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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】容量ベースアイトラッカー
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/113 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
A61B3/113
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564583
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022026022
(87)【国際公開番号】W WO2022226358
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/179,045
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ヒュン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィネシュワール・サクティベルパティ
(72)【発明者】
【氏名】サン-ギュン・アン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA21
4C316FA19
4C316FA20
4C316FC04
(57)【要約】
ユーザの眼瞼の位置を感知することによりユーザの眼の角膜の垂直位置を測定するように構成された少なくとも1つの垂直容量センサと、ユーザの眼球の位置を感知することによりユーザの眼の角膜の水平位置を測定するように構成された少なくとも1つの水平容量センサとを含む、アイトラッキングシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイトラッキングシステムであって、
ユーザの眼瞼および眼球の位置を感知することにより前記ユーザの眼の角膜の垂直位置を測定するように構成された少なくとも1つの垂直容量センサと、
前記ユーザの眼球の位置を感知することにより前記ユーザの眼の前記角膜の水平位置を測定するように構成された少なくとも1つの水平容量センサと
を備える、アイトラッキングシステム。
【請求項2】
第2の水平容量センサをさらに備える、請求項1に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの水平容量センサおよび前記第2の水平容量センサは、前記ユーザの眼の前記角膜の前記水平位置を測定するための差動測定を使用して動作する、請求項2に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項4】
第2の垂直容量センサをさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの垂直容量センサおよび前記第2の垂直容量センサは、前記ユーザの眼の前記角膜の前記垂直位置を測定するために差動測定を使用して動作する、請求項4に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの垂直容量センサは、前記角膜を覆う前記ユーザの眼瞼から30mmの範囲内に位置するように構成され、前記垂直センサは、前記角膜の中心から±45mmの範囲内に位置決めされる、請求項1から5のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの水平センサは、前記角膜の中心から測定したときに前記ユーザの鼻に向かう-30mmのところから、40mm離れたところまでの範囲内に位置決めされる、請求項1から6のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項8】
水平センサの総数が、2個以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項9】
垂直センサの総数が、2個以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの垂直センサおよび前記少なくとも1つの水平センサは、前記ユーザの眼の付近に位置決めされるように構成されたアーティクル上に取り付けられる、請求項1から9のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項11】
前記アーティクルは、単眼用レンズまたは双眼用レンズ、メガネレンズフレーム、アイマスク、ゴーグル、および前記眼の上方の空間内に前記センサを懸下するように構成された機械的支持具または調節可能リングから選択される、請求項10に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項12】
前記水平センサおよび前記垂直センサは、眼球運動に対する感度を上昇させるために時計回り方向に最大で45度まで回転させられる、請求項1から11のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの垂直容量センサは、シングル電極から構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの垂直容量センサは、第1の垂直電極および第2の垂直電極から構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項15】
前記第1の垂直電極は、カーボンナノチューブペーパー複合材料電極であり、前記第2の垂直電極は、金属電極である、請求項14に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項16】
前記第1の垂直電極は、第1のカーボンナノチューブペーパー複合材料電極であり、前記第2の垂直電極は、第2のカーボンナノチューブペーパー複合材料電極である、請求項14に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項17】
前記第1の垂直電極および前記第2の垂直電極は、導電性インクで被覆される、請求項14に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項18】
前記第1の垂直電極と前記第2の垂直電極との間に間隙が存在する、請求項14から17のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項19】
前記第1の垂直電極と前記第2の垂直電極との間の前記間隙は、300μmから1mmの範囲内である、請求項18に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項20】
少なくとも1つの垂直センサが、PETフィルム内にラミネートされる、請求項1から19のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項21】
前記第1の水平容量センサは、シングル電極から構成される、請求項1から20のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの水平容量センサは、第1の水平電極および第2の水平電極から構成される、請求項1から21のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項23】
前記第1の水平電極は、カーボンナノチューブペーパー複合材料電極であり、前記第2の水平電極は、金属電極である、請求項22に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項24】
前記第1の水平電極は、第1のカーボンナノチューブペーパー複合材料電極であり、前記第2の水平電極は、第2のカーボンナノチューブペーパー複合材料電極である、請求項22に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項25】
前記第1の水平電極および前記第2の水平電極は、導電性インクで被覆される、請求項22に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項26】
前記第1の水平電極と前記第2の水平電極との間に間隙が存在する、請求項22から25のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項27】
前記第1の水平電極と前記第2の水平電極との間の前記間隙は、300μmから1mmの範囲内である、請求項26に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項28】
少なくとも1つの水平センサが、PETフィルム内にラミネートされる、請求項1から27のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項29】
前記少なくとも1つの水平センサおよび前記少なくとも1つの垂直センサを制御し、前記少なくとも1つの水平センサおよび前記少なくとも1つの垂直センサから測定信号を受信するように構成された、電子制御ユニットをさらに備える、請求項1から28のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項30】
前記測定信号を処理し、前記ユーザの眼の位置を表す出力を供給するように構成された、プロセッサをさらに備える、請求項1から29のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項31】
マシンラーニングおよび/または人工知能を適用することにより前記ユーザの眼の前記位置を表す前記出力を供給するように構成された、前記プロセッサ上で実行可能である命令をさらに備える、請求項30に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項32】
前記垂直容量センサおよび前記水平容量センサにより検出される容量変化を増大させるために、前記ユーザの身体に対して前記アイトラッキングシステムを電気接続するように構成された電子接地をさらに備える、請求項1から31のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項33】
アイトラッキングの正確度およびダイナミックレンジを改善するように構成された光学系ベースアイトラッキングシステムをさらに備える、請求項1から32のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項34】
前記電子制御ユニットおよび前記プロセッサに対する前記ユーザの眼の位置に関するデータを有線または無線で伝送するように構成されたハードウェアをさらに備える、請求項1から33のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項35】
前記システムは、睡眠時または眼瞼閉鎖時に前記ユーザをモニタリングするように構成される、請求項1から34のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項36】
前記容量信号の回帰係数が、ヒトの顔からの電荷により誘起される信号ドリフトを否認することにより眼球運動を検出するために使用される、請求項1から35のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項37】
IRカメラシステムが、より高い感度および正確度のデータを同期的に取得するために、水平容量センサおよび垂直容量センサとの組合せにおいて追加される、請求項1から36のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項38】
アイトラッキングシステムであって、
左側部および右側部を備えるアーティクルと、
前記アーティクルの前記右側部に対して装着された第1の垂直センサと、
前記アーティクルの前記左側部に対して装着された第2の垂直センサと、
前記アーティクルの前記右側部に対して装着された第1の水平センサと、
前記アーティクルの前記左側部に対して装着された第2の水平センサと
を備え、
前記第1の垂直センサおよび前記第1の水平センサは、ユーザの右眼瞼および前記ユーザの右眼球の位置を感知することにより、前記ユーザの右眼の角膜のそれぞれ垂直位置および水平位置を測定するように構成され、
前記第2の垂直センサおよび前記第2の水平センサは、前記ユーザの左眼瞼および前記ユーザの左眼球の位置を感知することにより、前記ユーザの左眼の角膜のそれぞれ垂直位置および水平位置を測定するように構成され、それによりユーザの右眼球運動および左眼球運動の両方が同時に感知される、アイトラッキングシステム。
【請求項39】
前記第1の垂直センサ、前記第2の垂直センサ、前記第1の水平センサ、および前記第2の水平センサのそれぞれが、前記ユーザに対面する前記アーティクルの内方側部上に配置される、請求項38に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項40】
前記第1の垂直センサ、前記第2の垂直センサ、前記第1の水平センサ、および前記第2の水平センサのそれぞれが、前記アーティクルから離れるように前記センサをそれぞれ持ち上げ、前記ユーザの近傍に各センサを配置するように構成された、スペーサを含む、請求項38または39に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項41】
前記第1の垂直センサ、前記第2の垂直センサ、前記第1の水平センサ、および前記第2の水平センサのそれぞれが、カーボンナノチューブ複合材料センサである、請求項38から40のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項42】
前記第1の垂直センサ、前記第2の垂直センサ、前記第1の水平センサ、および前記第2の水平センサのそれぞれが、ハイブリッドセンサ対である、請求項38から41のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項43】
前記アイトラッキングシステムは、
前記アーティクルの前記右側部に対して装着された第3の水平センサと、
前記アーティクルの前記左側部に対して装着された第4の水平センサと
をさらに備え、
前記第1の水平センサおよび前記第3の水平センサは、前記ユーザの右眼の前記角膜の前記水平位置を測定するために差動測定を使用して動作し、
前記第2の水平センサおよび前記第4の水平センサは、前記ユーザの右眼の前記角膜の前記水平位置を測定するために差動測定を使用して動作する、請求項38から42のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項44】
前記アーティクルは、単眼用レンズまたは双眼用レンズ、メガネレンズフレーム、アイマスク、ゴーグル、および前記眼の上方の空間内に前記センサを懸下するように構成された機械的支持具または調節可能リングから選択される、請求項38から43のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項45】
前記少なくとも1つの水平センサおよび前記少なくとも1つの垂直センサを制御し、前記少なくとも1つの水平センサおよび前記少なくとも1つの垂直センサから測定信号を受信するように構成された、電子制御ユニットをさらに備える、請求項38から44のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項46】
前記測定信号を処理し、前記ユーザの眼の位置を表す出力を供給するように構成された、プロセッサをさらに備える、請求項38から45のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項47】
マシンラーニングおよび/または人工知能を適用して、前記ユーザの眼の前記位置を表す前記出力を供給するように構成された、前記プロセッサ上で実行可能である命令をさらに備える、請求項46に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項48】
前記垂直容量センサおよび前記水平容量センサにより検出される容量変化を増大させるために、前記ユーザの身体に対して前記アイトラッキングシステムを電気接続するように構成された電子接地をさらに備える、請求項38から47のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステム。
【請求項49】
ユーザの少なくとも1つの眼の位置をトラッキングする方法であって、
前記ユーザに対して請求項1から48のいずれか一項に記載のアイトラッキングシステムを取り付けるステップと、
前記少なくとも1つの垂直センサおよび前記少なくとも1つの水平センサから容量を測定するステップと
を含む、方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの水平センサおよび第2の水平センサから容量を差動的に測定するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つの垂直センサおよび第2の垂直センサから容量を差動的に測定するステップをさらに含む、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
1つまたは複数の測定信号を処理し、前記ユーザの眼の位置を表す出力をプロセッサに供給するステップをさらに含む、請求項49から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記プロセッサを用いて前記1つまたは複数の測定信号に対してマシンラーニングおよび/または人工知能を適用するステップをさらに含む、請求項49から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記垂直センサおよび前記水平センサにより検出された前記容量変化を増大させるために、電子接地を用いて前記ユーザの身体に対して前記アイトラッキングシステムを電気接続するステップをさらに含む、請求項49から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記ユーザの眼の位置に関するデータをプロセッサに伝送するステップをさらに含む、請求項49から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記データは無線接続により伝送される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記データは有線接続により伝送される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記ユーザの眼瞼が閉じられているときに前記ユーザをモニタリングするステップをさらに含む、請求項49から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ユーザの睡眠時に前記ユーザをモニタリングするステップをさらに含む、請求項49から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記ユーザの顔からの電荷により誘起される信号ドリフトを否認するために前記容量信号の回帰係数を使用するステップをさらに含む、請求項49から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
IRカメラシステムを用いてより高い感度および正確度のデータを同期的に取得するステップをさらに含む、請求項49から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
感度を改善し、ノイズを低減し、電界を局在化するために前記水平容量センサおよび前記垂直容量センサを能動的および受動的にシールドするステップをさらに含む、請求項49から61のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年4月23日に出願された米国仮特許出願第63/179045号に基づく利益を主張するものである。この仮特許出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の実施許諾権に関する記載事項
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により認可された認可番号R21 EY031768およびアメリカ国立科学財団の先進製造プログラム(the Advanced Manufacturing Program)による認可番号1927623の下において政府支援によりなされたものである。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ウェアラブルセンサは、可撓性を有し、弾性を有し、小型サイズを有するものとして作製されてきた。とりわけ心拍、足圧、および皮膚動作のモニタリングのためのウェアラブルセンサは、スポーツ医療およびリハビリテーションに直接的な影響を及ぼす。しかし、眼球運動を正確かつ非侵襲的に測定するためのウェアラブルセンサは、未解決なままの問題となっている。眼球運動をモニタリングするための現行の方法は、本質的にバルク性が高いかまたは侵襲的なものであるかのいずれかである。
【0004】
これらの方法としては、以下のものが含まれる。(i)眼瞼に装着された極薄圧電ナノ発電機が、眼球の運動に応じて出力電圧を発生させる。この技術は、その初期段階にある。(ii)侵襲的に配置された強膜コイル。誘起される電圧の大きさは、強膜コイルおよび磁束の角度により決定される。この手技は、その侵襲性の高さにより一般集団による利用が不可能な場合がある。(iii)注視点検出を判定するための容量センサアレイ。眼球、筋、および眼瞼の動きが、眼の付近の固定点に配置されたコンデンサの容量変化を誘発する。しかし、その感度は、眼球運動の精密な測定には不十分なものであった。(iv)カメラベースデスクトップアイトラッキングシステムは、多数の用途にとって非常に役立つ主要なシステムである。しかし、このシステムは、バルク性が高く、可搬性を有さず、リアルタイムデータ解析を提供できず、保存されたデータセットの後処理を必要とする。
【0005】
神経障害診断のための正確度の高いアイトラッカーが不足している。ほとんどの外来診療所では、医師は、裸眼により眼球運動の問題の評価を行う。この技術は、不正確であり、誤診を招きやすい。さらに、従来のアイトラッカーは、バルク性が高く、高額であり、長い準備時間を必要とする。現行のカメラベースシステムを疾患診断のために適用可能なものにするためには、ハードウェアおよびソフトウェアにおける大幅な改善が必要である。実験室または臨床環境におけるアイトラッキングセンサの使用は、患者による訪問が短時間であること、装置の利用性が低いこと、および十分な訓練を受けた医療技術者が必要であることにより、困難であった。したがって、現行のアイモニタリングセンサは、臨床タスクにとって不十分なものである。
【0006】
ロバスト性解消を進める上での難点としては、(i)リアルタイム信号処理のための小型高忠実度センサおよび電子機器の入手、(ii)被験者の顔の解剖学的構造を明らかにし測定品質に対する被験者の動きの影響を最小限に抑えることが可能なウェアラブルプラットフォーム、ならびに(iii)データ解析アルゴリズムおよび測定較正が十分でないことが挙げられる。これらの難点により、収集されたデータが自然な日常的な眼球運動を反映しない場合があり、これが誤診をもたらす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、非侵襲的な高忠実度のアイトラッカーおよび使用方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本概要は、以降において「発明を実施するための形態」でさらに説明するコンセプトの1つを簡単に説明するためのものである。本概要は、特許請求される対象の重要な特徴を特定することを意図するものでもなければ、特許請求される対象の範囲の決定を支援するものとして使用されることを意図するものでもない。
【0009】
一態様では、アイトラッキングシステムであって、ユーザの眼瞼の位置を感知することによりユーザの眼の角膜の垂直位置を測定するように構成された少なくとも1つの垂直容量センサと、ユーザの眼球の位置を感知することによりユーザの眼の角膜の水平位置を測定するように構成された少なくとも1つの水平容量センサとを備える、アイトラッキングシステムが開示される。
【0010】
もう1つの態様では、アイトラッキングシステムであって、左側部および右側部を備えるアーティクルと、アーティクルの右側部に対して装着された第1の垂直センサと、アーティクルの左側部に対して装着された第2の垂直センサと、アーティクルの右側部に対して装着された第1の水平センサと、アーティクルの左側部に対して装着された第2の水平センサとを備え、第1の垂直センサおよび第1の水平センサが、ユーザの右眼瞼およびユーザの右眼球の位置を感知することにより、ユーザの右眼の角膜のそれぞれ垂直位置および水平位置を測定するように構成され、第2の垂直センサおよび第2の水平センサが、ユーザの左眼瞼およびユーザの左眼球の位置を感知することにより、ユーザの左眼の角膜のそれぞれ垂直位置および水平位置を測定するように構成され、それによりユーザの右眼球運動および左眼球運動の両方が同時に感知される、アイトラッキングシステムが開示される。
【0011】
さらにもう1つの態様では、ユーザの少なくとも1つの眼の位置をトラッキングする方法であって、ユーザに対して上述のアイトラッキングシステムを取り付けるステップと、少なくとも1つの垂直センサおよび少なくとも1つの水平センサから容量を測定するステップとを含む、方法が開示される。
【0012】
前述の態様および本発明の付帯的利点の多くは、以下の詳細な説明を添付の図面と組み合わせて参照することによってよりよく理解できるため、さらに容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本技術によるアイトラッカーの一例を示す図である。
図1B】本技術によるアイトラッカー上のセンサ位置の一例を示す図である。
図1C】本技術によるセンサ構成の例を示す図である。
図1D】本技術による、球状物体が一例のセンサからそれぞれ異なる位置に位置する状態における、電界分布の例を示すグラフである。
図1E】本技術によるシングル容量測定を示す図である。
図1F】本技術による差動容量測定を示す図である。
図1G】本技術による、種々のセンサ構成の容量変化を示すグラフである。
図1H】本技術による、種々のセンサ構成の差動容量変化を示すグラフである。
図1I】本技術による、一例のセンサにおけるファイバ電極の個数に基づく容量のグラフである。
図2A】本技術による、3つのセンサ構成の数値モデルの一例を示す図である。
図2B】本技術による、3つのセンサ構成の数値モデルの一例を示す図である。
図2C】本技術による、3つのセンサ構成の数値モデルの一例を示す図である。
図2D】本技術による、3つのセンサ構成の数値モデルの一例を示す図である。
図3】本技術による初期容量測定値を示す図である。
図4A】本技術によるセンサ製造の一例を示す図である。
図4B】本技術によるセンサ構成の例を示す図である。
図4C】本技術による一例のセンサの光学走査電子顕微鏡画像を示す図である。
図4D】本技術による試験のための導電性アルミニウムフォイルで覆われた眼および顔のシミュレータを示す図である。
図4E】本技術による容量測定構成の一例を示す図である。
図4F】本技術による、種々のセンサ構成の容量変化を示すグラフである。
図4G】本技術による、顔の動きを伴わない場合の種々のセンサ構成の容量変化を示すグラフである。
図4H】本技術による、シングル容量測定および差動容量測定の容量変化の比較を示す図である。
図5】本技術による、PR電極、PF電極、およびPH電極の初期容量値のグラフである。
図6】本技術による、左右運動をトラッキングする差動垂直センサのグラフである。
図7A】本技術による、垂直滑動性追従の最中に取得された30個の画像の中の1つの画像フレームを示す図である。
図7B】本技術による、センサと眼瞼との間における距離変化のグラフである。
図7C】本技術による、ほぼ閉じた眼から完全に閉じた眼にかけての容量変化を示すグラフである。
図7D】本技術による、乾燥皮膚と湿潤皮膚との間における容量変化を示すグラフである。
図8A】本技術による、シングル容量測定の場合および差動容量測定の場合のセンサの位置の例を示す図である。
図8B】本技術による、シングル垂直センサおよび差動水平センサを有する単眼用メガネの例を示す図である。
図8C】本技術による、垂直センサ位置による容量変化を示す図である。
図8D】本技術による、水平差動センサ位置による容量変化を示す図である。
図9A】本技術による、市販のアイトラッカーおよび本開示のアイトラッカーを用いた眼球の垂直運動を示す図である。
図9B】本技術による、本開示のアイトラッカーおよび市販のアイトラッカーを用いた水平眼球運動信号の例を示す図である。
図9C】本技術による、本開示のアイトラッカーおよび市販のアイトラッカーを用いた水平眼球運動信号を示す図である。
図9D】本技術による、本開示のアイトラッカーおよび市販のアイトラッカーを用いた水平眼球運動信号を示す図である。
図9E】本技術による、垂直滑動性追従運動および水平滑動性追従運動の位相図である。
図9F】本技術による、眼瞼が閉じた状態および開いた状態における水平眼球運動を示す図である。
図9G】本技術による、眼球運動を検出するためのリアルタイム応答の実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書においては、いくつかの実施形態では薄膜フォーマットを用いてシステム容量の微細な変化を測定するためにカーボンナノチューブ-ペーパー複合材料(CPC)から作製された、ウェアラブル感知プラットフォームが説明される。現行のカメラベースシステムに代わるために、CPC容量センサは、眼球運動をトラッキングし、例えば瞬きなどの眼瞼運動をモニタリングする。いくつかの実施形態では、これらのセンサは、マイクロセルロースファイバ基材中に埋設された多層カーボンナノチューブ(MWCNT)から構成される。MWCNTは、ファイバ網の全体にわたってランダムに分布し得る。基材が破砕されると、分離されたMWCNTが、キャパシタンスネットワークを形成する。電気的終端部が、クラックに沿ってキャパシタンスを形成する。これらの容量センサは、眼球運動による容量の非接触測定のためにパッケージングされる。これらのセンサは、低電力電子装置を使用し、任意の個数のアイトラッキングフォームファクタと一体化され得る。
【0015】
さらに、本明細書においては、1対の非対称電極から作製された小型ウェアラブル容量センサが説明される。一方の電極は、カーボンナノチューブペーパー複合材料(CPC)ファイバであり、他方の電極は、矩形金属電極である。非対称電極と球状眼球との間の容量相互作用は、数値解析により解析される。顔シミュレータを使用することにより、近接性、ジオメトリ、および人体電荷に関して眼球運動および容量信号変化を相関づけるために、シングル容量測定および差動容量測定の両方の特徴を調べる。この相互作用解析に基づき、ヒトの眼球をトラッキングするための最適なセンサ位置を見出すために、複数のセンサを試験した。垂直眼球運動および水平眼球運動を、市販のアイトラッカーにより生成される眼球運動と比較した。プロトタイプアイトラッカーを、滑動性追従眼球運動トラッキング、ヒューマンマシンインターフェース、および閉眼球運動モニタリングについて実証する。提案される容量感知デバイスは、視界を妨げない一方で、最小数の容量センサを使用して寄生容量を低下させる。いくつかの実施形態では、ウェアラブルアイトラッカーは、ヒューマンマシンインターフェース、認知的モニタリング、神経科学的研究、およびリハビリテーションに対して有用である。
【0016】
いくつかの実施形態では、2対のセンサがメガネ上に配置される。これらのセンサは、ヒト被験者の眼球運動を検査するために構成される。一例では、これらのセンサにより、眼球を左右方向および上下方向に移動するように指示されたヒト被験者の眼球運動を測定した。Analog Devices(Norwood、MA)AD7746容量デジタル変換器評価用ボードが、この測定のために使用され得る。容量は、差動方法により測定され得る。いくつかの実施形態では、センサLおよびRが、左右方向運動に対する対をなし、センサUおよびDが、上下方向運動に対する対をなす。この測定は、寄生容量を回避することなく16Hzのサンプリングレートで実施し得る。一実施形態では、検出された容量変化は20~30fFであった。感度および正確度は、センサ-眼球相互作用モデルに基づき上昇され得る。
【0017】
図1Aは、本技術によるアイトラッカーの一例である。ウェアラブルアイトラッカー100は、内蔵型の容量センサを有するメガネフレームの形態をとり得るものであるが、他の実施形態では、このアイトラッカーは、単眼用レンズもしくは双眼用レンズ、アイマスク、ゴーグル、または眼の上方の空間内にセンサを懸下するように構成された機械的支持具もしくは調節可能リングであってもよい。また、これらのセンサのフォームファクタが小さいことにより例えばバーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットなどの既存のヘッドギアへの組込みが可能になる。いくつかの実施形態では、個々の顔形状に合わせるために、図8Bに示すように、柔軟な取付台が、センサの位置および距離を調節するために使用される。このように設計されたセンサのジオメトリは、1×5mmの面積と、0.1mmの厚さとを有し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、図1Bにおいて説明および示すように、ウェアラブルアイトラッカー100は、少なくとも1つの垂直センサおよび少なくとも1つの水平センサを備え得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、ウェアラブルアイトラッカー100は、容量センサを固定するためのアーティクル110を備え得る。いくつかの実施形態では、このアーティクルは、単眼用レンズもしくは双眼用レンズ、メガネフレーム、アイマスク、ゴーグル、または眼の上方の空間内にセンサを懸下するように構成された機械的支持具もしくは調節可能リングであってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、アイトラッカー100は、測定信号を処理しユーザの眼の位置を示す出力を供給するように構成されたプロセッサ120をさらに備え得る。いくつかの実施形態では、このプロセッサは、命令を実行してマシンラーニングおよび/または人工知能を適用することによりユーザの眼の位置を示す出力を供給するように構成される。いくつかの実施形態では、プロセッサは、少なくとも1つの垂直センサおよび少なくとも1つの水平センサを制御し、少なくとも1つの垂直センサおよび少なくとも1つの水平センサから測定信号を受信するように構成された電子制御ユニットを備える。いくつかの実施形態では、この電子制御ユニットは、アイトラッカーとは別個の構成要素であってもよい。プロセッサ120は、アーティクル110の側部に図示されるが、有線接続により容量センサに接続されることを含め、任意の位置に位置してもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ120は、アーティクル110上に位置しなくてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、アイトラッカー100は、水平容量センサおよび垂直容量センサとの組合せにおいてIRカメラシステムをさらに備えてもよく、それにより、より高い感度および正確度のデータを同期的に取得する。
【0022】
動作において、容量測定の場合に、強膜-角膜接合部付近における眼球の幾何学形状の非対称性により、回転下においてセンサに対する眼球表面の距離の変化が生じる。この距離変化により、フリンジング電界が影響を被り、これにより図1Dに示すように容量が変化する。
【0023】
図1Bは、本技術によるアイトラッカー上のセンサ位置の一例である。これらのセンサは、センサとヒトの眼球との間の最適な距離を判定するために複数回にわたり調節した。図示するように、いくつかの実施形態では、センサ200、210、300、310、および320は、ユーザに対面する側において、アーティクル110のフレームの内側に配置される。
【0024】
いくつかの実施形態では、アイトラッカー100は、ユーザの眼瞼の位置を感知することによりユーザの眼の角膜の垂直位置を測定するように構成された少なくとも1つの垂直容量センサ200、210と、ユーザの眼球の位置を感知することによりユーザの眼の角膜の水平位置を測定するように構成された少なくとも1つの水平容量センサ300、310とを備える。いくつかの実施形態では、第2の垂直センサ(図1Bには図示せず)および第2の水平センサ320がさらに存在してもよい。いくつかの実施形態では、アーティクル110の各レンズが、少なくとも1つの垂直センサ200、210および少なくとも1つの水平センサ300、310を備える。いくつかの実施形態では、各レンズが、少なくとも1つの水平センサ300、310および第2の水平センサ320を備える。アーティクル110の左レンズの第2の水平センサは、はっきりと見えないが、第2の水平センサ320の同じ相対位置に、しかし左レンズ上に位置する(図8Bに示すように)点を理解されたい。いくつかの実施形態では、水平センサ300、310、320の総数は、2以下である。いくつかの実施形態では、垂直センサ200、210の総数は、2以下である。
【0025】
いくつかの実施形態では、アーティクル110は、左側部および右側部を備える。いくつかの実施形態では、例えば図1Bに示すように、アーティクル110の左側部は、メガネの左レンズであってもよく、アーティクル110の右側部は、メガネの右レンズであってもよい。いくつかの実施形態では、アーティクル110の右側部および左側部は、スリープマスクの右側部および左側部であってもよい。いくつかの実施形態では、アイトラッキングシステムは、アーティクルの右側部に対して装着された第1の垂直センサ200と、アーティクルの左側部に対して装着された第2の垂直センサ210と、アーティクルの右側部に対して装着された第1の水平センサ300と、アーティクルの左側部に対して装着された第2の水平センサ310とを備える。
【0026】
動作時に、第1の垂直センサ200および第1の水平センサ300は、ユーザの右眼瞼およびユーザの右眼球の位置を感知することによりユーザの右眼の角膜の垂直位置および水平位置をそれぞれ測定するように構成される。同様に、第2の垂直センサ210および第2の水平センサ310は、ユーザの左眼瞼およびユーザの左眼球の位置を感知することによりユーザの左眼の角膜の垂直位置および水平位置をそれぞれ測定するように構成され、それにより、ユーザの右眼球運動および左眼球運動の両方が、同時に感知される。
【0027】
いくつかの実施形態では、アイトラッキングシステム100は、電子接地130をさらに備え、この電子接地130は、垂直容量センサおよび水平容量センサにより検出される容量変化を増大させるために、ユーザの身体に対してアイトラッキングシステムを電気接続するように構成される。電子接地130は、プロセッサ120の一部であるものとして図示されるが、いくつかの実施形態では、電子接地は別個の構成要素である。いくつかの実施形態では、電子接地は、アーティクル110に対して装着されない。
【0028】
動作時に、および本明細書においてさらに詳細に説明されるように、少なくとも1つの垂直容量センサ200、210および第2の垂直容量センサ(図1Bには図示せず)は、ユーザの眼の角膜の垂直位置を測定するために差動測定を使用して動作する。同様に、少なくとも1つの水平容量センサ300、310および第2の水平容量センサ320は、ユーザの眼の角膜の水平位置を測定するために差動測定を使用して動作する。いくつかの実施形態では、水平センサおよび垂直センサは、眼球運動に対する感度を向上させるために時計回り方向に最大で45度回転させられる。
【0029】
図1Cは、本技術によるセンサ構成の例を示す図である。例えば図1Bに示すような少なくとも1つの垂直容量センサ200、210および少なくとも1つの水平容量センサ300、310などの容量センサは、ファイバ電極対(PF)、矩形電極対(PR)、および/またはハイブリッド電極対(PH)から構成され得る。いくつかの実施形態では、これらのセンサは、それぞれ異なる電極の組合せを有する。3つの異なる電極の組合せを、数値計算による感度評価のために試験した。1つは、ファイバ電極対(PH)であり、もう1つは、矩形電極対(PR)であり、少なくとも1つは、ファイバ電極および矩形電極からなるハイブリッド電極対(PH)であった。
【0030】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの垂直センサおよび少なくとも1つの水平センサは、それぞれ2つの電極から構成される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の垂直容量センサは、カーボンナノチューブペーパー複合材料センサである。いくつかの実施形態では、垂直容量センサは、テンプレート材料中に埋設された多層カーボンナノチューブからさらに構成され、テンプレート材料は、マイクロセルロースファイバ基材テンプレート材料からなる。いくつかの実施形態では、垂直容量センサは、少なくとも第1の電極および第2の電極を備えるテンプレート材料から構成される。第1の電極は、カーボンナノチューブペーパー複合材料電極であってもよく、第2の電極は、矩形電極であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の電極は、第1のカーボンナノチューブペーパー複合材料電極であり、第2の電極は、第2のカーボンナノチューブペーパー複合材料電極である。
【0031】
さらに、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の水平容量センサは、カーボンナノチューブペーパー複合材料センサである。いくつかの実施形態では、水平容量センサは、テンプレート材料中に埋設された多層カーボンナノチューブからさらに構成され、テンプレート材料は、マイクロセルロースファイバマトリクステンプレート材料からなる。1つまたは複数の水平容量センサは、少なくとも第1の電極および第2の電極を備えるテンプレート材料から構成され得る。第1の電極は、カーボンナノチューブペーパー複合材料電極であってもよく、第2の電極は、矩形電極であってもよい。さらにいくつかの実施形態では、第1の電極は、第1のカーボンナノチューブペーパー複合材料電極であり、第2の電極は、第2のカーボンナノチューブペーパー複合材料電極である。
【0032】
図1Dは、本技術による、ある球状物体が一例のPHセンサからそれぞれ異なる距離をおいて位置する状態における、電界分布の一例のグラフである。キーは、Log10をV/mで示す。右側は、球状物体から4mmの位置にあるセンサにより発生される電界である。左側は、球状物体から6mmの位置にあるセンサにより発生される電界である。円は、球状物体を示す。正方形の電界の底部には電極があり、この電極には5Vの電圧を印加した。
【0033】
容量感度は、容量変化と距離変化との比(ΔC/Δd)として定義される。ここで、Cは容量であり、dはセンサと眼球との間の距離である。電極同士の間の間隙サイズは、1mmであった。眼球に相当する5mm直径の球体を中心に浮遊させた。25kHzの周波数を有する5VのAC電位を、2つの電極間に印加した。ハイブリッド電極については、5Vの電圧をファイバ電極に対して印加し、その一方で矩形金属電極を接地させた。球状物体の比誘電率は、80であった。電圧が2つのCPC側部の間に印加されると、フリンジング電界が発生する。この電界は、MWCNTの直径に対して反比例するため、電界強度は、この直径が10nmまで縮小すると大幅に増大する。
【0034】
図1Eは、本技術によるシングル容量測定を示す図である。図1Fは、本技術による差動容量測定を示す図である。フリンジング電界によるΔCは、シングル方法(図1E)または差動方法(図1F)のいずれかにより計算することが可能である。図1Eおよび図1Fの両方における「GND」は、接地を表す。
【0035】
動作時に、シングル方法(図1E)は、好都合ではあるが、容量と回転角度との間の非線形関係による影響を被った。差動方法は、第2のセンサに対して180°位相をずらしてAC電圧を印加した。差動方法により、感度は2倍に上昇し、非線形性が相殺され、したがって容量と回転角度との間により高い線形関係が得られた。
【0036】
図1Gは、本技術による種々のセンサ構成の容量変化を示すグラフである。垂直軸には、容量変化(ΔC)をFfで示す。水平軸には、距離をmmで示す。
【0037】
標的球体まで4から6mmの間の距離におけるPFセンサ容量、PRセンサ容量、およびRHセンサ容量のΔC(図1Dに示すような)をグラフ化する。これらのセンサの中でも、PH電極は、最も高いΔCを示し、その後にPF電極およびPR電極が続いた。
【0038】
図1Hは、本技術による種々のセンサ構成の差動容量変化を示すグラフである。垂直軸には、容量変化(ΔC)をFfで示す。水平軸には、距離をmmで示す。
【0039】
PFセンサ、PRセンサ、およびPHセンサを使用した差動測定のΔCを図表化した。差動感知のために、5mmが0fFとして設定される。差動測定をΔCに適用すると、感度はより良好な線形性を伴いつつさらに向上した。より高い感度およびより良好な線形性が、近接応答に関する非線形項のキャンセレーションにより得られた。PH電極は、眼球なしによるCの低下および眼球ありによるCの上昇により最も高いΔCを示した。ΔCがより高くなることにより、感度(ΔC/Δd)の向上が結果的に得られた。
【0040】
図1Iは、本技術による一例のセンサにおけるファイバ電極の個数に基づく容量のグラフである。垂直軸には、容量をfFで示す。水平軸には、ファイバ電極の個数を示す。PHセンサの初期容量(C)および5mm距離における容量(C)は、センサ対のファイバ電極中のファイバの個数により左右される。球状標的が5mmの位置にある場合の容量、および標的なしの容量(C)。C、C、およびΔCは、ハイブリッド容量の場合にファイバの個数が増加すると飽和した。
【0041】
ファイバの個数が2個から16個へ増加すると、ΔCは、この個数が9個以上である場合に飽和した。ファイバ形状はランダムであるにもかかわらず、100を超過するアスペクト比(長さ/幅)および9個以上のファイバ個数により、場合によってはこの飽和に起因する均一なΔC値が得られる可能性があった。数値解析によれば、PH電極は、初期容量の低下と帯電した眼球による容量の上昇とにより、より高い感度を示した。次いで、差動測定により、近接検出の感度を高めることが可能であった。高アスペクト比ファイバのアレイにより均一なΔCを実現することが可能であった。いくつかの実施形態では、水平センサの第1の電極は、ファイバ電極である。いくつかの実施形態では、ファイバ電極は、8個以上のファイバを有する。同様に、いくつかの実施形態では、垂直センサの第1の電極は、ファイバ電極である。いくつかの実施形態では、ファイバ電極は、8個以上のファイバを有する。
【0042】
図2A図2Dは、本技術による3つのセンサ構成の数値モデルの一例を示す。容量センサの近接感度を調査するために、COMSOL数値モデルを構築した。
【0043】
図2Aは、本技術による、眼球を模した球状物体と、容量検出のための電極対とのジオメトリを示す。容量センサは、空気誘電率を有する正方形ドメインの底部に配置した。一方の側部は25mmであった。5Vの電位を2つの電極間に印加した。容量センサは、矩形電極対(PR)、ファイバ電極対(PF)、およびハイブリッド電極対(PH)から作製した(図2B図2D)。帯電した物体の近接検出に対する容量感度を調査するために、3つの異なるタイプのジオメトリを比較した。すべての電極に関して、総体積は同一になるように設計した。矩形電極は、1mmの長さを有し4×10μmの断面を有するモノリシック矩形スラブとした。ファイバ電極のジオメトリは、4つの直方体ファイバを20μm離間させて配置することにより形成した。いくつかの実施形態では、各電極が、10×10μmの断面を有し、1mmの長さを有する。ハイブリッド電極については、5Vの電圧をファイバ電極に対して印加し、その一方で矩形電極は接地した。25kHz周波数を静電モデルに適用した。球体は、80の比誘電率を有するものであった。あらゆる構成に関して、間隙サイズは1mmであったが、電極同士の間の間隙サイズは0.1μmから1mmの範囲内であってもよい。5mm直径の標的を、中心に浮遊する容量感知標的とした。観察される容量を、アドミタンスの仮想部分から算出し、これは以下の通りであった。
【0044】
【数1】
【0045】
記号Yは、電極において観察されるアドミタンスであり、ωは、励振角周波数であり、これは50,000π rad/sである。眼球との3つのセンサ構成について数値モデルを構築した。矩形金属電極は、40×10μmの断面と、1mmの長さとを有するものであった。ファイバ電極は、10×10μmの断面と1mmの長さとを有する4つのファイバから構成されるものであった。数値結果によれば、センサに対する球体の距離が6mmから4mmへと縮小すると、眼球と正電極との間の電荷相互作用は著しく増大した(図1Dに示すように)。換言すれば、眼球からの電荷は、容量変化(ΔC)を増大させ得る。
【0046】
図3は、本技術による初期容量測定のグラフである。垂直軸には、初期容量(C)をfFで表す。水平軸には、3つの電極構成(PR、PF、およびPH)を示す。
【0047】
眼球なしにおいて、PRセンサ、PHセンサ、およびPFセンサの初期容量は、表面積の増大により順次増加した。眼球が0.5mmの間隔で4から6mmの間において移動すると、ΔCは継続的に増加した。
【0048】
図4Aは、本技術によるセンサ製造の一例である。容量センサをカーボンナノチューブセルロースファイバ複合材料(CPC)から作製した。製造されたCPCは、88.4±3.1μmの平均厚さを有した。センサ製造に関して、材料を1×10mmに切断した。両端部上に銀電極をパターニングした後に(MG Chemicals、8330S-21G、USA)、ウォーターラインをプリントすることにより後に引張破断をもたらすクラック位置を誘導した。このプロセスを通じて、ファイバ電極を製造した。矩形電極については、銀インク(Engineered Materials Systems, Inc. Cl-1001、NY)をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に均一に被覆した。銀被覆されたPETフィルムを1×5mmへとトリミングした。ファイバ電極および矩形電極を組み合わせることにより、PF電極、PH電極、およびPR電極の3種の電極対を製造した。50μm厚の自己接着性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、容量センサをラミネートするために使用した。
【0049】
図4Bは、本技術によるセンサ構成の例を示す図である。製造されたPFセンサ、PHセンサ、およびPRセンサが図示される。電極同士の間の間隙は1mmであった。
【0050】
図4Cは、本技術による一例のセンサの光学SEM画像である。容量センサは、カーボンナノチューブ(CNT)ペーパー複合材料を破砕することにより製造した。この複合材料は、CPC中にクラックを生じさせるために伸張させた。破砕した複合材料は、センサの構造的完全性のためにポリマー(ポリウレタン)で含浸させた。クラックは、10~100μmの長さを有する10nm直径のMWCNTから構成される2つのCPC側部の間に、300~500μmの間隙を与える。走査電子顕微鏡(SEM)調査によれば、ファイバの平均太さは、5.9±1.6μmであった。電界強度を決定するアスペクト比は、200から490の範囲であった。ファイバの線密度は、14.5±3.6mm-1であった。
【0051】
図4Dは、本技術による、試験のための導電性アルミニウムフォイルで覆われた眼および顔のシミュレータである。導電性アルミニウムフォイルで覆われた眼および顔のシミュレータを作製した。センサ構成、ジオメトリ、および眼球を有するヒトの顔モデルの電荷によるΔCを調査するために顔シミュレータを使用することによって、製造した容量センサの応答の特徴を調べた。眼球に対応するヒトの顔モデルは、ポリ乳酸(PLA)を使用して3Dプリンティングした。顔および眼球は、導電性アルミニウムフォイルで覆い、銅ワイヤを介して接続した。眼球は、ヒトの眼球運動をシミュレーションするために手動x-y-zステージ上に配置した。顔モデルおよび眼球は、x-y面上に位置し、z軸に沿ってステップモータ制御した。身体電荷を、ヒト被験者の手に装着した銅ワイヤを介して顔モデルに印加した。容量センサを、3DプリンティングしたPLAパックの底部に配置し、このPLAパックは、顔モデルの輪郭に合致するように10度に傾斜させ、眼球に向かって配向した。センサは、容量デジタルチップおよびマイクロプロセッサに対して接続した。
【0052】
図4Eは、本技術による容量測定構成の一例を示す。容量デジタルチップを使用した容量測定構成が図示される。顔モデル(図4Dに示すような)は、ヒトの顔のジオメトリを有し、眼球および近接センサが独立作動する。ヒトの電荷を導電性表面に伝達するように指でアルミニウム被覆されたモデルに触れることにより、ヒトの電荷を模した。図4Eは、電気測定構成を示す。容量デジタルチップ(Analog Devices、AD7747)を、ICインターフェースを介してAtmegaマイクロプロセッサに連係した。デジタル化した容量データをラップトップコンピュータで収集した。容量検出については、強膜-角膜接合部付近における眼の非球状幾何学形状により、センサと眼との間の距離が変化した。この変化によりフリンジング電界が影響を被り、これにより後に容量が変化した。このΔCは、シングル容量センサまたは差動容量センサのいずれかによる計測が可能である。AD7747(Analog Devices)およびFDC1004(Texas Instruments)の2種類の容量デジタル変換器(CDC)を使用して容量を測定した。AD7747チップセットは、シングル容量測定または差動容量測定のために使用した。AD7747チップを3.3V入力で動作し、それにより16kHzの励振出力および45Hzのサンプリングレートを可能にした。AD7747は、高正確度容量測定(0.1aF)を実現したが、このチップは、2つのみの容量値を測定することが可能であった。
【0053】
このセットアップを使用して、様々な顔条件に対する容量センサの感度の特徴を調べるために、3つの試験を実施した。試験1では、PRセンサ、PFセンサ、およびPHセンサを、眼球に固定した顔から6mmだけ変位して、顔形状および身体電荷による感度の特徴を調べた。試験2は、眼球が顔から0から6mm変位された場合にのみ、PHセンサが最も感度の高いと評価する結果となった。また、この試験は、眼球により誘起される電界に応じたΔCをもたらすことが可能であった。試験3は、6mmの距離において±1mmの水平眼球運動に関してシングルセンサ構成を差動センサと比較した。この試験は、滑動性追従の最中における実際の眼球運動のある部分をエミュレートすることを目的とするものであった。試験2および試験3は、身体電荷がありおよびなしの状態において、1mm幅PHセンサを用いて実施した。
【0054】
ヒトの眼の試験については、最も感度の高いPHセンサを使用した。センサ性能を評価するために垂直眼球運動試験プロトコルを考案した。ここでは、ヒト被験者は、眼を±20°垂直方向に回転させるためにマーカを注視した。垂直眼球運動を較正するために、ユーザの眼から680mm離れた位置にホワイトボードを配置し、このホワイトボードには、ニュートラル注視位置の248mm上方および248mm下方に2つの点をマーキングした。これらの2つのマーカ間における注視点の移動は、±20°の垂直方向角度回転と等しいものであった。眼の注視を垂直運動に限定することにより、対角線方向または円方向の経路を無効にした。これらの試験間における均一性を確保するために、マーカ間にヒト被験者の注視点を配向するように眼球運動プロトコルを設計した。垂直試験における眼球運動プロセスは、以下の通りであった。±20°のマーカ間における垂直運動の3回の反復、ニュートラル位置から0~20°上方への3回の反復、ニュートラル位置から0~20°下方への2回の反復。アラームタイマーにより、2つの位置間を移動する時間と、マーカへの注視を維持する期間とを示唆した。マーカ間移動時間は1秒であり、各マーカにおける維持時間は3秒であった。この眼球変位試験を使用して、位置、ΔC、および感度に関してセンサの特徴を調べた。
【0055】
水平眼球運動については、最適なセンサ位置を調査するために差動容量測定を実施した。同一の実験セットアップを使用したが、中心位置から±35°の位置にある2つのマーカ間において注視点を移動した。被験者は、これらの2つのマーカ間において左右に70°の水平眼球運動を交互に行った。水平眼球運動の大きさは、被験者の個々の動眼限界により限定された。低感度を理由として、シングル容量水平測定を実施しなかった。
【0056】
垂直眼球運動および水平眼球運動の容量センサ信号を、市販のアイトラッカー(Tobii Pro Nano)のアイトラッキング出力と比較した。このアイトラッカーは、スクリーンベースアイトラッカーであり、60Hzにて注視データをキャプチャし、固定ベース調査向けに設計されたものであった。このアイトラッカーは、暗瞳孔照明モードおよび明瞳孔照明モードによるビデオベース瞳孔および角膜反射アイトラッキングを使用するものであった。1つのカメラにより、3D空間内における眼の注視および眼の位置ならびに瞳孔直径の正確な測定のために両眼の画像をキャプチャした。容量アイトラッカーの信号を、市販のアイトラッカーの信号と比較した。
【0057】
容量アイトラッカーは、水平アイトラッキングのための1対の差動センサと、FDC1004を使用する垂直眼球運動検出のためのシングルセンサと共に組み立てた。サンプリングレートは、15秒間で45Hzであった。時間依存容量データは、差動測定およびシングル測定についてそれぞれ水平運動および垂直運動とした。試験は、3人のヒト被験者に対して実施した。市販のアイトラッカーとの比較により、垂直角変位および水平角変位は、それぞれ±9°および±16°となった。角変位度は、市販のアイトラッカーのモニタサイズ(対角線距離:685mm)およびモニタからヒト被験者の顔までの距離(788mm)により判定した。市販のアイトラッカーによる対応するデータは、水平運動および垂直運動に関して単一変位であった。
【0058】
図4Fは、本技術による種々のセンサ構成の容量変化を示すグラフである。顔および眼球とセンサとの間の0~6mm変位におけるハイブリッドセンサ、ファイバセンサ、および矩形センサのΔCであり、(N=3)とする。ΔCは、ヒトの電荷ありおよびなしの状態で測定される。ヒトの顔形状および電荷の存在は、容量センサのΔCに著しい影響を及ぼした。図4Fは、ヒトの電荷ありおよび電荷なしの場合におけるセンサと眼球を有する顔との間の0~6mm変位に関するPHセンサ、PFセンサ、およびPRセンサのΔCの比較である。0mmの開始位置は、センサを覆う50μm厚PETフィルムの厚さを含まないものとした。この比較において、PHセンサは、それぞれヒトの電荷ありおよび電荷なしにおいて0.224pFおよび0.200pFの最大ΔCを示した。PFセンサは、それぞれヒトの電荷ありおよび電荷なしにおいて0.175pFおよび0.160pFのΔCを示した。PRセンサは、最小のΔCを示した。これらの実験データは、数値解析の結果に定性的に一致するものであった。
【0059】
図4Gは、本技術による、顔の動きを伴わない種々のセンサ構成の容量変化を示すグラフである。垂直軸には、容量変化をpFで示す。水平軸には、ハイブリッド電極対(PH)の間に電荷が存在したか否かを示す。顔の動きを伴わない眼球の変位よるハイブリッドセンサのΔC(0~6mmの距離にわたるΔC)が示される。
【0060】
センサは、最初にセンサから0mmの位置に配置される。PHセンサは、ヒトの電荷ありの場合にΔC=42fFを示すにすぎなかった。顔全体からPHセンサを移動する実験との比較では(図4F)、ΔCは、18.7%にすぎなかった。ヒトの電荷はΔCの上昇に寄与するが、顔全体の移動と比較した眼球のみの運動は、限定的なΔCを示すにすぎなかった。6mm変位を考慮すると、ヒトの眼球運動における実際の容量変化は、さらに低下する可能性があった。
【0061】
図4Hは、本技術によるシングル容量測定および差動容量測定に関する容量変化の比較である。垂直軸には、容量変化をpFで示す。水平軸には、水平距離をミリメートルで示す。センサに対して6mmの距離に位置する眼球の±1mmの水平運動に関するシングル容量測定および差動容量測定のΔCの比較を示す。面外変位に加えて、ヒトの眼はセンサから水平方向に移動し得る。
【0062】
シングル容量測定をセンサの近位6mmの位置における1mm水平移動に関して実施すると、ΔCは、1.7fFにすぎず、0.5fFRMSのノイズレベルに近似するものであった。差動容量測定では、ΔCは55%上昇した。したがって、差動容量測定により、ΔCおよびしたがって感度が上昇した。
【0063】
図5は、本技術によるPR電極、PF電極、およびPH電極の初期容量値のグラフである。垂直軸には、初期容量をfFで示す。水平軸には、本明細書において説明するような3つの電極構成(PR、PF、およびPH)を示す。
【0064】
値をPR電極、PF電極、およびPH電極について比較すると、その平均値は、それぞれ321.0±2.6fF、373.0±13.2fF、および360.7±7.7fFであった。標準偏差と平均値との比は、PR電極、PF電極、およびPH電極のそれぞれについて0.8%、3.5%、および2.1%であった。PR電極、PH電極、およびPF電極のC値の順次の上昇は、計算結果の順序と一致した(図3を参照)。
【0065】
図6は、本技術による左右運動をトラッキングする差動垂直センサのグラフである。垂直軸には、容量をpFで示す。水平軸には、時間を秒で示す。グラフ上部に沿った表示は、時間を秒で示したものである(0秒、10秒、20秒、および30秒)。垂直眼球運動に関しては、シングル測定のみを実施した。なぜならば、差動容量測定は望ましくないパターンを示したからである。
【0066】
図7Aは、本技術による垂直滑動性追従の最中に取得した30個の画像の中の1つの画像フレームの図である。距離「e」は、眼瞼からセンサまでの距離の変化であり、距離「c」は、角膜からセンサまでの距離の変化である。垂直眼球運動の容量信号は、眼瞼の動きよりも角膜の動きにより支配されることが推測された。容量信号ソースを評価するために、眼の写真角度解析を実施した。
【0067】
図7Bは、本技術によるセンサと眼瞼との間の距離変化のグラフである。垂直軸には、距離をミリメートルで示す。水平軸には、垂直回転角度を示す。
【0068】
センサ位置に対する垂直眼球運動の最中の角膜および眼瞼の変位量を判定するために、(図7Aに示されるように)コマ撮り写真を撮影した。6mmの初期距離から、角膜は、眼が20から-20°の間で注視を行う際に、垂直センサ位置から7.1mmだけ対角線方向に後退した。比較すると、眼瞼は、20°では-1mmに位置し、-20°では3mmだけ後退した。このデータは、角膜と眼瞼との間の複雑な運動関係を立証するものであり、この写真撮影による変位量は、容量信号と注視位置との間の関係を個別的に説明し得るものではなかった。
【0069】
図7Cは、本技術による、ほぼ閉じた眼から完全閉眼にかけての容量変化を示すグラフである。したがって、さらに角膜を包む眼瞼の容量効果を調査した。垂直軸には、容量変化をpFで示す。水平軸には、時間を秒で示す。眼瞼がほぼ閉じた状態から完全閉状態へと動くと、急激な上昇スパイクが容量に表れた。角膜および眼瞼の誘電性および電気変化は、ΔCの優位性に影響を及ぼし得るものであった。
【0070】
図7Dは、本技術による乾燥皮膚と湿潤皮膚との間の容量変化を示すグラフである。垂直軸には、容量変化を示す。水平軸には、乾燥した皮膚と水で潤った皮膚とを示す。湿潤状態の眼球と乾燥状態の眼瞼との間の容量相互作用を模すために、センサを湿潤皮膚と乾燥皮膚との間で移動すると、容量変化は、湿潤皮膚においてはるかに高かった。平均的には、湿潤皮膚は、24fFのΔCを示し、これは乾燥皮膚のΔCよりも高かった。このより高いΔCは、ヒトの身体電荷に対する直接的な電気接続と、皮膚上における電気二重層形成とにより引き起こされ得るものであった。
【0071】
図8Aは、本技術によるシングル容量測定および差動容量測定のためのセンサの位置の例である。この図の隅部には、位置を表すために使用されるx、y面を示し、位置は、座標系上に示される。フリンジング電界による容量変化は、シングルエンド方法(図8A、左側)または差動方法(図8A、右側)のいずれかにより測定することが可能であった。シングルエンド方法は、好都合であったが、容量と対象物までの距離との間に非線形関係が生じた。差動方法は、第2のセンサに対して180°位相をずらしてAC電圧を印加した。差動方法により、非線形性が相殺され、感度が上昇した。
【0072】
図8Bは、本技術によるシングル垂直センサおよび差動水平センサを有する単眼用メガネの例を示す。差動測定については、4つのセンサをメガネに設置した。強膜-角膜接合部付近における眼球の幾何学形状の非対称性により、眼球の回転下においてセンサに対する眼球の距離に変化が生じた。この距離変化により、フリンジング電界が影響を被り、これにより容量が変化した。
【0073】
図8Bにおける上の図は、アイトラッキングシステム100の近接図を示す。この図に示すように、いくつかの実施形態では、アイトラッキングシステム100は、アーティクル110、少なくとも1つの垂直センサ200、少なくとも1つの水平センサ300、および第2の水平センサ310を備える。いくつかの実施形態では、アイトラッキングシステム100は、プロセッサ120を備え、このプロセッサ120は、電子制御ユニットを備え得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ120は、アーティクル110に対して装着されず、少なくとも1つの垂直センサ200、少なくとも1つの水平センサ300、および第2の水平センサ310に対して通信的に結合される。いくつかの実施形態では、電子制御ユニット/プロセッサ120は、有線接続によりセンサ200、300、310に対して接続されるが、いくつかの実施形態では、電子制御ユニット/プロセッサ120は、例えばブルートゥース(登録商標)などの無線接続によりセンサ200、300、310に対して接続される。
【0074】
いくつかの実施形態では、アイトラッカー100は、アーティクル110からセンサ200、300、310を持ち上げユーザに対してより近傍にこれらのセンサを配置するための、スペーサ800、810、820をさらに備える。
【0075】
Tobii Pro Nanoに対するベンチマーク試験を行うためオンアイトラッカー回路を構成するために、FDC1004チップを使用した。FDC1004は、3.3V入力で作動させた。励振周波数は、0.5fFの測定分解能で25kHzであった。FDC1004は、4つのシングルセンサまたは2対の差動センサを有することが可能であり、サンプリングレートは、最大で100Hz/センサであった。4つの容量センサを収容することのできるこの多重性により、カメラベースアイトラッカーにおいて標準である60Hzでの水平眼球運動および垂直眼球運動の同時測定が可能であった。いくつかの実施形態では、サンプリングレートは、10Hzから99Hzの範囲である。100Hzの最大サンプリングレートは、正確度が低いため使用できなかった点に留意されたい。
【0076】
いくつかの実施形態では、容量を形成するために複数の電極を備えるテンプレート材料からなる容量センサを備えるアイトラッキングセンサであって、これらの複数の電極により眼球運動をトレースするために眼球または眼瞼までの距離を検出する、アイトラッキングセンサが開示される。いくつかの実施形態では、センサ位置は、特定の眼球運動および回転に対して設計される。限定数のセンサが、寄生容量を低減させ、構成を単純化し、メガネの光透過性を保証するために使用され得る。
【0077】
動作時に、容量センサは、シングルエンドセットアップおよび差動セットアップの組合せと共に使用される。位置に応じて、感度は変化する。上下運動に関する最も高い感度は、眼球の頂部において示される(上/下)。なぜならば、距離の変化を伴う角膜運動を検出し得るからである。容量変化は、眼瞼の動きにより増幅され得る。底部に位置するセンサは、信号を取得することができるが、より低い振幅のものとなる。差動構成は上/下に関して機能するが、図1Aに示すように、シングルエンド構成が上/下運動については十分に良好なものとなる。
【0078】
左右運動に関して、差動センサ構成は、より良好な感度を示す。左右運動に対する感度は、眼瞼の動きが左右運動とは結び付かないため、限定的である。シングルエンド構成は、より低い感度を示した。容量信号は、身体電荷または顔電荷により干渉される。容量信号は、電荷変化を伴う眼球運動により変化し得る。センサが身体に対して接地されると、容量信号変化は拡大される。いくつかの実施形態では、アイトラッカーは、電子接地を備え、この電子接地は、垂直容量センサおよび水平容量センサにより検出される容量変化を増大させるために、ユーザの身体に対してアイトラッキングシステムを電気接続するように構成される。身体が接地され、センサと共有される場合には、回路は、電気ショックから保護される必要がある。センサの角度または変位量の調節により、センサの皮膚との間の距離がより短く、センサと皮膚との間の対面面積がより大きいことによって、感度が改善される。
【0079】
信号ドリフトが、眼球運動に結び付けられる。トレンド除去(平坦化)フィルタおよびローパスフィルタが、ノイズおよび寄生容量を無効にするために使用され得る。アクティブシールディングおよびパッシブシールディングが、感度を改善し、ノイズを低減し、電界を局在化するために、チップ、ワイヤ、およびセンサに対して使用し得る。マイクロプロセッサ、容量デジタルチップ、信号の無線データ送信または有線データ送信、データストレージ、および電源ユニットが含まれてもよい。
【0080】
マシンラーニングアルゴリズムまたは人工知能ソフトウェアが、眼球運動を判定するために組み込まれ得る。いくつかの実施形態では、アイセンサは、神経障害の診断、ヒューマンマシンインターフェース、睡眠期判定、および睡眠モニタリングに対して適用可能であり得る。
【0081】
垂直眼球運動に関して、最適なセンサ位置を調べるためにシングル容量測定を実施した。図8Aでは、センサの位置が示される。垂直運動に関して、-5mm増分で垂直位置を変更することにより(0,20)から(0,25)にかけて検査するセンサ200の位置を調べた。座標の原点は、角膜の中心点に相当する。x-y座標は、図1Aに示すメガネのx-y面に対応する。図8Bの下図に示すように、ホワイトボード上の点を見ることにより設計されたプロトコルにしたがって垂直眼球運動および水平眼球運動を行った。シングル容量により垂直運動を測定したが(少なくとも1つの垂直センサ200)、水平差動センサ300、310もまた、垂直運動に対する感度は高かった。差動容量の感度が高いことにより、垂直運動の最中における差動センサに対する角膜および眼瞼の近接性の変化は、正弦波パターンとしての運動検出をもたらした。そのため、シングル測定は、垂直眼球運動に対する感知を可能にすると共に、水平運動を否認するために使用した。
【0082】
図8Cは、本技術による垂直センサ位置に応じた容量変化を示す。ΔCは、(0,20)、(0,10)、(0,0)、(0,-10)、および(0,-20)の垂直センサ位置によって決定される。第1のグラフの垂直軸には、角度を度で示す。他の各グラフの垂直軸には、容量変化をpFで示す。図8Cにおけるすべてのグラフの水平軸には、時間を秒で示す。
【0083】
図8Cの一番上のグラフにおける眼球運動時間依存プロトコルは、±20°の垂直変位を示す。(0,20)から(0,10)までのセンサ位置は、眼球運動の再現可能な測定を明確に示し、中央線に直線状ニュートラル注視線を特定した。(0,0)のセンサ位置において、ΔCの位相は、センサ位置が眼球の近傍に位置することにより変位した。中心位置において、センサは、垂直眼球運動を再現することができなかった。センサが(0,-10)および(0,20)に移動すると、ΔCは、(0,20)のΔCとの比較において反転された。なぜならば、これらの位置にあるセンサは、眼球による真逆の影響を被るからである。さらに、センサ位置が(0,0)未満である場合には、振幅は低減した。下方運動と比較して、上方運動の振幅は、距離増加によってより縮小した。これにより、振幅は縮小し、信号反転は、センサに対する角膜と眼瞼との間の容量関係によりさらに説明されることとなった。(0,-25)の位置では、センサは、信号の一貫性のない振幅および著しい歪みをもたらした。
【0084】
この結果によれば、薄い水の層を有する角膜は、眼瞼が完全に閉じられるまでΔCを支配し得る。垂直センサ位置(0,0)およびそれ未満におけるΔCの反転および振幅縮小は、角膜および眼瞼隆起に関連して説明し得るものであった。信号は、角膜がその下方軌道の最中にセンサの近傍に位置することにより、センサ位置(0,0)およびそれ未満にて反転した。振幅は、角膜がセンサとの間にほとんど相互作用を有していないため、縮小した。すなわち、(0,20)と(0,10)との間のセンサ位置は、20fFの最大振幅および0.5fF/degの感度を有しつつ最適となった。正確度は、1.1度であった。
【0085】
図8Dは、本技術による水平差動センサ位置に応じた容量変化である。第1のグラフの垂直軸には、角度を度で示す。すべての他のグラフの垂直軸には、容量変化をpFで示す。すべてのグラフの水平軸には、時間を秒で示す。[(-20,0)および(20,0)]、[(-20,0)および(25,0)]、[(-20,0)および(30,0)]、[(-20,0)および(35,0)]、および[(-20,0)および(40,0)]の水平差動センサ位置に応じたΔCが図示される。
【0086】
水平眼球運動について、最適なセンサ位置を調べるために差動容量測定を選択した。同一の実験プロトコルを使用したが、注視点は、-35°(左)および+35°(右)に位置する2つの標的の間で移動した。被験者は、各方向に関して70°の中心点シフトを5回反復した。水平眼球運動エクスカーションは、被験者の動眼範囲により限定された。シングル容量測定は、感度が低いため使用しなかった。水平眼球運動は、垂直運動のような測定可能な変位を生じさせなかった点に留意されたい。
【0087】
差動構成における両センサは、右眼の左側および右側に配置した。ガラスフレームの設計により、左側のセンサをノーズブリッジ付近の(-20,0)に配置することしかできなかった。右側センサの位置は、最適位置を調べるために5mm増分で(20,0)と(40,0)との間で試験した。
【0088】
右側のセンサが、(20,0)と(30,0)との間に位置する場合に、容量信号は、右方向運動、左方向運動、およびゼロ交差運動を明確に示した。さらに、これらの信号は、一定の運動振幅を示した。(35,0)の位置において、信号は振幅を縮小した。最外縁位置(40,0)において、センサは予測可能な信号を生成できなかった。これは、右側のセンサが眼の角膜を越えて位置したため、右側のセンサの感度欠損により引き起こされたものである。[(-20,0)および(20,0)]ならびに[(-20,0)および(30,0)]に位置する差動センサは、30fFの最大振幅および0.43fF/degの感度を有しつつ最適となった。0.35fFRMSのノイズレベルでは、精密度は0.82度の範囲内であった。波形の中心線は、直線状ニュートラル注視線に対応するものであった。
【0089】
垂直眼球運動および水平眼球運動の容量センサ信号を、カメラベースの市販のアイトラッカー(Tobii Pro Nano)により生成された信号と比較した。この容量アイトラッカーは、垂直検出用のシングル容量センサおよび水平アイトラッキング用の1対の差動センサと組み合わせた。被験者は、比較調査のために垂直運動および水平運動の両方を行った。シングルセンサおよび差動センサが、アイトラッキングのための2つの時間依存信号を示したため、水平運動および垂直運動のΔC値を、市販のアイトラッカーのΔC値と比較した。
【0090】
図9Aは、本技術による、市販のアイトラッカーおよび本開示のアイトラッカーによる眼球の垂直運動を示す。第1のグラフは、市販のアイトラッカーの水平性能を示す第2のグラフとの比較における、本開示のアイトラッカーの水平性能を示す。同様に、第3のグラフは、市販のアイトラッカーの垂直性能を示す下のグラフとの比較における、本開示のアイトラッカーの垂直性能を示す。
【0091】
眼球が垂直方向に動くと、垂直ΔCおよび水平ΔCは共に、同様の振幅および逆位相の運動信号を明確に示した。市販のアイトラッカーもまた、純垂直眼球運動の最中に垂直チャネルおよび水平チャネルの両方に眼球運動信号を生成したが、水平信号の振幅は、垂直信号の約3%であった。
【0092】
図9Bは、本技術による、本開示のアイトラッカーおよび市販のアイトラッカーによる水平眼球運動信号の例を示す。図9Bは、容量センサ(ΔC)およびTobiiアイトラッカーにより生成された水平眼球運動信号の比較を示す。垂直眼球運動とは対照的に、水平ΔCは、ロバスト水平運動信号を示したが、垂直ΔCは、水平眼球運動に関連する信号を示さなかった。これらの結果に基づき、垂直容量センサは眼球の運動方向を判定した。水平運動の回転角度は、垂直容量センサの振幅に基づき較正される必要があった。図9Aおよび図9Bに示す結果に基づき、垂直容量センサおよび水平容量センサの両方からの振幅および位相情報の両方を組み合わせることにより、垂直眼球運動の最中におけるクロストークによる水平および垂直信号分離を考慮した。
【0093】
図9Cは、本技術による、本開示のアイトラッカーおよび市販のアイトラッカーによる水平眼球運動信号を示す。図9Dは、本技術による、本開示のアイトラッカーおよび市販のアイトラッカーによる水平眼球運動信号を示す。これらの容量センサは、サッカードを明確に検出した。図9Bに示すΔC(最上パネル)と比較して、サッカード眼球運動は、より明瞭に示され、市販のアイトラッカーにより生成されたサッカード眼球運動(最下パネル)と明確に関連付けられた。全体的には、ΔCは、10~20fFの間の範囲であった。±12°の水平眼球運動を考慮した場合に、水平眼球運動に関して1°の正確度を実現することが可能であった。
【0094】
図9Eは、本技術による、垂直滑動性追従運動および水平滑動性追従運動の位相図を示す。眼球運動方向を定性的に推定するために、各滑動性追従運動の垂直成分および水平成分を相互に対して表にした。水平滑動性追従の最中に、位相図は、無視し得るわずかな垂直振幅を伴う曲線を描くものとなった。しかし、垂直滑動性追従の最中には、位相図は、水平振幅および垂直振幅を伴う対角線状の特徴を有する曲線を描いた。明確な定性的相違がこれらの位相図の間で明らかになり、水平眼球運動と垂直眼球運動との識別を支援した。
【0095】
図9Fは、本技術による、閉じた眼瞼および開いた眼瞼における水平眼球運動を示す。閉じた眼瞼および開いた眼瞼における水平眼球運動をモニタリングするために、容量アイトラッカーもまた試験した。容量センサは、両条件において眼球運動を確実に検出した。振幅は、眼瞼が開いている場合により大きかった。これらのセンサは、閉じた眼瞼における眼球運動を検出することが可能であることにより、睡眠調査においても使用することが可能である。
【0096】
図9Gは、本技術による眼球運動を検出するためのリアルタイム応答の実例である。眼球運動を検出するためのリアルタイム応答を実証するために、容量感知アイトラッカーをラップトップコンピュータと連係して、画面上のカーソルを制御した。音声信号にしたがって、中心点から開始して、眼球を左の位置、中心位置、および右の位置に移動した。カーソルは、これらの3つの位置への対応する運動を示した。瞬目(矢印)は、支援ビデオクリップ(Supporting Information、Real eye tracking HMI.mp4)に示すように、カーソル配置の正確度に影響を及ぼさないようだった。このウェアラブルアイトラッカーは、眼球運動を使用したマシン制御が可能であることを実証した。眼球は、左の位置、中心位置、および右の位置にて制御される。
【0097】
容量アイトラッカーについて、高正確度容量デジタルチップの性能は、眼球運動の正確な検出にとって極めて重要であった。我々の試験では、AD7747(Analog Devices)、FDC1004(Texas instrument)、およびFDC2214(Texas instrument)を含む、様々なチップを試験した。さらに、LM555タイマー(Texas instrument)が、容量アイトラッキングのために使用可能であった。我々の特徴調査によれば、眼球運動の1度の正確度を実現するためには、0.1fFの正確度がクリティカルであった。これに関して、AD7747は、正確度に関して最良であった。FDC1004の正確度がより低い(1fF)にもかかわらず、最高で400Hzまでのより高いサンプリングレートは、究極的なアイトラッキングにとって有用となり得るものであった。FDC2214は、1~3MHzの動作周波数を有する電気共振回路であった。この共振により、ΔCは、高いノイズレベルを伴いつつ高かった。FDC2214のサンプリングレートは、1kHzまで増大されることが可能であり、アイトラッキングに対するポテンシャルを有していた。
【0098】
【表1】
【0099】
カメラベースアイトラッカー(Tobii Nano Pro)との比較において、本容量アイトラッカーは、ウェアラブルアイトラッキングに関してより優れた特徴を示した。より実際的な比較を、ウェアラブルアイトラッカー(Tobii Pro Glasses 3)に対して行うことができた。
【0100】
Table 1(表1)は、他の市販のアイトラッカーとの容量アイトラッカーの比較を示す。全体として、容量アイトラッカーは、重量、計算コスト、および製造コストの点からウェアラブルアイトラッカーにとって有利である。容量アイトラッカーの正確度を改善するためには、高い正確度および高いサンプリングレートを有する8つのセンサを処理し得る容量デジタルチップが、双眼用アイトラッキング向けにカスタマイズされる必要がある。また、容量アイトラッカーの有用性は、視界および容易な較正を妨げることがないように改善される必要がある。
【0101】
眼球運動のモニタリングを行うために容量アイトラッカーを実証した。我々の数値分析に基づくと、ファイバ電極および矩形電極から作製されるハイブリッド容量センサは、眼球の存在下における初期容量の低下および容量変化の増加によって、最も高い感度を有した。シングルセンサとの比較においては、差動センサ構成は、より優れた検出性能を示した。顔モデルを使用した調査では、ヒトの電荷は、容量変化(ΔC)を増大させるが、顔バックグラウンドは、眼球運動のΔCを低下させた。ヒト被験者の試験では、シングル容量測定は、角膜の中心に対する(0,20)~(0,10)mmの位置において、垂直眼球運動に対して最適であった。水平眼球運動については、差動容量方法により、[(-20,0)および(20,0)]と[(-20,0)および(30,0)]との間の位置において正確な測定が可能になった。垂直運動および水平運動に関する正確度は、それぞれ1.1度および0.82度であった。市販のアイトラッカーに対する容量アイトラッカーの比較は、水平眼球運動および垂直眼球運動について良好な相関性を示した。水平容量センサは、垂直運動および水平運動の両方と同様のΔ振幅を示し、これは、垂直眼球運動の大きさが、垂直運動または水平運動を推定するために使用される必要があったことを意味した。垂直信号と水平信号との間の位相図は、眼球運動を定性評価するために使用した。本容量アイトラッカーは、眼瞼が閉じた状態および開いた状態において、水平眼球運動を検出した。角膜と眼瞼位置との間の関係を、容量信号に対するそれらの結果を理解するために調査した。角膜は、眼瞼が完全に閉じられるまで容量信号を支配することが判明した。ラップトップカーソルのリアルタイム制御を、被験者の水平眼球運動に基づき実証した。本ウェアラブル容量アイトラッカーは、神経科学、認知科学、眼機能診断、およびエンターテインメントを含む様々な分野におけるアイトラッキングの可能性を示す。
【0102】
例示の実施形態を図示および説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく本発明において様々な変更を行い得ることが理解されよう。
【0103】
排他的な所有権または特権が請求される本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲の通りに定義される。
【符号の説明】
【0104】
100 ウェアラブルアイトラッカー、アイトラッキングシステム
110 アーティクル
120 プロセッサ、電子制御ユニット/プロセッサ
130 電子接地
200 センサ、垂直センサ、垂直容量センサ、第1の垂直センサ
210 センサ、垂直センサ、垂直容量センサ、第2の垂直センサ
300 センサ、水平センサ、水平容量センサ、第1の水平センサ
310 センサ、水平センサ、水平容量センサ、第2の水平センサ
320 センサ、水平センサ、第2の水平容量センサ
800 スペーサ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
【国際調査報告】