(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240415BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240415BHJP
C12N 13/00 20060101ALI20240415BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240415BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20240415BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/34 B
C12N13/00
C12Q1/06
C12M1/26
C12M1/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564137
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022060330
(87)【国際公開番号】W WO2022223566
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102022203848.7
(32)【優先日】2022-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021203896.4
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブック
(72)【発明者】
【氏名】ザミーア カディッチ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ レアマー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ドレシュマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】アンネ ゼロウト
【テーマコード(参考)】
4B029
4B033
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029CC01
4B029DC04
4B029DC05
4B029DG06
4B029FA03
4B029FA04
4B029FA05
4B029GB04
4B029HA09
4B033NH06
4B033NJ01
4B033NK06
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
(57)【要約】
本明細書において提示するアプローチは、マイクロ流体デバイス(100)用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する方法に関する。当該方法は、そのために、マイクロ流体デバイス(100)の支持体基板(105)上への少なくとも1つの核含有細胞を含む試料液体の施与を生じさせるための施与信号を出力するステップと、少なくとも1つの核含有細胞を標的細胞として支持体基板(105)のマイクロキャビティ(110)内に捕捉するように構成された電界をマイクロキャビティ(110)に接して又はマイクロキャビティ(110)内に形成するための電流信号を、少なくとも1つの電極へのインタフェースに供給するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイス(100)用の少なくとも1つの電極(230)を使用して少なくとも1つの核含有細胞(510)を捕捉する方法(1600)であって、前記方法(1600)は、
-前記マイクロ流体デバイス(100)の支持体基板(105)上への前記少なくとも1つの核含有細胞(510)を含む試料液体の施与を生じさせるための施与信号(1710)を出力するステップ(1605)と、
-前記少なくとも1つの核含有細胞(510)を標的細胞として前記支持体基板(105)のマイクロキャビティ(110)内に捕捉するように構成された電界(535)を前記マイクロキャビティ(110)に接して又は前記マイクロキャビティ(110)内に形成するための電流信号(1720)を、前記少なくとも1つの電極(230)へのインタフェースに供給するステップ(1610)と、
を含む、方法(1600)。
【請求項2】
前記方法(1600)は、前記出力するステップ(1605)の後又は前記供給するステップ(1610)の前若しくは後に、前記電界(535)を変化させるために、特に強化するために若しくは弱化するために、電流強度を変化させるステップ(1615)を含み、
特に、前記電極(230)と、前記マイクロキャビティ(110)内において又は前記マイクロキャビティ(110)に接して前記電極(230)に対向する対向電極(455)との間で、前記電界(535)が形成され及び/又は変化させられる、
請求項1に記載の方法(1600)。
【請求項3】
前記供給するステップ(1610)において、前記電流信号(1720)が、前記少なくとも1つの電極(230)へのインタフェース及び隣接するマイクロキャビティ(110)内に配置された少なくとも1つの別の電極へのインタフェースへ出力され、これにより、前記少なくとも1つの別の電極に、前記電極(230)とは異なる電界が形成され、
特に、前記電極に形成された電界は、当該電界の方向及び/又は強度に関して、前記別の電極に形成された電界とは異なり、及び/又は、
前記電極(230)を有する前記マイクロキャビティ(110)を基準として共通の列又は共通の行に配置されたマイクロキャビティ(110)内に配置された別の電極において、別の電界が形成される、
請求項1又は2に記載の方法(1600)。
【請求項4】
前記方法(1600)は、前記試料液体の懸濁液を前記マイクロキャビティ(110)から洗い流すために、前記供給するステップ(1610)の後に、洗浄用緩衝剤を使用して前記試料液体を洗浄するステップ(1625)を含み、及び/又は、
前記供給するステップ(1610)中に又は前記供給するステップ(1610)の後に、前記核含有細胞(510)を捕捉した後、前記試料液体の別の核含有細胞(515)を非標的細胞として前記電界(535)から解放させるための解放信号(1725)が前記電極へ供給される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法(1600)。
【請求項5】
前記出力するステップ(1605)において、前記支持体基板(105)への溶解物の施与を生じさせるための施与信号(1710)が出力され、これにより、前記少なくとも1つの核含有細胞(510)を含む細胞沈降物と溶解物の細胞懸濁液とが得られ、及び/又は、
前記供給するステップ(1610)の後に、前記試料液体から前記核含有細胞(510)を識別するステップ(1620)が行われ、特に、前記識別するステップ(1620)において、細胞沈降物から前記核含有細胞が光学的に検出され及び/又は定量化される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法(1600)。
【請求項6】
前記供給するステップ(1610)において、前記核含有細胞(510)又は少なくとも1つの別の核含有細胞(515)が前記マイクロキャビティ(110)の捕捉平面内に捕捉され、及び/又は、前記解放信号(1725)により、前記試料液体の前記細胞(510)又は少なくとも1つの別の核含有細胞(515)が前記電界(535)から搬送平面へ解放される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法(1600)。
【請求項7】
マイクロ流体デバイス(100)用の少なくとも1つの電極(230)を使用して少なくとも1つの核含有細胞(510)を捕捉する方法であって、前記方法(1600)は、
-少なくとも1つの核含有細胞(510)を含む試料液体を前記マイクロ流体デバイス(100)の支持体基板(105)上へ施与するステップと、
-前記少なくとも1つの核含有細胞(510)を標的細胞として前記支持体基板(105)のマイクロキャビティ(110)内に捕捉するように構成された電界(535)を、前記少なくとも1つの電極(230)を有する前記マイクロキャビティ(110)に接して又は前記マイクロキャビティ(110)内に形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法(1600)のステップ(1605,1610,1615,1620,1625,1630)を、対応するユニット(1705,1715,1730,1735,1740)において実施する及び/又は駆動制御するように構成されている装置(1700)。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法(1600)のステップ(1605,1610,1615,1620,1625,1630)を実施する及び/又は駆動制御するために構成されているコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムを記憶した機械可読記憶媒体。
【請求項11】
試料液体の少なくとも1つの核含有細胞(510)を捕捉するマイクロ流体デバイス(100)であって、特に前記マイクロ流体デバイス(100)は、Lab-on-a-Chipカートリッジとして構成されており、
前記マイクロ流体デバイス(100)は、以下の特徴、すなわち、
-試料液体を収容するための、少なくとも1つのマイクロキャビティ(110)を有する支持体基板(105)と、
-前記核含有細胞(510)を前記マイクロキャビティ(110)内に捕捉するように構成された電界(535)を形成するための、前記マイクロキャビティ(110)に接して又は前記マイクロキャビティ(110)内に配置された、少なくとも1つの電極(230)と、
を備えている、マイクロ流体デバイス(100)。
【請求項12】
前記支持体基板(105)は、それぞれ少なくとも1つの電極(230)を備えた複数のマイクロキャビティ(110)を有しており、前記マイクロキャビティ(110)は、マトリクス状に前記支持体基板(105)上に配置されている、請求項11に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電極(230)は、前記マイクロキャビティ(110)のうちの少なくとも1つのマイクロキャビティのキャビティ底部に接して及び/又はキャビティ壁内に配置されている、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項14】
前記電極(230)は、前記マイクロキャビティ(110)のそれぞれにおいて個別に駆動制御可能であり、及び/又は、前記電極(230)は、環状、点状、及び/又は、層状に成形されており、
特に、前記複数の電極のそれぞれに対して異なるマイクロキャビティ(110)内において相互に独立した電圧を印加するように構成された駆動制御ユニットがさらに設けられている、
請求項12又は13に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項15】
前記マイクロキャビティ(110)は、少なくとも1つの別の電極(445)を有しており、前記電極(230)と前記少なくとも1つの別の電極(445)とは相互に電気的に絶縁されている、請求項11乃至14のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項16】
前記マイクロキャビティ(110)に接して少なくとも1つの対向電極(455)が配置されており、前記対向電極(455)は、前記マイクロキャビティ(110)内に又は前記マイクロキャビティ(110)に接して前記電極(230)及び/又は前記少なくとも1つの別の電極(445)に対向するように配置されており、及び/又は、前記電極(230)及び/又は前記少なくとも1つの別の電極(445)から電気的に絶縁されている、請求項11乃至15のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本アプローチは、独立請求項の上位概念に記載の、マイクロ流体デバイス用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する方法及び装置、並びに、マイクロ流体デバイスを基礎とする。本アプローチは、コンピュータプログラムも対象とする。
【背景技術】
【0002】
循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells,CTC)は、進行する悪性腫瘍への対応における臨床関連の有望なバイオマーカーとして、近年確立されてきている。例えば血液又はリンパ液などの適当な体液中でのその同定及び特徴評価は、今日の腫瘍学の研究の中心の1つであるリキッドバイオプシとして知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の開示
こうした背景から、本明細書において提示するアプローチにより、独立請求項に記載の、マイクロ流体デバイス用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する改善された方法、当該方法を使用する改善された装置、さらに、対応するコンピュータプログラム、及び、改善されたマイクロ流体デバイスが提案される。従属請求項に記載の手段により、独立請求項に記載の装置の有利な発展形態及び改善形態が得られる。
【0004】
本明細書において提示するアプローチにより、使い捨てカートリッジを使用したコストパフォーマンスの良いマイクロ流体デバイス、又は、効率的な自動マイクロ流体分析が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
マイクロ流体デバイス用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する方法であって、出力するステップと、供給するステップとを含む方法が提案される。出力するステップにおいては、マイクロ流体デバイスの支持体基板上への少なくとも1つの核含有細胞を含む試料液体の施与を生じさせるための施与信号が出力される。供給するステップにおいては、少なくとも1つの核含有細胞を標的細胞として支持体基板のマイクロキャビティ内に捕捉するように構成された電界をマイクロキャビティに接して又はマイクロキャビティ内に形成するための電流信号が、少なくとも1つの電極へのインタフェースに供給される。
【0006】
方法は、例えばLab-on-a-Chipカートリッジとしてのマイクロ流体デバイスにおいて実行可能である。有利には、方法は、自動的に実行可能である。核含有細胞とは、ゲノムを含む細胞核を有する細胞をいう。核含有細胞は、例えば腫瘍細胞又は例えば白血球であり得る。試料液体は、相応に例えば患者の血液試料であるものとしてよい。支持体基板は、例えばPCBに基づくものであってよく、すなわち、プリント回路板上に配置されるものであってよく、及び/又は、例えばシリコン材料を含むものとしてよい。マイクロキャビティは、例えばハニカム状、円状又は例えば多角形状で、支持体基板上又は支持体基板内に配置可能である。マイクロキャビティは、例えば、少なくとも1つの核含有細胞を含む試料液体を収容可能かつ捕捉可能であり、有利にはその後、当該試料液体を分析することができるように形成されるものとしてよい。
【0007】
一実施形態によれば、方法は、出力するステップの前又は後に、電界を変化させるために、特に強化するために又は弱化するために、電流強度を変化させるステップを含み得る。特に、電界は、電極とマイクロキャビティ内において又はマイクロキャビティに接して当該電極に対向する対向電極との間で形成され及び/又は変化させられる。有利には、電界は、有利には電流強度に依存して開放可能、閉鎖可能又は遮断可能な誘電泳動ケージを形成することができる。この場合、(開放、閉鎖及び遮断される)「DEPケージ」とは、2つの可能な態様のうちの一態様であり、細胞の捕捉に大いに役立つ。マイクロキャビティ内の位置に基づいて細胞を分類できるようにするために、本明細書において提示するアプローチの別の態様を使用することができる。マイクロキャビティ内の電極の駆動制御に応じて、細胞を選択的にキャビティから電気的に突出させることができる「DEPレビテータ」も得られる。こうしたDEPレビテータは、DEPケージとは異なる電界強度分布を有している。
【0008】
さらに好都合なことに、本明細書において提示するアプローチの一実施形態においては、供給するステップにおいて、電流信号が、少なくとも1つの電極へのインタフェース及び隣接するマイクロキャビティ内に配置された少なくとも1つの別の電極へのインタフェースに出力され、これにより、少なくとも1つの別の電極において上記の電極とは異なる電界が形成され、特に、電極において形成された電界は、その方向及び/又は強度に関して別の電極に形成された電界とは異なり、及び/又は、上記の電極を有するマイクロキャビティを基準として共通の列又は共通の行に配置されたマイクロキャビティ内に配置された別の電極において、別の電界が形成される。本明細書において提案するアプローチの当該実施形態は、第1のマイクロキャビティの電極における電界によって生じる電気信号のクロストークが隣接する第2のマイクロキャビティ内において防止され又は少なくとも減衰させられるという利点を提供する。このようにして、例えば、マトリクス状構造の共通の行又は共通の列に配置されたマイクロキャビティの電極において、きわめて近似した又は同一の電位が発生し、これにより、各マイクロキャビティに対して別個に形成されたケージが発生し得ることを効果的に防止することができる。このようにすることによって、各マイクロキャビティ内に捕捉された細胞の分離の改善又は閉じ込めの改善を実現することができる。
【0009】
方法は、供給するステップの後に、マイクロキャビティ及びその上方に存在するマイクロ流体チャンバの容積から試料液体の懸濁液を洗い流すために、洗浄用緩衝剤を使用して試料液体を洗浄するステップを含み得る。洗浄用緩衝剤は、有利には、懸濁液を除去するが、核含有細胞は損なわない流体として実現されるものとしてよい。洗浄するステップにより、有利には、試料液体の透明性を改善でき、これにより、例えば続く分析をより簡単に実行することができる。洗浄するステップは、捕捉された核含有細胞をその捕捉位置から洗い流すことがないように、十分に穏やかに行われるべきである。
【0010】
一実施形態によれば、供給するステップ中又は供給するステップの後に、核含有細胞を捕捉した後、試料液体の別の核含有細胞を非標的細胞として電界から解放させるための解放信号を電極へ供給することができる。有利には、解放信号は、電界の開放を生じさせる解放電圧をトリガすることができる。これにより、有利には、核含有細胞を、別の核含有細胞から単離させることができる。
【0011】
一実施形態によれば、出力するステップにおいて、支持体基板上への溶解物の施与を生じさせるための施与信号を出力することができ、これにより、少なくとも1つの核含有細胞を含む細胞沈降物及び溶解物の細胞懸濁液が得られる。有利には、当該施与信号をポンプ装置へのインタフェースに出力することができ、その結果、ポンプ装置がマイクロ流体デバイスを通して溶解物をポンピングすることができる。
【0012】
さらに、方法は、供給するステップの後に、試料液体から核含有細胞を識別するステップを含み得る。ここでは特に、識別するステップにおいて、細胞沈降物から核含有細胞が光学的に検出可能となり、付加的に又は代替的に定量化可能となる。有利には、例えば腫瘍細胞が溶解物中に含まれているかどうかを識別するために、識別するステップ中に又は識別するステップの前に試料液体を溶解させ、次いで、分析することができる。この場合、識別するステップ中にも、ここでの溶解を、フローを開始するための予備ステップとして実行することができる。
【0013】
また、他の実施形態によれば、供給するステップにおいて、核含有細胞又は少なくとも1つの別の核含有細胞をマイクロキャビティの捕捉平面内に捕捉することができ、及び/又は、解放信号により、試料液体の核含有細胞又は少なくとも1つの別の核含有細胞が電界から搬送平面へ解放される。このようにすれば、それぞれ該当する細胞型のきわめて効率的な捕捉及び後続の搬送を実現することができる。
【0014】
有利にはさらに、マイクロ流体デバイス用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する方法としての、本明細書において提示するアプローチの一実施形態において、方法が、少なくとも1つの核含有細胞を含む試料液体をマイクロ流体デバイスの支持体基板上へ施与するステップを含む。方法はさらに、少なくとも1つの電極により、少なくとも1つの核含有細胞を標的細胞としてマイクロキャビティ内に捕捉するように構成された電界を、支持体基板のマイクロキャビティに接して又は当該マイクロキャビティ内に形成するステップを含む。これらのことから、既に上述した利点がもたらされる。
【0015】
この場合、有利には、方法は、試料液体をマイクロ流体デバイスの支持体基板上へ施与するステップの後に、又は、電界を形成するステップの前若しくは後に、電界を変化させるために、特に強化するために又は弱化するために、電流強度を変化させるステップを含む。この場合、電界は、例えば上記の電極とマイクロキャビティ内において又はマイクロキャビティに接して上記の電極に対向する対向電極との間で形成され及び/又は変化させられる。このことから、既に上述した利点がもたらされる。
【0016】
また、有利には、電界を形成するステップの後に、試料液体の懸濁液をマイクロキャビティから洗い出すために、洗浄用緩衝剤を使用して試料液体を洗浄するステップが行われる。このことから、既に上述した利点がもたらされる。
【0017】
さらに、電界を形成するステップ中に又は電界を形成するステップの後に、核含有細胞を捕捉した後、試料液体の別の核含有細胞が非標的細胞として電界から電極によって解放されると有利である。このことから、既に上述した利点がもたらされる。
【0018】
また、有利には、試料液体を施与するステップにおいて、支持体基板への溶解物の施与が行われ、これにより、少なくとも1つの核含有細胞を含む細胞沈降物と溶解物の細胞懸濁液とが得られる。このことから、既に上述した利点がもたらされる。さらに有利には、電界を形成するステップの後に、試料液体から核含有細胞を識別するステップが設けられる。このことから、既に上述した利点がもたらされる。また、有利には、当該識別するステップにおいて、細胞沈降物から核含有細胞が光学的に検出され及び/又は定量化される。このことから、既に上述した利点がもたらされる。
【0019】
さらに有利には、電界を形成するステップにおいて、核含有細胞又は少なくとも1つの別の核含有細胞がマイクロキャビティの捕捉平面に捕捉され、及び/又は、試料液体の核含有細胞若しくは少なくとも1つの別の核含有細胞が電界から搬送平面へ解放される。このことから、既に上述した利点がもたらされる。
【0020】
この方法は、例えば、ソフトウェアとして、又は、ハードウェアとして、又は、ソフトウェア及びハードウェアの混合形態として、例えば制御装置内に実装可能である。
【0021】
本明細書において提示するアプローチはさらに、本明細書において提示する方法の変形形態の各ステップを対応する装置において実行する、駆動制御する又は使用するように構成された装置を提供する。ここでの装置の形態の本アプローチの変形実施形態によっても、本アプローチの基礎となる課題を迅速かつ効率的に解決することができる。ここでの装置は、例えば制御ユニット又は制御装置として実現可能である。
【0022】
このために、装置は、信号若しくはデータを処理する少なくとも1つの計算ユニット、信号若しくはデータを記憶する少なくとも1つのメモリユニット、センサからセンサ信号を読み込むための、又は、アクチュエータにデータ信号若しくは制御信号を出力するためのセンサ若しくはアクチュエータへの少なくとも1つのインタフェース、及び/又は、通信プロトコル内に埋め込まれたデータを読み込む若しくは出力するための少なくとも1つの通信インタフェースを有し得る。計算ユニットは、例えば、信号プロセッサ、マイクロコントローラなどであるものとしてよく、ここで、メモリユニットは、フラッシュメモリ、EEPROM又は磁気メモリユニットであるものとしてよい。通信インタフェースは、データを無線で及び/又は有線で読み込む又は出力するように構成可能であり、有線接続でデータを読み込む又は出力することができる通信インタフェースは、例えば電気的又は光学的に、対応するデータ伝送線路からデータを読み込むことができ、又は、対応するデータ伝送線路へデータを出力することができる。
【0023】
本明細書において、装置とは、センサ信号を処理し、これに応じて制御信号及び/又はデータ信号を出力する電気装置であると理解されたい。こうした装置は、ハードウェア及び/又はソフトウェアに基づいて構成可能なインタフェースを有し得る。ハードウェアに基づく構成の場合、インタフェースは、例えば、当該装置の様々な機能を含むいわゆるシステムASICの一部であるものとしてよい。しかし、インタフェースを固有の集積回路とすることもでき、又は、少なくとも部分的に個別のモジュールから構成することもできる。ソフトウェアによる構成においては、インタフェースは、ソフトウェアモジュールであるものとしてよく、このソフトウェアモジュールは、例えば別のソフトウェアモジュールと並んでマイクロコントローラ上に存在している。
【0024】
また、半導体メモリ、ハードディスクメモリ又は光学メモリのような機械可読担体上又は機械可読記憶媒体上に記憶可能であって、特にコンピュータ上又はデバイス上において実行されるときに前述した実施形態のうちの1つによる方法の各ステップを実施する、使用する及び/又は駆動制御するために使用されるプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムも有利である。
【0025】
さらに、試料液体の少なくとも1つの核含有細胞を捕捉するマイクロ流体デバイスであって、特にLab-on-a-Chipカートリッジとして構成可能なマイクロ流体デバイスが提案される。マイクロ流体デバイスは、試料液体を収容する支持体基板を有しており、この支持体基板は少なくとも1つのマイクロキャビティを有している。また、マイクロ流体デバイスは、マイクロキャビティに接して又はマイクロキャビティ内に配置される少なくとも1つの電極を有しており、これにより、核含有細胞をマイクロキャビティ内に捕捉するように構成された電界を形成することができる。
【0026】
マイクロ流体デバイスは、有利には、高速試験に関連して使用することができる。マイクロ流体デバイスは、例えば使い捨てカートリッジとして構成可能である。支持体基板は、例えば、複数の層を含む積層基板として構成されるものとしてよい。例えば、1つ又は複数の電極を支持体基板内へ集積させて配置することができる。電極は、マイクロキャビティのキャビティ底部に接して若しくはキャビティ底部内に、又は、キャビティ壁に接して若しくはキャビティ壁内に、配置可能である。
【0027】
一実施形態によれば、支持体基板は、それぞれ少なくとも1つの電極を備えた複数のマイクロキャビティを有するものとしてよく、この場合、マイクロキャビティはマトリクス状に支持体基板上に配置されている。有利には、電界は、マイクロキャビティ内の電極により形成することができる。したがって、複数の標的細胞を個々のマイクロキャビティ内に捕捉することができ、例えばマイクロキャビティごとにそれぞれ1つの標的細胞を捕捉することができる。
【0028】
さらに、少なくとも1つの電極は、複数のマイクロキャビティのうちの少なくとも1つのマイクロキャビティのキャビティ底部に、及び、付加的に又は代替的にキャビティ壁内に配置可能である。これにより、有利には、核含有細胞をマイクロキャビティ内に捕捉することができる位置を特定することができる。
【0029】
一実施形態によれば、少なくとも1つの電極は、マイクロキャビティのそれぞれにおいて個別に駆動制御可能であるものとしてよい。すなわち、有利には、実際に核含有細胞も存在するマイクロキャビティ内において少なくとも1つの電極を常に所期の通りに駆動制御することができる。特に、さらに、それぞれ異なるマイクロキャビティ内における複数の電極のそれぞれに、相互に独立した電圧を印加するように構成された駆動制御ユニットを設けることができる。このようにすれば、2つ以上のマイクロキャビティにわたる電界のクロストークをきわめて効率的に防止することができ、又は、この作用を少なくとも低減させることができる。クロストークを回避することによって、他の全てのマイクロキャビティにおいて既に支配的となっている先行の電界分布を変化させることなく、関心対象となっている単一のマイクロキャビティにおける新たな所望の電界分布を調整することができる。
【0030】
さらに、電極は、環状、点状、及び、付加的に又は代替的に層状に、成形可能である。有利には、マイクロキャビティのそれぞれが、例えば同心状に配置された少なくとも2つの電極を有するものとしてよい。この場合、1つの電極をキャビティ底部に点状に配置し、同様にキャビティ底部の当該電極の周囲に環状に別の電極を配置することができる。代替的に、少なくとも2つの電極を、層状に上下に重なり合うように、すなわち、支持体基板内に集積して配置することもできる。
【0031】
一実施形態によれば、マイクロキャビティは、少なくとも1つの別の電極を有し得るものであり、ここで、上記の電極と少なくとも1つの別の電極とは相互に電気的に絶縁されるものとしてよい。有利には、電極は、空間的な分離又は例えば絶縁層によって相互に電気的に絶縁可能である。
【0032】
特に有利には、一実施形態においては、マイクロキャビティに少なくとも1つの対向電極が配置されており、この場合、対向電極は、マイクロキャビティ内に又はマイクロキャビティに接して上記の電極に及び/又は少なくとも1つの別の電極に対向して配置されており、及び/又は、上記の電極及び/又は少なくとも1つの別の電極から電気的に絶縁されている。このような実施形態により、マイクロキャビティ内の電界のきわめてフレキシブルな駆動制御を達成することができ、これにより、マイクロキャビティ内の個々の細胞を迅速かつ簡単に単離又は分離することができる。
【0033】
本明細書において提示するアプローチの実施例を図面に示し、以下の説明において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】一実施例によるマイクロ流体デバイスを示す概略図である。
【
図2】支持体基板を備えた一実施例によるプリント回路板を示す概略図である。
【
図3】一実施例によるインターポーザ領域を示す概略図である。
【
図4】支持体基板の一実施例の構造を概略的に示す図である。
【
図7】支持体基板の一実施例を示す概略的な断面図である。
【
図9】マイクロ流体デバイスの一実施例による動作モードを示す概略図である。
【
図10】マイクロ流体デバイスの動作モードの一実施例を示す概略図である。
【
図11】マイクロ流体デバイスの動作モードの一実施例を示す概略図である。
【
図12】マイクロ流体デバイスの動作モードの一実施例を示す概略図である。
【
図13】マイクロ流体デバイスの動作モードの一実施例を示す概略図である。
【
図14】マイクロ流体デバイスの一実施例による電圧経過を示す概略的なグラフである。
【
図15】一実施例による寸法を有するマイクロキャビティを示す概略図である。
【
図16】一実施形態による、マイクロ流体デバイス用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する方法を示すフローチャートである。
【
図17】一実施例による装置を示すブロック回路図である。
【
図18a】支持体基板の一実施例を示す概略図である。
【
図18b】支持体基板の一実施例を示す概略図である。
【
図19a】マイクロ流体デバイスの検出チャンバの一実施例を示す概略的な断面図である。
【
図19b】マイクロ流体デバイスの検出チャンバの一実施例を示す概略的な断面図である。
【
図20a】マイクロ流体デバイスの検出チャンバの一実施例を示す概略的な断面図である。
【
図20b】マイクロ流体デバイスの検出チャンバの一実施例を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本アプローチの好都合な実施例についての以下の説明においては、複数の異なる図面に示されている同様の作用を有する要素に対して同一の又は同様の参照符号を使用し、これらの要素についての繰り返しての説明は省略する。
【0036】
図1には、一実施例によるマイクロ流体デバイス100の概略図が示されている。マイクロ流体デバイス100は、この場合、特に、例えば循環腫瘍細胞(CTC)とも称される腫瘍細胞につき試料液体を検査するための、例えば高速試験に関連して使用されるLab-on-a-Chipカートリッジとして形成されている。試料液体は、例えば、患者の血液である。ここで、マイクロ流体デバイス100は、試料液体を収容するための支持体基板105を有している。支持体基板105は、少なくとも1つのマイクロキャビティ110、好適には複数のマイクロキャビティ110を有する。マイクロキャビティ110の内部に又はマイクロキャビティ110に接して、電界を形成するための少なくとも1つの電極115が配置されている。ここで、少なくとも1つの電極115は、例えば、点状、環状、及び/又は、層状に、成形されている。層状とは、少なくとも1つの電極115が例えば層として成形されていることを意味する。電界は、マイクロキャビティ110内に核含有細胞を捕捉するように構成されている。当該実施例によれば、試料液体は、例えば顕微鏡又は評価装置の一部である露光ユニット120を使用して照明される。
【0037】
当該実施例によれば、支持体基板105はプリント回路板125上に配置されており、このプリント回路板125は、マイクロ流体デバイス100のケーシング要素130に配置されている。支持体基板105は、当該実施例によれば、同一又は近似の値の幅b及び長さlを有するので、支持体基板105は、当該実施例によれば、多角形状に、特に正方形状に成形されている。
【0038】
換言すれば、説明しているアプローチにより、帯電マイクロキャビティ110を用いて全血からの核含有細胞、特に活きた循環腫瘍細胞についての完全に自動化された定量化及び誘電泳動での個別細胞分類を実行するように構成されたマイクロ流体デバイス100であるオールインワンシステムを説明する。
【0039】
時間分解され標準化されたCTCの定量化は、患者の疾患の経過をリアルタイムで追跡することを可能にし、このことはリアルタイムモニタリングとも称される。これにより、個々の疾患状況に適合する治療決定を下せること(精密医学)、又は、病状進行なしでの生存に関する予測を提供することも可能となる。個別細胞分類では、分子レベル及び細胞レベルでのこのような核含有細胞の個別細胞分析が可能となる。この場合、さらに、適当な個別細胞分類により検出された腫瘍細胞を定性的に大きい重み付けで単離し、すなわち、迅速かつ効率的にかつ生存可能な状態に留まるように健康な血液細胞を汚染されたバックグラウンドから単離し、後続の分子遺伝学的分析、例えば、発現プロフィル、PCR、NGSのために、又は、例えば培養試験、幹細胞試験及び化学的感受性試験のために、供給する手段が得られる。この場合、癌性疾患に関するより正確な情報が得られる。このことは、例えば、生じる変異体の種類及び異質性、又は、使用される薬品に対する可能な抵抗性にも関する。
【0040】
このような背景から、本明細書において提示するアプローチは、比較的フラットで大面積の検出チャンバの底部にマイクロキャビティ110を有している。これによって生じる「オールインワンシステム」によって、健康な血液細胞からの、活きた循環腫瘍細胞の試料前処理及び(ほぼ)単離不要の定量化が可能となるだけでなく、付加的に、後続の個別細胞分析のための、検出された腫瘍細胞の誘電泳動での個別細胞分類も可能となる。当該システムはマイクロ流体環境で使用され、全血の全自動処理を可能にする。
【0041】
ここで、本明細書において提示するアプローチの中心となる要素として、CTCを定量化するための試料の前処理と、分子レベル及び細胞レベルでCTCを個別細胞分析するための個別細胞分類とが含まれる。試料前処理及びCTC定量化は、当該実施例によれば、個別細胞分類に使用可能な帯電マイクロキャビティ110内において行われる。当該実施例によれば、個別細胞分類は、負の誘電泳動による非接触操作に基づいている。この目的のために、個々のキャビティ110は、例えば覆われた導体路の交点に設けられた孔によって画定され、これらの孔は、電気的に分離されかつ排他的にアドレシング可能な行及び列として、支持体基板105上のマトリクス内に配置されている。単一の標的細胞の解放、又は、分類ストラテジに応じて、事前にキャビティ110内に沈降しており、そこで洗浄過程中でも安定的に「DEPケージ」内に捕捉される非標的細胞の解放は、捕捉平面から搬送平面への細胞の搬送として、適当な電気信号を用いて対応する行及び列を駆動制御することにより行われる(「DEPレビテータ」の使用)。非標的細胞、又は、分類ストラテジに応じて同一の行及び列に沿って隣接するキャビティ110内の標的細胞は、その捕捉状態においては影響を受けない。解放された細胞はマイクロ流体的に搬出され、ここで、これらの細胞は、個別細胞分類の全期間にわたって反発性の誘電相互作用により、チップと接触せず、隣接するDEPケージにおいて洗浄されることもない。
【0042】
細胞操作に必要なDEPケージは、必ずしもチャンバ高さ全体にわたって延在しているものではなく、一実施例によれば、チャンバ底部のマイクロキャビティ110内に形成されるので、電気部品とマイクロ流体部品との間には、分離が生じている。結果として、チャンバの高さひいては試料容積は、底面積及び供給電圧又は達成されるDEP力がさらに一定である場合、任意の大きさで選択することができる。マイクロキャビティ110内の細胞は、平坦な基板105の上方の細胞に比較して、細胞が懸濁された媒体を移動する際にさらに(著しく)低減されたストークス力を受け、その際に、キャビティ110の内部にDEPケージが存在することにより、より安定した捕捉位置がもたらされるので、効率的かつ損失のない洗浄を迅速に実行することができる。したがって、全体として、全血の自動前処理及びマイクロ流体力学による循環腫瘍細胞の定量化が支援される。
【0043】
個別細胞分類のために、静的な、すなわち、その位置及びサイズにおいて固定されたDEPケージが使用可能であるので、適当に駆動制御される場合、集積された能動回路部品を使用する必要がなくなる。こうした受動のチップは、比較的簡単にかつ低コストで製造することができる。細胞の純粋に流体的な搬出においては、純粋に誘電的に可能となるよりも高い搬送速度が可能となる。しかも、当該搬送速度は、チップのローディングとは無関係である。なぜなら、解放された細胞が同一の平面内において別の細胞の傍らを通過する必要がなくなり、他の細胞は、単純に直線的に飛び越えさせることができるからである。これらの態様においては、正の選択と負の選択とが同様に実際に使用可能である。
【0044】
図2には、支持体基板105を備えた一実施例によるプリント回路板125の概略図が示されている。ここに示されているプリント回路板125及び/又はこのプリント回路板125上に配置された支持体基板105は、少なくとも
図1に即して説明したプリント回路板125及び/又は
図1に即して説明した支持体基板105に相当し又は類似している。この場合、例えばプリント回路板125は、例えば支持体領域200とインターポーザ領域205とを有するPCB支持体とも称される。支持体基板105は、当該実施例によれば、シリコンチップとして形成されており、このシリコンチップは、例えば、インターポーザ領域205の箇所において外部の駆動制御回路に電気的に接続されているが、例えば複数の接続インタフェース210を介してコンタクト接続されており又はコンタクト接続可能であり、このことは、ボンディングとも称される。この場合、接続インタフェース210は、例えば支持体基板105上又は支持体基板105内に配置された電極との電気的なコンタクト接続のために形成されている。以下においては、駆動制御回路を装置とも称する。インターポーザ領域205は、少なくとも1つの調整孔215、特に2つの調整孔215を有し、これらの調整孔215は、インターポーザを適当に位置決めして固定するために、例えば圧着する又はねじ固定するために形成されている。
【0045】
本明細書においてはプリント回路板125と称される支持体PCBにボンディングされるSiチップは、例えばマイクロ流体的にLoCカートリッジに統合可能であり、インターポーザシステムを介して外部の駆動制御回路に電気的にコンタクト接続可能である。
【0046】
例えば50μlの全容量で酢酸を収容するために、底面12.5mm×12.5mmのチャンバに必要となるチャンバ高さは、少なくとも320μmである。しかし、必要な場合には、比較的高いチャンバを設けることも問題なく可能であり、この場合、これらのチャンバは、相応に比較的大きい試料容積をもたらす。例えば、高さ1mm超のチャンバ及び底面12.5mm×12.5mmのチャンバにおいては、156μl超のチャンバ容積が得られる。
【0047】
支持体部材105は、当該実施例によれば、複数の層220を有しており、ここで、支持体基板105の構造については、以下の図のうちの1つにおいて詳しく説明する。当該実施例によれば、支持体基板105は、試料液体を検査するためのチャンバ225を有している。チャンバ225の領域には、当該実施例によれば、マイクロキャビティ110が配置されている。さらに、マイクロキャビティ110のそれぞれは、例えば個別に駆動制御可能である少なくとも1つの電極230を有している。マイクロキャビティ110は、任意選択手段として、支持体基板105上にマトリクス状に配置されている。
【0048】
図3には、一実施例によるインターポーザ領域205の概略図が示されている。ここに示されているインターポーザ領域205は、少なくとも
図2に即して説明したインターポーザ領域205に相当し又は類似している。当該実施例によれば、インターポーザ領域205は、この場合、分解の図示としては分解
図300に描かれており、断面の図示としては断面
図302に描かれている。
【0049】
この場合、プリント回路板125は、ベース素子として形成されており、このベース素子には、例えば中間素子305及び/又はカバー素子310を有するインターポーザ303が配置されている。当該実施例によれば、インターポーザ303、中間素子305及びカバー素子310及びプリント回路板125が相互に圧着されている。
【0050】
当該実施例によれば、モジュール構造が示されている。すなわち、ここではプリント回路板125とその上に配置された
図3では見えていない支持体基板とから構成されている、電気的に見て受動の分類チップが、インターポーザ303が使用される状況において、個別細胞分類の期間にわたる圧着により、能動駆動制御回路にコンタクト接続されている。ここでは、各底部電極及び対向電極に対し、受動チップ上において、それぞれ排他的に駆動制御可能なコンタクトパッドが配属されている。よって、例えば、古典的なマトリクスの10000DEPケージを実現するために、100+100+1=201個のコンタクトパッドが必要である。コンタクトパッドの例示的なサイズは、500μm×500μmである。PCB技術で実現されている帯電マイクロキャビティでは、必要なコンタクトパッドは、同一のプリント回路板125上に直接に設けられる。これに対して、Si技術が使用される場合には、必要なコンタクトパッドを被着した付加的な支持体PCBが推奨される。これは、Siチップと支持体PCBとの間の電気的接続が例えばボンディングワイヤを介して行われることを意味する。
【0051】
受動部分は、例えばここではマイクロ流体デバイスとして説明しているLab-on-a-Chipマイクロ流体システム内に位置しているが、能動部分は、単に任意選択手段としてであるが、対応する空間的に分離された評価ユニット内に位置している。
【0052】
図4には、支持体基板105の一実施例の概略的な構造図が示されている。ここに示されている支持体基板105は、
図1又は
図2に即して説明した支持体基板105に相当し又は類似している。支持体基板105は、当該実施例によれば、6つの部分図a)乃至f)に示されている複数の層220を有する。当該実施例によれば、部分図a)乃至f)は相互に重なり合うように形成されていると理解される。
【0053】
部分図a)は、この場合、第1の酸化物層405を有し、よって基部として機能する支持体基板105のベース材料400、例えばシリコンを示している。部分図b)は、部分図a)に対応する。当該実施例によれば、相違点は、部分図b)における支持体基板105が付加的に複数の金属ロッド415又は例えば金属ストリップを有する金属層410を有していることのみである。この場合、金属層410は、構成すべき各マイクロキャビティに対して少なくとも1つの電極として作用するように、酸化物層405上に配置されている。当該実施例によれば、金属ロッド415は相互に離間されて配置されており、これにより、金属ロッド間にそれぞれ1つのギャップSが配置されている。
【0054】
部分図c)には、支持体基板105が示されており、この支持体基板105は、当該実施例によれば、部分図b)に示した支持体基板105に相当する。当該実施例によれば、相違点は、支持体基板105が付加的に金属層410の金属ロッド415に沿って複数の開口412を有する第2の酸化物層420を有することのみである。これらの開口412はこの場合、金属ロッド415上に配置されており、これにより、この金属ロッド415は、支持体基板105の動作準備状態において、マイクロキャビティのキャビティ底部に設けられた少なくとも1つの電極として機能する。この場合、開口412の直径dは、それぞれ金属ロッド415の幅wに対応する。
【0055】
部分図d)には、当該実施例によれば、部分図c)の発展形態が示されている。これに加えて、支持体基板105は、同様に複数の別の金属ロッド430から構成されている別の金属層425を有する。これらの別の金属ロッド430は、ここでは、金属ロッド415に対して横断方向に延在している。第2の酸化物層420の開口412の領域において、別の金属ロッド430は環状セクションを有し、この環状セクションのサイズ及び位置は開口412のサイズ及び位置に依存し、さらに、この環状セクションは、当該実施例によれば、少なくとも1つの別の電極445を構成している。ここで、電極230及び別の電極445は、当該実施例によれば、相互に電気的に絶縁されており、さらに任意選択手段として同心状に配置されている。付加的に又は代替的に、電極230,445は、相互に層状に配置されている。このことは、少なくとも1つの電極230が、マイクロキャビティ110のうちの少なくとも1つのキャビティ底部に及び/又はキャビティ壁内に配置されていることを意味している。
【0056】
部分図e)は部分図d)に対応しているが、ただし、当該実施例によれば、付加的にフォトレジスト層450が第2の金属層425の上方に配置されている。フォトレジスト層450は、上述した第2の酸化物層420と同様に、電極230,445の位置に配置された別の開口を有する。なお、別の金属ロッド430は、例えば電気絶縁特性を有するフォトレジスト層450によって覆われている。当該実施例によれば、電極230,445は、相互に間隔を置いて配置されている。これにより形成されるウェブは、当該実施例によれば、各金属ロッド415と同等の幅wを有する。
【0057】
部分図f)に示されている支持体基板105は、例えば部分図e)に即して説明した支持体基板105に相当する。相違点は、部分図f)の支持体基板105が付加的に(ここでは金属層として形成された)対向電極455を有し、当該対向電極455がフォトレジスト層450の上方に配置されて第3の電極として実現されていることのみである。
【0058】
換言すれば、例示的な寸法を有するシリコン技術における、新規のDEPチップの層構造が示されている。チップは複数の層から構成されている。
【0059】
当該実施例によれば、マイクロキャビティ110は薄膜技術において実現されている。支持体基板105は、この場合、例えば熱酸化シリコンウェハとして実現されている。金属ロッド415,430によって構成された底部電極230,445及びこれを電気的に絶縁する酸化物層420は、例えばリソグラフィにより描画することができる。すなわち、選択的にこれをスパッタリングプロセス又は成長プロセス及びエッチングと組み合わせて、又は、代替的に蒸着及びリフトオフによって行うことができる。このとき、約1μmの水平分解能が問題なく達成される。金属膜及び酸化物の層厚さは、例えば、数ナノメートルから最大約3μmまでである。ここで金属層として説明している対向電極455も同様に作製することができ、底部電極230,445と同様の製造制約を有する。キャビティの壁は、例えば本明細書においては、深部で約1:10までのアスペクト比で2μmから200μmまでの寸法を有するフォトレジスト層450と称される、リソグラフィパターニングされた厚いフォトレジストによって形成される。キャビティ110の底面の形状は、任意選択手段として、例えば円形状、六角形状又は正方形状に選択可能である。キャビティ110は、「古典的なマトリクス」内の底部電極230,445上に、又は、代替的に密にパッケージングされて、配置可能である。
【0060】
これに代えて、回路板技術(PCB)におけるマイクロキャビティ110は、以下のようにも実現可能である。支持体基板105は、例えば、剛性のFR4支持体、例えば1mm超の厚さのベース材料400から成る。接着剤を介して、例えば支持体基板105の機能層が相互に結合されている。金属層又は導体路は、例えばフォトリソグラフィによってパターニングされ、ウェットケミカルエッチングされた薄い銅箔を有しており、この銅箔は、例えば6μm乃至70μmの厚さを有している。導体路幅及び導体路間隔は、例えば標準的には既に15μmから実現可能である。導体路間のアイソレータは、例えば、通常12μm以上の厚さを有する薄いポリイミドフィルムを有している。それぞれ異なる金属層及びアイソレータがラミネート処理プロセスによって相互に接合される。底部電極230,445の交点における穿孔部(「平坦でないブラインドビア」とも称される)は、例えば(超)短パルスレーザによるアブレーションによって形成される。これらの穿孔部は例えば約15μm以上の直径を有し、約1:1のアスペクト比を有する。露出された金属面、特に媒体と接触する金属面は、いわゆる「仕上げ加工」によって保護することができる。PCB技術における標準的な端面は、例えばENIG、ENEPIG、EPIG又は電解金めっきである。さらにここで述べておくと、当該実施例においては、端面は、露出している全ての金属面上に設けられ、すなわち、全ての電極230,445及び455上に存在する。留意すべきことは、仕上げ加工が種々のコンタクト間の電気的短絡に結びついてはならないことである。マイクロキャビティ110は、例えば100μmの直径及び66μmの深さを有する。
【0061】
図5には、支持体基板105の概略的な断面図が示されている。ここに示した支持体基板105は、少なくとも
図1、
図2又は
図4に即して説明した支持体基板105に相当し又は類似している。当該実施例によれば、支持体基板105の内部又は上部の主セクション500に、少なくとも1つのチャンバ220が配置されている。さらに、支持体基板105は、チャンバ220よりも小さい副セクション504に副チャンバ502を有する。この場合、2つのチャンバ220,502は、同等の高さhを有している。チャンバ220は、隔壁505によって副チャンバ502から隔てられている。この場合、チャンバ220は、試料液体を収容するように形成されている。試料液体は、少なくとも1つの核含有細胞510を有し、特に少なくとも1つの別の核含有細胞515も有し、核含有細胞510は腫瘍細胞として形成されており、別の核含有細胞515は白血球として形成されている。チャンバ220の底部領域にはさらに、電極230,445が同心状に配置されている。支持体基板105は導電性金属層455を有し、この金属層455は、例えば第3の電極として構成されており、かつ、電極230,445に対向して配置されている。電極230,445及び455は、ケージ領域540に電界535を形成するように形成されており、この電界535は、ケージと同様に核含有細胞510に対して作用する。これにより、核含有細胞510がその位置で固定される。さらに、核含有細胞510,515のそれぞれに対して、それぞれ電界535が作用する。したがって、核含有細胞510は、相互に接触することなく、少なくとも1つの別の核含有細胞515の傍らを通過して搬送され、これにより、個別細胞分類を達成することができる。核含有細胞510は、この場合、副チャンバ502内へ搬送される。
【0062】
従来、血液試料からの循環腫瘍細胞の情報内容を利用するために、このために必要とされる試料前処理を伴うCTC定量化と、これに続いて行われる、このために必要とされる個別細胞分類を伴うCTC個別細胞分析とは、相互に分離したプロセスである。このために、通常複数の装置、例えば「プロセス段」として相互接続された独立したプラットフォームと、例えばピペット、反応容器又は遠心分離機などの実験用装置を使用した手動プロセスステップとが必要である。
【0063】
試料前処理においては、典型的には、赤血球(Red Blood Cells、RBC)の少なくとも1つの除去及び核含有細胞の蛍光染色(マーキング)が、CTCの光学検出及び分類のために行われる。CTCカウント前に、白血球(White Blood Cells,WBC)からのCTCの(さらなる)分類が行われるか否かに応じて、単離を伴う方法又は(殆ど)単離を行わない方法が区別される。
【0064】
個別細胞分類のための解決手段は、一般的に、分類スループットと分類感受性との間に妥結点を見出している。ここで、選択されるストラテジは具体的な用途に大きく依存する。これは、初期状態における試料の性質及び後続の個別細胞分析の要求に関連し得る。
【0065】
例えば100万個超の細胞の開始量を伴う多量の細胞の分類のために、従来は、例えば蛍光体に基づくフローサイトメータ(FACS)が使用されている。しかし、こうした蛍光体に基づくフローサイトメータは、比較的大きいデッドボリュームを有し、検出すべき細胞標識の大きさ及び強度に応じて相対的に損失を伴うものとなり得る。さらに、分類過程中、通常、視覚的なコントロール(イメージング)を行うことはできない。マイクロ流体システムの外部では、前段階において検出され場合により濃縮された個々の標的細胞、例えば循環腫瘍細胞が、非標的細胞、例えば白血球のような健康な血液細胞から、古典的にはマイクロキャピラリ(「細胞ピッカー」)によっても単離可能である。このために、通常、例えば数十マイクロメートルの範囲の内径を有するガラスから作製された超微細キャピラリを、マイクロマニピュレータを用いて標的細胞に近づける。十分に定義された負圧を加えることによって、標的細胞が周囲の非標的細胞から吸い出され、例えばさらなる分析のために別個の容器へ移される。
【0066】
マイクロ流体環境内における数マイクロリットルの血液中の白血球の数に例示的に対応する例えば数万個の細胞の開始量を有する小さいバイオプシの効率的な分類に関心がある場合、これまで有望であった、生物学的細胞をその誘電特性に基づいて操作するというアプローチが顕著であった。基礎を成す機構、いわゆる誘電泳動(DEP)は、空間的に非均一な直流電界又は交流電界における非帯電性の分極が可能な粒子の運動も表す。この場合、外部から印加された電界が、まさにこの外部電界により誘導される電気的マルチポーラと相互作用して、粒子に誘電泳動の力作用が生じる。
【0067】
生物学的細胞は、このように非接触で、かつ、マーカーから独立して操作される。当該効果は大きい規模でスケーリング可能であるので、さらに、今日のMEMS技術との良好な適合性も得られる。最も単純なケースである(例としての、細胞性の血液成分から単離すべき活きた循環腫瘍細胞の代表である)球状粒子については、
【数1】
で、時間平均された1次の誘電泳動力(誘電泳動の記述にとって十分な、中程度の不均一な電界を表す表現)が、最も一般的なケースにおいては、空間的に固定の電界に対して、
【数2】
として表現される。ここで、Rは、考察される粒子の半径を表し、
【数3】
及び
【数4】
は、粒子p及び周囲の媒体mの絶対複素誘電率を表し、ここで、
【数5】
が成り立ち、εは、電気伝導率であるσと印加される電界の角周波数であるωとの複素単位としての絶対実誘電率j=√(-1)である。クラウジウス・モソッティ係数(の実部)の符号
【数6】
に応じて(これは、電界の周波数、及び、媒体と粒子(内部)との間の周波数依存性の絶対実誘電率εと電気伝導率σとの相対的調整に依存する)、操作に際し、引き付け(電界強度の最大値
【数7】
の方向への作用を有する正の誘電泳動若しくはpDEP)の力作用又は反発(電界強度の最小値
【数8】
の方向への作用を有する負の誘電泳動若しくはnDEP)の力作用が、個々の粒子に対して形成され得る。
【0068】
pDEPを用いて細胞を操作するアプローチが考察されている場合、これは、低導電率の緩衝剤においてのみ達成可能であることに留意されたい。当該措置は、一方では全体として(著しく)熱損失を低減するが、他方では付加的な別個の脱イオンプロセスが結びついており、必然的に生じる「人工雰囲気」が細胞の活性及び増殖挙動に悪影響を及ぼし得る(「細胞内容物の漏出」)。安定した力平衡は、引き付けるDEP力に対し、電界を発生させる電極の表面で常に立体的に、又は、一般化された式において、チップ表面上の最大電界強度の箇所で発生する。DEPのケースはこのように格段に容易に形成可能となり、増加する電圧に対する拘束力が強くなり、特には高まるが、このことによって接触が生じ、ひいては状況により細胞がチップ表面と接着して、過度に高い電界強度のために細胞を溶解させるおそれがある。このことは、時折、pDEPによる分類の効率又は純度の(著しい)低下をまねきかねない重大な欠点である。上述した問題を回避しようとする場合、代替的に、例えば血漿、PBS又は細胞培養培地などの生理学的媒体において「いずれにせよわずかのみ」得られる負のDEP力を細胞の分類に使用することができる。この場合、確かに、比較として、電気作用エネルギからの、場合により適当な付加部品、例えばファン又はペルチエ素子によってしか放出可能でない熱への変換の増加を考慮しなければならないが、このための事前の脱イオン化は省略可能である。さらに、天然媒体を維持することにより、細胞の寿命及び発現プロフィルが最大限に保存される。
【0069】
再帰的なDEP力の場合、細胞は常に最小電界強度の場所へ、すなわち、通常は基板から離隔する方向へ移動する。これにより、細胞とチップ表面との間の接触が回避され、電界の過度の増加による細胞の付着及び破壊に抗する作用が得られる。このことから十分に導出されることとして、十分な強さのDEPのケースにおいて安定した力平衡が実現され、その拘束力が通常は電圧の増加に伴って低下することが挙げられる。当該アプローチにおけるストラテジは、1つの平面内において、ただし、2つの別個のチャンバを用いて、非標的細胞から標的細胞を単離することにある。このとき、分類プロセスは、以下の2つのステップを含む。
【0070】
先ず、準備された関心対象の細胞懸濁液が、ここではチャンバ220、以下においては「チャンバ1」とも称される大きい主チャンバに入力され、隣接する小さい副チャンバ502(以下「チャンバ2」と称する)には、生理学的組成物から成る清潔な洗浄用緩衝剤が充填される。充填ステップのために、個々のチャンバ220,502ではそれぞれ、入力用のインレットと排出又は出力用のアウトレットとが利用可能である。2つのチャンバ220,502は充填後に無空気で相互に流体接続され、チャンバ1内の細胞510,515はランダムであるが均一に分散して、これらの細胞は、チャンバ2内へは到達しない。チャンバ1内において、標的細胞は純粋に電気的に(誘電的に)捕捉され、「決定論的に」、すなわち、個別にプログラミング可能な軌道に沿って、固定平面545内において、同様に捕捉された非標的細胞の傍らを衝突なしに通過して、チャンバ2内へ搬送される。例えばチャンバ220,502及びその壁は、底部とカバー部とを密閉して接続する適当な高さ及び適当なレイアウトの両面接着テープによって画定される。標的細胞の搬送は、3次元の「持続的に閉鎖されたDEPケージ」を用いて非接触にて行われる。「標準構成」におけるこのようなケージは、例えば3×3個の平坦な正方形状のケイ素電極230,445から成り、これらのケイ素電極230,445は、チャンバ底部に設けられており(電極ごとに約18.8μm×18.8μm、隣接電極までの距離1.2μm)、さらに、チャンバカバー部の全面にわたって延在している透明なインジウムスズ酸化物(ITO)の対向電極455が設けられている。nDEPにより細胞が安定的に配置されたチャンバ内の中央に電界最小値を形成するために、中央の底部電極230とチャンバカバー部の対向電極455とを同等の交流電位に置き(「同相」又は「+」)、他方、外側の底部電極445をこれに対して逆相で動作させる(「逆相」又は「-」)。
【0071】
チャンバ2では、事前にチャンバ1から「吐出された」標的細胞510が、例えばEppendorfチューブなどの外部反応容器へ、清潔な緩衝剤を用いた最後の洗い流しステップを介して出力される。すなわち、当該過程は純粋にマイクロ流体において、ひいては「非決定論的に」実行され、このことは、核含有細胞が、当該変形例によれば、単純に直線状の軌道に従うことを意味する。
【0072】
ここで説明している分類プロセスは、それぞれ100%の再現可能性を有する効率及び純度を保証するが、以下の通り解釈されるべき「結果」を共に担う。
【0073】
電解作用を誘導せず、容易に実現可能かつ操作可能な給電電圧(UDEP≦5VRMS)の範囲内において、細胞マニピュレーションのための十分に高い電界強度又はDEP力を生成するために、チャンバ1の高さ、ひいてはこれに関連してチャンバ1で収容可能な最大試料体積は、制限されている。例えば、最大約100μmのチャンバの高さから、約12.5mm×12.5mmのチャンバ1の底面につき、最大約15.6μlのチャンバ容積が得られる。また、チャンバ2内のケースとは異なり、チャンバ1内の効果的な洗浄は、保証されておらず又は実現不能である。このため、清潔な緩衝剤内における、標的細胞がさらに濃縮された外部濃度が想定されている。これは、通常、遠心分離機によって実現されるが、装置間における、手動による試料転送が必要であり、付加的な細胞損失に注意が必要である。上述したように、動作に必要な「動的な」DEPケージ、すなわち、その位置及びサイズが可変であるDEPケージは、能動型素子、例えばトランジスタ又は記憶素子によってのみ実現可能である。これらは、個々のケイ素電極内にCMOS技術で集積されている。
【0074】
当該変形形態によれば、チャンバ1内の標的細胞に対する最大搬送速度は、搬送に使用される(横方向の)DEP力が制限されているため、制限されている(約1電極幅/秒)。さらに、任意選択手段として、最大搬送速度は、個々のケースにおいては、チップのローディングに依存する。これは、標準構成と比較して、理論的には全部で3×3/2×2=9/4=2.25倍の数の細胞を収容するための閉鎖されたDEPケージを2×2個の電極から成るパターンのみでも生成することができるが(「再構成」)、ここで、標的細胞のために先ず「出力部までの経路の自由空間」が必要となり、これが分類時間の増加に結びつくことを意味する。負の選択は、設けられておらず又は実現不能である。
【0075】
図6には、支持体基板105の概略図が示されている。ここに示されている支持体基板105は、例えば、
図5に即して説明した支持体基板105に相当する。斜視図としての視点のみが異なっている。これは、支持体基板105が上から見た状態で示されていることを意味する。単に例としてであるが、軌道600が示されており、この軌道600に沿って、電界と変化する電圧値とを使用して、核含有細胞510が、先ず副セクション504へ搬送され、次いで、支持体基板105から例えば試料容器605へ搬送される。
【0076】
主セクション500及びチャンバ220は、ここでは正方形状に成形されている。さらに、チャンバ220は、任意選択手段としてボトルネック状の接続セクション610を介して副チャンバ502に接続されている。副チャンバ502は、実質的に直線状に形成されており、入口615とこの入口615とは反対側の出口620とを有する。このために、別個のインレット-アウトレット対IN615及びOUT620が存在し、ここで、インレット-アウトレット対は、清潔な緩衝剤による洗浄/搬送/出力過程に対してのみ設けられている。出口620は、個別化された核含有細胞510を、支持体基板105から副チャンバ502を介して試料容器605内へ放出させるように形成されている。
【0077】
図7には、支持体基板105の一実施例の概略的な断面図が示されている。ここに示されている支持体基板105は、例えば
図1に即して例示的に説明したマイクロ流体デバイスのために使用可能である。また、当該支持体基板105は、少なくとも
図1、
図2、
図4、
図5、
図6に即して説明した支持体基板105に類似している。当該実施例によれば、支持体基板105内に凹部として配置されたマイクロキャビティ110が示されている。当該実施例によれば、ここに示されている支持体基板105も、電界535を形成するように構成されかつ同心状に配置された電極230,445を有する。電界535(「DEPケージ」)を生成できるようにするために、きわめて有利には、面状の電極を対向電極455として使用することもでき、この対向電極455は、この場合、マイクロキャビティ110のカバー部に設けられる第3の電極を形成し、電極230に対向する。当該実施例によれば、全てのマイクロキャビティ110が同様に形成されているので、これらのマイクロキャビティのそれぞれにおいて電界を生成することができる。これにより、例えば支持体基板105上における個別細胞分類が可能となる。さらに、これにより、核含有細胞510が軌道600に沿ってマイクロ流体デバイスから搬送可能となる。当該実施例によれば、出口620は、例えば二重弁として形成された弁700に接続されている。弁700は、核含有細胞510を試料容器605内へ案内し、望ましくない液体705、例えば試料液体の溶解残留物を放出させるように形成されている。
【0078】
換言すれば、帯電マイクロキャビティ110を用いた個別細胞分類、すなわち、非標的細胞、すなわち、1つのチャンバ内の他の核含有細胞515から2つの別個の平面545,710を用いて核含有細胞510を単離することを説明する。対応する分類プロセスは、前処理と空間的な分離とを前提としており、これにより、核含有細胞510の定量化が可能となる。
【0079】
当該実施例によれば、支持体基板105は、個別細胞分類のための帯電マイクロキャビティ110を有する。外側には、ここでは弁700とも称される2方向制御弁が設けられている。弁700は、汚染物として作用するため前処理プロセスにおいて洗い流すべき血液溶解物705を、個別細胞分類の際に後続の清潔な洗浄用緩衝剤を使用して、核含有細胞510から空間的に完全に分離するように構成されている。代替的に、弁700を用いずに血液溶解物705を分離するために、アウトレットすなわち出口620にシーケンシャルに配置された2つの異なる反応容器を使用することも考えられる。
【0080】
個々のマイクロキャビティ110の底部には、第1の点状電極230が設けられており、この第1の点状電極230は、第2の環状電極445によって取り囲まれることにより、電気的に絶縁されている。これら2つの底部電極230,445は、同心状に配置されており、マイクロキャビティ110の底面の重心に一致する。点状電極230としてキャビティ110を通って延在する電極230は、ギャップを形成する。このために、環状電極としてキャビティを通って延在する、90°回転された電極445は、各底部電極230,445を別個に駆動制御することができるマトリクスの行を形成する。続いて、3次元の「解放機能を有するDEPケージ」を生成できるようにするためには、金属層455とも称され、隣接するウェル間のウェブ上面を形成する面状の第3の対向電極が必要となる。
【0081】
当該実施例によれば、全ての点状の底部電極230及び対向電極455が十分に高い同等の交流電位に置かれ、一方、全ての環状の底部電極445が同等の強度で逆相に駆動される場合、底部付近でランダムではあるが均一に分布した無欠陥の核含有細胞510,515、すなわち、白血球及び循環腫瘍細胞が、静止した媒体
【数9】
中で、沈降の経過において、非接触でマイクロキャビティ110内の中央の安定した浮遊位置へ導かれる。ただし、この場合、同時に、電圧レベルU
DEP,minは、開放されたDEPケージを得るために十分に低く選定されるべきである。
【0082】
洗浄の直前
【数10】
には、通常は不変の信号が底部電極230,445に印加されているときの電圧が、与えられた最大値U
DEP,maxまで増加させられ、最大保持力を有する閉鎖されたDEPケージが形成され、このDEPケージ内においては、全ての細胞510,515が、キャビティ110の壁又は底部に接触することなく、支配的な流動力に抗して安定的に捕捉されたままとなる。その結果、ケージの外側に位置する無欠陥の細胞は当該ケージにはもはや入ることができず、一方、1つのケージ内の全ての細胞510,515は安定的に捕捉されたままとなる。洗浄過程は、汚染物が残留物なしに除去されたチャンバ内において行われ、単に任意選択手段としてのものである。
【0083】
以下においては、任意選択手段として一般性を制限することなく、正の選択過程、すなわち、非標的細胞515からの標的細胞510の単離を提示する。これとは逆にもちろん、マイクロキャビティ110から非標的細胞515を開放し、これに対して標的細胞510を開放しないことにより、負の選択も達成される。
【0084】
チャンバ底部へ沈降した全ての細胞510,515は、初期状態においては、先ず、マイクロキャビティ110の内部にある平衡位置、すなわち、キャビティ110の底部から出発した一定の高さの箇所に位置している。こうした下方の捕捉平面は、以下の考察においては、平面710と称される。印加されるDEP電圧レベルが依然として最大である場合には、チャンバ内の媒体は依然として運動する。標的細胞510,515を平面710での安定した捕捉状態から吐出させ、ウェブ上面を介してここでは平面545と称される上方の搬送平面へ移行させるために、標的細胞510の位置において交差した底部電極230,445が適当な電気信号によって駆動制御される。このために、対応する列には解放電圧UF,Sが、対応する行には解放電圧UF,Zが印加される。この場合、解放電圧は、幾何学形状に依存している。0≦UF,S≦UF,Z≦UDEP,maxにおいて、個々の細胞のその浮遊位置からの純粋に電気的な(誘電的な)解放を「決定論的に」、ただし、隣接する細胞の捕捉位置での障害を生じさせることなく保証するために、次のように解放電圧を選択することができる。使用される全ての信号は、例えば一定の周波数を有する高調波励起である。
【0085】
細胞解放は、マイクロキャビティ110を通る中央の対称軸線に沿って負のz方向で十分に大きい再帰的な正味のDEP力(「DEPレビテータ」)を必要とする。このために、マイクロキャビティ110の所与の幾何学的形状につき、UF,SとUF,Zとの適当な組合せによって、対向電極455からの電界強度の電力線全体が点状の底部電極230の露出された表面(列)まで可能な限りz軸に対して平行に下降し、引き続き十分に大きい電界強度が存在することが保証される。壁近傍のマイクロキャビティ110の縁部領域における環状の底部電極445(行)による当該電界経過に起因した障害は、最大限まで抑制されることになる。
【0086】
UF,Zは、同時に、解放行に沿った、すなわち、標的細胞510のキャビティ110の左右にある非標的細胞515のDEPケージの崩壊が回避され、閉鎖されたDEPケージが十分な保持力で存在し続けるように、小さく選定されるべきである。他方、UF,Sは、深く閉鎖されたDEPケージの内部における一時的な新しい平衡状態において、非標的細胞515と解放列に沿った対応するキャビティ110の底部との間の接触、すなわち、標的細胞510のキャビティ110の上側と下側との接触が生じないように大きく選定されるべきである。
【0087】
キャビティ110内の平面710内において先行して解放された細胞に対して保護を行い、洗浄時に全体として低減されたストークス力しか受けないようにした場合、平面545内の状況が変化する。ここでは、出口620への搬送(搬出)と清潔な(洗浄用)緩衝剤を用いた出力とが、純粋にマイクロ流体として、すなわち、非決定論的に、最大のストークス力により、ひいては相対的に迅速に行われる。解放された細胞は、隣接するDEPケージに流入することができない。なぜなら、隣接するDEPケージは閉鎖されているからである。したがって、分類の基本方式により、全体として最大の効率及び純度が得られる。
【0088】
図8には、支持体基板105の一実施例の概略図が示されている。ここに示されている支持体基板105は、例えば
図1、
図2又は
図4乃至
図7に即して説明した支持体基板105に相当し又は類似している。当該実施例によれば、斜視図としての視点のみが異なっている。これは、ここに示されている支持体基板105が上方から見た図であることを意味する。支持体基板105は、この場合も、複数のマイクロキャビティ110を有する。この場合も、マイクロキャビティ110はマトリクス状に、すなわち、行及び列として配置されている。ここにも少なくとも1つの核含有細胞510のための軌道600が示されている。
【0089】
図9には、マイクロ流体デバイス用の動作モード900の一実施例が概略的に示されている。この場合、少なくともここに示されている支持体基板105は、
図1、
図2又は
図4乃至
図8に即して説明した支持体基板105に類似している。動作モード900とは、当該実施例によれば、マイクロ流体デバイスの電極が動作させられて電界535が形成される状態をいう。当該実施例によれば、動作モード900は、層状に配置された電極230,445及び455を備えた支持体基板105のマイクロキャビティ110の断面図を使用して示されている。ここでは、各個々のマイクロキャビティ110に、又は、各マイクロキャビティ110内に、電極230,445及び455が配置されている。この場合、電極230,445及び455は、電界535の動作状態において核含有細胞510がマイクロキャビティ110の中央に達するように配置されている。これは、電気ケージが開放されていることを意味する。
【0090】
換言すれば、当該実施例によれば、個別細胞分類の動作モード900は、PCB技術における帯電マイクロキャビティ110を用いて示されかつ説明され、例えば正の選択が説明されており、このことは非標的細胞515からの標的細胞510の単離を表している。
【0091】
図10には、マイクロ流体デバイス用の動作モード900の一実施例の概略図が示されている。ここに示されているマイクロキャビティ110は、例えば
図9に即して説明したマイクロキャビティ110に類似している。当該実施例によれば、電界535のみが異なって示されている。当該実施例によれば、電気ケージは閉鎖された状態で示されているので、核含有細胞510はその位置でマイクロキャビティ110の中央に捕捉されている。核含有細胞510の周囲に位置する液体は、この場合、例えば核含有細胞510をマイクロキャビティ110から洗い流すことなく(=洗浄過程で)流出させることができる。同様のことは、核含有の非標的細胞515についても当てはまる。
【0092】
図11には、マイクロ流体デバイス用の動作モード900の一実施例の概略図が示されている。ここに示されているマイクロキャビティ110は、例えば
図10に即して説明したマイクロキャビティ110に類似している。当該実施例によれば、電界535のみが異なって示されている。当該実施例によれば、電極230,445及び455は、標的細胞とも称される核含有細胞510をマイクロキャビティ110から電気的に押し出し、その後、マイクロキャビティの上方での濯ぎにより既にマイクロ流体的に押し流すことができるように駆動制御される。このことは、例えば、電極に印加される電圧Uの変化によって達成される。
【0093】
図12には、マイクロ流体デバイス用の動作モード900の一実施例の概略図が示されている。ここに示されているマイクロキャビティ110は、例えば
図11に即して説明したマイクロキャビティ110に類似している。当該実施例によれば、電界535のみが異なって示されている。当該実施例によれば、電極230,445及び455は、非標的細胞とも称される別の核含有細胞515がマイクロキャビティ110内に保持されるように、駆動制御される。電圧の変更により、例えば、別の核含有細胞515が解放され、又は、代替的に、マイクロキャビティ110内のその位置に保持される。このことは、例えば、電極230,445及び455に印加される電圧Uの変更によって達成される。このために必要な電圧Uは、この場合、核含有細胞510のために必要な電圧Uとは任意に異なる。これにより、例えば、核含有細胞510を、別の核含有細胞515の傍らを通過させて搬送することが可能である。
【0094】
図13には、マイクロ流体デバイス用の動作モード900の一実施例が概略的に示されている。ここに図示されているマイクロキャビティ110は、例えば
図12に即して説明したマイクロキャビティ110に類似している。当該実施例によれば、電界535のみが異なって示されている。当該実施例によれば、電極230,445及び455は、非標的細胞とも称される別の核含有細胞515がマイクロキャビティ110内に保持されるように駆動制御される。電圧は、非標的細胞とキャビティ底部との接触が回避されるぎりぎりの大きさとなるように選定されるべきである(非接触式の個別細胞分類)。
【0095】
図14には、マイクロ流体デバイスの一実施例による電圧経過1400の概略的なグラフが示されている。この場合、ここに示されている電圧経過1400は、時間tに関するマイクロキャビティ内に印加される電圧Uの挙動を示している。当該実施例によれば、電圧U
DEPと称される電圧は、例えば最小閾値及び最大閾値を表す例えば設定された基準値を表している。当該実施例によれば、例えば
図9乃至
図13に即して説明した動作モードに対応してそれぞれ異なって印加される複数の電圧の経過が示されている。これは、個々のマイクロキャビティ及び/又は個々の電極における電圧Uの適応化及び/又は変更により、電界が
図9乃至
図13に示されているように変化することを意味する。
【0096】
第1の曲線1405及び第2の曲線1410は、当該実施例によれば、
図9に即して説明した、電気ケージが開放されている動作モードを表している。この場合、第1の曲線1405は、電圧Uが電極230及び455に印加されていることを示している。第2の曲線1410は、電圧Uが別の電極445に印加されていることを示している。U
DEP,minは、曲線1405及び曲線1410の時間平均値を示している。
【0097】
第3の曲線1415及び第4の曲線1420は、
図10に即して説明した動作モードを例示している。この場合、第3の曲線1415は、同様に電極230及び電極455に印加される第1の曲線1405に対する電圧バリエーションとして実現されることが明らかである。これと同様に、第4の曲線1420は、第2の曲線1410の電圧バリエーションとして、別の電極445の電圧経過を示している。
【0098】
さらに、第5の曲線1425及び第6の曲線1430は、
図11乃至
図13に示した動作モードを表している。ここで、U
F,Zは、曲線1425の時間平均値であり、U
F,Sは、曲線1430の時間平均値である。
【0099】
換言すれば、標的細胞は、例えば
【数11】
を使用して解放することができる。
【0100】
図15には、一実施例による寸法を有するマイクロキャビティ110の概略図が示されている。マイクロキャビティ110は、少なくとも
図1、
図2又は
図4乃至
図13に即して説明したマイクロキャビティ110に相当し又は類似している。当該実施例によれば、電極230,445及び455はこの場合も同心状に配置されている。
図15に示されている寸法は単に例示的なものであると理解されるべきであり、代替的な実施例においては、異なるものとしてもよい。
【0101】
換言すれば、当該実施例においては、シリコン技術による、例示的な寸法を有する帯電マイクロキャビティ110の側面図が図示されている。
図15にはさらに、キャビティ110内に位置する、最大の予想直径(破線の大きい円)及び最小の予想直径(小さい円)を有する細胞510とのサイズ比較が示されている。
【0102】
当該実施例によれば、キャビティ110は、例えば50μmの直径及び約37.5μmの深さを有している。以下に述べるカウンタの例は、生理学的媒体
【数12】
中で帯電マイクロキャビティ110によって誘電泳動的に操作される、最も軽く最も小さいと予想される球状のCTC(ρ
p=1070kg/m
3及びR=3μm)の軌道に関する。生理学的媒体中の十分に大きい負のDEP力
【数13】
は、電解効果なしに最小の膜電圧で、約1MHz乃至10MHzの動作周波数において生成することができる。水状の洗浄用緩衝剤は、密度ρ
f=1000kg/m
3及び粘度η=1mPa・sを有するものとする。
【0103】
第1のプロセス部分は、比較的小さい体積(≦20μl)の全血を「入力」として使用する。「出力」とは、第2のプロセス部分、すなわち、DEPによる個別細胞分類のための理想的な初期状況を表している。最終的な光学検出においては、単離すべきCTCは、100μl未満の血液溶解物中の80000乃至220000個未満の白血球となると予想されるため、このような細胞懸濁液は全体として比較的小さいバイオプシとして解釈可能である。ローディング、すなわち、開放されたDEPケージは、例えば動作電圧UDEP=UDEP,min=1.5VRMSで得られる。
【0104】
チャンバの十分な光学的透明性及び純度のために50μlの大きさのチャンバ容積が、例えば5分以内に安全のため30回交換される場合、すなわち、洗浄用緩衝剤で洗い流す場合、マイクロ流体システムによって平均して一定に調整すべき5μl/sの体積流が生じる。よって、12.5mm×320μmの端面の入口面積及び出口面積を有するチャンバにおいては、
【数14】
の平均流速が得られる。動作電圧U
DEP=U
DEP,max=5V
RMSで生じる、閉鎖されたDEPケージは、キャビティ110内部の洗浄によって誘起される流動力又は渦流に耐える十分な保持力を有する。
【0105】
図16には、一実施例による、マイクロ流体デバイス用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する方法1600のフローチャートが示されている。ここで、方法1600は、先行の図に即して説明したマイクロ流体デバイスの装置において適用可能な方法であり得る。この場合、方法1600は、出力するステップ1605と供給するステップ1610とを含む。出力するステップ1605においては、マイクロ流体デバイスの支持体基板上への少なくとも1つの核含有細胞を含む試料液体の施与を生じさせるための施与信号が出力される。供給するステップ1610においては、少なくとも1つの核含有細胞を標的細胞としてマイクロキャビティ内に捕捉するように構成された電界を、支持体基板のマイクロキャビティに接して又はマイクロキャビティ内に形成するための電流信号が、少なくとも1つの電極へのインタフェースに供給される。当該実施例によれば、出力するステップ1605において、支持体基板上への溶解物の施与を生じさせるための施与信号が出力され、これにより、少なくとも1つの核含有細胞を含む細胞沈降物と溶解物の細胞懸濁液とが得られる。これは、例えば細胞沈降物が沈降する所定の時間が待機されることを意味する。さらに任意選択手段として、供給するステップ1610中又は供給するステップ1610の後、核含有細胞を捕捉した後に、試料液体の別の核含有細胞を非標的細胞として電界から解放させるための解放信号が電極へ供給される。こうした解放は、任意選択手段としての新たなステップ1630であってもよい。
【0106】
当該実施例によれば、方法1600はさらに、出力するステップ1605の後に、又は、供給するステップ1610の前若しくは後に、電界を変化させるために、例えば強化するために若しくは弱化するために電流強度及び/又は電圧を変化させるステップ1615を含む。供給するステップ1610の後、任意選択手段としての識別するステップ1620において、核含有細胞が試料液体から識別され、特に細胞沈降物から光学的に検出され及び/又は定量化される。
【0107】
さらに、任意選択手段として、方法1600は、試料液体を洗浄するステップ1625を含む。この場合、試料液体の懸濁液をマイクロキャビティから洗い流すために、供給するステップ1610の後に、洗浄用緩衝剤を使用して試料液体が洗浄される。
【0108】
本明細書において提示している方法ステップは繰り返し実行可能であり、また、記載した順序とは異なる順序で実行可能である。
【0109】
図17には、一実施例による装置1700のブロック図が示されている。装置1700は、例えば
図16に示したように、マイクロ流体デバイス用の少なくとも1つの電極を使用して少なくとも1つの核含有細胞を捕捉する方法を駆動制御する又は実行するように構成された制御装置又は制御ユニットとして実現されている。装置1700は、このために、マイクロ流体デバイスの支持体基板上への少なくとも1つの核含有細胞を含む試料液体の施与を生じさせるための施与信号1710を出力する出力ユニット1705と、少なくとも1つの核含有細胞を標的細胞としてマイクロキャビティ内に捕捉するように構成された電界を支持体基板のマイクロキャビティに接して又はマイクロキャビティ内に形成するための電流信号1720を、少なくとも1つの電極へのインタフェースに供給する供給ユニット1715とを有している。さらに供給ユニット1715は、単に任意選択手段としてであるが、核含有細胞を捕捉した後、試料液体の別の核含有細胞を非標的細胞として電界から解放させるための解放信号1725を電極へ供給するように構成されている。装置1700はさらに、電界を強化するために、弱化するために、及び/又は、変化させるために、電流強度の変化を生じさせる変更ユニット1730を有する。当該実施例によれば、装置1700はさらに、洗浄用緩衝剤を使用して試料液体の洗浄を生じさせ、これにより試料液体の懸濁液をマイクロキャビティから洗い流すように構成された洗浄ユニット1735を有する。さらに任意選択手段として、装置1700は、試料液体から核含有細胞を識別するように構成された、特に細胞沈降物から核含有細胞を光学的に検出する及び/又は定量化するように構成された識別ユニット1740を有する。
【0110】
図18aには、支持体基板105の一実施例の概略図が示されている。ここに示されている支持体基板105は、少なくとも
図2に即して説明した支持体基板105に相当し又は類似しており、例えばマイクロ流体デバイス100内に配置されており又は配置可能である。このようなマイクロ流体デバイス100は、
図1乃至
図8のうちの少なくとも1つの図に即して既に説明したものである。当該実施例によれば、マイクロキャビティ110は、格子状に、又は、パッシブマトリクス、すなわち、行及び列として配置されている。マイクロキャビティ110は、さらに複数のスイッチングユニット1800と電気的に接続されており、すなわち、例えば対応する電気コンタクトを有している。より詳細には、全てのマイクロキャビティ110は、行列状にそれぞれ1つのスイッチに接続されている。さらに、このことは、同様にマイクロキャビティ110が行状に及び/又は列状に駆動制御可能であることを意味している。
【0111】
当該実施例によれば、支持体基板105の中央に配置されたマイクロキャビティ110が関心対象のマイクロキャビティ110として示されている。ここで、当該マイクロキャビティ110に直接接続されたマイクロキャビティ110はクリティカルに隣接するマイクロキャビティ110として構成されており、これらのマイクロキャビティにおいては、それぞれ稲妻マーク1805によって電圧降下がシンボリックに示されている。稲妻マーク1805は電気的な寄生クロストークを表しており、関心対象の中央キャビティ110の電界分布の切り替えが、不都合なことに、隣接するマイクロキャビティ110内の状態の不規則な切り替えに繋がることを意味している。
【0112】
マイクロキャビティ110は、換言すれば、ほぼ平坦な層構造を有する底部電極に基づくものであり、これらの底部電極は、単に例としてであるが、最下方の第1の金属層としての点状電極を有する列と中間の第2の金属層としての環状電極を有する行とが別個に駆動制御可能であって相互に分離された形態で、配置されている。ただし、当該実施例によれば、導体路の単純な立体交差を特徴とするパッシブマトリクスが示されているので、関心対象のマイクロキャビティ110のみに電圧降下を印加したり又は読み取ったりすることは不可能である。これに対して、選択的アドレシングの状態を達成するために、パッシブマトリクスは、適当な集積トランジスタ回路を用いて、導体路の交点においても対応する列及び行においても、
図18bに説明及び/又は図示したようなアクティブマトリクスへと拡張される。
【0113】
図18bには、支持体基板105の一実施例の概略図が示されている。ここに示されている支持体基板105は、例えば
図18aに即して説明した支持体基板105に類似しており、この場合、ここに示されている支持体基板105は、当該実施例によれば、アクティブマトリクスとして構成されている。これは、個々のマイクロキャビティ110が同様に行列状に配置されているが、それぞれ1つずつスイッチに個別に接続されており又は接続可能であることを意味する。ただし、当該実施例においては、このことは、見やすくするために簡略化されて示されている。このため、マイクロキャビティ110は、それぞれ固有の回路ユニットにより、固有の制御信号1850を用いて個別に駆動制御可能であり、電気的なクロストーク、ひいては隣接するマイクロキャビティ110の影響が阻止される。
【0114】
換言すれば、マイクロ流体デバイス100は、関心対象である個々のマイクロキャビティ110の「理想的な」選択的アドレシングを可能にする能動回路素子が拡張され、これにより、支持体基板105はアクティブマトリクスとして形成される。関心対象であるマイクロキャビティ110は、例えば、DEP操作が検出されている及び/又は電気化学的検出が行われているマイクロキャビティ110である。さらに能動回路素子により、マイクロキャビティ110内の電極が、細胞を誘電泳動させるための操作素子としてだけでなく、細胞を通して溶液中に放出される粒子を電気化学的に検出するセンサ素子としても使用できるようになる。これにより、例えば
図20a乃至
図20bに即して説明する、マイクロキャビティ110の封止後にオンチップでの分析を行う手段が付加的に拡張され、これにより、例えばマイクロキャビティ110内の細胞510のための周囲条件を監視することができる。
【0115】
準平面のアクティブマトリクスの回路素子は、集積された半導体回路技術の形態で実装可能である。このために、例えば、シリコンでモノリシックに作製される相補的金属酸化物半導体技術(CMOS)が使用可能である。代替的に、例えばバイポーラ技術のような他の技術及び例えばガリウムヒ素などの他の半導体材料も使用可能である。個々のマイクロキャビティ110の選択的アドレシングに必要な回路の非線形モジュール、すなわち、例えばトランジスタ、記憶素子、ダイオードなどは、これらの技術のそれぞれにおいて典型的には標準的に作製される。半導体回路技術においてアクティブマトリクスが実現される場合、第3の電極とも称される上述した全面にわたる対向電極は、例えばフォトレジストシステムを用いて、最上部の第3の金属層として構築可能である。このために、単に例としてであるが、SU-8フォトレジストが使用され、このフォトレジストの、マイクロキャビティ110の画定のために改質されていない例えば30μm超の厚い第1の層に、さらに続いて、全面にわたる対向電極の画定のためにオフセットされた例えば1μm未満の薄い第2の層に、金属粒子、例えば銀粒子がスピンコーティングされる。2つの層のいわゆるソフトベーク、露光、現像及びハードベークにより、対向電極は、導電率を高めるために、任意選択手段としてさらに化学的に不活性な金属、例えば金によって電気めっきされる。半導体チップの電気コンタクト接続は、例えば、上部にチップが予め接着された支持体プリント回路板とのボンディングワイヤ接続によって実現される。
【0116】
電極が、マイクロキャビティ110内において、細胞510を通して溶液中に放出された粒子を電気化学的に検出するセンサ素子として使用される場合には、当該電極は、感受性を高めるために、状況に応じて事前に、適当な対向粒子によって機能化される。この場合、対向粒子は、例えば、検出すべき粒子に効果的に結合される、又は、粒子と電極との間の電気化学反応を増幅するというタスクを有する。センサ素子は、多くの用途にとって有利であり得る。例えば、このようにして、対応する抗原(=対向粒子)を有する電極を機能させた後、医薬品製造のために関心対象であるBリンパ球から分泌される抗体(=粒子)を識別することができる。他の例としては、細胞系統展開のための細胞培養が挙げられ、ここでは、電極がセンサ素子として用いられて、成長条件、例えばpH値、O2含有量、CO2含有量及び/又はグルコース濃度が正確にリアルタイムで追跡されかつ制御される。
【0117】
図19aには、マイクロ流体デバイス100の一実施例の概略的な断面図が示されている。この場合、当該実施例によれば、複数のマイクロキャビティ110のうちのそれぞれ1つのマイクロキャビティ内に、核含有細胞510が配置されている。ここで、溶解物は、水性媒体として細胞510の周囲に、及び、支持体基板105と透明なカバー1905との間の中間領域1900に配置されている。中間領域1900は、例えばマイクロ流体デバイス100の検出領域と称することもできる。当該実施例によれば、マイクロキャビティ110のそれぞれは、第1の電極1910と第2の電極1915とを有している。これらの電極1910,1915は、この場合、底部電極とも称され得るが、動作状態においてそれぞれ例えば電界及び/又は磁界を形成するように構成されている。形成された電界により、核含有細胞510はそれぞれのマイクロキャビティ110内に保持される一方、例えば溶解物は洗浄される。第1の電極1910は、この場合、キャビティ底部1920の中央に点状に実現されており、第2の電極1915は、例えば第1の電極1910の周囲に環状に配置されている。電極1910と電極1915とは、この場合、接触していない。当該実施例によれば、第1の電極1910は正極として、第2の電極1915は負極として構成されている。
【0118】
当該実施例によれば、支持体基板105はさらに、当該実施例によれば、基板表面に面状に配置された第3の電極1925を有する。この場合、第3の電極1925は、同様に正極として構成されており、
図14に示した時間的な電圧経過に従う。
【0119】
換言すれば、マイクロキャビティ110は、ローディングされたそれぞれ1つの核含有細胞510を含む帯電マイクロキャビティ110として図示されている。
【0120】
図19bには、マイクロ流体デバイス100の一実施例の概略的な断面図が示されている。
図19bに示されているマイクロ流体デバイス100は、例えば
図19aに即して説明したマイクロ流体デバイス100に類似している。当該実施例によれば、核含有細胞510のそれぞれからの粒子1950のみが、対応する細胞510の周囲にドーム状に配置されており、これにより、これらの粒子1950は隣接するそれぞれ1つのマイクロキャビティ110に作用する。これは、ここでは単なる例示としてではあるが、電気的な及び/又はマイクロ流体的なクロストークが示されていることを意味する。
【0121】
図20aには、マイクロ流体デバイス100の一実施例の概略的な断面図が示されている。ここに示されているマイクロ流体デバイス100は、例えば
図19aに即して説明したマイクロ流体デバイス100に類似している。ここでも、マイクロキャビティ110のそれぞれに、それぞれ1つずつの核含有細胞510が配置され、電極1910,1915,1925によってそれぞれの位置に保持される。しかし、当該実施例によれば、例えば
図19bに即して説明したように相互に影響し合う又は隣接するマイクロキャビティ110のマイクロ流体的なクロストークを排除し、マイクロキャビティ110を例えば封止するために、マイクロ流体デバイス100に、例えばシリコーンオイル又は空気を含む非水性媒体2000又は非水性相が印加される。これは、マイクロキャビティ110が、非水性媒体2000の選択ひいてはこれに関連する物理的な特性によって封止されることを意味する。
【0122】
当該実施例によれば、オンチップでの個別細胞分析の間、チップ、すなわち、マイクロ流体デバイス100は、少なくとも1つの媒体2000によって非水性相でフラッシングされる。これにより、封止、ひいてはマイクロキャビティ110内における、ここでは生理学的特性を有する水性媒体として記述されている水性相中での細胞510の単離が達成される。
【0123】
換言すれば、溶解物、すなわち、水性相の層は、キャビティ110の上側で細胞510のローディング後、先ず、オンチップでの個別細胞分析のためにマイクロキャビティ110内の水性相中の細胞510の封止が達成されるように、非水性相の媒体2000により押し流される。個々の細胞510がオフチップでの分析のために捕捉容器内に付加的に出力される場合、予め入力された非水性相2000が再び水性相によって押し流され、これにより、状況が初期状態へ戻される。
【0124】
図20bには、マイクロ流体デバイス100の検出チャンバの一実施例の概略的な断面図が示されている。ここに示されている検出チャンバは、
図20aに即して説明した検出チャンバに類似している。当該実施例によれば、中間領域1900は、マイクロキャビティ110を除き、非水性媒体2000のみによって完全に充填されているので、マイクロキャビティ110どうしは相互に絶縁されている。換言すれば、マイクロキャビティ110自体の内部にしか水性媒体は存在していない。
【0125】
換言すれば、マイクロ流体の寄生クロストークの除去が示されている。水性相中に核含有細胞510を有する帯電マイクロキャビティ110は、非水性媒体2000により相互に完全に絶縁される。これにより、細胞510を通して溶液中に放出される粒子の拡散及び対流による移動が不可能となり、個々のマイクロキャビティ110における分析が相互に独立して行われる。
【0126】
1つの実施例が、第1の特徴と第2の特徴との間の「及び/又は」接続を含む場合、このことは、当該実施例が、一実施形態によれば、第1の特徴及び第2の特徴の双方を含み、他の実施形態によれば、第1の特徴のみ又は第2の特徴のみを含むというように解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイス(100)用の少なくとも1つの電極(230)を使用して少なくとも1つの核含有細胞(510)を捕捉する方法(1600)であって、前記方法(1600)は、
-前記マイクロ流体デバイス(100)の支持体基板(105)上への前記少なくとも1つの核含有細胞(510)を含む試料液体の施与を生じさせるための施与信号(1710)を出力するステップ(1605)と、
-前記少なくとも1つの核含有細胞(510)を標的細胞として前記支持体基板(105)のマイクロキャビティ(110)内に捕捉するように構成された電界(535)を前記マイクロキャビティ(110)に接して又は前記マイクロキャビティ(110)内に形成するための電流信号(1720)を、前記少なくとも1つの電極(230)へのインタフェースに供給するステップ(1610)と、
を含む、方法(1600)。
【請求項2】
前記方法(1600)は、前記出力するステップ(1605)の後又は前記供給するステップ(1610)の前若しくは後に、前記電界(535)を変化させるために、特に強化するために若しくは弱化するために、電流強度を変化させるステップ(1615)を含み、
特に、前記
少なくとも1つの電極(230)と、前記マイクロキャビティ(110)内において又は前記マイクロキャビティ(110)に接して前記
少なくとも1つの電極(230)に対向する対向電極(455)との間で、前記電界(535)が形成され及び/又は変化させられる、
請求項1に記載の方法(1600)。
【請求項3】
前記供給するステップ(1610)において、前記電流信号(1720)が、前記少なくとも1つの電極(230)へのインタフェース及び隣接するマイクロキャビティ(110)内に配置された少なくとも1つの別の電極へのインタフェースへ出力され、これにより、前記少なくとも1つの別の電極に、前記
少なくとも1つの電極(230)とは異なる電界が形成され、
特に、前記
少なくとも1つの電極
(230)に形成された電界は、当該電界の方向及び/又は強度に関して、前記別の電極に形成された電界とは異なり、及び/又は、
前記
少なくとも1つの電極(230)を有する前記マイクロキャビティ(110)を基準として共通の列又は共通の行に配置されたマイクロキャビティ(110)内に配置された別の電極において、別の電界が形成される、
請求項
1に記載の方法(1600)。
【請求項4】
前記方法(1600)は、前記試料液体の懸濁液を前記マイクロキャビティ(110)から洗い流すために、前記供給するステップ(1610)の後に、洗浄用緩衝剤を使用して前記試料液体を洗浄するステップ(1625)を含み、及び/又は、
前記供給するステップ(1610)中に又は前記供給するステップ(1610)の後に、前記核含有細胞(510)を捕捉した後、前記試料液体の別の核含有細胞(515)を非標的細胞として前記電界(535)から解放させるための解放信号(1725)が前記
少なくとも1つの電極
(230)へ供給される、
請求項
1に記載の方法(1600)。
【請求項5】
前記出力するステップ(1605)において、前記支持体基板(105)への溶解物の施与を生じさせるための施与信号(1710)が出力され、これにより、前記少なくとも1つの核含有細胞(510)を含む細胞沈降物と溶解物の細胞懸濁液とが得られ、及び/又は、
前記供給するステップ(1610)の後に、前記試料液体から前記核含有細胞(510)を識別するステップ(1620)が行われ、特に、前記識別するステップ(1620)において、細胞沈降物から前記核含有細胞が光学的に検出され及び/又は定量化される、
請求項
1に記載の方法(1600)。
【請求項6】
前記供給するステップ(1610)において、前記核含有細胞(510)又は少なくとも1つの別の核含有細胞(515)が前記マイクロキャビティ(110)の捕捉平面内に捕捉され、及び/又は、前記解放信号(1725)により、前記試料液体の前記
核含有細胞(510)又は少なくとも1つの別の核含有細胞(515)が前記電界(535)から搬送平面へ解放される、請求項
1に記載の方法(1600)。
【請求項7】
マイクロ流体デバイス(100)用の少なくとも1つの電極(230)を使用して少なくとも1つの核含有細胞(510)を捕捉する方法
(1600)であって、前記方法(1600)は、
-少なくとも1つの核含有細胞(510)を含む試料液体を前記マイクロ流体デバイス(100)の支持体基板(105)上へ施与するステップと、
-前記少なくとも1つの核含有細胞(510)を標的細胞として前記支持体基板(105)のマイクロキャビティ(110)内に捕捉するように構成された電界(535)を、前記少なくとも1つの電極(230)を有する前記マイクロキャビティ(110)に接して又は前記マイクロキャビティ(110)内に形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項
1に記載の方法(1600)のステップ
を、対応するユニット
において実施す
るように構成されている装置(1700)。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムは、コンピュータ上において実行されるときに、請求項
1に記載の方法(1600)のステップ
を前記コンピュータに実施させるためのプログラムコードを含む、コンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムを記憶した機械可読記憶媒体。
【請求項11】
試料液体の少なくとも1つの核含有細胞(510)を捕捉するマイクロ流体デバイス(100)であって、特に前記マイクロ流体デバイス(100)は、Lab-on-a-Chipカートリッジとして構成されており、
前記マイクロ流体デバイス(100)は、以下の特徴、すなわち、
-試料液体を収容するための、少なくとも1つのマイクロキャビティ(110)を有する支持体基板(105)と、
-前記核含有細胞(510)を前記マイクロキャビティ(110)内に捕捉するように構成された電界(535)を形成するための、前記マイクロキャビティ(110)に接して又は前記マイクロキャビティ(110)内に配置された、少なくとも1つの電極(230)と、
を備えている、マイクロ流体デバイス(100)。
【請求項12】
前記支持体基板(105)は、それぞれ少なくとも1つの電極(230)を備えた複数のマイクロキャビティ(110)を有しており、前記マイクロキャビティ(110)は、マトリクス状に前記支持体基板(105)上に配置されている、請求項11に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電極(230)は、前記マイクロキャビティ(110)のうちの少なくとも1つのマイクロキャビティのキャビティ底部に接して及び/又はキャビティ壁内に配置されている、請求項12に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項14】
前記
少なくとも1つの電極(230)は、前記マイクロキャビティ(110)のそれぞれにおいて個別に駆動制御可能であり、及び/又は、前記
少なくとも1つの電極(230)は、環状、点状、及び/又は、層状に成形されており、
特に、前記複数の電極のそれぞれに対して異なるマイクロキャビティ(110)内において相互に独立した電圧を印加するように構成された駆動制御ユニットがさらに設けられている、
請求項
12に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項15】
前記マイクロキャビティ(110)は、少なくとも1つの別の電極(445)を有しており、前記
少なくとも1つの電極(230)と前記少なくとも1つの別の電極(445)とは相互に電気的に絶縁されている、請求項
11に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【請求項16】
前記マイクロキャビティ(110)に接して少なくとも1つの対向電極(455)が配置されており、前記対向電極(455)は、前記マイクロキャビティ(110)内に又は前記マイクロキャビティ(110)に接して前記
少なくとも1つの電極(230)及び/又は前記少なくとも1つの別の電極(445)に対向するように配置されており、及び/又は、前記
少なくとも1つの電極(230)及び/又は前記少なくとも1つの別の電極(445)から電気的に絶縁されている、請求項
11に記載のマイクロ流体デバイス(100)。
【国際調査報告】