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特表2024-517325薬学的に活性な化合物としてのレゾルシノール誘導体及びその調製の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】薬学的に活性な化合物としてのレゾルシノール誘導体及びその調製の方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/42 20060101AFI20240412BHJP
   C07C 29/147 20060101ALI20240412BHJP
   C07C 69/16 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 31/055 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C07C39/42 CSP
C07C29/147
C07C69/16
A61K31/055
A61P25/08
A61K9/06
A61K9/02
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569987
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 GB2022051200
(87)【国際公開番号】W WO2022238701
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】2106786.3
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ジェームズ・シルコック
(72)【発明者】
【氏名】カレン・カ-イェン・ツェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ダニエル・オズボーン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・スチュアート・ヒンチリーフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・シャープ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA14
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB21
4C076BB31
4C076CC01
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206CA20
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA43
4C206MA47
4C206MA48
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA75
4C206NA14
4C206ZA06
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB20
4H006AB84
4H006AC41
4H006BB14
4H006BM30
4H006BM73
4H006BR70
4H006FC22
4H006FC52
4H006FE12
4H006FE13
4H006FE73
4H006FE76
4H006KC12
(57)【要約】
本発明は、薬学的に活性な化合物としてのレゾルシノール誘導体及びその調製の方法に関する。レゾルシノール誘導体は、様々な病気及び障害を処置するために使用されている。そのような処置は有望であるが、より効果的な処置が当技術分野ではなおも必要とされており、これは、本発明のレゾルシノール誘導体によってもたらされた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物又はその塩若しくは立体異性体。
【請求項2】
(1'R,2'R,4'S)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオールである、式(I)の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を、担体、希釈剤、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、保存剤、酸化防止剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味料、及び甘味剤から選択される1種以上の追加の成分と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項4】
液剤(liquid)、溶液剤(solution)、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、舐剤、洗口剤、滴剤、錠剤、顆粒剤、散剤、薬用キャンディー剤(lozenge)、トローチ剤(pastille)、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、急速静注剤、坐剤、腟坐剤、チンキ剤、ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、油剤、フォーム剤、スプレー剤、及びエアロゾル剤から選択される形態である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬としての使用のための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
前記医薬が、てんかんを処置するための医薬である、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記医薬が、全般発作、焦点起始発作、又は強直間代発作を処置するための医薬である、請求項5又は6に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
処置の方法における使用のための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項9】
処置の前記方法が、てんかんを処置する方法である、請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
処置の前記方法が、全般発作、焦点起始発作、又は強直間代発作を処置する方法である、請求項8又は9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
治療有効量の請求項1又は2に記載の化合物を、処置を必要とする対象に投与する工程を含む、処置の方法。
【請求項12】
てんかんを処置する方法である、請求項11に記載の処置の方法。
【請求項13】
全般発作、焦点起始発作、又は強直間代発作を処置する方法である、請求項11又は12に記載の処置の方法。
【請求項14】
式(I)の化合物の製造のための方法であって、
以下の工程:
i)5-ブロモベンゼン-1,3-ジオールを4-イソプロペニル-1-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オールと反応させる工程、
ii)得られた化合物5-ブロモ-2-[6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]ベンゼン-1,3-ジオールを無水酢酸で処理する工程、
iii)更に得られる化合物[3-アセトキシ-5-ブロモ-2-[6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]フェニル]アセテートを酢酸マンガン二水和物で処理する工程、
iv)その後に更に得られる化合物[3-アセトキシ-5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-4-オキソ-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]フェニル]アセテートに水素化ホウ素ナトリウムを添加し、続いて、その後の工程を行い、式(I)の化合物を製造する工程
を含む、方法。
【請求項15】
式(I)の化合物の製造方法で形成される中間体であって、
【化2】
である、中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年5月12日(2021年5月12日)に出願されたGB2106786.3に関連し、その利益を主張するものであり、その内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、薬学的に活性な化合物としてのレゾルシノール誘導体、研究ツール、及びその調製の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レゾルシノールは、高度な化学物質及び技術の開発において広く使用される多目的の化学化合物として広く知られている(Durairaj、2005)。これは、樹脂、プラスチック、染料、薬、及び多数の他の有機化学化合物の製造を含む、医学から化学までの幅広い範囲の用途で用いられてきた。
【0004】
レゾルシノールは、白色の結晶又は粉末として生じ、甘く苦い味を伴うかすかな特有の芳香臭を有し、水及びアルコールに容易に可溶である。この化合物についての他の名称は、レゾルシン、メタ-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ベンゼンジオール、及び3-ヒドロキシフェノールを含み、その示性式は、C6H6O2である。構造的には、この化合物は、芳香環構造中に2個のヒドロキシル基を有し、各ヒドロキシル基に対してメタ位に位置している。レゾルシノールの高い反応性は、ベンゼン環内のこれらの2個のヒドロキシル基の位置に主に関連しており、ヒドロキシル基に隣接した水素原子は、特に反応性が高い。
【0005】
レゾルシノールの製造は、ブラジルウッドの蒸留物等の天然樹脂を使用するか、多数の樹脂(ガルバナム及びアサフェティダ等)のいずれかを溶かし、これを水酸化カリウムと組み合わせるか、又はいくつかの合成法によるかのいずれかの合成経路を介したものであり得る。1つの合成製造法は、ベンゼンを硫酸でスルホン化し、得られたベンゼンジスルホン酸を水酸化ナトリウムと融合させ、その後、レゾルシノールを抽出することである。
【0006】
レゾルシノールの使用のうちの1つは、薬剤及び他の有機化合物を合成するための化学中間体としてのその役割である。例えば、これは、ジアゾ染料及び可塑剤の生成において、及び樹脂におけるUV吸収剤として使用される。薬として、レゾルシノールは、ざ瘡、脂漏性皮膚炎、湿疹、乾癬、鶏眼、皮膚硬結、及びいぼ等の皮膚障害及び感染症の処置において、局所用薬学的製品の防腐剤及び消毒剤として使用されている。レゾルシノールは、角質溶解活性を発揮するため、硬い、鱗片状の、又は荒れた皮膚を除去する助けをすることによって機能する。しかしながら、レゾルシノールの主な使用は、樹脂の生成である。ホルムアルデヒドとの反応は、ゴムでの含浸に適したレーヨン及びナイロンを作製するために、並びに接着剤として使用される、樹脂を生成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」、第2版、2002年、Stahl and Wermuth (Eds)、Wiley-VCH、Weinheim、Germany
【非特許文献2】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年、pub. Lippincott、Williams & Wilkins
【非特許文献3】Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994年
【非特許文献4】Animals (Scientific Procedures) Act 1986
【非特許文献5】Duermuellerら、NeuroReport、第4巻、第6号、683~686頁、1993年
【非特許文献6】J. Pharmacol. Exp. Ther. 107、273~283ページ、1953年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最も一般的には、本発明は、生物学的に活性であり、したがって疾患の処置に有用である、新規のレゾルシノール誘導体に関する。そのような新規の化合物は、経口、経皮、口腔、経鼻、肺、直腸、又は眼を含むがこれらに限定されることはない幅広い種類の経路によって投与され得る。そのような化合物は、てんかんを含むがこれに限定されることはない医学的症状の処置又は予防に使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様では、式(I):
【0010】
【化1】
【0011】
の化合物又はその塩若しくは立体異性体が提供される。
【0012】
一実施形態では、式(I)の化合物は、(1'R,2'R,4'R)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオール又はその塩である。
【0013】
一実施形態では、式(I)の化合物は、(1'R,2'R,4'S)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオール又はその塩である。
【0014】
本発明の第2の態様では、第1の態様の化合物を、担体、希釈剤、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、保存剤、酸化防止剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味料、及び甘味剤から選択される1種以上の追加の成分と一緒に含む医薬組成物が提供される。
【0015】
好ましくは、第2の態様の医薬組成物は、液剤(liquid)、溶液剤(solution)、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、舐剤、洗口剤、滴剤、錠剤、顆粒剤、散剤、薬用キャンディー剤(lozenge)、トローチ剤(pastille)、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、急速静注剤、坐剤、腟坐剤、チンキ剤、ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、油剤、フォーム剤、スプレー剤、及びエアロゾル剤から選択される形態である。
【0016】
本発明の第3の態様では、処置の方法における使用のための、第1の態様の化合物、又は第2の態様の医薬組成物が提供される。
【0017】
好ましくは、第3の態様の処置の方法は、てんかん、全般発作、焦点起始発作、又は強直間代発作の処置の方法である。
【0018】
本発明の第4の態様では、医薬としての使用のための、第1の態様の化合物、又は第2の態様の医薬組成物が提供される。
【0019】
好ましくは、第4の態様の医薬は、てんかん、全般発作、焦点起始発作、又は強直間代発作を処置するための医薬である。
【0020】
本発明の第5の態様では、治療有効量の第1の態様の化合物、又は第2の態様の医薬組成物を、処置を必要とする対象に投与する工程を含む、処置の方法が提供される。
【0021】
本発明の第6の態様によると、以下の工程:
i)5-ブロモベンゼン-1,3-ジオールを4-イソプロペニル-1-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オールと反応させる工程、
ii)得られた化合物5-ブロモ-2-[6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]ベンゼン-1,3-ジオールを無水酢酸で処理する工程、
iii)更に得られる化合物[3-アセトキシ-5-ブロモ-2-[6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]フェニル]アセテートを酢酸マンガン二水和物で処理する工程、
iv)その後に更に得られる化合物[3-アセトキシ-5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-4-オキソ-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]フェニル]アセテートに水素化ホウ素ナトリウムを添加し、続いて、その後の工程を行い、式(I)の化合物を製造する工程
を含む、式(I)の化合物の製造のための方法が提供される。
【0022】
本発明のこれら及び他の態様及び実施形態は、以下で更に詳細に説明されている。
【0023】
本発明を、以下に列挙される図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例2に記載されているようなマウスのミニMEST試験における試験化合物の評価を示す。
図2】実施例3に記載されているようなマウスのMEST試験における試験化合物の評価を示す。
図3】実施例4に記載されているようなマウスの聴原性発作試験(陽性対照:バルプロエート;陰性対照:ビヒクル)において化合物Iを投与した場合のワイルドランニング(wild running)を有するマウスのパーセンテージ(%)を示す。
図4】実施例4に記載されているようなマウスの聴原性発作試験(陽性対照:バルプロエート;陰性対照:ビヒクル)において化合物Iを投与した場合の間代性けいれんを有するマウスのパーセンテージ(%)を示す。
図5】実施例4に記載されているようなマウスの聴原性発作試験(陽性対照:バルプロエート;陰性対照:ビヒクル)において化合物Iを投与した場合の間代性けいれんまでの潜時を示す。
図6】実施例4に記載されているようなマウスの聴原性発作試験(陽性対照:バルプロエート;陰性対照:ビヒクル)において化合物Iを投与した場合の強直性伸展を有するマウスのパーセンテージ(%)を示す。
図7】実施例7に記載されているようなマウスの聴原性発作試験(陽性対照:バルプロエート;陰性対照:ビヒクル)において化合物Iを投与した場合の強直性伸展までの潜時を示す。
図8】実施例4に記載されているようなマウスの聴原性発作試験(陽性対照:バルプロエート;陰性対照:ビヒクル)において化合物Iを投与した場合の死亡のパーセンテージ(%)を示す。
図9】実施例5に記載されているようなマウスの6Hz精神運動試験における試験化合物の評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、生物学的に活性であり、したがって疾患の処置に有用である、新規のレゾルシノール誘導体を提供する。
【0026】
新規のレゾルシノール
本発明は、式(I):
【0027】
【化2】
【0028】
の化合物を提供する。
【0029】
式(I)の化合物は異性体(エピマー)として存在する。本発明の新規のレゾルシノールの2つの異性体は、異性体1と呼ばれることとなる(1'R,2'R,4'R)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオール及び異性体2と呼ばれることとなる(1'R,2'R,4'S)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオールである。異性体1及び2は、総称して式Iの化合物又は化合物Iと呼ばれることとなる。
【0030】
一実施形態では、式(I)の化合物は、(1'R,2'R,4'R)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオール(異性体1)である。
【0031】
一実施形態では、式(I)の化合物は、(1'R,2'R,4'S)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオール(異性体2)である。
【0032】

いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、遊離塩基の形態で提供される。
【0033】
或いは、化合物の対応する塩、例えば、薬学的に許容可能な塩を調製すること、精製すること、及び/又は取り扱うことが好都合又は所望であり得る。薬学的に許容可能な塩の例は、「Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」、第2版、2002年、Stahl and Wermuth (Eds)、Wiley-VCH、Weinheim、Germanyで論じられている。
【0034】
したがって、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、塩として、例えば、適切な対アニオンと一緒に、プロトン化された形態で提供される。
【0035】
適切な対アニオンは、有機アニオン及び無機アニオンの両方を含む。適切な無機アニオンの例は、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、ヨウ化物(I-)、硫酸塩(SO4 2-)、亜硫酸塩(SO3 2-)、硝酸塩(NO3 -)、亜硝酸塩(NO2 -)、リン酸塩(PO4 3-)、及び亜リン酸塩(PO3 3-)を含む無機酸から誘導されたものを含む。適切な有機アニオンの例は、2-アセトキシベンゾエート、アセテート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゾエート、カンファースルホネート、シンナメート、シトレート、エデテート、エタンジスルホネート、エタンスルホネート、ホルメート、フマレート、グルコネート、グルタメート、グリコレート、ヒドロキシマレート、カルボキシレート、ラクテート、ラウレート、ラクテート、マレエート、マレート、メタンスルホネート、オレエート、オキサレート、パルミテート、フェニルアセテート、フェニルスルホネート、プロピオネート、ピルベート、サリチレート、ステアレート、スクシネート、スルファニレート、タルタレート、トルエンスルホネート、及びバレレートを含む。適切なポリマー有機アニオンの例は、タンニン酸及びカルボキシメチルセルロースから誘導されたものを含む。
【0036】
或いは、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、塩として、例えば、適切な対カチオンと一緒に、脱プロトン化された形態で提供される。
【0037】
適切な対カチオンは、有機カチオン及び無機カチオンの両方を含む。適切な無機カチオンの例は、Na+及びK+等のアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+等のアルカリ土類カチオン、及びAl3+等の他のカチオンを含む。適切な有機カチオンの例は、アンモニウムイオン(すなわち、NH4 +)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2 +、NHR3 +、NR4 +)を含む。置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニン等のアミノ酸から誘導されたものを含む。一般的な第4級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4 +である。
【0038】
溶媒和物
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、脱溶媒和された形態、例えば、脱水された形態で提供される。
【0039】
或いは、化合物の対応する溶媒和物を調製すること、精製すること、及び/又は取り扱うことが好都合又は所望であり得る。
【0040】
したがって、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、溶媒和物(溶質(例えば、化合物、化合物の塩)及び溶媒の複合体)の形態で提供される。溶媒和物の例は、水和物、例えば、一水和物、二水和物、及び三水和物を含む。
【0041】
合成法
本発明はまた、以下の工程:
i)5-ブロモベンゼン-1,3-ジオールを4-イソプロペニル-1-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オールと反応させる工程、
ii)得られた化合物5-ブロモ-2-[6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]ベンゼン-1,3-ジオールを無水酢酸で処理する工程、
iii)更に得られる化合物[3-アセトキシ-5-ブロモ-2-[6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]フェニル]アセテートを酢酸マンガン二水和物で処理する工程、
iv)その後に更に得られる化合物[3-アセトキシ-5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-4-オキソ-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]フェニル]アセテートに水素化ホウ素ナトリウムを添加し、続いて、その後の工程を行い、式(I)の化合物を製造する工程
を含む、式(I)の化合物の製造のための方法を提供する。
【0042】
中間体
本発明はまた、式(I)の化合物の製造方法で形成される中間体であって、
【0043】
【化3】
【0044】
である、中間体を提供する。
【0045】
医薬組成物
式(I)の化合物を単独で投与することが可能であり、その一方で、式(I)の化合物を1種以上の他の薬学的に許容可能な成分と一緒に含む医薬組成物(例えば、製剤、調製物、又は医薬)を投与することが好ましい。
【0046】
したがって、本発明は、式(I)の化合物、又はその塩を1種以上の薬学的に許容可能な成分と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0047】
適切な薬学的に許容可能な成分(例えば、担体、希釈剤、賦形剤等)は、標準的な薬学の教材、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2000年、pub. Lippincott、Williams & Wilkins;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994年で見ることができる。
【0048】
適切な薬学的に許容可能な成分の例は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤(例えば、油剤)、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、保存剤、酸化防止剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味料、及び甘味剤を含む。
【0049】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、担体、油、崩壊剤、潤滑剤、安定剤、香味料、酸化防止剤、希釈剤、及び別の薬学的に有効な化合物から選択される賦形剤のうちの1種以上を含む。
【0050】
医薬組成物は、任意の適切な形態であり得る。適切な形態の例は、液剤(liquid)、溶液剤(solution)(例えば、水性、非水性)、懸濁剤(例えば、水性、非水性)、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、シロップ剤、舐剤、洗口剤、滴剤、錠剤(例えば、コーティングされた錠剤を含む)、顆粒剤、散剤、薬用キャンディー剤(lozenge)、トローチ剤(pastille)、カプセル剤(例えば、硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセルを含む)、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、急速静注剤、坐剤、腟坐剤、チンキ剤、ゲル剤、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、油剤、フォーム剤、スプレー剤、及びエアロゾル剤を含む。
【0051】
好ましい実施形態では、医薬組成物の形態は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、吸入用散剤、スプリンクル剤、経口液剤、及び懸濁剤から選択される。
【0052】
医学的処置
本発明者らは、式(I)の化合物が生物学的に活性であることを見出した。実施例は、式(I)の化合物がマウスモデルにおいて抗けいれん活性を示すことを実証している。したがって、式(I)の化合物及びその塩、並びに式(I)の化合物又はその塩を含む医薬組成物は、医学的処置に有用である。
【0053】
したがって、本発明は、処置の方法における使用のための、例えば、治療(すなわち、治療の方法)によるヒト又は動物の体の処置の方法における使用のための、式(I)の化合物、又はその塩を提供する。
【0054】
本発明はまた、医薬としての使用のための、式(I)の化合物、又はその塩を提供する。
【0055】
本発明はまた、治療有効量の化合物(I)、又はその塩を、処置を必要とする対象に投与する工程を含む、処置の方法を提供する。
【0056】
本発明はまた、医薬の製造のための、化合物(I)、又はその塩の使用を提供する。
【0057】
処置される症状
本発明者らは、式(I)の化合物が、全般発作のマウスモデルにおいて抗けいれん活性を示すことを見出した。したがって、式(I)の化合物、その塩、並びに式(I)の化合物又はその塩を含む医薬組成物は、発作に関連する特定の症状の処置に有用である。
【0058】
同様に、式(I)の化合物、その塩、並びに式(I)の化合物又はその塩を含む医薬組成物は、発作に関連する特定の症状を処置するための医薬として(及び処置のための医薬の製造において)有用である。
【0059】
好ましい実施形態では、発作に関連する症状は、てんかんである。
【0060】
一実施形態では、発作に関連する症状は、全般発作、例えば、てんかんに関連する全般発作である。
【0061】
一実施形態では、発作に関連する症状は、強直間代発作、例えば、てんかんに関連する強直間代発作である。
【0062】
対象/患者
処置の方法は、典型的には、式(I)の化合物、又はその塩を対象又は患者に投与する工程を含む。
【0063】
対象/患者は、脊索動物、脊椎動物、哺乳類、胎盤哺乳類、有袋類(例えば、カンガルー、ウォンバット)、げっ歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科(例えば、マウス)、ウサギ目(例えば、ウサギ)、鳥類(例えば、鳥)、イヌ科(例えば、イヌ)、ネコ科(例えば、ネコ)、ウマ科(例えば、ウマ)、ブタ属(porcine)(例えば、ブタ)、ヒツジ属(ovine)(例えば、ヒツジ)、ウシ属(例えば、ウシ)、霊長類、サル属(simian)(例えば、サル又は類人猿)、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、又はヒトであり得る。更に、対象/患者は、その発達形態のいずれであってもよく、例えば、乳児又は子供であってもよい。
【0064】
好ましい実施形態では、対象/患者は、ヒト、より好ましくは成人である。
【0065】
対象/患者はまた、げっ歯類等の実験室研究で使用される非ヒト哺乳類であり得る。げっ歯類は、ラット、マウス、モルモット、及びチンチラを含む。
【0066】
投与経路
処置の方法は、式(I)の化合物、又はその塩を全身的/末梢的又は局所的に(すなわち、所望の作用の部位で)任意の都合のよい投与経路によって対象に投与する工程を含み得る。
【0067】
投与経路は、経口(例えば、摂取による)、頬側、舌下、経皮(例えば、パッチ、絆創膏等によるものを含む)、経粘膜(例えば、パッチ、絆創膏等によるものを含む)、鼻腔内(例えば、点鼻スプレー剤による)、眼(例えば、点眼薬による)、肺(例えば、例えばエアロゾルを介して、例えば口又は鼻を通して使用する吸入又は送気治療による)、直腸(例えば、坐剤又は浣腸による)、膣(例えば、腟坐剤による)、非経口、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、くも膜下腔内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、及び胸骨内を含む注射又は点滴による、或いは、例えば皮下又は筋肉内でのデポ又はリザーバの移植によるものであり得る。
【0068】
投与量
処置の方法は、典型的には、治療有効量の式(I)の化合物、又はその塩を対象に投与する工程を含む。
【0069】
式(I)の化合物、その塩、並びに式(I)の化合物又はその塩を含む医薬組成物の適切な投与量は、患者ごとに異なり得る。最適な投与量の決定は、一般に、任意のリスク又は有毒な副作用に対する治療効果のレベルのバランスを取ることを伴う。選択される投与量レベルは、式(I)の特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、化合物の排泄速度、処置期間、組み合わせて使用される他の活性薬剤、化合物及び/又は材料、症状の重症度、並びに患者の種、性別、年齢、体重、症状、全般的な健康状態及び以前の病歴を含むがこれらに限定されることはない様々な要因に応じる。投与量及び投与経路は、最終的には臨床医の裁量によるが、一般に、投与量は、実質的な有害又は有毒な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成する作用部位での局所的濃度を達成するように選択される。
【0070】
投与は、処置の過程全体を通じて、1回の用量で、連続的又は断続的に(例えば、適切な間隔の分割された用量で)行われ得る。単回又は複数回の投与は、処置する臨床医によって選択された用量レベル及びパターンで実行され得る。
【0071】
他の態様及び実施形態
上記の実施形態のあらゆる互換性のある組み合わせは、あらゆる組み合わせが個別且つ明示的に挙げられているかのように、本明細書に明示的に開示されている。
【0072】
本発明の様々な重要な態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば当業者に明らかであろう。
【0073】
使用される場合、「及び/又は」は、単独の関連する成分又は特徴のそれぞれの具体的な開示、並びに成分又は特徴の組み合わせの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、それぞれが個別に記載されているかのように、i)A、ii)B、並びにii)A及びBのそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。
【0074】
文脈から特に指定されない限り、先に記載されている特徴の説明及び定義は、本発明の特定の態様又は実施形態に限定されることはなく、説明されるすべての態様及び実施形態に等しく適用される。
【0075】
定義
以下の定義は、本発明の理解を助けるために提供される。
【0076】
「レゾルシノール」は、以下の構造を有する化合物、又はその内部にそのような構造を含む任意の超構造を有する化合物である:
【0077】
【化4】
【0078】
てんかんは、以下の症状のうちのいずれかによって定義される脳の疾患であると考えられる:(1)24時間超空けて生じる少なくとも2回の非誘発性(又は反射性)発作、(2)今後10年間かけて生じる1回の非誘発性(又は反射性)発作、及び2回の非誘発性発作後の一般的な再発リスク(少なくとも60%)と同様の更なる発作の確率、(3)てんかん症候群の診断(International League Against Epilepsy (ILAE), 2014によるてんかんの実践的な臨床定義)。
【0079】
「全般発作」(「全般起始発作」)という用語は、脳内のある点に由来し、両側に分散したネットワークに急速に関与すると概念化された発作を指す(ILAE, 2017によるOperational Classification of Seizure Types)。
【0080】
「強直間代発作」は、2つの相において生じ、強直相は、典型的には、筋肉の硬化及び意識喪失を伴い、間代相は、典型的には、手足のリズミカルなけいれんを伴う。
【0081】
「薬学的に許容可能な」という用語は、健全な医学的判断の範囲で、合理的な利益/リスク比率に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症のない、当該の対象(例えば、ヒト)の組織と接触する使用に適切な化合物、成分、材料、組成物、剤形等に関係する。各成分(例えば、担体、希釈剤、賦形剤等)は、組成物の他の成分と適合するという意味合いで「許容可能」である必要もある。
【0082】
「治療有効量」という用語は、所望の処置計画に従って投与された場合に、合理的な利益/リスク比に見合った、何らかの所望の治療効果を生み出すのに有効な、化合物、又は化合物を含む材料、組成物若しくは剤形の量に関係する。
【実施例
【0083】
本発明の特定の態様及び実施形態は、例示的に、また上記の図を参照して説明される。
【0084】
(実施例1)
レゾルシノール誘導体の合成製造法
この実施例は、薬理活性を実証した新規のレゾルシノールを製造するために使用した新規の合成法を説明する。以下のスキーム1は、多数の中間体を介して形成される新規のレゾルシノールを製造するために使用された反応の4つの段階を説明する。
【0085】
本発明の新規のレゾルシノールの2つの異性体は、化合物Iの異性体1と呼ばれることとなる(1'R,2'R,4'R)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオール及び化合物Iの異性体2と呼ばれることとなる(1'R,2'R,4'S)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオールであり、異性体1及び異性体2は、全体を通して総称して式Iの化合物又は化合物Iと呼ばれることとなる。
【0086】
化合物Iの異性体1の分析データは、以下の通りである:1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.37 (s, 2H), 6.39 (s, 2H), 5.17 (s, 1H), 4.63 - 4.58 (m, 1H), 4.51 (s, 1H), 4.47 - 4.46 (m, 1H), 4.08 - 4.01 (m, 1H), 3.87 (s, 1H), 3.74 - 3.72 (m, 1H), 2.01 (d, J=5.0 Hz, 1H), 1.70 - 1.53 (m, 7H).
【0087】
化合物Iの異性体2の分析データは、以下の通りである:1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.53 (s, 1H), 9.32 (s, 1H), 6.43 - 6.36 (m, 2H), 5.07 - 5.05 (m, 1H), 4.62 (d, J=6.7 Hz, 1H), 4.49 - 4.44 (m, 2H), 4.12 - 4.06 (m, 1H), 3.88 - 3.84 (m, 1H), 3.20 - 3.12 (m, 1H), 1.90 (ddd, J=2.4, 5.7, 12.0 Hz, 1H), 1.66 - 1.63 (m, 3H), 1.63 - 1.55 (m, 4H).
【0088】
スキーム1:新規のレゾルシノールの合成
【0089】
【化5】
【0090】
【表1】
【0091】
工程1:化合物cの形成
2-メチルテトラヒドロフラン(132mL)及びジクロロメタン(465mL)の混合物中の5-ブロモベンゼン-1,3-ジオール(20.88g、0.110mol、1.00当量)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(10.51g、55.2mmol、0.500当量)の溶液を窒素下で氷/食塩水浴で0℃に冷却した。(4R)-4-イソプロペニル-1-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オール(13mL、77.5mmol、0.701当量)を添加し、得られた溶液を5分間にわたって撹拌した。冷却浴を除去し、無色の溶液を2時間にわたって撹拌し、20℃に温めた。混合物をジクロロメタン(200mL)で希釈し、300mLの飽和NaHCO3水溶液を慎重に添加することによってpH8に塩基性化した。有機層を分離し、水(50mL)、飽和食塩水(50mL)で洗浄し、次いで、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮して、無色のゴム状物を得た。これを、シクロヘキサン中の0~50%のジエチルエーテルで溶出するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(800g、Interchim社製カートリッジ)によって精製して、無色のゴム状物/ガラス状物としての2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]ベンゼン-1,3-ジオール(2.53g、約6%の収率)を得た。これを、真空中でシクロヘキサン中の5~20%のジエチルエーテルで溶出するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(40g、15ミクロンのInterchim社製カラム)によって再精製して、5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]ベンゼン-1,3-ジオール(0.92g)及びいくつかの不純物質を得た。
【0092】
初期のカラムはまた、放置すると固化した無色のゴム状物としての5-ブロモベンゼン-1,3-ジオール(8.17g、約39%の回収)の回収をもたらした。これを、2-メチルテトラヒドロフラン(55mL)及びジクロロメタン(185mL)の混合物に溶解させ、(4R)-4-イソプロペニル-1-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オール(4.9mL、30.3mmol、0.701当量)で処理し、窒素下で氷/食塩水浴で0℃に冷却した。p-トルエンスルホン酸一水和物(4.11g、21.6mmol、0.500当量)を添加し、得られた溶液を5分間にわたって撹拌した。冷却浴を除去し、無色の溶液を2時間にわたって撹拌し、20℃に温めた。混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、300mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を慎重に添加することによってpH8に塩基性化した。有機層を分離し、水(50mL)、飽和食塩水(50mL)で洗浄し、次いで、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮して、無色のゴム状物を得た。残渣を、シクロヘキサン中の0~50%のジエチルエーテルで溶出するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(40gのInterchim社製カートリッジ)によって精製して、無色のゴム状物としての表題の化合物(1.33g、7%の収率、81%のLCMS純度)を得た。これを、第1の反応からの不純物質と合わせ、シクロヘキサン中の5~20%のジエチルエーテルで溶出するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(40gのInterchim社製カートリッジ)によって精製して、無色のゴム状物としての5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]ベンゼン-1,3-ジオール(2.10g、91%のLCMS純度)を得た。
【0093】
得られた5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]ベンゼン-1,3-ジオールの総収率は、3.02gであった(9.34mmol、8.5%)。
【0094】
化合物cの分析データ:1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.37 (s, 2H), 6.38 (s, 2H), 5.08 (s, 1H), 4.49 (d, J=2.8 Hz, 1H), 4.44 (dd, J=1.6, 2.8 Hz, 1H), 3.86 - 3.83 (m, 1H), 3.06 - 2.98 (m, 1H), 2.12 - 2.07 (m, 1H), 1.96 - 1.92 (m, 1H), 1.63 - 1.59 (m, 8H).
【0095】
工程2:化合物dの形成
アセトニトリル(30mL)中の5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]ベンゼン-1,3-ジオール(1305mg、4.04mmol、1.00当量)を、炭酸セシウム(3289mg、10.1mmol、2.50当量)、続いて、無水酢酸(0.95mL、10.1mmol、2.50当量)で処理した。反応混合物を1時間にわたって撹拌し、次いで、酢酸エチル(100mL)と水(100mL)とで分けた。層を分離し、水性層を酢酸エチル(100mL)で抽出し、合わせた有機相を疎水性濾紙で濾過し、真空中で濃縮して、橙色のゴム状物としての表題の化合物(1.60g、93.4%)を得た。これを更なる精製なしで次の反応で使用した。
【0096】
化合物dの分析データ:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ, 7.07 (s, 2H), 5.15 (s, 1H), 4.56 (s, 1H), 4.44 - 4.44 (m, 1H), 3.55 - 3.50 (m, 1H), 2.67 - 2.60 (m, 1H), 2.24 - 2.16 (m, 7H), 2.07 - 2.00 (m, 1H), 1.84 - 1.64 (m, 5H), 1.58 - 1.57 (m, 3H).
【0097】
工程3:化合物eの形成
酢酸エチル(31.92mL)中の[3-アセトキシ-5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-シクロヘキシ-2-エン-1-イル]フェニル]アセテート(1560mg、3.83mmol、1.00当量)及びモレキュラーシーブ(3Å、5000mg)を酢酸マンガン(III)二水和物(103mg、0.383mmol、0.100当量)で処理し、続いて、ノナン中の5.5Mのtert-ブチルヒドロペルオキシド溶液(3.5mL、19.2mmol、5.00当量)で処理した。反応混合物をオーバーナイト、20℃で撹拌し、次いで、酢酸エチル(50mL)で希釈し、セライトのパッドを通して濾過した。濾液を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(30mL)及び水(30mL)で洗浄し、分離し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮した。残渣を、シクロヘキサン中の0~100%のジエチルエーテルで溶出するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、オフホワイトの固体としての表題の化合物(561mg、34.8%)を得た。
【0098】
化合物dの分析データ:1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 7.39 (s, 2H), 6.38 (t, J=1.8 Hz, 1H), 4.56 (s, 1H), 4.50 (s, 1H), 4.04 (td, J=2.3, 10.6 Hz, 1H), 3.20 - 3.11 (m, 1H), 2.85 - 2.76 (m, 1H), 2.35 - 2.19 (m, 7H), 1.71 (dd, J=1.5, 2.5 Hz, 3H), 1.62 (s, 3H).
【0099】
工程4:化合物Iの異性体1及び化合物Iの異性体2の形成
0℃で、メチルアルコール(25.0mL)中の[3-アセトキシ-5-ブロモ-2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチル-4-オキソ-シクロヘキサ-2-エン-1-イル]フェニル]アセテート(1.10g、2.61mmol、1.00当量)の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(0.22g、5.74mmol、2.20当量)を30分間の期間をかけて4等分で添加し、混合物をオーバーナイトで室温に温めた。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣を酢酸エチル(75mL)と水(75mL)とで分けた。層を分離し、有機相を食塩水(50mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、真空中で濃縮した。残渣を、シクロヘキサン中の0~80%の酢酸エチルで溶出するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製して、白色の固体としての(1'R,2'R,4'R)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオール(200mg、22.5%)及び白色の固体としての(1'R,2'R,4'S)-4-ブロモ-5'-メチル-2'-(プロパ-1-エン-2-イル)-1',2',3',4'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2,4',6-トリオール(508mg、57.4%)を得た。
【0100】
(実施例2)
最小のサンプルサイズを使用したマウスの最大電気ショック発作閾値(MEST)試験を使用した抗けいれん活性についての新規のレゾルシノールの評価(ミニMEST)
式Iの化合物による新規のレゾルシノールの有効性を、全般発作の新規のマウスモデル、すなわち、典型的に使用されるよりも低いn数を使用するミニMEST(最大電気ショック発作閾値)試験で試験した。
【0101】
最大電気ショック発作閾値(MEST)試験は、試験化合物のけいれん促進特性又は抗けいれん特性を評価するために前臨床で広く利用されている(Loscherら、1991)。
【0102】
MEST試験では、後肢の強直性伸筋けいれんを誘発するのに必要な発作閾値電流を変化させる薬物の能力が、ショック滴定の「アップアンドダウン」法に従って測定される(Kimballら、1957)。発作閾値の増加は、抗けいれん効果を示す。全身強直間代発作に対する有効性が臨床的に証明されているナトリウムチャネル遮断薬(例えば、ラモトリジン)を含む抗てんかん薬はすべて、マウスのこの試験で抗けいれん特性を呈する。
【0103】
反対に、発作閾値の低下は、ピクロトキシン等の知られたけいれん剤で観察されるようなけいれん促進効果を示す。
【0104】
強直性後肢伸筋けいれんの存在を誘発するのに必要な、電流(mA)として表される刺激強度を変化させる試験化合物の能力がMESTで評価される。処置群の動物の50%において強直性後肢伸筋を引き起こす電流(CC50)から観察された強直性後肢伸筋けいれんの存在(+)又は不在(0)の結果によって、処置群の発作閾値が決定され、次いで、その効果をビヒクル対照群のCC50と比較した。
【0105】
方法
研究の詳細:
ナイーブマウスを最大7日間にわたってそれらのホームケージ内の処置室に慣れさせ、食物及び水を自由に取らせた。
【0106】
研究の開始時にすべての動物を体重測定し、群全体の体重の平均分布に基づいて処置群にランダムに割り当てた。すべての動物に、ビヒクル、50mg/kgの試験化合物、又は2.5mg/kgのジアゼパムのいずれかを、腹腔内(i.p.)注射を介して10mL/kgで投薬した。
【0107】
1回の電気ショックから、ビヒクル、試験化合物、及びジアゼパムの投薬後30分に、強直性後肢伸筋けいれんの発生について動物を個別に評価した。
【0108】
処置群内の第1の動物には、予想又は推定CC50電流でショックを得た。その後の動物については、前の動物からのけいれんの結果に応じて対数スケール間隔で電流を低下又は上昇させた。
【0109】
各処置群から生成されたデータを使用して、処置群のCC50±SEM値を計算した。
【0110】
試験化合物:
ビヒクル:(85%の生理食塩水中の5%のエタノール、10%のソルトール)を以下のように調製した:1mLのエタノール、2mLのソルトールを17mLの生理食塩水中で60℃に温めた(1:2:17)。
【0111】
陽性対照:ジアゼパムを2.5mg/kgで使用した。
【0112】
本明細書において化合物Iとして記載されている試験化合物は、式Iとして示されている通りである。試験化合物は、1:2:17のエタノール:ソルトール:0.9%の生理食塩水の配合で、50mg/kg(i.p.)で投与した。
【0113】
サンプルの採取:
各動物を、頭蓋骨の打撃からの脳の破壊によるけいれんの発生直後に人道的に殺し、続いて、Animals (Scientific Procedures) Act 1986の別紙1のThe Humane Killing of Animalsに基づいて、断頭による循環の完全停止の確認を行った。断頭に続いて、終末血液及び脳採取(Terminal blood and brain collection)を実施した。
【0114】
血液をリチウムヘパリンチューブに採取し、1500×gで10分間にわたって4℃で遠心分離した。得られた血漿を取り出し(100μL超)、安定化のために10μLのアスコルビン酸(100mg/mL)を含有する0.5mLのエッペンドルフチューブの2つのアリコートに分割した。脳を取り出し、生理食塩水で洗浄し、半分にした。半分にしたものそれぞれを別々の2mLのスクリューキャップクライオバイアルに入れ、計量し、心臓上で凍結させた。
【0115】
統計分析
各処置群のデータは、用いた各電流レベルでの+及び0の数として記録し、次いで、この情報を使用して、CC50値(動物の50%が発作挙動を示すために必要な電流)±標準誤差を計算する。
【0116】
試験化合物の効果も、ビヒクル対照群からのCC50のパーセンテージ変化として計算した。
【0117】
薬物処置動物と対照との間の有意差を、Litchfield and Wilcoxon (1949)に従って評価した。
【0118】
結果
図1及びTable 1(表2)は、この実験で得られたデータを説明する。
【0119】
ビヒクル群では、CC50値は、23.5mAであると計算された。
【0120】
試験前の30分にi.p.投与されたジアゼパム(2.5mg/kg)処置群では、CC50値は、89.0mAであった。この結果は、ビヒクル対照と比較して、統計的に有意であった(p<0.001)。
【0121】
試験前の30分にi.p.投与された試験化合物は、ビヒクルと比較して、発作閾値の明らかな増加をもたらし、CC50は、50mg/kgの場合、114mA超であった。試験した6匹の動物では「+」の強直性後肢けいれんが見られなかったため、正確な値は計算されなかった。CC50は決定されなかったが、化合物Iは、ミニMESTにおいて発作閾値の明らかな増加を示した。この処置群の動物はけいれんを起こさなかったため、化合物Iの明らかな活性が実証された。
【0122】
そのようなデータは、この化合物に治療上の利益があるであろうことを示す。
【0123】
【表2】
【0124】
結論
ミニMESTモデルを使用して得られたこのデータは、化合物Iについての強力な治療効果を実証しており、CC50は、ビヒクル対照と比較して385%超増加しており、変化率は、陽性対照によってもたらされたものよりも更に高い。
【0125】
このデータは、この新規のレゾルシノールに治療的価値があり得るというこれまで知られていなかった証拠を提供することから、重要である。
【0126】
(実施例3)
マウスの最大電気ショック発作閾値(MEST)試験を使用した抗けいれん活性についての新規のレゾルシノールの評価
式Iの化合物による新規のレゾルシノールの有効性を、全般発作のマウスモデル、すなわち、最大電気ショック発作閾値(MEST)試験で試験した。
【0127】
最大電気ショック発作閾値(MEST)試験は、試験化合物のけいれん促進特性又は抗けいれん特性を評価するために前臨床で広く利用されている(Loscherら, 1991)。
【0128】
MEST試験では、後肢の強直性伸展けいれんを誘発するのに必要な発作閾値電流を変化させる薬物の能力が、ショック滴定の「アップアンドダウン」法に従って測定される(Kimballら, 1957)。発作閾値の増加は、抗けいれん効果を示す。全身強直間代発作に対する有効性が臨床的に証明されているナトリウムチャネル遮断薬(例えば、ラモトリジン)を含む抗てんかん薬はすべて、マウスのこの試験で抗けいれん特性を呈する。
【0129】
反対に、発作閾値の低下は、ピクロトキシン等の知られたけいれん剤で観察されるようなけいれん促進効果を示す。
【0130】
強直性後肢伸展けいれんの存在を誘発するのに必要な、電流(mA)として表される刺激強度を変化させる試験化合物の能力がMESTで評価される。処置群の動物の50%において強直性後肢伸展を引き起こす電流(CC50)から観察された強直性後肢伸展けいれんの存在(+)又は不在(0)の結果によって、処置群の発作閾値が決定され、次いで、その効果をビヒクル対照群のCC50と比較した。
【0131】
方法
研究の詳細:
ナイーブマウスを最大7日間にわたってそれらのホームケージ内の処置室に慣れさせ、食物及び水を自由に取らせた。
【0132】
研究の開始時にすべての動物を体重測定し、群全体の体重の平均分布に基づいて処置群にランダムに割り当てた。すべての動物に、ビヒクル、1、5、20、50、100、及び200mg/kgの試験化合物、又は2.5mg/kgのジアゼパムのいずれかを、腹腔内(i.p.)注射を介して10mL/kgで投薬した。
【0133】
1回の電気ショックから、ビヒクルの投薬後60分、試験化合物の投薬後15~60分、及びジアゼパムの投薬後30分に、強直性後肢伸展けいれんの発生について動物を個別に評価した。
【0134】
処置群内の第1の動物には、予想又は推定CC50電流でショックを与えた。その後の動物については、前の動物からのけいれんの結果に応じて5mAの間隔で電流を低下又は上昇させた。
【0135】
各処置群から生成されたデータを使用して、処置群のCC50±SEM値を計算した。
【0136】
試験化合物:
ビヒクル:(5%のエタノール、5%のKolliphor(登録商標)EL、90%の生理食塩水)を以下のように調製した:2mLのエタノール、2mLのKolliphor(登録商標)ELを36mLの生理食塩水中で60℃に温めた(1:1:18)。
【0137】
陽性対照:ジアゼパムを2.5mg/kgで使用した。
【0138】
本明細書において化合物Iとして記載されている試験化合物は、式Iとして示されている通りである。試験化合物は、1:2:17のエタノール:ソルトール:0.9%の生理食塩水の配合で、1、5、20、50、100、及び200mg/kg(i.p.)で投与した。
【0139】
サンプルの採取:
各動物を、頭蓋骨の打撃からの脳の破壊によるけいれんの発生直後に人道的に殺し、続いて、Animals (Scientific Procedures) Act 1986の別紙1のThe Humane Killing of Animalsに基づいて、断頭による循環の完全停止の確認を行った。断頭に続いて、終末血液及び脳採取(Terminal blood and brain collection)を実施した。
【0140】
血液をリチウムヘパリンチューブに採取し、1500×gで10分間にわたって4℃で遠心分離した。得られた血漿を取り出し(100μL超)、安定化のために100μLのアスコルビン酸(100mg/mL)を含有する0.5mLのエッペンドルフチューブの2つのアリコートに分割した。脳を取り出し、生理食塩水で洗浄し、半分にした。半分にしたものそれぞれを別々の2mLのスクリューキャップクライオバイアルに入れ、計量し、ドライアイス上で凍結させた。
【0141】
統計分析
各処置群のデータは、用いた各電流レベルでの+及び0の数として記録し、次いで、この情報を使用して、CC50値(動物の50%が発作挙動を示すために必要な電流)±標準誤差を計算する。
【0142】
試験化合物の効果も、ビヒクル対照群からのCC50のパーセンテージ変化として計算した。
【0143】
薬物処置動物と対照との間の有意差を、Litchfield and Wilcoxon (1949)に従って評価した。
【0144】
結果
図2及びTable 2(表3)は、この実験で得られたデータを説明する。
【0145】
ビヒクル群では、CC50値は、23.7mAであると計算された。
【0146】
試験の30分前にi.p.投与されたジアゼパム(2.5mg/kg)処置群では、CC50値は、130.0mAであった。この結果は、ビヒクル対照と比較して、統計的に有意であった(p<0.001)。
【0147】
試験前の15~60分にi.p.投与された試験化合物は、1、5、20、50、及び100mg/kgのビヒクルと比較して、統計的に有意なCC50値をもたらしたが、このことは、この化合物が抗けいれん特性を呈することを示唆している。
【0148】
200mg/kgで、化合物Iは、ビヒクルと比較して、発作閾値の明らかな増加をもたらし、CC50は、300mA超であった。試験した12匹の動物では「+」の強直性後肢けいれんが見られなかったため、正確な値は計算されなかった。CC50は決定されなかったが、200mg/kgは、MESTにおいて発作閾値の明らかな増加を示した。
【0149】
そのようなデータは、この化合物に治療上の利益があることを示す。
【0150】
【表3】
【0151】
結論
MESTモデルを使用して生成されたこれらのデータは、式Iの化合物の治療効果を実証しており、CC50は、ビヒクル対照と比較して、すべての用量で増加している。
【0152】
これらのデータは、この新規のレゾルシノールに治療的価値があり得るというこれまで知られていない証拠を提供することから、重要である。
【0153】
明らかに、この化合物は、用量に関連してMESTの増加をもたらし、この化合物が抗けいれん特性を呈することを示唆している。ビヒクルと比較した場合、著しい効果が観察された。
【0154】
(実施例4)
DBA/2マウス聴原性発作試験を使用した抗けいれん活性についての新規のレゾルシノールの評価
抗けいれん活性を検出するDBA/2聴原性発作試験は、Duermuellerらによって記載されたものに従う(NeuroReport、第4巻、第6号、683~686頁、1993年)。
【0155】
方法
研究の詳細:
60匹の雄のDBA/2マウス(生後3~4週)を実験に含めた(体重範囲は、実験開始時に8~11g)。動物は、分娩後に1日にわたって試験施設に慣れさせ、食物及び水を自由に取れるようにして、木の敷料上のマクロロンケージにランダムで5つの群に収容した。
【0156】
動物のハウスは、制御された22±2℃の室温及び30~70%の相対湿度で、7:00~19:00の間、人工照明下で維持した(12時間)。
【0157】
マウスを個別に(3~5分間隔で)準備室から隣接する実験室に移し、直腸温度計を使用して体温を測定した。その直後に、これらを、電気ベルを取り付けたプレキシガラス瓶(直径=40cm、高さ=35cm)に入れた。ベルを作動させたら、ワイルドランニング発作、間代発作、及び強直発作の発生率及び潜時を測定した。死亡も記録した。ベルは、強直発作が生じるまで、又は最大60秒間にわたって作動させた。
【0158】
実験は、6つの群を含んでいた(群1つ当たり10匹のマウスを研究した)。実験者には、処置群について知らせなかった。
【0159】
試験物質を、試験前の30分又は60分にi.p.投与された4回の用量(10mL/kg)で評価し、ビヒクル対照群と比較した。用量及び前処理時間は、以前の薬物動態データに基づいていた。
【0160】
【表4】
【0161】
試験化合物:
試験化合物:5%のエタノール、10%のKolliphor HS15、85%の生理食塩水に溶解した化合物I。
【0162】
ビヒクル対照:5%のエタノール、10%のKolliphor HS15、85%の生理食塩水。
【0163】
参照:5%のエタノール、10%のKolliphor HS15、85%の生理食塩水に溶解したバルプロエート(180mg/kg)。
【0164】
統計分析
データは、d'Agostino-Pearsonを使用して正規性について試験され、正規分布に従っていないことが見出された。行動の外れ値が特定されなかったため、統計的な外れ値は特定又は除去されなかった。
【0165】
試験物質での定量的データ(潜時)は、Kruskal-Wallis試験、続いて、Dunn多重比較試験を使用して、処置群をビヒクル対照と比較することによって分析した。参照物質での定量的データは、Mann-Whitney U試験を使用して分析した。
【0166】
量的データ(頻度)は、Fisher正確確率試験を使用して処置群をビヒクル対照と比較することによって分析した。
【0167】
結果
図3図8及びTables 4-7(表5~8)は、この実験で生成されたデータを説明する。
【0168】
実験の陰性対照について、試験前の30分にi.p.投与されたビヒクル対照では、すべてのマウスは、ワイルドランニング(図3を参照、100%の最も左側の列)、間代性けいれん(図4は100%を示す)、及び強直性けいれん(図6)を示した。試験した10匹のマウスのうち4匹が死亡した(図8)。ワイルドランニングまでの中央潜時は3.3秒(IQR2.7~4.0)であり(Table 4(表5))、間代性けいれんまでの中央潜時は6.6秒(IQR6.1~7.7)であり(Table 5(表6))、強直性けいれんまでの中央潜時は10.7秒(IQR9.6~12.1)であった(Table 6(表7))。
【0169】
実験の陽性対照について、試験前の30分にi.p.投与されたバルプロエート(180mg/kg)は、ビヒクル対照(-100%、各パラメータについてp<0.001)と比較して、ワイルドランニング(図3を参照、0%の左から2番目の列)、間代性けいれん(図4は0%を示す)、及び強直性けいれん(図6)を抑制した。バルプロエートは、ビヒクル対照と比較して、対応する潜時を有意に増加させた(それぞれ、+1718%、+809%、及び+461%、各パラメータについてp<0.001)(Tables 4-6(表5~7))。バルプロエートが投薬された動物では、死亡は観察されなかった(図8及びTable 9(表10))。バルプロエートが投薬された動物では、有害な兆候は認められなかった。
【0170】
化合物Iを100及び200mg/kgで投薬した各群の4匹のマウスは、35.0℃未満の直腸温度を有していた。これらのマウスは、すべての分析から除外した。100mg/kgで処置された5匹のマウス及び200mg/kgで処置された3匹のマウスで振戦が認められた。
【0171】
50、100、及び200mg/kgの化合物Iは、ワイルドランニングを示すマウスの数を有意に減少させた(それぞれ、-50%、p<0.05、-100%、p<0.001、及び-80%、p<0.01)。図3を参照されたい。
【0172】
ビヒクルと比較して、ワイルドランニングまでの潜時に対する化合物I用量の統計的に有意な主効果があった(p<0.001、Table 4(表5)を参照)。Dunn多重比較試験は、50、100、及び200mg/kgの化合物Iが、ビヒクルと比較して、ワイルドランニングまでの潜時を有意に増加させたことを示した(それぞれ、平均ランク-19.10、p<0.01、-26.55、p<0.001、及び-23.22、p<0.001)。
【0173】
50、100、及び200mg/kgの化合物Iは、間代性けいれんを示すマウスの数を有意に減少させた(それぞれ、-60%、p<0.05、-100%、p<0.001、及び-80%、p<0.01)。図4を参照されたい。
【0174】
ビヒクルと比較して、間代性けいれんまでの潜時に対する化合物I用量の統計的に有意な主効果があった(p<0.001、図5を参照)。Dunn多重比較試験は、20、50、100、及び200mg/kgの化合物Iが、ビヒクルと比較して、間代性けいれんまでの潜時を有意に増加させたことを示した(それぞれ、平均ランク-13.10、p<0.05;-21.20、p<0.001、-26.70、p<0.001、及び-22.53、p<0.001)。
【0175】
図6に示されるように、すべての用量で、化合物Iは、強直性けいれんを示すマウスの数を有意に減少させた(20mg/kgで-60%、p<0.05;他の用量で-100%、p<0.001)。
【0176】
ビヒクルと比較して(p<0.001)、強直性けいれんまでの潜時に対する化合物I用量の統計的に有意な主効果があった(図7)。Dunn多重比較試験は、20、50、100、及び200mg/kgの化合物Iが、ビヒクルと比較して、強直性けいれんまでの潜時を有意に増加させたことを示した(平均ランクは、20mg/kgで-16.20、p<0.01;最後の3回の用量については-22.80、p<0.001)。
【0177】
図8及びTable 7(表8)によって証明されるように、化合物Iは、どの用量でも死亡数に影響を与えなかった。
【0178】
【表5】
【0179】
【表6】
【0180】
【表7】
【0181】
【表8】
【0182】
結論
バルプロエートは、このモデルで抗けいれん活性を示し、したがって、実験は、有効であると考えられた。結果は、DBA/2マウスの聴原性発作試験において、i.p.での20~200mg/kgの用量範囲にわたる化合物Iについての抗けいれん活性の存在を示す。
【0183】
バルプロエート及び化合物Iのどちらも死亡者数に大きな変化を引き起こさず、化合物Iの安全性の証拠を提供した。
【0184】
(実施例5)
マウス6Hz精神運動試験を使用した抗けいれん活性についての新規のレゾルシノールの評価
抗けいれん活性を検出する6Hz精神運動試験は、Brownらによって記載されたものに従う(J. Pharmacol. Exp. Ther. 107、273~283ページ、1953年)。
【0185】
方法
研究の詳細:
雄のRjOrl:スイスマウス、生後5週、実験開始時に体重28~38g。動物は、分娩後に少なくとも5日間にわたって試験施設に慣れさせ、食物及び水を自由に取れるようにして、木の敷料上のマクロロンケージにランダムで3~4つの群に収容した。
【0186】
動物のハウスは、制御された22±2℃の室温及び30~70%の相対湿度で、7:00~19:00の間、人工照明下で維持した(12時間)。
【0187】
経角膜刺激の前に、局所麻酔のためにマウスの各目にテトラカイン溶液(2%)を1滴適用した。1~10分後の間に、試験化合物について指定された前処理時間で、定電流ショック発生器に接続された角膜電極を介して、マウスに矩形波電流(44mA、矩形パルス:0.2msのパルス幅、3秒の持続時間、6Hz)を投与した。
【0188】
前肢クローヌスによって反映される発作数を電流投与直後に記録した。前肢クローヌスを、欠如(0=前肢クローヌスなし)、軽度(1=1つの前肢でのクローヌス)、及び強い(2=両方の前肢でのクローヌス)としてスコア付けした。
【0189】
群1つ当たり15匹のマウスを研究した。実験者には、処置について知らせなかった。ケージは、それぞれが1つの処置群を指定する処置コードにランダムに割り当てた。
【0190】
化合物Iを、試験前の30分に20及び50mg/kgで、試験前の60分に100及び200mg/kgで腹腔内投与し、ビヒクル対照(5%のエタノール、10%のKolliphor EL、85%の生理食塩水)と比較した。
【0191】
試験前の30分に投与されたバルプロエート(300mg/kg i.p.)を参照物質として使用し、ビヒクル対照(5%のエタノール、10%のKolliphor HS15、85%の生理食塩水)と比較した。
【0192】
【表9】
【0193】
試験化合物:
試験化合物:5%のエタノール、10%のKolliphor HS15、85%の生理食塩水に溶解した化合物I。
【0194】
ビヒクル対照:5%のエタノール、10%のKolliphor HS15、85%の生理食塩水。
【0195】
参照:5%のエタノール、10%のKolliphor HS15、85%の生理食塩水に溶解したバルプロエート(300mg/kg)。
【0196】
統計分析:
データは、検証データに基づいて非正規分布であると仮定したため、ノンパラメトリック試験を利用した。試験物質を用いた定量的データ(スコア)は、Kruskal-Wallis試験が有意であった場合には、Kruskal-Wallis試験をDunn多重比較試験と一緒に使用して、処置群を対応するビヒクル対照と比較することによって分析した。参照物質での定量的データは、Mann-Whitney U試験を使用して分析した。
【0197】
結果
図9及びTable 9(表10)は、この実験で得られたデータを説明する。
【0198】
陰性対照について、試験前の30分にi.p.投与されたビヒクル対照では、5匹のマウスが、0の前肢発作スコアを有し、8匹のマウスが、1の前肢発作スコアを有し、2匹のマウスが、2の前肢発作スコアを有していた(図9を参照、最も左側)。
【0199】
陽性対照について、試験前の30分にi.p.投与されたバルプロエート(300mg/kg)は、ビヒクル対照と比較して、平均前肢発作スコアを有意に減少させた(-88%、p<0.001)(図9、左から2番目)。試験した15匹のマウスのうち1匹がわずかな鎮静を示した。
【0200】
化合物Iが100mg/kgである群の2匹のマウス及び200mg/kgの群の1匹のマウスは誤って投薬されたため、除外した。化合物Iが200mg/kgである試験した群の14匹のマウスのうち2匹が振戦を示し、すべてのマウスが軽度(12匹)~中程度(2匹)の鎮静を示した。化合物Iが100mg/kgの用量の試験した群の13匹のマウスのうち2匹がわずかな鎮静を示した。
【0201】
ビヒクルと比較して、すべての化合物Iの用量の群の間で前肢発作スコアのKruskal-Wallis試験において統計的に有意な差があった(p<0.01)(Table 9(表10)を参照)。
【0202】
試験前の60分にi.p.投与された化合物I(100mg/kg)は、ビヒクル対照と比較して、前肢発作スコアを有意に減少させた(-88%、p<0.01)(図9)。
【0203】
【表10】
【0204】
結論
結果は、マウスの6Hz(44mA)精神運動発作試験において、i.p.で100mg/kgの化合物Iについての抗けいれん効果の存在を示唆しており、200mg/kgで同様の傾向を伴う。
【0205】
(参考文献)
本発明及び本発明が関係する現在の技術水準をより完全に説明及び開示するために、多くの刊行物を先に引用した。これらの参考文献の完全な引用を以下に提供する。これらの参考文献のそれぞれの内容を本明細書に組み込む。
【0206】
Durairaj 2005. “Resorcinol Structure and Physical Properties.” Resorcinol. Springer, Berlin, Heidelberg. https://doi.org/10.1007/3-540-28090-1_1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】