(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】移植片対宿主病を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240412BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240412BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240412BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240412BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P37/06
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570099
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 IB2022054501
(87)【国際公開番号】W WO2022238978
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523427180
【氏名又は名称】アディエンネ・ソチエタ・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】ADIENNE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ディ ナーロ,アントニオ フランチェスコ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
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4C085BB37
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、移植片対宿主病の処置のために抗CD26抗体およびその抗原結合フラグメントを使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における移植片対宿主病(GvHD)を処置する方法であって、対象に治療有効量の抗CD26抗体を投与することを含み、ここで、抗体を4.0mg/m
2/日~25.0mg/m
2/日の用量で5日間1日1回、続いて隔日で計16回投与する、方法。
【請求項2】
抗CD26抗体が完全長抗体である、請求項1の方法。
【請求項3】
抗体がモノクローナル、ヒト、ヒト化、キメラ、多価抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1または2の方法。
【請求項4】
抗体がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgDおよびIgEからなる群から選択されるアイソタイプを有する、請求項1~3の何れかの方法。
【請求項5】
抗体がIgG2bアイソタイプを有する、請求項4の方法。
【請求項6】
抗CD26抗体がベゲロマブ、1F7またはCM03である、請求項1~5の何れかの方法。
【請求項7】
抗CD26抗体がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で産生される、請求項6の方法。
【請求項8】
抗CD26抗体が寄託番号PD 12002として、ジェノバ(イタリア)のCBA-ICLCに寄託されているハイブリドーマ細胞株から産生される、請求項1~7の何れかの方法。
【請求項9】
抗CD26抗体が
(a)配列番号7に示す配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号8に示す配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号9に示す配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号10に示す配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号11に示す配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号12に示す配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~8の何れかの方法。
【請求項10】
抗CD26抗体がそれぞれ配列番号3および5に示す配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含む、請求項1~9の何れかの方法。
【請求項11】
抗CD26抗体がそれぞれ配列番号1および2に示す配列を含む重鎖および軽鎖定常領域を含む、請求項1~9の何れかの方法。
【請求項12】
抗CD26抗体が4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25mg/m
2の用量で投与される、請求項1~11の何れかの方法。
【請求項13】
抗CD26抗体が16mg/m
2の用量で投与される、請求項12の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植片対宿主病(GvHD)の処置のために抗CD26抗体およびその抗原結合フラグメントを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
急性GvHDは、同種造血幹細胞移植(HSCT)の主要な合併症である(J Bolanos-Meade et al., 2004)。急性GvHDは相当な死亡率、罹病率を生じ、患者管理を複雑にし、臓器毒性、頻繁な感染、栄養障害および移植からの回復の相当な遅れをもたらす。急性GvHDは、通常同種HSCTの最初の3~4カ月以内に起こり、皮膚、肝臓および腸管が関与し得る。ドナー移植片に含まれるTリンパ球がインビボでレシピエント組織により発現される異種主要(HLA)または副次的(非HLA)組織適合性抗原に応答して、急性GvHDの徴候および症状に至る事象のカスケードを開始すると考えられる。
【0003】
急性GvHDの症候群は、次の徴候および症状を含む:皮膚合併症(斑状丘疹状発疹)が、通常最初の徴候である。病変は掻痒性または有痛性であり得て、色は赤色から紫色であり、しばしば手掌および足底が関与する。腸の急性GvHDは胃、小腸および結腸が関与し、永続性悪心および嘔吐または大量の下痢、腸出血、痙攣、腹痛および麻痺性イレウスを起こす。肝臓GvHDは、高ビリルビン血症および、場合により、肝細胞酵素上昇を伴う胆汁うっ滞性肝臓傷害を起こす。
【0004】
シクロスポリン(CSA)またはタクロリムス(FK)に加えて短期メトトレキサート(MTX)の使用は、単剤または他の組み合わせ治療と比較して急性GvHDのリスクを低減するが、これらのレジメンでも、患者の35~50%はグレードII~IV急性GvHDを発症する(J Bolanos-Meade et al., 2004; HJ Deeg, 2007; A. Bacigalupo, 2007)。高齢レシピエントまたは無関係または部分的HLA適合ドナーのものは、より頻繁にまたはおそらくより治療抵抗性の急性GvHDを発症し得る。
【0005】
初期処置に対する応答は、臨床アウトカムの重要な予測因子である。グレードII~IV急性GvHDの患者の死亡率は、初期処置に対する完全応答がなかった患者で最大である(PJ Martin, et al., 1990; D Weisdorf, et al., 1990; ML MacMillan et al., 2002; J Bolanos-Meade et al., 2005)。治療5日目にステロイドテーパリングを開始できることにより証明される、極めて早期の応答も好ましい予後と関連する(MT Van Lint, et al., 2006)。早期応答者は、少なくとも一部、ステロイドテーパリングが早く開始され、疾患の一般的原因である日和見感染を合併するリスクが減るため、良くなる可能性がある。一般に、皮膚疾患は迅速に応答するが、下部消化器および肝臓合併症は、治療にあまり応答しない(ML MacMillan et al., 2002)。初期治療が失敗する他のリスクは、GvHDの早期発症、LA不均衡増加および高齢を含む(PJ Martin, et al., 1990; ML MacMillan et al., 2002)。
【0006】
コルチコステロイド単独と関連する最適以下の応答および長期生存は、急性GvHD初期治療におけるさらなる免疫抑制剤の研究を促している。残念ながら、この戦略は、今日までステロイド単独と比較して優れたアウトカムをもたらしていない。ある場合、さらなる薬剤による初期GvHDの良好な管理の利益は、感染または他の副作用の高いリスクにより相殺される。この状況において最も広く試験されている薬剤は、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)である。急性GvHDの初期治療としてのプレドニゾン+ATGの単一アームフェーズII試験は、67%~80%の応答率であることが報告された(MJ Dugan, et al., 1997; F Graziani, et al, 2001)。しかしながら、プレドニゾロン±ウマATGの無作為化治験において、応答率または生存に有意差はなかったが、感染性罹病率、特にCMV疾患および肺炎は、組合せ免疫抑制群で有意に高かった(L Cragg, et al., 2000)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GvHD研究の分野で継続した進歩があるにも関わらず、同種造血幹細胞移植を受けた患者の35~50%がグレードII~IV急性GvHDを発症するため、急性GvHDの処置において満たされていない医学的要求がある(J Bolanos-Meade et al., 2004; HJ Deeg, 2007; A. Bacigalupo, 2007)。今日まで、急性GvHDのための一次処置選択肢は、標準的免疫抑制プロトコールに加えて、コルチコステロイドの全身投与のままである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
本発明は、対象における移植片対宿主病(GvHD)を処置する方法であって、対象に治療有効量の抗CD26抗体を投与することを含み、ここで、抗体を4.0mg/m2/日~25.0mg/m2/日の用量で5日間1日1回投与し、続いて、隔日で計16回投与する、方法に関する。
【0009】
ある態様において、抗CD26抗体は、完全長抗体である。他の態様において、抗体は、モノクローナル、ヒト、ヒト化、キメラ、多価抗体またはその抗原結合フラグメントである。他の態様において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgDおよびIgEからなる群から選択されるアイソタイプを有する。他の態様において、抗体はIgG2bアイソタイプを有する。
【0010】
ある態様において、抗CD26抗体はベゲロマブ、1F7またはCM03である。他の態様において、抗CD26抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で産生される。他の態様において、抗CD26抗体は、寄託番号PD 12002として、ジェノバ(イタリア)のCBA-ICLCに寄託されているハイブリドーマ細胞株から産生される。
【0011】
ある態様において、抗CD26抗体は、
(a)配列番号7に示す配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号8に示す配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号9に示す配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号10に示す配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号11に示す配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号12に示す配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む。他の態様において、抗CD26抗体は、それぞれ配列番号3および5に示す配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含む。他の態様において、抗CD26抗体は、それぞれ配列番号1および2に示す配列を含む重鎖および軽鎖定常領域を含む。
【0012】
ある態様において、抗CD26抗体は、4mg/m2、5mg/m2、6mg/m2、7mg/m2、8mg/m2、9mg/m2、10mg/m2、11mg/m2、12mg/m2、13mg/m2、14mg/m2、15mg/m2、16mg/m2、17mg/m2、18mg/m2、19mg/m2、20mg/m2、21mg/m2、22mg/m2、23mg/m2、24mg/m2または25mg/m2の用量で投与される。他の態様において、抗CD26抗体は、16mg/m2の用量で投与される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な記載
本発明がより容易に理解され得るように、ある用語をまず定義する。本出願で使用する限り、かつ他にここで異なって明示的に定義されない限り、次の用語の各々は、以下に示す意味を有する。さらなる定義は、本明細書を通して示される。
【0014】
定義
「抗体」(Ab)は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合で相互接続された少なくとも二個の重(H)鎖および二個の軽(L)鎖を含む糖タンパク質免疫グロブリンを含むが、これらに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(ここではVHと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3個の定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではVLと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1個の定常ドメイン、CLを含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端方向で次の順番で配置された3個のCDRおよび4個のFRを含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への結合に介在し得る。重鎖はC末端リシンを有しても、有していなくてもよい。ここで他に断らない限り、可変領域のアミノ酸はKabatナンバリングシステムを使用してナンバリングし、定常領域のものはEUシステムを使用してナンバリングする。ある実施態様において、抗体はインタクト抗体である。
【0015】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むが、これらに限定されない一般に知られるアイソタイプの何れに由来してもよい。IgGサブクラスも当分野で周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むが、これらに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。用語「抗体」は、例として、モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラおよびヒト化抗体;ヒトまたは非ヒト抗体;完全合成抗体;および一本鎖抗体を含む。非ヒト抗体は、ヒトにおける免疫原性を低減するため、組み換え方法によりヒト化され得る。明示されない限りかつ文脈から他のことが示されない限り、用語「抗体」は、単特異的、二特異的、多価または多特異的抗体および一本鎖抗体を含む。
【0016】
ここで使用する「IgG抗体」は、天然に存在するIgG抗体の構造を有する、すなわち、天然に存在する同じサブクラスのIgG抗体と同じ数の重鎖および軽鎖およびジスルフィド結合を有する。例えば、抗CD26 IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体は、2個の重鎖(HC)および2個の軽鎖(LC)からなり、ここで、2個の重鎖および軽鎖は、それぞれ、天然に存在するIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4抗体と同じ数および位置のジスルフィド架橋により連結される(抗体がジスルフィド結合を修飾するよう変異されていない限り)。
【0017】
「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいう(例えば、CD26に特異的に結合する単離抗体は、CD26以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。CD26に特異的に結合する単離抗体は、しかしながら、異なる種からのCD26分子などの他の抗原との交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含み得ない。
【0018】
抗体は、改変されている抗体であり得る(例えば、変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーションにより)。例えば、抗体は、抗体の性質(例えば、機能的性質)を変える、1以上のバリアントアミノ酸(天然に存在する抗体に比して)を含み得る。例えば、患者における半減期、エフェクター機能および/または抗体に対する免疫応答に影響する、例えば、多数のこのような改変が当分野で知られる。用語抗体はまた少なくとも1個の抗体由来抗原結合部位を含む、人工ポリペプチド構築物も含む。
【0019】
用語「モノクローナル抗体」(「mAb」)は、単一分子組成、すなわち、一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに単一結合特性および親和性を示す抗体分子の天然に存在しない調製物をいう。mAbは単離抗体の例である。MAbは、ハイブリドーマ、組み換え、トランスジェニックまたは当業者に知られる他の技術により産生され得る
【0020】
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワークおよびCDR領域両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、抗体をいう。さらに、抗体が定常領域を含むとき、定常領域もヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロで無作為または部位特異的変異誘発によりまたはインビボで体細胞変異により導入された変異)を含み得る。しかしながら、ここで使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの他の哺乳動物種の生殖細胞系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている、抗体を含むことは意図されない。用語「ヒト」抗体および「完全ヒト」抗体は同義的に使用される。
【0021】
「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体のCDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分または全てが、ヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置き換えられている、抗体をいう。ヒト化形態の抗体のある実施態様において、CDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分または全てはヒト免疫グロブリンからのアミノ酸で置き換えられており、一方、1以上のCDR領域内のアミノ酸の一部、大部分または全ては変化しない。アミノ酸の小さな富化、欠失、挿入、置換または修飾は、抗体が特定の抗原に結合する能力をなくさない限り、許容される。「ヒト化」抗体は、元の抗体に類似する抗原特異性を保持する。
【0022】
「キメラ抗体」は、可変領域がマウス抗体由来であり、定常領域がヒト抗体由来である抗体などの、可変領域がある種に由来し、定常領域が他の種に由来する、抗体をいう。
【0023】
「抗抗原」抗体は、該抗原に特異的に結合する抗体をいう。例えば、抗CD26抗体はCD26に特異的に結合する。
【0024】
抗体の「抗原結合部分」(「抗原結合フラグメント」とも称する)は、抗体全体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントまたは部分により実施され得ることが示されている。抗体、例えば、ここに記載する抗CD26抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合フラグメント」なる用語に包含される結合フラグメントの例は
(1)Fabフラグメント(パパイン切断由来フラグメント)またはVL、VH、LCおよびCH1ドメインからなる類似単価フラグメント;
(2)F(ab’)2フラグメント(ペプシン切断由来フラグメント)またはヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFabフラグメントを含む類似二価フラグメント;
(3)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;
(4)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、
(5)VHドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)フラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-46);
(6)ヒンジにより連結された2個のVHドメインからなる二単一ドメイン抗体(デュアル-親和性再ターゲティング抗体(DART));
(7)デュアル可変ドメイン免疫グロブリン;
(8)単離相補性決定領域(CDR);および
(9)所望により合成リンカーで接続されていてよい2以上の単離CDRの組み合わせ。さらに、Fvフラグメントの2個のドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によりコードされるが、組み換え方法を使用して、単価分子を形成するようVLおよびVH領域が対合された単一タンパク質鎖として製造されることを可能とする合成リンカーにより、接続され得る(一本鎖Fv(scFv)として既知;Bird et al. (1988) Science 242:423-426; and Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)。そのような一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合フラグメント」なる用語に包含されることも意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られる慣用の技術を使用して得て、フラグメントをインタクト抗体と同じ方法でその有用性についてスクリーニングする。抗原結合部分は、組み換えDNA技術またはインタクト免疫グロブリンの酵素もしくは化学切断により産生され得る。ある実施態様において、抗体は抗原結合フラグメントである。
【0025】
用語「CD26」は、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)をいう。用語CD26およびDPP4は、ここでは相互交換可能に使用する。用語「CD26」は、バリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログを含む。例えば、ヒトCD26タンパク質に特異的な抗体は、ある場合、ヒト以外の種からのCD26タンパク質と交差反応し得る。他の実施態様において、ヒトCD26タンパク質に特異的な抗体は、ヒトCD26タンパク質に完全に特異的であってよく、種または他のタイプの交差反応性を示さなくてよく、または全ての他の種ではなく、ある他の種と交差反応してよい(例えば、サルCD26と交差反応するが、マウスCD26とはしない)。用語「ヒトCD26」は、GenBank Accession No. AH005372.3を有するヒトCD26の完全アミノ酸配列などのヒト配列CD26をいう。ヒトCD26配列は、例えば、保存的変異または非保存的領域における変異を有することにより、GenBank Accession No. AH005372.3のヒトCD26と異なってよく、CD26はGenBank Accession No. AH005372.3のヒトCD26と実質的に同じ生物学的機能を有する。
【0026】
特定のヒトCD26配列は、一般にGenBank Accession No. AH005372.3のヒトCD26とアミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、他の種(例えば、マウス)のCD26アミノ酸配列と比較したとき、アミノ酸配列がヒトとして同定されるアミノ酸残基を含む。ある場合、ヒトCD26は、GenBank Accession No. AH005372.3のCD26とアミノ酸配列が少なくとも95%または少なくとも96%、97%、98%または99%同一であり得る。ある実施態様において、ヒトCD26配列は、GenBank Accession No. AH005372.3のCD26配列と10を超えるアミノ酸差異を示さない。ある実施態様において、ヒトCD26は、GenBank Accession No. AH005372.3のCD26配列と、5を超えるまたは4、3、2または1を超えるアミノ酸差異を示さない可能性がある。
【0027】
ここに示すポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大パーセント配列同一性を達成するためにかつあらゆる保存的置換を配列同一性部分として考慮せずに、配列を整列し、必要であれば、ギャップ導入後、ここに示す特定のポリペプチド配列(例えば配列表における配列識別子により特徴づけられる特定のポリペプチド配列)のアミノ酸残基と同一である、比較する興味ある候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性決定のために実施される配列アラインメントは、例えば、引用により本明細書に包含するEP1241179B1において、特に、ここに使用する定義および可能な保存的置換に関連する表1を含む、9ページ35行~10頁40行を含み、記載されているとおり、当分野で既知の方法により実施され得る。例えば、当業者は、公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用できる。配列同一性を決定するためのコンピュータープログラム方法は、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを含むが、これらに限定されない。ある実施態様によると、使用するソフトウェアアラインメントプログラムはBLASTであり得る。当業者は、比較対象の配列の完全長にわたり最大アラインメントを達成するのに必要な何らかのアルゴリズムを含む、測定アラインメントのための適切なパラメータを決定できる。ある実施態様によると、%同一性値は、WU-BLAST-2コンピュータープログラムを使用して作成できる(引用により本明細書に包含するAltschul et al., 1996, Methods in Enzymology 266:460-480)。ある実施態様によると、WU-BLAST-2コンピュータープログラムを実施するとき、次のパラメータが使用される:WU-BLAST-2検索パラメータの大部分は、デフォルト値に設定される。調整可能パラメータを次の値に設定した:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11およびスコアリングマトリクス=BLOSUM62。BLAST-2で使用される動的値であるHSP SおよびHSP S2パラメータは、目的の配列の組成および配列が検索されるデータベースの組成により、プログラム自体によって確立される。しかしながら、感受性を高めるために、値を調節できる。%配列同一性値は、(a)比較されるここに示す特定のアミノ酸配列(例えば配列表における配列識別子により特徴づけられる特定のポリペプチド配列)と比較する興味ある候補アミノ酸配列の間のマッチする同一アミノ酸残基数、例えばWU-BLAST-2で決定されたマッチする同一アミノ酸残基数を、(b)比較されるここに示すポリペプチド配列(例えば配列表において配列番号により特徴づけられる特定のポリペプチド配列)のアミノ酸残基の総数で除すことにより、決定され得る。
【0028】
ここに示す核酸配列に関する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、最大パーセント配列同一性を達成するために、配列を整列し、必要であれば、ギャップ導入後、ここに示す特定の核酸配列(例えば配列表における配列識別子により特徴づけられる特定のポリペプチド配列)と同一である、比較する興味ある候補配列におけるヌクレオチドのパーセンテージとして定義される。パーセント核酸配列同一性決定の目的でのアラインメントは、例えば、EP1241179B1に記載の、当業者に知られる方法により実施され得る。例えば、当業者は、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの工程に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用するなど、公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用できる。当業者は、比較対象の配列の完全長にわたり最大アラインメントを達成するのに必要な何らかのアルゴリズムを含む、測定アラインメントのための適切なパラメータを決定できる。好ましい実施態様によると、%同一性値はWU-BLAST-2コンピュータープログラムを使用して、作成できる。好ましい実施態様によると、次のコンピュータープログラムおよびパラメータが使用される:ここで使用する同一性値は、オーバーラップスパンおよびオーバーラップフラクションがそれぞれ1および0.125である、デフォルト値に設定したWU-BLAST-2のBLASTNモジュールにより作成される。%核酸配列同一性値は、(a)比較されるここに示す特定の核酸配列(例えば配列表における配列識別子により特徴づけられる特定の核酸配列)と比較する興味ある比較核酸分子の間のマッチする同一ヌクレオチド数、例えばWU-BLAST-2により決定されたマッチする同一ヌクレオチド数を、(b)比較されるここに示す特定の核酸配列(例えば配列表における配列識別子により特徴づけられる特定の核酸配列)のヌクレオチド残基の総数で除すことにより得られ得る。
【0029】
ここで使用する「患者」は、GvHDに罹患しているあらゆる患者を含む。用語「対象」および「患者」は、ここでは相互交換可能に使用する。
【0030】
「投与する」は、当業者に知られる種々の方法および送達系の何れかを使用する、治療剤を含む組成物の対象への物理的導入をいう。ここに開示する製剤の投与経路は、例えば、注射または点滴による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。ここで使用する用語「非経腸投与」は、通常注射により、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内注射および点滴ならびにインビボエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない、経腸および局所投与以外の投与方法を意味する。ある実施態様において、製剤は、非非経腸経路を介して、ある実施態様において、経口で投与される。他の非非経腸経路は、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣、直腸、舌下または局所を含む。投与は、例えば、1回、複数回および/または1以上の長期にわたり、実施もされ得る。
【0031】
対象の「処置」または「治療」は、症状、合併症もしくは状態の進行、進展、重症度または再発または疾患と関連する生化学的指標の回復、軽減、改善、阻止、減速を目的として、対象に実施するあらゆるタイプの介入または過程または活性剤の投与をいう。
【0032】
ここで使用する「有効な処置」は、有益な効果を生ずる、例えば、疾患または障害の症状の少なくとも1個を改善する、処置をいう。有益な効果は、ベースラインからの改善、すなわち、本方法による治療開始前の測定値または観察からの改善の形態をとり得る。
【0033】
用語「有効量」は、所望の生物学的、治療的および/または予防的結果をもたらす、薬剤の量をいう。その結果は、疾患の徴候、症状または原因の1以上の低減、改善、緩和、低減、遅延および/または軽減または生物学的系の何らかの他の所望の改変であり得る。
【0034】
ある例において、「有効量」は、GvHDの炎症性応答の顕著な減少に影響することが臨床的に証明されている、抗CD26抗体の量である。ここで使用する用語「固定用量」、「一定用量」および「一定固定用量」は、相互交換可能に使用され、患者の体重または体表面積(BSA)と無関係に患者に投与される用量をいう。固定または一定用量は、従って、mg/m2用量としてではなく、むしろ、薬剤(例えば、抗CD26抗体)の絶対量として示される。例えば、60kgのヒトおよび100kgのヒトは、同じ用量の組成物(例えば、100mgの抗CD26抗体)を投与される。
【0035】
ここでいう用語「体表面積に基づく用量」は、患者に投与する用量が、患者の表面積に基づき計算されることを意味する。例えば、2.0体表面積(BSA)の患者の4mg/m2の抗CD26抗体を必要とするとき、適切な量の抗CD26抗体(すなわち、8mg)を導くことができる。
【0036】
ここで使用する「投与間隔」は、対象に投与されるここに開示する抗CD26抗体を投与する間に経過する時間を意味する。故に、投与間隔は範囲として示され得る。
【0037】
ここで使用する用語「投与頻度」は、ある時間においてここに開示する抗CD26抗体を投与する頻度をいう。投与頻度は、ある時間あたりの投与回数として、例えば、週1回または2週に1回として示され得る。
【0038】
用語「ほぼ週1回」、「ほぼ毎週1回」、「ほぼ2週毎に1回」またはここで使用する何らかの他の類似する投与間隔の用語は、おおよその数値を意味し、「ほぼ週1回」または「ほぼ毎週1回」は、7日±2日毎、すなわち、5日毎から9日毎を含み得る。故に、「週1回」の投与頻度は、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎または9日毎であり得る。「ほぼ2週毎に1回」は、14日±3日毎、すなわち、11日毎~17日毎を含み得る。同様の近似が、例えば、約3週毎、約4週毎、約5種毎、約6週毎および約12週毎に適用される。ある実施態様において、約6週に1回または約12週に1回の投与間隔は、最初の用量を、1週目の任意の曜日に投与し得て、次いで、次の投与をそれぞれ6週目または12週目の任意の曜日に投与し得ることを意味する。他の実施態様において、約6週に1回または約12週に1回の投与間隔は、最初の用量を、1週目の特定の曜日(例えば、月曜日)に投与し、次いで、次の投与をそれぞれ6週目または12週目の同じ曜日(例えば、月曜日)に投与することを意味する。
【0039】
CD26発現に関連する用語「CD26陽性」または「CD26発現陽性」は、典型的に筋肉細胞を含む、試験組織サンプルにおける細胞の割合をいい、その、組織サンプルはCD26を発現するとして評価される。
【0040】
「免疫応答」は、侵襲病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、癌もしくは他の異常細胞または自己免疫または病的炎症の場合、正常ヒト細胞または組織の選択的ターゲティング、結合、損傷、破壊および/または脊椎動物身体からの排除をもたらす、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞および好中球)およびこれら細胞または肝臓により産生される可溶性高分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用をいう。
【0041】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢の一方、両方または任意の組み合わせを意味すると解釈すべきである。ここで使用する単数表現は、任意の引用されるまたは挙げられる成分の「1以上」をいうと解釈すべきである。
【0042】
用語「および/または」は、ここで使用されるとき、2個の特定する性質または成分各々の、他方を伴うまたは伴わない具体的開示として解釈される。故に、ここで「Aおよび/またはB」などの表現において使用する用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの表現において使用する用語「および/または」は、次の態様の各々を包含することを意図する:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0043】
態様が、ここで用語「含む」を用いて記載されるときは常に、用語「からなる」および/または「から本質的になる」で記載される他の点で類似の態様も提供されると理解される。
【0044】
用語「約」または「から本質的になる」は、一部、値または組成がどのように測定または決定されたかに依存する、すなわち、測定系の限界である、当業者により決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内である、値または組成をいう。例えば、「約」または「から本質的になる」は、当分野における実務あたりの1または1を超える標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約」または「から本質的になる」は、10%または20%までの範囲(すなわち、±10%または±20%)を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mg(10%について)または2.4mg~3.6mg(20%について)の任意の数字を含み得る。さらに、特に生物学的系または過程に関して、本用語は値の一桁までまたは5倍までを意味し得る。特定の値または組成が明細書および特許請求の範囲で提供されるとき、特に断らない限り、「約」または「から本質的になる」の意味は、その特定の値または組成について許容される誤差範囲の範囲内であると仮定される。
【0045】
ここで記載するあらゆる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、特に断らない限り、、その記載する範囲内のあらゆる整数の値および適切なとき、その分数(例えば整数の1/10および1/100)を含むと解釈される。
【0046】
他に定義されない限り、ここで使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が関連する分野の当業者により共通して理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 5th ed., 2013, Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, 2006, Oxford University Pressは、当業者に、本明細書で使用する用語の多くの一般的辞典を提供する。
【0047】
単位、接頭辞および記号は、国際単位系(SI)が認める形態で記される。数値範囲は、同範囲を定義する数値を含む。ここに提供する見出しは、明細書を全体として参照することにより解釈され得る本発明の種々の態様を限定しない。従って、すぐ下に定義する用語は、本明細書を全体として引用して、より完全に定義される。
【0048】
本発明の種々の態様は、次のサブセクションでさらに詳述される。
【0049】
CD26抗体
ある態様において、本発明は、GvHDの処置において抗CD26抗体を使用する方法に関する。本発明における使用に適する抗ヒトCD26抗体(またはそれ由来のVH/VLドメイン)は、当分野で周知の方法により産生され得る。あるいは、当分野で認識される抗CD26抗体が使用され得る。
【0050】
ある実施態様において、抗CD26抗体は、ブダペスト条約の下、2012年9月11日にジェノバのCentro di Biotecnologie Avanzate (CBA)--Interlab Cell Line Collection (ICLC) (L. go R. Benzi, 10, Genoa, Italy)に寄託PD 12002として寄託されたハイブリドーマ細胞株から産生される。他の実施態様において、本発明の方法で使用される抗CD26抗体は、PD 12002としてジェノバ(イタリア)のCBA-ICLCに寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生される抗体と同じエピトープに結合する。
【0051】
ある実施態様において、抗CD26抗体は、教示を引用により本明細書に包含させる米国特許9,376,498および10,208,126に記載の、それぞれ配列番号1および2に示す配列を含む重鎖および軽鎖を含むベゲロマブまたはその抗原結合フラグメントおよびバリアントである。
【0052】
他の実施態様において、抗体は、ベゲロマブの重鎖および軽鎖CDRまたは可変領域を有する。従って、ある実施態様において、抗体は、配列番号3に示す配列を有するベゲロマブのVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびに配列番号5に示す配列を有するベゲロマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。他の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号7、8および9に示す配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3ドメインならびにそれぞれ配列番号10、11および12に示す配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。他の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号3および/または配列番号5に示すアミノ酸配列を含むVHおよび/またはVL領域を含む。他の実施態様において、抗体は、それぞれ配列番号4および/または配列番号6に示す核酸配列によりコードされる重鎖可変(VH)および/または軽鎖可変(VL)領域を含む。他の実施態様において、抗体は、上記抗体とCD26の結合について競合するおよび/または同じエピトープに結合する。他の実施態様において、抗体は、上記抗体と少なくとも約90%可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、配列番号3または配列番号5と少なくとも約90%、95%または99%可変領域同一性)を有する。
【0053】
ある実施態様において、抗CD26抗体またはその抗原結合部分は、ヒトCD26への結合についてベゲロマブと交差競合する。他の実施態様において、抗CD26抗体またはその抗原結合部分は、ベゲロマブと同じエピトープに結合する。
【0054】
ある実施態様において、抗CD26抗体は、宿主細胞における発現のためにコドン最適化される。ある実施態様において、抗CD26抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における発現のためにコドン最適化されたベゲロマブである。他の実施態様において、コドン最適化ベゲロマブは、それぞれ配列番号15および16の重鎖および軽鎖を含む。
【0055】
ある実施態様において、抗CD26抗体は、米国特許7,658,923(例えば、1F7);米国特許7,462,698(例えば、CM03)、米国特許8,771,688および欧州特許3348276A1に記載される抗体またはその抗原結合フラグメントである。上に言及した当分野で認識される抗体の何れかとCD26への結合について競合する抗体またはその抗原結合フラグメントも使用され得る。
【0056】
ある実施態様において、抗CD26抗体をCD26発現の決定のために使用する。ある実施態様において、抗CD26抗体を、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)組織検体におけるCD26と結合する能力について選択する。他の実施態様において、抗CD26抗体は凍結組織におけるCD26に結合できる。さらなる実施態様において、抗CD26抗体はCD26の膜結合、細胞質および/または可溶性形態を区別できる。
【0057】
免疫抑制剤
ある実施態様において、本発明の方法は、GvHDの処置のために抗CD26抗体と組み合わせた1以上の免疫抑制剤の使用に関する。ある実施態様において、免疫抑制剤は、GvHDの標準処置と考えられる。「免疫抑制剤」は、免疫系の活性を阻害または阻止する化合物である。ある実施態様において、免疫抑制剤はコルチコステロイドである。コルチコステロイドは当分野で周知であり、特にミネラロコルチコイドおよびグルココルチコイドを含み得る。グルココルチコイドは抗炎症剤であり得る。ここで使用する用語コルチコステロイドは、特に脊椎動物の副腎皮質で産生され得るステロイドを含み得て、同時に、例えばコルチゾンおよびヒドロコルチゾンなどの天然ステロイドホルモンの活性を模倣する化合物を含む、合成コルチコステロイドまたは合成または天然コルチコステロイドアナログを包含し得る。コルチコステロイドアナログは、特に副腎皮質により合成される天然に存在するステロイドの何れかに構造および/または機能が似た合成または天然化合物を包含し得る。
【0058】
1以上のコルチコステロイドは、二プロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、アムシナフェル、アムシナフィド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、二プロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾン、クロロプレドニゾン、クロコルテロン、コルチゾール、コルチゾン、コルトドキソン、二酢酸ジフルオロソン、デシノロン、デソニド、ジフルプレドナート、ジヒドロキシコルチゾン、デスオキシメタゾン、デキサメサゾン、デフラザコート、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジクロリソン、ベタメタゾンのエステル、フルアザコート、フルセトニド、フルクロロニド、フルドロチゾン、フルオロコルチゾン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルコルトロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、フルロアンドレノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、フルオラメトロン、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ハイドロコルタメート、ロテプレドノール、メドリソン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、6-メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレドニドン、プレドニカルベート、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサカトニド、チキソコルトールプレドニゾロンおよびトリアムシノロン、それらの薬学的に許容される塩、それらの誘導体およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。他の実施態様において、免疫抑制剤は、メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、ニトロソウレアおよび白金化合物などのアルキル化剤ならびにリツキシマブ、トシリズマブ、アレムツズマブおよびシファリムマブなどのモノクローナル抗体を含む。ある実施態様において、免疫抑制剤は、上記の何れかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに上記の2以上の組み合わせを含む。
【0059】
医薬組成物
ヒト患者への投与に適する医薬組成物は、典型的に、例えば、液体担体で非経腸投与用にまたは静脈内投与用の液体溶液または懸濁液への再構成に適するように製剤化される。
【0060】
一般に、このような組成物は、典型的に薬学的に許容される担体を含む。ここで使用する用語「薬学的に許容される」は、政府規制当局により承認されている、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識される薬局方に動物、特にヒトにおける使用のために記載されていることを意味する。用語「担体」は、本化合物が共に投与される希釈剤、アジュバント、添加物または媒体をいう。そのような医薬担体は、水およびピーナツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油、グリセロールポリエチレングリコールリシンオレアートなどを含む、石油、動物、植物または合成期限のものを含む、油などの無菌液体であり得る。水または食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液を、特に、注射用溶液(例えば、抗CD26抗体を含む)のための担体として用い得る。非経腸投与用液体組成物は、注射または連続点滴による投与のために製剤化され得る。注射または点滴による投与経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内、髄腔内および皮下を含む。ある実施態様において、抗CD26抗体は静脈内投与される。
【0061】
本発明の方法
ある実施態様において、本発明は、標準的ステロイド療法と組み合わせた急性GvHDの初期処置としての、抗CD26抗体(例えば、ベゲロマブ)の薬物動態、薬力学、安全性および臨床活性を調査する方法に関する。ある実施態様において、方法は、標準的ステロイド療法と組み合わせた急性移植片対宿主病の初期処置としての抗CD26抗体(例えば、ベゲロマブ)の薬物動態、薬力学、安全性および臨床活性の調査のために設計された用量漸増試験であるある実施態様において、治験の目的は(1)CD26/CD3リンパ球活性の調節の観点での静脈内点滴ベゲロマブの最適生物学的用量(OBD)の確立;(2)ベゲロマブの漸増複数用量後のベゲロマブの薬物動態および薬力学の調査;(3)有効性エンドポイントの調査;および(4)急性移植片対宿主病を有する患者におけるベゲロマブの複数用量の安全性および忍容性の調査である。
【実施例】
【0062】
全体的試験設計および計画明細
試験設計
これは、標準的ステロイド療法と組み合わせた急性移植片対宿主病の初期処置としてのベゲロマブの薬物動態、薬力学、安全性および臨床活性を調査するための、連続コホートでのフェーズII、多施設、オープンラベル、用量漸増試験である。
【0063】
試験は2相に分けられる。初期ステージで、コホート当たり最大6患者が、ベゲロマブの増加する複数用量を受ける連続コホートに登録される;各対象は、一コホートのみ参加する。試験は最大4用量レベルを含むよう計画される;必要に応じて、2個のさらなる用量レベルを追加し得る。第二ステージで、最適生物学的用量(OBD)に到達したら、最大24名のさらなる対象を登録し、用量漸増相と同じ処置スケジュールに従い、OBDで処置する。
【0064】
開始用量レベルは4.0mg/m2であり、一方その後のコホートのための用量増分は、もたらされる安全性、忍容性およびCD26+結合データに基づき決定される。次に高いレベルへの用量の漸増の決定は、先の群における完全処置機関を完了した少なくとも4名の対象からの安全性忍容性および薬力学的データのレビューを必要とする。用量漸増は、OBDについてあらかじめ決定した基準であるセクション6.2に概説する安全性および忍容性の一般に許容される基準に達するかまたはNOAEL暴露に達するかのいずれか早いほうで停止する。試験する最高用量レベルは25.0mg/m2/日である。
【0065】
この試験について、OBDは、最大受容体占拠に至るかつ最も望ましい臨床効果を生ずる用量として定義される。
【0066】
患者あたりの総試験期間は、スクリーニング期間(-1日目~0日目)、27日間の処置および28-1/+2日、56±3日、100±7日および180±7日に計画される4回の処置後安全性フォローアップ来院からなる約26週間である(処置の最初の日を1日目として定義する)。
【0067】
試験目的
治験の目的は
・ CD26/CD3リンパ球活性の調節の観点で、静脈内点滴ベゲロマブの最適生物学的用量の確立;
・ ベゲロマブの漸増複数用量後のベゲロマブの薬物動態および薬力学の調査;
・ 有効性エンドポイントの調査;
・ 急性移植片対宿主病を有する患者における複数用量ベゲロマブの安全性および忍容性の調査
である。
【0068】
試験エンドポイント
プライマリーエンドポイント
試験のプライマリーエンドポイントは、フローサイトメトリーで決定して、試験用量範囲4.0~25.0mg/m2/日内で最大受容体占拠に至るベゲロマブの用量である。
【0069】
セカンダリーエンドポイント
セカンダリーエンドポイントは
【0070】
・ 28日目、56日目、100日目および180日目の累積全体的応答
である。
全体的応答は、移植片対宿主病(GvHD)完全応答(CR)または部分応答(PR)として定義され、これらは次のように定義される:
-GvHD CRは、介入サルベージなしで全ての評価可能な臓器における急性GvHDの全徴候および症の完全消散である;
-GvHD PRは、GvHD症状が関与する1以上の臓器における、その他の進行がない改善である。
【0071】
・ 全体的応答の期間[時間枠:ベースラインから180日目]。
最初の応答からGvHD進行または死亡までの時間として定義。
【0072】
・ +28日目、56日目、100日目および180日目のグレードII~IV内臓急性GvHDの全体的応答。
内臓急性GvHDのグレードおよびステージは、MAGIC基準(AC Harris et al., 2015)に従い決定される。
消化器GvHDの診断を確立するために、臨床的患者の状態の観点で、可能であるとき確認生検が推奨される。
・ 全身感染の発生率および重症度[時間枠:28日目、100日目および180日目]。
・ 少なくとも1個の感染を経験した参加者数。
【0073】
・ 28日目、56日目、100日目および180日目の全体的生存[時間枠:ベースラインから180日目]。
28日目、56日目、100日目および180日目まで生存している参加者の割合。
・ 100日目および180日目のGvHD無再発生存[時間枠:100日目および180日目]。
・ 28日目、56日目、100日目および180日目の移植関連死亡率。
【0074】
・ ステロイド処置の累積用量[時間枠:7日目、15日目、28日目、56日目、100日目、180日目]。
各患者の累積ステロイド用量を、用量を累積様式で加算することにより計算する(プレドニゾン当量として表す)。
・ 初期投与と比較したステロイド用量のパーセンテージ減少[時間枠:28日目、56日目、100日目、180日目]。
・ 28日目、56日目、100日目および180日目のステロイド抵抗性急性GvHDの発生率。
・ 100日目および180日目の慢性GvHDの発生率。
・ 慢性GvHDのグレードおよびステージは、NIHコンセンサス基準2014に従い決定される(MH Jagasia et al, 2014)。
・ Cmax、tmax、AUC0-t、CL、t1/2λzならびにCmaxおよびAUCの蓄積比として決定されるベゲロマブの薬物動態[時間枠:1日目から31日目]。
・ ヒト抗マウス抗体(HAMA)およびその中和能の発生率および力価経時変化[時間枠:1日目(ベゲロマブ開始前)、5日目、11日目、17日目、28日目、56日目、100日目および180日目]。
・ 循環CD26+の経時変化[時間枠:-1日目から180日目]。
・ 有害事象(AE)および重度有害事象(SAE)発生率[時間枠:ベースラインから28日目、100日目 180日目]。
・ ベゲロマブ点滴後処置関連AE(TRAE)を有する参加者の割合[時間枠:ベースラインから28日目、100日目および180日目]。
・ TRAEは、確実に/確かに、ほぼ確実またはおそらく試験薬が原因である事象として定義される。この試験は、血液学的および非血液学的毒性について、NCI CTCAE v4.0からの記載および等級付けスケールを使用する。
【0075】
探索的エンドポイントは探索的バイオマーカーである[時間枠:ベースラインから180日目]。患者がこの試験の任意的探索的バイオマーカー研究パートへの参加に同意したならば、計画した分析後残存する残った生物学的サンプルを、さらなる研究、例えば、疾患活性、試験薬物の効果および臨床アウトカムとの相関を評価するための、探索的バイオマーカーについて分析し得る。
【0076】
試験集団
試験集団は、急性GvHD宿主疾患グレードII~IVと診断された、性別に関係なく、12歳以上の患者を含む。
【0077】
試験は2相に分けられる。初期ステージで、コホート当たり最大6患者が、ベゲロマブの増加する複数用量を受ける連続コホートに登録される;各対象は、一コホートのみ参加する。試験は最大4用量レベルを含むよう計画される;必要に応じて、2個のさらなる用量レベルを追加し得る。第二ステージで、最適生物学的用量に到達したら、最大24名のさらなる対象を登録し、用量漸増相と同じ処置スケジュールに従い、OBDで処置する。
【0078】
インフォームド・コンセント書式に署名し、全編入基準を満たし、除外基準を満たさない患者のみを治験に含める。
【0079】
編入基準
この試験への参加に適格となるために、各患者は次の編入基準全てを満たさなければならない:
- 年齢≧12歳。
- 対象は、試験期間中、このプロトコールに明記されている、試験の要件、クリニックへの滞在およびフォローアップ評価のためのクリニックへの再来に従う意思があり、かつ可能でなければならない。
- 対象は、署名したインフォームド・コンセントの提供が可能であり、その意思がなければならない。思春期患者について、インフォームド・コンセントは親または法的後見人から得る。
【0080】
・ エクスビボT細胞枯渇移植片を移植された患者以外、全タイプの同種移植を受けた患者。
- 骨髄(BM)、末梢血幹細胞(PBSC)または臍帯血(CB)を使用する同種造血移植後またはドナーリンパ球点滴(DLI)後、MAGIC基準に従い、グレードII、IIIおよびIV急性GvHDを有する患者。
【0081】
臨床的に実行可能であるならば、確認生検が皮膚GvHD診断の確認のために必要であり、消化器および肝臓合併症の場合、実行可能であるならば、推奨される。生検の何らかの省略の理由はCRFに文書化する。
【0082】
ベースライン来院時に生検結果が入手不可能であるならば、ベゲロマブでの処置を、他の病因が排除されるとき、推定診断に基づき開始してよい。
- 全身治療を必要とするデノボ急性GvHD。GvHDは、急性GvHDが生ずる可能性があり、薬疹、腸内感染または肝毒性症候群などの他の病因の可能性がないまたは排除されている状況において現れる皮膚発疹および/または永続性悪心、嘔吐および/または下痢および/または胆汁うっ滞の存在として定義される。
【0083】
臨床的に実行可能であるならば、確認生検が皮膚GvHD診断の確認のために必要であり、消化器および肝臓合併症の場合、実行可能であるならば、推奨される。生検の何らかの省略の理由はCRFに文書化する。
【0084】
ベースライン来院時に生検結果が入手不可能であるならば、ベゲロマブでの処置を、他の病因が排除されるとき、推定診断に基づき開始してよい。
- 患者は、急性GvHDの発症後、≦2.0mg/kg メチルプレドニゾロンまたは等価物での先の全身コルチコステロイド治療を最大72時間受けた以外、急性GvHDの処置のための先の全身免疫抑制治療を受けていない。
- 骨髄生着の証拠(絶対好中球数(ANC)≧500/μL)。
- 患者がHSCTを必要とする根柢の疾患の再発の証拠がない。
- 血清クレアチニン<3×正常上限(ULN)またはコッククロフト・ゴールト式(1976)を使用する計算クレアチニンクリアランス(CLcr)>30mL/分により定義される適切な腎臓余裕量を有する患者。
- 休息時パルスおきしメトリーにより≧92%酸素飽和度(SaO2)により評価される適切な肺機能。
- 心臓駆出率>40%。
- 年齢<16歳の患者についてはランスキーパフォーマンススコア≧70%または年齢≧16歳の患者についてはカルノフスキーパフォーマンススコア≧50%)。
- 1カ月を超える余命。
- 妊娠可能な女性および男性は、試験の経過中(または試験薬物の最後の投与後少なくとも3カ月の何れか長いほう)の性交相手の妊娠を避けるための適切な避妊手段を取ることに同意しなければならない。避妊の許容される方法は、避妊剤の経口、注射またはインプラントによるホルモン方法、子宮内デバイス(IUD)または子宮内システム(IUS)の設置、避妊のバリア方法:殺精子フォーム/ゲル/フィルム/クリーム/坐薬を用いるコンドームまたは封鎖キャップ(ペッサリーまたは子宮頸/円蓋キャップ)を含む。禁欲は、個人の通常のライフスタイルであるときのみ避妊の許容される形態と考えられる。
- 女性はスクリーニング時およびベースライン時妊娠試験陰性でなければならず、授乳してはならない。
【0085】
治験製品
この試験において、治験医薬品(IMP)は、ハイブリドーマ細胞株により産生されるCD26に対するマウスモノクローナルIgG2b抗体であるベゲロマブである。開始用量レベルは4.0mg/m2/日である。ある態様において、抗CD26抗体は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25mg/m2/日の用量で投与される。ある態様において、抗CD26抗体は、16mg/m2/日の用量で投与される。
【0086】
治験医薬品は、参加後5日間(1~5日目)1日1回の専用カテーテル(すなわちCVCまたはPICC)を介する中心静脈への1時間静脈内点滴として投与され、続いて、さらに11回(7日目、9日目、11日目、13日目、15日目、17日目、19日目、21日目、23日目、25日目、27日目)を隔日で、計16回投与される。処置の最初の日を1日目として定義する。
【表1】
【0087】
各コホートにおいて、最初の対象の最初の5回(1~5日目)の後の全ての入手可能な安全性および忍容性データのレビューを、該コホートに他の対象を登録する前に行う。コホート内の用量漸増はない。
【0088】
最適生物学的用量に達したら、24名までの患者のさらなるコホートを登録し、上記のとおりOBDで処置する。
【0089】
試験運営委員会、用量漸増およびデータレビュー間隔
治験運営委員会(TSC)は少なくとも4人の構成員からなり:医学監視員、1名の研究責任者、薬物動態専門家およびスポンサー代表を含む。委員会は、用量漸増(または段階的縮小)に関する全ての決定およびOBDの達成の評価を行う。全ての決定は文書化される。
【0090】
試験の第一ステージ(用量漸増相)で、用量評価期間は、各コホートにおいてにおいてベゲロマブの最初の投与から、最後のIMP投与後7日目までである。あるコホートにおける最後のIMP投与後7日目と次のコホートにおける最初の投与の間は、データレビューをするための適切な時間を可能とするために最低10日間である。
【0091】
試験は最大4用量レベルを含むよう計画される;必要に応じて、2個のさらなる用量レベルを追加し得る。用量漸増相の最後に、全コホートからのデータを、拡張コホートにおけるさらなる評価のための最適生物学的活性用量の決定のために分析する。用量漸増相で集めたデータを含む中間試験報告を、科学的アドバイスを要求するおよび規制当局との検討のために作成してよい。
【0092】
試験の第二ステージ(コホート拡張)で、蓄積中の有効性および安全性データを、リスク-利益プロファイルが示す集団において好ましいままであることを確認するために、TSCにより連続的にモニターする。拡大コホートは24名までの患者の包含を計画する。TSCは、いずれにしても、現れている結果および規制当局からの最終的インプットに従い、登録を早期に中止するまたは拡張を増やす決定をし得る。
【0093】
用量漸増評価手順
各用量漸増前に、TSCは、入手可能な安全性、忍容性、PKおよびPDデータをレビューするために会合をする。次に高い用量レベルで、用量漸増中止基準(セクション6.2.4)の何れも満たさないと予測されるときのみ、用量漸増の決定をしてよい。
【0094】
各コホートから最低4名の評価可能患者が用量漸増決定に到達することが必要である;「評価可能対象」は、IMPの最後の投与後7日目までプロトコールに詳述した全ての計画される試験受診を完了している対象と定義される。
【0095】
用量漸増増分
用量増分は、非線形薬物動態の可能性を考慮に入れて、全ての入手可能な安全性、忍容性、PKおよびPDデータのレビューにより決定される。用量増分は3倍を超えてはならず、先のコホートの用量レベルの30%超を下回ってはならない
【0096】
最適生物学的用量は、フローサイトメトリーにより決定して、最大受容体占拠に至り、最も望ましい臨床効果を生ずる用量と考えられる。
【0097】
先のおよび同時の治療
先の医薬は、スクリーニングの前30日以内に開始され、試験処置の最初の投与前に中止された医薬をいう。同時の医薬は、試験処置の最初の投与前に開始され、その後も継続されるかまたは試験処置の最初の投与からフォローアップ来院までのどこかの時点で摂取される医薬をいう。
【0098】
全ての同時の医薬は、許容されるか禁止されている医薬であるかにかかわらず、試験57日目までまたは試験処置の最後の投与後30日目までのいずれか遅い方まで対象のCRFに記録される
【0099】
試験中、対象の福祉のために必要と考えられるあらゆる同時の医薬を、治験医の裁量で与えてよい。しかしながら、確実に医薬に関する詳細を完全にCRFに記録することは治験医の責任である。最低限の要件は、薬物な、用量、適応症および投与日の記録である。同時の医薬のあらゆる変更も対象のCRFに記録する。
【0100】
標準治療
試験処置と並行して、次の薬物をベースライン治療として対象に投与する:
- ≦2mg/kg/日用量のメチルプレドニゾロンIV(または他のステロイドおよび用量等価物);
- カルシニューリン阻害剤(またはGvHD予防を継続する、他の選択肢)。
【0101】
予防臨床治験医の裁量ならびに標準的薬務および組織/国際ガイドラインに従い、投与される。メチルプレドニゾロンまたはステロイド等価物用量は、急性GvHDの悪化に対し増量してよい。ステロイドテーパリングは、地域の組織慣行に従い得る。しかしながら、改善したら、ステロイドテーパリングは、試験への登録後3日より早く開始してはならず、ステロイド用量は28日目0.25mg/kg/日プレドニゾン(または0.2mg/kg/日 メチルプレドニゾロン)等価用量未満までテーパリングしてはならない。
【0102】
配列
配列番号1 重鎖定常領域アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
AKTTPPSVYPLAPGCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPESVTVTWNSGSLSSSVHTFPALLQSG
LYTMSSSVTVPSSTWPSQTVTCSVAHPASSTTVDKKLEPSGPISTINPCPPCKECHKCPA
PNLEGGPSVFIFPPNIKDVLMISLTPKVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQT
HREDYNSTIRVVSTLPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPSPIERTISKIKGLVRAPQVYIL
PPPAEQLSRKDVSLTCLVVGFNPGDISVEWTSNGHTEENYKDTAPVLDSDGSYFIYSKLN
MKTSKWEKTDSFSCNVRHEGLKNYYLKKTISRSPGK
【0103】
配列番号2 軽鎖定常領域アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
RADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQD
SKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0104】
配列番号3 重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
QVQLQQSGAELVKPGASVKLSCKASGYTFRSYDINWVRQRPEQGLEWIGWIFPGDGSTKY
NEKFKGKATLTTDKSSSTAYMQLSRLTSEDSAVYFCARWTVVGPGYFDVWGAGTTVTVSS
【0105】
配列番号4 重鎖可変領域(VH)ヌクレオチド配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
caggtccagctgcagcagtctggagctgaactggtaaagcctggggcttcagtgaagttgtcctgcaaggcttctggctacaccttcagaagttatgatataaactgggtgagacagaggcctgaacagggacttgagtggattggatggatttttcctggagatggtagtactaagtacaatgagaagttcaagggcaaggccacactgactacagacaaatcctccagcacagcctacatgcagctcagcaggctgacatctgaggactctgctgtctatttctgtgcaagatggacggtagtaggcccagggtacttcgatgtctggggcgcagggaccacggtcaccgtctcctca
【0106】
配列番号5 軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTITCSASSSVSYMNWFQQKPGTSPKLWIYSTSNLASGVPAR
FSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQRSSYPNTFGGGTKLEIK
【0107】
配列番号6 軽鎖可変領域(VL)ヌクレオチド配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
Caaattgttctcacccagtctccagcaatcatgtctgcatctccaggggagaaggtcaccataacctgcagtgccagctcaagtgtaagttacatgaactggttccagcagaagccaggcacttctcccaaactctggatttatagcacctccaacctggcttctggagtccctgctcgcttcagtggcagtggatctgggacctcttactctctcacaatcagccgaatggaggctgaagatgctgccacttattactgccagcaaaggagtagttacccgaacacgttcggaggggggaccaagctggaaataaaa
【0108】
配列番号7 重鎖CDR1アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
GYTFRSYDIN
【0109】
配列番号8 重鎖CDR2アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
WIFPGDGSTKYNEKFK
【0110】
配列番号9 重鎖CDR3アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
WTVVGPGYFDV
【0111】
配列番号10 軽鎖CDR1アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
SASSSVSYMN
【0112】
配列番号11 軽鎖CDR2アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
STSNLAS
【0113】
配列番号12 軽鎖CDR3アミノ酸配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
QQRSSYPNT
【0114】
配列番号13 重鎖定常領域ヌクレオチド配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
gccaaaacaacacccccatcagtctatccactggcccctgggtgtggagatacaactggttcctccgtgactctgggatgcctggtcaagggctacttccctgagtcagtgactgtgacttggaactctg gatccctgtccagcagtgtgcacaccttcccagctctcctgcagtctggactctacactatgagcagctcagtgactgtcccctccagcacctggccaagtcagaccgtcacctgcagcgttgctcaccc agccagcagcaccacggtggacaaaaaacttgagcccagcgggcccatttcaacaatcaacccctgtcctccatgcaaggagtgtcacaaatgcccagctcctaacctcgagggtggaccatccgtcttc atcttccctccaaatatcaaggatgtactcatgatctccctgacacccaaggtcacgtgtgtggtggtggatgtgagcgaggatgacccagacgtccagatcagctggtttgtgaacaacgtggaagtac acacagctcagacacaaacccatagagaggattacaacagtactatccgggtggtcagcaccctccccatccagcaccaggactggatgagtggcaaggagttcaaatgcaaggtcaacaacaaagacct cccatcacccatcgagagaaccatctcaaaaattaaagggctagtcagagctccacaagtatacatcttgccgccaccagcagagcagttgtccaggaaagatgtcagtctcacttgcctggtcgtgggcttcaaccctggagacatcagtgtggagtggaccagcaatgggcatacagaggagaactacaaggacaccgcaccagtcctggactctgacggttcttacttcatatatagcaagctcaatatgaaaacaagcaagtgggagaaaacagattccttctcatgcaacgtgagacacgagggtctgaaaaattactacctgaagaagaccatctcccggtctccgggtaaa
【0115】
配列番号14 軽鎖定常ヌクレオチド配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ)
cgggctgatgctgcaccaactgtatccatcttcccaccatccagtgagcagttaacatctggaggtgcctcagtcgtgtgcttcttgaacaacttctaccccaaagacatcaatgtcaagtggaagattgatggcagtgaacgacaaaatggcgtcctgaacagttggactgatcaggacagcaaagacagcacctacagcatgagcagcaccctcacgttgaccaaggacgagtatgaacgacataacagttatacctgtgaggccactcacaagacatcaacttcacccattgtcaagagcttcaacaggaatgagtgt
【0116】
配列番号15 重鎖ヌクレオチド配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ-CHO最適化)
caagtgcagcttcagcagtccggagccgaactcgtgaagccgggagcttccgtgaagctgagctgcaaggcatcggggtataccttccgctcctacgacatcaactgggtcagacagaggcccgaacagggtctggaatggattggctggatcttccctggcgacggttccaccaagtacaacgagaagttcaagggcaaagccaccctgaccactgacaagtcctcatcgaccgcgtacatgcaattgagccggctgacctccgaggatagcgccgtgtacttctgtgcccggtggactgtcgtgggaccaggctactttgatgtctggggggccggaactaccgtgacggtgtcatcagccaagactacccctccgtccgtgtacccccttgctccgggatgtggagacaccaccggctcgtccgtcactctgggatgcctcgtgaagggatacttccccgaatccgtcaccgtgacctggaacagcggaagcctgtcctcgtccgtgcatactttccctgccctgctgcaatccggcctgtacaccatgagctccagcgtgaccgtgccatcctcgacctggcccagccagaccgtgacttgctcagtggcgcaccctgcctcatccactaccgtggacaagaagctcgagccctccggtccgatttcaaccatcaacccttgcccaccctgcaaagaatgccataagtgtcccgctccgaatctagaaggcggcccatccgtctttatcttccctcccaacattaaggacgtgctgatgattagtctgaccccgaaagtcacttgcgtggtggtggacgtgtccgaagatgacccagacgtgcagatctcatggttcgtgaacaacgtggaggtgcacacggcccagacccagacgcaccgggaggactacaactcgactatccgcgtggtgtccacccttccgatccaacaccaggattggatgtcggggaaggagttcaagtgcaaggtcaacaacaaggatctcccgtcccccattgagaggacaatctctaagatcaagggcctcgtcagagcgcctcaggtctacatcttgcctcctcccgccgaacagttgagccggaaggatgtgtccctgacttgtctggtcgtggggttcaatccgggagacatctccgtggagtggacctcgaacggacacaccgaggaaaactacaaggacactgcaccggtgctggattccgacggctcctatttcatctactcgaagctgaacatgaaaacctcgaaatgggaaaagactgacagcttcagctgcaacgtgcgccacgagggtctgaagaactactacctgaaaaagaccatttcacggtccccggggaaa
【0117】
配列番号16 軽鎖ヌクレオチド配列;抗CD26 mAb(ベゲロマブ-CHO最適化)
Cagatcgtgcttacccaatccccggcgattatgtcagccagccccggagaaaaggtcaccattacttgctcggcatcctcctccgtgtcgtacatgaactggttccagcaaaagcccggcactagcccaaagctgtggatctattccacgtccaacctggcgtcaggagtgcctgcccgcttttcgggttctggcagcgggactagctactccctcaccatctcgagaatggaagctgaggacgccgccacctactactgtcagcagcggtcctcctacccgaacaccttcgggggaggcaccaaactggagatcaaacgggctgatgctgcaccaactgtatccatcttcccaccatccagtgagcagttaacatctggaggtgcctcagtcgtgtgcttcttgaacaacttctaccccaaagacatcaatgtcaagtggaagattgatggcagtgaacgacaaaatggcgtcctgaacagttggactgatcaggacagcaaagacagcacctacagcatgagcagcaccctcacgttgaccaaggacgagtatgaacgacataacagctatacctgtgaggccactcacaagacatcaacttcacccatcgtcaagagcttcaacaggaatgagtgt
【配列表】
【国際調査報告】