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▶ ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】腫瘍溶解性HSVの普遍的再標的化
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240412BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240412BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20240412BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20240412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240412BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240412BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240412BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20240412BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20240412BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
C12N15/09 Z ZNA
C12N7/01
C12N15/38
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K16/08
C07K16/30
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K47/66
A61P43/00 121
A61K47/68
A61K35/763
A61K48/00
C07K16/46
A61K38/17
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K39/395 C
A61K39/395 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567874
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2022054111
(87)【国際公開番号】W WO2022234473
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/184,283
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】バイラット,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】マーベイ,マシュー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084CA53
4C084DC50
4C084MA05
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA26
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA05
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA03
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、二重特異性アダプタータンパク質、及び腫瘍溶解性HSVを腫瘍細胞などの標的細胞に再標的化するためのその使用が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TAAを発現する腫瘍細胞に組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)を再標的化する方法であって、前記腫瘍細胞を有する対象に、
(a)前記組換えHSVであって、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、前記組換えHSVと、
(b)単離された二重特異性アダプタータンパク質であって、前記組換えHSVによって発現される前記異種リガンドペプチドに対する結合特異性を有する第1の結合ドメインと、前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAに対する結合特異性を有する第2の結合ドメインと、を含む、前記二重特異性アダプタータンパク質と、を投与することを含み、
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインが、前記組換えHSVによって発現される前記異種リガンドペプチドを結合し、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAを結合し、それによって前記組換えHSVを前記腫瘍細胞に再標的化する、方法。
【請求項2】
前記異種リガンドペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、野生型糖タンパク質D(gD)をコードするヌクレオチド配列の一部分への挿入又はその置換によって前記組換えHSVに挿入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異種リガンドペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、前記組換えHSVに挿入されて、前記野生型糖タンパク質D(gD)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を置換する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインが、前記組換えHSVによって発現される前記異種リガンドペプチドに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記異種リガンドペプチドに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、単鎖可変領域(scFv)、単鎖抗体VHH、及びポリペプチドDARPinからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記TAAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、scFv、単鎖抗体VHH、ポリペプチドDARPinからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組換えHSVによって発現される前記異種リガンドペプチドが、GCN4転写因子又はその断片を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記GCN4転写因子又はその断片が、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインが、前記GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号16)、HCDR2(配列番号17)及びHCDR3(配列番号18)からなる重鎖可変領域(VH)、並びに/又はLCDR1(配列番号19)、LCDR2(配列番号20)及びLCDR3(配列番号21)からなる軽鎖可変領域(VL)を含む抗GCN4 scFvである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号22と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号23と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗GCN4 scFvである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記組換えHSVによって発現される前記異種リガンドペプチドが、Laタンパク質又はその断片を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記Laタンパク質又はその断片が、配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインが、前記Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号26)、HCDR2(配列番号27)及びHCDR3(配列番号28)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号29)、LCDR2(配列番号30)及びLCDR3(配列番号31)からなるVLを含む抗La scFvである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号32と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号33と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗La scFvである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記組換えHSVによって発現される前記異種リガンドペプチドが、第1のロイシンジッパー部分を含み、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインが、第2のロイシンジッパー部分を含み、前記第1及び第2のロイシンジッパー部分が、ロイシンジッパー二量体を形成することができる、請求項1~3に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のロイシンジッパー部分が合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)であり、かつ前記第2のロイシンジッパー部分が合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)であるか、又は前記第1のロイシンジッパー部分が合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)であり、かつ前記第2のロイシンジッパー部分が合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAが、PSMA、TMEFF2、ROR1、KLK2、及びHLA-Gからなる群から選択される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがPSMAであり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号35)、HCDR2(配列番号36)及びHCDR3(配列番号37)を含む抗PSMA VHHである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号38と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む抗PSMA VHHである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号39)、HCDR2(配列番号40)及びHCDR3(配列番号41)を含む抗PSMA VHHである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号42と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む抗PSMA VHHである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号43)、HCDR2(配列番号44)及びHCDR3(配列番号45)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号46)、LCDR2(配列番号47)及びLCDR3(配列番号48)からなるVLを含む抗PSMA scFvである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号49と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号50と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗PSMA scFvである、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがTMEFF2であり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
TMEFF2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号53)、HCDR2(配列番号54)及びHCDR3(配列番号55)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号56)、LCDR2(配列番号57)及びLCDR3(配列番号58)からなるVLを含む抗TMEFF2 scFvである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
TMEFF2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号59と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号60と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗TMEFF2 scFvである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
TMEFF2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号61)、HCDR2(配列番号62)及びHCDR3(配列番号63)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号64)、LCDR2(配列番号65)及びLCDR3(配列番号66)からなるVLを含む抗TMEFF2 scFvである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
TMEFF2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号67と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号68と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗TMEFF2 scFvである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがKLK2であり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
KLK2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号72)、HCDR2(配列番号73)及びHCDR3(配列番号74)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号75)、LCDR2(配列番号76)及びLCDR3(配列番号77)からなるVLを含む抗KLK2 scFvである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
KLK2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号78と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号79と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗KLK2 scFvである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
KLK2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号80と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号81と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗KLK2 scFvである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがHLA-Gであり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、HLA-Gに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがROR1であり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、ROR1に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項39】
ROR1に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号94と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有するポリペプチドDARPinである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
対象におけるがんを治療する方法であって、TAAががん細胞によって発現され、前記方法が、前記対象に、
(a)組換えHSVであって、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、組換えHSVと、
(b)単離された二重特異性アダプタータンパク質であって、前記組換えHSVによって発現される前記異種リガンドペプチドに対する結合特異性を有する第1の結合ドメインと、前記がん細胞によって発現される前記TAAに対する結合特異性を有する第2の結合ドメインと、を含む、前記二重特異性アダプタータンパク質と、を投与することを含み、
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインが、前記組換えHSVによって発現される前記異種リガンドペプチドを結合し、前記特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、前記がん細胞によって発現される前記TAAを結合し、それによって前記がん細胞の腫瘍溶解を引き起こす、方法。
【請求項41】
前記異種リガンドペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、野生型糖タンパク質D(gD)をコードするヌクレオチド配列の一部分への挿入又はその置換によって前記組換えHSVに挿入される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記異種リガンドペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、前記組換えHSVに挿入されて、野生型gDのアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を置換する、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
組換えHSVを腫瘍細胞に再標的化するための二重特異性アダプタータンパク質であって、前記組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドに対する結合特異性を有する第1の結合ドメインと、前記腫瘍細胞によって発現されるTAAに対する結合特異性を有する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項44】
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1及び第2の結合ドメインのそれぞれが、抗原結合断片を含む、請求項43に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項45】
前記抗原結合断片が、scFv、単鎖抗体VHH、及びポリペプチドDARPinからなる群から選択される、請求項44に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項46】
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインが、GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項43~45のいずれか一項に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項47】
GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号16)、HCDR2(配列番号17)及びHCDR3(配列番号18)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号19)、LCDR2(配列番号20)及びLCDR3(配列番号21)からなるVLを含む抗GCN4 scFvである、請求項46に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項48】
GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号22と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号23と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗GCN4 scFvである、請求項46に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項49】
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインが、Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項43~45のいずれか一項に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項50】
Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号26)、HCDR2(配列番号27)及びHCDR3(配列番号28)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号29)、LCDR2(配列番号30)及びLCDR3(配列番号31)からなるVLを含む抗La scFvである、請求項49に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項51】
Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号32と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号33と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗La scFvである、請求項49に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項52】
前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第1の結合ドメインがロイシンジッパー部分を含む、請求項43に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項53】
前記ロイシンジッパー部分が、合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又は合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)である、請求項52に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項54】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがPSMAであり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項43~53のいずれか一項に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項55】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号35)、HCDR2(配列番号36)、及びHCDR3(配列番号37)を含む抗PSMA VHHである、請求項54に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項56】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号38と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む抗PSMA VHHである、請求項54に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項57】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号39)、HCDR2(配列番号40)、及びHCDR3(配列番号41)を含む抗PSMA VHHである、請求項54に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項58】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号42と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む抗PSMA VHHである、請求項54に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項59】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号43)、HCDR2(配列番号44)及びHCDR3(配列番号45)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号46)、LCDR2(配列番号47)及びLCDR3(配列番号48)からなるVLを含む抗PSMA scFvである、請求項54に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項60】
PSMAに対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号49と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号50と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗PSMA scFvである、請求項54に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項61】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがTMEFF2であり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項43~53のいずれか一項に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項62】
TMEFF2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号53)、HCDR2(配列番号54)、及びHCDR3(配列番号55)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号56)、LCDR2(配列番号57)、及びLCDR3(配列番号58)からなるVLを含む抗TMEFF2 scFvである、請求項61に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項63】
TMEFF2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号59と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号60と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗TMEFF2 scFvである、請求項61に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項64】
TMEFF2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号61)、HCDR2(配列番号62)、及びHCDR3(配列番号63)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号64)、LCDR2(配列番号65)、及びLCDR3(配列番号66)からなるVLを含む抗TMEFF2 scFvである、請求項61に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項65】
TMEFF2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号67と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号68と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗TMEFF2 scFvである、請求項61に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項66】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがKLK2であり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項43~53のいずれか一項に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項67】
KLK2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、HCDR1(配列番号72)、HCDR2(配列番号73)、及びHCDR3(配列番号74)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号75)、LCDR2(配列番号76)、及びLCDR3(配列番号77)からなるVLを含む抗KLK2 scFvである、請求項66に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項68】
KLK2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号78と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号79と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗KLK2 scFvである、請求項66に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項69】
KLK2に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号80と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号81と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗KLK2 scFvである、請求項66に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項70】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがHLA-Gであり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、HLA-Gに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項43~53のいずれか一項に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項71】
前記腫瘍細胞によって発現される前記TAAがROR1であり、前記二重特異性アダプタータンパク質の前記第2の結合ドメインが、ROR1に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む、請求項43~53のいずれか一項に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項72】
ROR1に対する結合特異性を有する前記抗原結合断片が、配列番号94と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有するポリペプチドDARPinである、請求項71に記載の二重特異性アダプタータンパク質。
【請求項73】
請求項43~71のいずれか一項に記載の単離された二重特異性アダプタータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項74】
請求項73に記載の単離核酸配列を含む、単離ベクター。
【請求項75】
請求項74に記載の単離ベクターを含む、組換え宿主細胞。
【請求項76】
請求項1~39のいずれか一項に記載の組換えHSVと、前記組換えHSVの使用説明書と、を含む、キット。
【請求項77】
請求項43~72のいずれか一項に記載の単離された二重特異性アダプタータンパク質と、前記二重特異性アダプタータンパク質の使用説明書と、を含む、キット。
【請求項78】
請求項1~93のいずれか一項に記載の組換えHSVと、請求項43~72のいずれか一項に記載の単離されたアダプタータンパク質と、使用説明書と、を含む、キット。
【請求項79】
異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えHSVであって、前記異種リガンドペプチドが、Laタンパク質又はその断片を含み、前記異種リガンドペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、野生型gDを置換する一部分への挿入又はその置換によって前記組換えHSVに挿入される、組換えHSV。
【請求項80】
前記異種リガンドペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、前記組換えHSVに挿入されて、野生型gDのアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を置換する、請求項79に記載の組換えHSV。
【請求項81】
前記Laタンパク質又はその断片が、配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項79又は80に記載の組換えHSV。
【請求項82】
異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えHSVであって、前記異種リガンドペプチドがロイシンジッパー部分を含み、前記異種リガンドペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、野生型gDの一部分への挿入又はその置換によって前記組換えHSVに挿入される、組換えHSV。
【請求項83】
前記異種リガンドペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列が、野生型gDのアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を置換する前記組換えHSVに挿入される、請求項82に記載の組換えHSV。
【請求項84】
前記ロイシンジッパー部分が、合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又は合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)である、請求項83に記載の組換えHSV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全容を参照により本明細書に援用するところの2021年5月5日出願の米国特許仮出願第63/184,283号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、二重特異性アダプタータンパク質、及び腫瘍溶解性HSVを腫瘍細胞などの標的細胞に再標的化するためのその使用が提供される。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出済みである、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。当該ASCIIコピーは、2022年2月28日に作成され、名称はJBI6460WOPCT1_SeqListing.txtであり、サイズは192,512バイトである。
【背景技術】
【0004】
腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)は、固形腫瘍の治療のために広く研究されている。グループとして、それらは、伝統的ながん療法を超える多くの利点をもたらす(Markert JM et al.,Genetically engineered HSV in the treatment of glioma:a review.Rev Med Virol.2000 Jan-Feb;10(1):17-30;Russell SJ et al.,Oncolytic virotherapy.Nat Biotechnol.2012 Jul 10;30(7):658-70;及びShen Y et al.,Herpes simplex virus 1(HSV-1)for cancer treatment.Cancer Gene Ther.2006 Nov;13(11):975-92)。具体的には、oHSVは通常、それらを自然免疫のいくつかの態様による阻害に対して感受性にする変異を具体化する。結果として、それらは、感染に対する1つ又は2つ以上の自然免疫応答が損なわれているがん細胞において複製するが、自然免疫応答が損なわれていない正常細胞においては複製しない。oHSVは、通常、ウイルスが複製し得る腫瘍塊に直接送達される。全身的ではなく標的組織に送達されると考えられるので、抗がん薬に特徴的な副作用はない。ウイルスは、複数回投与されるそれらの能力を削減する適応免疫応答を特徴的に誘導する。oHSVは、効力の喪失又は炎症応答などの有害反応の誘導の証拠なしに、腫瘍に複数回投与されている。HSVは、それらのゲノムに外来DNAを組み込むことができ、腫瘍への投与時にこれらの遺伝子の発現を調節することができる大きなDNAウイルスである。oHSVと共に使用するのに適した外来遺伝子は、腫瘍に対する適応免疫応答の誘導を助けるものである。
【0005】
細胞の自然免疫応答を克服する際の欠陥は、ウイルスが抗がん剤としてその腫瘍溶解性oHSVを示す腫瘍の範囲を決定する。欠失が広範囲になればなるほど、oHSVが有効であるがん細胞の範囲は、欠失したウイルス遺伝子の機能に依存して、より限定的になる。最も新しいoHSVは、その抗がん活性を強化するために少なくとも1つの細胞遺伝子を組み込む(Cheema TA et al.,Multifaceted oncolytic virus therapy for glioblastoma in an immunocompetent cancer stem cell model.Proc Natl Acad Sci USA.2013 Jul 16;110(29):12006-11;Goshima F et al.,Oncolytic viral therapy with a combination of HF10,a herpes simplex virus type 1 variant and granulocyte-macrophage colony-stimulating factor for murine ovarian cancer.Int J Cancer.2014 Jun 15;134(12):2865-77;Markert JM et al.,Preclinical evaluation of a genetically engineered herpes simplex virus expressing interleukin-12.J.Virol.2012 May;86(9):5304-13;及びWalker JD et al.,Oncolytic herpes simplex virus 1 encoding 15-prostaglandin dehydrogenase mitigates immune suppression and reduces ectopic primary and metastatic breast cancer in mice.J.Virol.2011 Jul;85(14):7363-71)。
【0006】
骨格と称されるoHSVの構造と、骨格への挿入に適した外来遺伝子と、を別々に考慮することが好都合である。上記のように、骨格の構造は、感受性がんの範囲を決定する。外来遺伝子は、宿主にがん細胞を適応免疫応答の正当な標的として認識させる。
【0007】
HSVゲノムは、L及びSと称される2つの共有結合した成分からなる。各成分は、逆方向反復に隣接する固有の配列(L成分についてはUL、S成分についてはUS)からなる。L成分の逆方向反復は、ab及びb’a’と称される。S成分の逆方向反復は、a’c’及びcaと称される。逆方向反復b’a’及びa’c’は、内部逆方向反復領域を構成する。L成分及びS成分の両方の逆方向反復領域は、それぞれICP0、ICP4、ICP34.5、ORF P及びORF Oと称されるタンパク質をコードする5つの遺伝子の2つのコピー、並びに転写されるがタンパク質をコードしないDNAの大きなストレッチを含むことが知られている。
【0008】
歴史的に、がん患者において試験されたウイルスは、3つの異なる設計に分類される。第1のものは、ICP34.5遺伝子の欠失がウイルスを有意に弱毒化するという証拠に基づいていた(Andreansky S et al.,Evaluation of genetically engineered herpes simplex viruses as oncolytic agents for human malignant brain tumors.Cancer Res.1997 Apr 15;57(8):1502-9;Chou J et al.,Association of a M(r)90,000 phosphoprotein with protein kinase PKR in cells exhibiting enhanced phosphorylation of translation initiation factor eIF-2 alpha and premature shutoff of protein synthesis after infection with gamma 134.5-mutants of herpes simplex virus 1.Proc Natl Acad Sci USA.1995 Nov 7;92(23):10516-20;Chou J et al.,Mapping of herpes simplex virus-1 neurovirulence to gamma 134.5,a gene nonessential for growth in culture.Science.1990 Nov 30;250(4985):1262-6;及びChou J et al.,The gamma 1(34.5)gene of herpes simplex virus 1 precludes neuroblastoma cells from triggering total shutoff of protein synthesis characteristic of programed cell death in neuronal cells.Proc Natl Acad Sci USA.1992 Apr 15;89(8):3266-70)。悪性神経膠芽腫の治療のためのその安全性を確実にするために、患者において試験された第1のウイルスであるG207は、ウイルスリボヌクレオチドレダクターゼをコードする遺伝子における更なる変異によって更に弱毒化された(Mineta T et al.,Attenuated multi-mutated herpes simplex virus-1 for the treatment of malignant gliomas.Nat Med.1995 Sep;1(9):938-43)。ICP34.5及びリボヌクレオチドレダクターゼ遺伝子の両方に変異を有するG207は、過度に弱毒化され、野生型プロテインキナーゼRを発現するがん細胞において遮断された(Smith KD et al.,Activated MEK suppresses activation of PKR and enables efficient replication and in vivo oncolysis by Deltagamma(1)34.5 mutants of herpes simplex virus 1.J.Virol.2006 Feb;80(3):1110-20)。
【0009】
第2の設計は、US11と称されるウイルスタンパク質が感染の初期に発現される場合、ICP34.5の不在を部分的に補償し、野生型プロテインキナーゼRを発現する細胞において成長する能力を回復するという実証に基づいていた(Mulvey et al.,A herpesvirus ribosome-associated,RNA-binding protein confers a growth advantage upon mutants deficient in a GADD34-related function,J Virol.1999 Apr;73(4):3375-85)。このウイルスの骨格の設計は、US12遺伝子及びUS11のプロモータが欠失しているという点で、Cassadyらによって公開された設計に従う(Cassady KA et al.,The herpes simplex virus US11 protein effectively compensates for the gamma1(34.5)gene if present before activation of protein kinase R by precluding its phosphorylation and that of the alpha subunit of eukaryotic translation initiation factor 2.J.Virol.1998 Nov;72(11):8620-6;Cassady KA et al.,The second-site mutation in the herpes simplex virus recombinants lacking the gamma134.5 genes precludes shutoff of protein synthesis by blocking the phosphorylation of eIF-2alpha.J.Virol.1998 Sep;72(9):7005-11;及びMulvey M et al.,A herpesvirus ribosome-associated,RNA-binding protein confers a growth advantage upon mutants deficient in a GADD34-related function.J.Virol.1999 Apr;73(4):3375-85)。結果として、US11は後期遺伝子としてではなく最初期遺伝子として発現される。FDAによって承認されたoHSV talimogene laherparepvec(以前はOncoVex GM-CSFとして知られていた)は、この骨格設計を利用し、CMVプロモータ制御下でヒトGM-CSF遺伝子を更にコードする(Liu et al.,ICP34.5 deleted herpes simplex virus with enhanced oncolytic,immune stimulating,and anti-tumour properties,Gene Ther.2003 Feb;10(4):292-303)。
【0010】
最初にR7020と称され、後にNV1020と改名された第3のウイルスの骨格は、弱毒化生ウイルスワクチンとして最初に試験された自然発生変異体の改変の結果であった(Meignier B et al.,In vivo behavior of genetically engineered herpes simplex viruses R7017 and R7020:construction and evaluation in rodents.J Infect Dis.1988 Sep;158(3):602-14及びMeignier B et al.,Virulence of and establishment of latency by genetically engineered deletion mutants of herpes simplex virus 1.Virology.1988 Jan;162(1):251-4)。この変異体は、内部逆方向反復(b’a’及びa’c’からなり、遺伝子ICP0、ICP4、ICP34.5、ORF P及びORF 0の1コピーをコードする)並びにUL56及びUL24をコードする遺伝子を欠いていた。更に、それは細菌配列を含み、ワクチンとして意図されたので、いくつかのHSV-2糖タンパク質をコードする遺伝子も含んでいた。R7020を、結腸がんからの肝転移を有する患者において広範に試験した。加えて、以下において試験を行った:無胸腺ヌードマウス及び膀胱腫瘍モデルにおける頭頸部上皮扁平上皮がん及び前立腺がん異種移植片(Sze DY et al.,Response to intra-arterial oncolytic virotherapy with the herpes virus NV1020 evaluated by[18F]fluorodeoxyglucose positron emission tomography and computed tomography.Hum Gene Ther.2012 Jan;23(1):91-7;Cozzi PJ et al.,Intravesical oncolytic viral therapy using attenuated,replication-competent herpes simplex viruses G207 and Nv1020 is effective in the treatment of bladder cancer in an orthotopic syngeneic model.FASEB J.2001 May;15(7):1306-8;Currier MA et al.,Widespread intratumoral virus distribution with fractionated injection enables local control of large human rhabdomyosarcoma xenografts by oncolytic herpes simplex viruses.Cancer Gene Ther.2005 Apr;12(4):407-16;Fong Y et al.,A herpes oncolytic virus can be delivered via the vasculature to produce biologic changes in human colorectal cancer.Mol Ther.2009 Feb;17(2):389-94;Geevarghese SK et al.,Phase I/II study of oncolytic herpes simplex virus NV1020 in patients with extensively pretreated refractory colorectal cancer metastatic to the liver.Hum Gene Ther.2010 Sep;21(9):1119-28;Kelly K et al.,Attenuated multimutated herpes simplex virus-1 effectively treats prostate carcinomas with neural invasion while preserving nerve function.FASEB J.2008 Jun;22(6):1839-48;Kemeny N et al.,Phase I,open-label,dose-escalating study of a genetically engineered herpes simplex virus,NV1020,in subjects with metastatic colorectal carcinoma to the liver.Hum Gene Ther.2006 Dec;17(12):1214-24;及びWong RJ et al.,Effective treatment of head and neck squamous cell carcinoma by an oncolytic herpes simplex virus.J Am Coll Surg.2001 Jul;193(1):12-21)。
【0011】
標的細胞へのHSVの侵入は多段階プロセスであり、ウイルス糖タンパク質gD、gH/gL、gC及びgBの複雑な相互作用及び立体構造変化を必要とする。これらの糖タンパク質は、HSV粒子の最も外側の構造であり、膜からなるウイルスエンベロープを構成する。細胞侵入のために、gC及びgBは、細胞表面ヘパラン硫酸へのHSV粒子の最初の付着を媒介する。その後、ウイルスと標的細胞とのより特異的な相互作用は、gDがネクチン-1(ヒト:HveC)及びHVEM(HveAとしても知られる)である少なくとも2つの代替細胞受容体に結合し、ビリオン-細胞膜融合につながる事象のカスケードを開始させるgDの立体構造変化を引き起こすという点で、起こる。それにより、中間タンパク質gH/gL(ヘテロ二量体)が活性化され、これがgBを誘発して膜融合を触媒する。
【0012】
現在の技術では、遺伝子操作されたo-HSVが開発されており、これは腫瘍細胞に対して高度に特異的な親和性(tropism)を示し、そうでなければ弱毒化されない。このアプローチは、腫瘍特異的受容体に対するHSV親和性の再標的化として定義されている。
【0013】
がん特異的受容体へのHSVの再標的化は、gDが特異的リガンドをコードする異種配列を保有するような、gDの遺伝子改変を必要とする。組換えウイルスに感染すると、野生型gDの代わりにキメラgD-リガンド糖タンパク質をエンベロープ中に有する子孫ウイルスが形成される。リガンドは、選択された細胞上に特異的に発現される分子と相互作用し、組換えo-HSVの選択された細胞への侵入を可能にする。HSVの再標的化のために首尾よく使用されてきたリガンドの例は、IL13α、uPaR、HER2に対する単鎖抗体及びEGFRに対する単鎖抗体である。
【0014】
再標的化は、組換えウイルスが選択された細胞に標的化されることを必然的に伴うが、再標的化は、組換えウイルスが依然としてその天然の細胞受容体を標的化することができ、身体の細胞の感染及び死滅をもたらすことを妨げない。ヘルペスウイルスのその天然受容体への結合及び身体の正常細胞の死滅を防止するために、天然受容体への結合を減少させる試みがなされてきた。これは「脱標的化」と呼ばれ、これは、組換えヘルペスウイルスでは、未改変ヘルペスウイルスの天然受容体に対する結合能力が低下しているか、又は全くないことを意味し、「低下した」という用語は、そのような結合低減改変を有しない同じヘルペスウイルスと比較して使用される。これは、正常細胞が感染しないか、又は感染の程度が低下し、したがって、正常細胞が死滅しないか、又は死滅する正常細胞が少ないという効果を有する。このような脱標的化ヘルペスウイルスは、正常細胞への感染がより少ないか又は全くないことによって有害な活性が減少し、罹患細胞を死滅させることによって有益な活性が増加している。
【発明の概要】
【0015】
当技術分野では、疾患特異的受容体へのHSVの再標的化のための方法が知られているが、再標的化される能力を有するこれらのHSVは、それらが大量に産生されることができ、疾患を治療するための医薬品として利用可能であるように増殖される必要がある。安全性の理由から、ヒトにおける腫瘍細胞などの罹患細胞のDNA、RNA及び/又はタンパク質などの物質の導入を回避するために、HSVの増殖及び産生のための細胞は罹患細胞であるべきではないという事実を考慮すると、HSVは、HSVの増殖及び産生のためにヒトに有害である成分を産生しない「安全な」細胞に感染するHSVを可能にするための更なる改変を含む必要がある。
【0016】
本明細書に開示される本発明は、組換えHSVを安全に増殖させ、正常細胞から脱標的化し、罹患(例えば、腫瘍)細胞に効果的に再標的化することができるシステムを提供する。
【0017】
TAAを発現する腫瘍細胞に組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)を再標的化する方法であって、腫瘍細胞を有する対象に、(a)組換えHSVであって、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、組換えHSVと、(b)単離された二重特異性アダプタータンパク質であって、組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドに対する結合特異性を有する第1の結合ドメインと、腫瘍細胞によって発現されるTAAに対する結合特異性を有する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性アダプタータンパク質と、を投与することを含み、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインが、組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドを結合し、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインが、腫瘍細胞によって発現されるTAAを結合し、それによって組換えHSVを腫瘍細胞に再標的化する、方法が本明細書において提供される。
【0018】
本方法の一実施形態では、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列は、野生型糖タンパク質D(gD)をコードするヌクレオチド配列の一部分への挿入又はその置換によって組換えHSVに挿入される。
【0019】
本方法の更なる実施形態では、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列は、組換えHSVに挿入されて、野生型糖タンパク質D(gD)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を置換する。
【0020】
本方法のなお更なる実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、組換えHSVによって発現される異種ペプチドに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0021】
本方法のなお更なる実施形態では、異種ペプチドに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、単鎖可変領域(scFv)、単鎖抗体VHH、及びポリペプチドDARPinからなる群から選択される。
【0022】
本方法のなお更なる実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、腫瘍細胞によって発現されるTAAに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0023】
なお更なる実施形態では、TAAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、scFv、単鎖抗体VHH、ポリペプチドDARPinからなる群から選択される。
【0024】
本方法のなお更なる実施形態では、組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドは、GCN4転写因子又はその断片を含む。
【0025】
本方法のなお更なる実施形態では、GCN4転写因子又はその断片は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0026】
本方法のなお更なる実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0027】
本方法のなお更なる実施形態では、GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号16)、HCDR2(配列番号17)及びHCDR3(配列番号18)からなる重鎖可変領域(VH)、並びに/又はLCDR1(配列番号19)、LCDR2(配列番号20)及びLCDR3(配列番号21)からなる軽鎖可変領域(VL)を含む抗GCN4 scFvである。
【0028】
本方法のなお更なる実施形態では、GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号22と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号23と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗GCN4 scFvである。
【0029】
本方法のなお更なる実施形態では、組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドは、Laタンパク質又はその断片を含む。
【0030】
本方法のなお更なる実施形態では、Laタンパク質又はその断片は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0031】
本方法のなお更なる実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0032】
本方法のなお更なる実施形態では、Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号26)、HCDR2(配列番号27)及びHCDR3(配列番号28)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号29)、LCDR2(配列番号30)及びLCDR3(配列番号31)からなるVLを含む抗La scFvである。
【0033】
本方法のなお更なる実施形態では、Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号32と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号33と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗La scFvである。
【0034】
本方法のなお更なる実施形態では、組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドは、第1のロイシンジッパー部分を含み、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、第2のロイシンジッパー部分を含み、第1及び第2のロイシンジッパー部分は、ロイシンジッパー二量体を形成することができる。
【0035】
本方法のなお更なる実施形態では、第1のロイシンジッパー部分は合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)であり、かつ第2のロイシンジッパー部分は合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)であるか、又は第1のロイシンジッパー部分は合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)であり、かつ第2のロイシンジッパー部分は合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)である。
【0036】
本方法のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAは、PSMA、TMEFF2、ROR1、KLK2、及びHLA-Gからなる群から選択される。
【0037】
本方法のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはPSMAであり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0038】
本方法のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号35)、HCDR2(配列番号36)及びHCDR3(配列番号37)を含む抗PSMA VHHである。
【0039】
本方法のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号38と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む抗PSMA VHHである。
【0040】
本方法のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号39)、HCDR2(配列番号40)及びHCDR3(配列番号41)を含む抗PSMA VHHである。
【0041】
本方法のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号42と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む抗PSMA VHHである。
【0042】
本方法のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号43)、HCDR2(配列番号44)及びHCDR3(配列番号45)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号46)、LCDR2(配列番号47)及びLCDR3(配列番号48)からなるVLを含む抗PSMA scFvである。
【0043】
本方法のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号49と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号50と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗PSMA scFvである。
【0044】
本方法のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはTMEFF2であり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0045】
本方法のなお更なる実施形態では、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号53)、HCDR2(配列番号54)及びHCDR3(配列番号55)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号56)、LCDR2(配列番号57)及びLCDR3(配列番号58)からなるVLを含む抗TMEFF2 scFvである。
【0046】
本方法のなお更なる実施形態では、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号59と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号60と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗TMEFF2 scFvである。
【0047】
本方法のなお更なる実施形態では、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号61)、HCDR2(配列番号62)及びHCDR3(配列番号63)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号64)、LCDR2(配列番号65)及びLCDR3(配列番号66)からなるVLを含む抗TMEFF2 scFvである。
【0048】
本方法のなお更なる実施形態では、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号67と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号68と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗TMEFF2 scFvである。
【0049】
本方法のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはKLK2であり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0050】
本方法のなお更なる実施形態では、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号72)、HCDR2(配列番号73)及びHCDR3(配列番号74)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号75)、LCDR2(配列番号76)及びLCDR3(配列番号77)からなるVLを含む抗KLK2 scFvである。
【0051】
本方法のなお更なる実施形態では、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号78と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号79と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗KLK2 scFvである。
【0052】
本方法のなお更なる実施形態では、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号80と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号81と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗KLK2 scFvである。
【0053】
本方法のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはHLA-Gであり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、HLA-Gに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0054】
本方法のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはROR1であり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、ROR1に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0055】
本方法のなお更なる実施形態では、ROR1に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号86と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有するポリペプチドDARPinである。
【0056】
対象におけるがんを治療する方法であって、TAAががん細胞によって発現され、方法が、対象に、(a)組換えHSVであって、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、組換えHSVと、(b)単離された二重特異性アダプタータンパク質であって、組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドに対する結合特異性を有する第1の結合ドメインと、がん細胞によって発現されるTAAに対する結合特異性を有する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性アダプタータンパク質と、を投与することを含み、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインが、組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドを結合し、特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインが、がん細胞によって発現されるTAAを結合し、それによってがん細胞の腫瘍溶解を引き起こす、方法が本明細書において更に提供される。
【0057】
本治療方法の一実施形態では、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列は、野生型糖タンパク質D(gD)をコードするヌクレオチド配列の一部分への挿入又はその置換によって組換えHSVに挿入される。
【0058】
本治療方法の更なる実施形態では、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列は、組換えHSVに挿入されて、野生型gDのアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を置換する。
【0059】
組換えHSVを腫瘍細胞に再標的化するための二重特異性アダプタータンパク質であって、組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドに対する結合特異性を有する第1の結合ドメインと、腫瘍細胞によって発現されるTAAに対する結合特異性を有する第2の結合ドメインと、を含む、二重特異性アダプタータンパク質が本明細書においてなお更に提供される。
【0060】
本二重特異性アダプタータンパク質の一実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1及び第2の結合ドメインのそれぞれは、抗原結合断片を含む。
【0061】
本二重特異性アダプタータンパク質の更なる実施形態では、抗原結合断片は、scFv、単鎖抗体VHH、及びポリペプチドDARPinからなる群から選択される。
【0062】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0063】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号16)、HCDR2(配列番号17)及びHCDR3(配列番号18)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号19)、LCDR2(配列番号20)及びLCDR3(配列番号21)からなるVLを含む抗GCN4 scFvである。
【0064】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、GCN4転写因子又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号22と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号23と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗GCN4 scFvである。
【0065】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインが、Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0066】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号26)、HCDR2(配列番号27)及びHCDR3(配列番号28)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号29)、LCDR2(配列番号30)及びLCDR3(配列番号31)からなるVLを含む抗La scFvである。
【0067】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、Laタンパク質又はその断片に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号32と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号33と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗La scFvである。
【0068】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインはロイシンジッパー部分を含む。
【0069】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、ロイシンジッパー部分は、合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又は合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)である。
【0070】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはPSMAであり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0071】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号35)、HCDR2(配列番号36)及びHCDR3(配列番号37)を含む抗PSMA VHHである。
【0072】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号38と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む抗PSMA VHHである。
【0073】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号39)、HCDR2(配列番号40)及びHCDR3(配列番号41)を含む抗PSMA VHHである。
【0074】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号42と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む抗PSMA VHHである。
【0075】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号43)、HCDR2(配列番号44)及びHCDR3(配列番号45)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号46)、LCDR2(配列番号47)及びLCDR3(配列番号48)からなるVLを含む抗PSMA scFvである。
【0076】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、PSMAに対する結合特異性を有する抗原結合断片が、配列番号49と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号50と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗PSMA scFvである。
【0077】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはTMEFF2であり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0078】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号53)、HCDR2(配列番号54)及びHCDR3(配列番号55)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号56)、LCDR2(配列番号57)及びLCDR3(配列番号58)からなるVLを含む抗TMEFF2 scFvである。
【0079】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号59と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号60と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗TMEFF2 scFvである。
【0080】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号61)、HCDR2(配列番号62)及びHCDR3(配列番号63)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号64)、LCDR2(配列番号65)及びLCDR3(配列番号66)からなるVLを含む抗TMEFF2 scFvである。
【0081】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、TMEFF2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号67と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号68と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗TMEFF2 scFvである。
【0082】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはKLK2であり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0083】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、HCDR1(配列番号72)、HCDR2(配列番号73)及びHCDR3(配列番号74)からなるVH、並びに/又はLCDR1(配列番号75)、LCDR2(配列番号76)及びLCDR3(配列番号77)からなるVLを含む抗KLK2 scFvである。
【0084】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号78と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号79と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗KLK2 scFvである。
【0085】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、KLK2に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号80と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号81と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む抗KLK2 scFvである。
【0086】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはHLA-Gであり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、HLA-Gに対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0087】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、腫瘍細胞によって発現されるTAAはROR1であり、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、ROR1に対する結合特異性を有する抗原結合断片を含む。
【0088】
本二重特異性アダプタータンパク質のなお更なる実施形態では、ROR1に対する結合特異性を有する抗原結合断片は、配列番号86と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有するポリペプチドDARPinである。
【0089】
上記の単離された二重特異性アダプタータンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子が、本明細書においてなお更に提供される。
【0090】
上記の単離核酸配列を含む、単離ベクターが、本明細書においてなお更に提供される。
【0091】
上記の単離ベクターを含む、組換え宿主細胞が、本明細書においてなお更に提供される。
【0092】
上記の組換えHSVと、組換えHSVの使用説明書と、を含む、キットが、本明細書においてなお更に提供される。
【0093】
上記の単離された二重特異性アダプタータンパク質と、二重特異性アダプタータンパク質の使用説明書と、を含む、キットが、本明細書においてなお更に提供される。
【0094】
上記の組換えHSVと、上記の単離されたアダプタータンパク質と、使用説明書と、を含む、キットが本明細書においてなお更に提供される。
【0095】
異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えHSVであって、異種リガンドペプチドが、Laタンパク質又はその断片を含み、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列が、野生型gDを置換する一部分への挿入又はその置換によって組換えHSVに挿入される、組換えHSVが、本明細書においてなお更に提供される。一実施形態では、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列は、組換えHSVに挿入されて、野生型gDのアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を置換する。更なる実施形態では、Laタンパク質又はその断片は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0096】
異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えHSVであって、異種リガンドペプチドがロイシンジッパー部分を含み、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列が、野生型gDの一部分への挿入又はその置換によって組換えHSVに挿入される、組換えHSVが、本明細書においてなお更に提供される。一実施形態では、異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列は、組換えHSVに挿入されて、野生型gDのアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を置換する。更なる実施形態では、ロイシンジッパー部分は、合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又は合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
図1】その二重特異性に起因して、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質が組換えHSVを腫瘍細胞に再標的化することを示す。
図2】本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質の様々な実施形態を示す。図2は、配列番号15として「(GGGGS)」、及び配列番号124として「GGGGS」を開示する。
図3】GCN4再標的化組換えHSVのゲノム構造を示す。図3は、配列番号5を開示する。
図4】RE/ER再標的化組換えHSVを示し、これは、二重特異性アダプタータンパク質によって腫瘍細胞に再標的化されている。
図5】ER/REロイシンジッパー対を使用するHSV1再標的化に使用されるRR12EE345L-(GS)-d6-38gD(ER/RE再標的化gD)及びEE12RR345L-(GS)-hネクチン1(ER/RE-ネクチン1)の構造を示す。ER/RE再標的化gDは、gDのAA6~38をRR12EE345L-ロイシンジッパー及び(GS)リンカー(配列番号126)で置換することによって得た。ER/RE-ネクチン1は、hネクチン1の第1のIg-様ドメイン(UniProtKB-Q15223(NECT1_HUMAN)のAA31~145)をEE12RR345Lロイシンジッパー及び(GS)リンカー(配列番号126)で置換することによって得た。図5は、出現順に配列番号8及び134をそれぞれ開示する。
図6】GCN4再標的化ウイルス(MOI=1)によるVero-H6-ネクチン1及びB16-F10-H6-ネクチン1細胞の感染を示す。親Vero及びB16-F10細胞を再標的化についての陰性対照として使用した。GFPを発現するoHSV1を、Vero細胞に対する感染についての陽性対照として使用した(左パネル)。
図7A】トランスフェクションの48時間後の、一過的にトランスフェクトされたHEK293Tの上清におけるPSMA-H6二重特異性アダプタータンパク質の発現を示す。二重特異性アダプタータンパク質を、抗mycタグ抗体で検出した。トランスフェクトされていないHEK293T細胞の上清を陰性対照(モック)として使用した。
図7B】FACSによって分析されたHEK293T-PSMA安定細胞株の表面におけるPSMAの発現を示す。親HEK293T細胞を、陰性対照として用いた。
図7C】PSMA-H6二重特異性アダプタータンパク質の存在下でのGCN4再標的化ウイルス(MOI=0.1)によるHEK293T-PSMA及びLNCaP細胞(PSMA+)の感染を示す。親HEK293T及びDU145細胞(PSMA-)を、再標的化についての陰性対照として使用した。GFPを発現するoHSV1を感染についての陽性対照として使用した(下パネル)。
図8A】トランスフェクションの48時間後の、一過的にトランスフェクトされたHEK293Tの上清におけるTMEFF2-H6二重特異性アダプタータンパク質の発現を示す。二重特異性アダプタータンパク質を、抗mycタグ抗体で検出した。トランスフェクトされていないHEK293T細胞の上清を対照(モック)として使用した。
図8B】FACSによって分析されたVero-TMEFF2安定細胞株の表面でのTMEFF2の発現(TMEFF2発現についての細胞選別の前後)を示す。親Vero細胞を陰性対照として使用した。
図8C】TMEFF2-H6二重特異性アダプタータンパク質の存在下でのGCN4再標的化ウイルス(MOI=0.1)によるVero-TMEFF2及び22Rv1細胞(TMEFF2+)の感染を示す。親Veroを再標的化についての陰性対照として使用した。GFPを発現するoHSV1を感染についての陽性対照として使用した。22Rv1細胞は、感染24時間及び72時間で示され、二重特異性アダプタータンパク質の存在下での再標的化ウイルスの成長を確認した。
図9A】トランスフェクションの48時間後の、一過的にトランスフェクトされたHEK293Tの上清におけるKLK2-H6二重特異性アダプタータンパク質の発現を示す。二重特異性アダプタータンパク質を、抗mycタグ抗体で検出した。トランスフェクトされていないHEK293T細胞の上清を陰性対照(モック)として使用した。
図9B】FACSによって分析されたVero-KLK2-ネクチン1安定細胞株の表面でのKLK2の発現(FLAGタグ発現についての細胞選別の前後)を示す。親Vero細胞を対照として使用した。
図9C】KLK2-H6二重特異性アダプタータンパク質の存在下でのGCN4再標的化ウイルス(MOI=0.1)によるVero-KLK2-ネクチン1細胞の感染を示す。親Veroを再標的化についての陰性対照として使用する。GFPを発現するoHSV1を感染についての陽性対照として使用した(下パネル)。
図10A】トランスフェクションの48時間後の、一過的にトランスフェクトされたHEK293Tの上清中のH6w-H6二重特異性アダプタータンパク質の発現を示す。二重特異性アダプタータンパク質を、抗mycタグ抗体で検出した。トランスフェクトされていないHEK293T細胞の上清を陰性対照(モック)として使用した。
図10B】FACSによって分析されたHEK293T細胞の表面でのROR1の発現を示す(実線:アイソタイプ、薄灰色:抗ROR1)。
図10C】H6w-H6二重特異性アダプタータンパク質の存在下でのGCN4再標的化ウイルス(MOI=0.1)によるHEK293T細胞の感染を示す。親293T細胞を、再標的化についての陰性対照として使用した。GFPを発現するoHSV1を感染の陽性対照として使用した(上パネル)。
図11A】ルシフェラーゼレポーター活性が細胞間融合の尺度である、二重スプリットレポータータンパク質系を使用するインビトロ融合アッセイによって測定された、RR12EE345L-(GS)-d6-38gDのEE12RR345L-(GS)-ネクチン1への再標的化を示す(Kondo et al.JBC 2010,Ishikawa et al.Protein Eng Des Sel 2012)。エフェクター細胞(HEK293T)に、HSV1 gH、gL、gB及びRR12EE345L-(GS)-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトし、一方、標的細胞(HEK293T)に、EE12RR345L-(GS)-ネクチン1及びnDSPをトランスフェクトした(レーン2)。陰性対照(レーン1)は、EE12RR345L-(GS)-ネクチン1を発現するプラスミドを省いた以外はレーン2と同一である。
図11B】ルシフェラーゼレポーター活性が細胞間融合の尺度である、二重スプリットレポータータンパク質系を使用するインビトロ融合アッセイによって測定された、B588LH-EE12RR345L二重特異性アダプターを使用したRR12EE345L-(GS)-d6-38gDのPSMAへの再標的化を示す。エフェクター細胞(HEK293T)に、HSV1 gH、gL、gB及びRR12EE345L-(GS)-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。標的細胞(HEK293T)に、PSMA、B588LH-EE12RR345L及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした(レーン5)。陽性対照(レーン3)は、エフェクター細胞としてHSV1 gH、gL、gB及びB588LH-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T、並びに標的細胞としてPSMA及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞を使用した。陰性対照(レーン4)は、二重特異性アダプターB588LH-EE12RR345Lを発現するプラスミドを省いた以外はレーン5と同一である。
図11C】ルシフェラーゼレポーター活性が細胞-細胞融合の尺度である、二重スプリットレポータータンパク質系を使用するインビトロ融合アッセイによって測定された、KL2B359LH-EE12RR345L二重特異性アダプターを使用するRR12EE345L-(GS)-d6-38gDのKLK2への再標的化を示す。エフェクター細胞(HEK293T)に、HSV1 gH、gL、gB及びRR12EE345L-(GS)-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。標的細胞(HEK293T)に、KLK2-ネクチン1、KL2B359LH-EE12RR345L及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした(レーン8)。陽性対照(レーン6)は、エフェクター細胞としてHSV1 gH、gL、gB及びKL2B359LH-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞を使用し、HEK293T細胞に、標的細胞としてKLK2-ネクチン1及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。陰性対照(レーン7)は、二重特異性アダプターKL2B359LH-EE12RR345Lを発現するプラスミドを省いた以外はレーン8と同一である。
図11D】ルシフェラーゼレポーター活性が細胞-細胞融合の尺度である、二重スプリットレポータータンパク質系を使用するインビトロ融合アッセイによって測定された、TMEF9LH-EE12RR345L二重特異性アダプターを使用するRR12EE345L-(GS)-d6-38gDのTMEFF2への再標的化を示す。エフェクター細胞(HEK293T)に、HSV1 gH、gL、gB及びRR12EE345L-(GS)-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。標的細胞(HEK293T)に、TMEFF2、TMEF9LH-EE12RR345L及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした(レーン11)。陽性対照(レーン9)は、エフェクター細胞としてHSV1 gH、gL、gB及びTMEF9LH-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞を使用し、HEK293T細胞に、標的細胞としてTMEFF2及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。陰性対照(レーン10)は、二重特異性アダプターTMEF9LH-EE12RR345Lを発現するプラスミドを省いた以外はレーン11と同一である。
図12A】ルシフェラーゼレポーター活性が細胞間融合の尺度である、二重スプリットレポータータンパク質系を使用するインビトロ融合アッセイによって測定された、La-d6-38gDの5B9HL-ネクチン1への再標的化を示す(Kondo et al.JBC 2010,Ishikawa et al.Protein Eng Des Sel 2012)。エフェクター細胞(HEK293T)に、HSV1 gH、gL、gB及びLa-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトし、一方、標的細胞(HEK293T)に、5B9HL-ネクチン1及びnDSPをトランスフェクトした(レーン2)。陰性対照(レーン1)は、5B9HL-ネクチン1を発現するプラスミドを省いた以外はレーン2と同一である。
図12B】ルシフェラーゼレポーター活性が細胞間融合の尺度である、二重スプリットレポータータンパク質系を使用するインビトロ融合アッセイによって測定された、B588LH-5B9HL二重特異性アダプターを使用したLa-d6-38gDのPSMAへの再標的化を示す。エフェクター細胞(HEK293T)に、HSV1 gH、gL、gB及びLa-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。標的細胞(HEK293T)に、PSMA、B588LH-5B9HL及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした(レーン5)。陽性対照(レーン3)は、エフェクター細胞としてHSV1 gH、gL、gB及びB588LH-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T、並びに標的細胞としてPSMA及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞を使用した。陰性対照(レーン4)は、二重特異性アダプターB588LH-5B9HLを発現するプラスミドを省いた以外はレーン5と同一である。
図12C】ルシフェラーゼレポーター活性が細胞間融合の尺度である、二重スプリットレポータータンパク質系を使用するインビトロ融合アッセイによって測定された、KL2B359LH-5B9HL二重特異性アダプターを使用するLa-d6-38gDのKLK2への再標的化を示す。エフェクター細胞(HEK293T)に、HSV1 gH、gL、gB及びLa-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。標的細胞(HEK293T)に、KLK2-ネクチン1、KL2B359LH-5B9HL及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした(レーン8)。陽性対照(レーン6)は、エフェクター細胞としてHSV1 gH、gL、gB及びKL2B359LH-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞を使用し、HEK293T細胞に、標的細胞としてKLK2-ネクチン1及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。陰性対照(レーン7)は、二重特異性アダプターKL2B359LH-5B9HLを発現するプラスミドを省いた以外はレーン8と同一である。
図12D】ルシフェラーゼレポーター活性が細胞間融合の尺度である、二重スプリットレポータータンパク質系を使用するインビトロ融合アッセイによって測定された、TMEF9LH-5B9HL二重特異性アダプターを使用するLa-d6-38gDのTMEFF2への再標的化を示す。エフェクター細胞(HEK293T)に、HSV1 gH、gL、gB及びLa-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。標的細胞(HEK293T)に、TMEFF2、TMEF9LH-5B9HL及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした(レーン11)。陽性対照(レーン9)は、エフェクター細胞としてHSV1 gH、gL、gB及びTMEF9LH-d6-38gD及びcDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトしたHEK293T細胞を使用し、HEK293T細胞に、標的細胞としてTMEFF2及びnDSPを発現するプラスミドをトランスフェクトした。陰性対照(レーン10)は、二重特異性アダプターTMEF9LH-5B9HLを発現するプラスミドを省いた以外はレーン11と同一である。
【発明の詳細な説明】
【0098】
「背景技術」において、また、本明細書全体を通じて、各種刊行物、論文及び特許が引用又は記載され、これらの参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明の前後関係を与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0099】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有する。
【0100】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0101】
別途記載されない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用される場合、数値範囲の使用は、文脈上別途明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0102】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの均等物を認識するか、又は確認することができよう。かかる均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0103】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、若しくは「含有する(containing)」、又はこれらの任意の他の変形は、述べられている整数又は整数群を含むことが意図されるが、これら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はかかる組成物、混合物、プロセス、方法、物品、若しくは装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって満たされる。
【0104】
本明細書に使用される場合、複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続的な用語は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つが、その意味に含まれ、したがって、本明細書に使用される用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、その意味に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0105】
本明細書で使用するとき、用語「からなる(consists of)」、又は「からなる(consist of)」若しくは「からなる(consisting of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含するが、追加の整数又は整数群が、指定の方法、構造、又は組成物に追加されないことを示す。
【0106】
本明細書で使用されるとき、用語「から本質的になる(consists essentially of)」、又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含し、任意選択で、指定の方法、構造、又は組成物の基本的又は新規の特性を実質的に変化させない任意の列挙された整数又は整数群も包含することを示す。M.P.E.P.§2111.03を参照されたい。
【0107】
本明細書で使用するとき、「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、これらに限定されるものではないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなど、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0108】
「右」、「左」、「下方」、及び「上方」という語は、参照される図面内での方向を指定する。
【0109】
好ましい本発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外するものではないことを示すことも理解すべきである。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【0110】
2つ若しくは3つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)及びそれらをコードする単離されたポリヌクレオチド;単離されたモノクローナル抗体又は二重特異性抗体及びその抗原結合断片、並びにそれらをコードする核酸)の文脈における用語「同一である」又はパーセント「同一性」は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して又は目視検査によって測定したとき、一致が最大になるように比較及び位置合わせさせた場合に同じである、又は特定のパーセント分の同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する、2つ若しくは3つ以上の配列又はサブ配列を指す。
【0111】
配列比較のために、典型的には1つの配列は、試験配列がそれに対して比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて、サブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0112】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカルホモロジアルゴリズム、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジアラインメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group、575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は目視検査(全般的には、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.eds.及びCurrent Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照されたい)によって行うことができる。
【0113】
配列同一性パーセント及び配列類似性を求めるのに好適なアルゴリズムの例は、それぞれ、Altschul et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されているBLAST及びBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列における同じ長さのワードと位置合わせしたときに一致するか、又はいくつかの正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかの、クエリ配列における長さWの短いワードを特定することによって、高スコア配列対(high scoring sequence pair、HSP)を特定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(Altschul et al、上記)と称される。これらの初期隣接ワードヒットは、それを含有するより長いHSPを見つけるために検索を開始するためのシードとして機能する。次いで、累積アライメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿ってワードヒットを両方向に延長する。
【0114】
ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致する残基の対についてのリワードスコア、常に0より大きい)及びパラメータN(不一致の残基についてのペナルティスコア、常に0より小さい)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アライメントスコアがその最大獲得値から量Xだけ低下したとき、1つ又は2つ以上の負のスコアリング残基のアラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に達したときに、各方向におけるワードヒットの延長が停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXが、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に対するもの)は、デフォルトとして、ワード長(W)=11、期待値(E)=10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に対しては、BLASTPプログラムが、デフォルトとして、3のワード長(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照されたい)。
【0115】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間又は2つのアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似しているとみなされる。
【0116】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記載されるように、第1核酸によりコード化されるポリペプチドが、第2核酸によりコード化されるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、第2ポリペプチドと実質的に同一であり、例えば、2つのペプチドは保存的置換によってのみ異なる。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0117】
本明細書で使用するとき、「単離(された)」という用語は、生物学的構成成分(例えば、核酸、ペプチド、又はタンパク質)が、これらの構成成分が天然に生じる生物の他の生物学的構成成分(すなわち、他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、並びにタンパク質)から実質的に分離されたか、これらの他の成分とは別に生成されたか、又はこれらの他の成分から精製されたものであることを意味する。このため、「単離(された)」核酸、ペプチド、及びタンパク質は、標準的な精製法により精製された核酸及びタンパク質を含む。「単離(された)」核酸、ペプチド、及びタンパク質は、組成物の一部であることができ、その組成物が核酸、ペプチド、又はタンパク質の本来の環境の一部ではない場合であっても単離される。また、この用語は、宿主細胞中での組換え発現により調製された核酸、ペプチド、及びタンパク質、並びに化学合成された核酸も包含する。
【0118】
本明細書で使用するとき、用語「ポリヌクレオチド」は、同義的に「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」とも称され、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであってもよい、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、一本鎖又はより典型的には二本鎖又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であってもよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語には、1つ又は2つ以上の修飾された塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性又は他の理由により修飾された骨格を有するDNA又はRNAも含まれる。「修飾された」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。様々な修飾をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的には天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと称される)も包含する。
【0119】
「ベクター」なる用語は、生体系内で複製され得る、又はこうした系間を移動することができるポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは典型的に、生物系においてこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を促進するように機能する複製起点、ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどのエレメントを含んでいる。このような生物系の例としては、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターを複製することができる生物学的成分を利用する再構成生物系が挙げられ得る。ベクターポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッドであり得る。例示的なベクターとしては、プラスミド、コスミド、ファージベクター、及びウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。用語「発現ベクター」は、発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの翻訳を指示するために、生物系又は再構成生物系において利用することができるベクターを意味する。
【0120】
本明細書で使用するとき、用語「宿主細胞」は、本発明の核酸分子を含む細胞を指す。「宿主細胞」は、例えば、初代細胞、培養中の細胞、又は細胞株由来の細胞のいずれのタイプの細胞であってもよい。一実施形態では、「宿主細胞」は、本発明の核酸分子をトランスフェクト又は形質導入した細胞である。別の一実施形態では、「宿主細胞」は、かかるトランスフェクト又は形質導入された細胞の子孫又は潜在的な子孫である。ある細胞の子孫は、例えば、後続の世代で生じ得る変異若しくは環境の影響、又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組み込みによって、親細胞との同一性を有していない場合がある。
【0121】
本明細書で使用するとき、用語「発現」は、遺伝子産物の生合成を指す。この用語は、遺伝子のRNAへの転写を包含する。この用語はまた、RNAの1つ又は2つ以上のポリペプチドへの翻訳も包含し、全ての天然に生じる、転写後及び翻訳後修飾も更に包含する。
【0122】
「異種」は、本明細書で使用するとき、それぞれ、所与の生物の天然核酸又はタンパク質において見出されないヌクレオチド配列又はポリペプチド配列を意味する。例えば、本開示の組換えHSVの文脈において、「異種」GCN4転写因子又はその断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、HSVにおいて天然に見出されない核酸であり、すなわち、コードされたGCN4転写因子又はその断片は、天然に存在するHSVによってコードされない。
【0123】
「抗原結合断片」又は「抗原結合ドメイン」は、抗原、例えば、抗体又はエピトープ結合ペプチドを結合するタンパク質の一部分を指す。抗原結合断片は、合成ポリペプチド、酵素的に入手可能なポリペプチド、又は遺伝的に操作されたポリペプチドであってもよく、これには、抗原に結合する免疫グロブリンの部分、例えば、VH、VL、VH及びVL、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(domain antibody、dAb)、サメ可変IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、VHHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの抗体のCDRを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識ユニット、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3、抗原に結合する代替足場、並びに抗原結合断片を含む多重特異性タンパク質が挙げられる。抗原結合断片(VH及びVLなど)は、合成リンカーを介して互いに連結して、VH及びVLドメインが別々の一本鎖により発現された場合にVH/VLドメインが分子内又は分子間で対合して一価の抗原結合ドメイン、例えば一本鎖Fv(single chain Fv、scFv)又はダイアボディを形成することができる、様々な種類の一本鎖抗体設計を形成することができる。抗原結合断片はまた、二重特異性及び多重特異性タンパク質を遺伝子操作するために、単一特異性又は多重特異性であり得る他の抗体、タンパク質、抗原結合断片、又は代替足場にコンジュゲートさせてもよい。例示的な抗原結合断片には、DARPinなどの遺伝子操作された抗体模倣タンパク質も含まれる。
【0124】
組換え(再標的化)単純ヘルペスウイルス(HSV)
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、腫瘍溶解目的のために改変又は適合された多くのヒト及び動物ウイルスのうちの1つである。HSVのいくつかの固有の特性は、HSVを腫瘍溶解剤として魅力的な候補にする。第1に、HSVによる溶解感染は、通常、他のDNAウイルスによる感染よりもはるかに迅速に標的細胞を死滅させる。標的細胞間での迅速な複製及び拡散は、ウイルスがインビボでその完全な腫瘍溶解能を発揮することを可能にする重要な特性であり、これは、身体の免疫機構が、より遅く成長するウイルスの拡散を制限する可能性がより高いためである。第2に、HSVは広い親和性を有し、それに由来する腫瘍溶解性ウイルスは、多くの異なるタイプの腫瘍に治療的に適用することができる。原則として、この特性は、他の腫瘍溶解性ウイルス(例えば、アデノウイルス由来のもの)とは対照的に、HSVを使用するウイルス療法に対する耐性の迅速な発生を防ぐはずである。最後に、アシクロビル及びファムシクロビルなどの有効な抗HSV薬は、ウイルスからの望ましくない感染又は毒性の場合の安全対策として容易に利用可能である。
【0125】
「単純ヘルペスウイルス(HSV)」及び「腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV)」という用語は、本明細書において互換的に使用される。本明細書中で使用されるHSVは、腫瘍細胞内で選択的に複製し得、その結果、それらの破壊及び隣接する腫瘍細胞に広がり得る子孫ビリオンの産生を生じる。HSV、HSV-1及びHSV-2の両方の血清型を本明細書で使用することができる。一実施形態では、本明細書で使用されるHSVはHSV-1である。更なる実施形態では、本明細書で使用されるHSVは、HSV1716(別名Seprehvir)、G207、G47Delta、Talimogene laherparepvec(別名OncoVexGM-CSF)、NV1020、NV1023、NV1034、NV1042、rQNestin34.5、RP1、RP2、RP3、ONCR-148、ONCR-177、ONCR-152、ONCR-153、VG161を含むがこれらに限定されない腫瘍溶解性HSV、並びにWO/2013/036795(BeneVir Pharm,Inc.)に開示及び教示されるものを含む他の公知のHSVから選択され得る。
【0126】
糖タンパク質D(gD)は、宿主細胞へのHSV侵入に必須であり、ヘルペスウイルス感染性において必須の役割を果たす55kDaのビリオンエンベロープ糖タンパク質である。HSVが細胞に侵入すると、gDとヘテロ二量体gH/gLとの相互作用は、細胞へのHSV侵入に関与する4つの糖タンパク質gD、gH、gL及びgBが関与する活性化カスケードにおける重要な事象である。活性化カスケードは、gDがその受容体であるネクチン-1、HVEM及び修飾ヘパラン硫酸のうちの1つに結合することから始まり、これがgH/gLに伝達され、最終的にgBに伝達される。gBは、HSVと標的細胞膜との融合を行う。ヘテロダイマーgH/gLは、gDのプロフュージョンドメインと相互作用し、このプロフュージョンドメインは、細胞侵入の間にgDとその受容体のうちの1つとの相互作用の際に除去される。gDは、HSVがその天然受容体(例えば、ネクチン-1及びHVEM)に標的化される原因となるいくつかの特異的領域を含む。
【0127】
本明細書には、HVEM結合部位の全部又は一部及びネクチン-1結合部位の全部又は一部をコードするヌクレオチド配列が欠失している組換えHSVが開示される。
【0128】
一実施形態では、組換えHSVは、HVEM結合部位の全部又は一部及びネクチン-1結合部位の全部又は一部をコードするヌクレオチド配列が欠失し、リガンドペプチドをコードする異種ヌクレオチド配列によって置換されている。
【0129】
シグナルペプチド(下線)を有するgDの全配列は以下の通りである。
MGGTAARLGAVILFVVIVGLHGVRGKYALADASLKMADPNRFRGKDLPVLDQLTDPPGVRRVYHIQAGLPDPFQPPSLPITVYYAVLERACRSVLLNAPSEAPQIVRGASEDVRKQPYNLTIAWFRMGGNCAIPITVMEYTECSYNKSLGACPIRTQPRWNYYDSFSAVSEDNLGFLMHAPAFETAGTYLRLVKINDWTEITQFILEHRAKGSCKYALPLRIPPSACLSPQAYQQGVTVDSIGMLPRFIPENQRTVAVYSLKIAGWHGPKAPYTSTLLPPELSETPNATQPELAPEDPEDSALLEDPVGTVAPQIPPNWHIPSIQDAATPYHPPATPNNMGLIAGAVGGSLLAALVICGIVYWMHRRTRKAPKRIRLPHIREDDQPSSHQPLFY(配列番号1)
【0130】
gDの成熟タンパク質は以下の通りである。
KYALADASLKMADPNRFRGKDLPVLDQLTDPPGVRRVYHIQAGLPDPFQPPSLPITVYYAVLERACRSVLLNAPSEAPQIVRGASEDVRKQPYNLTIAWFRMGGNCAIPITVMEYTECSYNKSLGACPIRTQPRWNYYDSFSAVSEDNLGFLMHAPAFETAGTYLRLVKINDWTEITQFILEHRAKGSCKYALPLRIPPSACLSPQAYQQGVTVDSIGMLPRFIPENQRTVAVYSLKIAGWHGPKAPYTSTLLPPELSETPNATQPELAPEDPEDSALLEDPVGTVAPQIPPNWHIPSIQDAATPYHPPATPNNMGLIAGAVGGSLLAALVICGIVYWMHRRTRKAPKRIRLPHIREDDQPSSHQPLFY(配列番号2)
【0131】
一実施形態では、組換えHSVは、野生型gD(DASLKMADPNRFRGKDLPVLDQLTDPPGVRRVY(配列番号3))のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失している腫瘍溶解性HSVに由来する。
【0132】
一実施形態では、組換えHSVは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失し、5~150アミノ酸、又は5~120アミノ酸、又は5~100アミノ酸、又は5~80アミノ酸、又は5~60アミノ酸、又は5~50アミノ酸、又は5~45アミノ酸、又は5~40アミノ酸、又は10~40アミノ酸、又は10~35アミノ酸の長さを有する異種リガンドペプチドをコードするヌクレオチド配列によって置換されている、腫瘍溶解性HSVに由来する。
【0133】
一実施形態では、本明細書に開示される組換えHSVは、GCN4再標的化組換えHSVであり、異種リガンドペプチドは、GCN4転写因子又はその断片若しくはエピトープである。このようなGCN4再標的化組換えHSVでは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失し、GCN4転写因子又はその断片若しくはエピトープを含むペプチド配列をコードする異種ヌクレオチド配列によって置換されている。一態様では、異種ヌクレオチド配列は、GCN4エピトープ(KNYHLENEVARLKKLV、配列番号4)を含むペプチド配列をコードする。別の態様では、異種ヌクレオチド配列は、リンカーに隣接するGCN4エピトープ(配列番号4)から構成されるGCN4由来ペプチド(TSGSKNYHLENEVARLKKLVGSGGGGSGNS、配列番号5)を含むペプチド配列をコードする。
【0134】
一実施形態では、本明細書に開示される組換えHSVは、ロイシンジッパー再標的化組換えHSVであり、異種リガンドペプチドは、ロイシンジッパー部分である。そのようなロイシンジッパー再標的化組換えHSVでは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失し、ロイシンジッパー部分(Moll JR et al.,Designed heterodimerizing leucine zippers with a range of pI and stabilities up to 10(-15)M.Protein Sci.2001 Mar;10(3):649-55に開示されているものなど)又はその断片を含むペプチド配列をコードする異種ヌクレオチド配列によって置換されている。一態様では、本明細書に開示される組換えHSVは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失し、合成ロイシンジッパー部分RE(LEIRAAFLRQRNTALRTEVAELEQEVQRLENEVSQYETRYGPL、配列番号6;CTGGAAATCAGAGCCGCTTTCCTGAGACAGCGGAACACCGCCCTGCGGACCGAGGTGGCCGAGCTGGAACAGGAGGTGCAGAGACTGGAAAACGAGGTGTCCCAATACGAGACAAGATACGGCCCTCTG、配列番号7)を含むペプチド配列をコードするヌクレオチド配列によって置換されている。更なる態様では、本明細書に開示される組換えHSVは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失し、RE由来ペプチド(GTLEIRAAFLRQRNTALRTEVAELEQEVQRLENEVSQYETRYGPLGGGGSGGGGSGGGGSGNS、配列番号8;GGTACCCTGGAAATCAGAGCCGCTTTCCTGAGACAGCGGAACACCGCCCTGCGGACCGAGGTGGCCGAGCTGGAACAGGAGGTGCAGAGACTGGAAAACGAGGTGTCCCAATACGAGACAAGATACGGCCCTCTGGGCGGCGGCGGAAGCGGCGGAGGCGGCAGCGGCGGCGGCGGATCTGGGAATTCT、配列番号9)を含むペプチド配列をコードするヌクレオチド配列によって置換されている。RE由来ペプチドは、リンカーに隣接する合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)から構成される。なお更なる態様では、本明細書に開示される組換えHSVは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失し、合成ロイシンジッパー部分ER(LEIEAAFLERENTALETRVAELRQRVQRLRNRVSQYRTRYGPL、配列番号10;CTGGAAATCGAGGCCGCCTTCCTGGAACGGGAAAACACCGCCCTGGAGACAAGAGTCGCCGAGCTGAGACAGCGGGTGCAGAGACTGCGGAATAGAGTGTCCCAATACCGCACCAGATACGGCCCTCTG、配列番号11)を含むペプチド配列をコードするヌクレオチド配列によって置換されている。なお更なる態様では、本明細書に開示される組換えHSVは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失し、リンカーに隣接する合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)から構成されるER由来ペプチドを含むペプチド配列をコードするヌクレオチド配列によって置換されている。
【0135】
一実施形態では、本明細書に開示される組換えHSVは、La再標的化組換えHSVであり、異種リガンドペプチドは、Laタンパク質又はその断片若しくはエピトープである。このようなLa再標的化組換えHSVにおいて、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードする核酸配列は、欠失し、核自己抗原Laタンパク質又はその断片若しくはエピトープを含むペプチド配列をコードする異種ヌクレオチド配列によって置換されている(Kohsaka et al,Fine epitope mapping of the human SS-B/La protein.Identification of a distinct autoepitope homologous to a viral gag polyprotein,J Clin Invest.1990 May;85(5):1566-74)。一態様では、本明細書に開示される組換えHSVは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失し、Laエピトープ(SKPLPEVTDEY、配列番号12)を含むペプチド配列をコードする異種ヌクレオチド配列によって置換されている(例えば、Koristka,S et al,Retargeting of Regulatory T Cells to Surface-inducible Autoantigen La/SS-B,Journal of Autoimmunity 42(2013)105-116を参照されたい)。更なる態様では、本明細書に開示される組換えHSVは、野生型gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列が欠失され、リンカーが隣接するLaエピトープ(配列番号12)によって構成されるLa由来ペプチド(GTGSKPLPEVTDEYGGGGSGNS、配列番号13;ACCGGCAGCAAGCCCCTGCCCGAGGTGACCGACGAGTACGGCGGCGGCGGCTCCGGGAATTCT、配列番号14)を含むペプチド配列をコードするヌクレオチド配列によって置換されている。
【0136】
このような改変により、組換えHSVは、正常細胞から脱標的化され得、以下に開示される二重特異性アダプタータンパク質と組み合わせて、罹患細胞(例えば、腫瘍細胞)に再標的化され得る。
【0137】
具体的には、本明細書中に開示される組換えHSVが、細胞培養物中に存在する細胞及びおそらく罹患細胞に効率的に再標的化されるために、正常細胞上に存在するgDの天然受容体に対する組換えHSVの結合部位が不活性化されることが有利である。これは、感染されることが意図される細胞への効率的な標的化を可能にし、一方、ヘルペスウイルスによって天然に感染される正常細胞の感染が減少される。gDは、宿主細胞へのウイルス侵入に必須であり、ヘルペスウイルス感染性において必須の役割を果たす。gDのそれらの天然受容体への結合部位の不活性化は、リガンドの標的分子を有する細胞への再標的化に有利に働く。本開示によれば、gD(配列番号3)のアミノ酸6~38をコードするヌクレオチド配列を欠失させることによって、組換えHSVの天然HVEM結合部位(gD(配列番号3)のアミノ酸6~34)及び天然ネクチン-1結合部位(gD(配列番号3)のアミノ酸35~39)の両方が不活性化され、その結果、これらの受容体を保有する細胞への結合が減少する。これは、gDの天然受容体からの組換えHSVの効率的な脱標的化をもたらし、したがって、正常細胞からの本開示の組換えHSVの脱標的化をもたらす。
【0138】
更に、組換えHSVはまた、二重特異性アダプタータンパク質(以下に記載されるような)に結合することができ、二重特異性アダプタータンパク質と組み合わせて、がんなどの疾患を治療する際の有効な治療薬として使用することができる。この実施形態は、以下に詳述される。
【0139】
更に、本明細書に開示される組換えHSVは、安全に増殖させることができる。HSVを成長させるための好適な技術及び条件は、当該技術分野において周知であり(Florence et al.,1992;Peterson and Goyal,1988)、HSVを細胞と共にインキュベートすること、及び感染細胞培養物の培地からHSVを回収することを含む。
【0140】
「培養された」細胞は、当該分野で公知のように、維持及び増殖されるインビトロ細胞培養中に存在する細胞である。培養細胞は、制御された条件下で、一般的にそれらの自然環境の外側で成長される。通常、培養細胞は多細胞真核生物、特に動物細胞に由来する。「HSVの成長について承認された細胞株」は、HSVによって感染され得ること(すなわち、ウイルスが細胞に侵入し、増殖し得、ウイルスを産生し得ること)が既に示されている任意の細胞株を含むことを意味する。細胞株は、単一細胞に由来し、同じ遺伝子組成を含む細胞の集団である。一実施形態では、組換えヘルペスウイルスの増殖及び産生のための細胞は、Vero、293、293T、HEp-2、HeLa、BHK、MRC5、又はRS細胞である。
【0141】
本開示によれば、増殖及び産生のための細胞株は、本明細書に開示される組換えHSVに結合することができる標的分子を保有するように改変される。例えば、HVEM結合部位の全部又は一部をコードするヌクレオチド配列を有し、ネクチン-1結合部位の全部又は一部が欠失している組換えHSVの場合、増殖及び産生のための細胞株は、組換えHSVに対する結合特異性を有する標的分子(例えば、抗原結合断片)を保有するように改変され得る。特定の一態様では、細胞株は、組換えHSV上の切断型gDに対する結合特異性を有する抗原結合断片を保有するように改変され得る。又は、HVEM結合部位の全部又は一部及びネクチン-1結合部位の全部又は一部をコードするヌクレオチド配列が欠失し、リガンドペプチドをコードする異種ヌクレオチド配列によって置換された組換えHSVについては、増殖及び産生のための細胞株は、リガンドペプチドに対する結合特異性を有する標的分子(例えば、抗原結合断片)を保有するように改変され得る。
【0142】
一実施形態では、細胞株は、GCN4転写因子若しくはその断片、又はそのエピトープを結合することができる標的分子を保有し、GCN4再標的化組換えHSVを増殖させるために使用することができる。一実施形態では、細胞株は、GCN4転写因子若しくはその断片、又はそのエピトープを結合することができる抗原結合断片又は抗原結合ドメインである標的分子を保有する。一実施形態では、本明細書において使用される細胞株は、配列番号4によって同定されるGCN4エピトープを結合することができるか、又は配列番号5によって同定されるGCN4エピトープに由来するペプチドを結合することができる抗原結合断片である標的分子を保有する。一態様では、細胞株は、GCN4転写因子若しくはその断片、又はそのエピトープを結合することができる抗原結合断片を発現するように改変されたVero細胞株である。別の態様において、Vero細胞株は、配列番号4によって同定されるGCN4エピトープを結合することができるか、又は配列番号5によって同定されるGCN4エピトープに由来するペプチドに結合することができる抗原結合断片を発現するように改変されている。
【0143】
一実施形態では、細胞株は、組換えHSVによってコードされるロイシンジッパー部分を結合することができる標的分子を保有し、ロイシンジッパー再標的化組換えHSVを増殖させるために使用することができる。一態様では、細胞株は、合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)又はロイシンジッパー部分RE(配列番号6)を結合することができるその断片である標的分子を保有する。更なる態様では、細胞株は、ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又はその断片を結合することができるロイシンジッパー部分ER(配列番号10)又はその断片を含むペプチドを発現するように改変されたVero細胞株である。なお更なる態様では、細胞株は、合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又はロイシンジッパー部分ER(配列番号10)を結合することができるその断片である標的分子を保有する。なお更なる態様では、細胞株は、ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)又はその断片を結合することができるロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又はその断片を含むペプチドを発現するように改変されたVero細胞株である。
【0144】
一実施形態では、細胞株は、Laタンパク質又はその断片若しくはエピトープを結合し得る標的分子を保有し、La再標的化組換えHSVを増殖させるために使用され得る。一実施形態では、細胞株は、Laタンパク質又はその断片若しくはエピトープを結合することができる抗原結合断片である標的分子を保有する。一実施形態では、本明細書で使用される細胞株は、配列番号12によって同定されるLaエピトープを結合することができるか、又は配列番号13によって同定されるLaタンパク質に由来するペプチドを結合することができる抗原結合断片である標的分子を保有する。一態様では、細胞株は、Laタンパク質若しくはその断片、又はそのエピトープを結合することができる抗原結合断片を発現するように改変されたVero細胞株である。別の態様では、Vero細胞株は、配列番号12によって同定されるLaタンパク質を結合することができるか、又は配列番号13によって同定されるLaタンパク質に由来するペプチドを結合することができる抗原結合断片を発現するように改変されている。
【0145】
二重特異性アダプタータンパク質
組換えHSV(上記のような)の異種ヌクレオチド配列によってコードされるリガンドペプチドを特異的に結合する第1の結合ドメインと、腫瘍関連抗原(TAA)又はヒトTAAなどの標的を特異的に結合する第2の結合ドメインと、を含むように操作された、単離された二重特異性アダプタータンパク質が、本明細書で更に開示される。
【0146】
本明細書に開示されるように、二重特異性アダプタータンパク質は、ペプチドリンカーによって連結された第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインを含み得る。また、本開示の範囲内で、二重特異性アダプタータンパク質は、ジスルフィド結合などの分子間結合を介してコンジュゲートされた第1及び第2の結合ドメインを含み得る。
【0147】
一実施形態では、リガンドペプチドは、GCN4転写因子若しくはその断片、又はそのエピトープである。二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、GCN4転写因子若しくはその断片、又はGCN4のエピトープ、又は配列番号4によって同定されるGCN4のエピトープ、又は配列番号5によって同定されるリンカーに隣接するGCN4のエピトープを特異的に結合する。
【0148】
一実施形態では、リガンドペプチドは、ロイシンジッパー部分又はその断片であり、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、リガンドペプチドを特異的に結合する対形成ロイシンジッパー部分を含む。一態様では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、ロイシンジッパー部分RE若しくはその断片、又はロイシンジッパー部分REのエピトープ、又は配列番号6によって同定されるロイシンジッパー部分RE、又は配列番号8によって同定されるリンカーに隣接するロイシンジッパー部分REを特異的に結合する。更に別の実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、ロイシンジッパー部分ER若しくはその断片、又はロイシンジッパー部分ERのエピトープ、又は配列番号10によって同定されるロイシンジッパー部分ER、又はリンカーに隣接するロイシンジッパー部分ERを特異的に結合する。
【0149】
一実施形態では、リガンドペプチドは、Laタンパク質若しくはその断片、又はそのエピトープである。二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、Laタンパク質若しくはその断片、又はLaのエピトープ、又は配列番号12によって同定されるLaのエピトープ、又は配列番号13によって同定されるリンカーに隣接するLaのエピトープを特異的に結合する。
【0150】
本明細書で使用するとき、「リガンドペプチド若しくはその断片、又はそのエピトープを特異的に結合する」結合ドメインは、1×10-7M以下、又は1×10-8M以下、又は5×10-9M以下、又は1×10-9M以下、又は5×10-10M以下、又は1×10-10M以下のKDで、リガンドペプチド若しくはその断片、又はそのエピトープを結合する抗原結合ドメインを指す。「KD」という用語は、Kd対Ka(すなわち、Kd/Ka)の比から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指す。抗体のKD値は、本開示を考慮して当該技術分野における方法を使用して決定することができる。例えば、ある抗体のKDは、表面プラズモン共鳴法を使用することによって、例えば、Biacore(登録商標)システムのようなバイオセンサーシステムを使用することなどによって、又は例えば、Octet RED96システムなどのバイオレイヤーインターフェロメトリー技術を使用することによって、求めることができる。KDの値が小さいほど、親和性・結合特異性は高い。
【0151】
本明細書で使用するとき、「腫瘍関連抗原(TAA)」という用語は、発現されて、TAAに結合することができる抗体によって認識されることができる任意の抗原を指す。TAAの例としては、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、TMEFF2、ROR1、KLK2、HLA-G、CD70、PD-1、PD-L1、CTLA-4、EGFR、HER-2、CD19、CD20、CD3、メソテリン(MSLN)、前立腺幹細胞抗原(prostate stem cell antigen、PCSA)、B細胞成熟抗原(BCMA又はBCM)、Gタンパク質共役受容体ファミリーCグループ5メンバーD(G-protein coupled receptor family C group 5 member D、GPRC5D)、インターロイキン-1受容体アクセサリタンパク質(Interleukin-1 receptor accessory protein、IL1RAP)、デルタ様3(delta-like 3、DLL3)、炭酸脱水酵素IX(carbonic anhydrase IX、CAIX)、がん胎児性抗原(carcinoembryonic antigen、CEA)、CD5、CD7、CD10、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD123、CD133、CD138、上皮性糖タンパク質-2(epithelial glycoprotein-2、EGP2)、上皮性糖タンパク質-40(epithelial glycoprotein-40、EGP-40)、上皮性接着分子(epithelial adhesion molecule、EpCAM)、葉酸結合タンパク質(folate-binding protein、FBP)、胎児性アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor、AChR)、葉酸受容体a及びb(folate receptor a and b、FRa及びFRb)、ガングリオシドG2(ganglioside G2、GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor、EGFR)、上皮増殖因子受容体vIII(EGFRvIII)、ERB3、ERB4、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(interleukin-13 receptor subunit alpha-2、IL-13Ra2)、k-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kinase insert domain receptor、KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1 cell adhesion molecule、LICAM)、メラノーマ関連抗原1(メラノーマ抗原ファミリーA1、MAGE-A1)、ムチン-16(Muc-16)、ムチン1(Muc-1)、NKG2Dリガンド、がん精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児性抗原(h5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(tumor-associated glycoprotein 72、TAG-72)、血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor、VEGFR)、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、タイプ1チロシンタンパク質キナーゼ膜貫通受容体(ROR1)、B7-H3(CD276)、B7-H6(Nkp30)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン-4(chondroitin sulfate proteoglycan-4、CSPG4)、DNAXアクセサリ分子(DNAX accessory molecule、DNAM-1)、エフリンタイプA受容体2(EpHA2)、線維芽細胞関連タンパク質(fibroblast associated protein、FAP)、Gp100/HLA-A2、グリピカン3(glypican 3、GPC3)、HA-1H、HERK-V、IL-11Ra、潜在膜タンパク質(latent membrane protein、LMP1)、神経細胞接着分子(neural cell-adhesion molecule、N-CAM/CD56)、及びTRAIL受容体(trail receptor、TRAIL R)が挙げられ得るが、それらに限定されない。
【0152】
本明細書で使用するとき、「特異的に結合する」又は「に対する結合特異性を有する」結合ドメインは、1×10-7M以下、又は1×10-8M以下、又は5×10-9M以下、又は1×10-9M以下、又は5×10-10M以下、又は1×10-10M以下のKDで、標的を結合する結合ドメインを指す。
【0153】
本明細書で使用するとき、「抗体」という用語は、広義で使用され、かつヒト、ヒト化、複合、及びキメラ抗体を含む、免疫グロブリン又は抗体分子、並びにモノクローナル又はポリクローナルである抗体断片を含む。一般に、抗体は、特定の抗原に対する結合特異性を示すタンパク質又はペプチド鎖である。抗体の構造は、周知である。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主なクラス(すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)に割り当てることができる。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。したがって、本明細書に開示される抗体は、5つの主要なクラス又は対応する下位クラスのいずれかのものであることができる。一実施形態では、本明細書に開示される抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。脊椎動物種の抗体軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、すなわちカッパ及びラムダのうちの一方に割り当てることができる。したがって、本発明の抗体は、κ又はλ軽鎖定常ドメインを含有することができる。特定の実施形態によれば、本明細書に開示される抗体は、ラット又はヒト抗体由来の重鎖及び/又は軽鎖定常領域を含む。重及び軽定常ドメインに加えて、抗体は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域からなる抗原結合領域を含有し、これらのそれぞれは3つのドメイン(すなわち相補性決定領域1~3;CDR1、CDR2、及びCDR3)を含有する。軽鎖可変領域ドメインは、代替的にLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と称され、重鎖可変領域ドメインは、代替的にHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と称される。
【0154】
本明細書で使用するとき、「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、リガンドペプチド(例えば、GCN4若しくはLaタンパク質)又はTAAのエピトープを特異的に結合する単離された抗体は、リガンドペプチド又はTAAのエピトープを結合しない抗体を実質的に含まない)。加えて、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない。
【0155】
本明細書で使用するとき、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量に存在する可能性のある自然発生変異を除いて同一である。本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ技術、単一リンパ球遺伝子クローニング技術、又は組換えDNA法によって作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウス又はラットから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって生成され得、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する。
【0156】
本明細書で使用するとき、「単鎖抗体」という用語は、当該分野における従来の単鎖抗体を指す。1つの例示的な単鎖抗体は、短いペプチド(例えば、約5~約20アミノ酸のペプチド)によって接続された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単鎖可変断片(scFv)である。別の例示的な単鎖抗体は、重鎖及び軽鎖の各々の1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインを含む単鎖抗原結合断片(scFab)である。更に別の例示的な単鎖抗体は、ラクダ科動物抗体の重鎖の可変領域に対応するVHH(又はいわゆるナノボディ)である。
【0157】
本明細書で使用するとき、用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体、又は当該技術分野において既知である任意の技術を使用して作製される、ヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、インタクトな若しくは完全長の抗体、その断片、並びに/又は少なくとも1つのヒト重鎖及び/若しくは軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。
【0158】
本明細書で使用するとき、用語「ヒト化抗体」とは、抗体の抗原結合特性が保持されるが、人体における抗原の抗原性が低下するように、修飾により配列相同性をヒト抗体のものに増加させた非ヒト抗体を意味する。
【0159】
本明細書で使用するとき、用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ又は3つ以上の種に由来する抗体を指す。軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、多くの場合、所望の特異性、親和性、及び能力を有する1つの種の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)に由来する抗原結合ドメインの可変領域に対応し、一方で定常領域は、その種における免疫応答の誘発を回避するために、別の種の哺乳動物(例えば、ヒト)に由来する抗原結合ドメインの配列に対応する。
【0160】
本明細書で使用するとき、用語「DARPin」(設計アンキリン反復タンパク質;第5章参照。「Designed Ankyrin Repeat Proteins(DARPins):From Research to Therapy」,Methods in Enzymology,vol 503:101134(2012);及び「Efficient Selection of DARPins with Sub-nanomolar Affinities using SRP Phage Display」,J.Mol.Biol.(2008)382,1211-1227(これらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)は、標的タンパク質に対する高い特異性及び高い結合親和性を有する抗体模倣タンパク質を指し、これは、遺伝子操作によって調製される。DARPinは、天然アンキリンタンパク質に由来し、少なくとも2つのアンキリン反復モチーフを含む構造を有し、例えば、少なくとも3つ、4つ又は5つのアンキリン反復モチーフを含む。DARPinは、反復モチーフの数に応じて任意の好適な分子量を有することができる。例えば、3つ、4つ、又は5つのアンキリン反復モチーフを含むDARPinは、それぞれ、約10kDa、約14kDa、又は約18kDaの分子量を有し得る。
【0161】
DARPinは、構造を提供するコア部分と、コアの外側に存在し、標的に結合する標的結合部分と、を含む。構造コアは保存されたアミノ酸配列を含み、標的結合部分は標的に応じて異なるアミノ酸配列を含む。
【0162】
一実施形態では、本明細書に開示される単離された二重特異性アダプタータンパク質は、第1及び第2の結合ドメインのそれぞれが、scFv、scFab又はVHHなどの単鎖抗体を含む、単離された二重特異性抗体である。
【0163】
更なる実施形態では、第1及び第2の結合ドメインの一方又は両方は、DARPinなどの抗原結合断片を含む。
【0164】
なお更なる実施形態では、単離された二重特異性アダプタータンパク質は、N末端からC末端に向かって、第1の結合ドメイン、リンカー(例えば、(GS)ポリペプチドリンカー(nは少なくとも2の整数である)(配列番号128))、及び第2の結合ドメインを含む。又は、単離された二重特異性アダプタータンパク質は、N末端からC末端に向かって、第2の結合ドメイン、リンカー((GS)ポリペプチドリンカー(nは少なくとも2の整数である)(配列番号128))、及び第1の結合ドメインを含む。
【0165】
なお更なる実施形態では、単離された二重特異性アダプタータンパク質は、ジスルフィド結合などの分子間結合を介してコンジュゲートされた第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインを含み得る。
【0166】
図2は、本明細書において有用な二重特異性アダプタータンパク質の例示的な構成を示す。例えば、第1の結合ドメインは、抗GCN4ポリペプチドリガンド(H6 scFv)から形成され、これは、N末端からC末端に向かって、(GGGGS)リンカー(配列番号15)によって連結された軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(HL)からなる。第2の結合ドメインは、単鎖可変断片scFv、単鎖抗体VHH、又は標的(例えば、腫瘍細胞)に対する特異性を有するポリペプチドDarpinから形成される。
【0167】
本発明によれば、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質は、標的細胞(腫瘍細胞など)への組換えHSV感染を駆動するためのアダプターとして使用することができる。例えば、図1及び4に示されるように、その第1の結合ドメインが組換えHSVを特異的に結合し、第2の結合ドメインが標的細胞(例えば、腫瘍細胞)を特異的に結合することにより、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質は、標的感染のために組換えHSVビリオンを標的細胞に送り込むことができる。
【0168】
第1の結合ドメイン
二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、組換えHSVの異種ヌクレオチド配列によってコードされるリガンドペプチドを特異的に結合するリガンド結合ドメインである。
【0169】
一実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、GCN4転写因子若しくはその断片、又はそのエピトープ、又は配列番号4によって同定されるそのエピトープを特異的に結合するGCN4結合ドメインである。GCN4結合ドメインは抗原結合断片であってもよい。GCN4結合ドメインは、scFv、scFab又はVHHなどの単鎖抗体を含んでもよい。
【0170】
一実施形態では、GCN4結合ドメインは、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに/又は軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域VLを含み、その配列は以下の通りである:
HCDR1:GFSLTDYG(配列番号16);
HCDR2:IWGDGIT(配列番号17);
HCDR3:VTGLFDY(配列番号18);
LCDR1:TGAVTTSNY(配列番号19);
LCDR2:GTN(配列番号20);
LCDR3:ALWYSNHWV(配列番号21)。
【0171】
一態様では、二重特異性アダプタータンパク質のGCN4結合ドメインは、配列番号22(DVQLQQSGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTDYGVNWVRQSPGKGLEWLGVIWGDGITDYNSALKSRLSVTKDNSKSQVFLKMNSLQSGDSARYYCVTGLFDYWGQGTTLTVSS)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号23(DAVVTQESALTTSPGETVTLTCRSSTGAVTTSNYASWVQEKPDHLFTGLIGGTNNRAPGVPARFSGSLIGDKAALTITGAQTEDEAIYFCALWYSNHWVFGGGTKLTVL)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む。
【0172】
更なる態様では、二重特異性アダプタータンパク質のGCN4結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)である。抗GCN4 scFvは、(GS)ポリペプチドリンカー(nは少なくとも2の整数である(配列番号128))によってVLドメインから分離されたVHドメインから構成され得る。VHドメインは、配列番号22と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。VLドメインは、配列番号23と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。抗GCN4 scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向又はVL-VH配向であってもよい。1つの例示的な抗GCN4 scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向、及び配列番号24(DVQLQQSGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTDYGVNWVRQSPGKGLEWLGVIWGDGITDYNSALKSRLSVTKDNSKSQVFLKMNSLQSGDSARYYCVTGLFDYWGQGTTLTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSDAVVTQESALTTSPGETVTLTCRSSTGAVTTSNYASWVQEKPDHLFTGLIGGTNNRAPGVPARFSGSLIGDKAALTITGAQTEDEAIYFCALWYSNHWVFGGGTKLTVL)と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。別の例示的な抗GCN4 scFvは、N末端からC末端に向かって、VL-VH配向、及び配列番号25(DAVVTQESALTTSPGETVTLTCRSSTGAVTTSNYASWVQEKPDHLFTGLIGGTNNRAPGVPARFSGSLIGDKAALTITGAQTEDEAIYFCALWYSNHWVFGGGTKLTVLGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSDVQLQQSGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTDYGVNWVRQSPGKGLEWLGVIWGDGITDYNSALKSRLSVTKDNSKSQVFLKMNSLQSGDSARYYCVTGLFDYWGQGTTLTVSS)(H6 scFv)と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。
【0173】
一実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、合成ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又はその断片を特異的に結合するRE結合ドメインである。一態様では、RE結合ドメインは、ロイシンジッパー部分REを結合することができる抗原結合断片を含む。別の態様では、RE結合ドメインは、ロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又はその断片を特異的に結合することができるロイシンジッパー部分ER(配列番号10)又はその断片を含む。
【0174】
一実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、合成ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)又はその断片を特異的に結合するER結合ドメインである。一態様では、ER結合ドメインは、ロイシンジッパー部分ERを結合することができる抗原結合断片を含む。別の態様では、ER結合ドメインは、ロイシンジッパー部分ER(配列番号10)又はその断片を特異的に結合することができるロイシンジッパー部分RE(配列番号6)又はその断片を含む。
【0175】
一実施形態では、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、Laタンパク質若しくはその断片、又はそのエピトープ、又は配列番号12によって同定されるそのエピトープを特異的に結合するLa結合ドメインである。La結合ドメインは、抗原結合断片であってもよい。La結合ドメインは、scFv、scFab又はVHHなどの単鎖抗体を含んでもよい。
【0176】
一実施形態では、La結合ドメインは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むVH、並びに/又はLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含むVLを含み、その配列は以下の通りである:
HCDR1:GYTFTHYYIY(配列番号26);
HCDR2:WMGGVNPSNGGTHF(配列番号27);
HCDR3:RSEYDYGLGFAY(配列番号28);
LCDR1:QSLLNSRTPKNYLA(配列番号29);
LCDR2:LLIYWASTRKS(配列番号30);
LCDR3:KQSYNLL(配列番号31)。
【0177】
一態様によれば、二重特異性アダプタータンパク質のLa結合ドメインは、配列番号32(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTHYYIYWVRQAPGQGLEWMGGVNPSNGGTHFNEKFKSRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARSEYDYGLGFAYWGQGTLVTVSS)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域(VH)、及び/又は配列番号33(DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSRTPKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRKSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYNLLTFGGGTKVEIK)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含み得る。
【0178】
更なる態様では、二重特異性アダプタータンパク質のLa結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)である。抗La scFvは、(GS)ポリペプチドリンカー(nは少なくとも2の整数である(配列番号128))によってVLドメインから分離されたVHドメインから構成され得る。VHドメインは、配列番号30と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。VLドメインは、配列番号31と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。抗La scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向又はVL-VH配向であってもよい。1つの例示的な抗La scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向、及び配列番号34(QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTHYYIYWVRQAPGQGLEWMGGVNPSNGGTHFNEKFKSRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARSEYDYGLGFAYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSRTPKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRKSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYNLLTFGGGTKVEIK)(5B9HL)と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。
【0179】
第2の結合ドメイン
二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、PSMA、TMEFF2、KLK2、HLA-G又はROR1などのTAAを特異的に結合するTAA結合ドメインである。一態様では、TAA結合ドメインは、scFv、scFab又はVHHなどの単鎖抗体を含み得る。別の態様では、TAA結合ドメインは、DARPinなどの抗体模倣タンパク質を含み得る。
【0180】
一実施形態では、第2の結合ドメインは、抗PSMA VHH又は抗PSMA scFvなどのPSMAを特異的に結合する。
【0181】
一実施形態では、第2の結合ドメインは、抗PSMA VHHを含む。1つの例示的な抗PSMA VHHは、HCDR1(GSTFSINA、配列番号35)、HCDR2(LSSGGSK、配列番号36)、及びHCDR3(NAEIYYSDGVDDGYRGMDY、配列番号37)を含む。又は、例示的な抗PSMA VHHは、配列番号38(QLQLVESGGGLVHAGGSLRLSCAASGSTFSINAIGWYRQAPGKQRELVAALSSGGSKNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNRLKPEDTAVYYCNAEIYYSDGVDDGYRGMDYWGKGTQVTVSS(B116))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む。別の例示的な抗PSMA VHHは、HCDR1(GPPLSSYA、配列番号39)、HCDR2(ISWSGSNT、配列番号40)、及びHCDR3(AADRRGGPLSDYEWEDEYAD、配列番号41)を含む。又は、例示的な抗PSMA VHHは、配列番号42(EVQVVESGGGLVQTGGSLRLSCAASGPPLSSYAVAWFRQTPGKEREFVAAISWSGSNTYYADSVKGRFTISKDNAKNTVLVYLQMNSLKPEDTAVYYCAADRRGGPLSDYEWEDEYADWGQGTQVTVSS(B110))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を含む。
【0182】
一実施形態では、第2の結合ドメインは、抗PSMA scFvを含む。本明細書に開示される抗PSMA scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向又はVL-VH配向であってもよい。一態様では、抗PSMA scFvは、HCDR1(GFTFSFYN、配列番号43)、HCDR2(ISTSSSTI、配列番号44)、及びHCDR3(AREGSYYDSSGYPYYYYDMDV、配列番号45)を含むVH、並びに/又はLCDR1(SSNIGAGYD、配列番号46)、LCDR2(GNT、配列番号47)、及びLCDR3(QSYDSSLSGTPYVV、配列番号48)を含むVLを含む。別の態様では、抗PSMA scFvは、配列番号49(EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYNMNWVRQAPGKGLEWISYISTSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRDEDTAVYYCAREGSYYDSSGYPYYYYDMDVWGQGTTVTVSS)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号50(QSVLTQPPSVSGAPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGNTNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCQSYDSSLSGTPYVVFGGGTKLTVL)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む。
【0183】
1つの例示的な抗PSMA scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向、及び配列番号51(EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYNMNWVRQAPGKGLEWISYISTSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRDEDTAVYYCAREGSYYDSSGYPYYYYDMDVWGQGTTVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSQSVLTQPPSVSGAPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGNTNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCQSYDSSLSGTPYVVFGGGTKLTVL(B588HL))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。別の例示的な抗PSMA scFvは、N末端からC末端に向かって、VL-VH配向、及び配列番号52(QSVLTQPPSVSGAPGQRVTISCTGSSSNIGAGYDVHWYQQLPGTAPKLLIYGNTNRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCQSYDSSLSGTPYVVFGGGTKLTVLGGSEGKSSGSGSESKSTGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSFYNMNWVRQAPGKGLEWISYISTSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRDEDTAVYYCAREGSYYDSSGYPYYYYDMDVWGQGTTVTVSS(B588LH))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。
【0184】
更なる実施形態では、第2の結合ドメインは、抗TMEFF2 scFvなどのTMEFF2を特異的に結合する。本明細書に開示される抗TMEFF2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向又はVL-VH配向であってもよい。一態様では、抗TMEFF2 scFvは、HCDR1(GFTFSSYS、配列番号53)、HCDR2(ISGSGGFT、配列番号54)、及びHCDR3(ARMPLNSPHDY、配列番号55)を含むVH、並びに/又はLCDR1(QGIRND、配列番号56)、LCDR2(AAS、配列番号57)、及びLCDR3(LQDYNYPLT、配列番号58)を含むVLを含む。一態様では、抗TMEFF2 scFvは、配列番号59(EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYSMSWVRQAPGKGLEWVSVISGSGGFTDYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARMPLNSPHDYWGQGTLVTVSS)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号60(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQDYNYPLTFGGGTKVEIK)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む。一態様では、抗TMEFF2 scFvは、HCDR1(GVSISSYF、配列番号61)、HCDR2(ISTSGST、配列番号62)、及びHCDR3(VRDWTGFDY、配列番号63)を含むVH、並びに/又はLCDR1(SSDVGSYNL、配列番号64)、LCDR2(EGS、配列番号65)、及びLCDR3(SSYAGSSTYV、配列番号66)を含むVLを含む。一態様では、抗TMEFF2 scFvは、配列番号67(QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGVSISSYFWSWLRQPAGKGLQWIGRISTSGSTNHNPSLKSRVIMSVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCVRDWTGFDYWGQGTLVTVSS)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号68(SYELTQPASVSGSPGQSITISCIGTSSDVGSYNLVSWYQQHPGKVPKLMIYEGSKRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSSTYVFGTGTKVTVL)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む。
【0185】
1つの例示的な抗TMEFF2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向、及び配列番号69(QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGVSISSYFWSWLRQPAGKGLQWIGRISTSGSTNHNPSLKSRVIMSVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCVRDWTGFDYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSSYELTQPASVSGSPGQSITISCIGTSSDVGSYNLVSWYQQHPGKVPKLMIYEGSKRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSSTYVFGTGTKVTVL(TMEF9HL))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。別の例示的な抗TMEFF2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VL-VH配向、及び配列番号70(DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQDYNYPLTFGGGTKVEIKGGSEGKSSGSGSESKSTGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYSMSWVRQAPGKGLEWVSVISGSGGFTDYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARMPLNSPHDYWGQGTLVTVSS(TMEF847LH))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。更に別の例示的な抗TMEFF2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VL-VH配向、及び配列番号71(SYELTQPASVSGSPGQSITISCIGTSSDVGSYNLVSWYQQHPGKVPKLMIYEGSKRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSSTYVFGTGTKVTVLGGSEGKSSGSGSESKSTGGSQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGVSISSYFWSWLRQPAGKGLQWIGRISTSGSTNHNPSLKSRVIMSVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCVRDWTGFDYWGQGTLVTVSS(TMEF9LH))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。
【0186】
なお更なる実施形態では、第2の結合ドメインは、抗KLK2 scFvなどのKLK2を特異的に結合する。本明細書に開示される抗KLK2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向又はVL-VH配向であってもよい。一態様では、抗KLK 2 scFvは、HCDR1(GNSITSDYA、配列番号72)、HCDR2(ISYSGST、配列番号73)、HCDR3(ATGYYYGSGF、配列番号74)、LCDR1(ESVEYFGTSL、配列番号75)、LCDR2(AAS、配列番号76)、及びLCDR3(QQTRKVPYT、配列番号77)を含む。別の態様では、抗KLK2 scFvは、配列番号78(QVQLQESGPGLVKPSDTLSLTCAVSGNSITSDYAWNWIRQPPGKGLEWIGYISYSGSTTYNPSLKSRVTMSRDTSKNQFSLKLSSVTAVDTAVYYCATGYYYGSGFWGQGTLVTVSS)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号79(DIVLTQSPDSLAVSLGERATINCKASESVEYFGTSLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASNRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQTRKVPYTFGQGTK)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む。更に別の態様では、抗KLK2 scFvは、配列番号80(QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGNSITSDYAWNWIRQFPGKRLEWIGYISYSGSTTYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCATGYYYGSGFWGQGTLVTVSS)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVH、及び/又は配列番号81(EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASESVEYFGTSLMHWYQQKPGQPPRLLIYAASNVESGIPARFSGSGSGTDFTLTISSVEPEDFAVYFCQQTRKVPYTFGGGTKVEIK)と少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは100%同一であるポリペプチド配列を有するVLを含む。
【0187】
1つの例示的な抗KLK2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向、及び配列番号82(QVQLQESGPGLVKPSDTLSLTCAVSGNSITSDYAWNWIRQPPGKGLEWIGYISYSGSTTYNPSLKSRVTMSRDTSKNQFSLKLSSVTAVDTAVYYCATGYYYGSGFWGQGTLVTVSSGTEGKSSGSGSESKSTDIVLTQSPDSLAVSLGERATINCKASESVEYFGTSLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASNRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQTRKVPYTFGQGTKLEIK(11B6HL))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。別の例示的な抗KLK2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向、及び配列番号83(QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGNSITSDYAWNWIRQFPGKRLEWIGYISYSGSTTYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCATGYYYGSGFWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASESVEYFGTSLMHWYQQKPGQPPRLLIYAASNVESGIPARFSGSGSGTDFTLTISSVEPEDFAVYFCQQTRKVPYTFGGGTKVEIK(KL2B359HL))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。更に例示的な抗KLK2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VL-VH配向、及び配列番号84(DIVLTQSPDSLAVSLGERATINCKASESVEYFGTSLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASNRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQTRKVPYTFGQGTKLEIKGTEGKSSGSGSESKSTQVQLQESGPGLVKPSDTLSLTCAVSGNSITSDYAWNWIRQPPGKGLEWIGYISYSGSTTYNPSLKSRVTMSRDTSKNQFSLKLSSVTAVDTAVYYCATGYYYGSGFWGQGTLVTVSS(11B6LH))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。更に例示的な抗KLK2 scFvは、N末端からC末端に向かって、VL-VH配向、及び配列番号85(EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASESVEYFGTSLMHWYQQKPGQPPRLLIYAASNVESGIPARFSGSGSGTDFTLTISSVEPEDFAVYFCQQTRKVPYTFGGGTKVEIKGGSEGKSSGSGSESKSTGGSQVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGNSITSDYAWNWIRQFPGKRLEWIGYISYSGSTTYNPSLKSRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCATGYYYGSGFWGQGTLVTVSS(KL2B359LH))と少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。
【0188】
なお更なる実施形態では、第2の結合ドメインは、抗HLA-G scFvなどのHLA-Gを特異的に結合する。本明細書に開示される抗HLA-G scFvは、N末端からC末端に向かって、VH-VL配向又はVL-VH配向であってもよい。
【0189】
なお更なる実施形態では、第2の結合ドメインは、ポリペプチドリガンドDARPinなどのROR1を特異的に結合する。ROR1に対する特異性を有する例示的なDARPinは、配列番号86(GSDLGKKLLEAARAGQDDEVRILMANGADVNASDRYGRTPLHLAAFNGHLEIVEVLLKNGADVNAKDKIGNTPLHLAANHGHLEIVEVLLKYGAVVNATDWLGVTPLHLAAVFGHLEIVEVLLKYGADVNAQDKFGKTAFDISIDNGNEDLAEILQKL(H6w、例えば、Koch,Characterisation and affinity maturation of DARPins binding human ROR1,Master’s Thesis,Submitted at Department of Biotechnology,University of Natural Resources and Life Sciences,Viennaを参照されたい))と95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%同一であるポリペプチド配列を有する。
【0190】
なお更なる実施形態では、本発明は、二重特異性アダプタータンパク質又はその断片をコードする核酸を含む、単離されたポリヌクレオチドに関する。タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく、タンパク質のコード配列を変える(例えば置換する、欠失する、挿入するなど)ことができることが、当業者には理解されよう。したがって、本発明の二重特異性アダプタータンパク質又はその断片をコードする核酸配列を、タンパク質のアミノ酸配列を変えずに変化させることができる点は当業者には理解されるであろう。
【0191】
本開示のなお更なる実施形態では、本発明は、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質又はその断片をコードする核酸を含む、単離されたポリヌクレオチドを含むベクターに関する。本開示を考慮して、当業者に既知である任意のベクター、例えばプラスミド、コスミド、ファージベクター、又はウイルスベクターを使用することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドなどの組換え発現ベクターである。ベクターは、例えば、プロモータ、リボソーム結合エレメント、ターミネータ、エンハンサ、選択マーカー、及び複製起点という、発現ベクターの従来の機能を確立するための任意のエレメントを含むことができる。プロモータは、常時発現型、誘導型、又は抑制型プロモータであり得る。細胞に核酸を送達することができる多数の発現ベクターが当技術分野において知られており、細胞内でその抗原結合ドメインを生成するために、本明細書において使用することができる。従来のクローニング技術、又は人工遺伝子合成法を使用して、本発明の実施形態に従った組換え発現ベクターを生成することができる。
【0192】
なお更なる実施形態では、本発明は、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質又はその断片をコードする核酸を含む、単離されたポリヌクレオチドを含むベクターを形質導入した細胞に関する。「形質導入された」又は「形質導入」という用語は、外因性の核酸が宿主細胞に移送又は導入されるプロセスを指す。「形質導入された」細胞は、外因性の核酸で形質導入されたものである。その細胞は、対象の一次細胞及びその子孫を含む。
【0193】
別の一般的な態様では、本発明は、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質又はその断片をコードする単離核酸分子を含むベクターを細胞に形質導入することによって形質転換細胞を調製する方法に関する。
【0194】
別の一般的な態様において、本発明は、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質又はその断片をコードする単離核酸分子を含む、宿主細胞に関する。本開示を考慮すると、当業者に知られている任意の宿主細胞を、本発明の抗体又はその抗原結合断片の組換え発現に使用することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、大腸菌TG1若しくはBL21細胞(例えば、scFv又はFab抗体の発現の場合)、CHO-DG44若しくはCHO-K1細胞、又はHEK293細胞(例えば、完全長IgG抗体の発現の場合)である。特定の実施形態によれば、組換え発現ベクターは、組換え核酸が効果的に発現するように宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれる、化学的トランスフェクション、熱ショック、又はエレクトロポレーションなどの従来の方法によって宿主細胞に形質転換される。
【0195】
本開示のなお更なる実施形態では、本発明は、本明細書に開示される単離された二重特異性アダプタータンパク質を産生する方法であって、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質をコードする核酸を含む細胞を培養することと、細胞又は細胞培養物から(例えば、上清から)二重特異性アダプタータンパク質を回収することと、を含む、方法に関する。発現された二重特異性アダプタータンパク質は、当該技術分野において既知の従来技術に従って、また、本明細書に記載されるように、細胞から採取し、精製することができる。
【0196】
医薬組成物
上に開示された組換えHSVと、上に開示された単離された二重特異性アダプタータンパク質と、医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物が、本明細書でなお更に開示される。本明細書で使用するとき、「医薬組成物」という用語は、上に開示された組換えHSVと、上に開示された単離された二重特異性アダプタータンパク質と、を、1つ又は2つ以上の医薬的に許容される担体と共に含む、製品を意味する。
【0197】
本明細書で使用するとき、用語「担体」は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有小胞、ミクロスフェア、リポソーム封入体、又は医薬製剤で使用するための当該技術分野において周知である他の材料を指す。担体、賦形剤又は希釈剤の特性は、特定の用途の投与経路によって決まる点は理解されよう。本明細書に使用される場合、「医薬的に許容される担体」という用語は、本発明による組成物の有効性にも本発明による組成物の生物学的活性にも干渉しない非毒性性材料を指す。特定の実施形態によれば、本開示を考慮すると、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、宿主細胞、ウイルス及び/又は遺伝子操作された免疫細胞の医薬組成物における使用に好適な、任意の医薬的に許容される担体を、本発明で使用できる。
【0198】
使用方法
別の一般的な態様では、本発明は、上に開示された二重特異性アダプタータンパク質を使用して、上に開示された組換えHSVを腫瘍細胞に再標的化する方法に関する。本方法は、組換えHSV及び二重特異性アダプタータンパク質を対象に投与することを含み、二重特異性アダプタータンパク質の第1の結合ドメインは、組換えHSVを特異的に結合し、二重特異性アダプタータンパク質の第2の結合ドメインは、腫瘍細胞のTAAを特異的に結合し、それによって組換えHSVが腫瘍細胞に再標的化される。
【0199】
本方法において、組換えHSV及び二重特異性アダプタータンパク質は、二重特異性アダプタータンパク質の第1のドメインが組換えHSVによって発現される異種リガンドペプチドを特異的に結合し、二重特異性アダプタータンパク質の第2のドメインが選択された腫瘍細胞の表面上のTAAを特異的に結合するように選択される。例えば、組換えHSVを前立腺がん細胞に再標的化するために、GCN4再標的化組換えHSV、並びに抗GCN4 scFvを含む第1の結合ドメイン及び抗PSMA scFvを含む第2の結合ドメインを有する二重特異性アダプタータンパク質を選択することができる。
【0200】
別の一般的な態様では、本発明は、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本明細書に開示される一致する二重特異性アダプタータンパク質を有する組換えHSVを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。本方法によって、組換えHSVは、一致する二重特異性アダプタータンパク質によって対象におけるがん細胞に再標的化され、それによってがん細胞の腫瘍溶解を引き起こす。本明細書で使用するとき、「腫瘍溶解」は、標的がん細胞の生存率の減少を指す。生存率は、処理した細胞の生細胞カウントによって決定することができ、減少の程度は、処理した細胞中の生細胞数を未処理の細胞中の生細胞数と比較することによって、又は処理前後の生細胞カウントを比較することによって決定することができる。
【0201】
がんは、例えば、前立腺がん、肺がん、胃がん、食道がん、胆管がん、胆管細胞がん、結腸がん、肝細胞がん、腎細胞がん、膀胱尿路上皮がん、転移性黒色腫、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、頭頸部がん、膵臓がん、神経膠腫、神経膠芽腫、及び他の固形腫瘍、並びに非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin’s lymphoma、NHL)、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia、ALL)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia、CML)、多発性骨髄腫(multiple myeloma、MM)、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、及び他の液体腫瘍から選択され得るが、これらに限定されない。
【0202】
本発明の実施形態によれば、組換えHSV及び二重特異性アダプタータンパク質を含む医薬組成物は、治療有効量の本明細書に開示される組換えHSV及び二重特異性アダプタータンパク質を含む。本明細書で使用するとき、「治療有効量」という用語は、対象に所望の生物学的又は薬理的応答を惹起する活性成分又は構成成分の量を指す。治療有効量は、記載される目的に対して経験的かつ通常の方法で決定することができる。
【0203】
組換えHSV及び二重特異性アダプタータンパク質に関して本明細書で使用するとき、治療有効量とは、免疫応答の調節を必要とする対象においてそれを行う、二重特異性アダプタータンパク質と組み合わせた組換えHSVの量を意味する。また、組換えHSVに関して本明細書で使用するとき、治療有効量とは、疾患、障害、若しくは状態の治療をもたらす、疾患、障害、若しくは状態の進行を予防する若しくは遅延させる、又は疾患、障害、若しくは状態に関連する症状を低減する若しくは完全に緩和する、二重特異性アダプタータンパク質を伴う組換えHSVの量を意味する。
【0204】
特定の実施形態によれば、治療有効量は、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上を達成するのに十分な治療の量を指す:(i)治療される疾患、障害若しくは状態又はそれに関連する症状の重症度を軽減又は改善すること、(ii)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれと関連する症状の期間を短縮すること、(iii)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれと関連する症状の進行を予防すること、(iv)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれと関連する症状の退縮を生じさせること、(v)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれと関連する症状の進行又は発症を予防すること、(vi)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれと関連する症状の再発を予防すること、(vii)治療される疾患、障害、若しくは状態、又はそれと関連する症状を有する対象の入院を減少させること、(viii)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれと関連する症状を有する対象の入院期間を短縮させること、(ix)治療される疾患、障害若しくは状態、又はそれと関連する症状を有する対象の生存率を高めること、(xi)治療される対象の疾患、障害若しくは状態、又はそれと関連する症状を阻害又は軽減すること、及び/あるいは(xii)別の療法の予防又は治療効果を強化又は改善すること。
【0205】
治療有効量又は用量は、治療される疾患、障害又は状態、投与手段、標的部位、対象の生理学的状態(例えば、年齢、体重、健康状態を含む)、対象がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び、治療が予防的なものであるか治療的なものであるか、などの様々な因子によって異なり得る。治療投薬量は、安全性及び有効性を最適化するために最適に漸増される。
【0206】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載される医薬組成物は、対象への想定される投与経路に好適であるように製剤化される。例えば、本明細書に記載される医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内投与に好適であるように製剤化することができる。
【0207】
本発明の医薬組成物は、当業者に既知の任意の便利な様式で投与され得る。例えば、本発明の医薬組成物は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、留置、及び/又は移植によって対象に投与することができる。本発明の組換えHSV及び一致する二重特異性アダプタータンパク質を含む医薬組成物は、経動脈に、皮下に、皮内に、腫瘍内に、瘤内に、髄内に、筋肉内に、胸膜内に、静脈内(i.v.)注射によって、又は腹腔内に投与することができる。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、対象のリンパ球枯渇を伴って又は伴わずに投与され得る。
【0208】
本明細書に開示される組換えHSV及び二重特異性アダプタータンパク質を含む医薬組成物は、滅菌液体調製物、典型的には細胞懸濁液を含む等張性水溶液、又は任意選択的に、選択されたpHにまで緩衝されるエマルジョン、分散液などとして提供され得る。医薬組成物は、組換えHSV及び二重特異性アダプタータンパク質の完全性及び生存性、並びに医薬組成物の投与に適した担体、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などを含むことができる。
【0209】
本明細書で使用するとき、用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、及び「治療(treatment)」は全て、がんに関連する少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの改善又は回復を指し、これは対象において必ずしも認識されるとは限らないが、対象において認識可能な場合もある。用語「治療する」、「治療すること」、及び「治療」はまた、疾患、障害、又は病態を退縮させる、その進行を防止する、又は少なくともその進行を遅らせることを指す場合もある。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、腫瘍若しくはがんなどの疾患、障害、若しくは病態に関連する1つ又は2つ以上の症状の緩和、進行若しくは発症の予防、又はその期間の短縮を指す。特定の実施形態では、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、疾患、障害、又は病態の再発の防止を指す。特定の実施形態では、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、疾患、障害、又は病態を有する対象の生存率の向上を指す。特定の実施形態では、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、対象における疾患、障害、又は病態の消失を指す。
【0210】
特定の実施形態によれば、がんの治療において使用される組換えHSV及び一致する二重特異性アダプタータンパク質を含む医薬組成物が提供される。がん療法のために、提供される医薬組成物は、化学療法、抗CD20mAb、抗TIM-3mAb、抗LAG-3mAb、抗EGFRmAb、抗HER-2mAb、抗CD19mAb、抗CD33mAb、抗CD47mAb、抗CD73mAb、抗DLL-3mAb、抗アペリンmAb、抗TIP-1mAb、抗FOLR1mAb、抗CTLA-4mAb、抗PD-L1mAb、抗PD-1 mAb、他の免疫腫瘍学薬、抗血管新生薬、放射線療法、抗体-薬物複合体(antibody-drug conjugate、ADC)、標的療法、又は他の抗がん薬が挙げられるがこれらに限定されない、別の治療法と併用され得る。
【0211】
特定の実施形態によれば、がんの治療を必要とする対象においてそれを行う方法は、対象に、本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質と組み合わせて組換えHSVを投与することを含む。
【0212】
キット
別の一般的な態様では、本明細書に開示される組換えHSVと、本明細書に開示される単離された二重特異性アダプタータンパク質と、任意選択的に医薬担体と、を含むキット、単位投与量、及び製造物品が本明細書に提供される。特定の実施形態では、キットは、その使用説明書を提供する。
【0213】
別の特定の態様では、(1)本明細書に開示される組換えHSVと、(2)本明細書に開示される単離された二重特異性アダプタータンパク質又はその断片と、を含むキットが、本明細書において提供される。組換えHSV及び単離された二重特異性アダプタータンパク質は、別個の成分として、又はプレミックスとしてキットに含まれ得る。
【0214】
別の特定の態様では、(1)本明細書に開示される組換えHSVと、(2)本明細書に開示される二重特異性アダプタータンパク質又はその断片をコードする単離核酸分子と、を含むキットが、本明細書において提供される。組換えHSV及び単離核酸分子は、別個の成分として、又はプレミックスとしてキットに含まれ得る。
【実施例
【0215】
GCN4/H6 scFvによるHSVの再標的化
材料及び方法
細胞培養
Vero細胞(Vero ATCC CCL-81)を、4.5g/Lグルコース、ピルビン酸ナトリウム、Glutamax(Gibco)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、100U/mL)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。無血清Vero(BioReliance cGMP Biomaterial RepositoryからのVERO-SF-ACF MCB)を、Glutamax(Gibco)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、100U/mL)を補充したVP-SFM(ThermoFisher)中で維持した。HEK293Tを、4.5g/Lグルコース、ピルビン酸ナトリウム、Glutamax(Gibco)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、100U/mL)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。22Rv1細胞を、4.5g/Lグルコース、ピルビン酸ナトリウム、Glutamax(Gibco)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、100U/mL)を補充したRoswell Park Memorial Institute 1460培地(RPMI-1460)中で維持した。LNCaPを、4.5g/Lグルコース、ピルビン酸ナトリウム、Glutamax(Gibco)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、100U/mL)を補充した、フェノールレッドを含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。DU145を、MEM非必須アミノ酸(Corning Cellgro)、ピルビン酸ナトリウム、Glutamax(Gibco)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、100U/mL)を補充した、EBSS及び25mM Hepesを含むイーグル最小必須培地(EMEM)中で維持した。
【0216】
GCN4再標的化oHSV1細菌人工染色体(BAC)
GCN4再標的化HSV1 BAC(又は組換えHSV1)は、HSV1Patton株ゲノムを含有し(例えば、完全な説明については、Mulvey et al.,J Virol.2007 Apr;81(7):3377-90を参照されたい)、これに、EGFP-FRT-KAN-FRT-T2A-1XGCN-d6-38gDカセットを、US6遺伝子(genebank MF959544.1ヌクレオチド138309~139493)の開始コドンと終止コドンとの間に挿入した。カセットは、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)アミノ酸配列(Uniprot P42212、F64L及びS65T変異)と、OVAペプチド(下線)及びインフレームFRT部位(イタリック体太字、ヌクレオチド配列gaagttcctattctctagaaagtataggaacttc)(配列番号130)を含むペプチドリンカー(AA配列:
【0217】
)(配列番号129)と、T2A自己切断ペプチド(AA配列:GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP)(配列番号131)と、内因性US6シグナルペプチド(AA配列
【0218】
(配列番号132)、シグナルペプチドには下線)を含むUS6アミノ酸1~30と、GCN4エピトープペプチド(配列
【0219】
(配列番号5)、エピトープには下線(配列番号4))を含有する30AA挿入と、US6 AA39~369(Uniprot P57083)とのインフレーム融合物を含有する。
【0220】
GCN4再標的化HSV1
GCN4再標的化ウイルスは、gD相補VSF細胞株eF9の1e6細胞に、リポフェクタミン3000を含む1μgのGCN4再標的化HSV1 BACをトランスフェクトすることによって得た。続いて、ウイルスをVero H6-ネクチン1細胞上で継代することによって増幅した。
【0221】
gD相補VSF細胞株
無血清Vero細胞(BioReliance cGMP Biomaterial RepositoryからのVERO-SF-ACF MCB)に、内因性US6遺伝子の代わりに挿入されたEGFP-T2A-US6(糖タンパク質D)カセットを含有するHSV1 Patton株ゲノムの5.7kb断片を保有するレンチウイルスを形質導入した。EGFP-T2A-US6 ORFは、US6 ORFの上流の1.5kbのゲノム配列及びUS6 ORFの下流の2.2kbのゲノム配列に隣接している。ブラストサイジン(2ug/mL)で選択した後、単細胞クローンを限界希釈によって単離した。クローンを、gD欠損HSV1 BACクローンの成長を救済するそれらの能力についてスクリーニングした。
【0222】
H6-ネクチン1細胞株
Vero細胞(ATCC CCL-81)及びB16-F10細胞(ATCC、カタログ番号CRL-6475TM)に、GSリンカー(配列番号124)によって分離されたヒトネクチン-1(Uniprot Q15223)のAA146~517に融合した抗GCN4 H6 scFvを発現するレンチウイルスを形質導入した。ブラストサイジン選択(それぞれ7.5μg/mL及び10μg/mL)後、単一細胞クローンを限界希釈によって単離し、ウェスタンブロットによってH6-ネクチン1発現についてスクリーニングした。
【0223】
PSMA細胞株
HEK-293Tに、ヒトPSMAを発現するレンチウイルス(Genecopoeia、カタログ番号:LPP-G0050-Lv105-050-S)を形質導入した。ピューロマイシン選択(2.5μg/mL)後、単一細胞クローンを限界希釈によって単離し、ウェスタンブロット及びFACS分析によってPSMA発現についてスクリーニングした。
【0224】
TMEFF2細胞株
Vero細胞(ATCC CCL-81)に、ヒトTMEFF2を発現するレンチウイルスを形質導入した。ピューロマイシン選択(5μg/mL)後、安定な集団を、細胞選別によってPSMA発現について濃縮した。
【0225】
KLK2-ネクチン1細胞株
Vero細胞(ATCC CCL-81)に、ヒトネクチン-1(Uniprot Q15223、トランスメンブレン+細胞質ドメイン)のAA337~517に融合したS195A変異(触媒死変異体)を保有するヒトKLK2(AA25~261、Uniprot P20151)を発現するレンチウイルスを形質導入した。ピューロマイシン選択(5μg/mL)後、安定な集団を、細胞選別によってKLK2-ネクチン1発現について濃縮した。
【0226】
二重特異性アダプタータンパク質のトランスフェクション及び発現
本研究で使用した全ての二重特異性アダプタータンパク質(表1を参照されたい)を、pCDNA3.1(+)-myc-HisAベクター(ThermoFischer)にクローニングした。
【0227】
トランスフェクションのために、HEK293T細胞を完全DMEM中の24ウェルに播種した。播種の24時間後、リポフェクタミン3000(ThermoFischer)を製造業者の指示に従って使用して、細胞に500ngの各二重特異性アダプター発現プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、上清を回収し、GCN4再標的化HSV1感染アッセイに直ちに使用した。
【0228】
GCN4再標的化HSV1感染アッセイ
標的細胞を、感染の24時間前にポリ-Lリシン(Sigma、0.01%、RTで30分、DPBSで2回洗浄)で処理した96ウェルプレートに播種した。感染当日、培地を除去し、二重特異性アダプタータンパク質を含有する50μLの馴化上清と交換した。1つの未処理ウェルをトリプシン処理し、細胞を計数した。37℃で2時間インキュベートした後、馴化培地を除去し、細胞を100μLのPBS(HEK293T細胞を除く)で洗浄し、MOI=0.1で希釈した再標的化ウイルスを含有する50μLの新鮮な完全培地を添加する。細胞を37℃で3時間インキュベートした。ウイルス上清を除去し、ウェルを100μLのPBS(HEK293T細胞を除く)で洗浄し、100μLの新鮮な完全培地を添加した。24時間後、GFP蛍光及び細胞変性効果を顕微鏡でモニターした。
【0229】
ウェスタンブロット
75μLの上清を25μLの4×Laemmli緩衝液(Biorad+100mM DTT)と混合し、95℃で5分間変性させた。20μLの各変性上清を、4~15%Mini-PROTEAN(登録商標)TGX Stain-Free(商標)Protein Gel(Biorad)に流し、低蛍光PVDF膜(Biorad、Trans-Blot Turbo Transfer System RTA Transferキット)に移した。ブロッキング緩衝液として、Intercept(PBS)ブロッキング緩衝液(Li-CoR)を用いた。c-Mycマウスモノクローナル抗体(9E10、Invitrogen)を一次抗体として、IRDye 800 CWヤギ抗マウス(Licor)を二次抗体として用いて、Mycタグ付き二重特異性アダプターを検出した。ブロットをOdyssey CLXスキャナー(Licor)でスキャンした。
【0230】
FACS染色
安定な細胞株及びそれらの親対応物を以下の抗体で染色した:PE標識抗ROR1(Biolegend、357803)、JF646標識抗TMEFF2(J4B6、NOVUSBIO)、PE標識抗PSMA抗体(abcam、ab77228)、PE標識マウスIgG1、K Isotype Ctrl(eBioscience)、PE標識抗DYDDDDK(配列番号133)(Biolegend)。簡単に説明すると、1e6細胞を100μL容量で染色毎に使用した。PBS中で洗浄した後、細胞を、抗体製造業者の仕様書に従って、PBS+0.5%BSA(SigmaAldrich)中、4℃で30分間染色した。PBS中で洗浄した後、細胞をPBS中の4%PFA(Alfa Aesar)で固定した。試料をMACSQuant Analyzer 10(Miltenyi Biotec)で分析した。
【0231】
インビトロ融合アッセイ
このアッセイでは、デュアルスプリットプロテイン(DSP)レポーター(例えば、Kondo N,Miyauchi K,Meng F,Iwamoto A,Matsuda Z.Conformational changes of the HIV-1 envelope protein during membrane fusion are inhibited by the replacement of its membrane-spanning domain.J Biol Chem.2010 May 7;285(19):14681-8を参照されたい)を使用した。エフェクター細胞の播種のために、HEK293T細胞を96ウェル透明底/白色壁プレートに1/6分割した。標的細胞の播種のために、HEK293T又はHEK293T-PSMAを12ウェルプレートに1/4分割した。翌日、96ウェル中のエフェクター細胞にそれぞれ、OptiMEM中のリポフェクタミン3000(ThermoFischer)を使用して、HSV1糖タンパク質gB、gH、gL及びgD(又は対応するgD融合物)並びにスプリットタンパク質レポーターcDSPを1:2:2:1:3の質量比で発現する180ngのプラスミドの混合物をトランスフェクトした。12ウェル中の標的細胞に、対応する標的タンパク質(同量の空ベクターを受ける293T-PSMAを除く)、対応するアダプター(対照試料は同量の空発現ベクターを受ける)及びスプリットタンパク質レポーターnDSPを発現する1μgの1:1:1混合プラスミドを同様にトランスフェクトした。翌日、96ウェルプレート中の培養培地を、60μM Enduren(生細胞透過性ルシフェラーゼ基質、Promega)を含有するフェノールレッド不含培養培地と交換し、標的細胞をベルセン溶液(Gibco)で剥離し、フェノールレッド不含培養培地で洗浄し、60μM Endurenを含有するフェノールレッド不含培養培地に再懸濁し、エフェクター細胞に添加した。エフェクター細胞への標的細胞の添加の7時間後に、細胞融合から生じるルシフェラーゼ活性を、サイトテーション(cytation)5マルチモードプレートリーダー(Biotek)をルミノメーターモードで用いて測定する。
【0232】
結果
gD(配列番号3)のアミノ酸6~38を、ピコモル親和性単鎖抗体断片(H6 scFv、本明細書においてH6と称される)が利用可能であったGCN4酵母転写因子由来の16AAエピトープ(配列番号4)を含有する30AAペプチド(配列番号5)で置換することによって、腫瘍溶解性HSV1(oHSV1)を再標的化した(例えば、Zahnd et al.,J Biol Chem.2004 Apr 30;279(18):18870-7を参照されたい)。得られたポリペプチドは、本明細書中で1XGCN-d6-38-gDとも称される。遺伝子改変は、細菌人工染色体(1)中のoHSV1ゲノムと、T2A自己切断ペプチドによって1XGCN-d6-38-gDから分離された高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)配列を含有する発現カセットとの間の内因性糖タンパク質D遺伝子座における組換えによって得られた(材料及び方法を参照されたい)。したがって、得られたウイルスは、内因性US6遺伝子座の5’及び3’UTRを使用して、EGFP-T2A-1XGCN-d6-38-gDカセットの発現を制御し、ウイルス表面における再標的化1XGCN-d6-38-gDの発現及び感染細胞におけるEGFPの発現をもたらす。
【0233】
GCN4/H6再標的化及びウイルスの特異性を、H6-ネクチン1融合タンパク質をその表面に安定に発現するB16-F10及びVero細胞株に感染させることによって最初に試験した。図6に示すように、GCN4/H6再標的化ウイルスは、H6-ネクチン1を発現するVero及びB16-F10細胞株の両方に感染することができたが、それらの親対応物には感染することができなかった。逆に、野生型gD糖タンパク質を発現するoHSV1は、その表面にネクチン-1を発現する親Vero細胞株に感染することができたが、ネクチン-1発現を欠くB16-F10親細胞株には感染することができなかった。全体として、これらの結果は、GCN4再標的化ウイルスが、受容体としてネクチン1を使用して細胞に感染するその能力を喪失したが、細胞侵入のためのその受容体としてH6-ネクチン1融合物を使用することができたことを確認した。
【0234】
腫瘍マーカーへの再標的化のために、抗GCN4 H6 scFvを、以下の標的:PSMA(図7)、TMEFF2(図8)、KLK2(図9)及びROR1(図10)に対する異なる単鎖結合剤に融合させることによって、二重特異性アダプタータンパク質を設計した。全ての構築物のリストを表1に示す。PSMAの場合、PSMA-H6二重特異性発現ベクターによって一過的にトランスフェクトされたHEK293T細胞(図7A)の上清が、感染の24時間後のGFP発現によってモニターされるように(図7C)、PSMAを発現するHEK293T(図7B及び7C)並びにPSMA陽性前立腺がん細胞株LNCaPの感染を首尾よく再標的化することが実証された。逆に、二重特異性アダプタータンパク質は、親HEK293T細胞株又はPSMA陰性前立腺がん細胞株DU145への感染を再標的化することができなかった。TMEFF2(図8)についても、同様の結果が観察された。二重特異性発現ベクターによって一過的にトランスフェクトされたHEK293T細胞の上清(図8A)は、それらの表面にTMEFF2を安定に発現するVero細胞(図8B及び8C)又はTMEFF2陽性前立腺がん細胞株22Rv1(図8C)に感染を再標的化することができた。ヒトTMEFF2発現を欠く親Vero細胞株は、GCN4再標的化ウイルスによる感染に耐性であった。ネクチン1の膜貫通及び細胞質ドメインによって細胞表面に繋ぎ止められたKLK2を発現するVero細胞株(図9B及び9C)は、KLK2-H6アダプター発現構築物でトランスフェクトされたHEK293T細胞の上清の存在下で、GCN4再標的化HSV1による感染に対して感受性にされた(図9A)。対照的に、親Vero細胞株は耐性であった。別の例では、表面にROR1を発現するHEK293T細胞(図10B)は、ROR1-H6アダプター発現構築物をトランスフェクトしたHEK293T細胞の上清の存在下で、GCN4再標的化HSV1による感染に対して感受性であった(図10C)。
【0235】
まとめると、これらの結果は、GCN4ペプチド/H6 scFv対を用いたHSV1の再標的化が効率的かつ多用途であることを実証する。これは、様々な腫瘍マーカーに対する最小限の操作で、異なる形式の結合剤(scFv、VHH、Darpin)に容易に適合させることができる。
【0236】
ロイシンジッパーRE/ERによるHSV再標的化
ロイシンジッパー対を使用するHSV1再標的化を実証するために(図5を参照されたい)、スプリットタンパク質レポーター系を使用する直接インビトロ融合アッセイを開発した。簡潔に述べると、細胞(エフェクター細胞)の集団に、i)アミノ酸6~36が配列(配列番号6)のロイシンジッパー、続いて(GS)リンカー(配列番号126)で置換された修飾gD糖タンパク質(RR12EE345L-(GS)-d6-38gD)を、ii)HSV1膜融合機構の3つの他の野生型糖タンパク質成分(gB、gH及びgL)を、及びiii)スプリットタンパク質レポーター系対の成分のうちの1つ(cDSP)を、トランスフェクトした。上記のRR12EE345L-ロイシンジッパーに相補的なEE12RR345L-ロイシンジッパー(配列番号10)及び(GS)リンカー(配列番号126)がヒトネクチン1のAA31~145を置換するタンパク質融合物(EE12RR345L-(GS)-ネクチン1と称する)を、及びスプリットタンパク質レポーター系対(nDSP)の第2成分を、別の集団(標的細胞)にトランスフェクトした。標的細胞及びエフェクター細胞を接触させると、堅牢なルシフェラーゼ活性を測定することができ、このことは、エフェクター細胞と標的細胞との間の膜融合及びその後のルシフェラーゼレポーターの再構成を示す(図11A)。比較すると、EE12RR345L-(GS)-ネクチン1受容体を反応から除外した場合、融合は検出されず、このことは、融合がEE12RR345L-(GS)-ネクチン1の存在を必要とすることを示す。HEK293T細胞はヒトネクチン1を天然に発現するので、対照反応はまた、RR12EE345L-(GS)-d6-38gDがその天然受容体ネクチン1に対するその親和性を喪失していることを示した。
【0237】
二重特異性アダプターを使用して特定の腫瘍マーカーへのHSV1再標的化を実証するために、次いで、標的細胞におけるEE12RR345L-(GS)-ネクチン1のトランスフェクションを、目的の特定の腫瘍マーカー(PSMA、KLK2-ネクチン1融合体、及びTMEFF2)、及びGGGGSリンカー(配列番号124)によってEE12RR345L-ロイシンジッパーに融合された対応する結合タンパク質(それぞれB588LH、KL2B359LH、及びTMEF9LH)から構成される分泌二重特異性アダプターのトランスフェクションによって置換した実験において、インビトロ融合アッセイを繰り返した(表1を参照されたい)。陰性対照として、二重特異性アダプターを標的細胞反応から省いた。陽性対照として、RR12EE345L-(GS)-d6-38gDの代わりにアミノ酸6~36が対応する腫瘍マーカー結合タンパク質(それぞれB588LH-d6-38gD、KL2B359LH-d6-38gD、及びTMEF9LH-d6-38gD)で置換された修飾gD糖タンパク質をエフェクター細胞にトランスフェクトし、二重特異性アダプターを標的細胞のトランスフェクションから省いた。図11B~11Dに示すように、二重特異性アダプターの存在は、ルシフェラーゼ活性(右欄)によって測定されるように、それらのそれぞれの対照(左欄)と同等の様式で、標的細胞とエフェクター細胞との間の膜融合を効率的に誘導する。対照的に、二重特異性アダプターの非存在下では、融合は検出されない(中央の列)。これにより、融合が特異的であり、二重特異性アダプターによって媒介されることが確認される。
【0238】
全体として、図11A~11Dのデータは、HSV1糖タンパク質融合機構による膜融合が、相補的ロイシンジッパーの対を代わりに使用して、GCN4ペプチド/H6 scFv対と同じ方法で再標的化され得、二重特異性アダプターを使用するHSV1再標的化戦略の範囲を広げることを実証する。
【0239】
Laエピトープ/5B9HL scFvによるHSV再標的化
異なるペプチド/scFv対を使用するHSV1再標的化を実証するために、スプリットタンパク質レポーター系を使用する直接インビトロ融合アッセイを開発した。簡潔には、細胞(エフェクター細胞)の集団に、i)アミノ酸6~36が2つのリンカー(最終配列:GTGSKPLPEVTDEYGGGGSGNS(配列番号13))に隣接するLaエピトープ(配列番号12)で置換され、La-d6-38gDと称される改変gD糖タンパク質を、ii)HSV1膜融合機構の3つの他の野生型糖タンパク質成分(gB、gH及びgL)を、及びiii)スプリットタンパク質レポーター系対(cDSP)の成分のうちの1つを、トランスフェクトした。別の細胞集団(標的細胞)に、5B9HL scFv(配列番号QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTHYYIYWVRQAPGQGLEWMGGVNPSNGGTHFNEKFKSRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARSEYDYGLGFAYWGQGTLVTVSSGGSEGKSSGSGSESKSTGGSDIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSRTPKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRKSGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCKQSYNLLTFGGGTKVEIK(配列番号34))、続いてGSリンカー(配列番号124)がヒトネクチン1(5B9HL-ネクチン1と称される)のAA31~145を置換するタンパク質融合物を、及びスプリットタンパク質レポーター系対(nDSP)の第2の成分を、トランスフェクトした。標的細胞及びエフェクター細胞を接触させると、堅牢なルシフェラーゼ活性を測定することができ、このことは、エフェクター細胞と標的細胞との間の膜融合及びその後のルシフェラーゼレポーターの再構成を示す(図12A)。比較すると、5B9HL-ネクチン1受容体が標的細胞トランスフェクションから除外される場合、融合は検出されず、融合が5B9HL-ネクチン1の存在を必要とすることを示す。HEK293T細胞はヒトネクチン1を天然に発現するので、対照反応はまた、La-d6-38gDがその天然受容体ネクチン1に対するその親和性を喪失していることを示す。
【0240】
二重特異性アダプターを使用して特定の腫瘍マーカーへのHSV1再標的化を実証するために、次いで、標的細胞における5B9HL-ネクチン1のトランスフェクションを、目的の特定の腫瘍マーカー(PSMA、KLK2-ネクチン1融合体、及びTMEFF2)、及びGGGGSリンカー(配列番号124)によって5B9HL scFvに融合された対応する結合タンパク質(それぞれB588LH、KL2B359LH、及びTMEF9LH)から構成される分泌二重特異性アダプターのトランスフェクションによって置換した実験において、インビトロ融合アッセイを繰り返した(表1を参照されたい)。陰性対照として、二重特異性アダプターを標的細胞反応から省いた。陽性対照として、La-d6-38gDの代わりにアミノ酸6~36が対応する腫瘍マーカー結合タンパク質(それぞれB588LH-d6-38gD、KL2B359LH-d6-38gD、及びTMEF9LH-d6-38gD)で置換された修飾gD糖タンパク質をエフェクター細胞にトランスフェクトし、二重特異性アダプターを標的細胞のトランスフェクションから省いた。図12B~12Dに示すように、二重特異性アダプターの存在は、ルシフェラーゼ活性(右欄)によって測定されるように、それらのそれぞれの対照(左欄)と同等の様式で、標的細胞とエフェクター細胞との間の膜融合を効率的に誘導する。対照的に、二重特異性アダプターの非存在下では、融合は検出されない(中央の列)。これにより、融合が特異的であり、二重特異性アダプターによって媒介されることが確認される。
【0241】
全体として、図12A~12Dのデータは、HSV1糖タンパク質融合機構による膜融合が、異なるペプチド/scFv対(ここではLa/5B9HL scFv)を使用して、GCN4ペプチド/H6 scFV対と同じ方法で再標的化され得、二重特異性アダプターを使用するHSV1再標的化戦略の範囲を広げることを実証する。
【0242】
【表1-1】
【0243】
【表1-2】
【0244】
【表1-3】
【0245】
【表1-4】
【0246】
【表1-5】
【0247】
【表1-6】
【0248】
【表1-7】
【0249】
【表1-8】
【0250】
【表1-9】
【0251】
【表1-10】
【0252】
【表1-11】
【0253】
【表1-12】
【0254】
【表1-13】
【0255】
【表1-14】
【0256】
【表1-15】
【0257】
【表1-16】
【0258】
【表1-17】
【0259】
【表1-18】
【0260】
【表1-19】
【0261】
【表1-20】
【0262】
【表1-21】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
【配列表】
2024517232000001.app
【国際調査報告】