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特表2024-517281ワクチン送達のための非ウイルスDNAベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ワクチン送達のための非ウイルスDNAベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20240412BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240412BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240412BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/88 Z
C12P21/02 C
A61K47/18
A61K9/127
A61K9/51
A61K9/19
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/04
A61P33/00
A61P37/06
A61P37/04
A61K48/00
A61K45/00
A61K39/00 A
A61K35/76
A61P43/00 105
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568397
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022028019
(87)【国際公開番号】W WO2022236014
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,823
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520068043
【氏名又は名称】ジェネレーション バイオ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サマヨア, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】スタントン, マシュー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ラジェンドラン, ラジ
(72)【発明者】
【氏名】クラット, デブラ
(72)【発明者】
【氏名】シルバー, ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】ハム, ルーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】マンガニエロ, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】モフィット, ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG32
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C076AA19
4C076AA29
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC06
4C076CC29
4C076DD49
4C076GG06
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZB372
4C084ZC75
4C085AA03
4C085BA01
4C085BA02
4C085BA07
4C085BA49
4C085BA51
4C085BB01
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG10
4C087AA01
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB09
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZB37
(57)【要約】
本出願は、細胞、組織、又は対象における、抗原及び免疫原性ペプチドの発現に有用なceDNAベクターを含む方法及び組成物と、様々な感染症、自己免疫障害、及び癌の治療並びに/又は予防の方法とを記載する。本開示は、概して、病原性生物及び癌の免疫原に対するワクチンに関する。本開示は、より詳細には、対象又は細胞において抗原又は抗原タンパク質を発現させるための非ウイルスベクターに関する。本開示はまた、核酸を含む核酸構築物、プロモーター、ベクター、及び宿主細胞と、標的細胞、組織、器官、又は生物に、抗原、又は抗原性タンパク質をコードする導入遺伝子を送達する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する逆方向末端(inverted terminal、ITR)間に少なくとも1つの核酸配列を含み、前記少なくとも1つの核酸配列は抗原又は免疫原性ペプチドをコードする、カプシド不含閉鎖末端DNA(ceDNA)ベクター。
【請求項2】
前記抗原又は前記免疫原性ペプチドが、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生生物感染因子に由来する、請求項1に記載のceDNAベクター。
【請求項3】
前記抗原又は前記免疫原性ペプチドが、腫瘍関連抗原である、請求項1に記載のceDNAベクター。
【請求項4】
前記抗原又は前記免疫原性ペプチドが、自己免疫状態に関連する、請求項1に記載のceDNAベクター。
【請求項5】
前記抗原又は前記免疫原性ペプチドが、表1~8に示されるもののうちの1つ以上から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項6】
前記少なくとも1つの核酸配列に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項7】
前記ceDNAベクターが、少なくとも1つのポリA配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項8】
前記ceDNAベクターが、5’UTR及び/又はイントロン配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項9】
前記ceDNAベクターが、3’UTR配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項10】
前記ceDNAベクターが、エンハンサー配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項11】
少なくとも1つのITRが、機能的末端分離部位及びRep結合部位を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項12】
前記ITRの一方又は両方が、パルボウイルス、ディペンドウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)から選択されるウイルスに由来する、請求項1~11のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項13】
前記隣接するITRが、互いに対して対称又は非対称である、請求項1~12のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項14】
前記隣接するITRが、対称又は実質的に対称である、請求項13に記載のceDNAベクター。
【請求項15】
前記隣接するITRが、非対称である、請求項13に記載のceDNAベクター。
【請求項16】
前記ITRの一方若しくは両方が野生型であるか、又は前記ITRの両方が野生型ITRである、請求項1~15のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項17】
前記隣接するITRが、異なるウイルス血清型に由来する、請求項1~16のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項18】
前記隣接するITRが、表8に示されるウイルス血清型のいずれかの対から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項19】
前記ITRの一方又は両方が、表9の配列のうちの1つ以上から選択される配列を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項20】
前記ITRのうちの少なくとも1つが、前記ITRの全体的な三次元立体構造に影響を与える欠失、付加、又は置換によって、野生型AAV ITR配列から変更されている、請求項1~19のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項21】
前記ITRの一方又は両方が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、及びAAV12から選択されるAAV血清型に由来する、請求項1~20のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項22】
前記ITRの一方又は両方が、合成である、請求項1~21のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項23】
前記ITRの一方若しくは両方が野生型ITRでないか、又は前記ITRの両方が野生型ITRでない、請求項1~15のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項24】
前記ITRの一方又は両方が、A、A’、B、B’、C、C’、D、及びD’から選択されるITR領域のうちの少なくとも1つにおける、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている、請求項1~23のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項25】
前記欠失、挿入、及び/又は置換が、通常は前記A、A’、B、B’、C、又はC’領域によって形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、請求項24に記載のceDNAベクター。
【請求項26】
前記ITRの一方又は両方が、前記B及びB’領域によって通常形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている、請求項1~25のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項27】
前記ITRの一方又は両方が、前記C及びC’領域によって通常形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている、請求項1~26のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項28】
前記ITRの一方又は両方が、前記B及びB’領域によって通常形成されるステムループ構造の一部、及び/又は前記C及びC’領域によって通常形成されるステムループ構造の一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている、請求項1~27のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項29】
前記ITRの一方又は両方が、前記B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、前記C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を通常は含む領域に、単一のステムループ構造を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項30】
前記ITRの一方又は両方が、前記B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、前記C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を通常は含む領域に、単一のステム及び2つのループを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項31】
前記ITRの一方又は両方が、前記B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、前記C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を通常は含む領域に、単一のステム及び単一のループを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項32】
両方のITRは、前記ITRが互いに対して反転されたときに全体的な三次元対称性をもたらす様式で変更されている、請求項1~31のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項33】
前記ceDNAベクターが、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)中に封入される、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ワクチンに使用するための、請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクター。
【請求項35】
細胞内で抗原又は免疫原性ペプチドを発現させる方法であって、前記細胞を請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターと接触させることを含む、方法。
【請求項36】
前記細胞が、インビトロ又はインビボである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの核酸配列が、前記細胞における発現のためにコドン最適化される、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
細菌、ウイルス、寄生生物、又は真菌感染症を有する対象を治療する方法であって、請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項39】
癌を有する対象を治療する方法であって、請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項40】
自己免疫疾患又は障害を有する対象を治療する方法であって、請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項41】
対象において、細菌、ウイルス、寄生生物、又は真菌感染症を予防する方法であって、請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項42】
対象において、癌を予防する方法であって、請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項43】
対象において、自己免疫疾患を予防する方法であって、請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項44】
前記対象に1つ以上の追加の治療剤を投与することを更に含む、請求項38~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ceDNAベクターが、静脈内、皮下、腫瘍内、又は筋肉内注射により投与される、請求項38~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターを含む、医薬組成物。
【請求項47】
1つ以上の追加の治療剤を更に含む、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターを含む、ワクチン組成物。
【請求項49】
請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクターと、脂質と、を含む、組成物。
【請求項50】
前記脂質が、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)である、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記脂質ナノ粒子が、イオン性脂質を更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記イオン性脂質が:
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
からなる群から選択される、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物が、凍結乾燥されている、請求項48~52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
請求項1~33のいずれか一項に記載のceDNAベクター、請求項46又は47に記載の医薬組成物、又は請求項48~53のいずれか一項に記載の組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月7日に出願された米国仮特許出願第63/185,823号の優先権を主張する。前述の出願の全内容は、参照により明確に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、病原性生物及び癌の免疫原に対するワクチンに関する。本開示は、より詳細には、対象又は細胞において抗原又は抗原タンパク質を発現させるための非ウイルスベクターに関する。本開示はまた、核酸を含む核酸構築物、プロモーター、ベクター、及び宿主細胞と、標的細胞、組織、器官、又は生物に、抗原、又は抗原性タンパク質をコードする導入遺伝子を送達する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
既存及び新興の感染性病原体は、世界中で、著しい罹患率、死亡率、及び経済的負担を引き起こし続けている。死亡の大部分は、ほんの少数の種類の病原体によって引き起こされる:1400種類程度の、既に認識されているヒト病原体及び寄生生物のうち、死亡の大部分は、呼吸器疾患、下痢、HIV/AIDS、結核(tuberculosis、TB)、マラリア、髄膜炎、百日咳、麻疹、B型肝炎、及び性感染症(sexually transmitted disease、STD)によって引き起こされている(Dye C.After 2015:Infectious diseases in a new era of health and development.(2014)Philosophical Transactions of the Royal Society of London.Series B,Biological Sciences,369(1645),20130426.doi:10.1098/rstb.2013.0426)。一部の疾患は、特に重要であると考えられる。例えば、HIV/AIDSなどは、出現したときに100%の死亡率を有していたので、特に重要であると考えられ;又は、例えば、ジカウイルスによる感染からの出生時欠損の出現のように、感染性ウイルス因子が、感染した主たる人を超えて疾患を引き起こすため、特に重要であると考えられる。
【0004】
病原体と戦うために使用される治療製品としては、ワクチンなどの予防的免疫化、並びに抗細菌剤及び抗ウイルス剤などの感染後治療薬が挙げられる。ワクチンは、病原体又は微生物体若しくはウイルス体の1つ又はいくつかの特異的抗原と、受容個体における免疫応答及び/又は病原体自体における細胞応答を誘導する抗原のその全セットと、から構成される治療剤である(Cassone,A.,&Rappuoli,R.(2010).Universal vaccines:shifting to one for many.Bio.1(1),e00042-10.doi:10.1128/mBio.00042-10)。ワクチンは、複製病原体を迅速に制御するか、又はそれらの毒性成分を不活性化することができるエフェクター機構を誘導することによって防御する。
【0005】
ワクチン接種は、疾患を予防し、集団レベルで感染の爆発的発生を制御するための費用対効果の高い手段を提供するが、現在市販されているワクチンは、重大な欠点を有し、時には効果を発揮することができないこともある。
【0006】
組換えAAV(Recombinant AAV、rAAV)は、ヒトにおける遺伝子導入のための、おそらくは最もよく研究されたベクターであり、何百もの臨床試験が形質導入の安全性を実証している。アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated viruse、AAV)は、パルボウイルス科Parvoviridae科に属し、より具体的にはディペンドパルボウイルス属を構成する。AAVに由来するベクター(すなわち、rAVV又はAAVベクター)は、以下の理由で、遺伝子材料を送達するのに魅力的である:(i)筋細胞及びニューロンを含む多種多様な非分裂及び分裂細胞型に感染する(形質導入する)ことができる;(ii)それらはウイルス構造遺伝子を欠き、それによって、ウイルス感染に対する宿主細胞応答(例えば、インターフェロン媒介応答)を減少させる;(iii)野生型ウイルスは、ヒトにおいて非病的であると考えられる;(iv)宿主細胞ゲノムに組み込むことができる野生型AAVとは対照的に、複製欠損AAVベクターは複製(rep)遺伝子を欠き、一般にエピソームとして存続し、したがって、挿入変異誘発又は遺伝毒性のリスクを制限する;及び(v)他のベクター系と比較して、AAVベクターは一般に免疫原性が比較的弱いと考えられ、したがって、有意な免疫応答を誘発せず(iiを参照)、したがって、ベクターDNAの持続性及び潜在的に治療用導入遺伝子の長期発現を得る。
【0007】
しかしながら、AAV粒子を遺伝子送達ベクターとして使用することには、いくつかの重大な欠陥が存在する。rAAVに関連する1つの重大な欠点は、約4.5kbの異種DNAの制限されたウイルスパッケージング能力であり(Dong et al.,1996;Athanasopoulos et al.,2004;Lai et al.,2010)、結果として、AAVベクターの使用は、150,000Da未満のタンパク質コード能力に制限されている。特に抗体送達に関連して、AAVのパッケージング制限は、天然抗体構造を形成する重鎖及び軽鎖の両方の効率的な送達にとって、重要な課題となっている。第2の欠点は、集団における野生型AAV感染の流行の結果として、rAAV遺伝子療法を受ける対象の候補が、患者からベクターを排除する中和抗体の存在についてスクリーニングされる必要があることである。第3の欠点は、初回治療から除外されなかった患者への再投与を妨げるカプシド免疫原性に関する。患者における免疫系は、「ブースター」ショットとして有効に作用するベクターに応答して、将来の治療を妨げる高力価抗AAV抗体を生成する免疫系を刺激し得る。前から存在する免疫は、形質導入の効率を厳しく制限し得る。いくつかの最近の報告は、高用量状況における免疫原性との関係を示している。一本鎖AAV DNAが異種遺伝子発現前に二本鎖DNAに変換されなければならないことを考えると、別の顕著な欠点は、AAV媒介性遺伝子発現の始まりが比較的遅いことである。
【0008】
ベクターが、それによって未知の抗原性タンパク質を発現するアデノウイルスベクターは、遺伝子及び癌の治療とワクチンとについて十分に研究されている。その広範な安全性プロフィールとは別に、アデノウイルスベクターを利用する利点は、それが比較的安定的であり、高力価を達成することが容易であり、そしてその効力に起因することであるが、複数の細胞株に感染し得ることである。組換えアデノウイルスベクターは、その高い形質導入効率及び導入遺伝子発現のために今日広く使用されているが、集団のほとんどがアデノウイルスに曝露されているので、そのベクターに対して、前から存在する免疫の可能性がある(上記参照文献を参照)。これは、ベクターベースのワクチンがヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)複製のための好ましい条件を提供したHIV-1第IIb相ワクチン治験において、有害であることが証明されている(Smaill,F.et al.,Sci.Transl.Med.(2013)5:205)。
当技術分野では、改善されたワクチン治療薬の開発が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Dye C.After 2015:Infectious diseases in a new era of health and development.(2014)Philosophical Transactions of the Royal Society of London.Series B,Biological Sciences,369(1645),20130426.doi:10.1098/rstb.2013.0426
【非特許文献2】Cassone,A.,&Rappuoli,R.(2010).Universal vaccines:shifting to one for many.Bio.1(1),e00042-10.doi:10.1128/mBio.00042-10
【非特許文献3】Smaill,F.et al.,Sci.Transl.Med.(2013)5:205
【発明の概要】
【0010】
本明細書に記載される技術は、カプシドを含まない(例えば、非ウイルス性の)、共有結合性閉端を有するDNAベクター(本明細書では、「閉端DNAベクター」又は「ceDNAベクター」と呼ぶ)であって、ceDNAベクターが抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を含む、ceDNAベクターに関する。1つ以上の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする1つ以上の核酸配列を発現する1つ以上のceDNAベクターの適用は、対象における疾患又は障害を治療、予防又はその重症度を低減させ、その送達において侵襲性が最小限になり、反復投与可能でかつ効果に応じて投与され、治療効果が迅速出現し、かつ/又は抗原若しくは免疫原性ペプチドの持続的発現をもたらすのに有用である。
【0011】
生体外で製造され、望ましくない細胞応答を誘発するおそれのある従来のワクチンとは異なり、本明細書に記載のceDNAワクチンは、よりネイティブな様式で細胞系に提示される。ceDNAベクターを使用して、抗原又は免疫原性ペプチドをコードする導入遺伝子(例えば、核酸配列)を細胞又は組織に送達することによって、適応免疫応答が回避され、所望の抗体特異性が、免疫化又は受動移入を使用せずに産生される。すなわち、ceDNAベクターは、形質膜陥入を介して細胞に入り、次いでエンドソーム区画から脱出し、核に輸送される。転写的に活性なceDNAエピソームは抗原の発現をもたらし、これは次いで細胞から循環中に分泌され得る。したがって、ceDNAベクターは、単回注射によって投与される抗体(例えば、本明細書に記載される治療用抗体、又はその中の抗原結合断片)の連続的、持続的及び長期送達を可能にし得る。これは、より急速に減少する、より増加した初期発現を示し得るmRNAワクチンと比較して、DNAワクチンが発現のより遅い増加及びより持続的な発現を示す、核酸ワクチン組成物のコンテクストにおいて特に有利である。
【0012】
いくつかの態様によれば、本開示は、隣接する逆方向末端反復配列(inverted terminal、ITR)間に少なくとも1つの核酸配列を含み、少なくとも1つの核酸配列は抗体又は免疫原性ペプチドをコードする、カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクターを提供する。いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生生物感染因子に由来する。いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、腫瘍関連抗原である。いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、自己免疫状態に関連する。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、表1~8に示されるもののうちの1つ以上から選択される。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、少なくとも1つの核酸配列に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、少なくとも1つのポリA配列を含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、5’UTR及び/又はイントロン配列を含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、3’UTR配列を含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、エンハンサー配列を含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのITRは、機能的な末端分離部位及びRep結合部位を含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方が、パルボウイルス、ディペンドウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)から選択されるウイルスに由来する。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、隣接するITRは、互いに対して対称又は非対称である。いくつかの実施形態によれば、隣接するITRは、対称又は実質的に対称である。いくつかの実施形態によれば、隣接するITRは、非対称である。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方若しくは両方が野生型であるか、又はITRの両方が野生型ITRである。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、隣接するITRは、異なるウイルス血清型に由来する。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、隣接するITRは、表8に示されるウイルス血清型の任意の対から選択される。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方が、表9の配列のうちの1つ以上から選択される配列を含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの少なくとも一方が、野生型AAV ITR配列から、ITRの全体的な3次元コンフォメーションに影響を与える欠失、付加、又は置換によって変更されている。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、及びAAV12から選択されるAAV血清型に由来する。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方が、合成のものである。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方若しくは両方が野生型ITRではないか、又はITRの両方が野生型ITRではない。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方若しくは両方は、A、A’、B、B’、C、C’、D、及びD’から選択されるITR領域のうちの少なくとも1つにおける欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾される。いくつかの実施形態によれば、欠失、挿入、及び/又は置換は、通常はA、A’、B、B’、C、又はC’領域によって形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、B及びB’領域によって通常形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、C及びC’領域によって通常形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、B及びB’領域によって通常形成されるステムループ構造の一部、並びに/又はC及びC’領域によって通常形成されるステムループ構造の一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、通常、B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を含む領域に、単一のステムループ構造を含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、通常、B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を含む領域に、単一のステム及び2つのループを含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、通常、B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を含む領域に、単一のステム及び単一のループを含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、両方のITRは、ITRが互いに対して反転している場合、全体的な3次元対称性をもたらす様式で変更されている。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)中に封入される。
【0013】
いくつかの態様によれば、本明細書の態様及び実施形態に記載されるceDNAベクターは、ワクチンとして使用される。
【0014】
いくつかの態様によれば、本開示は、細胞において抗原又は免疫原性ペプチドを発現させる方法であって、細胞を前述の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクターと接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、細胞は、インビトロ又はインビボである。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの核酸配列は、細胞における発現のためにコドン最適化されている。
【0015】
いくつかの態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクターを対象に投与することを含む、細菌、ウイルス、寄生生物又は真菌感染症を有する対象を治療する方法を提供する。
【0016】
いくつかの態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクターを対象に投与することを含む、癌を有する対象を治療する方法を提供する。
【0017】
いくつかの態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクターを対象に投与することを含む、自己免疫疾患又は障害を有する対象を治療する方法を提供する。
【0018】
いくつかの態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクターを対象に投与することを含む、対象における細菌、ウイルス、寄生生物、又は真菌感染症を予防する方法を提供する。
【0019】
一部の態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクターを対象に投与することを含む、対象における癌を予防する方法を提供する。
【0020】
いくつかの態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクターを対象に投与することを含む、対象における自己免疫疾患を予防する方法を提供する。
【0021】
前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、方法は、対象に1つ以上の追加の治療剤を投与することを更に含む。前述の態様及び実施形態のいくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、静脈内、皮下、腫瘍内又は筋肉内注射によって投与される。
【0022】
いくつかの態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクターを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤を更に含む。
【0023】
いくつかの態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクターを含むワクチン組成物を提供する。
【0024】
いくつかの態様によれば、本開示は、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクターと、脂質と、を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、脂質は脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)である。いくつかの実施形態によれば、組成物は、凍結乾燥されている。
【0025】
いくつかの態様によれば、本開示は、前述の態様及び実施形態のいずれかのceDNAベクター、前述の態様及び実施形態のいずれかの医薬組成物、又は前述の態様及び実施形態のいずれかの組成物を含むキットを提供する。
【0026】
本開示のこれらの及び他の態様は、下記で更に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
上記に簡単に要約され、以下により詳細に論じられる本開示の実施形態は、添付の図面に描かれた本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解することができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示し、したがって、本開示は他の等しく有効な実施形態を認めることができるため、範囲を限定するものとみなされるべきではない。
図1A】非対称ITRを含む、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。この実施形態では、例示的なceDNAベクターは、CAGプロモーター、WPRE、及びBGHpAを含有する発現カセットを含む。導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位(R3/R4)に挿入され得る。発現カセットは、2つの逆位末端反復(ITR)(発現カセットの上流(5’端)の野生型AAV2 ITR及び下流(3’端)の修飾型ITR)に隣接しており、したがって、発現カセットに隣接している2つのITRは、互いに対して非対称である。
図1B】CAGプロモーター、WPRE、及びBGHpAを含有する発現カセットを有する非対称ITRを含む、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位に挿入され得る。発現カセットは、2つの逆位末端反復(ITR)(発現カセットの上流(5’端)の修飾型ITR及び下流(3’端)の野生型ITR)に隣接している。
図1C】エンハンサー/プロモーター、導入遺伝子(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)、転写後エレメント(WPRE)、及びポリAシグナルを含有する発現カセットを有し、非対称ITRを含む、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。オープンリーディングフレーム(ORF)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位への導入遺伝子の挿入を可能にする。発現カセットは、互いに非対称である2つの逆位末端反復(ITR)、発現カセットの上流(5’端)の修飾型ITR及び下流(3’端)の修飾型ITRに隣接しており、5’ITR及び3’ITRの両方は、修飾型ITRであるが、異なる修飾を有する(すなわち、同じ修飾を有しない)。
図1D】CAGプロモーター、WPRE、及びBGHpAを含有する発現カセットを有する、本明細書で定義される対称な修飾型ITR又は実質的に対称な修飾型ITRを含む、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチド(例えば、HC又はLC)の発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位に挿入される。発現カセットは、5’修飾型ITR及び3’修飾型ITRが対称又は実質的に対称である、2つの修飾型逆位末端反復(ITR)に隣接している。
図1E】エンハンサー/プロモーター、導入遺伝子、転写後エレメント(WPRE)、及びポリAシグナルを含有する発現カセットを有する、本明細書で定義される対称な修飾型ITR又は実質的に対称の修飾型ITRを含む、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。オープンリーディングフレーム(ORF)は、導入遺伝子(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)の、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位への挿入を可能にする。発現カセットは、5’修飾型ITR及び3’修飾型ITRが対称又は実質的に対称である、2つの修飾型逆位末端反復(ITR)に隣接している。
図1F】CAGプロモーター、WPRE、及びBGHpAを含有する発現カセットを有する、本明細書で定義される対称なWT-ITR又は実質的に対称なWT-ITRを含む、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位に挿入される。発現カセットは、5’WT-ITR及び3’WT ITRが対称又は実質的に対称である、2つの野生型逆位末端反復(WT-ITR)に隣接している。
図1G】エンハンサー/プロモーター、導入遺伝子、転写後エレメント(WPRE)、及びポリAシグナルを含有する発現カセットを有する、本明細書で定義される対称な修飾型ITR又は実質的に対称の修飾型ITRを含む、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。オープンリーディングフレーム(ORF)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位への導入遺伝子の挿入を可能にする。発現カセットは、5’WT-ITR及び3’WT ITRが対称又は実質的に対称である、2つの野生型逆位末端反復(WT-ITR)に隣接している。
図2A】A-A’アーム、B-B’アーム、C-C’アーム、2つのRep結合部位(RBE及びRBE’)の特定とともに、AAV2の野生型左ITRのT形ステムループ構造を提供し、また、末端分離部位(terminal resolution site、trs)も示す。RBEは、Rep78又はRep68のいずれかと相互作用すると考えられる一連の4つの二重四量体を含有する。加えて、RBE’はまた、構築物中の野生型ITR又は変異型ITR上で組み立てられたRep複合体と相互作用すると考えられる。D及びD’領域は、転写因子結合部位及び他の保存構造を含有する。
図2B】A-A’アーム、B-B’アーム、C-C’アーム、2つのRep結合部位(RBE及びRBE’)の特定とともにAAV2の野生型左ITRのT形ステムループ構造を含む、野生型左ITRにおける提案されたRep触媒ニッキング及びライゲーション活性を示し、また、末端分離部位(trs)、並びにいくつかの転写因子結合部位を含むD及びD’領域並びに他の保存構造も示す。
図3A】野生型左AAV2 ITRのA-A’アーム並びにC-C’及びB-B’アームのRBE含有部分の一次構造(ポリヌクレオチド配列)(左)並びに二次構造(右)を提供する。
図3B】左ITRについての例示的な変異型ITR(修飾型ITRとも称される)配列を示す。例示的な変異型左ITR(ITR-1、左)のA-A’アーム、Cアーム、及びB-B’アームのRBE部分の一次構造(左)及び予測された二次構造(右)が示される。
図3C】野生型右AAV2 ITRのA-A’ループ、並びにB-B’及びC-C’アームのRBE含有部分の一次構造(左)並びに二次構造(右)を示す。
図3D】例示的な右修飾型ITRを示す。例示的な変異体右ITR(ITR-1、右)のA-A’アーム、並びにB-B’及びCアームのRBE含有部分の一次構造(左)及び予測された二次構造(右)が示される。左及び右のITR(例えば、AAV2 ITR又は他のウイルス血清型若しくは合成ITR)の任意の組み合わせを、本明細書で教示されるように使用することができる。図3A図3Dのポリヌクレオチド配列の各々は、本明細書に記載されるceDNAを産生するために使用されるプラスミド又はバクミド/バキュロウイルスゲノムで使用される配列を指す。プラスミド又はバクミド/バキュロウイルスゲノムのceDNAベクター構成及び予測されたGibbs自由エネルギー値から推定される対応するceDNAの二次構造もまた、図3A図3Dの各々に含まれる。
図4A図4Bの概略図に記載されるプロセスにおける、本明細書に開示される抗原又は免疫原性タンパク質の発現のためのceDNAベクターの産生に有用である、バキュロウイルス感染昆虫細胞(BIIC)を作製するための上流プロセスを示す概略図である。
図4B】ceDNAの産生の例示的な方法の概略図である。
図4C】ceDNAベクターの産生を確認するための生化学的方法及びプロセスを示す。
図4D図4BのceDNA産生プロセス中に取得された細胞ペレットから採取されたDNA中のceDNAの存在を特定するためのプロセスを説明する概略図である。図4Dは、左が未切断であるか、又は制限エンドヌクレアーゼで消化された後、未変性ゲル又は変性ゲルのいずれかで電気泳動に供される例示的なceDNAの概略的予想バンドを示す。左端の概略図は、未変性ゲルであり、その二重鎖及び未切断形態で、ceDNAが少なくとも単量体及び二量体状態で存在し、より速く移動する小さい単量体及び単量体のサイズの2倍である、より遅く移動する二量体として見えることを示唆する、多重バンドを示す。左から2番目の概略図は、ceDNAが制限エンドヌクレアーゼで切断された場合、元のバンドが消え、切断後に残存する予想断片サイズに対応する、より速く移動する(例えば、より小さな)バンドが出現することを示す。変性条件下、元の二重鎖DNAは一本鎖であり、相補鎖が共有結合されるため、未変性ゲル上で観察されるものより2倍大きい種として移動する。したがって、右から2番目の概略図において、消化されたceDNAは、未変性ゲル上で観察されるものと同様のバンディング分布を示すが、バンドは、未変性ゲル対応物のサイズの2倍の断片として移動する。右端の概略図は、変性条件下の未切断のceDNAが、一本鎖開環として移動し、したがって観察されたバンドは、環が開いていない未変性条件下で観察されるもののサイズの2倍であることを示す。この図において、「kb」を使用して、コンテクストに応じて、ヌクレオチド鎖の長さ(例えば、変性状態で観察される単鎖分子の場合)又は塩基対の数(例えば、未変性状態で観察される二本鎖分子の場合)に基づくヌクレオチド分子の相対サイズを示す。
図4E図4BのceDNA産生プロセス中に取得された細胞ペレットから採取されたDNA中のceDNAの存在を特定するためのプロセスを説明する概略図である。図4Eは、非連続的な構造を有するDNAを示す。ceDNAは、ceDNAベクター上に単一認識部位を有する制限エンドヌクレアーゼによって切断され得るが、中性条件及び変性条件の両方において、異なるサイズ(1kb及び2kb)を有する2つのDNA断片を生成することができる。図4Eはまた、直鎖状かつ連続的な構造を有するceDNAを示す。ceDNAベクターは、制限エンドヌクレアーゼによって切断され得るが、中性条件において1kb及び2kbとして移動する2つのDNA断片を生成することができ、変性条件では、鎖は、接続されたままであり、2kb及び4kbとして移動する一本鎖を産生する。
図5】エンドヌクレアーゼで消化した(+)又は消化していない(-)ceDNAベクターの変性ゲル泳動例の例示的な写真である(ceDNA構築物1及び2についてはEcoRI、ceDNA構築物3及び4についてはBamH1、ceDNA構築物5及び6についてはSpeI、及びceDNA構築物7及び8についてはXhoI)。構築物1~8は、国際特許出願PCT/US18/49996号の実施例1に記載されている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。アスタリスクで強調されたバンドのサイズを判定し、図の下に示した。
図6】実施例6に記載の試験の29日目及び49日目に決定された、スパイクタンパク質抗体力価を示すグラフである。
図7】中和アッセイの結果を示すグラフである。
図8】実施例7に記載の試験の21日目及び41日目に決定された、スパイクタンパク質抗体力価を示すグラフである。
図9】実施例8に記載の試験の21日目及び49日目に決定された、スパイクタンパク質抗体力価を示すチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の実施形態によれば、ceDNAベクターによって1つ以上の抗原又は免疫原性ペプチドを送達するための組成物が提供される。
【0029】
I.定義
本明細書で別途定義されない限り、本出願に関連して使用される科学的及び技術的用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。免疫学及び分子生物学における一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,19th Edition,Merck Sharp & Dohme Corp.により発行,2011(ISBN 978-0-911910-19-3)、Robert S.Porter et al.(eds.),Fields Virology,6th Edition,published by Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA,USA(2013)、Knipe,D.M.and Howley,P.M.(ed.),The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine,published by Blackwell Science Ltd.,1999-2012(ISBN 9783527600908)、及びRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により発行,1995(ISBN 1-56081-569-8)、Immunology by Werner Luttmann,Elsevierにより発行,2006、Janeway’s Immunobiology,Kenneth Murphy,Allan Mowat,Casey Weaver(eds.),Taylor & Francis Limited,2014(ISBN 0815345305,9780815345305)、Lewin’s Genes XI,published by Jones & Bartlett Publishers,2014(ISBN-1449659055)、Michael Richard Green and Joseph Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2012)(ISBN 1936113414)、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(2012)(ISBN 044460149X)、Laboratory Methods in Enzymology:DNA,Jon Lorsch(編)Elsevier,2013(ISBN 0124199542)、Current Protocols in Molecular Biology(CPMB),Frederick M.Ausubel(編),John Wiley and Sons,2014(ISBN047150338X,9780471503385)、Current Protocols in Protein Science(CPPS),John E.Coligan(編),John Wiley and Sons,Inc.,2005、及びCurrent Protocols in Immunology(CPI)(John E.Coligan,ADA M Kruisbeek,David H Margulies,Ethan M Shevach,Warren Strobe,(編)John Wiley and Sons,Inc.,2003(ISBN0471142735,9780471142737)に見出すことができ、これらの内容は全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
本明細書で使用される「免疫化」又は「能動免疫化」という用語は、自然に獲得された感染又は意図的なワクチン接種(人工能動免疫)から生じる免疫を意味する能動免疫の産生を指す。
【0031】
用語「アジュバント」は、本明細書中で使用される場合、処方物中で特定の免疫原と組み合わせて使用された場合に、得られる免疫応答を増強するか、又はそうでなければ変更若しくは改変する薬剤を指すことを意図する。免疫応答の改変は、免疫応答(例えば、抗体及び細胞性免疫応答のいずれか又は両方)の特異性の強化又は拡大を含む。免疫応答の改変はまた、特定の抗原特異的免疫応答を減少又は抑制することを意味し得る。
【0032】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、宿主の免疫系を刺激して体液性及び/又は細胞性の抗原特異的応答を生じさせる1つ以上のエピトープ(直鎖状、立体構造、又はその両方)を含有する分子を指すことを意図する。この用語は、用語「免疫原」と互換的に使用される。通常、B細胞エピトープは、少なくとも約5個のアミノ酸を含むが、3~4個程度のアミノ酸であってもよい。T細胞エピトープ(例えば、CTLエピトープ)は、少なくとも約7~9個のアミノ酸を含み、そしてヘルパーT細胞エピトープは、少なくとも約12~20個のアミノ酸を含む。通常、エピトープは、約7~15個のアミノ酸(例えば、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸などを含む)を含む。この用語は、タンパク質が本明細書中で定義されるような免疫学的応答を誘発する能力を維持する限り、ネイティブ配列と比較して、改変(例えば、欠失、付加、及び置換(一般的に、本質的に保存的))を含むポリペプチドを含む。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発によるように意図的であってもよく、又は抗原を産生する宿主の突然変異によるように偶発的であってもよい。
【0033】
用語「エピトープ」は、抗原決定基とも称され得るものであるが、結合剤、免疫グロブリン、又はT細胞受容体によって特異的に結合され得る分子決定基(例えば、ポリペプチド決定基)である。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、又はスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面分子群を含み、ある特定の実施形態では、特異的な三次元構造特性及び/又は特異的な電荷特性を有し得る。エピトープは、構造的又は機能的なものとして定義され得る。機能的エピトープは、一般に構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープは、直鎖状であっても、立体構造的であっても、すなわち、非直鎖状アミノ酸から構成されていてもよい。抗体又は抗体の抗原結合断片によって認識されるエピトープは、抗体又は断片のCDR(例えば、相補的部位)と相互作用する、抗原の構造要素である。エピトープは、抗体のCDRと相互作用して特異性を生じる、いくつかのアミノ酸残基からの寄与によって形成され得る。抗原性断片は、2つ以上のエピトープを含み得る。ある特定の実施形態では、抗体は、タンパク質及び/又は高分子の複合混合物中にあるその標的抗原を認識する場合に、抗原に特異的に結合する。例えば、抗体が交差競合する(一方が他方の結合又は調節効果を妨げる)場合、抗体は「同じエピトープに結合する」と言われる。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「自己免疫障害」は、一般に、対象の免疫系が身体自身の細胞を攻撃し、組織破壊を引き起こす状態をいう。自己免疫障害は、血液検査、脳脊髄液分析、筋電図(筋肉機能を測定する)、及び脳の磁気共鳴画像法を使用して診断され得るが、自己抗体(又は自己抗体)についての血液中の抗体試験が特に有用である。通常は、IgGクラス抗体が、自己免疫疾患に関連している。
【0035】
「Bリンパ球」又は「B細胞」という用語は、広範なクラスのリンパ球を指すために互換的に使用されるが、この広範なクラスのリンパ球は、特定の抗原エピトープを認識するクローン的に多様な細胞表面免疫グロブリン(Ig)受容体(BCR)を発現する、抗体分泌細胞の前駆体である。哺乳動物B細胞の発生は、一次リンパ組織例えば、ヒト胎児肝臓及び胎児/成人の骨髄で始まり、二次リンパ組織例えば、ヒトリンパ節及び脾臓におけるその後の機能的成熟を伴う、一連の段階を包含する。機能的/防御的エンドポイントは、最終的に分化した形質細胞による抗体産生である。成熟したB細胞は、その細胞表面免疫グロブリン(Ig)によって認識されるエピトープを発現する抗原との遭遇によって活性化され得る。活性化プロセスは、抗原による膜Ig分子の架橋に依存する直接的なもの(架橋依存性B細胞活性化)であってもよく、又はヘルパーT細胞との密接な相互作用の状況において最も効率的に生じる間接的なもの(「同族ヘルププロセス」)であってもよい。(LeBien,TW & TF Tedder,B lymphocytes:how they develop and function.Blood(2008)112(5):1570-80)。
【0036】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、異常細胞が制御されずに分裂し、他の組織に侵入することができる疾患を指す。100を超える異なるタイプの癌が存在する。ほとんどの癌は、それらが始まる器官又は細胞のタイプに対して命名され、例えば、結腸で始まる癌は結腸癌と呼ばれる。皮膚のメラノサイトで始まる癌は、黒色腫と呼ばれる。癌のタイプは、より広いカテゴリーに分類することができる。癌の主なカテゴリーには以下が含まれる:癌(皮膚において、又は内臓を裏打ち若しくは被覆する組織において始まる癌、及びそのサブタイプを意味し、腺癌、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、及び移行上皮癌を含む);肉腫(骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、又は他の結合組織若しくは支持組織において始まる癌を意味する);白血病(血液形成組織(例えば、骨髄)で始まり、多数の異常な血液細胞が産生されて血液に入る原因となる癌を意味する);リンパ腫及び骨髄腫(免疫系の細胞で始まる癌を意味する);及び中枢神経系(central nervous system、CNS)癌(脳及び脊髄の組織で始まる癌を意味する)。「骨髄異形成症候群」という用語は、骨髄が十分な健康な血液細胞(白血球、赤血球、及び血小板)を作らず、血液及び/又は骨髄中に異常な細胞が存在するタイプの癌を指す。骨髄異形成症候群は、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)になり得る。ある特定の実施形態では、癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨肉腫、腸癌、脳腫瘍、乳癌、未知の原発性癌、骨転移癌、脳転移癌、肝臓転移癌、肺転移癌、カルチノイド、子宮頸癌、絨毛癌、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、眼癌、胆のう癌、胃癌、妊娠性絨毛膜腫瘍(GTT)、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ種、メラノーマ皮膚癌、中皮腫、男性癌、奇胎妊娠、口腔及び中咽頭癌、骨髄腫、鼻及び洞癌、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、食道癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、稀な癌、直腸癌、唾液腺癌、続発性癌、皮膚癌(非メラノーマ)、軟部組織肉腫、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、未知の原発性癌、子宮癌、腟癌、及び外陰癌を含むがこれらに限定されない癌から選択される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「交差防御」という用語は、ウイルス、細菌、寄生生物又は他の病原体の少なくとも2つのサブグループ、サブタイプ、株及び/又は変異体に対する、それらの1つのサブグループ、サブタイプ、株及び/又は変異体の単回接種による免疫を説明するために使用される。
【0038】
用語「サイトカイン」は、本明細書中で使用される場合、他の細胞に対して種々の効果を有する細胞によって分泌される小さな可溶性タンパク質物質をいう。サイトカインは、成長、発達、創傷治癒、及び免疫応答を含む多くの重要な生理学的機能を媒介する。それらは、細胞膜に位置するそれらの細胞特異的受容体に結合することによって作用し、それにより、異なるシグナル伝達カスケードが細胞内で開始することが可能になり、最終的に標的細胞における生化学的変化及び表現型の変化がもたらされる。一般的に、サイトカインは局所的に作用する。それらには、多くのインターロイキン、及びいくつかの造血成長因子を包含するI型サイトカイン;インターフェロン及びインターロイキン-10を含むII型サイトカイン;腫瘍壊死因子(「TNF」)関連分子(TNFα及びリンホトキシンを含む);インターロイキン1(「IL-1」)を含む、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー;及びケモカイン(多種多様な免疫及び炎症機能において重要な役割を果たす分子ファミリー)が含まれる。同じサイトカインは、細胞の状態に依存して細胞に対して異なる効果を有し得る。サイトカインは、多くの場合、他のサイトカインの発現を調節し、他のサイトカインのカスケードを誘発する。
【0039】
用語「検出可能な応答」は、本明細書中で使用される場合、検出試薬を用いる又は用いないアッセイにおいて検出され得る任意のシグナル又は応答を指すことを意図する。検出可能な応答としては、放射性崩壊及びエネルギー(例えば、蛍光、紫外線、赤外線、可視光線)放出、吸収、偏光、蛍光、リン光、透過、反射又は共鳴移動が挙げられるが、これらに限定されない。検出可能な応答には、クロマトグラフィー移動度、濁度、電気泳動移動度、質量スペクトル、紫外線スペクトル、赤外線スペクトル、核磁気共鳴スペクトル及びX線回折も含まれる。あるいは、検出可能な応答は、生物学的材料の1つ以上の特性(例えば、融点、密度、伝導率、表面弾性波、触媒活性又は元素組成)を測定するためのアッセイの結果であり得る。「検出試薬」は、目的の物質の存在又は非存在を示す検出可能な応答を生成する任意の分子である。検出試薬には、抗体、核酸配列、及び酵素などの様々な分子のいずれかが含まれる。検出を容易にするために、検出試薬はマーカーを含んでもよい。
【0040】
本明細書で使用される「エフェクター細胞」という用語は、最終的な応答又は機能を実行する細胞を指す。免疫系の主要なエフェクター細胞は、例えば、活性化リンパ球及び食細胞である。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「集団免疫」は、集団中の、ワクチン接種されていない個体に付与される防御であって、他の個体のワクチン接種及び感染可能な天然の予備軍の減少によって生み出される防御をいう。
【0042】
本明細書で使用される「ヘテロサブタイプ免疫」(「HSI」)という用語は、全てのウイルス株にわたって保存された抗原の免疫認識に基づく免疫を指す。
【0043】
本明細書で使用される「ヘテロタイプ」という用語は、異なる又は異常なタイプ又は形態(例えば、ウイルス、細菌、寄生生物又は他の病原体の異なるサブグループ、サブタイプ、株及び/又は変異体)であることを指すために使用される。
【0044】
本明細書で使用される「ホモタイプ」という用語は、ウイルス、細菌、寄生生物又は他の病原体の同じタイプ又は形態例えば、同じサブグループ、サブタイプ、株及び/又は変異体であることを指すために使用される。
【0045】
本明細書で使用される「免疫応答」及び「免疫媒介性」という用語は、これらの反応の結果が対象にとって有益であるか有害であるかにかかわらず、外来抗原又は自己抗原のいずれかに対する対象の免疫系の任意の機能的発現を指すために本明細書で互換的に使用される。本明細書で使用される、抗原又は組成物に対する「免疫学的応答」という用語は、対象における、目的の組成物中に存在する抗原に対する体液性及び/又は細胞性免疫応答の発生を指すことを意図する。本開示の目的のために、「体液性免疫応答」は、抗体分子によって媒介される免疫応答を指すが、「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球及び/又は他の白血球によって媒介されるものである。細胞性免疫の1つの重要な態様は、細胞溶解性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答を含む。CTLは、主要組織適合性複合体(MHC)によってコードされるタンパク質と会合して提示され細胞の表面上に発現されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊、又はそのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導及び促進するのを助ける。細胞性免疫の別の一態様は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を含む。ヘルパーT細胞は、その表面上に、MHC分子と会合してペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を集中させるのを助けるように作用する。「細胞性免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカイン、並びに活性化T細胞及び/又は他の白血球(CD4+及びCD8+T細胞に由来するものを含む)によって産生される他のこのような分子の産生を指す。したがって、免疫学的応答は、以下の効果の1つ以上を含み得る:B細胞による抗体の産生;及び/又は目的の組成物又はワクチン中に存在する抗原(単数又は複数)に特異的に指向されるサプレッサーT細胞及び/又はγδT細胞の活性化。これらの応答は、感染性を中和し、及び/又は抗体補足的、若しくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介して、免疫された宿主に防御を提供するように働き得る。このような応答は、当該分野で周知の標準的なイムノアッセイ及び中和アッセイを使用して決定され得る。
【0046】
本明細書で使用される「免疫表現型」又は「免疫型」という用語は、様々な免疫細胞集団の集合的頻度及び刺激に対するそれらの機能的応答(細胞シグナル伝達及び抗体応答)を指す。(Kaczorowski,KJ et al.Proc.Nat.Acad.Sci.USA(2017)を参照)。
【0047】
本明細書で使用される「免疫系」という用語は、先天性免疫系及び適応免疫系を含む、疾患に対する身体の防御系を指す。先天性免疫系は、病原体に対する非特異的な第1防御線を提供する。それは、物理的障壁(例えば、皮膚)、並びに細胞性防御機構(顆粒球、ナチュラルキラー細胞)及び体液性防御機構(補体系)の両方を含む。先天性免疫系の反応は即時的であるが、適応免疫系とは異なり、病原体に対する永続的な免疫を提供しない。適応免疫応答は、典型的には免疫学的記憶を生じる特定の抗原に対する脊椎動物の免疫系の応答である。
【0048】
本明細書で使用される「免疫優性エピトープ」という用語は、それに対して抗体の大部分が産生されるか、又はそれに対してT細胞の大部分が応答するエピトープを指す。
【0049】
「免疫学的レパートリー」という用語は、T細胞及びB細胞の表面上に位置する膜貫通抗原受容体タンパク質の集合を指す。(Benichu,J.et al.Immunology(2011)135:183-191))。受容体をコードすることに関与するコンビナトリアル機構は、ヒトにおいて1018を超える異なるT細胞受容体(TCR)とそれよりはるかに多様なB細胞レパートリーを生成する可能性を伴って、遺伝子コードを再シャッフリングすることによってそれを行う(Venturi,Y.et al.Nat.Rev.Immunol.(2008)8:231-8)。次に、これらの配列は転写され、次いでタンパク質に翻訳されて、細胞表面に提示される。受容体の構築のために遺伝子セグメントを再配置する組換えプロセスは、免疫応答の発生のカギであり、再配置された受容体の正確な形成は、抗原に対するそれらの将来の結合親和性にとって非常に重要である。
【0050】
そのような分子をコードするペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又はポリヌクレオチドは、「免疫原性」であり、したがって、免疫応答を誘導することができる場合、本開示における免疫原である。本開示において、免疫原性は、CTL媒介性応答を誘導する能力としてより具体的に定義される。したがって、免疫原は、免疫応答を誘導することができる分子であり、本開示では、CTL応答を誘導することができる分子である。免疫原は、等価な生物学的活性及び免疫学的活性を有する1つ以上のアイソフォーム、配列変異体、又はスプライス変異体を有し得るが、したがって、本開示の目的のために、元の天然ポリペプチドの免疫原性等価物であるとも考えられる。
【0051】
そのような分子をコードするペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又はポリヌクレオチドは、「免疫原性」であり、したがって、免疫応答を誘導することができる場合、本開示における免疫原である。本開示において、免疫原性は、CTL媒介性応答を誘導する能力としてより具体的に定義される。したがって、免疫原は、免疫応答を誘導することができる分子であり、本開示では、CTL応答を誘導することができる分子である。免疫原は、等価な生物学的活性及び免疫学的活性を有する1つ以上のアイソフォーム、配列変異体、又はスプライス変異体を有し得るが、したがって、本開示の目的のために、元の天然ポリペプチドの免疫原性等価物であるとも考えられる。
【0052】
本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、ポリペプチド又はポリペプチド複合体が、リガンドをインビトロで又はインビボで認識して結合するが、周囲環境中の他の分子を実質的に認識又は結合しない能力を指す。いくつかの実施形態では、特異的結合は、少なくとも約1×10M以下の平衡解離定数によって特徴付けることができる(例えば、より小さい平衡解離定数は、より強い結合を示す)。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当該分野で周知であり、例えば、平衡透析法、表面プラズモン共鳴法などが挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される「表面プラズモン共鳴法」という用語は、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,NJ)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイム生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。更なる説明については、米国特許第6、258,562号の実施例1及びJonsson et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19;Jonsson et al.(1991)Biotechniques11:620-627;Johnsson et al.(1995)J.Mol.Recognit.8:125;及びJohnnson et al.(1991)Anal.Biochem.198:268を参照。
【0054】
本明細書で使用される場合、「異種核酸配列」及び「導入遺伝子」という用語は、交換可能に使用され、本明細書で開示されるceDNAベクターに組み込まれ、それによって送達及び発現され得る、関心対象の(カプシドポリペプチドをコードする核酸以外の)核酸を指す。いくつかの実施形態によれば、「異種核酸」という用語は、接触する細胞又は対象に存在しない、それにより発現されない、又はそれに由来しない核酸(又は導入遺伝子)を指すことを意図する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」及び「転写カセット」という用語は、交換可能に使用され、導入遺伝子の転写を配向するのに十分な1つ以上のプロモーター又は他の調節配列に作動可能に連結された導入遺伝子を含むが、カプシドコード配列、他のベクター配列、又は逆位末端反復領域を含まない核酸の直鎖状ストレッチを指す。発現カセットは、追加的に、1つ以上のシス作用性配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、又はリプレッサー)、1つ以上のイントロン、及び1つ以上の転写後調節エレメントを含んでもよい。
【0056】
本明細書で交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、又は多重鎖のDNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、又はプリン及びピリミジン塩基若しくは他の天然、化学的修飾若しくは生化学的修飾、非天然、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。「オリゴヌクレオチド」は、一般に、一本鎖又は二本鎖DNAの約5~約100ヌクレオチドのポリヌクレオチドを指す。しかしながら、この開示の目的のために、オリゴヌクレオチドの長さに上限はない。オリゴヌクレオチドは、「オリゴマー」又は「オリゴ」としても知られており、遺伝子から単離するか、又は当該技術分野で既知である方法によって化学的に合成することができる。「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、記載されている実施形態に適用可能であるように、一本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。
【0057】
DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、DNA-DNA二重鎖、事前に凝縮されたDNA、PCR産物、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、又はこれらのグループの誘導体及び組み合わせの形態であり得る。DNAは、ミニサークル、プラスミド、バクミド、ミニ遺伝子、ミニストリングDNA(直鎖状の共有結合性閉鎖DNAベクター)、閉端直鎖状の二重鎖DNA(CELiD又はceDNA)、doggybone(dbDNA(商標))DNA、ダンベル形DNA、最小限度に免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)ベクター、ウイルス性ベクター又は非ウイルス性ベクターの形態にあり得る。RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、rRNA、tRNA、ウイルスRNA(vRNA)、及びそれらの組み合わせの形態であり得る。核酸としては、既知のヌクレオチド類似体又は修飾型骨格残基若しくは連結を含有する核酸が挙げられ、これらは、合成、天然に存在する、及び天然に存在しないものであり、参照核酸と同様の結合特性を有する。そのような類似体及び/又は修飾残基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(モルホリノ)、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、ロックド核酸(LNA(商標))、及びペプチド核酸(PNA)が挙げられる。別途限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。別途明記しない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的修飾型バリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的配列、同様に、明示的に示された配列を暗黙的に包含する。
【0058】
「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)又はリボース(RNA)、塩基、及びリン酸基を含有する。ヌクレオチドは、リン酸基を介してともに連結している。
【0059】
「塩基」には、プリン及びピリミジンが含まれ、それらには、天然化合物のアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、及び天然類似体、並びにプリン及びピリミジンの合成誘導体が更に含まれ、それらには、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、及びアルキルハライドなどであるがこれらに限定されない新しい反応基を配置する修飾が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用される「核酸構築物」という用語は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又はそうでなければ天然に存在しなであろう様式で核酸のセグメントを含有するように修飾されるか、又は合成である、一本鎖又は二本鎖の核酸分子を指す。核酸構築物という用語は、核酸構築物が本開示のコード配列の発現に必要な制御配列を含有する場合、「発現カセット」という用語と同義である。「発現カセット」は、プロモーターに作動可能に連結されたDNAコード配列を含む。
【0061】
「ハイブリダイズ可能」又は「相補的」若しくは「実質的に相補的」とは、核酸(例えば、RNA)が、非共有結合的に結合する、すなわち、ワトソン・クリック塩基対及び/又はG/U塩基対を形成する、温度及び溶液イオン強度の適切なインビトロ及び/又はインビボ条件下で配列特異的、逆平行様式で別の核酸に「アニール」又は「ハイブリダイズ」する(すなわち、核酸は、相補的核酸に特異的に結合する)のを可能にするヌクレオチドの配列を含むことを意味する。当該技術分野で既知であるように、標準的なワトソン・クリック塩基対合には、チミジン(T)とのアデニン(A)対合、ウラシル(U)とのアデニン(A)対合、及びシトシン(C)とのグアニン(G)対合が含まれる。加えて、2つのRNA分子(例えば、dsRNA)間のハイブリダイゼーションのために、グアニン(G)塩基がウラシル(U)と対合することも、当該技術分野で既知である。例えば、G/U塩基対合は、mRNA中のコドンとのtRNAアンチコドン塩基対合の状況で、遺伝コードの縮重(すなわち、冗長性)を部分的に担っている。この開示の文脈において、対象のDNA標的化RNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)のグアニン(G)は、ウラシル(U)に相補的であるとみなされ、逆もまた同様である。したがって、対象のDNA標的化RNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)の所与のヌクレオチド位置でG/U塩基対を作製できる場合、その位置は、非相補的であるとみなされないが、代わりに相補的であるとみなされる。
【0062】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、コード及び非コードアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化されたアミノ酸、及び修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。
【0063】
特定の抗原又は免疫原性ペプチドを「コードする」DNA配列は、特定のRNA及び/又はタンパク質に転写されるDNA核酸配列である。DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されるRNA(mRNA)をコードし得るか、又はDNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRNA(例えば、tRNA、rRNA、又はDNA標的化RNA、「非コード」RNA又は「ncRNA」とも呼ばれる)をコードし得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「末端反復」又は「TR」という用語は、少なくとも1つの最小限必要な複製起源、及びパリンドロームヘアピン構造を含む領域を含む、任意のウイルス末端反復又は合成配列を含む。Rep結合配列(「Rep-binding sequence、RBS」)(RBE(Rep結合エレメント)とも称される)及び末端分離部位(「TRS」)は、一緒に「最小限必要な複製起源」を構成し、したがって、TRは、少なくとも1つのRBS及び少なくとも1つのTRSを含む。ポリヌクレオチド配列の所与のストレッチ内で互いの逆相補体であるTRは、典型的に、各々「逆位末端反復」又は「ITR」と称される。ウイルスの文脈において、ITRは、複製、ウイルスパッケージング、組み込み、及びプロウイルスレスキューを媒介する。予想外に見出されたように、全長にわたって逆相補体でないTRは、依然としてITRの従来の機能を遂行することができ、したがって、ITRという用語は、本明細書において、ceDNAベクターの複製を媒介することができるceDNAゲノム又はceDNAベクター中のTRを指すように使用される。複合ceDNAベクター構成中、3つ以上のITR又は非対称ITR対が存在し得ることは、当業者によって理解されるであろう。ITRは、AAV ITR若しくは非AAV ITRであり得るか、又はAAV ITR若しくは非AAV ITRに由来し得る。例えば、ITRは、パルボウイルス及びディペンドウイルス(例えば、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、マウスパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ヒトパルボウイルスB-19)を包含するパルボウイルス科に由来し得るか、又はSV40複製の起源として役立つSV40ヘアピンは、切断、置換、欠失、挿入、及び/若しくは付加によって更に修飾され得る、ITRとして使用され得る。パルボウイルス科ウイルスは、2つの亜科、すなわち脊椎動物に感染するパルボウイルス亜科及び無脊椎動物に感染するデンソウイルス亜科からなる。ディペンドパルボウイルスは、ヒト、霊長類、ウシ、イヌ、ウマ、及びヒツジ種を含むが、これらに限定されない脊椎動物宿主における複製が可能である、アデノ随伴ウイルス(AAV)のウイルス科を含む。本明細書では便宜上、ceDNAベクター中の発現カセットに対して5’(その上流)に位置するITRは、「5’ITR」又は「左ITR」と称され、ceDNAベクター中の発現カセットに対して3’(その下流)に位置するITRは、「3’ITR」又は「右ITR」と称される。
【0065】
「野生型ITR」又は「WT-ITR」は、例えば、Rep結合活性及びRepニッキング能力を保持する、AAV又は他のディペンドウイルスにおける天然に存在するITR配列の配列を指す。任意のAAV血清型からのWT-ITRの核酸配列は、遺伝コード又はドリフトの縮退に起因して天然に存在する正準配列とわずかに異なる場合があり、したがって本明細書における使用のために包含されるWT-ITR配列は、産生プロセス中に発生する天然に存在する変化(例えば、複製エラー)の結果としてWT-ITR配列を含む。
【0066】
本明細書で使用される場合、「実質的に対称なWT-ITR」又は「実質的に対称なWT-ITR対」という用語は、両方がそれらの全長にわたって逆相補配列を有する野生型ITRである単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内のWT-ITRの対を指す。例えば、変化が配列の特性及び全体的な三次元構造に影響を及ぼさない限り、天然に存在する正準配列から逸脱する1つ以上のヌクレオチドを有する場合でも、ITRが野生型の配列であるとみなすことができる。いくつかの態様によれば、逸脱するヌクレオチドは、保存的配列変化を表す。非限定的な一例として、配列は、正準配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性(例えば、デフォルト設定でBLASTを使用して測定される)を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、他のWT-ITRに対して対称な三次元空間構成を有する。実質的に対称なWT-ITRは、三次元空間で同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する。実質的に対称なWT-ITRは、適切なRepタンパク質と対合する操作可能なRep結合部位(RBE又はRBE’)及び末端分解部位(trs)を有することを決定することによって、WTとして機能的に確認することができる。任意選択的に、許容条件下での導入遺伝子発現を含む他の機能を試験することができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「修飾型ITR」又は「mod-ITR」又は「変異型ITR」の語句は、本明細書で交換可能に使用され、同じ血清型からのWT-ITRと比較して、少なくとも1つ以上のヌクレオチドに変異を有するITRを指す。変異は、同じ血清型のWT-ITRの三次元空間構成と比較して、ITRのA、C、C’、B、B’領域のいくつか以上に従って変化をもたらし、三次元空間構成(すなわち、幾何学的空間におけるその三次元構造)の変化をもたらし得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「非対称ITR対」とも称される「非対称ITR」という用語は、全長にわたって逆相補体ではない単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内のITRの対を指す。非限定的な一例として、非対称ITR対は、それらの三次元構造が、幾何学的空間において異なる形状であるように、それらの同族ITRに対して対称の三次元空間構成を有しない。言い換えると、非対称のITR対は、全体的な幾何学的構造が異なり、すなわち、三次元空間でのそれらのA、C-C’、及びB-B’ループの構成が異なる(例えば、同族ITRと比較して、1つのITRは、短いC-C’アーム及び/又は短いB-B’アームを有し得る)。2つのITR間の配列の相違は、1つ以上のヌクレオチド付加、欠失、切断、又は点変異に起因し得る。いくつかの実施形態によれば、非対称ITR対の一方のITRは、野生型AAV ITR配列であり得、他方のITRは、本明細書で定義される修飾型ITR(例えば、非野生型ITR配列又は合成ITR配列)であり得る。別の実施形態では、非対称ITR対のどちらのITRも野生型AAV配列ではなく、2つのITRは、幾何学的空間において異なる形状(すなわち、異なる全体的な幾何学的構造)を有する修飾型ITRである。いくつかの実施形態によれば、非対称ITR対の一方のmod-ITRは、短いC-C’アームを有することができ、他方のITRは、それらが同族の非対称mod-ITRと比較して、異なる三次元空間構成を有するように異なる修飾(例えば、単一アーム、又は短いB-B’アームなど)を有し得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、「対称ITR」という用語は、野生型ディペンドウイルスITR配列に対して変異又は修飾され、それらの全長にわたって逆相補である単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内の一対のITRを指す。どちらのITRも野生型ITR AAV2配列ではなく(すなわち、それらは修飾型ITRであり、変異型ITRとも称される)、ヌクレオチドの付加、欠失、置換、切断、又は点変異により、野生型ITRとは配列が異なり得る。本明細書では便宜上、ceDNAベクター中の発現カセットに対して5’(その上流)に位置するITRは、「5’ITR」又は「左ITR」と称され、ceDNAベクター中の発現カセットに対して3’(その下流)に位置するITRは、「3’ITR」又は「右ITR」と称される。
【0070】
本明細書で使用される場合、「実質的に対称の修飾型ITR」又は「実質的に対称のmod-ITR対」という用語は、両方がそれらの全長にわたって逆相補配列を有する単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内の修飾型ITRの対を指す。例えば、修飾型ITRは、変化が特性及び全体的な形状に影響を及ぼさない限り、逆相補配列から逸脱するいくつかのヌクレオチド配列がある場合でも、実質的に対称とみなすことができる。非限定的な一例として、配列は、正準配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性(デフォルト設定でBLASTを使用して測定される)を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、それらの同族の修飾型ITRに対して対称な三次元空間構成を有する。言い換えると、実質的に対称な修飾型ITR対は、三次元空間に構成された同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する。いくつかの実施形態によれば、mod-ITR対からのITRは、異なる逆相補ヌクレオチド配列を有し得るが、依然として同じ対称な三次元空間構成を有し得る。すなわち、両方のITRは、同じ全体的な三次元形状をもたらす変異を有する。例えば、mod-ITR対の1つのITR(例えば、5’ITR)は、1つの血清型に由来し得、他方のITR(例えば、3’ITR)は、異なる血清型に由来し得るが、両方が同じ対応する変異を有し得(例えば、5’ITRがC領域に欠失を有する場合、異なる血清型の同族の修飾型3’ITRは、C’領域の対応する位置に欠失を有する)、それにより修飾型ITR対が同じ対称な三次元空間構成を有する。そのような実施形態では、修飾型ITR対の各ITRは、AAV2及びAAV6の組み合わせなどの異なる血清型(例えば、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12)に由来し得、異なる血清型由来の同族のITRの対応する位置に反映されるいくつかのITRによる修飾を伴う。いくつかの実施形態によれば、実質的に対称な修飾型ITR対は、ITR間のヌクレオチド配列の相違が特性又は全体的な形状に影響を及ぼさず、それらが三次元空間で実質的に同じ形状を有する限り、一対の修飾型ITR(modified ITR、mod-ITR)を指す。非限定的な例として、mod-ITRは、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)又はデフォルト設定のBLASTNなどの当該技術分野において周知の標準的な手段によって決定される、正準mod-ITRに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、対称な三次元空間構成を有する。実質的に対称なmod-ITR対は、三次元空間で同じA、C-C’及びB-B’ループを有する。例えば、実質的に対称なmod-ITR対の修飾型ITRがC-C’アームの欠失を有する場合、同族のmod-ITRは、C-C’ループの対応する欠失を有し、またその同族のmod-ITRの幾何学的空間に同じ形状の残りのA及びB-B’ループの同様の三次元構造を有する。
【0071】
本明細書中で使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」(IRES)は、mRNA配列の中央で翻訳の開始を可能にするヌクレオチド配列(500超のヌクレオチド)を指すことを意図する(Kirn,JIT.et al.,2011.PLoS One 6(4):8556;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。IRES配列の使用は、IRESの前後の遺伝子の同時発現を確実にするが、IRESに続く配列は、IRES配列に先行する配列よりも低いレベルで転写及び翻訳され得る。
【0072】
本明細書中で使用される場合、「2Aペプチド」は、ウイルス(例えば、口蹄疫ウイルス(F2A)、ブタテッショウウイルス1(P2A)、オセアシグナウイルス(T2A)、又はウマ鼻炎Aウイルス(E2A))に由来する小さな自己切断ペプチドを指すことを意味する。2Aという名称は、特に、2AペプチドのO末端におけるグリシル-プロリル結合でリボソームスキップをもたらすピコルナウイルスポリタンパク質の領域を具体的に指す(Kim,J.IT.et al.2011.PLoS One 6(4);その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。このスキップは、2Aペプチドとそのすぐ下流のペプチドとの間の切断を生じる。
【0073】
「隣接する」という用語は、別の核酸配列に関する1つの核酸配列の相対位置を指す。一般に、配列ABCにおいて、BはA及びCに隣接している。配列A×B×Cについても同様である。したがって、隣接する配列は、隣接される配列の前又は後に続くが、隣接される配列と連続している、又はすぐ隣である必要はない。いくつかの実施形態によれば、「隣接する」という用語は、直鎖状二重鎖ceDNAベクターの各末端における末端反復を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ceDNAゲノム」という用語は、少なくとも1つの逆位末端反復領域を更に組み込む発現カセットを指す。ceDNAゲノムは、1つ以上のスペーサー領域を更に含み得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAゲノムは、DNAの分子間二重鎖ポリヌクレオチドとして、プラスミド又はウイルスゲノムに組み込まれる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ceDNAスペーサー領域」という用語は、ceDNAベクター又はceDNAゲノム中の機能的エレメントを分離する介在配列を指す。いくつかの実施形態によれば、ceDNAスペーサー領域は、最適機能性のため所望の距離で2つの機能的エレメントを保持する。いくつかの実施形態によれば、ceDNAスペーサー領域は、例えば、プラスミド又はバキュロウイルス内のceDNAゲノムの遺伝的安定性を提供するか又は増大させる。いくつかの実施形態によれば、ceDNAスペーサー領域は、クローニング部位などに便利な位置を提供することによって、ceDNAゲノムの容易な遺伝子操作を促進する。例えば、ある特定の態様では、いくつかの制限エンドヌクレアーゼ部位を含有するオリゴヌクレオチド「ポリリンカー」、又は既知のタンパク質(例えば、転写因子)結合部位を有しないように設計された非オープンリーディングフレーム配列をceDNAゲノム中に位置付けて、シス作用性因子を分離することができ、例えば、末端分離部位と、上流転写調節エレメントとの間に6mer、12mer、18mer、24mer、48mer、86mer、176merなどを挿入する。同様に、スペーサーを、ポリアデニル化シグナル配列と3’末端分離部位との間に組み込むことができる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「Rep結合部位」、「Rep結合エレメント」、「RBE」、及び「RBS」は、交換可能に使用され、Repタンパク質(例えば、AAV Rep 78又はAAV Rep 68)の結合部位を指し、Repタンパク質による結合時に、Repタンパク質が、RBSを組み込む配列上でその部位特異的エンドヌクレアーゼ活性を実施することを可能にする。RBS配列及びその逆相補体は、一緒に単一RBSを形成する。RBS配列は、当該技術分野において既知であり、例えば、AAV2において同定されたRBS配列である5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’を含む。任意の既知のRBS配列は、他の既知のAAV RBS配列及び他の天然に既知の又は合成RBS配列を含む、本開示の実施形態において使用され得る。理論に束縛されるものではないが、Repタンパク質のヌクレアーゼドメインは、二重鎖核酸配列GCTCに結合し、したがって2つの既知のAAV Repタンパク質は、二重鎖オリゴヌクレオチド、5’-(GCGC)(GCTC)(GCTC)(GCTC)-3’に直接結合し、安定してアセンブリすると考えられる。加えて、可溶性凝集配座異性体(すなわち、不定数の相互関連Repタンパク質)は解離し、Rep結合部位を含有するオリゴヌクレオチドに結合する。各Repタンパク質は、各鎖上の窒素塩基及びホスホジエステル骨格の両方と相互作用する。窒素塩基との相互作用は、配列特異性を提供するが、ホスホジエステル骨格との相互作用は、非配列特異性又は低配列特異性であり、タンパク質-DNA複合体を安定させる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「末端分離部位」及び「TRS」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、Repが、細胞DNAポリメラーゼ、例えばDNA polデルタ又はDNA polイプシロンを介してDNA伸長の基質として役立つ3’OHを生成する5’チミジンとのチロシン-ホスホジエステル結合を形成する領域を指す。代替的に、Rep-チミジン複合体は、配位ライゲーション反応に関与し得る。いくつかの実施形態によれば、TRSは、最小限で非塩基対チミジンを包含する。いくつかの実施形態によれば、TRSのニッキング効率は、RBSからの同じ分子内のその距離によって少なくとも部分的に制御され得る。受容体基質が相補的ITRである場合、得られる産物は、分子間二重鎖である。TRS配列は、当該技術分野において既知であり、例えば、AAV2において同定されたヘキサヌクレオチド配列である5’-GGTTGA-3’を含む。任意の既知のTRS配列は、他の既知のAAV TRS配列及び他の天然に既知の又はAGTT、GGTTGG、AGTTGG、AGTTGAなどの合成TRS配列、並びにRRTTRRなどの他のモチーフを含む、本開示の実施形態において使用され得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「ceDNA」という用語は、合成又はその他の非ウイルス遺伝子導入のためのカプシド不含閉端直鎖状二本鎖(ds)二重鎖DNAを指す。ceDNAの詳細な説明は、2017年3月3日に出願された国際特許出願第PCT/US2017/020828号に記載されており、その全容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。細胞ベースの方法を使用して様々な逆位末端反復(ITR)配列及び構成を含むceDNAの産生のためのある特定の方法は、2018年9月7日に出願された国際特許出願第PCT/US18/49996号及び2018年12月6日に出願された同第PCT/US2018/064242号の実施例1に記載されており、その各々は、その全体の参照により本明細書に組み込まれる。様々なITR配列及び構成を含む合成ceDNAベクターの生成のためのある特定の方法は、例えば、2019年1月18日に出願された国際特許出願第PCT/US2019/14122号に記載されており、その全容は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、「ceDNAベクター」及び「ceDNA」という用語は、交換可能に使用され、少なくとも1つの末端パリンドロームを含む閉端DNAベクターを指す。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、2つの共有結合性閉端を含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-プラスミド」という用語は、分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含むプラスミドを指す。
【0080】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バクミド」という用語は、E.coliにおいてプラスミドとして伝播することができる分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含み、それによりバキュロウイルスのシャトルベクターとして作動し得る、感染性バキュロウイルスゲノムを指す。
【0081】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス」という用語は、バキュロウイルスゲノム内の分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含むバキュロウイルスを指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス感染昆虫細胞」及び「ceDNA-BIIC」という用語は、交換可能に使用され、ceDNA-バキュロウイルスに感染した無脊椎動物宿主細胞(限定されないが、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)を含む)を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「閉端DNAベクター」という用語は、少なくとも1つの共有結合性閉端を有し、ベクターの少なくとも一部が分子内二重鎖構造を有する、カプシド不含DNAベクターを指す。
【0084】
本明細書で定義されるように、「レポーター」は、検出可能な読み出しを提供するために使用することができるタンパク質を指す。レポーターは、一般に、蛍光、色、又は発光などの測定可能なシグナルを産生する。レポータータンパク質コード配列は、細胞又は生物中の存在が容易に観察されるタンパク質をコードする。例えば、蛍光タンパク質は、特定波長の光で励起された場合に細胞を蛍光させ、ルシフェラーゼは、細胞に光を生じる反応を触媒させ、β-ガラクトシダーゼなどの酵素は、基質を着色産物に変換する。実験又は診断目的のために有用な例示的なレポーターポリペプチドとしては、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase、AP)、チミジンキナーゼ(thymidine kinase、TK)、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)、及び他の蛍光タンパク質、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase、CAT)、ルシフェラーゼ、並びに当該技術分野において周知の他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で使用される場合、「エフェクタータンパク質」という用語は、例えば、レポーターポリペプチドとして、あるいはより適切には、細胞を殺傷するポリペプチド、例えば毒素、又は選択された薬剤若しくはその欠失で細胞を殺傷しやすくする薬剤として、検出可能な読み出しを提供するポリペプチドを指す。エフェクタータンパク質は、宿主細胞のDNA及び/又はRNAを直接標的又は損傷する任意のタンパク質又はペプチドを含む。例えば、エフェクタータンパク質としては、宿主細胞DNA配列を標的とする制限エンドヌクレアーゼ(ゲノム因子であるか染色体外因子であるかにかかわらず)、細胞生存に必要なポリペプチドを標的とするプロテアーゼ、DNAギラーゼ阻害剤、及びリボヌクレアーゼ型毒素が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される合成生物的回路によって制御されるエフェクタータンパク質の発現は、別の合成生物的回路における因子として関与し得るが、それによって生物的回路系の応答性の範囲及び複雑性を拡張する。
【0086】
転写調節因子は、導入遺伝子例えば、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸の転写を活性化又は抑制する転写活性化因子及び抑制因子を指す。プロモーターは、特定の遺伝子の転写を開始する核酸の領域である。転写アクチベーターは、典型的に、転写プロモーターの近くに結合し、RNAポリメラーゼを動員して転写を直接開始する。リプレッサーは、転写プロモーターに結合し、RNAポリメラーゼによる転写開始を立体的に妨害する。他の転写調節因子は、それらが結合する場所、並びに細胞条件及び環境条件に応じて、アクチベーター又はリプレッサーのいずれかとして役立ち得る。転写調節因子クラスの非限定例としては、ホメオドメインタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質、翼状らせん(フォークヘッド)タンパク質、及びロイシン-ジッパータンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
本明細書で使用される場合、「リプレッサータンパク質」又は「誘導因子タンパク質」は、調節配列エレメントに結合するタンパク質であり、調節配列エレメントに作動可能に連結した配列の転写をそれぞれ抑制又は活性化する。本明細書に記載される好ましいリプレッサー及び誘導因子タンパク質は、少なくとも1つの入力剤又は環境入力の存在又は不在に敏感である。本明細書に記載される好ましいタンパク質は、例えば、分離可能なDNA結合及び入力剤結合、又は応答性エレメント若しくはドメインを含む形態のモジュールである。
【0088】
本明細書で使用される場合、「担体」としては、任意かつ全ての溶媒、分散媒質、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが挙げられる。薬学的に活性な物質に対するそのような媒質及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補充的活性成分を組成物に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与された場合に、毒性反応、アレルギー性反応、又は同様の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「入力剤応答性ドメイン」は、条件又は入力剤に結合するか、又はそうでなければ連結DNA結合融合ドメインをその条件若しくは入力の存在に対して応答性にするように、条件又は入力剤に応答する転写因子のドメインである。いくつかの実施形態によれば、条件又は入力の存在は、入力剤応答性ドメイン又はそれが融合するタンパク質の立体構造変化をもたらし、それが転写因子の転写調節活性を修飾する。
【0090】
「インビボ」という用語は、多細胞動物などの生物中又は生物内で起こるアッセイ又はプロセスを指す。本明細書に記載される態様のうちのいくつかによれば、方法又は使用は、細菌等の単細胞生物が使用されるときに「インビボで」起こると言われ得る。「エクスビボ」という用語は、多細胞動物又は植物、例えば、とりわけ外植片、培養細胞(一次細胞及び細胞株を含む)、形質転換細胞株、及び抽出組織又は細胞(血液細胞を含む)の体外に無傷膜を有する生細胞を使用して実施される方法及び使用を指す。「インビトロ」という用語は、細胞抽出物などの無傷膜を有する細胞の存在を必要としないアッセイ及び方法を指し、非細胞系、例えば細胞抽出物などの細胞又は細胞系を含まない媒質にプログラム可能な合成生物的回路を導入することを指し得る。
【0091】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、タンパク質又はRNAをコードする異種標的遺伝子であり得る、核酸配列の転写を駆動することによって、別の核酸配列の発現を調節する任意の核酸配列を指す。プロモーターは、構成的、誘導性、抑制性、組織特異性、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。プロモーターは、核酸配列の残りの転写の開始及び速度が制御される、核酸配列の制御領域である。プロモーターはまた、RNAポリメラーゼ及び他の転写因子等の調節タンパク質及び分子が結合し得る、遺伝子エレメントを含有し得る。本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態によれば、プロモーターは、プロモーター自体の発現を調節する転写因子の発現を駆動することができる。プロモーター配列内では、転写開始部位、同様に、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見出されるであろう。真核生物プロモーターは、必ずしもそうではないが、多くの場合、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含有する。誘導性プロモーターを含む様々なプロモーターを使用して、本明細書に開示されるceDNAベクター中の導入遺伝子の発現を駆動することができる。プロモーター配列は、その3’末端で転写開始部位によって結合され、バックグラウンドより上で検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基又はエレメントを含むように上流(5’配向)に伸びる。いくつかの実施形態によれば、本開示のプロモーターは、肝臓特異的プロモーターである。
【0092】
本明細書で使用される場合、「エンハンサー」という用語は、1つ以上のタンパク質(例えば、活性因子タンパク質又は転写因子)に結合して、核酸配列の転写活性化を増加させるシス作用性調節配列(例えば、10~1,500塩基対)を指す。エンハンサーは、それらが調節する遺伝子開始部位の上流又は遺伝子開始部位の下流で最大1,000,000塩基対に位置付けられ得る。エンハンサーは、非関連遺伝子のイントロン領域内又はエキソン領域内に位置付けられ得る。
【0093】
プロモーターは、それが調節する核酸配列の発現を駆動する、又は転写を駆動すると言うことができる。「操作可能に連結された」、「作動可能に位置付けられた」、「作動可能に連結された」、「制御下」、及び「転写制御下」という語句は、プロモーターが、核酸配列に関して正しい機能的位置及び/又は配向にあり、その配列の転写開始及び/又は発現を制御するように調節することを示す。本明細書で使用される場合、「逆位プロモーター」は、核酸配列が逆配向にあるプロモーターを指し、それによりコード鎖であったものは、今は非コード鎖であり、逆も同様である。逆位プロモーター配列を様々な実施形態で使用して、スイッチの状態を調節することができる。加えて、様々な実施形態では、プロモーターをエンハンサーと併せて使用することができる。
【0094】
プロモーターは、所与の遺伝子又は配列のコードセグメント及び/又はエクソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって取得され得る、遺伝子又は配列と天然に関連するものであり得る。このようなプロモーターは、「内因性」と呼ばれ得る。同様に、いくつかの実施形態によれば、エンハンサーは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置する、核酸配列と天然に関連するものであり得る。
【0095】
いくつかの実施形態によれば、コード核酸セグメントは、「組換えプロモーター」又は「異種プロモーター」の制御下で位置付けられ、これらの両方は、その自然環境において作動可能に連結されたコードされた核酸配列と通常は関連しないプロモーターを指す。組換え又は異種エンハンサーは、その自然環境において所与の核酸配列と通常は関連しないエンハンサーを指す。そのようなプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、任意の他の原核、ウイルス、又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、及び「天然に存在」しない合成プロモーター又はエンハンサーを含み得、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメント、及び/又は当該技術分野において既知である遺伝子操作の方法を通じて発現を変更する変異を含み得る。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列を合成的に産生することに加えて、プロモーター配列は、本明細書に開示される合成生物的回路及びモジュールに関して、PCRを含む組換えクローニング及び/又は核酸増幅技術を使用して産生され得る(例えば、米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号を参照されたく、各々は参照により本明細書に組み込まれる)。更に、ミトコンドリア、クロロプラスト等の非核性細胞小器官内の配列の転写及び/又は発現を配向する制御配列が同様に用いられ得ることが企図される。
【0096】
本明細書に記載される場合、「誘導性プロモーター」は、誘導因子若しくは誘導剤の存在下、それによって影響される場合、又はそれによって接触される場合に、転写活性を開始又は強化することによって特徴付けられるものである。本明細書に定義される場合、「誘導因子」又は「誘導剤」は、内因性であり得るか、又は誘導性プロモーターからの転写活性を誘導することにおいて活性であるような方式で投与される、通常は外因性の化合物又はタンパク質であり得る。いくつかの実施形態によれば、誘導因子又は誘導剤、すなわち、化学物質、化合物、又はタンパク質は、それ自体が核酸配列の転写又は発現の結果であり得るが(すなわち、誘導因子は、別の構成成分又はモジュールによって発現される誘導因子タンパク質であり得る)、それ自体が誘導性プロモーターの制御下であり得る。いくつかの実施形態によれば、誘導性プロモーターは、リプレッサー等のある特定の薬剤の不在下で誘導される。誘導性プロモーターの例としては、テトラサイクリン、メタロチオニン、エクジソン、哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、及びマウス乳腺腫瘍ウイルスの長い末端反復(MMTV-LTR))、並びに他のステロイド応答性プロモーター、ラパマイシン応答性プロモーター等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書で交換可能に使用される「DNA調節配列」、「制御エレメント」、及び「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナルなどの転写及び翻訳制御配列を指し、これらは非コード配列(例えば、DNA標的化RNA)又はコード配列(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド若しくはCas9/Csn1ポリペプチド)の転写を提供及び/若しくは調節し、かつ/又はコードされたポリペプチドの翻訳を調節する。
【0098】
本明細書で使用される「オープンリーディングフレーム(ORF)」という用語は、ペプチド又はタンパク質に翻訳され得るいくつかのヌクレオチドトリプレットの配列を指すことを意図する。オープンリーディングフレームは、好ましくは開始コドン、すなわちアミノ酸メチオニン(ATG)を通常コードする3つの後続ヌクレオチドの組み合わせをその5’末端に含み、また通常3ヌクレオチドの倍数の長さを示す後続領域を含む。ORFは、好ましくは終止コドン(例えば、TAA、TAG、TGA)によって終結する。典型的には、これはオープンリーディングフレームの唯一の終止コドンである。したがって、本開示の文脈におけるオープンリーディングフレームは、好ましくは、開始コドン(例えばATG)で始まり、好ましくは停止コドン(例えばTAA、TGA、又はTAG)で終わる、3で割ることができるいくつかのヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である。オープンリーディングフレームは、単離されてもよく、又はより長い核酸配列、例えば本明細書に記載のceDNAベクターに組み込まれてもよい。
【0099】
「作動可能に連結された」とは、そのように記載された構成成分が、それらが意図された方法で機能することを許可する関係にある並列を指す。例えば、プロモーターがその転写又は発現に影響を与える場合、プロモーターは、コード配列に操作可能に連結されている。「発現カセット」は、ceDNAベクターにおける導入遺伝子の転写を指示するのに十分なプロモーター又は他の調節配列に作動可能に連結されているDNA配列を含む。好適なプロモーターには、例えば、組織特異的プロモーターが含まれる。プロモーターは、AAV起源でもあり得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本開示によるceDNAベクターでの予防的治療を含む治療が提供される、ヒト又は動物を指す。本明細書中で使用される場合、用語「対象」は、ヒト及び他の動物を含む。好ましくは、対象は、ヒトである。例えば、対象は、成人、10代の若者、小児(2歳~14歳)、乳児(出生~2歳)、又は新生児(2ヶ月まで)であり得る。特定の態様において、対象は、最大4ヶ月齢、又は最大6ヶ月齢である。いくつかの態様によれば、成人は、約65歳以上、又は約60歳以上の高齢者である。いくつかの態様によれば、対象は、妊婦又は妊娠しようとしている女性である。他の態様において、対象はヒトではなく;例えば、非ヒト霊長類;例えば、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ、又はマカクである。特定の態様において、対象は、イヌ又はネコなどのペットであってもよい。
【0101】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本開示の核酸構築物又はceDNA発現ベクターによる形質転換、トランスフェクション、形質導入などを受けやすい任意の細胞型を含む。非限定的な例として、宿主細胞は、単離された初代細胞、多能性幹細胞、CD34細胞)、人工多能性幹細胞、又はいくつかの不死化細胞株(例えば、HepG2細胞)のいずれかであり得る。代替的に、宿主細胞は、組織、器官、又は生物におけるインサイチュ又はインビボの細胞であり得る。
【0102】
「外因性」という用語は、その天然源以外の細胞に存在する物質を指す。本明細書で使用される「外因性」という用語は、通常見られず、核酸又はポリペプチドをそのような細胞又は生物に導入することが望まれる、人間の手が関与するプロセスによって細胞又は生物等の生物系に導入された核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)又はポリペプチドを指し得る。代替的に、「外因性」とは、それが比較的少量で見られ、細胞又は生物における核酸又はポリペプチドの量を増加させること、例えば、異所性発現又はレベルをもたらすことが望まれる、人間の手が関与するプロセスによって細胞又は生物等の生物系に導入された核酸又はポリペプチドを指し得る。これとは対照的に、「内因性」という用語は、生物系又は細胞に対して天然である物質を指す。
【0103】
「配列同一性」という用語は、2つのヌクレオチド配列間の関連性を指す。本開示の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド配列間の配列同一性の程度は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,上記)、好ましくはバージョン3.0.0以降において実装されるように、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,上記)を使用して決定される。使用される任意のパラメータは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ拡張ペナルティ0.5、及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」とラベル付けされたNeedleの出力(-nobriefオプションを使用して取得される)は、同一性パーセントとして使用され、次のように計算される、(同一のデオキシリボヌクレオチド×100)/アラインメントの長さ-アラインメントにおけるギャップの総数)。アラインメントの長さは、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも25ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも100ヌクレオチドである。
【0104】
本明細書で使用される「相同性」又は「相同」という用語は、必要に応じて配列を整列させ、ギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後、標的染色体上の対応する配列のヌクレオチド残基と同一であるヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。ヌクレオチド配列相同性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ClustalW2、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当該技術分野の範囲内である様々な方式で達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。いくつかの実施形態によれば、例えば相同性アームの核酸配列(例えば、DNA配列)は、配列が、宿主細胞の対応する未変性又は未編集の核酸配列(例えば、ゲノム配列)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%以上同一である場合、「相同」とみなされる。
【0105】
本明細書で使用される「異種」という用語は、それぞれ天然の核酸又はタンパク質には見られないヌクレオチド又はポリペプチド配列を意味する。異種核酸配列は、天然に存在する核酸配列(又はそのバリアント)に(例えば、遺伝子操作によって)連結されて、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列を生成し得る。異種核酸配列は、バリアントポリペプチドに(例えば、遺伝子操作によって)連結されて、融合バリアントポリペプチドをコードする核酸配列を生成し得る。或いは、「異種」という用語は、細胞又は対象に天然には存在しない核酸配列を指す場合がある。
【0106】
「ベクター」又は「発現ベクター」は、細胞において結合されたセグメントの複製をもたらすために別のDNAセグメント、すなわち「挿入物」が結合され得る、プラスミド、バクミド、ファージ、ウイルス、ビリオン、又はコスミドなどのレプリコンである。ベクターは、宿主細胞への送達のために、又は異なる宿主細胞間の移動のために設計された核酸構築物であり得る。本明細書で使用される場合、ベクターは、起源及び/又は最終形態でウイルス性又は非ウイルス性であり得るが、本開示の目的のために、「ベクター」は、その用語が本明細書で使用される場合、一般にceDNAベクターを指す。「ベクター」という用語は、適切な制御エレメントと関連する場合に複製することができ、遺伝子配列を細胞に移すことができる任意の遺伝子エレメントを包含する。いくつかの実施形態によれば、ベクターは、発現ベクター又は組換えベクターであり得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列からのRNA又はポリペプチドの発現を指示するベクターを指す。発現される配列は、多くの場合、しかし必ずしもそうではないが、細胞にとって異種である。発現ベクターは、追加のエレメントを含むことができ、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有することができるため、それを2つの生物、例えば発現の場合はヒト細胞、並びにクローニング及び増幅の場合は原核生物宿主で維持することができる。「発現」という用語は、RNA及びタンパク質、また必要に応じて、例えば、転写、転写プロセシング、翻訳及びタンパク質の折りたたみ、修飾及びプロセシングを含むがこれらに限定されない分泌タンパク質の産生に関与する細胞プロセスを指す。「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。「遺伝子」という用語は、適切な調節配列に作動可能に連結された場合に、インビトロ又はインビボでRNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子には、コード領域の前後の領域、例えば、5’未翻訳(5’UTR)又は「リーダー」配列及び3’UTR又は「トレーラー」配列、同様に、個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)が含まれる場合及び含まれない場合がある。
【0108】
「組換えベクター」とは、異種核酸配列を含むベクター、又はインビボで発現することができる「導入遺伝子」を意味する。本明細書に記載されるベクターは、いくつかの実施形態によれば、他の好適な組成物及び療法と組み合わせることができることを理解されたい。いくつかの実施形態によれば、ベクターはエピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、対象における目的のヌクレオチドを高コピー数の染色体外DNAに維持し、それによって染色体組み込みの潜在的な影響を排除する手段を提供する。
【0109】
本明細書で使用される場合、「投与」、「投与する」という用語及びそれらの変形は、組成物又は薬剤(例えば、本明細書に記載されるceDNA)を対象に導入することを指し、1つ以上の組成物又は薬剤の同時及び連続導入を含む。「投与」は、例えば、治療、薬物動態、診断、研究、プラセボ、及び実験方法を指し得る。「投与」は、インビトロ及びエクスビボ治療も包含する。組成物又は薬剤の対象への導入は、経口、肺、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下)、直腸、リンパ管内、腫瘍内、又は局所を含む任意の好適な経路による。投与には、自己管理及び他者による投与が含まれる。投与は、任意の好適な経路によって実行され得る。好適な投与経路は、組成物又は薬剤がその意図された機能を遂行することを可能にする。例えば、好適な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物又は薬剤を対象の静脈に導入することによって投与される。
【0110】
本明細書で使用される「感染」という用語は、宿主への病原体の最初の侵入;及び病原体が、宿主の細胞又は組織の中又は細胞又は組織の上に確立された状態を指す。このような状態は、必ずしも疾患を構成又は導くわけではない。
【0111】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的サンプル」とは、対象から単離された生物学的起源の任意のタイプの物質(例えば、DNA、RNA、脂質、炭水化物、及びタンパク質を含む)を指す。用語「生物学的サンプル」は、対象から単離された組織、細胞及び生物学的流体を含む。生物学的サンプルは、例えば、血液全体、血しょう、血しょう、精液、唾液、涙、尿、糞便物質、汗、頬側、皮膚、脳脊髄液、骨髄、胆汁、毛髪、筋の生検用材料、臓器組織又は当業者に公知の生物学的起源の他の物質を含むが、それらに限定されない。生物学的試料は、診断若しくは研究のために対象から得ることができ、又は対照として、若しくは基礎研究のために健康な対象から得ることができる。本明細書で使用される「用量」という用語は、一度に対象に摂取又は投与される物質(例えば、本明細書に記載のceDNA)の量を指す。
【0112】
本明細書で使用される「投薬」という用語は、治療目的(例えば、治療)を達成するための物質(例えば、本明細書に記載されるceDNA)の投与を指す。
【0113】
「第2の薬剤と組み合わせた第1の薬剤」という句における「組み合わせ」という用語は、例えば、同じ薬学的に許容される担体に溶解又は混合されていてもよい第1の薬剤及び第2の薬剤の同時投与、又は第1の薬剤の投与とそれに続く第2の薬剤の投与、又は第2の薬剤の投与とそれに続く第1の薬剤の投与を含む。したがって、本開示は、併用療法処置の方法及び併用医薬組成物を含む。
【0114】
「併用治療的処置」という句における「併用」という用語は、ある薬剤を、第2の薬剤の存在下で投与することを含む。併用治療処置方法は、第1、第2、第3、又は追加の薬剤が同時投与される方法を含む。併用治療処置方法はまた、第1又は追加の薬剤が第2又は追加の薬剤の存在下で投与される方法を含み、ここで、第2又は追加の薬剤は、例えば、先行して投与されていてもよい。併用治療処置方法は、異なる行為者によって、段階的に実行され得る。例えば、ある行為者が対象に第1の薬剤を投与し、かつ第2の行為者が対象に第2の薬剤を投与してもよく、第1の薬剤(及び追加の薬剤)が第2の薬剤(及び追加の薬剤)の存在下で投与後である限り、投与ステップは同時に、又はほぼ同時に、又は離れた時間に実行されてもよい。行為者及び対象は、同じ実体(例えば、ヒト)であってもよい。
【0115】
本明細書で使用される「併用療法」という用語は、本明細書に記載される2つ以上の治療物質、例えば、抗原、又は免疫原性タンパク質と、別の薬物との投与を指す。その別の薬物は、本明細書中に記載されるように、抗原又は免疫原性タンパク質の投与と同時に、その前に、又はその後に投与され得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「核酸治療」、「治療用核酸」及び「TNA」という語句は、交換可能に使用され、疾患又は障害を治療するための治療剤の活性成分として核酸を使用する治療の任意のモダリティを指す。本明細書で使用される場合、これらの語句は、RNAベースの治療薬及びDNAベースの治療薬を指す。RNAベースの治療剤の非限定的な例としては、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)が挙げられる。DNAベースの治療薬の非限定的な例は、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルス性DNA(例えば、レンチウイルス又はAAVゲノム)若しくは非ウイルス性合成DNAベクター、閉端直鎖状の二重鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、doggybone(商標)DNAベクター、最小限度に免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)ベクター、非ウイルス性ミニストリングDNAベクター(直鎖状の共有結合性閉鎖DNAベクター)、又はダンベル形DNAミニマルベクター(「ダンベルDNA」)を含む。いくつかの実施形態によれば、治療用核酸は、ceDNAである。
【0117】
本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、治療の結果を指し、その結果は、望ましくかつ有益であると判断される。治療効果としては、直接的又は間接的に、疾患症状の阻止、低減、又は排除を挙げることができる。治療効果としてはまた、直接的又は間接的に、疾患症状の進行の阻止、低減、又は排除を挙げることができる。
【0118】
本明細書に記載される任意の治療剤について、治療有効量は、予備的なインビトロ研究及び/又は動物モデルから最初に決定することができる。治療有効用量はまた、ヒトのデータから決定することができる。適用される用量は、投与される化合物の相対的な生物学的利用能及び効力に基づいて調整することができる。上記の方法及び他の周知の方法に基づいて最大の効力を達成するように用量を調整することは、当業者の能力の範囲内である。参照により本明細書に組み込まれる、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,McGraw-Hill(New York)(2001)の第1章に見出され得る治療有効性を決定するための一般原則を以下に要約する。
【0119】
薬物動態学的原理は、許容できない副作用を最小限に抑えながら、望ましい程度の治療効果を得るために投与計画を変更するための基礎を提供する。薬物の血漿濃度を測定でき、治療濃度域に関連している状況では、投与量の変更に関する追加のガイダンスを入手することができる。
【0120】
本明細書で使用される場合、「ウイルス感染」は、対象の身体におけるウイルスの侵入及び増殖を指すことを意図する。
【0121】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」は、(i)従来のワクチンにおけるような感染又は再感染の予防、(ii)症状の減少又は排除、及び(iii)問題の病原体の実質的又は完全な排除のいずれかを指すことを意図する。処置は、予防的に(感染前に)又は治療的に(感染後に)行われ得る。治療することは:(a)障害の重症度を低減すること、(b)治療される障害(複数可)に特徴的な症状の悪化を制限すること、(c)以前に障害(複数可)を有していた患者において障害の再発を制限すること、及び(d)以前に障害(複数可)に対して無症候性であった患者において症状の再発を制限すること、のうちの1つ以上を達成することを更に指していてよい。
【0122】
薬理学的及び/又は生理学的効果等の有益な又は所望の臨床結果は、疾患、障害又は状態の素因を有する可能性があるが、疾患の症状をまだ経験していないか、若しくは呈していない対象において疾患、障害又は状態が発生するのを防ぐこと(予防的治療)、疾患、障害又は状態の症状の緩和、疾患、障害又は状態の程度の減少、疾患、障害又は状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患、障害又は状態の蔓延を防ぐこと、疾患、障害又は状態の進行を遅らせる又は遅くすること、疾患、障害又は状態の改善又は軽減、及びそれらの組み合わせ、同様に治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを含むが、これらに限定されない。
【0123】
本明細書で使用される「ワクチン接種された」という用語は、ワクチンで処置されていることを意図する。
【0124】
本明細書で使用される「ワクチン接種」という用語は、ワクチンによる処置を指すことを意図する。
【0125】
本明細書で使用される「ワクチン」という用語は、脊椎動物に投与することができる形態であり、免疫を誘導し、かつ/又は感染を予防及び/若しくは改善し、かつ/又は感染の少なくとも1つの症状を軽減し、かつ/又は別の用量の製剤の有効性を増強するのに十分な防御免疫応答を誘導する製剤を指すことを意図する。典型的には、ワクチンは、本開示の組成物が懸濁又は溶解されている従来の生理食塩水又は緩衝水溶液媒体を含む。この形態で、本開示の組成物は、ウイルス感染を予防、改善、又はさもなければ治療するために好都合に使用することができる。宿主に導入されると、ワクチンは、抗体及び/若しくはサイトカインの産生並びに/又は細胞傷害性T細胞、抗原提示細胞、ヘルパーT細胞、樹状細胞及び/若しくは他の細胞応答の活性化を含むがこれらに限定されない免疫応答を引き起こすことができる。
【0126】
本明細書で使用される「ワクチン療法」という用語は、物質又は物質群を使用して免疫系を刺激し、腫瘍又は感染性微生物を破壊するタイプの治療を指すことを意図する。
【0127】
「治療を必要とする」ものには、既に疾患若しくは障害、感染症、又は癌を有するヒトなどの哺乳動物が含まれる。
【0128】
本明細書で使用される場合、「増加する」、「増強する」、「上昇させる」という用語(及び同様の用語)は、一般に、天然、予測若しくは平均に対して、又は対照条件に対して、直接的又は間接的に、濃度、レベル、機能、活性、又は挙動を増加させる作用を指す。
【0129】
本明細書で使用される場合、「抑制する」、「減少する」、「妨害する」、「阻害する」及び/又は「低減する」という用語(並びに同様の用語)は、一般に、天然、予想若しくは平均に対して、又は対照条件に対して、直接的又は間接的に、濃度、レベル、機能、活性、又は挙動を低減する行為を指す。
【0130】
本明細書で使用される場合、「対照」は、参照標準を指すことを意図する。いくつかの実施形態によれば、対照は、健康な患者から得られた陰性対照試料である。他の実施形態では、対照は、疾患又は傷害、感染症又は癌と診断された患者から得られた陽性対照試料である。更に他の実施形態では、対照は、歴史的な対照又は標準参照値若しくは値の範囲(ベースライン又は正常値を表す試料の群など、以前に試験された対照試料など)である。試験試料と対照との差は、増加であってもよく、又は逆に減少であってもよい。差は、質的差又は量的差、例えば統計的に有意な差であってもよい。いくつかの例によれば、差は、対照と比較して、少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、又は500%超の増加又は減少である。
【0131】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」という用語は、方法又は組成物に必須であるが、必須であるか否かにかかわらず、不特定エレメントの包含に対して開かれている、その組成物、方法、及びそれぞれの構成成分に関して使用される。
【0132】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要なエレメントを指す。この用語は、その実施形態の基本的かつ新規又は機能的な特徴に物質的に影響を及ぼさないエレメントの存在を許容する。「含む」の使用は、限定ではなく包含を示す。
【0133】
「からなる」という用語は、実施形態の説明において列挙されてない任意のエレメントを除いて、本明細書に記載される組成物、方法、及びそれらのそれぞれの構成成分を指す。
【0134】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」に対する言及は、本明細書に記載される、及び/又は本開示などを読むことにより当業者に明らかとなるであろうタイプの1つ以上の方法、及び/又はステップを含む。同様に、「又は」という語は、文脈が別途明らかに示されない限り、「及び」を含むことが意図される。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料は、下記で説明される。省略形「例えば(e.g.)」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定例を示すように使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、「例えば(for example)」と同義である。
【0135】
作動例又は別途示される場合を除いて、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されたい。「約」という用語は、パーセンテージに関連して使用される場合、±1%を意味し得る。本開示は、以下の実施例によって更に詳細に説明されるが、本開示の範囲は、それに限定されるべきではない。
【0136】
本明細書に開示される本開示の代替エレメント又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各郡のメンバーは、個別に、又は群の他のメンバー又は本明細書で見られる他のエレメントとの任意の組み合わせで参照及び主張することができる。群の1つ以上のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由から、群に含まれるか、又は群から削除することができる。そのような任意の包含又は削除が発生した場合、本明細書では、明細書が修正されたグループを含むとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲で使用されている全てのマーカッシュグループの記述を満たす。
【0137】
本明細書では、本開示の様々な態様の説明内で他の用語が定義されている。
【0138】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示の特定の実施形態及び実施例が、例示の目的で本明細書で説明されているが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、方法のステップ又は機能は、所与の順序で提示されるが、代替的な実施形態は、異なる順序で機能を実施してもよく、又は機能は実質的に同時に実施されてもよい。本明細書で提供される開示の教示は、必要に応じて他の手順又は方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本開示の態様は、必要に応じて、上記の参照文献及び出願の組成物、機能、及び概念を用いて本開示の更なる実施形態を提供するように修正することができる。更に、生物学的機能の同等性の考慮により、種類又は量の生物学的又は化学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造にいくつかの変更を加えることができる。詳細な説明に照らして、これらの変更及び他の変更を本開示に加えることができる。そのような修正は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0139】
前述の実施形態のいずれかの特定のエレメントは、他の実施形態のエレメントと組み合わせるか、又は置き換えることができる。更に、本開示のある特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態の文脈で説明されたが、他の実施形態もそのような利点を示し得、全ての実施形態が本開示の範囲内にあるために必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0140】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によって更に説明されており、決してこれらを更に限定するものと解釈されるべきではない。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。
【0141】
II.免疫系の細胞
免疫系を構成する多数の細胞相互作用が存在する。これらの相互作用は、両方向に信号を送る特定の受容体-リガンド対を介して起こり、その結果、各細胞は、これらの信号の時間的及び空間的分布に基づいて命令を受け取る。
【0142】
ネズミモデルは免疫調節経路を発見するのに非常に有用であるが、非近交系ヒト集団は個々の免疫調節経路に様々な程度で依存する個体を有し得るので、これらの経路の臨床的有用性は、必ずしも近交系マウス系統から非近交系ヒト集団に翻訳されるわけではない。
【0143】
免疫系の細胞には、リンパ球、単球/マクロファージ、樹状細胞、密接に関連したランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、肥満細胞、好塩基球、及び骨髄細胞系列の他のメンバーが含まれる。更に、一連の特殊化された上皮細胞及び間質細胞は、多くの場合、免疫系の細胞における増殖及び/又は遺伝子活性化を調節する重要な因子を分泌することによって、免疫が生じる解剖学的環境を提供し、これはまた、応答の誘導期及びエフェクター期において直接的な役割を果たす。(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999),p.102)。
【0144】
免疫系の細胞は、末梢の組織化された組織(例えば、脾臓、リンパ節、腸のパイエル板及び扁桃腺)において見出される。リンパ球はまた、中枢リンパ器官、胸腺、及び骨髄においても見出され、そこで、成熟免疫系の無数の応答を媒介するようにリンパ球を準備する発達工程を受ける。リンパ球及びマクロファージの実質的な部分は、血液及びリンパ中に見出される細胞の再循環プールを含み、免疫担当細胞を、それらが必要とされる部位に送達し、局所的に生成される免疫を、一般化させる手段を提供する。(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999),p.102)。
【0145】
「リンパ球」という用語は、全身のリンパ組織において形成される小さな白血球を指し、通常の成人においては、疾患に対する身体の防御において大きな役割を果たす循環血液中の白血球の総数の約22~28%を構成する。個々のリンパ球は、それらの遺伝物質の組換え(例えば、T細胞受容体及びB細胞受容体を作製するための)を介して、構造的に関連する抗原の限定されたセットに応答するようにコミットされるように特殊化されている。免疫系が所与の抗原と最初に接触する前に存在するこのコミットメントは、リンパ球の表面膜上の抗原上の決定基(エピトープ)に特異的な受容体の存在によって発現される。各リンパ球は受容体の独特の集団を有し、その全てが同一の結合部位を有する。リンパ球の1つのセット又はクローンは、その受容体の結合領域の構造において別のクローンと異なり、従って、それが認識し得るエピトープにおいて異なる。リンパ球は、それらの受容体の特異性だけでなく、それらの機能においても互いに異なる。(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999),p.102)。
【0146】
2つの広範なクラスのリンパ球が認識されている:抗体分泌細胞の前駆体であるBリンパ球(B細胞)、及びTリンパ球(T細胞)。
【0147】
Bリンパ球
Bリンパ球は、骨髄の造血細胞に由来する。成熟したB細胞は、その細胞表面によって認識されるエピトープを発現する抗原で活性化することができる。活性化プロセスは、抗原による膜Ig分子の架橋に依存する直接的なもの(架橋依存的B細胞活性化)であってもよいし、同族補助と呼ばれるプロセスにおけるヘルパーT細胞との相互作用を介した間接的なものであってもよい。多くの生理学的状況において、受容体架橋刺激及び同族補助は、相乗作用して、より活発なB細胞応答をもたらす(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0148】
架橋依存性B細胞活性化は、各B細胞が同一の可変領域を有するIg分子を発現するので、抗原が細胞表面受容体の結合部位に相補的なエピトープの複数のコピーを発現することを必要とする。そのような要件は、微生物の莢膜多糖又はウイルスエンベロープタンパク質などの反復エピトープを有する他の抗原によって満たされる。架橋依存性B細胞活性化は、これらの微生物に対して開始される主要な防御免疫応答である(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction」,Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0149】
同族補助は、B細胞が、受容体を架橋することができない抗原に対する応答を開始することを可能にし、同時に、弱い架橋事象によってB細胞が刺激された場合にB細胞を不活性化からレスキューする共刺激シグナルを提供する。同族補助は、B細胞の膜免疫グロブリン(Ig)による抗原の結合、抗原の形質膜陥入、及び細胞のエンドソーム/リソソーム区画内でのそのペプチドへの断片化に依存する。得られたペプチドのいくつかは、クラスIIの主要組織適合性複合体(MHC)分子として公知の細胞表面タンパク質の特異化されたセット中の溝にロードされる。得られたクラスII/ペプチド複合体は細胞表面上に発現され、CD4+T細胞と呼ばれる一組のT細胞の抗原特異的受容体に対するリガンドとして作用する。CD4+T細胞は、B細胞のクラスII/ペプチド複合体に特異的な受容体をその表面上に有する。B細胞活性化は、そのT細胞受容体(TCR)を介したT細胞の結合に依存するだけでなく、この相互作用はまた、T細胞上の活性化リガンド(CD40リガンド)がB細胞上のその受容体(CD40)に結合してB細胞活性化をシグナル伝達することを可能にする。更に、Tヘルパー細胞は、B細胞上のサイトカイン受容体に結合することによって、刺激されたB細胞の増殖及び分化を調節するいくつかのサイトカインを分泌する(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0150】
抗体産生のための同族補助の間、CD40リガンドは、活性化CD4+Tヘルパー細胞上で一過性に発現され、抗原特異的B細胞上のCD40に結合し、それによって第2の共刺激シグナルを伝達する。後者のシグナルは、B細胞増殖及び分化、並びに抗原に遭遇した胚中心B細胞のアポトーシスを防止することによる記憶B細胞の生成に必須である。B細胞及びT細胞の両方におけるCD40リガンドの過剰発現は、ヒトSLE患者における病原性自己抗体産生に関与している(Desai-Mehta,A.et al.,「Hyperexpression of CD40 ligand by B and T cells in human lupus and its role in pathogenic autoantibody production,」J.Clin.Invest.Vol.97(9),2063-2073,(1996)).
【0151】
Tリンパ球
造血組織中の前駆体に由来するTリンパ球は、胸腺において分化を受け、次いで末梢リンパ組織及びリンパ球の再循環プールに播種される。Tリンパ球又はT細胞は、広範囲の免疫機能を媒介する。これらには、B細胞が抗体産生細胞に発達するのを助ける能力、単球/マクロファージの殺菌作用を増加させる能力、ある種の免疫応答の阻害、標的細胞の直接的な死滅、及び炎症反応の動員が含まれる。これらの効果は、特定の細胞表面分子のT細胞発現及びサイトカインの分泌に依存する(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction」,Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0152】
T細胞は、それらの抗原認識のメカニズムにおいてB細胞と異なる。B細胞の受容体である免疫グロブリンは、可溶性分子上又は微粒子表面上の個々のエピトープに結合する。B細胞受容体は、天然分子の表面上に発現されるエピトープを認識する。抗体及びB細胞受容体は、細胞外液中の微生物に結合し、それから保護するように進化したが、T細胞は、他の細胞の表面上の抗原を認識し、これらの抗原提示細胞(APC)と相互作用し、その挙動を変化させることによってそれらの機能を媒介する。末梢リンパ器官には、T細胞を活性化することができる3つのタイプのAPCが存在する:樹状細胞、マクロファージ、及びB細胞。これらのうち最も強力なものは樹状細胞であり、その唯一の機能は外来抗原をT細胞に提示することである。未成熟樹状細胞は、皮膚、腸、及び気道を含む全身の組織に位置する。それらがこれらの部位で侵入微生物に遭遇すると、それらは病原体及びそれらの産物に形質膜陥入し、それらをリンパを介して局所リンパ節又は消化管関連リンパ器官に運ぶ。病原体との遭遇は、抗原捕捉細胞から、T細胞を活性化することができるAPCへの樹状細胞の成熟を誘導する。APCは、T細胞を活性化してエフェクター細胞にする役割を有する3つのタイプのタンパク質分子をその表面に提示する:(1)T細胞受容体に対して外来抗原を提示するMHCタンパク質;(2)T細胞表面上の相補的受容体に結合する共刺激タンパク質;及び(3)活性化されるのに十分長くT細胞がAPCに結合することを可能にする細胞-細胞接着分子(「Chapter 24:The adaptive immune system,」Molecular Biology of the Cell,Alberts,B.et al.,Garland Science,NY,(2002))。
【0153】
T細胞は、それらが発現する細胞表面受容体に基づいて2つの別個のクラスに細分される。T細胞の大部分は、α鎖及びβ鎖からなるT細胞受容体(TCR)を発現する。T細胞の小さな集団は、γ鎖及びδ鎖からなる受容体を発現する。α/βT細胞の中には2つのサブ系統がある:共受容体分子CD4を発現するもの(CD4+T細胞);及びCD8を発現するもの(CD8+T細胞)。これらの細胞は、それらが抗原を認識する方法並びにそれらのエフェクター機能及び調節機能において異なる。
【0154】
CD4+T細胞は、免疫系の主要な調節細胞である。それらの調節機能は、T細胞が活性化されたときに発現が誘導されるCD40リガンドなどのそれらの細胞表面分子の発現と、活性化されたときにそれらが分泌する多様なサイトカインとの両方に依存する。
【0155】
T細胞はまた、重要なエフェクター機能を媒介し、そのいくつかは、それらが分泌するサイトカインのパターンによって決定される。サイトカインは、標的細胞に対して直接毒性であり得るが、強力な炎症メカニズムを動員し得る。
【0156】
更に、T細胞、特にCD8+T細胞は、CTLによって認識される抗原を発現する標的細胞を効率的に溶解することができる細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に発達することができる(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0157】
T細胞受容体(TCR)は、クラスII又はクラスIのMHCタンパク質の特異化された溝に結合した抗原のタンパク質分解によって誘導されるペプチドからなる複合体を認識する。CD4+T細胞はペプチド/クラスII複合体のみを認識し、一方、CD8+T細胞はペプチド/クラスI複合体を認識する(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0158】
TCRのリガンド(すなわち、ペプチド/MHCタンパク質複合体)は、APC内で作製される。一般に、クラスIIのMHC分子は、形質膜陥入プロセスを介してAPCによって取り込まれたタンパク質に由来するペプチドに結合する。次いで、これらのペプチド負荷クラスII分子は、細胞の表面上に発現され、ここで、それらは、発現された細胞表面複合体を認識することができるTCRを有するCD4+T細胞によって結合されるために利用可能である。したがって、CD4+T細胞は、細胞外供給源に由来する抗原と反応するように特異化されている(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0159】
対照的に、クラスIのMHC分子は主に、ウイルスタンパク質などの内部で合成されたタンパク質に由来するペプチドがロードされている。これらのペプチドは、プロテオソームによるタンパク質分解によって細胞質タンパク質から産生され、粗面小胞体に移行される。一般的に9アミノ酸長から構成されるこのようなペプチドは、クラスIのMHC分子に結合され、細胞表面に運ばれ、そこで適切な受容体を発現するCD8+T細胞によって認識され得る。これは、T細胞系、特にCD8+T細胞に、生物の残りの細胞のタンパク質(例えば、ウイルス抗原)又は突然変異抗原(活性癌遺伝子産物など)とは異なる、又はそれらよりもはるかに大量に産生されるタンパク質を発現する細胞を、これらのタンパク質がそれらのインタクトな形態で細胞表面に発現も分泌もされない場合であっても検出する能力を与える(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0160】
T細胞は、ヘルパーT細胞;細胞性免疫の誘導に関与するT細胞サプレッサーT細胞;及び細胞傷害性T細胞、としてのそれらの機能に基づいて分類することもできる。
【0161】
ヘルパーT細胞
ヘルパーT細胞は、B細胞を刺激してタンパク質及び他のT細胞依存性抗原に対する抗体応答を生じさせるT細胞である。T細胞依存性抗原は、個々のエピトープが、B細胞の膜免疫グロブリン(Ig)を架橋することができないか、又は非効率的にしか架橋しないように、1回のみ又は限定された回数出現する免疫原である。B細胞はその膜Igを介して抗原に結合し、複合体は形質膜陥入を受ける。エンドソーム及びリソソーム区画内で、抗原はタンパク質分解酵素によってペプチドに断片化され、生成されたペプチドの1つ又は複数がクラスIIのMHC分子にロードされ、これがこの小胞区画を通過する。次いで、得られたペプチド/クラスIIのMHC複合体は、B細胞表面膜に輸送される。ペプチド/クラスII分子複合体に特異的な受容体を有するT細胞は、B細胞表面上のこの複合体を認識する。(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia(1999))。
【0162】
B細胞活性化は、そのTCRを介したT細胞の結合及びT細胞CD40リガンド(CD40L)とB細胞上のCD40との相互作用の両方に依存する。T細胞は、CD40Lを構成的に発現しない。むしろ、CD40L発現は、T細胞のTCRによって認識される同族抗原及びCD80又はCD86の両方を発現するAPCとの相互作用の結果として誘導される。CD80/CD86は、一般に、活性化B細胞及びT細胞を含むヘルパー相互作用が効率的な抗体産生をもたらし得るように、活性化B細胞によって発現されるが、休止B細胞によっては発現されない。しかしながら、多くの場合、T細胞上のCD40Lの最初の誘導は、樹状細胞などのCD80/86を構成的に発現するAPCの表面上の抗原の認識に依存する。次いで、そのような活性化ヘルパーT細胞は、B細胞と効率的に相互作用し、B細胞を助けることができる。B細胞上の膜Igの架橋は、たとえ非効率的であっても、CD40L/CD40相互作用と相乗作用して、活発なB細胞活性化を生じ得る。増殖、Ig分泌、及び発現されるIgクラスのクラススイッチを含む、B細胞応答におけるその後の事象は、T細胞由来サイトカインの作用に依存するか、又はそれによって増強されるかのいずれかである(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0163】
CD4+T細胞は、主にサイトカインIL-4、IL-5、IL-6、及びIL-10を分泌する細胞(TH2細胞)又は主にIL-2、IFN-γ、及びリンホトキシンを産生する細胞(TH1細胞)に分化する傾向がある。TH2細胞は、B細胞が抗体産生細胞に発達するのを助けるのに非常に有効であるのに対して、TH1細胞は、単球及びマクロファージの殺菌活性の増強、並びにその結果としての、細胞内小胞区画中の微生物を溶解する際の効率の増加を含む、細胞性免疫応答の有効な誘導因子である。TH2細胞の表現型(すなわち、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-10)を有するCD4+T細胞は効率的なヘルパー細胞であるが、TH1細胞もヘルパーである能力を有する(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0164】
細胞性免疫誘導におけるT細胞の関与
T細胞はまた、細胞内微生物を破壊する単球及びマクロファージの能力を増強するように作用し得る。特に、ヘルパーT細胞によって産生されるインターフェロン-γ(IFN-γ)は、単核食細胞が細胞内細菌を破壊するいくつかのメカニズム、並びに酸化窒素の生成及び腫瘍壊死因子(TNF)産生の誘導を含む寄生を増強する。TH1細胞は、IFN-γを産生するため、殺菌作用の増強に有効である。対照的に、TH2細胞によって産生される2つの主要なサイトカインであるIL-4及びIL-10は、これらの活性をブロックする(Paul,W.E.,「Chapter 1:The immune system:a introduction,」Fundamental Immunology,4 th Edition,Ed.Paul,W.E.,Lippicott-Raven Publishers,Philadelphia,(1999))。
【0165】
調節性T(Treg)細胞
免疫ホメオスタシスは、免疫応答の開始と下方調節との間の制御されたバランスによって維持される。アポトーシス及びT細胞アネルギー(抗原遭遇後にT細胞が本質的に機能的に不活性化される寛容メカニズム(Scwartz,R.H.,”T cell anergy”,Annu.Rev.Immunol.,Vol.21:305-334(2003))は、免疫応答の下方調節に寄与する。第3のメカニズムは、サプレッサー又は調節性CD4+T(Treg)細胞による活性化T細胞の能動的抑制によって提供される(Kronenberg,M.et al.,「Regulation of immunity by self-reactive T cells」,Nature,Vol.435:598-604(2005)に概説されている)。IL-2受容体アルファ(IL-2Rα)鎖(CD4+CD25+)を構成的に発現するCD4+Tregは、アネルギー性及び抑制性である天然に存在するT細胞サブセットである(Taams,L.S.et al.,「Human anergic/suppressive CD4+CD25+T cells:a highly differentiated and apoptosis-prone population」,Eur.J.Immunol.Vol.31:1122-1131(2001))。CD4+CD25+Tregの枯渇は、マウスにおいて全身性自己免疫疾患をもたらす。更に、これらのTregの移入は、自己免疫疾患の発症を予防する。ヒトCD4+CD25+Tregは、それらのマウス対応物と同様に、胸腺において生成され、細胞-細胞接触依存性メカニズムを介してレスポンダーT細胞の増殖を抑制する能力、IL-2を産生できないこと、及びインビトロでアネルギー性の表現型によって特徴付けられる。ヒトCD4+CD25+T細胞は、CD25発現のレベルに従って、抑制性(CD25高)細胞及び非抑制性(CD25低)細胞に分けることができる。転写因子のフォークヘッドファミリーのメンバーであるFOXP3は、マウス及びヒトCD4+CD25+Tregにおいて発現されることが示されており、CD4+CD25+Treg発生を制御するマスター遺伝子であると思われる(Battaglia,M.et al.,「Rapamycin promotes expansion of functional CD4+CD25+FOXP3+regulator T cells of both healthy subjects and type 1 diabetic patients」,J.Immunol.,Vol.177:8338-8347,(2006))。
【0166】
細胞傷害性Tリンパ球
標的細胞内で産生されたタンパク質からペプチドを認識するCD8+T細胞は、それらが標的細胞の溶解をもたらすという点で細胞毒性特性を有する。CTL誘導溶解のメカニズムは、標的細胞の膜に挿入してその細胞の溶解を促進することができる分子であるパーフォリンのCTLによる産生を含む。パーフォリン媒介性溶解は、活性化CTLによって産生される一連の酵素であるグランザイムによって増強される。多くの活性CTLはまた、それらの表面上に大量のfasリガンドを発現する。CTLの表面上のfasリガンドと標的細胞の表面上のfasとの相互作用は、標的細胞におけるアポトーシスを開始し、これらの細胞の死を導く。CTL媒介性溶解は、ウイルス感染細胞の破壊の主要なメカニズムであるようである。
【0167】
リンパ球活性化
「活性化」又は「リンパ球活性化」という用語は、RNA、タンパク質及びDNAの合成並びにリンホカインの産生をもたらす、特異的抗原、非特異的マイトジェン、又は異質遺伝子的細胞によるリンパ球の刺激を指す。その後、様々なエフェクター細胞及び記憶細胞の増殖及び分化が起こる。T細胞活性化は、TCR/CD3複合体とその同族リガンド(クラスI又はクラスIIのMHC分子の溝に結合したペプチド)との相互作用に依存する。受容体係合によって動かされる分子事象は複雑である。最も初期の段階には、いくつかのシグナル伝達経路を制御する一組の基質のチロシンリン酸化をもたらすチロシンキナーゼの活性化があるようである。これらは、TCRをras経路に連結する一組のアダプタータンパク質、ホスホリパーゼCγ1(そのチロシンリン酸化は、その触媒活性を増加させ、イノシトールリン脂質代謝経路に関与し、細胞内遊離カルシウム濃度の上昇及びプロテインキナーゼCの活性化をもたらす)、並びに細胞成長及び分化を制御する一連の他の酵素を含む。T修飾細胞の完全な反応性は、レセプター結合に加えて、細胞送達同時刺激活性(例えば、APC上のCD80及び/又はCD86によるT細胞上のCD28の結合)を必要とする。
【0168】
T記憶細胞
適応免疫応答を介した病原体の認識及び根絶に続いて、T細胞の大部分(90-95%)はアポトーシスを受け、残りの細胞は、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、及びレジデントメモリーT細胞(TRM)と呼ばれるメモリーT細胞のプールを形成する(Clark,R.A.,「Resident memory T cells in human health and disease」,Sci.Transl.Med.,7,269rv1,(2015)).CD45RAは、ナイーブT細胞、並びにCD4及びCD8の両方におけるエフェクター細胞上で発現される。抗原を経験した後、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞は、CD45ROの発現を獲得し、CD45RAの発現を失う。したがって、CD45RA又はCD45ROのいずれかを使用して、一般にナイーブ集団を記憶集団から区別する。CCR7及びCD62Lは、セントラルメモリーT細胞とエフェクターメモリーT細胞を区別するために使用することができる2つの他のマーカーである。ナイーブ及びセントラルメモリー細胞は、二次的リンパ器官に移動するためにCCR7及びCD62Lを発現する。したがって、ナイーブT細胞はCD45RA+CD45RO CCR7+CD62L+であり、セントラルメモリーT細胞はCD45RA-CD45RO+CCR7+CD62L+であり、エフェクターメモリーT細胞はCD45RA-CD45RO+CCR7-CD62L-である。
【0169】
標準的なT細胞と比較して、これらのメモリーT細胞は、特定の表面マーカーの発現、異なるサイトカインタンパク質の迅速な産生、直接的なエフェクター細胞機能の能力、及び固有のホーミング分布パターンなどの異なる表現型を有して長寿命である。記憶T細胞は、加害者の再感染を排除し、それによって免疫系のバランスを迅速に回復するために、それらのそれぞれの抗原への再曝露時に迅速な反応を示す。増加する証拠は、自己免疫記憶T細胞が、自己免疫疾患を処置又は治癒するためのほとんどの試みを妨げるということを実証している(Clark,R.A.,「Resident memory T cells in human health and disease」,Sci.Transl.Med.,Vol.7,269rv1,(2015))。
【0170】
III.ceDNAベクターからの抗原又は免疫原性ペプチドの発現
本明細書に記載される技術は、一般に、1つ以上の非ウイルス性DNAベクター、例えば、本明細書に記載されるceDNAベクターからの細胞における、抗原又は免疫原性ペプチドの発現及び/又は産生を対象とする。抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、本明細書において「ceDNAベクター全般」と題されたセクションに記載されている。先に論じたように、従来のAAVベクター、更にはレンチウイルスベクターよりもceDNAベクターの明確な利点は、所望の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする1種以上の核酸配列にサイズの制約がないということである。当業者は、本明細書中に提供される開示に基づいて、多数の抗原又は免疫原性ペプチド(すなわち、免疫調節分子)が、一旦本明細書中に提供される教示を伴うと、ほとんど無限の種々のceDNAベクターを産生するために使用され得るということを理解するであろう。
【0171】
特定の実施形態では、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、一対のITR(例えば、本明細書に記載される対称又は非対称)、及びITR対の間に、プロモーター又は調節配列に作動可能に連結された、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸を含む。従来のAAVベクター、更にはレンチウイルスベクターを超える、抗原又は免疫原性ペプチドの発現に対するceDNAベクターの明確な利点は、所望の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列にサイズの制約がないことである。
【0172】
理解されるように、本明細書に記載されるceDNAベクター技術は、任意のレベルの複雑さに適合させることができるか、又はcdDNAベクターの異なる構成成分の発現が独立した様式で制御され得るモジュール方式で使用することができる。以下の実施形態は、本明細書で具体的に企図され、必要に応じて当業者が適応させることができる。
【0173】
いくつかの態様によれば、本開示は、抗原又は免疫原性ペプチドをコードする1つ以上の核酸配列を含む1つ以上のceDNAベクターを提供する。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の核酸配列は、例えば細菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫感染因子を含む、様々な病原体由来の1つ以上の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の核酸配列は、癌又は癌関連抗原である、1つ以上の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする。いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、腫瘍抗原である。いくつかの実施形態によれば、1つ以上の核酸配列は、関節リウマチ(rheumatoid arthritis、RA)又は多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)などの自己免疫状態に関連する、1つ以上の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする。いくつかの実施形態によれば、抗原は、感染因子によって引き起こされる自己免疫疾患などの自己免疫障害若しくは状態に関連する抗原、又は感染症若しくは病原体に関連する抗原である。
【0174】
癌又は腫瘍関連抗原
いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、癌又は腫瘍関連抗原をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、caped.icp.ucl.ac.be/aboutで公的に入手可能なCancer Antigenic Peptide Databaseから選択される1つ以上の抗原をコードする核酸配列を含む。このデータベースは、同定された各抗原について、ペプチド配列及びタンパク質配列中のその位置を含む。
【0175】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、以下の表1に示される抗原のうちの1つ以上から選択される腫瘍関連抗原をコードする核酸配列を含む:
【0176】
【表1】
【0177】
The Cancer Genome Atlas(TCGA)データセットの最近の分析は、腫瘍のゲノムランドスケープを腫瘍免疫と関連付け、T細胞応答を駆動する際のネオアンチゲン負荷を暗示している(Brown et al.,Genome Res.2014 May;24(5):743-50,2014)、免疫浸潤に関連する体細胞突然変異の同定(Rutledge et al.,Clin Cancer Res.2013 Sep 15;19(18):4951-60(2013)。Rooney et al.(2015 Jan 15;160(1-2):48-61)は、ネオ抗原及びウイルスが細胞溶解活性を駆動する可能性が高いことを示唆し、腫瘍が免疫攻撃に抵抗することを可能にする既知及び新規の突然変異を明らかにする。
【0178】
一部の実施形態では、抗原は、対象における癌細胞から同定されたネオ抗原である。いくつかの実施形態では、ネオ抗原は、共有されたネオ抗原である。ネオ抗原を同定する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,055,540号に記載されている。ネオ抗原性ポリペプチド及び共有ネオ抗原性ポリペプチドは、例えば、国際特許出願公開第PCT/US2016/033452号、米国特許出願公開第20180055922号、Schumacher and Hacohenet al.(Curr Opin Immunol.2016 Aug;41:98-103);Gubin,MM et al.(Nature.2014 Nov 27;515(7528):577-81),Schumacher and Schreiber,Science.2015 Apr 3;348(6230):69-74)、Ott PA.,et al.,Nature.2017 Jul 13;547(7662):217-221に記載されており、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0179】
したがって、いくつかの実施形態では、抗原は、ネオ抗原ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、抗原は、The Comprehensive Tumor-Specific Neoantigen Database(TSNAdb v1.0)に記載され;biopharm.zju.edu.cn/tsnadbで入手可能であり、Wuet al.,Genomics Proteomics Bioinformatics 16(2018)276-282に記載されているネオ抗原性ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、抗原は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,055,540号に記載されているネオ抗原ポリペプチドである。
【0180】
自己免疫疾患抗原
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、自己免疫疾患に関連する。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、以下の表2のものから選択される1つ以上の抗原をコードする核酸配列を含む。
【0181】
【表2】
【0182】
いくつかの実施形態によれば、自己免疫疾患は、感染因子によって引き起こされる。いくつかの実施形態によれば、本開示は、感染因子に関連するか又はそれによって誘発される自己免疫疾患又は障害を処置するための、1つ以上の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を含む、本明細書に記載されるceDNAを提供する。感染因子に関連するか又は感染因子によって誘発される例示的な自己免疫疾患又は障害を表3に示す。
【0183】
【表3】
【0184】
感染症
いくつかの実施形態によれば、本開示は、感染性疾患を処置するための、1つ以上の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を含む、本明細書に記載されるceDNAを提供する。いくつかの実施形態によれば、抗原は、病原体又は感染因子(ここで、「病原体」及び「感染因子」は、本明細書において互換的に使用される)、例えば、ウイルス病原体、細菌病原体、真菌病原体、又は寄生虫病原体の抗原である。
【0185】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、ウイルス抗原又は免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態によれば、本開示は、1つ以上のウイルス抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を含む、本明細書に記載されるceDNAを提供する。
【0186】
ウイルス感染としては、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、エプスタインバーウイルス、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、おたふくかぜウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、狂犬病ウイルス、及び風疹ウイルスが挙げられる。他のウイルス標的にはパラミクソウイルス科(例えば(ニューモウイルス、モルビリウイルス、メタニューモウイルス、レスピロウイルス、又はルブラウイルス)、アデノウイルス科(例えば,アデノウイルス)、アレナウイルス科(例えば、アレナウイルス、例えばリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)、アルテリウイルス科((例えば、ブタ呼吸器及び生殖器症候群ウイルス又はウマ動脈炎ウイルス)、ブニヤウイルス科(例えば、ボレウイルス又はハンタウイルス)、カリチウイルス科(例えば、ノーウォークウイルス)、コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス又はトロウイルス)、フィロウイルス科(例えば、エボラ様ウイルス)、フラビウイルス科(例えば、ヘパシウイルス又はフラビウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、シンプレックスウイルス、バリセロウイルス属、サイトメガロウイルス、ロゼオロウイルス、又はリンフォクリプトウイルス)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス又はトゴトウイルス)、パルボウイルス科(例えば,パルボウイルス)、ピコルナウイルス科(例えば、エンテロウイルス又はへパトウイルス)、ポックスウイルス科(例えば、オルトポックスウイルス、アビポックスウイルス、又はレポリポックスウイルス)、レトロウイルス科(例えば、レンチウイルス又はスピューマレトロウイルス属)、レオウイルス科(例えば,ロタウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、リッサウイルス、ノビラブドウイルス、又はベシクロウイルス)、及びトガウイルス科(例えば、アルファウイルス又はルビウイルス)。これらのウイルスの特定の例としては、ヒト呼吸器コロナウイルス、A型~C型インフルエンザウイルス、A型~G型肝炎ウイルス、及び単純ヘルペスウイルス1~9が挙げられる。
【0187】
例示的なウイルス病原体を以下の表4に示す。
【0188】
【表4】
【0189】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、COVID-19を治療するための、1つ以上の抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を含む、本明細書に記載されるceDNAを提供する。いくつかの実施形態によれば、核酸は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする。
【0190】
スパイクタンパク質は、コロナウイルスの細胞表面タンパク質への結合を促進するS1サブユニットを含有する。従って、スパイクタンパク質のS1サブユニットは、どの細胞がコロナウイルスによって感染されるかを制御する。スパイクタンパク質はまた、ウイルス及び細胞膜融合を容易にする膜貫通サブユニットであるS2サブユニットを含む。
【0191】
サーズコロナウイルス2分離株Wuhan-Hu-1の完全ゲノムは、GenBank受託番号MN908947.3として記載されている。野生型スパイク糖タンパク質(S)のアミノ酸配列は、配列番号_として以下に示される:
【0192】
MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVL HSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIR GWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVY SSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQ GFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFL LKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITN LCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCF TNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYN YLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPY RVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFG RDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAI HADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPR RARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTM YICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFG GFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFN GLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQN VLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGA ISSVLNDILSRLDKVEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMS ECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAH FPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELD SFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELG KYEQYIKWPWYIWLGFIAGLIAIVMVTIMLCCMTSCCSCLKGCCSCGSCCKFDEDDSE PVLKGVKLHYT
【0193】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、安定化された融合前SARS-CoV-2スパイクタンパク質(SARS-CoV-2 S(2P))である。
【0194】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、細菌抗原又は免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態によれば、本開示は、1つ以上の細菌抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を含む、本明細書に記載されるceDNAを提供する。
【0195】
細菌感染としては、マイコバクテリア、リケッチア、マイコプラズマ、髄膜炎菌、淋菌、レジオネラ菌、コレラ菌、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、緑膿菌、ジフテリア菌、クロストリジウム種、腸管毒素原性大腸菌、炭疽菌、リケッチア菌、ヘンセラ菌、塹壕熱菌、コクシエラ菌、クラミジア菌、ライ菌、サルモネラ菌;赤痢菌;エンテロコリチカ菌;仮性結核菌;レジオネラ・ニューモフィラ;結核菌;リステリア菌;マイコプラズマ種;蛍光菌;コレラ菌;インフルエンザ菌;炭疽菌;梅毒トレポネーマ;レプトスピラ;ボレリア;ジフテリア菌;フランシセラ;ブルセラ・メリテンシス;カンピロバクタージェジュニエンテロバクター;プロテウスミラビリス;プロテウス;及び肺炎桿菌。
【0196】
例示的な細菌感染を以下の表5に示す。
【0197】
【表5-1】
【0198】
【表5-2】
【0199】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、真菌抗原又は免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態によれば、本開示は、1つ以上の真菌抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を含む、本明細書に記載されるceDNAを提供する。
【0200】
例示的な真菌感染症を以下の表6に示す。
【0201】
【表6】
【0202】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドは、寄生生物抗原又は免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態によれば、本開示は、1つ以上の真菌抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列を含む、本明細書に記載されるceDNAを提供する。
【0203】
例示的な寄生生物感染を、以下の表7に示す。
【0204】
【表7-1】
【0205】
【表7-2】
【0206】
他の疾患及び障害が、本開示のceDNAベクターによる処置のために企図される。例としては、心血管疾患及び免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0207】
例えば、抗原又は免疫原性ペプチドの既知の及び/又は公的に利用可能なタンパク質配列を取り、cDNA配列を逆操作して、そのようなタンパク質をコードすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0208】
マルチペプチドワクチン
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載されるceDNAベクターは、複数の抗原又は免疫原性ペプチドを含むceDNAベクター組成物に含まれる。例えば、癌を処置するためのマルチペプチドワクチンを処方する際に、目的の癌上で発現される腫瘍関連抗原を同定及び特徴付けることだけでなく、患者についての1つより多くのエピトープに対する奏功の可能性を増加させる腫瘍関連抗原由来の異なるエピトープの組み合わせもまた重要である。腫瘍に対する治療を回避する腫瘍の能力に対抗するために、本開示は、ワクチン中の様々な特異的ペプチドを利用する。
【0209】
いくつかの実施形態によれば、同じタンパク質由来の2つ以上のエピトープをマルチペプチドワクチンにおいて使用することができる。
【0210】
IV.抗原の産生に使用するためのceDNAベクター
本開示の実施形態は、抗原又は免疫原性ペプチドを発現することができる、閉端線形二本鎖(ceDNA)ベクターを含む方法及び組成物に基づく。本明細書中に記載されるように、抗原又は免疫原性ペプチドは、例えば細菌、ウイルス、真菌及び寄生生物感染因子、又は癌若しくは癌関連抗原などを含む、種々の病原体から選択され得る。更に他の標的には、関節リウマチ(rheumatoid arthritis、RA)又は多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)などの自己免疫状態が含まれ得る。
【0211】
いくつかの実施形態によれば、導入遺伝子は、抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列である。ceDNAベクターは、好ましくは、発現カセット等の分子の少なくとも一部分にわたって二重鎖、例えば、自己相補的である(例えば、ceDNAは、二本鎖環状分子ではない)。ceDNAベクターは、共有結合性閉端を有し、したがって、例えば、1時間以上37℃でエキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIII)に対して耐性である。
【0212】
一般に、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、関心対象の核酸配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含む。ITR配列は、(i)少なくとも1つのWT ITR及び少なくとも1つの修飾型AAV逆位末端反復(mod-ITR)(例えば、非対称の修飾型ITR)、(ii)mod-ITR対が互いに対して異なる三次元空間構成を有する、2つの修飾型ITR(例えば、非対称の修飾型ITR)、又は(iii)各WT-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称のWT-WT ITR対、又は(iv)各mod-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称の修飾型ITR対のうちのいずれかから選択される。
【0213】
抗原又は免疫原性ペプチドの産生のためのceDNAベクターを含む方法及び組成物が本明細書に包含され、限定されないが、リポソームナノ粒子送達系などの送達系を更に含み得る。使用のために包含される非限定的な例示的リポソームナノ粒子系が、本明細書に開示されている。いくつかの態様によれば、本開示は、ceDNA及びイオン性脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。例えば、プロセスにより得られたceDNAを用いて作製及び負荷される脂質ナノ粒子製剤は、2018年9月7日に提出された国際特許出願第PCT/US2018/050042号に開示されており、本明細書に組み込まれる。
【0214】
本明細書に開示されるようなceDNAベクターは、ウイルスカプシド内の限定空間によって課されるパッケージング制約を有しない。ceDNAベクターは、封入されたAAVゲノムとは対照的な原核細胞的に産生されたプラスミドDNAベクターに対する可変の真核細胞的に産生された代替物を表す。これは、制御エレメント、例えば、本明細書に開示される調節スイッチ、大きな導入遺伝子、複数の導入遺伝子などの挿入を許可する。
【0215】
図1A図1Eは、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のための非限定的な例示的ceDNAベクターの概略図、又は対応するceDNAプラスミドの配列を示す。抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターはカプシドを含まず、かつ、第1のITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2のITRをこの順序でコードするプラスミドから得ることができる。発現カセットは、導入遺伝子の発現を可能にする及び/又は制御する1つ以上の調節配列を含み得、例えば、発現カセットは、エンハンサー/プロモーター、ORFレポーター(導入遺伝子)、転写後調節エレメント(例えば、WPRE)、並びにポリアデニル化及び終結シグナル(例えば、BGHポリA)のうちの1つ以上をこの順番で含み得る。
【0216】
発現カセットはまた、内部リボソームエントリー部位(IRES)及び/又は2Aエレメントを含み得る。シス調節エレメントとしては、プロモーター、リボスイッチ、インスレーター、mir調節エレメント、転写後調節エレメント、組織及び細胞型特異的プロモーター、並びにエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ITRは、導入遺伝子のプロモーターとして作用し得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を調節するための追加の構成成分、例えば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現を制御及び調節するための調節スイッチを含み、所望であれば、ceDNAベクターを含む細胞の制御された細胞死を可能にするキルスイッチである調節スイッチを含み得る。
【0217】
発現カセットは、4000ヌクレオチド超、5000ヌクレオチド、10,000ヌクレオチド、若しくは20,000ヌクレオチド、若しくは30,000ヌクレオチド、若しくは40,000ヌクレオチド、又は50,000ヌクレオチド、又は約4000~10,000ヌクレオチド、若しくは10,000~50,000ヌクレオチドの任意の範囲、又は50,000ヌクレオチド超を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、500~50,000ヌクレオチド長の範囲の導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、500~75,000ヌクレオチド長の範囲の導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、500~10,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、1000~10,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、500~5,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。ceDNAベクターは、カプシド化AAVベクターのサイズ制限を有さず、したがって、大サイズの発現カセットの送達が効率的な導入遺伝子の発現をもたらすようにすることができる。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、原核細胞特異的メチル化を欠いている。
【0218】
発現カセット、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの発現構築物で提供される配列は、標的宿主細胞に対してコドン最適化され得る。本明細書で使用される場合、「最適化されたコドン」又は「コドン最適化」という用語は、目的の脊椎動物、例えばマウス又はヒトの細胞中の発現強化のために、少なくとも1つ、2つ以上、又は相当数の未変性配列(例えば、原核細胞配列)のコドンを、その脊椎動物の遺伝子中でより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンと置き換えることによって、核酸配列を修飾するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸のある特定のコドンに対して特定の偏向を呈する。典型的に、コドン最適化は、元の翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列を変更しない。最適化されたコドンは、例えば、AptagenのGENE FORGE(登録商標)コドン最適化及びカスタム遺伝子合成プラットフォーム(Aptagen,Inc.,2190 Fox Mill Rd.Suite 300,Herndon,Va.20171)又は別の公開データベースを使用して決定することができる。いくつかの実施形態によれば、核酸はヒト発現のために最適化される。
【0219】
本明細書に開示されるように、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためにceDNAベクターによって発現される導入遺伝子は、抗原又は免疫原性ペプチドをコードする。プラスミドベース発現ベクターとは異なるceDNAベクターの多くの構造特徴が存在する。ceDNAベクターは、以下の特徴:元の(すなわち、挿入されていない)細菌DNAの欠失、原核細胞複製起源の欠失、自蔵である(すなわち、Rep結合及び末端分離部位(RBS及びTRS)を含む2つのITR以外のいかなる配列も、ITR間の外因性配列も必要としない)、ヘアピンを形成するITR配列の存在、並びに細菌型DNAメチル化、又は実際に哺乳動物宿主によって異常であるとみなされる任意の他のメチル化の非存在のうちの1つ以上を有し得る。一般に、本ベクターは、いかなる原核細胞DNAも含有しないことが好ましいが、いくつかの原核細胞DNAが、外因性配列として、非限定的な例としてプロモーター又はエンハンサー領域に挿入されてもよいことが企図される。ceDNAベクターをプラスミド発現ベクターと区別する別の重要な特徴は、ceDNAベクターが、閉端を有する一本鎖直鎖状DNAであるが、プラスミドは、常に二本鎖DNAである。
【0220】
本明細書に提供される方法によって産生される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、好ましくは、制限酵素消化アッセイによって決定される場合、非連続的な構造ではなく直鎖状で連続的な構造を有する(図4D)。直鎖状で連続的な構造は、細胞エンドヌクレアーゼによる攻撃に対してより安定であると同時に、組換えられて変異誘発を引き起こす可能性が低いと考えられる。したがって、直鎖状で連続的な構造のceDNAベクターは、好ましい実施形態である。連続的な直鎖状の一本鎖分子内二重鎖ceDNAベクターは、AAVカプシドタンパク質をコードする配列なしに、終端に共有結合している可能性がある。これらのceDNAベクターは、細菌起源の環状二重鎖核酸分子であるプラスミド(本明細書に記載されるceDNAプラスミドを含む)とは構造的に異なる。プラスミドの相補鎖は、変性に続いて分離されて2つの核酸分子を産生することができるが、反対に、ceDNAベクターは、相補鎖を有するが、単一DNA分子であり、したがって変性された場合でも単一分子のままである。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載されるceDNAベクターは、プラスミドとは異なり、原核細胞タイプのDNA塩基メチル化なしに産生され得る。したがって、ceDNAベクター及びceDNA-プラスミドは、構造(具体的には、直鎖状対環状)及びこれらの異なる対象物(下記を参照されたい)を産生及び精製するために使用される方法の両方に関して、またceDNA-プラスミドの場合は原核細胞タイプ及びceDNAベクターの場合は真核細胞タイプのものである、それらのDNAメチル化に関して異なる。
【0221】
本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためにceDNAベクターを使用することには、プラスミドベースの発現ベクターよりもいくつかの利点があり、そのような利点としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1)プラスミドは、細菌DNA配列を含有し、原核生物特異的メチル化(例えば、6-メチルアデノシン及び5-メチルシトシンのメチル化)を受けるが、カプシドを含まないAAVベクター配列は、真核生物起源であり、原核生物特異的メチル化を受けない;結果として、カプシドを含まないAAVベクターは、プラスミドと比較して炎症応答及び免疫応答を誘導する可能性が低い、2)プラスミドは産生プロセス中に耐性遺伝子の存在を必要とするが、ceDNAベクターは必要としない、3)環状プラスミドは、細胞への導入時に核に送達されず、細胞ヌクレアーゼによる分解を回避するために過負荷を必要とするが、ceDNAベクターは、ウイルスシスエレメント(すなわち、ITR)を含有し、これは、ヌクレアーゼに対して耐性を付与し、核に標的化及び送達するように設計され得る。ITR機能に不可欠な最小規定エレメントは、Rep結合部位(RBS;AAV2の場合5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’(配列番号_))及び末端分離部位(TRS;AAV2の場合5’-AGTTGG-3’(配列番号_))+ヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列;及び4)である。ceDNAベクターは、Toll様ファミリーの受容体のメンバーに結合し、T細胞媒介性免疫応答を誘発すると報告されている原核生物由来プラスミドにおいてしばしば見られるCpGジヌクレオチドの過剰提示を有しない。対照的に、本明細書に開示されるカプシド不含AAVベクターでの形質導入は、様々な送達試薬を使用し、従来のAAVビリオンで形質導入することが困難である細胞及び組織型を効率的に標的とし得る。
【0222】
逆位末端反復(ITR)
本明細書に開示されているように、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、2つの逆位末端反復(ITR)配列の間に位置付けられた導入遺伝子又は核酸配列を含有し、これらの用語が本明細書に定義されるように、ITR配列は、非対称ITR対又は対称若しくは実質的に対称のITR対であり得る。本明細書に開示されるceDNAベクターは、(i)少なくとも1つのWT ITR及び少なくとも1つの修飾型AAV逆位末端反復(mod-ITR)(例えば、非対称の修飾型ITR)、(ii)mod-ITR対が互いに対して異なる三次元空間構成を有する、2つの修飾型ITR(例えば、非対称の修飾型ITR)、又は(iii)各WT-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称のWT-WT ITR対、又は(iv)各mod-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称の修飾型ITR対のうちのいずれかから選択されるITR配列を含み得、本開示の方法は、限定されないが、リポソームナノ粒子送達系などの送達系を更に含み得る。
【0223】
いくつかの実施形態によれば、ITR配列は、2つの亜科:脊椎動物に感染するパルボウイルス亜科、及び昆虫に感染するデンソウイルス亜科を含む、パルボウイルス科のウイルスに由来し得る。Parvovirinae(パルボウイルスと称される)は、Dependovirus属を含み、そのメンバーは、ほとんどの条件下で、増殖性感染のためにアデノウイルス又はヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスとの共感染を必要とする。ディペンドウイルス族は、通常はヒト(例えば、血清型2、3A、3B、5、及び6)又は霊長類(例えば、血清型1及び4)に感染するアデノ随伴ウイルス(AAV)、並びに他の温血動物に感染する関連ウイルス(例えば、ウシ、イヌ、ウマ、及びヒツジアデノ随伴ウイルス)を含む。パルボウイルス及びパルボウイルス科の他のメンバーは、Kenneth I.Berns,「Parvoviridae:The Viruses and Their Replication,」Chapter 69 in FIELDS VIROLOGY(3d Ed.1996)に一般に記載されている。
【0224】
ITRは、明細書において例証されており、本明細書における例は、AAV2 WT-ITRであるが、当業者であれば、上述のように、任意の既知のパルボウイルス、例えば、ディペンドウイルス、例えばAAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノムからのITRを使用できることを認識する。例えば、NCBI:NC002077、NC001401、NC001729、NC001829、NC006152、NC006260、NC006261)、キメラITR、又は任意の合成AAV由来のITR。いくつかの実施形態によれば、AAVは、温血動物、例えば、鳥類(AAAV)、ウシ(BAAV)、イヌ、ウマ、及びヒツジアデノ随伴ウイルスに感染し得る。いくつかの実施形態によれば、ITRは、B19パルボウイルス(GenBank受託番号NC000883)、マウス由来微小ウイルス(Minute Virus from Mouse、MVM)(GenBank受託番号NC001510);ガチョウパルボウイルス(GenBank受託番号NC_001701)、ヘビパルボウイルス1(GenBank受託番号NC006148)由来である。いくつかの実施形態によれば、本明細書で論じられるように、5’WT-ITRは、1つの血清型に由来し、3’WT-ITRは、異なる血清型に由来し得る。
【0225】
当業者であれば、ITR配列が、二本鎖ホリデージャンクションの一般構造を有し、典型的には、T形又はY形ヘアピン構造であり(例えば、図2A及び図3Aを参照されたい)、各WT-ITRが、より大きなパリンドロームアーム(A-A’)に埋め込まれた2つのパリンドロームアーム又はループ(B-B’及びC-C’)、並びに一本鎖D配列によって形成される(これらのパリンドローム配列の順序は、ITRのフリップ又はフロップ配向を定義する)ことを知っている。例えば、Grimm et al.,J.Virology,2006;80(1);426-439;Yan et al.,J.Virology,2005;364-379;Duan et al.,Virology 1999;261;8-14に記載されている異なるAAV血清型(AAV1~AAV6)由来のITRの構造解析及び配列比較を参照されたい。当業者は、本明細書に提供される例示的なAAV2 ITR配列に基づいて、ceDNAベクター又はceDNA-プラスミドで使用するための任意のAAV血清型からWT-ITR配列を容易に決定することができる。例えば、Grimm et al.,J.Virology,2006;80(1);426-439に記載の、異なるAAV血清型(AAV1~AAV6、並びにトリAAV(AAAV)及びウシAAV(BAAV))由来のITRの配列比較を参照されたい。これは、他の血清型由来の左ITRに対するAAV2の左ITRの%同一性:AAV-1(84%)、AAV-3(86%)、AAV-4(79%)、AAV-5(58%)、AAV-6(左ITR)(100%)、及びAAV-6(右ITR)(82%)を示す。
【0226】
対称ITR対
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、関心対象の核酸配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含み、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに対して対称又は実質的に対称であり、すなわち、ceDNAベクターは、対称の三次元空間構成を有するITR配列を含み得るが、それによりそれらの構造は、幾何学的空間で同じ形状であるか、又は三次元空間で同じA、C-C’、B-B’ループを有する。そのような実施形態では、対称のITR対、又は実質的に対称のITR対は、野生型ITRではない修飾型ITR(例えば、mod-ITR)であり得る。mod-ITR対は、野生型ITRからの1つ以上の修飾を有し、互いに逆相補(逆位)である同じ配列を有し得る。代替的な実施形態では、修飾型ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、修飾型ITR対は、異なる配列を有し得るが、対応する又は同じ対称の三次元形状を有し得る。
【0227】
(i)野生型ITR
いくつかの実施形態によれば、対称のITR、又は実質的に対称のITRは、本明細書に記載されるように野生型(WT-ITR)である。すなわち、両方のITRが野生型配列を有するが、必ずしも同じAAV血清型のWT-ITRである必要はない。すなわち、いくつかの実施形態によれば、一方のWT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得るが、他方のWT-ITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。そのような実施形態では、WT-ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、それらは、対称的な三次元空間構成を維持しながら、1つ以上の保存的ヌクレオチド修飾を有することができる。
【0228】
したがって、本明細書で開示されるように、ceDNAベクターは、2つの隣接する野生型逆位末端反復(WT-ITR)配列の間に位置付けられた導入遺伝子又は核酸配列を含有し、互いに逆相補(逆位)であるか、又は代替的に互いに実質的に対称である。すなわち、WT-ITR対は、対称の三次元空間構成を有する。いくつかの実施形態によれば、野生型ITR配列(例えば、AAV WT-ITR)は、機能的Rep結合部位(Rep binding site、RBS;例えば、AAV2の場合5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’、配列番号_)及び機能的末端分離部位(terminal resolution site、TRS;例えば、5’-AGTT-3’(配列番号_)を含む。
【0229】
いくつかの態様によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、2つのWT逆位末端反復配列(WT-ITR)(例えば、AAV WT-ITR)の間に作動可能に位置付けられた核酸をコードするベクターポリヌクレオチドから取得可能である。すなわち、両方のITRが野生型配列を有するが、必ずしも同じAAV血清型のWT-ITRである必要はない。すなわち、いくつかの実施形態によれば、一方のWT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得るが、他方のWT-ITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。そのような実施形態では、WT-ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、それらは、対称の三次元空間構成を維持しながら、1つ以上の保存的ヌクレオチド修飾を有することができる。いくつかの実施形態によれば、5’WT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し、3’WT-ITRは、同じ又は異なるAAV血清型に由来する。いくつかの実施形態によれば、5’WT-ITR及び3’WT-ITRは、互いの鏡像であり、すなわち、それらは対称である。いくつかの実施形態によれば、5’WT-ITR及び3’WT-ITRは、同じAAV血清型に由来する。
【0230】
WT ITRは周知である。いくつかの実施形態によれば、2つのITRは、同じAAV2血清型に由来する。ある特定の実施形態では、他の血清型からのWTを使用することができる。相同であるいくつかの血清型、例えば、AAV2、AAV4、AAV6、AAV8がある。いくつかの実施形態によれば、密接に相同なITR(例えば、類似のループ構造を有するITR)を使用することができる。別の実施形態では、より多様なAAV WT ITR、例えばAAV2及びAAV5を使用することができ、更に別の一実施形態では、実質的にWTであるITRを使用することができる、すなわち、それはWTの基本ループ構造を有するが、特性を変更しないか又は影響しないいくつかの保存的ヌクレオチド変化を有する。同じウイルス血清型に由来するWT-ITRを使用する場合、1つ以上の調節配列を更に使用することができる。ある特定の実施形態では、調節配列は、ceDNAの活性、例えば、コードされた抗原又は免疫原性ペプチドの発現の調整を可能にする調節スイッチである。
【0231】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される技術の一態様は、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターに関し、ceDNAベクターは、2つの野生型逆位末端反復配列(WT-ITR)の間に作動可能に位置付けられた、HC及び/又はLCをコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、WT-ITRは、同じ血清型、異なる血清型に由来し得るか、又は互いに対して実質的に対称であり得る(すなわち、それらの構造が幾何学的空間で同じ形状であるように対称の三次元空間構成を有するか、又は三次元空間で同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する)。いくつかの実施形態によれば、対称WT-ITRは、機能的末端分離部位及びRep結合部位を含む。いくつかの実施形態によれば、核酸配列は、導入遺伝子をコードし、ベクターは、ウイルスカプシドにはない。
【0232】
いくつかの実施形態によれば、WT-ITRは同じであるが、互いの逆相補体である。例えば、5’ITRの配列AACGは、対応する部位の3’ITRのCGTT(すなわち、逆相補体)であり得る。いくつかの実施例によれば、5’WT-ITRセンス鎖は、ATCGATCGの配列を含み、対応する3’WT-ITRセンス鎖は、
【0233】
【化1】
(すなわち、ATCGATCGの逆相補体)を含む。いくつかの実施形態によれば、WT-ITR ceDNAは、末端分離部位及び複製タンパク質結合部位(replication protein binding site、RPS)(複製タンパク質結合部位(replicative protein binding site)とも称される)、例えば、Rep結合部位を更に含む。
【0234】
WT-ITRを含む抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターで使用するための例示的なWT-ITR配列は、WT-ITRの対(5’WT-ITR及び3’WT-ITR)を示す本明細書の表2に示されている。
【0235】
例示的な一実施例として、本開示は、調節スイッチの有無にかかわらず、導入遺伝子(例えば、核酸配列)に作動可能に連結されたプロモーターを含む抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを提供し、ceDNAはカプシドタンパク質を欠き、(a)WT-ITRをコードするceDNA-プラスミド(例えば、図1F図1Gを参照されたい)から産生され、各WT-ITRは、そのヘアピン二次構成で同じ数の分子内二重化塩基対を有し(好ましくはこれらの参照配列と比較して、この構成のいかなるAAA又はTTT末端ループの欠失も除外する)、及び(b)実施例1の未変性ゲル及び変性条件下でのアガロースゲル電気泳動によるceDNAの特定のためのアッセイを使用してceDNAとして特定される。
【0236】
いくつかの実施形態によれば、隣接するWT-ITRは、互いに実質的に対称である。この実施形態では、WT-ITRが同一の逆相補体ではないように、5’WT-ITRは、AAVの1つの血清型に由来し、3’WT-ITRは、AAVの異なる血清型に由来し得る。例えば、5’WT-ITRは、AAV2に由来し得、3’WT-ITRは、異なる血清型(例えば、AAV1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12)に由来し得る。いくつかの実施形態によれば、WT-ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、ヘビパルボウイルス(例えば、ロイヤルパイソンパルボウイルス)、ウシパルボウイルス、ヤギパルボウイルス、トリパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ウマパルボウイルス、エビパルボウイルス、ブタパルボウイルス、又は昆虫AAVのうちのいずれかから選択される2つの異なるパルボウイルスから選択され得る。いくつかの実施形態によれば、WT ITRのそのような組み合わせは、AAV2及びAAV6からのWT-ITRの組み合わせである。いくつかの実施形態によれば、実質的に対称のWT-ITRは、一方が他方のITRに対して反転されたときに、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%...99.5%、及びその間の全ての点のパーセンテージだけ同一であり、同じ対称の三次元空間構成を有する。いくつかの実施形態によれば、WT-ITR対は、それらが対称の三次元空間構成を有する(例えば、A、C-C’、B-B’、及びDアームの同じ三次元構成を有する)ため、実質的に対称である。いくつかの実施形態によれば、実質的に対称のWT-ITR対は、他方に対して反転され、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%...99.5%、及びその間の全ての点のパーセンテージだけ互いに同一であり、一方のWT-ITRは、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’(配列番号60)のRep結合部位(Rep-binding site、RBS)及び末端分離部位(terminal resolution site、trs)を保持する。いくつかの実施形態によれば、実質的に対称のWT-ITR対は、互いに対して反転され、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%...99.5%、及びその間の全ての点のパーセンテージだけ互いに同一であり、一方のWT-ITRは、ヘアピン二次構造形成を可能にする可変パリンドローム配列に加えて、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’(配列番号_)のRep結合部位(RBS)及び末端分離部位(trs)を保持する。相同性は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)、デフォルト設定のBLASTNなど、当該技術分野で周知の標準的な手段によって決定することができる。
【0237】
いくつかの実施形態によれば、ITRの構造エレメントは、ITRと大きなRepタンパク質(例えば、Rep 78又はRep 68)との機能的相互作用に関与する任意の構造エレメントであり得る。ある特定の実施形態では、構造エレメントは、ITRと大きなRepタンパク質との相互作用に対する選択性を提供する。すなわち、少なくとも部分的に、どのRepタンパク質がITRと機能的に相互作用するかを判定する。他の実施形態では、構造エレメントは、Repタンパク質がITRに結合されたとき、大きなRepタンパク質と物理的に相互作用する。各構造エレメントは、例えば、ITRの二次構造、ITRの核酸配列、2つ以上のエレメント間の空間、又は上記のうちのいずれかの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態によれば、構造エレメントは、A及びA’アーム、B及びB’アーム、C及びC’アーム、Dアーム、Rep結合部位(RBE)及びRBE’(すなわち、相補的RBE配列)、並びに末端分離部位(trs)からなる群から選択される。
【0238】
単なる例として、表8は、WT-ITRの例示的な組み合わせを示す。
【0239】
表8:同じ血清型若しくは異なる血清型、又は異なるパルボウイルスからのWT-ITRの例示的な組み合わせ。示されている順序は、ITR位置を示すものではなく、例えば、「AAV1、AAV2」は、ceDNAが5’位置にWT-AAV1 ITR及び3’位置にWT-AAV2 ITR、又はその逆、5’位置にWT-AAV2 ITR及び3’位置にWT-AAV1 ITRを含み得ることを明示する。略称:AAV血清型1(AAV1)、AAV血清型2(AAV2)、AAV血清型3(AAV3)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、AAV血清型10(AAV10)、AAV血清型11(AAV11)、又はAAV血清型12(AAV12)、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノム(例えば、NCBI:NC002077、NC001401、NC001729、NC001829、NC006152、NC006260、NC 006261)、温血動物由来のITR(トリAAV(AAAV)、ウシAAV(BAAV)、イヌ、ウマ、及びヒツジAAV)、B19パルボウイルス由来のITR(GenBank受託番号:NC000883)、マウス由来微小ウイルス(MVM)(GenBank受託番号NC001510)、ガチョウ:ガチョウパルボウイルス(GenBank受託番号NC001701)、ヘビ:ヘビパルボウイルス1(GenBank受託番号NC006148)。
【0240】
【表8-1】
【0241】
【表8-2】
【0242】
【表8-3】
【0243】
【表8-4】
【0244】
単なる例として、表9は、いくつかの異なるAAV血清型からの例示的なWT-ITRの配列を示す。
【0245】
【表9】
【0246】
いくつかの実施形態によれば、WT-ITR配列の核酸配列は、(例えば、1、2、3、4、若しくは5個以上のヌクレオチド又はその中の任意の範囲を修飾することにより)修飾され得るが、それにより修飾は、相補的ヌクレオチドの置換、例えば、Cの場合はG、及びその逆、Aの場合はT、及びその逆である。
【0247】
本開示のある特定の実施形態では、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、配列番号1、2、5~14のうちのいずれかから選択される核酸配列からなるWT-ITRを有さない。本開示の代替実施形態では、ceDNAベクターが、配列番号1、2、5~14のうちのいずれかから選択される核酸配列を含むWT-ITRを有する場合、隣接するITRもWTであり、ceDNAは、例えば、本明細書及び国際出願PCT/US18/49996号に開示されているように、調節スイッチを含む(例えば、PCT/US18/49996号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の表11を参照されたい)。いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、本明細書に開示されるような調節スイッチ、及び配列番号1、2、5~14からなる群のうちのいずれかから選択される核酸配列を有する選択されたWT-ITRを含む。
【0248】
本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、作動可能なRBE、trs、及びRBE’部分を保持するWT-ITR構造を含み得る。例示の目的で野生型ITRを使用する図2A及び図2Bは、ceDNAベクターの野生型ITR構造部分内のtrs部位の作動のための1つの可能な機序を示す。いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、Rep結合部位(RBS;AAV2の場合5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’(配列番号_))及び末端分離部位(TRS;5’-AGTT(配列番号_))を含む1つ以上の機能的ITRポリヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのWT-ITRは、機能的である。抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターが互いに実質的に対称である2つのWT-ITRを含む代替実施形態では、少なくとも1つのWT-ITRが機能的であり、少なくとも1つのWT-ITRが非機能的である。
【0249】
非対称ITR対又は対称ITR対を含むceDNAベクターの一般的な修飾型ITR(mod-ITR)
本明細書で論じられるように、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、対称ITR対又は非対称ITR対を含み得る。どちらの場合も、一方又は両方のITRは修飾型ITRであり得、その違いは、第1の場合(すなわち、対称mod-ITR)では、mod-ITRは、同じ三次元空間構成を有する(すなわち、同じA-A’、C-C’、及びB-B’アーム構成を有する)が、第2の場合(すなわち、非対称mod-ITR)では、mod-ITRは、異なる三次元空間構成を有する(すなわち、A-A’、C-C’、及びB-B’アームの異なる構成を有する)ことである。
【0250】
いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、野生型ITR配列(例えば、AAV ITR)と比較して、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されるITRである。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクター中のITRのうちの少なくとも1つは、機能的Rep結合部位(RBS;例えば、AAV2の場合5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’)及び機能的末端分離部位(TRS;例えば、5’-AGTT-3’)を含む。いくつかの実施形態によれば、ITRの少なくとも1つは、非機能的ITRである。いくつかの実施形態によれば、異なる又は修飾型ITRは各々、異なる血清型からの野生型ITRではない。
【0251】
ITRの特定の変更及び変異が本明細書において詳細に説明されているが、ITRの文脈では、「変更型」又は「変異型」又は「修飾型」とは、ヌクレオチドが野生型、参照、又は元のITR配列に対して挿入、欠失、及び/又は置換されたことを示す。変更型又は変異型ITRは、操作されたITRであり得る。本明細書で使用される場合、「操作された」とは、人間の手によって操作された態様を指す。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドの少なくとも1つの態様、例えば、その配列が、人間の手によって操作され、それが天然に存在するときの態様とは異なるとき、「操作された」とみなされる。
【0252】
いくつかの実施形態によれば、mod-ITRは、合成であり得る。いくつかの実施形態によれば、合成ITRは、2つ以上のAAV血清型からのITR配列に基づいている。別の実施形態では、合成ITRは、AAVベース配列を含まない。更に別の実施形態では、合成ITRは、上記のITR構造を保存するが、わずかなAAV源配列を有するか、又は全く有しない。いくつかの態様によれば、合成ITRは、野生型Rep又は特定血清型のRepと選好的に相互作用し得るか、又はいくつかの事例によれば合成ITRは、野生型Repによって認識されず、変異型Repによってのみ認識される。
【0253】
当業者であれば、既知の手段によって他の血清型における対応する配列を判定することができる。例えば、A、A’、B、B’、C、C’、又はD領域中に変化が存在するかどうかを判定し、別の血清型における対応する領域を判定する。BLAST(登録商標)(Basic Local Alignment Search Tool)又は他の相同性アラインメントプログラムをデフォルト状態で使用して、対応する配列を判定することができる。本開示は、異なるAAV血清型の組み合わせからmod-ITRを含む集団及び複数のceDNAベクターを更に提供する。すなわち、1つのmod-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他のmod-ITRは、異なる血清型に由来し得る。理論に束縛されるものではないが、いくつかの実施形態によれば、1つのITRは、AAV2 ITR配列に由来し得るか、又はそれに基づき得るが、ceDNAベクターの他のITRは、AAV血清型1(AAV1)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、AAV血清型10(AAV10)、AAV血清型11(AAV11)、又はAAV血清型12(AAV12)の任意の1つ以上のITR配列に由来し得るか、又はそれに基づき得る。
【0254】
任意のパルボウイルスITRを、ITRとして、又は塩基ITRとして修飾に使用することができる。好ましくは、パルボウイルスは、ディペンドウイルスである。より好ましくは、AAVである。選択される血清型は、その血清型の組織向性に基づき得る。AAV2は、広い組織向性を有し、AAV1は、ニューロン及び骨格筋を選好的に標的し、AAV5は、ニューロン、網膜色素上皮、及び光受容体を標的とする。AAV6は、骨格筋及び肺を選好的に標的とする。AAV8は、肝臓、骨格筋、心臓、及び膵臓組織を選好的に標的とする。AAV9は、肝臓、骨格、及び肺組織を選好的に標的とする。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、AAV2 ITRに基づいている。
【0255】
より具体的には、構造エレメントが特定の大きなRepタンパク質と機能的に相互作用する能力は、構造エレメントを修飾することによって変更され得る。例えば、構造エレメントの核酸配列は、ITRの野生型配列と比較して修飾され得る。いくつかの実施形態によれば、ITRの構造エレメント(例えば、Aアーム、A’アーム、Bアーム、B’アーム、Cアーム、C’アーム、Dアーム、RBE、RBE’、及びtrs)を除去し、異なるパルボウイルスからの野生型構造エレメントと置き換えることができる。例えば、置換構造は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、ヘビパルボウイルス(例えば、ロイヤルパイソンパルボウイルス)、ウシパルボウイルス、ヤギパルボウイルス、トリパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ウマパルボウイルス、エビパルボウイルス、ブタパルボウイルス、又は昆虫AAVからのものであり得る。例えば、ITRは、AAV2 ITRであり得、A若しくはA’アーム又はRBEは、AAV5からの構造エレメントと置き換えることができる。別の実施例では、ITRは、AAV5 ITRであり得、C又はC’アーム、RBE、及びtrsは、AAV2からの構造エレメントと置き換えることができる。別の実施例では、AAV ITRは、AAV5 ITRであり得、B及びB’アームは、AAV2 ITR B及びB’アームで置き換えられる。
【0256】
単なる例として、表10は、修飾型ITRの領域中の少なくとも1つのヌクレオチドの例示的な修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を示し、Xは、対応する野生型ITRに対する、そのセクションにおける少なくとも1つの核酸の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を示す。いくつかの実施形態によれば、C及び/又はC’及び/又はB及び/又はB’の領域のうちのいずれかにおける少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。例えば、修飾が、単一アームITR(例えば、単一C-C’アーム、若しくは単一B-B’アーム)、又は修飾型C-B’アーム若しくはC’-Bアーム、又は少なくとも1つの切断されたアーム(例えば、切断されたC-C’アーム及び/若しくは切断されたB-B’アーム)を有する2つのアームITRのうちのいずれかをもたらす場合、少なくとも単一アーム、又は2つのアームITRのアーム(1つのアームは切断され得る)のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。いくつかの実施形態によれば、切断されたC-C’アーム及び/又は切断されたB-B’アームは、末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を有する。
【0257】
【表10】
【0258】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターで使用するためのmod-ITRは、本明細書に開示される非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含み、表10に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’とCとの間、CとC’との間、C’とBとの間、BとB’との間、及びB’とAとの間から選択される領域のうちのいずれか1つ以上における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾を含み得る。いくつかの実施形態によれば、C若しくはC’又はB若しくはB’領域中の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、依然としてステムループの末端ループを保存する。いくつかの実施形態によれば、CとC’との間及び/又はBとB’との間の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。代替的な実施形態では、CとC’との間及び/又はBとB’との間の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Aヌクレオチド(すなわち、AAA)を保持する。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表10に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’、A、及び/又はDから選択される領域のうちのいずれか1つ以上における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。例えば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表10に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA領域における少なくとも1つの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)も含み得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表10に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表10に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA及び/又はA’領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表10に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またD領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。
【0259】
いくつかの実施形態によれば、構造エレメントのヌクレオチド配列を修飾して(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20以上のヌクレオチド、又はその中の任意の範囲を修飾して)、修飾型構造エレメントを産生することができる。いくつかの実施形態によれば、ITRに対する特定の修飾が本明細書に例示されているか(例えば、配列番号3、4、15~47、101~116、若しくは165~187)、又は2018年12月6日に出願された国際特許出願PCT/US2018/064242号の図7A図7Bに示されている(例えば、国際特許出願PCT/US2018/064242号の配列番号97~98、101~103、105~108、111~112、117~134、545~54)。いくつかの実施形態によれば、ITRは、(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20以上のヌクレオチド、又はその中の任意の範囲を修飾することによって)修飾され得る。他の実施形態では、ITRは、配列番号3、4、15~47、101~116、若しくは165~187の修飾型ITRのうちの1つ、又は配列番号3、4、15~47、101~116、若しくは165~187、又は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/US18/49996号の表2~9(すなわち、配列番号110~112、115~190、200~468)に示されている、A-A’アーム及びC-C’及びB-B’アームのRBE含有セクションと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上の配列同一性を有し得る。
【0260】
いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、例えば、特定アームの全部、例えば、A-A’アームの全部若しくは一部、又はB-B’アームの全部若しくは一部、又はC-C’アームの全部若しくは一部の除去又は欠失、又は代替的にステム(例えば、単一アーム)をキャップする最終ループが依然として存在する限り、ループのステムを形成する1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去(例えば、2018年12月6日に出願された国際特許出願PCT/US2018/064242号の図7AのITR-21を参照されたい)を含み得る。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、B-B’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9以上の塩基対の除去を含み得る。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、C-C’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去を含み得る(例えば、2018年12月6日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/064242の図3BのITR-1又は図7AのITR-45を参照されたい)。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、C-C’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9以上の塩基対の除去、及びB-B’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9以上の塩基対の除去を含み得る。塩基対の除去の任意の組み合わせが想起され、例えば、C-C’アームにおける6つの塩基対、及びB-B’アームにおける2つの塩基対が除去され得る。例示的な実施例として、図3Bは、修飾型ITRが、少なくとも1つのアーム(例えば、C-C’)が切断される2つのアームを含むように、C部分及びC’部分の各々から欠失された少なくとも7つの塩基対、C領域とC’領域との間のループ中のヌクレオチドの置換、並びにB領域及びB’領域の各々からの少なくとも1つの塩基対の欠失を有する例示的な修飾型ITRを示す。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRはまた、B領域及びB’領域の各々からの少なくとも1つの塩基対の欠失を含み、それによりB-B’アームもWT ITRに対して切断される。
【0261】
いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、全長野生型ITR配列に対して1~50(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50)ヌクレオチド欠失を有し得る。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、全長WT ITR配列に対して1~30ヌクレオチド欠失を有し得る。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、全長野生型ITR配列に対して2~20ヌクレオチド欠失を有する。
【0262】
いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、DNA複製(例えば、Repタンパク質によるRBEへの結合、若しくは末端分離部位でのニッキング)に干渉しないように、A又はA’領域のRBE含有部分にいかなるヌクレオチド欠失も含まない。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のために包含される修飾型ITRは、本明細書に記載されるB、B’、C、及び/又はC領域に1つ以上の欠失を有する。
【0263】
いくつかの実施形態によれば、対称ITR対又は非対称ITR対を含む抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、本明細書に開示される調節スイッチ、及び配列番号3、4、15~47、101~116、又は165~187からなる群のうちのいずれかから選択されるヌクレオチド配列を有する選択された少なくとも1つの修飾型ITRを含む。
【0264】
別の実施形態では、構造エレメントの構造は、修飾され得る。例えば、構造エレメントは、ステムの高さ及び/又はループ内のヌクレオチドの数の変化。例えば、ステムの高さは、約2、3、4、5、6、7、8、若しくは9ヌクレオチド以上、又はその中の任意の範囲であり得る。いくつかの実施形態によれば、ステムの高さは、約5ヌクレオチド~約9ヌクレオチドであり得、Repと機能的に相互作用する。別の実施形態では、ステム高さは、約7ヌクレオチドであり得、Repと機能的に相互作用する。別の実施例では、ステムの高さは、約3、4、5、6、7、8、9、若しくは10ヌクレオチド、又はそれ以上、又はその中の任意の範囲を有し得る。
【0265】
別の実施形態では、RBE又は伸長RBE内のGAGY結合部位又はGAGY関連結合部位の数は、増加又は減少され得る。いくつかの実施例によれば、RBE又は伸長RBEは、1、2、3、4、5、若しくは6以上のGAGY結合部位、又はその中の任意の範囲を含み得る。各GAGY結合部位は、独立して、配列がRepタンパク質に結合するのに十分である限り、正確なGAGY配列又はGAGYと同様の配列であり得る。
【0266】
別の実施形態では、2つのエレメント(限定されないが、RBE及びヘアピンなど)の間の空間を変更して(例えば、増加又は減少)、大きなRepタンパク質との機能的相互作用を変更することができる。例えば、空間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、若しくは21ヌクレオチド以上、又はその中の任意の範囲であり得る。
【0267】
本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、本明細書に開示される野生型AAV2 ITR構造に関して修飾されるITR構造を含み得るが、依然として作動可能なRBE、trs、及びRBE’部分を保持する。図2A及び図2Bは、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの野生型ITR構造部分内のtrs部位の操作のための1つの可能な機序を示す。いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、1つ以上の機能性ポリヌクレオチド配列を含有し、その1つ以上の機能的ポリヌクレオチド配列は、Rep結合部位(RBS;AAV2の場合5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’)及び末端分離部位(TRS;5’-AGTT)を含む。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのITR(野生型又は修飾型ITR)は、機能的である。抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターが、互いに異なるか、又は非対称である2つの修飾型ITRを含む代替的な実施形態では、少なくとも1つの修飾型ITRは、機能的であり、少なくとも1つの修飾型ITRは、非機能的である。
【0268】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの修飾型ITR(例えば、左又は右ITR)は、ループアーム、切断型アーム、又はスペーサー内に修飾を有する。ループアーム、切断型アーム、又はスペーサー内に修飾を有するITRの例示的な配列は、国際特許出願第PCT/US18/49996号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の表2(すなわち、配列番号135~190、200~233)、表3(例えば、配列番号234~263)、表4(例えば、配列番号264~293)、表5(例えば、本明細書の配列番号294~318)、表6(例えば、配列番号319~468)、及び表7~9(例えば、配列番号101~110、111~112、115~134)、又は表10A若しくは10B(例えば、配列番号9、100、469~483、484~499)に列挙されている。
【0269】
いくつかの実施形態によれば、非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含む抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターにおける使用のための修飾型ITRは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願第PCT/US18/49996号の表2、3、4、5、6、7、8、9、及び10A~10Bに示されるもののうちのいずれか、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0270】
上記のクラスの各々に非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含む抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターで使用するための追加の例示的な修飾型ITRを表11A及び表11Bに示す。表11Aの右修飾型ITRの予測二次構造は、2018年12月6日に出願された国際特許出願第PTC/US2018/064242号の図7Aに示されており、表11Bの左修飾型ITRの予測二次構造は、2018年12月6日に出願された国際特許出願第PTC/US2018/064242号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の図7Bに示されている。
【0271】
表11A及び表11Bは、例示的な右及び左修飾型ITRの配列番号を列挙する。
【0272】
【表11A】
【0273】
【表11B】
【0274】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ関連ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、関心対象のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含み、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに非対称である、すなわち、それらは互いに異なる三次元空間構成を有する。例示的な実施形態として、第1のITRは、野生型ITRであり得、第2のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得るか、又はその逆であり、第1のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得、第2のITRは、野生型ITRであり得る。いくつかの実施形態によれば、第1のITR及び第2のITRは、両方ともmod-ITRであるが、異なる配列を有するか、又は異なる修飾を有し、したがって同じ修飾型ITRではなく、異なる三次元空間構成を有する。言い換えると、非対称ITRを有するceDNAベクターは、WT-ITRに対するいくつかのITRによる任意の変化が他のITRに反映されないITRを含むか、代替的には、非対称ITRが修飾された非対称ITR対を有する場合、互いに対して異なる配列及び異なる三次元形状を有し得る。抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクター中の、ceDNA-プラスミドを生成するために使用するための例示的な非対称ITRは、表11A及び表11Bに示されている。
【0275】
代替実施形態では、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、2つの対称的なmod-ITRを含む。すなわち、両方のITRは、同じ配列を有するが、互いの逆相補体(逆位)である。いくつかの実施形態によれば、対称mod-ITR対は、同じAAV血清型からの野生型ITR配列と比較して、欠失、挿入、又は置換の少なくとも1つ又は任意の組み合わせを含む。対称ITRの付加、欠失、又は置換は同じであるが、互いの逆相補体である。例えば、5’ITRのC領域への3ヌクレオチドの挿入は、3’ITRのC’領域の対応するセクションへの3つの逆相補ヌクレオチドの挿入に反映される。単に説明の目的でのみ、付加が5’ITRのAACGである場合、付加は、対応する部位における3’ITRのCGTTである。例えば、
【0276】
【化2】
をもたらす。
【0277】
代替的な実施形態では、修飾型ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、修飾型ITR対は、異なる配列を有し得るが、対応する又は同じ対称の三次元形状を有し得る。例えば、1つの修飾型ITRは、1つの血清型に由来し得、他の修飾型ITRは、異なる血清型に由来し得るが、それらは同じ領域において同じ変異(例えば、ヌクレオチド挿入、欠失、又は置換)を有する。言い換えると、単なる説明の目的で、5’mod-ITRは、AAV2に由来し得、C領域に欠失を有し、3’mod-ITRは、AAV5に由来し得、C’領域に対応する欠失を有する。5’mod-ITR及び3’mod-ITRが同じ又は対称な三次元空間構成を有することを条件として、それらは本明細書における修飾型ITR対としての使用に包含される。
【0278】
いくつかの実施形態によれば、実質的に対称のmod-ITR対は、三次元空間で同じA、C-C’及びB-B’ループを有する。例えば、実質的に対称のmod-ITR対の修飾型ITRがC-C’アームの欠失を有する場合、同族のmod-ITRは、C-C’ループの対応する欠失を有し、またその同族のmod-ITRの幾何学的空間に同じ形状の残りのA及びB-B’ループの同様の三次元構造を有する。単なる例として、実質的に対称のITRは、それらの構造が幾何学的空間において同じ形状であるように、対称空間構成を有し得る。これは、例えば、G-C対が、例えばC-G対に、若しくはその逆に修飾されたとき、又はA-T対がT-A対に、若しくはその逆に修飾されたときに起こり得る。したがって、
【0279】
【化3】
aに加えてTの対応する修飾がない)。いくつかの実施形態によれば、そのような修飾型ITR対は、修飾型ITR対が対称な立体化学を有するので、実質的に対称である。
【0280】
表12は、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターで使用するための、例示的な対称修飾型ITR対(すなわち、左修飾型ITR及び対称右修飾型ITR)を示す。配列の太字(赤)部分は、図31A図46Bにも示される、部分的なITR配列(すなわち、A-A’、C-C’、及びB-B’ループの配列)を特定する。これらの例示的な修飾型ITRは、RBEであるGCGCGCTCGCTCGCTC-3’、スペーサーであるACTGAGGC、スペーサー補体及びRBE’(すなわちRBEの補体)であるGAGCGAGCGAGCGCGCを含み得る。
【0281】
【表12-1】
【0282】
【表12-2】
【0283】
【表12-3】
【0284】
いくつかの実施形態によれば、非対称ITR対を含む抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、本明細書の表11A~図11Bのいずれか1つ以上に示されるITR配列若しくはITR部分配列、あるいは2018年12月6日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/064242号(その全体が本明細書に組み込まれる)の図7A図7Bに示されているか、又は2018年9月7日に出願された国際特許出願第PCT/US18/49996号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の表2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10A~10Bに開示されている配列における修飾のうちのいずれかに対応する修飾を有するITRを含み得る。
【0285】
例示的なceDNAベクター
上記のように、本開示は、組換えceDNA発現ベクター、及び上記の非対称のITR対、対称のITR対、又は実質的に対称のITR対のうちのいずれか1つを含む抗原又は免疫原性ペプチドをコードするceDNAベクターに関する。ある特定の実施形態では、本開示は、隣接するITR配列及び導入遺伝子を有する抗原又は免疫原性ペプチドの発現のための組換えceDNAベクターに関し、ITR配列は、本明細書で定義されるように、互いに対して非対称、対称、又は実質的に対称であり、ceDNAは、隣接するITRの間に位置する関心対象の核酸配列(例えば、導入遺伝子の核酸を含む発現カセット)を更に含み、当該核酸分子は、ウイルスカプシドタンパク質コード配列を欠いている。
【0286】
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNA発現ベクターは、少なくとも1つのITRが変更されている場合、本明細書に記載される核酸配列を含む組換えDNA手順に都合よく供することができる任意のceDNAベクターであってもよい。本開示の抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、ceDNAベクターが導入される宿主細胞と適合性がある。ある特定の実施形態では、ceDNAベクターは、直鎖状であってもよい。ある特定の実施形態では、ceDNAベクターは、染色体外実体として存在し得る。ある特定の実施形態では、本開示のceDNAベクターは、宿主細胞のゲノムへのドナー配列の組み込みを可能にするエレメントを含有し得る。本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」、「核酸配列」及び「異種核酸配列」は同義であり、本明細書に記載されるように、抗原又は免疫原性ペプチドをコードする。
【0287】
ここで図1A図1Gを参照すると、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを作製するのに有用な2つの非限定的プラスミドの機能的構成成分の概略図が示されている。図1A図1B図1D、及び図1Fは、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの構築物又は対応するceDNAプラスミドの配列を示す。ceDNAベクターは、カプシドを含まず、第1のITR、発現可能な導入遺伝子カセット、及び第2のITRをこの順序でコードするプラスミドから取得することができ、第1及び第2のITR配列は、本明細書で定義されるように、互いに対して非対称、対称、又は実質的に対称である。抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、カプシドを含まず、第1のITR、発現可能な導入遺伝子(タンパク質又は核酸)、及び第2のITRをこの順序でコードするプラスミドから取得することができ、第1及び第2のITR配列は、本明細書で定義されるように、互いに対して非対称、対称、又は実質的に対称である。いくつかの実施形態によれば、発現可能な導入遺伝子カセットは、必要に応じて、エンハンサー/プロモーター、1つ以上の相同性アーム、ドナー配列、転写後調節エレメント(例えば、WPRE、例えば、配列番号67))、並びにポリアデニル化及び終結シグナル(例えば、BGHポリA、例えば、配列番号68)を含む。
【0288】
図5は、実施例に記載される方法を使用して、複数のプラスミド構築物からceDNAの産生を確認するゲルである。ceDNAは、上記の図4Aに関して、及び実施例で論じられるように、ゲル中の特徴的なバンドパターンによって確認される。
【0289】
調節エレメント
本明細書で定義される非対称のITR対又は対称のITR対を含む、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、シス調節エレメントの特定の組み合わせを更に含み得る。シス調節エレメントとしては、プロモーター、リボスイッチ、インスレーター、mir調節エレメント、転写後調節エレメント、組織及び細胞型特異的プロモーター、並びにエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0290】
いくつかの実施形態によれば、様々なシス調節エレメントの配列は、2021年3月24日に出願された国際特許出願第PCT/US2021/023891号(その内容はその全体が、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものの任意のものから選択することができる。
【0291】
実施形態では、第2の核酸配列は、調節配列、及びヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、遺伝子調節配列は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、調節配列は、宿主細胞におけるヌクレアーゼの発現を制御するのに適している。ある特定の実施形態では、調節配列は、本開示のヌクレアーゼをコードする核酸配列などのプロモーター配列に作動可能に連結された遺伝子の転写を指示することができる、好適なプロモーター配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の核酸配列は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列の5’末端に連結されたイントロン配列を含む。ある特定の実施形態では、エンハンサー配列がプロモーターの上流に提供されて、プロモーターの効力を増大させる。ある特定の実施形態では、調節配列は、エンハンサー及びプロモーターを含み、第2の核酸配列は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列の上流のイントロン配列を含み、イントロンは、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位を含み、プロモーターは、ヌクレアーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。
【0292】
好適なプロモーターは、ウイルスに由来し得るため、ウイルスプロモーターと称され得るか、又はそれらは、原核生物又は真核生物を含む任意の生物に由来し得る。好適なプロモーターを使用して、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)によって発現を駆動することができる。例示的なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルスの長い末端反復配列(long terminal repeat、LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(adenovirus major late promoter、Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6小核プロモーター(U6、例えば、配列番号80)(Miyagishi et al.,Nature Biotechnology 20,497-500(2002))、増強されたU6プロモーター(例えば、Xia et al.,Nucleic Acids Res.2003 Sep.1;31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)(例えば、配列番号81又は配列番号155)、CAGプロモーター、ヒトα1-アンチトリプシン(HAAT)プロモーター(例えば、配列番号82)などが挙げられる。ある特定の実施形態では、これらのプロモーターは、それらの下流イントロン含有端で変更され、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位を含む。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼ切断部位を含有するDNAは、プロモーターDNAに対して外来である。
【0293】
いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、ヒトユビキチンC(human ubiquitin C、hUbC)、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、又はヒトメタロチオネインなどの、ヒト遺伝子からのプロモーターであってもよい。
【0294】
いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。更なる実施形態によれば、組織特異的プロモーターは、肝臓特異的プロモーターである。いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性タンパク質は、肝臓に標的化され、かつ/又は肝臓特異的プロモーターによって肝臓において産生される。
【0295】
当技術分野で公知の任意の肝臓特異的プロモーターが、本開示における使用のために企図される。いくつかの実施形態によれば、肝臓特異的プロモーターは、天然又は合成のヒトα1-アンチトリプシン(HAAT)から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、肝臓への送達は、肝細胞の表面上に存在する低密度リポタンパク質(LDL)受容体を介して、肝細胞へのceDNAベクターを含む組成物の内因性ApoE特異的標的を使用して達成され得る。
【0296】
本開示に従って使用するための適切なプロモーターの非限定的な例としては、以下のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない:CAGプロモーター、EF1aプロモーター、IE2プロモーター及びラットEF1-αプロモーター、mEF1プロモーター、又は1E1プロモーターフラグメント。
【0297】
いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、2021年3月24日に出願された国際特許出願第PCT/US2021/023891号(その内容はその全体が、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている任意のプロモーター配列から選択することができる。
【0298】
ポリアデニル化配列:
ポリアデニル化配列をコードする配列が、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクター中に含まれ得るが、それにより、ceDNAベクターから発現されたmRNAを安定化し、かつ核輸送及び翻訳を助ける。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、ポリアデニル化配列を含まない。他の実施形態では、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、又はそれ以上のアデニンジヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、ポリアデニル化配列は、約43ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約40~55ヌクレオチド、約45~50ヌクレオチド、約35~50ヌクレオチド、又はその間の任意の範囲を含む。
【0299】
発現カセットは、当技術分野で既知の任意のポリアデニル化配列又はその変形を含むことができる。いくつかの発現カセットはまた、SV40後期ポリAシグナル上流エンハンサー(upstream enhancer、USE)配列を含み得る。いくつかの実施形態によれば、USE配列は、SV40pA又は異種ポリAシグナルと組み合わせて使用され得る。ポリA配列は、抗原又は免疫原性ペプチドをコードする導入遺伝子の3’に位置する。
【0300】
いくつかの実施形態によれば、ポリアデニル化配列は、2021年3月24日に出願された国際特許出願第PCT/US2021/023891号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている任意のポリアデニル化配列から選択することができる。
【0301】
発現カセットはまた、導入遺伝子の発現を増加させるために、転写後エレメントを含み得る。いくつかの実施形態によれば、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)を使用して、導入遺伝子の発現を増加させる。他の転写後処理エレメント、例えば、単純ヘルペスウイルス又はB型肝炎ウイルス(HBV)のチミジンキナーゼ遺伝子からの転写後エレメントを使用することができる。
【0302】
いくつかの実施形態によれば、転写後調節エレメントは、2021年3月24日に出願された国際特許出願第PCT/US2021/023891号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている任意の転写後調節エレメント配列から選択することができる。
【0303】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドをコードする核酸配列はまた、分泌配列もコードすることができるので、そのタンパク質は、ゴルジ装置及び小胞体に向けられ、タンパク質が小胞体を通過して細胞から出ると、シャペロン分子によって正しい立体構造に折りたたまれる。例示的な分泌配列には、VH-02及びVK-A26及びIgκシグナル配列、並びにタグ付きタンパク質が細胞質から分泌されるのを可能にするGluc分泌シグナル、タグ付きタンパク質をゴルジ体に向けるTMD-ST分泌配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0304】
いくつかの実施形態によれば、分泌配列は、2021年3月24日に出願された国際特許出願第PCT/US2021/023891号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている任意の分泌配列から選択することができる。
【0305】
核局在化配列
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、1つ以上の核局在化配列(nuclear localization sequence、NLS)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のNLSは、アミノ末端又はその近く、カルボキシ末端又はその近く、又はこれらの組み合わせ(例えば、アミノ末端における1つ以上のNLS及び/又はカルボキシ末端における1つ以上のNLS)に位置する。複数のNLSが存在する場合、各々を他のNLSから独立して選択することができ、それにより、単一のNLSが複数のコピーに、及び/又は1つ以上のコピーに存在する1つ以上の他のNLSと組み合わせて存在する。
【0306】
いくつかの実施形態によれば、NLSは、2021年3月24日に出願された国際特許出願第PCT/US2021/023891号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている任意のNLSから選択することができる。
【0307】
V.ceDNAベクターの産生の方法
一般的な産生
本明細書で定義されるような非対称ITR対又は対称ITR対を含む、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターのある特定の産生方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2018年9月7日に出願された国際特許出願第PCT/US18/49996号のセクションIVに記載されている。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、本明細書に記載されるように、昆虫細胞を使用して産生され得る。代替実施形態では、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2019年1月18日に出願された国際特許出願第PCT/US19/14122号に開示されるように、合成的に、またいくつかの実施形態によれば、無細胞法で産生することができる。
【0308】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、例えば、a)ポリヌクレオチド発現構築物テンプレート(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルス)を内包する宿主細胞(例えば、昆虫細胞)の集団をインキュベートするステップであって、Repタンパク質の存在下では、宿主細胞内のceDNAベクターの産生を誘導するために効果的な条件下、かつそのために十分な時間にわたってウイルスカプシドコード配列を欠いており、宿主細胞が、ウイルスカプシドコード配列を含まない、インキュベートするステップと、b)ceDNAベクターを宿主細胞から採取し、単離するステップと、を含むプロセスによって取得され得る。Repタンパク質の存在は、修飾型ITRを有するベクターポリヌクレオチドの複製を誘導して、宿主細胞中でceDNAベクターを産生する。但し、ウイルス粒子(例えば、AAVビリオン)は発現されない。したがって、AAV又は他のウイルスベースベクターにおいて天然に課されるもの等のサイズ制限はない。
【0309】
宿主細胞から単離されたceDNAベクターの存在は、宿主細胞から単離されたDNAをceDNAベクター上に単一認識部位を有する制限酵素で消化し、消化されたDNA材料を非変性ゲル上で分析して、直鎖状かつ非連続的なDNAと比較して特徴的な直鎖状かつ連続的なDNAのバンドの存在を確認することによって確認され得る。
【0310】
更に別の態様では、本開示は、例えば、Lee,L.et al.(2013)Plos One 8(8):e69879に記載されるように、非ウイルス性DNAベクターの産生において、DNAベクターポリヌクレオチド発現テンプレート(ceDNAテンプレート)をそれら自体のゲノムに安定して組み込んでいる宿主細胞株の使用を提供する。好ましくは、Repは、約3のMOIで宿主細胞に付加される。宿主細胞株が哺乳動物細胞株、例えば、HEK293細胞である場合、細胞株は、安定して組み込まれたポリヌクレオチドベクターテンプレートを有し得、ヘルペスウイルス等の第2のベクターを使用して、Repタンパク質を細胞に導入することができ、Rep及びヘルパーウイルスの存在下でのceDNAの切除及び増幅を可能にする。
【0311】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを作製するために使用される宿主細胞は、昆虫細胞であり、バキュロウイルスは、Repタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、例えば図4A~4C及び実施例1に記載される、ceDNAの非ウイルス性DNAベクターポリヌクレオチド発現構築物テンプレートとを両方送達するために使用される。いくつかの実施形態によれば、宿主細胞は、Repタンパク質を発現するために操作される。
【0312】
次いで、ceDNAベクターは、宿主細胞から採取され、単離される。本明細書に記載されるceDNAベクターを細胞から採取及び収集するための時間は、ceDNAベクターの高収率産生を達成するために選択され、最適化され得る。例えば、採取時間は、細胞生存率、細胞形態論、細胞増殖などを考慮して選択され得る。いくつかの実施形態によれば、細胞は増殖し、ceDNAベクターを産生するためのバキュロウイルス感染から十分な時間が経過した後、但し細胞のほとんどがバキュロウイルスの毒性のために死滅し始める前に採取される。DNA-ベクターは、Qiagen Endo-Freeプラスミドキット等のプラスミド精製キットを使用して単離され得る。プラスミド単離のために開発された他の方法もまた、DNA-ベクターに対して適合され得る。一般に、任意の核酸精製方法が採用され得る。
【0313】
DNAベクターは、DNAの精製のための当業者に既知の任意の手段によって精製され得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、DNA分子として精製される。別の実施形態では、ceDNAベクターは、エキソソーム又は微粒子として精製される。
【0314】
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの存在は、細胞から単離されたベクターDNAをDNAベクター上に単一認識部位を有する制限酵素で消化すること、並びにゲル電気泳動を使用し、消化されたDNA材料及び未消化のDNA材料の両方を分析して、直鎖状かつ非連続的なDNAと比較して特徴的な直鎖状かつ連続的なDNAの存在を確認することによって確認され得る。図4C及び図4Dは、本明細書におけるプロセスによって産生された閉端ceDNAベクターの存在を特定するための一実施形態を示す。
【0315】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAは無細胞環境で合成的に産生される。
【0316】
ceDNAプラスミド
ceDNA-プラスミドは、本明細書に説明される、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの後期産生に使用されるプラスミドである。いくつかの実施形態によれば、ceDNA-プラスミドは、転写方向の作動可能に連結された構成成分として、少なくとも(1)修飾型5’ITR配列;(2)シス調節エレメントを含有する発現カセット、例えば、プロモーター、誘導性プロモーター、調節スイッチ、エンハンサーなど、及び(3)修飾型3’ITR配列(3’ITR配列は、5’ITR配列に対して非対称である)を提供する既知の技法を使用して構築され得る。いくつかの実施形態によれば、ITRによって隣接された発現カセットは、外因性配列を導入するためのクローニング部位を含む。発現カセットは、AAVゲノムのrep及びcapコード領域を置き換える。
【0317】
いくつかの態様によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、本明細書では、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、導入遺伝子を含む発現カセット、及び変異型又は修飾型AAV ITRをこの順序でコードする「ceDNA-プラスミド」と称されるプラスミドから取得され、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いている。代替的な実施形態では、ceDNA-プラスミドは、第1の(又は5’)修飾型又は変異型AAV ITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2の(又は3’)修飾型AAV ITRをこの順序でコードし、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いており、5’及び3’ITRは、互いに対して対称である。代替的な実施形態では、ceDNA-プラスミドは、第1の(又は5’)修飾型又は変異型AAV ITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2の(又は3’)変異型又は修飾型AAV ITRをこの順序でコードし、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いており、5’及び3’修飾型ITRは、同じ修飾を有する(すなわち、それらは互いに対して逆相補又は対称である)。
【0318】
更なる実施形態では、ceDNA-プラスミド系は、ウイルスカプシドタンパク質コード配列を欠いている(すなわち、AAVカプシド遺伝子だけでなく、他のウイルスのカプシド遺伝子も欠いている)。加えて、特定の実施形態では、ceDNA-プラスミドはまた、AAV Repタンパク質コード配列を欠いている。したがって、好ましい実施形態では、ceDNA-プラスミドは、機能的AAV cap及びAAV rep遺伝子(AAV2の場合GG-3’)に加えて、ヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列を欠いている。
【0319】
本開示のceDNA-プラスミドは、当該技術分野において周知の任意のAAV血清型のゲノムの天然核酸配列を使用して生成され得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNA-プラスミド骨格は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノムに由来する。例えば、NCBI:NC002077;NC001401;NC001729;NC001829;NC006152;NC006260;NC006261;Kotin及びSmith、Springerによって維持されているURL(アドレスoesys.springer.de/viruses/database/mkchapter.asp?virID=42.04)で利用可能なSpringer Index of Viruses(なお、URL又はデータベースへの言及は、本出願の有効出願日時点でのURL又はデータベースの内容を指す)。特定の一実施形態では、ceDNA-プラスミド骨格は、AAV2ゲノムに由来する。別の特定の実施形態では、ceDNA-プラスミド骨格は、これらのAAVゲノムのうちの1つに由来する5’及び3’ITRに含まれるように遺伝子操作された合成骨格である。
【0320】
ceDNA-プラスミドは、ceDNAベクター産生細胞株の確立における使用のための選択可能又は選択マーカーを任意選択的に含み得る。いくつかの実施形態によれば、選択マーカーは、3’ITR配列の下流(すなわち、3’)に挿入され得る。別の実施形態では、選択マーカーは、5’ITR配列の上流(すなわち、5’)に挿入され得る。適切な選択マーカーは、例えば、薬物耐性を付与するものを含む。選択マーカーは、例えば、ブラスチシジンS耐性遺伝子、カナマイシン、ゲネチシンなどであり得る。好ましい実施形態では、薬物選択マーカーは、ブラスチシジンS耐性遺伝子である。
【0321】
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のための例示的なceDNA(例えば、rAAV0)ベクターは、rAAVプラスミドから産生される。rAAVベクターの産生のための方法は、(a)宿主細胞に上記のようなrAAVプラスミドを提供することであって、宿主細胞及びプラスミドの両方が、カプシドタンパク質コード遺伝子を欠いている、提供することと、(b)ceDNAゲノムの産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することと、(c)細胞を採取し、当該細胞から産生されたAAVゲノムを単離することと、を含み得る。
【0322】
ceDNAプラスミドからceDNAベクターを作製する例示的な方法
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのカプシドのないceDNAベクターを作製するための方法、特にインビボ実験に十分なベクターを提供するために十分に高い収率を有する方法もまた、本明細書に提供される。
【0323】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの産生方法は、(1)発現カセット及び2つの対称ITR配列を含む核酸構築物を宿主細胞(例えば、Sf9細胞)中に導入するステップと、(2)任意選択的に、例えば、プラスミド上に存在する選択マーカーを使用することによってクローン細胞株を確立するステップと、(3)Repコード遺伝子を(当該遺伝子を担持するバキュロウイルスでのトランスフェクション又は感染のいずれかによって)当該昆虫細胞中に導入するステップと、(4)細胞を採取し、ceDNAベクターを精製するステップと、を含む。ceDNAベクターの産生のために上記の発現カセット及び2つのITR配列を含む核酸構築物は、ceDNA-プラスミド、又は下記のようにceDNAプラスミドで生成されたバクミド若しくはバキュロウイルスの形態であり得る。核酸構築物は、トランスフェクション、ウイルス形質導入、安定した組み込み、又は当該技術分野において既知の他の方法によって宿主細胞中に導入され得る。
【0324】
細胞株
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの産生において使用される宿主細胞株は、Spodoptera frugiperda(Sf9、Sf21など)若しくはTrichoplusia ni細胞に由来する昆虫細胞株、又は他の無脊椎動物、脊椎動物、若しくは哺乳動物細胞を含む他の真核細胞株を含み得る。当業者に既知の他の細胞株、例えば、HEK293、Huh-7、HeLa、HepG2、HeplA、911、CHO、COS、MeWo、NIH3T3、A549、HT1 180、単球、並びに成熟及び未成熟樹状細胞を使用することもできる。宿主細胞株は、高収率のceDNAベクター産生のために、ceDNA-プラスミドの安定した発現のためにトランスフェクトされ得る。
【0325】
ceDNA-プラスミドは、当該技術分野において既知の試薬(例えば、リポソーム、リン酸カルシウム)又は物理的手段(例えば、エレクトロポレーション)を使用し、一時的なトランスフェクションによってSf9細胞中に導入され得る。代替的に、ceDNA-プラスミドをそれらのゲノム中に安定して組み込んでいる安定したSf9細胞株が確立され得る。そのような安定した細胞株は、選択マーカーを上記のceDNA-プラスミド中に組み込むことによって確立され得る。細胞株をトランスフェクションするために使用されるceDNA-プラスミドが、抗生物質などの選択マーカーを含む場合、ceDNA-プラスミドでトランスフェクションされ、ceDNA-プラスミドDNAをそれらのゲノム中に組み込んでいる細胞は、細胞増殖培地への抗生物質の添加によって選択され得る。次いで、細胞の耐性クローンは、単一細胞希釈又はコロニー移動技法によって単離され、伝播され得る。
【0326】
ceDNAベクターの単離及び精製
ceDNAベクターを入手し、単離するためのプロセスの例は、図4A~4E及び下記の特定の実施例に記載される。本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNA-ベクターは、AAV Repタンパク質を発現するプロデューサー細胞から取得され、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、又はceDNA-バキュロウイルスで更に形質転換され得る。ceDNAベクターの産生に有用なプラスミドには、抗原又は免疫原性ペプチドをコードするプラスミド、又は1つ以上のREPタンパク質をコードするプラスミドが含まれる。
【0327】
いくつかの態様によれば、ポリヌクレオチドは、プラスミド(Rep-プラスミド)、バクミド(Rep-バクミド)、又はバキュロウイルス(Rep-バキュロウイルス)中のプロデューサー細胞に送達されたAAV Repタンパク質(Rep78若しくは68)をコードする。Rep-プラスミド、Rep-バクミド、及びRep-バキュロウイルスは、上記の方法によって生成され得る。
【0328】
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のceDNAベクターを産生する方法が本明細書に記載される。本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを生成するために使用される発現構築物は、プラスミド(例えば、ceDNA-プラスミド)、バクミド(例えば、ceDNA-バクミド)、及び/又はバキュロウイルス(例えば、ceDNA-バキュロウイルス)であり得る。単なる例として、ceDNAベクターは、ceDNA-バキュロウイルス及びRep-バキュロウイルスに共感染した細胞から生成され得る。Rep-バキュロウイルスから産生されたRepタンパク質は、ceDNA-バキュロウイルスを複製して、ceDNAベクターを生成し得る。代替的に、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、Rep-プラスミド、Rep-バクミド、又はRep-バキュロウイルス中で送達されるAAV Repタンパク質(Rep78/52)をコードする配列を含む構築物で安定してトランスフェクトされた細胞から生成され得る。ceDNA-バキュロウイルスは、細胞に一時的にトランスフェクトされ、Repタンパク質によって複製され、ceDNAベクターを産生し得る。
【0329】
バクミド(例えば、ceDNA-バクミド)は、Sf9、Sf21、Tni(Trichoplusia ni)細胞、High Five細胞などの許容昆虫細胞中にトランスフェクトされ得、対称ITR及び発現カセットを含む配列を含む組換えバキュロウイルスである、ceDNA-バキュロウイルスを生成し得る。ceDNA-バキュロウイルスを昆虫細胞中に再度感染させて、次世代の組換えバキュロウイルスを取得することができる。任意選択的に、このステップを一回又は複数回繰り返して、より多い量の組換えバキュロウイルスを産生することができる。
【0330】
本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを細胞から回収及び採取するための時間は、ceDNAベクターの高収率産生を達成するために選択され、最適化され得る。例えば、採取時間は、細胞生存率、細胞形態、細胞増殖などを考慮して選択され得る。通常、細胞は、ceDNAベクター(例えば、ceDNAベクター)を産生するためのバキュロウイルス感染から十分な時間が経過した後、但し細胞の大半がウイルスの毒性のために死滅し始める前に採取され得る。ceDNAベクターは、Qiagen ENDO-FREE PLASMID(登録商標)キットなどのプラスミド精製キットを使用して、Sf9細胞から単離され得る。プラスミド単離のために開発された他の方法もまた、ceDNAベクターに対して適合され得る。一般に、任意の当該技術分野において既知の核酸精製方法、並びに市販のDNA抽出キットが採用され得る。
【0331】
代替的に、細胞ペレットをアルカリ溶解プロセスに供し、得られた溶解物を遠心分離し、クロマトグラフィー分離を実施することによって、精製が実装され得る。1つの非限定例として、このプロセスは、核酸を保持するイオン交換カラム(例えば、SARTOBIND Q(登録商標))上に上清を装填し、次いで溶出し(例えば、1.2M NaCl溶液で)、ゲル濾過カラム(例えば、6高速流GE)上で更なるクロマトグラフィー精製を実施することによって実施され得る。次いで、カプシド不含AAVベクターは、例えば、沈殿によって回収される。
【0332】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターはまた、エキソソーム又は微粒子の形態で精製され得る。多くの細胞型が、膜微小胞の脱落を介して、可溶性タンパク質だけでなく、複合タンパク質/核酸カーゴも放出することは、当該技術分野において既知である(Cocucci et al,2009、欧州特許第10306226.1号)。そのような小胞は、微小胞(微粒子とも称される)及びエキソソーム(ナノ小胞とも称される)を含み、それらの両方が、タンパク質及びRNAをカーゴとして含む。微小胞は、形質膜の直接出芽から生成され、エキソソームは、多小胞エンドソームと形質膜との融合時に細胞外環境に放出される。したがって、ceDNAベクターを含有する微小胞及び/又はエキソソームは、ceDNAプラスミド、又はceDNAプラスミドで生成されたバクミド若しくはバキュロウイルスで形質導入された細胞から単離され得る。
【0333】
微小胞は、培養培地を濾過又は20,000×gでの超遠心分離に供することによって単離することができ、エキソソームは、100,000×gで単離することができる。超遠心分離の最適な持続時間は、実験的に決定することができ、小胞が単離される特定の細胞型に依存する。好ましくは、培養培地は、最初に低速遠心分離(例えば、2000×gで5~20分間)によって一掃され、例えば、AMICON(登録商標)スピンカラム(Millipore,Watford,UK)を使用し、スピン濃度に供される。微小胞及びエキソソームは、微小胞及びエキソソーム上に存在する特定の表面抗原を認識する特定の抗体を使用することによって、FACS又はMACSを介して更に精製され得る。他の微小胞及びエキソソーム精製方法としては、免疫沈殿、親和性クロマトグラフィー、濾過、及び特定の抗体又はアプタマーでコーティングされた磁気ビーズが挙げられるが、これらに限定されない。精製時に、小胞を、例えば、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。ceDNA含有小胞を送達するために微小胞又はエキソソームを使用する1つの利点は、これらの小胞が、それぞれの細胞型上の特定の受容体によって認識されるそれらの膜タンパク質上に含めることによって、様々な細胞型に標的化され得ることである。(欧州特許第10306226号も参照されたい)
【0334】
本明細書における本開示の別の態様は、ceDNA構築物をそれら自体のゲノム中に安定して組み込んでいる宿主細胞株からceDNAベクターを精製する方法に関する。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、DNA分子として精製される。別の実施形態では、ceDNAベクターは、エキソソーム又は微粒子として精製される。
【0335】
国際特許出願第PCT/US18/49996号の図5は、実施例に記載される方法を使用して、複数のceDNA-プラスミド構築物からceDNAの産生を確認するゲルを示す。ceDNAは、実施例の図4Dに関して考察されるように、ゲル中の特徴的なバンドパターンによって確認される。
【0336】
VI.医薬組成物
別の一態様では、医薬組成物が提供される。医薬組成物は、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクター、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。
【0337】
本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、対象の細胞、組織、又は器官へのインビボ送達のために対象に投与するのに好適な医薬組成物に組み込まれ得る。典型的に、医薬組成物は、本明細書に開示されるceDNAベクター及び薬学的に許容される担体を含む。
【0338】
本明細書に開示される医薬製剤は、直接投与され得る液体例えば、水性溶液、及び投与前に希釈剤を添加することによって溶液に再構成され得る凍結乾燥粉末を含む。特定の実施形態において、本明細書に開示されるceDNAベクターを、少なくとも1つの追加の治療剤と共に又はそれなしで含む製剤は、適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として製剤化することができる。凍結乾燥は、市販の凍結乾燥器例えば、VirTis Lab製のScale Lyophilizer上で一般的な凍結乾燥サイクルを使用して行うことができる。
【0339】
いくつかの実施形態によれば、例えば、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、治療的投与(例えば、非経口投与)の所望の経路に好適な医薬組成物に組み込まれ得る。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射などの細胞内注射もまた、企図される。治療目的のための医薬組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高ceDNAベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌注射液は、必要に応じて、上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせとともに、適切なバッファーに必要量のceDNAベクター化合物を組み込んだ後、ceDNAベクターを含む濾過滅菌によって調製することができ、核酸中の導入遺伝子をレシピエントの細胞に送達するように製剤化して、その中の導入遺伝子又はドナー配列の治療的発現をもたらし得る。この組成物はまた、薬学的に許容される担体を含み得る。
【0340】
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを含む薬学的に活性な組成物は、細胞、例えば、対象の細胞に様々な目的のための導入遺伝子を送達するように製剤化することができる。
【0341】
治療目的のための医薬組成物は、典型的に、無菌であり、製造及び貯蔵の条件下で安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高ceDNAベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌の注射可能な溶液は、適切な緩衝液中の必要量のceDNAベクター化合物を、必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つ又は組み合わせと組み込み、濾過滅菌によって調製され得る。
【0342】
特定の実施形態において、非経口投与のための製剤は、凍結乾燥形態で、又は溶液中で保存することができる。ある実施形態では、非経口用の製剤は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルに入れられる。
【0343】
ある特定の実施形態では、医薬製剤が製剤化されると、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体として、又は脱水若しくは凍結乾燥粉末として、滅菌バイアル中に保存することができる。ある特定の実施形態では、そのような製剤は、すぐに使用できる形態、又は投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥された形態)のいずれかで保存することができる。
【0344】
本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、局所、全身、羊膜内、くも膜下腔内、頭蓋内、動脈内、静脈内、リンパ内、腹腔内、皮下、気管、組織内(例えば、筋肉内、心臓内)、肝内、腎臓内、脳内)、くも膜下腔内、膀胱内、結膜(例えば、眼窩外、眼窩内、眼窩後、網膜内、網膜下、脈絡膜、脈絡膜下、間質内、房内、及び硝子体内)、渦巻管内、並びに粘膜(例えば、経口、直腸、経鼻)投与に好適な医薬組成物に組み込むことができる。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射等の細胞内注射もまた、企図される。
【0345】
いくつかの態様によれば、本明細書で提供される方法は、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のための1つ以上のceDNAベクターを宿主細胞に送達することを含む。本明細書ではまた、そのような方法によって産生される細胞、及びそのような細胞を含むか又はそのような細胞から産生される生物(動物、植物、又は真菌など)も提供される。核酸の送達方法としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、及び薬剤によって増強されたDNAの取り込みが挙げられ得る。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、及び同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。送達は、細胞(例えば、インビトロ若しくはエクスビボ投与)又は標的組織(例えば、インビボ投与)に対するものであり得る。
【0346】
核酸を細胞に送達するための様々な技法及び方法が、当該技術分野において既知である。例えば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAなどの核酸は、脂質ナノ粒子(LNP)、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、リポプレックス、又はコアシェルナノ粒子中に製剤化され得る。典型的に、LNPは、核酸(例えば、ceDNA)分子、1つ以上のイオン化又はカチオン性脂質(若しくはそれらの塩)、1つ以上の非イオン性又は中性脂質(例えば、リン脂質)、凝集を防ぐ分子(例えば、PEG若しくはPEG-脂質コンジュゲート)、及び任意選択的にステロール(例えば、コレステロール)で構成される。
【0347】
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAなどの核酸を細胞に送達するための別の方法は、細胞によって内在化されるリガンドと核酸を複合することによるものである。例えば、リガンドは、細胞表面上の受容体に結合し、形質膜陥入を介して内在化され得る。リガンドは、核酸中のヌクレオチドに共有結合的に連結され得る。核酸を細胞中に送達するための例示的なコンジュゲートは、例えば、国際特許公開第WO2015/006740号、同第WO2014/025805号、同第WO2012/037254号、同第WO2009/082606号、同第WO2009/073809号、同第WO2009/018332号、同第WO2006/112872号、同第WO2004/090108号、同第WO2004/091515号、及び同第WO2017/177326号に記載される。
【0348】
抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAなどの核酸はまた、トランスフェクションによって細胞に送達され得る。有用なトランスフェクション方法としては、脂質媒介性トランスフェクション、カチオン性ポリマー媒介性トランスフェクション、又はリン酸カルシウム沈殿が挙げられるが、これらに限定されない。トランスフェクション試薬は、当該技術分野において周知であり、TurboFectトランスフェクション試薬(Thermo Fisher Scientific)、Pro-Ject試薬(Thermo Fisher Scientific)、TRANSPASS(商標)Pタンパク質トランスフェクション試薬(New England Biolabs)、CHARIOT(商標)タンパク質送達試薬(Active Motif)、PROTEOJUICE(商標)タンパク質トランスフェクション試薬(EMD Millipore)、293フェクチン、LIPOFECTAMINE(商標)2000、LIPOFECTAMINE(商標)3000(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTAMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、DMRIE-C、CELLFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、OLIGOFECTAMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTACE(商標)、FUGENE(商標)(Roche,Basel,Switzerland)、FUGENE(商標)HD(Roche)、TRANSFECTAM(商標)(Transfectam,Promega,Madison,Wis.)、TFX-10(商標)(Promega)、TFX-20(商標)(Promega)、TFX-50(商標)(Promega)、TRANSFECTIN(商標)(BioRad,Hercules,Calif.)、SILENTFECT(商標)(Bio-Rad)、Effectene(商標)(Qiagen,Valencia,Calif.)、DC-chol(Avanti Polar Lipids)、GENEPORTER(商標)(Gene Therapy Systems,San Diego,Calif.)、DHARMAFECT 1(商標)(Dharmacon,Lafayette,Colo.)、DHARMAFECT 2(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 3(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 4(商標)(Dharmacon)、ESCORT(商標)III(Sigma,St.Louis,Mo.)、及びESCORT(商標)IV(Sigma Chemical Co.)が含まれるが、これらに限定されない。ceDNAなどの核酸もまた、当業者に既知のマイクロフルイディクス法を介して細胞に送達され得る。
【0349】
本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターはまた、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与され得る。投与は、分子を血液又は組織細胞と最終的に接触させるために通常使用される経路のうちのいずれかによるものであり、注射、注入、局所用途、及びエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者によって利用可能かつ周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路が使用され得るが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりもより即時的であり、より効果的な反応を提供し得る。
【0350】
本開示による抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、対象中の細胞又は標的器官への送達のためにリポソームに付加され得る。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。化合物を含有するポリエチレングリコール(PEG)官能基を含むが、これに限定されない例示的なリポソーム及びリポソーム製剤は、2018年9月7日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/050042号及び2018年12月6日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/064242号に開示され、例えば、「医薬製剤」と題されるセクションを参照されたい。
【0351】
当該技術分野において既知の様々な送達方法又はそれらの修正を使用して、ceDNAベクターをインビトロ又はインビボで送達することができる。例えば、いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、機械的、電気的、超音波、流体力学的、又はレーザーベースエネルギーによって細胞膜に一時的な貫通を作製することによって送達され、それにより標的化された細胞へのDNA進入が促進される。例えば、ceDNAベクターは、サイズ制限されたチャネルを通して細胞を圧搾することによるか、又は当該技術分野において既知の他の手段によって細胞膜を一時的に崩壊させることにより送達され得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターのみが、裸のDNAとして、肺、肝臓、腎臓、胆嚢、前立腺、副腎、心臓、腸、胃、皮膚、甲状腺、心筋、又は骨格筋から選択される任意の1つ以上の組織のうちのいずれか1つに直接注射される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、遺伝子銃によって送達される。カプシド不含AAVベクターでコーティングされた金又はタングステン球状粒子(1~3μm直径)は、加圧ガスによって高速に加速され、標的組織細胞中に貫通することができる。
【0352】
本明細書では、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクター及び薬学的に許容される担体を含む組成物が、具体的に企図されている。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、脂質送達系、例えば、本明細書に記載されるリポソームで製剤化される。いくつかの実施形態によれば、そのような組成物は、熟練した医師等によって望まれる任意の経路によって投与される。組成物は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入を介した、口腔内投与を介した、胸膜内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、髄腔内、及び関節内、又はそれらの組み合わせを含む異なる経路によって対象に投与され得る。獣医学的使用のために、組成物は、通常の獣医学的慣習に従って好適に許容される製剤として投与され得る。獣医師は、特定の動物に最も適切な投与計画及び投与経路を容易に決定することができる。組成物は、従来のシリンジ、無針注射デバイス、「マイクロプロジェクタイルボンバードメントガン」、又はエレクトロポレーション(「EP」)、「流体力学的方法」、又は超音波などの他の物理的方法によって投与することができる。
【0353】
場合によっては、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、内臓及び肢全体の骨格筋への、任意の水溶性化合物及び粒子の直接細胞内送達のための単純かつ非常に効率的な方法である流体力学的注射によって送達される。
【0354】
いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、膜中にナノスコピック孔を作製することにより、超音波によって送達され、内臓又は腫瘍の細胞へのDNA粒子の細胞内送達を促進するため、プラスミドDNAのサイズ及び濃度は、この系の効率性において大きな役割を果たす。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、磁場を使用することによってマグネトフェクションにより送達され、核酸を含有する粒子を標的細胞中に濃縮する。
【0355】
いくつかの実施形態によれば、化学送達系は、例えば、カチオン性リポソーム/ミセル又はカチオン性ポリマーに属するポリカチオン性ナノマー粒子による負電荷核酸の圧縮を含むナノマー複合体を使用することによって使用され得る。送達方法に使用されるカチオン性脂質としては、一価カチオン性脂質、多価カチオン性脂質、グアニジン含有化合物、コレステロール誘導体化合物、カチオン性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンイミン)、ポリ-L-リジン、プロタミン、他のカチオン性ポリマー)、及び脂質-ポリマーハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0356】
A.エキソソーム:
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、エキソソームにパッケージ化されることによって送達される。エキソソームは、多胞体と形質膜との融合に続いて、細胞外環境中に放出される形質膜陥入起源の小膜小胞である。それらの表面は、ドナー細胞の細胞膜からの脂質二層からなり、それらは、エキソソームを産生した細胞からのサイトゾルを含有し、表面上の親細胞からの膜タンパク質を呈する。エキソソームは、上皮細胞、B及びTリンパ球、マスト細胞(mast cell、MC)、及び樹状細胞(dendritic cell、DC)を含む様々な細胞型によって産生される。いくつかの実施形態によれば、10nm~1μm、20nm~500nm、30nm~250nm、50nm~100nmの直径を有するエキソソームが、使用のために想定される。エキソソームは、それらのドナー細胞を使用するか、又は特定の核酸をそれらに導入するかのいずれかによって、標的細胞への送達のために単離され得る。当該技術分野において既知の様々なアプローチを使用して、本開示のカプシド不含AAVベクターを含有するエキソソームを産生することができる。
【0357】
微粒子/ナノ粒子
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、脂質ナノ粒子によって送達される。一般に、脂質ナノ粒子は、例えば、Tam et al.(2013).Advances in Lipid Nanoparticles for siRNA delivery.Pharmaceuticals 5(3):498-507によって開示されるように、イオン化アミノ脂質(例えば、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート、DLin-MC3-DMA、ホスファチジルコリン(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DSPC)、コレステロール、及びコート脂質(ポリエチレングリコール-ジミリストールグリセロール、PEG-DMG)を含む。
【0358】
いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、約10~約1000nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、300nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、約10~約300nmの直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、200nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、約25~約200nmの直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子調製物(例えば、複数の脂質ナノ粒子を含む組成物)は、サイズ分布を有し、平均サイズ(例えば、直径)は、約70nm~約200nmであり、より典型的に、平均サイズは、約100nm以下である。
【0359】
当該技術分野において既知の様々な脂質ナノ粒子を使用して、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを送達することができる。例えば、脂質ナノ粒子を使用する様々な送達方法は、米国特許第9,404,127号、同第9,006,417号、及び同第9,518,272号に記載されている。
【0360】
コンジュゲート
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、コンジュゲートされる(例えば、細胞取り込みを増加させる薬剤に共有結合される)。「細胞取り込みを増加させる薬剤」は、脂質膜を通した核酸の輸送を促進する分子である。例えば、核酸は、親油性化合物(例えば、コレステロール、トコフェロールなど)、細胞貫通ペプチド(cell penetrating peptide、CPP)(例えば、ペネトラチン、TAT、Syn1Bなど)、及びポリアミン(例えば、スペルミン)にコンジュゲートし得る。細胞取り込みを増加させる薬剤の更なる例は、例えば、Winkler(2013).Oligonucleotide conjugates for therapeutic applications.Ther.Deliv.4(7);791-809に開示されている。
【0361】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、ポリマー(例えば、ポリマー分子)又は葉酸塩分子(例えば、葉酸分子)に複合される。一般に、ポリマーに複合された核酸の送達は、例えば、国際特許出願公開第WO2000/34343号及び同第2008/022309号に記載されるように、当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、例えば、米国特許第8,987,377号によって記載されるように、ポリ(アミド)ポリマーに複合される。いくつかの実施形態によれば、本開示によって記載される核酸は、米国特許第8,507,455号に記載されるように、葉酸分子に複合される。
【0362】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、例えば、米国特許第8,450,467号に記載されるように、炭水化物に複合される。
【0363】
ナノカプセル
代替的に、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターのナノカプセル製剤が使用され得る。ナノカプセルは、一般に、安定かつ再生可能な方式で物質を捕捉することができる。細胞内ポリマー過負荷に起因する副作用を避けるために、そのような微細粒子(およそ0.1μmのサイズ)は、ポリマーを使用して、インビボで分解され得るように設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が、使用のために企図される。
【0364】
リポソーム
本開示による抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、対象中の細胞又は標的器官への送達のためにリポソームに付加され得る。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。
【0365】
リポソームの形成及び使用は、一般に、当業者に既知である。向上された血清安定性及び循環半減期を有するリポソームが開発されている(米国特許第5,741,516号)。更に、潜在的な薬物担体としてのリポソーム及びリポソーム様調製物の様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号、同第5,552,157号、同第5,565,213号、同第5,738,868号、及び同第5,795,587号)。
【0366】
例示的なリポソーム及び脂質ナノ粒子(LNP)組成物
本開示による抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、細胞、例えば、導入遺伝子の発現を必要とする細胞への送達のためにリポソームに付加され得る。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。
【0367】
ceDNAベクターを含む脂質ナノ粒子(LNP)は、2018年9月7日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/050042号;2018年12月6日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/064242号;及び2022年4月20日に提出された国際特許出願第PCT/US2022/025455号(これらの全体が本明細書に組み込まれる)に開示されており、本明細書に開示される、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターについての方法及び組成物での使用が想定されている。
【0368】
いくつかの態様によれば、本開示は、免疫原性/抗原性を低減し、化合物に対する親水性及び疎水性を提供し、投与頻度を低減することができる、ポリエチレングリコール(PEG)官能基を有する1つ以上の化合物(いわゆる「PEG化化合物」)を含む、リポソーム製剤を提供する。又は、リポソーム製剤は、単にポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを追加の構成成分として含む。そのような態様では、PEG又はPEG官能基の分子量は、62Da~約5,000Daであり得る。
【0369】
いくつかの態様によれば、本開示は、延長放出又は制御放出プロファイルを有するAPIを、数時間~数週間の期間にわたって送達するであろうリポソーム製剤を提供する。いくつかの関連態様によれば、リポソーム製剤は、脂質二層によって結合される水性チャンバを含み得る。他の関連態様では、リポソーム製剤は、数時間~数週間の期間にわたってAPIを放出する、高温で物理的移行を経る構成成分を有するAPIを封入する。
【0370】
いくつかの態様によれば、リポソーム製剤は、スフィンゴミエリン及び本明細書に開示される1つ以上の脂質を含む。いくつかの態様によれば、リポソーム製剤は、optisomeを含む。
【0371】
いくつかの態様によれば、本開示は、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、(ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、MPEG(メトキシポリエチレングリコールコンジュゲート脂質、HSPC(水素化ダイズホスファチジルコリン)、PEG(ポリエチレングリコール)、DSPE(ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、DPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール)、EPC(卵ホスファチジルコリン)、DOPS(ジオレオイルホスファチジルセリン)、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、SM(スフィンゴミエリン)、MPEG(メトキシポリエチレングリコール)、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)、DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール)、DSPG(ジステアロイルホスファチジルグリセロール)、DEPC(ジエルコイルホスファチジルコリン)、DOPE(ジオレオイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、硫酸コレステロール(CS)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、DOPC(ジオレオイル-sn-グリセロ-ホスファチジルコリン)、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の脂質を含むリポソーム製剤を提供する。
【0372】
いくつかの態様によれば、本開示は、リン脂質、コレステロール、及びPEG化脂質を56:38:5のモル比で含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、リポソーム製剤の全体脂質含有量は、2~16mg/mLである。いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びPEG化脂質を含有するリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びPEG化脂質を、それぞれ3:0.015:2のモル比で含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基、コレステロール、及びPEG化脂質を含有する脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基及びコレステロールを含有する脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、PEG化脂質は、PEG-2000-DSPEである。いくつかの態様によれば、本開示は、DPPG、ダイズPC、MPEG-DSPE脂質コンジュゲート、及びコレステロールを含むリポソーム製剤を提供する。
【0373】
いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する1つ以上の脂質、及びエタノールアミン官能基を含有する1つ以上の脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、1つ以上のホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びステロール、例えば、コレステロールを含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、リポソーム製剤は、DOPC/DEPC、及びDOPEを含む。
【0374】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ以上の薬学的賦形剤、例えば、スクロース及び/又はグリシンを更に含むリポソーム製剤を提供する。
【0375】
いくつかの態様によれば、本開示は、単一ラメラ構造又は多ラメラ構造のいずれかであるリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、多胞体粒子及び/又は発泡ベース粒子を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、一般的なナノ粒子に対する相対サイズでより大きく、約150~250nmのサイズであるリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、リポソーム製剤は、凍結乾燥粉末である。
【0376】
いくつかの態様によれば、本開示は、リポソームの外側に単離されたceDNAを有する混合物に弱塩基を添加することにより、本明細書に開示又は記載されるceDNAベクターで作製及び充填されたリポソーム製剤を提供する。この付加は、リポソームの外側のpHをおよそ7.3まで増加させ、APIをリポソーム中に送る。いくつかの態様によれば、本開示は、リポソームの内側で酸性であるpHを有するリポソーム製剤を提供する。そのような場合、リポソームの内側は、pH4~6.9、より好ましくはpH6.5であり得る。他の態様では、本開示は、リポソーム内薬物安定化技術を使用することにより作製されたリポソーム製剤を提供する。そのような場合、ポリマー又は非ポリマー高電荷アニオン及びリポソーム内捕捉剤、例えば、ポリリン酸塩又はオクタ硫酸スクロースが利用される。
【0377】
いくつかの態様によれば、本開示は、ceDNA及びイオン性脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。例えば、プロセスにより得られたceDNAを用いて作製及び負荷される脂質ナノ粒子製剤は、2018年9月7日に提出された国際特許出願第PCT/US2018/050042号に開示されており、本明細書に組み込まれる。これは、イオン性脂質をプロトン化し、粒子のceDNA/脂質会合及び核形成に好ましいエネルギー論を提供する、低pHでのエタノール脂質と水性ceDNAとの高エネルギー混合によって達成され得る。粒子は、水性希釈及び有機溶媒の除去によって更に安定化され得る。粒子は、所望のレベルに濃縮され得る。
【0378】
一般に、脂質ナノ粒子は、約10:1~60:1の全脂質対ceDNA(質量又は重量)比で調製される。いくつかの実施形態によれば、脂質対ceDNA比(質量/質量比、w/w比)は、約1:1~約60:1、約1:1~約55:1、約1:1~約50:1、約1:1~約45:1、約1:1~約40:1、約1:1~約35:1、約1:1~約30:1、約1:1~約25:1、約10:1~約14:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、約6:1~約9:1、約30:1~約60:1の範囲内であり得る。いくつかの実施形態によれば、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、約60:1の全脂質に対するceDNA(質量又は重量)比で調製される。いくつかの実施形態によれば、脂質粒子は、約10:1~30:1の全脂質対ceDNA(質量又は重量)比で調製される。いくつかの実施形態によれば、脂質対ceDNA比(質量/質量比、w/w比)は、約1:1~約25:1、約10:1~約14:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、又は約6:1~約9:1の範囲内であり得る。脂質及びceDNAの量を調整して、所望のN/P比、例えば3、4、5、6、7、8、9、10以上のN/P比を提供し得る。一般に、脂質粒子製剤の全体脂質含有量は、約5mg/ml~約30mg/mLの範囲であり得る。
【0379】
イオン性脂質は、典型的に、核酸カーゴ、例えばceDNAを低pHで凝縮させるため、及び膜会合及び膜融合性を駆動するために用いられる。一般に、イオン性脂質は、正に電荷される、又は例えばpH6.5以下の酸性条件下でプロトン化される少なくとも1つのアミノ基を含む脂質である。イオン性脂質はまた、本明細書ではカチオン性脂質と称される。
【0380】
例示的なイオン性脂質は、国際PCT特許出願公開第2015/095340号、同第2015/199952号、同第2018/011633号、同第2017/049245号、同第2015/061467号、同第2012/040184号、同第2012/000104号、同第2015/074085号、同第2016/081029号、同第2017/004143号、同第2017/075531号、同第2017/117528号、同第2011/022460号、同第2013/148541号、同第2013/116126号、同第2011/153120号、同第2012/044638号、同第2012/054365号、同第2011/090965号、同第2013/016058号、同第2012/162210号、同第2008/042973号、同第2010/129709号、同第2010/144740号、同第2012/099755号、同第2013/049328号、同第2013/086322号、同第2013/086373号、同第2011/071860号、同第2009/132131号、同第2010/048536号、同第2010/088537号、同第2010/054401号、同第2010/054406号、同第2010/054405号、同第2010/054384号、同第2012/016184号、同第2009/086558号、同第2010/042877号、同第2011/000106号、同第2011/000107号、同第2005/120152号、同第2011/141705号、同第2013/126803号、同第2006/007712号、同第2011/038160号、同第2005/121348号、同第2011/066651号、同第2009/127060号、同第2011/141704号、同第2006/069782号、同第2012/031043号、同第2013/006825号、同第2013/033563号、同第2013/089151号、同第2017/099823号、同第2015/095346号、及び同第2013/086354号、並びに米国特許出願公開第2016/0311759号、同第2015/0376115号、同第2016/0151284号、同第2017/0210697号、同第2015/0140070号、同第2013/0178541号、同第2013/0303587号、同第2015/0141678号、同第2015/0239926号、同第2016/0376224号、同第2017/0119904号、同第2012/0149894号、同第2015/0057373号、同第2013/0090372号、同第2013/0274523号、同第2013/0274504号、同第2013/0274504号、同第2009/0023673号、同第2012/0128760号、同第2010/0324120号、同第2014/0200257号、同第2015/0203446号、同第2018/0005363号、同第2014/0308304号、同第2013/0338210号、同第2012/0101148号、同第2012/0027796号、同第2012/0058144号、同第2013/0323269号、同第2011/0117125号、同第2011/0256175号、同第2012/0202871号、同第2011/0076335号、同第2006/0083780号、同第2013/0123338号、同第2015/0064242号、同第2006/0051405号、同第2013/0065939号、同第2006/0008910号、同第2003/0022649号、同第2010/0130588号、同第2013/0116307号、同第2010/0062967号、同第2013/0202684号、同第2014/0141070号、同第2014/0255472号、同第2014/0039032号、同第2018/0028664号、同第2016/0317458号、及び同第2013/0195920号に記載されており、これら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0381】
いくつかの実施形態によれば、イオン性脂質は、以下の構造を有するMC3(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(DLin-MC3-DMA又はMC3)である:
【0382】
【化4】
【0383】
脂質DLin-MC3-DMAは、Jayaraman et al.,Angew.Chem.Int.Ed Engl.(2012),51(34):8529-8533(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0384】
いくつかの実施形態によれば、イオン性脂質は、国際特許出願公開第2015/074085号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、脂質ATX-002である。
【0385】
いくつかの実施形態によれば、イオン性脂質は、国際特許出願公開第2012/040184号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン(化合物32)である。
【0386】
いくつかの実施形態によれば、イオン性脂質は、国際特許出願公開第2015/199952号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、化合物6又は化合物22である。
【0387】
いくつかの実施形態によれば、イオン性脂質は、米国特許出願公開第2022/025455号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、脂質1から脂質25である。
【0388】
いくつかの実施形態によれば、イオン性脂質は、以下からなる群から選択される:
【0389】
【化5】
【0390】
【化6】
【0391】
【化7】
【0392】
【化8】
【0393】
【化9】
【0394】
限定なく、イオン性脂質は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の20~90%(mol)を含み得る。例えば、イオン性脂質モル含有量は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の20~70%(mol)、30~60%(mol)、又は40~50%(mol)であり得る。いくつかの実施形態によれば、イオン性脂質は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の約50mol%~約90mol%を含む。
【0395】
いくつかの態様によれば、脂質ナノ粒子は、非カチオン性脂質を更に含み得る。非イオン性脂質としては、両親媒性脂質、中性脂質、及びアニオン性脂質が挙げられる。したがって、非カチオン性脂質は、中性の非電荷、双性イオン性、又はアニオン性脂質であり得る。非カチオン性脂質は、典型的に、膜融合性を増強するために用いられる。
【0396】
本明細書に開示される方法及び組成物での使用が想定される例示的な非カチオン性脂質は、2018年9月7日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/050042号、及び2018年12月6日に出願された同第PCT/US2018/064242号に記載されている。例示的な非カチオン性脂質は、国際公開第2017/099823号及び米国特許出願公開第2018/0028664号に記載されており、これら両方の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0397】
非カチオン性脂質は、脂質ナノ粒子中に存在する全脂質の0~30%(mol)を構成し得る。例えば、非カチオン性脂質含有量は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の5~20%(mol)又は10~15%(mol)である。様々な実施形態では、イオン性脂質対中性脂質のモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0398】
いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、リン脂質を全く含まない。いくつかの態様によれば、脂質ナノ粒子は、膜統合性を提供するために、ステロールなどの構成成分を更に含み得る。
【0399】
脂質ナノ粒子中で使用され得る1つの例示的なステロールは、コレステロール及びその誘導体である。例示的なコレステロール誘導体は、国際特許出願第2009/127060号及び米国特許出願公開第2010/0130588号に記載されており、これら両方の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0400】
ステロールなどの膜統合性を提供する構成成分は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の0~50%(mol)を構成し得る。いくつかの実施形態によれば、そのような構成成分は、脂質ナノ粒子の全脂質含有量の20~50%(mol)、30~40%(mol)である。
【0401】
いくつかの態様によれば、脂質ナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)又はコンジュゲートした脂質分子を更に含み得る。一般に、これらを使用して、脂質ナノ粒子の凝集を阻害し、かつ/又は立体安定化を提供する。例示的な複合脂質としては、PEG-脂質コンジュゲート、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲートなど)、カチオン性-ポリマー脂質(CPL)コンジュゲート、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、複合脂質分子は、PEG-脂質コンジュゲート、例えば、(メトキシポリエチレングリコール)-複合脂質である。例示的なPEG-脂質コンジュゲートとしては、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)(l-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)など)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEGS-DAG)(4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(w-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG))、PEGジアルコキシプロピルカルバム、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。追加の例示的なPEG-脂質コンジュゲートは、例えば、米国特許第5,885,613号、同第6,287,591、米国特許出願公開第2003/0077829号、同第2003/0077829号、同第2005/0175682号、同第2008/0020058号、同第2011/0117125号、同第2010/0130588号、同第2016/0376224号、及び同第2017/0119904号に記載されており、それら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0402】
いくつかの実施形態によれば、PEG-脂質は、米国特許出願公開第2018/0028664号に定義されている化合物であり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態によれば、PEG-脂質は、米国特許出願公開第2015/0376115号又は同第2016/0376224号に開示されており、これら両方の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0403】
PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル、PEG-ジミリスチルオキシプロピル、PEG-ジパルミチルオキシプロピル、又はPEG-ジステアリルオキシプロピルであり得る。PEG-脂質は、PEG-DMG、PEG-ジラウリルグリセロール、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステリルグリセロール、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、PEG-ジステリルグリカミド、PEG-コレステロール(1-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキシアミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)、PEG-DMB(3,4-ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル)、及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]のうちの1つ以上であり得る。いくつかの実施例によれば、PEG-脂質は、PEG-DMG、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]からなる群から選択され得る。
【0404】
PEG以外の分子と複合した脂質は、PEG-脂質の代わりに使用することもできる。例えば、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲート等)、及びカチオン性-ポリマー脂質(CPL)コンジュゲートを、PEG-脂質の代わりに、又はそれに加えて使用することができる。例示的な複合脂質、すなわち、PEG-脂質、(POZ)-脂質コンジュゲート、ATTA-脂質コンジュゲート、及びカチオン性ポリマー-脂質は、国際特許出願公開第1996/010392号、同第1998/051278号、同第2002/087541号、同第2005/026372号、同第2008/147438号、同第2009/086558号、同第2012/000104号、同第2017/117528号、同第2017/099823号、同第2015/199952号、同第2017/004143号、同第2015/095346号、同第2012/000104号、同第2012/000104号、及び同第2010/006282号、米国特許出願公開第2003/0077829号、同第2005/0175682号、同第2008/0020058号、同第2011/0117125号、同第2013/0303587号、同第2018/0028664号、同第2015/0376115号、同第2016/0376224号、同第2016/0317458号、同第2013/0303587号、同第2013/0303587号、及び同第2011/0123453号、並びに米国特許第5,885,613号、同第6,287,591号、同第6,320,017号、及び同第6,586,559号に記載されており、これら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0405】
組み合わせ
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、1つ以上の追加の治療剤例えば、抗癌治療剤、自己免疫治療剤、感染症治療剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態によれば、薬剤は、本明細書に記載される第2の抗原又は免疫原性ペプチドである。いくつかの態様において、ceDNA及び更なる薬剤の効果は相乗的である。「相乗的」又は「相乗作用」という用語は、それらの個々の効果と比較して、2つ以上の薬剤の組み合わせの相加効果を超える効果を意味する。いくつかの実施形態において、相乗的活性は、第1の薬剤が検出可能なレベルのアウトプットXを産生し、第2の薬剤が検出可能なレベルのアウトプットXを産生し、第1及び第2の薬剤が一緒になって相加を超えるレベルのアウトプットXを産生する場合に存在する。
【0406】
いくつかのヒト腫瘍は、患者の免疫系によって排除され得る。例えば、免疫「チェックポイント」分子を標的とするモノクローナル抗体の投与は、完全な奏功及び腫瘍寛解をもたらし得る。そのような抗体の作用様式は、腫瘍が抗腫瘍免疫応答からの保護として取り込んだ免疫調節分子の阻害によるものである。これらの「チェックポイント」分子を阻害することによって(例えば、アンタゴニスト抗体を用いて)、患者のCD8+T細胞を増殖させ、腫瘍細胞を破壊することができる。例えば、あくまでも非限定的な例として、CTLA-4又はPD-1を標的とするモノクローナル抗体の投与は、完全な奏功及び腫瘍寛解をもたらし得る。そのような抗体の作用様式は、腫瘍が抗腫瘍免疫応答からの保護として取り込んだCTLA-4又はPD-1の阻害によるものである。これらの「チェックポイント」分子を阻害することによって(例えば、アンタゴニスト抗体を用いて)、患者のCD8+T細胞を増殖させ、腫瘍細胞を破壊することができる。
【0407】
したがって、本明細書で提供される1つ以上の腫瘍関連抗原をコードする核酸配列を含むceDNAベクターは、免疫「チェックポイント」分子を標的とする1つ以上の遮断抗体と組み合わせて使用することができる。例えば、いくつかの態様において、本明細書において提供される組成物は、CTLA-4又はPD-1などの分子を標的とする1つ又は複数の遮断抗体と組み合わせて使用することができる。
【0408】
いくつかの実施形態によれば、ceDNA組成物はアジュバントと共に投与される。アジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Freundのアジュバント、GM-CSF、Montanide(例えば、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、及びMontanide ISA-51)、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax(登録商標)、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、フラゲリン又はフラゲリン由来のTLR5リガンド、FLT3リガンド、IC30、IC31、イミキモド(ALDARA(登録商標))、レシキモド、ImuFact IMP321、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-13、IL-15、IL-21、IL-23)、インターフェロン-α若しくは-β、又はそれらのペグ化誘導体、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、ISCOM、JuvImmune、LipoVac、MALP2、MF59、モノホスホリルリピドA、油中水滴型及び水中油滴型エマルジョン、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、OspA、PepTel(登録商標)ベクター系、ポリ(ラクチドコ-グリコリド)[PLG]-系及びデキストラン微粒子、タラクトフェリンSRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21スティミュロン、マイコバクテリア抽出物及び合成細菌細胞壁模倣物、RibiのDetox、Quil、Superfos、シクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフェニブ、テモゾロマイド、テムシロリムス、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、VEGFトラップ、ZD2171、AZD2171、及び抗CTLA4抗体。CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、ワクチン設定においてアジュバントの効果を増強するために使用され得る。
【0409】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの核酸配列は、アジュバントをコードする配列を更に含む。
【0410】
本明細書では、産生された脂質ナノ粒子に封入された昆虫細胞、又は本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のための合成的に産生されたceDNAベクター、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物もまた提供される。
【0411】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ以上の薬学的賦形剤を更に含む脂質ナノ粒子製剤を提供する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子製剤は、スクロース、トリス、トレハロース、及び/又はグリシンを更に含む。
【0412】
ceDNAベクターは、粒子の脂質部分と複合され得るか、又は脂質ナノ粒子の脂質位置に封入され得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、脂質ナノ粒子の脂質位置に完全に封入され得るが、それによって例えば水溶液中のヌクレアーゼによる分解からそれを保護する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子中のceDNAは、37℃で少なくとも約20、30、45、又は60分間のヌクレアーゼへの脂質ナノ粒子の曝露後に実質的に分解されない。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子中のceDNAは、37℃で、少なくとも約30、45、若しくは60分、又は少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、若しくは36時間、血清中で粒子をインキュベーションした後においても、実質的に分解されない。
【0413】
特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、対象、例えばヒトなどの哺乳動物に対して実質的に非毒性である。いくつかの態様によれば、脂質ナノ粒子製剤は、凍結乾燥粉末である。
【0414】
いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つの脂質二層を有する固体コア粒子である。他の実施形態では、脂質ナノ粒子は、非二層構造、すなわち非ラメラ(すなわち、非二層)形態を有する。非二層の形態には、例えば、三次元の管、ロッド、立方対称などが含まれ得るが、それらに限定されない。例えば、脂質ナノ粒子の形態(ラメラ対非ラメラ)は、米国特許出願公開第2010/0130588号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるCryo-TEM分析を使用して容易に評価され、特徴付けられ得る。
【0415】
いくつかの更なる実施形態によれば、非ラメラ形態を有する脂質ナノ粒子は、高電子密度である。いくつかの態様によれば、本開示は、単一ラメラ構造又は多ラメラ構造のいずれかである脂質ナノ粒子を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、多胞体粒子及び/又は発泡ベース粒子を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0416】
脂質構成成分の組成物及び濃度を制御することによって、脂質コンジュゲートが脂質粒子外で交換する速度、順に脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を制御することができる。加えて、例えば、pH、温度、又はイオン強度を含む他の変数を使用して、脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を変化及び/又は制御することができる。脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を制御するために使用され得る他の方法は、本開示に基づいて当業者に明らかとなるであろう。脂質コンジュゲートの組成物及び濃度を制御することによって、脂質粒径を制御することができることも明らかとなるであろう。
【0417】
製剤化されたカチオン性脂質のpKaは、核酸の送達のためのLNPの有効性と相関させることができる(Jayaraman et al.,Angewandte Chemie,International Edition(2012),51(34),8529-8533、Semple et al.,Nature Biotechnology 28,172-176(20l 0)を参照されたい(これらはいずれも、参照によりその全体が組み込まれる)。pKaの好ましい範囲は、約5~約7である。カチオン性脂質のpKaは、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)の蛍光に基づくアッセイを使用し、脂質ナノ粒子中で決定され得る。
【0418】
VII.治療方法
本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターはまた、関心対象の核酸配列を標的細胞(例えば、宿主細胞)に送達するための方法において使用され得る。この方法は、特に抗原又は免疫原性ペプチドを、それを必要とする対象の細胞に送達するため、及び関心対象の疾患又は障害を治療するための方法であり得る。
【0419】
本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片の標的(すなわち、抗原)は、例えば細菌、ウイルス、真菌、及び寄生生物感染因子を含む様々な病原体から選択され得る。適切な標的は、癌又は癌関連抗原などを更に含み得る。更に他の標的には、関節リウマチ(rheumatoid arthritis、RA)又は多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)などの自己免疫状態が含まれ得る。
【0420】
加えて、本開示は、それを必要とする対象の細胞における抗原又は免疫原性ペプチドの送達のための方法を提供し、その方法は、当該抗原又は免疫原性ペプチドをコードする本開示のceDNAベクターの複数回投与を含む。本開示のceDNAベクターは、カプシド化ウイルスベクターに対して典型的に観察されるような免疫応答を誘導しないため、そのような複数回投与戦略は、ceDNAベースの系においてより大きな成功を収めるであろう。ceDNAベクターは、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の副作用なしに、抗原又は免疫原性ペプチドの十分なレベルの遺伝子導入及び発現をもたらすのに十分な量で投与される。
【0421】
本明細書に記載されるような抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの送達は、発現された抗原又は免疫原性ペプチドの送達に限定されない。例えば、従来の方法で産生される(例えば、細胞ベースの産生方法(例えば、昆虫細胞産生方法)を使用して)又は合成的に産生された本明細書に記載されるceDNAベクターは、遺伝子療法の一部を提供するために提供される他の送達系とともに使用され得る。本開示に従ってceDNAベクターと組み合わせることができる系の1つの非限定的な例は、抗原又は免疫原性ペプチドを発現するceDNAベクターの効果的な遺伝子発現のために1つ以上の補因子又は免疫抑制因子を別々に送達する系を含む。
【0422】
本明細書に記載される免疫グロブリン構築物の標的は、例えば細菌、ウイルス、真菌、及び寄生生物感染因子を含む、様々な病原体から選択され得る。適切な標的は、癌又は癌関連抗原などを更に含み得る。更に他の標的には、関節リウマチ(rheumatoid arthritis、RA)又は多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)などの自己免疫状態が含まれ得る。
【0423】
ウイルス標的の例としては、オルトミクソウイルス科由来のインフルエンザウイルスが挙げられ、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、及びC型インフルエンザが含まれる。A型ウイルスは、最も有毒なヒト病原体である。パンデミックに関連付けられているインフルエンザAの血清型としては、1918年にスペイン風邪を、及び2009年に豚インフルエンザを引き起こしたH1N1;1957年にアジアインフルエンザを引き起こしたH2N2;1968年に香港インフルエンザを引き起こしたH3N2;2004年に鳥インフルエンザを引き起こしたH5N1;H7N7;H1N2;H9N2;H7N2;H7N3;及びH10N7が挙げられる。
【0424】
A型インフルエンザに対する広域中和抗体が、これまでに説明されている。本明細書で使用される場合、「広域中和抗体」は、複数のサブタイプ由来の複数の株を中和することができる中和抗体を指す。例えば、CR6261[The Scripps Institute/Crucell]は、1918年の「スペイン風邪」(SC1918/H1)を含む広範囲のインフルエンザウイルス、及び2004年にベトナムでニワトリからヒトに感染するようになったトリインフルエンザのH5N1クラスのウイルス(Viet04/H5)に結合するモノクローナル抗体として記載されている。CR6261は、インフルエンザウイルスの表面上の優勢なタンパク質であるヘマグルチニンの膜近位ステムにおける高度に保存されたヘリックス領域を認識する。この抗体は、参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願公開第2010/130636号に記載されている。別の中和抗体、F10[XOMA Ltd]は、H1N1及びH5N1に対して有用であると記載されている。[Sui et al,Nature Structural and Molecular Biology(Sui,et al.2009,16(3):265-73)]。インフルエンザに対する他の抗体例えば、Fab28及びFab49を選択してもよい。例えば、参照により組み込まれる国際特許出願公開第2010/140114号及び同第2009/115972号を参照されたい。更に他の抗体、例えば、国際特許出願公開第2010/010466号、米国公開特許出願公開第2011/076265号、及び国際特許出願公開第2008/156763号に記載されている抗体を容易に選択することができる。
【0425】
他の標的病原性ウイルスとしては、アレナウイルス(ファニン、マチュポ、及びラッサ熱を含む)、フィロウイルス(マールブルグ及びエボラを含む)、ハンタウイルス、ピコルナウイルス(ライノウイルス、エコーウイルスを含む)、コロナウイルス、パラミクソウイルス、モルビリウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、トガウイルス、コクサッキーウイルス、パルボウイルスB19、パラインフルエンザ、アデノウイルス、レオウイルス、痘瘡(大痘瘡(天然痘))及びポックスウイルス科のワクシニア(牛痘)、並びに水痘帯状疱疹(仮性狂犬病)が挙げられる。
【0426】
ウイルス性出血熱は、アレナウイルス科(ラッサ熱)(この科はリンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)にも関連する)、フィロウイルス(エボラウイルス)、及びハンタウイルス(puremala)のメンバーによって引き起こされる。ピコルナウイルス(ライノウイルスの亜科)のメンバーは、ヒトにおける感冒に関連している。コロナウイルス科には、伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸管系ウイルス(ブタ)、ブタ赤血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸内コロナウイルス(ネコ)、犬コロナウイルス(イヌ)などの多数の非ヒトウイルスが含まれる。ヒト呼吸器コロナウイルスは、一般的な風邪、非A、非B又は非C型肝炎、及び突発性急性呼吸器症候群(SARS)に関連すると推定されている。パラミクソウイルス科には、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(おたふくかぜウイルス)、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹ウイルス及びイヌジステンパーを含む麻疹ウイルス、並びに呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を含むニューモウイルスが含まれる。パルボウイルス科には、ネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、及びブタパルボウイルスが含まれる。アデノウイルス科には、呼吸器疾患を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)が含まれる。
【0427】
細菌性病原体に対する中和抗体構築物もまた、本開示における使用のために選択され得る。一実施形態では、中和抗体構築物は、細菌自体に対するものである。別の実施形態では、中和抗体構築物は、細菌によって産生される毒素に対するものである。風媒性細菌性病原体の例としては、髄膜炎菌(髄膜炎)、クレブシエラ肺炎(肺炎)、緑膿菌(肺炎)、類鼻疽菌(肺炎)、鼻疽菌(肺炎)、アシネトバクター(肺炎)、カタル球菌、モラクセララクナータ、アルカリゲネス、カルジオバクテリウム、インフルエンザ桿菌(flu)、パラインフルエンザ菌、百日咳菌(百日咳)、野兎病菌(肺炎/熱)、レジオネラ肺炎(レジオネラ病)、オウム病クラミジア(肺炎)、肺炎クラミジア(肺炎)、結核菌(肺結核(TB))、カンサシ菌(TB)、アビウム菌(肺炎)、ノカルジアアステロイデス(肺炎)、炭疽菌(炭疽病)、黄色ブドウ球菌(肺炎)、化膿性連鎖球菌(猩紅熱)、肺炎連鎖球菌(肺炎)、コルネバクテリアジフテリア(ジフテリア)、肺炎マイコプラズマ(肺炎)が挙げられる。
【0428】
炭疽病の原因物質は、炭疽菌によって産生される毒素である。トキソイドを形成する3つのペプチドの1つである保護剤(protective agent、PA)に対する中和抗体が、これまでに説明されている。他の2つのポリペプチドは、致死因子(LF)及び浮腫因子(EF)からなる。抗PA中和抗体は、炭疽病に対する受動免疫において有効であると記載されている。例えば、米国特許第7,442,373号;R.Sawada-Hirai et al,J Immune Based Ther Vaccines.2004;2:5.(オンライン2004年5月12日)を参照されたい。更に他の抗炭疽毒素中和抗体が既に説明されており、かつ/又は生成され得る。同様に、他の細菌及び/又は細菌毒素に対する中和抗体を使用して、本明細書に記載のAAV送達抗病原体構築物を生成してもよい。
【0429】
他の感染症は、例えばアスペルギルス種、アブシジア-コリムビフェラ、クモノスカビ、ムコールプランべウス、クリプトコッカスネオフォルマンス、ヒストプラズマカプスラーツム、ブラストミセスデルマチチジス、コクシジオイデスイミチス、ペニシリン種、ミクロポリスポラフェニ、テルモアクチノミセス-ブルガリス、アルテルナリアアルテルナーテ、クラドスポリウム種、ヘルミントスポリウム、及びスタキボトリス種を含む空中浮遊真菌によって引き起こされ得る。
【0430】
更に、受動免疫は、真菌感染例えば、水虫、白癬、又はウイルス、細菌、寄生生物、及び真菌、並びに直接接触によって伝染し得る他の病原体を予防するために使用され得る。更に、家庭のペット、ウシ及び他の家畜、並びに他の動物に影響を及ぼす様々な状態が引き起こされる。例えば、イヌにおいて、イヌ副鼻腔アスペルギルス症による上気道の感染は、重大な疾患を引き起こす。ネコでは、鼻に由来する上気道疾患又はネコ呼吸器系疾患複合体は、罹患及び治療せずに放置すると死亡を引き起こす。ウシは、ウシの急性伝染性ウイルス疾患である感染性ウシ鼻気管炎(一般にIBR(infectious bovine rhinotracheitis)又はレッドノーズと呼ばれる)による感染を受けやすい。更に、ウシは、軽度から重度の呼吸器疾患を引き起こし、他の疾患に対する耐性を損なう可能性があるウシ呼吸器合胞体ウイルス(Bovine Respiratory Syncytial Virus、BRSV)にかかりやすい。更に他の病原体及び疾患は、当業者に明らかである。例えば抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)中和抗体の生成を説明している米国特許第5,811,524号を参照されたい。そこに説明された技術は、他の病原体に適用可能である。このような抗体は、配列改変なしで使用され得るか、又はその配列(スキャフォールド)が改変されて、人工又は組換え中和抗体構築物を生成し得る。そのような方法は、既に説明されている[例えば、国際特許出願公開第2010/13036号;同第2009-115972号;同第2010-140114号を参照]。
【0431】
本明細書に記載の抗悪性腫瘍免疫グロブリンは、HER2などのヒト上皮成長因子受容体(human epidermal growth factor receptor、HER)を標的とし得る。例えば、トラスツズマブは、細胞ベースのアッセイにおいて高い親和性(Kd=5nM)でヒト上皮成長因子受容体タンパク質の細胞外ドメインに選択的に結合する組換えIgG1カッパ、ヒト化モノクローナル抗体である。市販の製品は、CHO細胞培養物中で産生される。例えばwww.drugbank.ca/drugs/DB00072を参照されたい。トラスツズマブ軽鎖1及び2並びに重鎖1及び2のアミノ酸配列、並びにトラスツズマブのX線構造の研究から得られた配列は、このデータベース上に受託番号DB00072で提供されており、この配列は参照により本明細書に組み込まれる。212-Pb-TCMC-トラスツズマブ[Areva Med,Bethesda,MD]も参照されたい。関心対象の別の抗体としては、例えばペルツズマブ、すなわちヒト上皮成長因子受容体2タンパク質(HER2)の細胞外二量体化ドメイン(サブドメインII)を標的とする組換えヒト化モノクローナル抗体が挙げられる。それは、それぞれ448及び214残基を有する、2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる。FDAは、2012年6月8日にこれを承認した。その重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、例えばデータベースwww.drugbank.ca/drugs/DB06366上において、受託番号DB06366(同義語は、2C4、MOAB 2C4、モノクローナル抗体2C4、及びrhuMAb-2C4を含む)で提供されている。HER2に加えて、他のHER標的が選択され得る。
【0432】
例えば、MM-121/SAR256212は、HER3受容体を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体であり[Merrimack’s Network Biology]、非小細胞肺癌(NSCLC)、乳癌、及び卵巣癌の治療に有用であることが報告されている。SAR256212は、HER3(ErbB3)受容体を標的とする研究用の完全ヒトモノクローナル抗体である[Sanofi Oncology]。別の抗Her 3/EGFR抗体は、頭頸部癌において有用であると記載されているRG7597[Genentech]である。別の抗体、マルゲツキシマブ(又はMGAH22)、すなわちHERを標的とする次世代のFc最適化モノクローナル抗体(mAb)[MacroGenics]も利用することができる。
【0433】
あるいは、他のヒト上皮細胞表面マーカー及び/又は他の腫瘍レセプター又は抗原が標的化され得る。他の細胞表面マーカー標的の例としては、以下が挙げられる:例えば5T4、CA-125、CEA(例えば、ラベツズマブによって標的化される)、CD3、CD19、CD20(例えば、リツキシマブによって標的化される)、CD22(例えば、エプラツズマブ又はベルツズマブによって標的化される)、CD30、CD33、CD40、CD44、CD51(またインテグリンαvβ3)、CD133(例えば、神経膠芽腫細胞)、CTLA-4(例えば、神経芽細胞腫の治療に使用される、例えばイピリムマブ)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体2(CXCR2)(脳内の異なる領域で発現される;例えば、抗CXCR2(細胞外)抗体#ACR-012(Alomene Labs));EpCAM、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)[例えば,国際特許出願公開第2012020006A2号を参照、脳腫瘍]、葉酸受容体アルファ(例えば、小児上衣脳腫瘍、頭頸部癌)、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)(抗FGFR1抗体を用いた癌の処置の考察については、例えば、国際特許出願公開第2012125124A1号を参照されたい)、FGFR2(例えば、国際特許出願公開第2013076186A号及び国際特許出願公開第2011143318A2号に記載されている抗体を参照)、FGFR3(例えば、米国特許第8,187,601号及び国際公開第2010111367A1号に記載されている抗体を参照)、FGFR4(例えば、例えば,国際特許出願公開第2012138975A1号に記載されている抗FGFR 4抗体を参照)、肝細胞増殖因子(HGF)(例えば、国際特許出願公開第2010119991A3号中の抗体を参照)、インテグリンα5β1、IGF-1受容体、ガングリオシドGD2(例えば、国際特許出願公開第2011160119A2に記載されている抗体を参照)、ガングリオシドGD3、膜貫通糖タンパク質NMB(GPNMB)(特に、神経膠腫に関連し、抗体グレムバツムマブ(CR011)の標的である)、ムチン、MUC1、ホスファチジルセリン(例えば、バビツキシマブ[Peregrine Pharmaceuticals,Inc]が標的とする]、前立腺癌細胞、PD-L1(例えば、ニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、完全ヒトgG4例えば,転移性黒色腫]、血小板由来増殖因子受容体アルファ(PDGFRα)又はCD140、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、テネイシンC、腫瘍壊死因子(TNF)受容体(TRAIL-R2)、血管内皮増殖因子(VEGF)-A(例えば、ベバシズマブによって標的化される)及びVEGFR2(例えば、ラムシルマブによって標的化される)。
【0434】
他の抗体及びそれらの標的としては、例えば、APN301(hu14.19-IL2)、すなわちモノクローナル抗体[小児における悪性黒色腫及び神経芽細胞腫、Apeiron Biolgic,Vienna,Austria]が挙げられる。例えば転移性脳腫瘍を含む固形腫瘍の治療に有用であると説明されているモノクローナル抗体8H9も参照されたい。モノクローナル抗体8H9は、B7H3抗原に対する特異性を有するマウスIgG1抗体である[United Therapeutics Corporation]。このマウス抗体はヒト化することができる。B7-H3及び/又はB7-H4抗原を標的とする更に他の免疫グロブリン構築物を、本明細書で使用し得る。別の抗体は、S58(抗GD 2、神経芽細胞腫)である。Cotara(商標)[Perregrince Pharmaceuticals]は、再発性神経膠芽腫の治療の用であると説明されているモノクローナル抗体である。他の抗体には、例えばアバスチン、フィクラツズマブ、メディ-575、及びオララツマブが含まれ得る。更に他の免疫グロブリン構築物又はモノクローナル抗体が、本明細書における使用のために選択され得る。例えば、Medicines in Development Biologics,2013 Report,pp.1-87(phRMA’s Communications&Public Affits Department.(202)835-3460(なお、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる))を参照。
【0435】
例えば、免疫原は、種々のウイルス科から選択され得る。免疫応答が望まれるウイルス科の例としては、ライノウイルス属を含むピコルナウイルス科(これは感冒の症例の約50%の原因である);ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びA型肝炎ウイルスなどのヒトエンテロウイルスを含むエンテロウイルス属;並びに主に非ヒト動物における口蹄疫の原因であるアプトウイルス属が挙げられる。ピコルナウイルス科のウイルス内で、標的抗原には、VP1、VP2、VP3、VP4、及びVPGが含まれる。別のウイルス科には、流行性胃腸炎の重要な原因物質であるノーウォーク群のウイルスを包含するカルシウイルス科が含まれる。ヒト及び非ヒト動物において免疫応答を誘導するために抗原を標的化する際の使用に望ましいなお別のウイルス科は、トガウイルス科であり、これは、アルファウイルス属を含み、これは、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、及びベネズエラ、イースタン&ウエスタン馬脳炎、並びにルビウイルス(風疹ウイルスを含む)を含む。フラビウイルス科には、デング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎及びダニ媒介性脳炎ウイルスが含まれる。他の標的抗原は、C型肝炎又はコロナウイルス科から生成され得るが、例としては、多数の非ヒトウイルスが挙げられ、例えば、伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸ウイルス(ブタ)、ブタ赤血球凝集脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、犬コロナウイルス(イヌ)、及びヒト呼吸器コロナウイルスなどが挙げられ、これらは感冒及び/又は非A型、非B型、若しくは非C型肝炎を引き起こし得る。コロナウイルス科内では、標的抗原は、E1(M又はマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(S又はスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HE又はヘマグルチン-エルテロースとも呼ばれる)糖タンパク質(全てのコロナウイルスに存在するわけではない)、又はN(ヌクレオカプシド)を含む。更に他の抗原は、ベシクロウイルス属(例えば、水疱性口内炎ウイルス)及び一般的なリッサウイルス属(例えば、狂犬病)を含むラブドウイルス科に対して標的化され得る。
【0436】
ラブドウイルス科内で、適切な抗原は、Gタンパク質又はNタンパク質に由来し得る。マールブルグ及びエボラウイルスなどの出血熱ウイルスを含むフィロウイルス科は、抗原の適切な供給源であり得る。パラミクソウイルス科には、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(おたふくかぜウイルス)、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹ウイルス及びイヌジステンパーを含む麻疹ウイルス、並びに呼吸器合胞体ウイルスを含むニューモウイルスが含まれる。インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科に分類され、抗原(例えば、HAタンパク質、N1タンパク質)の適切な供給源である。ブニアウイルス科には、ブニアウイルス属(カリフォルニア脳炎、La Crosse)、フレボウイルス属(リフトバレー熱)、ハンタウイルス属(puremalaはヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス属(ナイロビヒツジ病)及び様々な未帰属ブニヤウイルス属が含まれる。アレナウイルス科は、LCM及びラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。レオウイルス科には、レオウイルス属、ロタウイルス属(子供に急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルス属、及びカルチウイルス属(コロラドダニ熱、レボンボ(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)が含まれる。
【0437】
レトロウイルス科には、ネコ白血病ウイルス、HTLVI及びHTLVII、レンチウイルス(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、及びスプマウイルスイルスを含む)などのヒト及び獣医学的疾患を包含するオンコウイルス亜科が含まれる。レンチウイルスの中で、多くの適切な抗原が説明されており、標的として容易に選択することができる。適切なHIV及びSIV抗原の例としては、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、Nef、及びRevタンパク質、並びにそれらの種々のフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Envタンパク質の適切なフラグメントは、gp120、gp160、gp41などのそのサブユニットのいずれか、又は(例えば少なくとも約8アミノ酸長の)それらのより小さいフラグメントを含み得る。同様に、tatタンパク質の断片を選択してもよい。[米国特許第5,891,994号及び第6,193,981号を参照のこと]。また、HIV及びSIVタンパク質(D.H.Barouch et al,J.Virol.,75(5):2462-2467(March 2001)、及びR.R.Amara,et al,Science,292:69-74(6 Apr.2001)も参照されたい。別の一例において、HIV及び/又はSIV免疫原性タンパク質又はペプチドは、融合タンパク質又は他の免疫原性分子を形成するために使用され得る。例えば、2001年8月2日に公開された国際特許出願公開第01/54719号及び1999年4月8日に公開された同第99/16884号に記載の、HIV-1 Tat及び/又はNef融合タンパク質及び免疫レジメンを参照のこと。本発明は、本明細書に記載されるHIV及び/又はSIV免疫原性タンパク質又はペプチドに限定されない。更に、これらのタンパク質に対する種々の改変が記載されているか、又は当業者によって容易になされ得る。例えば米国特許第5,972,596号に記載されている修飾gagタンパク質を参照されたい。
【0438】
パポーバウイルス科には、ポリオーマウイルス亜科(BKU及びJCUウイルス)及びパピローマウイルス亜科(癌又はパピローマの悪性進行に関連する)が含まれる。アデノウイルス科には、呼吸器疾患及び/又は腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)が含まれる。パルボウイルス科には、ネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、パルボウイルス、及びブタパルボウイルスが含まれる。ヘルペスウイルス科には、シンプレックスウイルス(HSVI、HSVII)、バリセロウイルス属(仮性狂犬病、水痘帯状疱疹)の属を包含するアルファヘルペスウイルス亜科、並びにサイトメガロウイルス(HCMV、ムロメガロウイルス)属を包含するベータヘルペスウイルス亜科、並びにリンフォクリプトウイルス、EBV(バーキットリンパ腫)、感染性鼻気管炎、マレック病ウイルス及びラジノウイルスの属を包含するガンマヘルペスウイルス亜科が含まれる。ポックスウイルス科には、オルトポックスウイルス属(痘瘡(天然痘)及びワクシニア(牛痘))、パラポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、スイポックスウイルス属を包含するコルドポックスウイルス亜科、並びにエントモポックスウイルス亜科が含まれる。ヘパドナウイルス科にはB型肝炎ウイルスが含まれる。抗原の適切な供給源であり得る1つの未分類ウイルスは、デルタ型肝炎ウイルスである。更に他のウイルス源には、トリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス及びブタ呼吸器及び生殖器症候群ウイルスが含まれ得る。アルファウイルス科には、ウマ動脈炎ウイルス及び種々の脳炎ウイルスが含まれる。
【0439】
抗体の他の病原性標的には、例えばヒト及び非ヒト脊椎動物に感染する細菌、真菌、寄生微生物、若しくは多細胞寄生生物、又は癌細胞若しくは腫瘍細胞由来のものが含まれ得る。細菌性病原体の例としては、病原性グラム陽性球菌が挙げられ、その例としては、肺炎球菌;ブドウ球菌;及び連鎖球菌が挙げられる。病原性グラム陰性球菌としては、髄膜炎菌;淋菌が挙げられる。病原性腸内グラム陰性桿菌としては、腸内細菌科;シュードモナス属、アシネトバクター属及びイケネラ属;類鼻疽;サルモネラ;赤痢菌;ヘモフィルス;モラクセラ;軟性下疳菌(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ;野兎病菌(野兎病を引き起こす);エルシニア(パスツレラ);ストレプトバシラス・モニリフォルミス及びスピリルムが挙げられる。グラム陽性桿菌としては、リステリア菌;豚丹毒菌;ジフテリア菌(ジフテリア);コレラ菌;炭疽菌(炭疽病);ドノバニア感染症菌(鼠径部肉芽腫);及びバルトネラ菌が挙げられる。病原性嫌気性細菌によって引き起こされる疾患には、破傷風;ボツリヌス中毒症;他のクロストリジウム;肺結核;ハンセン病、及び他のマイコバクテリアが挙げられる。病原性スピロヘータ疾患には梅毒;トレポネーマ症:いちご腫、ピンタ及び地方病性梅毒;並びにレプトスピラ症が挙げられる。高等病原体細菌及び病原性真菌によって引き起こされる他の感染症としては、放線菌症;ノカルジア症;クリプトコッカス症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症及びコクシジオイデス症;カンジダ症、アスペルギルス症、及びムコール菌症;スポロトリコーシス;パラコクシジオイデス症、ペトリエリジオシス、トルロプシス症、菌腫及びクロモミコーシス;並びに白癬が挙げられる。リケッチア性感染には、チフス、ロッキー山紅斑熱、Q熱、及びリケッチア痘が含まれる。マイコプラズマ及びクラミジア感染の例としては、マイコプラズマ肺炎;鼡径リンパ肉芽腫症;オウム病;及び周産期クラミジア感染が挙げられる。病原性真核生物は、病原性原生動物及び蠕虫を包含し、それによって生じる感染には、アメーバ症;マラリア;リーシュマニア症;トリパノソーマ症;トキソプラズマ症;カリニ肺炎;旋毛虫;トキソプラズマ;バベシア症;ジアルジア症;旋毛虫症;フィラリア症;住血吸虫症;線虫;吸虫又は吸虫類;及び条虫(サナダムシ)感染症が挙げられる。
【0440】
これらの生物及び/又はそれによって産生される毒素の多くは、疾病管理センター(CDC)[米国保健福祉省]によって、生物学的攻撃における使用の可能性を有する薬剤として同定されている。例えば、これらの生物剤のいくつかには、炭疽菌(炭疽病)、ボツリヌス菌及びその毒素(ボツリヌス中毒症)、ペスト菌(ペスト)、大痘瘡(天然痘)、野兎病菌(野兎病)、及びウイルス性出血熱[フィロウイルス例えば、エボラ、マールブルグ]、及びアレナウイルス[例えば、ラッサ、マチュポ]](これらはすべて現在カテゴリーA剤に分類されている);コクシエラ・バーネッティ(Q熱);ブルセラ属の種(ブルセラ症)、ブルクホルデリアマレイ(鼻疽)、バークホルデリアシュードマレイ属の種(類鼻疽)、トウゴマ及びその毒素(リシントキシン)、クロストリジウム・パーフリンジェンス及びその毒素(エプシロントキシン)、ブドウ球菌属の種及びその毒素(エンテロトキシンB)、クラミジア・シッタシ(オウム病)、水の安全性の脅威物(例えば、コレラ菌、クリプトスポリジウム・パルバム)、チフス熱(発疹チフスリケッチア)、及びウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えば、ベネズエラウマ脳炎;東部馬脳炎;西部馬脳炎);(これらの全ては、現在、カテゴリーB因子として分類されている);そしてヒパウイルス及びハンタウイルス(これらは、現在、カテゴリーC因子として分類されている)が挙げられる。更に、そのように分類されるか、又は異なるように分類される他の生物は、将来このような目的のために同定及び/又は使用され得る。本明細書中に記載されるウイルスベクター及び他の構築物は、これらの生物、ウイルス、それらの毒素又は他の副産物由来の抗原を標的化するために有用であり、これらの生物学的因子による感染又は他の有害反応を予防及び/又は処置することが容易に理解される。
【0441】
ウイルス感染を処置又は予防するための、本明細書中に記載されるような抗原及び免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの有効用量又は治療有効用量は、処置される対象における感染の1つ以上の徴候及び/又は症状を、このような徴候及び/又は症状の退行又は排除を誘導することによるか、あるいはこのような徴候及び/又は症状の進行を阻害することによるかにかかわらず、軽減するのに十分である、本明細書中に記載されるような抗原又は免疫原性ペプチド、抗原及び免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの量をいう。投与量は、投与される対象の年齢及びサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。本開示の実施形態では、例えば成人ヒト対象におけるウイルス感染を治療又は予防するための本開示の抗体又はその抗原結合断片の有効用量又は治療有効用量は、約0.01~約200mg/kg、例えば、最大約150mg/kgである。本開示の一実施形態では、投与量は、最大約10.8又は11グラム(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11グラム)である。疾患又は感染の重症度に応じて、治療の頻度及び期間を調整することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗原及び免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、初回用量で投与され、続いて1回又は複数回の二次用量で投与され得る。ある特定の実施形態では、初回用量の後に、初回用量とほぼ同じ又はそれ未満であり得る量の抗原の第2の又は複数の後続用量の投与が続いてもよく、後続用量は、少なくとも1日~3日;少なくとも1週間、少なくとも2週間;少なくとも3週間;少なくとも4週間;少なくとも5週間;少なくとも6週間;少なくとも7週間;少なくとも8週間;少なくとも9週間;少なくとも10週間;少なくとも12週間;又は少なくとも14週間隔てて投与される。
【0442】
ceDNAベクターを投与される対象は、ウイルス感染症(例えば、インフルエンザ感染症)を有し得るか、又は感染を発症する素因があり得る。感染を発症する素因がある対象、又は感染症(例えば、コロナウイルス又はインフルエンザウイルスの感染症)に罹患するリスクが高くあり得る対象としては、自己免疫性疾患のために免疫系が損なわれた対象、免疫抑制療法を受けている対象(例えば、臓器移植後)、ヒト免疫不全症症候群(HIV)若しくは後天性免疫不全症候群(AIDS)に罹患している対象、白血球を枯渇若しくは破壊する貧血症の形態を有する対象、放射線若しくは化学治療を受けている対象、又は炎症障害に罹患している対象が挙げられる。更に、非常に若い対象(例えば、5歳以下)又は高齢の対象(例えば、65歳以上)は、リスクが高い。更に、対象は、疾患の発生に近接していること、(例えば、対象が人口密度の高い都市に住んでいること、又はウイルスの感染が確認された若しくは疑われる対象に近接していること)、又は雇用の選択(例えば、病院労働者、製薬研究者)、感染地域への旅行をすること、若しくは頻繁に空の旅をすることにより、ウイルス感染に罹患するリスクがあり得る。
【0443】
本開示はまた、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを、疾患又は障害(例えば、ウイルス感染)のリスクがある対象に、そのような感染を予防するために予防的に投与することを包含する。「予防する(prevent)」又は「予防すること(preventing)」は、免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを対象に投与して、対象の身体において、疾患又は感染症(例えば、ウイルス感染症)の発現を妨げることを意味する。なお、本明細書に記載される、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、治療有効量又は治療有効用量で対象に投与された場合に、その疾患又は感染症の発現を妨げるのに効果的である。
【0444】
いくつかの実施形態によれば、対象におけるウイルス感染の徴候又は症状は、例えばウイルス力価アッセイ(例えば、発育鶏卵におけるコロナウイルス増殖又はコロナウイルススパイクタンパク質アッセイ)によって決定される、対象の体内におけるウイルスの生存又は増殖である。ウイルス感染の他の徴候及び症状は、本明細書中で議論される。
【0445】
上記のように、いくつかの実施形態によれば、対象は非ヒト動物であってもよく、本明細書で考察される抗体及び抗原結合断片は、非ヒト動物(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジなど)における疾患を治療及び/又は予防するために獣医学的コンテクストにおいて使用されてもよい。
【0446】
本開示は、ウイルス感染(例えば、コロナウイルス感染)を治療若しくは予防するための、又はウイルス感染の少なくとも1つの徴候若しくは症状の進行の逆転若しくは除去を誘導するか、又はその進行を妨げるための方法を提供する。そのような兆候又は症状の例としては:発熱若しくは熱感/寒気を感じること;咳;喉の痛み;鼻水又は鼻づまり;くしゃみ;筋肉又は身体の痛み;頭痛;疲労(疲労感);嘔吐;下痢;気道の感染症;胸の不快感;息切れ;気管支炎;及び/又は肺炎が挙げられ、これらの徴候又は症状は、ウイルス感染から派生する徴候又は症状である。またそのような徴候又は症状の進行に関する上記の目的は、本明細書に記載の抗原又は免疫原性ペプチドを発現させるための治療有効量のceDNAベクターを、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することによって実現される。
【0447】
エクスビボ治療
いくつかの実施形態によれば、細胞を対象から除去し、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターをその中に導入した後、細胞を対象に戻す。エクスビボの治療のために対象から細胞を取り出し、続いて対象に戻す方法は、当該技術分野で既知である(例えば、米国特許第5,399,346号を参照、その開示は、その全体が本明細書に組み込まれる)。代替的に、ceDNAベクターは、別の対象からの細胞中に、培養細胞中に、又は任意の他の好適な供給源からの細胞中に導入され、これらの細胞を、それを必要とする対象に投与する。
【0448】
本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターで形質導入された細胞は、好ましくは、薬学的担体と組み合わせて「治療有効量」で対象に投与される。当業者であれば、いくらかの利益が対象にもたらされる限り、治療効果が完全又は治癒的である必要はないことを理解するであろう。
【0449】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片をコードすることができ、細胞においてインビトロ、エクスビボ、又はインビボで産生される。例えば、本明細書で論じられる治療方法における本明細書に記載されるceDNAベクターの使用とは対照的に、いくつかの実施形態では、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを、培養した細胞に導入し、発現した抗原又は免疫原性ペプチドを、ある時間の経過後に、例えば、抗体及び融合タンパク質の産生のために細胞から単離することができる。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを含む培養細胞は、抗体又は融合タンパク質の商業的産生に使用することができ、例えば、抗体又は融合タンパク質の小規模又は大規模バイオ製造の細胞源として役立つ。代替的な実施形態では、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、小規模な産生を含む抗体又は融合タンパク質のインビボ産生並びに商業的な大規模な抗原又は免疫原性ペプチド産生のために、宿主である非ヒト対象の細胞に導入される。
【0450】
本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、獣医学及び医学の両方の用途で使用することができる。上記のエクスビボ遺伝子送達方法に好適な対象としては、鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、七面鳥、及びキジ)及び哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、及びウサギ類)が挙げられ、哺乳動物が好ましい。ヒト対象が最も好ましい。ヒト対象は、新生児、幼児、年少者、及び成人を含む。
【0451】
用量範囲
本明細書では、本明細書に記載される抗原又は免疫原性ペプチドをコードするceDNAベクターを含む、有効量の組成物を対象に投与することを含む治療方法が提供される。
【0452】
インビボ及び/又はインビトロアッセイを任意選択的に用いて、使用のための最適投与量範囲を特定するのを助けることができる。製剤に用いられる正確な用量はまた、投与経路及び病態の重症度に依存し、当業者の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から推定され得る。
【0453】
本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターは、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の副作用なしに十分なレベルの遺伝子導入及び発現をもたらすのに十分な量で投与される。従来の薬学的に許容される投与経路としては、「投与」セクションで上述されたもの、例えば選択された器官への直接送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、経口、吸入(鼻腔内及び気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及び他の非経口投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与経路は、所望の場合、組み合わせることができる。
【0454】
特定の「治療効果」を達成するために必要な、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの量の用量は、核酸投与の経路、治療効果を達成するために必要な遺伝子又はRNA発現のレベル、治療される特定の疾患又は障害、及び遺伝子、RNA産物、又は得られる発現タンパク質の安定性を含むが、これらに限定されないいくつかの因子に基づいて変化するであろう。当業者は、前述の因子並びに当該技術分野において周知の他の因子に基づいて、特定疾患又は障害を有する患者を治療するためのceDNAベクター用量範囲を容易に判定することができる。
【0455】
最適な治療応答を提供するように、投与量レジームを調整することができる。例えば、オリゴヌクレオチドは、繰り返し投与することができ、例えば、数回用量が毎日投与され得るか、又は治療状況の急迫によって示されるように、用量を比例的に低減することができる。当業者は、オリゴヌクレオチドが細胞に投与されるか、又は対象に投与されるかにかかわらず、対象オリゴヌクレオチドの投与の適切な用量及びスケジュールを容易に判定することができるであろう。
【0456】
臨床的使用のための「治療有効量」は、臨床治験を通じて判定され得る比較的広い範囲内に含まれ、特定の用途に依存する(例えば、神経細胞は、極少量を必要とするが、全身注射は、多量を必要とする)であろう。例えば、ヒト対象の骨格筋又は心筋への直接インビボ注射の場合、治療有効量は、およそ約1μg~100gのceDNAベクターとなるであろう。ceDNAベクターを送達するためにエキソソーム又は微粒子が使用される場合、治療有効量は、経験的に判定され得るが、1μg~約100gのベクターを送達することが予想される。更に、治療有効量とは、疾患の1つ以上の症状の低減をもたらすが、著しいオフターゲット又は著しい有害副作用には至らない、対象に影響を与えるのに十分な量の導入遺伝子を発現するceDNAベクターの量である。いくつかの実施形態によれば、「治療有効量」は、所与の疾患症状の低減において、統計的に有意で。測定可能な変化もたらすのに十分である、発現した抗体又は免疫原性ペプチドの量である。そのような有効量は、所与のceDNAベクター組成物についての臨床試験及び動物実験で評価することができる。
【0457】
インビトロトランスフェクションの場合、細胞(1×10個の細胞)に送達される本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの有効量は、およそ0.1~100μgのceDNAベクター、好ましくは1~20μg、より好ましくは1~15μg、又は8~10μgとなる。より大きなceDNAベクターは、より多い用量を必要とするであろう。エキソソーム又は微粒子が使用される場合、有効なインビトロ用量は、経験的に判定され得るが、一般に同量のceDNAベクターを送達することが意図される。
【0458】
治療は、単一用量又は複数回用量の投与を必要とし得る。いくつかの実施形態によれば、2回以上の用量が対象に投与され得る。実際、ceDNAベクターは、ウイルス性カプシドの不在に起因して、抗カプシド宿主免疫応答を誘起しないため、複数回用量が、必要に応じて投与され得る。そのようなものとして、当業者は、適切な用量数を判定することができる。いくつかの実施形態によれば、用量は、プライム用量投与計画で投与される。
【0459】
任意の特定の理論に束縛されるものではないが、本開示によって記載されるceDNAベクターの投与によって誘起される典型的な抗ウイルス免疫応答の欠失(すなわち、カプシド構成成分の不存在)は、抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを、複数の場合にわけて宿主に投与することを可能にする。いくつかの実施形態によれば、核酸が対象に送達される場合の数は、2~10回の範囲内(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回)である。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、6回以上対象に送達される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、4回以上対象に送達される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、3回以上対象に送達される。
【0460】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの用量は、1暦日(例えば、24時間)当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、2、3、4、5、6、又は7暦日当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの用量は、歴週(例えば、7歴日)当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、2週間に1回(例えば、2暦週期間に1回)だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、1暦月当たり1回(例えば、30歴日に1回)だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、6暦月当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、歴年(例えば、365日又は閏年では366日)当たり1回だけ対象に投与される。
【0461】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、0日目に投与される。0日目の初回治療に続いて、ceDNAベクターを用いた初回治療の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、又は約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、又は約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、約10年、約11年、約12年、約13年、約14年、約15年、約16年、約17年、約18年、約19年、約20年、約21年、約22年、約23年、約24年、約25年、約26年、約27年、約28年、約29年、約30年、約31年、約32年、約33年、約34年、約35年、約36年、約37年、約38年、約39年、約40年、約41年、約42年、約43年、約44年、約45年、約46年、約47年、約48年、約49年又は約50年後に、2回目の投薬(再投与)を実施することができる。
【0462】
いくつかの実施形態によれば、治療用核酸の再投薬は、治療用核酸の発現の増加をもたらす。いくつかの実施形態によれば、初回投薬後の治療用核酸の発現と比較して、再投薬後の治療用核酸の発現の増加は、核酸の再投薬後、約0.5倍~約10倍、約1倍~約5倍、約1倍~約2倍、又は約0.5倍、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍高い。
【0463】
特定の実施形態では、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターの2回以上の投与(例えば、2、3、4回、又はそれ以上の投与)を用いて、様々な間隔の期間にわたって(例えば、毎日、毎週、毎月、毎年など)、所望のレベルの抗体発現を達成することができる。
【0464】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されるceDNAベクターによってコードされる治療用抗原、又は免疫源性ペプチドは、それが対象において少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月/1年、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年以上にわたって発現されるように、調節スイッチ、誘導性又は抑制性プロモーターによって調節され得る。いくつかの実施形態によれば、発現は、本明細書に記載されるceDNAベクターを所定の又は所望の間隔で繰り返し投与することによって達成することができる。
【0465】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態によれば、抗原又は免疫原性ペプチドを発現するceDNAベクターは、追加の化合物と併用して投与することができる。
【0466】
単位剤形
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗原又は免疫原性ペプチドの発現のためのceDNAベクターを含む医薬組成物は、単位剤形で都合よく提示され得る。単位剤形は、典型的に、医薬組成物の1つ以上の投与経路に適合されるであろう。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、吸入による投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、吸入器による投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、噴霧器による投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、エアロゾル化器による投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、経口投与のため、頬側投与のため、又は舌下投与のために適合される。
【0467】
ceDNAベクターを使用した良好な遺伝子発現の試験
当該技術分野で周知のアッセイを使用して、ceDNAベクターによる抗原又は免疫原性ペプチドの遺伝子送達の効率を試験することができ、インビトロ及びインビボの両方のモデルで実施され得る。ceDNAによる抗原又は免疫原性ペプチドの発現のレベルは、抗原又は免疫原性ペプチドのmRNA及びタンパク質レベルを測定することによって(例えば、逆転写PCR、ウェスタンブロット分析、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA))当業者により評価され得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、レポータータンパク質を含み、このレポータータンパク質は、その発現を、例えば、蛍光顕微鏡法又は発光プレートリーダーにより調べることによって、抗体又は抗原結合断片の発現を評価するために使用できるものである。インビボ適用の場合、タンパク質機能アッセイを使用して、所与の抗原又は免疫原性ペプチドの機能を試験して、遺伝子発現が成功したかどうかを判断することができる。当業者は、インビトロ又はインビボでceDNAベクターによって発現された抗原又は免疫原性ペプチドの機能を測定するための最良の試験を決定することができるであろう。
【0468】
本明細書では、細胞又は対象におけるceDNAベクターからの抗原又は免疫原性ペプチドの遺伝子発現の効果は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも20年にわたって継続し得るか、又は永続的であり得ることが企図される。
【0469】
本出願全体を通して引用される;参考文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む全ての特許及び他の刊行物は、例えば、本明細書に記載の技術に関連して使用され得る、そのような刊行物に記載される方法論を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供されている。この点に関するいかなるものも、発明者が先行する開示のおかげで、又はいかなる他の理由のためにもそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述又はこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関するいかなる承認も構成するものではない。
【実施例
【0470】
以下の実施例は、限定ではない例証によって提供される。本明細書に記載される野生型又は修飾型ITRのうちのいずれかからceDNAベクターを構築できること、及び以下の例示的な方法を使用して、そのようなceDNAベクターの活性を構築し、評価できることを当業者は理解するであろう。これらの方法は、ある特定のceDNAベクターを用いて例示されているが、それらは、説明に沿って任意のceDNAベクターに適用可能である。
【0471】
実施例1:昆虫細胞ベースの方法を使用してceDNAベクターを構築する
ポリヌクレオチド構築物テンプレートを使用したceDNAベクターの産生は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、国際特許出願第PCT/US18/49996号の実施例1に記載される。例えば、本開示のceDNAベクターを生成するために使用されるポリヌクレオチド構築物テンプレートは、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルスであり得る。理論に限定されるものではないが、許容宿主細胞中、例えば、Repの存在下、2つの対称ITR(ITRのうちの少なくとも1つが、野生型ITR配列に対して修飾されている)及び発現構築物を有するポリヌクレオチド構築物テンプレートは、ceDNAベクターを産生するように複合する。ceDNAベクター産生は、第1の、テンプレート骨格(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルスゲノムなど)からのテンプレートの切除(「レスキュー」)、及び第2の、切除したceDNAベクターのRep媒介型複製の2つのステップを経る。
【0472】
ceDNAベクターを産生するための例示的な方法は、本明細書に記載されるceDNA-プラスミドに由来する。図1A及び図1Bを参照すると、ceDNA-プラスミドの各々のポリヌクレオチド構築物テンプレートは、左修飾型ITR及び右修飾型ITRの両方を含み、ITR配列間に以下を有する:(i)エンハンサー/プロモーター;(ii)導入遺伝子のクローニング部位;(iii)転写後応答エレメント例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE));及び(iv)ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモン遺伝子(BGHpA)由来)。固有の制限エンドヌクレアーゼ認識部位(R1~R6)(図1A及び図1Bに示される)もまた、各構成成分の間に導入され、構築物中の特定部位への新たな遺伝子構成成分の導入を促進した。R3(PmeI)GTTTAAAC(配列番号123)及びR4(PacI)TTAATTAA(配列番号124)酵素部位は、導入遺伝子のオープンリーディングフレームを導入するために、クローニング部位の中で操作される。これらの配列を、ThermoFisher Scientificから取得したpFastBac HT Bプラスミドにクローニングした。
【0473】
ceDNA-バクミドの産生:
DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞、Thermo Fisher)を、製造元の指示によるプロトコルに従って、試験プラスミド又は制御プラスミドのいずれかで形質転換した。DH10Bac細胞中のプラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えceDNA-バクミドを生成した。バクミド及びトランスポサーゼプラスミドの形質転換体及び維持のために選択する抗生物質とともに、X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニングに基づいて(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)正の選択をスクリーニングすることによって、組換えバクミドを選択した。β-ガラクトシダーゼ指標遺伝子を妨害する転位によって引き起こされる白色コロニーを採取し、10mlの培地中で培養した。
【0474】
組換えceDNA-バクミドを、E.coliから単離し、FugeneHDを使用してSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。付着したSf9又はSf21昆虫細胞を、25℃のT25フラスコ中の50mLの培地で培養した。4日後、培養培地(P0ウイルスを含有する)を細胞から取り除き、0.45μmフィルターで濾過し、感染性バキュロウイルス粒子を細胞又は細胞残屑から分離した。
【0475】
任意選択的に、第1世代のバキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって50~500mlの培地中で増幅させた。オービタルシェーカー培養器内の懸濁液培養物中の細胞を、130rpm、25℃で維持し、細胞が(14~15nmのナイーブ直径から)18~19nmの直径及び約4.0E+6細胞/mLの密度に到達するまで、細胞直径及び生存率をモニタリングした。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離後に採取し、細胞及び残屑を除去した後、0.45μmフィルターで濾過した。
【0476】
試験構築物を含むceDNA-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性又は力価を決定した。具体的には、2.5E+6細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、25~27℃でインキュベートした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日判定した。
【0477】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際特許出願PCT/US18/49996号の図8Aに開示される「Rep-プラスミド」を、Rep78(配列番号131若しくは133)及びRep52(配列番号132)又はRep68(配列番号130)及びRep40(配列番号129)の両方を含むpFASTBAC(商標)二重発現ベクター(ThermoFisher)において産生した。Rep-プラスミドを、製造元によって提供されるプロトコルに従って、DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞(Thermo Fisher)中に形質転換した。DH10Bac細胞中のRep-プラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えバクミド(「Rep-バクミド」)を生成した。X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニング(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)を含む正の選択によって、組換えバクミドを選択した。単離された白色コロニーを採取し、10mlの選択培地(LBブロス中のカナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン)中に播種した。組換えバクミド(Rep-バクミド)をE.coliから単離し、Rep-バクミドをSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。
【0478】
Sf9又はSf21昆虫細胞を、50mlの培地中で4日間培養し、感染性組換えバキュロウイルス(「Rep-バキュロウイルス」)を、培養物から単離した。任意選択的に、第1世代のRep-バキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって増幅させ、50~500mlの培地中で培養した。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離によって細胞を分離するか、又は濾過若しくは別の分画プロセスのいずれかによって収集した。Rep-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性を決定した。具体的には、2.5×10細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、インキュベーションした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日決定した。
【0479】
ceDNAベクター生成及び特徴付け
図4Bを参照して、次いで、(1)ceDNA-バクミドを含有する試料又はceDNA-バキュロウイルス、及び(2)上記のRep-バキュロウイルスのいずれかを含有するSf9昆虫細胞培養培地を、Sf9細胞(2.5E+6細胞/mL、20mL)の新鮮な培養物に、それぞれ1:1000及び1:10,000の比で添加した。次いで、細胞を25℃、130rpmで培養した。同時感染の4~5日後に、細胞の直径及び生存率が検出される。生存率が約70~80%で細胞直径が18~20nmに到達した場合、細胞培養物を遠心分離し、培地を取り除き、細胞ペレットを回収した。最初に、細胞ペレットを、適量の水性培地(水又は緩衝液のいずれか)に再懸濁する。ceDNAベクターを単離し、Qiagen MIDI PLUS(商標)精製プロトコル(Qiagen、カラム当たり0.2mgの処理された細胞ペレット質量)を使用して、細胞から精製した。
【0480】
Sf9昆虫細胞から産生及び精製されるceDNAベクターの収率は、最初に、260nmでのUV吸光度に基づいて判定された。
【0481】
ceDNAベクターは、図4Dに例示されるような未変性条件又は変性条件下で、アガロースゲル電気泳動によって同定することによって評価することができ、(a)制限エンドヌクレアーゼ切断及びゲル電気泳動分析後の、未変性ゲルに対して変性ゲル上で2倍のサイズで移行する特徴的なバンドの存在、並びに(b)未切断材料の変性ゲル上の単量体及び二量体(2x)バンドの存在は、ceDNAベクターの存在に特有である。
【0482】
単離されたceDNAベクターの構造を、共感染Sf9細胞から得られたDNA(本明細書に記載されるように)を、制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、a)ceDNAベクター内の単一切断部位のみの存在、及びb)0.8%変性アガロースゲル(>800bp)上で分画したときに明らかに見えるほど十分に大きい、得られる断片について更に分析した。図4D及び図4Eに示されるように、非連続的な構造を有する直鎖状DNAベクター及び直鎖状で連続的な構造を有するceDNAベクターは、それらの反応産物のサイズによって区別することができ、例えば、非連続的な構造を有するDNAベクターは、1kb及び2kb断片を産生することが期待されるが、連続的な構造を有する非カプシド化ベクターは、2kb及び4kb断片を産生することが期待される。
【0483】
したがって、定義によって必要とされるように、単離されたceDNAベクターが共有結合性閉端であることを定性的に実証するために、試料を、特定のDNAベクター配列の文脈において、単一制限部位を有すると同定された制限エンドヌクレアーゼで消化させ、好ましくは、等しくないサイズ(例えば、1000bp及び2000bp)の2つの切断産物をもたらす。変性ゲル(2つの相補的DNA鎖を分離する)上の消化及び電気泳動に続いて、直鎖状の非共有結合的閉鎖状DNAは、2つのDNA鎖が連結され、展開されて2倍の長さである場合(但し、一本鎖である)、1000bp及び2000bpのサイズで溶解するが、共有結合的閉鎖状DNA(すなわち、ceDNAベクター)は、2倍サイズ(2000bp及び4000bp)で溶解するであろう。更に、DNAベクターの単量体、二量体、及びn量体形態の消化は、多量体DNAベクターの末端間連結に起因して、同じサイズの断片として全て溶解する(図4Dを参照されたい)。
【0484】
本明細書で使用される場合、「未変性ゲル及び変性条件下でのアガロースゲル電気泳動によるDNAベクターの特定のためのアッセイ」という語句は、制限エンドヌクレアーゼ消化に続いて、消化産物の電気泳動的評価を実施することによって、ceDNAの閉端性を評価するためのアッセイを指す。1つのそのような例示的アッセイを以下に示すが、当業者であれば、この実施例に関する当該技術分野において既知の多くの変形が可能であることを理解するであろう。およそ1/3倍及び2/3倍のDNAベクター長の産物を生成するであろう目的のceDNAベクターに対する単一切断酵素であるように、制限エンドヌクレアーゼが選択される。これは、未変性ゲル及び変性ゲルの両方でバンドを溶解する。変性前に、試料から緩衝液を取り除くことが重要である。Qiagen PCRクリーンアップキット又は脱塩「スピンカラム」、例えば、GE HEALTHCARE ILUSTRA(商標)MICROSPIN(商標)G-25カラムは、エンドヌクレアーゼ消化のための当該技術分野において既知のいくつかのオプションである。アッセイは、例えば、i)DNAを適切な制限エンドヌクレアーゼで消化すること、2)例えば、Qiagen PCRクリーンアップキットに適用し、蒸留水で溶出すること、iii)10倍変性溶液(10倍=0.5M NaOH、10mM EDTA)を添加し、10倍色素を添加し、緩衝せず、10倍変性溶液を、1mM EDTA及び200mM NaOHで以前にインキュベーションされた0.8~1.0%ゲル上で4倍に添加することによって調製されたDNAラダーと一緒に分析して、NaOH濃度が、ゲル及びゲルボックス中で均一であり、1倍変性溶液(50mM NaOH、1mM EDTA)の存在下でゲルを流動させることを保証することを含む。当業者であれば、サイズ及び所望のタイミングの結果に基づいて、電気泳動を実行するために使用する電圧を理解するであろう。電気泳動後に、ゲルを排出し、1倍TBE又はTAE中で中和し、蒸留水又は1倍SYBR Goldを含む1倍TBE/TAEに移す。次いで、例えば、Thermo FisherのSYBR(登録商標)Gold核酸ゲル染料(DMSO中10,000倍濃縮物)及び落射蛍光灯(青色)又はUV(312nm)を用いてバンドを可視化することができる。
【0485】
生成されたceDNAベクターの純度は、任意の当該技術分野において既知の方法を使用して評価され得る。1つの例示的な非限定的方法として、試料の全体UV吸光度に対するceDNA-プラスミドの寄与は、ceDNAベクターの蛍光強度を標準と比較することによって推定され得る。例えば、UV吸光度に基づいて、4μgのceDNAベクターをゲル上に充填し、ceDNAベクター蛍光強度が、1μgであることが知られている2kbバンドに相当する場合、1μgのceDNAベクターが存在し、ceDNAベクターは、全UV吸光材料の25%である。次いで、ゲル上のバンド強度を、バンドが表す計算されたインプットに対してプロットする。例えば、全ceDNAベクターが8kbであり、切除された比較バンドが2kbである場合、バンド強度は、全インプットの25%としてプロットされ、この場合、1.0μgのインプットに対して0.25μgとなる。ceDNAベクタープラスミドタイトレーションを使用して、標準曲線をプロットする場合、回帰直線等式を使用して、ceDNAベクターバンドの量を計算し、次いで、これを使用して、ceDNAベクターにより表される全インプットのパーセント、又は純度パーセントを決定することができる。
【0486】
比較目的のため、実施例1は、昆虫細胞ベースの方法及びポリヌクレオチド構築物テンプレートを使用するceDNAベクターの産生を記載し、また参照により全体が本明細書に組み込まれるPCT/US18/49996の実施例1にも記載される。例えば、実施例1に従って本開示のceDNAベクターを生成するために使用されるポリヌクレオチド構築物テンプレートは、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルスであり得る。理論に限定されるものではないが、許容宿主細胞中、例えば、Repの存在下、2つの対称ITR(ITRのうちの少なくとも1つが、野生型ITR配列に対して修飾されている)及び発現構築物を有するポリヌクレオチド構築物テンプレートは、ceDNAベクターを産生するように複合する。ceDNAベクター産生は、第1の、テンプレート骨格(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルスゲノムなど)からのテンプレートの切除(「レスキュー」)、及び第2の、切除したceDNAベクターのRep媒介型複製の2つのステップを経る。
【0487】
昆虫細胞を使用する方法でceDNAベクターを産生するための例示的な方法は、本明細書に記載されるceDNA-プラスミドに由来する。図1A及び図1Bを参照すると、ceDNA-プラスミドの各々のポリヌクレオチド構築物テンプレートは、左修飾型ITR及び右修飾型ITRの両方を含み、ITR配列間に以下を有する:(i)エンハンサー/プロモーター;(ii)導入遺伝子のクローニング部位;(iii)転写後応答エレメント例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE));及び(iv)ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモン遺伝子(BGHpA)由来)。固有の制限エンドヌクレアーゼ認識部位(R1~R6)(図1A及び図1Bに示される)もまた、各構成成分の間に導入され、構築物中の特定部位への新たな遺伝子構成成分の導入を促進した。R3(PmeI)GTTTAAAC(配列番号123)及びR4(PacI)TTAATTAA(配列番号124)酵素部位は、導入遺伝子のオープンリーディングフレームを導入するために、クローニング部位の中で操作される。これらの配列を、ThermoFisher Scientificから取得したpFastBac HT Bプラスミドにクローニングした。
【0488】
ceDNA-バクミドの産生:
DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞、Thermo Fisher)を、製造元の指示によるプロトコルに従って、試験プラスミド又は制御プラスミドのいずれかで形質転換した。DH10Bac細胞中のプラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えceDNA-バクミドを生成した。バクミド及びトランスポサーゼプラスミドの形質転換体及び維持のために選択する抗生物質とともに、X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニングに基づいて(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)正の選択をスクリーニングすることによって、組換えバクミドを選択した。β-ガラクトシダーゼ指標遺伝子を妨害する転位によって引き起こされる白色コロニーを採取し、10mlの培地中で培養した。
【0489】
組換えceDNA-バクミドを、E.coliから単離し、FugeneHDを使用してSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。付着したSf9又はSf21昆虫細胞を、25℃のT25フラスコ中の50mLの培地で培養した。4日後、培養培地(P0ウイルスを含有する)を細胞から取り除き、0.45μmフィルターで濾過し、感染性バキュロウイルス粒子を細胞又は細胞残屑から分離した。
【0490】
任意選択的に、第1世代のバキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって50~500mlの培地中で増幅させた。オービタルシェーカー培養器内の懸濁液培養物中の細胞を、130rpm、25℃で維持し、細胞が(14~15nmのナイーブ直径から)18~19nmの直径及び約4.0E+6細胞/mLの密度に到達するまで、細胞直径及び生存率をモニタリングした。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離後に採取し、細胞及び残屑を除去した後、0.45μmフィルターで濾過した。
【0491】
試験構築物を含むceDNA-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性又は力価を決定した。具体的には、2.5E+6細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、25~27℃でインキュベートした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日決定した。
【0492】
「Rep-プラスミド」は、Rep78(配列番号131若しくは133)又はRep68(配列番号130)及びRep52(配列番号132)又はRep40(配列番号129)の両方を含むpFASTBAC(商標)二重発現ベクター(ThermoFisher)において産生された。Rep-プラスミドを、製造元によって提供されるプロトコルに従って、DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞(Thermo Fisher)中に形質転換した。DH10Bac細胞中のRep-プラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えバクミド(「Rep-バクミド」)を生成した。X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニング(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)を含む正の選択によって、組換えバクミドを選択した。単離された白色コロニーを採取し、10mlの選択培地(LBブロス中のカナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン)中に播種した。組換えバクミド(Rep-バクミド)をE.coliから単離し、Rep-バクミドをSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。
【0493】
Sf9又はSf21昆虫細胞を、50mlの培地中で4日間培養し、感染性組換えバキュロウイルス(「Rep-バキュロウイルス」)を、培養物から単離した。任意選択的に、第1世代のRep-バキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって増幅させ、50~500mlの培地中で培養した。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離によって細胞を分離するか、又は濾過若しくは別の分画プロセスのいずれかによって収集した。Rep-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性を決定した。具体的には、2.5×10細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、インキュベーションした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日決定した。
【0494】
ceDNAベクター生成及び特徴付け
次いで、(1)ceDNA-バクミド又はceDNA-バキュロウイルスを含有する試料、及び(2)上記のRep-バキュロウイルスのいずれかを含有するSf9昆虫細胞培養培地を、Sf9細胞(2.5E+6細胞/ml、20ml)の新鮮な培養物に、それぞれ1:1000及び1:10,000の比で添加した。次いで、細胞を25℃、130rpmで培養した。同時感染の4~5日後に、細胞の直径及び生存率が検出される。生存率が約70~80%で細胞直径が18~20nmに到達した場合、細胞培養物を遠心分離し、培地を取り除き、細胞ペレットを回収した。最初に、細胞ペレットを、適量の水性培地(水又は緩衝液のいずれか)に再懸濁する。ceDNAベクターを単離し、Qiagen MIDI PLUS(商標)精製プロトコル(Qiagen、カラム当たり0.2mgの処理された細胞ペレット質量)を使用して、細胞から精製した。
【0495】
Sf9昆虫細胞から産生及び精製されるceDNAベクターの収率は、最初に、260nmでのUV吸光度に基づいて判定された。精製されたceDNAベクターは、実施例5に記載される電気泳動方法論を使用して、適切な閉端構成について評価され得る。
【0496】
実施例2:二本鎖DNA分子からの切除による合成ceDNA産生
ceDNAベクターの合成産生は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2019年1月18日に出願された国際特許出願第PCT/US19/14122号の実施例2~6に記載される。二本鎖DNA分子の切除を伴う合成方法を使用してceDNAベクターを産生する1つの例示的な方法。簡潔には、ceDNAベクターは、二本鎖DNA構築物を使用して生成され得る。例えば、国際特許出願第PCT/US19/14122号の図7A~8Eを参照されたい。いくつかの実施形態によれば、二本鎖DNA構築物はceDNAプラスミドであり、例えば、2018年12月6日に出願された国際特許出願第PCT/US2018/064242号の図6を参照されたい)。
【0497】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターを作製するための構築物は、本明細書に記載される調節スイッチを含む。
【0498】
例示の目的のため、実施例2は、この方法を使用して生成された例示的な閉端DNAベクターとして、ceDNAベクターを産生することを説明する。しかしながら、この実施例では、ITR及び発現カセット(例えば、核酸配列)を含む二本鎖ポリヌクレオチドの切除に続いて、本明細書に記載される遊離3’及び5’末端のライゲーションによって閉端DNAベクターを生成するインビトロ合成産生方法を例証するためにceDNAベクターが例示されているが、当業者は、上で例証されるように、ドギーボーンDNA、ダンベルDNAなどを含むが、これらに限定されない任意の所望の閉端DNAベクターが生成されるように、二本鎖DNAポリヌクレオチド分子を修飾できることを認識する。実施例2に記載される合成産生方法により産生され得る抗体又は融合タンパク質の産生のための例示的なceDNAベクターは、「III ceDNAベクター全般」と題されたセクションで論じられている。ceDNAベクターによって発現される例示的な抗体及び融合タンパク質は、「IIC ceDNAベクターによって発現される例示的な抗体及び融合タンパク質」と題されたセクションに記載される。
【0499】
本方法は、(i)二本鎖DNA構築物から発現カセットをコードする配列を切除することと、(ii)ITRのうちの1つ以上でヘアピン構造を形成することと、(iii)ライゲーションによって、例えば、T4 DNAリガーゼによって遊離5’及び3’末端を結合することと、を伴う。
【0500】
二本鎖DNA構築物は、5’から3’への順に、第1の制限エンドヌクレアーゼ部位、上流ITR、発現カセット、下流ITR、及び第2の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む。次いで、二本鎖DNA構築物を1つ以上の制限エンドヌクレアーゼと接触させて、制限エンドヌクレアーゼ部位の両方で二本鎖切断を生成する。1つのエンドヌクレアーゼが両方の部位を標的とすることも、制限部位がceDNAベクターテンプレート内に存在しない限り、各部位を異なるエンドヌクレアーゼによって標的とすることもできる。これにより、制限エンドヌクレアーゼ部位の間の配列が、残りの二本鎖DNA構築物から切除される(国際特許出願第PCT/US19/14122号の図9を参照されたい)。ライゲーションすると、閉端DNAベクターが形成される。
【0501】
この方法で使用されるITRの一方又は両方は、野生型ITRであり得る。修飾型ITRが使用されてもよく、ここで修飾は、B及びB’アーム並びに/又はC及びC’アームを形成する配列における野生型ITRからの1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換を含み得(例えば、国際特許出願第PCT/US19/14122号の図6~8及び10、図11Bを参照されたい)、2つ以上のヘアピンループ(例えば、国際特許出願第PCT/US19/14122号の図6~8、図11Bを参照されたい)又は単一のヘアピンループ(例えば、国際特許出願第PCT/US19/14122号の図10A~10B、図11Bを参照されたい)を有し得る。ヘアピンループ修飾型ITRは、既存のオリゴの遺伝子修飾によって、又は新規の生物学的合成及び/若しくは化学的合成によって生成され得る。
【0502】
非限定的な例では、ITR-6左及び右(配列番号111及び112)は、AAV2の野生型ITRからのB-B’及びC-C’アームに40ヌクレオチドの欠失を含む。修飾型ITRに残っているヌクレオチドは、単一のヘアピン構造を形成すると予測される。構造を展開するGibbs自由エネルギーは、約-54.4kcal/molである。機能的Rep結合部位又はTrs部位の任意の欠失を含む、ITRへの他の修飾を行うこともできる。
【0503】
実施例3:オリゴヌクレオチドの構築によるceDNAの産生
様々なオリゴヌクレオチドの構築を伴う合成方法を使用してceDNAベクターを産生する別の例示的な方法は、国際特許出願第PCT/US19/14122号の実施例3に提供されており、ceDNAベクターは、5’オリゴヌクレオチド及び3’ITRオリゴヌクレオチドを合成し、ITRオリゴヌクレオチドを、発現カセットを含む二本鎖ポリヌクレオチドにライゲーションすることによって産生される。国際特許出願第PTC/US19/14122号の図11Bは、5’ITRオリゴヌクレオチド及び3’ITRオリゴヌクレオチドを、発現カセットを含む二本鎖ポリヌクレオチドにライゲーションする例示的な方法を示す。
【0504】
本明細書に開示されるように、ITRオリゴヌクレオチドは、WT-ITR(例えば、図3A図3Cを参照されたい)、又は修飾型ITR(例えば、図3B及び図3Dを参照されたい)を含み得る。(例えば、国際特許出願第PCT/US19/14122号(その全体が本明細書に組み込まれる)の図6A図6B図7A、及び図7Bも参照されたい)。例示的なITRオリゴヌクレオチドには、限定されないが、配列番号134~145が含まれる(例えば、国際特許出願第PCT/US19/14122号の表7を参照)。修飾型ITRは、B及びB’アーム並びに/又はC及びC’アームを形成する配列における野生型ITRからの1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換を含み得る。無細胞合成で使用される、本明細書に記載されるWT-ITR又はmod-ITRを含むITRオリゴヌクレオチドは、遺伝子修飾又は生物学的及び/若しくは化学的合成によって生成することができる。本明細書で論じられるように、実施例2及び3のITRオリゴヌクレオチドは、本明細書で論じられるように、対称又は非対称構成のWT-ITR又は修飾型ITR(mod-ITR)を含み得る。
【0505】
実施例4:一本鎖DNA分子によるceDNA産生
合成方法を使用してceDNAベクターを産生する別の例示的な方法は、国際特許出願第PCT/US19/14122号の実施例4において提供され、センス発現カセット配列に隣接しアンチセンス発現カセットに隣接する2つのアンチセンスITRに共有結合的に結合される2つのセンスITRを含む一本鎖の直鎖状DNAを使用し、次いで、この一本鎖の直鎖状DNAの末端をライゲーションして、閉端一本鎖分子を形成する。非限定的な一例は、一本鎖DNA分子を合成及び/又は産生し、分子の一部をアニーリングして、二次構造の1つ以上の塩基対合領域を有する単一の直鎖状DNA分子を形成し、次いで遊離5’及び3’末端を互いにライゲーションして、閉鎖状一本鎖分子を形成する。
【0506】
ceDNAベクターの産生のための例示的な一本鎖DNA分子は、5’から3’に、
センス第1のITR、
センス発現カセット配列、
センス第2のITR、
アンチセンス第2のITR、
アンチセンス発現カセット配列、及び
アンチセンス第1のITRを含む。
【0507】
実施例4の例示的な方法で使用するための一本鎖DNA分子は、本明細書に記載される任意のDNA合成方法論、例えば、インビトロDNA合成によって形成され得るか、又はヌクレアーゼでDNA構築物(例えば、プラスミド)を切断し、得られたdsDNA断片を融解して、ssDNA断片を提供することによって提供され得る。
【0508】
アニーリングは、センス配列及びアンチセンス配列の対の計算された融解温度を下回って温度を下げることによって達成され得る。融解温度は、特定のヌクレオチド塩基含有量、及び使用している溶液の特性、例えば、塩濃度に依存する。任意の所与の配列及び溶液の組み合わせの融解温度は、当業者によって容易に計算される。
【0509】
アニーリングされた分子の遊離5’及び3’末端は、互いにライゲーションされるか、又はヘアピン分子にライゲーションされてceDNAベクターを形成することができる。好適な例示的ライゲーション方法論及びヘアピン分子は、実施例2及び3に記載される。
【0510】
実施例5:ceDNAの精製及び/又は産生の確認
例えば、実施例1に記載される昆虫細胞ベースの産生方法、又は実施例2~4に記載される合成産生方法を含む、本明細書に記載される方法によって産生されたDNAベクター産物のいずれも、例えば、熟練者に一般に知られている方法を使用して、不純物、未使用の構成成分、又は副産物を除去するために精製することができ、かつ/又は分析して、産生されたDNAベクター(この例では、ceDNAベクター)が所望の分子であることを確認することができる。DNAベクター、例えばceDNAの精製のための例示的な方法は、Qiagen Midi Plus精製プロトコル(Qiagen)を使用すること及び/又はゲル精製によるものである。
【0511】
以下は、ceDNAベクターの同一性を確認するための例示的な方法である。
【0512】
ceDNAベクターは、図4Dに例示されるような未変性条件又は変性条件下で、アガロースゲル電気泳動によって同定することによって評価することができ、(a)制限エンドヌクレアーゼ切断及びゲル電気泳動分析後の、未変性ゲルに対して変性ゲル上で2倍のサイズで移行する特徴的なバンドの存在、並びに(b)未切断材料の変性ゲル上の単量体及び二量体(2x)バンドの存在は、ceDNAベクターの存在に特有である。
【0513】
単離されたceDNAベクターの構造を、精製されたDNAを、選択された制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、a)ceDNAベクター内の単一切断部位のみの存在、及びb)0.8%変性アガロースゲル(>800bp)上で分画した場合に明らかに見えるほど十分に大きな、得られる断片について更に分析した。図4C及び図4Dに示されるように、非連続的な構造を有する直鎖状DNAベクター及び直鎖状かつ連続的な構造を有するceDNAベクターは、それらの反応産物のサイズによって区別することができ、例えば、非連続的な構造を有するDNAベクターは、1kb及び2kb断片を産生することが期待されるが、連続的な構造を有するceDNAベクターは、2kb及び4kb断片を産生することが期待される。
【0514】
したがって、定義によって必要とされるように、単離されたceDNAベクターが共有結合性閉端であることを定性的に実証するために、試料を、特定のDNAベクター配列の文脈において、単一制限部位を有すると同定された制限エンドヌクレアーゼで消化させ、好ましくは、等しくないサイズ(例えば、1000bp及び2000bp)の2つの切断産物をもたらす。変性ゲル(2つの相補的DNA鎖を分離する)上の消化及び電気泳動に続いて、直鎖状の非共有結合的閉鎖状DNAは、2つのDNA鎖が連結され、展開されて2倍の長さである場合(但し、一本鎖である)、1000bp及び2000bpのサイズで溶解するが、共有結合的閉鎖状DNA(すなわち、ceDNAベクター)は、2倍サイズ(2000bp及び4000bp)で溶解するであろう。更に、DNAベクターの単量体、二量体、及びn量体形態の消化は、多量体DNAベクターの末端間連結に起因して、同じサイズの断片として全て溶解する(図4Eを参照されたい)。
【0515】
本明細書で使用される場合、「未変性ゲル及び変性条件下でのアガロースゲル電気泳動によるDNAベクターの特定のためのアッセイ」という語句は、制限エンドヌクレアーゼ消化に続いて、消化産物の電気泳動的評価を実施することによって、ceDNAの閉端性を評価するためのアッセイを指す。1つのそのような例示的アッセイを以下に示すが、当業者であれば、この実施例に関する当該技術分野において既知の多くの変形が可能であることを理解するであろう。およそ1/3倍及び2/3倍のDNAベクター長の産物を生成するであろう目的のceDNAベクターに対する単一切断酵素であるように、制限エンドヌクレアーゼが選択される。これは、未変性ゲル及び変性ゲルの両方でバンドを溶解する。変性前に、試料から緩衝液を取り除くことが重要である。Qiagen PCRクリーンアップキット又は脱塩「スピンカラム」、例えば、GE HEALTHCARE ILUSTRA(商標)MICROSPIN(商標)G-25カラムは、エンドヌクレアーゼ消化のための当該技術分野において既知のいくつかのオプションである。アッセイは、例えば、i)DNAを適切な制限エンドヌクレアーゼで消化すること、2)例えば、Qiagen PCRクリーンアップキットに適用し、蒸留水で溶出すること、iii)10倍変性溶液(10倍=0.5M NaOH、10mM EDTA)を添加し、10倍色素を添加し、緩衝せず、10倍変性溶液を、1mM EDTA及び200mM NaOHで以前にインキュベーションされた0.8~1.0%ゲル上で4倍に添加することによって調製されたDNAラダーと一緒に分析して、NaOH濃度が、ゲル及びゲルボックス中で均一であり、1倍変性溶液(50mM NaOH、1mM EDTA)の存在下でゲルを流動させることを保証することを含む。当業者であれば、サイズ及び所望のタイミングの結果に基づいて、電気泳動を実行するために使用する電圧を理解するであろう。電気泳動後に、ゲルを排出し、1倍TBE又はTAE中で中和し、蒸留水又は1倍SYBR Goldを含む1倍TBE/TAEに移す。次いで、例えば、Thermo FisherのSYBR(登録商標)Gold核酸ゲル染料(DMSO中10,000倍濃縮物)及び落射蛍光灯(青色)又はUV(312nm)を用いてバンドを可視化することができる。前述のゲルベースの方法は、ceDNAベクターをゲルバンドから単離し、それを復元できるようにすることによって、精製目的に適合させることができる。
【0516】
生成されたceDNAベクターの純度は、任意の当該技術分野において既知の方法を使用して評価され得る。1つの例示的な非限定的方法として、試料の全体UV吸光度に対するceDNA-プラスミドの寄与は、ceDNAベクターの蛍光強度を標準と比較することによって推定され得る。例えば、UV吸光度に基づいて、4μgのceDNAベクターをゲル上に充填し、ceDNAベクター蛍光強度が、1μgであることが知られている2kbバンドに相当する場合、1μgのceDNAベクターが存在し、ceDNAベクターは、全UV吸光材料の25%である。次いで、ゲル上のバンド強度を、バンドが表す計算されたインプットに対してプロットする。例えば、全ceDNAベクターが8kbであり、切除された比較バンドが2kbである場合、バンド強度は、全インプットの25%としてプロットされ、この場合、1.0μgのインプットに対して0.25μgとなる。ceDNAベクタープラスミドタイトレーションを使用して、標準曲線をプロットする場合、回帰直線等式を使用して、ceDNAベクターバンドの量を計算し、次いで、これを使用して、ceDNAベクターにより表される全インプットのパーセント、又は純度パーセントを決定することができる。
【0517】
実施例6:LNP:DNA製剤の、雌BALB/cマウスにおける筋肉内(IM)投与後の抗スパイク抗体応答を評価するための調査
本研究の目的は、LNP:DNA製剤を筋肉内(IM)注射した後の抗スパイクタンパク質抗体の応答を評価することであった。研究設計及び詳細は、以下に示すように行われた。
【0518】
研究設計
表13は、研究の設計を示す。SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗原を、ceDNAベクター、プラスミドDNA、又はmRNAのいずれかとして送達した。試験材料を、30μL/動物の用量体積中、3μg又は10μgの用量レベルで10群のマウス(n=5)に投与した。第1群及び第12群を対照として用いた。以下の表に示すように、IM注射によって投薬を行った。49日目は研究の最終時点であった。
【0519】
【表13】
No.=番号an=動物;IM=筋肉内;ROA=投与経路、
【0520】
試験系
試験系は以下の通りである:
種:マウス
系統:Balb/cマウス。
雌の数:60個体プラス予備3個体
齢:到着時7週齢
供給元:Charles River Laboratories
【0521】
ハウジング:動物を、処置室内の接触床敷を備えた透明なポリカーボネートケージに集団で収容した。
【0522】
食物と水:動物には、Mouse Diet 5058、及び2.5~3.0の目標pHに1NのHClで酸性化された濾過水道水が、自由に提供された。
【0523】
試験材料
化合物のクラス:組換えDNAベクター:ceDNA;核酸ベースの生物製剤(合成):pDNA及びmRNA。
【0524】
用量処方:試験物品は濃縮ストックで供給された。試験品の濃度を受領時に記録した。
【0525】
ストックを室温まで温め、必要に応じて使用直前に、付属のPBSで希釈した。投与がすぐに実施されない場合、調製された材料を約4℃で保存した。
【0526】
被験物質の投与:被験物質及び対照物質を、第1、3、4、5、8~12群については0日目及び28日目に、第2、6、及び7群については28日目のみに、動物1匹あたり30μLで、左腓腹筋への筋肉内投与によって投与した。投与の手順を実施するため、動物を吸入イソフルランで麻酔した。
【0527】
残留物質:全ての残留オープンストックを、将来の投与のために冷蔵して保持した。希釈された用量物質は、用量投与の完了後に廃棄した。
【0528】
インライフ観察及び測定
ケージサイドからの観察(動物の健康チェック):ケージサイドからの動物の健康チェックは少なくとも1日1回行われ、一般的な健康、死亡率、及び瀕死状態がチェックされた。
【0529】
臨床観察:臨床観察並びに注射部位観察を、0日目及び28日目の試験材料投与の約1時間後、約5~6時間後及び約24時間後、2日後及び3日後に実施した。
【0530】
体重:全ての動物の体重を、0、1、2、3、7、11、14、21、28、29、30、31、35、39、42、及び49日目(安楽死前)に記録した。要求に応じて、追加の体重を記録した。
【0531】
存命中の画像化:4、11、21、39、及び49日目に、第10~12群の動物に、2.5mL/kgの腹腔内(intraperitoneal、IP)注射により150mg/kg(60mg/mL)のルシフェリンを投与した。各ルシフェリン投与後15分以内に;全ての動物は、本明細書に記載のIVISイメージングセッションを受けた。肝臓が標的器官であったので、画像のために動物を背臥位に置いた。
【0532】
麻酔と回復:麻酔下の間、回復中、及び移動するまで、試験施設の標準的な作業手順にしたがって、動物を継続的にモニタリングした。
【0533】
血液採取
以下の表14に示すように、第1、3、4、5、8~12群のすべての動物は、11日目、21日目及び39日目に暫定血液を採取し、第2、6、及び7群の動物は、39日目に暫定血液を採取した。
【0534】
全ての動物は、血清用に全血を採取された。
【0535】
血清のための全血を眼窩又は尾部採取によって採取した。全血は、凝固活性剤チューブを備えた血清分離器に収集され、施設のSOP毎に1つの血清アリコートに処理された。
【0536】
全ての試料を、ドライアイス上で、輸送されるまで、名目温度-70℃で保存した。
【0537】
【表14】
全血を、凝固活性剤を入れた血清分離チューブに収集した
【0538】
各収集後、動物は0.5~1.0mLの乳酸リンゲル液を皮下投与された。
【0539】
血清用の全血を伏在静脈より採取した。全血は、凝固活性剤チューブを備えた血清分離器に収集され、1つの血清アリコートに処理された。
【0540】
全ての試料を、ドライアイス上で、輸送されるまで、名目温度-70℃で保存した。
【0541】
麻酔の回復:該当する場合、麻酔下の間、回復中、及び移動するまで、動物を継続的にモニタリングした。
【0542】
最終手順及び収集
【0543】
【表15】
MOV=取得可能な最大容量
全血を血清分離チューブに収集し、凝固活性剤を添加した
【0544】
【表16】
終末血液:第1~12群では、49日目に、予定された時点の前に安楽死させた瀕死の動物から終末血液を採取した。全ての動物に対し、全血を、凝固活性剤チューブを備えた血清分離器に採取し、施設の標準的作業手順に従って、4つのアリコートの血清に処理した。全ての試料を、ドライアイス上で、輸送されるまで、名目温度-70℃で保存した。
【0545】
終末組織:第1~9群については、脾臓を採取し秤量した。Miltenyi Dissociation Kitを、試験施設のプロトコルに従って使用して、脾臓を脾細胞に加工した。処理後、脾臓を計数し、ペレット化し、再懸濁させた。収率及び解離細胞生存率を記録した。最大6000万個の細胞を、細胞培養凍結培地(Gibco#12648010)中の懸濁液として、1mL当たり最大1000万個の細胞で凍結した。細胞を、ドライアイス上で、輸送されるまで、名目上の温度-70℃で保存した。
【0546】
結果
図6は、試験の中間21日目及び49日目のエンドポイントで決定されたスパイクタンパク質抗体力価を示す。市販のCOVID-19ワクチンを表すmRNA構築物を、スパイクタンパク力価の比較のためのベンチマークとして使用した。図6に示すように、ceDNAを用いた場合のスパイクタンパク質Ab力価は、ceDNAの用量がmRNAの用量よりも3倍低い場合であっても、マウスにおけるmRNAベンチマークの約10倍以内であった。図7は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗原をコードするceDNAで処置したBalb/cマウス群で見られた検出可能な中和動態を示す。
【0547】
インビボでの画像化プロトコル(IVIS)
材料:
ルシフェリン投与に適したシリンジ
ルシフェリン投与のための適切なデバイス及び/又はシリンジ
ホタルルシフェリン
PBS
pHメーター又は同等物
5MのNaOH
5MのHCl
K/X麻酔薬又はイソフルラン
【0548】
手順:
ルシフェリンの調製
ルシフェリンストック粉末を、名目温度-20℃で保存する。製剤化されたルシフェリンを、1mLのアリコートで、光から保護して、2~8℃で保存する。製剤化されたルシフェリンは、光から保護すると、2~8℃では、最大3週間安定であり、室温(RT)では、約12時間安定である。
【0549】
ルシフェリンをPBSに十分な容量で60mg/mLの目標濃度に溶解し、必要に応じて5MのNaOH(約0.5μl/mgルシフェリン)及びHCl(約0.5μL/mgルシフェリン)でpH=7.4に調整する。
【0550】
少なくとも50%の超過分を含め、プロトコルに従って適切な量を調製する。
【0551】
注射及び画像化(注:一度に最大5匹の動物を画像化できる)
動物の被毛を剃る(必要に応じて)。プロトコルに従って、腹腔内を介して60mg/mLのPBS中の150mg/kgのルシフェリンを注射する。画像化は、投与直後又は投与後最大15分実施できる。画像化中に動物を麻酔するために、イソフルラン気化器を1~3%(通常は2.5%)に設定する。
画像化セッション用のイソフルラン麻酔:動物をイソフルランチャンバーに入れ、イソフルランが効果を発揮するまで約2~3分待つ。IVIS機器の側面の麻酔レベルが「オン」の位置にあることを確認する。動物をIVIS機器に入れ、ドアを閉める。IVISコンピューターにログインし、所望の取得プロトコルを開く。最高の感度を得るために推奨される取得設定は、Dレベルでのカメラの高さ、f1でのF/ストップ、中解像度でのビニング、及び露出時間を自動にすることである。カメラのコントロールパネルインターフェースで「取得」を押す。取得したすべての画像にラベルを挿入する。画像は保存される。
【0552】
実施例7:カニクイザルにおける筋肉内注射による28日間の免疫原性及び耐薬性試験
この研究の目的は、カニクイザルへの反復投与筋肉内注入後の2つのCOVID-19ワクチン製剤(LNP1及びLNP2)の免疫原性プロファイルを決定すること、及び何らかの知見が潜在的に逆転される可能性を評価することであった。
【0553】
試験材料の識別
使用した試験品は以下の通りである:
【0554】
【表21】
【0555】
【表22】
【0556】
【表23】
【0557】
【表24】
【0558】
【表25】
【0559】
用量製剤
製剤の調製:用量製剤分析を行った。用量製剤を、必要に応じてアリコートに分割して、各投与時に分注できるようにした。
【0560】
【表26】
【0561】
各投与機会からの投与製剤の全ての未使用体積を含む全ての残留体積(最小0.5mL)を、-80℃を維持するように設定された冷凍庫に移し、後にスポンサーに輸送した。
【0562】
調製の詳細
用量投与の日に、バルク試験品及び陽性対照物質を、用量調製の開始前に最低15分間(ただし60分以下)、冷蔵から周囲温度に移した。バルク試験品及び陽性対照材料を、使用前に穏やかに旋回させるか又は穏やかに反転させたすなわち、ボルテックスせず、激しく振盪もしなかった。
【0563】
必要に応じて滅菌ポリプロピレン容器中でバルク試験品及び陽性対照試験物質をビヒクルで希釈することによって、用量レベル要件を満たす適切な濃度で、バイオセーフティキャビネット中において投与製剤を調製した。投与製剤は濾過しなかった。投与製剤の物理的外観を希釈後に記録した。投薬製剤の全ての未使用体積を含む残りの投薬製剤を、各投薬後に保持し、-80℃を維持するように設定された冷凍庫内に保存し、そこでそれらを、将来濃度分析が必要になった時のために維持した。
【0564】
投与は、調製終了から4時間以内に完了した。全ての残りのバルク試験品、陽性対照試験材料、及びビヒクル(複数可)を、投薬の完了後、スポンサーへの出荷まで、-80℃での保存に戻した。
【0565】
試験系
種:カニクイザル(Macaca fascicularis)
動物スクリーニング
方法:研究に使用した全ての動物は、1回の結核(TB)試験(陰性)を確認するための文書を有していた。必要に応じて追加のTB試験を行った。
【0566】
動物の同定
方法:入れ墨及び/又は皮下に埋め込まれた電子識別チップ
【0567】
環境順応
方法:動物を、投薬の開始前に少なくとも2週間、実験室ハウジングに順応させた。
【0568】
動物の選択、割り当て、置き換え、及び処分
選択及び割り当て:動物を無作為化し、試験に移す前にコンピュータベースの手順を使用して群に割り当てた。健康状態が悪い動物又は極端な体重範囲の動物は群に割り当てなかった。
【0569】
置換:投薬の開始前に、研究における使用に不適切であると考えられる任意の割り当てられた動物を、代替の動物によって置き換えた。投薬の開始後、試験動物は、不慮の損傷、試験品に関連しない健康課題、又は同様の状況の場合に、代替動物との置き換え期間中に置き換えられ得る。代替動物は、3日以内の研究において置換個体として使用され得る。一般的な生存中の評価には、試験から解放されるまで交換用の動物を含めた。
【0570】
処分:全ての動物の処分を研究記録に記録した。
【0571】
飼育
ハウジング:
ハウジング:集団で収容した(同じ投与群の最大3匹の動物を一緒に収容した)。
【0572】
ケージ:メッシュ床を有するステンレス鋼ケージ。
【0573】
ケージ識別:研究、群、動物/入れ墨番号(複数可)、及び性別を示す印をつける。
【0574】
ハウジングの設定は、USDA Animal Welfare Act(Code of Federal Regulations,Title 9)に規定されており、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(NRC,Current Edition)に記載されている。動物は、指定された手順/活動の間に、又は研究責任者及び/若しくは臨床獣医によって適切であるとみなされるモニタリング及び/若しくは健康目的のために必要に応じて分離された。動物が飼育された部屋(複数可)を研究記録に記録した。
【0575】
動物の状態の向上
集団で収容された動物に、デバイス(例えば、玩具)などの心理的強化を提供した。また、少量の果実、穀類又は他のおやつを時々動物に与えてもよい。
【0576】
オペラント条件付け及び所望の行動を促進するための報酬及び手段として、必要とみなした場合には、研究の継続期間にわたって、各動物に、おやつを、研究関連手順(例えば、投薬又はサンプル収集)後に与えてもよい。
【0577】
環境条件
動物部屋の環境の目標条件は以下の通りであった:
【0578】
温度:64°F~84°F(18℃~29℃)。
【0579】
湿度:30%~70%
【0580】
光サイクル:12時間は明るくし、12時間は暗くする(指定された手順の間を除く)。
【0581】
換気:100%新鮮空気(再循環なし)で、1時間当たり10回以上の換気を実施。
【0582】
研究の完全性に影響を及ぼし得るアラーム遅延時間枠を超える、温度又は湿度に対するいかなる逸脱も報告された。
【0583】
食品
食餌:PMI Nutrition International認定霊長類食No.5048。
【0584】
食餌には、果実又は野菜を、週に少なくとも2~3回補充した。
【0585】
頻度/割当量:固形飼料は、動物のサイズ及び年齢に適した量で提供された。
【0586】
分析:栄養成分及び環境汚染物質の分析結果は、供給業者によって提供され、試験施設にファイルが保存されている。飼料中には、本研究の目的を妨げる既知の汚染物質は存在しないと考えられる。
【0587】

タイプ:逆浸透及び紫外線照射によって処理された都市水道水。
【0588】
頻度/割当量:自動給水システムを介して、各動物が自由に利用可能である(指定された手順中を除く)。
【0589】
分析:水の定期的な分析を行い、これらの分析の結果をファイルして試験施設に保存する。研究の結果を妨害する既知の汚染物質は水中に存在しないと考えられる。
【0590】
獣医学的ケア
獣医学的ケアは、研究の過程を通して利用可能であり、動物は、臨床徴候又は他の変化によってそれが必要だと思われた場合には、獣医学スタッフによって検査された。
【0591】
【表27】
【0592】
試験物質の投与
投与経路:大腿前部への筋肉内注射。
頻度:1日1回。
期間:1日目及び28日目。
方法:投薬の初日を1日目と呼んだ。用量投与のために動物を一時的に拘束し、鎮静剤は与えなかった。各注射部位に入れ墨又は消えないインクで印をつけ、必要に応じて何度でも印をつけ直した。
【0593】
存命中での手順、観察、及び測定
【0594】
【表28】
【0595】
実験室評価
臨床病理
【0596】
【表29】
【0597】
血液学
【0598】
【表30】
各血液学的試料から血液塗抹標本を調製した。試験責任者による承認後に、動物の健康を評価するために、又は血液分析器の結果を確認するために、必要であれば塗抹標本を検査した。血液塗抹標本の更なる検査が必要であるとみなされた場合、塗抹標本を続いて評価した。
【0599】
臨床化学
【0600】
【表31】
【0601】
中和抗体の収集、処理、及び分析
【0602】
【表32】
試料を遠心分離し、得られた血清を分離し、一意に標識したポリプロピレンチューブ中で5つのほぼ等しいアリコートに分割し、ドライアイス上で、又は-80℃を維持するように設定した冷凍庫中で直ちに凍結した。
【0603】
試料を輸送し、分析まで-70℃以下に維持するように設定された冷凍庫で保存した。試料を中和抗体について分析した。
【0604】
末梢血単核細胞(PBMC)の単離及び凍結保存
【0605】
【表33】
全血試料を、採取から1時間以内に、試験施設の適切な実験室に周囲温度で移した。凍結時のPBMCの標的濃度は、4×10個の細胞/mLであった。
【0606】
PBMCを、試験施設の標準的な操作手順に従って、血液サンプルから単離した。得られたPBMCを、一意に標識したクライオバイアル中の2つのほぼ等しいアリコートに分割した。アリコートを、-80℃を維持するように設定されたフリーザー中で少なくとも24時間凍結保存した。クライオバイアルを72時間以内に-80℃の冷凍庫から液体窒素(-140℃)に移した。
【0607】
試料を輸送し、次いで分析まで液体窒素(-140℃)中で保存した。
【0608】
サイトカインサンプルの収集、処理及び分析
【0609】
【表34】
試料を遠心分離し、得られた血清を分離し、一意に標識したポリプロピレンチューブ中で2つのほぼ等しいアリコートに分割し、ドライアイス上で、又は-80℃を維持するように設定した冷凍庫中で直ちに凍結した。
【0610】
試料を輸送し、分析まで-70℃以下に維持するように設定された冷凍庫で保存した。
【0611】
試料を、Invitrogen社によって供給される適格な市販のキットを使用するマルチプレックスルミネックスアッセイによって、IFN-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-18、及びTNF-αについて二連で分析した。
【0612】
結果
図8は、非ヒト霊長類(カニクイザル)における試験の21日目及び41日目のエンドポイントで決定されたスパイクタンパク質抗体力価を示す。市販のCOVID-19ワクチンを表すmRNA構築物を、スパイクタンパク力価の比較のためのベンチマークとして使用した(100μg/用量)。図8に示すように、ceDNAを用いた場合(30μg/用量)のスパイクタンパク質Ab力価は、ceDNAの用量がmRNAの用量より3倍低い場合であっても、mRNAベンチマークの約10倍以内であった。更に、この実験で決定されたベンチマークの絶対結合力価は、公表された臨床mRNA候補に密接に追従した。全ての用量は良好な耐薬性を示し、注射部位反応及びサイトカインは最小限であった(図示せず)。更に、図8は、相対的結合Ab力価(ceDNA対mRNA)が非ヒト霊長類に翻訳されることを実証している。
【0613】
ceDNA及びmRNA構築物において、検出可能なウイルス中和が確認された。ceDNA群において、追加免疫投与の2週間後である41日目における検出可能な中和は、最初の投与の3週間後である21日目におけるより大きな結合力価と相関しているようであった。
【0614】
実施例8:雌BALB/cマウスにおける、LNP:DNA製剤の筋肉内投与後の抗スパイク抗体応答を評価するための研究:
ceDNAベクターを、上記の実施例1に記載される方法に従って産生した。
【0615】
本研究の目的は、5つの異なるLNPの筋肉内(IM)注射後の抗スパイクタンパク質抗体応答を評価することであった。ceDNA製剤(LNP1~5)。研究設計及び詳細は、以下に示すように行われた。
【0616】
研究設計
表17は、研究の設計を示す。表17に示すように、SARS-CoV-2スパイクタンパク質抗原をコードする核酸を含むceDNAを、30μL/動物の用量体積中3μg又は10μgの用量レベルでマウス(n=5)の7つの群(第2~8群)に投薬した。グループ1を対照とした。投与は、筋肉内(IM)注射によって0日目及び28日目に行った。49日目は研究の最終時点であった。
【0617】
【表17】
No.=番号an=動物;IM=筋肉内;ROA=投与経路、
【0618】
試験系
試験系は以下の通りである。
種:マウス
系統:Balb/cマウス。
雌の数:40個体プラス予備3個体
齢:到着時6週齢
供給元:Charles River Laboratories
【0619】
ハウジング:動物を、処置室内の接触床敷を備えた透明なポリカーボネートケージに集団で収容した。
【0620】
動物には、Mouse Diet 5058、及び2.5~3.0の目標pHに1NのHClで酸性化された濾過水道水が、自由に提供された。
【0621】
試験材料
化合物のクラス:組換えDNAベクター:ceDNA。
【0622】
用量処方:試験物品は濃縮ストックで供給された。試験品濃度を受領時に記録した。
【0623】
ストックを室温まで温め、必要に応じて使用直前に、付属のPBSで希釈した。投与がすぐに実施されない場合、調製された材料を約4℃で保存した。
【0624】
試験材料投与:全ての群、すなわち第1~8群について、0日目及び28日目に、試験物品及び対照物品を動物当たり30μLで投与した。投与は、左腓腹筋への筋肉内投与によって行った。投与の手順を実施するため、動物を、施設の標準的な手順にしたがって、吸入イソフルランで麻酔した。
【0625】
残留物質:全ての残留オープンストックを、将来の投与のために冷蔵して保持した。希釈された用量物質は、用量投与の完了後に廃棄した。
【0626】
インライフ観察及び測定
ケージサイドからの観察(動物の健康チェック):ケージサイドからの動物の健康チェックは少なくとも1日1回行われ、一般的な健康、死亡率、及び瀕死状態がチェックされた。
【0627】
臨床観察:0日目及び28日目(各投与の60~120分後及び仕事時間の終わり(3~6時間後))並びに1日目及び29日目(0日目及び28日目の試験材料投与の22~26時間後)に臨床観察を実施した。
【0628】
体重:すべての動物(残っている動物に該当する)の体重を、0、1、2、3、7、14、21、28、29、30、31、35、42、及び49日目に記録した。要求に応じて、追加の体重を記録した。
【0629】
麻酔と回復:麻酔下の間、回復中、及び移動するまで、試験施設の標準的な作業手順にしたがって、動物を継続的にモニタリングした。
【0630】
血液採取
第1群~第8群の全ての動物は、0日目に、血清用に中間血液採取され;試験材料投与の4~6時間後に、血清用に中間血液採取され、その結果を以下の表18及び表19に示す。
【0631】
第1群~第8群の動物は、21日目に、血清用に中間血液採取された。
【0632】
血清用の全血を伏在静脈より採取した。全血は、凝固活性剤チューブを備えた血清分離器に収集され、施設のSOP毎に1つの血清アリコートに処理された。
【0633】
全ての試料を、ドライアイス上で、輸送されるまで、名目温度-70℃で保存した。
【0634】
【表18】
全血を、凝固活性剤を入れた血清分離チューブに収集した
【0635】
【表19】
全血を、凝固活性剤を入れた血清分離チューブに採取した。
【0636】
各収集後、動物は0.5~1.0mLの乳酸リンゲル液を、皮下に受けた。
【0637】
血清のための全血を、尾静脈ニック、伏在静脈、又は眼窩洞穿刺(吸入イソフルラン下)によって収集した。全血は、凝固活性剤チューブを備えた血清分離器に収集され、各25μLの2つの血清アリコートに処理された。
【0638】
全ての試料を、ドライアイス上で、輸送されるまで、名目温度-70℃で保存した。
【0639】
麻酔の回復:該当する場合、麻酔下の間、回復中、及び移動するまで、動物を継続的にモニタリングした。
【0640】
結果
図9は、試験の21日目及び49日目に決定された、スパイクタンパク質抗体力価を示す。様々なイオン性脂質含有ceDNA製剤(LNP1~5)を試験して、ワクチン製剤中で、特定の脂質が他のものより好ましいかどうかを決定した。図9に示すように、LNP製剤(例えば、LNP3及び4)は、試験した他の脂質製剤(例えば、LNP5)よりも免疫原性が高く、そのことは、ceDNAワクチン製剤において、いくつかの脂質が他のものよりも好まれ得るということを示す。イオン性の脂質と、ceDNAワクチン製剤に実装することができるLNP製剤は、国際特許出願PCT/US2022/025455に例示されており、この出願の全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0641】
参考文献
特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない、本明細書及び本明細書の実施例で引用される全ての刊行物及び参考文献は、あたかも個々の刊行物又は参考文献が、完全に記載されるように参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、それらの全体が参照により組み込まれる。この出願が優先権を主張する任意の特許出願もまた、刊行物及び参考文献について上述した方法で、参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【国際調査報告】