(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】捕捉されたCO2及び再生可能H2を低炭素シンガスへと変換するための改良された触媒反応器システム及び触媒
(51)【国際特許分類】
C01B 32/40 20170101AFI20240412BHJP
B01J 23/02 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C01B32/40
B01J23/02 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563843
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 US2022000008
(87)【国際公開番号】W WO2022235310
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522402405
【氏名又は名称】インフィニウム テクノロジー,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INFINIUM TECHNOLOGY,LLC
【住所又は居所原語表記】2020 L Street,Suite 120,Sacramento,CA 95811-4260(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュツレ,デニス
(72)【発明者】
【氏名】シュツレ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ハンベリー,オリオン
(72)【発明者】
【氏名】コールドウェル,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】マクギニス,グレン
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ラメール
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC01
4G146JD02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BB06A
4G169BC02A
4G169BC03A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC12A
4G169BC13A
4G169BC35A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169CB02
4G169CB81
4G169CC29
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EA18
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC04Y
4G169EC05Y
4G169EC24
4G169EE08
4G169FC08
(57)【要約】
【要約】
本発明は、CO
2及び低炭素H
2を80%よりも大きいCO
2変換効率で低炭素シンガスへと変換し、現行の技術において説明されるプロセスと比べて工場の資本及び運転コストの削減をもたらす、改良された触媒を有する改良された触媒反応器システムを説明する。断熱性の触媒反応器の内表面は、シンガスと反応せず触媒性能に影響を与えない断熱性の非反応性表面で覆われている。改良された触媒は、堅牢で、高いCO
2変換効率を有し、長期間の運転を通してほとんど又は全く性能低下を示さない。低炭素シンガスは、低炭素燃料(ディーゼル燃料、ジェット燃料、ガソリン、灯油など)、低炭素化学物質及びその他の生成物の生成に使用され、化石燃料由来の生成物と比べて温室効果ガス排出量の大幅な削減をもたらす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンガスを生成するための方法であって、
H
2及びCO
2の混合物を、内表面及び外表面を有する第1の触媒反応器へと導入するステップであって、前記第1の触媒反応器の前記内表面は、H
2、CO又はCO
2と反応しない不活性の断熱材料で被覆されており、前記第1の触媒反応器の前記外表面は、断熱運転の熱損失を最小にするように断熱されている、ステップを含み、
これによりシンガスを生成する、方法。
【請求項2】
前記第1の触媒反応器が、内表面及び外表面を有する第2の触媒反応器と直列して使用され、前記第2の触媒反応器の前記内表面は、H
2、CO又はCO
2と反応しない不活性の断熱材料で被覆されており、前記第2の触媒反応器の前記外表面は、断熱運転の熱損失を最小にするように断熱されており、
CO、H
2及びCO
2の混合物が前記第1の反応器を出て前記第2の反応器へと導入され、CO
2及びH
2からシンガスへのさらなる変換を起こし、CO
2の変換効率が80%から100%の間になる、
請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記第1の反応器に導入されるH
2のCO
2に対する体積比が、1.5から5.0の間である、請求項1に記載された方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の触媒反応器が、150psiから350psiで運転される、請求項2に記載された方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の触媒反応器が、1,600°Fから1,700°Fで運転される、請求項2に記載された方法。
【請求項6】
前記第2の触媒反応器が、前記第1の触媒反応器の圧力との圧力差が20psi以内の圧力で運転される、請求項2に記載された方法。
【請求項7】
再生可能電力が、前記H
2及びCO
2を前記第1の触媒反応器内へと導入する前に加熱するために使用される、請求項1に記載された方法。
【請求項8】
前記第1の触媒反応器内の触媒は、合計濃度が1重量部から35重量部の間の1種以上の元素を含浸させた金属アルミナスピネルを含み、前記金属アルミナスピネルは、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カリウム及びアルミン酸ナトリウムからなる群より選択され、1種以上の前記元素は、Ba、Ca、Co、Fe、Mg、Ni及びZnからなる群より選択される、請求項1に記載された方法。
【請求項9】
前記第2の触媒反応器内へと導入された前記CO、H
2及びCO
2が、前記第2の触媒反応器内へと導入された前記H
2及びCO
2とほぼ同じ温度に予熱される、請求項2に記載された方法。
【請求項10】
CO
2からのCO生成の選択率が、90%から100%の間である、請求項1に記載された方法。
【請求項11】
CO
2のCOへの変換効率が、1,000時間以上にわたって0%から1%の間で低下する、請求項1に記載された方法。
【請求項12】
前記H
2及びCO
2を前記第1の触媒反応器内へと導入する前の前記H
2及びCO
2の加熱に使用される予熱器が、前記第1の触媒反応器内へと導入されるCO
2の1メートルトンあたり0.6MWh未満の再生可能電力を使用する、請求項1に記載された方法。
【請求項13】
生成された前記シンガスのH
2/COの比が、1.5から3.0である、請求項1に記載された方法。
【請求項14】
前記第1の反応器内へと導入された前記H
2及びCO
2の混合物が、メタンをさらに含む、請求項1に記載された方法。
【請求項15】
前記メタンは、CO
2の0.1体積パーセントから10体積パーセントの間で含まれる、請求項14に記載された方法。
【請求項16】
前記メタンの80体積%から100体積%が、COへと変換される、請求項14に記載された方法。
【請求項17】
前記シンガスが、低炭素燃料又は低炭素化学物質へと変換される、請求項1に記載された方法。
【請求項18】
前記シンガスが低炭素燃料へと変換され、前記低炭素燃料の温室効果ガス排出量が90%から100%の間で削減される、請求項17に記載された方法。
【請求項19】
低炭素燃料又は低炭素化学物質へと変換する前に、前記シンガスから水が除去される、請求項17に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕捉されたCO2及び再生可能H2を80%よりも大きいCO2変換効率で低炭素シンガスへと変換する改良された触媒を有する、単一の反応器又は直列の反応器を含んでもよい、改良された触媒反応器システムを説明する。改良された触媒は堅牢で、高いCO2変換効率を有し、長期間の運転を通してほとんど又は全く性能低下を示さない。低炭素シンガスは、低炭素燃料(例えば、ディーゼル燃料、ジェット燃料、ガソリン、灯油など)、低炭素化学物質(メタノール、アルコール、オレフィン、溶剤など)、及びその他の生成物を生成するために使用され、化石燃料由来の生成物と比べて、温室効果ガス排出量の大幅な削減をもたらす。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、多くの工業プロセスや生物学的プロセスによって生成される。二酸化炭素は、通常、大気中へと放出される。しかし、二酸化炭素は重要な温室効果ガスであることが確認されており、そのため、これらのプロセスからの二酸化炭素排出量を削減する必要がある(Shuklaら(2019)、Schuetzle(2020))。二酸化炭素は、限られたケースでは油井からの油及びガスの回収を促進するために使用され、飲料産業やその他の用途にも少量使用されるが、大部分は大気中に排出される。二酸化炭素を処理する望ましい方法は、二酸化炭素を効率的に捕捉及び利用し、燃料及び化学物質などの有用な生成物へと変換することである。このような生成物は、石油及び天然ガスなどの化石資源から生成される燃料及び化学物質に代替することができ、大気中への二酸化炭素の正味の総排出量を減らすことができる(Hepburnら(2019))。
【0003】
二酸化炭素の利用のために検討されてきた反応のひとつに、二酸化炭素の水素化としばしば言われる、逆水性ガスシフト(Reverse Water Gas Shift(RWGS))反応がある(式1)。
CO2 + H2= CO + H2O 式1
この反応は、CO2及びH2を、CO及びH2Oへと変換する。この反応は、室温では吸熱性であり、進行に熱を必要とする。コーキング(炭素の形成)を最小限に抑え又は全く起こさずに、二酸化炭素を一酸化炭素へと大幅に変換するためには、高温と効率的な触媒とが必要である。
【0004】
水素は、天然ガスを含む多くの供給源から生成することができ、又は、さらに好ましくは電気分解若しくはその他の手段によって水から生成することができる(式2)。
H2O = H2+ 1/2O2 式2
RWGS反応からのCOと、水の電気分解からのH2とを用いて、燃料及び化学物質を生成することが可能である。H2及びCOの混合物は、合成ガス(synthesis gas)又はシンガス(syngas)と呼ばれる。シンガスは、液体及び気体の炭化水素燃料、アルコール、酢酸、ジメチルエーテル及びその他多くの化学生成物を含む、幅広い化学生成物を生成するための原料として使用することができる(Olah(2009)、Centi(2009)、Jian(2010)、Fischer(2016)、Li(2019)、米国科学アカデミー(2019))。
【0005】
[RWGS触媒]
現行の技術において最も広く説明されたアプローチは、CO2及びH2の混合物をシンガスへと変換するための触媒プロセスを採用している。この方法は、通常は「CO2水素化」又は「逆水性ガスシフト(RWGS)」と呼ばれる(Daza他(2016)、Vogt他(2019)。CO2及びH2Oの混合物をシンガスへと変換するための電気分解プロセスを含む、第2の新たなアプローチがある(Wangら(2016))。
【0006】
多くの特許出願、特許及び出版物では、H2及びCO2の混合物をシンガスへと変換するためのRWGS触媒の開発が説明されている。この技術は、表1において概説された品質及び性能仕様に関して評価される。
【0007】
表1 H2/CO2混合物のシンガスへの効果的な触媒変換のための品質及び性能要件
1.触媒には、低コストの成分が含まれる(レアメタルを全く(又はほとんど)含まない)。
2.数トンの量で経済的に製造可能である。
3.触媒が堅牢である(例えば、ロックウェル硬さがMohr 03-04よりも大きい)。
4.約2,100F°まで化学的及び物理的に安定である。
5.触媒反応器(管状反応器又は充填床反応器など)内へと容易に充填することができる。
6.触媒反応器の最上部から底部への圧力降下が許容できる(好ましくは50psi未満)。
7.触媒の活性化(例えばH2による還元)を、現場で行うことができる。
8.CO2のCOへの変換効率は、約5,000hr-1よりも大きい空間速度において1パスあたり約65%よりも大きく、好ましくは約75%よりも大きい。
9.(CO2からの)CO生成の選択率は、約90%よりも大きく、好ましくは約95%よりも大きい。
10.触媒がコークス化しない(例えば、炭素堆積物を形成しない)。
11.長寿命(運転1,000時間あたり0.5%未満の活性低下)であり、体系的な再活性化(還元)を必要としない。
【0008】
CO2変換システムの商業的経済性を満たすためには、上記の指標がRWGS触媒システムにとって重要である。したがって、現行の技術において説明される標準的なRWGS触媒は、表1において説明されたこれらの品質及び性能仕様を採用することにより、評価される。
【0009】
Iwananiら(1995)は、CO2及びH2の混合物をCOへと変換するための、酸化亜鉛上に遷移金属とレアメタル(Ni、Fe、Ru、Rh、Pt、W、Pd、Moなど)とを含む触媒を開発した。彼らは、150時間後に触媒活性を大幅に低下させることなく、37%までの比較的低い変換率を達成したが、より長時間の試験は実施しなかった。
【0010】
Dupontら(2003)は、H2/CO2(3.5/1.0(v/v))の混合物をCOへと変換するために、0.78%ZnO/0.21%Cr2O3/0.01%NiOで構成された触媒を開発した。950°F、圧力580psi及び空間速度5.0hr-1でのCO2変換効率は36%であり、92%のCO及び8%のCH4を伴った。触媒の経時的な効率に関するデータは、示されなかった。この触媒は、表1において概説された基準のいずれも満たしていない。
【0011】
Chenら(2015)は、RWGS反応のための活性及び選択性を示すナノ金属間触媒(InNi3Co0.5)の合成を、報告した。この触媒は、In-Ni金属間塩基の浸炭により製造され、触媒表面上に二重の活性部位が生成された。この触媒は、30,000hr-1という高いガス時速において、1125°F、150時間で、52~53%という中程度のCO2変換率を達成した。この触媒は、その構造に基づいて、基準#3及び#7を満たす可能性がある。この触媒を数トンの量で製造すること(基準#2)は困難であり、従来の触媒反応器において商業的に使用できるか否か(基準#5及び#6)は不明である。この触媒は、CO2のCOへの変換効率(基準#8)と、CO生成の選択性(基準#9)とを満たしていない。この触媒は、150時間しか試験されていないため、その安定性及び寿命(基準#4、#10及び#11)は不明である。
【0012】
Bahmanpourら(2019)は、H2を用いてCO2を水素化してシンガスにする活性触媒として、現場で形成されたCu-Alスピネルを研究した。彼らは、様々な重量比でCu-Alスピネルを形成するために、共沈に続けて水素化処理を使用した。CuとAlの比率は4対1がCO2変換に効率的であることが分かった。彼らは、比較的高い空間速度で600℃において47%という比較的低いCO2変換率を維持し、40時間の試験後に検出可能な失活は見られなかった。
【0013】
この触媒は、基準#1を満たし、基準#2、#3、#5、#6及び#7を満たす可能性がある。しかし、銅を含んでいる触媒は、高温で焼結することにより、時間の経過とともに失活する傾向がある。さらに、この触媒の製法は、長期的な寿命(基準#10)を評価するために1,000時間の試験が必要である。
【0014】
Daza及びKuhn(2016)は、FeO3基材上に含浸させたLa/Sr(3.0/1.0(w/w))触媒を開発した。彼らは、1,200°F及び15psiで、H2/CO2(1.0/1.0(v/v))のCOへの16%の変換率と、95%の選択率を観察した。CO2変換効率及びCO選択率は、150時間の試験期間を通して比較的一定であった。この触媒は、表1において示された基準#1、#7及び#9を満たしている。この触媒は、150時間しか運転されなかったので、長期的な寿命(#10)が不明である。
【0015】
表2は、CO2のCOへの水素化触媒のための上記及びその他の技術を、まとめたものである。要するに、これらの技術において説明された触媒は、H2/COの混合物のシンガスへの効果的で商業的な変換のために必要な品質と性能の半分も満たしていない。対照的に、本書で説明される改良された触媒及び触媒変換システムは、表1において示された要件を全て満たしている。
【0016】
【0017】
【0018】
[RWGS触媒反応器の技術]
単一の反応器及び直列の反応器を含めて、触媒反応器を使用することは、原料の変換効率を押し上げ、収率を改善し、生成物の選択性を高めるために何十年もの間使用されてきた(Duら(2019)、Wikipedia(2021)、Repaskyら(2021))。このため、RWGSのために直列の反応器を使用することは、当業者によく知られており、これらの直列の反応器は、革新的な改良とは考えられていない。
【0019】
本書において説明される触媒反応器は、シンガスと反応せず触媒性能に影響を及ぼすことがない断熱性の非反応性表面を触媒内壁に追加することにより、改良されている。RWGS触媒を用いる他の触媒反応器システム及び構成を説明する。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、H2及びCO2の混合物を含む供給ガスを、H2及びCOを様々な比率で含んでいるシンガスへと変換する方法に関する。供給ガスは、入口温度が1,500°Fよりも高温、好ましくは1,600°Fよりも高温へと予熱され、加熱された供給ガスが生成される。供給ガスは、個別に加熱された後に混合されてもよく、または、混合された後に一緒に加熱されてもよい。電気予熱器(Q1)は、再生可能電力を使用して供給ガスを加熱するが、加熱炉の構成を使用してもよい。加熱された供給ガスは、第1の触媒反応器内の改良されたRWGS触媒へと送られる。この改良された触媒は、第1族金属及び第2族金属の1種以上を金属アルミナスピネル上に含浸させたもので構成されている。第1の触媒反応器からのガスは、改良された触媒を含んでいる第2のRWGS触媒反応器へと送られる前に、RWGS触媒の所望の運転温度まで再加熱(Q2)される。結果として得られるCO2変換効率は約80%よりも優れており、CO生成の選択率は約95%よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、H
2及びCO
2を低炭素燃料及び化学生成物へと変換するための方法のフロー図を図示する。システムの主な部分は、以下を含む。1)水からH
2とO
2とを生成する電気分解システム101。2)捕捉されたCO
2102。3)H
2/CO
2混合物からシンガスを効率的に生成する直列の触媒反応器A105及びB106内の改良された触媒(触媒#1)を含む触媒変換システム104。触媒#2 108は、シンガスから液体炭化水素(又は他の化学生成物)を生成する。生成された低炭素燃料生成物及び高価値化学生成物は、蒸留及び/又は他の分離プロセス114によって分離及び/又は精製される。
【0022】
固有の触媒変換システム104の一般的な配置を、
図1において図示する。H
2及びCO
2の混合物103は、改良されたRWGS触媒(触媒#1)を含んでいる反応器A105内へと入る前に、所望の運転温度へと加熱される(Q
1)。反応物の流れは、混合ガスとして加熱されてもよく、又は個別に加熱されてもよい。H
2及びCOの触媒変換は吸熱性であるため、反応器Aを出て来るガスの温度は、入口温度よりも低くなるであろう。したがって、ガスは、反応器B106内へと入る前に、所望の運転温度へと再加熱される(Q
2)。システムの構成には、温度がほぼ定温に保たれるように反応器の長さ全体にわたり加熱される単一の反応器システムの使用も、含めることができる。RWGS反応器システムに続いて、反応器Bからのガスの温度を、燃料及び化学物質を生成するための触媒#2 108の所望の運転温度へと低下させるために、熱交換器が使用される。この段階で、水は除去される。
【0023】
RWGS反応器のための熱設計と最適化は、燃料及び化学物質の商業的合成において特に重要である。この直列の反応器の設計により、CO2をCOへと約80%以上の変換がもたらされ、プロセスの次の段階に入る前に生成ガス/シンガスの流れを再循環させる必要性を排除する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
再生可能電力を使用している水の電気分解101により、再生可能H2が生成される。
H2O = H2+ 1/2O2 式1
H2/COの比が約2.0のシンガスを生成するためのバイオマスの水蒸気改質により生成することができる再生可能H2(Schuetzleら(2015))、又は、主にメタンを含むフレアガスから生成することができる再生可能H2(式2)(Tan et al, 2018)も含んでいる、低炭素又は再生可能H2の他の供給源も使用することができる。
CH4 + H2O = 3H2 + CO 式2
【0025】
CO
2は、多くの産業及び自然発生源から捕捉することができる。CO
2は、天然ガス鉱床においてしばしば見出される。CO
2は、嫌気性消化のような多くの生物学的プロセスから排出される。その他多くのプロセス(例えば、発電所、セメント工場、エタノール生成、石油精製、化学工場など)でCO
2が生成され、通常は大気中へと放出される。CO
2は、大気から捕捉することもできる。CO
2は、多くの既知の技術を用いて、これらの生物学的プロセス、工業的プロセス及び大気によるプロセスから捕捉することができ、本発明のための原料として使用することができる(Hepburnら(2019))。H
2及びCO
2は、所望の体積比で混合され、
図1における流れ103を形成する。H
2/CO
2比は、2.5~4.0の間であり、さらに好ましくは3.0~3.7の間である。このガス混合物は、次に、1,500°Fよりも高温へと、好ましくは1,600°Fよりも高温へと、間接的に加熱される。この加熱は、得られる最終生成物に関する許容可能な炭素集約度(carbon intensities)を達成するために、再生可能電力又は他の再生可能資源を使用して行われることが重要である。
【0026】
【0027】
供給ガスの電気加熱を行うことができる多くの方法がある。一つの方法は、電気加熱される輻射炉(electrically heated radiant furnace)を使用することである。この実施形態において、ガス混合物の少なくとも一部が炉内の加熱コイルを通過する。炉内において、加熱コイルは、輻射式の電気加熱要素(radiant electric heating elements)によって囲まれている。本発明の他の実施形態において、ガスは加熱エレメント上を直接通過し、これにより、ガスは対流性熱伝達により加熱される。電気加熱要素は、多くの材料から作ることができる。最も一般的な加熱要素は、ニッケルクロム合金である。これらの要素は、巻かれたストリップ材若しくは線材でもよく、又は、ジグザグ形状として鋳造されてもよい。これらの要素は、一般的にセラミック繊維が断熱に使用される断熱容器内に固定される。輻射要素は、加熱パターンを制御できるようにするために複数の区域に分けてもよい。加熱された供給ガスを生成するエネルギーを供給するために、複数のコイル及び複数の区域が必要になる場合がある。輻射炉では、良好な形態係数(good view factors)及び良好な熱伝達を確保するために、加熱要素及び流体コイルを適切に設計する必要がある。輻射炉による電力使用量は、可能な限り低くするべきである。輻射炉による電力使用量は、供給ガス中のCO2のMT(メートルトン)についての、電力が0.5MWh(メガワット時)/MT未満、さらに好ましくは0.40MWh/MT未満、さらに好ましくは0.20MWh/MT未満である。
【0028】
触媒反応器A及びBは、熱損失を制限するために断熱された高温のインコネル鋼又はハステロイで構成されている。この直列の反応器についての設計の利点は、触媒反応器A及びBを断熱するだけで十分であり加熱する必要がないことである。触媒反応器A及びBの前に、ガスを加熱することだけが必要である。別の形態において、単一の触媒反応器システムを使用してもよく、その場合、反応器システム内で加熱器を使用してシステム内の温度をほぼ定温に保ち、変換率を最大にする。反応器システムは、充填容器又は多管式反応器システムであってもよく、いずれもこの技術分野でよく知られている。
【0029】
ステンレス鋼を用いて又はシリカを含むセラミック材料を用いて触媒反応器を構成することは、許容可能ではない。理由として、シリカがシンガスと反応して水素化ケイ素を生成した後、ケイ酸塩が触媒上に堆積し、触媒の寿命及び効率を大幅に低下させることが判明している。また、ステンレス鋼も、シンガスと反応するため、許容可能ではない。触媒反応器は、高温のインコネル又はハステロイから製造されるのが好ましい。
【0030】
インコネル又はハステロイの内表面は、シンガスと反応せず触媒性能に影響を及ぼさない断熱性の非反応性表面コーティングで被覆されている。許容可能な表面コーティングの例としては、例えば、アルミン酸マグネシウム及びイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのスピネルが含まれる。これらのコーティングは、溶射プロセスを用いて塗布することができる。
【0031】
改良されたRWGS触媒(反応器A 105内及び反応器B 106内の触媒#1)は、触媒変換システム104の内部に設置される。この触媒は、顆粒状、ペレット状、球状、三葉状(trilobes)、四葉状(quadra-lobes)、モノリス状、又は、反応器にわたっての圧力損失を最小化するための他の任意に設計された形状の形態とすることができる。理想的には、反応器にわたっての圧力損失が50psi未満、さらに好ましくは20psi未満になるように、触媒粒子の形状及び粒径が管理される。触媒形態の大きさは、1mmから10mmの間の特徴寸法を有することができる。触媒粒子は、内部表面積が約15m2/gよりも大きく、さらに好ましくは約30m2/gより大きい多孔質材料である。
【0032】
この改良されたプロセスで使用される改良された触媒は、合計濃度が1重量部から35重量部の間の1種以上の元素が含浸された金属アルミナスピネルを含む。金属アルミナスピネルは、アルミン酸マグネシウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カリウム及びアルミン酸ナトリウムからなる群より選択される。含浸された元素は、Ba、Ca、Co、Fe、Mg、Ni及びZnからなる群より選択される。
【0033】
1時間あたりの反応物(H2+CO2)の質量流量を反応器A及びB内の触媒質量で除した、単位時間あたりの重量空間速度(Weight Hourly Space Velocity(WHSV))は、1,000hr-1から50,000hr-1の間であり、さらに好ましくは10,000hr-1から30,000hr-1の間である。
【0034】
主な反応器の容器から出るガスは、生成ガスである。生成ガスは、シンガス(H2/COの混合物)、未反応のCO2及びH2Oを含んでいる。さらに、生成ガスは、主な反応器の容器内で副反応により生成された少量のメタン(CH4)を含む場合もある。一実施形態において、メタン生成量は、好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、さらにより好ましくは1%未満である。
【0035】
シンガスは、プロセスにおけるこの時点で、様々な方法で使用することができる。シンガスは、燃料及び化学物質を生成するために使用される触媒108により特徴付けられるように、熱交換器107を使用して冷却及び圧縮することができる。
【0036】
燃料又は化学物質を生成した後に、生成物(メタンに富んだテールガスを含む)は分離され109、タイガス(taigas)は更なる変換のために自己熱改質器(autothermal reformer)111へと再循環される。自己熱改質器は、電気分解ステップ101から生成された酸素を使用する。
【0037】
液体炭化水素生成物113は、ディーゼル、ナフサ、灯油、ジェット燃料、ガソリン若しくは他の燃料生成物、又は、溶剤、ワックス、n-パラフィン、オレフィン及び他の生成物などの低炭素な特別の化学生成物を生成するために、蒸留及び/又は加工114されてもよい。
【実施例】
【0038】
以下は、様々な触媒変換システムの設計及び運転仕様を用いた、H2及びCO2混合物のシンガスへの変換のための例である。
【0039】
[例#1]
この例において、触媒反応器A105及び反応器B106は同じ大きさであり、同じ条件の圧力、温度及び空間速度の下で運転される。H2/CO2混合物(3.4/1.0(v/v))は、1,650°Fへと加熱され、300psiへと圧縮され、約17,000hr-1の空間速度で触媒反応器A105内へと供給された。
【0040】
H2/CO2混合物のシンガスへの触媒変換は吸熱性であるため、ガス反応物及び生成物の温度が低下し、CO2変換効率は、ガスが反応器を通過するにつれて低下する。Figure 1は、CO2変換効率とガス温度との関係を図示している。触媒床の入口でのCO2変換効率は82%であり、CO生成の選択率は99%よりも大きい。
【0041】
反応器Aからの未反応ガス及び生成物ガスの出口温度は、約1,375°Fとなるであろう。したがって、反応器A内の平均ガス温度は、約1,510°Fである。平均CO
2変換効率は、触媒床のこの平均温度で約68%である。反応器Aから出ているガスは、約32%の未変換のCO
2を含む。反応器Aを出ているガスは、反応器B内へと入る前に1,650°Fへと再加熱される(
図1中のQ
2)。反応器Bからのガスの出口温度は約1,615°Fであり、平均CO
2変換効率は78%である。結果として、この改良された直列の反応器の設計では、CO
2変換効率は80%よりも大きい。したがって、触媒テールガスの再循環は、不要である。反応器Bから出ているシンガスの組成(乾燥)は、54%のH
2、27%のCO及び19%のCO
2である。
【0042】
したがって、H2/COに関する比率2.0/1.0は、燃料(Schuetzleら特許(2013、2014、2015、2016、2017、2019)、エタノール(Schuetzleら特許(2010))、メタノール(国立エネルギー技術研究所(2021))及び他の生成物の直接的な生成に理想的である。
【0043】
[米国特許出願文献]
2003/0113244A1、2003年6月、DuPontら
【0044】
[米国特許文献]
7,718,832B1、2010年5月、Schuetzleら
8,394,862B1、2013年3月、Schuetzleら
8,741,001B1、2014年6月、Schuetzleら
9,090,831B2、2015年7月、Schuetzleら
9,476,002B1、2016年10月、Schuetzleら
9,611,145B1、2017年4月、Schuetzleら
9,631,147B1、2017年4月、Schuetzleら
10,478,806B1、2019年11月、Schuetzleら
【0045】
[外国特許文献]
GB 1995/2279583A、1995年11月、Iwananiら
AU 2015/203898B2、2015年7月、Landauら
WO 2021/062384A1、2021年5月、Repaskyら
【0046】
[他の出版物]
Artz, J., Muller, T.E., Thenert, K., Kleinekorte, J., Meys, R., Sternberg, A., Bardow, A, Leitner, W: Sustainable conversion of carbon dioxide: An integrated review of catalysis and life cycle assessment. Chemical Reviews, 118, 434-504 (2018).
【0047】
Bahmanpour, A.M., Heroguel, F., Kilic, M., Baranowski, C.J., Artiglia, L.: Cu-Al spinel as a highly active and catalyst for the reverse water gas shift reaction. ACS Catal., 9, 6243-6251 (2019).
【0048】
Centi, G., Perathoner, S.: Opportunities and prospects in the chemical recycling of carbon dioxide to fuels. Catalysis Today, 148, 191-205 (2009).
【0049】
Chen, P., Zhao, Guofeng, Z., Xue-Rong, J., Zhu, J.D., Lu, Y.: Catalytic technology for carbon dioxide reforming of methane to syngas, iScience 17, 315-324 (2019).
【0050】
Daza, Y.A., Kuhn, J.N.: CO2 conversion by reverse water gas shift catalysis: Comparison of catalysts, mechanisms, and their consequences for CO2 conversion to liquid fuels, Royal Society of Chemistry Advances, 6, 49, 675-49,691 (2016).
【0051】
Fischer, N., Claeys, M., Van Steen, E., Niemantsverdriet, H., Vosloo, M.: Syngas convention - fuels and chemicals from synthesis gas: state of the art, 2, 1-200 (2016).
【0052】
Hepburn, C., Adlen, E., Beddington, J., Carter, E.A., Fuss, S., Dowell, N.M., Minx, J. C., Smith, P., Williams, C.K.: The technological and economic prospects for CO2utilization and removal, Nature, 575, 87-97 (2019).
【0053】
Jiang, Z., Xiao, T., Kuznetsov, V.L., Edwards, P.P.: Turning carbon dioxide into fuel. Phil. Trans. R. Soc. A, 368, 3343-3364 (2010).
【0054】
Li, W., Wang, H., Jiang, X., Zhu, J., Liu, Z., Guo, X., Song, C.: A short review of recent advances in CO2 hydrogenation to hydrocarbons over heterogeneous catalysts, RSC Adv., 8, 7651 (2018).
【0055】
Lortie, M.: Reverse water gas shift reaction over supported Cu-Ni nanoparticle catalysts, Department of Chemical and Biological Engineering M.S. Thesis, University of Ottawa, Ottawa, Canada (2014).
【0056】
National Academy of Sciences, Chemical Utilization of CO2 into Chemicals and Fuels, Gaseous Carbon Waste Streams Utilization: Status and Research Needs, National Academies Press, Washington D.C. (2019).
【0057】
National Energy Technology Laboratory: Syngas conversion to methanol, www.netl.doe.gov) (2021).
【0058】
Olah, G. A., Goeppert, A., Surya Prakash, G. K.: Chemical recycling of carbon dioxide to methanol and dimethyl ether - from greenhouse gas to renewable, environmentally carbon neutral fuels and synthetic hydrocarbons. J. Org. Chem., 74, 487-498 (2009).
【0059】
Ruckenstein, E., Hu, Y.H.: Combination of CO2 reforming and partial oxidation of methane over NiO/MgO Solid Solution, Industrial & Engineering Chemistry Research, 37, 1744-1747 (1998).
【0060】
Schuetzle, D., Tamblyn, G., Caldwell, M., Schuetzle, R.: Solar reforming of carbon dioxide to produce diesel fuel. U.S. Department of Energy report #DE-FE0002558 (2010).
【0061】
Schuetzle, D., Tamblyn, G., Caldwell, M., Hanbury, O., Schuetzle, R., Rodriquez, R., Johnson, A., Deichert, F., Jorgensen, R., Struble, D: Demonstration of a pilot integrated biorefinery for the efficient, direct conversion of biomass to diesel fuel. DOE Technical Report #DE-EE0002876, U.S. Department of Energy Bioenergy Technologies Office (DOE-BTO), Golden, CO, 1-261 (May 2015) (www.researchgate.net)
【0062】
Schuetzle, D.: Historical and predicted global climate changes and some potential accelerated climate moderation approaches, 2018 Global Climate Action Summit, San Francisco, CA, 1-42 (2020) (www.researchgate.net).
【0063】
Shukla, P.R. et al: Climate Change and Land: an IPCC special report on climate change, desertification, land degradation, sustainable land management, food security, and greenhouse gas fluxes in terrestrial ecosystems, 2019 Intergovernmental Panel on Climate Change (2019) (www.ipcc.ch)
【0064】
Tan, E.C.D., Schuetzle, D., Zhang, Y., Hanbury, O., Schuetzle, R.: Reduction of greenhouse gas and criteria pollutant emissions by direct conversion of associated flare gas to synthetic fuels at oil wellheads, International Journal of Energy and Environmental Engineering, 9: 305-321 (2018)
【0065】
Vogt, C., Monai, M., Kramer, G.J., Weckhuysen, B.M.: The renaissance of the Sabatier reaction and its applications on Earth and in space, Nature Catalysis, 2, 188-197 (2019).
【0066】
Wang, Y., Liu, T., Lei, L., Chen, F.: High temperature solid oxide H2O/CO2co electrolysis for syngas production, Fuel Processing Technology, 161 (2016).
【0067】
Williamson, D., Herdes, C., Torrente-Murciano, L., Jones, M., Mattia, D.: N-doped Fe for combined RWGS-FT CO2 hydrogenation, 7, 7395-7402, ACS Sustainable Chem. Engineering (2019).
【0068】
Zhu, Q.: Developments on CO2-utilization technologies, Clean Energy, 3, 85-100 (2019).
【国際調査報告】