(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】回転子
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2793 20220101AFI20240412BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H02K1/2793
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565134
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2022060727
(87)【国際公開番号】W WO2022223798
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513039333
【氏名又は名称】ヤサ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シモン オドリング
(72)【発明者】
【氏名】グレイム ハイソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ホジソン
(72)【発明者】
【氏名】カラム ピッケン
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA06
5H622CB06
5H622PP19
5H622PP20
5H622QA10
(57)【要約】
回転電機用の回転子(10)が説明され、回転子(10)は、対向する第1および第2の面を有する支持ディスク(14)、支持部材(20)、および、支持部材に取り付けられ、支持部材によって保持される複数の永久磁石(22)を備え、支持部材は、支持ディスク(14)の第1の面に固定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機用の回転子であって、前記回転子は、
対向する第1および第2の面を有する支持ディスクと、
複数の永久磁石を受け入れるための支持部材と、
前記支持部材に取り付けられ、前記支持部材によって保持される複数の永久磁石と、
前記永久磁石の周りに延び、使用時の前記永久磁石の半径方向外側への動きを制限または妨げる保持バンドであって、前記保持バンドは、内側へ、複数の前記磁石に対して半径方向に方向付けられた負荷を加えるためにプレストレスされている、保持バンドと、
を備え、
前記支持部材は、前記支持ディスクの前記第1の面に固定されている、
回転子。
【請求項2】
前記支持部材は、半径方向へ延びる複数のスポークを備え、隣接するスポーク間の前記空間は、それぞれの永久磁石を受け入れるための隙間を画定する、
請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記支持部材は、複数のスポークがそれから半径方向に突き出る環状部分を備え、隣接するスポーク間の前記空間の各々は、それぞれの永久磁石を受け入れるためのソケットを画定する、
請求項1に記載の回転子。
【請求項4】
前記支持部材は、前記磁石と共に共成形され、シートモールディングコンパウンド(SMC)物質から形成される、
請求項2または3に記載の回転子。
【請求項5】
前記支持部材は、前記磁石と共に共成形され、前記支持部材は、射出成形ポリマーから形成される、
請求項3に記載の回転子。
【請求項6】
前記環状部分および前記スポークは、別個の部品から形成される、
請求項3に記載の回転子。
【請求項7】
前記環状部分は、半径方向外側へ延びる複数の変形可能な構造体を備え、前記変形可能な構造体の各々は、それぞれのスポークと一致するように前記環状部分に位置付けされる、
請求項6に記載の回転子。
【請求項8】
前記変形可能な構造体の各々は、それぞれのスポークに対して接触し半径方向力を提供する、
請求項7に記載の回転子。
【請求項9】
前記環状部分は、射出成形ポリマーから形成される、
請求項6、7または8に記載の回転子。
【請求項10】
前記スポークの各々は、単一方向の炭素ストリップから形成され、前記炭素ストリップの各々の前記繊維は、前記それぞれのスポークの軸方向の長さに対して垂直である、
請求項6から9のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項11】
前記スポークの各々は、それぞれのスポークの長さに沿って半径方向に延びる平面および半径方向の平面に対して垂直に延びる平面において等方性の特性を有する物質から形成される、
請求項6から9のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項12】
前記スポークの各々は、磁性物質から形成される、
請求項6から9のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項13】
前記磁性物質は、前記複数の永久磁石のうちの1つまたは複数の磁場整列に対して直交する磁場整列を有する、
請求項12に記載の回転子。
【請求項14】
前記保持バンドは、複合物質である、
請求項1から13のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項15】
前記保持バンドは、適切な樹脂物質のマトリクス内の強化用繊維物質の巻線を備える、
請求項14に記載の回転子。
【請求項16】
前記繊維物質は、実質的にフープ巻きである、
請求項15に記載の回転子。
【請求項17】
前記支持部材および永久磁石は、前記保持バンドによって前記磁石に与えられた負荷に反応するように形作られ、前記保持バンドによって加えられる負荷の結果として前記磁石が半径方向内側に動くことを実質的に妨げる、
請求項1から16のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項18】
前記永久磁石の一部、前記支持部材および/または前記保持バンドの間のポリマー樹脂物質を備える、
請求項4から17のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項19】
前記支持部材および永久磁石は、接着剤を使用して前記支持ディスクの前記第1の面に固定される、
請求項1から18のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項20】
前記接着剤は、比較的低い弾性率である、
請求項19に記載の回転子。
【請求項21】
前記接着剤の前記弾性率は、20MPa未満である、
請求項20に記載の回転子。
【請求項22】
前記接着物質は、エポキシよりも熱伝導率が高い、
請求項20または21に記載の回転子。
【請求項23】
前記接着物質は、熱伝導率が0.5W/m・Kより大きい、
請求項22に記載の回転子。
【請求項24】
前記支持ディスクは、第2の環状部材が結合された第1の環状部材を備える、
請求項1から23のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項25】
前記第1の環状部材は、鋼鉄製である、
請求項24に記載の回転子。
【請求項26】
前記第2の環状部材は、積層体である、
請求項24または25に記載の回転子。
【請求項27】
前記第2の環状部材は、積層螺旋巻きコイルである、
請求項26に記載の回転子。
【請求項28】
前記第1および第2の環状部材は、10W/m・Kより大きい熱伝導率を有する物質を使用することにより、互いに、結合される、或いは固定される、
請求項24から27のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項29】
固定子および回転可能な回転子を備えた回転電機であって、前記回転子は、請求項1から28のいずれか1つの形態をとる、
回転電機。
【請求項30】
軸方向磁束モータまたは軸方向磁束発電機を備えた、
請求項29に記載の回転電機。
【請求項31】
前記固定子は、請求項1から28のいずれか1つの形態をとる一対の回転子の間に位置付けされる、
請求項30に記載の回転電機。
【請求項32】
回転電機用の回転子を組み立てる方法であって、
対向する第1および第2の面を有する支持ディスクを提供することと、
それに取り付けられる複数の永久磁石を有する支持部材を提供することと、
前記永久磁石の外側半径の周りに円周方向に延びるようにプレストレスされた保持バンドを位置付けすることであって、使用時およびプレストレスされている状態での、前記永久磁石の半径方向外側への動きを制限するまたは妨げるための前記保持バンドは、内側へ、前記永久磁石に対して半径方向に方向付けられた負荷を加える、位置付けすることと、
前記支持部材を前記支持ディスクの前記第1の面に固定することと、
を備える、方法。
【請求項33】
前記それに取り付けられる複数の永久磁石を有する支持部材を提供することは、
金型内にスティフナ構造を位置付けすることであって、前記スティフナ構造は、環状部分から半径方向に突き出る複数のスポークを備え、隣接するスポーク間の前記空間の各々は、それぞれの永久磁石を受け入れるためのソケットを画定する、位置付けすることと、
前記ソケットの各々にそれぞれの永久磁石を位置付けすることと、
前記永久磁石の各々を前記スティフナ構造に結合することと、
を備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記環状部分および前記スティフナ構造のそれぞれのスポークは、単一部分の形態である、
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記環状部分および前記スティフナ構造のそれぞれのスポークは、別個の部分の形態である、
請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記環状部分は、半径方向外側へ延びる複数の変形可能な構造体を備え、前記変形可能な構造体の各々は、それぞれのスポークと一致するように前記環状部分に位置付けされる、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記金型内に設置された場合に、前記変形可能な構造体の各々は、それぞれのスポークに対して接触し半径方向力を提供する、
請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記環状部分は、射出成形ポリマーから形成される、
請求項35、36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記スポークの各々は、単一方向の炭素ストリップから形成され、前記炭素ストリップの各々の前記繊維は、前記それぞれのスポークの軸方向の長さに対して垂直である、
請求項35から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記スポークの各々は、それぞれのスポークの長さに沿って半径方向に延びる平面および半径方向の平面に対して垂直に延びる平面において等方性の特性を有する物質から形成される、
請求項35から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記スポークの各々は、磁性物質から形成される、
請求項35から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記磁性物質は、前記複数の永久磁石のうちの1つまたは複数の磁場整列に対して直交する磁場整列を有する、
請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記永久磁石の各々を前記スティフナ構造に結合することは、1つまたは複数の前記それぞれの磁石と、それぞれのスポークと、環状部分と、の間の隙間を充填するために樹脂を注入すること、を備える、
請求項33から42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記永久磁石の各々を前記スティフナ構造に結合することは、前記永久磁石の各々と、それぞれのスポークと、環状部分の一部と、の間に接着剤を使用して、前記永久磁石の各々を前記スティフナ構造に結合する、ことを備える、
請求項33から42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記それに取り付けられる複数の永久磁石を有する支持部材を提供することは、
金型内に複数の永久磁石を位置付けすることであって、前記磁石は、軸の周りに円周方向に配置され、前記磁石の各々の間に隙間を有する、位置付けすることと、
前記金型内の前記永久磁石の周りにスティフナ構造を形成することと、
を備える、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記金型内の前記永久磁石の周りにスティフナ構造を形成することは、
複数のSMC(シートモールディングコンパウンド)プレフォームを使用することであって、それぞれは、それぞれの隣接する永久磁石の間の隙間において半径方向に外側へ突き出るスポークとして配置される、使用することと、
複数の前記SMCプレフォームを前記スティフナ構造に圧縮することと、
を備える、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記スティフナ構造は、環状内側部分を備え、前記スポークはそこから突き出るように形成される、
請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記SMCプレフォームは、熱硬化性樹脂を備える、
請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記それに取り付けられる複数の永久磁石を有する支持部材を提供することは、
半径方向外側へ突き出る複数のスポークを備えるスティフナ構造を形成するために、ポリマーを使用して射出成形することであって、各スポークは、隣接する永久磁石の間に形成される、射出成形すること、
を備える、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記スティフナ構造は、環状内側部分を備え、前記スポークがそこから突き出るように形成され、前記環状内側部分は、ポリマーを使用した射出成形中形成される、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
射出成形ポリマーは、その中に繊維を有するポリマーを備える、
請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記保持バンドは、複合物質である、
請求項32または51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記保持バンドは、適切な樹脂物質のマトリクス内の強化用繊維物質の巻線を備える、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記繊維物質は、実質的にフープ巻きである、
請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記支持部材および永久磁石は、接着剤を使用して前記支持ディスクの前記第1の面に固定される、
請求項32から54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記接着剤は、比較的低い弾性率である、
請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記接着剤の前記弾性率は、20MPa未満である、
請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記接着物質は、エポキシよりも熱伝導率が高い、
請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記接着物質は、熱伝導率が0.5W/m・Kより大きい、
請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に充電されたモータまたは発電機などの回転電機用の回転子に関する。特に、固定子が空隙を介して回転子と協働する、軸方向磁束モータで使用するのに適切な回転子に関し、空隙は、磁束の横断方向にあり、回転軸に主に平行であるが、本発明は、そのような使用に限定されないことが理解されるだろう。
【背景技術】
【0002】
英国特許第2468018号は、固定子の周りに円周方向に間隔をあけて配置され、関連する回転子から軸方向に(すなわち、回転子の回転軸と平行に)間隔をあけて配置された磁極片の回りに巻き付けられた一連のコイルを備える機械を説明する。回転子は、固定子の各電磁コイルの両端に面する永久磁石を提供されたディスクを備える2つのステージを有する。
【0003】
回転子ステージは、通常、ハブ領域および環状のリングを備え、環状リングは、軟磁性物質であり、隣接する磁石間の磁束を伝達するために使用され、磁石は、表面実装され、回転子ステージ環状リングの周りに円周方向に間隔をあけて配置され、軸方向、すなわち回転子の回転軸と平行に配置される。高回転回転子速度は、回転子ステージ、特に表面実装された磁石に高求心力を発生させ、磁石接着の損失は、このモータトポロジについてリスクである。アニュラスおよびハブ領域は連続し、同じ物質でできており、通常は、強磁性鋼であることが可能であるが、強磁性鋼は、導電性があり、使用時に渦電流損失が発生する。渦電流を低減するために、環状リングは軟磁性物質を保持することが可能であり、軟磁性物質は、軟磁性粉末複合体または積層電磁鋼板であり、軟磁性物質は、隣接する表面実装された磁石間の磁束を実質的に運ぶことが可能であるが、この同じ平面の電流の流れが抑制され、モータの軸に対して実質的に半径方向の平面内の電気抵抗が高くなる。
【0004】
また、2固定子1回転子の軸方向磁束モータも知られており、前記1回転子は、同様に配置された固定子電磁コイルに対して空隙を横切って対向する極面を有する、円周方向に配置された磁石を含む。2回転子機は、好ましくは、非磁性マトリクスを含む回転子を有し、マトリクスは、円周方向に配置された埋め込まれた磁石を有し、磁石は、その極面が回転軸と主に平行に整列され、磁北および磁南の極面は、空隙を横切って固定子に向かって面している。
【0005】
2固定子、1回転子の軸方向磁束機は、回転子が両方の固定子と協働し、回転子にかかる磁場誘導軸力が実質的に釣り合うため、静止時および使用時にかかる磁力が実質的に等しくなるという利点がある。2固定子、1回転子機は、永久磁石を動かすための回転子磁気ヨークが不要であるため、ヨーク重量を節約でき、軸力が実質的に釣り合うため、そのような機械の回転子は、比較的低剛性にすることが可能である。しかしながら、これらの利点は、2つの固定子およびそれらのバックヨークを伴い、組み立てたときは、通常、軸方向長さは1固定子、2回転子軸方向磁束機よりも大きくなる。しかしながら、短い軸方向長さを得るために、回転子の構造は、静止時および負荷時の剛性および完全性を達成する必要がある。
【0006】
固定子と回転子間との間の空隙を最小化することにより、固定子と回転子との間の拮抗起磁力によって発生するトルクを最大化することが、前記回転子ステージの剛性および関連する構成要素のスタック公差と一致する点で、本発明のモータにおいて利点がある。固定子と回転子との間の空隙を最小にすると、静止時および運転中に回転子ステージとモータ固定子との間に大きな軸方向負荷がかかる可能性があり、固定子とそうでなければ干渉し得る曲げに抵抗できるように回転子が剛くあることが好ましい。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、回転子ステージの質量を最小にし、渦電流を最小にし、磁束搬送能力を最大にする一方で、前記固定子への動きを最小にするように回転子ステージの十分な剛性を達成することである。本発明のモータの別の課題は、通常の動作の過程で高回転速度で回転させられる回転子ステージの完全性を維持することであり、この速度は磁石に大きな求心力を誘発するため、表面実装された磁石とそれが固定される前記環状リングとの間の取付けに圧力を与える。
【0008】
本発明のモータで解決すべき別の課題は、希土類遷移金属複合体の磁石物質と、磁石が表面実装される磁性鋼から作られる回転子基板との間の熱膨張の不一致である。温度サイクルより、磁石と鋼基板との間の接着層にクラックが発生する可能性がある。さらに、周囲温度が-40度に達するような場所での保管や輸送を防ぐ同様の理由で、最終的な動作温度が制限され得る。
【0009】
本発明のモータが解決すべき更なる課題は、回転子が一般的に使用される動作速度と一致する共振周波数を持つ可能性があることであり、他の特性を維持しながら振動を減衰させることに価値がある。
【0010】
本発明のモータが解決すべき別の課題は、一般的に使用される永久希土類遷移金属磁石の温度を130度程度、つまりそれらのキューリー温度よりかなり低いピーク温度に維持することである。モータの動作中に永久磁石に渦電流が発生し、渦電流を低減するために磁石は半径方向に積層され得るが、積層すると有用な磁性物質が失われ、コストがかかり、積層数はコスト/利益バランスにより制限される。その結果、渦電流は減少するものの、永久磁石では依然として熱が発生する。
【0011】
発電電動機の大半は、回転子および固定子を備え、回転子と固定子との間を磁束が半径方向に、つまり回転軸に概ね直交するように横断し、固定子と回転子の磁束の拮抗作用によって回転子を回転させる、いわゆる半径方向磁束機械と呼ばれるものである。半径方向磁束機械は、回転子が回転するときにかなりの求心力を発生する。半径方向磁束機械は、回転子を樹脂マトリクスで強化した繊維で包むことにより、求心力に順応するように機械的に改良されてきた。米国特許出願公開第2004/0021396号はその一例であり、特許出願公開平10-210690号もその一例であり、繊維は円周方向に強度を提供し、求心力に対する回転子の構造的完全性を維持する。
【0012】
市販されている発電電動機の大半は半径方向磁束設計であるが、本明細書に記載されているような軸方向磁束機械への関心が高まっている。しかしながら、特に高回転速度で動作される軸方向磁束機械には、動作中の軸方向力と半径方向力の組み合わせによりかなりの課題がある。
【0013】
本発明の目的は、公知の回転子設計に関連する欠点の少なくともいくつかが克服されるか、またはその影響が低減された回転子を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】英国特許第2468018号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0021396号明細書
【特許文献3】特開平10-210690号公報
【発明の概要】
【0015】
本発明は、回転電機用の回転子、および、ここに添付された独立請求項によって明らかにされるように、回転電機用の回転子を組み立てる方法を提供する。さらなる有利な実施形態は、同じくここに添付された独立請求項によって提供される。
【0016】
特に、回転電機用の回転子を説明し、回転子は、対向する第1および第2の面を有する支持ディスクと、複数の永久磁石を受け入れるための支持部材と、前記支持部材に取り付けられ、前記支持部材によって保持される複数の永久磁石と、前記永久磁石の周りに延び、使用時の前記永久磁石の半径方向外側への動きを制限または妨げる保持バンドであって、前記保持バンドは、内側へ、複数の前記磁石に対して半径方向に方向付けられた負荷を加えるためにプレストレスされている、保持バンドと、を備え、前記支持部材は、前記支持ディスクの前記第1の面に固定されている。
【0017】
回転子の構成中に永久磁石を保持する支持部材を使用し、支持部材および磁石を支持ディスクの第1の面に固定し、静止しているときでも、複数の磁石に対して内側へ、半径方向に方向付けられた負荷を加えるためにプレストレスされた保持バンドを使用することで、従来の回転子よりも、より高いrpmを達成することができる回転子を構成することが可能になる。
【0018】
前記支持部材は、半径方向へ延びる複数のスポークを備え、隣接するスポーク間の前記空間は、それぞれの永久磁石を受け入れるための隙間を画定し得る。
【0019】
代替的に、前記支持部材は、複数のスポークがそれから半径方向に突き出る環状部分を備えることができ、隣接するスポーク間の前記空間の各々は、それぞれの永久磁石を受け入れるためのソケットを画定し得る。
【0020】
前記支持部材は、前記磁石と共に共成形され得、シートモールディングコンパウンド(SMC)物質から形成され得る。
【0021】
代替的に、前記支持部材は、前記磁石と共に共成形され得、前記支持部材は、射出成形ポリマーから形成され得る。
【0022】
前記環状部分および前記支持部材を形成する前記スポークは、別個の部品から形成され得る。
【0023】
そのような回転子では、前記環状部分は、半径方向外側へ延びる複数の変形可能な構造体を備えることができ、前記変形可能な構造体の各々は、それぞれのスポークと一致するように前記環状部分に位置付けされ得る。前記変形可能な構造体の各々は、それぞれのスポークに対して接触し半径方向力を提供する。
【0024】
前記環状部分は、射出成形ポリマーから形成され得る。
【0025】
前記スポークの各々は、単一方向の炭素ストリップから形成され得、前記炭素ストリップの各々の前記繊維は、前記それぞれのスポークの軸方向の長さに対して垂直であり得る。
【0026】
前記スポークの各々は、それぞれのスポークの長さに沿って半径方向に延びる平面および半径方向の平面に対して垂直に延びる平面において等方性の特性を有する物質から形成され得る。
【0027】
前記スポークの各々は、磁性物質から形成され得る。前記磁性物質は、前記複数の永久磁石のうちの1つまたは複数の磁場整列に対して直交する磁場整列を有し得る。
【0028】
前記保持バンドは、複合物質を備え得る。例として、それは、適切な樹脂物質のマトリクス内の強化用繊維物質の巻線を備え得る。繊維物質は、例えば、炭素繊維またはガラス繊維形態であり得る。便宜上、前記繊維物資は、実質的にフープ巻きである。
【0029】
好ましくは、前記支持部材および永久磁石は、前記保持バンドによって前記磁石に与えられた負荷に反応するように形作られ、前記保持バンドによって加えられる負荷の結果として前記磁石が半径方向内側に動くことを実質的に妨げる。
【0030】
支持部材および/または永久磁石および/または支持バンドの間の相対的な動きを妨げるために、支持部材と永久磁石の間、ならびに/または永久磁石と保持バンドの間、の隙間は、ポリマー樹脂で充填され得る。
【0031】
支持部材は、接着剤を使用して支持ディスクの第1の面に固定され得る。好ましくは、永久磁石は、比較的低い弾性率の接着剤を使用して結合することにより支持ディスクに固定され得る。
【0032】
保持バンドは、半径方向の動きに対して永久磁石を保持する役割を果たすように、接着物質の主目的が、支持ディスクの表面から永久磁石が持ち上げられることを妨げることであることが理解されるだろう。
【0033】
例として、本発明の文脈では、高弾性率接着剤が、500MPaより大きい弾性率を有することが考えられるだろう。通常、エポキシは、1-5GPaの範囲の弾性率を有する。半剛体の接着剤は、20MPaおよび500MPaの間の弾性率を有し得る。低弾性率の接着剤は、約20MPaまたはそれより低い弾性率を有し得るだろう。通常、シリコン接着剤は、1-2MPaの範囲の弾性率を有する。
【0034】
以下で述べるように、使用時、回転子は、求心効果や磁気吸引、磁気反発力から生じる大きな負荷を受ける。永久磁石が、支持ディスクの所定の位置に保持されることが重要であり、低弾性率の接着物質の使用を通じて、磁石は、磁石と支持ディスクとの間の制限された動きに順応しながら、支持ディスクの所定の位置に保持されることが可能である。低弾性率の物質は、通常は、障害までの高いひずみを提示し、すなわち、負荷の下での伸長を提示する。例えば、エポキシ接着剤が、少量の伸長に順応することが可能である場合、シリコン接着剤は、数100%の伸長に順応することが可能である。それは、構成要素間の相対的な動きに順応することを可能にするこのひずみ能力や柔軟性である。
【0035】
接着物質は、好ましくは良好な熱伝導率であり、例えば、0.5W/m・Kより、良い熱伝導率である。
【0036】
前記支持ディスクは、好ましくは、第2の環状部材が結合された第1の環状部材、便宜上鋼鉄製である、を備える。前記第2の環状部材は、好ましくは、積層体である。それは、積層電磁鋼板の螺旋巻きコイルを備え得る。そのような構成は、磁束の横断を可能にしながら、半径方向の電気抵抗が比較的高く、渦電流の発生を防ぐという利点がある。
【0037】
第1および第2の環状部材は、良い熱伝導率の物質を使用することにより、便宜上互いに、結合される、或いは固定される。例として、それらは、エポキシ結合、銀ろう付け、ろう付け、または適切な共晶のもしくは共晶領域結合媒体によって、互いに固定され得る。好ましくは、第1および第2の環状部材は、0.5W/m・Kより大きい熱伝導率、より好ましくは、10W/mKを有する物質を使用することにより、互いに、結合される、或いは固定される。
【0038】
また、上述の回転子の形態をとる固定子および回転可能な回転子を備える回転電機を説明する。前記回転電機は、モータまたは発電機のような軸方向磁束機械であり得る。そのような軸方向磁束機械では、回転子は、上述の形態をとる一対の回転子の間に位置付けされる。
【0039】
さらに、回転電機用の回転子を組み立てる方法であって、対向する第1および第2の面を有する支持ディスクを提供することと、それに取り付けられる複数の永久磁石を有する支持部材を提供することと、前記永久磁石の外側半径の周りに円周方向に延びるようにプレストレスされた保持バンドを位置付けすることであって、使用時およびプレストレスされている状態での、前記永久磁石の半径方向外側への動きを制限するまたは妨げるための前記保持バンドは、内側へ、前記永久磁石に対して半径方向に方向付けられた負荷を加える、位置付けすることと、前記支持部材を前記支持ディスクの前記第1の面に固定することと、
を備える、方法を説明する。
【0040】
前記それに取り付けられる複数の永久磁石を有する支持部材を提供することは、金型内にスティフナ構造を位置付けすることであって、前記スティフナ構造は、環状部分から半径方向に突き出る複数のスポークを備え、隣接するスポーク間の前記空間の各々は、それぞれの永久磁石を受け入れるためのソケットを画定する、位置付けすることと、前記ソケットの各々にそれぞれの永久磁石を位置付けすることと、前記永久磁石の各々を前記スティフナ構造に結合することと、を備える
【0041】
前記環状部分および前記スティフナ構造のそれぞれのスポークは、単一部分の形態であり得る。代替的に、前記環状部分および前記スティフナ構造のそれぞれのスポークは、別個の部分の形態であり得る。
【0042】
前記スポークおよびスティフナ構造が別個の部分で形成される場合、前記環状部分は、半径方向外側へ延びる複数の変形可能な構造体を備えることができ、前記変形可能な構造体の各々は、それぞれのスポークと一致するように前記環状部分に位置付けされ得る。前記金型内に設置された場合に、前記変形可能な構造体の各々は、それぞれのスポークに対して接触し半径方向力を提供する
【0043】
前記環状部分は、射出成形ポリマーから形成され得る。
【0044】
前記スポークの各々は、単一方向の炭素ストリップから形成され得、前記炭素ストリップの各々の前記繊維は、前記それぞれのスポークの軸方向の長さに対して垂直であり得る。
【0045】
前記スポークの各々は、それぞれのスポークの長さに沿って半径方向に延びる平面および半径方向の平面に対して垂直に延びる平面において等方性の特性を有する物質から形成され得る。
【0046】
前記スポークの各々は、磁性物質から形成され得る。前記磁性物質は、前記複数の永久磁石のうちの1つまたは複数の磁場整列に対して直交する磁場整列を有し得る。
【0047】
上記の方法のいずれかでは、前記永久磁石の各々を前記スティフナ構造に結合することは、1つまたは複数の前記それぞれの磁石と、それぞれのスポークと、環状部分と、の間の隙間を充填するために樹脂を注入することを備え得る。
【0048】
代替的に、前記永久磁石の各々を前記スティフナ構造に結合することは、前記永久磁石の各々と、それぞれのスポークと、環状部分の一部と、の間に接着剤を使用して、前記永久磁石の各々を前記スティフナ構造に結合する、ことを備え得る。
【0049】
代替の方法では、前記それに取り付けられる複数の永久磁石を有する支持部材を提供することは、金型内に複数の永久磁石を位置付けすることであって、前記磁石は、軸の周りに円周方向に配置され、前記磁石の各々の間に隙間を有する、位置付けすることと、前記金型内の前記永久磁石の周りにスティフナ構造を形成することと、を備える。
【0050】
前記金型内の前記永久磁石の周りにスティフナ構造を形成することは、複数のSMC(シートモールディングコンパウンド)プレフォームを使用することであって、それぞれは、それぞれの隣接する永久磁石の間の隙間において半径方向に外側へ突き出るスポークとして配置される、使用することと、複数の前記SMCプレフォームを前記スティフナ構造に圧縮することと、を備える。
【0051】
前記スティフナ構造は、環状内側部分を備え、前記スポークはそこから突き出るように形成される。
【0052】
前記SMCプレフォームは、熱硬化性樹脂を備え得る。
【0053】
前記それに取り付けられる複数の永久磁石を有する支持部材を提供することは、半径方向外側へ突き出る複数のスポークを備えるスティフナ構造を形成するために、ポリマーを使用して射出成形することであって、各スポークは、隣接する永久磁石の間に形成される、射出成形すること、を備える。
【0054】
前記スティフナ構造は、環状内側部分を備え、前記スポークがそこから突き出るように形成され、前記環状内側部分は、ポリマーを使用した射出成形中形成される。
【0055】
射出成形ポリマーは、その中に繊維を有するポリマーを備え得る。
【0056】
上記の方法のいずれかでは、前記保持バンドは、複合物質であり得る。前記保持バンドは、適切な樹脂物質のマトリクス内の強化用繊維物質の巻線を備え得る。前記繊維物質は、実質的にフープ巻きであり得る。
【0057】
上記の方法のいずれかでは、前記支持部材および永久磁石は、接着剤を使用して前記支持ディスクの前記第1の面に固定され得る。前記接着剤は、比較的低い弾性率であり得る。前記接着剤の前記弾性率は、20MPa未満であり得る。
【0058】
前記接着物質は、エポキシよりも熱伝導率が高くあり得る。前記接着物質は、0.5W/m・Kより大きい熱伝導率を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明は、例として、添付の図面を参照してさらに説明される。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による回転子を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による回転子を示す図である。
【
図5】
図5は、回転子の一部およびそれが受ける負荷を示す図表示である。
【
図6】
図6は、支持部材の一態様の内側半径方向リングを示す図である。
【
図7】
図7は、樹脂ベースの充填材が加えられる前の、スポークを備えた金型内の
図6の内側半径方向リングを示す図である。
【
図8】
図8は、スポークの各々を形成するための切断線を示すUD引抜成形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
第1に、
図1から3を参照すると、回転子10は、この実施形態では軸方向磁束モータの形をとる回転電機12(
図4参照)での使用のために示されている。回転子10は、軸方向磁束モータでの使用が意図されているが、本発明は、この点で制限されるものではなく、回転子10は、図示のように、または修正された形で、例えば発電機に使用することが可能であることが理解されるだろう。
【0061】
回転子10は、第2の環状部材18が、例えば、接着剤18a等によって結合そうでなければ固定される、鋼鉄製の第1の環状部材16から作られた支持ディスク14を含み、第2の環状部材18は、電磁鋼板物質の螺旋状コイルの形をとり、その巻線は、比較的高い半径方向の電気抵抗を有する本体を形成するような方法で互いに積層され、その渦電流の発生を低減する一方、その面間の磁束の横断を容易に許す形をとる。第1および第2の環状部材16、18は、互いに非常に密接に間隔をあけて配置され、熱エネルギーがその間に容易に伝導されることが可能な方法で、互いに結合そうでなければ固定される。例として、第1および第2の環状部材16、18は、互いにろう付けされ得る。代替的に、適切なエポキシ接着物質(図示のとおり)、適切な共晶物質などを使用して、互いに結合されることが可能であろう。
【0062】
第1の環状部材16は、回転子10の残りのための構造的な支持としての役割を果たす。
【0063】
図示された配置では、鋼が第1の環状部材16のために使用されているが、他の物質も使用される可能性があることが理解されるだろう。例として、必要に応じて、適切なセラミックまたは複合物質が使用されるだろう。
【0064】
第1の環状部材16から離れた第2の環状部材18の面には、接着物質18bによって支持部材20が接着されている。第1の態様では、支持部材20は非磁性物質であり、そこから複数の概ね半径方向に突き出るスポーク20bが延びる中央環状部分20aを画定するよう形作られている。スポーク20bの隣接するものは、それぞれの永久磁石22が位置付けされるソケットまたは空間をその間に画定する。永久磁石22および支持部材20は、接着物質18bを使用することにより第2の環状部材18に結合される。接着物質18bは、永久磁石22および支持部材20を第2の環状部材に結合するために適した任意のタイプの接着物質であり得る。
【0065】
接着物質18bは、例えば、エポキシなどの接着剤(または、エポキシ接着剤と同様の特性または弾性率を有する)であり得、これにより、磁石22と、支持部材20と、第2の環状部材との間に強固で剛性のある結合が提供される。しかしながら、接着物質18bは、低いまたは比較的低い弾性率を有し、比較的高い熱伝導率を有するものであることが好ましい。例として、接着物質18bは、シリコーンベースの形態であり得る。適切な物質の他の例は、低弾性率のエポキシ接着剤、ポリウレタン接着剤、アクリル接着剤、およびニトリルフェノール接着剤を含む。このリストは徹底的ではなく、他の物質も使用できることが理解されよう。本発明の利点を達成するために、物質の障害までのひずみ、または伸長は、接着剤の応力が大きな半径方向の負荷を担わないように、通常の使用で発生する構成要素のすべての相対的な動きを吸収するのに十分であるべきである。例として、弾性率は20MPa未満であるべきであり、好ましくは1MPaから5MPaの範囲であるべきである。
【0066】
磁石22の半径方向外側の周囲を囲むのは保持バンド24であり、その目的は、磁石22に対して半径方向内側に方向付けられた負荷を加え、支持部材20のスポーク20bの間のソケットまたは空間に磁石22を押し込むことである。保持バンド24は、繊維強化複合物質である。例として、炭素繊維のような適切な強化用繊維物質の巻線を含み、適切な樹脂物質マトリクス内に埋め込まれている。保持バンド24は、便宜上、永久磁石22によって画定される回転子10の部分の外径よりも小さい弛緩直径となるように製造され、保持バンド24は、保持バンド24が磁石22に前述の半径方向に方向付けられた負荷を加えるような方法で保持バンド24をプレストレスするために、組立プロセス中に永久磁石22上に弾力的に伸張される。
【0067】
保持バンド24は、磁石22に対して比較的大きな半径方向内側に方向付けられた負荷を加え、支持部材20の機能の一つがこれらの負荷に反応することであることが理解されよう。低弾性率の接着物質で接着された場合、支持部材20は、支持部材20がなければ接着接合部の障害につながる磁石22に加えられる半径方向内向きの負荷の実質的にすべてに反応する。磁石22の側面および支持部材20の隣接部分の形状は、装着時に保持バンドに発生するフープ応力の結果、磁石22と支持部材20との間に係止力が発生するようになっている。係止力は、磁石22がくさび形である結果、磁石22の側面を支持部材20の各脚の側面に対して押し付ける半径方向内側に方向付けられた負荷から生じる。磁石22はそれゆえ、
図5に図式的に示されているように、磁石22の隣接するものの間でその脚部が圧縮された状態で、支持部材20に対して係止されるようになる。この支持部材の弾性率は、磁石が比較的硬いため、回転子を機能させ、負荷に反応させる上で重要である。例として、支持部材20は、高炭素繊維含有量の物質であり得る。好ましくは、20GPaを超える弾性率を有するべきである。
【0068】
支持部材20は、射出成形された形態であり得、または、代替的に、例えば、実質的に図示された形状に機械加工もしくは仕上げされたプレス成形された形状であってよい。しかしながら、いくつかの態様では、いくつかの製造技術(これについては後述する)が、支持部材20が内側環状部分20aなしで形成されることを可能にする。便宜上、支持部材20および磁石22は、予め組み立てられてサブアセンブリを形成し、その後、接着剤18bによってユニットとして第2の環状部材18に結合される。
【0069】
第1の製造技術では、支持部材20が単一部品として金型に装着され、すなわち、支持部材20は、内側年次部分20aおよび、複数のスポーク20bを含む。サブアセンブリの生産は、好ましくは、磁石22と支持部材20との間のあらゆる空間または隙間を、例えば適切な樹脂ベースの充填物質で充填するステップを含み、例えば、磁石22および支持部材20は、適切な形状の金型内に位置付けされる。支持部材20は、この目的のためにわずかに小さいサイズに設計され得、その脚部は、使用時に磁石22の半径方向外側に突き出ず、したがって保持バンド24と係合しないような長さに設計され得る。
【0070】
代替的に、単一部品としての支持部材20を提供する代わりに、支持部材20は、別個の部分として提供され得る、すなわち、内側環状リング20aおよび別個の複数のスポーク20bが、樹脂ベースの充填物質が隙間の間に加えられる前に複数の磁石を伴った金型内に位置付けされる。
【0071】
図6は、支持部材の一態様の内側半径方向リングを示す。
図7は、樹脂ベースの充填材が加えられる前の、スポークを備えた金型内の
図6の内側半径方向リングを示す図である。
【0072】
そのような製造技術では、内側年次リング20aは、その円周上に間隔をおいて複数の変形可能な構造体20cを提供され得る。変形可能な構造体20cの各々の目的は、それぞれのスポーク20bに接触し、スポーク20bに対して半径方向力を提供して、樹脂ベースの充填材が隙間の間に加えられる前にスポークを所定の位置に保持することである。樹脂ベースの充填材が加えられると、構造体は所定の位置に固定される。
【0073】
支持部材20が別個の部品として提供される場合、これは、支持部材20を含む異なる部品が、異なる特性を有する異なる物質から作られることを可能にする。
【0074】
例えば、スポーク20bは、単一方向の(UD)炭素ストリップを含み得る。例えば、スポーク20bは、引抜成形されたプロファイルから切断され得、これは、主にUDストリップ物質を低労力で大量に作るのに適した連続製造プロセスである。
【0075】
図8は、金型内に組み立てる前のスポーク20bの各々を形成するための切断線を示すUD引抜成形の一例を示す。
【0076】
UD炭素繊維引抜成形を含むスポーク20bの使用することは、スポークの剛性、特にそれらの幅方向の剛性が大幅に増加する。例えば、それらの幅にわたる平面弾性率は、それらの長さに沿った平面弾性率が5Gpaの範囲であるのに対して、110-130Gpaの範囲であり得る。
【0077】
代替的に、スポーク20bは、等方性、または準等方性の物質を含み得る。例えば、XY平面において等方性を有する物質である(ここでXY平面は、支持部材および磁石の面である)。そのような物質結合は、10-20GPaのXY平面の弾性率を有し得るガラス繊維SMC(Sheet Moulding Compound)を含み、炭素繊維SMCはそれより高く、通常は30-40GPaあたりである-これは、炭素繊維のより高い弾性率グレードを選択することにより増加させることが可能である。Z平面(厚み方向)では、弾性率はより低く、例えば、5-10GPaの範囲である。
【0078】
スポーク20bは、代わりに磁性物質を含み得る。そのような配置では、スポーク20bの磁場整列は、永久磁石22の磁場整列に対して直交するように配置される。例えば、永久磁石がN-S対として配置された場合、スポーク20bは、E-W整列を有するように配置され得る。そのような配置は、ハルバッハ配列を提供し得、これは、磁場の増強により回転子の磁気性能を改良し得る。
【0079】
上述の製造技術のいずれかでは、内側リング20aは、射出成形され得る。その物質特性は、磁石22およびスポーク20bの位置ほど、回転子の性能に影響を与えない。
【0080】
前述したように、内側リング20aは代わりに、存在しないことがあり、この場合、永久磁石22は、樹脂ベースの充填剤が加えられる前に金型内においてスポーク20bによって保持される。
【0081】
このようにサブアセンブリを生産することによって、磁石22が支持部材20および充填物質と密接に接触し、それらの間の動きを最小化または回避することを確かにすることが可能である。したがって、その後保持バンド24を装着する際、磁石22に大きな動きが生じて、接着物質18bに応力やひずみが生じるようなことはないはずである。
【0082】
上述の製造技術は、構成要素(内側リング20a、該当する場合、スポーク20bおよび磁石22)が金型内に位置付けされると、樹脂ベースの充填物質を使用するが、代替技術は、構成要素(内側リング20a、該当する場合、スポーク20bおよび磁石22)のいくつかまたは全ての間で接着剤を使用することを含む。そのような技術は、樹脂ベースの充填材が使用された場合と比べて、より強固な接合強度を、それぞれの構成要素の間、特に磁石22とスポーク20bとの間に提供する。
【0083】
大まかに言えば、代替の、共成形、組み立て技術は、磁石22を適切な金型に位置付けること、および、磁石22の間の位置に支持部材20を成形することを含む。そのような共成形技術は、隙間や空間が存在しないため、充填物質で隙間や空間を埋める必要がなく、磁石22および支持部材20は、支持部材20が形成される方法の結果として、互いに密接に接触する。
【0084】
そのような共成形技術では、磁石22は、下流工具内に設置され得、所定の位置に固締または保持される。SMC(Sheet Moulding Compound)プレフォームは、この段階では未硬化で柔軟性があり、長方形の物質を切断しただけのものである。SMCは、熱硬化性樹脂を含み得る。SMCプリフォームは、工具に装填され、上流工具が導入され、SMC物質を圧縮し、スポーク20bおよび内側リング20aの最終形状に強制的に流す(ただし、工具が支持部材20に内側リング20aを設けないように形作られ得る)。
【0085】
共成形技術を使用すると、磁石からの負荷経路が直接SMC物質に入り、全体的に高い剛性を有する支持部材20および磁石22のサブアセンブリが生産される。
【0086】
前述の回転子10は、第1および第2の環状ディスク16、18および支持部材20からなる支持ディスク14の面に結合される磁石22を有する片面形状であることが理解されるだろう。使用時に、一対のそのような回転子10は、共通の回転子シャフト26に取り付けられ、回転子10の間に単一の固定子28が軸方向に位置付けられるように位置付けられ、固定子28は、使用時に、永久磁石22と協働して回転子10を駆動する磁場を誘導するように励磁されるコイルを含み、回転子シャフト26は、それらが回転するように取り付けられる。いくつかの構成では、回転子10は、固定子28に収容された軸受に取り付けられ得る。
【0087】
使用時、軸を中心とした回転子10の回転は、磁石22が大きな求心負荷を受けることをもたらし、プレストレスされた保持バンド24は、それらの負荷に対抗し、所定の位置に磁石22を保持する役割を果たす。永久磁石22の磁束と固定子コイルに関連する磁場との間の相互作用は、永久磁石22を支持ディスク14から引き離す方向に大きな負荷を加えることをもたらし、および/または永久磁石が、支持ディスク14に対してねじれたり傾いたりすることを引き起こす。永久磁石22が、低弾性率接着物質を使用することにより支持ディスク14に結合されている場合、低弾性率接着剤は、永久磁石22と支持ディスク14との間の結合の完全性を維持しながら、そのようなねじれの動きに順応して、使用時に撓むことができる。低弾性接着物質はまた、回転子10の部分、特に磁石22と第2の環状部材18との間の熱膨張差から生じる動きに順応することが可能であり、これは、本明細書で前述したように重要である。
【0088】
支持部材20と永久磁石22が、より高い弾性率を有する接着剤を使用することにより支持ディスクに結合されている場合でも、支持部材20と、永久磁石22と、プレストレスされたバンド24の配置は、支持ディスクと磁石との間の動きを妨げるよう機能する。使用時の回転子10のその軸を中心とした回転は、永久磁石22が大きな求心負荷を受けることをもたらし、プレストレスされた保持バンド24は、それらの負荷に対抗し、永久磁石22を所定の位置に保持する役割を果たす。永久磁石22の磁束と固定子コイルに関連する磁場との間の相互作用は、永久磁石22を支持ディスク14から引き離す方向に大きな負荷を加えることをもたらし、および/または永久磁石が、支持ディスク14に対してねじれたり傾いたりすることを引き起こすが、これらのすべては、接着剤によって妨げられる。
【0089】
永久磁石22を支持ディスク14に結合するために使用される物質の熱伝導率は、支持ディスク14の設計と相まって、モータ内の他の場所で放散するために磁石22から離れる熱エネルギーの伝導を可能にする。
【0090】
本発明は、使用時の磁石の損失や、それに伴うモータの壊滅的な損傷を回避することが可能であるような方法で永久磁石が回転子10の残りの部分に固定される一方、モータが高速、例えば15000rpmを超える速度で、また様々な動作環境で動作することが可能である、という点で有利であることが理解されよう。
【0091】
前述の回転子10は、一対の片面回転子の間に固定子が位置付けされたタイプのモータに使用することが意図されているが、本発明は、そのような使用に限定されるものではなく、他の形態のモータや他の形態の回転電機に採用され得る。
【0092】
本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されているが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、広範囲の修正および変更がなされ得ることが理解されるだろう。
【国際調査報告】