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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】絶縁増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 7/00 20060101AFI20240412BHJP
   H03F 19/00 20060101ALI20240412BHJP
   H03F 3/58 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
H03F7/00
H03F19/00
H03F3/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567153
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 FI2022050278
(87)【国際公開番号】W WO2022234183
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】20215530
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ゴベニアス,ヨーナス
【テーマコード(参考)】
5J067
【Fターム(参考)】
5J067AA04
5J067AA32
5J067AA34
5J067AA35
5J067AA49
5J067CA35
5J067FA15
5J067KS01
5J067LS13
5J067TA01
(57)【要約】
本発明の例示的な態様により、第1の2×2ハイブリッドカプラ及び第2の2×2ハイブリッドカプラを備えた絶縁増幅装置が提供され、各2×2ハイブリッドカプラは、第1の入力ポート、第2の入力ポート、第1の出力ポート及び第2の出力ポートを有し、装置は更に、第1の2×2ハイブリッドカプラの第1の出力ポートに接続された入力と、第2の2×2ハイブリッドカプラの第1の入力ポートに接続された出力とを備えた第1の進行波パラメトリック増幅器TWPAと、第1の2×2ハイブリッドカプラの第2の出力ポートに接続された入力と、第2の2×2ハイブリッドカプラの第2の入力に接続された出力とを備えた第2の進行波パラメトリック増幅器TWPAとを備えている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁増幅装置であって、
第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)及び第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)であって、各2×2ハイブリッドカプラは、第1の入力ポート(102a、104a)、第2の入力ポート(102b、104b)、第1の出力ポート(102c、104c)及び第2の出力ポート(102d、104d)を有する、第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)及び第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)と、
前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の第1の出力ポート(102c)に接続された入力と、前記第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)の第1の入力ポート(104a)に接続された出力とを備えた第1の超伝導進行波パラメトリック増幅器TWPA(210)と、
前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の第2の出力ポート(102d)に接続された入力と、前記第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)の第2の入力ポート(104b)に接続された出力とを備えた第2の超伝導進行波パラメトリック増幅器(TWPA)(220)と、を備え、
前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)又は前記第2の入力ポート(102b)にポンプトーンが結合され、前記絶縁増幅装置が、前記第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)の前記第1の出力ポート(104c)にアイドラートーンを伝達し、前記第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)の前記第2の出力ポート(104d)から入力周波数信号を放散するように構成されていることを特徴とする絶縁増幅装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のTWPA(210、220)が4波混合TWPAであることを特徴とする請求項1に記載の絶縁増幅装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のTWPA(210、220)が3波混合TWPAであることを特徴とする請求項1に記載の絶縁増幅装置。
【請求項4】
前記第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)の前記第1の出力ポート(104c)は、前記装置の出力信号を供給するように構成されており、前記第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)の前記第2の出力ポート(104d)は終端抵抗器と結合されている、請求項1から3の何れか一項に記載の絶縁増幅装置。
【請求項5】
前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)は、増幅される信号源に結合され、前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第2の入力ポート(102b)は、ポンプトーン源に結合される、請求項1から4の何れか一項に記載の絶縁増幅装置。
【請求項6】
前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)が、増幅される信号源に結合され、ポンプトーン源も前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)に結合される、請求項1から4の何れか一項に記載の絶縁増幅装置。
【請求項7】
第1のポンプトーン源が前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)に結合され、第2のポンプトーン源が前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第2の入力ポート(102b)に結合される、請求項1から4の何れか一項に記載の絶縁増幅装置。
【請求項8】
前記信号源が極低温量子ビットを含み、間に追加のアイソレータ又はフィルタがあってもなくてもよいことを特徴とする請求項5から7の何れか一項に記載の絶縁増幅装置。
【請求項9】
前記超伝導TWPAがジョセフソン接合に基づくマイクロ波TWPAであることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の絶縁増幅装置。
【請求項10】
前記絶縁増幅装置が単一集積チップ上に構築されていることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の絶縁増幅装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の絶縁増幅装置と、請求項1から10の何れか一項に記載の少なくとも1つの第2の絶縁増幅装置とを備えたシステムであって、前記絶縁増幅装置と前記少なくとも1つの第2の絶縁増幅装置とが増幅器チェーンを形成し、前記増幅器チェーンにおいて、最後の絶縁増幅装置を除く各絶縁増幅装置の信号出力が、直後の絶縁増幅装置の信号入力に結合され、前記チェーン内の各絶縁増幅装置が、前記チェーン内の最大1つの直前の絶縁増幅装置と最大1つの直後の絶縁増幅装置とに結合されることを特徴とするシステム。
【請求項12】
各絶縁増幅装置の前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の第2の入力ポート(102b)と結合された第2のポンプトーン源を備えることを特徴とする請求項5、6又は7の何れか1項に従属する請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、増幅器チェーンを形成する偶数の絶縁増幅装置を備えることを特徴とする請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1及び第2の絶縁増幅装置が単一の集積チップ上に構築されていることを特徴とする請求項11から13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記2×2ハイブリッドカプラ(102、104)の各々が90度ハイブリッドカプラである、請求項1から10の何れか一項に記載の絶縁増幅装置又は請求項11から14の何れか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)を信号源に接続するステップと、ポンプトーンを前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)又は前記第2の入力ポート(102b)に供給するステップと、前記第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)の前記第1の出力ポート(104c)から増幅された信号としてアイドラートーンを抽出するステップと、前記第2の2×2ハイブリッドカプラ(104)の前記第2の出力ポート(104d)から増幅された信号を散逸させるステップとを含む、請求項1から10の何れか一項に記載の絶縁増幅装置を増幅器として使用することを含む方法。
【請求項17】
前記ポンプトーンが、前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)及び前記第2の入力ポート(102b)に供給され、前記第1の2×2ハイブリッドカプラ(102)の前記第1の入力ポート(102a)及び前記第2の入力ポート(102b)に供給される前記ポンプトーンに180度の位相差がある、請求項16に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行波パラメトリック増幅器、TWPAに関する。
【背景技術】
【0002】
パラメトリック増幅器は事実上ミキサであり、より弱い入力信号をより強いポンプトーンと混合することで増幅し得るものであり、結果としてより強い出力信号を生成する。パラメトリック増幅器は、物理システムの非線形応答に依存して増幅を生成する。このような増幅器は、定在波パラメトリック増幅器又は進行波パラメトリック増幅器、TWPAで構成されることがあり、進行波パラメトリック増幅器はウェーブガイドに沿って分散非線形性を使用し、理想的な場合、信号は一方向に進行する。分散非線形性は、例えばコプレーナウェーブガイドのような伝送線路に沿って分散された連続的な非線形材料、又は一連の多数の非線形集中素子から構成される。非線形素子がジョセフソン接合を含む場合、増幅器はジョセフソン進行波パラメトリック増幅器、JTWPAと呼ばれることがある。JTWPAでは、ジョセフソン接合は超伝導状態に維持され、超電流を流す。NbTiN等の高運動インダクタンス材料を用いて非線形性を提供する場合、その増幅器は運動インダクタンス進行波増幅器と呼ばれ得る。光領域では、非線形性は一般的に非線形結晶によって提供され、進行波パラメトリック増幅器は、その進行波の性質を強調することなく、単に光パラメトリック増幅器と呼ばれることが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
幾つかの態様により、独立項の主題が提供される。幾つかの実施形態は従属項に定義される。
【0004】
本開示の第1の態様により、絶縁増幅装置が提供され、その絶縁増幅装置は、第1の2×2ハイブリッドカプラ及び第2の2×2ハイブリッドカプラであって、各2×2ハイブリッドカプラが、第1の入力ポート、第2の入力ポート、第1の出力ポート、及び第2の出力ポートを有する、第1の2×2ハイブリッドカプラ及び第2の2×2ハイブリッドカプラと、第1の2×2ハイブリッドカプラの第1の出力ポートに接続された入力と、第2の2×2ハイブリッドカプラの第1の入力ポートに接続された出力とを備えた第1の進行波パラメトリック増幅器TWPAと、第1の2×2ハイブリッドカプラの第2の出力ポートに接続された入力と、第2の2×2ハイブリッドカプラの第2の入力に接続された出力とを備えた第2の進行波パラメトリック増幅器TWPAとを備えている。
【0005】
本開示の第2の態様により、第1の2×2ハイブリッドカプラの第1の入力を信号源に接続するステップと、第1の2×2ハイブリッドカプラの第1の入力又は第2の入力にポンプトーンを供給するステップと、第2の2×2ハイブリッドカプラの第1の出力から増幅された信号としてアイドラートーンを抽出するステップと、第2の2×2ハイブリッドカプラの第2の出力から増幅された信号を散逸させるステップを含む、第1の態様による絶縁増幅装置を増幅器として使用することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の動作原理が干渉計とどのように対比されるかを説明するのに有用な例示的システムを示す図である。
図2】本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る例示的な装置を示す図である。
図3】本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るシステムを示す図である。
図4】本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で説明するように、2つのTWPAを2×2ハイブリッドカプラと接続することにより、順方向には低ノイズ増幅を提供するが、絶縁増幅装置の出力から増幅される信号源への逆方向にはノイズや他の信号を伝えない絶縁増幅装置が得られる。これにより、信号源からの信号の情報へのアクセスを得ながら、信号源が周囲の環境からより良く絶縁されるという効果と有益な利点が得られる。これは、本明細書で以下に詳細に説明するように、周波数混合を用いた位相制御と適切に配置された干渉効果の組み合わせによって得られる。本開示は、構成TWPAの望ましい特性を損なうことなく、逆方向に伝搬するノイズを抑制する絶縁増幅装置を構成する、2つ以上の個別のTWPAと標準的な受動部品からなる回路配置について説明する。様々な実施形態において、この配置は又、出力信号からポンプトーンを自動的にフィルタリングするが、そのフィルタリングは、他の方式では別個のフィルタ部品で行われる必要があるものである。更に、開示された配置は、任意で、出力信号を入力信号に対して周波数シフトさせることができる。
【0008】
図1は、本発明の動作原理が干渉計とどのように比較されるかを説明するのに有用なシステム例を示す。図1の装置は相互干渉計であり、2×2ハイブリッドカプラ102、104は、図示のようにウェーブガイド110、120と一緒に接続されている。本開示では「ウェーブガイド」という表現を用いているが、様々な周波数領域において、伝送線路、中空ウェーブガイド、集積光ウェーブガイド、又は光ファイバケーブル等のウェーブガイド構造に対する他の用語が使用されているにも係らず、この用語上の選択によって開示される技術の適用可能領域が制限されることは意図されていない。更に、簡潔にする為に、ハイブリッドカプラという用語を2×2ハイブリッドカプラの代わりに使用する。詳細には、ハイブリッドカプラ102の第1の入力102aはソースP1から供給され、ハイブリッドカプラ102の第2の入力102bはソースP4から供給される。ハイブリッドカプラ104の第1の入力104aは、ウェーブガイド110を介してハイブリッドカプラ102の第1の出力102cと接続され、ハイブリッドカプラ104の第2の入力104bは、ウェーブガイド120を介してハイブリッドカプラ102の第2の出力102dと接続される。ハイブリッドカプラ104は、負荷P2及びP3に夫々接続された第1の出力104c及び第2の出力104dを提供する。ソースP1、P4と負荷P2、P3はインピーダンス整合されていてもよい。
【0009】
ハイブリッドカプラは、90度ハイブリッドで構成されてもよく、これは、3dBカプラ、分岐線カプラ、又は物理的実装を指す他の用語とも呼ばれ得る。ハイブリッドカプラという用語の使用や、幾つかの実施例における90度ハイブリッドカプラの使用は、特定の周波数範囲においてパワースプリッタに対して異なる位相シフトがより典型的であり、特定の周波数範囲においてビームスプリッタ等の異なる用語が使用されているにも係らず、開示された技術の適用可能領域を限定することを意図するものではない。更に、出力の相対位相はカプラの入力に依存する可能性があり、相対位相は異なる周波数で大きく異なる可能性があり、それは、関連する周波数がオクターブを超える範囲に亘るTWPAに関連する。ハイブリッドカプラの決定的な特徴は、受動型であること、各入力が2つの出力に対して等しく分割されること(この為3dBという用語が使われている)を含む。90度ハイブリッドカプラでは、出力は90度の相対位相シフトが付与される。ハイブリッドカプラは、実際には、製造上のばらつきにより、大きさが正確に等しく分割されなかったり、位相差が公称値と僅かに異なったりするような僅かな不完全さを伴うことがあるが、これらの影響は、性能の低下には繋がるものの、本発明の動作を妨げるものではない。例えば、90度ハイブリッドカプラに付与される位相差は、実際には90度又は90度±10度である可能性があり、振幅不均衡は例えば0.5デシベルdB及び/又は1dBの損失または反射が発生する可能性がある。同様の規模の実際的な不完全性は、他の構成要素の不完全性、実施例において同一であると示された構成要素が完全に同一でないこと、又は実施例において示されていない受動ウェーブガイドの追加的な短いセグメントの存在によっても、絶縁増幅装置全体に導入され得る。
【0010】
図示された装置では、P1から供給され、第1の入力102aに入った信号は、以下のように装置内を伝搬する:信号はハイブリッドカプラ102でウェーブガイド110と120に分割され、ウェーブガイド110の相対位相をゼロと定義した場合、ウェーブガイド120では90度の相対位相を持つ。これらは夫々、ハイブリッドカプラ104で2度目の分岐を成し、図中の入力に対して対角線上に在る出力に、更に90度の相対位相シフトが加わる。従って、ハイブリッドカプラ104の第1の出力104cにおける出力信号は、2つの等振幅部分の和となり、第1の部分は相対位相がゼロでウェーブガイド110から来て、第2の部分は相対位相が(90度+90°)=180度でウェーブガイド120から来る。従って、2つの等振幅部分は逆位相を持ち、出力104cで互いに打ち消し合う。対照的に、ハイブリッドカプラ104の第2の出力104dにおける出力信号は、2つの等振幅部分の和となり、第1の部分は相対位相が90度でウェーブガイド120から発生し、第2の等振幅部分はハイブリッドカプラ104から発生して相対位相が90度でウェーブガイド110から来る。従って、2つの等振幅部分は同じ符号を持ち、出力104dで建設的に干渉する。言い換えると、P1から供給される信号は、ウェーブガイド130の第1の出力104cでは全く見られず、P1から供給される信号は、その全体が、第1の入力102から、第2の出力104d及びウェーブガイド140に向けられることになる。
【0011】
同様のロジックを使用して、P4からハイブリッドカプラ102の第2入力102bに供給された信号は、ハイブリッドカプラ104の第1出力104cに接続された負荷であるP2での出力信号としてワインドアップする。
【0012】
このように、エネルギーはP1からP3へ、及びP4からP2へ流れ得る。図1の例示的なシステムは、入力と出力に関して対称である為、他方向にも対称に動作する。これは相互性と呼ばれる。その結果、エネルギーはP3からP1へ、及びP2からP4へ流れ得る。理想的な部品の場合、同じ理由、即ち相殺的干渉の為、例えばP2からP1へ逆方向にエネルギーが流れることはない。
【0013】
図2は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る例示的な装置を示す。同様の番号は、図1と同様の構造を示す。TWPA210は、ハイブリッドカプラ102の第1の出力102cがTWPA210の入力に供給され、TWPA210の出力がハイブリッドカプラ104の第1の入力104aに伝達されるように、ウェーブガイド110と接続される。同様に、ハイブリッドカプラ102の第2の出力102dはウェーブガイド120を介してTWPA220の入力に伝達され、TWPA220の出力はハイブリッドカプラ104の第2の入力104bに伝達される。TWPA210及び220は、順方向のみに利得を提供する非相互的素子であるが、双方向散逸損失、即ち伝搬方向に依存しないTPWA内の損失メカニズムによる信号の散逸を超える有意な絶縁を個々に提供しない。対照的に、図2の装置は全体として、後述するようにTWPA自体の内部での散逸に関連しない有意な追加の絶縁を提供する。双方向の散逸損失は一般に、順方向の純利得を直接減少させ、電力散逸を増加させ、ポンプ電力要件を増加させ、典型的には出力での追加ノイズに繋がる等の理由から望ましくない。例えばJTPWAでは、双方向損失は低く、例えば1~10dBの範囲である。典型的な光パラメトリック増幅器の実装では、双方向損失は格段に高く、例えば数十dBであるが、将来は、損失がより低い光パラメトリック増幅器が開発される可能性がある。
【0014】
JTWPAの典型的な応用例である超伝導量子ビットの分散読み出しでは、数百マイクロ波光子のパルスの位相と振幅が、読み出される超伝導量子ビットの状態を符号化する。このような微弱な信号を検出することは、振幅が小さい為に困難である。量子テレポーテーションのような他の応用例では、単一光子レベルまでの感度が要求されることもある。その為、適切な増幅器を使用して受信信号の振幅を大きくしてから、後続の増幅器や検出器に供給し、弱信号に符号化された情報を回収してもよい。別の例として、単一光子領域の通信は、盗聴を検出できるような量子通信を用いた安全な方法での暗号鍵の通信に採用され得る。本発明の他の実施形態は、量子ビットからの信号ほど微弱でない信号の増幅に応用できる。
【0015】
本開示の少なくとも幾つかの実施形態は、TWPAの超伝導実現に重点を置いており、この場合、伝送線路のインダクタンスのかなりの部分が、運動インダクタンス又は、単接合、超伝導量子干渉素子、SQUID、又は超伝導非線形非対称誘導素子、SNAIL等のジョセフソン素子として知られる、ジョセフソン接合ベースの素子のアレイによって寄与される。ジョセフソン素子内のジョセフソン接合は複数のタイプであり得、2つの超伝導体の間に異なる弱いリンクが配置され得る。ジョセフソン素子は、強いポンプトーンと同じ方向に沿って伝搬する弱信号(一般的にJTWPAの無線周波数帯域)の電力利得を提供する混合プロセスを可能にする非線形性を提供する。ポンプトーンの強さは、ポンプ電流振幅Ipと、ジョセフソン素子内の任意に選択された1つのジョセフソン接合の臨界電流Icの設計値との比をパラメータとしてもよい。非線形性の性質は素子内のジョセフソン接合の配置に依存する。最も単純な実現方法は、非線形素子として1つのジョセフソン接合を使用することであり、関連するインダクタンスのテイラー展開は、定数に、(Ip/Ic)∧2に比例する項を加えたもので、つまりKerr非線形性である。Kerr項は望ましい4波混合プロセスをもたらすが、ポンプパワーの関数としてrfトーンの波動ベクトルも変化させ、それは分散工学で補償され得る効果である。波動ベクトルの均衡は位相整合とも呼ばれ、デバイス長の関数としてTWPA利得を指数関数的に増加させることができる。本発明は、TWPA内で使用される分散工学の詳細とは無関係である。Kerr非線形性に基づく4波混合TWPAに加えて、本発明は3波混合TWPAにも適用可能である。更に、JTWPAは唯一の種類のTWPAではなく、本開示はこれに限定されるものではない。実際、光学分野におけるTWPAは、超伝導部品を用いずに実施することができ、同様に本発明の範囲内である。例えば、本明細書で開示する解決策は、マイクロ波増幅器システム、又は光増幅器システムで使用され得る。
【0016】
一般に、TWPAは、主に3波長混合(3WM)に基づくデバイスと、主に4波長混合(4WM)に基づくデバイスという、少なくとも2つのカテゴリーに分類される。これらの混合概念は非線形光学の分野で広く使用されている。3WMでは、周波数f_pのポンプトーンは周波数f_sの2倍であり、増幅される周波数帯域の中央付近にある。4WMでは、ポンプトーンは増幅される周波数帯域の中央付近にある。
【0017】
TWPAは順方向の信号を増幅するが、双方向の散逸損失を除いて、出力から入力に向かって逆方向に伝搬する信号を増幅も減衰もしない。この為、TWPAの出力に接続されたコンポーネントからの不要なノイズが、測定される信号源に漏れ込む可能性がある。このようなノイズは、量子ビットのような信号源の高感度素子を有意に妨害するのに十分な振幅を持つ可能性がある。更に、出力から入力への信号の逆方向伝搬を絶縁増幅装置で防止することは、理想的なインピーダンス整合が取れていない環境において全体的に有用であるが、それは、順方向の利得が高く逆方向の絶縁が少ない増幅器は、出力と入力での反射が小さいことにより、不安定さや望ましくない挙動を呈することがあるからである。逆方向の電力伝搬は、アイソレータやサーキュレータ等の非相互的コンポーネントを追加して制御され得るが、実際には、全体としてシステムに損失、反射、複雑さ、サイズとコストを追加する。
【0018】
更に、利得を生成するTWPAでは、アイドラートーンf_iがf_p‐f_s(3WM)又は2f_p‐f_s(4WM)の周波数で生成される。アイドラートーンの生成は、TWPAの動作に固有の機能である。本発明にとって重要なことは、アイドラートーンは、事実上、異なる周波数で増幅された信号のコピーであり、混合プロセスの産物である為、ポンプトーンの位相に依存する位相シフトを持つことである。理想的なパラメトリック増幅器では、信号周波数での電力利得をGとすると、アイドラーの振幅は入力信号の振幅の√(G-1)倍になる。4波混合の場合、相対アイドラー位相シフトは相対ポンプ位相の2倍であり、これは、90度のハイブリッドカプラを伴い、ポンプがハイブリッドカプラ102の入力の1つから供給される図2に例示される配置の場合、合計で180度である。3波混合の場合、相対アイドラー位相シフトは相対ポンプ位相だけであり、これは、90度ハイブリッドカプラを備え、ポンプがハイブリッドカプラ102の入力の1つから供給される、図2に例示される配置の場合、90度である。増幅された信号又はポンプトーンは、ポンプの位相に依存する位相シフトを受けない。アイドラートーンは、理想的なTWPAでは順方向にのみ生成される。
【0019】
図1の装置でそうであったように、増幅される入力信号がP1からハイブリッドカプラ102の第1の入力102aに供給される場合、入力周波数で増幅された信号はP3、即ちハイブリッドカプラ104の第2の出力104dでウェーブガイド140に接続された負荷にワインドアップする。これは、TWPA210、220が両方の信号経路で同じ方法でハイブリッドカプラ間の信号を増幅し、両方で同じ量の位相遅延が加わるからである。その結果、ウェーブガイド140内の信号は入力信号の増幅バージョンとなる。TWPAはポンプトーンを必要とするので、このポンプトーンは、例えば、ハイブリッドカプラ102の第2の入力102bに好都合に入力されて、等振幅のポンプ信号が両方のTWPA210、220を通って伝搬し、両方の増幅をトリガするようにしてもよい。又、図1に関連して上述した理由により、ハイブリッドカプラ102の第2の入力102bに導入されたポンプトーンは、ウェーブガイド130内のハイブリッドカプラ104の第1の出力104cにワインドアップする。
【0020】
一方、ポンプトーンがハイブリッドカプラ102の第1の入力102aに導入され、第2の入力102bには導入されないこともある。この場合、ポンプトーンは増幅された信号と共にハイブリッドカプラ104の第2の出力104dにワインドアップする。ポンプが第1の入力102aを介して導入される場合、ここではポンプカプラと呼ばれる受動部品を使用して入力信号と結合されてもよい。ポンプカプラの例は、入力信号を有意に減衰させることなくポンプトーンの供給を可能にする弱結合の方向性カプラを含む。例えば、当技術分野で知られているように、10dB、20dB、或いはそれ以上の弱結合の方向性カプラを使用してもよい。方向性カプラはポンプトーンをハイブリッドカプラ102に供給するが、信号源には供給しない。同様の最終結果は、ポンプに必要な狭周波数帯域を信号とは異なる物理ポートに結合する、ダイプレクサ等の受動的だが周波数選択性のある部品で構成されるポンプカプラでも達成できる。ポンプトーンは、ハイブリッドカプラ102の両方の入力ポートに供給されてもよく、TWPA210及び220に供給されるポンプトーンの独立した制御を提供するが、ハードウェア部品が増えるという代償がある。更にもう1つの変形例は、ハイブリッドカプラ102とTWPA210の間に1つのポンプカプラを追加し、ハイブリッドカプラ102とTWPA220の間に第2のポンプカプラを追加することによって、独立して制御されるポンプをTWPAに供給することである。同様に、1つ以上の追加のポンプカプラを、ポンプキャンセルの目的でTWPA210及び220の後の回路に配置してもよい。ポンプキャンセルとは、ポンプ周波数の追加トーンがTWPAの出力で追加方向性カプラに供給され、追加トーンの振幅と相対位相が、追加トーンとTWPA出力から来るポンプトーンが追加方向性カプラの出力で相殺的に干渉するように調整される配置を説明する為に当技術分野で使用される用語である。
【0021】
次に、両方のTWPA210、220で生成されるアイドラートーンが、図2に示す装置でどのように動作するかを評価する。両方のTWPA210、220は、入力信号の位相とポンプトーンの位相の両方によって決定されるアイドラーの位相で、ハイブリッドカプラ104に向かう順方向にアイドラートーンを生成する。ポンプトーンはウェーブガイド110、210、ひいてはTWPA210、220において異なる相対位相を有するので、ハイブリッドカプラ104の第1の入力104aに入射するアイドラートーンは、ハイブリッドカプラ104の第2の入力104bに入射するアイドラートーンに対して位相差を有する。上述のように、4波混合TWPAでは、相対アイドラー位相シフトは相対ポンプ位相の2倍であり、3波欠落では、相対アイドラー位相シフトは丁度相対ポンプ位相である。ポンプがハイブリッドカプラ102の入力の1つから供給されれば、90度ハイブリッドが使用される場合、これらは夫々180度及び±90度に対応する。符号は慣例による。上述した他のポンプカプラ方式の何れかが使用される場合、他の位相シフトを設計することができ、これは特に、代替ハイブリッドカプラタイプの場合、3WMTWPAの場合、又は部品の一部が非対称である場合、又はその他の非理想的な場合に有用である。
【0022】
その結果、90度ハイブリッドでハイブリッドカプラ102の入力102aからポンプを供給する実施例の場合、アイドラーの相対位相は次のようになる:TWPA220で生成されるアイドラーの相対位相は、信号の相対位相が90度であり、且つポンプの相対位相も90度である為、90度+2×90度=270度(4WM)又は90度+1×90度=180度(3WM)となる。TWPA210におけるポンプの相対位相とアイドラーの相対位相はゼロと定義される。従って、ハイブリッドカプラ104の第1の出力104cにおいて、2つの等振幅アイドラーは、TWPA210から発信される第1の部分についてはゼロに等しい相対位相を有し、TWPA220から発信される第2の部分については270度+90度=360度(4WM)又は180度+90度=270度(4WM)を有する。従って、4WMの場合、等振幅アイドラーは建設的に干渉し、アイドラー電力の全てがハイブリッドカプラ104の第1の出力104cに流入する。3WMの場合、等振幅アイドラーは位相が1/4周期ずれており、これは、全アイドラー電力の半分がハイブリッドカプラ104の第1出力104cに流入することを意味する。補足として、全アイドラー電力はハイブリッドカプラ104の第2の出力104dに一切流入しない(4WM)か、又は全アイドラー電力の半分がハイブリッドカプラ104の第2の出力104dに流入する(3WM)。
【0023】
図2の装置は、90度ハイブリッドで、ハイブリッドカプラ102の入力102aからポンプを供給する例の場合、従って、アイドラー電力の全て(4WM)又は半分(3WM)を、ハイブリッドカプラ104の第1の出力104cに向ける。これは、アイドラーがTWPAで得るポンプ依存の位相シフトによるものである。アイドラーは、振幅が約√(G-1)/√G異なり、周波数が異なることを除けば、増幅された入力信号の実質的なコピーであるので、アイドラーは、絶縁増幅装置の真の出力として使用されてもよい。ウェーブガイド140は、終端抵抗器又は他のインピーダンス整合部品に接続され、その中に増幅された信号が放散されることがある。3WMの場合、及び90度ハイブリッドでハイブリッドカプラ102の入力102aからポンプを供給する実施例の場合、アイドラーパワーの半分もウェーブガイド140の終端に流入するが、これは装置の有効利得を3dB減少させるだけである。ポンプトーンが入力102a経由で供給される場合も、ウェーブガイド140に導かれる。ポンプが入力102b経由で供給される場合、それはアイドラーと共にウェーブガイド130にワインドアップする。アイドラーの全て(4WM)又は半分(3WM)は、何れの場合も、絶縁増幅装置の出力であるウェーブガイド130から取り出される。この配置は、出力104cに伝搬するノイズやその他の波形が、ハイブリッドカプラ102の入力102b経由で絶縁増幅装置の外に導かれるという技術的利点を提供する。入力102bは、抵抗器又は別のインピーダンス整合部品で終端していてもよい。言い換えると、装置の出力104に衝突するノイズは、ハイブリッドカプラ信号102の入力102aに接続された信号源にはワインドアップしない。
【0024】
ハイブリッドカプラ102の入力102aに、従って信号源に逆向きに伝搬する唯一のノイズは、理想的な部品の場合、ウェーブガイド140の終端からのノイズである。終端がインピーダンス整合抵抗器の場合、ノイズは熱ノイズと量子力学的なゼロ点揺らぎのみから構成される可能性がある。図2の全部品の製造上の不完全性により、不完全な干渉効果、反射、部品内の微小な損失が発生し、絶縁増幅装置の出力と入力の間の絶縁が完全でなくなり、装置自体の内部でノイズが発生する可能性がある。このような不完全性があっても、装置の出力と入力の間の絶縁は有意であり得、例えば10dB、20dB、或いはそれ以上等であり得る。
【0025】
注目すべきことに、開示された絶縁のメカニズムは、アイドラートーンを使用するが絶縁の提供に周波数選択フィルタリングが不可欠である絶縁の方法とは異なる。本発明では周波数選択フィルタリングは必須ではない。寧ろ、本発明における絶縁は干渉効果に由来し、ファラデー回転に基づくアイソレータに似ているが、ファラデー効果に基づく非相互的位相変調を、TWPAでのアイドラートーンの非相互的生成に置き換え、位相をポンプの位相によって制御する。共振パラメトリックコンバータを使用してアイソレータを作成するパラメトリック変換プロセスの使用も可能であるが、TWPAは共振デバイスではない為、これらは本明細書で開示する解決策とは実質的に異なってもいる。進行波という用語は、定義上、共振とは本質的に反対である。更に、本発明の際立った特徴は、正確なハイブリッド型、ポンプ結合、及び混合プロセス(4WM又は3WM)の組み合わせが、増幅された信号が存在する元となる出力とは異なる出力からアイドラーパワーのかなりの部分が出るようなものである限り、絶縁増幅装置が電力利得を提供することである。ここでのかなりの部分とは、出力電力が元の入力信号電力よりも高いか、又はほぼ等しくなるような、約1/√(G-1)よりも大きい部分のことである。非絶縁増幅装置の逆の例は、図2の配置となるが、180度のハイブリッド102及び104、4WMTWPA210及び220、及び入力102a又は102bの何れかから供給されるポンプを伴うものである。この場合、TWPA内のポンプの相対位相は180度であり、アイドラーの相対位相のポンプ依存部分は2×180度=360度である。従って、アイドラーは、実質的に、相対ポンプ依存位相シフト、モジュロ360度を受けず、信号の位相を継承するだけであり、従って、増幅された信号と同じポートから出ることになる。出力104cと104dのどちらを本装置の真の出力として使用するかによって、本装置は、この特別に選択された部品の組み合わせに対して、増幅しないか、又は絶縁しないかの何れかとなる。
【0026】
上述した例において、3WMの場合の利得の3dB低下という妥協が望ましくない場合、TWPA210及び220におけるポンプトーンについて180度に近い相対位相シフトを設計できるように、ポンプ信号をハイブリッドカプラ102の両方の入力に供給してもよい。特に、周波数及び振幅は等しいが符号が反対の(180度の相対位相)ポンプトーンをハイブリッドカプラ102の入力に供給すると、TWPA210及び220を通って伝搬するポンプ信号の180度の相対位相シフトが生じる。ポンプ信号がハイブリッドカプラ102の両方の入力に供給される場合、入力は、相対振幅及び相対位相を選択する為の受動部品と組み合わされた単一のポンプトーン発生器から供給されてもよいし、2つの入力の各々は、別個のポンプトーン発生器から供給されてもよい。ポンプは又、TWPAとハイブリッドカプラ102との間の別個のポンプカプラを使用して、TWPA210及び220に供給されてもよい。出力104cからのアイドラーは、3WMの場合も絶縁増幅装置の出力として使用されてもよい。
【0027】
図3は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるシステムを示す。このシステムは、図2に示されているように、2つの絶縁増幅装置を備えている。これらの装置は、図では増幅器310及び増幅器320と示されている。従って、増幅器310及び320の各々は、図2に図示されるように、2つのTWPA及び2つのハイブリッドカプラを備えている。入力と出力は、明確にする為に別々に描かれている。信号Sは入力102aに供給され、ポンプは入力102bに供給される。増幅器310の組み合わされたポンプとアイドラーは、出力104cを介して出力され、増幅器320の第1の入力310aに導かれ、第2段の増幅が行われる。増幅器320の第1のハイブリッドカプラの第2の入力310bには、更にポンプトーンが供給されてもよいし、整合抵抗器で終端されてもよい。未使用の増幅信号は、図示のように抵抗301、311で終端され、全体の出力である320からのアイドラーは、増幅器320の出力310cから得られ、これは増幅器320の第2のハイブリッドカプラの第1の出力である。絶縁増幅器310と320は同一であってもよいし、例えば利得等のパラメータ値が異なっていてもよい。
【0028】
増幅器のシーケンスは、図3に示されるように2段に限定されず、寧ろ、用途に応じて任意の段数があり得る。出力310cに逆向きに伝搬するノイズは入力310bに到達する。同様に、出力104cに逆向きに伝搬するノイズは入力102bに到達し、入力102aに接続されている信号源には到達しない。従って、最終段の出力に衝突するノイズは、増幅器シーケンスを通じて逆方向に伝搬する為、増幅器段数の指数関数的に抑制される。有利なことに、段数が偶数でポンプ周波数が同じ使用事例の場合、出力アイドラー周波数も元の信号入力周波数と同じになる。他の用途では、出力周波数と入力周波数を分離するのが有利である。段数が奇数でポンプ周波数が全て同じ場合、出力周波数はTWPAの最初の組のアイドラー周波数に等しい。異なる段が異なる周波数でポンピングされる場合、各段のポンプ周波数を適切に選択することで、最終段からのほぼ任意の出力周波数を得ることができる。
【0029】
増幅器シーケンスの順方向利得は、独立増幅器で予期されるように、段数に対応する。つまり、異なる段のアイドラー電力利得√(G-1)が乗算され、凡その合計利得を得る。付随的な利点として、図2及び図3のシステムでは、個々のTWPAのパワーハンドリングと比較して、ダイナミックレンジが3dB増加する。
【0030】
実装オプションとして、図3のシステムの部品は、単一の集積回路としてモノリシックに実装され得る。或いは、例えば、共通のプリント回路基板上のディスクリートチップとして、フリップチップボンディングモジュール内の別個のチップとして、又はディスクリートウェーブガイドによって接続された別個のコネクタ化コンポーネントとして実装されてもよい。
【0031】
図4は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るシステムを示す。類似の番号は図3における類似の構造を示す。図4の増幅器シーケンスは、ポンプトーンが増幅器段に供給される方法において、図3のものとは異なる。詳細には、ポンプトーンは、夫々方向性カプラ315及び325を介して入力102a及び310aに導入される。方向性カプラは、ポンプトーンを信号源Sの方にではなく、望ましい順方向に向ける。これらの入力からポンプトーンを供給することで、本明細書で上述したように、ポンプが抵抗器301、311でワインドアップする為、ポンプを出力アイドラートーンから分離する必要がないという利点が得られる。更に、異なるステージ310及び320のポンプは、その後、独立したものとなる。上述した単一段の場合と同様に、各段の両入力にポンプを供給して、各段の各アーム内でポンプ信号を更に設計することも可能である。又、上述したように、ダイプレクサ等の方向性カプラとは異なるポンプカプラを使用することも可能である。更に、これも上述したように、ポンプカプラは、上述のハイブリッドカプラとTWPAの間等、他の場所にも配置され得る。
【0032】
一般に、第1のハイブリッドカプラ及び第2のハイブリッドカプラを備えた装置が提供され、各ハイブリッドカプラは、第1の入力ポート、第2の入力ポート、第1の出力ポート及び第2の出力ポートを有し、第1のハイブリッドカプラの第1の出力ポートに接続された入力と、第2のハイブリッドカプラの第1の入力ポートに接続された出力とを有する第1の進行波パラメトリック増幅器(TWPA)と、第1のハイブリッドカプラの第2の出力ポートに接続された入力と、第2のハイブリッドカプラの第2の入力に接続された出力とを有する第2の進行波パラメトリック増幅器(TWPA)とを備えている。第1のTWPAと第2のTWPAは類似していてもよく、特に、利得等の動作パラメータが同じであってもよい。
【0033】
本装置は、第1のハイブリッドカプラの第1の入力を信号源に接続することによって、ポンプトーンを第1のハイブリッドカプラの第1の入力又は第2の入力に供給することによって、又はその両方に供給することによって、及び第2のハイブリッドカプラの第1の出力から増幅された出力としてアイドラートーンを抽出することによって、及び第2のハイブリッドカプラの第2の出力から増幅された信号を散逸させることによって、絶縁増幅器として使用され得る。第1及び第2のTWPA用のポンプトーンは、第1のハイブリッドカプラと第1のTWPAとの間や、第1のハイブリッドカプラと第2のTWPAとの間等、複数の代替的な位置で、原理を有意に変えることなく投入され得ることを理解されたい。
【0034】
開示された本発明の実施形態は、本明細書に開示された特定の構造、プロセスステップ、又は材料に限定されるものではなく、関連技術分野における通常の当業者によって認識されるであろうそれらの等価物に拡張されることを理解されたい。又、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみに使用され、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0035】
本明細書全体を通して、1つの実施形態又は一実施形態への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて様々な場所で「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」という表現が現れるが、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。例えば、約又は実質的に等の用語を用いて数値に言及する場合、正確な数値も開示される。
【0036】
本明細書で使用される場合、複数の項目、構造要素、構成要素、及び/又は材料が、便宜上、共通のリストで示されることがある。しかしながら、これらのリストは、リストの各部材が別個の固有の部材として個別に識別されているかのように解釈されるべきである。従って、このようなリストの個々の部材は、単に共通リストでの表示に基づくだけでは、同じリストの他の部材と事実上等価であると解釈されるべきではない。更に、本発明の種々の実施形態及び実施例は、本明細書において、その種々の部品の代替例と共に言及されることがある。そのような実施形態、実施例及び代替例は、互いに事実上の等価物と解釈されるべきではなく、本発明の別個且つ自律的な提示であると見做されるべきであることが理解される。
【0037】
更に、記載された特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせられてもよい。先の説明では、本発明の実施形態を十分に理解できるように、数値、構成要素の種類等、多数の具体的な詳細を提供した。しかしながら、関連技術の当業者であれば、本発明は、具体的な詳細の1つ以上がなくても、又は他の方法、構成要素、材料等を用いて実施できることを認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、又は操作は、本発明の態様を不明瞭にすることを避ける為に、詳細に図示又は記載されていない。
【0038】
上述の実施例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を例示するものであるが、形態、使用法、及び実施の細部における多数の変更が、発明能力を行使することなく、本発明の原理及び概念から逸脱することなく行われ得ることは、当業者には明らかであろう。従って、以下に記載する特許請求の範囲による以外は、本発明を限定することを意図していない。
【0039】
本明細書では、「備える(comprise)」及び「含む(include)」という動詞は、記載されていない特徴の存在を除外することも要求することもない開放的な限定として使用される。従属請求項に記載された特徴は、特に明示しない限り、相互に自由に組み合わせることができる。更に、本明細書を通じて、「1つの(a)」又は「1つの(an)」、即ち単数形の使用は、複数形を排除するものではないことを理解されたい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、低ノイズ信号増幅において産業上の応用を見出す。
略語リスト
3WM 3波混合
4WM 四波混合
JWTPA ジョセフソンTWPA
TWPA 進行波パラメトリック増幅器
符号リスト
102a、102b 2×2ハイブリッドカプラ102への第1及び第2の入力
102c、102d 2×2ハイブリッドカプラ102への第1及び第2の出力
104a、104b 2×2ハイブリッドカプラ104への第1及び第2の入力
104c、104d 2×2ハイブリッドカプラ104への第1及び第2の出力
102、104 2×2ハイブリッドカプラ
110、120、130、140 ウェーブガイド
210、220 TWPA
310、320 絶縁増幅器
301、311 終端抵抗器
315、325 方向性カプラ
引用文献リスト
〔1〕A.カマル(A. Kamal)著「アクティブジョセフソン回路における非相互性(Nonreciprocity in active Josephson circuits)」、イエール大学博士論文(Ph.D thesis. Yale University(2013年)
https://qulab.eng.yale.edu/documents/theses/ArchanaThesis_Nonreciprocity
〔2〕マクリン他(Macklin et al.)著、「近量子限界ジョセフソン進行波パラメトリック増幅器(A near-quantum-limited Josephson traveling-wave parametric amplifier)」、サイエンス(Science)350、307(2015年)
http://dx.doi.org/10.1126/science.aaa8525
〔3〕K.M.スリワ他(K. M. Sliwa et al.,)著、「再構成可能なジョセフソンサーキュレータ/方向性増幅器(Reconfigurable Josephson Circulator/Directional Amplifier)」、フィジカル・レビュー(Phys. Rev. )X 5,041020(2015年)
https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevX.5.041020
〔4〕M.P.ウェスティング、T.M.クラプウィグ(M. P. Westig and T. M. Klapwijk)著「集積指向性を備えたジョセフソンパラメトリック反射増幅器(Josephson Parametric Reflection Amplifier with Integrated Directionality)」、フィジカル・レビュー・アプライド(Phys.Rev. Applied)9,064010(2018年)DOI:10.1103/PhysRevApplied.9.064010
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】