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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】自己免疫疾患のマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240415BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P37/06
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564155
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2022060498
(87)【国際公開番号】W WO2022223667
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/000307
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518095998
【氏名又は名称】ソルボンヌ ユニヴェルシテ
(71)【出願人】
【識別番号】518095987
【氏名又は名称】アンスティチュート ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ レシェルシュ メディカル (アンセルム)
(71)【出願人】
【識別番号】507139834
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルケス、チンディ
(72)【発明者】
【氏名】レニエ、ポール
(72)【発明者】
【氏名】サアドゥン、ダヴィド
【テーマコード(参考)】
2G045
4C085
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB03
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、特定の表現型を示す病原性B細胞および/またはT細胞の集団の同定に基づく、自己免疫性、慢性炎症性およびリンパ増殖性疾患の診断および処置の方法を対象とする。これらの細胞は、マーカータンパク質の発現のそれらの特異的パターンによって同定され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を診断する方法であって、前記対象から試験試料を得ることと、前記試験試料中の、マーカータンパク質CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質を、健康なドナーの試料から確立されたベースラインレベルと比較して異なるレベルで発現する病原性B細胞の存在を検出することとを含み、前記試料中の前記病原性B細胞の前記存在により、前記対象が、前記自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を有するか、あるいはそれを発症する可能性があることが同定される方法。
【請求項2】
前記疾患がpSSまたはpSSのリンパ増殖性形態であり、検出されたものに対するマーカータンパク質の発現が以下の通りである、請求項1に記載の方法。
【表1】
【請求項3】
病原性B細胞のin vitroでの検出用マーカーとしての、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の使用。
【請求項4】
対象における病原性B細胞の検出方法であって、前記対象から生体試料を得ることと、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の細胞発現レベルを決定することとを含み、前記細胞発現レベルが決定された前記マーカーについてのCD19+ CD27- CD21- CD11c++ CXCR5+ Tbet++ CD95+ FCRL3+の発現が、病原性B細胞を示す方法。
【請求項5】
患者由来の生体試料中の病原性B細胞のin vitro検出方法であって、
(i)前記生体試料中のB細胞のCD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の細胞発現レベルを決定する工程と、
(ii)前記細胞発現レベルが決定された前記マーカーについての、前記生体試料由来のB細胞におけるCD19+ CD27- CD21- CD11c++ CXCR5+ Tbet++ CD95+ FCRL3+の発現をin vitroで検出する工程であって、この発現の前記検出が、前記生体試料中の病原性B細胞の存在を示す、工程と
を含むin vitro検出方法。
【請求項6】
自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態の診断用、あるいは病原性B細胞の検出用のキットであって、試料中のマーカータンパク質CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6のうちの1つの発現レベルを決定するためにそれぞれ使用される試薬を含むキット。
【請求項7】
対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態の処置の有効性を評価する方法であって、前記処置を投与する前に前記対象から採取された試料中のB細胞におけるマーカータンパク質CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の発現を決定することと、前記処置を投与した後に前記対象から採取された試料中の病原性B細胞の存在を検出することと、前記処置を投与する前に前記対象から採取された前記試料中の前記マーカータンパク質の発現レベルを、前記処置を投与した後に前記対象から採取された前記試料中の前記マーカータンパク質の発現レベルと比較することとを含む方法。
【請求項8】
対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を処置する方法であって、病原性B細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を前記対象に投与することによって、前記対象に存在する前記病原性B細胞の活性を低下させることを含む方法。
【請求項9】
前記病原性B細胞によって発現される前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
病原性B細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を含む医薬組成物。
【請求項11】
前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5からなる群において選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
対象におけるSS、L-SSおよびリンパ腫を診断する方法であって、前記対象から試験試料を得ることと、前記試験試料中の、以下の中から選択されるマーカータンパク質を発現する病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することとを含む方法:
B細胞におけるCD3- CD19+ CD21- CD27- IgM+ CXCR5+ CD11c- FcRL3- Tbet-ならびに/または
T細胞におけるCD3+ CD4+ TNFα+ CXCR3- CCR6- IL-21- CXCR5- IL-17- IL-4-およびIFNγ+もしくはIFNγ-。
【請求項15】
対象におけるpSS、L-pSSおよびリンパ腫を診断するためのキットであって、それぞれが、試料中のマーカータンパク質:
B細胞におけるCD3 CD19 CD21 CD27 IgM CXCR5 CD11c FcRL3 Tbetおよび/または
T細胞におけるCD3 CD4 TNFα CXCR3 CCR6 IL-21 CXCR5 IL-17 IL-4 IFNγ
のうちの1つの発現レベルを決定するために使用される試薬を含むキット。
【請求項16】
対象におけるシェーグレン症候群(SS)、クリオグロブリン血症性血管炎(Cryo)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)のうちの自己免疫疾患を診断する方法であって、前記対象から試験試料を得ることと、前記試験試料中の、マーカータンパク質を発現する病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することとを含み、いくつかのスコア1、2.1、2.2および3の決定を含む方法:
(1)スコア1が0または1である場合、スコア2.1が計算され、
(1.1)スコア2.1が0または1である場合、前記対象は健康であり、
(1.2)スコア2.1が2、3または4である場合、前記対象はSSを有し、
(2)スコア1が2、3または4である場合、スコア2.2が計算され、
(2.1)スコア2.2が0、1、2または3である場合、スコア3が計算され、
(2.1.1)スコア3が0または1である場合、前記対象はRAを有し、
(2.1.2)スコア3が2または3である場合、前記対象はSLEを有し、
(2.2)スコア2.2が4、5または6である場合、前記対象はCryoを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所与の表現型の特定の組合せを示す、血液由来の病原性B細胞および/またはT免疫細胞集団のいくつかの組合せの同定に基づく、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患およびリンパ増殖性疾患の診断および処置の方法を対象とする。これらの細胞は、表面タンパク質マーカーと細胞内タンパク質マーカーの両方の特異的パターンによって、例えばフローサイトメトリーによって同定され得る。
【0002】
ここで、上述の疾患には、シェーグレン症候群(SS)およびその臨床的亜群、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)およびクリオグロブリン血症(Cryo)が含まれ得る。
【背景技術】
【0003】
自己免疫疾患は、脊椎動物の免疫系が感染因子ではなく「自己」組織を攻撃する場合に起こる。自己免疫障害は、原発性シェーグレン症候群(pSS)に特に関連するリンパ腫などのリンパ増殖性障害の発症にさらに関連し得る。
【0004】
pSSおよびSS(両方の頭字語は本発明では区別なく使用され、同じ状態を指す)は、外分泌腺、特に唾液腺および涙腺のリンパ球浸潤を特徴とする全身性自己免疫疾患である。臨床徴候は多数であり、ほとんどすべての器官(腎臓、肺、末梢神経など)に関与し得る。T細胞およびB細胞は、疾患の発症において主要な役割を果たす。特に、SSを有する患者の末梢B細胞区画は変化しており、これは、形質細胞への異常な分化に起因する可能性がある循環CD27+メモリーB細胞の減少が特徴である(1)。抗体産生は、Ro/SSA抗原またはLa/SSB抗原を標的とする抗核自己抗体を分泌するほとんどの患者において調節されていない。
【0005】
RAは重度の炎症性疾患であり、関節が徐々に破壊され、障害をもたらす。
【0006】
SLEは、最も特徴的な結合組織疾患である。SLEは、皮膚および関節に主に影響を及ぼすが、潜在的に重度の内臓徴候、特に神経または腎臓の徴候の併発によっても悪化し得る。
【0007】
最後に、Cryoは、37℃未満の温度においてin vitroで沈殿する能力によって、特定の免疫グロブリンが患者の血清中に存在することによって定義される、全身性、炎症性および/または血栓性疾患の異種群である。このクリオグロブリン血症の存在は、この状態の臨床徴候の元になる中または小口径血管の部分的または完全な閉塞をもたらす。
【0008】
本発明者らは最近、SS患者における自己反応性B細胞の排除障害が、主要組織適合複合体クラスIIを介するT細胞への自己抗原の提示の可能性を高めることによって自己免疫を促進し得ることを示した。
【0009】
SSを有する患者にとっての脅威は、リンパ腫の発症である(一般集団のリスクの10~16倍)。B活性化についての既存の臨床生物学的ツール(リウマチ因子(RF)、補体消費、クリオグロブリン血症など)は、互いに近い異なる血液学的実体:前リンパ腫、緩慢性リンパ腫および侵攻性リンパ腫を区別するには不十分である。したがって、侵攻性リンパ腫の臨床モニタリングおよび診断において臨床医を導くことができる新しいバイオマーカーを明らかにすることが不可欠である。
【0010】
SSにおけるリンパ腫の優性型は、主に節外部位(すなわち、唾液腺、耳下腺など)に関与する辺縁帯リンパ腫(MZL)であるが、細胞の起源および細胞の悪性形質転換をもたらす機序はほとんど理解されていない。MZLは、侵攻性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に進行し得る。おそらくB細胞活性化因子(BAFF)の産生増加に関連する、B細胞の長期生存およびそれらの過剰活性は、リンパ腫をもたらし得る。SS関連リンパ腫B細胞による免疫グロブリン(Ig)可変ドメイン遺伝子(VHおよびVL)の非ランダム使用、およびこれらのリンパ腫B細胞がRF活性を発揮し得ることの実証は、リンパ腫細胞が自己抗原の概念に関与するプロセスによって発症するという仮説を支持する。リンパ増殖は、疾患における補体受容体2/CD21の発現が低下した異常なB細胞集団の存在と相関している。
【0011】
興味深いことに、B細胞および/またはT細胞の前記異常集団の存在とのこの相関を使用して、pSS/SS、Cryo、RAおよびSLEなどの他の自己免疫疾患の診断を確立する、および/またはその進展をモニターすることもできる。
【0012】
それにもかかわらず、過去10年間にわたり、T細胞とB細胞との相互作用および協調も多くの自己免疫応答の発生の根底にあることが明らかになっている。特に、濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)は、二次リンパ器官内のB細胞と相互作用して、B細胞の分化および成熟をもたらす。
【0013】
より正確には、本発明は、2つの異なる軸に分割することができる。
1)SS患者が将来リンパ腫を発症するリスクの推定を可能にする所与の組合せの病原性T細胞およびB細胞の亜集団(それぞれが独自のマーカーセットを有する)を患者血中においてフローサイトメトリーにより同定すること、
2)pSS/SS、RA、CryoおよびSLEの鑑別診断に役立つ、所与の組合せの病原性T細胞およびB細胞の亜集団を同定すること。
【0014】
B細胞とT細胞との相互作用および協調が確立されているにもかかわらず、自己免疫疾患の出現および進展に影響を及ぼすこれらの細胞上のマーカーの正しいセットを同定することは困難なままである。自己免疫疾患を表す目的のマーカーを発現する細胞集団または亜群を単離することも困難であり、したがって、本発明は、前述の問題を改善することを提案する。
【0015】
これらの結果および特許請求の範囲を確立するために本発明者らが使用したデータ収集および生物情報学的方法は、「Bioinformatic analyses of flow cytometry data」(例を参照)において以下に記載されている。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、以下の目的に関する:
項目1.対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を診断する方法であって、対象から試験試料を得ることと、試験試料中の、マーカータンパク質CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質を、健康なドナーの試料から確立されたベースラインレベルと比較して異なるレベルで発現する病原性B細胞の存在を検出することとを含み、試料中の前記病原性B細胞の存在により、対象が、自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を有するか、あるいはそれを発症する可能性があることが同定される方法。
【0017】
項目2.前記疾患がSSまたはSSのリンパ増殖性形態であり、検出されたものに対するマーカータンパク質の発現が以下の通りである、項目1に記載の方法:
【表1】
【0018】
項目3.病原性B細胞のin vitroでの検出用マーカーとしての、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の使用。
【0019】
項目4.対象における病原性B細胞の検出方法であって、対象から生体試料を得ることと、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の細胞発現レベルを決定することとを含み、細胞発現レベルが決定されたマーカーについてのCD19+ CD27- CD21- CD11c++ CXCR5+ Tbet++ CD95+ FCRL3+の発現が、病原性B細胞を示す方法。
【0020】
項目5.患者由来の生体試料中の病原性B細胞のin vitro検出方法であって、
(i)生体試料中のB細胞のCD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の細胞発現レベルを決定する工程と、
(ii)細胞発現レベルが決定されたマーカーについての、生体試料由来のB細胞におけるCD19+ CD27- CD21- CD11c++ CXCR5+ Tbet++ CD95+ FCRL3+の発現をin vitroで検出する工程であって、この発現の検出が、生体試料中の病原性B細胞の存在を示す、工程と
を含むin vitro検出方法。
【0021】
項目6.自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態の診断用、あるいは病原性B細胞の検出用のキットであって、試料中のマーカータンパク質C CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6のうちの1つの発現レベルを決定するためにそれぞれ使用される試薬を含むキット。
【0022】
項目7.対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態の処置の有効性を評価する方法であって、処置を投与する前に対象から採取された試料中のB細胞におけるマーカータンパク質CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の発現を決定することと、処置を投与した後に対象から採取された試料中の病原性B細胞の存在を検出することと、処置を投与する前に対象から採取された試料中の前記マーカータンパク質の発現レベルを、処置を投与した後に対象から採取された試料中の前記マーカータンパク質の発現レベルと比較することとを含む方法。
【0023】
項目8.対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を処置する方法であって、病原性B細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を対象に投与することによって、対象に存在する病原性B細胞の活性を低下させることを含む方法。
【0024】
項目9.病原性B細胞によって発現される前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される、項目8に記載の方法。
【0025】
項目10.病原性B細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を含む医薬組成物。
【0026】
項目11.前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5からなる群において選択される、項目10に記載の医薬組成物。
【0027】
項目12.前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択される、項目10に記載の医薬組成物。
【0028】
項目13.前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される、項目10に記載の医薬組成物。
【0029】
項目14.B細胞およびT細胞からのマーカーの組合せを使用して自己免疫疾患を識別するための方法であって、マーカーの前記組合せが、異なる自己免疫疾患を区別するために使用されるスコアの定義を可能にする方法。
【0030】
より詳細には、項目14の方法は、B細胞マーカーがCD3、CD19、CD27、CD21、IgM、CD11c、CXCR5、Tbet、FcRL3、CD24、IgD、CD38、FCRL5およびCD95から選択され、T細胞マーカーがCD3、CD4、CXCR5、CD25、CD127、CCR6、CXCR3、ICOS、PD-1、FoxP3、IFNγ、TNFα、IL-17、IL-4およびIL-21から選択されるようなものである。
【0031】
項目15.対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を診断する方法であって、対象から試験試料を得ることと、試験試料中の、以下の中から選択されるマーカータンパク質を発現する病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することとを含む方法:
【表2】
【0032】
項目16.対象におけるシェーグレン症候群(SS)、クリオグロブリン血症性血管炎(Cryo)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)の中の自己免疫疾患を診断する方法であって、対象から試験試料を得ることと、試験試料中の、上に列挙したマーカーのすべてまたは一部を特徴とする特定の表現型を発現する病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することとを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を診断する方法であって、対象から試験試料を得ることと、試験試料中の、マーカータンパク質CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質を、少なくとも1つの健康なドナーの試料から確立されたベースラインレベルと比較して異なるレベルで発現する病原性B細胞の存在を検出することとを含み、試料中の前記病原性B細胞の存在により、対象が、自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を有するか、あるいはそれを発症する可能性があることが同定される方法に関する。
【0034】
他の実施形態によれば、本発明はまた、対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を診断する方法であって、対象から試験試料を得ることと、試験試料中の、以下の中から選択されるマーカータンパク質を発現する病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することとを含む方法に関する:
【表3】
【0035】
自己免疫性または慢性感染性の疾患の例には、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、クリオグロブリン血症性血管炎(Cryo)、関節リウマチ(RA)、分類不能型免疫不全症、ならびにVIHおよびVHCの慢性感染症が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
第1の特定の実施形態によれば、SSまたはSSのリンパ増殖性形態を発症するリスクに関連する病原性B細胞からのマーカータンパク質のプロファイル発現は以下の通りである:
【表4】
【0037】
任意選択的マーカーとしては、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38、G6が挙げられる。
【0038】
G6抗体は、Ab応答および疾患過程に関与しているIGHV1-69重鎖生殖細胞系遺伝子51p1対立遺伝子に選択的に結合する抗イディオタイプモノクローナルAbである(DOI:10.1016/j.celrep.2017.11.056)。
【0039】
本発明による任意選択的マーカーとは、最初の5つのマーカーが必須であり、任意選択的マーカーが、単独でまたは必須のマーカーもしくは他の任意選択的マーカーとのいずれかの組合せで存在し得ることを意味する。
【0040】
SSまたはSSのリンパ増殖性形態を発症するリスクに関連するこれらの任意選択的マーカータンパク質のうちのいくつかの発現プロファイルは以下の通りである:
【表5】
【0041】
いくつかの具体的な実施形態によれば、マーカータンパク質のセットは、
-CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5およびCD95、
-CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5およびFcrL3、
-CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5およびTbet、
-CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、CD95およびFcrL3、
-CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、CD95およびTbet、
-CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、FcrL3およびTbet、
-CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、CD95、FcrL3およびTbet
から構成される。
【0042】
対象という用語は、任意の動物対象、特に、霊長類、げっ歯類、家畜および家庭用ペットを含むがこれらに限定されない任意の脊椎動物哺乳動物を指す。本発明の方法のための好ましい哺乳動物にはヒトが含まれる。
【0043】
試料という用語は、末梢血細胞を含有する対象から得られた任意の生体試料を指す。試料は、血液などの生体液試料であってもよい。試料は、リンパ節、脾臓生検、耳下腺または小唾液腺から得られた組織試料であってもよい。
【0044】
健康なドナーは、疾患が診断されていない個体である。
【0045】
好ましくは、少なくとも1つの健康なドナーの試料から確立されたベースラインレベルは、少なくとも10個の健康なドナーの試料で確立される。
【0046】
病原性B細胞は、特定の表現型を有し、関連するB細胞の集団である。
【0047】
病原性T細胞は、特定の表現型を有し、関連するT細胞の集団である。
【0048】
マーカータンパク質の発現は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して評価され得る。発現という用語は、タンパク質翻訳またはmRNA転写を指す。
【0049】
タンパク質の検出に好適な方法には、細胞または細胞抽出物由来のタンパク質を検出および/または測定するのに好適な任意の方法が含まれる。このような方法には、フローサイトメトリー、ポリメラーゼ連鎖反応、免疫ブロット(例えば、ウエスタンブロット)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、免疫組織化学および免疫蛍光を使用する染色および/または選別が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質を検出するための特に好ましい方法には、フローサイトメトリーアッセイ、免疫組織化学アッセイおよび免疫蛍光アッセイを使用する染色および/または選別を含む任意の単一細胞アッセイが含まれる。このような方法は当技術分野で周知である。さらに、本明細書に記載の細胞表面または細胞内のタンパク質に対する抗体は当技術分野で公知であり、公開文献に記載されており、これらのタンパク質に対して開発することができる抗体の製造方法も当技術分野で周知である。
【0050】
mRNAを検出するのに好適な方法には、細胞または細胞抽出物からmRNAレベルを検出および/または測定するのに好適な任意の方法が含まれる。このような方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、配列分析、遺伝子マイクロアレイ分析(遺伝子チップ分析)、RNAシーケンシングおよびレポーター遺伝子の検出が含まれるがこれらに限定されない。転写レベルの検出のためのこのような方法は当技術分野で周知であり、このような方法の多くは、https://www.elsevier.com/books/rna-methodologies/farrell-jr/978-0-12-804678-4に詳細に記載されている。
【0051】
好ましい実施形態では、病原性B細胞および/またはT細胞の存在は、試料中の細胞をマーカータンパク質を特異的に認識する抗体または抗体断片で共免疫染色または共免疫標識することによって決定される。
【0052】
この方法は、細胞表面または細胞内タンパク質の一部またはすべてを発現する細胞の頻度(パーセンテージまたは総数)を決定する工程を含んでもよい。頻度は、任意の公知の方法によって決定することができる。このような方法は、フローサイトメトリーまたは任意のレーザーベースの顕色方法を含んでもよい。
【0053】
好ましい実施形態では、細胞の頻度は、フローサイトメトリーによって決定される。
【0054】
フローサイトメトリーは、細胞または粒子の集団の物理的および化学的特性を検出および測定するために使用される技術である。このプロセスでは、細胞または粒子を含有する試料を流体に懸濁させ、フローサイトメーター機器に注入する。試料には、理想的には一度に1つの細胞が流れるようにレーザービームにより集光され、散乱光は細胞およびそれらの構成成分に対して特徴的である。さらに、細胞は、光が吸収され、次いで異なる波長帯域で放出されるように、蛍光マーカーで標識されることが多い。数万個の細胞を数分以内に検査することができ、次いで収集されたデータはコンピューターによって直ちに処理される。フローサイトメトリーは、基礎研究、臨床診療、および臨床試験で日常的に使用される。
【0055】
免疫学におけるフローサイトメトリーの使用のためのガイドラインは、Cossarizzaらの研究(Eur J Immunol、2019 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/eji.201970107)に要約されている。フローサイトメトリーによって作成されたデータの分析は、以下の論文:https://www.nature.com/articles/nri3158-c1に要約されているように、標識強度を扱い、膜または細胞内マーカーの絶対的な陽性または陰性を扱わないため、主観的なままである。より正確には、染色(バッチ効果)中の実験条件(温度、試薬の希釈/ロット、試料の品質、細胞数など)または取得パラメーター(使用されるプラットフォーム、レーザー出力、1秒当たりの細胞数、細胞の詰まりなど)などの多数の可能な要素が原因で、測定された蛍光は実質的に変更され得る。注目すべきことに、2名の操作者は、染色される細胞のランダム性のみが原因で、同じ施設内で同じ試薬を用いて同じプロトコールに従ったとしても、全く同じ染色を得ることはない。このため、不変であると考えられる所与のマーカーについて陰性または陽性の固定閾値を定義することは不適切である。むしろ、各試料が同時にそれら自身の陰性対照および陽性対照である取得されたデータ内で直接このような閾値を決定することがより良好であるWang,L.およびHoffman,R.A.2017年Standardization,calibration,and control in flow cytometry.Curr.Protoc.Cytom.79:1.3.1-1.3.27.doi:10.1002/cpcy.14)。
【0056】
好ましい実施形態では、マーカータンパク質発現のデータは、t-SNE(t分布型確率的近傍埋め込み法)アルゴリズム(https://umap-learn.readthedocs.io/en/latest/index.htmlを参照されたい)と同じ方法で低次元空間(典型的には、2次元または3次元)における高次元空間からの点のセットを表すことを可能にする非線形次元縮小法である均一多様体近似および投影(UMAP)アルゴリズムで処理される。具体的には、生のフローサイトメトリーデータを含むファイルは、生データのオープン化、フォーマット化、変換、正規化およびリシェーピングを含む具体的に書かれたRコードの入力として与えられる。次に、これらの変換されたデータは、保持するためにn=2次元を有するUMAPアルゴリズム(uwot Rパッケージに実装される)の入力として与えられる。UMAP分析後、削減されたデータは、本発明者らの標準的なフローサイトメトリー分析ソフトウェア(BD BiosciencesからのFlowJoおよび/またはBeckman-CoulterからのKaluza)と互換性のあるフローサイトメトリーファイルを再構築するために使用される表としてフォーマット化される。これらのソフトウェアによって、本発明者らは、プロットまたはパーセンテージのようなデータを分析し、最終的にエクスポートするために相互作用し得る点群としてデータを視覚化することができる。
【0057】
別の実施形態によれば、本発明は、病原性B細胞のin vitroでの検出のためのマーカーとしての、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の使用に関する。
【0058】
本発明はまた、対象における病原性B細胞の検出方法であって、対象から生体試料を得ることと、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の細胞発現レベルを決定することとを含む方法に関する。
【0059】
特定の実施形態では、前記方法は、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、および/またはFCRL3からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の細胞発現レベルを決定することからなり、細胞発現レベルが決定されたマーカーについてのCD19+ CD27- CD21- CD11c++ CXCR5+ Tbet++ CD95+ FCRL3+の発現は、病原性B細胞を示す。
【0060】
本発明はさらに、患者由来の生体試料中の病原性B細胞のin vitro検出方法であって、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の細胞発現レベルを決定する工程を含む、方法に関する。
【0061】
特定の実施形態では、前記方法は、
(i)生体試料中のB細胞のCD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の細胞発現レベルを決定する工程と、
(ii)細胞発現レベルが決定されたマーカーについての、生体試料由来のB細胞におけるCD19+CD27-CD21-CD11c++CXCR5+Tbet++CD95+FCRL3+の発現をin vitroで検出する工程であって、この発現の検出が、生体試料中の病原性B細胞の存在を示す、工程を含む。
【0062】
前記in vitroでの方法の実施形態によれば、生体試料中の病原性B細胞の存在は、患者が自己免疫疾患のリンパ増殖性形態を発症するリスクを有することを示す。
【0063】
自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態の診断用、あるいは病原性B細胞の検出用のキットであって、試料中のマーカータンパク質CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質のうちの1つの発現レベルを決定するためにそれぞれ使用される試薬を含む、キットが本発明に含まれる。
【0064】
前記試薬は、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でマーカータンパク質をコードする核酸分子にハイブリダイズするプローブ、マーカータンパク質もしくはその断片をコードするmRNAの増幅用RT-PCRプライマー、および/またはマーカータンパク質に選択的に結合する抗体、その抗原結合性断片もしくは他の抗原結合性ペプチドであってもよい。
【0065】
本発明のキットの試薬は、検出可能なタグまたは検出可能な標識にコンジュゲートさせることができる。このようなタグは、試薬の検出を可能にし、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物または標識を含むがこれらに限定されない任意の好適なタグであり得る。本発明において有用な標識には、標識ストレプトアビジンコンジュゲートで染色するためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、texas red、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射性標識(例えば、3H、1251、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAにおいて一般的に使用される他のもの)、およびコロイド金または着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの比色標識が含まれる。
【0066】
さらに、キットの試薬は、基質上に固定化され得る。このような基質には、前述の検出方法のいずれかで使用されるような、検出試薬の固定化のための任意の好適な基質が含まれ得る。簡潔には、検出手段の固定化にとって好適な基質には、所望の標的分子を検出するための検出手段の活性および/または能力に有意に影響を及ぼすことなく、検出手段と結合を形成することができる任意の固体支持体、例えば任意の固体有機支持体、バイオポリマー支持体または無機支持体が含まれる。
【0067】
例示的な有機固体支持体としては、ポリスチレン、ナイロン、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、アクリルコポリマー(例えば、ポリアクリルアミド)、安定化された無傷の全細胞、および安定化された粗全細胞/膜ホモジネートなどのポリマーが挙げられる。
【0068】
例示的なバイオポリマー支持体としては、セルロース、ポリデキストラン(例えば、Sephadex(登録商標))、アガロース、コラーゲンおよびキチンが挙げられる。
【0069】
例示的な無機支持体としては、ガラスビーズ(多孔性および非多孔性)、ステンレス鋼、金属酸化物(例えば、ZrO2、TiO2、A1203、NiOなどの多孔質セラミック)および砂が挙げられる。
【0070】
他の既存のキットは、稀な事象の検出、免疫機能分析、免疫系に関する研究およびBeckman CoulterからのDURACloneパネルなどの特定の臨床用途のための乾燥した予め製剤化された抗体パネルからなる。
【0071】
別の目的によれば、本発明は、対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態の処置の有効性を評価する方法であって、処置を投与する前に対象から採取された試料中のB細胞におけるマーカータンパク質CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、ならびに任意選択的に、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択される少なくとも1つのマーカータンパク質の発現を決定することと、処置を投与した後に対象から採取された試料中の病原性B細胞の存在を検出することと、処置を投与する前に対象から採取された試料中の前記マーカータンパク質の発現レベルを、処置を投与した後に対象から採取された試料中の前記マーカータンパク質の発現レベルと比較することとを含む方法に関する。
【0072】
マーカータンパク質の発現レベルの低下は、処置が病原性B細胞の減少を可能にすることおよび処置が有効であることを示す。
【0073】
本発明はまた、対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を処置する方法であって、病原性B細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する抗体または抗体断片を対象に投与することによって、対象に存在する病原性B細胞の活性を低下させることを含み、特定の実施形態では、前記タンパク質が、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6、好ましくはCD19、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択される、方法に関する。
【0074】
本発明はまた、病原性B細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を含む医薬組成物に関する。
【0075】
本発明による医薬組成物は、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、好ましくはCD19、CD11c、CXCR5からなる群において選択されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を含む。
【0076】
本発明による医薬組成物は、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95および/またはFCRL3、好ましくはCD19、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95および/またはFCRL3からなる群において選択されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を含む。
【0077】
本発明による医薬組成物は、CD19、CD27、CD21、CD11c、CXCR5、Tbet、CD95、FCRL3、FCRL5、IgM、IgD、CD24、CD38および/またはG6からなる群において選択されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を含む。
【0078】
本発明はさらに、対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を診断する方法であって、対象から試験試料を得ることと、試験試料中の、以下の中から選択されるマーカータンパク質を発現する病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することとを含む方法に関する:
【表6】
【0079】
自己免疫性または慢性感染性の疾患の例には、シェーグレン症候群(SS)、クリオグロブリン血症性血管炎(Cryo)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、分類不能型免疫不全症ならびにVIHおよびVHCの慢性感染症が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
前記マーカータンパク質は、抗体に関与する方法を含む前述の方法によって同定することができ、このような場合に、IFNγ、TNFα、IL-17、IL-4およびIL-21マーカー(混合物Cytok中に存在する)に関連する技術的理由で、これらは、別個のプロトコールを使用して、混合物Tとは異なる抗体混合物中で染色されることになる。
【0081】
3つの混合物はそれぞれ、本発明の方法の実行を可能にする所与のB細胞またはT細胞の亜集団を定量するのに役立つ。
【0082】
具体的な実施形態では、本発明は、対象におけるSS、L-SSおよびリンパ腫を診断する方法であって、対象から試験試料を得ることと、試験試料中の、以下の中から選択されるマーカータンパク質を発現する病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することとを含む方法に関する:
B細胞におけるCD3- CD19+ CD21- CD27- IgM+ CXCR5+ CD11c- FcRL3- Tbet-ならびに/または
T細胞におけるCD3+ CD4+ TNFα+ CXCR3- CCR6- IL-21- CXCR5- IL-17- IL-4-およびIFNγ+もしくはIFNγ-。
【0083】
本発明の方法は、一方のみの細胞集団(B細胞またはT細胞)のマーカーに関して実行されてもよく、それに関する信頼できる結果を与える。
【0084】
別の実施形態によれば、本発明は、
病原性B細胞および/またはT細胞のin vitroでの検出のためのマーカーとしての、
B細胞におけるCD3- CD19+ CD21- CD27- IgM+ CXCR5+ CD11c- FcRL3- Tbet-ならびに/または
T細胞におけるCD3+ CD4+ TNFα+ CXCR3- CCR6- IL-21- CXCR5- IL-17- IL-4-およびIFNγ+もしくはIFNγ-
の使用に関する。
【0085】
本発明はまた、対象における病原性B細胞および/またはT細胞の検出方法であって、対象から生体試料を得ることと、
B細胞におけるCD3 CD19 CD21 CD27 IgM CXCR5 CD11c FcRL3およびTbet、ならびに/または
T細胞におけるCD3 CD4 TNFα CXCR3 CCR6 IL-21 CXCR5 IL-17 IL-4およびIFNγ
の細胞発現レベルを決定することとを含む方法に関する。
【0086】
特定の実施形態では、前記方法は、細胞発現レベルが病原性B細胞および/または細胞を示すと決定されたマーカーについて、以下の細胞発現レベルを決定することからなる:
B細胞におけるCD3 CD19 CD21 CD27 IgM CXCR5 CD11c FcRL3 Tbetおよび/または
T細胞におけるCD3 CD4 TNFα CXCR3 CCR6 IL-21 CXCR5 IL-17 IL-4 IFNγ。
【0087】
本発明はさらに、患者由来の生体試料中の病原性B細胞および/またはT細胞のin vitro検出方法であって、
B細胞におけるCD3 CD19 CD21 CD27 IgM CXCR5 CD11c FcRL3 Tbet、および/または
T細胞におけるCD3 CD4 TNFα CXCR3 CCR6 IL-21 CXCR5 IL-17 IL-4 IFNγ
の細胞発現レベルを決定する工程を含む方法に関する。
【0088】
特定の実施形態では、前記方法は、
(i)生体試料中の
B細胞におけるCD3 CD19 CD21 CD27 IgM CXCR5 CD11c FcRL3 Tbet、および/または
T細胞におけるCD3 CD4 TNFα CXCR3 CCR6 IL-21 CXCR5 IL-17 IL-4 IFNγ
の細胞発現レベルを決定する工程と、
(ii)細胞発現レベルが決定されたマーカーについて、生体試料由来の
B細胞におけるCD3- CD19+ CD21- CD27- IgM+ CXCR5+ CD11c- FcRL3- Tbet-、ならびに/または
T細胞におけるCD3+ CD4+ TNFα+ CXCR3- CCR6- IL-21- CXCR5- IL-17- IL-4-およびIFNγ+もしくはIFNγ-
の発現をin vitroで検出する工程であって、この発現の検出が生体試料中の病原性B細胞および/またはT細胞の存在を示す、工程
を含む。
【0089】
前記in vitroでの方法の実施形態によれば、生体試料中の病原性B細胞および/またはT細胞の存在は、患者が自己免疫疾患のリンパ増殖性形態を発症するリスクを有することを示す。
【0090】
これは、以下を考慮して診断スコアを計算することによって決定することができる:
B細胞における表現型CD3- CD19+ CD21- CD27- IgM+ CXCR5+ CD11c- FcRL3- Tbet-の相対的存在量(図4ではB1と呼ぶ):B1が2%以上である場合、第1のスコアは1であり、B1が5%以上である場合、第1のスコアは2である、
T細胞における表現型CD3+ CD4+ TNFα+ CXCR3- CCR6- IL-21- CXCR5- IL-17- IL-4-およびIFNγ+またはIFNγ-の相対的存在量(図4においてC1と呼ばれる):C1が4%以上である場合、第2のスコアは1であり、C1が8%以上である場合、第2のスコアは2である、ならびに
第1のスコアと第2のスコアとを合計して診断スコアを得る。
【0091】
前記診断スコアが0である場合、対象は健康であり、前記診断スコアが1または2である場合、対象はSSまたはL-SSを有する可能性がはるかに高く、前記診断スコアが3または4である場合、対象はリンパ腫を有するリスクが有意に増加している。
【0092】
自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態の診断用、または病原性B細胞の検出用のキットであって、それぞれが、試料中のマーカータンパク質:
B細胞におけるCD3 CD19 CD21 CD27 IgM CXCR5 CD11c FcRL3 Tbet、および/または
T細胞におけるCD3 CD4 TNFα CXCR3 CCR6 IL-21 CXCR5 IL-17 IL-4 IFNγ
のうちの1つの発現レベルを決定するために使用される試薬を含む、キットが本発明に含まれる。
【0093】
前記試薬は前述の通りである。
【0094】
別の目的によれば、本発明は、対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態の処置の有効性を評価する方法であって、処置を投与する前に対象から採取された試料中のマーカータンパク質:
B細胞におけるCD3 CD19 CD21 CD27 IgM CXCR5 CD11c FcRL3 Tbet、および/または
T細胞におけるCD3 CD4 TNFα CXCR3 CCR6 IL-21 CXCR5 IL-17 IL-4 IFNγ
の発現を決定することと、処置を投与した後に対象から採取された試料中の病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することと、処置を投与する前に対象から採取された試料中の前記マーカータンパク質の発現レベルを、処置を投与した後に対象から採取された試料中の前記マーカータンパク質の発現レベルと比較することとを含む方法に関する。
【0095】
B1およびC1表現型の相対的存在量の減少は、対象の状態の改善を示し、実際、これらの表現型の存在量の減少は、処置が病原性B細胞および/またはT細胞の減少を可能にすること、ならびに処置が有効であることを示す。
【0096】
本発明はまた、対象における自己免疫疾患または自己免疫疾患のリンパ増殖性形態もしくは慢性炎症性形態を処置する方法であって、病原性B細胞および/またはT細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する抗体または抗体断片を対象に投与することによって、対象に存在する病原性B細胞および/または細胞の活性を低下させることを含み、具体的な実施形態では、前記タンパク質が、
B細胞におけるCD3- CD19+ CD21- CD27- IgM+ CXCR5+ CD11c- FcRL3- Tbet-、好ましくはCD19+ IgM+ CXCR5+および/または
T細胞におけるCD3+ CD4+ TNFα+ CXCR3- CCR6- IL-21- CXCR5- IL-17- IL-4- IFNγ+;好ましくはCD3+ CD4+ TNFα+ IFNγ+
からなる群において選択される方法に関する。
【0097】
本発明はまた、病原性B細胞および/またはT細胞によって発現されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を含む医薬組成物に関する。
【0098】
本発明による医薬組成物は、以下からなる群において選択されるタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または抗体断片を含む:
B細胞におけるCD3、CD19、CD21、CD27、IgM、CXCR5、CD11c、FcRL3、Tbet、および/または
T細胞におけるCD3、CD4、TNFα、CXCR3、CCR6、IL-21、CXCR5、IL-17、IL-4、IFNγ。
【0099】
別の実施形態によれば、本発明はさらに、対象におけるシェーグレン症候群(SS)、クリオグロブリン血症性血管炎(Cryo)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)のうちの自己免疫疾患を診断する方法であって、対象から試験試料を得ることと、試験試料中の、先に列挙したマーカータンパク質を発現する病原性B細胞および/またはT細胞の存在を検出することとを含む方法に関する。
【0100】
前記方法は、図5Dに詳述されている特定の表現型のB細胞またはT細胞の相対的存在量を表すいくつかのスコア1、2.1、2.2および3の決定に関与し、表現型T1~T5、C1~C4およびB1~B3は図5Bに詳述されている通りである。
【0101】
この具体的な実施形態では、本発明の方法は、スコア1の決定を含み、
(1)スコア1が0または1である場合、スコア2.1が計算され、
(1.1)スコア2.1が0または1である場合、対象は健康であり、
(1.2)スコア2.1が2、3または4である場合、対象はSSを有し、
(2)スコア1が2、3または4である場合、スコア2.2が計算され、
(2.1)スコア2.2が0、1、2、または3である場合、スコア3が計算され、
(2.1.1)スコア3が0または1である場合、対象はRAを有し、
(2.1.2)スコア3が2または3である場合、対象はSLEを有し、
(2.2)スコア2.2が4、5または6である場合、対象はCryoを有する。
【0102】
スコアを計算する場合、考慮される表現型が指定の閾値でない場合、それは0をカウントし、それ以外の場合は1をカウントする。
【0103】
シェーグレン症候群(SS)、クリオグロブリン血症性血管炎(Cryo)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)のうちの自己免疫疾患の診断用キットであって、それぞれが、図5Bに詳述されている表現型T1~T5、C1~C4およびB1~B3の同定を可能にするマーカータンパク質の発現レベルを決定するために使用される試薬を含む、キットが本発明に含まれる。
【0104】
「抗体(複数可)」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖Fv抗体断片、Fab断片、およびF(ab’)2断片を含む。ポリクローナル抗体は、特定の抗原に特異的な抗体分子の不均一な集団であり、モノクローナル抗体は、抗原内に含有される特定のエピトープに対する抗体の均一な集団である。モノクローナル抗体およびヒト化抗体は、本発明において特に有用である。
【0105】
目的の標的に対する特異的結合親和性を有する抗体断片は、公知の技術によって生成することができる。
【0106】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、髄腔内、動脈内、静脈内、皮内、皮下、経口、経皮(局所)および経粘膜投与が挙げられる。
【0107】
非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の構成成分を含み得る:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの滅菌希釈剤;プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはエチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性を調整するための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回容量バイアルに封入することができる。
【0108】
注射用途に好適な医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製用滅菌粉末が含まれる。静脈内投与では、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合に、注射可能な組成物は無菌であるべきであり、容易な注射可能性が存在する程度に流動性であるべきである。これは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合に必要される粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、および塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよび/またはゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0109】
滅菌注射溶液は、必要量の活性化合物(例えば、ニューレグリン)を、必要に応じて上に列挙した成分のうちの1つまたはその組合せとともに適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体および上に列挙したものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製用滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、有効成分および任意の追加の所望の成分の粉末が、予め滅菌濾過されたその溶液から得られる。
【0110】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入されるか、または錠剤に圧縮され得る。経口治療薬の投与の目的のために、活性化合物を賦形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物は、マウスウォッシュとして使用するための流体担体を使用して調製することもでき、流体担体中の化合物は、経口的に適用され、スウィッシングされ、吐き出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分、または同様の性質の化合物のいずれも含有することができる:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはStertesなどの滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動化剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバリングなどの香味剤。
【0111】
吸入による投与では、化合物は、好適な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0112】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるものであり得る。経粘膜または経皮投与では、浸透されるバリアに適切な浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜投与用の洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐剤の使用によって達成することができる。経皮投与では、医薬組成物は、当技術分野で一般的に知られているように、軟膏剤、膏薬剤、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化される。
【0113】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、有効成分の持続放出または制御放出のために製剤化される。エチレンビニルアセタート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者にとって明らかである。材料は、例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的とするリポソームを含む)は、薬学的に許容される担体として使用することもできる。これらは、当業者に公知の方法に従って、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように調製することができる。
【0114】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。単位剤形は、本明細書で使用される場合、処置される対象のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を含み、各単位は、必要とされる医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためにこのような活性化合物を配合する技術に固有の制限によって決定され、それに直接的に依存する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1】L-pSS患者におけるメモリーB細胞(TLM)集団のような組織の拡大図である。(A)pSS患者と比較したL-pSS患者におけるB細胞集団の増加。(B)pSS患者と比較したL-pSS患者におけるCD19/CD3比の増加。(C)pSS患者と比較したL-pSS患者におけるCD21-B細胞数の増加。(D、E)pSS患者と比較したL-pSS患者における、目的の4つのB細胞亜集団の分布、TLMレベルの増加および静止期メモリーB細胞(RM)レベルの減少。
図2】フローサイトメトリー後のBリンパ球集団のUMAP分析を示す図である。A)健康なドナー、B)pSS患者およびC)L-pSS患者。
図3】フローサイトメトリーデータの処理および分析に使用されるバイオインフォマティックワークフローを示す図である。フローサイトメトリーの生データ(FCSフォーマット)を処理し、それらを分析するために本発明者らが使用したワークフローを示すUML図。
図4】CD4+T細胞およびBリンパ球亜集団の所与の組合せを使用して、HDをSS/L-SS、リンパ腫から識別することができることを示す図である。 (A)混合物B(上)、混合物Cytok(左下)および混合物T(右下)のいずれかについて、目的の各医学的状態(行)における決定された細胞クラスター(列)の絶対存在量を示すヒートマップ。値は列ごとにスケーリングされる。カラースケールは、黒色(最低値)から白色(最高値)になる。重要であると定義され、後の分析で使用されるメタクラスターは、枠外を白色で標識されている。 (B)前述のB1(上)およびC1(下)メタクラスターの個々の構成成分の実際の表現型を示す表。「-」および「+」はそれぞれ、細胞の全体的な分布と比較して陰性および陽性を示す。 (C)示した各医学的状態の各試料に対する実際のB1(左)およびC1(右)メタクラスターの存在量を示すヒストグラム。 (D)B1およびC1メタクラスターの測定された存在量に従って、目的の各医学的状態の各試料に適用されるスコアリング値および閾値を示す真理値表。 (E)(B)で言及したメタクラスターに(D)に示されている方法を適用した場合に、各医学的状態の各患者について計算した最終スコアを示すヒストグラム。**:p値<0.01、***:p値<0.001。
図5】CD4+T細胞およびBリンパ球の亜集団の所与の組合せを使用して、HDをSS、Cryo、RA、SLEから有意に識別する連続的であるが異なるスコアを構築することができる。 (A)混合物B(上)、混合物Cytok(左下)および混合物T(右下)のいずれかについて、目的の各医学的状態(行)における決定された細胞クラスター(列)の絶対存在量を示すヒートマップ。値は列ごとにスケーリングされる。カラースケールは、黒色(最低値)から白色(最高値)になる。重要であると定義され、後の分析で使用されるメタクラスターは、枠外を白色で標識されている。 (B)前述のT1~T5(左)、C1~C4(右上)およびB1~B3(右下)メタクラスターの個々の構成成分の実際の表現型を示す表。「-」および「+」はそれぞれ、細胞の全体的な分布と比較して陰性および陽性を示す。 (C)示した各医学的状態の各試料についての実際のT1~T5(上)、C1~C4(中央)およびB1~B3(下)メタクラスター存在量を示すヒストグラム。 (D)各スコア(スコア1、スコア2.1、スコア2.2およびスコア3)について、Tx、CxおよびBxメタクラスターの測定された存在量に従って各試料に適用されるスコアリング値および閾値を示す真理値表。 (E)(B)で言及したメタクラスターに(D)に示されている方法を適用した場合に、各医学的状態の各患者について計算した最終スコアを示すヒストグラム。 (F)HD、SS、Cryo、RAまたはSLEとして分類するために任意の所与の試料に適用するプロセスを示す決定木。各スコアの閾値は、それぞれの矢印の近くに示されている。***:p値<0.001、****:p値<0.0001。
【実施例
【0116】

材料および方法
患者
ピティエ・サルペトリエール病院(パリ、フランス)の内科および臨床免疫学部門で処置されたシェーグレン症候群(SS)の73名の患者ならびに29名の健康なドナーが含まれた。すべてのSS患者を、2016年米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会分類基準(ARD 2017-PMID:27789466)に従って分類した。
【0117】
SS患者は、以下の臨床的または検査上の特徴:唾液腺腫脹または末梢リンパ節症、紫斑病、リウマチ因子の上昇、C4の消費、高ガンマグロブリン血症、クリオグロブリン血症、モノクローナル高ガンマグロブリン血症、または証明されたリンパ腫のうちの少なくとも1つを有する場合、「SSに関連するリンパ増殖(L-SS)」群に分類した。
【0118】
研究はヘルシンキ宣言に従って実施した。すべての参加者から、通知および書面による同意を得た。
【0119】
細胞単離
末梢血単核細胞(PBMC)は、新鮮な全血試料からFicoll分離によって得た。
【0120】
フローサイトメトリー分析
PBMCを以下の抗ヒトマウスモノクローナル抗体により室温で30分間染色した:クロムオレンジ(KO)-またはAlexa Fluor 750(AF750)コンジュゲート抗CD3、エネルギー結合色素(ECD)コンジュゲート抗CD19、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-またはPE-シアニン7(PCy7)コンジュゲート抗CD21、PE-またはアロフィコシアニン(APC)コンジュゲート抗CD27、PCy7コンジュゲート抗CD11c、APCコンジュゲート抗CD95、FITCコンジュゲート抗CD80、APCまたはPcy5.5コンジュゲート抗CXCR5、PCy7またはAF750コンジュゲート抗CD38、PerCP-Cy5.5(PCy5.5)コンジュゲート抗CD24、PEコンジュゲート抗CD73、PEコンジュゲート抗FCRL3または抗FCRL5、PEコンジュゲート抗CD80、APCコンジュゲート抗CD10、FITCコンジュゲート抗IgM、PEコンジュゲート抗IgD、Pacific Blue(PB)コンジュゲート抗CD5、PerCPコンジュゲート抗CD4、PCy7コンジュゲート抗CD25、PEまたはAPCコンジュゲート抗CCR6、Alexa Fluor 700(AF700)コンジュゲート抗CXCR3、Brilliant Violet 421(BV421)コンジュゲート抗CD127、KOコンジュゲート抗PD-1、FITCコンジュゲート抗ICOSおよびFITCコンジュゲート抗IL1-R。
【0121】
PerFix-NCキット(Beckman Coulter)およびパシフィックブルー(PB)コンジュゲート化抗T-bet抗体を製造者の使用説明書に従って使用して、T-bet細胞内染色を実施した。
【0122】
FoxP3、IL-4、IL-17、IL-21、IFNγおよびTNFα染色を、Cytofix/Cytoperm緩衝剤(BD PharMingen)ならびにAPCまたはAlexa Fluor 647(AF647)コンジュゲート抗FoxP3、PEコンジュゲート抗IL-4、Brilliant Violet 510(BV510)コンジュゲート抗IL-17、BV421コンジュゲート抗IL-21、FITCコンジュゲート抗IFNγおよびPCy7コンジュゲート抗TNFα抗体を使用して、上記と同じプロトコールに従って実施した。この最後のプロトコールの主な違いは、前述のように実際の抗体染色を行う前に、細胞をPMAおよびイオノマイシンを含有する適切な培養培地(ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミンおよびウシ血清アルブミンを補充したRPMI)中で37℃にて4時間インキュベートしたことである。
【0123】
その後の取得および分析は、それぞれCytoflexフローサイトメータープラットフォームおよびKaluza分析ソフトウェア(Beckman Coulter)を用いて実施した。
【0124】
Rを用いたフローサイトメトリーデータの処理および分析
取得後に、コンペンセーションマトリックスを手動で調整し、データを前処理するために、生のフローサイトメトリーファイル(FCSフォーマット)をFlowJoバージョン10.8で開いた。リンパ球型の事象を抽出し、ダブレットを除去した。次いで、対応する前処理されたデータを新しいFCSファイルとして保存した。
【0125】
図3は、収集したデータを分析するために使用されるプロセスを要約している。HD、SS、Cryo、RAおよびSLE試料からのフローサイトメトリーデータ(FCSフォーマット)を最初にFlowJoバージョン10.8にインポートし、コンペンセーションを最適に調整し、リンパ球型の単一細胞をエクスポートして、その後のバイオインフォマティック分析を容易にした。
【0126】
次に、新たにエクスポートしたFCSファイルを、作者の使用説明書に従って、flowCoreおよびggcyto Bioconductor Rパッケージを使用して開いた。次に、再度、flowCore Bioconductor Rパッケージを使用してデータを最適に論理変換し、次いで、flowStats Bioconductor RパッケージからのgaussNorm法を使用して正規化した(Hahne,F.ら、Per-channel basis normalization methods for flow cytometry data.Cytometry A 77,121~131ページ(2010年))。このステップでは、データは、全リンパ球および全試料のすべての蛍光パラメーター情報を含む。ここから、2つの異なるリンパ球集団を、使用した抗体混合物に従ってゲーティングし:混合物BについてはCD3- CD19+細胞(「B細胞」として示される)、混合物Tおよび混合物CytokについてはCD3+ CD4+細胞(「CD4+T細胞」として示される)、したがって対応するデータを各試料について抽出した。
【0127】
その後、各群内の医学的状態(HD、Cryo、SS、RAまたはSLE)と試料数の両方を最終データセットに等しく寄与させるために、これらのデータをダウンサンプリングした。次に、このダウンサンプルされたデータセットを、uwot Rパッケージ(McInnes,L.、Healy,J.&Melville,J.UMAP:Uniform Manifold Approximation and Projection for Dimension Reduction.arXiv:1802.03426[cs,stat](2020年))からの均一多様体近似と投影(UMAP)アルゴリズムによって分析し、後続のUMAPモデルを抽出した。重要なことに、含まれるumap_transform法は、研究される細胞数および全体的な検出力を増加させるのに役立つ将来の分析プロセスにおいて可能な限り多くの細胞を保持するために、ダウンサンプリングされたデータセットに元々保持されていなかった細胞をモデルに追加することを可能にした。
【0128】
並行して、ダウンサンプリングしたデータセットに関するの細胞の階層的クラスタリングは、これらの細胞をそれらの表現型に従って分離し、類似の表現型を共有するものを統合するために実施された。このアプローチは、データセット内の基礎となる生物学的メッセージを変更することなく、同定された細胞クラスター数を可能な限り最小限に抑えることを意図したものであった。注目すべきことに、これらの決定されたクラスターは、非アーチファクトクラスターの兆候であるUMAP投影トポロジーに論理的に重なることがグラフで確認されている。このような分析の典型的な結果を図4Aおよび図5Aに示す。
【0129】
最後に、2つのUMAP寸法、ならびに形質転換および正規化されたフローサイトメトリーパラメーターだけでなく、それらのそれぞれの試料および群ならびにそれらの自動帰属クラスターに対する個々の細胞の関連性を別々のファイル(抗体混合物あたり1つ)にエクスポートした。
【0130】
ワークフロー分析の最後の工程は、患者の再分配および分離を全体的に視覚化するために、また最終的に各患者群の異常値を除去するために、3つの抗体混合物(必ずしもそうとは限らない)に関する情報が利用可能な患者を維持し、残りのデータを再びUMAPを使用して分析することであった。本発明者らは、最終的に、nHD=9、nSLE=24、nCryo=15、nRA=19およびnSS=115であった(nSS=55、nL-SS=49およびnLymphoma=11として分解)。これが達成されると、目的の各医学的状態における各クラスターの存在量を示すヒートマップ(典型的には、図4Aおよび図5Aによって表される)、ならびに各決定されたクラスターの表現型(図4Bおよび図5Bに要約されている)が計算された。ヒートマップ表現を使用すると、どのクラスターが所与の疾患に関連しているか、またはいくつかの疾患にわたって共有されているかを判定することがより容易かつ簡単になる。次いで、これらのクラスターのパーセンテージを最終的にプールし(「メタクラスター」と呼ばれる)、その後、目的の医学的状態間のそれらの真の差を評価した(典型的には、図4Cおよび図5Cに表される)。最後に、目的のメタクラスターが見つかると、それを構成する主な細胞集団の表現型を抽出し、表に要約した(典型的には、図4Bおよび図5Bに表される)。最終的に、患者を目的の臨床下位群(典型的には、図4D図4E図5D図5Eおよび図5Fに表される)からより容易に区別するために、分類スコアを確立し、患者に適用した。
【0131】
結果
L-SS患者は、SS患者よりも高い循環B細胞数(図1A)およびB細胞/T細胞比(図1B)を有するが、これらの結果は有意ではない。
【0132】
L-SS患者は、SS患者よりも有意に高いCD21-B細胞数を有した(32.14%対18.99%、p=0.0043)(図1C)。
【0133】
目的の亜集団内では、L-SS患者はSS患者よりも高いTLM(23.27%対12.01%、p=0.0044)および低いMR(13.53%対21.96%、p=0.0473)を有した(図1Dおよび図1E)。
【0134】
これらの結果を教師なしで確認し、目的の亜集団の表現型を改良するために、均一多様体近似および投影(UMAP)と呼ばれるアルゴリズム技術を使用してフローサイトメトリーデータを分析した。
【0135】
図2では、すべての健康なドナー(図2A)、SS(図2B)およびL-SS(図2C)患者のB細胞区画を一緒にプロットしている。CD19+ CD27- CD21- CD11c++ Tbet++ CXCR5+ CD95+ FCRL3+リンパ球集団の濃縮が観察され;これらの3つの群のBリンパ球集団のそれぞれ2%、2.12%および5.70%を表す。
【0136】
この分析方法により、教師なしの方法で、SSと比較してL-SS患者におけるCD21-集団の拡大が確認され、目的の表面マーカーおよび細胞内マーカーの同定により、これらの細胞の表現型の改良が可能になる。
【0137】
最終的なバイオマーカーのセットが定義されると、病原性B細胞集団の頻度を決定するために、各新しい対象試料が同じ方法で処理される。このような病原性B細胞集団の異常な存在量を固定する閾値が定義され、試験される各新規対象を分類するために使用される。
【0138】
SS患者内のリンパ腫リスクのマーカーを検出することを目的としたアッセイの第2のセットでは、上記の方法は、目的の4つの臨床群(HD、SS、L-SSおよびリンパ腫)における各抗体混合物について同定されたすべての細胞クラスターを示す図4Aに示されるヒートマップをもたらす。それらから、リンパ増殖によって徐々に濃縮されるクラスターのいくつかの群を単離した(メタクラスターと呼ばれる)(B1およびC1、白枠)。この情報から、これらの細胞メタクラスターの関連表現型が抽出され、表にまとめられている(図4B)。より正確には、メタクラスターB1は、すべて同じ表現型を共有する4つの異なるB亜集団から構成され(CD3- CD19+ CD21- CD27- IgM+ CXCR5+ CD11c- FcRL3- Tbet-)、メタクラスターC1は、2つの異なるT細胞亜集団から構成される(CD3+ CD4+ IFNγ+ TNFα+ CXCR3- CCR6- IL-21- CXCR5- IL-17- IL-4-およびCD3+ CD4+ IFNγ- TNFα+ CXCR3-CCR6- IL-21- CXCR5- IL-17- IL-4-)。図4Aに示された結果を使用して生成された図4Cは、B細胞およびT細胞内のB1およびC1メタクラスターの絶対存在量をそれぞれ示す。この図は、メタクラスターB1およびC1が、HD対SS/L-SSならびにSS/L-SS対リンパ腫を明確に区別し、リンパ増殖(SSからリンパ腫)を通じて蓄積することを可能にすることを示す。さらに、HD、SS、L-SSおよびリンパ腫の患者を分類するスコアは、図4Dに示された真理値表を使用して定義されている。このスコアを患者セット全体に適用すると、図4Eが得られ、これは、計算されたスコアにより、HD群とSS/L-SS群との間、およびSS/L-SS群とリンパ腫群との間の明確な区別が可能になることを示している。要約すると、本発明の方法は、ここで、測定するための特定のT細胞およびB細胞のメタクラスターならびに関与する亜集団(図4Aおよび図4B)、ならびにそれらの表現型(図4C)および関連する分類スコア方法論(図4Dおよび図4E)に関与する。
【0139】
それらの間の異なる自己免疫疾患の診断を目的として、前述したのと同じ方法を適用した。ここでの唯一の変化は、使用されるメタクラスターおよび細胞集団、ならびに目的の臨床群(ここで、HD、SS、Cryo、RAおよびSLE)の数が多いことに反映される。得られた結果は、図5Aのヒートマップ表示を使用して提示され、これにより、前述の疾患を最もよく区別するために使用することができるB細胞およびT細胞のメタクラスターの単離が可能になる。この場合、3つの異なるB細胞メタクラスター(B1~B3)(5つの異なるB細胞集団を占める)および16の異なるT細胞集団を占める9つの異なるT細胞メタクラスター(T1~T5およびC1~C4)を定義し、Cryo、RA、SLEまたはSS対HDの診断を確立するために使用した。これらの表現型はすべて、図3Bに示す表に提示されている。図5Aに提示された結果を使用して作成した図3Cは、B細胞およびT細胞内のB1~B3、T1~T5およびC1~C4メタクラスターの絶対存在量をそれぞれ示す。本発明者らはまた、自己免疫疾患をより正確に区別するために、以前に同定したB細胞およびT細胞のメタクラスターに基づいて4つのスコア(スコア1、スコア2.1、スコア2.2およびスコア3)を定義した。各スコアは、測定するメタクラスターの規定のセット、およびスコアリングに使用するそれらの関連する閾値を含む。これらのスコアの詳細を図5Dに示す。患者セットに対するそれらの適用は、図5Eに示す分類をもたらす。重要なことに、この特許請求にとって追加であるが重要な点は、図5Fに示す決定木である。より正確には、これらのメタクラスターおよび細胞集団は、これらの4つの疾患を診断するために「そのまま」使用することはできず、むしろ、1つまたはいくつかの疾患を徐々に排除するために、決定木と同時に使用されるべきである。実際、提示した細胞集団はそれぞれ、1つまたは複数の自己免疫疾患に特異的に関連し得る。さらに、T細胞またはB細胞の所与の細胞集団が単独で、それ自体、特定の疾患を定義する可能性は非常に低い。これが、いくつかの免疫細胞区画(ここではT細胞およびB細胞)におけるいくつかのマーカーと細胞集団との組合せが、所与の疾患に特異的に関連する組合せを見出すための最も効果的な方法である理由である。決定木は、4つの異なるスコアを使用する診断の漸進的な精緻化に基づいており、それぞれがある特定の疾患に近い「工程」を表す。
【0140】
1.Glauzy,Sら、Defective Early B Cell Tolerance Checkpoints in Sjogren’s Syndrome Patients.Arthritis&Rheumatology.2017年
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図5-7】
図5-8】
【国際調査報告】