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特表2024-517424熱可塑性ポリウレタン、ならびにアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体を含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタン、ならびにアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有する共重合体を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20240415BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240415BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L71/00
C08L77/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564156
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 FR2022050771
(87)【国際公開番号】W WO2022223936
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】2104203
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】プレンヴィール, トマ
(72)【発明者】
【氏名】アブグラル, トマ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CH002
4J002CK021
4J002CL002
4J002GC00
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、ならびにアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を含み、組成物が、23℃において170MPa以下の引張り係数を有する、組成物に関する。本発明は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、または熱可塑性ポリウレタン前駆体の反応により得られる組成物、そのような組成物を調製するための方法と、それから作られた物品にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって:
- 少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、ならびに
- アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を含み、
23℃において170MPa以下の引張り係数を有する、組成物。
【請求項2】
- アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに
- 少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタン前駆体
の反応により得られる組成物であって、
23℃において170MPa以下の引張り係数を有する、組成物。
【請求項3】
少なくとも一部のポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体が、少なくとも一部の熱可塑性ポリウレタンに、尿素官能基により共有結合しており、組成物における尿素官能基の濃度が、好ましくは0.001~0.1meq/g、より優先的には0.003~0.08meq/g、より一層優先的には0.005~0.05meq/gである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体が、0.01meq/g~1meq/g、好ましくは0.02meq/g~0.4meq/gのNHアミン官能基の濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
23℃において0.12以下のtan δを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の合計重量に対して:
- 15重量%~70重量%、好ましくは20重量%~60重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、および
- 30重量%~85重量%、好ましくは40重量%~80重量%の、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1.16以下、好ましくは1.14以下の密度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
30%の歪みで10サイクル後に、15%以下、好ましくは13%以下の引張り永久歪みを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンからなる組立体のウレタン官能基のNHアミン官能基に対するモル比が、15~350、好ましくは25~250、より優先的には40~200である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
熱可塑性ポリウレタンが、剛性ブロックおよび可撓性ブロックを含有する共重合体であり、
- 可撓性ブロックが、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリカーボネートブロックおよびそれらの組合せから選択され;好ましくは、可撓性ブロックは、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロックおよびそれらの組合せから選択され、また、より優先的には、ポリテトラヒドロフランブロック、ポリプロピレングリコールブロックおよび/もしくはポリエチレングリコールブロックであり;ならびに/または
- 剛性ブロックが、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートおよび/もしくはヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートに由来する単位、ならびに好ましくは、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールおよび/もしくは1,6-ヘキサンジオールから選択される少なくとも1つの鎖延長剤に由来する単位を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体のポリアミドブロックが、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10、ポリアミド6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10.10および/もしくはポリアミド10.12ブロック、好ましくはポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6および/もしくはポリアミド6.12ブロックであり;ならびに/またはアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体のポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコールブロックおよび/もしくはポリテトラヒドロフランブロックである、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
- 好ましくは押出機において、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を溶融状態で、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを溶融状態で混合する工程と;
- 任意選択で、混合物を顆粒または粉末の形態で成形する工程と
を含み;
組成物が、23℃において170MPa以下の引張り係数を有する、方法。
【請求項13】
組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
- 反応器、好ましくは押出機中に、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンの前駆体を導入する工程;
- 反応器中に、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を導入する工程;
- 反応器において、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の存在下で、熱可塑性ポリウレタンを合成して、その結果、熱可塑性ポリウレタン、ならびにポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体でできている組成物を得る工程と;
- 任意選択で、組成物を顆粒または粉末の形態で成形する工程と
を含み;
組成物が、23℃において170MPa以下の引張り係数を有する、方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物からなる少なくとも1つの要素からなる、またはそれらを含む物品であって、好ましくはスポーツ用履物ソール、大型または小型ボール、手袋、個人用保護機器、タイパッド、自動車部品、構造部品、光学機器部品、電気電子機器部品、時計バンド、玩具、医療機器部品、例えばカテーテル、伝動またはコンベヤーベルト、ギアおよび製造ラインコンベヤーベルトから選択される、物品。
【請求項15】
以下の工程:
- 請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を供給する工程;
- 前記組成物を射出成形する工程
を含む、請求項14に記載の物品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン、ならびにポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体ベースの組成物と、それを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なポリマー組成物は、とりわけスポーツ用具、例えばソールまたはソール構成部材、手袋、ラケットもしくはゴルフボール、または詳細にはスポーツ練習用の個人用保護具(ジャケット、ヘルメットの内側、シェルなど)の分野で使用される。そのような用途は、反発性能、低圧縮歪みまたは引張り永久歪み、ならびに繰り返される衝撃に耐える、また、初期形状に戻る性能を確保する、一連の特定の物理的性質を必要とする。ポリマー組成物は、例えば、医療機器、例えばカテーテルの分野でも、または他の分野(例えば時計バンド、玩具または産業用途用、詳細には製造ラインコンベヤーベルト)でも使用される。
【0003】
文献US7,383,647およびEP1871188は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル-TPU、ポリエーテル-TPU、ポリエステル-ポリエーテルTPU、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、熱可塑性酢酸ビニルエチル、スチレン-ブタジエン-スチレン、ブロックポリエーテルアミド、テクニカルポリエステル(technical polyester)、天然および合成ゴムを含むTPUブレンド、またはそれらの組合せでできている1つまたは複数の構成部材を含み得る履物ミッドソールに関する。
【0004】
文献FR2831175は、少なくとも2種の熱可塑性ポリウレタンおよび相溶化剤の混合物を15%以下の量で含み、相溶化剤が、好ましくはポリエーテルアミド、ポリエステルアミドまたはポリエーテルエステルアミドである、組成物に関する。
【0005】
文献JP5393036は、熱可塑性樹脂、ならびにポリエーテルエステルアミドおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーを含有する帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂組成物について記載している。
【0006】
文献JP5741139は、成分のドライブレンドにより調製された、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ならびにポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体を含み、共重合体が、ポリアミドブロックを含有し、ポリエーテルブロックは、トリブロックポリエーテルジアミン、ジカルボン酸およびポリアミド形成モノマーを重合することにより形成される、ポリウレタン樹脂組成物について記載している。これらの組成物は、1110MPa超のきわめて高い引張り係数を有する。
【0007】
良好な引裂強度、高い弾性、低密度、良好な可撓性および低い引張り永久歪みを有する組成物を提供することが現実的に必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、最初に、組成物であって:
- 少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、ならびに
- アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を含み、
23℃において170MPa以下の引張り係数を有する、組成物に関する。
【0009】
本発明は:
- アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに
- 少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタン前駆体の反応により得られる組成物であって、
23℃において170MPa以下の引張り係数を有する組成物にも関する。
【0010】
実施形態では、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の少なくとも一部は、熱可塑性ポリウレタンの少なくとも一部に、尿素官能基により共有結合しており、組成物における尿素官能基の濃度は、好ましくは0.001~0.1meq/g、より優先的には0.003~0.08meq/g、より一層優先的には0.005~0.05meq/gである。
【0011】
実施形態では、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体は、0.01meq/g~1meq/g、好ましくは0.02meq/g~0.4meq/gのNHアミン官能基の濃度を有する。
【0012】
実施形態では、組成物は、23℃において0.12以下のtan δを有する。
【0013】
実施形態では、組成物は、組成物の合計重量に対して:
- 15重量%~70重量%、好ましくは20重量%~60重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、および
- 30重量%~85重量%、好ましくは40重量%~80重量%の、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を含む。
【0014】
実施形態では、組成物は、1.16以下、好ましくは1.14以下の密度を有する。
【0015】
実施形態では、組成物は、30%の歪みで10サイクル後に、15%以下、好ましくは13%以下の引張り永久歪みを有する。
【0016】
実施形態では、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンからなる組立体のウレタン官能基のNHアミン官能基に対するモル比は、15~350、好ましくは25~250、より優先的には40~200である。
【0017】
実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、剛性ブロックおよび可撓性ブロックを含有する共重合体であり:
- 可撓性ブロックは、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリカーボネートブロックおよびそれらの組合せから選択され;好ましくは、可撓性ブロックは、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロックおよびそれらの組合せから選択され、また、より優先的には、ポリテトラヒドロフランブロック、ポリプロピレングリコールブロックおよび/もしくはポリエチレングリコールブロックであり;ならびに/または
- 剛性ブロックは、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートおよび/もしくはヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートに由来する単位、ならびに好ましくは、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールおよび/もしくは1,6-ヘキサンジオールから選択される少なくとも1つの鎖延長剤に由来する単位を含む。
【0018】
実施形態では、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体のポリアミドブロックは、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド10、ポリアミド6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド10.10および/もしくはポリアミド10.12ブロック、好ましくはポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6および/もしくはポリアミド6.12ブロックであり;ならびに/またはアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体のポリエーテルブロックは、ポリエチレングリコールブロックおよび/もしくはポリテトラヒドロフランブロックである。
【0019】
本発明は、組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
- 好ましくは押出機において、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を溶融状態で、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを溶融状態で混合する工程と;
- 任意選択で、混合物を顆粒または粉末の形態で成形する工程とを含み;
組成物は、23℃において170MPa以下の引張り係数を有する、方法にも関する。
【0020】
本発明は、組成物を調製するための方法であって、以下の工程:
- 反応器、好ましくは押出機中に、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンの前駆体を導入する工程;
- 反応器中に、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を導入する工程;
- 熱可塑性ポリウレタンを、反応器中で、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の存在下にて合成して、熱可塑性ポリウレタンならびにポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体でできている組成物を得る工程;および
- 任意選択で、組成物を、顆粒または粉末の形態で成形する工程を含み、
組成物は、23℃において170MPa以下の引張り係数を有する、方法にも関する。
【0021】
本発明は、上記の組成物からなる少なくとも1つの要素からなる、またはそれらを含む物品であって、好ましくはスポーツ用履物ソール、大型または小型ボール、手袋、個人用保護機器、タイパッド、自動車部品、構造部品、光学機器部品、電気電子機器部品、時計バンド、玩具、医療機器部品例えばカテーテル、伝動またはコンベヤーベルト、ギアおよび製造ラインコンベヤーベルトから選択される物品にも関する。
【0022】
本発明は、上記の物品を製造する方法であって、以下の工程:
- 上記の組成物を供給する工程;
- 前記組成物を射出成形する工程を含む、方法にも関する。
【0023】
本発明は、上で述べられている需要を満たすことを可能にする。より詳細には、これは、高い弾性および高い可撓性、低い引張り永久歪みおよび高い引裂強度および耐久性を同時に呈する低密度組成物を提供する。
【0024】
これは、熱可塑性ポリウレタン(またはTPU)と、アミン(NH)鎖末端および組成物の特定の引張り係数を有するポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体(またはPEBA)の組合せを通して達成される。
【0025】
ある有利な実施形態では、反応は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の少なくとも一部と、熱可塑性ポリウレタンの少なくとも一部との間で、より詳細にはポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体のアミン官能基と、熱可塑性ポリウレタンのウレタン官能基または熱可塑性ポリウレタンの前駆体に存在するイソシアネート官能基との間で発生する。アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の少なくとも一部と、熱可塑性ポリウレタンの少なくとも一部との間における反応により、これらのポリマーの間におけるより優れた適合性が得られる。これにより、ブレンドの性質、詳細には上で言及されている性質において改善が生じ、したがって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、以下により詳細に、また、後続する記載において非限定的な方途で説明される。
【0027】
本発明は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、ならびにアミン鎖末端を有するポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を含む組成物に関する。本文では、「鎖末端」および「鎖の末端」という用語は、同じ意味を有し、互換的に使用され得る。
【0028】
ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロック(PEBA)を含有する共重合体
本発明によるPEBAは、アミン鎖末端を有する。
【0029】
本発明によるPEBAは、反応性末端を保有するポリアミドブロック(剛性またはハードブロック)と、反応性末端を保有するポリエーテルブロック(可撓性またはソフトブロック)の重縮合に、詳細にはジカルボキシル鎖末端を保有するポリアミドブロックと、例えば、ポリエーテルジオールとして公知のα,ω-ジヒドロキシ化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化および水素化により得られるジアミン鎖末端を保有するポリオキシアルキレンブロックの重縮合に起因する。
【0030】
ジカルボキシル鎖末端を保有するポリアミドブロックは、例えば、ジカルボン酸連鎖制限剤の存在下にて、ポリアミド前駆体の縮合から発生する。
【0031】
3タイプのポリアミドブロックが、有利には使用され得る。
【0032】
第1のタイプによれば、ポリアミドブロックは、ジカルボン酸、詳細には4~36個の炭素原子を有するもの、好ましくは4~20個の炭素原子、より優先的には6~18個の炭素原子を有するもの、および脂肪族または芳香族ジアミン、詳細には2~20個の炭素原子を有するもの、好ましくは6~14個の炭素原子を有するものの縮合から発生する。
【0033】
ジカルボン酸の例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸が挙げられ得るが、ダイマー化脂肪酸も挙げられ得る。
【0034】
ジアミンの例として、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)および2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、パラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)ならびにピペラジン(Pip)が挙げられ得る。
【0035】
有利には、ポリアミドブロックPA4.12、PA4.14、PA4.18、PA6.10、PA6.12、PA6.14、PA6.18、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA10.14およびPA10.18は、使用される。PAX.Yという表記法では、従来通り、Xは、ジアミン残基に由来する炭素原子の数を表し、Yは、二酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0036】
第2のタイプによれば、ポリアミドブロックは、4~18個の炭素原子を有するジカルボン酸の、またはジアミンの存在下での、1つもしくは複数のα,ω-アミノカルボン酸、および/または、6~12個の炭素原子を有する1つもしくは複数のラクタムの縮合に起因する。ラクタムの例として、カプロラクタム、オエナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられ得る。α,ω-アミノカルボン酸の例として、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸が挙げられ得る。
【0037】
有利には、第2のタイプのポリアミドブロックは、PA10(ポリデカンアミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)またはPA6(ポリカプロラクタム)のブロックである。PAXという表記法では、Xは、アミノ酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0038】
第3のタイプによれば、ポリアミドブロックは、少なくとも1つのα,ω-アミノカルボン酸(またはラクタム)、少なくとも1つのジアミンおよび少なくとも1つのジカルボン酸の縮合に起因する。
【0039】
このケースでは、ポリアミドブロックPAは、
- X個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族または芳香族ジアミン(複数可)の重縮合;
- Y個の炭素原子を含有するジカルボン酸(複数可)の重縮合と;
- Z個の炭素原子を含有するラクタムおよびα,ω-アミノカルボン酸、ならびにX1個の炭素原子を含有する少なくとも1つのジアミン、およびY1個の炭素原子を含有する少なくとも1つのジカルボン酸の等モル混合物から選択され、(X1、Y1)が(X、Y)とは異なる、コモノマー(複数可){Z}の重縮合により調製され、
- 前記コモノマー(複数可){Z}は、ポリアミド-前駆体モノマーの合計量に対して、有利には50%まで、好ましくは20%まで、より一層有利には10%までの範囲の重量比率で導入され;
- ジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下にて、調製される。
【0040】
有利には、Y個の炭素原子を含有するジカルボン酸は、連鎖制限剤として使用され、これは、ジアミン(複数可)の化学量論に対して過剰に導入される。
【0041】
この第3のタイプの一変形によれば、ポリアミドブロックは、6~12個の炭素原子を含有する少なくとも2種のα,ω-アミノカルボン酸、もしくは少なくとも2種のラクタム、または同一数の炭素原子を有さない1つのラクタムおよび1つのアミノカルボン酸の、連鎖制限剤の任意選択の存在下での縮合に起因する。脂肪族α,ω-アミノカルボン酸の例として、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸が挙げられ得る。ラクタムの例として、カプロラクタム、オエナントラクタムおよびラウリルラクタムが挙げられ得る。脂肪族ジアミンの例として、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられ得る。脂環式二酸の例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられ得る。脂肪族二酸の例として、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸およびダイマー化脂肪酸が挙げられ得る。これらのダイマー化脂肪酸は、好ましくは、少なくとも98%のダイマー含有量を有し;これらは、好ましくは水素化され;これらは、例えば、Croda社によるPripolのブランド名で、またはBASF社によるEmpolのブランド名で、またはOleon社によるRadiacidのブランド名で販売されている製品、およびポリオキシアルキレンα,ω-二酸である。芳香族二酸の例として、テレフタル酸(T)およびイソフタル酸(I)が挙げられ得る。脂環式ジアミンの例として、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)および2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)の異性体、ならびにパラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)が挙げられ得る。普通に使用される他のジアミンは、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジンであり得る。
【0042】
第3のタイプのポリアミドブロックの例として、以下:
- PA6.6/6(式中、6.6は、アジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6は、カプロラクタムの縮合から生じた単位を表す);
- PA6.6/6.10/11/12(式中、6.6は、アジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表し、6.10は、セバシン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表し、11は、アミノウンデカン酸の縮合から生じた単位を表し、12は、ラウリルラクタムの縮合から生じた単位を表す)が挙げられ得る。
【0043】
PAX/Y、PAX/Y/Zなどの表記法は、X、Y、Zなどが、上記のようにホモポリアミド単位を表すコポリアミドに関する。
【0044】
有利には、本発明に使用される共重合体のポリアミドブロックは、ポリアミドPA6、PA10、PA11、PA12、PA5.4、PA5.9、PA5.10、PA5.12、PA5.13、PA5.14、PA5.16、PA5.18、PA5.36、PA6.4、PA6.6、PA6.9、PA6.10、PA6.12、PA6.13、PA6.14、PA6.16、PA6.18、PA6.36、PA10.4、PA10.9、PA10.10、PA10.12、PA10.13、PA10.14、PA10.16、PA10.18、PA10.36、PA10.T、PA12.4、PA12.9、PA12.10、PA12.12、PA12.13、PA12.14、PA12.16、PA12.18、PA12.36、PA12.T、またはそれらの混合物もしくは共重合体のブロックを含み;好ましくはポリアミドPA6、PA10、PA11、PA12、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA10.12、またはそれらの混合物もしくは共重合体のブロック、より優先的には、ポリアミドPA11、PA12、PA6、PA6.12、またはそれらの混合物もしくは共重合体のブロックを含む。
【0045】
ポリエーテルブロックは、アルキレンオキシド単位からなる。
【0046】
ポリエーテルブロックは、とりわけ、PEG(ポリエチレングリコール)ブロック、すなわちエチレンオキシド単位からなるブロック、および/またはPPG(プロピレングリコール)ブロック、すなわちプロピレンオキシド単位からなるブロック、および/またはPO3G(ポリトリメチレングリコール)ブロック、すなわちポリトリメチレングリコールエーテル単位からなるブロック、および/またはPTMGブロック、すなわちポリテトラヒドロフランとしても公知のテトラメチレングリコール単位からなるブロックであり得る。PEBA共重合体は、その鎖にいくつかのタイプのポリエーテルを含み得、コポリエーテルは、場合によりブロックまたはランダム形態である。
【0047】
ビスフェノール、例えば、ビスフェノールAのオキシエチル化により得られたブロックも使用され得る。後者の生成物は、文献EP613919に詳細に記載されている。
【0048】
ポリエーテルブロックは、エトキシ化第一級アミンからもなり得る。エトキシ化第一級アミンの例として、式:
[式中、mおよびnは、1~20の間の整数であり、xは、8~18の間の整数である]の生成物が挙げられ得る。これらの生成物は、例えば、Noramox(登録商標)というブランド名でCECAから、また、Genamin(登録商標)というブランド名でClariantから市販されている。
【0049】
本発明によるポリエーテル可撓性ブロックは、NH鎖末端を保有するポリオキシアルキレンブロックを含み、そのようなブロックは、ポリエーテルジオールといわれるα,ω-ジヒドロキシ化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化により得ることが可能である。より詳細には、JeffamineまたはElastamineという市販品を使用できる(例えば、Jeffamine(登録商標)D400、D2000、ED 2003またはXTJ 542、これらはHuntsmanからの市販品であり、文献JP2004346274、JP2004352794およびEP1482011にも記載されている)。
【0050】
ポリエーテルジオールブロックは、したがって、ポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシル-末端ポリアミドブロックと縮合するためにアミン化される。PAブロックとPEブロックとの間におけるアミド結合を保有するPEBA共重合体を調製するための一般的方法は公知であり、例えば文献EP1482011に記載されている。ポリエーテルブロックは、無作為に分配した単位を有するポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含むポリマーを調製するために、ポリアミド前駆体および二酸連鎖制限剤とも混合され得る(一段法)。OH鎖末端を保有するポリエーテルジオールは、ポリアミドブロックと縮合した場合、アミン化ポリエーテルジオールと存在し得る。これらのOH鎖末端を保有するポリエーテルジオールは、カルボキシル-末端ポリアミドブロックと縮合し得、PAブロックとPEブロックとの間にエステル結合が形成される(得られる生成物は、ポリエーテルエステルアミドである)。
【0051】
いうまでもないが、本発明の本明細書におけるPEBAという名称は、Arkemaにより販売されているPebax(登録商標)という製品、Evonik(登録商標)(Evonik(R))により販売されているVestamid(登録商標)という製品、およびEMSにより販売されているGrilamid(登録商標)という製品だけではなく、Sanyoにより販売されているPelestat(登録商標)type PEBAという製品、または他の供給業者からの任意の他のPEBAにも関する。
【0052】
上記のブロックを含有する共重合体が、一般的に少なくとも1つのポリアミドブロックおよび少なくとも1つのポリエーテルブロックを含む場合、本発明は、本明細書に記載されているものから選択される2、3、4(またはさらにそれ超)種の異なるブロックを含む共重合体もカバーするが、但し、これらのブロックが、少なくともポリアミドおよびポリエーテルブロックを含むことを条件とする。
【0053】
例えば、本発明による共重合体は、3種の異なるタイプのブロックを含むセグメント化ブロック共重合体(または「トリブロック」共重合体)であり得、これは、上記のブロックのいくつかの縮合から生じる。前記トリブロックは、例えば、ポリアミドブロック、ポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックを含む共重合体、または、ポリアミドブロックおよび2種の異なるポリエーテルブロック、例えばPEGブロックおよびPTMGブロックを含む共重合体であり得る。トリブロックは、好ましくはコポリエーテルエステルアミドである。
【0054】
本発明に関して特に好ましいPEBA共重合体は、PA10およびPEG;PA10およびPTMG;PA11およびPEG;PA11およびPTMG;PA12およびPEG;PA12およびPTMG;PA6.10およびPEG;PA6.10およびPTMG;PA6およびPEG;PA6およびPTMG;PA6.12およびPEG;PA6.12およびPTMGのうちからのブロックを含む共重合体である。
【0055】
PEBA共重合体におけるポリアミドブロックの数平均モル質量は、好ましくは400~20000g/mol、より優先的には500~10000g/molである。ある実施形態では、PEBA共重合体におけるポリアミドブロックの数平均モル質量は、400~500g/mol、または500~600g/mol、または600~1000g/mol、または1000~1500g/mol、または1500~2000g/mol、または2000~2500g/mol、または2500~3000g/mol、または3000~3500g/mol、または3500~4000g/mol、または4000~5000g/mol、または5000~6000g/mol、または6000~7000g/mol、または7000~8000g/mol、または8000~9000g/mol、または9000~10000g/mol、または10000~11000g/mol、または11000~12000g/mol、または12000~13000g/mol、または13000~14000g/mol、または14000~15000g/mol、または15000~16000g/mol、または16000~17000g/mol、または17000~18000g/mol、または18000~19000g/mol、または19000~20000g/molである。
【0056】
ポリエーテルブロックの数平均モル質量は、好ましくは100~6000g/mol、より優先的には200~3000g/molである。ある実施形態では、ポリエーテルブロックの数平均モル質量は、100~200g/mol、または200~500g/mol、または500~800g/mol、または800~1000g/mol、または1000~1500g/mol、または1500~2000g/mol、または2000~2500g/mol、または2500~3000g/mol、または3000~3500g/mol、または3500~4000g/mol、または4000~4500g/mol、または4500~5000g/mol、または5000~5500g/mol、または5500~6000g/molである。
【0057】
数平均モル質量は、連鎖制限剤の含有量により設定される。これは、等式:
=nモノマー×MW反復単位/n連鎖制限剤+MW連鎖制限剤
に従って計算できる。
【0058】
この式では、nモノマーは、モノマーのモル数を表し、n連鎖制限剤は、二酸制限剤の過剰なモル数を表し、MW反復単位は、反復単位のモル質量を表し、MW連鎖制限剤は、二酸の過剰なモル質量を表す。
【0059】
ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックの数平均モル質量は、ブロックの共重合の前に、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
【0060】
有利には、共重合体のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比は、0.1~20、好ましくは0.5~18、より一層優先的には0.6~15である。この重量比は、ポリアミドブロックの数平均モル質量を、ポリエーテルブロックの数平均モル質量で割ることにより計算できる。詳細には、共重合体のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比は、0.1~0.2、または0.2~0.3、または0.3~0.4、または0.4~0.5、または0.5~0.6、または0.6~0.7、または0.7~0.8、または0.8~0.9、または0.9~1、または1~1.5、または1.5~2、または2~2.5、または2.5~3、または3~3.5、または3.5~4、または4~4.5、または4.5~5、または5~5.5、または5.5~6、または6~6.5、または6.5~7、または7~7.5、または7.5~8、または8~8.5、または8.5~9、または9~9.5、または9.5~10、または10~11、または11~12、または12~13、または13~14、または14~15、または15~16、または16~17、または17~18、または18~19、または19~20であり得る。
【0061】
好ましくは、本発明に使用される共重合体は、30以上のShore D硬度を有する。好ましくは、本発明に使用される共重合体は、65Shore A~80Shore D、より好ましくは75Shore A~65Shore D、より優先的には80Shore A~55Shore Dの瞬間硬度を有する。硬度測定は、標準ISO7619-1に従って実行され得る。
【0062】
有利には、本発明によるPEBAは、0.01meq/g~1meq/g、好ましくは0.02meq/g~0.4meq/gのNH官能基の濃度を有する。PEBAは、0.01~0.015meq/g、または0.015~0.02meq/gまたは0.02~0.025meq/g、または0.025~0.03meq/g、または0.03~0.035meq/g、または0.035~0.04meq/g、または0.04~0.045meq/g、または0.045~0.05meq/g、または0.05~0.06meq/g、または0.06~0.07meq/g、または0.07~0.08meq/g、または0.08~0.09meq/g、または0.09~0.1meq/g、または0.1~0.2meq/g、または0.2~0.3meq/g、または0.3~0.4meq/g、または0.4~0.5meq/g、または0.5~0.6meq/g、または0.6~0.7meq/g、または0.7~0.8meq/g、または0.8~0.9meq/g、または0.9~1meq/gのNH官能基の濃度を有し得る。NH官能基の濃度は、電位差滴定により測定できる。この滴定は、例えば以下の手法で実行され得る:PEBAを最初に80℃のm-クレゾールに溶解し、次いで末端NH官能基を過塩素酸溶液で滴定する。
【0063】
本発明によるPEBAは、0.002meq/g~0.2meq/g、好ましくは0.005meq/g~0.1meq/g、より好ましくは0.01meq/g~0.08meq/gのCOOH官能基の濃度を有し得る。詳細には、本発明によるPEBAは、0.002~0.005meq/g、または0.005~0.01meq/g、または0.01~0.02meq/g、または0.02~0.03meq/g、または0.03~0.04meq/g、または0.04~0.05meq/g、または0.05~0.06meq/g、または0.06~0.07meq/g、または0.07~0.08meq/g、または0.08~0.09meq/g、または0.09~0.1meq/g、または0.1~0.15meq/g、または0.15~0.2meq/gのCOOH官能基の濃度を有し得る。COOH官能基の濃度は、電位差滴定分析により判定できる。測定プロトコールは、論文「Synthesis and characterization of poly(copolyethers-block-polyamides) - II. Characterization and properties of the multiblock copolymers」、Marechalら、Polymer、第41巻、2000年、3561~3580頁に詳細に記載されている。
【0064】
本発明によるPEBAは、ヒドロキシル(OH)鎖末端(例えば、OH鎖末端を保有するポリエーテルジオールとカルボキシル-末端ポリアミドブロックの縮合から発生する)を含み得る。詳細には、本発明によるPEBAは、0.002~0.2meq/g、好ましくは0.005~0.05meq/gのOH官能基の(すなわちヒドロキシル鎖末端の)濃度を有し得る。OH官能基の濃度は、プロトンNMRにより判定され得る。測定プロトコールは、論文「Synthesis and characterization of poly(copolyethers-block-polyamides) - II. Characterization and properties of the multiblock copolymers」、Marechalら、Polymer、第41巻、2000年、3561~3580頁に詳細に記載されている。
【0065】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)
本発明による熱可塑性ポリウレタンは、剛性ブロックおよび可撓性ブロックとの共重合体である。
【0066】
一般に、本文では、「剛性ブロック」という用語は、融点を有するブロックを意味すると理解される。融点の存在は、標準ISO11357-3 Plastics - Differential scanning calorimetry (DSC) Part 3に従った示差走査熱量測定により判定され得る。「可撓性ブロック」という用語は、0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するブロックを意味する。ガラス転移温度は、標準ISO11357-2 Plastics - Differential scanning calorimetry (DSC) Part 2に従った示差走査熱量測定により判定され得る。
【0067】
熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも1つのポリイソシアネートと、好ましくは2個のイソシアネート-反応性官能基を有する、少なくとも1つのイソシアネート-反応性化合物、より優先的にはポリオールの、また、任意選択で鎖延長剤と、任意選択で触媒の存在下での反応に起因する。TPUの剛性ブロックは、ポリイソシアネートおよび鎖延長剤に由来する単位からなるブロックであるが、可撓性ブロックは、主に0.5~100Kg/molのモル質量を有するイソシアネート-反応性化合物、好ましくはポリオールに由来する単位を含む。
【0068】
ポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族であり得る。好ましくは、ポリイソシアネートは、ジイソシアネートである。
【0069】
有利には、ポリイソシアネートは、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-および/またはオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン-1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、ブチレン-1,4-ジイソシアネート、1-イソシアネート-3,3,5-トリメチル-5-イソシアネートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、パラフェニレン-2,4-ジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシレン-2,4-ジイソシアネート(TMXDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-、2,4’-および/または2,2’-ジイソシアネート(H12 MDI)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネートおよび/または1-メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、トルエン-2,4-および/または2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニル-3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルエタン-1,2-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0070】
より好ましくは、ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0071】
より一層好ましくは、ポリイソシアネートは、4,4’-MDI(ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート)、1,6-HDI(ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート)またはそれらの混合物である。
【0072】
イソシアネート-反応性化合物(複数可)は、好ましくは、1.8~3個の間、より好ましくは1.8~2.6の間、より好ましくは1.8~2.2の間の平均官能基数を有する。イソシアネート-反応性化合物(複数可)の平均官能基数は、一定量の化合物からの分子1個に対して理論上計算される、分子のイソシアネート-反応性官能基の数に相当する。好ましくは、イソシアネート-反応性化合物は、統計的平均によれば、上記範囲内のZerewitinoff活性水素の数を有する。
【0073】
好ましくは、イソシアネート-反応性化合物(好ましくはポリオール)は、500~100000g/molの数平均モル質量を有する。イソシアネート-反応性化合物は、500~8000g/mol、より好ましくは700~6000g/mol、より詳細には800~4000g/molの数平均モル質量を有し得る。実施形態では、イソシアネート-反応性化合物は、500~600g/mol、または600~700g/mol、または700~800g/mol、または800~1000g/mol、または1000~1500g/mol、または1500~2000g/mol、または2000~2500g/mol、または2500~3000g/mol、または3000~3500g/mol、または3500~4000g/mol、または4000~5000g/mol、または5000~6000g/mol、または6000~7000g/mol、または7000~8000g/molまたは8000~10000g/mol、または10000~15000g/mol、または15000~20000g/mol、または20000~30000g/mol、または30000~40000g/mol、または40000~50000g/mol、または50000~60000g/mol、または60000~70000g/mol、または70000~80000g/mol、または80000~100000g/molの数平均モル質量を有する。数平均モル質量は、好ましくは標準ISO16014-1:2012に従って、GPCにより判定され得る。
【0074】
有利には、イソシアネート-反応性化合物は、ヒドロキシル基、アミン基、チオール基およびカルボン酸基から選択される少なくとも1個の反応性基を有する。好ましくは、イソシアネート-反応性化合物は、少なくとも1個の反応性ヒドロキシル基、より優先的にはいくつかのヒドロキシル基を有する。したがって、特に有利には、イソシアネート-反応性化合物は、ポリオールを含む、またはそれからなる。
【0075】
好ましくは、ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリシロキサンジオール、ポリアルキレンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび/またはポリカーボネートジオールであり、その結果、熱可塑性ポリウレタンの可撓性ブロックは、それぞれポリエーテルブロック、ポリエステルブロックおよび/またはポリカーボネートブロックとなる。より好ましくは、熱可塑性ポリウレタンの可撓性ブロックは、ポリエーテルブロックおよび/またはポリエステルブロックである(ポリオールは、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールである)。
【0076】
ポリエステルポリオールとして、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸および/またはセバシン酸から選択される1つまたは複数のカルボン酸、ならびに、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよび/またはポリテトラヒドロフランから選択される1つまたは複数のアルコールをベースとしたポリカプロラクトンポリオールおよび/またはコポリエステルが挙げられ得る。より詳細には、コポリエステルは、アジピン酸、ならびに1,2-エタンジオールおよび1,4-ブタンジオールの混合物をベースとし得、またはコポリエステルは、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸、セバシン酸もしくはそれらの混合物をベースとし得、ポリテトラヒドロフラン(テトラメチレングリコール)またはコポリエステルは、これらのコポリエステルの混合物であり得る。
【0077】
ポリエーテルジオール(すなわち脂肪族α,ω-ジヒドロキシルポリオキシアルキレンブロック)は、好ましくはポリエーテルポリオールとして使用される。好ましくは、ポリエーテルポリオールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/またはブチレンオキシドベースのポリエーテルジオール、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドベースのブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリブタンジオールまたはそれらの混合物である。ポリエーテルポリオールは、好ましくはポリテトラヒドロフラン(熱可塑性ポリウレタンの可撓性ブロックは、したがってポリテトラヒドロフランブロックである)、および/またはポリプロピレングリコール(熱可塑性ポリウレタンの可撓性ブロックは、したがってポリプロピレングリコールブロックである)、および/またはポリエチレングリコール(熱可塑性ポリウレタンの可撓性ブロックは、したがってポリエチレングリコールブロックである)、好ましくは500~15000g/mol、好ましくは1000~3000g/molの数平均モル質量を有するポリテトラヒドロフランである。ポリエーテルポリオールは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの反応生成物であるポリエーテルジオールであり得;プロピレンオキシドに対するエチレンオキシドのモル比は、好ましくは0.01~100、より優先的には0.1~9、より優先的には0.25~4、より優先的には0.4~2.5、より優先的には0.6~1.5であり、これは、より優先的には1である。
【0078】
本発明に使用できるポリシロキサンジオールは、好ましくは500~15000g/molの、好ましくは1000~3000g/molの数平均モル質量を有する。数平均モル質量は、好ましくは標準ISO16014-1:2012に従って、GPCにより判定され得る。有利には、ポリシロキサンジオールは、式(I):
HO-[R-O]-R-Si(R’)-[O-Si(R’)-O-Si(R’)-R-[O-R]-OH(I)
[式中、Rは、好ましくはC~Cアルキレンであり、R’は、好ましくはC~Cアルキルであり、n、mおよびpのそれぞれは、独立して、好ましくは0と50の間の整数を表し、mは、より好ましくは1~50、より一層優先的には2~50である]のポリシロキサンである。好ましくは、ポリシロキサンは、以下の式(II):
[式中、Meは、メチル基である]
または以下の式(III):
を有する。
【0079】
本発明に使用できるポリアルキレンジオールは、好ましくはブタジエンベースである。
【0080】
本発明に使用できるポリカーボネートジオールは、好ましくは脂肪族ポリカーボネートジオールである。ポリカーボネートジオールは、好ましくはアルカンジオールベースである。好ましくは、これは、厳密には二環能性である。本発明による好ましいポリカーボネートジオールは、ブタンジオール、ペンタンジオールおよび/またはヘキサンジオール、詳細には1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタン-(1,5)-ジオール、またはそれらの混合物をベースとし、より優先的には1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、またはそれらの混合物をベースとするものである。詳細には、ポリカーボネートジオールは、ブタンジオールおよびヘキサンジオールベース、もしくはペンタンジオールおよびヘキサンジオールベース、もしくはヘキサンジオールベースのポリカーボネートジオールであり得る、または、これらのポリカーボネートジオールの2つ以上の混合物であり得る。ポリカーボネートジオールは、有利には、500~4000g/mol、好ましくは650~3500g/mol、より優先的には800~3000g/molの数平均モル質量を有する。数平均モル質量は、好ましくは標準ISO16014-1:2012に従って、GPCにより判定され得る。
【0081】
1つまたは複数のポリオールは、イソシアネート-反応性化合物として使用され得る。
【0082】
特に好ましくは、TPUの可撓性ブロックは、ポリテトラヒドロフラン、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコールのブロックである。
【0083】
好ましくは、鎖延長剤は、熱可塑性ポリウレタンの調製に、イソシアネートおよびイソシアネート-反応性化合物に加えて使用される。
【0084】
鎖延長剤は、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式である。これは有利には、50~499g/molの数平均モル質量を有する。数平均モル質量は、好ましくは標準ISO16014-1:2012に従って、GPCにより判定され得る。鎖延長剤は、好ましくは2個のイソシアネート-反応基(「官能基」ともいわれる)を有する。単一の鎖延長剤、または少なくとも2種の鎖延長剤の混合物を使用することが可能である。
【0085】
鎖延長剤は、好ましくは、二官能性である。鎖延長剤の例は、2~10個の炭素原子を有するジアミンおよびアルカンジオールである。詳細には、鎖延長剤は、1,2-エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメタノールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンビス(ベータ-ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-および/またはデカ-アルキレングリコール、それらのそれぞれのオリゴマー、ポリプロピレングリコールおよびそれらの混合物からなる群から選択され得る。より優先的には、鎖延長剤は、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、これは、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールおよび/または1,6-ヘキサンジオールから選択される。より一層優先的には、鎖延長剤は、より優先的には6:1~10:1のモル比の1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールの混合物である。
【0086】
有利には、触媒は、熱可塑性ポリウレタンを合成するために使用される。触媒は、ポリイソシアネートのNCO基と、イソシアネート-反応性化合物(好ましくはイソシアネート-反応性化合物のヒドロキシル基)との間における、また、存在する場合は鎖延長剤を用いた、反応を加速させることを可能にする。
【0087】
触媒は、好ましくは第三級アミンであり、より優先的にはトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノールおよび/またはジアザビシクロ-(2,2,2)-オクタンから選択される。別法として、またはさらに、触媒は、有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、好ましくはアセチルアセトン酸第二鉄(ferric acetylacetonate)、スズ化合物、好ましくはカルボン酸のもの、より優先的には二酢酸スズ、スズジオクテート(tin dioctoate)、ジラウリン酸スズまたはジアルキルスズ塩、好ましくは二酢酸ジブチルスズおよび/もしくはジラウリン酸ジブチルスズ、ビスマスカルボン酸塩、好ましくはデカン酸ビスマスまたはそれらの混合物である。
【0088】
より好ましくは、触媒は、スズジオクテート、デカン酸ビスマス、チタン酸エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、触媒は、スズジオクテートである。
【0089】
熱可塑性ポリウレタンの調製中、イソシアネート-反応性化合物および鎖延長剤のモル比は、TPUの硬度およびメルトフローインデックスを変動させて調整できる。具体的には、鎖延長剤の比率が上昇すると、TPUの硬度および溶融粘度が増大する一方、TPUのメルトフローインデックスは低下する。可撓性TPUの生成物では、好ましくは、95未満、より優先的には75~95のShore A硬度を有するTPU、イソシアネート-反応性化合物および鎖延長剤を、1:1~1:5、好ましくは1:1.5~1:4.5のモル比で使用でき、その結果、好ましくはイソシアネート-反応性化合物および鎖延長剤の混合物は、200超、より詳細には230~650、より一層優先的には230~500のヒドロキシル当量重量を有する。より硬いTPUの生成物では、好ましくは98超のShore A硬度、好ましくは55~75のShore D硬度を有するTPU、イソシアネート-反応性化合物および鎖延長剤を、1:5.5~1:15、好ましくは1:6~1:12のモル比で使用でき、その結果、好ましくはイソシアネート-反応性化合物および鎖延長剤の混合物は、110~200、より優先的には120~180のヒドロキシル当量重量を有する。
【0090】
有利には、TPUを調製するために、ポリイソシアネート、イソシアネート-反応性化合物および好ましくは鎖延長剤を、好ましくは、ポリイソシアネートのNCO基と、イソシアネート-反応性化合物のヒドロキシル基および鎖延長剤の総計の当量比が、0.95:1~1.10:1、好ましくは0.98:1~1.08:1、より好ましくは1:1~1.05:1になるような量の触媒の存在下にて反応させる。触媒は、有利には、TPU合成試薬の100重量部当たり0.0001~0.1重量部の量で存在する。
【0091】
本発明によるTPUは、好ましくは10000g/mol以上、好ましくは40000g/mol以上、より優先的には60000g/mol以上の重量平均分子量を有する。好ましくは、TPUの重量平均分子量は、80000g/mol以下である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により判定できる。
【0092】
有利には、TPUは、半結晶性である。その溶融温度Tmは、好ましくは100℃~230℃、より好ましくは120℃~200℃である。溶融温度は、標準ISO11357-3 Plastics - Differential scanning calorimetry (DSC) Part 3に従って測定できる。
【0093】
有利には、TPUは、リサイクルしたTPU、および/または部分的にもしくは完全にバイオベースのTPUであり得る。
【0094】
好ましくは、TPUは、75以下、より優先的には65以下のShore D硬度を有する。詳細には、本発明に使用されるTPUは、65Shore A~70Shore D、好ましくは75Shore A~60Shore Dの硬度を有し得る。硬度測定は、標準ISO7619-1に従って実行され得る。
【0095】
有利には、本発明によるTPUは、0.002meq/g~0.6meq/g、好ましくは0.01meq/g~0.4meq/g、より好ましくは0.03meq/g~0.2meq/gのOH官能基の濃度を有する。実施形態では、本発明によるTPUは、0.002~0.005meq/g、または0.005~0.01meq/g、または0.01~0.02meq/g、または0.02~0.04meq/g、または0.04~0.06meq/g、または0.06~0.08meq/g、または0.08~0.1meq/g、または0.1~0.2meq/g、または0.2~0.3meq/g、または0.3~0.4meq/g、または0.4~0.5meq/g、または0.5~0.6meq/gのOH官能基の濃度を有する。OH官能基の濃度は、以下の論文に記載されている条件に従ってNMRにより判定できる:「Reactivity of isocyanates with urethanes: Conditions for allophanate formation」、Lapprandら、Polymer Degradation and Stability、第90巻、第2号、2005年、363~373頁。
【0096】
TPUおよびPEBA組成物
本発明による組成物は、少なくとも1つのPEBAおよび少なくとも1つのTPUを含むブレンドである。「ブレンド」という用語は、均一な混合物(巨視的に均一な混合物、すなわち肉眼で均一である混合物)を意味すると理解される。
【0097】
本発明による組成物は、有利には、組成物の合計重量に対して、20重量%~95重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに5重量%~80重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、より優先的には30重量%~85重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに15重量%~70重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、より一層優先的には40重量%~80重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに20重量%~60重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを含む。実施形態では、組成物は、組成物の合計重量に対して、20重量%~30重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに70重量%~80重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、または30重量%~40重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに60重量%~70重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、または40重量%~50重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに50重量%~60重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、または50重量%~60重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに40重量%~50重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、または60重量%~70重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに30重量%~40重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、または70重量%~80重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに20重量%~30重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、または80重量%~90重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに10重量%~20重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン、または90重量%~95重量%のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに5重量%~10重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0098】
本発明による組成物におけるアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、および少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンからなる組立体のウレタン官能基対NHアミン官能基のモル比は、15~350、好ましくは25~250、より一層好ましくは40~200であり得る。アミン官能基およびウレタン官能基の濃度は、以下の論文に記載されている条件に従ってNMRにより判定できる: 「Reactivity of isocyanates with urethanes: Conditions for allophanate formation」、Lapprandら、Polymer Degradation and Stability、第90巻、第2号、2005年、363~373頁。
【0099】
本発明による組成物は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、ならびに少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンからなり得る。
【0100】
あるいは、組成物は、好ましくは耐衝撃性改良剤、官能性または非官能性ポリオレフィン、コポリエーテルエステル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリレート共重合体、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート共重合体、エチレンおよびスチレンを含む共重合体、ポリオルガノシロキサン、可塑剤、核剤、潤滑剤、成形剥離剤、色素、顔料、有機または無機充填剤、補強剤、難燃剤、UV吸収剤、蛍光増白剤、光安定剤、抗酸化剤およびそれらの混合物から選択される1つまたは複数の添加剤を含み得る。有利には、添加剤は、組成物の合計重量に対して、0.1重量%~20重量%、好ましくは0.2重量%~10重量%の量で存在する。
【0101】
本発明による組成物は、23℃において170MPa以下の引張り係数を有する。組成物の引張り係数は、標準ISO527-1Aに従って判定できる。より好ましくは、組成物の23℃での引張り係数は、150MPa以下である。詳細には、これは、20~30MPa、または30~40MPa、または40~50MPa、または50~60MPa、または60~70MPa、または70~80MPa、または80~90MPa、または90~100MPa、または100~110MPa、または110~120MPa、または120~130MPa、または130~140MPa、または140~150MPa、または150~160MPa、または160~170MPaであり得る。
【0102】
好ましくは、全体の可撓性ブロック(すなわち熱可塑性ポリウレタンおよびPEBAの可撓性ブロック)の重量は、PEBAおよびTPUの合計重量に対して、10%~95%、より優先的には30%~90%、より一層優先的には50%~85%である。全体の可撓性ブロックは、詳細には、PEBAおよびTPUの合計重量に対して、10%~20%、または20%~30%、または30%~40%、または40%~50%、または50%~60%、または60%~70%、または70%~80%、または80%~90%、または90%~95%であり得る。全体の可撓性ブロックの重量は、核磁気共鳴(NMR)により判定できる。
【0103】
有利には、組成物は、23℃において0.12以下、好ましくは0.11以下、有利には0.10以下のtan δを有する。tan δ(または損失係数)は、23℃において、23℃の温度にて、動的機械分析(DMA)により測定される損失弾性率E’’対弾性係数E’の比に相当する。これは、2019年から標準ISO6721に従って測定でき、測定は、0.1%の引張り歪、1Hzの周波数および2℃/minの加熱速度で実行されている。tan δは、組成物の弾性を特徴付けることを可能にし:tan δが低いほど、弾力性の回復は大きくなる。組成物の23℃でのtan δは、0.05~0.06、または0.06~0.07、または0.07~0.08、または0.08~0.09、または0.09~0.10、または0.10~0.11、または0.11~0.12であり得る。
【0104】
本発明による組成物は、好ましくは1.16以下、より優先的には1.14以下、有利には1.12以下の密度を有する。組成物の密度は、ISO1183-1標準に従って判定できる。実施形態では、組成物は、1.00~1.01、または1.01~1.02、または1.02~1.03、または1.03~1.04、または1.04~1.05、または1.05~1.06、または1.06~1.07、または1.07~1.08、または1.08~1.09、または1.09~1.10、または1.10~1.11、または1.11~1.12、または1.12~1.13、または1.13~1.14、または1.14~1.15、または1.15~1.16の密度を有し得る。
【0105】
組成物は、好ましくは、70~98、より好ましくは75~95のShore A硬度を有する。硬度測定は、ISO7619-1標準に従って実行され得る。
【0106】
組成物は、有利には、30%の歪みで10サイクル後に、15%以下、好ましくは13%以下の引張り永久歪みを有し得る。引張り永久歪みは、「実施例」セクションにおいて、以下で指し示されているように決定され得る。
【0107】
組成物は、有利には顆粒の形態である。あるいは、これは粉末形態であり得る。
【0108】
有利には、本発明によるTPUおよびPEBAの組成物は、熱可塑性ポリエーテルの少なくとも一部に、尿素官能基により共有結合しているポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の少なくとも一部を含む。
【0109】
好ましくは、本発明による組成物は、0.001meq/g~0.1meq/g、好ましくは0.003meq/g~0.08meq/g、より好ましくは0.005meq/g~0.05meq/gの尿素官能基の濃度を有する。尿素官能基の濃度は、以下の論文に記載されている条件に従ってNMRにより判定できる:「Reactivity of isocyanates with urethanes: Conditions for allophanate formation」、Lapprandら、Polymer Degradation and Stability、第90巻、第2号、2005年、363~373頁。
【0110】
好ましくは、熱可塑性ポリウレタンの少なくとも一部に、尿素官能基により共有結合しているポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の一部は、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の量の10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、より優先的には2重量%以下を表す。
【0111】
別の態様によれば、本発明は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、および少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタン前駆体の反応により得られた組成物に関する。上記の特性は、本発明のこの態様と同様の手法で適用され得る。したがって、詳細には、上記の、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体、および少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンの組成物の量は、それぞれ、反応させる、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体の量、および少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンまたは熱可塑性ポリウレタン前駆体の量に適用され得る。組成物は、23℃において170MPa以下の引張り係数を有する。
【0112】
調製方法
本発明は、上記の組成物を調製するための方法にも関する。
【0113】
第1の有利な変形によれば、本発明による組成物は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を溶融状態で、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを溶融状態で混合する工程を含む方法により調製され得る。そのような調製方法は、ある混合時間および温度条件下で、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の一部のアミン官能基とTPUのウレタン官能基の間において行われる反応を可能にし、これにより、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体と熱可塑性ポリウレタンとの間における適合性が改善する。
【0114】
有利には、組成物の合計重量に対して、混合される、溶融状態のアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の量は、20重量%~95重量%、好ましくは30重量%~85重量%、より優先的には40重量%~80重量%であり、混合される、溶融状態の熱可塑性ポリウレタンの量は、5重量%~80重量%、好ましくは15重量%~70重量%、より優先的には20重量%~60重量%である。
【0115】
混合する工程は、プラスチックを溶融状態で混合する、混練する、または押し出すための、当業者に公知の任意のデバイス、例えば密閉式混合機、オープンミル、押出機、例としてシングルスクリュー押出機または対向回転もしくは共回転ツインスクリュー押出機、コニーダー、例として連続コニーダー、あるいは撹拌反応器で行われ得る。好ましくは、混合する工程は、押出機またはコニーダーにおいて、より優先的には押出機において、より一層優先的にはツインスクリュー押出機において行われる。
【0116】
好ましくは、混合する工程は、160℃を超える、またはそれに等しい、好ましくは160℃~300℃、より好ましくは180℃~260℃の温度で実行する。これらの温度範囲は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体と、熱可塑性ポリウレタンとの間における最適な反応、したがって、2種のポリマーのより優れた適合性を可能にする。
【0117】
有利には、混合する工程は、30秒~15分、好ましくは40秒~10分の期間実行する。好ましくは、混合する工程は、撹拌しながら実行する。これらの混合条件は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体と、熱可塑性ポリウレタンとの間における最適な反応、したがって、2種のポリマーのより優れた適合性を可能にする。
【0118】
アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体ならびに熱可塑性ポリウレタンは、独立して、溶融-ブレンドされる前に、粉末または顆粒の形態であり得る。
【0119】
混合する工程は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体ならびに熱可塑性ポリウレタンを、溶融状態で、組成物の他の成分(例えば添加剤)と混合することを含み得る。
【0120】
有利には、調製方法は、混合物を顆粒または粉末の形態で成形する工程を含む。
【0121】
混合物が粉末に形成される場合、これは、好ましくは最初に顆粒に形成され、次いで顆粒は粉末にすり潰される。任意のタイプのミル、例えばハンマーミル、ピンミル、アトリションディスクミルまたは衝撃分級ミルを使用できる。
【0122】
好ましくは、混合物は、顆粒に形成される。
【0123】
別の有利な変形によれば、組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンの合成中に、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1つの共重合体を導入することにより調製され得る。そのような調製方法では、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体は、イソシアネート-反応性化合物として(上記の「熱可塑性ポリウレタン(TPU)」のセクションで記載されているように)、任意選択で別のイソシアネート-反応性化合物、好ましくは上記のポリオール、および/または上記のように鎖延長剤に加えて使用される。
【0124】
したがって、調製方法は、
- 熱可塑性ポリウレタンの前駆体(すなわち少なくとも1つのポリイソシアネート、任意選択で少なくとも1つのイソシアネート-反応性化合物、および任意選択で少なくとも1つの鎖延長剤)を反応器中に導入する工程;
- アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体を反応器中に導入する工程;
- 熱可塑性ポリウレタンを、反応器中で、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の存在下にて合成して、その結果、熱可塑性ポリウレタン、ならびにポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の組成物を得る工程を含み得る。
【0125】
そのような調製方法は、熱可塑性ポリウレタンの合成中における、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体のNHアミン官能基の一部と、ポリイソシアネートの一部のイソシアネート官能基の反応を可能にし、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体と熱可塑性ポリウレタンとの間における共有結合の形成を引き起こし、これにより、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体と熱可塑性ポリウレタンとの間における適合性が改善する。
【0126】
有利には、組成物の合計重量に対して、反応器中に導入されるアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の量は、20重量%~95重量%、好ましくは30重量%~85重量%、より優先的には40重量%~80重量%であり、反応器中に導入される熱可塑性ポリウレタン前駆体の量は、5重量%~80重量%、好ましくは15重量%~70重量%、より優先的には20重量%~60重量%である。
【0127】
熱可塑性ポリウレタンの前駆体を導入する、ならびにアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体を導入する工程は、同時であり得る、またはあらゆる順番で実行され得る。触媒も、詳細には上記のように、反応器中に導入され得る。
【0128】
反応器は、バッチ反応器、撹拌反応器、静的混合機、密閉式混合機、オープンミル、押出機、例えばシングルスクリュー押出機、または対向回転もしくは共回転ツインスクリュー押出機、連続コニーダー、あるいはそれらの組合せであり得る。好ましくは、反応器は、押出機、より好ましくはツインスクリュー押出機である。
【0129】
好ましくは、熱可塑性ポリウレタンを合成する工程(アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体の存在下にて)は、160℃を超える、またはそれに等しい温度、好ましくは160℃~300℃、より好ましくは180℃~270℃において実行する。これらの温度範囲は、アミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体と熱可塑性ポリウレタンとの間における最適な反応、したがって、2種のポリマーのより優れた適合性を可能にする。
【0130】
方法は、1つまたは複数の添加剤を反応器中に導入することと、それらを熱可塑性ポリウレタン、ならびにアミン鎖末端を含むポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体と反応器中で混合することを含み得る。
【0131】
好ましくは、調製方法は、組成物を、顆粒または粉末の形態で、より優先的には顆粒の形態で成形する工程を含む。組成物は、調製方法の第1の変形に関係する上記の手法で粉末に形成され得る。
【0132】
これらの調製方法では、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体ならびに熱可塑性ポリウレタンに関係する上記の特性すべて(詳細にはそれらの性質、それらの量など)は、同様の手法で適用され得る。
【0133】
一般的に、組成物の調製中、組成物の引張り係数は、23℃において:
- PEBAおよび/またはTPUの可撓性ブロックの数平均モル質量を増加させることにより;
- PEBAおよび/またはTPUの可撓性ブロックとして、より低い引張り係数の材料を使用することにより;
- PEBAおよび/またはTPU)の可撓性ブロックに対する剛性ブロックの重量比を低下させることにより;
- アミン鎖末端を含むPEBAの少なくとも一部と、TPUの少なくとも一部との間における反応を誘導することにより、低下させることが可能である。
【0134】
本発明は、上記の調製方法により得られる、またはそれにより得ることが可能である組成物にも関する。上記の、詳細には「TPUおよびPEBA組成物」セクションにおける特性は、この組成物と同様の手法で適用され得る。
【0135】
用途
本発明による組成物は、スポーツ用具、例えばスポーツ用履物ソール、スキー用履物、ミッドソール、インソール、あるいはソールの様々な部分(例えば踵または土踏まず)における挿入物の形態の、機能性ソール構成部材、あるいは履物上部の構造における補強物または挿入物の形態の、または保護物(protections)の形態の、履物上部構成部材の製造に使用され得る。
【0136】
これは、ボール、スポーツ用手袋(例えばフットボール用グローブ)、ゴルフボール構成部材、ラケット、保護体(ジャケット、ヘルメットの内側、シェルなど)の生産にも使用され得る。
【0137】
本発明による組成物は、様々な部品の生産にも使用され得る:
- 光学産業:眼鏡フレームの構成部材、鼻当てパッドまたはノーズピース、フレームの保護体;これは、本発明の組成物が、柔らかい絹のような感触を有し、オーバーモールドによりポリアミド、より具体的には透明ポリアミドに十分に接着し、かつ皮脂に耐性であるためである;
- 自動車産業:室内装飾体;これは、本発明の組成物が、柔らかい感触、良好な触覚性を有し、オーバーモールドにより完璧に接着し、皮脂に耐性かつ耐摩耗性であるためである;
- 製造産業:伝動またはコンベヤーベルト、無音ギア;これは、本発明の組成物が、耐熱性、耐摩耗性、かつオーバーモールドにより加工しやすいためである;
- 医療分野:パッチ、バイオフィードバックパッチ、薬物送達システム、センサー、カテーテル;
- 電子産業:ヘッドセットの構成部材、イヤホン、Bluetooth(登録商標)宝飾品および時計、ディスプレイスクリーン、コネクテッドウォッチ、コネクテッドグラス、インタラクティブゲームコンポーネントおよびデバイス、GPS、コネクテッドフットウェア、生体活動モニターおよびセンサー、インタラクティブベルトおよびブレスレット、チャイルドまたはペットトラッカー、ポケットスキャナーまたはパームトップ、位置センサー、トラッカーまたは視覚デバイス;
- 運送産業:鉄道用タイパッド;
- 玩具産業;
- 宝飾産業:時計バンド。
【0138】
上記の組成物からなる物品または構成部材は、射出成形により生成され得る。
【実施例
【0139】
以下の実施例は、本発明を、限定することなく例証する。
【0140】
以下のポリマーを使用した:
- TPU No.1:4,4’-MDIおよび1,6-HDO(1,6-ヘキサンジオール)ベースの剛性ブロックを有し、また、アジピン酸およびブタンジオールベースのポリエステル可撓性ブロックを有し、95のShore A硬度を有するTPU。
- TPU No.2:4,4’-MDIおよび1,6-HDO(1,6-ヘキサンジオール)ベースの剛性ブロックを有し、また、アジピン酸およびブタンジオールベースのポリエステル可撓性ブロックを有し、59のShore D硬度を有するTPU。
- PEBA:アミン鎖末端を含むポリアミド11の剛性ブロックおよびポリエーテル可撓性ブロックを含む、アミン鎖末端を含みPEBA共重合体(PTMGおよびPPGの共重合体)、1000g/molの数平均モル質量を有するポリアミド11の剛性ブロック、および1000g/molの数平均モル質量を有するポリエーテルの可撓性ブロック、0.032meq/gのNH官能基の濃度を有するPEBA共重合体。
【0141】
様々な組成物を調製した。それらの成分の量は、以下の表で重量パーセンテージとして指し示される。
【0142】
上記の組成物すべては、18mm ZSKツインスクリュー押出機(Coperion)を使用して生成した。バレルの温度を210℃にセットし、スクリュー速度は、8kg/hのスループットで280rpmであった。
【0143】
組成物を次いで、0.04%未満の水分含有量を達成するために、80℃において減圧下で乾燥させた。
【0144】
1Aテスト標本(ISO527に従った)および2mmシートを、未研磨の型を使用するBattenfeld BA800 CDCプレスを使用して射出成形することにより生成した。以下のパラメータを注入中に適用した:
- バレル温度:180℃。
- ノズル温度:200℃。
- 成形温度:30℃。
- サイクル時間:60秒。
【0145】
組成物No.1およびNo.2は、本発明による組成物であり、組成物No.3は、比較の組成物である。
【0146】
これらの組成物の様々な性質を評価した:
- 23℃での引張り係数:標準ISO527-1Aに従って測定した;
- 23℃での50%歪みの応力:標準ISO527-1Aに従って測定した;
- 破断伸び:標準ISO527-1Aに従って測定した;
- 破断応力:標準ISO527-1Aに従って測定した;
- 引張り永久歪みおよびヒステリシス領域:30%の歪みで10サイクル後における永久歪みおよびヒステリシス面積を決定するために実行されるヒステリシステストを、以下に詳述されている条件で実行した:
○試料:標準ISO527に従ったタイプ1Aテスト標本;
○条件付け:23℃および50%相対湿度にて2週間;
○動力計:Zwick 1;
○L0:75mm;
○テスト速度:200mm/min;
○歪み:30%;
○サイクルの数:10。
- 23℃での密度:標準ISO1183-1に従って測定した;
- 23℃でのShore A硬度:標準ISO7619-1に従って3s後に測定した;
- 23℃でのtan δ:2019年からの標準ISO6721に従って、0.1%の引張り歪、1Hzの周波数、および2℃/minの加熱速度で測定した。
【0147】
これらの評価すべてを、乾燥した(条件付けしていない)テスト標本で実行した。
【0148】
結果は、以下の表で提示されている。
【0149】
本発明による組成物は、比較の組成物より低い引張り永久歪みを有し:そのような組成物からなる品物は、比較の組成物からなる品物より耐久性があることが見出される。
【0150】
さらに、本発明による組成物は、23℃において、比較の組成物のものより低い損失係数(tan δ)を有し、したがって比較の組成物より高い弾性を有する一方、低密度を保つ。
【国際調査報告】