(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
B41J2/335 101F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562756
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 CN2022101782
(87)【国際公開番号】W WO2023274202
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110753758.2
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523284158
【氏名又は名称】山東華菱電子股フン有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】王吉剛
(72)【発明者】
【氏名】陳文卓
(72)【発明者】
【氏名】徐継清
(72)【発明者】
【氏名】冷正超
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB02
2C065JF01
2C065JF03
2C065JF05
2C065JF11
2C065JF12
2C065JF13
2C065JF14
2C065JF17
(57)【要約】
絶縁基板(1)が設けられた耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板であり、絶縁基板(1)の表面部分に非晶質ガラス材料からなる下地釉層(2)が設けられ、下地釉層(2)の表面に共通電極及び個別電極(3)が設けられており、発熱抵抗体(4)は共通電極と個別電極(3)との間に配置され、発熱抵抗体(4)、共通電極及び個別電極(3)の表面に保護層(5)が設けられており、保護層(5)は、発熱抵抗体(4)の表面に被覆された第1保護層(5a)を備え、第1保護層(5a)は、転移点温度範囲が600~725℃のガラス釉層又は軟化点温度範囲が700~870℃のガラス釉層であり、該サーマルプリントヘッド発熱基板は、生産方法が簡単で、コストが低いという特徴を有し、高い印字エネルギーによる発熱抵抗体の破壊を極めて大きく減少させ、プリントヘッドの高温、高湿度環境での耐腐蝕能力及び劣悪な環境での耐摩耗性能を向上させ、製品の信頼性を著しく向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部分に、非晶質ガラス材料からなり、表面に共通電極及び個別電極が設けられた下地釉層が設けられた絶縁基板が設けられており、
発熱抵抗体は共通電極と個別電極との間に配置され、共通電極は、一端が発熱抵抗体に接続され、他端が電源との接続のために用いられ、個別電極は、一端が発熱抵抗体に接続され、他端がボンディングパッドに接続され、発熱抵抗体、個別電極及び共通電極の表面には、発熱抵抗体の表面に被覆されて転移点温度範囲が600~725℃のガラス釉層又は軟化点温度範囲が700~870℃のガラス釉層である第1保護層を備える保護層が設けられている、
耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【請求項2】
前記第1保護層における成分は、酸化物の状態で計ると、含量は、SiO
2含有量が49.4mol%~56.8mol%で、Al
2O
3含有量が13.7mol%~26.7mol%で、CaO含有量が3.5mol%~13.8mol%で、BaO含有量が1.5mol%~5.9mol%で、PbO含有量が4.8mol%~17.7mol%で、ZrO
2含有量が1.2mol%~5.0mol%である、
請求項1に記載の耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【請求項3】
前記保護層のうち、第1保護層の外側には、絶縁ガラス釉層又は導電ガラス釉層を採用する第2保護層が複合される、
請求項1に記載の耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【請求項4】
前記第2保護層の転移点又は軟化点は、第1保護層の転移点又は軟化点よりも低い、
請求項3に記載の耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【請求項5】
前記第2保護層は導電ガラス釉層であり、抵抗率範囲は0.01Ω・m~10kΩ・mである、
請求項3に記載の耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【請求項6】
前記保護層には、炭化ケイ素、サイアロン又は窒化ケイ素のうちの1種類からなり、あるいは炭化ケイ素、サイアロン、窒化ケイ素のうちの任意の2種類からなる複合薄膜セラミック層である薄膜セラミック耐摩耗保護層が更に設けられている、
請求項1に記載の耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【請求項7】
前記転移点温度が600~725℃又は軟化点温度が700~870℃の絶縁ガラス釉は、その組成物を酸化物の状態で計ると、SiO
2含有量が49.4mol%~54.5mol%で、Al
2O
3含有量が17.7mol%~26.7mol%で、CaO含有量が3.5mol%~10.5mol%で、BaO含有量が1.5mol%~5.0mol%で、PbO含有量が8.5mol%~17.7mol%で、ZrO
2含有量が1.2mol%~3.8mol%である、
請求項2に記載の耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【請求項8】
前記転移点温度が600~725℃又は軟化点温度が700~870℃の絶縁ガラス釉は、その組成物を酸化物の状態で計ると、SiO
2含有量が52.5mol%~54.5mol%で、Al
2O
3含有量が17.7mol%~22.5mol%で、CaO含有量が6.5mol%~10.5mol%で、BaO含有量が2.5mol%~5.0mol%で、PbO含有量が8.5mol%~13.5mol%で、ZrO
2含有量が2.5mol%~3.8mol%である、
請求項2に記載の耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、サーマルプリントヘッド製造の技術分野に関し、例えば、サーマルプリントヘッドにおける発熱抵抗体の耐エネルギ特性を著しく改善し、発熱基板の耐摩耗、耐腐蝕性能を効果的に向上させることができるサーマルプリントヘッド発熱基板に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術におけるサーマルプリントヘッドは、絶縁基板を備え、絶縁基板の表面に下地釉層が設けられ、前記絶縁基板及び下地釉層の表面に共通電極及び個別電極が設けられており、発熱抵抗体は両電極の間に配置され、共通電極の一端は発熱抵抗体に接続され、他端は電源との接続のために用いられ、個別電極の一端は発熱抵抗体に接続され、他端はボンディングパッドに接続され、発熱抵抗体、個別電極及び共通電極の表面には、ガラス釉保護層が設けられ、ガラス釉保護層の表面には更に、薄膜方式で形成されたセラミック耐摩耗層が設けられている。
【0003】
関連技術におけるサーマルプリントヘッドは、印字媒体の感度が低く、印字媒体の品質が悪く、サーマルプリントヘッドの発熱抵抗体は、印字媒体を発色させるためにより多くのジュール熱が必要とされ、より多くのジュール熱により、温度が発熱抵抗体の内部のガラス軟化点又は転移点温度を超えると、発熱抵抗体は、抵抗値の上昇が発生して破壊されやすくなり、高温高湿度環境では、保護層の耐腐蝕の不足の破壊により、金属電極は腐蝕されて断線し、また、印字媒体の品質が悪く、室外等の環境で、保護層の耐摩耗性能が不足し、抵抗体又は金属電極は、媒体又は異物のパーティクルで傷つけられ、いずれも製品の損壊を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下は、本稿について詳細に説明するテーマの概述である。本概述は、特許請求の保護範囲を制限するためのものではない。
【0005】
本願の実施例は、サーマルプリントヘッドにおける発熱抵抗体の耐エネルギ特性を著しく改善し、発熱基板の耐摩耗、耐腐蝕性能を効果的に向上させることができるサーマルプリントヘッド発熱基板を提出する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の実施例は、以下の措置により達成される。
【0007】
表面部分に、非晶質ガラス材料からなり、表面に共通電極及び個別電極が設けられた下地釉層が設けられた絶縁基板が設けられており、発熱抵抗体は共通電極と個別電極との間に配置され、共通電極は、一端が発熱抵抗体に接続され、他端が電源との接続のために用いられ、個別電極は、一端が発熱抵抗体に接続され、他端がボンディングパッドに接続され、発熱抵抗体、個別電極及び共通電極の表面には、発熱抵抗体の表面に被覆されて転移点温度範囲が600~725℃のガラス釉層又は軟化点温度範囲が700~870℃のガラス釉層である第1保護層を備える保護層が設けられている、
耐エネルギ耐腐蝕耐摩耗のサーマルプリントヘッド発熱基板。
【0008】
本願の実施例に記載の第1保護層における成分は、酸化物の状態で計ると、含量は、SiO2含有量が49.4mol%~56.8mol%で、Al2O3含有量が13.7mol%~26.7mol%で、CaO含有量が3.5mol%~13.8mol%で、BaO含有量が1.5mol%~5.9mol%で、PbO含有量が4.8mol%~17.7mol%で、ZrO2含有量が1.2mol%~5.0mol%である。
【0009】
本願の実施例に記載の保護層のうち、第1保護層の上側には、絶縁ガラス釉層又は導電ガラス釉層を採用する第2保護層が複合され、更に、前記第2保護層の転移点又は軟化点は、第1保護層の転移点又は軟化点よりも低く、更に、前記第2保護層が導電ガラス釉層である場合、抵抗率範囲は0.01Ω・m~10kΩ・mである。
【0010】
本願の実施例に記載の保護層には、ガラス釉層の上方に位置する薄膜セラミック耐摩耗保護層が更に設けられており、前記薄膜セラミック耐摩耗保護層は、炭化ケイ素、サイアロン又は窒化ケイ素のうちの1種類からなり、あるいは炭化ケイ素、サイアロン、窒化ケイ素のうちの任意の2種類からなる複合薄膜セラミック層であり、薄膜セラミック耐摩耗層は、外部環境及びプリント媒体との接触のために用いられ、製品の耐摩耗特性を向上させる。
【発明の効果】
【0011】
本願の実施例の有益な効果は、以下のとおりである。高転移点(600℃よりも大きい)又は高軟化点(700℃よりも大きい)の絶縁ガラス釉を第1保護層として採用し、焼結時に、部分的に発熱抵抗体の内部に拡散して入り、発熱抵抗体の内部のガラス組成物の転移点又は軟化点を高めて、発熱抵抗体の耐エネルギ特性を向上させ、高いエネルギーでプリントする時の発熱抵抗体の抵抗値の上昇を減少させ、前記高転移点又は高軟化点の絶縁ガラス釉は、高温溶融で作製され、且つ、高い温度で焼結する必要があり、良好な化学的安定性を有し、製品の耐腐蝕性能を著しく増強し、ガラス釉保護層の表面に設けられた薄膜プロセスで形成された薄膜セラミック耐摩耗保護層は、耐摩耗性能を更に強化し、本願のサーマルプリントヘッド用発熱基板は、生産方法が簡単で、コストが低いという特徴を有し、高い印字エネルギーによる発熱抵抗体の破壊を極めて大きく減少させ、プリントヘッドの高温、高湿度環境での耐腐蝕能力及び劣悪な環境での耐摩耗性能を向上させ、製品の信頼性を著しく向上させることができる。
【0012】
図面及び詳細な説明を閲読して理解してから、他の態様も理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本稿の技術案に対する更なる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、本願の実施例と共に本稿の技術案を解釈するために用いられ、本稿の技術案を制限するものではない。
【0014】
【符号の説明】
【0015】
1・・・絶縁基板、2・・・下地釉層、3・・・共通電極及び個別電極、4・・・発熱抵抗体、5・・・保護層、5a・・・第1保護層(高転移点又は高軟化点の絶縁ガラス釉層)、5b・・・第2保護層(低転移点又は低軟化点の絶縁ガラス釉層)、5c・・・第3保護層(低転移点又は低軟化点の絶縁ガラス釉層)、5d・・・薄膜セラミック耐摩耗保護層。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面及び実施例を参照しながら本願について更に説明する。
【0017】
本願は、従来技術の欠陥及び不足に対し、絶縁基板を備える耐エネルギ、耐腐蝕、耐摩耗のサーマルプリントヘッド用発熱基板を提出し、前記絶縁基板の表面部分に非晶質ガラス材料からなる下地釉層が設けられ、前記下地釉層の表面に共通電極及び個別電極が設けられており、発熱抵抗体は共通電極と個別電極との間に配置され、共通電極の一端は発熱抵抗体に接続され、他端は電源との接続のために用いられ、個別電極の一端は発熱抵抗体に接続され、他端はボンディングパッドに接続され、発熱抵抗体、個別電極及び共通電極の表面に、ガラス釉層と薄膜プロセスで形成されたセラミック耐摩耗層とからなる複合保護層が設けられており、前記ガラス釉保護層は、少なくとも高転移点又は高軟化点の絶縁ガラス釉からなる第1保護層5aを備えており、第1保護層5aを構成するガラス組成物の転移点又は軟化点は、発熱抵抗体内のガラス組成物の転移点又は軟化点温度よりも高く、第1保護層5aは、後続で高転移点又は高軟化点の絶縁ガラス釉保護層と呼ばれ、その転移点が600~725℃であり、又はその軟化点が700~870℃である。
【0018】
好ましくは、前記転移点温度が600~725℃又は軟化点温度が700~870℃の絶縁ガラス釉は、その組成物を酸化物の状態で計ると、SiO2含有量が49.4mol%~56.8mol%で、Al2O3含有量が13.7mol%~26.7mol%で、CaO含有量が3.5mol%~13.8mol%で、BaO含有量が1.5mol%~5.9mol%で、PbO含有量が4.8mol%~17.7mol%で、ZrO2含有量が1.2mol%~5.0mol%である。
【0019】
好ましくは、前記転移点温度が600~725℃又は軟化点温度が700~870℃の絶縁ガラス釉は、その組成物を酸化物の状態で計ると、SiO2含有量が49.4mol%~54.5mol%で、Al2O3含有量が17.7mol%~26.7mol%で、CaO含有量が3.5mol%~10.5mol%で、BaO含有量が1.5mol%~5.0mol%で、PbO含有量が8.5mol%~17.7mol%で、ZrO2含有量が1.2mol%~3.8mol%である。
【0020】
好ましくは、前記転移点温度が600~725℃又は軟化点温度が700~870℃の絶縁ガラス釉は、その組成物を酸化物の状態で計ると、SiO2含有量が52.0mol%~54.5mol%で、Al2O3含有量が17.7mol%~22.5mol%で、CaO含有量が6.5mol%~10.5mol%で、BaO含有量が2.5mol%~5.0mol%で、PbO含有量が8.5mol%~13.5mol%で、ZrO2含有量が2.5mol%~3.8mol%である。
【0021】
好ましくは、第1保護層は、独立して絶縁ガラス釉保護層としてもよいし、他のガラス釉保護層と共にガラス釉保護層を構成してもよく、前記他のガラス釉保護層は絶縁ガラス釉であり、導電ガラス釉であってもよく、前記導電ガラス釉保護層の抵抗率は0.01Ω・m~10kΩ・mである。
【0022】
好ましくは、第1保護層以外の他の絶縁ガラス釉保護層の転移点又は軟化点は、第1保護層の組成物の転移点又は軟化点よりも低く、後続で低転移点又は低軟化点の絶縁ガラス釉保護層と呼ばれる。
【0023】
好ましくは、前記保護層の表面には、薄膜プロセスで形成された薄膜セラミック耐摩耗保護層5dが設けられ、薄膜セラミック耐摩耗保護層5dは、炭化ケイ素、サイアロン又は窒化ケイ素のうちの1種類からなり、あるいは炭化ケイ素、サイアロン、窒化ケイ素のうちの任意の2種類からなる複合薄膜セラミック層である。
【0024】
本願に係る絶縁ガラス釉保護層の組成物は、その形態が様々な単一酸化物で存在するのではなく、通常、複合酸化物又は化合物の状態で存在し、本願において、ガラス組成物の成分は、通例に従い、単一酸化物に換算して標記され、例えば、絶縁ガラス釉にPbSiO3等の形態が含まれる可能性があり、単一酸化物でそれぞれPbO、SiO2と表記する。
【0025】
以下、耐エネルギのサーマルプリントヘッド発熱基板及びその製造方法を提供し、且つ、比較例を提供する。
【0026】
ここで、以下の説明に言及される各パラメータの意味は、以下のとおりである。
【0027】
焼成外観は、(1)表面粗さ試験機で表面粗さを計測し、各組成のガラス釉薬に対して、10個のサンプルを取って測定し、それらの平均値を求め、(2)実体顕微鏡で、表面レベリング及び欠陥等、ガラス釉の表面状態を観察するものである。
【0028】
Tg(ガラス転移点温度)、Ts(ガラス軟化点温度)は、示差熱分析DTAを用い、各組成のガラス釉薬に対して、10個のサンプルを取って測定し、それらの平均値を求めるものである。
【0029】
STOL(耐エネルギ試験)は、抵抗体に1.5~2倍の定格発熱エネルギーを印加し、発熱抵抗体の抵抗値の変化率を測定し、各組成のガラス釉薬の保護層に対して、192個の発熱抵抗体をサンプリング測定し、それらの平均値を求めるものである。
【0030】
耐腐蝕試験は、固定温度、固定湿度の条件で、サーマルプリントヘッドが実際作動状態の時に通電されて待機し、絶縁ガラス釉保護層に腐蝕破壊が発生する時間を測定するものである。
【0031】
まず、様々な酸化物をストイキ比で混合し、高温溶融してフリットを作製し、各サンプルを取ってTg、Ts測定を行い、適量のフリットを取って粉砕した後に、ガラス釉粉末を作製し、フィラー、有機溶媒及び樹脂を加え、混合後に高転移点又は高軟化点の絶縁ガラス釉保護層スラリーを作製する。
【0032】
酸化物で計算すると、高転移点又は高軟化点の絶縁ガラス釉組成物の様々な成分の含量は、表1のとおりである。
【0033】
【0034】
次に、上記作製された絶縁ガラス釉保護層スラリーを、電極、二酸化ルテニウム発熱抵抗体の調製が済んだ基板の表面に印刷し、焼結して第1絶縁ガラス釉保護層を作製し、サーマルプリントヘッド基板を作製し、耐電力特性試験、耐腐蝕特性試験を行い、その各項の結果が表2に記録されている。
【0035】
【0036】
また、STOL>-3%の試料3~試料7の絶縁ガラス釉保護層スラリーを選択し、電極、二酸化ルテニウム発熱抵抗体の調製が済んだ基板の表面に印刷し、焼結して高転移点又は軟化点の第1ガラス釉保護層サンプルを作製し、そして、一部のサンプルの表面に薄膜プロセスで炭化ケイ素耐摩耗層を形成し、サーマルプリントヘッド基板を作製し、他の一部のサンプルの表面に第2ガラス釉保護層スラリーを印刷して焼結し、第2ガラス釉保護層を作製してから、第2ガラス釉保護層の表面に薄膜プロセスで炭化ケイ素耐摩耗層を形成し、サーマルプリントヘッド基板を作製し、更に、耐エネルギ特性試験、耐腐蝕特性試験を行い、高転移点又は高軟化点の絶縁ガラス保護層を用いて他のガラス釉保護層と結合し、本願のサーマルプリントヘッドの耐エネルギ及び耐腐蝕性能は、従来技術よりも明らかに向上し、その各項の結果が表3に記録されている。
【0037】
【0038】
実施例1
図1に示すように、本例に係る耐エネルギ耐腐性のサーマルプリントヘッド用発熱基板は、絶縁基板1を備え、前記絶縁基板1の表面部分に非晶質ガラス材料からなる下地釉層2が設けられ、前記下地釉層2の表面に共通電極及び個別電極3が設けられており、発熱抵抗体4は、主プリント方向に沿って共通電極と個別電極3との間に配置され、ジュール熱を生じさせる発熱体として、前記共通電極の一端は、副プリント方向に沿って前記発熱抵抗体4に接続され、他端は電源との接続のために用いられ、前記個別電極の一端は、副プリント方向に沿って前記発熱抵抗体4に接続され、発熱基板を保護するために、前記発熱抵抗体4、共通電極及び個別電極3の表面に保護層5を被覆し、前記保護層5は、表3のように、試料3を選択使用し、転移点600℃、軟化点700℃の絶縁ガラス釉5aからなる第1保護層と、薄膜プロセスで形成された炭化ケイ素セラミック保護層とからなる。
【0039】
高軟化点又は転移点のガラス釉5aは、焼結時に、部分的に発熱抵抗体に拡散して入り、発熱抵抗体のガラス軟化点温度を高め、発熱する抵抗体の耐電力特性を増強し、高軟化点又は転移点の絶縁ガラス釉5aは、焼結時に一定の流動性を有し、焼結後に良好な表面平滑性を有し、5aの表面の欠陥が極めて少なく、製品の耐腐蝕性能を向上させ、炭化ケイ素セラミック層は、サーマルプリントヘッド基板の耐摩耗性能を強化し、耐エネルギ、耐腐蝕、耐摩耗のサーマルプリントヘッド基板が得られる。
【0040】
実施例2
図2に示すように、本例に係る耐エネルギ耐腐性のサーマルプリントヘッド用発熱基板は、絶縁基板1を備え、前記絶縁基板1の表面部分に非晶質ガラス材料からなる下地釉層2が設けられる。前記下地釉層2の表面には、共通電極及び個別電極3が設けられており、発熱抵抗体4は、主プリント方向に沿って共通電極と個別電極3との間に配置され、ジュール熱を生じさせる発熱体として、前記共通電極の一端は、副プリント方向に沿って前記発熱抵抗体4に接続され、他端は電源との接続のために用いられ、前記個別電極の一端は、副プリント方向に沿って前記発熱抵抗体4に接続され、発熱基板を保護するために、前記発熱抵抗体4、共通電極及び個別電極3の表面に保護層5を被覆し、前記保護層5は、表3のように、試料5を選択使用し、転移点683℃、軟化点812℃の絶縁ガラス釉5aからなる第1保護層と、絶縁ガラス釉5bからなる第2保護層と、薄膜プロセスで形成された炭化ケイ素セラミック保護層とからなり、
高軟化点ガラス釉5aは、焼結時に、部分的に発熱抵抗体に拡散して入り、発熱抵抗体のガラス軟化点温度を高め、発熱抵抗体の耐エネルギ特性を増強し、ガラス保護層5bは、焼結時に良好な流動性を有し、焼結後に絶縁ガラス釉5は良好な表面平滑性を有し、高軟化点のガラス釉5aの表面の緻密性を向上させ、更に製品の耐腐蝕性能を向上させ、炭化ケイ素セラミック層はサーマルプリントヘッド基板の耐摩耗性能を強化し、耐エネルギ、耐腐蝕、耐摩耗のサーマルプリントヘッド基板が得られる。
【0041】
実施例3
図3に示すように、本例に係る耐エネルギ耐腐性のサーマルプリントヘッド用発熱基板は、絶縁基板1を備え、前記絶縁基板1の表面部分に非晶質ガラス材料からなる下地釉層2が設けられている。前記下地釉層2の表面には、共通電極及び個別電極3が設けられており、発熱抵抗体4は、主プリント方向に沿って共通電極と個別電極3との間に配置され、ジュール熱を生じさせる発熱体として、前記共通電極の一端は、副プリント方向に沿って前記発熱抵抗体4に接続され、他端は電源との接続のために用いられ、前記個別電極の一端は、副プリント方向に沿って前記発熱抵抗体4に接続され、発熱基板を保護するために、前記発熱抵抗体4、共通電極及び個別電極3の表面に保護層5を被覆し、前記保護層5は、表3のように、試料5を選択使用し、転移点683℃、軟化点812℃の絶縁ガラス釉5aからなる第1保護層と、抵抗率が10Ω・mの導電ガラス釉5bからなる第2保護層と、薄膜プロセスで形成された炭化ケイ素セラミック保護層からなり、
本例において、高軟化点ガラス釉5aは、焼結時に、部分的に発熱抵抗体に拡散して入り、発熱抵抗体のガラス軟化点温度を高め、発熱抵抗体の耐エネルギ特性を増強し、導電ガラス釉保護層5bは、基板表面の電位を低下させ、高温高湿での耐摩耗保護層の電気化学的腐蝕を減少させ、高温高湿度環境の電極への腐蝕作用を低減し、製品の耐腐蝕性能を向上させ、炭化ケイ素セラミック層はサーマルプリントヘッド基板の耐摩耗性能を強化し、耐エネルギ、耐腐蝕、耐摩耗のサーマルプリントヘッド基板が得られる。
【0042】
本願は、他の組み合わせ方式を採用してもよく、例えば、高軟化点又は高転移点のガラス釉を第1保護層として採用し、低軟化点又は低転移点のガラス釉を第2保護層及び第3保護層として採用し、薄膜プロセスで形成された炭化ケイ素セラミック保護層を採用して共同で保護層を構成し、耐エネルギ、耐腐蝕、耐摩耗のサーマルプリントヘッド基板が得られる。
【国際調査報告】