(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】作業機械の液圧式のシリンダを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240412BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240412BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/22 E
F15B11/028 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568127
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022061793
(87)【国際公開番号】W WO2022233834
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021204544.8
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン トラハテ
(72)【発明者】
【氏名】オザン デミル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ナイアー
(72)【発明者】
【氏名】ニルス シュテーカー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ベンダー
(72)【発明者】
【氏名】アーミン グリーサー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン エーラース
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AB04
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB05
2D003FA02
3H089CC01
3H089DA01
3H089DB43
3H089EE36
3H089GG01
3H089JJ01
3H089JJ17
(57)【要約】
特に移動式の作業機械の液圧式のシリンダを動作させるための方法であって、・液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値
を、制御ユニットによって受信するステップと、・液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットの弁制御パラメータの目標値(u)を、運動パラメータの受信した目標値
に依存して、物理的なモデル(34’)と、データに基づいたモデル(32’,42’)とを使用して、制御ユニットによって特定するステップと、・液圧式のシリンダを動作させるための信号を、弁制御パラメータの特定された目標値(u)に依存して出力するステップとを備える、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に移動式の作業機械の液圧式のシリンダ(26)を動作させるための方法(100)であって、前記方法(100)は、以下のステップ、すなわち、
・前記液圧式のシリンダ(26)の運動パラメータの目標値
【数1】
を、制御ユニット(10)によって受信するステップ(110)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)に対応付けられた弁ユニット(24)の弁制御パラメータの目標値(u)を、前記運動パラメータの受信した前記目標値
【数2】
に依存して、物理的なモデル(34;34’)と、データに基づいたモデル(32;32’,42’)とを使用して、前記制御ユニット(10)によって特定するステップ(120)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)を動作させるための信号を、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して、前記制御ユニット(10)によって出力するステップ(130)と、
を備える、方法(100)。
【請求項2】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)を特定するステップ(120)において、
・前記運動パラメータの前記目標値
【数3】
に依存して、前記物理的なモデル(34;34’)の出力量(A
vlv,R)が特定され、
・特定された前記出力量(A
vlv,R)に依存して、前記データに基づいたモデル(42’)を使用して、前記弁制御パラメータの前記目標値(u)が特定される、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記物理的なモデル(34;34’)の出力量(A
vlv,R;Q
vlv,R)として、前記弁ユニット(24)の弁パラメータ(A
vlv,R;Q
vlv,R)に関する、特に弁開口量(A
vlv,R)に関する、又は、前記弁ユニット(24)に対応付けられた体積流量(Q
vlv,R)に関する目標値が特定される、
請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)を特定するステップ(120)において、
・前記運動パラメータの前記目標値
【数4】
に依存して、前記データに基づいたモデルの出力量が特定され、
・前記弁制御パラメータの前記目標値
【数5】
が、特定された前記出力量に依存して、前記物理的なモデルを使用して特定される、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記データに基づいたモデルの出力量として、弁開口量(A
vlv,R)に関する、又は、前記弁ユニット(24)に対応付けられた体積流量(Q
vlv,R)に関する目標値が特定される、
請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)を特定するステップ(120)において、
・前記物理的なモデル(34)を使用して、出力量に関する第1の値(u
FF,1)が特定され、
・前記データに基づいたモデル(32)を使用して、同一の出力量に関する第2の値(u
FF,2)が特定され、
・前記弁制御パラメータの前記目標値(u)が、前記第1の値(u
FF,1)と前記第2の値(u
FF,2)との比較に基づいて特定される、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)を特定するステップ(120)において、
・前記物理的なモデル(34’)と、前記データに基づいたモデル(42’)とを使用して、出力量に関する第1の値(u
FF,1)が特定され、
・さらなるデータに基づいたモデル(32’)を使用して、同一の出力量に関する第2の値(u
FF,2)が特定され、
・前記弁制御パラメータの前記目標値(u)が、前記第1の値(u
FF,1)と前記第2の値(u
FF,2)との比較に基づいて特定される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
・前記作業機械は、少なくとも1つのさらなる液圧式のシリンダ(26)を含み、
・前記受信するステップ(210a,210b,210c)において、前記さらなる液圧式のシリンダ(26)のさらなる運動パラメータのためのさらなる目標値
【数6】
が、前記制御ユニット(10)によって受信され、
・前記特定するステップ(220a,220b,220c)において、前記さらなる液圧式のシリンダ(26)に対応付けられたさらなる弁ユニット(24)のさらなる弁制御パラメータのさらなる目標値(u)が、受信した前記さらなる目標値
【数7】
に依存して、さらなる物理的なモデル(34;34’)と、さらなるデータに基づいたモデル(32;32’)とを使用して、前記制御ユニット(10)によって特定され、その際、
○前記物理的なモデル(34;34’)と、前記データに基づいたモデルとを使用して、前記液圧式のシリンダ(26)のための出力量に関する第1の値(u
FF,1)が特定され、
○前記さらなる物理的なモデル(34;34’)と、前記さらなるデータに基づいたモデルとを使用して、前記さらなる液圧式のシリンダ(26)のためのさらなる出力量に関するさらなる第1の値(u
FF,1)が特定され、
○追加的なデータに基づいたモデル(32;32’)を使用して、前記液圧式のシリンダ(26)の前記出力量と、前記さらなる液圧式のシリンダ(26)の前記さらなる出力値とに関するそれぞれ1つの第2の値(u
FF,2)が特定され、
○前記弁制御パラメータのそれぞれの前記目標値(u)が、それぞれの前記第1の値(u
FF,1)とそれぞれの前記第2の値(u
FF,2)との比較に基づいて特定され、
・前記出力するステップ(130)において、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して、前記液圧式のシリンダ(26)を動作させるための信号が出力される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)は、速度コントローラ(18)を使用して特定され、
前記速度コントローラ(18)は、前記物理的なモデル(34;34’)と、前記データに基づいたモデル(32;32’,42’)とに基づいたフィードフォワード制御部を含む、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダ(26)によって動作させ得る作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための方法(200)であって、前記方法(200)は、以下のステップ、すなわち、
・前記作業ユニット、特に前記アタッチメントの目標位置(x
R)を、制御ユニット(10)によって受信するステップ(210)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)の運動パラメータの目標値
【数8】
を、前記作業ユニットの受信した前記目標位置に依存して、前記制御ユニット(10)によって特定するステップ(220)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)に対応付けられた弁ユニット(24)の弁制御パラメータの目標値(u)を、前記運動パラメータの受信した前記目標値
【数9】
に依存して、物理的なモデル(34;34’)と、データに基づいたモデル(32;32’,42’)とを使用して、前記制御ユニット(10)によって特定するステップ(230)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)を動作させることによって、特に移動式の前記作業機械の前記作業ユニット、特に前記アタッチメントを動作させるための信号を、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して、前記制御ユニット(10)によって出力するステップ(240)と、
を備える、方法(200)。
【請求項11】
特に移動式の作業機械の液圧式のシリンダ(26)を動作させるための制御ユニットであって、前記制御ユニットは、
・前記液圧式のシリンダ(26)の運動パラメータの目標値
【数10】
を受信し、
・前記液圧式のシリンダ(26)に対応付けられた弁ユニット(24)の弁制御パラメータの目標値(u)を、前記運動パラメータの受信した前記目標値
【数11】
に依存して、物理的なモデル(34;34’)と、データに基づいたモデル(32;32’,42’)とを使用して特定し、
・前記液圧式のシリンダ(26)を動作させるための信号を、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して出力する
ように構成されている、制御ユニット。
【請求項12】
特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダ(26)によって動作させ得る作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための制御ユニット(10)であって、前記制御ユニット(10)は、
・前記作業ユニット、特に前記アタッチメントの目標位置(x
R)を受信し、
・前記液圧式のシリンダ(26)の運動パラメータの目標値
【数12】
を、前記作業ユニットの受信した前記目標位置に依存して特定し、
・前記液圧式のシリンダ(26)に対応付けられた弁ユニット(24)の弁制御パラメータの目標値(u)を、前記運動パラメータの受信した前記目標値
【数13】
に依存して、物理的なモデル(34;34’)と、データに基づいたモデル(32;32’,42’)とを使用して特定し、
・前記液圧式のシリンダ(26)を動作させることによって、特に移動式の前記作業機械の前記作業ユニット、特に前記アタッチメントを動作させるための信号を、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して出力する
ように構成されている、制御ユニット(10)。
【請求項13】
作業機械、特に移動式の作業機械であって、
作業ユニット、特にアタッチメントと、
前記作業ユニット、特に前記アタッチメントを運動させるための少なくとも1つの液圧式のシリンダ(26)と、
前記作業ユニット、特に前記アタッチメントを動作させるための請求項12に記載の制御ユニット(10)と、
を備える、作業機械。
【請求項14】
コンピュータ又は制御ユニット(10)によって実行された場合に、ステップ1乃至9のいずれか1つに記載の方法(100)又は請求項10に記載の方法(200)を前記コンピュータ又は前記制御ユニット(10)に実施及び/又は制御させるための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読データ担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧式のシリンダを動作させるための方法及び制御ユニットと、特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダによって動作させ得る作業ユニットを動作させるための方法及び制御ユニットとに関する。作業機械、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読データ担体も、本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
現代の作業機械により、自動化又は半自動化された作業プロセスの実施がますます可能となっている。その際、機能の内容は、多くの場合、ツールセンターポイント(TCP)に対する所望の軌道を自動的に追従することであり、又は、アシスト機能の場合には、運転者が所望の軌道を追従することを支援することである。この場合、例えば、データに基づいた閉ループ制御構造が使用される。
【0003】
液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットの絞りにわたる圧力差は、作業ユニットに作用する負荷に強力に依存しているので、作業ユニットの想定される作業領域を、純粋にデータに基づいたモデルによって完全にカバーするためのデータ生成コストは、非常に高いものとなっている。特に、種々異なる負荷のもとで訓練データを生成することが必要とされる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
第1の態様によれば、本発明は、特に移動式の作業機械の液圧式のシリンダを動作させるための方法に関する。
【0005】
本方法は、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値を、制御ユニットによって受信するステップを含む。
【0006】
本方法は、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットの弁制御パラメータの目標値を、運動パラメータの受信した目標値に依存して、制御ユニットによって特定するステップをさらに含む。この場合、弁制御パラメータの目標値は、物理的なモデルと、データに基づいたモデル、特に人工ニューラルネットワークとを使用して特定される。
【0007】
本方法は、液圧式のシリンダを動作させるための信号を、弁制御パラメータの特定された目標値に依存して、制御ユニットによって、特に間接的又は直接的に弁ユニットに出力するステップをさらに含む。
【0008】
第2の態様によれば、本発明は、特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダによって動作させ得る作業ユニット、特に液圧式のシリンダによって動作させることができるアタッチメントを動作させるための方法に関する。
【0009】
本方法は、作業ユニット、特にアタッチメントの目標位置を、制御ユニットによって受信するステップを含む。本方法は、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値を、作業ユニットの受信した目標位置に依存して、制御ユニットによって特定するステップをさらに含む。
【0010】
本方法は、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットの弁制御パラメータの目標値を、運動パラメータの受信した目標値に依存して、物理的なモデルと、データに基づいたモデルとを使用して、制御ユニットによって特定するステップをさらに含む。
【0011】
本方法は、液圧式のシリンダを動作させることによって、特に移動式の作業機械の作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための信号を、弁制御パラメータの特定された目標値に依存して、制御ユニットによって、特に間接的又は直接的に弁ユニットに出力するステップをさらに含む。
【0012】
第3の態様によれば、本発明は、特に移動式の作業機械の液圧式のシリンダを動作させるための制御ユニットに関する。制御ユニットは、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値を受信するように構成されている。制御ユニットは、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットの弁制御パラメータの目標値を、運動パラメータの受信した目標値に依存して、物理的なモデルと、データに基づいたモデルとを使用して特定するようにさらに構成されている。制御ユニットは、液圧式のシリンダを動作させるための信号を、弁制御パラメータの特定された目標値に依存して、特に間接的又は直接的に弁ユニットに出力するようにさらに構成されている。
【0013】
第4の態様によれば、本発明は、特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダによって動作させ得る作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための制御ユニットに関する。
【0014】
制御ユニットは、作業ユニット、特にアタッチメントの目標位置を受信するように構成されている。制御ユニットは、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値を、作業ユニットの受信した目標位置に依存して特定するようにも構成されている。制御ユニットは、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットの弁制御パラメータの目標値を、運動パラメータの受信した目標値に依存して、物理的なモデルと、データに基づいたモデルとを使用して特定するようにさらに構成されている。制御ユニットは、液圧式のシリンダを動作させることによって、特に移動式の作業機械の作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための信号を、弁制御パラメータの特定された目標値に依存して出力するようにさらに構成されている。
【0015】
第5の態様によれば、本発明は、作業機械、特に移動式の作業機械であって、作業ユニット、特にアタッチメントと、作業ユニット、特にアタッチメントを運動させるための少なくとも1つの液圧式のシリンダと、作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための上記の制御ユニットとを備える、作業機械に関する。
【0016】
さらなる態様によれば、本発明は、コンピュータ又は制御ユニットによって実行された場合に、本発明の第1の態様による方法及び/又は本発明の第2の態様による方法をコンピュータ又は制御ユニットに実施及び/又は制御させるための命令を含むコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品と、コンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読データ担体とに関する。コンピュータ可読データ担体又は機械可読データ担体は、例えば、半導体メモリ、ハードディスクメモリ又は光メモリのような記憶媒体であるものとしてよい。
【0017】
作業機械は、定置式の作業機械であるものとしてもよいし、又は、好ましくは移動式の作業機械であるものとしてもよい。作業機械は、建設業、農業、林業又は輸送業の目的のための作業機械であるものとしてよい。移動式の作業機械は、例えば、掘削機、ホイールローダ、ブルドーザ、荷役自動車、又は、高所作業車であるものとしてよい。定置式の作業機械は、例えば液圧式に駆動される産業用ロボットであるものとしてよい。
【0018】
作業機械の作業ユニットは、農業及び/又は林業及び/又は建設業の所定の領域を加工及び/又は処理するための作業ユニットであるものとしてもよいし、及び/又は、積み荷を運搬するための作業ユニットであるものとしてもよい。作業ユニットは、アタッチメントであるものとしてよい。作業ツールが、作業腕部、リフトフレーム、又は、リフトマストを含むことも想定される。
【0019】
アタッチメントは、例えば、バケット、ショベル、又は、作業ケージであるものとしてよい。アタッチメントは、作業機械の作業腕部、リフトフレーム、又は、リフトマストに配置可能である。
【0020】
液圧式のシリンダ又は液圧シリンダは、作業機械の作業ユニット又はアタッチメントと機械本体ユニットとの間に相対運動を生成するように構成されている。機械本体ユニットは、例えば作業ユニットの操作室及び/又は駆動ユニットを含む。機械本体ユニットは、例えば、掘削機の上部旋回体、又は、ホイールローダの下部走行体であるものとしてよい。すなわち、作業ユニット又はアタッチメントは、液圧式のシリンダによって、作業機械の機械本体ユニットに対して相対的に運動可能である。このために、液圧式のシリンダは、ハウジング及びピストンを含む。ピストンは、液圧式の流体、好ましくは作動液に圧力を印加することによって、ハウジングに対して相対的に運動可能であり、特にハウジングに抜き差し可能である。
【0021】
液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットは、弁ユニットを通過する作動液の事前に設定された及び/又は事前に設定可能な流量を調節するように、及び/又は、作動液に事前に設定された及び/又は事前に設定可能な圧力を印加するように構成されている。液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットは、液圧シリンダのピストンとハウジングとの間で相対運動を生成するように構成されている。
【0022】
弁ユニットは、1つ又は複数の弁を含み得る。弁は、電磁弁若しくは空圧式に操作可能な弁、又は、空圧弁として構成することが可能である。弁ユニットは、特に電磁式のパイロット弁と、好ましくはパイロット弁に対応付けられた、特に空圧式に操作可能な主弁とを含み得る。
【0023】
出力された信号に基づいて弁ユニットを制御することによって、液圧シリンダのピストンとハウジングとの間の相対運動を制御することができる。この相対運動は、作業機械における液圧式のシリンダの配置に基づいて、作業機械のアタッチメントと機械本体ユニットとの間の、特に作業機械のアタッチメントと作業腕部及び/又はリフトフレームとの間の相対運動を生成することができる。
【0024】
本発明の枠内における制御とは、入力量に基づいて出力量を生成するという意味での制御であると理解することが可能である。制御とは、さらに好ましくは、制御されるべき量の実際値を継続的に特定して、制御されるべき量の実際値と目標値とを継続的に比較するという意味で、閉ループ制御が含まれる制御であると理解することが可能である。
【0025】
制御ユニットは、好ましくは1つ又は複数の、特にカスケード式のコントローラを含む。制御ユニットは、作業機械に配置可能である。代替的に、制御ユニットは、作業機械から離隔した場所に、例えばサーババックエンド又はクラウドコンピューティングシステムに配置可能であるものとしてよく、無線通信接続を介して作業機械に接続可能であるものとしてよい。
【0026】
作業ユニットの目標位置は、作業ユニットが含まれる作業機械に対して相対的な、作業ユニットの空間的な相対位置であるものとしてもよいし、又は、外部の基準座標系、例えば全地球衛星航法システム、又は、位置検出センサユニットの基準座標系における空間的な位置であるものとしてもよい。アタッチメントの目標位置は、好ましくは、アタッチメントのツールセンターポイント(TCP)の空間的な位置である。作業ユニット又はアタッチメントの目標位置は、例えば、作業機械によって実施されるべき作業プロセスの作業ステップのために事前に設定可能である。アタッチメントの目標位置は、例えば、作業機械の機械本体ユニットに対して相対的な、アタッチメントの空間的な向きを含むこともあり得る。
【0027】
運動パラメータの目標値を、作業ユニットの目標位置に依存して特定することは、作業ユニット若しくはアタッチメントのための、又は、作業機械のための、ソフトウェアに基づいた軌道計画を用いて実施可能である。運動パラメータの目標値を特定することは、作業機械の運動学の少なくとも一部を考慮して実施可能である。
【0028】
液圧式のシリンダの運動パラメータは、液圧式のシリンダの運動のパラメータである。液圧式のシリンダの運動は、好ましくは液圧式のシリンダのピストンとハウジングとの間の相対運動である。液圧式のシリンダの運動は、一様に、すなわち、好ましくは均等に、加速された運動であるものとしてよい。
【0029】
液圧式のシリンダの運動パラメータは、速度及び/又は加速度であるものとしてよい。好ましくは、運動パラメータは、液圧式のシリンダのピストンとハウジングとの間の相対速度又は相対加速度である。運動パラメータは、速度及び/又は加速度の絶対値及び方向を含み得る。
【0030】
本発明の枠内における目標値を受信又は特定することは、少なくとも1つの目標値を受信又は特定することであると理解することが可能である。この場合、目標値は、事前に設定された及び/又は事前に設定可能な値、及び/又は、事前に特定された値である。好ましくは、目標値を受信又は特定することは、複数の目標値又は目標値の集合を受信又は特定することを含む。複数の目標値又は目標値の集合が、目標値の時間的なシーケンスを表すことも想定される。
【0031】
したがって、運動パラメータの目標値は、運動パラメータの値又は値の時間的な推移であり、この値又は値の時間的な時間推移に従って、液圧式のシリンダの運動が実施されるべきである。
【0032】
弁ユニットの弁制御パラメータは、弁ユニットの1つ又は複数の弁が制御される際の基礎となる、弁ユニットの1つ又は複数の弁のパラメータであるものとしてよい。弁制御パラメータは、電磁弁の弁通電又は電流強度であるものとしてよい。弁制御パラメータは、空圧式に操作可能な弁を操作する圧力であるものとしてもよい。さらに、弁制御パラメータは、弁ユニットの、例えば弁の弁絞りの開口面積のような幾何学的及び/又は流体的な弁パラメータであるものとしてよい。弁制御パラメータが、作業機械の操作要素、特にジョイスティックの姿勢であることも想定される。操作要素は、液圧式のシリンダの運動を制御するための手段として使用可能である。作業機械の操作要素の姿勢は、操作要素の位置又は状態であるものとしてよい。操作要素の姿勢又は位置又は状態に依存して、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットが、液圧式のシリンダを運動させるために制御される。このために、操作要素のそれぞれの姿勢に、弁ユニットを制御するためのそれぞれ1つの制御信号、又は、弁ユニットのそれぞれ1つの状態が対応付けられている。
【0033】
有利には、弁制御パラメータの目標値は、液圧式のシリンダ及び/又は作業機械の少なくとも1つのさらなるパラメータに依存して、特にその値に依存してさらに特定される。さらなるパラメータは、好ましくは運動パラメータとは異なるパラメータである。さらなるパラメータは、運動パラメータの時間導関数に相当することもできる。さらなるパラメータは、圧力、例えば液圧シリンダの作動流体の圧力であるものとしてよい。さらなるパラメータは、好ましくは液圧式のシリンダのピストン側における圧力と、液圧式のシリンダのロッド側における圧力との間の圧力差である。代替的又は追加的に、さらなるパラメータは、作業ユニットの負荷圧力と、作動流体に圧力を印加するためのポンプユニットによって提供される圧力との間の差である。さらなるパラメータが、液圧式のシリンダの作動流体の温度であることも想定される。さらなるパラメータが、作業機械のエンジンの回転数であることもさらに想定される。
【0034】
本願の枠内における物理的なモデルとは、1つ又は複数の物理的な方程式又は関数を使用して入力量を出力量にマッピングするように構成された数学的なモデル又は数学的なアルゴリズムであると理解することが可能である。1つ又は複数の物理的な方程式は、入力量と出力量との間の関係の基礎となる物理的な法則性を表し又は近似する。物理的なモデルを、システム理論の命名法に従ってホワイトボックスモデルと称することもできる。
【0035】
物理的なモデルの出力信号又は出力値を、本方法の妥当性検査のために使用することができる。出力値に関して、事前に設定された又は事前に設定可能な動的な閾値又は一定の閾値と比較し、この比較に依存してエラーモードをアクティブ化することが想定される。エラーモードがアクティブ化されている場合には、本方法を実施するための単純化されたモデルを使用することもさらに想定される。これにより、本方法のロバスト性を改善することができる。
【0036】
本発明の枠内におけるデータに基づいたモデルとは、訓練データを使用して入力量を出力量にマッピングするように構成された数学的なモデル又は数学的なアルゴリズムであると理解することが可能である。訓練データは、入力量の値と出力量の値との相関を表している。データに基づいたモデルは、好ましくは人工ニューラルネットワークとして構成されている。データに基づいたモデルを、システム理論の命名法に従ってブラックボックスモデルと称することもできる。特に、データに基づいた部分は、モデルのうちの非線形の部分、特にモデルのうちの、作業ユニットに作用する負荷に顕著に依存している部分を表すことができる。
【0037】
訓練データは、液圧シリンダの動作中、例えば液圧シリンダが含まれる作業機械の動作中に特定可能である。訓練データは、この場合、液圧シリンダの動作中に発生又は存在している値の組合せに相当する。
【0038】
データに基づいたモデルと、物理的なモデルとを組み合わせること、特に並行して又は順次に使用することを、システム理論の命名法に従ってグレーボックスモデル又はハイブリッドモデルと称することもできる。
【0039】
弁制御パラメータの目標値を特定する際には、データに基づいたモデルと、物理的なモデルとを、時間的に並行して又は時間的に順次に使用することができる。物理的なモデル、又は、データに基づいたモデルは、弁制御パラメータの目標値を特定するために使用されるコントローラのフィードフォワード制御部の一部であるものとしてよい。好ましくは、データに基づいたモデルと、物理的なモデルとは、弁制御パラメータの目標値を特定するために使用されるコントローラのフィードフォワード制御部の一部である。
【0040】
モデル化の目的は、非常に多種多様であるものとしてよい。例えば診断機能のために重要であるフィードフォワードの挙動と、例えば作業ユニットの閉ループ制御のために重要であるフィードバックの挙動との両方を、同様のデータ及び同様のモデル構造を用いてマッピング又はシミュレーションすることができる。
【0041】
制御ユニットは、好ましくは、特に移動式の作業機械に配置されている。制御ユニットが、作業機械から離隔した場所に配置されており、好ましくは無線通信接続を介して作業機械に接続可能であり又は接続されていることも想定される。
【0042】
本発明に係る方法及び対応する制御ユニットは、特に、移動式の作業機械の液圧式のシリンダの、又は、液圧シリンダによって運動させることができる作業ユニットの、自動化された動作における安全性及び信頼性を向上させる。複雑な液圧挙動を有していて、かつ、十分に詳細に説明された物理的なモデルによって特に大きいコストをかけてしか完全には記述することができないような作業機械のためにも、データに基づいたモデルを使用することによって、作業プロセスを(半)自動化することが可能となる。
【0043】
それと同時に、物理的なモデルを使用することによって、特に広大な作業領域又は広大なパラメータ空間を有する用途のための、データに基づいたモデルを訓練するためのコストが削減される。特に、さほど頻繁には発生しない作業領域において、又は、ほとんど訓練データが提供されないような作業領域において、本方法のロバスト性を向上させることができる。
【0044】
弁制御パラメータの目標値を特定するステップにおいて、
・運動パラメータの目標値に依存して、物理的なモデルの出力量が特定され、
・特定された出力量に依存して、データに基づいたモデルを使用して、弁制御パラメータの目標値が特定される
ものとすると有利である。すなわち、換言すれば、運動パラメータの目標値に依存して、物理的なモデルを使用して特定された出力量が、弁制御パラメータの目標値を特定するために、データに基づいたモデルのための入力量として提供される。物理的なモデルのための入力量は、好ましくは運動パラメータの目標値である。この実施形態により、さらなる影響量を考慮する際にも、運動パラメータの目標値をさらなる物理量へと決定論的に変換することができ、このさらなる物理量が、データに基づいたモデルにより、弁制御パラメータの目標値にマッピングされる。
【0045】
また、物理的なモデルの出力量として、弁ユニットの弁パラメータに関する、特に弁開口量に関する、又は、弁ユニットに対応付けられた体積流量に関する目標値が特定されるものとすると有利である。弁パラメータは、弁ユニットの弁の幾何学的及び/又は流体的なパラメータであるものとしてよい。この場合、物理的なモデルは、例えば弁ユニットの弁の絞りを通過する作動液の、圧力に依存する体積流量に関する絞り方程式を含み得る。この実施形態により、データに基づいたモデルに関する訓練コストを削減するために、わずかなコンピュータリソースにより実装することができる物理的な法則性を使用することが可能となる。
【0046】
さらに、弁制御パラメータの目標値を特定するステップにおいて、
・運動パラメータの目標値に依存して、データに基づいたモデルの出力量が特定され、
・弁制御パラメータの目標値が、特定された出力量に依存して、物理的なモデルを使用して特定される
ものとすると有利である。この場合、データに基づいたモデルの出力量として、弁開口量に関する、又は、弁ユニットに対応付けられた体積流量に関する目標値が特定されるものとすると有利である。すなわち、換言すれば、運動パラメータの目標値に依存して、データに基づいたモデルを使用して特定された出力量が、弁制御パラメータの目標値を特定するために、物理的なモデルのための入力量として提供される。データに基づいたモデルのための入力量は、好ましくは運動パラメータの目標値である。この実施形態により、運動パラメータの目標値をさらなる物理量へと変換することができ、このさらなる物理量が、物理的なモデルにより、さらなる影響量を考慮する際にも、弁制御パラメータの目標値に決定論的にマッピングされる。
【0047】
さらに、弁制御パラメータの目標値を特定するステップにおいて、
・物理的なモデルを使用して、出力量に関する第1の値が特定され、
・データに基づいたモデルを使用して、同一の出力量に関する第2の値が特定され、
・弁制御パラメータの目標値が、第1の値と第2の値との比較に基づいて特定される
ものとすると有利である。出力量は、好ましくは弁制御パラメータの目標値である。この場合、第2の値を、事前に設定された及び/又は事前に設定可能な値範囲によって制限することができる。特に、第2の値が値範囲外にある場合には、第2の値を値範囲の境界値に定めることができる。さらに、データに基づいたモデルを、圧力又は圧力差の入力又は供給なしに使用することができ、したがって、実質的に、定常的なシリンダモデルにおける誤差の補正が実施される。この実施形態により、ホワイトボックスモデル又はブラックボックスモデルを用いて特定された出力量の妥当性検査を実施することができ、これにより、弁制御パラメータの目標値を、より高い確実性で特定することが可能となる。
【0048】
さらに、弁制御パラメータの目標値を特定するステップにおいて、
・物理的なモデルと、データに基づいたモデルとを使用して、出力量に関する第1の値が特定され、
・さらなるデータに基づいたモデルを使用して、同一の出力量に関する第2の値が特定され、
・弁制御パラメータの目標値が、第1の値と第2の値との比較に基づいて特定される
ものとすると有利である。出力量は、好ましくは弁制御パラメータの目標値である。この実施形態により、グレーボックスモデルによって特定された出力量の妥当性検査を実施することができ、これにより、弁制御パラメータの目標値を、より高い確実性で特定することが可能となる。
【0049】
・作業機械が、少なくとも1つのさらなる液圧式のシリンダを含み、
・受信するステップにおいて、さらなる液圧式のシリンダのさらなる運動パラメータのためのさらなる目標値が、制御ユニットによって受信され、
・特定するステップにおいて、さらなる液圧式のシリンダに対応付けられたさらなる弁ユニットのさらなる弁制御パラメータのさらなる目標値が、受信したさらなる目標値に依存して、さらなる物理的なモデルと、さらなるデータに基づいたモデルとを使用して、制御ユニットによって特定され、その際、
・物理的なモデルと、データに基づいたモデルとを使用して、液圧式のシリンダのための出力量に関する第1の値が特定され、
・さらなる物理的なモデルと、さらなるデータに基づいたモデルとを使用して、さらなる液圧式のシリンダのためのさらなる出力量に関するさらなる第1の値が特定され、
・追加的なデータに基づいたモデルを使用して、液圧式のシリンダの出力量と、さらなる液圧式のシリンダのさらなる出力値とに関するそれぞれ1つの第2の値が特定され、
・弁制御パラメータのそれぞれの目標値が、それぞれの第1の値とそれぞれの第2の値との比較に基づいて特定され、
・出力するステップにおいて、弁制御パラメータの特定された目標値に依存して、液圧式のシリンダを動作させるための信号が出力される
ものとすると、特に有利である。この実施形態により、少なくとも2つの液圧式のシリンダごとの個々の追加的なデータに基づいたモデルにより、シリンダ同士の間の相互作用又は相関も考慮することが可能となり、このことにより、本方法の品質が向上させられる。
【0050】
さらに、弁制御パラメータの目標値が、速度コントローラを使用して特定され、速度コントローラが、物理的なモデルと、データに基づいたモデルとに基づいたフィードフォワード制御部を含むものとすると有利である。この実施形態により、本方法は、作業機械の液圧シリンダの速度の閉ループ制御を提供することが可能となり、この速度の閉ループ制御は、訓練されていない作業領域又はほとんど訓練されていない作業領域においても、訓練コストがわずかであると同時に精度が高いという点において優れている。
【0051】
以下においては、本発明を、添付の図面に基づいて例示的により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】作業機械の作業ユニットを動作させるための制御ユニットの概略図である。
【
図2】第1の実施形態によるモデルに基づいたフィードフォワード制御部の概略図である。
【
図3】第2の実施形態によるモデルに基づいたフィードフォワード制御部の概略図である。
【
図4a】ジョイスティック信号の時間分解図である。
【
図4b】ジョイスティック信号の時間分解図である。
【
図5】作業機械の液圧式のシリンダを動作させるための方法のフローチャートである。
【
図6】作業機械の作業ユニットを動作させるための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダ26によって動作させ得る作業ユニットを動作させるための制御ユニット10の概略図を示す。作業機械は、作業ユニットと、液圧式のシリンダ26と、液圧式のシリンダ26に対応付けられた弁ユニット24と、制御ユニット10とを含む。この場合、作業ユニットは、液圧式のシリンダによって動作させられ、特に作業機械の機械本体ユニットに対して相対的に運動させられる。
【0054】
作業機械は、例えば作業腕部として構成された作業ユニットが含まれる掘削機であるものとしてよい。作業腕部は、ブーム、アーム及びバケット、並びに、ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダを有する。シリンダの各々には、シリンダを運動させるための対応する弁ユニットが対応付けられている。
【0055】
制御ユニット10は、作業ユニットの目標位置xRを受信するように構成されている。この場合、目標位置xRは、作業ユニットの空間的な向きに関する情報をさらに含み得る。例えば、制御ユニット10は、掘削機のバケットのツールセンターポイント(TCP)の空間的な目標座標と、事前に設定された基準方向に対して相対的なバケットの角度とを受信するように構成することが可能である。
【0056】
目標位置xRは、作業ユニットの目標軌道の一部であるものとしてよい。目標軌道を、作業機械の操作員によって、及び/又は、作業機械のための目標軌道を生成するための計算ユニット12を用いて特定し、制御ユニット10に提供することが想定される。
【0057】
好ましくは、作業ユニットの目標位置x
Rは、制御ユニット10のポーズモジュール14に提供される。ポーズモジュール14は、好ましくはカスケードコントローラの一部として構成されており、作業ユニットの目標位置x
Rと、さらには作業ユニットの実際位置xを検出するセンサユニット28からの作業ユニットの実際位置xとを受信するように構成されている。さらに、ポーズモジュール14は、作業ユニットの目標位置x
Rと実際位置xとの偏差に基づいて、実際位置xを目標位置x
Rへと移行させることができるようにするための作業ユニットの目標速度
【数1】
を特定するように構成されている。例えば、ポーズモジュール14によってTCPの目標位置x
RとTCPの実際位置xとが受信され、この偏差に基づいてTCPの目標速度
【数2】
が計算される。
【0058】
制御ユニット10は、逆運動学モジュール16を含み、この逆運動学モジュール16は、作業ユニットの目標速度
【数3】
に基づいて、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値
【数4】
を特定するように構成されている。運動パラメータの目標値
【数5】
を特定することは、好ましくは作業機械の作業ユニットの運動学を考慮して、特に作業機械に関する逆運動学問題を解くことによって実施される。例えば、掘削機のTCPの目標速度
【数6】
に基づいて、ブームシリンダと、アームシリンダと、バケットシリンダとに関するそれぞれ1つの目標速度
【数7】
が計算される。
【0059】
制御ユニット10は、速度モジュール18を用いて、運動パラメータの目標値
【数8】
に依存して、液圧式のシリンダ26の弁制御パラメータの目標値uを特定するようにも構成されている。
【0060】
速度モジュール18は、好ましくは速度コントローラ18として構成されており、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値
【数9】
と運動パラメータの実際値
【数10】
とを受信するように構成されている。さらに、速度モジュール18は、運動パラメータの目標値
【数11】
と実際値
【数12】
との間の偏差に基づいて、弁制御パラメータの目標値uを特定するように構成されている。
【0061】
好ましくは、速度モジュール18は、弁制御パラメータの目標値uを特定する際に、以下の影響量:
・液圧式のシリンダ26の加速度の実際値
【数13】
・液圧式のシリンダ26のシリンダロッドにおける圧力の実際値、
・液圧式のシリンダ26のシリンダヘッドにおける圧力の実際値、
・シリンダロッドにおける圧力の実際値とシリンダヘッド26における圧力の実際値との間の差Δp
cyl、
・作業ユニットの負荷圧力の実際値、
・液圧式のシリンダ26を運動させる作動液に圧力を印加するための、液圧式のシリンダ26に対応付けられたポンプユニットのポンプ圧力の実際値、
・負荷圧力の実際値とポンプ圧力の実際値との間の差Δp
sys、
・作業機械の周囲の温度の実際値、及び/又は、オイル循環路内のエンジンオイルの温度の実際値
のうちの1つ又は複数を追加的に考慮するように構成されている。
【0062】
速度モジュール18は、好ましくはモデルに基づいたフィードフォワード制御部18a(feedforward control)を備えたPIコントローラを含む。これにより、PIコントローラの挙動が複雑かつ非線形である場合にも、PIコントローラのフィードバック制御部18b(feedback control)が外乱及びモデル誤差だけを考慮すればよいという点において、負担を軽減することができる。
【0063】
モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aは、液圧式のシリンダ26の運動パラメータと、それぞれの弁ユニットの弁制御パラメータとの間の関係に関する作業ユニットの逆挙動を表している。すなわち、換言すれば、モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aは、弁制御パラメータの事前に設定された値
【数14】
に基づいて、液圧式のシリンダ26の運動パラメータの値uを特定する。この場合、モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aは、物理的なモデルと、データに基づいたモデルとを使用して実施される。
【0064】
好ましくは、液圧式のシリンダ26の弁制御パラメータの目標値uを特定する際に、上記の影響量のうちの1つ又は複数、好ましくは特に、
【数15】
の組合せが追加的に考慮される。
【0065】
ブームシリンダと、アームシリンダと、バケットシリンダとを備えた掘削機の場合、制御ユニット10は、それぞれのシリンダに対応付けられた弁ユニットに関する弁制御パラメータのそれぞれ1つの目標値uを特定するために、PIコントローラとして構成されたそれぞれ1つの速度モジュール18を含む。この場合、PIコントローラの各々は、それぞれ1つの独自の、モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aを含む。
【0066】
弁制御パラメータの目標値uは、速度モジュール18の操作量として出力される。この場合、弁制御パラメータの目標値uは、特にフィードバック制御部18bの出力量uFBと、モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aの出力量uFFとの合計である。
【0067】
モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aは、
図2及び
図3に例示的に示されているように制御対象系の物理的なモデルと、データに基づいたモデルとに基づいている。すなわち、換言すれば、弁制御パラメータの特定されるべき目標値uは、液圧式のシリンダ26の速度パラメータの受信した目標値
【数16】
に基づいて、物理的なモデルと、データに基づいたモデルとを使用して特定される。
【0068】
制御ユニット10は、弁制御パラメータの特定された目標値uを、システム20に出力するようにさらに構成されている。システム20は、制御モジュール22と、弁ユニット24と、液圧式のシリンダ26とを含む。システム20は、速度コントローラ18の制御対象系を表している。
【0069】
制御モジュール22は、制御ユニット10から出力された信号に基づいて弁ユニット24を動作させるように構成されている。弁ユニット24は、制御モジュール22に出力された信号に応答して、液圧式のシリンダ26を運動させるために、弁ユニット24を通過する作動液の流量を調整するように構成されている。すなわち、換言すれば、弁制御パラメータの特定された目標値uに依存して弁ユニット24に信号を出力することにより、液圧式のシリンダ26が動作させられ、ひいては作業ユニットが運動させられる。
【0070】
作業機械に配置されたセンサ28のうちの1つ又は複数は、作業ユニットの実際位置xと、液圧式のシリンダ26の実際位置又は実際姿勢sと、好ましくは上記の影響量、特に、
【数17】
とを測定するように構成されている。この場合、センサ28には、好ましくは適当な、モデルに基づいたフィルタ30が対応付けられている。
【0071】
モデルに基づいたフィルタ30は、作業ユニットの実際位置xを、ポーズモジュール14及び逆運動学モジュール16に出力するように、かつ、液圧式のシリンダ26の実際位置又は実際位置sを、逆運動学モジュール16に出力するように、かつ、好ましくは上記の影響量、特に、
【数18】
を、速度モジュールに出力するように構成されている。
【0072】
図2は、モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aの第1の例示的な実施形態の図を示す。
【0073】
モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aは、制御対象系の逆モデルを表している。逆モデルは、この場合、物理的なモデル34と、データに基づいたモデル32とを含む。
【0074】
物理的なモデル34は、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値
【数19】
に、弁制御パラメータの目標値u
FFを対応付けるように構成されている。このために、物理的なモデル34は、第1のモジュール36を含み、この第1のモジュール36は、運動パラメータの目標値
【数20】
に基づいて、液圧式のシリンダの内部の増圧動特性を考慮又は無視して、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットを通過する作動液の体積流量の目標値Q
vlv,Rを特定するように構成されている。例えば、液圧式のシリンダのヘッドにおける作動液の体積流量の目標値Q
Hd,Rと、液圧式のシリンダのシリンダロッドにおける作動液の体積流量の目標値Q
Rd,Rとを計算することができる。物理的なモデル34は、体積流量の目標値Q
vlv,Rを特定する際に、液圧式のシリンダの増圧動特性を考慮するように構成された第1のモジュール36を含むものとしてもよい。
【0075】
液圧式のシリンダ26の増圧動特性が無視される場合には、シリンダ速度
【数21】
と、体積流量Q
vlv,Rとの間に、液圧式のシリンダ26のピストン面積に依存した定常的な関係が生じる。このような場合には、物理的なモデル34に、特に測定されたシリンダ圧力を提供することが必要とされない。
【0076】
物理的なモデル34は、第2のモジュール38を含み、この第2のモジュール38は、体積流量の特定された目標値Qvlv,Rに基づいて、弁ユニットの絞りの開口面積の目標値Avlv,Rを特定するように構成されている。
【0077】
好ましくは、物理的なモデル34は、絞りの開口面積の目標値Avlv,Rを特定する際に、シリンダロッドにおける圧力の実際値とシリンダヘッドにおける圧力の実際値との間の圧力差Δpcyl、及び/又は、負荷圧力の実際値とポンプ圧力の実際値との間の圧力差Δpsysを考慮するように構成されている。代替的に、物理的なモデル34は、絞りの開口面積の目標値Avlv,Rを特定する際に、例えば圧力センサが利用可能でない場合には、圧力差Δpcyl及び/又は圧力差Δpsysに関して、測定された値の代わりに事前に設定された及び/又は事前に設定可能な値を考慮するように構成することが可能である。
【0078】
物理的なモデル34は、第3のモジュール40をさらに含み、この第3のモジュール40は、絞りの開口面積の特定された目標値Avlv,Rに基づいて、弁制御パラメータに関する第1の出力値uFF,1を特定するように構成されている。物理的なモデル34の第3のモジュール40は、弁制御パラメータに関する第1の出力値uFF,1を特定する際に、弁ユニットの弁動特性を考慮するように構成することが可能である。
【0079】
データに基づいたモデル32は、人工ニューラルネットワーク32として構成されており、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値
【数22】
に、弁制御パラメータに関する第2の出力値u
FF,2を対応付けるように構成されている。
【0080】
好ましくは、データに基づいたモデル32は、弁制御パラメータに関する第2の出力値u
FF,2を特定する際に、以下の影響量:
・液圧式のシリンダの加速度の目標値
【数23】
及び又は実際値
【数24】
・液圧式のシリンダのシリンダロッドにおける圧力の実際値、
・液圧式のシリンダのシリンダヘッドにおける圧力の実際値、
・シリンダロッドにおける圧力の実際値とシリンダヘッドにおける圧力の実際値との間の差Δp
cyl、
・作業ユニットの負荷圧力の実際値、
・液圧式のシリンダを運動させる作動液に圧力を印加するための、液圧式のシリンダに対応付けられたポンプユニットのポンプ圧力の実際値、
・負荷圧力の実際値とポンプ圧力の実際値との間の差Δp
sys、
・作業機械の周囲の温度の実際値、及び/又は、オイル循環路内のエンジンオイルの温度の実際値
のうちの1つ又は複数を追加的に考慮するように構成されている。
【0081】
弁制御パラメータの、物理的なモデル34によって特定された第1の出力値uFF,1と、データに基づいたモデル32によって特定された第2の出力値uFF,2とに基づいて、フィードフォワード制御部18aによって弁制御パラメータの目標値uFFが出力される。好ましくは、弁制御パラメータの目標値uFFは、弁制御パラメータの、物理的なモデル34によって特定された第1の出力値uFF,1と、データに基づいたモデル32によって特定された第2の出力値uFF,2との合計として出力される。
【0082】
データに基づいたモデル32は、訓練方法によって訓練可能であり、この訓練方法においては、例えば
0=uFF-uFF,1-uFF,2
として残渣の形態で与えられる差に関する二乗平均平方根誤差(Root Mean Square Error)が特定される。この場合、第1の出力量uFF,1の値は、物理的なモデル34によって事前に設定されており、その一方で、第2の出力量uFF,2の値は、上記の二乗平均平方根誤差の値の最小化に関して、データに基づいたモデル32のパラメータを介して最適化される。
【0083】
速度コントローラ18の操作量、すなわち、弁制御パラメータの目標値uは、モデルに基づいたフィードフォワード制御部18aの出力量uFFに基づいて適合させられる。
【0084】
図3は、モデルに基づいたフィードフォワード制御部18a’の第2の例示的な実施形態の図を示す。
【0085】
図3のモデルに基づいたフィードフォワード制御部18a’は、さらなるデータに基づいたモデル42’が設けられており、かつ、物理的なモデルが、出力量として弁ユニットの絞りの開口面積の目標値A
vlv,Rを提供しているという点において、
図2のモデルに基づいたフィードフォワード制御部18aとは異なっている。
【0086】
すなわち、換言すれば、物理的なモデル34’は、第1のモジュール36’を含み、この第1のモジュール36’は、運動パラメータの目標値
【数25】
に基づいて、液圧式のシリンダの内部の増圧動特性を考慮又は無視して、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットを通過する作動液の体積流量の目標値Q
vlv,Rを特定するように構成されている。物理的なモデル34’は、第2のモジュール38’を含み、この第2のモジュール38’は、体積流量の特定された目標値Q
vlv,Rに基づいて、弁ユニットの絞りの開口面積の目標値A
vlv,Rを特定するように構成されている。
【0087】
さらなるデータに基づいたモデル42’は、絞りの開口面積の特定された目標値Avlv,Rに基づいて、弁制御パラメータの目標値uFFを特定するように構成されている。
【0088】
弁制御パラメータに関する、物理的なモデル34’と、さらなるデータに基づいたモデル42’とによって特定された第1の出力値uFF,1と、データに基づいたモデル32’によって特定された第2の出力値uFF,2とに基づいて、フィードフォワード制御部18a’によって弁制御パラメータの目標値uFFが出力される。好ましくは、弁制御パラメータの目標値uFFは、弁制御パラメータの、物理的なモデル34’と、さらなるデータに基づいたモデル42’とによって特定された第1の出力値uFF,1と、データに基づいたモデル32’によって特定された第2の出力値uFF,2との合計として出力される。
【0089】
データに基づいたモデル32’と、さらなるデータに基づいたモデル42’とは、この場合、並行する訓練方法によって訓練可能である。
【0090】
速度コントローラ18の操作量、すなわち、弁制御パラメータの目標値uは、モデルに基づいたフィードフォワード制御部18a’の出力量uFFに基づいて適合させられる。
【0091】
図4は、実際に走行される軌道が事前に設定されている場合における、データに基づいたモデル(32;32’)を使用して特定されたジョイスティック信号u
2(
図4a)と、データに基づいたモデルと物理的なモデルとを使用して特定されたジョイスティック信号u
3(
図4b)とを比較しながら、バケットのツールセンターポイントに対するTCP軌道の走行中における、掘削機の実際に測定されたジョイスティック信号u
1の時間分解図を示す。
【0092】
ジョイスティック信号uとは、この場合、弁制御パラメータuであると理解することが可能である。なぜなら、ジョイスティック信号uは、掘削機のブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダの弁ユニットの対応する駆動部に対応する、ジョイスティックの位置又は姿勢を表しているからである。
【0093】
図4a及び
図4bのデータに基づいたモデルは、訓練データの同一のデータ集合を用いて訓練された。この場合、訓練データは、シリンダロッドとシリンダヘッドとの間の種々異なる圧力差に対するTCP速度と、対応するジョイスティック位置とを含む。
【0094】
さらに、訓練データは、以下の量、すなわち、体積流量、絞り開口面積、弁スプール位置、シリンダ位置、シリンダ圧力、及び、これらの量の導関数のうちの1つ又は複数に関する値を含み得る。
【0095】
訓練データの生成時には、掘削機は、バケットが充填されていない状態で、すなわち、負荷なしで動作させられた。TCP軌道の走行中、バケットは、第1の時間間隔t1では充填されておらず、第2の時間間隔t2では充填されていた。したがって、第2の時間間隔t2でのシリンダロッドにおける圧力の実際値と、シリンダヘッドにおける圧力の実際値と間の圧力差は、第1の時間間隔t1とは顕著に異なっている。同様にして、第2の時間間隔t2での負荷圧力の実際値と、ポンプ圧力の実際値との間の圧力差も、第1の時間間隔t1とは顕著に異なっている。これにより、データに基づいたモデル(32;32’)を使用した場合には、格段により困難な条件が生じている。
【0096】
図4aと
図4bとを対比すると、液圧式のシリンダの動作時に、特にデータに基づいたモデルにとって不利な条件である場合に、データに基づいたモデル(32;32’)と、物理的なモデルとを使用することの利点が示されている。
【0097】
図4aは、第1の時間間隔t
1では、実際のジョイスティック信号u
1と、データに基づいたモデル(32;32’)を使用して計算されたジョイスティック信号u
2との間の一致が、第2の時間間隔t
2よりも格段により高いことを示しており、なお、第2の時間間隔t
2では、訓練データとは対照的にショベルが充填されている。
【0098】
図4bは、第1の時間間隔t
1では、実際のジョイスティック信号u
1と、データに基づいたモデルと物理的なモデルとを使用して計算されたジョイスティック信号u
3との間の一致が、第2の時間間隔t
2よりもより高いことを示している。しかしながら、第2の時間間隔t
2での偏差は、
図4aによる第2の時間間隔t
2での偏差よりも小さくなっている。なぜなら、バケットが積載されている状態と、バケットが積載されていない状態との間で顕著に異なっている圧力差の影響が、物理的なモデルによって考慮されているからである。
【0099】
第1の時間間隔t
1での実際のジョイスティック信号u
1と、データに基づいたモデルと物理的なモデルとを使用して計算されたジョイスティック信号u
3との間の偏差は、
図4aによる第1の時間間隔t
1での偏差と同等である。
【0100】
図5は、特に移動式の作業機械の液圧式のシリンダを動作させるための方法のフローチャートである。本方法には、全体として参照符号100が付されている。
【0101】
ステップ110においては、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値が、制御ユニットによって受信される。
【0102】
ステップ120においては、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットの弁制御パラメータの目標値が、運動パラメータの受信した目標値に依存して、物理的なモデルと、データに基づいたモデル(32;32’)とを使用して、制御ユニットによって特定される。
【0103】
ステップ130においては、液圧式のシリンダを動作させるための信号が、弁制御パラメータの特定された目標値に依存して、制御ユニットによって出力される。
【0104】
図6は、特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダによって動作させ得る作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための方法のフローチャートである。本方法には、全体として参照符号200が付されている。
【0105】
ステップ210においては、作業ユニット、特にアタッチメントの目標位置が、制御ユニットによって受信される。
【0106】
ステップ220においては、液圧式のシリンダの運動パラメータの目標値が、作業ユニットの受信した目標位置に依存して、制御ユニットによって特定される。
【0107】
ステップ230においては、液圧式のシリンダに対応付けられた弁ユニットの弁制御パラメータの目標値が、運動パラメータの受信した目標値に依存して、物理的なモデルと、データに基づいたモデル(32;32’)とを使用して、制御ユニットによって特定される。
【0108】
ステップ240においては、液圧式のシリンダを動作させることによって、特に移動式の作業機械の作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための信号が、弁制御パラメータの特定された目標値に依存して、制御ユニットによって出力される。
【0109】
ある実施例に、第1の特徴と第2の特徴との間の「及び/又は」の接続詞が含まれている場合には、このことは、その実施例が、ある実施形態によれば、第1の特徴及び第2の特徴も含み、さらなる実施形態によれば、第1の特徴のみ又は第2の特徴のみを含む、というように読解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に移動式の作業機械の液圧式のシリンダ(26)を動作させるための方法(100)であって、前記方法(100)は、以下のステップ、すなわち、
・前記液圧式のシリンダ(26)の運動パラメータの目標値
【数1】
を、制御ユニット(10)によって受信するステップ(110)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)に対応付けられた弁ユニット(24)の弁制御パラメータの目標値(u)を、前記運動パラメータの受信した前記目標値
【数2】
に依存して、物理的なモデル(34;34’)と、データに基づいたモデル(32;32’,42’)とを使用して、前記制御ユニット(10)によって特定するステップ(120)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)を動作させるための信号を、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して、前記制御ユニット(10)によって出力するステップ(130)と、
を備える、方法(100)。
【請求項2】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)を特定するステップ(120)において、
・前記運動パラメータの前記目標値
【数3】
に依存して、前記物理的なモデル(34;34’)の出力量(A
vlv,R)が特定され、
・特定された前記出力量(A
vlv,R)に依存して、前記データに基づいたモデル(42’)を使用して、前記弁制御パラメータの前記目標値(u)が特定される、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記物理的なモデル(34;34’)の出力量(A
vlv,R;Q
vlv,R)として、前記弁ユニット(24)の弁パラメータ(A
vlv,R;Q
vlv,R)に関する、特に弁開口量(A
vlv,R)に関する、又は、前記弁ユニット(24)に対応付けられた体積流量(Q
vlv,R)に関する目標値が特定される、
請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)を特定するステップ(120)において、
・前記運動パラメータの前記目標値
【数4】
に依存して、前記データに基づいたモデルの出力量が特定され、
・前記弁制御パラメータの前記目標値
(u)
が、特定された前記出力量に依存して、前記物理的なモデルを使用して特定される、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記データに基づいたモデルの出力量として、弁開口量(A
vlv,R)に関する、又は、前記弁ユニット(24)に対応付けられた体積流量(Q
vlv,R)に関する目標値が特定される、
請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)を特定するステップ(120)において、
・前記物理的なモデル(34)を使用して、出力量に関する第1の値(u
FF,1)が特定され、
・前記データに基づいたモデル(32)を使用して、同一の出力量に関する第2の値(u
FF,2)が特定され、
・前記弁制御パラメータの前記目標値(u)が、前記第1の値(u
FF,1)と前記第2の値(u
FF,2)との比較に基づいて特定される、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)を特定するステップ(120)において、
・前記物理的なモデル(34’)と、前記データに基づいたモデル(42’)とを使用して、出力量に関する第1の値(u
FF,1)が特定され、
・さらなるデータに基づいたモデル(32’)を使用して、同一の出力量に関する第2の値(u
FF,2)が特定され、
・前記弁制御パラメータの前記目標値(u)が、前記第1の値(u
FF,1)と前記第2の値(u
FF,2)との比較に基づいて特定される、
請求項
1に記載の方法(100)。
【請求項8】
・前記作業機械は、少なくとも1つのさらなる液圧式のシリンダ(26)を含み、
・前記受信するステップ(210a,210b,210c)において、前記さらなる液圧式のシリンダ(26)のさらなる運動パラメータのためのさらなる目標値
【数5】
が、前記制御ユニット(10)によって受信され、
・前記特定するステップ(220a,220b,220c)において、前記さらなる液圧式のシリンダ(26)に対応付けられたさらなる弁ユニット(24)のさらなる弁制御パラメータのさらなる目標値(u)が、受信した前記さらなる目標値
【数6】
に依存して、さらなる物理的なモデル(34;34’)と、さらなるデータに基づいたモデル(32;32’)とを使用して、前記制御ユニット(10)によって特定され、その際、
○前記物理的なモデル(34;34’)と、前記データに基づいたモデルとを使用して、前記液圧式のシリンダ(26)のための出力量に関する第1の値(u
FF,1)が特定され、
○前記さらなる物理的なモデル(34;34’)と、前記さらなるデータに基づいたモデルとを使用して、前記さらなる液圧式のシリンダ(26)のためのさらなる出力量に関するさらなる第1の値(u
FF,1)が特定され、
○追加的なデータに基づいたモデル(32;32’)を使用して、前記液圧式のシリンダ(26)の前記出力量と、前記さらなる液圧式のシリンダ(26)の前記さらなる出力
量とに関するそれぞれ1つの第2の値(u
FF,2)が特定され、
○前記弁制御パラメータのそれぞれの前記目標値(u)が、それぞれの前記第1の値(u
FF,1)とそれぞれの前記第2の値(u
FF,2)との比較に基づいて特定され、
・前記出力するステップ(130)において、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して、前記液圧式のシリンダ(26)を動作させるための信号が出力される、
請求項
1に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記弁制御パラメータの前記目標値(u)は、速度コントローラ(18)を使用して特定され、
前記速度コントローラ(18)は、前記物理的なモデル(34;34’)と、前記データに基づいたモデル(32;32’,42’)とに基づいたフィードフォワード制御部を含む、
請求項
1に記載の方法(100)。
【請求項10】
特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダ(26)によって動作させ得る作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための方法(200)であって、前記方法(200)は、以下のステップ、すなわち、
・前記作業ユニット、特に前記アタッチメントの目標位置(x
R)を、制御ユニット(10)によって受信するステップ(210)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)の運動パラメータの目標値
【数7】
を、前記作業ユニットの受信した前記目標位置に依存して、前記制御ユニット(10)によって特定するステップ(220)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)に対応付けられた弁ユニット(24)の弁制御パラメータの目標値(u)を、前記運動パラメータの受信した前記目標値
【数8】
に依存して、物理的なモデル(34;34’)と、データに基づいたモデル(32;32’,42’)とを使用して、前記制御ユニット(10)によって特定するステップ(230)と、
・前記液圧式のシリンダ(26)を動作させることによって、特に移動式の前記作業機械の前記作業ユニット、特に前記アタッチメントを動作させるための信号を、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して、前記制御ユニット(10)によって出力するステップ(240)と、
を備える、方法(200)。
【請求項11】
特に移動式の作業機械の液圧式のシリンダ(26)を動作させるための制御ユニットであって、前記制御ユニットは、
・前記液圧式のシリンダ(26)の運動パラメータの目標値
【数9】
を受信し、
・前記液圧式のシリンダ(26)に対応付けられた弁ユニット(24)の弁制御パラメータの目標値(u)を、前記運動パラメータの受信した前記目標値
【数10】
に依存して、物理的なモデル(34;34’)と、データに基づいたモデル(32;32’,42’)とを使用して特定し、
・前記液圧式のシリンダ(26)を動作させるための信号を、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して出力する
ように構成されている、制御ユニット。
【請求項12】
特に移動式の作業機械の、液圧式のシリンダ(26)によって動作させ得る作業ユニット、特にアタッチメントを動作させるための制御ユニット(10)であって、前記制御ユニット(10)は、
・前記作業ユニット、特に前記アタッチメントの目標位置(x
R)を受信し、
・前記液圧式のシリンダ(26)の運動パラメータの目標値
【数11】
を、前記作業ユニットの受信した前記目標位置に依存して特定し、
・前記液圧式のシリンダ(26)に対応付けられた弁ユニット(24)の弁制御パラメータの目標値(u)を、前記運動パラメータの受信した前記目標値
【数12】
に依存して、物理的なモデル(34;34’)と、データに基づいたモデル(32;32’,42’)とを使用して特定し、
・前記液圧式のシリンダ(26)を動作させることによって、特に移動式の前記作業機械の前記作業ユニット、特に前記アタッチメントを動作させるための信号を、前記弁制御パラメータの特定された前記目標値(u)に依存して出力する
ように構成されている、制御ユニット(10)。
【請求項13】
作業機械、特に移動式の作業機械であって、
作業ユニット、特にアタッチメントと、
前記作業ユニット、特に前記アタッチメントを運動させるための少なくとも1つの液圧式のシリンダ(26)と、
前記作業ユニット、特に前記アタッチメントを動作させるための請求項12に記載の制御ユニット(10)と、
を備える、作業機械。
【請求項14】
コンピュータ又は制御ユニット(10)によって実行された場合に、
請求項1に記載の方法(100)又は請求項10に記載の方法(200)を前記コンピュータ又は前記制御ユニット(10)に実施及び/又は制御させるための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読データ担体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
・作業機械が、少なくとも1つのさらなる液圧式のシリンダを含み、
・受信するステップにおいて、さらなる液圧式のシリンダのさらなる運動パラメータのためのさらなる目標値が、制御ユニットによって受信され、
・特定するステップにおいて、さらなる液圧式のシリンダに対応付けられたさらなる弁ユニットのさらなる弁制御パラメータのさらなる目標値が、受信したさらなる目標値に依存して、さらなる物理的なモデルと、さらなるデータに基づいたモデルとを使用して、制御ユニットによって特定され、その際、
・物理的なモデルと、データに基づいたモデルとを使用して、液圧式のシリンダのための出力量に関する第1の値が特定され、
・さらなる物理的なモデルと、さらなるデータに基づいたモデルとを使用して、さらなる液圧式のシリンダのためのさらなる出力量に関するさらなる第1の値が特定され、
・追加的なデータに基づいたモデルを使用して、液圧式のシリンダの出力量と、さらなる液圧式のシリンダのさらなる出力量とに関するそれぞれ1つの第2の値が特定され、
・弁制御パラメータのそれぞれの目標値が、それぞれの第1の値とそれぞれの第2の値との比較に基づいて特定され、
・出力するステップにおいて、弁制御パラメータの特定された目標値に依存して、液圧式のシリンダを動作させるための信号が出力される
ものとすると、特に有利である。この実施形態により、少なくとも2つの液圧式のシリンダごとの個々の追加的なデータに基づいたモデルにより、シリンダ同士の間の相互作用又は相関も考慮することが可能となり、このことにより、本方法の品質が向上させられる。
【国際調査報告】