(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】手持ち式ピペット装置を有するシステム
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20240412BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240412BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
G01N35/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565631
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061474
(87)【国際公開番号】W WO2022229384
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】リーザ マリー リューマン
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン フェルトマン
【テーマコード(参考)】
2G052
2G058
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AD09
2G052BA14
2G052CA20
2G052CA25
2G052CA28
2G052CA31
2G052HC07
2G052HC44
2G052HC45
2G052JA06
2G058EA02
2G058EB01
2G058GD05
2G058GD07
4G057AB16
(57)【要約】
本発明は、実験室実験で使用される分注法の構成要素である分注操作のシーケンスを記録するシステムに関する。このシステムは、方法記録の中断とその続行の可能性を実装する。本発明はまた、システムの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの試料を分注するために使用可能な少なくとも1つの手持ち式ピペット装置が使用される、ユーザが定義した実験における分注操作を記録するためのシステムであって、分注パラメータのパラメータセットがピペット装置のプログラム可能な分注操作を定義し、実験が分注操作のシーケンスによって定義される方法を有するものにおいて、
前記システムは、
ディスプレイ、特にタッチ画面を備えたユーザインタフェース装置と、
データ処理装置と、
データ記憶装置と、
前記データ処理装置と少なくとも1つのピペット装置の第2の通信装置との間で無線データ交換を行う第1の通信装置と、
を含み、
前記データ処理装置は、
前記第1の通信装置によって、第1の方法に割り当てられた少なくとも1つの分注操作の実行後に、少なくとも1つの前記第2の通信装置から、前記少なくとも1つのピペット装置の少なくとも1つの分注操作が設定及び実行された際に適用されたパラメータ値を含む記録データを受信し、
前記記録データを第1の方法データセットとしてデータ記憶装置に保存することによって、第1の方法識別データが割り当てられた第1の方法記録を実行し、
第1の方法記録の実行を、前記ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて一時停止し、
一時停止された第1の方法記録を、前記ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて続行し、又は一時停止された第1の方法記録を、前記ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて終了する、
ようにプログラムされているシステム。
【請求項2】
前記データ処理装置は、第1の方法記録を続行するようにプログラムされており、そのために、ユーザ入力及び第1の方法識別データに応じて、第1の方法記録の第1の記録セクション中に保存された第1の方法データセットが選択されて、第1の方法記録の第2の記録セクションの記録が開始され、
特に、前記第1の通信装置によって、少なくとも1つの別の分注操作の実行後に、少なくとも1つの前記第2の通信装置から、少なくとも1つの別の分注操作が設定及び実行された際に適用されたパラメータ値を含む別の記録データが受信され、及び、
第1の方法データセットに前記別の記録データを付加し、それらを前記データ記憶装置に保存することによって、第1の方法記録を続行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
分注パラメータの少なくとも1つのパラメータセットのパラメータ値によって定義された少なくとも1つの分注操作を実行するために、前記データ処理装置との間で無線データ交換を行うための前記第2の通信装置を備えた少なくとも1つの手持ち式ピペット装置を有し、
前記少なくとも1つの手持ち式ピペット装置は特に、
少なくとも1つのピペット容器を接続するための接続部と、
分注操作を実施する際に前記少なくとも1つのピペット容器に少なくとも1つの試料を吸引し、試料を前記少なくとも1つのピペット容器内に保持し、前記少なくとも1つのピペット容器から試料を排出するための電気的に制御された動作要素と、
少なくとも1つの分注パラメータに応じて動作要素を制御するように設計された電気制御装置と、を含み、
及び/又は、
コンピュータデバイス、特に携帯型コンピュータデバイスを有しており、
前記コンピュータデバイスは、
前記ユーザインタフェース装置と、
前記データ処理装置と、
前記第1の通信装置と、
任意選択で前記データ記憶装置と、
を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記データ処理装置は、第1の方法記録の開始後及び第1の方法記録の一時停止中に、前記ユーザインタフェース装置によって、第1の方法の構成要素をなさない少なくとも1つの別の分注操作の少なくとも1つの別のパラメータセットを検出するようにプログラムされており、ここで、少なくとも1つのピペット装置、特にその制御装置は、第1の方法記録の一時停止中に、少なくとも1つの別のパラメータセットに応じて少なくとも1つの分注操作、特にピペット装置の動作要素を制御するように設計されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記データ処理装置は、第1の方法記録の第2の記録セクションの記録を開始する前に第1の方法記録を一時停止した後、第1の方法識別データとは異なる第2の方法識別データが割り当てられた第2の方法記録を実行するようにプログラムされており、
そのために、特に前記データ処理装置は、
前記第1の通信装置によって、第2の方法に割り当てられた少なくとも1つの分注操作の実行後に、第2の方法の少なくとも1つの分注操作が設定及び実行された際に適用されたパラメータ値を含む記録データを、少なくとも1つの前記第2の通信装置から受信し、
前記記録データを第2の方法データセットとして前記データ記憶装置に保存することによって第2の方法記録を実行し、
第2の方法記録の実行を、前記ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて一時停止し、
一時停止された第2の方法記録を、前記ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて続行し、又は一時停止された第2の方法記録を、前記ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて終了する、
請求項2、又は請求項2及び請求項3と請求項4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
第1の方法で分注される第1の試料と、第1の方法では使用されないが第2の方法で分注される第2の試料とを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記データ処理装置は、前記ユーザインタフェース装置のディスプレイに、
キーを含む画面ページを表示し、前記キーを操作若しくはタッチすると方法記録が開始するようにプログラムされている、
請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記データ処理装置は、前記ユーザインタフェース装置のディスプレイに、
少なくとも1つの実行中の、即ち開始して終了されていない方法記録のタイトルが表示され、特に複数の実行中の方法記録のタイトルが一覧表示される画面ページを表示し、
対応する方法記録のステータスを示す少なくとも1つの情報フィールドを表示し、このステータスは「記録は一時停止中である」又は「記録は実行中である」又は「記録は終了した」を含むことができる、
ようにプログラムされている、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記データ処理装置は、前記ユーザインタフェース装置のディスプレイに、
少なくとも1つの実行中の方法記録のタイトルが表示され、特に複数の実行中の方法記録のタイトルが一覧表示される画面ページを表示し、
少なくとも1つのキーを表示し、前記キーを操作若しくはタッチすると、前記キーと関連付けられている少なくとも1つの以前一時停止された方法記録を選択し、
前記キーを表示し、前記キーを操作若しくはタッチすると、特に少なくとも1つの他の方法が一時停止されている間に、選択された一時停止中の方法記録を続行する、
ようにプログラムされている、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記データ処理装置は、前記ユーザインタフェース装置のディスプレイに、
少なくとも1つの実行中の方法記録のタイトルが表示され、特に複数の実行中の方法記録のタイトルが一覧表示される画面ページを表示し、
少なくとも1つのキーを表示し、前記キーを操作若しくはタッチすると、前記キーと関連付けられている少なくとも1つの以前一時停止された方法記録を選択し、前記キーはこの方法記録に関する情報を表示させ、この方法記録は、特にそれぞれ好ましくは方法のイベント、特に方法の時間的シーケンス、方法の時間データ、特に1つ以上のイベント、特に方法の開始、一時停止及び/又は終了のタイムスタンプ、方法の使用者、方法で使用された及び/又は使用されなかったピペット装置に関する情報を含む、
ようにプログラムされている、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記データ処理装置は、少なくとも1つの終了した方法記録の少なくとも1つの方法データセットを外部データ処理装置に転送可能なファイルとして提供し、或いはファイルの内容が、印刷、画面への表示、又はシステムの外部データ処理装置若しくはシステムの構成要素ではないサーバへの転送によって出力可能であるようにプログラムされている、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記データ処理装置は、
前記ユーザインタフェース装置から、少なくとも1つのパラメータセットのユーザ定義可能な分注パラメータのパラメータ値を取得し、これらのパラメータ値は少なくとも1つのピペット装置によって実行される方法、特に第1の方法、第2の方法、及びその他の方法の少なくとも1つの分注操作を定義し、
前記第1の通信装置によって、少なくとも1つのパラメータセットのこれらのパラメータ値を少なくとも1つの手持ち式ピペット装置に送信して、これらのパラメータ値を用いてピペット装置を方法の少なくとも1つの分注操作を実行するために設定することを可能にする、
ようにプログラムされている、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも1つのピペット装置が第2のデータ処理装置を有し、この第2のデータ処理装置は、
前記第2の通信装置によって少なくとも1つのパラメータセットのパラメータ値を取得して、これらのパラメータ値を用いてピペット装置を方法の少なくとも1つの分注操作を実行するために設定し、
パラメータ値を用いて設定された少なくとも1つの分注操作を、特に操作要素の操作により手動で生成された開始信号を検知することによって開始し、
パラメータ値を用いて設定された少なくとも1つの分注操作の終了又は終了後に、この分注操作を設定するために適用されたパラメータ値を記録データとして前記第1の通信装置に送信する、
ようにプログラムされている、請求項1から12のいずれか一項、特に3項に記載のシステム。
【請求項14】
前記データ処理装置は、第1の方法記録の一時停止中に前記第2の通信装置から前記第1の通信装置に送信されたデータ、特に前記記録データを、第1の方法記録の構成要素として第1の方法データセットに保存せず、及び/又は、
特に、第1の方法記録の一時停止中に前記第2の通信装置から前記第1の通信装置に送信されたデータ、特に前記記録データを、他の、特に第2の方法記録の構成要素として、この方法記録に割り当てられた別の、特に第2の方法データセットに保存する、
ようにプログラムされている、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のシステムを適用するための方法であって、
a)ユーザ入力に応じて、第1の方法記録の第1の記録セクションの記録を開始し、そこで第1の実験セクションのパラメータセットの第1のシーケンスの第1の部分量が記録されて、第1の方法データセットとして前記データ記憶装置に保存されるステップと、
b)ユーザ入力に応じて、第1の方法記録を一時停止するステップと、
c)ユーザ入力に応じて、及び第1の方法識別データに応じて、保存されている第1の方法記録を選択して、第1の実験を記録する第1の方法記録を続行し、そのために、第1の方法記録の第2の記録セクションの記録が開始されて、第2の実験セクションのパラメータセットの第1のシーケンスの第2の部分量が記録されるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの手持ち式ピペット装置を含むシステム、及びそれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような手持ち式ピペット装置は、医学、生物学、生化学、化学、及びその他の実験究室で一般的に使用されている。それらは実験室内で少量の流体試料の移送や搬送、特に試料の正確な調量に用いられる。このような手持ち式ピペット装置の既知の2つのタイプは、液体の吸引若しくは排出の物理的原理がそれぞれ異なる。液体の調量は、空気置換原理によって行われるか、又は直接置換原理が使用される。第1タイプの装置は空気置換式ピペットと呼ばれ、第2タイプは直接置換式ピペットと呼ばれる。
【0003】
空気置換式ピペットは、ピストンシリンダーシステムを使用して本来の測定が行われている。空気層が、プラスチックチップに吸引された試料を、ピペット内のピストンから分離する。ピストンを上方にスライドさせると、チップ内に負圧が発生して、液体がチップ内に上昇する。ピストンによって動かされる空気層は、チップ内の液量を吊り下げる弾性バネのような働きをする。直接置換の原理で作動する手持ち式ピペット装置では、ピストンと一体化されたチップが搬送容器として使用される。分注操作中はこのピストンがピペット装置のピストンロッドと連結されて、本来の分注操作を引き受ける。この場合、ピストンはチップの全内部容量を置換できるので、吸引された試料とピストン先端との間に空気層は形成されない。両タイプの手持ち式ピペット装置、即ち空気置換式ピペットと直接置換ピペットは、それぞれピストンストロークピペットの概念に包含される。
【0004】
手持ち式ピペット装置には、ピストンシステムが手動で駆動されるものと、電動で駆動されるものがある。電動の手持ち式ピストンストロークピペットは、少なくとも1つの分注プログラムによって制御可能であることが多く、自動化又は半自動化された方法で少なくとも1種類の分注操作を実行する。
【0005】
手持ち式ピペットは、人間の利用者が片手で利用できるように設計されている。しかし、また、ロボット化されたグリップアームを有する自動実験装置も存在し、その把持ツールは手持ち式ピペットを操作するために人間の手の活動を模擬し、手持ち式ピペットを操り動かすように設計されている。
【0006】
ピペット装置で1回の操作によって排出される試料の量は、装置内に吸引された試料の量に対応することができる。しかし、また、複数の排出量に対応して吸引された試料の量が、段階的に再び排出されるようにすることもできる。更に、シングルチャンネルピペット装置とマルチチャンネルピペット装置が区別され、シングルチャンネルピペット装置は単一の排出/吸引チャンネルのみを含み、マルチチャンネルピペット装置は複数の排出/吸引チャンネルを含み、これらは特に複数の試料の並行排出又は吸引を可能にする。
【0007】
本発明の範囲内で説明される手持ち式ピペット装置は、好ましくは、これに限定されるものではないが、コンピュータ制御された電動ピストン駆動の手持ち式ピストンストロークピペットであり、手持ち式電動ピペット装置又は手持ち式電動ピストンストロークピペットとも呼ばれる。
【0008】
先行技術による手持ち式電子空気置換式ピペットの例は、エッペンドルフ社(ドイツ・ハンブルク)のエクスプローラー(登録商標)及びエクスプローラー(登録商標)プラスであり、手持ち式電子ディスペンサーの例は、エッペンドルフ社(ドイツ、ハンブルク)のマルチペット(登録商標)E3及びマルチペット(登録商標)E3xである。
【0009】
電動ピペット装置は、非電動ピペット装置と比較して、多数の機能を簡単な方法で実行できるため、多くの利点がある。特に電動ピペット装置は、プログラム制御された分注操作を自動化又は半自動化することにより、分注操作を簡素化することができる。そのような分注操作を相応の分注プログラムを用いて制御するための典型的な分注パラメータは、液体を吸引又は排出する際の容量、それらの順序及び繰り返し、及び該当する場合はこれらの操作を時間的に配分する際の時間的パラメータに関するものである。電動ピペット装置は、単一の動作モード又は複数の動作モードで動作するように設計できる。動作モードは、ピペット装置の分注操作に影響を与えたり制御したりするピペット装置の1つ以上の分注パラメータのセットが、自動的に照会、設定及び/又は適用されるようにすることができる。
【0010】
タッチセンシティブ画面を使用した手持ち式ピペット装置が知られており、ユーザは分注パラメータを入力することができ、これらの分注パラメータによって手持ち式ピペット装置の分注操作を少なくとも半自動化して実行することが可能である。
【0011】
簡便な分注システムが、ドイツ、ハンブルグのエッペンドルフ社から、「VisioNize(登録商標)ピペットマネージャ」又は「コネクテッドピペット」という名称で販売されている。手持ち式ピペット装置と、これとワイヤレスに通信する携帯PCを、1つのデバイスに組み合わせることにより、生産的で効率的な作業環境が実現する。携帯PCによって、ピペット装置を設定することが可能であり、特に1つ以上の分注操作の分注パラメータを規定することができる。携帯PCはタッチ画面を備えた操作モジュールである。機能の中心は「VisioNize(登録商標)ピペットマネージャ」と呼ばれるソフトウェアであり、ワイヤレスデータ接続を介して1つ以上の手持ち式ピペット装置の設定を可能にする。このシステムでは、同じタイプ又は異なるタイプの複数のピペット装置を制御できる。
【0012】
実験室作業を効率的に行う上で重要な点は、実験において実行される分注方法の再現性であり、これは実験試料で行われる分注操作のシーケンスを含む。上述した分注システムには、本発明の基礎となる文書化機能が導入された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、ユーザが定義した実験における分注操作を記録するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、特に独立請求項に記載の主題によって解決される。好適な構成は従属請求項の主題であり、発明の詳細な説明にも記載されている。
【0015】
本発明は、少なくとも1つの試料の分注に少なくとも1つの手持ち式ピペット装置が使用される、ユーザが定義した実験における分注操作を記録するシステムに関する。実験は、分注操作のシーケンスによって定義される方法を含んでいる。分注パラメータのパラメータセットが分注操作を定義する。分注操作は、ピペット装置によって自動的又は半自動的に行われる一連のステップであり、多くの場合にユーザからの1つ以上のトリガー入力を必要とする。これらのステップは、特に動作要素、特にピストンの電子/ソフトウェア制御された又は手動制御された、1つ以上の液体実験試料を分注する動作を含んでいる。この文脈において「分注」は、少なくとも1つの液体試料を少なくとも1つのピペット容器、特にピペットチップ又はディスペンサーチップに吸引し、次いで試料を少なくとも1つのピペット容器に保持し、そして少なくとも1つのピペット容器から1つ以上のターゲット容器に試料を排出することを含んでいる。分注パラメータによって定義された分注操作は、ピペット装置の動作モードに割り当てることができる。ピペット装置は、多数の適用シナリオにおいてユーザを支援する多数の動作モードを提供することができる。これらの適用シナリオについては、以下で更に説明する。
【0016】
分注操作が使用される実験室での実験で実施される活動は、最終的に各ユーザが個別に指定できるか、少なくとも影響を与えることができる手順に従う。1つ以上の液体試料を初期状態から最終状態まで処理するためにユーザが実行する活動の合計が、実験と呼ばれる。典型的には、多数の試料が使用されるだけでなく、多数の異なるピペット装置とそれに適合するピペット容器が使用され、ピペット容器は特に公称容積が異なる場合がある。実験では、個々の分注操作をユーザが実験帳に手動で記録する必要がなく、電子/ソフトウェア制御されて把握されるならば、効率はプロトコル機能によって著しく改善される。
【0017】
方法は事前に定義(規定)されていないことが望ましい。特別に重要なことは、個々に発生する方法を記録できることである。そうすることにより、本発明によるシステム若しくは本発明による方法の使用が機能的、且つフレキシブルになる。このことは、特に実験が常に所定のプロトコルに従わなければならない先行技術のシステムと比較した場合に当てはまる。本発明においては、方法記録そのものを方法の定義に使用し、次にそれをその後の新たな利用や他のユーザのために提供することができる。これは、方法記録が単に文書化ツールとして適していることを超えるものである。
【0018】
方法は、実施するユーザによってその実施と記録を通して初めて定義されることが好ましい。方法は、特に事前に定義されることはなく、特に所定の計画に従って実施されることもない。ユーザは自分の行動によって、即ち分注操作を選択し実行することによって方法を規定する。その限りにおいて、方法は事前に知られていない。方法は特に予めプログラムされた分注操作の定義及び/又はシーケンスによって定義されていない。
【0019】
実験は、分注操作のシーケンスによって定義される方法を含んでいる。方法がこれから定義される限り、この方法は好ましくはまだ定義されていないと見なされる。方法が定義されるのは、方法の再現に必要なパラメータ、特に方法の分注操作を定義するのに必要な分注パラメータ、及び分注操作のシーケンス、特にそれらを実行する順序及び/又はシーケンスの時間的計画が、システムのデータ記憶装置に保存されたときである。方法の定義が完了するのは、方法を実施するユーザがユーザインタフェース装置に入力することによって方法を終了し、それによって方法記録が終了し、最終的に方法が知られ規定されたときである。実験は特に、事前に知られておらず、分注操作のシーケンスを実施することによって初めて定義される方法を含んでいる。
【0020】
この方法は、好ましくはユーザによって定義され、特に事前に定義されていない。
【0021】
本発明によるシステム及び本発明による方法のより一般的な実施においては、特定のユーザ、又は交替するユーザ、又はユーザの役割が同じであるか異なるユーザ、即ち任意選択でデータ処理装置によって付与されるユーザ権限に関して同じであるか異なるユーザが、方法及び/又はその方法記録を定義及び/又は実施するか否かは重要ではない。ここでは、ユーザ認証が実装されないか、又は代替的にユーザ認証が実装されるようにすることが可能である。システム若しくはデータ処理装置は、方法、特に第1の方法及び/又は第2の方法が、ユーザの身元とは無関係に定義及び/又は実施できるようにプログラムされていることが好ましい。システム若しくはデータ処理装置は、方法の実施がユーザの身元とは無関係に方法記録の形で文書化できるようにプログラムされていることが好ましい。これらの措置により、相応に設計されたシステムはフレキシブルに使用することが可能である。なぜなら、特にシステムの使用者が各々実験を構想し、関連する方法を規定し、記録し、一時停止し、続行し、若しくは終了することができるからである。
【0022】
しかしまた、ユーザ認証が実装されていること、そしてシステム若しくはデータ処理装置が、ユーザの身元に応じて方法、特に第1の方法及び/又は第2の方法が定義され実施されるようにプログラムされていることも可能であり好適である。システム若しくはデータ処理装置は、方法の実施をユーザの身元に応じて方法記録の形式で文書化できるようにプログラムされていることが好ましい。データ処理装置は、システムの利用者を、特に認証方法によって区別するようにプログラムされていることが好ましい。ユーザは、ユーザグループ固有の権限を持つことができる。特に、このユーザは、管理者ユーザであっても使用者ユーザであってもよく、これらの両役割には、システムのデータ記憶装置に保存された割り当てリストに従って異なるユーザ権限が帰せられる。割り当てリストには、好ましくは各ユーザの役割に関連して、ファイルの読み取り及び書き込み及び/又はシステムの機能へのアクセスに関する相応のユーザ権限が記載されている。
【0023】
方法は、好ましくはユーザが定義した分注操作のシーケンスを含み、その順序及び/又は分注パラメータはユーザ(特に「ユーザ」の用語と同義に「利用者」の用語を使用できる)によって規定されることができる。ある方法の分注操作の順序を定義するユーザは特に、例えば、システムのピペット装置の操作要素を操作して、当該方法の分注操作を開始若しくはスタートすることによって方法を実施するユーザでもあり、ユーザインタフェース装置に入力することによって第1の方法記録の実行を一時停止するユーザでもあり、及び/又はユーザインタフェース装置に入力することによって一時停止された第1の方法記録を続行するユーザでもあり、又はユーザインタフェース装置に入力することによって一時停止された第1の方法記録を終了するユーザでもある。ここで、上述したように、システム若しくはデータ処理装置は、ユーザ認証が実装されるか、又は代替的にユーザ認証が実装されないようにプログラムできる。
【0024】
ある方法の分注操作のシーケンスを定義するユーザは、特に、例えばシステムのピペット装置の操作要素を操作することによって当該方法の分注操作を開始若しくはスタートすることによって、方法を実施するユーザでもある。ある方法の分注操作のシーケンスを定義するユーザは特に、ユーザインタフェース装置に入力することによって、第1の方法記録の実行を一時停止するユーザでもある。ユーザは、特に、ユーザインタフェース装置に入力することによって、第1の方法記録の実行を一時停止するユーザでもある。ユーザは、特に、ユーザインタフェース装置に入力することによって、一時停止された第1の方法記録を続行し、又はユーザインタフェース装置に入力することによって、一時停止された第1の方法記録を終了するユーザである。
【0025】
本発明によるシステムは、ユーザが定義した実験における分注操作を記録するためのシステムであり、この実験は特に事前に知られた方法を含んでおらず、その限りで実施するユーザによって初めて定義される。
【0026】
基本的には、本発明によるシステムにおいて、方法は方法パラメータデータセットによって規定されることも可能であり好ましく、この方法パラメータデータセットはシステムのデータ記憶装置に保存されていて、データ記憶装置によって読み取られて、ユーザが方法パラメータデータセットにおいて規定された所定の分注操作のシーケンスを実施できる。この場合、実施するユーザが方法を実施することによって自分で方法を定義できるという利点を失うが、方法記録による文書化という利点は維持されている。この方法記録には好ましくは、特に方法パラメータデータ記録に含まれていない一連のデータ、例えば予め定義された方法を実施するユーザによって個別に選択された時間的パラメータ、及び/又は好ましくはセンサデータ、例えばピペット装置の傾斜角度、及び/又は加速度データ、及び/又はピペット装置又はシステムのセンサ装置で検出できる環境パラメータデータ(例えば温度、湿度)も一緒に保存することができる。
【0027】
電動ピペット装置では、必要な分注パラメータが、実行前にユーザによって規定されるのが一般的である。この目的のために、データ処理装置は、ユーザインタフェース装置、例えばタッチ画面によって、少なくとも1つのパラメータセットのユーザ定義可能な分注パラメータのパラメータ値を取得するようにプログラムされており、これらのパラメータ値は、少なくとも1つの手持ち式ピペット装置によって実行される少なくとも1つの分注操作を定義する。
【0028】
ピペット装置は、好ましくは少なくとも1つの操作要素を有しており、これを用いてユーザはピペット装置への入力を行うことができ、特に、続いて自動的に実行される分注操作及び/又はその部分操作を開始することができる。分注操作の過程における少なくとも1つの操作要素の操作、及び/又はある方法の1つ以上の分注操作の過程におけるイベントの合計は、データ処理装置によって記録データに記録できるとともに、好ましくはそれぞれ任意選択で、使用された動作モード、分注操作で適用された分注パラメータ、分注操作又はそれらの部分操作の開始時刻及び/又は終了時刻、使用した個々のピペット装置の識別データ、例えばシリアル番号、場合により事前に認証又は選択されたユーザ(通常は実験の実施責任者)の識別データ、並びに実験室の実験に関与する他のデバイス及び/又はセンサによって提供される可能性のあるその他のデータの少なくとも1つに関する情報も記録できる。
【0029】
システムにおいて文書化機能は、相応にプログラムされたデータ処理装置によって実行される方法記録がシステム特徴として設けられていることによって実装される。この方法記録が「第1の方法記録」と呼ばれる場合、これはこのシステム特徴への参照を可能にするための命名にすぎない。システム内部では、第1の方法記録は「第1の方法識別データ」を介して参照できる。本明細書の範囲内で対象を表示するために使用される「第1」及び「第2」、場合によって「第3」などの用語は、通常は命名として理解されるべきであり、原則として順序を表したり数を指示したりする機能を持たない。但し、それぞれの文脈でこの機能が該当する場合はこの限りではない。特に「第1の方法記録」及び「第2の方法記録」という呼称は、第3及びそれ以上の方法記録が可能ではないことを意味するものではなく、この文脈における「第1」及び「第2」という呼称は、主として方法記録を区別する役割を果たす。
【0030】
本発明は明示的に、複数の方法記録を並行して実行できるようになっている。データ処理装置は、実質的に並行して行われる複数の分注操作のパラメータ値を処理し、特に同じ方法記録又は異なる方法記録に保存するようにプログラムすることができる。例えば、例外的なケースでユーザがそれぞれ片手で特定のピペット装置を同時に操作し、それらのパラメータ値が実質的に並行して第1の通信装置に送信されて、同じ方法記録又は異なる方法記録に保存されることが可能であろう。このタイプの並行記録は、本発明によるシステムによって可能になる重なり合った記録と混同されてはならない。
【0031】
データ処理装置は、好ましくは少なくとも1つのピペット装置を第1の方法で使用するために登録するようにプログラムされており、そのために、特にピペット装置の識別データ、特にシリアル番号が、特に第1の方法の識別データと共に第1の方法データセットに保存される。
【0032】
データ処理装置は、好ましくはピペット装置を第1の方法で使用するために登録する際に、ピペット装置の識別データを基にして、ピペット装置が既に別の実行中の、即ち開始されてまだ終了していない方法記録に登録されているか否かをチェックし、特に登録されている場合は、第1のピペット装置を第1の方法で使用するために登録しないようにプログラムされている。このようにして、ピペット装置は正確に1つの実行中の方法記録のみに割り当てられ、これにより利用者側の混同が防がれ、このシステムを用いる作業の安全性が向上する。
【0033】
方法記録を一時停止することは、一方では、文書化されない作業、即ち少なくとも記録の一時停止の前に第1の方法で使用するために登録されている若しくは登録されていた少なくとも1つのピペット装置を使用して分注操作を行うことを可能にする。他方では、この少なくとも1つのピペット装置は、登録により、記録の一時停止中に開始された又は実行中の他の方法記録に割り当てることができ、これにより文書化機能を実質的に継続的に利用しながら、既存のピペット装置をより効率的に使用することができる。したがって、このようなタイプの方法記録の多重化は、本発明の好適な発展形態である。
【0034】
第1の方法記録中、データ記憶装置には、特に第1の実験において使用される少なくとも1つの手持ち式ピペット装置を用いて実行される分注操作の第1のシーケンスに対応するパラメータセットの第1のシーケンスが記録される。第1の方法記録の第1の記録セクションでは、特に分注操作の第1のシーケンスの第1の部分量が第1の方法データセットに保存される。第1の方法記録の第2の記録セクションでは、特に分注操作の第1のシーケンスの第2の部分量が第1の方法データセットに保存される。第1の方法記録の第3(i番目、iは自然数)の記録セクションでは、特に分注操作の第1のシーケンスの第3(i番目)の部分量が第1の方法データセットに保存される。これらの記録セクション中には、特にそれぞれ記録の一時停止がある。したがって、方法記録の分注操作は、特に1つ以上の一時停止によって中断され、連続的に第1の方法データセットに集められて保存される。一時停止期間は時間的に制限されず、ユーザの手順に依存する。
【0035】
本発明によるシステム若しくは文書化機能は、好ましくは方法記録を一時停止できることを特徴とする。これは、方法記録の記録セクションの記録の時間インターバルの間に時間的なずれが存在することを専ら意味するものではない。むしろ好ましくは、ユーザはシステム、特にユーザインタフェース装置に手動で入力することによって、即ちシステム、特にユーザインタフェース装置へのユーザ入力に応じて、方法記録をアクティブに一時停止するようになっている。これによりユーザは、特に1つ以上の分注操作を実行することができ、又はシステムのピペット装置、若しくはある方法で使用するために登録されたピペット装置で他のイベント、例えば設定を実行することができ、これらはこの場合は方法記録に記録されない。一時停止後、方法記録は選択により続行又は終了することができる。データ処理装置は、好ましくは一時停止の状態で、ユーザの選択により第1の方法記録を続行し又は終了することが可能であるようにプログラムされている。
【0036】
「ユーザ入力に応じて」という語句は、ユーザインタフェース装置を介して行われたユーザ入力が検出されること、及び任意選択で、その内容が評価されることを意味し、また、このユーザ入力が検出されると、「ユーザ入力に応じて」という語句の文脈に応じて、方法記録が開始、一時停止又は続行されることを意味する。
【0037】
一時停止(ポーズとも呼ばれる)は、方法記録の終了と同じ意味ではない。一時停止オプションは、実験室で実験を行い、それをプロトコル化する際に、システムにこれまで知られていなかったフレキシビリティを与える。データ処理装置は好ましくは、第1の方法データセットに保存することにより、終了によって「終了した」というステータスを取得した方法記録に、それ以上の記録データ、特にパラメータ値が、第1の方法データセットに保存することによって追加できないようにプログラムされている。しかしながら、例えば第1の方法データセットの検出されない操作を除外するために、第1の方法記録の終了後に第1の方法データセットに検証値を割り当てることはできる。
【0038】
データ処理装置は、好ましくは、
a)ユーザ入力に応じて、第1の方法記録の第1の記録セクションの記録を開始し、そこで第1の実験セクションのパラメータセットの第1のシーケンスの第1の部分量が記録されて、第1の方法データセットとしてデータ記憶装置に保存され、
b)ユーザ入力に応じて、第1の方法記録を一時停止する、
ようにプログラムされている。
【0039】
好ましくは、c)ユーザ入力に応じて、及び第1の方法識別データに応じて、保存されている第1の方法記録を選択して、第1の実験を記録する第1の方法記録を終了又は続行し、そのために、続行する場合は、第1の方法記録の第2の記録セクションの記録が開始されて、第2の実験セクションのパラメータセットの第1のシーケンスの第2の部分量が記録されるようになっている。第1の方法記録を終了する場合は、データ処理装置は、好ましくは第1の方法記録のそれ以上の続行及び/又は特にその後からの変更は可能ではないようにプログラムされる。
【0040】
第1の方法記録の続行可能性により、プロトコル化の多数の有利な適用シナリオが生じ、N>1の数の方法をインタリーブし、並行して実施し、記録することもできる。このために、第1の方法記録を一時停止し、第2の方法記録を続行又は開始し、第2の方法記録を一時停止し、第3の方法記録を続行又は開始し、第3の方法記録を一時停止することなどができる。
【0041】
システムを使用するための方法は、以下の連続的な作業形態を設けることができ、これは特に記録セクションの構成要素とすることができる、次の連続的に実施されるステップを含んでいる。
a1)ユーザがユーザインタフェース装置で指定する少なくとも1つの第1のパラメータセットにより、少なくとも1つのピペット装置を設定するステップ
a2)少なくとも1つの第1のパラメータセットによる少なくとも1つのピペット装置の設定に従って、少なくとも1つの分注操作を実行するステップ
a3)第1のパラメータセットのパラメータ値を第1の方法データセットに記録するステップ
a4)ユーザがユーザインタフェース装置で指定する少なくとも第2のパラメータセットにより、少なくとも1つのピペット装置を設定するステップ
a5)少なくとも1つの第2のパラメータセットによる少なくとも1つのピペット装置の設定に従って、少なくとも1つの分注操作を実行するステップ
a6)第1のパラメータセットのパラメータ値を第1の方法データセットに記録するステップ
【0042】
特に、以下のシーケンスは、相応に一般的に複数回若しくは任意の頻度で、任意の各方法記録に対して繰り返すことができる(j=1・・・n、nは自然数)。
a_i)ユーザがユーザインタフェース装置で指定する少なくとも1つのj番目のパラメータセットにより、少なくとも1つのピペット装置を設定するステップ
a_ii)少なくとも1つのj番目のパラメータセットによる少なくとも1つのピペット装置の設定に従って、少なくとも1つの分注操作を実行するステップ
a_iii)j番目のパラメータセットのパラメータ値を第1の方法データセットに記録するステップ
【0043】
分注操作の連続的設定の代替として、データ処理装置は、ユーザがユーザインタフェース装置で定義したパラメータセットのシーケンスを検知し、このシーケンスによって少なくとも1つのピペット装置は複数の連続的分注操作に対して設定され、ここで、対応する記録データを、例えばパラメータセットによって定義されたそれぞれの分注操作の終了後に、連続的に第1の通信装置に記録の目的で送信できるか、或いは記録データを連続的ではなく継続的に、例えば方法又は記録セクションの終了時に、第1の通信装置に記録の目的で送信できるようにプログラムすることができよう。
【0044】
方法記録は同じユーザ又は異なるユーザに割り当てることができる。方法記録は時間的にインタリーブされているので、例えば識別データによって識別される同一のピペット装置を、インタリーブされた複数の方法記録において利用することが可能になる。
【0045】
典型的な適用シナリオでは、ユーザは第1の実験において、第1の試料に対して第1の方法を実行し、例えば原液、例えば細胞懸濁液を個別容器に分割し、部分量を個々の試験管に分配し、各試験管に混合しようとする液体を分注する。次いで個々の試験管内の試料の遠心分離が必要になることがある。このとき第1の実験の内部で待ち時間が発生する。ユーザは第1の方法記録を一時停止することにより、特に既に第1の方法で使用され、特に登録によって第1の方法に割り当てられているのと同じピペット装置を使用して、第2の、同様に記録されている実験を開始することができ、非生産的な作業の中断を導入する必要はない。原則的に、インタリーブされて記録可能な方法の数Nは限定されておらず、特にN>5、N>10、特にNは1~100である。
【0046】
データ処理装置は、認証手順を実行するようにプログラムされていることが好ましく、ユーザは「セッション」でログインし、このユーザに応じてユーザ識別データが、特に既存のユーザ識別データのコレクションから選択することによって、又は新たに決定された個々のユーザ識別データを割り当てることによって決定される。方法記録は、特にユーザ識別データに応じて行われ、特にユーザ識別データは方法記録と共にデータ記憶装置に保存される。
【0047】
データ処理装置は、システムの利用者を、特に認証手順によって区別するようにプログラムされていることが好ましい。この手順は、任意選択の、特に利用者によってアクティブ化及び/又は非アクティブ化できる利用者管理の構成要素であると見なされ、この利用者は利用者グループ固有の権限を持つことができる。特にこの利用者は、管理者ユーザとすることができ、標準ユーザと比較して利用者管理をアクティブ化及び/又は非アクティブ化する権限を持つことができる。利用者管理がアクティブ化されていると、各利用者のみが当該利用者に割り当てられた方法にアクセスし、この方法を続行することができる。利用者管理が非アクティブ化されていると、様々な利用者が方法にアクセスすることができる(したがって方法を続行することもできる)。例えば、実験室スタッフ1は午前中にある方法を開始し、実験室スタッフ2は午後にこの方法を続行する。
【0048】
少なくとも1つの液体試料を分注するための手持ち式ピペット装置は、空気置換原理に従って作動するピストンストロークピペット、又は直接変位原理に従って作動する反復ピペットとすることができ、ディスペンサーとも呼ばれる。手持ち式ピペット装置は、特に、
少なくとも1つのピペット容器を接続するための接続部と、
分注操作を実施する際に少なくとも1つのピペット容器に少なくとも1つの試料を吸引し、試料を少なくとも1つのピペット容器内に保持し、少なくとも1つのピペット容器から試料を排出するための電気的に制御された動作要素と、
少なくとも1つの分注パラメータに応じて動作要素を制御するように設計された電気制御装置と、好ましくは、
ユーザ定義可能な分注パラメータのパラメータ値を、ピペット装置から離れた場所にあるコンピュータデバイス、特に携帯PC、特にタブレットPCから受信するための通信装置と、を含んでいる。
【0049】
特にこの携帯型コンピュータデバイスは、それぞれ好ましくは、
上記ディスプレイ付きユーザインタフェース装置と、
上記データ処理装置と、
任意選択で、ユーザ定義可能な分注パラメータのパラメータ値を、少なくとも1つの手持ち式ピペット装置の少なくとも1つの第2の通信装置に送信するための第1の通信装置と、
任意選択で、上記データ記憶装置と、
上記のコンポーネントが配置され、特にユーザが片手で保持でき、コンピュータデバイスを特に片手で操作できるハウジングと、を有する。
【0050】
コンポーネントの携帯性により、システムは特にフレキシブルで実験室での使用が容易である。
【0051】
携帯型コンピュータデバイスの代わりに、携帯型でないコンピュータデバイス、例えば据え置き型PCを使用することもできる。ディスプレイ付きユーザインタフェース装置も、原理的にはピペット装置の構成要素とすることができる。
【0052】
データ処理装置は、好ましくは、ステップb)において第1の方法記録を一時停止した後、ユーザインタフェース装置によって、分注操作の第1のシーケンスの構成要素をなさない少なくとも1つの別の分注操作の少なくとも1つの別のパラメータセットを検出するようにプログラムされており、ここで、特に制御装置は、ステップb)において第1の方法記録を一時停止した後、少なくとも1つの別のパラメータセットに応じて動作要素を制御するように設計されている。このステップにより、方法記録を一時停止することにより、プロトコル化された実験を一時停止することも可能になるという利点が実現され、一時停止中に、少なくともユーザによって設定でき、又はユーザによって実際に実施することもできる別の分注操作の形で生産的に作業を続けることができる。
【0053】
データ処理装置は、好ましくは、ステップb)において第1の方法記録を一時停止した後、ステップc)において第1の方法記録の第2の記録セクションの記録を開始する前に、第2の方法記録を実行するようにプログラムされている。第2の方法記録は、第2の(第1の方法識別データとは異なる)方法識別データが割り当てられていて、第2の実験において使用される、少なくとも1つの手持ち式ピペット装置によって実行される分注操作の第2のシーケンスに対応するパラメータセットの第2のシーケンスをデータ記憶装置に記録し、特にこれらの分注操作の時間データも記録する。これらのステップにより、第1の実験の一時停止中に、第2の実験を開始でき記録することもでき、その際に第1の実験の記録を妨害することはなく、後で続行又は終了できるという利点が実現される。ステップb)の後に第2の実験(第2の方法)が開始される場合と同様に、第2の実験も、それが既に開始され、その記録が既に開始し、一時的に一時停止されたという前提で続行することができる。インタリーブされる実験若しくは方法記録の数は、既に強調したように、「第1」及び「第2」の方法記録に限定されず、任意の数の方法/実験をインタリーブして記録することができる。
【0054】
データ処理装置は、好ましくは、ユーザインタフェース装置のディスプレイに、
ボタンを含む画面ページを表示し、そのボタンを操作若しくはタッチすると方法記録が開始する、
ようにプログラムされている。
【0055】
データ処理装置は、好ましくは、ユーザインタフェース装置のディスプレイに、
少なくとも1つの実行中の方法記録のタイトルが表示され、特に複数の現在の方法記録のタイトルが一覧表示される、少なくとも1つの画面ページを表示し、
対応する方法記録のステータスを示す少なくとも1つの情報フィールドを表示し、このステータスは「記録は一時停止中である」又は「記録は実行中である」又は「記録は終了した」を含むことができる、
ようにプログラムされている。
【0056】
データ処理装置は、好ましくは、ユーザインタフェース装置のディスプレイに、
少なくとも1つの実行中の方法記録のタイトルが表示され、特に複数の実行中の方法記録のタイトルが一覧表示される画面ページを表示し、
少なくとも1つのボタンを表示し、そのボタンを操作若しくはタッチすると、当該ボタンと関連付けられている少なくとも1つの以前一時停止された方法記録を選択し、
ボタンを表示し、そのボタンを操作若しくはタッチすると、特に少なくとも1つの他の方法が一時停止されている間に、選択された一時停止中の方法記録を続行する、
ようにプログラムされている。
【0057】
データ処理装置は、好ましくは、ユーザインタフェース装置のディスプレイに、
少なくとも1つの実行中の方法記録のタイトルが表示され、特に複数の実行中の方法記録のタイトルが一覧表示される画面ページを表示し、
少なくとも1つのボタンを表示し、そのボタンを操作若しくはタッチすると、当該ボタンと関連付けられている少なくとも1つの以前一時停止された方法記録を選択し、
ボタンを表示し、そのボタンを操作若しくはタッチすると、選択された一時停止中の方法記録を続行する、
ようにプログラムされている。
【0058】
データ処理装置は、好ましくは、少なくとも1つの終了した方法記録の少なくとも1つの方法データセットを、外部データ処理装置に転送可能なファイルとして提供し、或いはアイルの内容が、印刷、画面への表示、又はシステムの外部データ処理装置やシステムの構成要素ではないサーバへの転送によって出力可能であるようにプログラムされている。
【0059】
データ処理装置は、好ましくは、方法記録の実行中に、ユーザがユーザインタフェース装置を介して実行する1つ以上のメモ入力を検出して、対応する方法データセットの構成要素としてこの方法データセットと共に保存するようにプログラムされている。メモ入力は、好ましくは、特に仮想キーボードによって、又は代替的に特に携帯型コンピュータデバイスに実際に割り当てられた(ハードウェア)キーボードによって、ユーザによって個別に入力されたテキストを含む。しかし、また、メモ入力は、代替的又は追加的に、ユーザに対して可能なメモテキストの所定の選択リストが画面に表示され、そこからユーザは適切なメモテキストを選択できることも含むことができる。そのようなメモテキストの内容は、頻繁に発生する典型的な状況、例えば分注操作中にユーザが観察した技術的エラー、又はユーザに起因するエラー、又は他の影響因子、例えば温度や湿度などの環境要因、又は望ましくない因子若しくは望ましい因子として、特に実験結果に影響を与える可能性のある試料の状態に関するものである。
【0060】
1つ以上のメモ入力は、それぞれ好ましくはタイムスタンプと共に保存することができ、これは特に1つ以上のメモ入力を、方法の分注操作の他の部分ステップ、又は一般的に方法記録の他の記録された事象(イベント)に後で割り当てることを可能にし、及び/又はメモの時系列分類を可能にする。1つ以上のメモ入力は、それぞれ好ましくは固有のタイムスタンプなしでも保存することができる。好ましくは、メモ入力は、方法データセットに含まれる他のイベントへの割り当て、又は方法データセットのイベントグループへの割り当ても記憶されるように保存される。この場合、この他のイベント若しくはイベントグループは、好ましくは少なくとも1つのタイムスタンプを有する。そうすることによっても、メモ入力の時間的分類が可能である。
【0061】
データ処理装置は、好ましくは、方法データセットのイベント履歴(「イベントログ」とも呼ばれる)、即ち方法記録を形成するイベントのシーケンスを、特にユーザインタフェース装置の画面に、特にこれらのイベントのリスト若しくはシーケンスとして出力するようにプログラムされており、各イベントは対応する説明テキスト及び/又はグラフィックシンボルと共に表示されることが好ましい。イベントログは、実行された実験若しくは方法記録のプロトコルとして使用することができる。
【0062】
自動分注操作と言う場合、それぞれの文脈が矛盾しない限り、常に半自動分注操作も意味されている。自動分注操作の実行には、常に少なくとも自動分注操作を誘発する少なくとも1つのユーザ操作が含まれており、これは通常ピペット装置の操作要素を操作することによって行われる。特定の適用シナリオの半自動分注操作は、例えば部分操作に分割された分注操作を開始することに加えて、ユーザが少なくとも操作要素を操作することによって部分操作の誘発も開始することを必要とする場合がある。特定の適用シナリオの自動分注操作は、ピペット装置の特定の実施形態において、ユーザがピペット装置のユーザインタフェース装置の操作装置によって自動分注操作を開始する前に設定し.及び/又はデフォルト設定から引き継ぎ、及び/又はメモリからロードする分注パラメータのセットによって定義できる。典型的には、ピペット装置のそのような実施形態のユーザインタフェースは、選択オプション、例えばコントロールホイール又はタッチ画面上の選択可能なフィールドのリストを有しており、それによっていわゆる「動作モード」を選択できる。この動作モードは特定の適用シナリオを表すか、若しくはこの特定の適用シナリオに属していて、割り当てられた自動分注操作の開始前にユーザが設定できる分注パラメータの全セットが選択される。自動分注操作は、動作プログラムとして指定されたこの操作モードの分注プログラムに従って進行する。
【0063】
好適な実施形態において、システム、特にピペット装置若しくはデータ処理装置は、ユーザが分注パラメータを選択することによって自動分注操作を手動で定義し、それにより特にユーザ定義された分注操作の分注パラメータのセット(分注パラメータセット)を定義するようにプログラムされている。この分注パラメータセットは、動作モードの指定された分注パラメータセットに一部又は完全に対応することができる。分注操作の分注パラメータは、好ましくはピストンストロークピペットと接続されたピペット容器に試料を吸引するステップで、又はこのピペット容器から試料を排出するステップで分注される容量、場合によりこれらのステップの順序と繰り返し、場合によりこれらの操作の時間的配分における時間パラメータ、特に、また、そのような操作の時間変動、特に試料を吸引又は排出する速度及び/又は加速度に関係し若しくはこれらを定量化する。この実施形態では、自動分注操作は、これらのユーザ定義された分注パラメータにより完全に定義された分注プログラムに従って進行する。
【0064】
本発明による手持ち式ピペット装置は好ましくは、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つの分注パラメータの少なくとも1つのパラメータセットに従って少なくとも1つの分注操作を実施するために使用されるように、特にピペット装置の所定のパラメータセットに従う少なくとも1つの所定の動作モードで、又はユーザ定義されたパラメータセットにおいて使用されるように設計されている。動作モードには、好ましくはそれぞれ1つの分注パラメータのパラメータセット(分注パラメータセット)が設けられており、その分注パラメータは任意選択でユーザによって選択不可能であるか、又はユーザによって少なくとも一部選択可能であり、別の分注パラメータで補完することができる。
【0065】
分注操作は典型的には、分注プログラムに従って特定の試料量が、スタート容器からピストンストロークピペットと接続されたピペット容器、特にピペットチップに吸引され、及び/又はターゲット容器に排出され、特に調量して排出されるようになっている。分注操作は、好ましくは少なくとも1つ、2つ、3つ、又は好ましくはそれ以上の分注パラメータによって制御することができ、それによって上記の分注操作又はその機能若しくは構成要素に所望通りに影響し又は定義することができる。
【0066】
分注操作を制御するための分注パラメータは、好ましくはピストンストロークピペットと接続されたピペット容器に試料を吸引するステップで、若しくはこのピペット容器から試料を排出するステップで分注される容量、場合によりこれらのステップの順序と繰り返し、場合によりこれらの操作の時間的配分における時間パラメータ、特にまたそのような操作の時間的変動、特に試料の吸引又は排出する速度及び/又は加速度、又はプレウェットステップの数、任意にその際に吸引及び排出される容量に関係し若しくはこれらを定量化する。
【0067】
これらの分注パラメータは、好ましくは少なくとも一部、好ましくは完全にユーザによって、特にピストンストロークピペット又は外部データ処理装置のユーザインタフェース装置の少なくとも1つの操作要素を介して選択され及び/又は入力される。
【0068】
分注操作は、好ましくは分注パラメータセットによって一義的に規定でき若しくは規定されている。この分注パラメータセットは、好ましくは少なくとも一部、好ましくは完全に、特にピペット装置又は外部データ処理装置の操作装置を介して、ユーザによって選択され及び/又は入力される。
【0069】
しかしながら、分注操作が分注パラメータセットによって一義的に規定されていないようにすることも可能である。この場合は、分注パラメータセットを少なくとも1つの別の分注パラメータによって、特に(選択された)分注パラメータに応じて自動的に補完するように、ピペット装置が設計されており若しくはデータ処理装置がプログラムされている。少なくとも1つの分注パラメータがユーザによって規定されず、例えば分注パラメータが事前に知られていてデータメモリに保存されているか又はそこで自動的に検知されることにより、ピペット装置によって指定されることが可能であり選好される。
【0070】
好ましくは、直接的に連続する又は間接的に連続する分注容量の数を規定する少なくとも1つの分注パラメータが設けられており、好ましくは吸引ステップ及び/又は排出ステップの数、好ましくはそれぞれ関連する分注容量、それぞれ関連する分注速度及び/又は加速度、及び/又はステップ間のそれぞれ関連する時間間隔を規定する少なくとも1つの分注パラメータが設けられている。
【0071】
ユーザ定義された分注操作を手動で定義するために援用できる典型的な分注パラメータは、自動分注操作の典型的な適用シナリオの以下の説明から読み取ることができる。各分注シナリオは、相応に呼称される分注モードによって事前に設定される。1つの分注モードには、1つの分注モードIDを割り当てることができる。分注モードの分注パラメータは、ユーザがユーザインタフェース装置、即ち相応に設計されたGUI(図参照)で設定することができ、ピペット装置は分注パラメータを、任意選択で分注モードIDと一緒に受信し、それに従いピペット装置で分注モードを設定することができる。
【0072】
ピペット装置において半自動操作として想定されている典型的な適用シナリオは、ピペット容器(ピペットチップ又はディスペンサーチップ)に吸引された容量の分配(略称「DIS」)である。各部分排出、例えばピペット容器からマイクロタイタープレートの合計10個の別個のターゲット容器に合計1mlの全試料を分配するためには、ユーザは、分配される試料液が入った貯蔵容器の上方にピペット装置を位置決めし、ピペット容器の先端を貯蔵液に浸漬し、操作要素を操作して初期容量を吸引し、操作要素を操作して又は自動的にリバースストロークを誘発し、それによってシステムは定義された初期位置に入り、最初のターゲット容器の上方に位置決めされて、操作要素を操作して0.1mlの調量された部分量の電動排出を開始し、ピペット装置をマイクロタイタープレートの次のターゲット容器の上方に移動して位置決めし、操作要素を操作して再び0.1mlの調量された部分量の電動排出を開始する。これらの手動で実施された部分操作(位置決め、誘発)と、それに続く(合計10ステップの部分排出の)0.1ml試料の電動部分排出の自動部分操作は更に8回繰り返される。部分量の調量された排出は、次の分注パラメータのうちの1つ又は複数又は全部を含む分注パラメータの指定に従って行われる。即ち、分配される試料の全容量、分配される試料の部分量、及び/又は等しい部分量を排出するための排出ステップの数、試料吸引速度、及び/又は場合によりこれから逸脱する試料排出速度、リバースストロークの容量、オーバーストロークの容量、場合によりピペット容器、特にピペットチップのプレウェットステップの量と反復である。分配機能は、特にマイクロタイタープレートに試薬液を迅速に充填するのに適しており、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を実施するために使用することができる。
【0073】
適用シナリオは、好ましくは試料の「自動分配」(ADS)に関するものである。割り当てられた動作パラメータはそれぞれ好ましくは、複数の排出ステップのうちの1つの間の分配容量に関する個々の試料の量、排出ステップの数、排出ステップが自動的に一定の時間間隔で順次実施されるタイムインターバルの持続時間(タイムインターバルはこれらの時間間隔、又は例えば連続する排出ステップの終了と開始の間の遅延を規定できる)、1つ以上の試料が吸引される速度、1つ以上の試料が排出される速度である。この分配機能は、マイクロタイタープレートをより簡便に充填するのに適している。なぜなら使用者は、操作、例えばキーを押すことによって排出ステップを何度も繰り返し誘発する必要がなく、自動分配が開始したら排出は時間制御されて行われるからである。そのような分注パラメータセットに属する動作プログラムを実施するために、自動分配は、少なくとも操作要素を中断することなく操作する場合に、例えばキーを押した状態に保つ場合に相応のプログラムが実行されるという条件で行うことができる。このことは、例えば時間窓を正確に守ることが要求される長い分配シリーズや反応において有利である。自動分配機能は、マイクロタイタープレートをより簡便に充填するのに適している。なぜなら、ユーザは個々の排出ステップを自分で誘発する必要はなく、自動的に行われるからであり、これは例えばELISAを実行するために使用できる。
【0074】
適用シナリオは、好ましくは試料の「分注」(Pip)に関するものである。割り当てられた分注パラメータは特に、分注される試料の容量、試料が吸引される速度、試料が排出される速度である。
【0075】
適用シナリオは、好ましくは試料の「分注とそれに続く混合」(P/Mix)に関するものである。割り当てられた分注パラメータはそれぞれ好ましくは吸引及び/又は排出される試料の容量、混合量、混合サイクルの数、試料が吸引される速度、試料が排出される速度である。「分注とそれに続く混合」機能は、例えば非常に少量の分注に推奨される。10μL未満の調量容量を選択する場合は、これをそれぞれの反応液に混合することが推奨される。このことは、液体を排出した後に自動的に混合動作が開始することによって可能である。混合量と混合サイクルはあらかじめ定義されている。この動作モードの適用は、例えば物理的特性に基づき水よりも重い調量液を排出し、ピペット容器、特にピペットチップ内の残液を、既に受け器に入れた液体を援用してピペット容器若しくはピペットチップからリンスすることである。別の適用は、排出された液体を受け器に入れた液体と直ちに混合することであろう。この動作モードは、例えばPCR混合溶液にDNAを添加する場合に有利である。
【0076】
適用シナリオは好ましくは試料の「多重吸引」に関するものであり、「逆分配」又はアスピレーションを表す「ASP」とも呼ばれる。割り当てられた分注パラメータはそれぞれ好ましくは、吸引される1つ以上の試料の容量、試料の数、吸引速度、排出速度である。この機能は、液体量を複数回吸引し、全量を排出するために用いる。この場合、1回の操作でピペット容器に複数回充填することは想定されていない。速度は、全ての試料で同じである。実施において、好ましくは以下の手順で進行する。即ち、ピペット装置は基本位置から出発して、操作装置の第1タイプの操作により、それぞれ部分量を吸引する。最後の部分量が吸引されたら、ピペット装置は好ましくは警告メッセージを発し、ユーザは好ましくは操作装置の第2のタイプの操作によってこれを確認しなければならない。次に操作装置の第2のタイプの操作により、再び全量が排出される。操作装置は第1又は第2のタイプの操作のために、好ましくは少なくとも2つの操作要素を有し、1つは「第1タイプ」の操作信号を制御装置に入力するためのものであり、もう1つは「第2のタイプ」の操作信号を制御装置に入力するためのものである。操作装置は、特にピペット装置の長手方向軸線に垂直な軸線を中心に、第1のタイプの操作のための第1信号誘発位置(「ロッカーボタン上」)と第2のタイプの操作のための第2信号誘発位置(「ロッカーボタン下」)との間で揺動可能なロッカーボタンを有することができる。
【0077】
適用シナリオは、好ましくは試料の「ディリュート」(Dil)に関するものであり、「希釈」とも呼ばれる。割り当てられた分注パラメータはそれぞれ好ましくは、試料量、気泡量、希釈剤量、吸引速度、排出速度である。最大希釈剤量=公称量-(試料+気泡)。この機能は、試料と希釈剤を気泡で分離して吸引し、全量を排出するために用いる。速度は、全ての部分量で同じである。実施において、好ましくは以下の手順で進行する。即ち、ピペット装置は基本位置から出発して、最初に希釈剤量、次に気泡、最後に試料を吸引する。各吸引は、操作装置の第1タイプの操作によって好ましくは別個に誘発される。その後で全量が1回で排出される。
【0078】
適用シナリオは、好ましくは試料の「連続分注」(SeqD)に関するものである。割り当てられた分注パラメータはそれぞれ好ましくは、試料の数(好ましくは指定された最大数Nmax、好ましくは、5≦Nmax≦16、好ましくは、Nmax=10)、個々の試料の量、吸引速度、排出速度である。この機能は、自由に選択できる最大量Nmaxを連続分注するために用いる。この場合、好ましくはピペット容器に複数回充填することは想定されていない。速度は、全ての試料で同じである。この場合、好ましくはピペット容器の多重充填は設けられていない。速度は全ての試料で同じである。試料の数は、好ましくは個々の容量を入力するための中心的なパラメータである。好ましくは、容量を入力する際に、ピペット装置がピペット装置の最大容量を超えていないか常にチェックしなければならず、必要であれば警告メッセージが発せられる。全てのパラメータが入力されると、ピペット装置は操作装置の第1タイプの操作で全量を吸引し、操作装置の第2のタイプの操作でそれぞれ個々の容量を排出する。それ以外の手順は、好ましくは標準分配と同様である。
【0079】
適用シナリオは、好ましくは試料の「連続分注」(SeqP)に関するものである。割り当てられた分注パラメータはそれぞれ好ましくは、試料の数(好ましくは指定された最大数Nmax、好ましくは、5≦Nmax≦15、好ましくは、Nmax=10)、個々の試料の量、吸引速度、排出速度である。この機能は、開始前にプログラムされて順序が固定していて、自由に選択できる最大量Nmaxの分注に用いる。速度は、好ましくは全ての試料で同じである。しかし、また、速度は異なるように設定することも可能である。機能の手順は、分注の手順に対応している。事前に入力された容量が、プログラムされた順序で処理される。排出後、操作要素の操作、例えばキーを押すことによって、次の試料を吸引すべきか、それとも次の試料の前にまず「ブローアウト」を行うか、即ちピペット容器にまだ含まれている試料をオーバーストロークによって完全に確実に吐出するか、及び/又はピペット容器を交換するか否かを決定する。
【0080】
適用シナリオは、好ましくは試料の「逆分注」(rPip)に関するものである。割り当てられた分注パラメータはそれぞれ好ましくは、個々の試料の量、吸引速度、排出速度、カウンターの起動である。この「rPip」機能では、調量すべき容量より多く吸引される。これを達成するために、液体が吸引される前に、即ち第2タイプの操作、例えばキーを押すこと又は「ロッカーボタン下」によってピストンが下方へ移動して、ブローアウトの下方位置、即ち分注ストロークにおけるピストンの位置を超えるピストンのオーバーストロークの位置に達する。容量吸引が開始すると、ピペット装置はブローアウトの容量と設定された容量を吸引する。排出方向における駆動の遊びを取り除くために、ピペット装置は追加のストロークを実行し、このストロークは再びすぐに排出される。これは分配と同様であるが、好ましくは最大速度による廃棄ストロークの自動排出の下で行われる。
【0081】
適用シナリオ「rPip」の実施において、好ましくは以下の手順で進行する。第1に、ピペット装置(又はディスペンサーチップ)のピストンは自動的にブローアウトに移動して、下方位置に止まる。第2に、操作装置の第1タイプの操作が行われて、ピストンはブローアウト区間と分注容量に対するストロークだけ上方に移動する。第3に、操作装置の第2タイプの操作が行われて、ピストンは分注容量に対するストロークで下降して、ブローアウトの手前で止まっている。第4に、操作装置の第2タイプの操作が2回行われて、ピストンはブローアウトを実行し、下方位置で止まっている。「第4」の代替として、操作装置の第1タイプの操作が行われて、ピストンは分注ストロークで上方に移動する。「rPip」モードは、血漿、血清、その他タンパク質含有量の高い液体の分注に特に適している。水溶液には、特に「分注」モードが適している。「rPip」モードは、ターゲット容器に排出する際に気泡の発生を最小限に抑えるために、湿潤剤含有溶液に特に適している。液体は、特にオーバーストローク(ブローアウト量)で吸引される。この場合、オーバーストロークは通常排出量に含まれず、好ましくはターゲット容器に排出されない。特に、同じ試料を再度使用する場合、オーバーストロークはチップ内に留まることができる。他の液体を使用する場合、好ましくはオーバーストローク及び/又は好ましくはピペット容器は廃棄される。
【0082】
分注パラメータセットにより、所望の分注操作を実施するための動作プログラム、特に制御プログラムが制御されることが好ましい。制御プログラムは、それぞれ制御装置の電気回路の形態で構成でき、及び/又は、プログラムコード制御可能であり、好ましくはプログラム可能である制御装置を制御するのに適した実行可能なプログラムコードによって構成できる。
【0083】
システム、ピペット装置、携帯型コンピュータデバイス又は外部データ処理装置は、好ましくはユーザによって入力された分注パラメータの値(分注パラメータ値)を自動的にチェックし、それぞれの分注パラメータの許容範囲と比較するように設計されている。ユーザによって入力された分注パラメータ値が許容範囲外であれば、その入力は受け入れられず、画面に及び/又は音響的に警告が発せられ、或いは例えば最小値若しくは最大値、又は最後に許容された入力値とすることができるデフォルト値に設定され、又は自動的に修正された値が使用される。
【0084】
ユーザインタフェース装置は、好ましくは少なくとも1つのタッチセンシティブ画面又は非タッチセンシティブ画面を有し、及び/又は好ましくは少なくとも一部はあらかじめ定義されて、ピペット装置に表示ページデータの形態で保存されている多数の表示ページ(「画面ページ」とも呼ばれる)を有し、これらは1つの画面に又は複数の画面に分散して、好ましくは画面全体に表示することができる。画面は、好ましくは実質的に矩形であり、場合によっては正方形のこともある。
【0085】
データ処理装置は、好ましくはユーザインタフェース装置の画面(同義語:ディスプレイ)にグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するようにプログラムされている。以下のGUIの説明では、「データ処理装置は・・・するようにプログラムされている」という文言を一部省略され、GUIとその機能形態のみが説明されるが、この場合は常に、データ処理手段が相応のGUIとその機能形態を実装するようにプログラムされていることを意味する。この実装は、当業者にとってルーチン活動である。
【0086】
GUIは、少なくとも分注パラメータのパラメータセットの分注パラメータが表示される画面ページ(特に「ホームスクリーン」)の画面への表示を含むことが好ましい。それにより、データ処理装置は分注パラメータのパラメータセットの分注パラメータが表示される画面ページが画面に表示されるようにプログラムされている。「分注パラメータが画面に表示される」という表現は、分注パラメータの現在設定されている値が画面に表示されることを意味する。更に、分注パラメータの説明、特にテキストによる説明、特徴的なピクトグラム、又は分注パラメータに該当する場合は分注パラメータによって説明される量の物理的単位、例えば容量に対する「μL」を表示することができる。しかしまた、たとえ画面に説明がなくても、当業者は表示された値がどの分注パラメータに割り当てられているかを文脈から知り又は学習することもできる。
【0087】
特に、データ処理装置は、画面ページが、ホームスクリーン(類語:インターネットブラウザにおけるホームページ)とも同義に呼ばれるスタート画面を表示するようにプログラムされている。GUIへの複数若しくは多数のユーザ入力は、このホームスクリーンに戻ることが好適である。このホームスクリーンは有利には、ユーザ定義された又はあらかじめ保存されている適用シナリオから取り出された分注操作の全パラメータセットを表示し、関連する分注パラメータの設定を可能にするために利用できる。ホームスクリーンは、特に携帯コンピュータデバイスのユーザインタフェース装置の電源を入れた後、特に電源を入れた直後に表示されるが、ホームスクリーンに時間的に先立って、例えば会社のロゴや装置に関する情報など、純粋な情報提供ページが挿入されるようにすることも可能である。電源の投入は、ユーザが携帯型コンピュータデバイスのディスプレイ又は操作要素を操作することによって行うことができ、或いは加速度センサ、モーションセンサ、近接センサなどのセンサの測定によって行うことができる。このようなホームスクリーンは、ユーザにとってピペット装置の操作コンセプトを直感的に理解できるようにする中核であることが証明されている。
【0088】
ピペット装置又はその外部データ処理装置、特にコンピュータデバイスは、好ましくはデータ記憶装置を有する。これは、好ましくは少なくとも1つのデータメモリ、特にハードウェアデータメモリ、特に不揮発性データメモリ、特にEPROM又はFLASH(登録商標)メモリを有する。それは揮発性データメモリを有することもできる。しかしまた上記のデータ記憶装置は、システムの構成要素であり得る他の外部データ処理装置、例えばサーバに含まれることもある。このサーバは、特にファイルホスティング、即ちクラウドサービスを実装する。
【0089】
データ処理装置は、システムの電気制御装置、特にピペット装置、携帯型コンピュータデバイス、又は外部データ処理装置の構成要素とすることができる。携帯型コンピュータデバイス、特に電気制御装置は、それぞれ好適にはマイクロコントローラ、CPU、制御ソフトウェアを記憶するためのデータメモリを有することができる。制御装置又はコントロール装置とも略称される電気制御装置は、好ましくはデータ処理装置、特に少なくとも1つの中央処理装置(CPU)を有する。データ処理装置は、マイクロコントローラを含むことができる。制御装置は、好ましくはマイクロコントローラを有する。制御装置は、好ましくはデータ、特に分注パラメータ及び/又は1つ以上のコンピュータプログラム又はコンピュータプログラムコードを記憶するための少なくとも1つの記憶装置若しくはデータメモリを有する。
【0090】
制御装置は、好ましくはこの少なくとも1つの分注パラメータを使用して、少なくとも1つの分注操作の機能又は分注操作の一部又は分注操作を自動的に実行する少なくとも1つの制御ソフトウェア又は制御プログラムを含んでいる。制御ソフトウェア若しくは制御プログラムは、特に制御装置のデータ処理装置、特にデータ処理装置のCPUによって実行される。制御ソフトウェア又は制御プログラムは、特にデバイスのデータ記憶装置に保存されている。このデータ記憶装置は、不揮発性メモリであることが好ましい。
【0091】
システム、特にピペット装置、携帯型コンピュータデバイス又は外部データ処理装置は、センサ装置、例えばピペット装置のピストン駆動に使用されるモーター電流の環境パラメータ、特に温度、湿度又は圧力を検出するためのセンサを有することができる。モーター電流は、特に分注された液体の粘度を決定するために、ひいては液体を識別するために使用することができる。センサ装置は測定を実行するように設計することもでき、パラメータ、特に分注パラメータ、特にピペット装置と接続されたピペット容器のタイプ、特にピペット容器の最大充填量、特にピペットチップの最大充填量を検知することが可能である。ピペット装置又は外部データ処理装置は、少なくとも1つの分注パラメータをセンサ装置の測定値に応じて自動的に決定するように設計することができる。これにより、正確な分注に必要な分注パラメータの最適化を改善することができる。
【0092】
ピペット装置及び/又は携帯型コンピュータデバイス及び/又は外部データ処理装置は、好ましくは配電網から独立して作動される。特にそれぞれのデバイスは、充電可能な電源、例えば1つ以上の蓄電池を備えることができる。この場合、デバイスは充電可能な電源と接続された充電インタフェースを有することができる。
【0093】
通信装置、特に第1の通信装置又は第2の通信装置は、好ましくは無線ネットワークを介する無線データ交換のために設計されている。通信装置、特に第1の通信装置又は第2の通信装置は、好ましくは、WLAN、Bluetooth(登録商標)及び/又はLoRa-WANを介したデータ交換のために構成されている。システム構成要素は、特にこのような無線技術によってデータを交換する。システム構成要素は、少なくとも1つのピペット装置を除いて、異なるデバイス、したがって特にハウジング内に配置することができ、又は同じハウジング内、特にコンピュータデバイスのハウジング内に配置することができる。データ記憶装置は、特にファイルホスティングサービスを実装するためのサーバの構成要素としてシステムに統合することができる。
【0094】
ピペット容器は、手持ち式ピペット装置の接続部と接続するのに適した容器であり、液体をピペット容器に吸引し、液体をピペット容器内に保持し、そこから排出することを可能にする。ピペット容器の例は、ピペットチップ及びディスペンサーチップである。
【0095】
ピペットチップは、特に使い捨て製品であり、好ましくはプラスチック製である。必要とされる最大液体量に応じて異なるピペットチップがピストンストロークピペットと共に使用される。市販のピペットチップの典型的な公称容量は、例えば、10μL、20μL、100μL、200μL、300μL、1000μL、1250μL、2500μL、5mL、10mLである(μL:マイクロリットル、mL:ミリリットル)。ピペットチップは、通常、長手方向軸に沿って長く延ばされた円錐形の容器を有し、容器の下端部には液体交換口があり、上端部には上方に開いた円錐状又は管状の端部セクションを有し、これは空気置換式ピペットとして設計されたピペット装置の、動作コーンとして形成された接続部に差し込むことができる。液体のピペットチップへの吸引は、ピペットチップの内室の負圧によって行われる。この負圧は空気置換式ピペットとして設計されたピペット装置の場合、ピストンとして形成されたピペット装置の動作要素が移動し、ピペットチップ内の試料の上方の空隙に負圧が生成されることによって発生する。ピペットチップの内室は、ピペットチップがピストンストロークピペットの接続部と接続されている、嵌め込み位置とも呼ばれる分注位置で、ピストンストロークピペットのピペットチャンネルと流体的に接続されている。ピペットチャンネルは、中空円筒状のピストン室内でピストンストロークピペットの電気的に可動なシリンダーピストンを介して負圧/正圧が加えられる。
【0096】
ディスペンサーチップは、分注の際にピストンと液体試料の間に実質的に空気層が存在しない直接置換式ピペットで使用される。ここではピストンはディスペンサーチップの構成要素である。ディスペンサーチップは、ピストンシリンダーとして機能する、容器流出口を備えた容器部分と容器開口部を有し、容器開口部内にピストンが係合して、ピストンシリンダー内で移動可能に配置され、最終位置で吸引された全液量を押し出すことができる。ディスペンスチップを直接置換装置として設計されたピペット装置と接続する際に、容器部分はピペット装置の接続部と、特に嵌め込み又はねじ込みによって接続され、ピストンはカップリング装置によって動作要素に連結される。ディスペンサーチップは、特に使い捨て製品であり、好ましくはプラスチック製である。必要とされる液体の最大量に応じて異なるディスペンサーチップが直接置換装置と共に使用される。市販のディスペンサーチップの典型的な公称容量は、例えば、100μL、200μL、500μL、1mL、2.5mL、5mL、10mL、25mL、50mLである。
【0097】
本発明の枠内で説明される手持ち式ピペット装置は、好ましくは、これに限定されるものではないが、コンピュータ制御された電動ピストン駆動の手持ち式ピストンストロークピペットであり、手持ち式電動ピペット装置又は手持ち式電動ピストンストロークピペットとも呼ばれる。しかしまた、本発明によるシステムと共に使用できるピペット装置は、機械式の、特に手動で駆動されるピペット装置とすることもできる。これを実現するための1つの可能性は、ピペット装置を識別するための自動識別手順を実行することであろう。そのために特に機械式ピペット装置のハウジングに取り付けて識別データ(ID、例えばシリアル番号)を情報として含むことができるバーコード又はQRコード(登録商標)をスキャンする。次いで、この情報は、どのピペット装置が使用されたかを記録するために、対応する方法記録に保存することができる。機械式ピペット装置の分注操作の記録は、ピペット装置のセンサ又はシステムの画像検出及び処理システムなどの検出システムを介して行うことができる。
【0098】
本発明は、以下のステップを含む、本発明によるシステムを適用するための方法にも関する。
【0099】
a)ユーザ入力に応じて、第1の方法記録の第1の記録セクションの記録を開始し、そこで第1の実験セクションのパラメータセットの第1のシーケンスの第1の部分量が記録されて、第1の方法データセットとしてデータ記憶装置に保存されるステップと、
b)ユーザ入力に応じて、第1の方法記録を一時停止するステップと、
好ましくは、c)ユーザ入力に応じて、及び第1の方法識別データに応じて、保存されている第1の方法データセットを選択して、第1の実験を記録する第1の方法記録を終了又は続行し、続行する場合は第1の方法記録の第2の記録セクションの記録が開始されて、第2の実験セクションのパラメータセットの第1のシーケンスの第2の部分量が記録されるステップ。
【0100】
本発明による方法及びシステムの別の好適な構成形態は、以下の実施例の説明から、図及びその説明と併せて明らかになる。実施例の同一の部材は、特に別途指示されないか又は文脈から明らかな場合を除き、実質的に同一の参照符号によって表示される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1a】
図1aは、
図1bの本発明によるシステムで使用できるピペット装置の実施例の概略側面図である。
【
図1b】
図1bは、
図1aのピペット装置を使用することができ、そのユーザインタフェースディスプレイに、
図2a~
図2p及び
図3a~
図3jに示す画面ページがGUIの構成要素として出力される、本発明によるシステムを示す図である。
【
図2a】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2b】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2c】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2d】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2e】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2f】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2g】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2h】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2i】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2j】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2k】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2l】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2m】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2n】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2o】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図2p】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページの図である。
【
図3a】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3b】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3c】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3d】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3e】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3f】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3g】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3h】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3i】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図3j】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示す図である。
【
図4a】
図4aは、例示的な構成における本発明によるシステムの適用において、1つ以上の実験中に多重化された記録を伴って実行可能な、若しくは本発明による例示的な方法で実施されるユーザ操作のシーケンスを示す図である。
【
図4b】
図4bは、例示的な構成における本発明によるシステムの適用において、1つ以上の実験中に多重化された記録を伴って実行可能な、若しくは本発明による例示的な方法で実施されるユーザ操作のシーケンスを示す図である。
【
図5a】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力できる画面ページを示す図である。
【
図5b】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力できる画面ページを示す図である。
【
図5aa】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力できる画面ページを示す図である。
【
図5bb】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力できる画面ページを示す図である。
【
図5c】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力できる画面ページを示す図である。
【
図5d】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力できる画面ページを示す図である。
【
図5e】
図2に示す本発明によるシステムの構成要素をなす携帯型コンピュータデバイスで出力できる画面ページを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
図1aは、少なくとも1つの液体試料を分注するための手持ち式ピペット装置1、ここでは空気置換式ピペット1を示しており、これは
図1bに示す本発明によるシステム100で、任意の別の類似のピペット装置と並んで使用することができる。ピペット装置1には、システム内で一意に識別するためのシリアル番号が割り当てられている。この識別データはピペットのデータメモリに保存されていて、システムから読み取ることができる。このピペット装置1は、
図1aに示す少なくとも1つのピペット容器19、ここではピペットチップと接続するための接続部2(作動コーン)と、
分注操作を実施する際に少なくとも1つのピペット容器19に少なくとも1つの試料を吸引し、試料を少なくとも1つのピペット容器内に保持し、少なくとも1つのピペット容器から試料を排出するために制御装置5によって電気的に制御される動作要素、ここではピストン3(電動ピペット装置の場合、動作要素はディスペンサーチップのピストンと接続されるディスペンサーの電動コンポーネントである)と、
ピペット装置の頭部14の前面14Aに設けた、ユーザ定義可能な分注パラメータのパラメータ値を入力するためのタッチセンシティブ画面4と、を有しており、ここで、分注パラメータのパラメータセットは分注操作を完全に定義し、
ここで、電気制御装置5は、少なくとも1つの分注パラメータに応じて動作要素3を制御するようにプログラムされているデータ処理装置6と、データメモリ7と、外部データ処理装置、特に携帯型コンピュータデバイス50と無線通信するための通信ユニット8とを有しており、
ユーザが操作ロッカーボタン10によって作動させることができる2つの操作要素(同義語:作動要素)9a、9bを備えている。操作要素を用いてユーザは特に分注操作を開始することができる。
【0103】
通信ユニット8は、特許請求の範囲における「第2の通信装置」として理解され、特に、携帯型コンピュータデバイス50の対応する(第1の)通信装置58とデータを交換するように設定されている。特にピペット1は携帯型コンピュータデバイス50から設定データを受信して、ピペット1をコンピュータデバイス50で選択された動作モードで動作させる。特に、このときピペットが使用する分注パラメータは事前にユーザによって確定されており、同様にコンピュータデバイス50から受信する。交換されるデータは、ピペット1で設定される動作モード、分注操作に適用される分注パラメータ、分注操作又はそのサブステップの開始時刻及び/又は終了時刻、使用される個々のピペット装置の識別データ(シリアル番号など)、通常実験の責任者である、場合により事前に認証又は選択されたユーザの識別データ、並びに実験に関与する実験室のデバイス及び/又はセンサから提供できるその他のデータに関する情報を含むことができる。これらのデータは、方法データセットのデータとして保存することができる。
【0104】
ピペット装置は、アキュムレータ17によって給電され、シリンダーピストン12内でピストンロッド若しくはピストン3を動かし、その結果として分注チャンネル13内に吸引圧力又は排出圧力が生じるようにする電動モーター18を備えている。電子制御によって正確に調量できる。イジェクトボタン15が設けられていて、ピペット装置のイジェクトスリーブによってピペットチップ19を接続部2から取り外すことができる。データ処理装置は特に、イジェクトボタン15が作動した場合に実行中の分注操作を中断するようにプログラムされている。
【0105】
図1bには同様に、タブレットPCやスマートフォンを代表とする別の外部デバイス60が示されており、それによってコンピュータデバイス50で設定されたパラメータ、特に分注パラメータを任意に設定し又は読み出すことができる。
【0106】
所望の半自動分注操作を定義するパラメータセットの分注パラメータの選択と、これらの分注パラメータの値の設定は、
図1bに見られるように、コンピュータデバイス50に設けたGUIによって行われる。コンピュータデバイス50は、タッチ画面52が組み込まれたハウジング51を有する。タッチ画面52は、システムのユーザインタフェース装置52として機能する。コンピュータデバイス50のデータ処理装置56は、システムの1つ以上の方法記録を制御するようにプログラムされている。コンピュータデバイス50のデータ処理装置56は、タッチ画面52にユーザによってシステムが制御されるGUIの画面ページを表示するようにプログラムされている。相応の制御ソフトウェアは、制御ソフトウェア「VisioNize(登録商標)ピペットマネージャ」の改良版である。このような画面ページを
図2a~2p及び
図3a~3jに示す。これによって実装される一時停止可能な、特に多重化可能な方法記録によるプロトコル化の機能を以下に説明する。
【0107】
方法記録の内部で、[Process/Run] Records機能がVisioNize(登録商標)ピペットマネージャ用に拡張される。ユーザは「実行中の記録」画面から記録(レコーディングとも呼ばれる)を開始して、記録時点を定義する時間枠を作成することができ、また下部バーからアクセスできる特別ページから新規記録を開始し、一時停止中の記録を編集し、又は記録を保存することができる。
記録はエクスポートでき、設定されたフィルターに従ってPDFを生成できる。
方法記録は、(例外が発生しない限り)単独ユーザのシナリオである。
【0108】
GUIのホームスクリーン(
図2aに示す)では、方法(方法識別データで識別可能)に割り当てられた接続されているピペット1の動作モード、及びこれと関連する分注パラメータを設定して、ピペット1(又は同じタイプの複数のピペット1や他のピペット)に送信し、それによってこれらのピペットを設定することができる。
【0109】
方法記録は、記録を一時停止する機能としてホームスクリーン上で利用可能であり、「実行中の記録」画面から記録を続行/一時停止/保存/新規記録を開始することができ、メニューからこの機能を呼び出すことができる。画面ページ「メニュー」には「方法記録」ボタンが表示される。これにタッチすると、ユーザは全ての保存済みの記録及び終了した記録にアクセスできる。
【0110】
実験作業の開始時に、ユーザはその後の操作を文書化することを決定することができる。これは何よりも、後日行われる可能性のある監査に確実に合格するために有益である。方法記録の機能は、この要件をサポートする。主要な操作は、スタート画面からナビゲートされる。
【0111】
図2aに示すスタート画面では、記録が行われているか否かの情報がステータスバーに表示される。ステータスバーには、次の3つのステータスのいずれかが表示される。
実行中の記録
記録なし
記録一時停止
下部バーには、方法記録に割り当てられたキーがある。ボタンは「実行中の記録」と共に再生/一時停止アイコンを表示する。このアイコンは、下部バーのメニューのように動作する。
【0112】
「実行中の記録」(
図2bの画面を参照)は、下部バー(いわゆる「ボトムバー」)の「実行中の記録」ボタンからアクセスできる。一番上のリスト項目は、現在記録中のものである。これは強調表示され、ホームのアイコンをスタート画面の「使用中」のスタイルで示す。リスト項目の最後にある日付は、作成日(年/月/日、時:分)を示している。リスト要素は区切り線で区切られている。
【0113】
リストは動的で、必要なだけスペースを使用し、1つの画面に収まりきらない記録が実行され場合は、スクロールバーが表示される。右側のボタンでユーザは記録を操作できる。左のリストから方法セットが選択されない限り、ボタンは非アクティブである。「新規記録」は常にアクティブで、新規記録を開始する。第1のボタンは文脈依存である。このボタンは「記録一時停止」又は「選択を続行」を意味する。「記録一時停止」ボタンは、アクティブな記録がマークされている場合のみ表示される。これを押すと記録が一時停止(ポーズ)する。「記録を続行」ボタンは、一番上の記録以外の記録が選択されている場合のみ表示されてアクティブになる(記録が選択されていない場合、ボタンは非アクティブである)。「記録を保存」により、ユーザは記録を保存できる。その後で記録を編集することはできない。「情報」は、選択された記録に関する情報を示す。ここで、ユーザは情報(例えばタイトル)を編集することもできる。
【0114】
図2c:各方法記録(方法データセット)について、開始日と終了日(日付と時刻)が表示される。記録のタイトルが、記録のステータスと共に表示される。記録のステータスは、以下のいずれかであることができる。
「実行中」・・・→記録が実行中であることを示す。(例えば複数のユーザが異なるデバイスで記録する場合は、複数の記録が「実行中」として表示されることがある。また、1人のユーザがある記録を一時停止し、「続行」で別の記録を続行し、又は新規記録を開始することによって異なる記録を切り替えると、後で複数の記録が実行されることがある。記録が実行されている間は、アクティビティー表示が表示される。
「終了」→記録が終了し、編集できないようにロックされている。
【0115】
ステータスの下には、以下のいずれかの情報要素を表示することができる。
「ユーザにより」→ユーザ名、又は(ユーザ管理が非アクティブな場合は)「匿名ユーザ」
【0116】
ユーザ管理が非アクティブで、「不明なユーザ」に対して複数のセッションがアクティブで、複数の記録が実行されている場合、このリストには複数の記録が表示されることがある。
ユーザ管理がアクティブな場合、現在ログインしているユーザのみがこのデバイスに表示される。
ユーザ管理がアクティブな状態で記録が行われた後、ユーザ管理が非アクティブ化された場合、ここにユーザ名が表示される。
【0117】
図2d、
図2e:記録の横にあるドリルダウンインジケータをクリックすると、ユーザは以下の情報を示す記録のサマリーに到達する。
ブレッドクラムバーの記録名(ブレッドクラムの「アクティブ」な部分、背景色は青)
レコードタイトル(ヘッダー)及び記録のタイトル
タイムスパン(ヘッダー)及び記録の開始時刻と終了時刻
関連ピペット(ヘッダー)及び番号
記録に使用された全てのピペット(ユーザがピペットをアクティブに使用した場合)とドリルダウンインジケータ
記録に含まれるピペットのみがこの番号に追加される(記録から削除されたピペットは除外される)。
削除されたピペットはリストの一番下に藍色で表示される(必要な場合は、ピペットが記録から削除された理由を付す)。
イベント(事象)(ヘッダー)及びイベントストとドリルダウンインジケータ(記録中に更にイベントが発生すると数が増える)
メモ(任意選択→記録を保存する際にメモが追加された場合のみ)
VisioNize(登録商標)ピペットマネージャのバージョン(ヘッダー)及び記録の時点でインストールされているソフトウェアバージョン
【0118】
図2f、
図2g:ブレッドクラムバー(いわゆる「パンくずリストバー」)は、前画面でのドリルダウン操作によって到達した現在のレベルも表示する。「RNA用意テストケースA245」ボタンをクリックすると、次の階層レベルのページが開く。上部にはオプションもある。
エクスポート
【0119】
関連ページ「関連ピペット」には、記録中にアクティブに使用された全てのピペットのリストが表示される。このページは、以下の要素を含むヘッダーで構成されている。
ピペットのサイズとタイプ
シリアル番号
メモ(「サブタイトル」情報を含む)
追加情報
【0120】
さらに、以下の要素を含むリスト
ピペットのアイコン(シングル又はマルチチャンネルピペットタイプを表す)
容量表示バッジ
ピペットのシリアル番号
次の内容を含み得る追加情報
「・・・に追加」日付
「・・・により削除」ユーザ、日付+時刻(任意選択で理由記載)(削除されたピペットはリストの最後にある)
【0121】
この画面で実行されるエクスポートは、PDFとしてUSBスティックにエクスポートされる。
ここにリストアップされる関連ピペット(及び全ての表示された情報)、並びに全ての削除されたピペット(相応にマークされている)、記録名、ユーザ、記録の日付と時刻
【0122】
取り外したピペットは藍色で表示される。容量バッジも非アクティブ状態で表示される。
【0123】
図2h、
図2i、
図2j:イベント(事象)は、方法記録を中心にしてグループ化され、方法記録の構成要素である。イベントの詳細は、何が「行われた」か、特にピペットが記録に追加されたか又は削除されたかを示すべきである。また、ピペットの削除のために選択された理由と、それが行われた日付と時刻も示すべきである。このアクションを引き起こしたユーザも、ここに(ピペットを削除したときに)表示する。
【0124】
図2k、
図2l、
図2m、
図2n、
図2o、
図2p:ユーザは、記録を実行中の画面で「記録を保存」オプションを選択できる。これは、リストから記録が選択されている間は常にアクティブである。3ステップのアシスタントが表示される。記録名と開始時間がダイアログに表示される。記録が保存されるや否や、編集できなくなり、「ロック」(封鎖)される。フェードインされるオーバーレイは、以下の要素を含んでいる。
タイトル
3ステップのステップカウンタ(ダイアログ(アシスタント)と一致)
短い説明文
記録名(日付)
「次へ」ボタン
「閉じる」ボタン(X)
(場合により画面ページに表示される指紋は、ユーザが対応するボタンに触れたことを象徴している)。
【0125】
使用者は、ピペットをタップすることにより、削除すべきピペットを選択できる。それらのピペットは、選択されたことが強調表示される。(少なくとも1つの)ピペットが選択されると、ユーザはドロップダウンボックスをタップすることができ、オーバーレイが表示される。さもなければドロップダウンボックスは非アクティブとして藍色で表示される。ステップ2/3で、ユーザに選択された記録のサマリーが表示される。サマリーは、以下の事項を示す。
(保存されている記録の)タイトルと画面上の編集可能性
記録の(開始)時間
関連ピペット。ここに表示されるピペットの数が多すぎる場合は、スクロールバーが表示される。関連ピペットは4本ずつ並べたリストで表され、ピペットのアイコン、容量バッジ、シリアル番号と削除オプションが表示されている。
【0126】
ピペットの情報は、以下の通りである。
ピペットのタイプ別アイコン(シングルチャンネル、マルチチャンネル、機械式)
容量バッジ
シリアル番号
【0127】
ユーザはタイトルを(画面上で)変更し、又はピペットを削除することができる。削除キーは、以下のことを可能にする。
ピペットの下にドロップダウンボックスが表示される。
編集アイコンが青色になる。
ユーザはリストから削除するピペットをタップすることによって選択できる。
【0128】
ステップ2/3で、ユーザは記録のタイトルを編集し(保存前)、表示される関連ピペットを削除できる。ピペットを削除する際、記録からピペットを削除した理由を選択できる(しかし、必ず選択する必要はない)。理由が指定された場合は、その理由がエクスポートと記録の詳細に表示される。ユーザは個人的な理由を指定することもできる。ピペットが削除されると、すぐステップ2/3のサマリーには表示されなくなる。一度に複数のピペットを削除することもできる。ユーザが何かを編集した後、アシスタントを閉じる、を選択すると、「警告」ポップアップダイアログが表示される。これは、誤ってデータが失われるのを防ぐためである。ステップ3/3として、ユーザは任意選択で記録に関するメモを入力することができる。「記録を保存」を選択すると、オーバーレイがフェードインされて、ユーザに再度、記録が保存されるとロックされて編集できなくなることを知らせる。ユーザがこれを承認すると、画面に「実行中の記録」がフェードインされて、ユーザに記録が正常に保存されたことを通知する。ここで表示されるリストからは記録は移動されたために消えており、方法記録(メニューからアクセス)の中に見つけることができる。ピペットが記録から削除された理由、時刻、日付、ユーザ、ピペット(シリアル番号、タイプ、容量)が保存され、この記録から作成される全てのレポートに記載される。この情報は「関連ピペット」のサマリーに表示されるが、そのピペットは「関連ピペット」の1つとしてカウントされなくなる(サマリーリストの番号)。ピペットを記録から永久に削除することはできず、VisioNizeピペットマネージャソフトウェアの内部に保存されているリストから消去されるにすぎない。第3のステップで記録にメモを追加することがきる。情報を入力している間に、テキスト入力フィールドが拡大する。
【0129】
図3a、
図3b、
図3c:ユーザは記録を一時停止できる。GUIには2つの異なるシナリオと手順がある。ユーザが実行中の記録画面で「記録一時停止」を選択すると、ユーザに複数のオプションを提供するオーバーレイが表示される。ユーザは「記録一時停止を続行」を選択でき、それによって記録が続行されて、一時停止を解除する。他方、ユーザはオーバーレイを「閉じる」ボタンで閉じることができる。オーバーレイを閉じると記録の選択が消えて、実行中の記録画面の一番上の欄に「実行中の記録は無し」と表示される。他の可能性はホームスクリーンにあり、ここではユーザは下部バーのボタンをタップして記録を一時停止することができる。このボタンを選択すると、ユーザに記録が一時停止されていることを知らせる情報パネルがフェードインされる。ステータスバーには記録が表示されるが、「一時停止中:タイトル」が追加される。このとき下部バーのボタンは「選択を続行」となり再生アイコンが表示される。これにより、ユーザはホームスクリーンから簡単に記録を一時停止したり続行したりできる。
【0130】
図3d、
図3e、
図3f:記録が実行中の記録のリストの一部として表示される場合、ユーザは記録を選択して続行することが可能である。記録が選択されるとオーバーレイが表示され、記録が現在ホームスクリーンにあるか否かに応じて、オーバーレイは2つの状態のいずれかで表示される。
【0131】
「ホームスクリーンスロット」に記録がない場合、「選択を続行」のオーバーレイは新しく選択された記録のみ示し、オーバーレイのボタングループには1つのボタンだけが表示される。ユーザは選択された記録を続行するか、又は閉じるボタンでオーバーレイを閉じる。オーバーレイが閉じられると、記録は引き続き選択されているが続行されない。「選択を続行」をクリックすると、ユーザはホームスクリーンに移動し、そこで続行される記録が実行されて、それ以降の全ての操作が記録とリンクされる。
【0132】
ホームスクリーンスロットに記録がある場合、オーバーレイは下に2つのキーからなるグループを有し、2つの記録をオーバーレイに表示する。ホームスクリーンの記録はホームアイコンを表示し、青色で強調表示される。これは、両記録を簡単に区別するとともに、画面で実行中の記録に対して表示されるのと同じ色とアイコンの使用を転用するためである。ユーザが「現在の記録を再開」オプションを選択すると、ホームスクリーンスロットから記録が続行される。「選択された記録を続行」の場合は、新しく選択された記録が続行される。いずれの場合も、ユーザはホームスクリーンに戻り、ステータスバーに記録名が表示される。オーバーレイを閉じるボタンで閉じると、オーバーレイは閉じられて、選択された記録は引き続き選択されている。
【0133】
図3g、
図3h、
図3i、
図3j:ユーザ管理が非アクティブの場合、「様々な」ユーザセッションを正しく識別できるようにするために「セッション」が使用される。ユーザには「実行中の記録」ページで、現在実行中又は一時停止中の全ての記録が表示される。このセッション内でこのデバイスでアクティブな記録は、他の「ユーザ」がそれらの記録とリンクされていることを示すことなく表示される。ユーザは別の記録を要求して、その作業を続けることができる。「実行中の記録」ページとリストアップされた記録は、記録が他のセッションとリンクされているか否かをユーザインジケータで示す。ユーザは、記録を選択して(記録は強調表示される)、「選択を続行」を選択することによって、記録を「要求」することができる。その後で、この記録が現在別のセッションとリンクされていることをユーザに知らせるポップアップが表示される。記録名、開始タイプ、及びユーザイコンが表示される。「要求」をクリックすると、記録はこのセッションに対するアクティブな記録となり、ホームスクリーンスロットに移動され、ユーザはホームスクリーンに戻り、そこで要求されて記録が実行される。
【0134】
ユーザはソーシャルプロトコルを通じて、記録が実際にフリーであることを確認する可能性がないために誰もこの記録を使用していないことをチェックするよう求められる。データセットは後の時点でまとめることはできないため、ユーザがこれについて連絡し合って情報を得ることが重要である。
【0135】
図4は、例示的な構成における本発明によるシステムの適用において、1つ以上の実験中に多重化された記録を伴って実行可能な、若しくは本発明による例示的な方法で実施されるユーザ操作(BI)のシーケンスを示す。
【0136】
1:リストから記録を選択する/新規記録を開始する。
2:ユーザがプロトコル/リストなど(例えばキット)に従う。
3:分注容量を遠心分離機にかける。
4:ユーザが現在の記録を一時停止する。
5:ユーザが(新規)記録の開始/続行を決定する。
6:ユーザがプロトコル/リストなど(例えばキット)に従う。
7:プロトコルが完了し、ユーザが記録を終了する。
8:遠心分離が終了し、ユーザが記録を決定する。
9:ユーザがプロトコル/リストなど(例えばキット)に従う。
10:分注容量を冷凍庫に2時間入れておく。
11:ユーザが新規記録を開始する(ステップ12まで:これはかなり頻繁に起こり得る)。
12:ユーザがバッファを準備する。
13:翌日:ユーザが記録を続行する。
14:プロトコル/リストなど(例えばキット)に従う。
15:プロトコルが完了し、ユーザが記録を終了する。
16:ユーザがリストから既存の記録を選択する。
17:冷凍庫から取り出した試料をキットの指示に従って処理する。
18:プロトコルが完了し、ユーザが記録を終了する。
19:次の記録、次の記録、次のステップ...
ステップ19のループ:無限に繰り返す。
【0137】
図4の色凡例:
青緑色:「タンパク質精製」の記録(記録=レコード)
紫色:「PCR」の記録
橙色:緩衝液準備(記録なし)
緑色:「DNA分離」の記録
【0138】
システム100によって実行される方法記録は、方法識別データ、特に個々の方法識別データを使用して、様々な方法、特に第1の方法と第2の方法、並びにそれぞれの方法記録を区別する。例えば
図2bにおいて、そこで「ミュラー-DNA-ケース254」と呼ばれている方法には第1の方法識別データが割り当てられ、「RNA分析-ケース12.53」と呼ばれている方法には第2の方法識別データが割り当てられ、「ミュラー-DNA-ケース109」と呼ばれている方法には第3の方法識別データが割り当てられ、「エッペンドルフ-ケース09.21」と呼ばれている方法には第4の方法識別データが割り当てられている。この場合、第1、第2、第3、第4、及び以降全ての方法識別データは、互いに明確に区別できる。これらの方法識別データは、対応する第1、第2、第3又は第4の方法データセットの一つを一意に選択できるようにするため、及び/又は方法記録を一意に続行又は終了するために適している。方法識別データの内容は重要ではなく、例えば数字1、2、3、4、又はそれぞれの2進数表現が、それぞれの方法識別データを形成するのに適していよう。
【0139】
コンピュータデバイス50のデータ処理装置56は、システムの方法記録、特に
図2bの前述の方法記録を制御するようにプログラムされている。特に、コンピュータデバイス50のデータ処理装置56は、以下のようにプログラムされている。
第1の通信装置58によって、第1の方法に割り当てられた少なくとも1つの分注操作の実行後に、少なくとも1つの第2の通信装置8から、少なくとも1つのピペット装置の少なくとも1つの分注操作が設定及び実行された際に適用されたパラメータ値を含む記録データを受信し、
記録データを第1の方法データセットとしてデータ記憶装置(ここでは特にデータ処理装置56の構成要素である携帯型コンピュータ50)に記憶することによって、第1の方法識別データが割り当てられた第1の方法記録を実行し、
第1の方法記録の実行を、ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて一時停止し、
一時停止された第1の方法記録の実行、略して「一時停止された第1の方法記録」を、ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて続行し、又は一時停止された第1の方法記録を、ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて、特に第1の方法識別データに応じて終了する。終了はここでは特に、ユーザがタッチ画面の「記録を保存」と記された入力フィールド(
図2l参照)に触れることによって行われる。その際にデータ処理装置56は、ここでは例として、第1の方法識別データにより識別可能な第1の方法(ここでは「ミュラー-DNA-ケース254」と表記)が意味することを検出する。この方法若しくは方法記録の続行は、保存後は好ましくはもはや不可能である(
図2p)。特に第1の方法記録の続行は、GUIによって選択的に
図3a、
図3b、
図3cに示されているように行われる。この場合も、データ処理装置56は、ここでは例として、第1の方法識別データにより識別可能な第1の方法(ここでは「ミュラー-DNA-ケース254」と表記)が意味されていることを検出する。
【0140】
データ処理装置56はまた、第1の方法記録、例えば「ミュラー-DNA-ケース254」を次のようにして続行するようにプログラムされている。
ユーザ入力及び第1の方法識別データに応じて、第1の方法記録の第1の記録セクション中に記憶された第1の方法データセットが選択されて、第1の方法記録の第2の記録セクションの記録が開始される。
【0141】
この場合、データ処理装置56は、次のようにもプログラムされている。
第1の方法記録の第2の記録セクションの記録を開始する前に第1の方法記録を一時停止した後、第1の方法識別データとは異なる第2の方法識別データに割り当てられた第2の方法記録を実行する。
【0142】
2つの方法の多重化記録は、特にデータ処理装置56が次のようにプログラムされていることによって行われる。
第1の通信装置58によって、第2の方法に割り当てられた少なくとも1つの分注操作の実行後に、第2の方法の少なくとも1つの分注操作が設定及び実行された際に適用されたパラメータ値を含む記録データを、少なくとも1つの第2の通信装置8から受信し、
この記録データを第2の方法データセットとしてデータ記憶装置に保存することによって、第2の方法記録を実行し、ここで、第2の方法データセットは特に第2の方法識別データを含んでおり、
第2の方法記録の実行を、ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて一時停止し、
一時停止された第2の方法記録を、ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて、特に第2の方法識別データに応じて続行し、又は一時停止された第2の方法記録を、ユーザインタフェース装置で行われるユーザ入力に応じて、特に第2の方法識別データに応じて終了する。
【0143】
図5a~
図5eはそれぞれ、
図2の本発明によるシステムの一部を構成する携帯型コンピュータデバイスで出力可能な画面ページを示している。
【0144】
図5aは、ログインしたユーザの「ホームスクリーン」を形成する画面ページを示しており、この場合、現在方法記録は行われていない。このことは、画面ページの上縁部に「現在記録していない」というテキストを含む情報フィールドを表示することによってユーザに通知される。
【0145】
図5bは、ログインしたユーザの「ホームスクリーン」を形成する画面ページを示しており、この場合、現在方法記録が行われている。このことは、画面ページの上縁部に「DNA分析-ケース45.9-ミュラー」というテキストを含む情報フィールドを表示することによってユーザに通知される。このテキストは、対応する方法記録の表記にもなる。
【0146】
データ処理装置56は、
図5a~
図5eに従い、方法記録の実行中にユーザインタフェース装置を介してユーザが行った1つ以上のメモ入力を検出して、対応する方法データセットの構成要素としてその方法データセットと共に保存するようにプログラムされている。このために
図5bのホームスクリーンでは画面上縁部に、「一口メモ」と表記されたタッチ画面のコントロールパネルが表示される。ユーザがこのコントロールパネルにタッチすると、オーバーレイウィンドウが開いて、あらかじめ定義されたメモテキスト(ここでは起こり得るエラー状態(「チップに気泡」など)の選択リストを表示する(
図5c参照)。メモテキストは、ユーザが個別に選択することができ、その後、メモ入力として方法データセットに保存される。自由テキスト入力(「自分の意見」)のための入力フィールドを選択すると、個々のテキスト入力オプションとして仮想キーボードが開く(
図5d)。
【0147】
メモ入力は、ユーザが特に仮想キーボードによって、代替として特に携帯型コンピュータデバイスに実際に割り当てられた(ハードウェア)キーボード(図示せず)によって、個別に入力したテキストを含む。ここで、メモ入力は、ユーザに画面で可能なメモテキストの事前に定義された選択リストが提示され、そこからユーザが適切なメモテキストを選択できるオプションも含む。このようなメモテキストの内容は、ここでは分注操作中にユーザによって観察された技術的エラーに関するものであるが、他の典型的な状況、例えば方法で分注された試料の温度、湿度又は試料の状態などの環境要因、又は特に実験の結果に影響を与える可能性のある他の望ましくない要因又は望ましい要因を記すこともできる。
【0148】
1つ以上のメモ入力は、ここではタイムスタンプと共に保存され、このことは特に1つ以上のメモ入力を、方法の分注操作の他のサブステップ、又は一般的に方法記録の他の記録された事象(イベント)に後で割り当てることを可能にし、及び/又はメモの時系列分類を可能にする。タイムスタンプは、好ましくはタッチ画面の「一口メモ」入力フィールド(
図5b参照)がユーザによってタッチされる時刻を含み、及び/又はメモ入力に割り当てられたテキスト入力の可能性、ここでは
図5c又は
図5dのオーバーレイウィンドウが閉じられる時刻を含む。
【0149】
データ処理装置56は、方法データセットのイベント履歴(「イベントログ」とも呼ばれる)、即ち方法記録を形成するイベントのシーケンスを、特にユーザインタフェース装置の画面に、特にこれらのイベントのリスト若しくはシーケンスとして出力するようにプログラムされており、各イベントは対応する説明テキスト及び/又はグラフィックシンボルと共に表示されることが好ましい。イベントログは、実行された実験若しくは方法記録のプロトコルとして使用することができる。このことは
図5eに示されており、方法記録として「他の有用な名前-TLDR」と表記された方法のイベントが、上から下へ時間的に遡る時系列リストとして、それぞれタイムスタンプと共に表示される。
図2cに従って行われ、方法記録と共に保存されたメモ入力「チップに気泡」が、タイムスタンプ入力「2020-09-21,15:22:04」と一緒に含まれている。メモを簡便に保存できることは、実験若しくは実施された方法の再現性を向上させるために、更に改善された方法である。このようにして、システムによって自動的に実行されるプロトコル化は、ユーザによって個別に導入された情報によって改良される。
【国際調査報告】