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特表2024-517190ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤による肝疾患を治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤による肝疾患を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240412BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240412BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240412BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20240412BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P1/16
A61P3/10
A61K31/7105
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/113 130Z
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/09 110
C12Q1/6827 Z
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566823
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022028415
(87)【国際公開番号】W WO2022240783
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/186,838
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】フェルヴァイ、ニーク
(72)【発明者】
【氏名】ソシナ、オルカヨデ
(72)【発明者】
【氏名】アクバリ、パーサ
(72)【発明者】
【氏名】ロック、アダム
(72)【発明者】
【氏名】バラス、アリス
(72)【発明者】
【氏名】ロッタ、ルカ アンドレア
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ42
4B063QQ52
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4B063QX01
4C084AA13
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4C084NA05
4C084ZA75
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4C086AA01
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4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
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4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、肝疾患または2型糖尿病を有する対象を治療する方法、及び肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有する対象を特定する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝疾患を有するか、もしくは肝疾患を発症するリスクを有する対象、または肝疾患を発症するリスク因子を有する対象、または肝疾患の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
脂肪肝疾患を有するか、もしくは脂肪肝疾患を発症するリスクを有する対象、または脂肪肝疾患を発症するリスク因子を有する対象、または脂肪肝疾患の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
前記脂肪肝疾患は、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
肝細胞癌を有するか、もしくは肝細胞癌を発症するリスクを有する対象、または肝細胞癌を発症するリスク因子を有する対象、または肝細胞癌の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
肝硬変を有するか、もしくは肝硬変を発症するリスクを有する対象、または肝硬変を発症するリスク因子を有する対象、または肝硬変の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
肝線維症を有するか、もしくは肝線維症を発症するリスクを有する対象、または肝線維症を発症するリスク因子を有する対象、または肝線維症の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
単純性脂肪肝、脂肪性肝炎もしくはNASHを有するか、または単純性脂肪肝、脂肪性肝炎もしくは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症するリスクを有する対象、あるいは単純性脂肪肝、脂肪性肝炎またはNASHを発症するリスク因子を有する対象、あるいは単純性脂肪肝、脂肪性肝炎またはNASHの合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
肝損傷を有するか、もしくは肝損傷を発症するリスクを有する対象、または肝損傷を発症するリスク因子を有する対象、または肝損傷の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項9】
2型糖尿病を有するか、もしくは2型糖尿病を発症するリスクを有する対象、または2型糖尿病を発症するリスク因子を有する対象、または2型糖尿病の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記PDE3B阻害剤は、PDE3B mRNAにハイブリダイズするアンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、または短ヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記PDE3B阻害剤は、Casタンパク質と、PDE3Bゲノム核酸分子内のガイドRNA(gRNA)認識配列にハイブリダイズするgRNAと、を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記Casタンパク質は、Cas9またはCpf1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記gRNA認識配列は、配列番号1内に位置する、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列は、前記gRNA認識配列の約2~約6ヌクレオチド下流である、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記gRNAは、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記gRNA認識配列は、配列番号26~34のうちのいずれか1つに従うヌクレオチド配列を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象からの生物学的サンプル中のヒトPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の存在または非存在を検出することをさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象がPDE3B参照である場合、前記対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量を超える量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性である場合、前記対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を標準投薬量と同じまたはそれ未満の投薬量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、スプライス部位バリアント、ストップゲインバリアント、スタートロスバリアント、ストップロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはフレーム内インデルバリアント、または切断されたPDE3Bポリペプチドをコードするバリアントである、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、切断されたPDE3Bポリペプチドをコードする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤で対象を治療する方法であって、前記対象は、肝疾患または2型糖尿病に罹患しており、前記方法は、
前記対象から生物学的サンプルを得ることまたは得たこと、及び
前記対象がホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)で予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために前記生物学的サンプルについて配列分析を実施することまたは実施したことによって、前記対象が、ヒトPDE3Bポリペプチドをコードする前記PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するかどうかを決定するステップと、
前記対象がPDE3B参照である場合、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する前記治療剤を、標準投薬量を超える量で前記対象に投与するか、または継続して投与し、かつPDE3B阻害剤を前記対象に投与するステップと、
前記対象が、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である場合、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する前記治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で前記対象に投与するか、または継続して投与し、かつPDE3B阻害剤を前記対象に投与するステップと、
前記対象が、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してホモ接合性である場合、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する前記治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で前記対象に投与するか、または継続して投与するステップと、を含み、
前記ヒトPDE3Bポリペプチドをコードする前記PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有する遺伝子型の存在は、前記対象が前記肝疾患または2型糖尿病を発症する低下したリスクを有することを示す、前記方法。
【請求項23】
前記対象は、PDE3B参照であり、前記対象は、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する前記治療剤を、標準投薬量を超える量で投与されるか、または継続して投与され、かつPDE3B阻害剤を投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性であり、前記対象は、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する前記治療剤を標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で投与されるか、または継続して投与され、かつPDE3B阻害剤を投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記予測される機能喪失またはミスセンスバリアントPDE3B核酸分子は、スプライス部位バリアント、ストップゲインバリアント、スタートロスバリアント、ストップロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはフレーム内インデルバリアント、または切断されたPDE3Bポリペプチドをコードするバリアントである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記予測される機能喪失またはミスセンスバリアントPDE3B核酸分子は、切断されたPDE3Bポリペプチドをコードする、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記PDE3B阻害剤は、PDE3B mRNAにハイブリダイズするアンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、または短ヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記PDE3B阻害剤は、Casタンパク質と、PDE3Bゲノム核酸分子内のガイドRNA(gRNA)認識配列にハイブリダイズするgRNAと、を含む、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記Casタンパク質は、Cas9またはCpf1である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記gRNA認識配列は、配列番号1内に位置する、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列は、前記gRNA認識配列の約2~6ヌクレオチド下流である、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記gRNAは、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記gRNA認識配列は、配列番号26~34のうちのいずれか1つに従うヌクレオチド配列を含む、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記肝疾患は、脂肪肝疾患である、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記脂肪肝疾患は、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記肝疾患は、肝細胞癌である、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記肝疾患は、肝硬変である、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記肝疾患は、肝線維症である、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記肝疾患は、単純性脂肪肝、脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象は、肝損傷を有する、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
2型糖尿病を治療するための前記治療剤は、メトホルミン、インスリン、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、レパグリニドナテグリニド、ロシグリタゾンピオグリタゾン、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、及びエンパグリフロジン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
肝疾患を治療するための前記治療剤は、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、プレドニゾン、アザチオプリン、インターフェロン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、ペニシラミン、トリエンチン、デフェロキサミン、ブメタニド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、アミロリド、トリアムテレン、スピロノラクトン、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、チモロール、及びカルベジロール、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記肝疾患は、脂肪症、脂肪性肝炎、またはNASHであり、前記治療剤は、オベチコール酸、セロンセルチブ、エラフィブラノル、セニクリビロク、GR_MD_02、MGL_3196、IMM124E、アラキジルアミドコラノイン酸、GS0976、エムリカサン、ボリキシバット、NGM282、GS9674、トロピフェキソル、MN_001、LMB763、BI_1467335、MSDC_0602、PF_05221304、DF102、サログリタザル、BMS986036、ラニフィブラノル、セマグルチド、ニタゾキサニド、GRI_0621、EYP001、VK2809、ナルメフェン、LIK066、MT_3995、エロビキシバット、ナモデノソン、フォラルマブ、SAR425899、ソタグリフロジン、EDP_305、イソサブテート、ゲムカベン、TERN_101、KBP_042、PF_06865571、DUR928、PF_06835919、NGM313、BMS_986171、ナマシズマブ、CER_209、ND_L02_s0201、RTU_1096、DRX_065、IONIS_DGAT2Rx、INT_767、NC_001、セラデパル、PXL770、TERN_201、NV556、AZD2693、SP_1373、VK0214、ヘパステム、TGFTX4、RLBN1127、GKT_137831、RYI_018、CB4209-CB4211、及びJH_0920、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有する対象を特定する方法であって、前記方法は、
前記対象から得られる生物学的サンプル中のヒトホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)ポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含み、
前記対象がPDE3B参照である場合、前記対象は、前記肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有し、
前記対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、前記対象は、前記肝疾患または2型糖尿病を発症する低下したリスクを有する、前記方法。
【請求項45】
前記PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、スプライス部位バリアント、ストップゲインバリアント、スタートロスバリアント、ストップロスバリアント、フレームシフトバリアント、もしくはフレーム内インデルバリアント、または切断されたPDE3Bポリペプチドをコードするバリアントである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、切断されたPDE3Bポリペプチドをコードする、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記対象は、PDE3B参照であり、前記対象は、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する前記治療剤を、標準投薬量を超える量で投与されるか、または継続して投与され、かつPDE3B阻害剤を投与される、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性であり、前記対象は、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する前記治療剤を標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で投与されるか、または継続して投与され、かつPDE3B阻害剤を投与される、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記PDE3B阻害剤は、PDE3B mRNAにハイブリダイズするアンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、または短ヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項50】
前記PDE3B阻害剤は、Casタンパク質と、PDE3Bゲノム核酸分子内のガイドRNA(gRNA)認識配列にハイブリダイズするgRNAと、を含む、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記Casタンパク質は、Cas9またはCpf1である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記gRNA認識配列は、配列番号1内に位置する、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列は、前記gRNA認識配列の約2~6ヌクレオチド下流である、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記gRNAは、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項50~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記gRNA認識配列は、配列番号26~34のうちのいずれか1つに従うヌクレオチド配列を含む、請求項50~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記肝疾患は、脂肪肝疾患である、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記脂肪肝疾患は、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記肝疾患は、肝細胞癌である、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記肝疾患は、肝硬変である、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記肝疾患は、肝線維症である、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記肝疾患は、単純性脂肪肝、脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記対象は、肝損傷を有する、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
2型糖尿病を治療するための前記治療剤は、メトホルミン、インスリン、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、レパグリニドナテグリニド、ロシグリタゾンピオグリタゾン、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、及びエンパグリフロジン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
肝疾患を治療するための前記治療剤は、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、プレドニゾン、アザチオプリン、インターフェロン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、ペニシラミン、トリエンチン、デフェロキサミン、ブメタニド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、アミロリド、トリアムテレン、スピロノラクトン、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、チモロール、及びカルベジロール、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記肝疾患は、脂肪症、脂肪性肝炎、またはNASHであり、前記治療剤は、オベチコール酸、セロンセルチブ、エラフィブラノル、セニクリビロク、GR_MD_02、MGL_3196、IMM124E、アラキジルアミドコラノイン酸、GS0976、エムリカサン、ボリキシバット、NGM282、GS9674、トロピフェキソル、MN_001、LMB763、BI_1467335、MSDC_0602、PF_05221304、DF102、サログリタザル、BMS986036、ラニフィブラノル、セマグルチド、ニタゾキサニド、GRI_0621、EYP001、VK2809、ナルメフェン、LIK066、MT_3995、エロビキシバット、ナモデノソン、フォラルマブ、SAR425899、ソタグリフロジン、EDP_305、イソサブテート、ゲムカベン、TERN_101、KBP_042、PF_06865571、DUR928、PF_06835919、NGM313、BMS_986171、ナマシズマブ、CER_209、ND_L02_s0201、RTU_1096、DRX_065、IONIS_DGAT2Rx、INT_767、NC_001、セラデパル、PXL770、TERN_201、NV556、AZD2693、SP_1373、VK0214、ヘパステム、TGFTX4、RLBN1127、GKT_137831、RYI_018、CB4209-CB4211、及びJH_0920、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項44~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
PDE3B参照である対象における、あるいは
ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)ポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、
PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントmRNA分子、または
PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントcDNA分子を有する対象における肝疾患または2型糖尿病の治療において使用するための、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する、治療剤。
【請求項67】
前記肝疾患は、脂肪肝疾患である、請求項66に記載の治療剤。
【請求項68】
前記脂肪肝疾患は、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である、請求項67に記載の治療剤。
【請求項69】
前記肝疾患は、肝細胞癌である、請求項66に記載の治療剤。
【請求項70】
前記肝疾患は、肝硬変である、請求項66に記載の治療剤。
【請求項71】
前記肝疾患は、肝線維症である、請求項66に記載の治療剤。
【請求項72】
前記肝疾患は、単純性脂肪肝、脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項66に記載の治療剤。
【請求項73】
前記対象は、肝損傷を有する、請求項66に記載の治療剤。
【請求項74】
2型糖尿病を治療するための前記治療剤は、メトホルミン、インスリン、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、レパグリニドナテグリニド、ロシグリタゾンピオグリタゾン、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、及びエンパグリフロジン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項66に記載の治療剤。
【請求項75】
肝疾患を治療するための前記治療剤は、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、プレドニゾン、アザチオプリン、インターフェロン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、ペニシラミン、トリエンチン、デフェロキサミン、ブメタニド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、アミロリド、トリアムテレン、スピロノラクトン、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、チモロール、及びカルベジロール、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項66に記載の治療剤。
【請求項76】
前記肝疾患は、脂肪症、脂肪性肝炎、またはNASHであり、前記治療剤は、オベチコール酸、セロンセルチブ、エラフィブラノル、セニクリビロク、GR_MD_02、MGL_3196、IMM124E、アラキジルアミドコラノイン酸、GS0976、エムリカサン、ボリキシバット、NGM282、GS9674、トロピフェキソル、MN_001、LMB763、BI_1467335、MSDC_0602、PF_05221304、DF102、サログリタザル、BMS986036、ラニフィブラノル、セマグルチド、ニタゾキサニド、GRI_0621、EYP001、VK2809、ナルメフェン、LIK066、MT_3995、エロビキシバット、ナモデノソン、フォラルマブ、SAR425899、ソタグリフロジン、EDP_305、イソサブテート、ゲムカベン、TERN_101、KBP_042、PF_06865571、DUR928、PF_06835919、NGM313、BMS_986171、ナマシズマブ、CER_209、ND_L02_s0201、RTU_1096、DRX_065、IONIS_DGAT2Rx、INT_767、NC_001、セラデパル、PXL770、TERN_201、NV556、AZD2693、SP_1373、VK0214、ヘパステム、TGFTX4、RLBN1127、GKT_137831、RYI_018、CB4209-CB4211、及びJH_0920、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項66に記載の治療剤。
【請求項77】
ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)参照であるか、あるいは
ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)ポリペプチドをコードする、PDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、
PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントmRNA分子、または
PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントcDNA分子に対してヘテロ接合性である対象における肝疾患または2型糖尿病の治療において使用するための、前記肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する、PDE3B阻害剤。
【請求項78】
前記肝疾患は、脂肪肝疾患である、請求項77に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項79】
前記脂肪肝疾患は、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である、請求項78に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項80】
前記肝疾患は、肝細胞癌である、請求項77に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項81】
前記肝疾患は、肝硬変である、請求項77に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項82】
前記肝疾患は、肝線維症である、請求項77に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項83】
前記肝疾患は、単純性脂肪肝、脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項77に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項84】
前記対象は、肝損傷を有する、請求項77に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項85】
前記PDE3B阻害剤は、PDE3B mRNAにハイブリダイズするアンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、または短ヘアピンRNA(shRNA)を含む、請求項77~84のいずれか1項に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項86】
前記PDE3B阻害剤は、Casタンパク質と、PDE3Bゲノム核酸分子内のガイドRNA(gRNA)認識配列にハイブリダイズするgRNAと、を含む、請求項77~84のいずれか1項に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項87】
前記Casタンパク質は、Cas9またはCpf1である、請求項86に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項88】
前記gRNA認識配列は、配列番号1内に位置する、請求項86または請求項87に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項89】
プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列は、前記gRNA認識配列の約2~6ヌクレオチド下流である、請求項86または請求項87に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項90】
前記gRNAは、約17~約23ヌクレオチドを含む、請求項86~89のいずれか1項に記載のPDE3B阻害剤。
【請求項91】
前記gRNA認識配列は、配列番号26~34のうちのいずれか1つに従うヌクレオチド配列を含む、請求項86~90のいずれか1項に記載のPDE3B阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、2022年5月9日に作製された、18923806902SEQという名称で1,057キロバイトのサイズのテキストファイルとして電子提出された配列表を含む。この配列表は、参照により、本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)阻害剤による肝疾患を有する対象の治療、及び肝疾患を発症する増加したリスクを有する対象を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
慢性肝疾患及び硬変は、米国において主要な罹患原因及び死因であり、2014年における死亡数は38,170件に及んでいる(総死亡数の1.5%)(非特許文献1)。米国において、肝硬変の病因として特に多いのは、アルコール性肝疾患、慢性C型肝炎及び非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)であり、2004~2013年では、肝移植を待っている対象の約80%をこれらの3つが占めていた(非特許文献2)。米国におけるNAFLDの推定存在率は19~46パーセントであり(非特許文献3、非特許文献4、及び非特許文献5)、おそらくは、NAFLDの主な危険因子である肥満率の上昇と連動して(非特許文献6)、時間の経過とともに上昇している(非特許文献7)。C型肝炎の治療は有意に進歩しているのに対し、アルコール性または非アルコール性肝疾患及び硬変のための証拠に基づく治療は現在存在しない。
【0004】
2型糖尿病(T2D)の世界的な流行は、この疾患が世界で5番目に多い死因であり、病的状態(morbidity)、早期冠動脈性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、腎不全、及び切断の主要な原因であるため、主要な公衆衛生上の問題である。世界中で糖尿病を抱えて生きている人の数は、2011年の3億6600万人から2030年までに5億5200万人に増加すると予測されている。
【0005】
T2Dは、標的組織におけるインスリン分泌障害及びインスリン抵抗性に起因する高血糖を特徴とする。T2Dは、典型的には40歳以降に診断され、遺伝的感受性及び環境要因の複合作用により引き起こされる。T2Dは肥満に関連しており、多重遺伝子疾患でもある。
【0006】
ホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)は、それぞれのヌクレオシド5’モノリン酸の形成をもたらす、アデノシン及び/またはグアニン3’,5’環状モノリン酸(cAMP及び/またはcGMP)中の3’環状リン酸結合の加水分解を触媒するホスホヒドロラーゼファミリーのメンバーである。環状ヌクレオチドであるcAMP及びcGMPは、多くの細胞シグナル伝達経路におけるセカンドメッセンジャーとして機能する。PDE、ならびに環状ヌクレオチドを合成するグアニリル及びアデニリルシクラーゼは、環状ヌクレオチドの濃度を調節し、したがって、シグナル伝達経路を調節する細胞成分である。特に、PDEは、それらの分解を制御することによって、セカンドメッセンジャーを調節する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kochanek et al.,Nat’l.Vital Stat.Rep.,2016,65,1-122
【非特許文献2】Wong et al.,Gastroenterology,2015,148,547-555
【非特許文献3】Browning et al.,Hepatology,2004,40,1387-1395
【非特許文献4】Lazo et al.,Am.J.Epidemiol.,2013,178,38-45
【非特許文献5】Williams et al.,Gastroenterology,2011,140,124-131
【非特許文献6】Cohen et al.,Science,2011,332,1519-1523
【非特許文献7】Younossi et al.,Clin.Gastroenterol.Hepatol.,2011,9,524-530
【発明の概要】
【0008】
本開示は、肝疾患を有するか、もしくは肝疾患を発症するリスクを有する対象、または肝疾患を発症するリスク因子を有する対象、または肝疾患の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
本開示はまた、脂肪肝疾患を有するか、もしくは脂肪肝疾患を発症するリスクを有する対象、または脂肪肝疾患を発症するリスク因子を有する対象、または脂肪肝疾患の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0010】
本開示はまた、肝細胞癌を有するか、もしくは肝細胞癌を発症するリスクを有する対象、または肝細胞癌を発症するリスク因子を有する対象、または肝細胞癌の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0011】
本開示はまた、肝硬変を有するか、もしくは肝硬変を発症するリスクを有する対象、または肝硬変を発症するリスク因子を有する対象、または肝硬変の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3Bを対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0012】
本開示はまた、肝線維症を有するか、もしくは肝線維症を発症するリスクを有する対象、または肝線維症を発症するリスク因子を有する対象、または肝線維症の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0013】
本開示はまた、単純性脂肪肝、脂肪性肝炎もしくは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有するか、または単純性脂肪肝、脂肪性肝炎もしくはNASHを発症するリスクを有する対象、あるいは単純性脂肪肝、脂肪性肝炎またはNASHを発症するリスク因子を有する対象、あるいは単純性脂肪肝、脂肪性肝炎またはNASHの合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0014】
本開示はまた、肝損傷を有するか、もしくは肝損傷を発症するリスクを有する対象、または肝損傷を発症するリスク因子を有する対象、または肝損傷の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0015】
本開示はまた、2型糖尿病を有するか、もしくは2型糖尿病を発症するリスクを有する対象、または2型糖尿病を発症するリスク因子を有する対象、または2型糖尿病の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0016】
本開示はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤で対象を治療する方法であって、対象は、肝疾患または2型糖尿病に罹患しており、方法は、対象から生物学的サンプルを得ることまたは得たこと、及び対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために生物学的サンプルについて配列分析を実施することまたは実施したことによって、対象が、ヒトPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するかどうかを決定するステップと、対象が、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である場合、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で対象に投与するか、または継続して投与し、かつPDE3B阻害剤を対象に投与するステップと、対象が、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してホモ接合性である場合、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で対象に投与するか、または継続して投与するステップと、対象がPDE3B参照である場合、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量を超える量で対象に投与するか、または継続して投与し、かつPDE3B阻害剤を対象に投与するステップと、を含み、ヒトPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有する遺伝子型の存在は、対象が肝疾患または2型糖尿病を発症する低下したリスクを有することを示す、方法も提供する。
【0017】
本開示はまた、肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有する対象を特定する方法であって、方法は、対象から得られる生物学的サンプル中のヒトPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含み、対象がPDE3B参照である場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有し、対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性またはホモ接合性である場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を発症する低下したリスクを有する、方法も提供する。
【0018】
本開示はまた、PDE3B参照である(標準投薬量を超える量で)か、あるいはホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)ポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントmRNA分子、またはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントcDNA分子を有する(標準投薬量未満またはそれと同じ量で)対象における肝疾患または2型糖尿病の治療において使用するための、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する、治療剤も提供する。
【0019】
本開示はまた、対象における肝疾患または2型糖尿病の治療において使用するための、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害するPDE3B阻害剤であって、PDE3B参照であるか、あるいはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントmRNA分子、またはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントcDNA分子に対してヘテロ接合性である、PDE3B阻害剤も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の態様に関連する様々な用語は、本明細書及び特許請求の範囲を通して使用される。別段に示されていない限り、このような用語には、当該技術分野における通常の意味を付与するものとする。他の具体的に定義される用語は、本明細書において提供される定義と合致した様式で解釈されるものとする。
【0021】
別段明確に述べられない限り、本明細書において説明される任意の方法または態様は、そのステップが特定の順序で遂行されることを要求するものとして解釈されるようには一切意図されない。したがって、ステップを特定の順序に限定すべきことが、請求項または説明において、方法クレームによって具体的に定められていない場合には、いかなる点においても、順序を定めるようには意図されていない。このことは、ステップもしくは作業フローの手筈に関する論理事項、文法構成もしくは句読法に由来する一般的意味、または本明細書に記載されている態様の数もしくは種類を含め、あらゆる考え得る非明示的な解釈基準についても同様である。
【0022】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段文脈による明瞭な定めがない限り、複数の指示物を包含する。
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、列挙された数値が近似値であり、小さな変動が、開示される実施形態の実践に有意に影響しないであろうことを意味する。数値が使用される場合、文脈によって別段の指示がない限り、「約」という用語は、数値が±10%変動し、開示された実施形態の範囲内に留まることができることを意味する。
【0023】
本明細書において使用される場合、「含むこと」という用語は、特定の実施形態において、所望に応じて、「~からなること」または「~から本質的になること」と置き換えられ得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、核酸分子またはポリペプチドに関して、核酸分子またはポリペプチドが、例えば血液及び/または動物組織とは別の、その天然環境以外の状態にあることを意味する。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子またはポリペプチドは、他の核酸分子または他のポリペプチド、特に動物起源の他の核酸分子またはポリペプチドを実質的に含まない。いくつかの実施形態において、核酸分子またはポリペプチドは、高度に精製された形態、すなわち、95%を超える純度または99%を超える純度であり得る。この文脈で使用される場合、「単離された」という用語は、二量体または代替的にリン酸化もしくは誘導体化された形態等の代替的な物理的形態の同じ核酸分子またはポリペプチドの存在を排除しない。
【0025】
本明細書において使用される場合、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含み得、DNA及び/またはRNAを含み得、一本鎖、二本鎖、または多重鎖であり得る。核酸の一方の鎖は、その相補物ともいう。
【0026】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物を含む任意の動物を包含する。哺乳動物としては、家畜(例えばウマ、ウシ、ブタ等)、愛玩動物(例えばイヌ、ネコ等)、実験用動物(例えばマウス、ラット、ウサギ等)、及び非ヒト霊長動物が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、ヒトは、医師のケア下の患者である。
【0027】
本開示に従って、PDE3Bにおける機能喪失バリアント(これらのバリエーションが特定の対象においてホモ接合性であるかヘテロ接合性であるかにかかわらず)が、肝疾患または2型糖尿病を発症するリスクの低下と関連することが観察されている。PDE3B遺伝子またはタンパク質における機能喪失バリアントは、ゲノム全体またはエクソーム全体の関連研究において、肝疾患または2型糖尿病と関連していないと考えられている。したがって、PDE3B参照であるか、またはPDE3Bバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である対象は、肝疾患または2型糖尿病が阻害され、その症状が軽減され、及び/または症状の発症が抑制されるように、PDE3B阻害剤により治療され得る。また、肝疾患または2型糖尿病を有するかかる対象は、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤でさらに治療され得ると考えられる。
【0028】
本開示の目的のため、任意の特定の対象(例えば、ヒト)は、3つのPDE3B遺伝子型:i)PDE3B参照、ii)予測される機能喪失またはミスセンスバリアントPDE3B核酸分子に対してヘテロ接合性、またはiii)予測される機能喪失またはミスセンスバリアントPDE3B核酸分子に対してホモ接合性のうちの1つを有するものとしてカテゴリー化され得る。対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子のコピーを有しない場合、対象は、PDE3B参照である。対象が、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の単一コピーを有する場合、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性である。PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリバリアント核酸分子は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するバリアントPDE3Bポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)である。部分的な機能喪失(または予測される部分的な機能喪失)を有するPDE3Bポリペプチドを有する対象は、PDE3Bについてハイポモルフィックである。対象が、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の2つのコピー(同じまたは異なる)を有する場合、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してホモ接合性である。
【0029】
PDE3B参照であることが遺伝子型決定されているか、または決定されている対象について、そのような対象は、2型糖尿病または肝疾患、例えば、肝損傷、肝硬変、肝線維症、脂肪症、脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎症、及び/または脂肪肝疾患を発症する増加したリスクを有する。PDE3B参照であるか、またはPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性であるかのいずれかであることが遺伝子型決定されているか、あるいは決定されている対象について、そのような対象または対象は、PDE3B阻害剤により治療され得る。
【0030】
本明細書に記載されている実施形態のうちのいずれかでは、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するPDE3Bバリアントポリペプチドをコードする任意の核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子)であり得る。いくつかの実施形態において、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、参照PDE3Bと比較して、低下したPDE3Bリガンドに対するインビトロ応答に関連する。いくつかの実施形態において、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、ヒト参照ゲノム配列と比較して、PDE3Bポリペプチドの早期切断をもたらすか、またはもたらすと予測されるPDE3Bバリアントである。いくつかの実施形態において、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、ポリフェン、SIFT、または同様のアルゴリズム等のインビトロ予測アルゴリズムによって損傷していると予測されるバリアントである。いくつかの実施形態において、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、PDE3Bにおいて非同義のアミノ酸置換を引き起こすか、または引き起こすと予測されるバリアントであり、その対立遺伝子頻度は、対象が選択される集団において1/100対立遺伝子未満である。いくつかの実施形態において、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、任意の希少なミスセンスバリアント(対立遺伝子頻度<0.1%;または1,000対立遺伝子に1個)、または任意のスプライス部位、ストップゲイン、スタートロス、ストップロス、フレームシフト、もしくはフレームインデル、または他のフレームシフトPDE3Bバリアントである。
【0031】
本明細書に記載の実施形態のうちのいずれかでは、PDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドは、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有する任意のPDE3Bポリペプチドであり得る。
【0032】
本明細書に記載される実施形態のうちのいずれかにおいて、タンパク質配列におけるバリエーションをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子は、参照配列として、PDE3B参照ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列(配列番号1;GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリのENSG00000152270.9 chr11:14,643,804~14,872,044)を使用する染色体11の位置でのバリエーションを含むことができる。
【0033】
PDE3Bには、表1に列挙されるものを含むが、これらに限定されない、PDE3Bポリペプチド配列のその後の変化を引き起こす多数の遺伝的バリアントが存在する。
【0034】
【表1-1】
【0035】
【表1-2】
【0036】
【表1-3】
【0037】
【表1-4】
【0038】
【表1-5】
【0039】
【表1-6】
【0040】
【表1-7】
【0041】
【表1-8】
【0042】
【表1-9】
【0043】
【表1-10】
【0044】
【表1-11】
【0045】
PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子のうちのいずれか1つ以上(すなわち、任意の組み合わせ)を、本明細書に記載の方法のうちのいずれか内で使用して、対象が肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有するかどうかを決定することができる。特定のバリアントの組み合わせは、PDE3Bの特定の相関及び肝疾患または2型糖尿病を発症するリスクの統計分析のために使用されるマスクまたは負荷遺伝子型を形成することができる。
【0046】
本明細書に記載される実施形態のうちのいずれかにおいて、肝疾患は、実質性肝疾患、肝損傷、肝細胞癌、肝硬変、肝線維症、単純性脂肪症、脂肪性肝炎、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝炎症、及び/または脂肪肝疾患(アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)等)である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝実質性疾患である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝損傷である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝細胞癌である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝硬変である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝線維症である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、単純性脂肪肝である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、脂肪性肝炎である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、NASHである。いくつかの実施形態において、肝疾患は、肝炎症である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、脂肪肝疾患である。いくつかの実施形態において、肝疾患は、AFLDである。いくつかの実施形態において、肝疾患は、NAFLDである。
【0047】
肝疾患の症状としては、肝臓肥大、疲労感、右上腹部の痛み、腹部膨満(腹水症)、表皮直ぐ下の血管の拡大、男性における胸部拡大、脾臓の拡大、手掌紅斑、ならびに皮膚及び目の黄変(黄疸)、掻痒、暗色尿、浅色便、吐き気または嘔吐、食欲喪失、及び容易にあざができる傾向が挙げられるがこれらに限定されない。肝疾患のための検査は、血液検査、肝臓の画像化、及び肝臓の生検を伴い得る。対象が、既知の危険因子(例えば、病原性変異のような遺伝子因子)を少なくとも1つ有する場合には、その個体は、肝疾患のリスクが向上しており、その危険因子を有する個体は、危険因子のない個体よりも、その疾患を発症するリスクが統計的に有意な形で高い者と位置付けられる。肝疾患の危険因子も周知であり、例えば、アルコールの過剰摂取、肥満症、高コレステロール、高レベルの血中トリグリセリド、多嚢胞性卵巣症候群、睡眠時無呼吸、2型糖尿病、甲状腺機能低下(甲状腺機能低下症)、下垂体機能低下(下垂体機能低下症)及びメタボリックシンドローム(血中脂質の増大を含む)を挙げることができる。
【0048】
糖尿病の症状には、排尿の増加、持続的な渇き、体重減少、持続的な空腹感、ぼやけた視力、手足のしびれ、慢性的な疲労、乾燥肌、治癒が遅い痛み、感染症に対する感受性の増加、吐き気、嘔吐、または胃の痛みが含まれるが、これらに限定されない。対象は、少なくとも1つの既知の危険因子(その危険因子を有する個体は、危険因子を有しない個体よりも、糖尿病を発症するリスクが統計的に有意に高くなる)を有する場合には、その疾患(糖尿病)を発症するリスクが高い。糖尿病の危険因子には、例えば、家族歴、年齢、前糖尿病の存在、過剰な体重、及び座りがちなライフスタイルが含まれる。
【0049】
本開示は、肝疾患を有するか、もしくは肝疾患を発症するリスクを有する対象、または肝疾患を発症するリスク因子を有する対象、または肝疾患の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0050】
本開示はまた、脂肪肝疾患を有するか、もしくは脂肪肝疾患を発症するリスクを有する対象、または脂肪肝疾患を発症するリスク因子を有する対象、または脂肪肝疾患の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0051】
本開示はまた、肝細胞癌を有するか、もしくは肝細胞癌を発症するリスクを有する対象、または肝細胞癌を発症するリスク因子を有する対象、または肝細胞癌の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0052】
本開示はまた、肝硬変を有するか、もしくは肝硬変を発症するリスクを有する対象、または肝硬変を発症するリスク因子を有する対象、または肝硬変の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3Bを対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0053】
本開示はまた、肝線維症を有するか、もしくは肝線維症を発症するリスクを有する対象、または肝線維症を発症するリスク因子を有する対象、または肝線維症の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0054】
本開示はまた、単純性脂肪肝、脂肪性肝炎もしくはNASHを有するか、または単純性脂肪肝、脂肪性肝炎もしくはNASHを発症するリスクを有する対象、あるいは単純性脂肪肝、脂肪性肝炎またはNASHを発症するリスク因子を有する対象、あるいは単純性脂肪肝、脂肪性肝炎またはNASHの合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0055】
本開示はまた、肝損傷を有するか、もしくは肝損傷を発症するリスクを有する対象、または肝損傷を発症するリスク因子を有する対象、またはもしくは肝損傷の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0056】
本開示はまた、2型糖尿病を有するか、もしくは2型糖尿病を発症するリスクを有する対象、または2型糖尿病を発症するリスク因子を有する対象、または2型糖尿病の合併症を発症するリスクを有する対象を治療する方法であって、PDE3B阻害剤を対象に投与することを含む、方法も提供する。
【0057】
本明細書に記載の実施形態は、本明細書に記載の適応症のうちのいずれかを有するか、もしくは本明細書に記載の適応症のうちのいずれかを発症するリスクを有する任意の対象、または本明細書に記載の適応症のうちのいずれかを発症する危険因子を有する任意の対象、または本明細書に記載の適応症のうちのいずれかの合併症を発症するリスクを有する任意の対象に適用することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、阻害性核酸分子を含む。阻害性核酸分子の例としては、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA(siRNA)、及び短ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。かかる阻害性核酸分子は、PDE3B mRNAの任意の領域を標的とするように設計され得る。いくつかの実施形態において、アンチセンスRNA、siRNA、またはshRNAは、PDE3Bゲノム核酸分子またはmRNA分子内の配列にハイブリダイズし、対象における細胞中のPDE3Bポリペプチドの発現を減少させる。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、PDE3Bゲノム核酸分子またはmRNA分子にハイブリダイズし、対象における細胞中のPDE3Bポリペプチドの発現を減少させるアンチセンスRNAを含む。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、PDE3Bゲノム核酸分子またはmRNA分子にハイブリダイズし、対象における細胞中のPDE3Bポリペプチドの発現を減少させるsiRNAを含む。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、PDE3Bゲノム核酸分子またはmRNA分子にハイブリダイズし、対象における細胞中のPDE3Bポリペプチドの発現を減少させるshRNAを含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、アンチセンス核酸分子は、配列番号35~864で表されるヌクレオチド配列のうちのいずれかを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、siRNA分子は、配列番号865~3210で表されるヌクレオチド配列(センス鎖及びアンチセンス鎖)のうちのいずれかを含むか、またはそれからなる(例えば、センス鎖は、例えば、配列番号865であり、対応するアンチセンス鎖は、配列番号866である;センス鎖は、例えば、配列番号867であり、対応するアンチセンス鎖は、配列番号868である;センス鎖は、例えば、配列番号3209であり、対応するアンチセンス鎖は、配列番号3210である等)。
【0060】
本明細書に開示される阻害性核酸分子は、RNA、DNA、またはRNA及びDNAの両方を含み得る。阻害性核酸分子を、ベクターまたは異種標識等の異種核酸配列に連結または融合することもできる。例えば、本明細書に開示される阻害性核酸分子は、ベクター内部にあるか、または阻害性核酸分子と異種核酸配列とを含む外因性ドナー配列であり得る。阻害性核酸分子は、異種標識へ連結または融合もされ得る。標識は、直接検出可能であり得る(例えば、フルオロフォア等)か、または間接的に検出可能であり得る(例えば、ハプテン、酵素、またはフルオロフォアクエンチャー等)。そのような標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段により検出可能であり得る。かかる標識としては、例えば放射性同位体標識、色素、染料、クロモゲン、スピン標識、及び蛍光標識が挙げられる。標識はまた、例えば、化学発光物質、金属含有物質、またはシグナルの酵素依存性二次生成が生じる酵素であり得る。「標識」という用語はまた、コンジュゲートされた分子が、基質とともに続いて添加されたときに、検出可能なシグナルを生成するために使用されるように、コンジュゲートされた分子に選択的に結合することができる「タグ」またはハプテンを指し得る。例えば、ビオチンは、タグに結合するための西洋ワサビペルオキシデート(HRP)のアビジンまたはストレプトアビジンコンジュゲートとともにタグとして使用することができ、HRPの存在を検出するために、熱量測定基質(例えば、テトラメチルベンジジン(TMB)等)または蛍光発生基質を使用して検査することができる。精製を促進するためのタグとして使用することができる例示的な標識として、myc、HA、FLAGもしくは3×FLAG、6×Hisもしくはポリヒスチジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、エピトープタグ、または免疫グロブリンのFc部分が挙げられるが、これらに限定されない。多数の標識としては、例えば粒子、フルオロフォア、ハプテン、酵素、及びそれらの比色基質、蛍光発生基質、及び化学発光基質、ならびに他の標識が挙げられる。
【0061】
開示される阻害性核酸分子は、例えばヌクレオチド、または非天然ヌクレオチドもしくは修飾ヌクレオチド(ヌクレオチド類似体またはヌクレオチド代替物等)を含み得る。このようなヌクレオチドとしては、改変された塩基、糖もしくはホスフェート基を含むか、またはその構造に非天然部分が導入されているヌクレオチドが挙げられる。非天然ヌクレオチドの例としては、ジデオキシヌクレオチド、ビオチン化ヌクレオチド、アミノ化ヌクレオチド、脱アミノ化ヌクレオチド、アルキル化ヌクレオチド、ベンジル化ヌクレオチド、及びフルオロフォア標識ヌクレオチドが挙げられるが、これらに限らない。
【0062】
本明細書に開示された阻害性核酸分子は、1つ以上のヌクレオチド類似体またはヌクレオチド置換を含むこともできる。ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、またはリン酸部分のいずれかへの修飾を含むヌクレオチドである。塩基部分への修飾として、A、C、G、及びT/Uの天然及び合成修飾、ならびに例えばプソイドウリジン、ウラシル-5-イル、ヒポキサンチン-9-イル(I)、及び2-アミノアデニン-9-イル等の異なるプリンまたはピリミジン塩基が挙げられるが、これらに限定されない。修飾塩基としては、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(偽ウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ(例えば、5-ブロモ等)、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、及び3-デアザアデニンが含まれるがこれらに限定されない。
【0063】
ヌクレオチド類似体にはまた、糖部分の修飾も含まれ得る。糖部分への修飾には、リボース及びデオキシリボースの天然修飾、ならびに合成修飾が含まれるが、これらに限定されない。糖修飾としては、2’位での以下の修飾:OH;F;O-、S-、もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル;O-、S-、もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル(式中、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換または非置換のC1-10アルキルまたはC2-10アルケニル、及びC2-10アルキニルであり得る)が挙げられるがこれらに限定されない。また、例示的な2’糖修飾としては、-O[(CHO]CH、-O(CHOCH、-O(CHNH、-O(CHCH、-O(CH-ONH、及び-O(CHON[(CHCH)](式中、n及びmは独立して1~約10である)が挙げられるが、これらに限定されない。2’位での他の修飾としては、C1-10アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリールまたはO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性の改善のための基、またはオリゴヌクレオチドの薬物動力学的特性の改善のための基、及び類似する特性を有する他の置換基が挙げられるが、これらに限定されない。糖の他の位置で、特に、3’末端ヌクレオチドまたは2’-5’結合オリゴヌクレオチドにおける糖の3’位と、5’末端ヌクレオチドの5’位で同様の修飾が行われていてもよい。修飾された糖としては、架橋環酸素(CH及びS等)で修飾を含有するものも挙げられ得る。ヌクレオチド糖類似体は、ペントフラノシル糖の代わりに糖模倣体(シクロブチル部分等)も有し得る。
【0064】
ヌクレオチド類似体は、リン酸部分でも修飾され得る。修飾されたリン酸塩部分としては、2つのヌクレオチド間のリンケージが、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホラミデート及びアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエート、ならびにボラノホスフェートを含むように修飾することができるものが挙げられるが、これらに限定されない。2つのヌクレオチド間のこれらのリン酸リンケージまたは修飾されたリン酸リンケージは、3’-5’リンケージまたは2’-5’リンケージを介することができ、リンケージは逆向きの極性(3’-5’から5’-3’へまたは2’-5’から5’-2’へ等)を含有し得る。様々な塩、混合塩、及び遊離酸形態も含まれる。ヌクレオチド置換体には、ペプチド核酸(PNA)も含まれる。
【0065】
いくつかの実施形態において、アンチセンス核酸分子はギャップマーであり、それによって5’及び3’末端の最初の1~7ヌクレオチドは各々、2’-メトキシエチル(2’-MOE)修飾を有する。いくつかの実施形態において、5’及び3’末端の最初の5ヌクレオチドは各々、2’-MOE修飾を有する。いくつかの実施形態において、5’及び3’末端の最初の1~7ヌクレオチドは、RNAヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、5’及び3’末端の最初の5ヌクレオチドは、RNAヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド間の骨格リンケージの各々は、ホスホロチオエートリンケージである。
【0066】
いくつかの実施形態において、siRNA分子は、末端修飾を有する。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の5’末端は、リン酸化される。いくつかの実施形態において、5’-(E)-ビニル-ホスホネート等の、加水分解することができない5’-ホスフェート類似体が使用される。
【0067】
いくつかの実施形態において、siRNA分子は、骨格修飾を有する。いくつかの実施形態において、連続したリボースヌクレオシドを連結する修飾ホスホジエステル基は、siRNAの安定性及びインビボバイオアベイラビリティを向上させることが示されている。ホスホジエステルリンケージの非エステル基(-OH、=O)は、硫黄、ホウ素、またはアセテートと置き換えて、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート、及びホスホノアセテートリンケージを得ることができる。加えて、ホスホジエステル基をホスホトリエステルで置換することは、負電荷を排除することによって、siRNAの細胞取り込み及び血清成分上での保持を促進することができる。いくつかの実施形態において、siRNA分子は、糖修飾を有する。いくつかの実施形態において、糖は脱プロトン化され(エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼによって触媒される反応)、それによって2’-ヒドロキシルは、求核剤として作用し、ホスホジエステル結合中の隣接するリンを攻撃することができる。かかる代替物としては、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、及び2’-フルオロ修飾が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態において、siRNA分子は、塩基修飾を有する。いくつかの実施形態において、塩基は、シュードウリジン、5’-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、イノシン、及びN7-メチルグアノシン等の修飾塩基で置換され得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、siRNA分子は、脂質にコンジュゲートされる。脂質は、siRNAの5’または3’末端にコンジュゲートされて、それらが血清リポタンパク質と会合することを可能にすることによって、それらのインビボバイオアベイラビリティを改善することができる。代表的な脂質としては、コレステロール及びビタミンE、ならびにパルミテート及びトコフェロール等の脂肪酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの実施形態において、代表的なsiRNAは、以下の式を有する:
センス:mN*mN*/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/*mN*/32FN/
アンチセンス:/52FN/*/i2FN/*mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN/i2FN/mN*N*N
式中、「N」は塩基であり、「2F」は2’-F修飾であり、「m」は2’-O-メチル修飾であり、「I」は内部塩基であり、「*」はホスホロチオエート骨格リンケージである。
【0071】
本開示はまた、本明細書に開示される阻害性核酸分子のうちのいずれか1つ以上を含む、ベクターも提供する。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、本明細書に開示される阻害性核酸分子のうちのいずれか1つ以上と、異種核酸と、を含む。ベクターは、核酸分子を輸送できるウイルスベクターまたは非ウイルスベクターであることができる。いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミドまたはコスミド(例えば追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNA等)である。いくつかの実施形態において、本開示のベクターは、ウイルスベクターであって、追加のDNAセグメントをそのウイルスゲノムにライゲーションできるウイルスベクターである。発現ベクターとしては、プラスミド、コスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス(カリフラワーモザイクウイルス及びタバコモザイクウイルス等)、酵母人工染色体(YAC)、エプスタイン-バー(EBV)由来エピソーム、及び当該技術分野において既知の他の発現ベクターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
本開示はまた、本明細書に開示される阻害性核酸分子のうちのいずれか1つ以上を含む、組成物も提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的組成物である。いくつかの実施形態において、組成物は、担体及び/または賦形剤を含む。担体の例としては、ポリ(乳酸)(PLA)マイクロスフィア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)マイクロスフィア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コクリエート(cochleate)、及び脂質微小管が挙げられるが、これらに限らない。担体は、PBS、HBSS等のような緩衝化塩溶液を含んでよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、例えば、PCT公開第WO2002/070469号、米国特許出願公開第2020/0247783号に記載されている。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、OPC3911、IBMX、3-イソブチル-1-メチルキサンチン、ジヒドロピリダジノン、アムリノン、エノキシモン、シロスタミド、ミルリノン、シロスタゾール、及びレボシメンダンから選択される。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、OPC3911である。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、IBMXである。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、3-イソブチル-1-メチルキサンチンである。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、ジヒドロピリダジノンである。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、アムリノンである。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、エノキシモンである。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、シロスタミドである。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、ミルリノンである。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、シロスタゾールである。いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、レボシメンダンである。
【0074】
いくつかの実施形態において、PDE3B阻害剤は、認識配列(複数可)における1つ以上のニックもしくは二本鎖切断を誘導するヌクレアーゼ剤、またはPDE3Bゲノム核酸分子内の認識配列に結合するDNA結合タンパク質を含む。認識配列は、PDE3B遺伝子のコード領域内、または遺伝子の発現に影響を及ぼす制御領域内に所在し得る。DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤の認識配列は、イントロン、エクソン、プロモーター、エンハンサー、調節領域、または任意の非タンパク質コード領域内に所在し得る。認識配列は、PDE3B遺伝子の開始コドンを含み得るかまたはそれに近接し得る。例えば、認識配列は、開始コドンから約10、約20、約30、約40、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチドに配置することができる。別の例として、各々が開始コドンを含むかまたは当該コドンに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的化する、2つ以上のヌクレアーゼ剤が使用され得る。別の例として、1つが開始コドンを含むかまたはそれに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的とし、もう1つが終止コドンを含むかまたはそれに近接するヌクレアーゼ認識配列を標的とする2つのヌクレアーゼ剤を使用することができ、これらのヌクレアーゼ剤による切断により、2つのヌクレアーゼ認識配列間のコード領域を欠失させることができる。所望される認識配列の中へのニックまたは二本鎖切断を誘導する任意のヌクレアーゼ剤は、本明細書において開示される方法及び組成物において使用され得る。所望される認識配列へ結合する任意のDNA結合タンパク質は、本明細書において開示される方法及び組成物において使用され得る。
【0075】
本明細書における使用に好適なヌクレアーゼ剤及びDNA結合タンパク質としては、ジンクフィンガータンパク質もしくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)ペア、転写活性化因子様エフェクター(TALE)タンパク質もしくは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはクラスター化規則的散在型短パリンドローム反復(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系が挙げられるがこれらに限定されない。認識配列の長さは異なることができるが、例えば、ジンクフィンガータンパク質またはZFN対については約30~約36bp、各ZFNについては約15~約18bp、TALEタンパク質またはTALENについては約36bp、及びCRISPR/CasガイドRNAについては約20bpである認識配列が挙げられる。
【0076】
いくつかの実施形態において、CRISPR/Cas系を使用して、細胞内のPDE3Bゲノム核酸分子を修飾することができる。本明細書で開示される方法及び組成物は、PDE3B核酸分子の部位特異的切断のためにCRISPR複合体(Casタンパク質と複合体化したガイドRNA(gRNA)を含む)を利用することによってCRISPR-Cas系を用いることができる。
【0077】
Casタンパク質は、概して、gRNAと相互作用し得る少なくとも1つのRNA認識または結合ドメインを含む。Casタンパク質は、ヌクレアーゼドメイン(例えばDNaseドメインまたはRNaseドメイン等)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメイン、及び他のドメインも含み得る。好適なCasタンパク質には、例えば、野生型Cas9タンパク質及び野生型Cpf1タンパク質(例えば、FnCpf1等)が挙げられる。Casタンパク質は、PDE3Bゲノム核酸分子中で二本鎖切断を生成するように完全な切断活性を有し得るか、またはPDE3Bゲノム核酸分子中で一本鎖切断を生成するニッカーゼであり得る。Casタンパク質の追加の例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1またはCsx12)、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966、ならびにそれらのホモログまたは修飾バージョンが挙げられるがこれらに限定されない。Casタンパク質はまた、融合タンパク質として異種ポリペプチドに作動可能に連結され得る。例えば、Casタンパク質を、切断ドメイン、エピジェネティック修飾ドメイン、転写活性化ドメイン、または転写抑制因子ドメインに融合させることができる。Casタンパク質は、任意の形態で提供することができる。例えば、Casタンパク質を、タンパク質、例えば、gRNAと複合体化したCasタンパク質の形態で提供することができる。代替的に、Casタンパク質は、Casタンパク質をコードする核酸分子の形態(RNAまたはDNA等)で提供され得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、PDE3Bゲノム核酸分子の標的とする遺伝子修飾は、細胞を、Casタンパク質及びPDE3Bゲノム核酸分子における標的ゲノム遺伝子座内の1つ以上のgRNA認識配列にハイブリダイズする1つ以上のgRNAと接触させることによって生成され得る。例えば、gRNA認識配列は、配列番号1の領域内に所在し得る。gRNA認識配列は、PDE3Bゲノム核酸分子の開始コドンもしくはPDE3Bゲノム核酸分子の終止コドンを含み得るかまたはそれに近接し得る。例えば、gRNA認識配列は開始コドンまたは終止コドンから約10、約20、約30、約40、約50、約100、約200、約300、約400、約500、または約1,000ヌクレオチド離れて所在することができる。
【0079】
PDE3Bゲノム核酸分子の標的ゲノム遺伝子座内のgRNA認識配列は、Cas9ヌクレアーゼが標的とするDNA配列の直後にある2~6塩基対のDNA配列であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の近傍に所在する。カノニカルなPAMは、配列5’-NGG-3’(配列中、「N」は任意の核酸塩基であり、2つのグアニン(「G」)核酸塩基が後続する)である。gRNAは、遺伝子編集のためにCas9をゲノム中のいかなる場所へも輸送し得るが、Cas9がPAMを認識する部位以外のいかなる部位でも編集は起こり得ない。加えて、5’-NGA-3’は、ヒト細胞について高度に効率的な非カノニカルなPAMであり得る。概して、PAMは、gRNAによって標的化されるDNA配列の約2~6ヌクレオチド下流である。PAMは、gRNA認識配列に隣接し得る。いくつかの実施形態において、gRNA認識配列は、3’端上でPAMが隣接し得る。いくつかの実施形態において、gRNA認識配列は、5’端上でPAMが隣接し得る。例えば、Casタンパク質の切断部位は、PAM配列の上流または下流の、約1~約10の塩基対、約2~約5の塩基対、または3つの塩基対であり得る。いくつかの実施形態において(S.pyogenesからのCas9または密接に関連するCas9が使用された場合等)、非相補鎖のPAM配列は、5’-NGG-3’(式中、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの非相補鎖のgRNA認識配列の直ぐ3’である)であり得る。したがって、相補鎖のPAM配列は5’-CCN-3’となり、式中、Nは、任意のDNAヌクレオチドであり、標的DNAの相補鎖のgRNA認識配列の5’に隣接する。
【0080】
gRNAは、Casタンパク質に結合し、Casタンパク質をPDE3Bゲノム核酸分子内の特定の位置に標的化するRNA分子である。例示的なgRNAは、PDE3Bゲノム核酸分子に結合またはそれを切断するようにCas酵素を誘導するのに有効なgRNAであり、gRNAは、PDE3Bゲノム核酸分子内のgRNA認識配列にハイブリダイズするDNA標的セグメントを含む。例示的なgRNAは、開始コドンまたは終止コドンを含むかまたはそれに近接するPDE3Bゲノム核酸分子内に存在するgRNA認識配列にハイブリダイズするDNA標的化セグメントを含む。例えば、gRNAは、開始コドンから約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約100、約200、約300、約400、約500、もしくは約1,000ヌクレオチド離れて所在するgRNA認識配列、または終止コドンから約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約100、約200、約300、約400、約500、もしくは約1,000ヌクレオチド離れて所在するgRNA認識配列にハイブリダイズするように選択することができる。好適なgRNAは、約17~約25ヌクレオチド、約17~約23ヌクレオチド、約18~約22ヌクレオチド、または約19~約21ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、gRNAは、20ヌクレオチドを含み得る。
【0081】
ヒトPDE3B参照遺伝子内に所在する好適なgRNA認識配列の例は、配列番号26~34として表2に示される。
【0082】
【表2】
【0083】
Casタンパク質及びgRNAは、複合体を形成し、Casタンパク質は、標的PDE3Bゲノム核酸分子を切断する。Casタンパク質は、gRNAのDNA標的化セグメントが結合するであろう標的PDE3Bゲノム核酸分子中に存在する核酸配列の内部または外部の部位で核酸分子を切断することができる。例えば、CRISPR複合体(gRNA認識配列にハイブリダイズされ、Casタンパク質と複合体化されるgRNAを含む)の形成により、gRNAのDNA標的化セグメントが結合するであろうPDE3Bゲノム核酸分子中に存在する核酸配列中または当該配列の近傍(例えば当該配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、またはそれ以上の塩基対内等)で、1つまたは両方の鎖が切断され得る。
【0084】
かかる方法は、例えば、配列番号1の領域が破壊されている、開始コドンが破壊されている、終止コドンが破壊されている、またはコード配列が破壊されているもしくは欠失している、PDE3Bゲノム核酸分子をもたらし得る。任意選択で、細胞は、PDE3Bゲノム核酸分子中の標的ゲノム遺伝子座内の追加のgRNA認識配列にハイブリダイズする1つ以上の追加のgRNAsと、さらに接触させることができる。細胞を1以上の追加のgRNA(例えば、第2のgRNA認識配列にハイブリダイズする第2のgRNA)と接触させることによって、Casタンパク質による切断は、2以上の二本鎖切断または2以上の一本鎖切断を作り出すことができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、治療の方法はさらに、対象からの生物学的サンプルにおいて、ヒトPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の存在または非存在を検出することを含む。本開示全体で使用される場合、「PDE3Bで予測される機能喪失バリアント核酸分子」は、部分的な機能喪失、完全な機能喪失、予測される部分的な機能喪失、または予測される完全な機能喪失を有するPDE3Bポリペプチドをコードする任意のPDE3B核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、またはcDNA分子等)である。
【0086】
本開示はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤で対象を治療する方法であって、対象が、肝疾患または2型糖尿病に罹患している、方法も提供する。いくつかの実施形態において、方法は、対象から生物学的サンプルを得ることまたは得たこと、及び患者がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を含む遺伝子型を有するかどうかを決定するために生物学的サンプルについて配列分析を実施することまたは実施したことによって、対象がヒトPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するかどうかを決定することを含む。対象がPDE3B参照である場合、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤が、標準投薬量を超える量で対象に投与されるか、または継続して投与され、かつPDE3B阻害剤が、対象に投与される。対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性である場合、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤が、標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で対象に投与されるか、または継続して投与され、かつPDE3B阻害剤が、対象に投与される。ヒトPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有する遺伝子型の存在は、対象が肝疾患または2型糖尿病を発症する低下したリスクを有することを示す。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3B参照である。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である。
【0087】
PDE3B参照であるか、またはPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性であるかのいずれかであることが決定されているか、あるいは決定されている対象について、そのような対象は、本明細書に記載されるように、PDE3B阻害剤により治療され得る。
【0088】
対象からの生物学的サンプル中のPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の存在もしくは非存在を検出すること、及び/または対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するかどうかを決定することは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インビトロで実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インサイチュで実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インビボで実行され得る。これらの実施形態のうちのいずれかにおいて、核酸分子は、対象から得られた細胞内に存在し得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、対象がPDE3B参照である場合、対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量を超える量で投与される。いくつかの実施形態において、対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性である場合、対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の投薬量で投与される。
【0090】
いくつかの実施形態において、治療方法は、対象からの生物学的サンプル中のPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドの存在または非存在を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態において、対象がPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有しない場合、対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量を超える量で投与される。いくつかの実施形態において、対象がPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有する場合、対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の投薬量で投与される。
【0091】
本開示はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤で対象を治療する方法であって、対象が、肝疾患または2型糖尿病に罹患している、方法も提供する。いくつかの実施形態において、方法は、対象から生物学的サンプルを得ることまたは得たこと、及び対象がPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有するかどうかを決定するために生物学的サンプルについてアッセイを実施することまたは実施したことによって、対象がPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有するかどうかを決定することを含む。対象がPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有しない場合、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤が、標準投薬量を超える量で対象に投与されるか、または継続して投与され、かつPDE3B阻害剤が、対象に投与される。対象がPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有する場合、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤が、標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で対象に投与されるか、または継続して投与され、かつPDE3B阻害剤が、対象に投与される。PDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドの存在は、対象が肝疾患または2型糖尿病を発症する低下したリスクを有することを示す。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有しない。
【0092】
対象からの生物学的サンプル中のPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドの存在もしくは非存在を検出すること、及び/または対象がPDE3Bで予測される機能喪失ポリペプチドを有するかどうかを決定することは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インビトロで実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インサイチュで実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インビボで実行され得る。これらの実施形態のうちのいずれかにおいて、ポリペプチドは、対象から得られた細胞内に存在し得る。
【0093】
肝疾患を治療または阻害する治療剤の例としては、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、プレドニゾン、アザチオプリン、ペニシラミン、トリエンチン、デフェロキサミン、シプロフロキサシン、ノロフロキサシン、セフトリアキソン、オフロキサシン、アモキシシリン-クラブラン酸塩、フィトナジオン、ブメタニド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、アミロライド、トリアムテレン、スピロノラクトン、オクトレオチド、アテノロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、チモロール、及びカルベジロール、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、ジスルフィラムである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、ナルトレキソンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、アカンプロサートである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、プレドニゾンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、アザチオプリンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、ペニシラミンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、トリエンチンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、デフェロキサミンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、シプロフロキサシンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、ノロフロキサシンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、セフトリアキソンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、オフロキサシンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、アモキシシリン-クラブラン酸塩である。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、フィトナジオンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、ブメタニドである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、フロセミドである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、ヒドロクロロチアジドである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、クロロチアジドである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、アミロライドである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、トリアムテレンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、スピロノラクトンである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、オクトレオチドである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、アテノロールである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、メトプロロールである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、ナドロールである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、プロプラノロールである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、チモロールである。いくつかの実施形態において、肝疾患を治療または阻害する治療剤は、カルベジロールである。
【0094】
2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の例としては、メトホルミン、インスリン、スルホニルウレア(グリブリド、グリピジド、及びグリメピリド等)、メグリチニド(レパグリニド及びナテグリニド等)、チアゾリジンジオン(ロシグリタゾン及びピオグリタゾン等)、DPP-4阻害剤(シタグリプチン、サキサグリプチン、及びリナグリプチン等)、GLP-1受容体アゴニスト(エキセナチド、リラグルチド、及びセマグルチド等)、ならびにSGLT2阻害剤(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、及びエンパグリフロジン等)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、治療剤は、メトホルミン、インスリン、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、レパグリニド、ナテグリニド、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、またはエンパグリフロジンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、メトホルミンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、インスリンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、グリブリドである。いくつかの実施形態において、治療剤は、グリピジドである。いくつかの実施形態において、治療剤は、グリメピリドである。いくつかの実施形態において、治療剤は、レパグリニドである。いくつかの実施形態において、治療剤は、ナテグリニドである。いくつかの実施形態において、治療剤は、ロシグリタゾンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、ピオグリタゾンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、シタグリプチンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、サキサグリプチンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、リナグリプチンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、エキセナチドである。いくつかの実施形態において、治療剤は、リラグルチドである。いくつかの実施形態において、治療剤は、セマグルチドである。いくつかの実施形態において、治療剤は、カナグリフロジンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、ダパグリフロジンである。いくつかの実施形態において、治療剤は、エンパグリフロジンである。
【0095】
肝硬変を治療または阻害する治療剤の例としては、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロサート、コルチコステロイド(プレドニゾン及びアザチオプリン等)、抗ウイルス剤(インターフェロン、プロテアーゼ阻害剤、及び逆転写酵素阻害剤等)、キレート剤(ペニシラミン、トリエンチン、及びデフェロキサミン等)、利尿剤(ブメタニド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、アミロリド、トリアムテレン、及びスピロノラクトン等)、及びβ遮断剤(アテノロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、チモロール、及びカルベジロール等)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、肝硬変を治療または阻害する治療剤は、ジスルフィラムである。いくつかの実施形態において、肝硬変を治療または阻害する治療剤は、ナルトレキソンである。いくつかの実施形態において、肝硬変を治療または阻害する治療剤は、アカンプロサートである。いくつかの実施形態において、肝硬変を治療または阻害する治療剤は、コルチコステロイド(プレドニゾン及びアザチオプリン等)である。いくつかの実施形態において、肝硬変を治療または阻害する治療剤は、抗ウイルス剤(インターフェロン、プロテアーゼ阻害剤、及び逆転写酵素阻害剤等)である。いくつかの実施形態において、肝硬変を治療または阻害する治療剤は、キレート剤(ペニシラミン、トリエンチン、及びデフェロキサミン等)である。いくつかの実施形態において、肝硬変を治療または阻害する治療剤は、利尿剤(ブメタニド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、アミロライド、トリアムテレン、及びスピロノラクトン等)である。いくつかの実施形態において、肝硬変を治療または阻害する治療剤は、β遮断剤(アテノロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、チモロール、及びカルベジロール等)である。
【0096】
(例えば、非アルコール性脂肪肝疾患において使用するための)肝疾患治療剤の追加の例としては、体重減少誘導剤、例えば、オルリスタットまたはシブトラミン;インスリン感受化剤、例えば、チアゾリジンジオン(TZD)、メトホルミン、及びメグリチニド;脂質低下剤、例えば、スタチン類、フィブラート、及びオメガ-3脂肪酸;抗酸化剤、例えば、ビタミンE、ベタイン、N-アセチル-システイン、レシチン、シリマリン、及びベータ-カロテン;抗TNF剤、例えば、ペントキシフィリン;プロバイオティクス、例えば、VSL#3;ならびに細胞保護剤、例えば、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、ACE阻害剤/ARB、オリゴフルクトース、及びインクレチン類似体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、減量誘導剤(オルリスタットまたはシブトラミン等)である。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、インスリン感作剤(チアゾリジンジオン(TZD)、メトホルミン、及びメグリチニド等)である。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、脂質低下剤(スタチン、フィブラート、及びオメガ-3脂肪酸等)である。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、ビタミンE、ベタイン、N-アセチル-システイン、レシチン、シリマリン、及びベータ-カロテン等の抗酸化剤である。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、抗TNF剤(ペントキシフィリン等)である。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、プロバイオティクス(VSL#3等)である。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、細胞保護剤(ウルソデオキシコール酸(UDCA)等)である。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、ACE阻害剤/ARBである。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、オリゴフルクトースである。いくつかの実施形態において、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための治療剤は、インクレチン類似体である。
【0097】
(例えば、NASHにおいて使用するための)肝疾患治療剤の追加の例としては、OCALIVA(登録商標)(オベチコール酸)、セロンセルチブ、エラフィブラノル、セニクリビロク、GR_MD_02、MGL_3196、IMM124E、アラキジルアミドコラノイン酸(ARAMCHOL(商標))、GS0976、エムリカサン、ボリキシバット、NGM282、GS9674、トロピフェキソル、MN_001、LMB763、BI_1467335、MSDC_0602、PF_05221304、DF102、サログリタザル、BMS986036、ラニフィブラノル、セマグルチド、ニタゾキサニド、GRI_0621、EYP001、VK2809、ナルメフェン、LIK066、MT_3995、エロビキシバット、ナモデノソン、フォラルマブ、SAR425899、ソタグリフロジン、EDP_305、イソサブテート、ゲムカベン、TERN_101、KBP_042、PF_06865571、DUR928、PF_06835919、NGM313、BMS_986171、ナマシズマブ、CER_209、ND_L02_s0201、RTU_1096、DRX_065、IONIS_DGAT2Rx、INT_767、NC_001、セラデパル、PXL770、TERN_201、NV556、AZD2693、SP_1373、VK0214、ヘパステム、TGFTX4、RLBN1127、GKT_137831、RYI_018、CB4209-CB4211、及びJH_0920が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
加えて、対象は、減量手術及び/または食事介入により治療され得る。
(例えば、慢性C型肝炎治療において使用するための)肝疾患治療剤の追加の例としては、リバビリン、パリタプレビル、OLYSIOTM(シメプレビル)、グラゾプレビル、レジパスビル、オムビタスビル、エルバスビル、DAKLINZA(登録商標)(ダクラタスビル)、ダサブビル、リトナビル、ソホスブビル、ベルパタスビル、ボキシラプレビル、グレカプレビル、ピブレンタスビル、ペギンテルフェロンアルファ-2a、ペギンテルフェロンアルファ-2b、及びインターフェロンアルファ-2bが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
いくつかの実施形態において、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の用量は、PDE3B参照である対象(標準投薬量を超える量を受けてもよい)と比較して、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性である対象(すなわち、標準投薬量よりも少ない)については、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減らすことができる。いくつかの実施形態において、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の用量は約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%減らすことができる。加えて、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性である対象は、PDE3B参照である対象と比較して、低い頻度で投与することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の用量は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である対象と比較して、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してホモ接合性である対象については、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%減らすことができる。いくつかの実施形態において、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の用量は約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%減らすことができる。加えて、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してホモ接合性である対象における肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の用量は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である対象と比較して、低い頻度で投与することができる。
【0101】
肝疾患または2型糖尿病及び/またはPDE3B阻害剤を治療または阻害する治療剤の投与は、例えば、1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、1か月後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、2か月後、または3か月後に反復することができる。反復投与は、同じ用量または異なる用量であることができる。投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上反復することができる。例えば、ある特定の投薬量レジメンに従って、対象は、例えば、6か月、1年、またはそれ以上等の長期間にわたって療法を受けることができる。
【0102】
肝疾患または2型糖尿病及び/またはPDE3B阻害剤を治療または阻害する治療剤の投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、または筋肉内が含まれるがこれらに限定されない任意の好適な経路で行うことができる。投与のための薬学的組成物は、望ましくは滅菌済みで実質的に等張であり、GMP条件下で製造される。薬学的組成物は、単位投薬形態(すなわち単回投与のための投薬量)で提供することができる。薬学的組成物は、1つ以上の生理学的及び薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を使用して製剤化することができる。製剤は、選択した投与経路に依存する。「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、賦形剤または補助剤が、製剤の他の成分と適合性があり、かつそれらのレシピエントに実質的に有害でないことを意味する。
【0103】
「治療する」、「治療すること」及び「治療」、ならびに「予防する」、「予防すること」及び「予防」という用語は、本明細書において使用される場合、所望される生物学的応答(それぞれ治療効果及び予防効果等)を惹起することを指す。いくつかの実施形態において、治療効果は、薬剤または薬剤を含む組成物の投与後の、肝疾患もしくは2型糖尿病の減少/低減、肝疾患もしくは2型糖尿病の重症度低下/低減(例えば、肝疾患の発症の低減もしくは抑制等)、症状及び肝疾患に関連する影響もしくは2型糖尿病に関連する影響の減少/低減、症状及び肝疾患に関連する影響もしくは2型糖尿病に関連する影響の発症遅延、肝疾患に関連する影響もしくは2型糖尿病に関連する影響の症状の重症度低減、症状及び肝疾患に関連する影響もしくは2型糖尿病に関連する影響の数の低減、症状及び肝疾患に関連する影響もしくは2型糖尿病に関連する影響の潜伏期短縮、症状及び肝疾患に関連する影響もしくは2型糖尿病に関連する影響の改善、二次的症状の低減、二次感染の低減、肝疾患もしくは2型糖尿病の再発予防、再発エピソードの回数もしくは頻度の減少、症候性エピソード間の潜伏期延長、持続的進行までの時間の延長、回復の加速、または代替的治療法の有効性の増大もしくはそれに対する抵抗性の低下、及び/または罹患宿主動物の生存期間の延長のうちの1つ以上を含む。予防効果は、治療プロトコルの投与後の、肝疾患もしくは2型糖尿病の発生/進行の完全または部分的な回避/阻害、または遅延(例えば、完全または部分的な回避/阻害または遅延等)、及び罹患宿主動物の生存期間延長を含み得る。肝疾患または2型糖尿病の治療は、任意の臨床ステージまたは症状で任意の形態の肝疾患または2型糖尿病を有するものとしてすでに診断された対象の治療、肝疾患または2型糖尿病の症状もしくは徴候の発症または進展または増悪または悪化の遅延、及び/または肝疾患または2型糖尿病の重症度の予防及び/または低減を包含する。
【0104】
本開示はまた、肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有する対象を特定する方法も提供する。いくつかの実施形態において、方法は、対象から得られた生物学的サンプルにおいて、ヒトPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはcDNA分子)の存在または非存在を決定すること、または決定したことを含む。対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を欠く(すなわち、対象が遺伝子型的にPDE3B参照としてカテゴリー化される)場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有する。対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有する(すなわち、対象が、PDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性であるか、またはPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントに対してホモ接合性である)場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を発症する低下したリスクを有する。いくつかの実施形態において、肝臓発現定量的形質遺伝子座(eQTL)を分析することができる。
【0105】
PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の単一コピーを有することは、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子のコピーを有しないことよりも、肝疾患または2型糖尿病を発症することからヒト対象をさらに保護する。いかなる特定の理論または作用機序にも限定されることを意図するものではないが、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の単一コピー(すなわち、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性)は肝疾患または2型糖尿病を発症することから対象を保護すると考えられており、かつ、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の2つのコピー(すなわち、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してホモ接合性)を有することは、単一コピーを持つ対象と比べて肝疾患または2型糖尿病を発症することから対象をさらに保護し得るとも考えられている。したがって、いくつかの実施形態において、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の単一コピーは肝疾患または2型糖尿病を発症することから対象を完全に保護しなくてもよいが、代わりに、部分的または不完全に保護し得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子の単一コピーを有する対象に依然として存在する、肝疾患または2型糖尿病の発症に関与する追加の因子または分子があり、そのために、肝疾患または2型糖尿病の発症からの完全な保護に及ばない可能性がある。
【0106】
対象が対象からの生物学的サンプル中にPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するかどうかを決定すること、及び/または対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するかどうかを決定することは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかによって実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インビトロで実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インサイチュで実行され得る。いくつかの実施形態において、これらの方法は、インビボで実行され得る。これらの実施形態のうちのいずれかにおいて、核酸分子は、対象から得られた細胞内に存在し得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、対象が肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有するものとして特定された場合、対象は、本明細書に記載されるように、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤、及び/またはPDE3B阻害剤でさらに治療される。例えば、対象がPDE3B参照であり、そのために、肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有する場合、対象は、PDE3B阻害剤を投与される。いくつかの実施形態において、かかる対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態において、対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の投薬量で投与され、かつPDE3B阻害剤も投与される。いくつかの実施形態において、かかる対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態において、対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してホモ接合性である場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の投薬量で投与される。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3B参照である。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してホモ接合性である。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法のうちのいずれかは、肝疾患または2型糖尿病を発症するリスクの低下に関連する、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、mRNA分子、もしくはmRNA分子から生成されるcDNA分子、及び/またはPDE3Bで予測される機能喪失バリアントポリペプチドを有する対象の総負荷を決定することをさらに含むことができる。総負荷は、PDE3B遺伝子内のすべてのバリアントの合計であり(ゲノムアノテーションに関係なく、PDE3B遺伝子に近接する(遺伝子の周りに最大10Mb)任意の遺伝的バリアントを含む)、これは、肝疾患または2型糖尿病との関連分析で実行され得る。いくつかの実施形態において、対象は、肝疾患または2型糖尿病を発症するリスクの低下に関連する1つ以上のPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してホモ接合性である。いくつかの実施形態において、対象は、肝疾患または2型糖尿病を発症するリスクの低下に関連する1つ以上のPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である。関連分析の結果は、PDE3Bで予測される機能喪失及びミスセンスバリアントが、肝疾患または2型糖尿病のリスクの低下と関連していることを示唆している。対象がより低い総負荷を有する場合、対象は肝疾患または2型糖尿病を発症するリスクがより高く、対象は、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量を超える量で投与されるか、または継続して投与される。対象がより大きな総負荷を有する場合、対象は肝疾患または2型糖尿病を発症するリスクがより低く、対象は、標準投薬量と同じまたはそれ未満の量で肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を投与されるか、または継続して投与される。総負荷が高いほど、肝疾患または2型糖尿病を発症するリスクは低くなる。
【0109】
いくつかの実施形態において、任意の1つ以上のPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有する対象の総負荷は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子のうちのいずれかの複数の重み付けされた合計を表す。いくつかの実施形態において、総負荷は、PDE3B遺伝子内またはその周りに存在する(最大10Mb)少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約1,000、少なくとも約10,000、少なくとも約100,000、または少なくとも約1,000,000もしくは1,000,000を超える遺伝的バリアントを使用して計算され、ここで、遺伝的負荷は、対立遺伝子の数に、肝疾患との関連推定値または各対立遺伝子についての関連するアウトカム(例えば、重み付けされた多遺伝子負荷スコア)を乗じたものである。これには、ゲノムアノテーションに関係なく、遺伝的関連分析において肝臓関連形質との非ゼロ関連を示すPDE3B遺伝子(遺伝子の周りに最大10Mb)に近接する任意の遺伝的バリアントが含まれ得る。いくつかの実施形態において、対象が所望の閾値スコアよりも高い総負荷を有する場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を発症する低下したリスクを有する。いくつかの実施形態において、対象が所望の閾値スコアよりも低い総負荷を有する場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有する。
【0110】
いくつかの実施形態において、総負荷は、例えば、上位五分位、中間五分位、及び下位五分位等の五分位に分けることができ、総負荷の上位五分位は最低リスク群に対応し、総負荷の下位五分位は最高リスク群に対応する。いくつかの実施形態において、より大きな総負荷を有する対象は、対象集団からの総負荷の上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%を含むがこれらに限定されない、最も重み付けされた総負荷を含む。いくつかの実施形態において、遺伝的バリアントは、関連についてのp値範囲の上位10%、上位20%、上位30%、上位40%、または上位50%において肝疾患または2型糖尿病との関連を有する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態において、特定された遺伝的バリアントの各々は、約10-2以下、約10-3以下、約10-4以下、約10-5以下、約10-6以下、約10-7以下、約10-8以下、約10-9以下、約10-10以下、約10-11以下、約10-12以下、約10-13以下、約10-14以下、または約10-15以下のp値を有する肝疾患または2型糖尿病との関連を有する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態において、特定された遺伝的バリアントは、5×10-8未満のp値を有する肝疾患または2型糖尿病との関連を有する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態において、特定された遺伝的バリアントは、分布の上位20%について約1.001以上、約1.01以上、約1.1以上、約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、もしくは約2.25以上、または約1.5以上、約1.75以上、約2.0以上、約2.25以上、約2.5以上、もしくは約2.75以上のオッズ比(odds ratio、OR)を有する参照集団の残りの部分と比較して、高リスク対象における肝疾患または2型糖尿病との関連を有する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態において、オッズ比(OR)は、約1.001~約1.01、約1.01~約1.1、約1.0~約1.5、約1.5~約2.0、約2.0~約2.5、約2.5~約3.0、約3.0~約3.5、約3.5~約4.0、約4.0~約4.5、約4.5~約5.0、約5.0~約5.5、約5.5~約6.0、約6.0~約6.5、約6.5~約7.0、または7.0を超える範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、高リスクの対象は、参照集団における下位十分位、五分位、または三分位の総負荷を有する対象を含む。総負荷の閾値は、意図された実用化の性質及びその実用化にとって有意義であると考えられるリスク差に基づいて決定される。
【0111】
いくつかの実施形態において、対象が肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有するものとして特定された場合、対象は、本明細書に記載されるように、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤、及び/またはPDE3B阻害剤でさらに治療される。例えば、対象がPDE3B参照であり、そのために、肝疾患または2型糖尿病を発症増加したリスクを有する場合、対象は、PDE3B阻害剤を投与される。いくつかの実施形態において、かかる対象はまた、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を投与される。いくつかの実施形態において、対象がPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントに対してヘテロ接合性である場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量と同じまたはそれ未満の投薬量で投与され、かつPDE3B阻害剤も投与される。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3B参照である。いくつかの実施形態において、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子に対してヘテロ接合性である。さらに、対象が、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するためのより低い総負荷を有し、したがって肝疾患または2型糖尿病を発症する増加したリスクを有する場合、対象は、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を、標準投薬量を超える量で投与される。いくつかの実施形態において、対象が、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するためのより低い総負荷を有する場合、対象は、PDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を有するためのより高い総負荷を有する対象に投与される標準投薬量と同じまたはそれ未満の投薬量で肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤を投与される。
【0112】
本開示はまた、対象からの生物学的サンプル中のPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、及び/または対象からの生物学的サンプル中のPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントmRNA分子、及び/または対象からの生物学的サンプル中のmRNA分子から生成されるPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアントcDNA分子の存在または非存在を検出する方法を提供する。集団内の遺伝子配列、及びそのような遺伝子によってコードされるmRNA分子は、一塩基多型のような多型のために異なり得ることが理解される。PDE3Bバリアントゲノム核酸分子、PDE3BバリアントmRNA分子、及びPDE3BバリアントcDNA分子について本明細書で提供する配列は、例示的な配列に過ぎない。PDE3Bバリアントゲノム核酸分子、バリアントmRNA分子、及びバリアントcDNA分子についての他の配列も可能である。
【0113】
生物学的サンプルは、対象からの任意の細胞、組織、または生体液に由来し得る。生物学的サンプルは、骨髄サンプル、腫瘍生検標本、細針吸引生検標本、または体液(血液、歯肉溝滲出液、血漿、血清、リンパ、腹水、嚢胞液もしくは尿等)のサンプルのようないずれかの臨床的に関連する組織を含んでもよい。いくつかの場合では、サンプルには口腔スワブが含まれる。本明細書において開示される方法において使用される生物学的サンプルは、アッセイフォーマット、検出方法の性質、及びサンプルとして使用される組織、細胞、または抽出物に基づいて変動し得る。生物学的サンプルは、用いるアッセイに応じて異なる方法で処理することができる。例えば、任意のPDE3Bバリアント核酸分子を検出する場合、ゲノムDNAについて生物学的サンプルを単離または濃縮するように設計した予備処理を採用することができる。様々な技術を、この目的のために使用し得る。任意のPDE3BバリアントmRNA分子のレベルを検出する場合、様々な技術を使用してmRNA分子を含む生物学的サンプルを濃縮することができる。mRNA分子の存在もしくはレベル、または特定のバリアントゲノムDNA遺伝子座の存在を検出するために、様々な方法を使用することができる。
【0114】
いくつかの実施形態において、対象におけるPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子を検出することは、対象から得られた生物学的サンプルについて配列分析を実施して、生物学的サンプル中のPDE3Bゲノム核酸分子、及び/または生物学的サンプル中のPDE3B mRNA分子、及び/または生物学的サンプル中のmRNA分子から生成されるPDE3B cDNA分子が、機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすか、または機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすと予測される1つ以上のバリエーションを含むかどうかを決定することを含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、対象におけるPDE3Bで予測される機能喪失またはミスセンスバリアント核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはmRNA分子から生成されたcDNA分子等)の存在または非存在を検出する方法は、対象から得られた生物学的サンプルについてアッセイを実施することを含む。アッセイは、生物学的サンプル中の核酸分子が特定のヌクレオチド配列を含むかどうかを決定する。
【0116】
いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは、細胞または細胞溶解物を含む。そのような方法は、例えば、PDE3Bゲノム核酸分子またはmRNA分子を含む生物学的サンプルを対象から得ること、及びmRNAである場合、任意選択でmRNAをcDNAに逆転写することをさらに含み得る。そのようなアッセイは、例えば、特定のPDE3B核酸分子のこれらの位置の同一性を判定することを含むことができる。いくつかの実施形態において、方法は、インビトロの方法である。
【0117】
いくつかの実施形態において、決定ステップ、検出ステップ、または配列分析は、生物学的サンプル中のPDE3Bゲノム核酸分子、PDE3B mRNA分子、またはPDE3B cDNA分子のヌクレオチド配列の少なくとも一部分を配列決定することを含み、配列決定された部分は、機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こす、または機能喪失(部分的もしくは完全)を引き起こすと予測される1つ以上のバリエーションを含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、アッセイは、核酸分子の全体を配列決定することを含む。いくつかの実施形態において、PDE3Bゲノム核酸分子のみが分析される。いくつかの実施形態において、PDE3B mRNAのみが分析される。いくつかの実施形態において、PDE3B mRNAから得られたPDE3B cDNAのみが分析される。
【0119】
変異特異的ポリメラーゼ連鎖反応技術を使用して、突然変異(核酸配列中のSNP等)を検出することができる。鋳型とのミスマッチが存在するとDNAポリメラーゼは伸長しないため、変化特異的プライマーを使用することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、サンプル中の核酸分子はmRNAであり、mRNAは増幅ステップの前にcDNAへと逆転写される。いくつかの実施形態において、核酸分子は、対象から得られた細胞内に存在する。
【0121】
いくつかの実施形態において、アッセイは、生物学的サンプルを、ストリンジェントな条件下で、PDE3Bバリアントゲノム配列、バリアントmRNA配列、またはバリアントcDNA配列に特異的にハイブリダイズし、対応するPDE3B参照配列にはそうではない変異特異的プライマーまたは変異特異的プローブ等のプライマーまたはプローブと接触させることと、ハイブリダイゼーションが生じたかどうかを決定することと、を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、決定ステップ、検出ステップ、または配列分析は、a)PDE3Bポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも一部分を増幅することと、b)増幅された核酸分子を検出可能な標識で標識することと、c)標識された核酸分子を、変異特異的プローブを含む支持体と接触させることと、d)検出可能な標識を検出することと、を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、アッセイは、RNA配列決定(RNA-Seq)を含む。いくつかの実施形態において、アッセイは、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってmRNAをcDNAへと逆転写することも含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、方法は、標的ヌクレオチド配列に結合し、PDE3Bバリアントゲノム核酸分子、バリアントmRNA分子、もしくはバリアントcDNA分子を含むポリヌクレオチドを特異的に検出及び/または特定するのに十分なヌクレオチド長のプローブ及びプライマーを利用する。ハイブリダイゼーション条件または反応条件は、この結果を達成するために作業者が決定することができる。ヌクレオチド長は、本明細書において記載または例示される任意のアッセイを含めた選択した検出方法における使用のために十分な任意の長さであり得る。そのようなプローブ及びプライマーは、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で標的ヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズすることができる。プローブ及びプライマーは、標的ヌクレオチド配列内の連続したヌクレオチドの完全なヌクレオチド配列同一性を有し得るが、プローブは、標的ヌクレオチド配列とは異なり、かつ、標的ヌクレオチド配列を特異的に検出及び/または特定する能力を保持しているものを従来の方法で設計することができる。プローブ及びプライマーは、標的核酸分子のヌクレオチド配列と約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性または相補性を有することができる。
【0125】
例示的な核酸配列決定技術の例としては、鎖ターミネーター(サンガー)配列決定及びダイターミネーター配列決定が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法は、精製されたDNA、増幅されたDNA、及び固定された細胞調製物(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH))に対する、標識されたプライマーまたはプローブを使用することを含む、配列決定以外の核酸ハイブリダイゼーション法を包含する。いくつかの方法において、標的核酸分子は、検出の前にまたは検出と同時に増幅され得る。核酸増幅技術の用例として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換型増幅法(SDA)、及び核酸配列ベースの増幅法(NASBA)が挙げられるが、これらに限定されない。他の方法としては、リガーゼ連鎖反応、鎖置換型増幅法、及び好熱性SDA(tSDA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
ハイブリダイゼーション技法において、プローブまたはプライマーがその標的へ特異的にハイブリダイズするように、ストリンジェントな条件が用いられ得る。いくつかの実施形態において、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的配列に、他の非標的配列よりも検出可能に高い程度(バックグラウンドの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、またはそれ以上等、バックグラウンドの10倍超を含む)でハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態において、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他のヌクレオチド配列よりも検知可能に高い程度(少なくとも2倍)でハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態において、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他のヌクレオチド配列よりも検知可能に高い程度(少なくとも3倍)でハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態において、ストリンジェントな条件下のポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他のヌクレオチド配列よりも検知可能に高い程度(少なくとも4倍)でハイブリダイズするであろう。いくつかの実施形態において、ストリンジェント条件下でのポリヌクレオチドプライマーまたはプローブは、その標的ヌクレオチド配列に、他のヌクレオチド配列よりも検出可能に高い程度(バックグラウンドの10倍超)でハイブリダイズするであろう。ストリンジェントな条件は、配列によって決まり、環境によって異なることになる。
【0127】
DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件(例えば約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、続いて50℃での2×SSCの洗浄)は、既知であるか、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6中で見出され得る。典型的には、ハイブリダイゼーション及び検出のためのストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3で約1.5M未満のNaイオン、典型的には約0.01~1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば10~50ヌクレオチド等)について少なくとも約30℃及びより長プローブ(例えば50ヌクレオチド超等)について少なくとも約60℃である条件であるだろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミド等の不安定化剤の添加により実現してもよい。任意選択で、洗浄緩衝剤は、約0.1%~約1%のSDSを含み得る。ハイブリダイゼーションの継続時間は、概して約24時間未満、通常約4~約12時間である。洗浄時間の期間は、少なくとも平衡に達するのに十分な時間である。
【0128】
いくつかの実施形態において、そのような単離された核酸分子は、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約2000、少なくとも約3000、少なくとも約4000、もしくは少なくとも約5000ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、そのような単離された核酸分子は、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、もしくは少なくとも約25ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、少なくとも約18ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、約15ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、約10~約35、約10~約30、約10~約25、約12~約30、約12~約28、約12~約24、約15~約30、約15~約25、約18~約30、約18~約25、約18~約24、または約18~約22ヌクレオチドからなるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、約18~約30のヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、約15~約35ヌクレオチドを含むか、またはそれからなる。
【0129】
いくつかの実施形態において、そのような単離された核酸分子は、ストリンジェントな条件下でPDE3Bバリアント核酸分子(例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及び/またはcDNA分子)にハイブリダイズする。そのような核酸分子は、例えば、本明細書に記載されているまたは例示されているようなプローブ、プライマー、変異特異的プローブ、または変異特異的プライマーとして使用することができ、プライマー、プローブ、アンチセンスRNA、shRNA、及びsiRNAを含むが、これらに限定されず、それらの各々が本明細書の他の場所でさらに詳細に記載されており、本明細書に記載されている方法のうちのいずれかで使用することができる。
【0130】
いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、PDE3Bバリアントゲノム核酸分子、PDE3BバリアントmRNA分子、及び/またはPDE3BバリアントcDNA分子と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一である核酸分子の少なくとも約15個の連続ヌクレオチドにハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、約15~約100のヌクレオチド、もしくは約15~約35のヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、約15~約100のヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、約15~約35のヌクレオチドからなるか、またはそれを含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーは、DNAを含む。いくつかの実施形態において、変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーは、RNAを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるプローブ及びプライマー(変異特異的プローブ及び変異特異的プライマーを包含する)は、本明細書に開示される核酸分子のうちのいずれか、またはその相補物へ特異的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態において、プローブ及びプライマーは、で本明細書において開示される核酸分子のうちの任意のものへストリンジェントな条件下特異的にハイブリダイズする。
【0133】
いくつかの実施形態において、プライマー(変異特異的プライマーを包含する)は、第二世代配列決定またはハイスループット配列決定において使用され得る。いくつかの実例において、プライマー(変異特異的プライマーを包含する)は、修飾され得る。特に、プライマーは、例えば超並列シグネチャ配列決定(Massive Parallel Signature Sequencing、MPSS)、ポロニー配列決定(Polony sequencing)、及び454パイロシーケンシング(Pyrosequencing)の異なるステップで使用される、様々な修飾を含み得る。修飾プライマーはプロセスの複数のステップで使用され得、クローニングステップにおけるビオチン化プライマー、ならびにビーズローディングステップ及び検出ステップで使用される蛍光標識プライマーが挙げられる。ポロニー配列決定は、一般的に、DNAテンプレートの各分子の長さが約135bpであるペアエンドタグライブラリを使用して実施される。ビオチン化プライマーは、ビーズ負荷ステップ及びエマルジョンPCRにおいて使用される。蛍光標識された縮重ノナマーオリゴヌクレオチドは、検出ステップで使用される。アダプターは、ストレプトアビジンコートビーズ上へのDNAライブラリの固定化のために、5’-ビオチンタグを含有し得る。
【0134】
本明細書に記載のプローブ及びプライマーは、本明細書において開示されるPDE3Bバリアントゲノム核酸分子、PDE3BバリアントmRNA分子、及び/またはPDE3BバリアントcDNA分子のうちのいずれかにおけるヌクレオチドバリエーションを検出するために使用され得る。本明細書に記載のプライマーは、PDE3Bバリアントゲノム核酸分子、PDE3BバリアントmRNA分子、もしくはPDE3BバリアントcDNA分子、またはその断片を増幅するために使用され得る。
【0135】
本開示の文脈において、「特異的にハイブリダイズする」とは、プローブまたはプライマー(例えば、変異特異的プローブまたは変異特異的プライマー等)が、PDE3B参照ゲノム核酸分子、PDE3B参照mRNA分子、及び/またはPDE3B参照cDNA分子をコードする核酸配列にハイブリダイズしないことを意味する。
【0136】
いくつかの実施形態において、プローブ(例えば変異特異的プローブ等)は、標識を含む。いくつかの実施形態において、標識は、蛍光標識、放射標識、またはビオチンである。
【0137】
本開示は、本明細書において開示されるプローブのうちのいずれか1つ以上が結合される基質を含む支持体も提供する。固体支持体は、分子(本明細書に開示されているプローブのうちのいずれか等)が会合できる固体状態の基質または支持体である。固体支持体の形態は、アレイである。固体支持体の別の形態は、アレイ検出器である。アレイ検出器は、複数の種類のプローブがアレイ状、グリッド状またはその他の組織化されたパターンでカップリングしてある固体支持体である。固体状態の基質の形態は、標準的な96ウェルタイプのようなマイクロタイターディッシュである。いくつかの実施形態において、通常1ウェル当たり1つのアレイを含有するマルチウェルスライドグラスを用いることができる。
【0138】
PDE3B参照ゲノム核酸分子のヌクレオチド配列は、配列番号1(GRCh38/hg38ヒトゲノムアセンブリのchr11:14,643,804~14,872,044を包含するENSG00000152270.9)に示されている。
【0139】
PDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号2に示されている。別のPDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号3に示されている。別のPDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号4に示されている。PDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号5に示されている。別のPDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号6に示されている。別のPDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号7に示されている。PDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号8に示されている。別のPDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号9に示されている。別のPDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号10に示されている。別のPDE3B参照mRNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号11に示されている。
【0140】
PDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号12に示されている。別のPDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号13に示されている。別のPDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号14に示されている。PDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号15に示されている。別のPDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号16に示されている。別のPDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号17に示されている。別のPDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号18に示されている。別のPDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号19に示されている。PDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号20に示されている。別のPDE3B参照cDNA分子のヌクレオチド配列は、配列番号21に示されている。
【0141】
PDE3B参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号22に示されている。配列番号22を参照すると、PDE3B参照ポリペプチドは、1,112アミノ酸長である。PDE3B参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号23に示されている。配列番号23を参照すると、PDE3B参照ポリペプチドは、1,061アミノ酸長である。PDE3B参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号24に示されている。配列番号24を参照すると、PDE3B参照ポリペプチドは、1,190アミノ酸長である。PDE3B参照ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号25に示されている。配列番号25を参照すると、PDE3B参照ポリペプチドは、298アミノ酸長である。
【0142】
ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、任意の生物由来であり得る。例えば、ゲノム核酸分子、mRNA分子、及びcDNA分子は、ヒト、または別の生物(例えば、非ヒト哺乳動物、げっ歯類、マウス、もしくはラット)からのオーソログであり得る。集団内の遺伝子配列は、一塩基多型のような多型に起因して異なり得ることが理解される。本明細書で提供される実施例は、単なる例示的な配列である。他の配列もまた可能である。
【0143】
本明細書では、開示された核酸分子と相互作用することができる機能的ポリヌクレオチドも提供される。機能的ポリヌクレオチドの例としては、アンチセンス分子、アプタマー、リボザイム、三本鎖形成分子、及び外部ガイド配列が含まれるが、これらに限定されない。機能的ポリヌクレオチドは、標的分子が有する特定の活性のエフェクター、阻害剤、調節剤、及び刺激剤として機能することができ、または機能的ポリヌクレオチドは、任意の他の分子から独立した新規活性を有することができる。
【0144】
本明細書に開示される単離された核酸分子は、RNA、DNA、またはRNA及びDNAの両方を含み得る。単離された核酸分子を、ベクターまたは異種標識等の異種核酸配列に連結または融合することもできる。例えば、本明細書に開示される単離された核酸分子は、ベクター内部にあるか、または単離された核酸分子と異種核酸配列とを含む外因性ドナー配列であり得る。単離された核酸分子は、異種標識へ連結または融合もされ得る。標識は、直接検出可能である(例えば、フルオロフォア等)か、または間接的に検出可能である(例えば、ハプテン、酵素、またはフルオロフォアクエンチャー等)。そのような標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段により検出可能であり得る。かかる標識としては、例えば放射性同位体標識、色素、染料、クロモゲン、スピン標識、及び蛍光標識が挙げられる。標識はまた、例えば、化学発光物質、金属含有物質、またはシグナルの酵素依存性二次生成が生じる酵素であり得る。「標識」という用語はまた、コンジュゲートされた分子が、基質とともに続いて添加されたときに、検出可能なシグナルを生成するために使用されるように、コンジュゲートされた分子に選択的に結合することができる「タグ」またはハプテンを指し得る。例えば、ビオチンは、タグに結合するための西洋ワサビペルオキシデート(HRP)のアビジンまたはストレプトアビジンコンジュゲートとともにタグとして使用することができ、HRPの存在を検出するために、熱量測定基質(例えば、テトラメチルベンジジン(TMB)等)または蛍光発生基質を使用して検査することができる。精製を促進するためのタグとして使用することができる例示的な標識として、myc、HA、FLAGもしくは3×FLAG、6×Hisもしくはポリヒスチジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、エピトープタグ、または免疫グロブリンのFc部分が挙げられるが、これらに限定されない。多数の標識としては、例えば粒子、フルオロフォア、ハプテン、酵素、及びそれらの比色基質、蛍光発生基質、及び化学発光基質、ならびに他の標識が挙げられる。
【0145】
核酸分子内のヌクレオチド配列またはポリペプチド内のアミノ酸配列の特定のストレッチ間のパーセント同一性(またはパーセント相補性)は、BLASTプログラム(基本的な局所アラインメントサーチツール)及びPowerBLASTプログラム(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)またはGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for UNIX(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)を使用して、Smith and Watermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482-489)を使用するデフォルト設定を使用して、常套的に求めることができる。本明細書において、パーセント配列同一性について言及する場合、配列同一性の高いパーセンテージが低いものよりも好ましい。
【0146】
本明細書で使用される場合、「に対応する」という語句またはその文法的変形は、特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列または位置の番号付けの文脈で使用される場合、その特定のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列を参照配列(例えば、配列番号1等)と比較したときの指定された参照配列の番号付けを指す。言い換えれば、特定のポリマーの残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の番号または残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の位置は、その特定のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列の範囲内でのその残基の実際の位置番号によってではなく、参照配列を基準として指定される。例えば、特定のヌクレオチド配列は、ギャップを導入して2つの配列間の残基の一致を最適化することによって参照配列へアラインメントさせることができる。これらの場合では、ギャップは存在するが、特定のヌクレオチドまたはヌクレオチド配列における残基の番号付けは、それがアラインメントしている参照配列を基準として行われる。
【0147】
添付の配列表中でリストされるヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、標準的な文字略称をヌクレオチド塩基について使用し、3文字コードをアミノ酸について使用して示される。ヌクレオチド配列では、配列の5’端から3’端の方に(すなわち、各配列において左から右に)進むという標準的なしきたりに従っている。各々のヌクレオチド配列の1つの鎖のみが示されるが、提示された鎖に対する任意の参照によって、相補鎖が包含されることが理解される。アミノ酸配列は、配列のアミノ末端での開始からカルボキシ末端の方に(すなわち、各配列において左から右に)進む標準的な慣例に従う。
【0148】
本開示はまた、PDE3B参照であるか、あるいはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントmRNA分子、またはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントcDNA分子、を有する対象における肝疾患または2型糖尿病の治療において使用するための、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する、治療剤も提供する。本明細書に記載される肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤のうちのいずれも、これらの方法に使用することができる。PDE3B参照対象を治療するために、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の投与量は、標準投薬量よりも多い。上記のようにヘテロ接合性またはホモ接合性である対象を治療するために、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の投与量は、標準投薬量未満またはそれと同じである。
【0149】
本開示はまた、PDE3B参照であるか、あるいはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントmRNA分子、またはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントcDNA分子を有する対象における肝疾患または2型糖尿病を治療するための薬剤の調製において使用するための、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する、治療剤を提供する。本明細書に記載される肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤のうちのいずれも、これらの方法に使用することができる。PDE3B参照対象を治療するために、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の投与量は、標準投薬量よりも多い。上記のようにヘテロ接合性またはホモ接合性である対象を治療するために、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する治療剤の投与量は、標準投薬量未満またはそれと同じである。
【0150】
本開示はまた、PDE3B参照であるか、あるいはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントmRNA分子、またはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントcDNA分子、に対してヘテロ接合性である対象における肝疾患または2型糖尿病の治療において使用するための、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する、PDE3B阻害剤も提供する。本明細書に記載されるPDE3B阻害剤のうちのいずれも、これらの方法に使用することができる。
【0151】
本開示はまた、PDE3B参照であるか、あるいはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントゲノム核酸分子、PDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントmRNA分子、またはPDE3BポリペプチドをコードするPDE3Bで予測される機能喪失もしくはミスセンスバリアントcDNA分子、に対してヘテロ接合性である対象における肝疾患または2型糖尿病を治療するための薬剤の調製において使用するための、肝疾患または2型糖尿病を治療または阻害する、PDE3B阻害剤を提供する。本明細書に記載されるPDE3B阻害剤のうちのいずれも、これらの方法に使用することができる。
【0152】
上または下で引用されるすべての特許文書、ウェブサイト、他の出版物、アクセッション番号、及び同種のものは、あたかも各々の個別の項目が、参照によってそのように援用されることが具体的かつ個別に示されたかのように、同じ程度までそれらの全体がすべての目的のために参照によって援用される。異なるバージョンの配列が異なる時点でアクセッション番号に関連付けられている場合、本出願の有効出願日におけるアクセッション番号に関連付けられているバージョンを意味する。有効出願日とは、実際の出願日または優先出願の出願日のうちの早い方を意味し、該当する場合はアクセッション番号が参照される。同様に、異なるバージョンの刊行物、ウェブサイト等が異なる時点で公開される場合、特に明記しない限り、出願の有効出願日において最後に公開されたバージョンを意味する。本開示の任意の特色、ステップ、要素、実施形態、または態様は、別段具体的に指摘されない限り、他の特色、ステップ、要素、実施形態、または態様と組み合わせて使用され得る。本開示を、明確化及び理解を目的として、例示及び例としてある程度詳細に説明してきたが、特定の変更及び修正を添付の特許請求の範囲内で実施し得ることは明らかであろう。
【0153】
以下の実施例は、実施形態をより詳細に記載するために提供される。これらは、特許請求する実施形態を例示することを意図しており、限定することを意図していない。以下の実施例は、本明細書において記載される化合物、組成物、品物、デバイス及び/または方法が、どのように作製及び評価されるかについての開示及び記載を当業者に提供するものであり、純粋に例示的であることが意図され、任意の特許請求の範囲を限定することは意図されない。数値(例えば量、温度等等)に関して正確性を確実にする取り組みがなされているが、ある程度の誤差及び偏差が考慮され得る。別段に示されていない限り、部は、重量部であり、温度は、℃または周囲温度であり、圧力は、大気圧または大気圧近傍である。
【実施例
【0154】
実施例1:PDE3Bをコードする遺伝子の機能喪失は、低肝脂肪、ならびに肝損傷、肝疾患及び2型糖尿病の低リスクに関連している
PDE3Bにおける希少な非同義バリアントは、体脂肪分布と関連している(Emdin et al.,Nat.Commun.,2018,9,1613)。体脂肪の分布は、非アルコール性脂肪肝疾患の危険因子であるため、この遺伝子における希少な非同義性バリアントは、肝臓における脂肪の沈着及びその関連する疾患アウトカム、具体的には、2型糖尿病及び非アルコール性脂肪肝疾患に関連する可能性があると仮定された。この仮説を検証するために、PDE3Bにおける予測される機能喪失(pLOF)または予測される有害なミスセンスバリアントに関するこれらの健康形質との関連を、全エクソーム配列決定を受けた複数のコホートからの50万人以上の人々において推定した。
【0155】
表3は、PDE3Bにおける希少な(代替対立遺伝子頻度(AAF)<1%)pLOFバリアント(単独で、または予測される有害なミスセンスバリアントと組み合わせて)の負荷について、全体的な肥満とは独立した脂肪分布の尺度である、ボディマスインデックス調整ウエスト対ヒップ比(BMI調整WHR)との関連を示す。
【0156】
【表3】
【0157】
PDE3Bにおける希少なpLOFバリアントまたはpLOF+有害なミスセンスバリアントは、より低いBMI調整WHR、すなわちより好ましい体脂肪分布と強く関連していた。結果は、pLOFバリアント及び予測される有害なミスセンスバリアントが組み合わされて、脂肪分布により強く関連し、pLOFバリアント単独と比較して同様の影響サイズを有することを示し、これは、分析に含まれる予測される有害なミスセンスバリアントが機能喪失をもたらす可能性が高いことを示している。したがって、希少である予測される機能喪失バリアントと希少である有害なミスセンスバリアントとの組み合わせは、PDE3Bの機能の遺伝的喪失の結果を研究するための統計的能力を向上させる。
【0158】
次に、肝障害のバイオマーカーとして臨床現場で使用される肝臓酵素であるアラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase、ALT)によって測定されるイメージング及び肝損傷によって測定される肝脂肪含有量との関連を推定した。肝脂肪含有量は、肝臓の磁気共鳴画像診断(magnetic resonance imaging、MRI)由来プロトン密度脂肪画分(proton density fat fraction、PDFF)によって測定した。PDFFは、脂肪(トリグリセリド)由来の移動性プロトンの密度と移動性トリグリセリド及び移動性水由来のプロトンの全密度の比率として定義され、組織内の脂肪の濃度を反映する。循環ALTレベルは、炎症または細胞死に起因する損傷した細胞からの漏出を示す。PDE3Bにおける希少なpLOFバリアントまたはpLOF及び予測される有害なミスセンスバリアントの負荷は、より低いPDFF及びより低い循環ALTレベルと関連していることがわかった(表4)。
【0159】
【表4】
【0160】
これらの結果は、PDE3Bの機能喪失とヒトにおける肝脂肪沈着及び肝障害からの保護とを関連付ける最初の証拠となる。
さらに、複数のコホート研究のメタ分析において、PDE3B機能喪失バリアント及び予測される有害なミスセンスバリアントを保有する個体は、慢性肝疾患を発症するリスクが低いことがわかった(表5)。
【0161】
【表5】
【0162】
さらに、結果は、GHS研究における肥満手術患者における非アルコール性脂肪性肝炎または肝線維症のより低いリスクとの関連を示した(表7)。これらの結果は、PDE3Bの機能喪失とヒトにおける慢性肝疾患からの保護とを関連付ける最初の証拠となる。
【0163】
さらに、分析は、表6に示されるように、PDE3B機能喪失バリアント及び予測される有害なミスセンスバリアントのキャリアが、2型糖尿病のより低いリスクを有することを明らかにする。
【0164】
【表6】
【0165】
これらの結果は、PDE3Bの機能喪失とヒトにおける2型糖尿病からの保護とを関連付ける最初の証拠となる。
参加コホート
遺伝子関連研究は、United Kingdom Biobank(UKB)コホート(Sudlow et al.,PLoS Med,2015,12,e1001779)及びGeisinger Health System(GHS)MyCode Community Health InitiativeからのDiscoverEHRコホート(Carey et al.,Genet.Med.,2016,18,906-13)で実施した。UKBは、2006年~2010年に英国の22の検査センターを通じて募集した40歳~69歳の人々を対象とした集団ベースのコホート研究である。利用可能な全エクソーム配列決定及び表現型データを有するUKBからの430,000人を超えるヨーロッパ系参加者を含めた。GHS MyCode研究Community Health Initiativeは、2007年~2019年に募集したペンシルベニア州中部及び東部(米国)の患者の医療システムベースのコホートである。利用可能な全エクソーム配列決定及び表現型データを有するGHSからの130,000人を超えるヨーロッパ系参加者を含めた。PDE3Bとウエストヒップ比との関連を、UKB及びthe Mexico City Prospective Study(MCPS;Int.J.Epidemiol.,2006,35,243-9)において推定した。肝臓アウトカムとの関連はまた、Mount Sinai BioMe Biobankコホート(SINAI,Cell,2019,177,58-69)、University of Pennsylvania Penn Medicine BioBank(UPENN-PMBB;Park et al.,2020,doi:10.1038/s41436-019-0625-8)及び1991年から1996年の間に募集されたスウェーデンの集団ベースの有望な(prospective)観察コホートであるMalmo Diet and Cancer Study(MDCS)を含んだ(Berglund et al.,1993,doi:10.1111/j.1365-2796.1993.tb00647.x)。
【0166】
表現型の定義
ALTについての臨床検査室測定値は、GHSからの参加者の電子健康記録(electronic health record、EHR)から抽出した。2つ以上の測定値を有するすべての参加者について中央値を計算した。UKBでは、ALTを、研究のベースライン来院時にBeckman Coulter AU5800のIFCC(International Federation of Clinical Chemistry:国際臨床化学連盟)分析によって測定し、Hb1Acは、Bio-Rad VARIANT II Turboを使用するHPLCによって測定した。BMIは、重量(キログラム)を高さ(メートル)の2乗で割ることによって計算した。ウエスト対ヒップ比は、ウエスト周囲をヒップ周囲で割ることによって計算した。遺伝的関連分析の前に、連続表現型値を逆標準正規関数によって変換し、各祖先群内に適用し、男性及び女性に別々に適用した。
【0167】
疾病アウトカムは、EHR及び利用可能な場合には自己報告を使用して、国際疾病分類第9版及び第10版(International Classification of Diseases,Ninth and Tenth Revision)(ICD-9及びICD-10)に従って定義し、単一の変数に組み合わせた。2型糖尿病を有する個体を、前述のアルゴリズムを使用して特定し(Lotta et al.,JAMA,2018,doi:10.1001/jama.2018.19329)、慢性肝疾患を、表7に列挙される定義に従って定義した。非アルコール性肝疾患及び実質性肝疾患を有する個体は、UKB、GHS、SINAI、UPENN-PMBB及びMALMOで特定され、2型糖尿病を有する個体は、UKB及びGHSで特定された。
【0168】
【表7】
【0169】
GHS肥満手術コホートにおける肝臓組織病理学的表現型の定義
肝臓の楔状生検は、3,779人の個体の肥満手術において術中に得られた。生検は、いずれかの肝臓の退縮または胃の手術の前に、鎌状靭帯の左側10cmに一貫して得られた。生検をセクションに分け、一次セクションを肝臓組織学のために臨床病理学者に届け(10%中性緩衝ホルマリンで固定し、ルーチン組織学のためにヘマトキシリンとエオシンで染色し、線維症の評価のためにマッソンのトリクロムで染色した)、残りのセクションを研究バイオバンク内に保存した(RNAlater及び/または液体窒素で凍結)。肝臓組織学は、経験豊富な病理学者によって実施され、その後、NASH Clinical Research Networkスコアリングシステムを使用して、2人目の経験豊富な病理学者によって以下のように再検討された:脂肪症グレード0(67%)、小葉炎症グレード0(病巣なし)、グレード1(軽度、200×野当たり4病巣)、線維症ステージ0(なし)、ステージ1(正弦周囲または門脈周囲線維症)、ステージ2(正弦周囲及び門脈周囲線維症)、ステージ3(架橋線維症)、及びステージ4(肝硬変)。これらの組織学的診断は、以下の表現型を定義するために使用した:1)正常:脂肪症、NASH、または線維症の証拠がない、2)単純性脂肪肝:脂肪症(グレードに関係なく)で、NASHまたは線維症の証拠がないもの、3)NASH:小葉炎症または肝細胞バルーンの存在(グレードに関係なく)、または線維症の存在(病期に関係なく);4)線維症:線維症の存在(病期に関係なく)。
【0170】
遺伝子型データ
高カバレッジ全エクソーム配列決定を、前述のように(Science,2016,354:aaf6814、及びNature,2020;586,749-756)実施し、以下にまとめた。NimbleGenプローブ(VCRome、GHSコホートの一部に対して)またはIntegrated DNA Technologiesから入手可能なxGen設計の改変版(IDT、GHSの残り及び他のコホートに対して)を、エクソームの標的配列捕捉に使用した。多重化エクソームの捕捉及び配列決定を容易にするために、ライブラリ調製中に独自の6塩基対(bp)バーコード(VCRome)または10bpバーコード(IDT)を各DNA断片に添加した。等量のサンプルを、エクソーム捕捉前にプールした。Illumina v4 HiSeq 2500機器で(GHSコホートの一部に対して)、またはNovaSeq機器で(GHSの残り及び他のコホートに対して)、75bpのペアエンドリードを使用して配列決定を実施した。配列決定は、VCRomeサンプルの96%において、標的塩基の85%にわたる20倍以上のカバレッジ、及びIDTサンプルの99%において、標的塩基の90%にわたる20倍のカバレッジを提供するのに十分なカバレッジ深さ(すなわち、ゲノムの標的領域内の各ヌクレオチドをカバーする配列リードの数)を有した。データ処理ステップは、Illuminaソフトウェアを使用したサンプル脱多重化、バイナリアラインメント及びマッピングファイル(BAM)の生成を含むGRCh38ヒトゲノム参照配列へのアラインメント、BAMファイルの処理(例えば、重複リードのマーキング及び他のリードマッピング評価)を含む。バリアント呼び出しは、GLNexusシステム(DOI:10.1101/343970)を使用して実施した。バリアントマッピング及びアノテーションは、snpEffソフトウェアを使用してGRCh38ヒトゲノム参照配列及びEnsembl v85遺伝子定義に基づいた。次いで、アノテーション付きの開始及び停止を伴うタンパク質コード転写産物を伴うsnpEff予測を、各遺伝子について最も有害な機能影響クラスを選択することによって単一の機能影響予測に組み合わせた。これらのアノテーションの階層(最も有害性が高いものから最も有害性が低いものまで)は、フレームシフト、ストップゲイン、ストップロス、スプライスアクセプター、スプライスドナー、ストップロス、フレーム内インデル、ミスセンス、その他のアノテーションであった。予測されるLOF遺伝的バリアントは、a)フレームシフトを生じさせる挿入または欠失、b)早期終止コドンの導入または転写開始部位もしくは停止部位の喪失を生じさせる、挿入、欠失、または単一ヌクレオチドバリアント、及びc)ドナーまたはアクセプタースプライス部位におけるバリアントを含んでいた。SIFT(Adzhubei et al.,Nat.Methods,2010,7,248-9)及びPolyphen2_HVAR(Adzhubei et al.,Nat.Methods,2010,7,248-9)、LRT(Chun et al.,Genome Res.,2009,19,1553-61)、及びMutationTaster(Schwarz et al.,Nat.Methods,2010,7,575-6)を使用して有害性を予測したインシリコ予測アルゴリズムの数に従って、ミスセンスバリアントを機能影響の可能性について分類した。各遺伝子について、各バリアントの代替対立遺伝子頻度(AAF)及び機能的アノテーションは、これらの7つの総負荷曝露への包含を決定した:1)AAF<1%であるpLOFバリアント;2)AAF<1%である、5/5アルゴリズムによって有害であると予測されるpLOFまたはミスセンスバリアント。
【0171】
希少な機能喪失バリエーションの遺伝子負荷の関連分析
所与の遺伝子における希少な予測機能喪失またはミスセンスバリアントの負荷と表現型との関連は、REGENIE v1.0(doi:doi.org/10.1101/2020.06.19.162354)を使用してゲノム血縁マトリックスに近似する多遺伝子スコアのために調整された線形(量的形質の場合)またはファースバイアス補正ロジスティック(バイナリ形質の場合)回帰モデルを適合させることによって試験した。分析は、祖先によって層別化され、年齢、年齢、性別、性別毎年齢及び性別毎年齢の相互作用項、実験バッチ関連共変量、10個の一般的なバリアント由来の主成分、及び20個の希少なバリアント由来の主成分について調整した。各バリアント-表現型関連についてのコホートにわたる結果を、固定効果逆分散加重メタ分析を使用して組み合わせた。総負荷試験では、すべての個体は、(頻度及び機能アノテーションに基づいて上述したように)1つ以上の適格な希少なバリアントを有する場合はヘテロ接合体として標識され、ホモ接合体状態で任意の適格なバリアントを有する場合はホモ接合体として標識される。次いで、この「複合遺伝子型」を使用して、関連を試験する。
【0172】
本明細書に記載されるものに加えて、記載されている主題の様々な改変形態が、前述の説明から当業者には明らかとなろう。そのような修正はまた、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。本願で引用される各参考文献(学術誌記事、米国及び米国以外の特許、特許出願公報、国際特許出願公報、遺伝子バンクアクセッション番号等を含むが、これらに限定されない)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【配列表】
2024517190000001.app
【国際調査報告】