(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】炭素酸化物からメチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドを共製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 319/02 20060101AFI20240412BHJP
C07C 319/24 20060101ALI20240412BHJP
C07C 321/04 20060101ALI20240412BHJP
C07C 321/14 20060101ALI20240412BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
C07C319/02
C07C319/24
C07C321/04
C07C321/14
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570063
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 FR2022050889
(87)【国際公開番号】W WO2022238651
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレミー、ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】レイモン、ジャン-ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ラマン、エリク
(72)【発明者】
【氏名】サレンビエ、エロリ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB01
4H006AB84
4H006AB99
4H006AC63
4H006BA02
4H006BA14
4H006BA55
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BE20
4H006BE40
4H006BE41
4H006TA05
4H039CA99
4H039CB30
4H039CF30
(57)【要約】
炭素酸化物からメチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドを共製造するための方法。本発明は、メチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドを共製造するための方法であって、以下の連続する工程:
a)硫化水素(H2S)及び水素の存在下で少なくとも1種の炭素酸化物を反応させて、メチルメルカプタン、水、及び場合により未反応の硫化水素を含むストリーム(M)を形成すること、
b)前記ストリーム(M)を精製して、メチルメルカプタンが高濃度とされたストリーム(N)及び非凝縮性化合物を含有するストリーム(Muncond)を得ること、
c)任意選択で、工程b)から得られた前記非凝縮性化合物のストリーム(Muncond)を工程a)に再循環させること、
d)工程b)で精製された前記メチルメルカプタンを含むストリーム(N)の第一の部分を回収すること、
e)前記メチルメルカプタンのストリーム(N)の第二の部分を硫黄で酸化して、ジメチルジスルフィド、硫化水素、及び場合により未反応のメチルメルカプタンを含むストリーム(O)を形成すること、
f)前記ストリーム(O)を精製して、一方では前記高濃度とされたジメチルジスルフィドを、他方では前記硫化水素及び場合により工程e)で反応しなかった前記メチルメルカプタンを、分離すること、
g)工程f)で単離された前記硫化水素及び場合により前記メチルメルカプタンを、工程a)から得られた前記ストリーム(M)に再循環させること、
h)工程f)で単離された前記ジメチルジスルフィドを回収すること。
を含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドを共製造するための方法であって、以下の連続する工程:
a)硫化水素(H
2S)及び水素の存在下で少なくとも1種の炭素酸化物を反応させて、メチルメルカプタン、水、及び場合により未反応の硫化水素を含むストリーム(M)を形成すること、
b)前記ストリーム(M)を精製して、メチルメルカプタンが高濃度とされたストリーム(N)及び非凝縮性化合物を含有するストリーム(M
uncond)を得ること、
c)任意選択で、工程b)から得られた前記非凝縮性化合物のストリーム(M
uncond)を工程a)に再循環させること、
d)工程b)で精製された前記メチルメルカプタンを含むストリーム(N)の第一の部分を回収すること、
e)前記メチルメルカプタンのストリーム(N)の第二の部分を硫黄で酸化して、ジメチルジスルフィド、硫化水素、及び場合により未反応のメチルメルカプタンを含むストリーム(O)を形成すること、
f)前記ストリーム(O)を精製して、一方では前記高濃度とされたジメチルジスルフィドを、他方では前記硫化水素及び場合により工程e)で反応しなかった前記メチルメルカプタンを、分離すること、
g)工程f)で単離された前記硫化水素及び場合により前記メチルメルカプタンを、工程a)から得られた前記ストリーム(M)に再循環させること、
h)工程f)で単離された前記ジメチルジスルフィドを回収すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記再循環工程g)が、精製される前記ストリーム(M)から好ましくは凝縮、任意選択で後続のデカンテーション及び/又は蒸留によって前記硫化水素を除去する前記精製工程b)の前に再循環されるストリームを向かわせることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硫化水素及び場合により工程e)で反応しなかった前記メチルメルカプタンを含む前記ストリームのすべてが、工程a)で得られた前記ストリーム(M)に再循環されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、前記炭素酸化物が、一酸化炭素、二酸化炭素、又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、前記硫化水素が、硫黄及び水素を添加することによってin situで生成されることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
炭素酸化物/S/H
2S/H
2モル比が、1/0/0.05/0.05~1/20/40/100、好ましくは1/0/0.5/1~1/0/10/20であること、又は硫黄の非存在下では、CO/H
2/H
2S比が、1/0.05/0.05~1/40/100、好ましくは1/0.5/1~1/10/20であることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)の反応温度が、200℃~500℃、好ましくは200℃~400℃であり、圧力が、1~100バール、好ましくは3~30バールの絶対圧力であり、工程a)の前記反応が、アルミナ、シリカ、ゼオライト、シリコアルミネート、活性炭、ジルコニア、TiO
2、又はヒドロキシアパタイトなどの担持体上のMo-S-K及び/又はMo-O-Kタイプのモリブデン及びカリウムをベースとする触媒から選択される触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化工程e)のメチルメルカプタン/硫黄モル比が、0.1~100、好ましく1~50、さらにより好ましくは1~20であることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化工程e)の反応温度が、20℃~200℃であり、圧力が、2~30バールの絶対圧力であり、前記酸化工程e)の反応が、均一触媒、二相触媒、又は不均一触媒から選択される塩基性触媒の存在下で行われ、好ましくは、前記触媒が、不均一塩基性触媒であり、より好ましくは、前記触媒が、塩基性イオン交換樹脂であることを特徴とする、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記精製工程b)が、1又は複数の凝縮、及び後続の1又は複数のデカンテーション、及び任意選択で1又は複数の蒸留を含むことを特徴とする、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記精製工程f)が、1又は複数の蒸留工程、及び任意選択で1又は複数の塩基性触媒工程を含むことを特徴とする、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素酸化物からメチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドを共製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メルカプタンは産業上の関心が非常に高く、現在化学産業において、特により複雑な有機分子の合成における出発物質として広く用いられている。例えば、メチルメルカプタン(以下、CH3SH又はMeSHと記載する)、動物の栄養のための必須アミノ酸であるメチオニンの合成における出発物質として用いられる。メチルメルカプタンはまた、ジメチルジスルフィド(以下、DMDSと記載する)の合成にも用いられる。
【0003】
ジメチルジスルフィドは産業上の関心が非常に高く、産業界で非常に広く用いられている。例えば、限定されない例として、それは、特に石油留分の水素化精製における、触媒硫化添加剤として、エチレン製造のためのスチームクラッキングに供される石油フィードストック中の抗コーキング添加剤及び抗CO添加剤として、又は農業における土壌燻蒸剤として用いられる。
【0004】
これらの用途に用いられる他の製品、例えばジ-tert-アルキルポリスルフィドと比較して、DMDSは多くの利点を有する。例えば、DMDSは、高い硫黄含有量(68%)及びコークス化しない分解生成物(CH4、H2S)を有する。さらに、これらの用途において、DMDSはジ-tert-アルキルポリスルフィドを例とする通常用いられている他の市販製品よりも全体として高い性能品質をもたらす。
【0005】
現在、様々な合成経路を経てメチルメルカプタンを製造する方法が知られている。
【0006】
メチルメルカプタンは、以下の反応(1)に従ってメタノール(CH3OH)及び硫化水素(H2S)から製造され得る。
CH3OH + H2S → CH3SH + H2O (1)
【0007】
以下の反応(2)に従って一酸化炭素(CO)からメチルメルカプタンを製造することも可能である。
CO + 2H2 + H2S → CH3SH + H2O (2)
【0008】
他のプロセスが文献に記載されており、以下のように様々な反応を組み合わせたものである。
-反応(3)に従う、メタン、H2S、及び硫黄からのCS2及びH2の形成:
CH4 + S + H2S → CS2 + 3H2 (3)
-反応(4)に従う、上記で形成された水素を用いたCS2の水素化:
CS2 + 3H2 → CH3SH + H2S (4)
【0009】
ジメチルジスルフィドの合成のための工程は、従来、以下の反応(5)に従う硫黄を用いた酸化によって行われる。
2CH3SH + S → CH3SSCH3 + H2S (5)
【0010】
この硫黄によるメチルメルカプタンの酸化は、バッチモード又は連続モードで、均一又は不均一の有機又は無機塩基性剤で触媒されるものであるが、硫化水素の形成、さらには硫黄ランクxが2を超えるMeSxMeとして記載されるジメチルポリスルフィドの形成を伴う。さらに、この合成工程は一般に大過剰のメチルメルカプタンを必要とする。
【0011】
ここで、現在の環境保護を考慮するという状況において、より環境にやさしく同時に高収率も維持するメチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドを合成するための方法が現在まさに求められている。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、メチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドを共製造するための方法であって、以下の連続する工程:
a)硫化水素(H2S)及び水素の存在下で少なくとも1種の炭素酸化物を反応させて、メチルメルカプタン、水、及び場合により未反応の硫化水素を含むストリーム(M)を形成すること、
b)前記ストリーム(M)を精製して、メチルメルカプタンが高濃度とされたストリーム(N)及び非凝縮性化合物を含有するストリーム(Muncond)を得ること、
c)任意選択で、工程b)から得られた前記非凝縮性化合物のストリーム(Muncond)を工程a)に再循環させること、
d)工程b)で精製された前記メチルメルカプタンを含むストリーム(N)の第一の部分を回収すること、
e)前記メチルメルカプタンのストリーム(N)の第二の部分を硫黄で酸化して、ジメチルジスルフィド、硫化水素、及び場合により未反応のメチルメルカプタンを含むストリーム(O)を形成すること、
f)前記ストリーム(O)を精製して、一方では前記高濃度とされたジメチルジスルフィドを、他方では前記硫化水素及び場合により工程e)で反応しなかった前記メチルメルカプタンを、分離すること、
g)工程f)で単離された前記硫化水素及び場合により前記メチルメルカプタンを、工程a)から得られた前記ストリーム(M)に再循環させること、
h)工程f)で単離された前記ジメチルジスルフィドを回収すること
を含む、方法である。
【0013】
この方法により、メチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドの連続合成が可能となる。この生成物の共製造により前記合成のエネルギーコストを低減することが可能となる。このエネルギー節約は第一の環境保護的利点である。
【0014】
また、それにより需要に応じて各生成物の製造を調節することも可能となる。例えば、メチルメルカプタンの合成がジメチルジスルフィドの合成よりも好ましい場合がある。前記方法におけるこの柔軟性も利点である。また、必要に応じてメチルメルカプタンだけを製造する、すなわち、前記方法を工程d)で停止することも可能である。同様に、必要であればストリーム(N)のすべてを酸化工程e)に関与させてもよい。前記方法のこの柔軟性は大きな利点である。これにより、1つの同じ設備内で生成物の製造を必要に応じて変化させることが可能となる。
【0015】
次に、この共製造により最終生成物の不純物を再循環させることができる。硫黄による酸化反応の過程で反応しなかったメチルメルカプタン、及びこの酸化工程で生成された硫化水素が、メチルメルカプタン合成に再循環される。これらの不純物は通常は焼却され、酸性雨の潜在的原因である硫黄酸化物(SO2)の形成をもたらす。現在、これらの排出物はもはや許容されない。そこで、これらの軽質不純物のすべてを再循環させることでそれらの焼却を回避する。こうして、本発明に係る再循環工程g)により閉じた設備で硫化水素を再循環させることが可能となる。硫化水素は毒性のガスであることから、閉じた再循環によりこのガスの取り扱いを限定的とし、それにより事故を制限することができる。
【0016】
メチルメルカプタンから硫化水素を分離してこれらの不純物を経済的に利用することも可能であろう。しかし、この分離は非常に困難であり、非常に長い塔(column)を備えた蒸留装置を必要とする。結果、この分離は非常にエネルギー集約的である。したがって、これら2つの不純物を同じストリームに(すなわち、分離することなく)再循環させて前記合成方法の既存の精製工程に取り入れることは、シンプルで、エネルギーの点で非常に有利な解決策である。その上、硫黄による酸化工程は、一般に極めて大過剰のメチルメルカプタンを必要とする。
【0017】
この再循環は、前記合成方法にとって必須である精製工程に組み込まれる。したがって、この再循環は実施が容易であり、エネルギーの点で安価である。それは前記合成方法に追加の工程を必要としない。
【0018】
最後に、第一の合成工程からの化合物、すなわち硫化水素については試薬、メチルメルカプタンについては生成物であるこれらの不純物は、前記方法のこの第一の工程における濃度を高め、出発物質の消費を低減させる。
【0019】
反応に関して、特許請求の範囲に記載の方法は以下の2つの反応を包含する。
一酸化炭素に関して:CO + 2H2 + H2S → CH3SH + H2O
二酸化炭素に関して:CO2 + 3H2 + H2S → CH3SH + 2H2O、及び続いて、
2CH3SH + S → CH3SSCH3 + H2S
【0020】
これらの反応は、硫化水素が第一の工程に再循環される場合、以下のように単純化することができる。
2CO + 4H2 + H2S + S → CH3SSCH3 + 2H2O、又は
2CO2 + 6H2 + H2S + S → CH3SSCH3 + 4H2O
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、特許請求の範囲に記載の方法を実施する装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の他の特性、態様、目的、及び利点は以下の記載を読むことでさらにより明確に分かるであろう。
【0023】
本明細書で用いられる「…から…まで」及び「…と…との間」の表現は、言及されている境界値の各々を含むものとして理解されるべきであることが指摘される。
【0024】
本発明に係る方法は、上述の8つの連続する工程、すなわち工程a)~工程h)を含む。この方法は中間精製工程を含んでいてもよい。
【0025】
<工程a)-反応>
工程a)では、少なくとも1種の炭素酸化物、水素、及び硫化水素を、好ましくは気体の形態で、任意選択で少なくとも1種の触媒の存在下で反応させ、それにより、メチルメルカプタン、水、及び場合により未反応の硫化水素を含む、好ましくは気体の形態であるストリーム(M)を形成する。反応の変換度に応じて、ストリーム(M)は、水素、未反応の硫化水素、硫化カルボニル(COS)、及び場合により少なくとも1種の未反応の炭素酸化物を含み得る。
【0026】
この合成工程は硫化水素を必要とする。この硫化水素は、上記段落で言及又は上記反応スキームに示されているようにそのまま前記反応に関与させることが可能である。また、硫化水素をin situで硫黄及び水素から生成させることも可能である。この変型例によれば、前記反応の試薬は炭素酸化物(複数可)、硫黄、及び水素である。
【0027】
炭素酸化物は、一酸化炭素であっても、二酸化炭素であっても、これらの混合物であってもよい。
【0028】
特に、工程a)は、200℃~500℃、好ましくは200℃~400℃の温度で行われる。特に、工程a)は、1~100バール、好ましくは3~30バールの絶対圧力で行われる。
【0029】
好ましくは、工程a)において、炭素酸化物/S/H2S/H2モル比は1/0/0.05/0.05~1/20/40/100である。好ましくは、それは1/0/0.5/1~1/0/10/20である。特に、それは1/0/1/2である。
【0030】
好ましくは、工程a)において、硫黄の非存在下では、CO/H2/H2S比は1/0.05/0.05~1/40/100である。好ましくは、それは1/0.5/1~1/10/20である。特に、それは1/2/1である。
【0031】
工程a)は、固定床が好ましい1又は複数の触媒床で行われてもよい。それは、1又は複数の反応ゾーンを備えた反応器中で行われてもよく、ここで、試薬(複数可)は場合により個々のゾーンの間で供給される。したがって、試薬、好ましくはH2及び/又はH2Sは、個々の触媒床又は反応ゾーンに別々に導入されてもよい。
【0032】
工程a)で用いられる少なくとも1種の触媒は公知であり、特に以下から選択されてもよい。
-国際公開第2019/122072号に記載のような、ジルコニアに担持されたモリブデン及びカリウムをベースとする触媒、例えばK2MoO4/ZrO2など。これらの触媒は、320℃の温度及び10バールの圧力で、1/2/1のCO/H2/H2S比を用いて試験される。
-国際公開第2014/154885に記載のような、ヒドロキシアパタイト担持体上のMo-S-K及び/又はMo-O-Kタイプのモリブデン及びカリウムをベースとする触媒、例えばK2MoS4/Ca10(PO4)6(OH)2又はK2MoO4/Ca10(PO4)6(OH)2など。これらの触媒は、280℃の温度及び10バールの圧力で、1/2/1のCO/H2/H2S比を用いて試験される。
-米国特許出願公開第2010/0286448号に記載の触媒で、上に金属が電解析出されたSiO2、TiO2、シリカ-アルミナ、ゼオライト、及びカーボンナノチューブなどの多孔質担持体から構成される触媒。K2MoO4、及びさらにはプロモーターとして作用する別の金属酸化物が、続いてこの担持体上に含浸される。
-米国特許出願公開第2010/094059号に記載される、TeO2をプロモーターとし担持されたMo及びK(特に、K2MoO4)をベースとする触媒、例えばK2MoO4/TeO2/SiO2など。触媒K2MoO4/TeO2/SiO2は、300℃の温度及び2バールの圧力で、1/1/2のCO/H2/H2S比及び2000時間-1の空間速度を用いて試験される。
-国際特許出願公開第2005/040082号には、いくつかの触媒、特に、Mo-O-Kをベースとする活性成分と活性プロモーターと任意選択で担持体とを備えた触媒が記載されている。示されている触媒は、K2MoO4/Fe2O3/NiO又はK2MoO4/CoO/CeO2/SiO2であり、各々シリカに担持されている。これらの触媒は、320℃の温度及び7バールの圧力で、1/1/2のCO/H2/H2S比及び3000時間-1の空間速度を用いて試験される。
【0033】
<工程b)-精製>
ストリーム(M)の精製の少なくとも1つの工程は、メチルメルカプタンが高濃度とされたストリーム(N)及び非凝縮性化合物を含有するストリーム(Muncond)を得るために行われる。好ましくは、精製工程によってH2Sをストリーム(M)から分離することが可能となる。
【0034】
精製工程b)は、1又は複数の凝縮工程、及び任意選択で後続の1又は複数のデカンテーション工程、及び任意選択で後続の1又は複数の蒸留工程を含んでいてもよい。好ましくは、精製工程b)は、少なくとも1つの凝縮工程(特に、以下に述べるような)及び任意選択で蒸留工程(特に、以下に述べるような)を含む。
【0035】
<凝縮>
好ましくは、ストリーム(M)は凝縮される。
【0036】
この操作のために、管状交換器又は板状交換器など任意のタイプの凝縮器が用いられてもよい。好ましくは、凝縮器は分離された流体を有する、すなわち、凝縮される気体と冷却剤流体が接触しない。冷却剤流体は液体であっても気体であってもよく、空気、水、グリコール、ブライン、アンモニア、フレオン、又はオイルなどである。
【0037】
凝縮温度は、20℃~70℃、好ましくは30℃~60℃であり得る。圧力は、1バール~100バールの絶対圧力であり得る。目的は、非凝縮性化合物に対して最大量のメチルメルカプタン及び水を凝縮することであり、それにより液相と気相の容易な分離が可能となる。
【0038】
「非凝縮性化合物」の用語は、前記製造方法の温度及び圧力で、特に凝縮工程の後に気体の形態を維持する化合物を特に意味する。特に言及され得る非凝縮性化合物には、未反応の炭素酸化物(複数可)、すなわち一酸化炭素及び/又は二酸化炭素、水素、未反応の硫化水素、場合により硫化カルボニル(COS)、並びに前記方法の過程で生成又は導入された任意の他の非凝縮性不活性化合物が含まれる。好ましくは、「非凝縮性化合物」の用語は、未反応の炭素酸化物(複数可)、未反応の水素、未反応の硫化水素、及び場合により硫化カルボニル(COS)を意味する。
【0039】
これらの非凝縮性化合物は分離されてストリームMuncondを構成する。凝縮されたストリーム(MCond)は続いて以下の精製工程(複数可)に供され得る。
【0040】
<水の分離>
水分離工程は任意の従来技術によって行われてもよく、特にはデカンテーションによって行われてもよい。好ましくは、ストリーム(MCond)は液体の形態である。したがって、以下のものが好ましくはデカンテーションによりストリーム(MCond)から分離される。
-メチルメルカプタン及び場合により残留水を含む有機相(Morg)、及び
-水相(Maq)。
【0041】
特に、水分離工程において、水相(Maq)はストリーム(M)に存在する水の総重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の水を含む。
【0042】
<H2Sの蒸留>
メチルメルカプタンを含む有機相(Morg)は、このストリームに依然として存在し得る微量の硫化水素を除去するために蒸留工程にも供され得る。
【0043】
蒸留時において、圧力は、0.05~40バール、好ましくは1~25バールの絶対圧力であってもよく、及び/又は、温度は、塔頂部で-60℃~+60℃、好ましくは10~50℃、塔底部で+20℃~+200℃、好ましくは20℃~100℃であってもよい。
【0044】
工程b)の精製工程に応じて、ストリーム(N)は、ストリーム(Mcond)、ストリーム(Morg)、又は上述の蒸留工程から得たメチルメルカプタンのストリームであり得る。
【0045】
<ストリーム(N)の追加の乾燥工程>
ストリーム(N)は、モレキュラーシーブ上で、MgSO4上で、H2SO4を用いて、CaCl2上で、又は共沸蒸留によって、乾燥されてもよい。
【0046】
工程b)の完了後に回収されたストリームは(N)と記載される。
【0047】
好ましい実施形態によれば、精製工程b)は、1又は複数の凝縮工程、及び後続の1又は複数のデカンテーション工程、及び任意選択で1又は複数の蒸留工程を含む。
【0048】
好ましい実施形態によれば、精製工程b)は、凝縮工程、及び後続のデカンテーション工程、及び任意選択で蒸留工程を含む。
【0049】
<工程c)-任意選択の再循環>
精製工程b)の過程で回収され、未反応の一酸化炭素及び/又は二酸化炭素、未反応の硫化水素、未反応の水素、並びに存在し得る硫化カルボニルを含み得る気体形態のストリームMuncondは、この反応に再び供されるために工程a)の前に再循環されてもよい。再循環されるストリームの量を調節するためにパージが提供されてもよい。
【0050】
<工程d)-メチルメルカプタンの回収>
【0051】
本発明に係る方法は、次にメチルメルカプタンを回収する工程を含む。(N1)と記載されるストリーム(N)の一部は任意選択で別のプロセスに関与させるために回収される。(N2)と記載されるストリーム(N)の第二の部分はそれ自体、本発明に係る方法の次の工程、すなわち工程e)に関与させる。
【0052】
<工程e)-酸化>
工程e)では、工程d)の完了後に得られるメチルメルカプタンの一部(N2)を硫黄との酸化によって反応させて、ジメチルジスルフィド、硫化水素、場合により未反応のメチルメルカプタン、及び場合によりジメチルポリスルフィドを含むストリーム(O)を形成する。
【0053】
この工程は、例えば欧州特許出願公開第0976726号に記載されている。例えば、工程e)は高温及び圧力下で行われてよく、例えば20℃~200℃、好ましくは20℃~100℃であり、圧力は、2~30バール、好ましくは2~15バールの絶対圧力であり、典型的には、例えば、メチルメルカプタンの硫黄による酸化の場合、約70℃で約6バール下である。
【0054】
酸化反応e)は触媒を含有していてもよい反応器中で行われる。塩基性触媒が好ましく用いられる。この塩基性触媒は、均一でもよいし、二相でもよいし、不均一(固体)でもよい。触媒が均一である、すなわちメルカプタンに可溶性である場合、アミン、アミジン、及びグアニジンが好ましい。塩基性触媒が二相の水相を形成する場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムの水酸化物などのすべての水溶性塩基が好ましい。想定される塩基が固体である場合、任意の塩基性を有する固体が想定されてもよく、MgO、CaO、アルミナ、又は任意選択でアルカリ金属酸化物若しくはアルカリ土類金属酸化物でドープされた任意の他の担持体(シリカ、ジルコニア、酸化チタン、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイトなど)、又は任意選択でドープされたゼオライトなどである。好ましくは、不均一触媒は塩基性イオン交換樹脂であり、より好ましくは、不均一触媒はDuPont社から販売されているAmberlyst(登録商標)A21樹脂である。
【0055】
酸化工程e)のメチルメルカプタン/硫黄モル比は、0.1~100、好ましく1~50、より好ましくは1~20であってもよい。
【0056】
この酸化工程により、硫化水素、及び場合により未反応のメチルメルカプタンを含む気体ストリーム(O12)、並びにジメチルジスルフィド及び残留ジメチルポリスルフィドを含む液体ストリーム(O11)を形成することが可能となり得る。
【0057】
<追加の脱気工程>
ストリーム(O)又は液体ストリーム(O11)は、次に、液体ストリームから硫化水素又は存在し得るメチルメルカプタンなどの残留気体を除去してストリーム(O22)を形成するように、脱気装置で処理されてもよい。脱気された液体ストリームは(O21)と称される。
【0058】
<ポリスルフィドの追加のレトログラデーション(retrogradation)工程>
上記追加の脱気工程から得られる液体ストリーム(O21)又は酸化工程から得られるストリーム(O11)は、高硫黄ランクのポリスルフィドをより低い硫黄ランクのポリスルフィド、理想的にはジスルフィドにすることで残留ポリスルフィドをジメチルジスルフィドに変換するように、レトログラデーションの工程に供されてもよい。このレトログラデーション工程に用いられる反応器は仕上げ器(finisher)として知られる。それは反応の変換を高めるために過剰に導入されるメチルメルカプタンの入口部を含む。この仕上げ工程により、硫化水素、及び場合により未反応のメチルメルカプタンを含む気体ストリーム(O32)、並びにジメチルジスルフィドを含む液体ストリーム(O31)を形成することが可能となり得る。
【0059】
<追加の脱気工程>
液体ストリーム(O31)は追加の脱気工程に供されてもよい。液体ストリーム(O31)は、硫化水素及び場合により未反応のメチルメルカプタンなどの残留気体を除去してストリーム(O42)を形成するように、脱気装置で処理されてもよい。脱気された液体ストリームは(O41)と称される。
【0060】
<工程f)-精製>
本発明に係る方法は酸化工程e)から得られる液体ストリームの少なくとも1つの精製工程を含む。この液体ストリームは、酸化反応e)から直接得られるストリーム(O)であってもよいし、追加の脱気工程若しくはレトログラデーション工程の存在に応じて、ストリーム(O11)、ストリーム(O21)、ストリーム(O31)、又はストリーム(O41)であってもよい。この工程により、一方では高濃度とされたジメチルジスルフィドを、他方では硫化水素及び場合により工程e)で反応しなかったメチルメルカプタンを分離することが可能となる。そのような工程により特に以下を分離することが可能となり得る。
-高濃度とされたジメチルジスルフィド、
-硫化水素と場合により未反応のメチルメルカプタン、及び
-重質生成物、揮発性化合物、ヒドロメチルジスルフィド、又はメルカプトメチルメチルスルフィドなどの不純物。
【0061】
この精製工程f)はジメチルジスルフィドを単離するための連続する蒸留工程を含んでいてもよい。特に、精製工程f)は、1又は複数の蒸留工程、及び任意選択で1又は複数の塩基性触媒工程を含んでいてもよい。
【0062】
第一の実施形態によれば、精製工程f)は任意の従来技術によって実施されてもよく、特に以下に述べる記載の工程f1)~工程f4)で実施されてもよい。特に、精製工程は、以下に記載の工程f1)又は工程f6)に相当する。
【0063】
<工程f1)-形成されたH2Sの除去>
好ましくは蒸留による精製工程f1)は、以下を生成する。
-硫化水素、及び場合により未反応のメチルメルカプタンを含む気体ストリーム(P12)、及び
-主にジメチルジスルフィドを含む液体ストリーム(P11)。
【0064】
蒸留中、圧力は、0.05~15バール、好ましくは1~10バールの絶対圧力であり得る。塔底部の温度は、50~300℃、好ましくは50~200℃であり得る。塔頂部では、温度は、30~200℃、好ましくは30~120℃であり得る。
【0065】
<工程f2)-重質生成物の除去>
ストリーム(P11)の第二の蒸留が続いて行われてもよく、それによって以下が得られる。
-塔頂部分(column head)を構成し、主にジメチルジスルフィド及び微量の残留揮発性不純物を含むストリーム(P22)、及び
-塔テール部分(column tail)を構成し、重質不純物の混合物を含むストリーム(P21)。
【0066】
重質蒸留不純物のストリーム(P21)は、上記で定めるジメチルジスルフィド合成工程、特に工程e)又は工程f1)に再循環されてもよい。このプロセス中における不純物の蓄積を回避するために、パージを有する再循環パイプを備えることが可能である。
【0067】
<工程f3)-塩基性反応によるヒドロメチルジスルフィドの除去>
工程e)から得られるストリーム、又はストリーム(P11)及び/若しくはストリーム(P22)を、塩基性触媒を含む反応器中で反応させることで、以下の反応に従ってヒドロメチルジスルフィドをジメチルトリスルフィドに変換することができる。
MeSSH + MeSSMe → MeSH + MeSSSMe
【0068】
塩基性触媒は当業者に公知の任意の種類のものであってもよい。塩基性触媒は、好ましくは、後続の分離が容易となるように反応媒体に対して不均一である。したがって、塩基性触媒は、例えば、DuPont製のAmberlyst(登録商標)A21などのアニオン交換樹脂、遊離アミン形態の塩基性触媒、酸化ナトリウム及び/又は酸化カリウムでドープしたアルミナ、酸化マグネシウム(MgO)、並びに塩基性ゼオライトから選択されてもよい。上記に挙げた触媒を酸化反応e)に用いることも可能である。好ましくは、塩基性触媒はアニオン交換樹脂である。
【0069】
<工程f4-微量揮発性化合物の除去>
工程f3)から得られるストリームの第三の蒸留が最後に行われてもよく、それにより以下が得られる。
-工程f3)で形成される微量のメチルメルカプタンを含む塔頂部でのストリーム(P31)、及び
-塔テール部分を構成し、ジメチルジスルフィドを含むストリーム(P32)。
【0070】
第二の実施形態によれば、精製工程f)は以下に述べる工程f5)及び工程f6)で実施されてもよい。
<工程f5-塩基性反応による望ましくない不純物の除去>
酸化反応e)から直接得られる液体ストリーム(O)、又は追加の脱気工程若しくはレトログラデーション工程の存在に応じて、ストリーム(O11)、ストリーム(O21)、ストリーム(O31)、又はストリーム(O41)は、塩基性触媒反応に供されてもよい。したがって、これらのストリームは、望ましくない不純物が除去されるように、塩基性触媒を含む反応器に投入されてもよい。
用いられる触媒は上記で定める工程f3)について開示されている触媒であってもよい。
【0071】
<工程f6-微量揮発性化合物及び重質不純物の除去>
工程f5)から得られるストリームの蒸留が続いて行われてもよく、それにより以下が得られる。
-硫化水素及び微量のメチルメルカプタンを含む塔頂部でのストリーム、
-ジメチルジスルフィドを含む、側面部から除去されるストリーム、及び
-塔テール部分を構成し、重質不純物の混合物を含むストリーム。
【0072】
この工程を実施するために用いられる蒸留塔は側面留出部を備えた塔又は分配塔(partition column)であってもよい。
【0073】
分配塔が用いられる場合、塔の条件は以下の通りであり得る。塔頂部温度は、0℃~150℃、好ましくは10℃~100℃であり得る。塔中間部温度は、30℃~200℃、好ましくは50℃~150℃であり得る。塔テール部温度は、50℃~250℃、好ましくは80℃~180℃であり得る。塔内部の圧力は、0.05バール~30バール、好ましくは0.1~5バールの絶対圧力であり得る。塔頂部に再注入される液体と塔頂部の軽質不純物を含有する留出物との質量比として定義される還流比は、0(還流なし)~100、好ましくは0~10である。
【0074】
第三の実施形態によれば、塩基性触媒工程の前に揮発性不純物を除去するために、工程f5)及び工程f6)の前に蒸留塔を組み込むことが可能である。
【0075】
<再循環工程g)>
再循環工程g)は、精製されるストリーム(M)から好ましくは凝縮、任意選択で後続のデカンテーション及び/又は蒸留によって硫化水素を特に除去する精製工程b)の前に、再循環されるストリームを向かわせる。
【0076】
これらの工程e)及び/又は工程f)、並びに任意選択の追加の工程の過程で回収される硫化水素及び場合によりメチルメルカプタンは、工程a)から得られるストリーム(M)に再循環される、すなわち、精製工程b)に供されるようにストリーム(M)に注入される。例えば、それは、凝縮工程の前、又は分離工程の前、又は蒸留工程の前、好ましくは凝縮工程の前に注入されてもよい。したがって、ストリーム(O12)、ストリーム(O22)、ストリーム(O32)、ストリーム(O42)、ストリーム(P12)、及びストリーム(P31)は、単一ストリームとしてプールされ、ストリーム(M)に再注入されてもよい。
【0077】
ストリームの一部又はすべてが、ストリーム(M)に再注入されてもよい。ストリームの一部が再注入される場合、再循環パイプは再循環されるストリームの割合を制御するためにパージを有する。好ましくは、工程e)及び/又は工程f)で回収される硫化水素及び場合によりメチルメルカプタンのストリームのすべてが、工程a)から得られるストリーム(M)に再循環される。
【0078】
<回収工程h)>
ジメチルジスルフィドは最終的に回収される。
【0079】
【0080】
図1は、本発明に係る方法の工程a)~工程h)の一実施形態を示す。
【0081】
反応工程a)は、少なくとも1種の炭素酸化物、硫化水素、及び水素を用いて反応器Aで行われる。
【0082】
炭素酸化物(複数可)、硫化水素、及び水素のストリームは、パイプ1を経由して反応器Aに入る。パイプ3を経由して反応器Aから排出されるストリームMは、メチルメルカプタン、水、未反応の硫化水素、未変換の炭素酸化物(複数可)、未変換の水素、及び場合により硫黄系副生物を含む。
【0083】
精製工程b)は分離装置などの装置Bで行われる。未反応の炭素酸化物(複数可)、すなわち一酸化炭素及び/又は二酸化炭素、水素、未反応の硫化水素、場合により硫化カルボニル(COS)、並びに前記方法の過程で生成又は導入された任意の他の非凝縮性不活性化合物などの非凝縮性化合物のストリームMuncondは分離されパイプ4を経由して除去され、水性ストリームMaqはパイプ6を経由して除去され、メチルメルカプタン及び場合により硫黄系副生物を含むストリームNはバイプ5を経由して装置Bから排出される。
【0084】
パイプ4は反応器Aに接続されている。パイプ4はパージを含んでいてもよい。
【0085】
パイプ5はパイプ7とパイプ8とに分割される。パイプ8はメチルメルカプタンの回収を可能とし(前記方法の工程d))、パイプ7はストリームNの残りを反応器Dに運ぶ。
【0086】
酸化工程e)は反応器Dで行われる。硫黄がパイプ9を経由して反応器Dに導入される。パイプ10を経由して反応器Dから排出されるストリームOは、ジメチルジスルフィド、硫化水素、未反応のメチルメルカプタン、及び場合により硫黄系副生物を含む。
【0087】
精製工程f)は蒸留塔などの装置Eで行われる。硫化水素及び未反応のメチルメルカプタンのストリームはパイプ11を経由して塔頂部で除去され、塔テール部分はパイプ13を経由して反応器Dに再循環される。パイプ11及びパイプ13はパージを含んでいてもよい。ジメチルジスルフィドを含む塔中間部分はパイプ12を経由して回収される。
【0088】
パイプ11は、硫化水素及び未反応のメチルメルカプタンを含む塔頂部分を、ストリームMを精製装置Bに運ぶパイプ3に再循環させる。
以下に示す例は本発明を例証するものであるが、限定するものではまったくない。
【実施例】
【0089】
硫黄系廃棄物の除去
【0090】
DMDS及びMeSHを製造するための2つのユニットを比較した。一方は工程a)後のストリームを再循環させる工程g)を含まない。他方は本発明に係るユニットであり、この再循環工程g)を含む。50,000t/年のMeSH及び50,000t/年のDMDSが製造される、すなわち、これら2つの製品の各々について151.5t/日(330日/年に基づいて)又は6.3t/時間(24時間/日に基づいて)である。これらの条件下、
図1のストリーム11は2.2t/時間のH
2S及び2.3t/時間のMeSHを含有する。
【表1】
【0091】
前記比較から本発明に係る方法の利点の2つが示される。第一の利点は、大気汚染の原因となる硫黄系生成物の燃焼及び硫黄酸化物の環境中への放出が回避されることである。第二は、MeSH製造における収率が改善されることである。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメルカプタン及びジメチルジスルフィドを共製造するための方法であって、以下の連続する工程:
a)硫化水素(H
2S)及び水素の存在下で少なくとも1種の炭素酸化物を反応させて、メチルメルカプタン、水、及び場合により未反応の硫化水素を含むストリーム(M)を形成すること、
b)前記ストリーム(M)を精製して、メチルメルカプタンが高濃度とされたストリーム(N)及び非凝縮性化合物を含有するストリーム(M
uncond)を得ること、
c)任意選択で、工程b)から得られた前記非凝縮性化合物のストリーム(M
uncond)を工程a)に再循環させること、
d)工程b)で精製された前記メチルメルカプタンを含むストリーム(N)の第一の部分を回収すること、
e)前記メチルメルカプタンのストリーム(N)の第二の部分を硫黄で酸化して、ジメチルジスルフィド、硫化水素、及び場合により未反応のメチルメルカプタンを含むストリーム(O)を形成すること、
f)前記ストリーム(O)を精製して、一方では前記高濃度とされたジメチルジスルフィドを、他方では前記硫化水素及び場合により工程e)で反応しなかった前記メチルメルカプタンを、分離すること、
g)工程f)で単離された前記硫化水素及び場合により前記メチルメルカプタンを、工程a)から得られた前記ストリーム(M)に再循環させること、
h)工程f)で単離された前記ジメチルジスルフィドを回収すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記再循環工程g)が、精製される前記ストリーム(M)か
ら前記硫化水素を除去する前記精製工程b)の前に再循環されるストリームを向かわせることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硫化水素及び場合により工程e)で反応しなかった前記メチルメルカプタンを含む前記ストリームのすべてが、工程a)で得られた前記ストリーム(M)に再循環されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、前記炭素酸化物が、一酸化炭素、二酸化炭素、又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、前記硫化水素が、硫黄及び水素を添加することによってin situで生成されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
炭素酸化物/S/H
2S/H
2モル比が、1/0/0.05/0.05~1/20/40/10
0であること、又は硫黄の非存在下では、CO/H
2/H
2S比が、1/0.05/0.05~1/40/10
0であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
工程a)の反応温度が、200℃~500
℃であり、圧力が、1~100バー
ルの絶対圧力であり、工程a)の前記反応
が担持体上のMo-S-K及び/又はMo-O-Kタイプのモリブデン及びカリウムをベースとする触媒から選択される触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化工程e)のメチルメルカプタン/硫黄モル比が、0.1~10
0であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化工程e)の反応温度が、20℃~200℃であり、圧力が、2~30バールの絶対圧力であり、前記酸化工程e)の反応が、均一触媒、二相触媒、又は不均一触媒から選択される塩基性触媒の存在下で行わ
れることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記精製工程b)が、1又は複数の凝縮、及び後続の1又は複数のデカンテーション、及び任意選択で1又は複数の蒸留を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記精製工程f)が、1又は複数の蒸留工程、及び任意選択で1又は複数の塩基性触媒工程を含むことを特徴とする、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】