(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】耐水性が向上したエポキシ樹脂及びそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/26 20060101AFI20240412BHJP
C07D 303/28 20060101ALI20240412BHJP
C08G 59/04 20060101ALI20240412BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C08G59/26
C07D303/28
C08G59/04
C09D163/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565609
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2022005856
(87)【国際公開番号】W WO2022231233
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0053952
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515261354
【氏名又は名称】サムヤン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jongno 33-gil,Jongno-gu,Seoul,110-725 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,フン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジュン ソプ
【テーマコード(参考)】
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
4J036AB01
4J036AB11
4J036BA01
4J036BA03
4J036DB02
4J036DB15
4J036DC02
4J036HA12
4J036JA01
4J038DB021
4J038JB01
4J038KA03
4J038NA06
4J038NA27
4J038PC03
(57)【要約】
本発明は、耐水性が向上したエポキシ樹脂及びそれを含む組成物に関し、詳しくは、アンヒドロ糖アルコール及びアンヒドロ糖アルコール以外のジオールを特定含量比で含むジオール成分とエピハロヒドリンとの反応で製造されることにより、優れた環境保全性及び向上した耐水性を示し、コーティング組成物に適用した場合、防曇効果を示すと同時に、水分に対する耐久性を向上したコーティングを提供することができるエポキシ樹脂、及び該エポキシ樹脂を含む組成物(好ましくは、防曇コーティング用組成物)に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオール成分とエピハロヒドリンとの反応によって製造されるエポキシ樹脂であって、
前記ジオール成分が、ジオール成分の合計100重量部に対して、46~94重量部のアンヒドロ糖アルコール及び6~54重量部の、アンヒドロ糖アルコール以外のジオールを含む、エポキシ樹脂。
【請求項2】
アンヒドロ糖アルコールが、ジアンヒドロヘキシトールである請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
ジアンヒドロヘキシトールが、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド又はそれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項2に記載のエポキシ樹脂。
【請求項4】
アンヒドロ糖アルコール以外のジオールが、C3-C12の脂肪族ジオール、C3-C12の脂環式ジオール、C6-C20の芳香族ジオール又はそれらの組み合わせから選択される請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項5】
C3-C12の脂肪族ジオールが、プロピレングリコール;ネオペンチルグリコール;トリエチレングリコール;1,4-ブタンジオール;1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;1,7-ヘプタンジオール;1,8-オクタンジオール;1,9-ノナンジオール;1,10-デカンジオール;1,11-ウンデカンジオール;1,12-ドデカンジオール;又はそれらの組み合わせよりなる群から選択され、
C3-C12の脂環式ジオールが、シクロヘキサンジメタノール;ジシクロペンタジエンジメタノール;ノルボルネンジメタノール;ノルボルナンジメタノール;シクロオクタンジメタノール;シクロオクテンジメタノール;シクロオクタジエンジメタノール;ペンタシクロデカンジメタノール;ビシクロオクタンジメタノール;トリシクロデカンジメタノール;ビシクロヘプテンジメタノール;ジシクロペンタジエンジオール;ノルボルネンジオール;ノルボルナンジオール;シクロオクタンジオール;シクロオクテンジオール;シクロオクタジエンジオール;シクロヘキサンジオール;シクロヘキセンジオール;シクロペンタン-1,3-ジオール;ビシクロペンタン-1,1’-ジオール;デカヒドロナフタレン-1,5-ジオール;トランス,トランス-2,6-ジメチル-2,6-オクタジエン-1,8-ジオール;5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン;3-メチル-2,2-ノルボルナンジメタノール;5-ノルボルネン-2,3-ジメタノール;ノルボルナン-2,3-トランス-ジメタノール;5-ノルボルネン-2,3-ジメタノール;テトラヒドロフランジオール;又はそれらの組み合わせよりなる群から選択され、
C6-C20の芳香族ジオールが、レゾルシノール;ヒドロキノン;ビスフェノールA;2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン又はそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項4に記載のエポキシ樹脂。
【請求項6】
エピハロヒドリンが、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、メチルエピクロロヒドリン、メチルエピブロモヒドリン、メチルエピヨードヒドリン又はそれらの組み合わせよりなる群から選択される請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項7】
アンヒドロ糖アルコール及びアンヒドロ糖アルコール以外のジオールの合計100重量部に対して、エピハロヒドリンの反応量が460重量部以上である請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項8】
下記式(1)
【化1】
(式中、R1は、アンヒドロ糖アルコールに由来する2価の有機基であり、
R2は、アンヒドロ糖アルコールに由来する2価の有機基;C3-C12の直鎖状又は分岐状アルキレン基;C3-C12のシクロアルキレン基;又はC6-C20のアリーレン基であり、
R3は、C3-C12の直鎖状又は分岐状アルキレン基;C3-C12のシクロアルキレン基;又はC6-C20のアリーレン基であり、
nは、0~100の整数である。)で示される請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項9】
エポキシ樹脂の製造方法であって、
(1)塩基性触媒の存在下でアンヒドロ糖アルコールとエピハロヒドリンとの第1予備反応を行う工程;
(2)前記工程(1)で得られた反応生成物にアンヒドロ糖アルコール以外のジオールを加えて第2予備反応を行う工程;及び
(3)前記工程(2)で得られた反応生成物にさらに塩基性触媒を加え、減圧下で主反応を行う工程
を含み、
前記アンヒドロ糖アルコールとアンヒドロ糖アルコール以外のジオールの合計100重量部に対して、前記アンヒドロ糖アルコールの添加量が46~94重量部であり、前記アンヒドロ糖アルコール以外のジオールの添加量が6~54重量部である、エポキシ樹脂の製造方法。
【請求項10】
塩基性触媒が、アルカリ金属系触媒である請求項9に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項11】
工程(1)で使用する塩基性触媒の使用量は、工程(1)で使用するアンヒドロ糖アルコール及び工程(2)で使用するアンヒドロ糖アルコール以外のジオールの合計100重量部に対して、4~11重量部である請求項9に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項12】
工程(3)でさらに加えられる塩基性触媒の量は、工程(1)で使用するアンヒドロ糖アルコール及び工程(2)で使用するアンヒドロ糖アルコール以外のジオールの合計100重量部に対して、40~65重量部である請求項9に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂;及び
硬化剤
を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
組成物が、防曇コーティング用組成物である請求項13に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
請求項13に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して形成されたコーティング層を表面に含む、コーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性が向上したエポキシ樹脂及びそれを含む組成物に関し、詳しくは、アンヒドロ糖アルコール及びアンヒドロ糖アルコール以外のジオールを特定含量比で含むジオール成分とエピハロヒドリンとの反応によって製造されることにより、優れた環境保全性及び向上した耐水性を示し、コーティング組成物に適用した場合、防曇効果を示すと同時に、水分に対する耐久性を向上したコーティングを提供することができるエポキシ樹脂及びそれを含む組成物(好ましくは、防曇コーティング用組成物)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素化糖(「糖アルコール」ともいう)は、糖類が有する還元性末端基に水素を付加して得られる化合物を意味するものである。一般に、HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここで、nは2~5の整数)の式を有し、炭素数に応じて、テトリトール、ペンチトール、ヘキシトール及びヘプチトール(それぞれ、炭素数4、5、6及び7)に分類される。その中で、炭素数6のヘキシトールには、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールなどが含まれており、ソルビトールとマンニトールは特に効用性が大きな物質である。
アンヒドロ糖アルコールは、分子内に2つのヒドロキシ基を有するジオール(diol)形態であり、デンプン由来のヘキシトールを用いて製造することができる(例えば、特許文献1、2)。アンヒドロ糖アルコールは、再生可能な天然資源から得られる環境に優しい物質であるため、以前から注目されており、その製造に関する研究が続けられてきている。そのようなアンヒドロ糖アルコールの中でもソルビトールから製造されるイソソルビドは、現在最も工業的応用範囲が広い。
【0003】
アンヒドロ糖アルコールは、心臓及び血管疾患の治療、パッチ接着剤、口腔清浄剤などの医薬品、化粧品産業における組成物の溶媒、食品産業における乳化剤など、様々な分野で使用することができる。また、ポリエステル、PET、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ樹脂などの高分子物質のガラス転移温度を上昇させ、これらの物質の強度を向上させることができる。さらに、アンヒドロ糖アルコールは天然資源由来の環境に優しい材料であるため、バイオプラスチックなどのプラスチック産業においても非常に有用である。また、アンヒドロ糖アルコールは、接着剤、環境に優しい可塑剤、生分解性高分子、及び水溶性ラッカーの環境に優しい溶媒として使用できるとも知られている。
このように、アンヒドロ糖アルコールはその応用範囲の広さから注目されており、その実用的な産業応用のレベルは高まっている。
【0004】
防曇コーティングは、物品の表面に施され、物品が湿度の高い環境に曝されたとき、湿気による表面の曇りを防ぐ。例えば、特許文献3には、アンヒドロ糖アルコールであるイソソルビドを含有するエポキシ樹脂からなり、防曇効果を示すコーティング組成物が開示されている。しかし、この特許文献3に開示されているエポキシ樹脂は、耐水性が不十分であるため、それを含む組成物から形成された塗膜が湿度の高い環境に曝されると、塗膜の水分に対する耐久性が悪くなり、塗膜が剥離されてしまうという問題があった。
そのため、アンヒドロ糖アルコールなどのバイオマス原料をその製造に用いることから環境保全性に優れ、耐水性を向上させて水分に対する耐久性を向上させた防曇膜を提供するエポキシ樹脂の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国 特許 第10-1079518号
【特許文献2】韓国 公開特許公報 第10-2012-0066904号
【特許文献3】韓国 公開特許公報 第10-2016-0010133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた環境保全性と耐水性の向上を示し、コーティング組成物に適用した場合に、防曇効果と水分に対する耐久性の向上を同時に提供することができるエポキシ樹脂及びそれを含む組成物(好ましくは、防曇コーティング用組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ジオール成分とエピハロヒドリンとの反応により製造されるエポキシ樹脂であって、前記ジオール成分が、ジオール成分の合計100重量部に対して、アンヒドロ糖アルコール46~94重量部;及びアンヒドロ糖アルコール以外のジオール6~54重量部;を含む、エポキシ樹脂を提供する。
本発明の別の側面によれば、エポキシ樹脂の製造方法であって、(1)塩基性触媒の存在下でアンヒドロ糖アルコールとエピハロヒドリンとの第1予備反応を行う工程;(2)前記工程(1)で得られた反応生成物にアンヒドロ糖アルコール以外のジオールを加えて第2予備反応を行う工程;及び(3)前記工程(2)で得られた反応生成物にさらに塩基性触媒を加え、減圧下で主反応を行う工程;を含み、前記アンヒドロ糖アルコールとアンヒドロ糖アルコール以外のジオールの合計100重量部に対して、前記アンヒドロ糖アルコールの添加量が46~94重量部であり、前記アンヒドロ糖アルコール以外のジオールの添加量が6~54重量部である、エポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0008】
本発明のさらに別の側面によれば、前記エポキシ樹脂;及び硬化剤;を含むエポキシ樹脂組成物が、好ましくは、防曇コーティング用組成物が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、前記エポキシ樹脂組成物を硬化して形成されたコーティング層を表面に含む、コーティングされた物品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるエポキシ樹脂は、優れた環境保全性及び向上した耐水性を示し、コーティング組成物に適用したとき、防曇効果と水分に対する耐久性の向上を同時に有するコーティングを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、ジオール成分とエピハロヒドリンとの反応により製造され、前記ジオール成分が、ジオール成分の合計100重量部に対して、アンヒドロ糖アルコール46~94重量部;及びアンヒドロ糖アルコール以外のジオール6~54重量部;を含む。
本発明のエポキシ樹脂の製造に用いられるジオール成分は、ジオール成分の合計100重量部に対して、アンヒドロ糖アルコール46~94重量部;及びアンヒドロ糖アルコール以外のジオール6~54重量部;を含む。
【0011】
前記ジオール成分の合計100重量部中のアンヒドロ糖アルコール含量が46重量部未満であると、製造されたエポキシ樹脂を含む組成物から形成されたコーティングの防曇効果が悪くなる。逆に、ジオール成分の合計100重量部中のアンヒドロ糖アルコール含量が94重量部を超えると、製造されたエポキシ樹脂の耐水性が低下し、それを含む組成物から形成されたコーティングの水分に対する耐久性が悪くなる。
一実施形態において、前記ジオール成分の合計100重量部中の前記アンヒドロ糖アルコール含量は、46重量部以上、47重量部以上、48重量部以上、49重量部以上又は50重量部以上であってもよく、また、94重量部以下、93重量部以下、92重量部以下、91重量部以下又は90重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0012】
前記ジオール成分の合計100重量部中のアンヒドロ糖アルコール以外のジオール含量が6重量部未満であると、製造されたエポキシ樹脂の耐水性が低下し、それを含む組成物から形成されたコーティングの水分に対する耐久性が悪くなる。逆に、ジオール成分の合計100重量部中のアンヒドロ糖アルコール以外のジオール含量が54重量部を超えると、製造されたエポキシ樹脂を含む組成物から形成されたコーティングの防曇効果が悪くなる。
一実施形態において、前記ジオール成分の合計100重量部中の前記アンヒドロ糖アルコール以外のジオール含量は、6重量部以上、7重量部以上、8重量部以上、9重量部以上又は10重量部以上であってもよく、また、54重量部以下、53重量部以下、52重量部以下、51重量部以下又は50重量部以下であってもよいが、これらに限定されない。
【0013】
本発明において、「アンヒドロ糖アルコール」は、糖の還元末端基に水素を付加して得られる化合物(一般に、水素添加糖または糖アルコールと呼ばれる)から1つ以上の水分子を除去して得られる物質を意味する。
前記アンヒドロ糖アルコールは、モノアンヒドロ糖アルコール、ジアンヒドロ糖アルコール又はそれらの組み合わせであってもよい。
前記モノアンヒドロ糖アルコールは、水素化糖の内部から1つの水分子が除去されたアンヒドロ糖アルコールであり、分子内に4つのヒドロキシ基を有するテトラオール形態である。本発明において、前記モノアンヒドロ糖アルコールの種類は、特に限定されないが、好ましくは一無水糖ヘキシトールであってもよく、より具体的には1,4-アンヒドロヘキシトール、3,6-アンヒドロヘキシトール、2,5-アンヒドロヘキシトール、1,5-アンヒドロヘキシトール、2,6-アンヒドロヘキシトール又はこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0014】
前記ジアンヒドロ糖アルコールは、水素化糖の内部から2つの水分子が除去されたアンヒドロ糖アルコールであり、分子内に2つのヒドロキシ基を有するジオール形態であり、デンプン由来のヘキシトールを用いて製造することができる。ジアンヒドロ糖アルコールは、再生可能な天然資源から得られる環境に優しい物質であるため、以前から多くの関心を集めており、その製造方法に関する研究が続けられてきている。このようなジアンヒドロ糖アルコールの中で、ソルビトールから製造されたイソソルビドが、現在最も工業的応用範囲が広い。本発明において、前記ジアンヒドロ糖アルコールの種類は、特に限定されないが、好ましくはジアンヒドロヘキシトールであってもよく、より具体的には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであってもよい。前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド又はこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態において、前記アンヒドロ糖アルコールはジアンヒドロヘキシトールであってもよく、より好ましくは、イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール)、イソマンニド(1,4:3,6-ジアンヒドロマンニトール)、イソイジド(1,4:3,6-ジアンヒドロイジトール)又はそれらの組み合わせよりなる群から選択されてもよく、最も好ましくは、イソソルビドであってもよい。
前記アンヒドロ糖アルコール以外のジオールとしては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール又はそれらの組み合わせであってもよく、好ましくは、環境保全性の観点からバイオマス原料に由来するバイオ由来化合物であってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記アンヒドロ糖アルコール以外のジオールは、C3-C12の脂肪族ジオール、C3-C12の脂環式ジオール、C6-C20の芳香族ジオール又はそれらの組み合わせから選択することができ、より具体的には、
前記C3-C12の脂肪族ジオールが、プロピレングリコール;ネオペンチルグリコール;トリエチレングリコール;1,4-ブタンジオール;1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;1,7-ヘプタンジオール;1,8-オクタンジオール;1,9-ノナンジオール;1,10-デカンジオール;1,11-ウンデカンジオール;1,12-ドデカンジオール;又はそれらの組み合わせよりなる群から選択することができ、
前記C3-C12の脂環式ジオールが、シクロヘキサンジメタノール;ジシクロペンタジエンジメタノール;ノルボルネンジメタノール;ノルボルナンジメタノール;シクロオクタンジメタノール;シクロオクテンジメタノール;シクロオクタジエンジメタノール;ペンタシクロデカンジメタノール;ビシクロオクタンジメタノール;トリシクロデカンジメタノール;ビシクロヘプテンジメタノール;ジシクロペンタジエンジオール;ノルボルネンジオール;ノルボルナンジオール;シクロオクタンジオール;シクロオクテンジオール;シクロオクタジエンジオール;シクロヘキサンジオール;シクロヘキセンジオール;シクロペンタン-1,3-ジオール;ビシクロペンタン-1,1’-ジオール;デカヒドロナフタレン-1,5-ジオール;トランス、トランス-2,6-ジメチル-2,6-オクタジエン-1,8-ジオール;5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン;3-メチル-2,2-ノルボルナンジメタノール;5-ノルボルネン-2,3-ジメタノール;ノルボルナン-2,3-トランス-ジメタノール;5-ノルボルネン-2,3-ジメタノール;テトラヒドロフランジオール;又はそれらの組み合わせよりなる群から選択することができ、
前記C6-C20の芳香族ジオールが、レゾルシノール;ヒドロキノン;ビスフェノールA;2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン;又はそれらの組み合わせよりなる群から選択することができるが、それらに限定されるものではない。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂の製造に使用されるエピハロヒドリンは、アルキル基(例えば、C1-C4アルキル)で置換又は非置換されたエピハロヒドリンであってもよく、バイオマス原料由来のバイオマス由来の化合物であることが、環境保全性の側面から好ましい。
一実施形態において、前記エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、メチルエピクロロヒドリン、メチルエピブロモヒドリン、メチルエピヨードヒドリン又はそれらの組み合わせよりなる群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0018】
一実施形態によれば、前記アンヒドロ糖アルコールとアンヒドロ糖アルコール以外のジオールとの合計100重量部に対して、反応に用いるエピハロヒドリンの量は、460重量部以上であってもよく、より具体的には、470重量部以上、480重量部以上、490重量部以上、500重量部以上、510重量部以上、520重量部以上、530重量部以上、540重量部以上又は550重量部以上であってもよい。アンヒドロ糖アルコールとアンヒドロ糖アルコール以外のジオールとの合計100重量部と反応させるエピハロヒドリンの使用量の上限は、特に限定されないが、例えば、1,600重量部以下、1,500重量部以下、1,400重量部以下、1,300重量部以下、1,200重量部以下、1,100重量部以下、1,000重量部以下、900重量部以下、800重量部以下、又は700重量部以下であることが経済性の側面から好適である。
【0019】
一実施形態によれば、本発明のエポキシ樹脂は、下記式(1)
【化1】
(式中、R1は、アンヒドロ糖アルコールに由来する2価の有機基であり、
R2は、アンヒドロ糖アルコールに由来する2価の有機基;C3-C12の直鎖状又は分岐状アルキレン基;C3-C12のシクロアルキレン基;又はC6-C20のアリーレン基であり、
R3は、C3-C12の直鎖状又は分岐状アルキレン基;C3-C12のシクロアルキレン基;又はC6-C20のアリーレン基であり、
nは、0~100の整数である。)で示すことができる。
【0020】
より具体的に、
前記アンヒドロ糖アルコールに由来する2価の有機基はジアンヒドロ糖アルコールに由来する2価の有機基、より具体的には、ジアンヒドロヘキシトールに由来する2価の有機基、より具体的には、イソソルビド、イソマンニド又はイソイジドに由来する2価の有機基であってもよく、
前記C3-C12の直鎖状又は分岐状アルキレン基は、ブチレン基又はヘキシレン基であってもよく、
前記C3-C12のシクロアルキレン基は、テトラヒドロフリレン基、シクロヘキシレン基又はシクロヘキサンジメチレン基であってもよく、
前記C6-C10のアリーレン基は、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フリレン基であってもよく、
前記nは、0~50、より具体的には0~20殻だより具体的には0~10の整数であってもよい。
【0021】
本発明の他の側面によれば、(1)塩基性触媒の存在下でアンヒドロ糖アルコールとエピハロヒドリンとの第1予備反応を行う工程;(2)前記工程(1)で得られた反応生成物にアンヒドロ糖アルコール以外のジオールを加えて第2予備反応を行う工程;及び(3)前記工程(2)で得られた反応生成物にさらに塩基性触媒を加え、減圧下で主反応を行う工程;を含み、前記アンヒドロ糖アルコールとアンヒドロ糖アルコール以外のジオールの合計100重量部に対して、前記アンヒドロ糖アルコールの添加量が46~94重量部であり、前記アンヒドロ糖アルコール以外のジオールの添加量が、6~54重量部である、エポキシ樹脂の製造方法が提供される。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂製造方法で使用される前記アンヒドロ糖アルコール、アンヒドロ糖アルコール以外のジオール及びエピハロヒドリン並びにそれらの使用量は、前記で説明したものと同様である。
一実施形態において、前記塩基性触媒は、アルカリ金属系触媒であってもよく、より具体的には、アルカリ金属の水酸化物であってもよく、より具体的には、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)又はそれらの組み合わせよりなる群から選択されてもよい。前記塩基性触媒は、例えば、水溶液(例えば、50%NaOH水溶液)形態で反応混合物に加えてもよい。
【0023】
一実施形態において、前記工程(1)で使用されるエピハロヒドリンの量は、工程(1)で使用されるアンヒドロ糖アルコールと工程(2)で使用されるアンヒドロ糖アルコール以外のジオールとの合計100重量部に対して、例えば、460~1,600重量部であってもよく、より具体的には、500~1,500重量部であってもよく、さらに具体的には、550~1400重量部であってもよいが、これに限定されるものではない。工程(1)におけるエピハロヒドリンの量が、前記水準より少なすぎると、生成されるエポキシ樹脂中に存在するエポキシ基が少なくなるおそれがあり、逆に多すぎると、反応に関与しないエピハロヒドリンの量が多くなりすぎ、生産性が低下する可能性がある。
【0024】
一実施形態において、前記工程(1)で使用される塩基性触媒の量は、例えば、工程(1)で使用されるアンヒドロ糖アルコールと、工程(2)で使用されるアンヒドロ糖アルコール以外のジオールとの合計100重量部に対して、4~11重量部であってもよく、より具体的には4~10重量部であってもよく、さらに具体的には4~8重量部であってもよいが、これに限定されるものではない。塩基性触媒の使用量が、前記範囲を大幅に超えると、副反応生成物の含量が増加する場合がある。
一実施形態において、前記工程(1)の反応時間は、例えば、0.5~6時間であってもよく、より具体的には1~5時間であってもよく、さらに具体的には1.5~4時間であってもよいが、これに限定されるものではない。また、一実施形態において、前記工程(1)の反応温度は、例えば、30~100℃であってもよく、より具体的には40~90℃であってもよく、さらに具体的には50~80℃であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
前記工程(2)で加えるアンヒドロ糖アルコール以外のジオールの量は、工程(1)で加えたアンヒドロ糖アルコールと工程(2)で加えたアンヒドロ糖アルコール以外のジオールとの合計100重量部に対して、6~54重量部である。
一実施形態において、前記工程(2)の反応時間は、例えば、0.5~6時間、より具体的には1~5時間、さらに具体的には1.5~4時間であってもよいが、これに限定されるものではない。また、一実施形態において、前記工程(2)の反応温度は、例えば、30~100℃、より具体的には40~90℃、さらに具体的には50~80℃であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
一実施形態において、前記工程(3)でさらに加えられる塩基性触媒の量は、例えば、工程(1)で使用されるアンヒドロ糖アルコールと工程(2)で使用されるアンヒドロ糖アルコール以外のジオールとの合計100重量部に対して、40~65重量部、より具体的には45~65重量部、さらに具体的には50~65重量部であってもよいが、これに限定されるものではない。工程(3)において、塩基性触媒の添加量が前記より少なすぎると、副反応生成物の含量が増加することがあり、逆に、前記より多すぎると、樹脂中に未反応の塩基が残存し、樹脂のpHが上昇することがある。
【0027】
一実施形態において、前記工程(3)の反応時間は、例えば、1~6時間、より具体的には1.5~5時間、さらに具体的には2~4時間であってもよいが、これに限定されるものではない。また、一実施形態において、前記工程(3)の反応温度は、例えば、30~100℃、より具体的には40~90℃、さらに具体的には50~80℃であってもよいが、これに限定されるものではない。
また、一実施形態において、前記工程(3)の減圧程度は、例えば、300~50トール、より具体的には250~80トール、より具体的には200~100トールであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂製造方法は、(4)前記工程(3)で得られた反応生成物をろ過する工程をさらに含むことができる。
一実施形態によれば、前記工程(4)における反応生成物のろ過は、前記工程(3)の反応終了後に撹拌を停止し、反応生成物を一定時間静置し、ポンプを用いて上層部のみを抽出することによって行うことができる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂製造方法は、さらに、(5)前記工程(4)で得られたろ過物から未反応のエピハロヒドリンを回収する工程を含むことができる。
一実施形態によれば、前記工程(5)におけるエピハロヒドリンの回収は、高温・減圧の条件下(例えば、140℃~160℃の温度及び3~20トール圧力)で行うことができる。
【0030】
本発明のまた別の側面によれば、前記説明した本発明のエポキシ樹脂;及び硬化剤;を含むエポキシ樹脂組成物が提供される。
好ましい一実施形態において、前記組成物は、防曇コーティング用組成物であってもよい。
一実施形態において、前記硬化剤は、例えば、ポリアミン類、ポリカルボン酸無水物、ポリアミド類又はポリチオール類などのエポキシ基と反応する反応性基を2個以上有する化合物であってもよく、より具体的には、芳香核を有さないポリアミン類やポリカルボン酸無水物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記芳香核を有しないポリアミン類としては、例えば、アミノ基を2~5個有する脂肪族ポリアミン化合物又は脂環族ポリアミン化合物であってもよく、より具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、イソホロンジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、又はそれらの組み合わせよりなる群から選択されることもできる。前記ポリオキシアルキレンポリアミンは、ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基をアミノ基に置換した構造を有するポリアミンであり、例えば、2~4個のアミノ基を有するポリオキシアルキレンジ-、トリ-又はテトラアミンであってもよい。
【0032】
前記ポリカルボン酸無水物は、例えば、ジカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物及びテトラカルボン酸無水物であってもよい。
一実施形態において、前記エポキシ樹脂と硬化剤は、エポキシ樹脂内のエポキシ基に対する硬化剤内の反応性基の当量比が0.8~1.2となるような量で使用できるが、これらに限定されない。
一実施形態において、前記エポキシ樹脂組成物は、硬化触媒をさらに含むことができる。このような硬化触媒としては、3級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸類、オニウム塩類、ジシアンジアミド類、有機酸ジヒドラジド類、又はポルフィン類などが挙げられ、より具体的には、3級アミン類、イミダゾール類、ホスフィン類、又はアリルスルホニウム塩などが挙げられる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記で説明した成分に加えて、硬化性エポキシ樹脂組成物に従来使用されている一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
一実施形態において、前記添加剤は、硬化促進剤(例えば、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミンなどの3級アミン)、無機充填剤(例えば、シリカ、アルミナ又はタルク)、シランカップリング剤、離型剤(例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウム)、顔料及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれた一つ以上であってもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法には特別な制限はなく、従来公知の方法及び装置を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物は、前記説明した成分を押出機、混練機又はロールなどで十分に混合及び均質化することにより調製することができる。
【0034】
本発明のさらに別の側面によれば、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させて形成されたコーティング層を表面に含む、コーティングされた物品が提供される。
本発明のエポキシ樹脂組成物を物品表面にコーティングする方法や硬化させる方法には特別な制限はなく、従来公知の方法及び装置を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物をロールコーティングなどの方法で物品表面に塗布し、加熱して硬化させることができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例及び比較例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明の範囲はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0036】
実施例
<バイオエポキシ樹脂の調製>
実施例A1:ジオールとしてイソソルビド50重量部及び1,4-ブタンジオール50重量部を用いたバイオエポキシ樹脂の製造
ディーン・スタークトラップ、撹拌機及び窒素流入口を備えた冷却管を含む1Lのフラスコに、イソソルビド50gとエピクロロヒドリン700gを加え、70℃に昇温しながら溶解させた。溶液が完全に溶解した後、50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液13gを2時間かけて定量注入し、第1次予備反応を行った。次に、前記第1次予備反応生成物に、1,4-ブタンジオール50gを加え、第2次予備反応を2時間行った。次いで、前記第2次予備反応生成物に、70℃の温度及び120トールの減圧下で50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液130gを3時間かけて定量注入し、主反応を行った。主反応中に生成された水は、ディーン・スタークを通して連続的に除去した。主反応終了後、反応生成物をろ紙でろ過し、残った樹脂をアセトンで洗浄した。次いで、ろ過した反応生成物を150℃まで及び、圧力を5トールまでゆっくり昇温及び減圧し、未反応のエピクロロヒドリンを回収して、エポキシ当量が170g/eqの式(1)のエポキシ樹脂を得た。
【0037】
実施例A2:ジオールとしてイソソルビド70重量部及び1,6-ヘキサンジオール30重量部を用いたバイオエポキシ樹脂の製造
ディーン・スタークトラップ、撹拌機及び窒素流入口を備えた冷却管を含む1Lのフラスコに、イソソルビド70g及びエピクロロヒドリン630gを加え、70℃に昇温しながら溶解させた。溶液が完全に溶解した後、50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液11gを2時間かけて定量注入し、第1次予備反応を行った。次に、前記第1次予備反応生成物に、1,6-ヘキサンジオール30gを加え、第2次予備反応を2時間行った。次いで、前記第2次予備反応生成物に、70℃の温度及び120トールの減圧下で50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液109gを3時間かけて定量注入し、主反応を行った。主反応中に生成された水は、ディーン・スタークを通して連続的に除去した。主反応終了後、反応生成物をろ紙でろ過し、残った樹脂をアセトンで洗浄した。次いで、ろ過した反応生成物を150℃の温度及び5トールまでゆっくり昇温及び減圧し、未反応のエピクロロヒドリンを回収して、エポキシ当量が198g/eqの式(1)のエポキシ樹脂を得た。
【0038】
実施例A3:ジオールとしてイソソルビド90重量部及び2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン10重量部を用いたバイオエポキシ樹脂の製造
ディーン・スタークトラップ、撹拌機及び窒素流入口を備えた冷却管を含む1Lのフラスコに、イソソルビド90g及びエピクロロヒドリン550gを加え、70℃まで昇温しながら溶解させた。溶液が完全に溶解した後、50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液9gを2時間かけて定量注入し、第1次予備反応を行った。次いで、前記第1次予備反応生成物に2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン10gを加え、第2次予備反応を2時間行った。次に、前記第2次予備反応生成物に70℃の温度及び120トールの減圧下で50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液100gを3時間かけて定量注入し、主反応を行った。主反応中に生成された水は、ディーン・スタークを通して連続的に除去した。主反応終了後、反応生成物をろ紙でろ過し、残った樹脂をアセトンで洗浄した。次いで、ろ過した反応生成物を150℃の温度及び5トールまでゆっくり昇温及び減圧し、未反応のエピクロロヒドリンを回収して、エポキシ当量が203g/eqの式(1)のエポキシ樹脂を得た。
【0039】
比較例A1:ジオールとしてイソソルビド95重量部及び1,4-ブタンジオール5重量部を用いたバイオエポキシ樹脂の製造
ディーン・スタークトラップ、撹拌機及び窒素流入口を備えた冷却管を含む1Lのフラスコに、イソソルビド95g及びエピクロロヒドリン700gを投入して70℃まで昇温しながら溶解させた。溶液が完全に溶解した後、50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液13gを2時間かけて定量注入し、第1次予備反応を行った。次に、前記第1次予備反応生成物に1,4-ブタンジオール5gを加え、第2次予備反応を2時間行った。次いで、前記2次予備反応生成物に70℃の温度及び120トールの減圧下で50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液130gを3時間かけて定量注入し、主反応を行った。主反応中に生成された水は、ディーン・スタークを通して連続的に除去した。主反応終了後、反応生成物をろ紙でろ過し、残った樹脂をアセトンで洗浄した。次いで、ろ過した反応生成物を150℃の温度及び5トールまでゆっくり昇温及び減圧し、未反応のエピクロロヒドリンを回収して、エポキシ当量が183g/eqのエポキシ樹脂を得た。
【0040】
比較例A2:ジオールとしてイソソルビド45重量部及び1,6-ヘキサンジオール55重量部を用いたバイオエポキシ樹脂の製造
ディーン・スタークトラップ、撹拌機及び窒素流入口を備えた冷却管を含む1Lのフラスコに、イソソルビド45g及びエピクロロヒドリン600gを加え、70℃まで昇温しながら溶解させた。溶液が完全に溶解した後、50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液9gを2時間かけて定量注入し、第1次予備反応を行った。次に、前記第1次予備反応生成物に1,6-ヘキサンジオール55gを加え、第2次予備反応を2時間行った。次いで、前記第2次予備反応生成物に70℃の温度及び120トールの減圧下で50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液90gを3時間かけて定量注入し、主反応を行った。主反応中に生成された水は、ディーン・スタークを通して連続的に除去した。主反応終了後、反応生成物をろ紙でろ過し、残った樹脂をアセトンで洗浄した。次いで、ろ過した反応生成物を150℃の温度及び5トールまでゆっくり昇温及び減圧し、未反応のエピクロロヒドリンを回収して、エポキシ当量が225g/eqのエポキシ樹脂を得た。
【0041】
比較例A3:ジオールとしてイソソルビド100重量部を用いたバイオエポキシ樹脂の製造
ディーン・スタークトラップ、撹拌機及び窒素流入口を備えた冷却管を含む1Lのフラスコに、イソソルビド100g及びエピクロロヒドリン633gを加え、70℃まで昇温しながら溶解させた。溶液が完全に溶解した後、50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液11gを2時間かけて定量注入し、予備反応を行った。次に、前記予備反応生成物に70℃の温度及び120トールの減圧下で50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液109gを3時間かけて定量注入し、主反応を行った。主反応中に生成された水は、ディーン・スタークを通して連続的に除去した。主反応終了後反応生成物をろ紙でろ過し、残った樹脂をアセトンで洗浄した。次いで、ろ過した反応生成物を150℃の温度及び5トールまでゆっくり昇温減圧し、未反応のエピクロロヒドリンを回収して、エポキシ当量が189g/eqのエポキシ樹脂を得た。
【0042】
比較例A4:ジオールとして1,4-ブタンジオール100重量部を用いたバイオエポキシ樹脂の製造
ディーン・スタークトラップ、撹拌機及び窒素流入口を備えた冷却管を含む1Lのフラスコに、1,4-ブタンジオール100g及びエピクロロヒドリン633gを加え、70℃まで昇温しながら溶解させた。溶液が完全に溶解した後、50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液11gを2時間かけて定量注入し、予備反応を行った。次に、前記予備反応生成物に70℃の温度及び120トールの減圧下で50%苛性ソーダ(NaOH)水溶液109gを3時間かけて定量注入し、主反応を行った。主反応中に生成された水は、ディーン・スタークを通して連続的に除去した。主反応終了後、反応生成物をろ紙でろ過し、残った樹脂をアセトンで洗浄した。次いで、ろ過した反応生成物を150℃の温度及び5トールまでゆっくり昇温減圧し、未反応のエピクロロヒドリンを回収して、エポキシ当量が131g/eqであるエポキシ樹脂を得た。
【0043】
<防曇コーティング用組成物の調製>
実施例B1~B3及び比較例B1~B4:標準的な調製方法
エポキシ樹脂として実施例A1~A3及び比較例A1~A4で調製したバイオエポキシ樹脂の各100重量部に対して、硬化剤としてポリオキシアルキレントリアミン(ジェファミンT-403、ハンツマン社製)90重量部を混合して防曇コーティング用組成物を調製し、これを用いてガラス板に厚さ150μmで塗膜を形成し、室温で24時間、次いで80℃で2時間硬化させ、エポキシ樹脂の硬化物をコーティングした試片を作製した。
【0044】
<防曇コーティング用組成物の物性評価>
(1)吸湿・防曇性(防曇効果)
前記実施例B1~B3及び比較例B1~B4のエポキシ樹脂硬化物でコーティングされた試片を、20℃の温度及び相対湿度50%の環境下に1時間放置した後、40℃の温水上に置き、試料が白濁し、水膜による透視画像の歪みが認められるまでの時間を測定した。前記時間が長いほど防曇効果が高くなる。
防曇処理を施していない従来のソーダ石灰ガラスでは、2~5秒以内に曇りが生じることが観察された。実用上の防曇用途に必要な防曇時間は50秒以上、好ましくは70秒以上、より好ましくは100秒以上である。
【0045】
(2)耐水性
前記実施例B1~B3及び比較例B1~B4のエポキシ樹脂硬化物でコーティングした各試片をXカットした後、70℃の温水に浸漬し、コーティング膜が剥離するまでの時間を測定した。前記コーティング膜の剥離時間が長いほど耐水性に優れることを意味し、実用化までの時間は好ましくは3日以上、より好ましくは5日以上である。
【表1】
【0046】
前記表1に示すように、本発明によるバイオエポキシ樹脂を用いた実施例B1~B3の防曇コーティング用組成物の場合、600秒以上の吸湿防曇効果が観察されるなど、優れた防曇効果を有し、同時に70℃の温水に対しても優れた耐水性を示した。
しかし、比較例B1及びB3の防曇コーティング用組成物の場合、耐水性が非常に悪く、比較例B2及びB4の防曇コーティング用組成物の場合、防曇特性が非常に悪かった。
【国際調査報告】