(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】注射器用安全シールド
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
A61M5/32 510P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563276
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 US2022024866
(87)【国際公開番号】W WO2022221565
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ロートン
(72)【発明者】
【氏名】ナット ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ソーリー ジェフ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE06
4C066FF06
4C066HH13
4C066NN08
(57)【要約】
【課題】注射器が予定よりも早く注射部位から除去されても、注射針を露出させない。
【解決手段】注射器は、長軸のあるハウジングを含む。ハウジングは、薬を含む薬容器を収容する。ハウジングの先端には、薬容器に操作可能に結合している針の一部を通すための穴が開いている。ハウジングのうち少なくとも先端部は安全シールドによって囲まれている。安全シールドは後退位置からハウジングに対して先端側へ、針を保護する前進位置まで前進する。ハウジングと安全シールドとの間には前進用ばねが配置されている。前進用ばねは、安全シールドを後退位置から前進位置まで前進させると共に、安全シールドが前進位置にあるときにはハウジングと安全シールドとにロックされることにより、安全シールドが後退位置へ戻るのを妨げる。
【選択図】
図47b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬を含む薬容器を収容するように構成されているハウジングであり、長軸があり、先端には、前記薬容器に操作可能に結合している針の一部を通すための穴が開いているハウジングと、
前記ハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでおり、後退位置から前記ハウジングに対して先端側へ、前記針を保護する前進位置まで前進するように構成されている安全シールドと、
前記ハウジングと前記安全シールドとの間に配置されており、前記安全シールドを前記後退位置から前記前進位置へ前進させるように、かつ、前記安全シールドが前記前進位置にあるときには前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている前進用ばねと
を備えている注射器。
【請求項2】
前記ハウジングが第1ロック面を備え、前記安全シールドが第2ロック面を備え、
前記第2ロック面は、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記第1ロック面と向かい合うように配置されており、
前記前進用ばねは、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記第1ロック面と前記第2ロック面とにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている、
請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記第1ロック面が、前記ハウジングの先端側を向いている肩部を含み、
前記第2ロック面が、前記ハウジングの基端側を向いている面を含み、当該面から先端方向へ前記長軸の方向のリッジが伸びており、
前記長軸の方向のリッジは、前記安全シールドが前記後退位置にあるときに前記前進用ばねを径方向に圧縮するように構成されており、
前記前進用ばねは、前記安全シールドが前進する間に前記第2ロック面を通過すると、径方向へ拡がるように構成されている、
請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
前記前進用ばねが、第1直径の基端部と、前記第1直径よりも狭い第2直径の先端部とを備えており、
前記基端部は、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされるように構成されている、
請求項1に記載の注射器。
【請求項5】
前記安全シールドが前記後退位置にあるときには、前記前進用ばねの基端部が、前記第1直径よりも狭い第3直径まで圧縮され、
前記安全シールドが前記前進位置にあるときには、前記前進用ばねが前記第1直径まで拡がるように配置されている、
請求項4に記載の注射器。
【請求項6】
前記ハウジングと前記安全シールドとの一方が保持用タブを含み、他方が一方向受け部を含み、
前記保持用タブが、
前記注射器の組み立て中には、前記一方向受け部の上を摺動し、
前記安全シールドの前進中には、前記一方向受け部に接触することにより、前記安全シールドが前記ハウジングから分離するのを防ぐ
ように構成されている、
請求項1に記載の注射器。
【請求項7】
前記一方向受け部が、
前記注射器の組み立て中、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせるのに便利なように配置されている斜面と、
前記安全シールドの前進中、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせないように配置されている切り立った崖面と
を含む、
請求項6に記載の注射器。
【請求項8】
前記一方向受け部が更に片持ち梁状のアームを含む、請求項7に記載の注射器。
【請求項9】
前記ハウジングが前記一方向受け部を含み、前記安全シールドが前記保持用タブを含む、請求項6に記載の注射器。
【請求項10】
前記保持用タブが周方向へ広がっている突起を含む、請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
前記安全シールドに嵌まると前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されている解放可能なロック機構
を更に備えている、請求項1に記載の注射器。
【請求項12】
前記針と前記薬容器とに結合している針ハブ
を更に備え、
前記針ハブが前記ハウジングに対し、
前記ハウジングの穴から離れている第1位置と、
前記ハウジングの穴の中を伸びている第2位置と
の間で移動可能であり、
前記針ハブが、前記第2位置では前記ロック機構から外れることにより、前記安全シールドを解放するように構成されている、
請求項11に記載の注射器。
【請求項13】
前記ロック機構が、前記安全シールドと前記ハウジングとのうちの一方に接続されているラッチ面と、他方に接続されている柔軟なラッチアームとを含み、
前記ラッチアームが、前記ラッチ面に嵌まることにより前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されており、
前記針ハブが、前記第2位置では前記ラッチアームを前記ラッチ面から外すように構成されている、
請求項12に記載の注射器。
【請求項14】
前記薬容器と前記針ハブとに対し、前記第1位置へ向かって力を加えるように配置されている復帰用ばね
を更に備えている、請求項11に記載の注射器。
【請求項15】
前記復帰用ばねがコイルばねを含み、前記ハウジングと前記薬容器との間に位置する、請求項14に記載の注射器。
【請求項16】
前記前進用ばねがコイルばねを含む、請求項1に記載の注射器。
【請求項17】
注射器を製造する方法であって、
長軸のあるハウジングを用意するステップと、
前記ハウジングのうち少なくとも先端部を囲み、後退位置から前記ハウジングに対して先端側へ、針を保護する前進位置まで前進可能な安全シールドを用意するステップと、
前記ハウジングと前記安全シールドとの間に前進用ばねを配置し、前記安全シールドを前進させるように前記前進用ばねを構成するステップと
を備え、
前記前進用ばねは、
前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻ることを防ぐ
ように構成されている
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ハウジングと前記安全シールドとのうちの一方が保持用タブを含み、他方が一方向受け部を含み、
前記安全シールドを前記ハウジングの上で前記後退位置へ向かって摺動させ、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせて前記一方向受け部よりも後方にロックすることにより、前記安全シールドを前記ハウジングから分離させないようにするステップ
を更に備えている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記安全シールドを前記ハウジングの上で摺動させる前に、前記前進用ばねを前記安全シールドの中に配置するステップ
を更に備えている、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2021年4月14日を出願日とする米国仮特許出願第63/174,722号に基づく優先権の主張を伴うものであり、その開示内容が参照により、この明細書に組み込まれる。
【0002】
この出願は、皮下注射針を保護することにより怪我を防ぐように構成されている注射器と、それに関連する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
手動の注射器、自動注射器等の注射器は、薬を皮下へ送るのに皮下注射針を使用する。使用済みの皮下注射針は有害な病原体の居場所になりかねないので、注射器は注意深く取り扱われ、安全に廃棄されねばならない。正しく使用されなくても、正しく廃棄されなくても、怪我を招きかねず、病気の感染源になりかねない。
【0004】
安全シールドを備えている注射器が知られている。安全シールドは、注射後に配置されることにより、皮下注射針を保護して怪我を防ぐように構成されている。しかし、そのような安全シールドも、それを配置する機構も、機械的には複雑になりうる。その結果、そのような注射器の製造、組み立てはコストが高くなりうる。さらに、安全シールドを配置する機構が複雑であると故障しやすいので、怪我の予防に関する効力が落ちる。
【0005】
従来の注射器、特に自動注射器には別の問題点もある。それは、患者に正しい用量の薬が完全に投与されたか否かが、ユーザーまたは医療従事者にはわかりにくい場合があることである。その場合は危険である。患者に投与された薬の用量が、(注射が不完全でしかなく、そのことにユーザーが気付いていない場合は)少な過ぎることも、(注射が不完全でしかないので、新たな用量の薬が再度投与される場合は)多過ぎることも起こり得るからである。
【0006】
これらの問題点は特に、自宅で使用される自動注射器に広く見られる。そのような自動注射器は大抵(医療従事者ではなく)患者によって使用されるからである。したがって、誤使用の危険性が更に高い。
【0007】
既知の自動注射器の一種に、次のように構成されている安全機構を含むものがある。この安全機構は、所定量の薬が投与され終えると、注射筒を後退させて皮下注射針を注射器のハウジングの中へ収容することにより、使用後の皮下注射針の先端をハウジングの中に保護する。しかし、安全機構が皮下注射針を後退させ損ねれば、使用後の自動注射器が安全ではなくなる。さらに、安全機構が注射筒を後退させるのは注射の完了後であるので、皮下注射針の保護が注射の完了後にしか行われない。
【0008】
すでに述べたように、既知の自動注射器には、安全シールドを含み、それを自動注射器の使用後に前進させるように構成されている種類もある。
【0009】
上記の種類の自動注射器はいずれも、注射の完了後には皮下注射針を露出させない。しかし、いずれのシステムでも、注射器が予定よりも早く(たとえば、注射の完了前に)注射部位から取り除かれた上、必要量の薬が患者に投与されたか否かについて何の表示もない場合、皮下注射針が露出するかもしれない。さらに、上記の種類の自動注射器は、予定よりも早く患者から除去された結果、皮下に投与されるべき総量よりも少ない量しか実際には投与されていない場合でも、使用後に投与の成功を表示するかもしれない。それ故、注射器の改良が必要である。
【発明の概要】
【0010】
発明の実施形態の1つでは次の注射器が与えられる。この注射器は、ハウジングと、安全シールドと、前進用ばねとを備えている。
ハウジングは、薬を含む薬容器を収容するように構成されている。ハウジングには長軸があり、ハウジングの先端には、薬容器に操作可能に結合している針の一部を通すための穴が開いている。
安全シールドはハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでおり、後退位置からハウジングに対して先端側へ、針を保護する前進位置まで前進するように構成されている。
前進用ばねはハウジングと安全シールドとの間に配置されており、安全シールドを後退位置から前進位置へ前進させるように、かつ、安全シールドが前進位置にあるときにはハウジングと安全シールドとに拘束(ロック)されることにより、安全シールドが後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている。
【0011】
前進用ばねが、安全シールドを配置する手段としてだけでなく、安全シールドをロックする手段としても機能するので、この注射器は機械的には単純である。したがって、製造コストが低く、組み立てが簡単である。さらに、安全シールドを配置する手段も、ロックする手段も、部品数が少ないので不具合の生じる可能性が低い。前進用ばねはコイルばねであってもよい。
【0012】
以下、部品の先端とは、その部品の端のうち、注射器の使用中、注射部位に近い方をいう。一方、部品の基端とは、その部品の端のうち、注射器の使用中、注射部位から遠い方をいう。先端方向への移動とは、注射器の使用中、注射部位へ近づくことをいい、基端方向への移動とは、注射器の使用中、注射部位から遠ざかることをいう。
【0013】
さらに、上記の注射器が、ハウジングに取り付けられているハンドル部を備えていてもよく、注射を行うための駆動部品を含んでいてもよい。その他に、ハウジングが、注射を行うための駆動部品を含むハンドル部に取り付けられるように構成されていてもよい。たとえば、上記の実施形態による注射器が、再利用可能なハンドル部に取り付けられる使い捨て部品として形成されていてもよい。
【0014】
上記の注射器には、その内部に薬容器が設置されていても、いなくてもよい。
【0015】
上記の安全シールドが、ハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでいるスリーブを備えていてもよい。スリーブは実質上、閉じた管であってもよい。この管の基端は開いていもよい(たとえば、先端にはある壁が、基端にはない)。それとは別に、スリーブが先端に、穴の開いた壁を含んでいてもよい。この穴は、注射の際に針を通すことができる。
【0016】
ハウジングが第1ロック面を備え、安全シールドが第2ロック面を備えていてもよい。第2ロック面は、安全シールドが前進位置にあるときに第1ロック面と向かい合うように配置されている。前進用ばねは、安全シールドが前進位置にあるときに第1ロック面と第2ロック面とにロックされることにより、安全シールドが後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている。たとえば、前進用ばねの少なくとも一部は、安全シールドが前進位置にあるときに第1ロック面と第2ロック面との間で楔となるように構成されていてもよい。
【0017】
第1ロック面が、ハウジングの先端側を向いている肩部を含み、第2ロック面が、ハウジングの基端側を向いている面を含んでいてもよい。第2ロック面が安全シールドの内面に位置してもよい。第2ロック面の基端側を向いている面から先端方向へ、ハウジングの長軸の方向のリッジが伸びていてもよい。安全シールド(特に、そのリッジ)は、安全シールドが後退位置にあるときに前進用ばねを径方向に圧縮するように構成されていてもよい。前進用ばねは、安全シールドが前進する間に第2ロック面を通過すると、径方向へ拡がるように構成されていてもよい。この径方向への拡がりにより、上記のように、前進用ばねが第1ロック面と第2ロック面とにロックされる。
【0018】
前進用ばねが、第1直径の基端部と、第1直径よりも狭い第2直径の先端部とを備えていてもよい。基端部は、安全シールドが前進位置にあるときにハウジングと安全シールドとにロックされるように構成されている。安全シールドが後退位置にあるときには、前進用ばねの基端部が、第1直径よりも狭い第3直径まで圧縮され、安全シールドが前進位置にあるときには、前進用ばねが第1直径まで拡がるように配置されていてもよい。安全シールド(たとえば、そのリッジ)は、後退位置にあるときに前進用ばねの基端部を第3直径まで圧縮するように構成されていてもよい。
【0019】
ハウジングと安全シールドとの一方が保持用タブを含み、他方が一方向受け部を含んでもよい。保持用タブが、注射器の組み立て中には一方向受け部の上を摺動するように、かつ、安全シールドの前進中には一方向受け部に接触することにより、安全シールドがハウジングから分離するのを防ぐように構成されていてもよい。したがって、(たとえば、ハウジングの上で安全シールドを基端方向へ摺動させることにより)保持用タブと一方向受け部とを注射器に簡単に組み込むことができると共に、安全シールドを先端方向へ前進させるときにハウジングから分離させることを防ぐことができる。
【0020】
一方向受け部が、注射器の組み立て中、保持用タブに一方向受け部を乗り越えさせるのに便利なように配置されている斜面と、安全シールドの前進中、保持用タブに一方向受け部を乗り越えさせないように配置されている切り立った崖面とを含んでもよい。斜面は先端方向を向いており、崖面は基端方向を向いている。さらに、一方向受け部が片持ち梁状のアームを含んでもよい。アームの自由端に上記の斜面と崖面とが位置してもよい。実施形態の中には、ハウジングが一方向受け部を備え、安全シールドが保持用タブを備えているものがあってもよい。そのような実施形態では、保持用タブが、周方向に広がっている突起を含んでもよい。注射器が片持ち梁状のアームを複数本、たとえば2本、3本、または4本備えていてもよい。この場合、それらのアームが径方向において等間隔に配置されていてもよい。
【0021】
ハウジングと安全シールドとが長軸の方向の溝を備えていてもよい。溝は、長軸の方向に広がっているリッジが嵌まるように構成されていてもよい。これにより、安全シールドがハウジングに対して回転することが防止される。
【0022】
注射器が、安全シールドに嵌まると安全シールドを後退位置にロックするように構成されている解放可能なロック機構を更に備えていてもよい。
【0023】
注射器が、針と薬容器とに結合している針ハブ(特に薬容器との結合は、操作可能なものである。)を更に備えていてもよい。針ハブがハウジングの中に摺動可能に収容されていてもよい。針ハブがハウジングに対し、ハウジングの穴から離れている第1位置(後退位置)と、ハウジングの穴の中を伸びている第2位置(注射位置)との間で移動可能であってもよい。針ハブが、第2位置(注射位置)ではロック機構から外れることにより、安全シールドを解放するように構成されていてもよい。
【0024】
たとえば、ロック機構が、安全シールドとハウジングとのうちの一方に接続されているラッチ面と、他方に接続されている柔軟なラッチアームとを含んでもよい。ラッチアームが、ラッチ面に嵌まることにより安全シールドを後退位置にロックするように構成されていてもよい。針ハブが、第2位置(注射位置)ではラッチアームをラッチ面から外すことにより、安全シールドを解放するように構成されていてもよい。
【0025】
注射器が、薬容器と針ハブとに対し、第1位置(後退位置)へ向かって力を加えるように配置されている復帰用ばねを備えていてもよい。復帰用ばねがハウジングと薬容器との間に位置してもよい。復帰用ばねがコイルばねであってもよい。注射の間に針ハブが、たとえば、駆動部品またはプランジャーの作用により、第2位置(注射位置)へ移動可能であってもよい。さらに、注射器が、注射の完了に続いて針ハブを第1位置(後退位置)へ戻すように構成されていてもよい。
【0026】
針ハブが、1回分の投薬の完了に応じ、復帰用ばねの作用により第1位置(後退位置)へ戻るように構成されていてもよい。これにより、安全シールドが後退位置にロックされてもよい。ただし、1回分の投薬が完了する前に注射器が注射部位から取り外された場合は、たとえ、その取り外し後に1回分の投薬が完了したとしても、針ハブが第1位置(後退位置)へ戻る前に、安全シールドが前進位置へ移動する。注射器は、注射部位から予定よりも早く取り外されたことに応じ、第1の方法(1回分の投薬の完了に応じて薬容器を第1位置(後退位置)へ戻す。)と第2の方法(安全シールドを前進させる。)との両方を行ってもよい。したがって、安全シールドが起動した状態は、1回分の投薬が為された状態であることを表す。たとえば、注射器には次の表示状態がある。
○ 第1表示状態。1回分の投薬が完全に為された後に注射器が注射部位から取り外されたことを表す。たとえば、注射器が注射部位から取り外されるタイミングが予定よりは早くないことを表す。
○ 第2表示状態。注射器が注射部位から取り外されるタイミングが予定よりも早く、かつ、不完全な量しか投薬されていないことを表す。
○ 第3表示状態。1回分の投薬が完全に為される前に注射器が注射部位から取り外されたことを表す。たとえば、注射器が注射部位から取り外されるタイミングが予定よりも早いことを表す。
【0027】
第1表示状態が注射器の注射後における第1状態であってもよい。第3表示状態が注射器の注射後における第2状態であってもよい。第2表示状態が注射後における第2状態の前兆であってもよい。これら3つの表示状態が見た目で互いに区別されてもよい。たとえば、針ハブが第2位置(注射位置)から第1位置(後退位置)へ移動すると第1可視表示が露出するように、注射器が構成されていてもよい。さらに、安全シールドが前進すると第2可視表示が露出するように、注射器が構成されていてもよい。
【0028】
発明の別の実施形態では次の注射器が与えられる。この注射器は、ハウジングと、安全シールドと、前進用ばねとを備えている。
ハウジングは、薬を含む薬容器と、薬容器に結合させるための針とを収容するように構成されている。ハウジングには長軸があり、ハウジングの基端には、薬容器に結合している針を通すための穴が開いている。
安全シールドはハウジングのうち少なくとも基端部を囲んでおり、後退位置からハウジングに対して基端側へ、針を保護する前進位置まで前進するように構成されている。
前進用ばねはハウジングと安全シールドとの間に配置されており、安全シールドを前進させるように構成されている。
ハウジングと安全シールドとのうち、一方は保持用タブを備え、他方は一方向受け部を備えている。一方向受け部は、注射器の組み立て中には保持用タブの上を摺動し、安全シールドの前進中には保持用タブに接触することにより、安全シールドがハウジングから分離するのを防ぐように構成されている。
【0029】
上記2つの実施形態の特徴に関して説明された部材が互いに組み合わせ可能であることは、読者には理解されるだろう。
【0030】
発明の別の実施形態では次の注射器が与えられる。この注射器は、ハウジングと、安全シールドと、前進用ばねとを備えている。
ハウジングは、薬容器を収容するように構成されている。ハウジングの先端には、薬容器に結合している針を通すための穴が開いている。
安全シールドはハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでおり、後退位置からハウジングに対して先端側へ、針を保護する前進位置まで前進するように構成されている。
前進用ばねはハウジングと安全シールドとの間に配置されており、安全シールドを後退位置から前進位置まで前進させるように構成されている。
安全シールドはラッチ面を備え、ハウジングは柔軟なラッチアームを備えている。ラッチアームは、安全シールドのラッチ面に嵌まることにより、安全シールドを後退位置にロックするように、かつ、注射中にラッチ面から解放可能であるように構成されている。
【0031】
読者には理解されるだろうように、この実施形態に関して説明された部材は、少なくとも、最初に説明された実施形態の部材と組み合わせ可能である。
【0032】
ハウジングが、薬容器と針ハブとを収容するように配置されてもよい。針ハブは針に取り付けられた上で薬容器に結合している。さらに、薬容器と針ハブとがハウジングに対して第1位置と第2位置との間で移動可能であるように、ハウジングが配置されてもよい。第1位置(後退位置)では針ハブがハウジングの穴から離れている。第2位置(注射位置)では針ハブがハウジングの穴を通っている。針ハブが、第2位置(注射位置)ではラッチアームをラッチ面から外すように構成されていてもよい。
【0033】
発明の別の実施形態では、注射器を製造する方法が与えられる。この方法は、
長軸のあるハウジングを用意するステップと、
ハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでおり、後退位置からハウジングに対して先端側へ、針を保護する前進位置まで前進可能な安全シールドを用意するステップと、
ハウジングと安全シールドとの間に前進用ばねを配置し、安全シールドを前進させるように前進用ばねを構成するステップと
を備えている。前進用ばねは、安全シールドが前進位置にあるときにハウジングと安全シールドとにロックされることにより、安全シールドが後退位置へ戻ることを防ぐように構成されている。
【0034】
たとえば、この実施形態による方法が、上記の実施形態のいずれによる注射器を製造する方法であってもよい。さらに、この方法が、安全シールドをハウジングの上で摺動させる前に、前進用ばねを安全シールドの中に配置するステップを備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
発明は、以下の図面に示されている多くの実施形態の例に関連付けられて、より詳細に説明される。ただし、これらの図面は発明を限定するものではない。
【0036】
【
図1】この明細書で開示される発明による注射器の断面図である。
【
図2】注射前の状態である
図1の注射器の側面図である。
【
図3A】この明細書で開示される発明による注射器の保管状態を示す。
【
図3B】
図3Aの注射器を、長軸Lのまわりで45°回転させた状態を示す。
【
図6】
図3Aの注射器の、起動中だが投薬前の状態を示す。
【
図8】
図3Aの注射器が駆動を終えて針を抜いた時の状態を示す。
【
図9】この明細書で開示される発明による動力パックの分解組立図である。
【
図10A】この明細書で開示される発明の実施形態によるラッチの拡大斜視図である。
【
図10B】この明細書で開示される発明による別のラッチの拡大斜視図である。
【
図10C】この明細書で開示される発明によるラッチ機構の張出部の拡大斜視図である。
【
図11A】この明細書で開示される発明による駆動装置の基端の拡大図である。基端側ハウジングが非起動位置にある。
【
図11B】
図11Aに示されている駆動装置の基端の拡大図である。基端側ハウジングが起動位置にある。
【
図12】この明細書で開示される発明の別の実施形態による注射器を示す。
【
図13】この明細書で開示される発明の別の実施形態による注射器を示す。
【
図14】以下に示される動力パックを備えている注射器の組み立て方法を示す。
【
図17b】
図17aの第1駆動部品の長軸に沿った平面による断面を示す。
【
図18a】第1駆動部品とダンパーとの、長軸Lに沿った平面による断面図である。注射器内における第1駆動部品の様々な伸縮状態を示す。
【
図18b】第1駆動部品とダンパーとの、長軸Lに沿った平面による断面図である。注射器内における第1駆動部品の様々な伸縮状態を示す。
【
図18c】第1駆動部品とダンパーとの、長軸Lに沿った平面による断面図である。注射器内における第1駆動部品の様々な伸縮状態を示す。
【
図18d】第1駆動部品とダンパーとの、長軸Lに沿った平面による断面図である。注射器内における第1駆動部品の様々な伸縮状態を示す。
【
図18e】第1駆動部品とダンパーとの、長軸Lに沿った平面による断面図である。注射器内における第1駆動部品の様々な伸縮状態を示す。
【
図19】この明細書で開示される発明の別の実施形態の断面図である。
【
図20】この明細書で開示される発明の別の実施形態の等角断面図である。
【
図21】この明細書で開示される発明の別の実施形態による第1駆動部品の断面図である。
【
図22a】
図21の第1駆動部品の、長手方向に沿って間隔を空けて配置されている様々な平面による等角断面図である。
【
図22b】
図21の第1駆動部品の、長手方向に沿って間隔を空けて配置されている様々な平面による等角断面図である。
【
図22c】
図21の第1駆動部品の、長手方向に沿って間隔を空けて配置されている様々な平面による等角断面図である。
【
図22d】
図21の第1駆動部品の、長手方向に沿って間隔を空けて配置されている様々な平面による等角断面図である。
【
図23】この明細書で開示される発明の別の実施形態の等角断面図である。
【
図25】この明細書で開示される発明の別の実施形態の等角切断図である。
【
図27】この明細書で開示される発明の実施形態によるダンパーの断面図である。
【
図28a】この明細書で開示される発明の4つの実施形態のうちの1つの断面図である。
【
図28b】この明細書で開示される発明の4つの実施形態のうちの1つの断面図である。
【
図28c】この明細書で開示される発明の4つの実施形態のうちの1つの断面図である。
【
図28d】この明細書で開示される発明の4つの実施形態のうちの1つの断面図である。
【
図29】この明細書で開示される発明による注射器の組み立て方法を模式的に示す。
【
図30a】
図1の注射器の一部の断面図である。注射器は注射前の状態(保管状態)にある。
【
図31a】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図31b】
図31aの組み合わせの注射後(または注射中)の状態を示す。
【
図32a】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図32b】
図32aの組み合わせの注射後(または注射中)の状態を示す。
【
図33】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図34】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図35】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図36】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図37】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図38】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図39】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図40】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせを示す。
【
図41】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図42】この明細書で開示される発明による注射器の別の組み合わせの断面図である。この組み合わせは保管状態にある。
【
図43】この明細書で開示される発明による方法のフローチャートである。
【0037】
発明の詳細な説明の全体にわたり、同じ参照番号は同じ部品、同じ要素に対して使用される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
この明細書で開示される発明は、注射器、注射器用の部品、およびそれらを組み立て、または製造する方法全般を対象とする。発明は第1の側面では動力パックを与える。この動力パックが駆動装置の一部を成してもよい。発明は第2の側面では、動力パックから得られる動力を弱める注射器用の制動機構を与える。発明は第3の側面では、針ハブを薬のカートリッジに接続する注射器用の接続装置を与える。発明は第4の側面では、注射針の露出した先端からユーザーを保護する注射器用の受動式安全シールドを与える。
【0039】
以下、発明の各側面について順番に説明する。これらの側面は互いに独立にも組み合わせても実施可能である。それは以下の詳細な説明から明らかになるであろう。たとえば、以下に説明される動力パックの実施形態はいずれも、この明細書で説明される制動機構のいずれとも組み合わせ可能である。動力パックが制動機構を伴わずに使用されてもよい。
【0040】
同様に、以下に説明される制動機構が、この明細書で説明されるものとは別の動力パックと共に使用されてもよい。動力パックと制動具(ダンパー)とは互いに独立に使用可能であるが、この明細書で説明される動力パックが、以下で説明される制動機構との組み合わせで注射器に設置されれば、更なる利点が得られるだろう。特に、この明細書で開示される発明による動力パックは従来の注射器に比べ、より大きな駆動用ばねを搭載可能である。より大きな駆動用ばねの動力は、必要に応じ、この明細書で説明される制動機構を使って弱められてもよい。
【0041】
この明細書で説明される動力パックおよび/または制動機構は、この明細書で開示される受動式安全シールドを備えている注射器に組み込まれる場合、更なる利点を与える。その他に、この明細書で開示される発明の他の側面からは、安全シールドの設備が単独で与えられてもよい。この明細書で開示される発明による安全シールドの設備は必要に応じ、次のように構成されている種類の注射器に利用されてもよい。この注射器は、注射の間は針をハウジングから伸ばして針から1回分の薬を投与し、その後、使用済みの針を引っ込める。
【0042】
最後に、この明細書で説明される接続装置が、この明細書で説明される注射器とは独立に利用されてもよいことも理解されるだろう。この明細書で説明される接続装置は、薬容器が、針に貫かせるように構成されている隔壁を備えているものであれば、どのような装置または部品にも利用可能である。この明細書で説明される接続装置は、以下に説明される他の側面とは独立に利用可能であるが、この明細書で開示される他の側面の1以上と組み合わされれば、更なる利点が得られることは理解されるだろう。特に、この明細書で説明される接続装置は、以下に説明される受動式安全シールドの設備と組み合わされれば、更なる利点を与えることができる。
【0043】
以下、上記の各側面による実施形態、すなわち、動力パックの例、制動機構の例、接続装置の例、および安全シールド機構の例を含む注射器が説明される。
【0044】
図1は、この明細書で開示される発明による注射器1001の断面図である。注射器1001は基端にはハンドル1003を含み、先端にはカバー1006を含む。ハンドル1003は駆動装置1016(駆動用ばね1017を含む。)とプランジャーロッド1015とを収容している。先端方向とは、矢印Aによって示されているように、注射器の針側の端へ向かう方向である。基端方向は先端方向の反対であり、矢印Bによって示されている。
【0045】
図1が示す注射器1001は保管状態である。この状態ではカバー1006が注射器1001の先端を隠している。カバー1006は注射器1001から、針キャップ1005および針シールド1004と共に取り外し可能であり、それにより注射器1001の先端を露出させることができる。注射器1001の先端には薬容器1007が含まれている。薬容器1007は、基端がプランジャー1013によって密封(シール)されており、先端が隔壁1008によってシールされている。薬容器1007の中には薬Mが収められている。薬容器1007の先端には針ハブ1011が結合しており、針ハブ1011には皮下注射針1009が取り付けられている。針ハブ1011は薬容器1007に対して並進可能である。したがって、注射器1001の使用時、隔壁1008を皮下注射針1009に貫かせて薬容器1007と皮下注射針1009との間に流路を確立し、注射を行うことができる。この明細書で開示される実施形態は、隔壁によってシールされているカートリッジを薬容器として備えている注射器について説明されているが、実施形態の中には、隔壁によってシールされている容器が針付きの注射筒で置き換えられたものがあってもよいことは理解されるだろう。
【0046】
続けて
図1を参照すると、示されている注射器の状態では、皮下注射針1009の先端がハウジング1023の最先端から引っ込んでいる。ハウジング1023の先端のまわりには安全シールド1019も設けられている。安全シールド1019は、状況によっては注射後にハウジング1023に対して前進可能である。
【0047】
続けて
図1を参照すると、ハウジング1023がハンドル1003から取り外し可能であってもよい。この場合、ハウジング1023とその内容物(すなわち注射器1001の先端)とを使い捨てにできる。
【0048】
ユーザーが注射を行うには、まず注射器1001からカバー1006を(針キャップ1005および針シールド1004と共に)取り外す。ユーザーは、次に安全シールド1019の先端を所望の注射部位に置き、駆動装置1016を起動する。駆動装置1016が起動すると、駆動用ばね101の作用でプランジャーロッド1015が先端方向へ前進する。これにより針ハブ1011と薬容器1007とが前進するので、皮下注射針1009が注射部位に突き刺さる。プランジャーロッド1015が前進を続けると薬容器1007が更に前進するので、隔壁1008が皮下注射針1009によって貫かれる。最終的にはプランジャー1013が薬容器1007の中で隔壁1008へ向かって前進することにより、薬が薬容器1007から皮下注射針1009を通して排出される。このようにして注射が行われる。プランジャーロッド1015が終端に到達すると、駆動用ばね1017がプランジャーロッド1015から離れるので、復帰用ばね1021が、薬容器1007、針ハブ1011、および皮下注射針1009を基端方向へ後退させるように動作できる。これにより皮下注射針1009が後退してハウジング1023の中へ戻るので、注射完了後における注射器1001の安全性が確保される。状況によっては前進用ばね1025の作用により、安全シールド1019がハウジング1023に対して前進する。これにより安全シールド1019が更なる保護層となる。
【0049】
図2は
図1の注射器1001の外観図であり、使用に備えてカバー1006が取り外された注射前の状態を示す。この状態では、使用に備えてハウジング1023と安全シールド1019とが露出している。
図2に示されているように、注射器1001は基端1aと先端1bとを含む。先端1bが基端1aから取り外し可能であってもよい。実施形態の中には、先端1bが使い捨てであり、基端1aが再利用可能であるものがあってもよい。すなわち、注射器の先端部(針を含む。)が1回しか使えないように構成されている一方、注射器の基端部(駆動装置を含む。)が注射器の次の使用の度に新たな先端部に繋がれることにより何回も再利用可能であってもよい。その他に、注射器の基端部と先端部との両方が使い捨てであっても、再利用可能であってもよい。
【0050】
[動力パック]
以下、この明細書で開示される発明の第1側面による動力パックについて説明する。
【0051】
図1、
図2に示されている駆動装置1016は動力パックを含む。この動力パックは、駆動用ばね1017の作用で薬容器1007とプランジャーロッド1015とを先端方向へ移動させるように構成されている。
【0052】
大まかに言えば、動力パックは、ハウジング1023の中に設置されている駆動用ばね1017を含み、プランジャーロッド1015と薬容器1007とを先端方向へ移動させて注射を実行させる動力源となるように構成されている。駆動用ばね1017は、解放可能に移動を禁止する機構(移動禁止機構。詳細については後で説明する。)を通してプランジャーロッド1015に結合している。移動禁止機構は、注射の間、駆動用ばね1017をプランジャーロッド1015に嵌まっている状態に維持するように構成されている(これにより、薬容器1007および/またはプランジャーロッド1015が駆動用ばね1017の作用で先端方向へ移動する)。移動禁止機構は更に、1回分の薬が薬容器1007から投与された後は駆動用ばねの作用からプランジャーロッド1015を解放するように構成されている。
【0053】
以下、動力パックについて、
図1に示されている注射器1001を例に説明するが、この明細書で説明される動力パックが、駆動用ばね1017からプランジャーロッド1015が分離されることが望ましいどのような注射器にも使用可能であることは、理解されるだろう。
【0054】
図1は保管状態の注射器における駆動用ばね1017を示す。
図1に示されているように、注射器の使用前は駆動用ばね1017が圧縮され、注射器1001の駆動用の弾性位置エネルギーを蓄えている状態(蓄積状態)にある。注射器1001が起動するまで駆動用ばね1017が蓄積状態に保たれてもよい。注射器1001が起動すると駆動用ばね1017が伸長状態へ移行でき、その過程で注射器1001のプランジャーロッド1015を移動させる。
【0055】
注射器1001の中で駆動用ばね1017が伸びることにより伝えられる動力は、一般に、ばね1017の伸びに逆比例する。プランジャーロッド1015の軌道の全長にわたって駆動用ばね1017に動力を確実に伝えさせるには、駆動用ばね1017がまだ幾分か圧縮されている状態で、プランジャーロッド1015に移動を終えさせればよい。それ故、注射中、薬容器1007および/またはプランジャーロッド1015が駆動用ばね1017の作用から解放されるまで、駆動用ばね1017が薬容器1007をハウジング1023の中で先端の位置に留める。これは多くの場合、望ましくないかもしれない。注射の完了後に薬容器1007をハウジング1023の中で後退させることを困難にするかもしれないからである。
【0056】
以下のより詳細な説明を読めば理解されるように、この明細書で開示される発明による動力パックは、注射の間、駆動用ばね1017に動力をプランジャーロッド1015に確実に伝えさせて1回分の薬を投与させ、その後に続けて、駆動用ばね1017をその軌道の終端でプランジャーロッド1015から外すことができる。これにより、注射が完了すると、プランジャーロッド1015(および薬容器1007)が注射器1001の先端には留まらない。
【0057】
以下、動力パックの実施形態について、
図3A-
図13を参照しながら、より詳細に説明する。
【0058】
図3A-
図11Bには、この明細書で開示される発明による動力パック1030を備えている注射器1001の第1実施形態が示されている。
図3Aは、注射器1001の長軸に沿った断面図である。
図3Bは注射器1001の別の断面図である。これは、
図3Aの示す位置から注射器1001の長軸Lのまわりに45°回転したものである。
図3Aと
図3Bとは注射器1001の注射前における保管状態を示す。
図4-
図8は、
図3A、
図3Bの注射器1001の次のような状態を示す。動力パック1030がプランジャーロッド1015と薬容器1007とをハウジング1023内で先端方向へ前進させ、プランジャーロッド1015を駆動用ばね1017の作用から解放して、薬容器1007をハウジング1023に対して後退可能にする。
【0059】
まず
図3Aを参照すると、動力パック1030が駆動用ばね1017と移動禁止機構1036とを備えている。移動禁止機構1036は、駆動用ばね1017をプランジャーロッド1015に嵌めるように構成されている。動力パック1030は基端側ハウジング1032の中に配置されている。基端側ハウジング1032は注射器1001のハンドル1003の中に移動可能に取り付けられている。ハンドル1003はまた起動具1034も収容している。それらの更なる詳細について、
図3B、
図12、
図13を参照しながら説明する。
【0060】
駆動用ばね1017として螺旋状のコイルばねが採用されている。このコイルばねはプランジャーロッド1015と移動禁止機構1036とに対して同軸に配置されている。移動禁止機構1036はラッチ機構1038と格納筒1044とを備えている。ラッチ機構1038はラッチ1040と張出部1042とを含む。
【0061】
図3Aに示されているように、プランジャーロッド1015は、複数の異なる部品から成る複合部材であってもよい。その他に、プランジャーロッド1015が一体成形品であってもよい。
図3Aに示されているように、プランジャーロッド1015の本体の基端側の部分が中空であってもよい。しかし、これは、プランジャーロッド1015が実質的に中実材であることを妨げるものではない。
【0062】
ラッチ機構1038は、プランジャーロッド1015を駆動用ばね1017に嵌めるように構成されていると共に、注射器1001が使用準備を終えるまで駆動用ばね1017を蓄積状態に維持するようにも構成されている。ラッチ機構1038は少なくとも一部が駆動用ばね1017の内部の空洞に収められている。ラッチ機構1038が駆動用ばね1017の内部に位置するので、駆動用ばね1017が移動禁止機構1036の内側に配置される場合よりも、駆動用ばね1017の直径を大きくすることができる。使用される駆動用ばね1017が大きいほど、プランジャーロッド1015に強い動力を伝えることができるので、注射の全体にわたって、すなわち駆動用ばね1017が伸び終えるまで、プランジャーロッド1015に強い動力を伝えることができる。
【0063】
図3Aに示されているように、ラッチ機構1038が含むラッチ1040は張出部1042に固定されている。したがって、ラッチ1040と張出部1042とは駆動用ばね1017の作用により、一緒に移動可能である。ラッチ機構1038は(ラッチと張出部との両方を含む)一体成形品として形成されても、別部品であるラッチ1040と張出部1042とを互いに嵌め合わせることにより形成されてもよい。
【0064】
ラッチ1040は嵌合部1046を備えている。嵌合部1046は、ラッチ1040をプランジャーロッド1015に嵌めるように構成されている。嵌合部1046は1本のアーム(または複数本のアーム)の形をしている。このアームはラッチ面を備えている(
図10A、
図10Bに示されている)。ラッチ面は、プランジャーロッド1015のラッチ面1050に引っ掛かるように構成されている。嵌合部1046のアームは
図10Aに明確に示されており、参照番号1052が付されている。
【0065】
嵌合部1046のアーム1052は、(
図3Aに示されているように)プランジャーロッド1015のラッチ面1050に引っ掛かる位置から外周方向へ、ラッチ面1050にはもはや引っ掛からない位置まで屈曲可能である。ただし、
図3Bに示されているようにラッチ機構1038が移動禁止位置にあるときには、嵌合部1046が外側に曲がることを格納筒1044が妨げている。これについては後で更に説明する。
【0066】
図3A、
図3Bに示されているように、格納筒1044は嵌合部1046と張出部1042との間に収容されている。格納筒1044はほぼ筒状の本体を含む。その本体の少なくとも一部がロック用スリーブ1054を形成している。ロック用スリーブ1054は、ラッチ機構1038が
図3Aと
図3Bとに示されている位置にある場合、嵌合部1046のアーム1052を囲むように構成されている。これにより、アーム1052が外周方向へ曲がることが妨げられる(または、その曲がりが制限される)ので、嵌合部1046がプランジャーロッド1015に嵌まっている状態に保たれる。ラッチ機構1038のこの位置(すなわち、嵌合部1046のアームがプランジャーロッド1015からは外れない位置)が移動禁止位置である。この引っ掛かりにより、ラッチ機構1038は駆動用ばね1017をプランジャーロッド1015に解放可能に結合させ、駆動用ばね1017からの動力をプランジャーロッド1015に伝えることができる。
【0067】
格納筒1044はまた1以上の凹部1064も備えている。これらの凹部1064が貫通穴であっても有底の凹部であってもよく、それらが成す空間に嵌合部1046のアーム1052が曲がって入り込むことにより、プランジャーロッド1015から外れることができる。ラッチ1040は格納筒1044に摺動可能に取り付けられている。格納筒1044が所定の位置に到達すると、ロック用スリーブ1054と嵌合部1046のアーム1052とが相対的に移動可能である。この位置では、格納筒1044の1以上の凹部1064が嵌合部1046のアーム1052の自由端に割り当てられ、アーム1052が外側へ屈曲可能である。ラッチ機構1038のこの位置が移動許可位置である。
【0068】
注射の過程における移動禁止機構1036の動作については、後で
図4-
図8を参照しながら更に詳細に説明する。
【0069】
図3Bに移ると、ラッチ機構1038はまた、注射器1001が起動するまでは起動具1034に引っ掛かって駆動用ばね1017を蓄積状態に留めていてもよい。ラッチ機構1038のラッチ1040は引っ掛かり要素1056を少なくとも1つ含む。引っ掛かり要素1056は、ハンドル1003の中に解放可能に固定されることにより、駆動用ばね1017を蓄積状態に留める。
【0070】
引っ掛かり要素1056が、自由端を基端方向へ伸ばしている複数本のアーム1058を備えていてもよい。アーム1058が、起動具1034のラッチ面に引っ掛かるように構成されているラッチ面を含んでもよい。アーム1058が基端側ハウジング1032により、起動具1034のラッチ面に引っ掛かる位置に保たれてもよい。
【0071】
駆動用ばね1017の先端がラッチ機構1038の張出部1042の先端側フランジ1072を圧迫すると、基端側ハウジング1032の基端にラッチ機構1038が固定される。これにより、駆動用ばね1017の先端が早過ぎるタイミングで伸びることが防止される。
【0072】
図3A、
図3Bからも見られるように、駆動用ばね1017の基端が基端側ハウジング1032の隣接面1073を圧迫する。こうして、蓄積状態の駆動用ばね1017は張出部1042の先端側フランジ1072と基端側ハウジング1032の基端側の隣接面1073との間で圧縮されている。
【0073】
基端側ハウジング1032が、起動具1034に対して非起動位置と起動位置との間で移動するように構成されていてもよい。引っ掛かり要素1056のアーム1058は、基端側ハウジング1032と起動具1034との相対運動により、基端側ハウジング1032と起動具1034との間に拘束されている状態から解放されるように構成されていてもよい。これにより、駆動用ばね1017が先端方向へ伸びてラッチ機構1038を先端方向へ移動させる。注射器1001が、基端側ハウジング1032と起動具1034との間に設置されているばね1075を含んでいてもよい。ばね1075は、基端側ハウジング1032に対して力を先端方向へ(すなわち非起動位置へ向かって)加えるように構成されている。注射の初期では(後述のように)注射器1001に対して加えられるユーザーの力がばね1075の力に打ち勝ち、基端側ハウジング1032を起動具1034に対して基端側へ移動させて、アーム1058を基端側ハウジング1032と起動具1034との間の引っ掛かりから解放させねばならない。引っ掛かり要素1056と起動具1034との間の相互作用については後で、
図10A-
図10Cを参照しながらより詳細に説明する。
【0074】
ラッチ機構1038が様々に異なる方法で構成されていてもよいことは理解されるだろう。たとえば、ラッチ1040の嵌合部1046が、ラッチ機構1038をプランジャーロッド1015に結合させるように構成されているアーム1052を1本だけ備えていてもよいし、示されているように複数本備えていてもよい。複数本のアーム1052が、注射器1001の直径を挟んで向かい合う対を成すように配置されていても、注射器1001の長軸Lのまわりで周方向に間隔を空けて配置されていてもよい。
【0075】
同様に、ラッチ1040の引っ掛かり要素1056が、起動具1034を引っ掛けるように構成されているアーム1058を1本だけ備えていても、示されているように複数本備えていてもよい。複数本のアーム1058が、注射器1001の直径を挟んで向かい合う対を成すように配置されていても、注射器1001の長軸Lのまわりで周方向に間隔を空けて配置されていてもよい。ラッチ機構1038が、金属材、または弾性変形可能なポリマー等、弾性変形可能な材料で形成されていてもよい。
【0076】
注射の進行中におけるラッチ機構1038の動作について、より詳細に説明する。
【0077】
まず、
図4に示されている注射器1001のように、
図3A、
図3Bに示されている注射器1001から(
図1に示されている)カバー1006が取り外される。注射器1001は、
図4が示す注射前の状態で注射部位に置かれ、安全シールド1019が注射部位に押し付けられる。
【0078】
図5に示されているように、安全シールド1019を注射部位に押し付ける動作によりハウジング1023と駆動装置1016(動力パック1030と基端側ハウジング1032とを含む。)とがハンドル1003の中をハンドル1003に対して基端側へ移動する(ばね1075を縮める)。ハウジング1023がハンドル1003に対して基端側へ移動することは、ハンドル1003がハウジング1023に対して先端側へ移動することに等しいことは理解されるだろう。言い換えると、起動具1034がハンドル1003に対して固定されているので、基端側ハウジング1032がハンドル1003に対して後退すると、起動具1034が基端側ハウジング1032に対して先端側へ、非起動位置から起動位置へ移動する。これにより、引っ掛かり要素1056が、基端側ハウジング1032と起動具1034との間に拘束されている状態から解放される。
【0079】
説明されている実施形態における基端側ハウジング1032の後退は、ユーザーが注射器1001を注射部位に押し付けることによって生じる。この動作により、ハウジング1023がハンドル1003に対して基端側へ移動する。ハウジング1023の後退は更に中間ハウジング1084を通して基端側ハウジング1032をも連動させる。しかし、他の構成が可能であることは当業者には理解されるだろう。たとえば、基端側ハウジングと中間ハウジングとが一体成形品として形成されていてもよい。その他に、基端側ハウジングおよび/または中間ハウジングのそれぞれが複数の部品から形成されていてもよい。
【0080】
図6に示されているように、注射器1001が起動すると、駆動用ばね1017が伸びてプランジャーロッド1015を先端方向へ移動させる。プランジャーロッド1015が先端方向へ移動すると、薬容器1007が先端方向へ移動して針1009を注射部位に突き刺す。薬容器1007が先端方向へ移動し切った後もプランジャーロッド1015が前進を続ける(薬容器1007に対して先端側へ移動する)ので、薬容器1007から針1009を通して1回分の薬が排出される。
【0081】
図4-
図6から理解できるように、注射のこの段階では、格納筒1044がラッチ機構1038と一緒に移動するので、ロック用スリーブ1054が嵌合部1046のアーム1052を、ラッチ面1050がプランジャーロッド1015に引っ掛かっている位置に保つ。
【0082】
格納筒1044は、先端方向へ移動できるだけ移動し終えると、ハウジング1023に設けられている隣接面1062に接触して止まる(
図7参照)。示されている実施形態では、隣接面1062が中間ハウジング1084に設けられている。中間ハウジング1084は、基端側ハウジング1032に嵌まるように構成されている。しかし、隣接面1062が、ハウジング1023またはハンドル1003等、別の構成要素に設けられていてもよいことは、当業者には理解されるだろう。
【0083】
格納筒1044が隣接面1062に到達した後もラッチ機構1038は(
図7に示されているように)格納筒1044に対して先端側へ前進し続ける。この前進により、嵌合部1046のアーム1052がロック用スリーブ1054との接触状態から逃れ、格納筒1044の凹部1064、すなわち穴に嵌まる。この位置ではロック用スリーブ1054がもはや嵌合部1046のアーム1052を、プランジャーロッド1015のラッチ面に引っ掛かっている状態には保たないので、アーム1052が外側へ曲がってプランジャーロッド1015を解放する。その結果、移動禁止機構1036(
図3Aに示されており、格納筒1044とラッチ機構1038とから成る。)が移動禁止位置から移動許可位置へ移動し、プランジャーロッド1015をラッチ機構1038から分離して駆動用ばね1017の作用から逃れさせる。
【0084】
図7に示されているように、プランジャーロッド1015と嵌合部1046のアーム1052とのいずれのラッチ面も傾斜しているので、プランジャーロッド1015を押し付けるラッチ1040の(先端方向の)力がアーム1052を外側へ押す。この力に伴うアーム1052の曲がりを妨げるのは、格納筒1044のロック用スリーブ1054しかない。それ故、アーム1052が凹部1064に嵌まった後は、駆動用ばね1017の力がアーム1052をプランジャーロッド1015から外すので、プランジャーロッド1015が駆動用ばね1017の作用から解放される。
【0085】
最後に、
図8に示されているように、プランジャーロッド1015が駆動用ばね1017の作用から解放されている状態では薬容器1007が、たとえば復帰用ばね1021の作用により、使用後の注射器1001の中に引っ込んでもよい。薬容器1007をハウジング1023の中へ引っ込ませることが可能な機構については、
図47a-
図47Fを参照しながら更に詳細に説明する。
【0086】
この明細書で開示される発明による動力パックは、上記の方法により、駆動用ばねが移動禁止機構を通して動力をプランジャーロッドに伝えることを可能にする。移動禁止機構は、駆動用ばねとプランジャーロッドとの間の物理的な接続を解放可能にするように構成されている。最初の移動禁止状態では駆動用ばねが伸びることにより、その力でプランジャーロッドを移動させる。次の移動許可状態では移動禁止機構が駆動用ばねの力をプランジャーロッドから逃すので、その後はプランジャーロッドが駆動用ばねの動力によっては固定されることなく、自由に移動可能である。
【0087】
図9に移ると、
図3A-
図8を参照しながら説明された動力パック1030の部品が、分解組立図によってより詳細に示されている。
図9に示されているように、基端側ハウジング1032は、駆動用ばね1017、(ラッチ1040と張出部1042とを含む)ラッチ機構1038、格納筒1044、およびプランジャーロッド1015と同軸に組み合わせ可能である。駆動用ばね1017のサイズは基端側ハウジング1032の内径以下に設計されている。張出部1042のサイズはコイル状の駆動用ばね1017の内径以下に設計されている。ラッチ1040は、格納筒1044がラッチ1040と張出部1042との間に置かれている状態で張出部1042の中に合う(嵌まる)ように、そのサイズが設計されている。最後に、プランジャーロッド1015のサイズはラッチ1040の内径以下に設計されている。
【0088】
基端側ハウジング1032は起動具1034に対して移動可能に取り付けられている。ばね1075は、基端側ハウジング1032に対して力を先端方向へ(非起動位置へ向かって)加えるように構成されている。言い換えると、ばね1075は基端側ハウジング1032と起動具1034との間に位置するので、基端側ハウジング1032と起動具1034とに対して互いに離れるように力を加える。
【0089】
格納筒1044はラッチ機構1038に、ラッチ1040と張出部1042との間で摺動するように嵌められる。しかし、ラッチ1040と張出部1042とが格納筒1044に径方向に押し付けられて引っ掛かるので、ラッチ機構1038が格納筒1044に対してハウジング1023の長軸の方向へ摺動することをラッチ機構1038と格納筒1044との間の摩擦が妨げる。このように格納筒1044とラッチ機構1038との間には締まり嵌めが実現しているので、注射器1001の保管中、または、その使用時の初期段階において基端側ハウジング1032が先端方向へ移動する際、ラッチ機構1038と格納筒1044とが互いに対してハウジング1023の長軸の方向へ摺動することを抑えるのに十分な摩擦が得られる。ただし、この摩擦は、格納筒1044が隣接面(
図7では参照番号1062で示されている。)に接触すると、ラッチ機構1038を格納筒1044に対して摺動させる程度には弱い。
【0090】
この分解組立図(
図9)では、ラッチ1040の嵌合部1046を形成するアームがはっきりと見える。ラッチ1040の引っ掛かり要素1056を形成するアームもはっきりと見える。
図10Aでは、それらのアームをはっきりと区別させる目的で、嵌合部1046のアームに参照番号1052が付され、引っ掛かり要素1056のアームに参照番号1058が付されている。
図9ではまた、これらのアームの自由端のラッチ面も見えるし、それらに対応付けられているプランジャーロッド1015のラッチ面も見える。ただし、それらのラッチ面をはっきりとさせる目的でラッチ面の参照番号は
図10Aに付す。
図10Aの方がアームのラッチ面をよりはっきりと示しているからである。示されている実施形態では、プランジャーロッド1015のラッチ面が、プランジャーロッド1015のまわりを周方向へ伸びている円環状のリブ1060として形成されている。ただし、周方向に連続しているリブ1060が複数の離散的なラッチ面に置き換えられてもよいことは、当業者には理解されるだろう。
【0091】
駆動用ばねによってプランジャーに加えられる力は、プランジャーが軌道の終点に到達すると除去されるが、その力が制動機構を使ってより精密に制御されてもよい。制動機構は
図15-
図29に示されている。制動機構については後で、それらの図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0092】
図10A、
図10Bに移ると、ラッチの構成が2例、示されている。
図10Aは、
図9に示されているラッチの一例1040を示す。ラッチ1040は、引っ掛かり要素1056を成す4本のアーム1058と、嵌合部1046を成す4本のアーム1052とを備えている。
【0093】
引っ掛かり要素1056を成すアーム1058は、ラッチ1040の本体1066から基端方向へそれぞれの自由端を伸ばしている。各アーム1058の自由端、またはそこへ向かう途中にロック用フック1068が設けられている。ロック用フック1068はラッチ1040のうち、基端側ハウジング1032と起動具1034との間に拘束される部分である。これらによるロック用フック1068の拘束については、
図11A、
図11Bを参照する際により詳細に説明する。
【0094】
嵌合部1046を成すアーム1052はラッチ1040の本体1066から先端方向へそれぞれの自由端を伸ばしている。各アーム1052の自由端、またはそこへ向かう途中に肩部1070が形成されており、そこにはラッチ面1051が配置されている。
【0095】
図10Aに示されている例では、引っ掛かり要素1056が4本のアーム1058を含み、嵌合部1046が4本のアーム1052を含む。これらのアーム1058、1052は本体1066のまわりに間隔を空けて交互に配置され、引っ掛かり要素1056のアーム1058が嵌合部1046のアーム1052から周方向に45°ずつずれている。
【0096】
アーム1052、1058は、注射が行われる間に曲がって、それぞれのラッチ面を外すことができるように構成されている。特にアーム1052、1058が弾性変形可能な材料から形成されていてもよい。
【0097】
図10Bは、
図10Aに示されているラッチ1040の変形例を示す。
図10Bのラッチ1040’は引っ掛かり要素1056の2本のアーム1058’と嵌合部1046の2本のアーム1052’とを含む。引っ掛かり要素1056のアーム1058’は間にラッチ1040の直径を挟んで向かい合っている。嵌合部1046のアーム1052’は間にラッチ1040の直径を挟んで向かい合っている。アーム1058’、1052’は周方向において互い違いに位置をずらしている。アーム1058’、1052’はどのような本数の組み合わせであってもよく、図面に示されている特定の例には限られない。たとえば、アーム1058’、1052’が6本ずつ設けられていてもよく、引っ掛かり要素のアームが2本設けられている一方、嵌合部のアームが4本設けられていてもよい
【0098】
図10Cはラッチ1040の張出部1042を単体で示す。張出部1042は先端側フランジ1072を備えている。先端側フランジ1072は外周方向へ広がっており、その表面が駆動用ばね1017に嵌まって接触することにより、駆動用ばね1017の力をラッチ機構1038に伝える。張出部1042はスリーブ1074を備えている。スリーブ1074は先端側フランジ1072から基端方向へ、城壁風フランジ1076まで伸びている。城壁風フランジ1076は、スリーブ1074から内周方向へ広がっている壁1078を少なくとも1枚含む。ラッチ1040が張出部1042に嵌め込まれるときには、ラッチ1040の引っ掛かり要素1056のアーム1058が壁1078の間を通過するので、壁1078がラッチ1040の本体1066を圧迫する。これにより、駆動用ばね1017の力がラッチ104に伝わり、さらに、嵌合部1046のアーム1052を通してプランジャーロッド1015のリブ1060に伝わる。
【0099】
図10Cに示されている実施形態では、城壁風フランジ1076が壁1078を4枚備えており、それらの間に空間が4箇所設けられている。それらの空間を引っ掛かり要素1056の4本のアーム1058が通過できる。壁1078の枚数(および、それらの間の空間の数)は、ラッチ1040に設けられている引っ掛かり要素1056のアーム1058の本数に合わせて調節可能であることは理解されるだろう。アームの本数が必ずしも空間の数と等しくなくてもよく、アームよりも空間が多くてもよいことも、当業者には理解されるだろう。
【0100】
図11A、
図11Bに移り、ラッチ1040を解放する起動具1034の動作についてより詳細に説明する。
【0101】
図11Aは駆動装置1016の基端の断面図である。注射器1001が保管状態にあるとき、ラッチ1040の嵌合部1046が非起動位置の基端側ハウジング1032と起動具1034との間に拘束されている。
【0102】
図11Aに見られるように、引っ掛かり要素1056のアーム1058が基端側ハウジング1032の基端の穴を通して伸びている。アーム1058のロック用フック1068が外周方向へ動くのを保持キャップ1080が妨げている。保持キャップ1080は基端側ハウジング1032の基端に被されている。ただし、基端側ハウジング1032の本体自体がアーム1058の外側への曲がりを防ぐサイズであってもよいことは理解されるだろう。
【0103】
起動具1034が
図11Aに示されている非起動位置にあるとき、アーム1058の内側への曲がりを起動具1034の蓋面1082が妨げている。アーム1058が基端側ハウジング1032に対してその長軸の方向へ摺動するのは、ロック用フック1068の形が防いでいる。こうして、起動具1034が
図11Aに示されている非起動位置にあるとき、アーム1058が基端側ハウジング1032と起動具1034との間に拘束されるので、ラッチ機構1038の前進が妨げられ、駆動用ばね1017が圧縮状態に保たれる。
【0104】
基端側ハウジング1032はばね1075(
図11A、
図11Bには模式的に示されている。)により、起動具1034に対して先端側の位置(非起動位置)に維持される。注射器1001を起動させる目的でユーザーが注射器1001を注射部位に押し付けると、ハウジング1023がハンドル1003に対して基端側へ移動する。これに続いて、基端側ハウジング1032がハンドル1003の中を基端方向へ移動し、ばね1075を縮める。
【0105】
図11Bは、起動位置にある基端側ハウジング1032を示す。(注射器1001が注射部位に押し付けられることにより、起動位置では基端側ハウジング1032が起動具1034に対して基端側へ移動している。)この位置では起動具1034の蓋面1082が基端側ハウジング1032(ばね1075を縮めている。)に対して先端側へ移動しており、アーム1058のロック用フック1068が起動具1034の穴1083、すなわち凹部に面している。この位置に起動具1034があるときはアーム1058が内側(凹部の中)へ自由に曲がれるので、ロック用フック1068が保持キャップ1080(すなわち基端側ハウジング1032)から外れ、ラッチ機構1038を駆動用ばね1017の作用で前進可能にする。
【0106】
移動禁止機構は上記のとおりに解放可能であり、プランジャーロッド1015を駆動用ばね1017の作用から解放するように構成されている。この移動禁止機構が異なる形であってもよいことは理解されるだろう。
図12に示されている別の実施形態は、注射器2001の注射前の状態を示す。注射器2001は、上記の構成と同様に、ハンドル2003、ハウジング2023、および安全シールド2019を備えている。注射器2001はまた駆動装置2016も備えている。駆動装置2016は、基端側ハウジング2032の中に配置されている動力パックを含む。動力パックは駆動用ばね2017を含み、駆動用ばね2017は移動禁止機構2036により、プランジャーロッド2015に解放可能に結合するように構成されている。
【0107】
図12に示されている移動禁止機構2036は格納筒2044とラッチ機構2038とを備えている。ラッチ機構2038は、プランジャーロッド2015と駆動用ばね2017とを解放可能に結合させるように構成されている。
【0108】
上記の実施形態と同様に、ラッチ機構2038はラッチ2040と張出部2042とを含む。ラッチ2040は、プランジャーロッド2015のラッチ面に引っ掛かるように構成されている。張出部2042は、駆動用ばね2017に圧迫されるフランジを含む。
【0109】
図12に示されているラッチ機構の構成は、
図3A-
図11Bを参照しながら説明された構成とは異なるが、動作の仕方は後述のように同様である。
【0110】
ラッチ機構2038は嵌合部2046を含む。嵌合部2046は、屈曲可能なアームによりプランジャーロッド2015に解放可能に嵌まるように構成されている。アームは、プランジャーロッド2015のラッチ面に引っ掛かるように構成されている。ラッチ機構2038は引っ掛かり要素2056も含む。引っ掛かり要素2056は、起動具との相互作用により、駆動用ばね2017を蓄積状態に保ったまま、ラッチ機構2038を注射器2001の基端に解放可能に保持するように構成されている。
【0111】
移動禁止機構2036は格納筒2044も備えている。格納筒2044は、嵌合部2046のアームが外側へ曲がるのを妨げることにより、アームをプランジャーロッド2015のラッチ面に保持する。
図12に示されている格納筒2044は、凹部(その中に嵌合部のアームが曲がり込むことができる。)を含む円筒状の本体を備えている格納筒とは異なり、ロック用スリーブ2054を備えている。ロック用スリーブ2054は第1内径の部分であり、嵌合部2046のアームをプランジャーロッド2015に引っ掛かっている状態に保つ。ロック用スリーブ2054よりも先端側では格納筒2044の内径が(ロック用スリーブ2054に対して)広がっており、嵌合部2046のアームが外周方向へ曲がるための空間が形成されている。格納筒2044はまた、ロック用スリーブ2054に対して先端側に圧迫面2092も備えている。圧迫面2092は、格納筒2044がラッチ機構2038に対して基端側へ移動させられると、嵌合部2046のアームが移動してプランジャーロッド2015から外れるように作用する。
【0112】
以下で説明されるように、注射器2001は注射器1001と同様に動作する。
【0113】
注射の開始時、注射器2001が注射部位に置かれ、安全シールド2019が皮膚に押し付けられる。安全シールド2019を注射部位に押し付ける動作がハウジング2023と駆動装置2016とをハンドル2003の中で後退させ、起動具(図示せず。)を駆動装置2016とハンドル2003との間で圧縮することにより注射器2001を起動させる。すなわち、起動具が駆動用ばね2017を蓄積状態から解放することにより、注射器2001を起動させる。注射器2001が起動すると、駆動用ばね2017が伸びてプランジャーロッド2015を先端方向へ移動させる。
【0114】
注射器2001は移動禁止機構2036を含み、移動禁止機構2036はラッチ機構2038と格納筒2044とを含む。
図12に示されている移動禁止機構2036は、
図3Aを参照しながら説明された移動禁止機構1036と同様に動作する。
【0115】
注射の第1段階(移動禁止機構が「移動禁止」状態にあるとき)では、内径が比較的狭いロック用スリーブ2054がラッチ2040の嵌合部2046を、プランジャーロッド2015に引っ掛かっている状態に保つ。しかし、
図12に示されている注射器2001の格納筒2044は、(
図3-
図10を参照しながら説明された上記の実施形態のように)嵌合部2046のアームが曲がり込むための凹部を含む、全体的に円筒状の本体を備えているものとは異なり、圧迫面2092を含む。圧迫面2092は、格納筒2044のうち、ロック用スリーブ2054よりも直径の大きい部分の内側へ向けて嵌合部2046のアームを曲げることにより、嵌合部2046に対して外周方向へ力を加え、嵌合部2046をプランジャーロッド2015から積極的に外すように構成されている。圧迫面2092が複数本のアームとして、または円錐状の斜面として構成されていてもよい。格納筒2044がハウジングの隣接面2062に到達すると(ラッチ機構2038が前進を続けるので)ラッチ機構2038に対して摺動し、嵌合部2046をプランジャーロッド2015から押し退ける。嵌合部2046は、最初はプランジャーロッド2015に引っ掛かっている状態に保たれ、その後、プランジャーロッド2015から積極的に外されるので、プランジャーロッド2015から外れるまでは、プランジャーロッド2015にロックされ、またはしっかりと引っ掛かっているように構成されていてもよい。こうして、ラッチ機構2038をプランジャーロッド2015に確実に引っ掛け、プランジャーロッド2015から確実に外すことができる。
【0116】
したがって、この明細書で開示される発明の1つの側面では格納筒が圧迫面を備えており、その圧迫面が、嵌合部のアームを外周方向へ押してプランジャーロッドから外すように構成されている。発明の別の側面では、圧迫面が複数本のアームまたは円錐状の斜面を備えていてもよい。また、これらの特徴が上記のロック用スリーブと組み合わせられてもよいことも理解されるだろう。
【0117】
図13は別の注射器3001を示す。注射器3001は、基端に配置されているハンドル3003、ハウジング3023、および先端に配置されているカバー3006を含む。ハンドル3003は駆動装置3016を収容しており、駆動装置3016は駆動用ばね3017と前進用ばね3099とを含む。駆動用ばね3017は、薬容器3007から薬を排出するための動力を与える。しかし、薬容器3007を先端方向へ移動させる動力、すなわち針を皮膚に突き刺す動力は与えず、これらの動力は別の前進用ばね3099が与える。注射器3001が起動すると、駆動用ばね3017は圧縮状態に残される一方、前進用ばね3099は圧縮状態から解放される。
【0118】
注射器3001は、安全シールド3019が注射部位、すなわち皮膚に押し付けられることにより起動可能である。安全シールド3019を注射部位に押し付ける動作によりハウジング3023と駆動装置3016とがハンドル3003の中で後退し、前進用ばね3099を圧縮状態から解放することにより、注射器3001を起動させる。
【0119】
注射器3001が起動すると、前進用ばね3099が伸びてプランジャーロッド3015を先端方向へ移動させる。前進用ばね3099の作用により、プランジャーロッド3015が駆動用ばね3017と一緒に先端方向へ移動する。駆動用ばね3017は(一定の間隔に配置されている)先端側隣接面3097と基端側隣接面3095との間で、
図13に示されている圧縮状態に維持されている。前進用ばね3099が所定距離(薬容器3007を完全に前進させるのには十分であるが、薬の排出には不十分である。)を移動すると、先端側隣接面3097が基端側隣接面3095に対して一定の位置からは解放されるので、駆動用ばね3017がもはや圧縮状態には拘束されない。先端側隣接面3097が基端側隣接面3095から解放されると、駆動用ばね3017が先端側隣接面3097を圧迫して先端方向へ移動させ、続いてプランジャーロッド3015を先端方向へ移動させる。こうして、前進用ばね3099が薬容器3007を注射位置まで前進させた後に駆動用ばね3017が伸長可能になるので、プランジャーロッド3015に対し、移動禁止機構3036の中を移動する動力が与えられる。駆動用ばね3017は、伸び切ると、またはその前に、解放可能な移動禁止機構3036によりプランジャーロッド3015から切り離される。移動禁止機構3036は、上記のもの1036、2036と同様なものであっても、他のものであってもよい。
【0120】
プランジャーロッド3015が先端方向へ軌道の終点まで移動すると(すなわち、薬が全部投与されると)、移動禁止機構3036がプランジャーロッド3015を駆動用ばね3017の動力から解放することができる。
【0121】
駆動用ばね3017が伸長可能になるまでに前進用ばね3099が伸びる距離は、薬容器3007と針とを、保管されている位置から完全に使用可能な位置まで移動させるのに必要な距離として決められてもよい。ある場合ではその距離が、先端方向へ10mmから20mmまでの間、たとえば18mmであってもよい。
【0122】
前進用ばね3099と駆動用ばね3017とが別々に設けられることにより、針の前進に必要な動力が弱められる。しかし、目的がそれに限られるわけではない。たとえば、針を先端方向へ移動させて注射部位に突き刺すことと、投薬することとの両方に強力な駆動用ばねを使うことは、状況によってはユーザーを不快にするかもしれない。駆動用ばね3017よりも力の弱い前進用ばね3099が利用される結果、注射器に針を緩やかに前進させる一方で、投薬を素早く行わせることもできる。
【0123】
したがって、発明の1つの側面では注射器が次のものを備えている。長軸があるハウジング。ハウジングの中に設置されている駆動用ばね。駆動用ばねには先端があり、ハウジングの長軸に沿って先端の反対側には基端があり、内部には空洞が形成されている。少なくとも一部が薬容器の中に設置されているプランジャー。プランジャーに取り付けられているプランジャーロッド。前進用ばね。それには先端があり、ハウジングの長軸に沿って先端の反対側には基端がある。駆動用ばねと前進用ばねとをいずれも圧縮状態に保つように構成されている起動機構。起動機構は次のようにも構成されている。注射器の起動後、まず前進用ばねを圧縮状態から解放して前進用ばねに薬容器を先端の位置まで移動させ、その後、駆動用ばねを圧縮状態から解放して駆動用ばねにプランジャーを薬容器の中で移動させて薬を注射筒から排出させる。
【0124】
発明の別の側面では注射器が移動禁止機構を備えている。移動禁止機構は次のものを含む。少なくとも一部が駆動用ばねの内部の空洞に収容されているラッチ機構。ラッチ機構は、プランジャーロッドに解放可能に嵌まるように構成されている嵌合部を少なくとも1つ含み、駆動用ばねの作用により注射器の先端方向へ移動するように構成されている。
○ ラッチ機構に嵌まっている格納筒。
○ ラッチ機構は、格納筒に対して移動禁止位置から移動許可位置へ移動するように構成されている。
- 移動禁止位置では、格納筒がラッチ機構の嵌合部を、プランジャーに嵌まっている状態に保つことにより、駆動用ばねの伸びがラッチ機構と格納筒とを移動させて注射筒から薬を排出させる。
- 移動許可位置では、格納筒が嵌合部を、プランジャーに嵌まっている状態には保たない。
【0125】
発明の別の側面では、前進用ばねの少なくとも一部が駆動用ばねの内部の空洞に収められている。発明の更に別の側面では、前進用ばねが圧縮状態であるとき、その全体が駆動用ばねの内部の空洞に収められている。
【0126】
発明の別の側面では起動機構が次のように構成されている。前進用ばねが先端方向へ所定距離伸びた後に駆動用ばねを解放する。必要であれば、その所定距離が10mmから20mmまでの間、たとえば18mmである。
【0127】
図14は、動力パックを備えている注射器の組み立て方法を示す。その方法について、以下説明する。
【0128】
ステップ101では、長軸のあるハウジングが用意される。ステップ103では、ハウジングの中に駆動用ばねが設置される。駆動用ばねには先端があり、ハウジングの長軸に沿って先端の反対側には基端がある。駆動用ばねは内部に空洞を形成している。ステップ105、107では、プランジャーの少なくとも一部が薬容器の中に設置され、プランジャーにプランジャーロッドが嵌められる。ステップ109では、ラッチ機構が格納筒に嵌められて移動禁止機構を形成する。ラッチ機構は嵌合部を少なくとも1つ備えている。ステップ111では、ラッチ機構の少なくとも一部が駆動用ばねの空洞に設置され、嵌合部がプランジャーに解放可能に嵌められる。ステップ113では、格納筒が移動禁止機構の中に配置されることにより、嵌合部をプランジャーに嵌まっている状態に保つ。駆動用ばねの伸びがラッチ機構と格納筒とを先端方向へ移動させ、注射筒から薬を排出させる。格納筒は、移動禁止位置から移動許可位置へ移動するように構成されている。移動許可位置では格納筒が嵌合部を、プランジャーに嵌まっている状態には保たない。場合によってはステップ115において、駆動用ばねの先端と基端とが圧縮されて駆動用ばねが圧縮状態にされ、駆動用ばねを圧縮状態に保つようにラッチ機構が構成されてもよい。以上のステップがどのような順序でも実行可能であることは、読者には理解されるだろう。
【0129】
以上、この明細書で開示される発明の第1側面に関する注射器が説明されているが、発明の実施形態は、注射器用の動力パックに関するとも、注射器の駆動装置用の動力パックに関するとも言うことはできる。この明細書で開示される発明による動力パックが、針付きの薬容器を注射位置まで自動的に前進させて1回分の薬を自動的に排出するように構成されている注射器に組み込まれてもよい。特にその動力パックが次のような種類の自動注射器に利用されてもよい。その自動注射器は、薬容器を前進させて1回分の薬を排出し、使用後に薬容器を自動的に、ハウジングに対して後退させる。
【0130】
この明細書で説明される動力パックが、1台以上の制動機構、接続装置、および受動式安全シールドと組み合わされてもよい。以下、それぞれについて、より詳細に説明する。
【0131】
[制動機構]
この明細書で開示される発明は、注射器の駆動装置の力を弱めるように構成されている制動機構の一例も与える。その発明による制動機構について、以下、上記の駆動装置の例と組み合わせて説明する。ただし、その制動機構が上記の駆動装置と一緒に使用されねばならないわけではないことは理解されるだろう。それどころか、以下の制動機構は、上記の駆動装置とは異なってはいても、動力の少なくとも一部を弱めることが必要であり、またはそのことが有利であろう駆動装置を備えている他の注射器にも組み込み可能である。
【0132】
図1、
図2の注射器は次の制動機構を搭載可能である。この制動機構は、注射器が注射を行うべく起動されたときに、駆動用ばねの初期の動力の少なくとも一部を弱めるように構成されている。
【0133】
一般的に言えば、制動機構はダンパーを備えており、ダンパーは、駆動装置の第1部品に締まり嵌めされるように構成されている。駆動装置は、駆動用ばねから薬容器内に設置されているプランジャーへ動力を伝えることにより、駆動用ばねにユーザーへの注射を行わせるように構成されている。以下、
図15-
図28を参照しながらより詳細に説明されるように、ダンパーとそれが嵌められる駆動装置の部品(以下、「第1駆動部品」と総称する。)とは、多様に異なる形でありうる。ダンパーは、この明細書で説明される注射器の多くの例に関連付けて説明されるが、他の注射器に組み込まれてもよいことは理解されるだろう。
【0134】
図15は、
図1、
図2に示されている注射器1001の基端部の拡大断面図である。この拡大図には
図1の駆動装置1016がハンドル1003と共に示されているが、
図1に示されている注射器1001の残りの部分からは切り離されている。
【0135】
駆動装置1016(
図1参照。)は、動力パック1030、ハウジング(これまでは基端側ハウジング1032と呼ばれていたもの)、および起動具1034を備えている。これらの部品の構造と動作とについては
図3A-
図14を参照しながらより詳細に説明するが、概略を述べると、動力パック1030は駆動用ばね1017と(
図3-
図10を参照しながら説明された上記の)移動禁止機構1036とを含む。移動禁止機構1036は、駆動用ばね1017をプランジャーロッド1015に結合させるように構成されている。移動禁止機構1036は、プランジャーロッド1015と起動具1034とに嵌まるように構成されているラッチ1040と、駆動用ばね1017に嵌まるように構成されている張出部1042とを含む。張出部1042はラッチ1040に結合することにより、プランジャーロッド1015に結合する。こうして駆動用ばね1017は、ラッチ1040と張出部1042とを通してプランジャーロッド1015に動力を伝えるように構成されている。
【0136】
図15に示されているように、駆動装置1016は制動機構も含む。制動機構は、駆動用ばね1017が
図15に示されている蓄積状態から解放されるときに駆動用ばね1017の初期の力を弱めるように構成されている。
【0137】
この明細書で開示される発明による制動機構はダンパー1200を含む。ダンパー1200はハウジング1032に対して固定されており、第1駆動部品の表面に締まり嵌めされるように構成されている。第1駆動部品は、注射の間、基端側ハウジング1032に対して長軸の方向へ移動するように構成されている。以下に説明される実施形態では、第1駆動部品が中空のプランジャーロッド1015として形成されている。
【0138】
ダンパー1200は、注射器1001のハウジング1032の中にピン1202で固定可能である。この明細書での開示内容の全体にわたり、ダンパーが固定されているハウジングは、注射器1001の基端側ハウジング1032等、注射器の内側のハウジングである。その他にダンパー1200が、ハンドル1003等、注射器の外側のハウジングに固定されていてもよい。注射器のハウジングの中にダンパー1200が固定されていることにより、注射の開始時に駆動用ばね1017が解放されると、駆動部品が確実にダンパー1200に対して移動する。
【0139】
ピン1202はハウジングの長軸Lに沿って伸びており、頭部とシャフトとを含む。シャフトは基端側ハウジング1032の穴1204の中を伸びている。ピン1202の頭部は、基端側ハウジング1032の穴1204の縁を囲む肩部に接触すると、栓を成す。この栓がピン1202を、基端側ハウジング1032に対して長軸の方向へは移動しないように固定する。ピン1202はシャフトにねじを含む。このねじは、ダンパー1200の基端のねじ穴(
図16c参照。)と噛み合ってピン1202をダンパー1200に固定することにより、ダンパー1200を注射器1001のハウジングの中に固定するように構成されている。ピン1202は、ダンパー1200を適所に固定するように、plastite(登録商標)または他の適度に堅い材料から製造されていてもよい。
【0140】
以下に説明される実施形態は、ピンがダンパーを適所に固定していることを示すが、固定具がピンとは異なる形をしていてもよいことは理解されるだろう。たとえば固定具が、ダンパーの対応する部分に対する栓を成すハウジングのフランジ、ダンパーをハウジングにくっつける接着剤、および/または、ダンパーの一部とハウジングの一部との間に配置されている機械的なロック機構であってもよい。機械的なロック機構には、たとえば、回転錠、スナップ錠が含まれる。その他に、ダンパーが基端側ハウジング(またはハンドル)と一体に形成されていてもよい。この場合、固定具は不要である。
【0141】
ダンパー1200は基端側ハウジング1032の中で第1駆動部品と同軸に配置されている。ダンパー1200はまた、長軸Lを中心としてそのまわりで、ラッチ1040、張出部1042、およびピン1202とも同軸に配置されている。
【0142】
(
図15に示されているように)注射器1001が保管状態にある場合、ダンパー1200は、プランジャーロッド1015に形成されている縦穴1206の中に設置されている。プランジャーロッド1015はほぼ管状の構造であり、実質的に円筒状の囲いを備えている。この囲いの中空部が縦穴1206としてダンパー1200を収容している。縦穴1206は内壁1208により仕切られており、開口部1210を通してダンパー1200の少なくとも一部を収容するように(サイズ、形、および位置が)構成されている。
【0143】
図15にはプランジャーロッド1015の基端部しか示されていない。示されている部分の先端には接続部1212が見える。接続部1212は、プランジャーロッド1015の先端部(
図1参照。)に接続されるように構成されている。この明細書に示されているプランジャーロッド1015は複数の部品を含むが、プランジャーロッド1015が基端に中空部を含む一体成形品であってもよいことは理解されるだろう。
【0144】
図15に示されているようにダンパー1200は制動部材1214を備えている。制動部材1214は、プランジャーロッド1015がダンパー1200に対して移動する間、プランジャーロッド1015の内壁1208に締まり嵌めされているように構成されている。制動部材1214は最大外径がダンパー1200の本体の最大外径よりも広い。
【0145】
制動部材1214は弾性変形可能な材料の帯または円環として形作られており、注射の間、縦穴1206の内壁1208の少なくとも一部に接触するように構成されている。制動部材1214の最大外径は縦穴1206の最小内径よりも広い。縦穴1206の内径がその長さ方向において一定であってもよいし(この場合は常に、縦穴1206の内径が変形前の制動部材1214の外径よりも狭い。)、変化していてもよい(この場合は縦穴1206の長さ方向における一部でのみ、縦穴1206の内径が制動部材1214の外径よりも狭い。)ことは理解されるだろう。
【0146】
縦穴1206の少なくとも一部の内径が制動部材1214の外径よりも確実に狭いことにより、注射の少なくとも一部の期間では、制動部材1214の変形可能な材料が縦穴1206の内壁1208に押し潰される。この押し潰しによりダンパー1200とプランジャーロッド1015との間に締まり嵌めが形成されるので、駆動用ばね1017が作用してもプランジャーロッド1015がダンパー1200に対して基端側へは移動しにくい(ただし、移動できないわけではない)。
【0147】
ダンパー1200と第1駆動部品(ここではプランジャーロッド1015)との間の締まり嵌めにより、ダンパー1200とプランジャーロッド1015との間の摩擦力が駆動用ばね1017の力に抵抗するので、駆動用ばね1017が伸びる区間の少なくとも一部では駆動用ばね1017の力が弱められる。
【0148】
以下、ダンパー1200については
図16a-
図16cを参照しながら、プランジャーロッド1015については、
図17a、
図17bを参照しながら、より詳細に説明する。
【0149】
プランジャーロッド1015の軌道に沿ったダンパー1200とプランジャーロッド1015との間の相互作用については、
図18a-
図18e、
図19を参照しながら、より詳細に説明する。
【0150】
図16aは
図15のダンパー1200の等角図であり、
図16bはその拡大図である。
図16cは、
図15に示されている長軸Lに沿った平面によるダンパー1200の断面を示す。
【0151】
図16a、
図16bに示されているように、ダンパー1200は細長い本体1200aと変形可能な制動部材1214とを含む。制動部材1214はダンパー1200の頭部1200bを囲んでいる。この意味でダンパー1200は心棒とも言える。本体1200aは、ナイロン(登録商標)樹脂、または他の適度に堅い材料から製造可能である。制動部材1214は、シリコーン、または他のエラストマーもしくは弾性変形可能な材料から製造可能である。
【0152】
図16a、
図16bに示されているように、ダンパー1200の本体1200aは基端に位置決め部1216を含む。位置決め部1216は、ダンパー1200の基端を基端側ハウジング1032の溝の中に配置するためのものである。示されている実施形態では位置決め部1216が六角形のプリズムを備えている。このプリズムは、ダンパー1200の一端を
図15に示されている基端側ハウジング1032の六角形の座部に配置するためのものである。位置決め部1216はダンパー1200の基端よりも先端側に円環状のフランジを含む。このフランジには、基端側ハウジング1032の座部を囲む肩部に結合する面が設けられている。位置決め部1216とフランジとにより、注射器1001の組み立て中、ダンパー1200を基端側ハウジング1032の中に配置して長軸Lと揃えることがより簡単になる。
【0153】
ダンパー1200の先端、またはそこへ向かう途中に頭部1200bが位置する。頭部1200bと位置決め部1216とは、それらの間に伸びているシャフトによって接続されている。
図16bに見られるように、頭部1200bはシャフトの細長い本体1200aと位置決め部1216とのいずれよりも直径が大きい。
【0154】
ダンパー1200の頭部1200bは制動部材1214を支持する。制動部材1214をダンパー1200の先端に据え付けることにより、制動部材1214がプランジャーロッド1015の縦穴1206の内壁1208に嵌まっている状態で移動する距離を最大にできる。
【0155】
先にも述べられているとおり、制動部材1214には、ダンパー1200の頭部1200b(またはその一部)を囲む弾性変形可能な材料の帯を装着可能である。制動部材1214がダンパー1200の頭部1200bにオーバーモールドされていてもよい。
【0156】
図16bに示されている構成では頭部1200bが、その長さ方向において間隔を空けて配置されている2本の周方向の溝1218a、1218bを含む。これらの溝1218a、1218bの間には周方向のリッジ1220が形成されている。示されている溝1218a、1218bは2本であるが、頭部1200bが含む溝は、1本、3本、4本等、何本であってもよい。
【0157】
図16a、
図16b、
図16cに示されているように、制動部材1214は環状の筒を備えている。この筒の内周面は、その輪郭がダンパー1200の頭部1200bの外周面の輪郭と一致しているので、周方向の溝1218a、1218bの中と周方向のリッジ1220の上とにぴったりと嵌まる。この筒の内周面の輪郭は、制動部材1214を頭部1200bに嵌めてそのまわりに安定に据え付けるのに必要であれば補われる部分である。この構成により、制動部材1214に対して摩擦に伴うせん断力が長軸Lに対して平行な方向のいずれかに作用したときでさえも、頭部1200bが制動部材1214を適所に保持できる。
図16cでは、制動部材1214と頭部1200bとが互いに嵌まっている状態をよりはっきりと見ることができる。
図16cは、頭部1200bの溝1218a、1218bの中とリッジ1220の上とに据え付けられている制動部材1214の断面図である。制動部材1214の内周面は、その輪郭が頭部1200bの表面を成す溝1218a、1218bとリッジ1220との輪郭と一致しているので、それらに確実にぴったりと嵌まる。
【0158】
図16b、
図16cに示されているように、制動部材1214は、外周面に沿って伸びている溝1222を含む。この溝1222により、制動部材1214の外周面を周方向へ伸びている2本の帯1224a、1224bが形成されている(
図16a参照)。帯1224a、1224bの外径C1はダンパー1200の頭部1200bの外径C2よりも大きいので、帯1224a、1224bはダンパー1200の軸から最も遠くまで突出しており、ダンパー1200のうち、プランジャーロッド1015の縦穴1206の内壁1208に嵌まるように構成されている部分である。縦穴1206の内壁1208に嵌まり得るダンパー1200の部分は制動部材1214と頭部1200bとしかない。これによりプランジャーロッド1015が注射器1001の中でどこにいるときでも内壁1208の一部にしかダンパー1200が嵌まらないので、ダンパー1200とプランジャーロッド1015との間の摩擦がよりよく制御される。
【0159】
図16cはダンパー1200の断面図である。
図16cに示されているように、ダンパー1200には穴1226がある。穴1226について、以下、より詳細に説明する。穴1226は、ハウジングの中にダンパー1200を固定しているピン1202(
図15に示されている。)を収容するように構成されている。ダンパー1200はソケット1228も備えている。ソケット1228は必要であれば六角形状であり、ダンパー1200にピン1202を取り付ける工具(たとえば六角レンチ)の頭部が収まるように構成されている。ダンパーには、工具が挿し込まれるように構成されているソケットを用いることなくピンが固定されてもよいが、上記のような構成のほうが便利だろう。細長い基端側ハウジング1032の中での制動部材1214の位置とダンパー1200の位置とにより、ダンパー1200の外面が掴みにくいからである。
【0160】
図16a、
図16b、
図16cのダンパー1200の製造では、制動部材1214が頭部1200bにオーバーモールド可能である。これは、他の手段(たとえば、溝の中へOリングを設置すること)よりも制動部材1214とダンパー1200の本体1200aとの間の機械的な結合を強くするので、制動部材1214を本体1200aにより確実に取り付けるのに役立つ。これにより、ダンパーの性能のバラツキを抑えることができ、たとえば品質管理の必要性を抑えることにより、または品質管理の簡単化により、製造および/または組み立てのコストを低減させることができる。
【0161】
図16a-
図16cに示されている構成では、ダンパー1200の溝1218a、1218bとリッジ1220とが頭部1200bのまわりを周方向へ伸びて、切れ目のない環形を成している。したがって、制動部材1214は、内周面の輪郭がダンパー1200の頭部1200bの外周面の輪郭と一致している連続環を備えている。しかし、この構成が変更されて、溝1218a、1218b、および/またはリッジ1220の成す環形が切れ目を含み、それに応じて制動部材1214の内周面も変更されてもよいことは理解されるだろう。
【0162】
さらに、示されている実施形態ではダンパー1200の含む周方向の溝が2本であり、それらの間に形成されている周方向のリッジが1本である。しかし、他の構成が可能であることは当業者には理解されるだろう。たとえば、周方向の溝が3本設けられ、隣接する2本の溝ごとにそれらを分ける周方向のリッジが設けられてもよい。さらに、周方向の溝が1本だけ設けられ、その中に制動部材の一部が据え付けられてもよい
【0163】
理解されるとおり、プランジャーロッド1015とダンパー1200との間の締まり嵌めでダンパー1200が注射器1001のハウジング内に固定されることにより、駆動用ばね1017が他の部品をハウジングに対して移動させるときのブレーキとしてダンパー1200が機能しうる。その目的で固定具が、少なくともハウジングの長軸に対して平行な方向においてダンパー1200とハウジングとの相対運動を妨げるように配置されている。
【0164】
以下、
図15に示されているプランジャーロッド1015について、
図17a、
図17bを参照しながらより詳細に説明する。
図17aは
図15のプランジャーロッド1015の基端部の等角図である。(基端部と先端部とを含む完全なプランジャーロッド1015は
図1に示されている。)
図17bは、長軸Lに沿った平面によるプランジャーロッド1015の基端部の断面図である。
図17aに示されているように、内壁1208は縦穴1206を形成している。縦穴1206はプランジャーロッド1015の基端部の全長にわたって伸びている。プランジャーロッド1015の基端部は先端にスナップフィット式の接続部1230を備えている。この接続部1230が(
図1に示されている)プランジャーロッド1015の先端部のスナップフィット式の接続具と共に、プランジャーロッド1015の基端部と先端部との間を接続する。
【0165】
図17bに示されているように、縦穴1206には内径の異なる5つの部分が並んでいる。大まかに言えば、これら5つの部分には、第1内径d1の先端区間1232、第2内径d2の中間区間1234、第3内径d3の基端区間1236が含まれる。これらの部分の間には移行区間1238、1240が設けられている。第1移行区間1238は先端区間1232を中間区間1234に接続し、第2移行区間1240は中間区間1234を基端区間1236に接続している。
【0166】
図17bから理解されるように、縦穴1206の長さ方向に沿ってその内径が変化しているので、プランジャーロッド1015が制動部材1214に対して前進する間に制動部材1214の圧縮量を変化させることにより、注射時にダンパー1200によって与えられる制動力を変化させることができる。
【0167】
先端区間1232には、駆動用ばね1017が蓄積状態であるときにダンパー1200の頭部1200bが位置する(
図15に示されている)。プランジャーロッド1015がダンパー1200に対して前進すると、制動部材1214が先端区間1232から中間区間1234を通って基端区間1236へ移動する。
【0168】
中間区間1234の内径d2は先端区間1232の内径d1と基端区間1236の内径d3とのいずれよりも小さい。ダンパー1200の頭部1200bが中間区間1234の中に位置するとき、制動部材1214が圧縮される。これにより、縦穴1206の内壁1208による制動部材1214の圧縮量が増えるので、制動部材1214と内壁1208との間の垂直抗力が強まる。したがって、駆動用ばね1017がプランジャーロッド1015をダンパー1200に対して移動させる際、内壁1208と制動部材1214との間の摩擦が強まる。制動部材1214が縦穴1206の先端区間1232に位置するとき(たとえば、注射器1001が保管されている間)、または縦穴1206の基端区間1236に位置するとき(たとえば、プランジャーロッド1015が前進して薬容器を注射位置まで前進させるとき)、制動部材1214が縦穴1206の広めの部分に位置するので、縦穴1206の内壁1208には圧縮されない(または、圧縮量が減る)。こうして、プランジャーロッド1015がダンパー1200に対して移動し始めるときと移動し終えるときとでは、制動機構の与える制動力を除去すること(または、弱めること)ができる。その上、注射器1001の保管中と使用前とでは、制動部材1214が非圧縮状態のままでいられる空間を先端区間1232が与える。したがって、保管期間中も制動部材が圧縮され続ける注射器に比べ、注射器1001では制動機能とその信頼性とが改善されうる。
【0169】
縦穴1206の区間ごとにその直径を制動部材1214の外径に対して変化させることにより、プランジャーロッド1015がダンパー1200に対して前進するにつれてダンパー1200の制動力を変化させることができる。さらに、上記の区間ごとに長さおよび/または直径を変化させることにより、駆動用ばね1017の伸びに伴う力が弱められる距離も変化させることができる。
【0170】
上記の実施形態では、縦穴1206の最小内径がダンパー1200の堅い頭部1200bの外径よりも広い。しかし、縦穴1206のうち少なくとも1つの区間(ここでは中間区間1234)の内径が変形前の制動部材1214の外径以下である。プランジャーロッド1015の少なくとも一部の内径が変形前の制動部材1214の外径よりも狭められることにより、駆動用ばね1017の力を弱める摩擦力が生み出される。
【0171】
図17bに示されている縦穴1206の各区間が変更されてもよいことは理解されるだろう。たとえば、
図17bの実施形態では、制動部材1214の外径よりも内径が狭い区間が1つ(中間区間1234)しかない。しかし、縦穴1206の複数の区間で内径が制動部材1214の外径よりも狭くてもよい。さらに、上記の実施形態では縦穴1206が5つの区間に分けられているが、それらよりも区間が多くても少なくてもよい。たとえば縦穴1206の内径が長さ方向に沿ってほぼ一定であり、プランジャーロッド1015がダンパー1200に対して前進する際、ダンパー1200の制動力がほぼ一定であってもよい。移行区間1238、1240が省略され、代わりに直径の異なる区間の間に段差が設けられていてもよい。プランジャーロッドに、一端から他端へ向かって滑らかに先細りする縦穴が設けられていてもよい。これらの変更および他の変更は、この明細書の開示内容を考慮すれば、当業者には明らかだろう。
【0172】
発明の実施形態ではプランジャーロッド1015の移動の初期にダンパー1200が駆動用ばね1017の力を弱める。しかし、ダンパー1200が駆動用ばね1017の力を弱める期間は、注射針が刺される前、および/または刺されている期間であっても、薬容器1007から注射針を通して薬が大量に流される前にプランジャーロッド1015が移動する期間であってもよい。なお、注射針内の薬の流れが制限されると、流れを押し戻す圧力が働くので、ダンパー1200によって駆動用ばね1017の力を弱めることは、注射針の穴を通して薬が投与される間は不要だろう。それ故、ダンパー1200が駆動用ばね1017の力を注射器の動作の初期ほどに弱めることは、それよりも後の期間(たとえば、注射針の挿入後)では不要とされてもよい。
【0173】
以下、
図15に示されているプランジャーロッド1015がダンパー1200に対して前進する際におけるダンパー1200とプランジャーロッド1015との相互作用について、
図18a-
図18eを参照しながらより詳細に説明する。
【0174】
図18a-
図18eは、プランジャーロッド1015とダンパー1200との、長軸Lに沿った平面による断面図である。
図18aは、頭部1200bが縦穴1206の先端区間1232に位置する状態のダンパー1200を示す。
図18b-
図18eは、注射の間にプランジャーロッド1015がダンパー1200に対して最も先端に近い位置まで前進する際のダンパー1200を示す。
【0175】
図18aに示されているように、(駆動用ばね1017の解放によって)注射が開始されるまでは、ダンパー1200の頭部1200bが制動部材1214と共に縦穴1206の先端区間1232に位置する。上記のように、この区間1232の内径は制動部材1214の外径よりも広いので、制動部材1214が縦穴1206の内壁1208には接触しない(すなわち、内壁1208によっては圧縮されない)(
図17a、
図17b参照)。この配置の結果、縦穴1206の内壁1208に対する制動部材1214の引っ掛かりが制限される(または、存在しない)ので、プランジャーロッド1015とダンパー1200との間の摩擦力が弱い(または、除去されている)。
【0176】
図18bは、ダンパー1200の頭部1200bが縦穴1206の第1移行区間1238を跨いで中間区間1234の少なくとも一部に差し掛かったときにおけるプランジャーロッド1015の、ダンパー1200に対する位置を示す。この位置では縦穴1206の内径が(変形前の)制動部材1214の外径よりも狭いので、制動部材1214の基端部が縦穴1206の内壁1208によって圧縮される。一方、制動部材1214の先端部はまだ縦穴1206の先端区間1232に位置するので、縦穴1206の内壁1208によっては圧縮されていない(または、基端部よりも圧縮量が小さい)。この結果、縦穴1206の内壁1208に対する制動部材1214の引っ掛かり具合が増すので、プランジャーロッド1015と制動部材1214との間の摩擦力が中程度の強さである。
【0177】
図18cは、
図15のプランジャーロッド1015がダンパー1200に対して更に前進し、ダンパー1200の頭部1200bが縦穴1206の中間区間1234に位置するときにおけるダンパー1200とプランジャーロッド1015との相対位置を示す。この位置では、制動部材1214がその全長にわたり、縦穴1206の内壁1208によって圧縮されている。この結果、縦穴1206の内壁1208に対する制動部材1214の引っ掛かりに伴うプランジャーロッド1015と制動部材1214との間の摩擦力が強い。
【0178】
図18dに示されているように、プランジャーロッド1015がダンパー1200に対して先端側へ移動し続けると、ダンパー1200の頭部1200bの一部が縦穴1206の中間区間1234(制動部材が圧縮される。)に位置し、別の一部が第2移行区間1240を跨いで基端区間1236(制動部材が圧縮されない、またはその圧縮量が小さい。)に位置する。この位置では、
図18bに示されている位置と同様、より狭い中間区間1234の中にまだ残っているのが制動部材1214の先端部しかないので、制動部材1214の一部しか圧縮されない。この結果、縦穴1206の内壁1208に対する制動部材1214の一部の引っ掛かりに伴うプランジャーロッド1015と制動部材1214との間の摩擦力が、中程度の強さに戻る。
【0179】
最後に
図18eに移ると、プランジャーロッド1015がダンパー1200に対して最も先端に近い位置まで到達したとき、ダンパー1200の頭部1200bが縦穴1206の基端区間1236に位置する。縦穴1206の基端区間1236の内径が制動部材1214の外径よりも広いので、制動部材1214が縦穴1206の内壁1208によっては圧縮されない。この結果、縦穴1206の内壁1208に対する制動部材1214の引っ掛かりが制限される(または、存在しない)ので、プランジャーロッド1015とダンパー1200との間の摩擦力が弱い(または、除去されている)。
【0180】
以上が考慮されると、縦穴1206の先端区間1232は「ダンパー保管領域」と呼ばれてもよい。この領域に配置されるときには制動部材1214が非圧縮状態である(
図18a参照)。ダンパー1200がプランジャーロッド1015に対してこの位置にある状態が注射器の保管状態に相当する。この状態では注射器1001が起動前であり、駆動用ばね1017が圧縮されている。ダンパー1200とプランジャーロッド1015とがほとんど、または全く引っ掛からないように、縦穴1206の先端区間1232がダンパー1200の頭部1200bを収容するように構成される。この構成は便利だろう。注射器1001の組み立て時、ダンパー1200をプランジャーロッド1015の先端に挿入して制動機構を組み立てるのに、制動部材1214とプランジャーロッド1015との間の引っ掛かりに伴う強い摩擦に打ち勝つ必要がないからである。
【0181】
中間区間1234は「ダンパー圧縮領域」と呼ばれてもよい。この領域に配置されるときには制動部材1214が圧縮状態である。この段階では制動部材1214が最大限に圧縮されるので、注射器の起動直後の駆動用ばね1017の力が弱められる。これにより、薬容器が注射器内の部品に与える衝撃を最小限に抑えることができる。それとは別に、またはそれに加えて、ユーザーを驚かせるような強い衝撃、またはユーザーの予期しない過ちを招くような振動を避けることができる。
【0182】
基端区間1236は「非制動領域」と呼ばれてもよい。この領域に配置されるときには制動部材1214が圧縮状態からほとんど、または完全に離脱している。非制動領域を縦穴1206の基端に設けることは便利だろう。駆動用ばね1017の軌道のうち、駆動用ばね1017の力が最も強く、薬容器1007を注射位置へ前進させる区間(たとえば、移動初期の区間)でしか、駆動用ばね1017の力が弱められないからである。さらに、(必要であれば、基端区間1236と中間区間1234との間に先細りの移行区間が設けられると共に)基端区間が拡げられてもよいだろう。これは、注射の完了後にプランジャーロッド1015をダンパー1200に対して後退させるのに便利だからである。
【0183】
図15-
図18eに示されているプランジャーロッド1015は、内径が変化する縦穴1206を備えているが、この縦穴の内径が実質的に一定であってもよいことは理解されるだろう。この縦穴では、プランジャーロッド1015がダンパー1200に対して移動する区間のほぼ全長にわたり、制動部材1214が縦穴の内壁に引っ掛かる。そのような実施形態の例は図面には示されていないが、単に、
図18a-
図18eに示されているプランジャーロッド1015を、内径が一定であるほぼ円柱状の穴が開いているプランジャーロッドに置き換えればよいことは理解されるだろう。
【0184】
以下に
図19を参照しながら説明するように、ダンパーが中空のプランジャーロッドの中に収容される他の構成についても開示する。
【0185】
図19は、この明細書で開示される発明の更なる実施形態の断面図である。
図19に示されている実施形態は上記の実施形態と同様である。
図19に見られるとおり、注射器4001は駆動装置4016を備えている。駆動装置4016は基端側ハウジング4032を含み、基端側ハウジング4032は、駆動用ばね4017、ラッチ4040、張出部4042、および起動具4034を収容している。上記の実施形態と同様、ラッチ4040と張出部4042とは共に動力を駆動用ばね4017からプランジャーロッド4015へ伝える。プランジャーロッド4015は基端に縦穴4206、すなわち中空部を含む。
【0186】
図15を参照しながら説明された実施形態とは異なり、
図19の実施形態における第1駆動部品4015には内径の異なる2つの部分、先端部分4232と基端部分4236とがある。それらは、プランジャーロッド4015の伸長状態に応じてダンパー2400を収容するように構成されている。先端部分4232の第1内径よりも基端部分4236の第2内径は広い。
【0187】
図19のダンパー4200も
図15のダンパー1200とは異なる。
図15のダンパー1200は、頭部1200bの外周面の輪郭に内周面の輪郭が一致するように構成されている制動部材1214を1つしか含まない。一方、
図19のダンパー4200は頭部4200bに円環状の溝を複数本含み、各溝が、その中にOリングを1本ずつ収容するように構成されている。ダンパー4200はまた、頭部4200bを支える本体部4200aも含む。
【0188】
図19に示されているダンパー4200の頭部4200bには3本の周方向の溝4218a、4218b、4218cが設けられている。3本の制動部材4214a、4214b、4214c(それぞれが1本のOリングとして形成されている。)が1本ずつ別々に周方向の溝4218a、4218b、4218cに据え付けられている。頭部4200bが正しく置かれると、制動部材4214a、4214b、4214cの外径が頭部4200bの外径よりも広い。
【0189】
図19のダンパー4200は
図15のダンパー1200と同様に動作する。
図19に示されている位置ではダンパー4200の制動部材4214a、4214b、4214cの外径よりも縦穴4206の先端部分4232の内径が狭いので、制動部材4214a、4214b、4214cが縦穴4206の内壁4208によって圧縮される。その結果、縦穴4206の内壁4208に対する制動部材4214a、4214b、4214cの引っ掛かりに伴い、プランジャーロッド4015とダンパー4200との間に強い摩擦力が生じる。
【0190】
制動部材4214a、4214b、4214cが縦穴4206の基端部分4236に設置される場合、基端部分4236は直径が広いので、制動部材4214a、4214b、4214cをもはや圧縮しない(または、その圧縮量が小さい)。その結果、縦穴4206の内壁4208に対する制動部材4214a、4214b、4214cの引っ掛かりが制限される(または、存在しない)ので、プランジャーロッド4015とダンパー4200との間の摩擦力が弱い(または、除去される)。
【0191】
図15の実施形態には見られない
図19のプランジャーロッド4015の特徴は、栓4242である。栓4242は、縦穴4206の先端部分4232の先端で縦穴4206を閉じるキャップの形をしている。栓4242は、注射器の組み立ての間、ダンパー4200の頭部4200bの端が隣接する面を成し、1回分の注射が終了し、第1駆動部品4015が元の位置に戻るとき、第1駆動部品4015が後退し過ぎるのを防ぐ。栓4242がこの実施形態から省略されてもよいし、必要であれば、
図15の実施形態に追加されてもよいことは理解されるだろう。栓4242は、ダンパー4200が注射器の他の部品、たとえば、ダンパーとプランジャーとの間に配置されるPCBなどの部品に干渉するのを防ぐのにも役立つ。
【0192】
ダンパーとプランジャーロッドとが、
図15、
図19に示されている種類、すなわち、ダンパーがプランジャーロッドに設けられている縦穴の内壁に引っ掛かるものには限られないことは理解されるだろう。この明細書で開示される発明によれば、ダンパーを、他の駆動部品に引っ掛かるように構成することも可能である。
【0193】
動力パックも、
図15、
図19に示されているものには限られず、ラッチの張出部と同様な部材が駆動用ばねの力を第1駆動部品に、ラッチを使うことなく直に伝えてもよい。この修正も他の修正も、
図20-
図28dに関する以下の説明から明らかになるだろう。
【0194】
図20は発明のある実施形態の断面図である。この実施形態ではダンパー5200が、駆動装置の(プランジャーロッド以外の)部品に直に引っ掛かるように構成されている。
図20は、
図15、
図19に示されている構成と同様な構成を示す。この構成では駆動装置が駆動用ばね5017とダンパー5200とを備えている。ダンパー5200は、駆動用ばね5017の少なくとも初期の伸びを弱めるように構成されている。
【0195】
図15を参照しながら説明された実施形態とは異なり、
図20の実施形態のダンパー5200は頭部が拡げられていない。より詳細には、
図20に示されているダンパー5200の本体は、ほぼ全長にわたって直径が実質的に一様な棒である。ただし、ダンパー5200の先端のまわりに2本の周方向の溝5218a、5218bがある。溝5218a、5218bはそれぞれが制動部材5214a、5214bを1本ずつ収容している。2本の制動部材5214a、5214bは、
図19を参照しながら説明されたOリングと同じ形をしている。
【0196】
図15を参照しながら説明された実施形態と異なり、ダンパー5200が嵌まっている駆動部品はスリーブ5015である。スリーブ5015は駆動用ばね5017に結合しているので、駆動用ばね5017によって動かされる第1駆動部品として機能する。スリーブ5015が注射器のプランジャーロッドの一部を成していてもよい。
【0197】
スリーブ5015は1本の縦穴を備えている。この縦穴は上記のプランジャーロッドの縦穴と幾分かは似ており、ダンパー5200を収容するように構成されている。縦穴の内壁は、ダンパー5200が締まり嵌めされるように構成されている。
【0198】
図20に見られるように、スリーブ5015の縦穴には3つの区間がある。第1直径の先端区間5232、第1直径よりも広い第2直径の基端区間5236、および、先端区間5232と基端区間5236との間に挟まれている先細りの移行区間5238である。上記の実施形態と同様に、スリーブ5015では少なくとも1つの区間の内径が制動部材5214a、5214bの外径よりも狭い。示されている実施形態では、先端区間5232の内径が制動部材5214a、5214bの外径よりも広いので、先端区間5232はダンパー保管領域と呼べる。基端区間5236の内径は制動部材5214a、5214bの外径よりも狭いので、基端区間5236はダンパー圧縮領域と呼べる。
【0199】
図15、
図19に示されている第1駆動部品とは異なり、駆動部品(この実施形態ではスリーブ5015)は駆動用ばね5017に、ラッチ機構を介しては結合していない。そうではなく第1駆動部品は、上記のラッチ機構の張出部1042と同様な形をしている駆動用スリーブ5042の中に嵌まっている。(張出部1042と形が似ている)駆動用スリーブ5042は先端側フランジ5072を備えており、これが駆動用ばね5017に圧迫される。駆動用スリーブ5042の中にスリーブ5015が嵌まっているので、駆動用ばね5017の作用により駆動用スリーブ5042が先端方向へ移動すると、駆動用スリーブ5042と一緒にスリーブ5015が先端方向へ移動する。
【0200】
スリーブ5015および/または駆動用スリーブ5042が、動力をプランジャーロッド(図示せず。)に伝えるように構成されていてもよい。プランジャーロッドは、プランジャーを薬容器の中で先端方向へ移動させて1回分の薬を排出させるように構成されている。したがって、スリーブ5015の先端が位置決め部材(たとえば、一段高くなっている円環状のフランジ)を含み、それがプランジャーロッドの基端の対応する部材に嵌められていてもよい。
【0201】
上記の実施形態は、長さ方向に沿って内径が変化している縦穴を含む。これにより、駆動用ばねが伸びるにつれて制動部材の圧縮量(したがって、制動力)を変化させることができる。ただし、縦穴の長さ方向に沿ってその内径が一定であってもよいことは理解されるだろう。これにより、縦穴がダンパーに対して先端側へ移動しても、制動力がほぼ一定に留まる。
【0202】
図21に移り、この明細書で開示される発明の更に別の実施形態について説明する。
図21はプランジャーロッド6015を示す。プランジャーロッド6015は、ほぼ長軸の方向に伸びている複数本の溝6250a、6250b、6250cを備えている。これらの溝6250a、6250b、6250cが長軸に沿っており、すなわち長軸に対して平行であってもよい。以下、より詳細に説明するように、溝6250a、6250b、6250cは、制動部材と接触する縦穴の壁の表面積を減らす。これにより形成される空間では制動部材が、縦穴の壁から受ける圧縮力を弱めるように変形可能である。したがって、ダンパーが嵌められている第1駆動部品の表面領域ではダンパーと第1駆動部品との間の摩擦力が弱められる。
【0203】
【0204】
図21は、
図17a、
図17bに示されている第1駆動部品と本質的には同じものを示すが、次の点で異なる。
図21に示されているように、縦穴6206の中間区間6234(先端区間6232と基端区間6236との間に位置する。)は、内面に複数本の溝6250a、6250b、6250cを含む。溝6250a、6250b、6250cはプランジャーロッド6015の長軸Lに対して平行に伸びている。いずれの溝6250a、6250b、6250cも中間区間6234の基端から先端へ向かって長軸Lの方向へ伸びている。第1溝6250aは中間区間6234のほぼ全体にわたって伸びており、中間区間6234の先端の手前に終端がある。第2溝6250bは第1溝6250aからは周方向へ離れており、長さが中間区間6234の長さのほぼ2/3である。第3溝6250cは第1溝6250a、第2溝6250bのいずれからも周方向へ離れており、長さが中間区間6234の長さのほぼ1/2である。第1溝6250a、第2溝6250b、第3溝6250cは中間区間6234の周の上に次の順序で並んでいる。第1溝、第2溝、第3溝、第2溝、第1溝、第1溝、第2溝、第3溝、第2溝、第1溝。
【0205】
図22aに示されているように、
図21のプランジャーロッド6015の第1断面A-A’は中間区間6234の先端と第1溝6250aの端との間にあり、溝6250a、6250b、6250cをいずれも含まない。
図22bに示されているように、
図21のプランジャーロッド6015の第2断面B-B’は第1溝6250aの端と第2溝6250bの端との間にあり、第1溝6250aしか含まない。
図22cに示されているように、
図21のプランジャーロッド6015の第3断面C-C’は第2溝6250bの端と第3溝6250cの端との間にあり、第1溝6250aと第2溝6250bとしか含まない。
図22dに示されているように、
図21のプランジャーロッド6015の第4断面D-D’は第3溝6250cの端と中間区間6234の基端との間にあり、第1溝6250a、第2溝6250b、第3溝6250cをすべて含む。
【0206】
このように、中間区間6234の先端から基端へ向かう方向における距離が増えるにつれて、中間区間6234の単位周長あたりの溝6250a、6250b、6250cの数が増える。したがって、中間区間6234の中では、プランジャーロッド6015の前進に伴い、ダンパーの制動部材が中間部分6234の先端から基端へ向かって移動するにつれて、制動部材に接触するプランジャーロッド6015の表面積が減る。これにより、プランジャーロッド6015が前進するほどダンパーとプランジャーロッド6015の内壁との接触面積が減る。言い換えると、基端へ向かうほど溝に対して内壁の占める割合が低い。したがって、プランジャーロッド6015の前進に伴い、ダンパーとプランジャーロッド6015との間の摩擦力が階段状に弱まる。
【0207】
図21に示されている実施形態では中間部に10本の溝がある。しかし、溝の総数も、異なる長さごとの溝の数も、変更可能であることは理解されるだろう。さらに、この実施形態では、長手方向に沿って内径が変化する駆動部品に溝が設けられるように説明されているが、この構成とは別のものに溝が設けられていてもよい。
【0208】
この実施形態はプランジャーロッドについて説明されているが、上記の溝が
図20のスリーブ5015に組み込まれてもよいし、ダンパーに対して移動するように構成されている他の駆動部品に組み込まれてもよいことは理解されるだろう。さらに、上記の説明では溝がプランジャーロッドの内壁にあるが、実施形態はそれに限られるわけではない。たとえば、この明細書の以下の部分で説明されるように、ダンパーが円環状であり(たとえば
図27参照。)、ダンパーの内側に第1駆動部品が配置されている場合、ダンパーに引っ掛かるように配置されている第1駆動部品の外周面に溝が形成されていてもよい。それとは別に、またはそれに加えて、第1駆動部品に嵌まるように配置されているダンパーの部分に溝があってもよい。
【0209】
以下、
図23-
図24bに移ると、この明細書で開示される発明による制動機構は、変形可能な細長い板状部材(スプラインまたはリッジ)を複数備えているダンパーを含んでいてもよい。スプラインはダンパーの長手方向へ伸びており(すなわち、注射器の長軸に対して実質的に平行であり)、プランジャーロッド等の第1駆動部品、または駆動装置の他の部品によって圧縮されるように配置されている。第1駆動部品が、スプラインを圧縮するように構成されている圧縮用リングを備えていてもよい。この明細書の開示内容から理解されるように、第1駆動部品に嵌まるように配置されているダンパーの部分に設けられているスプラインを用い、ダンパーと第1駆動部品との間の摩擦力の強さを制御することは可能である。上記の溝と同様に、スプラインの長さ、幅、もしくは厚さを変化させ、または単位周長当たりのスプラインの数を変化させることにより、ダンパーと第1駆動部品との間の摩擦を増減させてもよい。
【0210】
より詳細には、
図23に示されているように、実施形態の中には、第1駆動部品と同軸に配置されているダンパー7200を備えているものがある。この実施形態では第1駆動部品が、
図19のスリーブ5015と同様なスリーブ7015の形をしている。
図19に示されている実施形態と同様、スリーブ7015は駆動用スリーブ7252に結合している。駆動用スリーブ7252には、駆動用ばね7017が圧迫可能な先端側フランジ7072が設けられている。
図20に示されている実施形態のように、ダンパー7200がハウジングの中にピン7202で固定されている。ピン7202はダンパー7200に締結されている。
【0211】
図23に示されているように、スリーブ7015が縦穴7206を含む。縦穴7206は、ダンパー7200の少なくとも一部を収容するように構成されている。スリーブ7015は縦穴7206の基端、またはその近くに圧縮用リング7254も備えている。圧縮用リング7254は、注射の間、スリーブ7015がダンパー7200に対して前進する際にダンパー7200から受ける力では変形しない材料(たとえば金属)から成る。圧縮用リング7254はスリーブ7015の基端に位置し、スリーブ7015の長手方向の一部しか占めていない。
【0212】
ダンパー7200は外面に、長軸の方向へ伸びているスプライン7256を複数本備えている。スプライン7256はダンパー7200の先端からその本体の一部の上を、長軸の方向へ伸びている。スプライン7256はダンパー7200の本体の外周面から径方向へ突出しており、その本体のまわりに間隔を空けて並んでいる。スプライン7256が外周方向へ伸びていることによりダンパー7200の直径が、ダンパー7200の先端に位置する円柱状の棒の直径よりも拡がっている。この直径(「スプライン径」)はまた、圧縮用リング7254の最小内径よりも広い。
【0213】
スプライン7256は基端を除き、長手方向において高さがほぼ一定であり、基端に近づくにつれてダンパー7200の本体へ近づくように傾斜している。スプライン7256の外径は圧縮用リング7254の最小内径よりも広い。ダンパー7200は少なくともスプライン7256が弾性変形可能な材料で形成されているので、スプライン7256は圧縮用リング7254の内面によって圧縮され得る。スプライン7256がエラストマー、たとえば熱可塑性エラストマーから形成されていてもよい。
【0214】
図23に示されているように、圧縮用リング7254は一端が、スプライン径よりも広い直径からスプライン径よりも狭い直径へと傾斜している。これにより、圧縮用リング7254が縦穴7206を、圧縮用リング7254の先端側にあるダンパー保管領域と、圧縮用リング7254によって形成されているダンパー圧縮領域と、圧縮用リング7254の基端側にある非制動領域とに分けている。縦穴7206の内径が、(圧縮用リング7254に対する位置にかかわらず)ダンパー7200の本体に沿って伸びているスプライン7256の外径よりも広い値に一定であってもよい。
図23のスプライン7256は
図24a(
図23のダンパーの斜視図)でははっきりと見える。
【0215】
図23を更に参照すると、注射器が保管状態にあるとき(駆動用ばねが完全に圧縮されている。)にはスリーブ7015がダンパー7200に対して後退し切った位置にあり、先端のダンパー保管領域がダンパー7200のうち、スプライン7256を含む部分を収容している。スプライン7256の外径がスリーブ7015の内径よりも狭く、ダンパー7200の本体の外径が圧縮用リング7254の最小内径よりも狭いので、ダンパー7200と第1駆動部品7015の内壁とが引っ掛からない。
【0216】
注射器の動作中、駆動用ばね7017の力で第1駆動部品7015がダンパー7200に対して前進すると、スプライン7256が圧縮用リング7254の中に押し込まれる。スプライン7256の外径が圧縮用リング7254の最小内径よりも広い一方、スプライン7256が弾性変形可能であるので、スプライン7256が圧縮用リング7254に引っ掛かって圧縮される。スプライン7256の変形に伴う垂直抗力が圧縮用リング7254に対して加わる。こうして、ダンパー7200とスリーブ7015との間に摩擦力が生じる。他の実施形態と同様、この摩擦力が、駆動用ばね7017によりプランジャーロッドおよび/または薬容器に対して加えられる力を弱めるように作用する。
【0217】
スプラインは違う形であってもよい。それについて、以下、
図24a、
図24bを参照しながら説明する。すでに述べたとおり、
図24aは
図23のダンパー7200の斜視図である。この図に見られるように、ダンパー7200のスプライン7256は長さが一定であり、長手方向における始点も終点も揃っており、ダンパー7200の本体のまわりで周方向に分布している。この配置により、ダンパー7200のうちスプライン7256を含む部分が圧縮用リング7254を通過する際には、実質的に一定の制動力が得られる。
【0218】
図24bはダンパーの別の実施形態7200’を示す。ダンパー7200’は、長さの異なるスプライン7256a、7256b、7256cを備えている。
図24bが示すように、スプライン7256a、7256b、7256cの長さが異なることにより、圧縮用リング7254を備えているスリーブ7015がダンパー7200’に対して前進する際、制動機構によって与えられる制動力を変化させることができる。
【0219】
図24aに示されているスプライン7256はそれぞれ、ダンパー7200の先端から基端へ向かってほぼ同じ距離だけ伸びている。したがって、駆動部品7015がダンパー7200に対して移動する間、その全体にわたって圧縮用リング7254とダンパー7200との間の摩擦力がほぼ一定である。一方、
図24bに示されている実施形態では、
図21の実施形態において溝の長さが異なることを利用してプランジャーロッド6015とダンパーとの間の摩擦力を変化させているのと同様に、スプライン7256a、7256b、7256cの長さが異なることにより、第1駆動部品7015がダンパー7200’に対して前進する間に第1駆動部品7015とダンパー7200’との間の摩擦力が変化する。
【0220】
図24bは特に次のことを示す。ダンパー7200’の第1スプライン7256aはダンパー7200’の先端部の全長にわたって伸びている。第2スプライン7256bは長さがダンパー7200’の先端部の長さのほぼ3/4であるので、ダンパー7200’の先端から先端部の長さのほぼ1/4だけ手前に終端がある。第3スプライン7256cは長さがダンパー7200’の先端部の長さのほぼ1/3であるので、ダンパー7200’の先端から先端部の長さのほぼ2/3だけ手前に終端がある。
【0221】
要するに、ダンパー7200’が圧縮用リング7015を通過する間にスプライン7256a、7256b、7256cと圧縮用リング7015との間の接触面積が変化するようにスプライン7256a、7256b、7256cが配置されている。実施形態では複数本のスプラインが第1スプライン7256aと第2スプライン7256bとを少なくとも1本ずつ含む。第1スプライン7256aと第2スプライン7256bとは、それぞれの伸びている範囲がダンパー7200’の一部でしかない。第1スプライン7256aと第2スプライン7256bとは長さ(すなわち、ダンパー7200’と注射器1001との長軸Lに沿って測られた寸法)が異なる。それとは別に、またはそれに加え、少なくとも1本のスプラインがその幅をその長手方向に沿って変化させていてもよい。それとは別に、またはそれに加え、上記の「スプライン径」がダンパーの長手方向に沿った位置に応じて変化していてもよい。
【0222】
スプライン7256a、7256b、7256cの長さが異なることにより、ダンパー7200’の長軸の方向に沿った距離に応じてスプラインの密度が異なるので、単位長あたりの接触面積が変化する。これにより、第1駆動部品7015が後退し切った位置から伸長位置まで前進する間に制動力が変化する。ダンパー7200’のどの位置でも、スプラインが密であるほどダンパー7200’と第1駆動部品7015との間の接触面積が広いので、制動力が強い。言い換えると、ダンパーの先端へ向かうにつれてダンパーの外面に対してスプラインの占める割合が下がるので、制動力が弱まる。逆に、スプラインが同じ長さであれば、ダンパーの長手方向に沿って一様な制動力が得られる。
【0223】
上記のダンパーのいずれにおいてもスプラインの幅(注射器の長軸を囲むダンパーの周方向に沿って測られた寸法)が一定である。その他に、1本以上のスプラインが長手方向に沿って幅を変化させていてもよい。その幅の変化が緩やかであり、スプラインが長手方向に沿って先細りしていてもよい。または、その幅が長手方向に沿って階段状に変化していてもよい。これによっても、ダンパーの長手方向に沿ってダンパーと第1駆動部品との間の接触面積が変化する。
【0224】
ダンパーの長手方向に沿ってスプライン径が一様であってもよい。その他に、ダンパーの長手方向に沿ってスプライン径が変化していてもよい。スプライン径のその変化が緩やかであり、スプラインがダンパーの長手方向に沿って先細りしていてもよい。または、スプラインの長手方向に沿ってスプライン径が階段状に変化していてもよい。スプライン径の変化により、スプラインが圧縮用リングを通過する際、ダンパーと第1駆動部品との間の垂直抗力が変化する。したがって、第1駆動部品の前進に伴って摩擦力が変化するので、駆動用ばねの力が弱められる程度が変化する。
【0225】
上記のスプラインと溝とはダンパーの長手方向に対して平行に配置されているが、この明細書で開示される発明はそれには限定されない。たとえば、溝がダンパーに、またはスプラインが第1駆動部品に、螺旋状に配置されていてもよい。この配置でも上記のものと同様に、スプラインまたは溝の属性(すなわち、幅、長さ、径方向の位置、または密度)が長手方向の位置の関数として変化していてもよい。螺旋状のスプラインまたは溝がダンパーと第1駆動部品との間の接触面積および/または垂直抗力を変化させることにより、摩擦力に所望の変化を生じさせてもよい。ただし、第1駆動部品にその長軸方向へ伸びているスプラインを設ける方が、製造は簡単である。
【0226】
さらに、上記の実施形態は、スプラインが形成されているダンパーを含み、そのダンパーが、駆動装置の一部を成すスリーブと相互作用するように構成されているが、
図15のプランジャーロッド1015のように、プランジャーロッドの一部に圧縮用リングが設けられていてもよいことは理解されるだろう。
【0227】
この明細書で開示される発明の更に別の実施形態では制動機構が次のように構成されることにより、第1駆動部品とダンパーとの間の摩擦力を変化させてもよい。固定されているダンパーに対して圧縮力を管によって加え、その管の肉厚をその長手方向に沿って変化させることにより圧縮力を変化させる。この実施形態の構造は上記の実施形態とは幾分異なるが、以下に説明されるように、基礎となる原理(すなわち、ダンパーと駆動部品とが加え合う圧縮力を変化させること)は同じである。要するに、これらの実施形態では第1駆動部品が、圧縮用スリーブを含む付属の駆動部材として形成されていてもよい。圧縮用スリーブはその長手方向に沿って内径が一定であるが、肉厚が変化している。圧縮用スリーブは、駆動用ばねの作用で先端方向へ前進するように構成されている駆動部品と一体に形成されていても、その部品に結合する別の部品であってもよい。圧縮用スリーブの内側にはダンパーが配置され、圧縮用スリーブの内面に嵌められる。
【0228】
図25は、第1駆動部品8015を備えている制動機構の等角断面図である。第1駆動部品8015は、本体8015a、圧縮用リング8015b、ダンパー8200、およびピン8202から形成されている。
【0229】
ダンパー8200は本体8200aとフェルール8200bとを含む。本体8200aは、両端へ近づくにつれて外径が狭まるように先細っており、ピン8202を収容するためのねじ穴を含む。本体8200aの両端の間には、外径が最大となる部分が形成されており、その外径はピン8202の外径よりも広い。フェルール8200bは環状部材であり、本体8200aの外側に形成されている。フェルール8200bは圧縮用スリーブ8015bの中に入ると塑性変形することにより、駆動用ばねの力を弱める。フェルール8200bは、金属、射出成形樹脂、または他の塑性変形可能な(すなわち、弾性変形が実質上不能な)材料から形成されていてもよい。フェルール8200bは圧縮用スリーブ8015bよりも硬度と強度とが高くてもよい。
【0230】
フェルール8200bは本体8200aを囲んでおり、本体8200aよりも外径が広いので、この明細書で開示されている他の実施形態の制動部材と同様な方法で駆動部品の内壁に接触する面を成す。示されている実施形態ではフェルール8200bが本体8200aの上に取り付けられているが、フェルールの外径がピン8202の外径よりも広ければ、本体が省略され、フェルールが直にピン8202に取り付けられていてもよいことは理解されるだろう。
【0231】
図25を更に参照すると、第1駆動部品8015が本体8015aと圧縮用スリーブ8015bとを含む。本体8015aはほぼ円筒状の部材であり、円環8260を備えている。円環8260には先端方向に面している肩部が形成されており、その肩部が圧縮用スリーブ8015bの肩部8262によって圧迫される。これらの肩部が隣り合うことにより、本体8015aが圧縮用スリーブ8015bに対して先端側へ移動することが妨げられる。したがって、駆動用ばねの作用で本体8015aと圧縮用スリーブ8015bとが(少なくとも先端方向へは)一緒に移動することが保証される。
【0232】
圧縮用スリーブ8015bは、肩部から基端方向へ伸びている細長い管状であり、その中にフェルール8200bが配置可能である。以下、圧縮用スリーブ8015bについて
図26a-
図26cを参照しながら、より詳細に説明する。
【0233】
図26aは圧縮用スリーブ8015bの端面図である。
図26aに示されているように圧縮用スリーブ8015bの断面は実質的に円環である。
【0234】
図26bは圧縮用スリーブ8015bの側面図である。この図に示されているように、圧縮用スリーブ8015bは保管部8264(その基端には、基端方向に面している肩部8262が形成されている。)と圧縮部8266(保管部8264から、開いている基端へ向かって伸びている。)とを備えている。
図26bに見られるように、圧縮部8266は外径が先端での最大値から基端での最小値まで緩やかに減少している。
【0235】
図26cは、
図26aに示されている平面F-F’に沿った断面図である。
図26cに示されているように、圧縮部8266の内径d
cは一定である。圧縮部8266の外径が先端(保管部8264に近い方の端)の第1外径d
dから基端(保管部8264から遠い方の端)の第2外径d
pまで緩やかに減少しているので、圧縮部8266の壁8268の厚さはその長手方向に沿って緩やかに、先端での最大値から基端での最小値まで減少している。
【0236】
圧縮用スリーブ8015bの壁厚の変化により、ダンパーと第1駆動部品との間のフープ応力(周方向応力)がダンパーに対する第1駆動部品の位置の関数として変化する。フープ応力の変化が第1駆動部品とダンパーとの間の垂直抗力を変化させる。その結果、圧縮用スリーブ8015bとダンパーとの間の締まり嵌めの程度が変化するので、プランジャーおよび/または薬容器に対して加わる駆動用ばねの力を弱める程度が変化する。
【0237】
実施形態ではダンパーが第1駆動部品の内側に配置されると説明されているが、この明細書で開示される発明はその配置には限定されない。たとえば、駆動用ばねの制動が次のようなダンパーを使って実現されてもよい。このダンパーは円環状であって第1駆動部品を囲んでおり、第1駆動部品の前進の様々な段階で摩擦力を発生させて駆動用ばねの力を弱める。
【0238】
図27は(
図12を参照しながら説明された)注射器の例2001の断面図である。この注射器2001では円環状ダンパー2200が第1駆動部品のまわりに配置され、第1駆動部品の外周面に嵌まっている。
図27は、
図12を参照しながら説明された注射器2001の基端部を示す。
【0239】
図27に示されている円環状ダンパー2200はOリングとして形成されており、基端側ハウジング2032の縦穴に据え付けられ、基端側ハウジング2032の長軸の方向へは移動しないように基端側ハウジング2032に結合している。円環状ダンパー2200は、ラッチ2040として形成されている第1駆動部品の外壁を囲み、その外壁に嵌まっている。円環状ダンパー2200が力を受けていない状態では、その内径が第1駆動部品(ラッチ2040)の外壁の外径よりもわずかに狭い。第1駆動部品(ラッチ2040)は、張出部2042として形成されている駆動用スリーブにより駆動用ばね2017に結合している。したがって、円環状ダンパー2200が第1駆動部品(ラッチ2040)を囲むと第1駆動部品(ラッチ2040)の外周面に垂直抗力が加わるので、その結果、円環状ダンパー2200と第1駆動部品(ラッチ2040)との間に摩擦力が生じ、駆動用ばね2017の力に抵抗する。
【0240】
図27ではラッチ2040が、注射器の動作中はずっと円環状ダンパー2200に接触し続けるように配置されている。すなわち、ラッチ2040の外径が実質的に一様であるので、制動力が第1駆動部品の位置に依らない。しかし、発明の実施形態はこれには限られない。たとえば、ラッチ2040の外径が変化していることにより、駆動用ばね2017が伸長する期間の様々な段階ごとに強さの異なる垂直抗力を、円環状ダンパー2200が第1駆動部品2015に対して加えてもよい。それとは別に、またはそれに加え、ラッチ2040の外径が変化していることにより、駆動用ばね2017が伸長する期間には、円環状ダンパー2200とラッチ2040とが接触する段階もあれば、接触しない段階もあってもよい。こうしてスリーブの外径を変化させることにより摩擦力を様々なパターンで変化させることができる。それらのパターンには、この明細書で説明されているいずれもが含まれるが、それらには限られない。
【0241】
発明の実施形態では、固定されているダンパーが、駆動用ばねで動かされる部品に対して摩擦力を加えると説明されているが、駆動用ばねの力を弱める他の手段も可能であることを発明者は認識している。たとえば
図28a-
図28dは、圧縮状態の駆動用ばねに直に接触するエラストマーの、様々に異なる構成を示す。各エラストマーは、駆動用ばねの伸びに抵抗するように、すなわち、一度にはばねの巻きが1つしか前進できないように配置されている。
【0242】
図28aは、圧縮され切った状態の駆動用ばね17aを囲むエラストマー鞘18aとして形成されているエラストマーを示す。エラストマー鞘18aは、力を受けていない状態では、内径が駆動用ばね17aの外径よりも狭い。エラストマー鞘18aはまた、圧縮され切った状態の駆動用ばね17aよりも長い。したがって、エラストマー鞘18aが拡げられて駆動用ばね17aを囲み、駆動用ばね17aの両端の外側まで伸ばされているエラストマー鞘18aの両端がその縮みにより駆動用ばね17aに対して圧縮力を加えると、エラストマー鞘18aが駆動用ばね17aを効果的に包み込む。それ故、駆動用ばね17aの各端の一巻きに対して軸力(すなわち、駆動用ばね17aの軸に対して平行な方向の力)が加わる。エラストマー鞘18aが加えるこの力が、駆動用ばね17aのすべての巻きが一度に伸びることを防ぐ。エラストマー鞘18aの端からは一度に1つの巻きしか解放されない。1つの巻きが解放されると、次の巻きに対してエラストマー鞘18aの軸力が加わり、その巻きの伸びに抵抗する。以降、それの繰り返しである。
【0243】
図28bは、
図28aのエラストマー鞘18aと実質的に同様に機能するエラストマー内管18bを示す。エラストマー内管18bも駆動用ばね17bと同軸に位置する。ただし、エラストマー内管18bは駆動用ばね17bの内側に形成されている。エラストマー内管18bは外径が駆動用ばね17bの内径よりも広く、圧縮されている駆動用ばね17bよりも長いので、両端が駆動用ばね17bの両端に対して軸力を加える。これにより、
図28aを参照しながら説明された効果と同じ効果が得られる。
【0244】
図28cは、駆動用ばね17cと同軸に配置されてそれを囲んでいる堅い支持管18cを示す。支持管18cはその一端の内面でエラストマーリッジ188cを支持している。エラストマーリッジ188cは支持管18cの内周面を周方向へ伸びている。エラストマーリッジ188cの内径は駆動用ばね17cの外径よりも狭いので、エラストマーリッジ188cは駆動用ばね17cの端に対して軸力を加え、最初の巻きの伸びに抵抗する。支持管18cの端から最初の巻きが解放されると、次の巻きに対してエラストマーリッジ188cが軸力を加える。以降、その繰り返しである。
【0245】
図28dは
図28cと同様な構成を示す。ただし、その構成に含まれる支持管18dは駆動用ばね17dの内側に配置されており、エラストマーリッジ188dは支持管18dの一端の外周面を周方向へ伸びている。エラストマーリッジ188dの外径が駆動用ばね17dの内径よりも広いので、駆動用ばね17dの各巻きが順番に支持管18dの端から解放される際にエラストマーリッジ188dから軸力を受ける。したがって、この構成によっても、駆動用ばね17dの巻きが1つずつ解放されるという上記の効果が得られる。
【0246】
図29は、この明細書で開示される発明による注射器の製造方法を示す。ステップ201では、長軸のあるハウジングが用意される。ステップ203では、ハウジングにダンパーが、ハウジングに対してその長軸に沿って並進しないように取り付けられる。ステップ205では、ハウジング内に駆動用ばねが設置される。ステップ207では、ハウジング内に第1駆動部品が設置される。これにより、ダンパーが第1駆動部品の内側に同軸に配置され、第1駆動部品が駆動用ばねによってダンパーに対して長軸に沿って移動する程度に、ダンパーと第1駆動部品とが締まり嵌めされるように構成される。追加のステップとしてステップ209では、ダンパーを成す細長い部材(たとえば心棒)に変形可能な制動部材がオーバーモールドされてもよい。
【0247】
読者には理解されるだろうように、上記のステップはどのような順序でも実行可能である。この方法には更に、
図15-
図28dに示されている実施形態について先に説明されたいずれの特徴を用意するステップが含まれていてもよい。
【0248】
この明細書で開示される装置についての説明によれば、注射器内で駆動用ばねを制動するある方法が与えられる。この方法は以下のステップを含む。
- 駆動用ばねを使って薬容器を注射器のハウジングに対し、後退位置から伸長位置へ前進させるステップ。駆動用ばねは第1駆動部品を通して薬容器へ動力を伝える。
- 第1駆動部品をダンパーに対して移動させるステップ。ダンパーは第1駆動部品に対して同軸に配置されている。
- 第1駆動部品がダンパーに対して移動する間、第1駆動部品の表面とダンパーとを締まり嵌めさせるステップ。
【0249】
上記の実施形態についての説明によって理解されるように、ダンパーと第1駆動部品との間の垂直抗力および/または動摩擦係数が調節されることにより、それらの部品間の摩擦力が調節される。垂直抗力は、ダンパーと第1駆動部品との嵌め方、および/または、いずれかの部品の弾性もしくは剛性、および/または、いずれかの部品の一部の変位量(エラストマーである場合は通常、その復元力に比例する。)に依存する。動摩擦係数は、ダンパーと第1駆動部品との間の接触面積、および/または、単位接触面積当たりの動摩擦係数に依存する。
【0250】
説明されている実施形態から当業者には理解されるように、ダンパーまたは制動部材の断面が一様である。しかし、この明細書で開示される発明はそれには限られない。たとえば、ダンパーの断面が様々であることにより、ダンパーと第1駆動部品との間の垂直抗力が第1駆動部品の圧縮領域に対するダンパーの位置に応じて変化してもよい。この手段によっても、ダンパーと第1駆動部品との相対位置に応じて駆動用ばねの力を弱める程度を変えることができる。
【0251】
上記の詳細な説明では、針を抜き差しする特定の機構を備えている注射器の中で動力を弱めるシステムと方法とについて説明した。しかし、この明細書で説明されている注射器の例についての使用に発明が限られないことは、当業者には理解されるだろう。むしろ、他の投薬装置についても、発明の1以上の利点が得られる。これは、上記の詳細な説明を考慮すれば、当業者には明らかだろう。
【0252】
駆動用ばねについて説明したが、より一般的な弾性部材(駆動用ばねはそれらの一例に過ぎない。)についても発明の実施形態が説明可能であることを発明者は認識している。
【0253】
ダンパーが1つの場合について説明したが、2以上のダンパーを含む制動機構を注射器が備えていてもよい。それらのダンパーは相互に作用することにより駆動用ばねの力を弱めることができる。さらに、注射器について説明したが、発明の実施形態は、注射器の制動機構に関するとも、注射器の駆動装置に対する制動機構に関するとも言える。
【0254】
この明細書で開示されている発明による制動機構が、1回分の薬を自動的に投与するように構成されている注射器に実装されてもよい。特に、薬容器を前進させて1回分の薬を投与し、使用後の薬容器をハウジングに対して自動的に後退させる種類の自動注射器に利用されてもよい。
【0255】
この明細書で説明されている制動機構が、発明の上記の特徴による動力パックと組み合わされてもよいし、および/または、以下でより詳細に説明される接続装置と受動式安全シールドとの1以上と組み合わされてもよい。
【0256】
[接続装置]
この明細書で開示される発明は、シールされている薬容器の内部に注射針を接続するように構成されている接続装置の例も与える。
【0257】
図30aは注射器用の接続装置1500の断面図である。注射器は、
図1に示されているもののような、この明細書で開示される発明による投薬用のものである。
図30aに示されている接続装置1500は保管状態にある。接続装置1500は薬容器1007を含む。薬容器1007には薬Mが詰められており、キャップ1502が付いている。薬容器1007は隔壁1008でシールされている。キャップ1502には第1リブ1504と第2リブ1506とがある。これらのリブ1504、1506はキャップ1502の周を取り巻いており、それらの間に位置決め用の第1凹部1508を形成している。キャップ1502の外面1524にはシール要素1510が接触しており、第1凹部1508の中で第1リブ1504と第2リブ1506との間に挟まれている。シール要素1510はキャップ1502の周を取り巻いており、キャップ1502と化学的に結合し、特にオーバーモールドされている。これにより、キャップ1502とシール要素1510とは一体化している。シール要素1510は柔軟な材料から成り、(キャップ1502に化学的に結合していると共に)2本のリブ1504、1506の間で押し潰されている。
【0258】
キャップ1502の先端部(第1リブ1504と第2リブ1506とを含む。)とシール要素1510とは針ハブ1011の中に据え付けられている。針ハブ1011は本体1512と、本体1512から伸びている長尺部1514とを含む。針ハブ1011の本体1512の内部では、針ハブ1011、キャップ1502、およびシール要素1510の表面が空洞1516を仕切っており、その中に針1009の自由端1518が位置する。針ハブ1011の内面を見ると、針ハブ1011は第1内面1520を備えている。第1内面1520は円形であり、針1009に対して垂直に広がっており、キャップ1502に面している。針ハブ1011はまた、針1009へ向かって内周方向へ伸びている基端側突起1522も備えている。基端側突起1522は円環状であり、キャップ1502の外周面のまわりに伸びており、それに接触可能である。基端側突起1522はまた、選択に応じて第2リブ1506、特にその基端側の表面にも接触する。こうして、針ハブ1011はキャップ1502の先端(第1リブ1504、第2リブ1506、およびシール要素1510を含む。)を覆っている。
【0259】
針ハブ1011はまた、第2内面1528も備えている。第2内面1528は管状であり、針1009に対して平行に広がっており、第1内面1520と基端側突起1522とに繋がっている。針ハブ1011は堅い材料から成るので、柔らかいシール要素1510が、キャップ1502の第1リブ1504と第2リブ1506との間で押し潰されると共に、針ハブ1011の第2内面1528にも押し潰される。したがって、キャップ1502の外面1524と針ハブ1011の第2内面1528との間がシールされる。このシールはシール要素1510によって形成される。
【0260】
針1009は針ハブ1011の第1内面1520と長尺部1514とを貫通している。針1009は更に接続装置1500の先端に達し、針シールド(
図1に示されている針シール1004に相当する。)に接触している。
【0261】
針ハブ1011は、その本体1512の先端に環状突起1526を備えている。この突起の目的について、以下、
図30bを参照しながら説明する。
【0262】
図30aは接続装置1500の第1状態(注射前の状態)を示す。第1状態では、針1009の自由端1518が、隔壁1008から離れた位置に保持されている。
図30bは接続装置1500の第2状態を示す。第2状態では針1009が隔壁1008を貫いている。接続装置1500が、
図30aに示されている第1状態から、
図30bに示されている第2状態へ移行する過程について、以下に説明する。
【0263】
注射を実行する過程については
図1を参照しながら説明されているので、この実施形態にも同じ説明が適用されることは、読者には理解されるだろう。説明されているように、注射中、針ハブ1011と薬容器1007とが先端方向へ前進するので、皮下注射針1009が注射部位に突き刺さる。プランジャーロッド1015が前進を続ける(
図1参照。)ので薬容器1007が更に前進し、針ハブ1011に対して移動して針ハブ1011、特にその第2内面1528とキャップ1502の外面1524との間をシールし続ける。その後、針1009が隔壁1008を貫き、薬Mを薬容器1007から皮下注射針1009を通して排出可能にする。プランジャー1013が薬容器1007の中を隔壁1008へ向かって移動することにより、薬Mが薬容器1007から皮下注射針1009を通して排出される。こうして注射が実行される。
【0264】
注射の間に針ハブ1011が先端方向へ前進するので、針ハブ1011の環状突起1526が柔らかいラッチアーム1402(
図47a-
図47cとそれらについての後述の説明とを参照。)に引っ掛かり、それらを外周方向へ押し退ける。これにより、柔らかいラッチアーム1402がラッチ面1404から外れる。その結果、安全シールド1019がもはや後退位置にはロックされない。
【0265】
以下、
図31a、
図31bを参照しながら、投薬用の注射器に使用される他の接続装置について説明する。
図31aに示されている接続装置は、
図30a、
図30bに示されているものと同様であるが、次の点で異なる。まずシール要素9510がOリングである。以前のものと同様、シール要素9510は柔軟な材料から成る。シール要素9510はキャップ9502(堅い材料から成る。)の位置決め用の凹部9508の中に設置されている。針ハブ9011(これも堅い材料から成る。)にも同様な凹部9530がある。接続装置9500が第1状態、すなわち針9009の自由端が隔壁9008から離れている位置に保持されている状態であるとき、針ハブ9011の凹部9530がシール要素9510と並ぶので、シール要素9510をキャップ9502の位置決め用の凹部9508の中へ押し込むのに役立つ。こうして、シール要素9510によりキャップ9502と針ハブ9011との間にシールが形成され、空洞9516が形成される。
【0266】
上記のとおり、注射の間は薬容器9007が針ハブ9011に対して(先端側へ)前進するので、針ハブ9011とキャップ9502との間のシールが維持される。
【0267】
図31bは
図31aの接続装置9500の第2状態を示す。すなわち、針9009が隔壁9008を貫いているときの状態を示す。シール要素9510がキャップ9508の第1凹部9508の中で針ハブ9011の内面に押し潰されている。針ハブ9011の位置決め用の凸部9532がキャップ9502の位置決め用の第2凹部9534と並び、その中にロックされる。第2凹部9534は第1凹部9530の隣に位置する。接続装置9500が第2状態になると第2凹部9534に凸部9532がロックされるので、針ハブ9011がキャップ9502に対して基端側へ移動することが妨げられる(したがって、針9009が薬容器9007からは抜けない)。
【0268】
図32aには第3接続装置10500が示されている。第3接続装置10500は(
図30a、
図30b、
図31a、
図31bに示されている)上記2つの接続装置と共通の要素を含むが、次の点で異なる。第1に、(
図30a、
図30b、
図31a、
図31bに示されている接続装置では、キャップが針ハブの内側に設置されていたのに対し、)第3接続装置10500は、針ハブ10011がキャップ10502の内側に設置されるように構成されている。第3接続装置10500が第1状態(注射前の状態)にあるとき、針ハブ10011の一部がキャップ10502の内側に設置されている。
【0269】
隔壁10008も、
図30a、
図30b、
図31a、
図31bに示されている隔壁とは形が異なり、機能も追加されている。隔壁10008は主部10008aと長尺部10008bとを含む。長尺部10008bは環状のリッジであり、空洞10516を形成している。針ハブ10011も長尺部10550を含む。
【0270】
シール要素10510が隔壁10008の一部、特に長尺部10008bの先端によって形成されており、キャップ10502の内面と針ハブ10011の外面との間に挟まれている。キャップ10502と針ハブ10011とはいずれも堅い材料(同じ材料であってもなくてもよい。)から成り、隔壁10008は柔らかい材料から成る。したがって、隔壁10008の環状のリッジ10008bがキャップ10502と針ハブ10011との間で押し潰されてシールを形成している。これにより、流路、すなわち空洞10516が形成されている。
【0271】
キャップ10502は第1肩部10538と第2肩部10540とを備えている。各肩部10538、10540では(キャップ10502の先端から基端へ向かうにつれて)キャップ10502の半径が急激に増大している。シール要素(すなわち、隔壁10008の先端)は第1肩部10538と針ハブ10011との間で押し潰されている。このように、シール要素がキャップ10502のうち、形がはっきりしている部分に押し付けられているので、しっかりとしたシールが確実に得られる。第1肩部10538に対して基端側に位置するキャップ10502の部分はキャップ10502の先端よりも半径が大きいので、針ハブ10011に対する薬容器10007と隔壁10008との動きが過度には制限されない。キャップ10502の第2肩部10540は隔壁10008を押し潰すことでシールを形成している。
【0272】
キャップ10502は薬容器10007の先端を囲んでいる。薬容器10007の先端は、第1半径の第1円筒部10542と、第1半径よりも小さい第2半径の第2円筒部10544とを含む。第2円筒部10544は第1円筒部10542よりも隔壁10008から遠い。キャップ10502は薬容器10007の第1円筒部10542に接触しており、第2円筒部10544によりロックされるリブ10055(第1円筒部10542に比べて半径が小さい。)を備えている。これにより、キャップ10502が薬容器10007に固定されやすい。
【0273】
キャップ10502の先端には、針ハブ10011の一部を収める穴がある。キャップ10502はこの穴に、内周方向へ突出している突起10546を含む。針ハブ10011には、キャップ10502の突起10546に引っ掛かる突起10566があり、針ハブ10011がキャップ10502に対して先端側へ移動してキャップ10502から外れるのを防いでいる。キャップ10502の突起10546には斜面があり、先端が基端よりも薄い。針ハブ10011には斜面10562があり、後述のように、第3接続装置10500が第1状態から第2状態へ移行するとき、キャップ10502の突起10546の斜面に引っ掛かる。針ハブ10011には凹み10554もある。第3接続装置10500が第2状態にあるとき、凹み10554にキャップ10502の突起10546がロックされるので、第3接続装置10500が第2状態に到達した後は針ハブ10011がキャップ10502に対して先端側へは移動できない。
【0274】
針ハブ10011には、外周方向へ広がっている円板10556もある。円板10556には、針ハブ10011の周方向に等間隔で並んでいる3つの穴がある。これらの穴は
図32cで見られる。穴には3枚の翼部10558があり、それらが穴を分けている。穴には、第3接続装置10500が第1状態にあるときにはキャップ10502の先端が収容され、第3接続装置10500が第1状態から第2状態へ移行する際、キャップ10502に対する針ハブ10011の捩れを防ぐ。これについては後で更に詳細に説明する。
【0275】
キャップ10502には3つの凹み10560がある。凹み10560は、針ハブ10011がキャップ10502に対して基端側へ移動する際、針ハブ10011の3枚の翼部10558が収容されるように構成されている。
【0276】
第3接続装置10500が第1状態から第2状態へ移行する間、薬容器10007が針ハブ10011に対して先端側へ移動するので、このときには、針ハブ10011の長尺部10550が隔壁10008の縦穴、すなわち空洞10516の内側に収容される。針ハブ10011の長尺部10550の連続している表面にはシール要素10510が、キャップ10502によって押し付けられる。こうして、第3接続装置10500が(
図32aに示されている)第1状態から(
図32bに示されている)第2状態へ移行する間、シール要素10510がキャップ10502の内面と針ハブ10011の外面との間で押し潰され続ける。針ハブ10011の表面がこのように滑らかであることは、針ハブ10011の製造が容易であることを意味する。位置決め具がないことも、シール要素10510が針ハブ10011の上を移動する際に損傷しにくいことを意味する。
【0277】
針ハブ10011が更に移動すると、針ハブ10011の斜面10562にキャップ10502の突起10546の斜面10564が乗り上げるので、キャップ10502の先端が針ハブ10011の幅だけ押し広げられる。針ハブ10011がキャップ10502に対して基端側へ移動し続けると、やがて針10009が隔壁10008を貫く。薬容器10007と針10009との間に流路が開かれ、薬Mが排出される。キャップ10502の突起10546が針ハブ10011の凹み10554に嵌まる位置まで到達すると(
図32bに示されている。)、針ハブ10011がその位置からキャップ10502に対して先端側へは移動できない。
【0278】
図32cは、注射器が第1状態(注射前の状態)にあるときの第3接続装置10500の別の図である。示されているように、キャップ10502の先端が針ハブ10011の円板10556の穴の中に収容されている。キャップ10502には凹み10560があり、針ハブ10011がキャップ10502に対して基端側へ移動すると、凹み10560に円板10556の翼部10558が収容される。
【0279】
図33は第4接続装置11500を示す。第4接続装置11500は、キャップ11502を囲んでいるシール用スリーブ11568を備えている。シール用スリーブ11568は基端が薬容器11007の外面に接触しており、薬容器11007を囲んでいる固定用リング11572によって適所に保持されている。第4接続装置11500はまた、堅い針ハブ11011を備えている。針ハブ11011は針11009で貫かれている。針ハブ11011はシール用スリーブ11568の先端でその内面に接触している。キャップ11502とシール用スリーブ11568との間にも、針ハブ11011とシール用スリーブ11568との間にも、シールが形成されている。空洞11570は、針ハブ11011、シール用スリーブ11568、キャップ11502、および隔壁11008によって仕切られている。第4接続装置11500が第1状態(保管状態)にあるときには、空洞11570の中に針11009の自由端11518が位置する。
【0280】
薬容器11007に対して先端方向の力が加えられると、薬容器11007が針11009と針ハブ11011とに対して先端側へ移動する。薬容器11007が前進するとシール用スリーブ11568が潰れて外周方向へ曲がるので、針11009が隔壁11008を貫く。その結果、薬Mが針11009を通して排出される。
【0281】
図34は第5接続装置12500を示す。
図33に示されている第4接続装置11500と同様に、第5接続装置12500もシール用スリーブ12568を使用する。シール用スリーブ12568はキャップ12502を囲んでおり、キャップ12502の基端では内周方向へ広がっている。これにより、シール用スリーブ12568がキャップ12502に固定されている。シール用スリーブ12568の内面とキャップ12502の外面12574との間にはシールが形成されている。
【0282】
シール用スリーブ12568の先端は、堅い針ハブ12011にロックされている。針ハブ12011は針12009によって貫かれている。針ハブ12011とシール用スリーブ12568の先端との間にはシールが形成されている。
【0283】
シール用スリーブ12568は先端にリップ12576を備えている。リップ12576はシール用スリーブ12568の先端のまわりに広がっている。注射器が第1状態にあるとき、リップ12576は基端方向へ伸びている。
【0284】
薬容器12007に対して先端方向の力が加わると、薬容器12007が針ハブ12011と針12009とに対して移動する。薬容器12007が前進すると、シール用スリーブ12568(特に、キャップ12502の外面に接触していない部分)が外周側へ潰れ、リップ12576が裏返って先端方向へ伸び、針ハブ12011の先端を囲む。これにより針ハブ12011が案内されるので、薬容器12007に対して中央側へ確実に寄せられる。やがて針12009が隔壁12508を貫くので、薬Mが針12009を通して排出される。
【0285】
図35は第6接続装置13500を示す。第6接続装置13500もシール用スリーブ13568を使用する。この構成ではシール用スリーブ13568がキャップ13502を囲み、キャップ13502の基端で内周方向へ広がっている。これにより、シール用スリーブ13568がキャップ13502に固定されている。シール用スリーブ13568の先端にはリッジがあり、針ハブ13011の基端のリッジにロックされている。これにより、シール用スリーブ13568と針ハブ13011との間にはシールが形成されている。針ハブ13011は堅い材料から成り、シール用スリーブ13568は柔らかい材料から成る。
【0286】
シールはシール用スリーブ13568とキャップ13502の外面13574との間にも形成されている。針ハブ13011とキャップ13502との内壁、および隔壁13008によって空洞13578が仕切られている。第6接続装置13500が第1状態にあるとき、空洞13578の中に針13009の自由端13518が位置する。
【0287】
薬容器13007に対して先端方向の力が加えられると、薬容器13007が針13009と針ハブ13011とに対して先端側へ移動する。薬容器13007が前進するにつれ、針ハブ13011の壁13580がシール用スリーブ13568の内側(特に、内周側)を移動する。この移動の間、シール用スリーブ13568と針ハブ13011の外面との間のシールが維持される。やがて針13009が隔壁13008を貫くので、薬Mが針13009を通して排出される。
【0288】
図36は第7接続装置14500を示す。
図36の接続装置14500は、薬容器14007のキャップ14502に接触している栓14582の形をしたシール要素を備えている。その他に、栓14582が、キャップ14502を囲んでいる第1外側キャップ(図示せず。)に接触していてもよい。このように外側キャップを使用する利点は、薬容器14007とそのキャップ14502とを第7接続装置14500と共に使用する目的では、それらに何らの修正を加える必要も、それらを特定の形にする必要も、それらに特定の器具を設ける必要もない点にある。栓14582は柔らかい材料から成る。
【0289】
栓14582には針ハブ14011が接触している。第7接続装置14500が第1状態にあるとき、針ハブ14011は一部が栓14582の内側(すなわち、内周側)に位置している。針ハブ14011は堅い材料から成り、安定性を保つための翼部14586を含む。キャップ14502、栓14582、および針ハブ14011の一部は第2外側キャップ14588によって囲まれている。第2外側キャップ14588には複数本の縦穴があり、第7接続装置14500が第1状態から第2状態へ移行する際、それらの縦穴の中を翼部14586が移動する。このように翼部14586が第2外側キャップ14588の縦穴にロックされることにより、第7接続装置14500が第2状態へ移行する際に針ハブ14011が栓14582に対して回転することが防止される。第2外側キャップ14588の縦穴は
図36には示されていないが、
図32cに示されているキャップ10502の縦穴と同様である。翼部14586は更に、後述のように、針ハブ14011が基端方向へ行き過ぎるのを防ぐ。
【0290】
針ハブ14011の翼部14586の隣には凹み14590がある。注射器が第2状態にあるとき、凹み14590には、栓14582の先端に位置するリッジ14592がロックされる。
【0291】
(
図36に示されている)第1状態では針ハブ14011の外面と栓14582の内面との間にシールが形成されている。栓14582、針ハブ14011、キャップ14502の先端、および隔壁14008が空洞14578を仕切っている。第7接続装置14500が第1状態にあるとき、空洞14578の中に針14009の自由端14518が位置する。
【0292】
薬容器14007に対して先端方向の力が加わると、薬容器14007が(第2外側キャップ14588および栓14582と共に)針14009と針ハブ14011とに対して先端側へ移動する。薬容器14007が前進するにつれて、針ハブ14011の基端が栓14582の壁14594の内側(特に、内周側)を移動する。この移動の間も、栓14582と針ハブ14011の外面との間にはシールが維持される。針ハブ14011が栓14582に対して移動し、やがて針14009が隔壁14008を貫いて薬Mが針14009を通して排出される。上記のとおり、針ハブ14011の翼部14586が第2外側キャップ14588の縦穴に嵌まっているので、やがては栓14582の先端に隣接する。したがって、針ハブ14011が栓14582に対して基端側へ更に移動することが防止される。その上、針ハブ14011の凹み14590が栓14582のリッジ14592にロックされるので、針ハブ14011が栓14582に対して先端側へ戻ることも防止される。
【0293】
図37は第8接続装置15500を示す。第8接続装置15500は容器15596を備えている。容器15596は、針15009の基端、針ハブ15011の基端、第1シール要素15598a、および第2シール要素15598bを囲んで収容している。シール要素15598a、15598bは2本の柔軟なリングとして形成されている。リング15598a、15598bは柔らかい材料から成る。一方、容器15596は堅い材料から成る。第1リング15598aは容器15596の内面とキャップ15502の外面15574との間に挟まれている。第1リング15598aにより、容器15596の内面とキャップ15502の外面15574との間にシールが形成されている。第2リング15598bは容器15596の内面と針ハブ15011の外面との間に挟まれている。第2リング15598bにより、容器15596の内面と針ハブ15011の外面との間にシールが形成されている。容器15596、針ハブ15011の基端、およびキャップ15502の先端の内面により空洞15578が仕切られており、リング15598a、15598bによってシールされている。第8接続装置15500が(
図37に示されている)第1状態にあるとき、空洞15578の中に針15009の自由端15518が位置する。
【0294】
薬容器15007に対して先端方向の力が加わると、薬容器15007が針15009と針ハブ15011とに対して先端側へ移動する。薬容器15007が前進するにつれて容器15596の先端が曲がって開き、第8接続装置15500の先端の外周側へ移動する。薬容器15007が前進する間も、針ハブ15011と容器15596との間のシールが(第2リング15598bによって)維持され、キャップ15502と容器15596との間のシールが(第1リング15598aによって)維持される。やがて針15009が隔壁15008を貫いて薬Mが針15009を通して排出される。
【0295】
図38は第9接続装置16500を示す。第9接続装置16500は、
図35に示されているものと同様に、たとえばシール用スリーブ16568を使用する。シール用スリーブ16568は柔らかい材料から成る。この実施形態では、シール用スリーブ16568がキャップ16502を囲み、その基端で内周側へ広がっている。これにより、シール用スリーブ16568がキャップ16502に固定されている。シール用スリーブ16568の先端は針ハブ16011の内面16600とキャップ16502の外面16574との間に挟まれている。キャップ16502と針ハブ16011の内面16600との間のシールがシール用スリーブ16568によって形成されている。針ハブ16011、キャップ16502、および隔壁16008の内面により空洞16578が仕切られており、シール用スリーブ16568によってシールされている。第8接続装置16500が第1状態にあるとき、空洞16578の中に針16009の自由端16518が位置する。
【0296】
シール用スリーブ16568の外面は位置決め具を備えている。第9接続装置16500が第1状態にあるときには、位置決め具が針ハブ16011の基端を保持し続ける。この場合、位置決め具はリッジ16602a、16602bである。第9接続装置16500が第1状態にあるとき、リッジ16602a、16602bの間には、針ハブ16011の基端に位置するリッジ16604が設置されるので、針ハブ16011が薬容器16007に対して保持される。
【0297】
薬容器16007に対して先端方向の力が加わると、薬容器16007が針16009と針ハブ16011とに対して先端側へ移動するので、針ハブ16011のリッジ16604がシール用スリーブ16568のリッジ16602aを乗り越える。薬容器16007が前進する間も、キャップ16502と針ハブ16011の内面16600との間にはシールが維持される。やがて針16009が隔壁16008を貫いて薬Mが針16009を通して排出される。
【0298】
図39は第10接続装置17500を示す。第10接続装置17500は、以下の違いを除き、大部分が
図34に示されているものと同様である。
図39の接続装置17500は、
図34に示されているリップ12576を備えていない。(ただし、この実施形態にリップを組み込むことが可能であることは理解されるだろう。)
図34の接続装置と同様に、
図39の接続装置17500はシール用スリーブ17568を備えている。
図39の接続装置17500の場合、シール用スリーブ17568のうち、キャップ17502の外面に接触していない領域(すなわち、針ハブ17011とキャップ17502との間に挟まれている領域)は、キャップ17502と針ハブ17011とのそれぞれに接触している部分に比べ、厚みが減らされている。これにより、この位置(すなわち、厚みが減らされている位置)ではシール用スリーブ17568が潰れる可能性が高いので、第10接続装置17500の部品のより良い制御に役立つ。
【0299】
図40は第11接続装置18500を示す。第11接続装置18500では針ハブ18011が角ねじの雌ねじ18606を備えている。雌ねじ18606は、薬容器18007のキャップ18502を囲んでいるスリーブ18608に形成されている雄ねじと噛み合うように構成されている。スリーブ18608は柔らかい材料から成る。第11接続装置18500が第1状態にあるとき、すなわち針18009がキャップ18502の隔壁(図示せず。)を貫く前では、スリーブ18608の雄ねじが針ハブ18011の雌ねじ18606とシールを形成している。
【0300】
薬容器(図示せず。)に対して先端方向の力が加わると、スリーブ18608の雄ねじと針ハブ18011の雌ねじ18606とが互いを乗り越えるので、薬容器が針18009と針ハブ18011とに対して先端側へ移動する。薬容器が前進するにつれて、針18009が隔壁を貫いて薬が針18009を通して排出される。
【0301】
図41は第12接続装置19500を示す。第12接続装置19500は
図30aに示されているものと同様であるが、この場合はシール要素19510が、キャップ19502の外面ではなく、針ハブ19011の内面に接着されている。さらに、キャップ19502の外面には1本のリブ19610しかない(
図30aのリブ1504に相当する)。シール要素19510はリブ19610と針ハブ19011の基端19612との間で押し潰されている。それ以外の点については、第12接続装置19500の動作は、
図30a、
図30bを参照しながら説明された動作と同じである。
【0302】
次のことは理解されるだろう。リブ19610が存在しなくてもよく、代わりに、シール要素とキャップとの間の摩擦により、シール要素が針ハブに対して基端側へ移動しないようにされていてもよい。
【0303】
図42は第13接続装置20500を示す。第13接続装置20500は、次の点を除き、
図30a、
図30bに示されているものと同様である。キャップ20502を囲んでキャップ20502と針ハブ20011の内面との間にシールを形成するシール要素に代えて、針20009を囲んでいるスリーブ20614の形をしたシール要素がある。スリーブ20614は針ハブ20011の内壁(針20009に対して垂直であり、針ハブ20011の先端に位置している。)からキャップ20502の先端まで伸びており、針20009に面している。このように、スリーブ20614は針20009を囲み、針20009と、隔壁のうち針20009で貫かれる領域との両方を常に滅菌状態に維持する。
【0304】
薬容器20007に対して先端方向の力が加わると、薬容器20007が針20009と針ハブ20011とに対して先端側へ移動する。薬容器20007が前進するにつれてスリーブ20614が外周側へ潰れる。やがて針20009が隔壁を貫いて薬Mが針20009を通して排出される。
【0305】
上記の実施形態のいずれにおいてもシール要素が、Santroprene等の可鍛性エラストマーから形成されていてもよい。特にSantroprene101-73が使用可能である。
【0306】
上記の実施形態のいずれにおいてもキャップと針ハブとが、ポリプロピレン等の硬質ポリマーから形成されていてもよい。
【0307】
上記の実施形態のいずれにおいても針が、ステンレス鋼(たとえばグレード304または316)等の金属から形成されていてもよい。
【0308】
図43は、投薬用の注射器を対象とする接続装置の製造方法を示すフローチャートである。この方法は以下のステップを備えている。ステップ301では、キャップ付きであって隔壁でシールされている薬容器が用意される。ステップ303では、薬容器のキャップの外面に接触するシール要素が用意される。ステップ305では、隔壁を貫かせるための針が用意される。シール要素が薬容器のキャップの外面と針ハブの内面との間に設置される。ステップ307では針ハブが用意される。接続装置は、第1状態(針が隔壁から離れている状態に保持されており、シール要素によってシールされている空洞の中に針の自由端が位置する。)から第2状態(針が隔壁を貫いている。)へ移行するように構成されている。接続装置が第1状態にあるときは、針ハブの内面とキャップの外面との間のシールがシール要素によって形成されている。そのシールは、接続装置が第1状態から第2状態へ移行する間もずっと維持され、第2状態にあるときも維持される。
【0309】
この明細書で開示される発明による接続装置は、1回分の薬を自動的に排出するように構成されている注射器に実装可能である。しかし、この明細書で説明されている接続装置が、手動式投薬装置にも、電動の駆動手段を備えている投薬装置にも、実装されてもよいことは理解されるだろう。実施形態の中には少なくとも、この明細書で開示される発明による接続装置と制動機構とが、次のような種類の自動注射器に使用されているものがあってもよい。薬容器に前進をさせて1回分の薬を排出させ、使用後にはハウジングへ自動的に後退させる。
【0310】
この明細書で説明されている接続装置は、発明の上記の観点による動力パックおよび/または制動機構と組み合わされても、および/または、以下に詳細に説明される受動式安全シールドと組み合わされてもよい。
【0311】
[受動式の針刺し防止手段]
この明細書には、注射器の使用前、使用中、および使用後において針刺しからユーザーを守るように構成されている安全装置の例も開示されている。
【0312】
【0313】
図44a、
図44bに示されているように、安全シールド1019は、穴1400を除いて先端が閉じている丸管を備えている。注射が行われる間、穴1400の中には皮下注射針1009が伸びている。安全シールド1019はハウジング1023の先端部を囲んでいる。
図44a-
図44cは、ハウジング1023に対して後退した位置にある安全シール1019を示す。安全シールド1019はハウジング1023に対して先端側へ、皮下注射針1009を保護する前進位置まで前進可能である。前進用ばね1025が安全シールド1019に対し、前進位置へ向かう力を加える。前進用ばね1025はハウジング1023と安全シールド1019との間に位置し、前進用ばね1025の基端は、ハウジング1023の先端付近にある先端側を向いている肩部に対して力を加え、前進用ばね1025の先端は安全シールド1019の先端に対して力を加える。ただし、
図44a-
図44cに示されている注射前の状態では、ハウジング1023の柔軟なラッチアーム1402が安全シールド1019のラッチ面1404に引っ掛かり、安全シールド1019の前進を阻む。したがって、注射前の状態では、前進用ばね1025が作用しても安全シールド1019が前進位置までは前進できない。つまり、柔軟なラッチアーム1402とラッチ面1404とが解放可能なロック機構を備えている。
図44a-
図44cではこの機構がロックされている状態にある。
【0314】
ハウジング1023の基端には、薬容器1007を収容するための穴1406があり、先端には、注射が行われる間、皮下注射針1009と針ハブ1011の先端とを通すための穴1408がある。薬容器1007はハウジング1023の中に収容されており、針ハブ1011と皮下注射針1009とに結合している。
図44a-
図44cが示す注射前の状態では、薬容器1007、針ハブ1011、および皮下注射針1009が第1位置(後退位置)にある。これらは、第1位置(後退位置)からハウジング1023の中を先端方向へ移動するように、さらに、注射が行われる間に第2位置(注射位置)まで移動するように構成されている。薬容器1007、針ハブ1011、および皮下注射針1009は、復帰用ばね1021により、第1位置(後退位置)へ向かって力を受けている。復帰用ばね1021はハウジング1023と薬容器1007との間に配置されている。復帰用ばね1021の基端は薬容器1007の、先端側を向いている肩部に対して力を加える。復帰用ばね1021の先端はハウジング1023の先端に対して力を加える。薬容器1007は、プランジャーロッド1015(
図44a-
図44cには示されていない。)の作用により第2位置(注射位置)まで移動可能である。すなわち、プランジャーロッド1015が動作すると、復帰用ばね1021の力に打ち勝って薬容器1007を第2位置(注射位置)まで前進させる。薬容器1007が針ハブ1011と結合しているので、薬容器1007が第2位置(注射位置)へ向かって前進すると、針ハブ1011(および皮下注射針1009)も第2位置(注射位置)へ向かって前進するので、皮下注射針1009が注射部位に刺さる。薬容器1007が第2位置(注射位置)へ向かって更に前進すると、隔壁1008が皮下注射針1009の基端によって貫かれる。なお、注射前の状態では皮下注射針1009が隔壁1008を貫いてはいないので、薬容器1007の中の薬の滅菌状態が維持されている。
【0315】
安全シールド1019は内面に第1突起1410を含み、ハウジング1023は外面に第2突起1412を含む。
図44aに示されているように、注射前の状態では第1突起1410と第2突起1412とが隣り合っている。これにより、安全シールド1019が、示されている後退位置よりもハウジング1023に対して基端側へ更に移動することが妨げられる。さらに、安全シールド1019が前進位置まで前進すると、第1突起1410が一方向受け部1414の、基端側を向いている切り立った崖面1414aに接触する。したがって、安全シールド1019は前進位置を越えて前進することができない。言い換えると、第1突起1410、第2突起1412、および一方向受け部1414の設置により、安全シールド1019の移動が後退位置と前進位置との間に制限される。その上、一方向受け部1414の、先端側を向いている斜面1414bにより、注射器1001の先端部1bの組み立て中、第1突起1410に一方向受け部1414を乗り越えさせることができる。一方向受け部1414は片持ち梁状のアーム1416も含むので、注射器1001の先端部1bの組み立てには更に便利である。要するに、注射器1001の先端部1bは、組み立てが容易であるが、分解も改竄も容易ではない。
【0316】
図44cに示されているように、ハウジング1023は更に、基端部の外面に組み立て用タブ1418を備えている。組み立て用タブ1418は、注射器1001の組み立て時にハンドル1003の部材に嵌まるように構成されている。これにより、先端部1bが基端部1aに固定される。
【0317】
図45aは、
図1の示す安全シールド1019の第1斜視図であり、そこには安全シールド1019の内面が見えている。
図45bは、
図1の示す安全シールド1019の第2斜視図であり、そこには安全シールド1019の先端が見えている。
図45cは、
図1の示すハウジング1023の斜視図である。
【0318】
図45aは2本の第1突起1410のうちの1本を示す。
図45aでは見えないが、もう1本の第1突起1410は、見えている第1突起1410と向かい合っている。言い換えると、安全シールド1019は第1突起1410を2本備えており、安全シールド1019の向かい合っている内面に1本ずつ設置されている。
図45aに示されているように第1突起1410は、安全シールド1019の内周の一部に沿って周方向へ伸びている突起である。安全シールド1019の先端には2枚のラッチ面1404のうちの1枚も見えている。
図45aでは見えないが、もう1枚のラッチ面1404は見えているラッチ面1404と向かい合っている。言い換えると、安全シールド1019はラッチ面1404を2枚含み、穴1400の向かい合っている縁に1枚ずつ設置されている。最後に、
図45aは、安全シールド1019の内面に形成されている長軸方向のリッジ1420を示す。
図44a-
図44cに示されているように安全シールド1019が後退位置にあるとき、長軸方向のリッジ1420のそれぞれがハウジング1023の長軸方向の溝1422に嵌まっている。
【0319】
図45cに示されているように、ハウジング1023は、先端側を向いている肩部1424を備えている。肩部1424は、先端側を向いている第1ロック面1426を複数枚含む。第1ロック面1426は溝1422の先端に配置されている。さらに、長軸方向のリッジ1420がそれぞれ、基端側を向いている第2ロック面1428を備えている。すなわち、長軸方向のリッジ1420がそれぞれ、第2ロック面1428から先端方向へ伸びている。安全シールド1019が前進位置にあるとき、リッジ1420が溝1422の先端側に位置するので、第1ロック面1426と第2ロック面1428とが向かい合う。
【0320】
図45cはハウジング1023の2本のラッチアーム1402と2つの一方向受け部1414のうちの1つとを示す。読者には理解されるだろうように、もう1つの一方向受け部1414は、見えている一方向受け部1414とはハウジング1023の反対側に設置されている。2本のラッチアーム1402は、2枚のラッチ面1404に引っ掛かるように構成されている。2つの一方向受け部1414は、2本の周方向の突起1410に引っ掛かるように構成されている。最後に、
図45cでは4つの組み立て用タブ1418のうちの2つが見えている。
【0321】
図46は、自然な状態(非圧縮状態)にある前進用ばね1025の側面図である。示されているように、前進用ばね1025は基端部1430と先端部1432とを含む。基端部1430は先端部1432よりも直径が大きい。注射器1001が組み立てられるときには前進用ばね1025はハウジング1023と安全シールド1019との間に配置されている。前進用ばね1025は更に、基端部1430がハウジング1023の肩部1424に接触し、先端部1432が安全シールド1019の先端に接触するように配置されている。これにより、安全シールド1019が
図44a-
図44cに示されている後退位置にあるとき、前進用ばね1025は軸方向に圧縮された状態にあり、安全シールド1019に対して前進位置へ向かって力を加えている。さらに、安全シールド1019が後退位置にあるとき、前進用ばね1025の基端部1430がリッジ1420の間に挟まれているので、リッジ1420によって径方向に圧縮されている。後でより詳細に説明されるように、安全シールド1019が前進位置にあるときには前進用ばね1025の基端部1430がもはやリッジ1420の間には挟まれていないので、径方向には圧縮されない。前進用ばね1025の基端部1430は径方向へ広がり、第1ロック面1426と第2ロック面1428との間で楔となる。したがって、安全シールド1019が、前進位置に到達した後は、後退位置へ戻れない。安全シールド1019が前進位置から先端側へ更に移動することを一方向受け部が妨げ、前進用ばね1025の基端部1430が第1ロック面1426と第2ロック面1428との間で楔として働き、安全シールド1019が基端へ向かって移動することを妨げる。こうして、安全シールド1019が後退位置から動けなくなる。
【0322】
【0323】
先に説明されたとおり、
図1の保管状態ではカバー1006がハウジング1023と安全シールド1019とを囲んでいる。この状態が、
図47aに示されている保管状態である。ユーザーが注射を準備するとき、カバー1006が取り外されてハウジング1023と安全シールド1019とが露出する。この注射前の状態が
図47bに示されている。ユーザーが駆動装置1016を動作させて注射を行うとき、薬容器1007が針ハブ1011に対して先端側へ前進し、皮下注射針1009に隔壁1008を貫かせる。その後、薬容器1007と針ハブ1011が更に先端方向へ移動するので、皮下注射針1009が注射部位に突き刺さる。この注射中の状態、すなわち薬容器1007と針ハブ1011とが第2位置(注射位置)にある状態が
図47cに示されている。
【0324】
図47a-
図47cから理解できるように、前進用ばね1025が軸方向に圧縮されているので、安全シールド1019に対し、前進位置へ向かって力を加えている。しかし、
図47a、
図6bでは柔軟なラッチアーム1402がラッチ面1404に引っ掛かることにより、安全シールド1019が前進位置へ前進する。言い換えると、保管状態と注射前の状態とでは安全シールド1019が後退位置にロックされているが、
図47cに示されている注射中の第1状態のように針ハブ1011が第2位置(注射位置)へ移動すると、柔軟なラッチアーム1402がラッチ面1404から外れる。したがって、安全シールド1019がもはや後退位置にはロックされない。
【0325】
注射が正しく行われると、駆動装置1016が動作を完了し、薬容器1007から薬をすべて排出させる。このとき、駆動装置1016がプランジャーロッド1015から離れる。したがって、復帰用ばね1021(
図47cに示されている注射中の第1状態では圧縮されている。)が薬容器1007を第1位置(後退位置)へ戻すので、皮下注射針1009も後退させる。ユーザーによって注射が正しく行われた場合は、注射が完全に終わって薬容器1007が第1位置(後退位置)へ戻るまで、注射器1001が注射部位からは除去されない。それ故、その場合は、注射器1001が注射部位から除去されるときまでにラッチアーム1402がラッチ面1404に再び引っ掛かる。したがって、安全シールド1019が後退位置にロックし直される。言い換えると、
図47Dに示されている注射後の第1状態(すなわち、正しい状態)で注射が完了していれば、針1009がハウジング1023の中まで後退しており(したがって、安全であり)、安全シールド1019が使用されない。
図47Dに示されているように、薬容器1007と針ハブ1011とが基端方向へ移動して第1位置(後退位置)に戻ると、それらと共に第1指標帯1434が基端方向へ移動する。第1指標帯1434は薬容器1007とハウジング1023との間に位置しており、緑色であってもよい。したがって、薬容器1007と針ハブ1011とが第1位置(後退位置)に戻ると、第1指標帯1434がハウジング1023の窓部1436を通して見えるようになる。これにより、1回分の薬がすべて針1009を通して投与され、薬容器1007と針ハブ1011とが第1位置(後退位置)に正常に戻ったことをユーザーに視覚的に認識させる。
【0326】
一方、注射器が予定よりも早く注射部位から除去されるべき場合、または針を後退させる機構に不具合が生じた場合、注射器1001が、
図47Eに示されている注射中の第2状態へ移行した後、
図47Fに示されているように注射後の第2状態になる。
【0327】
注射後の第2状態(すなわち、異常な状態)では、駆動装置1016の動作が不完全であったので、薬容器1007から1回分の薬が不完全にしか排出されていない。または、駆動装置1016がプランジャーロッド1015から離れていない。いずれの場合でも、針ハブ1011が第1位置(後退位置)には戻っていないので、ラッチアーム1402がロックされない位置に留まる。言い換えると、安全シールド1019がロックされている状態には決して戻らない。したがって、注射器1001が注射部位から除去されると、安全シールド1019が前進位置まで前進できる。注射器1001は一時的に、
図47Eが示す注射中の第2状態になる。この状態では針1009が第2位置(注射位置)に残っているが、前進位置にある安全シールド1019が針1009による怪我を防ぐ。さらに、前進用ばね1025の基端1430が第1ロック面1426と第2ロック面1428との間で楔になるので、安全シールド1019が後退位置には戻れない。要するに、注射器が正しく使われなくても、安全シールド1019が注射器を安全に保つ。
図47Eからわかるように、安全シールド1019の前進に伴い、ハウジング1023の先端部の外面に位置する第2指標帯1438が見えるようになる。安全シールド1019の前進は注射器の異常な使用の結果であるので、第2指標帯1438が見えることから、その異常な使用を容易に知らせることができる。第2指標帯1438が赤色であってもよい。
【0328】
図47Fは注射後の第2状態(すなわち、異常な状態)を示す。この状態では、駆動装置1016が動作を完了し、薬容器1007から薬がすべて排出されている。さらに、駆動装置1016がプランジャーロッド1015からの分離に成功しているので、復帰用ばね1021が薬容器1007を第1位置(後退位置)へ戻して針1009を後退させることができる。しかし、(
図47Eの示す注射中の第2状態について説明されたとおり)薬容器1007が後退する前に注射器1001が注射部位から除去されたので、安全シールド1019が前進位置にロックされている。その上、薬がすべて皮下注射針1009を通して排出されていても、注射器1001が予定よりも早く注射部位から除去されたので、1回分の薬が完全には注射部位に投与されていない。
図47Fに示されているように、第1指標帯1434と第2指標帯1438との両方が見えている。このことは、(第1指標帯1434が見えているので)1回分の薬が針1009を通して完全に排出されたことを示すだけでなく、(第2指標帯1438が見えているので)注射器1001が予定よりも早く注射部位から除去された結果、1回分の薬が完全には患者に投与されなかったことも示す。
【0329】
【0330】
・注射後の第1状態。注射器1001が正しく使用されたことを示す。この状態では針1009が第1位置(後退位置)にあり、安全シールド1019が後退位置にある。この状態は
図47Dに示されている。
図48Aも参照せよ。
図48Aは注射後の第1状態にある注射器1001の外観図である。示されているように、第1指標帯1434が見えている。
【0331】
・注射中の第2状態。注射器1001が不正に使用され、針1009を通した投薬が不完全であることを示す。この状態では針1009が注射位置にあり、安全シールド1019が前進位置にある。この状態は
図47Eに示されている。
図48Bも参照せよ。
図48Bは注射中の第2状態にある注射器1001の外観図である。示されているように、第2指標帯1438が見えている。
【0332】
・注射後の第2状態。注射器1001が不正に使用され、針1009を通した投薬は完全であるが、注射部位への投薬が不完全であったことを示す。この状態では針1009が第1位置(後退位置)にあり、安全シールド1019が前進位置にある。この状態は
図47Fに示されている。
図48Cも参照せよ。
図48Cは注射後の第2状態にある注射器1001の外観図である。示されているように、第1指標帯1434と第2指標帯1438との両方が見えている。
【0333】
薬容器1007を後退させる機構が動作に失敗するという稀な状況では、注射中の第2状態が注射後の第3状態であってもよい。これは極めて稀である。しかし、その場合でも安全シールド1019が前進位置にあることにより、針1009が安全に保たれる。
【0334】
図49は
図1の注射器1001の組み立て方法を示す。ステップ401では、前進用ばね1025が安全シールド1019の中に設置され、長軸方向のリッジ1420の中に固定される。その後、ハウジング1023の先端が安全シールド1019の中に挿入され、前進用ばね1025がハウジング1023と安全シールド1019との間に設置される。突起1410が一方向受け部1414を乗り越えるまでハウジング1023が安全シールド1019の中で前進させられる。これにより、安全シールド1019がハウジング1023から離れない。ハウジング1023が安全シールド1019の中を更に前進すると柔軟なラッチアーム1402がラッチ面1404に引っ掛かるので、安全シールド1019が後退位置にロックされる。このステップが行われる間はハウジング1023の基端の中に工具が挿入され、ハウジング1023と安全シールド1019とが組み合わされる間、柔軟なラッチアーム1402の間隔が拡げられてもよい。ハウジング1023が安全シールド1019の中を更に前進させられた後に工具が除去されると柔軟なラッチアーム1402がラッチ面1404に正しく引っ掛かるので、安全シールド1019が後退位置にロックされる。
【0335】
ステップ403では、復帰用ばね1021がハウジング1023の中に挿入され、続いて薬容器1007が挿入される。したがって、復帰用ばね1021がハウジング1023と薬容器1007との間に挟まれる。薬容器1007がハウジング1023の中に挿入されるときにはすでに薬容器1007が針ハブ1011と皮下注射針1009とに取り付けられていてもよい。さらに、針1009がすでに針シールド1004と針キャップ1005とによって覆われていてもよい。
【0336】
読者には理解されるとおり、ステップ401、403は順序が逆であってもよい。すなわち、ステップ401の前にステップ403が行われてもよい。ステップ403が先に行われる際は、柔軟なラッチアーム1402を拡げるのに工具が使われなくてもよい。
【0337】
ステップ405では、ステップ401-ステップ403で組み立てられた先端部1bがハンドル1003に取り付けられ、注射器1001が完全に組み立てられる。
【0338】
この明細書には、以下に番号が振られている各項に係る発明による実施例が数多く開示されている。
【0339】
A1 長軸があるハウジングと、
- 前記ハウジングの中に設置されており、先端があり、前記長軸に沿って前記駆動用ばねの先端の反対側には基端があり、内部に空洞を形成している駆動用ばねと、
- 少なくとも一部が薬容器の中に設置されているプランジャーと、
- 前記プランジャーに嵌まっているプランジャーロッドと、
- 移動禁止機構と
を備えている注射器、または注射器の一部であり、
前記移動禁止機構が、
○ 少なくとも一部が前記駆動用ばねの空洞に収容されており、前記プランジャーロッドに解放可能に嵌まるように構成されている嵌合部を少なくとも1つ含み、前記駆動用ばねの作用により前記駆動用ばねの先端へ向かって移動するように構成されているラッチ機構と、
○ 前記ラッチ機構に嵌まっている格納筒と
を含み、
○ 前記ラッチ機構が、前記格納筒に対して移動禁止位置から移動許可位置へ移動するように構成されており、
- 前記移動禁止位置では、前記格納筒が前記嵌合部を前記プランジャーロッドに嵌まっている状態に保つことにより、前記駆動用ばねの伸びが前記ラッチ機構と前記格納筒とを前記駆動用ばねの先端へ向かって移動させて注射筒から薬を排出させ、
- 前記移動許可位置では、前記格納筒が前記嵌合部を前記プランジャーロッドに嵌まっている状態には保たないことにより、前記嵌合部が前記プランジャーから解放可能になる
ことを特徴とする注射器、または注射器の一部。
【0340】
A2 前記ラッチ機構が、前記駆動用ばねの先端に接触する先端側フランジを含む、A1に記載の注射器。
【0341】
A3 前記ラッチ機構と前記格納筒とは、前記ラッチ機構が前記移動禁止位置にあるときには、前記ハウジングの長軸の方向に繋がった状態で前記駆動用ばねの先端へ向かって移動するように構成されている、A1またはA2に記載の注射器。
【0342】
A4 前記ハウジングが隣接部を含み、前記隣接部が、
前記格納筒が前記隣接部を越えて前記駆動用ばねの先端側へ移動するのを妨げることにより、前記ラッチ機構を前記格納筒に対して前記駆動用ばねの先端側へ移動可能にして、前記移動禁止位置から前記移動許可位置へ移動させる
ように構成されている、A3に記載の注射器。
【0343】
A5 前記ラッチ機構が、前記移動禁止位置では前記格納筒を、前記ラッチ機構と前記格納筒との間の締まり嵌めにより前記駆動用ばねの先端へ向かって移動させるように構成されている、A1からA4までのいずれか1項に記載の注射器。
【0344】
A6 前記ラッチ機構は、前記駆動用ばねによって加えられる力が前記ラッチ機構と前記格納筒との間の摩擦に打ち勝つことにより、前記移動禁止位置から前記移動許可位置へ移動するように構成されている、A5に記載の注射器。
【0345】
A7 前記ラッチ機構が、前記注射器の起動前には前記駆動用ばねを圧縮状態に留めるように構成されている、A1からA4までのいずれか1項に記載の注射器。
【0346】
A8 前記ラッチ機構が、
前記ハウジングの一部に解放可能に固定されることにより、前記駆動用ばねを前記圧縮状態に留めるように構成されている引っ掛かり要素
を少なくとも1つ含む、A7に記載の注射器。
【0347】
A9 前記ラッチ機構が、
前記駆動用ばねに嵌まるように構成されている張出部と、
前記張出部に嵌まっているラッチと
を含む、A1からA8までのいずれか1項に記載の注射器。
【0348】
A10 前記ラッチが前記嵌合部を含み、前記張出部が前記引っ掛かり要素を含む、A9に記載の注射器。
【0349】
A11 前記ラッチ機構が一体成形品である、A10に記載の注射器。
【0350】
A12 前記注射器が更にハンドルを備えており、
前記ハウジングが前記ハンドルに対して軸方向において非起動位置から起動位置へ移動可能であり、
前記ハウジングが前記非起動位置から前記起動位置へ移動することにより、前記駆動用ばねが圧縮状態から解放される、
A7に記載の注射器。
【0351】
A13 前記注射器の先端が注射可能な組織に押し付けられると、前記ハウジングが前記非起動位置から前記起動位置へ移動することにより、前記駆動用ばねが前記圧縮状態から解放されるように構成されている、A12に記載の注射器。
【0352】
A14 前記注射器が更に、
前記ハウジングと前記ハンドルとの間に設置され、前記ハウジングに対して力を前記非起動位置へ向かって加える起動用ばね
を備えている、A13に記載の注射器。
【0353】
A15 前記ハウジングが前記非起動位置にあるときには、前記引っ掛かり要素が前記ハウジングと起動具との間に固定されている、A13に記載の注射器。
【0354】
A16 前記起動具の全体が前記ハンドルの中に設置されている、A15に記載の注射器。
【0355】
A17 前記起動具が前記ハンドルに、軸方向へ移動しないように固定されている、A16に記載の注射器。
【0356】
A18 前記格納筒が、少なくとも1つ穴が開いているスリーブを含む、A1からA17までのいずれか1項に記載の注射器。
【0357】
A19 前記ラッチ機構が前記移動禁止位置にあるときには、前記格納筒のスリーブが前記嵌合部と径方向において並んで、前記嵌合部を前記プランジャーロッドに嵌まっている状態に保ち、
前記ラッチ機構が前記移動許可位置にあるときには、前記スリーブの穴が前記嵌合部と径方向において並んで、前記嵌合部が外側へ曲がって前記プランジャーロッドから外れることが可能になる、
A18に記載の注射器。
【0358】
A20 前記駆動用ばねが、
1)注射筒を前記ハウジングの中で軸方向へ移動させて、2)前記注射筒から薬を排出させるように構成されている単一のばね
から成る、A1からA19までのいずれか1項に記載の注射器。
【0359】
A21 注射器または注射器の一部の製造方法であって、
- 長軸があるハウジングを用意するステップと、
- 先端と基端とがあって内部に空洞を形成している駆動用ばねを前記ハウジングの中に、前記長軸に沿って前記駆動用ばねの先端の反対側に前記基端があるように設置するステップと、
- プランジャーの少なくとも一部を薬容器の中に設置するステップと、
- 前記プランジャーにプランジャーロッドを嵌めるステップと、
- 嵌合部を少なくとも1つ含むラッチ機構を格納筒に嵌めて、移動禁止機構を形成するステップと、
- 前記ラッチ機構の少なくとも一部を前記駆動用ばねの空洞の中に設置し、前記嵌合部を前記プランジャーロッドに解放可能に嵌めるステップと、
- 前記格納筒が前記嵌合部を前記プランジャーロッドに嵌まっている状態に保つ移動禁止位置に前記格納筒を配置することにより、前記駆動用ばねの伸びが前記ラッチ機構と前記格納筒とを前記駆動用ばねの先端へ向かって移動させて注射筒から薬を排出させることを可能にするステップと
を備え、
前記格納筒が、前記移動禁止位置から、前記格納筒が前記嵌合部を前記プランジャーロッドに嵌まっている状態には保たない移動許可位置へ移動するように構成されている
ことを特徴とする製造方法。
【0360】
A22 前記駆動用ばねの先端と基端とを圧縮して圧縮状態にし、前記ラッチ機構に前記駆動用ばねを前記圧縮状態に留めさせるステップ
を更に備えている、A21に記載の製造方法。
【0361】
B1 長軸があるハウジングと、
- 前記ハウジングの中に設置されている駆動用ばねと、
- 前記駆動用ばねから、薬容器の中に設置されているプランジャーへ動力を伝えるように構成されている第1駆動部品と、
- 前記第1駆動部品に対して同軸に配置されており、前記ハウジングに対して前記長軸の方向へは移動しないように固定されているダンパーと
を備えている注射器であり、
前記第1駆動部品は、
前記駆動用ばねの作用により、前記ダンパーに対して前記ハウジングの長軸に沿って移動する
ように構成されており、
前記ダンパーは、
前記第1駆動部品が前記ダンパーに対して移動する間、前記第1駆動部品の表面に締まり嵌めされている
ように構成されている
ことを特徴とする注射器、または注射器の一部。
【0362】
B2 前記ダンパーが環状である、B1に記載の注射器。
【0363】
B3 前記駆動用ばねが、前記薬容器を前記ハウジングに対して後退位置から伸長位置まで前進させるように構成されている、B1またはB2に記載の注射器。
【0364】
B4 前記ダンパーが前記ハウジングに、前記長軸の方向へ伸びているピンによって取り付けられている、B3に記載の注射器。
【0365】
B5 前記ダンパーの先端は、
前記ダンパーを前記ピンに固定するための工具の頭部を収容するように構成されているソケット
を形作っている、B4に記載の注射器。
【0366】
B6 前記ダンパーが、
前記ハウジングの中に固定されている細長い本体
を備え、
前記第1駆動部品が、
縦穴を形作っている内壁
を備え、
前記ダンパーが、前記縦穴に収容されて前記内壁に嵌まるように構成されている、
B1からB5までのいずれか1項に記載の注射器。
【0367】
B7 前記ダンパーが更に、前記本体に設置されている変形可能な制動部材を少なくとも1つ備えている、B1からB6までのいずれか1項に記載の注射器。
【0368】
B8 前記本体が、
先端に周方向の溝を少なくとも1本含む頭部
を備えており、
前記溝は、前記制動部材の相補的な形の部分が嵌まるように構成されている、
B7に記載の注射器。
【0369】
B9 前記縦穴の直径が前記ハウジングの長軸に沿って少なくとも2つの異なる値に変化しており、これにより、前記第1駆動部品が前記ダンパーに対して移動するにつれて前記第1駆動部品と前記ダンパーとの間の締まり嵌めの程度が変化する、B6またはB7に記載の注射器。
【0370】
B10 前記制動部材がオーバーモールドされている部品を含む、B7からB9までのいずれか1項に記載の注射器。
【0371】
B11 前記第1駆動部品の内壁が、前記内壁の長手方向へ、または前記ハウジングの長軸に沿って、もしくは前記長軸に対して平行に伸びている溝を複数本備えている、B6からB10までのいずれか1項に記載の注射器。
【0372】
B12 前記溝が、第1長さの溝と、前記第1長さとは異なる第2長さの溝とを、少なくとも1本ずつ含む、B11に記載の注射器。
【0373】
B13 前記溝は前記ハウジングの長軸のまわりで、周方向に間隔を空けて配置されている、B11またはB12に記載の注射器。
【0374】
B14 前記第1駆動部品の内壁に対して前記溝の占める割合が、先端へ向かうにつれて低下している、B10からB13までのいずれか1項に記載の注射器。
【0375】
B15 注射器または注射器の一部を製造する方法であり、次のステップを備えている。
長軸のあるハウジングを用意するステップ。
前記ハウジングにダンパーを取り付けて、前記ハウジングに対して前記長軸に沿っては並進しないように固定するステップ。
前記ハウジングの中に駆動用ばねを設置するステップ。
前記ハウジングの中に第1駆動部品を設置して、前記ダンパーを前記第1駆動部品の中に同軸に配置するステップ。
前記第1駆動部品は、前記ダンパーと締まり嵌めされている状態で前記駆動用ばねにより、前記ダンパーに対して前記ハウジングの長軸に沿って移動させられるように構成されている。
【0376】
B16 前記ダンパーが細長い本体と変形可能な制動部材とを備えており、
前記本体の上に前記制動部材をオーバーモールドして前記ダンパーを形成するステップ
を更に備えているB15に記載の方法。
【0377】
C1 投薬用の注射器に使用される機構であって、
薬を含み、キャップが付いており、隔壁によってシールされている容器と、
前記容器のキャップの外面に接触しているシール要素と、
前記隔壁を貫かせるための針と、
前記針に取り付けられている針ハブと
を備え、
前記シール要素が前記容器のキャップの外面と前記針ハブの内面との間に設置されており、
前記機構が第1状態から第2状態へ移行するように構成されており、
前記第1状態では、前記針が前記隔壁から離れており、前記針の自由端が前記シール要素によってシールされている空洞の中に位置し、
前記第2状態では、前記針が前記隔壁を貫いており、
前記針ハブの内面と前記キャップの外面との間のシールが前記シール要素により、前記第1状態において形成され、前記第1状態から前記第2状態へ移行する間においても、前記第2状態においても維持されている
ことを特徴とする機構。
【0378】
C2 長軸と、前記針の一部を通す穴が開いている先端とがあるハウジングであり、薬を含む容器を収容するように構成されているハウジングと、
前記ハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでおり、後退位置から前記ハウジングに対して先端側へ、前記針を覆う前進位置まで前進するように構成されている安全シールドと、
前記ハウジングと前記安全シールドとの間に配置されており、前記安全シールドを前記後退位置から前記前進位置まで前進させるように構成されている前進用ばねと
を備えているC1に記載の機構。
【0379】
C3 前記安全シールドに嵌められることにより、前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されている解放可能なロック機構
を更に備えているC2に記載の機構。
【0380】
C4 前記針ハブが、
前記ハウジングに対し、前記ハウジングの穴から離れている第1位置と、前記ハウジングの穴の中を伸びている第2位置との間で移動可能であり、
前記第2位置では前記ロック機構から外れることにより、前記安全シールドを解放するように構成されている、
C3に記載の機構。
【0381】
C5 前記ロック機構が、前記安全シールドと前記ハウジングとのうち、一方に接続されているラッチ面と、他方に接続されている柔軟なラッチアームとを含み、
前記ラッチアームが、前記ラッチ面に嵌まることにより前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されており、
前記針ハブが、前記第2位置では前記ラッチアームを前記ラッチ面から外すように構成されている、
C3またはC4に記載の機構。
【0382】
C6 前記前進用ばねは、前記安全シールドが前記前進位置にあるとき、前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている、C2からC5までのいずれか1項に記載の機構。
【0383】
C7 前記シール要素が前記キャップの外面に化学的に結合している、C1からC6までのいずれか1項に記載の機構。
【0384】
C8 前記シール要素が前記キャップの外面にオーバーモールドされている、C1からC7までのいずれか1項に記載の機構。
【0385】
C9 前記シール要素がOリングである、C1からC6までのいずれか1項に記載の機構。
【0386】
C10 前記シール要素が第1材料を含み、
前記キャップが、前記第1材料とは異なる第2材料を含み、
前記シール要素と前記キャップとが二重射出成形によって一体成形品として形成されている、
C1からC7までのいずれか1項に記載の機構。
【0387】
C11 前記針ハブが、
前記針に対して垂直に広がって前記キャップに面している第1内面と、
前記針に向かって内側へ伸びている基端側突起と、
前記第1内面から前記基端側突起まで、前記針に対して平行に広がっている第2内面と
を含み、
前記第2内面が、前記第1状態、前記第1状態から前記第2状態への移行期間、および前記第2状態において前記シール要素に嵌まっているように構成されている、
C1からC10までのいずれか1項に記載の機構。
【0388】
C12 前記キャップが第1リブと第2リブとを含み、
前記シール要素が前記第1リブと前記第2リブとの間に設置されている、
C1からC11までのいずれか1項に記載の機構。
【0389】
C13 前記第1状態では、前記第1リブと前記針の自由端との間の距離が前記第2リブと前記針の自由端との間の距離よりも近く、前記針ハブの基端側突起が前記キャップの第2リブに嵌まっており、
前記第2状態では、前記針ハブの第1内面が前記キャップの第1リブに嵌まっている、
C12に記載の機構。
【0390】
C14 前記キャップが、
前記シール要素が中に設置されている位置決め用の第1凹みと、
前記第2状態において、選択に応じて前記針ハブの位置決め用の突起を収容する位置決め用の第2凹みと
を含む、C1からC13までのいずれか1項に記載の機構。
【0391】
C15 前記第1状態では、前記針ハブの位置決め用の突起の表面が前記シール要素に接触している、C14に記載の機構。
【0392】
C16 投薬用の注射器に使用される機構を製造する方法であり、次のものを用意するステップを備えている。
キャップが付いており、隔壁によってシールされている容器と、
前記容器のキャップの外面に接触しているシール要素と、
前記隔壁を貫かせるための針と
前記容器のキャップの外面と自身の内面との間に前記シール要素が設置されている針ハブ。
前記機構は第1状態から第2状態へ移行するように構成されており、
前記第1状態では、前記針が前記隔壁から離れており、前記針の自由端が前記シール要素によってシールされている空洞の中に位置し、
前記第2状態では、前記針が前記隔壁を貫いており、
前記針ハブの内面と前記キャップの外面との間のシールが前記シール要素により、前記第1状態において形成され、前記第1状態から前記第2状態へ移行する間においても、前記第2状態においても維持されている。
【0393】
C17 長軸のあるハウジングを用意するステップと、
前記ハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでおり、前記ハウジングに対して後退位置から先端側へ、前記針を保護する前進位置まで前進可能な安全シールドを用意するステップと、
前記安全シールドを前進させるように構成されている前進用ばねを、前記ハウジングと前記安全シールドとの間に配置するステップと
を更に備えている、C16に記載の機構の製造方法。
【0394】
C18 前記安全シールドに嵌まると前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されている解放可能なロック機構
を用意するステップを備えている、C16またはC17に記載の機構の製造方法。
【0395】
C19 前記針ハブが、
前記ハウジングに対し、前記ハウジングの穴から離れている第1位置と、前記ハウジングの穴の中を伸びている第2位置との間で移動可能であり、
前記第2位置では前記ロック機構から外れることにより、前記安全シールドを解放するように構成されている、
C18に記載の機構の製造方法。
【0396】
C20 前記ロック機構が、前記安全シールドと前記ハウジングとのうち、一方に接続されているラッチ面と、他方に接続されている柔軟なラッチアームとを含み、
前記ラッチアームが、前記ラッチ面に嵌まることにより前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されており、
前記針ハブが、前記第2位置では前記ラッチアームを前記ラッチ面から外すように構成されている、
C18またはC19に記載の機構の製造方法。
【0397】
C21 前記前進用ばねは、前記安全シールドが前記前進位置にあるときには前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている、C17からC20までのいずれか1項に記載の機構の製造方法。
【0398】
C22 前記シール要素を用意するステップが、前記シール要素を前記キャップの外面に化学的に結合させるステップを含む、C16からC21までのいずれか1項に記載の機構の製造方法。
【0399】
C23 前記シール要素を用意するステップが、前記シール要素を前記キャップの外面にオーバーモールドするステップを含む、C16からC22までのいずれか1項に記載の機構の製造方法。
【0400】
C24 前記シール要素が第1材料を含み、前記キャップが、前記第1材料とは異なる第2材料を含む、C16からC23までのいずれか1項に記載の機構の製造方法。
【0401】
C25 前記化学的に結合させるステップが、二重射出成形を行うステップを含む、C22に記載の機構の製造方法。
【0402】
C26 前記シール要素がOリングである、C16からC21までのいずれか1項、またはC24に記載の機構の製造方法。
【0403】
D1 薬を含む薬容器を収容するように構成されているハウジングであり、長軸があり、先端には、前記薬容器に操作可能に結合している針の一部を通すための穴が開いているハウジングと、
前記ハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでおり、前記ハウジングに対して先端側へ後退位置から、前記針を保護する前進位置まで前進するように構成されている安全シールドと、
前記ハウジングと前記安全シールドとの間に配置されており、前記安全シールドを前記後退位置から前記前進位置へ前進させるように、かつ、前記安全シールドが前記前進位置にあるときには前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている前進用ばねと
を備えている注射器、または注射器の一部。
【0404】
D2 前記ハウジングが第1ロック面を備え、前記安全シールドが第2ロック面を備え、
前記第2ロック面は、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記第1ロック面と向かい合うように配置されており、
前記前進用ばねは、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記第1ロック面と前記第2ロック面とにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている、
D1に記載の注射器。
【0405】
D3 前記第1ロック面が、前記ハウジングの先端側を向いている肩部を含み、
前記第2ロック面が、前記ハウジングの基端側を向いている肩部を含み、当該肩部から先端方向へは前記長軸の方向のリッジが伸びており、
前記長軸の方向のリッジは、前記安全シールドが前記後退位置にあるときに前記前進用ばねを径方向に圧縮するように構成されており、
前記前進用ばねは、前記安全シールドが前進する間に前記第2ロック面を通過すると、径方向へ拡がるように構成されている、
D2に記載の注射器。
【0406】
D4 前記前進用ばねが、第1直径の基端部と、前記第1直径よりも狭い第2直径の先端部とを備えており、
前記基端部は、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされるように構成されている、
D1からD3までのいずれか1項に記載の注射器。
【0407】
D5 前記安全シールドが前記後退位置にあるときには、前記前進用ばねの基端部が、前記第1直径よりも狭い第3直径まで圧縮され、
前記安全シールドが前記前進位置にあるときには、前記前進用ばねが前記第1直径まで拡がるように配置されている、
D4に記載の注射器。
【0408】
D6 前記ハウジングと前記安全シールドとの一方が保持用タブを含み、他方が一方向受け部を含み、
前記保持用タブが、前記注射器の組み立て中には前記一方向受け部の上を摺動するように、かつ、前記安全シールドの前進中には前記一方向受け部に接触することにより、前記安全シールドが前記ハウジングから分離するのを防ぐように構成されている、
D1からD3までのいずれか1項に記載の注射器。
【0409】
D7 前記一方向受け部が、
前記注射器の組み立て中、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせるのに便利なように配置されている斜面と、
前記安全シールドの前進中、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせないように配置されている切り立った崖面と
を含む、
D6に記載の注射器。
【0410】
D8 前記一方向受け部が更に片持ち梁状のアームを含む、D7に記載の注射器。
【0411】
D9 前記ハウジングが前記一方向受け部を含み、前記安全シールドが前記保持用タブを含む、D6からD8までのいずれか1項に記載の注射器。
【0412】
D10 前記保持用タブが周方向へ広がっている突起を含む、D9に記載の注射器。
【0413】
D11 前記安全シールドに嵌まると、前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されている解放可能なロック機構
を更に備えている、D1からD10までのいずれか1項に記載の注射器。
【0414】
D12 前記針と前記薬容器とに結合している針ハブ
を更に備え、
前記針ハブが前記ハウジングに対し、
前記ハウジングの穴から離れている第1位置と、
前記ハウジングの穴の中を伸びている第2位置と
の間で移動可能であり、
前記針ハブが、前記第2位置では前記ロック機構から外れることにより、前記安全シールドを解放するように構成されている、
D11に記載の注射器。
【0415】
D13 前記ロック機構が、前記安全シールドと前記ハウジングとのうちの一方に接続されているラッチ面と、他方に接続されている柔軟なラッチアームとを含み、
前記ラッチアームが、前記ラッチ面に嵌まることにより前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されており、
前記針ハブが、前記第2位置では前記ラッチアームを前記ラッチ面から外すように構成されている、
D12に記載の注射器。
【0416】
D14 前記薬容器と前記針ハブとに対し、前記第1位置へ向かって力を加えるように配置されている復帰用ばね
を更に備えている、D11からD13までのいずれか1項に記載の注射器。
【0417】
D15 前記復帰用ばねがコイルばねを含み、前記ハウジングと前記薬容器との間に位置する、D14に記載の注射器。
【0418】
D16 前記前進用ばねがコイルばねを含む、D1からD15までのいずれか1項に記載の注射器。
【0419】
D17 注射器を製造する方法であって、
長軸のあるハウジングを用意するステップと、
前記ハウジングのうち少なくとも先端部を囲み、後退位置から前記ハウジングに対して先端側へ、針を保護する前進位置まで前進可能な安全シールドを用意するステップと、
前記ハウジングと前記安全シールドとの間に前進用ばねを配置し、前記安全シールドを前進させるように前記前進用ばねを構成するステップと
を備え、
前記前進用ばねは、
前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻ることを防ぐ
ように構成されている
ことを特徴とする方法。
【0420】
D18 前記ハウジングと前記安全シールドとのうちの一方が保持用タブを含み、他方が一方向受け部を含み、
前記安全シールドを前記ハウジングの上で前記後退位置へ向かって摺動させ、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせて前記一方向受け部よりも後方にロックすることにより、前記安全シールドを前記ハウジングから分離させないようにするステップ
を更に備えている、D17に記載の方法。
【0421】
D19 前記安全シールドを前記ハウジングの上で摺動させる前に、前記前進用ばねを前記安全シールドの中に配置するステップ
を更に備えている、D18に記載の方法。
【0422】
E1 薬を含む薬容器を収容するように構成されているハウジングであり、長軸があり、先端には、前記薬容器と操作可能に結合している針の一部を通すための穴が開いているハウジングと、
- 前記ハウジングの中に設置されており、先端と、前記ハウジングの長軸に沿って前記先端とは反対側に位置する基端とがあり、内側に空洞を形成している駆動用ばねと、
- 前記薬容器の中に少なくとも一部が設置されているプランジャーと、
- 前記プランジャーに嵌まっているプランジャーロッドと
を備えている注射器であって、
移動禁止機構と、
制動機構と、
安全シールド機構と、
薬容器接続装置と
のうちの1以上を更に備え、
a)前記移動禁止機構は、
前記駆動用ばねの空洞の中に少なくとも一部が収容されており、前記プランジャーロッドに解放可能に嵌まるように構成されている嵌合部を少なくとも1つ含み、前記駆動用ばねの作用により先端方向へ移動するように構成されているラッチ機構と、
前記ラッチ機構に嵌まっている格納筒と
を含み、
前記ラッチ機構が、前記格納筒に対して移動禁止位置から移動許可位置まで移動するように構成されており、
前記移動禁止位置では、前記格納筒が前記ラッチ機構の嵌合部を前記プランジャーロッドに嵌まっている状態に保持し、駆動用ばねの伸びにより前記ラッチ機構と前記格納筒とを先端方向へ移動させて注射筒から薬を排出させ、
前記移動許可位置では、前記格納筒が前記ラッチ機構の嵌合部を前記プランジャーロッドに嵌まっている状態には保持しないので、前記嵌合部を前記プランジャーから外すことができ、
b)前記制動機構は、
必要に応じて前記プランジャーロッドとして設けられ、前記駆動用ばねから、薬容器の中に設置されている前記プランジャーへ動力を伝えるように構成されている第1駆動部品と、
前記第1駆動部品に対して同軸に配置されており、前記ハウジングに対して長軸の方向へは動かないように固定されているダンパーと
を含み、
前記第1駆動部品は、前記駆動用ばねの作用により前記ダンパーに対して前記ハウジングの長軸に沿って移動するように構成されており、
前記ダンパーは、前記第1駆動部品が前記ダンパーに対して移動する間、前記第1駆動部品の表面に締まり嵌めされるように構成されており、
c)前記安全シールド機構は、
前記ハウジングの少なくとも先端部を囲んでおり、後退位置から前記ハウジングに対して先端側へ、前記針を保護する前進位置まで前進するように構成されている安全シールドと、
前記ハウジングと前記安全シールドとの間に配置されており、前記安全シールドを前記後退位置から前記しよう位置まで前進させるように構成されている前進用ばねと
を含み、
前記前進用ばねは、前記安全シールドが前記前進位置にあるときには、前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドを前記後退位置へは戻さないように構成されており、
d)前記薬容器接続装置は、
前記薬を収容して、キャップが付いており、隔壁によりシールされている薬容器と、
前記薬容器のキャップの外面に接触しているシール要素と、
前記隔壁を貫くための針と、
前記針が取り付けられており、内面と前記薬容器のキャップの外面との間に前記シール要素が設置されている針ハブと
を含み、
前記薬容器接続装置は、第1状態から第2状態へ移行するように構成されており、
前記第1状態では、前記針が前記隔壁から離れて、前記針の自由端を前記シール要素によってシールされている空洞の中に位置させており、
前記第2状態では、前記針が前記隔壁を貫通しており、
前記針ハブの内面と前記キャップの外面との間のシールが、前記第1状態では前記シール要素によって形成され、前記第1状態から前記第2状態への移行中も維持され、前記第2状態でも維持される
ことを特徴とする注射器。
【0423】
「基端方向」、「先端方向」という用語が、図面の解釈において便利なように使用されるものであり、発明を限定するように解釈されてはならないことは理解されるだろう。「先端方向」という用語は注射部位(すなわち注射部位で患者に接触するための針の端)へ向かう方向を意味し、「基端方向」という用語は注射部位から離れる方向を意味する。「~を備える」という用語は、「~を含むが、それに限定されるわけではない」という意味に解釈されるべきであり、列挙されていない部材の存在を排除するものではない。「円環状」という用語が使われる場合、それは円形のみに限るものとして捉えられるべきではなく、周が途切れていないどのような形をも意味するものとして捉えられるべきである。「長軸の方向へ」という用語は、針が配置されている軸に沿ってという意味に捉えられるべきである。同様に、「径方向」は、針の長軸に対して垂直な方向を意味する。外周方向は針から離れる方向を意味し、内周方向は針へ向かう方向として捉えられるべきである。
【0424】
以上に説明され、添付の図面に示されている実施形態は、発明が効果を発揮する例として与えられるものであり、発明の範囲を限定することを意図するものではない。この明細書で開示される発明からは離れることなく、実施形態に変更を加えることも、実施形態の構成要素を機能的にも構造的にも等価なものに置き換えることも、異なる実施形態の構成を組み合わせることも可能である。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬を含む薬容器を収容するように構成されているハウジングであり、長軸があり、先端には、前記薬容器に操作可能に結合している針の一部を通すための穴が開いているハウジングと、
前記ハウジングのうち少なくとも先端部を囲んでおり、後退位置から前記ハウジングに対して先端側へ、前記針を保護する前進位置まで前進するように構成されている安全シールドと、
前記ハウジングと前記安全シールドとの間に配置されており、前記安全シールドを前記後退位置から前記前進位置へ前進させるように、かつ、前記安全シールドが前記前進位置にあるときには前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている前進用ばねと
を備えている注射器。
【請求項2】
前記ハウジングが第1ロック面を備え、前記安全シールドが第2ロック面を備え、
前記第2ロック面は、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記第1ロック面と向かい合うように配置されており、
前記前進用ばねは、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記第1ロック面と前記第2ロック面とにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻るのを防ぐように構成されている、
請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記第1ロック面が、前記ハウジングの先端側を向いている肩部を含み、
前記第2ロック面が、前記ハウジングの基端側を向いている面を含み、当該面から先端方向へ前記長軸の方向のリッジが伸びており、
前記長軸の方向のリッジは、前記安全シールドが前記後退位置にあるときに前記前進用ばねを径方向に圧縮するように構成されており、
前記前進用ばねは、前記安全シールドが前進する間に前記第2ロック面を通過すると、径方向へ拡がるように構成されている、
請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
前記前進用ばねが、第1直径の基端部と、前記第1直径よりも狭い第2直径の先端部とを備えており、
前記基端部は、前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされるように構成されている、
請求項1に記載の注射器。
【請求項5】
前記安全シールドが前記後退位置にあるときには、前記前進用ばねの基端部が、前記第1直径よりも狭い第3直径まで圧縮され、
前記安全シールドが前記前進位置にあるときには、前記前進用ばねが前記第1直径まで拡がるように配置されている、
請求項4に記載の注射器。
【請求項6】
前記ハウジングと前記安全シールドとの一方が保持用タブを含み、他方が一方向受け部を含み、
前記保持用タブが、
前記注射器の組み立て中には、前記一方向受け部の上を摺動し、
前記安全シールドの前進中には、前記一方向受け部に接触することにより、前記安全シールドが前記ハウジングから分離するのを防ぐ
ように構成されている、
請求項1に記載の注射器。
【請求項7】
前記一方向受け部が、
前記注射器の組み立て中、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせるのに便利なように配置されている斜面と、
前記安全シールドの前進中、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせないように配置されている切り立った崖面と
を含む、
請求項6に記載の注射器。
【請求項8】
前記一方向受け部が更に片持ち梁状のアームを含む、請求項7に記載の注射器。
【請求項9】
前記ハウジングが前記一方向受け部を含み、前記安全シールドが前記保持用タブを含む、請求項6に記載の注射器。
【請求項10】
前記保持用タブが周方向へ広がっている突起を含む、請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
前記安全シールドに嵌まると前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されている解放可能なロック機構
を更に備えている、請求項1に記載の注射器。
【請求項12】
前記針と前記薬容器とに結合している針ハブ
を更に備え、
前記針ハブが前記ハウジングに対し、
前記ハウジングの穴から離れている第1位置と、
前記ハウジングの穴の中を伸びている第2位置と
の間で移動可能であり、
前記針ハブが、前記第2位置では前記ロック機構から外れることにより、前記安全シールドを解放するように構成されている、
請求項11に記載の注射器。
【請求項13】
前記ロック機構が、前記安全シールドと前記ハウジングとのうちの一方に接続されているラッチ面と、他方に接続されている柔軟なラッチアームとを含み、
前記ラッチアームが、前記ラッチ面に嵌まることにより前記安全シールドを前記後退位置にロックするように構成されており、
前記針ハブが、前記第2位置では前記ラッチアームを前記ラッチ面から外すように構成されている、
請求項12に記載の注射器。
【請求項14】
前記薬容器と前記針ハブとに対し、前記第1位置へ向かって力を加えるように配置されている復帰用ばね
を更に備えている、
請求項12に記載の注射器。
【請求項15】
前記復帰用ばねがコイルばねを含み、前記ハウジングと前記薬容器との間に位置する、請求項14に記載の注射器。
【請求項16】
前記前進用ばねがコイルばねを含む、請求項1に記載の注射器。
【請求項17】
注射器を製造する方法であって、
長軸のあるハウジングを用意するステップと、
前記ハウジングのうち少なくとも先端部を囲み、後退位置から前記ハウジングに対して先端側へ
前進位置まで前進可能な安全シールドを用意するステップと、
前記ハウジングと前記安全シールドとの間に前進用ばねを配置し、前記安全シールドを前進させるように前記前進用ばねを構成するステップと
を備え、
前記前進用ばねは、
前記安全シールドが前記前進位置にあるときに前記ハウジングと前記安全シールドとにロックされることにより、前記安全シールドが前記後退位置へ戻ることを防ぐ
ように構成されている
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記ハウジングと前記安全シールドとのうちの一方が保持用タブを含み、他方が一方向受け部を含み、
前記安全シールドを前記ハウジングの上で前記後退位置へ向かって摺動させ、前記保持用タブに前記一方向受け部を乗り越えさせて前記一方向受け部よりも後方にロックすることにより、前記安全シールドを前記ハウジングから分離させないようにするステップ
を更に備えている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記安全シールドを前記ハウジングの上で摺動させる前に、前記前進用ばねを前記安全シールドの中に配置するステップ
を更に備えている、請求項18に記載の方法。
【国際調査報告】