(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】海藻繊維及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 9/04 20060101AFI20240412BHJP
D01F 1/10 20060101ALI20240412BHJP
D06M 15/61 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
D01F9/04
D01F1/10
D06M15/61
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570149
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 CN2022091698
(87)【国際公開番号】W WO2022237722
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110516532.0
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523427814
【氏名又は名称】青島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】夏延致
(72)【発明者】
【氏名】苗大剛
(72)【発明者】
【氏名】李凱
(72)【発明者】
【氏名】姚久勇
(72)【発明者】
【氏名】成芳芳
(72)【発明者】
【氏名】許長海
【テーマコード(参考)】
4L033
4L035
【Fターム(参考)】
4L033AA01
4L033AB01
4L033AC15
4L033CA57
4L035AA04
4L035BB03
4L035DD16
4L035JJ21
4L035KK05
(57)【要約】
本願は、海藻繊維及びその製造方法を開示し、織物の染色の技術分野に属する。海藻繊維
の製造方法は、アルギン酸ナトリウムを含む原料を用いて紡糸液を製造するステップS1
0と、S10で得られた紡糸液を凝固浴に押し出して凝固成形し、一次繊維を得るステッ
プS20と、S20で得られた一次繊維を延伸し水洗して、海藻繊維を得るステップS3
0と、S30で得られた海藻繊維を処理剤に浸漬して後処理するステップS40と、を含
み、S10の原料、S20の凝固浴及びS30の処理剤の少なくともいずれか又は全てが
、5員環第4級アミン塩重合体を含む。本願により得られた海藻繊維は、着染率が高く、
深刻な繊維損傷が少なく、石鹸洗濯に対する堅牢度が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻繊維の製造方法であって、
アルギン酸ナトリウム:5員環第4級アミン塩重合体=100:(0.001~30)の
質量比で前記アルギン酸ナトリウムと前記5員環第4級アミン塩重合体とを水中で混合し
て、紡糸液を得るステップS10と、
前記S10で得られた前記紡糸液を静置脱泡後、濃度が0.01質量%~2質量%の前記
5員環第4級アミン塩重合体を含む40℃~70℃の温度の凝固浴に押し出して凝固成形
し、一次繊維を得るステップS20と、
前記S20で得られた前記一次繊維を延伸し水洗し、前記海藻繊維を得るステップS30
と、
前記S30で得られた海藻繊維を20~70℃の温度の処理剤に浸漬し、5min~60
min浸漬処理するステップS40と、を含み、
前記処理剤には、前記S30で得られた海藻繊維の質量に対して0.5%~10%の5員
環第4級アミン塩重合体が含まれており、
前記5員環第4級アミン塩重合体は以下に示されるものである、ことを特徴とする海藻繊
維の製造方法。
(ただし、R
1は、CH
3、CH
2CH
3、CH
2(CH
2)
4CH
3、CH
2(CH
2
)
10CH
3、CH
2(CH
2)
16CH
3、又はC
6H
5CH
2であり、R
2は、CH
3、CH
2CH
3、CH
2(CH
2)
4CH
3、CH
2(CH
2)
10CH
3、CH
2(
CH
2)
16CH
3、又はC
6H
5CH
2であり、重合度nの範囲が50~25000で
ある。)
【請求項2】
前記海藻繊維中の前記5員環第4級アミン塩重合体の含有量が0.1質量%~10質量%
である、ことを特徴とする請求項1に記載の海藻繊維の製造方法。
【請求項3】
前記紡糸液中の前記アルギン酸ナトリウムの濃度が3質量%~6質量%である、ことを特
徴とする請求項1に記載の海藻繊維の製造方法。
【請求項4】
前記S20において、前記凝固浴のpHは4.5~6.5であり、及び/又は、前記S2
0において、前記凝固浴は、濃度が1質量%~6質量%の塩化カルシウム水溶液をさらに
含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の海藻繊維の製造方法。
【請求項5】
前記S40の後、前記S40で得られた海藻繊維に洗浄処理及び乾燥処理を行うステップ
S50をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の海藻繊維の
製造方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法を用いて得られる、ことを特徴とする海藻
繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、繊維織物の染色の技術分野に属し、特に海藻繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻繊維は、天然海藻から抽出したアルギン酸ナトリウムを原料とし、湿式紡糸法により
製造された、環境にやさしい新規な生分解性繊維である。海藻繊維は優れた吸湿性、成膜
性や繊維化性、良好な生分解性と生体適合性を有することから、重要視されている。
【0003】
海藻繊維は、現在、医療用ドレッシングの分野で広く応用されており、高級衣料品、下着
生地、装飾織物において将来性が期待できる。
【0004】
海藻繊維の滑らかな風合いにより、着用心地がよく、紡糸が困難になる。一方、関連技術
では、海藻繊維の純粋な紡糸を実現することが難しい。一方、海藻繊維の価格はまだやや
高いため、市場に多く出回っているのが海藻繊維混紡織物である。
【0005】
その中で、海藻繊維と綿との混紡及び海藻繊維と毛との混紡には2つの主要な品種があり
、混紡後の繊維は、制菌、難燃性などの優れた着用性能を併せ持つことができ、服装用と
産業用織物の両方の分野において産業化の将来性が期待できる。
【0006】
しかし、海藻繊維は、酸・アルカリ耐性が弱く、アンモニウム塩、Na+、K+、H+イ
オンの溶液に出会うと膨潤したり、溶解したりする。このため、現在の染色系では、海藻
繊維の染色が困難である。海藻繊維は、染色しにくいという問題が、紡績分野への大規模
な応用を制限するボトルネックとなっている。
【0007】
関連技術において、CN101736440Aは、水溶性デンドリマーをアルギン酸繊維
紡糸溶液に加え、湿式紡糸装置及びプロセスを採用して、凝固、延伸、水洗及び後処理を
行って、染色可能な海藻繊維を得る、染色可能な海藻繊維の製造方法を開示している。こ
の方法では、紡糸液にポリアミド-アミンデンドリマーを加えることが重要であるが、海
藻繊維の強い電気陰性度を解決できず、染色の際には塩類を加えて染色を促進する必要が
あり、海藻繊維へのダメージを回避できない。
【0008】
そのほか、邵歓迎らが発表した論文であるアルギン酸カルシウム繊維の直接染料無塩染色
(捺染、2014年10月、1-5)と劉傑らが発表した論文であるアルギン酸繊維の反
応染料染色技術の研究(捺染技術、2014年3月、11-13)は海藻繊維の製造方法
を報告した。いずれの論文にも塩化カルシウムが用いられており、前者は塩化カルシウム
を固定剤、後者は塩化カルシウムを促進剤として用いている。塩化カルシウムを固定剤に
すると繊維が脆くなり、切れやすくなる。塩化カルシウムは促進剤として使用され、論文
に記載されるように、強度損失が非常に大きく、約30~40%低下する。
【0009】
現在も、いくつかの綿無塩染色の技術は種々の制限により海藻繊維の染色に用いることが
できない。CN108914630Aのように、その前処理液の苛性ソーダ濃度は2~6
g/Lであり、このプロセスにより、海藻繊維が基本的に溶解する。例えば、CN106
498770Aのように、綿の改質には吸着型カチオン改質剤は使用され、苛性ソーダは
使用されていない。しかし、明らかな線状第4級アンモニウム塩高分子は、海藻繊維との
吸着・架橋効果が低く、海藻繊維を膨潤・溶解させ、海藻繊維の使用性に悪影響を与える
。
【0010】
以上のことから、当業者は、海藻繊維の形態構造を破壊し、かつ、海藻繊維の強度を低下
させことなく、海藻繊維の染色が難しいという問題を解決できる製造方法を見つけること
が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願は、海藻繊維の染色が難しいという従来技術における技術的課題を解決するために、
海藻繊維及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術的課題を解決するために、本願は以下のように実施される。
【0013】
本願は、
アルギン酸ナトリウムを含む原料を用いて紡糸液を製造するステップS10と、
S10で得られた紡糸液を凝固浴に押し出して凝固成形し、一次繊維を得るステップS2
0と、
S20で得られた一次繊維を延伸し水洗して、海藻繊維を得るステップS30と、
S30で得られた海藻繊維を処理剤に浸漬して後処理するステップS40と、を含み、
S10の原料、S20の凝固浴及びS30の処理剤の少なくともいずれか又は全てが、5
員環第4級アミン塩重合体を含む、海藻繊維の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明の上記の実施例による技術的解決手段は、以下の追加的な技術的特徴を有し
てもよい。
【0015】
上記の技術的解決手段において、5員環第4級アミン塩重合体は以下に示されるものであ
る。
(ただし、R
1は、CH
3、CH
2CH
3、CH
2(CH
2)
4CH
3、CH
2(CH
2
)
10CH
3、CH
2(CH
2)
16CH
3、又はC
6H
5CH
2であり、R
2は、CH
3、CH
2CH
3、CH
2(CH
2)
4CH
3、CH
2(CH
2)
10CH
3、CH
2(
CH
2)
16CH
3、又はC
6H
5CH
2であり、重合度nの範囲が50~25000で
ある。)
【0016】
上記のいずれの技術的解決手段において、海藻繊維中の5員環第4級アミン塩重合体の含
有量が0.1質量%~10質量%である。
【0017】
上記のいずれかの技術的解決手段において、S10は、具体的には、
アルギン酸ナトリウム:5員環第4級アミン塩重合体=100:(0.001~30)の
質量比でアルギン酸ナトリウムと5員環第4級アミン塩重合体とを水中で混合して、紡糸
液を得るステップS101を含む。
【0018】
上記のいずれかの技術的解決手段において、紡糸液中のアルギン酸ナトリウムの濃度が3
質量%~6質量%である。
【0019】
上記のいずれかの技術的解決手段において、S20は、具体的には、
S10で得られた紡糸液を静置脱泡後、濃度が0.01質量%~2質量%の5員環第4級
アミン塩重合体を含む40℃~70℃の温度の凝固浴に押し出して凝固成形し、一次繊維
を得るステップS201を含む。
【0020】
及び/又は、上記のいずれかの技術的解決手段において、S40は、具体的には、
S30で得られた海藻繊維を20~70℃の温度の処理剤に浸漬し、5min~60mi
n浸漬処理するステップS401を含み、
処理剤には、S30で得られた海藻繊維の質量に対して0.5%~10%の5員環第4級
アミン塩重合体が含まれている。
【0021】
上記のいずれの技術的解決手段において、S20において、凝固浴のpHは4.5~6.
5である。
【0022】
上記のいずれの技術的解決手段において、S20において、凝固浴は、濃度が1質量%~
6質量%の塩化カルシウム水溶液である。
【0023】
上記のいずれかの技術的解決手段において、S40の後に、製造方法は、
S40で得られた海藻繊維に洗浄処理及び乾燥処理を行うステップS50をさらに含む。
本願はまた、上記のいずれかの技術的解決手段に記載の製造方法を用いて得られる海藻繊
維を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本願の有益な効果は次のとおりである。
まず、本願による海藻繊維の製造方法は、着染率が高く、海藻繊維の損失率が低く、石鹸
洗濯に対する堅牢度が高い。したがって、本願は、色が鮮やかな海藻繊維を得ることがで
きる。
また、本願による海藻繊維の製造方法は、海藻繊維の形態構造を破壊することなく、非塩
、非アルカリ系で染色することができ、海藻繊維を最大限に保護することができる。
最後に、本願による海藻繊維の製造方法は、紡糸架橋及び後仕上げ工程を利用し、適切な
原料、比率、反応条件等を選択することにより、海藻繊維の内部及び表面に第4級アンモ
ニウム基染色部位を構築し、染色可能な海藻繊維を製造することにより、現在の海藻繊維
の産業化用途におけるボトルネックを解決する。
本願の追加の態様及び利点は、以下の説明において部分的に示され、部分的には以下の説
明から明らかになるか、又は本願の実務を通して理解される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来技術における海藻繊維の走査型電子顕微鏡像である。
【
図2】本願による海藻繊維の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照して以下に説明する実施例は、本願を説明するためにのみ使用される例示的な
ものであり、本願を限定するものとは理解されない。本願の実施例に基づいて、当業者が
創造的な努力を必要とせずに取得した他のすべての実施例は、本願の特許範囲に属する。
【0027】
本願の実施例は、海藻繊維の製造方法であって、
アルギン酸ナトリウムを含む原料を用いて紡糸液を製造するステップS10と、
S10で得られた紡糸液を凝固浴に押し出して凝固成形し、一次繊維を得るステップS2
0と、
S20で得られた一次繊維を延伸し水洗して、海藻繊維を得るステップS30と、
S30で得られた海藻繊維を処理剤に浸漬して後処理するステップS40と、を含み、
S10の原料、S20の凝固浴及びS30の処理剤の少なくともいずれか又は全てが、5
員環第4級アミン塩重合体を含む、海藻繊維の製造方法を提供する。
【0028】
上記の実施例においては、本願の実施例の海藻繊維を用いて、海藻繊維と他の1種又は2
種以上の繊維との混紡織物である海藻繊維混紡織物を製造することができる。例えば、海
藻繊維混紡織物は、海藻繊維・綿混紡織物、海藻繊維・ビスコース混紡織物、海藻繊維・
ウール混紡織物、海藻繊維・カシミヤ混紡織物、海藻繊維・シルク混紡織物の少なくとも
1種であってもよい。
【0029】
上記の実施例において、本願の海藻繊維は、染色が容易であり、色が鮮やかである。直接
染料、酸性染料、反応染料、天然染料、インジゴ染料の1種又は2種以上を用いて染色す
ることができる。
【0030】
上記の実施例において、S10の原料、S20の凝固浴、及びS30の処理剤の少なくと
もいずれか又は全てが、5員環第4級アミン塩重合体を含むのは、染色時の海藻繊維の着
染率を向上させ、海藻繊維の損失率を低減させ、海藻繊維の石鹸洗濯に対する堅牢度を向
上させるためである。本願の実施例による製造方法により得られる海藻繊維混紡織物は、
着染率が85%以上であり、かつ、石鹸洗濯に対する堅牢度がレベル4以上である。
【0031】
本願の実施例が上記の目的を達成することができる原理は以下の通りである。アルギン酸
ナトリウムは、構造の異なる2種類のウロン酸がC-1,4結合で連結されたブロック線
形多糖類で、すなわち、β-D-マンヌロン酸(M単位と略す)とα-L-グロウロン酸
(G単位と略す)である。アルギン酸ナトリウム分子内のその2つの構造単位は、ポリマ
ンヌロン酸(M)nとポリグルロン酸(G)nの形で分子鎖中に分布しており、両者は交
互MG又は多重交互(MG)nで連結されており、その化学構造は次のとおりである。
【0032】
アルギン酸ナトリウム紡糸液が塩化カルシウムを含む凝固浴に遭遇すると、アルギン酸ナ
トリウム紡糸液は速やかに非水溶性のアルギン酸カルシウムゲルに変化する。このプロセ
スは、主に、GGセグメントとCa2+が「卵-殻」構造を作り、海藻繊維を製造する。
多くの一価塩は海藻繊維の安定性を破壊し、すなわち、その「卵-殻」架橋構造を破壊す
る。
【0033】
本願の要点の1つは、S10の原料、S20の凝固浴、及びS30の処理剤のうちの少な
くともいずれか又は全てが、5員環第4級アミン塩重合体を含むことである。紡糸の異な
る工程(1つ又は複数のステップ)において、5員環第4級アミン塩重合体を添加するこ
とにより、海藻繊維に染色可能な第4級アンモニウム基染色部位を付与することができる
。本願の実施例の5員環第4級アミン塩重合体は、海藻繊維のM単位に類似した構造を有
し、良好な平面性を有し、M単位との吸着架橋が容易であり、Ca2+を置換する確率が
低い。本願の実施例の5員環第4級アミン塩重合体は、カチオン密度が高いので、様々な
海藻繊維の高分子鎖を吸着することもでき、最終的に「卵-殻」系を助け、安定した染色
可能な海藻系を形成すると同時に、海藻繊維の安定性と機械的性能をできるだけ確保する
ことができる。
【0034】
以上のように、本願の実施例の海藻繊維は、良好な染色性を有しており、市販されている
直接染料で無塩染色することができる。本願の実施例によれば、紡糸工程において、5員
環第4級アミン塩重合体を添加して製造された染色可能な海藻繊維は、染色による色が鮮
やかで、堅牢性に優れている。染色過程中に繊維は元の形態を維持でき、明らかな溶解現
象が発生せず、力学性能は明らかな低下がなかった。
【0035】
さらに、例えばCN101736440Aの関連技術で提案されている染色可能な海藻繊
維の製造方法と比較して、本関連技術では、紡糸原料にデンドリマーを添加しているので
、染色部位が得られるが、繊維の電気陰性度の問題を解決することはできない。本願の実
施例では、紡糸工程及び後処理工程において、5員環第4級アミン塩重合体を添加するこ
とにより、染色可能な海藻繊維の安定した染色部位及び電気陰性度の問題を解決した。
本願の実施例の一部の実施形態において、5員環第4級アミン塩重合体は、以下に示され
るものである。
(ただし、R
1は、CH
3、CH
2CH
3、CH
2(CH
2)
4CH
3、CH
2(CH
2
)
10CH
3、CH
2(CH
2)
16CH
3、又はC
6H
5CH
2であり、R
2は、CH
3、CH
2CH
3、CH
2(CH
2)
4CH
3、CH
2(CH
2)
10CH
3、CH
2(
CH
2)
16CH
3、又はC
6H
5CH
2であり、重合度nの範囲が50~25000で
ある。)
【0036】
本願の実施例の一部の実施形態において、5員環第4級アミン塩重合体は、水溶性の5員
環第4級アミン塩重合体である。
【0037】
本願の実施例の一部の実施形態において、海藻繊維中の5員環第4級アミン塩重合体の含
有量は0.1質量%~10質量%である。
【0038】
本願の実施例の一部の実施形態において、海藻繊維中の5員環第4級アミン塩重合体の含
有量は、2質量%%~8質量%である。
【0039】
本願の実施例の一部の実施形態において、海藻繊維中の5員環第4級アミン塩重合体の含
有量は4質量%~6質量%である。本願の実施例の一部の実施形態において、海藻繊維中
の5員環第4級アミン塩重合体の含有量は、5質量%である。
【0040】
本願の実施例の一部の実施形態において、5員環第4級アミン塩重合体は、5員環第4級
アミン塩単量体、開始剤、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムを混合し、60℃~100
℃の温度条件下で1h~5h保温し、5員環第4級アミン塩重合体を得ることにより製造
される。
本願の実施例の一部の実施形態において、5員環第4級アミン塩重合体は、5員環第4級
アミン塩単量体、開始剤、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムを混合し、70℃~90℃
の温度条件下で2h~3h保温し、5員環第4級アミン塩重合体を得ることにより製造さ
れる。
本願の実施例の一部の実施形態において、5員環第4級アミン塩重合体は、5員環第4級
アミン塩単量体、開始剤、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムを混合し、80℃~85℃
の温度条件下で2.5h保温し、5員環第4級アミン塩重合体を得ることにより製造され
る。
【0041】
上記の実施形態において、5員環第4級アミン塩重合体は、撹拌機、温度計及び窒素ガス
導入装置を備えた反応器を用いて製造される。
【0042】
上記の実施形態において、5員環第4級アミン塩単量体の濃度は20%~80%であり、
開始剤の濃度は0.1%~2%であり、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムは0.001
%~0.01%である。
【0043】
上記の実施形態において、5員環第4級アミン塩単量体の濃度は40%~60%であり、
開始剤の濃度は1%~1.5%であり、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムは0.004
%~0.006%である。
【0044】
上記の実施形態において、開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモ
ニウム、アゾビスイソブタミジン塩酸塩、アゾジイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプ
タニトリルのいずれか1種又は複数種を含む。
【0045】
上記の実施形態において、5員環第4級アミン塩重合体は、具体的には、濃度20%~8
0%の5員環第4級アミン塩単量体を、撹拌機、温度計及び窒素ガス導入装置を備えた反
応器に加え、次に、0.1%~2%の開始剤、0.001%~0.01%のエチレンジア
ミン四酢酸ナトリウムを順次加え、その後、窒素ガスを20~40分間導入した後、60
~100℃に昇温し、1~5時間保温し、5員環第4級アミン塩重合体を製造することに
より製造される。
【0046】
本願の実施例の一部の実施形態において、S10は、具体的には、
アルギン酸ナトリウム:5員環第4級アミン塩重合体=100:(0.001~30)の
質量比でアルギン酸ナトリウムと5員環第4級アミン塩重合体とを水中で混合して、紡糸
液を得るステップS101を含む。
【0047】
本願の実施例の一部の実施形態において、S10は、具体的には、
アルギン酸ナトリウム:5員環第4級アミン塩重合体=100:(10~20)の質量比
でアルギン酸ナトリウムと5員環第4級アミン塩重合体とを水中で混合して、紡糸液を得
るステップS101を含む。
【0048】
本願の実施例の一部の実施形態において、S10は、具体的には、
アルギン酸ナトリウム:5員環第4級アミン塩重合体=100:(12~18)の質量比
でアルギン酸ナトリウムと5員環第4級アミン塩重合体とを水中で混合して、紡糸液を得
るステップS101を含む。
【0049】
本願の実施例の一部の実施形態において、紡糸液中のアルギン酸ナトリウムの濃度は3質
量%~6質量%である。
【0050】
本願の実施例の一部の実施形態において、紡糸液中のアルギン酸ナトリウムの濃度は4質
量%~5質量%である。
【0051】
本願の実施例の一部の実施形態において、S20は、具体的には、
S10で得られた紡糸液を静置脱泡後、40℃~70℃の温度の凝固浴に押し出して凝固
成形し、一次繊維を得るステップS201を含む。
【0052】
本願の実施例の一部の実施形態において、S20は、具体的には、
S10で得られた紡糸液を静置脱泡後、50℃~60℃の温度の凝固浴に押し出して凝固
成形し、一次繊維を得るステップS201を含む。
【0053】
本願の実施例の一部の実施形態において、凝固浴には、濃度が0.01質量%~2質量%
の5員環第4級アミン塩重合体が含まれている。
【0054】
本願の実施例の一部の実施形態において、凝固浴には、濃度が0.5質量%~1.5質量
%の5員環第4級アミン塩重合体が含まれている。
【0055】
本願の実施例の一部の実施形態において、凝固浴には、濃度が1質量%の5員環第4級ア
ミン塩重合体が含まれている。
【0056】
本願の実施例の一部の実施形態において、S40は、具体的には、
S30で得られた海藻繊維を20~70℃の温度の処理剤に浸漬し、5min~60mi
n浸漬処理するステップS401を含む。
【0057】
本願の実施例の一部の実施形態において、S40は、具体的には、
S30で得られた海藻繊維を40~50℃の温度の処理剤に浸漬し、20min~40m
in浸漬処理するステップS401を含む。
【0058】
本願の実施例の一部の実施形態において、処理剤には、S30で得られた海藻繊維の質量
に対して0.5%~10%の5員環第4級アミン塩重合体が含まれている。
【0059】
本願の実施例の一部の実施形態において、処理剤には、S30で得られた海藻繊維の質量
に対して2%~8%の5員環第4級アミン塩重合体が含まれている。
【0060】
本願の実施例の一部の実施形態において、処理剤には、S30で得られた海藻繊維の質量
に対して4%~6%の5員環第4級アミン塩重合体が含まれている。
【0061】
本願の実施例の一部の実施形態において、S20において、凝固浴のpHは4.5~6.
5である。
【0062】
本願の実施例の一部の実施形態において、S20において、凝固浴のpHは5である。
【0063】
本願の実施例の一部の実施形態において、S20において、凝固浴は、濃度が1質量%~
6質量%の塩化カルシウム水溶液である。
【0064】
本願の実施例の一部の実施形態において、S20において、凝固浴は、濃度が2質量%~
4質量%の塩化カルシウム水溶液である。
【0065】
本願の実施例の一部の実施形態において、S40の後に、製造方法は、
S40で得られた海藻繊維に洗浄処理及び乾燥処理を行うステップS50をさらに含む。
実施例1
【0066】
(1)アルギン酸ナトリウム40gと5員環第4級アミン塩重合体改質剤1gを溶液10
00gに調製した。
(2)塩化カルシウム5質量%+5員環第4級アミン塩重合体改質剤溶液凝固浴1質量%
を調製し、凝固浴のpHを塩酸で5に調整し、紡糸液を静置脱泡後、40℃の凝固浴水溶
液に押し出して凝固成形し、延伸し洗浄した。
(3)5員環第4級アミン塩重合体改質剤1gを水に溶解して、浸漬液1000gを調製
し、ステップ(2)で製造された海藻繊維と浸漬液とを30℃で接触させて20分間浸漬
させ、浸漬完了後に、水洗して乾燥し、後処理架橋海藻繊維を得た。
実施例2
【0067】
(1)アルギン酸ナトリウム100gを水に溶解して、溶液2000gを調製した。
(2)塩化カルシウム6質量%+5員環第4級アミン塩重合体改質剤溶液凝固浴1.5質
量%を調製し、凝固浴のpHを塩酸で6に調整し、紡糸液を静置脱泡後、40℃の凝固浴
水溶液に押し出して凝固成形し、延伸し洗浄した。
(3)5員環第4級アミン塩重合体改質剤6gを水に溶解して、浸漬液1000gを調製
し、ステップ(2)で製造された海藻繊維と浸漬液とを40℃で接触させて10分間浸漬
させ、浸漬完了後、水洗し乾燥し、後処理架橋海藻繊維を得た。
実施例3
【0068】
(1)アルギン酸ナトリウム300gを水に溶解して、溶液4000gを調製した。
(2)塩化カルシウム溶液凝固浴4.5質量%を調製し、凝固浴のpHを塩酸で5に調整
し、紡糸液を静置脱泡後、凝固浴水溶液に押し出して55℃で凝固成形し、延伸し洗浄し
た。
(3)5員環第4級アミン塩重合体改質剤9gを水に溶解して、6000gの浸漬液を調
製し、ステップ(2)で製造された海藻繊維と浸漬液とを50℃で接触させて8分間浸漬
させ、浸漬完了後、水洗し乾燥し、後処理架橋海藻繊維を得た。
比較のために、本発明は、非5員環の一般的なポリ第4級アンモニウム塩化合物を一実施
例とする。
実施例4
【0069】
(1)アルギン酸ナトリウム40gとジアミノ尿素重合体1gを溶液1000gに調製し
た。
(2)塩化カルシウム5質量%+ジアミノウレア重合体溶液凝固浴1質量%を調製し、凝
固浴のpHを塩酸で5に調整し、紡糸液を静置脱泡後、40℃の凝固浴水溶液に押し出し
て凝固成形し、延伸し洗浄した。
(3)ジアミノ尿素重合体1gを水に溶解して、浸漬液1000gを調製し、ステップ(
2)で製造された海藻繊維と浸漬液とを30℃で接触させて20分間浸漬させ、浸漬完了
後、水洗して乾燥し、後処理架橋海藻繊維を得た。
図1は通常の海藻繊維の走査型電子顕微鏡像であり、
図2は染色可能な海藻繊維の走査型
電子顕微鏡像である。通常の海藻繊維と実施例1、2、3、4で得られた染色可能な海藻
繊維の染色性を表1に示す。
【0070】
【0071】
本願の実施例に係る海藻繊維の染色プロセスは以下のとおりである。水400gに直接染
料(ダイレクトスカーレット4BS、ダイレクトイエローRS、ダイレクトブルー3RL
)0.2gを計量して加えて、撹拌溶解し、常温で海藻繊維10gを投入し、2℃/mi
nで80℃まで昇温し、40分間染色した後、90℃の5g/lの中性洗剤水溶液で10
分間洗浄し、温度を下げ、水洗し、80℃で乾燥又は風乾した。
【0072】
国家標準『GB/T3921-2008織物染色堅牢度試験石鹸洗濯堅牢度』を参照して
、繊維の水洗堅牢度をテストした。その結果、実施例1、2、3、4で得られた海藻繊維
は、ダイレクトスカーレット4BS、ダイレクトイエローRS、ダイレクトブルー3RL
に対する、石鹸洗濯に対する堅牢度がいずれもレベル4以上であった。
【0073】
本願の明細書及び特許請求の範囲における用語「第1」、「第2」の特徴は、1つ又は複
数の特徴を明示的又は暗黙的に含んでもよい。本願の説明において、別段の記載がない限
り、「複数」とは、2以上を意味する。さらに、明細書及び請求項における「及び/又は
」は、それらの前記に記載の対象の少なくともいずれかを表し、文字「/」は、一般的に
前後の関連対象が「又は」の関係であることを表す。
【0074】
本明細書の説明において、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例示的な実施例
」、「例」、「特定の例」、又は「いくつかの例」などを参照する説明は、その実施例又
は例に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本願の少なくとも1つ
の実施例態又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記の用語の概略的な
表現は、必ずしも同じ実施例又は例を指すものではない。さらに、記載された特定の特徴
、構造、材料、又は特性は、任意の1つ又は複数の実施例又は例において適切な方法で組
み合わされてもよい。
【0075】
本願の実施例が示され、説明されているが、これらの実施例は、本願の原理及び目的から
逸脱することなく、様々な変更、修正、置換及び変形が可能であり、本願の範囲は請求項
及びその均等物によって限定されることを当業者は理解する。
【国際調査報告】