(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】光分解による分解可能な化合物および方法
(51)【国際特許分類】
C07C 213/04 20060101AFI20240412BHJP
C07C 215/16 20060101ALI20240412BHJP
C07C 233/18 20060101ALI20240412BHJP
C07C 231/12 20060101ALI20240412BHJP
A01N 33/18 20060101ALI20240412BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240412BHJP
C07D 499/21 20060101ALI20240412BHJP
C02F 1/30 20230101ALI20240412BHJP
【FI】
C07C213/04
C07C215/16
C07C233/18
C07C231/12
A01N33/18 B
A01P3/00
C07D499/21 Z
C02F1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564677
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022059863
(87)【国際公開番号】W WO2022223390
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523396978
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・スタヴァンゲル
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】シドネス,マグネ オーラヴ
(72)【発明者】
【氏名】シドネス,レイヴ クリステン
(72)【発明者】
【氏名】アイケモ,ヴェビョーン
【テーマコード(参考)】
4D037
4H006
4H011
【Fターム(参考)】
4D037AA02
4D037AA11
4D037AB18
4D037BA16
4H006AA02
4H006AC52
4H006AC53
4H006BU26
4H006BV22
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB04
(57)【要約】
本発明は、置換芳香族基を含む生物活性標的分子を同定し;少なくとも標的分子の該芳香族基および所望により標的分子と等鎖長を有する出発物質を準備し;そして出発物質に1以上の置換を導入することにより光分解による分解可能な化合物を合成することを含む、光分解による分解可能な化合物を合成する方法に関する。
標的分子は例えば抗微生物分子、抗細菌分子または殺虫分子であってよい。本発明による光分解による分解可能な化合物は、塩基性pHの水性環境で光に曝されたならば不均等開裂され得る少なくとも1個のC-N、C-SまたはC-O結合および所望により少なくとも1個のベンジルC-C結合を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光分解による分解可能な化合物を合成する方法であって、
a)1以上の置換芳香族基を含む生物活性標的分子を同定し;
b)該1以上の置換芳香族基と同一の少なくとも1個の芳香族基を有する出発物質を準備し;そして
c)出発物質の該芳香族基にニトロ置換を導入することにより光分解による分解可能な化合物を合成する
工程を含み;
ここで、光分解による分解可能な化合物は、一般式I:
【化1】
〔式中、
AおよびBおよびCおよびDの少なくとも1個は
-CN、
-CH
2NR
1R
2または-[CH
2NR
1R
2R
3]
+(ここで、R
1、R
2およびR
3は各々Hおよび分岐または非分岐C
1-C
6アルキルからなる群から選択される);
O(CH
2)
o(CX
2)
p(CH
2)
q(CHX)
r(CH
2)
s(CX
2)
t(CH
2)
u(CX
3)
v(CHX
2)
w(CH
2X)
x(CH
3)
y(ここで、
o=0~5、p=0~5、q=0~5、r=0~5、s=0~4、t=0~4、u=0~4、v=0~1、w=0~1、x=0~1、y=0~1であるが、ただし、各化合物において、v、w、xおよびyの1個のみが1であり、他の3個は0であり、そして
ここで、XはFおよび/またはClである)
であり、A、B、CおよびDの他の3個は
1)各々H、F、Cl、I、Br、CN、CF
3、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルキルのアルコキシ、NH
2、NHR
1、NR
1R
2および[NR
1R
2R
3]
+からなる群から独立して選択され(ここで、R
1、R
2およびR
3は上に定義するとおりである)、そして
2)置換が可能なフェニル環における4個の残りの炭素原子に無作為に結合でき;
Qは
NH、NR
4、[NR
4R
5]
+、NOH、NOR
4、NNH
2、NNHR
4、[NNHR
4R
5]
+、NNR
4R
5および[NNR
4R
5R
6]
+(ここで、R
4、R
5およびR
6は分岐または非分岐C
1-C
3アルキルである);
またはO;
またはS、[SR
4]
+、SOおよびSO
2
であり;
mは0~4、例えば1~4であり;
YはHおよび分岐または非分岐C
1-C
6アルキルからなる群から選択され;
nは0~4であり;
Zは
Hまたは
NHC(O)R
7
(ここで、R
7はR
5またはR
5の一ハロゲン化~過ハロゲン化誘導体であり、
ここで、ハロゲンはFおよび/またはClである);
アリール;例えば
【化2】
(このアリールはニトロ基で置換されていてよく、そして
置換基EおよびFおよびGおよびHはそれぞれA、B、CおよびDについて上に定義したとおりである)
である。〕
により定義される、方法。
【請求項2】
工程c)において、メタ-ニトロ置換;パラ-ニトロ置換;またはメタ-ニトロ置換およびパラ-ニトロ置換を出発物質の該芳香族基に導入する、請求項1の方法。
【請求項3】
式IのZ基がアリール;例えば
【化3】
〔式中、
ニトロ基はZ基を式(I)の炭素鎖に結合する炭素に対してメタ位またはパラ位であり;そして
置換基EおよびFおよびGおよびHはA、B、CおよびDについて定義したとおりである。〕
である、請求項1または2の方法。
【請求項4】
Zがベータラクタムである、請求項1~3の何れかの方法。
【請求項5】
XがFおよび/またはCl、例えばFである、請求項1~4の何れかの方法。
【請求項6】
出発物質が少なくとも1個の脂肪族N-、S-またはO-結合および、所望により、少なくとも1個のベンジルC-C結合を含む、請求項1~5の何れかの方法。
【請求項7】
光分解による分解可能な化合物の少なくとも1個のベンジルC-C結合が、塩基性pHの水性環境で光への暴露により不均等開裂される、請求項1~6の何れかの方法。
【請求項8】
該塩基性pHが約7を超える、請求項7の方法。
【請求項9】
該塩基性pHが約11に等しい、請求項8の方法。
【請求項10】
このように合成された光分解による分解可能な化合物が標的分子のものと実質的に等しい生物学的活性を示す、請求項1~9の何れかの方法。
【請求項11】
標的分子が抗微生物活性;殺虫活性;または抗微生物活性および殺虫活性を示す、請求項1~10の何れかの方法。
【請求項12】
標的分子がシプロフロキサシン;クロラムフェニコール;およびペニシリンからなる群から選択される抗細菌分子である、請求項11の方法。
【請求項13】
標的分子がジフルベンズロン;テフルベンズロンおよびルフェヌロンからなる群から選択される殺虫剤である、請求項11の方法。
【請求項14】
置換基として抗生物質由来の分子を含む、請求項1~13の何れかにより合成された光分解による分解可能な化合物。
【請求項15】
該置換基が下記式IIにより定義される、請求項14の光分解による分解可能な化合物。
【化4】
【請求項16】
置換基としてフナムシ薬物由来の分子を含む、請求項14の光分解による分解可能な化合物。
【請求項17】
置換基としてジフルベンズロン;テフルベンズロン;およびルフェヌロンからなる群から選択される分子を含む、請求項14~16の何れかの光分解による分解可能な化合物。
【請求項18】
精製水を産生する方法であって、請求項1~13の何れかの方法により得た少なくとも1個の光分解による分解可能な化合物を含む廃水または飲料水などの水を光に曝し、それにより、光分解による分解可能な抗微生物分子の負荷が低減され、抗細菌分子;殺虫性;または抗細菌剤および殺虫剤が浄化された水をもたらすものである、方法。
【請求項19】
水のpHが光への暴露中約7より高く制御される、請求項18の方法。
【請求項20】
該pHが約11に制御される、請求項19の方法。
【請求項21】
水産養殖におけるサケシラミを制御する方法であって、請求項14の光分解による分解可能な化合物を水産養殖におけるサケの処理に使用する、方法。
【請求項22】
該処理がサケシラミの発生を低減または排除するためである、請求項21の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化学の分野、より具体的に環境により容易に分解される生物活性分子を設計および製造する方法に関する。より具体的に、本発明は、興味ある生物学的機能を示すが、またそれに加えて、環境条件下でのその後の光分解を可能とする官能性も含む分子の、戦略的設計を含む。故に、本発明は、まず、例えば駆虫剤、殺虫剤、抗細菌剤などの抗微生物剤または抗生物質などの薬物として使用でき、その後、光への暴露により容易に無能力となる、生物活性分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
耐性細菌株は、ヒト医薬および農業における抗生物質の過剰使用により出現している。多剤耐性(MDR)細菌はすでに広く広まっている問題であり、いくつかの公衆衛生機関は、破滅的結末となるであろう危機としてこの状況を記載している。さらに、世界中で100を超える医薬化合物が飲料水、廃水、地下水および海洋生物で検出されていることを示すデータが警鐘を鳴らしている。一例は、世界中の廃水で検出されている抗生物質シプロフロキサシンである。該化合物を含む流出水の慣用のUV処理が実施されているが、効果はない。他の例は、広スペクトル抗生物質である抗生物質クロラムフェニコールである。
【0003】
水産養殖産業は、成長し続けると推測される大きな世界的な事業である。例えば、ノルウェイでは、水産養殖品は、油およびガスに次ぐ最大の輸出商品であり、この製品と関連する問題の解決が重要となる。あるこのような問題は、宿主の皮膚、粘液および血液を常食とし、野生の魚類で動物間流行も誘導し得るサケシラミ(レペオフテイルス・サルモニス)である。サケ養殖場は、一般にオープンネットペンを使用するため、このようなシラミ感染は隣接養殖場に容易に移動でき、マス(サルモ・トルッタ)および野生タイセイヨウサケ(サルモ・サラー)などの魚類の地域個体群にも感染し得る。
【0004】
サケシラミ感染に関連する問題に対処するため、大量のジフルベンズロンおよびテフルベンズロンなどの殺虫剤が現在適用されている。
【化1】
これらの化合物はキチンシンターゼ阻害剤として作用し、脱皮後シラミがキチンに富む外骨格を形成できず、最終的に死に至ることを意味する。しかしながら、これら医薬が、サケによる排泄後170日の規定された半減期で、持続性でありかつ安定性であることを示す多くの研究がある。生け簀から1100mも離れた水中でも検出され、タラバガニ、小エビ、ヒゲナガチュウコシオリエビおよびヨーロピアン・ロブスターおよびノーウェイ・ロブスターに悪影響を示すことが証明されている。事実、脱皮が目前に迫ると、テフルベンズロンの検出レベルは、死亡を誘発するのに十分であった。さらに、シロイトダラおよび上記甲殻類における許容残留量(MRL)値はタイセイヨウサケを超え、食物安全性も考慮すべきであることを意味する。故に、半減期が短いキチンシンターゼ阻害剤を製造する喫緊の必要性がある。
【0005】
CA2972079(Jayraman et al.)などの光分解可能な化合物は記載されており、これは、抗生物質残留により課せられる強選択圧が抗生物質耐性を加速することが知られる環境で分解する。ホスホピリシンは、環境への蓄積を減少する光感受性化学構造を有する抗微生物化合物として記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に関わらず、有害な生物活性化合物から環境を保護するために、全水性部分から医薬および他の生物活性化合物を効率的に排除する方法をもたらす総合的戦略がなお必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明の第一の態様は、請求項1に定義する光分解による分解可能な化合物を合成する方法である。本発明はまた請求された方法により合成された化合物も包含する。より具体的に、本発明は、光分解による分解可能な化合物を合成する方法であって、
a)1以上の置換芳香族基を含む生物活性標的分子を同定し;
b)該1以上の置換芳香族基と同一の少なくとも1個の芳香族基を有する出発物質を準備し;そして
c)出発物質の該芳香族基にニトロ置換を導入することにより光分解による分解可能な化合物を合成する
工程を含み;
ここで、光分解による分解可能な化合物は、一般式I:
【化2】
〔式中、
AおよびBおよびCおよびDの少なくとも1個は
-CN、
-CH
2NR
1R
2または-[CH
2NR
1R
2R
3]
+(ここで、R
1、R
2およびR
3は各々Hおよび分岐または非分岐C
1-C
6アルキルからなる群から選択される);
O(CH
2)
o(CX
2)
p(CH
2)
q(CHX)
r(CH
2)
s(CX
2)
t(CH
2)
u(CX
3)
v(CHX
2)
w(CH
2X)
x(CH
3)
y(ここで、
o=0~5、p=0~5、q=0~5、r=0~5、s=0~4、t=0~4、u=0~4、v=0~1、w=0~1、x=0~1、y=0~1であるが、ただし、各化合物において、v、w、xおよびyの1個のみが1であり、他の3個は0であり、そして
ここで、XはFおよび/またはClである)
であり、A、B、CおよびDの他の3個は
1)各々H、F、Cl、I、Br、CN、CF
3、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルキルのアルコキシ、NH
2、NHR
1、NR
1R
2および[NR
1R
2R
3]
+からなる群から独立して選択され(ここで、R
1、R
2およびR
3は上に定義するとおりである)、そして
2)置換が可能なフェニル環における4個の残りの炭素原子に無作為に結合でき;
Qは
NH、NR
4、[NR
4R
5]
+、NOH、NOR
4、NNH
2、NNHR
4、[NNHR
4R
5]
+、NNR
4R
5および[NNR
4R
5R
6]
+(ここで、R
4、R
5およびR
6は分岐または非分岐C
1-C
3アルキルである);
またはO;
またはS、[SR
4]
+、SOおよびSO
2
であり;
mは0~4、例えば1~4であり;
YはHおよび分岐または非分岐C
1-C
6アルキルからなる群から選択され;
nは0~4であり;
Zは
Hまたは
NHC(O)R
7
(ここで、R
7はR
5またはR
5の一ハロゲン化~過ハロゲン化誘導体であり、
ここで、ハロゲンはFおよび/またはClである);
アリール;例えば
【化3】
(このアリールはニトロ基で置換されていてよく、そして
置換基EおよびFおよびGおよびHは、それぞれA、B、CおよびDについて上に定義したとおりである)
である。〕
により定義される、方法である。
【0008】
本発明の他の第二の態様は、廃水または飲料水中の抗微生物分子の負荷を低減する方法であって、ここで、本発明の方法により得られかつ合成した抗細菌分子を含む水を光分解により分解させるために光に曝す、方法である。
【0009】
本発明のさらなる態様は、水産養殖におけるサケシラミを制御する方法であって、ここで、本発明の方法により得られかつ合成した殺虫剤を、水産養殖におけるサケの処理に使用する、方法である。
【0010】
さらなる実施態様において、詳細および利点は、従属請求項ならびに以下の詳細な記載および実験部分から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】化合物1をpH7、9、11および13で光分解する前後の
1H-NMRスペクトル;
【
図2】化合物2をpH9、11および13で光分解する前後の
1H-NMRスペクトル;
【
図3】化合物3をpH9、11および13で光分解する前後の
1H-NMRスペクトル;
【
図4】化合物4をpH9、11および13で光分解する前後の
1H-NMRスペクトル;
【
図5】化合物5をpH9、11および13で光分解する前後の
1H-NMRスペクトル;
【
図6】(A)照射前の化合物6、(B)分解産物および(C)光分解後の
1H-NMRスペクトル;
【
図8】化合物6~9のUV-visスペクトル;および
【
図9a-c】化合物6(●)、化合物7(▲)、化合物8(■)および化合物9(◆)の最小阻害濃度(MIC)プロット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な記載
以下から明らかなとおり、本発明は、水性環境で容易に分解され、よって、光分解による分解可能な化合物と称される、抗微生物剤または殺虫分子などの生物活性分子を設計および製造する方法を提供する。生物活性分子は置換芳香族基を含む。
【0013】
生物学的活性は、微生物をまたは微生物、寄生虫などの生物学的機能などの他の機能を破壊、低減またはその他の方法で害する能力などの、広範な活性から選択されるどんな活性でもよい。
【0014】
本発明の第一の態様は、抗微生物剤、抗細菌剤または殺虫化合物などの既知生物学的活性を有する化合物を模倣する生物学的活性を有する、光分解による分解可能な化合物を合成する方法である。
【0015】
具体的に、本発明の第一の態様は光分解による分解可能な化合物を合成する方法であって、
a)1以上の置換芳香族基を含む生物活性標的分子を同定し;
b)該1以上の置換芳香族基と同一の少なくとも1個の芳香族基を有する出発物質を準備し;そして
c)出発物質の該芳香族基にニトロ置換を導入することにより光分解による分解可能な化合物を合成する
工程を含み;
ここで、光分解による分解可能な化合物は一般式I:
【化4】
〔式中、
AおよびBおよびCおよびDの少なくとも1個は
-CN、
-CH
2NR
1R
2または-[CH
2NR
1R
2R
3]
+(ここで、R
1、R
2およびR
3は各々Hおよび分岐または非分岐C
1-C
6アルキルからなる群から選択される);
O(CH
2)
o(CX
2)
p(CH
2)
q(CHX)
r(CH
2)
s(CX
2)
t(CH
2)
u(CX
3)
v(CHX
2)
w(CH
2X)
x(CH
3)
y(ここで、
o=0~5、p=0~5、q=0~5、r=0~5、s=0~4、t=0~4、u=0~4、v=0~1、w=0~1、x=0~1、y=0~1であるが、ただし、各化合物において、v、w、xおよびyの1個のみが1であり、他の3個は0であり、そして
ここで、XはFおよび/またはClである)
であり、A、B、CおよびDの他の3個は
1)各々H、F、Cl、I、Br、CN、CF
3、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルキルのアルコキシ、NH
2、NHR
1、NR
1R
2および[NR
1R
2R
3]
+からなる群から独立して選択され(ここで、R
1、R
2およびR
3は上に定義するとおりである)、そして
2)置換が可能なフェニル環における4個の残りの炭素原子に無作為に結合でき;
Qは
NH、NR
4、[NR
4R
5]
+、NOH、NOR
4、NNH
2、NNHR
4、[NNHR
4R
5]
+、NNR
4R
5および[NNR
4R
5R
6]
+(ここで、R
4、R
5およびR
6は分岐または非分岐C
1-C
3アルキルである);
またはO;
またはS、[SR
4]
+、SOおよびSO
2
であり;
mは0~4、例えば1~4であり;
YはHおよび分岐または非分岐C
1-C
6アルキルからなる群から選択され;
nは0~4であり;
Zは
Hまたは
NHC(O)R
7
(ここで、R
7はR
5またはR
5の一ハロゲン化~過ハロゲン化誘導体であり、
ここで、ハロゲンはFおよび/またはClである);
アリール;例えば
【化5】
(このアリールはニトロ基で置換されていてよく、
そして置換基EおよびFおよびGおよびHは、それぞれA、B、CおよびDについて上に定義したとおりである)
である。〕
により定義される。
【0016】
工程c)において、置換はメタ-ニトロ置換;パラ-ニトロ置換であってよく;またはメタ-ニトロ置換およびパラ-ニトロ置換を出発物質の該芳香族基に導入する。
【0017】
さらに、式IのZ基は、アリール;例えば
【化6】
〔式中、
ニトロ基はZ基を式(I)の炭素鎖に結合する炭素に対してメタ位またはパラ位であり;そして
置換基EおよびFおよびGおよびHはA、B、CおよびDについて上に定義したとおりである。〕
であり得る。
【0018】
より具体的に、式IのZ基はベータラクタムであり得る。
【0019】
さらに、式Iにおいて、XはFおよび/またはCl、例えばFであり得る。
【0020】
この状況において、標的分子を「同定する」なる用語は、本発明により合成する光分解による分解可能な化合物をどの分子に模倣させるべきかの決定、すなわち適当な標的分子の選択のための、本方法の使用者による決定と理解される。本発明の合成は選択的合成であり得る。
【0021】
ある実施態様において、標的分子は抗微生物分子および殺虫剤の群から選択される。ある実施態様において、標的分子は抗細菌分子である。
【0022】
当業者は、妥当な標的分子を考慮に入れ、必要であれば、簡単な試験を実施することにより、濃度、体積および温度などの本発明による合成のための最も有利なパラメータを決定できる。例えば、本方法は室温で実施し得るが、ある標的分子については、30℃を超える、例えば40℃を超えるまたは50℃を超える温度などの高温がさらに有利であり得る。ある有利な実施態様において、合成を約60℃の温度で実施する。
【0023】
簡潔には、本発明により合成した光分解による分解可能な化合物は、プロトンの引き抜きを介する光-逆アルドール反応を介して開裂できる、C-C結合およびC-N、C-SまたはC-O結合両方を含み得て、例えば下のスキーム1を参照のこと(化合物1は下表1に見ることができる)。
【化7】
スキーム1:化合物1の示唆される光分解機構。
【0024】
本方法の標的分子は1以上の置換芳香族基を含み、該置換はパラ位、メタ位およびオルト位、有利にパラおよび/またはメタ位から選択される。ある実施態様において、少なくとも1個のアリール基が存在する。
【0025】
本発明の光分解による分解可能な化合物における少なくとも1個の芳香族基はニトロアリール基であり得る。有利には、工程c)において、種々の芳香族基のm-ニトロ、o-ニトロまたはp-ニトロ置換が導入される。特定の実施態様において、p-ニトロ置換が工程c)において導入され、m-ニトロ置換は導入されない。
【0026】
その最も広い意味で、本発明は、光への暴露により分解され得る、他の生物活性分子、例えば抗細菌剤などの抗微生物剤または殺虫剤を模倣する光分解による分解可能な化合物の合成に関する。故に、本発明は、天然状態で生物学的機能を発揮し;そしてそれについて光分解による分解を受けることができる化合物を本発明の教示に従い合成し得る、あらゆる他の分子の合成を包含する。この状況において、用語「光」は、一般に‘日光’として知られるものまたは特定波長または一定範囲の波長からなる人工および/または閉鎖環境で適用される光であり得る。
【0027】
ある実施態様において、光分解による分解可能な化合物は、標的分子の生物学的活性の実質的に全て、例えば、その少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも99%を保持する。標的分子は、天然状態で抗微生物、殺虫または抗細菌活性を示すあらゆる分子であり得る。ある実施態様において、標的分子は生物学的活性の1タイプ、例えば抗細菌性を有し、生物学的活性を有する化合物は他のタイプの生物学的活性、例えば殺虫性を有してよく、またはその逆も可能である。
【0028】
下にさらに詳述するとおり(実施例1参照)、光分解による分解可能な化合物の化学構造は、生物活性標的分子の逆合成解析により定義され得る。当業者には周知のとおり、逆合成解析は、標的分子のより単純な前駆分子/構造への変形を含む。換言すると、逆合成解析は、生物活性標的分子の構造的単純化を含む。
【0029】
有利な実施態様において、ニトロ基はp位(4位)である。
【0030】
ある実施態様において、光分解による分解可能な化合物は、芳香環以外のものを含む。故に、式IにおけるZは、任意のアリール、例えば
【化8】
であってよく、このアリールは、Z基を式(I)の炭素鎖に結合する炭素に対してメタ位またはパラ位のニトロ基を含んでよく、ここで、置換基EおよびFおよびGおよびHは、それぞれA、B、CおよびDについて定義したとおりであり、一方式Iの残りは上に定義するとおりである。
【0031】
芳香環のさらなる置換パターンも、本発明の範囲内で想起され得る。例えば、置換基A、B、C、D、E、F、GおよびHの1以上はハロゲン、-CF3、-CN、-COOH、-COOR、-CONR2および-R1OR2からなる群から選択してよく、生物学的活性を有する別の化合物の製造を可能とし得る。下の実験部分から明らかなとおり、日常的方法を使用して、当業者はここに記載する生物学的活性を有する化合物を製造でき、その後電子供与性および電子求引性効果がさらに調査され得る。
【0032】
ある実施態様において、式IにおけるXはFまたはClであり、一方式Iの残りは上に定義するとおりである。
【0033】
故に、本発明による光分解による分解可能な化合物は、下に記載し、下表1に定義する、化合物1、2、3、4、5、6、7、8および9からなる群から選択される1以上であり得る。
【表1】
【0034】
故に、当業者には認識されるとおり、式IのZ基により提供される生物学的活性は、抗微生物活性、抗生物質活性、殺虫活性などであり得る。このような基または物はそれ自体知られ得るが、光分解による分解可能な性質を提供するために特に設計される化合物に今まで含まれたことはない。
【0035】
Zがベータラクタムである本発明による光分解による分解可能な化合物の具体例は、下式II:
【化9】
により定義される。
【0036】
当業者には認識されるとおり、本発明の利点が化学と密接に関連するため、ジフルベンズロンまたはテフルベンズロンにより例示される殺虫剤;またはクロラムフェニコールにより例示される抗生物質分子などのここに示す構造基準を満たすいろんな有機分子が存在し得る。
【0037】
活性分子を光により分解するために本発明で使用する反応は、脂肪族C-C結合の不均等開裂を介して進行する光-逆アルドールタイプである。WanおよびMuralidharan(Wan, P.; Muralidharan, S. J. Am. Chem. Soc. 1988, 110 (13), 4336-4345)は、下のスキーム2から明らかなとおり、種々のpH条件および種々の1位の置換基(R基)で、p-およびm-ニトロ-置換フェネチルアルコールを用いてこの変換を観察した。ある実施態様において、本発明により合成した生物学的活性を有する化合物は、光への暴露の結果不均等開裂ができる。
【化10】
スキーム2:WanおよびMuralidharanにより観察された光-逆アルドールタイプ反応。R=H、Ph。
【0038】
1-フェニル置換フェネチルアルコールを用いて、反応は、pH2~14で30~60%の変換が達成されたため、多かれ少なかれpH非依存的であった。しかしながら、フェニル基の代わりにプロトンを用いて、11を超えるpHが必要であった。機構(スキーム3参照)は、反応性三重項状態が、水またはヒドロキシドによるプロトンの引き抜きを介する逆アルドール反応を受け、p-ニトロベンジルカルバニオンおよびホルムアルデヒドを形成することを示唆する(Wan, P.; Muralidharan, S. J. Am. Chem. Soc. 1988, 110 (13), 4336-4345)。
【化11】
スキーム3:WanおよびMuralidharanにより説明される光分解機構。
【0039】
これを踏まえて、本発明者らは、この化学を修飾フルベンズロンの合成に適用することを決定した。構造の単純化により、合成が容易な類似の構造要素を含む一連の複雑ではない化合物の構築が可能であった。下のスキーム4に示す化合物は、2個の芳香族基および同じ長さの鎖を有し、故に、光分解の概念実証試験のために適当な試験化合物と考えられた。
【化12】
スキーム4:テフルベンズロンの一連の化合物への構造単純化。
【0040】
ニトロ基の電子求引能からの孤立した効果を調査するために、出発点は単置換系であった。それゆえに、単純な始まりは、2個のフェニル環へのp-およびm-ニトロ置換の別々の包含であり、これはニトロアニリンおよびヨードニトロベンゼンなどの、市販されかつ安価な出発物質から容易に製造された(スキーム5参照)。4個の化合物が得られたら、光化学性質および分解パターンを調査した。
【化13】
スキーム5:p-およびm-ニトロ-置換フルベンズロン化合物の逆合成。
【0041】
抗細菌性を有する化合物6~9は、Kotha et al(Kotha, S.; Behera, M.; Shah, V., Synlett 2005, 12, 1877-1880)に記載の方法を使用する、アリルボロン酸ピナコールエステルとの鈴木-宮浦クロスカップリング反応により製造できた。その後のmCPBAでの処理により、対応するエポキシドを得た。5M 過塩素酸リチウム-ジエチルエーテル(LPDE)溶液を使用するルイス酸促進エポキシド開環反応により化合物6を得た。化合物7~9は、選択的メタニトロ化、続くアリルトリブチルスタンナンとのスチレクロスカップリングおよびその後のmCPBAでのエポキシド化により製造した。アニリンA
1~A
3でのルイス酸促進エポキシド開環により、アミノール7~9を得た(スキーム6参照)。
【化14】
スキーム6:化合物6~9の完全合成。試薬および条件:(i)Pd(PPh
3)
4、CsF、アリルBpin、THF、還流;(ii)mCPBA、DCM、rt;(iii)5M LPDE、40℃;(iv)H
2SO
4、HNO
3、0℃;(v)Pd(PPh
3)
4、Bu
3Snアリル、DMF、110℃。
【0042】
化合物6~9の抗細菌活性を分析した(
図9参照)。化合物6~9は、実験セクションにさらに記載するとおり全て抗細菌活性を示し、光分解により分解できた。分解親化合物[化合物6~9]は抗微生物活性を示さなかった。故に、ここに記載する生物学的活性を有する化合物は抗細菌剤であり、抗細菌適用のために使用できる。本発明のある利点は、活性化合物が光分解により分解可能であることであり、他の利点は、分解産物が100μM濃度で不活性である(表2参照およびさらに実験セクションに詳述)。
【0043】
光分解に関する観念は、抗生物質にも拡大でき、これは、廃水処理プラントが必ずしもこれらの物質を完全に除去するよう設計されていないからである。例えば、シプロフロキサシンは、処理プラントの廃液から検出されており、他の試験は米国で一般に使用される抗生物質を調査しており、廃水処理中に濃度は減少するが、残留することを示した。同様の問題を引き起こす他の抗細菌分子は、広スペクトル抗生物質であるクロラムフェニコールである。構造をよく見ると、上記フルベンズロンを模倣する化合物とのある程度の類似性が明らかである。これにより、類似の官能性を有する化合物(化合物5)の構築が可能であった(スキーム7参照)。
【化15】
スキーム7:広スペクトル抗生物質クロラムフェニコールの化合物。
【0044】
同様に、‘合成’の下にさらに下に詳述するとおり、標的分子は市販かつ安価な出発物質から容易に製造された。数個の直感的分離および官能基相互変換(FGI)を介して、単純な逆合成解析は、化合物5が3工程で合成できたことを示す(スキーム8参照)。
【化16】
スキーム8:クロラムフェニコール化合物5の逆合成解析。
【0045】
故に、本発明の他の態様は、廃水または飲料水中の抗微生物分子の負荷を低減する方法であって、ここで、本発明の方法により得られかつ合成した抗細菌分子を含む水を光に曝して、あらゆる残存する薬学的活性分子を光分解により分解することを含む、方法である。廃水のpHは、適宜、例えば、7を超えるまたは約11まで調節し得る。
【0046】
第一の態様に関連してここに記載した反応および化学に関連する全ての詳細は、この第二の態様および他の態様に等しく適用可能である。
【0047】
本発明のさらなる態様は、水産養殖におけるサケシラミを制御する方法、ここで、本発明の方法により得られかつ合成した殺虫化合物を使用して、水中で養殖しているサケを処理しサケシラミの発生を低減または排除し、その処理後該養殖からもたらされる水を光に曝して、あらゆる残存殺虫剤を光分解により分解させる、方法である。廃水のpHは、適宜、例えば、約7を超えるまで調節し得る。例えば駆虫剤または殺虫剤の化学に依存して、異なるpH値を使用し得ることを当業者は認識する。
【0048】
特定の実施態様において、本発明は、生物学的活性を有する光分解による分解可能な化合物を選択的に合成する方法であって、
a)1以上の置換芳香族基を含む生物活性標的分子を同定し;
b)該標的分子を模倣する化合物の合成のための適当な出発物質を選択し、その出発物質は少なくとも標的分子の芳香族基を有し;そして
c)工程b)で選択した出発物質の少なくとも1個の芳香族基にm-ニトロまたはp-ニトロ置換を導入することにより化合物を合成する
工程を含み、ここで、化合物が、水性環境で塩基性pHでの光への暴露の結果として不均等開裂できる、少なくとも1個のC-N、C-SまたはC-O結合および所望により少なくとも1個のベンジルC-C結合を含む、方法に関する。
【0049】
生物活性標的分子は、抗微生物分子および殺虫剤からなる群から選択される分子などの、微生物または寄生虫などの他の化合物を破壊および/または害することができる能力により特徴づけられる、分子であり得る。
【0050】
本発明のこの実施態様において、生物学的活性を有する化合物は一般式I:
【化17】
により定義され、ここで、Qに結合したアリール基において、ニトロ基はQに結合する炭素原子に対してメタまたはパラであり;
そして
AおよびBおよびCおよびDの少なくとも1個は
O(CH
2)
o(CX
2)
p(CH
2)
q(CHX)
r(CH
2)
s(CX
2)
t(CH
2)
u(CX
3)
v(CHX
2)
w(CH
2X)
x(CH
3)
y(ここで、
o=0~5、p=0~5、q=0~5、r=0~5、s=0~4、t=0~4、u=0~4、v=0~1、w=0~1、x=0~1、y=0~1であるが、ただし、各化合物において、v、w、xおよびyの1個のみが1であり、他の3個は0であり、そして
ここで、XはFおよび/またはClである)
であり、A、B、CおよびDの他の3個は
1)各々H、F、Cl、CF
3、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルキルのアルコキシ、NH
2、NHR
1、NR
1R
2および[NR
1R
2R
3]
+からなる群から独立して選択され(ここで、R
1、R
2およびR
3は各々Hおよび分岐または非分岐C
1-C
6アルキルからなる群から選択される)、そして
2)置換が可能なフェニル環における4個の残りの炭素原子に無作為に結合でき;
ここで、n=0~4であり、
Qは
NH、NR
4、[NR
4R
5]
+、NOH、NOR
4、NNH
2、NNHR
4、[NNHR
4R
5]
+、NNR
4R
5および[NNR
4R
5R
6]
+(ここで、R
4、R
5およびR
6は分岐または非分岐C
1-C
3アルキルである);
またはO;
またはS、[SR
4]
+、SOおよびSO
2
であり;
YはHおよび分岐または非分岐C
1-C
6アルキルからなる群から選択され;
Zは
Hまたは
NHC(O)R
7
(ここで、R
7はR
5またはR
5の一ハロゲン化~過ハロゲン化誘導体であり、
ここで、ハロゲンはFおよび/またはClである);
アリール;または
【化18】
(このアリールは式(I)の炭素直鎖に対してメタ位またはパラ位にニトロ基を含み得る)
であり、そして、
置換基EおよびFおよびGおよびHは、それぞれA、B、CおよびDについて上に定義したとおりである)
である。
【0051】
具体的に、式IにおけるZはアリール;または
【化19】
であり得て、このアリールはZ基を式(I)の炭素鎖に結合する炭素に対してメタ位またはパラ位のニトロ基を含み得て、そして
置換基EおよびFおよびGおよびHはA、B、CおよびDについて定義したとおりである。
上記式IにおけるXはClであり得る。
【0052】
本明細書の他の箇所に記載した全ての詳細および適用は、直前に記載したこの本発明の特定の実施態様にも適用される。
【0053】
図面の詳細な記載
図1~9は、全て下の実験セクションに記載するとおり得た結果を記載する:
図1:は化合物1(上記表1参照)の光分解前後の
1H-NMRスペクトルを示す。y軸は相対強度を示し、X軸は[ppm]を示す。上から下に向かって、スペクトルは、それぞれpH7;pH9;pH11;pH13;および光分解前に得る。100%変換はpH11;および13で得られた。50%変換はpH7で得られた。
pH7の2時間照射後の32%変換は、約6時間の経過中に完全に分解されたことを示す。
【0054】
図2:化合物2の光分解前後の
1H-NMR。y軸は相対強度を示し、X軸は[ppm]を示す(上記表1参照)。上から下に向かって、スペクトルはそれぞれpH9;pH11;pH13;および光分解前に得る。17%変換はpH13で得られた。この結果は、p位(4位)にニトロ基を有する利点を強調する。
【0055】
図3:化合物3(上記表1参照)の光分解前後の
1H-NMR。上から下に向かって、スペクトルはそれぞれpH9;pH11;pH13;および光分解前に得る。y軸は相対強度を示し、X軸は[ppm]を示す。40%変換はpH13で得られた。
【0056】
図4:p-ニトロアニリンと比較した化合物4(上記表1参照)の光分解前後の
1H-NMR。上から下に向かって、スペクトルはそれぞれpH9;pH11;pH13;および光分解前に得る。y軸は相対強度を示し、X軸は[ppm]を示す。56%変換はpH13で得られた。
【0057】
図5:化合物5(上記表1参照)の光分解前後の
1H-NMR。上から下に向かって、スペクトルはそれぞれpH9;pH11;pH13;および光分解前に得る。y軸は相対強度を示し、X軸は[ppm]を示す。100%変換はpH13で得られ、68%変換はpH11で得られた。
【0058】
図6:(A)照射前の化合物6、(B)分解産物および(C)アニリンA
1の
1H-NMRスペクトル。y軸は相対強度を示し、X軸は[ppm]を示す。
図6は、分解産物の一つとしてのアニリンA
1の形成を強調する。
【0059】
図7:化合物1~5のUV-visスペクトル。化合物2(表1)のUV-visデータは、400nmのλ
max、例えば16nmの深色シフトを示す。y軸は吸光度(a.u.)を示し、X軸は波長(nm)を示す。
化合物2は、主に約312、366および575nmを放射する中圧水銀ランプでの照射にあまり曝されていないと考えられる。
詳細な記載について光分解セクション参照。
【0060】
図8:0.06mMでの化合物6~9のUV-visスペクトルと共に、各化合物について濃度0.02、0.04、0.06および0.08mMの標準曲線の傾斜として決定した、対応するλ
maxおよびε(R
2≧0.999)。y軸は吸光度(a.u.)を示し、X軸は波長(nm)を示す。
図8は、化合物6~9が全て約250nmのλ
maxを有することを強調する。
【0061】
図9a~c。スタフィロコッカス・アウレウス(
図9a)、ストレプトコッカス・アガラクチア(
図9b)およびスタフィロコッカス・エピデルミス(
図9c)に対する化合物6(●)、化合物7(▲)、化合物8(■)および化合物9(◆)の最小阻害濃度(MIC)プロット。MICについて0.05の黒色破線は、活性閾値を示す。y軸は光学密度を示し、X軸は濃度(μM)を示す。
【実施例】
【0062】
実験
本実施例は、説明の目的でのみ提供され、添付する特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。下におよび本出願の他の箇所に提供する全ての引用文献は、引用により本明細書に包含させる。
【0063】
化合物1~5
合成
求核試薬としてp-およびm-ニトロアニリンを使用することは、ニトロ基の電子求引性効果による求核性の悪さのため、厄介かつ緩慢であり得る。Lindsay et al(Lindsay, H.; Desai, H.; D’Souza, B.; Foether, D.; Johnson, B. 合成 2007, 6, 902-910)により報告されたマイクロ波補助アミノ分解による反応を試みたとき、これは実際に観察された。しかしながら、これらの反応は、Heydari et al. (Heydari, A.; Mehrdad, M.; Maleki, A.; Ahmadi, N. 合成 2004, 10, 1563-1565)により報告されるとおり、5M 過塩素酸リチウム-ジエチルエーテル溶液で実施したならば、相当にスピードアップされる。高濃度の弱ルイス酸性求オキソLi
+イオンが、反応を促進するために十分である。さらに、反応を室温で実施し、所望の生成物(化合物1および2)が良好な収率で得られる(スキーム9)。二次アミノ分解に起因する副産物は微量検出された。
【化20】
スキーム9:化合物1および2を得るマイクロ波または5M LiClO
4-Et
2O溶液中のアミノ分解。
【0064】
化合物3および4について、わずかに長い合成経路が、ニトロ置換エポキシドが市販されていないために、必要であった。単純なアリルボロン酸ピナコールエステルおよびヨウ化アリールとの鈴木-宮浦パラジウム触媒クロスカップリング反応、続くmCPBAでの標準エポキシド化およびその後のアニリンでのエポキシドアミノ分解により、所望の生成物を、3工程で20~30%収率で得た(スキーム10)。
【化21】
スキーム10:化合物3および4を模倣するフルベンズロンの合成。
【0065】
標準条件下でのジクロロメタン中トリエチルアミンを用いるジクロロアセチルクロライドでのアシル化により、N-アリル-2,2-ジクロロアセトアミドを99%収率で得た(スキーム11)。アルケンのDCM中mCPBAへの暴露によりエポキシドを得て、これを5M 過塩素酸リチウム-ジエチルエーテル溶液中p-ニトロアニリンで開環して、3工程にわたる全体的収率62%であった。
【化22】
スキーム11:化合物5を模倣するクロラムフェニコールの合成。
【0066】
光分解
手近なアミノール1~5を用いて、λ
maxおよびεなどのスペクトル性質を決定し、表2および
図7に要約する。UV-visスペクトルに記載するとおり、ニトロ基がλ
maxに大きく影響する位置にあるときである。アニリンのニトロ置換で、これらの値は約380および400nmであり、他の2化合物について、浅色シフトが248nmまで観察される。
【表2】
【0067】
WanおよびMuralidharan (Wan, P.; Muralidharan, S. J. Am. Chem. Soc. 1988, 110 (13), 4336-4345)の方法に従い、アミノール1(化合物1)を、125W中圧水銀蒸気ランプを使用して、適切なpHでアセトニトリルおよび水(7:3、v:v)中光分解した。7実験をpH13~pH1で、約0.68mM濃度で、各反応を2時間照射して実施した。DCMでの液体-液体抽出後、全反応混合物を
1H-NMRスペクトロスコピーで分析した。最初に、ニトロフェネチルアルコール(スキーム3)に類似の機構が起こり、それ故、予測される生成物はN-メチル-p-ニトロアニリン、フェニルアセトアルデヒド、2-(p-ニトロアニリン)アセトアルデヒドおよびトルエンであろうと予測された。
【化23】
【化24】
スキーム12:アミノール1(化合物1)の示唆される光分解機構。
【0068】
しかしながら、pH13および11で2時間後、
1H-NMRスペクトルに見られるおとおり、これらの化合物の何れも検出されず、100%変換が観察された。pHが下がるに連れ、変換も低下し、pH5で完全に停止した。対照実験も暗所で同じ条件で実施し、変換は示されなかった。このため、一重項状態への励起および三重項状態への項間交差(ISC)後、プロトンが引き抜かれ、分解が開始する可能性があると考えられる。NMRデータからp-ニトロアニリンおよびベンズアルデヒドの2個の生成物が同定された。これは、出発物質に不明な2個の炭素原子があることを意味する(スキーム13)。合理的な仮説は、抽出中ホルムアルデヒドまたはグリオキサールとしてそれらが水相に残るとのことである。
【化25】
スキーム13:アルカリ条件下のアミノール1(化合物1)の光分解。
【0069】
m位のニトロ基を用いて、変換は良好ではなかった。pH13および11で17%の変換が観察され、11より低いpH値では化合物は安定なままであった。化合物2のUV-visデータ(表2および
図7)は、400nmのλ
max、例えば16nmの深色シフトを示す。これは、主に約312、366および575nmを放射する中圧水銀ランプ(Ushio America Inc. (2019) UVH Medium Pressure Mercury Arc)での照射に化合物があまり曝されていないことを意味する。
【0070】
さらに、m位に有するのと比較して、p位のニトロ基は顕著なメソメリー効果を有し、共鳴構造(スキーム14)により容易に説明される。それ故に、ヒドロキシルプロトンのpK
a値に影響を与えるのに不十分であり、反応は起きない。
【化26】
スキーム14:p位のニトロ基のメソメリー効果。
【0071】
他のフェニル環のニトロ基で、pHと関係なく、光分解は観察されなかった(スキーム15)。これは、中圧水銀ランプがこれら化合物のλ
max値である248nmで照射しないためである可能性が高い(表1)。しかしながら、低圧水銀ランプなどの異なるランプを使用して、254nmで強い放射があるため、反応が起こる。
【化27】
スキーム15:化合物3および4の光分解。
【0072】
クロラムフェニコールを模倣する化合物は化合物1に類似した反応をして、p-ニトロアニリンが実際検出された。っ完全な変換がpH13で、達成され、pH11で60%であった。pH値が低いと、化合物は安定なままであった。しかしながら、アルデヒドシグナルは観察されず、スペクトルの脂肪族領域における
1H-NMRデータは、この点について決定的でないままであった。
【化28】
スキーム16a:クロラムフェニコール模倣化合物5の光分解。
【0073】
化合物1~5を、5種の異なる細菌(エンテロコッカス・フェカーリス、エシェリキア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウスおよびストレプトコッカス・アガラクティエ)に対して試験したが、抗微生物活性を示さなかった。化合物1~5と同じエタノール-置換アニリンをまた含むクロラムフェニコールの構造にさらに似せた化合物を製造するために、ヒドロキシルアミンは有望な溶液と考えられる(スキーム16b)。
【化29】
スキーム16b:元の構造をより密接に模倣するクロラムフェニコール模倣化合物の設計。
【0074】
クロラムフェニコールを模倣する化合物、化合物10への逆合成アプローチを、アニリン切断で開始できる(スキーム17)。ヒドロキシルアミンは良好な求核試薬であり、市販され、故に、そこでの他の開裂をさせるのは当然であるアルコールの官能基相互変換はビシナルジオールをもたらし、これは、一般に対応するアルケンから合成される。
【化30】
スキーム17:新規クロラムフェニコール模倣化合物の逆合成解析。
【0075】
共酸化剤としてのオスミウム酸カリウムおよびK
3Fe(CN)
6でのジヒドロキシル化により、ビシナルジオールを優れた収率(92%)でえた。2級アルコールを選択的にトシル化するために、ベンゾイル基は通常1級アルコールに選択的に反応し、一方トシル化はそうではないため、まずベンゾイル化が必要であった。しかしながら、ジベンゾイル化が生じ、低収率(39%)の理由である。次いで、トシル基を導入し、O-トリメチルシリルヒドロキシルアミンでの求核性置換反応は、実施すべき次の工程である(スキーム18)。
【化31】
スキーム18:クロラムフェニコール模倣化合物10に向けた合成。
【0076】
ヒドロキシルアミン部分をヒドラジンに変えることも可能であった(スキーム19)。合成経路は、第四工程で求核試薬としてヒドロキシルアミンの代わりにヒドラジンを使用する以外、化合物10のものに類似する。
【化32】
スキーム19:ヒドラジンクロラムフェニコール模倣化合物。
【0077】
2個の付加的化合物は、ヒドロキシルアミン-およびヒドラジンアナログより構造的に遠いが、スキーム20により製造したエポキシドと共にO-TMS-N-ニトロフェニルヒドロキシルアミンまたはN-ニトロフェニル-Bocヒドラジンから容易に製造できる。
【化33】
スキーム20:化合物5のヒドロキシルアミン-およびヒドラジン模倣化合物。Y=OTMS、NHBoc、X=OH、NH
2。
【0078】
化合物6~9
合成
化合物6~9を製造した。この目的で、Kothaおよび共同研究者ら(Kotha, S.; Behera, M.; Shah, V., A. Synlett 2005, 12, 1877-1880)により記載された方法を使用する、アリルボロン酸ピナコールエステルとの鈴木-宮浦クロスカップリング反応。その後のmCPBAでの処理により、対応するエポキシドを得た。5M 過塩素酸リチウム-ジエチルエーテル(LPDE)溶液を使用するルイス酸促進エポキシド開環反応により、アミノール化合物6を得た。残りの3個の化合物を、選択的メタニトロ化、続くアリルトリブチルスタンナンとのスチレクロスカップリングおよびその後のmCPBAでのエポキシド化により製造し、必要なエポキシドEを得た。アニリンA~Cでのルイス酸促進エポキシド開環により、アミノール7~9を得た(スキーム21)。
【化34】
スキーム21:アミノール6~9の完全合成。試薬および条件:(i)1)Pd(PPh
3)
4、CsF、アリルBpin、THF、還流、2)mCPBA、DCM、rt;(ii)5M LPDE、40℃;(iii)H
2SO
4、HNO
3、0℃;(iv)1)Pd(PPh
3)
4、Bu
3Snアリル、DMF、110℃。
【0079】
光分解
アミノール6~9(化合物6~9)をアセトニトリルに溶解し、水酸化ナトリウム溶液でpH13で希釈した(30/70、V/V)。全ての化合物が約250nmの強い吸収バンドを有するため(
図8)、6W 低圧水銀蒸気ランプを、主に254nmで放射するため、照射源として選択した。全ての反応を、75mL ガス注入口フラスコ(約0.7mM)で、石英ウェルコールドフィンガーを用いる一定窒素流下、24時間実施した。
【0080】
図8は、各化合物について濃度0.02、0.04、0.06および0.08mMの標準曲線の傾斜として決定した(R
2≧0.999)、0.06mMの化合物6、化合物7、化合物8および化合物9のUV-visスペクトルと対応するλ
maxおよびεを示す。
【0081】
水性後処理後、反応混合物を
1H-NMRスペクトロスコピーで分析した。化合物6について、6.80および7.32ppm(H
aおよびH
b)の2個の1重項が2,5-ジクロロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)アニリンに対応する6.93および7.30ppmに顕著にシフトため、完全な変換が観察された。化合物6の光分解反応はスキーム21に見ることができる。さらに、7.47および8.13ppm(H
cおよびH
d)の2個の二重項が完全多重項へと消失し、脂肪族プロトン約3ppmはもはや見えない(
図6)。
図6は、(A)照射前の化合物6、(B)分解産物および(C)アニリンA
1の
1H-NMRスペクトルを示す。化合物7および化合物9で類似の結果が観察されたが、化合物8について、完全な分解はこれらの条件で達成されなかった。出発物質および分解生成物のシグナルH
aの比は、56%変換を示す。
【0082】
抗細菌活性
手持ちの化合物6~9および粗製分解混合物で、最小阻害性濃度(MIC)を、エンテロコッカス・フェカーリス、エシェリキア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・アガラクティエおよびスタフィロコッカス・エピデルミスを含むいくつかのグラム陽性およびグラム陰性細菌に対してスクリーニングした。活性を決定するために、600nmでの光学密度(OD)を測定して、1.6~100μM濃度での細菌濃度を推定した。0.05未満の値を活性としてカウントし、増殖阻害を示し、化合物6~9の濃度に対してODをプロットすることにより示す(
図9)。
図9a~cは、化合物6(●)、化合物7(▲)、化合物8(■)および化合物9(◆)の最小阻害性濃度プロットを示す。MICについて0.05およびバイオフィルム形成について30%の黒色破線は、活性閾値を示す。化合物の2個、化合物6および化合物8は、グラム陽性ストレプトコッカス・アガラクティエ(
図9b)に対して選択的な6.3μM活性ならびにそれぞれ12.5および25μMでスタフィロコッカス・エピデルミス(
図9c)に対するバイオフィルム阻害を示した。化合物9は、全グラム陽性細菌に対して50μM活性であり、化合物7はスタフィロコッカス・アウレウスに対して50μM活性を示した(
図9a)。グラム陰性細菌に対する活性は観察されなかった(表3)。ストレプトコッカス・アガラクティエに対する化合物6および化合物8の高濃度での活性減少は、現敵的溶解度による沈殿が原因である。
【0083】
【0084】
スペクトル解析
IRスペクトルを、減衰全反射(ATR)アタッチメントを備えたAgilent Cary 630 FT-IR分光光度計で記録した。サンプルを、ZnSe結晶上ニートで解析し、吸収周波数は端数(cm-1)で示す。
【0085】
UV-visスペクトルを、UV範囲について重水素放出ランプおよび可視波長範囲についてタングステンランプを用いるAgilent 8453シングルビームUV-vis分光光度計で得た。サンプルを、Agilent頂部開口型UV石英セル(10mm、3.0mL)でエタノールを溶媒として用いで分析した。波長をnmおよびモル減衰係数をM-1cm-1として示す。
【0086】
NMRスペクトルを、Bruker AscendTM 400スペクトロメーター(1Hについて400.13MHz、13Cについて100.61MHz、19Fについて376.46MHz)またはBruker AscendTM 850スペクトロメーター(1Hについて850.13MHzおよび13Cについて213.77MHz)で記録した。カップリング定数(J)をHzで記載し、多重度を一重項(s)、二重項(d)、三重項(t)、六重項(sxt)、多重項(m)および幅広一重項(bs)として報告する。化学シフト値を、ppmで高磁場から低磁場で報告し、較正をクロロホルム-d(1H 7.26ppm;13C 77.16ppm)またはアセトニトリル-d3(1H 1.94ppm;13C 1.32ppm)に対する残存溶媒シグナルを使用して実施した。2719F NMRの較正を、クロロホルム-d(-62.61ppm)およびアセトニトリル-d3(-63.10ppm)中の内部標準としてα,α,α-トリフルオロトルエンを使用して、実施した。
【0087】
高解像度マススペクトルを、ESIモードで操作するJEOL AccuTOFTM T100GCマススペクトロメーターで記録した。低解像度マススペクトルを、サンプル注入用Plate Express(登録商標)TLCプレートリーダーを備えたESIモードで操作するAdvion発現コンパクトマススペクトロメーター(CMS)で記録した。アセトニトリルおよび水(95/5)中の酢酸アンモニウム(3.0mM)およびギ酸(0.05%)の溶液を、陽および陰ESIモード両者の移動相として使用した。
【0088】
薄層クロマトグラフィー(TLC)を、石油エーテル、酢酸エチルおよびDCMの種々の混合物からなる溶媒系を用いて、アルミニウムシートシート上でシリカゲル(60 F254)で実施した。UV光(254および/または365nm)または過マンガン酸カリウム染色により、染色した。フラッシュクロマトグラフィーをハンドポンプおよび230~400メッシュシリカゲルで実施した。
【0089】
一般的合成法
ルイス-酸促進エポキシド開環:
過塩素酸リチウムを真空で1時間乾燥させ、無水ジエチルエーテルに溶解して、5M溶液とした。適切なアニリン(1.0~1.3当量)およびエポキシド(1.0当量)を添加し(約0.2M)、反応混合物を40℃でAr雰囲気下に一夜撹拌した。DCMおよび水を添加し、相を分離し、水層をDCM(3×10mL)で抽出した。合わせた有機相をセライト上で蒸発させ、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/DCM、3/7)に付し、関連するフラクションの濃縮により、ニトロフェネチルアルコールを得た。
【0090】
1-アリル-4-ニトロベンゼンの合成
凝縮器を備えたオーブン乾燥した25mL丸底フラスコに1-ヨード-4-ニトロベンゼン(1.00g、4.00mmol)、CsF(1.52g、10.0mmol)、Pd(PPh3)4(0.70g、15mol%)、THF(20mL)および水(2mL)を入れた。混合物を、室温でAr下に30分間撹拌し、続いてアリルボロン酸ピナコールエステル(1.36mL、7.20mmol)のTHF(8mL)溶液を添加した。反応混合物を22時間還流した(油浴、95℃)。rtに冷却後、生成物混合物をセライト上で蒸発させ、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル)で精製した。関連するフラクションの濃縮(Rf 0.47、石油エーテル/EtOAc 8/2)により、アリル化生成物(0.35g、52%)をわずかに黄色の液体として得た。スペクトルデータは、先の文献報告置に合致した(下記参照)。
TLC (石油エーテル:EtOAc, 80:20 v:v): Rf = 0.47
IR (ニート): νmax 3091, 3017, 2918, 1593, 1502
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3): δ 8.15 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.99-5.89 (m, 1H), 5.18-5.09 (m, 2H), 3.49 (d, J = 6.7 Hz, 2H)
13C NMR (100.61 MHz, CDCl3): δ 147.9, 146.7, 135.6, 129.5, 123.8, 117.5, 40.0
【0091】
2-(4-ニトロベンジル)オキシランの合成
1-アリル-4-ニトロベンゼン(0.35g、2.16mmol)の無水DCM(12mL)溶液を入れたオーブン乾燥した25mL丸底フラスコを冷却し(氷/水浴)、5分間、Ar下に撹拌し、続いてmCPBA(0.59g、2.63mmol)を添加した。反応混合物を環境温度で2時間、次いで室温で15時間撹拌した。さらにmCPBA(0.12g、0.54mmol)を添加し、撹拌をさらに31時間続け、その後反応を1M NaOH水溶液(10mL)でクエンチした。相を分離し、水相をDCM(3×15mL)で抽出した。合わせた有機相を水(20mL)、塩水(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、減圧下濃縮した。生成物をシリカゲルオートフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc/DCM、93/2/5→40/55/5)で精製し、関連するフラクションの濃縮(Rf 0.26、石油エーテル/DCM、5/5)により、エポキシドを黄色油状液体(0.20g、52%)として得た。スペクトルデータについては下記参照。
TLC (石油エーテル:DCM, 50:50 v:v): Rf = 0.26
IR (ニート): νmax 2957, 2923, 2853, 1599, 1516, 1345
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3): δ 8.18 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 3.20-3.16 (m, 1H), 3.06 (dd, J = 14.8 Hz, 4.2 Hz, 1H), 2.90 (dd, J = 14.8 Hz, 6.4 Hz, 1H), 2.84 (dd, J = 4.7 Hz, 4.0 Hz, 1H), 2.55 (dd, J = 4.7 Hz, 2.6 Hz, 1H)
13C NMR (100.61 MHz, CDCl3): δ 147.1, 145.0, 130.0, 123.9, 51.7, 46.8, 38.6
【0092】
1-((2,5-ジクロロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル)アミノ)-3-(4-ニトロフェニル)プロパン-2-オールの合成
2,5-ジクロロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)アニリン(111mg、0.34mmol)および2-(4-ニトロベンジル)オキシラン(62mg、0.34mmol)を、一般法に従い19時間反応させて、6を白色固体(87mg、50%、融点121~123℃)として得て、2-(4-ニトロベンジル)オキシランは40%回収率であった。スペクトルデータについては下記参照。
TLC (DCM): Rf = 0.36
IR (ニート): νmax 3507 (OH), 3420, 3376 (NH), 2980, 2918, 2857, 1599
UV/vis (EtOH): λmax 255 nm (ε 18339 M-1cm-1)
1H NMR (850.13 MHz, CD3CN): δ 8.14 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.49 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.33 (s, 1H), 6.81 (s, 1H), 5.55 (dsxt, J = 42.8 Hz, 5.8 Hz, 1H), 5.03 (t, J = 5.6 Hz, NH), 4.06-4.02 (m, 1H), 3.30 (ddd, J = 13.3 Hz, 6.4 Hz, 3.9 Hz, 1H), 3.27 (d, J = 4.4 Hz, OH), 3.15-3.11 (m, 1H), 2.98 (dd, J = 13.8 Hz, 4.5 Hz, 1H), 2.85 (dd, J = 13.8 Hz, 8.4 Hz, 1H)
13C NMR (213.77 MHz, CD3CN): δ 148.2, 147.7, 145.2, 134.5, 131.5, 127.9, 125.6, 124.3, 121.3 (qd, J = 281 Hz, 25 Hz), 119.1 (td, J = 271 Hz, 23 Hz), 117.7, 112.6, 85.4 (dsxt, J = 198 Hz, 35 Hz), 70.8, 49.7, 41.7
19F NMR (376.46 MHz, CD3CN): δ -75.6--75.7 (m, 3F), -78.4--80.4 (m, 2F), -213.3 (sxt, J = 12 Hz, 1F)
HRMS: (ESI/TOF) m/z: [M+Na]+ C18H14Cl2F6N2O4Na+計算値 529.01270; 実測値 529.01286
【0093】
2-ブロモ-1,3-ジフルオロ-4-ニトロベンゼンの合成
2,6-ジフルオロ-1-ブロモベンゼン(579mg、3.00mmol)を95~97%硫酸(4mL)に溶解し、0℃に冷却した。これに、95~97%硫酸(4mL)および65%硝酸(5.2mL)の氷冷混合物を15分間かけて滴下した。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、氷に注加し、DCM(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、減圧下濃縮して、表題化合物を白色結晶固体(691mg、97%、融点52~53℃)として得た。
TLC (石油エーテル:EtOAc, 90:10, v:v): Rf = 0.35
IR (ニート): νmax 3099, 1916, 1591, 1530
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3): δ 8.12 (ddd, J = 9.4 Hz, 8.0 Hz, 5.5 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 9.4 Hz, 7.0 Hz, 2.0 Hz, 1H)
13C NMR (100.61 MHz, CDCl3): δ 163.1 (dd, J = 260 Hz, 3 Hz), 154.3 (dd, J = 267 Hz, 5 Hz), 134.8, 126.2 (dd, J = 10 Hz, 2 Hz), 112.1 (dd, J = 24 Hz, 4 Hz), 101.3 (dd, J = 25 Hz, 24 Hz)
19F NMR (376.46 MHz, CDCl3): δ -92.0 (d, J = 9.5 Hz), -104.4 (d, J = 9.5 Hz)
【0094】
S2-アリル-1,3-ジフルオロ-4-ニトロベンゼンの合成
アリールブロマイド#(870mg、3.66mmol)、Pd(PPh3)4(634mg、15mol%)およびBu3Snアリル(1.53mL、4.39mmol)を無水DMF(8mL)に溶解した。4Åモレキュラー・シーブを添加し、反応混合物を100℃でAr下に24時間撹拌した。固体を、DCM(50mL)の助けを借りてコットンを通して濾過し、揮発物を減圧下除去した。表題化合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、99/1)により単離し、関連するフラクションの濃縮により、アリル化生成物を無色液体(194mg、27%)として得た。スペクトルデータについては下記参照。
TLC (石油エーテル:EtOAc, 95:5, v:v): Rf = 0.32
IR (ニート): νmax 3087, 2957, 2925, 2855, 1623, 1596
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3): δ 8.01 (ddd, J = 9.0 Hz, 8.5 Hz, 5.7 Hz, 1H), 7.04-6.99 (m, 1H), 5.95-5.85 (m, 1H), 5.13-5.08 (m, 2H), 3.51-3.48 (m, 2H)
13C NMR (100.61 MHz, CDCl3): δ 164.2 (dd, J = 258 Hz, 8 Hz), 155.2 (dd, J = 266 Hz, 10 Hz), 134.5-134.4 (m), 132.9, 125.4 (dd, J = 11 Hz, 2 Hz), 118.8 (dd, J = 22 Hz, 19 Hz), 117.4, 111.7 (dd, J = 25 Hz, 4 Hz), 26.8 (t, J = 3 Hz)
19F NMR (376.46 MHz, CDCl3): δ -102.5 (d, J = 14.1 Hz), -116.6 (d, J = 14.1 Hz)
【0095】
2-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンジル)オキシランの合成
撹拌中のアリルベンゼン#(194mg、0.97mmol)の溶液に、0℃でmCPBA(425mg、1.94mmol)を添加した。反応混合物を2時間、℃でおよび5日間、室温で撹拌し、続いて1:1 飽和NaHCO3:10%Na2S2O3水溶液(30mL)を添加した。相を分離し、水層をDCM(3×15mL)で抽出した。合わせた有機相を1:1 飽和NaHCO3:10%Na2S2O3水溶液(30mL)、飽和NaHCO3水溶液(30mL)、水(30mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、減圧下濃縮して、アリル化生成物をわずかに黄色の油状液体(183mg、88%)として得て、さらに精製することなく使用した。スペクトルデータについては下記参照。
TLC (DCM): Rf = 0.53
IR (ニート): νmax 3104, 3000, 2926, 1728, 1624
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3): δ 8.05 (ddd, J = 9.2 Hz, 8.5 Hz, 5.7 Hz, 1H), 7.07-7.02 (m, 1H), 3.22-3.17 (m, 1H), 3.16-3.11 (m, 1H), 3.03-2.97 (m, 1H), 2.81-2.79 (m, 1H), 2.56 (dd, J = 4.8 Hz, 2.5 Hz, 1H)
13C NMR (100.61 MHz, CDCl3): δ 164.5 (dd, J = 259 Hz, 8 Hz), 155.5 (dd, J = 266 Hz, 9 Hz), 134.5, 126.1 (dd, J = 11 Hz, 1 Hz), 115.8 (dd, J = 22 Hz, 20 Hz), 111.8 (dd, J = 25 Hz, 4 Hz), 50.1, 46.9, 25.8 (t, J = 2 Hz)
19F NMR (376.46 MHz, CDCl3): δ -101.5 (d, J = 13.6 Hz), -115.7 (d, J = 13.6 Hz)
【0096】
1-((3,5-ジクロロ-2-フルオロフェニル)アミノ)-3-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロフェニル)プロパン-2-オールの合成
3,5-ジクロロ-2-フルオロフェニルアニリン(82mg、0.46mmol)および2-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンジル)オキシラン(77mg、0.36mmol)を、一般法に従い、20時間反応させて、9(60mg、42%)を粘性無色油として得て、2-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンジル)オキシランは7%回収率であった。スペクトルデータについては下記参照。
TLC (DCM): Rf = 0.36
IR (ニート): νmax 3565 (OH), 3425 (NH), 3101, 2926, 2857, 1597
UV/vis (EtOH): λmax 254 nm (ε 16575 M-1cm-1)
1H NMR (400.13 MHz, CD3CN): δ 8.05 (ddd, J = 9.3 Hz, 8.5 Hz, 5.7 Hz, 1H), 7.14 (ddd, J = 9.3 Hz, 8.5 Hz, 1.9 Hz, 1H), 6.73-6.69 (m, 2H), 4.93 (bs, NH), 4.06-3.98 (m, 1H), 3.34 (d, J = 5.3 Hz, OH), 3.32 (ddd, J = 13.5 Hz, 6.7 Hz, 4.0 Hz, 1H), 3.20-3.13 (m, 1H), 2.99-2.87 (m, 2H)
13C NMR (100.61 MHz, CD3CN): δ 165.5 (dd, J = 256 Hz, 8 Hz), 156.2 (dd, J = 263 Hz, 10 Hz), 146.8 (d, J = 239 Hz), 139.9 (d, J = 12 Hz), 135.5, 130.5 (d, J = 4 Hz), 126.7 (dd, J = 12 Hz, 2 Hz), 121.4 (d, J = 16 Hz), 118.6 (dd, J = 22 Hz, 19 Hz), 116.5 (d, J = 1 Hz), 112.6 (dd, J = 25 Hz, 4 Hz), 111.6 (d, J = 4 Hz), 69.3, 49.5, 29.1
19F NMR (376.46 MHz, CD3CN): δ -103.0 (d, J = 13.6 Hz, 1F), -117.5 (d, J = 13.6 Hz, 1F), -141.7 (s, 1F)
HRMS: (ESI/TOF) m/z: [M+H]+ C15H12Cl2F3N2O3
+計算値 395.01716; 実測値 395.01724
【0097】
1-((3,5-ジクロロ-2,4-ジフルオロフェニル)アミノ)-3-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロフェニル)プロパン-2-オールの合成
3,5-ジクロロ-2,4-ジフルオロフェニルアニリン(65mg、0.33mmol)および2-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンジル)オキシラン(71mg、0.33mmolを、一般法に従い22時間反応させて、7を白色固体(45mg、33%、融点110~112℃)として得て、2-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンジル)オキシランは46%回収率であった。スペクトルデータについては下記参照。
TLC (DCM): Rf = 0.30
IR (ニート): νmax 3433 (OH), 3382 (NH), 3103, 2935, 2857, 1625
UV/vis (EtOH): λmax 242 nm (ε 16289 M-1cm-1)
1H NMR (400.13 MHz, CD3CN): δ 8.04 (ddd, J = 9.2 Hz, 8.6 Hz, 5.7 Hz, 1H), 7.13 (ddd, J = 9.2 Hz, 8.5 Hz, 1.8 Hz, 1H), 6.79 (dd, J = 8.6 Hz, 7.1 Hz, 1H), 4.72 (bs, NH), 4.05-3.97 (m, 1H), 3.34 (d, J = 5.3 Hz, OH), 3.92 (ddd, J = 13.4 Hz, 6.6 Hz, 4.1 Hz, 1H), 3.16-3.10 (m, 1H), 2.98-2.87 (m, 2H)
13C NMR (100.61 MHz, CD3CN): δ 165.5 (dd, J = 256 Hz, 8 Hz), 156.2 (dd, J = 263 Hz, 10 Hz), 146.9 (dd, J = 242 Hz, 1 Hz), 146.3 (dd, J = 237 Hz, 2 Hz), 135.7 (dd, J = 12 Hz, 3 Hz), 135.4 (dd, J = 8 Hz, 3 Hz), 126.7 (d, J = 12 Hz), 118.5 (dd, J = 22 Hz, 20 Hz), 117.3 (dd, J = 18 Hz, 4 Hz), 112.6 (dd, J = 25 Hz, 4 Hz), 111.4-111.0 (m, 1C), 111.2 (d, J = 4 Hz), 69.4, 49.7, 29.1
19F NMR (376.46 MHz, CD3CN): δ -103.0 (d, J = 14.0 Hz, 1F), -117.5 (d, J = 14.0 Hz, 1F), -133.9 (d, J = 4.0 Hz, 1F), -137.0 (d, J = 4.0 Hz, 1F)
HRMS: (ESI/TOF) m/z: [M+H]+ C15H11Cl2F4N2O3
+計算値 413.00774; 実測値 413.00829
【0098】
1-((2,5-ジクロロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル)アミノ)-3-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロフェニル)プロパン-2-オールの合成
2,5-ジクロロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)アニリン(151mg、0.46mmol)および2-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンジル)オキシラン(100mg、0.46mmol)を一般法に従い18時間反応させて、8をわずかに黄色の油状液体(104mg、42%)として得て、2-(2,6-ジフルオロ-3-ニトロベンジル)オキシランは16%回収率であった。スペクトルデータについては下記参照。
TLC (DCM): Rf = 0.36
IR (ニート): νmax 3550 (OH), 3411 (NH), 3103, 2937, 1624
UV/vis (EtOH): λmax 254 nm (ε 25248 M-1cm-1)
1H NMR (400.13 MHz, CD3CN): δ 8.04 (ddd, J = 9.2 Hz, 8.5 Hz, 5.7 Hz, 1H), 7.31 (t, J = 1.0 Hz, 1H), 7.12 (ddd, J = 9.2 Hz, 8.5 Hz, 1.8 Hz, 1H), 6.85 (s, 1H), 5.54 (dsxt, J = 42.8 Hz, 5.9 Hz, 1H), 5.03 (t, J = 5.8 Hz, NH), 4.09-4.02 (m, 1H), 3.42 (d, J = 5.4 Hz, OH), 3.35 (ddd, J = 13.3 Hz, 6.4 Hz, 4.1 Hz, 1H), 3.22-3.16 (m, 1H), 2.99-2.89 (m, 2H)
13C NMR (213.77 MHz, CD3CN): δ 165.5 (dd, J = 256 Hz, 8 Hz), 156.2 (dd, J = 263 Hz, 10 Hz), 145.1, 135.5 (dd, J = 8 Hz, 3 Hz), 134.6, 127.9, 126.7 (d, J = 12 Hz), 125.6, 121.3 (qd, J = 281 Hz, 25 Hz), 119.1 (td, J = 271 Hz, 23 Hz), 118.5 (dd, J = 22 Hz, 19 Hz), 117.7, 112.71, 112.67 (dd, J = 25 Hz, 3 Hz), 85.4 (dsxt, J = 198 Hz, 35 Hz), 69.3, 49.6, 29.2
19F NMR (376.46 MHz, CD3CN): δ -75.6--75.7 (m, 3F), -78.5--80.4 (m, 2F), -102.9 (d, J = 14.0 Hz, 1F), -117.4 (d, J = 14.0 Hz, 1F), -213.3 (sxt, J = 11.2 Hz, 1F)
HRMS: (ESI/TOF) m/z: [M+H]+ C18H13Cl2F8N2O4
+計算値 543.01191; 実測値 543.01196
【国際調査報告】