(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】分析物を検出する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/552 20060101AFI20240415BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01N33/552
G01N33/543 591
G01N33/543 593
G01N33/543 575
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557331
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2022051935
(87)【国際公開番号】W WO2022195394
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522464159
【氏名又は名称】ネオゲン フード セイフティ ユーエス ホルドコ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラパティ,サイラジャ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンナ,フィリップ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】スゴラストラ,フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,キンバリー シー.エム.
(57)【要約】
親和性基が結合した複数のガラス球がその中に分散したポリマーマトリックス又はフィルムを含む組成物、及びそれを用いて標的分析物を検出する方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に配置されたフィルムを含む組成物であって、
前記フィルムが、
第1のポリマーマトリックス材料と、
前記第1のポリマーマトリックス材料に埋め込まれた複数の第1の中空ガラス球と
を含み、
前記第1の中空ガラス球が、0.60グラム/mL未満の密度、1.0未満のスパン、及び前記第1の中空ガラス球に共有結合した複数の第1の親和性基を有する、組成物。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーマトリックス材料に埋め込まれた複数の第2の中空ガラス球をさらに含み、
前記第2の中空ガラス球が、0.60グラム/mL未満の密度、1.0未満のスパン、及び前記第1の中空ガラス球に共有結合した、前記第1の親和性基とは異なる複数の第1第2の基を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の親和性基の少なくとも一部が第1の結合抗体を含み、任意に、前記第2の親和性基の少なくとも一部が結合抗体を含む、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の親和性基の少なくとも一部が第1の結合標的分析物分子を含み、任意に、前記第2の親和性基の少なくとも一部が第2の結合標的分析物分子を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の親和性基の少なくとも一部が、吸着剤、ゼオライト及びキレート剤からなる群から選択される少なくとも1つの基を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも2つのフィルム層であって、第1のフィルム層が第1の水溶性又は水分解性ポリマーマトリックス材料を含み、第2のフィルム層が第2の水溶性又は水分解性ポリマーマトリックス材料を含む、少なくとも2つのフィルム層を含み、
任意に、前記第2の水溶性又は水分解性マトリックスに埋め込まれた複数の第3の中空ガラス球をさらに含み、前記第2の中空ガラス球が、0.60グラム/mL未満の密度、1.0未満のスパン、及び前記第1の中空ガラス球に共有結合した複数の親和性基を有し、前記複数の親和性基が第1の親和性基、第2の親和性基又はそれらの組合せから選択される、請求項1~5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記第2のポリマーマトリックス材料が、前記第1のポリマーマトリックス材料の少なくとも一部の上に配置される、請求項1~6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記第1のポリマーマトリックス材料が持続放出性ポリマーを含む、請求項1~7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記第2のポリマーマトリックス材料が即時放出性ポリマーを含む、請求項1~8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記即時放出性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマー、水溶性(メタ)アクリルポリマー、水溶性(メタ)アクリルコポリマー、(メタ)アクリレートとポリエチレングリコールとの水溶性コポリマー、及びポリエチレングリコールを含む、請求項8又は9記載の組成物。
【請求項11】
前記持続放出性ポリマーが、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物)、ポリ(アミド)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(ホスホエステル)、キトサン、ヒアルロン酸、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、腸溶性ポリマー、又は酵素分解性ポリマーを含む、請求項8又は9記載の組成物。
【請求項12】
前記複数の第1の中空ガラス球に共有結合していない複数の第1の検出化合物分子をさらに含み、前記第1の検出化合物分子が、第1の波長で検出可能な第1の検出可能な基を含む、請求項1~11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記第1の検出化合物分子の少なくとも一部が非結合である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記複数の第1の中空ガラス球に共有結合していない複数の第2の検出化合物分子をさらに含み、前記第1の検出化合物分子が、第1の波長で検出可能な第1の検出可能な基を含む、請求項1~13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記第2の検出化合物分子の少なくとも一部が非結合である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記基材が容器であり、任意にエッペンドルフチューブ、PCRチューブ、試験管、及びキュベットから選択される、請求項1~15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
分析物を検出する方法であって、
請求項1~16のいずれか1項記載の組成物を準備することと、
第1の遊離標的分析物分子を含有するサンプルを前記組成物と接触させることと、
液体、任意に水性液体、を前記組成物と接触させることと、
前記第1の遊離標的分析物分子を前記第1の親和性基又は前記第1の検出化合物分子に結合させることと、
前記複数の第1の中空ガラス球を前記液体の上部濃縮部分に浮遊させることと、
選択的に前記複数の第1の中空ガラス球を前記液体から除去することなく、前記液体の前記上部濃縮部分より下にある第2の部分中の前記第1の検出可能な化合物分子の量を測定することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記第1の検出化合物分子の量を測定することが、第1の波長で発光シグナルを測定すること又は第1の波長で吸光度を測定することを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
第2の標的分析物分子を前記第2の親和性基又は前記第2の検出化合物分子に結合させることと、
前記複数の第2の中空ガラス球を前記液体の上部濃縮部分に浮遊させることと、
任意に前記複数の第2の中空ガラス球を前記液体から除去することなく、前記液体の前記上部濃縮部分より下にある第2の部分中の第2の検出可能な化合物分子の量を測定することと
をさらに含む、請求項16~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記複数の第1の中空ガラス球を前記第1のポリマーマトリックスから放出させることをさらに含み、任意に、前記複数の第2の中空ガラス球を前記第2のポリマーマトリックスから放出させることを含む、請求項16~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記中空ガラス球の第1の部分を前記第1のポリマーマトリックスから第1の期間内に放出させることであって、前記第1の期間が、前記液体が前記組成物と接触したときに始まり、選択的に前記中空ガラス球の前記第1の部分が全て放出されたときに終わる、前記第1の期間内に放出させること、
中空ガラス球の第2の部分を前記第1又は第2のポリマーマトリックスから前記第1の期間よりも長い第2の期間内に放出させることであって、前記第2の期間が、前記液体が前記組成物と接触したときに始まり、選択的に前記中空ガラス球の第2の部分が全て放出されたときに終わる、前記第2の期間内に放出させること
をさらに含み、
前記中空ガラス球の前記第1の部分が、前記複数の第1の中空ガラス球の一部又は前記複数の第1の中空ガラス球の全てであり、
前記中空ガラス球の前記第2の部分が、前記複数の第1の中空ガラス球の一部、前記複数の第2の中空ガラス球の一部、又は前記複数の第2の中空ガラス球の全てである、
請求項16~20のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
非特許文献1には、アフラトキシンに対するナノ粒子ベースの免疫センサー及び免疫測定法が開示されている。開示されているセンサーには、蛍光アッセイ及び化学発光アッセイ及び光散乱アッセイが含まれる。非特許文献2には、磁性ナノ粒子を用いたブドウ球菌エンテロトキシンAの迅速免疫蛍光アッセイが開示されている。このアッセイでは、磁性ナノ粒子に固定化された抗体が使用される。アッセイ中に磁性ナノ粒子が磁石によって液体から除去され、上清の蛍光シグナルが測定される。
【0002】
例えば自己投与式の妊娠検査薬として、ラテラルフローアッセイが知られている。このアッセイは、特別な分析機器を必要としない。ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)による分析物の定量化が知られている。
【0003】
持続放出用のポリマーが、非特許文献3及び非特許文献4等の様々な参照文献で論考されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Wang et al. (Analytica Chimca Acta 912 (2016) 10-23)
【非特許文献2】Becheva et al. (International Journal of Food Science and Technology 2018)
【非特許文献3】Paolini, M.S., Fenton, O.S., Bhattacharya, C. et al. Polymers for extended-release administration. Biomed Microdevices 21, 45 (2019)
【非特許文献4】Polymers Kamaly, N., Yameen, B., Wu, J. et al. Degradable controlled-release polymers and polymeric nanoparticles: mechanisms of controlling drug release. Chem. Rev. 2016, 116, 4, 2602-2663
【0005】
開示の概要
本開示の上記の概要は、開示される各実施形態又は本開示の全ての実施態様を説明することを意図したものではない。以下の説明では、例示的な実施形態をより詳細に例証する。本願全体を通して幾つかの箇所で、例のリストにより指針を与えるが、これらの例は様々な組合せで使用され得る。いずれの場合にも、記載のリストは代表的な群としてのみ働き、排他的なリストとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】最初に結合抗体と複合体化している検出化合物分子を用い、移動した(すなわち、溶出した)検出化合物分子を測定することによって遊離(すなわち、非結合)標的分析物分子を検出する、結合抗体溶出法を用いる本開示の方法を示す図である。
【
図2】遊離検出化合物分子及び結合抗体を用い、(遊離したままの)検出化合物分子を測定することによって遊離標的分析物分子を検出する、結合抗体枯渇法を用いる本開示の方法を示す図である。
【
図3】結合標的分子と複合体化した標識抗体(相補的な基(すなわち、抗体)と結合した検出基(すなわち、標識)を含む検出化合物分子)を用い、最初に遊離していた標的分析物分子により移動した(すなわち、溶出した)標識抗体を測定することによって遊離標的分析物を検出する、結合標的溶出法を用いる本開示の方法を示す図である。
【
図4】最初に遊離していた標識抗体(相補的な基(すなわち、抗体)と結合した検出基(すなわち、標識)を含む検出化合物分子)を用い、最初に遊離していた標的分析物分子と複合体化した標識抗体を測定することによって遊離標的分析物を検出する、結合標的枯渇法を用いる本開示の方法を示す図である。
【
図5A】分画の前後のガラス球のサイズ分布図である。
【
図5B】分画の前後のガラス球のサイズ分布図である。
【
図6】コルチゾール若しくはフモニシンのいずれかを10ppb、5ppb若しくは1ppb含有する溶液、又はそれぞれを10ppb、5ppb若しくは1ppb含有する混合物についての対照サンプルに対する(2つの異なる波長での)蛍光の増加率のグラフである。
【
図7】コルチゾール若しくはフモニシンのいずれかを10ppb、5ppb若しくは1ppb含有する溶液、又はそれぞれを10ppb、5ppb若しくは1ppb含有する混合物についての対照サンプルに対する(2つの異なる波長での)蛍光の増加率のグラフである。
【
図8】それぞれ異なる励起及び発光波長での50ppbのコルチゾール、フモニシン、アフラトキシンB1のいずれか、又は3つ全ての混合物についての対照サンプルに対するシグナルの増加率のグラフである。
【
図9】それぞれ異なる励起及び発光波長での5ppbのコルチゾール、フモニシン、アフラトキシンB1のいずれか、又は3つ全ての混合物についての対照サンプルに対するシグナルの増加率のグラフである。
【
図10】穀物抽出物又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のフモニシンを含有する溶液からの蛍光のグラフである。
【
図11】枯渇法によるアフラトキシンB1の検出における蛍光強度のグラフである。
【0007】
例示的な実施形態の詳細な説明
「親和性基」という用語は、別の分子と特異的に結合することが可能な共有結合した基を指す。親和性基は、例えば特定の波長での蛍光、発光又は吸収によって検出され得る検出化合物とさらに複合体化又は結合してもよい。本明細書において、親和性基は検出化合物又は検出基とは異なる。
【0008】
「抗体」という用語は、標的分析物と結合し、特に特異的に結合することが可能な領域を有するポリペプチド分子を指す。このため、この用語には、完全抗体と、場合により抗体フラグメントとの両方が含まれる。
【0009】
「特異的に結合する」及び「特異的結合」という用語は、親和性基が、アッセイ条件下で他の分子と複合体化するよりも高い親和性で別の分子(すなわち、その相補的分子)と複合体化することを意味する。例えば、抗体と相補的標的分子との結合は、特異的結合相互作用である。特定の場合、「特異的に結合する」とは、親和性基が、標的分子とは無関係の分子と複合体化するよりも少なくとも106倍高い親和性、少なくとも107倍高い親和性、少なくとも108倍高い親和性又は少なくとも109倍高い親和性で相補的分子と複合体化することを意味し得る。この文脈において、分子は、親和性基と相互作用する標的分子の化学構造の部分を欠く場合、標的分子とは無関係である。
【0010】
「スパン」という用語は、粒子のサンプルの粒径分布であり、以下の式:スパン=(90P-10P)/50Pによって表すことができ、式中、90Pは、分布中の粒子の90パーセント(%)がそれよりも小さいサイズであり(90パーセンタイルサイズと称される)、10Pは、分布中の粒子の10%のみがそれよりも小さいサイズであり(10パーセンタイルサイズと称される)、50Pは、分布中の粒子の50パーセントがそれよりも小さいサイズである(50パーセンタイルサイズと称される)。
【0011】
本願において、「a」、「an」及び「the」等の用語は、単数の実体のみを指すことを意図したものではなく、具体例を説明に用いることができる一般的な分類を含む。「a」、「an」及び「the」という用語は、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という表現と区別なく使用される。リストの後に続く(followed by)「の少なくとも1つ」及び「の少なくとも1つを含む」という表現は、リスト中の項目のいずれか1つ及びリスト中の2つ以上の項目の任意の組合せを指す。
【0012】
「一般的な」、「一般に」、「しばしば」、「頻繁な」及び「頻繁に」等の用語は、本発明において典型的に用いられる特徴を指すために使用されるが、別段の指示がない限り、そのように記載される特徴が本開示の前に既知又は一般的であったことを意味する意図はない。
【0013】
磁性ビーズ又はナノ粒子は、標的分析物を検出する不均一系アッセイの固体支持成分として使用されている。磁性ビーズ又はナノ粒子を用いる典型的な従来技術のアッセイは、標的分析物に結合することができる抗体等の分子でビーズが修飾された競合アッセイである。或る量、通常では既知量の、発光色素等の検出分子に結合した標的分析物が、金属ビーズ又はナノ粒子を含有する水性液体に添加される。この場合、アッセイは競合結合アッセイであり、検出器に結合した発光分析物と、サンプルからの非結合分析物とが、磁性ビーズ又はナノ粒子に結合した抗体との結合について競合し、液体の発光が測定される。次いで、磁石が水性液体に作用させられて、磁性ビーズ又はナノ粒子が、それらに結合するあらゆるものと共に液体から除去される。次いで、上清の蛍光を測定し、発光の変化をサンプル中の標的分析物の濃度と関連付けることができる。
【0014】
磁性ビーズ又はナノ粒子の使用には問題がある。第一に、水性液体に対する磁石の効果は、液体と磁石との近さに依存する。標的分析物が低濃度である場合に特に必要とされ得る大きなサンプル量では、磁石は、磁性ビーズ又はナノ粒子の全てが液体から除去され、上清が磁性ビーズ及びナノ粒子を含まないことを保証するほど十分にサンプル全体に近接しないことがある。
【0015】
第二に、低濃度の標的分析物を正確に検出又は定量化するために必要とされ得る、弱い蛍光又は発光強度の僅かな差の検出は、他の光検出器よりも感度が高い光電子増倍管(PMTとして知られることもある)を用いて行うのが最善である。PMTは磁場の影響を受けやすく、良好な性能のためには磁石の近くで操作すべきではない。このため、PMTと磁性ビーズ又はナノ粒子との併用は、問題をはらんでいるか又は不可能である。
【0016】
第三に、磁性ナノ粒子は全てのサンプルに適合するとは限らず、例えば、強磁性物質を含有するサンプルは、磁性粒子と共に使用可能でない場合がある。
【0017】
第四に、液体及び固体成分を用いる二相アッセイに使用される粒子は、磁性であるか否かにかかわらず、凝集する傾向があり得る。粒子の凝集は、アッセイの正確さを低下させる恐れがある。
【0018】
第五に、サンプル、特に動物、植物又は環境からのサンプルは、標的分析物の検出を妨げる化学化合物を含有することがある。
【0019】
第四及び第五の問題は、検出分子の発光の消光の問題に一部起因し得る。より具体的には、典型的なアッセイは、検出化合物の発光(蛍光又はリン光等)に依存し、これは、アッセイのタイプに応じて、親和性基が標的分析物に結合した場合にオン又はオフになり得る。このため、標的分析物と親和性基との結合に関連するもの以外のプロセスによって発光が消光されると、発光ベースのアッセイの正確さが損なわれる。粒子(親和性基を有するもの等)の凝集は、検出化合物の自己消光を引き起こす可能性がある。磁性ビーズは、大抵の場合、発光消光剤である。すなわち、磁性ビーズは、凝集がなくともアッセイ感度を低下させる恐れがある。同様に、標的分析物以外のサンプルの一部の成分が検出化合物の発光を消光する可能性がある。この消光の結果、アッセイの正確さ、精度及び感度が失われることがあり、蛍光免疫測定法の使用は、複雑なマトリックス中の比較的高濃度の化合物の検出に限定される。
【0020】
さらに、サンプル中の標的分析物以外の化合物が関与する問題に関して、かかる化合物は、数ある干渉メカニズムの中でも、標的分析物への競合的結合及び検出化合物への結合(消光を伴わない場合も)等の消光以外のメカニズムによってアッセイを妨げる可能性もある。
【0021】
さらにまた、磁性でない粒子を使用する場合、粒子を遠心分離、濾過又はその両方等の1つ以上の操作によってアッセイから除去する必要がある。かかる操作は、ユーザーエラーの可能性を増大させる。
【0022】
注目すべきことに、凝集、消光、及び標的分析物以外の化合物の干渉に関する問題等のこれらの問題の多くは、磁性粒子に特有のものではなく、不均一系アッセイに使用されるあらゆる種類の粒子に関する問題であり得る。このため、別の問題は、多重化アッセイ、すなわち、2種類以上の分析物を検出し得る単一アッセイにおいてサンプルの干渉、自己消光又はその両方を低減又は排除することである。
【0023】
さらに別の問題は、多重化、すなわち、同じアッセイにおける2つ以上の分析物の検出を可能にする不均一系アッセイを提供することである。
【0024】
上記の問題は全て、標的分析物、特に低濃度で存在する標的分析物、高感度を必要とする標的分析物又はその両方をどのように検出するかという一般的な問題に関係する。より詳細には、これらの問題は、不均一系アッセイの感度、正確さ若しくは精度を低下させる問題、又はかかるアッセイのロバスト性を低下させる問題に関係する。これらの問題に関連する標的分析物の一種には、アフラトキシン等のマイコトキシンがある。これらの問題に関連し得る他の種類の標的としては、全細胞、例えば細菌細胞、ウイルス、ビリオン、毒素、タンパク質及びペプチドが挙げられる。
【0025】
上述の問題の1つ以上、また場合によっては他の問題に対する解決手段は、組成物及びこの組成物を用いて分析物を検出する方法を提供する本開示に見ることができる。検出される分析物は、通例、「標的分析物」と称される。特に、本組成物及び方法は、一度に2つ以上の分析物のレベルを同時に測定する多重化を可能にする。
【0026】
組成物は、第1の親和性基に共有結合した第1の複数の中空ガラス球を含む。複数の第1のガラス球は、第1のポリマーマトリックス材料に埋め込まれる。第1のポリマーマトリックス材料は、基材上に配置されたフィルムの構成要素である。任意に、第2、第3、第4の親和性基等の付加的な親和性基が用いられてもよい。
【0027】
多重化のために構成される本明細書に記載の組成物及び方法の特定の実施形態では、全ての標的分析物を同時に結合させるのではなく、同じアッセイにおいて2つ以上の標的分析物を順次結合させることが可能である。これにより、さらに別の問題、具体的には、多重化アッセイにおいて複数の親和性基が同時に存在する場合に異なる親和性基間に生じる干渉の問題を解決することができる。
【0028】
親和性基
検出する分析物に応じて、任意の好適な親和性基を第1の親和性基として使用することができる。第2、第3、第4の親和性基等の付加的な親和性基を用いる場合、本明細書に記載のものと同じ種類の親和性基から独立して選択することができる。
【0029】
通例、標的分析物等の分析物に結合する親和性基が選択される。例としては、抗体、抗体基質等が挙げられる。例として抗体が挙げられ、代替的には、親和性基のいずれかを、消光剤又は標的分析物の検出を妨げる可能性がある他の物質に結合するように選択することができる。例としては、吸着剤、ゼオライト及びキレート剤が挙げられる。標的分析物以外の化合物又は物質に結合する親和性基を選択することも可能であり、例えば、アッセイへの干渉を低減又は排除するために、アッセイを妨げる可能性がある化合物又は物質に結合する親和性基を選択することができる。
【0030】
使用され得る親和性基の一種は抗体である。当業者は、検出する単数又は複数の標的分析物に応じて適切な抗体を選択することができる。例としては、ウサギ抗マウスIgG抗体、抗コルチゾール抗体、抗フモニシン抗体及び抗アフラトキシンB1抗体が挙げられる。好適な抗体は、Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA、Abeam,Cambridge,MA、Lifespan Biosciences,Seattle,WA及びCreative Diagnostics,Shirley,NYを含む様々な供給元から得ることができる。
【0031】
使用され得る別の種類の親和性基はアプタマー、すなわち、短いポリヌクレオチドである。アプタマーの例としては、Aptagen,Jacobus,PAから入手可能である抗アフラトキシン及び抗オクラトキシンアプタマーが挙げられる。特定のアプタマーも同様に、検出する単数又は複数の標的分析物によって決まる。
【0032】
場合によっては、重金属又は有機小分子等の1つ以上の標的分析物分子を親和性基として使用することができる。本明細書において、有機小分子は、5000グラム/モル以下の分子量を有するものである。
【0033】
中空ガラス球
本明細書で使用される中空ガラス球は、典型的には水性液体である、アッセイに使用される液体中で浮遊することを可能にする密度を必要とする。このため、中空ガラス球は、0.60グラム/mL未満、任意に0.40グラム/mL以下の密度を有する。ガラス球に必要とされる下限はないが、実際には、用いられる殆どのガラス球が0.05グラム/mL以上の密度を有する。このため、用いられる特定の中空ガラス球は、0.05~0.40グラム/mLの範囲の密度を有する。
【0034】
或る特定の実施形態では、中空ガラス球は1.0未満、0.8未満又は0.7未満のスパンを有する。或る特定の実施形態では、中空ガラス球は少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4又は少なくとも0.5のスパンを有する。好ましい実施形態では、中空ガラス球は0.1~1.0、0.1~0.8、0.1~0.7又は0.1~0.5のスパンを有する。通例、スパンが狭いほど、中空ガラス球の均一性が高くなり、アッセイが短くなり、アッセイの再現性がより良好となる。
【0035】
中空ガラス球のサイズは、それを使用する特定のアッセイの必要性に応じて選択することができる。考慮事項には、中空ガラス球が埋め込まれたポリマーマトリックスから中空ガラス球を放出する必要がある速度、凝集の最小化、中空ガラス球が液体の上部に浮上する速度、また場合によっては光散乱効果が含まれる。本明細書で用いられる最も一般的な中空ガラス球は、少なくとも30マイクロメートル、任意に少なくとも40マイクロメートルの平均直径を有する。典型的には、中空ガラス球は、80マイクロメートル以下の平均直径を有する。特定の場合、中空ガラス球は、30~80マイクロメートル、任意に40~80マイクロメートルの平均直径を有する。通例、中空ガラス球が大きいほど、所与の密度でより迅速に液体の上部濃縮部分に浮上する。
【0036】
好適な中空ガラス球は、様々な供給元から市販されている。これらとしては、例えば、XLD3000シリカ球の名称で市販されているもの及び3M Company,St Paul,MNから入手可能な3M(商標) Glass Bubbles S60HSが挙げられる。通例、市販の中空ガラス球は、平均直径及びスパンによって決定される所望のサイズ分布を得るために分画される。このような分画された中空ガラス球は、アッセイの再現性に寄与する。
【0037】
他の粒子ベースのアッセイと比較して、ガラス球を固体支持体として使用する利点は、溶液からの容易で調整可能及び迅速な分離を可能にする固有の浮力特性にある。このため、他の粒子とは異なり、撹拌又は遠心分離等の機械的な力を加えることなく、また磁力を加えることなく、アッセイの液体成分からのガラス球の部分的な分離を行うことができる。その代わりに、ガラス球を液体の表面に浮遊させることができ、ガラス球を含まない液体の下部を分析物の存在について試験することができる。常にそうする必要があるわけではないが、分析のために標的分析物に結合したガラス球を容易に回収又は採取することもさらに可能である。
【0038】
本方法の付加的な差別化要因は、回収した固相上にある成分ではなく、液相中にあるアッセイ成分から蛍光シグナルを検出し得ることである。これにより、固相を洗浄する必要がなくなり、結果までの時間及びオペレータエラーの排除の両方において大きな利点となる。
【0039】
中空ガラス球は、ガラスを官能化する任意の方法によって親和性基に共有結合させることができる。かかる方法の多くは既知であり、適切な方法は、親和性基の性質によって決まる。場合によっては、親和性基の結合を促進するために中空ガラス球を活性化する。活性化は、例えばシラン処理によって達成することができる。従来のシラン処理試薬(例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)及び手法は、当該技術分野で既知である。代替的には、3M Company,St. Paul,MNから市販されているグリシジル官能化H20シリカ球等の市販の官能化ガラス球を使用することができる。
【0040】
親和性基は、例えば蛍光によって検出され得る検出化合物にさらに結合、例えば複合体化、又は非共有的に結合させることができる。便宜上、検出化合物又は検出基が親和性基に結合している場合であっても、親和性基は、検出化合物/基とは異なるものとして本明細書に記載される。
【0041】
検出化合物分子及び検出基
検出化合物分子には、例えば発光、特に蛍光によって検出され得る検出基、及び相補的な基が含まれる。かかる検出化合物又は基は、通例、検出基の極大発光波長(λmax)等の特定の波長で検出可能である。多重化組成物又は方法のように複数の検出基又は検出化合物を用いる場合、第1の検出基又は化合物は第1の波長で検出することができ、第2の検出基又は化合物は第2の波長で検出することができ、第3の検出基又は化合物は第3の波長で検出することができる、等である。
【0042】
生物学的アッセイと共に使用される様々な検出化合物及び検出基が知られている。原則として、任意の検出化合物又は基を、アッセイ条件に適合する限りにおいて本開示の組成物及び方法と共に使用することができ、不適合性には、標的分析物又はアッセイの別の成分と化学反応を起こすこと、アッセイ条件下で不安定であること等が含まれ得る。例えば、アミン反応性TEXAS RED-Xスクシンイミジルエステルは、およそ595/615ナノメートル(nm)の励起/発光極大を有する明赤色の蛍光検出化合物を生じるために使用することができる。フルオレセインイソチオシアネートは、488nm励起による520nm発光で蛍光を発するために使用することができる。アッセイの要件、使用される検出システム、及び他の要因に応じて適切な検出基及び化合物を選択することができる当業者には、多くの他の例が知られている。
【0043】
第1の波長での検出又は検出可能性を伴う本明細書の任意の実施形態において、第1の波長は、特に電磁スペクトルの可視又はUV部、より詳細には電磁スペクトルの可視部、最も詳細には600nm~850nmの波長である。
【0044】
第2の波長での検出又は検出可能性を伴う本明細書の任意の実施形態において、第2の波長は、特に電磁スペクトルの可視又はUV部、より詳細には電磁スペクトルの可視部、最も詳細には600nm~850nmの波長である。
【0045】
第3の波長での検出又は検出可能性を伴う本明細書の任意の実施形態において、第3の波長は、特に電磁スペクトルの可視又はUV部、より詳細には電磁スペクトルの可視部、最も詳細には600nm~850nmの波長である。
【0046】
検出化合物又は基の検出は、ルミノメータ、特に蛍光光度計を用いて達成することができる。これらは様々なものが知られており、通例、蛍光等の発光を検出するための光電子増倍管又は電荷結合素子(CCD)を備える。
【0047】
基材、フィルム及びポリマーマトリックス
組成物はフィルムを含み、フィルム自体が、第1の複数の中空ガラス球が埋め込まれた第1のポリマーマトリックスを含む。フィルムは基材上にあり、基材は、通例、アッセイが中で行われるPCRチューブ、キュベット、エッペンドルフチューブ、試験管等の容器である。
【0048】
埋め込まれた中空ガラス球は、ポリマーマトリックス内で任意の特定の配置にある必要はないが、組成物が使用されるアッセイに応じて、或る特定の配置がより望ましい結果をもたらす可能性がある。例えば、中空ガラス球の大部分は、ポリマーマトリックスの表面上に位置するか、ポリマーマトリックス全体に均一若しくはほぼ均一に分布するか、又は他の何らかの方法でポリマーマトリックス中に分布することが可能である。例えば、必要に応じて、ポリマーマトリックスからの一次放出をもたらすように中空ガラス球を分布させることができる。
【0049】
ポリマーマトリックス材料に関して、「上に」及び「下に」という用語は、フィルムが上に配置される基材に対する特定のマトリックス材料又はマトリックス材料の層の近接性を指すために使用されるが、必ずしも隣接関係を示すわけではない。例えば、第1のポリマーマトリックスが第2のポリマーマトリックスの「上に」配置される場合、第2のポリマーマトリックスは、第1のポリマーマトリックスよりも基材に近いが、第1及び第2のポリマーマトリックスは、必ずしも互いに隣接している必要はなく、第2のポリマーマトリックスは、必ずしも基材に隣接している必要はない。
【0050】
第1のポリマーマトリックス材料は、第1の複数のガラス球をマトリックスから、例えば液体組成物に放出するように設計される。このため、フィルム及び第1のポリマーマトリックス材料は、通常、キュベット、エッペンドルフチューブ、PCRチューブ等の容器の表面上に配置され、その中にガラス球を放出することができる。フィルム及び第1のポリマーマトリックス材料は、当該技術分野で既知の様々な手法を用いること、例えば、フィルム及び第1のポリマーマトリックス材料とガラス球との溶液又は懸濁液を溶媒キャストし、続いて乾燥させること、ガラス球と予備硬化させた接着剤とを混合し、混合物を表面上に配置し、硬化させること(この場合、硬化した接着剤がポリマー材料及びフィルムとなる)等によって表面上に配置することができる。
【0051】
第2のポリマーマトリックス材料を用いてもよく、例えば、第1のポリマーマトリックスの少なくとも一部の上に配置することができる。第3、第4及び更なるポリマーマトリックス材料を用いてもよく、それぞれが下層のポリマーマトリックス材料の少なくとも一部の上に配置される。様々なポリマーマトリックス材料はいずれも、それと共に配置されたガラス球を有していてもよく、又はガラス球を有さず、むしろ下層のポリマーマトリックス材料からのガラス球の放出を制御するために用いてもよい。
【0052】
例えば、ポリマーマトリックス材料はいずれも、即時放出性ポリマー、持続放出性ポリマー及び腸溶性ポリマーから選択することができる。即時放出性ポリマーマトリックスは、非常に迅速に、例えば水性液体等の液体がフィルムと接触してから5分以降、2分以降、1分以降又は30秒以降にガラス球の全てをポリマーマトリックスから放出し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとのコポリマー、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマー、水溶性(メタ)アクリルポリマー、水溶性(メタ)アクリルコポリマー、(メタ)アクリレートとポリエチレングリコールとの水溶性コポリマー、及びポリエチレングリコールの1つ以上を含み得る。
【0053】
持続放出性ポリマーマトリックスは、長時間にわたって、例えば少なくとも2分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも20分又はそれ以上にわたってガラス球を放出し、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物)、ポリ(アミド)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(ホスホエステル)、キトサン、ヒアルロン酸、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、腸溶性ポリマー又は酵素分解性ポリマーの1つ以上を含み得る。場合によっては、放出速度を制御するために、マトリックスが化学修飾されても、又は或る程度の架橋を有していてもよい。
【0054】
遅延放出性ポリマーマトリックスは、液体がフィルムと接触してからガラス球が放出されるまでの時間を遅延させることができる。例えば、遅延放出性マトリックスは、被覆層が溶解又は崩壊するまでガラス球が放出されないように、ガラス球を有しない被覆層を伴う即時放出性層を含み得る。
【0055】
通例、様々なポリマーマトリックス材料は、水溶性又は水分解性であるが、酵素分解性であるか、特定のpH、温度若しくは塩濃度でのみ分解若しくは溶解するか、又は溶解性でも分解性でもないが、他の方法でガラスビーズを放出するマトリックス材料、ガラスビーズが通過して放出され得る細孔を有するようなポリマーマトリックス材料を有することも可能である。
【0056】
サンプルマトリックスから化合物又は物質を除去する必要がある場合、例えば、かかる化合物又は物質がアッセイを妨げる可能性がある場合、多層フィルムを用いることができる。一例では、制御放出性又は持続放出性ポリマーマトリックス等の第1のポリマーマトリックスを、第2のポリマーマトリックスの下に配置することができる。第1のポリマーマトリックスは、持続放出性又は制御放出性マトリックスとすることができ、標的分析物に結合するように選択された親和性基が共有結合した複数のガラス球をその中に埋め込むことができる。第2のポリマーマトリックスは、即時放出性ポリマーとすることができ、妨害化合物又は物質に結合するように選択された親和性基が共有結合した複数の中空ガラス球をその中に埋め込むことができる。使用時に、サンプルを含有する液体、典型的には水性液体がフィルムと接触した後、第2のポリマーマトリックスが初めにその中空ガラス球を放出する。これらの中空ガラス球は、妨害化合物又は物質に結合しながら表面に浮遊するため、妨害化合物又は物質がサンプルの液体部分から除去される。次いで、第1のポリマーマトリックスが、標的分析物と結合する親和性基を有する中空ガラス球を放出する。このようにして、標的分析物を親和性基に結合させることを含むアッセイの一部が開始前に妨害化合物又は物質を除去することができる。
【0057】
組成物が多重化に適合する幾つかの実施形態では、中空ガラス球を多重化する。このような場合、中空ガラス球に共有結合した2つ以上の親和性基が存在し得る。これは、少なくとも2つの方法で実施することができる。第一に、同じガラス球に2種類以上の親和性基が結合し得るように、複数の中空ガラス球が、ガラス球に結合した複数の親和性基、例えば第1の親和性基及び第2の親和性基(任意に第3、第4、第5、第6、第7等)を有することができる。
【0058】
多重化を達成する別の方法では、少なくとも2つの複数のガラス球を使用することができる。第1の複数のガラス球には第1の親和性基が共有結合し、第2の複数のガラス球には、第1の親和性基とは異なる第2の親和性基が共有結合する。それぞれが異なる複数のガラスビーズに共有結合した第3、第4、第5、第6、第7等の親和性基を使用することも可能である。2つのアプローチの組合せも可能であり、例えば、第1の複数のガラス球を第1の親和性基及び第2の親和性基に共有結合させ、第2の複数のガラス球を第3の親和性基及び第4の親和性基に結合させることができる(更なる複数のガラス球及び更なる親和性基を使用してもよい)。
【0059】
2つの複数の中空ガラス球を用いる場合、これらは同じ又は異なるポリマーマトリックス中に存在し得る。例えば、第1の複数の中空ガラス球は、第1のポリマーマトリックス中に存在することができ、第2の複数の中空ガラス球は、第1のポリマーマトリックス上にある第2のポリマーマトリックス中に存在することができる。その結果、第2の複数の中空ガラス球が第1の複数の中空ガラス球よりも前に放出される。このことは、同じアッセイにおいて複数の標的分析物を同時にではなく、順次結合させることが有用であり得る一部の多重化アッセイに有利な可能性がある。例えば、この構成及び検出方法は、第2の親和性基が第1の標的分析物に対して幾らかの交差親和性を有する場合に特に有用である。これは、第2の親和性基が放出される前に第1の標的分析物を結合させることで、第1の標的分析物が第2の親和性基に曝露されるのを防ぐことができるためである。
【0060】
これらのアプローチの組合せを用いることもできる。例えば、上記のように2つのポリマーマトリックスを用いる場合、吸着剤に共有結合した第3の複数のガラス球を有する第3のポリマーマトリックスを、第1及び第2のポリマーマトリックスの上に配置することができる。このようにして、吸着剤が初めに妨害化合物又は物質を除去し、続いて第1及び第2の複数のガラス球を除去することができる。
【0061】
多重化中空ガラス球が2つの異なる複数の共有結合親和性基を含む実施形態では、組成物は、複数の多重化中空ガラス球に共有結合していない複数の第1の検出化合物分子であって、第1の検出化合物分子が、第1の波長で検出される第1の検出可能な基を含む、第1の検出化合物分子と、複数の多重化中空ガラス球に共有結合していない複数の第2の検出化合物分子であって、第2の検出化合物分子が、第1の波長とは異なる第2の波長で検出される第2の検出可能な基を含む、第2の検出化合物分子とを含む。
【0062】
多重化中空ガラス球が3つ以上の異なる複数の共有結合親和性基を含む実施形態では、組成物は、複数の多重化中空ガラス球に共有結合していない複数の第1の検出化合物分子であって、第1の検出化合物分子が、第1の波長で検出される第1の検出可能な基を含む、第1の検出化合物分子と、複数の多重化中空ガラス球に共有結合していない複数の第2の検出化合物分子であって、第2の検出化合物分子が、第1の波長とは異なる第2の波長で検出される第2の検出可能な基を含む、第2の検出化合物分子と、複数の多重化中空ガラス球に共有結合していない複数の第3の(任意に第4、第5、第6、第7等の)検出化合物分子であって、第3の(任意に第4、第5、第6、第7等の)検出化合物分子が、第1又は第2の波長(又は他の波長のいずれか)とは異なる第3の(任意に第4、第5、第6、第7等の)波長で検出される第3の(任意に第4、第5、第6、第7等の)検出可能な基を含む、第3の(任意に第4、第5、第6、第7等の)検出化合物分子とを含む。
【0063】
サンプル及び標的分析物
本明細書に記載される組成物及び方法は、親和性基が結合し得る任意の標的分析物のアッセイに適用することができる。例としては、特に抗体、基質、小分子及び重金属が挙げられる。多くの標的分析物は、食品(例えば、動物用飼料)及び水を汚染するもの(すなわち、食品又は水の汚染物質)、並びにバイオマーカーとして使用されるものである。しかしながら、原則として、サンプル中の標的分析物の少なくとも一部が親和性基に結合し得る限りにおいて、任意の標的分析物を検出することができる。
【0064】
重金属は、検出することができる標的分析物の一種である。特定の重金属は、20を超える原子番号を有する金属又は半金属である。典型的には、かかる重金属は、92以下の原子番号を有する。例としては、Pb、As及びHgが挙げられる。
【0065】
方法は有機小分子に特に有効である。かかる有機小分子は、5000グラム/モル以下の分子量を有する。かかる有機小分子の例としては、マイコトキシン、例えばアフラトキシン(例えばB1、B2、G1、G2及びM1)、トリコテセン(例えばデオキシニバレノール、HT-2及びT-2)、ゼアラレノン、オクラトキシン(例えばA、B、C及びTA)、フモニシン(例えばB1、B2、B3及びB4)及びパツリン;貝毒、例えばサキシトキシン、オカダ酸、ドモイン酸及びジノフィシストキシン誘導体;ホルモン、例えばコルチゾール、プロゲステロン、エストラジオール、アンドロステンジオン、ジエチルスチルベストロール、ラクトパミン、クレンブテロール、スタノゾロール、トリアムシノロン、ジルパテロール、ゼラノール及びトレンボロン;抗生物質及び抗ウイルス薬、例えばβ-ラクタム、テトラサイクリン、スルホンアミド、ニトロフラン、シプロフロキサシン、クロラムフェニコール、アシクロビル、トリクロサン、ストレプトマイシン、アンフェニコール、フルニキシン、フロルフェニコール、フルオロキノロン、ゲンタマイシン、リンコマイシン、ネオマイシン、タイロシン、ジクラズリル、ジメトリダゾール、コリスチン及びダプソン;バイオマーカー、例えばコプロスタノール、コレステロール及びクレアチニン;農薬、例えばアトラジン、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、グリホサート、ポリ塩化ビフェニル(例えば、DDT及びDDE)、ブロマシル、アベルメクチン、有機リン酸エステル及びN-メチルカルバメート;乱用薬物、例えばオピオイド(例えば、フェンタニル及びヘロイン)、コカイン、テトラヒドロカンナビノール(THC)及びアンフェタミン;並びに他の生物活性化合物、例えばデキサメタゾン、アルブテロール、カフェイン、ワルファリン、イブプロフェン、コデイン、リドカイン、セレコキシブ、ベンザトロピン、メトプロロール、オメプラゾール、ナドロール、スタチン(例えば、アトルバスタチン及びシンバスタチン)、リシノプリル、ケタミン及びナンドロロンが挙げられる。かかる有機小分子には、タンパク質は含まれない。検出される特に重要な有機小分子には、マイコトキシンが含まれる。
【0066】
本開示は、サンプル中の汚染物質等の分析物を検出する方法も提供する。これらの方法は、a)水を含む液体、液体中の複数の第1の中空ガラス球であって、複数の第1の中空ガラス球の少なくとも一部に共有結合した複数の第1の共有結合親和性基を有する、第1の中空ガラス球、及び複数の第1の中空ガラス球に共有結合していない複数の第1の検出化合物分子であって、第1の波長で検出される第1の検出可能な基を含む、第1の検出化合物分子を含む組成物を準備することと、b)第1の遊離標的分析物分子を含有するサンプルを組成物に添加することと、c)第1の遊離標的分析物分子を第1の親和性基又は第1の検出化合物分子に結合させることと、d)複数の第1の中空ガラス球を液体の上部濃縮部分に浮遊させることと、e)複数の第1の中空ガラス球を液体から除去することなく、液体の上部濃縮部分より下にある第2の部分中の第1の検出化合物分子の量を測定することとを含む。本方法では、第1の中空ガラス球は、0.60グラム/mL未満の密度、1.0未満のスパン及び複数の第1の共有結合親和性基を有する。全ての球が上部濃縮部分に浮遊し得るわけではないが、より効率的な分離によって、より高い感度が得られることが理解される。
【0067】
本明細書に記載の方法は、重金属及び小有機化合物の検出に使用することができる。かかる金属及び化合物は、食品(例えば、動物用飼料)及び水を汚染する典型的に見られるもの(すなわち、食品又は水の汚染物質)、並びにバイオマーカーとして使用されるものである。
【0068】
本明細書において、「重金属」は、20(カルシウム)を超える原子番号を有する金属又は半金属である。典型的には、かかる重金属は、92(ウラン)以下の原子番号を有する。例としては、Pb(鉛)、As(ヒ素)及びHg(水銀)が挙げられる。
【0069】
方法は有機小分子に特に有効である。かかる有機小分子は、5000グラム/モル以下の分子量を有する。かかる有機小分子の例としては、マイコトキシン、例えばアフラトキシン(例えばB1、B2、G1、G2及びM1)、トリコテセン(例えばデオキシニバレノール、HT-2及びT-2)、ゼアラレノン、オクラトキシン(例えばA、B、C及びTA)、フモニシン(例えばB1、B2、B3及びB4)及びパツリン;貝毒、例えばサキシトキシン、オカダ酸、ドモイン酸及びジノフィシストキシン誘導体;ホルモン、例えばコルチゾール、プロゲステロン、エストラジオール、アンドロステンジオン、ジエチルスチルベストロール、ラクトパミン、クレンブテロール、スタノゾロール、トリアムシノロン、ジルパテロール、ゼラノール及びトレンボロン;抗生物質及び抗ウイルス薬、例えばβ-ラクタム、テトラサイクリン、スルホンアミド、ニトロフラン、シプロフロキサシン、クロラムフェニコール、アシクロビル、トリクロサン、ストレプトマイシン、アンフェニコール、フルニキシン、フロルフェニコール、フルオロキノロン、ゲンタマイシン、リンコマイシン、ネオマイシン、タイロシン、ジクラズリル、ジメトリダゾール、コリスチン及びダプソン;バイオマーカー、例えばコプロスタノール、コレステロール及びクレアチニン;農薬、例えばアトラジン、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、グリホサート、ポリ塩化ビフェニル(例えば、DDT及びDDE)、ブロマシル、アベルメクチン、有機リン酸エステル及びN-メチルカルバメート;乱用薬物、例えばオピオイド(例えば、フェンタニル及びヘロイン)、コカイン、テトラヒドロカンナビノール(THC)及びアンフェタミン;並びに他の生物活性化合物、例えばデキサメタゾン、アルブテロール、カフェイン、ワルファリン、イブプロフェン、コデイン、リドカイン、セレコキシブ、ベンザトロピン、メトプロロール、オメプラゾール、ナドロール、スタチン(例えば、アトルバスタチン及びシンバスタチン)、リシノプリル、ケタミン及びナンドロロンが挙げられる。かかる有機小分子には、タンパク質は含まれない。検出される特に重要な有機小分子には、マイコトキシンが含まれる。
【0070】
かかる分析物を含むサンプルは、固体であっても又は液体であってもよいが、蛍光強度を測定する場合は液体の形態である。サンプルは、典型的には食品(例えば、オート麦、トウモロコシ、小麦等の穀物)又は水サンプルである。固体サンプルを分析する場合、標的分析物を、有機溶媒の取扱い及び廃棄を避けるために水抽出法を用いて抽出するのが好ましい。典型的な水抽出法には、界面活性剤ベースの抽出が用いられる。例えば、TWEEN 20及びTRITON-X非イオン系洗剤を用いて、標的分析物を抽出することができる。干渉が観察される場合、バッファー(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)で希釈することによって克服することができる。
【0071】
結合抗体組成物/方法
本明細書に記載され、1つ以上のポリマーマトリックス及び少なくとも第1の複数のガラス球を含有するフィルムは、様々なタイプのアッセイに使用することができる。アッセイのタイプに関わらず、例えばマトリックスを溶解するか、マトリックスを分解するか、又は中空ガラス球をマトリックスから溶出させることによって、中空ガラス球の少なくとも一部をポリマーマトリックスから放出させる液体を、フィルムと接触させる。
【0072】
液体は、本明細書で論考されるように、抽出、希釈又はその両方が行われるサンプルからのもののようなサンプルを含有する組成物であり得る。液体は、中空ガラス球に結合していない検出化合物又は基である遊離検出化合物を含有していてもよい。アッセイ方法は、通常、液体、最も典型的には溶液としてのサンプルを、ポリマーマトリックス及び中空ガラス球を含むフィルムと接触させることを含む。場合によっては、サンプルは、中空ガラス球をポリマーマトリックスから放出させる液体に溶解する固体として添加することができる。
【0073】
殆どのアッセイでは、複数の第1の中空ガラス球に共有結合していない複数の少なくとも第1の検出化合物分子も用いられる。多重化アッセイ等の一部のアッセイでは、複数の第1の中空ガラス球に共有結合していない複数の第2、第3、第4又は更なる検出化合物分子を用いることもある。複数の第1の中空ガラス球に共有結合していない検出化合物分子はいずれも、典型的には、例えばポリマーマトリックスを含有するフィルムが配置された容器に溶液又は分散液として添加することによって、液体形態でポリマーマトリックスと接触させる。この場合、検出化合物分子をサンプルと同じ液体で添加しても、又は異なる液体で添加してもよい。複数の第1の中空ガラス球に共有結合していない検出化合物分子をポリマーマトリックス内に配置し、ガラス球と共に放出させることも可能である。
【0074】
本開示の結合抗体方法は、典型的には競合結合(例えば、競合複合体化)アッセイであり、検出化合物が、液体サンプル中に存在する標的分析物と競合して、中空ガラス球上で利用可能な結合部位である、限られた数の親和性基、典型的には抗体と複合体化する。結合後に、中空ガラス球は、液体の上部濃縮部分に浮遊し、上部濃縮部分より下の液体中の非結合(すなわち、遊離)検出化合物分子から放出される発光、典型的には蛍光を測定する。全てのガラス球が液体の上部濃縮部分に浮遊し得るわけではないことが理解される。
【0075】
本明細書に記載の組成物は、溶出アッセイ又は枯渇アッセイのいずれにも使用することができる。溶出法では、親和性基、通常では抗体が結合した中空ガラス球を、サンプルに曝露する前に遊離検出化合物分子と複合体化させる。これは、例えば、最初に遊離検出化合物分子を含有する液体とポリマーフィルムとを接触させて、中空ガラス球を放出させ、後に標的分析物を含有するサンプルを添加することによって達成することができる。サンプル中の標的分析物は、検出化合物分子を球から移動、すなわち、溶出させる。枯渇法では、検出化合物分子を、標的分析物を含有する液体サンプルに添加し、次いで、ガラス球がポリマーマトリックスから放出された後に、両者がガラス球上の親和性基、典型的には抗体との結合について競合する。
【0076】
溶出法では、
図1に示されるように、抗体は中空ガラス球に共有結合した親和性基である。抗体は、遊離標的分析物分子と接触する前に検出化合物分子と複合体化し、それにより1種類の結合抗体組成物が形成される。検出化合物分子及び標的分析物分子は、どちらも相補的な基を含み、結合抗体との結合について競合することができる。分析物を検出する本方法では、方法は、結合抗体組成物(第1の検出化合物分子と複合体化した第1の結合抗体を親和性基として有する中空ガラス球を含む)を準備することと、第1の遊離標的分析物分子を含有するサンプルを組成物に添加することと、第1の遊離標的分析物分子を第1の結合抗体に結合させる(それにより、中空ガラス球に共有結合した第1の結合抗体から第1の検出化合物分子を移動、すなわち、溶出させる)ことと、複数の第1の中空ガラス球を液体の上部濃縮部分に浮遊させることと、複数の第1の中空ガラス球を液体から除去することなく、液体の上部濃縮部分より下にある第2の部分中の(移動した)第1の検出化合物分子の量を測定することとを含む。
図1では、第1の検出化合物は、検出可能(すなわち、相補的な基に結合した検出基)とすることができ、最初に結合抗体と複合体化している。
【0077】
枯渇法では、
図2に示されるように、抗体は中空ガラス球に共有結合した親和性基である。標的分析物分子と検出化合物分子との間で結合抗体との結合についての競合が引き起こされる。本方法に使用される組成物では、第1の検出化合物分子が第1の相補的な基を含み、第1の遊離標的分析物分子が第1の相補的な基を含み、第1の検出化合物分子は、第1の結合抗体との複合体化について第1の遊離標的分析物分子と競合する。分析物を検出する本方法では、方法は、結合抗体組成物及び遊離検出化合物分子を準備することと、第1の遊離標的分析物分子を含有するサンプルを組成物に添加することと、第1の遊離標的分析物分子を第1の結合抗体に結合させる(それにより、第1の遊離検出化合物分子と競合させる)ことと、複数の第1の中空ガラス球を液体の上部濃縮部分に浮遊させることと、複数の第1の中空ガラス球を液体から除去することなく、液体の上部濃縮部分より下にある第2の部分中の(遊離したままの)第1の検出化合物分子の量を測定することとを含む。
【0078】
図2では、検出化合物は、最初に遊離分子の形態である。結合抗体枯渇法では、標的分析物分子は、中空ガラス球に共有結合するか、又は他の形で結合し、標識抗体と複合体化することでガラス球に結合する(共有結合ではない)。分析物を検出する本方法では、方法は、結合標的組成物(標識抗体と複合体化した結合標的分析物分子を親和性基として有する中空ガラス球を含む)を準備することと、第1の遊離標的分析物分子を含有するサンプルを組成物に添加することと、第1の遊離標的分析物分子を第1の標識抗体と複合体化させる(それにより、中空ガラス球に結合した第1の結合標的分析物分子から第1の標識抗体を移動、すなわち、溶出させる)ことと、複数の第1の中空ガラス球を液体の上部濃縮部分に浮遊させることと、複数の第1の中空ガラス球を液体から除去することなく、液体の上部濃縮部分より下にある第2の部分中の第1の検出化合物分子(最初に遊離していた第1の標的分析物分子と複合体化した、移動した第1の標識抗体)の量を測定することとを含む。複合体化工程は任意に、場合により、中空ガラス球を液体中で分散した非凝集状態に維持するために振盪、タンブリング、混合等の撹拌を伴っていてもよい。
図3において、検出化合物分子は標識抗体であり、結合標的溶出法では最初に結合標的分子と複合体化している。
【0079】
枯渇法では、
図4に示されるように、結合標的分析物分子と遊離標的分析物分子との間で標識抗体との複合体化についての競合が引き起こされる。本方法に使用される組成物は、第1の遊離標識抗体と、第1の結合標的分析物分子が結合した中空ガラス球とを含む。第1の結合標的分析物分子は、第1の遊離標識抗体との複合体化について第1の遊離標的分析物分子と競合する。分析物を検出する本方法では、方法は、結合標的組成物(第1の結合標的分析物分子を親和性基として有する中空ガラス球と、第1の検出化合物分子としての遊離標識抗体とを含む)を準備することと、第1の遊離標的分析物分子を含有するサンプルを組成物に添加することと、第1の遊離標的分析物分子を第1の標識抗体と複合体化させる(それにより、第1の結合標的分析物分子と競合させる)ことと、複数の第1の中空ガラス球を液体の上部濃縮部分に浮遊させることと、複数の第1の中空ガラス球を液体から除去することなく、液体の上部濃縮部分より下にある第2の部分中の最初に遊離していた標的分析物分子と複合体化した第1の標識抗体の量を測定することとを含む。
図4において、検出化合物は、結合標的枯渇法では最初に遊離標識抗体の形態である。
【0080】
通例、検出において、蛍光シグナルの強度は、サンプル中の標的分析物の量に正比例又は反比例する。このため、かかる実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて標的分析物の量を定量化することができる。これは、未知サンプルのシグナルと、既知の標的分析物濃度の標準(例えば、典型的には3つ以上の標準サンプル)のシグナルとを比較することによって行うことができる。
【0081】
本明細書に記載されるアッセイ及び方法は、多重化を用いる場合も本質的に同様に機能する。主な違いは、中空ガラス球が多重化に有用な本明細書に記載のタイプの1つ以上であること、及び2つ以上の遊離検出化合物分子を用いることである。中空ガラス球を表面に浮遊させた後、複数の波長で蛍光等の発光を測定することによって検出を行う。各波長で測定された発光は、例えば正比例関係又は反比例関係により、発光が測定された検出化合物に関連する標的分析物の濃度に対応する。
【0082】
実施例
本発明の目的及び利点を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例に挙げられる特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を限定すると解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に例示のみを目的とする。特に明記しない限り、全ての量は重量パーセントである。
【0083】
材料
ポリビニルアルコール(PVOH、4-88グレード)は、Kuraray America, Inc.,Houston,TXから入手した。
【0084】
XLD3000ガラス(シリカ)球、S60HSガラス(シリカ)球及びグリシジル官能化H20ガラス(シリカ)球は、3M Company,St Paul,MNから入手した。
【0085】
硫酸ナトリウム及び0.1N NaOH溶液は、Avantor,Radnor,PAから入手した。
【0086】
エタノールは、Decon Labs,King of Prussia,PAから入手した。
【0087】
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)及びエタノールアミンは、Alfa Aesar(Haverhill,MA)から入手した。
【0088】
ウシ血清アルブミン(BSA)、TWEEN 20非イオン系洗剤、フモニシンB1、アフラトキシンB1(AFB1)及びコルチゾールは、Sigma Aldrich,St. Louis,MOから入手した。
【0089】
N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びエチル-3-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、Thermo Scientific(Rockford,IL)から入手した。
【0090】
酢酸、アセトン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、メタノール及びトリエチルアミンは、EMD Millipore,Billerica,MAから入手した。
【0091】
TEXAS RED-Xスクシンイミジルエステル、EZ-LINKヒドラジド-PEG4-ビオチン及びQDOTストレプトアビジンサンプラーキット(Q10151MP)は、Thermo Fisher Scientific,Waltham,MAから入手した。
【0092】
Cy3標識ウサギ抗マウスIgGは、Jackson ImmunoResearch,West Grove,PAから入手した。
【0093】
抗コルチゾール抗体(XM-210)は、Abeam,Cambridge,MAから入手した。
【0094】
抗フモニシン抗体(PY715173)及び抗アフラトキシンB1抗体(DMAB2948)は、Creative Diagnostics,Shirley,NYから入手した。
【0095】
脱イオン(DI)水は、MILLI-Q浄水システム(EMD Millipore,Burlington,MA)を用いて精製した。
【0096】
SUPELCLEAN LC-Si SPEカートリッジ及びAMICON Ultra 0.5mL遠心式フィルターユニット(3000NMWL)は、Millipore Sigma,St. Louis,MOから入手した。
【0097】
NANOSEPチューブは、Pall Corporation,Port Washington,NYから入手した。
【0098】
サイズ分布は、Microtrac Inc.(Montgomery,PA)のFlex動的光散乱システムを用いて測定した。
【0099】
LCMS(液体クロマトグラフィー-質量分析)データは、6130四重極LC/MSを備えるAgilent 1260 Infinity HPLCシステム(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)で記録した。
【0100】
蛍光は、Tecan Infinite 200プレートリーダー(Tecan Group, Ltd.,Switzerland)又はSynergy Neo2プレートリーダー(BioTek Instruments,Winooski,VT)のいずれかで測定した。
【0101】
FITC-コルチゾール(フルオレセインイソチオシアネート標識コルチゾール)は、M. Pourfarzaneh et al., Clin. Chem. 26(6), 730-733 (1980)の手順に従って合成した。
【0102】
抗AFB1抗体は、Thermo Fisher Scientific,Waltham,MAのALEXA FLUOR 680標識キット(#A20188)に添付された使用説明書に従い、ALEXA FLUOR 680で標識した。
【0103】
調製例1:ガラス球の分画
1A - XLD3000ガラス球の分画:ガラス球XLD3000(3M ID98-0212-3469-9;10グラム(g))を分液漏斗内の400ミリリットル(mL)の脱イオン(DI)水に添加した。懸濁液を振盪し、ガラス球を1分間(min)浮遊させた後、390mLの液体(破片及び小さなガラス球を含む)を底から排出した。このプロセスを5回繰り返した後、低圧下でWhatman 4フィルターに通して濾過することにより、分画されたガラス球を回収した。次いで、回収したガラス球をアセトン(100mL)ですすぎ、室温で一晩乾燥させた。分画されたサンプルのサイズ分布(平均(すなわち、均した)直径及びスパンによって決定される)を
図5Aに示す。
【0104】
1B - H20ガラス球の分画:ガラス球H20(3M ID70-0704-8399-8;10グラム(g))を分液漏斗内の400ミリリットル(mL)のDI水に添加した。懸濁液を振盪し、ガラス球を1分間(min)浮遊させた後、390mLの液体(破片及び小さなガラス球を含む)を底から排出した。このプロセスを5回繰り返した後、低圧下でWhatman 4フィルターに通して濾過することにより、分画されたガラス球を回収した。次いで、ガラス球をアセトン(100mL)ですすぎ、室温で一晩乾燥させた。分画サンプルのサイズ分布(平均(すなわち、均した)直径及びスパンによって決定される)を
図5Bに示す。
【0105】
調製例2:XLD3000ガラス球の活性化及びシラン処理
調製例1の分画ガラス球(6.4g;平均=43.7マイクロメートル;スパン=0.70)を400mLの0.1ノルマル(N)NaOH中にて10回転毎分(rpm)で3時間穏やかに回転させ(ThermoFisherのローテーター)、続いてWhatman #54濾紙で真空濾過することによって清浄化した。Milli-Q水ですすいだ後、清浄化したガラス球をプラスチック皿に移し、室温で一晩空気乾燥した。
【0106】
清浄化した分画ガラス球(500ミリグラム(mg))を、95%のエタノール/5%の50ミリモル(mM)酢酸バッファー(pH5.2)及び300マイクロリットル(μL)の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの40mL溶液に添加し、ボルテックスによって分散させた後、ローテーターを用いて20rpmで30分~2時間の間にわたって垂直方向に回転させた。次いで、シラン処理した球を真空濾過(Whatman #54濾紙)によって溶液から分離し、エタノールですすぎ、ガラスバイアルに移し、室温で一晩空気乾燥させた。
【0107】
調製例3:XLD3000ガラス球の抗体官能化
調製例2のシラン処理ガラス球(3mg)を0.5mL遠心分離チューブに添加し、90マイクロリットルのカップリングバッファー(0.9モル(M)硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)及び10マイクロリットルの1.5mg/mL IgG再構成ストック溶液(ウサギ抗マウスIgG抗体、シアニン3(Cy3)蛍光色素標識)の溶液に懸濁した。チューブを暗所にて20rpmで30分垂直方向に回転させた後、ガラス球を真空濾過し(Whatman #1濾紙)、1M NaCl溶液、続いて脱イオン(DI)水ですすいだ。
【0108】
本実施例の目的は、ガラス球への抗体の効率的な結合を実証することであった。蛍光顕微鏡法により、抗体によるガラス球の一貫した被覆が示された。
【0109】
調製例4:グリシジル基でプレコーティングしたH20ガラス球への抗体固定化の基本手順
NANOSEPチューブ(0.45ミクロン)に10mgのグリシジル官能化H20ガラス球を投入した。カップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)中の抗体溶液(およそ0.1mg/mL)を300マイクロリットル量添加し、懸濁液を25rpmで1時間穏やかに回転させた。液体を遠心分離によって除去し、1%BSAを含む0.5mLの消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9)を添加した。チューブの内容物を25rpmで1時間回転させることによって混合した。液体を遠心分離によって除去し、ガラス球を0.5mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。
【0110】
調製例5:TEXAS RED-Xフモニシンコンジュゲート(検出化合物)の合成
DMF中の2mg/mLフモニシンB1毒素溶液の50マイクロリットルのサンプルを、メタノール(Invitrogen)中の2mg/mL TEXAS RED-Xスクシンイミジルエステル50マイクロリットル及びトリエチルアミン10マイクロリットルと小型プラスチック反応バイアル内で混合した。反応混合物を遮光して室温で一晩(およそ20時間)反応させた。10マイクロリットルアリコートの反応混合物のサンプルをSUPELCLEAN LC-Si SPEカートリッジにロードし、クロロホルム/メタノール/酢酸(20:5:0.5)で溶出させた。画分を0.5mL毎に清浄なバイアルに回収し、LC/MSによって分析した。画分を穏やかな窒素流で乾燥させた。
【0111】
調製例6:H20ガラス球へのアフラトキシンB1(標的分析物)の固定化
NANOSEPチューブ(0.45ミクロン)に10mgのグリシジル官能化H20ガラス球を投入した。カップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)中のBSA-AFB1溶液(およそ0.5mg/mL)を400マイクロリットル量添加し、懸濁液を4℃で一晩回転させることによって混合した。次いで、液体を遠心分離によって除去し、0.5mLの消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9)を添加し、25rpmで4時間回転させることによって混合した。液体を遠心分離によって除去し、ガラス球を0.5mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。ガラス球を最後に希釈バッファーに再懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0112】
概念実証例1:結合標的溶出法によるアフラトキシンの検出
希釈バッファー(調製例6に従って調製)中のアフラトキシンB1コーティングガラス球10mgが入ったチューブを遠心分離して希釈バッファーを除去し、希釈バッファー(0.01%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で洗浄し、再び遠心分離した。ALEXA FLUOR 680標識抗AFB1抗体の溶液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の10マイクログラム/mL溶液400マイクロリットル)を添加し、遮光して回転させながら1.5時間インキュベートした。次いで、ガラス球を希釈バッファー(0.01%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄して過剰な抗体を除去し、希釈バッファー(300マイクロリットル)に再懸濁し、2mLバイアルに移した。
【0113】
結合した標的分析物分子及び複合体化した標識抗体を有するガラス球をボルテックスによって懸濁状態に維持し、25マイクロリットル量を別の清浄な1.5mLチューブに慎重に分取した。希釈バッファー中のアフラトキシンB1の標準溶液(50ppb、5ppb、0.5ppb、0ppb、各500マイクロリットル;ppb=パーツ・パー・ビリオン)をチューブ1本に1つの標準溶液でチューブに添加した。各チューブを遮光して30min回転させた。チューブを傾けながらガラス球を表面に浮遊させ、各チューブから200マイクロリットルの液体を慎重にNANOSEPチューブに移し、遠心分離して残留ガラス球を濾別した後、黒色ハーフエリア96ウェルプレートの1ウェルに移した。蛍光を670nm励起による715nm発光で測定した。
【0114】
表1は、官能化ガラス球との30minのインキュベーション後の指定量のアフラトキシンB1を含有する溶液の数回の反復試験から測定された平均蛍光シグナル強度を示す。試験した抗体は、良好な結果をもたらし、サンプル中の標的の濃度が高いほど溶液からのシグナルが増加すると共に、0.5ppbと0ppbとが明らかに識別された。
【0115】
【0116】
概念実証例2:結合抗体溶出法を用いた同じサンプル中のフモニシン及びコルチゾールの多重化検出
2A - コルチゾール球の調製:XLD3000ガラス球を、初めに調製例2と同様に3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランでシラン処理した。次いで、NANOSEPチューブに10mgのエポキシ官能化XLD3000ガラス球を投入した。抗コルチゾール抗体(XM-210)の溶液を、25マイクロリットルの2mg/mL抗体溶液及び375マイクロリットルのカップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)を混合することによって調製した後、ガラス球が入ったチューブに添加した。チューブを25rpmで1時間穏やかに回転させた。液体を短時間の遠心分離によって除去した。1%BSAを含む消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9)のアリコート(0.5mL)を添加し、懸濁液を25rpmで1時間回転させた。液体を短時間の遠心分離によって再び除去し、ガラス球を0.5mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。FITC-コルチゾールコンジュゲートの溶液(500マイクロリットル、100nM)を添加し、懸濁液を遮光して1.5時間回転させた。液体を遠心分離によって除去した。ガラス球を希釈バッファーで3回洗浄して過剰なコンジュゲートを除去した後、0.25mLの希釈バッファーに再懸濁した。
【0117】
2B - フモニシン球の調製:XLD3000ガラス球を、初めに調製例2と同様に3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランでシラン処理した。次いで、NANOSEPチューブに10mgのエポキシ官能化XLD3000ガラス球を投入した。抗フモニシン抗体(Creative Diagnostics PY715173)の溶液を、10マイクロリットルの5.3mg/mL抗体溶液及び390マイクロリットルのカップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)を混合することによって調製した後、ガラス球が入ったチューブに添加した。チューブを25rpmで1時間穏やかに回転させた。液体を短時間の遠心分離によって除去した。1%BSAを含む消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9)のアリコート(0.5mL)を添加し、懸濁液を25rpmで1時間回転させた。液体を短時間の遠心分離によって再び除去し、ガラス球を0.5mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。TEXAS RED-Xフモニシンコンジュゲートの溶液(500マイクロリットル、100nM、調製例5に従って調製)を添加し、懸濁液を遮光して1.5時間回転させた。液体を遠心分離によって除去した。ガラス球を希釈バッファーで3回洗浄して過剰なコンジュゲートを除去した後、0.25mLの希釈バッファーに再懸濁した。
【0118】
2C - 溶出法による多重化競合アッセイ:2A及び2Bからのガラス球懸濁液をボルテックスによって懸濁状態に維持し、25マイクロリットル量を清浄な1.5mLチューブに慎重に分取した。9つの異なる標的サンプル溶液+対照溶液のアリコート(コルチゾール単独:10ppb、5ppb、1ppb;フモニシン単独:10ppb、5ppb、1ppb;コルチゾール+フモニシン混合物:10ppbの各成分、5ppbの各成分、1ppbの各成分;及び対照:0ppbをそれぞれ200マイクロリットル;各サンプルについてn=2)を希釈バッファーで調製し、ガラス球が入った別のチューブに個別に添加した(チューブ1本に単一のアリコートを添加)。各チューブを遮光して1時間回転させた。チューブを傾けながらガラス球を表面に浮遊させ、各チューブから180マイクロリットルの液体を黒色ハーフエリア96ウェルプレートの1ウェルに慎重に移した。蛍光強度を励起488nm/発光520nm(コルチゾール検出用)及び励起590nm/発光620nm(フモニシン検出用)の2組の条件下で測定した。
【0119】
表2及び3並びに
図6及び7に、結果を対照に対するシグナルの増加率として示す。表2及び
図6のデータから、コルチゾール及びフモニシンの両方を含有する溶液が、FITC-コルチゾールコンジュゲートに適切な波長で調べた場合に、コルチゾールのみを含有する溶液の応答に厳密に追従することが明らかに示される。表3及び
図7のデータから、コルチゾール及びフモニシンの両方を含有する溶液が、TEXAS RED-Xコンジュゲートに適切な波長で調べた場合に、フモニシンのみを含有する溶液の応答に厳密に追従することが明らかに示される。
【0120】
【0121】
【0122】
概念実証例3:結合抗体溶出法を用いた同じサンプル中のアフラトキシン、フモニシン及びコルチゾールの多重化検出
3A - コルチゾール球の調製:NANOSEPチューブに12mgのエポキシコーティングH20ガラス球を投入した。抗コルチゾール抗体(XM-210)の溶液を、25マイクロリットルの2mg/mL抗体溶液及び375マイクロリットルのカップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)を混合することによって調製した後、ガラス球が入ったチューブに添加した。チューブを25rpmで1時間穏やかに回転させた。液体を短時間の遠心分離によって除去した。1%BSAを含む消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9)のアリコート(0.5mL)を添加し、懸濁液を25rpmで1時間回転させた。液体を短時間の遠心分離によって再び除去し、ガラス球を0.5mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。FITC-コルチゾールコンジュゲートの溶液(400マイクロリットル、100nM)を添加し、懸濁液を遮光して1.5時間回転させた。液体を遠心分離によって除去した。ガラス球を希釈バッファーで3回洗浄した後、0.3mLの希釈バッファーに再懸濁した。
【0123】
3B - フモニシン球の調製:NANOSEPチューブに12mgのエポキシコーティングH20ガラス球を投入した。抗フモニシン抗体(Creative Diagnostics PY715173)の溶液を、10マイクロリットルの5.3mg/mL抗体溶液及び390マイクロリットルのカップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)を混合することによって調製した後、ガラス球が入ったチューブに添加した。チューブを25rpmで1時間穏やかに回転させた。液体を短時間の遠心分離によって除去した。1%BSAを含む消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9)のアリコート(0.5mL)を添加し、懸濁液を25rpmで1時間回転させた。液体を短時間の遠心分離によって再び除去し、ガラス球を0.5mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。TEXAS RED-Xフモニシンコンジュゲートの溶液(400マイクロリットル、100nM、調製例5に従って調製)を添加し、懸濁液を遮光して1.5時間回転させた。液体を遠心分離によって除去した。ガラス球を希釈バッファーで3回洗浄した後、0.3mLの希釈バッファーに再懸濁した。
【0124】
3C - アフラトキシンB1球の調製:NANOSEPチューブに12mgのエポキシコーティングH20ガラス球を投入した。BSA-AFB1溶液(カップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)中0.5mg/mL)をガラス球が入ったチューブに添加し、チューブを25rpmで1時間穏やかに回転させた。液体を短時間の遠心分離によって除去した。消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9、余分なBSAを含まない)のアリコート(0.5mL)を添加し、懸濁液を25rpmで1時間回転させた。液体を短時間の遠心分離によって再び除去し、ガラス球を0.5mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。ALEXA FLUOR 680標識抗アフラトキシン抗体の溶液(400マイクロリットル、10マイクログラム/mL)を添加し、懸濁液を遮光して1.5時間回転させた。液体を遠心分離によって除去した。ガラス球を希釈バッファーで3回洗浄した後、0.3mLの希釈バッファーに再懸濁した。
【0125】
3D - 溶出法による多重化競合アッセイ:3A、3B及び3Cからのガラス球懸濁液を合わせ、浮上させ、0.54mLのバッファー溶液を底から除去して、ガラス球濃度を100mg/mLとした。球をボルテックスによって懸濁状態に維持し、20マイクロリットル量を清浄な2mLチューブに慎重に分取した。8つの異なる標的サンプル溶液+対照溶液のアリコート(コルチゾール単独:50ppb、5ppb;フモニシン単独:50ppb、5ppb;アフラトキシン単独:50ppb、5ppb;コルチゾール+フモニシン+アフラトキシンB1混合物:50ppbの各成分、5ppbの各成分;及び対照:0ppbをそれぞれ300マイクロリットル;各サンプルについてn=2)を希釈バッファーで調製し、ガラス球が入った別のチューブに個別に添加した(チューブ1本に単一のアリコートを添加)。各チューブを遮光して30min回転させた。チューブを傾けながらガラス球を表面に浮遊させた。二連のそれぞれから液体(130マイクロリットル)を除去し、合わせ、NANOSEPチューブに濾過した。合わせて濾過したサンプル(170マイクロリットル)を黒色ハーフエリア96ウェルプレートの1ウェルに移した。濾過サンプルの蛍光強度を、励起488nm/発光520nm(コルチゾール);励起590nm/発光620nm(フモニシン);励起670nm/発光715nm(アフラトキシンB1)の3組の条件下で測定した。
【0126】
表4及び5並びに
図8及び9に、データを対照に対するシグナルの増加率として示す。表4は、50ppbのコルチゾール、フモニシン、アフラトキシンB1のいずれかを含有する溶液、又は50ppbの各成分を含有する混合物についてのそれぞれ異なる波長での蛍光の増加率を示す。表5は、5ppbのコルチゾール、フモニシン、アフラトキシンB1のいずれかを含有する溶液、又は5ppbの各成分を含有する混合物についてのそれぞれ異なる波長での蛍光の増加率を示す。データから、3つ全ての標的を50ppbで容易に検出することができ、特にフモニシンが、他の標的及び蛍光コンジュゲートの存在下であっても5ppbで容易に検出され得ることが明らかに示される。
【0127】
【0128】
【0129】
概念実証例4:穀物抽出物中の結合抗体溶出法を用いたフモニシンの検出
3つの異なる穀物(オート麦、トウモロコシ、小麦)のサンプル(2g)を別の50mL遠心分離チューブに量り入れた。それぞれをPBS中のTWEEN 20非イオン系洗剤の3%溶液10mLで処理し、3分間手で振盪し、30秒間沈降させた。上清をデカントし、0.45マイクロメートルシリンジフィルターに通して濾過した後、PBSで10倍に希釈した。水中のフモニシンの10ppm(パーツ・パー・ミリオン)標準溶液を、穀物抽出物又は希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)のいずれかに十分量添加し、100ppb、50ppb、5ppb及び0ppbのフモニシンを含有する個々のサンプルを作製した。
【0130】
XLD3000ガラス球を、初めに調製例2と同様に3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランでシラン処理した。次いで、NANOSEPチューブにそれぞれ5mgのエポキシ官能化XLD3000ガラス球を投入し、続いて5マイクロリットルの5.3mg/mL抗体溶液及び395マイクロリットルのカップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含むリン酸バッファー、pH7.5)を混合することによって調製した抗フモニシン抗体(Creative Diagnostics PY715173)の溶液を投入した。チューブを25rpmで1時間穏やかに回転させた後、液体を短時間の遠心分離によって除去し、1%BSAを含む0.35mLの消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9)を添加した。得られた懸濁液を25rpmで1時間回転させた。液体を短時間の遠心分離によって再び除去し、ガラス球を0.4mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。TEXAS RED-Xフモニシンコンジュゲートの溶液(400マイクロリットル、100nM、調製例5に従って調製)を添加し、懸濁液を遮光して1時間回転させた。液体を遠心分離によって除去した。ガラス球を希釈バッファーで3回洗浄して過剰なコンジュゲートを除去した後、0.2mLの希釈バッファーに再懸濁した。
【0131】
ガラス球をボルテックスによって懸濁状態に維持し、25マイクロリットル量を清浄な1.5mLチューブに慎重に分取した。標的溶液(100ppb、50ppb、5ppb及び0ppb、250マイクロリットルの各穀物抽出物又はPBS対照)をガラス球が入った別のチューブに個別に添加した(チューブ1本に単一の標的溶液を添加)。各チューブを遮光して1時間回転させた。チューブを傾けながらガラス球を表面に浮遊させ、各チューブから160マイクロリットルの液体を黒色ハーフエリア96ウェルプレートの1ウェルに慎重に移した。蛍光強度を590nm励起による620nm発光で測定し、表6及び
図10に報告する。これらのデータから、フモニシンが穀物から効率的に抽出され、本明細書に記載の方法を用いて分析され得ることが示される。
【0132】
【0133】
調製例7:アフラトキシンB1-QD 585コンジュゲートの合成
乾燥DMSO(0.4mL)を50mgのEZ-LINKヒドラジド-PEG4-ビオチンに添加し、250mMストック溶液を作製した。この溶液(2.5マイクロモル)の10マイクロリットルアリコートを、褐色バイアル内のDMSO中のアフラトキシンB1の10mg/mL溶液100マイクロリットルに添加した。酢酸(110マイクロリットル)をバイアルに添加した後、これを水浴内で一晩50℃に加熱した。LCMSにより、EZ-LINKヒドラジド-PEG4-ビオチンの消費及びアフラトキシンコンジュゲート(ビオチン-PEG4-AFB1、MH+ 800.2)の形成が示された。この溶液の5マイクロリットルアリコート(2×10-8モル)を975マイクロリットルのリン酸バッファー(0.1N pH7.6)で希釈して、0.02nM溶液を作製した。この溶液をQDOT 585ストレプトアビジンコンジュゲート(Thermo Fisher ScientificのQ10151MPサンプラーキットの一部として入手)の1マイクロモル溶液20マイクロリットルに添加し、室温で2時間穏やかに回転させた。
【0134】
コンジュゲーション後に、2つの0.5mL AMICON Ultra遠心式フィルターを用い、14000Gで15分間遠心分離することによって溶液を濃縮した。溶出液(およそ400マイクロリットル)を除去し、フィルターに残った濃縮溶液を、0.4mLのpH7.6バッファーを用いて、さらに3回フィルター(14000G、15分間)で洗浄した。2つの濃縮最終溶液を合わせ、冷蔵し、ストレプトアビジン-ビオチン-PEG4リンカーを介してアフラトキシンB1で官能化された、およそ10-11モルのQDOT 585を含有する、およそ110マイクロリットルの鮮橙色の蛍光溶液を得た。
【0135】
概念実証例5:結合DMAB2948抗体を用いた枯渇法によるアフラトキシンの検出
NANOSEPチューブ(0.45ミクロン)に10mgのグリシジル官能化XLD3000ガラス球(調製例2)を個別に投入した。各チューブに、カップリングバッファー(0.9M硫酸ナトリウムを含む0.1Mリン酸バッファー、pH7.5)中の抗アフラトキシン(DMAB2948)抗体溶液(およそ0.07mg/mL)を400マイクロリットル量添加し、懸濁液を25rpmで1時間穏やかに回転させた。液体を遠心分離によって除去し、1%BSAを含む0.4mLの消光バッファー(3Mエタノールアミン、pH9)を添加し、内容物を25rpmで1時間回転させることによって混合した。液体を遠心分離によって除去し、ガラス球を0.5mLの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)で3回洗浄した。
【0136】
次いで、抗体官能化ガラス球を200マイクロリットルの希釈バッファー(0.1%TWEEN 20非イオン系洗剤を含むリン酸バッファー、pH7.4)に懸濁し、この懸濁液の25マイクロリットルアリコートを清浄な1.5mLチューブに慎重に移した。
【0137】
アフラトキシンB1のストック溶液(メタノール中20マイクログラム/mL、Sigma- Aldrich,St Louis,MO)を希釈して(PBS、0.1%Tween-20、pH7.4)、1000ppb溶液を得た。この溶液を調製例7のQD-PEG-AFB1コンジュゲート溶液(20マイクロリットル)及び適量の希釈バッファーと混合して、最終アフラトキシンB1濃度を100ppb、10ppb、1ppb及び0ppbとした。これらの溶液のアリコート(175マイクロリットル)を、抗体官能化ガラス球が入った別のチューブに個別に二連で添加した(チューブ1本に単一のアリコートを添加)。各チューブを回転させながら30minインキュベートした。チューブを傾けながらガラス球を表面に浮遊させ、各チューブから200マイクロリットルの液体を黒色ハーフエリア96ウェルプレートの1ウェルに慎重に移した。蛍光強度を400nm励起による585nm発光で測定し、表7及び
図11に報告する。これらのデータから、10ppb以上のアフラトキシン濃度が枯渇法によって効率的に測定され得ることが示される。
【0138】
【0139】
実施例1:
PVOH(100g)を70℃で20時間加熱することによって脱イオン水(233g)に溶解した。PVOH溶液を室温まで冷却した。S60HSガラス球(0.3g、密度0.6g/mL、平均直径30マイクロメートル)を30gのPVOH溶液が入ったボトルに添加し、ボトルローラーミキサーを用いて内容物を50℃で1時間混合して、コーティング配合物を得た。
【0140】
固定化されたガラス球を含有するフィルムサンプルを、ノッチバーコーターを用いて8ミルのギャップ設定でポリエステル剥離フィルムの剥離コーティング面にコーティング配合物をコーティングすることによって調製した。コーティングサンプルを65℃で20分間乾燥させた。ディスク(直径2.54cm)をサンプルから打ち抜き、剥離フィルムを除去した。単一のフィルムディスクをバイアルの底に置いた後、室温の水2mLをバイアルに添加した。30秒以内にフィルムが溶解し、官能化ガラス球が上部水面に浮上するのが観察された。
【0141】
実施例2:
より少量のS60HSガラス球(0.05g)を30gのPVOH溶液が入ったボトルに添加したことを除き、実施例1に記載したものと同じ手順に従った。得られたフィルムディスクは、30秒以内に水に溶解し、官能化ガラス球が上部水面に浮上するのが観察された。
【0142】
実施例3:
0.3gのXLD3000ガラス球(密度0.23g/mL、平均直径30マイクロメートル)を30gのPVOH溶液が入ったボトルに添加したことを除き、実施例1に記載したものと同じ手順に従った。得られたフィルムディスクは、30秒以内に水に溶解し、官能化ガラス球が上部水面に浮上するのが観察された。
【国際調査報告】