(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】タイヤの内面をクリーニングするための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/36 20140101AFI20240412BHJP
B29D 30/00 20060101ALI20240412BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20240412BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240412BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240412BHJP
【FI】
B23K26/36
B29D30/00
B08B7/00
B23K26/00 N
B23K26/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565947
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2022061058
(87)【国際公開番号】W WO2022229190
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】102021000010571
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】アレッシオ チャルネラ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ストラッフィ
【テーマコード(参考)】
3B116
4E168
4F215
【Fターム(参考)】
3B116AA41
3B116AB33
3B116BC01
4E168AD18
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB08
4E168DA40
4E168JA11
4F215AD32
4F215AH20
4F215AQ01
4F215AR07
4F215AR20
(57)【要約】
タイヤ(3)の内面(2)をクリーニングするための方法およびシステム(1)は、以下のステップを含む。すなわち、エミッタ装置(8)を用いて、内面(2)に向けられるレーザビーム(9)を射出するステップ。内面(2)の少なくとも第1環状ゾーン(A)の内部で、レーザビーム(9)を用いて、第1環状ゾーン(A)に対して第1表面エネルギ密度を印加して、より深いクリーニングを行うステップ。および、内面(2)の少なくとも第2環状ゾーン(B)の内部で、レーザビーム(9)を用いて、第2環状ゾーン(B)に対して、第1表面エネルギ密度よりも低い第2表面エネルギ密度を印加して、より徹底的でないクリーニングを行うステップ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(3)の内面(2)をクリーニングするための方法であって、エミッタ装置(8)を用いて前記内面(2)に向けられるレーザビーム(9)を射出するステップを含み、
前記クリーニングするための方法は、
前記内面(2)の少なくとも第1環状ゾーン(A)の内部で、前記レーザビーム(9)を用いて、前記第1環状ゾーン(A)に対して第1表面エネルギ密度を印加して、より深いクリーニングを行う更なるステップと、
前記内面(2)の少なくとも第2環状ゾーン(B)の内部で、前記レーザビーム(9)を用いて、前記第2環状ゾーン(B)に対して、ゼロではなく、前記第1表面エネルギ密度よりも低い第2表面エネルギ密度を印加して、より徹底的でないクリーニングを行う更なるステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第2表面エネルギ密度は、前記第1表面エネルギ密度の35%と50%との間である、請求項1に記載のクリーニングするための方法。
【請求項3】
前記第1環状ゾーン(A)を、前記第2環状ゾーン(B)の両端部に配置するように、前記タイヤ(3)のサイドウォールに近接して配置する、請求項1または2に記載のクリーニングするための方法。
【請求項4】
前記第2環状ゾーン(B)を、前記タイヤ(3)の中心に配置する、請求項1~3の何れか一項に記載のクリーニングするための方法。
【請求項5】
前記第1環状ゾーン(A)を、前記タイヤ(3)のサイドウォールの近くと、前記タイヤ(3)の中心と、の両方に配置する、請求項1~4の何れか一項に記載のクリーニングするための方法。
【請求項6】
前記内面(2)の少なくとも第3環状ゾーン(C)の内部で、前記レーザビーム(9)を用いて、前記第3環状ゾーン(C)に対して、前記第1表面エネルギ密度よりも低く、前記第2表面エネルギ密度よりも高い第3表面エネルギ密度を印加して、中間クリーニングを行う更なるステップを含む、請求項1~5の何れか一項に記載のクリーニングするための方法。
【請求項7】
前記第3環状ゾーン(C)は、前記第1環状ゾーン(A)と前記第2環状ゾーン(B)との間に介在する、請求項6に記載のクリーニングするための方法。
【請求項8】
前記第3表面エネルギ密度は、前記第1表面エネルギ密度の60%と80%との間である、請求項6または7に記載のクリーニングするための方法。
【請求項9】
支持装置(4)を用いて、前記タイヤ(3)を、回転軸線(5)を中心に回転させる更なるステップと、
前記エミッタ装置(8)によって射出される前記レーザビーム(9)の強度を常に一定に保つ更なるステップと、
前記タイヤ(3)の回転速度を減少または増加させる際に、前記レーザビーム(9)によって前記内面(2)に印加される表面エネルギ密度を増加または減少させる更なるステップと、を含む、請求項1~8の何れか一項に記載のクリーニングするための方法。
【請求項10】
軸線方向で前記第1環状ゾーン(A)の内部に、クリーニングされていない前記内面(2)の部分が存在しない、すなわち、クリーニングされていない前記内面2の部分は、軸線方向で前記第1環状ゾーン(A)の外側のみに見られる、請求項1~9の何れか一項に記載のクリーニングするための方法。
【請求項11】
連続的なクリーニングを達成するために、すなわち、円形バンドに沿って、中断なく、前記レーザビーム(9)を連続的に射出する更なるステップを含む、請求項1~10の何れか一項に記載のクリーニングするための方法。
【請求項12】
断続的なクリーニングを行うために、すなわち、円形バンドに沿って、クリーンな領域とクリーンでない領域を交互にするために、前記レーザビーム(9)を断続的に射出する更なるステップを含む、請求項1~10の何れか一項に記載のクリーニングするための方法。
【請求項13】
前記レーザビーム(9)の1つの通路を、前記レーザビーム(9)の次の通路と部分的に重ね合わせる更なるステップと、
前記第1環状ゾーン(A)と前記第2環状ゾーン(B)との間の重なり合い度を変える更なるステップと、を含む、請求項1~12の何れか一項に記載のクリーニングするための方法。
【請求項14】
前記第1環状ゾーン(A)は、前記第2環状ゾーン(B)の第2重なり合い度よりも高い第1重なり合い度を有する、請求項13に記載のクリーニングするための方法。
【請求項15】
タイヤ(3)の内面(2)をクリーニングするためのシステム(1)であって、前記内面(2)に向けられるレーザビーム(9)を射出するように構成されたエミッタ装置(8)と、制御ユニット(13)と、を備え、
前記制御ユニット(13)が、
前記内面(2)の少なくとも第1環状ゾーン(A)の内部で、前記レーザビーム(9)を用いて、前記第1環状ゾーン(A)に対して第1表面エネルギ密度を印加して、より深いクリーニングを行い、
前記内面(2)の少なくとも第2環状ゾーン(B)の内部で、前記レーザビーム(9)を用いて、前記第2環状ゾーン(B)に対して、ゼロではなく、前記第1表面エネルギ密度よりも低い第2表面エネルギ密度を印加して、より徹底的でないクリーニングを行うように構成されていることを特徴とする、クリーニングするためのシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内面をクリーニングするための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの開発は、パンクをシールすることが意図されたシーリング剤を用いて製造されたインナーライニングを備えるタイヤに向けられてきた。通常、シーリング剤は、孔に対するシーリング作用と、タイヤの状態を問わない内腔内部におけるその安定性と、の両方を保証するために、高いレベルの粘度を有する。シーリング剤は、加硫前のタイヤの内面(すなわち、インナーライナーの上方)の、道路と接触するタイヤの領域(すなわち、潜在的にパンクが発生し得るタイヤの領域)に塗布される。特に、シーリング剤は、トレッドおよび部分的にサイドウォールに塗布される。
【0003】
近年、タイヤの開発は、路面上を転がるタイヤによって発生する騒音を低減するための吸音材料(一般にスポンジ)を内部に備えるタイヤにも、向けられてきた。吸音材料は、すでに加硫されたタイヤの内面(すなわち、インナーライナーの上方)に塗布され、特にトレッド(すなわち、道路と接触するタイヤの領域)において、場合によってはサイドウォールの一部においても、タイヤの内面に接着される。
【0004】
タイヤの(インナーライナーからなる)内面にシーリング剤または吸音材量を塗布する前に、シーリング剤または吸音材量の内面への最適な接着を保証するために、汚れおよび加工残渣(例えば、加硫用金型の内壁に塗布された離型剤からの残渣)を除去するために、内面をクリーニングする必要がある。
【0005】
特許出願WO2017082162A1およびEP3281810A1は、タイヤの内面をクリーニングするためのシステムを記載する。このシステムでは、レーザエミッタは、既に加硫されたタイヤに挿入され、タイヤが一定速度で回転する間にタイヤの内面に向けられるレーザビームを射出する。レーザビームが開始から終了までタイヤの内面全体をスイープする螺旋を通って進むように、レーザエミッタを軸線方向に(すなわち、タイヤの回転の中心軸線に沿って)徐々に移動させる。
【0006】
特許出願WO2017082162A1およびEP3281810A1は、完全に、また同じ方法で、タイヤの内面全体をクリーニングすることを記載する。しかしながら、この方法では、クリーニングサイクルが、かなり長い。したがって、製造プラントの要件に適した時間ごとの生産性を有するためには、そのすべてが並行して動作する多数のクリーニングステーションを提供する必要があり、コストおよび寸法において、関連する増加が伴う。この問題を解決するために(すなわち、クリーニングサイクルをより迅速にするために)、特許出願EP3175974A1およびEP3175975A1は、非連続で非直線的な(すなわち波状の)経路をたどって、ストリップ状に、すなわち、均一にクリーニングされたストリップと完全にクリーニングされていないストリップとの間を交互に、タイヤの内面をクリーニングするレーザビームを発生させることを記載する。しかしながら、この解決策には、シーリング剤または吸音材料の内面への最適な接着が常に得られるとは限らない、という欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2017082162A1
【特許文献2】EP3281810A1
【特許文献3】EP3175974A1
【特許文献4】EP3175975A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、タイヤの内面をクリーニングするための方法およびシステムを提供することである。クリーニングするための方法およびシステムは、上述の欠点がなく、特に、クリーニングサイクルを迅速に行うことを可能にし、同時に、シーリング剤または吸音材料の内面への最適な接着を、あらゆる条件下で保証する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲内で決定される、タイヤの内面をクリーニングするための方法およびシステムが提供される。
【0010】
特許請求の範囲は、本明細書の不可欠な部分を形成する本発明の好適な実施形態を記載する。
【0011】
本発明は、例示的、非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従って製造されたクリーニングシステムの、明確にするために部品を取り外した概略的な側面図である。
【
図2】
図1のクリーニングシステムの、明確にするために部品を取り外した概略的な正面図である。
【
図3】
図1のクリーニングシステムによって作成された、区別されたクリーニング領域を強調する、タイヤの一部の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および
図2において、その全体において、数字1は、シーリング剤または吸音材料の塗布前に、タイヤ3の(インナーライナーからなる)内面2の(少なくとも)一部をクリーニングするためのクリーニングシステム1を示す。換言すると、タイヤ3は、外面によって、および外面とは反対側の内面2によって境界が定められるトロイダル形状を有し、シーリング剤または吸音材料は、内面2の(少なくとも)一部に塗布される。シーリング剤または吸音材料がタイヤ3の内面2に塗布可能となる前に、汚れおよび加工残渣(例えば、加硫用金型の内壁に塗布された離型剤からの残渣)を除去するために、内面2をクリーニングする必要がある。
【0014】
クリーニングシステム1は、垂直位置に配置されたタイヤ3を支持するのに適し、かつタイヤ3を対称中心軸線と一致する回転軸線5を中心に回転させるのにも適した支持装置4を備える。好適な実施形態によれば、支持装置4は、回転自在に取り付けられてタイヤ3を内部で把持するのに適した拡張グリッパを備える。代替的に(添付の図面に示されるように)、支持装置4は、タイヤ3を垂直位置で安定して保持するサイドレール(図示せず)と、電動ローラ(概略的に図示される)と、を備える。タイヤ3は、電動ローラの上に載置されて駆動される。更なる実施形態によれば、支持装置4は、異なる形状であり、垂直位置に配置されるのではなく、代わりに水平位置に配置されるタイヤ3を支持するのに適している。
【0015】
クリーニングシステム1は、回転軸線5を中心とするタイヤ3の角度位置を決定するのに適した位置センサ6を備える。位置センサ6は、例えば、支持装置4の電動ローラの1つに結合された角度エンコーダであってもよい。そうでなければ、位置センサ6が、タイヤ3の変位を直接に読み取ってもよい。
【0016】
クリーニングシステム1はカメラ7を備えることができる。カメラ7は、タイヤ3のサイドウォールの外面に面し、同じサイドウォールに貼付されているグラフィカル識別コード(典型的にはバーコードまたは類似のもの)を読み取るのに適している。タイヤ4の場合、グラフィカル識別コードは、常に同じ位置(角度位置も同じ)に貼付されている。したがって、カメラ7がグラフィカル識別コードの存在を検出すると、回転軸線5の周りのタイヤ3の角度位置のための絶対角度基準を得るために、回転軸線5の周りのタイヤ3の対応する角度位置が状況に応じて決定される。支持装置4は、タイヤ2が回転している間にタイヤ2の角度位置を検出する角度位置センサ(通常はエンコーダ)を備える。
【0017】
クリーニングシステム1は、タイヤ3の(インナーライナーからなる)内面2上に存在する異物の少なくとも一部を昇華(蒸発)させるのに十分に強力なレーザビーム9を射出することができるエミッタ装置8を含む。このような異物は、後続の製造プロセスを抑制する可能性のある(加硫用金型内部に塗布された)離型剤を含む場合がある。レーザビーム9を適切に変調することによって、タイヤ3の(インナーライナーからなる)内面2に対するいかなる損傷も回避することができる。したがって、レーザビーム9は、タイヤ3の内面2を損傷するリスクを冒すことなく、タイヤ3の内面2をクリーニングすることができる。
【0018】
さらに、クリーニングシステム1は、ハンドリング装置10を備える。ハンドリング装置10は、エミッタ装置8と、支持装置4によって担持されるタイヤ2との間の相対移動(タイヤ2を担持する支持装置4を動かして、エミッタ装置8を静止状態に保持する、さもなければエミッタ装置8を動かして、タイヤ2を担持する支持装置4を静止状態に保持する)を実行する。クリーニングサイクルの開始および終了の際に、ハンドリング装置10は、エミッタ装置8をそれぞれタイヤ3の内側およびタイヤ3の外側に配置する。一方、クリーニングサイクルの間に、移動装置10は、エミッタ装置8をタイヤ2に対して軸線方向に(すなわち、回転軸線5に平行に)、タイヤ3の一方の側からタイヤ3の反対側に移動させて、エミッタ装置8によって射出されるレーザビーム9がタイヤ3の内面2全体をクリーニングすることを可能にする。
【0019】
図2に示すものによれば、ハンドリング装置10は、一端でエミッタ装置8を支持する支持アーム11と、アクチュエータ12と、を備えることができる。アクチュエータ12は、支持アーム11を軸線方向に(すなわち、回転軸線5に平行に)並進させる。代替的な実施形態によれば、ハンドリング装置10は、エミッタ装置8をタイヤに最初に挿入し、続いてエミッタ装置8をタイヤから取り外すために、必要に応じて、より多くの自由度を有するロボットアームを備えることができる。
【0020】
可能な実施形態によれば、ハンドリング装置10は、内面2の(明らかに、幅に、すなわち、レーザビーム9の軸線方向寸法に、等しい幅を有する)円形ストリップをクリーニングする間はエミッタ装置8を静止状態に保持し、そしてエミッタ装置8を軸線方向に(ワンステップで)、内面2の円形ストリップのクリーニングの終了と内面2の次の隣接する円形ストリップのクリーニングの開始との間のみで、移動させる。換言すると、内面2の複数の円形ストリップは、それらの間で独立し、互いに隣り合って配置され、(一般に、一定の相互の重なり合いを伴って、すなわち、新しい円形ストリップが隣接する円形ストリップの上に多少は重ねられて)クリーニングされる。代替的な実施形態によれば、移動装置10は、スパイラル形状を有する内面2の単一の連続ストリップを(すなわち、継ぎ目なく)クリーニングするために、エミッタ装置8を軸線方向に、かつ連続的に移動させる(この場合にも、スパイラルの各ループは、前のスパイラルに多少は重ねられる)。
【0021】
クリーニングシステム1は制御ユニット13を備える。制御ユニット13は、同じクリーニングシステム1の動作を監督し、とりわけ、エミッタ装置8の作動および停止を制御し、支持装置4によって与えられる回転速度を調整し、そして移動装置10によって与えられる軸線方向の並進運動を制御する。
【0022】
使用時、クリーニングされるべき新しいタイヤ3が支持装置4に取り付けられると、ハンドリング装置10は、クリーニングされるべきタイヤ3の内側にエミッタ装置8を挿入するように(または、クリーニングされるべきタイヤ3をエミッタ装置8の周りに配置するように)作動される。この時点で、支持装置4は、タイヤ3を回転軸線5の周りで回転させ、続いてエミッタ装置8は、タイヤ3の内面2に向けられるレーザビーム9を射出するように作動される。同時に、ハンドリング装置10は、レーザビーム9がタイヤ3の内面2全体を、一方の端部から他方の端部までクリーニングできるように、エミッタ装置8とタイヤ2との間に比較的ゆっくりとした軸線方向の並進を作り出すように作動される。クリーニングサイクルの終了時には、エミッタ装置8は停止され、次いでハンドリング装置10が作動されて、エミッタ装置8をタイヤ3から引き出す(または、タイヤ3をエミッタ装置8から取り外す)。したがって、クリーンなタイヤ3を支持装置4から取り外すことが可能であり、新たなクリーニングされるべきタイヤ3を支持装置4に取り付けることができて、それによって、新たなクリーニングサイクルが開始される。
【0023】
図3に示されるものに関して、より深いクリーニングは、内面2の(少なくとも)環状ゾーンA(一定幅の一連の円形ストリップまたはスパイラルから構成され、それらの間に隣接し、部分的に重なり合う)の内部で、レーザビーム9を用いて、環状ゾーンAに対して(一般にジュール/cm
2で測定される)第1表面エネルギ密度を印加して、行われる。さらに、より徹底的でないクリーニングは、内面2の(少なくとも)環状ゾーンB(同じく、一定幅の一連の円形ストリップまたはスパイラルから構成され、それらの間に隣接し、部分的に重なり合う)の内部で、レーザビーム9を用いて、環状ゾーンBに対して、第1表面エネルギ密度よりも低い第2表面エネルギ密度を印加して、行われる。例として、(ゾーンBに印加される)第2表面エネルギ密度は、(ゾーンAに印加される)第1表面エネルギ密度の35%と50%との間である。
【0024】
添付の図面に示されるように、環状ゾーンAは、環状ゾーンBの両端部に配置されるように、タイヤ3のサイドウォール(すなわち、タイヤ3の外縁)に近接して配置される。(すなわち、環状ゾーンBは環状ゾーンAの内側に配置される。すなわち、環状ゾーンBは、環状ゾーンAによって、左右で囲まれる。)
【0025】
図3に示される実施形態において、環状ゾーンBは、タイヤ3の中心に配置され、すなわち、中断することなくタイヤ3の中心を完全に占める。
図4に示される代替的な実施形態において、環状ゾーンAは、タイヤ3のサイドウォールの近くと、タイヤ3の中心と、の両方に配置される。したがって、ゾーンBは、中心に配置された環状ゾーンAの両側の2つのセミセントラルバンドの内部に位置する。
【0026】
図5および
図6に示される代替的な実施形態において、中間クリーニングサイクルは、内面2の環状ゾーンC(一定幅の一連の円形ストリップまたはスパイラルから構成され、それらの間に隣接し、部分的に重なり合う)の内部で、レーザビーム9を用いて、環状ゾーンCの内部に、(ゾーンAの内部に印加される)第1表面エネルギ密度よりも低く、(ゾーンBの内部で印加される)第2表面エネルギ密度よりも高い第3表面エネルギ密度を印加して、行われる。例として、(ゾーンCの内部に印加される)第2表面エネルギ密度は、(ゾーンAに印加される)第1表面エネルギ密度の60%と80%との間である。環状ゾーンCは、環状ゾーンAと環状ゾーンBとの間に介在する。
【0027】
添付の図面に示される実施形態において、2つまたは3つのゾーンA、B、およびCは、各々異なるクリーニング度(すなわち、レーザビーム9によって印加される異なる表面エネルギ密度)を有して提供される。他の実施形態によれば、図示されてはいないが、各々が異なるクリーニング度(すなわち、レーザビーム9によって印加される異なる表面エネルギ密度)を有する、3つを超える(例えば、4つ、5つ、6つ・・・の)ゾーンA、B、およびCが提供されてもよい。
【0028】
好適な実施形態によれば、エミッタ装置8によって射出されるレーザビーム9の強度は、常に一定に保たれる(すなわち、エミッタ装置8は、エミッタ装置8のすべての電位を常に利用するように、常に定格出力、すなわち、可能な最大出力で動作する)。したがって、レーザビーム9によって内面2に印加される表面エネルギ密度を増加または減少させるために、タイヤ3の回転速度は、回転軸線5を中心として減少または増加される。
【0029】
実際、エミッタ装置8によって射出されるレーザビーム9の強度が同じであれば、回転軸線5を中心とするタイヤ3の回転が速いほど、表面領域の上に放射されるエネルギの量(すなわち、一般にジュール/cm2で測定される表面エネルギ密度)が少なくなる。
【0030】
可能な実施形態によれば、レーザビーム9が前に通過した場所をレーザビーム9が(少なくとも部分的に)通過するように、レーザビーム9の1つの通路(円形ストリップまたはスパイラル)は、レーザビーム9の後続の通路(円形ストリップまたはスパイラル)の上に部分的に重ねられる。この場合、様々なゾーンA、B、およびCの間の重なり合い度を変えることが可能である。特に、環状ゾーンAは、環状ゾーンBの第2重なり合い度よりも大きい第1重なり合い度を有する。一方、環状ゾーンCは、環状ゾーンAの第1重なり合い度と環状ゾーンBの第2重なり合い度との間の、第3重なり合い度を有する。例として、環状ゾーンAの第1重なり合い度は、45%と75%との間であり、環状ゾーンBの第2重なり合い度は、15%と35%との間であり、そして環状ゾーンCの第3重なり合い度は、30%と50%との間である。(0%の重なり合い度は、重なり合いがないことに対応する。一方、100%の重なり合い度は、全体が重なり合うことに対応する。)これらの値は、単なる例であり、異なることも可能である。
【0031】
軸線方向で環状ゾーンAの内部に、クリーニングされていない内面2の部分が存在しないこと、すなわち、クリーニングされていない内面2の部分は、軸線方向で環状ゾーンAの外側のみに見られることを強調することが重要である。換言すると、内面2のクリーニングは、クリーニングサイクルによって影響を受ける内面2全体を、区別された方法で(すなわち、よりクリーンな部分、ゾーンA、およびよりクリーンでない部分、ゾーンBで)クリーニングすることを伴う。しかしながら、いずれの場合でも、全くクリーンでない「穴(holes)」を残すことなく、全領域をクリーニングする。
【0032】
好適な実施形態によれば、エミッタ装置8は、連続的なクリーニングを達成するために、すなわち、円形バンドに沿って、中断なく、レーザビーム9を連続的に射出するように作動される。代替的な実施形態によれば、エミッタ装置8は、断続的なクリーニング(「チェッカーボード」)を行うために、すなわち、円形バンドに沿って、クリーンな領域とクリーンでない領域を交互にするために、レーザビーム9を断続的に射出するように作動される。
【0033】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の保護範囲から逸脱することなく、それらの間で組み合わせることができる。
【0034】
上述のクリーニングシステム1は、多くの利点を有する。
【0035】
第1に、上述のクリーニングシステム1は、タイヤ3の内面2のクリーニングを非常に迅速に行うことができる。いくつかの実験的テストでは、上述のクリーニングシステム1が、類似の既知のクリーニングシステムよりも、更に50~60%高速になり得ることが示された。
【0036】
さらに、上述のクリーニングシステム1は、シーリング剤または吸音材料の内面2への最適な接着を保証する。
【0037】
最後に、上述のクリーニングシステム1は、類似の既知のクリーニングシステムと比較される場合、本質的に、ハードウェアの変更なしに(または、少なくともハードウェアを僅かに変更するだけで)、ソフトウェア更新のみを必要とする点で、実施が簡単で安価である。
【符号の説明】
【0038】
1 クリーニングシステム
2 内面
3 タイヤ
4 支持装置
5 回転軸線
6 位置センサ
7 カメラ
8 エミッタ装置
9 レーザビーム
10 ハンドリング装置
11 支持アーム
12 アクチュエータ
13 制御ユニット
A 環状ゾーン
B 環状ゾーン
C 環状ゾーン
【国際調査報告】