(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】反射の少ないHUDシステム及びHUDシステムの反射低減方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240415BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240415BHJP
B60K 35/22 20240101ALI20240415BHJP
B60K 35/40 20240101ALI20240415BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/00 B
G02B5/00 Z
B60K35/22
B60K35/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564147
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 HU2022050034
(87)【国際公開番号】W WO2022224000
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504111451
【氏名又は名称】ブダペスティ ミーサキ エーシュ ガズダサーグトウドマーニ エジェテム
(74)【代理人】
【識別番号】100081352
【氏名又は名称】広瀬 章一
(72)【発明者】
【氏名】シュヨク,アーベル
(72)【発明者】
【氏名】コッパ,パール
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H042AA10
2H042AA11
2H042AA19
2H042AA28
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA25
2H199DA29
2H199DA42
2H199DA43
2H199DA48
3D344AA03
3D344AA08
3D344AA21
3D344AA24
3D344AA27
3D344AC25
(57)【要約】
本発明は、互いに対して角度を持って固定された画像表示デバイス(1)と反射要素(3)とを備え、画像表示デバイス(1)は、それが発生させた画像の複数地点から放射されて反射要素(3)から反射される画像形成光コーン(11)を発生し、画像形成光コーン(11)はそれらの軸(T)が反射要素(3)からの反射後にある設計検出点(23a)の方向を向き、かつ画像形成光コーン(11)は設計検出点(23a)を通過する平面内である設計検出領域(23)を照射する、反射が低減したHUDシステム(100)に関する。このHUDシステムは、画像表示デバイス(1)と反射要素(3)との間の光路内に配置された方向選択性光フィルター(20)を備え、このフィルター(20)には、それを貫通する複数の導光チャネル(22)が、各チャネル(22)が、それに入ってくる画像形成光コーン(11)には実質的に透過性であり、かつ反射要素(3)に向かって画像表示デバイス(1)により反射される、画像形成光コーン(11)の軸(T)とは異なる角度の軸(D)を持った反射光コーン(12)は実質的にブロックする構成で配置されている。画像表示デバイス(1)は、反射要素(3)との間に角度αで近接するスクリーン(2)として構成され、方向選択性光フィルター(20)には、複数の導光チャネル(22)が、導光チャネル(22)の幅(h)と壁面厚み(w)により規定される周期間隔(p)が、スクリーン(2)のピクセルサイズの1/5以下又は5倍以上となるよう配置されている。本発明はまたHUDシステム(100)の反射低減方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して角度を持って固定されている画像表示デバイス(1)と反射要素(3)とを備えるHUDシステム(100)であって、画像表示デバイス(1)は、それにより発生させた画像の複数地点から放射して反射要素(3)から反射される画像形成光コーン(11)を発生するようになっていて、この画像形成光コーン(11)はそれらの軸(T)が反射要素(3)からの反射後にある設計検出点(23a)の方向を向き、かつ画像形成光コーン(11)は設計検出点(23a)を通過する平面内で或る設計検出領域(23)を照射するものであって、前記HUDシステム(100)は、画像表示デバイス(1)と反射要素(3)との間の光路内に配置された方向選択性光フィルター(20)を備え、この方向選択性光フィルター(20)には、方向選択性光フィルター(20)を貫通する複数の導光チャネル(22)が配置され、その配置は、チャネル(22)のそれぞれが、チャネル(22)に入ってくる画像形成光コーン(11)を実質的に通過させるが、反射要素(3)に向かって画像表示デバイス(1)により反射される、画像形成光コーン(11)の軸(T)とは異なる角度の軸(D)を有する反射光コーン(12)は実質的にブロックするような形状となるような配置であり、下記を特徴とする、反射が低減したHUDシステム(100):
画像表示デバイス(1)が、反射要素(3)との間に角度αをなして近くに位置するスクリーン(2)として構成され、そして方向選択性光フィルター(20)内の複数の導光チャネル(22)の配置が、導光チャネル(22)の幅(h)と壁面厚み(w)とにより規定される周期間隔(p)が、スクリーン(2)のピクセルサイズの1/5以下であるか、又は5倍以上である。
【請求項2】
スクリーン(2)が画像形成光コーン(11)を発生させるように構成された方向選択性発光スクリーン(2’)として構成されていることを特徴とする、請求項1記載のHUDシステム(100)。
【請求項3】
スクリーン(2)と反射要素(3)の相互に対する配置が、画像形成光コーン(11)のそれぞれの軸(T)が、スクリーン(2)の平面と直角以外の角度をなすような配置であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のHUDシステム(100)。
【請求項4】
ある一つの所定チャネル(22)とスクリーン(2)の平面との傾斜角は、角度Ω=α+θとなり、前記所定チャネル(22)の傾斜方向(J)における幅(h)と前記所定チャネル(22)での方向選択性光フィルター(2)の厚み(d)とが次式を満たすように導光チャネル(22)の形状を構成することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のHUDシステム(100):
d≧h・tan(α+θ)
式中、θは前記所定チャネル(22)を通過する画像形成光コーン(11)の軸(T)と反射要素(3)との間の角度である。
【請求項5】
方向選択性光フィルター(20)がスクリーン(2)の表面に固定されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のHUDシステム(100)。
【請求項6】
導光チャネル(22)の断面が、円形又は正方形又は矩形であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のHUDシステム(100)。
【請求項7】
方向選択性光フィルター(20)が、画像表示デバイス(1)とは反対側の表面上に入射する光線を吸収するように構成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のHUDシステム(100)。
【請求項8】
方向選択性光フィルター(20)が、画像表示デバイス(1)とは反対側の表面で光吸収性材料により被覆されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のHUDシステム(100)。
【請求項9】
導光チャネル(22)の内壁が、光吸収性材料で被覆されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のHUDシステム(100)。
【請求項10】
方向選択性光フィルター(20)内に導光チャネル(22)がエッチングにより形成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のHUDシステム(100)。
【請求項11】
方向選択性光フィルター(20)が、光吸収性の微視的に粗面の材料、好ましくはブラックポリマーから作られていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のHUDシステム(100)。
【請求項12】
方向選択性光フィルター(20)が光吸収性の表面薄膜又は微細構造材料で被覆されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のHUDシステム(100)。
【請求項13】
相互に対して固定されている画像表示デバイス(1)と反射要素(3)とを備えるHUDシステム(100)の反射を低減させる方法であって、この方法は、画像表示デバイス(1)を使用し、この画像表示デバイス(1)により生じさせた画像の複数の点からそれぞれ放射される画像形成光コーン(11)を、反射要素(3)から反射された画像形成光コーン(11)の軸Tが、ある設計検出点(23a)の方向に向かうように発生させ、画像形成光コーン(11)の形状が、設計検出点(23a)を通過する平面内である設計検出領域(23)を照射するように選択されるという工程を含み、下記の点を特徴とする方法:
画像表示デバイス(1)をスクリーン(2)として構成し、そして、画像表示デバイス(1)と反射要素(3)との間の光路において、画像表示デバイス(1)から反射要素(3)の方向に反射され、かつ画像形成光コーン(11)の軸(T)とは異なる角度の軸(D)を有する反射光コーン(12)の伝播を、請求項1~12のいずれか1項に記載の方向選択性光フィルター(20)によってブロックする。
【請求項14】
方向選択性光フィルター(20)の導光チャネル(22)の傾斜角度がインバース・レイ・トレーシングに基づく数値モデル化により決定されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射の少ないHUD(ヘッドアップディスプレイ、head-up display)システムに関する。このHUDシステムは、画像表示デバイス(イメージングデバイス)と反射要素とを備え、これらは互いに対して角度をつけて固定されており、画像表示デバイスは、それにより発生させた画像の複数地点から放射して、反射要素から反射される、複数の画像形成光コーン(imaging light cones)を発生するように構成され、前記画像形成光コーンは、それらの軸が反射要素からの反射後に或る一つの設計検出点(designed detection point)の方向に向かい、この画像形成光コーンは前記検出点を通る一つの平面内で、一つの設計検出領域(designed detection area)を照明する。
【0002】
本発明はまた、HUDシステムの反射の低減方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
HUDは、もともとはパイロットがルートを見続けるだけでよく、他のどの方向も見ないですむ目的で軍事用に開発された。これに対し、従来のヘッドダウンディスプレイ(HDD、head-down display)では、パイロットはダッシュボード(計器盤)をときどき見る必要があり、遠くを見た直後に突然近くに焦点を合わせなければならず、疲れを生じうる。ヘッドアップディスプレイはまた、遠方の画像面を作ることにより、近くに焦点を合わせなければならないという問題点を解決する。軍事技術から出発したが、HUDは今では自動車産業にも使われようになり、民間ユーザーにも利用可能になった。画像を反射要素、換言するとコンバイナー(この目的のために特別に装備した特殊なウインドスクリーン<フロントガラス>又は特殊なプレート)上に投影することにより、ドライバーは運転しながら、速度、ナビゲーション、ラジオの設定、エラーメッセージその他の、普通ならダッシュボードを見ることで見つけなければならなかった運転情報についての情報を得ることができる。また、危険な状況(例、路上障害物、見えづらい状態での道路の曲がり、歩道から降りている歩行者等)を眼でみて予測することもできる。現在、HUDシステムは主に高級車に搭載されているが、適用範囲は急速に拡大しつつある。
【0004】
車両に搭載されている最も一般的なHUD解決策(
図1a参照)は、ミラー1aとプロジェクター1bとを含む画像表示デバイス1と、非球面ミラー2とから本質的に構成され、ここで反射要素3はウインドスクリーン(フロントガラス)である。この実施形態では、非球面ミラー1aは、ウインドスクリーンの設計のために湾曲している反射要素3の歪みを補正し、かつ画像表示デバイス1の分散する光ビームを集束させるためのものであり、画像表示デバイス1は、遠方イメージ面を形成し、ドライバーが車両の前方に「浮いている」ように快適な距離感で見える投影画像4を作り出すためのプロジェクター1をとして形成されている。画像表示デバイス(投影ユニットとも呼ばれる)は、普通には第1の方向で幅寸法を、この方向と実質的に直交する第2の方向で高さ寸法を生ずる。それから発出された光線は、追加の偏光光学要素を通して、透過性と反射性とを有する反射要素(即ち、ウインドスクリーン)に送られ、そこから透過光及び反射光がユーザーの眼に送られる。このようなミラー型の解決策の主な欠点の一つは、画像面積が大きくなるにつれて、ダッシュボードに埋め込まれる投影ユニットの容積も大きくなることである。例えば、この原理を利用したフルウインドスクリーン投影システムは、ウインドスクリーンのサイズのミラーを必要としよう。しかし、そのようなミラーは、スペース要件、起こりうる振動、脆弱性及び高コストという理由で実際的ではない。その上、走行する車内に設置した大きなミラーは、どのみち振動するため、画像の見え方がぼやけ、不快となる。
【0005】
これらの欠点を克服するため、HUDシステムでは、ミラーと大きな光学補助部材の代わりに、方向選択性(direction-selective)のスクリーンを使用することが始まってきた(
図1b参照)。この解決策の背景にあるアイディアは、スクリーン上の各ピクセルが発生する光コーン(light cones、光円錐)の軸を、ウインドスクリーンからの反射後に、ドライバーの両眼の間の仮想二等分点の方向を向くように整列させることである。このような方向選択性照射が可能な表示モジュールと、そのような表示モジュールを組み込んだHUDシステムは、例えば、特許文献US2014/0063359A1に記載されている。この特許文献の明細書及び
図2は、フラットディスプレイ(平面ディスプレイ)が、一つのLCDパネルと複数のLCDチップのような光源とこのLCDパネルと光源との間に配置された一つのマイクロ・オプティカルマトリックス(micro-optical matrix)とを含んでいる実施形態を開示している。マイクロ・オプティカルマトリックスは、光源からの光ビームをドライバーの眼の面(即ち、アイボックス<eye-box>)内に向かわせ、そこで集束するように構成されている。そこに示されているLCDパネルのピクセルは、光を1方向に発するのではなく、決まった角度範囲を持った「光円錐(光コーン)」状に発する。このマイクロ・オプティカルマトリックスは、スクリーン上に異なるピクセルから発せられた光コーン(光円錐)が、ドライバーの眼の面であるアイボックス内で交差するように設計されている。方向選択性照射が可能なこのような装置及びスクリーンでは、HUDシステムのサイズを小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開2014/0063359
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、上述した解決策の全て、特に方向選択性フラットスクリーンを備えたHUDシステムでは、表示デバイスからの周囲光(例、太陽光、街路の光、等)の反射がドライバーの眼に戻って入るという問題があることを認めた。このような反射は、ユーザーの体験を著しく劣化させうる。さらに、画像表示デバイス上にあたった太陽光は、デバイスの温度上昇を引き起すことがあり、場合によっては故障の原因となりうる。
【0008】
本発明者らはまた、画像形成に関与する光コーン(画像形成光コーン)は、画像表示デバイスが発生させた光コーンのうち、反射要素からの反射後にその軸が、設計された検出点(設計検出点)の方向を向いていて、かつ検出点を通る面内で設計された検出領域(設計検出領域)であるアイボックスを照射する光コーンだけであることにも気づいた。一方で、画像形成デバイスから反射される、反射の原因となる光ビーム(以下、「反射光コーン」という)の軸は、画像形成光コーンの軸とは典型的には異なる角度でランダムな向きを向いている。
【0009】
本発明は、画像表示デバイスと反射要素との間の光路内に配置された、適切に設計された方向選択性の光フィルターを使用することで、画像表示デバイスの表面に入射した光線を実質的に低減させて、画像表示デバイスが発した画像形成に関与する光線をブロックせずに、画像表示デバイスの表面から反射された光線をブロックすることができる、という知見に基づいている。こうして、注意をそらせる周囲光の反射を著しく低減させることができ、HUDシステムが生成する画像のコントラスト比を増大させることができ、さらに画像表示デバイスの温度上昇を低減させることができる。
【0010】
本発明者らはさらに、フラットスクリーン(平面スクリーン)HUDシステムにとっては、スクリーンと反射要素の相互に対する配置が、画像形成光コーンの軸がどこでもスクリーン面に対して垂直(直角)にならず、異なる角度Ωで出るようにすることが有利であることも知見した。こうして、方向選択性光フィルターが適正な高さのものであれば、周囲光はどの入射角でもスクリーンから反射することができない。即ち、方向選択性フィルターとスクリーンは一緒になって、混乱を引き起こす周囲光に対する完全な光バリアーを形成するのである。
【0011】
本発明者らはまた、このような方向選択性光フィルターは、例えば、高い吸光性と微視的に粗い表面(粗面)とを持つ「黒色」材料から、次のようにして創出することができることを見いだした。即ち、方向選択性光フィルター内に複数(又は多数)の導光チャネルを形成するのであるが、その際に、形成されたこれらの個々の道光チャネルのサイズと向き(方向)を、そのチャネル内に入ってくる画像形成光コーンは阻害しないが、画像表示デバイスから反射してくる反射光コーンはブロックするように、画像形成光コーンに応じたサイズ及び向きにするのである。
【0012】
本発明の目的は、前述した従来技術の難点が解消された装置及び方法を提供することである。本発明のこの目的は、現状のHUDシステムの画像品質及びコントラスト比を改善すること、特に画像表示デバイスからの反射を低減させること、及び画像表示デバイスの昇温を低減させること、である。
【0013】
本発明によれば、この目的は、画像表示デバイスと、これにある角度で固定かつ配置された反射要素とを含む、請求項1に記載のHUDシステムにより達成される。画像表示デバイスは、それにより発生させた画像(イメージ)の複数点から放射して、反射要素から反射される画像形成光コーンを発生するようになっており、これらの画像形成光コーンは、それらの軸が反射要素からの反射後に或る一つの設計検出点の方に向かっていて、前記検出点を通る平面内の或る一つの設計検出エリアを照射する。画像表示デバイスと反射要素との間の光路内には方向選択性光フィルターが配置される。
【0014】
本発明の骨子によれば、この方向選択性光フィルターには、その方向選択性光フィルターを貫通する多数の導光チャネルが配置されていて、その配置は、各チャネルが、それぞれのチャネルに入ってくる画像形成光コーンは実質的に通すが、反射要素の方向に画像表示デバイスにより反射された、画像形成光コーンの軸とは異なる角度の軸を持った反射光コーンは実質的にブロックするように構成されるような配置とする。
【0015】
上記目的はさらに、請求項13に記載のHUDシステムの反射低減方法によっても達成される。本発明の好適実施形態の一部は従属請求項に記載されている。本発明のさらなる詳細は、添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】従来のミラー型HUDシステムの概要側面図である。
【
図1b】従来のフラットスクリーン型HUDシステムの概要側面図である。
【
図2a】本発明に係るHUDシステムの例示的1実施形態の概要側面図である。
【
図2b】本発明に係るHUDシステムの別の例示的実施形態の概要側面図である。
【
図3】
図2bに示したHUDシステムにおける検出領域の形成を示す概要側面図である。
【
図4a】本発明に従った矩形の導光チャネルを備える、本発明に係る方向選択性光フィルターの例示的1実施形態の概要図である。
【
図4b】
図4aに示した方向選択性光フィルターのA-A切断概要断面図である。
【
図5a】断面が円形の導光チャネルを備える、本発明に係る方向選択性光フィルターの例示的1実施形態の概要図である。
【
図5b】
図5aに示した方向選択性光フィルターのA-A切断概要断面図である。
【
図6a】断面が正方形の導光チャネルを備える、本発明に係る方向選択性光フィルターの例示的1実施形態の概要図である。
【
図6b】
図6aに示した方向選択性光フィルターのA-A切断概要断面図である。
【
図7】本発明に係る導光チャネルにおける画像形成光コーンの通過と反射光コーンのブロックを図示する概要断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1a及び1bは、現状技術のHUDシステムとそれらの問題点を示すが、それらについては本明細書で既に詳しく説明した。理解を明確かつ容易にするために、これらの図面については必要がある時のみに言及することにする。
【0018】
図2a及び2bは、本発明に係るHUDシステム100の例示的実施形態を示す。ここで、本システム100は、画像表示デバイス1と、この画像表示デバイス1に対して角度を持って固定された反射要素3とを備える。図示の実施形態では、反射要素3は自動車のウインドスクリーンとして用意されているが、当業者には自明であるように、反射要素3は別の乗り物(例、飛行機)のウインドスクリーンでもよく、或いは画像表示デバイス1により生じさせた画像を反射するのに適した特別に設計された透明な表面であってもよい。反射要素3は平面(フラット)でも湾曲していてもよく、反射層若しくは反射防止層などといったHUDシステム100に慣用されている要素を含んでいてもよい。画像表示デバイス1とは反射要素3との間の光路には、1または2以上の偏光要素などといった追加の公知要素を配置してもよいが、それらは本発明の主題ではないので、図面には示していないことにも留意されたい。
【0019】
画像表示デバイス1という用語は広義に解されるべきであって、例えば、
図2aに示したミラー1b及びプロジェクター1aを備えた光学システム1、又は反射要素3に対して角度αで配置されたスクリーン2で他の光学要素を持たないもの、を包含する。前者の場合、プロジェクター1aが画像を生じ、後者の場合はスクリーン2それ自体が画像を生ずる。しかし、どちらの場合も、プロジェクター1a及びスクリーン2の画像形成単位(ピクセル)は光を1方向に発するのではなく、決まった角度範囲を持つ光コーン(光円錐)状に光を発する。本発明に関して、光コーンなる用語は、円形以外の断面形状(例、楕円形、矩形など)を持つ立体角で伝播する光ビームを包含することに留意されたい。楕円形や矩形の断面をもつ光コーンは、2以上の開口角で特徴づけられうる(規定されうる)。
【0020】
デフォルトでは、画像表示デバイス1のピクセルは様々な角度に光コーンを発する。しかし、反射要素3からの反射後にその軸Tが、HUDシステム100のある設計された検出点23aの方向を向いており、かつその検出点23aを通る平面と交差するある設計された検出領域23(アイボックス、eye-box)を照らす光コーンだけが、HUDシステム100が表示すべき画像の生成に本質的に関与する。換言すると、こうした光コーンだけが地点23aから見ている仮定ユーザーに到達する。これらの光コーンを以下では画像形成光コーン11という。即ち、本発明に係る画像表示デバイス1は、デバイス1により発生させた画像の複数点から発し、反射要素3から反射する画像形成光コーン11を発生するように構成されているのである。
図2bに示した特に好ましい実施形態では、画像表示デバイス1は、画像形成光コーン11を生成するように構成された方向選択性発光スクリーン2’ として構成される。即ち、ディスプレイの複数ピクセルにより発生された光コーンは実質的に全てが画像形成光コーン11となる。このような方向選択性発光スクリーン2’ は、当業者には知られているように、例えば、LCD型スクリーン2’ 用の適切なバックライト設計により、又はアクティブ発光スクリーン2’(例、OLED,マイクロLED)用のマイクロレンズマトリックスを使用することにより作成することができる。
【0021】
本明細書に関して、設計検出領域23とは、HUDシステムにより発生させた画像がそこから見えるだろうとユーザーが予期する空間位置の範囲を意味し、従って、これは設計パラメータである。そのため、設計検出領域23の位置とサイズはHUDシステム100の環境に依存する。例えば、ある所定タイプの車両に搭載するように設計されたHUDシステム100の場合、設計検出領域23は、ドライバーのシート(運転席)とウインドスクリーンとの相対位置に依存しよう。実際には、例えば、身長がさまざまに異なるユーザー(ドライバー)が運転位置で運転席に座った時(即ち、シートの高さと間隔が快適な運転を可能にするように調整されている時)のユーザーの眼の位置が決定されうる。設計検出領域23は、決定された眼の位置を含んだ或る空間範囲であると考えることができ、例えば、設計検出領域23の中心を設計検出点23aであると考えることができる。また、設計検出点23aだけを規定することも考えられる。例えば、運転位置で運転席に座っている平均サイズのユーザーの両眼をつなぐセクション(切断線)の中点を設計検出点23aであると考えるのである。別の可能性は、特定のあるユーザーについて、設計検出点23aを同様な手法で規定することである。
【0022】
図3は、画像表示デバイス1が発生させた画像の種々の異なる点から発生した光コーン11が、反射要素3からの反射後に地点23aで出会うようにするために、異なる角度で反射要素3に到達することを示す。換言すると、画像の異なる点からの光コーン11の軸Tが互いにある角度にある。
図3はまた、光コーン11がどのようにして設計検出領域23を照らして、それを生成させるかも示している。この図は、設計検出領域23の形状が光コーン11の断面により決定されることを示す。例えば、断面が円形又は矩形の光コーンの場合、領域23もまた、それぞれ本質的に円形又は矩形となろう。
【0023】
本発明に係るシステム100は、画像表示デバイス1と反射要素3との間の光路内に配置された方向選択性光フィルター20を備える。この方向選択性光フィルター20には、この方向選択性光フィルター20を貫通する複数の導光チャネル22が形成されている。本発明に関して、光フィルター20とは、光には不透明であるが、それに形成されたチャネル22を通ってのみ光がフィルターを通過することができる光学要素であると解される。方向選択性光フィルター20は、例えば、ブラック(黒色)ポリマー、好ましくはポリアミドといった、微視的には(顕微鏡レベルでは)は粗い材料から形成しうる。特に好ましい実施形態では、光フィルター20は、少なくとも画像表示デバイス1とは反対側のその表面20aに入射する光線を吸収するように構成される。反対側の、画像表示デバイス1に面する光フィルター20の表面20bも、光線を吸収するように構成されていてもよい。このような光吸収は、当業者なら知っているように、例えば、表面20aに光吸収性(吸光性)材料(例、ベンタブラック(Vantablack)(登録商標)と呼ばれる塗料)を塗布する、及び/又は、表面20aを目的に合うように微細構造化する(例、吸光性の表面薄膜若しくは微細構造物で被覆する)ことにより達成されうる。好ましくは、光フィルター20の寸法は、設計検出領域23から見たときに画像表示デバイス1(例、スクリーン2)をその全表面積にわたって覆い隠すような寸法とする。
【0024】
本発明に係る導光チャネル22は光フィルター20を貫通していて、光フィルター20の両側の2つの側面20a、20bの間で光の通路を与える。チャネル22は、それぞれ表面20bに入口開口22b及び表面20aに出口開口22aを有する。チャネル22の断面形状は、例えば、それぞれ
図4a、5a及び6aに示すように、矩形、円形、又は正方形でよい。チャネル22の形成は、当業者には知られるように、例えば、光フィルター20をエッチング(腐食)するなどの材料抜取り技術を用いて、或いは場合により、例えば、3D印刷などの材料付加技術により、チャネル22の壁の注型(若しくは鋳込み)により、又は、例えばフォトニック結晶、回折性構造、マイクロレンズ、及びアパーチャ
ーマトリックス等を作り出すことにより、達成しうる。
【0025】
チャネル22のそれぞれは、それぞれのチャネル22に入ってくる画像形成光コーン11を実質的に通すが、画像表示デバイス1によって反射要素3の方向に反射された反射光コーン12であって、画像形成光コーン11の軸Tとは異なる角度の軸Dを有する反射光コーンは実質的にブロックするような形状に作られる。チャネル22に入ってくる光コーン11、12の光路を
図7に示す。これからわかるように、光コーン11はチャネル22に開口22bから入り、開口22aから出る。チャネル22のそれぞれは、それぞれのチャネル22の傾斜角が、それぞれのチャネル22をチャネル22の傾斜方向Jで通過する光コーン11の軸Tの傾斜角と実質的に等しくなるような形状に構成される。本明細書に関して、チャネル22の傾斜角とは、画像表示デバイス1(スクリーン2の実施形態の場合はスクリーン面、又はミラーの実施形態の場合は画像面)に対するチャネル22の軸の角度であると解される。既に述べたように、異なるピクセルから発出した光コーン11の軸Tの方向は異なるので、チャネル22はそれぞれ異なる傾斜角を有する。
図4b~6bに、異なる実施形態でのチャネル22の概略断面図を示すが、各チャネル22の傾斜角Ω
1、Ω
2、Ω
3は異なっている(Ω
1>Ω
2>Ω
3)ことを見ることができる。また、ある一つの開口22bの異なる地点で入ってくる光コーン11は反射要素3に向かってわずかに異なる方向に移動するが、実際的には、ある一つのチャネル22にその傾斜方向Jに沿って入ってくる光コーン11の軸Tは、
図7に見られるように、互いに平行であると考えることができることにも留意されたい。チャネル22の直径及び長さ並びに開口22a、22bの形状は、それぞれ光コーン11の角度及び断面形状に従って選択することが好ましい。こうして、開口22bに入ってくる光コーン11は、チャネル22の壁と衝突せずに、これらのチャネルを実質的に通過する。チャネル22の壁に接近して通過する光コーン11の一部は光コーン11の発散のためにチャネル22により吸収されるが、これは実際的には無視しうる損失であることに留意されたい。これに対して、軸Tとは異なる角度の軸Dを持つ、開口22aからチャネル22に入ってくる光コーン12は、チャネル22の壁により吸収され、複数の反射を受けることになり、こうしてそれらの強度が低減する。特に好ましい実施形態では、導光チャネル22の内壁は、表面20a、20bと同様の吸光性材料で被覆され、それにより吸収をさらに増大させることができる。画像表示デバイス1の表面には、軸Tとの角度差が小さい軸Dを持つ光コーン12又はチャネル22の壁面から何回も反射を受けた光コーン12しか到達しない。
図7はまた、画像表示デバイス1に到達してそれから反射された光コーン12は、さらなる反射という代償を払わない限り、開口22aから出ることができず、それにより、これらの光コーンは実際的に完全に吸収されてしまうか、又はそれらの強度が著しく低減されてしまう、即ち、ブロックされることになることも示している。
【0026】
上記を考慮して、光コーン11のパラメータ(例、軸Tの方向、光コーン11の開き角度)を知って、当業者には自明な手法でチャネル22を設計することができる。例えば、
図7に示した好適実施形態では、ある一つのチャネル22のスクリーン2との面との傾斜角はΩ=α+θとなり、ある一つのチャネル22の傾斜方向Jにおける幅hとある一つのチャネル22での光フィルター20の厚みdとが次式を満たすようにチャネル22の形状を構成する;
d≧h・tan(α+θ)
式中、θはそのチャネル22を通過(例、断面の中央で通過)する画像形成光コーン11の軸Tと反射要素3との間の角度であり、そしてαはスクリーン2と反射要素3との間の角度である。この実施形態では、表面20aに垂直に入射する光はチャネル22を通過することができないことを見ることができる。
【0027】
光コーン11の断面は画像表示デバイス1からの距離が長くなるにつれて大きくなるので、より良好な光透過を達成するために、ある一定のチャネル22直径にとって、光フィルター20は画像表示デバイス1に可及的に近づけて配置することが好ましい。1好適実施形態では、従って、方向選択性光フィルター20をスクリーン2の表面に固定する。無論、光フィルター20はスクリーン2からさらに離して配置してもよいが、好ましくは、光フィルター20とスクリーン2との間の間隔は数mm以下とすることが好ましい。光フィルター20は典型的には平面の表面を持つが、場合によっては(例、湾曲したスクリーン2を持つシステム100の場合)、湾曲した光フィルター20(例、スクリーン2の湾曲に従った湾曲をもつもの)を使用してもよい。
【0028】
画像表示デバイス1が発した光コーン11の一部は、チャネル22を隔てているチャネル壁24によりブロックされるので、透過を向上させるために、できるだけ薄いチャネル壁24を使用することが好ましい。壁厚みの決定では、光フィルター20が崩壊せず、システム100の普通の使用時の機械的作用に耐えるような機械的安定性を考慮しなければならない。
【0029】
導光チャネル22は光フィルター20内に、チャネル22の幅hと壁厚みwにより規定される周期間隔pが、スクリーン2のピクセルサイズの1/5以下であるか、又は少なくとも5倍となるように配置される。こうして、モアレ効果により生じる周期的な強度変動が避けられる。例えば、典型的なウインドスクリーンディスプレイ2のピクセルサイズは200μmである。従って、この場合の周期間隔pは、1mm以上であるか、又は40μm以下であることが好ましい。
【0030】
本発明はまた、上述した画像表示デバイス1とこれに対して固定された反射要素3とを備えたHUDシステム100の反射を低減させる方法にも関する。
この方法では、画像表示デバイス1により生じさせた画像の複数の点(ピクセル)から画像形成光コーン11を発生させる。画像形成光コーン11の軸Tは、光コーン11が反射要素3から反射されて設計検出点23aの方向に向かうようにするようなものである。即ち、軸Tの位置は、反射の原理を考慮に入れて、画像表示デバイス1と反射要素3と設計検出点23aとの相対位置、及び画像表示デバイス1と反射要素3の形状により決定される。画像表示デバイス1の光放射(光コーン11の開き角度及びそれらの断面形状)は、発出された光コーン11が設計検出点23aを通過する平面とちょうど交差する設計検出領域23を照射するように設計される。一つの可能な実施形態では、スクリーン2の短辺側に沿った光コーン11の開き角度をΔαとし、スクリーン2の長辺側に沿った同角度をΔβとする。かくして、スクリーン2の異なるピクセルが発生させた複数の光コーン11は、設計検出点23aで交差し、ここで、これらの光コーン11は、同じ高さA≒L・Δα及び幅B≒L・Δβ(ここで、Lは、反射要素3により反射された光コーン11に沿って測定した、スクリーン2と点23aとの間の距離である)の領域(面積)を照射する。従って、この実施形態では、領域23は高さAで幅Bの面積となろう。
【0031】
本方法の次の工程では、画像表示デバイス1から反射要素3の方向に反射された光コーン11の軸Tとは異なる角度の軸Dを持つ反射光コーン12の伝播を、上述した本発明に係る方向選択性光フィルター20によって、画像表示デバイス1と反射要素3との間の光路内でブロックする。一つの可能な実施形態では、光コーン11の軸Tに対応する方向選択性光フィルター20の導光チャネル22の傾斜角を、当業者には公知のインバース・レイ・トレーシング (inverse ray tracing) に基づく数値モデル化により決定する。
【0032】
上に開示した実施形態の多様な変更が、添付の特許請求の範囲により規定される保護範囲から逸脱せずに、当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0033】
1:画像表示デバイス
1a:ミラー
1b:プロジェクター
2、2’ :スクリーン
3:反射要素
4:投影画像
11:画像形成光コーン
12:反射光コーン
20:方向選択性光フィルター
22:導光チャネル
23:設計検出領域
23a:設計検出点
24:チャネル壁
100:HUDシステム
【国際調査報告】