(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】マイクロニードル要素を製造するための方法及び装置、並びにマイクロニードル要素
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
A61M37/00 505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567240
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2022062657
(87)【国際公開番号】W WO2022238414
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021112136.1
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ギャノン,ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】アールホーファー,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB05
4C267BB23
4C267BB40
4C267CC05
4C267FF10
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、マイクロニードル要素(22, 23)を製造するための方法に関し、方法は、製造するマイクロニードル要素(22, 23)のための型要素(10)を準備する工程、型要素(10)に第1の配合物(20)を充填する工程、第1の配合物(20)を硬化させる工程、及び硬化中に第1の配合物(20)に圧力を加える工程を有する。本発明は更に、マイクロニードル要素(22, 23)、及びマイクロニードル要素(22, 23)を製造するための装置(100) に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマイクロニードルを有するマイクロニードル要素(22, 23)を製造するための方法であって、
製造するマイクロニードル要素(22, 23)のための型要素(10)を準備する工程、
前記型要素(10)に第1の配合物(20)、特にバッキング配合物を充填する工程、
前記第1の配合物(20)を硬化させる工程、及び
硬化中に前記第1の配合物(20)を加圧する工程
を有する、方法。
【請求項2】
前記型要素(10)に前記第1の配合物(20)を充填する工程の前に、前記型要素(10)に第2の配合物(14)、特に先端部配合物を充填する更なる工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記型要素(10)に前記第2の配合物(14)を充填する工程の後に、前記第2の配合物(14)を硬化させて、特に同時的に加圧する更なる工程を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記型要素(10)に前記第1の配合物(20)を充填する工程の前であって、前記型要素に前記第2の配合物(14)を充填する工程の後に、
前記型要素に少なくとも1つの追加の配合物(26)、特に中間配合物を充填する更なる工程、及び好ましくは、
前記少なくとも1つの追加の配合物(26)を硬化させて、特に同時的に加圧する更なる工程
を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記型要素(10)に前記第1の配合物を充填するとき、前記第1の配合物(20)が前記型要素(10)から出るように前記型要素(10)を過剰充填する、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
硬化中に乾燥、特に空気乾燥を行う、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
硬化中に温度を適用する、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
過圧、並びに/又は、特に押込器(32)及び/若しくはローラを有する押圧装置によって加圧を行う、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
加圧及び/又は硬化を、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも60分間、特に好ましくは少なくとも90分間に亘って行う、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記型要素(10)は、複数のマイクロニードルネガ型を有しており、前記複数のマイクロニードルネガ型は、特にマイクロアレイネガ型を形成している、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記第1の配合物(20)が前記複数のマイクロニードルネガ型を覆うように、前記型要素(10)に前記第1の配合物(20)を充填する、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載の方法によって得られる、マイクロニードル要素(22, 23)、特にマイクロニードル又はマイクロアレイ。
【請求項13】
特に請求項1~12のいずれか1つに記載の方法に応じて、少なくとも1つのマイクロニードルを有するマイクロニードル要素(22, 23)を製造するための装置(100) であって、
製造するマイクロニードル要素(22, 23)のための型要素と、
特に過圧チャンバ(34)を有する加圧装置(30)と、
好ましくは、特に熱及び/又は空気流を発生させるための乾燥装置(38)と
を備えており、
前記加圧装置(30)は、前記型要素(10)に圧力を加えるように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのマイクロニードルを有するマイクロニードル要素を製造するための方法及び装置、並びにマイクロニードル要素に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロアレイなどのマイクロニードル要素は、一般的にはパッチ、プラスタなどの支持要素に配置されているか又は支持要素に連結されている複数のマイクロニードルを有している。他方では、マイクロニードル要素は、1つのマイクロニードルであってもよく又は複数の個別のマイクロニードルであってもよい。一般に、マイクロアレイは多数のマイクロニードルを有しており、マイクロニードルの長さは、マイクロニードルが患者の皮膚に押し込まれたとき、可能であればニードル先端部が神経及び血管に接触しない程度までしかマイクロニードルが皮膚に入り込まないような長さである。ここで、マイクロニードルは有効成分、例えば薬物を含む。対応する有効成分がマイクロニードルの上側に含められてもよく、又はマイクロニードル内に含められてもよい。有効成分がマイクロニードル内に含まれる場合、マイクロニードル又はマイクロニードルの部品は、一般に患者の皮膚で溶解する材料で形成される。溶解するマイクロニードルは特に、有効成分を含む、及び/又は有効成分を含まない、好ましくは有効成分で構成されている一又は複数の配合物を含んでもよい。
【0003】
マイクロニードル及び/又はマイクロアレイは、例えば凹部として形成された複数の型開口部を有するダイを使用して製造される。これらの型開口部は、製造するマイクロニードル及び/又は製造するマイクロアレイのネガ型としての機能を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロニードル要素の従来の製造方法が
図1a~1fに示されている。
図2は、
図1f(II)の詳細図である。
図1aに示されているように、ダイ10、例えばシリコーンダイが出発点になる。ダイ10の型開口部12に、まず、先端部配合物とも称される液体配合物14、特に有効成分を含む配合物を充填する(
図1b)。これにより、型開口部12の先端部 (
図1c)に配合物14が充填される。次に、先端部配合物14を乾燥により硬化させて、製造するマイクロニードルの先端部16を形成する。乾燥により、特に配合物の水及び/又はエタノールなどの溶媒が減少するため、体積が減少する。
図1dに示されているように、体積の減少により、先端部配合物14の表面18が平坦でなくなり、例えば凹状になり得る。先端部配合物14が硬化した後、型開口部12に、バッキング配合物とも称される更なる配合物20、特に有効成分を含まない配合物を充填する(
図1e)。その後、バッキング配合物20を、特に乾燥によって硬化させる。バッキング配合物20及び先端部配合物14を結合する。結合して硬化した配合物14, 20は共にマイクロニードル22’を形成する(
図1f)。マイクロニードル22’を、例えば粘着ホイルにより離型することができる。バッキング配合物20を充填するとき、バッキング配合物20と先端部配合物14との間にエアポケット24’が生じることが多い。図面には概略的に示されている。例えば、
図1b及び
図1eに示されている液滴状の配合物14, 20は、(
図1c及び
図1fでは)それ相応に充填されるように十分大きく示されない場合がある。また、個々の液滴による充填は概略的に示されているだけである。例えば、複数の液滴及び/又は配合物噴出物による充填が更に可能である。例えば、図示されている滴下式充填の代わりに又は滴下式充填に加えて、流入式充填を使用することが更に可能である。
【0005】
エアポケット24’(例えば
図2参照)は、複数の問題を引き起こす場合がある。一方では、バッキング配合物20と先端部配合物14とが結合しないか又はバッキング配合物20と先端部配合物14との結合が不十分である場合がある。他方では、例えば、離型、取り扱い又は使用中に破損が発生するような不安定性が存在する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、製造するマイクロニードル要素の品質、特に安定性を高める、少なくとも1つのマイクロニードルを有するマイクロニードル要素を製造するための方法及び装置を提供することである。本発明の別の目的は、品質、特に安定性を高めるマイクロニードル要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1に係る方法、請求項13に係る装置、及び請求項12に係るマイクロニードル要素によって達成される。
【0008】
本発明に係る方法は、マイクロニードル要素を製造するための方法であり、製造するマイクロニードル要素は、少なくとも1つのマイクロニードルを有する。本発明に係る方法は、特にマイクロアレイを製造するための方法であり、製造するマイクロニードル要素は、複数のマイクロニードルが特に支持要素によって連結されているマイクロアレイであることが好ましい。他方では、本発明に係る方法が、マイクロニードル、特に個々のマイクロニードルを製造するための方法であることが更に可能である。この方法の第1の工程では、製造するマイクロニードル要素のための型要素を準備する。型要素は特に、例えばシリコーンを含むダイである。型要素は、製造するマイクロニードル要素のためのネガ型として形成された少なくとも1つの型開口部を有していることが好ましい。この方法の更なる工程では、型要素に第1の配合物、特にバッキング配合物を充填する。型要素に第1の配合物を充填した後、第1の配合物を硬化させる。硬化と少なくとも部分的に同時に、第1の配合物を硬化中に加圧する。型開口部が配合物で実質的に完全に充填されるように、第1の配合物の充填を行うことが好ましい。硬化中の加圧により、ガスポケット、例えばエアポケットが配合物から抜け得る、及び/又はガスポケットが導入され得ないことが特に有利である。このようにして、より安定したマイクロニードル要素を製造することができる。型開口部が筒形状又は錐形状であることが好ましい。特に、筒形状又は錐形状の型開口部の基部領域は円形状、楕円形状、矩形状又は正方形状である。型開口部が錐形状を有する場合、型開口部は更に錐台とすることができる。型開口部の断面は先細であることが好ましい。特に、型開口部は長手方向に対称であり、特に回転対称である。型要素が気密性又はガス透過性を有することが好ましい。
【0009】
1つの配合物のみを導入して、ひいては特に製造するマイクロニードル要素全体を形成することが可能である。しかしながら、製造するマイクロニードル要素を、複数の、特に少なくとも2つの配合物から製造することが好ましい。従って、第1の配合物を充填する前に、型要素に第2の配合物、特に先端部配合物を充填することが好ましい。従って、特にi.型要素を準備する、ii.型要素に第2の配合物を充填する、iii.型要素に第1の配合物を充填する、iv.第1の配合物及び好ましくは第2の配合物を硬化させて同時的に加圧する順番で行うことが好ましい。第1の配合物を硬化させて同時的に加圧することにより、ガスポケット、例えばエアポケットが第1の配合物と第2の配合物との間から抜け得ることが有利に可能である。加えて又は或いは、ガスポケットが第1の配合物と第2の配合物との間で圧縮されて、好ましくは凝縮されることが特に有利である。圧縮によって、特に気泡などのガスポケットが小さくなる。硬化後、ガスポケットの膨張は一般的に不可能になる。このため、第1の配合物と第2の配合物との間により好ましい結合部分、特により大きな結合面があるという利点がある。この方法は、配合物間の圧力、特に少なくとも1つのガスポケットの圧力が、好ましくは少なくとも2バール、特に好ましくは少なくとも3バールであるように行われることが好ましい。
【0010】
好ましい実施形態では、型要素に第2の配合物を充填した後、特に型要素に第1の配合物を充填する前に第2の配合物を硬化させる。第2の配合物の硬化と同時的に加圧を行うことが可能である。
【0011】
マイクロニードル要素を製造するために3以上の配合物を使用することが可能である。従って、この方法の好ましい実施形態では、型要素に第1の配合物を充填する工程の前であって、型要素に第2の配合物を充填する工程の後に、型要素に少なくとも1つの追加の配合物、特に中間配合物を充填し、好ましくは少なくとも1つの追加の配合物を硬化させて、好ましくは同時的に加圧する更なる工程を、少なくとも1回行う。
【0012】
第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物は、溶媒、例えば水、及び/又は液体有機物、及び/又はアルコール、好ましくはエタノールを含むことが好ましい。特に、第2の配合物は少なくとも1つの有効成分を含む。第1の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物は有効成分を含まないことが好ましい。
【0013】
好ましい実施形態では、型要素に第1の配合物を充填するとき、第1の配合物が型要素から出るように型要素を過剰充填する。その後、過剰充填部分を除去するか又は残すことが可能である。過剰充填部分が残っている場合、例えばバッキング層を形成することが可能である。
【0014】
第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物を、乾燥、特に空気乾燥によって硬化させることが好ましい。硬化処理は乾燥処理であることが好ましい。乾燥を空気流及び/又は赤外線によって行うことが可能である。
【0015】
好ましい実施形態では、第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物を硬化させるときに温度を適用する。
【0016】
好ましい実施形態では、第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物の硬化中、第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物の連続的な加圧を行う。特に、第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物を少なくとも部分的に、特に完全に硬化させるまで加圧を行う。第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物の硬化期間の少なくとも一部の間、加圧を行うことが好ましい。特に、第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物の硬化期間の少なくとも4分の1、好ましくは半分、特に好ましくは4分の3の間、加圧を行う。第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物の硬化期間全体に亘って加圧を行い得ることが好ましい。第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物が元の液体量、特に溶媒量の最大50%、好ましくは最大30%、特に好ましくは最大10%を依然として有するまで、第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物の加圧及び/又は硬化を行うことが好ましい。前記液体量は、特に体積分率及び/又は質量分率に関わる。特に硬化によりガスポケットの更なる膨張が可能でなくなるまで加圧を行うことが好ましい。
【0017】
特に第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物の加圧を過圧により行うことが好ましい。ここでの過圧とは、周囲圧力を超えるガス圧を意味することが好ましい。過圧チャンバを使用して過圧を発生させて、型要素が過圧チャンバ内に少なくとも部分的に、特に完全に配置されることが好ましい。特に、過圧は少なくとも1バールであり、好ましくは少なくとも3バールであり、特に好ましくは周囲圧力より少なくとも3バール高い。好ましい実施形態では、過圧は10バールを超えず、特に5バールを超えない。過圧による加圧の代わりに又は過圧による加圧に加えて、加圧を機械的に、特に押込器及び/又はローラを有する押圧装置によって行うことができる。
【0018】
好ましい実施形態では、特に第1の配合物及び/又は第2の配合物及び/又は少なくとも1つの追加の配合物の加圧及び/又は硬化を、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも60分間、特に好ましくは少なくとも90分間に亘って行う。
【0019】
特に、型要素は複数のマイクロニードルネガ型を有している。複数のマイクロニードルネガ型は、特にマイクロアレイネガ型を形成している。
【0020】
第1の配合物が複数のマイクロニードルネガ型を覆うように、第1の配合物を型要素に充填することが好ましい。このようにして、バッキングとも称される支持要素が、第1の配合物と一体的に有利に形成され得る。
【0021】
本発明に係るマイクロニードル要素は、特に少なくとも1つのマイクロニードルを有するマイクロニードル又はマイクロアレイである。マイクロニードル要素は、特に上述した本発明に係る方法によって得られることが可能である。マイクロニードル要素を上述した方法によって得ることができるという定義の代わりに又はこのような定義に加えて、本発明に係るマイクロニードル要素は、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも部分的に硬化した配合物を含んでいる。配合物は互いに結合されている。特に、配合物は少なくとも先端部配合物及びバッキング配合物である。少なくとも1つのガスポケット、例えば気泡が少なくとも2つの配合物間に配置されていることが好ましい。ここで、ガスポケットは周囲圧力を超えている。配合物間に過圧が存在することが好ましい。配合物間の圧力、特に少なくとも1つのガスポケットの圧力が、好ましくは少なくとも2バール、特に好ましくは少なくとも3バールである。好ましい実施形態では、マイクロニードル要素は、第1の配合物と第2の配合物との間に、好ましくは実質的に球状又は楕円形状の空隙を含む。空隙の断面積は、第1の配合物と第2の配合物との結合面より、特に少なくとも30%小さいことが好ましい。空隙の直径は、特に第1の配合物と第2の配合物との接合部分でマイクロニードル要素の直径より、特に少なくとも30%小さい。特に、本発明に係るマイクロニードル要素の空隙が先のマイクロニードル要素の空隙より小さいことが有利である。更に、先のマイクロニードル要素が楕円形の断面を有する一方、本発明に係るマイクロニードル要素が、好ましくは円形の断面を有する実質的に球状の空隙を有することが特に有利である。
【0022】
本発明に係る装置は、少なくとも1つのマイクロニードルを有するマイクロニードル要素を製造するための装置である。装置は、製造するマイクロニードル要素のための型要素を備えている。型要素は、本発明に係る方法のための上述した型要素として特に構成されている。更に、装置は加圧装置を備えている。加圧装置は、過圧チャンバ及び/又は押圧装置を有していることが好ましい。加圧装置は、特に過圧チャンバ内に過圧を発生させるためのポンプを有していることが好ましい。型要素が過圧チャンバ内に少なくとも部分的に、特に完全に配置されていることが好ましい。好ましい実施形態では、装置は、特に熱及び/又は空気流を発生させる乾燥装置を備えている。乾燥装置は加圧装置と、特に一体的に連結され得る。加圧装置は、型要素に圧力を加えるように好ましくは構成及び/又は配置されている。特に圧力は、少なくとも型要素の型開口部に加えられる。乾燥装置は、好ましくは赤外線を発生させるポンプ及び/又は加熱要素を有し得る。装置は、型要素に少なくとも1つの配合物を充填するための、好ましくは分注デバイスを有する充填装置を備えていることが好ましい。
【0023】
特に、装置は、上述した本発明に係る方法を行うように構成されている。装置は、本方法との関連で上述した特徴、特に装置の特徴の一又は複数を有していることが好ましい。
【0024】
以下に、添付図面を参照して好ましい実施形態によって本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1a】先行技術に係るマイクロニードル要素を製造するための方法を示すために様々な状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図1b】先行技術に係るマイクロニードル要素を製造するための方法を示すために様々な状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図1c】先行技術に係るマイクロニードル要素を製造するための方法を示すために様々な状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図1d】先行技術に係るマイクロニードル要素を製造するための方法を示すために様々な状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図1e】先行技術に係るマイクロニードル要素を製造するための方法を示すために様々な状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図1f】先行技術に係るマイクロニードル要素を製造するための方法を示すために様々な状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図2】先行技術のマイクロニードルの形態のマイクロニードル要素を示すための
図1fの領域IIに係る詳細図である。
【
図3】本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための方法の実施形態を示すためにある状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図4】マイクロニードルの形態の本発明に係るマイクロニードル要素の実施形態を示すための
図3の領域IVに係る詳細図である。
【
図5】本発明に係るマイクロニードル要素の更なる実施形態と共に本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための方法の更なる実施形態を示すためにある状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図6】本発明に係るマイクロニードル要素の更なる実施形態と共に本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための方法の更なる実施形態を示すためにある状態のダイを概略的に示す側断面図である。
【
図7】本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための方法の更なる実施形態を示すためにある状態のダイを備えた、本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための装置の実施形態を概略的に示す側断面図である。
【
図8】本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための方法の更なる実施形態を示すためにある状態のダイを備えた、本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための装置の実施形態を概略的に示す側断面図である。
【
図9】本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための方法の更なる実施形態を示すためにある状態のダイを備えた、本発明に係るマイクロニードル要素を製造するための装置の実施形態を概略的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面には、同様又は同一の部品又は要素が同一の参照番号又はその変形例(例えば22及び22’)で特定されている。特に明瞭性を向上させるために、好ましくは既に特定されている要素は、全ての図面に参照番号が記載されていない。
【0027】
【0028】
図3は
図1a~1fに基づいている。ここで、
図1fに示されている状態の後の状態が図示されているが、(
図1fでは)バッキング配合物20は未だ硬化及び/又は乾燥していない。
【0029】
未だ硬化していない、特に湿ったバッキング配合物20に圧力を加える(
図3)。この加圧は、物理的な圧力、例えば押込器(
図9参照)又はローラによって行われ得る。過圧、例えば過圧チャンバ(
図7参照)による加圧が好ましい。前記過圧は、特に周囲圧力と比較して約3バールである。加圧は、バッキング配合物20の硬化と同時的に行われる。加圧は少なくとも30分間行われることが好ましい。従って、ある時間に亘ってバッキング配合物20に圧力を加える。
【0030】
圧力を加えることにより、
図3では気泡であるエアポケットが圧縮される。気泡はバッキング配合物20と先端部配合物14との間に空隙24を形成する。バッキング配合物20が硬化する、特に乾燥すると、気泡は膨張することができなくなる。この詳細が
図4に示されている。
【0031】
圧縮のため、気泡、ひいては空隙24は、先の製造方法の空隙24’(例えば
図2参照)より遥かに小さい。このため、バッキング配合物20と先端部配合物14との結合接触部分が先の製造方法(例えば
図2参照)より大きくなる。空隙24の断面積は、バッキング配合物20と先端部配合物14との結合面より、特に少なくとも30%小さいことが好ましい。空隙の直径は、特にバッキング配合物20と先端部配合物14との接合部分でマイクロニードル22の直径より、特に少なくとも30%小さい。このように空隙24が最小化されるか、又はバッキング配合物20と先端部配合物14との結合接触が大きくなることにより、先のマイクロニードル22’(例えば
図2参照)と比較してマイクロニードル22の安定性が高まることが有利である。
【0032】
空隙24内の空気圧は、特に加えられる過圧に対応する。空隙24内の空気圧は周囲圧力より高いことが好ましい。空隙24内の空気圧は、特に先行技術の空隙24’(例えば
図2参照)内の空気圧より高い。
【0033】
図3及び
図4のマイクロニードル22は、本発明に係るマイクロニードル要素の実施形態に対応しており、
図3の複数の、特に全てのマイクロニードル22が、本発明に係るマイクロアレイに対応することが好ましい。
【0034】
図5は、実質的に
図3に基づいている。
図3の実施形態とは対照的に、
図5のマイクロアレイ23は、3つの配合物14, 20, 26を含むマイクロニードル22を有している。ここで、空隙24, 28は(先行技術と比較して)夫々最小化されている。
【0035】
このような小さな空隙24, 28は、例えば、別々に2回加圧して同時的に硬化させるか、又は配合物20, 26を共に加圧して同時的に硬化させることにより形成され得る。
【0036】
図6も、実質的に
図3に基づいている。
図3の実施形態とは対照的に、
図6のマイクロアレイ23は一体のマイクロアレイ23である。特に、バッキング配合物20が、製造する複数のマイクロニードル22を共に結合するように、型開口部12にバッキング配合物20を過剰充填することにより、マイクロアレイが形成され得る。この結合面は、例えばマイクロアレイ23のバッキング層21としての機能を果たす。上述したような加圧が、製造する複数のマイクロニードル22の共通のバッキング配合物20に適用されてもよい。
【0037】
図7も、実質的に
図3に基づいている。充填された型要素10に加えて、マイクロニードル要素23を製造するための装置100 が
図7に示されている。
【0038】
装置100 は加圧装置30を備えている。図示されているように、加圧装置30は、チャンバ壁35を有するチャンバ34、特に過圧チャンバを有している。チャンバ34は、型要素10を少なくとも部分的に、特に完全に囲んでいる。チャンバ34に連結されている圧力発生器36、特にポンプを介してバッキング配合物20に過圧が加えられ得る。図示されているように、圧力は、例えばライン46を介して加えられる。
【0039】
任意に、(図示されているような)装置は乾燥装置38を備え得る。図示されている乾燥装置38は、空気流発生器40を有している。空気流発生器40は、特にポンプ及び/又は加熱要素を有し得る。図示されているように、乾燥装置は、供給ライン42及び排出ライン44を介してチャンバ34に連結されている。バッキング配合物20を乾燥させるために乾燥装置38を使用して、例えば空気流、特に暖かい空気流を発生させることができる。
【0040】
図8の装置100 は、
図7の装置100 に実質的に対応し、乾燥装置38の別の実施形態が図示されている。図示されている乾燥装置38は加熱要素である。ここでは、バッキング配合物を加熱する。例えばチャンバ34内に配置されている、赤外線50を発生させる加熱装置48によって、バッキング配合物を加熱することができる。
【0041】
図9も、実質的に
図3に基づいている。マイクロニードル要素23を製造するための装置100 の更なる実施形態が図示されている。
【0042】
ここでは、加圧装置30は押圧装置である。押圧装置は、バッキング配合物に物理的な圧力を加える押込器32を有している。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマイクロニードルを有するマイクロニードル要
素を製造するための方法であって、
製造するマイクロニードル要
素のための型要
素を準備する工程、
前記型要
素に第1の配合
物、特にバッキング配合物を充填する工程、
前記第1の配合
物を硬化させる工程、及び
硬化中に前記第1の配合
物を加圧する工程
を有する、方法。
【請求項2】
前記型要
素に前記第1の配合
物を充填する工程の前に、前記型要
素に第2の配合
物、特に先端部配合物を充填する更なる工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記型要
素に前記第2の配合
物を充填する工程の後に、前記第2の配合
物を硬化させて、特に同時的に加圧する更なる工程を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記型要
素に前記第1の配合
物を充填する工程の前であって、前記型要素に前記第2の配合
物を充填する工程の後に、
前記型要素に少なくとも1つの追加の配合
物、特に中間配合物を充填する更なる工程、及び好ましくは、
前記少なくとも1つの追加の配合
物を硬化させて、特に同時的に加圧する更なる工程
を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記型要
素に前記第1の配合物を充填するとき、前記第1の配合
物が前記型要
素から出るように前記型要
素を過剰充填する、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
硬化中に乾燥、特に空気乾燥を行う、請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
硬化中に温度を適用する、請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
過圧、並びに/又は、特に押込
器及び/若しくはローラを有する押圧装置によって加圧を行う、請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
加圧及び/又は硬化を、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも60分間、特に好ましくは少なくとも90分間に亘って行う、請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記型要
素は、複数のマイクロニードルネガ型を有しており、前記複数のマイクロニードルネガ型は、特にマイクロアレイネガ型を形成している、請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記第1の配合
物が前記複数のマイクロニードルネガ型を覆うように、前記型要
素に前記第1の配合
物を充填する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法によって得られる、マイクロニードル要
素、特にマイクロニードル又はマイクロアレイ。
【請求項13】
特に請求項1~
4のいずれか1つに記載の方法に応じて、少なくとも1つのマイクロニードルを有するマイクロニードル要
素を製造するための装
置であって、
製造するマイクロニードル要
素のための型要素と、
特に過圧チャン
バを有する加圧装
置と、
好ましくは、特に熱及び/又は空気流を発生させるための乾燥装
置と
を備えており、
前記加圧装
置は、前記型要
素に圧力を加えるように構成されている、装置。
【国際調査報告】