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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】炭化水素のマイクロ波分解
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/26 20060101AFI20240412BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20240412BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C01B3/26
C01B32/05
C09C1/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568665
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 GB2022051174
(87)【国際公開番号】W WO2022234302
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】2106556.0
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523421476
【氏名又は名称】スイソ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Suiso Limited
【住所又は居所原語表記】The Cooper Buildings, Arundel Street, Sheffield S1 2NS, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャ, スク ペ
(72)【発明者】
【氏名】チャ, チャン ユル
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
4J037
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DB04
4G140DC02
4G146AA01
4G146BA03
4G146BA12
4G146BC03
4G146BC15
4G146BC18
4G146BC33A
4G146BC33B
4G146BC43
4G146BC44
4G146CB16
4G146CB19
4G146CB33
4G146DA02
4G146DA31
4J037BB02
4J037BB28
4J037EE24
(57)【要約】
水素とカーボンブラックなどのカーボン生成物を生成するプロセスを提供する。炭化水素含有投入ガス、例えばメタンを、マイクロ波放射線が照射されたマイクロ波反応チャンバ内の反応床に通過させる。反応床は、金属若しくは金属化合物とカーボン材料のうちの少なくとも1つを含む粒子状材料を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素含有投入ガスをマイクロ波反応チャンバ内の反応床に通過させるステップと、前記マイクロ波反応チャンバにマイクロ波放射線を照射するステップとを含み、前記反応床は、金属若しくは金属化合物とカーボン材料のうちの少なくとも1つを含む粒子状材料を含む、水素及びカーボン生成物を形成するプロセス。
【請求項2】
前記反応床は、前記金属若しくは金属化合物を含む粒子状材料を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応床は、移動反応床である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応床は、前記金属若しくは金属化合物を含み、マイクロ波吸収化合物をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
マイクロ波反応チャンバで炭化水素含有投入ガスをマイクロ波吸収材料と金属若しくは金属化合物との組み合わせと接触させるステップと、前記マイクロ波反応チャンバにマイクロ波放射線を照射するステップと、を含む、水素及びカーボン生成物を形成するプロセス。
【請求項6】
前記炭化水素含有投入ガスを、前記マイクロ波吸収材料及び前記金属若しくは金属化合物を含む反応床に通過させる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記カーボン生成物は、カーボンブラックである、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
追加のカーボンを前記反応チャンバに添加する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記追加のカーボンは、カーボンブラックである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記マイクロ波反応チャンバから除去された、カーボン生成物を含む固体生成物の一部を前記反応チャンバに再循環させる、請求項7、8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記カーボン生成物を前記マイクロ波反応チャンバ内の反応床から分離しない、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
反応が進行している間の前記反応器内のカーボン生成物の滞留を、所望のカーボン生成物の平均直径に応じて選択する、請求項7~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記カーボン生成物は、少なくとも15nmの平均直径を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記金属若しくは金属化合物は、前記プロセス中に消費される、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
追加の金属若しくは金属化合物を前記反応チャンバに添加する、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記金属若しくは金属化合物は、遷移金属若しくは遷移金属化合物である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記金属若しくは金属化合物は、酸化鉄である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
炭化水素含有ガスは、メタンを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記投入ガス中の炭化水素の少なくとも50モル%は、シングルパス反応で水素ガスに転化される、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
少なくとも50モル%の転化は、少なくとも1時間の連続期間維持される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記金属若しくは金属化合物は、金属酸化物であり、シングルパスプロセスで生成された生成物ガス中の一酸化炭素及び二酸化炭素は、合計で、生成物ガスの0.1~10vol%を占める、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記投入ガスは、硫黄含有化合物を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記マイクロ波反応チャンバ内のガス温度は、1000℃未満である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記投入ガスは水を含まない、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
炭化水素を水素及びカーボンブラックに転化するための装置であって、
マイクロ波放射線源と、
マイクロ波反応チャンバとを含み、前記マイクロ波反応チャンバは、前記炭化水素を含む投入ガスを導入するためのガス入口と、前記マイクロ波反応チャンバから生成物ガスを除去するためのガス出口と、固体材料を前記マイクロ波反応チャンバに導入するための固体入口と、前記反応チャンバから固体生成物を除去するための固体出口とを含む、装置。
【請求項26】
前記マイクロ波反応チャンバは、前記ガス入口と前記ガス出口との間にガス導管を含み、前記ガス導管は、前記導管内の固体材料を前記固体出口に向かって移動させるように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記導管は、垂直線に対して少なくとも20°の角度をなす、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記マイクロ波反応チャンバから出た未反応の炭化水素を前記マイクロ波反応チャンバに再循環させるためのガス再循環経路をさらに含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記マイクロ波反応チャンバに入る前にガスを加熱するための予熱器と、前記マイクロ波反応チャンバから出たガスから一酸化炭素を分離するための一酸化炭素分離器と、分離された一酸化炭素を前記予熱器の燃料源に送るための一酸化炭素流路と、を含む、請求項25~28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記固体生成物の一部を前記マイクロ波反応チャンバに再循環させるためのカーボン生成物再循環経路を含む、請求項25~29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
炭化水素からのカーボンブラック及び水素へのマイクロ波支援転化における、核形成剤としてのカーボンブラックの使用。
【請求項32】
粒子状金属若しくは金属化合物と、前記金属若しくは金属化合物と異なる粒子状マイクロ波吸収材料と、を含む、組成物。
【請求項33】
前記金属若しくは金属化合物は、鉄化合物である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記粒子状マイクロ波吸収材料は、カーボンと炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを含むか又はそれらからなる、請求項32又は33に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
メタンなどの炭化水素燃料の燃焼を低減し、代替エネルギー源に置き換えることが緊急の必要性がある。そのような代替エネルギー源の1つは、内燃機関又は燃料電池などに使用できる水素である。
【0002】
別の代替エネルギー源は、リチウムイオン電池であり、通常、電池の陽極にカーボンブラックなどの導電性カーボンを含む。
【0003】
マイクロ波エネルギーを使用した、炭化水素からの水素の生成は、例えば、米国特許第5,164,054号に開示されているように知られている。
【0004】
国際公開第2021/014111号には、セラミック又はカーボン担体に担持された鉄種の触媒の存在下でガス状炭化水素をマイクロ波放射線にさらす、水素の製造プロセスが開示されている。
【0005】
米国特許出願公開第2008/0210908号には、水素富化燃料及びカーボンナノチューブを製造する方法が開示されている。
【0006】
R Ebner S Ellis S Golunski、“Deactivation and durability of the catalyst for Hotspot natural gas processing”、ETSU F/02/00173/REPは、天然ガス改質触媒の不活性化の潜在的な原因のうちの硫黄化合物の存在及びカーボン堆積物の蓄積を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,164,054号
【特許文献2】国際公開第2021/014111号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0210908号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R Ebner S Ellis S Golunski、“Deactivation and durability of the catalyst for Hotspot natural gas processing”、 ETSU F/02/00173/REP
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、炭化水素、特にメタンを水素及びカーボン生成物、特にカーボンブラックに分解するためのエネルギー効率の高いプロセスを提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、炭化水素、特にメタンを水素及びカーボン生成物に分解するための低コストの方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明はさらに、水蒸気メタン改質よりもCO及び/又はCO2の生成が少ない、炭化水素、特にメタンを水素及びカーボン生成物に分解するための方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明はまたさらに、炭化水素の分解によって形成されるカーボン粒子のサイズを制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様において、本発明は、水素及びカーボン生成物を形成するプロセスを提供し、該プロセスは、炭化水素含有投入ガスをマイクロ波反応チャンバ内の反応床に通過させるステップと、マイクロ波反応チャンバにマイクロ波放射線を照射するステップとを含み、反応床は、金属若しくは金属化合物とカーボン材料のうちの少なくとも1つを含む粒子状材料を含む。
【0014】
好ましくは、反応床は、粒子状金属若しくは金属化合物を含む。
【0015】
任意に、反応床は、移動反応床である。
【0016】
任意に、反応床は、マイクロ波吸収化合物をさらに含む。
【0017】
第2の態様において、本発明は、水素及びカーボン生成物を形成するプロセスを提供し、該プロセスは、マイクロ波反応チャンバで炭化水素含有投入ガスをマイクロ波吸収材料と金属若しくは金属化合物との組み合わせと接触させるステップと、マイクロ波反応チャンバにマイクロ波放射線を照射するステップと、を含む。
【0018】
任意に、第2の態様において、炭化水素含有投入ガスを、マイクロ波吸収材料及び金属若しくは金属化合物を含む反応床に通過させる。
【0019】
任意に、第1又は第2の態様において、カーボン生成物は、カーボンブラックである。
【0020】
任意に、追加のカーボンを反応チャンバに添加し、任意に、反応チャンバ内のマイクロ波反応が進行している間に添加する。任意に、反応チャンバに添加されるカーボンは、追加のカーボンブラックである。
【0021】
任意に、マイクロ波反応チャンバから除去された固体生成物の一部、例えば、カーボンブラックを含むか又はそれからなる固体生成物を反応チャンバに再循環させる。
【0022】
任意に、第1又は第2の態様において、カーボン生成物をマイクロ波反応チャンバ内の反応床から分離しない。
【0023】
任意に、第1又は第2の態様において、反応が進行している間の反応器内のカーボンブラック生成物の滞留を、所望のカーボンブラック生成物の平均直径に応じて選択する。
【0024】
任意に、第1又は第2の態様において、カーボン生成物は、少なくとも1nm、任意に少なくとも8nm、任意に少なくとも15nmの平均直径を有する。
【0025】
任意に、第1又は第2の態様において、金属若しくは金属化合物が存在し、プロセス中に消費される。
【0026】
任意に、第1又は第2の態様において、追加の金属若しくは金属化合物を反応チャンバに添加し、任意に、反応チャンバ内のマイクロ波反応が進行している間に添加する。
【0027】
本明細書で使用される「追加のカーボン」及び「追加の金属若しくは金属化合物」は、本明細書に記載されるプロセスの開始点に存在するカーボン及び金属若しくは金属化合物に追加されるものであることが理解されるであろう。
【0028】
任意に、第1又は第2の態様において、金属若しくは金属化合物は、遷移金属若しくは遷移金属化合物である。
【0029】
任意に、第1又は第2の態様において、金属若しくは金属化合物は、酸化鉄である。
【0030】
任意に、第1又は第2の態様において、炭化水素含有ガスは、メタンを含む。
【0031】
任意に、第1又は第2の態様において、投入ガス中の炭化水素の少なくとも50モル%、任意に少なくとも70モル%は、シングルパス反応で水素ガスに変換される。任意に、少なくとも50モル%又は少なくとも70モル%の変換は、少なくとも1時間の連続期間維持される。
【0032】
任意に、第1又は第2の態様において、金属若しくは金属化合物は、金属酸化物であり、シングルパスプロセスで生成された生成物ガス中の一酸化炭素及び二酸化炭素は、合計で、生成物ガスの0.1~10vol%を占める。
【0033】
任意に、第1又は第2の態様において、投入ガスは、硫黄含有化合物を含む。
【0034】
任意に、第1又は第2の態様において、マイクロ波反応チャンバ内のガス温度は、1000℃未満、任意に200~900℃の範囲にある。
【0035】
任意に、第1又は第2の態様において、投入ガスは水を含まない。
【0036】
第3の態様において、本発明は、炭化水素を水素及びカーボンブラックに転化するための装置を提供し、該装置は、
マイクロ波放射線源と、
マイクロ波反応チャンバとを含み、該マイクロ波反応チャンバは、炭化水素を含む投入ガスを導入するためのガス入口と、マイクロ波反応チャンバから生成物ガスを除去するためのガス出口と、固体材料をマイクロ波反応チャンバに導入するための固体入口と、反応チャンバから固体生成物を除去するための固体出口とを含む。
【0037】
任意に、第3の態様において、マイクロ波反応チャンバは、ガス入口とガス出口との間にガス導管を含み、該ガス導管は、導管内の固体材料を固体出口に向かって移動させるように構成される。
【0038】
任意に、導管は、垂直線に対して少なくとも20°、任意に垂直線に対して少なくとも40°、60°、任意に水平線に対して10°以内の角度をなす。本明細書に記載される導管の角度は、装置が使用中であるか、又は使用できる状態で位置決めされ配向されるときの角度であることが理解されるであろう。
【0039】
任意に、第3の態様において、装置は、マイクロ波反応チャンバから出た未反応の炭化水素をマイクロ波反応チャンバに再循環させるためのガス再循環経路をさらに含む。
【0040】
任意に、第3の態様において、装置は、マイクロ波反応チャンバに入る前にガスを加熱するための予熱器と、マイクロ波反応チャンバから出たガスから一酸化炭素を分離するための一酸化炭素分離器と、分離された一酸化炭素を予熱器の燃料源に送るための一酸化炭素流路と、を含む。
【0041】
任意に、第3の態様において、装置は、固体生成物の一部をマイクロ波反応チャンバに再循環させるためのカーボン生成物再循環経路を含む。
【0042】
第1又は第2の態様に係るプロセスは、この第3の態様に係る装置を用いて実行されてもよい。
【0043】
使用中に、金属若しくは金属化合物、及び任意に1つ以上のさらなる材料、例えば1つ以上のマイクロ波吸収材料を固体入口に導入してもよい。1つ以上のさらなる材料を、金属若しくは金属化合物とは別に、又は金属若しくは金属化合物との混合物として供給してもよい。
【0044】
使用中に、反応チャンバから除去された固体生成物は、カーボン生成物と、(金属若しくは金属化合物が触媒性である場合)金属若しくは金属化合物、又は、(金属若しくは金属化合物が反応中に消費される場合)金属若しくは金属化合物の反応により形成された生成物と、を含んでもよい。
【0045】
第4の態様において、本発明は、炭化水素からのカーボンブラック及び水素へのマイクロ波支援転化における、核形成剤としてのカーボンブラックの使用を提供する。
【0046】
第5の態様において、本発明は、粒子状金属若しくは金属化合物と、金属若しくは金属化合物と異なる粒子状マイクロ波吸収材料と、を含む、組成物を提供する。
【0047】
任意に、第5の態様において、金属若しくは金属化合物は、鉄化合物であり、任意に酸化鉄である。
【0048】
任意に、第5の態様において、粒子状マイクロ波吸収材料は、カーボンと炭化ケイ素のうちの少なくとも1つを含むか又はそれらからなる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
以下、図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0050】
図1】一定の縮尺で描かれていない、いくつかの実施形態に係るマイクロ波反応チャンバを示す。
図2】一定の縮尺で描かれていない、いくつかの実施形態に係る、マイクロ波反応チャンバを含む装置を示す。
図3】一定の縮尺で描かれていない、いくつかの実施形態に係る、傾斜移動床を有するマイクロ波反応チャンバを含む装置を示す。
図4】固定床にMgO含浸粒状活性炭を使用したCH4転化対時間のグラフである。
図5】固定床に石油コークスを使用したCH4転化対時間のグラフである。
図6】SiC層間にFe23を使用したCH4転化対時間のグラフである。
図7図6の反応1日目の排出ガス中のCO及びCO2の濃度のグラフである。
図8図6の反応2日目の排出ガス中のCO及びCO2の濃度のグラフである。
図9】Fe23含浸アルミナ及びSiC層を使用したCH4転化対CH4流量のグラフである。
図10】Fe23含浸アルミナ及びSiC層を使用したCH4転化対ガス温度のグラフである。
図11】Fe23含浸アルミナ及びSiC層を使用したCH4転化対時間のグラフである。
図12図11の反応の場合のCOに転化されたカーボンブラックの割合を示すグラフである。
図13図11の反応において生成された凝集カーボンブラックの写真である。
図14図11の反応の生成物を使用した天然ガス転化対時間のグラフである。
図15図14のプロセスの排出ガス中のH2、CH4、CO及びCO2の濃度のグラフである。
図16】酸化鉄粉末でコーティングされた炭化ケイ素を使用したCH4転化対時間のグラフである。
図17図16のプロセスの排出ガスのCO及びCO2の濃度のグラフである。
図18図16のプロセスの場合の、Fe23と反応したカーボンの百分率対時間のグラフである。
図19】鉄粉と混合したメタンの分解によりカーボンブラック生成物が生成された場合の天然ガス転化対時間のグラフである。
図20図19のプロセスの排出ガス中のCO及びCO2の濃度のグラフである。
図21図19のプロセスの場合の、Fe23と反応したカーボンの百分率対時間のグラフである。
図22】粒状活性炭が充填された反応器におけるH2S破壊効率対マイクロ波電力のグラフである。
図23】石油コークスを含む流動床におけるCH4転化対時間のグラフである。
図24図23のプロセスの場合の排出ガス中のH2の濃度対時間のグラフである。
図25】0.5~1.3mmの石油コークスを使用した流動床反応におけるCH4転化対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書に記載される炭化水素分解は、カーボン及び金属若しくは金属化合物のうちの少なくとも1つを含むマイクロ波反応器への炭化水素含有ガスの導入を含む。マイクロ波反応器が金属若しくは金属化合物を含む場合、マイクロ波反応器は、好ましくは、マイクロ波吸収材料をさらに含む。
【0052】
カーボン、又は金属若しくは金属化合物はある程度のマイクロ波吸収能力を有することができ、本明細書に記載される「マイクロ波吸収材料」は、金属若しくは金属化合物と異なることが理解されるであろう。マイクロ波吸収材料は、金属若しくは金属化合物に比べて、単位質量あたりのマイクロ波吸収能力がより高い。
【0053】
マイクロ波反応器が金属若しくは金属化合物を含む場合、マイクロ波吸収材料は、マイクロ波吸収カーボン材料であってもよく、他のマイクロ波吸収カーボン材料であってもよい。
【0054】
反応は、プラズマ温度未満、例えば900℃未満のガス温度で実施することができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、マイクロ波吸収材料により、マイクロ波吸収材料及び金属若しくは金属化合物を含む反応床で反応を行うことができ、プラズマの気相反応の必要性を取り除く。反応床の大部分内の反応は、炭化水素含有ガスを(反応床の表面上ではなく)反応床に通過させることにより促進することができる。
【0055】
本明細書に記載される反応床は、カーボン及び/又は金属若しくは金属化合物からなり、或いは、カーボン及び/又は金属若しくは金属化合物と、1つ以上のさらなる粒子状材料、任意に、1つ以上のさらなるマイクロ波吸収材料とを含むことが理解されるであろう。
【0056】
本明細書に記載されるマイクロ波吸収材料は、マイクロ波放射線にさらされると温度が急速に上昇するとともに、水素を形成するための投入ガスと(触媒的に又は別の方法で)反応しない、任意の固体材料であってもよい。適切な材料は、金属導体及び非金属導体を含む、固体導体又は固体半導体である。例示的なマイクロ波吸収化合物は、カーボンブラック又は活性炭などのカーボン材料、炭化ケイ素、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。1つ以上の金属若しくは金属化合物と1つ以上のマイクロ波吸収化合物とを含む混合物は、金属若しくは金属化合物を微量成分(50重量%未満)として含んでもよい。
【0057】
好ましくは、カーボン生成物は、カーボンブラックである。
【0058】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載されたプロセスにカーボンブラックを含めると、カーボンブラックを提供しないプロセスと比較して、より大きなカーボンブラック生成物粒子を形成できることを発見した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、カーボンブラックの存在により、反応中にカーボンブラック粒子の成長のための核形成点を提供することができる。任意に、カーボンブラックは、反応床内の唯一のマイクロ波吸収化合物である。
【0059】
これらの核形成点の存在により、カーボンブラック微粒子の形成を制限することができる。カーボンブラック微粒子は、金属若しくは金属化合物をコーティングすることにより、金属若しくは金属化合物が炭化水素を分解する能力を低下させることができる。さらに、反応装置を流れるガスに混入して、装置の内壁をコーティングし得るカーボンブラック微粒子を単離することは、困難である場合がある。
【0060】
カーボンブラック生成物粒子の寸法及び/又は物理的特性は、反応中の反応器内のカーボンブラックの滞留時間を制御すること、及び/又はカーボンブラック生成物を反応器に再循環させることにより制御することができる。例えば、移動床の配置では、カーボンブラックを反応器に通過させるのに要する時間は、カーボンブラック生成物の所望の寸法及び/又は物理的特性に応じて選択されてもよい。
【0061】
任意に、カーボンブラック生成物粒子の平均直径は、1nm以上、任意に10nm以上、任意に15nm以上、任意に1nm~1ミクロンの範囲にある。平均直径は、当業者に知られている方法、例えば粒径分析器(UPA-EX150、日機装、日本)を使用して測定されてもよい。
【0062】
物理的特性は、カーボンブラックの形態及び/又は漆黒性を含む。
【0063】
金属若しくは金属化合物は、金属、金属の酸化物及び誘導体などの金属化合物、合金又はそれらの混合物から選択されてもよい。金属若しくは金属化合物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属又はその酸化物であってもよいが、これらに限定されない。
【0064】
例示的な金属又はその酸化物は、鉄、ニッケル、銅、マグネシウム及びカリウムを含むが、これらに限定されない。
【0065】
酸化鉄が特に好ましい。
【0066】
いくつかの実施形態では、金属若しくは金属化合物は、純形態で提供される。いくつかの実施形態では、金属若しくは金属化合物は、担体、例えばアルミナなどのセラミックに担持される。
【0067】
金属若しくは金属化合物が鉄などの金属である場合、この金属は、触媒として機能してもよい。
【0068】
金属酸化物などの金属化合物が存在する場合、金属化合物は、反応中に消費されてもよく、即ち、金属化合物は、非触媒性である。非触媒性の金属酸化物が存在する場合、生成物ガスに一酸化炭素及び/又は二酸化炭素が存在する場合がある。任意に、一酸化炭素及び二酸化炭素は、合計で、シングルパスプロセスで生成された生成物ガスの0.1~10vol%を占める。本明細書で使用される「シングルパスプロセス」とは、排出ガスがマイクロ波反応チャンバに再循環されないプロセスを意味する。
【0069】
金属若しくは金属化合物が触媒性であるか否かにかかわらず、金属若しくは金属化合物は、炭化水素生成物からの水素及びカーボン生成物への転化の反応を開始することが理解されるであろう。
【0070】
金属若しくは金属化合物、又は、金属若しくは金属化合物を含む材料は、粒子状形態で提供されてもよい。金属若しくは金属化合物の粒径は、スクリーニングプロセスによって金属若しくは金属化合物とカーボン生成物を分離できるように、本明細書に記載されるプロセスによって形成されるカーボン生成物のサイズよりも大きく又は小さく選択してもよい。追加的又は代替的に、これらの材料の密度の違いを用いてそれらを分離することもできる。
【0071】
本発明者らは、Fe23及びカーボンブラックなどのカーボンにマイクロ波を照射する時に形成されたFe-C化合物を使用して炭化水素の分解を達成できることを発見した。したがって、好ましい実施形態では、金属化合物は、Fe23とカーボンとのマイクロ波反応生成物である。
【0072】
反応の開始時に、金属若しくは金属化合物とマイクロ波吸収材料は、混合物として、別個の層として、又はそれらの組み合わせとして反応器内に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、金属若しくは金属化合物は、反応器内の唯一の固体材料であってもよい。いくつかの実施形態では、金属若しくは金属化合物とマイクロ波吸収材料は、反応器内の2つのみの材料であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる材料、例えば、1つ以上のさらなるマイクロ波吸収材料が存在してもよい。
【0073】
反応は、バッチプロセスであっても連続プロセスであってもよい。カーボン、金属若しくは金属化合物、任意に1つ以上のマイクロ波吸収材料の供給は、連続的に補給されてもよく、継続的に補給されてもよい。本明細書で使用される「継続的に補給される」とは、間欠的な補給を意味する。
【0074】
金属若しくは金属化合物又はマイクロ波吸収材料を補給する速度は、反応物が反応を通過し、生成物が分離され、任意に反応器を通して再循環される速度により決定されてもよい。
【0075】
本明細書に記載されるプロセスでは、炭化水素含有ガスは、好ましくは、金属若しくは金属化合物とマイクロ波吸収材料を含む床を通過する。本発明者らは、驚くべきことに、この分解プロセスで生成されるカーボンブラックなどのカーボン生成物の存在により、水素の収量を増加させることができることを発見した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、反応床の大部分の分解は、金属若しくは金属化合物を含む層の表面での反応と比較して、カーボン生成物が金属若しくは金属化合物をコーティングする効果を制限する可能性がある。さらに、金属若しくは金属化合物及びカーボン生成物によって形成された金属-カーボン化合物は、炭化水素の高い転化率を維持するのに役立ち得る。
【0076】
したがって、いくつかの実施形態では、反応器で形成されたカーボン生成物の少なくとも一部は、後続の分解反応のために反応器内で保持され、及び/又は反応器により生成されたカーボン生成物の一部は、反応器に再循環される。
【0077】
追加的に、カーボン生成物により発生するマイクロ波エネルギーの吸収により、反応器内の局所的なホットスポットの形成を防止するか、又はFe23などの鉄化合物と反応して、炭化水素の分解に適したFe-C化合物を形成することができる。
【0078】
カーボン生成物は、ガス流に混入することに加えて、又はその代わりに、反応床の表面に蓄積してもよい。反応床の一部の除去は、反応床の表面に形成されたカーボン生成物の除去を含んでもよく、この場合、除去された材料は、本質的(例えば、少なくとも95重量%)にカーボン生成物からなり得る。
【0079】
反応床の一部の除去は、カーボン生成物及び使用済みの金属若しくは金属化合物の除去を含んでもよい。
【0080】
反応器内のカーボン生成物に対する金属若しくは金属化合物の比は、例えば、移動床反応器から、反応床の一部、例えばカーボン生成物が豊富な反応床の一部を除去することと、未使用の金属若しくは金属化合物を反応器に添加することと、再循環カーボン生成物を反応器に添加することとのうちの1つ以上により制御することができる。
【0081】
任意に、金属若しくは金属化合物:マイクロ波吸収材料の重量比は、約1:99~99:1、好ましくは1:99~10:90の範囲にある。
【0082】
金属若しくは金属化合物とカーボン生成物の均質な混合物は、当業者に知られている任意の方法、例えば、混合物の機械的撹拌及び/又は反応床に流体を通過させる方法で維持することができる。
【0083】
投入ガスは、少なくとも10体積%の炭化水素、より好ましくは少なくとも20体積%の炭化水素を適切に含む。
【0084】
投入ガスは、少なくとも10体積%のメタン、任意に少なくとも20体積%のメタンを適切に含む。
【0085】
本明細書に記載される炭化水素は、好ましくは、C1-4アルカン及びC1-4アルケンから選択される。
【0086】
好ましくは、投入ガスは、10体積%未満の水を含み、好ましくは、1体積%未満の水を含む。任意に、投入ガスは水を含まない。
【0087】
本明細書で使用される「投入ガス」とは、マイクロ波反応チャンバに入るガスを意味する。
【0088】
投入ガスは、マイクロ波反応チャンバに入る前に予熱器により加熱されてもよい。任意に、投入ガスは、1000℃以下、任意に900℃以下、任意に200~900℃の範囲、任意に400~600℃の範囲、最も好ましくは約500℃の温度に予熱される。
【0089】
好ましくは、マイクロ波反応チャンバ内のガスの温度は、このガスのプラズマ形成温度未満である。任意に、マイクロ波反応温度内のガスの温度は、900℃未満、任意に200~900℃の範囲、任意に400~600℃、任意に約500℃である。ガス温度は、例えば、反応器のヘッドスペース内で、赤外光高温計などの光学的方法により測定することができる。
【0090】
任意に、マイクロ波反応チャンバ内のガスの圧力は、0.1~10気圧、好ましくは0.5~3気圧又は0.5~2気圧である。
【0091】
任意に、マイクロ波周波数は、0.5~20GHzの範囲にある。
【0092】
任意に、マイクロ波源のマイクロ波電力(複数のマイクロ波源の場合に複合マイクロ波電力)は、少なくとも1kW、任意に1kW~1MW、任意に1~100kWである。必要なマイクロ波電力は反応器のサイズに部分的に依存することが理解されるであろう。
【0093】
図1は、マイクロ波反応器60の概略図である。マイクロ波エネルギーを透過させる管120は、マイクロ波チャンバ122内に配置される。
【0094】
溝126を有する導波管124は、マイクロ波放射線をチャンバ内に導くように設けられる。図1の実施形態では、導波管は、マイクロ波チャンバ126の外壁に取り付けられるが、当業者であれば他の構成に気づくであろう。いくつかの実施形態では、導波管124は、マイクロ波チャンバを通過してもよく、例えば、導波管は、マイクロ波チャンバの内壁に取り付けられてもよい。
【0095】
マイクロ波チャンバの内壁は、マイクロ波を反射するように適切に選択される。導波管の内壁に対する位置は、マイクロ波を管120に向かって反射するように選択されてもよい。
【0096】
溝の幅及び間隔は、使用されるマイクロ波の波長に対して最適化されてもよい。マイクロ波エネルギー源128は、マイクロ波エネルギーを導波管124内に導くように構成される。
【0097】
一実施形態では、管120は、石英ガラスである。
【0098】
図1は、カーボン及び/又は金属若しくは金属化合物、任意にマイクロ波吸収材料及び投入ガスが、マイクロ波エネルギーを透過させる管内に収容されるマイクロ波反応器を示すが、他の実施形態も当業者には明らかであろう。
【0099】
図1のマイクロ波反応チャンバの断面は、半楕円形であるが、任意の適切な形状、例えば長方形を使用してもよいことが理解されるであろう。
【0100】
図1は、放射線をマイクロ波反応チャンバ内に導く単一の導波管を有するマイクロ波反応器を示す。他の実施形態では、このような導波管が複数設けられる。
【0101】
図1の実施形態では、投入ガスは、カーボン及び/又は金属若しくは金属化合物、及び存在する場合にはマイクロ波吸収材料を含む管120内のマイクロ波チャンバ122を通過する。投入ガスは、入口136から入り、管を流れ、この管において、カーボン及び/又は金属若しくは金属化合物、及び存在する場合にはマイクロ波吸収材料と接触し、出口138から反応チャンバを出る。
【0102】
図1は、管120が実質的に垂直である配置を示す。この実施形態では、ガスは、管120を通って上向きに流れることができる。他の配置では、管120は、垂直よりも水平に近くてもよい。
【0103】
マイクロ波反応チャンバは、吸熱性炭化水素分解反応などによる熱損失を防止するために断熱されてもよい。
【0104】
図2は、例えば図1を参照して記載したマイクロ波反応チャンバ122を含む、本開示の実施形態に係る装置100を示す。マイクロ波反応チャンバは、ガス入口及びガス出口を有する。図1に示す管120は、マイクロ波反応チャンバの入口136と出口138との間の距離の一部又は全部の間に伸びることができる。図1を参照して記載したように、ガス入口及びガス出口は、管120の両端であってもよい。
【0105】
装置は、金属若しくは金属化合物、任意にカーボンブラック又は炭化ケイ素などのマイクロ波吸収材料をマイクロ波反応チャンバに導入するための供給ホッパーを含んでもよい。供給ホッパーは、管120の固体入口に接続されてもよい。
【0106】
マイクロ波反応チャンバは、移動床を含んでもよい。
【0107】
当業者に知られている任意の移動床配置を使用してもよい。いくつかの実施形態では、図2に示すような装置のマイクロ波反応チャンバ122は、マイクロ波反応チャンバ122内の固体内容物を、マイクロ波チャンバを通して移動させるためのパイプとスクリューの配置を形成するスクリューを含んでもよい。いくつかの実施形態では、移動床は、振動床であってもよい。
【0108】
マイクロ波反応チャンバから出た固体生成物は、コレクター142に収集されてもよい。管120は、マイクロ波チャンバから出た固体生成物を除去するための固体出口を含んでもよい。固体生成物は、コレクターに収集されてもよい。カーボン生成物は、当業者に知られている任意の方法を使用して分離されてもよい。
【0109】
適切には、反応床の構成要素は、マイクロ波チャンバ内で互いに分離されない。
【0110】
いくつかの実施形態では、例えば図3に示すように、移動床は、水平に対して傾斜してもよい。移動床により、連続反応又はバッチ反応を実行することができる。
【0111】
図2及び図3は、複数のマイクロ波エネルギー源128を有する装置を示す。マイクロ波エネルギー源の数は、装置の所望の寸法及び動作条件に応じて選択されてもよいことが理解されるであろう。
【0112】
天然ガスなどの投入ガスは、マイクロ波反応チャンバに入る前に予熱器により加熱されてもよい。装置内のガスの圧力は、例えばガス圧縮機146を使用することにより、1気圧を超えるか又は1気圧未満の任意の所望の圧力に設定されてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、例えば図2に示すように、原料ガスと投入ガスは、同じであり、即ち、原料ガスは、その組成を変更する処理を行わずにマイクロ波反応チャンバに送られる。
【0114】
いくつかの実施形態では、原料ガスは、その組成を投入ガスの組成に変更し、例えば、酸素含有ガス、特に水を除去するように処理される。
【0115】
マイクロ波反応チャンバから出た生成物ガスに含まれる水素は、水素分離器148により、水素ガスと、マイクロ波反応チャンバに再循環され得る任意の未反応の投入ガスとに分離されてもよい。
【0116】
図1の実施形態では、水素から分離された生成物ガスをマイクロ波チャンバに再循環させる。
【0117】
図示されていない他のいくつかの実施形態では、例えば、金属酸化物が一酸化炭素及び二酸化炭素を生成する場合、一酸化炭素は、一酸化炭素分離器により、生成物ガスから分離されてもよい。残りの生成物ガスをマイクロ波反応器に再循環させてもよく、一酸化炭素を、予熱器を加熱する燃焼のために予熱器144の燃料に送ってもよい。
【0118】
生成物ガスに混入した微粒子、例えば、カーボンブラック微粒子を粒子フィルタ150により分離し、粒子コレクター152に収集してもよい。
【0119】
図2及び図3の装置の構成要素が任意の適切な順序で配置され得ることが、当業者には理解されるであろう。
【0120】
移動床反応器は、反応チャンバの出口から除去できるカーボン生成物の連続的な生成を可能にすることができる。除去されたカーボン生成物は、金属若しくは金属化合物から分離されていてもよく、分離されていなくてもよい。その後、分離されていないカーボン生成物を当業者に知られている任意の方法で分離してもよい。分離されている又は分離されていないカーボン生成物の一部を反応器に再循環させてもよい。
【0121】
他の実施形態では、マイクロ波反応チャンバは、流動床又は固定床を有してもよい。
【0122】
本明細書に記載されるプロセスにより生成された水素及びカーボンは、当業者に知られている広範な用途に使用することができる。水素の用途は、内燃機関又は水素燃料電池の燃料としての用途を含むが、これに限定されない。カーボンブラックの用途は、ゴムにおける用途、染料における用途、又はリチウムイオン電池の陽極の成分としての用途を含むが、これらに限定されない。
【0123】
本明細書に記載される場合、反応器は、水素燃料が必要な場所、例えば車両の補給ステーションに取り付けられてもよい。任意に、本明細書に記載されるプロセスによって生成された水素は、同じ部位の貯蔵タンクに直接的に移送されてもよい。
【実施例
【0124】
これらの実施例に記載されるメタン分解を、2.45GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波源を有する図1を参照して記載した反応器内の単一石英管又は二重石英管を使用して実行した。
【0125】
1.5cmのマイクロ波固定床試験-CTC-70、CTC-80及びMgO含浸GAC
【0126】
1.5cmの石英管を7.6cmの石英管の中に入れた。
【0127】
1.5cmの石英管反応器に50gのCTC-70粒状活性炭(GAC)を充填した。
【0128】
6kWのマイクロ波発生器を始動し、マイクロ波電力を2kWに設定した。
【0129】
2を2scfh(毎時標準立方フィート)で導入した。
【0130】
0.5scfhのCH4を1.5cmの反応器に導入した。
【0131】
マイクロ波電力を、CH4転化が80%を超えるようにするレベルに調整した。
【0132】
出口ガス中のH2、CH4、CO及びCO2の濃度を、Wuhan Cubic石炭ガス分析器を使用して10分ごとに測定した。
【0133】
CH4転化率を10分ごとに計算した。
【0134】
CTC-80及びMgO含浸活性炭を使用して、上記プロセスを繰り返した。
【0135】
図4は、CH4転化を時間の関数として示す。MgO含浸GACの場合のCH4転化率は、80%に増加したが、試験30分間後に連続的に減少した。CTC-70 GAC及びCTC-80 GACの場合の転化は、80%よりもはるかに低かった。
【0136】
7.6cmのマイクロ波固定床試験-石油コークス
【0137】
7.6cmの単一石英管反応器に0.7mmの球状石油コークスを867g充填し、試験した。床の高さを32cmとした。
【0138】
図5は、CH4転化が100分に80%に増加したが、その後、連続的に減少したことを示す。
【0139】
上記試験で分解により生成されたカーボンブラックは、活性炭の表面に堆積し、活性炭から分離することができなかった。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、活性表面の減少は、反応時間が増加するにつれて転化が減少する主な理由であると考えられ、これは、活性炭が単独で投入ガスの高い転化を維持するには不適切であることを示す。
【0140】
酸化鉄粉末を使用した分解
【0141】
以下のプロセスに従って分解を実行した。
【0142】
1、9cmの反応器に、4インチの炭化ケイ素(SiC)下層と2インチのSiC上層との間にFe23粉末(2インチ)を充填した。
【0143】
2、マイクロ波発生器を始動した。電力を3kWに設定し、3.5kWに増加させた。
【0144】
3、天然ガスを0.5scfhで導入し、その後、1scfhに増加させて導入した。
【0145】
4、生成物ガス中のH2、CH4、CO、CO2の濃度を測定した。
【0146】
5、試験を、2日間継続した。
【0147】
6、転化率を10分ごとに計算した。
【0148】
使用したFe23が微粉であったため、CH4流量を0.5scfhから開始し、試験1日目に1scfhまで徐々に増加させた。
【0149】
図6は、試験1日目のCH4転化率を時間の関数として示す。この図に示すように、CH4転化は、試験1日目の終わりに98%まで増加した。
【0150】
図7は、試験1日目の生成物ガス中のCO及びCO2の濃度を時間の関数として示す。酸化鉄が唯一の酸素源であるため、酸化鉄が消費されてCO及びCO2を生成することは明らかである。CO2及びCOの濃度は、150分後に連続的に減少した。
【0151】
酸化鉄粉末試験を2日目まで継続して、様々なマイクロ波電力及びCH4流量でのCH4転化を取得した。表1は、2日目の酸化鉄粉末の試験結果を示す。
【0152】
図8は、2日目のFe23粉末試験の生成物ガス中のCO及びCO2の濃度を示す。濃度は、2日目に低下し続ける。
【0153】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、1日目及び2日目にわたるCO2及びCOの濃度の低下は、酸化鉄の量の減少が原因である。
【0154】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、COレベル及びCO2レベルが低下し始めた後の1日目の高い転化率の維持は、酸化鉄から形成された元素鉄による触媒作用、酸化鉄から形成されたFe-C複合体による触媒作用、及び/又は残留酸化鉄自体による触媒作用が原因である可能性がある。
【0155】
表1に示すように、CH4転化は、マイクロ波電力が増加するにつれて増加したが、CH4流量が増加するにつれて減少した。
【0156】
【表1】
【0157】
図8に示すように、CO2の濃度は非常に低く、これは、Fe23からのCO2生成がほとんど又は全くないことを示している。COの濃度も非常に低く、経時的に減少した。これは、CH4の分解がFe23とCH4の主な反応であることを示す。
【0158】
転化は、71%~86%の間で変化した。
【0159】
酸化鉄含浸アルミナについてCH 4 流量による固定床における転化への影響
【0160】
メタンを以下のプロセスに従って分解した。
【0161】
1、1500mL(1812g)のFe23含浸アルミナ(5.1mm)及び700mL(876.7g)のSiCを9cmの反応器に充填した。
【0162】
2、マイクロ波発生器を4kWに設定し、4.5kWに増加させた。
【0163】
3、天然ガスを0.1scfm(毎分標準立方フィート)で導入し、1scfmに増加させた。
【0164】
4、生成物ガス中のH2、CH4、CO、CO2の濃度を測定した。
【0165】
転化率を10分ごとに計算しながら、試験を2日にわたって実行した。
【0166】
試験を、0.1scfmのCH4流量及び4kWのマイクロ波電力で開始した。CH4転化を約30分間測定し、その後、流量を増加させた。0.3scfmの流量では、62%の転化率が得られた。
【0167】
図9は、0.1~1.0scfmの流量の場合の転化を示す。
【0168】
4kWのマイクロ波電力で流量が増加するにつれて転化率は減少した。
【0169】
電力が4.5kWに増加すると、転化流量が1.0scfmに達するまで転化は77%に留まった。これは、反応床がより高いガス流量を処理でき、高い転化を維持するためには、熱損失を低減する必要があることを示している。
【0170】
入口ガス温度による転化への影響
【0171】
1、1500mL(1812g)のFe23含浸アルミナ(5.1mm)及び700mL(876.7g)のSiCを9cmの反応器に充填した。
【0172】
2、マイクロ波発生器を4.5kWに設定した。
【0173】
3、CH4を1scfmで導入し、0.7scfm(8.1cm/sの線速度)に減少させた。
【0174】
4、入口ガス温度を700°Fから1000°Fに上昇させた。
【0175】
5、生成物ガス中のH2、CH4、CO、CO2の濃度を測定した。
【0176】
6、転化率を10分ごとに計算した。
【0177】
図10は、様々な入口ガス温度でのCH4転化を示す。
【0178】
入口ガス温度が700°F(371℃)から1044°F(562℃)に上昇すると、CH4転化率は、58%から87%に増加した。
【0179】
0.7scfmのN 2 及び5scfhのCH 4 でのFe 2 3 含浸アルミナ-SiC固定床試験
【0180】
入口ガス温度の影響を決定するための上記プロセスを、1000°Fの固定温度で、0.7scfmのN2及び5scfhのCH4で300時間以上の期間にわたって実行した。
【0181】
図11図12はそれぞれ、CH4転化と、Fe23と反応したカーボンの割合とを時間の関数として示す。
【0182】
CH4転化は、経時的に連続的に増加し、300分後には96%以上に達した。CO及びCO2の濃度に基づいて決定された、Fe23と反応したカーボンブラックの割合は、図12に示すように経時的に減少した。Fe23とカーボンの反応により、CH4分解反応を触媒するFe-C複合体が形成された。このFe-C複合体は、カーボン生成物とともに残存し、CH4転化率を増加させた。また、カーボンブラックは、CH4分解により生成されたカーボン生成物とともに凝集体を形成し、カーボン生成物が分解反応部位を被覆するのを防止した。これは、CH4転化率を高く保持するためには、Fe-C複合体を含むカーボン生成物がアルミナ又はSiC床に存在する必要があることを示唆する。
【0183】
Fe23-SiC固定床で生成されたカーボンブラックは、ガスにより床から分離されず、床内に留まった。300分後に床の高さを3インチ増加させ、分解により生成されたカーボンブラックが床の内部に留まっていることを確認した。Fe23は、CH4分解によって生成されたカーボンと反応するため、完全に消費されたら交換する必要がある。
【0184】
SiCを含まないFe 2 3 含浸アルミナ固定床
【0185】
以下のプロセスに従って分解を実行した。
【0186】
1、1000mLのFe23含浸アルミナを9cmの反応器に充填した。
【0187】
2、マイクロ波電力を2.5kWに設定した。
【0188】
3、CH4を5scfhで導入した。
【0189】
4、入口ガス温度を700°Fから1000°Fに上昇させた。
【0190】
5、生成物ガス中のH2、CH4、CO、CO2の濃度を測定した。
【0191】
6、転化率を10分ごとに計算した。
【0192】
7、瓶入りのCH4の代わりに天然ガスを使用して、ステップ(3)~(6)を繰り返した。この天然ガスには、約10%のC2以上の炭化水素及び約4ppmの硫黄化合物が含まれていた。
【0193】
Fe23含浸アルミナを分離し、SiCを混合せずに試験した。この床は、主にCH4の滞留時間が長いため、瓶入りのCH4と天然ガスの両方に対して非常に高い転化率を実現した。しかしながら、表2に示すように、床の圧力降下は、5scfhのガス流量で5pisgを超えた。
【0194】
【表2】
【0195】
マイクロ波エネルギーが均一に分布せず、Fe23を溶かしたホットスポットが床の上部に発生した。Fe23をSiCと混合すると、マイクロ波分布はより均一になり、ホットスポットが発生しなかった。試験3日後に生成されたカーボンブラックは1105gと推定されたが、Fe23では322gのカーボンブラックしか回収されなかった。出口ガスにより721gのカーボンブラックが運び出され、より高いガス速度を使用すれば、カーボンブラックをFe23から分離できることが示唆された。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、出口ガスに混入した微細カーボンブラックの割合が高いのは、反応の開始時にカーボンブラックが存在せず、反応中に生成されるカーボンブラックの核形成点を提供するためであると考えられる。
【0196】
生成物ガスの平均組成は、95.44%のH2、0.94%のCH4、3.55%のCO、及び0.06%のCO2であった。Fe23と反応してCOを生成するカーボンの量は62gであり、5.6%のカーボンが生成されたと推定された。これは、酸化鉄を使用したマイクロ波分解が水蒸気改質と比較してCO2排出量を94.6%低減できることを示した。
【0197】
SiCを含まない2400mLのFe23含浸アルミナをマイクロ波反応器に充填した。2kWで1scfmのN2及び2scfhの天然ガスで試験を開始した。マイクロ波電力をゆっくりと4kWに増加させた。カーボンブラックを床の上部から分離し、床の高さを連続的に増加させた。しかしながら、カーボンブラックを床から除去するにつれて、転化率が減少し、高い転化率を維持するためには床内にカーボンブラックを保持する必要があることを示した。前述したように、Fe23とカーボンブラックの反応により、カーボンブラック内に残存し、CH4分解反応を触媒するFe-C複合体が形成された。しかしながら、カーボンブラックは、床の上部で凝集体を形成し、出口ガスにより運び出すことができなかった。図13は、床の上部に蓄積した凝集カーボンブラックの写真を示す。
【0198】
分解により形成されたカーボンブラックを使用した固定床
【0199】
上記Fe23含浸アルミナ床から除去されたカーボンブラックは、Fe-C複合体及びFe23を含むと考えられる。このカーボンブラックを以下のように分解反応に使用した。
【0200】
1、上記Fe23含浸アルミナ床の試験から生成されたカーボンブラックを9cmの反応器に2700mL(1383.7g)充填した。
【0201】
2、マイクロ波電力を2kWに設定し、3kWに増加させた。
【0202】
3、天然ガスを1scfhで導入し、カーボンブラック床が持ち上がるまでゆっくりと増加させた。
【0203】
4、生成物ガス中のH2、CH4、CO、CO2の濃度を測定した。
【0204】
5、転化率を10分ごとに計算した。
【0205】
6、カーボンブラック床の上部に2インチのSiCを添加して、床が持ち上がることを防止した。
【0206】
7、ステップ(3)における2scfhの天然流量を使用して、ステップ(2)~(7)を繰り返した。
【0207】
天然ガス流を1scfhから2.4scfhに増加させた。2.4scfhのNGで、カーボンブラック床が持ち上がり、試験を中止した。
【0208】
図14図15はそれぞれ、転化率と生成物ガスの組成を時間の関数として示す。転化率は、1scfhで非常に高く開始したが、流量が増加するにつれて80%に減少した。電力が3kWに増加すると、転化率は、87%に増加した。CO及びCO2の高い濃度は、カーボンブラックが酸化鉄を含むことを明確に示した。
【0209】
図14に示すように、天然ガスの転化率は、80%を超えた。この試験で使用されたカーボンブラックは、Fe23含浸アルミナの試験から生成された酸化鉄を含んでいる可能性がある。また、カーボンブラックは、酸化鉄の消費時に形成され、天然ガスの分解を触媒する、Fe-カーボン複合体を含んでいた。
【0210】
試験を2日目まで継続した。転化率は、78%から開始し、50分後に72%に減少した。転化率は、200分間にわたって72%に留まり、その後、70%に減少した。COとCO2の濃度はそれぞれ、3%と2%から開始し、200分後に2%と0%に減少した。これは、カーボンブラックがFe23及びFe-C複合体を含み、Fe-C複合体がマイクロ波分解の触媒であったことを示した。この試験は、NG分解により生成されたカーボンブラックがマイクロ波分解に使用できることを示した。
【0211】
Fe 2 3 でコーティングされたカーボンブラック-SiC
【0212】
この試験の主な目的は、Fe-C複合体を形成するためのFe23とカーボンブラック生成物の反応を研究し、転化効率が増加するか否かを決定することであった。
【0213】
1、SiC粒子とFe23粉末を混合することにより、Fe23粉末でコーティングされたSiCを調製した。
【0214】
2、9cmの反応器に、150mLのSiCを8層充填し、続いて300mLのカーボンブラックを充填した。SiCをコーティングしたFe23の総量とカーボンブラックの総量はそれぞれ、1200mL(1629g)と2400mL(1202g)であった。
【0215】
3、マイクロ波電力は、2kWから開始し、4kWに増加した。
【0216】
4、天然ガスを2scfhで導入した。
【0217】
5、生成物ガス中のH2、CH4、CO、CO2の濃度を測定した。
【0218】
6、転化率を10分ごとに計算した。
【0219】
7、試験を2日間実施した。
【0220】
結果を図16図18に示す。CH4転化率は、1日目に85%以上に経時的に増加したが、2日目に80%に減少した。CO及びCO2の濃度は、1日目に、15%を超えて開始したが、5%未満に減少した。COの濃度は、2日目に、5%未満から開始し、4%に減少した。CO2の濃度は、約2%から開始し、0.5%未満に減少した。
【0221】
図18は、CO及びCO2の濃度データに基づいて計算された、反応したカーボンブラックの百分率を示す。酸化鉄と反応したカーボンブラックの量は、連続的に減少し、これは、Fe-C複合体がマイクロ波CH4分解を触媒したことを示唆する。Fe23とカーボンブラックの反応により生成されたFe-C複合体がSiC表面に留まる場合、より高いガス速度を使用することによりカーボンブラックをSiC固定床から分離することができる。
【0222】
カーボンブラック-鉄粉試験
【0223】
カーボンブラック及び鉄粉を使用したメタン分解を以下の手順に従って実行した。
【0224】
1、100gの鉄粉(10wt%の鉄粉)が混合された1000gのカーボンブラックを9cmの反応器に充填した。
【0225】
2、5gの鉄粉が混合された200gのSiCをカーボンブラック床の上部に添加して、カーボンブラック床が持ち上がることを防止した。
【0226】
3、マイクロ波電力は、2kWから開始し、3kWに増加した。
【0227】
4、天然ガスを2scfhで導入した。
【0228】
5、生成物ガス中のH2、CH4、CO、CO2の濃度を測定した。
【0229】
6、転化率を10分ごとに計算した。
【0230】
図19図21は、この試験の結果を示す。CH4転化率は、92%を超えて開始したが、連続的に減少した。転化率が80%に減少したとき、マイクロ波電力は3kWに増加した。その後、試験が完了するまで、転化率は84%に増加した。COの濃度は、14%から開始したが、50分後に2%未満に減少した。また、CO2の濃度は、6%から開始したが、50分後に1%未満に減少した。図21に示すように、分解により生成されたカーボンの約50%がFe23と反応したが、50分後に、10%未満のカーボンがFe23と反応した。試験200分間後、2%未満のカーボンがFe23と反応し、これは、鉄粉がカーボンブラックと反応せずにマイクロ波分解を触媒できることを示した。
【0231】
カーボンブラック-鉄粉床におけるNG転化率は、カーボンブラック単独の場合よりも高い。鉄粉は、天然ガスの転化を増加させることができる、優れたマイクロ波吸収剤である。
【0232】
2 S測定
【0233】
カーボンブラック及び鉄粉を使用したメタン分解を以下の手順に従って実行してH2Sの破壊を評価した。
【0234】
1、活性炭CTC-70を1.5cmの石英管反応器に充填した。
【0235】
2、N2を反応器に18scfhで導入した。
【0236】
3、H2Sを入口N2に10cc/分で注入した(N2中に1000ppmのH2S)。
【0237】
4、入口及び出口のガス流におけるH2Sの濃度を測定した。
【0238】
5、マイクロ波電力を300Wに設定した。
【0239】
6、マイクロ波電力の関数としてのH2S破壊効率を測定した。
【0240】
図22は、マイクロ波電力が600Wに増加するにつれてH2S解離効率が86%に増加し、その後、700Wのマイクロ波入力電力で平衡に達したことを示す。天然ガスは、約4ppmの硫黄化合物を含む。触媒被毒を防止するために、天然ガス中の硫黄化合物の濃度は1ppm未満であることが好ましい。600Wを超えるマイクロ波電力により、天然ガスのH2Sをこのレベル未満に分解することを示す。反応器から出たカーボンブラックの温度は、通常、硫黄の沸点である445℃よりも低い。
【0241】
1.5cmの流動床マイクロ波反応器試験
【0242】
1、1.5cmの石英管を7.6cmの石英管の中に入れた。
【0243】
2、50gの石油コークス(0.6~1.3mm)を1.5cmの石英管反応器に充填した。
【0244】
3、マイクロ波電力を2kWに設定した。
【0245】
4、石油コークスを2scfhのN2で流動化した。
【0246】
5、0.3scfhのCH4を1.5cmの反応器に導入した。入口ガスの線速度を、10.3cm/sとした。
【0247】
6、マイクロ波電力を、CH4転化率が80%を超えるレベルに調整した。
【0248】
7、出口ガス中のH2、CH4、CO及びCO2の濃度を、Wuhan Cubic石炭ガス分析器を使用して10分ごとに測定した。
【0249】
8、CH4転化率を10分ごとに計算した。
【0250】
図23図24はそれぞれ、CH4転化と生成物ガスの水素の濃度を時間の関数として示す。
【0251】
CH4転化率は、4kWのマイクロ波電力で、200分間にわたって95%を超えたが、300分に50%に連続的に減少した。CH4分解により生成されたカーボンブラックは、石油コークスの表面を覆い、これは、粒子の分解活性を減少させた。石油コークスのかさ密度は、0.60から0.74g/mLに増加し、カーボンブラックが石油コークスの表面に蓄積し、活性表面積を減少させたことを確認した。生成されたカーボンブラックの量は22.59gであると推定され、石油コークスの重量の増加は、7.7gであった。この結果は、34%のカーボンブラックが石油カーボンの表面に残存したことを示す。カーボンブラックがコークスの表面に蓄積したため、CH4分解の活性表面積が減少した。
【0252】
図24に示すH2の濃度は、活性炭固定床におけるCH4転化率(図23)と同じ傾向を示した。生成物ガスに高級炭化水素を検出せず、1モルのCH4が2モルのH2を生成したことが確認された。
【0253】
9cmの流動床マイクロ波反応器試験
【0254】
11.5cmの石英管の内部に9cmの管を有する二重石英管反応器を使用した。小さな粒径の石油コークスGAC(0.5~1.3mm)を使用して、カーボンブラックをカーボンの表面からどのように分離できるかを研究することにより、石油コークスの表面積の減少を防止する。入口ガスを約900°Fに予熱した。
【0255】
0.1~0.3scfmのCH4流量で石油コークスGACを流動化した。CH4転化率は、80%を超えて開始したが、約1時間後に連続的に減少した。カーボン床のマイクロ波吸収に対する監視により、試験時間が増加するにつれて床がマイクロ波を効率的に吸収しなくなることを示した。いくつかの試験の後、高いCH4転化を維持するためには、入口のCH4を約1000°Fに予熱する必要があるとの結論に達した。
【0256】
流動床試験は、1157g(2000mL)の石油コークスを0.4scfmのN2及び2scfhのCH4で流動化することにより開始した。80分後、N2の流量を0.3scfmに低減してCH4転化率を増加させた。図25に示すように、N2の流量を0.3scfmに低減し、入口ガス温度を約1000°Fに上昇させると、CH4転化率は64%から89%に増加した。0.3scfmのN2及び2scfhのCH4を使用して試験を2日目に継続した。CH4転化率は、0.3scfmのN2で流動化された石油コークスの場合に、90%を超えた。2日目と同じ条件で3日目に試験を継続した。CH4転化率は、80%未満から開始し、40%に連続的に減少した。試験の2日目及び3日目の結果も図25に示す。
【0257】
マイクロ波分布を改善するために、試験3日目と同じ条件で9cmの反応器を使用して試験を継続した。CH4転化は、約40%から開始し、60%に増加し、120分間にわたって60%を超えて留まり、その後、30%に連続的に減少した。
【0258】
未使用の石油コークスのかさ密度は、0.572g/mLであった。使用済みの石油コークスのかさ密度は、0.692g/mLに増加した。この増加は、CH4分解により生成されたカーボンブラックが石油コークスの表面に堆積したことを示した。300分後の転化の減少は、主に石油コークスの表面積の減少に起因すると考えられた。使用済みの石油コークスを蒸気及びマイクロ波により再活性化した。再活性化されたコークスのかさ密度は、0.605g/mLに減少し、未使用のコークスのかさ密度に近かった。この試験により、CH4分解が石油コークスの表面で発生したことを確認した。しかしながら、石油コークスの再活性化においてはCO2が発生する。
【0259】
カーボンブラックを石油コークスから連続的に分離することができなかった。
【0260】
酸化鉄含浸アルミナ触媒流動床試験
【0261】
1.8mmのアルミナ粒子に酸化鉄を含浸させた。この触媒のFe23の含有量は、46.5gのFe23/100gのAl23であった。
【0262】
30scfhの天然ガスを使用して流動床の試験を実施した。触媒は、マイクロ波をよく吸収し、カーボンブラックは、触媒から分離され、触媒床の上に蓄積した。しかしながら、NGからH2及びカーボンブラックへの転化は、非常に低かった。さらに、出口ガスがカーボンブラックを反応器から移すと、触媒の半分以上が失われた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図16
図17
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図22
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図24
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【国際調査報告】