(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】プロセス蒸気の供給方法およびプロセス蒸気を使用するためのプロセスエンジニアリングプラント
(51)【国際特許分類】
F03G 4/00 20060101AFI20240412BHJP
F01D 15/08 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
F03G4/00 501
F01D15/08 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568337
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022059937
(87)【国際公開番号】W WO2022233554
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021111918.9
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502155482
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツァー フェルデルング デア アンゲヴァンテン フォーシャング アインゲトラーゲナー フェアアイン
【氏名又は名称原語表記】FRAUNHOFER-GESELLSCHAFT ZUR FORDERUNG DER ANGEWANDTEN FORSCHUNG E.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ブット
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン クルート
(57)【要約】
地熱を使用して、プロセス、特にプロセスエンジニアリングプロセス、のためのプロセス蒸気(22)を供給する方法が記載および図示されている。気候により優しく、より簡素で、より効率的な、且つより経済的な、稼働を可能にするために、地熱源において加熱された熱流体(3)の地熱を使用して地熱蒸気(6)を供給し、アップグレード用蒸気(12、16)を使用して地熱蒸気(6)をアップグレードし、このアップグレード中に地熱蒸気(6)の圧縮と加熱とが同時に行われる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱を使用して、プロセス、特にプロセスエンジニアリングプロセス、のためのプロセス蒸気(22)を供給する方法であって、地熱蒸気(6)を供給するために、地熱源において加熱された熱流体(3)の地熱が使用され、前記地熱蒸気(6)をアップグレードするために、アップグレード用蒸気(12、16)が使用され、アップグレード中に前記地熱蒸気(6)の圧縮および加熱が同時に行われる、方法。
【請求項2】
前記地熱蒸気(6)をアップグレードするために、前記地熱蒸気(6)の圧力および温度より高い圧力および高い温度を有する前記アップグレード用蒸気(12、16)が使用される、および/または前記アップグレード用蒸気と前記地熱蒸気とがアップグレード中に混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記地熱蒸気(6)は、蒸気噴流圧縮機(18)における直接的な熱交換によって、前記アップグレード用蒸気(12、16)によって、および/または前記アップグレード用蒸気(12、16)によって駆動されるタービン(27)を備えた圧縮機によって、加熱および圧縮され、好ましくは、前記タービン(27)によって駆動されるターボチャージャ(26)のターボ圧縮機(29)が圧縮機として使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮機を出た後の前記地熱蒸気(6)を更に加熱および圧縮するために、前記タービン(17)を出た後の部分的に膨張した前記アップグレード用蒸気(12、16)が蒸気噴流圧縮機(18)を駆動するために使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記タービン(17)を出た後の部分的に膨張した前記アップグレード用蒸気(12、16)と前記ターボ圧縮機(29)を出た後のアップグレードされた前記地熱蒸気(6)とが混合室(30)において混合され、好ましくは、前記部分的に膨張したアップグレード用蒸気(12、16)と前記アップグレードされた地熱蒸気(6)とは、前記混合室(30)における混合前に、少なくともほぼ同じ圧力を有している、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記熱流体(3)は、間接的な熱交換によって、地熱を水に伝達し、好ましくは、前記水(17)は、前記熱流体(3)との前記間接的な熱交換によって、少なくとも部分的に蒸発して地熱蒸気(6)を生じさせる、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱流体(3)、または前記地熱によって加熱された、および/または部分的に蒸発した、前記水(17)は、蒸発器(5)において、特に完全に、蒸発して地熱蒸気(6)を生じさせる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アップグレード用蒸気(12、16)は、化石燃料(24)、バイオガス、バイオマス(9、14)、および/または廃棄物、の燃焼によって生成される、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも60℃、少なくとも80℃、特に少なくとも100℃、および/または最大220℃、好ましくは最大180℃、特に最大140℃、の温度を有する前記加熱された熱流体(3)は、地熱蒸気(6)を供給するために使用される、および/または前記地熱蒸気(6)は、アップグレード前、少なくとも60℃、少なくとも80℃、特に少なくとも100℃、および/または最大220℃、好ましくは最大180℃、特に最大140℃、の温度を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記地熱蒸気(6)は、前記アップグレード中に、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも50℃、特に少なくとも100℃、加熱される、および/または、前記地熱蒸気(6)は、前記アップグレード中に、少なくとも1バール、好ましくは少なくとも2バール、特に少なくとも3バール、圧縮される、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の地熱を使用して供給されるプロセス蒸気(22)を使用するための、特に製紙用の、プロセスエンジニアリングプラント(1)であって、熱流体(3)を地中の地熱源の地熱によって加熱するための、および前記熱流体(3)の前記地熱を使用して地熱蒸気(6)を供給するための、地熱ステーション(2)と、アップグレード用蒸気(12、16)の源と、前記アップグレード用蒸気(12、16)によって前記地熱蒸気(6)の圧縮および加熱を同時に行うためのアップグレード化デバイスと、を備えたプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項12】
前記アップグレード用蒸気(12、16)の前記源は、前記地熱蒸気(6)の圧力および温度より高い圧力および温度を有するアップグレード用蒸気を供給するための源であること、および/または前記アップグレード化デバイスは、蒸気噴流圧縮機(18)、および/または、前記地熱蒸気(6)を加熱および圧縮するための前記アップグレード用蒸気(12、16)によって駆動されるタービン(27)を備えた圧縮機、を備えること、および、好ましくは、前記圧縮機は、前記タービン(27)によって駆動されるターボチャージャ(26)のターボ圧縮機(29)であること、を特徴とする、請求項9に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項13】
前記ターボ圧縮機(29)において加熱および圧縮された前記地熱蒸気(6)を更に加熱および圧縮するために、前記タービン(27)を出た、前記部分的に膨張したアップグレード用蒸気(12、16)を蒸気噴流圧縮機(18)に供給するための接続ライン(31)が設けられていることを特徴とする、請求項10に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項14】
地熱を水(17)に伝達するために、前記熱流体(3)と間接式熱交換器とを備えた熱回路が設けられていること、および/または、特に地熱によって加熱された前記水(17)からの、前記地熱蒸気(6)を供給するための蒸発器(5)が設けられていること、を特徴とする、請求項10または11に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項15】
前記熱交換器(23)は、前記水(17)を少なくとも部分的に蒸発させて前記地熱蒸気(6)を供給するための前記蒸発器(5)の一部であることを特徴とする、請求項12に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項16】
前記地熱蒸気(6)および/または前記アップグレード用蒸気(12、16)を供給するために、化石燃料(24)および/またはバイオマス(9、14)を燃料とする蒸発器(5)が設けられていることを特徴とする、請求項9~13の何れか一項に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地熱を使用して、プロセス、特にプロセスエンジニアリングプロセス、のためのプロセス蒸気を供給する方法に関する。更に、本発明は、地熱を使用して供給されるプロセス蒸気を使用するための、特に製紙用の、プロセスエンジニアリングプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
地熱とは、地表より下に熱の形態で存在するエネルギーを指す。地表下400mまでの深さの地熱源が使用される場合、それは浅部地熱エネルギーと称され、更に深い場合は、深部地熱エネルギーと称される。深部地熱エネルギーの可能な用途は、熱水システムと岩盤熱システムとに分けられる。熱水システムでは、自然に発生する温かい地下水が使用される。岩盤熱システムでは、主に、例えば深部地熱プローブによって、または岩盤への水の注入によって、岩盤に貯蔵されているエネルギーが使用される。多くの場合、使用可能な地熱の温度レベルは低いので、建物の暖房または冷房にしか使用されていない。ただし、場所によっては、プロセスエンジニアリングプラントに使用するためのプロセス蒸気を地熱から抽出できるほど、温度が高い。
【0003】
このコンテキストにおいては、蒸発器において熱水を使用した間接的熱交換によって水をプロセス蒸気に変換する方法が公知である。その後、このプロセス蒸気をプロセスエンジニアリングプラントにおいて使用できる。ただし、これには、プロセス蒸気の温度レベルより高い温度レベルの熱水を利用できる必要がある。ただし、熱水の温度は、多くの場合、この目的のためには十分でないので、熱水の温度レベルより高い温度レベルのプロセス蒸気を供給するために、さまざまな方法が提案されている。例えば、所望の温度レベルのプロセス蒸気を供給するために、フラッシュタンク内で熱水を膨張させて蒸気を生じさせ、化石燃料を燃焼させて熱水または蒸気を加熱することが公知である。あるいは、フラッシュタンク内で生じた蒸気を必要なプロセス蒸気温度に加熱できる、または機械的圧縮によって必要なプロセス蒸気圧にすることができる。本方法の更なる一変形例において、フラッシュタンクからの蒸気は、最初に、プロセス流体を蒸発させるために使用される。その後、プロセス流体の蒸気の温度を機械的圧縮によって上げることによって、所望の温度レベルまたは圧力レベルのプロセス蒸気を得る。圧力の上昇に伴い、温度が上昇する。この温度は、更なる工程ステップにおいて、適切に調整または変化させることができる。更に、このコンテキストにおいては、クローズドヒートポンプの使用も公知である。ただし、これらの方法は、熱水の温度、および必要とされるヒートポンプ媒体の故に実現可能な温度、の点で、厳しく制限されている。クローズドヒートポンプを使用する公知の方法では、最大160℃の温度を実現できる。したがって、より簡素で、より効率的且つ経済的な方法およびプロセスエンジニアリングプラントに対する更なるニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明は、冒頭で言及し、上でより詳細に説明した種類の何れのケースにおいても、気候により優しく、より簡素で、より効率的且つ経済的な稼働が可能であるように、方法およびプロセスエンジニアリングプラントを設計し更に発展させるという目的に基づく。
【0005】
この目的は、請求項1によると、地熱を使用して、プロセス、特にプロセスエンジニアリングプロセス、のためのプロセス蒸気を供給する方法によって達成される。本方法においては、
- 地熱蒸気を供給するために、地熱源において加熱された熱流体の地熱が使用され、
- 地熱蒸気をアップグレードするために、アップグレード用蒸気が使用され、
- アップグレード中に地熱蒸気の圧縮および加熱が同時に行われる。
【0006】
前記目的は、請求項10によると、特に請求項1~9の何れか一項に記載の、地熱を使用するプロセス蒸気を使用するための、特に製紙用の、プロセスエンジニアリングプラントによっても達成される。このプロセスエンジニアリングプラントは、地中の地熱源の地熱によって熱流体を加熱するための、およびこの熱流体の地熱を使用して地熱蒸気を供給するための、地熱ステーションと、アップグレード用蒸気の源と、アップグレード用蒸気によって地熱蒸気の圧縮と加熱とを同時に行うためのアップグレード化デバイスと、を備える。
【0007】
したがって、本発明によると、地熱蒸気とアップグレード用蒸気とを使用して、プロセス蒸気を発生させる。地熱蒸気は、地熱源を使用して発生させる。この目的のために、地熱蒸気を発生させるために、加熱された熱流体、好ましくは水、が地中から抽出されて使用される。このプロセスにおいて、特に熱流体が液状形態である場合は、例えばフラッシュタンク内で、熱流体を膨張させることができる。フラッシュタンクから出た蒸気は、その後、地熱蒸気としてそのまま使用することも、更に加熱することもできる。特に、熱流体が最初に液体・蒸気混合物として存在する場合は、この熱流体をフラッシュタンク内で蒸気と液体とに分離できる。熱流体を更に部分的に膨張させる場合は、フラッシュタンク内の液相の一部を蒸発させることもできる。
【0008】
熱流体がその熱の一部を最初に別の流体に伝達して、この流体を蒸発させる、または少なくとも加熱する、ことも考えられる。これは、例えば、熱流体の望ましくない不純物が地熱源に予測される場合に、熱回路を設けるために特に有用である。その場合、この熱流体の熱を最初に水、または扱い易い別の媒体、に伝達できる。加熱された水または他の媒体をフラッシュタンク内で蒸気と液体とに分離できる、および/または部分的に膨張させて蒸気を生じさせることができる。この蒸気は、地熱蒸気としてそのまま使用することも、または事前に別のステップで更に加熱することもできる。
【0009】
地熱源内の熱流体が100℃未満の温度に加熱される場合は、別の熱源を使用してこの熱流体を更に加熱することによって、相応に加熱された熱流体によって地熱蒸気を発生させることができる。必要であれば、熱流体の熱を最初に水または別の媒体に伝達することもできる。その場合、この水または別の媒体を更なるステップにおいて更に加熱することによって、地熱蒸気を発生させる。
【0010】
特に、低温度レベルの熱流体のみが利用可能である場合は、周囲圧力または標準圧力より低い圧力で地熱蒸気を使用または供給できる。これは、必要であれば、低い蒸発エンタルピーしか必要としないので、エネルギー上の利点を伴う。したがって、地熱蒸気の温度を、通常の条件下で必要とされる100℃よりはるかに低くできる。この場合、以降のアップグレードによって、周囲圧力または標準圧力より著しく高い圧力のプロセス蒸気を依然として、何の問題もなく、得ることができる。換言すると、地熱蒸気の圧力レベルは、周囲圧力または標準圧力によって必ずしも下方に制限されない。むしろ、用途に応じて、地熱蒸気の圧力を適切に選択できる。
【0011】
アップグレード用蒸気は、地熱を使用する以外の方法で得ることができる、または任意の方法で利用可能であり得る。これにより、アップグレード用蒸気は、アップグレードによって、地熱蒸気をエネルギー的にアップグレードできる。本コンテキストにおいて、アップグレードとは、地熱蒸気の加熱と圧縮とを同時に行う方法ステップとして理解されたい。加熱と圧縮とを互いに切り離された2つの別個の方法ステップに分割することはできない。したがって、原理上、これは、熱圧縮と称することもできる。
【0012】
上記のプロセスは、プロセスエンジニアリングプラントにおいてプロセス蒸気を供給するために使用可能である。この目的のために、地中の地熱源によって熱流体を加熱するために、地熱ステーションが必要とされる。加えて、地熱ステーションにおいては、地熱を使用して、熱流体から地熱蒸気を発生させる。更に、アップグレード用蒸気源が必要とされる。アップグレード用蒸気源においては、アップグレード用蒸気は、必要であれば、既に利用可能であり得る。すなわち、別個に発生させる必要がない。アップグレード用蒸気は、アップグレード化デバイスにおいて、アップグレード用蒸気による地熱蒸気の圧縮および加熱を同時に行うことによって、地熱蒸気をアップグレードするために使用される。
【0013】
ここで特に適しているのは、プロセスエンジニアリングプラントが製紙プラントである場合である。ここで、製紙においては、少なくとも中~高温および中~高圧力レベルのプロセス蒸気が極めて多量に必要とされるので、本方法の諸利点が特に有効である。これは、上記の方法においては、特に気候に優しく、簡素で、効率的且つ経済的に、保証され得る。
【0014】
本方法の特に好適な第1の実施形態においては、地熱蒸気をアップグレードするために、地熱蒸気の圧力および温度より高い圧力および温度を有するアップグレード用蒸気が使用される。これは、実施が特に容易である。例えば、アップグレード中、装置およびプロセス工学によって、アップグレード用蒸気と地熱蒸気との混合が可能である。ただし、これは必須ではない。アップグレード中、アップグレード用蒸気と地熱蒸気とを混合せずに、地熱蒸気の圧縮および加熱を同時に行うことも可能である。これの特に簡単な例は、間接的な熱伝達である。加えて、地熱蒸気より圧力および温度が低いアップグレード用蒸気によって、地熱蒸気をアップグレードすることも考えられる。ただし、原理上、これは装置の費用が高くなる。
【0015】
簡素化のために好都合であるのは、蒸気噴流圧縮機における直接的な熱交換によって、アップグレード用蒸気による地熱蒸気の加熱および圧縮を行う場合である。このプロセスにおいては、蒸気噴流圧縮機のスロットルを介してアップグレード用蒸気を部分的に膨張させるので、アップグレード用蒸気は高速度に達し、ひいてはアップグレード用蒸気の初期圧力より低い圧力の地熱蒸気を二次ラインから引き込む。その後、この地熱蒸気は、当該プロセスにおいて、アップグレード用蒸気と混合されて加速される。その後、地熱蒸気とアップグレード用蒸気とを混合して発生させた蒸気は、拡散器において減速される。したがって、十分な圧力と十分な温度とを有するプロセス蒸気が発生する。プロセス蒸気の圧力およびその温度は、アップグレード用蒸気および地熱蒸気の圧力および温度の間であることが好ましい。
【0016】
代わりに、または加えて、アップグレード用蒸気によって駆動されるタービンを備えた圧縮機を使用して、アップグレード用蒸気による地熱蒸気の加熱および圧縮を行うこともできる。これにより、基本的に、地熱蒸気のアップグレードの量および種類の点で、融通性を高めることができる。ここで、必要であれば、アップグレード用蒸気と地熱蒸気との混合を省くことができる。アップグレード用蒸気は、地熱蒸気とは別に、タービンを駆動する。この場合、タービンは、圧縮機を駆動する。圧縮機において、地熱蒸気は少なくとも1段階でアップグレードされる。このアップグレードは、地熱蒸気の圧縮および加熱を同時に行いながら行われる。
【0017】
特に適しているのは、タービンによって駆動されるターボチャージャのターボ圧縮機が圧縮機として使用される場合である。このようなターボチャージャにおいては、タービンとターボ圧縮機とを共通のシャフト上に配置できるので、タービンとターボ圧縮機とは、必要であれば加速比なしに、直接結合される。ただし、これは必須ではない。タービンとターボ圧縮機との間に加速比、または場合によっては減速比、をもたらすために、タービンとターボ圧縮機との間に任意の種類の変速装置を設けることもできる。この場合、利用可能なアップグレード用蒸気でタービンを作動させることができる。アップグレード用蒸気のプロセスパラメータは、地熱蒸気のアップグレードのためにはあまり重要ではない。ここで、原理上、より重要であるのは、アップグレード用蒸気の利用可能な質量流量である。したがって、この場合のアップグレード用蒸気は、地熱蒸気の温度および圧力より低い温度および圧力も容易に有し得る。ターボチャージャの設計により、ターボチャージャのターボ圧縮機において、圧力および温度の点で適切な、地熱蒸気のアップグレードが可能になる。ターボ圧縮機は、アップグレード用蒸気とタービンとによって駆動される。このタービンとターボ圧縮機とは、シャフトを介して、必要であれば更に変速装置を介して、結合されている。地熱蒸気はターボ圧縮機において圧縮され、更には、このプロセスで発生した熱によって加熱される。
【0018】
アップグレード用蒸気は、タービンを通過するときに、必ずしも完全に膨張される必要はない。アップグレード用蒸気がタービン内で部分的にのみ膨張される場合は、この部分的に膨張したアップグレード用蒸気が、タービンを出た後、地熱蒸気と混合されると、特に蒸気噴流圧縮機の駆動に使用されると、効率を高めるために有用であり得る。これが特に興味深いのは、圧縮機を出た後の地熱蒸気の更なる加熱および圧縮のために、蒸気噴流圧縮機が使用される場合である。この場合、この圧縮機がターボチャージャのターボ圧縮機であり得ることが好ましい。ただし、これは必須ではない。
【0019】
タービンを出た後のアップグレード用蒸気の圧力レベルがターボ圧縮機内で圧縮された地熱蒸気に少なくともほぼ相当する圧力レベルになるまで、アップグレード用蒸気をターボチャージャなどのタービン内で膨張させることも想定され得る。その後、部分的に膨張したアップグレード用蒸気と圧縮された地熱蒸気とを混合することによって、生じたアップグレード用蒸気を効率的に使用できる。この場合、蒸気噴流圧縮機は不要である。この目的のためには、簡単な混合室で十分である。加えて、圧縮された地熱蒸気および部分的に膨張したアップグレード用蒸気の温度レベルを互いに少なくともほぼ対応させることもできる。ただし、これは必須ではない。通常有利であるのは、混合前のアップグレード用蒸気の温度が圧縮された地熱蒸気より著しく高温である場合である。この場合、アップグレード用蒸気の圧力だけではなく、その温度も特に好都合に使用されることになる。ただし、部分的に膨張したアップグレード用蒸気と圧縮された地熱蒸気との混合は、混合前のアップグレード用蒸気の温度が圧縮された地熱蒸気より低温である場合も、可能である。何れの場合も、ターボ圧縮機を出た圧縮された地熱蒸気とタービンを出たアップグレード用蒸気とを混合することによって、プロセス蒸気を生じさせることができる。これにより、以降のプロセス、特にプロセスエンジニアリングプロセス、の稼働のために、部分的に膨張したアップグレード用蒸気を使用できる。
【0020】
熱流体は、例えば、地熱源における地中加熱によって、それぞれの不純物で汚染され得る。この場合、適切であり得るのは、熱流体が最初に間接的な熱交換によって地熱を水または別の媒体に伝達する場合である。この水または別の媒体は、その後、プロセスエンジニアリングプロセスの方向への地熱の更なる輸送を引き継ぐ。このような場合、更に適切であり得るのは、熱流体が水ではなく、他の何らかの伝熱媒体である場合である。この場合、例えば水蒸気を生じさせるために、熱流体を蒸発させる必要がないので、熱流体の選択時、この点について考慮する必要がない。それにも拘わらず、水を熱流体として使用することも簡素化のために適切であり得る。
【0021】
熱流体の選択には関係なく、特に簡素且つ確実であるのは、熱流体との間接的な熱交換によって水を少なくとも部分的に蒸発させて地熱蒸気を生じさせる場合である。地熱蒸気を生じさせるために水を部分的にのみ蒸発させると、地熱蒸気と水とを分離するために、地熱蒸気と未蒸発水とをフラッシュタンクに向かわせる場合に好都合である。フラッシュタンク内の圧力を更に大幅に下げると、水の少なくとも一部を蒸発させて地熱蒸気にできる。この場合、相応に回収された水蒸気は、アップグレード用蒸気による圧力および温度の同時上昇によるアップグレードのための地熱蒸気として使用可能である。
【0022】
経済的な理由により、例えばボイラで、化石燃料を燃焼させてアップグレード用蒸気を得ることができる。ただし、全体的な効率を上げるために、更には生態学的観点から、好適であり得るのは、化石燃料の少なくとも部分的代替としてバイオマス、バイオガス、および/または廃棄物がアップグレード用蒸気を発生させるために使用される場合である。この場合、必要であれば、廃棄物もバイオマスにし得る。これが特に該当するのは、加熱対象のプロセスエンジニアリングプラントにおいて、特にプロセス蒸気が供給されるプロセス、特にプロセスエンジニアリングプロセス、において、バイオマス、バイオガス、および/または廃棄物が生じる、および/または発生する、場合である。ただし、アップグレード用蒸気を発生させるために、化石燃料、バイオマス、バイオガス、または廃棄物の燃焼を完全に省くこともできる。ここで、バイオガスとは、合成的に、特に回生的に、生成された水素およびメタンとして理解することもできる。対応する代替方法は当業者には公知であり、従来技術において十分に説明されている。
【0023】
本方法を特に効率的に使用できるのは、地熱蒸気を供給するために、少なくとも60℃、少なくとも80℃、特に少なくとも100℃、の温度を有する、加熱された熱流体が使用される場合である。この場合は、地熱蒸気の中程度のアップグレードが必要とされるだけである。更に、代わりに、または加えて、効率向上を助け得るのは、地熱蒸気を供給するために、最大220℃、好ましくは最大180℃、特に最大140℃、の温度を有する、加熱された熱流体が使用される場合である。そうでなければ、大半の場合、小規模なアップグレードしか必要とされない。これは、プロセス工学および装置コストを部分的にしか正当化できない。
【0024】
同じ理由により、代わりに、または加えて、好適であり得るのは、アップグレード用蒸気を使用するアップグレードの前に、地熱蒸気が低温過ぎない、および/または高温過ぎない、場合である。この場合、高効率が実現されるのは、アップグレード前の地熱蒸気の温度が少なくとも60℃、少なくとも80℃、特に少なくとも100℃、である場合である。ただし、アップグレード前の地熱蒸気の温度が最大220℃、好ましくは最大180℃、特に最大140℃、であることも想定され得る。
【0025】
熱流体の熱を容易且つ効率的に使用できるのは、アップグレード中に地熱蒸気が少なくとも20℃、好ましくは少なくとも50℃、特に少なくとも100℃、加熱される場合である。ただし、これは、代わりに、または加えて、アップグレード中に地熱蒸気が少なくとも1バール、好ましくは少なくとも2バール、特に少なくとも3バール、圧縮される場合にも該当する。
【0026】
本プロセスエンジニアリングプラントの特に好適な第1の実施形態において、アップグレード用蒸気の源は、地熱蒸気の圧力および温度より高い圧力および温度のアップグレード用蒸気を供給するように設計された源である。このような場合は、地熱蒸気のアップグレードを、例えばアップグレード用蒸気と地熱蒸気との混合によって、装置およびプロセス工学の点で、簡単に実施できる。
【0027】
特に、このような場合、アップグレード化デバイスは、地熱蒸気の初期圧力より高い圧力と温度とを有するプロセス蒸気を供給するために、蒸気噴流圧縮機を備え、地熱蒸気とアップグレード用蒸気とが蒸気噴流圧縮機において適切に組み合わされることが好ましい。これは、実現が容易であり、効率的に行える。ただし、これは、上記の場合に、または上記以外の何れの場合も、必須ではない。
【0028】
代わりに、または加えて、アップグレード化デバイスは、地熱蒸気を加熱および圧縮するために、アップグレード用蒸気によって駆動されるタービンを有する圧縮機を備える。これを特に容易に、且つ同時に経済的に、行えるのは、圧縮機がターボチャージャのサーモコンプレッサである場合である。この場合、アップグレード用蒸気は、ターボチャージャのタービンを駆動できる。これにより、ターボチャージャのサーモコンプレッサが駆動されて、地熱蒸気を圧縮する。地熱蒸気がサーモコンプレッサにおいて圧縮されるとき、多量の熱が発生するので、地熱蒸気は圧縮と同時に加熱される。
【0029】
エネルギーの更なる最適化のために、タービンから出た部分的に膨張したアップグレード用蒸気を蒸気噴流圧縮機に供給するための接続ラインを設けることができる。この場合、蒸気噴流圧縮機は、ターボ圧縮機において既に部分的に加熱および圧縮されている地熱蒸気を更に加熱および圧縮する役割を担う。部分的に膨張したアップグレード用蒸気と部分的に圧縮された地熱蒸気とを混合するために蒸気噴流圧縮機を使用することは、ここでは好適であるが、この混合を蒸気噴流圧縮機以外の混合室で行うこともできる。
【0030】
熱流体による不要な汚染を回避するために、更には保守コストを低く抑えるために、得策であり得るのは、熱流体を熱回路に通すことである。熱回路は、熱流体の熱を水または別の媒体に伝達するための間接式熱交換器を有する。
【0031】
この熱流体が100℃より高温であり、少なくとも部分的に液体である場合は、蒸気を発生させるために、フラッシュタンクに熱流体を送り込むことができる。熱流体が水である場合は、地熱による地中加熱のために熱流体が再び使用される前に、当該プロセスで蒸発していない熱流体の部分に水を追加できる。ただし、間接的に加熱される蒸発器内の水に熱回路の熱流体からの地熱を最初に伝達することによって、水を蒸発器において蒸発させることも可能である。原則として、水が熱流体として既に使用されているかどうかは問題ではない。更に、エネルギーおよび設計の観点から、通常得策であるのは、水の少なくとも部分的な蒸発および地熱蒸気の供給のために、熱回路の上記熱交換器が蒸発器の一部を形成している場合である。
【0032】
何れにしてもアップグレード用蒸気が利用不能な場合は、アップグレード用蒸気および/または地熱蒸気を簡単且つ経済的に発生させるために、化石燃料、バイオガス、および/またはバイオマス、を燃料とする蒸発器を使用できる。ただし、原則として、蒸気を発生させるための、またはアップグレード用蒸気および/または地熱蒸気を供給するための、他のあらゆるプロセスおよびプラントも考えられる。
【0033】
以下においては、複数の実施形態例を単に示している図面によって、本発明をより詳細に説明する。図面は、以下の図を示している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】地熱を使用するための本発明によるプロセスエンジニアリングプラントの概略図である。
【
図2】地熱を使用するための本発明による第1の方法の概略図である。
【
図3】地熱を使用するための本発明による第2の方法の概略図である。
【
図4】地熱を使用するための本発明による第3の方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に、製紙用のプロセスエンジニアリングプラント1が示されている。このプロセスエンジニアリングプラント1では、地熱を使用して発生させたプロセス蒸気が使用される。地熱を使用するために、地熱ステーション2が設けられている。地熱ステーション2では、地中の地熱源によって熱流体3を加熱するために、熱流体3を地中に送り込む。熱流体3は、簡素化のために、水とすることができる。このようにして加熱された熱流体3は、地表4に戻され、そこで蒸発器5に供給される。蒸発器5において、熱流体3から地熱蒸気6を発生させる。この地熱蒸気は、その後、製紙部7に供給される。製紙部7における製紙中、廃水が生じる。この廃水は、廃水処理ユニット8において処理され、同時にバイオガス9を発生させる。バイオガス9を発生させるために、必要であれば、プロセス全体のどこか別の場所で生じたバイオマスを使用することもできる。バイオガス9は、熱電併給プラント10に供給され、そこで天然ガス11と一緒に燃やされて、アップグレード用蒸気12を発生させる。更に、バイオマス発電プラント13も設けられている。バイオマス発電プラント13は、一方では、バイオマス14から電気15を発生させ、他方では、アップグレード用蒸気16も発生させる。必要であれば、バイオマス発電プラント13または熱電併給プラント10を省くこともできる。ただし、アップグレード用蒸気12、16の全く異なる供給源を使用することもできる。ただし、その生成方法に関係なく、アップグレード用蒸気12、16は、地熱蒸気6より高い圧力を有する。加えて、アップグレード用蒸気12、16の温度は、地熱蒸気6の温度より高い。
【0036】
製紙部7では、アップグレード用蒸気12、16と地熱蒸気6とからプロセス蒸気を発生させる。このプロセス蒸気は、製紙のために、特に、製紙中に特定のプロセスを加熱するために、使用される。この目的のために、さまざまな方法が可能である。そのうちの3つの異なる方法が例として
図2~
図4に示されている。これらの方法を以下に説明する。
【0037】
図2は、図示されていない地中の地熱源において熱流体3を100℃より高い温度に加熱する方法を示している。加熱された熱流体3が地表4に戻された後、この熱流体3の熱は、水17を蒸発させるために蒸発器5において使用される。この水17は、地熱蒸気6として蒸気噴流圧縮機18に供給される。蒸気噴流圧縮機18は、アップグレード用蒸気12、16によって作動される。アップグレード用蒸気12、16は、スロットル19を介した部分的膨張によって、蒸気噴流圧縮機18において加速されるので、スロットル19の後、地熱蒸気6は混合室20に吸い込まれ、そこでアップグレード用蒸気12、16と混合される。その後、この蒸気は拡散器21に導かれ、ひいては再び減速されるので、地熱蒸気6の圧力および温度より高い圧力および温度のプロセス蒸気22が生成される。したがって、地熱蒸気6は、アップグレード用蒸気12、16の使用によって、圧力および温度の点でアップグレードされているので、その後、製紙部7において製紙用のプロセス蒸気22として効率的に使用され得る。
【0038】
図2に示されている方法の代わりに、例えば、熱流体をフラッシュタンク内で膨張させることもできる。得られた蒸気を地熱蒸気として蒸気噴流圧縮機に供給できる。この場合、熱流体から水への地熱の事前伝達を省くことができる。
【0039】
図3は、図示されていない地中の地熱源において熱流体3を100℃未満の温度に加熱する方法を示している。加熱された熱流体3が地表4に戻された後、水17との間接的な熱交換が熱交換器23において行われ、これにより地熱が水17に伝達される。その後、化石および/または再生可能燃料24を燃料とするボイラ25の蒸発器5において水17を蒸発させる。ただし、異なる方法で作動される蒸発器5も考えられる。この点に関して好適な図示の実施形態例において、地熱蒸気6は蒸発器5から出て、蒸気噴流圧縮機18に供給され、そこで、上記のように、蒸気噴流圧縮機18を駆動するアップグレード用蒸気12、16による温度および圧力の同時上昇によって、アップグレードされる。
【0040】
図3に示されている方法の代わりに、例えば、熱流体3をフラッシュタンク内で膨張させることもできる。このプロセスで生じた蒸気を地熱蒸気6として蒸気噴流圧縮機18に供給することもできる。この場合、熱流体3から水17への地熱の事前伝達を省くことができる。ただし、追加の熱を加えることによって蒸発器5において熱流体3を蒸発させることも想定される。その後、得られた蒸気を地熱蒸気6として蒸気噴流圧縮機18に直接供給することも、水17を蒸発させるために使用することもできる。後者の場合、こうして発生させた水蒸気は、地熱蒸気6として蒸気噴流圧縮機18に供給される。
【0041】
図4は、図示されていない地中の地熱源において熱流体3を100℃より高い温度に加熱する方法を示している。加熱された熱流体3が地表4に戻された後、熱流体3の熱は、水17を蒸発させるために蒸発器5において使用され、その後、地熱蒸気6としてターボチャージャ26に供給される。この熱流体を必ずしも循環させる必要はない。熱流体を一箇所で地中から吸い上げ、別の箇所で地中に再注入することもできる。特に、自然に発生する地下水として熱流体が地中に流れている場合は、同じ熱流体が必ずしも使用される訳ではなく、むしろ同じ源からの異なる熱流体が必要に応じて常に使用される。
【0042】
ターボチャージャ26は、タービン27を有する。タービン27は、シャフト28を介してターボ圧縮機29に接続されている。アップグレード用蒸気12、16がタービン27に供給され、タービン27内で部分的に膨張され、シャフト28を駆動する。その後、シャフト28はターボ圧縮機29を駆動する。ターボ圧縮機29は、地熱蒸気6の圧縮と加熱とを同時に行う。その後、この点に関して好適な図示の実施形態例において、圧縮された地熱蒸気6は、ターボチャージャ26における圧力および温度の同時上昇による地熱蒸気6のアップグレードに加え、圧力および温度の同時上昇による更なるアップグレードのために、部分的に膨張したアップグレード用蒸気12、16と混合室30において混合される。この目的のために、タービン27は、接続ライン31を介して混合室30に接続されている。混合室30は、蒸気噴流圧縮機の混合室であり得ることが好ましい。圧縮された地熱蒸気6と部分的に膨張したアップグレード用蒸気12、16との以降の混合によってプロセス蒸気22を発生させることが特に得策であり得るのは、このアップグレード用蒸気12、16の圧力がこの圧縮された地熱蒸気6よりはるかに高い場合である。この理由は、アップグレード用蒸気12、16は、ターボチャージャ26のタービン27内での部分的膨張後の圧力がターボ圧縮機29を出た後の圧縮された地熱蒸気6の圧力より依然として高いことが好ましいからである。ただし、これは必須ではない。
【0043】
あるいは、タービン27を出た後の部分的に膨張したアップグレード用蒸気12、16の圧力レベルがターボ圧縮機29を出た後の圧縮された地熱蒸気6の圧力レベルに少なくともほぼ相当するまで、アップグレード用蒸気12、16をターボチャージャ26のタービン27内で膨張させることも想定され得る。この場合、部分的に膨張したアップグレード用蒸気12、16と地熱蒸気6との混合を、蒸気噴流圧縮機なしに、必要であれば、極めて簡素な混合室30において、行うことができる。その後、部分的に膨張したアップグレード用蒸気12、16とアップグレードされた地熱蒸気6とを一緒に、以降のプロセスにおいて、特にプロセスエンジニアリングプロセスにおいて、プロセス蒸気22として使用できる。
【0044】
図4に示されている方法の代わりに、熱流体3を、例えばフラッシュタンク内で膨張させることもできる。このプロセスで生じた蒸気を地熱蒸気6としてターボチャージャ26のターボ圧縮機29に供給することもできる。この場合、熱流体3から水17への地熱の事前伝達を省くことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 プロセスエンジニアリングプラント
2 地熱ステーション
3 熱流体
4 地表
5 蒸発器
6 地熱蒸気
7 製紙部
8 水処理ユニット
9 バイオガス
10 熱電併給プラント
11 天然ガス
12 アップグレード用蒸気
13 バイオマス発電プラント
14 バイオマス
15 電気
16 アップグレード用蒸気
17 水
18 混合室
19 スロットル
20 混合室
21 拡散器
22 プロセス蒸気
23 熱交換器
24 燃料
25 ボイラ
26 ターボチャージャ
27 タービン
28 シャフト
29 ターボ圧縮機
30 混合室
31 接続ライン
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱を使用して、プロセス、特にプロセスエンジニアリングプロセス、のためのプロセス蒸気(22)を供給する方法であって、地熱蒸気(6)を供給するために、地熱源において加熱された熱流体(3)の地熱が使用され、前記地熱蒸気(6)をアップグレードするために、アップグレード用蒸気(12、16)が使用され、アップグレード中
、圧縮機において前記地熱蒸気(6)の圧縮および加熱が同時に行われる、方法。
【請求項2】
前記地熱蒸気(6)をアップグレードするために、前記地熱蒸気(6)の圧力および温度より高い圧力および高い温度を有する前記アップグレード用蒸気(12、16)が使用される、および/または前記アップグレード用蒸気と前記地熱蒸気とがアップグレード中に混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記地熱蒸気(6)は、蒸気噴流圧縮機(18)における直接的な熱交換によって、前記アップグレード用蒸気(12、16)によって、および/または前記アップグレード用蒸気(12、16)によって駆動されるタービン(27)を備えた圧縮機によって、加熱および圧縮され、好ましくは、前記タービン(27)によって駆動されるターボチャージャ(26)のターボ圧縮機(29)が圧縮機として使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮機を出た後の前記地熱蒸気(6)を更に加熱および圧縮するために、前記タービン(17)を出た後の部分的に膨張した前記アップグレード用蒸気(12、16)が蒸気噴流圧縮機(18)を駆動するために使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記タービン(17)を出た後の部分的に膨張した前記アップグレード用蒸気(12、16)と前記ターボ圧縮機(29)を出た後のアップグレードされた前記地熱蒸気(6)とが混合室(30)において混合され、好ましくは、前記部分的に膨張したアップグレード用蒸気(12、16)と前記アップグレードされた地熱蒸気(6)とは、前記混合室(30)における混合前に、少なくともほぼ同じ圧力を有している、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記熱流体(3)は、間接的な熱交換によって、地熱を水に伝達し、好ましくは、前記水(17)は、前記熱流体(3)との前記間接的な熱交換によって、少なくとも部分的に蒸発して地熱蒸気(6)を生じさせる、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱流体(3)、または前記地熱によって加熱された、および/または部分的に蒸発した、前記水(17)は、蒸発器(5)において、特に完全に、蒸発して地熱蒸気(6)を生じさせる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アップグレード用蒸気(12、16)は、化石燃料(24)、バイオガス、バイオマス(9、14)、および/または廃棄物、の燃焼によって生成される、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも60℃、少なくとも80℃、特に少なくとも100℃、および/または最大220℃、好ましくは最大180℃、特に最大140℃、の温度を有する前記加熱された熱流体(3)は、地熱蒸気(6)を供給するために使用される、および/または前記地熱蒸気(6)は、アップグレード前、少なくとも60℃、少なくとも80℃、特に少なくとも100℃、および/または最大220℃、好ましくは最大180℃、特に最大140℃、の温度を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記地熱蒸気(6)は、前記アップグレード中に、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも50℃、特に少なくとも100℃、加熱される、および/または、前記地熱蒸気(6)は、前記アップグレード中に、少なくとも1バール、好ましくは少なくとも2バール、特に少なくとも3バール、圧縮される、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の地熱を使用して供給されるプロセス蒸気(22)を使用するための、特に製紙用の、プロセスエンジニアリングプラント(1)であって、熱流体(3)を地中の地熱源の地熱によって加熱するための、および前記熱流体(3)の前記地熱を使用して地熱蒸気(6)を供給するための、地熱ステーション(2)と、アップグレード用蒸気(12、16)の源と、前記アップグレード用蒸気(12、16)によって前記地熱蒸気(6)の圧縮および加熱を同時に行うためのアップグレード化デバイスと、を備えたプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項12】
前記アップグレード用蒸気(12、16)の前記源は、前記地熱蒸気(6)の圧力および温度より高い圧力および温度を有するアップグレード用蒸気を供給するための源であること、および/または前記アップグレード化デバイスは、蒸気噴流圧縮機(18)、および/または、前記地熱蒸気(6)を加熱および圧縮するための前記アップグレード用蒸気(12、16)によって駆動されるタービン(27)を備えた圧縮機、を備えること、および、好ましくは、前記圧縮機は、前記タービン(27)によって駆動されるターボチャージャ(26)のターボ圧縮機(29)であること、を特徴とする、請求項9に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項13】
前記ターボ圧縮機(29)において加熱および圧縮された前記地熱蒸気(6)を更に加熱および圧縮するために、前記タービン(27)を出た、前記部分的に膨張したアップグレード用蒸気(12、16)を蒸気噴流圧縮機(18)に供給するための接続ライン(31)が設けられていることを特徴とする、請求項10に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項14】
地熱を水(17)に伝達するために、前記熱流体(3)と間接式熱交換器とを備えた熱回路が設けられていること、および/または、特に地熱によって加熱された前記水(17)からの、前記地熱蒸気(6)を供給するための蒸発器(5)が設けられていること、を特徴とする、請求項10または11に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項15】
前記熱交換器(23)は、前記水(17)を少なくとも部分的に蒸発させて前記地熱蒸気(6)を供給するための前記蒸発器(5)の一部であることを特徴とする、請求項12に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【請求項16】
前記地熱蒸気(6)および/または前記アップグレード用蒸気(12、16)を供給するために、化石燃料(24)および/またはバイオマス(9、14)を燃料とする蒸発器(5)が設けられていることを特徴とする、請求項9~13の何れか一項に記載のプロセスエンジニアリングプラント。
【国際調査報告】