(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】形状記憶合金作動流体サブアセンブリ及びそれを組み込んだ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 43/09 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
F04B43/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565279
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022061170
(87)【国際公開番号】W WO2022229247
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】102021000010589
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517067202
【氏名又は名称】アクチュエーター・ソリュ―ションズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ケプファー
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA08
3H077CC07
3H077CC09
3H077DD01
3H077EE02
3H077EE36
3H077FF08
(57)【要約】
本発明は、SMA作動流体サブアセンブリ(10)、及びそれを分配装置として組み込んだ機器に固有のものであり、SMAワイヤ(16、16’)の作動により、流体密封リザーバ(17”)が蓋(18)によって圧縮されて、その容積が最大容積Voから最小容積V1に減少し、この減少の結果、圧力が上昇して、出口フラップ(13”)が開き、出口チャネル(13)を通じて流体が分配される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10;20;40)であって、
*入口チャネル(12;22)、出口チャネル(13;23)及びチャネル分離壁(14;24)を有するベース(11;21)と、
*入口フラップ(12”;22”)によって閉じられた入口ポート(12’;22’)を介して前記入口チャネル(12;22)と連通し、出口フラップ(13”;23”)によって閉じられた出口ポート(13’;23’)を介して前記出口チャネル(13;23)と連通する圧縮性の流体密封リザーバと、
*作動時に、流体密封リザーバ蓋(18;28)に作用することによって、前記流体密封リザーバを最大体積Voから最小体積V1まで圧縮するように構成された、少なくとも1つの形状記憶合金ワイヤ(16、16’、26、461、462、463、464)と、
*前記少なくとも1つの形状記憶合金ワイヤ(16、16’、26、461、462、463、464)の非活性化時に、圧縮性の流体密封リザーバの体積をV1からVoに復元するための弾性復帰手段(17、17’、17”;28、281)と、
を備え、
ニュートンで表される前記弾性復帰手段(17,17’,17”;28,281)の全体の復帰力Fは、次式:
【数1】
で与えられ、Vo/V1は2~5である、
ことを特徴とする形状記憶合金作動流体サブアセンブリ。
【請求項2】
Voが100μlから500μlの間に含まれる、請求項1に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10;20;40)。
【請求項3】
入口フラップ及び出口フラップ(12”、13”;22”、23”)が50μm~250μmの間に含まれる厚さを有する、請求項1または2に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10;20;40)。
【請求項4】
前記入口フラップ(12”;22”)が前記入口ポート(12’;22’)の幅より長く、前記出口フラップ(13”;23”)が前記出口ポート(13’;23’)の幅より長い、請求項1~3のいずれか一項に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10;20;40)。
【請求項5】
前記入口フラップ(12”)が前記入口ポート(12’)の上方に固定され、前記リザーバの底部に当接し、前記出口フラップ(13”)が前記出口ポート(13’)の下方に固定され、前記出口チャネル(13)の天井に当接している、請求項4に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10)。
【請求項6】
前記フラップ(12”、13”)が剛性を有し、前記ベース(11)に対して枢動するようにピボット点に固定されている、請求項5に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10)。
【請求項7】
前記フラップ(12”、13”)は可撓性を有し、前記ベース(11)に対して堅固に固定されており、前記フラップの材料は、好ましくは、0.001GPa~0.05GPaのヤング率を有している、請求項5に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10)。
【請求項8】
前記入口フラップ(22”)は、前記入口ポート(22’)の下方に固定され、前記入口チャネル(22)に向かって延在している前記チャネル分離壁(24)の一部に当接し、前記出口フラップ(23”)は、前記出口ポート(23’)の下方に固定され、前記出口チャネル(23)の天井に当接している、請求項4に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(20)。
【請求項9】
前記入口フラップ(22”)及び前記出口フラップ(23”)が、逆C字形状の2つの切り欠きを有する連続弾性膜(25)から得られ、前記膜(25)が、前記チャネル(22、23)の天井に配置され、前記チャネル分離壁(24)を通過しており、前記膜の材料が、好ましくは、0.001GPa~0.05GPaのヤング率を有している、請求項8に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(20)。
【請求項10】
前記蓋(18)は、1つまたは複数の形状記憶合金ワイヤ(16、16’)に対して反対に作用する1つまたは複数の弾性復帰要素(17、17’、17”)と接触する剛性の蓋(18)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10)。
【請求項11】
前記弾性復帰要素は、圧縮されていない状態で最大体積Voを規定する1つ以上のスプリング(17,17’)及び/またはゴムシェル(17”)を含む、請求項10に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10)。
【請求項12】
前記蓋(28)は、ドーム形状の変形可能な弾性要素であり、その周囲は、前記ベース(21)に固定された環状のシート(280)に保持されたガスケット(281)によってブロックされ、少なくとも1本の形状記憶合金ワイヤ(26)は、前記蓋(28)の頂部を通過し、好ましくは、その頂部に位置するカプラ(29)を介してその上に作用する、請求項1~9のいずれか一項に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(20;40)。
【請求項13】
前記作用が、それぞれ、第1の端部がドーム形状の前記蓋(28)の頂部に位置する共通のカプラ(49)に接続され、第2の端部がそれぞれの固定ピラーに接続された、4本の形状記憶合金ワイヤ(461、462、463、464)によって提供されている、請求項12に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の形状記憶合金作動流体サブアセンブリ(10;20;40)を含む分配装置を組み込んだ機器であって、前記機器は、好ましくは流体ディスペンサであり、より好ましくは、薬剤または試薬を分配するのに適した流体ディスペンサである、機器。
【請求項15】
請求項14に記載の機器を組み込んだ分析システムであって、好ましくはラボオンチップである、分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金(SMA:shape memory alloy)作動流体サブアセンブリ(actuated fluidic subassembly)に固有のものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、作動要素としてのSMAワイヤの使用は、重量、電力消費、コストの点で他の作動システムに対して様々な利点を提供し、作動要素は、最も典型的には適切な電流供給を介したジュール効果によって加熱されたときに、短縮されるように適切に調整された(trained)SMAワイヤの能力を利用している。
【0003】
SMAワイヤの使用によって与えられる利点が長い間認識されている分野は、引用文献1及び引用文献2に記載されているように、流体バルブ制御(fluidic valve control)であり、これらの利点が特に関連する特定の用途は、マイクロ流体バルブ、及び2008年に刊行された非特許文献1に記載されているようないわゆる「ラボオンチップ(lab-on-a-chip)」用途である。非特許文献1では、SMAワイヤを可撓性のチャネルの周りにループ状にして、その直径をその閉鎖まで制御している。非特許文献1に記載された解決策は、チャネルを完全に閉じる必要があるときにチャネルに加わる応力については理想的とは程遠い。
【0004】
流体モジュールにおけるSMAワイヤの使用は特許文献3にも記載されており、プランジャを駆動して流体分配容積をゼロにまで減少させているが、プランジャの接触及び衝撃が繰り返されると、分配された流体を汚染する微粒子の放出につながる可能性があるため、このような解決策は最適ではない。同じ分野において、同様の解決策が特許文献4に開示されているが、これは、信頼性のある動作が可能な、すなわち、適切な負荷を受けることができるSMAベースのシステムを効果的に実現する方法を記載しておらず、また、分配された流体と接触する可撓性の膜を介して入口弁及び出口弁を閉じるために、スプリング負荷ポペット(spring-loaded poppet)に依存している。より詳細には、非特許文献2に概説されているように、適切に設計されていないSMAベースのアクチュエータは、SMAワイヤの過度の疲労とその破損/故障につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3835659号明細書
【特許文献2】米国特許第4973024号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1552146号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0209189号明細書
【特許文献5】米国特許第9068561号明細書
【特許文献6】米国特許第6835083号明細書
【特許文献7】米国特許第8739525号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Electronic control of elastomeric microfluidic circuits with shape memory actuators” by Vyawahare et al, published in 2008 on labchip, number 8, pages 1530-1535
【非特許文献2】“Thermomechanical fatigue of shape memory alloys” by Lagoudas et al, published in 2009 in Smart Materials and Structures, Volume 18, Number 8
【非特許文献3】”A Study of the Properties of a High Temperature Binary Nitinol Alloy Above and Below its Martensite to Austenite Transformation Temperature” by Dennis W. Norwich presented at the SMST 2010 conference
【非特許文献4】”Fabrication Process and Characterization of NiTi Wires for Actuators” Tuissi at al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術によるSMAベースの流体アクチュエータの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その第1の態様は、本願の特許請求の範囲に詳述されているようなSMA作動流体サブアセンブリにある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】休止位置の作動状態における、本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの断面図の概略図である。
【
図1B】第1の作動状態における、本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの断面図の概略図である。
【
図1C】第2の作動状態における、本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの断面図の概略図である。
【
図2A】本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの第2の実施形態の概略図であり、上から見た図である。
【
図2B】本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの第2の実施形態の概略図であり、休止位置の作動状態における、
図2AのA-A’断面である。
【
図2C】本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの第2の実施形態の概略図であり、第1の作動状態における、
図2AのA-A’断面である。
【
図2D】本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの第2の実施形態の概略図であり、第2の作動状態における、
図2AのA-A’断面である。
【
図3】第2の実施形態で使用される入口フラップ及び出口フラップを作製するための好ましい方法の上方からの概略図である。
【
図4】第2の実施形態の変形例の上方からの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の図面を用いて本発明を更に説明する。
【0011】
図面では、いくつかの場合に示される様々な要素のサイズ及び寸法比は、図面の理解を助けるために変更されており、特に、SMAワイヤの直径、リターンスプリング等の付勢要素のサイズ、及び流体密封シール要素(fluid-tight sealing element)の長さ/厚さ/幅に言及しているが、これらに限定されない。更に、SMAワイヤのための圧着手段並びにそれらを動作させるための電流伝導要素は、当業者に広く知られており、本発明の理解に必要ではないので、示されていない。
【0012】
本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの第1の実施形態の断面図の概略図を
図1Aに示す。サブアセンブリ10は、壁14によって分離された入口チャネル12及び出口チャネル13を備えたベース11を有している。入口チャネル12及び出口チャネル13は、それぞれ入口ポート12’及び出口ポート13’を介して、好ましくはゴム材料で作られた、蓋18によって最大体積Voから最小体積V1まで圧縮可能なシェル17”によって画定される流体密封リザーバと連通している。
【0013】
蓋18の移動は、ベース11を蓋18に接続する一対のSMAワイヤ16、16’によってVoからV1に向かって圧縮駆動され、一方、リターンスプリング17、17’によってV1からVoに向かって拡張駆動されている。
【0014】
入口ポート12’及び出口ポート13’は、通常、それぞれフラップ12”及び13”によって閉じられ、これは、それらの開放に一定の力が必要であることを意味している。閉鎖力は、種々の手段によって提供することができ、例えば、
図1Aに示す実施形態では、フラップ12”及び13”がベース11に当接してベース11上で枢動され、このような力は、ベース11上のフラップ12”、13”の固定要素(anchoring element)としても作用するねじり荷重スプリングによって提供することができる。換言すれば、入口/出口チャネル12、13と流体密封圧縮性リザーバ17との間の開口の幅として定義されるポート幅より長いフラップ12”、13”によってそれぞれ閉じられるポート12’,13’を有することが好ましい。
【0015】
図1Aは、構造の観点からのサブアセンブリ10の断面概略図であるが、
図1B及び
図1Cは、流体分配(
図1B)等のサブアセンブリ10の第1の作動状態、及び流体ローディング(
図1C)等のサブアセンブリ10の第2の作動状態の断面概略図である。
【0016】
特に、分配段階では、SMAワイヤ16、16’の作動及びその結果としての短縮により、蓋18がベース11に向かって下降し、シェル17”及びスプリング17、17’を圧縮し、従って体積VoがV1に向かって減少する。圧力増加は、出口ポート13’の下で枢動されるフラップ13”のねじりスプリングの抵抗を克服するようなものであり、従って、フラップ13”を下方に回転させ、ポート13’を通じて正確な量の流体(本質的にVo-V1)を非常に再現性のある方法で分配することを可能にしている。反対に、フラップ12”がポート12’の上で枢動するので、シェル17”の圧力増加は、ポート12’をしっかりと閉じたままにして、入口チャネル12内への流体の逆流を防止している。
【0017】
分配段階の後、SMAワイヤ16、16’は、非活性化され(deactivated)、それによって、リターンスプリング17、17’は、蓋18をその開始位置に向かって移動させて、容積Voを回復している。この動きにより、リザーバ17”内の圧力低下を引き起こし、そのねじりスプリングの抵抗に抗してフラップ12”の上向きの回転を通じて入口ポート12’の開放を導き、流体吸引を通じてリザーバ17”の充填を導いている。反対に、フラップ13”がポート13’の下で枢動するので、シェル17”の圧力減少は、ポート13’をしっかりと閉じたままにして、出口チャネル13からの流体の逆流を防止している。
【0018】
言うまでもなく、システムが周期的な分配及び充填を行うためには、出口ポート13’から出る空気のみを伴う第1のサイクルが必要であり、一方、SMAワイヤの非活性化及びリターンスプリング17、17’の作用に起因する圧力低下は、分配されるべき流体でリザーバ17”を充填する。
【0019】
次に、
図2A~
図2Dに示す第2の実施形態を参照すると、サブアセンブリ20は、壁24によって分離され、上述の第1の実施形態と同様に、それぞれのフラップ22”及び23”によって通常は閉じられる入口ポート22’及び出口ポート23’を介して流体密封リザーバとそれぞれ連通する入口チャネル22及び出口チャネル23を有するベース21を有している。閉鎖力は、種々の手段によって提供することができ、例えば、
図2A~
図3の実施形態では、フラップ22”、23”を、逆C字形状の2つの切り欠き(cut-out)を有する連続弾性膜(continuous elastic membrane)25とする好ましい方法が
図3に示されており、この膜25は、チャネル22、23の天井に配置され、壁24を貫通しており、閉鎖力は、膜25の材料の変形に対する抵抗によって提供されている。
【0020】
第1の実施形態と同様に、入口/出口ポートは、ポート幅よりも長いフラップによって閉じられ、基部に当接するが、この場合、両方のフラップは、それぞれのポートの下に位置し、それによって、壁24は、フラップ22”のための当接部を提供するために、ポート22’の下で入口チャネル22に向かって延在している。
【0021】
この第2の実施形態では、流体密封リザーバは、ドーム形状の(dome-shaped)弾性変形可能な要素28によって画定され、その周囲は、ベース21に固定された環状シート280内に保持されたガスケット281によってブロックされている。SMAワイヤ26は、ベース21に固定された固定ピラー(fixing pillar)26’、26”に接続するために、ドーム28の頂部を通り、シート280に設けられた適切な溝を通過している。
【0022】
図2Bは、構造上の観点からサブアセンブリ20の断面概略図を示しているが、
図2C及び
図2Dは、流体分配(
図2C)及び流体ローディング(
図2D)の段階中のサブアセンブリを示している。
【0023】
特に、分配段階の間、SMAワイヤ26の作動は、好ましくはドーム頂部に配置された適切なカプラ29を介して、変形可能な弾性要素28を下方に押すことになり、従って、シート280に収容された圧縮性ガスケット281によって許容される要素28の変形により、体積VoをV1に向かって減少させる。すなわち、変形可能な要素28の周囲は、弾性ガスケット281により深く入り込んでいる。
【0024】
第1の実施形態と同様に、リザーバ内の圧力上昇の結果、フラップ23”が膜25の抵抗に打ち勝って押し下げられるので、出口ポート23’が開き、リザーバと出口チャネル23との間の流体連通が可能になる(
図2C)。反対に、フラップ22”は上から壁24に当接するので、圧力の増加は、ポート22’をしっかりと閉じたままにして、入口チャネル22内への流体の逆流を防止している。
【0025】
SMAワイヤ26が非活性化されると、要素28は、その弾性と、ガスケット281をその周囲に沿って押すことにより、その元の形状に復帰し、従って、最大体積Voを回復する。これは、その変形されていない位置に戻るフラップ23”の弾性、及びフラップ22”の上方への変形による入口ポート22’の開口によるものであり、出口ポート23’の閉鎖を導くリザーバ内の圧力低下をもたらす。
【0026】
第1の実施形態に関しては、この場合も、サブアセンブリは、その後の一連の分配動作の準備をするために、第1のローディングサイクルを経る必要がある。
【0027】
第2の実施形態の変形例が
図4に示されており、
図2A~
図2Dに示されているサブアセンブリ20と実質的に同じ構造及び動作を有するが、SMAワイヤの数が異なるサブアセンブリ40を示している。実際、サブアセンブリ40において、作動は、4つのSMAワイヤ461、462、463、464によって提供され、各ワイヤは、第1の端部がドーム28の頂部に位置する共通のカプラ49に接続され、第2の端部がそれぞれの固定ピラーに接続されている。
【0028】
図面に示されていない他の可能な変形では、2つの整列したSMAワイヤのみ、すなわち、対461/463または対462/464のうちの1つ、または2つの直交交差するSMAワイヤ、すなわち、SMAワイヤ26及びそれに直交する別のワイヤを使用することができる。更に、第1の実施形態の枢動されるフラップ12”、13”は、第2の実施形態において、膜フラップ22”、23”の代わりに使用することができ、その逆も可能である。また、第1の実施形態のSMAワイヤ16、16’は、第2の実施形態のSMAワイヤ26と同様に、蓋18を通過する1つ又は複数のSMAワイヤと交換及び/又は一体化することができる。
【0029】
「フラップ」という用語は、特定の幾何学的形状又は構成に限定されるものではなく、上述したメカニズムに従って、VoからV1へのリザーバ容積の減少及びV1からVoへのリザーバ容積の増加によって生じる圧力変化の作用の下で、入口ポート及び出口ポートを開閉することができる任意の等価な要素を包含することを強調しておく。
【0030】
作動の全体的な力は、流体密封リザーバの圧縮を引き起こす唯一の能動要素であるSMAワイヤに作用する全ての寄与を考慮して評価されるべきであることも強調されるべきである。単一のSMAワイヤの場合には、それはSMAワイヤに作用する全ての復帰力の合計であり、複数のSMAワイヤの場合には、それは異なるSMAワイヤに別々に又は共通に作用する全ての復帰力の合計である。
【0031】
従って、
図4の実施形態では、力は、共通の復帰要素、すなわち、弾性変形可能要素28及び周辺ガスケット281からワイヤ461、462、463、464に作用する全ての復帰力の合計と考えられるべきであり、一方、第1の実施形態では、復帰力は、リターンスプリング17、17’及びシェル17”によって別々に提供される。追加の弾性復帰手段を有することも可能であり、例えば、第2の実施形態は、壁24とドーム28との間に配置された復帰スプリングを含むことができる。
【0032】
本発明は、ニュートンで表される前記弾性手段の全体の復帰力Fが次式で与えられるように、弾性手段によって与えられる復帰力に対して正しい制限を設定している。
【0033】
【0034】
ここで、Vo/V1は2~5である。例えば、圧縮比3.5(すなわち、Vo/V1=3.5)で作動するシステムの場合、SMAワイヤに作用する総復帰力Fは、2.625Nを上回らない上限及び0.35Nを下回らない下限を有するべきものとする。
【0035】
低すぎる復帰力、例えば0.1Nで操作すると、制限された圧力レベルとなり、チャネルを通じて流体をポンピングするには不十分であり、また、特に膜フラップの場合、入口フラップ及び出口フラップを確実に操作するには低すぎる圧力差となる。過剰な力、例えば6Nで操作すると、作動速度に限界があると共に、固定のための要件が増加し、5Vを超える電圧要件を有する高力SMAワイヤが必要となり、標準的なUSB電源の使用が妨げられる。
【0036】
本発明によるSMA作動流体サブアセンブリの好ましい最大体積Voは、100~500μlである。
【0037】
入口フラップ及び出口フラップに関して、好ましいものは、
図2B~
図2Dに示された、50μm~250μmの厚さを有する屈曲可能なフラップであり、より好ましくは、フラップは、0.001GPa~0.05GPaのヤング率を有する材料から作製された膜のカットアウトから得られる。
【0038】
本発明は特定のSMAに限定されるものではないが、加工に応じて超弾性挙動(superelastic behavior)またはSMA挙動を交互に示すことができるニチノール等のNi-Tiベースの合金の使用が好ましい。ニチノールの特性及びそれらを達成することを可能にする方法は、当業者に広く知られており、例えば非特許文献3を参照されたい。
【0039】
ニチノールをそのまま使用することも、Hf、Nb、Pt、Cu等の元素を添加することで転移温度(transition temperature)の特性を調整することもできる。材料合金の適切な選択及びその特性は、当業者によって一般に知られており、例えば非特許文献4を参照されたい。
【0040】
また、SMAワイヤは、「それ自体」で、またはコーティング/シースと共に使用して、それらの熱管理(thermal management)、すなわち、非活性化された後のそれらの冷却を改善することができる。コーティングシースは、熱伝導体である電気絶縁コーティングに頼ることによって残留熱を管理する方法を教示する特許文献5に記載されているように、均一であり得るが、特許文献6は、SMAワイヤが、全ての作動サイクル後に冷却を改善することができる囲繞シース(enclosing sheath)を備えていることを開示している。また、特許文献7に記載されているように、相変化材料(phase changing material)で作られた、または相変化材料を含むコーティングを有利に使用することができる。
【0041】
SMAワイヤの直径に関しては、50~150μmであることが好ましい。
【0042】
その第2の態様では、本発明は、前述したようなSMA作動流体サブアセンブリを含む分配装置を組み込んだ装置からなる。好ましくは、このようなデバイスは、薬剤(消耗品)カートリッジまたは分析機器であり、より好ましくは、ラボオンチップ用途のためのものである。
【国際調査報告】