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特表2024-517168サンゴ切片を保持する為のデバイス、及び支持構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】サンゴ切片を保持する為のデバイス、及び支持構造
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/00 20170101AFI20240412BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240412BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240412BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240412BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20240412BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240412BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
A01K61/00 301
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y80/00
C08L101/12 ZBP
C08K3/26
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566413
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022060808
(87)【国際公開番号】W WO2022229045
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】2104303
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523404686
【氏名又は名称】コレール アーティファクト サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ゴーブ,ジェレミー
【テーマコード(参考)】
2B104
4F213
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
2B104AA38
4F213AA24
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL62
4J002CF031
4J002CF051
4J002CF191
4J002DE236
4J002DH036
4J002EG056
4J002EN116
4J002FD016
4J002GT00
4J200AA06
4J200BA14
4J200BA15
4J200BA16
4J200BA18
4J200BA20
4J200DA07
(57)【要約】
本発明は、サンゴ切片を保持する為のデバイスに関し、該デバイスは、長手軸に沿って延在し、且つ遠位端と、近位端と、内側面と、外側面とを備えている第1の中空管状要素;及び、該第1の要素の該近位端と同軸に配置され、且つ該第1の要素の該長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する平坦な表面を画定するフレア部を備えている第2の要素を備えており、ここで、該デバイスは、テクスチャ付けされた表面を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンゴ切片を保持する為のデバイス(1,21)であって、該デバイスは、
長手軸に沿って延在し、且つ遠位端(3)と、近位端(4)と、内側面(13)と、外側面(5)とを備えている第1の中空管状要素(2)、及び、
該第1の要素(2)の該近位端(4)と同軸に配置され、且つ該第1の要素の該長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する平坦な表面(10)を画定するフレア部(7)を備えている第2の要素(6)
を備えており、
ここで、該デバイスは、該内側面上(13)に、テクスチャ付けされた表面(8)を有する、
該デバイス。
【請求項2】
該フレア部(7)は、該平坦な表面(10)と共に該長手軸の周りにフランジ(12)を画定する縁部(11)を備えており、特に、該フランジ(12)は、有利には、該管状要素(2)の該長手軸に対して実質的に平行な方向に変形可能である、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
該第2の要素(6)の該フレア部(7)は、少なくとも4つの細長い突起(16)を備えており、ここで、各突起は遠位端(17)を備えており、該突起は、該フレア部(7)の該表面の面に配置され、及び該長手軸の周りに位置している全ての該遠位端(17a、17b、17c)と共に保持部材を形成するような形で、該フレア部(7)と共に、該中空管状要素(2)の該長手軸の方向に円の弧状に延在している、請求項1に記載のデバイス(21)。
【請求項4】
該第1の要素(2)が、該内側面(13)から該要素の内側に向かって延在する少なくとも1つのスパイク(26)を備えている、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
該デバイスが、少なくとも1つの生分解性ポリマーと少なくとも1つのカルシウム塩とを含む材料から形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つのデバイスの為の支持構造(27)であって、該支持構造(27)が、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス(1,21)の中空管状要素(2)を受け入れるように構成された少なくとも1つの穴(30)を備えている連続した表面(38)を備えており、ここで、該表面がテクスチャ付け(31)されている、該支持構造(27)。
【請求項7】
該支持構造(27)が、複数のセル(33)から構成される内部を備えており、該複数のセルは、互いに、及び直接的に又は間接的に該穴(30)と、連通している、請求項6に記載の支持構造(27)。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つのデバイス(1,21)を備えている、請求項6又は7に記載の支持構造(27)。
【請求項9】
該支持構造(27)は、該支持構造中の穴(30)内に配置された、請求項2に記載された少なくとも1つのデバイス(1)を備えており、ここで、該デバイス(1)は、フランジ(12)を備えており、及び該フランジ(12)は該構造(27)の該表面(38)に固定されている、請求項6~8のいずれか1項に記載の支持構造(27)。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の、サンゴ切片を保持する為のデバイス(1,21)又は請求項6若しくは7に記載の支持構造(27)を製造する方法であって、該デバイス(1,21)又は該支持構造(27)を3Dプリンティングすることからなる少なくとも1つの工程を含む、該方法。
【請求項11】
少なくとも1つのカルシウム塩を含む生分解性ポリマーの使用方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載の、サンゴ切片を保持する為のデバイス(1,21)又は請求項6若しくは7に記載の支持構造(27)を製造する為の該使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生動物、特にサンゴ、を養殖及び成長させる為の、断片又は切片を保持する為のデバイス、及びそのようなデバイスの為の支持の構造に関する。これらのデバイス及び構造は、切片からのサンゴの成長を可能にする為に水槽内で使用されうるが、海洋環境でも使用されうる。
【0002】
本発明はまた、これらのデバイス及び支持構造を製造する方法、並びにこれらのデバイス及び支持構造を製造する為の生分解性ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
サンゴは、海洋環境に生息するイソギンチャク様の動物の多様な群である。サンゴは、軟質サンゴ、硬質サンゴ、海綿、ウミウチワ等を包含する。刺胞動物門の動物である硬質サンゴは、本質的に炭酸カルシウムからなる共通の骨格を共有する幾つかの個体、又はポリプ、から構成される。また、これらポリプ及びそれらの骨格はコロニーを形成する。
【0004】
多くの種類のサンゴは、断片又は切片からの繁殖によって無性生殖で成長させられうる。例えば、生きている一片のサンゴが折られて、幾つかのより小さいかけら又は断片にされうる。断片は、次いで土台又は支持体に付着させられる。コロニーの断片を切り取った後、ポリプから構成される、この断片、又は切片、の生組織は回復してその増殖を再開し、骨格及び新しいポリプを産生し、それにより新しいコロニーを作る。サンゴ切片を採取することは、特に、その自然な再生を助ける為に礁に切片を移植すること、水中生物愛好家に販売される為に自然環境からサンゴを採取するのを回避すること、科学的研究及び公衆への展示の為に研究室でサンゴを増殖させること、及び絶滅危惧種の収集を可能にする。
【0005】
サンゴが適正に増殖することができるように、繁殖の早い段階にサンゴ断片を土台又は支持体に付着させることが重要である。該サンゴが該土台に適正に付着させられないと、該断片が傾く又は動くことがあり得、該土台への該サンゴの自然な付着が遅れるか又は発生せず、成長不全を生じさせる可能性がある。
【0006】
現在、該断片を切り取った後に、サンゴコロニーから切片を採取する為の最も一般的な方法は、恒久的な固定製品を使用して、該切片をプラスチック又はコンクリート製のデバイスに接着結合させるものである。該切片の設置先に応じて、該デバイスは、同じ接着剤を使用して、設置先環境、すなわち水槽又は海底の礁、に設置された支持体にそれ自体が付着されうる。
【0007】
サンゴ骨格の石灰性は、接着剤、例えばエポキシ樹脂(ポリエポキシド)、シアノアクリレート、又は接着モルタル、の使用を必要とし、これは、サンゴ及び水生動物全般に対してある程度毒性であるという不都合点を有する。
【0008】
ペースト形態のエポキシ樹脂は、耐水性で、海洋環境において扱われうる為、サンゴ切片を接着する為にしばしば使用される。しかしながら、これらの接着剤は、非常に感作性が高く、職業活動の状況において発病するアレルギー性湿疹の大半の原因として認識されている。更に、重合前の基本成分は、毒性であり、特に、サンゴの成長にとって害となるフタル酸及び各種アルコールに由来するエステルを放出しうる。
【0009】
シアノアクリレートは、様々な材料が迅速に互いと結合されることを可能にする。しかしながら、その毒性の問題に加えて、それらは、貯蔵寿命が短く、水又は更には周囲水分と接触すると硬化するという不都合点も有し、後者は、それらを、現場で使用されるには不可能でなくとも難しい接着剤にしている。
【0010】
接着モルタルは一般的に、空気石灰とセメントの混合物からなる。それらは、建設作業に広く使用されている。これらの接着剤は、保管条件の変化に非常に敏感であり、それ故に、長期間保管するのが難しい。これらの製品には、長期にわたって吸入した後の肺損傷のリスクがある。加えて、それらは、水の存在下でアルカリ反応を生じさせ、それが、目や皮膚と接触した場合に重篤な刺激を生じる可能性がある。このアルカリ反応はまた、これら薬剤が使用される構造の弱化を招き、よって、海水と接触している結合の耐久性に影響しうる。
【0011】
場合によっては、保持デバイスに接着結合された切片が、次いで、金属のくぎ及び/又はプラスチックの結束帯を使用して礁に付着させられる。ここでも、これらの方法は、該サンゴにとって潜在的に損傷性及び/又は毒性である。
【0012】
該切片を保持デバイスに接着結合することを伴う方法の代法として、接着結合を用いずに、該切片をリング又はバルブに留め付けることによって該切片を保持させることを可能にするデバイス、例えば、Vivid Creative Aquaticsによって販売される「Frag Gripper by Reef Stew - the No Glue Frag Mounting System」(vividcreativeaquatics.com/shop/frag-gripper-by-reef-stew/)、がある。しかしながら、この保持デバイスは、支持体又は支持体に挿入されることが意図される棒に接着結合されなければならない。そのようなデバイスは、枝状サンゴには好適であるが、しかしながら塊状サンゴには好適でない。
【0013】
該切片が通常接着結合される又は付着させられる該支持体は、例えばプラスチック又はコンクリートで作られ、同様に毒性のリスクを呈し、サンゴ礁の損傷要因を悪化させることがあり、又は更にはそれらが作られる方法に起因して環境に負の影響を有しうる。
【0014】
例えば、プラスチック材料、例えばポリエチレンテレフタレート又は塩化ポリビニル、は、内分泌攪乱物質、例えば三酸化アンチモン又はフタル酸エステル類、を放出しうる。プラスチックによって汚染された領域では、サンゴが病気をより発症しやすくなることが観察される。プラスチック細片とサンゴとの接触は、サンゴ組織に損傷を生じさせ、それにより細菌による感染を促進することができる。更に、プラスチック中に存在する特定の添加物が、サンゴポリプを引き寄せて、サンゴポリプによるプラスチックの摂取を促進し、サンゴポリプの増殖と生存に必要な本物の食物からそれらを遠ざける一方で、サンゴポリプに毒性要素を伝播させるリスクを増大させる。
【0015】
主として水、セメント、及び砂から構成されるコンクリートは、世界中のあらゆる建設計画で使用されている。砂は、多くの場合、海底又は海岸を供給源とし、その除去は、礁に対する機械的損傷を引き起こす。セメントの生産は、世界中で最も高いレベルのCOを放出し、COは地球温暖化の主要要因であり、その結果、サンゴ礁の破壊又は更には消滅が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
サンゴの切片又は断片を保持する為のデバイスであって、該切片若しくは該断片を該保持デバイスに付着させる為であれ、又は該デバイスを支持構造に付着させる為であれ、接着結合の工程を必要としないデバイス、を有することが妥当でありうる。
【0017】
また、生分解性で、サンゴに対して生体適合性があり、環境に対して非毒性の材料で容易に作製されうる、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造を有する必要性がある。
【0018】
また、その生物模倣がサンゴの成長と増殖を促す、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造を有する必要性がある。
【0019】
また、その表面テクスチャがサンゴの成長と増殖を促すような形で粗い、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造を有する必要性がある。
【0020】
接着結合を用いずに、表面が接触するときに摩擦作用を生じさせ、該デバイスを該支持構造内に保持するのを助けることが可能な粗さを呈するようにその表面がテクスチャ付けされている、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造を有する必要性がある。
【0021】
枝状であるか塊状であるかを問わず、様々な大きさの任意の種類のサンゴの切片又は断片を保持する為に好適でありうる、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイスを有する必要性がまたある。
【0022】
3Dプリンティング又は成型により、特に3Dプリンティングにより、簡易な方式で作製されうる、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造を有する必要性がまたある。
【0023】
本来の場所でのサンゴの自然な増殖を可能な限り近く再現することを可能にする、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造を有する必要性がまたある。
【0024】
環境又はサンゴに対して潜在的に毒性である薬剤を有さない、又はその使用がそのような薬剤を生成せず、また要することもない、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造を有する必要性がまたある。
【0025】
サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造であって、該切片が該デバイス内に保持され、該デバイスが該支持構造に付着していることを保証する為に最小限の処置を必要とする、該デバイス又は該支持構造を有する必要性がまたある。
【0026】
水槽内で又は海底で使用可能な、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイス又はそのようなデバイスの為の支持構造を有する必要性がまたある。
【0027】
接着結合を用いずに天然の礁に付着させられうる、サンゴの切片若しくは断片を保持する為のデバイスを有する必要性がまたある。
【0028】
その内部構造が水によって充填され、バラストされることを可能にする、支持構造を有する必要性がまたある。
【0029】
本発明は、これらの様々な必要性に完全に又は部分的に応えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
これらの第1の主題のうちの1つに従うと、本発明は、サンゴ切片を保持する為のデバイスであって、該デバイスは、
長手軸に沿って延在し、且つ遠位端と、近位端と、内側面と、外側面とを備えている第1の中空管状要素、及び、
該第1の要素の該近位端と同軸に配置され、且つ該第1の要素の長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する表面を画定するフレア部を備えている第2の要素
を備えており、
ここで、該デバイスは、テクスチャ付けされた表面を有する、
上記のデバイスに関する。
【0031】
1つの実施態様に従うと、該デバイスは、該内側面上に、テクスチャ付けされた表面を有する。
【0032】
1つの実施態様に従うと、該フレア部は、該平坦な表面と共に該長手軸の周りにフランジを画定する縁部を備えうる。該フランジは有利には、該管状部材の該長手軸に対して実質的に平行な方向に変形可能でありうる。
【0033】
1つの実施態様に従うと、該長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する該表面は、少なくとも4つの細長い突起を備えていてもよく、ここで、各突起は遠位端を備えている。該突起は、該フレア部の該表面の面に配置され、及び該長手軸の周りに位置している全ての該遠位端と共に保持部材を形成するような形で、該フレア部と共に、該中空管状要素の該長手軸の方向に円の弧状に延在している。特に、該長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する該表面は、少なくとも5~少なくとも15個、特に少なくとも7~少なくとも12個、特に少なくとも10個の、細長い部材を備えうる。
【0034】
本発明者は、サンゴの断片が接着結合を用いずにデバイス内に保持されることができるように、また該デバイスが接着結合を用いずに水槽内又は海底上の支持体に設置され、付着させられることができるように、構成された、サンゴの切片又は断片を保持する為のデバイスを作製することが可能であることを驚くべきことに発見した。
【0035】
本発明者はまた、カルシウム塩、例えば炭酸カルシウム、を含む生分解性ポリマー、例えば乳酸ポリマー、を使用して、サンゴの切片又は断片を保持する為のデバイス、又はそのようなデバイスの為の支持構造を作製することが可能であることを発見した。
【0036】
本発明者はまた、サンゴの切片又は断片を保持する為のデバイス、又はそのようなデバイスの為の支持構造を、3次元プリンティング法により作製して、該デバイス又は該支持構造上に、テクスチャ付けされた表面を与えることを可能にすることが可能であることを発見した。
【0037】
該保持デバイス又は該支持構造上の該テクスチャ付けされた表面は有利なことに、該サンゴの成長及び増殖を促す生物模倣を生じさせることを可能にする。該テクスチャ付けされた表面はまた有利なことに、接着結合を用いずに、該支持構造内への該デバイスの保持及び付着を促進させるような形で、互いと接触するときに摩擦作用を生じさせることが可能な粗さを有する。
【0038】
使用される材料の生分解性は有利なことに、起こりうる負の影響を最小にしながら、該保持デバイス及び該支持構造を自然環境の中に良好に統合することを可能にする。
【0039】
本発明者は、該サンゴ切片を付着させ、保持すること、及びそれを支持構造又は天然礁に挿入し、付着させることの両方を、全て接着結合を用いずに可能にする形状をデバイスに与えることにより、サンゴの切片又は断片を保持する為のデバイスを作製することが可能であることを予期せず発見した。特に、該保持デバイスの設計は、該サンゴの切片が、該切片と接触している該デバイスの1つ又は複数の部分によって圧縮されることにより、該切片が該デバイス内に保持されることを可能にする。
【0040】
本発明の該デバイス及び支持構造の3Dプリンティングによる作製は有利なことに、単純で低費用であり、該サンゴ切片の様々な寸法に容易に適合可能な、製造方法を可能にする。
【0041】
本発明者は、使用される生分解性材料及び3Dプリンティングによる製造の方法が、該保持デバイスの柔軟性を確実にすることを可能にして、該サンゴの切片と接触している該デバイスの該本体の1つ又は複数の部分による該切片の圧縮によって該切片を該デバイス内に保持する性質を、該デバイスに与えることを驚くべきことに発見した。
【0042】
本発明者は、該使用される生分解性材料及び3Dプリンティングによる該製造の方法が、本明細書に記載されている該デバイス及び支持構造の表面に、テクスチャ、又は粗さ、を単純且つ低費用の方式で与えるのを可能にすることを驚くべきことに発見した。
【0043】
本発明の利点のうちの1つは、接着結合を用いずにサンゴ断片を保持することを可能にする、サンゴ切片を保持する為のデバイス、及びそのようなデバイスの為の支持構造をもたらすことである。
【0044】
本発明の該利点のうちの別の1つは、該サンゴの成長を促す生物模倣性を有する、サンゴ切片を保持する為のデバイス、及びそのようなデバイスの為の支持構造をもたらすことである。
【0045】
本明細書に記載されているデバイスは、有利には、結合剤を使用する必要なく、水槽又は海底の礁の天然の穴の中にある任意の好適な支持体、特に本明細書に記載されている支持構造、に配置され、取り付けられうる。
【0046】
本発明の該利点のうちの別の1つに従うと、本明細書に記載されている該デバイス及び支持構造は、該サンゴ又はその環境に対して毒性の要素を全く含有しない生分解性材料を使用して実施されうる。
【0047】
その利点のうちの別の1つに従うと、本発明の該デバイス及び支持構造は、3Dプリンティングによって製造されてもよく、このことは、それらの寸法を、該サンゴ断片の様々な寸法に合わせて適合することを容易にしうる。
【0048】
1つの実施態様に従うと、該第1の要素は、該内側面から該要素の内側に向かって延在する少なくとも1つのスパイクを備えうる。
【0049】
1つの実施態様に従うと、デバイスの該テクスチャ付けされた表面は、該サンゴ切片の表面との、及び/又は支持構造の接触点との摩擦を発生させることを可能にする表面粗さを有しうる。特に、該テクスチャ付けされた表面は、少なくとも0.5μmの平均表面粗さ、特に0.5μm~320μmの範囲の平均表面粗さ、を有しうる。
【0050】
1つの実施態様に従うと、本発明に従う該デバイスは、少なくとも1つの生分解性ポリマーと少なくとも1つのカルシウム塩とを含む材料から形成されうる。
【0051】
該生分解性ポリマーは、ポリ乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(アルキレンコハク酸)、ポリカプロラクトン、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、及びそれらの組み合わせから選択されうる。特に、該生分解性ポリマーは、乳酸ポリマーでありうる。
【0052】
該カルシウム塩は有機カルシウム塩でありうる。有機カルシウム塩は、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リシン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択されうる。特に、該カルシウム塩は、炭酸カルシウムでありうる。
【0053】
1つの実施態様に従うと、本発明に従う該デバイスは、サンゴ切片を備えうる。
【0054】
その主題のうちの別の1つに従うと、本発明は、本発明に従う少なくとも1つのデバイスの為の支持構造であって、該支持構造が、本発明に従うデバイスの中空管状要素を受け入れるように構成された少なくとも1つの穴を備えている連続した表面を備えており、ここで、該表面は、テクスチャ付けされた表面である、上記の支持構造に関する。
【0055】
1つの実施態様に従うと、該構造は、複数のセルから構成される内部を備えていてもよく、該複数のセルは、互いに、及び直接的に又は間接的に該穴と、連通している。
【0056】
1つの実施態様に従うと、本発明に従う該構造は、少なくとも1つの生分解性ポリマーと少なくとも1つのカルシウム塩とを含む材料から形成されうる。
【0057】
1つの実施態様に従うと、構造上の該テクスチャ付けされた表面は、本発明のデバイスとの摩擦を発生させることを可能にする表面粗さを有しうる。特に、該テクスチャ付けされた表面は、少なくとも0.5μmの平均表面粗さ、特に0.5μm~770μmの範囲の平均表面粗さ、を有しうる。
【0058】
1つの実施態様に従うと、該支持構造は、本発明に従う少なくとも1つのデバイスを備えうる。
【0059】
1つの実施態様に従うと、該支持構造は、穴内に挿入された本発明に従う少なくとも1つのデバイスを備えていてもよく、該デバイスはフランジを備えており、ここで、該フランジは該構造の該表面に固定されている。
【0060】
その主題のうちの別の1つに従うと、本発明は、本発明に従うサンゴ切片を保持する為のデバイス又は本発明に従う支持構造を製造する方法であって、該デバイス又は該構造を3Dプリンティングすることからなる少なくとも1つの工程を含む、上記の方法に関する。
【0061】
1つの実施態様に従うと、本発明の方法で使用されるプリンティング材料は、カルシウム塩を含む生分解性ポリマーでありうる。
【0062】
その主題のうちの別の1つに従うと、本発明は、少なくとも1つのカルシウム塩を含む生分解性ポリマーの使用方法であって、本発明に従うサンゴ切片を保持する為のデバイス又は本発明に従う支持構造を製造する為の上記の使用方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1図1は、フランジを画定するフレア状の上部を備えている、サンゴの断片又は切片を保持する為のデバイスを示す。
図2図2は、図1に従うデバイスを通る断面を示す。
図3図3は、保持部材を画定する細長い突起を有するフレア状の上部を備えている、サンゴの断片又は切片を保持する為のデバイスを示す。
図4図4は、図3に従うデバイスを通る断面を示す。
図5図5は、塊状サンゴの断片を備えた、図3に従うデバイスを示す。
図6図6は、枝状サンゴの断片を備えた、図1に従うデバイスを示す。
図7図7は、該フランジが持ち上げられた状態で、支持構造の穴内に設置された図1に従うデバイスを示す。
図8図8は、該フランジが該支持構造の表面に固定された状態で、支持構造の穴内に設置された図1に従うデバイスを示す。
図9図9は、図1に従う保持デバイス内に設置された、図3に従う保持デバイスを示す。
図10図10は、図9の変形例を示す。
図11図11は、該中空管状要素の該内側面と該第2の要素の上面とに配置されたスパイクを備えている、図1に従うデバイスを通る断面を示す。
図12図12は、本発明の該デバイスの為に好適な支持構造を示す。
図13図13は、ハニカム状の内部を明らかにする、図12の断面を示す。
図14図14は、各々がサンゴ断片を備えた図1及び図3に従うデバイスをこれらの複数の穴のうちの一部の穴内に備えられている、図12に従う支持構造を通る断面を示す。
図15図15は、水槽内に設置された支持構造に配置されるか、又は海底に存在する天然礁に配置されるかのいずれかである、本発明に従う該保持デバイスの可能な使用を図示する。
図16図16は、プリンティングノズルから押し出されるポリマーの層の重畳による3Dプリンティングの原理を示す。
図17図17は、プリンティングノズルから押し出される該ポリマーの該層の厚さの関数としての該平均表面粗さの変動性を図示する。
図18図18は、図1に従うデバイスの3Dプリンティングを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0064】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」及び「the」は、文脈が明らかに他のように示さない限り、複数形の指示対象を包含することに留意されたい。よって、例えば、「デバイス(a device)」の言及は、複数のデバイスの言及を包含し、「構造(a structure)」の言及は複数の構造の言及を包含する等である。
【0065】
表現「1つの~を備えている(comprising a)」は、「少なくとも1つの~を備えている」と同義であると理解されるべきである。
【0066】
数値又はパラメータとの関係で本明細書において使用される、語「~前後」又は「およそ」は、この値又はこのパラメータの測定に関する、当技術分野の当業者には既知である通常の誤差区間を云う。「値又はパラメータ」「前後」の言及は、その値又はそのパラメータを使用する実施態様を包含し、記述する。幾つかの実施態様において、語「~前後」は、所与の値の±10%を云う。しかしながら、当該の値が、更に分割された場合にその本質性を失う分割不可能な対象を指すとき、「~前後」は、該分割不可能な対象の±1を云う。
【0067】
本明細書に記載されている本発明の観点及び実施態様は、それら観点及び実施態様「を有する」、「を備えている」、「からなる」及び「本質的に~からなる」変形例を包含する。要素との関連で使用される語「~を有する(have)」及び「~を備えている(comprise)」、並びに変化形、例えば「~を有する(has)」、「~を有する」、「~を備えている(comprises)」、又は「~を備えている」、は、他の要素を排除することなく、言及されている1以上の該要素の包含を示唆するものと理解される。語「~からなる」は、追加的な要素を除外して、示されている要素を包含することを示唆する。語「本質的に~からなる」は、述べられる要素及び可能性として他の要素の包含を示唆し、それら他の要素は、本開示の1以上の基本的特徴に実質的に影響しない。語「~を備えている」又は同等の語を使用する本開示の様々な実施態様は、その語が「~からなる」又は「本質的に~からなる」に置き換えられる実施態様を包含することが理解される。
【0068】
説明において、ある特徴との関連で使用される語「本質的に」又は「実質的に」は、その特徴と概ね似ているが完全には似ていないその特徴の変種の組を定義することが意図される。所与の特徴の変種の組と所与の特徴との差は、該所与の特徴の変種の該組に対応する全ての実施態様において、該特徴の性質及び機能が実質的に影響されないようなものである。例えば、ある位置を参照する語「実質的に」、例えば「実質的に平行」、は、平行な位置に近いが全く同じではない位置の組を表す為に使用される。
【0069】
明瞭性の為に別々の実施態様として記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施態様としても組み合わせられうることが理解される。逆に、簡潔性の為に単一の実施態様の文脈で説明される本発明の異なる特徴はまた、別々に実施される、又は好適なサブコンビネーションで実施されうる。
【0070】
特に述べられない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は同等の全ての方法及び材料も、本発明の実施で使用されうる。本明細書で言及される全ての文献は、そのような文献がそれとの関連で引用される該方法及び/又は材料を記載する為に、参照により組み込まれる。
【0071】
下記に記載される供給源、成分、及び構成要素のリストは、その組み合わせ又は混合物も企図され、本明細書に含まれるように列挙される。所与の該リストは、所与の化合物又は品目のリスト「からなる群から選択される」及び「その組み合わせ」を意味するように読まれ、解釈されうる。
【0072】
説明中で与えられる各最大数値制限は、そのようなそれより低い数値制限が明示的に書かれているかのように、全てのそれより低い数値制限を含む。説明中で与えられる各最小数値制限は、そのようなそれより高い数値制限が本明細書に明示的に記載されているかのように、全てのそれより高い数値制限を含む。説明中で与えられる各数値範囲は、それらの数値範囲が本明細書に明示的に記載されているかのように、該与えられる数値範囲に含まれるより狭い数値範囲を含む。
【0073】
発明の詳細な説明において、具体的な商品名をもつ所与の材料、化合物、又は機器が参照される。本発明は、それら特定の材料、化合物、又は機器の使用に限定されず、当分野で既知の任意の同等物を含む。
【0074】
保持デバイス
サンゴ切片を保持する為の本発明に従う保持デバイス(1、21)は、
長手軸に沿って延在し、且つ遠位端(3)と、近位端(4)と、内側面(13)と、外側面(5)とを備えている第1の中空管状要素(2)、及び、
該第1の要素の該近位端と同軸に配置され、且つ該第1の要素(2)の長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する平坦な表面(10)を画定するフレア部(7)を備えている第2の要素(6)
を少なくとも備えていてもよく、
ここで、該デバイスが、テクスチャ付けされた表面(8)を有する。
【0075】
該第1の要素は、その遠位端(3)と近位端(4)との間に、この第1の要素の該内側面(13)と該外側面(5)とによって画定される本体(9)を備えている。
【0076】
本発明のデバイスの該第2の要素(6)は、該フレア部(7)の該平坦な表面(10)と共に該長手軸の周りにフランジ(12)を画定する縁部(11)を備えたフレア部を備えうる。該フランジ(12)は、一体部片であってもよく、該第1の要素の該長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する連続した表面を形成しうる。代替的には、図示されない1つの実施態様に従うと、該フランジ(12)は、その縁部に対して実質的に直角に配置された断絶部を有しうる。該断絶部は、該フランジの該縁部から該第1の要素の該近位端まで延在する切り込み又は切り欠きの形態を取りうる。
【0077】
該フランジ(12)は、該第1の要素(2)の該長手軸に対して実質的に平行な方向に変形可能でありうる。有利には、該フランジ(12)は、該第1の要素(2)の該遠位端(3)の方向に変形可能でありうる。よって、支持体、例えば下記で定義される支持構造又は海底の天然礁、に設置されると、該変形可能なフランジ(12)は、該第1の要素の該遠位端(3)に向かって下方に折られて、該支持体の表面に固定された状態になりうる。該支持体の該表面に固定された状態になることにより、該フランジは、そのテクスチャ付けされた表面によって生成される摩擦力を通じて、支持体への該デバイスの付着及び保持を促進する。
【0078】
図1において示されている1つの実施態様に従うと、本発明に従うサンゴ切片を保持する為の保持デバイス(1)は、長手軸に沿って延在し、且つ遠位端(3)と、近位端(4)と、内側面(見えていない)と、外側面(5)とを備えている少なくとも第1の中空管状要素(2)、及び、該第1の要素(2)の該近位端(4)と同軸に配置され、且つ該第1の要素の該長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する平坦な表面(10)を画定するフレア部(7)を備えている第2の要素(6)を備えていてもよく、該フレア部(7)は、該平坦な表面(10)と共に該長手軸の周りにフランジ(12)を画定する縁部(11)を更に備えており、ここで、該デバイスは、テクスチャ付けされた表面(8a、8b)を有しうる。有利には、該フランジ(12)は、該管状部材(2)の該長手軸と実質的に平行な方向に変形可能である。
【0079】
フランジを有するそのようなデバイスは、以下の説明で「バルブ」デバイスと呼ばれうる。
【0080】
図2は、サンゴ切片を保持する為の保持デバイス(1)を通る断面を示し、該保持デバイス(1)は、長手軸に沿って延在し、且つ遠位端(3)と、近位端(4)と、内側面(13)と、外側面(5)とを備えている少なくとも第1の中空管状要素(2)、及び、該第1の要素(2)の該近位端(4)と同軸に配置され、且つ該第1の要素(2)の該長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する平坦な表面(10)を画定するフレア部(7)を備えている第2の要素(6)を備えており、ここで、該フレア部(7)は、該平坦な表面(10)と共に該長手軸の周りにフランジ(12)を画定する縁部(11)を更に備えており、該デバイスは、テクスチャ付けされた表面を有しうる。
【0081】
該第1の要素は、その遠位端(3)と近位端(4)との間に、この第1の要素の該内側面(13)と該外側面(5)とによって画定される本体(9)を備えている。
【0082】
全体として考えられると、本発明に従うデバイスは、一方においては、該第2の要素(6)の上面(14)によって延ばされた該第1の中空管状要素(2)の該内側面(13)と、他方においては、該第2の要素(6)の下面(15)によって延ばされた該第1の要素(2)の該外側面(5)と、からなる壁を備えている。
【0083】
該デバイスの該壁は、内側面及び外側面を備えている。該壁の該内側面は、該第1の中空管状要素(2)の該内側面(13)、及び該第2の要素(6)の該上面(14)によって形成される。該壁の該外側面は、該第1の中空管状要素(2)の該外側面(5)、及び該第2の要素(6)の該下面(15)によって形成される。該外側面と内側面は、併せて、本発明の該デバイスの表面を表す。
【0084】
デバイスの該壁は、サンゴ断片が該デバイスに挿入されるのを可能にし、その後それが保持されるのを確実にする為に、また該デバイスが、支持構造又は海底の礁にある、穴内に挿入されてその中に保持されるのを可能にする為に必要な柔軟性及び硬さを有する。
【0085】
図3は、本発明のデバイス(21)の変形の実施態様を示す。本発明のデバイス(21)は、その該フレア部(7)が少なくとも4つの細長い突起(16)を備えている(同図では4番目の端は隠されている為に見えない)第2の要素(6)を備えていてもよく、ここで、各突起は遠位端(17)を備えている。該突起は、該フレア部(7)の該表面の面に配置され、及び該長手軸の周りに位置している全ての該遠位端(17a、17b、17c;4番目の端は同図では該端17bで終端する該突起によって隠されている為に見えない)と共に保持部材を形成するような形で、該フレア部(7)と共に、該中空管状要素(2)の該長手軸の方向に円の弧状に延在している。
【0086】
該第1の要素は、その遠位端(3)と近位端(4)との間に、この第1の要素の該内側面(13)と該外側面(5)とによって画定される本体(9)を備えている。
【0087】
本発明に従う該デバイス(21)の該表面は、テクスチャ付けされている(8)。
【0088】
特に、該フレア部(7)は、少なくとも5個から少なくとも15個、特に少なくとも7個から少なくとも12個、特に少なくとも10個の、細長い突起(16)を備えうる。
【0089】
該突起は、該第2の要素の該フレア部に位置する、遠位端(17)及び基部(18)を備えている。
【0090】
該細長い突起は、実質的に平坦でありうる。代替的には、それらは実質的に管状、中空、又は中実でありうる。有利には、それらは中実の管状形態である。更に有利には、それらは実質的に平坦である。
【0091】
該細長い突起は、該第2の要素の該フレア部と各自の遠位端との間に一定の断面を有しうる。代替的には、該断面は、該遠位端に尖った形状を与えるような形で、実質的に該突起の該遠位端に向かって減少しうる。
【0092】
有利には、該細長い突起(16)は、実質的に平坦化されており、断面が、尖った、又は実質的に尖った、形状を該遠位端(17)に与えるような形で、該第2の要素(6)の該フレア部(7)に位置する該基部(18)との間で減少していく。
【0093】
該細長い突起(16)は、該突起(16)の該遠位端(17)が該基部(18)の位置と実質的に合わせられた位置になるように、実質的に該第2の要素(6)の該フレア部(7)の表面の面内を直線状に延在しうる。
【0094】
代替的には、変形の実施態様に従うと、該細長い突起は、該突起の該遠位端が該基部の位置に対して横方向にオフセットされた位置になるように、実質的に該第2の要素の該フレア部の表面の面内を、S字形状又はねじれ形状で延在しうる。
【0095】
図4は、図3において示されている本発明に従うデバイス(21)を通る断面を示す。
【0096】
変形の実施態様に従うと、本発明に従うサンゴ切片を保持する為のデバイス(21)は、
長手軸に沿って延在し、且つ遠位端(3)と、近位端(4)と、内側面(13)と、外側面(5)とを備えている第1の中空管状要素(2)、及び
該第1の要素(2)の該近位端(4)と同軸に配置され、且つ該第1の要素(2)の長手軸を中心に周方向に拡がる面を構成する平坦な表面(10)を画定するフレア部(7)を備えている第2の要素(6)
を備えており、ここで、該フレア部(7)が少なくとも4つの細長い突起(16)を備えており、各突起は遠位端(17)を備えており、該突起は、該フレア部(7)の該表面の面に配置され、及び該長手軸の周りに位置している全ての該遠位端(17a、17b、17c)と共に保持部材を形成するような形で、該フレア部(7)と共に、該中空管状要素(2)の該長手軸の方向に円の弧状に延在しており、
該デバイスは、テクスチャ付けされた表面(8)を有する。
【0097】
突起を有する上記で説明されたデバイスは、説明の残りにおいて「リング」デバイスと呼ばれうる。
【0098】
「バルブ」又は「リング」型のデバイスの寸法は、可変であり、移植されるサンゴ切片の寸法に依存する。下記で説明される3Dプリンティング製造方法を使用して、サンゴ断片の寸法に合わせて適合された本発明の保持デバイスを得ることは容易である。本発明の該保持デバイスの寸法に関する制約はないが、実際には、それらの最も大きい長さにおいて50cmよりも大きい寸法のサンゴ断片を切り取ることは有益でない。
【0099】
本発明の該デバイスは、該デバイスの最も大きい長さにおいて、1cm前後~25cm前後、特に、2cm前後~20cm前後、5cm前後~15cm前後、8cm前後~10cm前後、の範囲の寸法を有しうる。
【0100】
本発明の該デバイスは、該デバイスの最も大きい幅において、0.5cm前後~20cm前後、特に1cm前後~15cm前後、4cm前後~12cm前後、又は8cm前後~10cm前後、の範囲の寸法を有しうる。
【0101】
1つの変形の実施態様に従うと、該第1の中空管状要素は、その遠位端で閉じられうる。代替的には、それはその遠位端で開口していうる。該開口は、該第1の要素の該本体の幅と実質的に等しい直径を有しうる。代替的には、該開口は、該第1の要素の該本体の該幅よりも小さい直径を有しうる。更に別の変形例に従うと、該遠位端は、可変の寸法及び形状、例えば円形の、少なくとも1つ又は複数の、少なくとも2つの、穴を備えうる。
【0102】
該第1の中空管状要素は、可変形状の断面を有しうる。それは、実質的に円形、正方形、長方形、台形、三角形、又は更には楕円形でありうる。有利には、それは実質的に円形である。該第1の管状部材の該断面は、該部材の長さ全体に沿って一定であってもよく、又はこの長さに沿ってその形状が変化してもよく、例えば、該管状要素の該長さの第1の区間では実質的に円形の断面を有し、次いで、続く区間において実質的に正方形の断面を有する。
【0103】
有利には、該第1の中空管状要素の該断面は、実質的に円形であり、該要素の該長さ全体に沿って一定である。
【0104】
該中空管状要素の該本体の表面は、その近位端と遠位端との間で、連続的であるか、又は様々な寸法及びサイズ、特に円形の、開口を有しうる。特に、該中空管状要素の該本体の該表面は連続的である。
【0105】
該遠位端にある開口及び/又は該遠位端にある少なくとも1つの穴及び/又は該第1の要素の該本体にある少なくとも1つの穴の存在は有利なことに、海水又は水槽水が該保持デバイス内を循環して、該サンゴ切片にその成長及び増殖に必要な栄養分をより容易に供給することを可能にする。
【0106】
本明細書において記載されている本発明のデバイス、例えば(1)又は(21)、は、一体部片として作られうる。そのような構成において、該第2の要素(6)は、該第1の要素(2)の該近位部(4)の延長部を構成しうる。
【0107】
代替的には、本明細書において記載されている本発明のデバイス、例えば(1)又は(21)、は、該第1の要素(2)及び第2の要素(6)によってそれぞれ表される少なくとも2つの部分から構成されうる。そのような構成において、該第1の要素(2)及び第2の要素(6)は、当業者に既知の任意の方法により、例えば溶着により、組み立てられうる。
【0108】
有利には、本発明に従う保持デバイスは、一体部片として作られる。
【0109】
本明細書において記載されている本発明のデバイス、例えば(1)又は(21)、は、有利には、サンゴ断片又は切片を保持することが意図される。そして、該デバイスは、該切片が増殖してサンゴの新しいコロニーに成長することを可能にする環境に設置される。表現「サンゴ断片」又は「サンゴ切片」は、本明細書において、切片を介して繁殖させる目的で個体から採取されたサンゴ片を意味する為に交換可能に使用される。切片を採取することは、分離された部分又は部分の断片から新しい個体を誕生させることからなる栄養体繁殖の方法である。該デバイスはまた、支持構造又は海底に存在する天然礁の、穴内に挿入することによって設置され、それにより該サンゴ断片にその成長及びその増殖に必要な環境を与えることが意図される。
【0110】
本発明に従うデバイス、例えば(1)又は(21)、を取り付け穴内に挿入する機能は、該第1の中空管状要素(2)によって行われる。該デバイス(1)によってサンゴ切片を保持する機能は、該第1の要素(2)の該近位端(4)と同軸に配置され、フレア部(7)を備えている、該第2の要素(6)と、該第1の中空管状要素(2)の管腔、又は内部、とによって行われる。該デバイス(21)によってサンゴ切片を保持する機能は、該第1の要素(2)の該近位端(4)と同軸に配置され、フレア部(7)を備えている、該第2の要素(6)と、該長手軸を中心に位置するその該遠位端(17)が保持部材を形成する、該細長い突起(16)と、によって行われる。
【0111】
上記で説明された「リング」デバイスは有利なことに、枝状又は塊状サンゴの断片を保持するのに好適でありうる。そのような実装において、該サンゴ断片は、該細長い突起の該遠位端同士の間に挿入されうる。該サンゴ断片の挿入は、該断片の少なくとも一方の、好ましくは両方の、端が2つの突起の間に保持され、該デバイスから外側に延在した状態を保つように行われる。特に、細長い突起(16)を有する本発明のデバイス(21)は、塊状サンゴに好適でありうる。図5は、該細長い突起(16)に留め付けられた塊状サンゴの断片(22)を備えた、本発明に従うデバイス(21)を示す。
【0112】
「リング」型デバイスは、例えば、95前後~98前後のショアA硬度、特に96前後のショアA硬度~97前後のショアA硬度、を有する、剛体の壁を有しうる。特に、そのようなデバイスは、98前後のショアA硬度を有する剛体の壁を有しうる。
【0113】
該に記載された「バルブ」デバイスは、有利には、枝状サンゴの断片を保持する為に好適でありうる。そのような実装において、該サンゴ断片は、該第1の要素の全長さに沿って挿入されうる。該サンゴの保持は、下記で説明されるように、スパイクの存在によって促進されうる。該サンゴ断片は、該断片の一部を、該第2の要素の該フレア部の上に出ている状態に保つように挿入される。
【0114】
フランジを有する本発明のデバイスは、特には枝状サンゴに好適でありうる。図6は、枝状サンゴの断片(23)を備えた、本発明に従うデバイス(1)を示す。
【0115】
「バルブ」型デバイスは、例えば85前後~98前後のショアA硬度、特に90前後~95前後のショアA硬度、特に92前後のショアA硬度、の範囲の硬度を有する壁を有しうる。特に、そのようなデバイスは、92前後のショアA硬度を有する剛体の壁を有しうる。
【0116】
該サンゴ断片が「バルブ」型保持デバイスに挿入されると、該デバイスは、支持構造、例えば、下記で定義される支持構造又は海底の天然礁、に設置されてもよく、該変形可能なフランジが、該中空管状要素の該遠位端に向かって下方に折られて、該支持体の表面に固定された状態になりうる。該支持体の該表面に固定された状態になることにより、該フランジは、そのテクスチャ付けされた表面によって生成される摩擦力を通じて、その支持体への該デバイスの付着及び保持を促進する。
【0117】
図7及び図8は、支持体(24)の穴(25)内に挿入された枝状サンゴの断片(23)を含む、本発明に従うデバイス(1)を示す。図7は、該フランジ(12)が初期位置に持ち上げられた状態の該デバイスを示す。図8は、該フランジ(12)が変形して、該支持体(24)の該表面に固定された状態の該デバイスを示す。
【0118】
代替的には、「バルブ」デバイスは、枝状又は塊状サンゴの切片を備えた「リング」デバイス自体を保持する為に好適でありうる。
【0119】
図9及び図10は、「バルブ」型保持デバイス(1)に挿入された塊状サンゴの断片(22)を備えた、本発明の「リング」型デバイス(21)を示す。
【0120】
上記で説明された「バルブ」デバイス又は「リング」デバイスはまた、少なくとも該デバイスの該壁の該内側面に配置された、少なくとも1つの、特に複数の、スパイクを備えうる。
【0121】
1つの実施態様に従うと、1以上の該スパイクは、該第1の要素の該内側面に配置されうる。1以上の該スパイクは、該近位端に配置されうる。代替的には、又は追加的には、それらは、該第1の要素の該本体の内部表面全体に、又は該遠位端にも、配置されうる。
【0122】
1つの変形の実施態様に従うと、1以上の該スパイクは、該第2の要素の上面に配置されうる。
【0123】
該スパイクは、該第1の中空管状要素の周部に、又は該第1の要素の該長手軸に沿って長手方向に、又は該第1の要素の該内側面上に規則的に配置されるように周部上に及び該長手軸に沿って、配置されうる。該スパイクの密度は、サンゴ断片の挿入を阻止又は妨害することなく、該サンゴ断片(又は本発明のデバイスに挿入された任意の他の要素)への保持を増大させるように調整される。
【0124】
該スパイクの存在は有利なことに、該中空管状要素に挿入された該サンゴ断片の保持、又は該当する場合、第1のデバイスに挿入されたサンゴ断片を保持する為の第2のデバイスの保持、を促進することを可能にする。
【0125】
図11は、該第1の要素(2)の該内側面(13)及び該第2の要素(6)の該上面(14)に配置された複数のスパイク(26)を備えた、本発明に従うデバイス(1)を通る断面を示す。
【0126】
本発明に従うデバイスは、テクスチャ付けされた表面(8)を有する。該テクスチャ付けされた表面は、該サンゴ切片の表面との、及び/又は支持構造の接触点との摩擦を発生させることが可能な平均表面粗さを有しうる。本発明の目的には、語「テクスチャ付けされた」は、壁の表面が粗いことを意味する。該壁の該表面のテクスチャ付け又は粗さは、該壁の該外側面又はその内側面に存在する。有利には、該テクスチャ付け又は粗さは、該内側面と該外側面とに存在する。
【0127】
該デバイスの該内側面の表面のテクスチャ付けは、該表面の該テクスチャと該サンゴ切片の該表面との間に生じる摩擦の現象を通じて、該切片を該デバイス内に固定化し、保持することを可能にする。
【0128】
該デバイスの該外側面の該表面の該テクスチャ付けは、該テクスチャ付けされた表面と、該デバイスが挿入されている支持体の表面との間に生じる摩擦の現象を通じて、該デバイスを該支持体内に固定化し、保持することを可能にする。
【0129】
語「テクスチャ付けされた」は、特定の材料又は製造方法(例えば、それに施与される仕上げ又はコーティング)の使用を示唆しない。語「テクスチャ付けされた」は、滑らかな又は研磨された表面外形と対照的に、高摩擦の表面外形を云う為に使用される。テクスチャ付けされた面、又は表面、は、多数の個別の構成要素から構成されてもよく、ここで、該多数の個別の構成要素は、互いの近傍にあり、共に複数の凹要素及び凸要素を画定する。凸要素及び凹要素は、どの特定の形状にも限定されない。本発明に好適な凹要素は、どの特定の形状にも限定されず、例えば、空洞、谷、空隙、凹部、溝、条痕、又はへこみの形状を有しうる。本発明に好適な凸要素は、どの特定の形状にも限定されず、例えば、出っ張り、こぶ、突起部、隅部、隆起部、膨らみ、盛り上がり、又は突出物の形状を有しうる。
【0130】
該テクスチャ付けは、どの特定の形状にも限定されない。本発明に好適なテクスチャ付けは、例えば、溝筋、条痕、溝、刻み目、網目の組、幾何学的ネットワーク、又は絡み合いの形状を有しうる。
【0131】
1つの実施態様に従うと、本発明のデバイスの該表面の該テクスチャ付け及び支持体、例えば本発明の支持構造、の表面の該テクスチャ付けは、該デバイスの該表面の該凸要素が、該支持体の該表面の該凹要素に嵌まることができるように、及び該支持体の該表面の該凸要素が、該デバイスの該表面の該凹要素に嵌まることができるように、同一の又は同様の構成を有しうる。テクスチャ付けの同一の又は同様の構成は一般的に、向かい合う構成要素が互いと干渉する/絡み合う接触状態に容易に置かれる為、より大きい表面摩擦が生成されることを可能にする。
【0132】
有利な実施態様に従うと、デバイスの表面及び支持構造の表面は、実質的に互いと平行に配置された、溝筋、条痕、又は溝の組によって形成されるテクスチャ付けを有する。
【0133】
本発明に従うデバイスの表面のテクスチャ付けは、表面粗さ、特に平均表面粗さ、によって定義されうる。表面粗さは、表面に存在し、高さの違いによって生じる、凹凸に対応する。表面粗さは、粗さ測定デバイスを使用して表面外形を測定することによって確立されうる。様々な粗さ測定方法が適用されうる。表面粗さ、特に平均表面粗さ、を測定する為の方法の例として、接触式の方法、例えばスタイラス法、又は、例えば光学プロフィロメータを使用する、光学方法が言及されうる。
【0134】
該スタイラス法と呼ばれるものでは、センサ先端が、デバイスの表面にわたって一定の速度で使用される。該先端は、該表面を点ごとに走査する。該平均表面粗さの接触式測定は、例えば機器、例えばミツトヨ社によって販売されるSurftest SJ-210又はSurftest SJ-410、を使用して得られうる。
【0135】
該平均表面粗さの光学測定は、光学プロフィロメータ型の機器、例えばZygo Corporation製のNewView(商標)9000光学プロフィロメータ、を使用して、又はOGP社によって販売されるRainbow白色光色共焦点センサを使用して、得られうる。
【0136】
DIN EN ISO 4288(出願日の時点)によれば、粗さ特性は、5つの個別測定セクションで測定される。大半の粗さ特性、例えば、算術平均粗さ値(Ra)、平均粗さ深さ(Rz)、又は最大粗さ深さ(Rmax)、は、個別の測定セクションで計算される(個別の測定セクションの長さは上限波長と数値的に等しい)。特性値、例えば材料比(Rmr)又は該粗さ特性の総高さ(Rt)、は、粗さ特性全体にわたって考慮される。粗さ特性又は粗さパラメータは、国際標準DIN EN ISO 4287(出願日の時点)を基準とする。
【0137】
該平均粗さRaは、参照セクション内の特性偏差の絶対値の算術平均値と定義される。
【0138】
本発明のデバイスの該平均表面粗さは、該要素の該長手軸に平行に測定されうる。
【0139】
本発明のデバイスの該平均表面粗さは、該表面に存在する該条痕に対して直角に測定されうる。
【0140】
本発明に従うデバイスの該テクスチャ付けされた表面は、少なくとも0.5μmの平均表面粗さ、特に0.5μm前後~320μm前後の範囲の表面粗さ、を有しうる。特に、本発明のデバイスは、1μm前後~300μm前後、2μm前後~250μm前後、4μm前後~200μm前後、8μm前後~150μm前後、10μm前後~120μm前後、15μm前後~100μm前後、20μm前後~80μm前後、又は30μm前後~50μm前後の範囲の平均表面粗さを有しうる。
【0141】
本発明に従うデバイスは、0.5μm前後、1μm前後、2μm前後、5μm前後、8μm前後、10μm前後、15μm前後、20μm前後、30μm前後、40μm前後、50μm前後、80μm前後、100μm前後、120μm前後、150μm前後、180μm前後、200μm前後、250μm前後、280μm前後、300μm前後、又は320μm前後の平均表面粗さを有しうる。
【0142】
下記で詳細に説明されるように、本発明のデバイスの該表面粗さ、又はテクスチャ付け、は、特に該デバイスを製造する為の該方法のパラメータによって決定される。よって、各製造方法が、1つの予想される表面粗さに対応する。
【0143】
本発明のデバイスの該壁は、該デバイスにサンゴ断片を挿入して保持する、及び該デバイスを天然の又は製造された支持体に挿入して保持する為に好適な柔軟性又は硬さを有する。本発明のデバイスの柔軟性又は硬さは、ショア硬度尺度を使用して測定されうる。硬度は、ショアデュロメータを使用して測定されうる。そのようなデバイスは、試料に適用されたときの、円錐台形の先端である標準化されたインデンタの押し込み深さを決定し、該試料を貫通する際、それは較正された金属ばねに対する反作用を引き起こす。本発明に従うデバイスの該壁の該硬度を測定する為の尺度は、ショアA尺度である。該ショアA尺度による該硬度の測定は、35°の円錐角、8.065Nのばね力、及び12.5Nの圧力による力を有する円錐台を用いて実施されうる。
【0144】
該保持デバイスは、サンゴ断片との生物模倣を促進する為に着色されうる。本発明に従う該デバイスの着色は、下記で詳細に説明されるように、それを製造する為に使用される材料を着色することによって得られる。
【0145】
図15において示されているように、本発明の該デバイスは、人工の、例えば下記で説明される支持構造、又は天然の、例えば海底にある礁、のいずれかである、支持体に挿入されうる。
【0146】
支持構造
本発明の主題のうちの1つは、本発明の少なくとも1つのデバイスの為の支持構造に関する。そのような構造は、本明細書に記載されているデバイスの該遠位端を受け入れるように構成された少なくとも1つの穴を備えている連続した表面を備えている。該構造の該表面はテクスチャ付けされている。
【0147】
支持構造は、任意の可能な形状を有しうる。特に、それは、サンゴ礁の天然の起伏を模倣するように意図された隆起部及び空洞を有しうる。代替的には、それは、幾何学的形状、例えば、立方体、平行六面体、又は、該構造が水槽の底又は海底に安定して設置されることを可能にするのに十分な寸法の少なくとも1つの面を備えている多角形、を有しうる。
【0148】
図12は、隆起部(28)及び凹部(29)を有し、該当する場合にはデバイス(1、21)の中空管状要素(2)を受け入れるように構成された複数の穴(30)を備えている連続した表面(38)を備えており、ここで、該表面がテクスチャ付け(31)されている、任意形状の支持構造(27)を示す。
【0149】
本発明に従う該支持構造の該表面のテクスチャ付けは、特に上記で説明された、本発明のデバイスの該表面のテクスチャ付けと同じ特性を有していてもよく、ここで、該平均表面粗さがまた、該デバイスに関して上記で説明されたように測定されうる。
【0150】
本発明に従う支持構造の該テクスチャ付けされた表面は、少なくとも0.5μmの平均表面粗さ、特に10μm前後~770μm前後の範囲の平均表面粗さ、を有しうる。特に、本発明のデバイスは、15μm前後~700μm前後、20μm前後~600μm前後、40μm前後~500μm前後、50μm前後~400μm前後、80μm前後~300μm前後、100μm前後~250μm前後、120μm前後~200μm前後、又は150μm前後~180μm前後の範囲の平均表面粗さを有しうる。
【0151】
本発明に従う支持構造は、0.5μm前後、10μm前後、15μm前後、20μm前後、40μm前後、50μm前後、80μm前後、100μm前後、120μm前後、150μm前後、180μm前後、200μm前後、250μm前後、300μm前後、400μm前後、500μm前後、600μm前後、700μm前後、又は770μm前後の平均表面粗さを有しうる。
【0152】
有利な実施態様に従うと、支持構造(27)の該表面(38)は、実質的に互いと平行に配置された、溝筋、条痕、又は溝の組から構成されるテクスチャ付け(31)を有する。
【0153】
本発明に従う支持構造(27)の該表面は、本発明に従うデバイス(1、21)の該中空管状要素(2)を受け入れるように構成された少なくとも1つの穴(30)を備えている。
【0154】
特に、支持構造は、複数の穴(30)を有する。該穴は、該構造の該表面に無作為の又は無秩序な配置で配置される。代替的には、該穴は、規則正しく配置されうる。
【0155】
該穴は、該穴の各々に設置されて本発明の保持デバイスの中に存在する各サンゴ切片が、隣の切片の成長と増殖を妨害することなく増殖するのを可能にするように、互いから距離をおいて配置される。例えば、該穴は、互いから、少なくとも5cm、特に少なくとも8cm、特に少なくとも10cm、特に少なくとも12cm、又は少なくとも15cm、の距離に配置されうる。2つの隣り合う穴の間の該距離は、5cm前後~15cm前後、特に8cm前後~12cm前後の範囲であってもよく、又は10cm前後でありうる。
【0156】
1つの変形の実施態様に従うと、該支持構造は中実でありうる。この変形例において、該穴は、塊の中にくりぬかれる又は穿孔される。
【0157】
別の変形の実施態様に従うと、該支持構造は、中空であり、壁を含みうる。この変形例において、該穴は、該中空の構造の壁にくりぬかれる又は穿孔されうる。代替的には、該中空の構造は、例えば、該穴を形成する為のスパイクを備えた型で、射出成形又は押出しブロー成形によって成型されうる。
【0158】
更に別の変形の実施態様に従うと、該支持構造は、壁と、複数のセルから構成される内部とを備えうる。該セルは、有利には互いと連通している。そのような構造は、ハニカム(又は六角形の)型のインフィルを用いて3Dプリンティングによって得られうる。3Dプリンティングにおいて、インフィルは、プリンティングされる製品の充填度合いを反映する。インフィルパターンが密であるほど、該プリンティングされる製品の該内部がより多く充填されることになる。本発明に従う支持構造は、1~50%の範囲のインフィル密度を備えうる。
【0159】
図13は、隆起部(28)及び凹部(29)を有し、壁(32)と、複数のセル(33)から構成される内部とを備えた、任意形状の支持構造(27)を通る断面を示す。
【0160】
図14は、隆起部(28)及び凹部(29)を有し、壁(32)と、複数のセル(33)から構成される内部とを備えた、任意形状の支持構造(27)を通る断面を示す。該構造は、複数の穴(30)を備えており、ここで、該穴に、サンゴ断片(22)又は(23)を保持する為のデバイス(1)又は(21)が挿入される。
【0161】
中空構造又はハニカム状の内部を備えている構造の場合、有利には、該穴が、該構造の外部と内部との間の連通を可能にするように該構造の内部に開口しうる。これは、水槽に沈められるか又は海底に設置された該構造が水で満たされることを可能にすることができる。そのようにして満たされた該構造は、バラストされ、該水槽の底又は該海底に安定して静止しうる。
【0162】
1つの変形の実施態様に従うと、本発明に従う支持構造は、互いと、及び直接又は間接的に該穴と、連通している複数のセルから構成される内部を備えうる。各セルは、少なくとも1つの隣のセルとの間で共有される壁と、該セルの該空隙と少なくとも1つの隣のセルの空隙との間の連通を可能にする少なくとも1つの開口と、を備えている空隙を構成する。
【0163】
3Dプリンティングによって得られる本発明の支持構造の該内部のセルの数及びその寸法は、特に、選択されるインフィルの種類及びその密度に依存する。該密度及びインフィルのモデルは、製造される部品の固体性、重量、及び費用の点で最良の妥協を得、また該支持構造が沈められたときに水で満たされるのを確実にするように調整される。
【0164】
「バルブ」又は「リング」型デバイスの為の支持構造の寸法は、様々に異なっていてもよく、また、特に、該支持構造の最終的な設置先、すなわち水槽又は海底、及び設置される保持デバイスの数などに依存しうる。実際には、支持構造は、数センチメートルの高さ、幅、及び長さから、数十センチメートルに及ぶ寸法を有しうる。特には大きい寸法をもつ構造の場合、これらはメートル単位で表されうる。
【0165】
本発明に従う支持構造は、本発明に従う少なくとも1つのデバイスを備えうる。好ましくは、該構造は沈められ、その後、本発明に従う該サンゴ切片保持デバイスが該穴に配置される。中空構造又はハニカム状の内部を備えている構造の場合、これは有利に、該構造を水で満たし、バラストすることを可能にする。
【0166】
1つの実施態様に従うと、サンゴ切片を直接保持する為のデバイスとして、又は切片を含む「リング」型デバイスを備えている間接的な保持デバイスとしてのいずれかの「バルブ」型デバイスの使用の場合、該フランジは、変形により、該構造の該表面に固定されうる。該フランジの該テクスチャ付けされた表面と該支持構造の該テクスチャ付けされた表面とを接触させることによって生成される摩擦は、有利に、該構造内への該保持デバイスの安定した配置を可能にする。
【0167】
本発明に従うサンゴ切片を保持する為の該デバイスは、その表面全体にわたってテクスチャ付けされている。本発明の該デバイスの該テクスチャ付けされた表面と、それが挿入される該穴の縁部との接触は、摩擦を発生させることを可能にし、それが、該構造内への該保持デバイスの安定した配置を有利に可能にする。
【0168】
該保持デバイスの場合と同様、本発明に従う支持構造は、サンゴ断片との生物模倣を促進する為に着色されうる。好ましくは、本発明に従う支持構造は、それがサンゴの増殖に助けとなる環境であることを隣のサンゴに知らせる為に、その形状と色の両方において、一般的な耐性サンゴ、例えばポリテスフルカタ(Porites furcata)、の外観を模倣しうる。本発明に従う該支持構造の着色は、下記で詳細に説明されるように、それを製造する為に使用される材料を着色することによって得られうる。
【0169】
生分解性ポリマー
本発明に従う保持デバイス及び/又は支持構造は、少なくとも1つのカルシウム塩を含む生分解性ポリマーから作られうる。
【0170】
よって、その主題のうちの1つに従うと、本発明は、本発明に従うサンゴ切片を保持する為のデバイス又は本発明に従う支持構造を製造する為の、少なくとも1つのカルシウム塩を含む生分解性ポリマーの使用に関する。
【0171】
ポリマーは、反復する単位の鎖から構成される高分子である。生分解性ポリマーは、時間と共に急速に分解して生体適合性のある(又は親環境性の)副生成物となるポリマーである。
【0172】
本発明に好適な生分解性ポリマーは、成形により、例えば射出成形若しくは押出しブロー成形により、又は3Dプリンティングにより、本発明に従うデバイス又は支持構造を製造する方法で使用されるように適合されうる。
【0173】
有利には、少なくとも1つのカルシウム塩を含む生分解性ポリマーが、3Dプリンティングによって本発明の該デバイス及び構造を製造する方法の為に好適でありうる。
【0174】
3Dプリンティングで使用されうるポリマーは、フィラメントの形態で供給される。
【0175】
本発明に好適なポリマーは、150℃~220℃、特に180℃~190℃、の押出し温度を有しうる。
【0176】
本発明に好適な生分解性ポリマーは、ポリ乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(アルキレンコハク酸)、ポリカプロラクトン、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、及びそれらの組み合わせから選定されうる。
【0177】
ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸)(PHBHHx)、及びそれらの組み合わせから選定されうる。
【0178】
ポリ(アルキレンコハク酸)は、ポリ(エチレンコハク酸)(PESu)、ポリ(プロピレンコハク酸)(PPSu)、ポリ(ブチレンコハク酸)(PBSu)、及びそれらの組み合わせから選定されうる。
【0179】
特に、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)ポリマーでありうる。
【0180】
本発明に好適なカルシウム塩は、有機カルシウム塩でありうる。有機塩は、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リシン酸カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択されうる。特に、カルシウム塩は炭酸カルシウムである。炭酸カルシウムは、サンゴの骨格を構成する要素の1つである。
【0181】
炭酸カルシウムは、本発明に好適である任意の形態で該ポリマーに導入されうる。特に、該炭酸カルシウムは、粉砕されたイタボガキの殻、例えば粉砕された牡蠣殻、の形態で該ポリマーに導入されうる。
【0182】
カルシウム塩、特に炭酸カルシウム、の粒子は、3Dプリンタの押出しノズルの直径と干渉しない粒径を有する。例えば、カルシウム塩、特に炭酸カルシウム、の粒子の粒径は、250μm未満でありうる。
【0183】
カルシウム塩を含むポリマーは、本発明に従うデバイス又は支持構造の生体適合性、生物模倣、プリント性、粗さ、及び/又は硬度を向上させることが意図される他の化合物を含みうる。
【0184】
例えば、生物模倣は、カルシウム塩と、サンゴの色を模倣する染料とをプリンティングポリマーに添加することにより向上される。
【0185】
本発明に従うデバイス又は支持構造の該粗さ及び/又は硬度は、木又は石の粒子をプリンティングポリマーに添加することにより向上されうる。
【0186】
本発明に従うデバイス又は構造の該硬度を調節することが可能な追加的な化合物として、例えば、キトサン、キチン、デンプン、又はアルギン酸塩が言及されうる。
【0187】
本発明において使用されるポリマーと共に使用されうる添加物として、染料も言及されうる。該染料は、有利には、生物模倣効果を得る為に使用されうる。
【0188】
多くの種類の染料が使用されうる。好ましくは、生体適合性の又は生体由来の染料が使用される。本発明において使用されうる染料の例として、クルクミン、ビキシン、アントシアニン、クロロフィル、アスタキサンチン、ナフトキノン、カロテノイド、又はブドウ、イチゴ、リンゴ、サクランボ、若しくは赤キャベツから抽出された染料が言及されうる。
【0189】
本発明の方法で使用されうるポリマーの着色は、3Dプリンティング用のフィラメントとして押し出す前のその製造時に、親練りをバイオポリマーに添合することによって達成されうる。
【0190】
本発明に好適なポリマーは、Nazeer et al.(Materials Today Communications, Vol. 25, 2020, 101515: 3D printed poly(lactic acid) scaffolds modified with chitosan and hydroxyapatite for bone repair applications, doi.org/10.1016/j.mtcomm.2020.101515)に記載されるような、キトサン及びヒドロキシアパタイトを含む乳酸ポリマーでありうる。
【0191】
本発明に好適なポリマーは、Dubinenko et al.(Journal of Applied Polymer Science (2021; 138:e49662): Highly filled poly(l-lactic acid)/hydroxyapatite composite for 3D printing of personalized bone tissue engineering scaffolds. doi.org/10.1002/app.49662)に記載されるような、ヒドロキシアパタイトを含む乳酸ポリマーでありうる。
【0192】
本発明に好適なポリマーは、Gayer et al.(Materials Science and Engineering: C, Vol. 101, 2019, pages 660-673: Development of a solvent-free polylactide/calcium carbonate composite for selective laser sintering of bone tissue engineering scaffolds; doi.org/10.1016/j.msec.2019.03.101.)に記載されるような、又はNunes et al. (International Journal of Innovative Science, Engineering & Technology, Vol. 4, Issue 6, June 2017: Evaluation of the Poly(Lactic Acid) and Calcium Carbonate Effects on the Mechanical and Morphological Properties in PBAT Blends and Composites)に記載されるような、炭酸カルシウムを含む乳酸ポリマーでありうる。
【0193】
本発明に好適な少なくとも1つのカルシウム塩を含む生分解性ポリマーは、炭酸カルシウムを含む乳酸ポリマーでありうる。有利には、該炭酸カルシウムは、イタボガキの殻の粉砕物、例えば牡蠣殻の粉砕物、の形態で該ポリマーに導入される。
【0194】
本発明に好適な炭酸カルシウムを含む乳酸ポリマーの例として、品番FRF341674の下でFrancofil社によって販売される牡蠣の副産物である、フィラメントポリマーFrancofil 1.75mmPLAフィラメントも言及されうる。
【0195】
製造方法
本発明に従うデバイス又は支持構造は、当分野で既知の任意の方法、特に上記で説明されたようなカルシウム塩を含むポリマーと併せて使用可能な方法、によって製造されうる。
【0196】
本発明に好適な製造方法は、該デバイス又は該支持構造の該表面のテクスチャ付けを可能にする。
【0197】
本発明のデバイス又は構造を製造する方法は、3次元プリンティング(又は3Dプリンティング)法でありうる。3Dプリンティング法は有利には、プリンティング工程の間に該デバイス又は構造の表面のテクスチャ付けを得ることを可能にする。
【0198】
製造される製品、すなわちデバイス又は支持構造、に応じて、該プリンティング法は異なるパラメータ及びプリンティングモードを含みうる。
【0199】
3Dプリンティング法は周知である。
【0200】
プリンティングの前に、本発明に従うデバイス又は構造がモデル化される。そのようなモデルは、様々なソフトウェア、例えばCatia、Fusion360、Solidworks、又はCreo、を使用して開発され得、最終フォーマットは、機械可読のフォーマット、例えばSTEP、STL、又はOBJ、で生成される。その結果得られたモデルが、次いでスライスソフトウェアによって複数の層にスライスされる。該層の寸法(長さ、直径)は、使用されるプリンティング機器、特に押出しノズル、ポリマーフィラメントの寸法、また押出し率/秒にも合わせて適合される。該層は、プリンティングされる物体の固体性を確実にするのに十分に厚く、互いと近くなければならないが、同時に、該プリンティングされる物体に要求される柔軟性を与えるのに十分なだけ離れている及び/又は薄くなければならない。該ソフトウェアは、該モデルを、該3Dプリンタが理解する座標に変換し、該ポリマーが、プリンティングプロセス中に、それらの座標に従って互いと重ねて層状に堆積される。出力時、該モデルは、「.gcode」のファイル拡張子をもつテキストファイルの形態である。
【0201】
本発明に従うデバイス又は構造は、様々な3Dプリンティング技術を使用してプリンティングされうる。3Dプリンティングは、材料の層を堆積して物理的物体を作製することによって3D物体が作製される付加的製造技術である。押出し及び熱溶解積層(FDM)によって動作するプリンタは、ポリマーフィラメント、例えば、PLA(乳酸ポリマー)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PET-G(グリコール化ポリエチレンテレフタレート)を使用し、ステレオリソグラフィ(SLA)又はDLP(デジタル光処理)による3Dプリンティング用のプリンタは樹脂を使用し、SLS(選択的レーザ焼結)技術は、粉末化された材料、例えばナイロン、を使用する。
【0202】
特に、本発明に従うデバイス又は支持構造を製造する方法は、押出し及び熱溶解積層による技術(「熱溶解フィラメントモデリング」(FFM:fused filament modeling)、「融解押出しモデリング」(MEM:melted and extruded modeling)、「熱溶解フィラメントファブリケーション」(FFF:fused filament fabrication)、又は「熱溶解積層法」(FDM:fused deposition method))を使用しうる。
【0203】
図16は、熱溶解積層プリンティングを模式的に描いており、ここでは、3Dプリンタノズル(34)が、溶融ポリマーの層(36)の連続をワーク表面(35)に堆積させる。
【0204】
図17において示されているように、該3Dプリンタノズルによって押し出され、堆積される溶融ポリマーの層(36)は、製造される製品の表面上への条痕(37)の形成につながる。該3Dプリンタノズルによって堆積される溶融ポリマーの層の厚さが大きいほど、該条痕は深くなり、平均表面粗さ値は大きくなる。該3Dプリンタノズルによって堆積される溶融ポリマーの層が薄いほど、該条痕は深くなくなり、該平均表面粗さ値は小さくなる。
【0205】
本発明に従うデバイスを3Dプリンティングする為の方法は、「花瓶(vase)」モードで行われうる。この3Dプリンティングモードは、押出し機(又はプリンティングノズル)の断絶なしに、壁が単一の層としてプリンティングされることを意味する。標準的なプリンティングのように層が1つずつ生成されるのではなく、z軸が徐々に上昇していく。そのようなプリンティングは、有利には、インフィルなしで行われる。該層は、該プリンティングノズルを該デバイスの該長手軸を中心に回転させることにより、それ自体の上に徐々に堆積される。該層の積み重なりが、該表面の該テクスチャ付けを形成する条痕の形成につながる。
【0206】
図18は、溶融ポリマーの層の堆積による方法を使用した、本発明の「バルブ」型保持デバイスの3Dプリンティングを示す。該3Dプリンティングノズル(34)は、該Z軸に沿って進みながら、溶融ポリマーの積み重ねられた層(36)を連続的に堆積して、インフィルなしで(花瓶モード)、「バルブ」型のデバイス(1)の外形を形成する。
【0207】
本発明に従うデバイスは、0.4mm前後の直径を有する押出しノズルで、熱溶解積層技術を使用する3Dプリンティングによってプリンティングされうる。プリンティング速度、層厚さ及び押出し温度は、使用される該ポリマー及び使用される該ノズルに依存する。通常、層厚さは、該ノズル直径の80%を超えるべきではない。
【0208】
例えば、炭酸カルシウムを含む乳酸ポリマー、例えばFrancofil社により品番FRF341674の下で販売されるもの、の場合、ノズル温度は、200℃前後(185℃~230℃)であってもよく、プリンティング表面温度は、30℃前後(20℃~30℃)であってもよく、該プリンティング速度は、60mm/秒前後(40~100mm/秒)であってもよく、層高さは、0.5μm前後~320μm前後であってもよい。
【0209】
本発明に従う支持構造は、1.2mm前後の直径を有する押出しノズルで、熱溶解積層技術を使用する3Dプリンティングによってプリンティングされうる。該プリンティング速度、層厚さ及び押出し温度は、使用される該ポリマー、使用される該ノズル、並びに選定されるインフィルの密度及びモデルに依存する。
【0210】
本発明に従う支持構造は、炭酸カルシウムを含む乳酸ポリマー、例えば、Francofil社により品番FRF341674の下で販売されるもの、を用いて3Dでプリンティングされてもよく、具体的な特徴は上記で説明されている。該層高さは、0.5μm前後~770μm前後の範囲でありうる。
【0211】
プリンティングは、例えば3mm前後の最大層厚さで、行われうる。そのような層厚さは、該サンゴの付着の為に必要な粗さをもつ条痕のある外観を維持しながら、該物体に良好な固体性と良好な耐水性を与えることを可能にする。
【0212】
3Dプリンティングによって得られる本発明の支持構造の内部にあるセルの数及びその寸法は、特に選定されるインフィルの種類及びその密度に依存する。インフィルの該密度及びモデルは、製造される部品の固体性、重量、及び費用の点で最良の妥協を得、また該支持構造が沈められたときに水で満たされるのを確実にするように調整される。各種のインフィルが、すなわち、六角形、三角形、直線状、グリッド、波形等のセルの形状で、利用可能である。
【0213】
本発明に従う支持構造を3Dプリンティングする為の方法は、ハニカム形状のインフィル(又は充填物)で行われうる。該インフィルは、1~50%の密度を有しうる。
【0214】
本発明に従う支持構造の該穴は、プリンティングの間又はプリンティングの後のいずれかに、例えばドリル若しくは加熱されたピンを使用して、穿孔若しくは穴あけにより、得られうる。
【0215】
1つの変形の実施態様に従うと、本発明のデバイス又は構造を製造する方法は、再現されるべき本発明の該デバイス又は該構造を中空形式で表す型にポリマーを押出しブロー成形する為の方法でありうる。代替的には、製造方法は、射出成形方法でありうる。そのような方法において、該型の壁は、該デバイス又は構造の表面にプリンティングされるべきテクスチャ付けパターンを凹部として有しうる。
【0216】
本発明に従う構造の場合、該方法は、任意の好適な方法、例えばドリル又は加熱されたピンにより、後に本発明に従う該保持デバイスを受け入れる為の穴を穿孔する工程を含みうる。
【0217】
更に別の代替態様に従うと、本発明に従うデバイスを製造する為に使用される型は、該表面にプリンティングされるテクスチャ付けパターンを有さないものであってもよく、ここで、該テクスチャ付けは、後に彫刻工程によって追加されうる。
【0218】
本発明は、すぐ上で説明された例に限定されず、特に、説明された該例の特徴は、説明されない変形例において互いと組み合わせられうる。それにより、本発明の範囲から逸脱すること無しに他の変形例及び改良が考えられうる。
【0219】
引用されている文献
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【国際調査報告】