IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アムジェン インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】抗TSLP抗体組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20240415BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240415BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240415BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
A61K39/395 U
A61P29/00
A61P37/02
A61P11/06
A61P1/04
A61P11/00
A61P11/02
A61P13/12
A61P17/00
A61P37/08
C12N15/13
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564144
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022025994
(87)【国際公開番号】W WO2022226339
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,938
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ポロゾヴァ, アラ
(72)【発明者】
【氏名】フィッツパトリック, ケリー
(72)【発明者】
【氏名】エイブラムス, クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】シャン, ドン
(72)【発明者】
【氏名】ジュベール, マリサ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB17
4C085CC02
4C085CC05
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA25
4H045GA30
(57)【要約】
本出願は、一般に、抗体の品質属性を有する、抗TSLP抗体であるテゼペルマブ及びその誘導体を含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物であって、前記1つ以上のテゼペルマブ誘導体は異性化誘導体を含み、前記組成物中の前記異性化誘導体の量は、約30%未満であり、テゼペルマブは、
(A)
(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)
(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインから構成される組成物。
【請求項2】
前記組成物中の前記異性化誘導体の量が、約0.5%~約13%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記異性化誘導体が、重鎖又は軽鎖相補性決定領域(CDR)に改変を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記異性化誘導体が、可変領域鎖の一方又はその両方において、配列番号7の重鎖CDRのD54、及び/又は配列番号4の軽鎖CDRのD49、D50若しくはD52に変異を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記異性化誘導体が、約5%未満の量で配列番号7のD54に異性化を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記異性化誘導体が、約13%未満の量で配列番号4のD49、D50又はD52の1つ以上に異性化を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記異性化誘導体が、イソアスパラギン酸(isoAsp)又は環状アスパラギン酸(cAsp)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の前記異性化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、30%超の前記異性化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力が、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、又はStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その前記発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物であって、前記1つ以上のテゼペルマブ誘導体は脱アミド化誘導体を含み、前記組成物中の前記脱アミド化誘導体の量は、約15%未満であり、テゼペルマブは、
(A)
(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)
(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインから構成される組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記脱アミド化誘導体の量が、約0.5%~10%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記脱アミド化誘導体が、配列番号3のN25/N26、配列番号13のN316、及び/又は配列番号13のN385/390に脱アミド化されたアスパラギンを含む、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記脱アミド化誘導体が、約3%未満の量で配列番号3のN25/N26に脱アミド化を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記脱アミド化誘導体が、約13%未満の量で配列番号13のN316、及び/又はN385/390の1つ以上に脱アミド化を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物中の前記脱アミド化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定される、請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、15%超の前記脱アミド化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力が、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、又はStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その前記発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す、請求項10~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物であって、前記1つ以上のテゼペルマブ誘導体は酸化誘導体を含み、前記組成物中の前記酸化誘導体の量は、約7%未満であり、テゼペルマブは、
(A)
(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)
(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインから構成される組成物。
【請求項18】
前記組成物中の前記酸化誘導体の量が、約0.4%~約7%である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記酸化誘導体が、重鎖の一方又はその両方において、配列番号6の重鎖メチオニンM34、配列番号13のM253、M359、又は配列番号7の重鎖トリプトファンW52、配列番号5のW90、若しくは配列番号8のW102の1つ以上に酸化を含む、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
前記酸化誘導体が、重鎖の一方又はその両方において、配列番号6の重鎖メチオニンM34、配列番号13のM253、M359の1つ以上に酸化を含み、任意選択により、前記酸化が約7%未満の量である、請求項17~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記酸化誘導体が、重鎖の一方又はその両方において、配列番号7のトリプトファンW52、配列番号5のW90、又は配列番号8のW102の1つ以上に酸化を含み、任意選択により、前記酸化が約3%未満の量である、請求項17~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物中の前記酸化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定される、請求項17~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、7%超の前記酸化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力が、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、又はStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その前記発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す、請求項17~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物であって、前記1つ以上のテゼペルマブ誘導体は高分子量(HMW)種であり、前記組成物中の前記HMW種の量は、約20%未満であり、テゼペルマブは、
(A)
(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)
(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインから構成される組成物。
【請求項25】
前記組成物中の前記HMW種の量が、約1.7%以下である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物中の前記HMW種の量が、約1.4%以下である、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項27】
前記HMW種が、テゼペルマブの二量体を含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物中の前記HMW種の量が、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定される、請求項24~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記SE-HPLCがSE-超HPLCであり、タンパク質が、pH6.8で100mMのリン酸ナトリウム、250mMの塩化ナトリウムを含む移動相を使用して、均一濃度で分離される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、20%超の前記HMW種を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力が、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、又はStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その前記発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す、請求項24~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物であって、前記1つ以上のテゼペルマブ誘導体はテゼペルマブ断片を含み、前記組成物中の前記テゼペルマブ断片の量は、約15%未満であり、テゼペルマブは、
(A)
(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)
(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインから構成される組成物。
【請求項32】
前記テゼペルマブ断片が、低分子量(LMW)種若しくは中分子量(MMW)種、又はこれらの組み合わせである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記断片が、約25kD未満の低分子量種である、請求項31又は32に記載の組成物。
【請求項34】
前記断片が、約25~50kDの分子量を有する中分子量種である、請求項31又は32に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物中のテゼペルマブ断片の量が、ドデシル硫酸ナトリウムによる還元キャピラリー電気泳動(rCE-SDS)によって測定される、請求項31~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、15%超の前記テゼペルマブ断片を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力が、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、又はStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その前記発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す、請求項31~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物であって、前記1つ以上のテゼペルマブ誘導体はグリコシル化誘導体を含み、前記組成物中の前記グリコシル化誘導体の量は、約40%未満であり、テゼペルマブは、
(A)
(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)
(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインから構成される組成物。
【請求項38】
前記組成物中のグリコシル化誘導体の量が、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%又は約5%未満である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記グリコシル化誘導体が、一方又は両方の重鎖において、配列番号13の残基N298にテゼペルマブのグリコシル化の変異を含む、請求項37又は38に記載の組成物。
【請求項40】
前記グリコシル化誘導体が、テゼペルマブのアフコシル化又はグリコシル化から高マンノース部分又はガラクトシル部分への変異を含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記グリコシル化誘導体が、約5%未満の量でアフコシル化誘導体を含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記グリコシル化誘導体が、約30%未満の量でガラクトシル部分を含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記グリコシル化誘導体が、約5%未満の量で高マンノース部分を含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、約25%、約23%、約21%、約19%、約17%、約15%、約13%、約11%、約8%、又は約5%以下の高マンノースグリコシル化誘導体を含む、請求項37~40又は43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、25%超の高マンノースグリコシル化誘導体を有する組成物よりも低いクリアランス及び/又は長い半減期を有する、請求項37~40、43又は44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記組成物中の前記グリコシル化誘導体の量が、グリカンマップ法によって測定される、請求項37~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
請求項37~46のいずれか一項に記載の組成物であって、
(a)前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、40%超の前記グリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力が、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、若しくはStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その前記発現はTSLPがTSLPRに結合することを示すか、又は
(b)前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、15%以下の高マンノースを含み、15%超の高マンノースを有する組成物よりも低いクリアランスを有する組成物。
【請求項48】
請求項37~46のいずれか一項に記載の組成物であって、
(a)前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、40%超の前記グリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力が、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、若しくはStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その前記発現はTSLPがTSLPRに結合することを示すか、又は
(b)前記テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体が、25%以下の高マンノースを含み、25%超の高マンノースを有する組成物よりも低いクリアランスを有する組成物。
【請求項49】
テゼペルマブ及びその1つ以上のジスルフィドアイソフォーム誘導体を含む組成物であって、前記1つ以上のジスルフィドアイソフォーム誘導体が、IgG2-Bアイソフォーム及び/又はIgG2-A/Bアイソフォームを含み、前記組成物中の前記ジスルフィドアイソフォーム誘導体の量が、約75%未満である組成物。
【請求項50】
前記1つ以上のジスルフィドアイソフォーム誘導体が、IgG2-Bアイソフォームを含み、前記組成物中の前記ジスルフィド誘導体の量が、約20%未満である、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記IgG2-Bアイソフォームの量が、約5%未満である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記1つ以上のジスルフィドアイソフォーム誘導体が、IgG2-A/Bアイソフォームを含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項53】
前記組成物中の前記IgG2-A/Bアイソフォームの量が、約75%未満である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物中の前記IgG2-A/Bアイソフォームの量が、約38%~約43%である、請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量が、非還元逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって測定される、請求項48~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物であって、前記テゼペルマブ誘導体が、異性化誘導体、脱アミド化誘導体、酸化誘導体、グリコシル化誘導体、HMW種、断片、ジスルフィドアイソフォーム誘導体、又はこれらの組み合わせを含み、前記組成物は、
(a)前記組成物中の異性化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定した場合に約30%以下であり;
(b)前記組成物中の脱アミド化誘導体の量が、ペプチドマッピングによって測定した場合に約15%以下であり;
(c)前記組成物中の酸化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定した場合に約7%以下であり;
(d)前記組成物中のグリコシル化誘導体の量が、グリカンマッピングによって測定した場合に約40%以下であり;
(e)前記組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量が、非還元逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって測定した場合に約75%以下であり;
(f)前記組成物中のHMW種の量が、SE-HPLCによって測定した場合に約20%以下であり;及び/又は
(g)前記組成物中の断片の量が、rCE-SDSによって測定した場合に約15%以下である、という特徴の1つ以上を有する組成物。
【請求項57】
請求項49~56のいずれか一項に記載の組成物であって、テゼペルマブが、
(A)
(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに
(B)
(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;
(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列;及び
(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインから構成される組成物。
【請求項58】
テゼペルマブが、配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列と、配列番号12に記載される軽鎖アミノ酸配列とを含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
請求項1~58のいずれか一項に記載の組成物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬製剤。
【請求項60】
対象の炎症性疾患を治療するための方法であって、前記対象に治療有効量の請求項1~58のいずれか一項に記載の組成物又は請求項59に記載の医薬製剤を投与することを含む方法。
【請求項61】
前記炎症性疾患が、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性特発性蕁麻疹、Ig誘発性疾患、IgA腎症、ループス腎炎、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎及び特発性肺線維症(IPF)からなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
2週間毎又は4週間毎の間隔で前記組成物を投与することを含む、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が、少なくとも4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年以上の期間投与される、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記喘息が、重症喘息である、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記喘息が、好酸球性喘息又は非好酸球性喘息である、請求項60~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記投与が、プレフィルドシリンジ又は自動注入装置を介して行われる、請求項60~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記自動注入装置が、Ypsomed YpsoMate(登録商標)デバイスである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
対象の炎症性疾患を治療するのに使用される、請求項1~58のいずれか一項に記載のテゼペルマブ組成物又は請求項59に記載の医薬組成物。
【請求項69】
前記炎症性疾患が、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性特発性蕁麻疹、Ig誘発性疾患、IgA腎症、ループス腎炎、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎及び特発性肺線維症(IPF)からなる群から選択される、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
対象の炎症性疾患を治療するための薬剤の調製における、請求項1~58のいずれか一項に記載のテゼペルマブ組成物又は請求項59に記載の医薬組成物の使用。
【請求項71】
前記投与が、プレフィルドシリンジ又は自動注入装置を介して行われる、請求項68~70のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項72】
前記自動注入装置が、Ypsomed YpsoMate(登録商標)デバイスである、請求項71に記載の組成物又は使用。
【請求項73】
前記炎症性疾患が、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性特発性蕁麻疹、Ig誘発性疾患、IgA腎症、ループス腎炎、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎及び特発性肺線維症(IPF)からなる群から選択される、請求項68~72のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項74】
テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法であって、
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;
前記組成物中の1つ以上のテゼペルマブ誘導体の量を測定することであって、前記テゼペルマブ誘導体は、異性化誘導体、脱アミド化誘導体、酸化誘導体、グリコシル化誘導体、ジスルフィドアイソフォーム誘導体、HMW種、断片、又はこれらの組み合わせを含む、測定すること;
前記測定された前記1つ以上のテゼペルマブ誘導体の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに
前記比較が前記所定の参照基準を満たすことを示す場合、前記テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む方法。
【請求項75】
異性化誘導体の量が測定され、前記所定の参照基準が約30%以下である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記テゼペルマブ組成物中の異性化の量が、還元ペプチドマッピングによって測定される、請求項74又は75に記載の方法。
【請求項77】
脱アミド化誘導体の量が測定され、前記所定の参照基準が約15%以下である、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記テゼペルマブ組成物中の脱アミド化の量が、還元ペプチドマッピングによって測定される、請求項74又は77に記載の方法。
【請求項79】
酸化誘導体の量が測定され、前記所定の参照基準が約7%以下である、請求項74に記載の方法。
【請求項80】
前記テゼペルマブ組成物中の酸化の量が、還元ペプチドマッピングによって測定される、請求項74又は79に記載の方法。
【請求項81】
グリコシル化誘導体の量が測定され、前記所定の参照基準が約40%以下である、請求項74に記載の方法。
【請求項82】
前記テゼペルマブ組成物中のグリコシル化の量が、グリカンマッピングによって測定される、請求項74又は81に記載の方法。
【請求項83】
ジスルフィドアイソフォーム誘導体の量が測定され、前記所定の参照基準が約75%以下である、請求項74に記載の方法。
【請求項84】
前記テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォームの量が、非還元逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって測定される、請求項74又は83に記載の方法。
【請求項85】
HMW種の量が測定され、前記所定の参照基準が約20%以下である、請求項74に記載の方法。
【請求項86】
HMW種の量が、SE-HPLCによって測定される、請求項74又は85に記載の方法。
【請求項87】
断片の量が測定され、前記所定の参照基準が約15%以下である、請求項74に記載の方法。
【請求項88】
前記テゼペルマブ組成物中の断片の量が、rCE-SDSによって測定される、請求項74又は87に記載の方法。
【請求項89】
前記テゼペルマブ組成物が、配列番号10の重鎖をコードする核酸と配列番号12の軽鎖をコードする核酸とを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株から得られる、請求項74~88のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年4月23日に出願された米国仮特許出願第63/178,938号明細書の優先権利益を主張する。
【0002】
本出願は、一般に、抗体の品質属性を含む、抗TSLP抗体であるテゼペルマブ及びその誘導体を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
環境刺激及び炎症誘発性刺激に応答して産生される上皮細胞由来サイトカインである胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、複数の炎症細胞及び下流経路の活性化をもたらす(Soumelis et al.Nat Immunol 2002;3:673-80;Allakhverdi et al.J Exp Med 2007;204:253-8)。TSLPは喘息患者の気道で増加し、Th2サイトカイン及びケモカインの発現(Shikotra et al.J Allergy Clin Immunol 2012;129:104-11 e1-9)並びに疾患重症度(Ying et al.J Immunol 2005;174:8183-90;Ying et al.J Immunol 2008;181:2790-8)と相関がある。TSLPはTh2免疫の調節の中心となる一方で、炎症の他の経路において重要な役割を担う可能性もあり、従って複数の喘息表現型と関連する可能性がある。
【0004】
テゼペルマブは、TSLPに結合し、TSLP受容体複合体との相互作用を妨げる、ヒト免疫グロブリンG2(IgG2)モノクローナル抗体(mAb)である。テゼペルマブは、2本の重鎖と2本の軽鎖から構成されるヘテロ四量体であり、TSLPとの結合部位を2つ含むものであることが理解されよう。軽症のアトピー性喘息患者を対象とした概念実証試験では、テゼペルマブは早期及び後期の喘息反応を阻害し、吸入アレルゲン曝露後のTh2炎症のバイオマーカーを抑制することが示された(Gauvreau,et al.N Engl J Med 2014;370:2102-10)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
製剤中の抗体治療薬を経時的にモニタリングすることは、治療薬の任意の分解を低減し、製品の完全性を維持する保存条件を特定するために重要なことである。本開示は、抗体の忍容性及び/又は効力に有益となるか又は有害となり得る属性を含む、製造及び保存中に経時的に変化する可能性のある抗TSLP抗体の属性試験を提供する。
【0006】
一態様では、本開示は、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物を提供し、1つ以上のテゼペルマブ誘導体は異性化誘導体を含み、組成物中の異性化誘導体の量は、約30%未満であり、テゼペルマブは、(A)(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに(B)(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、及び(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0007】
様々な実施形態では、組成物中の異性化誘導体の量は、約30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満である。様々な実施形態では、組成物中の異性化誘導体の量は、約0.5%~約13%である。様々な実施形態では、組成物中の異性化誘導体の量は、約1%~12%、2%~10%又は約4%~7%である。様々な実施形態では、異性化誘導体は、重鎖又は軽鎖相補性決定領域(CDR)に改変を含む。様々な実施形態では、異性化誘導体は、可変領域鎖の一方又はその両方において、配列番号7の重鎖CDR残基D54、及び/又は配列番号4の軽鎖CDR残基D49、D50若しくはD52に変異を含む。様々な実施形態では、異性化誘導体は、約5%未満の量でD54に異性化を含む。様々な実施形態では、異性化誘導体は、約4%、3%、2%又は1%未満の量でD54に異性化を含む。様々な実施形態では、異性化誘導体は、約26%未満の量で配列番号4の残基D49、D50又はD52の1つ以上に異性化を含む。様々な実施形態では、異性化誘導体は、約25%、20%、18%、15%、13%、10%、7%、5%、3%又は2%未満の量で配列番号4の残基D49、D50又はD52の1つ以上に異性化を含む。様々な実施形態では、異性化誘導体は、イソアスパラギン酸(isoAsp)、環状アスパラギン酸(cAsp)、スクシンイミド又は異性化中間体である。様々な実施形態では、異性化誘導体は、イソアスパラギン酸(isoAsp)又は環状アスパラギン酸(cAsp)である。様々な実施形態では、組成物中の異性化誘導体の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、30%超の異性化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、30%超の異性化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0008】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物であって、1つ以上のテゼペルマブ誘導体は脱アミド化誘導体を含み、組成物中の脱アミド化誘導体の量は、約15%未満であり、テゼペルマブは、(A)(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに(B)(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、及び配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。様々な実施形態では、組成物中の脱アミド化誘導体の量は、約15%、約10%、約7%、約5%、約4%、約3%、約2%又は約1%未満である。様々な実施形態では、組成物中の脱アミド化誘導体の量は、約0.5%~約13%である。様々な実施形態では、組成物中の脱アミド化誘導体の量は、約0.5%~10%、約1%~8%、約2%~7%又は約3%~6%である。様々な実施形態では、脱アミド化誘導体は、配列番号3に記載されるLCDR1のN25/N26、配列番号13に記載される重鎖のN316、及び/又は配列番号13に記載される重鎖のN385/390に脱アミド化されたアスパラギン残基を含む。様々な実施形態では、脱アミド化誘導体は、約3%未満の量でN25/N26に脱アミドを含む。様々な実施形態では、脱アミド化誘導体は、約13%未満の量でN316、及び/又はN385/390の1つ以上に脱アミドを含む。様々な実施形態では、脱アミド化誘導体は、脱アミド化されたアスパラギン又は脱アミド化中間体である。様々な実施形態では、組成物中の脱アミド化誘導体の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%超の脱アミド化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%超の脱アミド化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0009】
また、本開示は、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物を提供し、1つ以上のテゼペルマブ誘導体は酸化誘導体を含み、組成物中の酸化誘導体の量は、約7%未満であり、テゼペルマブは、(A)(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに(B)(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、及び(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0010】
様々な実施形態では、酸化誘導体の量は、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%又は約1%未満である。様々な実施形態では、組成物中の酸化誘導体の量は、約0.4%~約7%、約1%~約6%、約2%~約5%又は約0.4%~約4%である。様々な実施形態では、酸化誘導体は、重鎖の一方又はその両方において、配列番号6に記載されるHCDR1の重鎖メチオニン残基M34、又は配列番号13に記載される重鎖定常領域の重鎖メチオニン残基M253若しくはM359、又は配列番号7に記載されるHCDR2の重鎖トリプトファン残基W52、配列番号5に記載されるLCDR3のW90、若しくは配列番号8に記載されるHCDR3のW102の1つ以上に酸化を含む。様々な実施形態では、酸化誘導体は、重鎖の一方又はその両方において、重鎖メチオニン残基M34、M253、M359の1つ以上に酸化を含み、任意選択により、酸化は約7%未満の量である。様々な実施形態では、酸化誘導体は、重鎖の一方又はその両方において、トリプトファン残基W52、W90、又はW102の1つ以上に酸化を含み、任意選択により、酸化は約3%未満の量である。様々な実施形態では、組成物中の酸化誘導体の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、7%超の酸化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、7%超の酸化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0011】
別の実施形態では、本開示は、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物を提供し、1つ以上のテゼペルマブ誘導体はグリコシル化誘導体を含み、組成物中のグリコシル化誘導体の量は、約40%未満であり、テゼペルマブは、(A)(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに(B)(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、及び(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0012】
様々な実施形態では、組成物中のグリコシル化誘導体の量は、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、又は約5%未満である。様々な実施形態では、組成物中のグリコシル化誘導体の量は、約1%~約35%、約3%~約30%、約5%~約25%、約10%~約20%である。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、一方又は両方の重鎖において、配列番号13の残基N298にテゼペルマブのグリコシル化の変異を含む。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、テゼペルマブのアフコシル化又はグリコシル化から高マンノース部分又はガラクトシル部分への変異を含む。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、アフコシル化誘導体を約5%未満の量で含む。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、ガラクトシル部分を約30%未満の量で含む。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、高マンノース部分を約5%未満の量で含む。様々な実施形態では、組成物中のグリコシル化誘導体の量は、グリカンマップ法によって測定される。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、40%超のグリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、40%超のグリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0013】
グリコシル化誘導体はまた、エフェクター機能及び抗体クリアランスと関連付けることができる(抗体クリアランスが低いほど、半減期が長いことを示すことが可能であることが理解されよう。従って、参照抗体又は抗体組成物よりも「クリアランスが低い」抗体又は抗体組成物は、参照抗体又は抗体組成物よりも数値的に半減期が長いことを意味することが理解されよう)。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約15%、約13%、約11%、約8%又は約6%超の高マンノースグリコシル化誘導体を含む組成物よりも、低い抗体クリアランス及び/又は良好な忍容性を有する。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約25%、約23%(例えば、約23.1%)、約21%、約18%、約15%、約13%、約11%、約8%、約6%、又は約5%超の高マンノースグリコシル化誘導体を含む組成物よりも、低い抗体クリアランス及び/又は良好な忍容性を有する。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約23.1%超の高マンノースグリコシル化誘導体を含む組成物よりも、低い抗体クリアランス及び/又は良好な忍容性を有する。様々な実施形態では、高マンノース種を5%から23.1%に増加させた結果、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体のクリアランスが1.7%又は10%以下で増加する。
【0014】
また、テゼペルマブ及びその1つ以上のジスルフィドアイソフォーム誘導体を含む組成物が提供され、1つ以上のジスルフィドアイソフォーム誘導体が、IgG2-Bアイソフォーム及び/又はIgG2-A/Bアイソフォームを含み、組成物中のジスルフィドアイソフォームの量は、約75%未満である。様々な実施形態では、組成物中のジスルフィドアイソフォームの量は、約70%、約65、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%又は約1%未満である。
【0015】
様々な実施形態では、1つ以上のジスルフィドアイソフォーム誘導体は、IgG2-Bアイソフォームを含む。様々な実施形態では、IgG2-Bアイソフォームの量は、約5%未満である。様々な実施形態では、1つ以上のジスルフィドアイソフォーム誘導体は、IgG2-A/Bアイソフォームを含む。様々な実施形態では、組成物中のIgG2-A/Bアイソフォームの量は、約75%未満である。様々な実施形態では、組成物中のIgG2-A/Bアイソフォームの量は、約38%~約43%である。様々な実施形態では、組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量は、非還元逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって測定される。
【0016】
また、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物が企図され、1つ以上のテゼペルマブ誘導体は高分子量(HMW)種であり、組成物中のHMW種の量は、約20%未満であり、テゼペルマブは、(A)(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに(B)(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、及び(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0017】
様々な実施形態では、組成物中のHMW種は、約20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満である。様々な実施形態では、組成物中のHMW種の量は、約0.5%~約13%、約1%~約11%、約2%~約10%、又は約3%~約8%又は約4%~約7%である。様々な実施形態では、組成物中のHMW種の量は、約1.7%以下である。様々な実施形態では、組成物中のHMW種の量は、約1.4%以下である。様々な実施形態では、HMW種は、テゼペルマブの二量体を含む。
【0018】
様々な実施形態では、組成物中のHMW種の量は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)、沈降速度超遠心分離(SV-AUC)、又は還元ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(rCE-SDS)によって測定される。様々な実施形態では、SE-HPLCは、SE-超HPLC(SE-UHPLC)又は静的光散乱を伴うSE-HPLC(SE-HPLC-SLS)である。様々な実施形態では、SE-HPLCはSE-UHPLCである。様々な実施形態では、SE-HPLCがSE-UHPLCである場合、タンパク質は、pH6.8で100mMのリン酸ナトリウム、250mMの塩化ナトリウムを含む移動相を使用して、均一濃度で分離される。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、20%超のHMW種を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、20%超のHMW種を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0019】
組成物の様々な実施形態では、(a)テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、40%超のグリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、若しくはStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示すか、又は(b)テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%以下の高マンノースを含み、15%超の高マンノースを有する組成物よりも低いクリアランスを有する。
【0020】
組成物の様々な実施形態では、(a)テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、40%超のグリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合することを阻害する能力、若しくはStatルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示すか、又は(b)テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、25%以下の高マンノースを含み、25%超の高マンノースを有する組成物よりも低いクリアランスを有する。
【0021】
また、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物が提供され、1つ以上のテゼペルマブ誘導体はテゼペルマブ断片を含み、組成物中のテゼペルマブ断片の量は、約15%未満であり、テゼペルマブは、(i)配列番号3に記載される軽鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号4に記載される軽鎖CDR2アミノ酸配列;及び(iii)配列番号5に記載される軽鎖CDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びに(B)(i)配列番号6に記載される重鎖CDR1アミノ酸配列;(ii)配列番号7に記載される重鎖CDR2アミノ酸配列、及び(iii)配列番号8に記載される重鎖CDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0022】
様々な実施形態では、組成物中の断片の量は、約15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満である。様々な実施形態では、組成物中の断片の量は、約0.5%~約13%、約1%~約11%、約2%~約10%、又は約3%~約8%又は約4%~約7%である。様々な実施形態では、テゼペルマブ断片は、低分子量(LMW)種若しくは中分子量(MMW)種、又はこれらの組み合わせである。様々な実施形態では、断片は、約25kD未満の低分子量種である。様々な実施形態では、断片は、約25~50kDの分子量を有する中分子量種である。様々な実施形態では、組成物中のテゼペルマブ断片の量は、ドデシル硫酸ナトリウムを用いる還元キャピラリー電気泳動(rCE-SDS)によって測定される。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、20%超のテゼペルマブ断片を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%超のテゼペルマブ断片を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0023】
テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物が本明細書に提供され、テゼペルマブ誘導体は、異性化誘導体、脱アミド化誘導体、酸化誘導体、グリコシル化誘導体、HMW種、断片、ジスルフィド異性体、又はこれらの組み合わせを含み、組成物は、以下の特徴の1つ以上を有する:(a)組成物中の異性化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定した場合に約30%以下である;(b)組成物中の脱アミド化誘導体の量が、ペプチドマッピングによって測定した場合に約15%以下である;(c)組成物中の酸化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定した場合に約7%以下である;(d)組成物中のグリコシル化誘導体の量が、グリカンマッピングによって測定した場合に約75%以下である;(e)組成物中のジスルフィド異性体の量が、非還元逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって測定した場合に約40%以下である;(f)組成物中のHMW種の量が、SE-HPLCによって測定した場合に約20%以下である;及び/又は(g)組成物中の断片の量が、rCE-SDSによって測定した場合に約20%以下である。
【0024】
様々な実施形態では、テゼペルマブは、配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列と、配列番号12に記載される軽鎖アミノ酸配列とを含む。
【0025】
別の態様では、本開示は、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法であって、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中の1つ以上のテゼペルマブ誘導体の量を測定することであって、テゼペルマブ誘導体が異性化誘導体、脱アミド化誘導体、酸化誘導体、グリコシル化誘導体、ジスルフィドアイソフォーム誘導体、HMW種、断片、又はこれらの組み合わせを含む、測定すること;測定された1つ以上のテゼペルマブ誘導体の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む方法を提供する。様々な実施形態では、異性化誘導体の量が測定され、その所定の参照基準は約30%以下である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中の異性化の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。様々な実施形態では、脱アミド化誘導体の量が測定され、その所定の参照基準は約15%以下である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中の脱アミド化の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。様々な実施形態では、酸化誘導体の量が測定され、その所定の参照基準は約7%以下である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中の酸化の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体の量が測定され、その所定の参照基準は約40%以下である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化の量は、グリカンマッピングによって測定される。様々な実施形態では、ジスルフィドアイソフォーム誘導体の量が測定され、その所定の参照基準は約75%以下である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォームの量は、非還元逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって測定される。様々な実施形態では、HMW種の量が測定され、その所定の参照基準は約20%以下である。様々な実施形態では、HMW種の量は、SE-HPLCによって測定される。様々な実施形態では、断片の量が測定され、その所定の参照基準は約15%以下である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中の断片の量は、rCE-SDSによって測定される。
【0026】
様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物は、配列番号10の重鎖をコードする核酸と、配列番号12の軽鎖をコードする核酸とを発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株から得られる。
【0027】
様々な実施形態では、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質又は抗体は、ヒト抗体である。様々な実施形態では、抗体は、IgG2抗体である。様々な実施形態では、テゼペルマブ又はその誘導体は、配列番号2のアミノ酸29~159に記載されるようなTSLPポリペプチドに特異的に結合する。様々な実施形態では、テゼペルマブ又はその誘導体の結合部位は、どちらもTSLPと同一の結合を有する。
【0028】
様々な実施形態では、テゼペルマブ又はその誘導体は、数値的に10-8M Kd以下の親和性でTSLPに結合する。
【0029】
更に、本明細書に記載されるようなテゼペルマブ又はその誘導体、及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む組成物が企図される。
【0030】
本開示はまた、本明細書に記載されるテゼペルマブ又はその誘導体の軽鎖可変ドメイン、重鎖可変ドメイン、又はその両方をコードするポリヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供する。
【0031】
本開示は更に、本明細書に記載されるようなテゼペルマブをコードする核酸を含む組換え発現ベクターを企図する。発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0032】
更に、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質、又は抗体を発現させることができる条件下で宿主細胞をインキュベートすることを含む、配列番号2のアミノ酸29~159を含むTSLPポリペプチドに特異的に結合するテゼペルマブ又はその誘導体を含む組成物を産生する方法が本明細書で企図され、前記宿主細胞は、(i)本明細書に記載されるような抗原結合タンパク質の軽鎖可変ドメインをコードする組換え発現ベクター、及び本明細書に記載されるような抗原結合タンパク質の重鎖可変ドメインをコードする組換え発現ベクター、又は(ii)テゼペルマブの軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの両方をコードする組換え発現ベクターを含む。
【0033】
また、治療有効量のテゼペルマブ及びその誘導体を含む組成物を対象に投与することを含む、対象の炎症性疾患を治療するための方法が本明細書に提供される。様々な実施形態では、炎症性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性特発性蕁麻疹、Ig誘発性疾患、IgA腎症、ループス腎炎、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎及び特発性肺線維症(IPF)からなる群から選択される。様々な実施形態では、喘息は軽症、中等症、又は重症喘息である。様々な実施形態では、喘息は重症喘息である。様々な実施形態では、喘息は、好酸球性喘息又は非好酸球性喘息である。
【0034】
様々な実施形態では、本方法は、2週間毎又は4週間毎の間隔で組成物を投与することを含む。様々な実施形態では、組成物は、少なくとも4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年以上の期間で投与される。
【0035】
様々な実施形態では、抗体は、IgG2抗体である。様々な実施形態では、テゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体は、配列番号10に記載される重鎖可変領域と、配列番号12に記載される軽鎖可変領域とを含み、本明細書に記載される属性の1つ以上を含む。
【0036】
本開示はまた、炎症性疾患を治療するのに使用される、本明細書に記載されるようなテゼペルマブ及びその誘導体を含む組成物を提供する。特定の実施形態では、本開示は、炎症性疾患を治療するための薬剤の調製における、本明細書に記載されるようなテゼペルマブ及びその誘導体を含む組成物の使用を提供する。
【0037】
任意選択により好適な使用説明書と共に、上記の抗体又は組成物のいずれかを含む、シリンジ、例えば使い捨て又はプレフィルドシリンジ、滅菌密封容器、例えばバイアル、ボトル、容器及び/又はキット又はパッケージも企図される。様々な実施形態では、投与は、プレフィルドシリンジ又は自動注入装置を介して行われる。様々な実施形態では、自動注入装置は、Ypsomed YpsoMate(登録商標)デバイスである。
【0038】
本明細書に記載されるそれぞれの特徴若しくは実施形態又は組み合わせは、本発明の態様のいずれかの非限定的な、例示的な例であり、従って、本明細書に記載される任意の他の特徴若しくは実施形態又は組み合わせと組み合わせることが可能であると意図されることが理解される。例えば、特徴が「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「特定の実施形態」、「更なる実施形態」、「特定の例示的な実施形態」及び/又は「別の実施形態」などの用語を用いて記載される場合、これらのタイプの実施形態のそれぞれは、あらゆる可能な組み合わせを列挙する必要なく、本明細書に記載される任意の他の特徴又は特徴の組み合わせと組み合わせることが意図される特徴の非限定的な例である。このような特徴又は特徴の組み合わせは、本発明の態様のいずれかに適用される。範囲内に含まれる値の例が開示される場合、これらの例のいずれもが範囲の可能な端点として企図され、このような端点の間のあらゆる数値が企図され、上端点及び下端点のあらゆる組み合わせが想定される。
【0039】
本明細書における見出しは、読者の便宜のためのものであり、限定することを意図するものではない。本発明の更なる態様、実施形態及び変形形態は、発明を実施するための形態及び/又は図面及び/又は特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A-1F】効力と総CDR IsoAsp(図1A及び1D)、HMW種(図1B及び1E)、並びに総CDR Trp酸化(図1C及び1F)との関係性を示す、一連のてこ比プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
テゼペルマブの構造は、その構造及び機能的特性の理解、並びに重要な品質属性の評価を提供するために、様々な生物学的、生化学的、及び生物物理学的技法により明らかとされている。
【0042】
特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲を含む本出願で使用される以下の用語は、下記に示される定義を有する。
【0043】
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、不定冠詞「a」及び「an」並びに定冠詞「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数及び単数の指示対象を含む。
【0044】
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0045】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値に対する許容される誤差を意味し、この誤差は、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。特定の実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、1、2、3、又は4標準偏差内であることを意味する。特定の実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%内であることを意味する。「約」又は「およそ」という用語が、一連の2つ以上の数値内の最初の数値の前に置かれる場合は常に、その一連の数値のそれぞれに「約」又は「およそ」という用語が適用されることが理解される。
【0046】
「炎症性疾患」という用語は、慢性疼痛、発赤、腫れ、こわばり、及び正常組織の損傷をもたらし得る、免疫系が自分自身の細胞又は組織を攻撃することによって引き起こされる異常な炎症を含む医学的状態を指す。炎症性疾患としては、例えば、喘息、慢性消化性潰瘍、結核、歯周炎、副鼻腔炎、活動性肝炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性特発性蕁麻疹、Ig誘発性疾患(IgA腎症及びループス腎炎など)、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎、特発性肺線維症(IPF)などが挙げられる。例示的な態様では、炎症性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、又はCOPDである。例示的な態様では、炎症は喘息であり、いくつかの場合では、喘息は、重症喘息、好酸球性喘息、非好酸球性喘息、又は低好酸球性喘息である。
【0047】
本明細書で使用する場合、「喘息」という用語は、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、好酸球性喘息、及び非好酸球性喘息を指す。
【0048】
本明細書で使用する場合、「アレルギー性喘息」という用語は、1つ以上の吸入アレルゲンによって誘発される喘息を指す。そのような患者は、喘息反応を誘発する1つ以上のアレルゲンに対して、陽性のIgE蛍光酵素免疫アッセイ(FEIA)レベルを有する。ほとんどのアレルギー性喘息は、通常、Th2型炎症に関連する。
【0049】
「非アレルギー性喘息」という用語は、診断時に好酸球数が低く、Th2が低いか、又はIgEが低い患者を指す。「非アレルギー性喘息」を有する患者は、通常、領域特異的なアレルゲンを含むアレルゲンパネルに反応する、IgE蛍光酵素免疫アッセイ(FEIA)で陰性である。IgEの低さに加えて、これらの患者は、多くの場合、診断時に好酸球数が低いか又は全くなく、且つTh2数が低い。
【0050】
本明細書で使用する場合、「重症喘息」という用語は、コントロール良好を維持するために高強度治療(例えば、GINAステップ4及びステップ5)を必要とするか、又は高強度治療にもかかわらずコントロール良好が達成されない喘息を指す(GINA,Global Strategy for Asthma Management and Prevention.Global Initiative for Asthma(GINA)December 2012)。
【0051】
本明細書で使用する場合、「好酸球性喘息」という用語は、300細胞/μL以下、又は250細胞/μL以下のスクリーニング時の血中好酸球数を有する喘息患者を指し、「低好酸球性」喘息は、血液又は血清中に250細胞/μL未満の好酸球数を有する喘息患者を指す。或いは、「低好酸球性」喘息は、血液又は血清中に300細胞/μL未満の好酸球数を有する喘息患者を指す。
【0052】
「Tヘルパー(Th)1サイトカイン」又は「Th1特異的サイトカイン」は、Th1 T細胞によって発現される(細胞内発現される、及び/又は分泌される)、IFN-g、TNF-a、及びIL-12を含むサイトカインを指す。「Th2サイトカイン」又は「Th2特異的サイトカイン」は、Th2 T細胞によって発現される(細胞内発現される、及び/又は分泌される)、IL-4、IL-5、IL-13及びIL-10を含むサイトカインを指す。「Th17サイトカイン」又は「Th17特異的サイトカイン」は、Th17 T細胞によって発現される(細胞内発現される、及び/又は分泌される)、IL-17A、IL-17F、IL-22及びIL-21を含むサイトカインを指す。Th17細胞の特定の集団は、本明細書に列挙したTh17サイトカインに加えて、IFN-g及び/又はIL-2を発現する。多機能性CTLサイトカインとしては、IFN-g、TNF-a、IL-2及びIL-17が挙げられる。
【0053】
「特異的に結合する」という用語は、「抗原特異的」であり、「選択的結合剤」、「特異的結合剤」、「抗原標的」に「特異的」であるか、又は抗原に対して「免疫反応性」があり、類似配列の他の抗原よりも高い親和性で標的抗原に結合する抗体又はポリペプチドを指す。本薬剤は、免疫細胞型、例えば、表面抗原(例えば、T細胞受容体、CD3)、サイトカイン(例えば、TSLP、IL-4、IL-5、IL-13、IL-17、IFN-g、TNF-a)などを同定するのに有用な標的タンパク質に特異的に結合するものであると本明細書では企図される。様々な実施形態では、抗体は標的抗原に特異的に結合するものの、近縁関係にある種のオルソログと交差反応することが可能であり、例えば、抗体はヒトタンパク質に結合することができ、また、近縁関係にある霊長類タンパク質にも結合することができる。様々な実施形態では、TLSPに特異的な免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片は、数値的に10-8M以下のKdで結合する。様々な実施形態では、本明細書に記載される抗TSLP抗体は、少なくとも10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M以下の親和性(Kd)で結合する。
【0054】
「抗体」という用語は、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなり、それぞれが可変領域と定常領域とを含む、四量体の糖タンパク質を指す。「重鎖」及び「軽鎖」は、実質的に完全長のカノニカルな免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖を指す(例えば、Immunobiology,5th Edition(Janeway and Travers et al.,Eds.,2001)を参照されたい)。抗原結合部分は、組換えDNA技術、又はインタクト抗体を酵素的若しくは化学的に切断することによって生成され得る。
【0055】
抗原結合タンパク質には、抗体、抗体断片、及び抗体様タンパク質が含まれ、これらはカノニカルな四量体抗体の構造に対して構造的な変異を有し得る。抗体「変異体」は、公知の配列を有する親抗体と比較して、抗体の配列又は機能に構造的な変異を有し得る抗原結合タンパク質又はその断片を指す。抗体変異体は、定常領域に変異を有するV領域を含むか、又はその代わりに、任意選択により非カノニカルな方法で定常領域にV領域を付加することを含む。例としては、多重特異性抗体(例えば、追加のV領域を有する二重特異性抗体)、抗原に結合することが可能な抗体断片(例えば、Fab’、F’(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディ)、それらが所望の生物学的活性を示す限り、上記を含むバイパラトピックペプチド及び組換えペプチドが挙げられる。
【0056】
抗体断片には、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、CDR移植抗体結合領域、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、線状抗体;キレート化組換え抗体、トリボディ若しくはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、低分子モジュール免疫製剤(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、単一ドメイン抗体(ラクダ化抗体を含む)、VHH含有抗体、又はこれらの変異体若しくは誘導体、及び抗体が所望の生物学的活性を保持する限り、ポリペプチドに対する特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチド、例えば1、2、3、4、5又は6個のCDR配列を含む抗体の抗原結合部分が含まれる。
【0057】
本明細書で使用する場合、「抗体誘導体」とは、その化学的同一性、化学修飾又は構造的な属性型(例えば、HMW種、断片又はアイソフォーム)の点から特徴付けることができ、所望の生物学的活性を示す、本明細書に記載される1つ以上の属性を含む抗体、抗原結合タンパク質又はその断片を指す。
【0058】
「価」は、エピトープを標的化する各抗体又は抗体断片上の抗原結合部位の数を指す。典型的な完全長IgG分子、又はF(ab)2は、2つの同一の標的結合部位を有するという点で「二価」である。F(ab)’又はscFcなどの「一価」抗体断片は、単一の抗原結合部位を有する。多価となるように三価又は四価の抗原結合タンパク質を操作することもできる。
【0059】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に発生する可能性のある突然変異を除いて同一のものである。
【0060】
「TSLP活性を阻害する」という用語は、以下のいずれか1つ以上を阻害することを含む:TSLPのその受容体への結合;TSLP存在下のTSLPR発現細胞の増殖、活性化、又は分化;TSLP存在下の偏光アッセイにおけるTh2サイトカイン産生の阻害;TSLP存在下の樹状細胞の活性化又は成熟化;及びTSLP存在下の肥満細胞のサイトカインの放出。例えば、米国特許第7982016B2号明細書の6行目及び実施例8、並びに米国特許出願公開第2012/0020988A1号明細書の実施例7~10を参照されたい。
【0061】
「試料」又は「生体試料」という用語は、本方法で使用するために対象から得た検体を指し、尿、全血、血漿、血清、唾液、痰、組織生検、脳脊髄液、インビトロ刺激を伴う末梢血単核細胞、インビトロ刺激を伴わない末梢血単核細胞、インビトロ刺激を伴う腸リンパ組織、インビトロ刺激を伴わない腸リンパ組織、腸洗浄、気管支肺胞洗浄、鼻洗浄、及び誘発喀痰を含む。
【0062】
「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、本明細書に記載される炎症性障害に関連する事象、疾患又は症状の臨床症状、発症又は進行を、一時的又は永久的に、部分的又は完全に排除、減少、抑制又は改善することを指す。関連分野で認識されているように、治療薬として使用される薬物は、所与の病状の重症度を低下させることができるが、有用な治療薬と見なされるために、必ずしも疾患のあらゆる発症を消失させる必要はない。同様に、予防的に投与される治療は、実行可能な予防剤を構成するために、症状の発症を予防するのに必ずしも完全に有効である必要はない。単に、疾患の影響を減少させるか(例えば、その症状の数若しくは重症度を減少させることによって、若しくは別の治療の有効性を向上させることによって、若しくは別の有益な効果を生じさせることによって)、又は対象に疾患が発症若しくは悪化する可能性を減少させれば十分である。本発明の一実施形態は、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインを超える持続的改善を生じさせるのに十分な量及び時間で患者に治療薬を投与することを含む、治療の有効性を測定するための方法に関する。
【0063】
「治療有効量」という用語は、疾患又は障害に関連する疾患の症状又は兆候を改善又は軽減するのに有効な治療薬の量を指す。
【0064】
TSLP
胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、炎症誘発性刺激に応答して産生され、主に樹状細胞(Gilliet,J Exp Med.197:1059-1067,2003;Soumelis,Nat Immunol.3:673-680,2002;Reche,J Immunol.167:336-343,2001)、肥満細胞(Allakhverdi,J Exp Med.204:253-258,2007)及びCD34+前駆細胞(Swedin et al.Pharmacol Ther 2017;169:13-34)に対するその活性を介してアレルギー性炎症応答を誘発する上皮細胞由来サイトカインである。TSLPは、インターロイキン(IL)-7受容体アルファ(IL-7Rα)鎖及び一般的なγ鎖様受容体(TSLPR)からなるヘテロ二量体受容体を介してシグナル伝達を行う(Pandey,Nat Immunol.1:59-64,2000;Park,J Exp Med.192:659-669(2000)。
【0065】
ヒトTSLPのmRNA(Brightling et al.,J Allergy Clin Immunol 2008;121:5-10;quiz 1-2;Ortega et al.N Engl J Med 2014;371:1198-207)及びタンパク質レベル(Ortega et al.、上掲)は、対照と比較して喘息患者の気道で増加しており、この発現の規模は疾患の重症度と相関する(Brightling et al.、上掲)。最近の研究から、ヒトTSLP遺伝子座の一塩基多型と、喘息、アトピー性喘息及び気道過敏症からの防御との関連性が示され、これは、TSLP遺伝子発現の時差的調節が疾患感受性に影響を及ぼし得ることを示唆している(Ortega et al.N Engl J Med 2014;371:1198-207;To et al.BMC Public Health 2012;12:204)。これらのデータは、TSLPを標的とすることで、喘息に関与する複数の生物学的経路を阻害することができることを示唆している。
【0066】
TSLPの初期の非臨床研究により、TSLPは、気道上皮細胞又は間質細胞から放出された後、肥満細胞、樹状細胞、及びT細胞を活性化してTh2サイトカイン(例えば、IL-4/13/5)を放出することが示唆された。近年発表されたヒトのデータにより、重症喘息において、組織TSLP遺伝子と、タンパク質発現、Th2遺伝子シグネチャースコア、及び組織好酸球との間に良好な相関関係があることが示された。従って、抗TSLP標的療法は、Th2型炎症を有する喘息患者に有効である可能性がある(Shikotra et al,J Allergy Clin Immunol.129(1):104-11,2012)。
【0067】
他の研究からのデータでは、TSLPは気道平滑筋と肥満細胞との間のクロストークなどのTh2非依存性経路を介して気道炎症を促進する可能性があることが示唆されている(Allakhverdi et al,J Allergy Clin Immunol.123(4):958-60,2009;Shikotra et al、上掲)。TSLPはまた、T細胞の誘導を促進して、Th-17-サイトカイン産生細胞に分化させ、その結果、より重度の喘息に一般的に見られる好中球性炎症を増加させる可能性がある(Tanaka et al,Clin Exp Allergy.39(1):89-100,2009)。これらのデータ、及び他の新たなエビデンスは、TSLPを遮断することで、Th2サイトカイン(IL-4/13/5)に関与する経路を含むがこれらに限定されない複数の生物学的経路を抑制する役割を果たす可能性があることを示唆している。
【0068】
抗体
TSLPに特異的な抗体又は抗体誘導体又は抗原結合タンパク質が、喘息、例えば重症喘息、好酸球性喘息、非好酸球/低好酸球性喘息及び本明細書に記載される他の形態の喘息、アトピー性皮膚炎、EoE、並びにCOPDを含む炎症性疾患の治療に有用であることが企図される。
【0069】
標的抗原、例えばTSLPに結合する抗体及び抗体誘導体又は断片などの特異的結合剤は、本開示の方法及び組成物に有用である。一実施形態では、特異的結合剤は抗体である。抗体は、モノクローナル(MAb);組換え;キメラ;相補性決定領域(CDR)移植などのヒト化;ヒト;単鎖を含む抗体変異体;及び/又は二重特異性;並びにそれらの断片;変異体;又は誘導体であり得る。抗体断片は、目的のポリペプチド上のエピトープに結合する抗体のこのような部分を含む。このような断片の例としては、完全長抗体を酵素的に切断することで生成されるFab及びF(ab’)断片が挙げられる。他の結合断片としては、抗体可変領域をコードする核酸配列を含む組換えプラスミドの発現などの組換えDNA技術によって生成される断片が挙げられる。
【0070】
モノクローナル抗体は、治療薬又は診断薬として使用するために改変されてもよい。一実施形態は、重鎖(H)及び/又は軽鎖(L)の一部が特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、又は相同であるが、鎖の残存部分は、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、又は相同である「キメラ」抗体である。所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片もまた含まれる。米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851-55を参照されたい。
【0071】
別の実施形態では、モノクローナル抗体は、「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野でよく知られている。米国特許第5,585,089号明細書及び同第5,693,762号明細書を参照されたい。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば、齧歯動物の相補性決定領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に置換することによって、当該技術分野で説明されている方法を使用して実施することができる(Jones et al.,1986,Nature 321:522-25;Riechmann et al.,1998,Nature 332:323-27;Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-36)。
【0072】
TSLPに結合するヒト抗体変異体及び誘導体(抗体断片を含む)もまた、本発明に包含される。内因性免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体のレパートリーを産生することができる遺伝子導入動物(例えば、マウス)を使用することで、任意選択により担体にコンジュゲートされたポリペプチド抗原(すなわち、少なくとも6つの連続するアミノ酸を有する)で免疫化を行うことにより、そのような抗体が産生される。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.90:2551-55;Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255-58;Bruggermann et al.,1993,Year in Immuno.7:33を参照されたい。また、PCT出願第PCT/US96/05928号明細書及び同第PCT/US93/06926号明細書も参照されたい。更なる方法が、米国特許第5,545,807号明細書、PCT出願第PCT/US91/245号明細書及び同第PCT/GB89/01207号明細書、並びに欧州特許第546073B1号明細書及び欧州特許出願公開第546073A1号明細書に記載されている。ヒト抗体はまた、宿主細胞で組換えDNAを発現させることによって、又は本明細書に記載されるようなハイブリドーマ細胞中で発現させることによって産生することができる。
【0073】
キメラ抗体、CDR移植抗体、及びヒト化抗体、抗体断片、並びに/又は抗体変異体及び誘導体は、通常、組換え法によって産生される。抗体をコードする核酸を宿主細胞に導入し、本明細書に記載される材料及び手順を用いて発現させる。好ましい実施形態では、抗体は、CHO細胞などの哺乳動物宿主細胞で産生される。モノクローナル(例えばヒト)抗体は、宿主細胞で組換えDNAを発現させることによって、又は本明細書に記載されるようなハイブリドーマ細胞で発現させることによって産生することができる。哺乳動物細胞の更なる例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に加えて、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)及びヒト上皮腎293細胞を含む、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas、VA)から入手可能な不死化細胞株が挙げられる。更に、テゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体の正確な改変及びプロセッシングを確実に行うために、細胞株又は宿主系を選択することができる。遺伝子産物の一次転写物、グリコシル化、及びリン酸化を適正にプロセッシングするための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用することができる。これらには、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、NS0(任意の機能的な免疫グロブリン鎖を内因的に産生することのないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7030及びHsS78Bst細胞が挙げられる。ヒトリンパ球を不死化することによって開発されたヒト細胞株も使用することができる。ヒト細胞株PER.C6(登録商標)(Janssen;Titusville、NJ)を使用して、モノクローナル抗体を組換え産生することもできる。
【0074】
例として、本明細書に記載されるような分子属性を有するテゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、この分子属性を有するテゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体を発現する細胞クローンを選択することによって得ることができる。このようなテゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体を産生するために、組換えDNA法が使用され得る。例えば、テゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体の重鎖及び軽鎖をコードするDNAを、好適な発現ベクター(又はベクター、例えば重鎖用の1つのベクター及び軽鎖用の1つのベクター)に挿入することができ、これを好適な宿主細胞、例えば哺乳動物細胞株の細胞にトランスフェクトすることができる。例えば、プロモーターに連結されたテゼペルマブポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する好適な発現ベクターは、当該技術分野で公知である。発現ベクターを従来技術によって宿主細胞に導入してもよく、このトランスフェクト細胞を使用して抗体を産生することができる。任意選択により、宿主細胞は、分子属性を調節するために操作され得る。例えば、フコシル化を調節するために、グリコシル化コンピテント細胞をフコシルトランスフェラーゼ又はゴルジGDP-フコース輸送体の活性を変化させるように遺伝子改変してもよい。例として、グリコシル化を調節するための細胞株の操作は、PCT国際公開第2015/116315号パンフレットに記載されている。
【0075】
関連する分子属性を含むテゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体を産生するクローンが選択され得る。例として、確立されたマイクロタイタープレートベースのクローン生成及び増殖方法が実施され得る。数百のプールされた異種細胞が、蛍光活性化セルソーティング(FACS)又は限界希釈などのプロセスによって単一細胞培養物に選別され得る。健康で安定な集団に回復期間を与えた後に、これらのクローン由来細胞が分析され得、選択集団が更なる分析のために選択される。更なる分析のために、スピンチューブ、24ウェルプレート、又は96ディープウェルプレートなどの小さい容器内で、クローン細胞を「小規模細胞培養」(例えば、10日間の流加プロセス)で培養する。この小規模プロセスでは、栄養素のボーラスが定期的に添加され、異なる細胞増殖及び生存率の測定値が得られる。数百又は数千ものこれらの小規模培養は、並行して実施され得る。培養の終わり(例えば、10日目)に、アッセイ及び分析のために細胞を採取する。任意選択により、クローンを生成して増殖させる(例えば、サブクローニング)マイクロタイタープレートベースの方法を、例えば、Berkeley Lights Beacon(商標)光電子細胞株生成及び分析システムなどの、自動化された又は部分的に自動化された、ハイスループット且つハイコンテンツなスクリーニングツールの使用に置き換えてもよい。任意選択により、関連する分子属性を生じさせるクローンの選択を促進するために、ハイスループットスクリーニング法及び機械学習ツールを使用してもよい(例えば、PCT国際公開第2020/223422号パンフレットを参照されたい)。
【0076】
抗TSLP抗体のテゼペルマブは、米国特許第7,982,016号明細書及び米国特許出願第15/951,602号明細書に記載されている。
【0077】
本方法に有用な抗TSLP抗原結合タンパク質(その断片を含む)は、a. i.配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;ii.配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;iii.配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びにb.i.配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;ii.配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及びiii.配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインから構成される抗TSLP抗体を含み、抗体又は抗体誘導体は、配列番号2のアミノ酸29~159に記載されるようなTSLPポリペプチドに特異的に結合する。
【0078】
また、a.i.配列番号12と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列;ii.配列番号11と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;iii.配列番号11からなるポリヌクレオチドの相補体に中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン;並びにb. i.配列番号10と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列;ii.配列番号9と少なくとも80%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;iii.配列番号9からなるポリヌクレオチドの相補体と中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなる群から選択される重鎖可変ドメイン;又はc.(a)の軽鎖可変ドメイン及び(b)の重鎖可変ドメインを含む抗体又は抗体誘導体が企図され、抗体又は抗体誘導体は、配列番号2のアミノ酸29~159に記載されるようなTSLPポリペプチドに特異的に結合する。
【0079】
テゼペルマブは、a.i.配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;ii.配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;iii.配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン;並びにb.i.配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;ii.配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及びiii.配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを有する例示的な抗TSLP抗体である。
【0080】
テゼペルマブはまた、配列番号11に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン;及び配列番号9に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを含む。
【0081】
様々な実施形態では、抗TSLP抗体又はその抗体誘導体は二価であり、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、単量体抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0082】
様々な実施形態では、抗TSLP抗体誘導体は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、単一ドメイン抗体、scFvからなる群から選択され、その用量は、結合部位が二価抗体によって投与される場合と等モルとなるように調節される。
【0083】
抗体又は抗体誘導体は、IgG2抗体であることが企図される。ヒトIgG2の定常領域の例示的な配列は、UniprotデータベースからUniprot番号P01859として入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる。他の抗体の重鎖及び軽鎖定常領域に関する配列情報を含む情報はまた、Uniprotデータベースと同様に、抗体工学及び抗体産生の分野の技術者によく知られた他のデータベースを介して公に利用可能である。テゼペルマブはIgG2抗体である。IgG2鎖を含むテゼペルマブの完全長の重鎖及び軽鎖配列を、それぞれ配列番号13及び14に記載する。
【0084】
特定の実施形態では、抗体の誘導体は、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較してグリコシル化部位の数及び/又はタイプが変化した、四量体のグリコシル化抗体を含む。特定の実施形態では、変異体は、天然タンパク質よりも数が多いか、又は数が少ないN-結合型グリコシル化部位を含む。或いは、この配列を削除する置換により、既存のN-結合型炭水化物鎖が除去される。また、N-結合型炭水化物鎖の再編成がもたらされ、1つ以上のN-結合型グリコシル化部位(典型的には天然に存在するもの)が削除されて1つ以上の新しいN-結合部位が生成される。更なる抗体変異体としては、親アミノ酸配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が別のアミノ酸(例えば、セリン)で欠失又は置換されているシステイン変異体が挙げられる。システイン変異体は、不溶性封入体を単離した後などの、抗体を生物学的に活性な立体構造にリフォールディングしなければならない場合に有用であり得る。システイン変異体は、一般に、システイン残基が天然タンパク質よりも少なく、通常は、不対システインから生じる相互作用を最小限にするために、偶数個のシステイン残基を有する。
【0085】
所望のアミノ酸置換(保存的か又は非保存的かにかかわらず)は、そのような置換が所望される時点で当業者によって決定され得る。特定の実施形態では、アミノ酸置換は、ヒトTSLPにとって重要な抗体の残基を同定するために、又は本明細書に記載されるヒトTSLPに対する抗体の親和性を増大若しくは低下させるために使用することができる。
【0086】
特定の実施形態によれば、好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させるもの、(2)酸化に対する感受性を減少させるもの、(3)結合親和性を変化させるもの、(4)高分子量(HMW)種の形成を阻害するもの、及び/又は(5)そのようなポリペプチドにおける他の生理化学的特性若しくは機能的特性を付与若しくは改変させるものである。特定の実施形態によれば、単一又は複数のアミノ酸置換(特定の実施形態では保存的アミノ酸置換)は、天然の配列(特定の実施形態では、分子間接触を成立させるドメインの外側のポリペプチドの部分)内で行われ得る。特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、典型的には、親配列の構造的特徴を実質的に変化させることができない(例えば、置換アミノ酸により、親配列中に存在するヘリックスが破壊されるか、又は親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造が破壊される傾向があるべきではない)。当業者に認識されるポリペプチドの二次構造及び三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));及びThornton et al.Nature 354:105(1991)に記載されており、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
作製方法
本開示のテゼペルマブ組成物は、宿主細胞で重鎖及び軽鎖をコードする核酸を組換え発現すること、宿主細胞培養物又は宿主細胞可溶化物からテゼペルマブを部分的に精製するか又は精製すること、及び得られた組成物を下記により詳細に記載される方法に従って本明細書に詳述されるテゼペルマブ誘導体の1つ以上について分析することによって調製することができる。
【0088】
テゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体を組換え産生するために、重鎖(例えば、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド)及び軽鎖(例えば、配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチド)をコードする1つ以上の核酸が、1つ以上の発現ベクターに挿入される。重鎖をコードする核酸及び軽鎖をコードする核酸は、単一の発現ベクターに挿入することができるか、又は、それらを別々の発現ベクターに挿入することができる。本明細書で使用する場合、「発現ベクター」又は「発現コンストラクト」という用語は、特定の宿主細胞において作動可能に連結されたコード配列を発現するのに必要となる、所望のコード配列及び適切な核酸制御配列を含有する組換えDNA分子を指す。発現ベクターは、転写、翻訳に作用するか又はそれを制御する配列を含んでもよく、イントロンが存在する場合は、そこに作動可能に連結されたコード領域のRNAスプライシングに作用する。原核生物における発現に必要な核酸配列としては、プロモーター、任意選択によりオペレーター配列、リボソーム結合部位、及び場合によっては他の配列が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、並びに終結シグナル及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。分泌シグナルペプチド配列もまた、任意選択により発現ベクターによってコードされてもよく、所望であれば、細胞から目的のポリペプチドをより容易に単離するために、組換え宿主細胞によって発現ポリペプチドを分泌することができるように目的のコード配列に作動可能に連結されてもよい。ベクターはまた、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を促進するための1つ以上の選択マーカー遺伝子を含み得る。テゼペルマブの重鎖及び軽鎖と同様に、好適なシグナルペプチド配列、及びテゼペルマブを組換え発現するための発現ベクターの他の成分をコードする例示的な核酸は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,982,016号明細書に記載されており、本明細書では配列番号9及び配列番号11に記載されている。
【0089】
発現ベクターが構築され、ベクターの好適な部位にテゼペルマブ又はその誘導体の重鎖及び軽鎖成分をコードする1つ以上の核酸分子が挿入された後に、この完成したベクターを増幅及び/又はポリペプチド発現のために好適な宿主細胞に挿入してもよい。テゼペルマブ又はその誘導体の発現ベクターの選択された宿主細胞への形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又は他の公知の技術を含む、よく知られた方法によって行われ得る。選択される方法は、部分的に、使用される宿主細胞型に応じることになる。これらの方法及び他の好適な方法は、当業者によく知られており、例えば、Sambrook,Fritsch and Maniatis(eds),Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1989),Ausubel et al.(eds.)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,(1989)に記載されている。
【0090】
適切な条件下で培養された場合、宿主細胞はテゼペルマブ又はその誘導体を合成し、続いて、(宿主細胞が培地中に分泌する場合は)培養培地から、又は(分泌されない場合は)産生する宿主細胞から直接回収することができる。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性(グリコシル化又はリン酸化など)に望ましいか又は必要となるポリペプチド修飾、及び生物的に活性な分子へのフォールディングの容易さなどの様々な要因に依存する。
【0091】
例示的な宿主細胞としては、原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞が挙げられる。原核生物の宿主細胞としては、グラム陰性微生物又はグラム陽性微生物などの真正細菌、エシェリキア属(Escherichia)、例えば大腸菌(E.coli)などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、例えばネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属(Serratia)、例えばセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescans)、及びシゲラ属(Shigella)、並びにバチルス属(Bacillus)、例えば、B.サブティリス(B.subtilis)及びB.リケニフォルミス(B.licheniformis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、並びにストレプトミセス属(Streptomyces)が挙げられる。真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母が、組換えポリペプチドに好適なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、又は一般的なパン酵母が、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に用いられている。しかしながら、ピキア属(Pichia)、例えばP.パストリス(P.pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、カンジダ属(Candida)、トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、シュワニオミセス属(Schwanniomyces)、例えばシュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、並びに糸状菌、例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、並びにアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えば、A.ニデュランス(A.nidulans)及びA.ニガー(A.niger)などのいくつかの他の属、種、及び株が、本明細書において一般に利用可能であり、且つ有用である。
【0092】
グリコシル化抗体を発現するための宿主細胞は、多細胞生物由来であり得る。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株及び変異体、並びにツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)、及びカイコ(Bombyx mori)などの宿主由来の対応する昆虫の許容宿主細胞が同定されている。そのような細胞をトランスフェクトするための様々なウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異体、及びカイコ(Bombyx mori)NPVのBm-5株が公に入手可能である。
【0093】
脊椎動物宿主細胞もまた好適な宿主であり、このような細胞からの抗体の組換え産生は常法となっている。発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該技術分野において周知であり、以下に限定されないが、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能な不死化細胞株、例えば、以下に限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えば、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44、及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216,1980);SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(懸濁培養液中で増殖させるためにサブクローニングされた293又は293細胞(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251,1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44-68,1982);MRC 5細胞又はFS4細胞;哺乳動物骨髄腫細胞、及びいくつかの他の細胞株が挙げられる。CHO細胞は、テゼペルマブ又はその誘導体を発現するためのいくつかの実施形態において好ましい宿主細胞である。
【0094】
宿主細胞は、テゼペルマブ又はその誘導体を産生するために、上記に記載される発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトされ、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適切となるように改変された従来の栄養培地中で培養される。テゼペルマブ又はその誘導体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。ハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞を培養するのに好適である。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44,1979;Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255,1980;米国特許第4,767,704号明細書;同第4,657,866号明細書;同第4,927,762号明細書;同第4,560,655号明細書;若しくは同第5,122,469号明細書;国際公開第90/03430号パンフレット;又は国際公開第87/00195号パンフレットに記載される培地のいずれかを、宿主細胞の培養培地として使用してもよい。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、若しくは上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬物)、微量元素(通常マイクロモル範囲の終濃度で存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコース又は同等のエネルギー源が必要に応じて補充され得る。また、他の必要なあらゆる栄養補助剤が、当業者に公知であろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどのような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞でこれまでに使用されたものであり、当業者には明らかであろう。
【0095】
宿主細胞を培養すると、抗体は、細胞内で産生され得るか、細胞膜周辺腔内で産生され得るか、又は培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合は、第1の工程として、宿主細胞を溶解し(例えば、機械的剪断、浸透圧ショック、又は酵素的方法により)、粒状の細片(例えば、宿主細胞及び溶解断片)を、例えば、遠心分離、精密濾過、又は限外濾過によって除去する。抗体が培養培地に分泌される場合は、抗体を遠心分離又は精密濾過により宿主細胞から分離することができ、任意選択により、続いて限外濾過により濃縮することができる。テゼペルマブ又はその誘導体は、更に、例えば、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、又は混合モードクロマトグラフィーなどの1つ以上のクロマトグラフィー工程を使用して精製され得るか又は部分的に精製され得る。
【0096】
ゼペルマブ組成物を産生又は入手した時点で、組成物は、異性化誘導体(その異性化中間体を含む)、脱アミド化誘導体(その脱アミド化中間体を含む)、酸化誘導体、グリコシル化誘導体、ジスルフィドアイソフォーム誘導体及びサイズ誘導体(size derivative)(例えば、HMW種又は断片)を含む、本明細書に記載される1つ以上のテゼペルマブ誘導体の存在及び量について評価され得る。従って、本開示は、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中の1つ以上のテゼペルマブ誘導体の量を測定すること;測定された1つ以上のテゼペルマブ誘導体の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、(1)組成物中の異性化誘導体(その異性化中間体を含む)の量を測定すること、(2)組成物中の脱アミド化誘導体(その脱アミド化中間体を含む)の量を測定すること、(3)組成物中の酸化誘導体の量を測定すること、(4)組成物中のグリコシル化誘導体の量を測定すること、(5)組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量を測定すること、(6)組成物中のHMW種の量を測定すること、及び/又は(7)組成物中の断片の量を測定することのうちの1、2、3、4、5、6若しくは7つを含む。特定の実施形態では、テゼペルマブ組成物に、7つ全ての測定が実施される。
【0097】
各テゼペルマブ誘導体に対する所定の参照基準は、例えば、投与中の安全目的のため、又はリガンドによって誘導されるTSLP受容体の活性化を阻害するために、テゼペルマブ組成物の効力及び/又は忍容性に著しく影響を及ぼすことのない誘導体の閾値量又は量の範囲であり得る。例えば、各テゼペルマブ誘導体に対する所定の参照基準は、誘導体のこれらの限度/範囲を有するテゼペルマブ組成物が、臨床試験で評価され、臨床的有効性を有することが示されたテゼペルマブ組成物に匹敵する効力及び/又は忍容性があった場合、誘導体の各々に対して本明細書で開示される限度又は範囲のいずれかとすることができる。本明細書に記載されるような方法を開始する前に、本明細書に記載される所定の参照基準が規定され得ることが理解されよう。
【0098】
本方法の特定の実施形態では、組成物中の測定されたテゼペルマブ誘導体の量が所定の参照基準を満たす場合、テゼペルマブ組成物は許容可能であると分類され、例えば、組成物の医薬製剤を調製することにより(例えば、1つ以上の賦形剤若しくは希釈剤と組み合わせることにより);組成物の医薬製品を調製することにより(例えば、バイアル、シリンジ、自動注入装置、若しくは他の容器若しくは送達デバイスに充填することにより);使用説明書、希釈剤、及び/若しくは送達デバイスと共に組成物をパッケージ化することにより;又は市販若しくは販売業者への配送のために組成物をリリースすることなどにより、製造又は流通プロセスの次の工程に進むことができる。本方法のいくつかの実施形態では、組成物中の測定されたテゼペルマブ組成物の量が所定の参照基準を満たす場合に、テゼペルマブ組成物の医薬製剤が調製される。本方法の他の実施形態では、組成物中の測定されたテゼペルマブ組成物の量が所定の参照基準を満たす場合に、テゼペルマブ組成物の医薬製品が調製される。テゼペルマブ組成物の医薬製剤及び医薬製品を調製する方法は、下記により詳細に記載される。組成物中の測定されたテゼペルマブ誘導体の量が所定の参照基準を満たさない場合、本方法のいくつかの実施形態では、テゼペルマブ組成物は許容不能と分類され、処分され、廃棄することができるか、又は所定の参照基準が満たされるように組成物中のテゼペルマブ誘導体の量を除去又は減少させるため、追加の製造工程、例えば追加の精製にかけることができる。
【0099】
一実施形態では、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法は、テゼペルマブ及びテゼペルマブ異性化誘導体(その異性化中間体を含む)を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中の異性化誘導体の量を測定すること;測定された異性化誘導体の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む。テゼペルマブ組成物中の異性化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約30%未満、例えば、約25%未満、約20%以下、約17%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、約6%以下、又は約4%以下であり得る。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中の異性化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約15%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の異性化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約13%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の異性化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約10%、約8%、約5%、約3%又は約2%未満である。いくつかの実施形態では、テゼペルマブ組成物中の異性化誘導体の量に対する所定の参照基準は、ある範囲の量、例えば、テゼペルマブ組成物の約0.5%~約13%、テゼペルマブ組成物の約1%~約10%、又はテゼペルマブ組成物の約0.5%~約5%であり得る。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の異性化誘導体の量に対する所定の参照基準は、可変領域鎖の一方又はその両方において、配列番号7のD54で約5%、4%、3%、2%又は1%未満の異性化である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中の異性化誘導体の量に対する所定の参照基準は、配列番号4のD49、D50又はD52の1つ以上で約13%、約10%、約8%、約5%、約3%又は約2%未満の異性化である。特定の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の異性化誘導体の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。
【0100】
一実施形態では、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法は、テゼペルマブ及びテゼペルマブ脱アミド化誘導体(その脱アミド化中間体を含む)を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中の脱アミド化誘導体の量を測定すること;測定された脱アミド化誘導体の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む。テゼペルマブ組成物中の脱アミド化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約15%未満、例えば、約13%以下、約10%以下、約8%以下、約6%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、又は約1%以下であり得る。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中の脱アミド化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約7%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の脱アミド化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約5%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の脱アミド化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約2%以下である。いくつかの実施形態では、テゼペルマブ組成物中の脱アミド化誘導体の量に対する所定の参照基準は、ある範囲の量、例えば、テゼペルマブ組成物の約0.4%~約10%、テゼペルマブ組成物の約1%~約7%、又はテゼペルマブ組成物の約0.1%~約4%であり得る。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中の脱アミド化誘導体の量に対する所定の参照基準は、配列番号3に記載されるLCDR1のN25/N26で約3%未満の脱アミドである。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中の脱アミド化誘導体の量に対する所定の参照基準は、配列番号13に記載される重鎖のN316及び/又は配列番号13に記載される重鎖のN385/390で約13%未満の脱アミドである。特定の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の脱アミド化誘導体の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。
【0101】
一実施形態では、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法は、テゼペルマブ及びテゼペルマブ酸化誘導体を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中の酸化誘導体の量を測定すること;測定された酸化誘導体の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む。テゼペルマブ組成物中の酸化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約7%未満又はそれ以下、例えば、約6%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、又は約1%以下であり得る。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中の酸化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約7%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の酸化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約5%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の酸化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約3%以下である。いくつかの実施形態では、テゼペルマブ組成物中の酸化誘導体の量に対する所定の参照基準は、ある範囲の量、例えば、テゼペルマブ組成物の約0.1%~約7%、テゼペルマブ組成物の約0.4%~約5%、又はテゼペルマブ組成物の約0.8%~約3%であり得る。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の酸化誘導体の量に対する所定の参照基準は、配列番号8に記載されるHCDR3のW102で約7%以下、又は約6%以下、又は約5%以下、又は約3%以下の酸化である。特定の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の酸化誘導体の量は、還元ペプチドマッピングによって測定される。
【0102】
一実施形態では、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法は、テゼペルマブ及びテゼペルマブグリコシル化誘導体を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中のグリコシル化誘導体の量を測定すること;測定されたグリコシル化誘導体の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む。テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約40%未満、例えば、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約17%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、約6%以下、又は約4%以下であり得る。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約30%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約20%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約15%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約10%以下である。いくつかの実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、ある範囲の量、例えば、テゼペルマブ組成物の約1%~約40%、テゼペルマブ組成物の約4%~約30%、テゼペルマブ組成物の約2%~約20%、又はテゼペルマブ組成物の約5%~約15%であり得る。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約17%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、約5%以下、又は約4%以下の組成物中の高マンノースグリコシル化である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約25%以下、約23%以下(例えば、約23.1%以下)、約21%以下、約19%以下、約17%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、約6%以下、約5%以下、又は約4%以下の組成物中の高マンノースグリコシル化である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約23.1%以下の組成物中の高マンノースグリコシル化である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約17%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、約5%以下、又は約4%以下の組成物中のガラクトシル化である。様々な実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量に対する所定の参照基準は、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下のアフコシル化されたグリコシル化である。特定の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のグリコシル化誘導体の量は、グリカンマッピングによって測定される。
【0103】
一実施形態では、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法は、テゼペルマブ及びテゼペルマブジスルフィドアイソフォーム誘導体を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量を測定すること;測定されたジスルフィドアイソフォームの量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む。テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約75%未満、例えば、約70%以下、約65%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約17%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、約6%以下、又は約4%以下であり得る。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約50%以下である。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約35%以下である。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約25%以下である。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約15%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約10%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約8%以下である。いくつかの実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、ある範囲の量、例えば、テゼペルマブ組成物の約10%~約70%、テゼペルマブ組成物の約15%~約50%、又はテゼペルマブ組成物の約20%~約40%であり得る。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約50%以下のIgG2-A/Bアイソフォームである。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量に対する所定の参照基準は、約5%以下のIgG2-Bアイソフォームである。特定の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量は、逆相HPLCによって測定される。
【0104】
別の実施形態では、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法は、テゼペルマブ及びテゼペルマブのHMW種を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中のHMW種の量を測定すること;測定されたHMW種の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む。テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、約20%未満、例えば、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、又は約4%以下であり得る。テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、約3.0%未満、例えば、約2.5%以下、約2.4%以下、約2.3%以下、約2.2%以下、約2.1%以下、約2.0%以下、約1.8%以下、約1.6%以下、約1.4%以下、約1.2%以下、約1.0%以下、約0.8%以下、約0.6%以下、又は約0.4%以下であり得る。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、約2.5%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、約1.7%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、約1.4%以下である。更に別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、約1.2%以下である。なお別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、約0.6%以下である。テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、いくつかの実施形態では、ある範囲の量、例えば、テゼペルマブ組成物の約0.3%~約2.4%、テゼペルマブ組成物の約0.6%~約2.1%、テゼペルマブ組成物の約0.4%~約1.2%、又はテゼペルマブ組成物の約0.6%~約1.4%であり得る。特定の実施形態では、テゼペルマブ組成物中のHMW種の量は、SE-HPLC、例えば、SE-UHPLC、SE-HPLC-SLS、又は沈降速度超遠心分離(SV-AUC)によって測定される。
【0105】
別の実施形態では、テゼペルマブ組成物の品質を評価するための方法は、テゼペルマブ及びテゼペルマブの断片(例えば、LMW又はMMW)を含有するテゼペルマブ組成物を得ること;組成物中の断片の量を測定すること;測定された断片の量を、所定の参照基準と比較すること;並びに、この比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む。テゼペルマブ組成物中のHMW種の量に対する所定の参照基準は、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、又は約4%以下であり得る。テゼペルマブ組成物中の断片の量に対する所定の参照基準は、約3.0%未満、例えば、約2.5%以下、約2.4%以下、約2.3%以下、約2.2%以下、約2.1%以下、約2.0%以下、約1.8%以下、約1.6%以下、約1.4%以下、約1.2%以下、約1.0%以下、約0.8%以下、約0.6%以下、又は約0.4%以下であり得る。一実施形態では、テゼペルマブ組成物中の断片の量に対する所定の参照基準は、約2.5%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の断片の量に対する所定の参照基準は、約1.7%以下である。別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の断片の量に対する所定の参照基準は、約1.4%以下である。更に別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の断片の量に対する所定の参照基準は、約1.2%以下である。なお別の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の断片の量に対する所定の参照基準は、約0.6%以下である。テゼペルマブ組成物中の断片の量に対する所定の参照基準は、いくつかの実施形態では、ある範囲の量、例えば、テゼペルマブ組成物の約0.3%~約2.4%、テゼペルマブ組成物の約0.6%~約2.1%、テゼペルマブ組成物の約0.4%~約1.2%、又はテゼペルマブ組成物の約0.6%~約1.4%であり得る。特定の実施形態では、テゼペルマブ組成物中の断片の量は、rCE-SDSによって測定される。
【0106】
本発明の方法の特定の実施形態では、方法は、
(a)テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含有するテゼペルマブ組成物を得ることであって、テゼペルマブ誘導体は、異性化誘導体、脱アミド化誘導体、酸化誘導体、グリコシル化誘導体、ジスルフィドアイソフォーム誘導体、HMW種、断片又はこれらの組み合わせを含むこと;
(b)以下の1つ以上を実行することによってテゼペルマブ組成物を評価すること:
(i)還元ペプチドマッピングによって組成物中の異性化誘導体の量を測定し、測定された量を約30%以下の所定の参照基準と比較すること;
(ii)還元ペプチドマッピングによって組成物中の脱アミド化誘導体の量を測定し、測定された量を約15%以下の所定の参照基準と比較すること;
(iii)還元ペプチドマッピングによって組成物中の酸化誘導体の量を測定し、測定された量を約7%以下の所定の参照基準と比較すること;
(iv)グリカンマッピングによって組成物中のグリコシル化誘導体の量を測定し、測定された量を約40%以下の所定の参照基準と比較すること;
(v)非還元逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量を測定し、測定された量を約75%以下の所定の参照基準と比較すること;
(vi)SE-HPLCにおけるプレピークによって組成物中のHMW種の量を測定し、測定された量を約20%以下の所定の参照基準と比較すること;並びに/又は
(vii)rCE-SDSにおけるプレピークによって組成物中の断片の量を測定し、測定された量を約15%以下の所定の参照基準と比較すること;
並びに、
(c)工程(b)における比較が所定の参照基準を満たすことを示す場合、テゼペルマブ組成物の医薬製剤又は医薬製品を調製することを含む。いくつかの実施形態では、工程(b)(i)、(b)(ii)、(b)(iii)、(b)(iv)、b)(v)、(b)(vi)、及び(b)(vii)全てが実施される。他の実施形態では、工程(b)(vi)及び(b)(vii)のみが実施される。特定の実施形態では、工程(b)(iv)、(b)(vi)及び(b)(vii)が実施される。
【0107】
タンパク質結合に寄与する属性の同定
タンパク質結合及び活性に寄与する属性を測定するために、本明細書に記載されるような抗TSLP抗体であるテゼペルマブを、その構造に変化をもたらす、例えば、治療用タンパク質の誘導体の形成をもたらし、治療用タンパク質のアミノ酸構造に変化をもたらす条件に置く。例示的な態様では、アミノ酸の変化した構造は「属性」と呼ばれ、その化学的同一性又は属性型及び抗原結合タンパク質のアミノ酸配列内の位置(例えば、その属性が存在するアミノ酸の位置)の点から特性評価され得る。例えば、アスパラギン及びグルタミン残基は、脱アミド化に感受性がある。タンパク質のアミノ酸配列の10位で脱アミド化したアスパラギンは、属性の一例である。特定のアミノ酸の例示的な属性型の一覧を表Aに示す。このように、本明細書で使用する場合、「構造」とは、表Aに列挙した属性型か、又は表Aに列挙した2つ以上の属性型の組み合わせを含み得るか、実質的にそれから構成され得るか又はそれから構成され得る。属性は構造の例であり、特に明記しない限り、本明細書で「構造」に言及する場合は常に、属性は構造の例として企図されることが理解されよう。例えば、高分子量種(HMW)及び断片も属性の例である。
【0108】
【表A】
【0109】
免疫グロブリン若しくはその断片、抗体又は抗原結合タンパク質、例えばテゼペルマブは、複数のアミノ酸から構成されるため、本明細書に記載される抗体又は抗原結合タンパク質は、2つ以上の属性(例えば、変化した構造を有する2つ以上のアミノ酸)を有してもよく、属性プロファイルの点から説明され得る。本明細書で使用する場合、「属性プロファイル」という用語は、抗原結合タンパク質の属性の一覧を指す。様々な例では、属性プロファイルは、任意選択により、治療用タンパク質の天然構造に対して化学的同一性又は属性型、例えば脱アミド化を提供する。様々な例では、属性プロファイルは、属性の位置、例えば属性が存在するアミノ酸の位置を提供する。属性プロファイルは、いくつかの態様では、抗原結合タンパク質に存在する全ての属性の説明を提供する。他の態様では、属性プロファイルは、タンパク質に存在する一部の属性の説明を提供する。例えば、属性プロファイルは、タンパク質の特定の部分、例えば、定常領域、可変領域、CDR(3つの軽鎖CDR及び3つの重鎖CDRなど)に存在する属性のみを提供し得る。抗体又は抗原結合タンパク質などの治療用タンパク質の種は、そのタンパク質に存在する属性によって特性評価される。抗体又は抗原結合タンパク質の種は、異なる属性プロファイルを有することにより、同一のタンパク質の別の種とは異なり得る。2つの治療用タンパク質が異なる属性プロファイルを有する場合、この治療用タンパク質は、治療用タンパク質の2つの異なる種又は誘導体であることを示す。2つの治療用タンパク質が同一の属性プロファイルを有する場合、この治療用タンパク質は、治療用タンパク質の同一の種又は誘導体であると見なされる。
【0110】
様々な例では、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質は、その構造の変化(例えば、1つ以上の属性の形成)をもたらす状態に置かれ、その構造の変化により、標的に対する治療用タンパク質の親和性が変化し得る。様々な態様では、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質は、その構造の変化(例えば、1つ以上の属性の形成)をもたらす状態に置かれ、その構造の変化により、標的に対する抗原結合タンパク質の親和性が低下する。いくつかの様態で親和性が低下することにより、標的と相互作用する(例えば、結合する)免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質の能力の部分的又は全体的な喪失がもたらされる。様々な例では、標的と相互作用する(例えば、結合する)免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質の能力が部分的又は全体的に喪失すると、最終的に抗原結合タンパク質の効力が低下する。代替的な例では、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質は、その構造の変化(例えば、1つ以上の属性の形成)をもたらす状態に置かれ、その構造の変化により、標的に対する免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質の親和性が変化しない。様々な態様では、構造の変化により、標的に対するタンパク質の親和性が低下しない。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本開示の方法は、有利なことに、免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に影響を及ぼす免疫グロブリン、抗体又は抗原結合タンパク質のそのような属性を、相互作用に影響を及ぼさない属性と正確に且つ精度よく区別する。
【0111】
様々な態様では、本明細書の組成物は、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片の種又は誘導体の集団を含む。様々な例では、集団は、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片の同種集団であり、任意選択により、組成物試料中に存在するタンパク質の各々は、同一の種又は誘導体である。様々な例では、集団は、本明細書に記載される属性を有する免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片の少なくとも2つの異なる種又は誘導体から構成される異種集団である。様々な例では、異種集団は、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ以上の異なる種又は誘導体から構成される。任意選択により、異種集団は、タンパク質の7つを超える、8つを超える、9つを超える、10を超える、20を超える、30を超える、40を超える、50を超える異なる種又は誘導体から構成される。いくつかの態様では、集団のそれぞれの種又は誘導体は、固有の属性プロファイルを有する。代表的な例では、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片の種が、組成物中に存在する唯一のタンパク質である。いくつかの態様では、組成物は、(i)集団の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片、免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片、及び(ii)薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、異種集団の少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片が、本明細書に記載されるような属性を含む。いくつかの実施形態では、異種集団の20%、15%、10%、5%、又は1%以下の免疫グロブリン、抗原結合タンパク質若しくはその断片、又は抗体若しくはその断片が、本明細書に記載されるような属性を含む。
【0112】
分離
例示的な実施形態では、本開示は、抗原の異なる種を含む混合物を少なくとも2つの画分に分離する方法を含む。いくつかの態様では、混合物は、複数の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10以上の)画分に分離される。いくつかの態様では、本明細書で開示される方法の分離工程により、抗原結合タンパク質及びその標的の天然のフォールディング、高次構造及び結合能力が保持される。様々な態様では、混合物は、非結合抗体若しくは抗原結合タンパク質又は非結合標的を含む非結合画分と、抗体/抗原結合タンパク質-標的複合体を含む結合画分とに分離される。
【0113】
混合物を画分に分離する好適な方法及び技術は、当技術分野において公知である。例えば、Coskun,North Clin Istanb 3(2);156-160(2016);Snyder et al.,Practical HPLC Method Development,2nd ed.,John Wiley & Sons,Inc.1997;Snyder et al.,Introduction to Modern Liquid Chromatography,John Wiley & Sons,Inc.,Hoboken,NJ,2010;Heftmann,Chromatography:Fundamentals and applications of chromatography and related differential migration methods,6th ed.,Volume 69A,Elsevier,Amsterdam,Netherlands,2004;Mori and Barth,Size Exclusion Chromatography,Springer-Verlag,Berlin,1999を参照されたい。いくつかの態様では、分離は、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)及び/若しくはキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)などの電荷に基づくか、又は、例えば逆相(RP;例えば、RP-HPLC)及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC-HPLC)における分離などの疎水性に基づくものである。様々な態様では、分離は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC;例えば、SE-HPLC)、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウムを用いるキャピラリー電気泳動(CE-SDS)などのサイズに基づくものである。本明細書に記載される方法は、Met又はTrp残基の産物の酸化、断片化/クリッピング、Aspの異性化、脱アミド化、N末端におけるピログルタミン酸の形成を検出するために使用される。様々な実施形態では、混合物は、サイズ、電荷、疎水性、捕捉分子に対する親和性、又はこれらの組み合わせに基づいて混合物の成分を分離する技術を使用して、少なくとも2つの画分に分離される。様々な例では、この技術は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、アフィニティークロマトグラフィー、ビーズ若しくは細胞を使用する沈殿、フリーフロー分画(FFF)、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、又は超遠心分離(UC)である。任意選択により、混合物は、サイズに基づいて混合物の成分を分離する技術を使用して、少なくとも2つの画分に分離され、任意選択により、この技術はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。
【0114】
様々な態様では、混合物は、固体支持体、任意選択によりビーズ又は細胞に結合された捕捉分子に対する親和性に基づいて混合物の成分を分離する技術を使用して、少なくとも2つの画分に分離される。様々な例では、(i)捕捉分子に結合されたビーズ、又はその表面に捕捉分子を発現する細胞を含む容器、例えばチューブに混合物を加え、(ii)容器(例えば、チューブ)を遠心分離して上清及びペレットを得、(iii)ペレットから上清を回収して非結合画分を得、(iv)ペレットから溶液で結合画分を放出させ、(v)ペレット及び溶液を含む容器(例えば、チューブ)を遠心分離して、結合画分を含む第2の上清と、ビーズ又は細胞を含む第2のペレットとを得、並びに(vi)第2の上清を回収して結合画分を得ることによって混合物が分離される。いくつかの態様では、(i)捕捉分子に結合されたビーズを含む混合物をカラムに加えて、フロースルー及び結合画分を得、(ii)フロースルーを回収して非結合画分を得、(iii)ビーズから結合画分を溶液で放出させ、結合画分を含む溶液を回収することによって混合物が分離される。好適な固体支持体としては、例えば、任意選択によりセルロース、シリカ、アルミナ、ガラス、プラスチック又はこれらの組み合わせから作製されたビーズ、樹脂、紙が挙げられる。例示的な態様では、固体支持体に結合された捕捉分子は、タンパク質である。捕捉分子は、標的と同一であり得る。有利なことに、捕捉分子は、任意の特定の分子に限定されない。
【0115】
抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に影響を及ぼす免疫グロブリン、抗原結合タンパク質(例えば、テゼペルマブ)又は標的の属性を同定する方法の様々な実施形態では、方法は、非結合画分及び結合画分の各々に対して、抗原結合タンパク質の種若しくは誘導体又は標的に存在する各属性の存在量を同定及び定量することを含み、非結合画分中の属性の存在量が結合画分中の属性の存在量より多い場合、この属性は、抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に悪影響を及ぼす。様々な態様では、本方法は、質量分析計を使用して、非結合画分及び結合画分の各々における抗原結合タンパク質の種又は標的の各属性の存在量を同定及び定量することを含む。
【0116】
抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に及ぼす、抗原結合タンパク質の種又は標的に存在する既知の属性の影響を測定する方法の様々な実施形態では、方法は、非結合画分及び結合画分の各々に対して、既知の属性の存在量を定量することを含み、非結合画分中の既知の属性の存在量が結合画分中の既知の属性の存在量より多い場合、この既知の属性は、抗原結合タンパク質と標的との間の相互作用に悪影響を及ぼす。様々な態様では、本方法は、質量分析計を使用して、非結合画分及び結合画分の各々における既知の属性の存在量を定量することを含む。
【0117】
安定性とは、アミノ酸残基の化学修飾、及び生物物理学的タンパク質修飾、例えば、製造、保存、及び/又は追加若しくは代替的な応力条件中に生じ得る、応力条件中のHMW種の形成に対する耐性を指す。本明細書に記載される実施形態の方法並びに免疫グロブリン、抗原結合タンパク質、及びその断片に関して、「安定性」及び/又は「HMW」種は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して測定され得る。免疫グロブリン、抗原結合タンパク質、又は断片若しくは誘導体を含む組成物は、SEC-UVなどのSECによって分離することができる。SECは、100mMのリン酸ナトリウムと250mMのNaClから構成される移動相(pH6.8)を使用してもよく、流速を0.5ml/分に設定してもよく、カラム温度を37℃に設定してもよく、ランタイムを35分としてもよく、オートサンプラーを4℃に設定してもよい。SECに好適なカラムの例としては、ジオール官能基を含み、平均直径5μm、平均孔径約25nMを有するシリカ粒子を含むゲルカラム(例えば、TOSOH Bioscience社からG3000SWxlカラムとして市販されている)が挙げられる。SEC-UVの場合、紫外/可視分光分析(UV/VIS)検出が214nm及び280nmで実施され得る。分離後、単量体種及びHMW種を表すピークは、SEC溶出プロファイルにおいて異なる時間で溶出し得ることが理解されよう。
【0118】
SEC分析後、任意選択によりペプチドマッピングを実施してもよく、例えば、本明細書及び/又は国際公開第2020/247790号パンフレットに記載されているように、結合種及び非結合種に関連するペプチド修飾を同定してもよい。ペプチドマッピングの場合、分子量カットオフ(例えば、10kDa超)を有するフィルターを使用して溶出画分を回収し、7.5Mのグアニジン溶出緩衝液により溶出してもよい。抗原への結合に影響を及ぼす化学修飾を特定するために、応力を受けた免疫グロブリン(又は抗原結合タンパク質若しくはその断片)と抗原とを共に混合し、先行して溶出した抗原結合複合体と、その後に溶出した非結合の免疫グロブリン(又は抗原結合タンパク質若しくはその断片)とに分離してもよい。HMWに影響するか、又は相関する化学修飾を特定するために、単量体種及びHMW種が収集され得る。
【0119】
「親和性」又は「結合」は、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法、又は本明細書に記載されるようなSEC結合親和性実験でも測定され得ることが理解されよう。本明細書に特に明記しない限り、又は科学的文脈から特に必要とされない限り、「親和性」は、SPRによって測定した場合の親和性を指すことが理解されよう。Kd値は、BIAcore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用するSPRによって測定され得る。BIAcore(登録商標)システムによる分析は、固定化した分子(例えば、本明細書に記載されるような抗TSLP免疫グロブリン、抗原結合タンパク質、又はその断片)を表面に有するチップからの抗原(例えば、TSLP)の結合及び解離を分析することを含み得る。SPRを使用して、Kd<10-6Mの結合複合体を検出することができる。様々な実施形態では、SPRは20℃、25℃、30℃又は37℃で実行され得る。
【0120】
組成物
テゼペルマブの残基の番号付けは、それぞれ配列番号10及び12に記載される重鎖及び軽鎖可変配列、並びにそれぞれ配列番号13及び14に記載される完全長抗体重鎖及び軽鎖に基づくものであることが理解されよう。
【0121】
様々な実施形態では、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含む組成物が提供され、各々が、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列;配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列;配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列;配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列;配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列;及び配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含み、誘導体は、異性化誘導体、脱アミド化誘導体、酸化誘導体、グリコシル化誘導体、HMW種、断片、ジスルフィドアイソフォーム誘導体、又はこれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。様々な実施形態では、組成物は、テゼペルマブ及び1つ以上のテゼペルマブ誘導体を含み、各々が配列番号10に記載される重鎖アミノ酸配列及び配列番号12に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0122】
異性化誘導体は、アスパラギン酸残基に対する変異を含む。例示的なアスパラギン酸における異性化には、イソアスパラギン酸(isoAsp)、環状アスパラギン酸(cAsp)、スクシンイミド又は他の異性化中間体が含まれる。組成物中の異性化誘導体は、重鎖若しくは軽鎖相補性決定領域(CDR)に、又は可変領域の他の部分内に誘導体を含み得る。様々な実施形態では、異性化は、CDRに存在する。異性化誘導体は、可変領域鎖の一方又はその両方において、配列番号7の重鎖CDRのD54、及び/又は配列番号4の軽鎖CDRのD49、D50若しくはD52に変異を含む。様々な実施形態では、組成物中の異性化誘導体の量は、約0.5%~約30%、又は約0.5%~13%である。いくつかの実施形態では、組成物は、テゼペルマブ及びその誘導体を含み、D54における異性化は約5%未満の量であり、及び/又は、D49、D50若しくはD52の1つ以上における異性化は約13%未満の量である。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、30%超の異性化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、30%超の異性化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0123】
脱アミド化誘導体は、アスパラギン残基に対する変異を含む。例示的な脱アミド化誘導体には、完全な脱アミド化及び脱アミド化中間体が含まれる。組成物中の脱アミド化誘導体は、配列番号3に記載されるLCDR1のN25/N26、配列番号13に記載される重鎖可変領域のN316、及び/又は配列番号13に記載される重鎖可変領域のN385/390に脱アミド化されたアスパラギを含み得る。様々な実施形態では、組成物は、約3%未満の量でN25/N26に脱アミドを含み、並びに/又は、約13%未満の量でN316、及び/若しくはN385/390の1つ以上に脱アミドを含む脱アミド化誘導体を含む。いくつかの実施形態では、組成物中の脱アミド化誘導体の量は、約0.5%~10%である。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%超の脱アミド化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%超の脱アミド誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現は、TSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0124】
酸化誘導体は、タンパク質中のメチオニン又はトリプトファン残基の1つ以上に対する変異を含む。例示的な酸化誘導体には、完全酸化又は酸化中間体が含まれる。組成物中の酸化誘導体は、重鎖(又は適用可能であれば軽鎖)の一方又はその両方において、配列番号6に記載されるHCDR1の重鎖メチオニンM34、又は配列番号13に記載される重鎖定常領域のM253若しくはM359、又は配列番号7に記載されるHCDR2の重鎖トリプトファンW52、配列番号5に記載されるLCDR3のW90、若しくは配列番号8に記載されるHCDR3のW102の1つ以上に酸化を含み得る。例えば、組成物中の酸化誘導体は、重鎖(又は適用可能であれば軽鎖)の一方又はその両方において、配列番号6に記載されるHCDR1の重鎖メチオニンM34、配列番号7に記載されるHCDR2の重鎖トリプトファンW52、配列番号5に記載されるLCDR3の軽鎖W90、若しくは配列番号8に記載されるHCDR3の重鎖W102の1つ以上に酸化を含み得る。様々な実施形態では、酸化誘導体は、重鎖の一方又はその両方において、重鎖メチオニンM34、M253、M359の1つ以上に酸化を含み、任意選択により、酸化は約7%未満の量である。様々な実施形態では、酸化誘導体は、重鎖の一方又はその両方において、トリプトファンW52、W90、又はW102の1つ以上に酸化を含み、任意選択により、酸化は約7%未満、任意選択により約5%未満、又は約3%未満の量である。いくつかの実施形態では、組成物中の酸化誘導体の量は、約0.4%~約7%である。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、7%超の酸化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、7%超の酸化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0125】
高分子量誘導体は、二量体又はより大きなタンパク質の集合体となる、抗体の集合体を含む。本明細書において企図されるHMW種には、テゼペルマブの二量体及びオリゴマーが含まれる。様々な実施形態では、HMW種は、二量体である。様々な実施形態では、二量体は、共有結合又は非共有結合されている。様々な実施形態では、組成物中のHMW種の量は、約1.7%以下、約1.6%以下、約1.5%以下、約1.4%以下、約1.3%以下、約1.2%以下、約1.1%以下、約1.0%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.6%以下、約0.5%以下、又は約0.4%以下である。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、20%超のHMW種を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、20%超のHMW種を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0126】
テゼペルマブ断片誘導体には、産生中又は産生プロセスにおける他の工程によって産生された内部ペプチダーゼによって切断され得るタンパク質産物が含まれる。テゼペルマブ断片には、例えば約25kD未満の低分子量(LMW)種、若しくは、例えば25~50kDの中分子量(MMW)種、又はこれらの組み合わせが含まれる。様々な実施形態では、組成物中の断片の量は、約1.7%以下、約1.6%以下、約1.5%以下、約1.4%以下、約1.3%以下、約1.2%以下、約1.1%以下、約1.0%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.6%以下、約0.5%以下、又は約0.4%以下である。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%超の断片種を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%超の断片種を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0127】
テゼペルマブのグリコシル化誘導体は、抗体のFc領域のアスパラギン残基に翻訳後に適用され得る糖残基のプロファイルの変異を含む。例示的なグリコシル化誘導体には、アスパラギンに対するアフコシル化、ガラクトシル部分の適用(ガラクトシル化)、及び高マンノース部分の適用が含まれる。本明細書において企図されるグリコシル化誘導体は、重鎖の一方又は両方における、配列番号13に記載されるFc領域のアスパラギンN298の糖残基に対する変異である。様々な実施形態では、組成物中のグリコシル化誘導体の量は、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%又は約5%未満である。いくつかの実施形態では、グリコシル化誘導体は、約5%、約4%、約3%、又は約2%未満の量でアフコシル化誘導体を含む。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%又は約5%未満の量でガラクトシル部分を含む。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、約25%以下、約23%以下(例えば、約23.1%以下)、約21%以下、約19%以下、約17%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、約5%以下、又は約4%以下の量で高マンノース部分を含む。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、約23.1%以下の量で高マンノース部分を含む。様々な実施形態では、グリコシル化誘導体は、約5%、約4%、約3%、約2%又は約1%未満の量で高マンノース部分を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、40%超のグリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、40%超のグリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、15%、13%、11%、8%、又は5%以下の高マンノースを含み、15%超の高マンノースを有する組成物よりも低いクリアランス(及び/又は長い半減期)を有する。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約25%、約23%、約21%、約19%、約17%、約15%、約13%、約11%、約8%、又は約5%以下の高マンノースを含み、約25%超の高マンノースを有する組成物よりも低いクリアランス(及び/又は長い半減期)を有する。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約23.1%以下の高マンノースを含み、約23.1%超の高マンノースを有する組成物よりも低いクリアランス(及び/又は長い半減期)を有する。高マンノースの割合は、HILICによって測定され得る。
【0128】
「低いクリアランス」を有するテゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体とは、参照抗体、例えばテゼペルマブ又は他のIgG2抗体のクリアランスと比較した場合に、体内(血液又は血清)からのクリアランスの量が低いことを指す。テゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体のクリアランスは、参照抗体と比較して、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%未満又はそれ以下のクリアランスレベルであり得る。テゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体の「長い半減期」とは、体内の参照抗体、例えばテゼペルマブ又は他のIgG2抗体の半減期と比較した場合に、抗体が体内(血液又は血清)で検出可能である時間が長いことを指す。テゼペルマブ又はテゼペルマブ誘導体の半減期は、参照抗体の半減期よりも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%又はそれ以上長くてもよい。
【0129】
様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約40%、35%、30%、25%、23%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%又は4%超のグリコシル化誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有する。
【0130】
また、グリコシル化誘導体の効力及び/又は忍容性は、エフェクター機能及び抗体クリアランスに関連し得る。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約15%、約13%、約11%、約8%又は約6%超の高マンノースグリコシル化誘導体を含む組成物よりも、低い抗体クリアランス及び/又は良好な忍容性を有する。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約25%、約23%、約19%、約17%、約15%、約13%、約11%、約8%又は約6%超の高マンノースグリコシル化誘導体を含む組成物よりも、低い抗体クリアランス及び/又は良好な忍容性を有する。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、約23.1%超の高マンノースグリコシル化誘導体を含む組成物よりも、低い抗体クリアランス及び/又は良好な忍容性を有する。
【0131】
ジスルフィドの構造的不均一性は、18個のジスルフィド結合(6個の鎖間ジスルフィド結合と12個の鎖内ジスルフィド結合)を含む組換え及び天然に存在するIgG2分子に固有のものである。古典的なIgG2-A構造では、ヒンジ:ヒンジペプチドは、4つのジスルフィド結合を含有する。古典的なIgG2-A構造とは異なり、異性体であるIgG2-Bは、2コピーのFabペプチド(C1-C-ヒンジ)を2コピーのヒンジペプチドで接続する対称的な結合を含む。IgG2-A/Bは、IgG2-AとIgG2-Bの両方の一部の特徴を合体させた中間形態であり、ジスルフィド結合を介して2コピーのヒンジペプチドに共有結合された1本のFabアームを含む非対称的な配置によって定義される。ジスルフィドアイソフォーム誘導体は、IgG2-Bアイソフォーム及び/又はIgG2-A/Bアイソフォームから構成される。様々な実施形態では、組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量は、約75%未満である。いくつかの実施形態では、誘導体がIgG2-Bアイソフォームから構成される場合、組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量は、約20%、約15%、約10%、又は約5%未満である。いくつかの実施形態では、誘導体がIgG2-A/Bアイソフォームから構成される場合、組成物中のIgG2-A/Bアイソフォームの量は、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%又は約35%未満である。様々な実施形態では、組成物中のIgG2-A/Bアイソフォームの量は、約38%~約43%である。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、75%超のジスルフィドアイソフォーム誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、ドナービーズ上に固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズ上に固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する能力を含む。様々な実施形態では、テゼペルマブ及びテゼペルマブ誘導体は、75%超のジスルフィドアイソフォーム誘導体を含む組成物よりも良好な効力及び/又は忍容性を有し、前記効力は、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現したTSLPRの結合を阻害する能力を含み、その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す。
【0132】
様々な実施形態では、組成物は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する:
(a)組成物中の異性化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定した場合に約30%以下であり;
(b)組成物中の脱アミド化誘導体の量が、ペプチドマッピングによって測定した場合に約15%以下であり;
(c)組成物中の酸化誘導体の量が、還元ペプチドマッピングによって測定した場合に約7%以下であり;
(d)組成物中のグリコシル化誘導体の量が、グリカンマッピングによって測定した場合に約40%以下であり;
(e)組成物中のジスルフィドアイソフォーム誘導体の量が、非還元逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって測定した場合に約75%以下であり;
(f)組成物中のHMW種の量が、SE-HPLCによって測定した場合に約20%以下であり;及び/又は
(g)組成物中の断片の量が、rCE-SDSによって測定した場合に約15%以下である。
【0133】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載される製剤の一部である。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるような製剤を生成するのに使用される原薬である。
【0134】
投与方法
一態様では、本開示の方法は、本明細書に記載される治療用抗TSLP抗体又は抗体誘導体を、任意選択により薬学的に許容される担体又は賦形剤中で投与する工程を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、滅菌組成物である。
【0135】
本明細書に記載されるような抗TSLP抗体又は抗原結合タンパク質又はその断片によって、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎(EoE)、鼻茸、慢性特発性蕁麻疹、Ig誘発性疾患、IgA腎症、ループス腎炎、好酸球性胃炎、鼻茸を伴わない慢性副鼻腔炎及び特発性肺線維症(IPF)などの炎症性疾患、症状、又は障害を治療するための方法が、本明細書において企図される。様々な実施形態では、疾患、症状又は障害は、重症喘息、好酸球性喘息又は非好酸球性喘息及び低好酸球性喘息を含む喘息である。
【0136】
喘息は、気道の慢性的な炎症性障害である。毎年、喘息は、米国において推定110万人の外来受診、160万人の救急外来受診、444,000人の入院(Defrances et al,2008,The Centers for Disease Control website,www.cdc.gov/nchs/data/nhsr/nhsr005.pdfで利用可能)、及び3,500人の死亡の原因となっている。感受性が高い個体では、喘息性炎症によって喘鳴、息切れ、胸部圧迫感、及び咳の再発エピソードが引き起こされる。喘息の病因は、遺伝的及び環境的メカニズムの両方から影響を受ける多因子性であると考えられており(To et al.,BMC Public Health 2012;12:204;Chung et al.Eur Respir J 2014;43:343-73)、環境アレルゲンが重要な原因となっている(Chung et al.,上掲;Pavord ID,et al.,NPJ Prim Care Respir Med 2017;27:17)。症例の大部分は、人がアレルゲンに対して過敏になるときに生じる(アトピー)。アトピーは、Th2細胞の増加とTh2サイトカインの発現とIgEの産生とを特徴とする。米国では、およそ1000万人の患者がアレルギー誘発性喘息に罹患していると考えられている。利用可能な治療選択肢があるにも関わらず、喘息は依然として主要な健康問題である。世界中で、現在およそ3億人が喘息に罹患しており、2020年までには4億人が喘息に罹患すると予想されている(Partridge,Eur Resp Rev.16:67-72,2007)。
【0137】
アトピー性喘息患者によるアレルゲン吸入は、可逆性気流閉塞、気道過敏症、並びに好酸球性気道炎症及び好塩基性気道炎症を含む喘息の症状のいくつかを誘発する。アレルゲン吸入チャレンジは、多くの種において喘息の優勢なモデルになっている(Bates et al.,Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.297(3):L401-10,2009;Diamant et al.,J Allergy Clin Immunol.132(5):1045-1055,2013)。
【0138】
ステロイド治療に難治性である、異なる喘息サブタイプが確認されている。好酸球は、特徴としてTh2型CD4+T細胞によって媒介される、アレルギー性喘息の重要な炎症細胞である。好中球性気道炎症は、重症喘息のコルチコステロイド治療と関連付けられ、Th1型又はTh17型T細胞によって媒介され得る(Mishra et al.,Dis.Model.Mech.6:877-888,2013)。
【0139】
喘息の診断及び評価の尺度には、以下のものが含まれる:標準化した単回呼吸の呼気一酸化窒素濃度(FeNO)(American Thoracic Society;ATS、Am J Respir Crit Care Med.171(8):912-30,2005)試験を使用して評価される気道炎症。肺活量測定は、ATS/European Respiratory Society(ERS)のガイドライン(Miller et al,Eur Respir J.26(1):153-61,2005)に従って行われる。気管支拡張薬後(BD後)の肺活量測定試験は、対象がBD前の肺活量測定を実施した後に評価される。最大気管支拡張は、アルブテロール(90μgの計量用量)又はサルブタモール(100μgの計量用量)などのSABA、又は最大で合計8パフ用のスペーサー装置と同等のものを使用して誘導される(Sorkness et al,J Appl Physiol.104(2):394-403,2008)。4、6、又は8パフ後に得られたBD前及びBD後の最大のFEVは、可逆性の決定及び分析のために使用される。喘息コントロール質問票(ACQ)6は、喘息症状(すなわち、夜間の目覚め、目覚めた時の症状、活動制限、息切れ、喘鳴)及び毎日のレスキュー気管支拡張薬の使用及びFEVを評価する患者報告質問票である(Juniper et al,Oct 1999)。ACQ-6は、元のACQスコアからFEV測定を省略したACQの短縮版である。平均ACQスコアは、応答の平均である。平均スコア≦0.75は良好にコントロールされた喘息を示し、スコア0.75~≦1.5は部分的にコントロールされた喘息を示し、スコア>1.5はコントロール不良な喘息を示す(Juniper et al,Respir Med.100(4):616-21,2006)。少なくとも0.5の個々の変化は、臨床的に有意であると考えられる(Juniper et al,Respir Med.99(5):553-8,2005)。喘息生活の質質問票、標準化(AQLQ[S])+12(AQLQ(S)+12)は、喘息患者が経験するHRQoLを測定する32項目の質問票である(Juniper et al,Chest.115(5):1265-70,May 1999)。また、喘息日誌も評価に用いられる。
【0140】
抗TSLP抗体による治療は、高好酸球集団の場合と同様に、無好酸球/低好酸球集団の喘息症状を低減するのに有効であることが、関連する米国特許出願公開第2018-0296669号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。また、対象の喘息増悪の頻度を減少させる方法も企図されている。
【0141】
高Th2喘息プロファイル又は低Th2喘息プロファイルを有する対象の喘息を治療する方法も、本明細書において企図される。TSLPタンパク質がその受容体複合体と結合することを阻害するTSLPアンタゴニストは、本明細書に記載される抗体と同様に、低好酸球性喘息集団を効果的に治療することが企図される。同様に、TSLPがその受容体複合体と結合することを阻害するTSLPアンタゴニストは、低Th2喘息集団の治療に有効であることが企図される。本明細書に記載される抗TSLP抗体又は抗体誘導体又は抗原結合タンパク質を投与することを含む、対象の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療するための方法も企図される。治療される対象は、ヒトであることが企図される。対象は、成人、青年、又は小児であってよい。
【0142】
治療用抗体(又は抗体誘導体)組成物は、複数の部位で患者に送達されてもよい。この複数の投与は、同時に行われてもよく、又は一定時間にわたって投与されてもよい。特定の場合では、治療組成物の連続流を提供することが有益である。ある期間を基準に、例えば、毎時、毎日、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、又はより長い間隔で追加の療法を施してもよい。
【0143】
様々な実施形態では、2つのTSLP結合部位を有する二価抗体などの治療薬の所定用量における量は、治療が施される個体の大きさだけでなく、治療される障害の特徴に応じて変化し得る。
【0144】
例示的な治療では、抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、1日用量当たり約70mg~約280mgの用量範囲で投与される。例えば、用量は、約70mg、210mg又は280mgで与えられてもよい。様々な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、1用量当たり70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270又は280mgの用量で投与され得る。これらの濃縮物は、単一剤形として又は複数用量として投与されてもよい。上記の用量は、2週間毎又は4週間毎に与えられる。様々な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、2週間毎又は4週間毎に70mgの単回用量で投与される。様々な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、2週間毎又は4週間毎に210mgの単回用量で投与される。様々な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、2週間毎又は4週間毎に280mgの単回用量で投与される。
【0145】
抗体誘導体の場合、抗体誘導体の量は、用量中に存在するTSLP結合部位の数が、上記に記載されるカノニカル二価抗体と等モル数のTSLP結合部位を有するような量でなければならない。
【0146】
抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、少なくとも4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年以上の期間で、2週間毎又は4週間毎に投与されることが企図される。様々な実施形態では、投与は皮下又は静脈内投与である。
【0147】
対象の血液、痰、気管支肺胞液、又は肺における好酸球を減少させるために、抗TSLP抗体又は抗体誘導体による治療が企図される。また、この投与により、対象の細胞数を高Th2集団から低Th2集団に移行させることも企図される。更に、抗TSLP抗体を投与することにより、努力呼気肺活量(FEV)、FEV1可逆性、努力肺活量(FVC)、FeNO、喘息コントロール質問票-6のスコア及びAQLQ(S)+12のスコアからなる群から選択される、対象の喘息の1つ以上の尺度を改善することが企図される。
【0148】
喘息の改善は、以下の1つ以上として測定され得るものである:AER(年換算増悪率)の減少、喘息での入院/重度の増悪の減少、(抗TSLP抗体による治療開始後の)最初の喘息増悪までの期間におけるベースラインからの変化(増加)、治療の過程、例えば52週間にわたって1回以上の喘息増悪又は重度の増悪があった対象の割合のプラセボに対しての減少、(気管支拡張薬前及び気管支拡張薬後の)FEV1及びFVCのベースラインからの変化(増加)、血液又は痰の好酸球(又は生検若しくはBAL液が得られる場合は肺の好酸球)のベースラインからの変化(減少)、FeNOのベースラインからの変化(減少)、IgEのベースラインからの変化(減少)、ACQ及び変形版、AQLQ及び変形版、SGRQ、並びに喘息症状日誌を含むPROによって測定されるような喘息症状及びコントロールの改善、レスキュー薬の使用の変化(減少)、全身性コルチコステロイドの使用の減少、血中のTh2/Th1細胞比の減少。これらの測定の大部分/全ては、高好酸球及び低好酸球(250以上が高く、250未満が低い)、アレルギー性及び非アレルギー性、高Th2及び低Th2、高ペリオスチン及び低ペリオスチン(中央値と比較して)、並びに高FeNO及び低FeNO(24以上、又は24未満)を含む、全集団及び亜集団における測定でなければならない。
【0149】
また、限定されないが、抗炎症剤又は喘息治療を含む、本明細書に記載されるような第2の薬剤と併用した抗体組成物などの複数の薬剤の投与が本開示において企図される。
【0150】
しかしながら、様々な実施形態では、この投与により、対象における同時投与治療の頻度又はレベルが減少することが企図される。例示的な同時投与治療には、吸入コルチコステロイド(ICS)、長時間作用型β2アゴニスト(LABA)、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト[LTRA]、長時間作用型抗ムスカリン薬[LAMA]、クロモン、短時間作用型β2アゴニスト(SABA)、及びテオフィリン又は経口コルチコステロイドが含まれるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、この投与により、コルチコステロイド治療の必要性が排除される。
【0151】
製剤
いくつかの実施形態では、本開示は、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存料、及び/又はアジュバントと共に、治療有効量の抗TSLP抗体又は抗体誘導体を含む医薬組成物の使用を企図する。加えて、本開示は、そのような医薬組成物を投与することによって対象を治療する方法を提供する。
【0152】
特定の実施形態では、許容される製剤材料は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して無毒であることが好ましい。特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、匂い、無菌状態、安定性、溶出又は放出速度、吸着又は浸透性を、変更、維持又は保存するための製剤材料を含有してもよい。そのような実施形態では、好適な製剤材料としては、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩又は他の有機酸など);増量剤(マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(グルコース、スクロース、マンノース又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど);着色剤、香味剤及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);保存料(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤又は湿潤剤(プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベートなどのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど);安定性促進剤(スクロース又はソルビトールなど);等張化促進剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトールソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤及び/又は医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18’’Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0153】
好適なビヒクル又は担体は、注射用水、生理食塩水溶液又は人工脳脊髄液であってよく、場合によっては、非経口投与用の組成物で一般的な他の材料を補充してもよい。中性緩衝生理食塩水、又は血清アルブミンと混合した生理食塩水は、更なる例示的なビヒクルである。特定の実施形態では、医薬組成物は、約pH7.0~8.5のトリス緩衝液、又は約pH4.0~5.5の酢酸塩緩衝液を含み、ソルビトール又は好適なその代替物を更に含み得る。
【0154】
製剤成分は、投与部位に許容できる濃度で存在することが好ましい。特定の実施形態では、本組成物を生理学的pH又はわずかに低いpH、典型的には約4.5~約8、例えば、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、及び約8.0のpH範囲内に維持するために、緩衝液を使用する。
【0155】
様々な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、酢酸塩、及びプロリン、スクロース、ポリソルベート20又はポリソルベート80の1つ以上を含有する製剤中に存在する。様々な実施形態では、製剤は、4.9~6.0のpHで、5~50mMの酢酸塩、3%(重量/体積)以下のプロリン、0.015%(重量/体積)±0.005%(重量/体積)のポリソルベート20又はポリソルベート80を含む。任意選択により、抗体又は抗体誘導体は、約100~約150mg/mlの濃度である。製剤は、-20℃~-70℃で保存され得る。これらの賦形剤を含む例示的な抗TSLP製剤は、参考により本明細書に組み込まれる国際出願番号PCT/US2021/018561号明細書に記載されている。
【0156】
代替的な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、界面活性剤、及び少なくとも1つの塩基性アミノ酸又はその塩を含有する製剤中に存在する。代表的な例では、塩基性アミノ酸は、アルギニン又はヒスチジンである。様々な実施形態では、塩は、任意選択により10~200mMの濃度のグルタミン酸アルギニン又はグルタミン酸ヒスチジンである。任意選択により、製剤はプロリンを更に含む。代替的な実施形態では、抗TSLP抗体又は抗体誘導体は、界面活性剤、及びカルシウム又はその塩を含有する製剤中に存在する。様々な実施形態では、塩は、任意選択により15mM~約150mMの濃度のグルタミン酸カルシウムである。任意選択により、製剤はプロリンを更に含む。様々な実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20若しくはポリソルベート80、又はその混合物である。任意選択により、抗体又は抗体誘導体は、約110mg/ml超、又は約140mg/ml超の濃度で存在する。これらの賦形剤を含む例示的な抗TSLP製剤は、参考により本明細書に組み込まれる国際特許出願番号PCT/US2021/017880号明細書に記載されている。
【0157】
非経口投与が企図される場合、使用される治療組成物は、発熱物質を含まない、薬学的に許容されるビヒクル中に所望の抗TSLP抗体又はその誘導体を含む、非経口的に許容される水溶液の形態で提供され得る。非経口注射に特に適切なビヒクルは、無菌の蒸留水であり、この中で適切に保存された無菌の等張溶液として抗体が製剤化される。特定の実施形態では、製剤は、デポ注射を介して送達することができる生成物の徐放性又は持効性放出を提供し得る薬剤、例えば注射可能なミクロスフェア、生体内分解性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸若しくはポリグリコール酸など)、ビーズ又はリポソームと、所望の分子との製剤を含み得る。特定の実施形態では、循環中の持続期間を増進する効果を有するヒアルロン酸も使用され得る。特定の実施形態では、抗体を導入するために、インプラント可能な薬剤送達デバイスが使用され得る。様々な実施形態では、投与は、プレフィルドシリンジ又は自動注入装置を介して行ってもよい。様々な実施形態では、自動注入装置は、Ypsomed YpsoMate(登録商標)である。様々な実施形態では、自動注入装置は、国際公開第2018/226565号パンフレット、国際公開第2019/094138号パンフレット、国際公開第2019/178151号パンフレット、国際公開第20120/072577号パンフレット、国際公開第2020/081479号パンフレット、国際公開第2020/081480号パンフレット、PCT/US20/70590号明細書、PCT/US20/70591号明細書、PCT/US20/53180号明細書、PCT/US20/53179号明細書、PCT/US20/53178号明細書、又はPCT/US20/53176号明細書に開示されている。
【0158】
キット
更なる態様として、本開示には、本開示の方法を実施するために、それらの使用を容易にするような方法で包装された、1つ以上の化合物又は組成物を含むキットが含まれる。一実施形態では、このようなキットは、密封されたボトル又は容器などの容器に包装された本明細書に記載される化合物又は組成物を含み、本方法を実施する際の化合物又は組成物の使用について記載された、容器に貼付されるか、又は梱包内に含まれるラベルを備える。好ましくは、化合物又は組成物は、単位剤形で包装される。キットは更に、特定の投与経路に準じて組成物を投与するか、又はスクリーニングアッセイを実施するのに好適なデバイスを含み得る。好ましくは、キットは、抗体組成物の使用について記載したラベルを含む。
【0159】
限定するものではなく例示することを目的とした以下の実施例から、本開示の更なる態様及び詳細が明らかになるであろう。
【実施例
【0160】
実施例1-テゼペルマブの属性の同定
テゼペルマブは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で産生されるIgG2サブクラスの完全長のヒトモノクローナル抗体である。λサブクラスの2本の重鎖(HC)及び2本の軽鎖(LC)から構成されている。重鎖及び軽鎖は、ジスルフィド結合を介して共有結合されている。その構造的及び機能的特性の包括的な理解をもたらし、結合及び効力に影響を及ぼす可能性のある抗体の属性を評価できるようにするために、テゼペルマブの生化学的、生物物理学的、及び生物学的特性評価を実施した。
【0161】
材料及び方法
結合に影響を及ぼす可能性のあるAMG157及び不安定な残基:配列A5(及び鎖H5、L5)としてのAMG157のアミノ酸配列、また、いくつかの他のTSLP結合抗体は、これまでに米国特許第7,982,016 B2号明細書に記載されている。
【0162】
A2G0F/A2G0Fがグリコシル化した抗体(C6500 H9998 O2068 N1734 S52)の分子量は、重鎖のN末端のピログルタミン酸及びC末端のKを除去したものを含めて147189.4Daである。TSLPには、74%の単量体種、23%の二量体種、及び3%の四量体種が含まれていた。
【0163】
ペプチドマッピング:テゼペルマブ試料のペプチドマッピングは、(Ren et al.,Anal.Biochem.392;12-21(2009))に記載されるように、LC-MS分析に好適な、ペプチドにおけるグアニジンでのリフォールディング、ジスルフィド結合の還元及びアルキル化、緩衝液交換及びトリプシンによる消化を含む試料調製手順によって実行した。簡潔に記載すると、テゼペルマブを含む試料を、0.5mlのpH7.5の変性緩衝液(7.5Mの塩酸グアニジン(GdnHCl)及び0.25Mのトリス)中で約1mg/mlに希釈した。還元は、0.5Mのジチオトレイトール(DTT)3μlを添加し、続いて室温で30分間インキュベートすることによって達成した。カルボキシメチル化は、0.5Mのヨード酢酸(IAA)7μlを添加することによって達成した。反応を、暗所にて室温で15分間行った。0.5MのDTTを4μl添加することにより、過剰なIAAをクエンチした。還元し、アルキル化したテゼペルマブ試料を、NAP-5カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ、USA)を使用して、pH7.5の消化緩衝液(0.1Mのトリス又は0.1Mの重炭酸アンモニウム)に緩衝液交換した。凍結乾燥したトリプシンを水中で溶解し、最濃度を1mg/mlとした。還元し、アルキル化し、緩衝液交換したゼペルマブ試料に、1mg/mlのトリプシン溶液を添加することによって消化を開始し、1:25の酵素/基質比を達成した。37℃で30分間消化を行った。5tlの20%FAを添加することによって最終消化物をクエンチした。消化されたテゼペルマブ試料のLC-MS/MSペプチドマッピング分析を、(Ren et al.,2009、上掲)に記載されるように、Thermo Scientific Q-Exactive Biopharma質量分析計に接続されたAgilent 1290 UHPLCシステム上で実施した。得られたLC-MS/MSの生データ、及びテゼペルマブと標的の配列を使用して、MassAnalyzerソフトウェアによって改変を同定し、定量した(Zhang,Anal.Chem.81;8354-8364(2009))。
【0164】
SE-UHPLC:分析的SE-UHPLCカラム(BEH200カラム、粒径1.7μm、4.6mm×150mm、Waters Corporation)上にテゼペルマブ試料を負荷し、pH6.8で100mMのリン酸ナトリウム、250mMの塩化ナトリウムを含む移動相を使用して、均一濃度でタンパク質を分離した。280nmの紫外吸光度によって溶出液をモニターした。周囲温度でカラムを操作し、移動相を0.4mL/分の流速でカラムに加えた。
【0165】
非還元RP-HPLC:Waters BEH300 C4カラム(粒径1.7μm、2.1mm×50mm)を使用するRP-HPLCによってテゼペルマブ試料を分析し、0.1%のTFAを含有する移動相及び1-プロパノールの勾配を用いて75℃で溶出した。215nmでの吸光度をモニターした。
【0166】
還元CE-SDS:rCE-SDSによってテゼペルマブ試料を分析する。pH6.5のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及びβ-メルカプトエタノールの存在下で加熱することによって試料を還元して変性させ、その後25℃のSDSゲル緩衝液で充填されたベアフューズドシリカキャピラリーに電気的注入した。吸光度を220nmでモニターした。
【0167】
CEX-UHPLC:テゼペルマブ原薬の試料を、分析的CEX-HPLCカラム(BioPro SP-F、粒径5μm、4.6mm×100mm、YMC America,Inc.)上に負荷した。移動相Aは、pH6.6の20mMのリン酸ナトリウムを含有し、移動相Bは、pH6.6の20mMのリン酸ナトリウム、500mMの塩化ナトリウムからなるものであった。0分~4分で5%~12%の移動相B、18分で23%の移動相B、18.5分~20.5分で100%の移動相B、及び21分~25分で5%の移動相Bに戻すことで生じる線形の塩勾配を用いてタンパク質を分離した。溶出液を280nmの紫外吸光度によってモニターした。カラムを28℃で操作し、移動相を0.6mL/分の流速でカラムに加えた。
【0168】
グリカンマッピング:N-グリカンマッピングは、酵素的切断によってアスパラギン残基に結合したオリゴ糖を放出させる分析技術である。その後、遊離オリゴ糖を検出及び定量のために蛍光タグで誘導体化する。標識されたオリゴ糖を、蛍光検出を伴う親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)によって分離し、グリカンプロファイルを生成する。本方法では、テゼペルマブを、オリゴ糖のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)とアスパラギン残基との間の結合を特異的に切断するN-グリコシダーゼF(PNGase F)による酵素消化にさらす。還元的アミノ化によって、放出されたオリゴ糖を2-アミノ安息香酸(2-AA)で標識する。遠心分離によるクリーンアップ工程の後、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)システムのHILICによってオリゴ糖を分離する。主要なオリゴ糖種の相対ピーク面積百分率を計算する。
【0169】
効力:本明細書に記載される属性を含むテゼペルマブ組成物の効力を、受容体-リガンド結合バイオアッセイ及び/又はレポーター遺伝子の細胞ベースのバイオアッセイによって観察した。
【0170】
受容体-リガンド結合アッセイ:本アッセイは、テゼペルマブ活性の近接測定を提供し、TSLPと結合してTSLPがTSLP受容体(TSLPR)に結合するのを妨げるテゼペルマブの分子作用機序を直接的に反映するものである。本方法により、TSLPがTSLPRに結合するのを阻害するテゼペルマブの能力の定量的な測定が提供される。テゼペルマブは、組換えTSLP-Hisリガンド(TSLP-His)に結合し、TSLP-Hisがビオチン化TSLP受容体(TSLPR)に結合するのを阻害する。効力アッセイは、生体分子の相互作用を検出する、ビーズベースの増幅発光近接ホモジニアスアッセイ(「Alpha」)である。このアッセイは、2つのビーズ型であるアクセプタービーズ及びドナービーズを含む。ドナービーズは、フタロシアニン、光増感剤、及びストレプトアビジンを含有するヒドロゲルでコーティングされている。アクセプタービーズは、チオキセン誘導体及びニッケルキレートを含有するヒドロゲルでコーティングされている。ドナービーズは、ストレプトアビジンとビオチンとの間の相互作用によってビオチン化TSLPRに結合し、アクセプタービーズは、ニッケルキレートとヒスチジンとの間の相互作用によってヒスチジン標識化TSLPに結合する。TSLP-His及びビオチン化TSLPRが互いに結合すると、アクセプタービーズとドナービーズが極めて近くに近接することになる。この複合体にレーザーを照射すると、ドナービーズによって周囲酸素が一重項酸素に変換される。ビーズが極めて近くに近接している場合、アクセプタービーズへのエネルギー移動が起こり、その結果として発光が生じるが、これをAlphaScreen(登録商標)シグナル検出機能を備えるプレートリーダーで測定する。テゼペルマブはTSLP-Hisに結合し、TSLP-Hisがビオチン化TSLPRに結合することを妨げ、それによって用量依存的に発光出力が減少する。試験試料の活性は、試験試料の反応と参照基準で得られた反応とを比較することにより測定される。本パラグラフに記載される受容体-リガンド結合アッセイは、ドナービーズに固定化されたビオチン化TSLPRがアクセプタービーズに固定化されたTSLP-Hisに結合するのを阻害する組成物の能力を測定するのに好適なアッセイであることが理解されよう。
【0171】
細胞ベースのレポーター遺伝子バイオアッセイ:ヒト胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)タンパク質は、安定なマウスBaF細胞の表面に発現するヒトTSLP受容体(TSLPR)複合体に結合し、Stat 5の活性化及び細胞増殖を誘導する。本方法では、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子及びブラストサイジン耐性遺伝子をコードするプラスミドでコトランスフェクトしたマウスBaF/hu HTR細胞株を利用する。Stat/BaF/HTR細胞を組換えヒトTSLPとインキュベートすると、TSLPRと結合した後にシグナル伝達が生じ、その結果としてルシフェラーゼ活性が増大する。AMG157は、TSLPRのTSLP誘導活性に拮抗し、これによってTSLPにより媒介されるルシフェラーゼ反応を阻害する。本方法により、TSLPで刺激したStat/BaF/HTR細胞におけるAMG 157参照基準及び試験試料の用量依存的な阻害効果が測定される。TSLP及びテゼペルマブとインキュベートした後に、細胞を洗剤(細胞溶解のため)及びルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを含む試薬で処理する。ルシフェラーゼとルシフェリンが反応することにより発光が生じ、これを照度計で測定する。TSLPによる刺激に反応したレポーター細胞のルシフェラーゼの産生を、ルシフェラーゼ基質を添加した後の発光を読み取ることで定量する。ルシフェラーゼレポーター活性のTSLP誘発性活性の阻害の程度は、テゼペルマブの量に比例する。試験試料の生物活性は、試験試料の反応と参照基準とを比較することにより測定される。本パラグラフに記載される細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイは、Statルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするStat/BaF/HTR細胞の表面に発現した(その発現はTSLPがTSLPRに結合することを示す)TSLPRの結合を阻害する組成物の能力を判断するために好適なアッセイであることが理解されよう。
【0172】
結果
テゼペルマブの生化学的特性評価により、異性化誘導体、脱アミド化誘導体、酸化誘導体、高分子量種、断片化種、部分還元種、高マンノースグリカン誘導体、又はジスルフィドアイソフォーム誘導体を含む、テゼペルマブ製剤及び原薬を保存した後に単離することができる改変テゼペルマブ抗体が同定された。これらの属性を、テゼペルマブの効力及び忍容性に影響を及ぼす可能性について評価した。
【0173】
異性化:LC-MS/MSによる還元ペプチドマッピングによってアスパラギン酸の異性化を評価した。アスパラギン酸残基は、天然であるか、Asnの脱アミド化によって形成されたかに関わらず、環状イミド中間体を介した異性化を受ける可能性がある。異性化は、修飾残基のCDRへの近接に基づき、標的結合及び有効性に影響を与える可能性がある。天然レベルのテゼペルマブの異性化を、ペプチドマッピング試験の質量分析法によって評価した。HC CDR2 Asp54及びLC CDR3 Asp91/95における異性化は、原薬では有意なレベルで観察されなかった。熱曝露による強制分解試験により、LC CDR2 Asp49/50は高温で異性化しやすいことが示された。加えて、HC CDR2 Asp54の異性化レベルも、高温でわずかな増加(<2%)を示した。従って、優勢な異性化部位は、熱による強制分解(40℃)の5週間後に、10%及び2%のLC CDR Asp49/50及びHC CDR Asp54として同定された。
【0174】
軽鎖CDR2のAsp49/50の異性化は、原薬ではおよそ0.2%で観察された。HC CDR2 Asp54及びLC CDR3 Asp91/95における異性化は、原薬では有意なレベルで観察されなかった。
【0175】
有効期間終了時の臨床試験で使用された製品ロットを、HMW種、断片、異性化などのような不純物のレベルについてモニターし、同じロットの初回リリース時の不純物と比較した。時間の経過に伴う不純物の増加から、不純物のレベルに対する対象の臨床曝露を計算してこれらの属性の製品の安全性に及ぼす影響を判断することが可能となり、原薬中の不純物の忍容性の測定値が提供される。例えば、テゼペルマブの臨床試験では、最大で36ヶ月の臨床的有効期間の最終月に投与された原薬を使用した。より高用量で高頻度の投与と組み合わせて経時劣化した製剤を使用することにより、新しい製剤のロットよりも高濃度の製品関連物質及び製品関連不純物に患者を曝露した。曝露の増加は、主に、毎月210mgの皮下注射投与の用量と比較して、治療の1ヶ月当たりの累積投与量が増加したことによるものであった(例えば、Q14Dでの420mgの皮下注射投与による)。
【0176】
皮下注射による2週間毎の420mgの臨床用量は、毎月210mgの用量よりもおよそ4倍高いものである。この投与スケジュールから、「曲線下面積」(AUC)又は最大血清濃度(Cmax)のいずれかで表される高用量レジメンでの全身曝露は、低用量の臨床用量よりも、それぞれ3.2倍~3.7倍高いことが計算された。臨床試験プロトコルによれば、予想外の曝露の変化があったか、又は、場合によっては抗薬物抗体に関連する安全性事象があった場合にだけ、抗体検査が実施される。これらのアウトカムは観察されず、薬物は忍容性が良好であった。
【0177】
本臨床試験における投与量及び投与時の推定される属性レベルに基づいて、臨床試験の患者に対する属性曝露レベルを推定し、忍容性を評価した。例えば、Q28Dで210mgの提示された用量で投与される生産ロットでの同等の属性レベルの割合を求めるために、製剤の属性(例えば、HWM)の割合を臨床曝露の乗数で積算することができる。
【0178】
異性化の場合、Q28Dでの210mgの用量に基づいて計算された最大で30%の異性化の総量は、どのインビボでの安全性に関する問題にも関連しなかった。Q28Dでの210mgの用量に基づいて計算された26%のD49/D50又はD52の異性化は、どのインビボでの安全性の問題にも関連しなかった。一方、Q28Dでの210mgの用量に基づいて計算された4%のD54の異性化は、どのインビボでの安全性の問題にも関連しなかった。
【0179】
酸化:LC-MSによる還元トリプシンペプチドマップを使用して、酸化を評価した。メチオニン(Met)残基の酸化は、潜在的に酸素及び/又は化学的酸化剤への曝露、並びに光曝露の結果として起こり得る翻訳後修飾である。テゼペルマブは、各重鎖に8個のMet残基を含んでいる(Met、Met34、Met83、Met117、Met253、Met359、Met398、Met429)。Met残基は、軽鎖には存在しない。相補性決定領域(CDR)には、Met34という1つのMet残基だけが位置している。重鎖の残基Met、Met117、Met253、Met359、Met398において、低レベルではあるが検出可能なレベルの酸化が観察された(表1)。CDR内のメチオニン酸化は、効力に潜在的に影響を与える可能性があるが、CDR領域由来のMet34の酸化は観察されなかった。酸化の程度は、質量分析検出(ESI-MS)を伴う還元ペプチドマップによって推定した。酸化種及び非酸化種の相対強度から推測することによって相対的割合を計算したが、この手法は、潜在的にイオン化効率が異なり、且つ妨害種が共溶出することから、半定量的なものであると見なされている。強制酸化下でテゼペルマブを分析することにより、酸化に対する分子上の特定部位の感受性が明らかとなった。
【0180】
【表1】
【0181】
強制化学酸化により、重鎖メチオニンの感受性の順序は、Met117>Met253>Met>Met429であることが示され、Met117及びMet253が最も溶媒に曝露される部位であることが示された。上記の化学的酸化試験と同様、光分解試験により、光誘発性酸化に対する重鎖Met残基の相対的な感受性が以下のように確定された:Met253>Met117>Met398>Met359。Met34の酸化のレベルは定量レベルを下回っており、配列及び分子のフォールディングを考慮すると、この残基は酸化に有用でないことを示唆している。加えて、光分解試験より、Trp102>Trp56>Trp52>Trp90の順にトリプトファン残基の酸化レベルが増大することが示され、重鎖可変領域のTrp102及び軽鎖のTrp56が最も光に曝露される部位であることが示された(表2)。
【0182】
【表2】
【0183】
有効期間終了(EOS)時(最大値36ヶ月2~8℃+2ヶ月30℃)で観察された酸化は、HCDR内においてW52でおよそ0.2%の酸化であり、W102で1.1%の酸化であることが示された。原薬の酸化については、0.3~0.5%の酸化されたW102が検出された。ヒト臨床試験における投与量及び投与時の推定される属性レベルに基づいて、臨床試験の患者に対する属性曝露レベルを推定した。Q28Dでの210mgの用量に基づいて計算された最大で6~7%の酸化されたW102は、どのインビボでの安全上の問題にも関連しなかった。トリプトファンの酸化は、高温下、且つ極度の可視光及び紫外光曝露下で生じる可能性がある。極限条件によって引き起こされるCDRのトリプトファン酸化は、効力の中程度の低減と関連付けられている。トリプトファンの酸化と黄色指数との間には、強い相関関係が存在する。
【0184】
脱アミド化:アスパラギンの脱アミド化を、LC-MSによるトリプシンペプチドマッピングを使用して評価した。天然レベルのテゼペルマブの脱アミド化を、ペプチドマッピング試験のESI-MS/MS分析によって評価した。重鎖の残基Asn316及びAsn385では、低レベルの脱アミド化しか観察されなかった(表3)。それぞれ重鎖CDR2及び軽鎖CDR1のAsn57及びAsn25/26を含む他の部位での脱アミド化は、原薬では観察されなかった。
【0185】
【表3】
【0186】
強制脱アミド化条件下でテゼペルマブを分析することにより、脱アミド化に対する特定の分子部位の感受性を評価した。生理的pH7.4では、最も感受性が高い部位はAsn390及びAsn385(原薬3%、EOSでは5%)であることが確認されたが、感受性の劣る部位はAsn316(原薬0.09~0.1%、EOSでは0.4%)で同定され、それらの全てはFc領域内に位置している。Asn25におけるLC可変CDR領域内の脱アミド化は、低レベルでしか観察されなかった(原薬では0.1~0.2%;EOSでは0.4%)。ヒト臨床試験における投与量及び投与時の推定される属性レベルに基づいて、臨床試験の患者に対する属性曝露レベルを推定した。(Q28Dでの210mgの用量に基づいて)計算された最大で2%のAsn25における脱アミド化は、どのインビボでの安全上の問題にも関連せず、(Q28Dでの210mgの用量に基づいて)計算された最大で13%のAsn385/390における脱アミド化は、どのインビボでの安全上の問題にも関連しなかった。
【0187】
グリコシル化:グリコシル化は、抗体エフェクター機能、及び抗体が細胞表面上のFc受容体に結合することに関係するものであり、グリコシル化の変異により、これらの機能の1つ以上が妨げられる可能性がある。エフェクター機能には、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)が含まれる。
【0188】
テゼペルマブは、コンセンサス配列の存在、及び哺乳動物細胞培養物から産生したIgG2モノクローナル抗体の歴史的な特性評価に基づき、各重鎖上のAsn298に単一のN-グリコシル化部位を含むものと予想されている。PNGaseF処理の有りと無しのトリプシンペプチドマップを比較することによって、グリコシル化部位を評価した。PNGaseFにより、還元末端であるグリカンのN-アセチルグルコサミン残基とペプチド骨格のAsn残基との間に存在する、高マンノースでハイブリッドの複合グリカン部分が切断される。クロマトグラフ分離の排出口をオービトラップ型質量分析計に連結することによって、N-結合型グリカンマップにおける種の組成を確認した。
【0189】
テゼペルマブのグリカンの相補性を包括的に特性評価することにより、優勢種として様々な程度の末端ガラクトシル化を有し、且つ高レベル(およそ95%)のフコシル化を有する二分岐のN-結合型構造が存在することが示されている。HILICにより測定されたCEX原薬の各々のグリカンの分布を表4に示す。
【0190】
【表4】
【0191】
テゼペルマブグリカン誘導体集団は、ガラクトシル化種(DSで19.9~28.6%)、アフコシル化種(DSで1.1~1.2%)、及びDS中に3.9~4.8%の高マンノース種(主にオリゴマンノース5)を含有する。ヒト臨床試験における投与量及び投与時の推定される属性レベルに基づいて、臨床試験の患者に対する属性曝露レベルを推定した。計算された最大でおよそ5%のアフコシル化種、計算された最大で75~90%のガラクトシル化種、及び計算された最大で14~18%の高マンノース誘導体は、どのインビボでの安全上の問題にも関連せず、全ての推定値はQ28Dでの210mgの用量に基づく。
【0192】
N-結合型グリカンの除去による生物学的効果を調査するために、テゼペルマブをPNGaseFで処理して精製し、受容体-リガンド結合アッセイ及び細胞ベースのレポーター遺伝子バイオアッセイで試験した(表5)。これらの結果は、いずれの効力アッセイにおいても、N-グリカンを除去してもテゼペルマブに影響を及ぼさないことを示している。
【0193】
【表5】
【0194】
高マンノースグリカンのレベルは、製品の半減期に潜在的に影響を及ぼす可能性があり、生産バイオリアクターのプロセス条件が高マンノースレベルに影響する可能性がある。プロセス特性評価試験において生産バイオリアクターのプロセスパラメーターが高マンノースに及ぼす影響を評価すると、pHが高マンノースに影響を及ぼす主なプロセスパラメーターであることが同定された。一貫した高マンノースレベルを支持するように、pHの許容範囲を確定した。プロセス特性評価試験における高マンノースレベルは≦7.5%であった。
【0195】
実施例2-サイズ誘導体
テゼペルマブのアミノ酸レベルでの化学変化に加えて、凝集体又は断片を有する誘導体も利用可能である。
【0196】
2つの未改変軽鎖、2つのN末端ピログルタミデート化重鎖、及び18のジスルフィドが存在すると仮定すると、インタクトなテゼペルマブのペプチド骨格の予想される総質量は、144,298Daである。加えて、天然のテゼペルマブは、2本の重鎖の各々のAsn298に、単一のN-結合型グリコシル化部位を含有する。2コピーのAsn298のグリカン、2コピーの優勢な重鎖C末端のGly誘導体、及び2コピーの優勢な重鎖N末端のピログルタミンを有するインタクトなグリコシル化テゼペルマブの理論的質量は、147,189Daである。インタクトなテゼペルマブをPNGaseFで処理すると、グリカンを保持するAsnがAsp残基に変換されるためにポリペプチドの質量が1本の鎖につき1Da増加し、且つデコンボリューション質量スペクトルの不均一性が減少することを伴って、N-グリコシル化が除去される。脱グリコシル化された材料の理論的質量は、144,300Daである。
【0197】
サイズの不均一性は、様々なメカニズムによる自己会合と同様に、化学的又は酵素的切断の作用によるタンパク質の固有の特性である。可能なサイズ誘導体は、自己会合によって単量体よりも大きな種(二量体、より高次のオリゴマー種)を形成する、高分子量(HMW)種を含み得る。HMWは、非共有結合、還元性共有結合、及び/又は非還元性共有結合によって形成され得、低分子量(LMW)種は、ポリペプチド骨格のトランケーションによって、並びに/又はサブユニット成分(すなわち、軽鎖及び重鎖)の不完全な会合体によって形成され得る。
【0198】
テゼペルマブのサイズの不均一性を、以下の分析法を使用して評価した:天然条件下のサイズ及び純度を評価するためのサイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC);追加のモル質量の評価を提供するための沈降速度超遠心分離(SV-AUC)及び静的光散乱(SLS)検出を伴うSE-HPLC;還元変性条件下のサイズ及び純度を測定するための還元ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(rCE-SDS)。分離された誘導体には、断片、非還元性共有結合、正常なグリコシル化部位を欠くか、又は更なるグリコシル化部位を含むポリペプチドが含まれる;変性条件下でサイズ及び純度を測定するための非還元ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(nrCE-SDS)。分離された誘導体には、部分的に組み立てられた分子、断片、共有結合が含まれる。
【0199】
これらの分析技術の結果から、SE-UHPLC、SE-HPLC-SLS、及び沈降速度分析超遠心分離(SV-AUC)の結果に基づくと、テゼペルマブ原薬は主に単量体からなり、低レベルの二量体及びLMW種を含むことが示された。変性(nrCE-SDS)条件下及び還元変性(rCE-SDS)条件下では、低レベルのLMW種が観察されている。rCE-SDSの結果に基づくと、テゼペルマブは主にHC及びLC成分に還元され、断片化種及びHMW種はわずかなレベルであった。これらには、LMW(LCよりも小さい)種、中分子量(MMW、HCよりも小さいが、LCよりも大きい)種、及びHMW(HCよりも大きい)種が含まれる。LMW種(例えば、25kD未満)及びMMW種(約25~50kD)は、まとめて断片として検出され、テゼペルマブ製剤中2%未満で観察された[DS:<0.4%(HC+LCでは98.7~99%);EOS:1.5%(HC+LCでは97.3~97.5%)]。
【0200】
テゼペルマブのサイズの不均一性を、工程内管理方法であり、原薬及び製剤リリース及び安定性試験プログラムの一部である非変性SE-UHPLCによってモニターした。本方法は、単量体の主ピークからHMW種を分離するために、非変性条件下で実施される。テゼペルマブ原薬は、100mMのリン酸ナトリウム、250mMの塩化ナトリウム、pH6.8、流速0.4 mL/分の移動相においてWaters BEH200 4.6×150mm 1.7mm粒径カラムのSE-UHPLCによって分析し、280nmでの吸光度を検出した。プロファイルは、およそ2.8分で溶出した主ピーク(相対面積百分率99.6%)の存在によって決定した。微小ピークは、20倍濃縮クロマトグラムで最も多く観察され、およそ2.2分の保持時間で主ピークの前に溶出する。このピークにはテゼペルマブのHMWが含まれ、表6に示すように0.4%の相対面積百分率を有する。
【0201】
【表6】
【0202】
全体的なHMW種は、原薬(DS)中ではおよそ0.3~0.6%で検出されたが、EOSでは1.7%、例えば、≦1.4%のHMW(リリース)及び≦1.7%のHMW(安定性)であった。ヒト臨床試験における投与量及び投与時の推定される属性レベルに基づいて、臨床試験の患者に対する属性曝露レベルを推定した。(Q28Dでの210mgの用量に基づいて)計算された最大で20%のHMWのHMW種は、どのインビボでの安全性に関する問題にも関連しなかった。
【0203】
rCE-SDSを使用して、重鎖及び軽鎖、並びにLMW種及びMMW種を評価した。テゼペルマブのrCE-SDSの電気泳動図より、表7に示されるピーク面積百分率値が示される。これらのデータは、テゼペルマブがジスルフィド結合した重鎖と軽鎖からなるものであることを示している。テゼペルマブ原薬においてLMW及びMMW領域で観察される微小ピークは、本方法のベースラインノイズ及び変動の範囲内である。SE-UHPLCの結果と一致して、LMW種又はMMW種はほとんど観察されていない。ヒト臨床試験における投与量及び投与時の推定される属性レベルに基づいて、臨床試験の患者に対する属性曝露レベルを推定した。Q28Dでの210mgの用量に基づいて計算された最大で15%の断片種は、どのインビボでの安全上の問題にも関連しなかった。
【0204】
【表7】
【0205】
CE-SDSは、非単量体種の存在を評価するために、非還元条件下で実施することもできる。この技法は、タンパク質をアンフォールディングし、非共有結合を分解するために変性条件下で実施され、部分的な分子種及び部分的に還元されたインタクト分子、すなわち、単量体抗体に予想される2つの軽鎖成分及び2つの重鎖成分、又はそれぞれの鎖間結合の1つ以上を欠く分子を検出するのに特に有用である。単一の軽鎖と会合した2本の重鎖(HHL)、又は単一の軽鎖と会合した単一の重鎖(HL、半分子としても公知である)からなる種が、特定の細胞培養条件から報告されている(Trexler-Schmidt M,et al,2010)。pH6.5のSDS及びN-エチルマレイミドの存在下でテゼペルマブを加熱することによって変性させ、その後25℃のSDSゲル緩衝液で充填されたベアフューズドシリカキャピラリー(50mm ID×30.2cm)に電気的注入した。注入電圧は10.0kV、分離電圧は15.0kVであり、吸光度を220nmでモニターした。このデータは、テゼペルマブ原薬が主にジスルフィド結合された重鎖と軽鎖の単量体からなるものであり、分布の4.5%未満から構成される低レベルのより低分子の種を含んでいることを示している(表8)。
【0206】
【表8】
【0207】
SE-HPLC法に静的光散乱(SLS)検出を追加することにより、クロマトグラム中の個々のピークに対するモル質量を測定することが可能となる。溶出種によって散乱される光の強度は、その種の濃度及び分子量の両方に比例する。紫外吸光度(280nm)の強度は、タンパク質濃度に比例する。各溶出種のモル質量は、各ピークの光散乱強度と濃度を利用することで、機器メーカーのソフトウェアによって求めることができる。TSK-GEL G3000SWxl、粒径5μm、7.8mm ID×300mmの長さのカラムを備えたAgilent 1100 HPLCシステムを使用する、オンライン多角度光散乱検出に連結されたSE-HPLCクロマトグラフィーによって、テゼペルマブ原薬を分析した。使用された検出器は、Wyatt Heleos II検出器、Wyatt Optilab TrEX RI検出器、及び280nmの波長設定によるAgilent UV検出器であった。SE-HPLCの行程は、移動相として使用される100mMのリン酸ナトリウム、250mMの塩化ナトリウム、pH6.8±0.1の緩衝液により室温で実施され、流速は0.5mL/分であった。
【0208】
テゼペルマブ原薬について作成されたSLSデータから計算された紫外線プロファイル及び対応するモル質量から、主ピークのモル質量が145kDaであり、テゼペルマブ単量体の理論的質量(147kDa)とほぼ一致することを示している。単量体の前に溶出するピークのモル質量は平均284kDaであり、テゼペルマブ二量体の理論的質量(294kDa)とほぼ一致しており、HMW種の大部分がテゼペルマブの二量体であることを示している(表9)。
【0209】
【表9】
【0210】
濃縮されたHMW画分(テゼペルマブ二量体のために濃縮された)及び主ピーク(主に単量体を含む)を、受容体-リガンド結合アッセイ及び細胞ベースのレポーター遺伝子バイオアッセイにより、効力について評価した。結果は、受容体-リガンド結合アッセイ及び細胞ベースのレポーター遺伝子バイオアッセイにより、それぞれ64%及び62%のテゼペルマブ活性が測定されたために効力が低下したことを示している(表10)。
【0211】
【表10】
【0212】
この結果から、自己会合により立体障害が強制され、立体構造の変化がもたらされる可能性があり、この変化が次に結合に影響する可能性があることが予想される。凝集体形成の速度の増加は、高温、低pH、生理的pH、可視光及び紫外光曝露下で生じる可能性がある。生物学的特性評価により、HMW種で低下した効力を示したことが確認された。インビトロにおける効力の低下は、通常の加工条件及び保存条件下で検出される量を大幅に上回るレベルまで濃縮された場合にのみ検出可能であった。
【0213】
ジスルフィドアイソフォーム:テゼペルマブはIgG2サブクラスの抗体であり、従って、ジスルフィド媒介性の構造誘導体及びアイソフォームを呈することが予想されている(Wypych et al.,Journal of Biological Chemistry,Vol.283(23):16194-16205,2008;Dillon et al.,Journal of Biological Chemistry,Vol.283(23):16206-16215,2008)。ジスルフィドの構造的不均一性は、18個のジスルフィド結合(6個の鎖間ジスルフィド結合と12個の鎖内ジスルフィド結合)を含む組換え及び天然に存在するIgG2分子に固有のものである(Wang et al,2007;Zhang and Czupryn,2002)。テゼペルマブで検出されたジスルフィド結合の結合性を、非還元ペプチドに存在する結合の数に応じた異なる手法を使用して明らかにした。単一のジスルフィド結合を含むペプチドについては、還元トリプシンペプチドマップと非還元トリプシンペプチドマップとを比較することによって、ジスルフィドの結合性を割り出した。
【0214】
古典的なIgG2-A構造とは異なり、IgG2-Bアイソフォームは、2コピーのFabペプチド(C1-C-ヒンジ)を2コピーのヒンジペプチドで接続する対称的な結合を含む。IgG2-A/Bは、IgG2-AとIgG2-Bの両方の一部の特徴を合体させた中間形態で表され、ジスルフィド結合を介して2コピーのヒンジペプチドに共有結合された1本のFabアームを含む非対称的な配置によって定義される(Wypych et al.,Journal of Biological Chemistry,Vol.283(23):16194-16205,2008;Dillon et al.,Journal of Biological Chemistry,Vol.283(23):16206-16215,2008;Zhang et al.,Anal Chem.,Vol.82(3):1090-1099,2010)。
【0215】
ジスルフィド結合ペプチドを、非還元及び還元条件下でエンドプロテアーゼであるトリプシンを使用するペプチドマッピングにより、未分画の原薬中で同定した。RP-HPLC分離の排出口を、紫外検出に加えて質量分析を行うためにエレクトロスプレーイオン化質量分析計(ESI-MS)に連結した。続いて、還元剤[トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)]で非還元消化物を処理し、同一条件を用いて再度分析した。テゼペルマブ原薬の非還元トリプシンペプチドマップからの各々のジスルフィド結合ペプチドを、還元条件下で質量分析することによって、その構成ペプチドを分析した。まとめると、A~Hと名付けられたジスルフィド結合ペプチドの特性評価により、表11に要約したように、特定のCys残基間の結合が明らかとなり、古典的なジスルフィド構造であるIgG2-Aの存在が確認された。
【0216】
【表11】
【0217】
非還元トリプシンペプチドマップでも、IgG2-B誘導体の存在が示された。更に、非還元RP-HPLCによってIgG2-Bジスルフィド誘導体の確認を行った。まとめると、ジスルフィド結合ペプチドA~D、ペプチドF~G、並びにペプチドIの特性評価により、表12に要約したように、特定のCys残基間の結合が明らかとなり、ジスルフィドアイソフォーム構造であるIgG2-Bの存在が確認された。
【0218】
【表12】
【0219】
構造アイソフォームであるIgG2-A/B誘導体の存在も、テゼペルマブの非還元トリプシンペプチドマップにおいて見出された。更に、非還元RP-HPLCによってIgG2-A/Bジスルフィドアイソフォーム誘導体の確認を行う。まとめると、ジスルフィド結合ペプチドA~G、及びペプチドJの特性評価により、表13に要約したように、特定のCys残基間の結合が明らかとなり、ジスルフィドアイソフォーム構造であるIgG2-A/Bの存在が確認された。
【0220】
【表13】
【0221】
還元及び非還元トリプシンペプチドマッピングを比較することにより、優勢なIgG2-A構造であることが予想されるジスルフィド結合ペプチドだけでなく、更にIgG2-A/B及びIgG2-Bジスルフィド構造アイソフォームと関連した結合性を有するペプチドの存在も明らかとなった。テゼペルマブ中のジスルフィドアイソフォームの相対レベルは、RP-HPLCを基準として、IgG2-Bがおよそ3.4~4.2%、IgG2-A/Bが39.2~42%、及びIgG2-Aが54.2~57.1%の範囲である。ヒト臨床試験における投与量及び投与時の推定される属性レベルに基づいて、臨床試験の患者に対する属性曝露レベルを推定した。Q28Dでの210mgの用量に基づいて計算された最大で15%のジスルフィドアイソフォーム誘導体のIgG2-B、及びQ28Dでの210mgの用量に基づいて計算された最大で75%のジスルフィドアイソフォーム誘導体のIgG2-A/Bは、どのインビボでの安全上の問題にも関連しなかった。CEX-UHPLCを使用して、原薬中の主要なアイソフォーム、IgG2-A、IgG2-A/B、及びIgG2-Bを濃縮することにより、ジスルフィドアイソフォームの効力を評価した。その結果、アッセイ性能の範囲内で、全てのアイソフォームが完全な効力を示したことが証明された。
【0222】
実施例3-属性及び効力のてこ比分析
HMW種であるD49D50におけるCDRのisoAspと、総CDR酸化との間の関係を評価するために、最小二乗回帰モデルを利用した統計解析を行った。解析は、実施例1に記載される強制分解分析から決定されるような、これらの属性に基づくものであった。
【0223】
本明細書に記載される細胞ベースのレポーター遺伝子バイオアッセイを使用した効力測定(図1A~C)、また、本明細書に記載される受容体-リガンド結合アッセイを使用した効力測定(図1D~F)によって分析を行った。同定された属性間の関係は、両方の効力アッセイで同等であった。HMW種と総CDR trp酸化との間には、統計的に有意な負の相関が確認された(図1B~C及び1E~F)。CDRのIsoAsp D49D50と効力との関係は、統計的有意差に達しなかった。
【0224】
実施例4-高マンノース種と薬物動態(PK)のモデル化
モデル化手法を使用して、テゼペルマブのクリアランスに及ぼす高マンノース(HM)割合の増加における潜在的な影響を推定した。このモデルでは、単回静脈投与後の参照IgG2モノクローナル抗体のHM割合の減少速度に基づいて、半減期を24.5日(臨床試験におけるテゼペルマブの静脈内投与からのPKプロファイル)、及びテゼペルマブのHM型の増加速度定数を1日目に0.035と仮定した。参照IgG2モノクローナル抗体のHM型の増加速度定数は、これまでに解析された中で最も高い値を有し、これをテゼペルマブのHMの半減期の控えめな推定値として選択した。PKプロファイルは、最大で122.5日(5半減期と同等)となるようにモデル化し、選択対合に対する補正は用いなかった。下記の表14に示すように、HMレベルとテゼペルマブのクリアランスの推定増加量との間の関係性をモデル化した。
【0225】
【表14】
【0226】
これらの結果は、5%以下のHM種を有するテゼペルマブ組成物では、クリアランスの増加が皆無かそれに近いことが示され、テゼペルマブ組成物中のおよそ23%のHM種では、抗体クリアランスがおよそ10%増加する結果となったことを示している。
【0227】
本明細書で説明及び引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書により組み込まれる。開示される発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び材料が変更される可能性があるため、これらの方法論、プロトコル及び材料に限定されるものではないことが理解されよう。また、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0228】
当業者であれば、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対し、多くの等価物を認識するか、又は確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1A-1F】
【配列表】
2024517418000001.app
【国際調査報告】