(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】反強磁性層に交換結合した強磁性層を備える磁性素子の性能計算方法
(51)【国際特許分類】
H10N 50/10 20230101AFI20240415BHJP
H10N 50/01 20230101ALI20240415BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20240415BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H10N50/10 Z
H10N50/01
H01L29/82 Z
G01R33/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562726
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 IB2022053104
(87)【国際公開番号】W WO2022219454
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509096201
【氏名又は名称】クロッカス・テクノロジー・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】ストレルコフ・ニキータ
(72)【発明者】
【氏名】ティモフィーエフ・アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】チルドレス・ジェフリー
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AD55
2G017BA15
5F092AA20
5F092AC06
5F092AC12
5F092BB17
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB42
5F092BB43
5F092BC06
5F092GA01
(57)【要約】
【課題】加速寿命試験下のTMR磁場センサにおける電気的及び磁気的変数の劣化依存性を決定する方法を提供する。
【解決手段】本開示は基準磁化(210)を持つ強磁性基準層(21)と、交換バイアスによって前記基準磁化(210)をピン止めする反強磁性層(24)とを備える基準二重層(244)を備える磁気素子(2)の性能の計算方法に関し、前記反強磁性層(24)は、ある粒子体積分布を持つ金属多結晶材料を含有する。前記方法は、前記反強磁性層(24)の交換バイアス磁場(Hex)を温度関数として計測することと、
粒子体積分布を特徴付ける変数を決定すべく前記計測された交換バイアス磁場(Hex)に粒子体積分布関数を当てはめるステップと、
前記ばく露磁場(H)の方向の関数として、前記基準磁化(210)の方向における面内ばらつきを計算するステップと、前記面内のばく露磁場(H)の任意の値に対する交換バイアス磁場(Hex)を計算するステップと、
を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準磁化(210)を持つ強磁性基準層(21)と、交換バイアスによって前記基準磁化(210)をピン止めする反強磁性層(24)とを備える基準二重層(244)を備える磁気素子(2)の性能を計算する方法であって、前記反強磁性層(24)は、ある粒子体積分布を持つ金属多結晶材料を備え、前記方法が、
前記基準二重層(244)に与えられる、選択された面内のばく露磁場(H)の下でばく露時間(τ
S)の間、選択されたばく露温度(T
S)において前記反強磁性層(24)の交換バイアス磁場(H
ex)を計測することと、
粒子体積分布を特徴付ける少なくとも1つの分布変数と、前記反強磁性層(24)の磁気特性を特徴付ける少なくとも1つの磁気変数とを決定すべく前記計測された交換バイアス磁場(H
ex)に粒子体積分布関数を当てはめるステップと、
前記ばく露磁場(H)の方向の関数として、前記基準磁化(210)の方向の面内ばらつきに相当する基準角度(θ
FM)を計算するステップと、
前記粒子体積分布関数における、前記計算された基準角度(θ
FM)と、決定された前記少なくとも1つの分布及び複数の磁気変数とを使って、前記面内のばく露磁場(H)と、前記ばく露温度(T
S)と、前記ばく露時間(τ
S)との任意の値に対する交換バイアス磁場(H
ex)を計算するステップと、
を備える、磁気素子(2)の性能を計算する方法。
【請求項2】
決定された前記少なくとも1つの分布変数を使って粒子(241)の配列を生成することをさらに備え、前記粒子(241)の前記配列は、前記反強磁性層(24)の1層に相当する体積を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各粒子は、ランダムに配向された一軸異方性(K
u)を持つ、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの分布変数は、平均値(μ)及び標準偏差(σ)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記交換バイアス磁場(H
ex)を計算するステップは、前記交換バイアス磁場(H
ex)に寄与する粒子体積を計算すべく、決定された前記少なくとも1つの磁気変数を前記粒子体積分布関数において使うことを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの磁気変数は、一軸異方性定数(K
0)と、最大交換バイアス磁場(H
ex0)と、前記反強磁性層(24)のネール温度(T
N)とを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記交換バイアス磁場(H
ex)に寄与する前記粒子体積用の前記粒子体積分布関数を積分することを備える、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子体積分布関数は、対数正規関数である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基準角度(θ
FM)を計算するステップと、前記交換バイアス磁場(H
ex)を計算するステップとが、反復手順を備え、前記反復手順は、
所与のばく露角度(θ
H)に配向されたばく露磁場(H)に対する前記基準角度(θ
FM)を計算するステップと、
前記交換バイアス磁場(H
ex)の振幅のばらつきと前記交換角度(θ
Hex)のばらつきを計算するステップと
を備え、
前記反復手順は、2回の連続する反復の間の前記交換バイアス磁場(H
ex)の振幅のばらつきと前記交換角度(θ
Hex)のばらつきがしきい値より小さくなるまで繰り返される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各反復において、
統計的メトロポリス-ヘイスティングスアルゴリズムを使って、前記基準二重層(244)の平衡状態を見つけることで、前記交換バイアス磁場(H
ex)の振幅及び前記交換角度(θ
Hex)の平均ばらつきを計算することと、
前記交換バイアス磁場(H
ex)の振幅及び前記交換角度(θ
Hex)の計算された前記平均ばらつきに従って、前記基準角度(θ
FM)を調整することと
を備える、請求項2及び9に記載の方法。
【請求項11】
前記交換バイアス磁場(H
ex)の振幅及び前記交換角度(θ
Hex)の平均ばらつきを計算することは、
各粒子(241)のエネルギー状態を設定することと、
前記交換バイアス磁場(H
ex)の振幅と交換角度(θ
Hex)の平均ばらつきを計算することと、
前記基準磁化(210)を計算された交換角度(θ
Hex)に整列させることと
を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各粒子(241)は、ネールベクトルの低エネルギー最小値及び高エネルギー最小値を持ち、各粒子(241)のエネルギー状態を設定することが、
低エネルギー最小値に対しては低い切替時間(τ
-)を、高エネルギー最小値に対しては高い切替時間(τ
+)を計算することと、
前記粒子(241)の切替時間(τ)を決定することと、
前記決定された切替時間τが低い切替時間(τ
-)よりも大きく、高い切替時間(τ
+)よりも小さいならば、前記粒子(241)を前記低エネルギー最小値に設定することと、
前記決定された切替時間(τ)が前記低い切替時間(τ
-)より小さいならば、前記粒子(241)のエネルギーを変更しないことと、
前記決定された切替時間(τ)が前記高い切替時間(τ
+)よりも大きいならば、50%の確率で前記粒子(241)を2つの低エネルギー最小値又は高エネルギー最小値のいずれかに設定することと
を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータによってプログラムが実行されるとき、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行させる指示を備える、コンピュータのプログラムの製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサのような磁気素子における電気的及び磁気的変数の劣化依存性を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場センサ、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)又はスピントルクナノ発振器などのGMR又はTMRベースの磁気装置は、反強磁性層に結合された強磁性層交換を備えることが多い。強磁性層と反強磁性層との交換結合により生じる交換バイアスの現象により、磁性装置の安定性を向上できる。
【0003】
反強磁性層内の熱安定性は、動作する磁気装置を達成するための重要なパラメータである。通常の動作中、磁気装置は強い磁場と高温にさらされる可能性がある。このようなばく露中の熱緩和効果は、磁気装置の特性にシフトをもたらす可能性がある。したがって、特定のばく露条件下での磁気装置の予想される劣化の予測が重要である。
【0004】
多結晶反強磁性層の構造と熱ゆらぎに基づいて、強磁性層と反強磁性層の交換バイアスの熱安定性の推定に、さまざまなモデルが提案されている(例えば、非特許文献1)。これらのモデルでは、多結晶反強磁性層の粒子異方性軸は、各粒子(結晶粒)の自由エネルギーが強磁性層磁化の方向に依存しないように一方向のみに配向していると仮定される。この場合、強磁性層及び反強磁性層に加えられた外部磁場の角度変動の影響を適切に考慮することは不可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】G Vallejo-Fernandez et al 2008、J. Phys. D、Appl.Phys. 41 112001
【非特許文献2】S. Soeya, et al.,J.Appl.Phys.,vol.76,no.9,pp.5356-5360,Nov.1994、https://doi.org/10.1063/1.358488
【発明の概要】
【0006】
本開示は、加速寿命試験(ALT)下のトンネル磁気抵抗(TMR)磁場センサにおける電気的及び磁気的変数の劣化依存性を決定する方法に関する。この方法は、高温と磁場との少なくとも一方に起因する最初の交換バイアス方向及び強度の経時的な偏差(劣化)を計算する。それから、TMRセンサの最終出力変数(線形性、角度誤差、感度、ずれなど)に対する影響を推定可能である。この方法は、新規な自己無撞着再帰手順を用いた、反強磁性体の多結晶モデル及び熱活性化エネルギーのアレニウスの概念に基づく。
【0007】
1実施形態では、基準磁化を持つ強磁性基準層と、交換バイアスによって前記基準磁化をピン止めする反強磁性層とを備える基準二重層を備える磁気素子の性能を計算する方法が提供される。前記反強磁性層は、ある粒子体積分布を持つ金属多結晶材料を備える。この方法は、
前記基準二重層に与えられる、選択された面内のばく露磁場の下でばく露時間の間、選択されたばく露温度において前記反強磁性層の交換バイアス磁場を計測することと、
前記粒子の体積分布を特徴付ける少なくとも1つの分布変数と、前記反強磁性層の前記磁気特性を特徴付ける少なくとも1つの磁気変数とを決定すべく、前記計測された交換バイアス磁場に粒子体積分布関数を当てはめることと、
前記ばく露磁場の方向の関数として、前記基準磁化の方向の面内のばらつきに相当する基準角度を計算することと、
前記粒子体積分布関数における、前記計算された基準角度と、前記少なくとも1つの分布及び磁気変数とを使用して、前記面内のばく露磁場と、ばく露温度と、ばく露時間との任意の値について前記交換バイアス場を計算することと
を備える。
【0008】
本開示はさらに、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに方法を実行させる命令を備えるコンピュータのプログラム製品に関する。
【0009】
本明細書に開示される方法は、ALT試験下での経時的な感度と、線形性と、角度誤差とを含む、磁気センサのような磁気要素の特性を予測できる。特性は、迅速に、かつ短期及び長期の両方の使用条件において予測可能であり、したがって、所与の仕様を伴う磁気要素の寿命の推定を可能にする。特に、特性は、ALT測定(時間)よりも長い時間間隔(年)にわたって予測可能であるので、そのため、全寿命期間の予測を改善できる。
【0010】
本方法は、磁場、温度及び時間のような異なるばく露条件下で、MRAM、磁場センサ、スピントルクナノ発振器などの交換バイアスピン止めを持つ反強磁性体又は強磁性体界面に基づくスピントロニック装置を含む任意の磁気素子に適用できる。この方法は、反強磁性層の各粒子の一軸異方性の異なる面内配向を考慮に入れる。
よって、本方法は、特定の装置のモデル及び使用事例とともに、そのような磁気素子における潜在的な寿命性能シフトの評価に寄与できる。
【0011】
本発明の例示的な実施形態は、説明において開示され、図面によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、基準強磁性層及び反強磁性層を含む基準二重層を備えるTMRベースの磁気素子を概略的に示す。
【
図2】
図2は、基準強磁性層及び多結晶反強磁性層を概略的に示す。
【
図3】
図3は、多結晶反強磁性層の単一粒子を表す。
【
図4】
図4は、粒子の一軸異方性角の異なる配向についてのエネルギーの変化を報告する。
【
図5】
図5は、粒子の体積分布のヒストグラムを示す。
【
図6】
図6は、スパッタ堆積されたCoFeの基準強磁性層及びIrMnの反強磁性層における温度の関数として計測された交換バイアス磁場を報告する。
【
図7】
図7は、基準二重層の磁気状態に収束するための反復手順を示す。
【
図8】
図8は、特定の例についての反復手順の結果を示す。
【
図9】
図9は、基準二重層の温度対時間図の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、反強磁性層24と、基準磁化210を持つ基準強磁性層21とを備える基準二重層244を備えるTMRベースの磁気素子2を示し、反強磁性層24は、交換バイアスによって基準磁化210をピン止めしている。磁気素子2は、第1磁化210に対して切り替え可能な検知磁化230を持つ検知強磁性層23をさらに備える。トンネル障壁層22は、基準強磁性層21と検知強磁性層23との間に備わっている。反強磁性層24は、しきい値温度未満の温度で交換バイアス磁場H
ex結合によってピン止め方向に沿って基準磁化210の方向をピン止めできる。
しきい値温度は、ネール温度未満であるブロッキング温度に相当し得る。磁気素子2は、TMRの積層体に限定されず、強磁性層の磁化をピン止めする強磁性層を含む限り、磁場センサ、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)、又はスピントルクナノ発振器を含む巨大磁気抵抗効果(GMR)又はTMRベースの磁気装置などの任意の磁気装置を備えてよい。
さらに、「基準強磁性層」という表現は、任意の強磁性層に一般化してよい。
【0014】
基準層21は、1つ又は複数の強磁性層又は合成反強磁性体(SAF)を備え得る。反強磁性層24は、(イリジウムIr及びMnをベースとする合金(例えば、IrMn)と、Fe及びMnをベースとする合金(例えば、FeMn)と、白金Pt及びMnをベースとする合金(例えば、PtMn)と、Ni及びMnをベースとする合金(例えば、NiMn)とのような)マンガンMnをベースとする合金を含有し得る。反強磁性層24は、ある粒子体積分布を持つ金属多結晶材料を含有する。
【0015】
基準層21及び検知層23は、Feベースの合金、CoFe、NiFe、又はCoFeBのような強磁性材料で作成し得る。トンネル障壁22は、絶縁材料を含有し得る。
好適な絶縁材料としては、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)及び酸化マグネシウム(例えば、MgO)のような酸化物を挙げられる。トンネル障壁層22の厚さは、約1nmから約3nmまでのようなnm範囲内としてよい。
【0016】
図2は、厚さtAFを持つ基準強磁性層21及び多結晶反強磁性層24を模式的に表している。反強磁性層24は、様々な大きさ及び体積の複数の粒子241を含む。
図3は、単粒子241を表す。各粒子241は、ネールベクトル240によって表され、ネールベクトル角θ
Nで配向された磁性モーメントを持つ。各粒子241の一軸異方性軸線245は、異方性角度θ
Aによって定義される。反強磁性層24と基準強磁性層21との界面において、粒子241は、均一に磁化された基準強磁性層21と結合している。基準磁化210は、基準角度θ
FMで配向される。ネールベクトル角θ
N、異方性角度θ
A、及び基準角度θ
FMは、基準軸線300に対して定義してよい。
【0017】
1実施形態において、磁気素子2の性能を計算する方法は、
ばく露時間τSの間に、基準二重層244に与えられる、選択された面内のばく露磁場Hの下で、選択されたばく露温度TSにおいて反強磁性層24の交換バイアス磁場Hexを計測するステップと、
粒子体積分布を特徴付ける少なくとも1つの分布変数と、反強磁性層24の磁気特性を特徴付ける少なくとも1つの磁気変数とを決定すべく計測された交換バイアス磁場Hexに粒子体積分布関数を当てはめるステップと、
ばく露磁場Hの方向の関数として、基準磁化210の方向の面内ばらつきに相当する基準角度θFMを計算するステップと、
前記粒子体積分布関数における、計算された基準角度θFMと、決定された前記少なくとも1つの分布及び複数の磁気変数とを使って、面内のばく露磁場Hと、ばく露温度TSと、ばく露時間τSとの任意の値(大きさ及び方向)に対する交換バイアス磁場Hexを計算するステップと、
を備える。
【0018】
選択された面内露出磁場Hは、基準強磁性層21を飽和させるのに十分高くできる。この方法は、反強磁性層24の各粒子241の一軸異方性軸線245の異なる面内方位を考慮に入れる。ここで、「面内」とは、層(基準層21と反強磁性層24との少なくとも一方)の面内を意味する。
【0019】
この方法は、基準強磁性層21と反強磁性層24との間の界面における交換バイアスの熱安定性を計算する。具体的には、外部磁場(ばく露磁場H)、温度(ばく露温度T)、時間(ばく露時間τS)の各条件下における交換バイアス磁場Hexの角度ずれとその劣化量を計算する。
【0020】
図1に示される反強磁性粒子の総エネルギーEは、式(1)によって与えられる。
【数1】
【0021】
ここで、Kuは磁気異方性角度θAにおける一軸磁気異方性定数であり、Ωは粒子の体積であり、JEは界面結合定数であり、tAFは反強磁性層24の厚さであり、θNはネールベクトル角度であり、θFMは基準角度である。
【0022】
一軸異方角度θ
Aの異なる配向について式(1)から得られたエネルギーの変化の結果を
図4に示す。粒子241の2つの準安定状態間のエネルギー障壁は、式(1)の導関数から計算できる。異方性角度θ
Aがゼロに等しい場合、障壁ΔE
+及びΔE
-の近似式は、式(2)になる。
【数2】
【0023】
熱変動中に粒子がエネルギー障壁粒子ΔE
±を克服するのに相当する時間τ
±は、ネール-アレニウスの法則の式(3)によって与えられる。
【数3】
ここで、Tは温度、ν
0は10
9s
-1程度の試行回数、k
Bはボルツマン定数である。
【0024】
0°Kにおける異方性定数K0及び界面交換エネルギーJ0の温度依存性は、べき乗則Ku=K0(1-T/TN),JE=J0(1-T/TN)0.33に従う。ここで、TNは反強磁性層24のネール温度である。
【0025】
粒子体積分布関数は、式(4)のような対数正規関数に従うと仮定される。
【数4】
ここで、σは標準的な偏差であり、μは平均値である。
基準二重層244が、粒子241のエネルギーを変化させる、経時的な外部擾乱(例えば、高温でのアニーリング、続いて、磁場内での冷却)にさらされると仮定する。
結果の交換バイアス磁場H
exは、式(5)を用いて計算できる。
【数5】
ここで、H
0は、全ての粒子が完全に寄与する場合の利用可能な交換バイアス値の合計であり、Ω
±(τ)は、Ω
0<Ω<Ω
Sという条件を満たす粒子241の体積であり、ここで、
【数6】
である。
【0026】
ここで、Ω0は室温における臨界体積であり、ΩSは設定温度における臨界体積であり、T0は室温であり、TSはばく露(アニーリング)温度であり、τSはばく露時間であり、τcはばく露後に経過した時間(冷却時間と計測時間の合計)である。
【0027】
本方法では、粒子241内の異方性のランダムな方向が考慮されるので、式(5)を直接使うことはできない。基準強磁性層21及び反強磁性層24をシミュレートするには、式(4)の体積分布を考慮し、ランダムに配向された一軸異方性245を持つ粒子241の配列を生成しなければならない。
【0028】
1実施形態では、本方法は、決定された少なくとも1つの分布変数を使って粒子241の配列を生成することをさらに備え、粒子241の配列は、反強磁性層24の1層に相当する体積を持つ。少なくとも1つの分布変数は、粒子体積分布関数の平均値μ及び標準偏差σを備える。
【0029】
一例では、配列内の全ての粒子241は、0°と180°の間の異方性角度θAを持つランダムに配向された一軸異方性を持ち得る。対数正規分布は、平均値μ=6.28及び標準偏差σ=0.52と計算された。
【0030】
ばく露(ばく露磁場H及びばく露温度T
S)後に、結果として生じる交換バイアス磁場H
exを計算するには、式(5)を、寄与する(すなわち交換バイアス磁場Hに寄与する)複数の粒子241に全体についての和で置換できる、
図5では、3領域を備える体積分布のヒストグラムが示されている。3領域は、
熱的に不安定な小粒(Ω<Ω
0)に相当し、交換バイアス場H
exに寄与しない第1領域R1と、
安定な大粒((Ω
0>Ω>)Ω
S)に相当し、同じく交換バイアス場H
exに寄与しない第2領域R2と、
Ω
0<Ω<Ω
Sの条件に合致し、観測された交換バイアスH
exの原因である粒子に相当する第3領域R3である。
臨界体積Ω
0とΩ
Sは異方性軸線245の向きに依存するため、3つの領域R1、R2、R3の境界は直線ではない。それゆえ、第2領域R2の粒子を合計すると、交換バイアス磁場H
exの値が得られる。
【0031】
1実施形態では、本方法は特定の基準強磁性層21と反強磁性層24に適用され、それら層21、24の特性が様々なばく露条件(ばく露磁場Hとばく露温度TS)に対して推定される。これは、多結晶反強磁性層24の(結晶粒)粒子体積分布の変数を決定することによって達成される。
【0032】
1実施形態では、粒子体積分布は、実験的に計測された交換バイアス磁場Hexを温度Tの関数として当てはめることによって決定される。
【0033】
図6は、CoFe(コバルト鉄)の基準強磁性層21とIrMn(イリジウムマンガン)の反強磁性層24をスパッタ蒸着した際の、温度Tの関数としての交換バイアス磁場H
exの計測結果である。計測は、非特許文献2に記載されたものに類似したプロトコルを使って行われた。特に、計測は以下の
層容易軸線方向に反強磁性層24を飽和させるのに十分な飽和磁場で、基準二重層244を、界面拡散を生じない設定温度T
setまで加熱するステップと、
基準二重層244を、熱活性化が起こらない冷却温度T
NAまで冷却するステップと、
飽和磁場の極性を反転させるステップと、
基準二重層244を熱活性化が起こる活性化温度T
actまで加熱するステップと、
基準二重層244を冷却温度T
NAまで冷却するステップと、
活性化期間τ
actを待つステップと、
ヒステリシスループを計測するステップと
を備える。交換バイアス磁場H
exは、ゼロ磁場位置にヒステリシスループをずらして(シフトして)得られる。
【0034】
実験で使用される磁場方向は2つの対向する方向だけであるため、基準角度θ
FMをゼロに設定することで、エネルギー障壁式(2)を簡略化した式を使用できる。式(4)の対数正規分布の陽式とその積分を使って、各実験点i
thの交換バイアス磁場H
exは式(7)を使って計算できる。
【数7】
ここで、室温での臨界体積Ω
0と設定温度での臨界体積Ω
Sは、計測プロトコルの冷却温度T
NAと、設定温度T
setと、活性化期間τ
actとに依存する。符号Ω
a(T
i)は式(6)と同じ形の臨界体積であるが、第i
th実験点の温度と特性時間τ
aは先述のプロトコルの反転磁場のばく露時間に相当し、符号H
ex(T
i)は第i
th実験点の交換バイアスの値である。
【0035】
式(4)の分布関数は簡単に積分できるので、未知の変数(H
0と、T
Nと、K
0と、σと、μ)の調整が可能である。なお、変数H
0は室温での最初の計測点に近いがわずかに大きく、T
NはIrMnの反強磁性層では約400℃である。ここで、「最初の点」は
図6の最初の実験点に相当する。すなわち、310
oCで90分間高磁場中でアニールした後の交換バイアス磁場H
exの値に相当する。変数K
0は約10
6J/m
3である(非特許文献1)。分布関数変数σとμは、式(6)で定義される臨界体積が許容範囲(100nm
3<Ω
0<200nm
3及びΩ
S>700nm
3)内で変化するように調整できる。
【0036】
上記の複数の変数H0と、TNと、K0と、σと、μとが決定された後、ばく露温度TSと、ばく露磁場Hと、ばく露時間τSとを含む特定のばく露条件下での交換バイアス磁場Hexの進展のシミュレーションが可能である。基準強磁性層21及びIrMnの反強磁性層24に、基準軸300に対してあるばく露角度θHで面内のばく露磁場Hを与えると、基準磁化210の向きの逸脱(すなわち、基準角度θFMのばらつき)が生じる。基準磁化210が(マクロスピン近似で)一様であるとみなすならば、その方向は実効磁場に整列する。ここで実効磁場は、外部磁場Hと交換バイアス磁場Hexの和である。
【0037】
1より多い基準強磁性層を備える基準二重層244の場合、平衡角度を求めるにはランダウ-リフシッツ-ギルバート方程式のようないくつかの数値計算法を用いる必要がある。複数の強磁性層は、(Ta、Pt、Ruのような)薄い常磁性層によって互いに分離してよい。平衡角度は磁気系の最小エネルギーに相当する。
【0038】
基準磁化210の向きがその最初の方向から逸脱すると(すなわち、基準角度θFMにばらつきがあると)、交換バイアス磁場Hexが変化する可能性がある。これは、(複数の)粒子241の一部がその状態を切り替える可能性があるためである。これにより、基準磁化210の向きの追加的な逸脱(すなわち、基準角θFMのさらなるばらつき)につながる。
【0039】
図7に示す一観点では、本方法は、平衡磁気状態に収束させる反復手順を備える。平衡磁気状態は、交換バイアス磁場H
exがもはや回転しないエネルギーの最小値に相当する。反復手順は、以下の
(基準軸300に対する)ばく露角度θ
Hと、ばく露温度T
sと、ばく露時間τ
Sとの間、面内のばく露磁場Hを与えることを備えるばく露ステップを実行するステップと、
基準角度θ
FMの基準磁化210の(磁化)方向M
FMを計算するステップと、
交換バイアス磁場H
exの振幅のばらつきと交換角度θ
Hexのばらつきを計算するステップと
を備え得る。
【0040】
基準磁化210の磁化方向MFMは、露出磁場Hのベクトルと交換バイアス磁場Hexのベクトルの和に相当する実効磁場ベクトルと整列している。
【0041】
反復手順は、基準二重層244(粒子の配列)に対する最初の交換バイアス磁場Hexの設定を目的として、最初の計測点に相当する最初のステップを備えてよい。最初のステップは、最初のばく露時間τSinの間、最初のばく露温度Tinで(基準軸300に対して)0°を向いた最初のばく露磁場Hinを与えることを備える。ここで、最初のばく露温度Tinは290℃から310℃にしてよく、最初のばく露時間τSinは90分としてよい。
【0042】
反復手順は、交換バイアス磁場Hexの振幅と交換角度θHexの収束が達成されるまで繰り返される。言い換えると、2回の連続する反復の間の交換バイアス磁場Hexの振幅のばらつきと交換角度θHexのばらつきがしきい値より小さくなるまで反復手順が繰り返される。
【0043】
一観点では、本方法はさらに、ばく露磁場Hを除去し、ばく露温度TSを、ばく露温度TSより低い(例えば室温又は25℃の)解除温度TRまで、解除時間τRの間に低下させる解除ステップを備える。解除時間τRの間、交換バイアス磁場Hexの振幅及び交換角θHexのばらつきは、交換バイアス磁場Hexの振幅及び交換角度θHexのばらつきの平衡値に相当する、最初の値(基準二重層244が最初のばく露磁場Hinにさらされる前の値)に向かって部分的に回復される。交換バイアス磁場Hexの振幅と交換角度θHexのばらつきの平衡値は、選択されたばく露による交換バイアス磁場Heの劣化を表す。
【0044】
反復手順を
図8に具体例で示す。この例では、基準強磁性層21及び反強磁性層24は、最初のステップにおいて、最初のばく露時間τ
Sin(例えば90分)の間、290℃から310℃の間の、最初のばく露温度T
inで、(基準軸300に対して)0°を向いた最初の強い外部磁場H
inにさらされる。強い外部磁場H
inは、外部磁場H
inの方向で基準層21を飽和させるように適合される。反強磁性層24は、約1559Oeの振幅を持ち、(最初のステップの間、0
oに設定された交換角度θ
Hexに対して)-0.12°の交換角度θ
Hexを持つ交換バイアス磁場H
exを取得する。交換角度θ
Hexの0°から-0.12°へのずれが小さいのは、反強磁性層24の粒子241の数が有限であるためである。次に、ばく露ステップが実行される。ばく露ステップは、(基準軸300に対して)90°のばく露角度θ
Hで、100℃のばく露温度T
sで、1時間のばく露時間τ
Sの間に、2kOeのばく露磁場Hを与えることを備える。この例では、ばく露ステップを10回繰り返すことで収束に至った。収束後、交換角度θ
Hexのばらつきは3°に達し、交換バイアス磁場H
exの振幅のばらつきは-55Oeである。解除ステップの実行後、交換角度θ
Hexの平衡値のばらつきは約0.58°に達し、交換バイアス磁場H
exの振幅のばらつきは約35Oeである。
【0045】
本明細書で開示する方法は、与えられるばく露磁場Hの任意の面内方向において、交換バイアス磁場Hexの変化を予測できる。
【0046】
本明細書で開示する方法は、高いばく露温度TSと、任意のばく露角度θHで与えられるばく露磁場Hとを長い期間τにわたって受けた場合の交換バイアス磁場Hexの劣化の推定に適用できる。ここで、高いばく露温度TSとは、室温(又は動作温度)よりも高い温度に相当する。実際、この方法は、通常の動作条件を超える条件下での磁気素子の劣化を計算する。
【0047】
図9は、基準強磁性層21と反強磁性層24の温度と時間(T-τ)の関係の図の一例である。強度は、2kOeの外部磁場Hを90°のばく露角度θ
Hで与えた後の、最初の値0°からの基準角度θ
FMの変化に相当する。1年と10年の時間間隔が縦線で示されている。各Tの点及びτの点に対して、解除ステップを備える先述の反復手順を適用している。この図は、基準強磁性層21と反強磁性層24の熱安定性を反映している。この図は、交換バイアス磁場H
exの長期的な劣化、それゆえの磁気素子2の精度と性能の低下の予測に使用できる。
【0048】
1代替実施形態において、本方法は、各反復において、
統計的メトロポリス-ヘイスティングスアルゴリズムを使って、基準二重層244の平衡状態を見つけることで、交換バイアス磁場Hexの振幅及び交換角度θHexの平均ばらつきを計算することと、
交換バイアス磁場Hexの振幅及び交換角度θHexの計算された平均ばらつきに従って、基準角度θFMを調整することと
を備える。
【0049】
1観点では、交換バイアス磁場Hexの振幅及び交換角度θHexの平均ばらつきを計算することは、以下の
各粒子241のエネルギー状態を設定することと、
交換バイアス磁場Hexの振幅と交換角θHexの平均ばらつきを計算することと、
基準磁化210を計算された交換角度θHexに整列させることと
を備え得る。
【0050】
1観点では、各粒子241は、ネールベクトルの低エネルギー最小値と高エネルギー最小値を持つ。ここで、各粒子241のエネルギー状態を設定することは、以下の
低エネルギー最小値に対しては短い寿命(τ-)を、高エネルギー最小値に対しては長い寿命(τ+)を計算すること、
粒子241の現在のエネルギー状態から、現在の寿命(τ)を推定することと、
決定された電流切替寿命τが短い寿命τ-よりも長く、長い寿命τ+よりも短ければ、粒子241を低エネルギー最小値に設定することと、
決定された寿命(τ)が短い寿命(τ-)より短い場合、粒子241のエネルギーを変更しないことと、
決定された現在の寿命τが長い寿命τ+よりも長い場合、50%の確率で粒子241を2つの低エネルギー又は高エネルギーの最小値のいずれかに設定することと
を備え得る。
【0051】
本明細書で開示する方法は、基準層21が不均一に磁化されている場合にさらに適用可能である。このような場合、基準層21は、基準磁化210が各領域において実質的に均一であると考えられる複数の領域(図示せず)に分割されてもよい。この場合、反強磁性粒のエネルギーは、基準層21の局所領域の磁化に依存する。先述の反復手順において、基準角度θFMを計算することは、全ての単一ドメインの範囲を備える基準層(210)全体の微小磁気の計算手順を実行することを備え得る。
【0052】
本開示はさらに、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに方法を実行させる命令を備えるコンピュータのプログラム製品に関する。
【符号の説明】
【0053】
2 磁気素子
21 基準層
210 基準磁化
23 検知層
230 検知磁化
240 磁気的モーメント、ネールベクトル
241 粒子
244 基準二重層
245 一軸異方性軸線
300 基準軸線
Ω 粒子量
Ω0 室温での臨界体積
ΩS 設定温度での臨界体積
θA 異方性角度
θH ばく露角度
θHex 交換角度
θN ネールベクトル角度
θFM 基準角度
τ 期間
τC ばく露後の経過時間
τR 解除時間
τS ばく露時間
τSin 最初のばく露時間
H ばく露磁場
Hex 交換バイアス磁場
Hin 最初のばく露磁場
J0 0Kでの界面結合定数
JE 界面結合定数
K0 0Kでの異方性定数
Ku 一軸異方性定数
MFM 基準層の磁化方向
σ 標準偏差
tAF 反強磁性層の厚さ
T 温度
T0 室温
Tact 活性化温度
Tin 最初のばく露温度
TNA 冷却温度
TR 解除温度
TS ばく露温度
Tset 設定温度
μ 平均値
【手続補正書】
【提出日】2023-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準磁
化を持つ強磁性基準
層と、交換バイアスによって前記基準磁
化をピン止めする反強磁性
層とを備える基準二重
層を備える磁気素
子の性能を計算する方法であって、前記反強磁性
層は、ある粒子体積分布を持つ金属多結晶材料を備え、前記方法が、
前記基準二重
層に与えられる、選択された面内のばく露磁
場の下でばく露時
間の間、選択されたばく露温
度において前記反強磁性
層の交換バイアス磁
場を計測することと、
前記粒子体積分布を特徴付ける少なくとも1つの分布変数と、前記反強磁性
層の磁気特性を特徴付ける少なくとも1つの磁気変数とを決定すべく前記計測された交換バイアス磁
場に粒子体積分布関数を当てはめるステップと、
前記ばく露磁
場の方向の関数として、前記基準磁
化の方向の面内ばらつきに相当する基準角
度を計算するステップと、
前記粒子体積分布関数における、前記計算された基準角
度と、決定された前記少なくとも1つの分布及び複数の磁気変数とを使って、前記面内のばく露磁
場と、前記ばく露温
度と、前記ばく露時
間との任意の値に対する交換バイアス磁
場を計算するステップと、
を備える、磁気素
子の性能を計算する方法。
【請求項2】
決定された前記少なくとも1つの分布変数を使って粒
子の配列を生成することをさらに備え、前記粒
子の前記配列は、前記反強磁性
層の1層に相当する体積を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各粒子は、ランダムに配向された一軸異方
性を持つ、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの分布変数は、平均
値及び標準偏
差を備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記交換バイアス磁
場を計算するステップは、前記交換バイアス磁
場に寄与する粒子体積を計算すべく、決定された前記少なくとも1つの磁気変数を前記粒子体積分布関数において使うことを備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの磁気変数は、一軸異方性定
数と、最大交換バイアス磁
場と、前記反強磁性
層のネール温
度とを備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記交換バイアス磁
場に寄与する前記粒子体積用の前記粒子体積分布関数を積分することを備える、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子体積分布関数は、対数正規関数である、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記基準角
度を計算するステップと、前記交換バイアス磁
場を計算するステップとが、反復手順を備え、前記反復手順は、
所与のばく露角
度に配向されたばく露磁
場に対する前記基準角
度を計算するステップと、
前記交換バイアス磁
場の振幅のばらつきと前記交換角
度のばらつきを計算するステップと
を備え、
前記反復手順は、2回の連続する反復の間の前記交換バイアス磁
場の振幅のばらつきと前記交換角
度のばらつきがしきい値より小さくなるまで繰り返される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
各反復において、
統計的メトロポリス-ヘイスティングスアルゴリズムを使って、前記基準二重
層の平衡状態を見つけることで、前記交換バイアス磁
場の振幅及び前記交換角
度の平均ばらつきを計算することと、
前記交換バイアス磁
場の振幅及び前記交換角
度の計算された前記平均ばらつきに従って、前記基準角
度を調整することと
を備える、請求項2及び9に記載の方法。
【請求項11】
前記交換バイアス磁
場の振幅及び前記交換角
度の平均ばらつきを計算することは、
各粒
子のエネルギー状態を設定することと、
前記交換バイアス磁
場の振幅と交換角
度の平均ばらつきを計算することと、
前記基準磁
化を計算された交換角
度に整列させることと
を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各粒
子は、ネールベクトルの低エネルギー最小値及び高エネルギー最小値を持ち、各粒
子のエネルギー状態を設定することが、
低エネルギー最小値に対しては低い切替時
間を、高エネルギー最小値に対しては高い切替時
間を計算すること、
前記粒
子の切替時
間を決定することと、
前記決定された切替時
間が低い切替時
間よりも大きく、高い切替時
間よりも小さいならば、前記粒
子を前記低エネルギー最小値に設定することと、
前記決定された切替時
間が前記低い切替時
間より小さいならば、前記粒
子のエネルギーを変更しないことと、
前記決定された切替時
間が前記高い切替時
間よりも大きいならば、50%の確率で前記粒
子を2つの低エネルギー最小値又は高エネルギー最小値のいずれかに設定することと
を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータによってプログラムが実行されるとき、請求項
1に記載の方法を実行させる指示を備える
前記プログラムの製品
を格納している、非一過性コンピュータ可読媒体。
【国際調査報告】