(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ポリアミド及びガラス繊維に基づく組成物並びに衛生及び水管理の分野におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240412BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240412BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/14
C08L77/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567239
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2022050827
(87)【国際公開番号】W WO2022234222
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サバード, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】グラッソン, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】コケト, クリオ
(72)【発明者】
【氏名】ダン, パトリック
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL011
4J002CL01W
4J002CL01X
4J002CL031
4J002CL03W
4J002CL03X
4J002DA037
4J002DE137
4J002DJ047
4J002DL006
4J002EJ017
4J002FA046
4J002FD017
4J002FD027
4J002FD037
4J002FD077
4J002FD097
4J002FD137
4J002FD167
4J002FD177
4J002GG01
4J002GM00
(57)【要約】
本発明は、重量で、
a)20%~60%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)40%~75%のガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
を含む成形組成物であって、
組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しく、
ただし、非晶質ポリアミド及び微結晶性ポリアミドを除く、
成形組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量で、
a)20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した場合、1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維であって、
円形断面のガラス短繊維であり、120~350μmの繊維長を有する、ガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
を含む、成形組成物であって、
前記組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しく、
ただし、非晶質ポリアミド及び微結晶性ポリアミドを除く、
成形組成物。
【請求項2】
少なくとも2つの長鎖脂肪族ポリアミドが組成物中に存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
長鎖脂肪族ポリアミドが、
少なくとも1つのC
9~C
18、優先的にはC
10~C
18、特にC
10~C
12の、アミノ酸の、又は
少なくとも1つのC
9~C
18、優先的にはC
10~C
18、特にC
10~C
12の、ラクタムの、又は
少なくとも1つのC
4~C
36、優先的にはC
6~C
18、優先的にはC
6~C
12、より優先的にはC
10~C
12の、少なくとも1つの脂肪族ジアミンCaと、少なくとも1つのC
4~C
36、優先的にはC
6~C
18、優先的にはC
6~C
12、より優先的にはC
10~C
12の、ジカルボン酸Cbとの、
又はそれらの混合物の、
重縮合によって得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
長鎖脂肪族ポリアミドが、
少なくとも1つのC
9~C
18、優先的にはC
10~C
18、特にC
10~C
12の、アミノ酸の、又は
少なくとも1つのC
9~C
18、優先的にはC
10~C
18、特にC
10~C
12の、ラクタムの
重縮合から得られることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記長鎖ポリアミドが、PA1010、PA1012、PA1212、PA11及びPA12、特にPA11及びPA12から選択されることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記長鎖ポリアミドがPA11及びPA12から選択されることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの添加剤が、充填剤、染料、安定剤、可塑剤、界面活性剤、核形成剤、顔料、光沢剤、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、天然ワックス、レーザマーキング用添加剤、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の組成物。
【請求項8】
60℃以下の温度における、水、特に飲料水の衛生、輸送又は分配の分野のための物品の製造のための、請求項1から7の一項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
物品が、容器、導管、フィッティング、コネクタ、クイックコネクタ、スクリュー、流れ制御装置、流れ制御装置の要素、バルブ及びフィルタ要素並びに構造部品から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物の使用。
【請求項10】
物品が、タイプ1A試験片に対して規格ISO 527:2012に従って23℃で測定した、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して改善された機械的特性を有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の組成物の使用。
【請求項11】
物品が、タイプ1A試験片に対して規格ISO 527:2012に従って60℃で測定した、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して改善された機械的特性を有することを特徴とする、請求項8から10の一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
物品が、ISO 307:2007に従って決定した場合に、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して、改善されたクリープ強度を有することを特徴とする、請求項8から11の一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
物品が射出成形によって製造されることを特徴とする、請求項8から12の一項に記載の使用。
【請求項14】
請求項1から7の一項に記載の組成物で射出成形することによって得られる物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド及びガラス繊維に基づく成形組成物、並びに60℃以下の温度における、水、特に飲料水の衛生、輸送又は分配の分野におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
真鍮は衛生の分野で広く使用されている材料であるが、この材料は高価である。その使用はまた、水、特に飲料水への重金属の放出に関与する。これらの理由から、真鍮はプラスチック材料(PPSU、PVDF、PAタイプ)に置き換えられる。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2010/0249307号明細書は、飲料水の分野で使用するためのガラス繊維で強化されたポリアミド組成物を記載しており、当該ポリアミドは、特に3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(BMACM、MACM又はBと呼ばれる)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン一般的に(PACM又はPと呼ばれる)及びイソホロンジアミン(IPDと呼ばれる)等の脂環式ジアミンに基づく、半結晶性脂肪族ポリアミドと非晶質透明ポリアミドとの混合物である。
【0004】
米国特許出願公開第2010237271号明細書は、飲料水の分野で使用するためのガラス繊維で強化されたポリアミド組成物を記載しており、当該ポリアミドは、半結晶性脂肪族ポリアミドと、B9-36、B9-36/P9-36、12/BI及び12/BTから選択される非晶質透明ポリアミドとの混合物である。
【0005】
国際特許出願である国際公開第2018/011291号には、ポリアミドと、フェノール及びカルボニル化合物の縮合生成物とを含む組成物が記載されている。
【0006】
これらの特許出願はいずれも、飲料水への浸漬の前又は後に、60℃以下の温度で改善された機械的特性、特にクリープ強度又は破断時応力に関して改善された機械的特性を有する長鎖脂肪族ポリアミド及びガラス繊維に基づく成形組成物を記載していない。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明は、重量で、
a)20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%の、ガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
を含む、成形組成物に関し、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しい。
【0008】
したがって、本発明者らは、特定の範囲のガラス繊維を含む溶液中で特定のインヘレント粘度を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドを選択することにより、射出成形後に、60℃以下の温度で改善された機械的特性、特に飲料水への浸漬前後のクリープ強度又は破断時の応力に関して改善された機械的特性を示す組成物を構成することが可能になることを見出した。
【0009】
溶液(iv)のインヘレント粘度は、溶媒が硫酸ではなくm-クレゾールであり、濃度が0.5重量%であり、温度が20℃であるという点で修正された規格ISO 307:2007に従って決定される。
【0010】
本発明による成形組成物は、例えば、射出成形、射出ブロー成形、膨張成形及び回転成形によって形質転換された組成物である。
【0011】
脂肪族ポリアミドについて
成形組成物は、20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上の少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドを含む。
【0012】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、規格ISO 1874-1:2011 “Plastics-Polyamide(PA)Moulding and Extrusion Materials-Part1:Designation”、特に頁3(表1及び2)に記載されており、当業者に周知である。
【0013】
ポリアミドは、ホモポリアミド若しくはコポリアミド又はそれらの混合物であり得る。
【0014】
当該ポリアミドは、有利には、半結晶性ポリアミド又はコポリアミドである。
【0015】
本発明の目的のために、「半結晶性」という用語は、規格ISO 11357-3:2013によるDSCにおける融点(Tm)と、2013の規格ISO 11357-3に従って測定したDSCにおける20K/分の速度での冷却工程中の結晶化エンタルピーとを有し、20J/gより大きく、好ましくは30J/gより大きい(コ)ポリアミドを示す。
【0016】
ポリアミドは、
少なくとも1つのC9~C18、優先的にはC10~C18、より優先的にはC10~C12の、アミノ酸の、又は
少なくとも1つのC9~C18、優先的にはC10~C18、より優先的にはC10~C12の、ラクタムの、又は
少なくとも1つのC4~C36、優先的にはC6~C18、優先的にはC6~C12、より優先的にはC10~C12の、ジアミンCaと、少なくとも1つのC4~C36、優先的にはC6~C18、優先的にはC6~C12、より優先的にはC10~C12の、ジカルボン酸Cbとの、
又はその混合物の重縮合によって得られる反復単位に由来し、
ただし、繰り返し単位中の窒素原子当たりの炭素原子の数は9以上、特に10以上であることを条件とする。
【0017】
有利には、長鎖脂肪族ポリアミドは、
少なくとも1つのC9~C18、優先的にはC10~C18、特にC10~C12の、アミノ酸、又は
少なくとも1つのC9~C18、優先的にはC10~C18、特にC10~C12のラクタム
の重縮合から得られる。
【0018】
C9~C18アミノ酸は、特に9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、10-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸及び11-アミノウンデカン酸並びにそれらの誘導体、特にN-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸である。
【0019】
C9~C18ラクタムは、特にラウリルラクタムである。
【0020】
当該少なくとも1つのC4~C36ジアミンCaは、特に、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン及び1,18-オクタデカメチレンジアミン、オクタデセンジアミン、エイコサンジアミン、ドコサンジアミン並びに脂肪酸から得られるジアミンから選択されてもよい。
【0021】
有利には、当該少なくとも1つのジアミンCaはC6~C18であり、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン及び1,18-オクタデカメチレンジアミンから選択される。
【0022】
当該少なくとも1つのC4~C36ジカルボン酸Cbは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、オクタデセンジアミン、エイコサンジアミン、ドコサンジアミン、及び脂肪酸から得られるジアミンから選択され得る。
【0023】
有利には、当該少なくとも1つのジカルボン酸CbはC6~C18であり、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸及びオクタデカン二酸から選択される。
【0024】
特に、長鎖脂肪族ポリアミドは、
ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド1012(PA1012)、ポリアミド1212(PA1012)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、又はそれらの混合物、又はそれらのコポリアミドから選択される。
【0025】
有利には、ポリアミドは、特にPA11及びPA12である。
【0026】
一実施形態において、当該長鎖脂肪族ポリアミドは、5/95~95/5の重量比範囲の2つのポリアミドの混合物である。
【0027】
有利には、当該混合物は、窒素原子当たりの炭素原子の数が同じであるが、1.3を超える2つのポリアミドのうちの一方の溶液中のインヘレント粘度を有するが、混合物が1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する条件を満たす2つの同一のポリアミドの混合物である。
【0028】
ガラス繊維について
ガラス繊維は、組成物の総重量に対して40%~75%、特に50%~75%、特に60%~70%の重量で存在する。
【0029】
ガラス繊維は、中実及び/又は中空であり得、有利には、それらは固体である。
【0030】
ガラス繊維は、有利には短い。
【0031】
ガラス短繊維は、組成物の使用前に、好ましくは2~13mm、好ましくは3~8mmの長さを有する。
【0032】
有利には、ガラス短繊維は、120~350μmの繊維長を有する。
【0033】
この120~350μmの繊維長は、化合物について測定される。
【0034】
ガラス短繊維は、円形又は非円形断面であってもよい。
【0035】
円形断面の繊維は、その円周上の任意の点に繊維の中心と等しい距離を有する繊維として定義され、したがって完全又はほぼ完全な円を表す。
【0036】
したがって、この完全又はほぼ完全な円を有さないガラス繊維は、非円形断面の繊維として定義される。
【0037】
非円形断面の繊維の例は、限定されないが、例えば楕円形、卵形又は繭形、星形繊維、フレーク状繊維、平坦繊維、十字形、多角形及びリングを有する非円形繊維である。
【0038】
ガラス繊維は、
-4μm~25μm、好ましくは4μm~15μmの直径を有する円形断面のいずれか、
-又は、2~8、特に2~4のL/D比(Lは繊維の断面の最大寸法を表し、Dは当該繊維の断面の最小寸法を表す)を有する非円形断面
であり得る。L及びDは、走査電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0039】
有利には、ガラス繊維は円形である。
【0040】
添加剤について
少なくとも1つの添加剤は、組成物の総重量に対して0重量%~5重量%、特に0.1重量%~5重量%で存在していてもよい。
【0041】
添加剤は、充填剤、染料、安定剤、可塑剤、界面活性剤、核形成剤、顔料、光沢剤、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、天然ワックス、レーザマーキング用添加剤、及びそれらの混合物から選択される。
【0042】
例として、安定剤は、UV安定剤、有機安定剤、又はより一般的には有機安定剤の組み合わせ、例えばフェノールタイプの抗酸化剤(例えば、Ciba-BASF製のIrganox(登録商標)1010のタイプのもの)であってもよい。
【0043】
可塑剤の混合物を使用することは、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0044】
例として、充填剤は、カーボンブラック、タルク、顔料及び金属酸化物(酸化チタン)から選択されてもよい。
【0045】
成形組成物について
本明細書を通して、組成物の全てのパーセンテージは重量で与えられる。
【0046】
成形組成物は、重量で、
a)20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%の、ガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
を含み、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しく、
ただし、非晶質ポリアミド及び微結晶性ポリアミドを除く。
【0047】
本発明の目的のために、非晶質ポリアミドは、1つのみのガラス転移温度(融点なし(Tm))を有する非晶質透明ポリアミド、又は規格ISO 11357-3:2013に従って測定される示差走査熱量測定(DSC)における20K/分の速度での冷却工程中の結晶化エンタルピーが20J/g未満であるようなガラス転移温度及び融点を有する非常に低い結晶化度を有するポリアミドを意味する。これらのポリアミドについて規格ISO 11357-2:2013に従って20K/分の加熱速度でDSCによって測定したガラス転移温度(Tg)は75℃を超える。
【0048】
本発明の目的のために、微結晶性ポリアミドは、規格ISO 11357-3:2013に従って測定される示差走査熱量測定(DSC)において20K/分の速度で20J/g未満である冷却工程中の結晶化エンタルピーを有する。
【0049】
したがって、微結晶性ポリアミドは、当該成形組成物から除外される。
【0050】
非晶質ポリアミドは、例えば、MACM、PACM及びIPD等の少なくとも1つの脂環式ジアミンに基づくポリアミドである。
【0051】
したがって、非晶質ポリアミドは、当該成形組成物から除外される。
【0052】
したがって、混合物の形態の微結晶性ポリアミド及び非晶質ポリアミドは、当該成形組成物から除外される。
【0053】
有利には、脂肪族以外のポリアミド、特に半結晶性ポリアミドは、組成物から除外される。
【0054】
有利には、フェノールとカルボニル化合物との縮合生成物は、組成物から除外される。
【0055】
有利には、脂肪族以外のポリアミド、特に半結晶性ポリアミド、並びにフェノール及びカルボニル化合物の縮合生成物は、組成物から除外される。
【0056】
一実施形態において、成形組成物は、(重量で)、
a)20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%の、ガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
からなり、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しい。
【0057】
組成物が「からなる」場合、組成物は構成成分a)、b)及びc)のみを含有し得るので、排除はもはや必要ではないことは非常に明白である。
【0058】
第1のバリアントでは、成形組成物は、重量で、
a)20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
を含み、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しく、
ただし、非晶質ポリアミド及び微結晶性ポリアミドを除く。
【0059】
この第1のバリアントの一実施形態では、成形組成物は、重量で、
a)20%~49.9%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維、及び
c)0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
を含み、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しく、
ただし、非晶質ポリアミド及び微結晶性ポリアミドを除く。
【0060】
この第1のバリアントの別の実施形態では、組成物は、
a)20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
からなり、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しい。
【0061】
この第1のバリアントのなお別の実施形態では、組成物は、
a)20%~49.9%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維、及び
c)0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
からなり、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しい。
【0062】
第2のバリアントでは、成形組成物は、重量で、
a)25%~40%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)60%~70%のガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
を含み、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しく、
ただし、非晶質ポリアミド及び微結晶性ポリアミドを除く。
【0063】
この第2のバリアントの一実施形態では、成形組成物は、重量で、
a)25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)60%~70%のガラス繊維、及び
c)0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
を含み、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しく、
ただし、非晶質ポリアミド及び微結晶性ポリアミドを除く。
【0064】
この第2のバリアントの別の実施形態では、成形組成物は、
a)25%~40%、特に25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)60%~70%のガラス繊維、及び
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
からなり、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しい。
【0065】
この第2のバリアントのなお別の実施形態では、成形組成物は、
a)25%~39.9%の、窒素原子当たりの炭素原子数が9以上、特に10以上である、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
20℃の温度で規格ISO 307:2007に従って測定した1.3以下、特に1.25以下の溶液中のインヘレント粘度を有する、少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミド、
b)60%~70%のガラス繊維、及び
c)0.1重量%~5重量%の少なくとも1つの添加剤
からなり、
当該組成物の各構成成分の割合の合計は100%に等しい。
【0066】
別の態様によれば、本発明は、60℃未満の温度での水、特に飲料水の衛生、輸送又は分配の分野のための物品の製造のための上記で定義された組成物の使用に関する。
【0067】
この「使用」段落については、上述した全ての実施形態が有効である。
【0068】
「水の衛生、輸送又は分配の分野のための物品」という表現は、例えば、水のある部屋、特にバスルーム、キッチン、洗濯室、トイレ等で使用される全ての物品を示す。この物品は、弁要素、配管要素、供給要素、排出要素及び接続要素を意味する。この物品は、容器、導管、フィッティング、コネクタ、クイックコネクタ、スクリュー、流れ制御装置、流れ制御装置の要素、バルブ、フィルタ要素、及び構造部品であってもよい。
【0069】
本発明における水の輸送又は分配は、飲料水であろうとそうでなくても、60℃以下の温度の水に関する。
【0070】
一実施形態では、物品は、容器、導管、フィッティング、コネクタ、クイックコネクタ、スクリュー、流れ制御装置、流れ制御装置の要素、バルブ及びフィルタ要素並びに構造部品から選択される。
【0071】
有利には、物品は、タイプ1A試験片に対して規格ISO 527:2012に従って23℃で測定した、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して改善された機械的特性を有する。
【0072】
有利には、物品は、タイプ1A試験片に対して規格ISO 527:2012に従って60℃で測定した、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して改善された機械的特性を有する。
【0073】
有利には、物品は、タイプ1A試験片に対してISO 899-1:2017に従って決定されるように、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して、改善されたクリープ強度を有する。
【0074】
より有利には、物品は、タイプ1A試験片について規格ISO 527:2012に従って23℃及び60℃で測定した、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して、改善された機械的特性を有する。
【0075】
更により有利には、物品は、タイプ1A試験片について規格ISO 527:2012に従って23℃及び60℃で測定して、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して改善された機械的特性、並びにタイプ1A試験片についてISO 899-1:2017に従って測定して、溶液中のインヘレント粘度が1.3を超える物品と比較して改善されたクリープ強度を有する。
【0076】
有利には、物品は射出成形によって製造される。
【0077】
更に別の態様によれば、本発明は、上で定義した組成物を用いて射出成形することによって得られる物品に関する。
【実施例】
【0078】
本発明の組成物の調製及び機械的特性:
表1の組成物は、ポリアミドペレットをガラス繊維及び場合により添加剤と溶融混合することによって調製した。
【0079】
PA11及びPA12に基づく組成物を、250℃で平坦な温度プロファイル(T°)を有する直径40mmの共回転二軸スクリュー押出機で化合することによって処理した。スクリュー速度は300rpmであり、スループットは100kg/hである。
【0080】
半結晶性脂肪族ポリアミド及び場合により添加剤は、メインホッパーを介して添加される。
【0081】
次いで、以下の規格に従って組成物の特性を研究するために、組成物を(Engelブランド)射出成形機で設定温度260℃及び金型温度70℃でダンベルの形態で成形した。
【0082】
引張弾性率は、タイプ1Aダンベルの規格ISO 527-1:2012に従って23℃及び60℃で測定した。
【0083】
破断時応力も、この同じ規格ISO 527-1:2012に従って23℃及び60℃で測定した。インストロン5966型機を用いる。クロスヘッド速度は、弾性率の測定のために1mm/分に固定し、応力の測定のために5mm/分に固定した。
【0084】
クリープ強度は、規格ISO 899-1:2017に従って、一定応力下で60℃のタイプA試験片で試験した。
【0085】
試料は、乾燥しているか、又は90℃の飲料水に浸漬した後に試験した。
【0086】
結果を表2に示す。
[表1]
E=本発明による組成物
CE=反例
(直径10μmの円形断面の)FoodContact(商標)295-10ガラス繊維は、Owens Corning社によって販売されている。
(7×28μm断面の非円形断面の)CSG3PA820ガラス繊維は、Nitto Boseki社から販売されている。
PA11及びPA12は、本出願人の会社によって製造される。
ステアリン酸カルシウムはGreven社によって販売されている。
Licowax(登録商標)Eは、Clariant社から販売されている。
Irganox(登録商標)1010は、BASFによって販売されている。
[表2]
【0087】
本発明による組成物E6は、乾燥状態で23℃及び60℃で決定され、90℃の飲料水に浸漬した後のCE2と比較して、非常に著しく改善された機械的特性を有する。60℃におけるクリープ強度もまた、>1.3のインヘレント粘度を有するポリアミドマトリックスから構成される製剤と比較して著しく改善される。
【国際調査報告】