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特表2024-517209ダブルハイブリッドヒートポンプおよびシステム、並びに、使用及び動作の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ダブルハイブリッドヒートポンプおよびシステム、並びに、使用及び動作の方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 30/02 20060101AFI20240412BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240412BHJP
   F25B 41/26 20210101ALI20240412BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20240412BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20240412BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20240412BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20240412BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20240412BHJP
   F24D 3/18 20060101ALI20240412BHJP
   F24H 1/50 20220101ALI20240412BHJP
   F24D 5/12 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
F25B30/02 Z
F25B1/00 381H
F25B1/00 399Y
F25B41/26 A
F25B13/00 K
F25B1/00 381D
F25B1/00 383
F25B30/06 T
F24F3/00 A
F24H4/02 G
F24H1/18 G
F24D3/18
F24H1/50
F24D5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567126
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022072074
(87)【国際公開番号】W WO2022236261
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/183,615
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523412603
【氏名又は名称】デスマレー,マシュー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デスマレー,マシュー
【テーマコード(参考)】
3L070
3L071
3L092
3L122
【Fターム(参考)】
3L070AA02
3L070AA06
3L070BB14
3L070BC02
3L070BC22
3L070CC02
3L071AA01
3L071BC02
3L092BA12
3L092BA26
3L092BA30
3L092DA01
3L092DA03
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA62
3L122AB22
3L122AB41
3L122AC13
(57)【要約】
暖房モード及び冷房モードの両方での効率の向上、温水、及び他の利点を提供するダブルハイブリッドヒートポンプ、システム、及び動作方法。このシステムは、低圧の気相冷媒を高圧の気相冷媒に圧縮するための圧縮機と、水を加熱し、冷媒を高圧の液体冷媒に冷却する冷媒凝縮用熱交換器とを備え、高圧の液体冷媒は冷媒冷却用熱交換器に供給され、冷媒冷却用熱交換器では、残りの高圧の気相冷媒が凝縮され、高圧の液体冷媒が更に冷却される。高圧の冷却された液体冷媒は、膨張弁を通過して、冷却された液体の圧力を低下させ、低圧の冷却された液体冷媒又は低圧の冷却された二相冷媒を生成する。次いで、低圧の冷却された液体冷媒又は二相冷媒は、冷媒蒸発用熱交換器内で蒸発して低圧の蒸気冷媒を生成し、圧縮機に戻される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプシステムであって、
低圧蒸気冷媒入口及び高圧蒸気冷媒出口を有する圧縮機であって、前記圧縮機の前記入口から前記出口まで通過する低圧の蒸気冷媒を高圧の蒸気冷媒に圧縮するように構成された圧縮機と、
前記圧縮機の前記高圧蒸気冷媒出口に接続された入口と、出口とを有する冷媒凝縮用熱交換器であって、前記凝縮用熱交換器の前記入口から前記出口まで通過する高圧の蒸気冷媒を凝縮させ、前記冷媒からの熱を暖房用の水及び家庭内で使用する水のうちの少なくとも一方を加熱するために熱交換する冷媒凝縮用熱交換器と、
前記凝縮用熱交換器の出口に接続された入口と、出口とを有する冷媒冷却用熱交換器であって、高圧の蒸気冷媒を凝縮させ、前記冷却用熱交換器の前記入口から前記出口に向かって通過する高圧の液体冷媒を更に冷却する冷媒冷却用熱交換器と、
前記冷却用熱交換器出口の前記出口に接続された入口と、出口とを有する膨張弁であって、前記膨張弁を通過する高圧の液体冷媒に圧力降下を生じさせて、低圧の液体冷媒又は二相気液混合冷媒の一方を出力するように構成された膨張弁と、
前記膨張弁出口に接続された入口と、前記圧縮機入口に接続された出口とを有する冷媒蒸発用熱交換器であって、前記蒸発用熱交換器の前記入口から前記出口まで通過する低圧の液体冷媒を少なくとも蒸発させて前記圧縮機に低圧の蒸気冷媒を供給するように構成された冷媒蒸発熱交換器と、
ヒートポンプが冷房モードにある時の前記蒸発用熱交換器からの冷風、及び、ヒートポンプが暖房モードにある時の前記冷却用熱交換器からの温風のうちの一方を、冷房及び暖房のための出口に供給するための少なくとも1つの送風機と、
を備える、ヒートポンプシステム。
【請求項2】
構造体のための冷暖房システムであって、当該冷暖房システムはヒートポンプを備え、
前記ヒートポンプは、
低圧の蒸気冷媒を高圧の蒸気冷媒に圧縮する圧縮機と、
冷媒凝縮用熱交換器であって、前記凝縮用熱交換器は、前記高圧の蒸気冷媒から熱交換された熱を利用して水を加熱して、高圧の液体冷媒及び高圧の二相気液体冷媒の一方を出力し、貯水タンクからの水が、前記構造体における暖房用の温水及び家庭内で使用する温水のうちの少なくとも一方を提供する、冷媒凝縮用熱交換器と、
高圧の液体冷媒を更に冷却し、前記凝縮用熱交換器から受け取った高圧の蒸気冷媒を凝縮させる冷媒冷却用熱交換器と、
前記冷却用熱交換器に接続され、前記高圧の液体冷媒の圧力降下を生じさせて低圧の液体冷媒及び低圧の二相気液体冷媒のうちの一方を出力する膨張弁と、
前記膨張弁に接続され、前記低圧の液体冷媒を蒸発させて前記圧縮機に低圧の蒸気冷媒を供給する冷媒蒸発用熱交換器と、
暖房モード及び冷房モードを有する第1の反転要素であって、
前記暖房モードでは、前記第1の反転要素は、前記凝縮用熱交換器からの冷媒流を、前記冷媒冷却用熱交換器として機能する冷媒-空気熱交換器へと導き、前記冷媒蒸発用熱交換器は、冷媒-ソース熱交換器であり、
前記冷房モードでは、前記第1の反転要素は、前記凝縮用熱交換器からの冷媒流を、前記冷媒冷却用熱交換器として機能する前記冷媒-ソース熱交換器へと導き、前記冷媒蒸発用熱交換器は、前記冷媒-空気熱交換器である、第1の反転要素と、
前記冷媒-ソース熱交換器を通る冷媒流を反転させるように構成された第2の反転要素と、
前記冷媒-空気熱交換器からの冷風および前記冷媒-空気熱交換器からの温風のうちの一方を前記構造体に供給するために、前記冷媒-空気熱交換器に結合された少なくとも1つの送風機と、
を含んでなる、ことを特徴とする冷暖房システム。
【請求項3】
温風又は冷風と温水とを供給する方法であって、
圧縮機によって、低圧の蒸気冷媒を高圧の蒸気冷媒に圧縮することと、
冷媒凝縮用熱交換器によって、前記高圧の蒸気冷媒の少なくとも一部を凝縮させて、前記冷媒から暖房用の水及び家庭内で使用する水のうちの少なくとも一方に熱を伝達し、高圧の液相冷媒を生成することと、
冷媒冷却用熱交換器を介して、前記高圧の液体冷媒を冷却することと、
膨張弁を介して、前記冷却された高圧の液体冷媒を膨張させて、冷却された低圧の液体冷媒を生成することと、
冷媒蒸発用熱交換器を介して、前記冷却された低圧の液体冷媒を蒸発させて、前記低圧の蒸気冷媒を前記圧縮機に供給することと、
少なくとも1つの送風機を介して空気を循環させて、前記蒸発用熱交換器からの冷風および前記冷却用熱交換器からの温風のうちの一方を冷房及び暖房のための出口へと供給することと、
を含む、方法。
【請求項4】
前記凝縮用熱交換器で加熱された水は、貯水タンクから循環される、請求項2又は3に記載のシステム又は方法。
【請求項5】
前記貯水タンク内の水は、家庭内で使用する水の供給源への熱及び構造体の暖房のための熱の少なくとも一方を供給する、請求項4に記載のシステム又は方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの送風機は、空気の流れ及び熱の伝達を制御するように調整可能である、請求項1、2又は3に記載のシステム又は方法。
【請求項7】
前記冷媒流を暖房モードと冷房モードとの間で反転させるように構成された第1の反転要素を更に備え、
前記暖房モードでは、前記冷却用熱交換器は冷媒-空気熱交換器であり、前記冷媒蒸発用熱交換器は冷媒-ソース熱交換器であり、
前記冷房モードでは、前記冷却用熱交換器は前記冷媒-ソース熱交換器であり、前記冷媒蒸発用熱交換器は前記冷媒-空気熱交換器である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記冷媒-ソース熱交換器を通る冷媒流を反転させるように構成された第2の反転要素を更に備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記冷媒-ソース熱交換器は、地中源熱交換器及び空気源熱交換器のうちの一方である、請求項7又は14に記載のシステム。
【請求項10】
前記冷媒-ソース熱交換器は、直接冷媒-ソース熱交換器及び間接冷媒-ソース熱交換器のうちの一方である、請求項7又は14に記載のシステム。
【請求項11】
前記冷媒凝縮用熱交換器及び前記膨張弁のうちの少なくとも一方から出る冷媒は二相混合物である、請求項1、2又は3に記載のシステム又は方法。
【請求項12】
前記冷媒冷却用熱交換器は、前記冷媒凝縮用熱交換器内の冷媒と熱交換を行う水よりも低温の熱交換媒体と熱交換を行う、請求項2又は3に記載のシステム又は方法。
【請求項13】
システムが、住宅用冷暖房システム、商業用冷暖房システム、及び工業用冷暖房システムのうちの1つの一部であるか、又は、方法が、住宅用冷暖房システム、商業用冷暖房システム、及び工業用冷暖房システムのうちの1つにおいて使用される、請求項1、2、又は3に記載のシステム又は方法。
【請求項14】
暖房モード及び冷房モードを有する第1の反転要素であって、
前記暖房モードでは、前記第1の反転要素は、前記凝縮用熱交換器からの冷媒流を、前記冷媒冷却用熱交換器として機能する冷媒-空気熱交換器へと導き、前記冷媒蒸発用熱交換器は、冷媒-ソース熱交換器であり、
前記冷房モードでは、前記第1の反転要素は、前記凝縮用熱交換器からの冷媒流を、前記冷媒冷却用熱交換器として機能する前記冷媒-ソース熱交換器へと導き、前記冷媒蒸発用熱交換器は、前記冷媒-空気熱交換器である、第1の反転要素と、
前記冷媒-ソース熱交換器を通る冷媒流を反転させるように構成された第2の反転要素と、
を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の反転要素は、前記冷媒-ソース熱交換器を通る冷媒の逆流を生成するように構成される、請求項7又は14に記載のシステム又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載:該当なし
[関連出願の相互参照]
本出願は、その内容全体が参照により組み込まれる、2021年5月3日出願の米国仮特許出願第63183615号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、ヒートポンプに関する。より具体的には、本発明は、暖房及び家庭用給水のための温水及び強制空気システム、並びに冷房システムと組み合わせて使用することができるハイブリッドヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
住宅用、商業用、及び工業用ヒートポンプシステムは、高効率であり得、効率の劣る冷暖房システムと交換するために使用され得るため、その市場が世界的に成長している。ヒートポンプは、主に、強制温風暖房システムを有する新築住宅又は既存の住宅向けに浸透してきた。現在のところ、住宅の温水暖房方式への改修は、平均的な住宅所有者にとって非常に高額である。これらの住宅の改修は、例えば以下を含むいくつかの高額な選択肢に限定される。
1.全てのラジエータ又はベースボードを、低い加熱供給温度(110~120度の間)で動作可能なより大きなラジエータ又はパネルラジエータ又はベースボードと交換すること、
2.温水システムを強制温風システムに交換すること、
3.2つのヒートポンプを使用して温風と水を同時に供給すること、又は
4.既存の暖房システムからの熱出力を補うために、いくつかの温水循環式エアハンドラ及びダクトを追加すること。
【0004】
これらの選択肢のコストは、70,000ドル~100,000ドルであり、これは一般的な住宅所有者にとってはあまりにも高額である。更に、これらの改修の複雑さのレベルは、これらの作業を設置業者にとっても望ましくないものにする可能性がある。商業市場及び工業市場でのヒートポンプシステムの浸透は、少なくとも部分的には、冷水の必要性などのこれらのシステムの更なる複雑さ及び要件のために、住宅市場と比較して遅れている。
したがって、住宅用、商業用、及び工業用の建物のための既存の強制空気暖房システム及び強制水暖房システムの両方のための新規設置用途及び改修用途に使用可能な、より低コストかつより高性能のヒートポンプ、システム、及び方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】(国際調査報告を参照)
【発明の概要】
【0006】
本発明は、強制空気暖房システム又は温水暖房システムを有する建物のための新規設置及び改修用途で使用することができるダブルハイブリッドヒートポンプを提供することによって、上記の必要性に対処する。
【0007】
ダブルハイブリッドヒートポンプは、低圧の気相冷媒を高圧の気相冷媒に圧縮する圧縮機と、高圧の冷媒からの熱を利用して温水を生成して貯留する冷媒-水凝縮用熱交換器とを備える。次いで、凝縮した冷媒は、凝縮用熱交換器で熱交換されるよりも低温の流体と熱交換を行う冷媒冷却用熱交換器に送られ、高圧の液体冷媒は更に冷却される。高圧の冷却された液体冷媒は、膨張弁を通過して、冷却された液体の圧力を低下させる。次いで、低圧の冷却された液体冷媒又は液体/気体の二相混合冷媒は、冷媒蒸発用熱交換器に供給されて、低圧の冷媒が圧縮機に戻される前に低圧の冷媒を蒸発させる。
【0008】
様々な実施形態において、凝縮用熱交換器によって加熱された水は、1)貯蔵用温水又は家庭用温水として使用するための温水タンク、及び、2)様々な用途に役立つことができる温水循環式暖房ループの一方又は両方に供給される。例えば、ボイラを備えた温水暖房システムにおいて、暖房モードでは、ダブルハイブリッドヒートポンプは、暖房用ボイラの代わりに、家庭用温水又は温水循環用温水のいずれかとして使用するための温水を作ることができ、また、暖房のために冷媒-空気熱交換器内部から温風を供給することができる。一方、冷房モードでは、ダブルハイブリッドヒートポンプは、家庭用温水のための温水を提供し、空調のための冷風を提供することができる。冷房モードにある間、第1の凝縮器は、圧縮機によって排出された熱を最初に吸収し、残りの熱はシステムの外部に排出される。冷房モードでは、条件が許せば、システムは有用な温水を生成するために凝縮を優先し、その後、冷媒が熱膨張弁に到達する前に冷媒をさらに過冷却するために好ましい温度差を使用することができ、システムの正味効率を大幅に増加させる。
【0009】
ダブルハイブリッドヒートポンプは、多くの外部構成要素、複雑な制御装置、及び既存の温水暖房システムから地中源ヒートポンプ又は水源ヒートポンプへと家を改修するのに必要な多大な労力を排除するために使用することができる。ダブルハイブリッドヒートポンプは最小限の訓練で設置することができ、設置業者にとってのリスクを限定する内蔵機能を有する。例えば、温水暖房システムでは、本発明を使用して、家庭用温水予熱タンク、1つのヒートポンプ、1つの流れ中心、1つのHDPEマニホールド、1つのサーキュレータ、家庭用温水配管、温水循環ファンコイル、及び余分なゾーン制御装置を排除することができ、実質的な設置及び運用上の節約がもたらされる。
【0010】
したがって、本開示は、コスト及び性能が改善されたHVACシステムの継続的な必要性に対処する。
【0011】
添付の図面は、本発明の様々な態様の例示的な例示を目的として含まれており、本発明を限定する目的で含まれていない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】ダブルハイブリッドヒートポンプの例示的な概略的実施形態を示す。
図1B】ダブルハイブリッドヒートポンプの例示的な概略的実施形態を示す。
図2A】ダブルハイブリッドヒートポンプの例示的な概略的実施形態を示す。
図2B】ダブルハイブリッドヒートポンプの例示的な概略的実施形態を示す。
【0013】
図3A図3A及び3Bはそれぞれ、従来技術及び本発明の例示的な冷凍加熱サイクル及び冷却サイクルの圧力対エンタルピーを示す。
図3B図3A及び3Bはそれぞれ、従来技術及び本発明の例示的な冷凍加熱サイクル及び冷却サイクルの圧力対エンタルピーを示す。
【0014】
図4A】DHHPの例示的な実施形態を、見やすくするために冷媒部分と水部分とを分けて示す。
図4B】DHHPの例示的な実施形態を、見やすくするために冷媒部分と水部分とを分けて示す。
図4C】DHHPの例示的な実施形態を、見やすくするために冷媒部分と水部分とを分けて示す。
図4D】DHHPの例示的な実施形態を、見やすくするために冷媒部分と水部分とを分けて示す。
【0015】
図5】従来技術のシステム及び方法を用いた例示的な地中熱利用改修を示す。
【0016】
図6】本発明を用いた例示的な地中熱利用改修を示す。
【0017】
図7A】本発明の従来技術のシステム及び方法を使用した例示的な地中熱利用改修を示す。
図7B】本発明の従来技術のシステム及び方法を使用した例示的な地中熱利用改修を示す。
図7C】本発明の従来技術のシステム及び方法を使用した例示的な地中熱利用改修を示す。
【0018】
図8】例示的な商業用エアハンドラを示す。
【0019】
図9】ダブルハイブリッドヒートポンプをどのようにして例示的な商業用エアハンドラへと改修するのかの例示的な実施形態を示す。
【0020】
図10】ダブルハイブリッドヒートポンプをどのようにして商業用空気処理ユニットとして構築するのかの例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面及び詳細な説明において、同じ又は類似の参照番号は、同じ又は類似の要素を特定することができる。特定の図の実施形態に関して説明された実装形態、特徴などは、明示的に述べられていない限り、又は他の方法で不可能でない限り、他の図の他の実施形態に関して実装されてもよいことが理解されよう。
【0022】
システム100、ダブルハイブリッドヒートポンプ50、並びに、本発明の使用、動作及び制御の方法は、構造体200内の様々な暖房及び給水の解決策に使用することができる。
【0023】
図1A図2Bは、ダブルハイブリッドヒートポンプ50の例示的な概略的実施形態を示す。圧縮機1は、低圧の気相冷媒を入口で受け取った後、高圧の気相冷媒に圧縮し、高圧の気相冷媒は出口を通過し、接続部2を介して冷媒凝縮用熱交換器3への入口に供給される。冷媒は、凝縮用熱交換器3を通過し、用途に応じて水又は他の場所で使用され得る別の流体であり得る第1の冷却流体によって冷却される。様々な実施形態において、第1の冷却流体は、高圧の気相冷媒から熱を除去するために、33、34、37、及び38からの接続部を介して、タンク36から凝縮用熱交換器3を通り、貯水タンク循環ポンプ35を使用して循環させることができる。高圧の気相冷媒は、凝縮用熱交換器3への出口で完全に又は部分的に液体に凝縮してもよいことが理解されよう。冷媒が部分的に凝縮する場合、二相冷媒混合物が、冷媒凝縮用熱交換器3を出て、本明細書で説明するように冷却用熱交換器で完全に凝縮されて過冷却される。
【0024】
凝縮した冷媒は、凝縮用熱交換器3の出口から接続部4を介して入口として機能するポート5を介して反転要素15に供給される。本明細書で使用される「ポート」という単語は、ハードウェア及び/又はソフトウェアへのアクセスポイントを記述してもよいことが当業者には理解されよう。例えば、ポートは、流体の流れ、電流の流れなどの方向に応じて、装置への入口もしくは入口点、又は装置からの出口もしくは出口点として機能することができる。同様に、接続は、ハードウェア及び/又はソフトウェア間の直接的又は間接的な物理的接続又は論理的接続であってもよい。
【0025】
図1A及び図2Aに示すような暖房モードでは、反転要素15は、凝縮された冷媒を、接続部7を介し、入口として機能するポート10を介して、冷媒-第2の流体熱交換器11に送るように構成され、熱交換器11は、冷媒冷却用熱交換器として機能し、冷媒から熱を除去するために、第2の冷却流体、例えば空気を使用して、完全に又は部分的に凝縮された液体を更に冷却する。第2の冷却流体は、構造体200を暖房するための温風を供給する、又は排出されるなど、他の用途に使用されてもよい。
【0026】
第2の冷却流体、例えば空気の温度を第1の冷却流体、例えば水の温度よりも低く維持することにより、冷媒を第1の冷却流体のみによって達成可能であるよりも過冷却することができ、従来技術と比較してシステム50からより高い効率を得ることができることが当業者には理解されよう。
【0027】
熱交換器11は、通常、構造体200の内部に配置される。様々な実施形態において、圧縮機1、凝縮用熱交換器-貯水タンク36、及び熱交換器11は、設置及びメンテナンスを容易にするために近接して配置することができる同じ物理ユニット又は複数のユニットに収容することができる。本発明で使用される熱交換器及び他の装置は、当業者によって単一のユニットとして、又は別々に動作させることができる1つ以上の段を含むことができることが更に理解されよう。
【0028】
第2の流体として空気を使用する様々な実施形態では、熱交換器11内で伝達される熱の量を制御するように制御され得る熱交換器11に近接して、1つ以上の送風機12を設けることができる。送風機12は、温風及び冷風をそれぞれ暖房モード及び冷房モードで構造体200内に分配できるようにするために、構造体200内のダクトに接続されてもよい。様々な制御アルゴリズムを使用して、空気の流量、冷媒の温度、及び冷媒の更なる冷却によって生じる二次的な影響のバランスをとることによって、送風機12によって抽出される熱の量を人間にとって快適となるように制御することができる。ポート10を介して熱交換器11に入る凝縮された液体を、戻り空気の比較的低い温度を使用して過冷却することにより、より多くの熱を冷媒から抽出することができ、全体的な効率を高めることができる。したがって、より低温の冷媒は、システムを通過する冷媒ポンド当たりより多くの熱を熱交換器27で吸収することができる。
【0029】
図1A及び図2Aに示すような暖房モードでは、高圧の冷却された冷媒は、出口として機能するポート13を介して冷却用熱交換器11を出て、膨張弁17に供給される。可逆フィルタ乾燥機14が、冷媒-空気熱交換器と膨張弁17との間に配置されてもよく、又は冷媒からデブリを除去するためにシステム50の他の場所に配置されてもよい。膨張弁17は、高圧の冷却された冷媒に圧力降下を付与し、必要に応じて低圧の冷却された液体状態又は二相混合状態の冷媒を出力する。膨張弁17は、システム50の一実施形態において暖房モードと冷房モードとで必要とされる冷媒の量が異なる場合に冷媒を貯留するために貯留タンクに接続されてもよい。膨張弁17という用語が本明細書で使用されているが、膨張弁という用語は、システム50内に圧力降下を誘発するように設計された他のタイプの膨張を含むことができることが理解されよう。
【0030】
図1Aの実施形態では、冷媒は、ポート20を介して貯留タンクから出て、ポート21で反転要素23に入る。暖房モードでは、冷媒は、反転要素23によって出口ポート24に導かれ、暖房モードでは冷媒の蒸発用熱交換器として機能する冷媒-ソース熱交換器27に移動する。
【0031】
熱交換器27は、構造体200の外側に配置される場合がある。熱交換器27は、当技術分野で知られているように、気体、固体、又は液体を含む様々な熱交換器媒体を使用する様々な熱交換器設計で具現化することができる。例えば、熱交換器27は、熱が固体の土壌及び/又は井戸内の水との間で交換される地中熱利用熱交換器、又は冷媒-空気熱交換器であってもよい。
【0032】
低圧の蒸発した冷媒は、それぞれ接続部26及び25を介して熱交換器27に出入りし、反転要素23に移動する。暖房モードでは、低圧の蒸発した冷媒は、それぞれポート22及び28を介して反転要素23に出入りする。当技術分野で知られているように、いくつかの反転要素23、例えば弁は、出口よりも小さい入口を備え、適切な反転要素は、ポート28の両端での圧力降下を小さくすることが可能であるように選択されなければならない。例えば、圧縮機に7/8インチの吸入口を使用する3トンの圧縮機は、ポート28に少なくとも5/8インチの入口を有する反転要素によって最もよく機能することができるが、圧力を更に低減し効率を高めるために、7/8インチの入口を有するより大きな反転要素を使用することができる。
【0033】
低圧の蒸発した冷媒は、ポート28を出て、反転要素15のポート8に移動する。暖房モードでは、低圧の蒸発した冷媒は、ポート9を介して反転要素15を出て、接続部29を介して圧縮機1に戻され、サイクルを完了して繰り返す。
【0034】
図1A及び図1Bの実施形態で使用される反転要素23は、暖房及び冷房の両方のために、熱交換器27を逆流構成又は並流構成のいずれかで動作させることを可能にする。当業者に知られているように、熱交換器27が、ポンプ30によってポート32及び31を介して熱交換器27を通って圧送される加熱交換流体を使用するように構成されている場合、流れ構成はシステム50の性能を大幅に変化させることができる。冷媒熱交換器27がソース/シンク熱交換器である場合、すなわち、熱交換媒体が熱交換器のタイムスケールで一定の温度として扱うことができるプレナム(土壌、大量の空気、水又は他の流体)である場合、流れ方向は熱交換器27の効率に影響を与えないことも理解されよう。
【0035】
冷房モードでは、図1B及び図2Bに示すように、反転要素15は、高圧の液体冷媒を凝縮用熱交換器3から冷媒-ソース熱交換器27に、接続部5を介してポート8に送るように、また図1A及び図1Bの実施形態では、反転要素23を介してポート28に送るように設定される。反転要素23はまた、ポート24を通って熱交換器27に高圧の冷媒を送るようにシフトされる。冷房モードでは、冷媒-ソース熱交換器27は、液体冷媒を更に冷却し、冷却された液体冷媒を接続部25を介して出力する冷媒冷却用熱交換器として機能する。
【0036】
暖房モードの場合と同様に、熱交換器27からの熱抽出量を調整するために、制御アルゴリズムが通常使用される。熱交換器27が熱交換器3よりも低い温度を有する場合、膨張弁17に入る冷媒をかなりの程度まで過冷却することが可能であり、このため、熱交換器3のみを使用する場合と比較して蒸発用熱交換器11の冷却能力が向上する。より一般的に言えば、冷媒冷却用熱交換器が、冷媒凝縮用熱交換器内の冷媒と熱交換を行う水よりも低温の熱交換媒体との熱交換に使用される場合、システム100の全体的な効率を改善することができる。
【0037】
冷房モードでは、ソース/シンク熱交換器へのポンプ30の速度を適切に調整することにより、システム50は、熱交換器3内の高圧の冷媒を凝縮させ、次いでこの液体を熱交換器27で更に過冷却することができる。過冷却の量は、熱交換器3及び27上の相互作用する流体の相対温度、並びに熱交換器のサイズ及び設計に依存する。完全に凝縮されて過冷却された冷媒は、熱交換器11からより多くの熱を抽出することができ、冷房モードの効率を改善することができる。
【0038】
図1Bの実施形態では、冷媒は、ポート22及びポート21を介して反転要素23を通って戻る。過剰な冷媒は、存在する場合にはポート20で貯留タンク19に収集され、ポート18を介して循環ループに再び入ることができる。循環する高圧の過冷却された液体冷媒は、膨張弁17を通過し、これにより、冷媒に圧力降下が付与され、低圧の冷却された液体冷媒が得られる。
【0039】
低圧の冷却された液体冷媒は、ポート13を介して、蒸発用熱交換器として機能する熱交換器11に供給される。冷媒は、熱交換器11内で部分的に又は完全に蒸発し、ポート10を介して出る。様々な実施形態において、送風機12は、ダクトを介して構造体200全体にわたって熱交換器11からの冷風を循環させる。しかしながら、所望の効率及び/又は冷媒から伝達されるエネルギーの使用などの様々な要因に応じて、他の熱交換媒体を熱交換器11に使用することができる。
【0040】
冷房モードでは、ポート9を介して熱交換器11から出た低圧の蒸発した冷媒は、ポート7及び9を介して反転要素15を通って圧縮機1に戻され、サイクルを完了して繰り返す。
【0041】
図1A図2Bの実施形態は、暖房モードでは、暖房用及び家庭用温水として使用するための温水と暖房用の温風との双方を同時に供給するために使用され、冷房モードでは、家庭内温水として使用するための温水と冷風との両方を同時に供給するために使用され得る。暖房及び冷房を同時に必要とする除湿を伴う建物などの用途では、温水及び家庭用温水と同時に、ソースループからの冷却水から冷風を生成することができる。両方のモードで使用するための温水は、タンク36を介して供給されてもよい。家庭用温水は、ポート42及び43を介して、タンク36内の、しばしば間接熱交換器と呼ばれる水-水熱交換器41を介して供給されてもよい。
【0042】
温水の生成は、効果的にバイパス又は低減されてもよく、ヒートポンプシステム50は、サーキュレータ35から熱交換器3への流れを低減することによって温風又は冷風を供給するためにのみ使用されてもよいことが理解されよう。このモードでは、熱交換器11は、暖房モードでは凝縮用熱交換器として機能し、冷房モードでは蒸発用熱交換器として機能する。逆に、熱交換器27は、暖房モードでは蒸発用熱交換器として機能し、冷房モードでは凝縮用熱交換器として機能する。
【0043】
同様に、構造体200への強制的な温風又は冷風の分配は、温水の生成のみが望まれる場合には、低減、停止、又はバイパスされてもよい。様々な実施形態では、送風機12は、図1A図2Bの構成では減速されるか又は動作しなくてもよく、これにより、熱交換器11における熱伝達及びダクトを通る空気の流れが減少する。あるいは、熱交換器11は、バイパス弁(図示せず)を使用してバイパスされてもよい。
【0044】
図1A図2Bの実施形態は、ダブルハイブリッドヒートポンプを従来技術のユニットよりも効率的かつ容易に設置可能にするいくつかの要素を含む。例えば、圧縮機1によって導入された熱は、熱交換器3又はタンク36に近接して設置されたポンプを有し得る凝縮用熱交換器3を介して抽出することができる。熱交換器3は、様々な動作シナリオを達成するようなサイズとすることができる。例えば、様々な実施形態では、熱交換器3は、熱伝達性能が熱交換器の寿命にわたって変化する傾向があることから、流入する流体の温度に非常に近い圧力及び温度で冷媒が100%液体になるまで冷媒から熱を伝達するようなサイズにすることができる。例えば、熱交換器3は、ポート34で熱交換器を出る水の温度及びポート2で熱交換器3に入る冷媒の温度が全負荷条件下で互いに数度、例えば3度以内になるように、小さなアプローチ温度を有するように設計されてもよい。
【0045】
更に、送風機速度、したがって冷媒-空気熱交換器11内で伝達される熱の量は、特定の最終冷媒温度を目標とするようにフィードバックループに基づいて調整することができる。冷媒からの熱の多くは凝縮用熱交換器3によって既に除去されているので、送風機12は、居住者にとって不快であり得る大量の空気を建物内に吹き出さないように、より低速で動作することができる。送風機12は、流入空気温度より高い所定の温度まで冷媒を冷却するように設定されてもよい。例えば、流入空気温度が60度であり、冷媒飽和温度が120度であり、所定の設定点が流入空気温度よりも15度高い場合、送風機12は、ポート13での流出冷媒温度を75(60+15)度に設定するように調整し、排出飽和温度から45度の過冷却をもたらす。
【0046】
過冷却用熱交換器(暖房時は熱交換器11、冷房時は熱交換器27)を使用する効果は大きい。追加の過冷却は、蒸発器により大きな負荷をかけることによって、冷凍サイクルの全体的な効率を改善する。更に、過冷却が過冷却用熱交換器によって行われるため、凝縮用熱交換器に流入する冷媒の圧力及び温度を低くすることができ、圧縮機によって行われる仕事を低減することができる。
【0047】
蒸発器においても同様の効果が生じる。高圧の冷媒が冷媒冷却用熱交換器内のより冷たい流体によって過冷却されると、冷媒は、より少ない残留熱で膨張装置を通過する。その結果、膨張装置は、絞りが少なくなり、冷媒圧力が上昇することを可能にし、効率を高め、圧縮機動力入力を減少させる。
【0048】
実験的試験から収集された性能データは、30度の追加の過冷却が、蒸発用熱交換器27による熱抽出を21~30%改善することを示している。加えて、この性能の向上はまた、圧縮機の電力消費を3%削減した。
【0049】
貯水タンク36を含めることにより、配置シナリオに応じて、従来技術のシステムと比較していくつかの利点を提供することができる。例えば、タンク36を含むダブルハイブリッドヒートポンプシステム50は、
1.設置業者が別のバッファタンクを寸法決めして購入する必要性を排除することができ、したがって、事業のコスト及び複雑さが低減される。
2.ヒートポンプ温水凝縮器と建物負荷ポンプとの間で異なる流量で動作することができる。可変速度圧縮機を使用しない従来技術のヒートポンプの製造業者推奨の最小流量は、典型的には毎分3ガロン/トンの範囲内である。5トンのシステムは、最低15ガロン/分がシステムを通って流れることを必要とするため、この流量は多くの建物にとって困難であり得る。この流量は、低い流量及び高い温度差で使用される既存のボイラを有する家庭にとっては非常に高い。その結果、最小流量に合わせるために大きなポンプが使用されるが、水は構造体200とバッファタンクとの間で分割される。
3.膨大なコスト及び複雑さを追加する可変周波数駆動(「variable frequency drive、VFD」)構成要素を使用することなく、圧縮機の負荷変動を緩和することができる。
4.システム内で蓄熱を行うことができ、例えば、約25,000BTUを蓄熱するために50ガロンタンクを使用することができる。
6.抵抗素子45を介した温水循環式電気バックアップ熱とヒートポンプとの間のシームレスな統合を可能にすることができる。これにより、設置業者による過誤がヒートポンプの過少利用につながるリスクが低減される。
7.タンクが温水循環水で満たされている場合に、間接温水熱交換器を家庭用温水予熱に使用することを可能にする。この例では、第2の利点は、冷媒と家庭用の水との間に2つの媒体があるため、二重壁熱交換器が必要ないことである。
8.そうでなければ無駄になってしまうであろう熱の大部分を暖房及び冷房動作中に取り込むことを可能にする。冷房モードでは、この熱は、間接熱交換器41などによって家庭用温水に利用することができる。ヒートポンプが冷房モードで動作している場合、構造体200は、凝縮器ユニットによって外部に熱を排出する従来の空調システムとは異なり、「自由温水」、すなわち冷房の副産物としての温水を貯水タンク36内に回収することによって、この温水から利益を得ることができる。また、家庭用温水のための過熱防止装置を使用するほとんどの地中熱利用システムと比較して、このシステムは、過熱のみの場合には通常は排出される熱の90%以上(通常は全体の15%未満)を回収することができる。暖房モード及び冷房モードの両方において、圧縮機1によって加えられた熱は、最初にこのタンクに送られ、限定された追加の機械的設備で必要に応じて使用することができる(家庭用温水を供給するための追加の機械的設備は必要ない)。
9.ヒートポンプへの温水戻りを直接配管することによって引き起こされる冷媒圧力の急激な変動なしに、ヒートポンプコントローラが温度変化によって建物負荷を検知することを可能にする。
【0050】
図2A及び図2Bは、前述のように、単一の反転要素15のみを有するダブルハイブリッド冷凍サイクルを示す。単一の反転要素15の欠点は、一動作モード、通常は冷房モードでは、冷媒は、使用される場合、ソース/シンクループと並流でなければならないことである。しかしながら、この構成は、依然として暖房モード及び冷房モードの両方で冷媒の過冷却を可能にするので、他の従来技術よりも依然として好ましいであろう。
【0051】
前述のように、ダブルハイブリッドシステム50は、既存の温水循環式暖房インフラストラクチャを有する住宅構造を改修するためのいくつかの利点を有する。これらの建物は、より高温、すなわち、従来のボイラの一般的な供給温度である160~180度の温水に基づいて設置時に寸法決めされた、典型的にはベースボード、ラジエータ、又は放射床などの温水循環式発熱体を有し得る。これらの同じ発熱体は、ヒートポンプシステムの典型的な温度(110~120度)にある給水と接続される場合、それらの元の能力の一部を有するだけでよい。
【0052】
ダブルハイブリッドヒートポンプ50は、同じユニットから、温水循環式システム用の温水及び暖房用の温風を同時に生成して、温水循環式システム内のより低温の水を使用することによって生じる熱不足を克服するように構成することができる。前述のように、これら2つを同時に生成することにより、効率が大幅に改善され、改修された建物の発熱体を補うために温風を使用することができる。
【0053】
加えて、ダブルハイブリッドシステム50は、従来技術の温水専用のヒートポンプと比較して、全体的なシステム効率の点で更なる利点を有する。例えば、120度の温水でピーク日に暖房する場合のある建物は、120度の温水を供給するために温水専用のヒートポンプを必要とするが、ダブルハイブリッドシステム50は、より低い温水温度、例えば100度又は110度で動作し、次いで、加熱された強制空気を同時に供給して、同じ全体的な暖房効果を建物にもたらすことができる。当業者は、供給温度が数度でも低いと、ヒートポンプ効率に大きな差が生じることを理解するであろう。例えば、供給温度が10度低下すると、成績係数は25%増加し得る。
【0054】
加えて、建物の発熱体が厳しく制限されている場合、ユニットの熱生成が建物内の発熱体の能力によって制限されないようにするために、ユニットは、温風のみの生成と、温風及び温水の両方の生成とを繰り返すことができる。
【0055】
当業者は、システム50において他の装置を使用することができる。例えば、圧縮機1と凝縮用熱交換器3との間に過熱防止装置を使用して、凝縮用熱交換器3に入る前に高圧高温の蒸気を予冷することができる。
【0056】
図3A及び図3Bは、従来技術及び本発明の例示的な冷凍加熱サイクル及び冷却サイクルの圧力対エンタルピーを示す。黒い実線は、標準的な先行技術の水-水ヒートポンプシステムであり、紫色の一点鎖線は、過冷却用熱交換器及び凝縮用熱交換器を備えた冷凍サイクルを示している。図3A及び図3Bの冷凍サイクルの幅がより大きいのは、凝縮用熱交換器3を出た後に冷媒からの追加の熱伝達を提供する過冷却用熱交換器(heat exchanger、HE)によるものである。このため、より少ない圧縮機仕事でより大きな冷凍効果を有し、結果としてより高い効率をもたらす冷凍サイクルが得られる。凝縮用熱交換器3を出て冷却用熱交換器に送られる冷媒、及び膨張弁17を出る冷媒は、必要に応じて100%液体であっても二相混合物であってもよいことが当業者には理解されよう。例示的なサイクル3Bでは、凝縮用熱交換器3が高圧の流体から潜熱を吸収し、次いで過冷却用熱交換器27が、地中ループ温度から数度の範囲内で冷媒を更に冷却する。
【0057】
図4A図4Dは、DHHP50の例示的な実施形態を、見やすくするために冷媒部分と水部分とを分けて示したものである。図4A図4B及び図4C図4Dは、循環ポンプ35及び39の異なる配置を有する暖房モード構成における、図1A及び図2Aの実施形態と同様の実施形態の冷媒部分及び水部分をそれぞれ示す。
【0058】
2つの循環ポンプの使用は必須ではないが、パッケージ製品にそれらを含めることにより、以下のようないくつかの利点がもたらされる。
1.設置業者にとって設置がより迅速かつ容易となり、現場での配管作業が軽減され、配線が簡素化される。
2.ヒートポンプから建物の温水循環用温水供給部に水流が供給される。
3.供給圧力及び流量の調整がより容易になり、したがって大部分の家庭への適合がより容易になる。
4.可変速度サーキュレータをDHHPによって制御することにより、設置業者の制御統合を更に簡素化することができ、既存のシステムとの統合の問題が最小限に抑えられる。
5.例えば補助熱がオンにされたときなど、必要に応じてサーキュレータをオフにして、強制温風によってより大きな割合の熱を放出させることができる。
【0059】
本発明は、大規模なダクト、複雑な制御装置、温水循環式エアハンドラ、バッファタンク、追加のサーキュレータ、又は任意の他の外部機器を動作させる必要性を低減することによって、設置時間及びコストを削減する。
【0060】
図5及び図6は、従来技術の方法(図5)及び本発明(図6)を使用した地中熱利用改修について評価された建物の比較を提供する。既存のシステムは、ボイラ及び家庭用温水タンクを含む場合がある。
【0061】
従来技術の方法を使用した場合、改修は、
1.暖房用の温水及び家庭内で使用する温水を供給するための水-水ヒートポンプと、
2.強制空気暖房及び冷房のための温風及び冷風を供給するための水-空気ヒートポンプと、
3.水緩衝タンクと、
4.2つのヒートポンプの流量制御器と、
5.既存のボイラ及び温水タンクに接続するための2つの水循環ポンプ及び関連する配管と、
の設置を含み得る。
【0062】
図5に示すような従来技術の設置には、約70,000~100,000ドルの範囲のコストがかかる可能性がある。
【0063】
対照的に、ダブルハイブリッドヒートポンプ(図6)を用いた同じ改修は、設計及び関連コストから1つのヒートポンプ、家庭用温水予熱タンク、1つの循環ポンプ、いくつかのファンコイル及び流量制御器が削減されるので、インセンティブ適用前で約50,000~60,000ドルの範囲内で実施することができる。当業者には更に理解されるように、DHHP50を使用するシステム100では、設置されたシステムに関連する保守及びトラブルシューティングのコストが削減される可能性が高い。
【0064】
図7Aは、従来のヒートポンプを用いたボイラベースの暖房システムの典型的な従来技術の改修を示す。図7B及び図7Cは、それぞれ暖房(7B)モード及び冷房(7C)モードにある構造体200に設置されたDHHP50を有するシステム100の様々な実施形態を示す。図7Bは、暖房モードにある構造体200内の熱の流れを示し、例示的なユースケースを提供する。前述のように、また図7Bに示すように、DHHP50を備えたシステム100は、温水暖房及び追加の暖房のための強制温風をサポートするために、温水をボイラに、又はボイラの代わりに供給する。図7Bは、ダクト及び強制温風が一階のみに供給されることを示しているが、当業者であれば、設計及び予算の目的を満たすために、ダクトをより高層階に所望通りに供給できることを理解するであろう。
【0065】
図7Cは、冷房モードにある構造体200内の冷風の流れ、及び家庭用温水として使用するための温水の供給を示す。これらの実施形態は、熱が構造体200内の空気から除去され、家庭用温水として使用するための水の加熱に使用することができるので、特に効率的である。
【0066】
本発明を、ボイラと組み合わせて使用されるものとして様々な実施形態で説明したが、従来技術のユニットとは異なり、本発明のDHHP50は、既存のボイラと交換するために使用することができる。冷媒過冷却機能の統合は、過熱防止装置を備えた水-水ヒートポンプに典型的な、暖房モードで2.8~3.2、冷房モードで4.5~6の成績係数(coefficient of performance、COP)と比較して実質的に高い、通常の暖房モードで3.5~4.5、冷房モードで最大8~12(温水の利益を説明する)などのCOPを可能にすることができる。更に、本発明のDHHPシステム50を使用するシステム100は、設置がより簡単であり、その結果、設置業者にとっては作業ミスやリコールのリスクがより低くなる。
【0067】
当業者であれば、システム50は、動作及び制御の柔軟性を提供するために、固定速度式又は可変速度式のポンプ及び送風機12を用いて実装されてもよいことを理解するであろう。例えば、システム50は、可変速度送風機12を使用することができ、可変速度送風機は、典型的には、温水循環式エアハンドラによって使用され得る複数の小さな単一速度ファンよりも低い寄生電気負荷と、1つの固定速度ファンよりも高い柔軟性とを有する。同様に、システム50内の更なるポンプ30及び35が可変速度式であってもよい。
【0068】
図8は、典型的にはボイラからの温水及びチラー(chiller)からの冷水を使用して、それぞれ構造体に温風及び冷風を供給する、典型的な空気処理ユニットを示している。
【0069】
図9は、どのようにしてエアハンドラを市販のサイズのダブルハイブリッドヒートポンプシステム50で改修することができるかを示す。この手法にはいくつかの利点がある。第一に、建物が、多くの商業用建物、病院、工場、大学及び他の状況で一般的である同時冷暖房負荷を有する場合、DHHPシステム50は、温水、温風、及び冷水を同時に生成することができる。例えば、建物が暖房を必要とする場合、ダブルハイブリッドは、エアハンドラ加熱用コイルを加熱することを含むいくつかの用途のために建物内で使用することができる、例えば120度の高温温水を生成することができる。次いで、冷媒は、比較的低温であると想定される流入エアハンドラ空気によって更に過冷却され、冷媒を更に冷却する作用は、空気が第1の空気コイルに到達する前に空気を予熱するのに役立つ。ここで過冷却された冷媒は、膨張弁を通過し、給水から熱を吸収する。建物が冷却水を必要とする場合は、戻り冷却水を冷媒蒸発器に使用することができ、又は冷却水がもはや必要でない場合は、地中熱交換源方法、空気熱交換源方法、又は地中熱利用ボアホールもしくは乾式冷却器などの他の熱交換源方法を使用することができる。
【0070】
本発明のDHHPシステムの1つの利点は、図1Aで説明したように、一体型空気コイルを使用して冷媒を過冷却することによってより多くの熱を放出することである。住宅用途では、ユニットは、住宅所有者に「冷風」感覚を与えることを回避するために、排気温度に注意しなければならない。しかしながら、商業的/工業的な改修用途では、この例に記載されているように、空気はエアハンドラに入る空気を予熱しているので、これはあまり懸念されない。
【0071】
更に、モジュール式水-水ヒートポンプを使用する従来技術のシステムと比較して、本発明のダブルハイブリッドヒートポンプは、2つの理由で著しく高い効率を達成することができる。1.DHHPは、冷媒を過冷却することによって冷凍サイクルを広げ、より少ない電気を使用しながらより多くの正味の冷暖房効果をもたらす。2.暖房又は冷房時に、冷媒-空気熱交換器のアプローチ温度は、2つの熱交換器を通る移送に有利である。例えば、冷房モードでは、DHHPシステム50は、80度の空気を受け取り、それを約50度の冷媒で冷却することができる。しかしながら、温水循環式ヒートポンプが50度の冷水を製造する必要があり、そのためには、冷媒を更に低温、おそらく30~35度にする必要がある。当業者にはよく知られているように、低圧の冷媒を高圧に圧縮するためには圧縮機をより強く作動させる必要があるため、低温の冷媒は効率が悪い。
【0072】
DHHPシステム50は、スペースを節約し、輸送上の課題を低減し、ユニットを現場で、カスケード方式で組み合わせて、様々な建物要件に応じて上昇及び下降させることを可能にするために、モジュール方式で設計することができる。
【0073】
例えば、建物が空気の冷却を必要とする場合、DHHPシステム50は、高圧の冷媒を第1の熱交換器内で液体に凝縮させ、家庭用温水などの目的に有用な熱を提供し、その後、反転要素を使用して冷媒を第2の熱交換器に送ることができ、第2の熱交換器は、更なる熱除去のために地中熱交換源又は空気熱交換源に接続される。第2の熱交換器に入る水の温度が第1の熱交換器に入る水よりも低かった場合、ダブルハイブリッドは、温度差を利用して冷媒を更に過冷却し、膨張及び蒸発の前に冷媒からより多くの熱を放出させることができる。過冷却された冷媒は、第2の熱交換器を出て膨張装置に入り、低圧低温の流体になる。DHHPシステム50は、低圧低温の流体を使用して、流入空気が第1の暖房用空気コイルに到達する前に流入空気を予冷することができる。
【0074】
図10は、商業用又は工業用エアハンドラに直接組み込まれたダブルハイブリッドヒートポンプの一例を示す。これは、新築の建物に使用されても、既存の機器と交換するために使用されてもよい。この例では、複数の実施形態において、図1A図2Bで使用される構成要素は、高効率の暖房及び冷房を行うために商業ユニット又は工業ユニット内に組み込むことができる。これらは、モジュール配置式で使用されても、スタンドアロン式で使用されてもよい。場合によっては、システム50は、温水又は冷水貯水部を含むことができる。
【0075】
前述の開示は、本発明の例、例示及び説明を提供するが、網羅的であること、又は実施態様を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。上記の開示に照らして変更及び変形が可能であり、又は実装の実施から取得され得る。本発明のこれら及び他の変形及び修正は可能であり企図され、前述の明細書及び以下の特許請求の範囲はそのような修正及び変形を包含することが意図される。
【0076】
本明細書で使用される場合、構成要素という用語は、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして広く解釈されることを意図している。本明細書に記載のシステム及び/又は方法は、ハードウェア、ファームウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせの異なる形態で実装されてもよいことは明らかであろう。これらのシステム及び/又は方法を実装するために使用される実際の専用の制御ハードウェア又はソフトウェアコードは、実装を限定するものではない。したがって、システム及び/又は方法の動作及び挙動は、特定のソフトウェアコードを参照することなく本明細書に記載されており、ソフトウェア及びハードウェアは、本明細書の記載に基づいてシステム及び/又は方法を実装するように設計することができることが理解される。
【0077】
いくつかの実装形態は、閾値に関連して本明細書で説明される。本明細書で使用される場合、閾値を満たすことは、閾値よりも大きい、閾値よりも大きい、閾値よりも高い、閾値以上、閾値よりも小さい、閾値よりも小さい、閾値よりも小さい、閾値以下、閾値と等しいなどの値を指すことができる。
【0078】
特徴の特定の組み合わせが特許請求の範囲に記載され、及び/又は本明細書に開示されているが、これらの組み合わせは、可能な実装形態の開示を限定することを意図するものではない。実際、これらの特徴の多くは、特許請求の範囲に具体的に記載されていない、及び/又は明細書に開示されていない方法で組み合わされてもよい。以下に列挙される各従属請求項は1つの請求項のみに直接依存し得るが、可能な実装形態の開示は、各従属請求項を請求項セット内の他の全ての請求項と組み合わせて含む。
【0079】
本明細書で使用される要素、動作、又は命令は、そのように明示的に記載されていない限り、重要又は必須であると解釈されるべきではない。また、本明細書で使用される場合、冠詞「a」及び「an」並びに用語「セット(set)」は、1つ以上の項目を含むことを意図しており、「1つ以上」と交換可能に使用され得る。1つの項目のみが意図される場合、「1」という用語又は同様の用語が使用される。また、本明細書で使用される場合、「を有し、」、「有する、」、「を有し、」などの用語は、非限定的な用語であることが意図されている。更に、「に基づいて、」という語句は、特に明記しない限り、「少なくとも部分的に、」を意味することを意図している。
【符号の説明】
【0080】
1 圧縮機
3 熱交換器(冷媒凝縮用熱交換器)
11 熱交換器(冷媒-空気熱交換器)
12 送風機
15 反転要素(第1の反転要素)
17 膨張弁
23 反転要素(第2の反転要素)
27 熱交換器(冷媒-ソース熱交換器)
36 貯水タンク
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
【国際調査報告】