(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】二酸化炭素を捕捉し、捕捉溶液を再生するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/44 20060101AFI20240412BHJP
B01D 61/46 20060101ALI20240412BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20240412BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240412BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20240412BHJP
【FI】
B01D61/44 510
B01D61/46 500
C02F1/469
B01D61/44 500
C02F1/44 D
C02F1/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568082
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 US2022027523
(87)【国際公開番号】W WO2022235708
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518273633
【氏名又は名称】カーボン・エンジニアリング・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ローガン・オステリチャー
(72)【発明者】
【氏名】カイル・ウェイン・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・エドワード・オルムステッド
(72)【発明者】
【氏名】テレサ・ジュリエット・ペナ・バスティダス
【テーマコード(参考)】
4D006
4D034
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA17
4D006HA47
4D006JA42C
4D006JA42Z
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4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB19
4D061EB26
4D061EB33
4D061FA20
(57)【要約】
本開示による技法は、CO2捕捉溶液で希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉して、炭酸塩に富む捕捉溶液を形成する工程;炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の少なくとも一部分を分離する工程;電気透析(ED)供給溶液を形成する工程;水流及びED供給溶液をバイポーラー膜電気透析(BPMED)ユニットに流す工程;BPMEDユニットに電位を印加して、水酸化物を含む第1のED生成物流を含む少なくとも2つのED生成物流を形成する工程;及び、CO2捕捉溶液と共に希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉するのに使用するため、第1のED生成物流を流す工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO
2捕捉溶液で希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉して、炭酸塩に富む捕捉溶液を形成する工程、
前記炭酸塩に富む捕捉溶液から、炭酸塩の少なくとも一部分を分離する工程
電気透析(ED)供給溶液を形成する工程、
水流及び前記ED供給溶液を、バイポーラー膜電気透析(BPMED)ユニットに流す工程、
前記BPMEDユニットに電位を印加して、水酸化物を含む第1のED生成物流を含む少なくとも2つのED生成物流を形成する工程、及び
前記CO
2捕捉溶液と共に前記希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉するのに使用するため、前記第1のED生成物流を流す工程
を含む方法。
【請求項2】
前記BPMEDユニットに前記電位を印加する工程が、前記電位の少なくとも一部分を前記BPMEDユニットに印加して、前記第1のED生成物流及び第2のED生成物流を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のED生成物流が炭酸を含み、前記方法が更に、前記第2のED生成物流から二酸化炭素気体流の少なくとも一部分を回収する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のED生成物流から前記二酸化炭素気体流の部分を回収する工程が、前記第2のED生成物流から前記二酸化炭素気体流の部分を回収してブライン流を形成する工程を含み、前記炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の少なくとも一部分を分離する工程が、前記炭酸塩の部分を結晶化して、結晶質炭酸塩水和物を形成する工程を含み、前記方法が更に、
水及び前記ED供給溶液を前記BPMEDユニットに流す工程の前に、前記結晶質炭酸塩水和物を溶解し、前記溶解した結晶質炭酸塩水和物を前記ブライン流と混合して、ED供給溶液を形成する工程
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のED生成物流から前記二酸化炭素気体流の部分を回収して前記ブライン流を形成する工程が、フラッシュタンク内で前記二酸化炭素気体流の部分を回収する工程を含み、前記方法は更に、
前記結晶質炭酸塩水和物を溶解するのに使用するために、前記フラッシュタンクから前記ブライン流を流す工程と、前記溶解した結晶質炭酸塩水和物を前記ブライン流と混合して、前記ED供給溶液を形成する工程と
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
圧縮ユニット、燃料合成システム、合成ガス発生反応器、又は電解槽セルの少なくとも1つを含む下流プロセスに、前記二酸化炭素気体流を流す工程と、
合成ガス、CO、H
2、又は水の少なくとも1種を含む1つ又は複数の下流生成物をもたらす工程と
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のED生成物流がプロトンシャトル種を含み、前記方法が更に、
前記第2のED生成物流を前記炭酸塩の部分と反応させて、二酸化炭素気体を回収し、前記ED供給溶液を形成する工程
を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のED生成物流を前記炭酸塩の部分と反応させて、前記二酸化炭素気体を回収する工程が、前記第2のED生成物流の前記プロトンシャトル種を前記炭酸塩の部分と反応させて、炭酸と前記ED供給溶液とを形成する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
圧縮ユニット、燃料合成システム、合成ガス発生反応器、又は電解槽セルの少なくとも1つを含む下流プロセスに、前記二酸化炭素気体を流す工程と、
合成ガス、CO、H
2、又は水の少なくとも1種を含む1つ又は複数の下流生成物をもたらす工程と
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のED生成物流を前記炭酸塩の部分と反応させる工程が、重硫酸塩を含む前記プロトンシャトル種を、前記炭酸塩の部分と反応させる工程を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
水及び前記ED供給溶液を前記BPMEDユニットに流す工程の前に、前記ED供給溶液をイオン交換器内に流す工程を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
BPMEDリサイクル流を前記第1のED生成物流から分離する工程、及び前記BPMEDリサイクル流を前記BPMEDユニットに戻す工程を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の部分を分離する工程が、前記炭酸塩に富む捕捉溶液をナノ濾過ユニット内に流して、炭酸塩に富む混合物を含むナノ濾過(NF)保持液流を形成し、水酸化物に富む混合物を含むNF透過液流を形成する工程を含み、水及び前記ED供給溶液を前記BPMEDユニットに流す工程が、前記NF保持液流の少なくとも一部分を含む前記ED供給溶液を前記BPMEDユニットに流す工程を含み、前記方法が更に、
二酸化炭素気体を前記第2のED生成物流から回収して、ブライン流を形成する工程と、
前記ブライン流を逆浸透(RO)ユニットに流して、重炭酸塩に富む溶液を含むRO保持液流を形成し、水を含むRO透過液流を形成する工程と、
前記RO保持液流を前記NF保持液流と合わせて、前記ED供給溶液を形成する工程と
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記CO
2捕捉溶液と共に前記希薄気体供給源から前記二酸化炭素を捕捉するのに使用するため、前記NF透過液流の少なくとも一部分を流す工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記NF保持液流を、前記ナノ濾過ユニットの下流のイオン交換器に流して、イオン交換再生廃棄物流と、前記ED供給溶液の少なくとも一部分とを形成する工程を更に含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
水酸化物を含むBPMEDリサイクル流を、前記第1のED生成物流から分離する工程と、前記BPMEDリサイクル流を前記BPMEDユニットに流す工程とを更に含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
水を含む前記RO透過液流の少なくとも一部分を前記第1のED生成物流と合わせて、前記BPMEDリサイクル流を形成する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記BPMEDユニットを7から12の間のpHで動作させる工程を更に含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記BPMEDユニットを、0.001Mから2.5Mの間に及ぶ水素イオン濃度で動作させる工程を更に含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記CO
2捕捉溶液で希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉する工程の前に、前記第1のED生成物流中の水酸化物の濃度を増大させて、前記CO
2捕捉溶液を形成する工程を更に含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のED生成物流中の水酸化物の濃度を増大させる工程が、水を前記第1のED生成物流から蒸発させる工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の部分を分離する工程が、前記炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化することによって前記炭酸塩に富む捕捉溶液中の炭酸塩の濃度を増大させて、母液及び結晶質炭酸塩水和物を形成する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記結晶質炭酸塩水和物の少なくとも一部分を溶解して、炭酸塩の部分を形成する工程と、
前記炭酸塩の部分をブライン流と混合して、前記ED供給溶液を形成する工程と
を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記結晶質炭酸塩水和物の少なくとも一部分を溶解して、炭酸塩の部分を形成する工程と、
前記炭酸塩の部分を、前記第2のED生成物流中のプロトンシャトル種と反応させて、前記ED供給溶液を形成する工程と
を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化する工程の前に、前記炭酸塩に富む捕捉溶液から水を蒸発させて、炭酸塩の濃度を増大させる工程を更に含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記CO
2捕捉溶液と共に前記希薄気体供給源から前記二酸化炭素を捕捉するのに使用するため、前記母液の少なくとも一部分を、前記CO
2捕捉溶液の少なくとも一部分と合わせる工程を更に含む、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記結晶質炭酸塩水和物が、炭酸カリウムセスキ水和物(K
2CO
3・1.5H
2O)、炭酸ナトリウム十水和物(Na
2CO
3・10H
2O)、炭酸カリウムナトリウム六水和物(KNaCO
3・6H
2O)、又は無水炭酸塩の少なくとも1種を含む、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の部分を分離する工程が、前記炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化して、低固形分流と、結晶質炭酸塩水和物を含む高固形分流とを形成する工程を含み、前記低固形分流は、前記高固形分流よりも高い液体対固体比を有しており、前記方法は更に、
前記高固形分流の前記結晶質炭酸塩水和物を水性溶液に溶解し、ブライン流と混合して、前記ED供給溶液を形成する工程と、
前記低固形分流を戻して、前記炭酸塩に富む捕捉溶液の結晶化で使用する工程と
を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液中の炭酸塩の部分を分離する工程が、前記炭酸塩に富む捕捉溶液をナノ濾過ユニット内に流す工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液を前記ナノ濾過ユニット内に流す工程が、前記炭酸塩に富む捕捉溶液を前記ナノ濾過ユニット内に流して、炭酸塩に富む混合物を含むNF保持液流を形成し、水酸化物に富む混合物を含むNF透過液流を形成する工程を含み、前記方法が更に、
前記CO
2捕捉溶液と共に前記二酸化炭素を捕捉するのに使用するため、前記NF透過液流の少なくとも一部分を戻す工程と、
前記NF保持液流の少なくとも一部分を結晶化して、母液と結晶質炭酸塩水和物とを形成する工程と
を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液を前記ナノ濾過ユニット内に流す工程が、炭酸イオンの少なくとも85%を排除する工程を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
重炭酸塩に富む溶液を含むセル供給溶液を、CO
2電解還元ユニットに流す工程と、
前記CO
2電解還元ユニットに電位を印加して、1つ又は複数の還元反応を前記セル供給溶液で行う工程と、
前記1つ又は複数の還元反応を前記セル供給溶液で行って、1種又は複数の還元生成物をもたらす工程と
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
1種又は複数の還元生成物をもたらす工程が、合成ガス、CO、H
2、ギ酸塩、メタン、エチレン、又はエタノールの少なくとも1種をもたらす工程を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記CO
2捕捉溶液で前記希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉して、前記炭酸塩に富む捕捉溶液を形成する工程が、気-液接触器、空気接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、単一セル空気接触器、二重セル空気接触器、又は多重セル空気接触器の少なくとも1種において前記CO
2捕捉溶液で二酸化炭素を捕捉する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉するためにCO
2捕捉溶液を再生するための電気化学システムであって、
CO
2捕捉サブシステムから炭酸塩に富む捕捉溶液を受容し、前記炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の少なくとも一部分を分離するように構成された炭酸塩分離サブシステムと、
前記炭酸塩分離サブシステムに流体で連結された再生サブシステムであり、前記炭酸塩分離サブシステムに流体で連結されたバイポーラー膜電気透析(BPMED)ユニットを含み、前記BPMEDユニットが、少なくとも1つのバイポーラー膜と交互に配置された少なくとも1つのカチオン交換膜を含む、再生サブシステムと
を含み、前記BPMEDユニットが、
電気透析(ED)供給溶液及び水流を受容し、
水酸化物を含む第1のED生成物流を含む少なくとも2つのED生成物流をもたらす
ように構成される、電気化学システム。
【請求項36】
前記少なくとも1つのカチオン交換膜が、アルカリ金属イオンを輸送するように構成され、前記少なくとも1つのバイポーラー膜が、ヒドロキシルイオンを提供するように動作可能である、請求項35に記載の電気化学システム。
【請求項37】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液が、K
2CO
3、Na
2CO
3、又はこれらの組合せの少なくとも1種を含む、請求項35又は36に記載の電気化学システム。
【請求項38】
前記炭酸塩分離サブシステムに流体で連結され、前記再生サブシステムに流体で連結されたCO
2捕捉サブシステムを更に含み、前記CO
2捕捉サブシステムが、KOH、NaOH、添加剤、又はこれらの組合せの少なくとも1種を含む前記CO
2捕捉溶液を受容するように構成される、請求項35から37のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項39】
前記炭酸塩分離サブシステムが、前記CO
2捕捉サブシステムに流体で連結され、前記炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮するように動作可能である、一次苛性蒸発器を含む、請求項35から39のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項40】
前記炭酸塩分離サブシステムが、前記一次苛性蒸発器に流体で連結された晶析器を含み、前記晶析器は、前記一次苛性蒸発器から受容された前記炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮するように動作可能である、請求項39に記載の電気化学システム。
【請求項41】
前記一次苛性蒸発器が、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器又は多重効果蒸発器の少なくとも1つを含む、請求項39又は40に記載の電気化学システム。
【請求項42】
前記炭酸塩分離サブシステムが、
前記炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮するよう動作可能である、ナノ濾過ユニットと、
前記ナノ濾過ユニットに流体で連結され、前記ナノ濾過ユニットから受容された前記炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化して結晶質炭酸塩水和物を形成するよう動作可能である、晶析器と
を含む、請求項35に記載の電気化学システム。
【請求項43】
ナノ濾過ユニットが、炭酸イオンの少なくとも85%を排除するように動作可能である、請求項41に記載の電気化学システム。
【請求項44】
ナノ濾過ユニットが、2から14のpH範囲で動作可能である、請求項41又は42に記載の電気化学システム。
【請求項45】
晶析器が、チラー晶析器、蒸発式晶析器、共晶凍結晶析器、冷却晶析器、又は膜蒸留晶析器の少なくとも1つを含む、請求項40から43のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項46】
前記再生サブシステムが、前記CO
2捕捉サブシステムに及び前記BPMEDユニットに流体で連結された補助苛性蒸発器を含み、前記補助苛性蒸発器が、前記水酸化物を有する前記第1のED生成物流を濃縮するように動作可能である、請求項35に記載の電気化学システム。
【請求項47】
前記補助苛性蒸発器が、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器又は多重効果蒸発器の少なくとも1つを含む、請求項46に記載の電気化学システム。
【請求項48】
前記再生サブシステムが、
前記炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化して結晶質炭酸塩水和物を形成するように動作可能な晶析器と、
前記晶析器に流体で連結され、前記結晶質炭酸塩水和物を溶解するように構成された溶解タンクと
を含む、請求項35に記載の電気化学システム。
【請求項49】
前記再生サブシステムが、前記BPMEDユニットに流体で連結され、前記BPMEDユニットによりもたらされた前記少なくとも2つの生成物流の第2の生成物流から二酸化炭素気体流を回収するように動作可能である、フラッシュタンクを含む、請求項35から48のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項50】
前記再生サブシステムの前記BPMEDユニットが、断続的電源を含む低炭素強度電源に電気的に連結される、請求項35から49のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項51】
圧縮ユニット、燃料合成システム、合成ガス発生反応器、又は電解槽セルの少なくとも1つを更に含む、請求項35から50のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項52】
前記炭酸塩分離サブシステムが、
前記炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮して結晶質炭酸塩水和物にするように動作可能な晶析器と、
前記晶析器に流体で連結された固形分分離器であって、低固形分流を形成するように、結晶質炭酸塩水和物を含む高固形分流を形成するように構成された固形分分離器と、
前記固形分分離器に流体で連結された溶解タンクであって、前記固形分分離器から前記高固形分流を受容するように、前記高固形分流の前記結晶質炭酸塩水和物を溶解するように構成された溶解タンクと
を含む、請求項35に記載の電気化学システム。
【請求項53】
前記再生サブシステムが、前記溶解タンク及び前記BPMEDユニットに流体で連結されたイオン交換器を含み、前記イオン交換器は、前記BPMEDユニットに流れる2価カチオン及び多価カチオンの一部分を除去するように構成される、請求項52に記載の電気化学システム。
【請求項54】
前記炭酸塩分離サブシステムが、水酸化カリウムKOH、水酸化ナトリウムNaOH、添加剤、又はこれらの組合せを含むCO
2捕捉溶液を受容するように構成される、請求項35に記載の電気化学システム。
【請求項55】
前記炭酸塩に富む捕捉溶液が、炭酸カリウムK
2CO
3、炭酸ナトリウムNa
2CO
3、又はこれらの組合せを含む、請求項35から54のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項56】
前記CO
2捕捉サブシステムが、気-液接触器、空気接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、単一セル空気接触器、二重セル空気接触器、又は多重セル空気接触器の少なくとも1つを含む、請求項35から55のいずれか一項に記載の電気化学システム。
【請求項57】
希薄気体供給源からの二酸化炭素から還元生成物を発生させるための電気化学システムであって、
炭酸塩に富む捕捉溶液を発生させるように構成されたCO
2捕捉サブシステムと、
前記CO
2捕捉サブシステムに流体で連結され、前記炭酸塩に富む捕捉溶液を受容するように動作可能である炭酸塩分離サブシステムであり、前記炭酸塩に富む捕捉溶液から少なくとも部分的に結晶質炭酸塩水和物を形成するように構成された晶析器を含む、炭酸塩分離サブシステムと、
前記CO
2捕捉サブシステムに流体で連結され、前記炭酸塩分離サブシステムに晶析器を介して流体で連結された、生成物発生サブシステムであり、
前記晶析器に流体で連結され、前記結晶質炭酸塩水和物を溶解するように構成された溶解タンクと、
前記溶解タンクに流体で連結され、1つ又は複数のバイポーラー膜、及び1種又は複数の還元生成物をもたらすように構成された触媒を含む、CO
2電解還元ユニットと
を含む生成物発生サブシステムと、
を含む、電気化学システム。
【請求項58】
前記CO
2電解還元ユニットが、重炭酸塩に富む溶液を含むセル供給溶液から、1種又は複数の還元生成物をもたらす、請求項57に記載の電気化学システム。
【請求項59】
前記1種又は複数の還元生成物が、合成ガス、CO、H
2、ギ酸塩、メタン、エチレン、又はエタノールの少なくとも1種を含む、請求項57又は58に記載の電気化学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素(CO2)を捕捉し、CO2捕捉溶液を再生するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気から二酸化炭素(CO2)を捕捉することは、温室効果ガスの排出を軽減し、気候変動を遅らせるための1つの手法である。しかしながら、工業設備の煙道ガス等の点源からのCO2捕捉に向けて設計された多くの技術は、著しく低いCO2濃度、及びプロセスに必要とされる大量の空気に起因して、大気からCO2を捕捉する際に一般に効果がない。近年、大気から直接CO2を捕捉するのにより良く適した技術を見出すことに進歩が見られた。
【0003】
一部の直接空気回収(DAC)システムは、大気からCO2を捕捉するのに液体収着剤(溶媒又は捕捉溶液と呼ばれることもある)を使用する。そのような気-液接触システムの例は、冷却塔の設計に基づくものと考えられ、液体収着剤を含む捕捉溶液で濡れた高表面積充填フィル全体から空気を引き出すのにファンが使用される。ある場合には、捕捉溶液は、空気中のCO2と反応したときに炭酸塩に富む溶液を形成する水性アルカリ溶液とすることができる。炭酸塩に富む捕捉溶液は更に下流で処理されて、炭酸塩が少ない溶液を再生し、濃縮された炭素流、例えばCO、CO2、又はその他の炭素生成物を放出する。
【0004】
捕捉溶液を再生し、CO2を放出するための公知の熱化学プロセスは、ペレット化カルシウム技術である。このプロセスは、炭酸塩を沈殿させて炭酸カルシウム(CaCO3)固形分を形成し、CaCO3固形分をか焼して捕捉CO2を回収し、それによって酸化カルシウム(CaO)を生成し、水和して水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を生成することを含む。次いでCa(OH)2をアルカリ炭酸塩(例えば、炭酸カリウムK2CO3又は炭酸ナトリウムNa2CO3)と反応させて、捕捉溶液(例えば、水酸化カリウムKOH又は水酸化ナトリウムNaOH)を再生する。熱化学再生プロセスとDAC合成とを一体化することで、商用規模でのCO2捕捉及び回収が可能になった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例の実現において、方法は、CO2捕捉溶液で、希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉して、炭酸塩に富む捕捉溶液を形成する工程;炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の少なくとも一部分を分離する工程;電気透析(ED)供給溶液を形成する工程;水流及びED供給溶液をバイポーラー膜電気透析(BPMED)ユニットに流す工程; BPMEDユニットに電位を印加して、水酸化物を含む第1のED生成物流を含む少なくとも2つのED生成物流を形成する工程;及び、CO2捕捉溶液と共に希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉するのに使用するため、第1のED生成物流を流す工程を含む。
【0006】
実施例の実現と組合せ可能な態様では、BPMEDユニットへ電位を印加する工程は、電位の少なくとも一部分をBPMEDユニットに印加して、第1のED生成物流及び第2のED生成物流を形成する工程を含む。
【0007】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、第2のED生成物流が炭酸を含む。
【0008】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、第2のED生成物流から二酸化炭素気体流の少なくとも一部分を回収する工程を含む。
【0009】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、第2のED生成物流からの二酸化炭素気体流の部分を回収する工程が、第2のED生成物流から二酸化炭素気体流の部分を回収して、ブライン流を形成する工程を含み、及び炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の少なくとも一部分を分離する工程が、炭酸塩の部分を結晶化して結晶質炭酸塩水和物を形成する工程を含む。
【0010】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、結晶質炭酸塩水和物を溶解し、溶解した結晶質炭酸塩水和物をブライン流と混合して、ED供給溶液を形成し、その後、水及びED供給溶液をBPMEDユニットに流す工程を含む。
【0011】
先の態様のいずれかとの組合せ可能な別の態様では、ブライン流を形成するための、第2のED生成物流からの二酸化炭素気体流の部分の回収は、フラッシュタンク内で二酸化炭素気体流の部分を回収する工程を含む。
【0012】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、結晶質炭酸塩水和物を溶解するのに使用するために、ブライン流をフラッシュタンクから流す工程と、溶解した結晶質炭酸塩水和物をブライン流と混合して、ED供給溶液を形成する工程とを更に含む。
【0013】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、圧縮ユニット、燃料合成システム、合成ガス発生反応器、又は電解槽セルの少なくとも1つを含む下流プロセスに二酸化炭素気体流を流す工程と;合成ガス、CO、H2、又は水の少なくとも1つを含む1種又は複数の下流生成物を得る工程とを含む。
【0014】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、第2のED生成物流が、プロトンシャトル種を含む。
【0015】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、第2のED生成物流を炭酸塩の部分と反応させて、二酸化炭素気体を回収し、ED供給溶液を形成する工程を含む。
【0016】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、二酸化炭素気体を回収するために、第2のED生成物流を炭酸塩の部分と反応させる工程は、第2のED生成物流のプロトンシャトル種を炭酸塩の部分と反応させて、炭酸及びED供給溶液を形成する工程を含む。
【0017】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、二酸化炭素気体を:圧縮ユニット、燃料合成システム、合成ガス発生反応器、又は電解槽セルの少なくとも1つを含む下流のプロセスに流す工程と;合成ガス、CO、H2、又は水の少なくとも1つを含む1種又は複数の下流生成物を得る工程とを含む。
【0018】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、第2のED生成物流を炭酸塩の部分と反応させる工程は、重硫酸塩を含むプロトンシャトル種を炭酸塩の部分と反応させる工程を含む。
【0019】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、イオン交換器を通してED供給溶液を流し、その後、水及びED供給溶液をBPMEDユニットに流す工程を含む。
【0020】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、BPMEDリサイクル流を第1のED生成物流から分離し、BPMEDリサイクル流をBPMEDユニットに戻す工程を含む。
【0021】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の部分を分離する工程、炭酸塩に富む溶液を、ナノ濾過ユニットを通して流して、炭酸塩に富む混合物を含むナノ濾過(NF)保持液流を形成し、水酸化物に富む混合物を含むNF透過液流を形成する工程を含み、水及びED供給溶液をBPMEDユニットに流す工程は、NF保持液流の少なくとも一部分を含むED供給溶液をBPMEDユニットに流す工程を含む。
【0022】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、二酸化炭素気体を第2のED生成物流から回収して、ブライン流を形成する工程と;ブライン流を逆浸透(RO)ユニットに流して、重炭酸塩に富む溶液を含むRO保持液流を形成し、水を含むRO透過液流を形成する工程と;RO保持液流をNF保持液流と合わせて、ED供給溶液を形成する工程とを含む。
【0023】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、NF透過液流の少なくとも一部分を流して、二酸化炭素を、CO2捕捉溶液で、希薄気体供給源から捕捉する際に使用する工程を含む。
【0024】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は更に、NF保持液流を、ナノ濾過ユニットの下流のイオン交換器に流して、イオン交換再生廃棄物流と、ED供給溶液の少なくとも一部分とを形成する工程を含む。
【0025】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、水酸化物を含むBPMEDリサイクル流を第1のED生成物流から分離し、BPMEDリサイクル流をBPMEDユニットに流す工程を含む。
【0026】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、水を含むRO透過液流の少なくとも一部分を第1のED生成物流と合わせて、BPMEDリサイクル流を形成する工程を含む。
【0027】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、BPMEDユニットを7から12の間のpHで動作させる工程を含む。
【0028】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、0.001Mから2.5Mの間に及ぶ水素イオン濃度でBPMEDユニットを動作させる工程を含む。
【0029】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、第1のED生成物流中の水酸化物の濃度を増大させて、CO2捕捉溶液を形成し、その後、CO2捕捉溶液で二酸化炭素を希薄気体供給源から捕捉する工程を含む。
【0030】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、第1のED生成物流中の水酸化物の濃度の増大は、水を第1のED生成物流から蒸発させる工程を含む。
【0031】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の部分を分離する工程は、炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化することによって炭酸塩に富む捕捉溶液中の炭酸塩の濃度を増大させて、母液及び結晶質炭酸塩水和物を形成する工程を含む。
【0032】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、結晶質炭酸塩水和物の少なくとも一部分を溶解して、炭酸塩の部分を形成する工程と;炭酸塩の部分をブライン流と混合してED供給溶液を形成する工程とを含む。
【0033】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、結晶質炭酸塩水和物の少なくとも一部分を溶解して、炭酸塩の部分を形成する工程と;炭酸塩の部分を、第2のED生成物流中でプロトンシャトル種と反応させて、ED供給溶液を形成する工程とを含む。
【0034】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、炭酸塩に富む捕捉溶液から水を蒸発させて炭酸塩の濃度を増大させ、その後、炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化する工程を含む。
【0035】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、CO2捕捉溶液と共に二酸化炭素を希薄気体供給源から捕捉するのに使用するため、母液の少なくとも一部分をCO2捕捉溶液の少なくとも一部分と合わせる工程を含む。
【0036】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、結晶質炭酸塩水和物は:炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)、炭酸ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)、炭酸カリウムナトリウム六水和物(KNaCO3・6H2O)、又は無水炭酸塩の少なくとも1種を含む。
【0037】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の少なくとも一部分を分離する工程は、炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化して、結晶質炭酸塩水和物を含む低固形分流及び高固形分流を形成する工程を含み、低固形分流は、高固形分流よりも高い液体対固体比を有するものである。
【0038】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、高固形分流の結晶質炭酸塩水和物を水性溶液に溶解し、ブライン流と混合して、ED供給溶液を形成する工程と;炭酸塩に富む捕捉溶液の結晶化で使用するように低固形分流を戻す工程とを含む。
【0039】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩に富む捕捉溶液中の炭酸塩の部分を分離する工程は、炭酸塩に富む捕捉溶液をナノ濾過ユニットに通して流す工程を含む。
【0040】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、ナノ濾過ユニットに通して炭酸塩に富む捕捉溶液を流す工程は、ナノ濾過ユニットに通して炭酸塩に富む捕捉溶液を流して、炭酸塩に富む混合物を含むNF保持液流を形成し、水酸化物に富む混合物を含むNF透過液流を形成する工程を含む。
【0041】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、CO2捕捉溶液と共に二酸化炭素を捕捉するのに使用するため、NF透過液流の少なくとも一部分を戻す工程と;NF保持液流の少なくとも一部分を結晶化して、母液及び結晶質炭酸塩水和物を形成する工程とを含む。
【0042】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、ナノ濾過ユニットを通して、炭酸塩に富む捕捉溶液を流す工程は、炭酸イオンの少なくとも85%を排除する工程を含む。
【0043】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、重炭酸塩に富む溶液を含むセル供給溶液をCO2電解還元ユニットに流す工程と;電位をCO2電解還元ユニットに印加して、1つ又は複数の還元反応をセル供給溶液上で行う工程と;セル供給溶液上で還元反応を行って、1種又は複数の還元生成物を得る工程とを含む。
【0044】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、1種又は複数の還元生成物を得る工程は:合成ガス、CO、H2、ギ酸塩、メタン、エチレン、又はエタノールの少なくとも1種を得る工程を含む。
【0045】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩に富む捕捉溶液を形成するためのCO2捕捉溶液による希薄気体供給源からの二酸化炭素を捕捉する工程は:気-液接触器、空気接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、単一セル空気接触器、二重セル空気接触器、又は多重セル空気接触器の少なくとも1つにおいてCO2捕捉溶液で二酸化炭素を捕捉する工程を含む。
【0046】
別の例示的な実現例、希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉するためのCO2捕捉溶液を再生するための電気化学システムでは、電気化学システムは、CO2捕捉サブシステムから炭酸塩に富む捕捉溶液を受容し、炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の少なくとも一部分を分離するように構成された炭酸塩分離サブシステムと;炭酸塩分離サブシステムに流体で連結された再生サブシステムとを含み、再生サブシステムは、炭酸塩分離サブシステムに流体で連結されたバイポーラー膜電気透析(BPMED)ユニットを含む。BPMEDユニットは、少なくとも1つのバイポーラー膜と交互にされた少なくとも1つのカチオン交換膜を含む。BPMEDユニットは:電気透析(ED)供給溶液及び水流を受容するように;及び水酸化物を含む第1のED生成物流を含む少なくとも2種のED生成物流を得るように、構成される。
【0047】
例示的な実現例と組合せ可能な態様では、少なくとも1つのカチオン交換膜は、アルカリ金属イオンを輸送するように構成され、少なくとも1つのバイポーラー膜は、ヒドロキシルイオンを提供するように動作可能である。
【0048】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩に富む捕捉溶液が:K2CO3、Na2CO3、又はこれらの組合せの少なくとも1種を含む。
【0049】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に、炭酸塩分離サブシステムに流体で連結され、再生サブシステムに流体で連結されたCO2捕捉サブシステムを含み、CO2捕捉サブシステムは:KOH、NaOH、添加剤、又はこれらの組合せの少なくとも1種を含むCO2捕捉溶液を受容するように構成される。
【0050】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩分離サブシステムは、CO2捕捉サブシステムに流体で連結され、炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮するように動作可能な、一次苛性蒸発器を含む。
【0051】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩分離サブシステムは、一次苛性蒸発器に流体で連結された晶析器を含み、晶析器は、一次苛性蒸発器から受容された炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮するように動作可能である。
【0052】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、一次苛性蒸発器は:機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器又は多重効果蒸発器の少なくとも1つを含む。
【0053】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩分離サブシステムは、炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮するように動作可能なナノ濾過ユニットと;ナノ濾過ユニットに流体で連結され、ナノ濾過ユニットから受容された炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化して、結晶質炭酸塩水和物を形成するように動作可能である晶析器とを含む。
【0054】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、ナノ濾過ユニットは、炭酸イオンの少なくとも85%を排除するよう動作可能である。
【0055】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、ナノ濾過ユニットは、2から14のpH範囲で動作可能である。
【0056】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、晶析器は:チラー晶析器、蒸発式晶析器、共晶凍結晶析器、冷却晶析器、又は膜蒸留晶析器の少なくとも1つを含む。
【0057】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、再生サブシステムは、CO2捕捉サブシステムに及びBPMEDユニットに流体で連結された補助苛性蒸発器を含み、補助苛性蒸発器は、水酸化物を有する第1のED生成物流を濃縮するよう動作可能である。
【0058】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、補助苛性蒸発器は:機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器又は多重効果蒸発器の少なくとも1つを含む。
【0059】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、再生サブシステムは、炭酸塩に富む捕捉溶液を結晶化して結晶質炭酸塩水和物を形成するよう動作可能な晶析器と;晶析器に流体で連結され、結晶質炭酸塩水和物を溶解するよう構成された溶解タンクとを含む。
【0060】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、再生サブシステムは、BPMEDユニットに流体で連結され、BPMEDユニットによりもたらされた少なくとも2つの生成物流の第2の生成物流から二酸化炭素気体流を回収するよう動作可能なフラッシュタンクを含む。
【0061】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、再生サブシステムのBPMEDユニットは、断続的電力源を含む低炭素強度電力源に電気的に連結される。
【0062】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様は、更に:圧縮ユニット、燃料合成システム、合成ガス発生反応器、又は電解槽セルの少なくとも1つを含む。
【0063】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩分離サブシステムは、炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮して結晶質炭酸塩水和物にするよう動作可能な晶析器と;晶析器に流体で連結された固形分分離器であって、低固形分流を形成するように、結晶質炭酸塩水和物を含む高固形分流を形成するように構成された固形分分離器と;固形分分離器に流体で連結された溶解タンクであって、固形分分離器から高固形分流を受容するように、高固形分流の結晶質炭酸塩水和物を溶解するように構成された溶解タンクとを含む。
【0064】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、再生サブシステムが、溶解タンク及びBPMEDユニットに流体で連結されたイオン交換器を含み、イオン交換器は、BPMEDユニットに流れる2価のカチオン及び多価カチオンの一部分を除去するように構成される。
【0065】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩分離サブシステムは、水酸化カリウムKOH、水酸化ナトリウムNaOH、添加剤、又はこれらの組合せを含むCO2捕捉溶液を受容するように構成される。
【0066】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、炭酸カリウムK2CO3、炭酸ナトリウムNa2CO3、又はこれらの組合せを含む。
【0067】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、CO2捕捉サブシステムは:気-液接触器、空気接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、単一セル空気接触器、二重セル空気接触器、又は多重セル空気接触器の少なくとも1つを含む。
【0068】
別の例示的な実現例では、希薄気体供給源からの二酸化炭素から還元生成物を発生させるための電気化学システムは、炭酸塩に富む捕捉溶液を発生するように構成されたCO2捕捉サブシステムと;CO2捕捉サブシステムに流体で連結され、炭酸塩に富む捕捉溶液を受容するよう動作可能な炭酸塩分離サブシステムであって、炭酸塩に富む捕捉溶液から少なくとも部分的に結晶質炭酸塩水和物を形成するよう構成された晶析器を含む炭酸塩分離サブシステムと;CO2捕捉サブシステムに流体で連結され、晶析器を介して炭酸塩分離サブシステムに流体で連結された生成物発生サブシステムとを含む。生成物発生サブシステムは、晶析器に流体で連結され、結晶質炭酸塩水和物を溶解するよう構成された溶解タンクと;溶解タンクに流体で連結されたCO2電解還元ユニットであって、1つ又は複数のバイポーラー膜、及び1種又は複数の還元生成物をもたらすよう構成された触媒を含む、CO2電解還元ユニットとを含む。
【0069】
例示的な実現例と組合せ可能な態様では、CO2電解還元ユニットは、重炭酸塩に富む溶液を含むセル供給溶液から1種又は複数の還元生成物をもたらす。
【0070】
先の態様のいずれかと組合せ可能な別の態様では、1種又は複数の還元生成物は:合成ガス、CO、H2、ギ酸塩、メタン、エチレン、又はエタノールの少なくとも1種を含む。
【0071】
別の例示的な実施形態では、希薄気体供給源から捕捉溶液を再生するための電気化学システムは、CO2捕捉溶液を受容するように、CO2捕捉溶液中の炭酸塩の濃度よりも大きい炭酸塩の濃度を有する炭酸塩に富む捕捉溶液を形成するように構成された炭酸塩分離サブシステムと;炭酸塩分離サブシステムに流体で連結された再生サブシステムであって、気体拡散電極(GDE)及びカチオン交換膜を含む電気透析(ED)ユニットを含む再生サブシステムとを含む。
【0072】
別の例示的な実現例では、希薄気体供給源から二酸化炭素を捕捉するための捕捉溶液を再生するための方法は、炭酸塩に富む捕捉溶液から炭酸塩の少なくとも一部分を分離する工程と;炭酸塩に富む重炭酸塩混合物を含む電気透析(ED)供給溶液を、気体拡散電極(GDE)を含むEDユニットに流す工程と;水流及び水素供給流を、GDEを含むEDユニットに流す工程と;電位をEDユニットに印加して複数のED生成物流を形成する工程であって、複数のGDE生成物流が、水酸化物及び水素を含む第1のED生成物流、重炭酸塩及び水を含む第2のED生成物流、並びに気状二酸化炭素流を含むものである工程と;第1のED生成物流を、CO2捕捉溶液及び水素に富む流れに分離する工程と;気状二酸化炭素流を、EDユニットのGDEに通して拡散する工程とを含む。
【0073】
本開示に記述される対象の1つ又は複数の実現例の詳細を、添付図面及び以下の記述で述べる。対象のその他の特徴、態様、及び利点は、記述、図面、及び請求項から明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】捕捉溶液を再生し、直接プロトン化を用いることによってCO
2を回収するための、実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図2】捕捉溶液を再生し、間接的プロトン化を用いることによってCO
2を回収するための、実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図3】捕捉溶液を再生し、ナノ濾過ユニット及び直接プロトン化を用いることによってCO
2を回収するための、実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図4】捕捉溶液を再生し、ナノ濾過ユニット及び間接的プロトン化を用いることによってCO
2を回収するための、実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図5】電気化学システムを介してCO
2捕捉溶液を再生し、CO
2を回収するための、実施例の方法を示すフローチャートである。
【
図6】CO
2電解還元ユニットを用いることにより還元生成物を発生させるための実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図7】捕捉溶液を再生し、チラー晶析器及び直接プロトン化を用いてCO
2を回収するための、実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図8】捕捉溶液を再生し、ナノ濾過ユニット及び逆浸透ユニットを用いてCO
2を回収する、実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図9】バイポーラー膜と交互になったカチオン交換膜を含む膜積層体を有する、実施例のバイポーラー膜電気透析(BPMED)ユニットの概略図である。
【
図10】気体拡散電極を含む実施例の電気透析(ED)ユニットの概略図である。
【
図11】捕捉溶液を再生し、濾過ユニットを用いEDユニットに提供される供給材料のpHのスイングを使用してCO
2を回収するための、実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図12】捕捉溶液を再生し、濾過ユニット及びEDユニットを用いてCO
2を回収するための、実施例の電気化学システムを示す、ブロックフロー図である。
【
図13】気体拡散電極を含む、実施例のEDユニットの概略図である。
【
図14】本開示による、コンピューターで支援されるプロセスを実行するのに使用することができる、実施例の制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本開示は、捕捉溶液で希薄供給源(大気又は周囲空気等)からCO2を捕捉し、捕捉溶液を再生し、及び電気化学プロセスを使用してCO2を回収するためのシステム及び方法について記述する。大気等の希薄供給源でのCO2濃度(約400~420ppm)は、煙道ガス等の点源でのCO2濃度(約5~15%v/v)よりも非常に低い。物質移動動態は、点源からのCO2捕捉に好ましい。したがって、CO2捕捉サブシステム及び捕捉溶液再生サブシステムに関する設計上の懸念は、点源と比較したとき、希薄供給源に関して異なる。本明細書に記述される電気化学システム及び方法は、炭酸塩分離サブシステムを介して捕捉溶液再生サブシステムに連結されたCO2捕捉サブシステムを含む。CO2捕捉サブシステムを捕捉溶液再生システムに橋渡しする炭酸塩分離サブシステムは、サブシステムを互いに動作可能に切り離すことを可能にし、そのことがいくつかの利点をもたらす。
【0076】
CO2捕捉サブシステムは、炭酸塩分離サブシステムによって下流プロセスから切り離されるので、より広い範囲の周囲条件で動作することができる。炭酸塩分離サブシステムは結晶質炭酸塩水和物を形成し、この生成物を形成するのに必要とされる負荷は、捕捉溶液組成物、及びDIC種の飽和曲線(例えば、炭素飽和曲線)に対するその位置によって決定される。例えば、高イオン強度捕捉溶液が使用される条件では(例えば、より速い捕捉動態に関しては高水酸化物、又はより高い晶析器回収に関しては高炭酸塩)、炭酸塩分離サブシステムは、捕捉溶液が飽和曲線に近いので、飽和に到達し、結晶質炭酸塩水和物を形成するのに低負荷を必要とする可能性がある。対照的に、希薄捕捉溶液が必要とされる条件では(例えば、高い蒸発損失のある乾燥気候)、炭酸塩分離サブシステムは、飽和に到達し、結晶質炭酸塩水和物を形成するのに高負荷を必要とする可能性がある。したがってCO2捕捉サブシステムは、下流の捕捉溶液再生サブシステムに著しく影響を及ぼすことなく、環境温度及び相対湿度と平衡にすることができる。平衡から得られる蒸発負荷は、その他の2つのサブシステムを橋渡しする炭酸塩分離サブシステムのユニットによって対応される。捕捉溶液中の炭酸塩の溶解度は、捕捉溶液再生サブシステムに炭酸塩分離サブシステムが純粋な又はほぼ純粋な炭酸塩を提供する緩衝材であるので、炭酸塩分離サブシステムに対する負荷を支配する。したがって、CO2捕捉サブシステムで用いられる捕捉溶液は、相対湿度平衡を考慮して、捕捉するために(例えば、高水酸化物、低炭酸塩)又は水収支及び蒸発コストを改善するために最適化することができる。
【0077】
本明細書に記述される電気化学システムは、環境条件及び寒冷時の運転への適応可能性等の利点を可能にする。炭酸塩分離サブシステムはCO2捕捉サブシステムの負荷を保持することができるので、CO2捕捉サブシステムに関して広範な動作条件が可能である。CO2捕捉サブシステムは、電気透析(ED)ユニットへの純粋な又はほぼ純粋な炭酸塩流を維持しつつ(例えば、結晶質炭酸塩水和物を分離し溶解することによって実現することができる)、炭酸塩飽和曲線下のどこでも動作することができる。これによりCO2捕捉システムは、高イオン強度で、飽和線近くで動作することが可能になり、溶液の氷点は結果として著しく低下する。例えばCO2捕捉サブシステムは、より高い捕捉率を可能にすることができる高水酸化物濃度を含む捕捉溶液で動作することができる。
【0078】
本明細書に記述される電気化学システムの別の利点は、負荷柔軟性(ランピング)である。システムの主要なエネルギー推進器はEDユニットである。一部の実現例で、EDユニットは、バイポーラー膜電気透析ユニット(BPMED)を含むことができる。一部の実現例では、EDユニットは、気体拡散電極(GDE)を含むことができる。EDユニットは電気化学セルであるので、必要に応じてカットされ、低減され、又はランプアップされた電源を単に有することができる。このことは、容易にランプ動作することができない流動床反応器及び高温か焼炉等のカルシウム再生プロセスで使用されることもある設備よりも有利である。更に電気化学システムは、不溶性沈殿物の排除を可能にする。特に炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムは高度に水溶性であり、これらの塩が望ましくない場所で又は汚れた設備で結晶化した場合、単なる水洗で汚れが落とされることになる。
【0079】
本開示の全体を通して、「空気接触器」及び「気-液接触器」という用語は、周囲空気又は大気等の希薄気体供給源から二酸化炭素を吸収するのに収着剤(例えば、液体捕捉溶液)を用いるCO2捕捉サブシステムの要素を記述するのに同義で使用される。
【0080】
本明細書に記述される電気化学システム及び方法は、捕捉溶液再生サブシステムを、空気接触器、例えば冷却塔スタイルの気-液接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び液体収着剤を使用して更に大きい気体流から特定の気体成分の少なくとも一部分を除去するように設計されたその他のシステムを含む、様々な異なるスタイルのCO2捕捉サブシステムと併せて使用可能にすることができる。サブシステムは、互いに容易に連結解除でき、モジュラーであるので、電気化学システムは、規模の柔軟性の利益を有する。サブシステムは、実験室規模から工業又は商用規模に及ぶ容量に順応するようにサイズを決めることができる。電気化学システムは、様々な環境条件、及び断続的供給源(例えば、風、ソーラー)を含む低炭素強度発電に適応可能である。下流生成物製造用の原料として得られたCO2生成物は、炭素放出が本来低いその他の炭素生成物をもたらすことができる。風及びソーラーエネルギー等の断続的電源は、変動する傾向にあり、制御するのが難しい。断続的電源は、典型的には電気を周期的にのみ発生させる。後続の電気化学シスム及び方法は、断続的電源並びに水力、核、及びバイオマス等の非断続的電源を含む低炭素強度電源と連結可能になるように、比較的速いランプ速度を有する。
【0081】
電気化学システムは、炭酸塩分離サブシステムを介して捕捉溶液再生サブシステムに連結されたCO2捕捉サブシステムを含むことができる。周囲空気からのCO2は、空気を、空気接触器等の気-液接触器でアルカリ水酸化物(例えば、KOH、NaOH、又はこれらの組合せ)を含む捕捉溶液に接触させることによって、捕捉することができる。ある場合には、空気接触器又は気-液接触器は、冷却塔技術に基づいて又は既存の冷却塔システムを改造することから設計することができる。空気中のCO2をアルカリ捕捉溶液と反応させることで、炭酸塩に富む捕捉溶液(例えば、K2CO3、Na2CO3、又はこれらの組合せ)を形成することができ、これは下流使用のために捕捉CO2を回収するように、捕捉溶液中のアルカリ水酸化物を再生するように、処理しなければならない。
【0082】
炭酸塩に富む捕捉溶液を処理する本開示の実現例は、EDユニットの使用を含むことができる。一部の実現例では、EDユニットは、バイポーラー膜(BPM)を含む膜積層体からなるバイポーラー膜電気透析ユニット(BPMED)を含むことができ、その実施例を
図9に示す。一部の実現例では、EDユニットは、気体拡散電極(GDE)及び単一セル膜積層体を含むことができ、その実施例を
図10に示す。BPMEDユニットは、BPMを、カチオン交換膜(CEM)又はアニオン交換膜(AEM)のいずれか又は両方と組み合わせることができる。EDユニットは、溶液中でpHスイングを生成することができる。EDユニットで使用することができる1つの膜積層体構成は、BPMがCEMと交互に配置されたものである。この膜の配置構成はBPMEDユニットを形成し、膜は、交互に配置された供給材放出(プロトン発生)及びアルカリ再生(水酸化物発生)区画を画定する。一部の実現例では、EDユニットは、1つ又は複数のCEM又はBPMと交互に配置されたAEMによって画定された3つの区画(供給材区画、酸区画、及び塩基区画)を有することができる。EDユニットは、再生サブシステムの要素とすることができる。アルカリ水酸化物を含む捕捉溶液を再生するには、BPMが、水の解離を介してアルカリ再生区画にヒドロキシルイオンを提供し、供給材放出区画にプロトンを提供する。再生プロトンは、アルカリ再生区画にCEMを横断して選択的に輸送されたアルカリ金属イオン等のカチオンに取って代わる。例えば、捕捉溶液中で水酸化カリウム(KOH)を再生するには、BPMがOH
-イオンを提供し、CEMは、K
+をアルカリ再生区画に通過させる。BPMEDユニットは、低電圧降下(例えば、2V未満のBPM電圧降下及び1V未満のCEM電圧降下)及び高電流密度(例えば、50mA/cm
2よりも上のBPM電流密度)等の所望の特性を有するように選択又は設計することができる。BPM及びCEMは共に、低下した電圧で可能であるので、広範な動作温度で、特に高い動作温度で安定であってもよい。BPM及びCEMは共に、広範なpHで及び高濃度アルカリ溶液中で安定であってもよい。これにより、CO
2捕捉速度を改善することができ、蒸発器コストを削減することができる、高水酸化物濃度を有する再生捕捉溶液が可能になる。実施形態では、CEMは、積層効率を低減させる可能性のあるイオン漏出を軽減する低アオニン透過率を有する。実施例のBPMEDユニットを、以下の
図9に関して例示し記述する。一部の実現例では、EDユニットは、気体拡散電極(GED)及び単一セル膜積層体、例えばCEMを含むことができ、その実施例を以下の
図10に示す。したがってEDユニットは、EDユニットが電気エネルギーの入力を合わせて化学反応を容易にする点で(例えば、塩分解及び酸塩基回収を可能にする)、再生サブシステムの電気化学的構成要素である。したがって
図1から
図10までの構成で、再生サブシステムは、電気化学システムの「電気化学」再生サブシステムと記述されてもよい。
【0083】
EDユニットを動作させるための所望のプロセス条件を実現するには、EDユニットを含む再生サブシステムに純粋な炭酸塩流を提供するために、炭酸塩に富む捕捉溶液中のその他の化学種から炭酸塩を分離することを有利とすることができる。このことに関する1つの手法は、CO2捕捉サブシステムの気-液接触器を橋渡しする炭酸塩分離サブシステムと、再生サブシステムとを一体化することである。炭酸塩分離サブシステムは、炭酸塩種を水酸化物含有プロセス溶液から選択的に分離する1つ又は複数のユニットを含むことができる。例えば、苛性蒸発器又はナノ濾過ユニットは、気-液接触器からの炭酸塩に富む捕捉溶液を濃縮するのに使用することができる。苛性蒸発器は、捕捉溶液のイオン濃度を増大させることができ、それによって、炭酸塩飽和曲線に対して溶液の組成を移動させて、溶液中の炭酸塩の溶解度を低下させ、濃縮された炭酸塩に富む溶液を生成する。苛性蒸発器の一部の実施例は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器及び多重効果蒸発器を含む。次いで濃縮された炭酸塩に富む流れを晶析器に送って、結晶質炭酸塩水和物を形成することができる。この固相中間生成物は、炭酸塩を、流れのその他の成分から容易に分離させて、EDユニットで使用するのに純粋な又は比較的純粋な炭酸塩流を形成する。結晶質炭酸塩水和物は、再生サブシステムのEDユニットに供給するのに使用される水溶性溶液に溶解する。水性溶液は主に水であるが、いくつかの非水性成分を含むことができる。ある場合には、ナノ濾過システムからの濃縮炭酸塩溶液を含むナノ濾過保持液は、イオン交換システムで精製して、望ましくないイオン種(Ca+2、Mg+2、Ba+2、Sr+2、シリケート、ボレート)の少なくとも一部分を除去することができ、次いでEDユニットに流すことができる。ある場合には、ナノ濾過ユニットをCO2捕捉サブシステムの下流で用いて、再生サブシステムに供給される炭酸塩に富む又は重炭酸塩に富む混合物を生成することができる。ナノ濾過ユニットは、膜材料としてポリエーテルスルホンを含むことができ、100~1000ダルトンの分子カットオフを有することができる。上流のCO2捕捉サブシステムがランプアップ又はダウンする(例えば、先の容量とは異なる容量で動作する)ある場合には、得られる負荷は、炭酸塩分離サブシステムでの苛性蒸発器、ナノ濾過ユニット、晶析器、又はこれらの組合せにより順応させることができる。これはCO2捕捉システムが高いイオン強度溶液中で動作する場合、又はシステムが断続的電源に連結される場合(又は両方)、特に有用である。例えば、EDユニットが限られた容量で動作する場合又は非稼動状態である場合(例えば、メンテナンスに起因して)、炭酸塩分離サブシステムは、結晶質炭酸塩水和物を保存する1つ又は複数の緩衝タンクを含むことができる。ある場合には、緩衝容量溶解タンク又はオーバーフロータンクは、結晶質炭酸塩水和物が非常に可溶性の塩であるので、動作変化の負荷を吸収するのに役立てることができる。例えば、非ピーク期間中、断続的供給源(例えば、風、ソーラー)からの電気はほとんどなく、電気透析システム、プロセスで最もエネルギーを消費するサブシステムはランプダウンするが、空気接触器及び晶析器は動作し続けることができ、CO2を捕捉し、結晶質炭酸塩水和物を生成する。結晶質炭酸塩水和物固形分は、保存し、電気透析システムに供給して、電気がより容易に入手可能なときに再生することができる。
【0084】
EDユニットは、溶解無機炭素(DIC)の形で吸収されたCO2を運ぶブラインループ、及び捕捉溶液を再生する苛性ループを構成する。有意な電流密度がEDユニットに適用されるとき、水はプロトンとヒドロキシルイオンとに分解することができる。十分なプロトンの発生により、EDユニットは、供給溶液中のDIC種の局所pH及び局所平衡をシフトすることができる。DIC種は炭酸塩CO3
2-、重炭酸塩HCO3
-、炭酸H2CO3、溶解CO2、又はこれらの組合せを含むことができる。EDユニットは、DICの1つ又は複数を直接プロトン化して、下記の反応をもたらす:
【0085】
反応1: CO3
2-+H+→HCO3
-(炭酸塩から重炭酸塩)
【0086】
反応2: HCO3
-+H+→H2CO3(重炭酸塩から炭酸)
【0087】
反応3: 解離: H2CO3→H2O+CO2
【0088】
高いH2CO3濃度で、平衡CO2濃度は捕捉溶液からCO2をガス抜きするのに十分になる。ある場合には、CO2は、EDユニットセル内で部分的に脱気されてもよい。EDユニットセルでのCO2脱気に起因するCO2バブル形成は、電気抵抗を増大させ、セルの活性領域を低減させる可能性があるので、外部のCO2を完全に脱気することが有益であるとすることができる。完全なCO2脱気は、外部フラッシュタンクで引き起こすことができ、HCO3
-は、ブライン流としてEDユニットに戻される。他の構成では、H2CO3の形成及びCO2の脱気は共に、EDユニットでDIC種を間接的にプロトン化可能にするプロトン-シャトルループを用いることによって、個別のタンクで実施することができる。
【0089】
一部の態様では、EDユニットは、EDユニットのセル内でのCO2の脱気を回避するため、中間溶解イオン種を介してDIC種を間接的にプロトン化することができる。これはEDユニット内で最初にプロトン化され、次いでこれらのプロトンを外部ユニット内のDIC種に供与するプロトン-シャトル種(例えば、SO4
2-、HPO4
2-)を用いることによって、実現することができる。一実施例の構成では、プロトン-シャトル種は、硫酸塩SO4
2-、重硫酸塩HSO4
-、又はこれらの組合せである。EDユニットは、下記の反応を介して硫酸塩をプロトン化する:
【0090】
反応4: SO4
2-+H+→HSO4
-(硫酸塩から重硫酸塩)
【0091】
外部タンクは、EDユニット及び炭酸塩流から硫酸塩-重硫酸塩混合物を受容する。硫酸塩は、下記の反応を介して炭酸塩と反応して、H2CO3をもたらす:
【0092】
反応5: 2KHSO4+K2CO3→2K2SO4+H2CO3
【0093】
したがって、重硫酸塩はその後、反応1から3を介して、外部タンク内の同じDIC pHスイングに影響を及ぼす可能性がある。
【0094】
一部の態様では、カリウム系及びナトリウム系種の混合物を含むプロセス溶液を用いることを、有利とすることができる。ある場合には、カリウム系捕捉溶液は、ナトリウム系捕捉溶液よりも良好な捕捉動態を実現することができるが、ナトリウム系捕捉溶液は、晶析器の負荷を低減することができる更に低い溶解度を有することができる。したがってCO2捕捉溶液は、KOH、NaOH、K2CO3、及びNa2CO3の混合物を含むことができる。これらの混合ナトリウム-カリウム系は、物質移動動態、水収支、及び動作温度の調整を可能にする。カリウム系成分の、ナトリウム系成分に対する有効な比は、動作環境に依存する可能性があり、本明細書に記述される。
【0095】
図1は、捕捉溶液を再生し、直接プロトン化を用いることによりCO
2を回収するための、実施例の電気化学システム100を示すブロックフロー図である。電気化学システム100は、炭酸塩分離サブシステム162及び再生サブシステム164に流体で連結されたCO
2捕捉サブシステム102を含む。炭酸塩分離サブシステム162は、晶析器104に流体で連結された一次苛性蒸発器112を含む。一部の実現例では、晶析器104は、遠心分離、圧力又は真空フィルター、スクレーパー、サイクロン、及び同様のもの等の固形分分離器に流体で連結することができる。炭酸塩分離サブシステム162は、炭酸塩の効率的な分離を可能にするように、捕捉溶液中の炭酸塩及び水酸化物塩の間の溶解度の差を活用する。一次苛性蒸発器112は、炭酸塩に富む捕捉溶液120をCO
2捕捉サブシステム102から受容する。一部の実現例では、CO
2捕捉サブシステム102は、1つ又は複数の空気接触器105を含むことができる。空気接触器105は、冷却塔スタイルの気-液接触気、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び特定の気体成分の少なくとも一部分をより大きい気体流から液体収着剤を使用して除去するように設計されたその他のシステムを含むことができる。空気接触器105は、単一又は多重セル空気接触器、二重セル空気接触器、二重流空気接触器、又はこれらの組合せを含むことができる。空気接触器は、交差流、向流、並流、又はこれらの組合せで動作することができる。
【0096】
炭酸塩に富む捕捉溶液120は、主に炭酸イオン、アルカリ金属炭酸塩(例えば、K2CO3、Na2CO3)、又はこれらの組合せを含む水性混合物とすることができる。炭酸塩に富む捕捉溶液120は、水酸化物イオン、アルカリ金属水酸化物(例えば、KOH、NaOH)、水、及び不純物等、その他の成分を少量で含む可能性もある。例えば炭酸塩に富む捕捉溶液120は、0.4Mから6Mの間のK2CO3及び1Mから10Mの間のKOHを含むことができる。別の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液120は、水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。
【0097】
一部の実現例では、一次苛性蒸発器112は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。一次苛性蒸発器112は、炭酸塩に富む捕捉溶液120から水を除去して、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液118を形成する。一次苛性蒸発器112は、水流119を放出する。濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液118は、炭酸塩に富む捕捉溶液120よりも高い炭酸塩濃度及びより高い水酸化物濃度を含むことができる。例えば、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液118は、0.4Mから6Mの間のK2CO3及び1Mから14Mの間のKOHを含むことができる。別の実現例では、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液118は、濃縮された水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。したがって一次苛性蒸発器112は、炭酸塩に富む捕捉溶液118中の炭酸塩がそれほど可溶性ではなくなるように、炭酸塩及び水酸化物のそれぞれの濃度を増大させ、晶析器104に対する晶析器の負荷(蒸発加熱又は冷却冷蔵)を低減させる。
【0098】
一部の実現例では、晶析器104は、蒸発式晶析器、共晶凍結晶析器、冷却晶析器(例えば、真空又は表面冷却)、膜蒸留晶析器、又はこれらの組合せを含む。晶析器104は、強制循環、ドラフトチューブバッフル、流動床設計、又はこれらの組合せをベースにすることができる。晶析器104は水酸化物濃度を増大させ、それによって、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液118中の炭酸塩の溶解度が低下する。ある場合には、晶析器104は、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液118の一部分を蒸発させて、過飽和に到達させる。この濃縮工程は、結晶質炭酸塩水和物122、母液142、及び水流124を形成する。晶析器104は、下流の処理(例えば、濾過システム、水処理システム、又は廃棄システム)のために又はシステム100の内部若しくは越えた別の適用例での使用のために、水流124を放出する。結晶質炭酸塩水和物122は、母液142から少なくとも部分的に分離されて、EDユニット用の供給溶液で使用することができる純粋な又はほぼ純粋な炭酸塩を形成する。母液142は、結晶質炭酸塩水和物122が分離された後、水及び水酸化物等の濃縮炭酸塩溶液118の残りの成分を含むことができる。結晶質炭酸塩水和物122は、炭酸塩セスキ水和物(M2CO3・1.5H2O)又は無水炭酸塩を含むことができる。例えば結晶質炭酸塩水和物122は、炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)を含むことができる。炭酸カリウムセスキ水和物結晶は、KOH- K2CO3混合物を含むことができる母液142から少なくとも部分的に単離することができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物122は炭酸ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)を含むことができ、母液142は、NaOH-Na2CO3混合物を含むことができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物122は、炭酸カリウムナトリウム六水和物(KNaCO3・6H2O)を含むことができる。一部の実現例では、結晶質炭酸塩水和物122は、結晶質炭酸塩中(例えば、M2CO3・nH2Oであり、式中、Mはアルカリ金属であり、nは整数又は小数値である)、単位炭酸塩あたり、異なる化学量論量の水分子を含むことができる。母液142からの分離後、結晶質炭酸塩水和物122は再生サブシステム164に送られ、母液142はCO2捕捉サブシステム102に戻される。
【0099】
再生サブシステム164は、BPMED 108及びフラッシュタンク110に流体で連結された溶解タンク106を含む。BPMED 108は、BPM及びCEMを用いるEDユニットの実施例であるが、ある場合には、再生サブシステム164は、異なるEDユニット(例えば、1つ又は複数のCEM、AEM、BPM、又はこれらの組合せを含むEDユニット)を含むことができる。まとめると、溶解タンク106、BPMED 108、及びフラッシュタンク110に流入及び流出するプロセス流は、内部でDICがプロトン化され、CO2が放出されるブラインループを形成する。溶解タンク106は、水流128、及び晶析器104からの結晶質炭酸塩水和物122を受容することができる。ある場合には、精製された水性溶液を、水流128の代わりに又は加えて使用することができる。精製された水性溶液は、低減された又は最小限に抑えられた微粒子及び溶解汚染物質を有する溶液とすることができる。結晶質炭酸塩水和物122は、水に溶解し、フラッシュタンク110から受容されたブライン流138中で重炭酸塩HCO3
-と合わせられて、ED供給溶液126を形成する。ED供給溶液126は、重炭酸塩HCO3
-に富む溶液を、炭酸塩及び水等のその他の成分の混合物と共に含むことができる。
【0100】
BPMED 108は、2つの電極の間に位置決めされたセルの積層体を含むことができる。各セルは、BPMとCEMが交互になされたものを含む構成で、配置構成することができる。電極は、電位を印加して塩分解及び酸塩基回収が可能になるように動作可能である。ある場合には、BPMED 108の電極は、断続的低炭素強度電源(例えば、ソーラー、風、地熱)又は非断続的な低炭素強度電源(例えば、水力、核、バイオマス、再生天然ガス)に連結することができる。BPMED 108は、BPM及びCEMにより画定された多重供給材放出区画及びアルカリ再生区画を含むことができる。
【0101】
BPMED 108は、ED供給溶液126及び水流134を1つ又は複数の供給材放出区画で受容するように構成される。BPMED 108のBPMは、水をヒドロキシルイオン及びプロトンに分解する水分解反応を可能にする。BPMED 108は、塩をそのカチオン及びアニオンに分解する塩分解反応を可能にする。CEMは、カチオンをアルカリ再生区画に移送するように動作可能である。アルカリ再生区画では、カチオンはヒドロキシルイオンと組み合わされて、0.5Mから12Mの間の水酸化物濃度を有する第1のED生成物流132を形成する。例えばED供給溶液126は、重炭酸カリウムKHCO3に富む溶液を含むことができる。BPMED 108のCEMは、カリウムイオンK+に合わせて選択され、アルカリ再生区画内に輸送し、そこでK+がOH-と合わされて、第1のED生成物流132中でKOHを形成する。供給材放出区画では、重炭酸HCO3
-イオンが、BPMED 108中で直接プロトン化されて、炭酸H2CO3を含む第2のED生成物流130を形成する。ある場合には、炭酸はCO2と水とに解離し、CO2は、BPMED 108で部分的に脱気し得る。
【0102】
一部の実現例では、pHの低減で、炭酸が解離し、BPMED 108のセル内でCO2を放出させることができる。一部の実現例では、BPMED 108は、各BPMとCEMとの間で1mm未満の膜間距離を含むことができる。例えばBPMは、CEMから0.7mmで位置決めすることができる。一部の実現例では、50mA/cm2から2000mA/cm2の間の電流密度は、BPMED 108に適用することができる。
【0103】
第2のED生成物流130は、炭酸H2CO3と重炭酸HCO3
-との水性混合物を含むことができる。例えば第2のED生成物流130は、炭酸H2CO3、及び重炭酸カリウムKHCO3の水性混合物を含むことができる。炭酸H2CO3は、CO2及び水に解離する。第2のED生成物流130は、フラッシュタンク110に送ることができ、そこでCO2流136がフラッシュタンク110から部分的に又は完全に放出され、後続の実現例に記述される1つ又は複数の下流の処理ユニットに送られる(例えば、圧縮ユニット、精製ユニット、電解還元サブシステム、炭素生成物製造システム、合成ガス発生反応器)。重炭酸塩HCO3
-の水性混合物を含むブライン流138は、溶解タンク106に送ることができ、再生サブシステム164のブラインループが完成する。
【0104】
第1のED生成物流132は、支配的な化学種として水酸化物との水性混合物を含むことができる。例えば第1のED生成物流132は、水酸化カリウムKOHの水性溶液を含むことができる。第1のED生成物流132は、CO2捕捉溶液144としてBPMED 108からCO2捕捉サブシステム102に戻すことができる。一部の実現例では、CO2捕捉溶液144は、0.5Mから10Mの間で水酸化物濃度を含むことができる。一部の実現例では、再生サブシステム164は、補助苛性蒸発器114を必要に応じて含むことができる。補助苛性蒸発器114は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。補助苛性蒸発器114は、水を除去しCO2捕捉溶液144を形成し、水流140を放出することによって、第1のED生成物流132を濃縮する。そのような実現例では、CO2捕捉溶液144は、炭酸塩が希薄な混合物を含み、第1のED生成物流132よりも高い水酸化物濃度を有する。まとめると、補助苛性蒸発器114、CO2捕捉サブシステム102、炭酸塩分離サブシステム162、溶解タンク106、及びBPMED 108に流入及び流出するプロセス流は、捕捉溶液が再生される苛性ループを形成する。
【0105】
実施例の電気化学システム100並びに本開示によるその他の例示的な実現例は、CO2を捕捉し、pHスイングを用いて捕捉溶液を再生し、CO2を放出するのに使用される電気化学システム内にプロセス流(「流れ」とも呼ぶ)を含む。CO2の回収は、本明細書ではCO2のオフガスとも呼ばれる。プロセス流は、電気化学システムの全体を通して実装される1つ又は複数の流れ制御システム999を使用して流すことができる。流れ制御システム999は、プロセス流をポンプ送出するように1つ又は複数の流れポンプ、及び内部を通ってプロセス流が流れる1つ又は複数の流動管、及び管内を通る流れの流動を規制するように1つ又は複数の弁を、含むことができる。制御システム999は、1つ又は複数のpHモニタリングデバイスと、1つ又は複数の伝導率モニタリングデバイスとを含むことができる。一部の実現例では、制御システム999は、DIC種を測定する1つ又は複数の化学分析デバイス(例えば、フーリエ変換近赤外分光測定デバイス)を含むことができる。一部の実現例では、制御システム999は、電気化学システムの1つ又は複数の要素から発生した熱に応答して流れ制御システム999の1つ又は複数の態様をモニターし制御するために、1つ又は複数の温度センサー(例えば、熱電対、サーミスター、温度計)及び温度制御器を含むことができる。
【0106】
一部の実現例では、制御システム999は、手作業で操作することができる。例えばオペレーターは、各ポンプごとに流量を設定し、制御システム999の管内を通るプロセス流の流れを規制するように弁の開閉位置を設定することができる。オペレーターが、CO2を捕捉し、捕捉溶液を再生するために電気化学システム全体にわたって分布された全ての制御システム999の弁の開閉位置を設定したら、制御システム999は、一定の流れの条件下で、例えば一定の体積流量又はその他の流れ条件下で、流れを流動させることができる。流れ条件を変えるため、オペレーターは手作業で、例えばポンプ流量又は弁の開閉位置を変化させることによって、制御システム999を操作することができる。
【0107】
一部の実現例では、流れ制御システム999は、自動的に動作することができる。例えば流れ制御システム999は、操作(流れ制御操作等)を行うために1つ又は複数のプロセッサーにより実行可能な命令(流れ制御命令及びその他の命令等)を記憶するコンピューター又はコンピューター可読媒体に接続することができる。オペレーターは、流れ制御システム999を使用してCO2を捕捉し、捕捉溶液を再生するために、電気化学システム全体にわたり分布された全ての流れ制御システム999に関して流量及び弁の開閉位置を設定することができる。そのような実現例では、オペレーターは、流れ制御システム999を通して入力を提供することにより、流動条件を手作業で変更することができる。また、そのような実現例では、流れ制御システム999は、自動的に(即ち、手作業の介入なしに)、流れ制御システムの1つ又は複数を、例えば流れ制御システム999に接続されたフィードバックシステムを使用して制御することもできる。例えばセンサー(圧力センサー、温度センサー、又はその他のセンサー等)は、プロセス流が内部を流れる管に接続することができる。センサーは、流れ制御システム999へのプロセス流の流動条件(圧力、温度、又はその他の流動条件等)をモニターし提供することができる。閾値(閾圧力値、閾温度値、又はその他の閾値等)を超える流動条件に応答して、制御システム999は自動的に動作を行うことができる。例えば、管内の圧力又は温度がそれぞれ閾圧力値又は閾温度値を超える場合、流れ制御システム999は、流量を低下させるためのポンプへの信号、圧力を軽減するために弁を開くための信号、プロセス流量を遮断するための信号、又はその他の信号を提供することができる。
【0108】
図2は、間接的プロトン化及びプロトンシャトル種を用いることにより、捕捉溶液を再生し、CO
2を回収するための実施例の電気化学システム200を示す。ある場合には、電気化学システム200は、EDユニット外でDIC種がプロトン化され、EDユニットのセル内でのCO
2脱気が回避されるので、
図1の電気化学システム100よりも有利とすることができる。EDユニット内でのCO
2の脱気は、電気抵抗を増大させ、セルの活性領域を低減させる可能性があるので、望ましくない可能性がある。したがって、間接的プロトン化システムを含むブラインループは、直接プロトン化システムを含むブラインループよりも効率的にすることができる。
【0109】
電気化学システム200は、炭酸塩分離サブシステム262及び再生サブシステム264に流体で連結されたCO2捕捉サブシステム202を含む。炭酸塩分離サブシステム262は、晶析器204に流体で連結された一次苛性蒸発器212を含む。一部の実現例では、晶析器204は、遠心分離器、圧力又は真空フィルター、スクレーパー、サイクロン、及び同様のもの等の固形分分離器に流体で連結することができる。炭酸塩分離サブシステム262は、炭酸塩の効率的な分離が可能になるように、捕捉溶液中の炭酸塩と水酸化物塩との間の溶解度の差を活用する。一次苛性蒸発器212は、CO2捕捉サブシステム202から炭酸塩に富む捕捉溶液220を受容する。一部の実現例では、CO2捕捉サブシステム202は、1つ又は複数の空気接触器205を含むことができる。空気接触器205は、冷却塔スタイルの気-液接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び液体収着剤を使用して更に大きい気体流から特定の気体成分の少なくとも一部分を除去するように設計されたその他のシステムを含むことができる。空気接触器205は、単一又は多重セル空気接触器、二重セル空気接触器、二重流空気接触器、又はこれらの組合せを含むことができる。空気接触器は、交差流、向流、並流、又はこれらの組合せで動作することができる。
【0110】
炭酸塩に富む捕捉溶液220は、主に炭酸イオン、アルカリ金属炭酸塩(例えば、K2CO3、Na2CO3)、又はこれらの組合せを含む水性混合物とすることができる。炭酸塩に富む捕捉溶液220は、少量で、水酸化物イオン、アルカリ金属水酸化物(例えば、KOH、NaOH)、水、並びにプロセス添加剤(例えば、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、界面活性剤)及び非プロセス要素(例えば、ケイ酸塩、ホウ酸塩、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、ニッケル)を含むその他の溶解した化学種等のその他の成分を含むこともできる。例えば炭酸塩に富む捕捉溶液220は、0.5Mから6Mの間のK2CO3、及び1Mから10Mの間のKOHを含むことができる。別の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液220は、水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。
【0111】
一部の実現例では、一次苛性蒸発器212は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。一次苛性蒸発器212は、炭酸塩に富む捕捉溶液220から水を除去して、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液218を形成する。一次苛性蒸発器212は、水流219を放出する。濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液218は、炭酸塩に富む捕捉溶液220よりも高い炭酸塩濃度及びより高い水酸化物濃度を含むことができる。例えば、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液218は、0.5Mから6Mの間のK2CO3と、1Mから14Mの間のKOHとを含むことができる。別の態様では、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液218は、濃縮水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。したがって一次苛性蒸発器212は、炭酸塩に富む捕捉溶液218中の炭酸塩がそれほど可溶性ではなくなるように、炭酸塩及び水酸化物のそれぞれの濃度を増大させ、晶析器204に対する晶析器の負荷(蒸発加熱又は冷却冷蔵)を低減させる。
【0112】
一部の実現例では、晶析器204は、蒸発式晶析器、共晶凍結晶析器、冷却晶析器(例えば、真空又は表面冷却された)、膜蒸留晶析器、又はこれらの組合せを含む。晶析器204は、強制循環、ドラフトチューブバッフル、流動床設計、又はこれらの組合せをベースにすることができる。晶析器204は、水酸化物濃度を増大させ、それによって濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液218中の炭酸塩の溶解度を低下させる。ある場合には、晶析器204は、濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液218の一部分を蒸発させて、過飽和に到達させる。これは結晶質炭酸塩水和物222、母液242、及び水流224を形成する。晶析器204は、下流の処理(例えば、濾過システム、水処理システム、又は廃棄システムで)のために又はシステム200の内部又は越えた別の適用例で使用するために、水流224を放出する。結晶質炭酸塩水和物222は、母液242から少なくとも部分的に分離されて、EDユニット用の供給溶液で使用することができる純粋な又はほぼ純粋な炭酸塩を形成する。母液242は、結晶質炭酸塩水和物222が分離された後、水及び水酸化物等の濃縮炭酸塩溶液218の残りの成分を含むことができる。結晶質炭酸塩水和物222は、炭酸塩セスキ水和物(M2CO3・1.5H2O)又は無水炭酸塩を含むことができる。例えば結晶質炭酸塩水和物222は、炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)を含むことができる。炭酸カリウムセスキ水和物結晶は、KOH-K2CO3混合物を含むことができる母液242から少なくとも部分的に単離することができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物222は炭酸ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)を含むことができ、母液242は、NaOH-Na2CO3混合物を含むことができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物222は、炭酸カリウムナトリウム六水和物(KNaCO3・6H2O)を含むことができる。一部の実現例では、結晶質炭酸塩水和物222は、結晶質炭酸塩中、炭酸塩当たり、異なる化学量論量の水分子を含むことができる(例えば、M2CO3・nH2Oであり、式中、Mはアルカリ金属であり、nは整数又は小数値である)。母液242から分離した後、結晶質炭酸塩水和物222を再生サブシステム264に送り、母液242をCO2捕捉サブシステム202に戻した。
【0113】
再生サブシステム264は、BPMED 208に流体で連結された溶解タンク206を含む。BPMED 208は、BPM及びCEMを用いるEDユニットの例であるが、ある場合には、再生サブシステム264は、異なるEDユニットを含むことができる(例えば、1つ又は複数のCEM、AEM、BPM、又はこれらの組合せを含むEDユニット)。ある場合には、溶解タンク206は、最大40barの圧力で動作することができる。まとめると、溶解タンク206及びBPMED 208に流入及び流出するプロセス流は、プロトンシャトル種(例えば、硫酸塩SO4
2-、重硫酸塩HSO4
-)がBPMED内でプロトン化されるブラインループを形成し、プロトンは、プロトンシャトル種を介して溶解タンク206にシャトル移送される。一部の実現例では、プロトンシャトル種は、Cl-、I-、Br-、HPO4
-2、及びH2PO4
-1、酢酸塩、及びクエン酸塩を含むことができる。溶解タンク206では、プロトンシャトル種はDIC種をプロトン化して炭酸H2CO3を形成する。したがってブラインループにより、BPMED 208はDIC種を間接的にプロトン化させる。
【0114】
溶解タンク206は、水流228、結晶質炭酸塩水和物222を晶析器204から、及びブライン流238をBPMED 208から受容することができる。ある場合には、精製された水性溶液は、水流228の代わりに又は加えて使用することができる。精製された水性溶液は、微粒子及び溶解汚染物質を実質的に含む可能性はない。結晶質炭酸塩水和物222は水に溶解し、BPMED 208から受容されたブライン流238中のプロトンシャトル種と反応する。例えば結晶質炭酸塩水和物222は、溶解タンク206の水に溶解して炭酸カリウムK2CO3をもたらす炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)を含むことができる。ブライン流238は、重硫酸塩に富む溶液を含むことができる。例えばブライン流238は、プロトンシャトル種として重硫酸カリウムKHSO4を含むことができる。重硫酸塩に富む溶液は、溶解タンク206で炭酸塩と反応して、重硫酸塩が希薄な溶液及び炭酸をもたらすことができる。例えば、重硫酸カリウムKHSO4は、炭酸カリウムK2CO3と反応して、硫酸カリウムK2SO4及び炭酸H2CO3をもたらすことができる。その結果、pHは低減することになる。炭酸は、水と気状CO2とに解離させるのに十分な平衡CO2分圧(例えば、1bar未満)を有することになる。溶解タンク206は、CO2流236を部分的に又は完全に放出することができる。CO2流236は、後続の実現例に記述された1つ又は複数の下流の処理ユニットに送ることができる(例えば、圧縮ユニット、精製ユニット、電解還元サブシステム、炭素生成物製造システム、合成ガス発生反応器)。溶解タンク206での反応は、ED供給溶液226も形成する。ED供給溶液226は、重硫酸塩が希薄な溶液を含むことができる。例えばED供給溶液226は、重硫酸カリウム及び水等のその他の成分の混合物と共に硫酸カリウムを含むことができる。溶解タンク206は、ED供給溶液226をBPMED 208に流すように構成される。
【0115】
BPMED 208は、2つの電極の間に位置決めされたセルの積層体を含むことができる。ある場合には、BPMED 208の電極は、断続的低炭素強度電源(例えば、ソーラー、風、地熱)又は低炭素強度電源(例えば、水力、核、再生天然ガス)に連結することができる。各セルは、BPM及びCEMが交互に配置されたものを含む構成に、配置構成することができる。電極は、塩分解及び酸塩基回収を可能にするため、電位を印加するように動作可能である。BPMED 208は、BPM及びCEMにより画定された、多数の供給材放出区画及びアルカリ再生区画を含むことができる。
【0116】
BPMED 208は、ED供給溶液226及び水流234を1つ又は複数の供給材放出区画で受容するように構成される。BPMED 208のBPMは、水をヒドロキシルイオンとプロトンとに分解する水分解反応が可能である。BPMED 208は、塩をそのカチオン及びアニオンに分解する塩分解反応が可能である。CEMは、カチオンをアルカリ再生区画に移送するように動作可能である。アルカリ再生区画では、カチオンはヒドロキシルイオンと組み合わされて、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を有するED生成物流232を形成する。
【0117】
例えば、カリウムをベースにした系では、ED供給溶液226が硫酸カリウムに富む溶液を含むことができる。BPMED 208のCEMは、カリウムイオンK+を選択し、それをアルカリ再生区画に輸送して、K+をOH-と組み合わせることによりKOHをED生成物流232中で形成する。供給材放出区画では、プロトンシャトル種をプロトン化し、カチオンと組み合わせて、ブライン流238を形成することができる。例えば、硫酸イオンSO4
2-は、プロトン化してカリウムイオンK+と組み合わせて、重硫酸カリウムKHSO4をブライン流238に形成することができる。
【0118】
溶解タンク206は、BPMED 208からブライン流238を受容するように構成され、再生サブシステム264のブラインループを完成する。一部の実現例では、ブライン流238は、約1Mから約2.5Mの間の硫酸塩及び重硫酸塩を含むことができる。
【0119】
例えば、カリウムをベースにした系では、ブライン流238は、約1Mの硫酸カリウムK2SO4濃度及び重硫酸カリウムKHSO4を含むことができる。別の実施例では、ブライン流238は、約2.5Mの硫酸ナトリウムNa2SO4及び重硫酸ナトリウムNaHSO4を含むことができる。ある場合には、ブライン流238は、K2SO4/KHSO4及びNaSO4/NaHSO4の組合せを、2.5M又はそれよりも低い全濃度で含むことができる。ある場合には、ブライン流238は、1MのKNaSO4濃度を含むことができる。ある場合には、ブライン流238及びED供給溶液226は、BPMED 208の動作温度及びBPMED 208での硫酸塩から重硫酸塩への変換に応じて、その他の硫酸塩又は重硫酸塩濃度(又は両方)を含むことができる。ED供給溶液226及びブライン流238のそれぞれの硫酸塩及び重硫酸塩濃度は、任意の所与の動作温度に関して最低溶解度の化学種に依存することになる。
【0120】
一部の実現例では、BPMED 208は、各BPMとCEMとの間で1mm未満の膜間距離を含むことができる。例えばBPMは、CEMから0.7mmに位置決めすることができる。一部の実現例では、50mA/cm2から2000mA/cm2の間の電流密度をBPMED 208に適用することができる。
【0121】
BPMED 208で生成されたED生成物流232は、支配的な化学種として水酸化物を有する水性混合物を含むことができる。例えばED生成物流232は、水酸化カリウムKOHの水性溶液を含むことができる。ED生成物流232は、CO2捕捉溶液244としてBPMED 208からCO2捕捉サブシステム202に戻ることができる。一部の実現例では、CO2捕捉溶液244は、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を含むことができる。一部の実現例では、再生サブシステム264は、補助苛性蒸発器214を必要に応じて含むことができる。補助苛性蒸発器214は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。補助苛性蒸発器214は、水を除去することによってED生成物流232を濃縮して、CO2捕捉溶液244を形成し、水流240を放出する。例えば、送出されたt-CO2当たり最大20m3の水を、補助苛性蒸発器214によって除去することができる。そのような実現例では、CO2捕捉溶液244は、炭酸塩が希薄な混合物を含み、ED生成物流232よりも高い水酸化物濃度を有する。まとめると、補助苛性蒸発器214、CO2捕捉サブシステム202、炭酸塩分離サブシステム262、溶解タンク206、及びBPMED 208に流入及び流出するプロセス流は、捕捉溶液が内部で再生される苛性ループを形成する。
【0122】
図3は、ナノ濾過ユニット350及び直接プロトン化を用いることによって捕捉溶液を再生し、CO
2を回収するための、実施例の電気化学システム300を示すブロックフロー図である。ある場合には、電気化学システム300は、苛性蒸発器とは異なって、炭酸塩の飽和を実現するためにナノ濾過が水の除去を必要とすることなく特定の濃度の炭酸塩を選択的に生成できるので、
図1の電気化学システム100及び
図2の電気化学システム200よりも有利とすることができる。電気化学システム300は、炭酸塩分離サブシステム362及び再生サブシステム364に流体で連結されたCO
2捕捉システム302を含む。炭酸塩分離サブシステム362は、晶析器304に流体で連結されたナノ濾過ユニット350を含む。一部の実現例では、晶析器304は、蒸発式晶析器、冷却晶析器(例えば、真空又は表面冷却)、膜蒸留晶析器、又はこれらの組合せを含む。晶析器は、強制循環、ドラフトチューブバッフル、又は流動床設計、又はこれらの組合せに基づくことができる。
【0123】
一部の実現例では、晶析器304は、遠心分離、圧力又は真空フィルター、スクレーパー、サイクロン、及び同様のもの等の固形分分離器に流体で連結することができる。炭酸塩分離サブシステム362は、捕捉溶液中の炭酸塩と水酸化物塩との間の溶解度の差を活用して、炭酸塩の効率的な分離を可能にする。ナノ濾過ユニット350は、炭酸塩に富む捕捉溶液320をCO2捕捉サブシステム302から受容することができる。一部の実現例では、CO2捕捉サブシステム302は、1つ又は複数の空気接触器305を含むことができる。空気接触器305は、冷却塔スタイルの気-液接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び液体収着剤を使用して更に大きい気体流から特定の気体成分の少なくとも一部分を除去するように設計されたその他のシステムを含むことができる。空気接触器305は、単一又は多重セルの空気接触器、二重セル空気接触器、二重流空気接触器、又はこれらの組合せを含むことができる。空気接触器は、交差流、向流、並流、又はこれらの組合せで動作することができる。一部の実現例では、一次苛性蒸発器312は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0124】
炭酸塩に富む捕捉溶液320は、主に炭酸イオン、アルカリ金属炭酸塩(例えば、K2CO3、Na2CO3)、又はこれらの組合せを含む水性混合物とすることができる。炭酸塩に富む捕捉溶液320は、水酸化物イオン、アルカリ金属水酸化物(例えば、KOH、NaOH)、水、及び不純物等、その他の成分を少量で含むこともできる。例えば炭酸塩に富む捕捉溶液320は、0.4Mから6Mの間のK2CO3及び1Mから10Mの間のKOHを含むことができる。別の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液320は、水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。
【0125】
ナノ濾過ユニット350は、晶析器304に対する蒸発負荷を低減させることができ、供給流量及び晶析器のサイジングを低減させることができる、選択的排除を介して炭酸塩を濃縮することができる。ナノ濾過ユニット350は、炭酸イオン等の大きい2価のイオンに対して不透過性であり又はそのようなイオンを選択する、1つ又は複数の濾過膜を含むことができる。ナノ濾過膜は、固有の表面電化を有することができ、イオン混合物の分離に特に適切なものにする。化学種の排除は、サイズ、イオン電荷、及び膜親和性に依存する可能性がある。ナノ濾過ユニット350は、広いpH耐性を有し、0から14に及ぶpH又は最大10Mの水酸化物濃度で動作するのに十分耐久性のある、膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット350は、最大10Mの水酸化物濃度で動作可能な膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット350は、約10Mまでの間の水酸化物濃度を安定に取り扱う膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット350は、2価のイオン(例えば、炭酸イオン)の85%から100%を排除して、炭酸塩に富む保持液352と水酸化物に富む又は炭酸塩が希薄な透過液354とを得ることができる。ある場合には、ナノ濾過ユニット350は、2価のイオンの50%から100%の間を排除することができる。ある場合には、ナノ濾過ユニット350は、炭酸塩に富む保持液352を得るために、高イオン強度のドロー溶液及び圧力勾配を用いる正浸透スタイルの濾過ユニットを含むことができる。高イオン強度ドロー溶液は、膜を横断する浸透圧差を低下させることができ、水を供給溶液からドロー溶液までより容易に流すことができる電解質溶液である。ナノ濾過ユニット350は、スペーサー及び支持体と一緒にクランプ留めされたいくつかのナノ濾過膜(例えば、平膜シート)を保持するプレート及びフレームモジュールを含むことができる。
【0126】
ナノ濾過ユニット350は、供給溶液として炭酸塩に富む捕捉溶液320、及びドローイン溶液として母液342を受容することができる。ナノ濾過ユニット350の濾過膜は、炭酸イオンを選択し、排除することができ、それによって、主に濃縮された炭酸塩を含む保持液352と主に水酸化物を含む透過液354(ドローアウト溶液)とが生成される。例えばナノ濾過ユニット350は、供給材としてK2CO3に富む溶液、及びドローイン溶液として母液(KOH、水、及び少量のK2CO3を含むことができる)を受容することができる。次いでナノ濾過ユニット350は、保持液352として濃縮されたK2CO3に富む溶液、及び透過液354としてKOHに富む溶液を生成することができる。保持液352は、炭酸塩に富む捕捉溶液320よりも高い炭酸塩濃度を含むことができる。一部の実現例では、保持液352は、約0.5Mから6Mの間のK2CO3を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット350は、供給材としてNa2CO3に富む捕捉溶液を受容することができ、保持液352として濃縮されたNa2CO3に富む溶液、及び透過液354としてNaOHに富む溶液を生成することができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット350は、供給材として、混合されたK2CO3/Na2CO3に富む捕捉溶液を受容することができ、保持液352として濃縮され混合されたK2CO3/Na2CO3に富む溶液、及び透過液354として混合されたKOH/NaOHに富む溶液を生成することができる。
【0127】
一部の実現例では、ナノ濾過ユニット350は、炭酸塩に富む捕捉溶液320を受容するように構成された供給タンクと、保持液352を受容するように構成された排除収集タンクとを含むことができる。したがってナノ濾過ユニット350は、保持液352中の炭酸塩がそれほど可溶性ではなくなるように、炭酸塩のそれぞれの濃度を増大させ、晶析器304に対する晶析器の負荷を低減させる(蒸発加熱又は冷却冷蔵)。
【0128】
晶析器304は、ナノ濾過ユニット350から保持液352を受容する。一部の実現例では、晶析器304は、蒸発式晶析器、共晶凍結晶析器、冷却晶析器(例えば、真空又は表面冷却)、膜蒸留晶析器、又はこれらの組合せを含む。晶析器304は、強制循環、ドラフトチューブバッフル、流動床設計、又はこれらの組合せをベースにすることができる。晶析器304は水酸化物濃度を増大させ、それによって保持液352中の炭酸塩の溶解度を低下させる。保持液352中の炭酸塩の溶解度は、保持液352の組成及びその飽和曲線に対する位置によって決定される。ある場合には、晶析器304は、ナノ濾過ユニット350から保持液352を受容し、保持液352の一部分を蒸発させて過飽和に達する。これは結晶質炭酸塩水和物322、母液342、及び水流324を形成する。晶析器304は、下流の処理に向けて(例えば、濾過システム、水処理システム、又は廃棄システム)又はシステム300の内部又は越えた別の適用例で使用するために、水流324を放出する。結晶質炭酸塩水和物322は、母液342から少なくとも部分的に分離されて、EDユニット用の供給溶液で使用することができる純粋な又はほぼ純粋な炭酸塩を形成する。母液342は、水、水酸化物、及び少量の炭酸塩を含むことができる。結晶質炭酸塩水和物322は、炭酸塩セスキ水和物(M2CO3・1.5H2O)又は無水炭酸塩を含むことができる。例えば、結晶質炭酸塩水和物322は、炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)を含むことができる。炭酸カリウムセスキ水和物結晶は、KOH-K2CO3混合物を含むことができる母液142から少なくとも部分的に単離することができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物322は、炭酸塩ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)を含むことができ、母液342は、NaOH-Na2CO3混合物を含むことができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物322は、炭酸カリウムナトリウム六水和物(KNaCO3・6H2O)を含むことができる。一部の実現例では、結晶質炭酸塩水和物322は、結晶質炭酸塩中の単位炭酸塩当たり、異なる化学量論量の水分子を含むことができる(例えば、M2CO3・nH2Oであり、式中、Mはアルカリ金属であり、nは整数又は小数値である)。母液342からの分離後、結晶質炭酸塩水和物322は再生サブシステム364に送られ、母液342はナノ濾過ユニット350にドローイン溶液として戻される。
【0129】
再生サブシステム364は、BPMED 308及びフラッシュタンク310に流体で連結された溶解タンク306を含む。BPMED 308は、BPM及びCEMを用いるEDユニットの実施例であるが、ある場合には、再生サブシステム364は、異なるEDユニットを含むことができる(例えば、1つ又は複数のCEM、AEM、BPM、又はこれらの組合せを含むEDユニット)。まとめると、溶解タンク306、BPMED 308、及びフラッシュタンク310に流入及び流出するプロセス流は、DICがプロトン化され、CO2が放出されるブラインループを形成する。溶解タンク306は、水流328及び結晶質炭酸塩水和物322を晶析器304から受容することができる。ある場合には、精製された水性溶液は、水流328の代わりに又は加えて使用することができる。精製された水性溶液は、微粒子及び溶解汚染物質を実質的に含めないことができる。結晶質炭酸塩水和物322は、水に溶解し、ブライン流338中で重炭酸塩HCO3
-と組み合わされてED供給溶液326を形成する。ED供給溶液326は、重炭酸塩HCO3
-に富む溶液を、炭酸塩及び水等のその他の成分の混合物と共に含むことができる。BPMED 308は、2つの電極の間に位置決めされたセルの積層体を含むことができる。ある場合には、BPMED 308の電極は、断続的低炭素強度電源(例えば、ソーラー、風、地熱)又は低炭素強度電源(例えば、水力、核、再生可能天然ガス)に連結することができる。各セルは、BPM及びCEMが交互になされたものを含む構成に、配置構成することができる。電極は、塩分解及び酸塩基回収を可能にするため、電位を印加するように動作可能である。BPMED 308は、BPM及びCEMにより画定された多数の供給-放出区画及びアルカリ再生区画を含むことができる。
【0130】
BPMED 308は、ED供給溶液326及び水流334を1つ又は複数の供給-放出区画に受容するように構成される。BPMED 308のBPMは、水をヒドロキシルイオンとプロトンとに分解する水分解反応を可能にする。BPMED 308は、塩をそのカチオン及びアニオンに分解する塩分解反応を可能にする。CEMは、カチオンをアルカリ再生区画内に移送するように動作可能である。アルカリ再生区画では、カチオンがヒドロキシルイオンと組み合わされて、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を有する第1のED生成物流332を形成する。
【0131】
例えばED供給溶液326は、重炭酸カリウムKHCO3に富む溶液を含むことができる。BPMED 308のCEMは、カリウムイオンK+を選択し、それらをアルカリ再生区画に輸送し、そこでK+をOH-と組み合わせて、第1のED生成物流332中でKOHを形成する。供給-放出区画では、重炭酸HCO3
-イオンがBPMED 308で直接プロトン化されて、炭酸H2CO3を含む第2のED生成物流330を形成する。ある場合には、炭酸はCO2と水とに解離し、CO2は、BPMED 308内で部分的に脱気され得る。
【0132】
一部の実現例では、pHの低減により、炭酸を解離させてBPMED 308のセル内でCO2を放出させることができる。一部の実現例では、BPMED 308は、各BPMとCEMとの間で1mm未満の膜間距離を含むことができる。例えば、BPMは、CEMから0.7mmに位置決めすることができる。一部の実現例では、50mA/cm2から2000mA/cm2の間の電流密度をBPMED 308に適用することができる。
【0133】
BPMED 308により発生した第2のED生成物流330は、炭酸H2CO3及び重炭酸HCO3
-との水性混合物を含むことができる。例えば第2のED生成物流330は、炭酸H2CO3及び重炭酸カリウムKHCO3の水性混合物を含むことができる。炭酸H2CO3はCO2と水とに解離する。第2のED生成物流330はフラッシュタンク310に送ることができ、そこでCO2流336がフラッシュタンク310から部分的に又は完全に放出され、後続の実現例に記述された1つ又は複数の下流の処理ユニットに送られる(例えば、圧縮ユニット、精製ユニット、電解還元サブシステム、炭素生成物製造システム、合成ガス発生反応器)。重炭酸HCO3
-の水性混合物を含むブライン流338は、溶解タンク306に送ることができ、再生サブシステム364のブラインループを完成させる。
【0134】
第1のED生成物流332は、支配的な化学種として水酸化物との水性混合物を含むことができる。例えば第1のED生成物流332は、水酸化カリウムKOHの水性溶液を含むことができる。第1のED生成物流332は、CO2捕捉溶液344としてBPMED 308からCO2捕捉サブシステム302に戻すことができる。一部の実現例では、CO2捕捉溶液344は、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を含むことができる。一部の実現例では、再生サブシステム364は、補助苛性蒸発気314を必要に応じて含むことができる。補助苛性蒸発器314は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。補助苛性蒸発器314は、CO2捕捉溶液344を形成するように水を除去し、水流340を放出することによって、第1のED生成物流332を濃縮する。そのような実現例では、CO2捕捉溶液344は、炭酸塩が希薄な混合物を含み、第1のED生成物流332よりも高い水酸化物濃度を有する。まとめると、補助苛性蒸発器314、CO2捕捉サブシステム302、炭酸塩分離サブシステム362、溶解タンク306、及びBPMED 308に流入及び流出するプロセス流は、捕捉溶液が再生される苛性ループを形成する。
【0135】
図1の電気化学システム100又は
図3の電気化学システム300の各要素において、1つ又は複数のプロセス流は、CO
2、HCO
3
-、及びCO
3
2-の混合物を、部分的に、また完全に完成する反応に基づいて及びプロセス条件に基づいて、様々な濃度で含むことができる。プロセス流中の、溶解したCO
2、溶解したH
2CO
3、HCO
3
-、及びCO
3
2-の濃度の比は、pHに依存する可能性がある。例えば、pHが10から7.5に低下するにつれ、HCO
3
-濃度及びCO
2濃度は、CO
3
2-濃度が低下しつつ、増大することができる。ある場合には、有意な量の重炭酸塩が、ブラインループに含まれる各プロセス流中に存在する。
図1の電気化学システム100のBPMED 108又は
図3の電気化学システム300のBPMED 308は、約1から14のpH範囲で動作することができる。例えばBPMED 108及びBPMED 308は、約7から12のpH範囲で動作することができる。
【0136】
図4は、ナノ濾過ユニット450とプロトンシャトル種による間接的プロトン化を用いることによって、捕捉溶液を再生し、CO
2を回収するための実施例の電気化学システム400を示す、ブロックフロー図である。ある場合には、電気化学システム400は、EDユニットの外側でDIC種がプロトン化され、EDユニットのセル内でのCO
2脱気が回避されるので、
図1の電気化学システム100及び
図3の電気化学システム300よりも有利とすることができる。EDユニット内でのCO
2脱気は、電気抵抗を増大させ、セルの活性領域を低減させる可能性があるので、望ましくない可能性がある。したがって間接的プロトン化システムを含むブラインループは、直接プロトン化システムを含むブラインループよりも効率的にすることができる。ナノ濾過ユニット450は、苛性蒸発器とは異なって、炭酸塩の飽和を実現するのに水の除去を必要とすることなく、特定の濃度の炭酸塩を選択的に生成することができる。
【0137】
電気化学システム400は、炭酸塩分離サブシステム462及び再生サブシステム464に流体で連結されたCO2捕捉サブシステム402を含む。炭酸塩分離サブシステム462は、晶析器404に流体で連結されたナノ濾過ユニット450を含む。一部の実現例では、晶析器404は、遠心分離、圧力又は真空フィルター、スクレーパー、サイクロン、及び同様のもの等、固形分分離器に流体で連結することができる。炭酸塩分離サブシステム462は、炭酸塩の効率的な分離が可能になるように、捕捉溶液中の炭酸塩と水酸化物塩との間の溶解度差を活用する。ナノ濾過ユニット450は、炭酸塩に富む捕捉溶液420をCO2捕捉サブシステム402から受容することができる。一部の実現例では、CO2捕捉サブシステム402は、1つ又は複数の空気接触器405を含むことができる。空気接触器405は、冷却塔スタイルの気-液接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び液体収着剤を使用して更に大きい気体流から特定の気体成分の少なくとも一部分を除去するように設計されたその他のシステムを含むことができる。空気接触器405は、単一セル空気接触器、二重セル空気接触器、多重セル空気接触器、二重流接触器、又はこれらの組合せを含むことができる。空気接触器は、交差流、向流、並流、又はこれらの組合せで動作することができる。
【0138】
炭酸塩に富む捕捉溶液420は、主に炭酸イオン、アルカリ金属炭酸塩(例えば、K2CO3、Na2CO3)、又はこれらの組合せを含む水性混合物とすることができる。炭酸塩に富む捕捉溶液420は、水酸化物イオン、アルカリ金属水酸化物(例えば、KOH、NaOH)、水、及び不純物等、その他の成分を少量で含むこともできる。例えば炭酸塩に富む捕捉溶液420は、0.4Mから6Mの間のK2CO3及び1Mから10Mの間のKOHを含むことができる。別の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液420は、水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。
【0139】
ナノ濾過ユニット450は、選択的排除を介して炭酸塩を濃縮することができ、晶析器404に対する晶析器の負荷を低減させることができ(蒸発加熱又は冷却冷蔵)、供給流量及び晶析器のサイジングを低減させることができる。ナノ濾過ユニット450は、炭酸イオン等の大きい2価のイオンに対して不透過性の又はそのようなイオンを選択する、1つ又は複数の濾過膜を含むことができる。ナノ濾過ユニット450は、供給溶液として炭酸塩に富む捕捉溶液420及びドローイン溶液として母液442を受容することができる。ナノ濾過ユニット450の濾過膜は、炭酸イオンを選択し排除することができ、それによって、主に濃縮された炭酸塩を含む保持液452と、主に水酸化物を含む透過液454(ドローアウト溶液)とが生成される。例えばナノ濾過ユニット450は、K2CO3に富む溶液を供給材として受容することができ、母液442(KOH、水、及び少量のK2CO3を含むことができる)をドローイン溶液として受容することができる。次いでナノ濾過ユニット450は、濃縮されたK2CO3に富む溶液を保持液452として、及びKOHに富む溶液を透過液454として生成することができる。保持液452は、炭酸塩に富む捕捉溶液420よりも高い炭酸塩濃度を含むことができる。一部の実現例では、保持液452は、約0.5Mから6Mの間のK2CO3を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット450は、Na2CO3に富む捕捉溶液を供給材として受容することができ、濃縮されたNa2CO3に富む溶液を保持液452として、及びNaOHに富む溶液を透過液454として生成することができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット450は、濃縮され混合されたK2CO3/Na2CO3に富む捕捉溶液を供給材として受容することができ、混合されたK2CO3/Na2CO3に富む溶液を保持液452として及び混合されたKOH/NaOHに富む溶液を透過液454として生成することができる。
【0140】
ナノ濾過ユニット450は、広いpH耐性を有し、0から14に及ぶpHで動作するのに十分耐久性がある膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット450は、3から14のpH範囲で動作可能な膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット450は、最大10Mの水酸化物濃度を安定に取り扱う膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット450は、2価のイオン(例えば、炭酸イオン)の85%から100%を排除して、炭酸塩に富む保持液452と、水酸化物に富む又は炭酸塩が希薄な透過液454とをもたらすことができる。ある場合には、ナノ濾過ユニット450は、2価のイオンの50%から100%の間で排除することができる。ある場合には、ナノ濾過ユニット450は、ドロー溶液と、炭酸塩に富む保持液をもたらす圧力勾配とを用いる、正浸透スタイルの濾過ユニットを含むことができる。ナノ濾過ユニット450は、スペーサー及び支持体と一緒にクランプ留めされたいくつかのナノ濾過膜(例えば、平膜シート)を保持する、プレート及びフレームモジュールを含むことができる。
【0141】
一部の実現例では、ナノ濾過ユニット450は、炭酸塩に富む捕捉溶液420を受容するように構成された供給タンクと、保持液452を受容するように構成された排除収集タンクとを含むことができる。したがってナノ濾過ユニット450は、炭酸塩のそれぞれの濃度を増大させて、保持液452中の炭酸塩がそれほど可溶性ではないようにし、したがって晶析器404に対する晶析器の負荷(蒸発加熱又は冷却冷蔵)が低減される。
【0142】
晶析器404は、ナノ濾過ユニット450から保持液452を受容する。一部の実現例では、晶析器404は、蒸発式晶析器、共晶凍結晶析器、冷却晶析器(例えば、真空又は表面冷却)、膜蒸留晶析器、又はこれらの組合せを含む。晶析器404は、強制循環、ドラフトチューブバッフル、流動床設計、又はこれらの組合せに基づくことができる。晶析器404は水酸化物濃度を増大させ、それによって保持液452中の炭酸塩の溶解度が低下する。保持液452中の炭酸塩の溶解度は、保持液452の組成及びその飽和曲線に対する位置によって決定される。ある場合には、晶析器404は、保持液452の一部分を蒸発させて過飽和に到達させる。これは結晶質炭酸塩水和物422、母液442、及び水流424を形成する。晶析器404は、下流の処理(例えば、濾過システム、水処理システム、又は廃棄システムで)又はシステム400の内部若しくは越えた別の適用例での使用に向けて水流424を放出する。結晶質炭酸塩水和物422は、母液442から少なくとも部分的に分離されて、EDユニット用の供給溶液中で使用できる純粋な又はほぼ純粋な炭酸塩を形成する。母液442は、結晶質炭酸塩水和物422が分離された後、水及び水酸化物等、濃縮炭酸塩溶液418の残りの成分を含むことができる。結晶質炭酸塩水和物422は、炭酸塩セスキ水和物(M2CO3・1.5H2O)又は無水炭酸塩を含むことができる。例えば、結晶質炭酸塩水和物422は、炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)を含むことができる。炭酸カリウムセスキ水和物結晶は、KOH-K2CO3混合物を含むことができる母液442から少なくとも部分的に単離することができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物422は炭酸ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)を含むことができ、母液442はNaOH-Na2CO3混合物を含むことができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物422は、炭酸カリウムナトリウム六水和物(KNaCO3・6H2O)を含むことができる。一部の実現例では、結晶質炭酸塩水和物422は、結晶質炭酸塩中(例えば、M2CO3・nH2Oであり、式中、Mはアルカリ金属であり、nは整数又は小数値である)、単位炭酸塩当たり、異なる化学量論量の水分子を含むことができる。母液442から分離後、結晶質炭酸塩水和物422は、再生サブシステム464に送られ、母液442はドローイン溶液としてナノ濾過ユニット450に戻される。
【0143】
再生サブシステム464は、BPMED 408に流体で連結された溶解タンク406を含む。BPMED 408は、BPM及びCEMを用いるEDユニットの実施例であるが、ある場合には、再生サブシステム464は、異なるEDユニットを含むことができる(例えば、1つ又は複数のCEM、AEM、BPM、又はこれらの組合せを含むEDユニット)。ある場合には、溶解タンク406は、最大40barの圧力で動作することができる。まとめると、溶解タンク406及びBPMED 408に流入及び流出するプロセス流は、プロトンシャトル種(例えば、硫酸塩SO4
2-、重硫酸塩HSO4
-)がBPMEDでプロトン化され、プロトンがプロトンシャトル種を介して溶解タンク406にシャトル移送される、ブラインループを形成する。一部の実現例では、プロトンシャトル種は、Cl-、I-、Br-、HPO4
-2、及びH2PO4
-1、酢酸塩、及びクエン酸塩を含むことができる。溶解タンク406では、プロトンシャトル種はDIC種とプロトン化して、炭酸H2CO3を形成する。したがってブラインループでは、BPMED 408がDIC種を間接的にプロトン化させる。
【0144】
溶解タンク406は、水流428、晶析器404からの結晶質炭酸塩水和物422、及びBPMED 408からのブライン流438を受容することができる。ある場合には、精製された水性溶液は、水流428の代わりに又は加えて使用することができる。精製された水性溶液は、微粒子及び溶解汚染物質を実質的に含めないことができる。結晶質炭酸塩水和物422は、水に溶解し、ブライン流438中のプロトンシャトル種と反応する。例えば結晶質炭酸塩水和物422は、炭酸カリウムK2CO3をもたらすように、溶解タンク406の水に溶解する炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)を含むことができる。ブライン流438は、重硫酸塩に富む溶液を含むことができる。例えばブライン流438は、重硫酸カリウムKHSO4をプロトンシャトル種として含むことができる。一部の実現例では、ブライン流438は、約1Mから約2.5Mの間の硫酸塩を含むことができる。例えばブライン流438は、約1Mの硫酸カリウムK2SO4濃度を含むことができる。別の実施例では、ブライン流438は、約2.5Mの硫酸ナトリウムNa2SO4を含むことができる。ある場合には、ブライン流438及びED供給溶液426は、BPMED 408の動作温度に応じて、その他の硫酸塩又は重硫酸塩濃度(又は両方)を含むことができる。溶解タンク406では、重硫酸塩に富む溶液は炭酸塩と反応して、重硫酸塩が希薄な溶液及び炭酸をもたらすことができる。例えば重硫酸カリウムKHSO4は、炭酸カリウムK2SO3と反応して、硫酸カリウムK2SO4及び炭酸H2CO3をもたらすことができる。その結果、pHは低減することになる。炭酸は、水及び気状CO2への解離を引き起こすよう十分な平衡CO2分圧(例えば、1bar未満)を有することになる。溶解タンク406は、気状CO2流436を部分的に又は完全に放出することができる。気状CO2流436は、後続の実現例に記述された1つ又は複数の下流の処理ユニットに送ることができる(例えば、圧縮ユニット、精製ユニット、電解還元サブシステム、炭素生成物製造システム、合成ガス発生反応器)。
【0145】
溶解タンク406での反応は、ED供給溶液426を形成する。ED供給溶液426は、重硫酸塩が希薄な溶液を含むことができる。例えばED供給溶液426は、重硫酸カリウム及び水等のその他の成分の混合物と共に硫酸カリウムを含むことができる。溶解タンク406は、ED供給溶液426をBPMED 408に流すように構成される。
【0146】
BPMED 408は、2つの電極の間に位置決めされたセルの積層体を含むことができる。ある場合には、BPMED 408の電極は、断続的低炭素強度電源(例えば、ソーラー、風、地熱)又は低炭素強度電源(例えば、水力、核、再生天然ガス)に連結することができる。各セルは、BPM及びCEMが交互になされたものを含む構成に、配置構成することができる。電極は、電位を印加して塩分解及び酸塩基回収が可能になるように動作可能である。BPMED 408は、BPM及びCEMによって画定された多数の供給-放出区画及びアルカリ再生区画を含むことができる。
【0147】
BPMED 408は、ED供給溶液426及び水流434を1つ又は複数の供給-放出区画に受容するように構成される。BPMED 408のBPMは、水をヒドロキシルイオン及びプロトンに分解する水分解反応を可能にする。BPMED 408は、塩をそのカチオン及びアニオンに分解する塩分解反応を可能にする。CEMは、カチオンをアルカリ再生区画内に移送するように動作可能である。アルカリ再生区画では、カチオンはヒドロキシルイオンと組み合わされて、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を有するED生成物流432を形成する。
【0148】
例えばカリウムをベースにした系では、ED供給溶液426は、硫酸カリウムに富む溶液を含むことができる。BPMED 408のCEMは、カリウムイオンK+を選択し、それらをアルカリ再生区画内に輸送して、そこでK+をOH-と組み合わせてKOHをED生成物流432中に形成する。供給-放出区画では、プロトンシャトル種をプロトン化し、カチオンと組み合わせてブライン流438を形成することができる。例えば硫酸イオンSO4
2-は、プロトン化され、カリウムイオンK+と組み合わせて、重硫酸カリウムKHSO4をブライン流438中に形成することができる。
【0149】
溶解タンク406は、ブライン流438をBPMED 408から受容するように構成され、再生サブシステム464のブラインループが完成する。一部の実現例では、ブライン流438は、約1Mから約2.5Mの間の硫酸塩及び重硫酸塩を含むことができる。
【0150】
例えばカリウムをベースにした系では、ブライン流438は、約1Mの硫酸カリウムK2SO4濃度及び重硫酸カリウムを含むことができる。別の実施例では、ブライン流438は、約2.5Mの硫酸ナトリウムNa2SO4及び重硫酸ナトリウムを含むことができる。ある場合には、ブライン流438は、K2SO4/KHSO4及びNaSO4/NaHSO4の組合せを、2.5M又はそれよりも低い全濃度で含むことができる。ある場合には、ブライン流438は、1MのKNaSO4濃度を含むことができる。
【0151】
ある場合には、ブライン流438及びED供給溶液426は、BPMED 408の動作温度及びBPMED 408での硫酸塩から重硫酸塩への変換に応じて、その他の硫酸塩又は重硫酸塩濃度(又は両方)を含むことができる。ED供給溶液426及びブライン流438のそれぞれの硫酸塩及び重硫酸塩濃度は、任意の所与動作温度に関して最も低い溶解度の化学種に依存することになる。
【0152】
一部の実現例では、BPMED 408は、各BPMとCEMとの間で1mm未満の膜間距離を含むことができる。例えばBPMは、CEMから0.7mmに位置決めすることができる。一部の実現例では、100mA/cm2から2000mA/cm2の間の電流密度をBPMED 408に適用することができる。
【0153】
ED生成物流432は、支配的な化学種としての水酸化物との水性混合物を含むことができる。例えばED生成物流432は、水酸化カリウムKOHの水性溶液を含むことができる。ED生成物流432は、CO2捕捉溶液444として、BPMED 408からCO2捕捉サブシステム402に戻すことができる。一部の実現例では、CO2捕捉溶液444は、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を含むことができる。一部の実現例では、再生サブシステム464は、補助苛性蒸発器414を必要に応じて含むことができる。補助苛性蒸発器414は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。補助苛性蒸発器414は、CO2捕捉溶液444を形成するように水を除去し、水流440を放出することによって、ED生成物流432を濃縮する。例えば送出されたt-CO2当たり最大20m3の水を、補助苛性蒸発器414によって除去することができる。そのような実現例では、CO2捕捉溶液444は、炭酸塩が希薄な混合物を含み、ED生成物流432よりも高い水酸化物濃度を有する。まとめると、補助苛性蒸発器414、CO2捕捉サブシステム402、炭酸塩分離サブシステム462、溶解タンク406、及びBPMED 408に流入及び流出するプロセス流は、捕捉溶液が再生される苛性ループを形成する。
【0154】
図2の電気化学システム200又は
図4の電気化学システム400の各要素において、1つ又は複数のプロセス流は、部分的に又は完全に完成する反応及びプロセス条件に基づいて濃度が様々になるDIC種又はプロトンシャトル種の混合物を含むことができる。CO
2、HCO
3
-、及びCO
3
2-の比、HSO
4
-及びSO
4
2-の濃度、並びにプロセス流中の全イオン強度は、pHに依存する可能性がある。例えば、pHが10から7.5に低下するにつれ、HCO
3
-濃度及びCO
2濃度は増大することができ、それと共にCO
3
2-濃度は低下する。
図2の電気化学システム200のBPMED 208又は
図4の電気化学システム400のBPMED 408は、約1から14のpH範囲で動作することができる。例えばBPMED 208及びBPMED 408は、0.001Mから2.5Mの間に及ぶ水素イオン濃度で動作することができる。例えば、K
2CO
3中のカチオンがプロトンと置き換わってKHCO
3を形成するにつれ、K
2CO
3分子中の3個のイオン(2個のK
+及び1個のCO
3
2-)及びKHCO
3分子中の2個のイオン(1個のK
+及び1個のHCO
3
-)があるので、全イオン強度は低下することになる。
【0155】
一部の実現例では、
図2の電気化学システム200又は
図4の電気化学システム400は、必要に応じたフラッシュタンクを含むことができる。必要に応じたフラッシュタンクは、溶解タンク206、406に、及びBPMED 208、408に流体で連結することができる。必要に応じたフラッシュタンクは、溶解タンク206、406から出口流を受容することができる。CO
2流236、436は、溶解タンク206、406に加えて又は代わりに、必要に応じたフラッシュタンクから脱気することができる。ED供給溶液226、426は、必要に応じてフラッシュタンクからBPMED 208、408に流れることができる。
【0156】
図3のナノ濾過ユニット350及び
図4のナノ濾過ユニット450はそれぞれ、先行して、ケイ酸塩、硬水、界面活性添加剤、又は塩分の問題を引き起こす塩等の固形分を除去するように構成された一次濾過システム(例えば、限外濾過システム)を設けることができる。この構成では、ナノ濾過ユニット350及び450は、汽水域等の非可搬式水源の使用を可能にすることができる。この構成は、ナノ濾過ユニット350及び450を潜在的に有害な汚染物質から保護することができ、下流のプロセス及びユニットへの化学種の持越しを防止することができる。
【0157】
図5は、本開示の少なくとも1つの例示的な実施形態による、電気化学システムを介してCO
2捕捉溶液を再生し、CO
2を回収するための、実施例の方法500を示すフローチャートである。方法500は工程502から516を含むが、他の実現例では、ある特定の工程を省略することができ、追加の工程を付加することができる。工程502から516は、図示されるように逐次行うことができ、又は図示される方法とは異なる順序で行うことができる。
【0158】
502で、炭酸塩に富む捕捉溶液を、晶析器を含む炭酸塩分離サブシステムに流す。K2CO3、KOH、H2O、NaOH、Na2CO3、又はこれらの組合せを含む炭酸塩に富む捕捉溶液は、炭酸塩分離サブシステムに流すことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、蒸発式晶析器、共晶凍結晶析器、冷却晶析器(例えば、真空又は表面冷却)、膜蒸留晶析器、又はこれらの組合せに流すことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、晶析器の前に一次苛性蒸発器(例えば、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せ)に流すことができる。
【0159】
504で、結晶質炭酸塩水和物及び母液が晶析器内で形成される。一部の実現例では、結晶質炭酸塩水和物は、炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)又は無水炭酸カリウムであって、炭酸塩に富む捕捉溶液の水酸化物濃度を増大させて炭酸塩の溶解度を低下させることによって形成されるものを含むことができる。一部の実現例では、母液は、水酸化カリウムKOH、水、及び少量の炭酸カリウムK2CO3を含むことができる。一部の実現例では、結晶質炭酸塩水和物は、炭酸ナトリウム水和物又は無水炭酸ナトリウムを含むことができる。一部の実現例では、母液は、水酸化ナトリウムNaOHを含むことができる。
【0160】
506で、結晶質炭酸塩水和物を溶解タンクに溶解する。溶解炭酸塩を、ブライン流中の重炭酸塩HCO3
-と合わせて、ED供給溶液を形成する。一部の実現例では、溶解炭酸塩をブライン流と合わせて、重炭酸塩に富む溶液であるED供給溶液を形成する。
【0161】
508で、水流及びED供給溶液をEDユニットに流す。一部の実現例では、水流を、EDユニットの1つ又は複数のアルカリ再生区画に流す。一部の実現例では、ED供給溶液を、EDユニットの1つ又は複数の供給-放出区画に流す。
【0162】
510で、電位をEDユニットに印加する。一部の実現例では、電位を、断続的低炭素強度電源(例えば、ソーラー、風、地熱)又は低炭素強度電源(例えば、水力、核、再生天然ガス)によって印加する。一部の実現例では、最大2000mA/cm2の電流密度をEDユニットに適用することができる。EDユニットのBPMは、水をヒドロキシルイオンとプロトンとに分離することができ、ヒドロキシルイオンを1つ又は複数のアルカリ再生区画に提供することができる。EDユニットのCEMは、ED供給溶液のカチオン(例えば、アルカリ金属イオン)を、1つ又は複数のアルカリ再生区画内に移送することができる。
【0163】
512で、ED生成物流は、EDユニットを含む苛性ループを介して形成される。カチオンを、アルカリ再生区画のヒドロキシルイオンと合わせて、ED生成物流を形成する。一部の実現例では、ED生成物流は、1Mから10Mの間の水酸化物濃度を有していてもよい。
【0164】
514で、CO2気体流が、EDユニットを含むブラインループを介して放出される。重炭酸塩のプロトン化は、CO2気体流を放出するように解離することができる炭酸を形成する。一部の実現例では、ブラインループは、直接プロトン化システムを含む。直接プロトン化で、DIC種は、EDユニットの供給-放出区画でプロトン化される。一部の実現例では、ブラインループは、間接的プロトン化システムを含む。間接的プロトン化で、EDユニットは、DIC種がプロトン化されてCO2気体流を放出する外部フラッシュタンクに移送される、プロトンシャトル種(例えば、硫酸塩、重硫酸塩)をプロトン化する。気泡形成及び電気抵抗を低減させるようにEDユニットを加圧することにより、EDユニット内でのCO2脱気を回避することを、有益にすることができる。圧力でEDユニットを動作させることで、下流のCO2圧縮のコストを削減することもできる。一部の実現例では、EDユニットは、CO2オフガス圧力(例えば、約40bar)にほぼ等しい圧力で動作することができる。一部の実現例では、EDユニットは、下流圧縮器での圧縮の第1の段階にほぼ等しい圧力(例えば、1bar又はそれよりも高い圧力)で動作することができる。
【0165】
516で、ED生成物流を含むCO2捕捉溶液を、CO2捕捉サブシステムに戻す。一部の実現例では、ED生成物流は、補助苛性蒸発器で濃縮して、CO2捕捉溶液を形成することができ、これをCO2捕捉サブシステムに戻す。一部の実現例では、CO2捕捉溶液は、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を含むことができる。
【0166】
上記工程のそれぞれは、異なる化学的性質を介してCO2の捕捉及び捕捉溶液の再生に順応するように修正することができる。例えばNaOHをベースにした反応は、方法500に記述されるKOHをベースにした反応に替えることができる。
【0167】
図1から
図4までの電気化学システム100、200、300、及び400のそれぞれ、並びに
図5の方法500では、下流の圧縮のコストを削減するため、高圧でCO
2流136、236、336、436をオフガスすることが有益とすることができる。例えばCO
2は、下流の圧縮器での圧縮の第1の段階に等しい又は高い圧力で(例えば、1bar又はそれよりも高い圧力)放出することができる。ある場合には、CO
2は、約40barで放出することができる。ある場合には、BPMED 108、208、308、408は、それぞれ加圧されて、気泡形成及び電気抵抗を低下させ、それによって積層効率を高めることができる。例えばBPMED 108、208、308、408は、CO
2オフガス圧力にほぼ等しい圧力で動作することができる(例えば、約40bar)。一部の実現例では、BPMED 108、208、308、408は、25℃から90℃に及ぶ動作温度で動作することができる。例えばBPMED 108、208、308、408は、40℃から60℃に及ぶ動作温度で動作することができる。
【0168】
本明細書に記述される実現例は、交互に配置されたCEM-BPM配置構成を含むEDユニットに関する。EDユニットのその他の可能性ある構成では、
図1から
図4までのBPMED 108、208、308、408、及び
図5の方法500に記述されるEDユニットのそれぞれは、アニオン交換膜(AEM)を含むことができる。例えばBPMED 108、208、308、408は、電極間に介在する反復BPM-CEM-AEM配置構成を含むことができる。BPMED 108、208、308、408は、個別のアルカリ再生、供給、及び放出区画を含むことができる。別の実施例では、BPMED 108、208、308、408は、電極間に介在する、交互に配置されたBPM-AEM配置構成を含むことができる。BPMEDは、個別の供給及び放出区画を含むことができる。そのような場合、電気化学システム100、200、300、400は、1つ若しくは複数の追加のプロセス流を含むことができ、又は例示されるプロセス流の1つ又は複数を除外することができる。
【0169】
図1から
図4、
図7、
図8、
図10の電気化学システム100、200、300、400、700、800と、
図5の方法500のそれぞれにおいて、
図1から4、
図7、
図8、
図10から
図13までのCO
2流136、236、336、436、736、836、1036、1136、1236、1336は、下流の処理システムに送ることができる。一部の実現例では、CO
2に、単一段階又は多段階気体圧縮器(例えば、ピストン圧縮器、往復圧縮器)を含むことができる下流の圧縮ユニットで、加圧することができる。ある場合には、CO
2は、残留水及び/又はその他の不純物の少なくとも一部分を除去する清掃ユニット(例えば、精製ユニット)に送ることができる。ある場合には、下流の圧縮ユニットは、低圧でCO
2を液化する冷蔵システムであって、液体ポンプでポンプ送出可能にするシステムを含むことができる。ある場合には、下流圧縮ユニットは、最大約40barでCO
2流136、236、336、436、736、836、1036を含むことができる。圧縮されたCO
2をダウンホールに送出し、地質学的形成、地表下リザーバー、カーボンシンク、及び同様のものに隔離することができる。ある特定のダウンホール条件で、CO
2は、炭酸カルシウム等の固体生成物にミネラル化することができる。ある場合には、圧縮されたCO
2は、リザーバーからの炭化水素の生成を高めるため、1つ又は複数の坑井内に注入することによる高い油回収率に向けて使用されてもよい。一部の実現例では、CO
2流136、236、336、436、736、836、1036は、合成ガス発生反応器を含むことができる、下流の燃料合成システムに供給することができる。合成ガス発生反応器は、逆水性ガスシフト反応、水蒸気メタン改質反応、直接メタン改質反応、又はこれらの組合せによって、合成ガス生成物流を生成することができる。下流の燃料合成システムは、合成ガス及び水素を反応させて燃料等の炭化水素生成物を生成することができる、Fischer-Tropsch反応器も含むことができる。一部の実現例では、下流の燃料合成システムは、電解還元ユニット又は気体拡散電極等、Fischer-Tropsch反応器の電気化学的代替例を含むことができる。
【0170】
一部の実現例では、
図1から
図4、
図7、
図8、
図10のCO
2流136、236、336、436、736、836、1036を、下記の反応の1つ又は複数を実施する電解槽セルに送ることができる:
【0171】
反応6: CO2+2e-→CO+O2-
【0172】
反応7: H2O+2e-→H2+O2-
【0173】
反応8: O2-→1/2O2+2e-
【0174】
電解槽セルは、
図1から
図4、
図7、
図8、
図10から
図13までのCO
2流136、236、336、436、736、836、1036、1136、1236、1336、又は水(又は両方)等の供給材料から、合成ガス、純粋な一酸化炭素、又は純粋な水素等の下流生成物を形成することができる。電解槽セルは、ニッケル系触媒、銀系触媒、又は貴金属系触媒を含むことができる。一部の実現例では、電解槽セルは、固体酸化物電解槽セルである。一部の実現例では、電解槽セルは、付加価値のある炭素生成物(例えば、短鎖炭化水素、FT液体、ワックス等)を形成する下流のFischer-Tropsch反応に適した合成ガスの比をもたらすことができる。例えば電解槽セルは、2.5又はそれよりも高い合成ガス比をもたらすことができる。
【0175】
直接空気捕捉技術から誘導される炭素生成物は、これらの生成物がライフサイクルベースで一般に低い又はゼロの正味の排出を有するので、望ましい。
図1から
図4までの電気化学システム100から400のそれぞれは、電気化学セル用の気状CO
2供給材料を必要とすることなくin-situで、合成ガス又は短鎖炭化水素等の付加価値のある炭素生成物を発生させるための手法で修正又は一体化することができる。これは気状CO
2が、セルのpHを低下させ、水素形成を好む条件をもたらすことができるので、望ましい。
図6は、重炭酸溶液から炭素生成物を含む還元生成物をもたらし、
図1から
図4までに記載される実現例による電気化学システム100、200、300、400の1つ又は複数の要素を含む、実施例の電気化学システム600を示す。
【0176】
図6は、CO
2電解還元ユニット610を用いることによって還元生成物を発生させるための、実施例の電気化学システム600を示すブロックフロー図である。電解還元は、電気化学還元と呼ぶこともできる。電気化学システム600は、生成物発生サブシステム606に、炭酸塩分離サブシステム604を介して流体で連結されたCO
2捕捉サブシステム602を含む。
【0177】
CO
2捕捉サブシステム602は、CO
2捕捉サブシステム102、202、302、402の1つ又は複数に実質的に類似してもよく、
図1から
図4までに記載される1つ又は複数のプロセス流又は反応を含むことができる。一部の実現例では、CO
2捕捉サブシステム602は、空気接触器105、205、305、405に類似する1つ又は複数の空気接触器605を含むことができる。空気接触器605は、冷却塔スタイルの気-液接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び液体収着剤を使用して更に大きい気体流から特定の気体成分の少なくとも一部分を除去するように設計されたその他のシステムを含むことができる。空気接触器605は、単一又は多重セル空気接触器、二重セル空気接触器、二重流空気接触器、又はこれらの組合せを含むことができる。空気接触器は、交差流、向流、並流、又はこれらの組合せで動作することができる。CO
2捕捉サブシステム602は、炭酸塩に富む溶液612を炭酸塩分離サブシステム604に提供する。
【0178】
炭酸塩に富む溶液612は、主に炭酸イオン、アルカリ金属炭酸塩(例えば、K2CO3、Na2CO3)、又はこれらの組合せを含む水性混合物とすることができる。炭酸塩に富む捕捉溶液612は、水酸化物イオン、アルカリ金属水酸化物(例えば、KOH、NaOH)、水、及び不純物等、少量でその他の成分を含むこともできる。例えば炭酸塩に富む捕捉溶液612は、0.4Mから6Mの間のK2CO3及び1Mから10Mの間のKOHを含むことができる。別の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液612は、水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。
【0179】
炭酸塩分離サブシステム604は、炭酸塩に富む捕捉溶液612を受容する。炭酸塩分離サブシステム604は、
図1から
図4までに記載される実現例による炭酸塩分離サブシステム162、262、362、462からの、1つ又は複数の要素、プロセス流、及び反応を、含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩分離サブシステム604は、苛性蒸発器又は晶析器(又は両方)、並びに
図1及び
図2に記載される実現例によるこれらのユニットに流入又は流出するプロセス流の1つ又は複数を、含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩分離サブシステム604は、ナノ濾過ユニット又は晶析器(又は両方)と、
図3及び
図4に記載される実現例によるこれらユニットに流入又は流出するプロセス流の1つ又は複数を、含むことができる。炭酸塩分離サブシステム604は、結晶質炭酸塩水和物614をもたらす。
【0180】
結晶質炭酸塩水和物614は、炭酸塩セスキ水和物(M2CO3・1.5H2O)又は無水炭酸塩を含むことができる。例えば結晶質炭酸塩水和物122は、炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)を含むことができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物614は、炭酸ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)を含むことができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物614は、炭酸カリウムナトリウム六水和物(KNaCO3・6H2O)を含むことができる。一部の実現例では、結晶質炭酸塩水和物614は、結晶質炭酸塩の単位炭酸塩当たり、異なる化学量論量の水分子を含むことができる(例えば、M2CO3・nH2Oであり、式中、Mはアルカリ金属であり、nは整数又は小数値である)。
【0181】
生成物発生サブシステム606は、結晶質炭酸塩水和物614を受容する。生成物発生サブシステム606は、CO
2電解還元ユニット610に流体で連結された溶解タンク608を含む。生成物発生サブシステム606は、
図1及び
図3に記載される実現例による再生サブシステム164及び364の、1つ又は複数の要素、プロセス流、又は反応を含むことができる。一部の実現例では、生成物発生サブシステム606は、苛性蒸発器と、
図1及び
図3に記載される実現例によるこのユニットに流入又は流出するプロセス流の1つ又は複数とを含むことができる。
【0182】
溶解タンク608は、炭酸塩分離サブシステム604からの結晶質炭酸塩水和物614、水流620、及びブライン流622を受容することができる。ある場合には、精製された水性溶液は、水流620の代わりに又は加えて使用することができる。精製された水性溶液は、微粒子及び溶解汚染物質を実質的に含まなくてもよい。結晶質炭酸塩水和物614は、水に溶解し、ブライン流622中の重炭酸塩HCO3
-と合わされて、セル供給溶液616を形成する。セル供給溶液616は、炭酸塩及び水等のその他の成分の混合物と共に重炭酸塩HCO3に富む溶液を含むことができる。
【0183】
CO2電解還元ユニット610は、セル供給溶液616及び水流620を受容する。CO2電解還元ユニット610は、1つ又は複数のBPMと1つ又は複数の触媒層とを、2つの電極間に介在させて含む。電極は、ニッケル、銀、又は非金属を含むことができる。一部の実現例では、CO2電解還元ユニット610は、CEM、AEM、又はこれらの組合せも含むこともできる。一部の実現例では、CO2電解還元ユニット610は、後続の還元反応のいずれかを実施するよう、銀、水銀、スズ、銅、又はこれらの組合せを含む触媒を用いる。一部の実現例では、CO2電解還元ユニットは、気状CO2、溶解CO2、又はこれらの組合せから、還元生成物流624をもたらすことができる。一部の実現例では、50mA/cm2から2000mA/cm2の間の電流密度を、CO2電解還元ユニット610に適用することができる。
【0184】
一部の実現例では、セル供給溶液616は、CO
2電解還元ユニット610に流れる前に、
図1から
図4及び
図7から
図9までのBPMED 108、208、308、408、708、808、900等のBPMED、又は
図10のEDユニット1000に流れることができる。そのような実現例では、BPMEDは、BPMED内のCO
2の完全な脱気を回避しながら、CO
2電解還元ユニット610の動作を改善する好ましい範囲にpHをシフトさせることによって、セル供給溶液616を処理又は調製することができる。例えばBPMEDは、セル供給溶液616をCO
2電解還元ユニット610に流す前に、反応1から3までの1つ又は複数を実施することによって、セル供給溶液616のpHを8から10の間にシフトさせることができる。
【0185】
CO2電解還元ユニット610内のBPMは、水分解反応を可能にしてプロトンをカソードに提供する。十分な流束により、プロトンは、セル供給溶液616中で重炭酸塩と反応して(例えば、反応1から3までを介して)、溶解CO2又は気状CO2を局所的に(又は両方)もたらすことができる。更にCO2電解還元ユニット610は、下記の還元反応の1つ又は複数により、局所的にもたらされたCO2(DIC種のプロトン化によって形成された)を電気化学的に還元することができる:
【0186】
反応9: CO2+2H++2e-→CO+H2O
【0187】
反応10: CO2+8H++8e-→CH4+2H2O
【0188】
反応11: 2CO2+12H++12e-→C2H4+4H2O
【0189】
電気化学的還元は、典型的には触媒表面で生じる。ある場合には、CO2電解還元ユニット610は、その他の短鎖炭化水素又はアルコールをもたらすことができる。CO2電解還元ユニット610は、電解還元反応のための炭素供給源としてセル供給溶液616中で重炭酸塩を使用し、したがって気状CO2供給材料の必要性が排除されるので、電解槽よりも有利にすることができる。これによりセルは、水素の生成よりも還元炭素生成物の生成に有利なpHで動作可能になる。還元生成物流624は、CO、H2、合成ガス、ギ酸塩、メタン、エチレン、エタノール、水、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0190】
CO2電解還元ユニット610は、BPMによって提供されたヒドロキシルイオンを、セル供給溶液616中のカチオンと合わせて、炭酸塩が希薄な溶液618を形成するように構成される。例えばセル供給溶液616は、重炭酸カリウムKHCO3に富む溶液を含むことができる。CO2電解還元ユニット610は、カリウムイオンを、BPMにより提供されたヒドロキシルイオンと合わせて、炭酸塩が希薄な溶液618中にKOHを形成することができる。炭酸塩が希薄な溶液618は、再生捕捉溶液としてCO2捕捉サブシステム602に送ることができる。
【0191】
図7は、チラー晶析器704及び直接プロトン化を用いることによって、捕捉溶液を再生し、CO
2回収するための、実施例の電気化学システム700を例示するブロックフロー図である。ある場合には、電気化学システム700は、チラー晶析器を比較的経済的にすることができ、上流の蒸発器の必要性を除外することができるので、
図1から
図4の電気化学システム100、200、300、400よりも有利にすることができる。電気化学システム700は、炭酸塩分離サブシステム762及び再生サブシステム764に流体で連結されたCO
2捕捉サブシステム702を含む。炭酸塩分離サブシステム762は、固形分分離器750に流体で連結されたチラー晶析器704を含む。固形分分離器750の例には、遠心分離、圧力又は真空フィルター、精製器、スクレーパー、サイクロン、塩バスケット、及び同様のものを含めることができる。チラー晶析器704は、CO
2捕捉サブシステム702から、炭酸塩に富む捕捉溶液720を受容する。一部の実現例では、CO
2捕捉サブシステム702は、1つ又は複数の空気接触器705を含むことができる。空気接触器705は、冷却塔スタイルの気-液接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び液体収着剤を使用して更に大きい気体流から特定の気体成分の少なくとも一部分を除去するように設計されたその他のシステムを含むことができる。空気接触器705は、単一又は多重セル空気接触器、二重セル空気接触器、二重流空気接触器、又はこれらの組合せを含むことができる。空気接触器は、交差流、向流、並流、又はこれらの組合せで動作することができる。
【0192】
炭酸塩に富む捕捉溶液720は、主に炭酸イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ金属炭酸塩(例えば、K2CO3、Na2CO3)、又はこれらの組合せを含む、水性混合物とすることができる。炭酸塩に富む捕捉溶液720は、水酸化物イオン、アルカリ金属水酸化物(例えば、KOH、NaOH)、水、及び不純物等のその他の成分を少量で含むこともできる。例えば炭酸塩に富む捕捉溶液720は、0.1Mから6Mの間のK2CO3及び1Mから10Mの間のKOHを含むことができる。別の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液720は、水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。
【0193】
チラー晶析器704は、水酸化物濃度を増大させ、それによって炭酸塩に富む捕捉溶液720中の炭酸塩の溶解度が低下する。ある場合には、晶析器704は、炭酸塩に富む捕捉溶液720の一部分を濃縮して、過飽和に到達させる。これは結晶質炭酸塩水和物722、母液742、及び水流724を形成する。チラー晶析器704は、下流の処理のために(例えば、濾過システム、水処理システム、又は廃棄システムで)又はシステム700の内部若しくは越えた別の適用例で使用するために、水流724を放出する。結晶質炭酸塩水和物722は、母液742から少なくとも部分的に分離されて、EDユニット用の供給溶液に使用することができる純粋な又はほぼ純粋な炭酸塩を形成する。母液742は、結晶質炭酸塩水和物722が分離された後、水及び水酸化物等の炭酸塩に富む捕捉溶液720の残りの成分を含むことができる。結晶質炭酸塩水和物722は、炭酸塩セスキ水和物(M2CO3・1.5H2O)又は無水炭酸塩を含むことができる。例えば結晶質炭酸塩水和物722は、炭酸カリウムセスキ水和物(K2CO3・1.5H2O)を含むことができる。炭酸カリウムセスキ水和物結晶は、KOH-K2CO3混合物を含むことができる母液742から少なくとも部分的に単離することができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物722は炭酸ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)を含むことができ、母液742は、NaOH-Na2CO3混合物を含むことができる。別の実施例では、結晶質炭酸塩水和物722は、炭酸カリウムナトリウム六水和物(KNaCO3・6H2O)を含むことができる。一部の実現例では、結晶質炭酸塩水和物722は、結晶質炭酸塩中、単位炭酸塩当たり、異なる化学量論量の水分子を含むことができる(例えば、M2CO3・nH2Oであり、式中、Mはアルカリ金属であり、nは整数又は小数値である)。母液742から分離後、結晶質炭酸塩水和物722を、固形分分離器750又は再生サブシステム764に送ることができ、母液742は、CO2捕捉サブシステム702に戻される。固形分分離器750は更に、結晶質炭酸塩水和物722を残りの液体から単離し、溶解タンク706に流れることができる高固形分流752と、チラー晶析器704に戻すことができる低固形分流760とを形成することができる。高固形分流752は、主に結晶質炭酸塩水和物722を含む。低固形分流760は、高固形分流752よりも高い液体対固体比を有する。高固形分流752は、低固形分流760と固形分分離器750の入り口流との両方よりも低い液体対固体比を有する。
【0194】
実施形態では、電気化学システム700のチラー晶析器704は、機械式冷蔵設備を含む。そのような機械式冷蔵設備は、1つ又は複数のポンプ、冷媒を循環させる1つ又は複数の熱交換器、配管、及び/又はその他の構成部品を含むことができる。代替の実施形態では、チラー晶析器704は水酸化物濃度を増大させ、それにより他の冷却手段を使用して炭酸塩に富む捕捉溶液720中の炭酸塩の溶解度が低下する。例えばチラー晶析器704は、結晶質炭酸塩水和物722を形成するための周囲又は環境冷却法を使用して、過飽和に到達するように、炭酸塩に富む捕捉溶液720の一部分を濃縮する。そのような構成では、チラー晶析器704は、炭酸塩に富む捕捉溶液720を飽和させて、機械式冷蔵手段を使用せずに又は機械式冷蔵手段にそれほど頼らずに結晶質炭酸塩水和物722を形成してもよく、したがって関連ある冷蔵エネルギー要件が低減される。
【0195】
再生サブシステム764は、BPMED 708及びフラッシュタンク710に流体で連結された溶解タンク706を含む。BPMED 708は、BPM及びCEMを用いるEDユニットの例であるが、ある場合には、再生サブシステム764は異なるEDユニットを含むことができる(例えば、1つ又は複数のCEM、AEM、BPM、又はこれらの組合せを含むEDユニット)。まとめると、溶解タンク706、BPMED 708、及びフラッシュタンク710に流入及び流出するプロセス流は、DICがプロトン化されCO2が放出されるブラインループを形成する。一部の実現例では、溶解タンク706は、水流728及び結晶質炭酸塩水和物722を晶析器104から受容することができる。ある場合には、精製された水性溶液を、水流728の代わりに又は加えて使用することができる。精製された水性溶液は、微粒子及び溶解汚染物質を実質的に含まなくてもよい。一部の実現例では、溶解タンク706は、固形分分離器750からの結晶質炭酸塩水和物722を含む高固形分流752を受容することができる。高固形分流752中の結晶質炭酸塩水和物722は水に溶解し、フラッシュタンク710から受容されたブライン流735中の重炭酸塩HCO3
-と合わされて、ED供給溶液726を形成する。ED供給溶液726は、重炭酸塩HCO3
-に富む溶液を、炭酸塩及び水等のその他の成分の混合物と共に含むことができる。ある場合には、ED供給溶液726は、望ましくない2価及び多価カチオン(例えば、Ca2+、Mg2+、鉄、亜鉛等)の少なくとも一部分を低減又は除去するために、イオン交換器754を通して流れることができる。捕らえられたイオンは、新しいカラムを使用し、捕らえられたイオンを酸又は塩基で置き換えることにより使用されたカラムを再生することによって、イオン交換器754から除去することができる。これらのカラムは、いくつかのカラムが動作したままでありそれと共にその他のカラムは再生されるように、順調に動作させるために構成することができる。使用されたカラムの再生は、廃棄塩を含むイオン交換再生廃棄物流770を生成する可能性がある。
【0196】
BPMED 708は、2つの電極間に位置決めされたセルの積層体を含むことができる。ある場合には、BPMED 708の電極は、断続的電源(例えば、ソーラー、風、地熱)又は低炭素強度電源(例えば、水力、核)に連結することができる。各セルは、交互になされたBPM及びCEMを含む構成で、配置構成することができる。電極は、塩分解及び酸塩基回収を可能にする電位を印加するように動作可能である。BPMED 708は、BPM及びCEMにより画定された多数の供給-放出区画とアルカリ再生区画とを含むことができる。
【0197】
BPMED 708は、ED供給溶液726及び水流734を1つ又は複数の供給-放出区画に受容するように構成される。BPMED 708のBPMは、水をヒドロキシルイオンとプロトンとに分解する水分解反応を可能にする。BPMED 708は、塩をそのカチオンとアニオンとに分解する塩分解反応を可能にする。CEMは、カチオンをアルカリ再生区画内に移送するように動作可能である。アルカリ再生区画では、カチオンをヒドロキシルイオンと合わせて、0.5Mから12Mの間の水酸化物濃度を有する第1のED生成流732を形成する。例えば、ED供給溶液726は、重炭酸カリウムKHCO3に富む溶液を含むことができる。BPMED708のCEMは、カリウムイオンK+を選択し、それらをアルカリ再生区画内に輸送し、そこでK+をOH-と合わせて第1のED生成物流732中でKOHを形成する。供給-放出区画では、重炭酸塩HCO3
-イオンをBPMED 708で直接プロトン化して、炭酸H2CO3を含む第2のED生成物流730を形成する。ある場合には、CEMは、カリウムイオンK+、ナトリウムイオンNa+、又はこれらの組合せを移送するように動作可能である。
【0198】
一部の実現例では、pHの低減により、炭酸を解離させ、CO2をBPMED 708のセル内に放出させることができる。一部の実現例では、BPMED 708は、各BPMとCEMとの間で1mm未満の膜間距離を含むことができる。例えばBPMは、CEMから0.7mmに位置決めすることができる。一部の実現例では、50mA/cm2から2000mA/cm2の間の電流密度をBPMED 708に適用することができる。
【0199】
第2のED生成物流730は、炭酸H2CO3及び重炭酸塩HCO3
-との水性混合物を含むことができる。例えば第2のED生成物流730は、炭酸H2CO3及び重炭酸カリウムKHCO3の水性混合物を含むことができる。例えば第2のED生成物流730は、炭酸H2CO3、重炭酸カリウムKHCO3、及び重炭酸ナトリウムNaHCO3の水性混合物を含むことができる。炭酸H2CO3は、CO2及び水に解離する。第2のED生成物流730をフラッシュタンク710に送ることができ、そこでCO2流736がフラッシュタンク710から部分的に又は完全に放出され、後続の実現例で記述される1つ又は複数の下流の処理ユニットに送られる(例えば、圧縮ユニット、電解還元サブシステム、炭素生成物製造システム、合成ガス発生反応器)。重炭酸塩HCO3
-の水性混合物を含むブライン流735を溶解タンク706に送り、再生サブシステム764のブラインループを完成することができる。
【0200】
第1のED生成物流732は、支配的な化学種としての水酸化物との水性混合物を含むことができる。例えば第1のED生成物流732は、水酸化カリウムKOHの水性溶液を含むことができる。第1のED生成物流732は、CO2捕捉溶液744として、BPMED 108からCO2捕捉サブシステム702に戻すことができる。一部の実現例では、CO2捕捉溶液744は、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を含むことができる。実現例では、第1のED生成物流732の一部分を、EDリサイクル流765としてBPMED 708に戻すことができ、処理された水766をEDリサイクル流765に添加することができる。例えば処理水766は、脱ミネラル化され、上流され、濾過され、精製され、又は処理された水を含むことができるEDリサイクル流765及び処理水766は、BPMED 708の供給-放出区画及びアルカリ再生区画で溶液の組成を維持することができる。
【0201】
一部の実現例では、再生サブシステム764は、補助苛性蒸発器714を必要に応じて含むことができる。補助苛性蒸発器714は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。補助苛性蒸発器714は、CO2捕捉溶液744を形成するように水を除去し、水流740を放出することによって、第1のED生成物流732を濃縮する。そのような実現例では、CO2捕捉溶液744は、炭酸塩が希薄な混合物を含み、第1のED生成物流732よりも高い水酸化物濃度を有する。まとめると、補助苛性蒸発器714、CO2捕捉サブシステム702、炭酸塩分離サブシステム762、溶解タンク706、及びBPMED 708に流入及び流出するプロセス流は、捕捉溶液が再生される苛性ループを形成する。
【0202】
電気化学システム700は、チラー晶析器704及び直接プロトン化を用いるが、一部の実現例では、フラッシュタンク710が電気化学システム700から除外される、
図2及び
図4の電気化学システム200、400に記載されるチラー晶析器704及び間接的プロトン化を用いることを有利とすることができる。ある場合には、間接的プロトン化は、DIC種がEDユニットの外側でプロトン化され、EDユニットのセル内でのCO
2脱気が回避されるので、有利とすることができる。例えば、結晶質炭酸塩水和物722を含む高固形分流752は、溶解タンク706に流れることができる。まとめると、溶解タンク706及びBPMED 708に流入及び流出するプロセス流は、プロトンシャトル種(例えば、硫酸塩SO
4
2-、重硫酸塩HSO
4
-)がEDユニットでプロトン化され、プロトンがプロトンシャトル種を介して溶解タンク706にシャトル移送される、ブラインループを形成する。一部の実現例では、プロトンシャトル種は、Cl
-、I
-、Br
-、HPO
4
-2、及びH
2PO
4
-1、酢酸塩、及びクエン酸塩を含むことができる。溶解タンク706では、プロトンシャトル種は、DIC種をプロトン化して炭酸H
2CO
3を形成する。したがってブラインループは、BPMED 708でDIC種を間接的にプロトン化可能にする。
【0203】
フラッシュタンク710が排除される間接的プロトン化構成では、溶解タンク706は、水流728、チラー晶析器704からの結晶質炭酸塩水和物722を含む高固形分流752、及びBPMED 708からのブライン流735を受容することができる。ある場合には、精製された水性溶液を、水流728の代わりに又は加えて使用することができる。精製された水性溶液は、微粒子及び溶解汚染物質を実質的に含まなくてもよい。結晶質炭酸塩水和物722は水に溶解し、BPMED 708に受容されたブライン流735中のプロトンシャトル種と反応する。ブライン流735は、重硫酸塩に富む溶液を含むことができる。例えばブライン流735は、プロトンシャトル種として重硫酸カリウムKHSO4を含むことができる。例えば硫酸イオンSO4
2-は、プロトン化し、カリウムイオンK+と合わせて、ブライン流735中に重硫酸カリウムKHSO4を形成することができる。重硫酸塩に富む溶液は、溶解タンク706で炭酸塩と反応して、重硫酸塩が希薄な溶液及び炭酸をもたらすことができる。例えば、重硫酸カリウムKHSO4は炭酸カリウムK2CO3と反応して、硫酸カリウムK2SO4及び炭酸H2CO3をもたらすことができる。その結果、pHは低減することになる。炭酸は、水と気状CO2とに解離させるのに十分な平衡CO2分圧(例えば、1bar未満)を有することになる。溶解タンク706は、気状CO2流736を部分的に又は完全に放出することができる。溶解タンク706での反応は、ED供給溶液726も形成する。ED供給溶液726は、重硫酸塩が希薄な溶液を含むことができる。例えばED供給溶液726は、重硫酸カリウム及び水等のその他の成分の混合物と共に硫酸カリウムを含むことができる。溶解タンク706は、ED供給溶液726をBPMED 708に流すように構成される。
【0204】
一部の実現例では、ブライン流735は、約1Mから約2.5Mの間の硫酸塩及び重硫酸塩を含むことができる。例えばブライン流735は、約1Mの硫酸カリウムK2SO4濃度及び重硫酸カリウムを含むことができる。別の実施例では、ブライン流735は、約2.5Mの硫酸ナトリウムNa2SO4及び重硫酸ナトリウムを含むことができる。ある場合には、ブライン流735及びED供給溶液726は、BPMED 708の動作温度及びBPMED 708での硫酸塩から重硫酸塩への変換に応じて、その他の硫酸塩又は重硫酸塩濃度(又は両方)を含むことができる。ある場合には、ブライン流735は、1MのKNaSO4濃度を含むことができる。
【0205】
図8は、捕捉溶液を再生し、ナノ濾過ユニット850及び逆浸透ユニット868を用いてCO
2を回収するための実施例の電気化学システム800を例示するブロックフロー図である。ある場合には、電気化学システム800は、ナノ濾過ユニット850及び逆浸透ユニット868がプロセスでの固形分の必要性を排除し、BPMED 808で水酸化物を形成するのに必要な水の量を低減させることができるので、有利とすることができる。BPMED 808は、BPM及びCEMを用いるEDユニットの例であるが、ある場合には、再生サブシステム864は、異なるEDユニットを含むことができる(例えば、1つ又は複数のCEM、AEM、BPM、又はこれらの組合せを含むEDユニット)。ナノ濾過ユニット850は、最大約2Mの炭酸塩濃度を生成することができる。逆浸透ユニット868は、高いpH(例えば、10よりも大きいpH)での動作に耐えることができ、過剰な水を容易に除去又は一体化して水収支を維持できるようにする。電気化学システム800は、炭酸塩分離サブシステム862及び再生サブシステム864に流体で連結されたCO
2捕捉サブシステム802を含む。炭酸塩分離サブシステム862は、逆浸透ユニット868及びBPMED 808に流体で連結されたナノ濾過ユニット850を含む。ナノ濾過ユニット850は、CO
2捕捉サブシステム802からの炭酸塩に富む捕捉溶液820を受容することができる。一部の実現例では、CO
2捕捉サブシステム802は、1つ又は複数の空気接触器805を含むことができる。空気接触器305は、冷却塔スタイルの気-液接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び液体収着剤を使用して更に大きい気体流からの特定の気体成分の少なくとも一部分を除去するように設計されたその他のシステムを含むことができる。空気接触器805は、単一又は多重セル空気接触器、二重セル空気接触器、二重流空気接触器、又はこれらの組合せを含むことができる。空気接触器は、交差流、向流、並流、又はこれらの組合せで動作することができる。
【0206】
炭酸塩に富む捕捉溶液820は、主に炭酸イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ金属炭酸塩(例えば、K2CO3、Na2CO3)、又はこれらの組合せを含む水性混合物とすることができる。炭酸塩に富む捕捉溶液820は、水酸化物イオン、アルカリ金属水酸化物(例えば、KOH、NaOH)、水、及び不純物等、その他の成分を少量で含むこともできる。例えば炭酸塩に富む捕捉溶液820は、0.1Mから6Mの間のK2CO3及び1Mから10Mの間のKOHを含むことができる。別の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液820は、水性Na2CO3-NaOH混合物を含むことができる。一部の実現例では、炭酸塩に富む捕捉溶液は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むことができる。
【0207】
ナノ濾過ユニット850は、選択的排除を介して炭酸塩を濃縮することができる。ナノ濾過ユニット850は、炭酸イオン等の大きい2価のイオンに対して不透過性の又はそのようなイオンを選択する、1つ又は複数の濾過膜を含むことができる。ナノ濾過膜は、固有の表面電荷を有することができ、これはイオン混合物を分離するのに特に適している。化学種の排除は、サイズ、イオン電荷、及び膜親和性に依存し得る。ナノ濾過ユニット850は、広いpH耐性を有し、0から14に及ぶpHで動作するのに十分耐久性のある、膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット850は、3から14のpH範囲で動作可能な膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過850は、約4%から約20%の間の水酸化物濃度を取り扱うのに安定した膜を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット850は、ナノ濾過(NF)保持液852を得るため、2価のイオン(例えば、炭酸イオン)の85%から100%を排除することができる。ある場合には、ナノ濾過ユニット850は、2価のイオンの50%から100%の間を排除することができる。ある場合には、ナノ濾過ユニット850は、ドロー溶液及び圧力勾配を用いて、炭酸塩に富むナノ濾過保持液852をもたらす、正浸透スタイルの濾過ユニットを含むことができる。ナノ濾過ユニット850は、スペーサー及び支持体と一緒にクランプ留めされたいくつかのナノ濾過膜(例えば、平膜シート)を保持するプレート及びフレームモジュールを含むことができる。
【0208】
ナノ濾過ユニット850は、炭酸塩に富む捕捉溶液820を供給材料として受容することができる。ナノ濾過ユニット850の濾過膜は、炭酸イオンを選択し排除することができ、それによって、主に炭酸塩に富む混合物を含むナノ濾過保持液852と、主に水酸化物に富む混合物を含むナノ濾過透過液854とを生成する。例えばナノ濾過ユニット850は、K2CO3に富む溶液を供給材料として受容することができ、次いで濃縮K2CO3をナノ濾過保持液852として及びKOHをナノ濾過透過液854として生成することができる。ナノ濾過保持液852は、炭酸塩に富む捕捉溶液820よりも高い炭酸塩濃度を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過保持液852は、約0.5Mから6Mの間のK2CO3を含むことができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット850は、Na2CO3に富む捕捉溶液を供給材料として受容することができ、濃縮Na2CO3をナノ濾過保持液852として、NaOHをナノ濾過透過液854として生成することができる。一部の実現例では、ナノ濾過ユニット850は、K2CO3及びNa2CO3の混合物を含むナノ濾過保持液852を生成することができる。
【0209】
一部の実現例では、ナノ濾過保持液852は、BPMED 808にED供給溶液826として送られる。一部の実現例では、ナノ濾過保持液852をイオン交換器860に流して、ED供給溶液826中の望ましくない2価及び多価カチオン(例えば、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、鉄、亜鉛等)の少なくとも一部分を低減又は除去することができる。捕らえられたイオンは、新しいカラムを使用し、捕らえられたイオンを酸又は塩基で置き換えることにより使用済みカラムを再生することによって、イオン交換器860から除去することができる。使用済みカラムの再生は、廃棄塩を含むイオン交換再生廃棄物流870を生成し得る。
【0210】
再生サブシステム864は、フラッシュタンク810及び逆浸透(RO)ユニット868に流体で連結されたBPMED 308を含む。まとめると、BPMED 808、フラッシュタンク810、及び逆浸透ユニット868に流入及び流出するプロセス流は、DICがプロトン化されCO2が放出されるブラインループを形成する。ED供給溶液826は、重炭酸塩HCO3
-に富む溶液を、炭酸塩及び水等のその他の成分の混合物と共に含むことができる。BPMED 808の各セルは、交互になされたBPM及びCEMを含む構成に、配置構成することができる。電極は、塩分解及び酸塩基回収を可能にする電位を印加するように動作可能である。BPMED 808は、BPM及びCEMにより画定された多数の供給-放出区画及びアルカリ再生区画を含むことができる。
【0211】
BPMED 808は、ED供給溶液826及び水流834を1つ又は複数の供給-放出区画に受容するように構成される。BPMED 808のBPMは、水をヒドロキシルイオンとプロトンとに分解する水分解反応を可能にする。BPMED 808は、塩をそのカチオン及びアニオンに分解する塩分解反応を可能にする。CEMは、カチオンをアルカリ再生区画内に移送するように動作可能である。アルカリ再生区画では、カチオンをヒドロキシルイオンと合わせて、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を有する第1のED生成物流832を形成する。例えばED供給溶液826は、重炭酸カリウムKHCO3に富む溶液を含むことができる。BPMED 308のCEMは、カリウムイオンK+を選択し、それらをアルカリ再生区画内に輸送し、そこでK+をOH-と合わせてKOHを第1のED生成物流832中に形成する。供給-放出区画では、重炭酸塩HCO3
-イオンをBPMED 808で直接プロトン化して、炭酸H2CO3を含む第2のED生成物流830を形成する。ある場合には、CEMは、カリウムイオンK+、ナトリウムイオンNa+、又はこれらの組合せを移送するように動作可能である。
【0212】
一部の実現例では、pHの低減により炭酸を解離させ、CO2をBPMED 808のセル内に放出することができる。一部の実現例では、BPMED 808は、各BPMとCEMとの間に1mm未満の膜間距離を含むことができる。例えばBPMは、CEMから0.7mmに位置決めすることができる。一部の実現例では、50mA/cm2から2000mA/cm2の間の電流密度をBPMED 808に適用することができる。
【0213】
BPMED 808により発生させた第2のED生成物流830は、炭酸H2CO3及び重炭酸塩HCO3
-との水性混合物を含むことができる。例えば、第2のED生成物流830は、炭酸H2CO3及び重炭酸カリウムKHCO3の水性混合物を含むことができる。炭酸H2CO3はCO2及び水に解離する。第2のED生成物流830は、フラッシュタンク810に送ることができ、それに対して気状CO2流836は、フラッシュタンク810から部分的に又は完全に放出され、後続の実現例で記述される1つ又は複数の下流の処理ユニット(例えば、圧縮ユニット、電解還元サブシステム、炭素生成物製造システム、合成ガス発生反応器)に送られる。重炭酸塩HCO3
-の水性混合物を含むブライン流835は、逆浸透(RO)ユニット868に送ることができる。
【0214】
逆浸透ユニット868は、水収支を維持するようブラインループから水を除去する主要機能を有する。逆浸透ユニット868の膜は、炭酸イオンを選択及び排除することができ、それによって、重炭酸塩に富む溶液を含むRO保持液863及び主に水を含むRO透過液866が生成される。RO保持液863は、ブライン流835よりも高い重炭酸塩濃度を含むことができる。一部の実現例では、RO保持液863は、2.4M又はそれよりも低い重炭酸カリウムKHCO3濃度を含むことができる。一部の実現例では、RO保持液863は、2.4M又はそれよりも低い重炭酸ナトリウムNaHCO3濃度を含むことができる。一部の実現例では、RO保持液863は、重炭酸カリウムKHCO3と重炭酸ナトリウムNaHCO3との混合物を2.4M又はそれよりも低い濃度で含むことができる。次いでRO保持液863は、NF保持液852と合わせて、ED供給流826を形成することができ、それによって再生サブシステム864のブラインループが完成する。RO透過液866中の水は、苛性ループと一体化させてBPMED 808で水酸化物を生成することができる。
【0215】
第1のED生成物流832は、支配的な化学種としての水酸化物との水性混合物を含むことができる。例えば、第1のED生成物流832は、水酸化カリウムKOH、NaOH、又はこれらの組合せの水性溶液を含むことができる。第1のED生成物流832は、CO2捕捉溶液844として、BPMED 808からCO2捕捉サブシステム802に戻すことができる。一部の実現例では、CO2捕捉溶液844は、0.5Mから10Mの間の水酸化物濃度を含むことができる。一部の実現例では、再生サブシステム864は、補助苛性蒸発器814を必要に応じて含んで、水840をCO2捕捉溶液844から除去することができる。補助苛性蒸発器314は、機械式蒸気再圧縮(MVR)蒸発器、多重効果蒸発器、又はこれらの組合せを含むことができる。そのような実現例では、CO2捕捉溶液844は、炭酸塩が希薄な混合物を含み、第1のED生成物流832よりも高い水酸化物濃度を有する。まとめると、補助苛性蒸発器814、CO2捕捉サブシステム802、炭酸塩分離サブシステム862、及びBPMED 808に流入及び流出するプロセス流は、捕捉溶液が再生される苛性ループを形成する。
【0216】
一部の実現例では、RO透過液866中の水を第1のED生成物流832と合わせることができる。合わせた流れの一部分を、EDリサイクル流865としてBPMED 808に戻すことができ、合わせた流れのその他の部分は、CO2捕捉溶液844としてCO2捕捉サブシステム802に戻すことができる。一部の実現例では、処理水834を、EDリサイクル流865に添加することができる。例えば処理水834は、脱ミネラル化され、蒸留され、濾過され、精製され、又は処理された水を含むことができる。
【0217】
電気化学システム800は、逆浸透ユニット868及び直接プロトン化を用いるが、一部の実現例では、
図2及び
図4の電気化学システム200、400に記載される逆浸透ユニット及び間接的プロトン化を用いることが有利とすることができる。ある場合には、間接的プロトン化は、DIC種がEDユニットの外側でプロトン化され、EDユニットのセル内でのCO
2脱気を回避するので、有利とすることができる。例えば炭酸塩水和物は、オフガスタンクに流れることができる。まとめると、オフガスタンク及びEDユニットに流入及び流出するプロセス流は、プロトンシャトル種(例えば、硫酸塩SO
4
2-、重硫酸塩HSO
4
-)がEDユニット内でプロトン化され、プロトンがプロトンシャトル種を介してオフガスタンクにシャトル移送されるブラインループを形成する。一部の実現例では、プロトンシャトル種は、Cl
-、I
-、Br
-、HPO
4
-2、及びH
2PO
4
-1、酢酸塩、及びクエン酸塩を含むことができる。オフガスタンクでは、プロトンシャトル種がDIC種をプトロン化して、炭酸H
2CO
3を形成する。したがってブラインループでは、EDユニットでDIC種を間接的にプロトン化させる。
【0218】
間接的プロトン化構成では、逆浸透ユニットが、ブライン流をEDユニットから受容し、主に重硫酸塩を含むRO保持液と主に水を含むRO透過液とを生成することができる。オフガスタンクは、ナノ濾過ユニットから炭酸塩に富むNF保持液、及びROユニットから重硫酸塩に富むRO保持液を受容することができる。オフガスタンクでは、炭酸塩がプロトンシャトル種と反応する。RO保持液は、重硫酸塩に富む溶液を含むことができる。例えばRO保持液は、プロトンシャトル種として重硫酸カリウムKHSO4を含むことができる。例えば硫酸イオンSO4
2-をプロトン化し、カリウムイオンK+と合わせて、重硫酸カリウムKHSO4をEDユニット内で形成することができる。次いで重硫酸カリウムKHSO4を選択することができ、それによって重硫酸塩に富む溶液を含むRO保持液が生成される。重硫酸塩に富む溶液は、オフガスタンク内で炭酸塩と反応して、重硫酸塩が希薄な溶液及び炭酸をもたらすことができる。例えば、重硫酸カリウムKHSO4は炭酸カリウムK2CO3と反応して、硫酸カリウムK2SO4及び炭酸H2CO3をもたらすことができる。その結果、pHは低減することになる。炭酸は、水と気状CO2とに解離させるように、十分な平衡CO2分圧(例えば、1bar未満)を有することになる。オフガスタンクは、部分的に又は完全に気状CO2流を放出することができる。オフガスタンクでの反応は、ED供給流も形成する。ED供給溶液は、重硫酸塩が希薄な溶液を含むことができる。例えばED供給溶液は、重硫酸カリウム及び水等のその他の成分の混合物と共に硫酸カリウムを含むことができる。オフガスタンクは、ED供給溶液をEDユニットに流すように構成される。
【0219】
図9は、BPM 908と交互になされたCEM 906を含む膜積層体を有する実施例のBPMED 900の概略図である。BPMED 900は、
図9に示されるよりも多くの又はより少ないCEM 906及びBPM 908を含んでいてもよい。膜積層体は、カソード902とアノード904との間に位置決めされる。膜は、交互になされた供給-放出(プロトン発生)区画910と、アルカリ再生(水酸化物発生)区画912とを画定する。BPMED 900は、再生サブシステムの要素として電気化学システムに含めることができる。例えば各再生サブシステムのそれぞれにおけるBPMED 108、208、308、408、708、808は、BPMED 900と同じ要素の少なくともいくつかを含むことができる。
【0220】
アルカリ水酸化物MOHを含む第1の生成物流930等の捕捉溶液を再生するため、BPM 908は、水の解離を介して、ヒドロキシルイオンOH-をアルカリ再生区画912に提供し、プロトンH+を供給-放出区画910に提供する。発生したプロトンは、アルカリ再生区画912へとCEM 906を横断して選択的に輸送される、アルカリ金属イオン(例えば、K+、Na+等)等のカチオンM+に置き換わる。例えば、第1の生成物流930として捕捉溶液中で水酸化カリウム(KOH)を再生するため、BPM 908はヒドロキシルイオンOH-を提供し、CEM 906はカリウムイオンK+をアルカリ再生区画912内部に通す。したがってアルカリ金属イオン及びヒドロキシルイオンは、アルカリ水酸化物と共に再生CO2捕捉溶液を含む第1の生成物流930を形成する。第1の生成物流930は、BPMED 900から、下流のCO2捕捉サブシステム又は苛性蒸発器に流れることができる。
【0221】
供給-放出区画910は、重炭酸塩HCO3
-(直接プロトン化用)等の溶解無機炭素種、又は硫酸塩SO4
2-(間接的プロトン化用)等のプロトンシャトル種を含むことができるED供給溶液926を受容する。BPM 908は、プロトンを供給-放出区画910に提供し、ED供給溶液926中の化学種はプロトン化して第2の生成物流932を形成する。第2の生成物流932は、炭酸H2CO3(直接プロトン化用)又は重硫酸塩HSO4
-(間接的プロトン化用)を含むことができる。第2の生成物流932は、BPMED 900から下流のフラッシュタンク又は溶解タンクに流れることができる。
【0222】
BPMED 900は、低い電圧降下(例えば、2V未満のBPM電圧降下及び1V未満のCEM電圧降下)及び高い電流密度(例えば、50mA/cm
2よりも上のBPM電流密度)等、所望の特徴を有するように選択又は設計することができる。一部の実現例では、BPMED 900は、AEMと交互になされたBPMを含む膜積層体からなることができる。BPM 908は、3D接合部、平面接合部、又はこれらの組合せを含むことができる。3D接合部を有するBPM 908は、触媒表面積及び機械的強度を改善するように絡み合うナノ繊維を有する。3D接合部は、エレクトロスピニングによって製造することができる。平面接合部を有するBPM 908は、カチオン交換層とアニオン交換層との間に挟まれた触媒層を有する。BPM 908では、カチオン交換層はカソード902側に位置決めされ、アニオン交換層はアノード904側に位置決めされる。水の解離は、介在する触媒層で生じ、プロトンはカチオン交換層を通して輸送され、一方、ヒドロキシルイオンはアニオン交換層を通して輸送される。
図9に示される膜積層体は例示を目的とし、様々にすることができる。
【0223】
図10は、気体拡散電極(GDE)1004を含む実施例のEDユニット1000の概略図である。この構成は、高い電流密度及び最大35%w/wの水酸化物濃度を可能にすることができるので、有利とすることができる。これは資本コストを低下させ、水の使用を低減させ、水処理コストを低減させることができる。膜積層体は、カソード1002とGDF 1004との間に位置決めされたCEM 1006を含む。
図10のEDユニット1000はアノードとしてGDE 1004を用いるが、一部の実現例では、EDユニット1000はカソードとしてGDE 1004を用いることができる。GDE 1004は、触媒層1012を支持する気体拡散層1010を含む。気体拡散層1010は多孔質であり、触媒層1012に向かう気体の移動を可能にする。一部の実現例では、触媒層1012は、白金又は非貴金属触媒(例えば、ニッケル、ニッケル鉄、コバルト、金属合金)を含むことができる。気体拡散層1010は疎水性であるので、その細孔は、水性電解質溶液によってそれほど遮断されず、したがって触媒層1012への気体輸送が維持される。ある場合には、GDE 1004を有するEDユニット1000は、0から14に及ぶpHで動作することができる。カソード1002及びCEM 1006は、アルカリ再生(水酸化物発生)区画を画定し、捕捉溶液を再生する。CEM 1006及びGDE 1004は、供給-放出(プロトン発生)区画を画定し、CO
2を形成する。EDユニット1000は、DIC種の直接プロトン化又は間接的プロトン化に用いることができる。EDユニット1000は、電気化学システム100から400、700、800のいずれか等、電気化学システムの再生サブシステムの要素として含めることができる。
【0224】
直接プロトン化は、CO2捕捉溶液を再生し、気状CO2を回収するのに使用することができる。アルカリ水酸化物MOHを含む第1のED生成物流1032等のCO2捕捉溶液を再生するため、EDユニット1000は、気状水素供給流1024及びED供給溶液1026であって炭酸塩-重炭酸塩混合物を含むものを供給-放出区画内に受容する。EDユニット1000は、水をアルカリ再生区画内に受容する。電位はEDユニット1000に印加される。水素H2酸化反応はGDE 1004で生じる。発生したプロトンは、CEM 1006を横断してアルカリ再生区画に選択的に輸送されるアルカリ金属イオン(例えば、K+、Na+等)等のカチオンM+に置き換わる。
【0225】
カソード1002で、水解離反応が生じてヒドロキシルイオンOH-及び水素H2を発生させる。アルカリ再生区画では、アルカリ金属イオンM+及びヒドロキシルイオンOH-が、アルカリ水酸化物MOH及び水素H2と共に再生捕捉溶液を含む第1のED生成物流1032を形成する。例えばカリウムイオンK+は、CEM 1006を横断して輸送されて、水酸化カリウムKOHを有する再生捕捉溶液を形成することができる。第1のED生成物流1032は、EDユニット1000から分離ユニットに流れることができ、そこで水素が再生CO2捕捉溶液から分離される。次いでCO2捕捉溶液1044は、CO2捕捉サブシステムの空気接触器に流れることができる。一部の実現例では、分離された水素は、水素供給流1024としてEDユニット1000のGDE 1004にリサイクルすることができる。
【0226】
供給-放出区画では、アルカリ金属イオンに置き換わったプロトンが炭酸塩-重炭酸塩混合物を酸性化して、気状二酸化炭素1036と、水、重炭酸塩MHCO3
-、炭酸H2CO3、又はこれらの組合せを含む第2のED生成物流1034とを形成する。一部の実現例では、気状二酸化炭素1036は、GDE 1004を通してオフガスすることができる。ある場合には、供給-放出区画でのプロトン化は、完了まで反応しなくてもよく、重炭酸塩MHCO3
-は、GDE 1004を通してEDユニット1000を離れることができる。ある場合には、EDユニット1000は、気状二酸化炭素用の下流のフラッシュタンク又はオフガスタンクに流体で連結されて、脱気することができる。
【0227】
GDE 1004を含むEDユニット1000は、低い電圧降下(例えば、1.6V未満のCEM電圧降下)及び高い電流密度(例えば、50mA/cm2から1000mA/cm2の間の電流密度)を有するように選択又は設計することができる。
【0228】
硫酸塩、重硫酸塩、又はこれらの組合せ等のプロトンシャトル種を介した間接的プロトン化は、CO2捕捉溶液を再生するのに使用することができる。ある場合には、プロトンシャトル種は、Cl-、I-、Br-、HPO4
-2、及びH2PO4
-1、酢酸塩、クエン酸塩、又はこれらの組合せを含むことができる。アルカリ水酸化物MOHを含む第1のED生成物流等のCO2捕捉溶液を再生するため、EDユニットは、気状水素供給流と、硫酸塩-重硫酸塩混合物を含むED供給溶液とを、供給-放出区画内で受容する。EDユニットは、水をアルカリ再生区画内で受容する。電位をEDユニットに印加する。水素H2酸化反応がGDEで生じる。発生したプロトンが、アルカリ再生区画にCEMを横断して選択的に輸送するアルカリ金属イオン等(例えば、K+、Na+等)等のカチオンM+と置き換わる。
【0229】
間接的プロトン化構成において、カソードで及びアルカリ再生区画で生じる反応は、直接プロトン化構成におけるカソード及びアルカリ再生区画で生じるものと実質的に同じである。EDユニットは、アルカリ水酸化物MOH及び水素H2を有する再生捕捉溶液を含む第1のED生成物流を形成する。水素は分離ユニットで分離され、再生捕捉溶液はCO2捕捉サブシステムに送られる。
【0230】
間接的プロトン化構成では、供給-放出区画において、アルカリ金属イオンと置き換わったプロトンが硫酸塩-重硫酸塩混合物を酸性化して、水及び重硫酸塩MHSO4を含む第2のED生成物流を形成する。ある場合には、第2のED生成物流は、硫酸H2SO4を含むこともできる。次いで第2のED生成物流を溶解タンクに送って、重硫酸塩を炭酸塩と反応させることにより炭酸H2CO3をもたらすことができる。炭酸は、水と気状CO2とに解離するのに十分な平衡CO2分圧を有することになる。溶解タンクは、CO2流を部分的に又は完全に放出して、下流のプロセスで使用するために回収することができる。
【0231】
図11は、濾過ユニット1150を用い、EDユニット1107に提供された供給材料のpHのスイングを使用することにより、捕捉溶液を再生し、CO
2を回収するための、実施例の電気化学システム1100を例示するブロックフロー図である。電気化学システム1100は、CO
2捕捉システム1102、炭酸塩分離サブシステム1162、及びEDサブシステム1164を含む。
【0232】
CO2捕捉サブシステム1102は、1つ又は複数の空気接触器1105を含んでいてもよい。空気接触器1105は、冷却塔スタイルの気-液接触器、噴霧塔、液-気スクラバー、ベンチュリスクラバー、充填塔、及び液体収着剤を使用して更に大きい気体流からの特定の気体成分の少なくとも一部分を除去するように設計されたその他のシステムを含んでいてもよい。空気接触器1105は、単一セル空気接触器、二重セル空気接触器、二重流空気接触器、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。空気接触器1105は、交差流、向流、並流、又はこれらの組合せである構成で動作することができる。CO2捕捉溶液1144は、水酸化物イオン、アルカリ金属水酸化物(例えば、KOH、NaOH)、及び不純物等、アルカリ金属炭酸塩(例えば、K2CO3、Na2CO3)、水、促進剤、及びその他の化学種の1種又は複数を少量で含む水性混合物である。空気接触器1105で、CO2捕捉溶液1144の炭酸塩及び水は、下記の反応に従い、希薄気体供給源(例えば、大気又は周囲空気)からのCO2と反応して、重炭酸イオン(HCO3
-)を形成することができる。
【0233】
反応9: CO3
-+H2O+CO2→HCO3
-
【0234】
重硫酸イオンは、CO2捕捉溶液1144のアルカリ金属水酸化物により中和されて、金属炭酸塩/重炭酸塩(例えば、K2CO3/KHCO3、Na2CO3/NaHCO3)を形成してもよい。1つの可能性ある構成では、炭酸塩は、希薄気体供給源からのCO2及びCO2捕捉溶液1144中の水と反応して、重炭酸イオンを形成する。1つの可能性ある構成では、CO2捕捉溶液1144中の水は、空気接触器1105内で、希薄気体供給源からのCO2と反応して炭酸(H2CO3)を形成することができ、この炭酸が、CO2捕捉溶液1144のアルカリ金属水酸化物と反応して、金属炭酸塩/重炭酸塩(例えば、K2CO3/KHCO3、Na2CO3/NaHCO3)を形成する。
【0235】
炭酸塩のCO2捕捉動態は、CO2捕捉溶液1144中の促進剤化学種等の添加剤の導入によって、改善されてもよい。炭酸塩によるCO2捕捉を強化するための促進剤の非限定的な例には、炭酸脱水酵素、アミン(第一級、第二級、第三級)、双性イオン性アミノ酸、及びホウ酸が含まれる。CO2捕捉サブシステム1102により生成されて得られた捕捉溶液1120は、炭酸塩及び重炭酸塩を含み、同様に促進剤も含む。捕捉溶液1120の実施例の組成物は、K2CO3/KHCO3及び促進剤を含んでいてもよい。捕捉溶液1120は、11~13の範囲のpHを有していてもよく、CO2捕捉溶液1144からの残留水酸化物はほとんどないと考えられる。
【0236】
図11を参照すると、炭酸塩分離サブシステム1162は、空気接触器1105から捕捉溶液1120を受容するためCO
2捕捉サブシステム1102に流体で連結された濾過ユニット1150を含む。濾過ユニット1150は、EDサブシステム1164に流体で連結される。濾過ユニット1150は、捕捉溶液1120を保持液1152及び透過液に分離するのに使用される任意のデバイスであってもよい。
図11の構成では、透過液は、CO
2捕捉溶液1144の部分として濾過ユニット1150から空気接触器1105に流れることが示され、したがって「透過液1144」と本明細書で呼ばれ得る。1つの可能性ある構成では、濾過ユニット1150はナノ濾過ユニット1150Nである。別の可能性ある構成では、濾過ユニット1150は限外濾過ユニット1150Uである。更に別の可能性ある構成では、濾過ユニット1150は、ナノ濾過及び限外濾過の組合せを含む。例えば1つのそのような構成では、濾過ユニット1150は、ケイ酸塩、硬水、促進剤、界面活性添加剤、又は塩分の懸念を引き起こす塩を含むがこれらに限定されない固形分を除去するように構成された、一次濾過システム(例えば、限外濾過システム)が先にある又はその下流にあるナノ濾過ユニット1150Nであってもよい。濾過ユニット1150のこの構成は、電気化学システム1100での、汽水域等の非可搬性水源、例えば電気化学システム1100の補給水の供給源等の使用を可能にし得る。この構成は、潜在的に有害な汚染物質から濾過ユニット1150Nを保護することができ、下流のプロセス及びユニットへの化学種の持越しを防止し得る。
【0237】
濾過ユニット1150は、炭酸及び重炭酸イオン等の大きいイオンに対して不透過性の又は選択的な、1つ又は複数の濾過膜を含んでいてもよい。濾過ユニット1150は、供給溶液として捕捉溶液1120を受容し得る。濾過ユニット1150の濾過膜は、炭酸塩及び重炭酸塩のイオンを含む塩種を選択し排除することができ、それによって、主に濃縮された金属炭酸塩/重炭酸塩(例えば、K2CO3/KHCO3、Na2CO3/NaHCO3)を含む保持液1152を生成する。濾過ユニット1150の濾過膜は、促進剤化学種の場合のようなより大きい分子を排除することができ、それによって濾過ユニット1150の透過液1144(ドローアウト溶液)が生成される。透過液1144は、CO2捕捉溶液1144中の炭酸塩でのCO2捕捉を強化するのに使用された促進剤を含む。促進剤を含む透過液1144は、CO2捕捉サブシステム1102に戻されてCO2捕捉溶液1144と共に使用される。
【0238】
1つの可能性ある構成において、
図11を参照すると、濾過ユニット1150はK
2CO
3/KHCO
3/促進剤供給溶液を受容する。次いで濾過ユニット1150は、濃縮された炭酸/重炭酸カリウム(例えば、K
2CO
3/KHCO
3)溶液を保持液1152として、及び促進剤に富む溶液を透過液1144として生成する。別の可能性ある構成では、濾過ユニット1150はNa
2CO
3/NaHCO
3/促進剤供給溶液を受容する。次いで濾過ユニット1150は、濃縮された炭酸/重炭酸ナトリウム(例えば、Na
2CO
3/NaHCO
3)溶液を保持液1152として、及び促進剤に富む溶液を透過液1144として生成する。別の可能性ある構成では、濾過ユニット1150は、混合Na
2CO
3/NaHCO
3/K
2CO
3/KHCO
3/促進剤供給溶液を受容する。次いで濾過ユニット1150は、炭酸/重炭酸ナトリウム及びカリウム(例えば、Na
2CO
3/NaHCO
3/K
2CO
3/KHCO
3)溶液を保持液1152として、及び促進剤に富む溶液を透過液1144として生成する。
【0239】
濾過ユニット1150は、炭酸塩/重炭酸塩の飽和を実現するために蒸発による水の除去を必要とすることなく、保持液1152中の特定の濃度の炭酸塩/重炭酸塩を選択的に生成させ得る。濾過ユニット1150は、広いpH耐性を有し、0から14に及ぶpHで動作するのに十分な耐久性のある膜を含んでいてもよい。一部の実現例では、濾過ユニット1150は、10から14のpH範囲で動作可能な膜を含むことができる。一部の実現例では、濾過ユニット1150は、大きいイオン(例えば、炭酸塩/重炭酸塩のイオン)の少なくとも85%を排除して、炭酸塩/重炭酸塩に富む保持液1152と、炭酸塩/重炭酸塩が希薄な透過液1144とをもたらし得る。ある場合には、濾過ユニット1150は、大きいイオンの50%から100%の間を排除し得る。透過液1144及び/又は保持液1152は、少量の水酸化物を含んでいてもよい。濾過ユニット1150は、スペーサー及び支持体と一緒にクランプ留めされたいくつかの濾過膜(例えば、平膜シート)を保持するプレート及びフレームモジュールを含むことができる。一部の実現例では、濾過ユニット1150は、捕捉溶液1120を受容するように構成された供給タンクと、保持液1152を受容するように構成された排除収集タンクとを含むことができる。濾過ユニット1150は、保持液1152中の炭酸塩/重炭酸塩がそれほど可溶性ではないように、炭酸塩及び重炭酸塩の濃度が増大するよう動作し得る。EDユニット1107に運ばれないよう、促進剤の少なくとも一部分を分離するのを助けることにより、濾過ユニット1150は、感受性ある促進剤(例えば、炭酸脱水酵素)を保護してCO2捕捉サブシステム1102で再使用し得るように、EDユニット1107内を通り続ける場合よりも被る分解が少なくなるように、働き得る。EDユニット1107に運ばれないよう促進剤の分離を助けることにより、濾過ユニット1150は、有機分子及びその他のイオン性種に感受性がある可能性のあるEDユニット1107の膜を保護するのを助けてもよい。
【0240】
電気化学システム1100の代替の実施形態では、濾過ユニット1150が存在しない。そのような実施形態では、CO2捕捉サブシステム1102で使用される促進剤の化学種は、EDユニット1107で生じるpHの大きな変動又はスイングに耐えることが可能である。そのような実施形態では、電気化学システム1100は濾過ユニット1150を含まず、電気化学システム1100では、捕捉溶液1120中の促進剤をEDユニット1107の酸及び塩基の両方の区画を通して送り、次いで促進剤に富む流れを空気接触器1105へと戻させる。
【0241】
濃縮炭酸塩/重炭酸塩保持液1152は、ED供給溶液を形成する。EDユニット1107は、ED供給溶液を受容するように構成される。
図11を参照すると、EDユニット1107は、BPMED 1108であり又は含む。BPMED 1108は、2つの電極間に位置決めされたセルの積層体を含むことができる。ある場合には、BPMED 1108の電極は、ベースロード電気のその他の低炭素強度電源(例えば、水力、核)に加えて又はそれとは別に、低炭素断続的電源(例えば、ソーラー、風、地熱)に連結することができる。各セルは、交互になされた膜(BPM及びCEM)を含む構成で、配置構成することができる。膜は、交互になされた供給-放出(プロトン発生)区画と、アルカリ発生(水酸化物発生)区画とを画定する。電極は、電位を印加して塩分解及び酸塩基回収を可能にするように動作可能である。BPMED 1108は、BPM及びCEMにより画定された多数の供給-放出区画とアルカリ区画とを含むことができる。
【0242】
BPMED 1108は、保持液1152及び水流を、供給-放出区画の1つ又は複数に受容するように構成される。BPMED 1108のBPMは、水をヒドロキシルイオンとプロトンとに分解する水分解反応を可能にする。BPMED 1108は、塩をそのカチオンとアニオンとに分解する塩分解反応を可能にする。CEMは、カチオンをアルカリ発生区画内に移送するように動作可能である。
【0243】
捕捉溶液を再生するため、BPMは、水の解離を介して、ヒドロキシルイオンOH-をアルカリ発生区画に、及びプロトンH+を供給-放出区画に提供する。発生したプロトンは、CEMを横断してアルカリ発生区画まで選択的に輸送される、アルカリ金属イオン(例えば、K+、Na+等)等のカチオンM+と置き換わる。例えば、BPMED 1108の第1の生成物流として水酸化カリウム(KOH)を提供するため、BPMは、ヒドロキシルイオンOH-を提供し、CEMはカリウムイオンK+をアルカリ発生区画へと通過させる。したがってアルカリ金属イオン及びヒドロキシルイオンは、アルカリ水酸化物を含む第1のED生成物流1132を形成する。水酸化物を有する第1のED生成物流1132は、CO2捕捉サブシステム1102に戻されて、再生CO2捕捉溶液のループの部分としてCO2捕捉溶液1144と共に使用される。
【0244】
第2のED生成物流1138を発生させるため、BPMED 1108の供給-放出区画は、炭酸塩CO3
2-及び重炭酸塩HCO3
-等の溶解無機炭素種を含むED供給溶液を受容する。BPMはプロトンを供給-放出区画に提供し、ED供給溶液中の化学種はプロトン化されて第2のED生成物流1138を形成する。第2のED生成物流1138は、炭酸H2CO3を含む。
【0245】
例えばカリウムをベースにした系では、BPMED 1108のCEMは、カリウムイオンK+を選択し、それらをアルカリ発生区画に輸送して、K+をOH-と合わせて第1のED生成物流1132中にKOHを形成する。したがって第1のED生成物流1132は、支配的な化学種として水酸化物を有する水性混合物を含んでいてもよい。例えば第1のED生成物流1132は、水酸化カリウムKOHの水性溶液を含むことができる。第1のED生成物流1132は、CO2捕捉溶液1144と共に又はその部分として使用されるように、BPMED 1108からCO2捕捉サブシステム1102に戻すことができる。同じ実施例では、供給-放出区画において、ED供給溶液の化学種をプロトン化し、カチオンと合わせて第2のED生成物流1138を形成することができる。例えば、ED供給溶液の炭酸CO3
2-及び重炭酸HCO3
-イオンをプロトン化して、第2のED生成物流1138中に主に炭酸H2CO3を形成することができる。
【0246】
図11を参照すると、第2のED生成物流1138は、EDユニット1107から、EDユニット1107の下流にある脱気スクラバー1106に流れることができる。脱気スクラバー1106は、BPMED 1108に流体で連結される。第2のED生成物流1138の炭酸H
2CO
3は、脱気スクラバー1106内で水と気状CO
2とに解離させるのに十分な平衡CO
2分圧(例えば、約1bar)を有することになる。脱気スクラバー1106は、気状CO
2流1136を部分的に又は完全に放出することができる。気状CO
2流1136は、本明細書に記述される1つ又は複数の下流の処理ユニット(例えば、圧縮ユニット、精製ユニット、電解還元サブシステム、炭素生成物製造システム、合成ガス発生反応器)に送ることができる。
【0247】
脱気スクラバー1106は、BPMED 1108に直接流れることができる水を主に含む残留生成物流1112を提供する。残留生成物流1112中の炭酸CO
3
2-及び重炭酸HCO
3
-イオンがBPMED 1108のアルカリ区画に流れないようにすることが望まれる構成では、電気化学システム1100は、逆浸透(RO)ユニット1128を含んでいてもよく、その例は
図11に示される。そのような実施形態では、残留生成物流1112は、ROユニット1128を介して間接的に、BPMED 1108に供給される。ROユニット1128は、炭酸塩CO
3
2-及び重炭酸塩HCO
3
-イオンを残留生成物流1112から除去する主要な機能を有する。ROユニット1128の膜は、炭酸及び重炭酸イオンを選択し排除することができ、それによって、炭酸塩-重炭酸塩混合物を含むRO保持液1168と、主に水を含むRO透過液1166とが生成される。RO保持液1168は、残留生成物流1112よりも高い濃度の炭酸塩及び重炭酸塩を含んでいてもよい。RO保持液1168は脱気スクラバー1106に戻されて、炭酸CO
3
2-及び重炭酸HCO
3
-イオンを残留生成物流1112の水から除去する。水を含むRO透過液1166は、BPMED 1108に流れてBPMED 1108中に水酸化物を生成する。
【0248】
図11の電気化学システム1100は、pHスイングを使用して捕捉溶液からのCO
2の電気化学的回収を可能にする。EDユニット1107での水分解から発生したプロトンは、濾過ユニット1150からEDユニット1107に供給される保持液1152のpHを低下させ、それによって、第2のED生成物流1138中の炭酸の濃度を増大させることにより更に酸性の高い産出物を発生させる。EDユニット1107は、支配的な化学種としての水酸化物によるその水性混合物に起因して、より高いpHを有する第1のED生成物流1132も生成する。例えば、EDユニット1107への保持液1152供給溶液は、11~13の間のpHを有していてもよい。pHは、EDユニット1107でのプロトン化によって低下して、5~8の間のpHを有する第2のED生成物流1138を生成する。更にpHは、EDユニット1107での水分解から発生したヒドロキシルアニオンによって上昇して、約14のpHを有する第1のED生成物流1132を生成する。
【0249】
図11の電気化学システム1100では、EDユニット1107に供給される保持液1152は、残留水酸化物を含有することができ、これはEDユニット1107で発生したプロトンによって中和されて水を形成し得る。したがって、保持液1152供給溶液を介してEDユニット1107内に導入された任意の残留水酸化物は、電気化学システム1100の固定荷重として働くことになる。そのような構成では、電気化学システム1100は、2工程(捕捉+再生プロセス)システムであり、再生工程は、残留水酸化物がほとんどない低pH溶液で動作する。BPMED 1108を含むとして
図11に関して記述されたが、一部の実現例では、電気化学システム1100のEDユニット1107は、本明細書に開示される気体拡散電極(GDE)の代わりをしてもよく、この電極を含んでもよく、又はこの電極を使用してもよい。
【0250】
図12は、EDユニット1207を用いることにより捕捉溶液を再生し、CO
2を収集するための、実施例の電気化学システム1200を示すブロックフロー図である。
図12の電気化学システム1200は、
図11の電気化学システム1100に類似した構成要素、特徴、プロセス、及び/又は機能性を有する。したがって
図11の電気化学システム1100の構成要素、特徴、プロセス、利点及び/又は機能性の上記記述は、
図12の電気化学システム1200に、必要な変更を加えて適用される。
図11の特徴に適用される参照符号は、
図12の電気化学システム1200の特徴に、必要な変更を加えて適用される。
【0251】
図12を参照すると、CO
2捕捉溶液1244は、アミノ酸又はアミン等の捕捉溶媒を含む水性混合物である。空気接触器1205では、CO
2捕捉溶液1244の水及び捕捉溶媒は、希薄気体供給源からのCO
2と反応して、重炭酸イオン(HCO
3
-)を形成する。例えばアミン(AMP)捕捉溶媒はCO
2及び水と反応して、下記の反応による重炭酸塩を形成することができる:
【0252】
【0253】
ある場合には、反応は完了に向かわなくてもよく、CO2捕捉サブシステム1202により生成されて得られた重炭酸塩に富む捕捉溶液1220は、未反応の捕捉溶媒を含むことができる。重炭酸塩に富む捕捉溶液1220の実施例の組成は、主にHCO3
-/捕捉溶媒であってもよい。濾過ユニット1250は、重炭酸塩に富む捕捉溶液1220を供給溶液として受容してもよい。濾過ユニット1250の濾過膜は、重炭酸イオンを含む塩の化学種を選択し排除することができ、それによって主に濃縮された重炭酸塩を含む保持液1252が生成される。濾過ユニット1250の濾過膜は、CO2捕捉溶液1144で使用される捕捉溶媒を含むことができる透過液を生成する。捕捉溶媒を含む透過液は、元のCO2捕捉サブシステム1202に供給されて、CO2捕捉溶液1244と共に使用される。水は、いくつかの場所で電気化学システム1200に添加されてもよく、例えばCO2捕捉溶液1244又は空気接触器1205での損失を補う空気接触器1205の集水器に添加されてもよい。
【0254】
図12を参照すると、重炭酸塩に富む保持液1252が供給溶液としてEDユニット1207に提供され、そこではプロトンを発生させる水分解反応により、重炭酸塩に富む供給溶液のプロトン化を可能にして、主に炭酸を含むED生成物流1238を形成する。EDユニット1207での水分解により発生したヒドロキシルイオン及びプロトンは、水ED生成物流1232として提供されてもよく、これはCO
2捕捉サブシステム1202に戻されて、再生CO
2捕捉溶液のループの部分としてCO
2捕捉溶液1244と共に使用されることになる。ED生成物流1238は、EDユニット1207から、EDユニット1207の下流である脱気スクラバー1206に流れることができる。脱気スクラバー1206は、EDユニット1207に流体で連結される。ED生成物流1238の炭酸H
2CO
3は、十分な平衡CO
2分圧(例えば、約1bar)を有して、脱気スクラバー1206で水と気状CO
2との解離を引き起こすことになる。気状CO
2 1236は、脱気スクラバー1206から放出される。電気化学システム1200には、逆浸透(RO)ユニット1228が設けられてもよく、その例が
図12に示される。ROユニット1228は、炭酸CO
3
2-及び重炭酸HCO
3
-イオンを脱気スクラバー1206の残留生成物流1212から除去する主要な機能を有する。ROユニット1228の膜は、炭酸及び重炭酸イオンを選択し排除することができ、それによって、炭酸-重炭酸混合物を含むRO保持液1268と主に水を含むRO透過液1266とが生成される。RO保持液1268は、残留生成物流1212におけるよりも高い濃度の炭酸塩及び重炭酸塩を含んでいてもよい。RO保持液1268は、脱気スクラバー1206に戻されて、炭酸CO
3
2-及び重炭酸HCO
3
-イオンを残留生成物流1212の水から除去する。RO透過液1266の水はEDユニット107に流れてヒドロキシルイオン及びプロトンを生成する。
【0255】
したがって
図12の電気化学システム1200では、アミノ酸及びアミンを捕捉溶液として使用することにより、後で重炭酸塩を発生させるための初期炭酸塩形成の必要がなくなる。捕捉溶液は、CO
2及び水と反応させて、重炭酸イオンを直接形成することができ、次いでこれを上述のように電気化学システム1200により処理してもよい。
【0256】
図13は、GDE 1304を含む実施例EDユニット1300の概略図である。この構成は、高電流密度及び高水酸化物濃度等、
図10のGDE 1004を含むEDユニット1000に類似した利点のいくつかを可能にする。膜積層体は、アノード1302とGDE 11304との間に位置決めされたCEM 1306を含む。GDE 1304は、触媒層1312を支持する気体拡散層1310を含む。気体拡散層1310は多孔質であり、気体を触媒層1312に向かって移動させる。一部の実現例では、触媒層1312は、硫化ロジウム又は様々な金属/金属合金及びそれらの酸化物であって白金、パラジウム、イリジウム、銀、ロジウム、又は非貴金属/金属酸化物触媒(例えば、ニッケル、鉄、コバルト)を含むものを含むことができる。ある場合には、GDE 1304を有するEDユニット1300は、0から14の間に及ぶpHで動作することができる。GDE 1304及びCEM 1306は、捕捉溶液が再生されるアルカリ再生(水酸化物発生)区画を画定する。CEM 1306及びアノード1302は、酸素及びプロトンシャトル種を含む生成物が形成される供給-放出(プロトン発生)区画を画定する。EDユニット1300は、DIC種の間接的プロトン化に用いることができる。EDユニット1300は、電気化学システム200、400、700、及び800のいずれか等、電気化学システムの再生サブシステムの要素として含めることができる。
【0257】
硫酸塩、重硫酸塩、又はこれらの組合せ等のプロトンシャトル種を介した間接的プロトン化は、CO2捕捉溶液を再生するのに使用することができる。ある場合には、プロトンシャトル種は、Cl-、I-、Br-、HPO4
-2、及びH2PO4
-1、酢酸塩、クエン酸塩、又はこれらの組合せを含むことができる。EDユニット1300は、間接的プロトン化構成のブラインループの部分を構成する。EDユニット1300は、水と、硫酸塩-重硫酸塩混合物を含むED供給溶液1326とを供給-放出区画内に受容する。電位がEDユニット1300に印加される。酸素発生反応はアノード1302で生じる。酸素発生反応は、例えば水の電気化学分解によって分子状酸素が発生する反応である。一部の実現例では、アノード1302上の触媒層は、白金族金属及びそれらの酸化物、例えばイリジウム/酸化イリジウム又はルテニウム/酸化ルテニウムを含むことができる。一部の実現例では、これらの触媒は、チタン/酸化チタン電極に組み込まれて寸法安定アノード(DSA)又は混合金属酸化物(MMO)電極を形成してもよい。発生したプロトンは、アルカリ再生区画にCEM 1306を横断して選択的に輸送される、アルカリ金属イオン(例えば、K+、Na+等)等のカチオンM+を置き換える。
【0258】
アルカリ水酸化物MOHを含む捕捉溶液を再生するため、EDユニット1300は水及び酸素供給材料1324をアルカリ再生区画内に受容する。一部の実現例では、空気又は酸素含有供給流を、酸素供給材料1324の代わりに又はそれと組み合わせて使用することができる。GDE 1304で、酸素還元反応が生じてヒドロキシルイオンOH-が発生する。アルカリ再生区画では、アルカリ金属イオンM+及びヒドロキシルイオンOH-が、アルカリ水酸化物MOHと共に再生捕捉溶液を含む第1のED生成物流1332を形成する。例えばカリウムイオンK+は、CEM 1306を横断して輸送して、水酸化カリウムKOHを有する再生捕捉溶液を形成することができる。第1のED生成物流1332は、EDユニット1300からCO2捕捉サブシステムの空気接触器に、再生CO2捕捉溶液として流れることができる。
【0259】
供給-放出区画では、アルカリ金属イオンと置き換わるプロトンは、硫酸塩-重硫酸塩混合物を酸性化して、発生した酸素及び重硫酸塩MHSO4を含む第2のED生成物流1334を形成する。ある場合には、第2のED生成物流1334は、硫酸H2SO4を含むこともできる。次いで第2のED生成物流1334は、フラッシュタンク135又は脱気スパージに送り、そこで酸素流1342を脱気し除去することができる。一部の実現例では、酸素流1342は、GDE 1304にリサイクルし、酸素供給材料1324の代わりに又はそれと組み合わせて使用することができる。酸素がフラッシュタンク1350から脱気された後、重硫酸塩に富む溶液を含むブライン流1338は溶解タンク1352に流れる。溶解タンク1352は、炭酸塩-水和物塩を、例えば上流の炭酸塩分離サブシステムから受容する。
【0260】
溶解タンク1352では、重硫酸塩に富む溶液は、反応5に従い、炭酸塩と反応して硫酸塩に富む(重硫酸塩が希薄な)溶液及び炭酸をもたらすことができる。例えば重硫酸カリウムKHSO4は、炭酸カリウムK2CO3と反応して、硫酸カリウムK2SO4及び炭酸H2CO3をもたらすことができる。その結果、pHは低減することになる。炭酸は、十分な平衡CO2分圧(例えば、1bar)を有して、水と気状CO2流1336への解離を引き起こすことになる。溶解タンク1352は、気状CO2流1336を部分的に又は完全に放出することができる。気状CO2流1336は、後続の実現例で記述される1つ又は複数の下流の処理ユニットに送ることができる(例えば、圧縮ユニット、精製ユニット、電解還元サブシステム、炭素生成物製造システム、合成ガス発生反応器)。溶解タンク1352での反応は、ED供給溶液1326も形成する。ED供給溶液1326は、硫酸塩に富む(重硫酸塩が希薄な)溶液を含むことができる。例えばED供給溶液1326は、重硫酸カリウム及び水等のその他の成分の混合物と共に硫酸カリウムを含むことができる。
【0261】
図1から
図4、
図6から
図8、
図11、
図12における電気化学システム100、200、300、400、600、700、800、1100、1200、
図9のBPMED 900、
図10のEDユニット1000、
図13のEDユニット1300、及び
図5の方法500のいずれか1つは、流れ(例えば、炭酸塩に富む捕捉溶液、結晶質炭酸塩水和物、ED供給溶液、生成物流等)を、少なくとも1つの補助ユニット又は補助装置、例えば1つ又は複数の緩衝タンク、濾過システム、水処理システム、保持タンク、混合タンク、沈降器、浄化器、コンベヤ、又は前述の電気化学システム及び方法の性能を容易にするその他のユニットに流すことを含むことができる。
【0262】
図1~4、6~8、11、12の電気化学システム100、200、300、400、600、700、800、1100、1200、
図9のBPMED 900、
図10のEDユニット1000、
図13のEDユニット1300、及び
図5の方法500では、単塩(1価の塩)等の添加剤を、1つ又は複数のプロセス流に含めることができる。塩化ナトリウム等の単塩は、CO
2捕捉サブシステムに関して伝導率を増大させ、凝固点を低下させることによって、性能を高めることができる。
【0263】
図1から
図4まで並びに
図7及び
図8の一次苛性蒸発器112、212、312、412、補助苛性蒸発器114、214、314、414、714、814及び晶析器104、204、304、404、704は、それぞれ1つ又は複数の水流を放出する。ある場合には、水流は、BPMEDユニット108、208、308、408、708、808、900、CO
2電解還元ユニット610、EDユニット1000、1107、1207、1300、又は溶解タンク106、206、306、406、608、706、1352等の流入する流れとして水を必要とするその他のユニットで部分的に又は完全にリサイクルすることができる。例えば電気化学システム100では、一次苛性蒸発器112は、BPMED 108に流れる水流134と置き換えることができる又は合わせることができる水流119を放出する。例えば補助苛性蒸発器114は、凝縮水として水流140を放出し、水流140は、BPMED 108に供給される水流134と置き換わる又は合わせることができる。ある場合には、放出された水流は、下流のユニットに流れる前に、処理(例えば、濾過システム又は水処理システムで)を必要とする可能性がある。一次苛性蒸発器112、212、312、412、補助苛性蒸発器114、214、314、414、714、814はそれぞれ、t-CO
2当たり最大20m
3の水を除去することができる。プロセスからの追加の水除去が有利な場合、水は、空気接触器、晶析器、ナノ濾過ユニット、逆浸透ユニット、補助ユニット、又はこれらの組合せから除去して、プロセスの水収支を維持することができる。例えばプロセスからの水除去は、季節による又は日中の天候条件に対して調節するのに有利とすることができ、EDユニットを動作させるのに淡水が必要であり、又はこれらの組合せとすることができる。除去される水は、どこかで再使用することができ、将来の使用に向けて保存することができ、又は現場以外に運び出すことができる。
【0264】
図1から
図4まで、
図6から
図8まで、
図11、
図12の電気化学システム100、200、300、400、600、700、800、1100、1200、
図9のBPMEDユニット900、
図10のEDユニット1000、
図13のユニット1300、及び
図5の方法500のそれぞれで、水流を流す又は受容する1つ又は複数の要素が、ある特定の量の懸濁固形分、溶解固形分、若しくは不純物(又はこれらの組合せ)を流す又は受容することができる。例えばBPMEDユニット108、208、308、408、708、808、900、CO
2電解還元ユニット610、及びEDユニット1000、1107、1207、1300は、様々な量の懸濁固形分、溶解固形分、不純物、又はこれらの組合せをそれぞれ含む、それぞれの水流を受容することができる。ある場合には、BPMEDユニット108、208、308、408、708、808、900、CO
2電解還元ユニット610、及びEDユニット1000、1107、1207、1300は、処理された水流を受容することができる。例えば処理水は、脱ミネラル化され、蒸留され、濾過され、精製され、又は処理された水を含むことができる。
【0265】
図1から
図4まで、
図6から
図8まで、
図11、
図12、の電気化学システム100、200、300、400、600、700、800、1100、1200のそれぞれで、水はBPMEDに供給されて、第1のED生成物流及び第2のED生成物流を生成する。水は、1つ又は複数の流れから蒸発して、水収支を維持することができる。例えば水は、下記の流れの1つ又は複数から蒸発することができる:炭酸塩に富む捕捉溶液120、220、320、420、720、820、保持液352、452、852、又は透過液354、454、854。水は、MVR蒸発器、多重効果蒸発器、又は膜濾過ユニット(例えば、限外濾過、ナノ濾過、逆浸透、及び同様のもの)を使用して蒸発することができる。水は、空気捕捉ユニットを通して蒸発することもでき、この蒸発は、少なくとも部分的に周囲環境条件に依存している。
【0266】
図1から
図4まで、
図6から
図8まで、
図11、
図12の電気化学システム100、200、300、400、600、700、800、1100、1200、
図9のBPMED 900、
図10のEDユニット1000、
図13のEDユニット1300、及び
図5の方法500のそれぞれで、CO
2捕捉溶液における広範な水酸化物濃度は、希薄気体供給源からいくらかの量のCO
2を吸収することができるが、最も有効な組成物は、捕捉効率を改善するために及びある特定の動作環境に順応するために調整することができる。例えばCO
2捕捉溶液144、244、344、444、618、744、844、930、1044、1144、1244、1332は、1Mから8Mに及ぶ水酸化カリウムKOH濃度及び0.1Mから1.8Mに及ぶ炭酸カリウムK
2CO
3濃度を含むことができる。例えばCO
2捕捉溶液144、244、344、444、618、744、844、930、1044、1144、1244、1332は、1Mから3Mに及ぶ水酸化ナトリウムNaOH濃度と0.1Mから1Mに及ぶ炭酸ナトリウムNa
2CO
3濃度とを含むことができる。
【0267】
例えばCO2捕捉溶液144、244、344、444、618、744、844、930、1044、1144、1244、1332は、2.5Mから5Mに及ぶKOH濃度、2.5Mから1Mに及ぶNaOH濃度、0.1Mから0.7Mに及ぶ炭酸カリウムK2CO3濃度、及び0.05Mから0.2Mに及ぶ炭酸ナトリウムNa2CO3濃度を含む混合物を含むことができる。
【0268】
本明細書に記述される電気化学システム及び方法は、モジュール式に縮小拡大可能であり、したがって
図1から
図13までに例示される実現例とは異なる数の要素及びサブシステムを含むことができる。例えば電気化学システムは、炭酸塩分離サブシステムに流体で連結された多数の空気接触器又はEDユニット(又は両方の組合せ)を含むことができる。例えば電気化学システムは、空気接触器又はEDユニットのそれぞれに関して、炭酸塩分離サブシステムに1つ又は複数の苛性蒸発器を含むことができる。多数の空気接触器、多数の炭酸塩分離サブシステム、及び多数の再生サブシステム、及びそのそれぞれの要素の組合せは、システム及び要素に流体で連結された1つ又は複数のトレーンを含む分布システムを必要とする可能性がある。
【0269】
図14は、捕捉溶液を再生し、CO
2を回収するための電気化学システムの制御システム(又は制御器)1400の概略図である。システム1400は、例えば制御システム999又は本明細書に記述されるその他の制御器として又はその部分として、前述のコンピューターで支援される方法のいずれかに関連して記述される動作に使用することができる。
【0270】
システム1400は、様々な形のデジタルコンピューター、例えばラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、携帯情報端末、サーバー、ブレードサーバー、メインフレーム、及びその他の適切なコンピューターを含むことが意図される。システム1400は、モバイルデバイス、例えば携帯情報端末、携帯電話、スマートフォン、及びその他類似のコンピューターデバイスを含むこともできる。更にシステムは、可搬性記憶媒体、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブを含むことができる。例えばUSBフラッシュドライブは、オペレーティングシステム及びその他のアプリケーションを記憶してもよい。USBフラッシュドライブは、入力/出力構成要素、例えばワイヤレストランスミッター又はUSBコネクターであって別のコンピューターデバイスのUSBポートに挿入し得るものを含むことができる。
【0271】
システム1400は、プロセッサー1410、メモリー1420、記憶デバイス1430、及び入力/出力デバイス1440を含む。構成要素1410、1420、1430、及び1440のそれぞれは、システムバス1450を使用して相互接続される。プロセッサー1410は、システム1400内で実行するための命令を処理することが可能である。プロセッサーは、いくつかのアーキテクチャーのいずれかを使用して設計されてもよい。例えばプロセッサー1410は、CISC(複合命令セットコンピューター)プロセッサー、RISC(縮小命令セットコンピューター)プロセッサー、又はMISC(最小命令セットコンピューター)プロセッサーであってもよい。
【0272】
1つの実現例では、プロセッサー1410は、シングルスレッドプロセッサーである。一部の実現例では、プロセッサー1410は、マルチスレッドプロセッサーである。プロセッサー1410は、入力/出力デバイス1440上にユーザーインターフェースに関するグラフィック情報を表示するため、メモリー1420又は記憶デバイス1430に記憶された命令を処理することが可能である。
【0273】
メモリー1420は、システム1400内に情報を記憶する。1つの実現例では、メモリー1420は、コンピューター可読媒体である。1つの実現例では、メモリー1420は、揮発メモリーユニットである。一部の実現例では、メモリー1420は、不揮発性メモリーユニットである。
【0274】
記憶デバイス1430は、システム1400にマスストレージを提供することが可能である。1つの実現例では、記憶デバイス1430は、コンピューター可読媒体である。様々な種々の実現例で、記憶デバイス1430は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、又はテープデバイスであってもよい。
【0275】
入力/出力デバイス1440は、システム1400に入力/出力オペレーションを提供する。1つの実現例では、入力/出力デバイス1440は、キーボード及び/又はポインティングデバイスを含む。一部の実現例では、入力/出力デバイス1440は、グラフィカルユーザーインターフェースを表示するためのディスプレーユニットを含む。
【0276】
記述されるある特定の特徴は、デジタル電子回路で、又はコンピューターハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアで、又はこれらの組合せで実現することができる。装置は、情報キャリアで、例えばプログラマブルプロセッサーにより実行するための機械可読記憶デバイスで実体的に具体化されたコンピュータープログラムプロダクトにおいて実現することができ;及び方法工程は、入力データ上での操作し、出力を発生させることによって記述される実現例の機能を行う命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサーにより、行うことができる。記述される特徴は、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信するように、それらのシステム及びデバイスにデータ及び命令を送信するように連結された、少なくとも1つのプログラマブルプロセッサーを含むプログラマブルシステムで実行可能な1つ又は複数のコンピュータープログラムで有利に実現することができる。コンピュータープログラムは、ある特定のアクティビティを行うため又はある特定の結果をもたらすため、コンピューターで直接又は間接的に使用することができるひと組の命令である。コンピュータープログラムは、コンパイラ型又はインタプリタ型言語を含むプログラミング言語の任意の形で書くことができ、独立型プログラムとして又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、若しくはコンピューティング環境で使用するのに適したその他のユニットを含む任意の形で展開することができる。
【0277】
命令のプログラムを実行するための適切なプロセッサーは、例として、汎用及び専用目的のマイクロプロセッサー、並びに単独プロセッサー又は任意の種類のコンピューターのマルチプロセッサーの1つの、両方を含む。一般にプロセッサーは、命令及びデータをリードオンリーメモリー又はランダムアクセスメモリー又はその両方から受信することになる。コンピューターの必須の要素は、命令を実行するためのプロセッサーと、命令及びデータを記憶するための1つ又は複数のメモリーである。一般にコンピューターは、データファイルを記憶するための1つ又は複数のマスストレージデバイスも含むことになり又はこれらと通信するように動作可能に連結されることになり;そのようなデバイスは、磁気ディスク、例えば内部ハードディスク及び取外し可能なディスク;光磁気ディスク;及び光ディスクを含む。コンピュータープログラム命令及びデータを実体的に具体化するのに適した記憶デバイスは、例として半導体メモリーデバイス、例えばEPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリーデバイス;磁気ディスク、例えば内部ハードディスク及び取外し可能なディスク;光磁気ディスク;及びCD-ROM及びDVD-ROMディスクを含む、全ての形の不揮発性メモリーを含む。プロセッサー及びメモリーは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補うことができ又はこれに組み込むことができる。
【0278】
ユーザーとの相互作用を提供するため、特徴は、ユーザーに情報を表示するためのCRT(陰極線管)又はLDC(液晶ディスプレー)モニター等のディスプレーデバイスと、キーボード及びポインティングデバイスであってそれによってユーザーが入力をコンピューターに提供できるマウス又はトラックボール等とを有するコンピューターで、実現することができる。更に、そのような動作はタッチスクリーンフラットパネルディスプレー及びその他の適切なメカニズムを介して実現することができる。
【0279】
特徴は、データサーバー等のバックエンドコンポーネントを含む、又はアプリケーションサーバー若しくはインターネットサーバー等のミドルウェアコンポーネントを含む、又はグラフィカルユーザーインターフェース若しくはインターネーットブラウザーを有するクライアントコンピューター等のフロントエンドコンポーネント、又はこれらの任意の組合せを含む制御システムで実現することができる。システムのコンポーネントは、通信ネットワーク等のデジタルデータ通信の任意の形又は媒体により接続することができる。通信ネットワークの例には、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、ピアツーピアネットワーク(アドホック又は静的メンバーを有する)、グリッドコンピューティングインフラストラクチャー、及びインターネットが含まれる。
【0280】
本記述で使用される、「連結する(couple)」という用語及びその変形例、例えば「連結された(coupled)」、「連結する(couples)」、及び「連結している(coupling)」は、他に指示しない限り、間接的及び直接的な接続を含むものとする。例えば、第1のデバイスが第2のデバイスに連結される場合、その連結は、直接接続を通してでもよく又はその他のデバイス及び接続を介した間接的接続を通してでもよい。同様に、第1のデバイスが第2のデバイスに流体で連結される場合、流れは、直接接続を通して、又はその他のデバイス及び接続を介した間接的接続を通してでもよい。特に流体で連結は、2つの流体で連結されたデバイスの間に流体を流すための直接又は間接的経路が設けられることを意味する。
【0281】
本記述で使用される、前述のシステム及び方法のプロセス流又は要素の1つ又は複数に関する動作又は結果を記述するのに使用される用語(例えば、「流れる(flow)」、「形成する」、「戻る」、「受容する」、「生成する」、「放出する」、「用いる」、「適用する(apply)」、「提供する(provide)」、「溶解する」、及びそれらのそれぞれの動名詞)は、部分的な及び完全な動作又は結果を含むものとする。例えばサブシステムに溶液を流すことは、溶液の少なくとも一部分又は全体をサブシステムに流すことを含むことができる。例えば、溶液を受容するサブシステムは、溶液の一部分又は溶液の全体を受容するサブシステムを含むことができる。
【0282】
本開示のいくつかの実施形態について記述してきた。それにも関わらず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行ってもよいことが理解されよう。したがってその他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。様々な態様の更なる修正及び代替の実施形態は、本記述に鑑み当業者に明らかにされよう。したがって本記述は、単なる例示として解釈されることになる。本明細書に示され記述される形態は、実施形態の例と解釈されることが理解されよう。要素及び材料は、本記述の利益を有する後、全て当業者に明らかされるように、本明細書でそれらの例示され記述されたものと置き換えられてもよく、部品及びプロセスは逆にされてもよく、ある特定の特徴は独立して利用されてもよい。以下の請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記述される要素に変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0283】
100 電気化学システム
102 CO2捕捉サブシステム
104 晶析器
105 空気接触器
106 溶解タンク
108 BPMED
110 フラッシュタンク
112 一次苛性蒸発器
114 補助苛性蒸発器
118 濃縮された炭酸塩に富む捕捉溶液
119 水流
120 炭酸塩に富む捕捉溶液
122 結晶質炭酸塩水和物
124 水流
126 ED供給溶液
128 水流
130 第2のED生成物流
132 第1のED生成物流
134 水流
136 CO2流
138 ブライン流
140 水流
142 母液
144 CO2捕捉溶液
162 炭酸塩分離サブシステム
164 再生サブシステム
999 流れ制御システム
【国際調査報告】