(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】真空処理システムおよびプロセス制御
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20240412BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240412BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/205
H01L21/302 103
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569867
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022062313
(87)【国際公開番号】W WO2022238257
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021002479.6
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランティシェク バロン
(72)【発明者】
【氏名】ケリム ユント
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク マイアホーファー
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030EA03
4K030FA01
4K030HA01
4K030JA05
4K030KA41
5F004CA02
5F004CB01
5F045DP03
5F045EE01
5F045GB04
(57)【要約】
真空処理システム(1)であって、真空処理システム(1)は、真空チャンバ(10)と、真空チャンバ(10)に接続されており、かつ真空チャンバ(10)内への流体の流入を、制御された方式で提供するように構成されている制御可能な流体適用装置(30)と、少なくとも制御可能な流体適用装置(30)を制御するための制御および/または調整ユニット(40)とを含む。真空処理システム(1)は、雰囲気分析装置(50)を含み、雰囲気分析装置(50)は、真空チャンバ(10)の内部の雰囲気情報を特定するように、かつ雰囲気情報をそれぞれの雰囲気信号として提供するように配置および構成されており、制御および/または調整ユニット(40)は、雰囲気信号に応じて制御可能な流体適用装置(30)を制御するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理システム(1)であって、前記真空処理システム(1)は、
真空チャンバ(10)と、
前記真空チャンバ(10)に接続されており、かつ前記真空チャンバ(10)内への流体の流入を、制御された方式で提供するように構成されている制御可能な流体適用装置(30)と、
少なくとも前記制御可能な流体適用装置(30)を制御するための制御および/または調整ユニット(40)と
を含む、真空処理システム(1)において、
前記真空処理システム(1)は、雰囲気分析装置(50)を含み、
前記雰囲気分析装置(50)は、前記真空チャンバ(10)の内部の雰囲気情報を特定するように、かつ前記雰囲気情報をそれぞれの雰囲気信号として提供するように配置および構成されており、
前記制御および/または調整ユニット(40)は、前記雰囲気信号に応じて前記制御可能な流体適用装置(30)を制御するように構成されている
ことを特徴とする、真空処理システム(1)。
【請求項2】
前記制御および/または調整ユニット(40)は、前処理機能を含み、
前記前処理機能が実行されると、
前記真空チャンバ(10)内への規定された流体の流入が、前記制御可能な流体適用装置(30)によって提供され、
前記規定された流体の流入中、前記真空チャンバ(10)の内部の前記規定された流体の濃度が、前記雰囲気分析装置(50)によって特定され、前記規定された流体の濃度は、前記雰囲気情報を表す、
請求項1記載の真空処理システム(1)。
【請求項3】
前記前処理機能が実行されると、
前記規定された流体の濃度が、規定された時間間隔の後に少なくとも1回特定され、前記時間間隔は、前記真空チャンバ(10)内への前記規定された流体の流入の開始によって開始し、
前記規定された流体の特定された前記濃度が、事前閾値と比較され、
前記比較に応じて前処理情報が提供される、
請求項2記載の真空処理システム(1)。
【請求項4】
前記前処理機能が実行されると、
前記規定された流体の濃度が連続的に特定され、
前記規定された流体の特定された前記濃度が、前記制御可能な流体適用装置によって前記規定された流体を適用するための公称濃度変化と比較され、
前記比較に応じて前処理情報が提供される、
請求項2記載の真空処理システム(1)。
【請求項5】
前記前処理情報は、
前記制御可能な流体適用装置(30)の状態、
前記制御可能な流体適用装置(30)の動作信頼性、および/または
後続の処理ステップを開始するためのトリガポイント
に関する情報を提供する、
請求項3または4記載の真空処理システム(1)。
【請求項6】
前記前処理機能が実行されると、前記前処理情報に応じて前記制御可能な流体適用装置(30)が制御され、前記真空チャンバ(10)内への前記規定された流体の内向きの流れが低減および/または停止される、
請求項3から5までのいずれか1項記載の真空処理システム(1)。
【請求項7】
前記制御および/または調整ユニット(40)は、後処理機能を含み、
前記後処理機能が実行されると、
前記真空チャンバの内部の雰囲気特性が、前記雰囲気分析装置(50)によって特定され、
特定された前記雰囲気特性が、後処理閾値と比較され、
前記制御可能な流体適用装置(50)が、特定された前記雰囲気特性と前記後処理閾値との前記比較に応じて制御される、
請求項1から6までのいずれか1項記載の真空処理システム(1)。
【請求項8】
前記制御可能な流体適用装置(50)は、
前記真空チャンバ(10)内への前記規定された流体の内向きの流れが低減および/または停止されるように制御され、かつ/または
前記真空チャンバ(10)内へのさらなる規定された流体の内向きの流れが提供されるように制御される、
請求項7記載の真空処理システム(1)。
【請求項9】
前記後処理機能が実行されると、特定された前記雰囲気特性と前記後処理閾値との前記比較に応じて下流ユニット(20)が制御され、前記真空チャンバ(10)からガスを抽出するための流速が、前記比較に応じて増大または低減される、
請求項7または8記載の真空処理システム(1)。
【請求項10】
前記後処理機能が実行されると、特定された前記雰囲気特性と前記後処理閾値との前記比較に応じて後続の処理ステップがトリガされる、
請求項7から9までのいずれか1項記載の真空処理システム(10)。
【請求項11】
前記後処理機能の実行は、規定された処理ステップの開始および/または実施によってトリガされる、
請求項7から10までのいずれか1項記載の真空処理システム(1)。
【請求項12】
前記雰囲気特性は、
前記規定された流体の濃度、
前記真空チャンバ(10)の内部雰囲気に関する化学組成、および/または
前記化学組成の一部である化学元素または化学分子の特定の濃度
によって表される、
請求項7から11までのいずれか1項記載の真空処理システム(1)。
【請求項13】
前記濃度は、
化学種のモル濃度、
単位体積当たりの質量、
質量濃度、
体積濃度、
分子の数密度、および/または
物質量のパーセンテージ
のうちの少なくとも1つである、
請求項2から6までのいずれか1項または請求項12記載の真空処理システム(1)。
【請求項14】
前記制御可能な流体適用装置(30)は、
少なくとも1つのガス入口弁および少なくとも1つの質量流量コントローラ、または
少なくとも2つのガス入口弁または少なくとも2つの質量流量コントローラ
を含む、
請求項1から13までのいずれか1項記載の真空処理システム(1)。
【請求項15】
前記真空処理システム(1)は、下流ユニット(20)を含み、
前記下流ユニット(20)は、前記真空チャンバ(10)に接続されており、かつ前記真空チャンバから流体を抽出するように構成されている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の真空処理システム。
【請求項16】
真空チャンバ(10)における真空処理サイクルを調整するための方法であって、
前記方法は、
第1の処理ステップを実施することであって、前記第1の処理ステップは、
前記真空チャンバ(10)内で処理されるべき、規定された表面特性を有する基板を提供することと、
前記真空チャンバ(10)の内部の、前記表面上に堆積するように設計されている第1の前駆体の濃度を増加させることと、
特に、前記真空チャンバ(10)の内部にプラズマを印加することと、
規定された時間期間の後に前記真空チャンバ(10)の内部の前記第1の前駆体の濃度を減少させることと
を含む、ことと、
前記第1の処理ステップを繰り返すこと、または第2の処理ステップを開始することと
を含む、方法において、
前記真空チャンバ(10)の内部の前記第1の前駆体の濃度を連続的に特定することと、
前記第1の前駆体の特定された前記濃度に応じて、前記第1の処理ステップを繰り返すステップ、または第2の処理ステップを開始するステップをトリガすることと
を特徴とする、方法。
【請求項17】
前記真空チャンバ(10)の内部の前記第1の前駆体の濃度が、前記第1の前駆体の許容可能な残留濃度を表している規定された下側閾値未満に低下するとすぐに、前記第2の処理ステップが開始される、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記第2の処理ステップは、前記真空チャンバ(10)内に、前記第1の前駆体とは異なる第2の前駆体を流入させることを含む、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項1から15までのいずれか1項記載の真空処理システム(1)の適切な動作が行われているかをチェックするための方法であって、前記方法は、
真空チャンバ(10)内への流体の規定された流入を開始するために、制御可能な流体適用装置(30)に信号を提供することと、
前記真空チャンバ(10)の内部の前記流体の濃度を、雰囲気分析装置(50)によって連続的に特定することと、
特定された前記濃度を基準濃度と比較することであって、前記基準濃度は、前記流体適用装置によって行われるべき流体の流入と、前記行われるべき流体の流入の持続時間との間の関係を表す、ことと、
特定された前記濃度と前記基準濃度との比較に基づいて、前記流体適用装置(30)の実際の動作状態に関する情報を提供することと
を含む、方法。
【請求項20】
コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、機械可読媒体に格納されたプログラムコードを含むか、またはプログラムコードセグメントが含まれる電磁波によって具現化されており、特に、請求項1から15までのいずれか1項記載の真空処理システム(1)において実行された場合に、請求項16から19までのいずれか1項記載の方法を実施および/または制御するためのコンピュータ実行可能命令を有する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも真空チャンバと、流体適用ユニットと、制御ユニットと、雰囲気分析装置とを含む、真空処理システムに関する。
【0002】
公知の真空処理システムは、例えばIC、半導体、または基板の製造の分野において広く使用されており、こうした分野の製造は、できるだけ汚染粒子を存在させることなく、保護された雰囲気中で実施されなければならない。
【0003】
このような種類の真空チャンバシステムは、特に、少なくとも1つの排気可能な真空チャンバを含み、この少なくとも1つの排気可能な真空チャンバは、処理または製造されるべき半導体素子または基板を収容するために設けられており、かつ少なくとも1つの真空チャンバ開口部を有し、この少なくとも1つの真空チャンバ開口部を介して半導体素子または他の基板を真空チャンバ内に導入し、かつ真空チャンバ外に導出することができる。典型的には、真空チャンバを排気するための少なくとも1つの真空ポンプと、プロセスガスを適用するための少なくとも1つのガス入口弁とが設けられている。例えば、半導体ウェハまたは液晶基板のための製造工場では、非常に敏感な半導体素子または液晶素子が、いくつかのプロセス真空チャンバを順次に通過し、これらのプロセス真空チャンバでは、これらのプロセス真空チャンバの内部に配置された部品が、その都度、処理装置によって処理される。プロセス真空チャンバの内部での処理プロセス中、およびチャンバからチャンバ内への搬送中の両方において、非常に敏感な半導体素子または基板は、常に保護雰囲気中に-特に無空気環境中に-配置されなければならない。
【0004】
前述のシステムによって製造されるべき基板は、非常に敏感な品質のものであるので、例えば、-特に真空弁または入口弁の作動または搬送システムによって引き起こされる-粒子の発生と、真空チャンバ内の遊離粒子の数とを、できるだけ少なく抑える必要がある。粒子の発生は、典型的には、例えば金属/金属の接触の結果としての、かつアブレーションの結果としての摩擦の結果である。
【0005】
そのために、真空調整弁または搬送弁のような特別に設計された真空弁が、敏感な半導体素子の製造に応用される。
【0006】
真空調整弁は、プロセスチャンバ内の規定されたプロセス環境(例えば、圧力)を設定する目的のために使用される。閉ループ制御は、チャンバの内部圧力に関する情報を提供する圧力信号に基づいて実施可能であり、かつこの閉ループ制御によって得られるべき目標変数-すなわち公称圧力-に基づいて実施可能である。次いで、一定の時間期間内に公称圧力が得られるように、弁シャッタ(弁ディスク)の位置が、閉ループ制御の枠内で変化させられる。
【0007】
例えば半導体を製造するための基板の処理は、明確に規定された制御された条件下で実施されなければならない。このような処理は、特に基板上への原子層または分子層の堆積を含むことができる。
【0008】
化学蒸着(chemical vapour deposition:CVD)は、真空蒸着法であり、非常に敏感な基板を製造するために適用可能である。このプロセスは、半導体産業において薄膜を製造するために使用されることが多い。典型的なCVDでは、ウェハ(基板)が1つまたは複数の揮発性の前駆体に曝され、この前駆体が、基板表面上で反応および/または分解して所望の堆積物を生成する。
【0009】
原子層エピタキシ、またはより一般的には原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)として知られる原子層エピタキシは、気相化学プロセスのシーケンシャルな使用に基づく薄膜堆積技術である。このプロセスも、半導体産業において薄膜を製造するために使用されることが多い。ALD反応の大部分は、前駆体と称される(反応物とも称される)2つの化学物質を使用する。これらの前駆体は、材料の表面と一度に1つずつ連続的かつ自己制限的に反応する。別々の前駆体に繰り返し曝されることにより、薄膜が緩慢に堆積される。ALDは、半導体装置の製造における鍵となるプロセスとなってきており、ナノ材料の合成のためにも使用される。
【0010】
原子層堆積中、膜は、その表面を(典型的には、前駆体と称される)交互のガス種に曝すことによって基板上で成長させられる。化学蒸着とは対照的に、これらの前駆体は、反応器内に同時には存在しないが、一連の連続的な重畳しないパルスとして挿入される。これらのパルスの各々において、前駆体分子は、表面と自己制限的に反応し、これにより、表面上の全ての反応性部位が消費されると反応が終了する。全ての前駆体への1回の曝露(いわゆるALDサイクル)の後に表面上に堆積される材料の最大量は、前駆体-表面の相互作用の性質によって決定される。サイクルの回数を変化させることによって、任意に複雑な大型の基板上に、材料を均一かつ高精度に成長させることが可能となる。
【0011】
有機前駆体を使用することが希望される場合には、原子層堆積の姉妹技術である分子層堆積(molecular layer deposition:MLD)が使用される。ALD/MLD技術を組み合わせることによって、多くの用途のために高度にコンフォーマルで純粋なハイブリッドの膜を製造することが可能となる。
【0012】
さらなる表面処理技術は、原子層エッチング(atomic layer etching:ALE)と称され、この原子層エッチング(ALE)は、材料の堆積とは反対の効果を提供するものと理解可能である。原子層エッチングを実施することにより、基板から材料が除去される。ここでは、除去されている表面または材料を攻撃するために反応物が使用される。
【0013】
上記の堆積プロセスのうちの1つまたは他の任意のプロセスを真空チャンバの内部で高い信頼性で実施するための1つの要件は、真空容積(チャンバ)の内部で、それぞれのプロセスのための公称(目標)雰囲気状態に一致する雰囲気を提供することである。
【0014】
例えば、チャンバ内でのプラズマの印加を利用する堆積サイクル中には、揮発性の副産物が生成される可能性がある。さらに、(排他的に)第2の前駆体が使用されるべきである後続の処理ステップを開始する際に、依然として(部分的に)第1の前駆体が存在してしまう可能性がある。
【0015】
典型的には、規定された時間期間にわたって反応チャンバを通過するガス流によって不所望な流体(例えば、前駆体)を除去することにより、プロセスに関係するこのような汚染を回避することが試みられている。第1のプロセスサイクルは、真空チャンバを第1の前駆体によってフラッディングすることによって実施される。第1のプロセスサイクルの終了後、真空チャンバが(窒素等のような)フラッシング流体によって能動的にフラッシングされるか、または第1の前駆体が下流を介して抽出されている間、規定された時間期間の経過が許可される。その後、その真空容積は、次回のプロセスサイクルのためにクリーンであると見なされ、次回のサイクルが開始される。
【0016】
上記のようなALDステップは、典型的には時間制御された方式で実施され、すなわち、それぞれのサイクルが、事前に規定された時間期間にわたって実行される。
【0017】
結果として、処理中に発生する可能性のある障害は、結果的に製品の障害をもたらし、それらの障害が発生した際には殆ど認識されないが、大抵の場合、任意の後の時点において認識されることとなる。このような障害は、第2の処理ステップを開始する際に、下流での抽出が不十分であることに起因して第1の前駆体が存在することによって引き起こされる可能性があるか、または必要とされる前駆体の濃度不足等をもたらす入口弁の損傷によって引き起こされる可能性がある。さらに、時間間隔は、最適に(高信頼性の処理ステップを依然として提供しながらできるだけ短く)は選択されない可能性があるが、不要な誤差を伴って設定される可能性がある。
【0018】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を克服する、改善された真空処理システムを提供することである。
【0019】
特に、本発明の目的は、複数の連続的な処理ステップをより効率的に(より少ない時間消費で)実施する、改善された真空処理システムを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、比較的多数のプロセスサイクルにわたって基板をより高い信頼性で処理する、改善された真空処理システムを提供することである。
【0021】
これらの目的は、独立請求項の特徴部に記載された特徴を実現することによって達成される。本発明をさらに代替的または有利に発展させる特徴は、従属請求項から得られる。
【0022】
本発明の基本的な着想は、(真空容積、プロセス容積、プロセスチャンバ、または処理チャンバとも称される)真空チャンバの内部雰囲気に関する状態情報を特定するためのユニットを提供することである。状態情報は、限定するわけではないが、内部雰囲気に関する化学的情報であってよい。そのようなユニットは、真空チャンバ内に存在する流体(例えば、ガスまたは液体)の濃度および/または組成を特定するために使用される雰囲気分析装置であってよい。当然、雰囲気分析装置は、規定された流体または規定された化学種が存在するかどうかをチェックするためにも使用可能である。
【0023】
雰囲気分析装置は、真空チャンバの内部からそれぞれの情報が得られるように配置されている。そのために、雰囲気分析装置を、真空チャンバの内部に配置してもよいし、またはそれぞれのデータを内部から、例えばチューブを介して、光ファイバを介して、かつ/または透過窓を介して受信するように配置してもよい。
【0024】
雰囲気分析装置は、真空処理システムの一部であり、この真空処理システムは、制御および/または調整ユニットと、流体適用装置とを追加的に含む。流体適用装置は、前駆体のような少なくとも1つの規定された流体を、処理チャンバ内に適用する。流体適用装置は、制御および/または調整ユニットによって制御可能であるように設計可能である。
【0025】
制御および/または調整ユニットは、雰囲気分析装置および流体適用装置に(ワイヤによって、またはワイヤレスで)接続されている。制御および/または調整ユニットは、雰囲気分析装置によって供給することができる情報に応じて流体適用装置を制御することが可能となるようにさらに構成されている。
【0026】
したがって、本発明は、真空処理システムであって、真空処理システムは、真空チャンバと、真空チャンバに接続されており、かつ真空チャンバ内への少なくとも1つの流体の流入を、制御された方式で提供するように構成されている制御可能な流体適用装置とを含む、真空処理システムに関する。特に、真空処理システムは、下流ユニットを含むことができ、下流ユニットは、真空チャンバに接続されており、かつ真空チャンバから流体またはガスを抽出するように構成されている。
【0027】
真空処理システムは、少なくとも制御可能な流体適用装置を制御するための制御および/または調整ユニットも含む。
【0028】
さらに、真空処理システムは、雰囲気分析装置を含む。雰囲気分析装置は、真空チャンバの内部からの雰囲気情報を特定するように、かつそれぞれの雰囲気信号を提供するように配置および構成されている。制御および/または調整ユニットは、雰囲気信号に応じて制御可能な流体適用装置を制御するように構成されている。
【0029】
有利には、真空処理システムは、チャンバの内部の実際の雰囲気状態の特定に基づいて、チャンバ内への流体の流入を制御することを可能にする。これにより、単一または複数の処理ステップのための時間消費に関してプロセスサイクルを最適化することができる。換言すれば、事前に規定された雰囲気状態に達するまで、後続の処理ステップが開始されないようにすることができる。
【0030】
代替的または追加的に、真空処理システムは、システム自体の適切な動作が行われているかをチェックすることを可能にする。このようなチェックは、チャンバの内部の流体または化学種の濃度を測定または監視し、このような測定データを、監視された流体の流入に関するそうあるべきデータと比較することによって実現可能である。比較されるデータ同士が一致している場合、例えば事前に規定された許容範囲の限界内にある場合には、そのシステムまたは特にその流体適用装置を、適切に動作していると見なすことができる。
【0031】
真空処理システムの一実施形態では、制御および/または調整ユニットは、前処理機能またはチェック機能を含むことができる。前処理機能は、この前処理機能が実行されると、真空チャンバ内への規定された流体の流入が、制御可能な流体適用装置によって提供されるように、かつ規定された流体の流入中、真空チャンバの内部の規定された流体の濃度が、雰囲気分析装置によって特定されるように構成可能であり、規定された流体の濃度は、雰囲気情報を表す。
【0032】
流体の制御された適用と、関連する化学濃度のそれぞれの特定とは、処理ステップの最適化された制御のための、特に現在の処理ステップの停止または後続の処理ステップの開始のための基礎を提供する。
【0033】
本発明の一実施形態では、前処理機能の実行は、規定された流体の濃度を、規定された時間間隔の後に少なくとも1回特定することをさらに含み、時間間隔は、真空チャンバ内への規定された流体の流入の開始によって開始する。規定された流体の特定された濃度が、事前閾値と比較され、比較に応じて前処理情報が提供される。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、-前処理機能が実行されると-規定された流体の濃度が連続的に特定される。規定された流体の特定された濃度が、制御可能な流体適用装置によって規定された流体を適用するための公称濃度変化と比較され、比較に応じて前処理情報が提供される。
【0035】
前処理情報の比較および/または提供は、雰囲気信号に基づいてもよく、例えば制御および/または調整ユニットの側で処理されてもよいし、または雰囲気情報に直接的に基づいてもよい、例えば雰囲気分析装置の側で処理されてもよい。後者の場合、前処理情報は、雰囲気信号によって表されてよい。換言すれば、制御および/または調整ユニットは、雰囲気分析装置内に実装されてもよいし、または別個のユニットとして具現化されてもよい。制御および/または調整ユニットによって提供される任意の他の機能についても、上記のことが当てはまってよい。
【0036】
本発明の一実施形態では、前処理情報は、制御可能な流体適用装置の状態、制御可能な流体適用装置の動作信頼性(適切な動作)、および/または後続の処理ステップを開始するためのトリガポイントに関する情報を提供することができる。
【0037】
したがって、前処理機能は、処理ステップの明確に規定された制御、またはシステムの完全性についてのチェックを提供することができる。一方では、前処理機能は、流体適用ユニット、例えば前駆体の流入を制御するように配置されたガス入口弁または質量流量コントローラが、規定された限界内で動作しているか、すなわち流体適用ユニットが損傷を受けているか、または誤動作を含んでいるかをチェックすることを可能にする。流体適用ユニットの動作時間または残存寿命を特定するために、このようなチェックを適用することもできる。これにより、流体適用装置の予知保全が利用可能になり、すなわち、流体適用装置を、規定された時間またはサイクル間隔の後に交換または保守する必要はないが、要求に応じて交換または保守することができる。
【0038】
他方では、前処理機能は、チャンバの内部において所望の粒子濃度に達するとすぐに、処理ステップの開始、例えば放電の適用またはプラズマの点火を適時に制御することを可能にする。これにより、例えば、それぞれの前駆体のための規定された流入時間に基づく最小粒子濃度を保証するために、あらゆる不必要な適用時間を回避しながら、所要の製品品質を高い信頼性で得るために、所望の処理ステップをできるだけ迅速に開始することが可能となる。これにより、製品品質を維持しながら処理が高速になり、かつ処理サイクルが短縮される。
【0039】
本発明の一実施形態では、前処理情報に応じて制御可能な流体適用装置を制御することができ、真空チャンバ内への規定された流体の内向きの流れが低減および/または停止される。換言すれば、例えば目標濃度に達すると弁を通過するガス(前駆体)の流れが減少するように、例えば入口弁または質量流量コントローラを制御することができる。
【0040】
事前閾値は、規定された化学種の濃度に関する事前に規定された値であってもよいし、または典型的には最適な(所望の)濃度値を中心とした許容帯域を含むことができる濃度範囲によって与えられてもよい。事前閾値は、規定された時間期間にわたる粒子(分子)濃度の変化または進行によって表されてよい。事前閾値は、特定の処理ステップを実施する前に設定または測定されてもよいし、かつ/または明確に規定された公称処理条件下での特定の処理ステップの実施中に測定されてもよい。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、制御および/または調整ユニットは、後処理機能を含むことができる。後処理機能が実行されると、真空チャンバの内部の雰囲気特性(特徴)が、雰囲気分析装置によって特定され、特定された雰囲気特性が、後処理閾値と比較され、制御可能な流体適用装置が、特定された雰囲気特性と後処理閾値との比較に応じて制御される。
【0042】
後処理閾値は、規定された化学種の濃度に関する事前に規定された値であってもよいし、または典型的には最適な(所望の)濃度値を中心とした許容帯域を含むことができる濃度範囲によって与えられてもよい。後処理閾値は、規定された時間期間にわたる粒子(分子)濃度の変化または進行によって表されてよい。後処理閾値は、特定の処理ステップを実施する前に設定または測定されてもよいし、かつ/または明確に規定された公称処理条件下での特定の処理ステップの実施中に測定されてもよい。後処理閾値は、特定の化学元素(原子、分子、または化学種)の相互の比率を表すことができる。後処理閾値は、真空チャンバ内に存在することが許可された化学種のリスト(ホワイトリスト)を含むことができる。逆に、後処理閾値は、代替的または追加的に、真空チャンバ内に存在することが許可されない化学種のリスト(ブラックリスト)を含んでもよい。
【0043】
雰囲気特性は、規定された流体の濃度、真空チャンバの内部雰囲気に関する化学組成、および/または化学組成の一部である化学元素または化学分子の特定の濃度または比率によって表されてよい。
【0044】
一実施形態では、制御可能な流体適用装置は、(特定された雰囲気特性と後処理閾値との比較に応じて)真空チャンバ内への規定された流体の内向きの流れが低減および/または停止されるように制御され、かつ/または真空チャンバ内へのさらなる規定された(別の異なる)流体の内向きの流れが提供されるように制御される。これにより、第1の前駆体の濃度が規定されたレベル(後処理閾値)未満に低下するとすぐに、別の前駆体の適用を必要とする後続の処理ステップを開始することができる。
【0045】
したがって、一実施形態では、後処理機能が実行されると、特定された雰囲気特性と後処理閾値との比較に応じて後続の処理ステップがトリガされる。
【0046】
特に、後処理機能が実行されると、特定された雰囲気特性と後処理閾値との比較に応じて下流ユニットを制御することができ、真空チャンバから流体を抽出するための流速が、比較に応じて増大または低減される。このことは、流体抽出速度を上昇させるために、すなわち連続する2つの処理ステップの間の時間(遅延)を短縮するために実施可能である。下流ユニットは、制御可能な真空ポンプ、および/または制御可能な真空弁、特に真空制御弁を含むことができる。
【0047】
一実施形態によれば、後処理機能の実行を、規定された処理ステップの開始および/または実施によってトリガすることができる。このようにして、規定された処理ステップを監視することが可能となり、上記のように(時間消費に関して)最適化された方式で、後続の処理ステップを開始することが可能となる。
【0048】
本発明の一実施形態では、濃度は、
・化学種のモル濃度、
・単位体積当たりの質量、
・質量濃度、
・体積濃度、
・分子の数密度、および/または
・物質量のパーセンテージ
のうちの少なくとも1つであってよい。
【0049】
一実施形態では、制御可能な流体適用装置は、少なくとも2つのガス入口弁または少なくとも2つの質量流量コントローラ(mass flow controller:MFC)を含む。一実施形態では、制御可能な流体適用装置は、少なくとも1つのガス入口弁および少なくとも1つの質量流量コントローラ(MFC)を含む。例えば、MFCは、ガスを注入するために使用可能であり、入口弁は、液体前駆体を注入するために使用可能である。
【0050】
本発明は、真空チャンバにおける真空処理サイクルを調整するための方法にも関する。本方法は、第1の処理ステップを実施することを含む。第1の処理ステップは、少なくとも、
・真空チャンバ内で処理されるべき、規定された表面特性を有する基板を提供するステップと、
・真空チャンバの内部の、表面上に堆積するように設計されている第1の前駆体の濃度を増加させるステップと、
・特に、真空チャンバの内部にプラズマを印加するステップと、
・規定された時間期間の後に真空チャンバの内部の第1の前駆体の濃度を減少させるステップと
を含む。
【0051】
プラズマの印加に関しては、このプラズマの印加を、前駆体の活性化のために使用することができる。代替的に、活性化を、熱または温度上昇によって実施してもよい。
【0052】
本方法によれば、第1の処理ステップが繰り返されるか、または第2の処理ステップが開始される。
【0053】
本方法は、真空チャンバの内部の第1の前駆体の濃度を連続的に特定することと、第1の前駆体の特定された濃度に応じて、第1の処理ステップを繰り返すステップ、または第2の処理ステップを開始するステップをトリガすることも含む。
【0054】
本発明の一実施形態では、真空チャンバの内部の第1の前駆体の濃度が、第1の前駆体の許容可能な残留濃度を表している規定された下側閾値(後処理閾値)未満に低下していると判定されるとすぐに、第2の処理ステップを開始することができる。
【0055】
特に、第2の処理ステップは、真空チャンバ内に、第1の前駆体とは異なる第2の前駆体を流入させることを含むことができる。
【0056】
本発明は、上記の実施形態のいずれか1つによる真空処理システムの適切な動作が行われているかをチェックするための方法にも関する。本方法は、
・真空チャンバ内への流体の規定された流入を開始するために、制御可能な流体適用装置に信号を提供することと、
・真空チャンバの内部の流体の濃度を、雰囲気分析装置によって連続的に特定することと、
・特定された濃度を基準濃度と比較することであって、基準濃度は、流体適用装置によって行われるべき流体の流入と、行われるべき流体の流入の持続時間との間の関係を表す、ことと、
・特定された濃度と基準濃度との比較に基づいて、流体適用装置の実際の動作状態に関する情報を提供することと
を含む。
【0057】
したがって、実際の動作状態に関する情報は、所与の制限内の適切な動作、または誤動作の発生に関する情報を提供することができる。
【0058】
本発明は、コンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラム製品は、機械可読媒体に格納されたプログラムコードを含むか、またはプログラムコードセグメントが含まれる電磁波によって具現化されており、特に、上記の真空処理システムにおいて実行された場合に、上記の任意の方法を実施および/または制御するためのコンピュータ実行可能命令を有する、コンピュータプログラム製品にも関する。
【0059】
以下では、本発明による装置および方法を、図面に概略的に図示された実施例を参照しながら単なる例としてより詳細に記載または説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明による真空処理システムの第1の実施形態の概略図である。
【
図2】本発明による真空処理システムの別の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明による真空処理システムの別の実施形態を示す図である。
【0061】
図1は、本発明による真空処理システム1の一実施形態を示す。
【0062】
システム1は、真空プロセスチャンバ10を含む。プロセスチャンバ10は、例えばロボットのような自動化された搬送システムを用いて、処理されるべき基板11または被加工物を収容するように構成および設計されている。基板11は、真空チャンバ10内に搬入され、規定された処理ステップが実施され、その後、処理された基板11は、真空チャンバ10の外に取り出される。
【0063】
システム1は、真空チャンバ10に接続された下流ユニット20も含む。下流ユニット20は、真空容積10の内部のガス圧力を調整するために、真空容積10に対して配置されており、かつ真空容積10に接続されている。本実施形態によれば、下流ユニット20は、真空ポンプ21および真空調整弁22を含む。真空ポンプ21および/または真空調整弁22は、制御可能なコンポーネントとして設計されており、このことはつまり、真空ポンプ21の実際の吸込出力および/または弁開口部の実際の断面積を、それぞれの制御信号の印加に基づいて変化させることが可能であるということを意味する。このような調整により、真空チャンバ10からの流体の流出速度と、キャビティ圧力とを変更および設定することができる。
【0064】
さらに、システム1は、制御可能な入口弁のセット(ここでは3つ)を含み、これらの制御可能な入口弁が、1つの流体適用装置30を構築している。流体適用装置30は、真空チャンバ10に接続されており、真空チャンバ10内への少なくとも1つの流体の流入を、制御された方式で提供するように構成されている。本実施形態では、流体適用装置30は、3つの異なる流体、特に3つの異なる前駆体の適用を制御するように構成されている。入口弁の各々は、個別に制御可能であり、例えば、規定された時間期間にわたってそれぞれの前駆体をパルス方式で注入するように制御可能である。
【0065】
前駆体は、搬送ガスによって搬送される材料のガスまたは蒸気であってよい。したがって、本発明の文脈における前駆体は、流体であると理解されるべきである。
【0066】
制御および/または調整ユニット40も設けられている。制御および/または調整ユニット40は、制御可能な流体適用装置30と、下流ユニット20とに接続されている。これにより、真空チャンバ10内に流入する規定された前駆体の量と、処理サイクル中におけるそのような流入のための規定された時点とを制御することができる。真空容積10の内部の真空圧力も、同様に制御することができる。
【0067】
真空処理システム1は、雰囲気分析装置50を含む。雰囲気分析装置50は、真空チャンバ10の内部の雰囲気情報を特定することができるように配置および構成されている。分析装置50は、それぞれの雰囲気信号を提供することができる。見て取れるように、雰囲気分析装置50は、制御および/または調整ユニット40に接続されている。あるいは、制御および/または調整ユニット40は、雰囲気分析装置50によって提供される情報または信号を受信するように構成されている。
【0068】
雰囲気分析装置50は、特にプロセスチャンバ10の内部に存在する流体またはガスの化学元素または化学種の化学組成および/または濃度を特定するように構築可能である。
【0069】
雰囲気分析装置50は、発光分光分析装置(optical emission spectrometer:OES)、残留ガス分析装置(residual gas analyser:RGA)、または共鳴分光分析装置(resonance spectrometer:RES)であってよい。
【0070】
雰囲気分析装置50の動作原理は、赤外線(infrared:IR)もしくはラマン分光法、ガスクロマトグラフィ(gas chromatography:GC)、または分析目的のために電磁波または電磁信号(例えば、電子共鳴)を使用する別の原理に基づくことができる。
【0071】
真空処理システム1は、真空処理システム1の少なくとも1つのコンポーネントの適切な動作が行われているかをチェックするように構成可能である。チェックされるべきコンポーネントは、好ましくは流体適用装置30であってよい。適切な動作とは、真空チャンバ10内への規定された流体の流入量が正確に制御されていることであると理解可能であり、この場合、流入する流体の量は、流体適用装置30に関する、または流体適用装置30の少なくとも1つのガス入口弁に関する既知の基準量(目標量)に一致する。換言すれば、流体適用装置30は、真空チャンバ10内に正確な量の流体を提供するように設計されており、真空処理システム1は、提供された量が、提供されるべき量に一致するかどうかをチェックするように構成可能である。
【0072】
こうした適切な動作が行われているかをチェックするために、制御ユニット40は、それぞれのチェック機能を含む。このようなチェック機能は、この機能が実行されると、以下のステップ、すなわち、チャンバ10内への規定された流体の規定された流入を制御するステップと、流入する流体の濃度を、特に連続的に測定するステップと、測定された濃度を、それぞれの基準濃度と比較するステップとを提供および/または制御する。
【0073】
チェック機能は、好ましくはアルゴリズムとして実装可能であり、制御ユニット40に直接的に格納可能であるか、コンピュータ可読媒体上に提供可能であるか、または例えばネットワークまたはインターネットを介してリモートで(電磁波として)提供可能である。制御ユニット40によって提供される任意の他の機能についても、同じことが当てはまってよい。
【0074】
測定された濃度がそれぞれの基準濃度に一致している場合には、その流体適用装置30は、適切な動作をしていると見なされる。
【0075】
基準濃度は、濃度の範囲であってよく、すなわち特定の濃度許容範囲を含むことができる。
【0076】
測定された濃度がそれぞれの基準濃度に一致していない場合には、その流体適用装置30は、適切な動作をしていないと見なされ、すなわちその適用装置30は、損傷を受けているか、または誤動作をしている。
【0077】
このチェック機能の1つの利点は、システム1の品質および/または収率の監督の改善を可能にすることに関する。濃度を監督するセンサ50(雰囲気分析装置)は、プロセスにおいて流体(例えば、ガス前駆体)が存在するかどうかを直接的に検出することが可能である。流体が存在しないと検出された場合(流体が検出されないか、または低濃度の流体しか検出されない場合)には、このようなことが、1つのガス入口弁の故障によって引き起こされている可能性がある。その結果、この情報を、制御ユニット40またはメインツールコントローラに直接的に供給することができ、製品の損失を防止するために真空チャンバ10内での処理を停止させることができる。
【0078】
このような種類のプロセス故障は、典型的に、検出することが非常に困難である。標準的なALD入口弁は、弁のアクチュエータ(駆動部)のみを直接的に監督することができ、アクチュエータによって動かされるそれぞれの膜(弁の内部の封止を提供する)を監督することはできず、すなわち、アクチュエータに関する情報を入手することはできるが、封止要素(膜)の状態に関する情報を入手することはできない。このような封止要素に(例えば、固着に起因して、かつプロセスチャンバ内へのガス注入が許可されないことに起因して)欠陥がある場合には、その結果として生じるガス障害の問題は、特に前駆体を搬送するために搬送ガスが使用される場合には、容易には検出されない。このような欠陥が検出されない限り、欠陥のある製品(ウェハ)が産出される可能性がある。
【0079】
制御および/または調整ユニット40は、処理チャンバ10内の基板の処理を制御するための調整機能をさらに含むことができる。調整機能は、この機能が実行されると、以下のステップ、すなわち、真空チャンバ内で処理されるべき、規定された表面特性を有する基板を提供するステップ、真空チャンバの内部の、表面上に堆積するように設計された第1の前駆体の濃度を増加させるステップ、-規定された時間期間の後に-真空チャンバの内部の第1の前駆体の濃度を減少させるステップを提供および/または制御する。上記のステップを実施した後、後続の処理ステップを実施することができる。
【0080】
複数の異なる処理ステップにおいて使用される2つのそれぞれ異なる流体(前駆体)の間に、如何なる不所望な相互作用も生じないことを保証するために、調整機能は、第1の処理ステップの流体濃度および/または流体組成の制御を提供し、検出された濃度および/または組成に応じて後続の処理ステップを開始する。処理ステップをこのように分離することは、ALE/ALDによって基板を高い信頼性で製造するために不可欠であろう。
【0081】
これにより、このようなサイクル型のプロセス(ALD/ALE)の高収率および高生産性が利用可能となる。前駆体の濃度および/または組成に関する情報によって、それぞれの配合ステップのプロセス時間を最適化(例えば、短縮)し(スループットを向上させ)、粒子の問題を防止するために(例えば、2つ以上の前駆体の)不所望な(偶発的な)流体混合を回避することが可能となる。機能は、それぞれのアルゴリズムによって実現可能である。
【0082】
第1の処理ステップのために使用されるべき前駆体の濃度が十分に低くならないうちに、または許容可能にならないうちに、第2の処理ステップのために使用されるべき前駆体が導入された場合には、このことによって不所望な化学反応が生じる可能性がある。このことは、半導体装置にとって有害な粒子の生成につながる(例えば、収率に影響を及ぼし、その結果、ウェハ/チップのスクラップが生じる)可能性がある。したがって、調整機能は、それぞれの前駆体濃度を監督して、前の前駆体反応物が除去された場合にのみ、かつ/または計画された製造プロセスに対する如何なるリスクも引き起こさない規定された濃度未満に低減された場合にのみ、次のプロセスステップを開始することを可能にする。
【0083】
他方で、コントローラは、それぞれのステップの終了時点に前駆体の所与の濃度に到達するために、それぞれの処理ステップの時間期間を監督する必要がもはやない。このことはつまり、サイクル式の処理ステップの制御を、(流体適用装置30のような)処理装置の時間ベースの開ループ制御から、濃度によって決定される閉ループ制御へと切り替えることができるということを意味する。
【0084】
この結果として、時間に関して最適化されたプロセスシーケンスが得られる。(測定された濃度が十分なレベルに達するとすぐに)サイクルの回数をより迅速に完了することができるので、オーバーヘッドを除去することができ、より高いスループットが可能になる。
【0085】
雰囲気分析装置50は、複数の異なる前駆体の濃度を検出するために使用可能である。分析装置50の出力信号を、(コントローラ40を介して)真空制御弁22の適応的な制御に加えることもできる。センサ信号の強度は、前駆体タイプ種の濃度に直接的に関係することができる。前駆体種の濃度がプロセスパラメータによって許容される特定の閾値を下回るとすぐに、次のプロセスステップを開始することができる。必要に応じて、前駆体のより迅速な希釈および排出を可能にするために、別の流体を導入してもよい。
【0086】
図2は、本発明による真空処理システム1の別の実施形態を示す。
【0087】
真空処理システム1は、雰囲気分析装置50の設計および配置という点で、
図1の真空処理システムとは異なっている。雰囲気分析装置50は、真空チャンバ10の外部に配置されている。本実施形態では、雰囲気分析装置50は、光学的効果、例えば原子または分子による光の散乱または吸収および光の放出によって特定の種の化学組成および/または化学濃度を特定するように構成されている光学センサである。
【0088】
システム1は、光カプラ51を含み、光カプラ51は、雰囲気分析装置50を処理チャンバ10に接続し、電磁信号の双方向伝送を提供し、電磁信号は、例えば測定放射、測定光、光ビーム、コリメート光、測定レーザ光等であってよい。光カプラ51は、電磁信号の所望の案内を提供する光ファイバまたは光学要素、例えばコリメータ、レンズ、アパーチャ等を含むことができる。
【0089】
特に、真空チャンバ10は、(電磁信号の)少なくとも特定の測定波長の電磁放射の双方向伝送を可能にする透過窓を含む。特に、測定光を、チャンバ10内へと透過させることができ、測定光の反射または相互作用を、透過窓によってチャンバ10の外部で検出することができる。
【0090】
図3は、本発明による真空処理システム1の別の実施形態を示す。
【0091】
図3の真空処理システム1は、少なくとも雰囲気分析装置50の配置という点で、
図1の真空処理システムとは異なっている。雰囲気分析装置50は、真空チャンバ10と下流ユニット20との間に配置されている。
【0092】
雰囲気分析装置50は、この分析装置50を通って流れる流体を分析するように設計されている。雰囲気分析装置50は、好ましくは残留ガス分析装置(RGA)として具現化されており、すなわち、一種の質量分析装置として構成されている。したがって、雰囲気分析装置50は、例えば不純物または規定された化学種を検出するように設計されている。
【0093】
上記では本発明を、いくつかの特定の実施形態を部分的に参照しながら例示したが、複数の実施形態のそれぞれ異なる特徴の多数の修正および組み合わせを行うことができ、複数の異なる特徴を互いに組み合わせること、または従来技術から公知の真空用途と組み合わせることができるということが理解されなければならない。
【国際調査報告】