(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
C09K3/00 E
C09K3/00 F ZBP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568571
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022061990
(87)【国際公開番号】W WO2022233941
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523419646
【氏名又は名称】コンポジット プロダクション テクノロジー ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ファン ニムヴェーゲン,ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】デ ヨング,ピーター ジェル
(72)【発明者】
【氏名】ウィレムス,キャスパー ルドルフ ヨハネス
(57)【要約】
本発明は、感水性及び/又は感温性化合物、例えばイソシアネート、の輸送及び貯蔵の為の方法を提供し、ここで、該化合物は、制御された条件下で、貯蔵又は輸送されることができ、容器又はパイプを損傷する危険無しに、該化合物の除去及びその後の洗浄が容易である。この目的の為に、本発明は、液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う方法を対象とする。液体状の感水性及び/又は感温性化合物と接触するところのデバイスの表面に水溶性コーティングが施され、並びに該コーティングは、該デバイスを洗浄する為に水で溶かされる。該水溶性コーティングは好ましくは、ポリビニルアルコールを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う方法であって、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物と接触するところのデバイスの表面に水溶性コーティングが施され、及び前記コーティングが、前記デバイスを洗浄する為に水で溶解される、前記方法。
【請求項2】
液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物が、取り扱い後に、液体状で前記デバイスから除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性コーティングがポリビニルアルコールを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記取り扱いが、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物の輸送、貯蔵、製造及び/又は精製を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物が、イソシアネート、好ましくはメチレンジフェニルジイソシアネート又はトルエンジイソシアネート、である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記デバイスが、容器、タンク、パイプ、バルブ、若しくは取り扱われる前記化合物と接触する任意の他の機能的装置、又はこれらの組み合わせを備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶性コーティングが、該水溶性コーティングを水中に溶かすことによって除去される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記感水性及び感温性化合物と接触していたところの前記表面を洗浄する為に前記水溶性コーティングを溶かす前に、水溶性コーティングが施された前記表面が蒸気で処理される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記感水性及び/又は感温性化合物の前記除去後に残存する破片が、前記水溶性コーティングの前記除去の間に洗い流される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記デバイスに、温度制御手段と、前記取り扱いの間に前記化合物に水が入らないようにする手段が備えられている、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う為のデバイスであって、前記デバイスに、温度制御手段と、前記取り扱いの間に前記化合物に水が入らないようにする手段が備えられており、並びに、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物と接触するところの前記デバイスの前記表面に、水溶性コーティングが施されている、前記デバイス。
【請求項12】
前記水溶性コーティングがポリビニルアルコール含有コーティングである、請求項11に記載の、液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う為のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、機能的装置、好ましくは、容器、タンク、パイプ、若しくはバルブ、又はそれらの組み合わせである、請求項11又は12に記載のデバイス。
【請求項14】
液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う為に、請求項11~13のいずれか1項に記載のデバイスを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体状の感水性及び感温性化合物、例えばイソシアネート、の輸送及び貯蔵の方法、並びにこの方法の為に適した装置、例えば容器及びパイプ、に向けられている。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートは水、結晶化及び過熱に敏感である。それ故に、輸送及び貯蔵は、水の無い雰囲気下、且つ制御された温度で行われる必要がある。これらの条件のうちの1以上が損なわれる場合に、ポリウレア及び/又は結晶化したイソシアネート及び/又は分解したイソシアネートが、容器、パイプ又は装置の内壁に堆積する。
【0003】
現場において、これらの汚染された容器及びパイプは、蒸気加熱によって洗浄され、続いて、高圧水によって機械的洗浄され、又は粉砕装置若しくは反応性化学薬品による洗浄によって洗浄される。このような洗浄が、しばしば容器又はパイプに損傷を与えることは言うまでもない。その上、化学薬品が使用される場合には、排水が化学廃棄物として処理される必要がある。
【0004】
幾つかの刊行物は、イソシアネート製造中のパイプ及び装置からイソシアネート残留物を除去する方法に向けられている。例えば、欧州特許第EP-2772528号明細書は、ポリオール、無機塩基及びアミンを含む特定の溶媒組成物を記載する。この溶媒組成物、イソシアネート残渣を溶解する。
【0005】
米国特許第US5,506,301号明細書は、イソシアネート蒸留残渣を、酸性化した水と、有機化合物、例えば、リモネン、リモネンオキシド、メントキシ酢酸、クロロギ酸メンチル、又はガンマ-テルピネン、との混合物で処理し、そして、混合物がpH7になるまで撹拌することを記載する。
【0006】
米国特許出願公開第US2012/0271067号明細書において、イソシアネート残渣が、イソシアネート残渣を分解するように、高圧且つ高温の水と溶剤とに接触させる。
【0007】
イソシアネートの輸送に関する刊行物は、固化する可能性があり、非常に粘性が高く且つ水と容易に反応するところの液体を輸送するニーズに対応する為に装えられたタンク容器を記載する。例えば、特許公開公報第2002-053196号公報は、加熱手段と温度センサーとを備えた複数の加熱部に分割されたタンク容器を記載する。
【0008】
中国特許出願公開第CN210392211号明細書は、ブロック化されたイソシアネートの輸送の為のポリエチレン製内張り袋付きの容器バレルを記載する。
【0009】
米国特許出願公開第US2010/032337号明細書は、液体、ゲル、又は固体の物質を包含する、選択された物質又は品目の貯蔵及び輸送の為に適合したレセプタクル(receptacle)又は容器(container)を開示する。これらの選択された品目又は物質は、危険物質又は非危険物質のいずれかである可能性がある。該明細書において使用される場合、有害物質(又は危険物)とは一般的に、人の健康又は環境に潜在的に有毒(toxic)又は有害(detrimental)であるところの物質を云う。レセプタクル又は容器は多層構造を有し、ここで、内層は、適切な溶媒、例えば水又は洗浄組成物、と接触するときに溶解又は劣化するところの物質の形態であってもい。本開示は、感水性又は感温性の物質を取り扱う為の方法でなく、むしろ危険な物質、例えば農薬、を取り扱う方法を云う。また、英国特許出願公報第GB2237号明細書は、危険物質の為の容器に向けられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、感水性及び/又は感温性化合物、例えばイソシアネート、の輸送及び貯蔵の方法であって、ここで、該化合物は、容器又はパイプを損傷する危険性無しに、該化合物の除去、そしてその後の洗浄を容易にしながら、制御された条件下で該化合物が貯蔵又は輸送されることができる。
【0011】
この目的の為に、本発明は、液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う方法であって、液体状の該感水性及び/又は感温性化合物と接触するところのデバイスの表面に水溶性コーティングが施され、及び該コーティングが、該デバイスを洗浄する為に水で溶解される、上記の方法に向けられている。
【0012】
1つの観点において、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物が、取り扱い後に、液体状で前記デバイスから除去される。
【0013】
前記水溶性コーティングは好ましくは、ポリビニルアルコールを含む。
【0014】
前記取り扱いが、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物の輸送、貯蔵、製造及び/又は精製を含む。
【0015】
液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物の例が、イソシアネート、好ましくはジイソシアネート、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート又はトルエンジイソシアネートである。
【0016】
言及されるデバイスが、取り扱われる前記化合物と接触する任意の他の機能的装置、例えば、容器、タンク、パイプ、バルブ、又はこれらの組み合わせ、を包含する上記の他の機能的装置、を備えている。
【0017】
前記水溶性コーティングが、該水溶性コーティングを水中に溶かすことによって除去されてもよい。
【0018】
任意的に、前記感水性及び感温性化合物と接触していたところの前記表面を洗浄する為に前記水溶性コーティングを溶かす前に、水溶性コーティングが施された前記表面が蒸気で処理される。
【0019】
前記感水性及び/又は感温性化合物の前記除去後に残存する破片が、前記水溶性コーティングの前記除去の間に洗い流される。
【0020】
任意的に、前記デバイスに、温度制御手段と、前記取り扱いの間に前記化合物に水が入らないようにする手段が備えられている。
【0021】
本発明はまた、液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う為のデバイスであって、前記デバイスに、温度制御手段と、前記取り扱いの間に前記化合物に水が入らないようにする手段が備えられており、並びに、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物と接触するところの前記デバイスの前記表面に、水溶性コーティング、好ましくはポリビニルアルコールコーティング、が施されている、上記のデバイス、並びに、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う為に該デバイスを使用する方法に向けられている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う方法であって、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物と接触するところのデバイスの表面に水溶性コーティングが施され、及び前記コーティングが、前記デバイスを洗浄する為に水で溶解される、上記の方法に向けられている。
【0023】
本明細書の文脈において、「感水性」は、水反応性、吸湿性、脱水性、結晶化性、又は化合物に有害な影響を与える水若しくは水分によって生じる他の何らかの物理的若しくは化学的現象を意味する。
【0024】
本明細書の文脈において、語「感温性」は、化合物に有害な影響を与える温度変化を意味する。
【0025】
1つの観点において、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物が、取り扱い後に、液体状で前記デバイスから除去される。
【0026】
原則的には、
取り扱いの間に適用される条件下で安定した保護コーティングとして施与されることができる、及び、
取り扱われるべき化合物を妨げない、
勿論、除去の間に適用される条件下で水溶性である
ところの任意の物質が、水溶性コーティングとして使用されうる。好適な水溶性コーティングの例は、ポリビニルアルコール及びその誘導体、例えばエトキシル化されたPVA、セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、ポリピロリドン、ポリヒドロキシブチレート、及びそれらのコポリマー又はブレンドである。
【0027】
前記水溶性コーティングは好ましくは、ポリビニルアルコールを含む。ポリビニルアルコール含有コーティングは、スチール、プラスチック又は複合材料のいずれかからなる機器の内側に容易に施与されて、保護コーティングを形成することができることが見出された。該ポリビニルアルコール含有コーティングは、多くの感水性及び/又は感温性化合物に対して弾力性がある。更に、該ポリビニルアルコール含有コーティングは、感水性及び/又は感温性化合物と接触した表面を損傷すること無しに、水で容易に除去されることができる。その上、洗浄の間に形成される廃水は、溶解されたポリビニルアルコール含有コーティングのみを含み、生分解性廃水流として処理されうる。
【0028】
好適なポリビニルアルコール含有塗料は、様々なグレードで市販されている。PVAコーティングの溶解度は加水分解度とその分子量に依存する。取り扱い条件に依存して、適切なPVAグレードが選択されることができる。一般的には、70~99%の加水分解度を有するPVAが使用されることができる。適切なコーティングを確保し且つ同時に除去に応じて適切な水溶解度(water-solubility rate)を確保する為には、80~98%の加水分解度が好ましく、より好ましくは85~96%加水分解度、最も好ましくは90~94%の加水分解度、が使用される。分子量は10,000から150,000(Mw)である。PVAと他のポリマーとのブレンドがまた適しており、例えばポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリコハク酸とのブレンドが、結果として得られるコーティングの溶解性が満足でき、且つ取り扱う製品に支障をきたさない限り使用されうる。また、酢酸ビニルと上記されたポリマーのモノマーとのコポリマーが使用されうる。
【0029】
PVA含有コーティングは、添加剤、例えば、コーティングの密着性、コーティング性、コーティングの機械的若しくは化学的安定性、又は洗浄の間の溶解性を改善する為の添加剤、を含んでいてもよい。任意の慣用的な添加剤が本発明において使用されうるが、廃水が生分解性廃水流のままであるように注意がなされなければならない。適切な添加剤は、生分解性可塑剤、生分解性消泡剤、界面活性剤、殺生物剤等でありうる。
【0030】
前記取り扱いは、液体状の感水性及び/又は感温性化合物の輸送、貯蔵、製造、及び/又は精製を含みうる。
【0031】
液体状の感水性及び/又は感温性化合物の例は、イソシアネート、好ましくはメチレンジフェニルジイソシアネート又はルエンジイソシアネート、である。
【0032】
イソシアネートは水、結晶化及び過熱に敏感である。本発明に従う方法では、これらのイソシアネートが、水の無い雰囲気及び制御された温度下で、製造され、輸送され、精製され及び貯蔵されうる。上述された条件のうちの1つが損なわれた場合、ポリウレア及び/又は結晶化したイソシアネート及び/又は分解したイソシアネートは、水溶性コーティング上に堆積され、そして、イソシアネートと接触したデバイスの表面を損傷すること無しに除去されることができる。
【0033】
言及されるデバイスが、容器、タンク、パイプ、バルブ、取り扱われる前記化合物と接触する任意の他の機能的装置、又はこれらの組み合わせを備えていてもよい。
【0034】
任意的に、前記デバイスが、温度制御手段と、前記取り扱いの間に前記化合物に水が入らないようにする手段が備えられている。
【0035】
イソシアネートの輸送、製造及び精製において、例えば、洗浄に応じて機能装置の一部、例えば、バルブ、フランジ、パイプ、マンホール蓋、を廃棄することが一般的である。本発明に従う方法及び装置では、この必要はない。
【0036】
上述されているように、水溶性コーティングは、該水溶性コーティングを水中に溶かすことによって除去されうる。該コーティングを溶解する為の水圧は、約10~約200バール、好ましくは50~90バール、で変化しうる。通常、約70barの水圧を有する水噴霧器で十分である。任意的に、コーティングの溶解を促進及び/又は加速する為に、高められた温度を有する水(例えば30~80℃)が使用される。
【0037】
任意的に、前記感水性化合物及び感温性化合物と接触していたところの表面を洗浄する為に前記水溶性コーティングを溶かす前に、水溶性コーティングが施された前記表面が、残留する感水性及び/又は感温性化合物を除去する為に処理される。最適には、残留化合物の除去を容易にするように、化合物を固化させる処理が選択される。例えば、水と反応して固体を形成する化合物の場合に、蒸気又は熱水による処理が可能である。処理を容易にする為には、水蒸気処理が好ましい。水蒸気処理の利点の一つは、化学廃水が発生しないことである。この処理は特に、イソシアネートを取り扱う場合に適している。除去後に残留するイソシアネートは蒸気処理によって加水分解されて、固形ポリウレアを形成するであろう。この固形ポリウレアの破片は、引き続き、洗浄の為の水溶性コーティングの可溶化の間に洗い流される。
【0038】
化合物の上記の水及び温度への感受性に応じて、該残留化合物の適切な処理、例えば、熱処理、冷却/結晶化処理等、が選択されることができる。
【0039】
該感水性及び/又は感温性化合物の除去後に又は上記された処理後に残存する破片は、該水溶性コーティングの除去の間に洗い流される。大きな破片は手によって取り除かれてもよい。
【0040】
本発明はまた、液体状の感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う為のデバイスであって、前記デバイスに、温度制御手段と、前記取り扱いの間に前記化合物に水が入らないようにする手段が備えられており、並びに、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物と接触するところの前記デバイスの前記表面に、水溶性コーティング、好ましくはポリビニルアルコールコーティング、が施されている、上記のデバイス、並びに、液体状の前記感水性及び/又は感温性化合物を取り扱う為に該デバイスを使用する方法に向けられている。
【0041】
イソシアネートは、水溶性ポリビニルアルコールを含有する内面コーティングを施された容器又はパイプ内に貯蔵され及び/又は輸送される。イソシアネートの除去後、容器/パイプは相対的に低圧(約70バール)の水で容易に洗浄されることができる。残留するイソシアネートは加水分解されて、固形のポリウレアを形成する。PVA含有コーティングは溶解し、そして、固形ポリウレアとその他の沈殿物は洗い流される。該固形物は廃水から容易に分離されることができ、及び該廃水は非化学的廃水として取り扱われることができる。下記の実施例において使用されたPVA含有コーティングはイソシアネートの品質を阻害せず、一方、容器及び/又はパイプはイソシアネートから保護されることが判った。このこと及び過酷な機械的又は化学的洗浄が省略されることができるという事実は、容器の及び/又はパイプの寿命を高め、及び安全なエネルギーと洗浄のCO2フットプリントを減少させるであろう。
【0042】
本発明は、下記の実施例によって更に解明される。これらの実施例は例示を目的としたものであって、限定的なものとして解釈されるべきでない。
【0043】
実施例
【0044】
実施例1:PVAでコーティングされたステンレス板のMDIを用いた流動試験(flow test)
【0045】
市販のPVAコーティングが、ステンレス鋼試験片に施与された。該試験片の一部は未処理のままとされた。該コーティングを施与後、該試験片が、MDI(Iso-PMDI 92340)で部分的に満たされたスチール容器内に入れられた。
【0046】
MDIは、流出速度1.65m/秒及び距離±3cmで該試験片上に送り込まれた。この流出速度は、1時間に30m3が充填されるMDIタンク容器のディップチューブ(dip tube)の流出速度に相当する。
【0047】
ポンプはパルス運転であり、従って、MDIの影響は実際にはもっと大きいだろう。該ポンプは、合計174時間、すなわち7日間、約30℃の温度で、周囲湿度下で運転された。時間とともにMDIは増粘した。
【0048】
流動試験の後、該試験片は蒸気処理にさらされた。表面に付着していたMDIは反応し、そして硬化した。蒸気を掛けた後、該試験片が、10℃の水を用いて、90バールの圧力水噴霧器(pressure water sprayer)で洗浄された。
【0049】
流動試験の間、PVAコーティングは試験片の表面上に固定されたままであった。蒸気処理の間、残留MDIは硬化したが、圧力水噴霧器で簡単に除去されることができた。未処理の表面では、MDIは除去されることができず、その表面は適切に洗浄することができなかった。
【0050】
実施例2:実施例1と同様であるが、複合プレートを使用
【0051】
上記のステンレス鋼試験片の代わりにガラス繊維-ビニルエステルコンポジット試験片を用いて、実施例1において記載された試験が繰り返された。
【0052】
結果は実施例1の結果に類似している。
【0053】
実施例3:PVAでコーティングされたステンレス製タンク容器
【0054】
サンプルは、試験前に洗浄及び乾燥されている実際のステンレス製タンク容器である。
【0055】
該タンクの底において、各々が異なる水溶性を有する異なる市販のPVAコーティング剤が施与された。該コーティングが施与され、そして乾燥されると、約60リットルのpMDIタイプが該タンク容器内に注がれ、それは、輸送後の該タンク内のMDIの残存量に相当する。
【0056】
残留MDIを有する該タンク容器は、約8時間蒸気処理に付された。温度及び蒸気によってMDIが反応し、そして、硬化した。固まったMDIの大きな破片は手によって取り除かれた。ほうきでタンクを洗浄した後、水による標準的な洗浄プログラム(100バール及び70~80℃、5分間)がタンクを洗浄する為に使用された。
【0057】
蒸気を掛けて洗浄した後に、コーティングが施与された場所でスチール製容器にはMDIは残っていなかった。該スチールタンクは無傷であった。
【0058】
NOコーティングが施与された場所では、100バール、70~80℃の水で、5分間、蒸気を掛けて洗浄した後においてもMDIは剥がれなかった。
【0059】
3つの異なるタイプのコーティング全てが効果的であることが証明された。
【国際調査報告】