IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス 9 エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特表-フィルム形成組成物 図1
  • 特表-フィルム形成組成物 図2
  • 特表-フィルム形成組成物 図3
  • 特表-フィルム形成組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】フィルム形成組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/22 20060101AFI20240415BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20240415BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20240415BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20240415BHJP
   A61L 15/62 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240415BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/892 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61L15/22 300
A61L15/26
A61L15/24
A61L15/58
A61L15/62
A61K9/70 401
A61K47/34
A61K47/32
A61K8/02
A61K8/892
A61K8/81
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560095
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022022505
(87)【国際公開番号】W WO2022216495
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,300
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523064620
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス 9 エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DDP Specialty Electronic Materials US 9,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】タン、アンソニー ウェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シャラウ ザ セカンド、ジェラルド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA76
4C076BB31
4C076EE16
4C076EE27
4C076EE48
4C081AA03
4C081AA10
4C081AA12
4C081BB01
4C081BB04
4C081CA061
4C081CA271
4C081CB051
4C081DA02
4C081DC12
4C081EA01
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD151
4C083AD152
4C083CC02
4C083DD12
4C083EE07
4C083EE10
4C083FF01
(57)【要約】
i)1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサン;ii)窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである);iii)任意選択的に、溶媒のブレンドを含む、フィルム形成組成物であって、フィルム形成組成物から形成されたフィルムが水解性である、組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサン;
ii)窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、前記窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである);
iii)任意選択的に、溶媒
のブレンドを含む、フィルム形成組成物であって、
前記フィルム形成組成物が水解性であるフィルムを形成する、
組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルム形成組成物であって、前記組成物が、i)及びii)の重量を基準として、35~85%(w/w)のi)を含み、i)のヒドロキシル含有量は、i)の重量を基準として、1.5~12.0%(w/w)であり、及び/又は前記ブレンドは均一である、組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィルム形成組成物であって、前記組成物が15%(w/w)~65%(w/w)のii)を含み、前記組成物が35%(w/w)超の水溶性可塑剤を更に含み、前記フィルム形成組成物が、いったん形成されると皮膚から除去するために水を必要とするだけであるフィルムを前記皮膚上に形成し、前記1個以上のヒドロキシル基が、シラノール、ポリエーテル、ヒドロキシ置換ヒドロカルビル、又はシラノール、ポリエーテル、及びヒドロキシル置換ヒドロカルビル基の2つ以上の組合せの一部であり、並びに/又は前記ポリシロキサンが、ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン;ヒドロキシル置換ヒドロカルビル末端ポリジオルガノシロキサン;若しくはポリジオルガノシロキサン-ポリエーテルコポリマーである、組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム形成組成物であって、前記窒素含有繰り返し単位の窒素原子が共鳴安定化されているか、或いは窒素含有繰り返し単位を含む前記ポリマーが、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、2-メチル-2-オキサゾリン、又はビニルピリジンの1種以上のホモポリマー及びコポリマーである、組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム形成組成物であって、前記組成物が溶媒を含み、前記溶媒が有機アルコールである、組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物から形成されるフィルム。
【請求項7】
i)1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンと;
ii)窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、前記窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである)と
を含む、フィルム組成物であって、
前記フィルムが水解性である、
フィルム組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルムであって、前記フィルムが、
35%(w/w)~85%(w/w)のi)(ここで、i)は、i)の重量を基準として、1.5%(w/w)~12%(w/w/)のヒドロキシルを含む)と、
15%(w/w)~65%(w/w)のii)と
を含む、フィルム。
【請求項9】
請求項8の1つに記載のフィルムであって、前記フィルムがヒト皮膚に接着するであろう、フィルム。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載のフィルムであって、前記フィルムが感圧接着剤である、フィルム。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム形成組成物又は請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム形成組成物によって形成されたフィルムを含む、ウェアラブル製品であって、前記ウェアラブル製品が、衣服、ドレープ、創傷包帯、包帯、パッチ又は医療デバイスである、ウェアラブル製品。
【請求項12】
請求項7~10のいずれか一項に記載のフィルムを含む、ウェアラブル製品であって、前記ウェアラブル製品が医療デバイスであり、前記医療デバイスが、センサー、人工装具、モニター又は除細動器である、ウェアラブル製品。
【請求項13】
皮膚の保護方法であって、前記方法が、
請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム形成組成物を皮膚に適用するステップ、又は
請求項6~9のいずれか一項に記載のフィルムを皮膚に適用するステップ(ここで、前記フィルムは、水又高水分環境での前処理なしに乾燥皮膚に直接適用される)
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の皮膚の保護方法であって、水を前記フィルムに適用するステップ(ここで、前記水は、前記皮膚への前記フィルム形成組成物の接着を低下させる)と;前記組成物を前記皮膚から除去するステップとを更に含む方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム形成組成物の製造方法であって、
1個以上のヒドロキシル基を含む前記ポリシロキサン、窒素含有繰り返し単位を含む前記ポリマー(ここで、前記窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである)、任意選択的に、前記溶媒を組み合わせるステップと;
前記ブレンドが形成されるまで混合するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【0002】
本発明は、概して、フィルム形成組成物、水解性フィルム、及び1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンと窒素含有繰り返し単位を含むポリマーとを含むフィルム形成組成物及びフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フィルム及びフィルム形成組成物は、健康管理用途を有する。例えば、それらは、衣服、ドレープ、創傷包帯、包帯、パッチ及び電極などの医療デバイスに使用され得る。フィルムは、健康的な及び損傷した皮膚に適用することができる。それらは、皮膚及び創傷を、微粒子、細菌汚染、及び擦り傷から保護することができる。適用後に、フィルムは、後で皮膚から除去されなければならない。それ故に、フィルムは、所望の結果を達成するのに十分に長く皮膚上にとどまるのに十分な接着性を有し、特定の用途において分解に抵抗し、且つ患者への悪影響を引き起こさないものでなければならない。例えば、フィルムは、創傷包帯において体液による分解に抵抗し、且つ患者の皮膚への痛み、刺激、又は損傷を引き起こすことなく、その時になったら皮膚から除去することができなければならない。皮膚を損傷しないことは、損傷した皮膚及び年配の患者の皮膚で特に必要である。
【0004】
接着及び安定性特性に加えて、フィルム又はフィルム形成組成物はまた、添加剤のための好適なマトリックスであることが必要であり得る。例えば、好適なマトリックスは、薬物活性物、抗微生物剤、抗菌剤、酸化防止剤、及び/又は導電性添加剤のために必要とされ得る。
【0005】
有機ポリマーは、フィルム及びフィルム形成組成物において問題を有していた。それらは、良好な接着特性を提供するが、皮膚から除去するのが困難で、損傷を引き起こし得、刺激性又は感作性モノマーを含有し得、いくつかの材料のためのマトリックスとしてこれまで不適切であった。ポリシロキサン材料はまた、健康管理用途におけるフィルム及びフィルム形成組成物に使用されてきた。ポリシロキサンは、皮膚からの良好な除去特性を提供するけれども、それらは、水分管理、親水性、及び透明性で問題を有していた。有機ポリマーとポリシロキサンポリマーとの組合せは、報告された不適合性問題を有していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に、様々な活性材料と相溶性があり、用途の要求に応じて皮膚上にとどまるのに十分な接着強度を提供するが、容易に除去され得る、且つ所定の場所にある又は除去されるときに皮膚に悪影響を及ぼさないであろうフィルム及び/又はフィルム形成組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、i)1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンと;ii)窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである)と;iii)任意選択的に、溶媒とのブレンドを含むフィルム形成組成物であって、フィルム形成組成物が水解性であるフィルムを形成する、組成物を指向する。
【0008】
本発明は、更に、i)1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンと;ii)窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである)とを含むフィルムであって、フィルムが水解性である、フィルムを指向する。
【0009】
本発明は、もっと更に、フィルム又はフィルム形成組成物を含むウェアラブル製品を指向する。
【0010】
本発明は、もっと更に、フィルム形成組成物の製造方法であって、1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンと、窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである)と、任意選択的に、溶媒とを組み合わせるステップと;ブレンドが形成されるまで混合するステップとを含む、方法を指向する。
【0011】
本発明のフィルム形成組成物は、広範囲の成分と相溶性があるマトリックスを提供し、皮膚を刺激しない、損傷しない、又は感作しない良好な接着強度のフィルムを形成することができる。本発明のフィルムは、水を使用して皮膚への損傷又は刺激を引き起こすことなく皮膚から容易に除去される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ポリビニルピロリドンK-90とシラノール流体Dowsil(登録商標)4-2737とのブレンドに関するガラス転移温度(ケルビン)及びポリカーボネートからの接着力のグラフである。
図2】示差走査熱量測定法を利用して図1において示された試料(ポリビニルピロリドン及びDowsil 4-2737)の測定から得られた熱流曲線のグラフである。
図3】ポリビニルピロリドンK-90とシラノール流体Dowsil 4-7042とのブレンドに関するガラス転移温度(ケルビン)及びポリカーボネートからの接着力のグラフである。
図4】ポリビニルカプロラクタム(Luviskol(登録商標)Plus)とシラノール流体Dowsil 4-7042とのブレンドに関するガラス転移温度(ケルビン)及びポリカーボネートからの接着力のグラフである。溶媒は、測定前に混合物から除去された。最大剥離力試料は、実施例5に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
i)1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンと;
ii)窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである)と;
iii)任意選択的に、溶媒と
のブレンドを含む、フィルム形成組成物であって、
フィルム形成組成物が水解性であるフィルムを形成する、組成物。
【0014】
「ブレンド」は、本明細書で用いるところでは、組成物が、それがどこでサンプリングされようとも同一であるか又は実質的に同一であることを意味することを意図する。
【0015】
「均一ブレンド」は、本明細書で用いるところでは、ただ一つのガラス転移温度を有することでも示されるブレンドを意味することを意図する。
【0016】
「水解性フィルム」は、本明細書で用いるところでは、水をフィルムに添加することによってその特性を変えるであろうフィルムである。いくつかの実施形態において、フィルムは、医療用接着フィルムであり、フィルムは、水がフィルムに適用される場合に皮膚とのその接着強度を失う、又は低減するであろう。
【0017】
ポリシロキサンi)は、ポリシロキサンの重量を基準として、1個以上のヒドロキシル基、或いはまた0.1~15%(w/w)、或いはまた0.5~11%(w/w)のヒドロキシル基を含む。当業者は、ポリシロキサンに関するヒドロキシル基の重量パーセントを測定する方法を知っているであろう。
【0018】
ポリシロキサンi)のヒドロキシル基は、末端、ペンダント、又は両方にあり得るか;又はヒドロキシルは、末端、ペンダント、又は両方にある基によって含まれ得る。ヒドロキシルは、シラノール、ポリエーテル、ヒドロキシ置換ヒドロカルビル基、又はシラノール、ポリエーテル、及びヒドロキシ置換ヒドロカルビル基の組合せからであり得る。
【0019】
ポリシロキサンi)は、一般式RSiO(4-a)/2(式中、「a」は、0~3、1~3、又は1.8~2.2の値を有し、式中、各Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル、1個以上のヒドロキシルで置換されたヒドロカルビル、ヒドロキシル、又はポリエーテルであり、及び式中、少なくとも1つのR基は、1個以上のヒドロキシル基で置換されたヒドロカルビル、ヒドロキシル、又はポリエーテルである)で表される1個以上の単位の組合せとして記載され得る。
【0020】
Rで表されるヒドロカルビル基は、1~12、或いはまた1~8、或いはまた1~6個の炭素原子を有する。ヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルなどのアルキル;シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルなどの、シクロアルキル;フェニル及びナフチルなどの、アリール;トリル及びキシリルなどのアルカリール;ベンジル及びフェニチルなどの、アラルキル;ビニル、アリル、及びプロペニル、ブテニル、ヘキセニル、及びオクテニルなどの、アルケニル;スチリル及びシンナミルなどの、アリールアルケニル;並びにエチニル及びプロピニルなどの、アルキニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
Rで表される1個以上のヒドロキシルで置換されたヒドロカルビルは、ヒドロカルビルが1個以上、或いはまた1又は2個、或いはまた1個のヒドロキシルによって置換されていることを除いては、Rに関して上で定義されたようなヒドロカルビルである。1個以上のヒドロキシル基で置換されたヒドロカルビルの例としては、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル、1-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、1-ヒドロキシ-1-メチルプロピル、1-ヒドロキシメチルプロピル、2-ヒドロキシメチルプロピル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシルなどの、ヒドロキシアルキル;ヒドロキシシクロペンチル、ヒドロキシシクロヘキシル、及びヒドロキシメチルシクロヘキシルなどの、ヒドロキシシクロアルキル;ヒドロキシフェニル及びヒドロキシナフチルなどの、ヒドロキシアリール;ヒドロキシメチルフェニル及びヒドロキシキシリルなどのヒドロキシアルカリル;ヒドロキシベンジル及びヒドロキシフェネチルなどの、ヒドロキシアラルキル;ヒドロキシビニル、ヒドロキシアリル、及びヒドロキシプロペニルなどの、ヒドロキシアルケニル;ヒドロキシスチリル及びヒドロキシシンナミルなどの、ヒドロキシアリールアルケニル;ヒドロキシエチニル及びヒドロキシプロピニルなどの、アルキニル、並びに1,2-ジヒドロキシエチル、1,2-ジヒドロキシプロピルなどのジヒドロキシアルキル、及びジヒドロキシフェニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0022】
Rで表されるポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、及びエチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマー(PEO/PPO)が挙げられるが、それらに限定されない。PEO、PPO、及びPEO/PPOの重合度は変わることができる。一実施形態において、重合度は、1~8、或いはまた1~12、或いはまた1~16の範囲である。
【0023】
一実施形態において、Rで表される基は、メチルとヒドロキシル基との、或いはまたメチル、フェニルと、ヒドロキシル基との、或いはまたメチルと、1~6個の炭素原子を有するヒドロキシ置換ヒドロカルビルとの、或いはまたメチルとポリエーテルとの、或いはまたメチル、フェニルと、ポリエーテルとの組合せである。
【0024】
ポリシロキサンの構造は変わり得る。例えば、ポリシロキサンは、環状、線状、分岐した、架橋した、又は樹木状であり得るが、それらに限定されない。
【0025】
ポリシロキサンは、ポリシロキサンの混合物であり得る。一実施形態において、ポリシロキサンは、様々な分子量、構造、及び/又は粘度のポリシロキサンの混合物、或いはまた線状ポリシロキサンと環状ポリシロキサンとの混合物などの異なる構造のポリシロキサンの混合物であり得るし、或いはまたポリシロキサンは線状である。一実施形態において、ポリシロキサンは、式RSiO1/2(式中、各Rは、上で定義された通りである)のシロキサン基で末端ブロックされている、実質的に線状の材料を含む。
【0026】
ポリシロキサンのシロキサン部分の重合度は変わることができる。一実施形態において、ポリシロキサンi)のシロキサン部分は、2~200、別の実施形態においては、3~150、及び別の実施形態においては、3~50個のケイ素原子の重合度を有する。
【0027】
1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンi)の例としては、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルビニル、ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルフェニル、ジメチルシロキサン)及びポリ(ジフェニル、ジメチルシロキサン);末端若しくはペンダントPEO、PPO、若しくはPEO及びPPOの両方を有するポリジメチルシロキサンなどの、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、又はポリジメチルシロキサンとPPO、PEO、若しくはPPO及びPEOの両方とのブロックコポリマー;ヒドロキシメチル末端ポリジメチルシロキサン及びジメチルシロキサンを含むヒドロキシメチル-末端コポリマーなどのヒドロキシ置換ヒドロカルビル末端若しくはペンダントポリジメチルシロキサンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0028】
当業者は、ポリシロキサンを製造する方法を知っているであろう。本発明による多くのポリシロキサンは、市販されている。
【0029】
ポリマーii)は、窒素含有繰り返し単位を含み、ここで、窒窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである。一実施形態において、ポリマーii)は、窒素含有繰り返し単位を含む有機ポリマーである。一実施形態において、ポリマーii)は、1繰り返し単位当たり1個以上、或いはまた1~3個、或いはまた1又は2個、或いはまた1個の窒素原子を含むホモポリマーである。
【0030】
窒素含有繰り返し単位を含むポリマーii)は、ホモポリマーであることができるか又は2つ以上、或いはまた2又は3つの、異なる繰り返し単位を有することができる。ポリマーii)が異なる繰り返し単位を有する場合、繰り返し単位の少なくとも1つは窒素を含む。
【0031】
一実施形態において、窒素含有繰り返し単位の窒素原子は、単環若しくは多環芳香族炭素、アミド基のカルボニル基、複素環アミン、アルキン及びビニル基との相互作用でなどで共鳴安定化している。
【0032】
ポリマーii)は、20,000~3,000,000g/mol、或いはまた100,000~2,000,000g/mol、或いはまた1,000~20,000g/molの分子量を有する。
【0033】
窒素含有繰り返し単位を含むポリマーii)は、共通の溶媒中の1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンi)との混合物の溶融又はキャストから組成物を形成する。一実施形態において、窒素含有繰り返し単位を含むポリマーii)は、共通の溶媒中の1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンi)との混合物の溶融又はキャストから均一組成物を形成する。
【0034】
ポリマーii)は、上で記載されたように窒素含有繰り返し単位を含む2種以上のポリマーを含み得る。
【0035】
窒素含有繰り返し単位を含むポリマーii)の例としては、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピペリドン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-ビニルイソブチルアミド)、ポリ(N-ビニルホルムアミド)、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリアミノ酸、ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート及びそれらのコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。当業者は、ポリマーii)を製造する方法を知っているであろう。アミンを繰り返し単位中に含む多くのポリマーは、市販されている。
【0036】
溶媒は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むポリマーi)、窒素含有繰り返し単位を含むポリマーii)の両方、或いはまたポリマーi)、ポリマーii)及びフィルム形成組成物中の任意の追加の材料を可溶化するであろう任意の溶媒である。一実施形態において、溶媒は、有機アルコール、或いはまた2~10個、或いはまた2~6個、或いはまた2又は3個の炭素原子を有する有機アルコールである。溶媒の例としては、エタノール及びイソプロパノールなどの有機アルコールが挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態において、溶媒はイソプロパノールであり;別の実施形態においては、溶媒はエタノールである。一実施形態において、溶媒は、水性アルコール溶液、或いはまた溶媒の総重量を基準として、0.1~25%(w/w)、或いはまた0.1~15%(w/w)の水を含む、水性アルコール溶液である。多くの溶媒は市販されている。
【0037】
一実施形態において、溶媒は、2種以上の溶媒の混合物、或いはまた2種若しくは3種の溶媒の混合物である。溶媒の混合物の例としては、エタノール及びイソプロパノール;エタノール及び水;イソプロパノール及び水;並びにエタノール、イソプロパノール、及び水が挙げられる。
【0038】
一実施形態において、フィルム形成組成物における混合物は、均一ブレンドであり、ここで、「均一ブレンド」は、上で記載された意味を有する。
【0039】
フィルム形成組成物は、医薬活性物、抗菌剤成分、有機塩、導電性成分、化粧品成分、及びMQポリシロキサン樹脂などの改質剤を含むが、それらに限定されない追加の材料を更に含み得る。活性物は、それがフィルム形成組成物に可溶である若しくは部分的に可溶である、或いはまた1個以上のヒドロキシル基を有するポリシロキサンに可溶である若しくは部分的に可溶である場合にフィルム形成組成物への添加に好適である。当業者は、材料がフィルム形成組成物若しくは1個以上のヒドロキシ基を有するポリシロキサンに可溶である若しくは部分的に可溶であるかどうかを決定する方法を知っているであろう。例えば、添加剤は、典型的なレベルでフィルム形成組成物に混ぜ込まれ得る。
【0040】
抗菌剤成分、有機塩、及び導電性成分は、当技術分野において公知であり、多くは市販されている。抗菌剤成分の例としては、塩化ベンザルコニウムなどのアルコニウムハロゲン化物及び臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、並びに塩化4-ビニルベンジル(トリフェニル)ホスホニウムが挙げられるが、それらに限定されない。
【0041】
化粧品成分は、当技術分野において公知であり、市販されている。化粧品成分の例としては、顔料、界面活性剤、乳白剤、パール化剤、着色剤、及びInternational Cosmetic Ingredient Dictionaryの最新版に見いだされる他のクラスの成分が挙げられるが、それらに限定されない。
【0042】
フィルム形成組成物は、フィルム形成組成物の重量を基準として、10~85%(w/w)、或いはまた30~85%(w/w)、或いはまた50~85%(w/w)、或いはまた60~85%(w/w)、或いはまた30~60%(w/w)、或いはまた50~60%(w/w)のポリシロキサンi)を含む。
【0043】
フィルム形成組成物は、フィルム形成組成物の重量を基準として、15~90%(w/w)、或いはまた15~70%(w/w)、或いはまた15~50%(w/w)、或いはまた15~40%(w/w)、或いはまた40~70%(w/w)、或いはまた40~50%(w/w)のポリマーii)を含む。
【0044】
一実施形態において、フィルム形成組成物は、溶媒を、或いはまた、フィルム形成組成物の重量を基準として、1~75%(w/w)、或いはまた2~20%(w/w)の溶媒を含む。
【0045】
フィルム形成組成物が、上で記載されたような追加の材料を含む場合、フィルム形成組成物は、所望の効果を達成するのに十分な量の材料を、或いはまた、フィルム形成組成物の総重量を基準として0.01~10%(w/w)、或いはまた0.01~5%(w/w)の追加の材料を含む。
【0046】
フィルム形成組成物は、医薬活性物を、或いはまた薬学的に十分な量、或いはまた0.01~10%、或いはまた0.01~5%(w/w)、或いはまた0.01~2%(w/w)の医薬活性物を含み得る。薬学的に活性な材料の例としては、リドカイン、樟脳、ジフェンヒドラミン、テルビナフィン、クロトリマゾール、アルバコナゾール、プラミコナゾール、ミコナゾール、クロニジン塩基が挙げられるが、それらに限定されない。多くの薬学的活性物の製造方法は、当技術分野において公知である。多くの薬学的活性物は市販されている。
【0047】
フィルム形成組成物は、様々な用途向けに使用することができる。フィルム形成組成物が使用され得る用途としては、生物医学センシング及び医療用電極、放射線耐性接着剤などの、接着剤、抗菌性フィルム、局所の及び経皮的な薬物送達のための薬物送達マトリックスが挙げられるが、それらに限定されない。当業者は、これらの様々な用途でのフィルム形成組成物の使用方法を知っているであろう。
【0048】
フィルム形成組成物は、ブレンド、或いはまた均一ブレンドが形成されるまで構成要素を任意の順に混合して組み合わせることによって製造され得る。或いはまた、ポリシロキサンi)及び/又は窒素含有繰り返し単位を含むポリマーii)が最初に溶媒中で混合され、次いで、或いはまた均一ブレンドが形成されるまで混合して組み合わせられる。フィルム形成組成物に添加されるあらゆる追加の材料は、ポリシロキサンi)、窒素含有繰り返し単位を含むポリマー、溶媒、又は溶媒とi)、ii)、若しくはi)及びii)のいずれかへのそれらの溶解性に応じてフィルム形成組成物に添加することができる。フィルム形成組成物の構成要素を混合するために使用される混合装置は、決定的に重要であるわけではない。当業者は、どんな装置を使用するか及び組成物を組み合わせる及び混合する方法を知っているであろう。
【0049】
フィルム形成組成物の構成要素が組み合わせられる温度は、変わることができる。例えば、組合せは、約周囲温度、或いはまた周囲温度~高められた温度、或いはまた10℃~60℃で完了し得る。当業者は、フィルム形成組成物の構成要素が組み合わせられる温度を調整する及び最適化する方法を知っているであろう。
【0050】
一実施形態において、フィルム形成組成物は、ポリシロキサンi)、ポリマーii)及び任意の他の成分を混合し、混合物をポリマーii)のガラス転移温度近くに加熱することによって製造され、均一化が達成されるまで混合される。別の実施形態において、ポリシロキサンi)及びポリマーii)の両方を可溶化するであろう溶媒は、均一化プロセス中にポリシロキサン及びポリマー混合物に添加される。
【0051】
i)1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンと;
ii)窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである)と
を含む、フィルムであって、
フィルムが、水解性である
フィルム。
【0052】
ポリシロキサンi)及び窒素含有繰り返し単位を含むポリマーii)は、上で記載された通りである。
【0053】
フィルムは、フィルム形成組成物に関して上で記載されたような追加の材料を含み得る。
【0054】
フィルムは、当技術分野において公知の方法によって形成され得る。例えば、フィルムは、上で記載された溶媒を含むフィルム形成組成物をバッキングシート上へキャストし、次いで溶媒を蒸発させることによって製造され得る。当業者は、フィルムをキャストする方法及び溶媒を蒸発させる方法を知っているであろう。
【0055】
一実施形態において、フィルムは接着フィルムである。フィルムが使用され得る用途としては、生物医学センシング及び医療用電極、放射線耐性接着剤などの、接着剤、抗菌性接着フィルム、局所の及び経皮的な薬物送達のための接着特性を持った薬物送達マトリックスが挙げられるが、それらに限定されない。これらの用途向けフィルムは、フィルム形成組成物に関して上で記載されたような相当する追加の材料を組み入れ、次いで当技術分野において公知の方法に従ってフィルムをフィルム形成組成物からキャストすることによって製造され得る。当業者は、どの添加剤を組み入れるか、追加の材料を組み入れる方法、及びフィルム形成組成物から形成されたフィルムをこれらの用途向けに使用する方法を知っているであろう。
【0056】
ウェアラブル製品であって、フィルム形成組成物を含む製品。フィルム形成組成物は、上で記載された通りである。当業者は、フィルム形成組成物を含むウェアラブル製品の製造及び使用方法を知っているであろう。例えば、フィルムは、バッキングシート及びトップシート上にキャストされ;トップシートは、すぐに使えるときに除去され得、露出したフィルムは、着用者に貼り付けられるウェアラブル製品のセクションに適用され;いったん貼り付けられると、バッキングシートは次いで除去され、ウェアラブル製品は着用者に適用される。或いはまた、フィルム形成組成物は、バックシート又はトップシートあり若しくはなしでウェアラブル製品に直接適用され得る。フィルム形成組成物を含むウェアラブル製品の例としては、衣服、ドレープ、創傷包帯、包帯、パッチ又は医療デバイスが挙げられるが、それらに限定されない。
【0057】
フィルム形成組成物によって形成されたフィルムを含む、ウェアラブル製品。フィルム及びフィルム形成組成物は、上で記載された通りである。当業者は、上で記載されたようなフィルム及びフィルム形成組成物を含むウェアラブル製品を製造する方法を知っているであろう。フィルム又はフィルム形成組成物でウェアラブル製品を製造する標準方法が用いられ得る。上で記載されたフィルム形成組成物によって形成されたフィルを含有するウェアラブル製品の例としては、衣服、ドレープ、創傷包帯、包帯、パッチ又は医療デバイスが挙げられるが、それらに限定されない。
【0058】
フィルム形成組成物の製造方法であって、
1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサンと、窒素含有繰り返し単位を含むポリマー(ここで、窒素含有繰り返し単位は、アミド、第三級アミン、ベンジルアミン、又は複素環アミンである)と、任意選択的に、溶媒とを組み合わせ;ブレンドが形成されるまで混合することを含む方法。
【0059】
ポリシロキサン及びポリマーは、フィルム形成組成物に関して上で定義された通りである。
【0060】
組み合わせることは、当業界において公知の方法を用いて行われる。当業者は、ポリシロキサンとポリマーとを組み合わせる方法を知っているであろう。
【0061】
一実施形態において、本方法は、溶媒を1個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサン及び窒素含有繰り返し単位を含むポリマーと組み合わせることを更に含む。溶媒は、フィルム形成組成物に関して上で記載された通りである。当業者は、溶媒をポリマー及びポリシロキサンと組み合わせる方法を知っているであろう。例えば、ポリマーは、溶媒に溶解させられ、次いで溶媒及びポリマー溶液は、ポリシロキサンに添加され得る。
【0062】
フィルム形成組成物の形成方法は、追加の材料を更に含み、ここで、追加の材料は、フィルム形成組成物に関して上で記載された通りである。
【0063】
本発明の方法、及び組成物は、医薬添加剤などの、広範囲の材料のためのマトリックスとして機能するフィルム形成組成物を提供し、皮膚を刺激しない、損傷しない、又は感作しない良好な接着強度を持ったフィルムを形成することができる。本発明のフィルム形成組成物から形成されたフィルムは、水を使用して、皮膚への損傷又は刺激を引き起こすことなく皮膚から容易に除去される。フィルム形成組成物から製造されたフィルムは、ポリシロキサンi)又はポリマーii)それら自体から形成されたフィルムと比較してより粘着性、接着性及び柔軟性である。フィルム及びフィルム形成組成物のための用途としては、生物医学センシング及び医療用電極、放射線耐性接着剤などの、接着剤、抗菌性接着フィルム、局所の及び経皮的な薬物送達のための接着特性を持った薬物送達マトリックスが挙げられる。
【実施例
【0064】
以下の実施例は、本発明の方法をよりよく例示するために提示されるが、添付の特許請求の範囲で正確に記述される、本発明を限定すると考えられるべきではない。特に記載のない限り、実施例で報告される全ての部及び百分率は、重量による。次の表1は、実施例で用いられる略語を説明する。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例で用いられる方法
フィルム形成組成物の調製
ポリシロキサンとアミノ基繰り返し単位を含むポリマーとを、均一な調合物が達成されるまでイソプロピルアルコール(50重量%)と混合することによってフィルム形成剤の溶液を調製した。Luviskol Plus、Gaffix VC-713及びPVP/VA E-735などのいくつかのポリマーを溶液で供給し、だから追加の溶媒は添加しなかった。表2及び3は、実施例において使用された流体及びポリマーに関する詳細を含む。表4は、フィルム形成組成物の組成を含む。
【0067】
フィルムの形成
自動化Meyerドローダウンバー及びステンレス鋼シムを利用して、フィルム形成剤の溶液を50μm厚さのポリエステル(Mylar)シート上へコーティングした。25~50μmの範囲の厚さのフィルムを得るためにシム厚さを変えた。次いで、被覆シートを130℃において4分間オーブン中で熱処理して溶媒を除去した。次いで、被覆Mylarを25cm幅のストリップに薄く切った。ストリップの評価を、コーティングの24時間以内に実施した。
【0068】
水解性
被覆ストリップを、1分にわたって60回1L広口瓶の室温水中に浸けた。次いで、コーティングを、外観及びモルフォロジの変化に関して目視検査した。被覆ストリップを、コーティングが上向きである状態でガラス板上に置き、指をストリップの長さに沿って走らせた。表面が潤滑性又はコーティング一様性(透明性、凝集性、表面特徴等)の変化を示した場合に、フィルムは、水解性と見なした。不溶性フィルムは、表面に残る傷がない、透明な及びモルフォロジの変化なしが観察されるものであった。
【0069】
フィルム凝集性及びタック
被覆ストリップを、コーティングが上向きである状態でガラススライドのトップ上に置いた。25cmギャップが表面長さ方向に存在するようにストリップを押し下げた。人さし指を使用し、それを1秒の時間内で取り除いてストリップの表面を露出した25cmギャップ内で接触させることによって凝集性及びタックを評価した。人さし指上に残渣がほとんど又は全く移行しなかった場合に、フィルムは、凝集性であると見なした。非凝集性のフィルムは、フィルムがその完全性を失い、かなりの部分が皮膚上に移行したものであった。タック値は、認知されたタック値に基づいて割り当てた:1(タックなし)、2(わずかなタック)、3(適度なタック)、4(良好なタック)及び5(優れたタック)。凝集破壊したフィルムには、5の値を与えた。
【0070】
皮膚からの剥離
被覆フィルムのストリップを、コーティング側を皮膚の方へ向けて前腕上へ置いた。フィルムを5分間皮膚上に存在させた。その後、フィルムの一端をつかみ、2秒の期間で全体フィルムが除去されるまで180°角度で引っ張ることによってフィルムを剥離した。ヒト皮膚からの剥離の穏やかさを、値:0(非凝集性、残渣が残る)、1(攻撃的な)、2(適度に攻撃的な)、3(許容できる)、4(良好な)、5(優れた)を割り当てることによって評価した。
【0071】
柔軟性
被覆フィルムのストリップを5回二つ折りにした。層間剥離した、ひびが入った又は機械的破損の兆候を示したフィルムを、試験に不合格であると見なした。それらの構造特性を保持したフィルムは、柔軟性があると判断した。
【0072】
均一性
被覆フィルムのストリップを視覚的に観察した。光学的に透明なフィルムは、均一であると見なした。不透明の又はかすんだ凝集性フィルムは、混和性と見なした。
【0073】
ガラス転移温度評価
ポリマー-シリコーンブレンドのガラス転移温度は、液体窒素クーラーを備えたTA 2500示差走査熱量計を利用して測定した。4~14mgのブレンドをTzeroアルミニウム試料皿に入れることによって試料を作った。試料をガラス転移温度よりも上で5分間アニールして熱履歴を除去し、次いで10℃/分で-180℃に冷却した。ガラス転移温度は、10℃/分での加熱時に得られた熱流曲線に適用されるハーフハイト熱容量法を用いて決定した。結果を、Fox方程式(1)によって予測されるガラス転移温度と比較した:
【数1】
【0074】
式中、Tは、ケルビン単位でのブレンド、ニートポリマー及びニートシロキサンのガラス転移温度であり、wは、ブレンド中のポリマー及びシロキサン構成要素の質量分率である。Fox方程式は、均一なポリマーブレンドのガラス転移温度を予測する確立された方法である。均一ブレンドは、ただ一つのガラス転移温度、及び方程式によって予測されるものに似たガラス転移温度を示すであろう。不均一又は不適合ブレンドは、Fox方程式によって予測されるガラス転移温度からの大きい偏差を示す及び/又は構成要素のそれぞれに関する別個の遷移を示すであろう。当業者は、実験によりガラス転移温度を測定する及びFox方程式によってガラス転移温度を決定する方法をよく知っているであろう。
【0075】
実施例において使用される原材料
以下の表2は、それらのヒドロキシ含有量と一緒に、実施例において使用されるオルガノポリシロキサン及び他のヒドロキシル含有材料を含む。
【0076】
【表2】
【0077】
以下の表3は、実施例において使用されるアミン含有繰り返し単位を持ったポリマーを含む。
【0078】
【表3】
【0079】
実施例1~23及び比較例1~10
実施例1~23及び比較例1~10は、本発明を具体化するフィルム形成剤の特性を例示する(表4)。実施例6及び7は、本発明の特性が、溶液から及び溶融体から配合されるときに匹敵することを実証する。比較例1~4は、本発明と匹敵する流体ローディングを利用する先行技術に基づく調合物であり;本発明におけるものが凝集性フィルムをもたらすのに対して、比較例は凝集性ではない。比較例5~9は、先行技術調合物である。本発明は皮膚に優しい、且つ皮膚を傷つけないフィルムをもたらすのに対して、比較例は、皮膚に攻撃的である凝集性フィルムをもたらす。比較例9及び10は、市販されているシリコーン及びアクリル接着剤の性能を本発明と比較する。比較例9のシリコーン接着剤は、優れた剥離特性及びタック特性を示すが、それは、水解性ではない。比較例10のアクリル接着剤は、皮膚に攻撃的であり、且つ水解性ではない。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
実施例24~38
下の実施例24~38及び比較例11は、フィルムの特性へのポリシロキサン濃度の影響を例示する(表5)。前に記載された調製技法を用いて試料を調製した。これらの実施例は、調合物中のポリシロキサン流体の濃度を下げることによってフィルムタックを調節できることを実証する。
【0083】
【表6】
【0084】
実施例39~44
実施例39~44は、ポリマーブレンドとコポリマーとを含む組成物から製造されたフィルムの特性を示す(表6)。前に記載された調製技法を利用して試料を調製した。
【0085】
【表7】
【0086】
実施例45~48
実施例3及び6並びに比較例1及び9に記載された調合物から医療用接着ストリップ及びパッチを調製した。前に記載された混合手順を利用して材料の溶液を調製した。Myerロッド及び305μm(12ミル)厚さのシムを利用して溶液を50μm厚さのポリエステル(Mylar)シート上へコーティングした。湿潤コーティングを130℃において4分間オーブン中で熱処理した。ダイヤモンドエンボス加工した、低密度ポリエチレン(LDPE)剥離ライナーを、15kgローラーを利用して乾燥コーティングの表面に適用した。試料を2.5cmストリップに切断し、周囲条件下で24時間そのままにさせた。接着及び剥離試験についてN(ニュートン)単位での剥離力及び接着力の評価を、TA-243付属装置付きTexture Analyzer Model TA-XT Plusを利用して行った。180°の角度、130mmの距離及び10mm/sの速度で剥離試験を遂行して接着剤から剥離ライナーを除去するのに要する力を測定した。その後、接着ストリップをポリカーボネート(PC)に貼り付け、5kgローラーでプレスし、接着性試験に備えて30分間休止させた。剥離試験のために用いた同じ試験セットアップを利用してPCへの接着性試験を実施した。試料を3通り試験し、平均の力(N)を報告した。
【0087】
【表8】
【0088】
実施例49~55
様々な濃度で実施例6に記載された調合物へ有機塩及び導電性添加剤を組み入れることによって医療用電極を調製した(表8)。臭化ベンジルトリメチルアンモニウム及びアセチレンブラックは、Sigma Aldrichから入手した。単層カーボンナノチューブは、OCSiAlからTuball 201として入手した。溶液調製に関して記載された混合手順を利用して添加剤入り調合物を調製した、Myerロッド及び2ミル厚さのシムを利用して溶液をアルミ箔上にコーティングした。湿潤コーティングを130℃において4分間オーブン中で熱処理した。3.5cm直径のスチールディスクを利用して被覆アルミニウムシートから円形電極をパンチで切り取った。電極を接着剤側を下に第2のアルミニウムシート上へ置いてサンドイッチ構造体を形成することによって電気性能評価のための検体を生み出した。ANSI/AAMI EC12-2000に従ったセットアップを利用して単極構造体において電気インピーダンスを測定した。GAG-810オーディオ発生器及びB&K 2540B-GENオシロスコープを用いて10Hz及び100μAの設定で電極を測定した。パッチ及びストリップをまた調合物から生み出して接着力及び剥離力を測定した。調製及び試験は、前に記載された実施例に関して用いられたものと一致した。
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
【0091】
実施例56
フィルム形成組成物のガラス転移温度を測定し、Fox方程式と比較した。ポリビニルピロリドン及びDowsil(登録商標)4-2737からなるブレンドを評価し、結果を図1に示す。測定されたガラス転移温度は、Fox方程式によって予測されたものと似ていた。実験から得たガラス転移温度と予測ガラス転移温度との間のいくらかのわずかな偏差が観察された。これらの偏差は、ブレンドの共同性に影響を及ぼしたポリマーとシリコーン流体との間の水素結合相互作用に帰することができる。水素結合相互作用によるガラス転移温度の類似の偏差は、文献において観察されている。ポリカーボネートからのフィルム形成組成物の剥離力(ポリカーボネートからの接着力は、実施例45~48に記載された同じアプローチで評価された)は、感圧接着性を示す狭い範囲の組成があることを示す。図2は、図1からの試料を測定することから得られた示差走査熱量測定熱流曲線を示す。ただ一つのガラス転移温度が、これらの試料に関して観察され、均一ブレンドが達成されたことを示す。図3及び4は、それぞれ、ポリカプロラクトンとDowsil(登録商標)4-7042とのブレンド及びポリビニルピロリドンとDowsil 4-7042とのブレンドに関する本発明の他の実施形態からのガラス転移温度及び接着性結果を含む。これらの図は、均一ブレンドが達成されたこと、及び接着性がブレンド組成に依存することを同様に例示する。図4のフィルムは、測定前に混合物から溶媒が除去された。図4における最大剥離力試料は、実施例5に対応する。
【0092】
変化が本開示の範囲内にとどまる限り、上記の値の1つ以上は、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%等だけ変わり得る。予期せぬ結果は、全ての他のメンバーから独立したマーカッシュ群の各メンバーから得られ得る。各メンバーは、個別に、及び又は組み合わせて信頼され得、添付のクレームの範囲内の特定の実施形態に十分なサポートを提供する。両方とも個々に又は複合的に依存している、独立クレーム及び従属クレームの全ての組合せの主題が、本明細書では明確に熟慮される。本開示は、限定のよりもむしろ記載の単語を含めて例示的である。本開示の多くの修正及び変形が上記の教示を踏まえて可能であり、本開示は、本明細書で具体的に記載されたようなものとは別のやり方で実践され得る。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】