(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ニコチンアミドリボシドクロリド(NRCL)の合成プロセス
(51)【国際特許分類】
C07H 19/048 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
C07H19/048
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568280
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022061950
(87)【国際公開番号】W WO2022233923
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】202121020313
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416058
【氏名又は名称】ボーハン アンド カンパニー エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルカンナガリ,ラマニ
(72)【発明者】
【氏名】ガンダプネニ,ラーガバ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ボーハン,フロード
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA17
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL05
4C057LL41
(57)【要約】
本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリド(NRCl)の合成に関する。より詳細には、本発明は、非晶質形態のNRClを合成するための費用効果が高く、工業的に拡張可能なプロセス記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アセトンまたはアセトニトリル中、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下で、ニコチンアミドまたは3-シアノピリジンでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドまたはトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを得ること;および、
b)アルコール性溶媒中、HClの存在下で、前記トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドまたは前記トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること;
を含む、ニコチンアミドリボシドクロリドを調製するための方法。
【請求項2】
a)アセトン中、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下、ニコチンアミドでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること;および、
b)アルコール性溶媒中、無水HClの存在下、前記トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること;
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)アセトニトリル中、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下、3-シアノピリジンでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを得ること;および、
b)アルコール性溶媒中、HClの存在下で前記トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2,3,4,5-テトラ-O-アセチル-D-リボースの前記塩素化はまた、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびC4~C6ケトン溶媒からなる群から選択される溶媒中で行われ得る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塩素化反応は、0~5℃の温度範囲で好都合に行われ得る、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の前記反応は、0℃~50℃の温度範囲で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
溶媒中で使用される前記乾燥HClまたは無水HClは、溶媒中に吸収された新たに調製された乾燥HClもしくは無水HCl、または溶媒中に吸収された市販の乾燥HClもしくは無水HClからなる群から選択され得、
前記溶媒は、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
リボース四酢酸対ニコチンアミドのモル比は、1:0.5~2.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)で使用することができるアルコール性溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、および他のC4~C6アルコール性溶媒からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記有機塩基は、DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)、TBA、またはN-アルキルピロリジンから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の前記反応は、0~25℃の温度範囲で行われ得る、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
a)ジクロロメタンまたはジクロロエタンから選択される溶媒中、TMSOTfの存在下で、3-シアノピリジンでリボース四酢酸(RTA)を処理することによりトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートを調製すること;および
b)加水分解後、エタノール/水中のHClを用いて、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること;
を含む、ニコチンアミドリボシドクロリドを調製するための方法。
【請求項13】
上記で得られたニコチンアミドリボシドクロリドは、非晶質形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリド(NRCl)の合成に関する。より詳細には、本発明は、非晶質形態のNRClを合成するための費用効果が高く、工業的に拡張可能なプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドリボシドならびにニコチンアミドリボシドクロリドおよびニコチンアミドモノヌクレオチドなどのその誘導体は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の代謝産物である。NAD+前駆体として、ニコチンアミドリボシドは酸化代謝の増強を示し、マウスの高脂肪食誘導性肥満から保護し、ニコチンアミドリボシドおよびその誘導体に大きな関心が寄せられた。ニコチンアミドリボシドは天然に存在する化合物であるため、ニコチンアミドリボシドおよびその誘導体は、副作用を引き起こすことなく天然の栄養補助食品として大きな可能性を有する。ニコチンアミドリボシドおよびその誘導体の商業的利用における1つの限界は、ニコチンアミドリボシドおよびその誘導体を調製するための既知の合成方法がいくつかの欠点を有し、それらを商業的または工業的使用のためのスケールアップに適さないようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1は、ニコチンアミドリボシドのトリフラート塩形態を介してニコチンアミドリボシドおよびその誘導体を調製する方法を記載している。したがって、ニコチンアミドリボシドのトリフラート塩形態は、その関連する毒性のために栄養補助食品ではない。したがって、これらの化合物は、逆相液体クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーなどの方法を使用して、トリフラートアニオンを薬学的に許容可能な他のアニオンと交換するための追加の工程を必要とし、それによって製造プロセスのコストが増大する。さらに、クロマトグラフィー条件下でのニコチンアミドリボシドの不安定な性質を考慮すると、副生成物の生成により、純度および収率が低下する可能性がある。
【0004】
特許文献1(実施例1および2)は、還流下でCH2Cl2中のトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)の存在下で、1,2,3,5-テトラ-o-アセチル-β-D-リボフラノースをニコチン酸エチルと反応させて、化合物2’,3’,5’-トリアセチルエチルニコチンリボシド(エチルl-[3,4-ジアセチルオキシ-5-(アセチルオキシメチル)オキソラン-2-イル]-ピリジン-3-カルボキシレート)を生成することによる、ニコチンアミドリボシドの調製を記載しており、これを脱アセチル化し、メタノール性アンモニア中でアミド化してニコチンアミドリボシド(NR)をもたらし、続いて逆HPLCを使用して精製する。しかしながら、これらの実施例は、得られた生成物が純粋であると言及しているが、純度も収率も報告されていない。合成を以下のスキーム1に示す。
【0005】
【0006】
同様の手順は、特許文献2(実施例1~3、
図3)に記載されており、ここでは、5当量のTMSOTfの存在下でのヘキサメチルジシラザン(HMDS)中のビス-シリル化ニコチンアミド(ニコチンアミドおよびトリメチルシリルクロリド(TMSCl)から調製)とリボース四酢酸とのカップリングが記載されている。この場合も、薬学的に許容可能な塩化物塩への変換は、いくつかの追加の工程を必要とする。
【0007】
ニコチンアミド誘導体と保護リボースとの間のTMSOTf媒介カップリングは、非特許文献1~3に記載されている。これらの方法は、TMSOTfを触媒として使用することによって必然的にトリフラート塩の調製をもたらし、イオン交換のさらなる工程をもたらすという欠点を有する。
【0008】
特許文献3は、NRClを合成するための他のプロセスを開示しており、トリ-O-アセチルリボフラノシルクロリドを得るための1,2,3,5-テトラ-アセチル-D-リボフラノースの塩素化が、塩化アセチルまたはアセトニトリルに溶解したHClを任意に使用して反応溶媒としてジクロロメタンを使用してクロロ誘導体を得ることと、続いて、アセトニトリル中トリブチルアミンの存在下でニコチンアミドとカップリングさせて、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドを得ることと、によってジオキサンに溶解したHClの存在下で行われることが報告されており、これをさらにメタノール性アンモニアまたはジエチルアミンの存在下で加水分解して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得る。このプロセスは、1,4-ジオキサンおよびアセトニトリルなどの高価な溶媒を伴うため、ニコチンアミドリボシドクロリドの全合成のコストを増大させ、それにより、これらの溶媒の使用は、このプロセスの工業規模での実施を不可能にする。トリアセチルニコチンアミドリボシドの脱アセチル化は、メタノール中のジエチルアミンの溶液を使用して、長時間にわたる反応時間(36時間)での極低温条件(-3℃)を必要とする。HClを用いた反応塊からの生成物の再生は緩慢であり、低~中程度の収率をもたらす。
【0009】
他の先行技術(非特許文献4)において、トリ-O-アセチルリボフラノシルクロリドを得るための1,2,3,5-テトラ-アセチル-D-リボフラノースの塩素化は、エーテル性乾燥HClの存在下、0℃で行われる。しかしながら、エーテルは、その高い揮発性および関連する安全性の問題のために、工業的使用のためのスケールアップに適した溶媒ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2007/061798号公報
【特許文献2】国際公開第2015/014722号公報
【特許文献3】国際公開第2019/006262号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Franchetti,P.et al,Bioorg.Med.Chem.Lett.2004,14,4655-4658
【非特許文献2】Tanimori,S.et al,Bioorg.Med.Chem.Lett.2002,12,1135-1137
【非特許文献3】Yang,T.et al,J.Med.Chem.2007,50,6458-6461.
【非特許文献4】Journal of Chemical Sciences,1948,967
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記から明らかなように、先行技術は、消費に適したニコチンアミドリボシドを作るためにトリフラートを適切な対イオンで置換するためのイオン交換クロマトグラフィーのような追加の工程、プロセスの工業的使用のためのスケールアップを実行不可能にする塩素化工程での高価な溶媒の使用、脱アセチル化プロセスのための極低温条件の必要性、クロマトグラフィー技術を用いたニコチンアミドリボシドクロリドの精製の困難さと相まったアセチル基の不完全な加水分解による収率の減少などの多くの欠点を抱えている。
【0013】
したがって、当技術分野では、ニコチンアミドリボシドクロリドを製造するための費用効果が高く、非常に効率的で、工業的に拡張可能なプロセスを開発する必要性が依然として存在する。
【0014】
上記に照らして、本発明の目的は、ニコチンアミドリボシドクロリドを調製するための工業的に実行可能で費用効果の高いプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
上記の目的に沿って、本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの調製方法を提供し、方法は、
a)アセトンまたはアセトニトリル中、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下、ニコチンアミドまたは3-シアノピリジンでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドまたはトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを得ること;および、
b)アルコール性溶媒中、HClの存在下、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドまたはトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること、を含む。
【0016】
したがって、好ましい態様において、本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの調製方法を提供し、方法は、
a)アセトン中、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下、ニコチンアミドでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること;および、
b)アルコール性溶媒中、HClの存在下、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること、を含む。
【0017】
他の好ましい態様において、本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの調製方法を提供し、方法は、
a)アセトニトリル中、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下、3-シアノピリジンでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを得ること;および、
b)アルコール性溶媒中、HClの存在下、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること、を含む。
【0018】
さらに他の好ましい態様において、本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの調製方法を提供し、方法は、
a)ジクロロメタンまたはジクロロエタン中、TMSOTfの存在下、3-シアノピリジンでリボース四酢酸(RTA)を処理することによりトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートを調製すること;および、
b)加水分解後、エタノール/水中のHClを用いて、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ることと、を含む。
【0019】
他の態様において、本発明の方法によって得られるニコチンアミドリボシドクロリドは、非晶質固体の形態である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
ここで、本発明を、その様々な態様がより完全に理解および認識され得るように、特定の好ましいおよび任意選択の実施形態に関連して詳細に説明する。別段の指定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明を説明するために、特定の用語は、本明細書では以下のように具体的に定義される。
【0021】
そうではないと述べられていない限り、「含む(including)」、「含む(includes)」、「含む(comprising)」、および「含む(comprises)」という語のいずれも「限定されないが含む(including without limitation)」を意味し、特定のまたは類似の項目に続く一般的な記述を限定すると解釈されるべきではない。
【0022】
したがって、一実施形態において、本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの調製方法を提供し、方法は、
a)アセトンまたはアセトニトリル中、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下、ニコチンアミドまたは3-シアノピリジンでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドまたはトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを得ること;および、
b)アルコール性溶媒中、HClの存在下、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドまたはトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること、を含む。
【0023】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、ニコチンアミドリボシドの調製方法を提供し、方法は、
a)アセトン中、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下、ニコチンアミドでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること;および、
b)アルコール中、HClの存在下、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること、を含む。
【0024】
【0025】
リボース四酢酸(RTA)の塩素化もまた、t-BuOMe(MTBE)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-メチル-THF)、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトニトリル、アセトンおよび1,4-ジオキサンなどの他の溶媒中で試験された。アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびC4~C6の他のケトン溶媒は、試験した他の溶媒よりも優れていることが分かったが、アセトンを溶媒として使用すると、より高い変換率および優れた純度が得られた。この変換のためのアセトンの使用に伴う利点は、上記の変換のためのジオキサンのような報告された溶媒と比較して、費用対効果の高い工業用溶媒であることである。さらに、アセトンを塩素化に使用する場合、利点は、ニコチンアミドとの後続のカップリング工程をその場で行うことができることである。したがって、アセトンがこの変換における好ましい溶媒である。
【0026】
したがって、好ましい実施形態の1つにおいて、1-クロロ-2,3,5トリ-O-アセチル-β-D-リボースを得るための2,3,4,5テトラ-O-アセチル-D-リボースの塩素化、および1-クロロ-2,3,5トリ-O-アセチル-β-D-リボースとニコチンアミドとのカップリング反応は、適切な溶媒としてアセトンを使用してワンポットで行われる。
【0027】
他の実施形態において、本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの調製方法を提供し、ここで、1-クロロ-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボースを得るための2,3,4,5-テトラ-O-アセチル-D-リボースの塩素化、および1-クロロ-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボースとニコチンアミドとのカップリング反応は、適切な溶媒としてアセトンを使用して異なるポットで行われ得る。このプロセスでは、中間体1-クロロ-2,3,5トリ-O-アセチル-β-D-リボースを単離し、続いてニコチンアミドと反応させることができる。
【0028】
一実施形態において、塩素化反応は、0~5℃の温度範囲で好都合に行うことができる。
【0029】
他の実施形態において、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドのインサイチュー合成は、0℃~50℃の温度範囲で好都合に行うことができる。
【0030】
他の実施形態において、溶媒中で使用される乾燥HClまたは無水HClは、溶媒中に吸収された、新たに調製された乾燥HClもしくは無水HCl、または溶媒中に吸収された、市販の乾燥HClもしくは無水HClからなる群から選択され得、ここで、溶媒は、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される。
【0031】
さらなる実施形態において、リボース四酢酸対ニコチンアミドのモル比は、1:0.5~2.0の比である。
【0032】
1-クロロ-2,3,5トリ-O-アセチル-β-D-リボースとニコチンアミドとのカップリング反応については、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、およびトリイソペンチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルピロリジン、およびテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などの各種有機塩基が検討されている。しかしながら、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、TBAまたはN-アルキルピロリジンなどの塩基が最良の結果を与えた。
【0033】
したがって、他の実施形態において、カップリング反応に使用することができる有機塩基は、DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)、TBAまたはN-アルキルピロリジンから選択される。
【0034】
一実施形態において、トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドまたはトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドまたはトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートの脱アセチル化に使用することができるアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコールおよび他のC4~C6アルコール溶媒からなる群から選択される。
【0035】
本発明によれば、アセトン中のD-リボース四酢酸の冷却された(0℃)反応混合物を、撹拌下で無水HClガスと反応させた。得られた混合物を0~5℃でさらに4~5時間撹拌した。完全に変換したら、窒素ガスを反応混合物中に10~15分間パージし、0~5℃でアセトン中のニコチンアミドを仕込み、次いで、同じ温度でDIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)をゆっくり添加し、得られた反応混合物を25~50℃の温度範囲で同じ温度で少なくとも20時間撹拌した。完了したら、反応塊を15~20℃に冷却し、次いで濾過してウェットケーキを回収し、これを吸引下で冷却アセトンでさらに洗浄した。得られたウェットケーキを真空下30℃で乾燥させて、トリアセチル-NRClを得た。
【0036】
上記の変換のためのアセトンの使用に伴う利点は、ジオキサンなどの報告された溶媒と比較して、費用対効果の高い工業用溶媒であることである。アセトンはまた、より低い温度で清浄な反応を促進し、さらなる後処理を排除し、それによってそれに関連するコストを低減させる。アセトンは、反応媒体ならびに精製溶媒として二重の役割を果たす。報告されたプロセスとは異なり、この方法は精製のために追加の溶媒を必要としない。
【0037】
次の段階では、トリアセチル-NRClの脱アセチル化を、HClガスのエタノール溶液またはメタノール溶液と0~5℃で最大24時間撹拌しながら反応させることによって行った。TLCによって示されるように完全に変換した後、反応塊を濾別し、メタノールに溶解させ、0~5℃で2~3時間撹拌した。反応終了後、生成物を濾過により単離し、アセトンで洗浄した。得られたウェット塊を真空下30℃で約2~3時間乾燥させて、ニコチンアミドリボシドクロリドを定量的収率で得た。
【0038】
脱アセチル化反応について試験されたHCl、HBrおよびHIのような様々な脱アセチル化剤の中で、メタノールおよびエタノール中のHClが最良の結果をもたらした。調査したメタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、ジエチルエーテルおよびジオキサンのような異なる溶媒のうち、エタノールおよびメタノールが最良の結果をもたらした。さらに、本発明者らは、メタノール性アンモニア、エチルアミン、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、およびジイソブチルアミンなどの様々なアルカリ性脱アセチル化剤の有効性も評価した。しかしながら、この反応について試験した全ての脱アセチル化剤の中で、エタノール性HClおよびメタノール性HClが、この変換について試験した全ての脱アセチル化剤の中で最良の変換率をもたらした。
【0039】
本発明による脱アセチル化反応は、先行技術とは異なり、いかなる極低温条件も必要とせず、0~5℃で容易に行われて、NRClを定量的収率で得ることができる。極低温条件(-5から-7℃)を使用する脱アセチル化反応[Lee J,Churchil H,Choi W-B,Lynch J E,Roberts F E,Volante R P,Reider P J.Chem Commun.1999:729-730.doi:10.1039/a809930h]は、工業規模での極低温条件の適用が困難であるため、先行技術の方法における限界であった。したがって、本発明は、溶媒としてメタノールまたはエタノールなどのアルコール中の無水HClを使用することによって脱アセチル化プロセスを単純化し、反応は0~5℃で行われた。また、従来の方法は、脱アセチル化剤として無水アンモニアまたはジアルキルアミンの使用を含み、アセトアミドまたはジアルキルアミドが副生成物であった。したがって、アセトアミドまたはジアルキルアミンおよび他の副生成物を除去するために、面倒な後処理および精製方法が必要であった。しかしながら、本方法では、無水HClを脱アセチル化剤として使用したため、脱アセチル化中に形成される副生成物は酢酸エチルであり、これは揮発性で環境に優しい溶媒であり、したがって単純な蒸留または蒸発によってより容易に最終生成物から除去することができる。
【0040】
さらに、クロマトグラフィー技術による精製は、NRClの合成における他の課題であり、これは、0~5℃でメタノールまたはエタノールなどの容易に入手可能な溶媒を使用する精製によって解決される。
【0041】
他の好ましい実施形態において、本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの調製方法を提供し、方法は、
a)アセトニトリル中、0℃で、乾燥HClで処理し、続いて有機塩基の存在下、3-シアノピリジンでクロロ誘導体をインサイチューカップリングすることによりリボース四酢酸(RTA)を塩素化して、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを得ること;および、
b)HCl/アルコールの存在下で、HClの存在下、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを脱アセチル化して、β-ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること、を含む。
【0042】
この実施形態によるプロセスをスキーム3に示す。
【化3】
【0043】
上記スキーム3に従って、2,3,4,5-テトラ-O-アセチル-D-リボースの塩素化を、アセトニトリルの存在下、0~5℃で、乾燥HClで処理することによって行った。アセトニトリルの使用に伴う利点は、その後の3-シアノピリジンとのカップリング工程をその場で行うことができることである。したがって、アセトニトリルは、スキーム3によるこの変換における好ましい溶媒である。
【0044】
第2のステップでは、TBAまたはDIPEAから選択される有機塩基中、アセトニトリルの存在下で、クロロ誘導体を3-シアノピリジンとカップリングさせて、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドを得た。
【0045】
第3のステップにおいて、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドは、40℃で、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール性溶媒中HCl(メタノール、エタノールまたはイソプロパノール中塩酸)の存在下で脱アセチル化および加水分解を受けて、NRClを高収率で得る。
【0046】
他の好ましい実施形態において、本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの調製方法を提供し、方法は、
a)ジクロロメタンまたはジクロロエタン中、TMSOTfの存在下、3-シアノピリジンでリボース四酢酸(RTA)を処理することによりトリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートを調製すること;および、
b)加水分解後、エタノール/水中のHClを用いて、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートを脱アセチル化して、ニコチンアミドリボシドクロリドを得ること、を含む。
【0047】
この実施形態によるプロセスをスキーム4に示す。
【化4】
【0048】
上記の方法に従って、1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-β-D-リボフラノースを室温で撹拌しながら乾燥ジクロロメタン中で3-シアノピリジンと反応させ、次いで、TMSOTfの溶液を室温でゆっくり添加した。添加が完了した後、混合物を還流下、45℃で10~12時間加熱した。反応の進行をTLCでモニターし、反応の完了後、溶媒を除去し、粗生成物を1:1MeOH/ヘキサンで抽出し、トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートを無色液体としてメタノール層から回収した。
【0049】
トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドトリフラートの溶液を、EtOH:H2O(1:1)中のHCl(40mmol)で40℃にて12時間処理することによって、同時に加水分解および脱アセチル化した。完了後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をアセトンで希釈し、固体を濾過し、乾燥させて粗NRClを得、これをアセトンから精製して純粋な非晶質NRClを得た。
【0050】
一実施形態において、このようにして本発明の方法によって得られたニコチンアミドリボシドクロリドは、スキーム2、スキーム3およびスキーム4に示されるように、非晶質固体の形態である。
【0051】
したがって、本発明に記載されるようなプロセスは、改善された収率、より清浄な反応プロファイルのようないくつかの利点を提供し、合成プロセスならびに精製段階におけるアセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールのような容易に入手可能な低コストの工業用溶媒の使用を可能にし、それによって全合成を費用対効果が高く、工業的に拡張可能なものにする。
【0052】
以下の実施例は、実験条件を用いて本発明をさらに説明するために提示され、これらは純粋に例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1:
段階1パート-A:無水HClを用いたD-リボース四酢酸(RTA)の塩素化
【化5】
【0054】
D-リボース四酢酸(100g)を250mLのアセトン(2.5vol)に溶液した溶液を1L丸底フラスコに入れ、室温で撹拌した。溶液を0℃に冷却し、次いで、無水HClガス(18.3g、1.6当量)を反応混合物に30分間にわたって通した。得られた混合物を0~5℃でさらに4~5時間撹拌した。反応の進行をTLC(1:1、EtOAc:ヘキサン)およびGC(IPC限界:GCによるRTAの含有量はNMT5%である)によってモニターした。
【0055】
段階1パート-B:トリ-O-アセチルβ-ニコチンアミドリボシドクロリドの合成
【化6】
【0056】
段階1パート-Aの完全な変換時に、窒素ガスを反応混合物に10~15分間パージし、0~5℃で100mLのアセトン(1vol)中のニコチンアミド(38.4g、1.0当量)を仕込み、次いで、同じ温度でDIPEA(40.6g、1.0当量)をゆっくり添加した。得られた混合物を25~30℃で、同じ温度で20時間にわたって撹拌した。反応の進行をTLC(1:9、MeOH:DCM)およびHPLC(IPC限界:HPLCによるニコチンアミドの含有量はNMT2%である)によってモニターした。完了したら、反応塊を0℃に冷却し、次いで、濾別してウェットケーキを回収し、これを吸引下で冷却アセトン(500mL)でさらに洗浄した。得られたウェットケーキを真空下、30℃で2~3時間乾燥させて、所望のトリアセチル-NRClを得た。
【0057】
収量:湿重量:57g、乾燥重量:50g、理論収量:130g
溶融範囲:136~142℃。
1H NMR(400MHz,D2O)δ 9.45(s,1H),9.22(d,J=6.3Hz,1H),9.01(d,J=8.1Hz,1H),8.30(dd,J=7.9,6.4Hz,1H),6.61(d,J=3.8Hz,1H),5.58(dd,J=5.3,4.0Hz,1H),5.46(t,J=5.4Hz,1H),4.95-4.88(m,1H),4.54(d,J=1.9Hz,2H),2.20-2.05(m,9H)。
13C NMR(101MHz,D2O)δ173.29,172.40,172.34,165.47,146.19,143.08,140.40,135.24,134.14,128.56,97.28,82.56,76.33,69.32,62.57,20.15,19.81,19.78。
C17H21N2O8のHRMS計算値:381.1302、実測値381.1310
【0058】
段階2:EtOH中の無水HClを用いたトリアセチル-NRClの脱アセチル化
【化7】
【0059】
0℃の1L丸底フラスコ中の300mLエタノール(3vol)中のトリアセチル-NRCl(100g)の撹拌溶液に、無水HClガス(28.3g、3当量)を添加した。得られた溶液を25℃で24時間にわたって撹拌した。TLC(2:8、MeOH:DCM)によって示される完全な変換後、反応塊を濾別し、次いで、アセトン(300mL)に溶解した。25℃で2~3時間撹拌し、次いで、濾過し、アセトン(100mL)で洗浄した。得られたウェット塊を真空下、30℃で2~3時間乾燥させて、NRClを非晶質固体として得た。
【0060】
収量:湿重量53g、乾燥重量:47g、理論収量:69g
溶融範囲:125~128℃。
1H NMR(400MHz,D2O)δ9.53(s,1H),9.20(d,J=6.3Hz,1H),9.04-8.77(m,1H),8.21(dd,J=8.0,6.4Hz,1H),6.18(d,J=4.4Hz,1H),4.43(dt,J=7.2,4.0Hz,2H),4.29(t,J=4.7Hz,1H),3.98(dd,J=12.9,2.9Hz,1H),3.83(dd,J=12.9,3.6Hz,1H)。
13C NMR(101MHz,D2O)δ165.76,145.58,142.59,140.36,133.91,128.30,99.86,87.59,77.37,69.69,60.08。
C11H15N2O5のHRMS計算値:255.1023、実測値255.0982
【0061】
実施例2:
HClでのパージによるD-リボース四酢酸(RTA)の塩素化
【化8】
【0062】
段階-1
段階Iの合成プロセス:
25~30℃で清浄で乾燥したRBFに、撹拌しながら穏やかな窒素雰囲気下、25~30℃で、室温でアセトン(容量:250ml)lot-1を投入した。アセトンを穏やかな窒素下で0~5℃に冷却した。反応塊(重量:196g)を秤量し、乾燥塩酸をパージして、5℃未満で18.3gのHCl重量を得るまで反応塊に入れた。反応塊(重量:214.34g)を秤量した(HClアッセイは8.4%である)。0~5℃でD-リボース四酢酸(D-RTA)(重量:100g)を投入した。反応塊を0~5℃でさらに15分間維持した。反応物を8~10℃に加温し、反応塊を4時間維持した。注釈:反応塊は30分後に透明溶液になる。試料をGCによって出発物質含有量について分析した(注釈:D-RTA含量5%未満)。反応塊を0~5℃に冷却し、中程度の窒素を15分間パージした。0~5℃でニコチンアミド(38.27gmまたは1.0当量のD-RTA)を投入した。DIPEA、(重量27.61gまたは0.68当量)lot-1を0~5℃で添加した。反応物を8~10℃に加温し、反応塊を15分間維持した。反応物を38~43℃に加温し、反応塊を16~18時間維持した。試料をHPLCにより生成物含量(ニコチンアミドリボシドアセテート)について分析した。16時間の試料分析により、生成物純度:33~35%、ニコチンアミド:36~38%、未知不純物:21~23%であることが示された。反応塊を15~20℃に冷却した。15~20℃で、塩基lot-2(重量:15gまたは0.37当量)を投入した(注釈:未反応のニコチンアミドに基づいて塩基量を算出する)。反応塊を15~20℃でさらに1~2時間連続して撹拌した。塊を濾過し、底(bed)を0.5volのアセトン(容量:50ml)lot-2で洗浄した。吸引し、真空を用いて底(bed)を15~20分間乾燥させた。丸底フラスコに材料を入れず、30-35℃で2時間真空下で材料を乾燥させ、LOD含有量およびHPLC純度を確認した。
【0063】
ニコチンアミドリボシドトリアセテートクロリド(NRT-Cl)の収量:乾燥重量として50g
ニコチンアミドリボシドアセテートのHPLC純度:97.05%
【0064】
【0065】
段階IIの合成プロセス:
25~30℃の清浄で乾燥したRBFに、25~30℃でメタノール(容量:250mlまたは5容量)lot-1を投入した。メタノールを0~5℃に冷却した。反応塊(重量:198g)を秤量した。5℃未満で反応塊中に18.87gまたは4.3当量のHCl重量を得るまで、乾燥塩酸を反応塊中にパージした。反応塊(重量216.86g)を秤量した(HClアッセイは10.4%である)。段階Iから得られたように、0~5℃でニコチンアミドリボシドトリアセテートクロリド(NRT-Cl、重量:50g)を投入した。0~5℃で10~12時間、反応塊を維持した(注釈:反応塊は、2~3時間後に透明溶液になり、6~7時間後に固体が再形成される)。試料をHPLCによって出発物質含有量、NRT-Clについて分析した(注釈:NRT-Cl含有量は1%未満であるべきである)。固体を濾過し、窒素下、冷却したメタノール(25mlまたは0.5容量)lot-2で底(bed)を洗浄した(注釈:ニコチンアミドリボシドクロリド(NRCl):92~95%およびニコチンアミド:2~3%)。
【0066】
精製:
0~5℃で冷却したメタノール(75mlまたは1.5容量)lot-3を投入した。NRClを0~5℃で投入し、0~5℃で1~2時間撹拌した。固体を濾過し、窒素下、冷却したメタノール(25mlまたは0.5容量)lot-4で底(bed)を洗浄した。底(bed)を真空下で15~20分間吸引乾燥した。非晶質材料を丸底フラスコに入れず、材料を真空下で30~35℃で2時間乾燥させた。(注釈:HPLC純度が仕様を満たさない場合、精製工程を繰り返す必要がある。)
【0067】
ニコチンアミドリボシドクロリドの収量:乾燥重量23.5g
ニコチンアミドリボシドクロリドのHPLC純度:98.59%
【0068】
実施例3:
HClシリンダーを用いたD-リボース四酢酸(RTA)の塩素化
【0069】
【0070】
段階-1
段階Iの合成プロセス:
25~30℃の清浄で乾燥したRBFに、アセトン(容量:250ml)lot-1を、撹拌しながら穏やかな窒素雰囲気下、25~30℃で、室温で投入した。アセトンを穏やかな窒素下で0~5℃に冷却した。反応塊(重量:196g)を秤量した。5℃未満で反応塊中に18.3gのHCl重量を得るまで、HClシリンダーから反応塊中に乾燥塩酸を通した。反応塊(重量:214.34g)を秤量した(HClアッセイは8.4%である)。0~5℃でD-リボース四酢酸(D-RTA)(重量:100g)を投入した。反応塊を0~5℃でさらに15分間維持した。反応物を8~10℃に加温し、反応塊を4時間維持した。(注釈:反応塊は30分後に透明溶液になる)。試料をGCによって出発物質含有量について分析した。(注釈:D-RTA含有量5%未満)。反応塊を0~5℃に冷却し、中程度の窒素を15分間パージした。0~5℃でニコチンアミド(38.27gmまたは1.0当量のD-RTA)を投入した。DIPEA、(重量27.61gまたは0.68当量)lot-1を0~5℃で添加した。反応物を8~10℃に加温し、反応塊を15分間維持した。反応物を38~43℃に加温し、反応塊を16~18時間維持した。試料をHPLCにより生成物含量(ニコチンアミドリボシドアセテート)について分析した。16時間の試料分析により、生成物純度:33~35%、ニコチンアミド:36~38%、未知不純物:21~23%であることが示された。反応塊を15~20℃に冷却した。15~20℃で、塩基lot-2(重量:15gまたは0.37当量)を投入した。(注釈:塩基量は、未反応のニコチンアミドに基づいて計算される)。塊の撹拌を15~20℃でさらに1~2時間続けた。塊を濾過し、底(bed)を0.5volのアセトン(容量:50ml)lot-2で洗浄した。吸引し、真空を用いて底(bed)を15~20分間乾燥させ、非晶質材料を丸底フラスコ中で取り出し、材料を真空下、30~35℃で2時間乾燥させ、LOD含有量およびHPLC純度を確認した。
【0071】
ニコチンアミドリボシドトリアセテートクロリド(NRT-Cl)の収量:乾燥重量として51g
ニコチンアミドリボシドアセテートのHPLC純度:96.05%
【0072】
【0073】
段階IIの合成プロセス:
25~30℃の清浄で乾燥したRBFに、25~30℃でメタノール(容量:250mlまたは5容量)lot-1を投入した。メタノールを0~5℃に冷却した。反応塊(重量:198g)を秤量した。5℃未満で反応塊中に18.87gまたは4.3当量のHCl重量を得るまで、HClシリンダーから反応塊中に乾燥塩酸を通した。反応塊(重量216.86g)を秤量した(HClアッセイは10.4%である)。段階Iから得られた0~5℃のニコチンアミドリボシドトリアセテートクロリド(NRT-Cl、重量:51g)を投入した。反応塊を0~5℃で10~12時間維持した(注釈:反応塊は2~3時間後に透明溶液になり、6~7時間後に固体が再形成される)。試料をHPLCによって出発物質含有量、NRT-Clについて分析した。(注釈:NRT-Cl含有量は1%未満であるべきである)。固体を濾過し、窒素下、冷却したメタノール(25mlまたは0.5容量)lot-2で底(bed)を洗浄した。(注釈:ニコチンアミドリボシドクロリド(NRCl):92~95%およびニコチンアミド:2~3%)。
【0074】
精製:
0~5℃で冷却したメタノール(75mlまたは1.5容量)lot-3を投入した。NRClを0~5℃で投入し、0~5℃で1~2時間撹拌した。固体を濾過し、窒素下、冷却したメタノール(25mlまたは0.5容量)lot-4で底(bed)を洗浄した。底(bed)を真空下で15~20分間吸引乾燥し、非晶質材料を丸底フラスコに入れず、材料を真空下で30~35℃で2時間乾燥させた。(注釈:HPLC純度が仕様を満たさない場合、必要なHPLC純度を得るまで精製工程を繰り返す必要がある。)
【0075】
ニコチンアミドリボシドクロリドの収量:乾燥重量として24.4g
ニコチンアミドリボシドクロリドのHPLC純度:98.43%
【0076】
実施例4:
段階IIにおける市販のメタノール性HClの使用
【0077】
【0078】
段階-1
段階Iの合成プロセス:
25~30℃の清浄で乾燥したRBFに、アセトン(容量:250ml)lot-1を、撹拌しながら穏やかな窒素雰囲気下、25~30℃で、室温で投入した。アセトンを穏やかな窒素下で0~5℃に冷却した。反応塊(重量:196g)を秤量した。5℃未満で反応塊中に18.3gのHCl重量を得るまで、HClシリンダーから反応塊中に乾燥塩酸を通した。反応塊(重量:214.34g)を秤量した(HClアッセイは8.4%である)。0~5℃でD-リボース四酢酸(D-RTA)(重量:100g)を投入した。反応塊を0~5℃でさらに15分間維持した。反応物を8~10℃に加温し、反応塊を4時間維持した。(注釈:反応塊は30分後に透明溶液になる)。試料をGCによって出発物質含有量について分析した。(注釈:D-RTA含有量5%未満)。反応塊を0~5℃に冷却し、中程度の窒素を15分間パージした。0~5℃でニコチンアミド(38.27gmまたは1.0当量のD-RTA)を投入した。DIPEA、(重量27.61gまたは0.68当量)lot-1を0~5℃で添加した。反応物を8~10℃に加温し、反応塊を15分間維持した。反応物を38~43℃に加温し、反応塊を16~18時間維持した。試料をHPLCにより生成物含量(ニコチンアミドリボシドアセテート)について分析した。16時間の試料分析により、生成物純度:33~35%、ニコチンアミド:36~38%、未知不純物:21~23%であることが示された。反応塊を15~20℃に冷却した。15~20℃で塩基lot-2(重量:15gまたは0.37当量)を投入した(注釈:塩基量は、未反応のニコチンアミドに基づいて計算される)。塊を15~20℃でさらに1~2時間撹拌し続けた。塊を濾過し、底(bed)を0.5volのアセトン(容量:50ml)lot-2で洗浄した。吸引し、真空を用いて底(bed)を15~20分間乾燥させた。丸底フラスコに材料を入れず、30-35℃で、2時間真空下で材料を乾燥させ、LOD含有量およびHPLC純度を確認した。
【0079】
ニコチンアミドリボシドトリアセテートクロリド(NRT-Cl)の収量:乾燥重量として51g
ニコチンアミドリボシドアセテートのHPLC純度:96.3%
【0080】
【0081】
段階IIの合成プロセス:
25~30℃の清浄で乾燥したRBFに、25~30℃で容易に入手可能なメタノール-HCl(容量:262mlまたは5.2容量)lot-1を投入した。メタノール-HClを0~5℃に冷却した。反応塊を秤量した(重量216.86g、HClアッセイは10.4%である)。段階Iから得られた0~5℃のニコチンアミドリボシドトリアセテートクロリド(NRT-Cl、重量:51g)を投入した。反応塊を0~5℃で10~12時間維持した(注釈:反応塊は2~3時間後に透明溶液になり、6~7時間後に固体が再形成される。試料をHPLCによって出発物質含有量、NRT-Clについて分析した。注釈:NRT-Cl含有量は1%未満であるべきである)。固体を濾過し、窒素下、冷却したメタノール(25mlまたは0.5容量)lot-2で底(bed)を洗浄した。(注釈:ニコチンアミドリボシドクロリド(NRCl):92~95%およびニコチンアミド:2~3%)。
【0082】
精製:
0~5℃で冷却したメタノール(75mlまたは1.5容量)lot-3を投入した。NRClを0~5℃で投入し、0~5℃で1~2時間撹拌した。固体を濾過し、窒素下、冷却したメタノール(25mlまたは0.5容量)lot-4で底(bed)を洗浄した。底(bed)を真空下で15~20分間吸引乾燥した。非晶質材料を丸底フラスコに入れず、材料を真空下で30~35℃で2時間乾燥させた。(注釈:HPLC純度が仕様を満たさない場合、必要な純度を得るまで上記の精製工程を繰り返す必要がある。)
【0083】
ニコチンアミドリボシドクロリドの収量:乾燥重量として24.5g
ニコチンアミドリボシドクロリドのHPLC純度:98.30%以上
【0084】
実施例5:
3-シアノピリジンを用いたNRClの合成
【化14】
【0085】
乾燥ジクロロメタン(100mL)中の1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-β-D-リボフラノース(3.18g、10mmol)および3-シアノピリジン(1.56、15mmol)の混合物をアルゴン雰囲気下、室温で撹拌し、次いで、TMSOTf(2.22g、10mmol)の溶液を、シリンジを用いて室温でゆっくり添加した。添加が完了した後、混合物を還流下、45℃で10~12時間加熱した。反応の進行をTLC(5:0.3:0.05 EtOAc/MeOH/トリエチルアミン溶離液)でモニターし、10%H2SO4/MeOHを含むTLCプレートを可視化した。出発リボース四酢酸が完全に消失し、生成物が単一のUV活性スポットとして出現した後、溶媒を除去し、粗生成物を1:1MeOH/ヘキサン(5×100mL)で抽出した。n-ヘキサン層を分離し、メタノール層を濃縮して、3.23gの生成物4aを収率89%で無色液体として得た。
【0086】
【0087】
4a(3.63g、10mmol)のHCl(40mmol)を含むEtOH:H2O(8:2)の溶液を、40℃で12時間撹拌した。完了後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をアセトンで希釈し、固体を濾過し、乾燥させて粗NRClを得、これをアセトンから精製して、NRClの純粋な非晶質固体(2.16g)を白色固体として収率85%で得た。
【0088】
実施例6:
段階I:無水HClを用いたD-リボース四酢酸(RTA)の塩素化
【化16】
【0089】
D-リボース四酢酸(10g、31.5mmol)を25mLのアセトニトリル(2.5vol)に溶液した溶液を250mL丸底フラスコに入れ、室温で撹拌した。溶液を0℃に冷却し、次いで、無水HClガス(18.3g、1.6当量)を反応混合物に30分間にわたって通した。得られた混合物を0~5℃でさらに3時間撹拌した。反応の進行をTLC(1:1、EtOAc:ヘキサン)およびGC(IPC限界:GCによるRTAの含有量はNMT5%である)によってモニターした。
【0090】
段階II:
トリ-O-アセチルβ-ニコチノニトリルリボシドクロリドの合成
【化17】
【0091】
段階1の完全な変換時に、窒素ガスを反応混合物に10~15分間パージし、3-シアノピリジン(3.27g、1.0当量)を含む10mLのアセトニトリル(1vol)を0~5℃で投入し、次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、4.0g、1.0当量)またはトリブチルアミン(TBA、5.82g、1.0当量)を同じ温度でゆっくり添加した。得られた混合物を25℃で、同じ温度で15時間にわたって撹拌した。反応の進行をTLC(5:0.3:0.05 EtOAc/MeOH/トリエチルアミン溶離液)でモニターし、10%H2SO4/MeOHを含むTLCプレートを可視化した。出発リボース四酢酸が完全に消失し、生成物が単一のUV活性スポットとして出現した後、溶媒を除去し、粗生成物を1:1MeOH/ヘキサン(5×100mL)で抽出した。n-ヘキサン層を分離し、メタノール層を濃縮して、4.0gの生成物4aを収率35%で無色液体として得、これをさらに特徴づけすることなく次の工程で使用した。
【0092】
段階III:4aの加水分解/脱アセチル化
【化18】
【0093】
4a(3.63g、10mmol)のHCl(40mmol)を含むEtOH:H2O(8:2)の溶液を、40℃で12時間撹拌した。完了後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をアセトンで希釈し、固体を濾過し、乾燥させて粗NRClを得、これをアセトンから精製して、NRClの純粋な非晶質固体(1.7g)を白色固体として収率70%で得た。
【0094】
産業上の利点:
本発明では、アセトンを、1,2,3,5-テトラ-O-アシル-D-リボフラノースの塩素化およびニコチンアミドとのカップリング反応のための溶媒として初めて使用した。さらに、アセトンは、スキーム2において、トリアセチル-NRClの合成における反応および精製の両方に使用されている。
【0095】
スキーム3に示すように、アセトニトリルを、1,2,3,5-テトラ-O-アシル-D-リボフラノースの塩素化およびその後の3-シアノピリジンとの反応のための溶媒として使用した。
【0096】
2,3,5-トリアセチル-NRClの脱アセチル化は、0~25℃の温度でメタノールまたはエタノールまたはイソプロパノール中のHClを使用して初めて行われ、それにより、極低温条件の必要性が回避された。この反応では、メタノールまたはエタノールまたはイソプロパノールが、NRClの合成における反応および精製の両方のための溶媒として作用する。
【0097】
この方法は、リボース四酢酸(RTA)の塩素化および2,3,5-トリアセチル-NRClの脱アセチル化の両方のために、費用対効果の高いアセトン、メタノールおよびエタノールのような溶媒ならびにHClのような試薬を使用するため、商業的に実行可能である。この方法はまた、スキーム2に示すように塩素化およびニコチンアミドとのカップリング反応の両方のためにアセトンのような溶媒を使用するインサイチュー反応、またはスキーム3に示すようにアセトニトリルによっても実現可能である。
【0098】
第1の工程でアセトンを使用すると、方法が費用効果的になり、それは反応および精製のための溶媒として使用される。第2のステップでは、メタノールまたはエタノールを反応および精製に使用したが、これは、複数の溶媒を反応および精製に使用した以前の報告とは逆のものである。
【0099】
この方法は、スキーム3に示されるように、塩素化および3-シアノピリジンとのカップリング反応の両方のためのアセトニトリルのような溶媒、ならびにリボセトラアセテート(RTA)の塩素化および2,3,5-トリアセチル-NRClの脱アセチル化の両方のためのHClのような試薬を使用するインサイチュー反応によって商業的に実現可能である。
【0100】
本プロセスは、2段階のプロセスである。全プロセスにおいて、反応溶媒として、および精製のために2つの溶媒のみを使用した。
【0101】
また、従来の方法は、脱アセチル化剤として無水アンモニアまたはジアルキルアミンを使用することを含み、アセトアミドまたはジアルキルアミドが副生成物であった。したがって、アセトアミドまたはジアルキルアミンおよび他の副生成物を除去するために、面倒な後処理および精製方法が必要であった。しかしながら、本方法では、無水HClを脱アセチル化剤として使用したため、脱アセチル化中に形成される副生成物は酢酸エチルであり、これは揮発性で環境に優しい溶媒であり、簡単な後処理によって最終生成物から容易に除去され得る。
【0102】
従来の方法では、脱アセチル化のために極低温条件(-5~-7℃)を使用した。しかしながら、本発明における脱アセチル化反応は0~25℃で行った。
【0103】
したがって、本発明は、より清浄な反応プロファイル、改善された収率、高い選択性および純度、ならびに単純な後処理および精製をもたらし、それによってプロセスが費用効果的かつ工業的に拡張可能となる。
【0104】
アセトニトリルまたはアセトン中のTMSOTfまたは無水HClを使用したリボース四酢酸(D-RTA)および3-シアノピリジンからのNRCl合成の第1の例が本発明に開示されており、これはNRCl合成のための新規アプローチである。NRClの合成において3-シアノピリジンを使用することには、いくつかの利点があり、それは操作の単純さ、収率の改善および高いβ選択性を含む。
【国際調査報告】