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特表2024-517324細胞培養監視システム及び誘電泳動カートリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】細胞培養監視システム及び誘電泳動カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240412BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C12M1/34 D
C12M1/00 A
C12M1/00 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569985
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2022062178
(87)【国際公開番号】W WO2022238235
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】21173427.2
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21173429.8
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179116
【氏名又は名称】セイドス・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】レオナール・バラス
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ワルペン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA08
4B029AA23
4B029BB01
4B029CC01
4B029DF06
4B029DF10
4B029DG01
4B029DG06
4B029FA04
4B029FA10
4B029FA11
4B029HA05
(57)【要約】
細胞培地(15)を含む培養タンク(2)に結合するための監視装置(3)と、細胞培養タンク(2)に流体結合するための流体循環システム(4)とを備え、流体循環システムは、供給導管(14a)および戻り導管(14b)を介して細胞培養タンク(2)に接続するための誘電泳動カートリッジ(5)を備え、誘電泳動カートリッジは、ベース(20)と、電極支持体(19)であって、電極支持体(19)内または電極支持体(19)上の電極(21)を有する、電極支持体(19)とを備え、電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ間に測定チャンバを形成する電極支持体(19)とベース(20)の床(26)との間に形成された測定チャンバ(23b)の上方に配置された測定ゾーン(21a)を備え、測定チャンバを通って流れる液体培地中の細胞は、前記測定チャンバ(23b)における前記液体の流れの方向に直交する進行波誘電泳動力を受け、監視装置(3)は、コンピューティングユニット(9)と、コンピューティングユニット(9)に接続された画像キャプチャシステム(7)と、画像キャプチャシステム(7)が前記測定チャンバ(23b)を通って流れる細胞を検出し得るように前記誘電泳動カートリッジ(5)を受け入れるためのカートリッジホルダ部(28)とを備える、細胞培養監視システム(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培地(15)を含む培養タンク(2)に結合するための監視装置(3)と、前記細胞培養タンク(2)に流体結合するための流体循環システム(4)と、を備える細胞培養監視システム(1)であって、
前記流体循環システムは、供給導管(14a)および戻り導管(14b)と、前記供給導管(14a)および前記戻り導管(14b)を介して前記細胞培養タンク(2)に接続するための誘電泳動カートリッジ(5)と、を備え、
前記誘電泳動カートリッジは、ベース(20)と、電極支持体(19)であって、前記電極支持体(19)内または前記電極支持体(19)上の電極平面X-Yに配置された電極(21)を有する、電極支持体(19)と、を備え、
前記電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ間に測定チャンバを形成する前記電極支持体(19)と前記ベース(20)の床(26)との間に形成された測定チャンバ(23b)の上方に配置された測定ゾーン(21a)を備え、
前記監視装置(3)は、前記電極に接続された信号発生器(12)と、コンピューティングユニット(9)と、前記コンピューティングユニット(9)に接続された画像キャプチャシステム(7)と、前記画像キャプチャシステム(7)が前記測定チャンバ(23b)内の細胞を検出し得るように前記誘電泳動カートリッジ(5)を受け入れるためのカートリッジホルダ部(28)と、を備え、
前記画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに対する直交方向Zにおける前記測定チャンバ内の前記細胞培地中の細胞の変位をキャプチャして細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される、細胞培養監視システム(1)。
【請求項2】
前記画像キャプチャシステムおよび前記コンピューティングユニットは、前記直交方向Zにおいてとられたスライス式の複数の画像をキャプチャするように構成され、前記複数の画像は、前記直交方向Zにおける細胞の位置および前記細胞の変位を判定するように処理される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記画像キャプチャシステムは、前記測定チャンバの高さよりも小さい被写界深度を有する顕微鏡(7)と、異なる高さにおける画像のスライスをキャプチャするように焦点を調整するための電気的に調整可能なレンズと、を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記測定チャンバ内の前記細胞培養液体培地中の細胞は、前記電極平面X-Yに平行な平面において進行波誘電泳動力を受け、前記画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに平行な前記平面における前記測定チャンバ内の前記細胞培地中の細胞の前記変位をキャプチャして、前記直交方向Zにおける前記細胞の変位に基づく前記測定に関連して細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記信号発生器は、測定の間または一連の測定にわたって、異なる電極信号周波数を走査するか、または複数の離散した異なる電極信号周波数を印加するように構成され、前記画像キャプチャシステムおよび前記コンピューティングユニットは、異なる電極信号周波数について細胞の変位を測定するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記電極支持体(19)は、透明ポリマーまたはガラスで作られ、前記電極は、導電透明材料、たとえば、薄い酸化インジウムスズ(ITO)層で作られる、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記電極(21)は、測定ゾーン(21a)および接点(21b)を除いて、絶縁体層によって前記測定チャンバの内部に対して絶縁される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記カートリッジは、細胞のインピーダンス(Zi)を測定するように構成された少なくとも2つのインピーダンス測定電極(21’、21”)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記電極(21)は、前記測定チャンバ(23b)を画定する前記電極支持体(19)の内面上に形成され、前記内面は、前記監視装置の補ばね接点(31a)に接点を差し込むために前記ベース(20)に形成された電極接続窓(22)まで延びる接触部(21b)を有し、前記電極接続窓(22)は、前記測定チャンバ(23b)から密封分離される、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記測定チャンバ(23b)は、隆起した床(26)と、前記床(26)と前記電極支持体(19)との間に隙間を画定する横方向ガイド(27)と、を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記電極(21)は、たとえば、鏡像対称の2つのセットにおける1つまたは複数のらせん状導電トラックであって、一部が前記測定ゾーン(21a)を形成する、らせん状導電トラックを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記電極は、少なくとも2つの噛み合わされた電極(21i、21ii、21iii、21iv、21v、21vi)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記監視装置(3)の前記カートリッジホルダ部(28)は、前記誘電泳動カートリッジを滑り可能に挿入するように構成されたカートリッジホルダ長穴を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記カートリッジホルダ部(28)は、前記誘電泳動カートリッジを測定位置に位置付けて固定するために前記誘電泳動カートリッジ内の補位置決め要素に係合する位置決め要素(30)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記測定チャンバ(23)における電極と床(26)との間の隙間は、10μm~500μmの範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
細胞培地(15)を含む培養タンク(2)に結合するための監視装置(3)と、前記細胞培養タンク(2)に流体結合するための流体循環システム(4)と、を備える細胞培養監視システム(1)であって、
前記流体循環システムは、供給導管(14a)および戻り導管(14b)と、前記供給導管(14a)および前記戻り導管(14b)を介して前記細胞培養タンク(2)に接続するための誘電泳動カートリッジ(5)と、を備え、
前記誘電泳動カートリッジは、ベース(20)と、電極支持体(19)であって、前記電極支持体(19)内または前記電極支持体(19)上の電極平面X-Yに配置された電極(21)を有する、電極支持体(19)と、を備え、
前記電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ間に測定チャンバを形成する前記電極支持体(19)と前記ベース(20)の床(26)との間に形成された測定チャンバ(23b)の上方に配置された測定ゾーン(21a)を備え、
前記監視装置(3)は、前記電極に接続された信号発生器(12)と、コンピューティングユニット(9)と、前記コンピューティングユニット(9)に接続された画像キャプチャシステム(7)と、前記画像キャプチャシステム(7)が前記測定チャンバ(23b)内の細胞を検出し得るように前記誘電泳動カートリッジ(5)を受け入れるためのカートリッジホルダ部(28)と、を備え、
前記電極(21)は、測定ゾーン(21a)を除いて、絶縁体層によって前記測定チャンバの内部に対して絶縁される、細胞培養監視システム(1)。
【請求項17】
前記絶縁体層は、二酸化ケイ素を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記電極支持体(19)は、透明ポリマーまたはガラスで作られ、前記電極は、少なくとも部分的に、導電透明材料の前記測定ゾーン内に作られる、請求項16または17に記載のシステム。
【請求項19】
前記導電透明材料は、薄い酸化インジウムスズ(ITO)層である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記カートリッジは、細胞のインピーダンス(Zi)を測定するように構成された少なくとも2つのインピーダンス測定電極(21’、21”)を備える、請求項16から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記電極(21)は、前記測定チャンバ(23b)を画定する前記電極支持体(19)の内面上に形成され、前記内面は、前記監視装置の補ばね接点(31a)に接点を差し込むために前記ベース(20)に形成された電極接続窓(22)まで延びる接触部(21b)を有し、前記電極接続窓(22)は、前記測定チャンバ(23b)から密封分離される、請求項16から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記測定チャンバ(23b)は、隆起した床(26)と、前記床(26)と前記電極支持体(19)との間に隙間を画定する横方向ガイド(27)と、を備え、前記測定チャンバ(23)における電極と床(26)との間の前記隙間は、10μm~500μmの範囲である、請求項16から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記電極(21)は、たとえば、鏡像対称の2つのセットにおける1つまたは複数のらせん状導電トラックであって、一部が前記測定ゾーン(21a)を形成する、らせん状導電トラックを備える、請求項16から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記電極は、少なくとも2つの噛み合わされた電極(21i、21ii、21iii、21iv、21v、21vi)を備える、請求項16から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに対する直交方向Zにおける前記測定チャンバ内の前記細胞培地中の細胞の変位をキャプチャして細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される、請求項16から24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記画像キャプチャシステムおよび前記コンピューティングユニットは、直交方向Zにおいてとられたスライス式の複数の画像をキャプチャするように構成され、前記複数の画像は、前記直交方向Zにおける細胞の位置および細胞の変位を判定するように処理される、請求項16から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記測定チャンバ内の前記細胞培養液体培地中の細胞は、前記電極平面X-Yに平行な平面において進行波誘電泳動力を受け、前記画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに平行な前記平面における前記測定チャンバ内の前記細胞培地中の細胞の変位をキャプチャして、直交方向Zにおける前記細胞の変位に基づく測定に関連して細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される、請求項16から26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記信号発生器は、測定の間または一連の測定にわたって、異なる電極信号周波数を走査するか、または複数の離散した異なる電極信号周波数を印加するように構成され、前記画像キャプチャシステムおよび前記コンピューティングユニットは、異なる電極信号周波数について細胞の変位を測定するように構成される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記監視装置(3)の前記カートリッジホルダ部(28)は、前記誘電泳動カートリッジを滑り可能に挿入するように構成されたカートリッジホルダ長穴を備える、請求項16から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記カートリッジホルダ部(28)は、前記誘電泳動カートリッジを測定位置に位置付けて固定するために前記誘電泳動カートリッジ内の補位置決め要素に係合する位置決め要素(30)を備える、請求項16から29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
細胞培養タンク(2)に接続するための誘電泳動カートリッジ(5)であって、
ベース(20)と、電極支持体(19)であって、前記電極支持体(19)内または前記電極支持体(19)上の電極平面X-Yに配置された電極(21)を有する、電極支持体(19)と、を備え、
前記電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ間に測定チャンバを形成する前記電極支持体(19)と前記ベース(20)の床(26)との間に形成された測定チャンバ(23b)の上方に配置された測定ゾーン(21a)を備え、
前記電極(21)は、測定ゾーン(21a)を除いて、絶縁体層によって前記測定チャンバの内部に対して絶縁される、誘電泳動カートリッジ(5)。
【請求項32】
前記絶縁体層は、二酸化ケイ素を含む、請求項31に記載のカートリッジ。
【請求項33】
前記電極支持体(19)は、透明ポリマーまたはガラスで作られ、前記電極は、少なくとも部分的に、導電透明材料の前記測定ゾーン内に作られる、請求項31または32に記載のカートリッジ。
【請求項34】
前記導電透明材料は、薄い酸化インジウムスズ(ITO)層である、請求項33に記載のカートリッジ。
【請求項35】
前記カートリッジは、細胞のインピーダンス(Zi)を測定するように構成された少なくとも2つのインピーダンス測定電極(21’、21”)を備える、請求項31から34のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項36】
前記電極(21)は、前記測定チャンバ(23b)を画定する前記電極支持体(19)の内面上に形成され、前記内面は、監視装置の補ばね接点(31a)に接点を差し込むために前記ベース(20)に形成された電極接続窓(22)まで延びる接触部(21b)を有し、前記電極接続窓(22)は、前記測定チャンバ(23b)から密封分離される、請求項31から35のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項37】
前記測定チャンバ(23b)は、隆起した床(26)と、前記床(26)と前記電極支持体(19)との間に隙間を画定する横方向ガイド(27)と、を備え、前記測定チャンバ(23)における電極と床(26)との間の前記隙間は、10μm~500μmの範囲である、請求項31から36のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項38】
前記電極(21)は、たとえば、鏡像対称の2つのセットにおける1つまたは複数のらせん状導電トラックであって、一部が前記測定ゾーン(21a)を形成する、らせん状導電トラックを備える、請求項31から37のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【請求項39】
前記電極は、少なくとも2つの噛み合わされた電極(21i、21ii、21iii、21iv、21v、21vi)を備える、請求項31から37のいずれか一項に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体培地中の細胞の培養を監視するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞治療および細胞ベースの製品が出現しているので、細胞培養を正確にかつ適時に制御する必要性が増している。細胞培養はまた、たとえば、抗体およびワクチンのバイオプロダクションに使用されることがある。従来の培養プロセスの多くのステップでは、特に細胞計数および細胞生存率測定についてのヒトの介入を必要とする。各介入は、汚染のリスクおよび治療の最終コストを増大させる。エラーおよび汚染に起因する治療バッチの損失は、患者に多大な影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のことに鑑みて、本発明の目的は、細胞成長を正確に制御するのを可能にし、汚染のリスクを低コストで低減させる細胞培養監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
信頼できる細胞培養監視システムを提供すると有利である。
【0005】
培養中の細胞の状態の連続的または頻繁な分析を低コストでかつ滅菌状態で行うのを可能にする細胞培養監視システムを提供すると有利である。生存率を連続的に測定すると、細胞培養疾患を早期の段階で検出することが可能である。
【0006】
本発明の目的は、請求項1による細胞培養監視システムを提供することによって達成されている。
【0007】
本発明の目的は、請求項16による細胞培養監視システムを提供することによって達成されている。
【0008】
本発明の目的は、請求項31による細胞培養監視システム用の誘電泳動カートリッジを提供することによって達成されている。
【0009】
本明細書では、細胞培地を含む培養タンクに結合するための監視装置と、細胞培養タンクに流体結合するための流体循環システムとを備える細胞培養監視システムが開示される。流体循環システムは、供給導管および戻り導管を介して細胞培養タンクに接続するための誘電泳動カートリッジを備え、誘電泳動カートリッジは、ベースと、電極支持体であって、電極支持体内または電極支持体上の電極平面X-Yに配置された電極を有する、電極支持体とを備え、電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ細胞培養タンクからの細胞培地で充填可能な、電極支持体とベースの床との間に形成された測定チャンバの上方に配置された測定ゾーンを備える。監視装置は、電極に接続された信号発生器と、コンピューティングユニットと、コンピューティングユニットに接続された画像キャプチャシステムと、画像キャプチャシステムが前記測定チャンバ内の細胞を検出し得るように前記誘電泳動カートリッジを受け入れるためのカートリッジホルダ部とを備える。
【0010】
本発明の第1の態様では、画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに対する直交方向Zにおける測定チャンバ内の細胞培地中の細胞の変位をキャプチャして細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される。
【0011】
本発明の第2の態様では、電極は、電極が測定チャンバの内部に非絶縁接触する測定ゾーンを除いて、絶縁体層によって測定チャンバの内部に対して絶縁される。
【0012】
本明細書ではまた、細胞培養タンクに接続するための誘電泳動カートリッジであって、ベースと、電極支持体であって、電極支持体内または電極支持体上の電極平面X-Yに配置された電極を有する、電極支持体とを備え、電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ間に測定チャンバを形成する電極支持体とベースの床との間に形成された測定チャンバの上方に配置された測定ゾーンを備え、電極は、測定ゾーンを除いて、絶縁体層によって測定チャンバの内部に対して絶縁される、誘電泳動カートリッジが開示される。
【0013】
有利な実施形態では、画像キャプチャシステムおよびコンピューティングユニットは、直交方向Zにおいてとられたスライス式の複数の画像をキャプチャするように構成され、複数の画像は、直交方向Zにおける細胞の位置および細胞の変位を判定するように処理される。
【0014】
有利な実施形態では、画像キャプチャシステムは、測定チャンバの高さよりも小さい被写界深度を有する顕微鏡と、異なる高さにおける画像のスライスをキャプチャするように焦点を調整するための電気的に調整可能なレンズとを備える。
【0015】
有利な実施形態では、測定チャンバ内の細胞培養液体培地中の細胞は、電極平面X-Yに平行な平面において進行波誘電泳動力を受け、画像キャプチャシステムは、電極平面X-Yに平行な前記平面における測定チャンバ内の細胞培地中の細胞の変位をキャプチャして、直交方向Zにおける細胞の変位に基づく測定に関連して細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される。
【0016】
有利な実施形態では、信号発生器は、測定の間または一連の測定にわたって、異なる電極信号周波数を走査するか、または複数の離散した異なる電極信号周波数を印加するように構成され、画像キャプチャシステムおよびコンピューティングユニットは、異なる電極信号周波数について細胞の変位を測定するように構成される。
【0017】
有利な実施形態では、電極支持体は、透明ポリマーまたはガラスで作られ、少なくとも測定ゾーン内の電極は、導電透明材料、たとえば、薄い酸化インジウムスズ(ITO)層で作られてもよい。しかし、電極の接触領域は、好ましくは、金層、または耐食性を有しており、コネクタとの良好な電気接触を確保する他の導電材料を備えてもよい。
【0018】
しかし、変形形態では、金製の電極または測定ゾーン内を含む他の不透明導電材料を有することが可能であり、不透明電極線は、画像処理アルゴリズムによる細胞チャンバの画像取得について考慮されるかまたは除外されてもよく、電極間の空間は、細胞の位置および変位を測定するのを可能にする。
【0019】
有利な実施形態では、カートリッジは、細胞のインピーダンス(Zi)を測定するように構成された少なくとも2つのインピーダンス測定電極を備える。インピーダンス測定電極は、進行波誘電泳動に使用される電極の2つであっても、またはインピーダンス測定のためのみに使用されるインピーダンス電極であってもよい。
【0020】
有利な実施形態では、誘電泳動カートリッジは、前記供給導管および戻り導管を形成する柔軟なポリマーのチューブに結合するように構成された流出口および流入口を備える。
【0021】
有利な実施形態では、電極は、測定チャンバを画定する電極支持体の内面上に形成され、内面は、監視装置の補ばね接点に接点を差し込むためにベースに形成された電極接続窓まで延びる接触部を有し、電極接続窓は、測定チャンバから密封分離される。
【0022】
有利な実施形態では、測定チャンバは、隆起した床と、床と電極支持体との間に隙間を画定する横方向ガイドとを備える。
【0023】
有利な実施形態では、前記電極は、1つまたは複数のらせん状導電トラックによって形成された測定ゾーンを備える。
【0024】
有利な実施形態では、前記電極は、4個~10個の電極、好ましくは4個~8個の電極からなる。
【0025】
有利な実施形態では、電極は、鏡像対称の2つのセットの測定ゾーンに配置される。
【0026】
代替実施形態では、電極は、少なくとも2つの互いに噛み合わされた電極を備える。
【0027】
有利な実施形態では、監視装置のカートリッジホルダ部は、誘電泳動カートリッジを滑り可能に挿入するように構成されたカートリッジホルダ長穴を備える。
【0028】
有利な実施形態では、カートリッジホルダ部は、誘電泳動カートリッジを測定位置に位置付けて固定するために誘電泳動カートリッジ内の補位置決め要素に係合する位置決め要素を備える。
【0029】
有利な実施形態では、位置決め要素は、カートリッジホルダ部上または誘電泳動カートリッジ上のいずれかにばね突起またはばね抵抗部分を備える。
【0030】
有利な実施形態では、画像キャプチャシステムは、画像キャプチャシステムによってキャプチャされた細胞の軌跡のデジタル分析向けに構成されたコンピューティングユニットの画像処理回路に接続された顕微鏡を備える。
【0031】
有利な実施形態では、コンピューティングユニットは、電極の測定ゾーンにおいて進行波誘電泳動信号を生成するように構成された誘電泳動カートリッジの電極にコネクタを介して接続された信号発生器を備える。
【0032】
有利な実施形態では、電極と床との間の測定チャンバは、10μm~500μmの範囲である。
【0033】
有利な実施形態では、細胞培養タンクは、監視装置から分離しており、誘電泳動カートリッジに接続された供給導管および戻り導管に接続するための流体コネクタを備える。
【0034】
本発明のさらなる目的および利点は、特許請求の範囲、詳細な説明、および添付の図面から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態による細胞培養監視システムの概略図である。
図2a】本発明の実施形態による細胞培養監視システムの斜視図である。
図2b】カバーを取り外し特定の内部構成要素を取り外した図2aの細胞培養監視システムの一部の斜視図である。
図3a】本発明の実施形態による細胞培養監視システムの細胞培養タンク2に挿入されたチューブの概略図である。
図3b】本発明の実施形態による細胞培養監視システムの細胞培養タンク2に挿入されたチューブの概略図である。
図4】細胞培養タンクの流体コネクタの断面図である。
図5a】本発明の実施形態による細胞培養システムの監視装置のカートリッジホルダ部の斜視図である。
図5b】本発明の実施形態による細胞培養監視システムのカートリッジがホルダに挿入された、図5aと同様の図である。
図5d図5bのカートリッジおよびホルダの斜視部分断面簡略図である。
図5c図5bの要素の分解図である。
図6a】本発明の実施形態によるカートリッジの斜視図である。
図6b】本発明の実施形態によるカートリッジの斜視図である。
図6c】本発明の実施形態によるカートリッジの分解斜視図である。
図6d】本発明の実施形態によるカートリッジのベースの平面図である。
図6e】本発明の実施形態によるカートリッジを通る断面図である。
図7】本発明の実施形態による誘電泳動カートリッジの電極の図である。
図8a】電極の平面に直交する方向から見た、誘電泳動を受けたときの電極に対する細胞の軌跡の概略簡略図である。
図8b】誘電泳動および進行波誘電泳動に起因する電極の平面に対する細胞に加えられた力の主方向を示す概略簡略斜視図である。
図8c】電極の平面に直交する方向から見た、画像キャプチャシステムのカメラの視野の概略簡略図である。
図9】変形形態による誘電泳動カートリッジの概略図である。
図10a】進行波誘電泳動力式のクラウジウス-モソッティ係数の虚部と異なる細胞モデルについての進行波の印加周波数との関係を示すプロットの図であり、進行波誘電泳動力は、電極の平面に平行に生成されている。
図10b】誘電泳動力式のクラウジウス-モソッティ係数の実部と異なる細胞モデルについての印加周波数との関係を示すプロットの図であり、誘電泳動力は、電極の平面に直交するように生成されている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図を参照すると、本発明の実施形態による細胞培養監視システム1は、監視装置3と、細胞培養タンク2と、観察対象の細胞を含む細胞培地を細胞培養タンクと監視装置との間で輸送するための流体循環システム4とを備える。
【0037】
監視装置3は、画像キャプチャシステム7と、分光計8と、コンピューティングユニット9と、流体循環システム4の誘電泳動カートリッジ5を受け入れるためのカートリッジホルダ部28とを備える。
【0038】
流体循環システム4は、誘電泳動カートリッジ5と、誘電泳動カートリッジ5を細胞培養タンク2と相互接続する導管14a、14bとを備える。流体循環システム4は、監視装置3の取付け部分もしくは形成部分であってもよいか、または他の変形形態では、細胞培養タンク上に取り付けられ、ポンプを制御するために監視装置に電気的に接続されてもよいポンプ6をさらに備える。好ましい実施形態では、ポンプは、監視装置上に取り付けられ、有利には蠕動ポンプの形態であってもよい。供給導管14aの少なくとも一部は、細胞培地を滅菌状態で送り出すための蠕動ポンプに取り付けられたチューブの可撓性部分を備える。
【0039】
誘電泳動カートリッジ5および流体循環システムの細胞培養タンク2に接続された供給導管14aおよび戻り導管14bは、有利には、閉回路において、細胞培養タンク2に含まれる細胞培地15の流体を誘電泳動カートリッジ5に循環させて細胞培養タンクに戻すのを可能にする閉回路を形成する。変形形態では、流体循環システムは、肝臓細胞から分離された死滅(すなわち、アポトーシスを起こした)細胞を除去するか、または誘電泳動カートリッジ内の軌跡が異なることに起因して異なる細胞表現型を分離するために排水路23dに結合された流出口導管をさらに備えてもよい。流体コネクタ18は、流体接続分野においてそれ自体が公知のルアーロック式の接続を介して細胞培養タンクに接続されてもよく、または他の手段によって相互接続されてもよい。流体コネクタ18は、可撓性を有するチューブ、特にタンク供給チューブおよび戻りチューブをコネクタに結合するのを可能にする。
【0040】
供給導管14aは、細胞培地15に浸漬させられ、好ましくは細胞培養タンクの底部まで延びる有孔チューブ17をさらに備えてもよい。チューブ17の孔は、タンクの底部に向かうより多くの孔と、タンクの頂部に向かう徐々に数が少なくなる孔とがあり、その結果、流入口抵抗がタンクの底部に向かって小さくなるように配置されてもよい。これによって、高さ全体にわたって一様にサンプリングするために、細胞培養タンクの高さ全体にわたる細胞培地が確実に供給チューブに引き込まれるように、吸込圧力が実質的に均等に分散されるのを確実にする。有孔チューブの底部に重りを設け、チューブの頂部に浮きを設けて、すべての穴を確実に液体に浸漬させてもよい。しかし、他のチューブ保持および位置決め手段が設けられてもよい。さらに、有孔チューブは、水平サンプリングの一様性を増すために様々な形状、たとえば、「コルク栓抜き」の形状を備えてもよい。細胞培養容器は、培地中の細胞分散を均等化するために混合システム、たとえば、回転翼またはマグネチックバースターラー(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0041】
供給戻り導管内での細胞培地の再循環を可能して、培養タンクを通過させずに閉回路内を循環させるか、または細胞培養タンクから引き出された新しい細胞培地が供給導管に送り込まれるように弁設定を変更する弁が、流体コネクタ18に設けられてもよい。弁の機能は、行われる分析に依存してもよく、たとえば、供給導管および戻り導管が互いに接続されている場合、測定のために、たとえば、測定の感度を高めるために、サンプル培地が複数回再循環されて誘電泳動カートリッジを通過してもよく、または新しい細胞培地が、誘電泳動カートリッジを1回通過するために、供給導管に送り込まれて細胞培養タンクに戻ってもよい。
【0042】
測定中のサンプルが破棄され、細胞培地に戻されないいくつかの事例では、廃棄物容器(図示せず)への戻り導管を切り替える弁が設けられてもよい。
【0043】
本発明の有利な実施形態による誘電泳動カートリッジ5は、ベース20と電極支持体19とを備える。ベース20は、有利には、ポリマー材料で作られてもよく、ポリマー材料は、いくつかの実施形態では、有利には、ABS(アクリルニトリル-ブタジエン-スチロール-コポリマー)などの透明ポリマー材料であってもよい。ベースは、有利には、成形されてもよく、たとえば、射出成形されるか、または付加製造技法(3Dプリンティングなど)によって作られてもよい。
【0044】
電極支持体19は、ポリマー材料で作られてもよいが、好ましくはガラスで作られ、化学蒸着、リソグラフィ、プリンティング、および他の既知の金属層堆積技法などの様々なそれ自体が既知の堆積およびパターン化技法によって作られ得る導電電極をガラス上に備える。有利な実施形態では、電極支持体19は、ベースから別個に形成され、たとえば、接着、超音波ボンディング、または溶接によってベースに組み付けられる部分である。しかし、付加製造技法を介してベース、支持体、および電極を単一の部分として形成することも可能である。
【0045】
ベース20は、流入口24aおよび流出口24bと、ベース内に形成され、流入口24aと流出口24bとを相互接続する流路を有するマイクロ流体回路とを備える流体コネクタ部24を備える。ベースは、電極21の接触部21bに触れるのを可能にする電極接続窓22をさらに備える。
【0046】
マイクロ流体回路23は、流入口24aに接続され、測定チャンバ23bに流入する流入路23aと、測定チャンバ23bから流出口24bまで流れる戻り流路23cとを備える。測定チャンバ23bは、有利には、ベース20と電極支持体19との間の流路高さを画定する隆起した床26を備えてもよい。これによって、流体が測定チャンバを通って流れるためのはっきりと画定された隙間が、測定チャンバの上方に位置付けられた電極21の測定ゾーン21aの下方に形成されるのを確実にする。測定チャンバ23内の電極と床26との間の高さは、好ましくは10μm~200μmの範囲である。
【0047】
測定チャンバ23bを通って流れる液体中の細胞は、細胞の状態に応じて進行波誘電泳動力FtwDEPを受ける。誘電泳動電極を使用して細胞の状態を判定することは、それ自体が公知の概念である。従来のシステムでは、一般に液体培地内の細胞は、誘電泳動によって変位され、そのような変位は細胞の状態を示す。死滅細胞は、それほど変位されないか、または進行波誘電泳動力を受けず、それによって、生体細胞は、誘電泳動力を受け、電極を横切って平行移動する。隙間によって分離された並べられた電極にディフェーズ信号が印加されると、進行波誘電泳動力FtwDEPと呼ばれる、電極が配置された平面X-Yに平行な力が、細胞の状態に応じて細胞に加えられる。進行波誘電泳動力は、以下のそれ自体が既知の式によって特徴付けられる。
【0048】
【数1】
【0049】
しかし、上記の式におけるクラウジウス-モソッティ(CM)係数[fCM]の虚部は、細胞特性および電極上のディフェーズ信号の印加周波数に応じて異なる。図10aは、電極上のディフェーズ信号の印加周波数の関数として異なる細胞モデルについての進行波誘電泳動力のプロットを示す。
【0050】
図8bに示すように、共平面電極がまた、電極の平面に直交する方向において非一様な電界を発生させ、それによって、電極平面X-Yに直交し、かつ細胞を電極を横切って平行移動させる進行波誘電泳動力の方向に直交する方向Zにおいて誘電泳動力FDEPを発生させる。直交誘電泳動力FDEPは、CM係数の実部に依存する。
【0051】
【数2】
【0052】
図10bは、CM係数の実部のプロットを示す。細胞に作用する力は、細胞特性に依存する。水平(X-Y平面)細胞集団と垂直(直交方向Z)細胞集団の両方の変位を追跡することによって、それらの細胞集団を互いに区別することができ、細胞の状態を、生細胞と死滅細胞とで区別し、場合によっては正常な生細胞と病的な生細胞とで区別してもよい。電極21の平面X-Yに対する共平面方向と直交方向の両方における細胞変位の追跡は、画像キャプチャシステム7によって行われる。
【0053】
画像キャプチャシステム7は、電極21の平面X-Yに平行な平面における細胞の水平位置および変位をキャプチャする顕微鏡7を備える。
【0054】
本発明の一態様によれば、画像キャプチャシステム7は、直交方向Zにおける細胞の位置および変位をキャプチャするように構成される。この特徴の重要な利点は、電極の平面X-Yに平行な平面における変位を測定することによって細胞種および/または細胞状態を区別することが可能になる前に、直交方向における誘電泳動力を受けた細胞の変位が、細胞種および/または細胞状態を区別するように測定され得ることである。したがって、より迅速な測定を実行することができる。また、この測定を電極の平面X-Yに平行な平面における測定とともに使用して、細胞種および/または細胞状態の特性の測定の精度および信頼性を向上させることができる。
【0055】
有利な実施形態では、画像キャプチャシステムを用いた測定中に異なる電極信号周波数を走査するか、または複数の離散した異なる電極信号周波数を印加すると、ある周波数範囲にわたって特性を正確に測定して観測された細胞の種類とその細胞の状態の両方の特定を向上させることが可能になる。図10aおよび図10bは、様々な細胞種および細胞状態が、細胞種および状態を区別するために使用できる異なるCM/周波数プロットをもたらすことを示す。
【0056】
電極の平面X-Yに平行な平面における細胞変位の測定は、直交方向Zにおける細胞変位の測定と同時に実行するか、順番に実行するか、または直交方向Zにおける細胞変位の測定とは無関係に実行することができる。
【0057】
一実施形態では、顕微鏡7は、小さい被写界深度と、培養サンプルを通して視認して直交方向Zにおける細胞の位置をキャプチャするように構成された電気的に調整可能なレンズとを備えてもよい。電気的に調整可能なレンズは、Z方向においてとられるスライス式の複数の画像をキャプチャするように構成されてもよく、これらの画像は、直交Z方向における細胞の位置および変位を決定するように処理されてもよい。高速Zスライシングキャプチャおよび再構成は、細胞サンプル体積を計算することを可能にし、サンプルに関するより多くの情報を与え、対象をより正確に検出し特徴付けることを可能にする。顕微鏡レンズを調整して焦点を合わせた細胞を視認すると、細胞の形状を正確に決定することができる。焦点は、誘電泳動カートリッジ5を監視装置3に挿入するときに直交Z軸における何らかの機械的エラーを補償するようにさらに調整することができる。X-Y平面における位置決めエラーは、カメラセンサーにおいて対象の領域を選択することによって補償することができる。カメラの視野は、測定のゾーンよりも大きい。
【0058】
したがって、システムは、細胞が焦点を合わされるスライスを分析することによって電極21の平面に対する細胞の浮上を測定することができる。
【0059】
電極21は、有利には、導電透明材料、たとえば、薄い酸化インジウムスズ(ITO)層で作られてもよく、それによって、顕微鏡は、透明電極支持体19を通して測定チャンバ23bの内部を視認し、電極の上方の任意の位置における細胞の画像をキャプチャすることができる。
【0060】
本発明の範囲内で、画像キャプチャシステムにおいて、光学顕微鏡を使用する代わりに、ライトシート顕微鏡または共焦点顕微鏡を使用することができ、そのような顕微鏡システムは、それ自体が知られており、本明細書において説明する必要はない。
【0061】
図7aおよび図7bに示すように、本発明の態様によれば、電極21は、測定ゾーン21aを除いて、液体培地と接触する測定チャンバ23bの内部に対して、絶縁体層、たとえば、二酸化ケイ素SiO2の層によって絶縁される。電極の測定ゾーン21aは、電圧降下および信号ひずみを回避し、したがって、最適な電場を発生させるように絶縁されない。測定チャンバの外部に位置する接点21bも絶縁されない。
【0062】
電極を測定ゾーン21aの周りで絶縁すると、測定ゾーンと接点を相互接続する電極の部分の誘電泳動信号に対する悪影響なしに、画像キャプチャシステムに整列される接点21bと測定ゾーン21aとの間の距離を延ばすことも可能である。
【0063】
図8bに概略的に示すように、細胞のインピーダンスZiは、有利には、2つの平行なインピーダンス測定電極21’、21”を用いて測定することができる。インピーダンス測定電極21’、21”は、進行波誘電泳動に使用される電極の2つであってもよく、またはインピーダンス測定にのみ使用される独立の電極であってもよい。細胞位置は、画像キャプチャシステムを用いて検出し、画像キャプチャシステムによって位置を検出しながら、ポンプ6の制御された動作によって、および/または進行波誘電泳動力FtwDEPを加えることによって、測定チャンバ内の液体の流れを制御することによりインピーダンス測定電極21’、21”間に配置することができる。このことは、選択された単一の細胞サンプルの測定を行う上で非常に有用である場合がある。
【0064】
図7aおよび図6cを参照すると、大面積の進行波誘電泳動twDEPゾーンを一実施形態によるスパイラル形電極を用いて実現することができる。前述のように、信号減衰またはひずみを回避するために、測定ゾーン21aおよび接点21bを除くあらゆる場所で上部に絶縁層を付加してもよい。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、図7bに示すように、個々の非スパイラル状トラックに接続された測定ゾーン21a内に複数の電極21を単に並べて並列に配置してもよい。
【0066】
図7cを参照すると、別の実施形態によれば、電極21は、4つの異なる信号を互いに噛み合わせて生成するための4つの電極21i、21ii、21iii、21ivを有し、4つの電極は、絶縁分離された層上に置かれる。4つの層はたとえば、第1の導電層、第1の絶縁層、第2の導電層、次いで第2の絶縁層のスタックとして構築されてもよく、それによって、電極21i、21iiiの2つは、第1の導電層上にあるが離隔されており、他の2つの電極21ii、21ivは、第2の導電層上にあるが離隔されている。
【0067】
図7dを参照すると、別の実施形態によれば、2つの電極21v、21viによって生成された2つの信号を用いて直交方向Zにおける細胞の浮上を測定することができる。最大の浮上力は、2つの信号が180°ディフェーズされるときに生じる。この実施形態では、細胞種および細胞状態の区別が、画像キャプチャシステムを用いて直交方向Zにおける細胞の位置および変位を測定することによってのみ実行されてもよい。
【0068】
画像キャプチャシステムによって、進行波誘電泳動に起因する細胞の位置および変位を測定する間、測定チャンバ内の液体は、静止しているかもしくは実質的に静止している場合があるか、または流体流を受け、それによって、図8aに示すように、測定チャンバ内を流入口から流出口に向かう液体流方向LFにおける成分を示し、ならびに進行波誘電泳動力FtwDEPに起因する横方向への平行移動Tを示す場合がある。細胞の移動方向は、画像キャプチャシステム7によってキャプチャされ、コンピューティングユニット9によって分析される。同時流体流および誘電泳動による平行移動の利点は、垂直成分によって、細胞の状態を非常に正確にかつ容易に測定して正常細胞と死滅細胞を区別するとともに、誘電泳動力に影響を及ぼす細胞の状態を非常に正確にかつ容易に測定することが可能になることである。この測定は、細胞種間ならびに各細胞の異なる状態間の区別の精度および信頼性を増すために直交方向Zにおける変位の測定とともに行われてもよい。
【0069】
エレクトロポレーションは、細胞移入を向上させるために使用される技法である。本発明の別の態様によれば、測定チャンバ内の誘電泳動ゾーンをこの目的のために使用してもよい。発生した電場(振幅依存)は、細胞膜の透過性を高め、ベクトル(たとえば、ウイルス)の細胞への統合を推進する。誘電泳動を通じて異なるサイズの微生物(たとえば、ウイルスおよび細胞)を異なる速度で移動させることができると、衝突が生じるのでウイルスの統合が増幅される。したがって、測定チャンバ内で発生する進行波誘電泳動力を使用して微生物を横方向において両方向に移動させ、複数の衝突を生じさせることができる。
【0070】
別の実施形態では、図9に概略的に示すように、2つの流出路を有することが可能であり、第1の流出路は、戻り流路23cに対応し、別の流出路は、排水路23dに対応し、ここでは非生存細胞が流体流から除去され、生存細胞は細胞培地に戻る。
【0071】
細胞生存率の連続分析または半連続分析を可能にする誘電泳動カートリッジ5は、蠕動ポンプまたはシャトルポンプ(または液体培地に接触するアクチュエータを有さない他のポンプタイプ)を使用する、細胞培養タンクから出て細胞培養タンクに戻る閉回路接続と協働して、一方では、滅菌液体回路を確保し、同時に培地中の細胞の状態を低コストで自動分析することを可能にする。誘電泳動カートリッジおよび細胞培養タンクはさらに、監視装置3から滅菌状態で分離され、低コストでかつ容易に処分することができ、一方、監視装置は、特別な処理の必要なしに再利用される。
【0072】
誘電泳動カートリッジ5は、供給導管40aおよび戻り導管40bを形成する柔軟なチューブに結合され、監視装置3のカートリッジホルダ部28の長穴に取り外し可能に挿入されてもよい。誘電泳動カートリッジ5は、カートリッジホルダ部28内の所定の位置にある間、画像キャプチャシステム7および分光計8が測定チャンバ23bの上方に位置付けられ、測定チャンバに流入する細胞の移動をキャプチャし流体の特性を検出することができるように位置付けられる。カートリッジには、測定チャンバにおいて測定チャンバの少なくとも上方に形成された透明窓が設けられる。透明窓は、電極支持体19によって、たとえば、ガラス層の形に形成され得るが、ベース20の透明ポリマー窓を通しても視認可能である。
【0073】
いくつかの変形形態では、光源13は、画像キャプチャシステム7に対してカートリッジホルダ部の反対側に位置付けられてもよい。
【0074】
分光計8は、流体の特性をキャプチャするために使用されてもよく、一方、画像キャプチャシステムは、液体内の細胞を検出して測定チャンバにおける細胞の移動をキャプチャするため使用されてもよい。
【0075】
分光計8および画像キャプチャシステム7に接続されたコンピューティングユニット9は、細胞を計数し、細胞の軌跡を分析してその分析から細胞の生存率を判定するようにアルゴリズムを用いて構成される。コンピューティングユニットは、進行波誘電泳動信号を生成するために電極21に接続された信号発生器12を備える。コンピューティングユニット9にはインピーダンス計11がさらに接続されてもよく、インピーダンス計は、測定チャンバを通って流れる液体の電気インピーダンスを測定する。インピーダンス計Ziは、カートリッジ5を通って流れる培地に浸漬させた2つの離隔された電極21’、21”を備えてもよい。
【0076】
図7aを見ると最もよくわかるように、有利な実施形態によれば、複数の電極は、鏡像スパイラルの対を形成してもよい。図示の実装形態では、電極が8つあり、各スパイラル上に4つずつある。図示の実施形態におけるスパイラルは、実質的に矩形の形態を有するが、楕円形態または丸い形態を有することができる。有利な実施形態では、電極はより少なくてもよく、たとえば、電極は6つまたは4つであってもよい。
【0077】
しかし、一実施形態(図示せず)では、複数の電極の単一のスパイラルのみが存在してもよい。
【0078】
電極のこのスパイラル状測定部は、有利には、電極の数を削減し、一方、進行波誘電泳動信号を十分に大きい幅で印加し、生存細胞の容易に測定可能な平行移動を生じさせるのを可能にする。
【0079】
電極の数を削減すると、有利なことに、接触される電極の数を減らすことが可能になり、接触部21bは、外側に延び広がって、幅が大きくなり、監視装置のカートリッジホルダ部28における電気コネクタ31の補端子31aに十分な接触表面積をもたらす。図5dおよび図5cを見ると最もよくわかるように、コネクタ31は、誘電泳動カートリッジ5がカートリッジホルダ部28に完全に差し込まれたときに電極接続部21bの金属化パッドに弾性的に押し付けられるばね取付け接点を備える。
【0080】
カートリッジホルダ部28は、誘電泳動カートリッジが測定位置において完全に挿入され得るカートリッジホルダ長穴29を備え、それによって、たとえば、誘電泳動カートリッジのベース20における対応するくぼみ30bに受け入れられる突起30aの形をした位置決め要素30が、誘電泳動カートリッジをカートリッジホルダ長穴29内に保持し位置決めする。位置決め要素30bは、カートリッジホルダ部28に取り付けられたばねでもよく、または剛性を有してもよく、それによって、誘電泳動カートリッジ5の材料により、かつ任意選択で、カートリッジホルダ部28上の突起に係合する弾性ガイドおよびくぼみを誘電泳動カートリッジに設けることによって、弾性コンプライアンスがもたらされる。
【0081】
監視装置には、カートリッジホルダ長穴29からカートリッジを吐出するかまたはカートリッジホルダ長穴29からカートリッジを吐出するのを助けるためにプッシャー機構(概略的にのみ表されている)を備える手動作動式または電気作動式エジェクタ33が設けられてもよい。
【0082】
画像キャプチャシステム7は、光学画像のデジタル処理を可能にするデジタル画像キャプチャシステムに結合された光学顕微鏡12を備えてもよい。しかし、変形形態では、次のように他の画像キャプチャシステムを使用することが可能である。
- 位相差顕微鏡を撮像システムとして使用して画像のコントラストを高めて細胞認識の質を向上させる位相差画像法。
- 画像の解像度を高めるための撮像システムとしての共焦点顕微鏡。それによって共焦点像は、細胞特性評価の質を向上させる細胞の3Dモデルを再構成するのを可能にする。
- ライトシート顕微鏡法は、内部の流路の3D画像を作成するために使用することができる。ライトシート顕微鏡法は、細胞形態に関してより多くの情報を提供する。
【0083】
測定チャンバ23bでは、測定チャンバの厳密な高さ、すなわち、電極支持体19と測定チャンバの床との間の隙間を判定するために測定チャンバ部の各側方に横方向ガイド27が設けられてもよい。
【0084】
電極支持体19は、電極支持体19の保護を可能にするベース20のくぼみ25内に取り付けられてもよい。
【0085】
したがって、誘電泳動カートリッジ5をカートリッジホルダ長穴29に容易に差し込み、カートリッジホルダ長穴内にしっかりと正確に位置決めすることができ、同時にベース20の電極接続窓22を通して電極接続部21bに押し付けられるコネクタ31のばね接点31aによって接触を確立することができる。
【0086】
したがって、誘電泳動カートリッジは、別個に用意することができる培養タンクへの供給導管および戻り導管に接続され、培養期間の間、たとえば、培地において細胞が成長する2週間の期間の間、細胞を半連続的または連続的に分析するために監視装置に容易に結合され得る。
【0087】
閉回路構成および流体循環システムの監視装置からの滅菌分離は、手動介入の必要なしに、コンピューティングユニットに接続された画像キャプチャシステムによる細胞の自動分析を可能にし、培地において細胞が特に安全に、滅菌状態で、低コストで成長するのを可能にする。
【0088】
本発明の主な用途の1つは、拡張期の間(たとえば、2週間以内)細胞培養を無菌状態で監視することである。本発明は、監視デバイスに接続されてもよく、初めて使用した後に処分される滅菌シングルユース使い捨てキットを提供する。閉ループにおいて監視装置に接続された使い捨てキットを使用すると、システムは、培養の全時間にわたって細胞培養の連続的または半連続的な分析を実行することが可能である。測定データは、細胞培養の状態に遠隔的にリアルタイムに従うように通信ネットワークを介して利用可能にされてもよい。拡張期以外の相についても、たとえば、対数期、静止期、および死滅期を含むこれらの相を、たとえばバイオプロダクションについて監視すると興味深い場合がある。誘電泳動は早期アポトーシス状態の細胞を検出することができる。したがって、死滅期への遷移を予測することができる。
【0089】
システムの動作は、以下の態様を含んでもよい。サンプルは、細胞培養タンクから抽出され、誘電泳動カートリッジを通って流れる。拡大が可能な画像キャプチャシステムは、カートリッジの透明窓を通すか、ベースを通すか、または代替的に電極支持体を通して観察される測定(観察)ゾーンを通過する細胞を記録する。観察ゾーンでは、進行波誘電泳動を使用して細胞を操作してもよい。異なる細胞集団を区別し、ソートすることもできる。
【0090】
培地の光学分光法およびインピーダンス分光法は、代謝産物含有量などのさらなるパラメータを監視するのを可能にする。これらの測定によって生成されたデータが分析され、細胞培養ステータスに関する情報が提供されてもよい。たとえば、ラマン分光法が使用されてもよく、それによって、電極支持体は、たとえば、表面強化ラマン散乱(SERS)測定技法を使用して検出を強化する機能的コーティングを備えてもよい。電極支持体上の機能的コーティングは、具体的には、グルコース、ラクトース、および他の細胞代謝産物などの代謝産物を検出するように構成されたコーティングを含んでもよい。
【0091】
細胞密度は、画像キャプチャシステムを用いて、その後コンピューティングユニットにおける画像分析を用いて測定されてもよい。観察されたゾーンに対応する体積は既知である。2つの次元(xおよびy)は、光学顕微鏡の投影モデルを用いて計算することができる。測定チャンバ高さは、機械的設計から既知であり、したがって、計数は、画像認識アルゴリズムを用いて自動的に行われ得る。
【0092】
細胞生存率は、電極全体にわたる進行波誘電泳動および/または直交方向における誘電泳動を用いて、画像キャプチャシステムを用いて細胞の軌跡を分析することによって測定され得る。細胞の変位(X-Y方向における軌跡および/またはZ方向における変位)に応じて、各細胞の生存率を評価することができる。これを画像分析と相関することによって、各細胞種の厳密な生存率を判定することができる。
【0093】
細胞表現型は、誘電泳動力によって発生する細胞の変位に基づいて区別することができる。細胞のサイズ、膜、および誘電特性は、誘電泳動力においてある役割を果たす。形状、吸収、核サイズ、粒状度、膜厚などの光学特性が、埋め込みコンピュータまたは分散外部システム(クラウドネットワーク)であってもよい信号処理ユニットにおいて実行される画像処理アルゴリズムから抽出されてもよく、細胞の区別の信頼性を高め得る。異なる信号パターンを印加することによって異なる細胞種を電極に沿ってクラスタ化することができる。異なる信号構成(位相、振幅、時間)が実行されてもよく、画像キャプチャシステムのフィードバックおよび/または強化学習方法を用いて、同じ細胞種が再グループ化されてもよい。同様の方法をソーティングに使用することもできる。
【0094】
細胞を区別することができると、細胞のある集団が他の集団よりも速く成長するかまたは必要な細胞に害が及ぶほど成長するかどうかを観察することが可能になる。必要な細胞についての培養条件(栄養、温度、希釈された注視、pH、代謝産物含有量)は、収集されたデータおよびその分析を用いて改善することができる。不要な細胞および他の粒子(細菌、ウイルス…)を監視の間にソートすることもできる。
【0095】
培養の状態に関する情報を提供することに加えて、分光計およびインピーダンス計によって提供されたデータに、システムによって提供された他のデータ(生存率、細胞集団…)および通信ネットワークに記憶された他のデバイスからのデータを結合して使用してもよい。アルゴリズム(たとえば、機械学習)を用いてパターンを見つけることができ、現在の培養に対して予測を行うことができる。複数の監視記録のデータをクラウドコンピューティングネットワークまたは分散デバイスにおいて収集し分析することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 細胞培養監視システム
3 監視装置
7 画像キャプチャシステム
12 顕微鏡
13 ライト
8 分光計
9 コンピューティングユニット
10 信号発生器
11 インピーダンス計
28 カートリッジホルダ部
29 カートリッジホルダ長穴
30 位置決め要素
30a ばね突起
31 コネクタ
31a 電気端子
33 イジェクタ
4 流体循環システム
5 誘電泳動カートリッジ
20 ベース
22 電極接続窓
23 マイクロ流体回路
23a 流入路
23b 測定チャンバ
26 隆起した床
27 横方向ガイド
23c 戻り流路
23d 排水路
23e 補助流入路
24b 流出口(戻り)
24a 流入口(供給)
30b 位置決めくぼみ
25 支持取付けくぼみ
19 電極支持体
21 電極
21a 測定ゾーン
21b 接点
32 絶縁体層
14a 供給導管
14b 出口/戻り導管
16 タンク供給/戻り流体接続
17 有孔チューブ
18 流体コネクタ
18a 供給接続
18b 戻り接続
6 ポンプ
2 細胞培養タンク
15 細胞培地
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図8c
図9
図10a
図10b
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培地(15)を含む培養タンク(2)に結合するための監視装置(3)と、前記細胞培養タンク(2)に流体結合するための流体循環システム(4)と、を備える細胞培養監視システム(1)であって、
前記流体循環システムは、供給導管(14a)および戻り導管(14b)と、前記供給導管(14a)および前記戻り導管(14b)を介して前記細胞培養タンク(2)に接続するための誘電泳動カートリッジ(5)と、を備え、
前記誘電泳動カートリッジは、ベース(20)と、電極支持体(19)であって、前記電極支持体(19)内または前記電極支持体(19)上の電極平面X-Yに配置された電極(21)を有する、電極支持体(19)と、を備え、
前記電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ間に測定チャンバを形成する前記電極支持体(19)と前記ベース(20)の床(26)との間に形成された測定チャンバ(23b)の上方に配置された測定ゾーン(21a)を備え、
前記監視装置(3)は、前記電極に接続された信号発生器(12)と、コンピューティングユニット(9)と、前記コンピューティングユニット(9)に接続された画像キャプチャシステム(7)と、前記画像キャプチャシステム(7)が前記測定チャンバ(23b)内の細胞を検出し得るように前記誘電泳動カートリッジ(5)を受け入れるためのカートリッジホルダ部(28)と、を備え、
前記画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに対する直交方向Zにおける前記測定チャンバ内の前記細胞培地中の細胞の変位をキャプチャして細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される、細胞培養監視システム(1)。
【請求項2】
前記画像キャプチャシステムおよび前記コンピューティングユニットは、前記直交方向Zにおいてとられたスライス式の複数の画像をキャプチャするように構成され、前記複数の画像は、前記直交方向Zにおける細胞の位置および前記細胞の変位を判定するように処理される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記画像キャプチャシステムは、前記測定チャンバの高さよりも小さい被写界深度を有する顕微鏡(7)と、異なる高さにおける画像のスライスをキャプチャするように焦点を調整するための電気的に調整可能なレンズと、を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記測定チャンバ内の前記細胞培養液体培地中の細胞は、前記電極平面X-Yに平行な平面において進行波誘電泳動力を受け、前記画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに平行な前記平面における前記測定チャンバ内の前記細胞培地中の細胞の前記変位をキャプチャして、前記直交方向Zにおける前記細胞の変位に基づく前記測定に関連して細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記信号発生器は、測定の間または一連の測定にわたって、異なる電極信号周波数を走査するか、または複数の離散した異なる電極信号周波数を印加するように構成され、前記画像キャプチャシステムおよび前記コンピューティングユニットは、異なる電極信号周波数について細胞の変位を測定するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記電極支持体(19)は、透明ポリマーまたはガラスで作られ、前記電極は、導電透明材料、たとえば、薄い酸化インジウムスズ(ITO)層で作られる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記電極(21)は、測定ゾーン(21a)および接点(21b)を除いて、絶縁体層によって前記測定チャンバの内部に対して絶縁される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記カートリッジは、細胞のインピーダンス(Zi)を測定するように構成された少なくとも2つのインピーダンス測定電極(21’、21”)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記電極(21)は、前記測定チャンバ(23b)を画定する前記電極支持体(19)の内面上に形成され、前記内面は、前記監視装置の補ばね接点(31a)に接点を差し込むために前記ベース(20)に形成された電極接続窓(22)まで延びる接触部(21b)を有し、前記電極接続窓(22)は、前記測定チャンバ(23b)から密封分離される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記測定チャンバ(23b)は、隆起した床(26)と、前記床(26)と前記電極支持体(19)との間に隙間を画定する横方向ガイド(27)と、を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記電極(21)は、たとえば、鏡像対称の2つのセットにおける1つまたは複数のらせん状導電トラックであって、一部が前記測定ゾーン(21a)を形成する、らせん状導電トラックを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記電極は、少なくとも2つの噛み合わされた電極(21i、21ii、21iii、21iv、21v、21vi)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記監視装置(3)の前記カートリッジホルダ部(28)は、前記誘電泳動カートリッジを滑り可能に挿入するように構成されたカートリッジホルダ長穴を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記カートリッジホルダ部(28)は、前記誘電泳動カートリッジを測定位置に位置付けて固定するために前記誘電泳動カートリッジ内の補位置決め要素に係合する位置決め要素(30)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記測定チャンバ(23)における電極と床(26)との間の隙間は、10μm~500μmの範囲である、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
細胞培地(15)を含む培養タンク(2)に結合するための監視装置(3)と、前記細胞培養タンク(2)に流体結合するための流体循環システム(4)と、を備える細胞培養監視システム(1)であって、
前記流体循環システムは、供給導管(14a)および戻り導管(14b)と、前記供給導管(14a)および前記戻り導管(14b)を介して前記細胞培養タンク(2)に接続するための誘電泳動カートリッジ(5)と、を備え、
前記誘電泳動カートリッジは、ベース(20)と、電極支持体(19)であって、前記電極支持体(19)内または前記電極支持体(19)上の電極平面X-Yに配置された電極(21)を有する、電極支持体(19)と、を備え、
前記電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ間に測定チャンバを形成する前記電極支持体(19)と前記ベース(20)の床(26)との間に形成された測定チャンバ(23b)の上方に配置された測定ゾーン(21a)を備え、
前記監視装置(3)は、前記電極に接続された信号発生器(12)と、コンピューティングユニット(9)と、前記コンピューティングユニット(9)に接続された画像キャプチャシステム(7)と、前記画像キャプチャシステム(7)が前記測定チャンバ(23b)内の細胞を検出し得るように前記誘電泳動カートリッジ(5)を受け入れるためのカートリッジホルダ部(28)と、を備え、
前記電極(21)は、測定ゾーン(21a)を除いて、絶縁体層によって前記測定チャンバの内部に対して絶縁される、細胞培養監視システム(1)。
【請求項17】
前記絶縁体層は、二酸化ケイ素を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記電極支持体(19)は、透明ポリマーまたはガラスで作られ、前記電極は、少なくとも部分的に、導電透明材料の前記測定ゾーン内に作られる、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記導電透明材料は、薄い酸化インジウムスズ(ITO)層である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記カートリッジは、細胞のインピーダンス(Zi)を測定するように構成された少なくとも2つのインピーダンス測定電極(21’、21”)を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記電極(21)は、前記測定チャンバ(23b)を画定する前記電極支持体(19)の内面上に形成され、前記内面は、前記監視装置の補ばね接点(31a)に接点を差し込むために前記ベース(20)に形成された電極接続窓(22)まで延びる接触部(21b)を有し、前記電極接続窓(22)は、前記測定チャンバ(23b)から密封分離される、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記測定チャンバ(23b)は、隆起した床(26)と、前記床(26)と前記電極支持体(19)との間に隙間を画定する横方向ガイド(27)と、を備え、前記測定チャンバ(23)における電極と床(26)との間の前記隙間は、10μm~500μmの範囲である、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記電極(21)は、たとえば、鏡像対称の2つのセットにおける1つまたは複数のらせん状導電トラックであって、一部が前記測定ゾーン(21a)を形成する、らせん状導電トラックを備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
前記電極は、少なくとも2つの噛み合わされた電極(21i、21ii、21iii、21iv、21v、21vi)を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項25】
前記画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに対する直交方向Zにおける前記測定チャンバ内の前記細胞培地中の細胞の変位をキャプチャして細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項26】
前記画像キャプチャシステムおよび前記コンピューティングユニットは、直交方向Zにおいてとられたスライス式の複数の画像をキャプチャするように構成され、前記複数の画像は、前記直交方向Zにおける細胞の位置および細胞の変位を判定するように処理される、請求項16に記載のシステム。
【請求項27】
前記測定チャンバ内の前記細胞培養液体培地中の細胞は、前記電極平面X-Yに平行な平面において進行波誘電泳動力を受け、前記画像キャプチャシステムは、前記電極平面X-Yに平行な前記平面における前記測定チャンバ内の前記細胞培地中の細胞の変位をキャプチャして、直交方向Zにおける前記細胞の変位に基づく測定に関連して細胞種および/または細胞状態の測定を可能にするように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項28】
前記信号発生器は、測定の間または一連の測定にわたって、異なる電極信号周波数を走査するか、または複数の離散した異なる電極信号周波数を印加するように構成され、前記画像キャプチャシステムおよび前記コンピューティングユニットは、異なる電極信号周波数について細胞の変位を測定するように構成される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記監視装置(3)の前記カートリッジホルダ部(28)は、前記誘電泳動カートリッジを滑り可能に挿入するように構成されたカートリッジホルダ長穴を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項30】
前記カートリッジホルダ部(28)は、前記誘電泳動カートリッジを測定位置に位置付けて固定するために前記誘電泳動カートリッジ内の補位置決め要素に係合する位置決め要素(30)を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項31】
細胞培養タンク(2)に接続するための誘電泳動カートリッジ(5)であって、
ベース(20)と、電極支持体(19)であって、前記電極支持体(19)内または前記電極支持体(19)上の電極平面X-Yに配置された電極(21)を有する、電極支持体(19)と、を備え、
前記電極は、進行波誘電泳動向けに構成され、かつ間に測定チャンバを形成する前記電極支持体(19)と前記ベース(20)の床(26)との間に形成された測定チャンバ(23b)の上方に配置された測定ゾーン(21a)を備え、
前記電極(21)は、測定ゾーン(21a)を除いて、絶縁体層によって前記測定チャンバの内部に対して絶縁される、誘電泳動カートリッジ(5)。
【請求項32】
前記絶縁体層は、二酸化ケイ素を含む、請求項31に記載のカートリッジ。
【請求項33】
前記電極支持体(19)は、透明ポリマーまたはガラスで作られ、前記電極は、少なくとも部分的に、導電透明材料の前記測定ゾーン内に作られる、請求項31に記載のカートリッジ。
【請求項34】
前記導電透明材料は、薄い酸化インジウムスズ(ITO)層である、請求項33に記載のカートリッジ。
【請求項35】
前記カートリッジは、細胞のインピーダンス(Zi)を測定するように構成された少なくとも2つのインピーダンス測定電極(21’、21”)を備える、請求項31に記載のカートリッジ。
【請求項36】
前記電極(21)は、前記測定チャンバ(23b)を画定する前記電極支持体(19)の内面上に形成され、前記内面は、監視装置の補ばね接点(31a)に接点を差し込むために前記ベース(20)に形成された電極接続窓(22)まで延びる接触部(21b)を有し、前記電極接続窓(22)は、前記測定チャンバ(23b)から密封分離される、請求項31に記載のカートリッジ。
【請求項37】
前記測定チャンバ(23b)は、隆起した床(26)と、前記床(26)と前記電極支持体(19)との間に隙間を画定する横方向ガイド(27)と、を備え、前記測定チャンバ(23)における電極と床(26)との間の前記隙間は、10μm~500μmの範囲である、請求項31に記載のカートリッジ。
【請求項38】
前記電極(21)は、たとえば、鏡像対称の2つのセットにおける1つまたは複数のらせん状導電トラックであって、一部が前記測定ゾーン(21a)を形成する、らせん状導電トラックを備える、請求項31に記載のカートリッジ。
【請求項39】
前記電極は、少なくとも2つの噛み合わされた電極(21i、21ii、21iii、21iv、21v、21vi)を備える、請求項31に記載のカートリッジ。
【国際調査報告】