(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】インターロイキン-22の治療用誘導体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20240412BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20240412BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240412BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240412BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240412BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240412BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240412BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20240412BHJP
A61P 11/16 20060101ALI20240412BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240412BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240412BHJP
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A61P 29/00 20060101ALI20240412BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240412BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240412BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240412BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240412BHJP
【FI】
C12N15/24 ZNA
C07K14/54
A61P3/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P1/00
A61P13/12
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A61P17/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P43/00 105
A61P11/08
A61P11/16
A61P31/12
A61P31/04
A61P17/02
A61P29/00
A61K38/20
A61P1/04
A61P37/06
A61K47/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570002
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2022062846
(87)【国際公開番号】W WO2022238510
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179105
【氏名又は名称】サイトカイ・ファーマ・アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・サス-ウルム
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス・ヨルゲンセン
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ベック・ヨルゲンセン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング・トゲルセン
(72)【発明者】
【氏名】トマス・ホウ-イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・パオロ・バストナー・サンドリニ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
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4H045AA10
4H045AA20
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4H045BA55
4H045CA42
4H045DA02
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、インターロイキン-22(IL-22)の新規な誘導体、特に、IL-22タンパク質に共有結合された脂肪酸を含む誘導体であって、そのIL-22タンパク質が、アミノ酸置換を少なくとも1つ含む誘導体、及び治療におけるその誘導体の使用に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-22タンパク質に共有結合された脂肪酸を含むIL-22誘導体であって、前記IL-22タンパク質が、hIL-22のバリアントであり、前記バリアントが、hIL-22の95位または106位に置換を含み、前記脂肪酸が、前記置換位で共有結合されている前記IL-22誘導体。
【請求項2】
前記置換が、R95C及びL106Cから選択されている、請求項1に記載の誘導体。
【請求項3】
前記脂肪酸が、前記IL-22タンパク質にリンカーによって共有結合されている、請求項1に記載の誘導体。
【請求項4】
前記脂肪酸が、
(i)下記の式Iのもの、
HOOC-(CH
2)
x-CO-
*
(式中、xは、10~18、任意に、12~18、14~16もしくは16~18の範囲の整数であり、
*は、前記IL-22タンパク質もしくは前記リンカーへの結合位置を定めている)
(ii)ジ脂肪酸、
(iii)C12、C14、C16、C18もしくはC20のジ酸、
(iv)C16もしくはC18のジ酸、
(v)C18のジ酸、
(vi)下記の式IIのもの、
H
3C-(CH
2)
x-CO-
*
(式中、xは、10~18、任意に、12~18、14~16もしくは16~18の範囲の整数であり、
*は、前記IL-22タンパク質もしくは前記リンカーへの結合位置を定めている)
(vii)モノ脂肪酸、
(viii)C12、C14、C16、C18もしくはC20のモノ酸、
(ix)C16もしくはC18のモノ酸、及び/または
(x)C16のモノ酸である、
先行請求項のいずれかに記載の誘導体。
【請求項5】
前記バリアントが、
(i)hIL-22の1位、21位、35位、64位、113位及び/または114位でさらに置換されており、
(ii)A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及びK114Rからなる群から選択した、hIL-22の置換をさらに含み、
(iii)hIL-22の35位及び64位にGln残基をさらに含み、
(iv)hIL-22との配列同一性が少なくとも10%であり、ならびに/または
(v)hIL-22内にバリエーションを1個、2個、3個、4個もしくは5個以上含み、前記バリエーションが独立して、欠失、置換及び挿入からなる群から選択されている、
先行請求項のいずれかに記載の誘導体。
【請求項6】
前記バリアントが、
(i)hIL-22の伸長形態であり、
(ii)N末端ペプチドを含み、
(iii)N末端の3量体を含み、及び/または
(iv)N末端のG-P-Gを含み、及び/または
(v)最大で5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個もしくは50個のアミノ酸からなるN末端ペプチドを含む、
先行請求項のいずれかに記載の誘導体。
【請求項7】
前記リンカーが、
(i)任意にGlu及び/もしくはLysを含む1つ以上のアミノ酸、
(ii)オキシエチレングリシン単位を1つ、もしくはキシエチレングリシン単位が複数、任意に2~5単位連結したもの、
(iii)1つ以上のオリゴ(エチレングリコール)(OEG)残基、
(iv)エチレンジアミン(C
2DA)基、
(v)アセトアミド(Ac)基、
(vi)γGlu-OEG-OEG-C
2DA-Ac、
(vii)γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAc、ならびに/または
(viii)γGlu-OEG-OEG-εLys-αAc、
を含む、請求項3~6のいずれかに記載の誘導体
【請求項8】
前記誘導体が、リンカーによって前記hIL-22のバリアントに共有結合されたC18のジ酸を含む、先行請求項のいずれかに記載の誘導体。
【請求項9】
前記バリアントが、hIL-22の95位または106位で置換されたCys残基を含み、前記リンカーが、前記Cys残基に結合している、請求項3~8のいずれかに記載の誘導体。
【請求項10】
前記誘導体が、本明細書で定められているような誘導体1、2、3または4である、先行請求項のいずれかに記載の誘導体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の誘導体と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、吸入による投与、注射による投与、局所投与、経口投与または点眼投与に適し、任意に、前記注射が、腹腔内注射、皮下注射または静脈内注射である前記医薬組成物。
【請求項12】
治療で使用するための、請求項1~10のいずれかに記載の誘導体、または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
代謝性、肝臓、肺、消化管、腎臓、中枢神経系(CNS)または皮膚の疾患、障害または病状を治療する方法で使用するための、請求項1~10のいずれかに記載の誘導体、または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
(i)前記代謝性の疾患、障害または病状が、肥満症、1型糖尿病、2型糖尿病、高脂血症、高血糖症または高インスリン血症であり、
(ii)前記肝臓の疾患、障害または病状が、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、慢性肝不全の急性増悪(ACLF)、アセトアミノフェン誘発性肝臓毒性、急性肝損傷、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変、または手術もしくは移植を原因とする病理学的状態であり、
(iii)前記肺の疾患、障害または病状が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、化学損傷、ウイルス感染、細菌感染または真菌感染であり、
(iv)前記消化管の疾患、障害または病状が、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、移植片対宿主病(GvHD)、化学損傷、ウイルス感染または細菌感染であり、
(v)前記腎臓の疾患、障害または病状が、急性腎臓病または慢性腎臓病であり、
(vi)前記CNSの疾患、障害または病状が、多発性硬化症であり、あるいは
(vii)前記皮膚の疾患、障害または病状が、創傷、炎症性疾患またはGvHDである、
請求項14に記載の誘導体または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン-22(IL-22)の新規な誘導体、特には、IL-22タンパク質に共有結合された脂肪酸を含む誘導体に関するものである。そのIL-22タンパク質は、天然型の成熟ヒトIL-22(以下、「hIL-22」という)のバリアントであり、その脂肪酸は、特定の置換に共有結合している。本発明には、それらを作製する方法、ならびに代謝性、肝臓、肺、消化管、腎臓、中枢神経系(CNS)及び皮膚の疾患、障害及び病状の治療、予防及び改善を含むに療法で、それらを使用する方法も含まれる。
【背景技術】
【0002】
IL-22は、分子量が17KDaである146アミノ酸のタンパク質である。IL-22は、サイトカインのIL-10ファミリーに属し、ユビキタスに発現するIL-10受容体Bサブユニット(IL-10RA2)と、発現が上皮に限られるIL-22受容体Aサブユニット(IL-22RA1)からなるヘテロ二量体の受容体を選択的に活性化する。IL-22は、免疫細胞から放出されるが、上皮細胞を選択的に標的とする点で、特有のサイトカインである。したがって、IL-22によって誘導されるシグナル伝達経路は、様々な組織(標的としては、皮膚、腸、肺、肝臓、腎臓、膵臓及び胸腺が挙げられる)に関連している可能性があるが、IL-22は、それらのシグナル伝達経路を上皮特異的に活性化する。可溶性結合タンパク質であるIL-22BPは、IL-22を中和することで、IL-22の作用を調節する。
【0003】
IL-22は、化学的または機械的な損傷を反映するシグナル、例えば、環境毒素またはトリプトファン中間体に応答した、アリール炭化水素受容体の活性化、ならびに死にかけた細胞または侵入してきた病原体のタンパク質、断片及び破片に応答した、Toll様受容体4などのパターン認識受容体の活性化に対する応答として放出される。IL-22の放出は、特定のサイトカイン、特にIL-23によって、及びIL-23ほどではないがIL1βによって、さらに刺激される。したがって、IL-22は、病原体への感染とともに、免疫の活性化も反映した合図に対する応答として分泌される。
【0004】
IL-22の作用は、いくつかの活性/経路が体系化されて関与した結果である。損傷すると、IL-22は、上皮バリアの組織及び器官に作用して、(例えば、抗アポトーシス遺伝子のプログラムの活性化を通じて)その細胞を保護し、バリア機能を維持する。IL-22は、(例えば、成熟細胞の増殖及び幹細胞の活性化を誘導することによって)修復も加速させ、(例えば、上皮間葉転換の低減、NLRP3インフラマソームのアンタゴナイズ、及び肝星細胞の老化の誘導を通じて、)線維化を防ぎ、(例えば、抗微生物性ペプチド及び走化性シグナルを誘導することによって)炎症を制御する。IL-22は、高血糖症、高脂血症及び高インスリン血症など、糖尿病または過体重の哺乳動物で観察されることが多い病状を含む広範な病状を治療できるものとして報告されている。
【0005】
しかしながら、IL-22は概して、腎臓によって身体から急速に除去され、これにより、臨床現場での使用は限られている。これは、サイトカインの一般的な特徴であり、半減期が延長されたサイトカイン薬剤開発候補は、例えば、オンコロジー及び免疫療法の治療のための薬剤開発段階に達している。概して、半減期が延長されたこれらのサイトカインでは、Fc融合溶液またはPEG化が使われている。したがって、循環IL-22の半減期を延長する既知の方法は、腎臓で除去されないように、IL-22のサイズを人工的に70kDa超に増大させようとすることである。この作用に対して、現在最良の解決策は、IL-22を抗体のFc断片にライゲーションすることであり、Genentech及びGeneron Shanghaiのいずれも、臨床開発段階にある長時間作用型のIL-22-Fc融合体を有する。IL-22をポリエチレングリコールで修飾すること(PEG化)は、腎臓で除去されないようにする別の既知の手段である。
【0006】
しかしながら、これらの既存の解決策には、問題点がある。利用可能なデータにより、PEG自体に免疫原性があり、PEG化された生物学的製剤を有する細胞において、PEGを含む空胞が観察されることが示唆されている。活性の低下及び不均一性も、PEG化の不都合な面である。Fc融合技術は、よく知られているが、抗体Fc断片の付加は、IL-22の構造を大きく変化させることに当たり、半減期の延長よりも、IL-22の特性に影響を及ぼす。Fcの融合により、タンパク質のサイズが、およそ17kDaからおよそ85kDaまで増大するので、拡散速度、分布、及び受容体への関与の動態といった特性に影響が及ぶことがある。例えば、いくつかのFc融合体は、特定の経路を介した投与用としては、ゆっくり吸収され及び/または大きすぎる。Genentech及びGeneronのいずれによっても、IL-22-Fc融合体の用量制限性の有害作用として、中程度かつ可逆性の皮膚反応が報告されている。さらに、その効力は、大きい融合パートナーを原因とする立体障害性を通じて影響を受けることがある。
【0007】
加えて、天然型のIL-22は、半減期が数時間と非常に短く、その臨床的有用性が大きく制限されるのに対して、IL-22-Fc融合体は、男性での半減期が1週間以上であることが報告されている。いくつかの条件において、天然型のIL-22と比べて半減期が長いが、例えば、至適な漸増、局所的な適用及び作用のために、Fc融合体よりも半減期が短い強力な分子を有するのが有益となる。現時点では、この問題について説明された解決策はない。
【0008】
したがって、当該技術分野では、天然型の分子に比べて、循環半減期、ならびに局所的な組織コンパートメント及び生体液における半減期を増強するとともに、最適化された薬物動態特性及び薬物動力特性を示す新たな生体適合性のIL-22修飾体に対するニーズが残っている。理想的には、それらの修飾体は、天然型分子の効力及びその他の特性を維持し、既知の誘導体で示された毒性、免疫原性及びいずれかのその他の有害反応も回避しなくてはならない。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、IL-22タンパク質に共有結合された脂肪酸を含むIL-22誘導体を提供し、そのIL-22タンパク質は、hIL-22のバリアントであり、前記バリアントは、hIL-22の95位または106位に置換を含み、その脂肪酸は、前記置換位で共有結合している。
【0010】
その置換は、R95C及びL106Cから選択されていてよい。
【0011】
本発明の実施形態では、その脂肪酸は、そのIL-22タンパク質にリンカーによって共有結合している。
【0012】
その脂肪酸は、下記の式Iのものであってよく、
HOOC-(CH2)x-CO-*
式中、xは、10~18、任意に12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、そのIL-22タンパク質またはリンカーへの結合位置を定める。その脂肪酸は、C12、C14、C16、C18またはC20のジ酸のようなジ脂肪酸であってよい。有益なことに、その脂肪酸は、C16またはC18のジ酸であり、最も有益なことには、その脂肪酸は、C18のジ酸である。
【0013】
そのモノ脂肪酸は、下記の式IIのものであってよく、
H3C-(CH2)x-CO-*
式中、xは、10~18、任意に12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、そのIL-22タンパク質またはリンカーへの結合位置を定める。その脂肪酸は、C12、C14、C16、C18またはC20のモノ酸のようなモノ脂肪酸であってよい。有益なことに、その脂肪酸は、C16またはC18のモノ酸であり、最も有益なことには、その脂肪酸は、C16のモノ酸である。
【0014】
そのバリアントは、hIL-22の置換形態であり、hIL-22の95位または106位に置換を含む。そのバリアントは、1つ以上のさらなる位置、任意に、1位、21位、35位、64位、113位及び/または114位で置換されていてもよい。そのバリアントは、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、R95C、L106C、Q113C、Q113R、K114C及びK114Rからなる群から選択した、hIL-22の置換を含んでよい。有益なことに、そのバリアントは、hIL-22の35位及び64位にGln残基を含む。そのバリアントは、hIL-22との配列同一性が少なくとも10%であってよい。そのバリアントは、hIL-22内にバリエーションを1個、2個、3個、4個または5個以上含んでよく、前記バリエーションは独立して、欠失、置換及び挿入からなる群から選択されている。
【0015】
そのバリアントは、hIL-22の伸長形態であってよい。そのバリアントは、N末端の3量体のようなN末端ペプチドを含んでよい。有益なことに、そのバリアントは、N末端のG-P-Gを含む。そのバリアントは、最大で5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または50個のアミノ酸からなるN末端ペプチドを含んでよい。
【0016】
そのリンカーは、任意にグルタミン酸(Glu)及び/またはリジン(Lys)を含め、アミノ酸を1つ以上含んでよい。そのリンカーは、オキシエチレングリシン単位を1つ、またはオキシエチレングリシン単位が複数、任意に2~5単位、有益なことには2単位連結したものを含んでよい。そのリンカーは、オリゴ(エチレングリコール)(OEG)残基を1つ以上含んでよい。そのリンカーは、エチレンジアミン(C2DA)基及び/またはアセトアミド(Ac)基を含んでよい。有益なことに、そのリンカーは、上記の要素のすべてを組み合わせて含む。特に、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Ac、γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcまたはγGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであってよい。
【0017】
そのリンカーは、hIL-22の95位または106位で置換されたCys残基に結合したCys反応性リンカーであってよい。
【0018】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC18のジ酸を含む。有益なことに、そのバリアントは、hIL-22の95位または106位で置換されたCys残基を含み、そのリンカーは、前記Cys残基に結合している。本発明の例示的な誘導体は、本明細書で誘導体1、誘導体2、誘導体3及び誘導体4と定められたものである。
【0019】
第2の態様では、第1の態様の誘導体を調製するプロセスであって、脂肪酸をIL-22タンパク質に共有結合させることを含むプロセスを提供し、そのIL-22タンパク質は、hIL-22のバリアントであり、前記バリアントは、hIL-22の95位または106位に置換を含み、そのプロセスは、その脂肪酸を前記置換位で共有結合する。
【0020】
第3の態様では、第1の態様の誘導体と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物を提供し、その医薬組成物は、吸入による投与、注射による投与、局所投与、経口投与または眼内投与に適し、任意に、その注射は、腹腔内注射、皮下注射または静脈内注射である。
【0021】
第4の態様では、治療で使用するための第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物を提供する。
【0022】
第5の態様では、治療方法で使用するための第1の態様の誘導体または第2の態様の医薬組成物を提供し、前記方法は、その誘導体を体重1kg当たり0.001μg~体重1kg当たり10mgの1日量で投与することを含む。
【0023】
第6の態様では、代謝性、肝臓、肺、消化管、腎臓、CNSまたは皮膚の疾患、障害または病状を治療する方法で使用するための第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物を提供する。
【0024】
その代謝性の疾患、障害または病状は、肥満症、1型糖尿病、2型糖尿病、高脂血症、高血糖症または高インスリン血症であってよい。
【0025】
その肝臓の疾患、障害または病状は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、慢性肝不全の急性増悪(ACLF)、急性肝損傷、アセトアミノフェン誘発性肝臓毒性、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変、または手術もしくは移植を原因とする病理学的状態であってよい。
【0026】
その肺の疾患、障害または病状は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、化学損傷、ウイルス感染、細菌感染または真菌感染であってよい。
【0027】
その消化管の疾患、障害または病状は、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、移植片対宿主病(GvHD)、化学損傷、ウイルス感染または細菌感染であってよい。
【0028】
その腎臓の疾患、障害または病状は、急性腎臓病または慢性腎臓病であってよい。
【0029】
そのCNSの疾患、障害または病状は、多発性硬化症であってよい。
【0030】
その皮膚の疾患、障害または病状は、創傷、炎症性疾患またはGvHDであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】(A)C18のジ酸、(B)C16のジ酸及び(C)C14のジ酸を示しており、それぞれ、Cys反応性単位を含むリンカーに連結している。脂肪酸とリンカーとのこれらの組み合わせを本発明の誘導体で用いてよい。脂肪酸とリンカーとの組み合わせのうち、(A)で示されている組み合わせは、本明細書で誘導体1及び誘導体2と定められた誘導体で用いられている。
【
図2】本発明の誘導体のうち、本明細書で誘導体1と定められた誘導体の構造を示す。
【
図3】本発明の誘導体のうち、本明細書で誘導体2と定められた誘導体の構造を示す。
【
図4】(A)C18のジ酸、(B)C16のジ酸及び(C)C14のジ酸を示しており、それぞれ、Cys反応性単位を含むリンカーに連結している。脂肪酸とリンカーとのこれらの組み合わせは、本発明の誘導体の比較薬のうち、本明細書で比較薬6~15と定められた比較薬で用いられている。
【
図5】本明細書で比較薬6と定められたIL-22タンパク質の構造を示す。
【
図6】本明細書における比較薬11としてのIL-22タンパク質の構造を示す。
【
図7】本明細書で比較薬15と定められたIL-22タンパク質の構造を示す。
【
図8】糖尿病マウスモデルにおける8日間の試験において、hIL-22、及び主鎖バリエーションのみを有する比較用のIL-22バリアント(本明細書では比較薬3と定めた)の1日1回投与が血中グルコースに及ぼす作用(平均±標準誤差)を示す。
【
図9】糖尿病マウスモデルにおける16日間の試験において、本発明の誘導体の比較薬(本明細書では比較薬6と定めた)の1日1回投与が、IL-22-Fc融合体(具体的には、ヒトFcのN末端をhIL-22に融合したもの。以下、「hFc-hIL-22」という)と比べて、(A)血中グルコース及び(B)食物摂取量に及ぼす作用を示す(平均±標準誤差。
*は、独立t検定を用いた時に、p<0.05であったことを意味する)。
【
図10A】糖尿病マウスモデルにおける16日間の試験において、比較薬6及びhFc-hIL-22の1日1回投与が、それぞれ異なる標的関与バイオマーカーに及ぼす作用を示す(平均±標準誤差。
***は、独立t検定を用いた時に、p<0.0002であったことを意味する)。
【
図10B】糖尿病マウスモデルにおける16日間の試験において、比較薬6及びhFc-hIL-22の1日1回投与が、それぞれ異なる標的結合バイオマーカーに及ぼす作用を示す(平均標準誤差。
***は、独立t検定を用いた時に、p<0.0003であったことを意味する)。
【
図10C】糖尿病マウスモデルにおける16日間の試験において、比較薬6及びhFc-hIL-22の1日1回投与が、それぞれ異なる標的結合バイオマーカーに及ぼす作用を示す(平均標準誤差。
***は、独立t検定を用いた時に、p<0.0026であったことを意味する)。
【
図11】糖尿病マウスモデルにおける13日間の試験において、比較薬11を1日1回、(3つの異なる用量で)投与した場合の血中グルコースに対する用量-応答曲線を、比較薬6及びhFc-hIL-22と比べたものを示す(平均±標準誤差)。
【
図12A】アセトアミノフェン(APAP)の誘導による肝損傷のマウスモデルにおいて、比較薬6及び11が、肝損傷を予防する作用を2つの異なる肝臓酵素の血漿中レベルによって立証したもの示す。ダネット検定の1因子線形モデルを使用し、ビヒクル+APAPと比べて、
*はp<0.05を意味し、
**はp<0.01を意味する。
【
図12B】アセトアミノフェン(APAP)の誘導による肝損傷のマウスモデルにおいて、比較薬6及び11が、肝損傷を予防する作用を2つの異なる肝臓酵素の血漿中レベルによって立証したもの示す。ダネット検定の1因子線形モデルを使用し、ビヒクル+APAPと比べて、
**はp<0.01を意味する。
【
図13A】APAPの誘導による肝損傷のマウスモデルにおいて、比較薬6及び11がアポトーシスを予防する作用を示す。
【
図13B】APAPの誘導による肝損傷のマウスモデルにおいて、比較薬6及び11が細胞増殖に及ぼす作用を示す。NSは、有意差なしを意味する。
【
図14A】ブレオマイシンの誘導による肺損傷のラットモデルにおいて、比較薬11が、プレドニゾロンと比べて、肺の炎症を予防及び/または低減する作用を示す。
【
図14B】ブレオマイシンの誘導による肺損傷のラットモデルにおいて、比較薬11が、プレドニゾロンと比べて、肺の線維化を予防及び/または低減する作用を示す。
【
図14C】ブレオマイシンの誘導による肺損傷のラットモデルにおいて、比較薬11が、プレドニゾロンと比べて、肺の線維化を予防及び/または低減する作用を示す。
【
図15】デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の誘導による大腸炎のマウスモデルにおいて、比較薬11が大腸の炎症を予防する作用を示す。
****は、ビヒクル(DSSを含む)と比べて、p<0.0001であることを意味する。
【
図16】DSSの誘導による大腸炎のマウスモデルにおいて、比較薬11が、hFc-hIL-22と比べて、粘膜上皮の創傷を予防する作用を示す。倍率は4倍であり、スケールバーは500μmである。
【
図17】DSSの誘導による大腸炎のマウスモデルにおける血漿中の再生膵島由来タンパク質タンパク質3γ(Reg3g)レベルを、標的関与の尺度として(Reg3gは、IL-22の標的関与マーカーである)示す。
【
図18A】コンカナバリンA(ConA)の誘導による肝損傷のマウスモデルにおいて、比較薬6が肝損傷を予防する作用を2つの異なる肝臓酵素の血清中レベルによって立証したものを示す。
【
図18B】コンカナバリンA(ConA)の誘導による肝損傷のマウスモデルにおいて、比較薬6が肝損傷を予防する作用を2つの異なる肝臓酵素の血清中レベルによって立証したものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、ギリシャ文字は、ローマ綴りではなく、ギリシャ文字で表されている。例えば、αはアルファであり、εはイプシロンであり、γはガンマであり、μはミューである。アミノ酸残基は、そのフルネーム、3文字表記または1文字表記によって定められていることがあり、それらのいずれも、完全に同じである。
【0033】
「IL-22誘導体」という用語は、本明細書で使用する場合、共有結合された脂肪酸を有するIL-22タンパク質を指し、そのIL-22タンパク質は、hIL-22のバリアントであり、前記バリアントは、hIL-22の95位または106位に置換を含み、その脂肪酸は、前記置換位で共有結合されている。その用語には、その脂肪酸がそのIL-22タンパク質に直接共有結合されている誘導体、及びその共有結合がリンカーによるものである誘導体の両方が含まれる。
【0034】
脂肪酸の共有結合は、ペプチド及びタンパク質の半減期を延長するための実証済みの技術であり、脂肪酸をペプチドまたはタンパク質から延ばす方法である。この技術は、1型糖尿病及び2型糖尿病用の市販製品、例えば、インスリンLevemir(登録商標)(デテミル)及びTresiba(登録商標)(デグルデク)、ならびにグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)誘導体Victoza(登録商標)(リラグルチド)及びOzempic(登録商標)(セマグルチド)から知られている。
【0035】
脂肪酸の結合により、アルブミンに結合可能となり、それによって、腎排泄が防止され、タンパク質分解がされないように、多少、立体保護がなされる。有益なことに、脂肪酸の結合により、Fcの融合またはPEG化と比べて、IL-22への修飾が最小限になる。この点では、Fcの融合及びPEG化が、IL-22のサイズを、腎臓での除去の閾値よりも大きくするためのものであるのに対して、IL-22タンパク質に共有結合された脂肪酸を含む誘導体は、そのIL-22タンパク質のサイズと同様の小さいサイズを保持している。すなわち、脂肪酸の結合は、修飾が最小限であるので、得られる誘導体は、分布、拡散速度、ならびに受容体への関与(結合、活性化及びトラフィッキング)を含め、天然型のような特性を保持するとともに、免疫原性リスクを最小限に抑えると考えられる。
【0036】
上記のように、脂肪酸の結合は、糖尿病向けのインスリン及びGLP-1誘導体において治療効力が実証されている。しかしながら、IL-22は、そのサイズ、配列及び生物学的特性が大きく異なるタンパク質である。したがって、本発明者には、治療効果を保持したまま、脂肪酸をIL-22に共有結合できるとは直感的には理解しがたかった。このように、IL-22への修飾が最小限であることにより、高い効力(hIL-22と同じかまたは近い効力)を得られるとともに、循環半減期の延長、または生体液(例えば血漿もしくは腸液)もしくは組織調製液における半減期の延長も合わせて実現できることは特に驚くべきことであった。
【0037】
すなわち、第1の態様では、本発明は、IL-22タンパク質に共有結合された脂肪酸を含むIL-22誘導体に関するものであり、そのIL-22タンパク質は、hIL-22のバリアントであり、前記バリアントは、hIL-22の95位または106位に置換を含み、その脂肪酸は、前記置換位で共有結合されている。その脂肪酸は、そのIL-22タンパク質に直接、またはリンカーを介して共有結合されていてよく、そのリンカー自体は、様々なサブユニットから考案できる。「IL-22タンパク質」という用語は、本明細書で使用する場合、天然型のIL-22タンパク質、例えばhIL-22、またはそのバリアントを意味することができる。「バリアント」は、本明細書にさらに定義されているように、天然型タンパク質のアミノ酸配列と類似のアミノ酸配列を有するタンパク質であることができる。本発明の誘導体に含まれるIL-22タンパク質は、hIL-22のバリアントであり、前記バリアントは、hIL-22の95位または106位に置換を含む。
【0038】
天然においては、ヒトIL-22タンパク質は、分泌のために、33アミノ酸のシグナルペプチドとともに合成される。成熟ヒトIL-22タンパク質(すなわちhIL-22)は、146アミノ酸長であり、マウスIL-22(マウスIL-22は147アミノ酸長である)との配列同一性が80.8%である。hIL-22のアミノ酸配列は、本明細書では配列番号1と定められている。他のIL-10ファミリーメンバーのように、IL-22の構造は、α-へリックスを6個含む(へリックスA~Fという)。
【0039】
本発明の誘導体は、hIL-22の天然型配列内にアミノ酸配列バリエーションを1つ以上有する。具体的には、その誘導体は、95位及び/または106位にアミノ酸置換を有する。加えて、その誘導体は、天然型配列に対して(すなわち、天然型配列の外側に)、アミノ酸配列バリエーションを1つ以上含んでよい。
【0040】
「~内に」、「~に対して」、「~に対応して」及び「~と同等の」のような表現は、本明細書では、その天然型タンパク質、例えばhIL-22の配列を参照することによって、IL-22タンパク質における変更部位及び/または脂肪酸の共有結合部位を特徴付ける目的で使用する。配列番号1では、hIL-22の1番目のアミノ酸残基(アラニン(Ala))を1位と割り当てる。
【0041】
したがって、hIL-22の配列内のバリエーションは、配列番号1における1~146番目の残基のいずれかに対するバリエーションである。例えば、hIL-22における10番目の残基の天然型AspをGluに置換することは、本明細書では、「D10E」として表す。その誘導体が、10位で共有結合された脂肪酸も有する場合には、その結合は、本明細書では、「10E」の残基での結合という。
【0042】
しかしながら、hIL-22の配列に対するバリエーションは、配列番号1における1~146番目の残基の外側のバリエーションである。例えば、本明細書で定義されているような誘導体は、15アミノ酸長のN末端ペプチドを含んでよい。そのN末端ペプチドの残基には、負の番号を割り当て、hIL-22の1番目の残基に結合された残基から開始され、すなわち、そのN末端ペプチドの残基のうち、hIL-22の1番目の残基に結合された1番目の残基は、「-1」と示される。すなわち、その誘導体が、-1位から始まるN末端ペプチドの7番目の残基において、共有結合された脂肪酸を有し、この残基がCysであるとすると、その誘導体の共有結合部位は、本明細書では「-7C」という。しかし、当然ながら、このような誘導体について、配列表で用いられているナンバリングは、WIPO Standard ST.25に従って1から始まることになるので、その誘導体についての配列表の1位は実際には、本明細書で言及されているような-7番目の残基である。
【0043】
天然型配列内にバリエーションを2個、3個、4個または5個以上加えて、本発明の誘導体を形成してよい。例えば、この点では、バリエーションを10個超、15個超、20個超、25個超、50個超、75個超、100個超、またはさらには125個超、加えてもよい。その天然型配列の1~146番目の残基のいずれかを変化させてよい。バリエーションを加えるための例示的な残基は、hIL-22の1番目、2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、22番目、24番目、25番目、26番目、27番目、29番目、30番目、32番目、33番目、34番目、35番目、36番目、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目、44番目、45番目、47番目、48番目、49番目、50番目、51番目、52番目、53番目、54番目、55番目、56番目、58番目、59番目、61番目、62番目、63番目、64番目、65番目、67番目、68番目、69番目、70番目、71番目、72番目、73番目、74番目、75番目、77番目、78番目、79番目、82番目、83番目、84番目、86番目、88番目、90番目、91番目、92番目、93番目、94番目、95番目、96番目、97番目、98番目、99番目、100番目、102番目、103番目、104番目、105番目、106番目、107番目、108番目、109番目、110番目、111番目、112番目、113番目、114番目、115番目、116番目、117番目、118番目、119番目、120番目、121番目、122番目、123番目、124番目、126番目、127番目、128番目、129番目、130番目、132番目、133番目、134番目、135番目、137番目、138番目、139番目、141番目、143番目、144番目、145番目及び/または146番目の残基である。1番目、21番目、35番目、64番目、95番目、106番目、113番目及び/または114番目の残基のバリエーションが特に有益である。最低でも、本発明の誘導体は、95番目または106番目の残基にバリエーションを含む。
【0044】
その天然型配列内のバリエーションは、典型的にはアミノ酸置換である。「置換」という用語は、本明細書で使用する場合、天然型タンパク質のアミノ酸を別のアミノ酸に置き換えることを意味することができる。置換は、保存的置換であってもよいし、または非保存的置換であってもよい。本発明では、hIL-22の95位または106位の置換を必ず用いる。有益なことに、その置換は、R95CまたはL106Cである。追加の例示的な置換は、A1C、A1G、A1H、P2C、P2H、I3C、I3H、I3V、S4H、S4N、S5H、S5T、H6C、H6R、C7G、R8G、R8K、L9S、D10E、D10S、K11C、K11G、K11V、S12C、N13C、N13G、F14S、Q15C、Q15E、Q16V、P17L、Y18F、I19Q、T20V、N21C、N21D、N21Q、R22S、F24H、M25E、M25L、L26S、A27L、E29P、A30Q、L32C、L32R、A33C、A33N、D34F、N35C、N35D、N35H、N35Q、N36Q、T37C、T37I、D38L、V39Q、R40W、L41Q、I42P、E44R、K45A、F47T、H48G、H48R、G49N、V50S、S51C、M52A、M52C、M52L、M52V、S53C、S53K、S53Y、E54D、E54F、R55Q、R55V、C56Q、L58K、M59I、Q61E、V62D、L63C、N64C、N64D、N64Q、N64W、F65G、L67Q、E69D、E69L、V70S、L71C、F72D、F72L、P73C、P73L、Q74T、R77I、F78Q、Q79E、M82Y、Q83G、E84R、V86A、F88N、A90P、A90T、R91C、R91K、R91Y、L92R、S93Y、N94C、N94Q、R95K(R95Cをまだ用いていない場合)、R95Q(R95Cをまだ用いていない場合)、L96E、S97K、T98C、T98N、T98S、C99V、H100S、E102S、G103D、D104Y、D105Y、L106E(L106Cをまだ用いていない場合)、L106Q(L106Cをまだ用いていない場合)、H107L、H107N、I108L、Q109Y、R110C、R110K、N111K、V112E、Q113C、Q113R、K114C、K114R、L115V、K116Y、D117E、T118G、V119A、K120H、K121R、L122A、G123V、G126Y、E127C、I128V、K129V、G132Y、E133Q、L134P、D135M、L137D、F138R、M139L、M139R、L141Q、N143S、A144E、C145E、I146R及び/またはI146Vである。追加の置換は、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及びK114Rからなる群から選択されているのが有益であろう。N35Q及びN64Qは、特に有益である。驚くべきことに、本発明で用いられているような置換は、IL-22の活性に悪影響を及ぼさない。
【0045】
追加の置換の特定の組み合わせとしては、(i)A1G、N21D、N35D及びN64D、(ii)A1G、N35Q及びN64Q、(iii)A1G及びN64C、(iv)A1G及びQ113C、(v)A1G及びK114C、(vi)A1G及びM25L、(vii)A1G及びM52L、(viii)A1G及びM139L、(ix)A1G及びN36Q、(x)A1G及びD117E、(xi)A1G及びN21Q、(xii)A1G及びN35Q、(xiii)A1G及びN64Q、(xiv)A1G、N21Q及びN35Q、(xv)A1G、N21Q及びN64Q、(xvi)A1G、N21Q、N35Q及びN64Q、(xvii)A1G及びK11C、(xviii)A1G及びN13C、(xix)N35Q及びN64Q、(xx)A1C、N35Q及びN64Q、(xxi)H6C、N35Q及びN64Q、(xxii)I3C、N35Q及びN64Q、(xxiii)P2C、N35Q及びN64Q、(xxiv)L32C、N35Q及びN64Q、(xxv)N35Q、M52C及びN64Q、(xxvi)N13C、N35Q及びN64Q、(xxvii)N21C、N35Q及びN64Q、(xxviii)N35Q、N64Q及びN94C、(xxix)N35Q、N64Q及びP73C、(xxx)N35Q、N64Q及びQ113C、(xxxi)N35Q、N64Q及びR91C、(xxxii)N35Q、N64Q及びR110C、(xxxiii)S12C、N35Q及びN64Q、(xxxiv)N35Q、S51C及びN64Q、(xxxv)N35Q、S53C及びN64Q、(xxxvi)N35Q、T37C及びN64Q、(xxxvii)N35Q、N64Q及びT98C、(xxxviii)Q15C、N35Q及びN64Q、(xxxix)N35C及びN64Q、(xxxx)H6C、N35Q及びN64Q、ならびに(xxxxi)A33C、N35Q及びN64Qが挙げられる。あらゆる組み合わせの置換が想定されており、それらは、本発明の一部を形成する。
【0046】
第1の態様の誘導体は、95位及び/または106位に置換を含む。有益なことには、その置換は、R95CまたはL106Cである。その誘導体は典型的には、追加のアミノ酸置換を含んでよく、それにより、天然型の残基において、任意に、上で定めた位置のいずれか、例えば、1位、2位、3位、6位、11位、12位、13位、15位、21位、32位、33位、35位、37位、51位、52位、53位、63位、64位、71位、73位、91位、94位、98位、110位、113位、114位及び/または127位で、Cysに置換されている。R95CまたはL106Cという置換を、35位及び64位の2つの糖鎖付加部位における置換と組み合わせるのが特に有益である。これにより、効力または半減期に悪影響を及ぼすことなく、取り込みが速くなるからである(実施例1の誘導体1及び2を参照されたい)。有益な一実施形態では、第1の態様の誘導体は、R95Cという置換を含む(実施例11、誘導体4)。有益な一実施形態では、第1の態様の誘導体は、L106Cという置換を含む(実施例11、誘導体3)。有益な一実施形態では、第1の態様の誘導体は、N35Q、N64Q及びR95Cという置換を含む。別の有益な実施形態では、第1の態様の誘導体は、N35Q、N64Q及びL106Cという置換を含む。しかしながら、別の実施形態では、第1の態様の誘導体は、hIL-22(配列番号1)内に、前記R95Cまたは前記L106Cを含み、追加の置換またはバリエーションを含まないことが有益である場合もある。
【0047】
その天然型配列内のバリエーションは、アミノ酸の挿入も含んでよい。その天然型配列内に、アミノ酸が最大で5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個またはさらには最大で50個、挿入されていてよい。この点では、3量体、5量体、7量体、8量体、9量体及び44量体が特に有益である。例示的な配列が表1に示されている。挿入は、その天然型配列のいずれの位置でも行うことができるが、ヘリックスA(例えば30番目の残基)、ループCD(例えば75番目の残基)、ヘリックスD(例えば85番目の残基)及び/またはヘリックスF(例えば124番目の残基)の位置が好ましい。
【表1】
【0048】
その天然型配列内の1個、2個、3個、4個または5個以上のバリエーションは独立して、置換及び挿入からなる群から選択されていてよい。
【0049】
その天然型配列内のバリエーションは、上記に加えてまたは上記の代わりに、配列番号1内のアミノ酸の欠失を1つ以上含んでよい。すなわち、そのペプチドは、アミノ酸の欠失を最大で5個含んでよい。アミノ酸の欠失は、3個以下または2個以下が好ましい。前記欠失は、例えば配列番号1内の別々の(すなわち、連続していない)位置に存在してよい。そのバリエーションは、上記に加えてまたは上記の代わりに、配列番号1内の2個、3個、4個または5個の連続するアミノ酸の欠失であってよく、これは、最大で5個の隣接する一連のアミノ酸が欠失されていてよいことを意味する。hIL-22のアミノ酸配列に対する配列バリエーションは、存在する場合、典型的には、N末端にペプチドが付加されているなどの伸長を含む。そのペプチドは、最大で5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個またはさらには最大で50個のアミノ酸からなっていてよい。この点では、単量体、3量体、8量体、13量体、15量体、16量体、21量体、28量体が特に有益である。例示的な配列は、表2に示されている。ある実施形態では、第1の態様の誘導体に含まれるIL-22タンパク質は、G-P-GというN末端を含む。ある実施形態では、第1の態様の誘導体に含まれるIL-22タンパク質は、G-P-GというN末端を含まない。
【表2】
【0050】
hIL-22のアミノ酸配列に対する配列バリエーションは、存在する場合、C末端におけるペプチドの付加を含んでよい。そのペプチドは、最大で5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個またはさらには最大で50個のアミノ酸からなっていてよい。例示的なC末端ペプチド配列としては、(N末端ペプチドについて)表2に示されている配列が挙げられる。この点では、任意にG-S-G-S-G-S-Cというアミノ酸配列(配列番号18)を有する7量体が特に有益である。
【0051】
本発明の誘導体は、本明細書に記載されているような、バリアントhIL-22のアミノ酸配列に加えて、N末端ペプチド及びC末端ペプチドの両方を含んでよい。本明細書に記載されているN末端ペプチドとC末端ペプチドの組み合わせのいずれも、本発明において想定されているとともに、明示的に含まれる。
【0052】
hIL-22のバリアントに共有結合された脂肪酸を含むいずれのIL-22誘導体であって、前記バリアントが、hIL-22の95位または106位に置換を含み、その脂肪酸が、前記置換位で共有結合されているIL-22誘導体までに本発明が及ぶことは明らかであろう。その「バリアント」は、hIL-22との配列同一性が少なくとも10%であるタンパク質であることができる。ある実施形態では、そのバリアントは、hIL-22との配列同一性が少なくとも20%またはさらには少なくとも30%である。そのバリアントは、hIL-22の「アミノ酸配列を実質的に」有してよく、これは、hIL-22のアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも40%である配列を意味することができる。したがって、ある実施形態では、第1の態様の誘導体は、hIL-22とのアミノ酸配列同一性が少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%である。実験の部分に開示されている本発明の特定の誘導体に組み込まれている例示的なIL-22タンパク質バリアントは、配列番号19、20、23及び33に示されている。
【0053】
熟練の技術者には、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを計算する方法は明らかであろう。まず、2つの配列をアラインメントしたものを用意してから、配列同一性の値を計算する必要がある。2つの配列の同一性パーセントは、(i)それらの配列をアラインメントするのに用いる方法、例えば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(様々なプログラムに実装されている)、または3D比較による構造的アラインメント、ならびに(ii)そのアラインメント方法、例えば、ローカルアラインメントとグローバルアラインメントで用いるパラメーター、使用するペアスコアマトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)及びギャップペナルティ、例えば、関数形式及び定数に応じて異なる値を取ることがある。
【0054】
アラインメントを行った後に、2つの配列間の同一性パーセントを計算するには、多種多様な方法がある。例えば、方法の1つでは、同一である数を(i)最短配列の長さ、(ii)アラインメント部分の長さ、(iii)配列の長さの平均、(iv)ギャップのない位置の数、または(iv)オーバーハングを除いて等しくした位置の数で除してよい。さらに、同一性パーセントが、長さに大きく依存することも明らかであろう。すなわち、配列対が短いほど、たまたま配列同一性が高くなると予想し得る。
【0055】
したがって、アミノ酸配列を正確にアラインメントするのは、複雑なプロセスであることは明らかであろう。一般的なマルチプルアラインメントであるClustalW[48,49]は、本発明によるタンパク質のマルチプルアラインメントを行う好ましい方法である。ClustalWに適するパラメーターは、タンパク質のアラインメントにおいては、ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップエクステンションペナルティ=0.2及びマトリックス=Gonnetであってよい。DNA及びタンパク質のアラインメントでは、ENDGAP=-1及びGAPDIST=4である。配列を最適にアラインメントするために、これらのパラメーター及びその他のパラメーターを変更する必要があることを当業者は認識するであろう。
【0056】
好ましくは、続いて、このようなアラインメント結果から、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントの計算値を(N/T)×100として計算でき、式中、Nは、それらの配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、比較する位置であって、ギャップを含むが、オーバーハングを含まない位置の総数である。すなわち、2つの配列間の同一性パーセントを計算するための最も好ましいの方法は、(i)適切なパラメーター群、例えば上記のようなパラメーター群を用いたClustalWプログラムを用いて、配列アラインメントを準備することと、(ii)配列同一性=(N/T)×100という式にN及びTの値を挿入することを含む。
【0057】
類似の配列を定める代替的な方法は、当業者には分かるであろう。
【0058】
適切なことに、第1の態様の誘導体は、200個以下のアミノ酸を含む。例えば、その誘導体は、アミノ酸を190個未満、180個未満、170個未満、160個未満またはさらには150個未満含む。適切なことに、その誘導体は、アミノ酸を少なくとも146個含むことになるが、これは、hIL-22のアミノ酸の数である。その誘導体は、少なくとも150個のアミノ酸、少なくとも160個のアミノ酸、少なくとも170個のアミノ酸またはさらには少なくとも180個のアミノ酸を含んでもよい。本発明の誘導体は、上記の範囲内のいずれかの長さのタンパク質を含むことができるが、典型的には、146~180アミノ酸長となる。
【0059】
本発明の誘導体であって、本明細書に記載のバリアントのアミノ酸配列を有する誘導体は、IL-22タンパク質に95位または106位で共有結合された脂肪酸を含む。その脂肪酸は典型的には、そのIL-22タンパク質にリンカーによって共有結合されている。その脂肪酸及びリンカーは、アミド結合を介して互いに連結しているのが適切であり、そのリンカーは、そのIL-22タンパク質に共有結合されている。したがって、その脂肪酸及びリンカーは、そのIL-22タンパク質上の側鎖として存在してよい。共有結合された脂肪酸が、IL-22の活性に悪影響を及ぼさないことは、本発明者には驚くべきことであった。脂肪酸の結合に、半減期の延長などの追加の利点が伴うことは、特に驚くべきことであった。
【0060】
その脂肪酸は、いずれかの適切な脂肪酸であってよい。特に、その脂肪酸は、下記の式Iのものであってよく、
HOOC-(CH2)x-CO-*
式中、xは、10~18、任意に12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、そのIL-22タンパク質またはリンカーへの結合位置を定める。その脂肪酸は、C12、C14、C16、C18またはC20のジ酸のようなジ脂肪酸であってよい。有益なことに、その脂肪酸は、C16またはC18のジ酸であり、最も有益なことには、その脂肪酸は、C18のジ酸である。
【0061】
例えば、式Iにおける-(CH2)x-は、xが10である直鎖アルキレンであってよい。この脂肪酸は利便的には、C12のジ酸と称してもよく、すなわち、炭素原子を12個有するジカルボン酸脂肪酸である。あるいは、式Iにおける-(CH2)x-は、xが12である直鎖アルキレンであってもよい。この脂肪酸は利便的には、C14のジ酸と称してもよく、すなわち、炭素原子を14個有するジカルボン酸脂肪酸である。同様に、式Iにおける-(CH2)x-は、xが14である直鎖アルキレン(C16のジ酸)、16である直鎖アルキレン(C18のジ酸)または18である直鎖アルキレン(C20のジ酸)であってよい。第1の態様の誘導体は、C14、C16、C18またはC20のジ酸を含むのが適切であり、C16またはC18のジ酸を含むのがより適切であり、C18のジ酸を含むのがさらに適切である。
【0062】
あるいは、その脂肪酸は、式IIのものであってよく、
H3C-(CH2)x-CO-*
式中、xは、10~18、任意に12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、そのIL-22タンパク質またはリンカーへの結合位置を定める。その脂肪酸は、C12、C14、C16、C18またはC20のモノ酸のようなモノ脂肪酸であってよい。有益なことに、そのモノ脂肪酸は、C16またはC18のモノ酸であり、最も有益なことには、C16のモノ酸である。
【0063】
例えば、式IIにおける-(CH2)x-は、xが10である直鎖アルキレンであってよい。この脂肪酸は利便的には、C12のモノ酸と称してよく、すなわち、炭素原子を12個有するモノカルボン酸脂肪酸である。あるいは、式IIにおける-(CH2)x-は、xが12である直鎖アルキレンであってよい。この脂肪酸は利便的には、C14のモノ酸と称してよく、すなわち、炭素原子を14個有するモノカルボン酸脂肪酸である。同様に、式IIにおける-(CH2)x-は、xが14である直鎖アルキレン(C16のモノ酸)、16である直鎖アルキレン(C18のモノ酸)または18である直鎖アルキレン(C20のモノ酸)であってよい。第1の態様の誘導体は、C14、C16、C18またはC20のモノ酸を含むのが適切であり、C16またはC18のモノ酸を含むのがより適切であり、C16のモノ酸を含むのがさらに適切である。
【0064】
そのジ酸またはモノ酸は、アルブミンと非共有結合を形成することによって、血流中で、その誘導体の循環を促進できてよい。短いジ酸及びモノ酸(例えばC16のジ酸またはモノ酸)ほど、それよりも長いジ酸及びモノ酸(例えばC18のジ酸及びモノ酸)よりも、アルブミン親和性が低くなるので、半減期が短くなる。しかしながら、それらの誘導体は依然として、長時間作用する誘導体であり、男性での予測半減期は、1日を超える。
【0065】
そのモノ酸は新油性でもあり、これは、生体膜に結合する傾向があることを意味する。生体膜に組み込まれることで、アルブミンに依存しないこの保護力により、局所的な貯蔵部が形成し得るので、確実に局所作用が長くなる。これにより、局所投与、経口投与、肛門坐剤もしくは直腸泡沫剤としての投与、または肺吸入において利点が得られるという仮説を立てることができる。
【0066】
また、脂肪酸の結合はそれ自体、そのIL-22タンパク質がタンパク分解しないように安定させる。その結果得られる半減期は典型的には、IL-22-Fc融合体の半減期と同等である(すなわち、hIL-22と比べて大幅に改善されている)。
【0067】
第1の態様の誘導体は、脂肪酸とIL-22タンパク質との特定の組み合わせを含んでよい。例えば、C14、C16、C18またはC20のジ酸またはモノ酸が、hIL-22の95位または106位にCys残基を含むIL-22タンパク質に結合していてよい。一例では、第1の態様の誘導体は、C18のジ酸を含み、そのIL-22タンパク質は、hIL-22の95位または106位で置換されたCys残基を含む。別の例では、第1の態様の誘導体は、C18のジ酸を含み、そのIL-22タンパク質は、(誘導体1及び2におけるように、)hIL-22の95位または106位で置換されたCys残基、及びhIL-22の35位及び64位で置換されたGln残基を含む。これらの例では、そのIL-22タンパク質は、A-E-P-E-E(配列番号9)という配列を有するN末端5量体またはC末端5量体をさらに含んでもよい。
【0068】
上記のように、その脂肪酸は、リンカーに連結しているのが適切であり、そのリンカーが、IL-22タンパク質に95位または106位で結合している。そのリンカーは、1つ以上のGlu残基及び/またはLys残基など、1つ以上のアミノ酸を含め、リンカー要素をいくつか含んでよい。そのリンカーは、オキシエチレングリシン単位を1つ、またはオキシエチレングリシン単位が複数、任意に2~5単位、有益なことには2単位連結したものを含んでよい。上記の代わりにまたは上記に加えて、OEG残基、C2DA及び/またはAc基が1つ以上含まれていてもよい。そのリンカーは、Cys反応性単位を含んでよい。「Cys反応性単位」は、本明細書で使用する場合、Cysの硫黄原子と反応して、炭素と硫黄との共有結合を作ることができる機能的単位を意味することができる。Cys反応性単位は、いくつかの形態のいずれかを有することができるが、脱離基に結合した炭素原子を含むのが適切であり、その脱離基は、炭素と硫黄との結合の形成中に、Cysの硫黄原子に置換される。その脱離基は、ハロゲン、任意に臭素原子であってよい。臭化物であるこの脱離基は、Ac官能基に対するα位であることができ、有益なことに、ブロモ-Ac官能基である。あるいは、その脱離基は、メシル酸塩もしくはトシル酸塩の形態の、官能化されたヒドロキシル基、または官能化されていないヒドロキシル基であってよい。さらに、その脱離基は、マレイミドまたはその他の官能基であることができる。例示的なリンカーとしては、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Ac、γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAc及びγGlu-OEG-OEG-εLys-αAcが挙げられるが、いずれかの適切なリンカーを用いてよい。特定の実施形態では、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Acである。
【0069】
いくつかの実施形態では、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcというリンカーに共有結合されたモノ脂肪酸を含むバリアントが好ましいこともある。いくつかの実施形態では、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Ac及びγGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcから選択したリンカーに共有結合されたジ脂肪酸を含むバリアントが好ましいこともある。いくつかの実施形態では、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Ac及びγGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcから選択したリンカーに共有結合されたC14、C16、C18またはC20のジ脂肪酸を含むバリアントが好ましいこともある。いくつかの実施形態では、γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcというリンカーに共有結合されたC14のジ脂肪酸を含むバリアントが好ましいこともある。いくつかの実施形態では、γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcというリンカーに共有結合されたC16、C18またはC20のジ脂肪酸を含むバリアントが好ましいこともある。
【0070】
そのリンカーは、配列番号1内のCys残基に結合したCys反応性リンカーであってよい。そのリンカーは、配列番号1に対するC末端またはN末端の伸長部において、Cys残基に結合したCys反応性リンカーであってよい。
【0071】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC14、C16、C18またはC20のモノ酸を含み、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、そのバリアントは、N末端のG-P-G、及びhIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0072】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC16、C18またはC20のモノ酸を含み、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、そのバリアントは、N末端のG-P-G、及びhIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0073】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC16またはC18のモノ酸を含み、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、そのバリアントは、N末端のG-P-G、及びhIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0074】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC16のモノ酸を含み、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、そのバリアントは、N末端のG-P-G、及びhIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0075】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC14、C16、C18またはC20のモノ酸を含み、そのバリアントは、N末端のG-P-Gを含まないが、hIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0076】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC14、C16、C18またはC20のモノ酸を含み、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、そのバリアントは、N末端のG-P-Gを含まないが、hIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0077】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC16、C18またはC20のモノ酸を含み、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、そのバリアントは、N末端のG-P-Gを含まないが、hIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0078】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC16またはC18のモノ酸を含み、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、そのバリアントは、N末端のG-P-Gを含まないが、hIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0079】
ある実施形態では、その誘導体は、リンカーによってhIL-22のバリアントに共有結合されたC16のモノ酸を含み、そのリンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、そのバリアントは、N末端のG-P-Gを含まないが、hIL-22の1位のCys残基を含み、そのリンカーは任意に、前記Cys残基に結合している。
【0080】
その脂肪酸またはリンカーは、IL-22タンパク質における95位または106位の置換アミノ酸残基に結合している。天然型残基は典型的には、その脂肪酸またはリンカーの結合を可能にするために、CysまたはLysで置換されている。特に、その脂肪酸またはリンカーは、hIL-22の95位または106位で置換されたCys残基に結合していてよい。
【0081】
その脂肪酸またはリンカーのそのIL-22タンパク質への結合は、共有結合である。例えば、Cys反応性の脂肪酸またはリンカーを用いて、その脂肪酸またはリンカーをそのIL-22タンパク質のCys残基に結合していてよい。その脂肪酸またはリンカーは、そのCys残基の硫黄原子に、チオエーテル結合を介して共有結合されいてよい。あるいは、Lys反応性の脂肪酸またはリンカーを用いて、その脂肪酸またはリンカーをIL-22タンパク質のLys残基に結合していてよい。あるいは、その脂肪酸またはリンカーは、そのIL-22タンパク質のN末端の遊離アミン(-NH2)基に共有結合されていてもよい(1位のアミノ酸には関わらない)。適切なN末端反応性の種を含む脂肪酸またはリンカーが準化学量論的量でも、結合は、Cysへの結合の場合と同様に進行できる。その脂肪酸またはリンカーは、アルデヒド(N末端反応性の種)の形態で与えられていて、古典的に知られている還元的アミノ化を用いて、遊離アミンに共有結合されていてもよい。
【0082】
したがって、第1の態様の誘導体は、リンカーによって、hIL-22のバリアントに結合したC14、C16、C18またはC20のジ酸またはモノ酸を含むのが適切であり、そのバリアントは、hIL-22の95位または106位に置換を含み、そのリンカーは、前記置換位で共有結合されている。有益なことに、Cys残基には、hIL-22の95位または106位で置換されており、そのリンカーは、そのCys残基に結合している。任意に、Gln残基に、35位及び64位で置換されている。
【0083】
第1の態様の例示的な誘導体は、配列番号19、20、23または33に示されているようなIL-22タンパク質を含む。特に有益な誘導体は、表3に示されているとともに、
図2及び3に図示されており、本明細書に例示されている。
【表3】
【0084】
図1Aには、Cys反応性単位を含むリンカーに連結したC18のジ酸が図示されている。これは、誘導体1及び2で用いられている脂肪酸及びリンカー(側鎖)である。
図1Bには、Cys反応性単位を含むリンカーに連結したC16のジ酸が示されている。
図1Cには、Cys反応性単位を含むリンカーに連結したC14のジ酸が示されている。
【0085】
誘導体1は
図2に、誘導体2は
図3に示されている。誘導体3は、L106Cという置換を含む点では、誘導体1と同様であるが、配列番号1と比べると、35位及び64位が変化していない点が異なる。誘導体4は、R95Cという置換を含む点では、誘導体2と同様であるが、配列番号1と比べると、35位及び64位が変化していない点が異なる。
【0086】
本発明の誘導体は、様々な立体異性体で存在してもよく、本発明は、これらのすべてに関するものである。
【0087】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の誘導体を調製するプロセスであって、脂肪酸をIL-22タンパク質に共有結合させることを含み、そのIL-22タンパク質が、hIL-22のバリアントであり、前記バリアントが、hIL-22の95位または106位に置換を含み、そのプロセスが、その脂肪酸を前記置換位で共有結合させることを含むプロセスを提供する。
【0088】
そのプロセスを用いて、本明細書で記載または想定されている様々なIL-22誘導体のいずれか作製してよいが、脂肪酸をバリアントIL-22タンパク質に共有結合させると、特に有益である。その第2の態様で用いるIL-22タンパク質は、置換形態のhIL-22であり、95位及び/または106位の天然型残基が、代わりのアミノ酸に置き換えられている。そのバリアントhIL-22タンパク質は任意に、1位、21位、35位、64位、113位及び/または114位でさらに置換されている。例示的な置換としては、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、R95C、L106C、Q113C、Q113R、K114C及び/またはK114Rが挙げられる。好ましくは、そのIL-22タンパク質は、95位及び/または106位においてはCys残基で、35位及び/または64位においてはGln残基で置換されている。その他のバリアントは、35位及び/または64位に修飾を含まない。
【0089】
その脂肪酸は、組み換え手段を含め、当該技術分野で知られているいずれかの手段によって得ることができる。適切な脂肪酸は、市販のものであるか、または利用可能な出発物質から、標準的な化学合成を用いて容易に誘導されたものである。
【0090】
そのIL-22タンパク質は、組み換え手段を含め、当該技術分野で知られているいずれかの手段によって得ることができる。組み換えhIL-22の作製は、以前に説明されており、当該技術分野で周知である。所望のバリアントIL-22タンパク質は、同様の方法で作製できる。当該分野の熟練の研究者は、所望のバリアントIL-22タンパク質をコードする適切な核酸配列を容易に特定できるであろう。したがって、当業者は、当該技術分野における既存の知識に基づき、本発明のこの部分を容易に実施できるであろう。そのIL-22タンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような哺乳動物システムで、標準的な技法を用いて作製するのが適切である。ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)を用いて、その組み換えタンパク質のアフィニティー精製を補助してもよい。
【0091】
この点では、本発明で用いるようなIL-22タンパク質は、発現後に切断可能なHisタグを用いて調製でき、このタグは、ニッケルカラムへのアフィニティーによって精製できる10個未満、好ましくは6個のヒスチジン残基がN末端またはC末端に付加されている。Hisタグは、既知のプロテアーゼによって消化されて、遊離IL-22タンパク質を脱離できるリンカーを介して、タンパク質のN末端またはC末端に連結する。その切断可能なHisタグは、HHHHHHGGSSGSGSEVLFQというアミノ酸配列(配列番号21)を有することができ、そのプロテアーゼ切断性リンカーは、タバコエッチウイルス(TEV)リンカー(その天然型切断部位のコンセンサス配列は、ENLYFQ\S(配列番号22)であり、この配列中、「\」は、切断されるペプチド結合を示す)、またはヒトライノウイルス-14 3C(HRV14-3C)のプロテアーゼ切断性リンカー(EVLFQというコンセンサスな切断部位を有する)であることができる。切断は、およそ10μgのプロテアーゼを、2.5μgのタンパク質及び10mMの2-メルカプトエタノールとともに、室温で4時間インキュベートすることによって行ってよい。
【0092】
本発明をさらに例示するために、以下のように、タンパク質を調製する代表的なプロセスを示す。そのプロセスには、そのIL-22タンパク質の所望のアミノ酸配列をコードするプラスミドDNAを調製することが伴う。このプラスミドを細胞株、例えばCHO-K1に一過性にトランスフェクションでき、その細胞株を関連する培地中で成長させてから、既知のエンハンサーを追加することによって、成長を増大させる。続いて、既知の遠心分離法及び滅菌ろ過法を通じて、分泌されたIL-22タンパク質を回収してから、そのタンパク質をニッケルカラムで精製できる。濃縮及び緩衝液交換の後、HRV14-3Cプロテアーゼを用いてHisタグを除去してから、脂肪酸でアルキル化し(下にさらに説明されている)、最終精製及び緩衝液交換を行う。糖鎖除去とともに、または糖鎖除去を行わずに、SDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィー-タンデム質量解析(LC-MS-MS)を用いた、最終生成物の解析を利用して、その最終生成物の品質を担保できる。
【0093】
その脂肪酸は、第1の態様について記載されているように、そのIL-22タンパク質に、直接、またはリンカーを用いるかのいずれかで共有結合できる。そのリンカーは、当該技術分野で知られているいずれかの手段によって得ることができる。その脂肪酸及びリンカーを用いる場合、それらを調製する代表的な方法は、下記のとおりである(C16のジ酸によって例示されているが、同様の方法を用いて、いずれの誘導体も作製できる)。
【0094】
ジクロロメタン(500ml)中のN-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミド(100g、401mmol)の溶液を、ジクロロメタン(750ml)中のエチレンジアミン(189ml、2.81mol)の溶液に加える。30分後、その懸濁液をろ過、洗浄し、真空下で濃縮する。その残渣をトルエン(750ml)で希釈し、洗浄し、ジクロロメタン(4×200ml)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮し、ヘキサン(200ml)で希釈する。その溶液に、エーテル(100ml、400mmol)中の塩化水素の4M溶液を加え、得られた懸濁液を真空下で濃縮し、ヘキサン(1l)で希釈する。沈殿した固体をろ過し、ヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥して、(2-アミノエチル)カルバミン酸ベンジルエステル塩酸塩を白色粉末として得る。
【0095】
2-クロロトリチル樹脂100-200に、{2-[2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-エトキシ]-エトキシ}-酢酸(Fmoc-Ado-OH、17.5g、45.4mmol)を担持させる そのFmoc基を除去し、その樹脂に、N,Nジメチルホルムアミド(140ml)中の0-6-クロロ-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TCTU、24.2g、68.1mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(21.4ml、123mmol)の溶液を加え、その混合物を1時間振とうする。その樹脂をろ過及び洗浄する。20%ピペリジンで処理することによって、上記のように、そのFmoc基を除去する。その樹脂を上記のように洗浄する。
【0096】
その樹脂に、N,Nジメチルホルムアミド(140ml)中の(S)-2-(フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-ペンタン二酸1-tert-ブチルエステル(Fmoc-Glu-OtBu、29.0g、68.1mmol)、TCTU(24.2g、68.1mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(21.4ml、123mmol)の溶液を加え、その混合物を1時間振とうする。その樹脂を上記のようにろ過及び洗浄する。20%ピペリジンで処理することによって、上記のように、そのFmoc基を除去する。その樹脂を上記のように洗浄する。
【0097】
その樹脂に、N,N-ジメチルホルムアミド/ジクロロメタンの混合物(4:1、200ml)中の16-tert-ブトキシ)-16-オキソヘキサデカン酸(23.3g、68.1mmol)、TCTU(24.2g、68.1mmol)及びN,Nジイソプロピルエチルアミン(21.4ml、123mmol)の溶液を加える。その樹脂を1時間振とうし、ろ過し、N,N-ジメチルホルムアミド(3×250ml)、ジクロロメタン(2×250ml)、メタノール(2×250ml)及びジクロロメタン(6×250ml)で洗浄する。2,2,2-トリフルオロエタノール(250ml)で18時間処理することによって、その生成物をその樹脂から切断する。その樹脂をろ別し、ジクロロメタン(2×250ml)、2-プロパノール/ジクロロメタンの混合物(1:1、2×250ml)、2-プロパノール(250ml)及びジクロロメタン(3×250ml)で洗浄する。
【0098】
その溶液を合わせ、その溶媒を蒸発させ、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製する。純粋な(S)-22-(tert-ブトキシカルボニル)-41,41-ジメチル-10,19,24,39-テトラオキソ-3,6,12,15,40-ペンタオキサ-9,18,23-トリアザドテトラコンタン酸を真空下で乾燥し、淡黄色の濃厚な黄色油として得る。
【0099】
その後に、乾燥ジクロロメタン(110ml)中の(S)-22-(tert-ブトキシカルボニル)-41,41-ジメチル-10,19,24,39-テトラオキソ-3,6,12,15,40-ペンタオキサ-9,18,23-トリアザドテトラコンタン酸(22.4g、27.4mmol)の溶液に、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、11.4g、30.1mmol)及びトリエチルアミン(8.77ml、62.9mmol)を加える。乾燥ジクロロメタン(165ml)中の(2-アミノ-エチル)-カルバミン酸ベンジルエステル塩酸塩(6.94g、30.1mmol)の懸濁液にトリエチルアミン(72ml、41.0mmol)を加え、得られた混合物を上記の溶液に加える。その混合物を室温で一晩撹拌してから、蒸発乾固する。その残渣を再溶解し、洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィー(Silicagel60、0.040~0.060mm、溶離液:ジクロロメタン/メタノール(95:5))蒸発して、15-[(S)3-(2-{2-[(2-{2-[(2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-エチルカルバモイル)-メトキシ]-エトキシ}エチル-カルバモイル)メトキシ]エトキシ)-エチルカルバモイル)-1-tert-ブトキシカルボニルプロピルカルバモイル]-ペンタデカン酸tert-ブチルエステルを淡黄色の濃厚な油として得る。
【0100】
メタノール(350ml)中の上記の化合物(23.8g、24.0mmol)の溶液にパラジウム炭素(10%、1.27g、1.20mmol)を加え、得られた混合物に、常圧で4時間水添する。その触媒をろ別し、そのろ液を蒸発乾固する。メタノールの残渣を除去するために、その残渣をジクロロメタンから数回蒸発させ、真空下で乾燥して、tert-ブチル(S)-1-アミノ-25-tert-ブトキシカルボニル)-4,13,22,27-テトラオキソ-6,9,15,18-テトラオキサ-3,12,21,26-テトラアザドテトラコンタン-42-オエートを濃厚な無色の油として得る。
【0101】
乾燥ジクロロメタン(290ml)中の上記のアミン(20.5g、23.8mmol)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.98ml、28.6mmol)を-30℃で、アルゴン下で加える。ブロモアセチルブロミド(2.48ml、28.6mmol)を滴下し、得られた溶液を-30℃で、さらに3時間撹拌する。その冷却浴を除去し、その混合物を室温で1時間撹拌し、その溶媒を真空下で除去する。その残渣を酢酸エチル(450ml)に再溶解し、クエン酸の5%水溶液(300ml)で洗浄する。その相を1時間以内に分離する。有機層を一晩分離させて、3つの相を得る。その透明な水層を除去し、残りの2相を臭化カリウムの飽和水溶液(100ml)とともに振とうする。それらの相を一晩分離させ、その水相を除去し、その有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥する。その溶媒を真空下で除去し、その残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー:ジクロロメタン/メタノール(95:5))によって精製し、tertブチル(S)-1-ブロモ-28-tert-ブトキシカルボニル)-2,7,16,25,30-ペンタオキソ-9,12,18,21-テトラオキサ-3,6,15,24,29-ペンタアザペンタ-テトラコンタン-45-オエートを無色の固体として得る。
【0102】
上記の化合物(19.5g、19.8mmol)をトリフルオロ酢酸(120ml)に溶解し、得られた溶液を室温で1.5時間撹拌する。トリフルオロ酢酸を真空下で除去し、その残渣をジクロロメタン(6×200ml)から蒸発させる。その油状残渣にジエチルエーテル(200ml)を加え、その混合物を一晩撹拌し、懸濁液を得る。その固体生成物をろ過し、ジエチルエーテル及びヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥して、所望の生成物15-{(S)-1-カルボキシ3-[2-(2-{[2-(2-{[2-(2-ブロモアセチルアミノ)エチルカルバモイル]メトキシ}-エトキシエチル-カルバモイル]メトキシ}エトキシル-エチルカルバモイル]プロピルカルバモイル}ペンタデカン酸を白色粉末として得る。
【0103】
その脂肪酸またはリンカーのそのIL-22タンパク質への共有結合は、当該技術分野における標準的な手順を用いて行ってよい。すなわち、リンカーを用いる場合には、リンカーにより、そのIL-22タンパク質をその脂肪酸に共有結合させる。非限定的な例として、Cys反応性の脂肪酸またはリンカーは、そのIL-22タンパク質のCys残基の硫黄原子と反応して、チオエーテル結合を形成し得る。その共有結合工程に適する条件は、以下のように例示し得る。すなわち、水中のトリスを、トリス及びNaCl-緩衝液(1.35mg/ml)中のIL-22タンパク質(70mg)に加えて、pH8まで調整する。水に溶解したビス(p-スルホナトフェニル)-フェニルホスフィン二水和物二カリウム(BSPP)塩(12mg)を加え、緩やかに4時間、室温で撹拌する。エタノール(0.5ml)中の15-{(S)-1-カルボキシ-3-[2-(2-{[2-(2-{[2-(2-ブロモアセチルアミノ)-エチルカルバモイル]エトキシ}エトキシ)エチルカルバモイル]メトキシ}エトキシ)エチルカルバモイル]プロピル-カルバモイル}ペンタデカン酸(19mg、0.022mmol)を加え、その混合物を緩やかに一晩撹拌する。ミリQ水(150ml)を加え、その伝導率を2.5mS/cmに低下させる。続いて、結合緩衝液(20mMのトリス、pH8.0)、溶出用緩衝液(20mMのトリス、500mMのNaCl、pH8.0)、流量6ml、及び60カラム容量を超えるグラジエント0-80%の溶出用緩衝液を用いたMonoQ 10/100 GLカラムで、アニオン交換を用いて、その混合物を精製する。
【0104】
本発明の誘導体は、クロマトグラフィー、電気泳動、溶解度差または抽出など、当該技術分野で知られているいずれかの適切な手順を用いて精製してよい。
【0105】
本明細書に記載されているように、本発明者は、生物学的活性を維持したままで、脂肪酸をIL-22タンパク質に共有結合できることを見出し、驚いた。このように、IL-22に対する改変が最小限であることにより、高い(hIL-22に近い)効力が得られるとともに、循環半減期を非常に長くできるのは、特に驚くべきことであった。この特定の組み合わせの特性は、非常に望ましい場合がある。
【0106】
その誘導体の効力は、ヒトIL-22受容体を発現する全細胞によって、in vitroアッセイで求めてよい。例えば、ヒトIL-22受容体の応答は、IL-22R1、IL-10R2及びリン酸化STAT3(pSTAT3)応答性レポーター遺伝子を過剰発現するベビーハムスター腎臓(BHK)細胞を用いて測定し得る。あるいは、そのIL-22受容体を内在的に発現するHepG2細胞を用いてもよい。その受容体の活性化により、STAT3シグナル伝達経路が活性化し、それにより、例えば、STAT3で誘導されるプロモーターを有するルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いて、またはpSTAT3をアッセイすることによって測定できる。In vivo効力は、当該技術分野で知られているように、動物モデルまたは臨床試験で求めてよい。
【0107】
薬物の効力の尺度として、半最大効果濃度(EC50)の値を用いる場合が多い。この尺度は、最大効果の50%をもたらすのに必要な薬物濃度を表すので、EC50値が低いほど、効力が高い。本発明の誘導体は適切にも、細胞内で、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化を用いて測定した効力(EC50値)が、1.5nM未満、1.25nM未満、1nM未満、0.75nM未満、0.5nM未満、0.25nM未満またはさらには0.1nM未満である(例えば、実施例1に記載されているようにして求めた)。本発明の誘導体は適切にも、細胞内で、pSTAT3をアッセイすることによって測定した効力(EC50値)が、15nM未満、12nM未満、10nM未満、7nM未満またはさらには5nM未満である。
【0108】
有益なことに、そのIL-22誘導体の効力は、IL-22-Fc融合体の効力よりも高いことがある。例えば、Genentechは、そのIL-22-Fc融合体UTTR1147Aのin vitro効力が、hIL-22と比べて34分の1に低下したことを報告している(Stefanich et al.,Biochem Pharmacol,2018,152:224-235)。これに対して、脂肪酸のバリアントhIL-22への共有結合によっては、効力が3分の1または5分の1にしか低下しないことが示されている(実施例1における誘導体1及び2を参照されたい)。IL-22-Fc融合体及び本発明の誘導体の両方とも、半減期がhIL-22よりも改善する点、及び少なくともいくつかの状況での生体機能の改善という点では、同程度である場合があるが、本発明の誘導体は、効力の低下が最小限であるという追加の利点を有する場合がある。
【0109】
その誘導体の循環排泄半減期(T1/2)は、マウス、ラットまたはミニブタのような適切な動物モデルで、その誘導体を皮下投与または静脈内投与することによって、in vivoで求めてよい。適切な方法は、当業者には分かるであろう。非限定的な例として、第1の態様の誘導体は、マウスに皮下投与または静脈内投与した後の循環半減期が、少なくとも1時間、少なくとも3時間、少なくとも5時間またはさらには少なくとも8時間である。その誘導体は、ラットに皮下投与または静脈内投与した後の循環半減期が、少なくとも3時間、少なくとも5時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間またはさらには少なくとも13時間であるとみられる。その誘導体は、ミニブタに皮下投与または静脈内投与した後の循環半減期が、少なくとも25時間、少なくとも40時間、少なくとも70時間またはさらには少なくとも100時間であるとみられる。
【0110】
本発明者は、本発明の誘導体がin vivoにおいて速やかに吸収されることも見出した。有益なことに、皮下投与後のその誘導体の吸収は、IL-22-Fc融合体の吸収よりも速く行われる可能性がある。平均吸収時間は、取り込み量を測定するための正確なパラメーターである。用量、及び薬物投与後の最高血漿中濃度の影響を受けないからである。吸収時間は、平均滞留時間、すなわち、薬物が、吸収の完了から排泄まで、体内に滞留する時間に基づき計算できる。本発明の誘導体は適切にも、ブタにおける平均吸収時間が、100時間未満、90時間未満、80時間未満、70時間未満またはさらには60時間未満である。
【0111】
本発明の誘導体は、高い物理的安定性及び/または溶解度のような生物物理学的な特性に優れており、これらの特性は、当該技術分野における標準的な方法を用いて測定し得る。実際、モノ酸で誘導体化されたバリアントは、生物物理学的な特性が、hIL-22と比べて有意に変化しており、それにより、その潜在的な治療能力が改善される。注目すべきことに、その誘導体は、例えば、アルブミンへの結合及び脂質膜との相互作用を通じて、タンパク質分解及び腎臓での除去に対して安定化している。重要なことに、本発明者は、脂肪酸部分を含むモノ酸のコンジュゲーションをIL-22タンパク質の主鎖の所定の部位で行うことができ、そのコンジュゲートされた誘導体の活性が、in vitroで測定した場合に、損なわれることもないことを見出した。
【0112】
したがって、本発明の第3の態様によれば、第1の態様の誘導体と薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物を提供する。その医薬組成物は、吸入による投与、注射による投与、局所投与、経口投与または点眼による投与に適することがあり、任意に、その注射は、本明細書にさらに記載されているように、腹腔内注射、皮下注射または静脈内注射である。一実施形態では、皮下投与が好ましい。一実施形態では、静脈内投与が好ましい。一実施形態では、経口投与が好ましい。
【0113】
第3の態様の医薬組成物は、本明細書で説明または想定されている様々なIL-22誘導体のいずれかを含んでよい。その医薬組成物は、本明細書で誘導体1、2、3または4と定められているIL-22誘導体の1つを含むのが適切である。
【0114】
第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物は適切にも、hIL-22と比べて、循環排泄半減期の延長を示す。有益なことに、循環排泄半減期が、hIL-22と比べて少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%以上延長することになる。
【0115】
第3の態様の医薬組成物は、第1の態様の誘導体を治療有効量と、薬学的に許容されるビヒクルとを組み合わせることによって調製し得る。薬学的に活性な成分と様々な賦形剤との調合は、当該技術分野で知られている。
【0116】
第1の態様の誘導体の「治療有効量」は、対象に投与したときに、疾患、障害または病状を治療するか、または所望の効果をもたらすのに必要となる誘導体量であるいずれかの量である。
【0117】
例えば、使用する誘導体の治療有効量は、約0.001mg~約1000mg、好ましくは約0.01mg~約500mgであってよい。誘導体の量は、約0.1mg~約100mg、最も好ましくは約0.5mg~約50mgの量であるのが好ましい。
【0118】
「薬学的に許容されるビヒクル」とは、本明細書で言及されている場合には、医薬組成物を調合する際に有用であることが当業者に知られているいずれかの既知の化合物、または既知の化合物の組み合わせである。
【0119】
一実施形態では、その薬学的に許容されるビヒクルは、固体であってよく、任意に、その組成物は、再懸濁用の粉末の形態であってよい。薬学的に許容される固体ビヒクルとしては、香味剤、滑沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤、色素、充填剤、潤沢剤、不活性結合剤、保存剤または色素としても作用する1つ以上の物質を挙げてよい。そのビヒクルは、カプセル化材であってもよい。散剤においては、ビヒクルは、本発明による微粉化誘導体と添加混合された微粉化固体である。その散剤は好ましくは、最大で99%の誘導体を含む。適切な固体ビヒクルとしては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース及びイオン交換樹脂が挙げられる。
【0120】
別の実施形態では、医薬用ビヒクルはゲルであってもよく、その組成物は、クリームなどの形状であってもよい。
【0121】
しかしながら、医薬用ビヒクルは液体であってもよく、任意に、その医薬組成物は、溶液の形状であってもよい。液体ビヒクルは、溶液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤及び加圧組成物を調製する際に用いる。本発明による誘導体は、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物、または薬学的に許容される油もしくは脂肪のような薬学的に許容される液体ビヒクルに溶解または懸濁してよい。液体ビヒクルは、溶解補助剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調節剤、安定剤または浸透圧調節剤のようなその他の適切な医薬品添加物を含むことができる。非経口投与用の液体ビヒクルの適切な例としては、水(上記のような添加物、例えば、セルロース誘導体、好ましくはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液を部分的に含む)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコールを含む)及びそれらの誘導体、ならびに油(例えば、精製ヤシ油及びラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与用では、ビヒクルは、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルのような油性エステルであることもできる。滅菌液体ビヒクルは、非経口投与用の滅菌液体形状の組成物に有用である。加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素またはその他の薬学的に許容される噴射剤であることができる。
【0122】
すなわち、本発明の医薬組成物を調製するプロセスは、当該技術分野において標準的な通常の工程を含んでよい。
【0123】
したがって、本発明の第4の態様によれば、治療で使用するための第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物を提供する。対象を本発明の誘導体またはその誘導体を含む医薬組成物で治療する方法も提供する。本発明で説明または想定されている様々なIL-22誘導体のいずれも、本発明のこれらの態様に明示的に含まれる。
【0124】
本明細書で使用する場合、「治療すること」及び「療法」のような用語には、疾患、障害または病状の治療、改善または予防が明示的に含まれる。
【0125】
そのIL-22誘導体またはその誘導体を含む医薬組成物は、治療すべき対象に直接投与してよい。その誘導体または医薬組成物は、吸入による投与、注射による投与、局所投与、経口投与、直腸投与または眼内投与を含むいずれかの手段によって投与してよい。吸入によって投与するときには、鼻または口を介してよい。好ましくは、その誘導体または医薬組成物は、注射によって投与し、典型的には、皮下投与または静脈内投与する。上記のように、本発明のモノ酸誘導体の親油性は、局所投与、経口投与、直腸投与(例えば、坐剤もしくはフォーム剤)または肺吸入にも有益である場合がある。したがって、その誘導体は、投与(例えば、注射による投与、吸入による投与、局所塗布、直腸投与もしくは経口投与、または点眼送達)の柔軟性において、Fc融合体を上回る明らかな利点を有する。その誘導体の方が、サイズが小さく、効力が高いからである。治療すべき対象に、本発明の誘導体を投与すると、hIL-22と比べて循環時間が長くなり、このことが、疾患、障害または病状の治療を助けることは明らかであろう。上記のように、「治療すること」には、疾患、障害または病状を改善及び予防することも含まれる。
【0126】
滅菌溶液剤または滅菌懸濁剤である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内注射、髄腔内注射、硬膜外注射、腹腔内注射及び特には皮下注射または静脈内注射によって利用できる。その誘導体は、投与時に、滅菌水、滅菌生理食塩水またはその他の適切な注射可能な滅菌媒質を用いて溶解または懸濁してよい滅菌固体組成物として調製してよい。
【0127】
吸入に有用な形状としては、滅菌溶液剤、滅菌乳剤及び滅菌懸濁剤が挙げられる。あるいは、その誘導体は、Dischaler(登録商標)またはTurbohaler(登録商標)を介して、微粉末またはエアゾール剤の形状で投与してよい。経鼻吸入は適切にも、微粉末もしくはエアゾールの点鼻スプレーの形状、または改変型のDischaler(登録商標)もしくはTurbohaler(登録商標)であってもよい。
【0128】
局所製剤としては、溶液剤、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、パスタ剤、チンキ剤及びパウダー剤が挙げられる。その製剤は、経皮塗布、すなわち、皮膚に直接塗布してもよいし、または粘膜に塗布してもよい。
【0129】
経口投与は適切にも、錠剤、カプセル剤、または液体懸濁剤もしくは乳剤を介してよい。経口投与用の液体ビヒクルの適切な例としては、水(添加物、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液を部分的に含む)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコールを含む)及びそれらの誘導体、ならびに油(例えば、精製ヤシ油及びラッカセイ油)が挙げられる。本発明の誘導体は、他の溶質または懸濁化剤(例えば、その溶液を等張化するのに十分な生理食塩水またはグルコース)、胆汁塩、アカシア、ゼラチン、ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80(ソルビトールとその無水物のオレイン酸エステルを酸化エチレンと共重合したもの)などを含む滅菌溶液または滅菌懸濁液の形状で経口投与してよい。溶液剤、シロップ剤及びエリキシル剤も、本発明の一部を形成する。本発明による誘導体は、固体組成物の形状で経口投与することもできる。経口投与に適する固体組成物としては、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤及び散剤が挙げられる。
【0130】
直腸投与は適切にも、坐剤またはフォーム剤を介してもよい。
【0131】
眼内投与用の製剤は典型的には、局所塗布用の溶液剤、懸濁剤及び軟膏剤、例えば点眼剤の形状である。あるいは、滅菌溶液剤または滅菌懸濁剤を眼内注射によって使用できる。その誘導体は、投与時に、滅菌水、滅菌生理食塩水またはその他の適切な注射可能な滅菌媒質を用いて溶解または懸濁してよい滅菌固体組成物として調製してよい。その製剤は、結膜下注射用、硝子体内注射用、眼球後注射用または前房内注射用でもあってよい。
【0132】
本発明の誘導体または医薬組成物は、それを必要とするいずれの対象にも投与してよい。「対象」は、本明細書で使用する場合、脊椎動物、哺乳動物または飼育動物であってよい。したがって、本発明による誘導体及び組成物を用いて、いずれかの哺乳動物、例えば、家畜(例えばウマ)、ペットを治療してもよいし、または他の動物用の用途で用いてもよい。最も好ましくは、その対象は、ヒトである。その誘導体及び組成物は、疾患、障害または病状の徴候がすでに見られる者のみに投与する必要はない。むしろ、それらは、一見健康である対象に、純粋に、将来このような疾患、障害または病状に罹患する可能性に対する予防的措置として投与できる。
【0133】
本発明によるIL-22誘導体及び組成物は、疾患、障害または病状を治療するために、単剤療法(すなわち、その誘導体または組成物の単独使用)で用いてよいことは明らかであろう。あるいは、本発明による誘導体及び組成物は、疾患、障害または病状を治療するための既知の療法の補助剤として、またはその療法と組み合わせて用いてよい。
【0134】
IL-22誘導体の所要量は、その生物学的活性、半減期及びバイオアベイラビリティによって求め、ひいては、投与方法、その誘導体及び組成物の生理化学的特性、ならびに単剤療法として用いるか、または併用療法で用いるかによって決まることは明らかであろう。投与頻度は、治療を受けている対象におけるその誘導体の半減期の影響も受けることになる。最適な投与量は、当業者が求めてよく、その量は、使用する特定の誘導体、医薬組成物の強度、投与方法、ならびに疾患、障害または病状の進行とともに変動する。対象の年齢、体重、性別、食事及び投与時間を含め、治療を受ける特定の対象によって決まる追加の要因により、投与量を調整する必要が生じる。
【0135】
概して、使用する誘導体または組成物に応じて、疾患、障害または病状を治療するために、本発明によるIL-22誘導体を体重1kg当たり0.001μg~体重1kg当たり10mgという1日量で用いてよい。より好ましくは、その1日量は、体重1kg当たり0.01μg~体重1kg当たり1mgであり、より好ましくは、体重1kg当たり0.1μg~体重1kg当たり500μgであり、最も好ましくは、およそ、体重1kg当たり0.1μg~体重1kg当たり100μgである。
【0136】
そのIL-22誘導体または組成物は、疾患、障害または病状の発症前、発症中または発症後に投与してよい。1日量は、1回の投与(例えば1日1回の注射)として与えてよい。あるいは、その誘導体または組成物は、1日に2回以上の投与が必要となることもある。例として、誘導体は、0.07μg~700mgの1日量(すなわち、体重を70kgと想定している)を2回(または、治療する疾患、障害または病状の重症度に応じて3回以上)として投与してよい。治療を受けている患者に、起床時に第1の用量を投与し、続いて、夕方に(2用量のレジメの場合)、またはその後に3時間もしくは4時間の間隔で、第2の用量を投与してよい。あるいは、1週間に1回、2週間に1回もしくは1カ月に1回、またはもっと頻繁に、例えば、1週間に2回もしくは3回、服用量を投与してよい。製薬業界(例えば、in vivo実験、臨床試験など)で従来から用いられている手順のような既知の手順を用いて、本発明による誘導体及び組成物の所定の製剤を形成するとともに、治療レジメ(薬剤の1日量及び投与頻度など)を実施してよい。
【0137】
多くの試験により、特に、肺、肝臓、腸、腎臓、皮膚、膵臓及び胸腺における複数の上皮損傷モデルにおいて、IL-22の重要な作用が示されている。機序的には、複数の研究者による試験において、例えば、抗アポトーシス、増殖、自然免疫、抗酸化ストレス、抗線維化及び幹細胞/前駆細胞の動員におけるいくつかの経路が、IL-22の作用を企てることが十分に実証されている。重要な機序的知見は、ヒト細胞株を用いてin vitroで、またはヒトex vivo モデル(例えば、ヒトの腸の初代オルガノイド)でさらに確認されている。すなわち、上皮損傷の際の細胞死の予防、再生の確保、及び炎症の制御におけるIL-22の強力な役割が、十分に確立されている。
【0138】
したがって、本発明の第5の態様によれば、治療方法で使用するための第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物を提供し、前記方法は、その誘導体を体重1kg当たり0.001μg~体重1kg当たり10mgの1日量で投与することを含む。このような1日量の投与は、本明細書にさらに説明されている。
【0139】
損傷させた遺伝子モデル(IL-22のノックアウトまたはトランスジェニック過剰発現)を解析することによって、多くの試験が行われている。これらの試験では、損傷時に、IL-22が欠損しているか、またはIL-22が過剰発現することになる。別の試験では、損傷時に、IL-22を抗体で中和し、場合によっては、急性損傷段階を越えて(例えば、亜急性に、またはかなり再生段階に入った時点まで)IL-22を中和する。その他の研究は、外生投与したIL-22の作用を見ることによって、治療シナリオにより近づいている。利用可能な文献で総合的に見ると、それぞれに異なるモデルにおいて、ノックアウト、過剰発現、損傷前もしくは損傷後のIL-22の中和またはタンパク質の外生投与にかかわらず、IL-22が、損傷器官を保護して、再生を促すという同じ状況が表されていることに留意するのが重要である。これにより、IL-22の治療潜在力の広範な用途及び広範なタイムウィンドウが示され、hIL-22よりも長時間作用するIL-22タンパク質がなぜ必要とされるのかも示されている。
【0140】
したがって、本発明の第6の態様によれば、代謝性、肝臓、肺、消化管、腎臓、CNSまたは皮膚の疾患、障害または病状を治療する方法で使用するための第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物を提供する。本発明で説明または想定されている様々なIL-22誘導体のいずれも、本発明のこの態様に明示的に含まれる。
【0141】
その代謝性の疾患、障害または病状は、肥満症、1型糖尿病、2型糖尿病、高脂血症、高血糖症または高インスリン血症であってよい。
【0142】
その肝臓の疾患、障害または病状は、NAFLD、NASH、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、ACLF、アセトアミノフェン誘発性肝臓毒性、急性肝損傷、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変、または手術もしくは移植を原因とする病理学的状態であってよい。
【0143】
その肺の疾患、障害または病状は、COPD、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、化学損傷、ウイルス感染、細菌感染または真菌感染であってよい。
【0144】
その消化管の疾患、障害または病状は、IBD、潰瘍性大腸炎、クローン病、GvHD、化学損傷、ウイルス感染または細菌感染であってよい。
【0145】
その腎臓の疾患、障害または病状は、急性腎臓病または慢性腎臓病であってよい。
【0146】
そのCNSの疾患、障害または病状は、多発性硬化症であってよい。
【0147】
その皮膚の疾患、障害または病状は、創傷、炎症性疾患またはGvHDであってよい。
【0148】
IL-22誘導体またはその誘導体を含む医薬組成物で、IL-22による治療に応答する病状、例えば、上記の疾患、障害または病状の1つ以上を有する対象を治療する方法も提供する。
【0149】
そのIL-22誘導体は、本発明の第1の態様について定められた特徴のすべてを有する。その医薬組成物は、本発明の第3の態様について定められた特徴のすべてを有する。IL-22による治療に応答する病状、例えば、上記の疾患、障害または病状の1つ以上を有する対象を治療する方法は、本発明の第4の態様について定められた特徴のすべてを有する。
【0150】
本明細書に記載されているようなIL-22誘導体または組成物のどれを、どの患者に投与すべきかに関する制限はない。むしろ、本明細書に記載されている誘導体及び組成物のいずれも、本明細書に記載されているようないずれの患者にも投与できることが意図されている。
【0151】
本明細書(いずれの添付の特許請求、要約及び図面を含む)に記載されている特徴のすべて、及び/または本明細書で開示されているいずれの方法もしくはプロセスの工程のすべては、上記態様のいずれと、いずれの組み合わせでも組み合わせてよく、ただし、このような特徴及び/または工程の少なくともいくつかが相反する組み合わせを除く。
【0152】
本発明をさらに深く理解するために、また、本発明の実施形態を実施し得る方法を示すために、以下では、実施例について述べるが、実施例は、いかなる場合も、本発明を限定するようには意図されていない。
【実施例】
【0153】
実施例に記載されている試験で用いた材料及び方法は、別段に示されていない限り、以下のとおりであった。
【0154】
誘導体及び比較薬
表4には、データセットで表された、IL-22誘導体及び比較薬の大要が示されている。
【0155】
そのIL-22誘導体は、主鎖及び共有結合部位がそれぞれ異なっていた。誘導体1~4のそれぞれで用いたリンカーは、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Acであった。そのリンカーは、残基95Cまたは残基106Cに結合していた。
【0156】
比較薬には、hIL-22及びhFc-hIL-22(組み換え融合タンパク質)が含まれる。また、比較薬として含まれるのは、様々な主鎖、様々な種類の脂肪酸及び様々な共有結合部位を有するhIL-22誘導体であり、すなわち、本発明を適用し得る誘導体の多様性を表している。比較薬7(-7C)、9(-7C)、13(6C)及び14(33C)を除くすべての場合において、そのリンカーは、残基1Cに結合させた。比較薬12は、1Cでの共有結合を例示するものであるが、1Cで共有結合された脂肪酸を有する他の誘導体の大半に存在するG-P-GというN末端ペプチドを欠損している。
【表4-1】
【表4-2】
【0157】
以下は、プロトコールの例示であり、特許請求されている発明を例示するように意図されているに過ぎない。実施例のために作製したような比較薬6~9及び11の品質管理解析は、以下のように行った。
【0158】
1mg/mlの試料を20μl、N-グリコシダーゼF 2μlに室温で48時間加えることによって、糖鎖除去後の試料で、タンパク質のインタクト質量を求めた。続いて、その試料をpH7.4のPBSで0.2mg/mlまで希釈し、Waters MassLynx4.1を用いたWaters Synapt G2に接続したSynapt G2を用いて解析した。A:水中0.1%のギ酸及びB:アセトニトリル/0.09%ギ酸という移動相(複数可)とともに、10-90 Column Acquity UPLC Protein BEH C4(1.7μm、1×100mm)を使用した。流量は120μl/分とし、UVは214nm(20pts/秒)とし、グラジエントは表5に示されているとおりであった。
【表5】
【0159】
【0160】
すなわち、品質管理データによって、意図した比較薬が実際に作製されたことが確認された。
【0161】
以下は、プロトコールの例示であり、特許請求されている発明を例示するように意図されているに過ぎない。当業者には分かるように、これらの試験で用いた動物及び時間経過の正確な数字は変動し得る。
【0162】
実施例1-C95またはC106の修飾を有するIL-22誘導体のin vitro効力試験
方法
レポーター遺伝子アッセイを用いて、IL-22Ra、IL-10Rb、及びSTAT3で誘導されるプロモーターを有するルシフェラーゼをトリプルトランスフェクションしたBHK細胞において効力を試験した。この試験は、感度が高いハイスループットなアッセイであり、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化を測定した。
【0163】
(i)pcDNA3,1hygro(+)内のhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)内のIL22R及び(iii)pGL4.20内の2xKZdel2というプラスミドを用いて、安定なレポーターBHK細胞株を作製した。すなわち、その細胞株により、pSTAT3駆動性のプロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現させた。
【0164】
アッセイプロトコールの0日目に、その細胞を96ウェルプレート(Corning#3842、ブラック、クリアボトム)において、基礎培地(500mlの場合:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号31966-021)、10%(w/v)ウシ胎仔血清(FCS、アルブミンを含む)(50ml)及び1%(w/v)ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5ml))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、そのプレートを反転させることによって、培地を除去した。新しい基礎培地を1ウェル当たり50μl加え、その細胞を60分インキュベートした。
【0165】
そのIL-22誘導体を比較薬としてのhIL-22とともに、duplicateで試験した。
【0166】
すなわち、各ウェルに、希釈した誘導体または比較薬(基礎培地で希釈)を50μl加え、そのプレートを4時間静置した。すなわち、すでにウェルにおいて50μlの培地中で希釈されていたので、その誘導体及び比較薬は2倍希釈されていた。Steadylite plus試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を100μl加えることによって、その刺激を4時間後に終了した。そのプレートをTopSeal Aで密閉し、450rpmで15分振とうしてから、12時間後以内に、Mithrasまたは類似のシステムを用いて読み取った。
【0167】
Graphpad Prismを用いて、データ解析を行った。それぞれの誘導体または比較薬の半最大効果濃度(EC50)をその効力の尺度として評価した。EC50は、log(化合物)と応答との対比(可変勾配(4p))を用いて求めた。曲線の傾きは、標準物質を1とした。
【0168】
結果
表7には、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化について、BHK細胞レポーター遺伝子アッセイで測定した誘導体及び比較薬のEC
50が示されている。
【表7】
【0169】
そのBHK細胞アッセイは、大量のアルブミンを含んでいたので、これらの誘導体を試験した時には、EC50測定値には、アルブミンの結合の影響が組み込まれていた。
【0170】
アルブミンが存在するBHK細胞アッセイでは、誘導体1は、効力がhIL-22と比べて3分の1に低下し、誘導体2は、効力がhIL-22と比べて5分の1に低下した。
【0171】
結論
その培地中にアルブミンを有するBHK細胞アッセイでは、誘導体1及び誘導体2では、効力がhIL-22と比べて3分の1または5分の1に低下した。それに比べて、上記のように、Genentechにより、IL-22のFc融合体については、in vitro効力が34分の1に低下したことが報告されている。
【0172】
すなわち、IL-22誘導体は、アルブミンの存在下でも、効力がhIL-22と同程度である。Cys置換及びGln置換、ならびに脂肪酸の共有結合は、異なる位置でも許容される。実際、本発明者は、天然のアミノ酸をCysに置換することで、95番目及び106番目の残基へコンジュゲーションしても、IL-22タンパク質の活性に対する影響が最小限であるので、これらの残基が、特に魅力的なコンジュゲーション部位とみなされることを示した。その天然のアミノ酸は、R95及びL106である。
【0173】
すなわち、データにより、本発明の誘導体は、バイオアベイラビリティ及び効力に優れるので、代謝性、肝臓、肺、消化管、腎臓、CNS及び皮膚の疾患、障害及び病状を含む広範な適応症に対する新規かつ改善型の治療が得られることが示されている。
【0174】
実施例2-ジ脂肪酸を含む比較薬の薬物動態試験
方法
マウス(n=27)、ラット(n=4~8)及びミニブタ(n=2~5)において、hIL-22及びhFc-hIL-22を含め、所定の比較薬で薬物動態試験を行った。
【0175】
(i)マウス及びラット
8週齢の雄C57Bl/6マウスを30匹と、雄Sprague Dawleyラットを5匹、Taconic Biosciencesから入手した。そのマウスを10匹からなる群で飼育した。動物は、実験の前に、1週間馴化した。投与前に、体重を測定した。これは、薬物動態の計算のために重要である。これらの動物は、実験の全体にわたって覚醒させていたとともに、餌及び水を自由摂取させた。
【0176】
いずれの比較薬も、マウス用には、PBS(pH7.4)中0.3mg/mlの溶液として、ラット用には0.5mg/mlの溶液として調製した。マウスでは、2.0mg/kgの用量を試験した。ラットでは、1mg/kgの用量を試験した。
【0177】
その比較薬は、これらの動物に皮下投与した。投与後、所定の時点に、血液試料を採取した。
【0178】
マウスでは、スパースサンプリングを利用し、すなわち、27匹のマウスに比較薬を投与し、血液試料を3匹の異なるマウスから、5分、15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分、150分、3時間、4時間、6時間、8時間、16時間、24時間、32時間及び48時間という時点のそれぞれに採取した。したがって、それぞれのマウスは、試験過程において採取した試料が2個に過ぎなかった。最後の試料を採取後、マウスは、頸椎脱臼によって安楽死させた。
【0179】
5匹のラットに比較薬を投与し、3つの血液試料を5分、15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分、150分、3時間、4時間、6時間、8時間及び24時間という時点のそれぞれに採取した。それぞれのラットは、試験過程において採取した試料が17個であった。最後の試料を採取後、ラットは、二酸化炭素によって安楽死させた。
【0180】
血液試料(100μl)は、マウス及びラットから舌の血液によって採取し、EDTAチューブ(Microvette(登録商標)VetMed 200 K3E、Sarstedt番号09.1293.100)に移した。採取から20分以内に、その血液を5分、8000G、4℃で遠心分離した。その血漿試料(40~50μl)をMicronicのハーフチューブに移した。
【0181】
(ii)ミニブタ
体重がおよそ15kgである9カ月齢の雌のGottingen系ミニブタをEllegaard Gottingen Minipigs A/Sから入手した。手術(カテーテル挿入)前に、馴化期間をおよそ18日置き、その期間中には、カテーテルからの皮下投与及び血液サンプル採取に備えて、ミニブタの社会化及びしつけを行った。手術の3~5日前には、ミニブタを単独で飼育した。投与の6日前には、すべてのミニブタに、中心静脈カテーテル(Cook Medical、C-TPNS-6.5-90-REDO、シリコン、サイズ6.5フレンチ、長さ106cmのタイプのTPN)が2本挿入されており、手術後、少なくとも5日間の回復時間を置いてから、試験(投与)を開始した。
【0182】
いずれの比較薬も、PBS(pH7.4)中の溶液として調製した。使用した用量は、0.1mg/kg(静脈内投与)または0.2mg/kg(皮下投与)であった。
【0183】
ミニブタは、投与中、プロポフォールで軽度に麻酔した。静脈内注射は、ミニブタに、長中心カテーテルを通じて行った。投与後、カテーテルを10mlの滅菌生理食塩水でフラッシュした。皮下注射は、25Gのニードルを用いて、深さ5mmで行った。ニードルは、注射後、皮膚内に10秒保持して、逆流を回避した。
【0184】
血液試料をそのミニブタから、静脈内投与の1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、24時間後、28時間後、48時間後、72時間後、96時間後、144時間後、168時間後、192時間後、216時間後、240時間後、264時間後、312時間後、336時間後、360時間後、384時間後、408時間後、432時間後及び480時間後という時点に採取した。血液試料を皮下投与からは1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、14時間後、16時間後、18時間後、20時間後、22時間後、24時間後、26時間後、28時間後、46時間後、52時間後、72時間後、96時間後、144時間後、168時間後、192時間後、216時間後、240時間後、264時間後、312時間後、336時間後、360時間後、384時間後、408時間後、432時間後及び480時間後という時点に採取した。
【0185】
血液試料(1ml)は、ミニブタからEDTAチューブ(血液1ml当たり1.6mgのK3EDTAを得るために、K3EDTAの入った1.3mlチューブ(Sarstedt,Germany))に採取した。試料は、湿った氷の上で、最長で30分、遠心分離(10分、4℃、2000G)されるまで保持した。比較薬の測定に備えて、200μlの血漿をMicronicチューブに移し、解析するまで、-20℃で保存した。
【0186】
(iii)試料の処理
以前に説明されているように(Poulsen et al.J Biomol Screen,2007,12(2):240-7)、自社開発の発光酸素チャネリング(LOCI(登録商標))アッセイを用いて、比較薬の血漿中レベルを測定した。このアッセイの際には、濃度依存性のビーズ-アナライト免疫複合体を作製することで、光を出力させ、その光をPerkin Elmer Envisionというリーダーで測定した。抗体のビーズへのカップリング、抗体のビオチン化及びLOCIアッセイ手順は、以前に説明されているようにして行った(Petersen et al.,J Pharmaceut Biomed,2010,51(1):217-24)。キャリブレーター及び品質管理(QC)試料を試験試料と同じマトリックスで作製した。アッセイ精度(CV(%))を評価したところ、すべての試験試料において、20%未満であることが示された。
【0187】
アッセイでは、抗ヒトIL-22モノクローナル抗体(R&D Systems MAB7822)コンジュゲートアクセプタービーズを、ビオチン化モノクローナル抗体(R&D Systems BAM7821、ヒトIL-22に対して作製)及び一般的なストレプトアビジンコートドナービーズとともに使用した。ラット血漿中のヒトIL-22の定量下限未満(LLOQ)は、4pMであった。しかしながら、それぞれの比較薬は、同じ比較薬のキャリブレーター群に対して測定した。それぞれの比較薬のhIL-22に対する交差反応性を測定し、それを用いて、アッセイ感度を調整した。
【0188】
Phoenix WinNonlin Professional 6.4(Pharsight Inc)で、ノンコンパートメント解析(NCA)を用いて、ミニブタについて、血漿中濃度-時間のプロファイルを測定した。個々の濃度を用いるとともに、1/(Y×Y)によって重み付けして、線形対数台形を用いて計算を行った。循環排泄半減期(T1/2)は、第1のスクリーニングパラメーターであったので、静脈内投与を用いた。クリアランス及び分布体積は、対象とする第2のパラメーターであり、試験1日目に頻繁に血液試料を採取する理由であった。
【0189】
マウス及びラットにおいて、薬物動態を評価する目的で測定した唯一のパラメーターは、循環排泄半減期(T1/2)であった。ミニブタでは、測定した追加のパラメーターは、薬物投与後の最高(ピーク)血漿中濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでの時間(Tmax)、血漿中薬物濃度-時間曲線下面積(AUC、ある用量の薬物を投与後の実際の薬物生体暴露を反映する)を薬物用量について正規化したもの(AUC/D)、平均滞留時間(MRT、すなわち、薬物が、吸収の完了から排泄まで、体内に滞留する時間)、平均吸収時間(MAT)及び投与量の全身アベイラビリティ(すなわちバイオアベイラビリティ、F)であった。MATは、皮下投与後のMRT(MRTSC)から、静脈内投与後のMRT(MRTIV)を減じた値として計算されている。
【0190】
結果
表8には、マウスで得られた結果が示されており、表9には、ラットで得られた結果が示されており、表10及び11には、ミニブタで得られた結果が示されている。NDは、未決定である。IVは、静脈内投与である。SCは、皮下投与である。
【表8】
【0191】
表8に示されているように、主鎖バリエーションのみを有するhIL-22バリアント(比較薬1及び3)は、投与経路にかかわらず、循環半減期が短かった。Fcの融合による保護(hFc-hIL-22)により、半減期が大幅に延長された。脂肪酸の共有結合(C18のジ酸、比較薬6及び11)により、マウスでは、循環半減期が中程度となった。それらの比較薬は、マウスでは、皮下投与した時に、静脈内投与と比べて循環期間が長くなった。
【0192】
上記から、hIL-22のR95C位またはL106C位で、C18のジ酸がCysに共有結合されていると、マウスにおいて、循環半減期が同様に中程度となることは明らかである。すなわち、誘導体1、2、3または4のように、R95CまたはL106Cという置換を含む誘導体においても、同様の結果が予想される。
【表9】
【0193】
表9に示されているように、主鎖バリエーションのみを有するhIL-22バリアント(比較薬1)は、循環半減期が短かった。脂肪酸の共有結合(比較薬6、8及び11)により、ラットでは、用いた脂肪酸(C16のジ酸に対してC18のジ酸)及び投与経路にかかわらず、循環半減期が延長された。それらの比較薬は典型的には、皮下投与した時に、静脈内投与と比べて循環期間が長くなった。
【0194】
上記から、hIL-22のR95C位またはL106C位で、C16またはC18のジ酸がCysに共有結合されていると、ラットにおいて、循環半減期が同様に中程度となるとともに、皮下投与すると、静脈内投与と比べて循環時間が延長されることは明らかである。すなわち、誘導体1、2、3または4のように、R95CまたはL106Cという置換を含む誘導体についても、同様の結果が予想される。
【表10】
【0195】
表10に示されているように、主鎖バリエーションのみを有するhIL-22バリアント(比較薬1及び2)は、循環半減期が短く、hIL-22と同程度であった。比較薬であるFc融合体(hFc-hIL-22)、及びその他の比較薬のすべて(比較薬6、11及び15)は、循環半減期が有意に延長された。比較薬6、11及び15は、ミニブタでは、静脈内投与したところ、循環半減期が50時間を超え、比較薬であるIL-22-Fc融合体と同程度であった。
【0196】
上記から、hIL-22のR95C位またはL106C位で、C16またはC18のジ酸がCysに共有結合されていると、ミニブタにおいて、循環半減期が同様に中程度となることは明らかである。すなわち、誘導体1、2、3または4のように、R95CまたはL106Cという置換を含む誘導体についても、同様の結果が予想される。
【表11】
【0197】
表11に示されているように、比較薬11では、MATが、比較薬であるFc融合体(hFc-IL-22)と比べて早くなることが示された。MATは、Tmaxを単に比較するよりも正確な薬物取り込み尺度である。MATでは、Cmaxの差も考慮されるからである(Tmaxは、用量及びCmaxの両方の影響を受ける)。ミニブタとヒトとの類似性から、この試験には、マウスまたはラットではなく、ミニブタを使用した。
【0198】
結論
既知の脂肪酸アルキル化GLP-1誘導体であるセマグルチドは、ミニブタにおいて、半減期が46時間であり(Lau et al.,J Med Chem,2015,58(18):7370-80)、男性では、半減期が160時間であり、これは、1週間に1回の投与プロファイルに相当するとともに、ピーク/トラフ比が2である。Fc融合体であるGLP-1誘導体デュラグルチドの半減期は、同程度である。
【0199】
したがって、ミニブタにおいて、比較薬6、11及び15によって、皮下投与した時に示された少なくとも40時間の半減期、及び静脈内投与した時に示された50時間超は、男性では、1週間に1回の投与プロファイルに相当するとともに、ピーク/トラフ比は2であると仮定される。
【0200】
すなわち、そのデータから、これらの比較薬により、IL-22の循環半減期が増強され、薬物動態及び薬物動力の特性の最適化が見られるので、代謝性、肝臓、肺、消化管、腎臓、眼、胸腺、膵臓及び皮膚の疾患、障害及び病状を含む広範な適応症に対する新規かつ改善型の治療が得られることが示されている。
【0201】
実施例3-ジ脂肪酸を含む比較薬のin vitro効力試験
方法
2つのin vitroアッセイを用いて、配列番号1と比べて修飾を有するIL-22タンパク質の効力を試験した。
【0202】
第1のアッセイは、IL-22Ra、IL-10Rb、及びSTAT3で誘導されるプロモーターを有するルシフェラーゼをトリプルトランスフェクションしたBHK細胞でのレポーター遺伝子アッセイであった。この試験は、感度が高いハイスループットなアッセイであり、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化を測定した。
【0203】
(i)pcDNA3,1hygro(+)内のhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)内のIL22R及び(iii)pGL4.20内の2xKZdel2というプラスミドを用いて、安定なレポーターBHK細胞株を作製した。すなわち、その細胞株により、pSTAT3駆動性のプロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現させた。
【0204】
アッセイプロトコールの0日目に、その細胞を96ウェルプレート(Corning#3842、ブラック、クリアボトム)において、基礎培地(500mlの場合:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号31966-021)、10%(w/v)ウシ胎仔血清(FCS、アルブミンを含む)(50ml)及び1%(w/v)ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5ml))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、そのプレートを反転させることによって、培地を除去した。新しい基礎培地を1ウェル当たり50μl加え、その細胞を60分インキュベートした。
【0205】
比較薬として、hIL-22、及び主鎖バリエーションのみを有するhIL-22バリアントとともに、比較薬6、8、9及び11~15を試験した。アッセイ実行数「n」は、1~24の範囲であった。
【0206】
すなわち、各ウェルに、比較薬(基礎培地で希釈した)を50μl加え、そのプレートを4時間静置した。すなわち、すでにウェルにおいて50μlの培地中で希釈されていたので、その比較薬は2倍希釈されていた。Steadylite plus試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を100μl加えることによって、その刺激を4時間後に終了した。そのプレートをTopSeal Aで密閉し、450rpmで15分振とうしてから、12時間後以内に、Mithrasまたは類似のシステムを用いて読み取った。
【0207】
Graphpad Prismを用いて、データ解析を行った。それぞれの比較薬の半最大効果濃度(EC50)をその効力の尺度として評価した。EC50は、log(化合物)と応答との対比(可変勾配(4p))を用いて求めた。曲線の傾きは、標準物質を1とした。
【0208】
第2のin vitro効力アッセイでは、IL-22Ra及びIL-10Rbを内在的に発現するヒト肝臓由来の細胞株であるHepG2細胞において、pSTAT3を測定した。
【0209】
1日目に、HepG2細胞を96ウェルプレート(Biocoat #35-4407 Becton Dickinson)において、25,000~30,000細胞/ウェルで播種した。播種及び継代のために用いた細胞培地は、DMEM(1×)+25mM(4.5g/l)のグルコース-ピルベート(Gibco、カタログ番号61965-026)+10%(w/v)FCS+1%(w/v)P/Sであった。2日目に、その細胞は、アッセイできる状態であった。DMEM(Gibco、カタログ番号61965-026)において、その細胞を0.1%(w/v)FCSで飢餓状態にし(すなわち、アルブミン濃度が非常に低かった)、50μlを各ウェルに加え、60分静置した。
【0210】
Technical duplicateを用いて、標準物質として、7個の濃度(0.001nM、0.01nM、0.1nM、1nM、10nM、100nM、1000nM)の各比較薬で、試験を行った。すなわち、各ウェルに、希釈した比較薬(DMEM中0.1%(w/v)のFCSで希釈)を50μl加え、そのプレートを15分静置した。すなわち、すでにウェルにおいて50μlの培地中で希釈されていたので、その比較薬は2倍希釈されていた。その細胞を溶解させるために、培地をその細胞から除去し、新たに調製した1×溶解緩衝液(キットのSureFire溶解緩衝液)を50μl、各ウェルに加えた。そのプレートを350rpmで10分、室温で攪拌した。
【0211】
AlphaScreen(登録商標)SureFire(登録商標)STAT3(p-Tyr705)のアッセイプロトコール(Perkin Elmerカタログ番号TGRS3S(500-10K-50K))に従って、IL-22の誘導による、STAT3のリン酸化を測定した。この点では、アッセイのために、溶解液4μlを384ウェルプロキシプレートに移した(ポジティブコントロール及びネガティブコントロールを4μl加えた)。使用直前に、(活性化緩衝液を反応緩衝液で5倍に希釈すること、及びアクセプタービーズを希釈緩衝液で50倍に希釈することによって)アクセプターミックスを調製した。アクセプターミックスを5μl、各ウェルに加え、そのプレートを粘着フィルムTopseal Aで密閉し、2時間、室温でインキュベートした。使用直前に、(ドナービーズを希釈緩衝液で20倍に希釈することによって)ドナーミックスを調製した。ドナーミックスを2μl、弱い光の下で、ウェルに加えた。そのプレートを再度、粘着フィルムTopseal Aで密閉し、2時間、室温でインキュベートした。そのプレートをAlpha Technology適合性のプレートリーダーで読み取った。
【0212】
Graphpad Prismを用いて、データ解析を行った。第1に、log(化合物)と応答との対比(可変勾配(4p))解析をPrismで用いて、非線形回帰を行った。曲線の傾きを1とした。続いて、Prismにおいて、コントロール化合物(hIL-22)のY=topを正規化に使用した。各データセットにおいて、0%を最小値と設定し、100%を、(コントロールについての)上記の非線形回帰のY=topと設定した。非線形回帰を上記のように繰り返し、試験した比較薬の重量当たりの活性率(%)は、最高値下の結果を読み取り、EC50は、EC50を読み取った。
【0213】
結果
表12には、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化について、BHK細胞レポーター遺伝子アッセイで測定した比較薬のEC
50が示されている。
【表12】
【0214】
そのBHK細胞アッセイは、大量のアルブミンを含んでいたので、測定されたEC50には、それらの比較薬を試験した時に、アルブミン結合の作用が組み込まれていた。
【0215】
主鎖バリエーションのみを有するIL-22バリアントである比較薬4は、効力がhIL-22と同等であることが示された。比較薬4と同じ主鎖を有するが、親和性が中程度であるアルブミン結合物質(C16のジ酸)に共有結合された比較薬8は、効力が、hIL-22と比べて4分の1に低下した。同様に同じ主鎖を有するが、高親和性のアルブミン結合物質(C18のジ酸)に共有結合された比較薬6は、効力が、hIL-22と比べて7分の1に低下した。
【0216】
これらの結果を実施例1と比べると、IL-22タンパク質において、配列番号1内の95位または106位でCysに共有結合されたジ脂肪酸の作用が、上記の比較薬6、8、9、11、12、13、14または15で言及されている位置のいずれかで結合された同様のジ脂肪酸の作用と非常に類似していることは明らかである。実施例1のデータは、C18のジ酸に関するものであるので、C16のジ脂肪酸について、この実施例で示されたのと同様のEC50値が、R95CまたはL106Cという置換とともに、C16のジ脂肪酸での置換を含む誘導体にも当てはまると推定できる。すなわち、誘導体1、2、3または4のように、R95CまたはL106Cという置換を含む誘導体について、同様の結果が見られるように予想される。
【0217】
比較薬11~14の結果を比較することによって、35Q、64Qという背景(すなわち、3つのIL-22糖鎖付加部位のうちの2つが変異されている)を相殺して、アルキル化の位置及び主鎖バリエーションの精査を行った。これらの比較薬で得られた結果から、Cys置換及び脂肪酸の共有結合が、いくつかの(所定の)位置において許容される可能性があることが示され、これは、本発明者には驚くべきことであった。
【0218】
表13には、pSTAT3について、HepG2細胞アッセイで測定した比較薬のEC
50が示されている。
【表13】
【0219】
受容体の内在発現レベルを有し、シグナル増幅がほとんど見られず、アルブミンを含まないHepG2細胞アッセイでは、比較薬6は、効力が、hIL-22と比べて2.5分の1に低下した(比較薬6と同じ主鎖を有するが、脂肪酸を有さないhIL-22バリアントである比較薬4と同程度であった)。
【0220】
表14には、N末端伸長部における脂肪酸の共有結合及び糖鎖付加部位の変異を評価するために、BHK細胞アッセイ及びHepG2細胞アッセイの両方の結果が並列されている。NDは、未決定である。
【表14】
【0221】
比較薬11は、比較薬6とは、N35Q及びN64Qという追加の置換(3つの糖鎖付加部位のうち2つが変異している)によって異なるが、これらの効力は同程度である(比較薬11において、効力がわずかに低下する傾向がある)。
【0222】
N35Q及びN64Qというこれらの2つの置換の作用は、実施例1に示されているように、R95CまたはL106Cを含む誘導体における作用と同様である。すなわち、誘導体1、2、3または4のように、R95CまたはL106Cという置換を有する誘導体において、同様の結果が見られると予想される。
【0223】
比較薬7及び9は、15量体のN末端伸長部とともに、その伸長部(-7C)に、脂肪酸の結合のためのCys残基を有するが、驚くべきことに、これは、十分に許容されることが示されている。
【0224】
実施例1に示されている同様の効力データ、ならびに置換及び同様の脂肪酸結合を含む他の誘導体のN末端伸長部の上記評価により、R95CまたはL106Cを含む誘導体に適用したN末端伸長部の同様の作用を予想し得る。すなわち、誘導体1、2、3または4のように、R95CまたはL106Cという置換を含む誘導体についても、同様の結果が予想される。
【0225】
結論
試験した比較薬において、脂肪酸の共有結合により観察された、効力の低下は主に、アルブミンの結合によるものであり、主鎖置換には、原因はほとんど見られなかった。このことは、驚くべきことに、比較薬4及びhIL-22の効力が同程度であったことによって示された。それに比べて、上記のように、Genentechにより、IL-22のFc融合体については、in vitro効力が34分の1に低下したことが報告されている。
【0226】
アルブミンレベルが非常に低いHepG2細胞アッセイでは、比較薬6(BHKアッセイ(アルブミンの結合が見られる)において、効力が7分の1に低下した比較薬)は、効力が、hIL-22と比べて2.5分の1にしか低下しなかった。
【0227】
比較薬6及び11の効力が同程度であったことにより(表14)、驚くべきことに、35Q及び64Qという変異が、効力に影響を及ぶすことなく、許容されることが示された。
【0228】
すなわち、これらの比較薬は、アルブミンの存在下で、高い効力を維持し、アルブミンの非存在下では、hIL-22と効力がほぼ同等である。Cys置換及び脂肪酸の共有結合は、いくつかの位置で許容される。
【0229】
すなわち、データから、これらの比較薬は、バイオアベイラビリティ及び効力に優れることが示されているので、代謝性、肝臓、肺、消化管、腎臓及び皮膚の疾患、障害及び病状を含む広範な適応症に対する新規かつ改良型の治療が得られる。
【0230】
実施例4-糖尿病における、ジ脂肪酸を含む比較薬のin vivo有効性試験
この試験は、糖尿病マウスモデルにおいて、比較薬を1日1回、8~16日間投与する作用を調べるために設計した。この試験は、治療(予防ではない)方式で行い、これは、投与を開始する前に、糖尿病の所見が発現したことを意味する。このマウスモデルは、脂肪肝を有する(レプチン受容体ノックアウト)ので、このモデルは、肝疾患の代謝性モデルとしても機能する。
【0231】
方法
7~8週齢の雄C57BKS db/dbマウスをCharles River Laboratoriesから入手して(-10日目)、実験の開始前に、少なくとも1週間馴化した。到着から1週間後(-3日目)、そのマウスを無作為に分け、10匹からなる群で飼育した(または食物摂取試験のために、単独で飼育した)。-3日目、及び1~16日目の各試験日に、血中グルコース及び食物摂取量を測定した。
【0232】
さらなる比較薬としてのIL-22のFc融合体(hFc-hIL-22)及びネガティブコントロールとしてのビヒクルのみとともに、比較薬6を試験した。それぞれの薬剤は、糖尿病db/dbマウス(各群におけるn=6~10)において、0.1mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kgまたは1.0mg/kgという1日1回量で、1~16日目の各日に皮下投与した。食物摂取量は、比較薬/コントロールの投与後に低減した。
【0233】
試験期間にわたって、血中グルコースを毎日測定した。終了時に、麻酔したマウスにおいて、眼の血液試料を採取した。血液500μlをEDTAチューブに採取した。その試料を氷上で維持し、5分、6000G、4℃で、20分以内で遠心分離した。血漿を0.75mlのmicronicチューブに分離し、成分濃度を後で測定するために、直ちに凍結した。
【0234】
比較薬の濃度を測定するとともに、標的結合バイオマーカー(肝臓由来の急性期タンパク質であるハプトグロビン及び血清中アミロイドP成分(SAP)、ならびに消化管由来のペプチドYY(PYY))の血漿中レベルを試験の最後に測定した。ハプトグロビンは、COBASという計器(Roche Diagnostics)で、市販のキットによって、メーカーの指示に従って測定した。PYYは、マウスPYY及びラットPYYを認識する市販のELISAアッセイ(ALPCO)によって、メーカーの指示に従って測定した。SAPは、マウスペントラキシン2/SAPを認識する市販のELISAアッセイ(R&D Systems)によって、メーカーの指示に従って測定した。
【0235】
結果
試験期間にわたる血中グルコースレベルが、
図8及び9Aに示されている。
【0236】
図8から見ることができるように、hIL-22、及び主鎖バリエーションのみを有するhIL-22バリアント(比較薬3)は、試験過程にわたって、血中グルコースが、ビヒクルコントロールと比べて低下しなかった。
【0237】
図9Aから見ることができるように、比較薬6及びhFc-hIL-22のいずれも、血中グルコースが、正常レベルと比較して低下し、試験末期には、比較薬6の有効性がわずかに高かった。ただし、hFc-hIL-22の標的関与度の方が高く、その所定の試験では、定常状態暴露レベルが比較薬6よりも高いことが示されている。治療した動物では、ビヒクルコントロールと比べて、食物摂取量の低下が観察された(
図9Bを参照されたい)。すなわち、比較薬6は、db/dbモデルにおいて、hFc-hIL-22と同様の形で、血中グルコースが正常化したが、上記のように、hIL-22または比較薬3では、そのような作用は観察されなかった。
【0238】
標的関与バイオマーカーであるハプトグロビン、SAP及びPYYのレベルは、試験の最後に測定したものが、それぞれ
図10A~Cに示されている。それらのグラフで見ることができるように、3つのすべての標的関与バイオマーカーが、比較薬6及びhFc-hIL-22によってアップレギュレートし、hFc-hIL-22による方が、比較薬6よりもアップレギュレートした。
【0239】
図11には、比較薬11(2つの糖鎖付加部位での追加の置換を除き、比較薬6と同じである)の用量-応答データが示されている。試験した3つのすべての用量(0.1m/kg、0.25m/kg及び0.5m/kg)は、血中グルコースを時間とともに低下させ、濃度の上昇とともに、段階的に低下させるのに有効であった
【0240】
結論
db/dbモデルにおいて、試験した比較薬及びhFc-hIL-22の両方とも、血中グルコースを正常化したことによって、in vivoでの治療効果が示された。重要なことに、hIL-22の投与では、このような作用は見られず、治療効果を得るには、長時間作用型の比較薬及びFc融合体で見られた長期暴露が必要であることが示された。抗糖尿病効果の作用機序は、まだ十分には解明されていないが、IL-22が肝臓に及ぼす作用(肝糖新生及び脂質生成)が主な寄与因子であると考えられる。
【0241】
食物摂取量も、比較薬6による治療によって低下したことが示されたので、肥満症の治療としての有効性が示された。
【0242】
標的関与バイオマーカーも、その比較薬及びhFc-hIL-22によって、アップレギュレートしたことが観察された。db/dbマウスにおいて測定した特定のバイオマーカーは、男性に置き換えられることが知られている。
【0243】
皮下投与したhFc-hIL-22の循環半減期(T
1/2)は、特にマウスにおいて、比較薬6よりも長いことに留意することが重要である(T
1/2は、hFc-hIL-22では20時間、比較薬6では8時間であった。表8を参照されたい)。したがって、定常状態においては、hFc-hIL-22の暴露値の方が高い。これは、hFc-hIL-22群において、標的関与バイオマーカー(ハプトグロビン、SAP及びPYY)が、比較薬6の群よりも高かった観察結果(
図10)によりさらに裏付けられており、示した実験においては、標的関与自体も高かったことが示されている。すなわち、16日間の投与試験の最後の3日間には、Fc融合体(hFc-hIL-22)の方が、暴露量及び標的関与が高かったにもかかわらず、hFc-hIL-22の有効性は、比較薬6)よりも劣っていた。
【0244】
したがって、そのデータにより、比較薬6は、糖尿病及び肝疾患のマウスモデルにおいて、治療効力に優れることが示されている。db/dbマウスにおいて測定した特定のバイオマーカーは、男性に置き換えられることが知られているので、このような治療効力も置き換えられると予測するのが賢明である。
【0245】
実施例5-肝損傷(I)における、ジ脂肪酸を含む比較薬のin vivo有効性試験
この試験は、肝損傷マウスモデルにおいて、本発明の誘導体の比較薬を投与する作用を調べる目的で設計した。この試験は、予防形式で行い、これは、投与を開始した後に、肝損傷を誘導したに過ぎないことを意味する。
【0246】
方法
10週齢のC57Bl/6Rjマウスを入手し、1週間馴化してから試験を開始した。肝損傷を単回腹腔内用量(300mg/kg、20ml/kg)のAPAPで誘導した。ビヒクルコントロールとともに、比較薬6及び11を1.5mg/kgで2時間皮下投与してから、APAPを投与した(n=5~10)。この試験は、APAPの投与から24時間後に終了させた。血漿中のアラニントランスアミナーゼ(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の測定に備えて、確実に放血死を行った。
【0247】
血液試料をヘパリン処理チューブに採取し、血漿を分離し、解析まで-80℃で保存した。ALT及びASTは、市販のキット(Roche Diagnostics)を用いて、自動分析装置COBAS c501で、メーカーの指示に従って測定した。
【0248】
組織学的解析に備えて、肝臓をホルマリンで固定して、パラフィン包埋を行った。
【0249】
ki67の免疫組織化学(IHC)染色を介して、増殖を測定した。VISというソフトウェア(Visiopharm,Denmark)を用いて、IHC陽性染色を画像解析によって定量した。
【0250】
末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端ラベリング(TUNEL)アッセイで、アポトーシスを測定した。簡潔に述べると、パラフィン包埋した切片を含むスライドをキシレンで脱パラフィンし、一連の段階的なエタノールで再水和した。そのスライドをプロテイナーゼKで前処理し、内在性ペルオキシダーゼ活性を過酸化水素でブロックした。TUNEL混合物(In Situ Cell Death Detection Kit、POD、Roche)をそのスライドに加えてから、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)によって増幅し、ジアミノベンジジン(DAB)(色原体)によって可視化した。最後に、そのスライドをヘマトキシリンで対比染色し、カバースリップを載せた。
【0251】
結果
試験終了時のALTの血漿中レベルは
図12Aに、ASTの血漿中レベルは
図12Bに示されている。肝損傷前に、比較薬6または11で処置したマウスにおいて、ビヒクル/APAPコントロールと比べて、ALT及びASTの量が有意に減少したことが示された。
【0252】
試験終了時のTUNEL陽性細胞の数は
図13Aに、ki67陽性細胞の数は
図13Bに示されている。肝損傷の前に、比較薬6または11で処置したマウスにおいて、ビヒクル/APAPコントロールと比べて、TUNEL陽性細胞の量は(有意に)減少した。ki67陽性細胞の量は、APAP処置群にわたって同等であった。
【0253】
結論
ALT及びASTは、肝障害の指標として用いられている肝臓酵素である。したがって、比較薬6及び11は、APAPによって誘導される損傷から肝臓を保護することが示された。同様の効力及び半減期を明らかにした大量のデータに基づき、本明細書に開示されている誘導体に、同様の作用を予測できる。
【0254】
TUNELアッセイの結果により、比較薬6及び11が、ビヒクル/APAPコントロールと比べて、肝損傷を原因とするアポトーシスから保護したことが示された。しかしながら、細胞増殖には、これらの比較薬による影響は及ぼなかった。(コントロールで見られるように、)損傷に対する応答として、増殖が生理学的にアップレギュレートするので、結果により、比較薬6及び11の増殖作用が示されている。損傷の低減の後に、増殖の減少が続かない(損傷に対する増殖の比率が上昇する)からである。
【0255】
したがって、データにより、その比較薬は、マウスモデルにおいて、肝損傷から保護する有効性に優れることが示されている。マウスにおいて測定した特定のバイオマーカーは、男性に置き換えられることが知られているので、観察された保護機能も置き換えられると予測するのが賢明である。
【0256】
実施例6-肺損傷における、ジ脂肪酸を含む比較薬のin vivo有効性試験
この試験は、肺損傷ラットモデルにおいて、本発明の誘導体の比較薬を投与する作用を調べる目的で設計した。この試験は、予防形式及び治療形式の両方で行い、これは、肺損傷を誘導する前に投与を開始し、その後も継続したことを意味する。
【0257】
方法
肺損傷を誘導するために、ブレオマイシンを100μl、雄Sprague Dawleyラットの肺に、口腔咽頭吸引によって単回用量として1日目に投与した(群2~6)。生理食塩水をネガティブコントロールとして投与した(群1)。
【0258】
群3、4及び5のラットに、比較薬11を-1日目に0.5mg/kg、2日目に1.5mg/kgまたは3日目に4.5mg/kgで、1日1回、(皮下注射によって)投与した。群6のラットには、-1日目から3日目に、(強制経口投与によって)1日1回、プレドニゾロンを10mg/kgで投与した。
【0259】
そのラットから得た気管支肺胞洗浄液(BALF)中の可溶性コラーゲンを測定するために、加えたプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む滅菌PBS(カルシウム及びマグネシウムを含まない)で肺を洗浄し(3×4ml)、その洗浄液を1匹のラットごとに1本のチューブに入れた。可溶性コラーゲンは、Soluble Collagen Assay Sircol S1000(Biocolor)(Charles River Laboratories)を用いて、BALF上清で測定した。
【0260】
4日目に、すべてのラットを検死に出した(安楽死)。組織病理検査のために、すべてのラットから右肺を採取し、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)で膨張固定してから、NBFで浸漬固定した。平行な長手方向の切片を3枚、右肺後葉からトリミングし、カセット01にマウントした。右肺の前葉、中葉及び副葉も、長手方向に切片化し、カセット02にマウントした。
【0261】
それぞれのカセットから2枚のスライドを作製し、一方のスライドは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、もう一方は、ヘマトキシリン及びピクロシリウスレッド(H&PSR)で染色した。
【0262】
続いて、乱数発生器を用いて、それぞれのスライドに無作為な数字を割り当てた。識別キーをMicrosoft Excelのスプレッドシートに記録し、スライド評価後に、コピーを試験の病理担当者に提供した。すなわち、肺ごとに6枚の切片を盲検的に読み取った。
【0263】
続いて、動物病理担当者が、それぞれのH&E染色スライドで、それぞれの切片を炎症の重症度についてスコア化した(0=なし、1=最小限、2=軽度、3=中程度及び4=重度)。群ごとのスコアの平均及び中央値を計算した。病理担当者は、それぞれのH&PSR染色スライドで、それぞれの切片を線維化の重症度についても、(改良型のAshcroftスコアを用いて0=低~8=高まで)スコア化した。群ごとのスコアの平均及び中央値を計算し、ノンパラメトリックなANOVAであるKruskal-Wallisの事後検定解析を行った。
【0264】
結果
その顕微鏡所見の概要が表15に示されており、この表では、それぞれの群の炎症及び線維化に関するスコアの平均及び中央値が明らかにされている。
【表15】
【0265】
表15の1及び2を比較することによって立証されるように、ブレオマイシンは、そのラットモデルにおいて、肺の炎症及び線維化の両方を誘導した。スコアの平均及び中央値は、群3~5、すなわち、比較薬11で治療したラットで低めであった。これらの低めのスコアは、プレドニゾロンで治療したラット(群6)で見られたスコアと同程度であった。
【0266】
この試験におけるそれぞれのラットの炎症スコアの中央値は
図14Aに、線維化スコアの中央値は
図14Bにも示されている。
【0267】
図14Aに示されているように、ブレオマイシン/ビヒクルコントロール(群2)において、その群の炎症スコアの中央値は、ネガティブコントロール(群1)と比べて上昇した。比較薬11で治療したラット及びプレドニゾロンで治療したラット(群6)において、その群の炎症スコアの中央値は、ブレオマイシン/ビヒクルコントロールと比べて低下した(用量の高い群5においても、有意に低下した)。
【0268】
図14Bに示されているように、ブレオマイシン/ビヒクルコントロール(群2)において、その群の線維化スコアの中央値は、ネガティブコントロール(群1)と比べて上昇した。しかしながら、比較薬11で治療したラットにおいて、群の線維化スコアの中央値は、ブレオマイシン/ビヒクルコントロールと比べて低下した(用量の高い群5においても、有意に低下した)が、コントロールであるプレドニゾロンと比べると、低下しなかった。
【0269】
図14Cに示されているように、ブレオマイシン/ビヒクルコントロール(群2)において、ブレオマイシンの誘導による肺損傷後のBALF中の可溶性コラーゲンの量は、ネガティブコントロール(群1)と比べて増加し、この量は、プレドニゾロンによる治療(群6)によって減少しなかった。しかしながら、比較薬11で治療したラットから得たBALFでは、ブレオマイシン/ビヒクルコントロールと比べて、可溶性コラーゲンの量の有意な低下が、(試験したすべての用量にわたって)観察された。BALF中の可溶性コラーゲンは、線維化のリードアウトであるので、これらの結果により、上で即座に記録した組織構造データが確認される。
【0270】
結論
この顕微鏡的試験の結果により、本発明の誘導体の比較薬が、ラットモデルにおいて、ブレオマイシンの誘導による、肺の炎症及び線維化を予防及び/または低減できることが示された。炎症に関して見られた作用は、肺炎症の治療用と知られている副腎皮質ステロイドであるプレドニゾロンで観察された作用と同程度であった。しかしながら、その比較薬では、線維化に対する特有の作用が見られたが、プレドニゾロンでは見られなかった。同様の効力及び半減期を明らかにした大量のデータに基づき、本発明の誘導体に、同様の作用を予測できる。
【0271】
実施例7-大腸炎における、ジ脂肪酸を含む比較薬のin vivo有効性試験
この試験は、大腸炎マウスモデルにおいて、本発明の誘導体の比較薬を投与する作用を調べる目的で設計した。この試験は、予防形式及び治療形式の両方で行い、これは、大腸の炎症を誘導した日と同じ日に投与を開始し、その後も継続したことを意味する。
【0272】
方法
飼料を与えた雌C57Bl/6JRjマウスを、体重に基づき5群(1群当たりn=8)に無作為に分けた。5群のうち4群で、DSSを用いて、大腸炎を誘導した。これらのマウスに、DSSを飲料水中で7日間、試験0日目から6日目まで投与した。第5の群では、マウスに、DSSを含まない水を与え、すなわち、健常コントロールとして機能させた。試験0日目から、DSSマウスをビヒクル、比較薬11(0.35mg/kgもしくは1mg/kgで腹腔内投与)または比較薬としてのIL-22-Fc融合体(hFc-hIL-22、0.5mg/kgで腹腔内投与)で1日1回、10日間処置した。体重、餌及び水の摂取量を毎日モニタリングした。
【0273】
試験10日目には、血液試料をマウスからEDTAチューブに採取し、血漿を分離し、解析まで-80℃で保存した。メーカーの指示に従ってELISAキット(Cloud-Clone Corp)を用いて、再生膵島由来タンパク質3γ(Reg3g)をduplicateで測定した。Reg3gは、IL-22の標的関与マーカーである。
【0274】
終了時に、立体学的解析のために、腸を取り出した。したがって、その消化管を氷冷生理食塩水でフラッシュし、その内容物を静かに除去してから、サンプリングを行った。
【0275】
その腸をホルマリンに一晩浸透させ(Tissue-Tek VIP)、その後、パラフィンブロックに包埋した。続いて、系統均一ランダムサンプリング(SURS)の原理を用いて、ホルマリンで固定したその腸を近位方向から遠位方向にサンプリングし、その結果、合わせて4つのスラブを得て、マルチカセットに配置した。いずれの組織スラブも、後の段階で個々のスラブの識別が可能であるように配置した。そのパラフィンブロックをトリミングし、最上部5μmを切断し、Superfrost+対物ガラスにマウントした。大腸では、別の切片を最上部から500μmの距離で切断し、それにより、それぞれのマウスから、合わせて8枚の大腸切片が得られた。
【0276】
すなわち、大腸の二次元断面の三次元解釈を用いて、大腸炎症の体積を立体学的に測定した。スキャンしたH&E染色スライドで、newCASTのシステム(Visiopharm)を用いて、体積の立体学的な推定を行った。適切なサイズのグリッドシステムを用いたポイント計数によって、消化管の合計体積、粘膜の体積、粘膜下層及び筋層の体積、ならびに炎症を起こした組織の体積を推定し、その際、対象となる構造に当たったすべてのポイントを計数した。対象となる構造に当たったポイントの数は、下記の数学的な関係に従って、体積に変換した。
【0277】
【数1】
式中、A(p)は、ポイント当たりの面積であり、pは、対象となる構造に当たったポイントの総数であり、tは、切片間の距離である。1群当たりの炎症体積の平均を計算し、統計解析を行った。
【0278】
H&E染色スライドを見ることによって、大腸の形態も終了時に評価した。
【0279】
結果
大腸炎症の体積は、
図15に示されている。比較薬11で治療したマウスでは、いずれの用量でも、ビヒクルコントロール(この場合も、DSSを含む)と比べて、炎症が予防されたことが示された。とりわけ、炎症は、比較薬11で治療した群では、その処置群において、大腸炎症の体積が、健常コントロール(DSSを含まないビヒクル)と同じであったことによって立証されたように、正常レベルに留まった。このことは、hFc-hIL-22で処置した群にも当てはまった。
【0280】
終了時の大腸の形態の代表的なH&E染色画像が、
図16に示されている。ビヒクル処置マウス(黒色の矢印でマーキングされている)では、DSSによる処置後、粘膜上皮の創傷を見ることができるが、いずれかの用量の比較薬11またはhFc-hIL-22で治療したマウスでは見られなかった。これにより、上皮組織での保護作用が示されている。
【0281】
血漿中Reg3gレベルは、
図17に示されている。DSSによる処置により、Reg3gの基底レベルの上昇が誘導された(ビヒクルと、DSSを含まないビヒクルを比較する)。さらなる上昇は、低用量(0.35mg/kg)の比較薬11群では検出不能であったが、高用量(1mg/kg)の比較薬11群及びhFc-hIL-22群では見られた。hFc-hIL-22(0.5mg/kg)群において、比較薬11(1mg/kg)群と比べて、Reg3gレベルが高かったことにより、この比較薬11群よりも低い用量にもかかわらず、標的関与が大きかったことが示され、これは、hFc-hIL-22のマウスにおける半減期の延長に関連する可能性が高かった(半減期は、hFc-hIL-22では30時間であったのに対して、比較薬11では9.1時間であった)。
【0282】
結論
すなわち、データにより、本発明の誘導体の比較薬は、マウスモデルにおいて、大腸炎及び粘膜上皮の創傷から保護する有効性に優れることが示されている。これにより、消化管の疾患、障害及び病状に対する新規かつ改良型の治療が見出されたことが示されている。特に、これらの知見により、炎症性腸疾患など、粘膜上皮の損傷を特徴とする疾患を治療できる可能性が示されている。同様の効力及び半減期を明らかにした大量のデータに基づき、本発明の誘導体に、同様の作用を予測できる。
【0283】
実施例8-肝損傷(II)における、ジ脂肪酸を含む比較薬のin vivo有効性試験
この試験は、第2の肝損傷マウスモデル(第1のモデルは、実施例5で上記されている)において、本発明の誘導体の比較薬を投与する作用を調べる目的で設計した。この試験は、予防形式で行い、これは、投与を開始した後に、肝損傷を誘導したに過ぎないことを意味する。
【0284】
方法
雄C57Bl6/6jマウスを5つの群(1群当たりn=8)に分けた。この5つの群のうちの2群で、ConAによる処置に対して-26時間及び-2時間に、比較薬6を1mg/kgで腹腔内投与した。別の2群には、これらの時点にビヒクルのみを投与した。4つのすべての群に、ConAを静脈内ボーラスとして、30秒の期間にわたって、15mg/kgの用量で与えて、肝損傷を誘導した。第5の群には、健常コントロールとして、ConAを与えなかった(上記のように、ビヒクルのみ)。
【0285】
ConAの注射から8時間後または24時間後に、それらのマウスをイソフルランによる麻酔下に置き、(凝固活性化剤を含む血清用ポリプロピレンゲルチューブを用いて)最大容量の血液を心臓穿刺によって採取した。処置を行わなかったマウス(群5)を8時間の時点に殺処分した。そのチューブを数回反転させることによって、その血液を各チューブ内の凝固活性化剤と混合した。そのチューブを15分、室温で保持してから、2000gで10分、4℃で遠心分離した。自動システム(Konelab 20)をメーカーの指示に従って用いて、その血清試料中で、ALT及びASTを測定した。
【0286】
結果
試験終了時のALTの血漿中レベルは
図18Aに、ASTの血漿中レベルは
図18Bに示されている。ALT及びASTの量は、肝損傷の前に、比較薬6で処置したマウスにおいて、ビヒクル/ConAコントロールと比べて、試験した両方の時点で減少したことが示された。
【0287】
結論
ALT及びASTは、肝障害の指標として用いられている肝臓酵素である。したがって、比較薬6は、実施例5で、APAPによって誘導される損傷から保護するのと同様に、ConAによって誘導される損傷から、肝臓を保護することが示された。マウスにおいて測定した特定のバイオマーカーは、男性に置き換えられることが知られているので、観察された保護機能も置き換えられると予測するのが賢明である。同様の効力及び半減期を明らかにした大量のデータに基づき、本明細書に開示されている他の誘導体に、同様の作用を予測できる。
【0288】
実施例9-モノ脂肪酸を含む比較薬のin vitro効力試験
方法
レポーター遺伝子アッセイを用いて、IL-22Ra、IL-10Rb、及びSTAT3で誘導されるプロモーターを有するルシフェラーゼをトリプルトランスフェクションしたBHK細胞において効力を試験した。この試験は、感度が高いハイスループットなアッセイであり、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化を測定した。
【0289】
(i)pcDNA3,1hygro(+)内のhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)内のIL22R及び(iii)pGL4.20内の2xKZdel2というプラスミドを用いて、安定なレポーターBHK細胞株を作製した。すなわち、その細胞株により、pSTAT3駆動性のプロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現させた。
【0290】
アッセイプロトコールの0日目に、その細胞を96ウェルプレート(Corning#3842、ブラック、クリアボトム)において、基礎培地(500mlの場合:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号31966-021)、10%(w/v)ウシ胎仔血清(FCS、アルブミンを含む)(50ml)及び1%(w/v)ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5ml))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、そのプレートを反転させることによって、培地を除去した。新しい基礎培地を1ウェル当たり50μl加え、その細胞を60分インキュベートした。
【0291】
さらに比較薬としてのhIL-22とともに、比較薬16をduplicateで試験した。
【0292】
すなわち、各ウェルに、希釈した比較薬(基礎培地で希釈)を50μl加え、そのプレートを4時間静置した。すなわち、すでにウェルにおいて50μlの培地中で希釈されていたので、その比較薬は2倍希釈されていた。Steadylite plus試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を100μl加えることによって、その刺激を4時間後に終了した。そのプレートをTopSeal Aで密閉し、450rpmで15分振とうしてから、12時間後以内に、Mithrasまたは類似のシステムを用いて読み取った。
【0293】
Graphpad Prismを用いて、データ解析を行った。その比較薬の半最大効果濃度(EC50)を効力の尺度として評価した。EC50は、log(化合物)と応答との対比(可変勾配(4p))を用いて求めた。曲線の傾きは、標準物質を1とした。
【0294】
結果
表16には、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化について、BHK細胞レポーター遺伝子アッセイで測定した比較薬のEC
50が示されている。「n」は、個々のアッセイ実行数を示す。いずれのアッセイ実施操作も、同じ条件下で行ったが、別個の個別の実験は、別々の日に行った。
【表16】
【0295】
そのBHK細胞アッセイは、大量のアルブミンを含んでいたので、測定されたEC50には、比較薬16を試験した時に、アルブミン結合の作用が組み込まれていた。
【0296】
主鎖バリエーション及び共有結合されたC16のモノ酸を有する比較薬16は、hIL-22と同等の効力があることが示された。
【0297】
結論
驚くべきことに、比較薬16とhIL-22の効力が同等であったことが観察された。それに比べて、上記のように、Genentechにより、IL-22のFc融合体については、in vitro効力が34分の1に低下したことが報告されている。
【0298】
したがって、比較薬は、アルブミンの存在下において、高い効力を維持する。Cys置換、N末端のトリペプチド伸長部及びモノ脂肪酸の共有結合は、十分に許容されるのが明らかである。
【0299】
すなわち、データから、比較薬16は、バイオアベイラビリティ及び効力に優れることが示されているので、代謝性、肝臓、肺、消化管、腎臓、CNS及び皮膚の疾患、障害及び病状を含む広範な適応症に対する新規かつ改良型の治療が得られる。
【0300】
実施例10-モノ脂肪酸を含む比較薬及びジ脂肪酸を含む比較薬の平均滞留時間及び効力の試験
方法
以下には、2つの方法が記載されている。第1の方法は、平均滞留時間(MRT)を求める目的で、ラットにおいて、所定の比較薬1、6、8、10及び16で行った薬物動態試験に関するものである。第2の方法は、同じ比較薬のin vitro EC50(nM)を求めるための効力アッセイに関するものである。
【0301】
ラットにおけるin vivo MRTの測定
4匹のラットに、比較薬を投与し、3つの血液試料を5分、15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分、150分、3時間、4時間、6時間、8時間及び24時間という時点のそれぞれに採取した。それぞれのラットは、試験過程において採取した試料が17個であった。最後の試料を採取後、ラットは、二酸化炭素によって安楽死させた。
【0302】
血液試料(100μl)は、ラットから舌の血液によって採取し、EDTAチューブ(Microvette(登録商標)VetMed 200 K3E、Sarstedt番号09.1293.100)に移した。採取から20分以内に、その血液を5分、8000G、4℃で遠心分離した。その血漿試料(40~50μl)をMicronicのハーフチューブに移した。
【0303】
以前に説明されているように(Poulsen et al.J Biomol Screen,2007,12(2):240-7)、自社開発の発光酸素チャネリング(LOCI(登録商標))アッセイを用いて、比較薬の血漿中レベルを測定した。このアッセイの際には、濃度依存性のビーズ-アナライト免疫複合体を作製することで、光を出力させ、その光をPerkin Elmer Envisionというリーダーで測定した。抗体のビーズへのカップリング、抗体のビオチン化及びLOCI(登録商標)アッセイ手順は、以前に説明されているようにして行った(Petersen et al.,J Pharmaceut Biomed,2010,51(1):217-24)。キャリブレーター及び品質管理(QC)試料を試験試料と同じマトリックスで作製した。アッセイ精度(CV(%))を評価したところ、すべての試験試料において、20%未満であることが示された。
【0304】
アッセイでは、抗ヒトIL-22モノクローナル抗体(R&D Systems MAB7822)コンジュゲートアクセプタービーズを、ビオチン化モノクローナル抗体(R&D Systems BAM7821、ヒトIL-22に対して作製)及び一般的なストレプトアビジンコートドナービーズとともに使用した。ラット血漿中のヒトIL-22の定量下限未満(LLOQ)は、4pMであった。しかしながら、それぞれの比較薬は、同じ比較薬のキャリブレーター群に対して測定した。それぞれの比較薬のhIL-22に対する交差反応性を測定し、それを用いて、アッセイ感度を調整した。
【0305】
Phoenix WinNonlin Professional 6.4(Pharsight Inc)を用いて、MRT(すなわち、薬物が、吸収の完了から排泄まで、体内に滞留する時間)を含む薬物動態パラメーターを計算した。
【0306】
BHK細胞におけるin vitro EC50(nM)の測定
IL-22Ra、IL-10Rb、及びSTAT3で誘導されるプロモーターを有するルシフェラーゼをトリプルトランスフェクションしたBHK細胞でのレポーター遺伝子アッセイを使用した。この試験は、感度が高いハイスループットなアッセイであり、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化を測定した。
【0307】
(i)pcDNA3,1hygro(+)内のhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)内のIL22R及び(iii)pGL4.20内の2xKZdel2というプラスミドを用いて、安定なレポーターBHK細胞株を作製した。すなわち、その細胞株により、pSTAT3駆動性のプロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現させた。
【0308】
アッセイプロトコールの0日目に、その細胞を96ウェルプレート(Corning#3842、ブラック、クリアボトム)において、基礎培地(500mlの場合:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号31966-021)、10%(w/v)ウシ胎仔血清(FCS、アルブミンを含む)(50ml)及び1%(w/v)ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5ml))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、そのプレートを反転させることによって、培地を除去した。新しい基礎培地を1ウェル当たり50μl加え、その細胞を60分インキュベートした。
【0309】
比較薬1、16、10、8及び6を試験した。アッセイ実行数「n」は、1~24の範囲であった。
【0310】
すなわち、各ウェルに、比較薬(基礎培地で希釈した)を50μl加え、そのプレートを4時間静置した。すなわち、すでにウェルにおいて50μlの培地中で希釈されていたので、その比較薬は2倍希釈されていた。Steadylite plus試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を100μl加えることによって、その刺激を4時間後に終了した。そのプレートをTopSeal Aで密閉し、450rpmで15分振とうしてから、12時間後以内に、Mithrasまたは類似のシステムを用いて読み取った。
【0311】
Graphpad Prismを用いて、データ解析を行った。それぞれの比較薬の半最大効果濃度(EC50)をその効力の尺度として評価した。EC50は、log(化合物)と応答との対比(可変勾配(4p))を用いて求めた。曲線の傾きは、標準物質を1とした。
【0312】
結果
試験した比較薬のラットでの平均滞留時間及びin vitro EC
50は、表17に示されている。「n」は、独立した日におけるアッセイ反復数を表す。
【表17】
【0313】
データにより、配列番号1と比べてA1Gという修飾を含むhIL-22型の比較薬1に対して、同じ主鎖に結合された脂肪酸を、モノ酸からジ酸に変更したところ、平均滞留時間が延長されたことが示されている(比較薬16及び比較薬8のデータを比較する)。そのジ酸の長さを長くしたところ、平均滞留時間も延長された(比較薬8及び6のデータを比較する)。
【0314】
データによって、モノ酸の結合により、結合させなかった場合と比べて、平均滞留時間が延長されたが、ジ酸を結合した場合とは明らかに対照的なことに、hIL-22と比べた効力には、悪影響は及ぼなかったことも示された(比較薬16及び比較薬8のデータを比較する)。
【0315】
結論
ラットで測定した平均滞留時間を用いて、この比較試験により、ジ脂肪酸鎖の長さを長くした効果は、半減期の延長であったとともに、野生型様のヒトIL-22(比較薬1)と比較した効力低下は、許容される程度であったことが確認された。同様の結果は、ミニブタによる試験でも見られた(実施例2を参照されたい)。ミニブタで測定した場合の半減期(実施例2)により、C18のジ脂肪酸は、IL-22の伸長部として用いたFc融合体と同様に半減期が延長される一方で、C16のジ脂肪酸は、この両方よりも半減期が短縮し、これらのいずれも、野生型ヒトIL-22よりもかなり長いことが示された。
【0316】
ラットにおけるこの最新のデータセットで、モノ脂肪酸の結合により、確かに、平均滞留時間が、同じ長さのジ脂肪酸と比べて短縮することを我々は示した(比較薬16及び比較薬8を比較する)。同時に、モノ脂肪酸による脂質化を含む誘導体は、IL-22の野生型様である比較薬1と同じ半減期を維持するうえに、平均滞留時間を、比較薬1と比べて少なくとも4倍延長することが示されている。
【0317】
本明細書に示されているin vivoでの実施例では、効力低下と半減期延長との間のバランスにより、生体作用が依然として得られ、本発明の誘導体が、薬剤開発及び疾患治療のための候補薬に適するものとなることも我々は示した。
【0318】
モノ脂肪酸の結合及び長さとジ脂肪酸の結合及び長さとのこれらの比較データにより、所望の投与、または治療すべき疾患もしくは状態に応じて、試験したすべての脂肪酸の結合が確実に、様々な薬剤開発の目的に適うという結論を我々は得る。すなわち、IL-22タンパク質の伸長手段としてモノ脂肪酸を使用するのに最適なのは、伸長作用が望まれるが、ジ酸及びFc融合体よりも短い循環時間が望まれる状況であるであろう。
【0319】
R95CまたはL106Cという置換を含む誘導体においては、例えばN35Q及び/またはN64Qのような追加の修飾の有無にかかわらず、ジ脂肪酸またはモノ脂肪酸のコンジュゲーションが平均滞留時間及び効力に及ぼす同様の作用が予想され、このような誘導体は、本明細書では、誘導体1、2、3または4として例示されている。
【0320】
実施例11-R95CまたはL106Cという修飾を有する比較薬のin vitro効力試験
方法
これらの実験は、異なるラボで行ったので、実施例1には含まれていない。用いたアッセイは同じであったが、設備及び試料の取り扱いが、その実験から得られた値に影響を及ぼし得ることは、当業者には明らかであろう。
【0321】
レポーター遺伝子アッセイを用いて、IL-22Ra、IL-10Rb、及びSTAT3で誘導されるプロモーターを有するルシフェラーゼをトリプルトランスフェクションしたBHK細胞において効力を試験した。この試験は、感度が高いハイスループットなアッセイであり、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化を測定した。
【0322】
(i)pcDNA3,1hygro(+)内のhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)内のIL22R及び(iii)pGL4.20内の2xKZdel2というプラスミドを用いて、安定なレポーターBHK細胞株を作製した。すなわち、その細胞株により、pSTAT3駆動性のプロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現させた。
【0323】
アッセイプロトコールの0日目に、その細胞を96ウェルプレート(Corning#3842、ブラック、クリアボトム)において、基礎培地(500mlの場合:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号31966-021)、10%(w/v)ウシ胎仔血清(FCS、アルブミンを含む)(50ml)及び1%(w/v)ペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5ml))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、そのプレートを反転させることによって、培地を除去した。新しい基礎培地を1ウェル当たり50μl加え、その細胞を60分インキュベートした。
【0324】
誘導体3及び誘導体4をさらなる比較薬としてのhIL-22とともに、duplicateで試験した。
【0325】
すなわち、各ウェルに、希釈した比較薬(基礎培地で希釈)を50μl加え、そのプレートを4時間静置した。すなわち、すでにウェルにおいて50μlの培地中で希釈されていたので、その比較薬は2倍希釈されていた。Steadylite plus試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を100μl加えることによって、その刺激を4時間後に終了した。そのプレートをTopSeal Aで密閉し、450rpmで15分振とうしてから、12時間後以内に、Mithrasまたは類似のシステムを用いて読み取った。
【0326】
Graphpad Prismを用いて、データ解析を行った。それぞれの比較薬の半最大効果濃度(EC50)をその効力の尺度として評価した。EC50は、log(化合物)と応答との対比(可変勾配(4p))を用いて求めた。曲線の傾きは、標準物質を1とした。
【0327】
結果
表18には、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化について、BHK細胞レポーター遺伝子アッセイで測定した比較薬のEC
50が示されている。
【表18】
【0328】
そのBHK細胞アッセイは、大量のアルブミンを含んでいたので、測定されたEC50には、それらの比較薬を試験した時に、アルブミン結合の作用が組み込まれていた。
【0329】
アルブミンが存在するBHK細胞アッセイでは、誘導体3は、効力がhIL-22と比べて3分の1に低下し、誘導体4は、効力がhIL-22と比べて11分の1に低下した。
【0330】
結論
その培地中にアルブミンを有するBHK細胞アッセイでは、誘導体4では、効力がhIL-22と比べて11分の1に、誘導体3では、3倍分の1に低下したに過ぎなかった。それに比べて、上記のように、Genentechにより、IL-22のFc融合体については、in vitro効力が34分の1に低下したことが報告されている。
【0331】
実施例12-C16のモノ酸がコンジュゲーションされた比較薬17のin vitro効力試験
方法
その方法は、実施例11に記載されているアッセイに従って実施し、同じ実験設定で実施した。
【0332】
これらの実験は、異なるラボで行ったので、その結果は、表7には含まれていない。用いたアッセイ、細胞株及びプロトコールは同じであったが、設備及び試料の取り扱いが、その実験から得られた値に影響を及ぼし得ることは、当業者には明らかであろう。
【0333】
比較薬17をさらなる比較薬としてのhIL-22とともに、duplicateで試験した。
【0334】
結果
表19には、IL-22受容体の媒介による、STAT3の活性化について、BHK細胞レポーター遺伝子アッセイで測定した比較薬のEC
50が示されている。
【表19】
【0335】
そのBHK細胞アッセイは、大量のアルブミンを含んでいたので、その誘導体を試験した時には、EC50測定値には、アルブミンの結合の影響が組み込まれていた。
【0336】
アルブミンが存在するBHK細胞アッセイでは、比較薬17は、効力がhIL-22と比べて低下しなかった。
【0337】
結論
その培地中にアルブミンを有するBHK細胞アッセイでは、比較薬17は、効力の低下がhIL-22と比べて見られなかった。それに比べて、上記のように、Genentechにより、IL-22のFc融合体については、in vitro効力が34分の1に低下したことが報告されている。これにより、特許請求する誘導体は、G-P-Gという伸長部をN末端に含むことができるが、生体作用のためには、厳密には必須ではないことが確認される。
【0338】
本明細書において、本発明の特定の特徴を例示及び説明してきたが、当業者は、多くの修正物及び均等物を思いつくであろう。したがって、請求項は、このようなすべての修正形態及び均等物を、本発明の真の趣旨の範囲内に入るものとして網羅するように意図されていることを理解すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】