(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】向上した堆積効率を有する、薄く、平滑でかつ高速で火炎溶射される被覆用材料
(51)【国際特許分類】
C23C 4/06 20160101AFI20240412BHJP
C23C 4/10 20160101ALI20240412BHJP
C23C 4/129 20160101ALI20240412BHJP
【FI】
C23C4/06
C23C4/10
C23C4/129
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567198
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022027293
(87)【国際公開番号】W WO2022235570
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グトレバー,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】エロネン,ビレ・ヘルマンニ
(72)【発明者】
【氏名】レイセル,グイド
【テーマコード(参考)】
4K031
【Fターム(参考)】
4K031AB02
4K031CB22
4K031CB43
4K031CB45
4K031CB46
4K031DA01
(57)【要約】
溶射材料原料は「フラッシュ炭化物」被覆用に提供される。フラッシュ炭化物被覆は、基材を自己活性化させる、薄く、高密度でかつ平滑な溶射被覆である。フラッシュ炭化物被覆は、良好な密着性のための圧縮応力および耐腐食性を付与するための被覆を形成し、ピーニングする。本特性および性能の組み合わせを達成するために、微細であり、高密度であり、かつ角張った粒子を含む粉末が使用される。しかし、本粉末単独では通常、20%未満の不十分な堆積効率に終わる。本開示は、十分に最適化された応力および腐食特性と共に堆積効率を向上させるため、そしてある場合には、コーティング性能を増加させるために、特定の比率で2つ以上の異なる粒子を有する組成物を提供することにより、本粉末単独での不十分な堆積効率を軽減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高密度であり、角張った形状を有し、かつ測定可能な粒子内空隙率の平均が0%から15%である第一の粒子を含む第一の粉末;および
(b)測定可能な粒子内空隙率の平均が5%から35%である第二の粒子を含む第二の粉末
を含む、溶射材料原料。
【請求項2】
前記第二の粉末が概ね回転楕円形である、請求項1に記載の溶射材料原料。
【請求項3】
それぞれ前記第二の粉末が5%から50%、かつ前記第一の粉末が95%から50%である配合比率を含む、請求項1または2に記載の溶射材料原料。
【請求項4】
前記配合比率が、それぞれ前記第二の粉末が10%から40%であり、かつ前記第一の粉末が90%から60%である、請求項3に記載の溶射材料原料。
【請求項5】
前記配合比率が、それぞれ前記第二の粉末が20%から35%であり、かつ前記第一の粉末が80%から65%である、請求項3に記載の溶射材料原料。
【請求項6】
前記配合比率が、前記第二の粉末が25%、かつ第一の粉末が75%である、請求項3に記載の溶射材料原料。
【請求項7】
前記第一の粒子が焼結および粉砕されたものである、請求項1に記載の溶射材料原料。
【請求項8】
前記第一の粒子がWC-CoCr粉末、炭化物、または金属マトリックス中の他の硬質相を含み、前記他の硬質相が、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における元素の全ての炭化物、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における元素の元素周期表の元素の全てのホウ化物、または元素周期表のIV族、V族、およびVI族における少なくとも2つの元素の合金炭化物または合金ホウ化物を含む、請求項7に記載の溶射材料原料。
【請求項9】
前記炭化物が、WC、TiC、Cr
3C
2、VC、ならびに、Co、Cr、Ni、Fe、Cu、および他の合金元素を含有する合金組成を有する他の炭化物の類である、請求項8に記載の溶射材料原料。
【請求項10】
前記第二の粒子が凝集および焼結されたものである、請求項1に記載の溶射材料原料。
【請求項11】
前記第二の粒子がWC-CoCr粉末、炭化物、または金属マトリックス中の他の硬質相を含み、前記他の硬質相が、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における元素の全ての炭化物、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における元素の元素周期表の元素の全てのホウ化物、または元素周期表のIV族、V族、およびVI族における少なくとも2つの元素の合金炭化物または合金ホウ化物を含む、請求項10に記載の溶射材料原料。
【請求項12】
前記炭化物は、WC、TiC、Cr
3C
2、VC、ならびに、Co、Cr、Ni、Fe、Cuおよび他の合金元素を含有する合金組成を有する金属マトリックス中の他の炭化物の類である、請求項11に記載の溶射材料原料。
【請求項13】
前記第二の粒子がAl
2O
3を含む、請求項10に記載の溶射材料原料。
【請求項14】
前記第二の粒子がSiの炭化物および窒化物を含む、請求項10に記載の溶射材料原料。
【請求項15】
前記溶射材料原料の堆積効率が20%超である、請求項1に記載の溶射材料原料。
【請求項16】
前記溶射材料原料の堆積効率が20%から50%である、請求項1に記載の溶射材料原料。
【請求項17】
前記溶射材料原料の堆積効率が30%から50%である、請求項1に記載の溶射材料原料。
【請求項18】
基材表面上に請求項1に記載の材料原料を溶射して被覆を形成する工程を含む、フラッシュ炭化物被覆の製造方法。
【請求項19】
溶射プロセスが高速空気燃焼(HVAF)または高速酸素燃焼(HVOF)により実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の溶射材料から得られるフラッシュ炭化物被覆。
【請求項21】
前記第一の粒子の平均粒子内空隙率が0%から15%であり、前記第二の粒子の平均粒子内空隙率が10%から35%である、請求項1に記載の溶射材料原料。
【請求項22】
前記第一の粒子が炭化物を含み、前記炭化物の一次平均炭化物径が1μm超である、請求項11に記載の溶射材料原料。
【請求項23】
前記第二の粒子が炭化物を含み、前記炭化物の一次平均炭化物径が1μm未満である、請求項10に記載の溶射材料原料。
【請求項24】
前記第一の粒子を含む前記第一の粉末の測定可能な粒子内空隙率の平均が0.01%から15%である、請求項1に記載の溶射材料原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2021年5月3日に出願された米国仮出願第63/183,293号の利益および優先権を主張するものであり、その開示内容はその全体において本明細書中に参照により明示的に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
1. 開示の分野
本開示は、基材表面上に溶射された際に被覆組成物を形成する2つ以上の異なる粒子種を有する溶射材料原料に関する。実施形態例において、上記溶射材料原料は堆積効率を向上させ、コーティング性能を維持する。
【背景技術】
【0003】
2. 背景情報
「フラッシュ炭化物」被覆は、硬質クロムめっき、ならびに従来の高速酸素燃焼(HVOF)および高速空気燃焼(HVAF)被覆を置き換えるために昨今使用されている、薄く、高密度であり、かつ平滑な被覆であり、寸法研削および仕上げのための研削ストックの適用を要する。フラッシュ炭化物被覆に使用されていた従来の粉末は、一般的に非常に微細であり(-15/+5μm)、高密度であり、かつ角張った形状を有する。しかし、被覆を形成しない粉末中の残留粒子は基材表面を活性化させ、被覆をピーニングすることで圧縮応力を誘発させるため、これらの従来の粉末の特徴は、おおよそ20%の低い堆積効率に終わる。結果として、これらの従来の粉末の溶射の経済性および効率は十分でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、従来のフラッシュ炭化物被覆は、ピーニング効果に起因して高度な圧縮応力を示し、これは被覆の密度を高め、層を透過する腐食性媒体に対する耐久性を高める。高耐腐食性を達成するためには、非常に微細な粒子径および高い圧縮応力の両方が要求される。堆積効率を増加させるために、高密度であり、微細でかつ角張った形状を有する粒子の異なる粒群のみを使用することにより、低度の溶融および速度に起因する耐腐食性の増加が得られる。しかし、極めて小さい粒子径(-15/+5μm)は、火炎温度が低く、完全な溶融が起きないHVAFに特に必要とされる。さらに、被覆の微細な粒径は高い充填密度をもたらす。さらに、高密度であり、微細でかつ角張った形状を有する粒子を焼結および粉砕させた材料は、高い堆積効率および高い被覆密度の両方を達成しない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、向上した堆積効率を示す一方で、同時に、従来の粉末と比較してコーティング性能を維持する溶射材料原料を提供する。
【0006】
概要
本開示の実施形態は、より大きな堆積効率のための被覆を形成する粒子のパーセンテージを高めることにより、高速噴射被覆の堆積動力学を変更する溶射材料原料を提供する。被覆の堆積動力学は、原料粉末中に2つ以上の異なる粒子種を含めることにより変更される。本開示の発明者らは、2つ以上の異なる粒子種の形状、径、および粒子強度が、優れたピーニング応力、高密度の被覆、および向上した堆積効率をもたらすことを発見した。
【0007】
実施形態例において、原料粉末は、回転楕円形であり、第一の粒子よりも見かけ密度が低い(1から7g/cm3)第二の粒子を含む第二の粉末と混合された、高密度(見かけ密度範囲が3から9g/cm3)であり、微細でかつ角張った形状を有する第一の粒子を含む第一の粉末を含む。これらの粒子種の混合物は、コーティング性能の低下を最小限にすると共に、第一の粒子種単独よりも高い堆積効率を達成する。さらに、第二の粒子種のみの溶射から得られた被覆は、本開示の実施形態例と同一の特性または性能を有さない。
【0008】
実施形態例において、密度が高い方の第一の粉末は、測定可能な粒子内空隙率の平均が0%から15%、好ましくは0.01%から15%、より好ましくは0.01%から10%、そして最も好ましくは0.01%から5%である第一の粒子を含む。他の実施形態において、密度が低い方の第二の粉末は、測定可能な粒子内空隙率の平均が5%から35%、好ましくは10%から30%、そしてより好ましくは12%から22%である第二の粒子を含む。測定可能な粒子内空隙率の平均は、SEMを使用して、10の固有の粉末粒子断面の10の個々の空隙率測定を計測することにより測定することができる。溶射被覆内の空隙率を計測するための標準は、溶射された被覆中の面積パーセント空隙率を測定するための標準試験法である、ASTM-E2109である。空隙率を計測するための標準が粒子の外部をキャプチャーするのに対し、本開示は、SEMを使用して、断面から粒子の内部をキャプチャーする方法を使用すること以外は、本開示は、空隙率を計測するための標準と同様の方法を使用する。
【0009】
実施形態例において、第一の粒子を含む第一の粉末は、角張っており、不規則な形状を示す。結果として、本粉末の使用は、一貫していない粉末の供給に繋がり得る。加えて、第一の粉末粒子は概して密度が高く、かつ溶融しづらく、溶射における粒子の不十分な加熱に起因して、より低い堆積効率に繋がる。得られた被覆は、内部空隙率を有する粉末、例えば凝集した粉末、凝集および焼結された粉末、ならびに中空オーブン球状粉末(HOSP)から作られた被覆と比較して空隙率が低い可能性がある。
【0010】
実施形態において、第一の粒子を含む第一の粉末は、角張っており、不規則な形状を示す。結果として、本粉末の使用は、一貫していない粉末の供給に繋がり得る。加えて、第一の粉末粒子は概して密度が高く、かつ溶融しづらく、溶射における粒子の不十分な加熱に起因して、より低い堆積効率に繋がる。得られた被覆は、内部空隙率を有する粉末、例えば凝集した粉末、凝集および焼結された粉末、ならびに中空オーブン球状粉末(HOSP)から作られた被覆と比較して空隙率が低い可能性がある。
【0011】
実施形態例において、回転楕円形である第二の粒子を含む第二の粉末は、低い表面積を示し、異なる形状を有する他の粉末原料成分と組み合わせた際に、摩擦を低減させ、流動性を向上させ、および粘度を低減させる。
【0012】
実施形態例において、第一の粒子を含む第一の粉末は、好ましくは焼結かつ粉砕された高密度(見かけ密度範囲が3から9g/cm3)の炭化タングステンコバルトクロム(WC-CoCr)粉末を含む。実施形態において、上記第一の粒子を含む第一の粉末は、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における元素、例えばTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWの全ての炭化物を含む。他の実施形態において、上記炭化物は、WC、TiC、Cr3C2、VC、ならびに、Co、Cr、Ni、Fe、Cuおよび他の合金元素を含有する合金組成を有する金属マトリックス中の他の炭化物の類である。
【0013】
実施形態において、第一の粒子を含む第一の粉末は、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における元素の元素周期表の元素の全てのホウ化物を含む。他の実施形態において、上記第一の粒子を含む第一の粉末は、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における少なくとも2つの元素の合金炭化物または合金ホウ化物を含む。ある実施形態において、上記第一の粒子を含む第一の粉末は、Al2O3を含む。他の実施形態において、上記第一の粒子を含む第一の粉末は、Siの炭化物および窒化物を含む。
【0014】
実施形態例において、密度が高い方の第一の粉末中の炭化物の一次平均炭化物径は1μm超であり、好ましくは2μm超であり、そしてより好ましくは2.5μm超である。
【0015】
実施形態例において、第二の粉末は炭化タングステンコバルトクロム(WC-CoCr)粉末であり、好ましくは第一の粉末よりも密度(1から7g/cm3)が低く、そして好ましくは凝集および焼結されたものである。実施形態例において、密度が低い方の第二の粉末中の炭化物の一次炭化物径は1μm未満であり、好ましくは0.8μm未満であり、そしてより好ましくは0.5μm未満である。
【0016】
実施形態において、第二の粒子を含む第二の粉末は、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における元素、例えばTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWの全ての炭化物を含む。他の実施形態において、上記炭化物は、WC、TiC、Cr3C2、VC、ならびに、Co、Cr、Ni、Fe、Cuおよび他の合金元素を含有する合金組成を有する金属マトリックス中の他の炭化物の類である。実施形態において、上記第二の粒子を含む第二の粉末は、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における元素の元素周期表の元素の全てのホウ化物を含む。他の実施形態において、上記第二の粒子を含む第二の粉末は、元素周期表のIV族、V族、およびVI族における少なくとも2つの元素の合金炭化物または合金ホウ化物を含む。ある実施形態において、上記第二の粒子を含む第二の粉末は、Al2O3を含む。他の実施形態において、上記第二の粒子を含む第二の粉末は、Siの炭化物および窒化物を含む。
【0017】
本開示の実施形態例は、圧縮応力、自己ブラスト性/活性化、および低表面粗度に不利な影響を与えることなく、堆積効率を増加させ、被覆特性、例えば耐磨耗性、硬度、密着性および耐腐食性を向上させるために、それぞれ第二の粉末が約5%から50%、かつ第一の粉末が95%から50%である配合比率を含む溶射材料原料を含む。他の例において、堆積効率とコーティング性能との間の特性を両立させるため、溶射材料原料は、それぞれ第二の粉末が10%から40%であり、かつ第一の粉末が90%から60%である配合比率を含む。さらに他の例において、溶射材料原料は、それぞれ前記第二の粉末が20%から35%、かつ前記第一の粉末が80%から65%である配合比率を含む。
【0018】
溶射材料原料は、第一の粉末と第二の粉末とを配合、または被覆させることにより製造され得る。上記被覆は、基材上に原料材料を溶射させることにより形成される。
【0019】
本開示の実施形態例の配合粉末は、最大50%以上の堆積効率を達成する。これに対して、第一の粒子のみを有する粒子は、おおよそ20%の堆積効率を達成する。さらに、本開示の実施形態例における配合比率は、被覆残留応力制御および向上した効率を達成する。
【0020】
本開示の実施形態例は、より良好な変形性(すなわち、表面および角張った粒子スプラットの間と適合する能力)を有する第二の粉末を組み込むことにより高い堆積効率および高い被覆密度のいずれも達成する第一の粉末および第二の粉末の配合比率を有する溶射材料粉末原料を含む。ある実施形態において、上記第二の粒子は、衝撃の間に、高密度であり、微細でかつ角張った形状を有する第一の粒子周りで変形し、被覆を形成し得る角張った粒子が後で衝突することによりピーニングされ、第一の粒子および第二の粒子の比率および特性を変更することにより制御され得る本材料内の増大した圧縮応力をもたらす。
【0021】
実施形態例は、本開示の材料原料を基材表面上に溶射してタングステン炭化物被覆を形成する工程を含むタングステン炭化物被覆組成物の製造方法を含む。実施形態例において、上記溶射プロセスは、HVAFもしくはHVOFまたは同様の高速溶射プロセスである。
【0022】
本開示は、好ましい本開示の実施形態の非限定的な例によって、記載された複数の図面を参照として、以下の詳細な記載にさらに記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】各実施形態による変性された粉末の磨耗性およびキャビテーションのデータを示す図である。
【
図2】各実施形態による変性された粉末の堆積効率およびアルメンのたわみ残留応力を示す図である。
【
図3】各実施形態による変性された粉末の被覆の硬度および粗度を示す図である。
【
図4(A)】焼結および粉砕された、高密度であり、微細でかつ角張った粒子を示すSEM画像である。
【
図4(B)】凝集および焼結された回転楕円体の粒子を示すSEM画像である。
【
図4(C)】凝集および焼結された回転楕円体の粒子が25%であり、かつ焼結および粉砕された、高密度であり、微細でかつ角張った粒子が75%である配合比率を使用した被覆構造を示すSEM画像である。
【
図5(A)】2つの別々の粒子種の非適合特性に対する適合特性を示す、配合された原料粉末の倍率が低い方のSEM画像である。
【
図5(B)】被覆構造内の2つの粒子種の非適合特性に対する適合特性を示す、配合された粉末の溶射された被覆の倍率が高い方のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
図1は、AE12368、AE12870-1、AE12870-2、AE12870-3、およびXW0595を含む変性された粉末の磨耗性およびキャビテーションのデータを図示している。AE12368は、焼結および粉砕された、高密度であり、角張った粒子を100%含む材料である。XW0595は、凝集および焼結により100%製造され、本製造方法により達成される粒子に典型的である概ね回転楕円形を有する粒子を含む材料である。AE12870-1およびAE12870-2は、凝集された粒子および焼結された粒子の配合物をそれぞれ50%および75%含む材料である。AE12870-3は、凝集および焼結された回転楕円体の粒子が25%であり、かつ焼結および粉砕された、高密度であり、微細でかつ角張った粒子が75%である配合比率を含む材料である。
図1の結果は、AE12870-1、AE12870-2、およびAE12870-3材料ならびに得られた被覆は、凝集および焼結された材料(XW0595)単独または焼結および粉砕された材料(AE12368)単独のいずれか一方よりも予想外に良好な磨耗性およびキャビテーションを発揮することを示している。
【0025】
図2は、AE12368、AE12870-1、AE12870-2、AE12870-3、およびXW0595を含む、変性された粉末の堆積効率およびアルメンのたわみ残留応力を図示している。
図2の結果は、焼結および粉砕された材料(AE12368)単独と比較してアルメンのたわみにより示されているとおり、AE12870-1、AE12870-2、およびAE12870-3材料がより顕著に高い堆積効率および圧縮応力を達成することを示している。
【0026】
図3は、AE12368、AE12870-1、AE12870-2、AE12870-3、およびXW0595を含む変性された粉末の被覆の硬度および粗度を図示している。
図3の結果は、AE12870-1、AE12870-2、およびAE12870-3材料が、焼結および粉砕された材料(AE12368)単独と同様に、被覆の硬度および低表面粗度を維持することを示している。
【0027】
図4(A)は、焼結および粉砕された、高密度であり、微細でかつ角張った粒子のSEM画像を示している。
【0028】
図4(B)は、凝集および焼結された回転楕円体の粒子のSEM画像を示している。
図4(C)は、AE12870-3材料が、凝集および焼結された回転楕円体の粒子(薄い色調)が焼結および粉砕された、高密度であり、微細でかつ角張った粒子(暗い色調)周りで変形する被覆構造を提供することを示している。
【0029】
図5(A)は、上記2つの粒子種の非適合特性に対する適合特性を示す、配合された原料粉末の倍率が低い方のSEM画像を示している。
図5(A)において、密度が低い方の、すなわち、粒子内空隙率が高い方の第二の粉末は、回転楕円体の第二の粒子501を含み、そして密度が高い方の、すなわち、粒子内空隙率が低い方の第一の粉末は、角張っており、不規則な形状を有する第一の粒子502を含む。
【0030】
図5(B)は、上記2つの粒子種の非適合特性に対する適合特性を示す、配合された粉末由来の溶射された被覆の倍率が高い方のSEM画像を示している。
図5(A)と
図5(B)との間の比較は、噴射作業の間に、球状の第二の粒子501がより平坦な非球状の第二の粒子503に変形することを示している。
図5(B)に描かれた、より平坦な非球状の第二の粒子503の輪郭は、後に球状の第二の粒子501が変形されることを示唆している。いくつかの実施形態において、球状の第二の粒子501の噴射作業前の球形度は0.9以上であり、噴射作業後の球形度は0.8以下である。
【0031】
これに対して、
図5(A)と
図5(B)との間の比較は、
図5(B)の、角張っており、不規則な形状を有する噴射作業後の第一の粒子504により明らかであるとおり、噴射作業の間において第一の粒子502が第二の粒子502よりもその形状を維持することを示している。
【0032】
その全体におけるデータを考慮すると、凝集および焼結された回転楕円体の粒子を20%から30%使用した配合粉末は、性能基準の組み合わせにおいてより優れており、かつ予想外の結果を供することが理解され得る。例えば、
図2の結果は、AE12870-3材料は、18.9%から31.6%の67%増加である向上した堆積効率を達成することを実証している。加えて、
図1の結果は、AE12870-3材料は耐磨耗性および耐キャビテーション性の事実上の増加を達成することを実証している。最終的に、
図3の結果は、AE12870-3材料が最も低い噴射直後の表面粗度(Ra)をもたらすことを示している。
【0033】
さらに、少なくとも、本発明は、例えば簡潔性または効率性のため等の特定の例示的な実施形態の開示により、その製造および使用を可能とする方法で本明細書に開示されているため、本発明は、本明細書に具体的に開示されていない追加の要素または追加の構造がなくても実施することができる。
【0034】
前述の実施例は、単に説明のために供されたものであり、決して本発明を限定するものとして解釈されるものではないことに留意されたい。本発明は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本明細書で使用されてきた文言は、限定の文言ではなく、説明および例示の文言であることが理解される。その態様において本発明の範囲および精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で、現行の記載のとおり、および補正されたとおりに変更を加えることができる。本発明は、特定の手段、材料および実施形態を参照して本明細書に記載されているが、本発明は、本明細書に開示された特定のものに限定されることを意図するものではなく、むしろ、本発明は、例えば添付の特許請求の範囲の範囲内にある、全ての機能的に等価な構造、方法および使用に及ぶ。
【国際調査報告】