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特表2024-517314単結晶シリコンロッドの引張方法及び単結晶シリコンロッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】単結晶シリコンロッドの引張方法及び単結晶シリコンロッド
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240412BHJP
   C30B 15/20 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C30B29/06 502G
C30B15/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569755
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2022128327
(87)【国際公開番号】W WO2023093460
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111411291.X
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522248559
【氏名又は名称】西安奕斯偉材料科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】Room 1-3-029, No.1888 South Xifeng Rd., Hi-Tech Zone Xi’an, Shaanxi 710100, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】宋 振亮
(72)【発明者】
【氏名】宋 少傑
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB09
4G077BA04
4G077CF10
4G077EH06
4G077EJ02
4G077PF55
(57)【要約】
本開示の実施例は、単結晶シリコンロッドの引張方法及び単結晶シリコンロッドを開示した。前記引張方法は、単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、水平磁場の開始高さがシリコン溶融液の自由表面より高くなるように設置することと、前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンロッドの引張方法であって、
前記引張方法は、
単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、水平磁場の開始高さがシリコン溶融液の自由表面より高くなるように設置することと、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することと、を含む、引張方法。
【請求項2】
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することは、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、
前記水平磁場の磁場強度を一定に保ち、前記水平磁場の高さを徐々に低下して前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を増大することを含む
請求項1に記載の引張方法。
【請求項3】
前記水平磁場の低下速度は、0.02mm/hから0.12mm/hである
請求項2に記載の引張方法。
【請求項4】
前記引張方法は、さらに、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長終了段階において、前記水平磁場の高さが前記シリコン溶融液の自由表面以上であるようにすることを含む
請求項2に記載の引張方法。
【請求項5】
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することは、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、
前記水平磁場の高さを一定に保ち、前記水平磁場の磁場強度を徐々に増加して前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を増大することを含む
請求項1に記載の引張方法。
【請求項6】
前記水平磁場の磁場強度の増加周波数は、0.2G/hから0.6G/hである
請求項5に記載の引張方法。
【請求項7】
前記引張方法は、さらに、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長終了段階において、前記水平磁場の磁場強度が4000G以下であるようにすることを含む
請求項5に記載の引張方法。
【請求項8】
直径300mmの前記単結晶シリコンロッドについて、前記単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、前記水平磁場の開始高さを+100mmから+200mmとし、前記水平磁場の磁場強度を3000Gから4000Gとする
請求項1から7のいずれか1項に記載の引張方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の引張方法により製造された単結晶シリコンロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2021年11月25日に中国に提出された出願番号が202111411291.Xである中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容が参照によって本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施例は、半導体製造技術分野に関し、特に単結晶シリコンロッドの引張方法及び単結晶シリコンロッドに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、半導体装置製造過程における微細化の進展に伴い、必要なシリコンウェハに対する要求が高まっており、シリコンウェハ表面領域の欠陥が少ないひいては欠陥がないことが要求されるだけでなく、電子部品が配置されたシリコンウェハ領域を重金属不純物に汚染されないように保護するために、シリコンウェハには十分なバルクマイクロ欠陥(Bulk Micro Defects、BMD)を持つことも要求される。
【0004】
エピタキシャルシリコンウェハは、蒸着反応により単結晶層(エピタキシャル層とも呼ばれる)をシリコンウェハ上に成長させたものであり、エピタキシャル層は、高い結晶完整性を有し、欠陥がほとんどない特性を有するため、現在、エピタキシャルシリコンウエハは、半導体装置の基板材料として広く使用されている。しかしながら、シリコンウェハに含まれる重金属不純物は、半導体装置の品質に影響を与える重要な要素となっているため、重金属不純物の含有量は、シリコンウェハの製造過程で極力減少する必要がある。現在、シリコンウェハ内部に十分な量のBMDを形成すると、これらのBMDは、重金属不純物を捕捉する真性ゲッタリング(Intrinsic Gettering、IG)作用を有し、重金属不純物による半導体装置の品質不良の問題を大幅に改善できることが知られているが、エピタキシャル成長過程では、シリコンウェハが1000℃以上の高温環境に曝されており、この高い温度で小さいBMDコアが除去されるため、エピタキシャルシリコンウェハにおいては十分な量のBMDコアを提供することができず、この場合、上記エピタキシャルシリコンウェハを用いた半導体装置の製造時に十分な密度のBMDを引き起こすことができず、さらに製造された半導体装置の品質が低下する。
【0005】
エピタキシャルシリコンウェハ中のBMD密度低下の問題を解決するために、一般的に単結晶シリコンロッドの引張過程で窒素添加処理を行って、安定したBMDコアを得るが、現在、窒素が添加された単結晶シリコンロッド中のBMDの密度は、窒素濃度が高くなるにつれて高くなる。クライアントの半導体装置に対するプロセス要求によって、BMD密度の均一性に対する要求もますます厳しくなり、この場合、単結晶シリコンロッドが損失なしに特定のクライアントのプロセス要求を満たすことができず、生産性が低く、出荷コストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに鑑み、本開示の実施例は、単結晶シリコンロッドの軸方向でのBMD密度分布がより均一になるように、単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度を徐々に低下させる傾向を呈することができる単結晶シリコンロッドの引張方法及び単結晶シリコンロッドを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施例に係る技術的解決手段は、以下のように実現する。
【0008】
第1態様では、本開示の実施例は、単結晶シリコンロッドの引張方法を提供し、前記引張方法は、
単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、水平磁場の開始高さがシリコン溶融液の自由表面より高くなるように設置することと、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場の高さ又は磁場強度を変更して前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することと、を含む。
【0009】
第2態様では、本開示の実施例は、第1態様に記載の引張方法により製造された単結晶シリコンロッドを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施例では、単結晶シリコンロッドの引張方法及び単結晶シリコンロッドを提供し、単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、水平磁場をシリコン溶融液自由表面より高い位置に設置し、そして、単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が徐々に低下するように等径成長過程において水平磁場の高さ又は磁場強度を変更することにより、窒素濃度偏析によるBMD密度の増加を抑制し、最終的には単結晶シリコンロッド全体の軸方向でのBMD密度分布をより均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施例に係る結晶引張炉装置の構造概略図である。
図2】本開示の実施例に係る単結晶シリコンロッド長さに応じた窒素濃度の変化傾向の概略図である。
図3】本開示の実施例に係る関連する単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度の変化傾向の概略図である。
図4】本開示の実施例に係る単結晶シリコンロッドの引張方法のフロー概略図である。
図5】本開示の実施例に係る単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階における水平磁場の高さの概略図である。
図6】本開示の実施例に係る単結晶シリコンロッドの等径成長過程における、水平磁場の磁場強度を一定に保ち、水平磁場の高さを徐々に低下する場合、製造された単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度の変化傾向の概略図である。
図7】本開示の実施例に係る単結晶シリコンロッドの等径成長過程における、水平磁場の高さを一定に保ち、水平磁場の磁場強度を徐々に増加する場合、製造された単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度の変化傾向の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施例における図面を参照しながら本開示の実施例における技術的解決手段について明確で完全に説明する。
【0013】
図1に本開示の実施例の結晶引張炉装置1を示す。図1に示すように、該結晶引張炉装置1は、主に、石英坩堝10と黒鉛坩堝20を含む。ここで、黒鉛坩堝20は、石英坩堝10を支持し固定するために用いられる。図1に示す結晶引張炉装置1には、他の図1に示されていない構造、例えば、坩堝昇降装置なども含まれていてもよいことが理解できる。本開示の実施例は、これに対して具体的に説明しない。
【0014】
上記結晶引張炉装置1を用いて、窒素が添加された単結晶シリコンロッドSの引張を行う時、単結晶シリコンロッドSは、結晶成長中に結晶初期段階で窒素濃度が所定のターゲット濃度となるが、結晶成長過程が進むにつれて、窒素の偏析の原因で単結晶シリコンロッド中の窒素濃度(Nitrogen Concentration)は、具体的に、図2に示すように単結晶シリコンロッドS長さ(Ingot Length)が長くなるにつれて徐々に増加していくため、引張して得られた単結晶シリコンロッドS中のBMD密度は、頭部から尾部にかけて軸方向に徐々に増加する傾向にある。関連技術から、単結晶シリコンロッドS中の酸素濃度が高いほど、その内部に含まれるBMD密度が高くなるため、単結晶シリコンロッドS中の酸素濃度の変化傾向を制御することにより、単結晶シリコンロッドSの軸方向でのBMD密度の増加傾向を抑制することができる。
【0015】
現在、直引き(Czochralski、CZ)法に基づく単結晶シリコンロッドSの引張方法では、一般的に、石英坩堝の堝転やアルゴンガス流量を調整するなどのプロセス方法を用いて単結晶シリコンロッドS中の酸素濃度の変化傾向を調節するが、これらのプロセス方法について、酸素濃度は、窒素濃度と逆の変化傾向を呈することが難しく、一般的には、単結晶シリコンロッドSの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度は、具体的に、図3に示すように、一定範囲上下に変動する傾向にあり、酸素濃度の低下にも限界がある。
【0016】
上記説明に基づき、図4に本開示の実施例に係る単結晶シリコンロッドの引張方法を示す。前記方法は、以下のS401~S402を含む。
【0017】
S401では、単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、水平磁場の開始高さがシリコン溶融液の自由表面より高くなるように設置する。
【0018】
S402では、前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更する。
【0019】
図4に示す技術的解決手段については、単結晶シリコンロッドSの等径成長初期段階において、水平磁場をシリコン溶融液MS自由表面より高い位置に設置し、そして、等径成長過程中に水平磁場によるシリコン溶融液MS対流に対する制御強度を変更することにより、シリコン溶融液の対流程度を弱め、シリコン溶融液MS自由表面における酸素濃度の低下を招き、単結晶シリコンロッドSの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度を徐々に低下させることで、窒素濃度偏析によるBMD密度の増加を抑制し、最終的に単結晶シリコンロッドS全体の軸方向でのBMD密度分布をより均一にする。
【0020】
なお、本開示の実施例では、単結晶シリコンロッドSの頭部とは、等径成長初期段階で引張して得られた単結晶シリコンロッド部分を指し、単結晶シリコンロッドSの尾部とは、等径成長終了段階で引張して得られた単結晶シリコンロッド部分を指す。
【0021】
本開示の実施例を実施するために、具体的に図5に示すように、黒鉛坩堝20の外周には、石英坩堝10中のシリコン溶融液MSに水平磁場を印加するための一対の励起コイル30を設置することができ、ここで、図中の点線は、水平磁場の水平面40を表す。本開示の実施例では、水平面40とシリコン溶融液MS自由表面との間の距離Hは、水平磁場の位置(Maximum Gauss Position、MGP)を特徴づけるために用いられ、理解できるように、水平磁場は、一定の空間を占める立体構造であり、MGPとは、水平磁場全体の中間位置を指す。
【0022】
なお、本開示の実施例では、水平磁場の水平面40がシリコン溶融液MSの自由表面と重なり合うと、水平磁場の高さは、0であり、水平磁場の水平面40がシリコン溶融液MSの自由表面よりも高いと、水平磁場の高さは、大于0よりも大きいと規定する。例えば、水平磁場の水平面40がシリコン溶融液MSの自由表面より100mm高い場合、水平磁場の高さは、+100mmである。同様に、水平磁場の水平面40がシリコン溶融液MSの自由表面よりも低い場合、水平磁場の高さは、0よりも小さい。例えば、水平磁場の水平面40がシリコン溶融液MSの自由表面より100mm低い場合、水平磁場の高さは、-100mmである。
【0023】
なお、本開示の実施例では、水平磁場によるシリコン溶融液MS対流に対する制御強度とは、水平磁場によるシリコン溶融液MS対流の制御程度の特徴付け量を意味する。水平磁場によるシリコン溶融液MS対流に対する制御強度が増大すると、シリコン溶融液MSの対流程度が弱まり、シリコン溶融液MS自由表面における酸素濃度の低下を招き、さらに、単結晶シリコンロッドSの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度の含有量が徐々に低下する。例えば、本開示の実施例では、図5に示すように、単結晶シリコンロッドSの等径成長初期段階において、水平磁場の水平面40がシリコン溶融液MSの自由表面よりも高い場合、単結晶シリコンロッドSの引張過程中に、シリコン溶融液MSの自由表面が基本的に同一の位置に保持されるように、石英坩堝10は、上昇過程にあり続ける。この場合、水平磁場の高さの低下、又は、磁場強度の増大により、水平磁場Pによるシリコン溶融液MS対流の制御程度を補強することができる。
【0024】
選択可能に、本開示の実施例では、水平磁場の高さを低下するために、
いくつかの可能な実現方式において、前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することは、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドSの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、
前記水平磁場の磁場強度を一定に保ち、前記水平磁場の高さを徐々に低下して前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を増大することを含む。
【0025】
具体的には、水平磁場の高さを変更するために、図5に示すように、結晶引張炉装置1には、磁場移動ユニット50がさらに備えられている。磁場移動ユニット50は、単結晶シリコンロッドSの引張過程中に励起コイル30を移動して水平磁場の高さを変更するために用いられる。
【0026】
具体的に、図6に示すように、水平磁場の磁場強度が一定のままである場合、水平磁場を徐々に低下する過程で、単結晶シリコンロッドSの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度は、低下する傾向にある。
【0027】
上記可能な実現方式について、いくつかの例では、前記水平磁場の低下速度は、0.02mm/hから0.12mm/hである。
【0028】
上記可能な実現方式について、いくつかの例では、前記引張方法は、さらに、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長終了段階において、前記水平磁場の水平面が前記シリコン溶融液の自由表面以上であるようにすることを含む。つまり、単結晶シリコンロッドSの等径成長終了段階において、水平磁場の水平面40は、最低でもシリコン溶融液MSの自由表面と重なり合う。つまり、水平磁場の高さは、最低でも0である。もちろん、単結晶シリコンロッドSの等径成長終了段階において、水平磁場の高さは、0より大きくてもよい。
【0029】
選択可能に、本開示の実施例では、水平磁場の磁場強度を増大するために、
いくつかの可能な実現方式において、前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することは、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、
前記水平磁場の高さを一定に保ち、前記水平磁場の磁場強度を徐々に増加して前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を増大することを含む。
【0030】
例えば、本開示の実施例では、水平磁場の磁場強度を増加するために、励起コイル30の入力電流を増大し得る。
【0031】
具体的に、図7に示すように、水平磁場の高さが一定のままである場合、水平磁場の磁場強度を徐々に増加する過程で、単結晶シリコンロッドSの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度は、低下する傾向にある。
【0032】
上記可能な実現方式について、いくつかの例では、前記水平磁場の磁場強度の増加周波数は、0.2G/hから0.6G/hである。
【0033】
上記可能な実現方式について、いくつかの例では、前記単結晶シリコンロッドの等径成長終了段階において、前記水平磁場の磁場強度が、4000ガウシアン(G)以下である。つまり、本開示の実施例では、単結晶シリコンロッドSの成長を容易にするために、単結晶シリコンロッドSの等径終了段階において、水平磁場の磁場強度が4000G以下であるようにする。
【0034】
選択可能に、本開示の実施例では、直径300mmの前記単結晶シリコンロッドについて、前記単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、前記水平磁場の開始高さを+100mmから+200mmとし、前記水平磁場の磁場強度を3000Gから4000Gとする。
【0035】
本開示の実施例では、直径300mmの単結晶シリコンロッドSを引張する時、等径成長初期段階において、水平磁場の開始高さを、+100mmから+200mmとし、水平磁場の磁場強度を、3000Gから4000Gとし、等径成長過程で、水平磁場の磁場強度を一定に保ち、0.02mm/hから0.12mm/hの低下速度で水平磁場を徐々に低下することにより、水平磁場の水平面40がシリコン溶融液MSの自由表面に徐々に接近して水平磁場によるシリコン溶融液MS対流に対する制御強度を補強し、シリコン溶融液MSの対流程度を弱め、さらに、単結晶シリコンロッドSの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度の含有量が徐々に低下するようにすることができる。等径成長終了段階において、水平磁場の水平面40は、最低でもシリコン溶融液MSの自由表面と重なり合う。
【0036】
一方、本開示の実施例では、直径300mmの単結晶シリコンロッドSを引張する時、等径成長初期段階において、水平磁場の開始高さを、+100mmから+200mmとし、水平磁場の磁場強度を、3000Gから4000Gとし、等径成長過程で、水平磁場の高さを一定に保ち、0.2G/hから0.6G/hの増加周波数で水平磁場の磁場強度を徐々に増加することにより、水平磁場によるシリコン溶融液MS対流に対する制御強度を補強し、シリコン溶融液MSの対流程度を弱め、さらに、単結晶シリコンロッドSの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度の含有量が徐々に低下するようにすることもできる。等径成長終了段階において、水平磁場の磁場強度が4000G以下であるようにする。
【0037】
最後に、本開示の実施例は、さらに単結晶シリコンロッドを提供し、前記単結晶シリコンロッドは、上述した技術的解決手段に記載の引張方法により製造されたものである。
【0038】
なお、本開示の実施例に記載した技術的解決手段間は、衝突しない場合には、任意に組み合わせることができる。
【0039】
上記は、本開示の具体的な実施形態にすぎないが、本開示の保護範囲はこれに限定されるものではなく、本開示が開示した技術範囲内において、当業者は、容易に変更や置換を思いつくことができ、それらは、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲に準じなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンロッドの引張方法であって、
前記引張方法は、
単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、水平磁場の開始高さがシリコン溶融液の自由表面より高くなるように設置することと、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することにより、窒素濃度偏析によるBMD密度の増加を抑制することと、を含み、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することは、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場の磁場強度を一定に保ち、前記水平磁場の高さを徐々に低下して前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を増大することを含み、ここで、前記水平磁場の低下速度は、0.02mm/hから0.12mm/hであり、
又は、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を変更することは、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長過程において、前記単結晶シリコンロッドの頭部から尾部にかけて軸方向での酸素濃度が低下する傾向にあるように、前記水平磁場の高さを一定に保ち、前記水平磁場の磁場強度を徐々に増加して前記水平磁場による前記シリコン溶融液の対流に対する制御強度を増大することを含み、ここで、前記水平磁場の磁場強度の増加周波数は、0.2G/hから0.6G/hである、引張方法。
【請求項2】
前記引張方法は、さらに、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長終了段階において、前記水平磁場の高さが前記シリコン溶融液の自由表面以上であるようにすることを含む
請求項に記載の引張方法。
【請求項3】
前記引張方法は、さらに、
前記単結晶シリコンロッドの等径成長終了段階において、前記水平磁場の磁場強度が4000G以下であるようにすることを含む
請求項に記載の引張方法。
【請求項4】
直径300mmの前記単結晶シリコンロッドについて、前記単結晶シリコンロッドの等径成長初期段階において、前記水平磁場の開始高さを+100mmから+200mmとし、前記水平磁場の磁場強度を3000Gから4000Gとする
請求項1に記載の引張方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の引張方法により製造された単結晶シリコンロッド。
【国際調査報告】