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特表2024-517329インターロイキン-22の治療的誘導体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】インターロイキン-22の治療的誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/54 20060101AFI20240412BHJP
   C07K 1/107 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240412BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240412BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240412BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240412BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240412BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
C07K14/54
C07K1/107
A61K38/20
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P1/16
A61P11/00
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/04
A61P1/04
A61P1/00
A61P13/12
A61P25/00
A61P17/00
A61P17/02
A61P29/00
A61K47/65
A61K47/60
A61K47/54
A61K9/72
A61K9/08
C12N15/24 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570005
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2022062828
(87)【国際公開番号】W WO2022238503
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】21173388.6
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21173310.0
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179105
【氏名又は名称】サイトカイ・ファーマ・アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・サス-ウルム
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス・ヨルゲンセン
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ベック・ヨルゲンセン
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング・トゲルセン
(72)【発明者】
【氏名】トマス・ホウ-イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・パオロ・バストナー・サンドリニ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA93
4C076AA94
4C076AA99
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB24
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC19
4C076CC21
4C076CC32
4C076CC35
4C076CC41
4C076DD03
4C076DD49
4C076DD51
4C076DD52
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF34
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA12
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA12
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA55
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA22
4H045FA52
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、インターロイキン-22(IL-22)の新規誘導体、特に、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪一酸を含む誘導体、及び療法におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含むIL-22の誘導体であって、前記脂肪酸が、一酸である、前記誘導体。
【請求項2】
前記脂肪一酸が、リンカーによって前記IL-22タンパク質に共有結合している、請求項1に記載の誘導体。
【請求項3】
前記脂肪酸が、
(i)下式Iのもの:
C-(CH-CO-*
(式中、xは、10~18、任意選択で12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、前記IL-22タンパク質または前記リンカーへの結合点を示す)、
(ii)C12、C14、C16、C18もしくはC20一酸、
(iii)C16もしくはC18一酸、及び/または
(iv)C18一酸である、請求項1または請求項2に記載の誘導体。
【請求項4】
前記IL-22タンパク質が、天然成熟ヒトIL-22(hIL-22、配列番号1)またはそのバリアントである、先行請求項のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項5】
前記バリアントが、
(i)hIL-22の置換形態である、
(ii)hIL-22の1位、21位、35位、64位、113位及び/または114位で置換されている、
(iii)A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及びK114Rからなる群から選択されるhIL-22の置換を含む、
(iv)hIL-22の1位にCys残基を含む、
(v)hIL-22の95位もしくは106位にCys残基を含む、
(vi)hIL-22内に変異を含み、hIL-22と少なくとも10%の配列同一性を有する、及び/または
(vii)hIL-22内に1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上の変異を含み、前記変異が、独立して、欠失、置換及び挿入からなる群から選択される、請求項4に記載の誘導体。
【請求項6】
前記バリアントが、
(i)hIL-22の伸長形態である、
(ii)N末端ペプチドを含む、
(iii)N末端三量体を含む、
(iv)N末端G-P-Gを含む、及び/または
(v)最大5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または50個のアミノ酸のN末端ペプチドを含む、請求項4または請求項5に記載の誘導体。
【請求項7】
前記リンカーが、
(i)任意選択でGlu及び/またはLysを含む1個以上のアミノ酸、
(ii)オキシエチレングリシン単位もしくは複数の連結したオキシエチレングリシン単位、任意選択で2~5つのそのような単位、
(iii)1つ以上のオリゴ(エチレングリコール)(OEG)残基、
(iv)エチレンジアミン(CDA)基、
(v)アセトアミド(Ac)基、
(vi)γGlu-OEG-OEG-CDA-Ac、
(vii)γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAc、及び/または
(viii)γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcを含む、請求項2~6のいずれかに記載の誘導体。
【請求項8】
前記リンカーが、
(i)前記hIL-22もしくは前記そのバリアント中のCys残基に結合したCys反応性リンカーである、
(ii)前記hIL-22もしくは前記そのバリアントの-7位、-5位、1位、6位、33位、113位、114位もしくは153位で結合している、
(iii)前記hIL-22の1位、6位、33位、113位もしくは114位で置換されたCys残基に結合している、
(iv)前記hIL-22に対して-5位、-7位もしくは153位でCys残基に結合している、
(v)前記hIL-22の1位で置換されたCys残基に結合している、及び/または
(vi)前記hIL-22の95位もしくは106位で置換されたCys残基に結合している、請求項2~7のいずれかに記載の誘導体。
【請求項9】
前記誘導体が、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC14、C16、C18またはC20一酸を含み、前記バリアントが、任意選択で、N末端G-P-G及びhIL-22の1位のCys残基を含み、前記リンカーが、任意選択で、前記Cys残基に結合している、先行請求項のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項10】
前記誘導体が、本明細書で同定される誘導体1または誘導体2である、先行請求項のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の誘導体と、薬学的に許容されるビヒクルと、を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、吸入、注射、局所、経口または眼内投与に好適であり、任意選択で、前記注射が、腹腔内、皮下または静脈内である、前記医薬組成物。
【請求項12】
療法において使用するための、請求項1~10のいずれかに記載の誘導体または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
療法の方法であって、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の1日用量の前記誘導体を投与することを含む、前記方法において使用するための、請求項1~10のいずれかに記載の誘導体または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
代謝、肝臓、肺、腸、腎臓、中枢神経系(CNS)または皮膚の疾患、障害または状態を治療する方法において使用するための、請求項1~10のいずれかに記載の誘導体または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
(i)前記代謝疾患、障害または状態が、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、高脂血症、高血糖症または高インスリン血症である、
(ii)前記肝臓の疾患、障害または状態が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、慢性肝不全の急性憎悪(ACLF)、アセトアミノフェン誘導肝毒性、急性肝損傷、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変、または手術もしくは移植によって引き起こされた病的状態である、
(iii)前記肺の疾患、障害または状態が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、化学損傷、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症である、
(iv)前記腸の疾患、障害または状態が、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、移植片対宿主病(GvHD)、化学損傷、ウイルス感染症または細菌感染症である、
(v)前記腎臓の疾患、障害または状態が、急性腎疾患または慢性腎疾患である、
(vi)前記CNSの疾患、障害または状態が、多発性硬化症である、あるいは
(vii)前記皮膚の疾患、障害または状態が、創傷、炎症疾患またはGvHDである、請求項14に記載の誘導体または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン-22(IL-22)の新規誘導体、特に、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含む誘導体に関し、脂肪酸は一酸である。本発明はまた、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓、中枢神経系(CNS)及び皮膚の疾患、障害及び状態の治療、予防及び改善を含む、それらの産生及び療法におけるそれらの使用のための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
IL-22は、17KDaの分子量を有する146アミノ酸タンパク質である。それは、サイトカインのIL-10ファミリーに属し、遍在的に発現するIL-10受容体Bサブユニット(IL-10RA2)、及び上皮限定発現を有するIL-22受容体Aサブユニット(IL-22RA1)からなるヘテロ二量体受容体を選択的に活性化する。それは、免疫細胞から放出されるが、上皮細胞を選択的に標的とするという点で独特のサイトカインである。したがって、IL-22によって誘導されるシグナル伝達経路は、異なる組織(標的は、皮膚、腸、肺、肝臓、腎臓、膵臓及び胸腺を含む)において関連性を有し得るが、IL-22は、それらを上皮特異的な方法で活性化する。可溶性結合タンパク質であるIL-22BPは、IL-22を中和し、したがってその効果を調節する。
【0003】
IL-22は、化学的または機械的損傷、例えば、環境毒素またはトリプトファン中間体に応答するアリール炭化水素受容体の活性化、及び死にかけている細胞または侵入する病原体からのタンパク質、断片及びデブリに応答する、toll様受容体4などのパターン認識受容体の活性化を反映するシグナルに応答して放出される。IL-22の放出は、ある特定のサイトカイン、特にIL-23及び程度は低いがIL1βによって更に刺激される。したがって、IL-22は、病原体感染及び免疫活性化を反映する合図に対する応答としても分泌される。
【0004】
IL-22の効果は、いくつかの活動/経路の調整された関与の結果である。IL-22は、損傷時に上皮バリア組織及び臓器に作用して細胞を保護し、バリア機能を維持する(例えば、抗アポトーシス遺伝子プログラムの活性化を通じて)。これはまた、修復を加速し(例えば、成熟細胞の増殖及び幹細胞の活性化を誘導することによって)、線維症を予防し(例えば、上皮-間葉転移を低減し、NLRP3インフラマソームに拮抗し、肝星状細胞の老化を誘導することによって)、炎症を制御する(例えば、抗微生物ペプチド及び走化性シグナルを誘導することによって)。IL-22は、高血糖症、高脂血症及び高インスリン血症などの糖尿病のまたは過体重の哺乳動物でしばしば観察される医学的状態を含む、様々な医学的状態を治療することができると報告されている。
【0005】
しかしながら、IL-22は、一般的に腎臓によって体から迅速に除去されるため、臨床診療におけるその使用が制限される。これはサイトカインの共通の特徴であり、半減期延長サイトカイン薬物開発候補は、例えば、腫瘍学及び免疫療法の治療のための薬物開発段階に達している。一般的に、これらの半減期延長サイトカインは、Fc融合溶液またはPEG化を使用する。したがって、循環IL-22の半減期を延長するための既知の方法は、腎クリアランスを回避するために、70kDaを超えるようにIL-22のサイズを人工的に増加させることを試みる。IL-22をFc抗体断片にライゲートすることが、現在この効果に対する最良の解決策である。Genentech及びGeneron Shanghaiはいずれも、臨床開発において長時間作用型IL-22-Fc融合物を有する。IL-22をポリエチレングリコールで修飾すること(PEG化)は、腎クリアランスを回避するための別の既知の手段である。
【0006】
しかしながら、これらの既存の解決策には欠点がないわけではない。入手可能なデータは、PEG自体が免疫原性であり、PEG含有空胞がPEG化生物製剤を有する細胞において観察されることを示唆する。活性の減少及び不均一性もまた、PEG化の不利な態様である。Fc融合技術は非常によく知られているが、Fc抗体断片を添加することは、IL-22の構造における大きな変化をもたらし、その特性に半減期延長を超えた影響を与える。Fc融合物のタンパク質のサイズを約17kDaから約85kDaに増加させるにつれて、拡散速度、分布及び受容体関与動態などの特性が影響を受ける可能性がある。例えば、ある種のFc融合物は、ある特定の経路を介して投与するには、ゆっくりと吸収される、及び/または大きすぎる。Genentech及びGeneronのどちらも、IL-22-Fc融合物の用量制限有害作用として、中等度及び可逆的な皮膚反応を報告する。更に、効力は、大きな融合パートナーによって引き起こされる立体障害によって影響を受ける可能性がある。
【0007】
更に、天然のIL-22は、数時間の非常に短い半減期を有し、その臨床的有用性を強く制限するであろうが、IL-22-Fc融合物は、ヒトにおいて1週間以上の半減期を有することが報告されている。いくつかの条件では、天然IL-22と比較して半減期が延長されたが、Fc融合物よりも半減期が短い強力な分子を有することは、例えば、最適な滴定、局所適用及び作用のために有益であろう。現在、この問題の解決策は説明されていない。
【0008】
したがって、循環半減期及び局所組織区画及び生体液中の半減期を増強し、天然分子と比較して最適化された薬物動態及び薬力学的特性を実証する、IL-22の新しい生体適合性修飾因子の必要性が当該技術分野に残存する。理想的には、それらは、天然分子の効力及び他の特性を維持し、また、既知の誘導体によって実証される毒性、免疫原性及び任意の他の有害反応を避けるべきである。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含むIL-22の誘導体であって、脂肪酸が、一酸である、誘導体が提供される。
【0010】
本発明の実施形態では、脂肪一酸は、リンカーによってIL-22タンパク質に共有結合している。
【0011】
脂肪一酸は、下式Iのもの:
C-(CH-CO-*
(式中、xは、10~18、任意選択で12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、IL-22タンパク質またはリンカーへの結合点を示す)であり得る。それは、C12、C14、C16、C18またはC20一酸であり得る。有利には、脂肪酸は、C16またはC18一酸であり、最も有利には、C16一酸である。
【0012】
IL-22タンパク質は、天然成熟ヒトIL-22(以下、「hIL-22」)またはそのバリアントであり得る。バリアントは、hIL-22の置換形態であり得、任意選択で、1位、21位、35位、64位、113位及び/または114位で置換されている。それは、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及びK114Rからなる群から選択されるhIL-22の置換を含み得る。有利には、バリアントは、hIL-22の1位にCys残基を含む。それは、hIL-22の95位または106位にCys残基を含み得る。それは、hIL-22内に変異を含み得、hIL-22と少なくとも10%の配列同一性を有し得る。それは、hIL-22内に1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上の変異を含み得、該変異は、独立して、欠失、置換及び挿入からなる群から選択される。
【0013】
バリアントは、hIL-22の伸長形態であってもよい。それは、N末端三量体などのN末端ペプチドを含み得る。有利には、バリアントは、N末端G-P-Gを含む。それは、最大5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または50個のアミノ酸のN末端ペプチドを含み得る。
【0014】
リンカーは、任意選択でグルタミン酸(Glu)及び/またはリジン(Lys)を含む1つ以上のアミノ酸を含み得る。リンカーは、オキシエチレングリシン単位または複数の連結したオキシエチレングリシン単位、任意選択で2~5つのそのような単位、有利には2つの単位を含み得る。リンカーは、1つ以上のオリゴ(エチレングリコール)(OEG)残基を含み得る。それは、エチレンジアミン(CDA)基及び/またはアセトアミド(Ac)基を含み得る。有利には、リンカーは、前述の要素の全てを組み合わせて含む。特に、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-C2DA-Ac、γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcまたはγGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり得る。
【0015】
リンカーは、追加的または代替的に、hIL-22またはそのバリアント中のCys残基に結合したCys反応性リンカーであり得る。それは、hIL-22またはそのバリアントの-7位、-5位、1位、6位、33位、113位、114位または153位で結合し得る(ここで、-7位、-5位などは、本明細書で定義されるとおりである)。一例として、リンカーは、hIL-22の1位、6位、33位、113位または114位で置換されたCys残基に結合し得る。それは、hIL-22に対して-5位、-7位または153位でCys残基に結合し得る。有利には、リンカーは、hIL-22の1位で置換されたCys残基に結合している。一実施形態では、リンカーは、hIL-22の95位もしくは106位で置換されたCys残基に結合している。
【0016】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC14、C16、C18またはC20一酸を含み、バリアントは、任意選択で、N末端G-P-G及びhIL-22の1位のCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。本発明の例示的な誘導体は、本明細書において誘導体1として同定される。本発明の別の例示的な誘導体は、本明細書において誘導体2として同定される。
【0017】
第2の態様では、脂肪一酸をIL-22タンパク質に共有結合させることを含む、第1の態様の誘導体を調製するためのプロセスが提供される。
【0018】
第3の態様では、第1の態様の誘導体と、薬学的に許容されるビヒクルと、を含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、吸入、注射、局所、経口または眼内投与に好適であり、任意選択で、注射は、腹腔内、皮下または静脈内である。
【0019】
第4の態様では、療法に使用するための第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物が提供される。
【0020】
第5の態様では、療法の方法であって、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の1日用量の誘導体を投与することを含む、方法において使用するための、第1の態様の誘導体または第2の態様の医薬組成物が提供される。
【0021】
第6の態様では、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓、CNSまたは皮膚の疾患、障害または状態を治療する方法において使用するための、第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物が提供される。
【0022】
代謝の疾患、障害または状態は、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、高脂血症、高血糖症または高インスリン血症であり得る。
【0023】
肝臓の疾患、障害または状態は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、慢性肝不全の急性憎悪(ACLF)、急性肝損傷、アセトアミノフェン誘導肝毒性、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変、または手術もしくは移植によって引き起こされた病的状態であり得る。
【0024】
肺の疾患、障害または状態は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、化学損傷、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症であり得る。
【0025】
腸の疾患、障害または状態は、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、移植片対宿主病(GvHD)、化学損傷、ウイルス感染症または細菌感染症であり得る。
【0026】
腎臓の疾患、障害または状態は、急性腎疾患または慢性腎疾患であり得る。
【0027】
CNSの疾患、障害または状態は、多発性硬化症であり得る。
【0028】
皮膚の疾患、障害または状態は、創傷、炎症疾患またはGvHDであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】それぞれ、誘導体1(図1A)及び誘導体2(図1B)として本明細書で同定される本発明の2つの誘導体の構造を図示する。
図2】本明細書において、比較物1として同定される本発明の誘導体の比較物の構造を図示する。
図3】本明細書で比較物2として同定される本発明の誘導体の比較物の構造を図示する。
図4】それぞれがCys反応性単位を含むリンカーに接続された、(A)C18二酸、(B)C16二酸及び(C)C14二酸の例を図示する。脂肪酸及びリンカーのこれらの組み合わせは、本明細書で比較物4~13として同定される本発明の誘導体の比較物に用いられる。
図5】比較物4として本明細書で同定されるIL-22タンパク質の構造を図示する。
図6】本明細書で比較物9としてのIL-22タンパク質の構造を図示する。
図7】比較物13として本明細書で同定されるIL-22タンパク質の構造を図示する。
図8】糖尿病マウスモデルの8日間の研究における、血中グルコースに対するhIL-22及び骨格変異のみを有する比較IL-22バリアント(本明細書では比較物16として同定される)の毎日投与の効果(平均±SEM)を図示する。
図9】糖尿病マウスモデルの16日間の研究における、(A)血中グルコース及び(B)食物摂取量に対する、IL-22-Fc融合物(具体的には、hIL-22にN末端融合したヒトFc;以下「hFc-hIL-22」)と比較した、本発明の誘導体の比較物(本明細書では、比較物4として同定される)の毎日投与の効果(平均±SEM;*対応のないt検定を使用したp<0.05を意味する)を図示する。
図10A】糖尿病マウスモデルの16日間の研究における、3つの異なる標的関与バイオマーカーに対する比較物4及びhFc-hIL-22の毎日投与の効果(平均±SEM;***は、対応のないt検定を使用したp<0.0002を意味する)を図示する。
図10B】糖尿病マウスモデルの16日間の研究における、3つの異なる標的関与バイオマーカーに対する比較物4及びhFc-hIL-22の毎日投与の効果(平均±SEM;***は、対応のないt検定を使用したp<0.0003を意味する)を図示する。
図10C】糖尿病マウスモデルの16日間の研究における、3つの異なる標的関与バイオマーカーに対する比較物4及びhFc-hIL-22の毎日投与の効果(平均±SEM;***は、対応のないt検定を使用したp<0.0026を意味する)を図示する。
図11】糖尿病マウスモデルの13日間の研究における、血中グルコースに対する、比較物4及びhFc-hIL-22と比較した、本発明の誘導体(本明細書で比較物9として同定される)(3つの異なる用量)の比較物の毎日投与についての用量応答曲線(平均±SEM)を図示する。
図12A】2つの異なる肝臓酵素の血漿レベルによって証明されるように、アセトアミノフェン(APAP)誘導肝損傷マウスモデルの肝損傷の予防における比較物4及び9の効果を図示する。ダネット検定一要素線形モデルを使用して、ビヒクル+APAPと比較して、*はp<0.05、及び**はp<0.01を意味する。
図12B】2つの異なる肝臓酵素の血漿レベルによって証明されるように、アセトアミノフェン(APAP)誘導肝損傷マウスモデルの肝損傷の予防における比較物4及び9の効果を図示する。ダネット検定一要素線形モデルを使用して、ビヒクル+APAPと比較して、*はp<0.05、及び**はp<0.01を意味する。
図13A】APAP誘導肝損傷マウスモデルのアポトーシスの予防における比較物4及び9の効果を図示する。NSは有意でないことを意味する。
図13B】APAP誘導肝損傷マウスモデルの細胞増殖に対する比較物4及び9の効果を図示する。NSは有意でないことを意味する。
図14A】プレドニゾロンと比較した、ブレオマイシン誘導肺損傷ラットモデルの、肺炎症の予防及び/または低減における比較物9の効果を図示する。
図14B】プレドニゾロンと比較した、ブレオマイシン誘導肺損傷ラットモデルの、肺線維症の予防及び/または低減における比較物9の効果を図示する。
図14C】プレドニゾロンと比較した、ブレオマイシン誘導肺損傷ラットモデルの、肺線維症の予防及び/または低減における比較物9の効果を図示する。
図15】デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導大腸炎マウスモデルにおける結腸炎症の予防における比較物9の効果を図示する。****は、ビヒクル(DSSを含む)と比較したp<0.0001を意味する。
図16】DSS誘導大腸炎マウスモデルの粘膜上皮創傷の予防における、hFc-hIL-22と比較した比較物9の効果を図示する。倍率4倍、スケールバー=500μm。
図17】標的関与の尺度としての、DSS誘導大腸炎マウスモデルにおける血漿再生島由来タンパク質3ガンマ(Reg3g)レベルを図示する(Reg3gは、IL-22の標的関与マーカーである)。
図18A】2つの異なる肝臓酵素の血清レベルによって証明されるように、コンカナバリン(ConA)誘導肝損傷マウスモデルの肝損傷の予防における比較物4の効果を図示する。
図18B】2つの異なる肝臓酵素の血清レベルによって証明されるように、コンカナバリン(ConA)誘導肝損傷マウスモデルの肝損傷の予防における比較物4の効果を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、ギリシャ文字は書かれた名前ではなくシンボルで表される。例えば、α=アルファ、ε=エプシロン、γ=ガンマ及びμ=ミューである。アミノ酸残基は、それらのフルネーム、3文字のコードまたは1文字コードによって同定されてもよく、これらは全て完全に等価である。
【0031】
「IL-22の誘導体」という用語は、本明細書で使用される場合、共有結合した脂肪酸を有するIL-22タンパク質を指し、脂肪酸は一酸である。この用語は、脂肪一酸がIL-22タンパク質に直接共有結合している誘導体、及び共有結合がリンカーによる誘導体の両方を包含する。
【0032】
脂肪酸の共有結合は、ペプチド及びタンパク質の半減期延長のための実証済みの技術であり、ペプチドまたはタンパク質から脂肪酸を区切る方法である。それは、インスリンLevemir(登録商標)(デテミル)及びTresiba(登録商標)(デグルデク)、ならびにグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)誘導体Victoza(登録商標)(リラグルチド)及びOzempic(登録商標)(セマグルチド)などの1型及び2型糖尿病の市販製品で知られている。
【0033】
脂肪酸結合は、アルブミンへの結合を可能にし、それにより腎排泄を防止し、タンパク質分解に対するある程度の立体保護を提供する。有利には、Fc融合またはPEG化と比較して、IL-22に対する最小限の修飾を提供する。この点に関して、Fc融合及びPEG化は、IL-22のサイズを腎クリアランスの閾値を超えて増加させることを目的とするが、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪一酸を含む誘導体は、IL-22タンパク質のサイズと同様の小さいサイズを保持する。したがって、脂肪一酸結合は最小限の修飾であるため、得られる誘導体は、分布、拡散速度及び受容体関与(結合、活性化及び輸送)を含む天然様特性を維持し、免疫原性リスクを最小限に抑えると考えられる。
【0034】
上記のように、脂肪酸結合は、糖尿病のためのインスリン及びGLP-1誘導体における治療有効性を証明している。しかしながら、IL-22は、そのサイズ、配列及び生物学的特性の観点から非常に異なるタンパク質である。したがって、脂肪一酸が治療効果を維持しながらIL-22に共有結合し得ることは、本発明者には直感に反することであった。IL-22に対するそのような最小限の修飾が、循環半減期の延長、または生体液(例えば、血漿または腸液)または組織調製物中での半減期の延長と組み合わせた高い効力(hIL-22と同一またはそれに近い)をもたらし得ることは特に驚くべきことであった。
【0035】
したがって、第1の態様では、本発明は、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含むIL-22の誘導体であって、脂肪酸が、一酸である、誘導体に関する。脂肪一酸は、IL-22タンパク質に直接またはリンカーを介して共有結合し得、リンカー自体は、様々なサブユニットを考案することができる。「IL-22タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、hIL-22などの天然IL-22タンパク質またはそのバリアントを意味し得る。「バリアント」は、本明細書に更に定義されるように、天然タンパク質の配列と同様のアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。
【0036】
天然では、ヒトIL-22タンパク質は、分泌のために33個のアミノ酸のシグナルペプチドで合成される。成熟ヒトIL-22タンパク質(すなわち、hIL-22)は、長さが146個のアミノ酸であり、マウスIL-22(後者は長さが147個のアミノ酸である)と80.8%の配列同一性を有する。hIL-22のアミノ酸配列は、本明細書において、配列番号1として同定される。他のIL-10ファミリーメンバーと同様に、IL-22構造は、6つのα-らせん(らせんA~Fと称される)を含有する。
【0037】
したがって、本発明の誘導体は、hIL-22の天然アミノ酸配列を有し得る。あるいは、それらは、天然配列内の1つ以上のアミノ酸配列変異を有し得る。それらは、追加的または代替的に、天然配列に対する(すなわち、外部の)1つ以上のアミノ酸配列変異を含み得る。したがって、実施形態では、誘導体は、hIL-22またはそのバリアントに共有結合した脂肪一酸を含む。
【0038】
「内で」、「に対して」、「に対応する」及び「等価である」などの表現は、天然タンパク質、例えば、hIL-22の配列を参照して、IL-22タンパク質中の脂肪一酸の変化及び/または共有結合の部位を特徴付けるために本明細書で使用される。配列番号1において、hIL-22の第1のアミノ酸残基(アラニン(Ala))は、1位に割り当てられる。
【0039】
したがって、hIL-22の配列内の変異は、配列番号1の残基番号1~146のうちのいずれかに対する変異である。例えば、hIL-22の残基10における天然AspのGlu置換は、本明細書において「D10E」として表される。誘導体も、10位で共有結合した脂肪一酸を有する場合、それは、本明細書では、残基「10E」での結合と称される。
【0040】
しかしながら、hIL-22の配列に対する変異は、配列番号1の残基番号1~146の外部の変異である。例えば、本明細書に定義される誘導体1は、長さが3個のアミノ酸のN末端ペプチドを含む。N末端ペプチドの残基は、hIL-22の残基1に結合した残基から開始して、負の番号を付けられる。すなわち、hIL-22の残基1に結合しているN末端ペプチドの第1の残基は、「-1」と示される。誘導体1は、hIL-22の第1の残基、すなわち、誘導体1の配列表における4位に共有結合した脂肪一酸を有し、これはCysであり、したがって、本明細書では「4C」と称される。しかしながら、例として、脂肪一酸が、-1位から始まるN末端ペプチドの第3残基、すなわちGluに共有結合していた場合、誘導体1の共有結合部位は、本明細書では「-3G」と称されていたであろう。しかしながら、当然、誘導体1の配列表で使用される番号付けは、WIPO標準ST.25に従って、1から始まる。したがって、誘導体1の配列表における1位は、本明細書で言及されるように、実際には残基-3である。
【0041】
2つ、3つ、4つ、5つ以上の変異が、本発明の誘導体を形成するために天然配列内で行われ得る。例えば、この点に関して、10、15、20、25、50、75、100を超える、または更に125を超える変異が行われ得る。天然配列中の残基1~146のうちのいずれかが変化し得る。変異のための例示的な残基は、hIL-22中の残基1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、24、25、26、27、29、30、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、45、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、58、59、61、62、63、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79、82、83、84、86、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、126、127、128、129、130、132、133、134、135、137、138、139、141、143、144、145及び/または146である。残基1、21、35、64、113及び/または114における変異が特に有利である。残基95及び/または106での変異もまた有利である。
【0042】
天然配列内の変異は、典型的にはアミノ酸置換である。「置換」という用語は、本明細書で使用される場合、天然タンパク質中のアミノ酸を別のアミノ酸と置き換えることを意味し得る。それらは、保存的または非保存的置換であり得る。例示的な置換は、A1C、A1G、A1H、P2C、P2H、I3C、I3H、I3V、S4H、S4N、S5H、S5T、H6C、H6R、C7G、R8G、R8K、L9S、D10E、D10S、K11C、K11G、K11V、S12C、N13C、N13G、F14S、Q15C、Q15E、Q16V、P17L、Y18F、I19Q、T20V、N21C、N21D、N21Q、R22S、F24H、M25E、M25L、L26S、A27L、E29P、A30Q、L32C、L32R、A33C、A33N、D34F、N35C、N35D、N35H、N35Q、N36Q、T37C、T37I、D38L、V39Q、R40W、L41Q、I42P、E44R、K45A、F47T、H48G、H48R、G49N、V50S、S51C、M52A、M52C、M52L、M52V、S53C、S53K、S53Y、E54D、E54F、R55Q、R55V、C56Q、L58K、M59I、Q61E、V62D、L63C、N64C、N64D、N64Q、N64W、F65G、L67Q、E69D、E69L、V70S、L71C、F72D、F72L、P73C、P73L、Q74T、R77I、F78Q、Q79E、M82Y、Q83G、E84R、V86A、F88N、A90P、A90T、R91C、R91K、R91Y、L92R、S93Y、N94C、N94Q、R95K、R95Q、L96E、S97K、T98C、T98N、T98S、C99V、H100S、E102S、G103D、D104Y、D105Y、L106E、L106Q、H107L、H107N、I108L、Q109Y、R110C、R110K、N111K、V112E、Q113C、Q113R、K114C、K114R、L115V、K116Y、D117E、T118G、V119A、K120H、K121R、L122A、G123V、G126Y、E127C、I128V、K129V、G132Y、E133Q、L134P、D135M、L137D、F138R、M139L、M139R、L141Q、N143S、A144E、C145E、I146R及び/またはI146Vである。有利には、置換は、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及びK114Rからなる群から選択され得る。有利には、置換は、R95CまたはL106Cであり得る。驚くべきことに、本発明で用いられる置換は、IL-22活性に悪影響を及ぼさない。
【0043】
置換の特定の組み合わせには、(i)A1G、N21D、N35D及びN64D、(ii)A1G、I3V、S4N、S5T、H6R、R8K、D10E、K11V、T20V、H48R、M52A、S53K、E54D、R55Q、E69D、F72L、A90T、R91K、R95Q、T98S、E102S、L106Q、H107N、R110K、Q113R、K114R、D117E及びI146V、(iii)A1G、I3V、S4N、S5T、H6R、R8K、D10E、K11V、T20V、H48R、M52A、S53K、E54D、R55Q、E69D、F72L、A90T、R91K、R95Q、T98S、E102S、L106Q、H107N、R110K、Q113R、K114R、D117E及びI146V、(iv)A1G、N35Q及びN64Q、(v)A1G及びN64C、(vi)A1G及びQ113C、(vii)A1G及びK114C、(viii)A1G及びM25L、(ix)A1G及びM52L、(x)A1G及びM139L、(xi)A1G及びN36Q、(xii)A1G及びD117E、(xiii)A1G及びN21Q、(xiv)A1G及びN35Q、(xv)A1G及びN64Q、(xvi)A1G、N21Q及びN35Q、(xvii)A1G、N21Q及びN64Q、(xviii)A1G、N21Q、N35Q及びN64Q、(xix)A1G及びK11C、(xx)A1G及びN13C、(xxi)N35Q及びN64Q、(xxii)A1C、N35Q及びN64Q、(xxiii)H6C、N35Q及びN64Q、(xxiv)I3C、N35Q及びN64Q、(xxv)P2C、N35Q及びN64Q、(xxvi)L32C、N35Q及びN64Q、(xxvii)N35Q、M52C及びN64Q、(xxviii)N13C、N35Q及びN64Q、(xxix)N21C、N35Q及びN64Q、(xxx)N35Q、N64Q及びN94C、(xxxi)N35Q、N64Q及びP73C、(xxxii)N35Q、N64Q及びQ113C、(xxxiii)N35Q、N64Q及びR91C、(xxxiv)N35Q、N64Q及びR110C、(xxxv)S12C、N35Q及びN64Q、(xxxvi)N35Q、S51C及びN64Q、(xxxvii)N35Q、S53C及びN64Q、(xxxviii)N35Q、T37C及びN64Q、(xxxix)N35Q、N64Q及びT98C、(xxxx)Q15C、N35Q及びN64Q、(xxxxi)N35C及びN64Q、(xxxxii)H6C、N35Q及びN64Q、(xxxxiii)A33C、N35Q及びN64Q、ならびに(xxxxiv)A1H、P2H、I3H、S4H、S5H、C7G、R8G、L9S、D10S、K11G、N13G、F14S、Q15E、Q16V、P17L、18F、Y19Q、N21Q、R22S、F24H、M25E、L26S、A27L、E29P、A30Q、L32R、A33N、D34F、N35H、T37I、D38L、V39Q、R40W、L41Q、I42P、E44R、K45A、F47T、H48G、G49N、V50S、M52V、S53Y、E54F、R55V、C56Q、L58K、M59I、Q61E、V62D、L63C、N64W、F65G、L67Q、E69L、V70S、L71C、F72D、P73L、Q74T、R77I、F78Q、Q79E、M82Y、Q83G、E84R、V86A、F88N、A90P、R91Y、L92R、S93Y、N94Q、R95K、L96E、S97K、T98N、C99V、H100S、G103D、D104Y、D105Y、L106E、H107L、I108L、Q109Y、R111K、V112E、L115V、K116Y、D117E、T118G、V119A、K120H、K121R、L122A、G123V、G126Y、E127C、I128V、K129V、G132Y、E133Q、L134P、D135M、L137D、F138R、M139R、L141Q、N143S、A144E、C145E及びI146Rが含まれる。置換の他の特定の組み合わせには、(xxxxv)N35Q、N64Q及びR95C、ならびに(xxxxvi)N35Q、N64Q及びL106Cが含まれる。置換のいずれか及び全ての組み合わせが想定され、本発明の一部を形成する。
【0044】
第1の態様の誘導体は、典型的には、アミノ酸置換を含み得、それにより、Cysは、任意選択で、上記で同定される位置、例えば、1位、2位、3位、6位、11位、12位、13位、15位、21位、32位、33位、35位、37位、51位、52位、53位、63位、64位、71位、73位、91位、94位、98位、110位、113位、114位及び/または127位うちのいずれかにおいて、天然残基を置換する。有利には、第1の態様の誘導体に含まれるIL-22タンパク質は、hIL-22の1位にCys残基を含む(誘導体1及び誘導体2など)。別の好ましい実施形態では、バリアントは、hIL-22の95位または106位にCys残基を含む。
【0045】
代替的に、または追加で、天然配列内の変異は、アミノ酸挿入であってもよい。最大5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または更には最大50個のアミノ酸が、天然配列内に挿入され得る。この点に関して、三量体、五量体、七量体、八量体、九量体及び44量体が特に有利である。例示的な配列を表1に示す。挿入は、天然配列の任意の位置で行うことができるが、らせんA(例えば、残基30で)、ループCD(例えば、残基75で)、らせんD(例えば、残基85で)及び/またはらせんF(例えば、残基124で)中のものが好ましい。
【表1】
【0046】
天然配列内の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ以上の変異は、独立して、置換及び挿入からなる群から選択され得る。
【0047】
天然配列内の変異はまた、配列番号1内に1つ以上のアミノ酸欠失を含み得るか、または代替的に含む。
【0048】
したがって、ペプチドは、最大5つのアミノ酸欠失を含み得る。3つまたは2つ以下のアミノ酸欠失が好ましい。該欠失は、例えば、配列番号1内の別個の(すなわち、非連続的な)位置に存在し得る。変異はまた、配列番号1内に2つ、3つ、4つまたは5つの連続したアミノ酸の欠失であり得るか、または代替的に欠失であり、これは、最大5つの一連の隣接するアミノ酸が欠失してもよいことを意味する。
【0049】
hIL-22のアミノ酸配列に対する配列変異は、存在する場合、典型的には、N末端にペプチドを付加するなどの伸長を含む。ペプチドは、最大5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または更には50個のアミノ酸からなり得る。単量体、三量体、八量体、13量体、15量体、16量体、21量体、28量体は、この点に関して特に有利である。例示的な配列を表2に示す。好適には、第1の態様の誘導体に含まれるIL-22タンパク質は、N末端G-P-Gを含む。特に好ましい例では、第1の態様の誘導体は、hIL-22の1位(配列番号1)のCys残基及びN末端G-P-Gの両方を含む。これにより、非常に良好な半減期及び効力を有する誘導体が作製されることが見出されている(実施例1の誘導体1を参照されたい)。
【表2】
【0050】
別の有利な実施形態では、第1の態様の誘導体に含まれるIL-22タンパク質は、N末端G-P-Gを含まない。
【0051】
hIL-22のアミノ酸配列に対する配列変異は、存在する場合、C末端にペプチドの付加を含み得る。ペプチドは、最大5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または更には50個のアミノ酸からなり得る。例示的なC末端ペプチド配列は、表2(N末端ペプチドについて)に示されるものを含む。七量体は、この点において特に有利であり、任意選択で、アミノ酸配列G-S-G-S-G-S-C(配列番号19)を有する。
【0052】
本発明の誘導体は、本明細書に記載される天然またはバリアントhIL-22アミノ酸配列に加えて、N末端ペプチド及びC末端ペプチドの両方を含み得る。本明細書に記載のN末端ペプチド及びC末端ペプチドの任意の組み合わせが想定され、本発明に明示的に含まれる。
【0053】
本発明は、hIL-22またはそのバリアントに共有結合した脂肪酸(脂肪酸は一酸である)を含むIL-22の任意の誘導体に及ぶことを理解されたい。「バリアント」は、hIL-22と少なくとも10%の配列同一性を有するタンパク質であり得る。例えば、バリアントは、hIL-22内に変異を有し得、hIL-22と少なくとも10%の配列同一性を有し得る。実施形態では、バリアントは、hIL-22と少なくとも20%、または更には少なくとも30%の配列同一性を有する。バリアントは、hIL-22の「実質的にアミノ酸配列」を有し得、これは、hIL-22のアミノ酸配列と少なくとも40%の配列同一性を有する配列を意味し得る。したがって、実施形態では、第1の態様の誘導体は、hIL-22と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。実験セクションに開示される本発明の特定の誘導体に組み込まれるものを含む例示的なIL-22タンパク質バリアントは、配列番号20~25に記載される。
【0054】
当業者は、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセンテージを計算する方法を理解するであろう。2つの配列のアラインメントは、最初に調製され、続いて配列同一性値が計算されなければならない。2つの配列の同一性パーセンテージは、以下に応じて異なる値を取ることができる:(i)配列をアラインメントさせるために使用される方法、例えば、ClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(異なるプログラムで実装される)または3D比較からの構造的アラインメント、ならびに(ii)アラインメント方法によって使用されるパラメータ、例えば、ローカル対グローバルアラインメント、使用されるペアスコアマトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)ならびにギャップペナルティ、例えば、関数形式及び定数。
【0055】
アラインメントを行った後、2つの配列間の同一性パーセンテージを計算する多くの異なる方法がある。例えば、以下によって同一性の数を分割することができる:(i)最短配列の長さ、(ii)アラインメントの長さ、(iii)配列の平均長さ、(iv)非ギャップ位置の数または(iv)オーバーハングを除く等価位置の数。更に、同一性パーセンテージも、強く長さに依存していることを理解されたい。したがって、一対の配列が短いほど、偶然に生じることが予想され得る配列同一性が高くなる。
【0056】
したがって、アミノ酸配列の正確なアラインメントは、複雑なプロセスであることを理解されたい。一般的な多重アラインメントプログラムClustalW[48、49]は、本発明によるタンパク質の複数のアラインメントを生成するための好ましい方法である。ClustalWに好適なパラメータは次のとおりであり得る:タンパク質アラインメントの場合:ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップエクステンションペナルティ=0.2及びマトリックス=ゴネット。DNA及びタンパク質アラインメントの場合:ENDGAP=-1及びGAPDIST=4。当業者であれば、最適な配列アラインメントのためにこれら及び他のパラメータを変更することが必要であり得ることを認識するであろう。
【0057】
好ましくは、次いで、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセンテージの計算は、(N/T)*100などのアラインメントから計算することができ、式中、Nは、配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップを含むがオーバーハングを除く、比較された位置の総数である。したがって、2つの配列間の同一性パーセンテージを計算するための最も好ましい方法は、(i)例えば、上記に記載されるように、好適なパラメータのセットを使用して、ClustalWプログラムを使用して配列アラインメントを調製することと、(ii)N及びTの値を以下の式:配列同一性=(N/T)*100に挿入することと、を含む。
【0058】
類似の配列を同定するための代替的な方法は、当業者に既知であろう。
【0059】
好適には、第1の態様の誘導体は、200個以下のアミノ酸を含む。例えば、誘導体は、190個未満、180個未満、170個未満、160個未満または150個未満のアミノ酸を含む。好適には、誘導体は、少なくとも146個のアミノ酸を含むが、これは、hIL-22中のアミノ酸の数である。少なくとも150個のアミノ酸、少なくとも160個のアミノ酸、少なくとも170個のアミノ酸または更には少なくとも180個のアミノ酸を含み得る。本発明の誘導体は、上記の範囲内の任意の長さのタンパク質を含むことができるが、それらは典型的には長さが146~180個のアミノ酸である。
【0060】
本発明の誘導体は、天然またはバリアントのアミノ酸配列を有するかどうかにかかわらず、IL-22タンパク質に共有結合した脂肪酸を含み、脂肪酸は一酸である。脂肪一酸は、典型的には、リンカーによってIL-22タンパク質に共有結合している。脂肪一酸及びリンカーは、アミド結合を介して互いに好適に接続され、リンカーは、IL-22タンパク質に共有結合している。したがって、脂肪一酸及びリンカーは、IL-22タンパク質上の側鎖として存在し得る。共有結合した脂肪一酸がIL-22活性に悪影響を及ぼさないことは、本発明者らにとって驚くべきことであった。脂肪一酸の結合が、半減期の延長などの追加の利点と関連していることは、特に驚くべきことであった。
【0061】
脂肪一酸は、任意の好適な脂肪一酸であり得る。特に、脂肪一酸は、下式Iのもの:
C-(CH-CO-*
(式中、xは、10~18、任意選択で12~18、14~16または16~18の範囲の整数であり、*は、IL-22タンパク質またはリンカーへの結合点を示す)であり得る。それは、C12、C14、C16、C18またはC20一酸であり得る。有利には、脂肪一酸は、C16またはC18一酸であり、最も有利には、C16一酸である。
【0062】
例えば、式Iの-(CH-は、xが10である直鎖アルキレンであり得る。この脂肪酸は、好都合には、C12一酸、すなわち、12個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸と称され得る。あるいは、式Iの-(CH-は、xが12である直鎖アルキレンであり得る。この脂肪酸は、好都合には、C14一酸、すなわち、14個の炭素原子を有する脂肪モノカルボン酸と称され得る。同様に、式Iの-(CHx-は、xが14(C16一酸)、16(C18一酸)または18(C20一酸)である直鎖アルキレンであり得る。好適には、第1の態様の誘導体は、C14、C16、C18またはC20一酸、より好適には、C16またはC18一酸、更により好適には、C16一酸を含む。
【0063】
一酸は、アルブミンと非共有結合会合を形成することができ、それにより血流中の誘導体の循環を促進することができる。より短い一酸(例えばC16一酸)は、低いアルブミン親和性を有し、したがってより長い一酸(例えばC18一酸)よりも半減期が短い。しかしながら、それらは依然として長時間作用型の誘導体であり、予想される半減期は人では1日を超える。
【0064】
一酸はまた、親油性であり、これは、それらが生体膜に結合する傾向があることを意味する。生体膜への組み込みによるこの非アルブミン依存性引延は、局所的なリザーバを形成し得、したがって、長時間の局所的作用を確実にする。これは、局所投与、経口投与、直腸坐剤もしくは直腸泡状物、または肺吸入における利点を提供すると仮定することができる。
【0065】
脂肪酸の結合は、それ自体で、更に、タンパク質分解に対してIL-22タンパク質を安定させる。
【0066】
第1の態様の誘導体は、脂肪一酸及びIL-22タンパク質の特定の組み合わせを含み得る。例えば、C14、C16、C18またはC20一酸は、hIL-22の1位にCys残基及び/またはN末端G-P-Gを含むIL-22タンパク質に結合し得る。一例では、第1の態様の誘導体は、C16一酸を含み、IL-22タンパク質は、hIL-22の1位にCys残基及びN末端G-P-G(誘導体1になど)の両方を含む。
【0067】
上記のように、脂肪一酸は、IL-22タンパク質に結合しているリンカーに好適に接続される。リンカーは、1つ以上のアミノ酸、例えば、1つ以上のGlu及び/またはLys残基を含む、いくつかのリンカー要素を含み得る。リンカーは、オキシエチレングリシン単位または複数の連結したオキシエチレングリシン単位、任意選択で2~5つのそのような単位、有利には2つの単位を含み得る。1つ以上のOEG残基、CDA及び/またはAc基が、代替的にまたは追加的に含まれ得る。リンカーは、Cys反応性単位を含み得る。「Cys反応性単位」は、本明細書で使用される場合、Cysの硫黄原子と反応して炭素-硫黄共有結合を作り出すことができる機能単位を意味し得る。Cys反応性単位は、いくつかの形態のうちのいずれかを有することができるが、好適には、脱離基に結合した炭素原子を含み、脱離基は、炭素-硫黄結合の形成中にCysの硫黄原子によって置換される。脱離基は、ハロゲン、任意選択で臭素原子であり得る。この臭化物脱離基は、Ac官能基へのアルファであり得、有利には、ブロモ-Ac官能基である。脱離基は、代替的に、メシレートまたはトシレートの形態の官能化ヒドロキシル基、または非官能化ヒドロキシル基であってもよい。更に、脱離基は、マレイミドまたは他の官能基であり得る。例示的なリンカーとしては、γGlu-OEG-OEG-CDA-Ac、γGlu-γGlu-γGlu-γGlu-OEG-OEG-εLys-αAc及びγGlu-OEG-OEG-εLys-αAcが挙げられるが、任意の好適なリンカーが用いられ得る。リンカーγGlu-OEG-OEG-εLys-αAcが好ましい場合がある。
【0068】
脂肪一酸またはリンカーは、IL-22タンパク質中の任意のアミノ酸残基に結合し得る。この点に関する例示は、hIL-22アミノ酸配列において、またはhIL-22アミノ酸配列に対して残基-7、-5、1、6、33、113、114及び153である。更なる例示的な残基は、hIL-22アミノ酸配列中の95及び106である。天然残基は、典型的には、脂肪一酸またはリンカーの結合を可能にするために、CysまたはLysで置換されている。あるいは、脂肪一酸またはリンカーは、天然のCysまたはLys残基において結合することができる。好適には、脂肪一酸またはリンカーは、hIL-22の1位、6位、33位、113位もしくは114位で置換されたCys残基、またはhIL-22に対して-5位、-7位もしくは153位のCys残基に結合している。特に、脂肪一酸またはリンカーは、hIL-22の1位で置換されたCys残基に結合し得る。脂肪一酸またはリンカーは、hIL-22の95位または106位で置換されたCys残基に結合し得る。
【0069】
脂肪一酸またはリンカーのIL-22タンパク質への結合は共有結合である。例えば、Cys反応性脂肪一酸またはリンカーを使用して、脂肪一酸またはリンカーをIL-22タンパク質中のCys残基に結合してもよい。脂肪一酸またはリンカーは、チオエーテル結合を介してCys残基の硫黄原子に共有結合し得る。あるいは、Lys反応性脂肪一酸またはリンカーを使用して、脂肪一酸またはリンカーをIL-22タンパク質中のLys残基に結合してもよい。脂肪一酸またはリンカーは、代替的に、IL-22タンパク質のN末端の遊離アミン(-NH)基に共有結合してもよい(1位のアミノ酸に関係なく)。結合は、Cys結合と同様に進行することができるが、好適なN反応性種を含有する脂肪一酸またはリンカーの化学量論的量未満である。脂肪一酸またはリンカーは、アルデヒド(N反応性種)の形態で提示され得、古典的に知られている還元的アミノ化を用いて遊離アミンに共有結合し得る。
【0070】
したがって、第1の態様の誘導体は、好適には、hIL-22のバリアントにリンカーによって結合しているC14、C16、C18またはC20一酸を含み、バリアントは、任意選択で、N末端G-P-G及びhIL-22の1位のCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、Cys残基に結合している。
【0071】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC14、C16、C18またはC20一酸を含み、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、バリアントは、N末端G-P-G及びhIL-22の1位のCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0072】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC16、C18またはC20一酸を含み、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、バリアントは、N末端G-P-G及びhIL-22の1位のCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0073】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC16またはC18一酸を含み、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、バリアントは、N末端G-P-G及びhIL-22の1位のCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0074】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したまたはC16一酸を含み、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、バリアントは、N末端G-P-G及びhIL-22の1位のCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0075】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC14、C16、C18またはC20一酸を含み、バリアントは、N末端G-P-Gを含まないが、hIL-22の1位にCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0076】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC14、C16、C18またはC20一酸を含み、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、バリアントは、N末端G-P-Gを含まないが、hIL-22の1位にCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0077】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC16、C18またはC20一酸を含み、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、バリアントは、N末端G-P-Gを含まないが、hIL-22の1位にCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0078】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC16またはC18一酸を含み、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、バリアントは、N末端G-P-Gを含まないが、hIL-22の1位にCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0079】
実施形態では、誘導体は、hIL-22のバリアントにリンカーによって共有結合したC16一酸を含み、リンカーは、γGlu-OEG-OEG-εLys-αAcであり、バリアントは、N末端G-P-Gを含まないが、hIL-22の1位にCys残基を含み、リンカーは、任意選択で、該Cys残基に結合している。
【0080】
第1の態様の例示的な誘導体は、配列番号20~25及び34のうちのいずれかに記載されるIL-22タンパク質を含む。特に有利な誘導体が表3に示され、図1に示され、本明細書に例示される。
【表3】
【0081】
本発明の誘導体は、異なる立体異性形態で存在し得、本発明は、これらの全てに関する。
【0082】
本発明の第2の態様によると、脂肪一酸をIL-22タンパク質に共有結合させることを含む、第1の態様の誘導体を調製するためのプロセスが提供される。
【0083】
プロセスを使用して、本明細書に記載のまたは想定されるIL-22の異なる誘導体のいずれかを産生してもよいが、脂肪一酸がバリアントIL-22タンパク質に共有結合している場合に特に有利である。したがって、実施形態では、第2の態様で用いられるIL-22タンパク質は、hIL-22の置換形態であり、任意選択で、1位、21位、35位、64位、113位及び/または114位で置換されている。例示的な置換としては、A1C、A1G、A1H、N21C、N21D、N21Q、N35C、N35D、N35H、N35Q、N64C、N64D、N64Q、N64W、Q113C、Q113R、K114C及び/またはK114Rが挙げられる。好ましくは、IL-22タンパク質は、1位のCys残基で置換されている。
【0084】
脂肪一酸は、組換え手段を含む、当該技術分野で既知の任意の手段によって得ることができる。好適な脂肪一酸は、市販されているか、または標準的な化学合成を使用して入手可能な出発材料から容易に導かれる。
【0085】
IL-22タンパク質は、組換え手段を含む、当該技術分野で既知の任意の手段によって得ることができる。組換えhIL-22の産生は以前に記載されており、当該技術分野で周知である。所望のバリアントIL-22タンパク質を同様の方法で産生することができる。この分野の熟練した研究者は、所望のバリアントIL-22タンパク質をコードする好適な核酸配列を容易に同定することができるであろう。したがって、当業者は、当該技術分野における既存の知識に基づいて、本発明のこの部分を容易に実行することができるであろう。好適には、IL-22タンパク質は、標準的な技法を使用して、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳類系で産生される。ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)を用いて、組換えタンパク質の親和性精製を補助することができる。
【0086】
この点に関して、本発明で使用されるIL-22タンパク質は、ニッケルカラムに対する親和性によって精製することができる10未満、好ましくは6つのヒスチジン残基のN末端またはC末端付加である、発現後切断可能なHisタグを使用して調製することができる。Hisタグは、遊離IL-22タンパク質を残すために既知のプロテアーゼによって消化することができるリンカーを介してタンパク質のN末端またはC末端に連結される。切断可能なHisタグは、アミノ酸配列、HHHHHHGGSSGSGSEVLFQ(配列番号26)を有し得、プロテアーゼ切断可能なリンカーは、タバコエッチウイルス(TEV)リンカーであり得、天然切断部位のそのコンセンサス配列は、ENLYFQ/S(配列番号27)であり、「¥」は、切断されたペプチド結合またはEVLFQコンセンサス切断部位を有するヒトライノウイルス-14 3C(HRV14-3C)プロテアーゼ切断可能リンカーを示す。切断は、約10μgのプロテアーゼを2.5μgのタンパク質及び10mMの2-メルカプトエタノールとともに室温で4時間インキュベートすることによって達成され得る。
【0087】
本発明を更に例示するために、タンパク質調製のための代表的なプロセスが以下のように提供される。このプロセスは、IL-22タンパク質の所望のアミノ酸配列をコードするプラスミドDNAを調製することを伴う。このプラスミドは、細胞株、例えば、CHO-K1に一過性にトランスフェクトされてもよく、細胞株は、既知のエンハンサーの添加によって成長が増加する前に、関連培地中で成長させる。次いで、分泌されたIL-22タンパク質は、タンパク質がニッケルカラム上で精製される前に、遠心分離及び滅菌濾過の既知の方法によって回収することができる。濃縮及び緩衝液交換後、脂肪一酸によるアルキル化(以下に更に記載される)、ならびに最終精製及び緩衝液交換の前に、Hisタグは、HRV14-3Cプロテアーゼを使用して除去される。脱グリコシル化の有無にかかわらず、SDS-PAGE、タンデム質量分析を用いたサイズ排除クロマトグラフィまたは液体クロマトグラフィ(LC-MS-MS)を使用した最終産物の分析を使用して、最終産物の品質を確保することができる。
【0088】
脂肪一酸は、直接、または第1の態様について記載されるリンカーを使用するかのいずれかで、IL-22タンパク質に共有結合し得る。リンカーは、当該技術分野で既知の任意の手段によって得ることができる。脂肪一酸及びリンカーを調製するための方法は、当業者に既知であろう。しかしながら、例として、脂肪二酸及びリンカーを調製するための代表的な方法は、用いられる場合、米国特許公開第US2018/0140673号に記載されている。当業者は、開示された二酸を一酸に置き換える方法を知っているであろう。
【0089】
したがって、IL-22タンパク質への脂肪一酸またはリンカーの共有結合は、当該技術分野の標準的な手順を使用して行われ得る。したがって、リンカーは、用いる場合、IL-22タンパク質の脂肪一酸への共有結合を可能にする。非限定的な例として、Cys反応性脂肪一酸またはリンカーは、IL-22タンパク質中のCys残基の硫黄原子と反応させて、チオエーテル結合を形成してもよい。共有結合ステップのための好適な条件は、以下のように例示され得る:水中のトリスを、トリス及びNaCl緩衝液(1.35mg/mL)中のIL-22タンパク質(70mg)に添加して、pH8に調節する。ビス(p-スルホナトフェニル)-フェニルホスフィン二水和物二カリウム(BSPP)塩(12mg)を、水に溶解して添加し、室温で4時間ゆっくりと攪拌する。エタノール(0.5mL)中の15-{(S)-1-カルボキシ-3-[2-(2-{[2-(2-{[2-(2-ブロモアセチルアミノ)-エチルカルバモイル]エトキシ}エトキシ)エチルカルバモイル]メトキシ}エトキシ)エチルカルバモイル]プロピル-カルバモイル}ペンタデカン酸(19mg、0.022mmol)を添加し、混合物を一晩ゆっくりと攪拌した。MiliQ水(150mL)を添加して、伝導度を2.5mS/cmに低下させる。次いで、混合物を、結合緩衝液(20mMのトリス、pH8.0)、溶出緩衝液(20mMのトリス、500mMのNaCl、pH8.0)、流量6mL及び60カラム体積にわたって0~80%の溶出緩衝液の勾配を使用して、MonoQ 10/100 GLカラム上でアニオン交換を使用して精製する。
【0090】
本発明の誘導体は、クロマトグラフィ、電気泳動、示差溶解性または抽出などの当技術分野で既知の任意の好適な手順を使用して精製され得る。
【0091】
本明細書に記載されるように、本発明者らは、脂肪一酸が、生物学的活性を維持しながら、IL-22タンパク質に共有結合し得ることを見出して驚いた。IL-22に対するそのような最小限の修飾が、非常に長い循環半減期と組み合わせて高い効力(hIL-22に近い)をもたらし得ることは、特に驚くべきことであった。特性のこの特定の組み合わせは、非常に望ましい場合がある。
【0092】
誘導体の効力は、ヒトIL-22受容体を発現する全細胞を用いたインビトロアッセイにおいて決定することができる。例えば、ヒトIL-22受容体の応答は、IL-22R1、IL-10R2及びホスホ-STAT3(pSTAT3)応答性レポーター遺伝子を過剰発現するベビーハムスター腎(BHK)細胞を使用して測定することができる。あるいは、IL-22受容体を内因的に発現するHepG2細胞を使用してもよい。受容体の活性化は、STAT3シグナル伝達経路の活性化をもたらし、これは、例えば、STAT3誘導プロモーターを有するルシフェラーゼレポーター遺伝子を使用して、またはpSTAT3をアッセイすることによって測定することができる。インビボ効力は、当該技術分野で知られているように、動物モデルまたは臨床試験で決定することができる。
【0093】
半最大有効濃度(EC50)値は、しばしば薬物の効力の尺度として使用される。これは、最大効果の50%を産生するのに必要な薬物の濃度を表すため、EC50値が低いほど、効力は良好である。本発明の誘導体は、好適には、1.5nM未満、1.25nM未満、1nM未満、0.75nM未満、0.5nM未満、0.25nM未満または更には0.1nM未満の、細胞においてIL-22受容体媒介STAT3活性化を使用して測定される効力(EC50値)を有する(例えば、実施例1に記載されるように決定される)。本発明の誘導体は、好適に、15nM未満、12nM未満、10nM未満、7nM未満または更には5nM未満の、細胞においてpSTAT3をアッセイすることによって測定される効力(EC50値)を有する。
【0094】
有利には、IL-22の誘導体の効力は、IL-22-Fc融合物の効力よりも高い場合がある。例えば、Genentechは、hIL-22と比較して、そのIL-22-Fc融合物であるUTTR1147Aのインビトロ効力が34倍低減したことを報告している(Stefanich et al.,Biochem Pharmacol,2018,152:224-235)。対照的に、hIL-22への脂肪一酸の共有結合は、効力の最小限の低減のみを引き起こすことが示されている(実施例1の誘導体1及び実施例12の誘導体2を参照されたい)。IL-22-Fc融合物及び本発明の誘導体の両方は、hIL-22に対する改善された半減期及び少なくとも一部の設定における生物学的機能の観点から同等であり得るが、本発明の誘導体は、効力の最小限の損失という追加の利点を有し得る。
【0095】
誘導体の循環排出半減期(T1/2)は、誘導体をマウス、ラットまたはミニブタなどの好適な動物モデルに皮下または静脈内投与することによってインビボで決定され得る。好適な方法は当業者に既知であろう。非限定的な例として、第1の態様の誘導体は、マウスへの皮下または静脈内投与後、少なくとも1時間、少なくとも3時間、少なくとも5時間または更には少なくとも8時間の循環半減期を有する。誘導体は、ラットへの皮下または静脈内投与後、少なくとも3時間、少なくとも5時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間または更には少なくとも13時間の循環半減期を有し得る。誘導体は、ミニブタへの皮下または静脈内投与後、少なくとも25時間、少なくとも40時間、少なくとも70時間または更には少なくとも100時間の循環半減期を有し得る。
【0096】
本発明者らはまた、本発明の誘導体がインビボで迅速に吸収されることを見出した。有利には、皮下投与後の誘導体の吸収は、IL-22-Fc融合物の吸収よりも速く生じ得る。平均吸収時間は、用量及び薬物投与後の最大血漿濃度とは独立しているため、取り込みを測定するための正確なパラメータである。これは、平均滞留時間、すなわち、吸収が完了したら、排出される前に薬物が体内に留まる時間に基づいて計算され得る。本発明の誘導体は、好適には、ブタにおいて100時間未満、90時間未満、80時間未満、70時間未満または更には60時間未満の平均吸収時間を有する。
【0097】
本発明の誘導体はまた、当該技術分野の標準的な方法を使用して測定され得る、高い物理的安定性及び/または溶解性などの良好な生物物理学的特性を有する。実際、一酸誘導体化バリアントは、hIL-22と比較して生物物理学的特性を顕著に変化させ、その治療可能性を改善する。注目すべきは、それらは、例えば、アルブミンへの結合及び脂質膜との相互作用を通じて、タンパク質分解及び腎クリアランスに対して安定化される。重要なことに、本発明者らは、インビトロで測定されるコンジュゲート誘導体の活性を損なうことなく、IL-22タンパク質骨格の選択部位で、一酸含有脂肪酸部分のコンジュゲーションを行うことができることを見出した(実施例1を参照されたい)。
【0098】
したがって、本発明の第3の態様によると、第1の態様の誘導体と、薬学的に許容されるビヒクルと、を含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、本明細書に更に記載されるように、吸入、注射、局所、経口または眼内投与に好適であり得、任意選択で、注射は、腹腔内、皮下または静脈内である。一実施形態では、皮下投与が好ましい。一実施形態では、静脈内投与が好ましい。一実施形態では、経口投与が好ましい。一実施形態では、局所投与が好ましい。
【0099】
第3の態様の医薬組成物は、本明細書に記載のまたは想定されるIL-22の異なる誘導体のうちのいずれかを含み得る。好適には、本明細書で誘導体1として同定されるIL-22の誘導体を含む。本明細書で誘導体2として同定されるIL-22の誘導体を含み得る。
【0100】
第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物は、hIL-22と比較して増加した循環排出半減期を好適に実証するであろう。有利には、hIL-22と比較して、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%以上増加した循環排出半減期を実証する。
【0101】
第3の態様の医薬組成物は、治療有効量の第1の態様の誘導体を薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせることによって調製され得る。様々な賦形剤を有する薬学的に有効な成分の製剤は、当該技術分野で既知である。
【0102】
第1の態様の誘導体の「治療有効量」は、対象に投与されるとき、疾患、障害または状態を治療するか、または所望の効果をもたらすために必要とされる誘導体の量である任意の量である。
【0103】
例えば、使用される誘導体の治療有効量は、約0.001mg~約1000mg、好ましくは約0.01mg~約500mgであり得る。誘導体の量は、約0.1mg~約100mg、最も好ましくは約0.5mg~約50mgの量であることが好ましい。
【0104】
本明細書でいう「薬学的に許容されるビヒクル」とは、医薬組成物を製剤化する際に有用であることが当業者に知られている、あらゆる公知の化合物または公知の化合物の組み合わせである。
【0105】
一実施形態では、薬学的に許容されるビヒクルは固体であり得、任意選択で、組成物は懸濁のための粉末の形態であり得る。固体の薬学的に許容されるビヒクルは、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、染料、充填剤、流動促進剤、不活性結合剤、防腐剤または染料としても作用し得る1つ以上の物質を含み得る。ビヒクルはまた、封入材料であってもよい。粉末では、ビヒクルは、本発明による微細化された誘導体と混合される微細化された固体である。粉末は、好ましくは最大99%の誘導体を含有する。好適な固体ビヒクルとして、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース及びイオン交換樹脂が挙げられる。
【0106】
別の実施形態では、薬学的ビヒクルはゲルであり得、組成物はクリームなどの形態であり得る。
【0107】
しかしながら、薬学的ビヒクルは液体であってもよく、任意選択で医薬組成物は溶液の形態である。液体ビヒクルは、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル剤及び加圧組成物の調製に使用される。本発明による誘導体は、水、有機溶媒、両方の混合物または薬学的に許容される油もしくは脂肪などの薬学的に許容される液体ビヒクルに溶解または懸濁され得る。液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、防腐剤、甘味料、香味剤、懸濁剤、増粘剤、色素、粘度調節剤、安定剤または浸透圧調節剤などの他の好適な薬学的添加剤を含有することができる。非経口投与のための液体ビヒクルの好適な例としては、水(上記のような添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価のアルコール及び多価のアルコール、例えば、グリコールを含む)及びそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分画ココナッツ油及びアラキス油)が挙げられる。非経口投与の場合、ビヒクルは、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであってもよい。滅菌液体ビヒクルは、非経口投与のための滅菌液体形態の組成物において有用である。加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される推進剤であり得る。
【0108】
したがって、本発明の医薬組成物を調製するためのプロセスは、当該技術分野で標準的である通常のステップを含み得る。
【0109】
したがって、本発明の第4の態様によれば、療法に使用するための第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物が提供される。本発明の誘導体またはそれを含む医薬組成物を用いた対象の治療方法も提供される。本明細書に記載のまたは想定されるIL-22の異なる誘導体のうちのいずれかが、本発明のこれらの態様に明示的に含まれる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「治療」及び「療法」などの用語は、疾患、障害または状態の治療、改善または予防を明示的に含む。
【0111】
IL-22の誘導体またはそれを含む医薬組成物は、治療される対象に直接投与され得る。誘導体または医薬組成物は、吸入、注射、局所、経口、直腸または眼内を含む任意の手段によって投与することができる。吸入により投与する場合は、鼻または口を介することができる。好ましくは、誘導体または医薬組成物は、注射によって、典型的には皮下または静脈内投与される。前述のように、本発明の一酸誘導体の親油性は、局所投与、経口投与、直腸投与(例えば、坐剤または泡状物)または肺吸入においても有利であり得る。したがって、誘導体は、それらのより小さいサイズ及びより高い効力のために、投与の柔軟性(例えば、注射、吸入、局所適用、直腸もしくは経口投与、または眼送達による)において、Fc融合物に勝る明らかな利点を有する。治療される対象に、本発明の誘導体を投与することにより、hIL-22と比較して循環時間が増加し、疾患、障害または状態の治療に役立つことが理解されるであろう。上記のように、「治療すること」はまた、疾患、障害または状態を改善及び予防することを含む。
【0112】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内及び特に皮下または静脈内注射によって利用することができる。誘導体は、滅菌水、生理食塩水または他の適切な滅菌注射用媒体を使用して、投与時に溶解または懸濁され得る滅菌固体組成物として調製され得る。
【0113】
吸入に有用な形態としては、滅菌溶液、エマルジョン及び懸濁液が挙げられる。あるいは、誘導体は、Dischaler(登録商標)またはTurbohaler(登録商標)を介して微粉末またはエアロゾルの形態で投与されてもよい。鼻腔吸入は、好適には、微粉末またはエアロゾルの鼻腔スプレーまたは改変されたDischaler(登録商標)またはTurbohaler(登録商標)の形態であってもよい。
【0114】
局所製剤としては、溶液、クリーム、泡状物、ゲル、ローション、軟膏、ペースト、チンキ剤及び粉末が挙げられる。それらは、皮膚上、すなわち、皮膚に直接適用されるか、または粘膜に適用されてもよい。
【0115】
経口投与は、好適には、錠剤、カプセルまたは液体懸濁液もしくはエマルジョンを介してであり得る。経口投与のための液体ビヒクルの好適な例としては、水(添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価のアルコール及び多価のアルコール、例えば、グリコールを含む)及びそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分画ココナッツ油及びアラキス油)が挙げられる。本発明の誘導体は、他の溶質または懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはグルコース)、胆汁塩、アカシア、ゼラチン、ソルビタンモノレエート、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステル及び酸化エチレンと共重合したその無水物)などを含有する滅菌溶液または懸濁液の形態で経口投与され得る。溶液、シロップ及びエリキシル剤もまた、本発明の一部を形成する。本発明による誘導体は、固体組成物形態で経口投与することもできる。経口投与に好適な固体組成物としては、丸薬、カプセル剤、顆粒剤、錠剤及び粉末が挙げられる。
【0116】
直腸投与は、好適には、坐剤または泡状物を介してでもよい。
【0117】
眼投与用の製剤は、典型的には、局所適用のための溶液、懸濁液及び軟膏、例えば、点眼剤の形態である。代替的に、滅菌溶液または懸濁液は、眼内注射によって利用することができる。誘導体は、滅菌水、生理食塩水または他の適切な滅菌注射用媒体を使用して、投与時に溶解または懸濁され得る滅菌固体組成物として調製され得る。製剤は、結膜下、硝子体内、球後または前房内注射用のものであってもよい。
【0118】
本発明の誘導体または医薬組成物は、それを必要とする任意の対象に投与され得る。「対象」は、本明細書で使用される場合、脊椎動物、哺乳動物または家畜であり得る。したがって、本発明による誘導体及び組成物を使用して、任意の哺乳動物、例えば、家畜(例えば、馬)、ペットを治療するか、または他の獣医学的用途で使用してもよい。最も好ましくは、対象は、ヒトである。誘導体及び組成物は、既に疾患、障害または状態の徴候を示すものに投与される必要があるだけではない。むしろ、それらは、将来的にそのような疾患、障害または状態の可能性に対する純粋な予防措置として、見かけ上健康な対象に投与することができる。
【0119】
本発明によるIL-22の誘導体及び組成物は、疾患、障害または状態を治療するために、単剤療法(すなわち、その誘導体または組成物の唯一の使用)で使用され得ることを理解されたい。代替的に、本発明による誘導体及び組成物は、疾患、障害または状態を治療するための既知の療法の補助剤として、またはそれらと組み合わせて使用され得る。
【0120】
必要とされるIL-22の誘導体の量は、その生物学的活性、半減期及びバイオアベイラビリティによって決定され、これは次に、投与様式、誘導体及び組成物の生理化学的特性、ならびに単剤療法として使用されているか、または併用療法で使用されているかに依存することを理解されたい。投与の頻度はまた、治療される対象内の誘導体の半減期に影響される。投与される最適な投与量は、当業者によって決定されてもよく、使用中の特定の誘導体、医薬組成物の強度、投与様式及び疾患、障害または状態の進行によって変化するであろう。対象の年齢、体重、性別、食事及び投与時間を含む、治療される特定の対象に依存する追加の要因は、投与量を調整する必要性をもたらす。
【0121】
一般に、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の1日用量の本発明によるIL-22の誘導体が、どの誘導体または組成物が使用されるかに応じて、疾患、障害または状態を治療するために使用され得る。より好ましくは、1日用量は、0.01μg/kg体重~1mg/kg体重、より好ましくは0.1μg/kg体重~500μg/kg体重、最も好ましくは約0.1μg/kg体重~100μg/kg体重である。
【0122】
IL-22または組成物の誘導体は、疾患、障害または状態の発生の前、その間またはその後に投与され得る。1日用量は、単回投与(例えば、1日1回の注射)として与えてもよい。代替的に、誘導体または組成物は、1日の間に2回以上の投与を必要とし得る。一例として、誘導体は、0.07μg~700mgの1日用量(すなわち、70kgの体重を想定して)を2回(または治療される疾患、障害または状態の重症度に応じてそれ以上)として投与されてもよい。治療を受けている患者は、起床時に第1の用量を服用し、次いで夕方(2回投与レジメンの場合)に第2の用量を服用するか、またはその後は3時間または4時間の間隔で服用してもよい。代替的に、用量は、週に1回、2週間ごともしくは月に1回、またはより頻繁に、例えば、週に2回または3回与えられてもよい。製薬業界によって従来用いられているもの(例えば、インビボ実験、臨床試験など)などの既知の手順を使用して、本発明による誘導体及び組成物の特定の製剤ならびに精密な治療レジメン(薬剤の1日用量及び投与頻度など)を形成してもよい。
【0123】
多くの研究が、特に肺、肝臓、腸、腎臓、皮膚、膵臓及び胸腺の複数の上皮損傷モデルにおけるIL-22の重要な効果を実証している。機構的には、例えば、抗アポトーシス、増殖、自然免疫、抗酸化ストレス、抗線維症及び幹細胞/前駆細胞動員内のいくつかの経路は、複数の研究者による研究においてIL-22効果を媒介することが十分に文書化されている。主要な機構的所見は、ヒト細胞株またはヒトエクスビボモデル(例えば、初代ヒト腸オルガノイド)を使用してインビトロで更に確認されている。したがって、上皮損傷における細胞死の予防、再生の確保及び炎症の制御におけるIL-22の強い役割は十分に確立されている。
【0124】
多くの研究は、損傷を受けた遺伝子モデル(IL-22ノックアウトまたはトランスジェニック過剰発現)を分析することによって行われる。これらの研究では、IL-22の欠如またはIL-22の過剰発現は、損傷時に存在する。他の研究では、IL-22は、損傷時に抗体で中和され、場合によっては、IL-22は、急性損傷期を超えて中和される(例えば、亜急性または良好に再生期に入る)。他の研究は、外因的に投与されたIL-22の効果を調べることによって、治療シナリオに近づく。利用可能な文献を全体的に見ると、ノックアウト、過剰発現、損傷前もしくは損傷後のIL-22中和、または外因性タンパク質投与にかかわらず、異なるモデルが、損傷した臓器を保護し、再生を促すIL-22の同じ状況を描くことに注意することが重要である。これは、IL-22の治療可能性に対する幅広い適用及び広い時間枠を示し、また、hIL-22よりも長時間作用型IL-22タンパク質が必要とされる理由を示す。
【0125】
したがって、本発明の第5の態様によると、療法の方法であって、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の1日用量の誘導体を投与することを含む、方法において使用するための、第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物が提供される。そのような1日用量の投与については、本明細書に更に記載される。
【0126】
本発明の第6の態様によると、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓、CNSまたは皮膚の疾患、障害または状態を治療する方法において使用するための、第1の態様の誘導体または第3の態様の医薬組成物が提供される。本明細書に記載のまたは想定されるIL-22の異なる誘導体のうちのいずれかが、本発明のこの態様に明示的に含まれる。
【0127】
代謝の疾患、障害または状態は、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、高脂血症、高血糖症または高インスリン血症であり得る。
【0128】
肝臓の疾患、障害または状態は、NAFLD、NASH、肝硬変、アルコール性肝炎、急性肝不全、慢性肝不全、ACLF、アセトアミノフェン誘導肝毒性、急性肝損傷、硬化性胆管炎、胆汁性肝硬変、または手術もしくは移植によって引き起こされた病的状態であり得る。
【0129】
肺の疾患、障害または状態は、COPD、嚢胞性線維症、気管支拡張症、特発性肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、化学損傷、ウイルス感染症、細菌感染症または真菌感染症であり得る。
【0130】
腸の疾患、障害または状態は、IBD、潰瘍性大腸炎、クローン病、GvHD、化学損傷、ウイルス感染症または細菌感染症であり得る。
【0131】
腎臓の疾患、障害または状態は、急性腎疾患または慢性腎疾患であり得る。
【0132】
CNSの疾患、障害または状態は、多発性硬化症であり得る。
【0133】
皮膚の疾患、障害または状態は、創傷、炎症疾患またはGvHDであり得る。
【0134】
IL-22の誘導体、またはそれを含む医薬組成物を用いて、上記の疾患、障害または状態のうちの1つ以上などのIL-22治療に応答する状態を有する対象を治療する方法も提供される。
【0135】
IL-22の誘導体は、本発明の第1の態様について特定された特徴の全てを有する。医薬組成物は、本発明の第3の態様について特定された特徴の全てを有する。上記の疾患、障害または状態のうちの1つ以上などのIL-22治療に応答する状態を有する対象を治療する方法は、本発明の第4の態様について特定された特徴の全てを有する。
【0136】
本明細書に記載のどのIL-22誘導体または組成物をどの患者に投与すべきかについての制限はない。むしろ、本明細書に記載の誘導体及び組成物のうちのいずれも、本明細書に記載される任意の患者に投与することができることが意図される。
【0137】
本明細書に記載される特徴(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)の全て、及び/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴及び/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで上記の態様のうちのいずれかと組み合わせることができる。
【0138】
本発明のより良い理解のために、及びその実施形態がどのように実施され得るかを示すために、ここで実施例を参照するが、これはいかなる方法でも本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0139】
別段の指示がない限り、実施例に記載の研究に用いられる材料及び方法は、以下のとおりであった。
【0140】
誘導体及び比較物
表4は、データセットに表されるIL-22の誘導体及び比較物の概要を提供する。
【0141】
比較物1~13及び19は、様々な骨格、脂肪酸の種類、リンカー及び共有結合部位を有した。多くの場合、リンカーは、誘導体1及び2に従って、残基1Cに結合された。比較物10は、1Cでの共有結合を例示するが、誘導体1及び1Cで共有結合した脂肪酸を有する他の全ての比較物に存在するG-P-G N末端ペプチドを欠く。
【0142】
更なる比較物は、hIL-22、hFc-hIL-22(組換え融合タンパク質)及び比較物14~18であり、これらは1つ以上の骨格変異のみを有するhIL-22バリアントであった。
【表4-1】
【表4-2】
【0143】
以下は、単に特許請求される発明を図示することを意図した例示的なプロトコルである。
【0144】
実施例1-脂肪一酸を含む誘導体のインビトロ効力研究
方法
レポーター遺伝子アッセイを用いて、IL-22Ra、IL-10Rb及びSTAT3誘導プロモーターを有するルシフェラーゼでトリプルトランスフェクトされたBHK細胞において効力を研究した。これは、IL-22受容体媒介性STAT3活性化を測定した、高感度、高スループットアッセイである。
【0145】
安定したレポーターBHK細胞株を、以下のプラスミドを使用して生成した:(i)pcDNA3,1hygro(+)におけるhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)におけるIL22R、及び(iii)pGL4.20における2xKZdel2。したがって、細胞株は、pSTAT3駆動プロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現した。
【0146】
アッセイプロトコルの0日目に、細胞を、96ウェルプレート(Corning#3842、黒色、透明底)中の基底培地(500mL:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号:31966-021)、10%(w/v)のウシ胎仔血清(FCS;アルブミンを含有する)(50mL)及び1%(w/v)のペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5mL))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、プレートを反転させることによって培地を除去した。新鮮な基底培地を1ウェル当たり50μlで添加し、細胞を60分間インキュベートした。
【0147】
IL-22の誘導体を、二つ組で比較物としてhIL-22とともに試験した。
【0148】
したがって、50μlの希釈した誘導体または比較物(基底培地中で希釈)を各ウェルに添加し、プレートを4時間放置した。したがって、誘導体及び比較物は、それらがウェル中に既に存在する50μlの培地中に希釈されたため、2倍希釈された。100μlのSteadylite+試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を添加することにより、4時間後に刺激を終了した。プレートをTopSeal Aで密封し、450rpmで15分間振盪した後、遅くとも12時間後までにMithrasまたは同様のシステムを使用して読み取った。
【0149】
データ分析をGraphpad Prismを使用して行った。誘導体または比較物の半最大有効濃度(EC50)を、その効力の尺度として評価した。EC50は、Log(化合物)対応答-可変スロープ(4p)を使用して決定した。ヒルスロープを標準として1に制限した。
【0150】
結果
表5は、IL-22受容体媒介STAT3活性化についてBHK細胞レポーター遺伝子アッセイにおいて測定した誘導体及び比較物のEC50を示す。「n」は、個々のアッセイ実行の数を示す。全てのアッセイ実行を同じ条件下で実施したが、別々の個々の実験を別々の日に実施した。
【表5】
【0151】
BHK細胞アッセイが大量のアルブミンを含有したため、測定されたEC50は、誘導体を試験するときにアルブミン結合の効果を組み込んだ。
【0152】
骨格変異及び共有結合したC16一酸を有する誘導体1は、hIL-22と同等の効力を有することが示された。
【0153】
結論
誘導体1及びhIL-22の驚くべき同等の効力が観察された。比較すると、及び前述したように、Genentechは、IL-22のFc融合について、インビトロでの効力が34倍低減したことを報告している。
【0154】
したがって、IL-22の誘導体は、アルブミンの存在下で高い効力を維持する。Cys置換、N末端トリペプチド伸長及び脂肪一酸共有結合は、明らかに良好に耐容されることを示す。
【0155】
したがって、データは、本発明の誘導体が良好なバイオアベイラビリティ及び効力を実証するため、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓、CNS及び皮膚の疾患、障害及び状態を含む多様な範囲の適応症に対して新しく改善された治療を提供することを図示する。
【0156】
本発明のある特定の特徴が本明細書に図示及び説明されているが、当業者であれば多くの修正及び等価物が思い付くであろう。したがって、特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に含まれる全てのそのような修正及び等価物を網羅することが意図されていることが理解されるべきである。
【0157】
実施例2-脂肪一酸を含む誘導体及び脂肪二酸を含む比較物の平均滞留時間及び効力の研究
方法
以下では、2つの方法について説明する。1つ目は、平均滞留時間(MRT)を決定するためにラットにおいて誘導体1及び比較物14、8、6及び4で実施された薬物動態研究に関する。2つ目は、同じ誘導体及び比較物についてのインビトロEC50(nM)を決定するための効力アッセイに関する。
【0158】
ラットにおけるインビボMRTの測定
4匹のラットに誘導体または比較物を投与し、3つの血液試料を、以下:5分、15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分、150分、3時間、4時間、6時間、8時間及び24時間の各時点で採取した。各ラットは、研究の過程で17の試料を採取された。最後の試料を採取した後、ラットを二酸化炭素によって安楽死させた。
【0159】
血液試料(100μl)を舌血によってラットから採取し、EDTAチューブ(Microvette(登録商標)VetMed 200K3E、Sarstedt nr 09.1293.100)に移した。採血後20分以内に、血液を8000G、4℃で5分間遠心分離した。血漿試料(40~50μl)を半マイクロチューブに移した。
【0160】
誘導体または比較物の血漿レベルを、前述のように社内開発の発光酸素チャネリング(LOCI(登録商標))アッセイを使用して測定した(Poulsen et al.J Biomol Screen,2007,12(2):240-7)。アッセイ中に、濃度依存性ビーズ-分析物-免疫複合体を作製し、光出力をもたらし、これをPerkin Elmer Envisionリーダーで測定した。抗体のビーズへのカップリング、抗体のビオチン化、及びLOCI(登録商標)アッセイ手順を、前述のように行った(Petersen et al.,J Pharmaceut Biomed,2010,51(1):217-24)。標準物質及び品質管理(QC)試料は、研究試料と同じマトリックスにおいて作製した。アッセイ精度(CV%)を評価し、試験した全ての試料について20%未満であることが示された。
【0161】
アッセイは、抗ヒトIL-22モノクローナル抗体(R&D Systems MAB7822)コンジュゲートアクセプタービーズを、ビオチン化モノクローナル抗体(R&D Systems BAM7821;ヒトIL-22に対して産生)及び一般的なストレプトアビジンでコーティングされたドナービーズとともに使用した。ラット血漿中のヒトIL-22の定量下限(LLOQ)は4pMであった。しかしながら、各誘導体または比較物を、同じ誘導体または比較物の標準物質列に対して測定した。hIL-22に対する各誘導体または比較物の交差反応性を測定し、アッセイ感度を調整するために使用した。
【0162】
MRTを含む薬物動態パラメータ(すなわち、吸収が完了したら、排出される前に薬物が体内に留まる時間)は、Phoenix WinNonlin Professional 6.4(Pharsight Inc)を使用して計算した。
【0163】
BHK細胞におけるインビトロEC50(nM)の測定
IL-22Ra、IL-10Rb及びSTAT3誘導プロモーターを有するルシフェラーゼでトリプルトランスフェクトされたBHK細胞においてレポーター遺伝子アッセイを使用した。これは、IL-22受容体媒介性STAT3活性化を測定した、高感度、高スループットアッセイである。
【0164】
安定したレポーターBHK細胞株を、以下のプラスミドを使用して生成した:(i)pcDNA3,1hygro(+)におけるhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)におけるIL22R、及び(iii)pGL4.20における2xKZdel2。したがって、細胞株は、pSTAT3駆動プロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現した。
【0165】
アッセイプロトコルの0日目に、細胞を、96ウェルプレート(Corning#3842、黒色、透明底)中の基底培地(500mL:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号:31966-021)、10%(w/v)のウシ胎仔血清(FCS;アルブミンを含有する)(50mL)及び1%(w/v)のペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5mL))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、プレートを反転させることによって培地を除去した。新鮮な基底培地を1ウェル当たり50μlで添加し、細胞を60分間インキュベートした。
【0166】
誘導体1及び比較物14、8、6及び4を試験した。アッセイ実行の「n」数は、1~24の範囲であった。
【0167】
したがって、50μlの誘導体または比較物(基底培地中で希釈)を各ウェルに添加し、プレートを4時間放置した。したがって、誘導体及び比較物は、それらがウェル中に既に存在する50μlの培地中に希釈されたため、2倍希釈された。100μlのSteadylite+試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を添加することにより、4時間後に刺激を終了した。プレートをTopSeal Aで密封し、450rpmで15分間振盪した後、遅くとも12時間後までにMithrasまたは同様のシステムを使用して読み取った。
【0168】
データ分析をGraphpad Prismを使用して行った。各誘導体または比較物の半最大有効濃度(EC50)を、その効力の尺度として評価した。EC50は、Log(化合物)対応答-可変スロープ(4p)を使用して決定した。ヒルスロープを標準として1に制限した。
【0169】
結果
ラットにおける平均滞留時間、ならびに誘導体1及び試験した比較物のインビトロEC50を表6に示す。「n」は、個々のアッセイ実行の数を示す。全てのアッセイ実行を同じ条件下で実施したが、別々の個々の実験を別々の日に実施した。
【表6】
【0170】
データは、同じ骨格に結合した脂肪酸を一酸から二酸に変更したとき、平均滞留時間がhIL-22に対して増加したことを示す(誘導体1と比較物6とのデータを比較する)。二酸の長さを増加させると、平均滞留時間も増加した(比較物8、6及び4のデータを比較する)。
【0171】
データはまた、一酸の結合が、結合なしと比較して平均滞留時間を増加させるが、二酸の結合(誘導体1及び比較物6のデータを比較する)とは明確に対照的に、効力(誘導体1及び比較物14のデータを比較する)に悪影響を及ぼさなかったことを示した。
【0172】
結論
ラットで測定された平均滞留時間を使用して、この比較研究は、脂肪二酸鎖長の増加の影響が、野生型ヒトIL-22と比較して許容可能な効力の低減を伴う増加した半減期であることを確認した。同様の結果は、ミニブタの研究においても示された(実施例3を参照されたい)。ミニブタ(実施例3)で測定された半減期は、C18脂肪二酸が、IL-22のためのプロトラクターとして使用されたFc融合物と同様の延長された半減期を有するが、C16脂肪二酸は、両方よりも短い半減期を有し、全てが野生型ヒトIL-22よりもかなり長いことを示した。
【0173】
ラットの現在のデータセットにおいて、我々は、脂肪一酸の結合により、同じ長さの脂肪二酸と比較して(誘導体1と比較物6とを比較)、実際に平均滞留時間が短くなることを示した。同時に、脂肪一酸脂質化を含む誘導体は、IL-22野生型様比較物14と同じ半減期を維持することが示されたが、平均滞留時間は同じものと比較して少なくとも4倍増加する。
【0174】
本明細書に提示されるインビボ実施例において、我々はまた、効力の低減と半減期の増加との間のバランスが依然として生物学的効果をもたらし、本発明の誘導体を、薬物開発及び疾患の治療のための適切な候補にすることを示した。
【0175】
脂肪一酸及び脂肪二酸の結合と長さとの間のこれらの比較データは、試験した全ての脂肪酸結合が、所望の投与または治療される疾患もしくは状態に応じて、異なる薬物開発目的に実際に好適であるという結論をもたらす。したがって、IL-22タンパク質の引延手段としての脂肪一酸の最適な使用は、引延作用が所望されるが、二酸及びFc融合物の場合よりも短い循環時間を有する状況であり得る。
【0176】
実施例3-脂肪二酸を含む比較物の薬物動態研究
方法
hIL-22及びhFc-hIL-22を含む、マウス(n=27)、ラット(n=4~8)及びミニブタ(n=2~5)における選択された比較物についての薬物動態研究を実施した。
【0177】
(i)マウス及びラット
8週齢のC57Bl/6雄マウス30匹及びスプラーグドーリー雄ラット5匹を、Taconic Biosciencesから得た。マウスを10匹の群で収容した。動物を、実験の前に1週間順化させた。投与前に体重を測定したが、これは薬物動態計算に重要である。動物は実験中ずっと覚醒しており、食物及び水にアクセスできた。
【0178】
全ての比較物を、マウスで使用するためのpH7.4のPBS中0.3mg/mL溶液及びラットで使用するための0.5mg/mL溶液として調製した。2.0mg/kgの用量をマウスで試験した。1mg/kgの用量をラットで試験した。
【0179】
比較物を動物に皮下投与した。投与後の特定の時点で血液試料を採取した。
【0180】
マウスにまばらなサンプリングを使用した。したがって、27匹のマウスに比較物を投与し、血液試料を以下:5分、15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分、150分、3時間、4時間、6時間、8時間、16時間、24時間、32時間及び48時間の各時点で3匹の異なるマウスから採取した。したがって、各マウスは、研究の過程で2つの試料のみを採取された。最後の試料を採取した後、マウスを頸部脱臼によって安楽死させた。
【0181】
5匹のラットに比較物を投与し、3つの血液試料を、以下:5分、15分、30分、45分、60分、75分、90分、105分、120分、150分、3時間、4時間、6時間、8時間及び24時間の各時点で採取した。各ラットは、研究の過程で17の試料を採取された。最後の試料を採取した後、ラットを二酸化炭素によって安楽死させた。
【0182】
血液試料(100μl)を舌血によってマウス及びラットから採取し、EDTAチューブ(Microvette(登録商標)VetMed 200K3E、Sarstedt nr 09.1293.100)に移した。採血後20分以内に、血液を8000G、4℃で5分間遠心分離した。血漿試料(40~50μl)を半マイクロチューブに移した。
【0183】
(ii)ミニブタ
体重約15kgの9ヶ月齢の雌ゲッティンゲンミニブタを、Ellegaard Gottingen Minipigs A/Sから得た。手術(カテーテルの挿入)の前に約18日間の順化をさせ、その間にミニブタを社会化し、カテーテルからの皮下投与及び血液サンプリングのために訓練した。手術の3~5日前に、ミニブタを単一収容した。投与の6日前に、全てのミニブタは、2つの中心静脈カテーテル(Cook Medical、C-TPNS-6.5-90-REDO、シリコン、サイズ6.5フレンチ、106cm長タイプTPN)を挿入され、研究開始(投与)前の少なくとも5日の手術後の回復時間を可能にした。
【0184】
全ての比較物を、pH7.4のPBS中の溶液として調製した。使用した用量は、0.1mg/kg(静脈内投与)または0.2mg/kg(皮下投与)であった。
【0185】
投与中にミニブタをプロポフォールで軽く麻酔した。静脈内注射は、長い中央カテーテルを介してミニブタに投与した。投与後、カテーテルを10mLの滅菌生理食塩水でフラッシュした。25Gの針を使用して、5mmの深さで皮下注射を行った。針は、逆流を避けるために、注射後10秒間皮膚に留めておいた。
【0186】
静脈内投与後の以下:1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、24時間、28時間、48時間、72時間、96時間、144時間、168時間、192時間、216時間、240時間、264時間、312時間、336時間、360時間、384時間、408時間、432時間及び480時間の時点でミニブタから血液試料を採取した。皮下投与後の以下:1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、26時間、28時間、46時間、52時間、72時間、96時間、144時間、168時間、192時間、216時間、240時間、264時間、312時間、336時間、360時間、384時間、408時間、432時間及び480時間の時点で血液試料を採取した。
【0187】
血液試料(1mL)を、ミニブタからEDTAチューブ(1.6mgのK3EDTA/mLの血液を得るためにK3EDTAを含有する1.3mLチューブ(Sarstedt,Germany))中に収集した。試料を、遠心分離(10分、4℃、2000G)するまで、最大30分間湿った氷の上に保管した。200μlの血漿を、比較物の測定のためにMicronicチューブに移し、分析まで-20℃で保管した。
【0188】
(iii)試料処理
比較物の血漿レベルを、前述のように社内開発の発光酸素チャネリング(LOCI(登録商標))アッセイを使用して測定した(Poulsen et al.J Biomol Screen,2007,12(2):240-7)。アッセイ中に、濃度依存性ビーズ-分析物-免疫複合体を作製し、光出力をもたらし、これをPerkin Elmer Envisionリーダーで測定した。抗体のビーズへのカップリング、抗体のビオチン化、及びLOCIアッセイ手順を、前述のように行った(Petersen et al.,J Pharmaceut Biomed,2010,51(1):217-24)。標準物質及び品質管理(QC)試料は、研究試料と同じマトリックスにおいて作製した。アッセイ精度(CV%)を評価し、試験した全ての試料について20%未満であることが示された。
【0189】
アッセイは、抗ヒトIL-22モノクローナル抗体(R&D Systems MAB7822)コンジュゲートアクセプタービーズを、ビオチン化モノクローナル抗体(R&D Systems BAM7821;ヒトIL-22に対して産生)及び一般的なストレプトアビジンでコーティングされたドナービーズとともに使用した。ラット血漿中のヒトIL-22の定量下限(LLOQ)は4pMであった。しかしながら、各比較物を、同じ比較物の標準物質列に対して測定した。hIL-22に対する各比較物の交差反応性を測定し、アッセイ感度を調整するために使用した。
【0190】
血漿濃度-時間プロファイルを、Phoenix WinNonlin Professional 6.4(Pharsight Inc)においてノンコンパートメント分析(NCA)を使用して、ミニブタについて測定した。計算は、個々の濃度、1/(Y*Y)による重み付け、及び線形対数台形を使用して行った。循環排出半減期(T1/2)が主要スクリーニングパラメータであったため、静脈内投与を使用した。クリアランス及び分布容積は、目的の二次的なパラメータであり、したがって、研究の1日目に頻繁に血液試料を採取する理由であった。
【0191】
マウス及びラットにおける薬物動態を評価するために測定された唯一のパラメータは、循環排出半減期(T1/2)であった。ミニブタでは、測定された追加のパラメータは、薬物投与後の最大(ピーク)血漿濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでの時間(Tmax)、薬物用量に対して正規化された血漿薬物濃度-時間曲線下面積(AUC;薬物の用量の投与後の薬物への実際の身体曝露を反映する)(AUC/D)、平均滞留時間(MRT;すなわち、吸収が完了したら、排出される前に薬物が体内に留まる時間)、平均吸収時間(MAT)及び投与用量の全身利用可能性(すなわち、バイオアベイラビリティ;F)であった。MATは、皮下投与後のMRT(MRTSC)から静脈内投与後のMRT(MRTIV)を差し引いたMRTとして計算する。
【0192】
結果
表7はマウスで得られた結果を示し、表8はラットで得られた結果を示し、表9及び10はミニブタで得られた結果を示す。ND=決定せず。IV=静脈内投与。SC=皮下投与。
【表7】
【0193】
表7に示されるように、骨格変異のみを有するhIL-22バリアント(比較物14及び16)は、投与経路にかかわらず、短い循環半減期を有した。Fc融合による引延(hFc-hIL-22)は、半減期をかなり増加させた。脂肪酸(C18二酸;比較物4及び9)の共有結合は、マウスにおいて中間循環半減期をもたらした。比較物は、静脈内投与と比較して皮下投与された場合、マウスにおいてより長い時間循環した。
【表8】
【0194】
表8に示されるように、骨格変異のみを有するhIL-22バリアント(比較物14)は、短い循環半減期を有した。脂肪酸(比較物4、6及び9)の共有結合は、用いられた脂肪酸(C16対C18二酸)及び投与経路にかかわらず、ラットにおける循環半減期の増加をもたらした。比較物は、典型的には、静脈内投与と比較して皮下投与された場合、より長い間循環した。
【0195】
脂肪一酸を含む本発明の誘導体についても同様の結果が予想される。実際、上記のデータから、C16またはC18脂肪酸の共有結合は、ラットにおけるより短い脂肪酸鎖と比較して、より長い脂肪酸鎖に対して比較的長い半減期を示し、静脈内投与と比較して皮下投与された場合、循環時間が延長されることが明らかである。脂肪二酸と比較して一般的に半減期が短いにもかかわらず、同じ傾向が一酸で予想され得る。
【表9】
【0196】
表9に示すように、骨格変異のみを有するhIL-22バリアント(比較物14及び15)は、hIL-22と同等の短い循環半減期を有した。比較物のFc融合物(hFc-hIL-22)及び他の全ての比較物(比較物4、9及び13)は、顕著に増加した循環半減期を有した。比較物4、9及び13は、静脈内に投与された場合、ミニブタにおいて50時間を超える循環半減期を有し、これは、比較物IL-22-Fc融合物と同等であった。
【表10】
【0197】
表10に示されるように、比較物のFc融合物(hFc-IL-22)と比較して、比較物9についてより速いMATが実証された。MATは、Cmaxの違いも考慮に入れるため、Tmaxを単に比較するよりも薬物取り込みのより正確な尺度である(Tmaxは、用量及びCmaxの両方の影響を受ける)。ミニブタは、ヒトと類似しているため、マウスまたはラットではなく、この研究に使用された。
【0198】
結論
既知の脂肪酸アルキル化GLP-1誘導体であるセマグルチドは、ミニブタで46時間の半減期(Lau et al.,J Med Chem,2015,58(18)7370-80)、及び2のピーク対トラフ比を有する週1回の投与プロファイルに対応する、160時間のヒトにおける半減期を有する。Fc融合GLP-1誘導体であるデュラグルチドの半減期は類似している。
【0199】
したがって、ミニブタにおける比較物4、9及び13によって実証された、皮下投与された場合には少なくとも40時間、静脈内投与された場合には50時間を超える半減期は、2のピーク対トラフ比を有するヒトにおける週1回の投与プロファイルに対応すると仮定される。
【0200】
したがって、データは、比較物がIL-22の循環半減期を向上させ、最適化された薬物動態学的及び薬力学的特性を実証し、よって、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓、眼、胸腺、膵臓、及び皮膚の疾患、障害及び状態を含む多様な範囲の適応症に対して新しく改善された治療を提供することを示す。
【0201】
脂肪一酸を含む本発明の誘導体についても同様の結果が予想される。実際、上記のデータセット、ならびに本明細書に開示されるIL-22バリアントの効力、半減期及び平均滞留時間に関する前述及び以下の実施例から、脂肪二酸結合を含むIL-22タンパク質と比較して、脂肪一酸結合についての同様の生物学的効果が、本明細書に提示される脂肪二酸の結果と比較して一般的に半減期が短く、効力が高いにもかかわらず、期待され得ることが妥当であるとされている。これは、引延作用が所望されるが、二酸及びFc融合物よりも循環時間が短い状況で特に望ましい場合がある。
【0202】
実施例4-脂肪二酸を含む比較物のインビトロ効力研究
方法
2つのインビトロアッセイを用いて、配列番号1と比較して修飾を伴うIL-22タンパク質の効力を研究した。
【0203】
1つ目は、IL-22Ra、IL-10Rb及びSTAT3誘導プロモーターを有するルシフェラーゼでトリプルトランスフェクトされたBHK細胞におけるレポーター遺伝子アッセイであった。これは、IL-22受容体媒介性STAT3活性化を測定した、高感度、高スループットアッセイである。
【0204】
安定したレポーターBHK細胞株を、以下のプラスミドを使用して生成した:(i)pcDNA3,1hygro(+)におけるhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)におけるIL22R、及び(iii)pGL4.20における2xKZdel2。したがって、細胞株は、pSTAT3駆動プロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現した。
【0205】
アッセイプロトコルの0日目に、細胞を、96ウェルプレート(Corning#3842、黒色、透明底)中の基底培地(500mL:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号:31966-021)、10%(w/v)のウシ胎仔血清(FCS;アルブミンを含有する)(50mL)及び1%(w/v)のペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5mL))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、プレートを反転させることによって培地を除去した。新鮮な基底培地を1ウェル当たり50μlで添加し、細胞を60分間インキュベートした。
【0206】
比較物4、6、7及び9~13を、比較物として骨格変異のみを有するhIL-22及びhIL-22バリアントとともに試験した。アッセイ実行の「n」数は、1~24の範囲であった。
【0207】
したがって、50μlの比較物(基底培地中で希釈)を各ウェルに添加し、プレートを4時間放置した。したがって、比較物は、それらがウェル中に既に存在する50μlの培地中に希釈されたため、2倍希釈された。100μlのSteadylite+試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を添加することにより、4時間後に刺激を終了した。プレートをTopSeal Aで密封し、450rpmで15分間振盪した後、遅くとも12時間後までにMithrasまたは同様のシステムを使用して読み取った。
【0208】
データ分析をGraphpad Prismを使用して行った。各比較物の半最大有効濃度(EC50)を、その効力の尺度として評価した。EC50は、Log(化合物)対応答-可変スロープ(4p)を使用して決定した。ヒルスロープを標準として1に制限した。
【0209】
2つ目のインビトロ効力アッセイは、IL-22Ra及びIL-10Rbを内因的に発現するヒト肝臓由来細胞株であるHepG2細胞におけるpSTAT3を測定した。
【0210】
1日目に、HepG2細胞を96ウェルプレート(Biocoat #35-4407 Becton Dickinson)に25,000~30,000細胞/ウェルで播種した。播種及び継代に使用した細胞培地は DMEM(1x)+25mM(4.5g/l)グルコース、-ピルビン酸塩(Gibco、カタログ番号61965-026)+10%(w/v)FCS+1%(w/v)P/Sであった。2日目に、細胞はアッセイの準備ができていた。細胞を、DMEM=Gibco、カタログ番号61965-026)中0.1%(w/v)のFCS(すなわち、非常に低いアルブミン濃度)で飢餓状態にし、各ウェルに50μlを添加し、60分間放置した。
【0211】
標準として各比較物の7つの濃度(0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000nM)で、技術的二つ組を使用して試験を行った。したがって、50μlの希釈した比較物(DMEM中0.1%(w/v)のFCSで希釈)を各ウェルに添加し、プレートを15分間放置した。したがって、比較物は、それらがウェル中に既に存在する50μlの培地中に希釈されたため、2倍希釈された。細胞を溶解するために、培地を細胞から除去し、新たに調製した50μlの1×溶解緩衝液(キットからのSureFire溶解緩衝液)を各ウェルに添加した。プレートを350rpmで室温で10分間攪拌した。
【0212】
AlphaScreen(登録商標)SureFire(登録商標)STAT3(p-Tyr705)アッセイプロトコル(Perkin Elmerカタログ番号TGRS3S=500-10K-50K))に従い、STAT3のIL-22誘導リン酸化を測定した。この点に関して、4μlの溶解物を、アッセイのために384ウェルプロキシプレートに移した(4μlの陽性対照及び陰性対照を添加した)。使用直前に、アクセプターミックスを調製した(反応緩衝液中で活性化緩衝液を5倍に希釈し、希釈した緩衝液中のアクセプタービーズを50倍に希釈することにより)。5μlのアクセプターミックスを各ウェルに添加し、プレートをTopseal A接着フィルムで密封し、室温で2時間インキュベートした。使用直前に、ドナーミックスを調製した(希釈緩衝液中でドナービーズを20倍に希釈することにより)。2μlのドナーミックスを、薄明りの下でウェルに添加した。プレートを再びTopseal A接着フィルムで密封し、室温で2時間インキュベートした。プレートをAlpha Technologyと互換性のあるプレートリーダーで読み取った。
【0213】
データ分析をGraphpad Prismを使用して行った。まず、非線形回帰を、PrismにおけるLog(化合物)対応答可変スロープ(4p)分析を使用して実施した。ヒルスロープを1に制限した。次いで、Y=対照化合物(hIL-22)からの上位をPrismにおいて正規化に使用した。0%を各データセットの最小値に設定し、100%をY=上記の非線形回帰からの上位に設定した(対照について)。非線形回帰を上記のように繰り返し、試験した比較物の活性%/重量%及びEC50を、それぞれ上位及びEC50下の結果で読み取った。
【0214】
結果
表11は、IL-22受容体媒介STAT3活性化についてBHK細胞レポーター遺伝子アッセイにおいて測定した主要比較物のEC50を示す。
【表11】
【0215】
BHK細胞アッセイが大量のアルブミンを含有したため、測定されたEC50は、比較物を試験するときにアルブミン結合の効果を組み込んだ。
【0216】
骨格変異のみを有するIL-22バリアントである比較物17は、hIL-22と同等の効力を有することが示された。比較物17と同じ骨格を有するが、中程度の親和性のアルブミン結合剤(C16二酸)に共有結合した比較物6は、hIL-22と比較して4倍の効力の低減を示した。この場合もやはり同じ骨格を有するが、高い親和性のアルブミン結合剤(C18二酸)に共有結合した比較物4は、hIL-22と比較して7倍のみの効力の低減を示した。
【0217】
アルキル化位置及び骨格変異の走査は、比較物9~12の結果を比較することによって、35Q、64Qバックグラウンド(すなわち、3つのIL-22グリコシル化部位のうちの2つが変異した)においてオフセットで行われた。これらの比較物で得られた結果は、Cys置換及び脂肪酸共有結合がいくつかの(選択された)位置で耐容され得ることを実証し、これは本発明者らにとって驚くべきことであった。
【0218】
脂肪一酸を含む本発明の誘導体についても同様の結果が予想される。実際、本明細書に開示されるIL-22バリアントの効力、半減期及び平均滞留時間に関する上記のデータセットならびに前述及び以下の実施例から、脂肪二酸の代わりに、脂肪一酸を含むIL-22誘導体について、Cys置換及び脂肪酸共有結合がいくつかの(選択)位置で耐容され得ることが妥当であるとされている。
【0219】
表12は、pSTAT3のHepG2細胞アッセイにおいて測定された主要比較物のEC50を示す。
【表12】
【0220】
受容体の内因性発現レベル、ほとんどシグナル増幅がない、及びアルブミンがないHepG2細胞アッセイでは、比較物4は、hIL-22と比較して2.5倍低減した効力を有した(比較物4と同じ骨格を有するが脂肪酸を有しないhIL-22バリアントである比較物17と同様)。
【0221】
表13は、N末端伸長及びグリコシル化部位の変異における脂肪酸共有結合を評価するためのBHK及びHepG2細胞アッセイの両方からの結果を照合する。ND=決定せず。
【表13】
【0222】
比較物9は、追加のN35Q及びN64Q置換(3つのグリコシル化部位のうちの2つが変異した)により比較物4と異なるが、それらは同等の効力である(比較物9についてはわずかに効力が低くなる傾向がある)。
【0223】
脂肪一酸結合を含む本発明の誘導体についても同様の結果が予想される。実際、これら2つの置換、N35Q及びN64Qの効果は、脂肪一酸を含む誘導体において同様の効果を有すると予想される。
【0224】
比較物5及び7は、15量体のN末端伸長を有し、伸長部(-7C)の脂肪酸結合のためのCys残基を有するが、これは驚くべきことに良好に耐容されることが示されている。
【0225】
この場合もやはり、脂肪一酸結合を含む本発明の誘導体に適用されるN末端伸長の同様の効果が予想され得る。上記のデータセットならびに本明細書に開示されるIL-22バリアントの効力、半減期及び平均滞留時間に関する前述の及び以下の実施例に基づいて、脂肪一酸結合を含む誘導体についても同様の結果が実際に予想されるが、一般的に、脂肪二酸結果と比較して半減期が短く、効力が高い。
【0226】
結論
試験した比較物において脂肪酸共有結合で観察された効力の低減は、主にアルブミン結合によって駆動され、骨格置換はほとんど寄与しなかった。これは、比較物17及びhIL-22の驚くべき同等の効力により実証された。比較すると、及び前述したように、Genentechは、IL-22のFc融合について、インビトロでの効力が34倍低減したことを報告している。
【0227】
非常に低いアルブミンレベルを用いたHepG2細胞アッセイにおいて、比較物4(BHKアッセイ(アルブミン結合を有するにおいて7倍の効力の低減を示した比較物)は、hIL-22と比較して効力の2.5倍の低減のみを示した。
【0228】
比較物4及び9の同等の効力(表13)は、35Q及び64Q変異が、効力に影響を及ぼすことなく驚くほど耐容されることを示した。
【0229】
したがって、比較物は、アルブミンの存在下で高い効力を維持し、アルブミンの不在下でhIL-22とほぼ同等の効力である。Cys置換及び脂肪酸共有結合は、いくつかの位置で耐容される。
【0230】
したがって、データは、比較物が良好なバイオアベイラビリティ及び効力を実証するため、代謝、肝臓、肺、腸、腎臓及び皮膚の疾患、障害及び状態を含む多様な範囲の適応症に対して新しく改善された治療を提供することを示す。上記のように、代わりに脂肪一酸を含む本発明の誘導体についても同様の結果が予想される。
【0231】
実施例5-脂肪二酸を含む比較物の糖尿病におけるインビボ有効性研究
この研究は、糖尿病マウスモデルにおいて、本発明の誘導体の比較物を8~16日間1日1回投与する効果を調査するように設計された。研究は、治療(予防ではない)様式で行われ、これは、投与が開始される前に糖尿病病理が発症したことを意味する。マウスモデルは脂肪肝(レプチン受容体ノックアウト)を有するため、肝疾患の代謝モデルとしても機能する。
【0232】
方法
7~8週齢の雄C57BKS db/dbマウスをCharles River Laboratories(-10日目)から得、実験開始の少なくとも1週間前に順化させた。到着の1週間後(-3日目)、マウスを無作為化し、10匹の群(または食物摂取研究のために単独で)で収容した。-3日目、及び研究の1~16日目の各日に、血中グルコース及び食物摂取量を測定した。
【0233】
比較物4を、更なる比較物としてIL-22のFc融合物(hFc-hIL-22)及び陰性対照としてビヒクルのみとともに試験した。各薬剤を、糖尿病性db/dbマウス(各群でn=6~10)において、1~16日目の各日に、0.1、0.25、0.5または1.0mg/kgの1日1回用量で皮下投与した。食物摂取量は、比較物/対照投与後に低減した。
【0234】
血中グルコースは、研究期間にわたって毎日測定された。麻酔したマウスにおいて、終了時に眼血液試料を採取した。500μlの血液をEDTAチューブに収集した。試料を氷上に保管し、20分以内に6000Gで、4℃で5分間遠心分離した。血漿を0.75mLのマイクロチューブに分離し、構成要素濃度の後の測定のために直ちに凍結した。
【0235】
比較物の濃度の測定と同様に、標的関与バイオマーカー(肝臓由来急性期タンパク質、ハプトグロビン及び血清アミロイドP構成要素(SAP)、ならびに腸由来ペプチドYY(PYY))の血漿レベルを研究終了時に測定した。ハプトグロビンを、製造業者の指示に従って市販キットを使用してCOBAS機器(Roche Diagnostics)で測定した。PYYを、製造業者の指示に従って、マウス及びラットPYYを認識する市販のELISAアッセイ(ALPCO)で測定した。SAPを、製造業者の指示に従って、マウスペントラキシン2/SAPを認識する市販のELISAアッセイ(R&D Systems)で測定した。
【0236】
結果
研究期間中の血中グルコースレベルを図8及び9Aに示す。
【0237】
図8から分かるように、hIL-22及び骨格変異のみを有するhIL-22バリアント(比較物16)は、ビヒクル対照と比較して、研究の経過にわたって血中グルコースを低減することができなかった。
【0238】
図9Aから分かるように、比較物4及びhFc-hIL-22の両方は、特定の研究におけるより高い定常状態曝露レベルを反映するhFc-hIL-22のより高い標的関与にもかかわらず、研究の最終日に比較物4のわずかに高い有効性を有する正常レベルに向かって同等の方法で血中グルコースを低減した。ビヒクル対照と比較して、処置動物において食物摂取量の低減が観察された(図9Bを参照)。したがって、比較物4は、hFc-hIL-22と同様にdb/dbモデルにおいて血中グルコースを正常化した。上記のように、hIL-22または比較物16では、そのような効果は観察されなかった。
【0239】
研究終了時に測定された標的関与バイオマーカー、ハプトグロビン、SAP及びPYYのレベルをそれぞれ図10A~Cに示す。グラフから分かるように、3つの標的関与バイオマーカーは全て、比較物4及びhFc-hIL-22によって上方制御され、比較物4よりもhFc-hIL-22によって上方制御された。
【0240】
図11は、比較物9の用量応答データを示す(比較物4と同じであるが、2つのグリコシル化部位における追加の置換についてである)。試験した3つの用量(0.1、0.25及び0.5m/kg)は全て、経時的に血中グルコースを低減するのに有効であり、濃度の増加に伴って漸進的に低減した。
【0241】
結論
試験した比較物及びhFc-hIL-22の両方が、db/dbモデルにおいて血中グルコースを正常化し、それによりインビボ治療効果を実証した。重要なことに、hIL-22の投与ではそのような効果は見られず、長時間作用型比較物及びFc融合物で得られた慢性曝露が治療効果に必要であることが実証された。抗糖尿病効果の作用様式はまだ完全には解明されていないが、肝臓に対するIL-22の効果(肝臓糖新生及び脂肪生成)が主要な寄与因子であると考えられている。
【0242】
食物摂取量もまた、比較物4による処置により低減することが示され、したがって、肥満処置としての有効性を実証した。
【0243】
標的関与バイオマーカーも、比較物及びhFc-hIL-22によって上方制御されることが観察された。db/dbマウスで測定される特定のバイオマーカーは、ヒトに置き換えられることが知られている。
【0244】
hFc-hIL-22を皮下投与した場合の循環半減期(T1/2)が、特にマウスにおいて、比較物4よりも高いことに留意することが重要である(T1/2はそれぞれ20時間及び8時間である;表7を参照されたい)。したがって、hFc-hIL-22の曝露は定常状態でより高い。これは、標的関与バイオマーカー(ハプトグロビン、SAP及びPYY)が、hFc-hIL-22群において、示される実験において、それ自体より高い標的関与を示す比較物4群(図10)よりも高かったという観察によって更に裏付けられる。したがって、より高い曝露及び標的関与にもかかわらず、16日間の投与研究の最後の3日間において、Fc融合物(hFc-hIL-22)の有効性は、比較物4と比較して劣っていた。したがって、データは、比較物4が、糖尿病及び肝疾患のマウスモデルにおいて良好な治療有効性を実証することを示す。db/dbマウスにおいて測定された特定のバイオマーカーはヒトに置き換えられることが知られているため、そのような治療有効性も置き換えられると予測するのが妥当である。この場合もやはり、代わりに脂肪一酸を含む本発明の誘導体についても同様の結果が予想され得る。
【0245】
実施例6-脂肪二酸を含む比較物の肝損傷(i)におけるインビボ有効性研究
この研究は、肝損傷マウスモデルにおいて、本発明の誘導体の比較物を投与する効果を調査するように設計された。研究は予防様式で行われ、これは、肝損傷は投与が開始された後にのみ誘導されたことを意味する。
【0246】
方法
10週齢のC57Bl/6Rjマウスを得、研究開始前に1週間順化させた。肝損傷は、単回腹腔内用量(300mg/kg、20mL/kg)のAPAPで誘導した。比較物4及び9を、ビヒクル対照(n=5~10)とともに、APAP投与の2時間前に1.5mg/kgで皮下投与した。研究は、APAP投与の24時間後に終了した。血漿アラニントランスアミナーゼ(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の測定のために、最後の出血を確保した。
【0247】
血液試料をヘパリン処理チューブに収集し、血漿を分離し、分析まで-80℃で保管した。ALT及びASTを、製造業者の指示に従ってCOBAS c501自動分析器で市販のキット(Roche Diagnostics)を使用して測定した。
【0248】
肝臓を、組織学的分析のためにホルマリン固定及びパラフィン包埋に供した。
【0249】
増殖をki67免疫組織化学(IHC)染色によって測定した。IHC陽性染色を、VISソフトウェア(Visiopharm,Denmark)を使用した画像分析によって定量化した。
【0250】
アポトーシスを、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイにおいて測定した。要約すると、パラフィン包埋切片を有するスライドをキシレン中で脱パラフィン処理し、一連の段階的なエタノールで再水和した。スライドをプロテイナーゼKで前処理し、内因性ペルオキシダーゼ活性を過酸化水素で遮断した。TUNEL混合物(In Situ Cell Death Detection Kit,POD,Roche)をスライドに添加し、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)による増幅及びジアミノベンジジン(DAB)(Chromogen)による可視化を行った。最後に、スライドをヘマトキシリンで対比染色し、カバースリップした。
【0251】
結果
研究の終了時のALT及びASTの血漿レベルをそれぞれ図12A及び12Bに示す。ALT及びASTの量は、ビヒクル/APAP対照と比較して、肝損傷前に比較物4または9で処置したマウスにおいて顕著に低減することが示された。
【0252】
研究の終了時のTUNEL-及びki67陽性細胞の数をそれぞれ図13A及び13Bに示す。TUNEL陽性細胞の量は、ビヒクル/ APAP対照と比較して、肝損傷の前に比較物4または9で処置したマウスにおいて(顕著に)低減した。ki67陽性細胞の量は、APAP処置群にわたって同等であった。
【0253】
結論
ALT及びASTは、肝損傷の指標として使用される肝臓酵素である。したがって、比較物4及び9は、APAPによって誘導される損傷から肝臓を保護することが示された。同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、本明細書に開示される他の比較物及び実際に誘導体からの同様の効果を予想することは合理的である。
【0254】
TUNELアッセイの結果は、比較物4及び9が、ビヒクル/APAP対照と比較して、肝損傷によって引き起こされるアポトーシスから保護したことを示した。しかしながら、細胞増殖は、これらの比較物の影響を受けなかった。増殖は、損傷に対する応答として(対照に見られるように)生理学的に上方制御されたため、結果は、損傷の低減としての比較物4及び9の増殖作用の後に増殖の低減が続かないことを実証する(損傷に対する増殖の比率は増加する)。
【0255】
したがって、データは、比較物がマウスモデルにおいて肝損傷からの保護において良好な有効性を実証することを示す。マウスにおいて測定された特定のバイオマーカーは、ヒトに置き換えられることが知られているため、観察された保護も置き換えられると予測することは合理的である。この場合もやはり、代わりに脂肪一酸を含む本発明の誘導体についても同様の結果が予想され得る。
【0256】
実施例7-脂肪二酸を含む比較物の肝損傷におけるインビボ有効性研究
この研究は、肺損傷ラットモデルにおいて、本発明の誘導体の比較物を投与する効果を調査するように設計された。研究は、予防様式及び治療様式の両方で行われ、これは、投与が肺損傷が誘導される前に開始され、その後継続されたことを意味する。
【0257】
方法
肺損傷を誘導するために、1日目に、100μlのブレオマイシンを単回用量として中咽頭吸引により雄スプラーグドーリーラットの肺に投与した(群2~6)。生理食塩水を陰性対照(群1)として投与した。
【0258】
群3、4及び5の動物に、-1日目~3日目に、それぞれ0.5、1.5または4.5mg/kgの比較物9を1日1回(皮下注射により)投与した。群6の動物に、-1日目~3日目に、1日1回、10mg/kgのプレドニゾロンを(経口強制摂食により)投与した。
【0259】
ラットからの気管支肺胞洗浄液(BALF)中の可溶性コラーゲンを測定するために、肺を、プロテアーゼ阻害剤カクテルを添加した滅菌PBS(カルシウム及びマグネシウムなし)で洗浄し(3×4mL)、動物ごとの洗浄液を1つのチューブに入れた。可溶性コラーゲンアッセイSircol S1000(Biocolor)(Charles River Laboratories)を使用して、可溶性コラーゲンをBALF上清において測定した。
【0260】
全ての動物を、4日目(終了安楽死)に剖検のために提出した。全ての動物から組織病理学的検査のために右肺を収集し、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)で膨張固定した後、NBFに浸漬固定した。3つの平行な縦断面を右尾肺葉からトリミングし、カセット01に取り付けた。右頭蓋葉、中葉及び副肺葉も長手方向に切断し、カセット02に取り付けた。
【0261】
各カセットから2つのスライドを作製した。一方のスライドをヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色し、他方のスライドをヘマトキシリン及びピクロシリウスレッド(H&PSR)で染色した。
【0262】
次に、各スライドに、乱数ジェネレータを使用して乱数を割り当てた。検索表をMicrosoft Excelスプレッドシートに記録し、スライド評価後にコピーを研究病理学者に提供した。したがって、肺当たり6つの切片を盲検で読み取った。
【0263】
次いで、獣医病理学者は、炎症の重症度について各H&E染色スライド上の各切片をスコア化した(0=不在、1=最小、2=軽度、3=中等度及び4=重度)。群当たりの平均及び中央値スコアを計算した。病理学者はまた、線維症の重症度について、各H&PSR染色スライド上の各切片をスコア化した(0=低~8=高の改変アシュクロフトスコアを使用する)。群当たりの平均スコア及びスコア中央値を計算し、ノンパラメトリックANOVA、Kruskal-Wallis事後試験分析を行った。
【0264】
結果
顕微鏡所見の概要を表14に示し、各群の炎症及び線維症の平均スコア及びスコア中央値を明らかにする。
【表14】
【0265】
表14の群1及び2を比較することによって証明されるように、ブレオマイシンは、ラットモデルにおいて肺の炎症及び線維症の両方を誘導した。平均スコア及びスコア中央値は、群3~5、すなわち、比較物9で処置したラットにおいて低かった。これらの低スコアは、プレドニゾロンで処置したラット(群6)で見られたものと同等であった。
【0266】
研究における各動物の炎症及び線維化スコアの中央値も、それぞれ図14A及び14Bに示される。
【0267】
図14Aに図示するように、陰性対照(群1)と比較して、ブレオマイシン/ビヒクル対照(群2)において、群の炎症スコア中央値が増加した。群の炎症スコア中央値は、ブレオマイシン/ビヒクル対照と比較して、比較物9(高用量群5で顕著に減少した)及びプレドニゾロン(群6)で処置したラットにおいて減少した。
【0268】
図14Bに図示するように、陰性対照(群1)と比較して、ブレオマイシン/ビヒクル対照(群2)において、群の線維症スコア中央値が増加した。しかしながら、群の線維症スコア中央値は、対照プレドニゾロンではなく、ブレオマイシン/ビヒクル対照と比較して、比較物9で処置したラットにおいて減少した(高用量群5で顕著に減少した)。
【0269】
図14Cに図示するように、ブレオマイシン誘導肺損傷後のBALF中の可溶性コラーゲンの量は、陰性対照(群1)と比較して、ブレオマイシン/ビヒクル対照(群2)において増加し、これは、プレドニゾロンによる処置(群6)により低減しなかった。しかしながら、ブレオマイシン/ビヒクル対照と比較して、比較物9で処置したラットからのBALFにおいて(試験した全ての用量にわたって)、可溶性コラーゲンの量の顕著な低減が観察された。BALF中の可溶性コラーゲンは線維症についての読み出しであるため、これらの結果は、直前に報告された組織学的データを確認する。
【0270】
結論
顕微鏡研究の結果は、本発明の誘導体の比較物が、ラットモデルにおいて、ブレオマイシン誘導肺炎症及び線維症を予防及び/または低減することができることを示した。炎症に関して見られた効果は、肺の炎症の治療で知られているコルチコステロイドであるプレドニゾロンで観察された効果と同等であった。しかしながら、比較物は、線維症に対して独自の作用を有し、プレドニゾロンでは見られなかった。同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、本明細書に開示される他の比較物及び実際に誘導体からの同様の効果を予想することは合理的である。
【0271】
実施例8-脂肪二酸を含む比較物の大腸炎におけるインビボ有効性研究
この研究は、大腸炎マウスモデルにおいて、本発明の誘導体の比較物を用いて投与する効果を調査するように設計された。研究は、予防様式及び治療様式の両方で行われ、これは、投与が結腸炎症が誘導されたのと同じ日に開始され、その後継続されたことを意味する。
【0272】
方法
固形飼料を与えられた雌C57Bl/6JRjマウスを、体重に基づいて5つの群(群当たりn=8)に無作為化した。DSSを使用して、5つのうちの4つの群で大腸炎を誘導した。これらのマウスは、研究0日目~6日目の7日間、飲料水においてDSSを与えられた。第5の群では、動物は、DSSなしで水を与えられ、したがって、健康な対照として機能した。研究0日目から、DSSマウスを、ビヒクル、比較物9(0.35mg/kgまたは1mg/kgで腹腔内投与)、または比較物としてのIL-22-Fc融合物(hFc-hIL-22;0.5mg/kgで腹腔内投与)で1日1回、10日間処置した。体重、食物及び水分摂取量を毎日モニタリングした。
【0273】
研究10日目に、血液試料をマウスからEDTAチューブに収集し、血漿を分離し、分析まで-80℃で保管した。製造業者の指示に従って、再生島由来タンパク質3ガンマ(Reg3g)をELISAキット(Cloud-Clone Corp)を使用して二つ組で測定した。Reg3gは、IL-22の標的関与マーカーである。
【0274】
終了時に、立体解析学的分析のために腸を除去した。したがって、腸を氷冷生理食塩水で洗い流し、その内容物をサンプリングする前に穏やかに除去した。
【0275】
腸を一晩ホルマリン(Tissue-Tek VIP)に浸潤し、続いてパラフィンのブロックに包埋した。次に、系統的均一無作為サンプリング(SURS)原理を使用して、ホルマリン固定腸を近位から遠位方向にサンプリングし、合計4つのスラブを得て、多重カセットに配置した。全ての組織スラブを、個々のスラブの同定が後の段階で可能であるような方法で配置した。パラフィンブロックをトリミングし、5μmの上部を切断し、Superfrost +オブジェクトグラスに取り付けた。大腸については、上部まで500μmの距離で別の切片を切断し、各動物から合計8つの結腸切片を得た。
【0276】
結腸炎症容積は、立体解析学的に、すなわち、結腸の二次元断面の三次元解釈を使用して測定した。立体容積の推定は、走査されたH&E染色スライド上で、newCASTシステム(Visiopharm)を使用して行った。総腸容積、粘膜の容積、粘膜下及び筋肉の容積、ならびに炎症組織の容積を、適切なサイズのグリッドシステムを使用してポイントカウントすることによって推定し、目的の構造に当たる全てのポイントがカウントされた。目的の構造に当たるポイントの数は、以下の数学的関係に従って容積に変換された:
【数1】
式中、A(p)はポイント当たりの面積、pは目的の構造に当たるポイントの総数、tは断面間の距離である。群当たりの平均炎症容積を計算し、統計分析に供した。
【0277】
結腸形態も、H&E染色スライドを見ることによって終了時に評価した。
【0278】
結果
結腸炎症容積を図15に示す。ビヒクル対照(DSSも含有する)と比較して、いずれかの用量で比較物9で処置したマウスにおいて、炎症が予防されることが示された。特に、処置群について健康な対照(DSSを含まないビヒクル)と同じである結腸炎症容積から明らかなように、炎症は、比較物9で処置された群において正常レベルに留まった。同じことが、hFc-hIL-22で処置した群にも当てはまった。
【0279】
終了時の結腸形態の代表的なH&E染色画像を図16に示す。DSS処置後、ビヒクル処置された動物(黒い矢印でマークされる)では粘膜上皮創傷を見ることができるが、いずれかの用量での比較物9またはhFc-hIL-22で処置された動物においては見られない。これは、上皮組織に対する保護効果を実証する。
【0280】
血漿Reg3gレベルを図17に示す。DSS処置は、基底Reg3gレベルの増加を誘導した(ビヒクルをDSSなしビヒクルと比較する)。低用量(0.35mg/kg)の比較物9群では更なる増加は検出されなかったが、高用量(1mg/kg)の比較物9群及びhFc-hIL-22群では見られた。比較物9(1mg/kg)群と比較して、hFc-hIL-22(0.5mg/kg)群におけるより高いReg3gレベルは、より低い用量にもかかわらずより高い標的関与を示し、これは、マウスにおけるhFc-hIL-22のより長い半減期(hFc-hIL-22については30時間のT1/2対比較物9については9.1時間のT1/2)に関連している可能性が高い。
【0281】
結論
したがって、データは、本発明の誘導体の比較物が、マウスモデルにおける大腸炎及び粘膜上皮創傷からの保護において良好な有効性を実証することを示す。これは、腸の疾患、障害及び状態に対する新しい改善された治療が発見されたことを示す。特に、この所見は、炎症性腸疾患などの粘膜上皮損傷を特徴とする疾患を治療する可能性を実証する。同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、本明細書に開示される他の比較物及び実際に誘導体からの同様の効果を予想することは合理的である。
【0282】
実施例9-脂肪二酸を含む比較物の肝損傷(ii)におけるインビボ有効性研究
この研究は、第2の肝損傷マウスモデル(第1のものは、実施例6で上述されている)において、本発明の誘導体の比較物を投与する効果を調査するように設計された。研究は予防様式で行われ、これは、肝損傷は投与が開始された後にのみ誘導されたことを意味する。
【0283】
方法
C57Bl6/6j雄マウスを5つの群に分けた(群当たりn=8)。比較物4を、ConA処置と比較して-26時間及び-2時間で、5つの群のうちの2つにおいて1mg/kgで腹腔内投与した。別の2つの群は、これらの時点でのみビヒクルを受けた。ConAを、30秒間にわたって15mg/kgの用量で静脈内ボーラスとして4群全てに投与し、肝損傷を誘導した。第5の群は、健康な対照として、ConA(上記のようにビヒクルのみ)を投与しなかった。
【0284】
ConA注射の8または24時間後、マウスをイソフルラン麻酔下に置き、最大量の血液を心臓穿刺(血餅活性化剤を含有するポリプロピレン血清ゲルチューブを使用して)により採取した。処置を受けていないマウス(群5)を8時間の時点で屠殺した。血液を、チューブを数回反転させることによって、各チューブ内の凝固活性化剤と混合した。チューブを室温で15分間維持し、次いで2000gで、4℃で10分間遠心分離した。ALT及びASTを、製造業者の指示に従って自動化システム(Konelab 20)を使用して血清試料において測定した。
【0285】
結果
研究の終了時のALT及びASTの血漿レベルをそれぞれ図18A及び18Bに示す。ALT及びASTの量は、試験した両方の時点で、ビヒクル/ConA対照と比較して、肝損傷前に比較物4で処置したマウスにおいて低減することが示された。
【0286】
結論
ALT及びASTは、肝損傷の指標として使用される肝臓酵素である。したがって、比較物4は、実施例6でAPAPによって誘導された損傷から保護されたのと同様に、ConAによって誘導された損傷から肝臓を保護することが示された。マウスにおいて測定された特定のバイオマーカーはヒトに置き換えられることが知られているため、観察された保護も置き換えられるだろうと予測するのが妥当である。同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、本明細書に開示される他の比較物及び実際に誘導体からの同様の効果を予想することは合理的である。
【0287】
実施例10-R95CまたはL106C修飾を有する比較物のインビトロ効力研究
方法
レポーター遺伝子アッセイを用いて、IL-22Ra、IL-10Rb及びSTAT3誘導プロモーターを有するルシフェラーゼでトリプルトランスフェクトされたBHK細胞において効力を研究した。これは、IL-22受容体媒介性STAT3活性化を測定した、高感度、高スループットアッセイである。
【0288】
安定したレポーターBHK細胞株を、以下のプラスミドを使用して生成した:(i)pcDNA3,1hygro(+)におけるhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)におけるIL22R、及び(iii)pGL4.20における2xKZdel2。したがって、細胞株は、pSTAT3駆動プロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現した。
【0289】
アッセイプロトコルの0日目に、細胞を、96ウェルプレート(Corning#3842、黒色、透明底)中の基底培地(500mL:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号:31966-021)、10%(w/v)のウシ胎仔血清(FCS;アルブミンを含有する)(50mL)及び1%(w/v)のペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5mL))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、プレートを反転させることによって培地を除去した。新鮮な基底培地を1ウェル当たり50μlで添加し、細胞を60分間インキュベートした。
【0290】
比較物1及び2を、更なる比較物としてhIL-22とともに二つ組で試験した。
【0291】
したがって、50μlの希釈した比較物(基底培地中で希釈)を各ウェルに添加し、プレートを4時間放置した。したがって、比較物は、それらがウェル中に既に存在する50μlの培地中に希釈されたため、2倍希釈された。100μlのSteadylite+試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を添加することにより、4時間後に刺激を終了した。プレートをTopSeal Aで密封し、450rpmで15分間振盪した後、遅くとも12時間後までにMithrasまたは同様のシステムを使用して読み取った。
【0292】
データ分析をGraphpad Prismを使用して行った。各比較物の半最大有効濃度(EC50)を、その効力の尺度として評価した。EC50は、Log(化合物)対応答-可変スロープ(4p)を使用して決定した。ヒルスロープを標準として1に制限した。
【0293】
結果
表15は、IL-22受容体媒介STAT3活性化についてBHK細胞レポーター遺伝子アッセイにおいて測定された比較物のEC50を示す。
【表15】
【0294】
BHK細胞アッセイが大量のアルブミンを含有したため、測定されたEC50は、比較物を試験するときにアルブミン結合の効果を組み込んだ。
【0295】
アルブミンが存在するBHK細胞アッセイにおいて、比較物1は、hIL-22と比較して3倍低減した効力を有し、比較物2は、hIL-22と比較して5倍低減した効力を有した。
【0296】
結論
培地中にアルブミンを含むBHK細胞アッセイでは、比較物1及び2は、hIL-22と比較して、効力の3倍または5倍の低減のみを示した。比較すると、及び前述したように、Genentechは、IL-22のFc融合について、インビトロでの効力が34倍低減したことを報告している。
【0297】
したがって、IL-22の誘導体の比較物は、アルブミンの存在下であってもhIL-22と効力が同様である。Cys及びGln置換ならびに脂肪酸共有結合は、異なる位置で耐容される。実際、本発明者らは、Cysに置換された天然アミノ酸を有する残基95及び106へのコンジュゲーションが、IL-22タンパク質の活性に対して影響が最小限であることを示し、したがって、特に魅力的なコンジュゲーション部位とみなされる。天然アミノ酸は、R95及びL106である。同様の効力及び半減期を強調する膨大な量のデータに基づいて、本明細書に例示される脂肪二酸結合の代わりに脂肪一酸結合を有する本明細書に開示される本発明の誘導体から同様の効果を予想することは合理的であるが、半減期は、hIL-22と比較して短く、効力があまり低減しないと予想される。
【0298】
実施例11-R95CまたはL106C修飾を有する比較物のインビトロ効力研究
方法
これらの実験は、異なる実験室で行ったため、実施例10には含まれなかった。使用されたアッセイは同じであったが、当業者は、装置及び試料の取り扱いが実験から抽出された値に影響を与える可能性があることを理解するであろう。
【0299】
レポーター遺伝子アッセイを用いて、IL-22Ra、IL-10Rb及びSTAT3誘導プロモーターを有するルシフェラーゼでトリプルトランスフェクトされたBHK細胞において効力を研究した。これは、IL-22受容体媒介性STAT3活性化を測定した、高感度、高スループットアッセイである。
【0300】
安定したレポーターBHK細胞株を、以下のプラスミドを使用して生成した:(i)pcDNA3,1hygro(+)におけるhIL-10Rb、(ii)pcDNA3,1(Zeocin)におけるIL22R、及び(iii)pGL4.20における2xKZdel2。したがって、細胞株は、pSTAT3駆動プロモーターの制御下で、ヒトIL-10Rb、ヒトIL-22Ra及びルシフェラーゼレポーターを発現した。
【0301】
アッセイプロトコルの0日目に、細胞を、96ウェルプレート(Corning#3842、黒色、透明底)中の基底培地(500mL:DMEM+Glutamax(Gibco、カタログ番号:31966-021)、10%(w/v)のウシ胎仔血清(FCS;アルブミンを含有する)(50mL)及び1%(w/v)のペニシリン-ストレプトマイシン(P/S)(5mL))に、15,000~20,000細胞/ウェルで播種した。1日目に、プレートを反転させることによって培地を除去した。新鮮な基底培地を1ウェル当たり50μlで添加し、細胞を60分間インキュベートした。
【0302】
比較物3及び19を、更なる比較物としてhIL-22とともに二つ組で試験した。
【0303】
したがって、50μlの希釈した比較物(基底培地中で希釈)を各ウェルに添加し、プレートを4時間放置した。したがって、比較物は、それらがウェル中に既に存在する50μlの培地中に希釈されたため、2倍希釈された。100μlのSteadylite+試薬(Perkin Elmerカタログ番号6066759)を添加することにより、4時間後に刺激を終了した。プレートをTopSeal Aで密封し、450rpmで15分間振盪した後、遅くとも12時間後までにMithrasまたは同様のシステムを使用して読み取った。
【0304】
データ分析をGraphpad Prismを使用して行った。各比較物の半最大有効濃度(EC50)を、その効力の尺度として評価した。EC50は、Log(化合物)対応答-可変スロープ(4p)を使用して決定した。ヒルスロープを標準として1に制限した。
【0305】
結果
表16は、IL-22受容体媒介STAT3活性化についてBHK細胞レポーター遺伝子アッセイにおいて測定された比較物のEC50を示す。
【表16】
【0306】
BHK細胞アッセイが大量のアルブミンを含有したため、測定されたEC50は、比較物を試験するときにアルブミン結合の効果を組み込んだ。
【0307】
アルブミンが存在するBHK細胞アッセイにおいて、比較物3は、hIL-22と比較して11倍低減した効力を有し、比較物19は、hIL-22と比較して3倍低減した効力を有した。
【0308】
結論
培地中にアルブミンを含むBHK細胞アッセイでは、比較物19及び3は、hIL-22と比較して、効力の11倍または3倍の低減のみを示した。比較すると、及び前述したように、Genentechは、IL-22のFc融合について、インビトロでの効力が34倍低減したことを報告している。
【0309】
実施例12-C16一酸脂質化を伴う誘導体2のインビトロ効力研究
方法
方法を実施例11に記載のアッセイに従って実施し、同じ実験設定で実行した。
【0310】
これらの実験は、異なる実験室で行ったため結果は表5に含まれなかった。使用されたアッセイ、細胞株及びプロトコルは同じであったが、当業者は、装置及び試料の取り扱いが実験から抽出された値に影響を与える可能性があることを理解するであろう。
【0311】
誘導体2を、二つ組で比較物としてhIL-22とともに試験した。
【0312】
結果
表17は、IL-22受容体媒介STAT3活性化についてBHK細胞レポーター遺伝子アッセイにおいて測定した誘導体及び比較物のEC50を示す。
【表17】
【0313】
BHK細胞アッセイが大量のアルブミンを含有したため、測定されたEC50は、誘導体を試験するときにアルブミン結合の効果を組み込んだ。
【0314】
アルブミンが存在するBHK細胞アッセイにおいて、誘導体2は、hIL-22と比較して、低減した効力を有しなかった。
【0315】
結論
培地中にアルブミンを含むBHK細胞アッセイでは、誘導体2は、hIL-22と比較して、低減した効力を示さなかった。比較すると、及び前述したように、Genentechは、IL-22のFc融合について、インビトロでの効力が34倍低減したことを報告している。これにより、特許請求される誘導体がN末端にG-P-G伸長を含むことができることが確認されるが、これは生物学的効果に厳密には必要ではない。
【0316】
本発明のある特定の特徴が本明細書に図示及び説明されているが、当業者であれば、多くの修正及び等価物が思い付くであろう。したがって、特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に含まれる全てのそのような修正及び等価物を網羅することが意図されていることが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
図18A
図18B
【配列表】
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【国際調査報告】