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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】防食用水性コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240412BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240412BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240412BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20240412BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240412BHJP
   C08G 59/22 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D175/04
C09D5/02
C09D5/08
C09D7/63
C08G59/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565599
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061035
(87)【国際公開番号】W WO2022229174
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21170676.7
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513277278
【氏名又は名称】オールネックス オーストリア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テメル、アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ルンツァー、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】バンバッハ、エリック
【テーマコード(参考)】
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AE07
4J036CD12
4J036DC27
4J036JA06
4J036KA04
4J038DB041
4J038DB061
4J038DG302
4J038JB14
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA10
4J038MA15
4J038NA03
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は親水性変性エポキシ系樹脂、架橋剤、及び共架橋剤の混合物を含む水性樹脂分散体に関する。本発明はまた、改良された腐食及び変色耐性を提供する前記樹脂分散体を含む水性コーティング組成物;水性樹脂分散体及びコーティング組成物の調製方法;及び金属基材を被覆するためのコーティング組成物の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性変性エポキシ系樹脂P、ブロックイソシアナート架橋剤IB、及び共架橋剤Eの混合物を含む水性樹脂分散体Dであって;親水性変性エポキシ系樹脂Pが1-ヒドロキシ-2-フェノキシ-エチル基を含み;
共架橋剤Eが
・80℃を超える昇温でエステル形成及び水の遊離下でコーティング組成物中に存在する酸化合物と反応する少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物E1、並びに
・少なくとも二価のアルコールE22及び80℃を超える昇温で不安定な酸E21により形成される少なくとも2個のエステル基をもつエステルE2
からなる群から選択される、
水性樹脂分散体D。
【請求項2】
ブロックイソシアナート架橋剤IBが:
・ポリイソシアナート及びモノアルコール、又は
・ポリイソシアナート及びオキシム、又は
・ポリイソシアナート及びピラゾール誘導体、又は
・ポリイソシアナート及び反応性メチレン化合物、又は
・ポリイソシアナート及びラクタム、又は
・ポリイソシアナート及びフェノール、又は
・ポリイソシアナート及びメルカプタン、又は
・ポリイソシアナート及びイミダゾール、又は
・ポリイソシアナート及びアミン、又は
・ポリイソシアナート及びイミン、又は
・ポリイソシアナート及びトリアゾール、又は
・ポリイソシアナート及びヒドロキシルアミン、又は
・ポリイソシアナート及びヒドロキシル官能性カルバマートC、又は
・ポリイソシアナート及びヒドロキシル官能性カルバマートC及びモノアルコール及び/又はオキシム及び/又はピラゾール誘導体及び/又は反応性メチレン化合物、及び/又はラクタム、及び/又はフェノール、及び/又はメルカプタン、及び/又はイミダゾール、及び/又はアミン、及び/又はイミン、及び/又はトリアゾール、及び/又はヒドロキシルアミン
の反応生成物である、請求項1に記載の水性樹脂分散体D。
【請求項3】
ブロックイソシアナート架橋剤IBがポリイソシアナート及びヒドロキシル官能性カルバマートCの反応生成物である、請求項1又は2に記載の水性樹脂分散体D。
【請求項4】
ヒドロキシル官能性カルバマートCが環状の有機カルボナートと脂肪族のモノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン及び/又はアルカノールアミンとの反応生成物であり、前記アミンは少なくとも一級又は二級のアミノ基を有する、請求項2又は3に記載の水性分散体D。
【請求項5】
アルカノールアミンが:
・一級のアミノ基を有する1モルの脂肪族ジアミンと2モルのモノエポキシド化合物又は一級のアミノ基を有する2モルの脂肪族モノアミンとの、及び/又は
・一級及び三級の反応不活性なアミノ基を有する脂肪族ジアミンと1モルのジエポキシド化合物との
反応生成物である、請求項4に記載の水性分散体D。
【請求項6】
ヒドロキシル官能性カルバマートCが、エチレンカルボナート又はプロピレンカルボナート及びアルカノールアミンの反応生成物である、請求項2から5のいずれかに記載の水性分散体D。
【請求項7】
ヒドロキシル官能性カルバマートCが2-ヒドロキシエチルビス(2-ヒドロキシエチル)カルバマート又は2-ヒドロキシプロピルビス(2-ヒドロキシエチル)カルバマートである、請求項2から6のいずれかに記載の水性分散体D。
【請求項8】
ブロックイソシアナート架橋剤IBがポリイソシアナート化合物Iの分子当たり平均して最大1個のイソシアナート基を含む部分的にブロックされたポリイソシアナートであり、前記イソシアナート基は該イソシアナート基とPのイソシアナート反応性の基との反応によって親水性変性エポキシ系樹脂Pに連結されており;ポリイソシアナート化合物Iの残りのイソシアナート基(単数又は複数)はブロッキング剤Bによりブロックされている、請求項1から7のいずれかに記載の水性分散体D。
【請求項9】
共架橋剤EがE1であり、E1が式:
(OH-CHR-CH-NR-CO)-A-(CO-NR-CH-CHR-OH)
[式中:
・Rは水素又はC1~C5アルキルであり;
・Rは水素、C1~C5アルキル又はCH-CHR-OHであり;
・Aは化学結合又は2~20個の炭素原子を含有する置換された炭化水素基を含む飽和、不飽和若しくは芳香族炭化水素基に由来する多価の有機基であり;
・mは1~2の値を有する整数であり;mは0~2の値を有する整数であり、m+nは少なくとも2である]
を有するベータ-ヒドロキシアルキルアミドである、
請求項1から8のいずれかに記載の水性樹脂分散体D。
【請求項10】
共架橋剤EがE1であり、E1が式:
(OH-CHR-CH-NR-CO)-A-(CO-NR-CH-CHR-OH)
[式中:
・Rは水素又はC1アルキルであり;
・RはCH-CHR-OHであり;
・Aは4個の炭素原子を含有する飽和炭化水素基であり;
・mは1に等しく、nは1に等しい]
を有するベータ-ヒドロキシアルキルアミドである、
請求項1から9のいずれかに記載の水性樹脂分散体D。
【請求項11】
共架橋剤EがE1であり、E1がN,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)-アジパミド又はN,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシプロピル)-アジパミドである、請求項1から10のいずれかに記載の水性樹脂分散体D。
【請求項12】
親水性変性エポキシ系樹脂Pが非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnである、請求項1から11のいずれかに記載の水性樹脂分散体D。
【請求項13】
非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnが、ジエポキシド、二価の芳香族化合物及びエポキシ官能性の非イオン性乳化剤Fの反応生成物であり、200~2,000g/equiv.であるエポキシド当量重量(EEW)により特徴付けられる、請求項12に記載の水性分散体D。
【請求項14】
エポキシ官能性の非イオン性乳化剤Fが;
・エポキシド官能性のポリオキシアルキレンホモポリマー若しくはコポリマー;及び/又は
・エポキシド官能性の糖アルコール;及び/又は
・ヒドロキシル官能性のポリオキシアルキレンホモポリマー若しくはコポリマー若しくは糖アルコールセグメントと少なくとも二官能性のエポキシド化合物との反応生成物
であり、
ここで:
・ポリオキシアルキレンホモポリマーはポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンであり;
・ポリオキシアルキレンコポリマーはポリオキシエチレン-プロピレンコポリマーであり;
・ポリオキシアルキレンホモポリマー及びコポリマーが20~150のC2~C3オキシアルキレン単位を含む、
請求項13に記載の水性分散体D。
【請求項15】
P、IB及びEの総重量に対して
・40~90重量%の親水性変性エポキシ系樹脂P;
・5~55重量%のブロックイソシアナート架橋剤IB;及び
・0.1~5重量%の共架橋剤E;
を含む、請求項1から14のいずれかに記載の水性樹脂分散体D。
【請求項16】
Pn、IB及びE1の総重量に対して
・40~90重量%の、非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnである親水性変性エポキシ系樹脂P;
・5~55重量%のブロックポリイソシアナート架橋剤IB;及び
・0.1~5重量%の、ベータ-ヒドロキシアルキルアミドE1である共架橋剤E;
を含む、請求項1から15のいずれかに記載の水性樹脂分散体D。
【請求項17】
新IUPAC命名系に従う元素の周期律表の4、7、8、9、12、13、14及び15族の、並びに、4、5及び6周期の、元素の、塩、キレート化合物及び有機金属化合物、並びに強アミンからなる群から選択される1種以上の触媒(単数又は複数)を含む、請求項1から16のいずれかに記載の水性樹脂分散体D。
【請求項18】
親水性変性エポキシ系樹脂P及び/若しくはブロックイソシアナート架橋剤IBが再生可能な供給原料から得られ、全体でエポキシ系樹脂P及びブロックイソシアナート架橋剤IBの総炭素含量の20重量%より多いバイオベース炭素含量を有し、バイオ炭素含量はASTM D6866-20規格を用いて決定される、又は、
当該エポキシ系樹脂P及び/若しくはブロックイソシアナート架橋剤IBがリサイクルされたモノマーに由来する、
請求項1から17のいずれかに記載の水性樹脂分散体D。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の水性樹脂分散体D並びに消泡剤、レベリング剤、融合助剤、流動性改良剤、殺生物剤、顔料、レオロジー添加剤、及び湿潤剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含むコーティング組成物。
【請求項20】
35~55重量%の非揮発性化合物並びに45~65重量%の水及びアルコール、ケトン、エステル、グリコール、グリコールエーテル、及びグリコールエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される共溶媒を含む、請求項19に記載のコーティング組成物。
【請求項21】
被覆された金属基材を生産する方法であって、次のステップ:
・場合により前処理され及び/又はプライマーを含む金属基材の少なくとも1つの面に、少なくとも10μmの乾燥コーティング厚さを得るために調節されたコーティング厚さで、請求項19又は20に記載のコーティング組成物を適用するステップ;
・少なくとも20℃の温度で少なくとも1分間水及び共溶媒をフラッシュオフするステップ;
・少なくとも100℃の温度で少なくとも20秒の期間、適用されたコーティング組成物を焼き付け処理して、架橋したコーティング層で被覆された金属基材を形成するステップ;
を含む方法。
【請求項22】
金属基材を被覆するための、請求項19又は20に記載のコーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂分散体及び改良された腐食(corrosion)及び変色耐性を提供する前記樹脂分散体を含む水性コーティング組成物(aqueous coating composition);水性樹脂分散体及びコーティング組成物の調製方法;並びに金属基材を被覆するためのコーティング組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属又はアルミニウムのような密着した酸化物層を形成する金属を除いて殆どの金属は周囲の条件に曝露されたとき腐食を防ぐか又は少なくとも遅らせるコーティング膜を備える。金属表面に対するコーティング膜の設置は、コーティング膜の金属基材に対する充分な接着があれば、またコーティング膜の酸素及び水に対する透過性が低ければ、金属基材と損傷を与える雰囲気との間にバリアを提供する。コーティング膜のうち、液体形態又は粉末形態の塗料は重要な役割を果たす。コーティング材料を選択するときに考慮すべき一面は、コーティング組成物中の、金属表面と反応することができ、従って金属基材を損傷する可能性がある成分、例えば将来の腐食攻撃に対する種を提供し得る塩素イオンをいかにして回避するかである。
【0003】
多くの有機ポリマーは金属表面上にコーティング膜を形成するのに適している。これらの塗膜はコーティング膜が被覆された金属物品の可能な変形に追随するのを可能にするために充分な硬度、上で指摘した充分な接着、また充分な弾性を有するのが望ましい。エポキシ樹脂は防食塗料の処方において最もよく使われている材料の1つである(高性能コーティング(High-Performance Coatings)、2008、編A.S.Khanna、「単語エポキシは今日の産業環境において防食と同意語になった(the word epoxy has become synonymous with anti-corrosion in today’s industrial environment)」)。エポキシ樹脂及びアミンから作製される反応生成物は車体の陰極電着塗装における標準的な材料になっている。
【0004】
国際公開第2015/093299号には、ビニルエステル樹脂(A)及び芳香環を有するウレタン樹脂(B)を水性媒体(C)に分散させ、それにカルボジイミド架橋剤(E)を加えることにより得られる水性樹脂組成物(D)が開示されている。ビニルエステル樹脂(A)は、重合可能なエチレン性不飽和の酸化合物(a2)をノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂(a1)と反応させることにより作製される。ウレタン樹脂(B)は、芳香環を有するポリオール(b1-1)及び、好ましくはアニオン性の基である親水性の基を有するポリオール(b1-2)をポリイソシアナート(b2)と反応させることにより得られる。カルボジイミド架橋剤(E)は好ましくは分子当たり2個以上のカルボジイミド基を有する。
【0005】
米国特許出願公開第2010/0129659号には、3コート1ベーク法により作製される被覆された生成物が開示されており;この方法は被覆しようとする金属物体上にカチオン電着コーティング組成物(A)から硬化したコーティング膜(A1)を形成し;その上に第1の着色水性コーティング組成物(B)を設けることにより第1の着色コーティング膜(B1)を形成し;未硬化の第1の着色被覆塗膜(B1)の上に第2の着色水性コーティング組成物(C)を被覆することにより第2の着色コーティング膜(C1)を形成し;未硬化の第2の着色コーティング膜(C1)の上に透明なコーティング組成物(D)を設けることにより透明なコーティング膜(D1)を形成し;未硬化の第1の着色被覆塗膜(B1)、未硬化の第2の着色コーティング膜(C1)、及び未硬化の透明なコーティング膜(D1)を同時に硬化させるステップを含む。カチオン電着コーティング組成物(A)はカチオン性のアミノ基を含有する変性エポキシ樹脂(a1)を含有し、この変性は酸性触媒の存在下でキシレン及びフェノールをホルムアルデヒドと縮合させることにより作製されたキシレンホルムアルデヒド樹脂の添加によりもたらされ、この変性によって可塑性及び疎水性がエポキシ樹脂に付与される。
【0006】
国際公開第2013/191826号には、水及び場合により1種以上の中和剤の存在下で1種以上のベースポリマー及び1種以上の安定化剤の溶融混合生成物を含む水性のポリオレフィン分散体を含む水性混合物が開示されており、ここでポリオレフィン分散体は400nm~1500nmの範囲の平均の体積粒子サイズ直径、及び8~11のpH範囲;並びにフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシアルキルアミド樹脂、アミノ-ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ基を含有する樹脂、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の架橋剤を有する。
【0007】
欧州特許出願公開第1805260号は、A)100重量部(parts per weight)の少なくとも1種のビスフェノールA型、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はこれらの混合物、固形分100%、B)0.1~200重量部の2~600nmの範囲の平均半径を有するナノ粒子、C)0~25重量部のジシアンジアミド、ブロックイソシアナート及びルイス酸からなる群から選択されるか又はフェノール樹脂、カルボン酸、無水物及びルイス酸からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤、固形分100%、D)0.1~10重量部の少なくとも1種の添加剤、並びにE)50~200重量部の水又は少なくとも1種の有機溶媒を含む電気鋼板コアの生産のための自己融着性コーティング組成物に関する。
【0008】
国際公開第2018130700号は親水性変性エポキシ系樹脂(hydrophilically modified epoxy-based resin)P及びレゾール(resole)架橋剤Rの混合物を含む水性樹脂分散体D、並びに共架橋剤(co-crosslinker)Eを開示しており、ここで親水性変性エポキシ系樹脂Pはアドバンスメント(advancement)反応が行われる少なくとも1つの工程を含む反応又は一連の反応で作製される。
【0009】
米国特許第5,177,161号はメチル化され、その後モノクロロ酢酸ナトリウムと反応し、次いで水に分散させたフェノール系ノボラック及び7型のビスフェノールAエポキシ樹脂の縮合生成物をベースとする水希釈性の塗料を含む缶塗装用途を開示している。エポキシ樹脂及びノボラック部分はエーテル結合を介して連結されている。
【0010】
カルボキシル化ノボラックA及びエポキシ樹脂Bの付加生成物をベースとする他の水希釈性の缶塗装用樹脂がドイツ特許第19756749号から公知である。これらの付加生成物は、ノボラックAのカルボキシル基とエポキシ樹脂Bのエポキシド基の反応により形成される、分子当たり少なくとも1個のエステル基を有する。これらの生成物は米国特許第5,177,161号によるものより薄い色を有する。
【0011】
当技術分野において今まで技術水準のコーティング膜をもつ鋼板の耐食性は未だ満足でないか、又は耐食性のコーティング膜は160℃を超える温度での焼き付けの際に変色する。最悪の場合、防食及び焼き付けの際の変色耐性の両方が不充分である。
【0012】
食物用缶の内側表面を充填された物品の腐食性の攻撃から保護するために金属コーティングのための主要な架橋剤としてのレゾールの使用が広まっている。かかる用途の場合150~250℃の温度で硬化したときレゾールが変色する傾向は知られており、重要な問題とは考えられていない。また金属コーティングが濃い着色顔料で着色されるならばレゾール架橋剤の黄変挙動は技術的な障害ではない。然しながら、オーブン硬化の際その色を変えるべきでない薄く着色された金属コーティング又は透明なコーティングの場合レゾールの使用は問題がある。このように高いレベルの金属保護及び昇温で硬化する際の低い変色の傾向をもつコーティング組成物に対する必要性が残されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は従来技術の欠点を示さないコーティング組成物のための水性分散体を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の目的は高い焼き付け温度で技術水準のコーティング系と比較して改良された耐食特性及び改良された変色耐性をもつコーティング組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は親水性変性エポキシ系樹脂P、ブロックイソシアナート架橋剤IB、及び共架橋剤Eの混合物を含む水性樹脂分散体Dであって、親水性変性エポキシ系樹脂Pは1-ヒドロキシ-2-フェノキシ-エチル基を含み;
共架橋剤Eは
・80℃を超える昇温でエステル形成及び水の遊離下でコーティング組成物中に存在する酸化合物と反応する少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物E1、並びに
・少なくとも二価のアルコールE22及び80℃を超える昇温で不安定な酸E21により形成される少なくとも2個のエステル基をもつエステルE2
からなる群から選択される、
水性樹脂分散体Dを開示する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は以下の特徴:
・ブロックイソシアナート架橋剤IBは好ましくはポリイソシアナート及びヒドロキシル官能性カルバマートCの反応生成物であり、前記ヒドロキシル官能性カルバマートCは環状の有機カルボナートと脂肪族のモノアミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン及び/又はアルカノールアミンとの反応生成物であり、前記アミンは少なくとも一級又は二級のアミノ基を有する;
・ヒドロキシル官能性カルバマートCは好ましくは2-ヒドロキシエチルビス(2-ヒドロキシエチル)カルバマート又は2-ヒドロキシプロピルビス(2-ヒドロキシエチル)カルバマートである;
・共架橋剤E1は好ましくは式:
(OH-CHR-CH-NR-CO)-A-(CO-NR-CH-CHR-OH)
[式中:
・Rは水素又はC1~C5アルキルであり;
・Rは水素、C1~C5アルキル又はCH-CHR-OHであり;
・Aは化学結合又は2~20個の炭素原子を含有する置換された炭化水素基を含む飽和、不飽和若しくは芳香族炭化水素基に由来する多価の有機基であり;
・mは1~2の値を有する整数であり;mは0~2の値を有する整数であり、m+nは少なくとも2である]を有するベータ-ヒドロキシアルキルアミドである;
・共架橋剤E1は好ましくはN,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)-アジパミド又はN,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシプロピル)-アジパミドである;
・親水性変性エポキシ系樹脂Pは、ジエポキシド、二価の芳香族化合物及びエポキシ官能性の非イオン性乳化剤Fの反応生成物である非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnであり;前記エポキシ官能性の非イオン性乳化剤Fは、
・エポキシド官能性のポリオキシアルキレンホモポリマー若しくはコポリマー;及び/又は
・エポキシド官能性の糖アルコール;及び/又は
・ヒドロキシル官能性のポリオキシアルキレンホモポリマー若しくはコポリマー若しくは糖アルコールセグメントと少なくとも二官能性のエポキシド化合物との反応生成物
であり;
ここで:
・ポリオキシアルキレンホモポリマーはポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンであり;
・ポリオキシアルキレンコポリマーはポリオキシエチレン-プロピレンコポリマーであり;
・ポリオキシアルキレンホモポリマー及びコポリマーは20~150のC2~C3オキシアルキレン単位を含む;
・非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnは好ましくは200~2,000g/equiv.であるエポキシド当量重量(epoxide equivalent weight)(EEW)により特徴付けられる;
・水性樹脂分散体Dは好ましくは、
P、IB及びEの総重量に対して、
・40~90重量%の親水性変性エポキシ系樹脂P、好ましくは非イオン性変性エポキシ系樹脂Pn;
・5~55重量%のブロックイソシアナート架橋剤IB;及び
・0.1~5重量%の共架橋剤E、好ましくはE1、より好ましくはベータ-ヒドロキシアルキルアミド
を含む;
・水性樹脂分散体Dは好ましくは新IUPAC命名系(new IUPAC naming system)に従う元素の周期律表の4、7、8、9、12、13、14及び15族及び4、5及び6周期の元素の塩、キレート化合物及び有機金属化合物、並びに強アミン(strong amine)からなる群から選択される1種以上の触媒(単数又は複数)を含む、
・本発明の水性樹脂分散体D中の親水性変性エポキシ系樹脂P及び/若しくはブロックイソシアナート架橋剤IBは、再生可能な供給原料から得られ、全体でエポキシ系樹脂P及びブロックイソシアナート架橋剤IBの総炭素含量の20重量%より多いバイオベース炭素含量(bio-based carbon content)を有し、バイオ炭素含量はASTM D6866-20規格を用いて決定され、又はエポキシ系樹脂P及び/若しくはブロックイソシアナート架橋剤IBはリサイクルされたモノマーに由来し、好ましくは本発明の水性樹脂分散体D中の親水性変性エポキシ系樹脂P及び/又はブロックイソシアナート架橋剤IBは再生可能な供給原料から得られ、全体でエポキシ系樹脂P及びブロックイソシアナート架橋剤IBの総炭素含量の20重量%より多いバイオベース炭素含量を有し、バイオ炭素含量はASTM D6866-20規格を用いて決定される
の1以上を開示する。
【0017】
本発明は更に35~55重量%の非揮発性化合物並びに45~65重量%の水及びアルコール、ケトン、エステル、グリコール、グリコールエーテル、及びグリコールエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される共溶媒を含み;前記コーティング組成物は好ましくは更に消泡剤、レベリング剤、融合助剤、流動性改良剤、殺生物剤、顔料、レオロジー添加剤、及び湿潤剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、コーティング組成物を開示する。
【0018】
本発明は、被覆された金属基材を生産する方法であって、更に次のステップ:
・場合により前処理され及び/又はプライマーを含む金属基材の少なくとも1つの面に、少なくとも10μmの乾燥コーティング厚さを得るために調節されたコーティング厚さで、コーティング組成物を適用する(applying)ステップ;
・少なくとも20℃の温度で少なくとも1分間水及び共溶媒をフラッシュオフする(flashing off)ステップ;
・少なくとも100℃の温度で少なくとも20秒の期間、適用されたコーティング組成物を焼き付け処理して(stoving)、架橋したコーティング層で被覆された金属基材を形成するステップ
を含む、方法を開示する。
【0019】
本発明は、金属基材を被覆するためのコーティング組成物の使用を更に開示する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の水性樹脂分散体Dは親水性変性エポキシ系樹脂P、架橋剤IB、及び共架橋剤Eの混合物を含み、ここで親水性変性エポキシ系樹脂Pは1-ヒドロキシ-2-フェノキシ-エチル基を含む(1-ヒドロキシ-2-フェノキシ-エチル基はエーテル結合である)。
【0021】
より特定的には、本発明の水性樹脂分散体Dは親水性変性エポキシ系樹脂P、架橋剤IB、及び共架橋剤Eの混合物を含み、ここで親水性変性エポキシ系樹脂Pはアドバンスメント反応が行われる少なくとも1つの工程を含む反応又は一連の反応で作製され、アドバンスメント反応はフェノール性のヒドロキシル基を有するフェノール性化合物が少なくとも2個の反応性エポキシド基を有する化合物と反応して1-ヒドロキシ-2-フェノキシ-エチル基を形成する反応である(エポキシ基とフェノール性のヒドロキシル基の反応の結果1-ヒドロキシ-2-フェノキシ-エチル基又はエーテル結合が形成される)。
【0022】
或いは且つ好ましくは、可能であれば、親水性変性エポキシ系樹脂P及び/又は架橋剤IBは再生可能な供給原料又はリサイクルされたモノマーから得られ、好ましくは親水性変性エポキシ系樹脂P及び/又は架橋剤IBは再生可能な供給原料から得られ、全体でエポキシ系樹脂P及びイソシアナート架橋剤IBの総炭素含量の20重量%より多いバイオベース炭素含量を有し、バイオ炭素含量はASTM D6866-20規格を用いて決定される。
【0023】
親水性変性エポキシ系樹脂Pは少なくとも部分的に中和されたアニオン性の変性エポキシ系樹脂Pa、非イオン性変性エポキシ系樹脂Pn、及び少なくとも部分的に中和されたアニオン性及び非イオン性変性エポキシ系樹脂Panからなる群から選択される。
【0024】
この発明の親水性変性エポキシ系樹脂Pの特徴の1つは、全ての可変物(variant)Pa、Pn及びPanが常に融合反応(fusion reaction)ともよばれる少なくとも1つのアドバンスメント反応、即ちフェノール性のヒドロキシル基を有するフェノール性化合物が少なくとも2個のエポキシド基を有する化合物と反応する反応を含む反応又は一連の反応により作製されることである。
【0025】
アニオン性の基を含む少なくとも部分的に中和されたアニオン性の変性エポキシ系樹脂Paは第1の多工程プロセス又は第2の多工程プロセスによって得られた生成物の酸基を少なくとも部分的に中和することにより作製される。
【0026】
少なくとも部分的に中和されたアニオン性の変性エポキシ系樹脂Paの調製のための第1の多工程プロセスは以下の工程a1、b1、c1、d1、e1、及びf1:
・工程a1において、ノボラックがフェノール及びホルムアルデヒドから酸触媒作用下で調製され、未反応のフェノールが工程a1の反応生成物から分離される;
・工程b1において、工程a1のノボラックが、平均して分子当たり少なくとも2個の官能性エポキシド基を有するエポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールAをベースとするエポキシ樹脂を加えることにより触媒作用下でアドバンスメント反応に付す;
・工程c1において、工程b1の反応生成物を有機溶媒に溶かして溶液を形成し、ここで溶媒は線状又は分岐した脂肪族アルコール、線状又は分岐した脂肪族エーテル、線状又は分岐した脂肪族ケトン、及びこれらと芳香族炭化水素の混合物からなる群から選択される;
・工程c1の反応生成物の溶液を次に工程d1においてアルカリの存在下でホルムアルデヒドと反応させてメチロール化合物を形成する;
・工程e1において、更なるアルカリの添加後、ハロゲンアルカン酸、好ましくは2-クロロ酢酸をd1の生成物に加え、ハロゲンアルカン酸の完全な反応後、工程e1の反応生成物を水性酸で酸性化することにより精製し、反応生成物を含有する有機層を分離し、分離した溶液を蒸留水で洗浄する;
・工程f1において、工程e1の精製された反応生成物から減圧下で蒸留により溶媒を除き、次いで水及び中和剤としての三級アミンを加えて小量の溶媒が残るだけの水性溶液を得る、
を含む。
【0027】
少なくとも部分的に中和されたアニオン性の変性エポキシ系樹脂Paの調製のための第2の多工程プロセスは次の工程a2、b2及びc2:
・工程a2において、リンを主とする酸と分子当たり少なくとも1個のエポキシド基を有するエポキシド官能性化合物とのエステルが調製され、ここでリンを主とする酸は分子当たり少なくとも2個の酸性水素原子を有し、無機の酸性リン化合物、及び有機の酸性リン化合物からなる群から選択され、エポキシド官能性化合物は分子当たり少なくとも2個のエポキシド基を有するエポキシド化合物であり、反応は工程a2の反応により生成するエステルが0.1モル/kg以下の特定の量のエポキシド基、及び平均して分子当たり少なくとも1個の酸性水素原子を有するようにして行われる;
・工程b2において、触媒の存在下で少なくとも二官能性のエポキシド及び芳香族のジヒドロキシ化合物を用いてアドバンスメント反応が行われてエポキシド基を有するポリエーテル化合物を得る;
・工程c2において、工程b2のポリエーテル化合物を溶媒に溶かし、工程a2で作製されたエステルを、撹拌しながら均一な混合物が得られるまで加え、この混合物から次に減圧下で蒸留により溶媒から除く、
を含む。
【0028】
工程a2で使用されるリンを主とする酸は分子当たり少なくとも2個の酸性水素原子を有し、無機の酸性リン化合物、及び有機の酸性リン化合物からなる群から選択される。フォーマー(former)基はオルトリン酸HPO、二リン酸H、三リン酸H10及びそれより高級のホモログ(オリゴマー)、亜リン酸HPO、二亜リン酸H及びそれより高級のホモログ、及び次亜リン酸HPO及びそれより高級のホモログを含む。特に好ましいのはオルトリン酸、オルトリン酸の二及びそれより高級のオリゴマーの混合物、亜リン酸、並びにそれらのより高級のオリゴマーである。後者の群はアルカンホスホン酸R-PO、芳香族ホスホン酸R-PO、及び対応する亜ホスホン酸HPOからなる群から選択されるホスホン酸を含み、ここでRは1~20個の炭素原子を有する線状、分岐又は環式アルキルであり、Rは6~20個の炭素原子を有する場合により置換された芳香族基である。特に好ましいのはメタンホスホン酸及びベンゼンホスホン酸である。
【0029】
工程a2で使用されるエポキシド官能性化合物は好ましくはフェノール性化合物のグリシジルエーテル、好ましくはビスフェノールAジグリシジルエーテル若しくはビスフェノールFジグリシジルエーテル、又はこれらのビスフェノールをベースとするオリゴマー性若しくはポリマー性のエポキシ樹脂である。
【0030】
非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnは工程a3及びb3を含むプロセスにより作製される。即ち
・工程a3において乳化剤Fが、ポリオキシエチレンホモポリマー若しくはコポリマーセグメント又は糖アルコールセグメントを含む非イオン性部分、及び少なくとも二官能性であるエポキシド化合物、好ましくはビスフェノールAジグリシジルエーテル又はそのオリゴマーから誘導されたビルディングブロックを含む非親水性の相溶化性部分から、少なくとも二官能性のエポキシド化合物とヒドロキシ官能性のポリオキシエチレンホモポリマー若しくはヒドロキシ官能性のポリオキシエチレンコポリマー又は糖アルコールとの、強いブレンステッド酸又はルイス酸、好ましくはテトラフルオロホウ酸HBF、三フッ化ホウ素BF、又はそのジアルキルエーテル若しくはアミンとの錯体により触媒されるカップリングによって調製される。或いは、乳化剤Fはエポキシド官能性のポリオキシエチレンホモポリマー又はエポキシド官能性のポリオキシエチレンコポリマー又はエポキシド官能性の糖アルコールを含む、
・工程b3において、乳化剤Fは、ジエポキシド、二価の芳香族化合物、及び工程a3の乳化剤Fをホスフィン又はアミン触媒の存在下で反応させ、アドバンスメント反応生成物がエポキシド末端基を有するように化学量論を選んだアドバンスメント反応を介してエポキシ樹脂中に組み込まれる。
【0031】
糖アルコールはnが1~24の整数である式HO-CH-[-CH(OH)]-CH-OHの化合物、又はそれから誘導されたエーテルであり;一般に公知の化合物にはグリセロール、エリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、及びマルトテトライトールがある。
【0032】
アニオン性及び非イオン性基を含む変性エポキシ系樹脂Panは好ましくは少なくとも部分的に中和されたアニオン性の変性エポキシ系樹脂Pa及び非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnを混合することにより調製される。好ましくは、混合比は質量比Pa/Pnが0.2/0.8~0.8/0.2となるように選ばれる。
【0033】
好ましくは親水性変性エポキシ系樹脂Pは非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnであり;より好ましくは親水性変性エポキシ系樹脂Pは(完全に)アニオン性の基を含まない(即ち0.0%のアニオン性の基を含む)非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnである。
【0034】
親水性変性エポキシ系樹脂Pは石油化学原料から得られる。
【0035】
或いは、好ましくは、可能であれば、親水性変性エポキシ系樹脂Pは再生可能な供給原料から得られる。特に好ましい再生可能な供給原料はリグニン及びタンニン並びに、例えばアナカルド酸(anarcadic acid)、カルダノール、カルドール及び2-メチルカルドールのようなフェノール性誘導体の起源であるカシューナッツ殻液(CNSL)のような木材バイオマスから抽出されたものである。またセルロース及びヘミセルロースのようなリグノセルロースバイオマス由来の供給原料も好ましく、これらは更に解重合され脱水されて5-ヒドロキシメチル-2-フルフラールになり、これは更に誘導体化されて例えば2,5-フランジカルボン酸又は2,5-フランジメタノールになる。他の好ましい供給原料はテルペン及びテルペノイド、例えばリモネン及びカルバクロール並びにオイゲノール、フェルラ酸及びシナピン酸のような他のフェノール性化合物である。エポキシ系樹脂のための他の再生可能な供給原料は樹脂酸(及びそれらのモノ-及びジグリシジルエーテル)、イソソルビド(及びそのジグリシジルエーテル)並びにオリゴ-又はポリグリセロール(及びそれらのグリシジルエーテル)である。エポキシド基はまた一部又はすっかり(バイオ)再生可能なグリセリンから誘導されたエピクロロヒドリンにより親水性変性エポキシ系樹脂Pに導入し得る。これらのエポキシ樹脂中のバイオベースの炭素の正確な量はASTM D6866-20に記載されている方法により決定することができ、ここで同時に存在するバイオマス系の材料に由来する炭素は化石系材料由来のものと区別され、バイオベース炭素含量は全有機炭素含量(TOC)の一部分として報告される。再生可能な炭素の部分を決定するためのその他の標準的な方法はISO16620-2及びCEN16640である。
【0036】
本発明の親水性変性エポキシ系樹脂Pのカーボンフットプリントを低下するための別の代わりの方法はその調製にリサイクルされたモノマーを使用することである。ポリ(ビスフェノールAカルボナート)のようなポリマーは解重合してモノマー(即ちビスフェノールA)を得ることができ、これは次いで更に使用して本発明のエポキシ系樹脂を調製することができる。
【0037】
更にもう1つ別の選択肢において、親水性変性エポキシ系樹脂Pは石油化学原料及び/又は再生可能な供給原料から得られ、及び/又はリサイクルされたモノマーから誘導される。
【0038】
本明細書において、「バイオベース炭素含量」はバイオ炭素含量を意味する。
【0039】
架橋剤IBはポリイソシアナート化合物I及びイソシアナートブロッキング剤Bの付加反応生成物を含むブロックイソシアナートである。
【0040】
ブロックポリイソシアナートIBに特に適したポリイソシアナート化合物Iには1,4-テトラメチレンジイソシアナート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、1,12-ドデカメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン-1,3-及び-1,4-ジイソシアナート、1-イソシアナト-2-イソシアナトメチルシクロペンタン、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート又はIPDI)、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、ビス-(4-イソシアナト-3-メチル-シクロヘキシル)-メタン、アルファ,アルファ,アルファ’,アルファ’-テトラメチル-1,3-及び/又は-1,4-キシリレンジイソシアナート、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4-及び/又は2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアナート、2,4-及び/又は2,6-トルエンジイソシアナート、2,4-及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5-ジイソシアナートナフチレン、4,4’,4”-トリフェニルメタンジイソシアナートがある。ジイソシアナートの混合物を使用することができる。
【0041】
ブロックポリイソシアナートIBは石油化学原料及び/又は再生可能な供給原料から得ることができ、及び/又はリサイクルされたモノマーから誘導することができる。好ましくはブロックポリイソシアナートIBは石油化学原料及び/又は再生可能な供給原料から得られる。
【0042】
適切なより高級のポリイソシアナートの例はトリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアナート、1,2,4-ベンゼントリイソシアナート及びポリメチレンポリフェニルイソシアナートである。適切なより高級のポリイソシアナートはまたジイソシアナートの二量化によりウレトジオンを形成するか又は三量化によりイソシアヌラートを形成することによっても形成することができる。アロファナート(allophanate)を形成するウレタンとイソシアナートの反応、並びにビウレットを形成する尿素とイソシアナートの反応はより高級のポリイソシアナートを生成するために使用することができる。
【0043】
イソシアナートプレポリマー、例えばイソシアナート基/ヒドロキシル基(NCO/OH)の当量比が1より大きいポリイソシアナートとポリオール(例えばネオペンチルグリコール及びトリメチロールプロパン)又はポリマー性ポリオール(例えばポリカプロラクトンジオール及びトリオール)との反応生成物も使用することができる。
【0044】
好ましいジイソシアナートは1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、1,5-ペンタエチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メタン、2,4-及び/又は2,6-トルエンジイソシアナート、2,4’-及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート及びアルファ,アルファ,アルファ’,アルファ’-テトラメチル-1,3-及び/又は-1,4-キシリレンジイソシアナート、並びに述べたジイソシアナートのオリゴマーであり、好ましくは1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)-メタン、2,4-及び/又は2,6-トルエンジイソシアナート、2,4’-及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート及びアルファ,アルファ,アルファ’,アルファ’-テトラメチル-1,3-及び/又は-1,4-キシリレンジイソシアナート並びに述べたジイソシアナートのオリゴマーである。
【0045】
或いは、好ましくは、可能であれば、ポリイソシアナートは再生可能な供給原料から得られる。特に好ましい再生可能な供給原料はバイオベースのアセトン(即ちイソホロンジイソシアナートの生産のため)である。一部再生可能な供給原料から誘導された他の好ましいポリイソシアナートは例えば1,5-ペンタエチレンジイソシアナート(及びそのトリマー、商品名DESMODUR(登録商標)eco N 7300としても公知)、l-リシンのメチル又はエチルエステルのジイソシアナート、イソソルビド系ジイソシアナート、フラン系ジイソシアナート、ビス(4-イソシアナト-2-メトキシフェノキシ)アルカン、ビス(4-イソシアナト-2,6-ジメトキシフェノキシ)アルカン、2,4-ジイソシアナト-1-ペンタデシルベンゼン、脂肪酸、ダイマー脂肪酸及び植物油をベースとするジ-及びポリイソシアナート、1-イソシアナト-10-[(イソシアナトメチル)チオ]デカン及び商品名TOLONATE(商標)X FLO 100として公知の生成物である。
【0046】
ブロッキング剤Bをポリイソシアナート化合物Iのイソシアナート基に加えてイソシアナート基をブロックし、ヒドロキシル官能性のブロッキング剤Bの特定の場合ウレタン構造を生じる。ブロッキング剤Bに対して化学量論的過剰のイソシアナートを使用すると、未反応のイソシアナートはまたアロファナート構造の形成中ウレタン基の-NH基とも反応することができる。
【0047】
ウレタン構造又はアロファナート構造の形態のブロックポリイソシアナートIBは室温で安定である;然しながら、ブロッキング剤Bはコーティング膜の焼き付け温度、通常100~200℃で加熱されると解離して遊離のイソシアナート基を再生する。
【0048】
代表的なブロッキング剤Bはオキシム、ラクタム、フェノール、反応性メチレン化合物、ピラゾール(又はピラゾール誘導体)、メルカプタン、イミダゾール、アミン、イミン、トリアゾール、ヒドロキシルアミン、(脂肪族、脂環式又は芳香族)モノアルコール、及びヒドロキシル官能性カルバマートからなる群から選択される誘導体である。
【0049】
好ましいブロッキング剤Bは脂肪族モノアルコール、オキシム、ピラゾール誘導体、反応性メチレン化合物、又はヒドロキシル官能性カルバマートである。より好ましくは、ブロッキング剤Bはヒドロキシル官能性カルバマートである。
【0050】
ブロッキング剤Bとして使用される適切な脂肪族のモノアルコールにはメタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、1-又は2-オクタノール、ノニルアルコール、3,3,5-トリメチルヘキサノール、デシル及びラウリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、2-(ヒドロキシメチル)フラン、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2-エトキシエタノール、n-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエトキシエタノール、2-エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2-ブトキシエチルエタノール、2-ブトキシエトキシエタノール、N,N-ジブチル-2-ヒドロキシアセトアミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-モルホリンエタノール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、3-オキサゾリジンエタノール、2-ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12-ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル、並びにエーテル-アルコール、例えばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、モノ-メチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-メチルエーテル、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルがある。
【0051】
適切な脂環式のモノ-アルコールとしては、例えば、シクロペンタノール及びシクロヘキサノールがある。
【0052】
適切な芳香族のモノ-アルコールにはフェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、s-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-s-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4-ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、ヒドロキシ安息香酸2-エチルヘキシルエステル、4-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸、2-ヒドロキシピリジン、2-又は8-ヒドロキシキノリン、及び2-クロロ-3-ピリジノールがある。
【0053】
好ましくはブロックイソシアナートIBのブロッキング剤Bとして使用されるモノ-アルコールはヘキサノール、2-エチルヘキサノール及びエチレングリコールモノエチルエーテルを始めとする脂肪族のモノ-アルコールである。
【0054】
1,2-エチレングリコール又は1,2-プロピレングリコールのような脂肪族のジオールも好ましいブロッキング剤Bであり、1,2-プロピレングリコールがより好ましく、一級のヒドロキシル基はイソシアナートに対して二級のヒドロキシル基よりも高い反応性を提供する。
【0055】
他の好ましいブロッキング剤Bはアクリル又はメタクリル酸のグリコールエステルである。メタクリル酸2-ヒドロキシエチルのブロッキング剤Bとしての使用が特に好ましい。
【0056】
適切なアミンとしてはジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4-、又は、2,2,5-トリメチルヘキサメチレンアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5-トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、t-ブチルメチルアミン、t-ブチルエチルアミン、t-ブチルプロピルアミン、t-ブチルブチルアミン、t-ブチルベンジルアミン、t-ブチルフェニルアミン、2,2,6-トリメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(ジメチルアミノ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、6-メチル-2-ピペリジン、及び6-アミノカプロン酸がある。
【0057】
適切なヒドロキシルアミンにはN,N-ジエチルヒドロキシルアミンがある。
【0058】
適切なイミダゾールにはイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、及び2-エチルイミダゾールがある。
【0059】
適切なイミンにはエチレン-イミン、ポリエチレン-イミン、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、及びグアニジンがある。
【0060】
適切なトリアゾールには1,2,4-トリアゾール及びベンゾトリアゾールがある。
【0061】
適切なメルカプタンにはブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、及びヘキシルメルカプタンがある。
【0062】
適切なオキシムには、例えば、ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム(又はメチルエチルケトキシム)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチル-t-ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、2,4-ジメチル-3-ペンタノンオキシム、メチル2,4-ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3-エチルヘプチルケトンオキシム、2,6-ジメチル-4-ヘプタノンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n-アミルケトンオキシム、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンオキシム、及び2-ヘプタノンオキシムがある。好ましくはオキシムはメチルエチルケトキシムである。
【0063】
適切なピラゾールにはピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール及び3-メチル-5-フェニルピラゾールがある。好ましくはピラゾール誘導体は3,5-ジメチルピラゾールである。
【0064】
適切な反応性メチレン化合物には例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ-n-ブチル、マロン酸ジ-t-ブチル、マロン酸ジ-2-エチルヘキシル、マロン酸メチルn-ブチル、マロン酸エチルn-ブチル、マロン酸メチルs-ブチル、マロン酸エチルs-ブチル、マロン酸メチルt-ブチル、マロン酸エチルt-ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t-ブチルフェニル、マロン酸イソプロピリデンのようなC1~C4ジアルキルマロン酸エステル;例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニル、メタクリル酸2-アセトアセトキシエチル、アセチルアセトンのようなアセト酢酸アルキル;及び酢酸シアノエチルがある。好ましくは反応性メチレン化合物はマロン酸ジエチルである。
【0065】
適切なラクタムにはアセトアニリド、N-メチルアセトアミド、酢酸アミド、イプシロン-カプロラクタム、デルタ-バレロラクタム、ガンマ-ブチロラクタム、ピロリドン、2,5-ピペラジンジオンイオン、及びラウロラクタムがある。
【0066】
好ましくはブロックイソシアナートIBのブロッキング剤Bとして使用されるヒドロキシル官能性カルバマートCは:
・プロピレンカルボナート、エチレンカルボナート、ブチレンカルボナート、グリセリンカルボナート、アリルオキシメチルカルボナート及びビスフェノールA又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルから出発して作製されるビスカルボナートを始めとする環状の有機カルボナート、好ましくはエチレンカルボナート、プロピレンカルボナート及びブチレンカルボナートからなる群から選択されるアルキレンカルボナート、より好ましくはエチレンカルボナート及びプロピレンカルボナートからなる群から選択されるアルキレンカルボナートと、
・脂肪族のモノアミン及び/又はジアミン及び/又はトリアミン及び/又はテトラアミン及び/又はアルカノールアミンで、これら全てのアミンは一級のアミノ基及び/又は二級のアミノ基及び/又は適切な場合三級の反応不活性なアミノ基を有し、例えば、シクロヘキシルアミン、N-メチルブチルアミン、N-メチルベンジルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ベンジルアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン及びポリオキシアルキレンアミン及びジアミンとの、又は
・一級のアミノ基を有する1モルの脂肪族ジアミンと2モルのモノエポキシド化合物との、又は一級のアミノ基を有する2モルの脂肪族モノアミン、及び/又は一級及び三級の反応不活性なアミノ基を有する脂肪族ジアミンと1モルのジエポキシド化合物との反応により得られた二級のアミノ化合物(アルカノールアミン)との
反応により得られる。いろいろなアミンの混合物も使用することができる。
【0067】
より好ましくは(ブロックイソシアナートIBの)ブロッキング剤Bとして使用されるヒドロキシル官能性カルバマートCはエチレンカルボナート又はプロピレンカルボナート及びアルカノールアミンの反応生成物である。
【0068】
更により好ましくはヒドロキシル官能性カルバマートCは2-ヒドロキシエチルビス(2-ヒドロキシエチル)カルバマート又は2-ヒドロキシプロピルビス(2-ヒドロキシエチル)カルバマートである。
【0069】
好ましい実施形態において、ブロックイソシアナートIBは二工程反応で作製され、第1の工程においては、二官能性のイソシアナートIが少なくとも3個のヒドロキシル基を有する有機ヒドロキシ化合物(モノ-アルコール)と反応して部分的にブロックされたイソシアナートを形成する。ここで当量比NCO/OHは3以上である。次の工程において、部分的にブロックされたイソシアナートは次いでブロッキング剤B、好ましくは脂肪族のモノ-アルコール、オキシム、ピラゾール誘導体、反応性メチレン化合物、及び/又はヒドロキシル官能性カルバマートと反応して、全ての残っているイソシアナート基をブロックする。
【0070】
更に、鎖が延長されたアルコール、例えば三価又は四価のアルコールとラクトンの反応生成物であって、分子のヒドロキシル基がオリゴマー性又はポリマー性のポリラクトン鎖により分離された三価又は四価のアルコールが作製されているアルコールを使用するのが好ましい。三価又は四価のアルコールをメチルオキシラン(プロピレンエポキシド)と反応させることにより同様な効果を達することができる。エチレンオキシドとの反応は、オリゴマー性又はポリマー性のオキシエチレン鎖がコーティングをより親水性にし、防食を損なうのであまり好ましくない。
【0071】
別の好ましい実施形態において、ブロックイソシアナートIBはポリイソシアナートIをヒドロキシル官能性のカルバマートC及び他のブロッキング剤、好ましくは脂肪族のモノ-アルコール、オキシム、ピラゾール誘導体、及び/又は反応性メチレン化合物と反応させることにより作製される。
【0072】
水性分散体Dに使用されるポリイソシアナート化合物Iのイソシアナート基はブロッキング剤Bによりすっかり又は部分的にのみブロックされることができる。本明細書において、すっかり(又は完全に)ブロックされたポリイソシアナートIBは全てのイソシアナート基がブロッキング剤Bでブロックされている(従ってIB中に遊離のイソシアナート基が残っていない)ポリイソシアナート化合物Iを意味する。部分的にブロックされたポリイソシアナートIBは、バインダー樹脂(バインダー樹脂は(共)架橋剤(単数又は複数)と一緒にいわゆる結合剤中に含まれる)のイソシアナート反応性の基とイソシアナート基との反応によって前記バインダー樹脂に結合した、前記イソシアナート基を含む、好ましくはポリイソシアナート化合物Iの分子当たり平均して最大1個のイソシアナート基を含むポリイソシアナート化合物Iであり;ポリイソシアナート化合物Iの残りのイソシアナート基(単数又は複数)はブロッキング剤Bによりブロックされている。このように部分的にブロックされたポリイソシアナートIBのイソシアナート基はバインダー樹脂と反応したイソシアナート基(好ましくは分子I当たり平均して最大1個のイソシアナート基)及びブロッキング剤Bでブロックされたイソシアナート基(単数又は複数)からなり、IB中に遊離のイソシアナート基はない。
【0073】
部分的にブロックされたポリイソシアナートIBは、分子内に少なくとも2個のイソシアナート基を有するポリイソシアナート化合物Iを、得られる生成物がブロックされていないイソシアナート基を、好ましくは平均して分子I当たり1個以下のブロックされていないイソシアナート基を含有することが可能となるのに充分な量のブロッキング剤Bと反応させることにより容易に調製することができ、前記ブロックされていないイソシアナート基は前記イソシアナート基とPのイソシアナート反応性の基との反応によって親水性変性エポキシ系樹脂Pに連結(又は結合)される(バインダー樹脂の前記反応性の基、例えばヒドロキシ基は架橋剤のブロックされていないイソシアナート基と反応し共有結合することができる)。
【0074】
ブロッキング剤Bは石油化学原料及び/又は再生可能な供給原料から得ることができる。
【0075】
共架橋剤Eは好ましくは少なくとも二官能性であり、
・(水性樹脂分散体D、以下参照、から調製された)コーティング組成物中に存在する酸化合物と(80℃を超える)昇温で反応してエステル形成及び水の遊離を伴う少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物E1、又は
・少なくとも二価のアルコールE22及び(80℃を超える)昇温で不安定な酸E21により形成される少なくとも2個のエステル基をもつエステルE2のいずれかである。この場合の架橋反応はエステルE2とコーティング組成物中に存在する酸化合物とのメタセシス反応であり、少なくとも二価のアルコールE22と前記酸化合物のエステルの形成、及び酸E21の遊離を伴い、これはβ-ケト酸E21の場合ケトン及び二酸化炭素に分解する。有用な化合物E2は一般式(R-C(=O)-CR-C(=O)-O-)を有し[式中Rは1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、R及びRは互いに独立して水素又は1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは2~4個のヒドロキシル基、及び2~40個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの残基である];好ましくはE2はエチレングリコールビス-アセトアセタート、ジエチレングリコールビス-アセトアセタート、プロピレングリコールビス-アセトアセタート、1,4-ブタンジオールビス-アセトアセタート、2,2,4-トリメチルペンタンジオールビス-アセトアセタート;及びダイマー脂肪アルコール、グリセロールトリス-アセトアセタート、トリメチロールプロパントリス-アセトアセタートの混合物のビス-アセトアセタート;及び3-オキソ吉草酸、3-オキソカプロン酸、3-オキソエナント酸、2-メチルアセト酢酸、2,2-ジメチルアセト酢酸、2-エチルアセト酢酸、及び2-メチル-2-エチルアセト酢酸の対応するジエステルからなる群から選択される。コーティング組成物において、酸基は結合剤成分中又は添加剤、特にレオロジー添加剤中、又はアジュバント、例えば触媒及び殺生物剤に存在することができる。
【0076】
化合物E1の好ましい例は式:
(OH-CHR-CH-NR-CO)-A-(CO-NR-CH-CHR-OH)
[式中:
・Rは水素又はC1~C5アルキルであり;
・Rは水素、C1~C5アルキル又はCH-CHR-OHであり;
・Aは化学結合又は2~20個の炭素原子を含有する置換された炭化水素基を含めた飽和、不飽和若しくは芳香族の炭化水素基由来の多価の有機基であり;
・mは1~2の値を有する整数であり;mは0から2の値を有する整数であり、m+nは少なくとも2である]
のベータ-ヒドロキシアルキルアミドである。
【0077】
適切なベータ-ヒドロキシアルキルアミドは文献、例えば米国特許第4,727,111号;同第4,788,255号;同第4,076,917号;同第5,266,628号;欧州特許第322834号及び同第473380号に述べられているものに記載されている。
【0078】
より好ましくは化合物E1は式:
(OH-CHR-CH-NR-CO)-A-(CO-NR-CH-CHR-OH)
[式中:
・Rは水素又はC1アルキルであり;
・RはCH-CHR-OHであり;
・Aは4個の炭素原子を含有する飽和炭化水素基であり;
・mは1に等しく、nは1に等しい]
のベータ-ヒドロキシアルキルアミドである。
【0079】
最も好ましくは化合物E1は商品名PRIMID(登録商標)XL552で公知のN,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)-アジパミド、又は商品名PRIMID(登録商標)QM1260で公知のN,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシプロピル)-アジパミドである。
【0080】
共架橋剤Eは石油化学原料及び/又は再生可能な供給原料から得ることができる。
【0081】
本発明のコーティング組成物は親水性変性エポキシ系樹脂P、ブロックイソシアナートIB、及び共架橋剤Eの混合物を含む水性樹脂分散体Dから調製される。
【0082】
好ましくは本発明の水性樹脂分散体DはP、IB及びEの総重量に対して(ここでP、IB及びEの重量百分率(重量%)の合計は100%を超えない):
・40~90重量%、より好ましくは45~85重量%の親水性変性エポキシ系樹脂P;
・5~55重量%、より好ましくは10~50重量%のブロックイソシアナート架橋剤IB;及び
・0.1~5重量%、好ましくは1~3重量%の共架橋剤E
を含む。
【0083】
より好ましくは本発明の水性樹脂分散体DはP、IB及びE1の総重量に対して(ここでPn、IB及びE1の重量百分率(重量%)の合計は100%を超えない):
・40~90重量%、より好ましくは45~85重量%の、非イオン性変性エポキシ系樹脂Pnである親水性変性エポキシ系樹脂P;
・5~55重量%、より好ましくは10~50重量%のブロックイソシアナート架橋剤IB;及び
・0.1~5重量%、好ましくは1~3重量%の、ベータ-ヒドロキシアルキルアミドE1である共架橋剤E
を含む。
【0084】
好ましくは脂肪族のアルコール、ケトン、エステル、グリコール、グリコールエーテル、及びグリコールエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の共溶媒が加えられ;好ましくは消泡剤、レベリング剤、融合助剤、流動性改良剤、殺生物剤、顔料、及びレオロジー添加剤からなる群から選択される1種以上の添加剤が加えられる。着色コーティング組成物が調製されるならば湿潤剤及び沈降防止剤も加えることができる。
【0085】
代表的なアルコールにはエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びイソ-ブタノールがあり;代表的なケトンにはアセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン、メチルアリールケトン、エチルアリールケトン及びメチルイソアミルケトンがあり;代表的なエステルには酢酸エチル及び酢酸ブチルがあり;代表的なグリコールにはエチレングリコール及びプロピレングリコールがあり;代表的なグリコールエーテルにはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びメトキシプロパノールがあり;代表的なグリコールエステルにはブチルグリコールアセタート及びメトキシプロピルアセタートがある。
【0086】
好ましくはコーティング組成物は35~55重量%、より好ましくは40~50重量%の非揮発性の化合物並びに45~65重量%、より好ましくは50~60重量%の水及びアルコール、ケトン、エステル、グリコール、グリコールエーテル、及びグリコールエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される共溶媒を含む。
【0087】
好ましくは1種以上の架橋触媒(単数又は複数)がコーティング組成物に加えられ、前記架橋触媒は新IUPAC命名系に従う元素の周期律表の4、7、8、9、12、13、14及び15族及び4、5及び6周期の元素の塩、キレート化合物及び有機金属化合物、並びに強アミンからなる群から選択される。
【0088】
水に良く溶ける化合物が好ましく、例えばこれらの元素の水性系中でイオンに解離する塩、及びこれらの元素のキレート化合物が好ましく、ここでキレートフォーマーは有機ヒドロキシ酸、例えば乳酸、2,2-ビスヒドロキシメチルプロピオン酸、アミノ酸、例えばN,N,N’,N’-エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、及びベータ-アラニン、又は多官能性アミン若しくはヒドロキシアミンであり得る。他の有用な化合物はアルコキシ金属酸化物、及び有機の酸又はヒドロキシ酸の金属塩のような有機金属化合物である。ビスマス、スズ、鉛、及びチタンのメタンスルホン酸塩、乳酸塩及びビスヒドロキシメチル-プロピオン酸塩が特に好ましい。
【0089】
強アミンはより好ましくは三級アミン、最も好ましくは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)のような(多)環式三級アミンである。
【0090】
コーティング組成物は好ましくは、ブロックイソシアナート架橋剤IB及び共架橋剤Eを含む親水性変性エポキシ系樹脂Pに対して5重量%までの1種以上の架橋触媒を含む。
【0091】
コーティング組成物は1種以上の有機及び無機顔料並びに場合により1種以上の充填剤を含み得る。
【0092】
無機顔料の例は鉄酸化物顔料、チタン酸化物顔料、亜鉛酸化物顔料、ニッケル及びチタン酸ニッケルと共沈したクロム酸化物顔料、硫クロム酸鉛又は鉛ビスマスバナダート(lead bismuth vanadate)由来の黄色顔料、鉛スルホクロマートモリブダート(lead sulphochromate molybdate)由来のオレンジ顔料、並びにカーボンブラックである。
【0093】
適切な有機顔料の例はアゾ顔料、金属錯体顔料、アントラキノノイド顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、殊にチオインジゴ、キナクリドン、ジオキサジン、ピロロ、ナフタレンテトラカルボン酸、ペリレン、イソアミドリン(イソアミドリノン)(isoamidolin(on)e)、フラバントロン、ピラントロン、又はイソビオラントロンシリーズのものである。
【0094】
有用な充填剤の例はカオリン、タルク、マイカ、他のケイ酸塩、石英、クリストバライト、ウォラストナイト、パーライト、珪藻土、繊維充填剤、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、又は炭酸カルシウムである。
【0095】
本発明の方法において、親水性変性エポキシ系樹脂P、ブロックイソシアナート架橋剤IB、及び共架橋剤Eの混合物を含む本発明の水性樹脂分散体Dは高速撹拌機、遊星型ミキサー又はボールミルグラインダーのような混合装置に移され、水、共溶媒、添加剤、顔料及び充填剤を加える。混合は少なくとも5分均一なブレンド(又はコーティング組成物)が得られるまで行う。
【0096】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは金属基材、より好ましくは耐食性前処理された金属基材、更により好ましくはリン酸鉄(iron phosphated)若しくはリン酸亜鉛(zinc phosphated)鋼又はジルコニウム-、バナジウム-、チタン-若しくはシラン系化成コーティングを含む前処理された鋼に適用される。
【0097】
コーティング組成物は当技術分野で公知のいずれかの適切な手法を用いて基材に適用し得、好ましくはスプレー又は浸漬コーティングにより適用する。
【0098】
次いで水及び任意選択の共溶媒が少なくとも20℃の温度で少なくとも1分、好ましくは少なくとも20℃の温度で少なくとも5分フラッシュオフされ、その後焼き付け処理が空気換気された対流オーブン中少なくとも140℃、好ましくは140~230℃、より好ましくは150~220℃、更により好ましくは160~210℃、最も好ましくは170~200℃の温度で、少なくとも20秒、好ましくは1~25分、より好ましくは2~20分、更により好ましくは4~18分、尚更により好ましくは6~15分、最も好ましくは8~12分の期間行われる。
【0099】
或いはコーティングは赤外線照射、例えば近、短若しくは中赤外線により、又は誘導により、又はそれらの組合せにより硬化し得る。赤外線又は誘導システムが使用される実施形態において、焼き付け処理サイクルは加熱システム又は加熱システムの組合せに応じて2~160秒の範囲内である。
【実施例
【0100】
<例1:ブロックイソシアナート架橋剤の合成>
190gのジエタノールアミン及びプロピレンカルボナートからのヒドロキシカルバマートを公知のように(欧州特許第0476514号:表1、HC2に従って)作製した。470gのブチルジグリコール及び0,4gのネオデカン酸ビスマス(28%Bi金属)を30℃で加え、均質化した。690gのオリゴマー性ジフェニルメタン-ジイソシアナート(イソシアナート含量32,0%、DIN EN ISO11909による)を段階的に加えて100℃未満の温度を維持した。遊離のイソシアナートの量が(滴定により)0,1%未満であると決定されたとき、生成物を80gのメトキシプロパノール及び60gの脱イオン水に希釈した。得られた生成物は90,2%の固体含量(サンプル1g、125℃で10min乾燥)及び12500mPa・sの動的粘度(23℃で測定、剪断速度25s-1)を有していた。
【0101】
<例2:ブロックイソシアナート非イオン性分散体の調製>
2.1.:親水性エポキシ樹脂の調製
1kgのポリエチレングリコールPEG4000(平均モル質量およそ4000g/mol)を120℃に加熱し、溶存水を減圧及び窒素流下で蒸留により除去した。110gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、その後、溶液中質量分率w(HBF)50%のテトラフルオロホウ酸水溶液1.7gを加えた。エポキシド基の特定の含量の一定値に達した(およそ0.1モル/kg~0.2モル/kg)とき、1100gの水を加えて固形分の質量分率およそ50%に希釈した。
【0102】
2.2.:アドバンスメント反応
温度計、撹拌機、還流冷却器、下行コンデンサー(descending condenser)、及び圧力を低下するためのポンプを備えた反応容器に、2400gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、720gのビスフェノールA、及び1200gの例2.1の親水性エポキシ樹脂を仕込み、撹拌しながら125℃に加熱して10kPa(100mbar)の減圧で全ての揮発性成分を除去した。次いで1.3gのトリフェニルホスフィンを加え、温度を更に160℃に上昇させ、1.87当量/kg(「エポキシド当量重量」534g/当量)の特定の量のエポキシド基に達するまで混合物を撹拌しながら保った。
【0103】
2.3.:ブロックイソシアナート及び水中分散体の添加
例2.2.で得られた反応塊を次いで120℃に冷却し、729gの例1からのブロックイソシアナートを加えた。次いで410gのメトキシプロパノールを加えることにより粘度を低下させ、溶液を80℃に冷却した。次いで1200gの脱イオン水を反応容器に加え、混合物を3時間70℃で分散させて水で希釈可能な樹脂分散体を得た。更に、3500gの脱イオン水を2時間にわたって容器に加え、最後に更に脱イオン水を加えることにより固形分の質量分率を42,1%(サンプル1g、125℃で10min乾燥)に調節し、粘度を1070mPa・s(23℃で測定、剪断速度100s-1)に低下させた。得られたZ-平均粒径(Z-average particle size)(ISO22412によるZ-平均(average mean))は246nmであった。
【0104】
<例3:ブロックイソシアナート非イオン性分散体の調製>
3.2.:アドバンスメント反応
温度計、撹拌機、還流冷却器、下行コンデンサー、及び圧力を低下するためのポンプを備えた反応容器に、2400gのビスフェノールAジグリシジルエーテル、670gのビスフェノールA、及び1750gの例2.1.の親水性エポキシ樹脂を仕込み、撹拌しながら125℃に加熱して10kPa(100mbar)の減圧で全ての揮発性成分を除去した。次いで1.3gのトリフェニルホスフィンを加え、温度を更に160℃に上昇させ、1.96当量/kg(「エポキシド当量重量」510g/当量)の特定の量のエポキシド基に達するまで混合物を撹拌しながら保った。
【0105】
3.3.:ブロックイソシアナート及び水中分散体の添加
次いで例3.2.で得られた反応塊を120℃に冷却し、2945gの例1からのブロックイソシアナートを加えた。次いで410gのメトキシプロパノールを加えることにより粘度を低下させ、溶液を80℃に冷却した。次に1850gの脱イオン水を反応容器に加え、3時間70℃で混合物を分散させて水で希釈可能な樹脂分散体を得た。更に、5000gの脱イオン水を2時間にわたって容器に加え、最後に更に脱イオン水を加えることにより固形分の質量分率を42,3%(サンプル1g、125℃で10min乾燥)に調節し、粘度を930mPa・s(23℃で測定、剪断速度100s-1)に低下させた。得られたZ-平均粒径(ISO22412によるZ-平均)は244nmであった。
【0106】
<比較例1:レゾール架橋剤の合成>
温度計、撹拌機、還流冷却器、下行コンデンサー及び圧力を低下するための装置を備えた反応容器中で、453.6gのn-ブタノールを50℃まで加熱した。次いで、397.3gのビスフェノールA、48.5gの水酸化ナトリウム溶液(固形分の質量分率45%)、357.6gの水性ホルムアルデヒド溶液(溶存ホルムアルデヒドの質量分率37%)、及び95.4gのパラホルムアルデヒドを加え、10時間50℃で反応させた。その後、更に447gのn-ブタノールを加え、72.2gのリン酸水溶液(溶存リン酸の質量分率75%)を加えることによりpHを3.5に調節した。水相を取り去るために大気圧及び94℃~105℃の温度で8時間共沸蒸留を行なった。次いで残留するn-ブタノールを120℃で取り去った。更に、212gのn-ブタノールを加え、続いて第2の共沸蒸留を大気圧で5時間行った。残りのn-ブタノールも取り去って115℃の蒸留温度に達し、反応塊のn-ヘプタンとの相溶性が1:2の樹脂対n-ヘプタンの比率で達するまで更に水を共沸蒸留により取り去った。得られた樹脂を187gの脱イオン水で洗浄することにより塩を除去した。残留する水を大気圧及び105℃の温度での共沸蒸留により除去し、続いて全ての揮発性成分を85℃及び10kPa(100mbar)の減圧で除去した。得られたポリマー性の樹脂を溶かして固形分の質量分率が80%(サンプルの質量:1g、乾燥条件:60min、125℃)で動的粘度が23℃で1200mPa・sの溶液とした。
【0107】
<比較例2:レゾール変性した非イオン性分散体の調製>
例2.1.及び2.2.に従って親水性のエポキシ樹脂を調製した。得られた反応塊を次いで120℃に冷却し、820gの比較例1からのフェノール樹脂を加えた。次いで318gのメトキシプロパノールを加えることにより粘度を低下させ、溶液を80℃に冷却した。次に1130gの脱イオン水を反応容器に加え、混合物を3時間70℃で分散させて水で希釈可能な樹脂分散体を得た。更に、3500gの脱イオン水を2時間にわたって容器に加え、最後に更に脱イオン水を加えることにより固形分の質量分率を41,8%(サンプル1g、125℃で10min乾燥)に調節し、粘度を1020mPa・s(23℃で測定、剪断速度100s-1)に低下させた。得られたZ-平均粒径(ISO22412によるZ-平均)は220nmであった。
【0108】
<例4:白色モノ-コート調製及び鋼パネルへの設置>
4.1.:ビーズミルで水に分散させた顔料ペースト
表1に示す成分をビーズミルで水に分散させることにより顔料ペーストを得た。
【表1】
【0109】
4.2.:コーティング組成物
表2には、本発明による(例5~10)及び技術水準による(例11~13は比較例である)コーティング組成物の成分が表されており、ここで:
DOWANOL(商標)DPnBはn-ブトキシプロポキシプロパノールであり;
ADDITOL(登録商標)VXW6393は鉱油系消泡剤であり(Allnex Austria GmbH);
RHEOVIS(登録商標)AS1130はAcrylic HASE増粘剤であり(酸価90mg/g、送達の形態に基づく;BASF SE);
PRIMID(登録商標)XL552は水に20重量%溶解したN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)-アジパミド(Ems Chemie AG)である。
【表2】
【0110】
表2に開示した成分を定められた順に実験用混合装置で混合した。24時間ブレンドした後例5~13のコーティング組成物を空気スプレーガンでリン酸亜鉛処理鋼板(GARDOBOND(登録商標)26S 6800 OC、Chemetall GmbH)上に塗布した。23℃で10分フラッシュオフした後、被覆された板を10分180℃で硬化させた。コーティングの乾燥塗膜厚さは各々の場合に35μmであった。
【0111】
<例14:防食及び色性能>
23℃及び50%相対湿度で7日のコンディショニング後、例5~13の各々のコーティング組成物の被覆されたパネルの色を、比色計「Spectro-guide」(Byk Gardner GmbH)を用いて測定した。CIE Lシステムによる「b」の高い値はコーティング膜の強い黄変(変色)を示す。次いでパネルの中央を引っ掻き、塩水噴霧チャンバー試験(”SST”;DIN EN ISO9227)に曝露した。人為的に老化させたパネルの膨れをDIN EN ISO4628-2に従って記録した。
【0112】
表3に、塩水噴霧試験に曝露後の色及び膨れを示す。
【0113】
比較例2及び本発明による例2の樹脂はエポキシ樹脂の量を基準として同等な量の架橋剤(それぞれレゾール又はブロックイソシアナート)を有する。例5と比較例11、例6と比較例12、及び例7と比較例13のコーティング組成物の直接の比較は比較例11~13の耐食性能が例5~7(本発明によるコーティング組成物)と同じレベルであることを示す。また、β-ヒドロキシアルキルアミドを防食モノコートに添加すると全ての場合に防食効果を有意に改良することも明らかに示されている。然しながら、維持された防食性能に加えて、ブロックイソシアナートに基づく本発明による全てのコーティング組成物(例5~例10)はレゾールに基づくもの(比較例11~比較例13)より同じ顔料/バインダー比130%(重量/重量)でずっと薄い色(より小さいb-値)を示す。本明細書において、顔料/バインダー比とは顔料及び充填剤の合計(重量)を固体バインダー樹脂及びブロックイソシアナート架橋剤の合計(重量)で割り百分率で表した比率を意味し;添加剤及び共架橋剤の固体含量は考慮しない。
【表3】

【国際調査報告】