(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】iRGD類似体及び関連する治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20240412BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240412BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240412BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240412BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P35/00
A61P1/18
A61P1/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/7068
A61K31/337
A61K31/282
A61K31/519
A61K31/4745
A61K31/513
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567209
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022027735
(87)【国際公開番号】W WO2022235852
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521395872
【氏名又は名称】センド セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジャベライネン,ハリ
(72)【発明者】
【氏名】ルースラーティ,エルキ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA26
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
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4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC43
4C086CB09
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4C086EA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206JB16
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA66
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書では、固形腫瘍癌を治療するための方法及び組成物が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
iRGD類似体及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記iRGD類似体は、先行技術のiRGD分子と比較して、1つ以上の改善された特性を有し、前記改善された特性は、
改善された薬物動態学的特性、
血漿/血清中の改善された安定性、
配合溶液中での改善された安定性、
貯蔵での改善された安定性、及び/または、
アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼなどのプロテアーゼからの改善された保護からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記改善された薬物動態学的特性は、吸収、分布、代謝及び/または排泄のうちの1つ以上から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記iRGD類似体は、良好なin vitroまたはin vivoでの効力及び/または有効性を維持する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記iRGD類似体は、
図2の構造に示されたCEND-1(CAS登録番号2580154-02-3)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
CEND-1は、37℃及びpH=7.4のリン酸緩衝生理食塩水中でのiRGDの分解速度よりも3倍低い分解速度、及び/またはプールされたヒト血漿中でのiRGDの分解速度よりも1.6倍低い分解速度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
CEND-1は、in vivoでiRGDと比較して46%増加した半減期を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
がんの腫瘍を治療、阻害もしくは前記腫瘍の体積を減少させることが必要な対象または患者における、前記がんの前記腫瘍を治療、阻害または前記腫瘍の体積を減少させる方法であって、前記方法は、CEND-1またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの抗がん剤もしくは抗がん治療の同時投与、分離投与または連続投与と組み合わせて投与することを含む、前記方法。
【請求項9】
前記腫瘍は、密な腫瘍間質によって特徴付けられる悪性固形腫瘍である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍は、乳癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、及び頭頸部癌からなる群から選択されるがんの固形腫瘍である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記膵臓癌は、原発性膵臓癌、転移性膵臓癌、難治性膵臓癌、抗がん剤耐性膵臓癌、及び腺癌からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記癌は、管腺癌(0~IVステージ)である、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗がん剤または前記抗がん治療は、化学療法剤、小分子、抗体、抗体薬物複合体、ナノ粒子、細胞治療、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸分子、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド;導入遺伝子、ウイルス、サイトカイン、細胞毒性ポリペプチドをコードする核酸分子;アポトーシス促進ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、細胞毒性T細胞などの細胞毒性細胞、及びワクチン(mRNAまたはDNA)からなる群から選択される、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法剤は、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ヌクレオシド、ゲムシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗剤、白金剤、シスプラチン、カルボプラチン、ステロイド、メトトレキサート、抗生物質、アドリアマイシン、イソフアミド、選択的エストロゲン受容体調節薬、マイタンシノイド、メルタンシン、エムタンシン;トラスツズマブ、抗上皮増殖因子受容体2(HER2)抗体、トラスツズマブ、カスパーゼ、カスパーゼ-8などの抗体;ジフテリア毒素A鎖、シュードモナス外毒素A、コレラ毒素、リガンド融合毒素、DAB389EGF、トウゴマ毒素(リシン);キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)、キメラ抗原受容体マクロファージ(CAR-M)、キメラ抗原受容体ナチュラルキラー細胞(CAR-K)、及び腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、抗PD-1抗体、ニボルマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ;抗CTLA-4抗体、イピリムマブ;二重特異性抗体、カツマキソマブ、Moderna製mRNA-4157及び/またはBioNTech製BNT122からなる群のうちの1つ以上から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
CEND-1は、抗がん剤またはがん治療法の1用量当たり約0.2~20mg/kg体重、抗がん剤またはがん治療法の1用量当たり約0.3~17mg/kg体重、抗がん剤またはがん治療法の1用量当たり約0.4~14mg/kg体重、抗がん剤またはがん治療法の1用量当たり約0.5~11mg/kg体重、抗がん剤またはがん治療法の1用量当たり約0.6~8mg/kg体重、抗がん剤またはがん治療法の1用量当たり約0.7~5mg/kg体重、抗がん剤またはがん治療法の1用量当たり約0.8~3.2mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
CEND-1は、がん治療法の1用量当たり3.2mg/kg体重に相当する量で投与される、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
CEND-1は、抗がん剤またはがん治療法の投与前または投与中に投与され、前記抗がん剤または前記がん治療法は、4回/日、3回/日、1日2回、1日1回、1日おきに1回、2日おきに1回、3日おきに1回、4日おきに1回、5日おきに1回、6日おきに1回、週1回、8日おきに1回、9日おきに1回、10日おきに1回、11日おきに1回、12日おきに1回、13日おきに1回、2週間おきに1回、3週間おきに1回、及び月1回からなる群から選択される投与レジメンである、請求項8~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
CEND-1は、乾燥配合物中に存在するか、または生体適合性媒体中に懸濁されている、請求項8~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記生体適合性媒体は、水、緩衝水性媒体、生理食塩水、緩衝生理食塩水、任意選択でアミノ酸の緩衝溶液、任意選択でタンパク質の緩衝溶液、任意選択で糖の緩衝溶液、任意選択でビタミンの緩衝溶液、任意選択で合成ポリマーの緩衝溶液、及び脂質含有エマルションからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
CEND-1は静脈内に投与される、請求項8~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
膵臓癌を治療することを必要とする患者における前記膵臓癌を治療する方法であって、有効量のCEND-1を抗がん治療法と組み合わせて前記患者に投与することを含み、前記抗がん治療法は、ゲムシタビン及び/またはnab-パクリタキセル、またはそれらの薬学的に許容される塩である、前記方法。
【請求項22】
前記膵臓癌は、原発性膵臓癌、転移性膵臓癌、難治性膵臓癌、抗がん剤耐性膵臓癌、及び腺癌からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記癌は、管腺癌(0~IVステージ)である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
CEND-1は、抗がん治療法の1用量当たり約0.2~20mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.3~17mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.4~14mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.5~11mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.6~8mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.7~5mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.8~3.2mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
CEND-1は、抗がん治療法の1用量当たり3.2mg/kg体重に相当する量で投与される、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
CEND-1は、抗がん治療法の投与前または投与中に投与され、前記抗がん治療法は、4回/日、3回/日、1日2回、1日1回、1日おきに1回、2日おきに1回、3日おきに1回、4日おきに1回、5日おきに1回、6日おきに1回、週1回、8日おきに1回、9日おきに1回、10日おきに1回、11日おきに1回、12日おきに1回、13日おきに1回、2週間おきに1回、3週間おきに1回、及び月1回からなる群から選択される投与レジメンである、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
CEND-1は、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.01~100、0.02~90、0.03~80、0.04~70、0.05~60、0.06~50、0.07~40、0.08~30、0.09~30、0.1~25、0.11~20、0.12~15、0.13~10、0.14~9、0.15~8、0.16~7、0.17~6、0.18~5、0.19~4、及び0.2~3.2mg/kg体重から選択される範囲の量で投与され、
nab-パクリタキセルは、1~500、10~450、20~400、30~350、40~300、50~250、60~200、70~175、80~160、90~150、100~140、110~140、115~135、及び120~130mg/m2から選択される範囲の量で投与され、ならびに、
ゲムシタビンは、1~5000、100~4500、200~4000、300~3500、400~3000、500~2500、550~2000、600~1750、650~1500、700~1400、750~1300、800~1200、及び900~1100mg/m2から選択される範囲の量で投与される、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
CEND-1は、1日当たりまたは化学治療法の1用量当たり0.2~3.2mg/kg体重の範囲で投与され、nab-パクリタキセルは、125mg/m2で投与され、及びゲムシタビンは、1000mg/m2で投与される、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
膵臓癌、結腸癌または虫垂癌を治療することを必要とする患者における前記膵臓癌、前記結腸癌または前記虫垂癌を治療する方法であって、有効量のCEND-1を抗がん治療法と組み合わせて前記患者に投与することを含み、前記抗がん治療法は、FOLFIRINOX、FolfoxもしくはFolfiri、及び/またはパニツムマブもしくはその薬学的に許容される塩のいずれかである、前記方法。
【請求項30】
前記膵臓癌は、原発性膵臓癌、転移性膵臓癌、難治性膵臓癌、抗がん剤耐性膵臓癌、及び腺癌からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌は、管腺癌(0~IVステージ)である、請求項29~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
CEND-1は、抗がん治療法の1用量当たり約0.2~20mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.3~17mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.4~14mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.5~11mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.6~8mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.7~5mg/kg体重、抗がん治療法の1用量当たり約0.8~3.2mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
CEND-1は、抗がん治療法の1用量当たり3.2mg/kg体重に相当する量で投与される、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
CEND-1は、抗がん治療法の投与前または投与中に投与され、前記抗がん治療法は、4回/日、3回/日、1日2回、1日1回、1日おきに1回、2日おきに1回、3日おきに1回、4日おきに1回、5日おきに1回、6日おきに1回、週1回、8日おきに1回、9日おきに1回、10日おきに1回、11日おきに1回、12日おきに1回、13日おきに1回、2週間おきに1回、3週間おきに1回、及び月1回からなる群から選択される投与レジメンである、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
CEND-1は、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.01~100、0.02~90、0.03~80、0.04~70、0.05~60、0.06~50、0.07~40、0.08~30、0.09~30、0.1~25、0.11~20、0.12~15、0.13~10、0.14~9、0.15~8、0.16~7、0.17~6、0.18~5、0.19~4、及び0.2~3.2mg/kg体重から選択される範囲の量で投与され、
オキサリプラチン、ロイコボリン及びイリノテカンのそれぞれの形態のFOLFIRINOXはそれぞれ、1~500、10~450、20~400、30~350、40~300、50~250、60~200、70~175、80~160、90~150、100~140、110~140、115~135、または120~130mg/m2から選択される範囲の量で投与され、及び、
フルオロウラシルは、1~5000、100~4500、200~4000、300~3500、400~3000、500~2500、550~2000、600~1750、650~1500、700~1400、750~1300、800~1200、または900~1100mg/m2から選択される範囲の量で投与され、
及び/または、パニツムマブは、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.01~100、0.02~90、0.03~80、0.04~70、0.05~60、0.06~50、0.07~40、0.08~30、0.09~30、0.1~25、0.11~20、0.12~15、0.13~10、0.14~9、0.15~8、0.16~7、0.17~6、0.18~5、0.19~4、もしくは0.2~3.2mg/kg体重、または14日当たり1~20mg/kg、14日当たり2~15mg/kg、14日当たり3~12mg/kg、14日当たり4~10mg/kg、14日当たり5~8mg/kg、もしくは14日当たり6mg/kgから選択される範囲の量で投与される、請求項29~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
CEND-1は、1日当たりまたは化学治療法の1用量当たり0.2~3.2mg/kg体重の範囲で投与され、オキサリプラチンは85mg/m2で投与され、ロイコボリンは400mg/m2で投与され、イリノテカンは180mg/m2で投与され、フルオロウラシルは2400mg/m2で投与され、及び/またはパニツムマブは14日当たり6mg/kgで投与される、請求項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法の有効性または臨床活性は、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)及び/または全生存期間(OS)を決定することによって測定される、請求項8~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記方法の有効性または臨床活性は、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される奏効率(ORR);25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される無増悪生存期間(PFS);及び/または25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される全生存期間(OS)のうちの1つ以上を決定することによって測定される、請求項8~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~7のいずれか一項に記載のiRGD類似体、及び抗がん剤を含む、キットまたは組成物。
【請求項40】
前記iRGD類似体は、
図2の構造に示されたCEND-1である、請求項39に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患、例えば、固形腫瘍の治療に有用な化合物、方法及び薬物に関する。
【背景技術】
【0002】
米国国立がん研究所の推定によると、2018年には、米国で約1,735,350人が新たにがんと診断され、609,640人がこの疾患によって死亡する。手術、放射線治療法、化学治療法、そして最近では免疫療法による特定の形態のがんの治療における進歩にもかかわらず、ほとんどの種類の固形腫瘍は本質的に不治である。特定のがんに対して有効な治療が利用可能である場合でも、治療による副作用は、患者の生活の質に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
膵臓癌は、特に重篤ながんであり、生命を脅かす状態である。ほとんどの場合、疾患の初期段階は無症候性であり、手術が可能な膵臓癌は20%未満である。更に、浸潤性膵臓癌及び転移性膵臓癌は、化学治療法及び放射線治療法における既存の治療に対して反応性が低く、反応率は通常30%未満である。米国国立がん研究所(NCI)は、膵外分泌部のがんの生存率が5%未満であり、診断後の生存期間の中央値が1年未満であると推定している。膵臓癌の予後不良及び有効な治療法の欠如が継続していることにより、膵臓癌を罹患した患者の臨床管理及び予後を改善する、より毒性が低くかつより効率的な治療戦略を開発するという医学的ニーズが満たされていないことが明らかになった。
【0004】
ほとんどの抗がん剤が固形腫瘍に対して毒性を有し、有効性が限られている重要な理由は、抗がん剤が、血管から3~5細胞径の深さまでしか浸透せず、腫瘍の一部の領域は薬剤の無効濃度に曝されるか、または全く薬剤に曝露されないという事実である。一例として、投与されたナブパクリタキセルの1%未満が膵管腺癌組織に浸透/進入し得ることを示す研究がある。
【発明の概要】
【0005】
CEND-1による化学治療剤の浸透の改善
in vivo及びin vitroの薬理学ならびに機構研究の両方からの結果は、iRGD類似体である本発明のCEND-1(
図2)を化学治療剤と組み合わせることにより、これらの薬剤の腫瘍浸透性が有意に増加し、その有効性が改善されることを示している。本発明の方法は、広汎な種類のがん及び/または固形腫瘍に適用可能であるが、この検査薬の最初の適応症は、膵管腺癌(pancreatic ductal adenocarcinoma、PDAC)である。なぜならば、予後不良に加えて、薬剤の進入に対する物理的バリアとして作用する細胞外マトリックス間質が密であることによって特徴付けられるためである。CEND-1によって開始された腫瘍のホーミング及び輸送過程は、PDAC間質において活性であることが示されており、前臨床研究では、異なる種類のPDACモデルにおいて薬剤浸透性及び有効性の増加が示されているため、CEND-1は、PDACを標的するのに特に良好に適していると思われる。
【0006】
したがって、本明細書では、iRGD類似体及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物が提供される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、
図2に構造として示されたiRGD類似体(すなわち、CEND-1)に対応する。本発明のCEND-1は、アミノ末端及びカルボキシ末端をブロックするために使用された特定の部分において従来技術のiRGDペプチドと異なり、これは、従来技術の環状iRGDペプチドに比べて顕著な利点をもたらす。例えば、本発明のiRGD類似体(
図2にCEND-1として記載)は、以下の分子式C37 H60 N14 O14 S2、MW989.1、及び最近のCAS登録番号:2580154-02-3を有する。一方、少なくとも1つの劣った治療特性を有する1つの先行技術のiRGDは、分子式:C
35H
57N
13O
14S
2、948.04の分子量、及びCAS登録番号1392278-76-0を有するiRGDに対応する。
【0007】
本発明のCEND-1 iRGD類似体(
図2、C37 H60 N14 O14 S2、MW989.1)の利点は、従来技術のCAS登録番号1392278-76-0環状ペプチド及び他の既知のiRGD分子と比較して、良好なin vitro/in vivo効力及び有効性を維持しつつ、以下:
好ましい薬物動態学的特性、
血漿/血清(例えば、本明細書の実施例に記載されるプールされたヒト血漿)における改善された安定性、
配合溶液中での改善された安定性、
貯蔵時(例えば、本明細書の実施例に記載されるリン酸緩衝生理食塩水)の改善された安定性、及び/または、
アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼなどのプロテアーゼからの改善された保護のうちの1つ以上を含む。
【0008】
特定の実施形態では、好ましい及び/または改善された薬物動態学的特性は、吸収、分布、代謝及び/または排泄のうちの1つ以上から選択される。特定の実施形態では、CEND-1は、37℃及びpH=7.4のリン酸緩衝生理食塩水中でのiRGDの分解速度よりも3倍低い分解速度(例えば、改善した安定性)、及び/またはプールされたヒト血漿中でのiRGDの分解速度よりも1.6倍低い分解速度を有する。別の実施形態では、CEND-1は、in vivoでiRGDと比較して、46%増加した半減期を有することがわかった。
【0009】
本明細書では、がんの腫瘍を治療、阻害もしくは腫瘍の体積を減少させることが必要な対象または患者における、がんの腫瘍を治療、阻害または腫瘍の体積を減少させる方法であって、前記方法は、CEND-1またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの抗がん剤もしくは抗がん治療の同時投与、分離投与または連続投与と組み合わせて投与することを含む、前記方法が提供される。特定の実施形態では、腫瘍は、密な腫瘍間質によって特徴付けられる悪性固形腫瘍である。他の実施形態では、腫瘍は、乳癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、及び頭頸部癌からなる群から選択されるがんの固形腫瘍である。別の実施形態では、膵臓癌は、原発性膵臓癌、転移性膵臓癌、難治性膵臓癌、抗がん剤耐性膵臓癌、及び腺癌からなる群から選択される。特定の実施形態では、前記癌は、0~IVステージなどの管腺癌である。
【0010】
特定の実施形態では、抗がん剤または抗がん治療は、化学療法剤、小分子、抗体、抗体薬物複合体、ナノ粒子、細胞治療、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸分子、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに導入遺伝子、ウイルス、サイトカイン、細胞毒性ポリペプチドをコードする核酸分子;アポトーシス促進ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、細胞毒性T細胞などの細胞毒性細胞、及び/またはワクチン(mRNAまたはDNA)からなる群から選択される。
【0011】
他の実施態様では、化学療法剤は、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ヌクレオシド、ゲムシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗剤、白金剤、シスプラチン、カルボプラチン、ステロイド、メトトレキサート、抗生物質、アドリアマイシン、イソフアミド、選択的エストロゲン受容体調節薬、マイタンシノイド、メルタンシン、エムタンシン;トラスツズマブ、抗上皮増殖因子受容体2(HER2)抗体、トラスツズマブ、カスパーゼ、カスパーゼ-8などの抗体;ジフテリア毒素A鎖、シュードモナス外毒素A、コレラ毒素、リガンド融合毒素、DAB389EGF、トウゴマ毒素(リシン);キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)、キメラ抗原受容体マクロファージ(CAR-M)、キメラ抗原受容体ナチュラルキラー細胞(CAR-K)、及び腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、抗PD-1抗体、ニボルマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ;抗CTLA-4抗体、イピリムマブ;二重特異性抗体、カツマキソマブ、Moderna製mRNA-4157及び/またはBioNTech製BNT122からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0012】
特定の実施形態では、CEND-1(
図2に記載のiRGD類似体)は、がん治療法の1用量当たり約0.2~20mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.3~17mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.4~14mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.5~11mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.6~8mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.7~5mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.8~3.2mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される。特定の実施形態では、CEND-1は、がん治療法の1用量当たり3.2mg/kg体重に相当する量で投与される。
【0013】
特定の実施形態では、CEND-1は、抗がん治療法の投与前または投与中に投与され、がん治療法は、4回/日、3回/日、1日2回、1日1回、1日おきに1回、2日おきに1回、3日おきに1回、4日おきに1回、5日おきに1回、6日おきに1回、週1回、8日おきに1回、9日おきに1回、10日おきに1回、11日おきに1回、12日おきに1回、13日おきに1回、2週間おきに1回、3週間おきに1回、及び/または月1回からなる群から選択される投与レジメンである。一実施形態では、CEND-1は、乾燥配合物中に存在するか、または生体適合性媒体中に懸濁されている。
【0014】
特定の実施形態では、生体適合性媒体は、水、緩衝水性媒体、生理食塩水、緩衝生理食塩水、任意選択でアミノ酸の緩衝溶液、任意選択でタンパク質の緩衝溶液、任意選択で糖の緩衝溶液、任意選択でビタミンの緩衝溶液、任意選択で合成ポリマーの緩衝溶液、及び脂質含有エマルションからなる群から選択される。特定の実施形態では、CEND-1は、静脈内投与される。
【0015】
本明細書ではまた、膵臓癌を治療することを必要とする患者における膵臓癌を治療する方法であって、有効量のCEND-1を、ゲムシタビン及び/またはnab-パクリタキセル、またはそれらの薬学的に許容される塩と組み合わせて患者に投与することを含む、前記方法も提供される。特定の実施形態では、膵臓癌は、原発性膵臓癌、転移性膵臓癌、難治性膵臓癌、抗がん剤耐性膵臓癌、及び腺癌からなる群から選択される。特定の実施形態では、前記癌は、管腺癌である(0~IVステージ)。
【0016】
特定の実施形態では、CEND-1は、がん治療法の1用量当たり約0.2~20mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.3~17mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.4~14mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.5~11mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.6~8mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.7~5mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.8~3.2mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される。一実施形態では、CEND-1は、がん治療法の1用量当たり3.2mg/kg体重に相当する量で投与される。
【0017】
特定の実施形態では、CEND-1は、抗がん治療法の投与前または投与中に投与され、がん治療法は、4回/日、3回/日、1日2回、1日1回、1日おきに1回、2日おきに1回、3日おきに1回、4日おきに1回、5日おきに1回、6日おきに1回、週1回、8日おきに1回、9日おきに1回、10日おきに1回、11日おきに1回、12日おきに1回、13日おきに1回、2週間おきに1回、3週間おきに1回、及び/または月1回からなる群から選択される投与レジメンである。抗がん治療法の特定の実施形態では、
CEND-1は、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.01~100、0.02~90、0.03~80、0.04~70、0.05~60、0.06~50、0.07~40、0.08~30、0.09~30、0.1~25、0.11~20、0.12~15、0.13~10、0.14~9、0.15~8、0.16~7、0.17~6、0.18~5、0.19~4、または0.2~3.2mg/kg体重から選択される範囲の量で投与され、
nab-パクリタキセルは、1~500、10~450、20~400、30~350、40~300、50~250、60~200、70~175、80~160、90~150、100~140、110~140、115~135、または120~130mg/m2から選択される範囲の量で投与され、及び、
ゲムシタビンは、1~5000、100~4500、200~4000、300~3500、400~3000、500~2500、550~2000、600~1750、650~1500、700~1400、750~1300、800~1200、または900~1100mg/m2から選択される範囲の量で投与される。
【0018】
抗がん治療法の更に別の実施態様では、CEND-1は、1日当たりまたは化学治療法の1用量当たり0.2~3.2mg/kg体重の範囲で投与され、nab-パクリタキセルは、125mg/m2で投与され、及び/またはゲムシタビンは、1000mg/m2で投与される。抗がん治療法の更に別の実施態様では、CEND-1は、1日当たりまたは化学治療法の1用量当たり0.2~3.2mg/kg体重の範囲で投与され、nab-パクリタキセルは、125mg/m2で投与され、及びゲムシタビンは、1000mg/m2で投与される。
【0019】
甲状腺癌、黒色腫、肝癌、例えば肝細胞癌、腎細胞癌などの抗がん治療法の更に別の実施形態では、
本発明のiRGD類似体であるCEND-1は、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.01~100、0.02~90、0.03~80、0.04~70、0.05~60、0.06~50、0.07~40、0.08~30、0.09~30、0.1~25、0.11~20、0.12~15、0.13~10、0.14~9、0.15~8、0.16~7、0.17~6、0.18~5、0.19~4、または0.2~3.2mg/kg体重から選択される範囲の量で、以下の薬剤と組み合わせて投与され、
ソラフェニブは、1~500、10~450、20~400、30~350、40~300、50~250、60~200、70~175、80~160、90~150、100~140、110~140、115~135、もしくは120~130mg/m2、または経口にて12時間おきに100~1000mg、経口にて12時間おきに200~800mg、経口にて12時間おきに300~7000mg、もしくは経口にて12時間おきに400mgから選択される範囲の量で投与され、及び/または、
ドキソルビシンは、1~5000、100~4500、200~4000、300~3500、400~3000、500~2500、550~2000、600~1750、650~1500、700~1400、750~1300、800~1200、または900~1100mg/m2から選択される範囲の量で投与される。
【0020】
本明細書で提供される本発明の方法の特定の実施形態では、本方法の有効性または臨床活性は、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)及び/または全生存期間(OS)を決定することによって測定される。更に別の実施形態では、本方法の有効性または臨床活性は、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される奏効率(ORR);25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される無増悪生存期間(PFS);及び/または25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される全生存期間(OS)のうちの1つ以上を決定することによって測定される。
【0021】
本明細書ではまた、iRGD類似体(CEND-1)及び抗がん剤を含む、キットまたは組成物が提供される。特定の実施形態では、iRGD類似体は、
図2の構造として記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】分子式C37 H60 N14 O14 S2を有し、MWは989.1であり、CAS登録番号2580154-02-3である本発明のCEND-1 iRGD類似体環状ペプチドの化学構造を示す。これはすべての天然アミノ酸を有し、また以下:Ac-Cys-Arg-Gly-Asp-Lys-Gly-Pro-Asp-Cys-NH2(Cys&Cys Bridge)のように表すこともできる。また、以下:L-システイニル-L-アルギニルグリシル-L-α-アスパルチル-L-リシルグリシル-L-プロリル-L-α-アスパルチル-環状(1.fwdarw.9)-ジスルフィドのように表すこともでき、N末端アミノ基はアセチル基でブロックされ、C末端カルボニル基はカルボキシアミド基でブロックされている。
【
図3】リン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)中のCEND-1及びiRGDの安定性を示す。
【
図4】プールされたヒト血漿中のCEND-1及びiRGDの濃度による安定性を示す。
【
図5】カルボキシペプチドY及びBの存在下でのCEND-1ならびにiRGDの安定性を示す。
【
図6】アミノペプチダーゼの存在下でのCEND-1及びiRGDの安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書では、がんの腫瘍を治療、阻害もしくは腫瘍の体積を減少させることが必要な対象または患者における、がんの腫瘍を治療、阻害または腫瘍の体積を減少させる方法であって、前記方法は、CEND-1またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの抗がん剤もしくは抗がん治療の同時投与、分離投与または連続投与と組み合わせて投与することを含む、前記方法が提供される。本発明は、固形腫瘍をより効果的に抗がん治療法により治療するための改善された方法及び薬物を提供する。CEND-1は、iRGD(インターナライズアルギニルグリシルアスパラギン酸環状ペプチド)の類似体である腫瘍透過性ペプチドである。一般にiRGD分子及び、特にiRGD類似体としてCEND-1は、9つのアミノ酸を含む環化(システイン側鎖を介したS-S結合)構造を有する。特定の実施形態では、本発明のiRGD類似体は、Ac-Cys-Arg-Gly-Asp-Lys-Gly-Pro-Asp-Cys-NH2として記載され、CAS登録番号2580154-02-3を有する、
図2に記載された特定の環状ペプチド化学構造に対応する本発明のiRGD類似体ペプチド配列、すなわち、CEND-1に対応する。CEND-1の薬理作用は、αv-インテグリン(腫瘍増殖では高発現するが、健康な組織では発現しない)との一次RGD腫瘍ホーミングモチーフ相互作用を介して腫瘍に限定されている。二次「CendR」モチーフは、NRP-1を介して腫瘍の微小環境を調節する。実験モデルに基づいて、ニューロピリン-1との相互作用は、固形腫瘍の微小環境を一時的な薬物導管へと変化させ、CEND-1と組み合わせて投与された抗がん治療法の効率的な腫瘍アクセスを可能にする。研究から、CEND-1は、上述した腫瘍の微小環境調節メカニズムを介して、抗がん剤の腫瘍への蓄積及び浸透を増加させるが、正常組織へは増加しないことが実証された。その結果、抗腫瘍活性は増強され、一方で治療マージン/安全プロファイルは潜在的に改善される。本発明のiRGD類似体(CEND-1、
図2)に加えて、本明細書に提供されているデータ、投与量及び結果を考慮すると、上記に記載されたものなどの当技術分野で公知の他のiRGDペプチド及び類似体は、本発明の方法で使用され得る。
【0024】
特定の実施形態では、腫瘍は、密な腫瘍間質によって特徴付けられる悪性固形腫瘍である。他の実施形態では、腫瘍は、乳癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、及び頭頸部癌からなる群から選択されるがんの固形腫瘍である。別の実施形態では、膵臓癌は、原発性膵臓癌、転移性膵臓癌、難治性膵臓癌、抗がん剤耐性膵臓癌、及び腺癌からなる群から選択される。特定の実施形態では、前記癌は、管腺癌である(0~IVステージなど)。
【0025】
本明細書で使用される場合、「固形腫瘍」という語句は、嚢胞または腫瘍転移以外の(すなわち、疾患の転移段階における)低い液体含量を有する、本質的に固形の腫瘍性成長を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「組み合わせて」という語句は、複数の治療剤を投与することを必要とするそれぞれの患者に複数の治療剤を投与することを指す。特定の実施形態では、CEND-1は、少なくとも1つの他の抗がん治療剤と一緒に投与される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「同時投与、分離投与または連続投与」という語句は、CEND-1を1つ以上の他のがん治療剤と同時に投与すること、または同時投与された抗がん剤を投与する前もしくは後のいずれかに投与することを指し、これにより、同時投与は、同じまたは異なる投与レジメンで投与された別個の医薬組成物に由来することができる。特定の実施形態では、CEND-1は、1つ以上の抗がん剤の後続の連続投与の前に投与される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「悪性」という用語は、異常細胞が制御されずに分裂し、近くの組織に侵襲し得る腫瘍またはがんを指す。悪性がん細胞はまた、血液及びリンパ系を介して身体の他の部位に広がる可能性がある。
【0029】
本発明者らが発見した新規な薬物導管機構に基づき、本発明の方法及び薬物は、固形腫瘍を治療するために使用される任意の抗がん剤の治療効果を増強するために、CEND-1(iRGD類似体)を使用するのに適している。したがって、本発明の方法及び薬物は、iRGD類似体(CEND-1)と、ドセタキセルまたはパクリタキセル(nab-パクリタキセルを含む)などのタキサン、ゲムシタビンなどのヌクレオシド、ドキソルビシンなどのアントラサイクリン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗剤、シスプラチンまたはカルボプラチンなどの白金剤、メトトレキサートなどのステロイド、アドリアマイシンなどの抗生物質、イソフアミド、選択的エストロゲン受容体調節薬、またはトラスツズマブなどの抗体のうちの少なくとも1つなどの固形腫瘍の治療に使用される任意の抗がん剤との組み合わせを含有する。
【0030】
CEND-1により効果が増強され得る抗がん剤は、ヒト化モノクローナル抗体などの抗体であり得る。一例として、抗上皮成長因子受容体2(HER2)抗体であるトラスツズマブ(Herceptin:Genentech,South San Francisco,Calif.)は、HER2/neuを過剰発現する乳癌を治療するための複合体に有用な治療剤である(White et al.,Annu.Rev.Med.52:125-141(2001))。
【0031】
CEND-1により効果が増強され得る抗がん剤はまた、細胞傷害性薬物であってもよく、本明細書で使用される場合、それは、細胞死を直接的または間接的に促進する任意の分子であり得る。有用な細胞傷害性薬物には、小分子、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸分子、細胞及びウイルスが含まれるが、これらに限定されない。非限定的な例として、有用な細胞傷害性薬物としては、ドキソルビシン、ドセタキセルまたはトラスツズマブなどの細胞毒性小分子;以下で更に説明するような抗菌ペプチド;カスパーゼ及びトキシン、例えばカスパーゼ-8などのアポトーシス促進ポリペプチド;ジフテリア毒素A鎖、シュードモナス外毒素A、コレラ毒素、DAB389EGFなどのリガンド融合毒素、トウゴマ毒素(リシン);及び細胞傷害性T細胞などの細胞傷害性細胞が挙げられる。例えば、Martin et al.,Cancer Res.60:3218-3224(2000);Kreitman and Pastan,Blood 90:252-259(1997);Allam et al.,Cancer Res.57:2615-2618(1997);及びOsborne and Coro nado-Heinsohn,Cancer J.Sci.Am.2:175(1996)を参照のこと。当業者であれば、本明細書に記載されるかまたは当技術分野において公知のこれら及び追加の細胞傷害性薬物を、開示された方法及び薬物においてCEND-1と組み合わせることができることを理解する。
【0032】
一実施形態では、CEND-1により効果が増強され得る抗がん剤は、治療用ポリペプチドであり得る。本明細書で使用される場合、治療用ポリペプチドは、生物学的に有用な機能を有する任意のポリペプチドであり得る。有用な治療用ポリペプチドは、サイトカイン、抗体、細胞毒性ポリペプチド;アポトーシス促進ポリペプチド;及び抗血管新生ポリペプチドを包含するが、これらに限定されない。CEND-1により効果が増強され得る抗がん剤は、抗血管新生剤であり得る。本明細書で使用される場合、「抗血管新生剤」という用語は、血管の成長及び発達である血管新生を抑制または阻止する分子を意味する。CEND-1と抗血管新生剤との組み合わせは、血管新生に関連したがんを治療するために使用され得る。種々の抗血管新生剤は、通常の方法で調製することができる。このような抗血管新生剤としては、小分子;血管新生因子、転写因子及び抗体のドミナントネガティブ型などのタンパク質;ペプチド;ならびにリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む核酸分子;ならびに、例えば、血管新生因子及び受容体、転写因子、ならびに抗体及びその抗原結合断片のドミナントネガティブ型をコードする核酸分子が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Hagedorn and Bikfalvi,Crit.Rev.Oncol.Hematol.34:89-110(2000)、及びKirsch et al.,J.Neurooncol.50:149-163(2000)を参照のこと。
【0033】
特定の実施形態では、抗がん剤または抗がん治療は、化学療法剤、小分子、抗体、抗体薬物複合体、ナノ粒子、細胞治療、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣体、核酸分子、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに導入遺伝子、ウイルス、サイトカイン、細胞毒性ポリペプチドをコードする核酸分子;アポトーシス促進ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、細胞毒性T細胞などの細胞毒性細胞、及び/またはワクチン(mRNAまたはDNA)からなる群から選択される。
【0034】
他の実施態様では、化学療法剤は、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ヌクレオシド、ゲムシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗剤、白金剤、シスプラチン、カルボプラチン、ステロイド、メトトレキサート、抗生物質、アドリアマイシン、イソフアミド、選択的エストロゲン受容体調節薬、マイタンシノイド、メルタンシン、エムタンシン、アウリスタチン、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)及びF(MMAF)、天然抗有糸分裂阻害剤、抗体、トラスツズマブ、抗上皮増殖因子受容体2(HER2)抗体、トラスツズマブ、カスパーゼ、カスパーゼ-8;ジフテリア毒素A鎖、シュードモナス外毒素A、コレラ毒素、リガンド融合毒素、DAB389EGF、トウゴマ毒素(リシン);キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)、キメラ抗原受容体マクロファージ(CAR-M)、キメラ抗原受容体ナチュラルキラー細胞(CAR-K)、及び腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、抗PD-1抗体、ニボルマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ;抗CTLA-4抗体、イピリムマブ;二重特異性抗体、カツマキソマブ、抗CD47抗体、エンホルツマブ、サシツズマブ、抗体薬物複合体、Moderna製mRNA-4157及び/またはBioNTech製BNT122からなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0035】
特定の実施形態では、CEND-1(
図2に記載のiRGD類似体)は、がん治療法の1用量当たり約0.2~20mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.3~17mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.4~14mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.5~11mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.6~8mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.7~5mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.8~3.2mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される。特定の実施形態では、CEND-1は、がん治療法の1用量当たり3.2mg/kg体重に相当する量で投与される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「がん治療法の1用量当たり」という語句は、CEND-1を1つ以上の抗がん剤と同時に投与することを指し、それにより、抗がん治療剤を投与するたびに、CEND-1は同様に同時に投与され、腫瘍内への治療剤の浸透を促進させる。CEND-1の1用量当たりの同時投与は、治療剤(複数可)と完全に同時に行う必要はなく、CEND-1は、治療剤の投与前または投与後のいずれでも投与することができる。
【0037】
特定の実施形態では、CEND-1は、抗がん治療法の投与前または投与中に投与され、がん治療法は、4回/日、3回/日、1日2回、1日1回、1日おきに1回、2日おきに1回、3日おきに1回、4日おきに1回、5日おきに1回、6日おきに1回、週1回、8日おきに1回、9日おきに1回、10日おきに1回、11日おきに1回、12日おきに1回、13日おきに1回、2週間おきに1回、3週間おきに1回、及び/または月1回からなる群から選択される投与レジメンである。一実施形態では、CEND-1は、乾燥配合物中に存在するか、または生体適合性媒体中に懸濁されている。
【0038】
特定の実施形態では、生体適合性媒体は、水、緩衝水性媒体、生理食塩水、緩衝生理食塩水、任意選択でアミノ酸の緩衝溶液、任意選択でタンパク質の緩衝溶液、任意選択で糖の緩衝溶液、任意選択でビタミンの緩衝溶液、任意選択で合成ポリマーの緩衝溶液、及び脂質含有エマルションからなる群から選択される。特定の実施形態では、CEND-1は、静脈内投与される。
【0039】
本発明の方法は、薬剤の進入に対する物理的バリアとして作用する顕著に密な腫瘍間質によって特徴付けられる、膵臓癌の治療に特に適している。したがって、CEND-1の最初の臨床指標として、進行膵臓癌を選択した。臨床的有用性の例として、CEND-1を単独で、またはnab-パクリタキセル及びゲムシタビンと組み合わせて投与した場合、腫瘍応答を増強する能力を含む、安全性及び有効性の結果を示す。
【0040】
本明細書ではまた、膵臓癌を治療することを必要とする患者における膵臓癌を治療する方法であって、有効量のCEND-1を、ゲムシタビン及び/またはnab-パクリタキセル、またはそれらの薬学的に許容される塩と組み合わせて患者に投与することを含む、前記方法も提供される。特定の実施形態では、膵臓癌は、原発性膵臓癌、転移性膵臓癌、難治性膵臓癌、抗がん剤耐性膵臓癌、及び腺癌からなる群から選択される。特定の実施形態では、前記癌は、管腺癌である(0~IVステージ)。
【0041】
別の実施形態では、膵臓癌の治療で使用するための前述のCEND-1は、ゲムシタビンなどの膵臓癌に有効であることが好ましいことに公知である、少なくとも1つの追加の抗がん剤と組み合わせて投与することができる。本発明の文脈において、CEND-1を用いることにより、静脈内経路によって投与されるゲムシタビン及びnab-パクリタキセルなどの他の膵臓癌剤の臨床活性が増強されることを見出した。
【0042】
本明細書ではまた、膵臓癌、結腸癌または虫垂癌を治療することを必要とする患者における膵臓癌、結腸癌または虫垂癌を治療する方法であって、有効量のCEND-1をFolfirinox及び/またはパニツムマブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて患者に投与することを含む、前記方法も提供される。特定の実施形態では、膵臓癌は、原発性膵臓癌、転移性膵臓癌、難治性膵臓癌、抗がん剤耐性膵臓癌、及び腺癌からなる群から選択される。特定の実施形態では、前記癌は、管腺癌である(0~IVステージ)。
【0043】
本明細書で使用される場合、「FOLFIRINOX」、FOLFIRINOXレジメンまたはその文法上の変化形という用語は、がん治療の文脈において、オキサリプラチン、ロイコボリンカルシウム(フォリン酸)、イリノテカン塩酸塩、及びフルオロウラシルのそれぞれの周知の組み合わせを指す。他の実施形態では、FOLFIRINOXに基づく組み合わせ、例えば、オキサリプラチン、ロイコボリンカルシウム(フォリン酸)及びフルオロウラシルに相当するFolfox、ならびにロイコボリンカルシウム(フォリン酸)、フルオロウラシル及びイリノテカン塩酸塩に相当するFolfiriを使用することができる。
【0044】
別の実施形態では、膵臓癌の治療で使用するための前述のCEND-1は、ゲムシタビンなどの膵臓癌に有効であることが好ましいことに公知である、少なくとも1つの追加の抗がん剤と組み合わせて投与することができる。本発明の文脈において、CEND-1を用いることにより、静脈内経路によって投与されるゲムシタビン及びnab-パクリタキセルなどの他の膵臓癌剤の臨床活性が増強されることを見出した。
【0045】
特定の実施形態では、CEND-1は、がん治療法の1用量当たり約0.2~20mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.3~17mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.4~14mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.5~11mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.6~8mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.7~5mg/kg体重、がん治療法の1用量当たり約0.8~3.2mg/kg体重からなる群から選択される量で投与される。一実施形態では、CEND-1は、がん治療法の1用量当たり3.2mg/kg体重に相当する量で投与される。
【0046】
特定の実施形態では、CEND-1は、抗がん治療法の投与前または投与中に投与され、がん治療法は、4回/日、3回/日、1日2回、1日1回、1日おきに1回、2日おきに1回、3日おきに1回、4日おきに1回、5日おきに1回、6日おきに1回、週1回、8日おきに1回、9日おきに1回、10日おきに1回、11日おきに1回、12日おきに1回、13日おきに1回、2週間おきに1回、3週間おきに1回、及び/または月1回からなる群から選択される投与レジメンである。膵臓癌を治療するための特定の実施形態では、
CEND-1は、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.01~100、0.02~90、0.03~80、0.04~70、0.05~60、0.06~50、0.07~40、0.08~30、0.09~30、0.1~25、0.11~20、0.12~15、0.13~10、0.14~9、0.15~8、0.16~7、0.17~6、0.18~5、0.19~4、または0.2~3.2mg/kg体重から選択される範囲の量で投与され、
nab-パクリタキセルは、1~500、10~450、20~400、30~350、40~300、50~250、60~200、70~175、80~160、90~150、100~140、110~140、115~135、または120~130mg/m2から選択される範囲の量で投与され、及び、
ゲムシタビンは、1~5000、100~4500、200~4000、300~3500、400~3000、500~2500、550~2000、600~1750、650~1500、700~1400、750~1300、800~1200、または900~1100mg/m2から選択される範囲の量で投与される。
【0047】
膵臓癌を治療するための更に別の実施態様では、CEND-1は、1日当たりまたは化学治療法の1用量当たり0.2~3.2mg/kg体重の範囲で投与され、nab-パクリタキセルは、125mg/m2で投与され、及びゲムシタビンは、1000mg/m2で投与される。
【0048】
膵臓癌、結腸癌及び虫垂癌のいずれかを治療するための別の実施形態では、CEND-1は、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.01~100、0.02~90、0.03~80、0.04~70、0.05~60、0.06~50、0.07~40、0.08~30、0.09~30、0.1~25、0.11~20、0.12~15、0.13~10、0.14~9、0.15~8、0.16~7、0.17~6、0.18~5、0.19~4、または0.2~3.2mg/kg体重から選択される範囲の量で投与され、
オキサリプラチン、ロイコボリン及びイリノテカンのそれぞれの形態のFOLFIRINOXはそれぞれ、1~500、10~450、20~400、30~350、40~300、50~250、60~200、70~175、80~160、90~150、100~140、110~140、115~135、120~130mg/m2から選択される範囲の量で投与され、及び、
フルオロウラシルは、1~5000、100~4500、200~4000、300~3500、400~3000、500~2500、550~2000、600~1750、650~1500、700~1400、750~1300、800~1200、または900~1100mg/m2から選択される範囲の量で投与され、
及び/または、パニツムマブは、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.01~100、0.02~90、0.03~80、0.04~70、0.05~60、0.06~50、0.07~40、0.08~30、0.09~30、0.1~25、0.11~20、0.12~15、0.13~10、0.14~9、0.15~8、0.16~7、0.17~6、0.18~5、0.19~4、もしくは0.2~3.2mg/kg体重、または14日当たり1~20mg/kg、14日当たり2~15mg/kg、14日当たり3~12mg/kg、14日当たり4~10mg/kg、14日当たり5~8mg/kg、もしくは14日当たり6mg/kgから選択される範囲の量で投与される。
【0049】
膵臓癌、大腸癌及び虫垂癌のいずれかを治療するための更に別の実施形態では、CEND-1は、1日当たりもしくは化学治療法の1用量当たり0.2~3.2mg/kg体重の範囲で投与され、オキサリプラチンは85mg/m2で投与される。ロイコボリンは400mg/m2で投与され、イリノテカンは180mg/m2で投与され、フルオロウラシルは2400mg/m2で投与され、及び/またはパニツムマブは14日当たり6mg/kgで投与される。
【0050】
本明細書で提供される本発明の方法の特定の実施形態では、本方法の有効性または臨床活性は、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)及び/または全生存期間(OS)を決定することによって測定される。更に別の実施形態では、本方法の有効性または臨床活性は、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される奏効率(ORR);25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される無増悪生存期間(PFS);及び/または25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%超または95%超から選択される全生存期間(OS)のうちの1つ以上を決定することによって測定される。
【0051】
本明細書ではまた、iRGD類似体及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物が提供される。一実施形態では、iRGD類似体は、CEND-1である。薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野において周知である。CEND-1組成物は、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、口腔及び吸入、皮下などを含む様々な経路により、ボーラス注入または注入により個体(ヒトなど)に投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内に投与される。
【0052】
製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量または複数用量の密封容器で提供することができ、注射のために、使用直前に、滅菌液体賦形剤、例えば、生理食塩水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。
【0053】
特定の実施形態では、注射用のCEND-1は、静脈内投与のための有効成分用量強度のバイアル当たり100mgとして供給される、滅菌された白色凍結乾燥粉末である。CEND-1注射は、賦形剤として酢酸ナトリウム三水和物及びマンニトールを含む、CEND-1薬剤物質からなる。
【0054】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、
図2に構造として記載されたiRGD類似体(CEND-1)に対応する。本発明のiRGD類似体は、アミノ末端及びカルボキシ末端をブロックするために使用された特定の部分において従来技術のiRGDペプチドと異なり、これは、従来技術の環状iRGDペプチドに比べて顕著な利点をもたらす。いくつかの実施形態では、前記部分は、アセチル基及びカルボキシアミド基である。いくつかの実施形態では、N末端アミンはアセチル化されており、C末端カルボキシルはアミド化されている。いくつかの実施形態では、N末端アミノ基は、アセチル基によりブロックされており、C末端カルボキシ基、すなわち、C末端カルボニル基は、カルボキシアミド基によりブロックされている。例えば、本発明のiRGD類似体(
図2にCEND-1として記載)は、以下の分子式C37 H60 N14 O14 S2、MW989.1、及び最近のCAS登録番号:2580154-02-3を有する。一方、少なくとも1つの劣った治療特性を有する1つの先行技術のiRGDは、分子式:C
35H
57N
13O
14S
2、948.04の分子量、及びCAS登録番号1392278-76-0を有する「学術的」または「従来の」iRGDに対応する。いくつかの実施形態では、L-アミノ酸ではなく、D-アミノ酸がペプチドにおいて使用される。いくつかの実施形態では、非修飾アミノ酸ではなく、当技術分野で公知の修飾アミノ酸が使用され、そのような修飾には、Wang(Current Biotechnology,Volume 1,Number 1,2012,pp.72-79(8))(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)により記載されるものを含み得る。
【0055】
本発明のCEND-1 iRGD類似体(
図2、C37 H60 N14 O14 S2、MW989.1)の利点は、従来技術のCAS登録番号1392278-76-0環状ペプチド及び他の既知のiRGD分子と比較して、良好なin vitro/in vivo効力及び/または有効性を維持しつつ、以下:
好ましい薬物動態学的特性、
血漿/血清中の改善された安定性、
配合溶液中での改善された安定性、
貯蔵での改善された安定性、及び/または、
アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼなどのプロテアーゼからの改善された保護のうちの1つ以上を含む。
【0056】
特定の実施形態では、好ましい及び/または改善された薬物動態学的特性は、吸収、分布、代謝及び/または排泄のうちの1つ以上から選択される。特定の実施形態では、CEND-1は、37℃及びpH=7.4のリン酸緩衝生理食塩水中でのiRGDの分解速度よりも3倍低い分解速度(例えば、改善した安定性)を有する。更なる実施形態では、CEND-1は、プールされたヒト血漿中でのiRGDの分解速度よりも1.6倍低い分解速度(すなわち、改善された安定性)を有する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「良好なin vitro/in vivoでの効力及び/または有効性を維持しつつ」という語句は、有効性及び/または効力がCEND-1によって低下しないように、それぞれの治療薬に対するCEND-1の継続的な効果を指す。
【0058】
本明細書ではまた、iRGD類似体(CEND-1)及び抗がん剤を含む、キットまたは組成物が提供される。iRGD類似体は、
図2の構造に示されている、請求項26に記載のキット。
【0059】
本明細書ではまた、CEND-1を含むiRGD類似体を製造する方法が提供される。諸実施形態では、CEND-1を含むiRGD類似体は、Fmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert-ブチルオキシカルボニル)の化学的性質のいずれかを用いた、現在入手可能な実験機器を使用して化学的に合成される。あるいは、CEND-1を含むiRGD類似体は、当業者に公知のバイオ製造法に従って、無細胞発現系により、または哺乳動物、微生物、昆虫もしくは鳥類細胞を使用して合成される。Boc/Bzl保護は、in situ中和と共に使用する場合、長いまたは難しいペプチド配列について優れた結果を提供することができる。樹脂からペプチド生成物を切断するには、TFMSAまたはHFなどの強酸が必要である。Fmoc/tBu保護は、通常、側鎖保護基を除去してペプチドを樹脂支持体から切断するために50%TFAより強い試薬を必要とせず、したがって、実験室で容易にスケールアップすることができる。N末端Fmocを所定の位置に保持したまま、側鎖を脱保護することができ、側鎖の修飾が可能となる。更に、特定の部位で選択的な脱保護を可能にする、様々な他の側鎖保護基が利用可能である。
【0060】
本明細書に記載されるアセチル化修飾及びアミド化修飾はまた、当業者に公知の方法に従って適用される。諸実施形態では、C末端アミドは、アミド形成樹脂、例えば、MBHA、RinkまたはSieber樹脂で調製される。他の実施形態では、C末端アミドは、アミノリシスにより樹脂からペプチドを開裂させることによって形成される。アミノリシスは、メリーフィールド樹脂及びWang樹脂などの多くの標準的な樹脂で行うことができるが、オキシム樹脂及びHMBA樹脂が好ましい。諸実施形態では、N末端アセチル化は、ペプチド合成プロトコルに最後のキャッピング工程を加えることにより達成される。諸実施形態では、キャッピングは、DMF中の6体積%Ac2O及び3体積%DIPEAを用いて2×10分間行われる。
【実施例】
【0061】
実施例1:非アセチル化、非アミド化iRGDと比較したCEND-1の安定性
CEND-1(
図2)のN末端のアセチル化及びCEND-1のC末端のアミド化が、リン酸緩衝生理食塩水、プールされたヒト血漿におけるその安定性に及ぼす効果、ならびにカルボキシペプチダーゼ及びアミノペプチダーゼの存在下での効果を評価した。CEND-1(CAS登録番号2580154-02-3)を、アセチル化されておらず、アミド化されていない「従来の」環状iRGD(CAS番号1392278-76-0)と比較した。
【0062】
方法:
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)での安定性試験のために、10倍のPBSストックを通常の1倍のPBS濃度に希釈し、CEND-1またはiRGDを約1mg/mLの最終濃度に溶解させた。プールされたヒト血漿での安定性試験のために、まず凍結されたプールされたヒト血漿を解凍し、混合し、次いで遠心分離によって清澄化した。CEND-1またはiRGDを、約2.5mg/mLの最終濃度で清澄化したプールされたヒト血漿に溶解させた。カルボキシペプチダーゼY(CY)による安定性試験のために、0.15Mの塩化ナトリウム、6単位/mLのカルボキシペプチダーゼ、及び約0.1mg/mLのCEND-1またはiRGDを含有する、pH=6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液を調製した。カルボキシペプチダーゼB(CB)による安定性試験のために、0.10Mの塩化ナトリウム、14単位/mLのカルボキシペプチダーゼB、及び約0.1mg/mLのCEND-1またはiRGDを含有するpH=7.7の25mMのトリス・HCl緩衝液を調製した。アミノペプチダーゼ(AP)による安定性試験のために、10単位/mLのカルボキシペプチダーゼB、及び約0.1mg/mLのCEND-1またはiRGDを含有するpH=8の20mMトリス・HCl緩衝液を調製した。
【0063】
溶液を25℃及び37℃でインキュベートし、分析のために適切な時間間隔で試料を採取した。PBS中の試料、カルボキシペプチダーゼY及びBならびにアミノペプチダーゼを有する試料を、事前に希釈することなく、HPLC分析のために直接使用した。プールされたヒト血漿(0.1mL)を含む試料を、メタノール中で0.15mLの0.1%トリフルオロ酢酸で希釈し、混合して遠心分離し、不溶性血漿タンパク質を除去した。
【0064】
結果:
37℃で、CEND-1は、リン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)中で1日当たり1.1%の速度で分解した(
図3)。37℃で、iRGDは、リン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)中で1日当たり3.3%の速度で分解した(
図3)。iRGDとCEND-1との分解速度の比率は3倍であり、CEND-1が、iRGDと比較して、リン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)中でより安定していることを示している(表1)。
【表1】
【0065】
37℃で、CEND-1は、プールされたヒト血漿中で1日当たり2.5%の速度で分解した(
図2)。37℃で、iRGDは、プールされたヒト血漿中で1日当たり4%の速度で分解した(
図4)。ヒト血漿中でのiRGDとCEND-1との分解速度の比率は1.6であり、CEND-1がiRGDよりもプールされたヒト血漿でより安定していることを示している(表1)。
【0066】
カルボキシペプチドY及びBは、酵素の供給元によって推奨されるとおり、それぞれの緩衝液中で25℃ではCEND-1もiRGDも分解しなかった(
図5)。CEND-1及びiRGDの純度は、酵素によって影響されなかった。アミノペプチダーゼは、酵素の供給元によって推奨される緩衝液中で25℃ではCEND-1もiRGDも分解しなかった(
図6)。CEND-1及びiRGDの純度は、酵素によって影響されなかった。
【0067】
結論:
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)では、CEND-1は、37℃でインキュベートした場合、iRGDと比較して、3倍(300%)安定していた。プールしたヒト血漿では、CEND-1は、37℃でインキュベートした場合、iRGDと比較して1.6倍(60%)安定していた。カルボキシペプチダーゼY及びBは、酵素の製造業者によって推奨される緩衝液中で25℃ではCEND-1またはiRGDを有意に分解しなかった。アミノペプチダーゼは、酵素の製造業者によって推奨される緩衝液中で25℃ではCEND-1またはiRGDを有意に分解しなかった。
【0068】
したがって、iRGDは、CEND-1と比較して、PBS及びプールされたヒト血漿では安定性が低い。CEND-1及びiRGDの両方の安定性は、使用されるカルボキシペプチダーゼ及びアミノペプチダーゼの影響を受けない。ペプチドの環化により、カルボキシペプチダーゼ及びアミノペプチダーゼに対する耐性を獲得し得る。CEND-1及びiRGDの線形形態は、カルボキシペプチダーゼ及びアミノペプチダーゼに対する耐性が低い場合がある。
【0069】
実施例2:マウスにおける薬物動態試験
この実施例は、in vivoで、半減期の増加を含む、iRGDと比べたCEND-1の有利な薬物動態特性を示している。CEND-1またはiRGDは、給餌したCD-1 ICRマウスに両方の群とも4.5mg/kgの公称用量を静脈内ボーラスで投与し、各群は4匹のマウスを用い、実際に投与された用量は、CEND-1は3.87mg/kg及びiRGDは4.33mgであった。CEND-1及びiRGDを、0.9mg/mlの濃度で生理食塩水に配合した。液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)を使用し、マウスのCEND-1及びiRGDの血漿レベルを異なる時点で測定した。その後、薬物動態パラメータを計算した。投与後1時間では、iRGDの平均血漿濃度は209ng/mlであったが、CEND-1の平均血漿濃度は535ng/mlであり、これは2.56倍の増加であった。半減期は、CEND-1は0.243時間、及びiRGDは0.167時間と計算され、これは、in vivoで従来のiRGDと比較して46%増加した半減期を有するCEND-1に対応する。この予想外の半減期の増加は、CEND-1の治療効果を著しく向上させることが期待される。
【表2】
【表3】
【0070】
実施例3:転移性膵臓癌患者において、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルと組み合わせたCEND-1の第I相試験(CEND-001試験と称する)
この実施例は、CEND-1が、ゲムシタビン及びnab-パクリタキセルとの組み合わせで良好な耐容性を示し、進行膵臓癌患者に臨床的有用性を提供したことを実証する。ベンチマーク試験と比較した場合、奏効率は2倍よりも高い。CEND-1は、本明細書では、
図2及びCAS登録番号2580154-02-3に記載されている化学構造に対応するiRGD類似体とも称される。
【0071】
材料:
CEND-1製剤は、化学純度の高い固相ペプチド合成技術を用いて製造された合成ペプチドである。注射用のCEND-1は、静脈内投与のための有効成分用量強度のバイアル当たり100mgとして供給される、滅菌された白色凍結乾燥粉末である。CEND-1注射は、賦形剤として酢酸ナトリウム三水和物及びマンニトールを含む、CEND-1薬剤物質からなる。
【0072】
方法:
オープンラベルの用量漸増多施設(オーストラリアでは3つの活性施設)試験では、CEND-1単剤療法の漸増療法での慣らし期間段階(1~7日)に続き、21日間の治療サイクルの1、8、15日目に、CEND-1とnab-パクリタキセル(125mg/m
2)及びゲムシタビン(1000mg/m
2)との組み合わせが行われた。患者はまず、nab-パクリタキセルの静脈内注入(30分(±3分)かけて125mg/m
2)を受ける。CEND-1は、nab-パクリタキセル後の生理食塩水洗浄の完了直後に、1分間(±30秒)かけてゆっくりとした静脈内プッシュとして適用できる用量レベルで静脈内投与される。ゲムシタビンの静脈内注入(30分(±3分)かけて1000mg/m2)は、可能な限り迅速に開始されるが、遅くともCEND-1投与から10分以内に開始される。
【表4】
【0073】
測定可能な転移性膵臓癌を有し、転移性疾患に対する従来の治療を受けていない患者(n=31)と、0~1のECOG PSとを含めた。主要評価項目は、安全性及び最適な生物学的投与量であり、副次的評価項目及び探索的評価項目には、奏効率、薬物動態及びバイオマーカーが含まれた。
【0074】
結果:29人の患者が最初の治療サイクルを完了し、奏効について評価された(データカットオフ、2020年4月27日)。用量制限毒性は観察されなかった。有害事象は概ね、nab-パクリタキセル及びゲムシタビンのものと一致していた。3人以上の患者に存在した唯一の薬物関連グレード(gr)3~4の有害事象(AE)は、18人(62%)の好中球減少症、及び5人(17%)の患者の貧血であった。治験者が評価したRECIST 1.1基準により、1人の患者は完全奏功(3.4%)、16人の患者は部分奏功(55%)、10人の患者は安定状態(34%)、及び2人の患者は進行性疾患(6.9%)を有した。CA19-9が上昇し、ベースライン後の評価が可能な患者の中で、患者の合計96%は少なくとも20%のベースラインからの低下を有し、74%は少なくとも90%の低下を有し、及び/またはCA19-9のレベルをベースラインに対して正規化した。
【0075】
結論:CEND-1をnab-パクリタキセル及びゲムシタビンと組み合わせて投与することは安全であり、用量制限毒性はない。グレード3及び4の有害事象の発生率は、類似の公開された試験の場合よりも低い。治療期間の中央値は、ベンチマーク試験よりも長く、奏効率は2倍を上回っていた。
【表5】
【0076】
以下の頻度は、括弧内のデータであるiMPACT3試験との比較である(Von Hoff et al.,2013)。
【0077】
有効性の結果-奏効率
評価可能なすべての患者(N=29)についての奏効率(ORR)は、59%(対23%)であった。16週間にわたる全疾患コントロール率は、79%(対48%)であった。
【0078】
図1は、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン第1.1版に従った標的病変のサイズのベースラインからの最大の変化率の瀑状プロットに対応する。合計16人の患者は部分奏功(55%)を示し、10人の患者は安定状態を有していた(34%)。
【0079】
CA19-9
合計24人の患者は、ベースラインCA19-9(37U/L以上)の上昇を示した。これらのうち、23人の患者は、少なくとも1つのオントリートメントCA19-9測定を受けた。患者の合計96%は少なくとも20%(対61%)のベースラインからの低下を有し、74%は少なくとも90%の低下を有し、及び/またはCA19-9のレベルをベースラインに対して正規化した。
【0080】
試験終了時に、中央値(IQR)PFSは9.7か月[6.2~11.6]であり、中央値OSは13.2か月[9.7~22.5]であった。
【0081】
治療曝露
安全性
以下の表2は、米国立がん研究所有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events、CTCAE)のバージョン5に従って観察された骨髄毒性の頻度を示す。この物質におけるグレード3~4の骨髄毒性の頻度は、好中球減少症で55%、白血球減少症で14%、血小板減少症で3%、貧血で24%であった。
【0082】
CEND1-001試験
CEND1-001試験では、上述したように、CEND-1を、1~7日間の慣らし期間の間に0.2mg/kg~3.2mg/kgの漸増用量で最初に投与し、その間に単剤の薬物動態及び安全性を評価した。
【0083】
コホート1aでは8人の患者:用量レベル1の1人の患者(CEND-1 0.2mg/kg)、用量レベル2の1人の患者(0.8mg/kg)、用量レベル3の3人の患者(1.6mg/kg)及び用量レベル4の3人の患者(3.2mg/kg)が存在した。コホート1bでは23人の患者、用量レベル3(1.6mg/kg)の11人の患者、用量レベル4(3.2mg/kg)の11人の患者、及び用量レベル4(3.2mg/kg)に割り当てられたが慣らし期間後に試験を中止し、CEND-1 0.2mg/kgでの慣らし投与のみを受けた1人の患者が存在した。
【0084】
登録された31人の患者のうち、29人の有効性を評価し、31人の薬物動態を評価し、30人の薬力学を評価した(CEND-1低用量群の2人の患者を除いて、1.6mg/kgCEND-1用量のN=14、3.2mg/kgCEND-1用量レベルのN=14)。試験の間に報告された10人の患者の死亡、原因疾患の進行によって引き起こされた9人(転移性膵臓癌)、及び左中大脳動脈脳卒中によって引き起こされた1人(最後のCEND-1投与後約3か月)の死亡があった。
【0085】
確認された客観的奏効(OR)は、17/29(58.6%)の患者(95%信頼区間=38.9、76.5)で発生した。全体として、進行を伴う患者の数は16/29(55.2%)であり、進行までの期間の中央値は、約9.7か月であった。
【0086】
これらの奏効率(OR)は、歴史的に比較可能な試験で達成されたものを明らかに上回り、顕著な改善を示す(表3)。nab-パクリタキセルについての第3相登録試験では、ゲムシタビン/nab-パクリタキセルの組み合わせで治療した第1期転移性膵臓癌患者における奏効率は23%であり、無増悪生存期間は5.5か月であった(Von Hoff et al.,2013)。
【表6】
【0087】
3.2mg/kgの用量レベルでの治療成績が改善する傾向がみられたため、これを、将来の研究で更に検討すべき用量として選択した。
【0088】
腫瘍バイオマーカー
5日目のサイクルでは、ベースラインからCA19-9が50%以上減少した患者の数は、20/22人の患者(90.9%)の高さまで増加した。
【0089】
1.6mg/kg及び3.2mg/kgの用量レベルでのCEND-1の腫瘍バイオマーカーの結果は、連続した投与サイクルでCA値が低下する傾向を示す。このことは、転移性癌を有する患者において、Nab-パクリタキセル及びゲムシタビンなどの薬剤と組み合わせたCEND-1の更なる開発を支持するものである。
【0090】
CEND-1の薬物動態
全体として、CEND-1の中央値Tmaxは、薬物動態サンプリングの全日にわたって0.067時間であった(最小値は0.03、最大値は0.55)。繰り返し投与で増加することなく、Cmaxには用量比例の増加があった。
【0091】
血漿CEND-1パラメータの評価により、曝露(AUC0-t、AUC0-6h及びAUC0-inf)は、Cmaxについて記載したのと同じパターンに従い、用量の増加と共に増加する傾向があることが示された。用量正規化された薬物動態パラメータ(AUC0-t/D、AUC0-6h/D及びAUC0-inf/D)は、訪問と投与との間で同程度であった。
【0092】
CEND-1は、薬物動態サンプリングの全日にわたって1.6時間と1.8時間の間の中央値T1/2で除去された。CL平均値は、106.8mL/h/kgと266.5mL/h/kgの間であった。終末における分布体積(Vz)平均値は、薬物動態サンプリングの全日にわたって220.9mL/kgと277.4mL/kgの間であった
【0093】
CEND-1安全性
用量増量中のCEND-1の慣らし期間中に、用量制限毒性の以下の定義が使用された。
【0094】
CEND-1単独療法:
慣らし期間における用量制限毒性は、以下のように定義された。
-5日以上続くグレード4の好中球減少症、または発熱及び/または感染を伴うグレード3もしくは4の好中球減少症
-グレード4血小板減少症(または、出血を伴うグレード3)
-グレード3または4の治療に関連する非血液学的毒性(最大治療を行っても72時間超で続くグレード3の悪心、嘔吐または下痢は用量制限毒性に該当し、治療が不十分な場合は、試験の実施が不適切であるため、用量制限毒性基準の例外にはならない)
-治療下で発現した有害事象または関連する重度の実験室異常による2週間超の投与遅延。
【0095】
用量制限毒性またはグレード3または4の有害事象は、試験の単一薬剤の慣らし部分の間は、いずれのCEND-1用量レベルでも存在せず、CEND-1に起因する臨床的に有意な有害事象も報告されなかった。
【0096】
本試験の組み合わせ部分の間、用量制限毒性の以下の定義を使用した。
-nab-パクリタキセル及びゲムシタビンの添付文書から予想される副作用よりも重度であるか、持続時間が長いか、または頻度が高い任意の副作用。
-上記の単剤療法の用量制限毒性の定義に合致する、nab-パクリタキセル及びゲムシタビンの添付文書に含まれない任意の副作用。
【0097】
試験中に用量制限毒性は報告されなかった。大部分の治療下で発現した有害事象はCTCAEグレード1または2であった。各グレードで報告された治療下で発現した有害事象の数は、CEND-1の用量レベル間で同程度であった。全体として、治療下で発現した有害事象の重症度は、CEND-1の用量では増加しなかった。標準治療による最も一般的なCTCAEグレード3~4の治療下で発現した有害事象は、血液及びリンパ系の障害であった。
【0098】
実施例4:膵臓癌、結腸癌及び虫垂癌におけるネオアジュバントFOLFIRINOXベースの治療法(CENDIFOX)と組み合わせたCEND-1の試験
コホート1 膵臓癌
アーカイブされた組織を入手できない場合、組織免疫プロファイルに関する生検。Folfirinoxを3サイクル注入した後、2回目の組織免疫プロファイルのための再生検を行う。Folfirinox+CEND1を3サイクル注入。最後の注入の72時間後に参加者は手術を受ける。
【0099】
CEND-1による治療は、14日に1回(または、4サイクル目から開始して各14日サイクルの1日目)の静脈内(IV)注入として(静脈内の針を介して)クリニックで投与される。FOLFIRINOXは、以下のように特定の順序で投与される複数の異なる薬剤を含む、化学療法治療レジメンの名称である。
【0100】
これらの薬剤はすべて、14日に1回(または、各14日サイクルの1日目)の静脈内(IV)注入として(静脈内の針を介して)クリニックで投与される。
オキサリプラチン-用量は85mg/m2であり、注入には約2時間かかる。その後
ロイコボリン-用量は400mg/m2である-これをイリノテカン(以下)と同時に投与し、注入には約1.5時間かかる。
イリノテカン-用量は180mg/m2である-これをロイコボリン(上記)と同時に投与し、注入には約1.5時間かかる。
その後
フルオロウラシル-用量は2400mg/m2である-この注入には、自宅で行う静脈ポンプを使用して46~48時間(2日間)かかる。
【0101】
コホート2 腹膜転移
アーカイブされた組織を入手できない場合、組織免疫プロファイルに関する生検。Folfirinox+パニツムマブ(RAS/BRAFの場合)を3サイクル注入した後、2回目の組織免疫プロファイルのための再生検を行う。Folfirinox+パニツムマブ(RAS/BRAF陽性の場合)及びCEND1を3サイクル注入。最後の注入の72時間後に参加者は手術を受ける。
【0102】
CEND-1による治療は、14日に1回(または4サイクルから開始して各14日サイクルの1日目)の静脈内(IV)注入として(静脈内の針を介して)クリニックで投与される。身体の特定の領域に広がったがんで、「RAS/BRAF野生型」と称される腫瘍内に特定の遺伝子を有する、治療を必要とする患者は、CEND-1及びFOLFIRINOXに加えて、治療有効量のパニツムマブを投与される(上記のとおり)。
【0103】
FOLFIRINOXは、特定の順序で投与される複数の異なる薬剤を含む、化学療法治療レジメンの名称である。これらの薬剤はすべて、以下のように、14日に1回(または、各14日サイクルの1日目)の静脈内(IV)注入として(静脈内の針を介して)クリニックで投与される。
オキサリプラチン-用量は85mg/m2であり、注入には約2時間かかる。その後
ロイコボリン-用量は400mg/m2である-これをイリノテカン(以下)と同時に投与し、注入には約1.5時間かかる。
イリノテカン-用量は180mg/m2である-これをロイコボリン(上記)と同時に投与し、注入には約1.5時間かかる。
その後
フルオロウラシル-用量は2400mg/m2である-この注入には、自宅で行う静脈ポンプを使用して46~48時間(2日間)かかる。
【0104】
コホート3 少数転移結腸癌
アーカイブされた組織を入手できない場合、組織免疫プロファイルに関する生検。Folfirinox+パニツムマブ(RAS/BRAFの場合)を3サイクル注入した後、2回目の組織免疫プロファイルのための再生検を行う。Folfirinox+パニツムマブ(RAS/BRAF陽性の場合)及びCEND1を3サイクル注入。最後の注入の72時間後に参加者は手術を受ける。
【0105】
CEND-1による治療は、14日に1回(または、4サイクル目から開始して各14日サイクルの1日目)の静脈内(IV)注入として(静脈内の針を介して)クリニックで投与される。身体の特定の領域に広がったがんで、「RAS/BRAF野生型」と称される腫瘍内に特定の遺伝子を有する、治療を必要とする患者は、CEND-1及びFOLFIRINOXに加えて、治療有効量のパニツムマブを投与される(上記のとおり)。
【0106】
FOLFIRINOXは、特定の順序で投与される複数の異なる薬剤を含む、化学療法治療レジメンの名称である。これらの薬剤はすべて、以下のように、14日に1回(または、各14日サイクルの1日目)の静脈内(IV)注入として(静脈内の針を介して)クリニックで投与される。
オキサリプラチン-用量は85mg/m2であり、注入には約2時間かかる。その後
ロイコボリン-用量は400mg/m2である-これをイリノテカン(以下)と同時に投与し、注入には約1.5時間かかる。
イリノテカン-用量は180mg/m2である-これをロイコボリン(上記)と同時に投与し、注入には約1.5時間かかる。
その後
フルオロウラシル-用量は2400mg/m2である-この注入には、自宅で行う静脈ポンプを使用して46~48時間(2日間)かかる。
【0107】
結果は、以下のうちの1つ以上について90%信頼区間を有する好ましい結果を示す:全生存(OS)は生存期間の中央値を用いて報告され、無病生存期間(DFS)は生存期間の中央値を用いて報告され、奏効率(ORR)、RO切除率(RORR)及び/または病理学的奏効率(PCR)を用いて報告される。
【国際調査報告】