(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】熱交換器ハウジングを有する電池モジュールおよび電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20240412BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240412BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240412BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/651
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570356
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2021062805
(87)【国際公開番号】W WO2022237986
(87)【国際公開日】2022-11-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523428693
【氏名又は名称】ホワイトマーク・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】WHITEMARK TECHNOLOGY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,ステファン・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】アダム,ピーター
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
液密ハウジングと、液密ハウジング内に配置された複数の電池セルとを備える電池モジュールが提供される。第1の温度調整流体が、複数の電池セルおよび液密ハウジングの内面に熱的に接触して、液密ハウジング内に含まれる。液密ハウジングは、液密ハウジングの内面と外面との間の第2の温度調整流体の流れを可能にするように構成される。さらに、電池モジュールと、電池モジュールの液密ハウジングに接続され、第2の温度調整流体の流れを確立させるように構成された二次温度調整システムとを備える電池システムが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液密ハウジング(110)と、
前記液密ハウジング(110)内に配置された複数の電池セル(120)と、
前記複数の電池セル(120)および前記液密ハウジング(110)の内面に熱的に接触して前記液密ハウジング(110)内に含まれた第1の温度調整流体と
を備える電池モジュールであって、
前記液密ハウジング(110)は、前記液密ハウジング(110)の前記内面と外面との間の第2の温度調整流体の流れを可能にするように構成されている
ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記液密ハウジング(110)の外側に配置され、前記液密ハウジング(110)の第1の流体チャネル(111)を介して前記液密ハウジング(110)の内部に接続されたポンプ(130)
をさらに備え、
前記ポンプ(130)は、前記第1の温度調整流体を前記第1の流体チャネル(111)を通して送ることによって、前記液密ハウジング(110)内の前記第1の温度調整流体の流れを生成するように構成されている
請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記液密ハウジング(110)、前記ポンプ(130)、および前記第1の流体チャネル(111)は、前記第1の温度調整流体の物質閉鎖系を形成する
請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記液密ハウジング(110)は、前記第2の温度調整流体の流れのための第2の流体チャネル(112)を備える
請求項1~3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記第2の流体チャネル(112)は、前記液密ハウジング(110)の内部に突出している
請求項4に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記第2の流体チャネル(112)は、円形の断面を有する
請求項4または5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記第2の流体チャネル(112)は、前記電池モジュールの主軸の方向に延びている
請求項4~6のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記液密ハウジング(110)は、
前記電池モジュールの主軸に沿って互いに反対側に位置した2つの開口端面を有する異形材ハウジング(113)と、
前記2つの開口端面において前記異形材ハウジング(113)を液密に閉じる第1のエンドプレート(114)および第2のエンドプレート(116)と
を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記第1のエンドプレート(114)と前記異形材ハウジング(113)との間の周囲に配置された第1のシールと、
前記第2のエンドプレート(116)と前記異形材ハウジング(113)との間の周囲に配置された第2のシールと
を備える、請求項8に記載の電池モジュール。
【請求項10】
前記第1のシールおよび前記第2のシールは、平面シールである
請求項9に記載の電池モジュール。
【請求項11】
前記第1のシールおよび前記第2のシールの各々は、前記電池モジュールの主軸に直交する平面内に配置される
請求項9または10に記載の電池モジュール。
【請求項12】
前記異形材ハウジング(113)は、第2の流体チャネル(112)が一体に形成された二重壁の異形材ハウジングとして構成される
請求項8~11のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項13】
前記異形材ハウジング(113)は、50W/(m・K)以上の熱伝導率を有する材料で作られる
請求項8~12のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項14】
前記異形材ハウジング(113)は、アルミニウムで作られる
請求項8~13のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項15】
前記第1のエンドプレート(114)および/または前記第2のエンドプレート(116)は、合成材料で作られる
請求項8~14に記載の電池モジュール。
【請求項16】
前記液密ハウジング(110)は、部分的に気体で満たされる
請求項1~15のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項17】
前記気体によって満たされた前記液密ハウジング(110)の体積百分率は、5%以下である
請求項16に記載の電池モジュール。
【請求項18】
前記液密ハウジング(110)は、気密である
請求項1~17のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項19】
前記液密ハウジング(110)は、少なくとも1バールの正圧までは気密である
請求項18に記載の電池モジュール。
【請求項20】
前記複数の電池セル(120)を保持するように構成された半殻状部分(141)を含んでいる複数のセルホルダ(140)であって、前記複数の電池セル(120)の側面が前記半殻状部分(141)によって覆われる、複数のセルホルダ(140)
をさらに備える、請求項1~19のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項21】
各々の電池セル(120)は、電池スタックを形成するために1つ以上の他の電池セル(120)に並列または直列に電気的に接続されている
請求項1~20のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項22】
前記電池スタックに接続された電気フィードスルー(118a、118b)
をさらに備える請求項21に記載の電池モジュール。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の電池モジュール(100)と、
前記電池モジュール(100)の前記液密ハウジング(110)に接続され、前記第2の温度調整流体の流れを確立させるように構成された二次温度調整システムと
を備える電池システム。
【請求項24】
前記第1の温度調整流体は、前記第2の温度調整流体と異なる、請求項23に記載の電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルの効率的かつ均質な温度調整を可能にする電池モジュールおよび電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
古典的な燃料の入手性に限界があると予想されること、およびエンジン排気ガスによる大気汚染の程度が高まっていることに鑑みて、近年、代替の駆動の解決策に注目が集まっている。一次エネルギー源にかかわらず、ほとんどの手法は、高い電力密度、長い寿命、および高い性能を有する電池モジュールおよびシステムを必要とする。
【0003】
電池システムを構築することは、多数の電池セルを作動ユニットに機械的、電気的、および熱的に統合することである。考慮すべきさらなる態様は、使用される構成要素の化学的適合性、熱暴走の場合の安全機能、および大量生産の容易さである。
【0004】
電池システム内の各々の電池セルの適切な温度制御が、とりわけ電池を充電または放電するときの重要な要件である。例えばリチウムイオン電池セルについて、温度限界が守られないと、電池性能が次第に低下する可能性があり、電池の急速かつ危険な破壊につながる可能性もある。
【0005】
従来から、電池システムにおける電池セルの温度制御を、例えば、円柱形の電池セルの基部に熱的に接触する冷却体を設けることによって間接的に行うことができる。冷却体に含まれるチャネルを通って、温度調整流体の流れが確立される。このようにして、電池セルによって生じた熱が、電池セルの外殻を介して冷却体に伝達される。この構成は、大きな熱慣性を呈し、高負荷の場合または充電の際に高い温度ピークをもたらす。この温度ピークは、最大電流を制限することによって防止することが可能である。しかしながら、従来のシステムは、急激な負荷変化を許容しない。
【0006】
あるいは、電池セルを、電池セルに直接熱接触する温度調整流体を介して直接冷却することができる。この目的のために、電池セルの外殻の周囲に液密中空空間を設けることができる。これらの中空空間を通して温度調整流体を送ることにより、主に電池セルの極において発生する熱が、外殻を通って温度調整流体へと伝達される。この技術は、浸漬冷却として知られている。このようなシステムの欠点は、電池セルの外殻の周囲の各々の中空空間が、通常は電池セルの外殻の2つの位置に、液密シールを必要とすることである。
【0007】
より高度なシステムにおいては、電池セルが完全に温度調整流体に浸漬される。この構成は、大量の温度調整流体を必要とし、システムの重量およびコストの増加をもたらす。さらに、温度調整流体は、電池セルの外殻と接触するだけでなく、極とも接触するため、特定の特性を示さなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に鑑み、電池セルの効率的かつ均質な温度調整を可能にする改善された電池モジュールおよび電池システムを提供することが、望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これは、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項が、好都合な実施形態を記載する。
【0010】
本発明は、液密ハウジングと、液密ハウジング内に配置された複数の電池セルとを備える電池モジュールに関する。電池モジュールは、複数の電池セルおよび液密ハウジングの内面に熱的に接触して液密ハウジング内に含まれる第1の温度調整流体をさらに備える。液密ハウジングは、液密ハウジングの内面と外面との間の第2の温度調整流体の流れを可能にするように構成される。
【0011】
言い換えれば、電池モジュールは、ハウジング内に複数の電池セルを備える。ハウジングは、液密である。すなわち、ハウジングに含まれる第1の温度調整流体が、ハウジングの外部に出ることができない。しかしながら、液密ハウジングは、例えば、電気フィードスルーまたは信号線のための開口部を備えてもよい。さらに、液密ハウジングは、液密ハウジングの内部を第1の温度調整流体のためのチャネル、管、パイプ、などに接続する開口部を備えてもよい。しかしながら、これらの開口部(フィードスルー開口部、流体接続開口部)は、周囲環境に対して封止される。
【0012】
各々の電池セルは、第1の温度調整流体に熱的に接触している。とくには、温度調整流体は、熱が主に極部分において発生するため、とりわけ各々の電池セルの極部分を覆うことができる。さらに、第1の温度調整流体は、ハウジングの内面と熱的に接触している。例えば、第1の温度調整流体は、ハウジングの内面全体またはハウジングの内面全体の一部分と接触することができる。したがって、電池セルによって発生した熱を、第1の温度調整流体を介してハウジングに伝達することができる。これを、例えば、伝導または対流によって実現することができる。ハウジング内、すなわちハウジングの内面と外面との間で、第2の温度調整流体の流れを、例えば二次温度調整システムによって確立させることができる。この目的のために、ハウジングは、第2の温度調整流体の流れを可能にするように構成される。例えば、ハウジングの壁が、第2の温度調整流体の流れのための内部中空空間を備えることができる。換言すれば、液密ハウジングの壁部分を、これらの壁部分の中を第2の温度調整流体が流れることができるように構成することができる。とくには、第2の温度調整流体を流すように配置された壁部分は、液密ハウジング内の第1の温度調整流体に熱的に接触する液密ハウジングの内面(または、その一部)に対応することができる。
【0013】
この構成において、電池モジュールの液密ハウジングは、内側の一次温度調整システム、例えばハウジングに収容された第1の温度調整流体と、外部の二次温度調整システム、とくにはハウジングの壁を通って流れる第2の温度調整流体との間で、熱交換器として機能することができる。第2の温度調整流体は電池セルに接触しないため、この第2の温度調整流体の特性に関する要件は、より低い。具体的には、第2の温度調整流体は、必ずしも絶縁体である必要がない。さらに、電池モジュールは、二次温度調整システムに接続される一体型の熱交換器を備える独立した小型のユニットである。
【0014】
液密ハウジングを使用することによって、複数の熱的に独立した電池モジュールを互いに電気的に接続して、電池システムを形成することができる。複数の熱的に独立した電池モジュールを、二次温度調整システムに接続することができる。これにより、複数の電池モジュールの各々の個別の温度制御を、これらのモジュール間の温度差を最小限に抑え、あるいは意図的に引き起こすことができるように、可能にすることができる。
【0015】
またさらに、それぞれの温度調整流体に関して内部の一次温度調整システムを二次温度調整システムから分離することによって、特定の電気的特性を示さない一般的な第2の温度調整流体を利用することが可能になる。具体的には、第2の温度調整流体は、電池セル、とくにはその極部分に接触することがないため、必ずしも絶縁体である必要がない。
【0016】
一実施形態において、電池モジュールは、液密ハウジングの外側に配置され、液密ハウジングの第1の流体チャネルを介して液密ハウジングの内部に接続されたポンプをさらに備える。ポンプは、第1の温度調整流体を第1の流体チャネルを通して送ることによって、液密ハウジング内の第1の温度調整流体の流れを生成するように構成される。
【0017】
すなわち、第1の温度調整流体の流れを、ポンプによって液密ハウジングの内部に能動的に確立させることができる。液密ハウジングの第1の流体チャネルは、液密ハウジングの壁内の第2の温度調整流体の流れから空間的に分離されてよい。言い換えると、第1の温度調整流体と第2の温度調整流体とが、互いに混ざることがない。内部の温度調整サークル(ポンプ、第1のチャネル、液密ハウジングの内)が、二次温度調整サークル(外部の温度調整システム、液密ハウジングの壁内の第2の温度調整流体の流れ)から空間的に分離される。
【0018】
液密ハウジング内で、第1の温度調整流体の流れを、例えば、ハウジングに対する電池セルの配置によって形成されてよい専用チャネルによって案内することができる。すなわち、第1の温度調整流体の流れを、専用の管またはパイプではなく、電池セルの特定の配置によって決定することができる。換言すれば、前記チャネルを、専用の物理的な導管、パイプ、または管によって形成する必要はなく、電池セル、センサ、ハウジング部分、ホルダ、ワイヤ、他の電気接続手段、などの物理的な中実の構成要素によって占有されない液密ハウジング内の空間の構成によって形成することができる。
【0019】
この構成において、電池モジュール内の温度の均質性を高めることができ、さらに、電池セルとハウジングとの間の熱伝達を改善することができる。
【0020】
一実施形態において、液密ハウジング、ポンプ、および第1の流体チャネルは、第1の温度調整流体の物質閉鎖系を形成する。
【0021】
すなわち、第1の温度調整流体は、液密ハウジング、第1の流体チャネル、およびポンプの内部空間によって提供される空間内に封入される。言い換えると、内部の系(例えば、液密ハウジングの内部、第1の流体チャネル、およびポンプの内部)と電池モジュールの外部との間の物質(例えば、第1の温度調整流体)の交換が防止される一方で、熱エネルギー、すなわち熱の交換は生じることができる。
【0022】
一実施形態において、液密ハウジングは、第2の温度調整流体の流れのための第2の流体チャネルを備える。
【0023】
すなわち、液密ハウジングを、第2の流体チャネルを設けることによって液密ハウジングの内面と液密ハウジングの外面との間の第2の温度調整流体の流れを可能にするように構成することができる。言い換えると、第2の流路は、液密ハウジングの壁内に形成される。さらに、液密ハウジングは、複数の第2の流路を備えてもよい。第2の流路は、電池モジュールの内部、第1の流路、またはポンプに流体に関して連絡しない。
【0024】
一実施形態において、第2の流体チャネルは、液密ハウジングの内部に突出する。
すなわち、第1の温度調整流体に熱的に接触する液密ハウジングの内面が、構造化された非平坦な表面を呈する。例えば、内面は、波状または溝付きの表面を呈してよい。内面は、溝および隆起部を有することができる。例えば、第2の流体チャネルの経路は、内面のそれぞれの隆起部の経路に対応または一致してよい。例えば、隆起部および第2の流路を、第2の流路がそれぞれの隆起部内に位置するように配置することができる。第1の温度調整流体との熱接触の面積が増加することが、非平坦な表面を呈する内面の特段の利点であり得る。これにより、チャネルの壁を介した第1の温度調整流体と第2の温度調整流体との間の熱伝達率が改善され、より高い冷却/加熱効率がもたらされる。
【0025】
例えば、第2の流体チャネルは、円形の断面を有する。
第2の流体チャネルの断面は、楕円形、長方形、などであってもよい。さらに、第2の流体チャネルは、断面が円形の部分と、断面が異なる部分とを呈してもよい。
【0026】
一実施形態において、第2の流体チャネルは、電池モジュールの主軸の方向に延びる。
電池モジュールの主軸は、ハウジングに対して所定の方向に延びる軸であってよい。例えば、主軸は、電池モジュールの基軸であってよい。例えば、主軸は、電池モジュールまたは液密ハウジングの最大または最小の物理的サイズの方向に対応する方向に延びてよい。例えば、主軸は、電池モジュールまたは液密ハウジングの最高次または最低次の(離散的な)回転対称軸の方向に対応する方向に延びてよい。液密ハウジングが実質的に箱形である場合、電池モジュールの主軸は、(概念的な)外接箱の側面に垂直な方向に延びてよい。
【0027】
一態様によれば、液密ハウジングは、異形材ハウジングと、第1のエンドプレートと、第2のエンドプレートとを備える。異形材ハウジングは、電池モジュールの主軸に沿って互いに反対側に位置する2つの開口端面を有する。第1のエンドプレートおよび第2のエンドプレートは、2つの開口端面において異形材ハウジングを液密に閉じる。
【0028】
異形材ハウジングは、互いに反対側に位置する2つの開口面と、長方形または実質的に長方形の断面を有するように配置された4つの壁部分とを有する箱形または実質的に箱形のハウジング部分であってよい。電池モジュールの主軸は、異形材ハウジングの第1の開口面から第2の開口面への方向に延びてよい。異形材ハウジングは、1つ以上の面部分の外面および/または内面に溝および/または隆起部を備えることができる。溝は、電池モジュールの主軸の方向に延びてよい。第1および第2のエンドプレートは、異形材ハウジングの開口面を液密の様相で閉じるように異形材ハウジングに取り付けられる。これにより、電池モジュールの内部が、接触点または接触領域における第1の温度調整流体の漏れに対して封止される。
【0029】
一実施形態において、電池モジュールは、第1のエンドプレートと異形材ハウジングとの間の周囲に配置された第1のシールと、第2のエンドプレートと異形材ハウジングとの間の周囲に配置された第2のシールとを備える。
【0030】
すなわち、第1および第2のエンドプレートを異形材ハウジングに取り付けることができ、エンドプレートと異形材ハウジングとの間の接触領域にシールが設けられる。シールは、実質的に異形材ハウジングの断面に従って周状に延びる。
【0031】
例えば、第1のシールおよび第2のシールは、平面シールである。
一実施形態において、第1のシールおよび第2のシールの各々は、電池モジュールの主軸に直交する平面内に配置される。
【0032】
一実施形態において、異形材ハウジングは、二重壁の異形材ハウジングとして構成され、第2の流体チャネルが一体的に形成される。
【0033】
言い換えれば、異形材ハウジングは、外壁および内壁部分を備え、両者の間に第2の流体チャネルが一体的に形成される。
【0034】
一実施形態において、異形材ハウジングは、50W/(m・K)以上の熱伝導率を有する材料で作られる。
【0035】
50W/(m・K)以上の熱伝導率は、液密ハウジングを介した第1の温度調整流体と第2の温度調整流体との間の熱伝達の改善を可能にすることができる。異形材ハウジングは、好ましくは100W/(m・K)以上、より好ましくは150W/(m・K)以上、より好ましくは200W/(m・K)以上、より好ましくは300W/(m・K)以上、より好ましくは400W/(m・K)以上の熱伝導率を有する材料で作られてよい。
【0036】
例えば、異形材ハウジングは、アルミニウム製である。異形材ハウジングは、金、銀、チタン、鋼、銅、などのような別の材料で作られてもよい。例えば、異形材ハウジングは、金属製であってよい。
【0037】
一実施形態において、第1のエンドプレートおよび/または第2のエンドプレートは、合成材料で作られる。
【0038】
例えば、第1のエンドプレートおよび/または第2のエンドプレートは、プラスチックまたはガラス繊維強化プラスチックで作られる。例えば、第1のエンドプレートおよび/または第2のエンドプレートは、アクリルニトリル-ブタジエン-スチロールコポリマー(ABS)、ナイロン12(ポリアミド12、PA12)、などのような別の材料で作られてもよい。
【0039】
一実施形態において、液密ハウジングは、部分的に気体で満たされる。
換言すれば、液密ハウジングは、第1の温度調整流体で(電池セル、接続手段、などとして含まれる物理的な中実の構成要素に加えて)完全に満たされなくてもよく、或る量の気体も含む。これにより、例えば温度の変化に起因する第1の温度調整流体の体積の変化が、液密ハウジング内の圧力を大きく増減させることなく可能になる。
【0040】
例えば、液密ハウジングは、空気、チッ素、または希ガスなどの不活性ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)で部分的に満たされてよい。
【0041】
例えば、液密ハウジングの気体によって満たされる体積百分率は、5%以下である。
例えば、この体積百分率は、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、あるいは1%以下であってよい。例えば、体積百分率は、所定百分率(例えば、0.1%、0.2%、1%、など)以上であってよい。例えば、体積百分率は、0.1%~1%の間、1%~2%の間、2%~3%の間、3%~4%の間、4%~5%の間、などであってよい。前記体積百分率は、例えば298.15K(25℃)などの所定の温度における液密ハウジングの内部の総体積に対する体積百分率に関することができる。
【0042】
例えば、所定の温度における気体の体積と第1の温度調整流体の体積との比は、1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、10%以下、または15%以下、などであってよい。所定の温度における気体の体積と第1の温度調整流体の体積との比は、所定の割合(例えば、0.1%、0.2%、1%、など)を上回ってもよい。
【0043】
一実施形態において、液密ハウジングは気密である。
すなわち、液密ハウジングは、気体が液密ハウジングに進入し、あるいは液密ハウジングから逃げ出すことを、防止するように構成されてよい。
【0044】
例えば、液密ハウジングは、少なくとも1バールの正圧までは気密である。
例えば、液密ハウジングは、少なくとも1バールの負圧までは気密である。
【0045】
正圧は、液密ハウジングの外側の圧力が液密ハウジング内の圧力よりも低い液密ハウジングの外部と液密ハウジングの内部との間の圧力差である。負圧は、液密ハウジングの外側の圧力が液密ハウジング内の圧力よりも高い液密ハウジングの内部と液密ハウジングの外部との間の圧力差である。1バールは、105Paであり、したがって通常の大気圧にほぼ相当する。
【0046】
例えば、液密ハウジングは、所定のしきい値以下の漏れ速度を呈することができる。例えば、液密ハウジングは、10-2mbar・l/s、10-3mbar・l/s、10-4mbar・l/s、10-5mbar・l/s、または10-6mbar・l/s以下の漏れ速度を呈してよい。
【0047】
一実施形態において、電池モジュールは、複数の電池セルを保持するように構成された半殻状部分を含んでいる複数のセルホルダさらに備える。複数の電池セルの側面が、半殻状部分によって覆われる。
【0048】
すなわち、電池セルは、電池モジュールのセルホルダによって保持され、電池セルの側面が完全に覆われ、あるいはかなりの程度(例えば、95%超、90%超)まで覆われる。側面の外殻と、上側および下側の基部に位置する2つの極とを有する円柱形の電池セルの場合、セルホルダの半殻状部分は、実質的に半円形の断面を有する。なお、電池モジュールはこれに限定されず、半殻状部分は、電池セルの形状に応じた断面を有してよい。すなわち、例えば、非円柱形の電池セルの場合、半殻状部分は、非円形であってよいが、電池セルの形状に対応する。さらに、電池セルと接する半殻状部分の内面の形状が、電池セルの形状に対応できる一方で、半殻状部分の外面の形状は、電池の形状と異なってもよい。各々の電池セルは、嵌まり合いにて接触した2つの半殻状部分の間に保持されてよい。例えば、各々の半殻状部分の厚さは、所定のしきい値を上回ってよい。
【0049】
この構成において、第1の温度調整流体を、熱が主に発生する電池セルの極に沿って優先的に導くことができる。さらに、特定の厚さを有するセルホルダを設けることにより、第1の温度調整流体の空間の体積が減少する。これにより、電池モジュールの重量を減らすことができる。さらに、第1の温度調整流体および液密ハウジングを介した電池セルから第2の温度調整流体への熱伝達を改善することができる。
【0050】
一実施形態において、各々の電池セルは、電池スタックを形成するために1つ以上の他の電池セルに並列または直列に電気的に接続される。
【0051】
言い換えれば、複数の電池セルは、電池セルの部分集合を含むことができ、各々の部分集合の電池セルは、互いに並列に接続される。さらに、電池セルの部分集合が、互いに直列に接続される。これにより、電池スタックが形成され、電池スタックによって提供される全体電圧は、直列に接続されたサブセットの数および使用される電池セルの種類によって決まる。
【0052】
一実施形態において、電池モジュールは、電池スタックに接続された電気フィードスルーを備える。
【0053】
電気フィードスルーは、液密ハウジングを貫いて電池スタックとの電気的接続を提供することができる。電池モジュールは、電池モジュールの正端子および負端子としての2つの電気フィードスルーを備えることができる。
【0054】
別の態様によれば、本発明は、電池システムに関する。電池システムは、上記の態様およびその変種のうちのいずれか1つによる電池モジュールと、二次温度調整システムとを備える。二次温度調整システムは、電池モジュールの液密ハウジングに接続され、第2の温度調整流体の流れを確立させるように構成される。
【0055】
換言すれば、電池システムは、例えば電池セルおよび液密ハウジングの内面に熱的に接触した第1の温度調整流体などの一次温度調整システムを含む電池モジュールと、二次温度調整システムとを備える。液密ハウジングは、第1の温度調整流体と第2の温度調整流体との間で熱を交換するための熱交換器として機能する。具体的には、熱を電池セルから第1の温度調整流体に伝達することができ、さらに液密ハウジングを介して第2の温度調整流体に伝達することができる。次いで、第2の温度調整流体によって吸収された熱を、第2の温度調整流体と周囲空気であってよい熱だめとの間で熱を交換するための第2の熱交換器であってよい二次温度調整システムの専用の放熱手段によって逃がすことができる。同様に、二次温度調整システムの専用の加熱手段によって第2の温度調整流体を加熱することによって、電池モジュールに熱を伝達することができる。
【0056】
一実施形態において、第1の温度調整流体は、第2の温度調整流体と異なる。
例えば、第1の温度調整流体は、電気絶縁性である温度調整流体であってよい。第2の温度調整流体は、電池モジュールの液密ハウジング内の極および/または電気接続手段と接触することがないため、必ずしも電気絶縁性である必要はない。例えば、第2の温度調整流体は、水とグリコールとの混合物であってよい。
【0057】
本発明の電池システムは、第2の温度調整流体をハウジングの内面と外面との間に流すことを可能にすることによって二次温度調整システムと熱的に結合させることができる内部温度調整システムによって、改善された温度制御能力、電池モジュール内の電池セルの均一な冷却、電池モジュールの重量の低減、および/または改善されたシステム柔軟性を提供する。
【0058】
本発明のさらなる利点および長所は、実施形態の詳細な説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図3】電池モジュールの外観図であり、カバーは示されていない。
【
図4】電池モジュールの異形材ハウジングを示している。
【
図5】電池モジュール内の電池セルの基本的な配置の切断図である。
【
図6】異形材ハウジング内の電池セルの配置の断面図である。
【
図7】電池モジュール内の第1の温度調整流体の流れを示している。
【
図8】電池モジュールのハウジング内の第2の温度調整流体の流れを示している。
【
図9】或る方向から見た並列な複数の電池セルの例示的な電気的接続を示している。
【
図10】別の方向から見た並列な複数の電池セルの例示的な電気的接続を示している。
【
図11】別の方向から見た並列な複数の電池セルの例示的な電気的接続を示している。
【
図12】別の方向から見た並列な複数の電池セルの例示的な電気的接続を示している。
【
図13】セルホルダによって保持された電気的に接続された電池セルを示している。
【
図14】セルホルダによって保持された電気的に接続された電池セルを示している。
【
図15】それぞれのセルホルダを有する2組の並列接続された電池セルを示している。
【
図16】それぞれのセルホルダを有する2組の並列接続された電池セルを示している。
【
図17】複数の電池セルを含む電池スタックを示している。
【
図18】複数の電池セルを含む電池スタックを示している。
【
図21】電池スタック内の電池セルの電気的接続の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
好ましい実施形態の説明
以下で、好ましい実施形態を、図面を参照することによって詳しく説明する。
【0061】
図1および
図2が、異なる方向から見たときの電池モジュール100の外観図を示している。電池モジュールは、液密ハウジング110を備え、液密ハウジング110は、第1のエンドプレート114、異形材ハウジング113、および第2のエンドプレート116を備える。さらに、電池モジュール100は、ポンプカバー115と、2つの電気フィードスルー117a、117bと、二次温度調整システムとの接続のためのおよび4つのポート118a~118dとを備える。
【0062】
液密ハウジング110は、直方体の実質的形状を有し、互いに反対側の2つの面が、第1のエンドプレート114および第2のエンドプレート116によって形成され、残りの4つの面が、異形材ハウジング113によって形成されている。ポンプカバー115は、第1のエンドプレート114の外側表面に配置され、第1のエンドプレート114の外側に取り付けられたポンプ130を覆う。第1のエンドプレート114と異形材ハウジング113との間、および第2のエンドプレート116と異形材ハウジング113との間には、ハウジング110を液密の様相で閉じるために、平面シールが設けられる。平面シールは、異形材ハウジング113の開口端面を周状に囲む。
【0063】
液密ハウジング110は、互いに接続されて電池スタックを形成する複数の電池セル120を収容する。その詳細は、以下でさらに説明される。さらに、第1の温度調整流体が、液密ハウジング110内に含まれる。第1の温度調整流体は、好ましくは高い熱伝導率を有する絶縁性流体である。
【0064】
異形材ハウジング113は、実質的に箱形であり、互いに反対側の2つの開口面を有する。異形材ハウジング113は、アルミニウム製であり、したがって高い熱伝導率を示す。しかしながら、ハウジングの材料は、アルミニウムに限定されず、熱伝導率が50W/(K・m)以上、好ましくは100W/(K・m)以上、より好ましくは150W/(K・m)以上、さらに好ましくは200W/(K・m)以上の他の材料で製作されてもよい。
【0065】
異形材ハウジング113は、反対向きの2つの外面に溝および/または隆起部を備える。しかしながら、異形材ハウジング113は、反対向きの2つの面に溝および/または隆起部を有することに限定されない。異形材ハウジング113は、ただ1つの面、2つの面、3つの面、または4つの面すべてに溝および/または隆起部を有することができる。
図1および
図2に示される電池モジュール100において、溝および/または隆起部は、電池モジュール100の主軸(y軸)の方向に延びている。主軸の方向は、異形材ハウジング113の最大物理的サイズの方向に沿って延びている。
【0066】
異形材ハウジング113は、第1のエンドプレート114および第2のエンドプレート116を液密の様相で取り付けるために、前面および後面のねじ穴をさらに備える。
【0067】
第1のエンドプレート114および第2のエンドプレート116は、実質的に平坦な長方形である。第1および第2のエンドプレート114、116の実質的に長方形の形状は、異形材ハウジング113の断面の形状に対応する。第1および第2のエンドプレート114、116は、異形材ハウジング113のねじ穴の位置に対応する位置にねじ用の穴を備える。
【0068】
第1のエンドプレート114は、第1のエンドプレート114のねじ用の穴および異形材ハウジング113の対応するねじ穴に挿入された複数のねじによって、異形材ハウジング113の一方の開口端面に取り付けられる。第2のエンドプレート116は、第2のエンドプレート116のねじ用の穴および異形材ハウジング113の対応するねじ穴に挿入された複数のねじによって、異形材ハウジング113の他方の開口端面に取り付けられる。異形材ハウジング113へのエンドプレート114、116の取り付けは、ねじならびに対応するねじ用の穴およびねじ穴を使用して実現されることに限定されず、例えばボルトおよびナットなどの異なる取り付け手段を使用して実現されてもよい。
【0069】
電気フィードスルー117a、117bは、液密ハウジング110の内部に含まれる電池セル120に接続される。具体的には、電気フィードスルー117a、117bのうちの一方が、電池モジュール100内の複数の電池セル120によって形成された電池スタックのプラス極に接続される。電気フィードスルー117a、117bのうちの他方が、電池モジュール100の内部の電池スタックのマイナス極に接続される。すなわち、電池モジュール100の電圧に、電気フィードスルー117a、117bを介して外部からアクセス可能である。電池セル120への電気的接続を提供する電気フィードスルー117a、117bは、第1および第2のエンドプレート114、116におけるそれぞれの封止された穴に配置される。しかしながら、電気フィードスルー117a、117bは、異形材ハウジング113に設けられてもよい。
【0070】
第1および第2のエンドプレート114、116の各々に、二次温度調整システムとの接続のための2つのポート118a~118dが設けられている。二次温度調整システムの詳細は、以下でさらに提供される。
【0071】
図3が、電池モジュール100の外観図であり、ポンプカバー115は示されていない。電池モジュール100は、第1のエンドプレート114の外面に取り付けられたポンプ130を備える。ポンプ130は、第1の流体チャネル111を介して液密ハウジング110の内部に接続されたマイクロポンプであってよい。ポンプ130は、第1の流体チャネル111を通して第1の温度調整流体を送るように構成されている。これにより、第1の温度調整流体の流れが、液密ハウジング110の内部に確立される。
【0072】
図4が、異形材ハウジング113の図である。異形材ハウジング113は、異形材ハウジング113の内面と外面との間で異形材ハウジング113と一体に形成された複数の第2の流体チャネル112を備える。第2の流体チャネル112は、円形の断面を有し、異形材ハウジング113の内部に突出している。これにより、異形材ハウジング113内の第1の温度調整流体との接触の面積が増加し、第1の温度調整流体と複数の第2の流体チャネル112内の第2の温度調整流体との間の熱伝達率の改善につながる。第2の温度調整流体は、電池セル120と接触しないため、絶縁体である必要はなく、例えば、水とグリコールとの混合物などの一般的な温度調整流体であってよい。
【0073】
図4に示される異形材ハウジング113は、電池モジュール100の主軸yの方向に延びる9つの直線状の第2の流体チャネル112を対向する2つの面に備えているが、異形材ハウジング113は、これに限定されない。とくには、異形材ハウジング113は、異なる数の第2の流体チャネル112を備えてもよい。さらに、第2の流体チャネル112は、異形材ハウジング113の1つ、2つ、3つ、または4つの面に設けられてよい。さらに、第2の流体チャネルは、湾曲していても、蛇行していてもよい。さらに、断面は、楕円形、長方形、などであってもよい。
【0074】
図5が、電池モジュール100内の電池セル120の基本的な配置の切断図である。電池モジュール100は、液密ハウジング110内に複数の電池セル120を備える。電池セル120は、リチウムイオン、ニッケルカドミウム、ニッケル水素、鉛酸、ポリマー系タイプ、または任意の他のタイプの電池セルであってよい。電池セル120は、円柱の形状を有し、その両側の円形の面に電池セル120の極が配置される。電池セル120は、円形の面が電池モジュール100の主軸yと直交するように配置される。電池セル120は、y軸に沿って見たとき、お互いに対して六角形に配列される。
【0075】
図6が、異形材ハウジング113内の電池セル120の配置の断面図である。図において、電池セル120および第2の流体チャネル112は、あくまでも見本として示されているにすぎない。電池セル120は、密集六角形配置にて配置され、第2の流体チャネル112を含む異形材ハウジング130の対向する2つの側面に隣接する電池セル120間の距離は、隣接する電池セル120間の距離、および電池セル120と異形材ハウジング113の他の2つの側面の内面との間の距離よりも大きい。この配置により、液密ハウジング110を通る第1の温度調整流体の流れを案内するために、電池セル120が存在しない空間119が、電池モジュール100の両側に形成される。しかしながら、電池セル120の配列は、六角形配置に限られず、異なっていてもよい。例えば、電池セルを、長方形または正方形の配置に従って配置してもよい。
【0076】
第1のエンドプレート114の第1のチャネル111が、空間119の場所に対応する位置において、ポンプ130を電池モジュール100の内部に接続する。この構成により、第1の温度調整流体の流れを、ポンプ130によって電池セル120の周りに並列な様相でx方向に確立させることができる。
【0077】
図7が、この第1の温度調整流体の流れを、太い矢印で示している。第1の温度調整流体は、ポンプ130によって、第1の流体チャネル111を通って、空間190の位置に対応する位置において液密ハウジング110の内部へと送られる。空間190は、その比較的大きい断面ゆえに、y方向の流れの抵抗が比較的小さく、したがって第1の温度調整流体は、x方向に並列な様相で電池セル120の周りを流れる。その後に、第1の温度調整流体は、反対側に位置する他方の空間190に進入し、第1の流体チャネル111を介してポンプ130に再び進入する。
【0078】
第1および第2のエンドプレート114、116は、異形材ハウジング113の第2の流路112をポート118に接続する第2の流体チャネルを備える。すなわち、異形材ハウジング113の一方側の第2の流体チャネル112は、エンドプレート114、116の第2の流体チャネルに合流し、二次温度調整システムとの接続のための継手ポート118につながる。
【0079】
図8が、この二次温度調整システムの第2の温度調整流体の流れを、太い矢印で示している。第2の温度調整流体は、ポート118、エンドプレートの第2の流体チャネル、異形材ハウジング113の第2の流体チャネル112、および他方のエンドプレートの第2の流体チャネルを通り、別のポート118を通って電池モジュール100の外へと送られる。
【0080】
図7および
図8に示されるように、空間119内の第1の温度調整流体の流れは、異形材ハウジング113の第2の流体チャネル112内の第2の温度調整流体の流れとは反対の方向に向けられる。これにより、第1の温度調整流体と第2の温度調整流体との間の熱的結合が最適化される。
【0081】
すなわち、液密ハウジング110は、液密ハウジング110(ポンプ130および第1の流体チャネル111を含む)内に封止された第1の温度調整流体と二次温度調整システムの第2の温度調整流体との間の熱交換器として機能する。
【0082】
図9~
図12が、さまざまな方向から見た並列な複数の電池セル120の例示的な電気的接続を示している。図は、2つの電気接続バー121によって並列なやり方で互いに接続された8つの電池セル120を示している。これらの電気接続バー121は、例えば、金属製である。第1の接続バー121は、電池セル120のプラス極同士を接続する。第2の接続バー121は、電池セル120のマイナス極同士を接続する。
【0083】
接続バー121は、電池セル120のプラス極またはマイナス極に溶接されてよい。例えば、各々の接続バー121は、電池セル120のプラス極およびマイナス極のいずれか一方にレーザ溶接されてよい。接続バー121は、電圧センサ(図示せず)などの測定装置との接続のための端子部122を備える。互いに並列に接続される電池セル120が、8個より多くても、あるいは少なくてもよいことは、言うまでもない。さらに、電気接続手段は、バー121に限らず、シートなどであってもよい。
【0084】
図13および
図14が、セルホルダ140によって保持された
図9~
図12の電気的に接続された電池セル120を示している。セルホルダ140は、複数の電池セル120をそれぞれ保持するための複数の半殻状部分141を備える。具体的には、電池セル120は、その側面において保持され、極部分は覆われないままである。セルホルダ140は、ガラス繊維強化プラスチックなどの合成材料のような非導電性材料で製作されてよい。セルホルダ140は、液密ハウジング110および/または別のセルホルダ140との接続のためのねじ用の穴などの取り付け部分を備えることができる。
【0085】
電池セル120の側面の全体または実質的に全体が、2つのセルホルダ140の半殻状部分141によって覆われる。図においては、説明のために、一方のセルホルダ140のみが示されている。しかしながら、電池セル120の側面は、図示の下側セルホルダ140および図示されていない上側セルホルダによって覆われる。下側セルホルダ140および上側セルホルダの半殻状部分は、電池セル120の側面を嵌まり合いにて覆う。セルホルダ140は、液密ハウジング110内の第1の温度調整流体が占める体積を減らすように構成される。例えば、セルホルダは、所定のしきい値を上回る厚さを呈することができる。
【0086】
図15および
図16が、それぞれのセルホルダ140を有する2組の並列接続された電池セル120を示しており、2組の並列接続された電池セルが、互いに直列に接続されている。
【0087】
図17および
図18が、y軸に沿って両方向から見た複数の電池セル120を含む電池スタックを示している。
図19および
図20が、電池スタックの全体図である。電池セル120は、異形材ハウジング113の開口端面に対応する前面および後面において、接続シート123a~123dによって互いに接続されている。
【0088】
具体的には、第1のエンドプレート114の位置に対応する面において、
図17に示されるように、上側3列の電池セル120のプラス極が第1の接続シート123aによって互いに接続されている。第1の接続シート123aは、第1の電気フィードスルー117aに接続される。さらに、中央3列の電池セル120のマイナス極および下側3列の電池セル120のプラス極が、第2の接続シート123bによって互いに接続されている。
【0089】
第2のエンドプレート116の位置に対応する面において、
図18に示されるように、上側3列の電池セル120のマイナス極および中央3列の電池セル120のプラス極が、第3の接続シート123cによって互いに接続されている。さらに、下側3列の電池セル120のマイナス極が、第4の接続シート123dによって互いに接続されている。第4の接続シート123dは、第2の電気フィードスルー117bに接続される。
【0090】
電池モジュール100、とくには電池スタックは、上述の構成に限定されない。とくには、電池セル120は、電池セル120のタイプ、総電圧、および達成すべき性能に応じて、異なるやり方で配置されてもよい。
【0091】
さらに上述したように、各々の電池セル120は、電池セル120の下方および上方に位置するそれぞれのセルホルダ140の2つの半殻状部分141によって保持されている。
【0092】
図21が、電池スタック内の電池セル120の電気的接続の概略図である。明瞭さおよび理解のしやすさの理由から、電池スタックは、6層の電池セル120を含むものとして示されており、各々の層が、互いに並列または直列に接続された9つの電池セル120を含んでいる。層は、4つの接続シート123a~123dによって互いに接続されている。電池スタックの全体の電圧が、2つの電気フィードスルー117aおよび117bの間にもたらされる。図示は、電池スタックの接続原理の単純な視覚化であり、したがって、電池モジュール100は、図示された電池セル120、列、および層の数に限定されない。
【0093】
図22および
図23は、電池モジュール100の外観を示す図であり、第1および第2のエンドプレート114、116ならびにポンプカバー115は、図示されていない。
【0094】
電池モジュール100の充電時や、電池モジュールが大電流を供給する場合、電池モジュール100の内部において、主に電池セルの極の位置で熱が発生する。この熱は、第1の温度調整流体に伝達され、第1の温度調整流体の体積の変化をもたらし得る。液密ハウジング110が第1の温度調整流体で完全に満たされている場合、液密ハウジング110内の圧力が上昇し得る。したがって、液密ハウジング110は、気密であるように構成される。例えば、液密ハウジングは、1バール、1.5バール、2バール、などの正圧まで気密であってよい。同様に、第1の温度調整流体の温度が低下すると、液密ハウジング110内の圧力が低下し得る。したがって、液密ハウジングは、1バールの負圧まで気密であるように構成される。これを、例えば、充分な数のねじを適切なシールと共に使用して互いに気密に接続される充分な厚さの異形材ハウジング113、ならびに第1および第2のエンドプレート114、116を利用することによって達成することができる。
【0095】
液密ハウジング110内の圧力の過度の上昇/低下を伴うことなく第1の温度調整流体の体積変化を許容するために、液密ハウジング110は部分的に気体で満たされてもよい。例えば、気体は、液密ハウジングの内部の1%、2%、3%、4%、5%、などまでの体積百分率を占めることができる。前記電圧百分率は、前記値のうちの任意の2つの値の間の範囲内であってもよい。体積百分率は、所定の値(例えば、0.1%、0.2%、1%、など)を上回ってもよい。体積百分率は、例えば298.15K(25℃)などの所与の温度における液密ハウジング110の内部の体積に対する体積百分率を指すことができる。これに限られないが、液密ハウジング110に含まれる気体は、例えば空気であってよい。
【0096】
電池モジュール100は、上述の構成要素に加えて、電池セル120、セルホルダ140、液密ハウジング110の内面、などに取り付けられた1つ以上の温度センサと、温度センサ信号を電池モジュール100の外部に提供するためのそれぞれの温度検知線とを備えることができる。電池モジュール100は、例えば、電池モジュール100の外部の電圧センサに電圧信号を提供するための接続バー121または接続シート123a~123dに接続された1つ以上の電圧感知線をさらに備えることができる。さらに、電池モジュール100は、ヒューズなどの1つ以上の電流制限素子を備えてもよい。電池モジュール100は、ポンプ130に接続されたマイクロプロセッサなどのコントローラをさらに備えてもよい。コントローラは、電圧センサからの電圧信号および/または温度センサからの温度信号を受信することができる。温度信号および/または電圧信号、ならびに例えばそれぞれの設定点に基づいて、コントローラは、ポンプ130の動作を制御する。
【0097】
一実施形態による電池システムは、上述のとおりの少なくとも1つの電池モジュール100と、電池モジュール100のポート119に接続された二次温度調整システムとを備える。温度調整システムは、例えば、ポンプと、熱交換器と、第2の温度調整流体の流れを確立させるための流体管とを備える。例えば、温度調整システムは、複数の電池モジュール100に接続されてもよい。例えば、第2の温度調整流体は、並列または直列の様相で複数の電池モジュール100を通って流れることができる。温度調整システムの熱交換器は、第2の温度調整流体とヒートシンクおよび/または熱源との間で熱を交換するように構成されてよい。ヒートシンクまたは熱源は、例えば、周囲空気であってもよい。さらに、温度調整システムは、各々の電池モジュール100の温度制御を可能にするために第2の温度調整流体を加熱するように構成された電気ヒータを備えてもよい。
【0098】
以下で、電池モジュール100および電池システムの考え方をまとめる。
電池モジュール/システムの中心的なアイデアは、複数の電池セル120からなる電池モジュール100のための温度調整回路を、閉じた系として設計することである。これは、定められた液体リザーバ(第1の温度調整流体)が、電池セル120と一緒に、割り当てられた空間(液密ハウジング110、ポンプ130、および第1の流体チャネル111)に封入されることを意味する。第1の温度調整流体は、そこを循環し、電池セルの極から熱を逃がす。非導電性であるが良好な熱伝導性を有する第1の温度調整流体を介して、熱が異形材ハウジング113の内壁へと伝達される。二次温度調整システムに接続されるように構成された第2の流体チャネル112が、異形材ハウジング113に含まれる。したがって、異形材ハウジング113は、ハウジングの形態の熱交換器を形成する。
【0099】
エンドプレート114、116および異形材ハウジング113が協働して、閉じた液密ハウジング110を形成する。エンドプレート114、116と異形材ハウジング113との間のシールが、最大1バールの過圧でもハウジングが密封されたままであり、第1の温度調整流体が漏れないことを保証する。
【0100】
ポンプ130(例えば、マイクロポンプ)が、液密ハウジング110内の第1の温度調整流体を運ぶことができ、循環を生じさせることができるように、液密ハウジング110のエンドプレート114、116の一方に取り付けられ、エンドプレート114、116に一体化された第1の流体チャネル111に直接接続される。この循環は、異形材ハウジング113と第1の温度調整流体との間の放熱または熱の吸収を支援する。次いで、異形材ハウジング113は、一体化された第2の流体チャネル112を介して、例えば水-グリコール混合物などの第2の温度調整流体によって熱を逃すことができる。これにより、例えば-50℃~60℃の温度範囲について、異形材ハウジング113に熱交換器の機能が与えられる。電池モジュール100の動作のための温度範囲は、第2の流体チャネル112内の第2の温度調整流体の流動点に依存し得る。
【0101】
液密ハウジング110は、互いに電気的に接続され、構造部品、すなわちセルホルダ140によって所定の位置に保持された個々の電池セル120を収容する。セルホルダ140は、個々の電池セル120の側面を覆う機能も有する。セルホルダ140は、側面の約50%を覆うことができる。次の列の電池セル120のセルホルダ140が、このセルホルダ140に嵌まり合って隣接し、電池セル120の側面が全周にわたって第1の温度調整流体から境界付けられるようなやり方で、追加の表面を覆う。これにより、第1の温度調整流体が占める空間が少なくなる。
【0102】
密閉容器を呈する液密ハウジング120は、例えば空気などの気体の層が上部領域にのみ生じる程度まで、第1の温度調整流体で満たされる。この領域は、第1の温度調整流体が温度下で膨張するときに、封入された空気の体積が第1の温度調整流体の膨張の体積だけ減少するように設計される。これにより、系内の圧力の上昇はわずかである。液密ハウジング110のシールは、この約0.3バール、1.0バール、1.5バール、などの圧力上昇に耐えるように設計される。
【0103】
液密ハウジング110を用いるがゆえに、熱的に独立した電池モジュール100を所望のとおりに互いに電気的に接続して、電池パックを形成することができる。これにより、電池モジュール100内の第1の温度調整流体の内部循環を個別に調節することができるため、電池モジュール100間の温度差を低減することができる。しかしながら、電池モジュール100間の所望の温度分布を実現することも可能である。これは、電池システムの一部が特別な用途に使用される場合に有利となる可能性があり、この場合に、電気的分離に加えて、熱的分離も実現することができる。熱交換器の機能が、電池モジュール100の液密ハウジング110に統合されている。これにより、コストおよび重量を節約することができる。さらに、複雑かつ多様なシールを不要にすることができる。いかなる特別な電気的特性も有する必要がない一般的な液体(水-グリコール)を、二次回路の第2の温度調整流体として使用することができる。
【0104】
要約すると、液密ハウジングと、液密ハウジング内に配置された複数の電池セルとを備える電池モジュールが提供される。第1の温度調整流体は、複数の電池セルおよび液密ハウジングの内面に熱的に接触して、液密ハウジング内に含まれる。液密ハウジングは、液密ハウジングの内面と外面との間の第2の温度調整流体の流れを可能にするように構成される。さらに、電池モジュールと、電池モジュールの液密ハウジングに接続され、第2の温度調整流体の流れを確立させるように構成された二次温度調整システムとを備える電池システムが提供される。
【国際調査報告】