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特表2024-517427アミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼをコードするDNA分子の組成物、その作製の方法、及びその使用の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】アミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼをコードするDNA分子の組成物、その作製の方法、及びその使用の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20240415BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20240415BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240415BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 38/45 20060101ALN20240415BHJP
   A61K 38/47 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
A61K48/00
C12N15/54 ZNA
C12N15/864 Z
C12N15/35
A61K31/713
A61K31/711
A61P1/16
A61P21/00
A61P43/00 111
A61P3/00
A61K38/45
A61K38/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564174
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022060306
(87)【国際公開番号】W WO2022223556
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/177,016
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523029526
【氏名又は名称】アンジャリウム バイオサイエンシズ エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル デ ビーア
(72)【発明者】
【氏名】モニーク マウラー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ラバニヤ クナリンガム
(72)【発明者】
【氏名】マルチェロ クレリシ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA18
4C084DC22
4C084DC25
4C084MA43
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZA94
4C084ZC19
4C084ZC21
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZA94
4C086ZC19
4C086ZC21
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、逆方向反復、発現カセット、及びニッキングエンドヌクレアーゼ用の1つ以上の制限部位を含む二本鎖DNA分子、その使用の方法、並びにその作製方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者においてアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(GDE)の活性の低下に関連する疾患を治療するための方法であって、
該患者に生体適合性担体(ハイブリドソーム)又は脂質ナノ粒子を投与することを含み、
該ハイブリドソーム又は該脂質ナノ粒子が、ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセットを含むDNA分子を含む、前記方法。
【請求項2】
ヒト患者においてアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(GDE)の活性の低下に関連する疾患を治療するための方法であって、
該患者にヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセットを含むDNA分子を投与することを含み、
該DNA分子が、単一の送達ベクター内に入っている、前記方法。
【請求項3】
ヒト患者においてGDEの活性の低下に関連する疾患を治療するための方法であって、
(i)ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセットを含むDNA分子の第1の用量を該患者に投与する工程、及び
(ii)該DNA分子の第2の用量を該患者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項4】
前記DNA分子の前記第1の用量が、該DNA分子の前記第2の用量の少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、又は少なくとも11ヶ月前に前記患者に投与される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記DNA分子の前記第1の用量が、該DNA分子の前記第2の用量の少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、又は少なくとも20年前に前記患者に投与される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記二本鎖DNA分子の前記第1の用量及び該DNA分子の前記第2の用量が、同じ量の該DNA分子を含有する、請求項3~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記DNA分子の前記第1の用量及び該DNA分子の前記第2の用量が、異なる量の該DNA分子を含有する、請求項3~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記DNA分子の1以上の追加の用量を投与することをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項9】
前記DNA分子が、週1回、2週に1回、又は月1回投与される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記DNA分子が、約6ヶ月ごと、約12ヶ月ごと、約18ヶ月ごと、約2年ごと、約3年ごと、約5年ごと、約10年ごと、約15年ごと、又は約20年ごとに前記患者に投与される、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
前記DNA分子が、前記患者の一生涯にわたり該患者に投与される、請求項8~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、成人患者である、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、小児患者である、請求項1又は11記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、前記DNA分子の前記第1の用量が投与されるときに小児患者である、請求項3~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記小児患者が、乳幼児である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記小児患者が、約1歳、約2歳、約3歳、約4歳、約5歳、約6歳、約7歳、約8歳、約9歳、約10歳、約11歳、約12歳、約13歳、約14歳、約15歳、約16歳、約17歳、又は約18歳である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項17】
前記疾患が、糖原病(GDS)III型(GSDIII)である、請求項1~16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記疾患が、GSDIIIa、GSDIIIb、GSDIIIc、及びGSDIIIdである、請求項1~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記導入遺伝子が、配列番号:174、175、178、又は179に記載される配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%同一である配列を含む、請求項1~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
以下のGSDIIIの臨床症状:空腹時不耐性、運動不耐性、発育不全、ミオパチー、筋力低下、及び肝腫大のうちの1つ以上の改善をもたらす、請求項1~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記患者において、1年あたりの低血糖エピソードの回数の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の減少をもたらす、請求項1~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
肝機能検査によって決定した場合に、患者において約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の肝機能の改善をもたらす、請求項1~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記患者において、1年あたりの高脂血症のエピソードの回数の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の減少をもたらす請求項1~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
以下の代謝マーカー:グルコース、乳酸、ケトン、クレアチンホスホキナーゼ、尿酸、脂質、又はケトンのうちの1つ以上によって測定される、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%超の臨床的改善をもたらす、請求項1~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記患者における尿中グルコーステトラサッカライド(Glc4)のレベルによって測定される、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%超の臨床的改善をもたらす、請求項1~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
天然のGDEタンパク質の生物活性レベルの約1~10%、約10~20%、約20~30%、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%又は約80~90%のGDEタンパク質活性をもたらす、請求項1~19のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記DNA分子が、定量的リアルタイムPCRによって前記患者の肝細胞で検出可能である、請求項1~26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記患者由来の生体試料(例えば、肝臓試料)における限界デキストリン蓄積の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%超の低減をもたらす、請求項1~27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記DNA分子が、定量的リアルタイムPCRによって前記患者の筋組織で検出可能である、請求項1~26のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記患者由来の生体試料(例えば、筋肉試料)における限界デキストリン蓄積の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%超の低減をもたらす、請求項1~27のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
トップ鎖の5’から3’方向に:
a.第1の逆方向反復であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第1の逆方向反復;
b.ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセット;及び
c.第2の逆方向反復であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復
を含む二本鎖DNA分子。
【請求項32】
トップ鎖の5’から3’方向に:
a.第1の逆方向反復であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第1の逆方向反復;
b.ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセット;及び
c.第2の逆方向反復であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復
を含む二本鎖DNA分子。
【請求項33】
トップ鎖の5’から3’方向に:
a.第1の逆方向反復であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第1の逆方向反復;
b.ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセット;及び
c.第2の逆方向反復であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復
を含む二本鎖DNA分子。
【請求項34】
トップ鎖の5’から3’方向に:
a.第1の逆方向反復であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第1の逆方向反復;
b.ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセット;及び
c.第2の逆方向反復であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復
を含む二本鎖DNA分子。
【請求項35】
単離DNA分子である、請求項31~34のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項36】
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位が全て、同一のニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位である、請求項31~35のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項37】
前記第1及び第2の逆方向反復が、同一である、請求項31~35のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項38】
前記第1及び/又は第2の逆方向反復が、パルボウイルスのITRである、請求項31~35のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項39】
前記第1及び/又は第2の逆方向反復が、パルボウイルスの改変ITRである、請求項31~35のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項40】
前記パルボウイルスが、ディペンドパルボウイルス、ボカパルボウイルス、エリスロパルボウイルス、プロトパルボウイルス、又はテトラパルボウイルスである、請求項38又は39記載のDNA分子。
【請求項41】
前記改変ITRのヌクレオチド配列が、前記パルボウイルスの前記ITRと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は少なくとも99%同一である、請求項39記載のDNA分子。
【請求項42】
前記ITRが、ウイルス複製関連タンパク質結合配列(「RABS」)を含む、請求項38~41のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項43】
前記RABSが、Rep結合配列を含む、請求項42記載のDNA分子。
【請求項44】
前記RABSが、NS1結合配列を含む、請求項42記載のDNA分子。
【請求項45】
前記ITRが、RABSを含まない、請求項38~41のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項46】
前記導入遺伝子が、配列番号:174、175、178、又は179の配列を含む、請求項31~45のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項47】
a.前記第1のニックが、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
b.前記第2のニックが、該第1の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
c.前記第3のニックが、前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;かつ/又は
d.前記第4のニックが、該第2の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にある、
請求項31又は35記載のDNA分子。
【請求項48】
a.前記第1のニックが、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
b.前記第2のニックが、該第1の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
c.前記第3のニックが、前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;かつ/又は
d.前記第4のニックが、該第2の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にある、
請求項32又は35記載のDNA分子。
【請求項49】
a.前記第1のニックが、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
b.前記第2のニックが、該第1の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
c.前記第3のニックが、前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;かつ/又は
d.前記第4のニックが、該第2の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にある、
請求項33又は35記載のDNA分子。
【請求項50】
a.前記第1のニックが、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
b.前記第2のニックが、該第1の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
c.前記第3のニックが、前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;かつ/又は
d.前記第4のニックが、該第2の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にある、
請求項34又は35記載のDNA分子。
【請求項51】
前記ニックが、前記逆方向反復の内部にある、請求項47~50のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項52】
前記ニックが、前記逆方向反復の外部にある、請求項47~50のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項53】
前記DNA分子が、プラスミドである、請求項31~52のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項54】
前記プラスミドが、細菌の複製起点をさらに含む、請求項53記載のDNA分子。
【請求項55】
前記プラスミドが、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域に制限酵素部位をさらに含み、
該制限酵素部位が、該第1の逆方向反復、該第2の逆方向反復、及び該第1の逆方向反復と該第2の逆方向反復との間の領域のいずれの中にも存在しない、請求項53記載のDNA分子。
【請求項56】
前記制限酵素での切断が、前記第1逆方向反復の及び/又は第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件下で検出可能なレベルでアニーリングしない一本鎖オーバーハングをもたらす、請求項55記載のDNA分子。
【請求項57】
前記プラスミドが、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域にニッキングエンドヌクレアーゼ用の第5及び第6の制限部位をさらに含み、
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の該第5及び第6の制限部位が:
a.向かい合う鎖上にあり;かつ
b.切断の一本鎖オーバーハングが該第1の及び/又は第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件下で検出可能なレベルで分子間又は分子内アニーリングしないような、該切断を前記二本鎖DNA分子内に生じさせる、
請求項53記載のDNA分子。
【請求項58】
前記第5及び第6のニックが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド離れている、請求項57記載のDNA分子。
【請求項59】
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位が全て、同一のニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である、請求項57記載のDNA分子。
【請求項60】
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び/又は第4の制限部位を認識する前記ニッキングエンドヌクレアーゼが、Nt. BsmAI; Nt. BtsCI; N. ALwl; N. BstNBI; N. BspD6I; Nb. Mva1269I; Nb. BsrDI; Nt. BtsI; Nt. BsaI; Nt. Bpu10I; Nt. BsmBI; Nb. BbvCI; Nt. BbvCI;又はNt. BspQIである、請求項31~59のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項61】
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第5及び第6の制限部位を認識する前記ニッキングエンドヌクレアーゼが、Nt. BsmAI; Nt. BtsCI; N. ALwl; N. BstNBI; N. BspD6I; Nb. Mva1269I; Nb. BsrDI; Nt. BtsI; Nt. BsaI; Nt. Bpu10I; Nt. BsmBI; Nb. BbvCI; Nt. BbvCI;又はNt. BspQIである、請求項57記載のDNA分子。
【請求項62】
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び/又は第4の制限部位を認識する前記ニッキングエンドヌクレアーゼが、プログラム可能なニッキングエンドヌクレアーゼである、請求項31~59のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項63】
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第5及び第6の制限部位を認識する前記ニッキングエンドヌクレアーゼが、プログラム可能なニッキングエンドヌクレアーゼである、請求項57記載のDNA分子。
【請求項64】
前記ニッキングエンドヌクレアーゼが、Casヌクレアーゼである、請求項62又は63記載のDNA分子。
【請求項65】
前記発現カセットが、転写単位に作動的に連結されたプロモーターをさらに含む、請求項31~64のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項66】
前記転写単位が、オープンリーディングフレームを含む、請求項65記載のDNA分子。
【請求項67】
前記発現カセットが、転写後制御因子をさらに含む、請求項65又は66記載のDNA分子。
【請求項68】
前記発現カセットが、ポリアデニル化及び終止シグナルをさらに含む、請求項65又は66記載のDNA分子。
【請求項69】
前記発現カセットのサイズが、少なくとも4kb、少なくとも4.5kb、少なくとも5kb、少なくとも5.5kb、少なくとも6kb、少なくとも6.5kb、少なくとも7kb、少なくとも7.5kb、少なくとも8kb、少なくとも8.5kb、少なくとも9kb、少なくとも9.5kb、又は少なくとも10kbである、請求項65~68のいずれか1項記載のDNA分子。
【請求項70】
0.1~500mgの請求項31~69のいずれか1項記載のDNA分子、及び該DNA分子を投与するための装置を含む、ヒトGDEをインビボで発現させるためのキット。
【請求項71】
前記装置が、注射針である、請求項70記載のキット。
【請求項72】
請求項31~69のいずれか1項記載の1種以上のDNA分子、及び医薬として許容し得る担体、を含む組成物。
【請求項73】
前記担体が、トランスフェクション試薬、ナノ粒子、ハイブリドソーム、又はリポソームを含む、請求項72記載の組成物。
【請求項74】
医学療法における使用のための、請求項72又は73記載の組成物。
【請求項75】
それを必要とする対象において、GDEの活性の低下に関連する疾患又は障害を改善、予防、発症遅延、又は治療するための医薬品を調製又は生産するための、請求項72~74のいずれか1項記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている、2021年4月20日に出願された米国シリアル番号第63/177,016号の優先権の利益を主張する。
【0002】
(電子的に提出された配列表に対する言及)
本出願は、2022年4月19日に作成され167,403バイトのサイズを有する「14497-008-228_Sequence_Listing.txt」と名付けられたテキストファイルとして本出願と共に提出される配列表を引用により組み込む。
【0003】
(1.分野)
本明細書で提供されるのは、アミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼをコードする二本鎖DNA分子、その使用の方法、及びその作製の方法である。また、グリコーゲン貯蔵障害(glycogen storage disorders)を治療する方法も提供される。
【背景技術】
【0004】
(2.背景)
遺伝子療法は、遺伝子を標的細胞内に導入して疾患を治療又は予防することを目的とする。活性な遺伝子産物(導入遺伝子と呼ばれることもある)を有する転写カセットを供給することによって、遺伝子療法の実施が、臨床転帰を改善することがある。これは、該遺伝子産物が、有益な機能効果の獲得、有害な機能効果の喪失、又は別の結果をもたらすことができるためであり、例えば、がんを患う患者では、腫瘍溶解効果を有し得る。患者の標的細胞における修正遺伝子の送達及び発現は、ウイルスによらない送達(例えば、リポソームによるもの)方法又は操作されたウイルス及びウイルス遺伝子送達ベクターの使用を含むウイルスによる送達方法などの多くの方法で実施することができる。ウイルス粒子としても知られる利用可能なウイルス由来ベクター(例えば、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルスなど)のうち、AAV系が、遺伝子療法における用途の広いベクターとして普及してきている。
【0005】
しかしながら、遺伝子送達ベクターとしてウイルス粒子を使用することには重大な欠点がいくつかある。重大な欠点の一つは、転写カセットをウイルス粒子中にパッケージングするのにウイルスのライフサイクル及びウイルスタンパク質に依存するとういことである。その結果、ウイルスベクターの使用は、導入遺伝子のサイズ(例えば、AAVでは150,000Da未満のタンパク質コード能力)の点又は効率的な複製及びパッケージングを確実とするために、発現カセットを不安定化してしまうことがある特定のウイルス配列(例えば、Rep結合エレメント)が存在する必要があるという点で制限がある。従って、大きな導入遺伝子(例えば、150,000Daよりも大きなタンパク質をコードする導入遺伝子、又は約4.7Kbよりも長い導入遺伝子)を送達するには、2つ以上のウイルス粒子が必要とされることがある。2つ以上のAAV構築体の使用は、AAVゲノムの再活性化のリスクを増加させる可能性がある。
【0006】
第2の欠点は、遺伝子療法に使用されるウイルス粒子が、多くの場合、人口の一部がその生涯のうちに曝露されている野生型ウイルスに由来していることである。これらの患者は、Snyder, Richard O.、及びPhilippe Moullierの文献、「アデノ随伴ウイルス:方法及びプロトコール(Adeno-associated virus : methods and protocols)」、Totowa, NJ: Humana Press, 2011においてさらに記載されているように、遺伝子療法の有効性を損なってしまう可能性がある中和抗体を有していることが分かっている。プリント...残りの血清陰性患者に関しては、ウイルスベクターのカプシドが多くの場合免疫原性であり、初期用量が十分ではなかったり、療法が徐々に無効化したりする場合に、患者へのウイルスベクター療法の再実施の妨げとなる。
【0007】
従って、ウイルス粒子の代替物としての非ウイルスベースの遺伝子療法、特に、大きな導入遺伝子を送達する療法に対する未だ満足されない需要が存在する。また、ウイルス複製機構(例えば、AAV Rep遺伝子)をコードするプラスミドやDNA配列を共存させることなく、ホスト細胞においてこれらのカプシド不含ベクターを製造する方法に対する未だ満足されない需要が存在する。これは、これらのウイルスタンパク質又はこれをコードするウイルスDNA配列が、カプシド不含ウイルスベクターの単離DNAに混入する可能性があるためである。
【0008】
さらに、向上した製造性及び/又は発現性を有する組換えDNAベクターに対する重要な未だ満足されない需要が依然として存在している。また、例えば、中和抗体を原因とする有効性の喪失を伴わずに反復投与を可能にする非免疫原性遺伝子送達ベクターに対する未だ満足されない需要も存在している。
【0009】
糖原病(glycogen storage diseases)GSDIII A型~C型などのアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(GDE)機能の欠陥又は欠損に関連する障害は、グリコーゲン代謝の欠陥を引き起こす。具体的には、GDEの脱分枝活性が損なわれ、これが、種々の組織におけるグリコーゲンの蓄積に繋がり、肝臓が最も大きな影響を受ける。代謝的な欠陥のために、患者は、低い血糖(低血糖(hypoglycemia))、肝臓の肥大(肝腫大)、過度の量の血中脂肪(高脂血症)、血中肝酵素レベルの上昇、慢性肝疾患(肝硬変)、肝不全、発育遅延、低身長、良性腫瘍(腺腫)、肥大型心筋症、心機能不全、うっ血性心不全、骨格筋ミオパチー、及び/又は不十分な筋緊張(筋緊張低下)を患う。現在のところ、疾患管理は、非常に若い年齢での重篤なケトン性低血糖を予防するための食事療法に限られている。厳格な食事制限を、出生後できる限り早く開始して、一生ではないにせよ少なくとも15年は継続しなければならない。さらに、GSDIII患者の大部分は、長期の症状を呈する。近年の代謝疾患に対するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースの遺伝子置換での成功にもかかわらず、遺伝子のサイズなどのAAV媒介性遺伝子導入の現時点での制限は、依然として、GSDIIIにおける遺伝子療法の成功のための難題となっている(Louisa Jauzeらの文献、Human Gene Therapy; 2019年10月、1263-1273)。さらに、おそらく治療されるべき肝細胞の病理学的状態を原因として、経時的な導入遺伝子の喪失が、肝臓に対するAAV遺伝子療法において観察されている。
【0010】
GSDIIIの分子生物学及び診断の理解が大幅に進んでいるにもかかわらず、この障害の新たな治療の開発はほとんど進展していない。GSDIIIにおける長続きする疾患修飾性療法に対する未だ満足されない大きな需要が残ったままである。現行の療法は、主として、正常血糖の短期の維持を目標としており、これは、厳格な食事制限を必要とし、また、服薬不順守は、発作及び極端な場合には昏睡を招くことがある。さらに、肝臓(重篤な線維症など)及び筋肉などの組織に対する長期の損傷を予防する必要性は、対処されないままである。GSDIIIに対して承認された遺伝子療法は存在せず、通常のAAVベースの療法は、大きな導入遺伝子を受け入れることができず、先在する抗体のために、患者の25%~40%は、これを用いることもできない。大きな導入遺伝子を受け入れ得る他のウイルス遺伝子療法ベクターは、それらが、1回のみしか投与できず、かつ得られるGDE発現レベルが、効果的となるほどには高くない可能性があるか、又は過常(supernormal)であることがあり、用量レベルを決定できないという難題を引き起こす。
【0011】
従って、本分野においては、GDSIIIの治療のために細胞、組織、又は対象における治療用GDEタンパク質の発現を可能とする技術が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
(3. 概要)
本明細書で提供されるのは、ヒト患者においてアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(GDE)の活性の低下に関連する疾患を治療するための方法であって、該患者に、生体適合性担体(ハイブリドソーム)又は脂質ナノ粒子を投与することを含み、該ハイブリドソーム又は該脂質ナノ粒子が、ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセットを含むDNA分子を含む、前記方法である。
【0013】
本明細書で提供されるのは、ヒト患者においてアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(GDE)の活性の低下に関連する疾患を治療するための方法であって、該患者にヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセットを含むDNA分子を投与することを含み、該DNA分子が、単一の送達ベクター内に入っている、前記方法である。
【0014】
本明細書で提供されるのは、ヒト患者においてGDEの活性の低下に関連する疾患を治療するための方法であって、(i)ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセットを含むDNA分子の第1の用量を該患者に投与する工程、及び(ii)該DNA分子の第2の用量を該患者に投与する工程を含む、前記方法である。
【0015】
一実施態様において、前記DNA分子の前記第1の用量は、該DNA分子の前記第2の用量の少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、又は少なくとも11ヶ月前に前記患者に投与される。
【0016】
一実施態様において、前記DNA分子の前記第1の用量は、該DNA分子の前記第2の用量の少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、又は少なくとも20年前に、前記患者に投与される。
【0017】
一実施態様において、前記二本鎖DNA分子の前記第1の用量及び該DNA分子の前記第2の用量は、同じ量の該DNA分子を含有する。
【0018】
一実施態様において、前記DNA分子の前記第1の用量及び該DNA分子の前記第2の用量は、異なる量の該DNA分子を含有する。
【0019】
一実施態様において、前記方法は、前記DNA分子の1以上の追加の用量を投与することをさらに含む。
【0020】
一実施態様において、前記DNA分子は、週1回、2週に1回、又は月1回投与される。
【0021】
一実施態様において、前記DNA分子は、約6ヶ月ごと、約12ヶ月ごと、約18ヶ月ごと、約2年ごと、約3年ごと、約5年ごと、約10年ごと、約15年ごと、又は約20年ごとに前記患者に投与される。
【0022】
一実施態様において、前記DNA分子が、前記患者に、該患者の一生涯にわたり投与される。
【0023】
一実施態様において、前記患者は、成人患者である。
【0024】
一実施態様において、前記患者は、小児患者である。
【0025】
一実施態様において、前記患者は、前記DNA分子の前記第1の用量が投与されるときに小児患者である。
【0026】
一実施態様において、前記小児患者は、乳幼児である。
【0027】
一実施態様において、前記小児患者は、約1歳、約2歳、約3歳、約4歳、約5歳、約6歳、約7歳、約8歳、約9歳、約10歳、約11歳、約12歳、約13歳、約14歳、約15歳、約16歳、約17歳、又は約18歳である。
【0028】
一実施態様において、前記疾患は、糖原病(GDS)III型(GSDIII)である。
【0029】
一実施態様において、前記疾患は、GSDIIIa、GSDIIIb、GSDIIIc、及びGSDIIIdである。
【0030】
一実施態様において、前記導入遺伝子は、配列番号:174、175、178、又は179に記載される配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%同一である配列を含む。
【0031】
一実施態様において、前記方法は、以下のGSDIIIの臨床症状:空腹時不耐性、運動不耐性、発育不全、ミオパチー、筋力低下、及び肝腫大のうちの1つ以上の改善をもたらす。
【0032】
一実施態様において、前記方法は、前記患者において、1年あたりの低血糖エピソードの回数の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の減少をもたらす。
【0033】
一実施態様において、前記方法は、肝機能検査によって決定した場合に、患者において約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の肝機能の改善をもたらす。
【0034】
一実施態様において、前記方法は、前記患者において、1年あたりの高脂血症のエピソードの回数の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の減少をもたらす。
【0035】
一実施態様において、前記方法は、以下の代謝マーカー:グルコース、乳酸、ケトン、クレアチンホスホキナーゼ、尿酸、脂質、又はケトンのうちの1つ以上によって測定される、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%超の臨床的改善をもたらす。
【0036】
一実施態様において、前記方法は、前記患者における尿中グルコーステトラサッカライド(Glc4)のレベルによって測定される、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%超の臨床的改善をもたらす。
【0037】
一実施態様において、前記方法は、天然のGDEタンパク質の生物活性レベルの約1~10%、約10~20%、約20~30%、約30~40%、約40~50%、約50~60%、約60~70%、約70~80%又は約80~90%のGDEタンパク質活性をもたらす。
【0038】
一実施態様において、前記DNA分子は、定量的リアルタイムPCRによって前記患者の肝細胞で検出可能である。
【0039】
一実施態様において、前記方法は、前記患者由来の生体試料(例えば、肝臓試料)における限界デキストリン蓄積の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%超の低減をもたらす。
【0040】
一実施態様において、前記DNA分子は、定量的リアルタイムPCRによって前記患者の筋組織で検出可能である。
【0041】
一実施態様において、前記方法は、前記患者由来の生体試料(例えば、筋肉試料)における限界デキストリン蓄積の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%超の低減をもたらす。
【0042】
本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:
(a)第1の逆方向反復であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第1の逆方向反復;
(b)ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセット;及び
(c)第2の逆方向反復であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復
を含む二本鎖DNA分子である。
【0043】
本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:
(a)第1の逆方向反復であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第1の逆方向反復;
(b)ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセット;及び
(c)第2の逆方向反復であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復
を含む二本鎖DNA分子である。
【0044】
本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:
(a)第1の逆方向反復であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第1の逆方向反復;
(b)ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセット;及び
(c)第2の逆方向反復であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復
を含む二本鎖DNA分子である。
【0045】
本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:
(a)第1の逆方向反復であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第1の逆方向反復;
(b)ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセット;及び
(c)第2の逆方向反復であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復
を含む二本鎖DNA分子である。
【0046】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、単離DNA分子である。
【0047】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は全て、同一のニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位である。
【0048】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子の第1及び第2の逆方向反復は、同一である。
【0049】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子の第1及び/又は第2の逆方向反復は、パルボウイルスのITRである。
【0050】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子の第1及び/又は第2の逆方向反復は、パルボウイルスの改変ITRである。
【0051】
一実施態様において、前記パルボウイルスは、ディペンドパルボウイルス、ボカパルボウイルス、エリスロパルボウイルス、プロトパルボウイルス、又はテトラパルボウイルスである。
【0052】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子の改変ITRのヌクレオチド配列は、前記パルボウイルスの前記ITRと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は少なくとも99%同一である。
【0053】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITRは、ウイルス複製関連タンパク質結合配列(「RABS」)を含む。
【0054】
一実施態様において、前記RABSは、Rep結合配列を含む。
【0055】
一実施態様において、前記RABSは、NS1結合配列を含む。
【0056】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITRは、RABSを含まない。
【0057】
一実施態様において、前記導入遺伝子は、配列番号:174、175、178、又は179の配列を含む。
【0058】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は:
(a)前記第1のニックが、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
(b)前記第2のニックが、該第1の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
(c)前記第3のニックが、前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;かつ/又は
(d)前記第4のニックが、該第2の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあるようなDNA分子である。
【0059】
一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は:
(a)前記第1のニックが、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
(b)前記第2のニックが、該第1の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
(c)前記第3のニックが、前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;かつ/又は
(d)前記第4のニックが、該第2の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあるようなDNA分子である。
【0060】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は:
(a)前記第1のニックが、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
(b)前記第2のニックが、該第1の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
(c)前記第3のニックが、前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;かつ/又は
(d)前記第4のニックが、該第2の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあるようなDNA分子である。
【0061】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は:
(a)前記第1のニックが、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
(b)前記第2のニックが、該第1の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;
(c)前記第3のニックが、前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあり;かつ/又は
(d)前記第4のニックが、該第2の逆方向反復の該ITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド以内にあるようなDNA分子である。
【0062】
一実施態様において、前記ニックは、前記逆方向反復の内部にある。
【0063】
一実施態様において、前記ニックは、前記逆方向反復の外部にある。
【0064】
一実施態様において、前記DNA分子は、プラスミドである。
【0065】
一実施態様において、前記プラスミドは、細菌の複製起点をさらに含む。
【0066】
一実施態様において、前記プラスミドは、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域に制限酵素部位をさらに含み、該制限酵素部位は、該第1の逆方向反復、該第2の逆方向反復、及び該第1の逆方向反復と該第2の逆方向反復との間の領域のいずれの中にも存在しない。
【0067】
一実施態様において、前記制限酵素での切断は、前記第1逆方向反復の及び/又は第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件下で検出可能なレベルでアニーリングしない一本鎖オーバーハングをもたらす。
【0068】
一実施態様において、前記プラスミドは、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域にニッキングエンドヌクレアーゼ用の第5及び第6の制限部位をさらに含み、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の該第5及び第6の制限部位は:
(a)向かい合う鎖上にあり;かつ
(b)切断の一本鎖オーバーハングが該第1の及び/又は第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件下で検出可能なレベルで分子間又は分子内アニーリングしないような該切断を前記二本鎖DNA分子内に生じさせる。
【0069】
一実施態様において、前記第5及び第6のニックは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド離れている。
【0070】
一実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位は全て、同一のニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。
【0071】
一実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び/又は第4の制限部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt. BsmAI; Nt. BtsCI; N. ALwl; N. BstNBI; N. BspD6I; Nb. Mva1269I; Nb. BsrDI; Nt. BtsI; Nt. BsaI; Nt. Bpu10I; Nt. BsmBI; Nb. BbvCI; Nt. BbvCI;又はNt. BspQIである。
【0072】
一実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の該第5及び第6の制限部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt. BsmAI; Nt. BtsCI; N. ALwl; N. BstNBI; N. BspD6I; Nb. Mva1269I; Nb. BsrDI; Nt. BtsI; Nt. BsaI; Nt. Bpu10I; Nt. BsmBI; Nb. BbvCI; Nt. BbvCI;又はNt. BspQIである。
【0073】
一実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び/又は第4の制限部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼは、プログラム可能なニッキングエンドヌクレアーゼである。
【0074】
一実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の該第5及び第6の制限部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼは、プログラム可能なニッキングエンドヌクレアーゼである。
【0075】
一実施態様において、前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、Casヌクレアーゼである。
【0076】
一実施態様において、前記発現カセットは、転写単位に作動的に連結されたプロモーターをさらに含む。
【0077】
一実施態様において、前記転写単位は、オープンリーディングフレームを含む。
【0078】
一実施態様において、前記発現カセットは、転写後制御因子をさらに含む。
【0079】
一実施態様において、前記発現カセットは、ポリアデニル化及び終止シグナルをさらに含む。
【0080】
一実施態様において、前記発現カセットのサイズは、少なくとも4kb、少なくとも4.5kb、少なくとも5kb、少なくとも5.5kb、少なくとも6kb、少なくとも6.5kb、少なくとも7kb、少なくとも7.5kb、少なくとも8kb、少なくとも8.5kb、少なくとも9kb、少なくとも9.5kb、又は少なくとも10kbである。
【0081】
本明細書で提供されるのは、ヒトGDEをインビボで発現させるためのキットであって、該キットは、0.1~500mgの本明細書で提供されるDNA分子、及び該DNA分子を投与するための装置を含む。
【0082】
一実施態様において、前記装置は、注射針である。
【0083】
本明細書で提供されるのは、本明細書で提供される1種以上のDNA分子、及び医薬として許容し得る担体を含む組成物である。
【0084】
一実施態様において、前記担体は、トランスフェクション試薬、ナノ粒子、ハイブリドソーム、又はリポソームを含む。
【0085】
一実施態様において、本明細書で提供される組成物は、医学療法に用いられる。
【0086】
一実施態様において、本明細書で提供される組成物は、それを必要とする対象においてGDEの活性の低下に関連する疾患又は障害を改善、予防、発症遅延、又は治療するための医薬品を調製又は生産するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
(4. 図面の簡単な説明)
図1図1は、さまざまな例示的なヘアピンの構造及び該ヘアピンの構造的要素を表す。
【0088】
図2図2A図2Cは、例示的な鎖コンホメーション及びオーバーハング内部の分子内力、並びに鎖の間の分子間力を示す線状相互作用プロット(linear interaction plot)を表し、図2Cは、期待されるアニーリングされた図2A及び図2Bの構造を表す。
【0089】
図3図3A図3Cは、ヘアピンのさまざまな例示的な配置、及びさまざまな制限部位の位置、並びにヘアピンの主ステム(primary stem)におけるII型ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を表す。
【0090】
図4図4は、さまざまな例示的なヘアピンの構造並びにヒトミトコンドリアDNA OriL及びOriL由来ITRの構造的要素を表す。
【0091】
図5図5は、例示的なアプタマー及びアプタマーITRのヘアピンの構造を表す。
【0092】
図6図6Aは、実施例1に記載されるような方法工程を実施した後に本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのDNA産物が生じる元となる環状プラスミドの例示的な構造を示す。
【0093】
図6Bは、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の例示的な構造を示す。本実施態様において、例示的なヘアピン末端DNAは、PGKプロモーター、前記GDE導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、及びBGHポリ(A)テイルを含む発現カセットを含む。当該発現カセットは、2つの一本鎖末端ヘアピンと隣接している。図6Cは、実施例1に記載されるような方法工程を実施した後の構築体1からのDNA産物の視覚化を表す。
【0094】
図7図7Aは、実施例1に記載されるような方法工程を実施した後に本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのDNA産物が生じる元となるプラスミドのさらなる例示的な構造を示す。本実施態様において、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域の12個(6対)のニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2に記載されているようなニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位)。
【0095】
図7Bは、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の例示的な構造を示す。本実施態様において、例示的なヘアピン末端DNAは、プロモーター、前記GDE導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、WPRE調節エレメント、及びポリ(A)テイルを含む発現カセットを含む。発現カセットは、2つの一本鎖末端ヘアピンと隣接している。ユニークな制限エンドヌクレアーゼ認識部位も、構築体内の新たな遺伝子成分の導入を容易にする各成分の間の特定の部位に導入した。
【0096】
図8図8A及び図8Bは、GDEをコードするヘアピン末端DNA分子でトランスフェクションを行った細胞のGDEタンパク質活性を示す。
【0097】
図9図9Aは、GDE又はGFPをコードするヘアピン末端DNA分子で処理したグルコース飢餓GSDIII患者由来線維芽細胞の溶解物中のグルコースに換算したグリコーゲン含量を経時的に表す。図9Bは、GDE又はGFPをコードするヘアピン末端DNA分子で処理したグルコース飢餓野生型GDE発現線維芽細胞の溶解物中のグルコースに換算したグリコーゲン含量を経時的に表す。
【0098】
図10図10A図10Cは、セクション6.3に記載される分裂細胞及び非分裂細胞中のルシフェラーゼ発現を表す。図10Aは、等モル量のLNP又はハイブリドソームに封入された分泌型ルシフェラーゼをコードするヘアピン末端DNA分子でトランスフェクションを行った非分裂によるルシフェラーゼの経時的な発現を表す。図10Bは、ハイブリドソームに封入された、それぞれが同一の分泌型ルシフェラーゼ用発現カセットをコードする等モル量のヘアピン末端DNA分子及び完全な環状プラスミドでのトランスフェクション後のルシフェラーゼの非分裂細胞による発現を表す。図10Cは、ハイブリドソームに封入された、分泌型ルシフェラーゼの同一の発現カセットをコードする等モル量のヘアピン末端DNA分子及び完全な環状プラスミドでのトランスフェクション後のルシフェラーゼの分裂細胞による発現を表す。ルシフェラーゼ活性は、分裂細胞においては第2日にピークとなるが、非分裂細胞では、発現は、4週間継続する。非分裂細胞では、直接の比較として、完全な環状プラスミドによるルシフェラーゼ発現は、経時的に減少する。
【0099】
図11図11は、AAV1に由来するITRの配列アラインメントを、種々のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位用の認識部位を生じさせる配列改変を強調して表す。
【0100】
図12図12は、AAV2に由来するITRの配列アラインメントを、種々のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位用の認識部位を生じさせる配列改変を強調して表す。
【0101】
図13図13は、AAV3に由来するITRの配列アラインメントを、種々のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位用の認識部位を生じさせる配列改変を強調して表す。
【0102】
図14図14は、AAV4左に由来するITRの配列アラインメントを、種々のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位用の認識部位を生じさせる配列改変を強調して表す。
【0103】
図15図15は、AAV4右に由来するITRの配列アラインメントを、種々のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位用の認識部位を生じさせる配列改変を強調して表す。
【0104】
図16図16は、AAV5に由来するITRの配列アラインメントを、種々のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位用の認識部位を生じさせる配列改変を強調して表す。
【0105】
図17図17は、AAV7に由来するITRの配列アラインメントを、種々のニッキングエンドヌクレアーゼ認識部位用の認識部位を生じさせる配列改変を強調して表す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
(5. 詳細な説明)
本明細書で提供されるのは、対象におけるアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(GDE)の存在量の減少又は機能の低下に関連する疾患又は障害の治療のための方法及び組成物である。いくつかの実施態様において、GDEの存在量の減少又は機能の低下に関連する疾患は、糖原病III型(GSDIII)である。そのような組成物は、GDE治療用タンパク質又はその断片をコードする1以上の核酸を含むヘアピン末端DNA分子を含む。一実施態様において、本明細書に記載される組成物は、GDE治療用タンパク質又はその断片をコードする核酸を1つ含むヘアピン末端DNA分子を含む。一実施態様において、本明細書に記載される組成物は、GDE治療用タンパク質又はその断片をコードする核酸を2つ、3つ、4つ、又はそれを超えて含むヘアピン末端DNA分子を含む。また、本明細書で提供されるのは、GDEタンパク質をコードする1つ以上の核酸を含む、本明細書に記載されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子である。また、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を生産する方法である。また、本明細書で提供されるのは、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA及び関連医薬組成物を用いてGSDIIIを治療する方法である。より詳細には、本明細書で提供されるのは、それを必要としている対象に、本明細書に記載されるヘアピン末端DNAを投与することを含むGSDIIIを治療する方法である。
【0107】
本明細書で提供されるのは、ヘアピン末端DNA分子を作製する方法である。また、本明細書で提供されるのは、例えば、ヘアピン末端DNA分子を遺伝子療法に使用することなどのヘアピン末端DNA分子を使用する方法である。ヘアピン末端DNA分子を作製するさまざまな方法が、下記セクション5.2にさらに記載される。ヘアピン末端DNA分子を使用するさまざまな方法が、下記セクション5.8に記載される。これらの方法で作製されるヘアピン末端DNAが、下記セクション5.5に示され、これは、それぞれが以下にさらに記載される両末端のヘアピン化逆方向反復、及び発現カセットを含む。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNAは、後述のセクション5.5でさらに示されるような1つ又は2つのニックも含む。ヘアピン、ヘアピン化逆方向反復、及びヘアピン化末端が、下記セクション5.5に記載され;ヘアピン化末端を形成する逆方向反復が、下記セクション5.4.1に記載され;ニック、ニッキングエンドヌクレアーゼ、及びニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位が、下記セクション5.4.2及び5.5に記載され;発現カセットが、下記セクション5.4.3及び5.5に記載され;かつヘアピン末端DNA分子の機能的性質が、下記セクション5.6に記載される。従って、本開示は、ヘアピン末端DNA分子、その作製方法、そのための使用方法を、本明細書で提供される要素の任意の組合せ又は順列と共に提供する。
【0108】
また、本明細書で提供されるのは、前記ヘアピン末端DNA分子を作製する方法で用いられる親DNA分子であって、それぞれが以下でさらに記載される2つの逆方向反復、2つ以上のニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位、及び発現カセットを含む、前記親DNA分子である。ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位は、ニッキングエンドヌクレアーゼによるニッキング及び変性を行うと、逆方向反復配列を有する一本鎖オーバーハングが生成し、次いでこれがアニーリングの際にフォールディングしてヘアピンを形成するように配置されている(各工程は、セクション5.2に記載されるようなものである)。逆方向反復は、下記セクション5.4.1に記載され;ニック、ニッキングエンドヌクレアーゼ、及びニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位は、下記セクション5.4.2に記載され;発現カセットは、下記セクション5.4.3に記載される。従って、本開示は、作製方法で用いられる親DNA分子を、本明細書で提供される要素の任意の組合せ又は順列と共に提供する。
【0109】
(5.1定義)
本明細書で使用される、DNA分子に関連して用いられる場合の「単離された」という用語は、言及されたDNA分子が、その天然、自然、又は合成環境においてみられる少なくとも1つの成分を含まないことを意味することが意図される。この用語は、その天然、自然、又は合成環境でみられる他の成分の一部又は全てから取り出されたDNA分子を含む。DNA分子の天然、自然、又は合成環境の成分は、天然、自然、又は合成環境におけるものであって、当該環境におけるDNA分子の複製及び維持に必要とされるか、用いられるか、又はその他の点で役割を果たすものを何であれ含む。また、DNA分子の天然、自然、又は合成環境の成分としては、例えば、細胞、壊死組織片、細胞小器官、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、多糖類、言及されるDNA分子以外の核酸、塩、細胞培養のための栄養素、及び/又はDNA合成に使用される化学物質も挙げられる。本開示のDNA分子を、該DNA分子が単離され、合成的に製造され、天然に産生され、又は組換えにより製造されたその天然、自然、又は合成環境のこれらの成分の全て又は任意の他の成分を部分的に、完全に、又は実質的に含まないものとすることができる。単離DNA分子の具体例としては、一部分だけ純粋なDNA分子及び実質的に純粋なDNA分子が挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「送達ビヒクル」という用語は、1種以上の薬剤を細胞、組織、又は対象に、特に、ヒト対象に投与又は送達するのに、該送達されるべき薬剤を伴って又は伴わずに使用することができる物質を意味する。送達ビヒクルは、特定のサブセット又は特定の種類の細胞に薬剤を優先的に送達し得る。送達ビヒクルによって達成される選択的又は優先的な送達は、ビヒクルの性質によって、又は送達ビヒクルにコンジュゲートされた部位、送達ビヒクルと結合した部位、もしくは送達ビヒクルに含有される部位によって達成することができる。この部位は、特定のサブセットの細胞に特異的に又は優先的に結合する。また、送達ビヒクルは、送達されるべき薬剤のインビボ半減期、該送達ビヒクルを用いない送達と比較した薬剤の送達の効率、及び/又は送達されるべき薬剤のバイオアベイラビリティを増加させることができる。送達ビヒクルの非限定的な例は、ヒドリドソーム(hydridosomes)、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマーソーム、天然/合成脂質の混合物、膜もしくは脂質抽出物、エキソソーム、ウイルス粒子、タンパク質もしくはタンパク質複合体、ペプチド、及び/又は多糖類である。
【0111】
本明細書で使用される、「対象」という用語は、ヒト又は任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、又は霊長類)を意味する。ヒトには、出生前及び出生後の形態が含まれる。多くの実施態様において、対象は、ヒトである。対象は、疾患の診断又は治療を求めて医療提供者を訪れるヒトを意味する患者であってもよい。「対象」という用語は、本明細書において、「個体」又は「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患又は障害に罹患していてもよく、又は疾患又は障害になりやすい者であるが、疾患又は障害の症状を呈していてもいなくてもよい。例示的な実施態様において、本開示の対象は、アミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(AGL)の活性が低下した対象である(例えば、濃度の減少、存在量の減少、及び/又は機能低下に起因)。さらなる例示的な実施態様において、対象は、ヒトである。
【0112】
本明細書において「A及び/又はB」などの句で用いられる「及び/又は」という用語は、A及びB双方;A又はB;A(単独);並びにB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの句で用いられる「及び/又は」という用語は、以下の実施態様:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)のそれぞれを包含することが意図される。
【0113】
(5.2 ヘアピン末端DNA分子及びヘアピン末端DNA分子を作製する方法)
本明細書に記載される方法及び組成物は、GSDIIIの治療のために、ヒトGDEタンパク質をコードするGDE核酸配列をそれを必要としている対象に送達するための組成物及び方法を意味する。
【0114】
いくつかの実施態様において、ヒトアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(本明細書では、まとめて又は個々に「AGL」又は「GDE」と称される)又はGDE活性を有するその断片を発現するためのポリヌクレオチド分子。
【0115】
いくつかの実施態様において、本開示のヘアピン末端DNA分子を、GSDIIIa、GSDIIIb、GSDIIIc、及びGSDIIId(本明細書では、まとめて又は個々に「GSDIII」又は「糖原病III型」と称される)のうちの1つ以上を改善、予防、又は治療するための方法に使用することができる。
【0116】
本明細書において治療される疾患又は障害(例えば、GSDIIIa、GSDIIIb、GSDIIIc、又はGSDIIId)は、低い血糖(低血糖)、肝臓の肥大(肝腫大)、過度の量の血中脂肪(高脂血症)、血中肝酵素レベルの上昇、慢性肝疾患(肝硬変)、肝不全、発育遅延、低身長、良性腫瘍(腺腫)、肥大型心筋症、心機能不全、うっ血性心不全、骨格筋ミオパチー、及び/又は不十分な筋緊張(筋緊張低下)に関連することもある。
【0117】
当業者により理解されるように、GSDIIIは、当該技術分野において、これらに限定されないが、AGL欠損症、Cori疾患(Cori disease)、Cori病(Cori's disease)、脱分枝酵素欠損症(debrancher deficiency)、Forbes病、グリコーゲン脱分枝酵素欠損症、GSDIII、又は限界デキストリン症などの任意の数の別名で称され得る。従って、GSDIIIは、明細書、実施例、図面、及び特許請求の範囲においてこれらの別名のいずれかと互換的に使用され得る。
【0118】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、ヒトアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(AGL)を発現するためのヘアピン末端DNA分子を作製調製するための方法である。一態様において、本明細書で提供されるのは、ヘアピン末端DNA分子を調製するための方法であって:a. セクション5.4に記載されるDNA分子を含むホスト細胞を、該DNA分子の増幅をもたらす条件下で培養すること;b.該DNA分子を該ホスト細胞から放出させること;c.該DNA分子を、前記4つの制限部位を認識して4つのニックをもたらす1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること;d.変性を行うこと、及びそれによって、前記発現カセットを含みかつ前記2つの一本鎖DNAオーバーハングと隣接しているDNA断片を生成させること;e.該一本鎖DNAオーバーハングを分子内アニーリングさせること、及びそれによって、工程dの結果として得られるDNA断片の両末端にヘアピン化逆方向反復を生成させることを含む方法である。
【0119】
(5.3 ヘアピン末端DNA分子を作製する方法)
一態様において、本明細書で提供されるのは、ヘアピン末端DNA分子を調製するための方法であって:a.セクション5.4に記載されるDNA分子を含むホスト細胞を、該DNA分子の増幅をもたらす条件下で培養すること;b.該DNA分子を該ホスト細胞から放出させること;c.該DNA分子を、前記4つの制限部位を認識して4つのニックをもたらす1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること;d.変性を行うこと、及びそれによって、前記発現カセットを含みかつ前記2つの一本鎖DNAオーバーハングと隣接しているDNA断片を生成させること;e.該一本鎖DNAオーバーハングを分子内アニーリングさせること、及びそれによって工程dの結果として得られるDNA断片の両末端にヘアピン化逆方向反復を生成させることを含む、前記方法である。
【0120】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、ヘアピン末端DNAを調製するための方法であって:a.5.4.6のプラスミドを含むホスト細胞を、該プラスミドの増幅をもたらす条件下で培養すること;b.該プラスミドを、該ホスト細胞から放出させること;c.前記DNA分子を、前記4つの制限部位を認識して4つのニックをもたらす1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること;d.変性を行うこと、及びそれによって、前記発現カセットを含みかつ前記2つの一本鎖DNAオーバーハングと隣接しているDNA断片を生成させること;e.該一本鎖DNAオーバーハングを分子内アニーリングさせること、及びそれによって工程dの結果として得られるDNA断片の両末端にヘアピン化逆方向反復を生成させること;f.該プラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、前記制限酵素とインキュベートすること、及びそれによって、該プラスミド又は該プラスミドの断片を切断すること;並びにg.該プラスミドの該断片をエキソヌクレアーゼとインキュベートし、それによって、工程eの結果として得られる断片を除く該プラスミドの断片を消化することを含む、前記方法である。
【0121】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、ヘアピン末端DNAを調製するための方法であって:a. 請求項24のプラスミドを含むホスト細胞を、前記プラスミドの増幅をもたらす条件下で培養すること;b.該プラスミドを、該ホスト細胞から放出させること;c.該DNA分子を、前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位を認識して4つのニックをもたらす1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること;d.変性を行うこと、及びそれによって、前記発現カセットを含みかつ前記2つの一本鎖DNAオーバーハングと隣接しているDNA断片を生成させること;e.該一本鎖DNAオーバーハングを分子内アニーリングさせること、及びそれによって工程dの結果として得られるDNA断片の両末端にヘアピン化逆方向反復を生成させること;f.該プラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、該二本鎖DNA分子における切断をもたらす前記第5及び第6の制限部位を認識する1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること;並びにg.該プラスミドの該断片をエキソヌクレアーゼとインキュベートし、それによって、工程eの結果として得られる断片を除く該プラスミドの該断片を消化することを含む、前記方法である。
【0122】
一態様において、本明細書で提供されるのは、ヘアピン末端DNA分子を調製するための方法であって:a.セクション5.4に記載されるDNA分子を含むホスト細胞を、該DNA分子の増幅をもたらす条件下で培養すること;b.該DNA分子を該ホスト細胞から放出させること;c.該DNA分子を、ガイド核酸用の前記4つの標的部位を認識して4つのニックをもたらす1種以上のプログラム可能なニッキング酵素とインキュベートすること;d.変性を行うこと、及びそれによって、前記発現カセットを含みかつ前記2つの一本鎖DNAオーバーハングと隣接しているDNA断片を生成させること;e.該一本鎖DNAオーバーハングを分子内アニーリングさせること、及びそれによって工程dの結果として得られるDNA断片の両末端にヘアピン化逆方向反復を生成させることを含む、前記方法である。
【0123】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、ヘアピン末端DNAを調製するための方法であって:a.5.4.6記載のプラスミドを含むホスト細胞を、該プラスミドの増幅をもたらす条件下で培養すること;b.該プラスミドを、該ホスト細胞から放出させること;c.前記DNA分子を、ガイド核酸用の前記4つの標的部位を認識して4つのニックをもたらす1種以上のプログラム可能なニッキング酵素とインキュベートすること;d.変性を行うこと、及びそれによって、前記発現カセットを含みかつ前記2つの一本鎖DNAオーバーハングと隣接しているDNA断片を生成させること;e.該一本鎖DNAオーバーハングを分子内アニーリングさせること、及びそれによって工程dの結果として得られるDNA断片の両末端にヘアピン化逆方向反復を生成させること;f.該プラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、前記制限酵素とインキュベートすること、及びそれによって、該プラスミド又は該プラスミドの断片を切断すること;並びにg.該プラスミドの該断片をエキソヌクレアーゼとインキュベートし、それによって、工程eの結果として得られる断片を除く該プラスミドの該断片を消化することを含む、前記方法である。
【0124】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、ヘアピン末端DNAを調製するための方法であって:a. 請求項24のプラスミドを含むホスト細胞を、該プラスミドの増幅をもたらす条件下で培養すること;b.該プラスミドを、該ホスト細胞から放出させること;c.該DNA分子を、ガイド核酸用の前記第1、第2、第3、及び第4の標的部位を認識して4つのニックをもたらす1種以上のプログラム可能なニッキング酵素とインキュベートすること;d.変性を行うこと、及びそれによって、前記発現カセットを含みかつ前記2つの一本鎖DNAオーバーハングと隣接しているDNA断片を生成させること;e.該一本鎖DNAオーバーハングを分子内アニーリングさせること、及びそれによって工程dの結果として得られるDNA断片の両末端にヘアピン化逆方向反復を生成させること;f.該プラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、ガイド核酸用の前記第5及び第6の標的部位を認識して該二本鎖DNA分子における切断をもたらすプログラム可能なニッキング酵素とインキュベートすること;並びにg.該プラスミドの該断片をエキソヌクレアーゼとインキュベートし、それによって、工程eの結果として得られる断片を除く該プラスミドの該断片を消化することを含む、前記方法である。別の実施態様において、本段落の工程fを、工程f:該プラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、前記2つの制限部位を認識して該二本鎖DNA分子における切断をもたらす1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすることに置き換えることができる。
【0125】
ある実施態様において、逆方向反復に隣接する発現カセットを含むDNA分子(セクション5.4に記載)を、前の段落において工程a及びbで提供されるように、該DNA分子又はプラスミドを含むホスト細胞を培養すること、及び該DNA分子又はプラスミドを該ホスト細胞から放出させることによって提供することができる。あるいは、そのようなDNA分子は、無細胞系で又は無細胞系及びホスト細胞ベースの系の組合せで合成することができる。例えば、さまざまなサイズ及び配列のDNA断片及びプラスミドの化学合成が知られており、本技術分野において広く用いられている;断片を化学的に合成し、次いで、本技術分野において公知の任意の手段でライゲーションするか、又はホスト細胞内で組み替えることができる。別の実施態様において、DNA分子又はプラスミドを、インビトロ複製によって提供することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅を含むさまざまな方法を、インビトロ複製に使用することができる。例えば、その全体が引用により本明細書に組み込まれるMichael Green及びJoseph Sambrookの文献「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第4版、ISBN 978-1-936113-42-2 (2012)に記載されているように、さまざまなサイズのDNA断片又はプラスミドを複製するためのPCR方法が、本技術分野において周知でありかつ広く用いられている。いくつかの実施態様において、工程a及び工程bを、DNA分子を化学合成又はPCRによって準備する工程で置き換えることができる。別の実施態様において、工程a、b、c、及びdを、DNA分子を化学合成で準備することで置き換えることができる。
【0126】
方法の工程の順番が、例示的な目的のために方法に列挙されている。ある実施態様において、方法の工程は、請求項にそれらが現れる順番で行われる。いくつかの実施態様において、方法の工程は、請求項にそれらが現れる順番とは異なる順番で行うことができる。具体的には、いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子を作製する方法の工程は、請求項にそれらが出現した順番で、又はaからe又はaからgの請求項にアルファベット順に列挙された順番で行うことができる。あるいは、ヘアピン末端DNA分子を作製する方法の工程は、請求項にそれらが出現する順番ではなく行うことができる。一実施態様において、ホスト細胞が、1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼを天然に発現するか、それを発現するように操作されているか、別な方法でそれを含有している場合には、工程c(DNA分子を、前記4つの制限部位を認識して4つのニックをもたらす1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること)を、工程b(プラスミドを、ホスト細胞から放出させること)の前に行うことができる。別の実施態様において、工程f(該プラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、前記制限酵素とインキュベートすること、又は該プラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること)は、工程d(変性を行うこと、及びそれによって、前記発現カセットを含みかつ前記2つの一本鎖DNAオーバーハングと隣接しているDNA断片を生成させること)の前、又は工程c(DNA分子を、1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること)の前に行うことができる。さらに、1つ以上の工程を組み合わせて、別々の工程の全ての作用を行う1つの工程とすることができる。ある実施態様において、工程a(ホスト細胞を培養すること)は、該ホスト細胞が、1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼを天然に発現するか、それを発現するように操作されているか、別な方法でそれを含有している場合には、工程c(DNA分子を、1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること)と組み合わせることができる。別の実施態様において、工程f(プラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、前記制限酵素とインキュベートすること、又はプラスミド又は工程dの結果として得られる断片を、1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること)は、工程f及びcに記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素と一緒にインキュベートすることによって工程c(DNA分子を、1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートすること)と組み合わせることができる。従って、本開示は、工程を、最新技術に応じてさまざまな組合せ及び順列で行うことができることを規定する。
【0127】
本明細書で提供される方法に対して、本方法の全ての工程の前、本方法の全ての工程の後、又は本方法の工程のいずれかの間に、付加的な工程を追加することができる。一実施態様において、本明細書で提供される方法は、工程hリガーゼを用いて前記ニックを修復して、環状DNAを生成させることをさらに含む。別の実施態様において、リガーゼを用いて前記ニックを修復して、環状DNAを生成させる工程hが、本明細書に記載される方法の他の工程の全ての後に行われる。
【0128】
セクション5.4.1及び5.5で以下にさらに記載されるように、DNA分子の末端に形成されるヘアピンは、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位の間のオーバーハングの性質によって決定される。従って、セクション5.4.1及び5.5に従いニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位の間のオーバーハングの配列及び構造的な性質を含む性質を設計することによって、本方法を使用して、1つ、2つ、又はそれを超えるヘアピン化末端を生成させることができる。一実施態様において、方法は、1つのヘアピン末端を含むヘアピン末端DNAを製造する。別の実施態様において、方法は、1つのヘアピン末端からなるヘアピン末端DNAを製造する。さらに別の実施態様において、方法は、2つのヘアピン末端を含むヘアピン末端DNAを製造する。さらなる実施態様において、方法は、2つのヘアピン末端からなるヘアピン末端DNAを製造する。
【0129】
本明細書で提供される方法を、人工の配列、天然のDNA配列、又は天然のDNA配列及び人工の配列の双方を有する配列を含むDNA分子を製造するのに使用することができる。一実施態様において、方法は、人工の配列を含むヘアピン末端DNA分子を製造する。別の実施態様において、方法は、天然の配列を含むヘアピン末端DNA分子を製造する。さらに別の実施態様において、方法は、天然の配列及び人工の配列の双方を含むヘアピン末端DNA分子を製造する。ある実施態様において、方法は、ウイルスの逆方向末端反復(ITR)を含むヘアピン末端DNA分子を製造する。さらなる実施態様において、方法は、ウイルスゲノムを含むヘアピン末端DNA分子を製造する。いくつかの実施態様において、ウイルスゲノムは、1つ以上の非ウイルス性の遺伝子を発現カセット内に含む操作されたウイルスゲノムである。ある実施態様において、ウイルスゲノムは、1つ以上のウイルス遺伝子がノックアウトされている操作されたウイルスゲノムである。いくつかの特定の実施態様において、ウイルスゲノムは、複製タンパク質(Rep)遺伝子、カプシド(Cap)遺伝子、又はRep遺伝子及びCap遺伝子の双方がノックアウトされている操作されたウイルスゲノムである。別の実施態様において、前記ウイルスゲノムは、パルボウイルスゲノムである。さらに別の実施態様において、前記パルボウイルスは、ディペンドパルボウイルス、ボカパルボウイルス、エリスロパルボウイルス、プロトパルボウイルス、又はテトラパルボウイルスである。
【0130】
本明細書で提供されるさまざまな方法で行われる工程が、以下でさらに詳細に説明される。ホスト細胞及び該ホスト細胞の培養の実施態様が、セクション5.3.1に記載され;DNA分子をホスト細胞から放出させる工程についての実施態様が、セクション5.3.2に記載され;DNA分子を変性させる工程についての実施態様が、セクション5.3.3に記載され;アニーリングする工程についての実施態様が、セクション5.3.5に記載され;DNA分子をニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素とインキュベートする工程についての実施態様が、セクション5.3.4に記載され;エキソヌクレアーゼとインキュベートする工程についての実施態様が、セクション5.3.6に記載され;かつライゲーションの工程についての実施態様が、セクション5.3.7に記載される。従って、本開示は、本明細書に記載される工程のさまざまな実施態様の順列及び組合せを含む方法を提供する。
【0131】
(5.3.1 ホスト細胞及び該ホスト細胞の培養)
本開示は、さまざまなホスト細胞を培養して、前記DNA分子を増幅させることができることを規定する。本明細書で提供される方法における使用のためのホスト細胞は、真核生物ホスト細胞、原核生物ホスト細胞、又は組換えDNA分子を複製又は増幅する能力がある任意の形質転換可能な生物とすることができる。いくつかの実施態様において、ホスト細胞は、微生物ホスト細胞とすることができる。さらなる実施態様において、ホスト細胞は、細菌、酵母、真菌、又はDNA分子を複製もしくは増幅するのに適用可能な種々の他の微生物細胞のいずれかから選択されるホスト微生物細胞とすることができる。細菌のホスト細胞は、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、アナエロビオスピリルム・スクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)、アクチノバチルス・スクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、マンヘミア・スクシニシプロデュセンス(Mannheimia succiniciproducens)、リゾビウム・エトリ(Rhizobium etli)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、及びシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)から選択されるいずれかの種のものとすることができる。酵母又は真菌ホスト細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クリベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、リゾブス・オリゼ(Rhizobus oryzae)などから選択されるいずれかの種のものとすることができる。大腸菌は、十分に特徴が明らかとされた微生物細胞であり、分子クローニングに広く用いられているために特に有用なホスト細胞である。他の特に有用なホスト細胞としては、サッカロマイセス・セレビシエなどの酵母が挙げられる。本技術分野において公知の任意の適当な微生物ホスト細胞を使用して、DNA分子を増幅することができることが理解される。
【0132】
同様に、本明細書で提供される方法における使用のための真核生物ホスト細胞は、本技術分野において知られかつ用いられる組換えDNA分子を複製又は増幅することができる任意の真核生物細胞とすることができる。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのホスト細胞は、哺乳動物ホスト細胞とすることができる。さらなる実施態様において、ホスト細胞は、ヒト又は非ヒト哺乳動物ホスト細胞とすることができる。別の実施態様において、ホスト細胞は、昆虫ホスト細胞とすることができる。いくつかの広く用いられている非ヒト哺乳動物ホスト細胞としては、CHO、マウス骨髄腫細胞株(例えば、NS0、SP2/0)、ラット骨髄腫細胞株(例えば、YB2/0)、及びBHKが挙げられる。いくつかの広く用いられているヒトホスト細胞としては、HEK293及びその誘導株、HT-1080、PER.C6、並びにHuh-7が挙げられる。ある実施態様において、ホスト細胞は、HeLa、NIH3T3、Jurkat、HEK293、COS、CHO、Saos、SF9、SF21、High 5、NS0、SP2/0、PC12、YB2/0、BHK、HT-1080、PER.C6、及びHuh-7からなる群から選択される。
【0133】
ホスト細胞は、各ホスト細胞が本技術分野において公知であり培養されているために、培養可能である。異なるホスト細胞についての培養条件及び培養培地は、本技術分野において知られておりかつ実践されているように異なることがある。例えば、細菌の又は他の微生物のホスト細胞は、37℃で、最高で300rpmの攪拌速度で、かつ強制曝気を伴い又は伴わずに培養することができる。一部の昆虫ホスト細胞は、一般に、25~30℃で、攪拌せずに又は最高で150rpmの攪拌速度で、かつ強制曝気を伴い又は伴わずに最適に培養することができる。一部の哺乳動物ホスト細胞は、37℃で、攪拌せずに又は最高で150rpmの攪拌速度で、かつ強制曝気を伴い又は伴わずに最適に培養することができる。さらに、さまざまなホスト細胞を培養するための条件は、本技術分野において知られておりかつ実践されているように、さまざまな条件下でホスト細胞の増殖曲線を調査することによって決定することができる。いくつかの広く用いられているホスト細胞の培養培地及び培養条件は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる、Michael Green及びJoseph Sambrookの文献「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第4版、ISBN 978-1-936113-42-2 (2012)に記載されている。
【0134】
(5.3.2 DNA分子をホスト細胞から放出させること)
DNA分子は、本技術分野において知られておりかつ実践されているようなさまざまなやり方でホスト細胞から放出させることができる。例えば、DNA分子は、ホスト細胞を物理的に、機械的に、酵素的に、化学的に、又は物理的、機械的、酵素的、及び化学的作用の組合せによって破壊することによって放出させることができる。いくつかの実施態様において、DNA分子は、細胞を細胞溶解試薬の溶液にさらすことによってホスト細胞から放出させることができる。細胞溶解試薬は、トリトン、SDS、Tween、NP-40、及び/又はCHAPSなどの界面活性剤を含む。別の実施態様において、DNA分子は、ホスト細胞をモル浸透圧濃度の差にさらすこと、例えば、ホスト細胞を低張液にさらすことによってホスト細胞から放出させることができる。別の実施態様において、DNA分子は、ホスト細胞を高pH又は低pHの溶液にさらすことによってホスト細胞から放出させることができる。ある実施態様において、DNA分子は、ホスト細胞に対して酵素処理、例えば、リゾチームによる処理を行うことによってホスト細胞から放出させることができる。いくつかのさらなる実施態様において、DNA分子は、ホスト細胞を界面活性剤、モル浸透圧濃度の圧力、高pHもしくは低pH、及び/又は酵素(例えば、リゾチーム)の任意の組合せにさらすことによってホスト細胞から放出させることができる。
【0135】
あるいは、DNA分子は、物理的な力をホスト細胞に対して働かせることによってホスト細胞から放出させることができる。一実施態様において、DNA分子は、ホスト細胞に、例えば、ワーリングブレンダー及びポリトロンを用いて力を直接的にかけることによってホスト細胞から放出させることができる。ワーリングブレンダーは、高速回転する刃を利用して、細胞を破壊し、ポリトロンは、回転する刃が入った長いシャフトの中に組織を引き込む。別の実施態様において、DNA分子は、剪断応力又は剪断力をホスト細胞にかけることによってホスト細胞から放出させることができる。さまざまなホモジナイザーを使用して、ホスト細胞を狭い空間に強制的に通し、それによって細胞膜を剪断することができる。いくつかの実施態様において、DNA分子は、液体ベースの均質化によってホスト細胞から放出させることができる。特定の一実施態様において、DNA分子は、Dounceホモジナイザーを用いてホスト細胞から放出させることができる。別の具体的な実施態様において、DNA分子は、Potter-Elvehjemホモジナイザーを用いてホスト細胞から放出させることができる。さらに別の具体的な実施態様において、DNA分子は、フレンチプレスを用いてホスト細胞から放出させることができる。DNA分子をホスト細胞から放出させる他の物理的な力としては、手動粉砕、例えば、乳鉢及び乳棒を用いるものが挙げられる。手動粉砕においては、ホスト細胞は多くの場合、例えば、液体窒素中で凍結され、次いで、乳鉢及び乳棒を用いて粉砕され、そのプロセスの間に、細胞壁のセルロース及び他の多糖類の引っ張り強度によって、ホスト細胞が破壊される。
【0136】
さらに、DNA分子は、細胞に対して凍結及び解凍サイクルを行うことによって、ホスト細胞から放出させることができる。いくつかの実施態様において、何回かのそのような凍結及び解凍サイクルにわたってホスト細胞の懸濁剤を凍結させ、次いで解凍させる。いくつかの実施態様において、DNA分子は、凍結及び解凍サイクルを1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20回ホスト細胞に対して行うことによってホスト細胞から放出させることができる。
【0137】
DNA分子をホスト細胞から放出させるための上述の各方法は、相互に排他的ではない。従って、本開示は、DNA分子を、このセクション5.3.2で提供されるDNA放出方法の任意の組合せによってホスト細胞から放出させることができることを規定する。
【0138】
(5.3.3 DNA分子を変性させること)
DNA分子は、本技術分野において知られておりかつ実践されているさまざまなやり方で変性させることができる。DNA分子を変性させる工程は、二本鎖DNA(dsDNA)からDNA分子を分離して一本鎖DNA(ssDNA)とすることができる。2本のDNA鎖を分離するにあたり、DNAが巻きが解け、該2本の鎖を一緒に保っている水素結合が弱まり、最終的に、分離するまで温度を上昇させることができる。二本鎖DNAを一本鎖へと分離させるプロセスは、DNA変性(DNA denaturation)又はDNA変性(DNA denaturing)として知られる。
【0139】
いくつかの実施態様において、DNA分子を変性させる工程は、該DNA分子の他のセグメント(複数可)をdsDNAとして保ったままで、前記dsDNA分子の1つ以上のセグメントの2本のDNA鎖を分離させることができる。いくつかのさらなる実施態様において、DNA分子を変性させる工程は、該DNA分子(例えば、セクション5.4に記載されるDNA分子)のその他の部分をdsDNAとして保ったままで、該DNAのトップ及びボトム鎖上のニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位の間のセグメントにおける前記dsDNAをssDNAへと分離させることができ、それによって、該第1及び第2の制限部位の間にオーバーハングを生成させる。ある実施態様において、DNA分子を変性させる工程は、該DNA分子(例えば、セクション5.4に記載されるDNA分子)のその他の部分をdsDNAとして保ったままで、該DNAのトップ及びボトム鎖上のニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位の間のセグメントにおいて前記dsDNAをssDNAへと分離させることができ、それによって、該第3及び第4の制限部位の間にオーバーハングを生成させることができる。別の実施態様において、DNA分子を変性させる工程は、該DNA分子(例えば、セクション5.4に記載されるDNA分子)のその他の部分をdsDNAとして保ったままで、該DNAのトップ及びボトム鎖上のニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位の間のセグメント及び第3及び第4の制限部位の間のセグメントにおいて前記dsDNAをssDNAへと分離させることができ、それによって、(1)該DNA分子を2つの娘DNA分子へと分解し、かつ(2)該第1及び第2の制限部位の間にオーバーハングを1つ及び該第3及び第4の制限部位の間にオーバーハングを1つ生成させる。一実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位の間のオーバーハングは、トップ鎖5’オーバーハングとすることができる。別の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位の間のオーバーハングは、ボトム鎖3’オーバーハングとすることができる。さらに別の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位の間のオーバーハングは、トップ鎖3’オーバーハングとすることができる。さらなる実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位の間のオーバーハングは、ボトム鎖5’オーバーハングとすることができる。いくつかの実施態様において、DNA分子を変性させる工程は、該DNA分子を本明細書で提供される実施態様の任意の組合せで分離させることができる。
【0140】
オーバーハングは、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の各制限部位の間の距離に応じて長さが異なり得る。一実施態様において、オーバーハングは、長さ及び/又は配列が同一であってもよい。別の実施態様において、オーバーハングは、長さ及び/又は配列が異なっていてもよい。いくつかの実施態様において、トップ鎖5’オーバーハングは、長さを少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、又は少なくとも100ヌクレオチドとすることができる。別の実施態様において、トップ鎖5’オーバーハングは、長さを約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、又はそれを超えるヌクレオチドとすることができる。ある実施態様において、ボトム鎖3’オーバーハングは、長さを少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、又は少なくとも100ヌクレオチドとすることができる。さらなる実施態様において、ボトム鎖3’オーバーハングは、長さを約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、又はそれを超えるヌクレオチドとすることができる。さらに別の実施態様において、トップ鎖3’オーバーハングは、長さを少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、又は少なくとも100ヌクレオチドとすることができる。別の実施態様において、トップ鎖3’オーバーハングは、長さを約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、又はそれを超えるヌクレオチドとすることができる。いくつかの実施態様において、ボトム鎖5’オーバーハングは、長さを少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、又は少なくとも100ヌクレオチドとすることができる。別の実施態様において、ボトム鎖5’オーバーハングは、長さを約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、又はそれを超えるヌクレオチドとすることができる。
【0141】
本技術分野において知られておりかつ実践されているように、DNA分子は、熱によって、該DNA分子の環境におけるpHを変化させることによって、塩濃度を上昇させることによって、又はこれらおよび他の公知手段の任意の組合せによって変性させることができる。本開示は、前記DNA分子を、該DNA分子のその他の部分をdsDNAとして保ったままで、該DNAのトップ及びボトム鎖上の第1及び第2の制限部位の間のセグメント及び/又は第3及び第4の制限部位の間のセグメントにおいて前記dsDNAをssDNAへと選択的に分離させる変性条件を用いることによって前記方法で変性させることができることを規定する。そのようなdsDNAのssDNAへの選択的な分離は、変性条件及び/又は該DNA分子を該変性条件にさらす時間を制御することによって行うことができる。一実施態様において、DNA分子を、少なくとも70℃、少なくとも71℃、少なくとも72℃、少なくとも73℃、少なくとも74℃、少なくとも75℃、少なくとも76℃、少なくとも77℃、少なくとも78℃、少なくとも79℃、少なくとも80℃、少なくとも81℃、少なくとも82℃、少なくとも83℃、少なくとも84℃、少なくとも85℃、少なくとも86℃、少なくとも87℃、少なくとも88℃、少なくとも89℃、少なくとも90℃、少なくとも91℃、少なくとも92℃、少なくとも93℃、少なくとも94℃、又は少なくとも95℃の温度で変性させる。別の実施態様において、DNA分子を、約70℃、約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、約75℃、約76℃、約77℃、約78℃、約79℃、約80℃、約81℃、約82℃、約83℃、約84℃、約85℃、約86℃、約87℃、約88℃、約89℃、約90℃、約91℃、約92℃、約93℃、約94℃、又は約95℃の温度で変性させる。特定の一実施態様において、DNA分子を、約90℃の温度で変性させる。
【0142】
熱による変性の他に、本明細書で提供されるDNA分子の一部又は全ては、グアニジン、ホルムアミド、サリチル酸ナトリウム、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、及び尿素などのさまざまな化学薬品の添加による変性プロセスを受けることができる。これらの化学的変性剤は、水素結合のドナー及びアクセプターに関して既存の窒素塩基対と競争することによって融解温度を低下させ、等温変性を可能とする。いくつかの実施態様において、化学薬品は、室温で変性を誘導することができる。いくつかの特定の実施態様において、アルカリ性薬剤(例えば、NaOH)を使用して、pHを変化させ水素結合に寄与しているプロトンを除去することによってDNAを変性させることができる。別の実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子を化学的に変性させることは、熱によって誘導される変性と比較して、DNAの安定性に関してより穏やかな処置とすることができる。別の実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子を化学的に変性及び再生させること(例えば、pHを変化させること)は、加熱による場合よりも速くなる場合がある。いくつかの実施態様において、本開示のDNAは、細菌中で複製させかつニッキングすることができ、かつ細菌からの放出(例えば、アルカリ溶解工程)の期間内に同時に変性させることができる。
【0143】
一実施態様において、DNA分子は、少なくとも10、少なくとも10.1、少なくとも10.2、少なくとも10.3、少なくとも10.4、少なくとも10.5、少なくとも10.6、少なくとも10.7、少なくとも10.8、少なくとも10.9、少なくとも11、少なくとも11.1、少なくとも11.2、少なくとも11.3、少なくとも11.4、少なくとも11.5、少なくとも11.6、少なくとも11.7、少なくとも11.8、少なくとも11.9、少なくとも12、少なくとも12.1、少なくとも12.2、少なくとも12.3、少なくとも12.4、少なくとも12.5、少なくとも13、少なくとも13.5、又は少なくとも14のpHで変性する。別の実施態様において、DNA分子は、約10、約10.1、約10.2、約10.3、約10.4、約10.5、約10.6、約10.7、約10.8、約10.9、約11、約11.1、約11.2、約11.3、約11.4、約11.5、約11.6、約11.7、約11.8、約11.9、約12、約12.1、約12.2、約12.3、約12.4、約12.5、約13、約13.5、又は約14のpHで変性する。さらに別の実施態様において、DNA分子は、少なくとも1M、少なくとも1.5M、少なくとも2M、少なくとも2.5M、少なくとも3M、少なくとも3.5M、又は少なくとも4Mの塩の塩濃度で変性する。さらなる実施態様において、DNA分子は、約1M、約1.5M、約2M、約2.5M、約3M、約3.5M、又は約4Mの塩の塩濃度で変性する。ある実施態様において、DNA分子は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、又は少なくとも20分間変性条件にさらされる。別の実施態様において、DNA分子は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、又は約20分間変性条件にさらされる。いくつかの実施態様において、DNA分子は、本明細書で提供される変性条件及び変性期間の任意の組合せによって変性させることができる。
【0144】
DNA分子のその他の部分をdsDNAとして保ったままで、該DNAのトップ及びボトム鎖上の第1及び第2の制限部位の間のセグメント及び第3及び第4の制限部位の間のセグメントを選択的に変性させる方法の工程のために、変性条件を決定することができる。そのような選択的変性条件は、選択的に変性されるべきDNAセグメントの性質に応じて決定することができる。DNA二重らせんの安定性は、DNAセグメントの長さ及びG/C含量の百分率と相関している。本開示は、選択的変性条件を、選択的に変性されるべきDNAセグメントの配列又は結果として得られるオーバーハングの配列によって決定することができることを規定する。例えば、選択的変性のための温度は、選択的に変性されるべきDNA配列について、Tm=2℃×A-T対の数+4℃×G-C対の数としておおまかに決定することができる。また、例えば、全てが全体として引用により本明細書に組み込まれるFreier SMらの文献、Proc Natl Acad Sci、83、9373-9377 (1986); Breslauer KJらの文献Proc Natl Acad Sci、83、3746-3750 (1986); Panjkovich,A.及びMelo,F.の文献、Bioinformatics 21:711-722 (2005); Panjkovich,A.らの文献、Nucleic Acids Res 33:W570-W572 (2005)に記載されているような、他のより厳密なTmの計算が本技術分野において知られており用いられている。
【0145】
前記オーバーハングは、さまざまなDNA配列を含むことができる。一実施態様において、オーバーハングは、逆方向反復を含む。別の実施態様において、オーバーハングは、ウイルスの逆方向反復を含む。さらに別の実施態様において、オーバーハングは、セクション5.4.1、5.4.2、5.4.3、及び5.5に記載される配列のいずれかの実施態様を含むか又はこれからなる。さらなる実施態様において、オーバーハングは、セクション5.4.1及び5.5に記載される配列のうちのいずれか1つを含むか又はこれからなる。
【0146】
(5.3.4 DNA分子を1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素とインキュベートすること)
本開示は、セクション3及び5.2に記載したように、DNA分子を、1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素とインキュベートするための1つ以上の方法の工程を提供する。理論にとらわれるものではないが、ニッキングエンドヌクレアーゼは、該DNA分子内のニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を認識し、dsDNAの一方の鎖上でのみ該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位の内部又は外部のいずれかの部位で切断を行い(例えば、1本のDNA鎖のホスホジエステル結合を加水分解し)、それによって、該dsDNA内にニックを生成させる。一方で、制限酵素は、該制限酵素用の制限部位を認識し、dsDNAの双方の鎖を切断し、それによって、特定の制限部位で又はその近くでDNA分子を切断する。
【0147】
本明細書で提供される組成物及び方法のさまざまな実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼは、メチル化依存性、メチル化感受性、又はメチル化不感受性であってもよい。本技術分野において知られており実践されているさまざまなニッキングエンドヌクレアーゼが、本明細書で提示される。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される組成物及び方法のためのニッキングエンドヌクレアーゼは、Nb.Bsml、Nb.BbvCI、Nb.BsrDI、Nb.Btsl、Nt.BbvCI、Nt.Alwl、Nt.CviPII、Nt.BsmAI、Nt.Alwl、及びNt.BstNBIなどの5-メチルシトシン依存性ではない天然に存在するニッキングエンドヌクレアーゼであってもよい。本明細書で提供される組成物及び方法のためのニッキングエンドヌクレアーゼは、IIs型制限酵素(例えば、Alwl、BpulOI、BbvCI、Bsal、BsmBI、BsmAI、Bsml、BspOJ、mlyl、Mval269l、及びSaplなど)から工学的に作り出すこともでき、ニッキングエンドヌクレアーゼを作製する方法は、引例に、例えば、全てが全体として引用により本明細書に組み込まれるUS 7,081,358; US 7,011,966; US 7,943,303; US 7,820,424、WO201804514に記載されている。
【0148】
あるいは、ニッキングエンドヌクレアーゼの代わりに、プログラム可能なニッキング酵素を、本明細書で提供される組成物及び方法に使用することができる。そのようなプログラム可能なニッキング酵素には、例えば、Cas9又はその機能的等価物(パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)アルゴノート(PfAgo)又はCpflなど)が含まれる。Cas9は、2つの触媒ドメインRuvC及びHNHを含む。これらのドメインのうちの1つを不活性化すると、本明細書で提供される方法及び組成物用のニッキングエンドヌクレアーゼを置き換えることができるプログラム可能なニッキング酵素を生じさせることとなる。Cas9において、RuvCドメインは、位置D10でのアミノ酸置換(例えば、D10A)によって不活性化することができ、HNHドメインは、H840でのアミノ酸置換(例えば、H840A)によって不活性化することができ、又は他のCas9に等価なタンパク質におけるこれらのアミノ酸に対応する位置でのアミノ酸置換によって不活性化することができる。そのようなプログラム可能なニッキング酵素は、2つの成分:標的DNAを切断するニッキング酵素(例えば、D10A Cas9ニッキング酵素又はそのバリアントもしくはオルソログ)、及び該ニッキング酵素を該標的DNA内の特定の部位に向けて標的化又はプログラムするガイド核酸、例えば、ガイドDNA又はRNA(gDNA又はgRNA)を含むアルゴノート又はII型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼとすることもできる(例えば、その全体が引用により本明細書に組み込まれるHsuらの文献: Nature Biotechnology 2013 31: 827-832を参照されたい)。プログラム可能なニッキング酵素は、DNA結合タンパク質(例えば、制限エンドヌクレアーゼ、転写因子、ジンクフィンガー、又はDNAにランダムではない位置で結合する別のドメイン)のDNA結合ドメインなどの部位特異的なDNA結合ドメイン(ターゲティングドメイン)を、ニッキングエンドヌクレアーゼと融合させ、それが、特定のランダムではない部位に対して作用するようにすることによって作製することもできる。前述したものから明らかであるように、プログラム可能なニッキング酵素によるプログラム可能な切断は、ニッキング酵素内の又はそれに融合されたターゲティングドメイン、又はターゲティングドメイン又はガイド分子を変化させることによってプログラムすることができる部位である特定のランダムではない部位にニッキング酵素を向かわせるガイド分子(gDNA又はgRNA)に起因する。そのようなプログラム可能なニッキング酵素は、引例、例えば、全体として引用により本明細書に組み込まれるUS7,081,358及びWO2010021692Aに記載されている。
【0149】
適当なガイド核酸(例えば、gDNA又はgRNA)配列及びガイド核酸に適している標的部位は、本技術分野において知られており広く利用されている。ガイド核酸(例えば、gDNA又はgRNA)は、対象となる標的DNA領域を認識し、かつ編集のためにプログラム可能なニッキング酵素(例えば、Casヌクレアーゼ)をそこへ向かわせる特定の核酸(例えば、gDNA又はgRNA)配列である。ガイド核酸(例えば、gDNA又はgRNA)は、多くの場合、2つの部分:標的DNAに相補的な15~20ヌクレオチド配列であるターゲティング核酸、及びプログラム可能なニッキング酵素(例えば、Casヌクレアーゼ)のために結合スキャフォールドとして働くスキャフォールド核酸で構成される。ガイド核酸に適している標的部位は、2つの要素:プログラム可能なニッキング酵素内のターゲティング核酸に相補的な配列及び隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を有していなければならない。PAMは、プログラム可能なニッキング酵素(例えば、Casヌクレアーゼ)に対して結合シグナルとして働く。さまざまなPAMが、例えば、双方ともが全体として引用により本明細書に組み込まれるDaniel Gleditzschらの文献、RNA Biol. 16(4): 504-517 (2019年4月); Ryan T. Leenayらの文献、Mol Cell. 62(1): 137-147 (2016年4月7日)に記載されているように、本技術分野において知られており、性質が明らかとされており、利用されている。AAV2 ITRの主ステム配列を標的とする例示的なgRNA及びgDNA配列は、表1に挙げるようなものを含む。
(表1: 例示的なニッキングエンドヌクレアーゼ及びそれらの対応する制限部位)
【表1】
【0150】
本技術分野において知られておりかつ用いられているさまざまなニッキングエンドヌクレアーゼを、本明細書で提供される方法に使用することができる。本方法における使用のためのニッキングエンドヌクレアーゼについての実施態様として提供されるニッキングエンドヌクレアーゼの例示的なリスト及び該ニッキングエンドヌクレアーゼの一部についての対応する制限部位が、www.rebase.neb.com/cgi-bin/azlist?nickで利用可能でありその全体が引用により本明細書に組み込まれる制限酵素データベース(The Restriction Enzyme Database)(本技術分野において、REBASEとして知られている)に記載されている。一実施態様において、第1、第2、第3、及び/又は第4の制限部位を認識するニッキングエンドヌクレアーゼは全て、同一のニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列に対するものである。別の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、該4つの部位を2つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ標的配列に割り当てるのに考えられる全ての組合せ(例えば、第1の制限部位を第1のニッキングエンドヌクレアーゼ用にかつ残りの制限部位を第2のニッキングエンドヌクレアーゼ用に、第1及び第2の制限部位を第1のニッキングエンドヌクレアーゼ用に及び残りの制限部位を第2のニッキングエンドヌクレアーゼ用になど)を含む2つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。さらに別の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、該4つの部位を3つの異なるエンドヌクレアーゼ標的配列に割り当てるのに考えられる全ての組合せを含む3つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。さらなる実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、4つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼは、表2に挙げられているものから選択されるいずれか1つとすることができる。
(表2: 例示的なニッキングエンドヌクレアーゼ及びそれらの対応する制限部位)
【表2】
【0151】
ニッキングされたDNA分子の所望の百分率を達成するための温度、塩濃度、pH、緩衝試薬、ある種の界面活性剤の有無、及びインキュベーション期間を含む、さまざまなニッキングエンドヌクレアーゼがdsDNAの一方の鎖を切断する条件が、本明細書で提示されるさまざまなニッキングエンドヌクレアーゼに対して知られている。これらの条件は、ニッキングエンドヌクレアーゼのさまざまな供給業者、例えば、New England BioLabsのウエブサイト又はカタログから容易に入手可能である。本開示は、前記DNA分子を1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼとインキュベートする工程が、本技術分野において知られておりかつ実践されているインキュベーション条件に従って行われることを規定する。
【0152】
本技術分野において知られておりかつ用いられているさまざまな制限酵素を、本明細書で提供される方法に使用することができる。本方法における使用のための制限酵素についての実施態様として提供される制限酵素の例示的なリスト及び該制限酵素用の対応する制限部位が、neb.com/products/restriction-endonucleasesで入手可能でありその全体が引用により本明細書に組み込まれるNew England Biolabsのカタログに記載されている。ニッキングされたDNA分子の所望の百分率を達成するための温度、塩濃度、pH、緩衝試薬、ある種の界面活性剤の有無、及びインキュベーション期間を含む、さまざまな制限酵素がdsDNAを切断する条件が、本明細書で提供されるさまざまな制限酵素に対して知られている。 これらの条件は、制限酵素のさまざまな供給業者、例えば、New England BioLabsのウエブサイト又はカタログから容易に入手可能である。本開示は、前記DNA分子を前記制限酵素とインキュベートする工程が、本技術分野において知られておりかつ実践されているインキュベーション条件に従って行われることを規定する。
【0153】
(5.3.5 アニーリング)
本明細書で提供される方法におけるアニーリングする工程を行って、前記ssDNAオーバーハングを分子内で選択的にアニーリングさせ、それによって、上述の変性させる工程(セクション5.3.3)で得られたDNA断片(例えば、セクション5.4及び5.5のもの)の一方の末端にヘアピン化逆方向反復を生成させる。ある実施態様において、本明細書で提供される方法におけるアニーリングする工程を行って、前記ssDNAオーバーハングを分子内で選択的にアニーリングさせ、それによって、上述の変性させる工程(セクション5.3.3)で得られたDNA断片(例えば、セクション5.4及び5.5のもの)の2つの末端上にヘアピン化逆方向反復を生成させる。理論にとらわれたりその他の点で理論に限定されたりするものではないが、ssDNAオーバーハングのそのような選択的分子内アニーリングは、ssDNAオーバーハング内の分子内相補的配列が、該ssDNAオーバーハングの分子内アニーリングを、該ssDNAオーバーハングの分子間アニーリングと比較して熱力学的にかつ/又は速度論的に有利なものとするという理由で達成される。
【0154】
理論にとらわれたりその他の点で理論に限定されたりするものではないが、オーバーハングの特定の長さ及び/又は配列が、ssDNAオーバーハングの分子内アニーリングを、該ssDNAオーバーハングの分子間アニーリングと比較して熱力学的にかつ/又は速度論的に有利なものとすることができることが認識される。例えば、オーバーハング内部の分子内力及び鎖の間の分子間力並びに結果として生じる構造を示す線状相互作用プロットを、図2A図2Cに示す。ssDNAオーバーハングのアニーリングの熱力学及び動力学は、様々な因子の中でも特にエンタルピー(ΔH)及びエントロピー(ΔS)によって決定される。本発明者らは、自由なssDNAオーバーハングから分子内アニーリングしたオーバーハングへの運動の自由度の減少が、自由なssDNAオーバーハングから分子間アニーリングしたオーバーハングへの運動の自由度の減少よりも少ないために、分子内アニーリングにおけるエントロピー減少が、分子内アニーリングにおけるエントロピー減少よりも小さいことを認識している。一方で、分子内アニーリングしたオーバーハングにおける相補的ヌクレオチド対の数が、分子間アニーリングしたオーバーハングにおける相補的ヌクレオチド対の数よりも少ない(従って、ワトソン・クリック及びフーグスティーン型水素結合が少ない)ために、分子内アニーリングにおけるエンタルピー増加が、分子内アニーリングにおけるエンタルピー増加よりも少ない可能性がある。本開示は、ssDNAオーバーハングを、オーバーハングの分子内アニーリングの自由エネルギー増加(ΔG=ΔH-TΔS)が、分子間アニーリングのそれよりも大きくなり、それによって、分子内アニーリングが分子間アニーリングと比較して熱力学的に有利となるような特定の長さ、相補的ヌクレオチド対の数、及びG-C対及びA-T対の百分率を有するように設計することができることを規定する。本発明者らはさらに、ssDNAオーバーハング内のヌクレオチドが、分子運動の際に別のssDNAオーバーハングのヌクレオチドと接触する確率よりも高い互いに接触する確率を有しているために、ssDNAオーバーハングの分子内アニーリングの反応速度が、分子間アニーリングのそれよりも高い可能性があることを認識している。本開示は、分子内アニーリングが、分子間アニーリングと比較して熱力学的に不利である場合であっても、ssDNAオーバーハングの分子内アニーリングの優れた反応速度が、分子間アニーリングしたオーバーハングよりも優先的に分子内アニーリングしたオーバーハングの形成をもたらすことができることを規定する。
【0155】
アニーリング工程は、分子間アニーリングよりも分子内アニーリングに有利に働くさまざまな温度で行うことができる。一実施態様において、ssDNAオーバーハングは、少なくとも15℃、少なくとも16℃、少なくとも17℃、少なくとも18℃、少なくとも19℃、少なくとも20℃、少なくとも21℃、少なくとも22℃、少なくとも23℃、少なくとも24℃、少なくとも25℃、少なくとも26℃、少なくとも27℃、少なくとも28℃、少なくとも29℃、少なくとも30℃、少なくとも31℃、少なくとも32℃、少なくとも33℃、少なくとも34℃、少なくとも35℃、少なくとも36℃、少なくとも37℃、少なくとも38℃、少なくとも39℃、少なくとも40℃、少なくとも41℃、少なくとも42℃、少なくとも43℃、少なくとも44℃、少なくとも45℃、少なくとも46℃、少なくとも47℃、少なくとも48℃、少なくとも49℃、少なくとも50℃、少なくとも51℃、少なくとも52℃、少なくとも53℃、少なくとも54℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃、少なくとも57℃、少なくとも58℃、少なくとも59℃、又は少なくとも60℃の温度でアニーリングされる。別の実施態様において、ssDNAオーバーハングは、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃、約41℃、約42℃、約43℃、約44℃、約45℃、約46℃、約47℃、約48℃、約49℃、約50℃、約51℃、約52℃、約53℃、約54℃、約55℃、約56℃、約57℃、約58℃、約59℃、又は約60℃の温度でアニーリングされる。特定の一実施態様において、ssDNAオーバーハングは、少なくとも25℃の温度でアニーリングされる。別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、約25℃の温度でアニーリングされる。さらに別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、室温でアニーリングされる。
【0156】
さらに、アニーリング工程を、分子間アニーリングよりも分子内アニーリングに有利に働くさまざまな期間にわたり行うことができる。ある実施態様において、ssDNAオーバーハングは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、又は少なくとも40分アニーリングされる。別の実施態様において、ssDNAオーバーハングは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、又は約40分アニーリングされる。特定の一実施態様において、ssDNAオーバーハングは、少なくとも20分アニーリングされる。別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、約20分アニーリングされる。
【0157】
いくつかの実施態様において、アニーリングは、温度を、計算されるセンス及びアンチセンス配列の対の融解温度を下回る温度に下げることにより達成し得る。融解温度は、具体的なヌクレオチド塩基含量及び用いられている溶液の特性、例えば、塩濃度に依存する。任意の配列と溶液との組合せの融解温度が、本技術分野において知られておりかつ実践されているように容易に計算される。
【0158】
いくつかの実施態様において、アニーリングは、変性用化学薬品の量を減らしてセンス及びアンチセンス配列の対の間の相互作用を可能とすることによって等温で達成することができる。DNA配列を変性させるのに必要とされる変性用化学薬品の最小濃度は、具体的なヌクレオチド塩基含量及び用いられている溶液の特性、例えば、温度又は塩濃度に依存する場合がある。任意の配列と溶液との組合せについて変性を招かない化学的変性剤の濃度は、本技術分野において知られておりかつ実践されているように容易に特定される。化学的変性剤の濃度は、本技術分野において知られておりかつ実践されているように容易に変更することもできる。例えば、尿素の量を、透析又は接線流濾過によって低下させることができ、又はpHを、酸又は塩基の添加によって変化させることができる。
【0159】
分子内アニーリングのためのアニーリング温度及びアニーリング時間は、ssDNAオーバーハングの長さ、相補的ヌクレオチド対の数、及びG-C及びA-T対の百分率、並びにssDNAオーバーハングの配列(相補的ヌクレオチド対の配置)と相関している。ある実施態様において、本明細書で提供される方法に提供されるssDNAオーバーハングは、セクション5.3.3に記載されるように、長さが任意の数のヌクレオチドを含む。ある実施態様において、本明細書で提供される方法に提供されるssDNAオーバーハングは、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、又は少なくとも50対の分子内相補的ヌクレオチド対を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法に提供されるssDNAオーバーハングは、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、又は約50対の分子内相補的ヌクレオチド対を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法に提供されるssDNAオーバーハングは、分子内相補的ヌクレオチド対のうち、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、又は少なくとも90%のG-C対を含む。ある実施態様において、本明細書で提供される方法に提供されるssDNAオーバーハングは、分子内相補的ヌクレオチド対のうち、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、又は約90%のG-C対を含む。
【0160】
さらに、本発明者らは、オーバーハングの濃度と相関するものであるDNA分子の濃度が、オーバーハングの分子内アニーリング及び分子間アニーリングの平衡及び動力学に影響を及ぼすことがあることを認識している。理論にとらわれたりその他の点で理論に限定されたりするものではないが、オーバーハングの濃度が高すぎる場合には、オーバーハングの間の分子間接触の確率が増加し、その場合には、上述のような低い濃度でみられる分子間接触に対する分子内接触の速度論的な優位性が低下する。
【0161】
上述のように、いくつかの実施態様において、分子内相互作用がより速い速度で生じることがあり、分子間相互作用が、より遅い速度で生じる。いくつかの実施態様において、3つ又はそれを超える分子(例えば、3つの異なる鎖)が関与する塩基対相互作用が、最も低い速度で生じる。いくつかの実施態様において、分子間相互作用に対する分子内相互作用の速度論的比率(kinetic rate)は、各分子の濃度に支配される。いくつかの実施態様において、DNA鎖の濃度が低いほど、分子内相互作用が速度論的に速く、又は分子内力が大きい。
【0162】
個別に見ると、IR又はITRの各相補的ドメインを形成する絶対自由エネルギーは、異なることがあり、鎖が変性状態からアニーリングされた状態へと遷移するときにより早期に局所的にフォールディングし得るIR又はITRの領域をもたらす。局所的にフォールディングされたドメイン(例えば、本セクション(セクション5.4.1)のどこか別の所及びセクション5.5に記載されているようなAAV2 ITRにおけるような中央のヘアピン又は分岐ヘアピン)の存在は、他の鎖との対形成に利用可能な塩基の量を減少させることができ、従って、分子間アニーリング又はハイブリダイゼーションの可能性を低下させ、平衡を分子間アニーリングから分子内アニーリング又はITR形成へとシフトさせることができる。
【0163】
従って、本開示は、アニーリング工程を、分子間アニーリングよりも分子内アニーリングに有利に働くさまざまな濃度で行うことができることを規定する。いくつかの実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について1以下、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、10以下、11以下、12以下、13以下、14以下、15以下、16以下、17以下、18以下、19以下、20以下、21以下、22以下、23以下、24以下、25以下、26以下、27以下、28以下、29以下、30以下、31以下、32以下、33以下、34以下、35以下、36以下、37以下、38以下、39以下、40以下、41以下、42以下、43以下、44以下、45以下、46以下、47以下、48以下、49以下、50以下、55以下、60以下、65以下、70以下、75以下、80以下、85以下、90以下、95以下、100以下、110以下、120以下、130以下、140以下、150以下、160以下、170以下、180以下、190以下、200以下、210以下、220以下、230以下、240以下、250以下、260以下、270以下、280以下、290以下、300以下、325以下、350以下、375以下、400以下、425以下、450以下、475以下、500以下、550以下、600以下、650以下、700以下、750以下、800以下、850以下、900以下、950以下、1000以下のng/μl濃度でアニーリングされる。ある実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約260、約270、約280、約290、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、約1000ng/μlの濃度でアニーリングされる。
【0164】
同様に、本開示は、アニーリング工程を、分子間アニーリングよりも分子内アニーリングに有利に働くさまざまなモル濃度で行うことができることを規定する。いくつかの実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について1以下、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、10以下、11以下、12以下、13以下、14以下、15以下、16以下、17以下、18以下、19以下、20以下、21以下、22以下、23以下、24以下、25以下、26以下、27以下、28以下、29以下、30以下、31以下、32以下、33以下、34以下、35以下、36以下、37以下、38以下、39以下、40以下、41以下、42以下、43以下、44以下、45以下、46以下、47以下、48以下、49以下、50以下、55以下、60以下、65以下、70以下、75以下、80以下、85以下、90以下、95以下、100以下、110以下、120以下、130以下、140以下、150以下、160以下、170以下、180以下、190以下、200以下、210以下、220以下、230以下、240以下、250以下、260以下、270以下、280以下、290以下、300以下、325以下、350以下、375以下、400以下、425以下、450以下、475以下、500以下、550以下、600以下、650以下、700以下、750以下、800以下、850以下、900以下、950以下、1000以下のnM濃度でアニーリングされる。ある実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約260、約270、約280、約290、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、約500、約550、約600、約650、約700、約750、約800、約850、約900、約950、約1000nMの濃度でアニーリングされる。いくつかのさらなる実施態様において、ssDNAオーバーハングは、1以下、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、10以下、11以下、12以下、13以下、14以下、15以下、16以下、17以下、18以下、19以下、20以下のμM濃度でアニーリングされる。さらに別の実施態様において、ssDNAオーバーハングは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20μMの濃度でアニーリングされる。特定の一実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約10nMの濃度でアニーリングされる。別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約20nMの濃度でアニーリングされる。さらに別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約30nMの濃度でアニーリングされる。さらに具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約40nMの濃度でアニーリングされる。さらに別の特定の実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約50nMの濃度でアニーリングされる。別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約60nMの濃度でアニーリングされる。特定の一実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約10ng/μlの濃度でアニーリングされる。別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約20ng/μlの濃度でアニーリングされる。さらに別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約30ng/μlの濃度でアニーリングされる。さらに具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約40ng/μlの濃度でアニーリングされる。特定の一実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約50ng/μlの濃度でアニーリングされる。別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約60ng/μlの濃度でアニーリングされる。さらに別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約70ng/μlの濃度でアニーリングされる。特定の一実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約80ng/μlの濃度でアニーリングされる。別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約90ng/μlの濃度でアニーリングされる。さらに別の具体的な実施態様において、ssDNAオーバーハングは、前記DNA分子について約100ng/μlの濃度でアニーリングされる。
【0165】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法に提供されるssDNAオーバーハングは、表3に挙げられる任意の配列を含む。
(表3: ssDNAオーバーハングの配列及びアニーリング後の対応する構造)
【表3】
【0166】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子の構造は、2、3、4、5、10、又は20サイクルの変性/再生(例えば、セクション5.3.3に記載される変性及び本セクション(セクション5.3.5)に記載される再アニーリング)後に同一である。DNA構造は、エネルギー最小の又はその付近の構造のアンサンブル(総体)によって記述することができる。ある実施態様において、アンサンブルDNA構造は、2、3、4、5、10、又は20サイクルの変性/再生後に同一である。一実施態様において、本明細書で提供されるITR又はIRから形成されるフォールディングされたヘアピン構造は、2、3、4、5、10、又は20サイクルの変性/再生後に同一である。別の実施態様において、フォールディングされたヘアピンのアンサンブル構造は、2、3、4、5、10、又は20サイクルの変性/再生後に同一である。
【0167】
(5.3.6 エキソヌクレアーゼとインキュベートすること)
本開示は、セクション3に記載されているようなエキソヌクレアーゼとインキュベートする工程を提供する。エキソヌクレアーゼは、DNA分子の末端(エキソ)からヌクレオチドを切断する。エキソヌクレアーゼは、5’から3’方向に、3’から5’方向に、又は双方向にヌクレオチドを切断することができる。ある実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのエキソヌクレアーゼは、配列特異性を示さずにヌクレオチドを切断する。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのエキソヌクレアーゼは、前記第5及び第6の制限部位を認識し切断する1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼによって又はセクション3で提供されるプラスミド又は該プラスミドの断片を切断する制限酵素によって生成された末端を含むDNA断片を消化する。
【0168】
本技術分野において知られておりかつ用いられているさまざまなエキソヌクレアーゼを、本明細書で提供される方法に使用することができる。本方法における使用のための制限酵素の実施態様として提供されるエキソヌクレアーゼの例示的なリストが、neb.com/products/dna-modifying-enzymes-and-cloning-technologies/nucleasesで入手可能でありかつその全体が引用により本明細書に組み込まれるNew England Biolabsのカタログに記載されている。所望の消化の百分率を達成するための温度、塩濃度、pH、緩衝試薬、ある種の界面活性剤の有無、及びインキュベーション期間を含む、さまざまなエキソヌクレアーゼがDNA分子を消化する条件が、本明細書で提供されるさまざまなエキソヌクレアーゼに対して知られている。これらの条件は、制限酵素のさまざまな供給業者、例えば、New England BioLabsのウエブサイト又はカタログから容易に入手可能である。本開示は、前記DNA分子を前記制限酵素とインキュベートする工程が、本技術分野において知られておりかつ実践されているインキュベーション条件に従って行われることを規定する。
【0169】
エキソヌクレアーゼをインキュベートする工程は、ヘアピン末端DNA分子をインタクトなままで残しつつ、1つ以上の末端を有するDNA分子を選択的に消化する。セクション5.3.5及び5.5の記載から明らかであるように、ヘアピン末端DNA分子は、0個、1個、2個、又はそれを超えるニックを含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのエキソヌクレアーゼは、環状ssDNA/dsDNA分子又は1つ以上のニックを含むが末端は含まないDNA分子をインタクトなままで残しつつ、1つ以上の末端を有するDNA分子を選択的に消化するエキソヌクレアーゼとすることができる。一実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのエキソヌクレアーゼを、エキソヌクレアーゼV(RecBCD)とすることができる。一実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのエキソヌクレアーゼを、エキソヌクレアーゼVIII又は切断型エキソヌクレアーゼVIIIとすることができる。エキソヌクレアーゼV(RecBCD)、エキソヌクレアーゼVIII、及び切断型エキソヌクレアーゼVIIIは、本段落で記載する選択性を含む。他の適当なエキソヌクレアーゼも、例えば、New England BioLabsなどの、エキソヌクレアーゼのさまざまな供給業者のウエブサイトやカタログに記載されているように、本技術分野において知られて用いられており、本明細書で提示される。
【0170】
いくつかの実施態様において、エキソヌクレアーゼ処理後に、本開示のDNA分子は、原核生物の骨格配列を実質的に含まない。いくつかの実施態様において、骨格は、2つのITRの間の発現カセットを包含する配列の一部ではないプラスミド配列を意味する。いくつかの実施態様において、骨格は、2つのITRの間の発現カセットを包含する配列の一部ではないベクター配列を意味する。いくつかの実施態様において、本開示の単離DNA分子は、元のプラスミドの原核生物骨格配列を100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、又は90%含まない。
【0171】
(5.3.7 リガーゼを用いてニックを修復すること)
本開示は、セクション3に記載されるリガーゼを用いて前記ニックを修復する工程を提供する。DNAリガーゼは、1つ以上の新たな共有結合を形成することによるDNA分子の2つの末端の連結を触媒する。例えば、よく使用されるT4 DNAリガーゼは、DNA内の並置された5'リン酸末端及び3'ヒドロキシル末端間のホスホジエステル結合の形成を触媒する。リガーゼによって触媒されて2つのDNA分子を繋ぐ新たな共有結合の形成は、「ライゲーション」と呼ばれる。ある実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのDNAリガーゼは、配列特異性を示さずにヌクレオチドをライゲーションする。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのDNAリガーゼは、セクション5.5に記載されるDNA分子の1つのニックにおいて2つの末端をライゲーションし、それによって、該1つのニックを修復する。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのDNAリガーゼは、セクション5.5に記載されるDNA分子の2つのニックにおいてそれぞれの2つの末端の対をライゲーションし、それによって、該2つのニックを修復する。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法における使用のためのDNAリガーゼは、セクション5.5に記載されるDNA分子の全てのニックにおいてそれぞれの2つの末端の対をライゲーションし、それによって、該DNA分子の全てのニックを修復する。セクション5.5に記載されるDNA分子が、セクション5.5に記載されるDNA分子の全てのニックが修復された後に環状DNAを形成する場合には。セクション5.5に記載されるように、いくつかの実施態様において、セクション5.5に記載されるDNA分子は、2つのニックからなる。ある実施態様において、セクション5.5に記載されるDNA分子は、2つのニックを含む。別の実施態様において、セクション5.5に記載されるDNA分子は、1つのニックからなる。さらに別の実施態様において、セクション5.5に記載されるDNA分子は、1つのニックを含む。
【0172】
本開示は、リガーゼを用いて前記ニックを修復する工程が、本技術分野において知られておりかつ実践されているインキュベーション条件に従って行われることを規定する。
【0173】
(5.4 本方法で用いられるDNA分子)
本明細書で提供されるDNA分子は、その自然なままの環境にあるDNA分子又は単離DNA分子とすることができる。ある実施態様において、DNA分子は、その自然なままの環境にあるDNA分子である。いくつかの実施態様において、DNA分子は、単離DNA分子である。一実施態様において、単離DNA分子は、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%純度のDNA分子とすることができる。別の実施態様において、単離DNA分子は、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%純度のDNA分子とすることができる。純度の観点での本明細書で提供される単離DNA分子の他の実施態様が、セクション5.4.8でさらに記載され、それは、本段落で提供される実施態様との任意の適当な組合せで組み合わせることができる。
【0174】
DNA分子は、完全に工学的に作製(例えば、合成により製造又は組換えにより製造)できるために、セクション3及び本セクション5.4のものを含む本明細書で提供されるDNA分子は、セクション5.4.5でさらに記載されるように特定の配列や特徴を欠くこともある。
【0175】
(5.4.1 逆方向反復)
セクション3及び本セクション(セクション5.4.1)で提供されるITR又はIRは、例えば、セクション3、5.3.3、5.3.4、及び5.3.5に記載される方法の工程を行うと、セクション5.5で提供されるヘアピン末端DNA分子内にヘアピン化ITRを形成することができる。従って、いくつかの実施態様において、セクション3及び本セクション(セクション5.4.1)で提供されるITR又はIRは、セクション3及びセクション5.5で提供されるIR又はITRの任意の実施態様及び本セクション(セクション5.4.1)で提供される追加の実施態様を、任意の組合せで含むことができる。
【0176】
「逆方向反復」又は「IR」は、回文配列領域を含む一本鎖核酸配列を意味する。この回文構造領域は、ヌクレオチドの配列と、その反転相補配列(reverse complement)、すなわち、以下でさらに説明されるような「回文配列」を、以下でさらに説明される同一の鎖上に含む。塩基間の疎水性スタッキング引力が無効とされる状態にあることを意味する変性状態では、IR核酸配列は、ランダムコイル状態で存在する(例えば、高温、化学薬品の存在、高pHでなど)。条件が、より生理学的なものとなるにつれて、該IRは、フォールディングして最も外側の領域が塩基対形成によって非共有結合的に一緒に保持される二次構造を形成することができる。いくつかの実施態様において、IRは、ITRとすることができる。ある実施態様において、IRは、ITRを含む。
【0177】
「逆方向末端反復」、「末端反復」、「TR」、又は「ITR」は、一本鎖DNA分子の末端にもしくはその近くにある逆方向反復領域、又はdsDNA分子の一本鎖オーバーハングにもしくはその内部にある逆方向反復を意味する。ITRは、該ITRにおける回文配列の結果としてそれ自体の上にフォールディングすることができる。一実施態様において、ITRは、ssDNAの一方の末端に又はその近くにある。別の実施態様において、ITRは、dsDNAの一方の末端に又はその近くにある。さらに別の実施態様において、2つのITRはそれぞれ、ssDNAの2つのそれぞれの末端に又はその近くにある。さらなる実施態様において、2つのITRはそれぞれ、dsDNAの2つのそれぞれの末端に又はその近くにある。いくつかの実施態様において、ssDNA又はdsDNAの非ITR部分は、該ITRに対して異種のものである。ある実施態様において、ssDNA又はdsDNAの非ITR部分は、ITRに対して同種のものである。塩基間の疎水性スタッキング引力が無効とされる状態にあることを意味する変性状態では、ITRを含む核酸配列は、ランダムコイル状態で存在する(例えば、高温、化学薬品の存在、高pHでなど)。いくつかの実施態様において、条件が、セクション5.3.5に記載されるアニーリングにより適したものとなるにつれて、ITRが、それ自体の上にフォールディングして、dsDNAの異種非ITR部分をインタクトなままとしつつ、塩基対形成によって非共有結合的に一緒に保持される構造を形成することができるか、又はssDNA分子の異種非ITR部分が、該異種DNA分子の反転相補配列を含む第2のssDNA分子とハイブリッド形成することができる。結果として得られる2本のハイブリッド形成したDNA鎖の複合体は、3つの別個の領域を含み、すなわち、第1のフォールディングされた一本鎖ITRが、二本鎖DNA領域に共有結合的に連結され、これが、今度は、第2のフォールディングされた一本鎖ITRに共有結合的に連結されている。ある実施態様において、ITR配列は、セクション3、5.3.4、及び5.4.2に記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位のうちの1つを起点とし、dsDNAの前の最後の塩基を終点とすることができる。一実施態様において、直鎖状二本鎖DNA分子とは対照的に、DNA分子の両末端でトップ及びボトム鎖の5’及び3’末端に存在するITRは、内側にフォールディングして互いに向かい合うことができ(例えば、3'が5'に、5'が3'に、又は逆もまた同様である)、従って、核酸二本鎖の両側の自由な5’又は3’末端を露出させることはない。ITRが、それ自体の上にフォールディングする場合、いくつかの実施態様においては、フォールディングされたITR内のdsDNAを、DNA分子の非ITR部分のdsDNAの直ぐ隣として、dsDNAと隣接するニックを生成させることができ、又は別の実施態様において、フォールディングされたITR内のdsDNAを、DNA分子の非ITR部分のdsDNAからヌクレオチド1つ以上離して、dsDNAと隣接する「ssDNAギャップ」を生成させることができる。非ITR DNA配列の両側に位置する2つのITRは、「ITR対」と称される。いくつかの実施態様において、ITRが、フォールディングされた状態をとる場合、それは、エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼV)に対して、例えば、37℃で1時間を超える期間抵抗性となる。
【0178】
フォールディングしてその二次構造をとるITRの末端塩基と、DNAハイブリッド化二本鎖の末端塩基の間の境界は、ニック又はssDNAギャップの両側に位置する塩基対の間のスタックキング相互作用(例えば、同軸スタッキング)によってさらに安定化することができ、これらの相互作用は、配列依存性がある。ニックに類似の構造の場合には、2つのコンホメーションの間の平衡が、存在することもあり、ここで、第1のコンホメーションは、ニックの両側に位置する塩基対の間のスタッキングが保存されているインタクトな二重らせんのそれに非常に近く、もう一方のコンホメーションは、ニック部位でのスタッキングの完全な喪失に対応し、従って、DNAにねじれを誘導する。ニッキングされた分子は、ポリアクリルアミド及びアガロースゲル電気泳動の間に、同じサイズのインタクトな分子よりも幾分遅く移動することが知られている。ある場合には、この遅延は、より高い温度で強化される。ニックのスタッキングされた/直鎖状のコンホメーションとスタッキングされていない/曲がったコンホメーションの間の迅速な平衡化が、ゲル電気泳動の間のDNA分子の移動度に直接影響を及ぼし、ニックを有するDNA分子に特徴的な特異な遅延をもたらすと考えられる。
【0179】
理論にとらわれるものではないが、細胞タンパク質は、平行な5’及び3’末端を二本鎖切断として認識することができ、これらに結合してプロセシングすることができ、このことが、細胞内のDNAの運命に有害な影響を及ぼすことがあると考えられる。従って、ITRは、セクション3及び5.5並びに本セクション(セクション5.4.1)で提供されるようなITRを有する発現カセットの早期の望まれない分解を、その2つの末端のうちの一方又は双方において防止することができる。
【0180】
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位を向かい合う鎖上かつ逆方向反復の近くに配置すること、及びそれに続く該逆方向反復のボトム鎖からのトップ鎖の分離によって、結果として得られるオーバーハングは、それ自体の上に折り返されて、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を少なくとも1つ含む二本鎖末端を形成することができる。いくつかの実施態様において、フォールディングされたITRは、ウイルスITRの二次構造コンホメーションに類似している。一実施態様において、ITRは、ボトム鎖の5’末端及び3’末端の双方に位置する(例えば、左のITR及び右のITR)。別の実施態様において、ITRは、トップ鎖の5’末端及び3’末端の双方に位置する。さらに別の実施態様において、一方のITRが、トップ鎖の5’末端に位置し、かつ他方のITRが、ボトム鎖の反対側の末端に位置する(例えば、左のITRがトップ鎖上の5’末端、右のITRがボトム鎖の5’末端)。さらに別の実施態様において、一方のITRが、トップ鎖の3’末端に位置し、他方のITRが、ボトム鎖の3’末端に位置する。
【0181】
いくつかの態様において、本開示は、回文配列を含むDNA分子を提供する。「回文配列」又は「パリンドローム」は、折り返されて分子内アニーリングに有利に働く条件下で自己相補的な領域においてdsDNAの区間を形成することができる自己相補的なDNA配列である。いくつかの実施態様において、回文配列は、順方向に読み取られた場合に相補鎖上で逆方向に読み取られた場合と同一となる連続したポリヌクレオチドの区間を含む。一実施態様において、回文配列は、順方向に読み取られた場合に相補鎖上で逆方向に読み取られた場合と同一となるポリヌクレオチドの区間であって、非回文構造のポリヌクレオチドの区間1つ以上によって中断されている、そのような区間を含む。別の実施態様において、回文配列は、順方向に読み取られた場合に相補鎖上で逆方向に読み取られた場合と50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一となるポリヌクレオチドの区間を含む。さらに別の実施態様において、回文配列は、順方向に読み取られた場合に相補鎖上で逆方向に読み取られた場合と50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一となるポリヌクレオチドの区間であって、非回文構造のポリヌクレオチドの区間1つ以上によって中断されている、そのような区間を含む。1つ以上の回文配列をコードするssDNAは、それ自体の上に折り返されて、二次構造(例えば、ヘアピンループ、又は三方向接合部(three-way junction))を備える二本鎖塩基対を形成することができる。
【0182】
例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.3.5に記載されているような適当な条件下で、本セクション(セクション5.4.1)で提供されるIR又はITRは、フォールディングして、ステム、主ステム、ループ、転換点(turning point)、バルジ、分岐、分岐ループ、内部ループ、及び/又はセクション5.5に記載される構造的な特徴の任意の組合せ又は順列を含む、本セクション(セクション5.4.1)及びセクション5.5に記載されるようなヘアピン構造を形成することができる。
【0183】
一実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のIR又はITRは、1つ以上の回文配列を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるIR又はITRは、主ステムドメインを形成することに加えて、分岐ヘアピン構造を形成することができる回文配列又はドメインを含む。いくつかの実施態様において、IR又はITRは、任意の数の分岐ヘアピンを形成することができる回文配列を含む。具体的なある実施態様において、IR又はITRは、1~30個の分岐ヘアピン、又は1~30のうちの任意の部分範囲の個数の分岐ヘアピンを形成することができる回文配列を含む。いくつかの特定の実施態様において、IR又はITRは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の分岐ヘアピンを形成することができる回文配列を含む。いくつかの実施態様において、IR又はITRは、三方向接合ドメイン(T形)をもたらす2つの分岐ヘアピン構造を形成することができる配列を含む。いくつかの実施態様において、IR又はITRは、4方向接合ドメイン(又は十字形の構造)をもたらす3つの分岐ヘアピン構造を形成することができる配列を含む。いくつかの実施態様において、IR又はITRは、非T形ヘアピン構造、例えば、U形ヘアピン構造を形成することができる配列を含む。いくつかの実施態様において、IR又はITRは、一連のバルジ及び塩基対ミスマッチを含む中断されたU形ヘアピン構造を形成することができる配列を含む。いくつかの実施態様において、分岐ヘアピンは全て、同じ長さのステム及び/又はループを有する。いくつかの実施態様において、一方の分岐ヘアピンは、他方の分岐ヘアピンよりも小さい(例えば、切断されている)。ヘアピン構造のいくつかの例示的な実施態様及びヘアピン構造の構造的要素を、図1に示す。
【0184】
「ヘアピン閉鎖塩基対(hairpin closing base pair)」は、対不形成ループ配列に続く最初の塩基対を意味する。特定のステムループ配列は、好ましい閉鎖塩基対(例えば、AAV2 ITRにおけるGC)を有する。一実施態様において、ステムループ配列は、閉鎖塩基対としてG-C対を含む。別の実施態様において、ステムループ配列は、閉鎖塩基対としてC-G対を含む。
【0185】
「ITR閉鎖塩基対」は、フォールディングされたITR内で塩基対を形成する最初及び最後のヌクレオチドを意味する。末端塩基対は、通常、DNA分子の非ITR配列(例えば、発現カセット)に最も近い主ステムドメインのヌクレオチドの対である。ITR閉鎖塩基対は、任意の種類の塩基対(例えば、CG、AT、GC、又はTA)とすることができる。一実施態様において、ITR閉鎖塩基対は、G-C塩基対である。別の実施態様において、ITR閉鎖塩基対は、A-T塩基対である。さらに別の実施態様において、ITR閉鎖塩基対は、C-G塩基対である。さらなる実施態様において、ITR閉鎖塩基対は、T-A塩基対である。
【0186】
本開示は、DNA二次構造が、本技術分野において知られておりかつ実践されているように計算的に予測できることを規定する。DNA二次構造は、いくつかの方法:スクイグルプロット(squiggle plot)、グラフ表示法(graph representation)、ドット-ブラケット表記法、環状プロット、円弧図、マウンテンプロット、ドットプロットなどで表すことができる。環状プロットでは、骨格が、丸によって表され、塩基対が、丸の内部に円弧によって表される。円弧図では、DNA骨格が、直線として描かれ、各塩基対のヌクレオチドが、円弧によって連結される。環状及び円弧プロットは双方とも、二次構造の類似性及び相違の特定を可能にする。
【0187】
DNA二次構造予測のための多くの方法のうちの1つは、最隣接モデルを用いており、DNA構造に関連する総自由エネルギーを最小化する。最小自由エネルギーは、塩基対スタッキング、ヘアピン、バルジ、内部ループ、及び多分岐ループからの個々のエネルギー寄与を合計することによって推定される。これらの要素のエネルギー寄与は、配列及び長さに依存性があり、実験的に決定されている。配列のステムループ及びサブステムへの分離は、例えば、構造をグラフプロットとして示すことによって図示することができる。線状相互作用プロットでは、各残基が、横軸上に表され、半楕円形の線が、互いに対を成す塩基を結ぶ(例えば、図2A及び図B)。
【0188】
いくつかの実施態様において、ITRは、細胞の核における核酸分子の長期残存を向上させる。いくつかの実施態様において、ITRは、細胞の核における核酸分子の永続的な残存を(例えば、該細胞の全寿命にわたって)向上させる。いくつかの実施態様において、ITRは、細胞の核における核酸分子の安定性を高める。いくつかの実施態様において、ITRは、細胞の核における核酸分子の分解を阻害又は防止する。
【0189】
ある実施態様において、IR又はITRは、任意のウイルスITRを含むことができる。別の実施態様において、IR又はITRは、反復の最も外側の頂点又は転換点で5’又は3’末端を露出させないパリンドロームヘアピン構造を形成することができる合成の回文配列を含むことができる。
【0190】
いくつかの実施態様において、ITR閉鎖塩基対の一方のヌクレオチドから該ITR閉鎖塩基対の他方のヌクレオチドまで広がる一本鎖ITR配列は、生理的条件下で-10kcal/mol~-100 kcal/molの範囲のアンフォールディングのギブズ自由エネルギー(ΔG)を有する。一実施態様において、前述の文にいうアンフォールディングのギブズ自由エネルギー(ΔG)(kcal/mol)は、-10以下(≦-10を意味し、例えば、-20、-30などを含む)、-11以下、-12以下、-13以下、-14以下、-15以下、-16以下、-17以下、-18以下、-19以下、-20以下、-21以下、-22以下、-23以下、-24以下、-25以下、-26以下、-27以下、-28以下、-29以下、-30以下、-31以下、-32以下、-33以下、-34以下、-35以下、-36以下、-37以下、-38以下、-39以下、-40以下、-41以下、-42以下、-43以下、-44以下、-45以下、-46以下、-47以下、-48以下、-49以下、-50以下、-51以下、-52以下、-53以下、-54以下、-55以下、-56以下、-57以下、-58以下、-59以下、-60以下、-61以下、-62以下、-63以下、-64以下、-65以下、-66以下、-67以下、-68以下、-69以下、-70以下、-71以下、-72以下、-73以下、-74以下、-75以下、-76以下、-77以下、-78以下、-79以下、-80以下、-81以下、-82以下、-83以下、-84以下、-85以下、-86以下、-87以下、-88以下、-89以下、-90以下、-91以下、-92以下、-93以下、-94以下、-95以下、-96以下、-97以下、-98以下、-99以下、又は-100以下である。別の実施態様において、前述の文にいうアンフォールディングのギブズ自由エネルギー(ΔG)(kcal/mol)は、約-10(≦-10を意味し、例えば、-20、-30などを含む)、約-11、約-12、約-13、約-14、約-15、約-16、約-17、約-18、約-19、約-20、約-21、約-22、約-23、約-24、約-25、約-26、約-27、約-28、約-29、約-30、約-31、約-32、約-33、約-34、約-35、約-36、約-37、約-38、約-39、約-40、約-41、約-42、約-43、約-44、約-45、約-46、約-47、約-48、約-49、約-50、約-51、約-52、約-53、約-54、約-55、約-56、約-57、約-58、約-59、約-60、約-61、約-62、約-63、約-64、約-65、約-66、約-67、約-68、約-69、約-70、約-71、約-72、約-73、約-74、約-75、約-76、約-77、約-78、約-79、約-80、約-81、約-82、約-83、約-84、約-85、約-86、約-87、約-88、約-89、約-90、約-91、約-92、約-93、約-94、約-95、約-96、約-97、約-98、約-99、又は約-100である。いくつかの実施態様において、ITR閉鎖塩基対の一方のヌクレオチドからITR閉鎖塩基対の他方のヌクレオチドまでひろがるITR配列は、生理的条件下で、-26kcal/mol~-95kcal/molの範囲のアンフォールディングのギブズ自由エネルギー(ΔG)を有する。いくつかの実施態様において、ITR閉鎖塩基対の一方のヌクレオチドからITR閉鎖塩基対の他方のヌクレオチドまでひろがるITR配列は、生理的条件下での該ITR配列についてのアンフォールディングのギブズ自由エネルギー(ΔG)の全てに寄与する。
【0191】
いくつかの実施態様において、フォールディングされた状態では、一本鎖IR又はITRは、約50%~98%の総合ワトソン・クリック自己相補性(overall Watson-Crick self-complementarity)を有する。一実施態様において、フォールディングされた状態では、一本鎖IR又はITRは、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の総合ワトソン・クリック自己相補性を有する。別の実施態様において、フォールディングされた状態では、一本鎖IR又はITRは、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の総合ワトソン・クリック自己相補性を有する。いくつかの実施態様において、フォールディングされた状態では、IR又はITRは、約60%~98%の総合ワトソン・クリック相補性を有する。
【0192】
いくつかの実施態様において、一本鎖IR又はITRは、約60~95%の総GC含量を有する。ある実施態様において、一本鎖IR又はITRは、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%の総GC含量を有する。別の実施態様において、一本鎖IR又はITRは、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、又は約95%の総GC含量を有する。いくつかの実施態様において、一本鎖IRは、約60~91%の総GC含量を有する。
【0193】
表4は、例示的なITRのフォールディング自由エネルギー、GC含量、相補性の百分率、長さを一覧表示し、表5は、表4のITRの配列を一覧表示する。
(表4:例示的なITRのフォールディング自由エネルギー、GC含量、相補性の百分率、長さ)
【表4】
(表5: 表4のITRの配列)
【表5】
【0194】
本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、さまざまな起源のIR又はITRを含むことができる。一実施態様において、前記DNA分子内のIR又はITRは、ウイルスITRである。「ウイルスITR」は、任意のウイルスの末端反復又は少なくとも1つの最低限必要な複製起点及びパリンドロームヘアピン構造を含む領域を含む合成配列を含む。一実施態様において、ウイルスITRは、パルボウイルス科に由来する。パルボウイルス科由来のウイルスITRは、パルボウイルス科遺伝子Rep及びNS1によってコードされるウイルスDNA複製関連タンパク質(「RAP」)及びそのアイソフォームが結合することができるDNA配列を意味するウイルス複製関連タンパク質結合配列(「RABS」)を含む「最低限必要な複製起点」を含む。いくつかの実施態様において、RABSは、Rep結合配列(「RBS」)(RBE(Rep結合エレメント)とも称される)を含み、これは、Repタンパク質(ウイルス核酸分子の複製を目的とする)によって認識されるヌクレオチド配列及び該Repタンパク質と該ヌクレオチド配列との間の特異的相互作用の部位の双方を含むヌクレオチド配列を意味する。別の実施態様において、パルボウイルス科由来のウイルスITRは、複製関連ウイルスタンパク質NS1が結合することができるNS1結合エレメント(「NSBE」)を含むRABSを含む。いくつかの実施態様において、ウイルスITRは、パルボウイルス科由来であり、ウイルスDNA複製関連タンパク質NS1又はRepが、TRSにおいて配列内にエンドヌクレアーゼ的切断によるニックを入れることができる末端分離部位(「「TRS」」)を含む。さらに別の実施態様において、ウイルスITRは、少なくとも1つのRBS又はNSBE及び少なくとも1つのTRSを含む。ウイルス又は組換えRepベースのウイルスゲノムの製造との関連で、ITRは、複製及びウイルスのパッケージングを媒介する。本発明者らによって予期せず発見され、本明細書で提供されるように、ウイルスITRに類似のITRを有する二本鎖の直鎖DNAベクターを、Rep又はNS1タンパク質を必要とすることなく、その結果、DNA複製をRABS又はTRS配列に依存せずに製造することができる。従って、RABS及びTRSは、任意に、本明細書で開示されるヌクレオチド配列内にコードすることができるが、必須ではなく、ITRの設計に関する柔軟性を提供する。一実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のITRは、RABSを含まない。別の実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のITRは、RBSを含まない。別の実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のITRは、NSBEを含まない。さらに別の実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のITRは、TRSを含まない。さらなる実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のITRは、RABS又はTRSのいずれも含まない。さらなる実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のITRは、RBS、TRS、又はRBS及びTRSの双方を含む。さらなる実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のITRは、NBSE、TRS、又はNBSE及びTRSの双方を含む。
【0195】
「ITR対」は、単一のDNA分子内の2つのITRを意味する。いくつかの実施態様において、ITR対における2つのITRは双方とも、その全長の全てにわたり逆相補配列を有する野生型ウイルスITR(例えば、AAV2 ITR)に由来する。ITRは、それが、標準的な天然に存在する配列から逸脱するヌクレオチドを1つ以上有しているとしても、その変化が、配列の性質及び総合的な三次元構造に影響を及ぼさない限りは、野生型配列と考えることができる。本開示は、いくつかの実施態様において、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、又は置換が、ウイルスITRの総合的な三次元構造を変化させることなくニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を生じさせることができることを規定する。いくつかの態様において、逸脱するヌクレオチドは、保存的な配列変化を意味する。ある実施態様において、本明細書で提供されるITRの配列は、(例えば、BLASTをデフォルトの設定で用いて測定して)標準配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有することができ、また、3D構造が、幾何学的空間において同一の形状となるように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を有する。別の実施態様において、本明細書で提供されるITRの配列は、(例えば、BLASTをデフォルトの設定で用いて測定して)標準配列に対して約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を有することができ、また、3D構造が、幾何学的空間において同一の形状となるようにニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を有する。
【0196】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、1組のwt-ITRを含む。具体的なある実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、表6に示される群から選択される1組のwt-ITRを含む。表6は、AAV血清型1(AAV1)、AAV血清型2(AAV2)、AAV血清型3(AAV3)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、AAV血清型10(AAV10)、AAV血清型11(AAV11)、又はAAV血清型12(AAV12);AAVrh8、AAVrhlO、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノム(例えば、NCBI: NC 002077; NC 001401 ; NC001729; NC001829; NC006152; NC 006260; NC 006261)、温血動物(トリAAV(AAAV)、ウシAAV(BAAV)、イヌ、ウマ、及びヒツジのAAV)由来のITR、B19パルボウイルス(GenBankアクセッションNo: NC 000883)、マウス由来の微小ウイルス(MVM)(GenBankアクセッションNo. NC 001510);ガチョウ:ガチョウパルボウイルス(GenBankアクセッションNo. NC 001701);ヘビ:ヘビパルボウイルス1(GenBankアクセッションNo. NC 006148)由来のITRを含む、同一の血清型もしくは異なる血清型、又は別のパルボウイルス由来の例示的なITRを示す。
(表6: 例示的なITR配列)
【表6】
【0197】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、パルボウイルスのゲノムの全体又は一部を含む。パルボウイルスのゲノムは、直鎖状で、サイズが3.9~6.3kbであり、コード領域は、異なる(ヘテロテロメア、例えば、HBoV)又は同一(ホモテロメア、例えば、AAV2)のいずれかの、フォールディングしてヘアピン様構造となることができる末端反復で挟まれている。一実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、該DNA分子の2つの末端に2つの異なるITRを含む。別の実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、該DNA分子の2つの末端に2つの同一のITRを含む。さらに別の実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、該DNA分子の2つの末端に2つのHBoV ITRに対応する2つの異なるITRを含む。さらなる実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、該DNA分子の2つの末端にAAV2 ITRに対応する2つの同一のITRを含む。
【0198】
ある実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内のITRは、AAV ITRとすることができる。別の実施態様において、ITRは、非AAV ITRとすることができる。一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内のITRは、AAV ITR又は非AAV TRから誘導することができる。いくつかの特定の実施態様において、ITRは、パルボウイルス及びディペンドウイルス(例えば、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、マウスパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ヒトパルボウイルスB-19)を包含するパルボウイルス科のいずれか1つから誘導することができる。別の具体的な実施態様において、ITRは、SV40複製の起点として働くSV40ヘアピンから誘導することができる。パルボウイルス科のウイルスは、2つの亜科:脊椎動物に感染するパルボウイルス亜科(Parvovirinae)及び無脊椎動物に感染するデンソウイルス亜科(Densovirinae)からなる。従って、一実施態様において、ITRは、パルボウイルス亜科のいずれか1つから誘導することができる。別の実施態様において、ITRは、デンソウイルス亜科のいずれか1つから誘導することができる。
【0199】
T形のAAV ITRと比較すると、ヒトエリスロウイルスB19は、フォールディングして少数の対不形成ヌクレオチドを有する長い直鎖状二本鎖となり、一連の小さいが高度に保存されたミスマッチバルジを生じさせることができる、不完全なパリンドロームで終わるITRを有する。いくつかの実施態様において、任意のパルボウイルスのITRを、本明細書で提供されるDNA分子用のITR(例えば、野生型又は改変型ITR)として用いることができ、又は任意のパルボウイルスのITRが、改変及びその時の本明細書で提供されるDNA分子内への組み入れのためのテンプレートITRとして作用することができる。いくつかの特定の実施態様において、DNA分子のITRが誘導されるパルボウイルスは、ディペンドウイルス、エリスロパルボウイルス、又はボカパルボウイルスである。別の具体的な実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITRは、AAV、B19、又はHBoVから誘導される。ある実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子用に選択されるAAV ITRの血清型は、該血清型の組織向性に基づくことができる。AAV2は、広い組織向性を有し、AAV1は、ニューロン及び骨格筋を優先的に標的とし、AAV5は、ニューロン、網膜色素上皮細胞、及び視細胞を優先的に標的とする。AAV6は、骨格筋及び肺を優先的に標的とする。AAV8は、肝臓、骨格筋、心臓、及び膵臓組織を優先的に標的とする。AAV9は、肝臓、骨格、及び肺組織を優先的に標的とする。一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITR又は改変ITRは、AAV2 ITRに基づくものである。一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITR又は改変ITRは、AAV1 ITRに基づくものである。一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITR又は改変ITRは、AAV5 ITRに基づくものである。一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITR又は改変ITRは、AAV6 ITRに基づくものである。一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITR又は改変ITRは、AAV8 ITRに基づくものである。一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のITR又は改変ITRは、AAV9 ITRに基づくものである。
【0200】
一実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、1つ以上の非AAV ITRを含む。さらなる実施態様において、そのような非AAV ITRは、哺乳動物のゲノムにみられるヘアピン配列から誘導することができる。特定の一実施態様において、そのような非AAV ITRは、ステムループ構造をとり、ミトコンドリアDNAのDNA合成を開始させるのに関与するOriLヘアピン配列
【化1】
(その全体が引用により本明細書に組み込まれるFusteらの文献、Molecular Cell、37、67-78、1月15日、2010年を参照されたい)を含むミトコンドリアのゲノムにみられるヘアピン配列から誘導することができる。別の具体的な実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、2つの自己相補的回文構造領域とヘアピンの双方の頂点の12ヌクレオチドループを有するT接合部を形成するように鏡写しとされた、OriL配列から誘導されたITRを含む。一実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、OriLヘアピンループ及びそれに続く対不形成バルジ及びGCリッチステムを維持している、OriL配列から誘導されるITRを含む。ミトコンドリアOriLから誘導されるITRのいくつかの例示的な実施態様を、図2に示す。
【0201】
一実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、アプタマーから誘導される1つ以上の非AAV ITRを含む。ウイルスITRと同様に、アプタマーは、フォールディングして三次元的構造を形成し、かつ生物学的標的を高い親和性及び高い特異性で認識する能力を有するssDNAで構成される。DNAアプタマーは、指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化(SELEX)によって作製することができる。例えば、一部のアプタマーが、ヒト細胞の核を標的とすることができることが既に示されている(その全体が引用により本明細書に組み込まれる、Shenらの文献、ACS Sens. 2019, 4, 6, 1612-1618を参照されたい)。一実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、核ターゲティングアプタマーITR又はその誘導体を含み、ここで、該アプタマーは、核タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施態様において、アプタマーITRは、フォールディングして、ヘアピン及び内部ループ、さらにバルジ及びステム領域などを含むことができる二次構造を形成する。アプタマーのいくつかの例示的な実施態様又はから誘導されるITRを、図3A図3Cに示す。
【0202】
いくつかの特定の実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、1つ以上のAAV2 ITR、ヒトエリスロウイルスB19 ITR、ガチョウパルボウイルスのITR、及び/又はそれらの誘導体を任意の組合せで含む。別の具体的な実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、AAV2 ITR、ヒトエリスロウイルスB19 ITR、ガチョウパルボウイルスのITR、及びそれらの誘導体から選択される2つのITRを、任意の組合せで含む。いくつかの特定の実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物用のDNA分子は、1つ以上のAAV2 ITR、ヒトエリスロウイルスB19 ITR、ガチョウパルボウイルスのITR、及び/又はそれらの誘導体を、任意の組合せで含み、ここで、該ITRは、それらのITRの回文構造領域が、発現カセットを基準として5’及び3’ITR方向性の直接の、反対の、又は任意の考えられる組合せであるかどうかにかかわらず、機能的なままである(その全体が引用により本明細書に組み込まれるWO2019143885に記載されている)。
【0203】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内の改変されたIR又はITRは、本セクション(セクション5.4.1)に記載されるようなヘアピン二次構造形成を可能とするさまざまな回文配列に加えて、5’-GAGTC-3’などのエンドヌクレアーゼ用の制限部位を含む合成IR配列である。
【0204】
ある実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内のIR又はITRは、本セクション(セクション5.4.1)に記載されるIR又はITR配列との配列相同性をさまざまに有するIR又はITRとすることができる。別の実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内のIR又はITRは、本セクション(セクション5.4.1)に記載されるさまざまなITRの起源の公知のIR又はITR配列(例えば、ウイルスITR、ミトコンドリアITR、アプタマーなどの人工の又は合成ITRなど)との配列相同性をさまざまに有するIR又はITRとすることができる。一実施態様において、本段落で提供されるそのような相同性は、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の相同性とすることができる。別の実施態様において、本段落で提供されるそのような相同性は、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の相同性とすることができる。
【0205】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内のIR又はITRは、本セクション(セクション5.4.1)に記載されるいずれか1つ以上の特徴を、さまざまな順列及び組合せで含むことができる。
【0206】
(5.4.2 制限酵素、ニッキングエンドヌクレアーゼ、及びそれらそれぞれの制限部位;プログラム可能なニッキング酵素及びそれらの標的部位)
セクション5.3.4に記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ、制限酵素、及び/又はそれらの制限部位のさまざまな実施態様が、本明細書で提供されるDNA分子に対して提供される。いくつかの実施態様において、セクション3及び本セクション(セクション5.4)に記載されるようなDNA分子に対して提供されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は全て、同一のニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列とすることができる。いくつかの実施態様において、セクション3及び本セクション(セクション5.4)に記載されるようなDNA分子に対して提供されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、4つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列とすることができる。別の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、該4つの部位を2つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ標的配列に割り当てるのに考えられる全ての組合せ(例えば、第1の制限部位を第1のニッキングエンドヌクレアーゼ用に、かつ残りの制限部位を、第2のニッキングエンドヌクレアーゼ用に、第1及び第2の制限部位を、第1のニッキングエンドヌクレアーゼ用に、かつ残りの制限部位を、第2のニッキングエンドヌクレアーゼ用になど)を含む、2つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。ある実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、該4つの部位を3つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ標的配列に割り当てるのに考えられる全ての組合せを含む、3つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ及び該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位は、表2を含むセクション5.3.4に記載されているものから選択されるいずれか1つとすることができる。さらなる実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位のそれぞれは、表2を含むセクション5.3.4に記載されるものから選択される任意のニッキングエンドヌクレアーゼ用の部位とすることができる。
【0207】
表7~表16は、ニッキングエンドヌクレアーゼ種によってグループ分けされた、同一のニッキングエンドヌクレアーゼ用の2つの逆平行認識部位を内部に有する例示的な改変AAV ITR配列を示す。ITRの改変配列並びにAAV1、AAV2、AAV3、AAV4左、AAV4右、AAV5、及びAAV7の野生型の対応アラインメントを、図11図17に示す。
(表7: ニッキングエンドヌクレアーゼNb.BvCI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来ITR)
【表7】
(表8: ニッキングエンドヌクレアーゼNb.BsmI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表8】
(表9: ニッキングエンドヌクレアーゼNb.BsrDI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表9】
(表10: ニッキングエンドヌクレアーゼNb.BssSi用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表10】
(表11: ニッキングエンドヌクレアーゼNb.BtsI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表11】
(表12: ニッキングエンドヌクレアーゼNt.AlwI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表12】
(表13: ニッキングエンドヌクレアーゼNt.BbvCI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表13】
(表14: ニッキングエンドヌクレアーゼNt.BsmAI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表14】
(表15: ニッキングエンドヌクレアーゼNt.BspQI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表15】
(表16: ニッキングエンドヌクレアーゼNt.BstNBI用の逆平行認識部位を内部に有する例示的なAAV由来のITR)
【表16】
(表17: ニッキング酵素標的の反転相補配列)
【表17】
【0208】
ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、さまざまな構成で配置することができる。いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位は、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、少なくとも100、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、少なくとも145、少なくとも150、少なくとも155、少なくとも160、少なくとも165、少なくとも170、少なくとも175、少なくとも180、少なくとも185、少なくとも190、少なくとも195、又は少なくとも200ヌクレオチド離れている。別の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位は、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、又は約200ヌクレオチド離れている。
【0209】
同様に、ある実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位は、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、少なくとも100、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、少なくとも145、少なくとも150、少なくとも155、少なくとも160、少なくとも165、少なくとも170、少なくとも175、少なくとも180、少なくとも185、少なくとも190、少なくとも195、又は少なくとも200ヌクレオチド離れている。さらなる実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位は、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、又は約200ヌクレオチド離れている。
【0210】
本開示は、セクション3、5.2(5.3.3を含む)、及び5.4(5.4.1を含む)に記載されるオーバーハングが、ニッキングエンドヌクレアーゼによる第1及び第2の制限部位でのニッキング及びセクション3及び5.2(5.3.3を含む)に記載される変性の結果であり得ることを規定する。従って、いくつかの実施態様において、第1及び第2の制限部位でのニッキングの結果として生じるオーバーハングは、本セクション(セクション5.4.2)の前の段落に記載される該第1及び第2の制限部位が離間する(ヌクレオチドの数での)長さと同一の長さとすることができる。ニッキングエンドヌクレアーゼは、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位の内側又は外側でDNAを切断することができるために、ある実施態様において、第1及び第2の制限部位でのニッキングの結果として生じるオーバーハングは、該第1及び第2の制限部位が離間する長さよりも少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、又は少なくとも30ヌクレオチドだけ長い又は短いことがある。別の実施態様において、該第1及び第2の制限部位でのニッキングの結果として生じるオーバーハングは、該第1及び第2の制限部位が離間する長さよりも約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、又は約30ヌクレオチドだけ長い又は短いことがある。
【0211】
同様に、本開示は、セクション3、5.2(5.3.3を含む)、及び5.4(5.4.1を含む)に記載されるオーバーハングが、ニッキングエンドヌクレアーゼによる第3及び第4の制限部位でのニッキング及びセクション3及び5.2(5.3.3を含む)に記載される変性の結果であり得ることを規定する。従って、いくつかの実施態様において、第3及び第4の制限部位でのニッキングの結果として生じるオーバーハングは、本セクション(セクション5.4.2)の前の段落に記載される該第3及び第4の制限部位が離間する(ヌクレオチドの数での)長さと同一の長さとすることができる。ニッキングエンドヌクレアーゼは、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位の内側又は外側でDNAを切断することができるために、ある実施態様において、第3及び第4の制限部位でのニッキングの結果として生じるオーバーハングは、該第3及び第4の制限部位が離間する長さよりも少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、又は少なくとも30ヌクレオチドだけ長い又は短いことがある。別の実施態様において、第3及び第4の制限部位でのニッキングの結果として生じるオーバーハングは、該第3及び第4の制限部位が離間する長さよりも約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、又は約30ヌクレオチドだけ長い又は短いことがある。
【0212】
セクション3及び5.5及び本セクション(セクション5.4)の記載から明らかであるように、本明細書で提供されるDNA分子は、発現カセットを含む。いくつかの実施態様において、発現カセットは、一方の末端のニッキングエンドヌクレアーゼ(複数可)用の第1及び第2の制限部位と他方の末端のニッキングエンドヌクレアーゼ(複数可)用の第3及び第4の制限部位の間に位置する。別の実施態様において、発現カセットは、セクション5.3.3に記載される2つのDNAオーバーハングを提供する変性工程を含む、セクション3及び5.2に記載される方法の工程a~dを行うことによって製造されるDNA分子のdsDNAセグメントの内部に位置する。ある実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、本段落に記載されるdsDNAセグメントの長さが、少なくとも0.2kb、少なくとも0.3kb、少なくとも0.4kb、少なくとも0.5kb、少なくとも0.6、少なくともkb、少なくとも0.7kb、少なくとも0.8kb、少なくとも0.9kb、少なくとも1kb、少なくとも1.5kb、少なくとも2kb、少なくとも2.5kb、少なくとも3kb、少なくとも3.5kb、少なくとも4kb、少なくとも4.5kb、少なくとも5kb、少なくとも5.5kb、少なくとも6kb、少なくとも6.5kb、少なくとも7kb、少なくとも7.5kb、少なくとも8kb、少なくとも8.5kb、少なくとも9kb、少なくとも9.5kb、又は少なくとも10kbとなるように配置されている。別の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、本段落に記載されるdsDNAセグメントの長さが、約0.2kb、約0.3kb、約0.4kb、約0.5kb、約0.6、約kb、約0.7kb、約0.8kb、約0.9kb、約1kb、約1.5kb、約2kb、約2.5kb、約3kb、約3.5kb、約4kb、約4.5kb、約5kb、約5.5kb、約6kb、約6.5kb、約7kb、約7.5kb、約8kb、約8.5kb、約9kb、約9.5kb、又は約10kbとなるように配置されている。
【0213】
セクション5.3.4に記載されるように、ニッキングエンドヌクレアーゼとのインキュベーションは、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位に対応する第1のニック、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位に対応する第2のニック、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位に対応する第3のニック、及び/又はニッキングエンドヌクレアーゼ用の第4の制限部位に対応する第4のニックをもたらすものである。本開示は、第1、第2、第3、及び/又は第4のニックが、逆方向反復に対してさまざまな位置に存在し得ることを規定する。一実施態様において、第1のニックは、第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド以内にある。別の実施態様において、第1のニックは、第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド以内にある。さらに別の実施態様において、第2のニックは、第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド以内にある。さらなる実施態様において、第2のニックは、第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド以内にある。一実施態様において、第3のニックは、第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド以内にある。別の実施態様において、第3のニックは、第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド以内にある。さらに別の実施態様において、第4のニックは、第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の5’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド以内にある。さらなる実施態様において、第4のニックは、第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対の3’ヌクレオチドから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド以内にある。いくつかの実施態様において、第1、第2、第3、及び第4のニックのいずれか又は任意の組合せは、逆方向反復の内側にある。ある実施態様において、第1、第2、第3、及び第4のニックのいずれか又は任意の組合せは、逆方向反復の外側にある。いくつかの追加の実施態様において、第1、第2、第3、及び第4のニックは、それら自体の間で、それらのいずれかと逆方向反復との間で、及び/又はそれらのいずれかと本セクション(セクション5.4.2)に記載される発現カセットとの間で、任意の組合せ又は順列で、任意の相対的な位置を有し得る。いくつかのさらなる実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、それら自体の間で、それらのいずれかと逆方向反復との間で、及び/又はそれらのいずれかと本セクション(セクション5.4.2)に記載される発現カセットとの間で、任意の組合せ又は順列で、任意の相対的な位置をとり得る。
【0214】
(5.4.3 GDEをコードする発現カセット)
本明細書で提供されるDNA分子は、発現カセットを含み得る(セクション3、5.4、及び5.5も参照されたい)。「発現カセット」は、細胞装置にRNA又はタンパク質を産生するように指示する配列又は他の情報を含有する核酸分子又は核酸分子の一部である。いくつかの実施態様において、発現カセットは、プロモーター配列を含む。ある実施態様において、発現カセットは、転写単位を含む。いくつかのさらに別の実施態様において、発現カセットは、転写単位に作動的に連結されたプロモーターを含む。一実施態様において、転写単位は、オープンリーディングフレーム(ORF)を含む。本明細書で提供される方法及び組成物とともに用いられるORFの実施態様が、本セクション(セクション5.4.3)の最終段落でさらに記載される。発現カセットは、細胞装置にRNA及びタンパク質を産生するよう指示する特徴をさらに含むことができる。一実施態様において、発現カセットは、転写後制御因子を含む。別の実施態様において、前記発現カセットは、ポリアデニル化及び/又は終止シグナルをさらに含む。さらに別の実施態様において、発現カセットは、調整を行うこと(ORFの発現を促進する、阻害する、及び/又はオン/オフすること)が本技術分野において知られておりかつそのために用いられている調節エレメントを含む。そのような調節エレメントとしては、例えば、5’非翻訳領域(UTR)、3’-UTR、又は5’UTR及び3’UTRの双方が挙げられる。いくつかのさらなる実施態様において、発現カセットは、本セクション(セクション5.4.3)で提供されるいずれか1つ以上の特徴を任意の組合せ又は順列で含む。
【0215】
発現カセットは、タンパク質コード配列をそのORF(センス鎖)に含むことができる。あるいは、発現カセットは、タンパク質をコードするORFの相補的配列(アンチセンス鎖)並びに細胞装置にセンス鎖DNA/RNA及び対応するタンパク質を産生させるための調節成分及び/又は他のシグナルを含むことができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、イントロンを有しないタンパク質配列を含む。別の実施態様において、発現カセットは、転写及びスプライシングされると除去されるイントロンを有するタンパク質配列を含む。発現カセットは、さまざまな数のORF又は転写単位も含むことができる。一実施態様において、発現カセットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のORFを含む。別の実施態様において、発現カセットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の転写単位を含む。
【0216】
ヒトAGL遺伝子は、分子量が約174.8kDaである1532個のアミノ酸タンパク質(配列番号1;受入番号P35573)をコードする。AGL遺伝子は、染色体1の部位1p21.2に位置している。AGLは、グリコーゲン分解において1,4-α-D-グルカン:l,4-α-D-グルカン-4-α-D-グリコシルトランスフェラーゼ及びアミロ-l,6-グルコシダーゼとして働く多機能性の酵素であり、グリコーゲン脱分枝酵素(GDE)、グリコーゲン脱分枝酵素、アミロ-α-l,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、EC:2.4.1.25、EC:3.2.1.33と呼ばれることもある。コンセンサスヒトAGLコード配列は、NCBI受入番号NM_000028.2で確認することができ、配列番号:1となる。
【0217】
当業者は、GDE治療用タンパク質が、GDEタンパク質の全てのスプライスバリアント及びオルソログを含むことを理解するであろう。本質的に、任意のバージョンのGDE治療用タンパク質又はその断片(例えば、機能的断片)を、本明細書に記載されるDNAベクターによってコードされそれに及びそれから発現することができる。GDE治療用タンパク質は、インタクトな分子及びその断片(例えば、機能的断片)を含む。いくつかの実施態様において、GDE治療用タンパク質は、WO2020030661A1に概略が示されているような機能的な切断型バージョンとすることができる。
【0218】
いくつかの実施態様において、GDEタンパク質の発現のためのヘアピン化DNA分子は、所望のタンパク質をコードする異種核酸配列についての大きさの制約がないために、従来型AAVベクターよりも有利な点を提供する。従って、完全長のGDE4599ntタンパク質でさえも、単一のDNAベクターから発現させることができる。従って、本明細書に記載されるDNAベクターを使用して、それを必要としている対象、例えば、糖原病の対象において治療用GDEタンパク質を発現させることができる。
(表18: 例示的な導入遺伝子)
【表18】
【0219】
一態様において、ヒトGDEをコードするコドン最適化された操作された核酸配列が提供される。ある実施態様において、操作されたヒトGDE cDNAは、本明細書で(配列番号:175として)提供され、これは、天然のGDE配列(配列番号:174)と比較して翻訳を最大化するように設計された。好ましくは、コドン最適化されたGDEコード配列は、全長天然GDEコード配列(配列番号:174)と約80%未満の同一性、好ましくは、約75%以下の同一性を有する。一実施態様において、コドン最適化されたGDEコード配列は、配列番号:174の天然のGDEコード配列と約75%の同一性を有する。一実施態様において、コドン最適化されたGDEコード配列は、天然のGDEと比較して向上した送達後の翻訳速度を特徴とする。一実施態様において、コドン最適化されたGDEコード配列は、配列番号:174の完全長天然GDEコード配列と約99%未満、98%未満、97%未満、96%未満、95%未満、94%未満、93%未満、92%未満、91%未満、90%未満、89%未満、88%未満、87%未満、86%未満、85%未満、84%未満、83%未満、82%未満、81%未満、80%未満、79%未満、78%未満、77%未満、76%未満、75%未満、74%未満、73%未満、72%未満、71%未満、70%未満、69%未満、68%未満、67%未満、66%未満、65%未満、64%未満、63%未満、62%未満、61%未満又はそれより少ない同一性を共有する。一実施態様において、コドン最適化された核酸配列は、配列番号:175のバリアントである。別の実施態様において、コドン最適化された核酸配列は、配列番号:175と約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%又はそれを越える同一性を共有する配列である。一実施態様において、コドン最適化された核酸配列は、配列番号:175である。別の実施態様において、核酸配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化されている。別の実施態様において、異なるGDEコード配列が、選択される。
【0220】
一態様において、ヒトGDEをコードするCpG最小化された操作された核酸配列が提供される。ある実施態様において、操作されたヒトGDE cDNAが、本明細書で(配列番号:179として)提供され、これは、天然のGDE配列(配列番号:174)と比較してCpGモチーフを最小化するように設計された。好ましくは、CpG最小化されたGDEコード配列は、全長天然GDEコード配列(配列番号:174)と約90%未満の同一性、好ましくは、約85%の同一性又はそれより少ない同一性を有する。一実施態様において、CpG最小化されたGDEコード配列は、配列番号:174の天然のGDEコード配列と約81%の同一性を有する。一実施態様において、CpG最小化されたGDEコード配列は、ホスト細胞内への送達後の、天然のGDE配列と比較して減少したホスト免疫反応の活性化を特徴とする。一実施態様において、CpG最小化されたGDEコード配列は、配列番号:174の完全長天然GDEコード配列と約99%未満、98%未満、97%未満、96%未満、95%未満、94%未満、93%未満、92%未満、91%未満、90%未満、89%未満、88%未満、87%未満、86%未満、85%未満、84%未満、83%未満、82%未満、81%未満、80%未満、79%未満、78%未満、77%未満、76%未満、75%未満、74%未満、73%未満、72%未満、71%未満、70%未満、69%未満、68%未満、67%未満、66%未満、65%未満、64%未満、63%未満、62%未満、61%未満又はそれより少ない同一性を共有する。一実施態様において、CpG最小化された核酸配列は、配列番号:179のバリアントである。別の実施態様において、CpG最小化された核酸配列は、配列番号:179と約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%又はそれを越える同一性を共有する配列を有する。一実施態様において、CpG最小化された核酸配列は、配列番号:179である。
【0221】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子は、別の配列に融合された(例えば、N又はC末端の融合)GDEタンパク質の完全長、断片、又は一部を含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施態様において、N又はC末端配列は、シグナル配列又は細胞ターゲティング配列である。
【0222】
具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:174に記載される配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%同一であるGDE導入遺伝子を含む。具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:175に記載される配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%同一であるGDE導入遺伝子を含む。具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:179に記載される配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%同一であるGDE導入遺伝子を含む。具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:178に記載される配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%同一であるGDE導入遺伝子を含む。具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:179に記載される配列と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%同一であるGDE導入遺伝子を含む。
【0223】
具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:174に記載される配列と同一であるGDE導入遺伝子を含む。具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:175に記載される配列と同一であるGDE導入遺伝子を含む。具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:179に記載される配列と同一であるGDE導入遺伝子を含む。具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:178に記載される配列と同一であるGDE導入遺伝子を含む。具体的な実施態様において、発現カセットは、配列番号:179に記載される配列と同一であるGDE導入遺伝子を含む。
【0224】
GDEをコードする核酸配列との関連での「パーセント(%)同一性」、「配列同一性」、「パーセント配列同一性」、又は「パーセント同一」という用語は、対応させて整列させた場合に同一となる2つの配列内の残基を意味する。配列同一性比較の長さは、好適な場合には、ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長、又は少なくとも約500~5000ヌクレオチドの断片にわたることもある。しかしながら、例えば、少なくとも約9ヌクレオチド、通常、少なくとも約20~24ヌクレオチド、少なくとも約28~32ヌクレオチド、少なくとも約36又はそれを超えるヌクレオチドのより小さな断片間の同一性も、望ましい場合がある。
【0225】
パーセント同一性は、タンパク質、ポリペプチド、約32個のアミノ酸、約330個のアミノ酸、もしくはそれらの断片ペプチドの完全長にわたるアミノ酸配列について、又は対応する核酸配列コード配列について容易に決定され得る。好適なアミノ酸断片は、長さが少なくとも約8個のアミノ酸であり得、かつ最大で約700個のアミノ酸であり得る。一般に、2つの異なる配列の間の「同一性」、「相同性」、又は「類似性」について言及する場合、「同一性」、「相同性」又は「類似性」は、「整列させた」配列に関して決定される。「整列させた」配列又は「アラインメント」は、参照配列と比較して欠損した又は追加の塩基又はアミノ酸に関する修正を多くの場合含有する複数の核酸配列又はタンパク質(アミノ酸)配列を意味する。
【0226】
同一性は、配列のアラインメントを調製すること及び当技術分野において公知の又は市販の種々のアルゴリズム及び/又はコンピュータープログラム[例えば、BLAST、ExPASy; ClustalO; FASTA;例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム、Smith-Watermanアルゴリズムを利用]の使用によって決定され得る。アラインメントは、種々の公に又は商業的に利用可能な複数の配列アラインメントプログラムのうちのいずれかを用いて行われる。配列アラインメントプログラム、例えば、「Clustal Omega」及び「Clustal X」プログラムが、アミノ酸配列に利用可能である。一般に、これらのプログラムのいずれかを、デフォルトの設定で用いるが、当業者は、必要に応じてこれらの設定を変更することができる。あるいは、当業者は、少なくとも参照とするアルゴリズム及びプログラムによって提供されるものと同様のレベルの同一性又はアラインメントを提供する別のアルゴリズム又はコンピュータープログラムを利用することができる。例えば、J. D. Thomsonらの文献、 Nucl. Acids. Res., 「複数の配列アラインメントの網羅的な比較(A comprehensive comparison of multiple sequence alignments)」, 27(13):2682-2690 (1999)を参照されたい。また、多数の配列アラインメントプログラムが、核酸配列についても利用可能である。そのようなプログラムの例としては、インターネット上のWebサーバーを介してアクセス可能な「Clustal Omega」、「Clustal W」、「"CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」、及び「MEME」が挙げられる。
【0227】
コドン最適化コード領域を、さまざまな異なる方法で設計することができる。この最適化は、オンラインで利用可能な方法(例えば、GeneArt)、公表された方法、又はコドン最適化サービスを提供する会社、例えば、DNA2.0(Menlo Park、CA)を用いて行うことができる。好適には、産物のオープンリーディングフレーム(ORF)の全長が修飾される。しかしながら、いくつかの実施態様においては、ORFの断片のみを改変してもよい。これらの方法のうちの1つを用いることによって、頻度を任意のポリペプチド配列に適用することができ、該ポリペプチドをコードするコドン最適化コード領域の核酸断片を製造することができる。いくつかの選択肢が、コドンに対して実際に変更を加えるため又は本明細書に記載されるように設計されたコドン最適化コード領域を合成するために利用可能である。そのような改変又は合成は、当業者に周知の標準的かつルーチンの分子生物学的処置を用いて行い得る。
【0228】
GDE発現カセットは、ホスト細胞における該発現カセットの効率的な転写を可能とする又は維持するのに適した、5’及び/又は3’ITR閉鎖対(セクション5.4.1に記載)のいずれかからの任意の塩基対の距離に位置し得る。いくつかの実施態様において、発現カセットと5’ITRとの間の距離及び発現カセットと3’ITR閉鎖対との間の距離は、同一である。いくつかの実施態様において、発現カセットと5’ITRとの間の距離及び発現カセットと3’ITR閉鎖対との間の距離は、同一でない。いくつかの実施態様において、発現カセット及び/又は3’ITR閉鎖対の間の距離並びに発現カセットと5’ITR閉鎖対との間の距離は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、少なくとも145、少なくとも150、少なくとも155、少なくとも160、少なくとも165、少なくとも170、少なくとも175、少なくとも180、少なくとも185、少なくとも190、少なくとも195、少なくとも200、少なくとも205、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、又は少なくとも400ヌクレオチドである。いくつかの実施態様において、発現カセットと3’ITR閉鎖対との間の距離及び/又は発現カセットと5’ITR閉鎖対との間の距離は、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、約200、約205、約210、約215、約220、約225、約230、約235、約240、約245、約250、約255、約260、約265、約270、約275、約280、約285、約290、約295、約300、約305、約310、約315、約320、約325、約330、約335、約340、約345、約350、約355、約360、約365、約370、約375、約380、約385、約390、約395又は約400ヌクレオチドである。
【0229】
「操作された核酸配列」によって、本明細書に記載されるGDEタンパク質をコードする核酸配列が、例えば、非ウイルス性の送達系(例えば、RNAベースの系、ネイキッドDNAなど)を生じさせるため、又はパッケージングホスト細胞内にウイルスベクターを生じさせるため、及び/又は対象におけるホスト細胞への送達のために、それが運ぶGDE配列をホスト細胞へと移送する任意の適当な遺伝子エレメント、例えば、ネイキッドDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどに組み込まれ及び配置されていることが意味される。一実施態様において、遺伝子エレメントは、環状プラスミドである。そのような操作された構築体を作製するのに用いられる方法は、核酸操作の技術を有する者に公知であり、遺伝子工学(genetic engineering)、組み換え操作(recombinant engineering)、及び合成技術を含む。例えば、Green及びSambrookの文献、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (2012) を参照されたい。
【0230】
一実施態様において、GDEをコードする核酸配列は、それに共有結合的に連結されたタグポリペプチドをコードする核酸をさらに含む。タグポリペプチドは、限定するものではないが、mycタグポリペプチド、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグポリペプチド、ルシフェラーゼタンパク質タグポリペプチド、緑色蛍光タンパク質タグポリペプチド、myc-ピルビン酸キナーゼタグポリペプチド、His6タグポリペプチド、インフルエンザウイルスヘマグルチニンタグポリペプチド、フラグタグポリペプチド、及びマルトース結合タンパク質タグポリペプチドなどの公知の「エピトープタグ」から選択され得る。いくつかの態様において、レポーターポリペプチドに連結されたGDEタンパク質を発現するヘアピン末端ベクターを、診断の目的で用いてもよく、また、有効性を決定するのに用いてもよく、又はそれを投与された対象におけるヘアピン末端ベクターの活性のマーカーとして用いてもよい。
【0231】
(5.4.4 GDEをコードするヘアピン末端DNA分子)
上の記載から明らかであるように、本明細書で提供されるヒトアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼを発現するためのヘアピン末端DNA分子は、発現カセットを含む。「発現カセット」は、細胞装置にRNA及びタンパク質を産生するように指示する配列又は他の情報を含有する核酸分子又は核酸分子の一部である。発現カセットは、GDEタンパク質又はその断片をコードする転写単位又はオープンリーディングフレーム(ORF)を含み得る。いくつかの実施態様において、発現カセットは、プロモーター配列を含む。いくつかのさらに別の実施態様において、発現カセットは、転写単位に作動的に連結されたプロモーターを含む。発現カセットは、細胞装置にRNA及びタンパク質を産生するように指示する特徴をさらに含み得る。一実施態様において、発現カセットは、転写後制御因子を含む。別の実施態様において、前記発現カセットは、ポリアデニル化及び/又は終止シグナルをさらに含む。さらに別の実施態様において、発現カセットは、調節すること(ORFの発現を促進、阻害、及び/又はオン/オフする)が本技術分野において知られておりかつ用いられている調節エレメントを含む。そのような調節エレメントとしては、例えば、5’-非翻訳領域(UTR)、3’-UTR、又は5’UTR及び3’UTRの双方が挙げられる。いくつかのさらなる実施態様において、発現カセットは、本セクション(セクション5.4.3)で提供されるいずれか1つ以上の特徴を、任意の組合せ又は順列で含む。
【0232】
発現カセットは、そのORF(センス鎖)にタンパク質コード配列を含み得る。あるいは、発現カセットは、タンパク質をコードするORFの相補的配列(アンチセンス)並びに調節成分及び/又は細胞装置にセンス鎖DNA/RNA及び対応するタンパク質を産生させる他のシグナルを含み得る。いくつかの実施態様において、発現カセットは、イントロンを有しないGDEタンパク質配列を含む。別の実施態様において、発現カセットは、転写及びスプライシングの際に除去されるイントロンを有するGDEタンパク質配列を含む。発現カセットは、さまざまな数のORF又は転写単位も含み得る。一実施態様において、発現カセットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のORFを含む。別の実施態様において、発現カセットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の転写単位を含む。
【0233】
発現カセットは、1つ以上の転写制御因子、1つ以上の転写後制御因子、又は1つ以上の転写制御因子及び1つ以上の転写後制御因子の双方も含むことができる。そのような調節エレメントは、複製(replication)、倍化(duplication)、転写、スプライシング、翻訳、安定性、及び/又は核酸又はその誘導体のうちの1つ(例えば、mRNA)のホスト細胞又は生物内への輸送を含む、核酸分子の機能的調節を可能とする、それに寄与する、又はそれを調節する任意の配列である。そのような調節エレメントとしては、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、翻訳終止コドン、リボソーム結合エレメント、転写ターミネーター、選択マーカー、複製起点などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0234】
いくつかの実施態様において、発現カセットは、エンハンサーを含む。本開示を考慮にいれて、当業者に公知の任意のエンハンサー配列を使用することができる。いくつかの実施態様において、エンハンサー配列は、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、又はCMV、HA、RSV、又はEBVのうちの1つなどのウイルスのエンハンサーとすることができる。具体的なある実施態様において、エンハンスは、ウッドチャックHBV転写後制御因子(WPRE)、ヒトアポリポタンパク質A1前駆体(ApoAI)から誘導されるイントロン/エクソン配列、ヒトT細胞白血病ウイルスタイプ1(HTLV-1)末端反復配列(LTR)の非翻訳R-U5ドメイン、スプライシングエンハンサー、合成ウサギβ-グロビンイントロン、AAVのP5プロモーター、又はそれらの任意の組み合わせとすることができる。
【0235】
上述のように、発現カセットは、対象となるタンパク質の発現を制御するプロモーターを含むことができる。プロモーターは、作動可能に連結されたヌクレオチド配列の転写を開始させる任意のヌクレオチド配列を含む。プロモーターは、構成的、誘導性、又は抑制性(repressible)のものとすることができる。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌性、植物、昆虫、及び動物などの起源から誘導することができる。プロモーターは、同種プロモーター(例えば、同一の遺伝源から誘導されるもの)又は異種プロモーター(例えば、異なる遺伝源から誘導されるもの)とすることができる。いくつかの実施態様において、プロモーターは、サルウイルス40(SV40)由来のプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター、例えば、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルス(ALV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター(CMV-IE)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、又はラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターとすることができる。別の実施態様において、プロモーターは、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、又はヒトメタロチオネイン(metalothionein)などのヒト遺伝子由来のプロモーターとすることができる。さらなる実施態様において、プロモーターは、GDE欠損患者においてGDEの発現が望まれる細胞又は組織においてなどの、GDEの発現が望まれる細胞又は組織における発現を促進する天然の又は合成の筋肉又は皮膚特異的プロモーターなどの組織特異的プロモーターとすることもできる。
【0236】
特定の実施態様において、プロモーターは、筋特異的プロモーターである。筋特異的プロモーターの非限定的な例としては、筋クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーターが挙げられる。好適な筋クレアチンキナーゼプロモーターの非限定的な例は、ヒト筋クレアチンキナーゼプロモーター及び切断型マウス筋クレアチンキナーゼ[(tMCK)プロモーター](Wang Bらの文献、「コンパクトなAAVベクター用の筋選択的プロモーターの作成及び分析(Construction and analysis of compact muscle-selective promoters for AAV vectors)」. Gene Ther. 2008 Nov;15(22): l489-99)(代表的GenBank受入番号. AF188002)。ヒト筋クレアチンキナーゼは、遺伝子ID番号1158を有する(代表的GenBank受入番号. NC 000019.9)。
筋特異的プロモーターの別の例としては、合成プロモーターC5.12 (spC5. l2、あるいは、本明細書では「C5.12」とも称される)、例えば、spC5.l2又はspC5. l2プロモーター(Wangらの文献、Gene Therapy 第15巻、1489頁~1499頁(2008)に開示)など、MHCK7プロモーター(Salvaらの文献 Mol Ther. 2007 Feb;15(2):320-9)、ミオシン軽鎖(MLC)プロモーター、例えばMLC2(遺伝子ID番号4633;代表的GenBank受入番号.NG 007554.1);ミオシン重鎖(MHC)プロモーター、例えば、α-MHC(遺伝子ID番号4624;代表的GenBank受入番号.NG 023444.1);デスミンプロモーター(遺伝子ID番号1674;代表的GenBank受入番号.NG 008043.1);心トロポニンCプロモーター(遺伝子ID番号7134;代表的GenBank受入番号.NG 008963.1);トロポニンIプロモーター(遺伝子ID番号7135、7136、及び7137;代表的GenBank受入番号NG 016649.1、NG 011621.1、及びNG_007866.2,);myoD遺伝子ファミリープロモーター(Weintraubらの文献、Science, 251 , 761 (1991);遺伝子ID番号4654;代表的GenBank受入番号.NM 002478);αアクチンプロモーター(遺伝子ID番号58、59、及び70;代表的GenBank受入番号NG 006672.1、NG 011541.1、及びNG 007553.1,);βアクチンプロモーター(遺伝子ID番号60;代表的GenBank受入番号.NG 007992.1);γアクチンプロモーター(遺伝子ID番号71及び72;代表的GenBank受入番号.NG 011433.1及びNM 001199893);Pitx3の眼部形態のイントロン1内にある筋特異的プロモーター(遺伝子ID番号5309)(Coulonら;当該筋選択的プロモーターは、代表的GenBank受入番号NG 008147の残基11219-11527に対応する);並びに米国特許公報US 2003/0157064に記載されるプロモーター、及びCK6プロモーター(Wangらの文献2008 doi: 10.1038/gt.2008.104)が挙げられる。別の特定の実施態様において、筋特異的プロモーターは、Wangらの文献、Gene Therapy 第15巻、1489頁~1499頁(2008)に記載されるE-Synプロモーターであり、これは、MCK誘導性エンハンサーの及びspC5.12プロモーターの組合せを含む。本開示の特定の実施態様において、筋特異的プロモーターは、spC5.12プロモーター、MHCK7プロモーター、E-synプロモーター、筋クレアチンキナーゼミオシン軽鎖(MLC)プロモーター、ミオシン重鎖(MHC)プロモーター、心トロポニンCプロモーター、トロポニンIプロモーター、myoD遺伝子ファミリープロモーター、αアクチンプロモーター、βアクチンプロモーター、及びγアクチンプロモーター、Pitx3の眼部形態のイントロン1にある筋特異的プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、並びにActalプロモーターからなる群において選択される。特定の実施態様において、筋特異的プロモーターは、spC5.12、デスミン及びMCKプロモーターからなる群において選択される。さらなる実施態様において、筋特異的プロモーターは、spC5.12及びMCKプロモーターからなる群において選択される。特定の実施態様において、筋特異的プロモーターは、spC5.12プロモーターである。
【0237】
特定の実施態様において、プロモーターは、肝特異的プロモーターである。肝特異的プロモーターの非限定的な例としては、α-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、LSPプロモーター(甲状腺ホルモン結合グロブリンプロモーター配列、2コピーのα-マイクログロブリン/ビクニンエンハンサー配列、及びリーダー配列-Ill, C. R.らの文献(1997). 「血友病Aの遺伝子療法のためのヒト第VIII因子相補的DNA発現プラスミドの最適化(Optimization of the human factor VIII complementary DNA expression plasmid for gene therapy of hemophilia A) Blood Coag. Fibrinol. 8: S23-S30)などが挙げられる。他の有用な肝特異的プロモーター、例えば、肝臓特異的遺伝子プロモーターデータベース(the Liver Specific Gene Promoter Database)、Cold Spring Harbor Laboratory編集(http://rulai.cshl.edu/LSPD/)に挙げられているものが、当技術分野において公知である。本開示との関連で好適な肝特異的プロモーターは、hAATプロモーターである。別の特定の実施態様において、プロモーターは、ニューロン特異的プロモーターである。ニューロン特異的プロモーターの非限定的な例としては、当業者にとって明らかであろうが、特に、以下のもの:シナプシン-l(Syn)プロモーター、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersenらの文献、Cell. Mol. Neurobiol., 13:503-15 (1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioliらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:5611-5 (1991))、及びニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioliらの文献 Neuron, 15:373- 84 (1995))が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、ニューロン特異的プロモーターは、Synプロモーターである。別のニューロン特異的プロモーターとしては、限定するものではないが:シナプシン-2プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、ドーパミンb-ヒドロキシラーゼプロモーター、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼプロモーター、低親和性NGF受容体プロモーター、及びコリンアセチルトランスフェラーゼプロモーター(Bejaninらの文献、1992;Carrollらの文献、1995; Chin and Greengardの文献、1994; Foss-Petterらの文献、1990; Harringtonらの文献、1987; Mercerらの文献、1991; Pateiらの文献、1986)が挙げられる。運動ニューロンに対して特異的な代表的なプロモーターとしては、限定するものではないが、公知の運動ニューロン由来因子であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)のプロモーターが挙げられる。運動ニューロンにおいて機能的な他のプロモーターとしては、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、シナプシン、及びHb9のプロモーターが挙げられる。本開示において有用な別のニューロン特異的プロモーターとしては、限定するものではないが:GFAP(アストロサイト)、Calbindin 2(介在ニューロン(intemeuron))、Mnxl(運動ニューロン(motomeuron))、Nestin(ニューロン)、パルブアルブミン、ソマトスタチオン(Somatostation)、及びPlpl(オリゴデンドロサイト及びシュワン細胞)が挙げられる。別の特定の実施態様においてプロモーターは、遍在性プロモーターである。代表的な遍在性のプロモーターとしては、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)(任意に、CMVエンハンサーを有する)[例えば、Boshartらの文献、Cell, 41 :521-530 (1985)]を参照されたい、]、PGKプロモーター、SV40初期プロモーター、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意に、RSVエンハンサーを含む)、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、b-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1 αプロモーターが挙げられる。また、プロモーターは、アルブミンプロモーター又はGDEプロモーターなどの内在性プロモーターであってもよい。特定の実施態様において、プロモーターは、シス調節モジュール(CRM)又は人工のエンハンサー配列などのエンハンサー配列に結合する。本開示の実施に有用なCRMとしては、Rinconらの文献、Mol Ther. 2015 Jan;23(l):43-52、Chuahらの文献、Mol Ther. 2014 Sep;22(9): l605-l3、又はNairらの文献、Blood. 2014 May 15; 123(20):3195-9に記載されているものが挙げられる。特に、遺伝子の筋特異的な発現、特に、心筋及び/又は骨格筋での発現を増強することができる他の調節エレメントは、WO2015110449に開示されているものである。人工配列を含む核酸調節エレメントの特定の例としては、WO2015110449に開示されている配列内に存在する転写因子結合部位(TFBS)を再配列することによって得られる調節エレメントが挙げられる。当該再配列は、TFBSの順序を変更すること及び/又は他のTFBSと比較して1以上のTFBSの位置を変更すること及び/又はTFBSのうちの1つ以上のコピー数を変更することを包含し得る。例えば、筋特異的遺伝子発現、特に、心筋及び骨格筋特異的遺伝子発現を増強するための核酸調節エレメントは、E2A、HNH 1、NF1、C/EBP、LRF、MyoD、及びSREBPの結合部位;又はE2A、NF1、p53、C/EBP、LRF、及びSREBPの結合部位;又はE2A、HNH 1、HNF3a、HNF3b、NF1、C/EBP、LRF、MyoD、及びSREBPの結合部位;又はE2A、HNF3a、NF1、C/EBP、LRF、MyoD、及びSREBPの結合部位;又はE2A、HNF3a、NF1、CEBP、LRF、MyoD、及びSREBPの結合部位;又はHNF4、NF1、RSRFC4、C/EBP、LRF、及びMyoDの結合部位、又はNF1、PPAR、p53、C/EBP、LRF、及びMyoDの結合部位を含み得る。例えば、筋特異的遺伝子発現、特に、骨格筋特異的遺伝子発現を増強させるための核酸調節エレメントは、E2A、NF1、SRFC、p53、C/EBP、LRF、及びMyoDの結合部位;又はE2A、NF1、C/EBP、LRF、MyoD、及びSREBPの結合部位;又はE2A、HNF3a、C/EBP、LRF、MyoD、SEREBP、及びTall bの結合部位;又はE2A、SRF、p53、C/EBP、LRF、MyoD、及びSREBPの結合部位;又はHNF4、NF1、RSRFC4、C/EBP、LRF、及びSREBPの結合部位;又はE2A、HNF3a、HNF3b、NF1、SRF、C/EBP、LRF、MyoD、及びSREBPの結合部位;又はE2A、CEBP、及びMyoDの結合部位も含み得る。他の例において、これらの核酸調節エレメントは、既に述べたTFBSのうちの1つ以上を少なくとも2コピー、例えば、2コピー、3コピー、4コピー、又はそれを超えるコピー数含む。特に、遺伝子の肝特異的発現を増強することができる他の調節エレメントは、W02009130208に開示されているものである。
(表19: 例示的な調節エレメント)
【表19】
【0238】
いくつかの実施態様において、発現カセットは、ポリアデニル化、終止シグナル、又はポリアデニル化及び終止シグナルの双方を含むことができる。本開示を考慮にいれて当業者に公知の任意のポリアデニル化シグナルを使用することができる。いくつかの実施態様において、ポリアデニル化シグナルは、SV40ポリアデニル化シグナル、AAV2ポリアデニル化シグナル(bp 4411-4466、NC_001401)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子由来のポリアデニル化シグナル、LTRポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化シグナル、又はヒトβ-グロビンポリアデニル化シグナルとすることができる。
【0239】
いくつかの実施態様において、発現カセットは、さまざまな長さの1つ以上のORFを収容するさまざまなサイズを有することができる。ある実施態様において、発現カセットのサイズは、少なくとも4.5kb、少なくとも5kb、少なくとも5.5kb、少なくとも6kb、少なくとも6.5kb、少なくとも7kb、少なくとも7.5kb、少なくとも8kb、少なくとも8.5kb、少なくとも9kb、少なくとも9.5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、少なくとも35kb、少なくとも40kb、少なくとも45kb、少なくとも50kb、少なくとも55kb、少なくとも60kb、少なくとも65kb、少なくとも70kb、少なくとも75kb、又は少なくとも80kbである。特定の一実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.5kbである。別の具体的な実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.6kbである。さらに別の具体的な実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.7kbである。さらに具体的な実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.8kbである。特定の一実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.9kbである。約4.5kb、約5kb、約5.5kb、約6kb、約6.5kb、約7kb、約7.5kb、約8kb、約8.5kb、約9kb、約9.5kb、約10kb、約15kb、約20kb、約25kb、約30kb、約35kb、約40kb、約45kb、約50kb、約55kb、約60kb、約65kb、約70kb、約75kb又は約80kb。特定の一実施態様において、発現カセットは、約4.5kbである。別の具体的な実施態様において、発現カセットは、約4.6kbである。さらに別の具体的な実施態様において、発現カセットは、約4.7kbである。さらに具体的な実施態様において、発現カセットは、約4.8kbである。特定の一実施態様において、発現カセットは、約4.9kbである。別の具体的な実施態様において、発現カセットは、約5kbである。発現カセットは、さまざまな数の対象となる遺伝子(「導入遺伝子」)も含むことができる。一実施態様において、発現カセットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の導入遺伝子を含む。いくつかの特定の実施態様において、発現カセットは、1つの導入遺伝子を含む。いくつかの実施態様において、導入遺伝子は、組換え遺伝子である。いくつかのさらなる実施態様において、導入遺伝子は、cDNA配列を含む(例えば、導入遺伝子中にイントロンなし)。
【0240】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、カプシド形成したAAVベクターのサイズ制限を有さず、従って、大型の発現カセットの送達を可能として、効率的な導入遺伝子を提供する。ある実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、任意の天然のAAV ゲノムのサイズと同じ又はそれよりも大きいサイズの発現カセットを含む。
【0241】
発現カセットは、逆方向反復に対してさまざまな位置を占めることができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、逆方向反復から少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、又は少なくとも100ヌクレオチド離れている。ある実施態様において、発現カセットは、逆方向反復から少なくとも0.2kb、少なくとも0.3kb、少なくとも0.4kb、少なくとも0.5kb、少なくとも0.6、少なくともkb、少なくとも0.7kb、少なくとも0.8kb、少なくとも0.9kb、少なくとも1kb、少なくとも1.5kb、又は少なくとも2kb離れている。別の実施態様において、発現カセットは、逆方向反復から約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99又は約100ヌクレオチド離れている。さらなる実施態様において、発現カセットは、逆方向反復から約0.2kb、約0.3kb、約0.4kb、約0.5kb、約0.6、約kb、約0.7kb、約0.8kb、約0.9kb、約1kb、約1.5kb又は約2kb離れている。一実施態様において、本段落の逆方向反復は、セクション3及び5.4(5.4.1を含む)に記載される第1の逆方向反復である。別の実施態様において、本段落の逆方向反復は、セクション3及び5.4(5.4.1を含む)に記載される第2の逆方向反復である。さらに別の実施態様において、本段落の逆方向反復は、セクション3及び5.4(5.4.1を含む)に記載される第1及び第2の逆方向反復の双方である。
【0242】
一態様において、本明細書で提供されるのは、センス鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むセンス鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)治療用GDEタンパク質をコードするセンス発現カセット;及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のアンチセンス鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むセンス鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含む二本鎖DNA分子である。
【0243】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、センス鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むアンチセンス鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)治療用GDEタンパク質をコードするセンス発現カセット;及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のアンチセンスからセンスが分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むアンチセンス鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている、前記第2の逆方向反復を含む二本鎖DNA分子である。
【0244】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、センス鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むセンス鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)治療用GDEタンパク質をコードするセンス発現カセット;及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むアンチセンス鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含む二本鎖DNA分子である。
【0245】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、センス鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むアンチセンス鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)治療用GDEタンパク質をコードするセンス発現カセット;及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むセンス鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3及び第4の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載されるか又は図2B及び図2Cに示される)、前記第2の逆方向反復を含む二本鎖DNA分子である。
【0246】
一態様において、本明細書で提供されるのは、センス鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第1の逆方向反復を含むセンス鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1及び第2の標的部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)治療用GDEタンパク質をコードするセンス発現カセット及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のアンチセンスからセンスが分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第2の逆方向反復を含むセンス鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3及び第4の標的部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含む二本鎖DNA分子である。
【0247】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、センス鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第1の逆方向反復を含むアンチセンス鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1及び第2の標的部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)治療用GDEタンパク質をコードするセンス発現カセット;及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第2の逆方向反復を含むアンチセンス鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3及び第4の標的部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含む二本鎖DNA分子である。
【0248】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、センス鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第1の逆方向反復を含むセンス鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1及び第2の標的部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)治療用GDEタンパク質をコードするセンス発現カセット;及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第2の逆方向反復を含むアンチセンス鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3及び第4の標的部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含む二本鎖DNA分子である。
【0249】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、センス鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第1の逆方向反復を含むアンチセンス鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1及び第2の標的部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)治療用GDEタンパク質をコードするセンス発現カセット;及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のアンチセンス鎖からセンス鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第2の逆方向反復を含むセンス鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3及び第4の標的部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載されるか又は図2B及び図2Cに示される)、前記第2の逆方向反復を含む二本鎖DNA分子である。一実施態様において、本パラグラフ及び直前の3つのパラグラフにおけるプログラム可能なニッキング酵素用の第1、第2、第3、及び第4の標的部位は全て同じである。別の実施態様において、本パラグラフ及び直前の3つのパラグラフにおけるプログラム可能なニッキング酵素用の第1、第2、第3、及び第4の標的部位のうちの3つは、同じである。さらに別の実施態様において、本パラグラフ及び直前の3つのパラグラフにおけるプログラム可能なニッキング酵素用の第1、第2、第3、及び第4の標的部位のうちの2つは、同じである。さらなる実施態様において、本パラグラフ及び直前の3つのパラグラフにおけるプログラム可能なニッキング酵素用の第1、第2、第3、及び第4の標的部位は全て異なる。
【0250】
発現カセットは、1つ以上の転写制御因子、1つ以上の転写後制御因子、又は1つ以上の転写制御因子及び1つ以上の転写後制御因子の双方も含むことができる。そのような調節エレメントは、複製、倍化、転写、スプライシング、翻訳、安定性、及び/又は核酸又はその誘導体のうちの1つ(例えば、mRNA)のホスト細胞又は生物内への輸送を含む、核酸分子の機能的調節を可能とする、それに寄与する、又はそれを調節する任意の配列である。そのような調節エレメントとしては、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、翻訳終止コドン、リボソーム結合エレメント、転写ターミネーター、選択マーカー、及び/又は複製起点などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0251】
発現カセットは、さまざまな長さの1つ以上のORFを収容するさまざまなサイズを有することができる。ある実施態様において、発現カセットのサイズは、少なくとも0.2kb、少なくとも0.3kb、少なくとも0.4kb、少なくとも0.5kb、少なくとも0.6、少なくともkb、少なくとも0.7kb、少なくとも0.8kb、少なくとも0.9kb、少なくとも1kb、少なくとも1.5kb、少なくとも2kb、少なくとも2.5kb、少なくとも3kb、少なくとも3.5kb、少なくとも4kb、少なくとも4.5kb、少なくとも5kb、少なくとも5.5kb、少なくとも6kb、少なくとも6.5kb、少なくとも7kb、少なくとも7.5kb、少なくとも8kb、少なくとも8.5kb、少なくとも9kb、少なくとも9.5kb、少なくとも10kb、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、少なくとも35kb、少なくとも40kb、少なくとも45kb、少なくとも50kb、少なくとも55kb、少なくとも60kb、少なくとも65kb、少なくとも70kb、少なくとも75kb、又は少なくとも80kbである。特定の一実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.5kbである。別の具体的な実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.6kbである。さらに別の具体的な実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.7kbである。さらに具体的な実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.8kbである。特定の一実施態様において、発現カセットは、少なくとも4.9kbである。別の具体的な実施態様において、発現カセットは、少なくとも5kbである。別の実施態様において、発現カセットのサイズは、約0.2kb、約0.3kb、約0.4kb、約0.5kb、約0.6、約kb、約0.7kb、約0.8kb、約0.9kb、約1kb、約1.5kb、約2kb、約2.5kb、約3kb、約3.5kb、約4kb、約4.5kb、約5kb、約5.5kb、約6kb、約6.5kb、約7kb、約7.5kb、約8kb、約8.5kb、約9kb、約9.5kb、約10kb、約15kb、約20kb、約25kb、約30kb、約35kb、約40kb、約45kb、約50kb、約55kb、約60kb、約65kb、約70kb、約75kb又は約80kbである。特定の一実施態様において、発現カセットは、約4.5kbである。別の具体的な実施態様において、発現カセットは、約4.6kbである。さらに別の具体的な実施態様において、発現カセットは、約4.7kbである。さらに具体的な実施態様において、発現カセットは、約4.8kbである。特定の一実施態様において、発現カセットは、約4.9kbである。別の具体的な実施態様において、発現カセットは、約5kbである。発現カセットは、さまざまな数の対象となる遺伝子(「導入遺伝子」)も含むことができる。実施態様において、発現カセットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の導入遺伝子を含む。いくつかの特定の実施態様において、発現カセットは、1つの導入遺伝子を含む。いくつかの実施態様において、導入遺伝子は、組換え遺伝子である。いくつかのさらなる実施態様において、導入遺伝子は、cDNA配列を含む(例えば、導入遺伝子中にイントロンなし)。
【0252】
さらに、発現カセットは、少なくとも4000ヌクレオチド、少なくとも5000ヌクレオチド、少なくとも10,000ヌクレオチド、少なくとも20,000ヌクレオチド、少なくとも30,000ヌクレオチド、少なくとも40,000ヌクレオチド、又は少なくとも50,000ヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、約4000~約10,000ヌクレオチド、約10,000~約50,000ヌクレオチド、又は50,000ヌクレオチド超の任意の範囲のヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、長さが約500~約50,000ヌクレオチドの範囲の導入遺伝子を含むことができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、長さが約500~約75,000ヌクレオチドの範囲の導入遺伝子を含むことができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、長さが約500~約10,000ヌクレオチドの範囲の導入遺伝子を含むことができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、長さが約1000~約10,000ヌクレオチドの範囲の導入遺伝子を含むことができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、長さが約500~約5,000ヌクレオチドの範囲の導入遺伝子を含むことができる。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、カプシド形成したAAVベクターのサイズ制限を有さず、従って、大型の発現カセットの送達を可能として、効率的な導入遺伝子を提供する。ある実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、任意の天然のAAVゲノムのサイズと同じ又はそれよりも大きいサイズの発現カセットを含む。
【0253】
発現カセットは、逆方向反復に対してさまざまな位置を占めることができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、逆方向反復から少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、少なくとも64、少なくとも65、少なくとも66、少なくとも67、少なくとも68、少なくとも69、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、少なくとも99、又は少なくとも100ヌクレオチド離れている。ある実施態様において、発現カセットは、逆方向反復から少なくとも0.2kb、少なくとも0.3kb、少なくとも0.4kb、少なくとも0.5kb、少なくとも0.6、少なくともkb、少なくとも0.7kb、少なくとも0.8kb、少なくとも0.9kb、少なくとも1kb、少なくとも1.5kb、又は少なくとも2kb離れている。別の実施態様において、発現カセットは、逆方向反復から約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99又は約100ヌクレオチド離れている。さらなる実施態様において、発現カセットは、逆方向反復から約0.2kb、約0.3kb、約0.4kb、約0.5kb、約0.6、約kb、約0.7kb、約0.8kb、約0.9kb、約1kb、約1.5kb又は約2kb離れている。一実施態様において、本段落の逆方向反復は、セクション3及び5.4(5.4.1を含む)に記載される第1の逆方向反復である。別の実施態様において、本段落の逆方向反復は、セクション3及び5.4(5.4.1を含む)に記載される第2の逆方向反復である。さらに別の実施態様において、本段落の逆方向反復は、セクション3及び5.4(5.4.1を含む)に記載される第1及び第2の逆方向反復の双方である。
【0254】
ニッキングエンドヌクレアーゼ及び/又はニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を用いて本セクション(セクション5.4.3)に記載されたさまざまな実施態様はさらに、ニッキングエンドヌクレアーゼをプログラム可能なニッキング酵素で置き換え、制限部位をプログラム可能なニッキング酵素用の標的部位で置き換えて提供される。本段落及び本セクション(セクション5.4.3)のためのプログラム可能なニッキング酵素及びその標的部位は、セクション5.3.4で提供されている。
【0255】
(5.4.5 本明細書で提供されるDNA分子中には存在しないウイルスDNA配列の特徴)
セクション3、5.2、5.4.1、5.4.2、5.4.3、5.4.6、5.4.7、及び5.5にさらに記載されているように、提供されるDNA分子は、合成的に又は組換えでのいずれかで、特定の配列エレメントや特徴を有して又は有さずに製造することができる。従って、ある適当かつ所望の配列の特徴又はエレメントを、本明細書で提供されるDNA分子に含めることができ、本明細書で提供されるDNA分子から排除することもできる。配列の特徴又はエレメントを含む又は含まないそのようなDNA分子を作製するための対応する方法も、5.2の方法を5.4のDNA分子と共に適用することによって記載されるように本明細書で提供され、これによって、5.5に記載されるさまざまなDNA分子を製造することができる。
【0256】
セクション3、5.4.1、5.6、及び6に記載されるように、本明細書で提供されるDNA分子から排除することができるそのようなDNA配列のエレメント又は特徴は、パルボウイルス科遺伝子Rep及びNS1によってコードされるウイルスDNA複製関連タンパク質及びそのアイソフォームが結合することができるDNA配列を意味する、ウイルス複製関連タンパク質結合配列(「RABS」)であってもよい。RABSは、Rep又はNS1タンパク質によって認識されるヌクレオチド配列(ウイルス核酸分子の複製を目的とする)及び該Rep又はNS1タンパク質と該ヌクレオチド配列との間の特異的相互作用の部位の双方を含むヌクレオチド配列を意味する。RABSは、5ヌクレオチドから300ヌクレオチドの配列とすることができる。本セクション5.4.5で提供されるものを含む本明細書で提供されるDNA分子のいくつかの実施態様において、RABSは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、少なくとも145、少なくとも150、少なくとも155、少なくとも160、少なくとも165、少なくとも170、少なくとも175、少なくとも180、少なくとも185、少なくとも190、少なくとも195、少なくとも200、少なくとも205、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、又は少なくとも400ヌクレオチドの配列とすることができる。いくつかの他の実施態様において、RABSは、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、約200、約205、約210、約215、約220、約225、約230、約235、約240、約245、約250、約255、約260、約265、約270、約275、約280、約285、約290、約295、約300、約305、約310、約315、約320、約325、約330、約335、約340、約345、約350、約355、約360、約365、約370、約375、約380、約385、約390、約395又は約400ヌクレオチドの配列とすることができる。いくつかのさらなる実施態様において、本段落に記載されるRABSを欠くDNA分子の任意の実施態様を、セクション3、5.2、5.4、5.5、及び6で提供されるものを含む本明細書で提供される任意の方法又はDNA分子と組み合わせることができる。
【0257】
あるいは、セクション3,5.2、5.4、5.5、及び6におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子は、RABSがもはや、Repタンパク質又はNS1タンパク質認識及び/又は結合部位として働くことができなくなるように、変異、挿入、欠失(部分的な欠失又はトランケーションを含む)を用いて該DNA分子中に存在するRABS配列を機能的に不活性化させることによって機能的RABSを欠いていてもよい。従って、セクション3,5.2、5.4、5.5、及び6におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子のいくつかの実施態様において、該DNA分子は、機能的に不活性化されたRABSを含む。そのような機能的不活性化は、Rep又はNS1タンパク質と機能的に不活性化されたRABSを含むDNA分子との間の結合と、Rep又はNS1タンパク質と野生型(wt)RBS又はNSBE配列(例えば、wt RBS又はwt NSBE配列を有している以外は同一であるDNA分子)を含む参照分子との間の結合とを測定し比較することによって評価することができる。そのような結合は、分子生物学の分野で知られており用いられている任意の結合測定、例えば、双方ともその全体が引用によりここに組み込まれるMatthew J. Guille及びG. Geoff Knealeの文献、Molecular Biotechnology 8:35-52 (1997); Bipasha Deyらの文献、Mol Cell Biochem. 2012 Jun;365(1-2):279-99にさらに記載されるような、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ、DNA電気泳動移動度シフト解析(EMSA)、DNAプルダウンアッセイ、又はマイクロプレート捕獲・検出アッセイによって決定することができる。一実施態様において、RAPとDNA分子内の機能的に不活性化されたRABSとの間の結合は、該RAPと参照DNA分子(例えば、野生型RBS又はNSBE配列を有する以外は同一のDNA分子)内の野生型RBS又はNSBEとの間の結合と比較して、多くとも0.001%、多くとも0.01%、多くとも0.1%、多くとも1%、多くとも1.5%、多くとも2%、多くとも2.5%、多くとも3%、多くとも3.5、多くとも4%、多くとも4.5%、多くとも5%、多くとも5.5%、多くとも6%、多くとも6.5%、多くとも7%、多くとも7.5%、多くとも8%、多くとも8.5%、多くとも9%、多くとも9.5%、又は多くとも10%である。別の実施態様において、RAPとDNA分子内の機能的に不活性化されたRABSとの間の結合は、該RAPと参照DNA分子(例えば、wt RBS又はNSBE配列を有する以外は同一のDNA分子)内の野生型RABSとの間の結合と比較して、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、又は約10%である。さらに別の実施態様において、RAPとDNA分子内の機能的に不活性化されたRABSとの間の結合は、該RAPと参照DNA分子(例えば、wt RBS又はNSBE配列を有する以外は同一のDNA分子)内の野生型RABSとの間の結合と比較して、0.001%、0.01%、0.1%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%である。
【0258】
さらに、セクション3,5.2、5.4、5.5、及び6におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子は、RAP又はウイルスカプシドコード配列がもはや、Repタンパク質、NS1タンパク質、又はウイルスカプシドタンパク質を機能的に発現できなくなるように、変異、挿入、欠失(部分的な欠失又はトランケーションを含む)を用いて該DNA分子中に存在するRepタンパク質、NS1、又はウイルスカプシドコード配列を機能的に不活性化させることによって、機能的RAP又はウイルスカプシドコード配列を欠いていてもよい。そのような機能的に不活性化させる変異、挿入、又は欠失は、例えば、Repタンパク質又はウイルスカプシドコード配列のオープンリーディングフレームをシフトさせる変異、挿入、及び/もしくは欠失を用いることによって、開始コドンを除去する変異、挿入、及び/もしくは欠失を用いることによって、プロモーター又は転写開始点を除去する変異、挿入、及び/もしくは欠失を用いることによって、RNAポリメラーゼ結合部位を除去する変異、挿入、及び/もしくは欠失を用いることによって、リボソーム認識又は結合部位を除去する変異、挿入、及び/もしくは欠失を用いることによって、又は本分野で知られておりかつ用いられる他の手段によって達成することができる。
【0259】
一実施態様において、DNA分子は、変異によって不活性化されたRBSを含む。一実施態様において、DNA分子は、RBSにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、10、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドの変異によって不活性化されたRBSを含む。別の実施態様において、DNA分子は、RBSにおけるヌクレオチドのうちの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、10%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、又は40%の変異によって不活性化されたRBSを含む。さらなる実施態様において、DNA分子は、RBSにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、10、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドの欠失によって不活性化されたRBSを含む。さらに別の実施態様において、DNA分子は、RBSにおけるヌクレオチドのうちの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、10%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、又は40%の欠失によって不活性化されたRBSを含む。いくつかの実施態様において、前述の文の欠失は、内部欠失、5’末端からの欠失、又は3’末端からの欠失である。いくつかの実施態様において、本段落の欠失は、内部欠失、5’末端からの欠失、及び/又は3’末端からの欠失の任意の組合せとすることができる。ある実施態様において、DNA分子は、RBS配列全体の欠失によって不活性化されたRBSを含む。いくつかの追加の実施態様において、DNA分子は、RBS配列の部分的な欠失によって不活性化されたRBSを含む。
【0260】
一実施態様において、DNA分子は、変異によって不活性化されたNBSEを含む。一実施態様において、DNA分子は、NSBEにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、10、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドの変異によって不活性化されたNSBEを含む。別の実施態様において、DNA分子は、NSBEにおけるヌクレオチドのうちの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、10%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、又は40%の変異によって不活性化されたNSBEを含む。さらなる実施態様において、DNA分子は、NSBEにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、10、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドの欠失によって不活性化されたNSBEを含む。さらに別の実施態様において、DNA分子は、NSBEにおけるヌクレオチドのうちの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、10%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、又は40%の欠失によって不活性化されたNSBEを含む。いくつかの実施態様において、前述の文の欠失は、内部欠失、5’末端からの欠失、又は3’末端からの欠失である。いくつかの実施態様において、本段落の欠失は、内部欠失、5’末端からの欠失、及び/又は3’末端からの欠失の任意の組合せとすることができる。ある実施態様において、DNA分子は、NSBE配列全体の欠失によって不活性化されたNSBEを含む。いくつかの追加の実施態様において、DNA分子は、NSBE配列の部分的な欠失によって不活性化されたNSBEを含む。
【0261】
同様に、DNA配列のエレメント又は特徴を、本明細書(セクション5.4及び5.5など)で提供されるDNA分子の任意の特定の領域又は本明細書(セクション5.2など)で提供される方法で用いられるDNA分子の任意の特定の領域に含めること又はそれらから排除することができる。一実施態様において、DNA分子は、Repタンパク質コード配列を欠く。一実施態様において、DNA分子は、NS1タンパク質コード配列を欠く。別の実施態様において、DNA分子は、ウイルスカプシドタンパク質コード配列を欠く。いくつかの実施態様において、発現カセットは、Repタンパク質コード配列を欠く。いくつかの実施態様において、発現カセットは、NS1タンパク質コード配列を欠く。ある実施態様において、発現カセットは、ウイルスカプシドタンパク質コード配列を欠く。さらなる実施態様において、DNA分子は、RABSを欠く。さらに別の実施態様において、第1の逆方向反復は、RABSを欠く。一実施態様において、第2の逆方向反復は、RABSを欠く。別の実施態様において、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対と前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対との間のDNA配列は、RABSを欠く。一実施態様において、DNA分子は、機能的に不活性化されたRepタンパク質コード配列を含む。一実施態様において、DNA分子は、機能的に不活性化されたNS1タンパク質コード配列を含む。別の実施態様において、DNA分子は、機能的に不活性化されたウイルスカプシドタンパク質コード配列を含む。いくつかの実施態様において、発現カセットは、機能的に不活性化されたRepタンパク質コード配列を含む。いくつかの実施態様において、発現カセットは、機能的に不活性化されたNS1タンパク質コード配列を含む。ある実施態様において、発現カセットは、機能的に不活性化されたウイルスカプシドタンパク質コード配列を含む。さらなる実施態様において、DNA分子は、機能的に不活性化されたRABSを含む。さらに別の実施態様において、第1の逆方向反復は、機能的に不活性化されたRABSを含む。一実施態様において、第2の逆方向反復は、機能的に不活性化されたRABSを含む。 別の実施態様において、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対と前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対との間のDNA配列は、機能的に不活性化されたRABSを含む。
【0262】
さらに、本明細書(セクション5.4及び5.5など)で提供されるDNA分子の任意の特定の領域又は本明細書(セクション5.2など)で提供される方法で用いられるDNA分子の任意の特定の領域の任意の組合せから、DNA配列のエレメント又は特徴を機能的に不活性化することができる。一実施態様において、第1の逆方向反復は、機能的に不活性化されたRABSを含み、かつ第2の逆方向反復は、機能的に不活性化されたRABSを含む。別の実施態様において、第1の逆方向反復は、機能的に不活性化されたRABSを含み、かつ前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対と前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対との間のDNA配列は、機能的に不活性化されたRABSを含む。さらなる実施態様において、第2の逆方向反復は、機能的に不活性化されたRABSを含み、かつ前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対と前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対との間のDNA配列は、機能的に不活性化されたRABSを含む。さらに別の実施態様において、第1の逆方向反復は、機能的に不活性化されたRABSを含み、第2の逆方向反復は、機能的に不活性化されたRBSを含み、前記第1の逆方向反復のITR閉鎖塩基対と前記第2の逆方向反復のITR閉鎖塩基対との間のDNA配列は、機能的に不活性化されたRABSを含む。
【0263】
セクション3、5.4.1、5.6、及び6に記載されているように、本明細書で提供されるDNA分子から排除することができるそのようなDNA配列のエレメント又は特徴は、末端分離部位(「TRS」)とすることができる。TRSは、RAPによって(ウイルス核酸分子の複製のために)認識されるヌクレオチド配列、該RAPと該ヌクレオチド配列との間の特異的相互作用の部位、及び該RAPタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性による特異的切断の部位を含む、DNA分子の逆方向反復内のヌクレオチド配列を意味する。RAPタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性による特異的切断の保存部位のヌクレオチド配列は、分子生物学の分野で知られており用いられているDNAニッキングアッセイ、例えば、双方ともその全体が引用によりここに組み込まれるXu Pらの文献 2019. Antimicrob Agents Chemother 63:e01879-18.; US20190203229A;にさらに記載されるような、ゲル電気泳動(gel electrophoreris)、フルオロフォアベースのインビトロニッキングアッセイ、放射活性インビトロニッキングアッセイによって決定することができる。いくつかの実施態様において、TRSは、Repタンパク質(ウイルス核酸分子の複製を目的とする)によって認識されるヌクレオチド配列、該Repタンパク質と該ヌクレオチド配列との間の特異的相互作用の部位、及び該Repタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性による特異的切断の部位を含む、DNA分子の逆方向反復内のヌクレオチド配列とすることができる。一実施態様において、TRSは、NS1タンパク質(ウイルス核酸分子の複製を目的とする)によって認識されるヌクレオチド配列、該NS1タンパク質と該ヌクレオチド配列との間の特異的相互作用の部位、及び該NS1タンパク質のエンドヌクレアーゼ活性による特異的切断の部位を含む、DNA分子の逆方向反復内のヌクレオチド配列とすることができる。TRSは、5ヌクレオチドから300ヌクレオチドの配列とすることができる。本セクション5.4.5で提供されるものなどの本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、TRSは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、少なくとも145、少なくとも150、少なくとも155、少なくとも160、少なくとも165、少なくとも170、少なくとも175、少なくとも180、少なくとも185、少なくとも190、少なくとも195、少なくとも200、少なくとも205、少なくとも210、少なくとも215、少なくとも220、少なくとも225、少なくとも230、少なくとも235、少なくとも240、少なくとも245、少なくとも250、少なくとも255、少なくとも260、少なくとも265、少なくとも270、少なくとも275、少なくとも280、少なくとも285、少なくとも290、少なくとも295、少なくとも300、少なくとも305、少なくとも310、少なくとも315、少なくとも320、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも340、少なくとも345、少なくとも350、少なくとも355、少なくとも360、少なくとも365、少なくとも370、少なくとも375、少なくとも380、少なくとも385、少なくとも390、少なくとも395、又は少なくとも400ヌクレオチドの配列とすることができる。いくつかの他の実施態様において、TRSは、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、約175、約180、約185、約190、約195、約200、約205、約210、約215、約220、約225、約230、約235、約240、約245、約250、約255、約260、約265、約270、約275、約280、約285、約290、約295、約300、約305、約310、約315、約320、約325、約330、約335、約340、約345、約350、約355、約360、約365、約370、約375、約380、約385、約390、約395又は約400ヌクレオチドの配列とすることができる。いくつかのさらなる実施態様において、本段落に記載されるTRSの任意の実施態様を、セクション3,5.2、5.4、5.5、及び6で提供されるものなどの本明細書で提供される任意の方法又はDNA分子と組み合わせることができる。
【0264】
あるいは、セクション3,5.2、5.4、5.5、及び6におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子は、TRSが、もはやRAP(すなわち、Rep及びNS1)用の認識及び/又は結合部位として働くことができなくなるように、変異、挿入、欠失(部分的な欠失又はトランケーションを含む)を用いて該DNA分子中に存在するTRS配列を機能的に不活性化させることによって、機能的TRSを欠いていてもよい。従って、セクション3,5.2、5.4、5.5、及び6におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子のいくつかの実施態様において、DNA分子は、機能的に不活性化されたTRSを含む。そのような機能的不活性化は、RAP(すなわち、Rep及びNS1)と機能的に不活性化されたTRSを含むDNA分子との間の結合と、RAPと野生型(wt)TRS配列(例えば、wt TRS配列を有している以外は同一のDNA分子)を含む参照分子との間の結合とを測定し比較することによって評価することができる。そのような結合は、分子生物学の分野で知られており用いられている任意の結合測定、例えば、双方ともその全体が引用によりここに組み込まれる、Matthew J. Guille及びG. Geoff Knealeの文献、Molecular Biotechnology 8:35-52 (1997); Bipasha Deyらの文献、Mol Cell Biochem. 2012 Jun;365(1-2):279-99にさらに記載されるような、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ、DNA 電気泳動移動度シフト解析(EMSA)、DNAプルダウンアッセイ、又はマイクロプレート捕獲・検出アッセイによって決定することができる。一実施態様において、RAP(すなわち、Rep及びNS1)とDNA分子内の機能的に不活性化されたTRSとの間の結合は、該RAP(すなわち、Rep及びNS1)と参照DNA分子(例えば、wt TRS配列を有している以外は同一のDNA分子)内の野生型TRSとの間の結合と比較して、多くとも0.001%、多くとも0.01%、多くとも0.1%、多くとも1%、多くとも1.5%、多くとも2%、多くとも2.5%、多くとも3%、多くとも3.5、多くとも4%、多くとも4.5%、多くとも5%、多くとも5.5%、多くとも6%、多くとも6.5%、多くとも7%、多くとも7.5%、多くとも8%、多くとも8.5%、多くとも9%、多くとも9.5%、又は多くとも10%である。別の実施態様において、RAP(すなわち、Rep及びNS1)とDNA分子内の機能的に不活性化されたTRSとの間の結合は、該RAP(すなわち、Rep及びNS1)と参照DNA分子(例えば、wt TRS配列を有している以外は同一のDNA分子)内の野生型TRSとの間の結合と比較して、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%又は約10%である。さらに別の実施態様において、RAP(すなわち、Rep及びNS1)とDNA分子内の機能的に不活性化されたTRSとの間の結合は、該RAP(すなわち、Rep及びNS1)と参照DNA分子(例えば、wt TRS配列を有している以外は同一のDNA分子)内の野生型TRSとの間の結合と比較して、0.001%、0.01%、0.1%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%である。
【0265】
一実施態様において、DNA分子は、変異によって不活性化されたTRSを含む。一実施態様において、DNA分子は、TRSにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、10、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドの変異によって不活性化されたTRSを含む。別の実施態様において、DNA分子は、TRSにおけるヌクレオチドのうちの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、10%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、又は40%の変異によって不活性化されたTRSを含む。さらなる実施態様において、DNA分子は、TRSにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、10、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドの欠失によって不活性化されたTRSを含む。さらに別の実施態様において、DNA分子は、TRSにおけるヌクレオチドのうちの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、10%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、又は40%の欠失によって不活性化されたTRSを含む。いくつかの実施態様において、前述の文の欠失は、内部欠失、5’末端からの欠失、又は3’末端からの欠失である。いくつかの実施態様において、本段落の欠失は、内部欠失、5’末端からの欠失、及び/又は3’末端からの欠失の任意の組合せとすることができる。ある実施態様において、DNA分子は、TRS配列全体の欠失によって不活性化されたTRSを含む。いくつかの追加の実施態様において、DNA分子は、TRS配列の部分的な欠失によって不活性化されたTRSを含む。
【0266】
同様に、DNA配列のエレメント又は特徴を、本明細書(セクション5.4及び5.5など)で提供されるDNA分子の任意の特定の領域又は本明細書(セクション5.2など)で提供される方法で用いられるDNA分子の任意の特定の領域に含めること又はそれらから排除することができる。一実施態様において、DNA分子は、TRSを欠く。さらに別の実施態様において、第1の逆方向反復は、TRSを欠く。別の実施態様において、第2の逆方向反復は、TRSを欠く。さらなる実施態様において、第1の逆方向反復は、TRSを欠き、かつ第2の逆方向反復は、TRSを欠く。
【0267】
あるいは、本明細書(セクション5.4及び5.5など)で提供されるDNA分子の任意の特定の領域又は本明細書(セクション5.2など)で提供される方法で用いられるDNA分子の任意の特定の領域から、TRS配列のエレメント又は特徴を機能的に不活性化することができる。一実施態様において、DNA分子は、機能的に不活性化されたTRSを含む。さらに別の実施態様において、第1の逆方向反復は、機能的に不活性化されたTRSを含む。別の実施態様において、第2の逆方向反復は、機能的に不活性化されたTRSを含む。さらなる実施態様において、第1の逆方向反復は、機能的に不活性化されたTRSを含み、かつ第2の逆方向反復は、機能的に不活性化されたTRSを含む。
【0268】
いくつかの特定の実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子において排除される又は機能的に不活性化されるRBSは、表20に挙げられているRBS配列のうちの任意のもの、又は任意の数の任意の組合せ、又は全てとすることができる。
(表20: 例示的なRAP)
【表20】
【0269】
特定の一実施態様において、DNA分子は、前の段落の表に記載されるRAPのうちのいずれか1つ、又は任意の数の任意の組合せ、又は全てのコード配列を欠く。別の具体的な実施態様において、DNA分子は、前の段落の表に記載されるRAPのうちのいずれか1つ、又は任意の数の任意の組合せ、又は全てをコードする機能的に不活性化された配列を含む。
【0270】
別の具体的な実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子において排除された又は機能的に不活性化されたTRSは、表21に挙げられるTRS配列のうちの任意のもの、又は任意の数の任意の組合せ、又は全てとすることができる。
(表21: 例示的なRAP)
【表21】
【0271】
本明細書で提供される方法が、ウイルス複製工程を必要とせず、かつ本明細書で提供されるDNA分子が、ウイルスのライフサイクルにおいて産生又は複製される必要がないために、本明細書で提供されるDNA分子が、本セクション(セクション5.4.5)で提供される配列又は特徴を含む、さまざまなDNAの配列又は特徴を欠いていてもよいことを本開示は規定し、かつ本開示の読者はそのことを理解するであろう。本セクション5.4.5で提示されるようなRABS及び/又はTRSを欠くDNA分子並びに機能的に不活性化されたRABS及び/又は機能的に不活性化されたTRSを含むDNA分子は、そのようなRABS及び/又はTRS配列を含むDNA分子と比較して、該DNA分子が患者に投与された場合に、可動化又は複製のリスクを有しないか又は顕著に低い可動化又は複製のリスクを有するという点で大きな利点を少なくとも提供する。可動化のリスク又は可動化リスクは、複製欠損DNA分子が、該DNA分子を投与されたホストにおいてウイルス粒子を複製又は産生するように復帰してしまうリスクを意味する。そのような可動化リスクは、該DNA分子を投与されたホストと同一のホストに感染したウイルスにより発現されるウイルスタンパク質(例えば、Repタンパク質、NS1タンパク質、又はウイルスカプシドタンパク質)の存在に起因することがある。可動化リスクは、例えば、Liujiang Songの文献、Hum Gene Ther、2020年10月;31(19-20):1054-1067(その全体は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、複製欠損ウイルスゲノムを遺伝子療法ベクターとして用いることに関する著しい安全性への懸念をもたらす。そのようなRBS及び/又はTRSを欠くDNA分子は、他のヘルパーウイルスが同一のホスト内に存在してRepタンパク質を提供した場合であっても、ウイルスのRepタンパク質が複製を開始させるための結合部位を有しないであろう。
【0272】
従って、本セクション5.4.5のものを含む本明細書で提供されるDNA分子のいくつかの実施態様において、RABSを含まずかつ/又はTRSを含まないDNA分子は、RABSを含みかつ/又はTRSを含むDNA分子と比較した場合に、対象又は患者に投与された後の可動化リスクが低い。本セクション5.4.5のものを含む本明細書で提供されるDNA分子のある実施態様において、機能的に不活性化されたRABS及び/又は機能的に不活性化されたTRSを含むDNA分子は、RABSを含みかつ/又はTRSを含むDNA分子と比較した場合に、より低い対象又は患者に投与された後の可動化リスクを有する。そのような可動化リスクの低下は、(Pm-Po)/Pm(式中、Pmは、RAPが(例えば、同一のホストにおけるRAPを含む何らかのウイルスの感染又はRAPの操作された発現を原因として)存在する場合にRBSを含む対照DNA分子から産生されるウイルス粒子の数であり;Poは、対照DNA分子に用いられるのと同一のホストにおいて同程度の条件下で、本明細書で提供されるRABSを欠くか又は機能的に不活性化され含むDNA分子から産生されるウイルス粒子の数である)として決定することができる。あるいは、そのような可動化リスクの低下は、(Pm-Po)/Pm(式中、Pmは、RAPが(例えば、同一のホストにおけるRepタンパク質を含む何らかのウイルスの感染又はRepタンパク質の操作された発現を原因として)存在する場合にTRSを含む対照DNA分子から産生されるウイルス粒子の数であり;Poは、対照DNA分子に用いられるのと同一のホストにおいて同程度の条件下で、本明細書で提供されるTRSを欠くか又は機能的に不活性化されたTRSを含むDNA分子から産生されるウイルス粒子の数である)として決定することができる。さらに、そのような可動化リスクの低下は、(Pm-Po)/Pm(式中、Pmは、RAPが(例えば、同一のホストにおけるRepタンパク質、NS1タンパク質を含む何らかのウイルスの感染又はRepタンパク質の操作された発現を原因として)存在する場合のRABSを含みかつTRSを含む対照DNA分子から産生されるウイルス粒子の数であり;Poは、対照DNA分子に用いられるのと同一のホストにおいて同程度の条件下で、本明細書で提供される(i)RABSを欠くか又は機能的に不活性化されたRABSを含み、かつ(ii)TRSを欠くか又は機能的に不活性化されたTRSを含むDNA分子から産生されるウイルス粒子の数である)として決定することができる。Liujiang Songの文献、Hum Gene Ther、2020年10月;31(19-20):1054-1067(その全体は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、産生される粒子数を決定するために用いられるホストは、細胞、動物(例えば、マウス、ハムスター、ラット、イヌ、ウサギ、モルモット、及び他の適当な哺乳動物)、又はヒトとすることができる。それぞれが本段落に記載されているとおりであるPm及びPoを、可動化の絶対的又は相対的なレベルを決定するのにも使用することができることを本開示はさらに規定し、そのことを本開示を読んだ当業者は理解するであろう。簡単に述べると、そのようなアッセイにおいて、DNA分子を、ホスト細胞(例えば、HEK293細胞)内にトランスフェクションさせるか、又はDNA分子を含むウイルス粒子に感染させることによってホスト細胞内に形質導入する。ホスト細胞を、Repタンパク質、NS1タンパク質を用いてさらにトランスフェクションさせるか、又はRepタンパク質又はNS1タンパク質を発現する別のウイルス(例えば、野生型ウイルス)に共感染させる。次いで、ホスト細胞を培養して、ウイルス粒子を産生及び放出させる。次いで、48~72時間(例えば、65時間)の培養後に、ビリオンを、ホスト細胞及び培養培地の双方を集めることによって回収する。ウイルス粒子の力価(Pm及びPoの代理)を、その全体が引用により組み込まれるSongらの文献、Cytotherapy 2013;15:986-998に記載されているように、非カプシド形成DNAを除去するベンゾナーゼ処理後のプローブベースの定量的PCR(qPCR)分析によって決定することができる。そのようなアッセイの例示的な実施は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる、Liujiang Songの文献、Hum Gene Ther、2020年10月;31(19-20):1054-1067に提供されている。
【0273】
可動化リスクの低下及び可動化リスクレベルの決定に基づき、本セクション5.4.5におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子のいくつかの実施態様において、ホストに投与された場合のDNA分子の可動化リスクは、RABSを含みかつ/又はTRSを含む対照DNA分子よりも100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%、50%、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、又は20%低い。ある実施態様において、ホストに投与された場合のDNA分子の可動化リスクは、RABSを含みかつ/又はTRSを含む対照DNA分子よりも少なくとも99%、少なくとも98%、少なくとも97%、少なくとも96%、少なくとも95%、少なくとも94%、少なくとも93%、少なくとも92%、少なくとも91%、少なくとも90%、少なくとも89%、少なくとも88%、少なくとも87%、少なくとも86%、少なくとも85%、少なくとも84%、少なくとも83%、少なくとも82%、少なくとも81%、少なくとも80%、少なくとも79%、少なくとも78%、少なくとも77%、少なくとも76%、少なくとも75%、少なくとも74%、少なくとも73%、少なくとも72%、少なくとも71%、少なくとも70%、少なくとも69%、少なくとも68%、少なくとも67%、少なくとも66%、少なくとも65%、少なくとも64%、少なくとも63%、少なくとも62%、少なくとも61%、少なくとも60%、少なくとも59%、少なくとも58%、少なくとも57%、少なくとも56%、少なくとも55%、少なくとも54%、少なくとも53%、少なくとも52%、少なくとも51%、少なくとも50%、少なくとも49%、少なくとも48%、少なくとも47%、少なくとも46%、少なくとも45%、少なくとも44%、少なくとも43%、少なくとも42%、少なくとも41%、少なくとも40%、少なくとも39%、少なくとも38%、少なくとも37%、少なくとも36%、少なくとも35%、少なくとも34%、少なくとも33%、少なくとも32%、少なくとも31%、少なくとも30%、少なくとも29%、少なくとも28%、少なくとも27%、少なくとも26%、少なくとも25%、少なくとも24%、少なくとも23%、少なくとも22%、少なくとも21%、又は少なくとも20低い。別の実施態様において、ホストに投与された場合のDNA分子の可動化リスクは、RABSを含みかつ/又はTRSを含む対照DNA分子よりも約100%、約99%、約98%、約97%、約96%、約95%、約94%、約93%、約92%、約91%、約90%、約89%、約88%、約87%、約86%、約85%、約84%、約83%、約82%、約81%、約80%、約79%、約78%、約77%、約76%、約75%、約74%、約73%、約72%、約71%、約70%、約69%、約68%、約67%、約66%、約65%、約64%、約63%、約62%、約61%、約60%、約59%、約58%、約57%、約56%、約55%、約54%、約53%、約52%、約51%、約50%、約49%、約48%、約47%、約46%、約45%、約44%、約43%、約42%、約41%、約40%、約39%、約38%、約37%、約36%、約35%、約34%、約33%、約32%、約31%、約30%、約29%、約28%、約27%、約26%、約25%、約24%、約23%、約22%、約21%又は約20%低い。
【0274】
あるいは、一実施態様において、本セクション5.4.5におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子は、(例えば、本セクション5.4.5で提供されるPoの測定に基づいて)検出可能な可動化をもたらさない。別の実施態様において、本セクション5.4.5におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子は、参照DNA分子(例えば、野生型RABSを有しかつ/又は野生型TRS配列を有している以外は同一であるDNA分子)がもたらす可動化の0.0001%以下、0.001%以下、0.01%以下、0.1%以下、1%以下、1.5%以下、2%以下、2.5%以下、3%以下、3.5以下、4%以下、4.5%以下、5%以下、5.5%以下、6%以下、6.5%以下、7%以下、7.5%以下、8%以下、8.5%以下、9%以下、9.5%以下、又は10%以下の可動化の可動化をもたらす。さらなる実施態様において、本セクション5.4.5におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子は、参照DNA分子(例えば、野生型RABSを有しかつ/又は野生型TRS配列を有している以外は同一であるDNA分子)がもたらす可動化の約0.0001%、約0.001%、約0.01%、約0.1%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%又は約10%の可動化をもたらす。さらに別の実施態様において、本セクション5.4.5におけるものを含む本明細書で提供されるDNA分子は、参照DNA分子(例えば、野生型RABSを有しかつ/又は野生型TRS配列を有している以外は同一であるDNA分子)がもたらす可動化の0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%の可動化をもたらす。そのような可動化の百分率は、前の段落(前の2つの段落を含む)にさらに記載されているように決定されたPm及びPoを用いることによって決定することができる。
【0275】
本セクション5.4.5の記載から明らかであるように、本明細書で提供されるDNA分子において排除されるDNAの配列又は特徴は、本明細書(セクション3、5.2、及び6など)で提供される方法のいずれか、本明細書(セクション3、5.4。及び6など)で提供されるDNA分子のいずれか、及び本明細書(セクション3、5.5、及び6など)で提供されるヘアピン末端DNA分子のいずれかと任意のやり方で組み合わせることができ、かつ本明細書(セクション3、5.6、及び6など)で提供されるDNA分子の機能的性質に寄与する。
【0276】
(5.4.6 プラスミドなどのベクター)
本開示は、DNA分子が、さまざまな形態のものであり得ることを規定する。一実施態様において、本明細書における方法及び組成物のために提供されるDNA分子は、ベクターである。ベクターは、ホスト細胞内で複製及び/又は発現させることができる核酸分子である。当業者に公知の任意のベクターが、本明細書で提供される。いくつかの実施態様において、ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、及び人工染色体(例えば、細菌人工染色体又は酵母人工染色体)とすることができる。特定の一実施態様において、ベクターは、プラスミドである。記載から明らかであるように、DNA分子が、ベクター(プラスミドを含む)の形態である場合、該ベクターは、セクション3及び本セクション(セクション5.4)に記載されているものを含む、DNA分子について本明細書に記載される全ての特徴を備えるであろう。
【0277】
いくつかの実施態様において、本セクション(セクション5.4.6)で提供されるベクターは、例えば、セクション5.2で提供される方法の工程を行うことによって、セクション3及び5.5で提供されるDNA分子の製造に使用することができる。従って、本セクション(セクション5.4.6)で提供されるベクターは、(1)セクション5.4.1及び5.5に記載されているようなヘアピンを形成することができるIR又はITR、5.4.3に記載されているような発現カセット、及びセクション5.4.2、5.3.4、及び5.4.7に記載されているようなニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素用の制限部位を含む、セクション3及び5.5で提供されるDNA分子の特徴を含み、かつ/又は(2)セクション5.4.5に記載されるようなRABS及び/又はTRS配列を欠く。従って、本開示は、本セクション(セクション5.4.6)で提供されるベクターが、(1)セクション5.4.1及び5.5に記載されているようなヘアピンを形成することができるIR又はITR、5.4.3に記載されているような発現カセット、セクション5.4.2、5.3.4、及び5.4.7に記載されているようなニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素用の制限部位、及び本セクション(セクション5.4.6)で提供されるベクターについての追加の特徴の実施態様の任意の組合せを含むことができ、かつ/又は(2)セクション5.4.5に記載されるようなRABS及び/又はTRS配列を欠くことを規定する。いくつかの実施態様において、ベクターは、作動的に連結された成分として、転写の方向に少なくとも以下のもの:(1)5’ITR配列;(2)cis-調節エレメント、例えば、プロモーター、誘導性プロモーター、調節性スイッチ、エンハンサーなどを含む発現カセット;及び(3)3’ IR配列を提供する公知の技術を用いて構築することができる。いくつかの実施態様において、発現カセットは、ITRに隣接しており、外来性の配列を導入するためのクローニングサイトを含む。
【0278】
具体的には、一実施態様において、DNA分子は、プラスミドである。プラスミドは、該プラスミド内のDNA分子を複製する又は発現させるためのベクターとして本技術分野において広く知られておりかつ用いられている。プラスミドは、多くの場合、適当なホスト細胞内で自律複製することができる二本鎖及び/又は環状DNA分子を意味する。本明細書に記載される方法及び組成物のために提供されるプラスミドは、さまざまな供給業者から入手可能でありかつ/又はその全体が引用により本明細書に組み込まれるMichael Green及びJoseph Sambrookの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第4版、ISBN 978-1-936113-42-2 (2012)において記載されているような、周知のホスト細胞(原核生物及び真核生物ホスト細胞の双方を含む)における使用のための商業的に入手可能なプラスミドを含む。
【0279】
本セクション(セクション5.4.6)に記載されるプラスミドは、他の特徴をさらに含むことができる。いくつかの実施態様において、前記プラスミドは、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域に制限酵素部位(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2に記載されるような制限酵素部位)をさらに含み、ここで、該制限酵素部位は、該第1の逆方向反復、該第2の逆方向反復、及び該第1の逆方向反復と該第2の逆方向反復との間の領域のいずれの中にも存在しない。ある実施態様において、本段落に記載される制限部位における制限酵素での切断は、前記第1の逆方向反復及び/又は前記第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件(例えば、セクション5.3.5に記載されているような条件)下では検出可能なレベルでアニーリングしない一本鎖オーバーハングをもたらす。いくつかの他の実施態様において、前記プラスミドは、本段落に記載される制限部位を認識し切断する制限酵素をコードするオープンリーディングフレームをさらに含む。ある実施態様において、制限酵素部位及び対応する制限酵素は、セクション5.3.4及び5.4.2に記載されている制限酵素部位のいずれか1つ及びその対応する制限酵素とすることができる。さらなる実施態様において、本段落に記載される制限酵素の発現は、プロモーターの制御下にある。いくつかの実施態様において、本段落に記載されるプロモーターは、セクション5.4.3で上述した任意のプロモーターとすることができる。別の実施態様において、記載されたプロモーターは、誘導性プロモーターである。ある実施態様において、誘導性プロモーターは、化学的に誘導性のプロモーターである。さらなる実施態様において、誘導性プロモーターは、その全体が引用により本明細書に組み込まれるJanina Klugeらの文献、Applied Microbiology and Biotechnology、102: 6357-6372 (2018)に記載されているような:テトラサイクリンON(Tet-On)プロモーター、負の誘導性pLacプロモーター、alcA、amyB、bli-3、bphA、catR、cbhl、cre1、exylA、gas、glaA、gla1、mir1、niiA、qa-2、Smxyl、tcu-1、thiA、vvd、xyl1、xyl1、xylP、xyn1、及びZeaRからなる群から選択されるいずれか1つである。
【0280】
同様に、ある実施態様において、プラスミドは、第1の逆方向反復に対して5’でありかつ第2の逆方向反復に対して3’である領域にニッキングエンドヌクレアーゼ用の第5及び第6の制限部位(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2に記載されているようなニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位)をさらに含むことができ、ここで、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の該第5及び第6の制限部位は:a.)向かい合う鎖上にあり;かつb.)切断の一本鎖オーバーハングが前記第1の逆方向反復及び/又は前記第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件(例えば、セクションセクション5.3.5に記載されているような条件)下で検出可能なレベルで分子間又は分子内アニーリングしないような、該切断を前記二本鎖DNA分子内に生じさせる。セクション5.3.4の記載から明らかであるように、ニッキングエンドヌクレアーゼとのインキュベーションは、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第5の制限部位に対応する第5のニック及び該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第6の制限部位に対応する第6のニックをもたらすものである。本開示は、該第5及び第6のニックが、それらの間でさまざまな相対的な位置をとることができることを規定する。一実施態様において、前記第5及び第6のニックは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド離れている。いくつかの実施態様において、第5及び第6のニックの間のssDNAオーバーハングが、前記第1の逆方向反復及び/又は前記第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件下で検出可能なレベルで分子間又は分子内アニーリングしないために、第5及び第6のニックの結果として生じるssDNAオーバーハングは、セクション5.3.3及び5.4.2に記載されるssDNAオーバーハングよりも低い融解温度を有する。ある実施態様において、第5及び第6のニックの結果として生じるssDNAオーバーハングは、セクション5.3.3及び5.4.2に記載されるssDNAオーバーハングよりも短い。別の実施態様において、第5及び第6のニックの結果として生じるssDNAオーバーハングは、セクション5.3.3及び5.4.2に記載されるssDNAオーバーハングよりも低いG-C含量百分率を有する。いくつかの特定の実施態様において、第5及び第6のニックの結果として生じるssDNAオーバーハングは、長さが0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチドである。
【0281】
ある実施態様において、プラスミドは、第1の逆方向反復に対して5’でありかつ第2の逆方向反復に対して3’である領域に、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個、又はそれを超えるニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2に記載されているようなニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位)をさらに含むことができ、ここで、該追加のニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位は:a.)向かい合う鎖上にあり;かつb.)切断の一本鎖オーバーハングが該第1の逆方向反復及び/又は該第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件(例えば、セクション5.3.5に記載されているような条件)下で検出可能なレベルで分子間又は分子内アニーリングしないような、該切断を前記二本鎖DNA分子内に生じさせる。本開示は、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域のニックが、それらの間でさまざまな相対的な位置を有し得ることを規定する。一実施態様において、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域のニックは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド離れている。いくつかの実施態様において、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域の複数のニックの間のssDNAオーバーハングが、該第1の逆方向反復及び/又は該第2の逆方向反復のアニーリングに好適な条件下で検出可能なレベルで分子間又は分子内アニーリングしないために、該第1の逆方向反復に対して5’でありかつ該第2の逆方向反復に対して3’である該領域の該ニックから生ずるssDNAオーバーハングは、セクションセクション5.3.3及び5.4.2に記載されるssDNAオーバーハングよりも低い融解温度を有する。ある実施態様において、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域のニックから生じるssDNAオーバーハングは、セクション5.3.3及び5.4.2に記載されるssDNAオーバーハングよりも短い。別の実施態様において、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域のニックから生ずるssDNAオーバーハングは、セクション5.3.3及び5.4.2に記載されるssDNAオーバーハングよりも低いG-C含量百分率を有する。いくつかの特定の実施態様において、前記第1の逆方向反復に対して5’でありかつ前記第2の逆方向反復に対して3’である領域のニックから生ずるssDNAオーバーハングは、長さが0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチドである。
【0282】
セクション5.3.4及び5.4.2で上述した通り、さまざまな実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び第4の制限部位は、同一の又は異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列とすることができる。同様に、ある実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の該第5及び第6の制限部位は、同一の又は異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列とすることができる。いくつかの実施態様において、セクション3及び5.3.4並びに本セクション5.4に記載されているようなDNA分子に対して提供されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位は、全てを同一のニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列用とすることができる。あるいは、別の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、第4、第5、及び第6番号?の制限部位は、該6つの部位を2つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ標的配列に割り当てるのに考えられる全ての組合せ(例えば、第1の制限部位を第1のニッキングエンドヌクレアーゼにかつ残りを第2のニッキングエンドヌクレアーゼに、第1及び第2の制限部位を第1のニッキングエンドヌクレアーゼにかつ残りを第2のニッキングエンドヌクレアーゼになど)を含む、2つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。さらに、ある実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位は、該6つの部位を3つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ標的配列に割り当てるのに考えられる全ての組合せを含む、3つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。さらに、いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位は、該6つの部位を4つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ標的配列に割り当てるのに考えられる全ての組合せを含む、4つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。さらに、いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位は、該6つの部位を5つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ標的配列に割り当てるのに考えられる全ての組合せを含む、5つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。さらに、いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位は、6つの異なるニッキングエンドヌクレアーゼ用の標的配列である。
【0283】
いくつかの実施態様において、前の段落に記載したニッキングエンドヌクレアーゼ部位のうちの1つ以上は、内在性ニッキングエンドヌクレアーゼの標的配列である。いくつかの特定の実施態様において、前記プラスミドは、前の段落を含む本セクション(セクション5.4.6)に記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位のうちの1つ以上を認識するニッキングエンドヌクレアーゼをコードするORFをさらに含む。特定の一実施態様において、前記プラスミドは、前の段落を含む本セクション(セクション5.4.6)に記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位のうちの2つ以上を認識する2つのニッキングエンドヌクレアーゼをコードする2つのORFをさらに含む。別の具体的な実施態様において、前記プラスミドは、前の段落を含む本セクション(セクション5.4.6)に記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位のうちの3つ以上を認識する3つのニッキングエンドヌクレアーゼをコードする3つのORFをさらに含む。さらに別の具体的な実施態様において、前記プラスミドは、前の段落を含む本セクション(セクション5.4.6)に記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位のうちの4つ以上を認識する4つのニッキングエンドヌクレアーゼをコードする4つのORFをさらに含む。さらに具体的な実施態様において、前記プラスミドは、前の段落を含む本セクション(セクション5.4.6)に記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位のうちの5つ以上を認識する5つのニッキングエンドヌクレアーゼをコードする5つのORFをさらに含む。特定の一実施態様において、前記プラスミドは、それぞれが前の段落を含む本セクション(セクション5.4.6)に記載されるニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の制限部位を認識する6つのニッキングエンドヌクレアーゼをコードする6つのORFをさらに含む。ある実施態様において、本段落に記載される1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼの発現は、プロモーターの制御下にある。いくつかの実施態様において、本段落に記載される1種以上のニッキングエンドヌクレアーゼの発現は、誘導性プロモーターの制御下にある。いくつかの特定の実施態様において、前記誘導性プロモーターは、本セクション(セクション5.4.6)で上述した任意の誘導性プロモーターとすることができる。
【0284】
いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び/又は第4の制限部位を認識する前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、セクション3、5.3.4、及び5.4.2に記載したいずれか1つとすることができる。ある特定の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の前記第1、第2、第3、及び/又は第4の制限部位を認識する前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt. BsmAI; Nt. BtsCI; N. ALwl; N. BstNBI; N. BspD6I; Nb. Mva1269I; Nb. BsrDI; Nt. BtsI; Nt. BsaI; Nt. Bpu10I; Nt. BsmBI; Nb. BbvCI; Nt. BbvCI;又はNt. BspQIである。いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の該第5及び第6の制限部位を認識する前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、セクション3、5.3.4、及び5.4.2に記載したいずれか1つとすることができる。ある特定の実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の該第5及び第6の制限部位を認識する前記ニッキングエンドヌクレアーゼは、Nt. BsmAI; Nt. BtsCI; N. ALwl; N. BstNBI; N. BspD6I; Nb. Mva1269I; Nb. BsrDI; Nt. BtsI; Nt. BsaI; Nt. Bpu10I; Nt. BsmBI; Nb. BbvCI; Nt. BbvCI;又はNt. BspQIである。
【0285】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のためのDNA分子(例えば、セクション3及び本セクション(セクション5.4)で提供されるようなもの)は、直鎖状非環状DNA分子とすることができる。
【0286】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のためのベクターは、本セクション(セクション5.4.6)に記載されるいずれか1つ以上の特徴を、さまざまな順列及び組合せで含む。ある実施態様において、本明細書で提供される方法及び組成物のためのプラスミドは、本セクション(セクション5.4.6)に記載されるいずれか1つ以上の特徴を、さまざまな順列及び組合せで備える。
【0287】
ニッキングエンドヌクレアーゼ及び/又はニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を用いて本セクション(セクションセクション5.4.6)で記載したさまざまな実施態様は、さらに、ニッキングエンドヌクレアーゼをプログラム可能なニッキング酵素で置き換え、かつ制限部位をプログラム可能なニッキング酵素用の標的部位で置き換えて提供される。本段落及び本セクション(セクション5.4.3)のためのプログラム可能なニッキング酵素及びそれらの標的部位は、セクション5.3.4で提供されている。
【0288】
(5.4.7 ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を4つ未満有するDNA分子及びプログラム可能なニッキング酵素用の標的部位を4つ未満有するDNA分子)
追加の一態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位及び制限酵素用の第2の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位よりも発現カセットに対して遠位であり、かつ該制限酵素用の第2の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0289】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位及び制限酵素用の第2の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位よりも発現カセットに対して遠位であり、かつ該制限酵素用の第2の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0290】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位及び制限酵素用の第2の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位よりも発現カセットに対して遠位であり、かつ該制限酵素用の第2の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0291】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位及び制限酵素用の第2の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位よりも発現カセットに対して遠位であり、かつ該制限酵素用の第2の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0292】
さらに、一態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0293】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0294】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0295】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1及び第2の制限部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第3の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0296】
さらに、一態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離するとニッキングが、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2及び第3の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0297】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)GDEをコードする発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2及び第3の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0298】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)GDEをコードする発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2及び第3の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0299】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)GDEをコードする発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、ニッキングが、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第2及び第3の制限部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該ニッキングエンドヌクレアーゼ用の第1の制限部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0300】
追加の一態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、該プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素による切断が、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)GDEをコードする発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2の標的部位及び制限酵素用の第2の制限部位が、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、該プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素による切断が、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位よりも発現カセットに対して遠位であり、かつ該制限酵素用の第2の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0301】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)をコードする発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2の標的部位及び制限酵素用の第2の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位よりも発現カセットに対して遠位であり、かつ該制限酵素用の第2の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0302】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2の標的部位及び制限酵素用の第2の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位よりも発現カセットに対して遠位であり、かつ該制限酵素用の第2の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0303】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2の標的部位及び制限酵素用の第2の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位よりも発現カセットに対して遠位であり、かつ該制限酵素用の第2の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0304】
さらに、一態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1及び第2の標的部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0305】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離するとプログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1及び第2の標的部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0306】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1及び第2の標的部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0307】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離するとプログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1及び第2の標的部位が、該第1の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第2の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第3の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0308】
さらに、一態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2及び第3の標的部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0309】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2及び第3の標的部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0310】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むトップ鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第2の逆方向反復を含むボトム鎖5’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2及び第3の標的部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0311】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:i)第1の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第1の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキング及び制限酵素での切断が、該第1の逆方向反復を含むボトム鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位及び制限酵素用の第1の制限部位が、向かい合う末端にかつ該第1の逆方向反復の近くに配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第1の逆方向反復;ii)発現カセット(例えば、セクション5.4.3に記載);及びiii)第2の逆方向反復(例えば、セクション5.4.1に記載)であって、該第2の逆方向反復のボトム鎖からトップ鎖が分離すると、プログラム可能なニッキング酵素によるニッキングが、該第2の逆方向反復を含むトップ鎖3’オーバーハングをもたらすように、プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第2及び第3の標的部位が、該第2の逆方向反復の近くの向かい合う鎖上に配置されている(例えば、セクション5.3.3、5.3.4、及び5.4.2に記載)、前記第2の逆方向反復を含み、該制限酵素用の第1の制限部位が、該プログラム可能なニッキング酵素のためのガイド核酸用の第1の標的部位よりも発現カセットに対して遠位である、二本鎖DNA分子である。
【0312】
本セクション(セクション5.4.7)で提供されるDNA分子は、本セクション(セクション5.4.7)に記載されるさまざまな特徴を備えるか又はさまざまな実施態様を有し、当該特徴及び実施態様は、以下のさまざまなサブセクションにさらに記載される。即ち、第1の逆方向反復及び/又は第2の逆方向反復を含む逆方向反復についての実施態様が、セクション5.4.1に記載され、制限酵素、ニッキングエンドヌクレアーゼ、及びそれらのそれぞれの制限部位についての実施態様が、セクション5.4.2に記載され、プログラム可能なニッキング酵素及びそれらの標的部位についての実施態様が、セクション5.3.4に記載され、発現カセットについての実施態様が、セクション5.4.3に記載され、プラスミド及びベクターについての実施態様が、セクション5.4.6に記載される。従って、本開示は、本明細書に記載されるDNA分子のさまざまな実施態様及び該DNA分子の特徴の実施態様の任意の順列及び組合せを含むDNA分子を提供する。
【0313】
ニッキングエンドヌクレアーゼを用いて本セクション(セクション5.4.7)に記載されるさまざまな実施態様は、プログラム可能なニッキング酵素と交換可能であり、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位は、プログラム可能なニッキング酵素用の標的部位と交換可能である。従って、ニッキングエンドヌクレアーゼの1つ以上の要素をプログラム可能なニッキング酵素と置き換えること及び/又はニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位の1つ以上の要素をプログラム可能なニッキング酵素用の標的部位と置き換えることによってもたらされる任意の組合せの追加の実施態様が、本明細書において本セクション(セクション5.4.7)で提供される。本段落及び本セクション(セクション5.4.3)のためのプログラム可能なニッキング酵素及びそれらの標的部位は、セクション5.3.4で提供されている。
【0314】
(5.4.8 単離DNA分子)
本明細書で提供される方法及びDNA分子の利点の1つは、本方法で製造され本明細書で提供される単離DNA分子の純度である。これは、本明細書で提供されるDNA分子が、エキソヌクレアーゼ又は他のDNA消化酵素に対して抵抗性があり、従って、セクション5.3.6に記載されているように、そのようなエキソヌクレアーゼ又はDNA消化酵素で処理して、そのような処理に影響を受けやすいDNA夾雑物を除去することができるためである。セクション5.4の見出しとセクション5.4.1の見出しとの間の段落で既に記載されているように、セクション3,5.2、5.4、5.5、及び6などで本明細書で提供されるDNA分子は、さまざまな純度の単離DNA分子とすることができる。さらに、セクション3,5.2、5.4、5.5、及び6などにおいて本明細書で提供されるDNA分子を、ある種の一般的なDNA夾雑物を含まない、ある種の特定のDNA夾雑物を含まない、又はある種の一般的なDNA夾雑物及びある種の特定のDNA夾雑物の双方を含まないものとすることができることを本開示は規定し、また、当業者はそのことを理解するであろう。
【0315】
従って、一実施態様において、単離DNA分子は、該DNA分子の断片を含まない。別の実施態様において、単離DNA分子は、該DNA分子の断片ではない核酸夾雑物を含まない。さらなる実施態様において、単離DNA分子は、バキュロウイルスのDNAを含まない。一実施態様において、単離DNA分子は、該DNA分子の断片を含まず、かつ該DNA分子の断片ではない核酸夾雑物を含まない。別の実施態様において、単離DNA分子は、該DNA分子の断片を含まず、かつバキュロウイルスのDNAを含まない。さらなる実施態様において、単離DNA分子は、バキュロウイルスのDNAを含まず、かつ該DNA分子の断片ではない核酸夾雑物を含まない。さらに別の実施態様において、単離DNA分子は、該DNA分子の断片を含まず、バキュロウイルスのDNAを含まず、かつ該DNA分子の断片ではない核酸夾雑物を含まない。
【0316】
具体的には、一実施態様において、前記DNA分子の断片は、前記単離DNA分子の1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、6%以下、7%以下、8%以下、9%以下、10%以下、11%以下、12%以下、13%以下、14%以下、15%以下、16%以下、17%以下、18%以下、19%以下、20%以下、21%以下、22%以下、23%以下、24%以下、25%以下、26%以下、27%以下、28%以下、29%以下、30%以下、31%以下、32%以下、33%以下、34%以下、35%以下、36%以下、37%以下、38%以下、39%以下、40%以下、41%以下、42%以下、43%以下、44%以下、45%以下、46%以下、47%以下、48%以下、49%以下、又は50%以下である。別の実施態様において、前記該DNA分子の断片は、前記単離DNA分子の1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、10%未満、11%未満、12%未満、13%未満、14%未満、15%未満、16%未満、17%未満、18%未満、19%未満、20%未満、21%未満、22%未満、23%未満、24%未満、25%未満、26%未満、27%未満、28%未満、29%未満、30%未満、31%未満、32%未満、33%未満、34%未満、35%未満、36%未満、37%未満、38%未満、39%未満、40%未満、41%未満、42%未満、43%未満、44%未満、45%未満、46%未満、47%未満、48%未満、49%未満、又は50%未満である。さらに別の実施態様において、前記該DNA分子の断片は、前記単離DNA分子の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%又は約50%である。
【0317】
さらに、一実施態様において、前記DNA分子の断片ではない核酸夾雑物は、前記単離DNA分子の1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、6%以下、7%以下、8%以下、9%以下、10%以下、11%以下、12%以下、13%以下、14%以下、15%以下、16%以下、17%以下、18%以下、19%以下、20%以下、21%以下、22%以下、23%以下、24%以下、25%以下、26%以下、27%以下、28%以下、29%以下、30%以下、31%以下、32%以下、33%以下、34%以下、35%以下、36%以下、37%以下、38%以下、39%以下、40%以下、41%以下、42%以下、43%以下、44%以下、45%以下、46%以下、47%以下、48%以下、49%以下、又は50%以下である。別の実施態様において、前記該DNA分子の断片ではない核酸夾雑物は、前記単離DNA分子の1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、10%未満、11%未満、12%未満、13%未満、14%未満、15%未満、16%未満、17%未満、18%未満、19%未満、20%未満、21%未満、22%未満、23%未満、24%未満、25%未満、26%未満、27%未満、28%未満、29%未満、30%未満、31%未満、32%未満、33%未満、34%未満、35%未満、36%未満、37%未満、38%未満、39%未満、40%未満、41%未満、42%未満、43%未満、44%未満、45%未満、46%未満、47%未満、48%未満、49%未満、又は50%未満である。さらに別の実施態様において、前記該DNA分子の断片ではない核酸夾雑物は、前記単離DNA分子の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%又は約50%である。
【0318】
加えて、一実施態様において、前記バキュロウイルスのDNAは、前記単離DNA分子の1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、6%以下、7%以下、8%以下、9%以下、10%以下、11%以下、12%以下、13%以下、14%以下、15%以下、16%以下、17%以下、18%以下、19%以下、20%以下、21%以下、22%以下、23%以下、24%以下、25%以下、26%以下、27%以下、28%以下、29%以下、30%以下、31%以下、32%以下、33%以下、34%以下、35%以下、36%以下、37%以下、38%以下、39%以下、40%以下、41%以下、42%以下、43%以下、44%以下、45%以下、46%以下、47%以下、48%以下、49%以下、又は50%以下である。別の実施態様において、前記バキュロウイルスのDNAは、前記単離DNA分子の1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、10%未満、11%未満、12%未満、13%未満、14%未満、15%未満、16%未満、17%未満、18%未満、19%未満、20%未満、21%未満、22%未満、23%未満、24%未満、25%未満、26%未満、27%未満、28%未満、29%未満、30%未満、31%未満、32%未満、33%未満、34%未満、35%未満、36%未満、37%未満、38%未満、39%未満、40%未満、41%未満、42%未満、43%未満、44%未満、45%未満、46%未満、47%未満、48%未満、49%未満、又は50%未満である。さらに別の実施態様において、前記バキュロウイルスのDNAは、前記単離DNA分子の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%又は約50%である。
【0319】
本セクション5.4.8の前の段落に記載されているような特定の夾雑物(例えば、前記DNA分子の断片、該DNA分子の断片ではない核酸夾雑物、及び/又はバキュロウイルスのDNA)に関する純度がさまざまである単離本明細書で提供されるDNA分子のさまざまな実施態様は、相互に排他的ではなく、従って、本セクション5.4.8.の前の段落のリストで提供される任意の実施態様を選択し組み合わせることによってさまざまな組合せで組み合わせることができる。さらに、本セクション5.4.8で提供される単離DNA分子及びセクション5.4の見出しとセクション5.4.1の見出しとの間の段落のものを、そこに記載されるリストに提供されている任意の適当な実施態様を選択して組み合わせることによってさまざまな組合せで組み合わせることもできる。
【0320】
(5.5 ヘアピン末端DNA分子)
本開示は、本セクション(セクション5.5)のヘアピン末端DNA分子が、セクション5.4で提供されるDNA分子に対して、セクション5.2(セクション5.3.3、5.3.4、及び5.3.5を含む)に記載される方法の工程を行うことによって製造することができることを規定する。従って、本セクション(セクション5.5)のヘアピン末端DNA分子は、(1)セクション5.4.1に及び本セクション(セクション5.5)に記載されているようなヘアピンを形成することができるIR又はITR、セクション5.4.1に及び本セクション(セクション5.5)に記載されているようなIR又はITRの特定の配列、起源、及び素性、5.4.3に記載されているような発現カセット、セクション5.4.2、5.3.4、及び5.4.7に記載されているようなニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素用の制限部位、並びにセクション5.3.4に記載されるようなプログラム可能なニッキング酵素用の標的部位を含む、セクション3及び5.4で提供されるDNA分子のさまざまな特徴を備えることができ、かつ/又は(2)セクション5.4.5に記載されるようなRABS及び/又はTRS配列を欠く。従って、本開示は、本セクション(セクション5.5)のヘアピン末端DNA分子が、(1)セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載されているようなヘアピンを形成することができるIR又はITR、5.4.3に記載されているような発現カセット、セクション5.4.2、5.3.4、及び5.4.7に記載されているようなニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素用の制限部位、セクション5.3.4に記載されるようなプログラム可能なニッキング酵素用の標的部位、及び本セクション(セクション5.5)で提供されるベクターの追加の特徴の実施態様の任意の組合せを含むことができ、かつ/又は(2)セクション5.4.5に記載されるようなRABS及び/又はTRS配列を欠くことを規定する。
【0321】
記載から明らかであるように、本セクション(セクション5.5)で提供されるヘアピン末端DNA分子内のITR又はヘアピン化ITRを、上でセクション3及び5.4.1に提供されるITR又はIRから、例えば、セクション3、5.3.3、5.3.4、及び5.3.5に記載される方法の工程を行って形成することができる。従って、いくつかの実施態様において、本セクション(セクション5.5)で提供されるヘアピン末端DNA分子内の2つのITR又は2つのヘアピン化ITRは、セクション3及び5.4.1で提供されるIR又はITRの任意の実施態様及び本セクション(セクション5.5)で提供される追加の実施態様を、任意の組合せで含むことができる。
【0322】
一態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:a.)第1のヘアピン化逆方向反復(例えば、セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載);b.)ボトム鎖のニック(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2、及び本セクション(セクション5.5)に記載);c.)発現カセット(例えば、5.4.3及び本セクション(セクション5.5)に記載);d.)該ボトム鎖のニック(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2、及び本セクション(セクション5.5)に記載);及びe.)第2のヘアピン化逆方向反復(例えば、セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載)を含む二本鎖DNA分子である。
【0323】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:a.)第1のヘアピン化逆方向反復(例えば、セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載);b.)該トップ鎖のニック(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2、及び本セクション(セクション5.5)に記載);c.)発現カセット(例えば、5.4.3及び本セクション(セクション5.5)に記載);d.)該トップ鎖のニック(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2、及び本セクション(セクション5.5)に記載);及びe.)第2のヘアピン化逆方向反復(例えば、セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載)を含む二本鎖DNA分子である。
【0324】
さらに別の態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:a.)第1のヘアピン化逆方向反復(例えば、セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載);b.)ボトム鎖のニック(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2、及び本セクション(セクション5.5)に記載);c.)発現カセット(例えば、5.4.3及び本セクション(セクション5.5)に記載);d.)該トップ鎖のニック(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2、及び本セクション(セクション5.5)に記載);及びe.)第2のヘアピン化逆方向反復(例えば、セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載)を含む二本鎖DNA分子である。
【0325】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、トップ鎖の5’から3’方向に:a.)第1のヘアピン化逆方向反復(例えば、セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載);b.)該トップ鎖のニック(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2、及び本セクション(セクション5.5)に記載);c.)発現カセット(例えば、5.4.3及び本セクション(セクション5.5)に記載);d.)ボトム鎖のニック(例えば、セクション5.3.4及び5.4.2、及び本セクション(セクション5.5)に記載);及びe.)第2のヘアピン化逆方向反復(例えば、セクション5.4.1及び本セクション(セクション5.5)に記載)を含む二本鎖DNA分子である。
【0326】
二次構造は、塩基対スタッキング、ステム、ヘアピン、バルジ、内部ループ、及び多分岐ループを含むコンホメーション(例えば、ドメイン)に基づいて形成される。IRのドメインレベルでの記述は、具体的なヌクレオチド配列よりもむしろドメインの観点で鎖及び形成される複合体を表現する。配列レベルでは、各ドメインが、特定のヌクレオチド配列又はモチーフに割り当てられ、その相補配列の配列が、Watson-Crick塩基対形成によって決定される。これは、G-Tゆらぎ塩基対を含む相補的なヌクレオチドの全てのペアの間の結合の全範囲にわたる。結合した(例えば、塩基対形成した)及び結合していないドメインの総体的なセットが、単分子の複合体を形成し、かつさまざまな二次構造を示す。いくつかの実施態様において、ヘアピンは、塩基対をなすステム及び対不形成塩基の小ループを有することができる。ある実施態様において、ポリヌクレオチド配列において織り交ぜられた非回文構造のポリヌクレオチドセクションの存在は、バルジとして知られる対不形成ヌクレオチドに繋がることがある。バルジは、1つ以上のヌクレオチドを有することができ、かつそれらの場所:トップ鎖(バルジ)、双方のストランド(内部ループ)、又は接合部に応じて種々の種類に分類することができる。これらの塩基対の集合が、DNAの二次構造を構成し、これは、その三次元的構造に現れる。
【0327】
本明細書で提供されるDNA分子用のドメインレベルでの説明も提供して、具体的なヌクレオチド配列よりはむしろドメインの観点で複数のストランド及びそれらの複合体を述べる。いくつかの実施態様において、相互作用性一本鎖DNA鎖のドメイン(例えば、配列モチーフ)は、他のDNA鎖と相互作用することができる一本鎖レベルで特定の二次構造を示すことができ、ある場合には、第1の鎖が、第2の鎖上の相補的ドメインに結合して二本鎖を形成する場合にハイブリッド形成した構造をとることができる。新たな複合体を生じさせる異なるDNA鎖の相互作用又は二次構造の変化を、「反応」とみることができる。追加の単分子及び二分子反応も、配列レベルで可能である。不出来な配列設計が、本明細書で提供される1種以上のDNA分子を含む系の意図される反応と干渉する配列レベルの構造又は相互作用(例えば、発現カセット内の相補性(complimentary)の複数のドメイン)を招くことがある。望ましくない相互作用は、設計によって回避することができ、信頼できる予測可能な二次構造形成をもたらす。
【0328】
本開示は、DNAの二次構造に繋がる根底にある力が、熱力学的法則の根底にある疎水性相互作用に支配されること、及び全体的なコンホメーションが、物理化学的条件に影響を受けることがあることを規定する。平衡状態を決定する因子の例示的なリストとしては、溶媒の種類、化学薬品の密集度、塩濃度、pH、及び温度が挙げられる。実験に関する文献から導かれる自由エネルギー変化パラメーター及びエンタルピー変化パラメーターが、コンホメーション安定性の予測を可能にするものの、IR配列から形成されるヘアピンの総合的な三次元構造は、統計力学では通常のことであるが、単に1つのコンホメーションのみではなく分子のコンホメーションの総体に対応する。物理的又は化学的な条件(例えば、塩、pH、又は温度)が変化する(permutated)に従って、主たるコンホメーションは変化することができる。
【0329】
「ステムドメイン」又は「ステム」は、ワトソン・クリック塩基対を形成するものであるオーバーハング鎖の自己相補的なヌクレオチド配列を意味する。ステムは、主に、DNA対の2つの逆平行区間の間に形成されるワトソン・クリック塩基対を含み、右巻きのらせんであり得る。一実施態様において、ステムは、回文配列内に自己相補的なDNA配列の区間を含む。
【0330】
「主ステムドメイン」又は「主ステム」は、DNA分子の発現カセット又は非ITR配列に最も近いITRの自己相補的な又は反転相補的なヌクレオチド配列の一部を意味する。一実施態様において、主ステムドメインは、本明細書で提供されるDNA分子の末端を形成し、各ITRと隣接している非ITR配列に共有結合的に連結された回文配列の自己相補的な区間である。主ステムは、IR配列の始め及び終わりの双方を包含する。ある実施態様において、主ステムは、長さが1から100bp以上にわたる。主ステム領域の長さは、変性/再生の動力学に対する効果を有する。いくつかの特定の実施態様において、主ステム領域は、熱安定性を確保するために少なくとも約4及び25ヌクレオチドを有する。別の具体的な実施態様において、主ステム領域は、熱安定性を確保するために約4及び25ヌクレオチドを有する。一方で、逆方向反復ドメインは、生理的条件でおおよその3次元構造を維持するのに十分な任意の長さのものであり得る。
【0331】
「ループ」又は「ループドメイン」は、転換点ではなくかつステム内にはないIR又はITRにおける対不形成ヌクレオチドの領域を意味する。いくつかの実施態様において、ループドメインは、IR構造の頂点にみつかる。ループドメインは、DNA鎖の局所的な方向性を、元のステムの2本の逆平行鎖をもたらすように反転させる領域として役立ち得る。立体的反発のために、ある実施態様において、ループは、DNAヘアピンにターンを作る最低で2つのヌクレオチドを含む。別の実施態様において、ループは、ヌクレオチドを4つ以上含む。さらに別の実施態様において、ループは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、又は少なくとも30ヌクレオチドを含む。いくつかのさらなる実施態様において、ループは、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29又は約30ヌクレオチドを含む。ループは、ステムの自己相補的配列に続くものであり、さらなるヌクレオチドをステムドメインへと接続するように働く。いくつかの実施態様において、ループは、ループ配列内の他のヌクレオチド又はITRの他のエレメントと連続した二本鎖構造を形成しないオリゴヌクレオチドの配列を含む(例えば、ループは、可撓性の一本鎖形態のままである)。一実施態様において、ループ配列内の他のヌクレオチドと二本鎖を形成しないループ配列は、一連の同一の塩基(例えば、AAAAAAAA、CCCCCCCC、GGGGGGG、又はTTTTTTTT)である。一実施態様において、ループは、2~30ヌクレオチドを含有する。さらなる実施態様において、ループドメインは、2~15ヌクレオチドを含有する。なおさらなる実施態様において、ループは、ヌクレオチドの混合物を含む。
【0332】
本明細書で使用される、「ヘアピン」という用語は、IR又はITR配列から形成される、任意のDNA構造及び二次又は三次構造を含む全体的なDNA構造を意味する。本明細書で使用される、「ヘアピン化」DNA分子は、1つ以上のヘアピンが、DNA分子内に形成されている、DNA分子を意味する。一実施態様において、ヘアピンは、相補的なステム及びループを含む。最も単純な形態のヘアピンは、相補的なステム及びループからなる。ステム及びループを包含する構造は、「ステムループ(stem-loop)」又は「ステムループ(stem loop)」又は「SL」と呼ばれる。別の実施態様において、ヘアピンは、相補的なステム及びループからなる。「分岐ヘアピン」は、分岐構造を形成する複数のステムループを有するヘアピンのサブセットを意味する(例えば、図1に示されるように)。ヘアピンを形成した後のIR又はITRを、ヘアピン化ITR又はIRと呼ぶこともできる。「ヘアピン末端」DNA分子は、DNA分子の一方の末端にヘアピンを形成しているか、又はDNA分子の2つの末端のそれぞれにヘアピンを形成しているDNA分子を意味する。
【0333】
「転換点」又は「頂点」は、ITRの空間的な末端での対不形成ヌクレオチドの領域を意味する。転換点は、DNA鎖の全体的な方向性を、元のステムの2本の逆平行鎖をもたらすように反転させる領域として働く。また、転換点は、IR又はITR配列が、逆方向となるか又は逆相補的となる点を示す。
【0334】
いくつかの実施態様において、主ステムドメインに続くITRの一部は、規則的な二本鎖DNAとは対照的に、それ自体の上にフォールディングする場合に、ゆらぎ及びミスマッチを含む非ワトソン・クリックベースの構造的要素並びにバルジ及び内部ループなどの構造的な欠陥又は不完全性を形成することができるヌクレオチド配列をコードすることができる(例えば、図1を参照されたい)。「バルジ」は、一方の鎖に対不形成ヌクレオチドを1つ以上含み、「内部ループ」は、トップ鎖及びボトム鎖の双方に対不形成ヌクレオチドを1つ以上含む。対称的な内部ループは、らせんをねじれさせたり折り曲げたりできるバルジ及び非対称の内部ループよりも、らせんをゆがめる傾向が低い。いくつかの実施態様において、ステム内の対不形成ヌクレオチドは、追加の熱力学的安定性及び機能的多様性に役立つ、非標準的な水素結合及びスタッキングなどの多様な構造的相互作用で結合することができる。理論にとらわれるものではないが、IRステム及びループの構造的な多様性が、複雑な二次構造及び機能的多様性に繋がると考えられる。
【0335】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子のヘアピンは、主ステムを含む。一実施態様において、ヘアピン末端DNA分子のヘアピンは、1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50個のステムを含む。別の実施態様において、ヘアピン末端DNA分子のヘアピンは、1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50個のループを含む。さらに別の実施態様において、ヘアピン末端DNA分子のヘアピンは、1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50個の内部ループを含む。さらなる実施態様において、ヘアピン末端DNA分子のヘアピンは、1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50個のバルジを含む。一実施態様において、ヘアピン末端DNA分子のヘアピンは、1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50個の分岐ヘアピンを含む。別の実施態様において、ヘアピン末端DNA分子のヘアピンは、1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50個の頂点を含む。さらなる実施態様において、ヘアピン末端DNA分子のヘアピンは、任意の数のステム、分岐ヘアピン、ループ、バルジ、頂点、及び/又は内部ループを、任意の組合せで含む。
【0336】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内のヘアピン構造は、対称なオーバーハングによって形成される。対称なオーバーハングを得るためには、改変された5’位置(複数可)が改変された3’位置(複数可)と塩基対(複数可)を形成することができるように、5’ステム領域での改変が、ステム領域内の対応する位置でのコグネート3’改変を必要とする。対称なオーバーハングを形成させるそのような改変は、出願の時点の最新技術と組み合わせて本開示に記載されているように行うことができる。例えば、wt AAV2 ITRに関して、位置23でのAの挿入によってBstNBIニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を作製することは、位置105でのTの挿入を必要とする(例えば、配列番号:162)。
【0337】
いくつかの実施態様において、ヘアピン化ITR対由来の5’及び3’ヘアピン化ITRは、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の逆平行制限部位を内部に有するように異なる反転相補的なヌクレオチド配列を有することができる(例えば、ニッキングが、ボトム鎖5’オーバーハングをもたらすような5’ITR及びニッキングが、ボトム鎖3’オーバーハングをもたらすような3’ITR)が、双方のITRが同一の全体的な3D形状をもたらす変異を有するような方式で同一の三次元的空間的構造を依然として有する。
【0338】
いくつかの実施態様において、本明細書における使用のためのヘアピン化ITRは、以下:主ステムドメイン、ステム、分岐ヘアピン、ループ、バルジ、又は内部ループから選択される領域のうちのいずれか1つ以上において少なくとも1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチドの改変(例えば、欠失、置換、又は付加)を含むことができる。特定の一実施態様において、右のヘアピン化ITR内のヌクレオチドを、AからG、C、もしくはTへ置換したり、欠失させたり、1つ以上のヌクレオチドを付加したりすることができ;左のヘアピン化ITR内のヌクレオチドを、TからG、C、又はAへと変更したり、欠失させたり、1つ以上のヌクレオチドを付加したりすることができる。
【0339】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のヘアピン化ITRは、主ステムであって、主ステムドメインがより短くなり、かつより低いフォールディングの自由エネルギーを有するように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40個又はそれを超える相補的な塩基対が、該主ステムドメインの各々から除去されている、前記主ステムを含むことができる。簡単に述べると、そのような実施態様においては、主ステムドメインのその部分の塩基が除去される場合には、主ステムドメイン内の相補的な塩基対も除去され、それによって、主ステムドメイン全体を短くする。
【0340】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のヘアピン化ITRは、主ステムであって、主ステムドメインがより長くなり、より高いフォールディングの自由エネルギーを有するように、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40個又はそれを超える相補的な塩基対が、主ステムドメインの各々から導入されている、前記主ステムを含むことができる。簡単に述べると、そのような実施態様においては、塩基が主ステムドメインのその部分に導入される場合、主ステムドメイン内の相補的な塩基対も導入され、それによって、主ステムドメイン全体を長くする。
【0341】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子のヘアピン化ITRは、主ステムであって、主ステムドメインが、よりG/Cリッチとなり、かつより高いフォールディングの自由エネルギーを有するように、主ステムドメインの各々の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40個又はそれを超える相補的な塩基対が、A又はTからG又はCへと置換されている、前記主ステムを含むことができる。簡単に述べると、そのような実施態様においては、主ステムドメインのその部分で塩基が置換される場合(例えば、TからG)、主ステムドメイン内の相補的な塩基対も置換され(例えば、AからC)、それによって、主ステムドメイン全体におけるG/C含量を増加させる。
【0342】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内のヘアピン化ITR配列は、全wt ITR配列を依然としてベクター内に存在させながら、全長WTウイルスITR配列と比較して1~40ヌクレオチドの欠失を有することができる。例えば、AAV2 ITRなどの対称のITRにおいて、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位がそれぞれ、頂点から25塩基離れている場合、オーバーハングのニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位の後の部分は、それが、セクション5.3.3及び5.3.4に記載されているようなニッキングエンドヌクレアーゼ(又はニッキングエンドヌクレアーゼ及び制限酵素)とのインキュベーション及び変性後にDNA分子から除去されるものであるために、wt IR配列である必要はない。ある実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子内のヘアピン化ITR配列は、全wt ITR配列を依然としてベクター内に存在させながら、全長WTウイルスITR配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチドの欠失を有することができる。
【0343】
いくつかの実施態様において、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位は、ITRステム領域内に存在する単離ヌクレオチド配列の予測融解温度に基づいて選択される。いくつかの実施態様において、予測される融解温度は、40~95℃である。さらなる実施態様は、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位及びについてのものであり、融解温度を考慮した実施態様が、上記セクションセクション5.3.3、5.3.4、5.3.5、及び5.4.2に記載されている。
【0344】
一実施態様において、温度を約4℃に維持した場合にヘアピンが生じるように、本明細書で提供されるDNA分子内のヘアピン化ITRのステム領域を包含するヌクレオチド配列の長さ及びGC含量が、欠失、挿入、及び/又は置換によってさらに改変される。例えば、構造的要素のヌクレオチド配列を、ウイルスITRの野生型配列と比較して、改変することができる。一実施態様において、ステムの長さ及びGC含量は、温度を全ITRの融解温度よりも約10℃以上低い温度に維持した場合にヘアピンが生じるように設計される。ヘアピンの融解温度は、GC含量、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位と主ステムに最も近い接合部(例えば、図1の4番)との間の距離、又は配列ミスマッチもしくはループを変化させることによって設計することができ、その結果、融解温度は、ヘアピン化ITRが50℃超でもフォールディングされたままとなることを可能とし、安定な保管を確保するのに十分に高くなる。ステムの実際の最適な長さは、ITRの配列並びにITRの分岐、ループ、及びアームなどのマイクロドメインに応じて異なり得るものであり、これは、最新技術との組合せで本開示に従い決定することができる。
【0345】
いくつかの実施態様において、ヘアピン化ITRのステム領域は、クラスIIニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位(例えば、5’の下流のNNNN)をコードする。いくつかの実施態様において、ステム領域は、クラスIIニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位を含まない。
【0346】
いくつかの実施態様において、ヘアピン化ITRのステム領域は、クラスIニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位をコードする。いくつかの実施態様において、ヘアピン化ITRのステム領域は、クラスIII、IV、又はVニッキングエンドヌクレアーゼ用の制限部位をコードする。図4は、ヘアピンの主ステム内のエンドヌクレアーゼ用の制限部位のさまざまな例示的な配置を表す。
【0347】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の発現カセットは、セクション5.4.3に記載した発現カセットの任意の実施態様とすることができる。ある実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内のITRは、セクション5.4.1に記載したIR又はITRの任意の実施態様とすることができる。さらなる実施態様において、ITR、発現カセット、及びニッキングエンドヌクレアーゼ又は制限酵素用の制限部位の間の配置は、セクション5.3.3、5.3.4、5.3.5、5.4.1、5.4.2、5.4.3、及び5.4.7に記載した任意の配置とすることができる。
【0348】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNAは、3’ITR及び5’ITRに共有結合的に連結されたトップ鎖を含み、該ITRがフォールディングされると、発現カセットが、2つのニック(第1及び第2のニック)の間に存在するように、ボトム鎖が、該ボトム鎖の両末端で該第1のニックと該第2のニックと隣接し、ここで、該第1のニックは、トップ鎖5’ITRヘアピンの結果として、該ボトム鎖の3’末端と該トップ鎖の並置された5’末端との間に形成され、かつ該第2のニックは、トップ鎖3’ITRヘアピンの結果として該ボトム鎖の5’末端と該トップ鎖の並置された3’末端との間に形成される。
【0349】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNAは、3’ITR及び5’ITRに共有結合的に連結されたボトム鎖を含み、該ITRがフォールディングされると、発現カセットが、2つのニック(第1のニック及び第2のニック)の間に存在するように、トップ鎖が、該トップ鎖の両末端で該第1のニックと該第2のニックと隣接し、ここで、該第1のニックは、ボトム鎖3’ITRヘアピンの結果として該トップ鎖の5’末端と該ボトム鎖の並置された3’末端との間に形成され、かつ該第2のニックは、ボトム鎖3’ITRヘアピンの結果として該トップ鎖の3’末端と該ボトム鎖の並置された5’末端との間に形成される。
【0350】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNAは、5’ITRに共有結合的に連結されたトップ鎖及び5’ITRに共有結合的に連結されたボトム鎖を含み、該ITRがフォールディングされると、第1のニックが、トップ鎖5’ITRヘアピンの結果としてボトム鎖の3’末端と該トップ鎖の並置された5’末端との間でボトム鎖に隣接して形成され、かつ第2のニックが、ボトム鎖5’ITRヘアピンの結果として該トップ鎖の3’末端と該ボトム鎖の並置された5’末端との間で該トップ鎖に隣接して形成され、発現カセットが、該第1及び第2のニックと隣接するようになっている。
【0351】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNAは、3’ITRに共有結合的に連結されたトップ鎖及び3’ITRに共有結合的に連結されたボトム鎖を含み、該ITRがフォールディングされると、第1のニックが、ボトム鎖3’ITRヘアピンの結果として該トップ鎖の5’末端と該ボトム鎖の並置された3’末端との間で該トップ鎖に隣接して形成され、かつ第2のニックが、トップ鎖3’ITRヘアピンの結果として該ボトム鎖の5’末端と該トップ鎖の並置された3’末端との間でボトム鎖に隣接して形成され、発現カセットが、該第1及び第2のニックと隣接するようになっている。
【0352】
いくつかの実施態様において、本セクション(セクション5.5)及び前4つの段落に記載したような2つのニックを含むヘアピン末端DNAをライゲーションして、ニックの両側に位置する2つのヌクレオチドの間に共有結合を形成させることによって該ニックを修復することができる。いくつかの実施態様において、本セクション(セクション5.5)及び前の4つの段落に記載した2つのニックのうちの一方を変性させたときにDNA分子が直鎖状一本鎖DNA分子となるように、ライゲーションして修復することができる。いくつかの実施態様において、本セクション(セクション5.5)及び前の4つの段落に記載した2つのニックを、変性させたときに、DNA分子が環状一本鎖DNA分子となるように、ライゲーションして修復することができる。
【0353】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の2つの両側に位置するITR対は、同一のDNA配列を含む。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の2つの両側に位置するITR対は、異なるDNA配列を含む。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内のITRのうちの一方が、同一のヘアピン末端DNA分子内の他方のITRと比較して、欠失、挿入、及び/又は置換によって改変されている。別の実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の第1のITR及び第2のITRは双方とも、例えば、欠失、挿入、及び/又は置換によって改変されている。さらに別の実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の第1のITR及び第2のITRは、異なるDNA配列を含み、かつ双方とも改変されている。さらなる実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の第1のITR及び第2のITRは、異なるDNA配列を含み、かつ双方とも改変されており、ここで、該2つのITRに対する改変は、異なったものである。なおさらなる実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の第1のITR及び第2のITRは、異なるDNA配列を含み、かつ双方とも改変されており、ここで、該2つのITRに対する改変は、同一である。一実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の第1のITR及び第2のITRは、同一のDNA配列を含み、かつ双方とも改変されており、ここで、該2つのITRに対する改変は、異なったものである。一実施態様において、ヘアピン末端DNA分子内の第1のITR及び第2のITRは、同一のDNA配列を含み、かつ双方とも改変されており、ここで、該2つのITRに対する改変は、同一である。一実施態様において、ヘアピン末端DNA内の第1のITR及び第2のITRは双方とも、改変ITRであり、かつ該2つの改変ITRは、同一ではない。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、非対称である2つのITRを含み、ここで、この非対称性は、他方のITRには反映されていない一方のITRにおける任意の変化の結果とすることができる。ある実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、非対称である2つのITRを含み、ここで、該ITRは、何らかの点で互いに異なる。ある実施態様において、欠失、挿入、及び/又は置換を含む本段落で提供される改変は、本セクション(セクション5.5)で上述した任意のそのような改変とすることができる。
【0354】
一態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、5'から3'の方向に:第1のIR、対象となるヌクレオチド配列、及び第2のIRを含む。一実施態様において、対象となるヌクレオチド配列は、例えば、セクション5.4.3で本明細書に記載されるような発現カセットを含む。ある実施態様において、セクション3及び本セクション(セクション5.5)でのものを含む本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、発現カセットを含み、ここで、該発現カセットは、セクション3及び5.4.3に記載したいずれかの実施態様とすることができる。
【0355】
ヘアピン末端DNA分子は、dsDNAとssDNAとの組合せを含むことができる。いくつかの実施態様において、本セクション(セクション5.5)で提供されるヘアピン末端DNA分子の特定の部分は、dsDNAである。さらなる実施態様において、本セクション(セクション5.5)で提供されるヘアピン末端DNA分子のdsDN部分は、前記発現カセット、前記ITRのステム領域、又は双方を含む。一実施態様において、本セクション(セクション5.5)で提供されるヘアピン末端DNA分子のdsDN部分は、該ヘアピン末端DNA分子の90%超を占める。別の実施態様において、本セクション(セクション5.5)で提供されるヘアピン末端DNA分子のdsDN部分は、該ヘアピン末端DNA分子の少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%を占める。別の実施態様において、本セクション(セクション5.5)で提供されるヘアピン末端DNA分子のdsDN部分は、該ヘアピン末端DNA分子の約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%を占める。
【0356】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、細胞の核に対して効率的に標的化されるか又は輸送されることができる。一実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、ITRに形成されるアプタマーと核タンパク質との間の結合によって、細胞の核に対して効率的に標的化されるか又は輸送されることができる。別の実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、核における該ヘアピン末端DNA分子の存在量が、細胞質における存在量よりも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%高くなるように、細胞の核に対して効率的に標的化されるか又は輸送されることができる。さらに別の実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、核における該ヘアピン末端DNA分子の存在量が、細胞質における存在量よりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30倍高くなるように、細胞の核に対して効率的に標的化されるか又は輸送されることができる。
【0357】
セクション(セクション5.5)におけるものを含む本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子のさまざまな実施態様において、該ヘアピン末端DNA分子は、セクション5.4.5に記載されるようなRABS及び/又はTRS配列を欠く。セクション(セクション5.5)におけるものを含む本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子の他の実施態様において、該ヘアピン末端DNA分子は、セクション5.4.5に記載したようなDNA配列、エレメント、又は特徴のいずれか又は任意の組合せを欠く。
【0358】
いくつかの追加の実施態様において、セクション(セクション5.5)におけるものを含む本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子の実施態様、該ヘアピン末端DNA分子は、セクション5.4.8に記載したような、純度に関するいずれかの実施態様における単離されたヘアピン末端DNA分子とすることができる。
【0359】
(5.6 ヘアピン末端DNA分子の機能的性質)
いくつかの実施態様において、ITRは、細胞の核における核酸分子の長期残存を促進する。いくつかの実施態様において、ITRは、細胞の核における核酸分子の永続的な残存を促進する(例えば、該細胞の全寿命の間)。いくつかの実施態様において、ITRは、細胞の核における核酸分子の安定性を促進する。いくつかの実施態様において、ITRは、細胞の核における核酸分子の分解を阻害又は防止する。
【0360】
いくつかの実施態様において、ITRが、フォールディングされた状態をとる場合、それは、エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼV)に対して、例えば、37℃で1時間を超える抵抗性を示す。一実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼVによる消化)に対して抵抗性を示す。別の実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼVによる消化)に対して、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、又はそれを超える時間抵抗性を示す。さらに別の実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、又は約10時間、エキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼVによる消化)に対して抵抗性を示す。
【0361】
本発明者らによって予期せず見出され、本明細書で提供されるように、ウイルスITRに類似するITRを有する二本鎖直鎖状DNAベクターを、Repタンパク質を必要とすることなく、かつその結果、ゲノム複製のためのRABSやTRS配列とは独立して製造することができる。従って、RBE及びTRSは、本明細書で開示されるヌクレオチド配列内に任意にコードすることができるが、欠かせないものではなく、ITRの設計に関する柔軟性を提供する。一実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、RABSを含まないITRを含む。別の実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、TRSを含まないITRを含む。さらに別の実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、RABSもTRSも含まないITRを含む。さらなる実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、RABS、TRS、又はRABS及びTRSの双方を含むITRを含む。
【0362】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、ホスト細胞内で安定である。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、長期培養の間ホスト細胞内で安定である。
【0363】
ある実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子は、ホスト細胞に効率的に送達することができる。
【0364】
本明細書で提供されるDNA分子は、単に上述のエキソヌクレアーゼ消化耐性についてだけでなく、その構造に関しても優れた安定性を有する。一実施態様において、DNA分子の構造は、室温で1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、又は12ヶ月の保管後に同じままである。別の実施態様において、DNA分子のアンサンブル構造は、室温で1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、又は12ヶ月の保管後に同じままである。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子の構造は、2、3、4、5、10、又は20サイクルの変性/再生後に同一である。(例えば、セクション5.3.3に記載されているような変性及びセクション5.3.5に記載されているような再アニーリング)。DNA構造は、エネルギー最小の又はその付近の構造の総体によって記述することができる。ある実施態様において、アンサンブルDNA構造は、2、3、4、5、10、又は20サイクルの変性/再生後に同一である。一実施態様において、本明細書で提供されるITR又はIRから形成されるフォールディングされたヘアピン構造は、2、3、4、5、10、又は20サイクルの変性/再生後に同一である。別の実施態様において、フォールディングされたヘアピンのアンサンブル構造は、2、3、4、5、10、又は20サイクルの変性/再生後に同一である。
【0365】
(5.7 ヘアピン末端DNA分子を含む送達ビヒクル)
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子を、その全体が引用により本明細書に組み込まれる、USPN 10,561,610に記載されているようなヒドリドソームによって送達することができる。別の実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子を、ヒドリドソームによって送達することができる。
【0366】
ある実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子を、脂質ナノ粒子などの脂質粒子によって送達することができる。別の実施態様において、本明細書で提供されるヘアピン末端DNA分子を、脂質ナノ粒子によって送達することができる。いくつかの実施態様において、脂質ナノ粒子は、イオン化可能脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、ステロール(例えば、コレステロール)、及びペグ化脂質から選択されるいずれか1つ以上の脂質を含む。実施態様において、脂質粒子は、イオン化可能脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、ステロール(例えば、コレステロール)、及びペグ化脂質から選択されるいずれか1つ以上の脂質を含み、ここで、脂質のモル比は、イオン化可能脂質については20~70モルパーセント又は40~60モルパーセントの範囲であり、非カチオン性脂質のモルパーセントは、0~30又は0~15の範囲であり、ステロールのモルパーセントは、20~70又は30~50の範囲であり、ペグ化脂質のモルパーセントは、1~6又は2~5の範囲である。別の実施態様において、脂質粒子は、イオン化可能脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、ステロール(例えば、コレステロール)、及びペグ化脂質から選択されるいずれか1つ以上の脂質を含み、ここで、脂質のモル比は、イオン化可能脂質については、40~60モルパーセントの範囲であり、非カチオン性脂質のモルパーセントは、0~15の範囲であり、ステロールのモルパーセントは、30~50の範囲であり、ペグ化脂質のモルパーセントは、2~5の範囲である。さらに別の実施態様において、脂質粒子は、イオン化可能脂質、非カチオン性脂質(例えば、リン脂質)、ステロール(例えば、コレステロール)、及びペグ化脂質から選択されるいずれか1つ以上の脂質を含み、ここで、脂質のモル比は、イオン化可能脂質については20~70モルパーセントの範囲であり、非カチオン性脂質のモルパーセントは、0~30の範囲であり、ステロールのモルパーセントは、20~70の範囲であり、ペグ化脂質のモルパーセントは、1~6の範囲である。
【0367】
本開示は、イオン化可能脂質を、低いpHで核酸カーゴを濃縮すること及び膜結合及び膜融合を推進することに使用採用することができることを規定する。そのようなイオン化可能脂質は、本明細書で提供されるDNA分子の組成物及び該DNA分子のための方法用の送達ビヒクルの一部として用いることができる。いくつかの実施態様において、イオン化可能脂質は、正電荷を持つか又は酸性条件下、例えば、6.5以下のpHでプロトン化される少なくとも1つのアミノ基を含む脂質である。いくつかの実施態様において、イオン化可能脂質は、該脂質が、生理学的なpH(例えば、pH7.4)以下のpHで正電荷を持ち、かつ第2のpH、例えば、生理学的なpH以上で中性となるように、少なくとも1つのプロトン化可能な又は脱プロトン化可能な基を有する。pHの関数としてのプロトンの付加又は除去が、平衡過程であること、及び電荷を持つ又は中性の脂質への言及が、主たる種の性質を意味し、脂質の全てが電荷を持つ又は中性の形態で存在することを必要としないことが当業者により理解されるであろう。一般に、イオン化可能脂質は、約4~約7の範囲にプロトン化可能な基のpKaを有する。
【0368】
さらなる例示的なイオン化可能脂質は、全てが全体として引用により本明細書に組み込まれる、PCT特許公報W02015/095340、WO2015/199952、W02018/011633、WO2017/049245、WO2015/061467、WO2012/040184、WO2012/000104、WO2015/074085、W02016/081029、WO2017/004143、WO2017/075531、WO2017/117528、WO2011/022460、WO2013/148541、WO2013/116126、WO2011/153120、WO2012/044638、WO2012/054365、WO2011/090965、W02013/016058、W02012/162210、W02008/042973、WO2010/129709、W02010/144740、WO2012/099755、WO2013/049328、WO2013/086322、WO2013/086373、WO2011/071860、W02009/132131、W02010/048536、W02010/088537、WO2010/054401、W02010/054406、W02010/054405、WO2010/054384、W02012/016184、W02009/086558、W02010/042877、WO2011/000106、WO2011/000107、W02005/120152、WO2011/141705、WO2013/126803、W02006/007712、WO2011/038160、WO2005/121348、WO2011/066651、W02009/127060、WO2011/141704、W02006/069782、WO2012/031043、WO2013/006825、WO2013/033563、W02013/089151、WO2017/099823、WO2015/095346、及びWO2013/086354に記載されている。
【0369】
いくつかの特定の実施態様において、イオン化可能脂質は、MC3(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA又はMC3)である。
【0370】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子をカプセル化する脂質ナノ粒子は、ジステアロイル-ホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイル-ホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジル-lエタノールアミン、ジパルミトイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホ-エタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans PE、1-ステアリオイル(stearioyl)-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、及び1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホホエタノールアミン(phophoethanolamine)(transDOPE)からなる群から選択される1種以上の脂質を含む。
【0371】
本明細書で提供される送達ビヒクルは、場合によってはトランスフェクションと呼ばれる、本明細書で提供されるDNA分子を細胞に送達するためのものを含む。さらなる有用なトランスフェクション方法としては、脂質媒介性トランスフェクション、カチオン性ポリマー媒介性トランスフェクション、又はリン酸カルシウム沈殿が挙げられるが、これらに限定されない。本技術分野において周知なトランスフェクション試薬が本明細書で提供され、TurboFectトランスフェクション試薬(Thermo Fisher Scientific)、Pro-Ject試薬(Thermo Fisher Scientific)、TRANSPASS(商標) Pタンパク質トランスフェクション試薬(New England Biolabs)、CHARIOT(商標)タンパク質送達試薬(Active Motif)、PROTEOJUICE(商標)タンパク質トランスフェクション試薬(EMD Millipore)、293fectin、LIPOFECT AMINE(商標) 2000、LIPOFECT AMINE(商標) 3000 (Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECT AMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、DMRIE-C、CELLFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、OLIGOFECT AMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECT ACE(商標)、FUGENE(商標)(Roche、Basel, Switzerland)、FUGENE(商標) HD (Roche)、TRANSFECT AM(商標)(Transfectam、Promega、Madison、Wis.)、TFX-10(商標)(Promega)、TFX-20(商標)(Promega)、TFX-50(商標)(Promega)、TRANSFECTIN(商標)(BioRad、Hercules、Calif.)、SILENTFECT(商標)(Bio-Rad)、Effectene(商標)(Qiagen、Valencia、Calif.)、DC-chol(Avanti Polar Lipids)、GENEPORTER(商標)(Gene Therapy Systems、San Diego、Calif.)、DHARMAFECT 1(商標)(Dharmacon、Lafayette、Colo.)、DHARMAFECT 2(商標) (Dharmacon)、DHARMAFECT 3(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 4(商標)(Dharmacon)、ESCORT(商標) III (Sigma、St. Louis、Mo.)、及びESCORT(商標) IV (Sigma Chemical社)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0372】
ある場合には、化学的送達系を使用して、例えば、カチオン性トランスフェクション試薬を用いることによって、本明細書で提供されるDNA分子を送達することができ、これには、カチオン性リポソーム/ミセル又はカチオン性ポリマーを生成するポリカチオン性化学薬品による負の電荷を持つ核酸のコンパクションが含まれる。本送達方法に使用されるカチオン性脂質としては、これらに限定されないが、一価カチオン性脂質、多価カチオン性脂質、含グアニジン化合物、コレステロール誘導体化合物、カチオン性ポリマー、(例えば、ポリ(エチレンイミン)、ポリ-L-リシン、プロタミン、他のカチオン性ポリマー)、及び脂質-ポリマーハイブリッドが挙げられる。
【0373】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、標的細胞内へのDNAの侵入が容易となるように、機械的、電気的、超音波、流体力学的、又はレーザーベースのエネルギーをかけて細胞膜に一過性の貫通を作ることによって送達される。例えば、細胞をサイズ制限された通路に押し込んで通すことによって又は本技術分野において公知の他の手段によって、細胞膜を一過性に破壊することによって本明細書で提供されるDNA分子を送達することができる。
【0374】
本開示は、本明細書で提供されるDNA分子を、医薬組成物として調製することができることを規定する。そのような組成物が、必然的に、1つ以上の活性な成分及び、ほとんどの場合、医薬として許容し得る賦形剤を含むことが理解されるであろう。
【0375】
本開示による医薬組成物中の活性成分(例えば、対象への移入又は移植のための本明細書で提供されるDNA分子又は本明細書で提供されるDNA分子を含む細胞)、医薬として許容し得る賦形剤、及び/又は任意の追加の成分の相対量は、治療中の対象の素性、大きさ、及び/又は状態に応じて、及びさらに組成物が投与される経路に応じて異なり得る。例えば、組成物は、0.1%~99%(w/w)の活性成分を含み得る。一例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0376】
本開示の製剤は、限定するものではないが、生理食塩水、リポソーム、脂質ナノ粒子、エキソソーム、細胞外ベシクル、ハイブリドソーム、ポリマー、ペプチド、タンパク質、本明細書で提供されるDNA分子を含む細胞(例えば、対象への移入又は移植のためのもの)、及びそれらの組合せを含むことができる。
【0377】
内在性の核酸を含有していてもよいウイルス粒子、エキソソーム、又はハイブリドソームの場合には、DNA分子の定量を、製剤に含有される用量の尺度として用いてもよい。本技術分野において公知の任意の方法を使用して、開示の組成物のDNA分子数を決定することができる。DNA分子数タイトレーションを行うための一つの方法は、以下の通りである:先ず、GDEをコードするヘアピン末端DNAを含むウイルス粒子、エキソソーム、又はハイブリドソーム組成物の試料を、DNaseで処理し、製造プロセス由来の不純物であるホストDNAを除去する。次いで、DNase抵抗性の粒子に対して熱処理を行って、カプシドからゲノムを放出させる。次いで、放出されたゲノムを、ウイルスゲノムの特定の領域(例えば、ポリAシグナル)を標的とするプライマー/プローブセットを用いるリアルタイムPCRによって定量化する。ゲノムコピー数を決定するための別の適当な方法は、定量PCR(qPCR)、特に、最適化qPCR又はデジタルドロップレットPCRである。
【0378】
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において公知の又は今後開発される任意の方法で調製され得る。本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの活性成分及び任意に1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤を含む組成物を意味する。
【0379】
一般に、そのような調製方法は、活性成分を、賦形剤及び/又は1つ以上の他の副原料と一緒にする工程を含む。本明細書で使用される、「活性成分」という句は、一般に、本明細書で提供されるDNA分子又は本明細書で提供されるDNA分子を含む細胞もしくは物質のいずれかを意味する。
【0380】
本明細書に記載されるDNA分子及び医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において公知の又は今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般的に、そのような調製方法は、活性成分を、賦形剤及び/又は1つ以上の他の副原料と一緒にし、その後、必要であればかつ/又は望ましければ、生成物を所望の単回又は複数回用量単位に分割、成形、及び/又は包装する工程を含む。
【0381】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される製剤は、疾患の治療のための発現カセット内のORFの発現に十分なDNA分子又は活性成分を含有していてもよい。
【0382】
いくつかの実施態様において、本開示のDNA分子は、AAV Rep78などのウイルスタンパク質を実質的に含まない。いくつかの実施態様において、本開示の単離DNA分子は、ウイルスタンパク質を100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、又は90%含まない。
【0383】
本開示のDNA分子は、(1)安定性を増加させる;(2)細胞トランスフェクション又は形質導入を増加させる;(3)活性成分の持続放出又は遅延放出を可能とする;(4)生体内分布を変化させる(例えば、DNA分子又はDNA分子を含む活性成分を、特定の組織又は細胞型に対して標的化する);(5)発現カセット内のORFの翻訳を増加させる;(6)発現カセットのORFによってコードされるタンパク質の放出プロファイルを変化させる、及び/又は(7)発現カセットのORFの調節可能な発現を可能にする1つ以上の賦形剤又は希釈剤を用いて製剤化することができる。
【0384】
いくつかの実施態様において、医薬として許容し得る賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の純度であり得る。いくつかの実施態様において、賦形剤は、ヒトへの及び獣医学的用途への使用に関して承認されている。いくつかの実施態様において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されていてもよい。いくつかの実施態様において、賦形剤は、医薬グレードのものであってもよい。いくつかの実施態様において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方(the International Pharmacopoeia)の基準を満たしていてもよい。
【0385】
本明細書で使用される賦形剤としては、所望の特定の剤形に適したありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘又は乳化剤、防腐剤などが挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物を製剤化するためのさまざまな賦形剤及び該組成物を調製するための技術は、本技術分野において公知である(引用によりその全体が本明細書に組み込まれるA. R. Gennaroの文献「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版、Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2006を参照されたい)。いずれかの慣用の賦形剤媒体が、何らかの望ましくない生物学的作用をもたらすことや、有害な様式で該医薬組成物の任意の他の成分とその他の点で相互作用することなどによって、物質又はその誘導体と不適合である場合を除き、慣用の賦形剤媒体の使用が、本開示の範囲内で想定され得る。
【0386】
例示的な希釈剤としては、本技術分野において知られておりかつ用いられているものが挙げられる(A. R. Gennaroの文献「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版、Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2006を参照されたい)。
【0387】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子用の医薬組成物は、少なくとも1つの不活性成分を含むことができる。本明細書で使用される場合、「不活性成分」という用語は、製剤に含まれる医薬組成物の活性成分の活性に寄与しない1種以上の薬剤を意味する。いくつかの実施態様において、本開示の製剤において用いられる不活性成分の全てもしくは一部を、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されておりかつ本技術分野で用いられるそのようなもののいずれかとすることができ、又は該不活性成分のいずれも、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されておりかつ本技術分野で用いられるそのようなもののいずれかとしないこともできる。
【0388】
(5.8 使用する方法)
本開示は、本明細書で提供されるDNA分子を使用して、発現のために発現カセット内のORF又は導入遺伝子を細胞に送達することができることを規定する。セクション5.4.3に記載されているようなORF又は導入遺伝子を、効率的に送達することができる。本開示は、本明細書で提供されるDNA分子を使用して、発現カセット内のORF又は導入遺伝子をヒト対象に送達することができることを規定する。セクション5.4.3に記載されているような任意のORF又は導入遺伝子を、効率的に送達することができる。
【0389】
特定の一実施態様において、発現のために目的遺伝子を細胞に送達する方法は:本明細書で提供されるDNA分子を該細胞内にトランスフェクションさせることを含む。ある実施態様において、細胞は、ヒト細胞である。別の実施態様において、細胞は、ヒト初代細胞である。さらに別の実施態様において、細胞は、初代ヒト血液細胞である。一実施態様において、セクション5.7に記載した任意の送達ビヒクルによって、DNA分子を細胞内にトランスフェクションさせることができる。
【0390】
別の具体的な実施態様において、発現のために目的遺伝子をヒト対象に送達する方法は: 本明細書で提供されるDNA分子を細胞内にトランスフェクションさせること、及び該細胞をヒト対象に投与することを含む。ある実施態様において、細胞は、ヒト細胞である。別の実施態様において、細胞は、ヒト初代細胞である。さらに別の実施態様において、細胞は、初代ヒト血液細胞である。一実施態様において、セクション5.7に記載した任意の送達ビヒクルによって、DNA分子を細胞内にトランスフェクションさせることができる。
【0391】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子は、前の3つの段落に記載されているように、発現カセット内の疾患を治す遺伝子を細胞又はヒト対象内に送達することによって、遺伝子療法に使用することができる。
【0392】
ある実施態様において、本明細書で提供されるDNA分子を使用して、本技術分野で知られているトランスフェクションすることが難しい細胞をトランスフェクションすることができる。トランスフェクションすることが難しいことが知られているそのような細胞としては、活発に分裂していない細胞が挙げられる。いくつかの実施態様において、そのような細胞は、例えば、ヒト初代血液細胞、ヒト初代肝細胞、ヒト初代ニューロン、ヒト初代筋肉細胞、ヒト初代心筋細胞などのヒト初代細胞であり得る。
【0393】
(5.8.1 ホスト細胞)
本明細書で使用される場合、「ホスト細胞」という用語は、本開示の核酸構築体又はヘアピン末端発現ベクターを用いる形質転換、トランスフェクション、形質導入などを受けやすい任意の細胞型を含む。
【0394】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端ベクターは、GDEタンパク質導入遺伝子を対象ホスト細胞内に送達する。いくつかの実施態様において、対象ホスト細胞は、例えば、血液細胞、幹細胞、造血細胞、CD34+細胞、肝細胞、がん細胞、血管細胞、筋肉細胞、膵臓細胞、神経細胞、眼部もしくは網膜細胞、上皮もしくは内皮細胞、樹状細胞、線維芽細胞などのヒトホスト細胞、又は、限定するものではないが、肝(hepatic)(すなわち、肝臓(liver))細胞、肺細胞、心細胞、膵臓細胞、腸細胞、横隔膜細胞、腎(renal)(すなわち、腎臓(kidney))細胞、神経細胞、血液細胞、骨髄細胞などの哺乳動物起源の任意の他の細胞、又は遺伝子療法が想定される対象の任意の1種以上の選択された組織である。一態様において、対象ホスト細胞は、ヒトホスト細胞である。
【0395】
また、本開示は、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端ベクターを含む上で言及したような組換えホスト細胞に関する。従って、当業者には自明であるように、目的に応じて複数のホスト細胞を用いることができる。本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端ベクターは、ドナー配列が染色体組み込み体として維持されるようにホスト細胞内に導入することができる。ホスト細胞という用語は、複製の間に生じる変異のために親細胞と同一ではない親細胞の任意の子孫を包含する。ホスト細胞の選択は、ドナー配列及びその起源に大きく依存し得るものである。
【0396】
また、ホスト細胞は、哺乳動物、昆虫、植物、又は真菌細胞などの真核生物細胞であってもよい。一実施態様において、ホスト細胞は、ヒト細胞(例えば、初代細胞、幹細胞、又は不死化細胞株)である。いくつかの実施態様において、ホスト細胞は、本明細書で開示されるGDEタンパク質のエクスビボでの発現のためのヘアピン末端ベクターを投与され、次いで、遺伝子療法イベントの後に対象に送達されることができる。ホスト細胞は、任意の細胞型、例えば、体細胞もしくは幹細胞、人工多能性幹細胞、又は血液細胞、例えば、T細胞もしくはB細胞、又は骨髄細胞とすることができる。ある実施態様において、ホスト細胞は、同種異系の細胞である。いくつかの実施態様において、遺伝子改変ホスト細胞、例えば、骨髄幹細胞、例えば、CD34+細胞、又は人工多能性幹細胞を、治療用タンパク質の発現のために患者に戻す移植を行うことができる。
【0397】
GDEは、肝臓、心臓、骨格筋、及び甲状腺で主に発現される。胎児発生の間に、GDEは、副腎、心臓、腸、腎臓、肺、及び胃に発現され得る。従って、GDEを発現するヘアピン末端ベクターを、以下:肝臓、腎臓、胆嚢、前立腺、副腎から選択されるいずれか1種以上の組織に投与することができる。いくつかの実施態様において、GDEを発現するヘアピン末端ベクターが、乳幼児に投与される場合、又は子宮内の対象に投与される場合には、GDEを発現するヘアピン末端ベクターを、以下:肝臓、骨格筋、心臓、舌、肺、及び胃から選択されるいずれか1種以上の組織に投与することができる。
【0398】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子を使用して、分泌及び血中循環のための又は他の組織への全身送達のためのGDEタンパク質の製造のためにGDEタンパク質を骨格筋、心筋、又は横隔膜筋に送達して、GSDIIIを治療、改善、及び/又は予防することができる。
【0399】
本明細書の別の実施態様において、ホスト細胞という用語は、本明細書に記載される組成物のインビトロ評価用のさまざまな哺乳動物種の肝臓又は筋肉細胞の培養物を意味する。また、別の実施態様において、「ホスト細胞」という用語は、インビボでGSDIII疾患について治療中の対象の肝細胞又は筋肉をいうことが意図される。
【0400】
(5.8.2 ヘアピン末端DNA分子を用いる成功した遺伝子発現に関する試験)
本技術分野において周知のアッセイを使用して、インビトロモデル及びインビボモデルの双方でのヘアピン末端DNA分子によるGDEタンパク質の遺伝子送達の効率を試験することができる。ヘアピン末端DNAによるGDEタンパク質の発現のレベルを、GDEタンパク質のmRNA及びタンパク質レベルを測定すること(例えば、逆転写PCR、ウエスタンブロット分析、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって当業者は評価することができる。一実施態様において、DNAは、GDEタンパク質の発現を、例えば、蛍光顕微鏡法又は発光プレートリーダーによりレポーターの発現を調査することによって評価するのに使用することができるレポーターを含む。インビボでの応用については、タンパク質機能アッセイを使用して、所与のGDEタンパク質の機能性を試験して、遺伝子発現が成功裏に生じているかどうかを決定することができる。当業者は、インビトロ又はインビボでのヘアピン末端DNA分子により発現されるGDEタンパク質の機能性を測定するための最高の試験を決定することができるであろう。
【0401】
本明細書においては、細胞又は対象内でのDNAベクターからのGDEタンパク質の遺伝子発現の効果が、少なくとも0.5ヶ月、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも20年持続し得るか、又は永続的であり得ることが想定される。
【0402】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される発現カセット、発現構築体、又はヘアピン末端DNA分子内のGDEタンパク質は、ホスト細胞にコドン最適化することができる。本明細書で使用される場合、「コドン最適化された」又は「コドン最適化」という用語は、対象となる脊椎動物、例えば、マウス又はヒト(例えば、ヒト化)の細胞における強化された発現のために、天然配列(例えば、原核生物の配列)の少なくとも1つ、2つ以上、又は有意な数のコドンを、該脊椎動物の遺伝子においてより頻繁に又は最も頻繁に用いられるコドンで置き換えることによって、核酸配列を改変するプロセスを意味する。さまざまな種が、特定のアミノ酸のあるコドンに関して特定の偏りを示す。典型的には、コドン最適化は、元の翻訳されるタンパク質のアミノ酸配列を変化させない。最適化コドンは、例えば、AptagenのGene Forge(登録商標)コドン最適化及びカスタム遺伝子合成プラットフォーム(Aptagen社)又は別の公に利用可能なデータベースを用いて決定することができる。
【0403】
(5.9 治療の方法)
別の態様において、本明細書で提供されるのは、患者においてアミロ-α-1,6-グルコシダーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(GDE)の活性の低下に関連する疾患を治療するための方法であって、該患者にヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含むDNA分子を投与することを含む、前記方法である。具体的な実施態様において、前記DNA分子は、ハイブリドソーム中に含有される。具体的な実施態様において、前記DNA分子は、脂質ナノ粒子中に含有される。
【0404】
DNA分子は、単一のベクター内又は共投与される複数のベクター内に含有され得る。
【0405】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される方法に従って治療される患者は、成人である。いくつかの実施態様において、前記患者は、小児患者である。小児患者は、例えば、約1歳、約2歳、約3歳、約4歳、約5歳、約6歳、約7歳、約8歳、約9歳、約10歳、約11歳、約12歳、約13歳、約14歳、約15歳、約16歳、約17歳、又は約18歳であり得る。いくつかの実施態様において、前記小児患者は、乳幼児である。本明細書で使用される、「患者」及び「対象」という用語は、互換的に使用される。いくつかの実施態様において、前記患者は、ヒトである。
【0406】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って治療される疾患は、糖原病(GSD)III型(GSDIII)である。具体的な実施態様において、前記疾患は、GSDIIIa、GSDIIIb、GSDIIIc、又はGSDIIIdである。
【0407】
具体的な実施態様において、本明細書に記載される治療の方法は、1以上の追加の療法を患者に対して実施することをさらに含む。当該1以上の追加の療法は、本明細書に記載されるDNA分子の前に、それと同時に、又はそれに続けて実施され得る。具体的な実施態様において、追加の療法は、GDEの活性の低下に関連する疾患の治療のためのものである。具体的な実施態様において、追加の療法は、免疫抑制剤療法である。具体的な実施態様において、本明細書に記載される方法に従って治療される患者は、免疫抑制剤療法を受けない。
【0408】
(5.9.1 DNAベクターからのGDEタンパク質発現を評価することによって有効性を決定すること)
本質的に、タンパク質発現を決定するための当技術分野において公知の任意の方法を使用して、ヘアピン末端DNA分子からのGDEタンパク質の発現を分析することができる。そのような方法/アッセイの非限定的な例としては、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、親和性ELISA、ELISPOT、段階希釈、フローサイトメトリー、表面プラズモン共鳴分析、速度論的排除アッセイ、質量分析、ウエスタンブロット、免疫沈降、及びPCRが挙げられる。
【0409】
インビボでGDEタンパク質発現を評価するために、生体試料を、分析用の対象から得ることができる。例示的な生体試料としては、生体液試料、体液試料、血液(全血を含む)、血清、血漿、尿、唾液、生検、及び/又は組織試料などが挙げられる。また、生体試料又は組織試料は、これらに限定されないが、腫瘍生検、大便、脊髄液、胸水、乳頭吸引液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸、及び泌尿生殖器の外切片、涙、唾液、母乳、細胞(これに限定されないが、血液細胞)、腫瘍、器官などの個体から単離された組織又は体液の試料を意味することもあり、またインビトロ細胞培養構成要素の試料を意味することもある。また、この用語は、上述の試料の混合物も含む。また、「試料」という用語は、未処理の又は前処理された(又は前加工された)生体試料も含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるアッセイ及び方法に使用される試料は、試験される対象から収集される血清試料を含む。
【0410】
(5.9.2 臨床パラメーターによって発現されたGDEタンパク質の有効性を決定すること)
GSDIIIに対するヘアピン末端DNA分子により発現される所与のGDEタンパク質の有効性(すなわち、機能的発現)は、熟練した臨床医によって決定することができる。しかしながら、治療は、当該用語が本明細書で使用される場合、GSDIIIの兆候又は症状のうちのいずれか1つ又は全てが、有益な様式で変わる場合、又は疾患の他の臨床的に受け入れられている症状又はマーカーが、本明細書に記載されるような治療用GDEタンパク質をコードする本明細書に記載されるDNAベクターでの治療後に、例えば、少なくとも10%向上又は改善される場合に「有効な治療」とみなされる。有効性は、GSDIIIの安定化によって評価して個体が悪化しないこと又は医学的な介入の必要性(すなわち、疾患の進行が停止させる又は少なくとも減速させる)によって測定することもできる。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知でありかつ/又は本明細書に記載されている。治療は、個体又は動物(いくつかの非限定的な例は、ヒト又は哺乳動物を含む)における疾患の任意の治療を含み:(1)GSDIIIを阻害すること、例えば、GSDIIIの進行を停止又は原則させること;又は(2)GSDIIIを緩和すること、例えば、GSDIII症状の軽減(regression)を引き起こすこと;及び(3)GSDIII疾患の発症を予防すること若しくはその可能性を低下させること、又はGSDIIIに関連する二次疾患/障害を予防することを含む。疾患の治療のための有効量は、それを必要としている哺乳動物に投与された場合に、当該用語が当該疾患に対して本明細書において定義されているような有効な治療をもたらすのに十分な量を意味する。薬剤の有効性は、GSDIII疾患に特有の物理的指標を評価することによって決定することができる。医師は、重篤な空腹時不耐性、発育不全、及び肝腫大:などのGSDIIIの臨床症状のうちのいずれか1つ以上について評価することができる。さらに、生化学的特徴は、(非)ケトン性低血糖症、高乳酸塩血症、肝酵素の増加、及び高脂血症である。血漿(すなわち、グルコース、乳酸、ケトン、アラニン、及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[ALT及びAST]、クレアチンホスホキナーゼ[CK]、尿酸、脂質)及び尿(ケトン)におけるルーチンの分析は、代謝調節をモニタリングするために必須である。血漿分析及び代謝的モニタリングの方法及び参照値が、本技術分野において記載されている(例えば、Saudubray JM.、van den Berghe G.、Walter J.H.(編)の「先天性代謝疾患(Inborn Metabolic Diseases)」Springer, Berlin, Heidelberg内のTouati G.、Mochel F.、Rabier D.の文献(2012)「診断手順:機能試験及び死後プロトコール(Diagnostic Procedures: Functional Tests and Post-mortem Protocol)」)。特に、通常食でのアミラーゼによるグリコーゲンの酵素分解により生ずる代謝産物である尿中グルコーステトラサッカライド(Glc4)の低下。尿中Glc4及び尿ヘキソーステトラサッカライド(Hex4)をモニタリングすることは、GSDIIIの治療の開発におけるバイオマーカーとなり得る。尿中Glc4濃度は、以前に記載されたように安定同位体希釈エレクトロスプレータンデム質量分析によって決定することができる(Young, S.P.らの文献(2003) Biochem, 316(2): 175-80)。
【0411】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される治療の方法は、その間に対象において、血中乳酸レベルが、1~2時間、2~3時間、3~4時間、4~5時間、5~6時間、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9~10時間、10~11時間、及び11~12時間に渡って2mmol/L超、3mmol/L超、又は4mmol/L超となる事象の数の減少をもたらす。
【0412】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される治療の方法は、対象における高脂血症エピソードの減少をもたらす。「高脂血症エピソード」によって、総血中コレステロールの200mg/dL超への増加及び/又は1~2時間、2~3時間、3~4時間、4~5時間、5~6時間、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9~10時間、10~11時間、及び11~12時間にわたる血中トリグリセリドの150mg/dL超への増加が意味される。
【0413】
一実施態様において、医師は、糖血症などの代謝関連GSDIIIの臨床症状のうちのいずれか1つ以上について発現されるGDEタンパク質の有効性をさらに評価することができる。具体的には、発現されるGDEの有効性を、絶食期間での、又は複合糖質に富む頻回の食事、未調理のトウモロコシデンプンの投与、及び/もしくは、患者の年齢及び絶食の許容度によっては、終夜連続的経腸栄養法の非存在での、正常血糖を維持する能力若しくは低血糖の予防をモニタリングすることによって評価することができる。一実施態様において、発現されるGDEタンパク質の有効性は、患者の最後の食事の後1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、又は9時間後の正常血糖状態の部分的な回復であり得る。
【0414】
一実施態様において、医師は、糖血症などの代謝関連GSDIIIの臨床症状のうちのいずれか1つ以上について発現されるGDEタンパク質の有効性をさらに評価することができる。具体的には、発現されるGDEの有効性を、絶食期間での、又は複合糖質に富む頻回の食事、未調理のトウモロコシデンプンの投与、及び/もしくは、患者の年齢及び絶食の許容度によっては、終夜連続的経腸栄養法の非存在での正常血糖を維持する能力又は低血糖の予防をモニタリングすることによって評価することができる。一実施態様において、発現されるGDEタンパク質の有効性は、患者の最後の食事の後1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、9時間以内での正常血糖状態の部分的な回復であり得る。
【0415】
一態様において、機能的GDEタンパク質をコードするコード配列が提供される。「機能的GDE」によって、天然のGDEタンパク質又は疾患に関連しないその天然のバリアントもしくは多形の生物活性レベルの少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又はそれとほぼ同じ又はその100%超を提供するGDEタンパク質をコードする遺伝子が意味される。GDEの発現及び活性レベルをインビトロで測定するための種々のアッセイが存在する。(Maireらの文献、(1991), Clinical Biochemistry, 24(2)、169-178、及びDiMauroらの文献、Pediatr Res. 1973 7(9):739-44を参照されたい。)
【0416】
いくつかの実施態様において、機能的GDEタンパク質をコードするヘアピン末端DNA分子を、必要としている患者(例えば、GSDIII患者)の肝臓、特に、肝細胞に送達することができ、患者の活性GDEレベルを上昇させることができる。ヘアピン末端DNA分子は、患者におけるGSDIIIの任意の症状を予防する、治療する、改善する、又は元に戻すのに使用することができる。
【0417】
さらなる態様において、本開示のヘアピン末端DNA分子は、疾患を制御するためのGSDIII患者の特定の食事に対する依存性を低下させるのにも使用し得る。例えば、本発明のヘアピン末端DNA分子を使用して、高頻度の高糖質食及び/又はタンパク質が異常に高い食事に対するGSDIII患者の依存性を低下させることができる。
【0418】
別の例示的な実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合に、生体試料内の限界デキストリンレベルの低下をもたらす。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の本開示のヘアピン末端DNA分子を含む組成物を投与することは、治療前のベースライン限界デキストリンレベルと比較して少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の生体試料(例えば、肝臓試料)中の限界デキストリン蓄積の減少をもたらす。いくつかの実施態様において、生体試料は、肝臓、心臓、横隔膜、四頭筋、及び腓腹筋から選択される器官の一部である。例示的な実施態様において、生体試料は、肝切片、例えば、肝細胞の切片である。さらなる例示的な実施態様において、定期的に投与される場合、治療上有効な用量は、肝臓試料において、治療前のベースライン限界デキストリンレベルと比較して少なくとも50%、60%、70%、又は80%の限界デキストリンレベルの低下をもたらす。
【0419】
(5.9.3 投与)
本明細書に記載されるDNA分子は、1回又は繰り返して対象に投与され得る。従って、具体的な実施態様において、ヒト患者においてGDEの活性の低下に関連する疾患を治療するための方法は、(i)ヒトGDE又は触媒として活性なその断片をコードする導入遺伝子を含む発現カセットを含むDNA分子の第1の用量を該患者に投与する工程、及び(ii)該DNA分子の第2の用量を該患者に投与する工程を含む。
【0420】
いくつかの実施態様において、前記DNA分子の前記第1の用量は、該DNA分子の前記第2の用量の少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、又は少なくとも11ヶ月前に前記患者に投与される。いくつかの実施態様において、前記DNA分子の前記第1の用量は、該DNA分子の前記第2の用量の少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、又は少なくとも20年前に前記患者に投与される。
【0421】
いくつかの実施態様において、前記DNA分子の前記第1の用量は、該DNA分子の前記第2の用量の約1~3ヶ月、約3~6ヶ月、約6~9ヶ月、約9~12ヶ月、約12~15ヶ月、約15~18ヶ月、約18~21ヶ月、約21~24ヶ月、約24~27ヶ月、約27~30ヶ月、約30~33ヶ月、約33~36ヶ月、約3~4年、約4~5年、約5~6年、約6~7年、約8~9年、約9~10年、約10~11年、約11~12年、約12~13年、約13~14年、約14~15年、約15~16年、約16~17年、約17~18年、約18~19年又は約19~20年前に投与される。
【0422】
前記二本鎖DNA分子の前記第1の用量及び該DNA分子の前記第2の用量は、同じ量の該DNA分子又は異なる量の該DNA分子を含有していてもよい。
【0423】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される治療の方法は、前記DNA分子の1以上の追加の用量を投与すること、例えば、合計で3、4、5、6、7、8、9、又は10回の用量の該DNA分子を投与することをさらに含む。
【0424】
前記DNA分子は、週1回、2週に1回(1週おき)、又は月1回で投与され得る。いくつかの実施態様において、前記DNA分子は、約3ヶ月ごと、約6ヶ月ごと、約9ヶ月ごと、約12ヶ月ごと、約15ヶ月ごと、約18ヶ月ごと、約21ヶ月ごと、約2年ごと、約3年ごと、約4年ごと、約5年ごと、約6年ごと、約7年ごと、約8年ごと、約9年ごと、約10年ごと、約11年ごと、約12年ごと、約13年ごと、約14年ごと、約15年ごと、約16年ごと、約17年ごと、約18年ごと、約19年ごと又は約20年ごとに投与される。
【0425】
具体的な実施態様において、前記DNA分子は、前記患者に、該患者の一生涯にわたり投与される。
【0426】
本明細書に記載されるDNA分子は、任意の適当な経路によって対象に投与され得る。ある実施態様において、当該投与の経路は、静脈内、血管内、動脈内、筋肉内、眼球内、皮下、及び皮内からなる群から選択される。具体的な実施態様において、当該経路は、静脈内である。別の実施態様において、当該経路は、静脈内、血管内、動脈内、筋肉内、眼球内、皮下、及び皮内以外の、ヘアピン末端DNAを肝臓へと送達する投与経路である。
【0427】
いくつかの実施態様において、対象において疾患を治療する方法は、対象のそれを必要としている標的細胞(特に、筋肉細胞又は組織)内に、治療的有効量のGDEタンパク質をコードするヘアピン末端分子を、任意に、医薬として許容し得る担体とともに導入することを含む。いくつかの実施態様において、GDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子は、対象の筋組織に投与される。
【0428】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子の投与は、限定するものではないが、平滑筋、骨格筋、心臓、横隔膜、又は眼の筋肉からなる群から選択される部位などの対象の任意の部位へのものとすることができる。
【0429】
本開示による、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の骨格筋への投与としては、手足(例えば、上脚部、下脚部、上腕部、及び/又は前腕部)、胸部、腹部、背部、頚部、頭部(例えば、舌)、骨盤/会陰部、及び/又は指の骨格筋への投与が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で開示されるヘアピン末端DNA分子は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、肢灌流(任意に、脚部及び/又は腕部の分離式肢灌流(isolated limb perfusion);例えば、Arrudaらの文献、(2005) Blood 105: 3458-3464を参照されたい)、及び/又は直接的な筋肉内注射によって骨格筋に送達することができる。特定の実施態様において、本明細書で開示されるGDEをコードするヘアピン末端DNA分子は、四肢灌流、任意に、分離式肢灌流によって(例えば、静脈内又は関節内投与によって)対象(例えば、GSDIIIの対象)の肝臓、眼、手足(例えば、腕部及び/又は脚部)に投与される。
【0430】
さらに、骨格筋に投与される本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子を含む組成物は、手足(例えば、上脚部、下脚部、上腕部、及び又は前腕部)、胸部、腹部、背部、頚部、頭部(例えば、舌)、骨盤/会陰部、及び/又は指の骨格筋に投与することができる。好適な骨格筋としては、小指外転筋(手)、小指外転筋(足)、母趾外転筋、第五中足骨外転筋(abductor ossis metatarsi quinti)、短母指外転筋、長母指外転筋、短内転筋、母趾内転筋、長内転筋、大内転筋、母指内転筋、肘筋、前斜角筋、膝関節筋、上腕二頭筋、大腿二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋、頬筋、烏口腕筋、皺眉筋、三角筋、口角下制筋、下唇下制筋、顎二腹筋、背側骨間筋(手)、背側骨間筋(足)、短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、小指伸筋、総指伸筋、短趾伸筋、長趾伸筋、短母趾伸筋、長母趾伸筋、示指伸筋、短母指伸筋、長母指伸筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋、短小指屈筋(手)、短小指屈筋(足)、短趾屈筋、長趾屈筋、深指屈筋、浅指屈筋、短母趾屈筋、長母趾屈筋、短母指屈筋、長母指屈筋、前頭筋、腓腹筋、オトガイ舌骨筋、大臀筋、中臀筋、小臀筋、薄筋、頸腸肋筋、腰腸肋筋、胸腸肋筋、腸骨筋(illiacus)、下双子筋、下斜筋、下直筋、棘下筋、棘間筋(inter spinalis)、横突間筋(intertransversi)、外側翼突筋、外側直筋、広背筋、口角挙筋、上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、上眼瞼挙筋、肩甲挙筋、長回旋筋(long rotators)、頭最長筋、頸最長筋、胸最長筋、頭長筋、頸長筋、虫様筋(手)、虫様筋(足)、咬筋、内側翼突筋、内側直筋、中斜角筋、多裂筋、顎舌骨筋、下頭斜筋、上頭斜筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、後頭筋、肩甲舌骨筋、小指対立筋、母指対立筋、眼輪筋、口輪筋、掌側骨間筋、短掌筋、長掌筋、恥骨筋、大胸筋、小胸筋、短腓骨筋、長腓骨筋、第三腓骨筋、梨状筋、底側骨間筋、足底筋、広頸筋、膝窩筋、後斜角筋、方形回内筋、円回内筋、大腰筋、大腿方形筋、足底方形筋、前頭直筋、外側頭直筋、大後頭直筋、小後頭直筋、大腿直筋、大菱形筋、小菱形筋、縫工筋、最小斜角筋、半膜様筋、頭半棘筋、頸半棘筋、胸半棘筋、半腱様筋、前鋸筋、短回旋筋(short rotators)、ヒラメ筋、頭棘筋、頸棘筋、胸棘筋、頭板状筋、頸板状筋、胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、茎突舌骨筋、鎖骨下筋、肩甲下筋、上双子筋、上斜筋、上直筋、回外筋、棘上筋、側頭筋、大腿筋膜張筋、大円筋、小円筋、胸壁筋、甲状舌骨筋、前脛骨筋、後脛骨筋、僧帽筋、上腕三頭筋、中間広筋、外側広筋、内側広筋、大頬骨筋、及び小頬骨筋、並びに当技術分野において公知の任意の他の適な骨格筋が挙げられるが、これらに限定されない。
【0431】
ある実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の横隔膜筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹腔内投与などの任意の適当な方法によるものとすることができる。
【0432】
本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の心筋への投与としては、左心房、右心房、左心室、右心室及び/又は中隔への投与が挙げられる。本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子は、静脈内投与、動脈内投与、例えば、大動脈内投与、直接の心注入(例えば、左心房、右心房、左心室、右心室内へのもの)、及び/又は冠動脈灌流によって心筋に送達することができる。
【0433】
本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の平滑筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹腔内投与などの任意の適当な方法によるものとすることができる。一実施態様において、投与は、平滑筋内、その近く、及び/又はその上に存在する内皮細胞へのものとすることができる。平滑筋の非限定的な例としては、眼の虹彩、肺の細気管支、喉頭筋(声帯)、胃腸管の胃、食道、小腸及び大腸の筋肉層、尿管、膀胱の排尿筋、子宮筋、陰茎、又は前立腺が挙げられる。
【0434】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子は、骨格筋、横隔膜筋及び/又は心筋に投与される。代表的な実施態様において、本開示によるヘアピン末端DNA分子は、骨格筋、心筋、及び/又は横隔膜筋の障害を治療及び/又は予防するのに用いられる。
【0435】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子を含む組成物を、1つ以上の眼の筋肉(例えば、外側直筋、内側直筋、上直筋、下直筋、上斜筋、下斜筋)、顔の筋肉(例えば、後頭前頭筋、側頭頭頂筋、鼻根筋、鼻筋、鼻中隔下制筋、眼輪筋、皺眉筋、眉毛下制筋、耳介筋、口輪筋、口角下制筋、笑筋、大頬骨筋、小頬骨筋、上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、下唇下制筋、口角挙筋、頬筋、オトガイ筋)、又は舌の筋肉(例えば、オトガイ舌筋、舌骨舌筋、小角舌筋、茎突舌筋、口蓋舌筋、上縦舌筋、下縦舌筋、垂直筋、及び横筋)に送達することができる。
【0436】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子を含む組成物は、対象において針を用いて、所与の筋肉、例えば、骨格筋(例えば、三角筋、外側広筋、背側臀部の筋肉(dorsogluteal muscle)の腹側臀部の筋肉(ventrogluteal muscle)、又は乳幼児の場合には前外側大腿)の1つ以上の部位に注射することができる。ある実施態様において、ヘアピン末端DNA分子を含む組成物は、他のサブタイプの筋肉細胞に導入することができる。筋肉細胞サブタイプの非限定的な例としては、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞及び/又は横隔膜筋細胞が挙げられる。
【0437】
ある実施態様において、組成物は、対象における1以上の筋肉内の複数の部位に送達される。例えば、組成物は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100の注射部位での注射によって送達され得る。そのような部位は、単一の筋肉の領域に広がっていることもあり、複数の筋肉の間に分布していることもある。
【0438】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子から発現される導入遺伝子の標的組織への送達は、ヘアピン末端DNA分子を含む合成のデポを送達することによって達成することもでき、ここで、ヘアピン末端DNA分子を含むデポが、骨格筋、平滑筋、心筋及び/又は横隔膜筋の組織に埋め込まれるか、又は筋組織が、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含むマトリックスと接触することができる。そのような埋め込み型マトリックス又は基板は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている米国特許第7,201,898号に記載されている。
【0439】
筋肉内注射のための方法は、当業者に公知であり、従って、本明細書には詳細に記載されない。しかしながら、筋肉内注射を実施する場合、適切な針の大きさは、患者の年齢及び大きさ、組成物の粘度、並びに注射の部位に基づいて決定されるべきである。
【0440】
ある実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子は、ヘアピン末端DNA分子が細胞に入るのを促進する担体の非存在下で、又は生理学的に不活性な医薬として許容し得る担体(すなわち、カプシドを持たない非ウイルスベクターの筋管内への取り込みを向上又は亢進させない任意の担体)中で投与される。そのような実施態様において、GDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の取り込みを、細胞又は組織の電気穿孔法によって促進させることができる。電気穿孔法では、電場を用いて、細胞に対する永続的な損傷を引き起こすことなく細胞に細孔を生じさせる。この細孔は、GDEの発現のためのヘアピン末端DNA分子が細胞の内部にアクセスを得るのを可能とするのに十分な大きさである。時間の経過とともに、細胞膜の細孔が閉じ、細胞は再び不透過性となる。
【0441】
インビボでの電気穿孔法のための方法がいくつか存在する;電極は、例えば、治療されるべき細胞の領域の上にある表皮をつかむカリパスなどのさまざまな構成で提供することができる。あるいは、針の形の電極を組織に挿入して、より深くに位置する細胞にアクセスしてもよい。いずれの場合にも、例えば、GDEの発現のためのヘアピン末端DNA分子を含む組成物が、治療領域に注射された後に、電極が、該領域に電場を加える。一部の電気穿孔法の適用では、この電場は、100~500V/cmのオーダーの約10~60msの期間の単一の方形波パルスを含む。そのようなパルスは、例えば、Genetronics社のBTX Divisionによって作成された公知のElectro Square Porator T820のアプリケーションにおいて発生させ得る。
【0442】
別の実施態様において、GDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子は、肝臓に投与される。ヘアピン末端DNAは、脊髄、脳幹(延髄、脳橋)、中脳(視床下部、視床、視床上部、下垂体、黒質、松果腺)、小脳、終脳(線条体、後頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び前頭葉、皮質、大脳基底核、海馬、及び扁桃体(portaamygdala)を含む大脳)、辺縁系、新皮質、線条体、大脳、並びに下丘に導入されてもよい。ヘアピン末端DNAベクターは、脳脊髄液に(例えば、腰椎穿刺によって)送達され得る。GDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNAは、さらに、血液脳関門が乱されている状況(例えば、脳腫瘍又は脳梗塞)ではCNSに血管内投与され得る。
【0443】
いくつかの実施態様において、GDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNAは、直接的な注射(例えば、定位注射(stereotactic injection))によってCNSの所望の領域又は区画に液体製剤中で投与することができる。別の実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、所望の領域への局所的投与又はエアロゾル製剤の鼻腔内投与によって提供することができる。
【0444】
(.5.9.4 投薬)
本明細書で提供されるのは、有効量の、本明細書に記載されるGDEタンパク質をコードするヘアピン末端ベクターを含む組成物を対象に投与することを含む治療の方法である。
当業者によって認識されるであろうように、「有効量」という用語は、対象におけるGDEの存在量の減少又は機能の低下に関連する疾患又は障害(例えば、GSDIII)の治療のための「治療有効量」でのGDEタンパク質の発現をもたらす投与されるヘアピン末端DNA分子組成物の量を意味する。
【0445】
インビボでの及び/又はインビトロアッセイを任意に採用して、使用のための最適な投薬量範囲を特定するのに役立てることができる。また、製剤に採用される厳密な用量は、投与の経路及び疾病の重篤度次第で決まるものであり、当業者の判断及び各々の対象の状況に従い決定されるべきである。有効用量を、インビトロ又は動物モデル試験系(例えば、患者由来線維芽細胞、マウス又はイヌモデル)から得られる用量反応曲線から推定することができる。
【0446】
本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端ベクターは、必要以上の有害作用を伴わずに所望の組織の細胞のトランスフェクションを行いかつ十分なレベルの遺伝子発現を提供するのに十分な量で投与することができる。毒性などの望ましくない作用のリスクを低減するために、最低有効濃度のGDEをコードするヘアピン末端ベクターを利用することが望ましい。いくつかの実施態様において、治療中の対象、好ましくは、ヒトの身体的状態、該対象の年齢、及び障害の発現の度合いを考慮して、これらの範囲内の別の投薬量が担当の医師によって選択され得る。慣用の及び医薬として許容し得る投与の経路としては、選択された器官(例えば、肝臓への門脈内送達)への直接送達、経口、吸入(鼻腔内及び気管内送達を含む)、眼球内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、及び他の親の(parental)投与経路などの「投与」セクションで上述したものが挙げられるが、これらに限定されない。望ましい場合、投与の経路は、組み合わせることができる。
【0447】
ある実施態様において、特定の「治療効果」を達成するのに必要とされる本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端ベクターの量(すなわち用量)は、これらに限定されないが:核酸投与の経路、医薬担体、治療効果を達成するのに必要とされる遺伝子発現のレベル、治療中の具体的な疾患又は障害、及び遺伝子、RNA産物、又は結果として発現されるタンパク質の安定性などのいくつかの因子に基づいて変化するものである。当業者は、対象におけるGDEの存在量の減少又は機能の低下に関連する疾患又は障害(例えば、GSDiii)を有する患者を治療するためのヘアピン末端ベクターの用量範囲を、上述の因子及び当技術分野において周知の他の因子に基づいて容易に決定することができる。
【0448】
一般に、投与計画を、最適な治療反応を提供するように調整することができる。例えば、GDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端ベクターを、繰り返し投与することができ、例えば、何回かの用量を、毎日投与することができ、又は用量を、治療状況の切迫した事情によって必要が示される場合には、比例的に減少させることができる。当業者は、本明細書に記載される対象のベクターの適切な投与の用量及びスケジュール、及び該ベクターを細胞に投与すべきか又は対象に投与すべきかを容易に決定することができるであろう。
【0449】
「治療上有効な用量」は、臨床試験を通じて決定することができる比較的広い範囲に入るものであり、特定の応用次第で決まるものである(例えば、眼部への直接の注射は、非常に少ない量を必要とし、一方で、全身注射は、より多くの量を必要とするであろう)。例えば、インビボでのヒト対象の骨格筋又は心筋への直接注射の場合、治療上有効な用量は、ヘアピン末端DNA分子が約1μg~100gのオーダーとなろう。ヘアピン末端DNA分子ベクターを送達するのにエキソソーム又はハイブリドソームが用いられる場合、治療上有効な用量は、実験的に決定することができるが、1μg~約100gのベクターを送達することが期待される。さらに、治療上有効な用量は、疾患の1以上の症状の減少をもたらすが、顕著なオフターゲットや顕著な有害な副作用はもたらさない作用を対象に対して発揮するのに十分な量の導入遺伝子を発現するヘアピン末端DNA分子の量である。一実施態様において、「治療有効量」は、統計学的に有意な測定可能なGSDIIIバイオマーカーの発現の変化又は所与の疾患症状の低減を生じさせるのに十分な、発現GDEタンパク質の量である。そのような有効量は、所与のヘアピン末端DNA分子組成物についての臨床試験及び動物研究で判断することができる。いくつかの実施態様において、導入遺伝子は、GDEの触媒として活性な断片をコードする。「GDEの触媒として活性な断片」は、その触媒機能を保持しているGDEの任意の切断型の形態である。
【0450】
種々の治療計画において本明細書で記載される特定の組成物を用いるための適当な投薬及び治療計画の開発と同様に、医薬として許容し得る賦形剤及び担体溶液の処方は、当業者に周知である。
【0451】
インビトロトランスフェクションの場合、細胞(1×106細胞)に送達されるべき本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子ベクターの有効量は、ヘアピン末端DNA分子ベクターが0.1~100μgのオーダー、好ましくは、1~20μg、及びより好ましくは1~15μg又は8~10μgであろう。より大きなヘアピン末端DNA分子ベクターであれば、より高用量を必要とするであろう。ハイブリドソーム、エキソソーム、又は脂質ナノ粒子が用いられる場合、有効なインビトロ用量は、実験的に決定することができるが、一般に、ヘアピン末端DNA分子ベクターと同じ量が送達されることが意図されるであろう。
【0452】
GSDIIIの治療の場合、本明細書で開示されるGDEタンパク質を発現するヘアピン末端DNA分子ベクターの適切な投薬量は、治療されるべき疾患の具体的な種類、GDEタンパク質の種類、GSDIII疾患の重症度及び経過、それまでの療法、患者の臨床的履歴、及びベクターへの反応、並びに担当の医師の裁量次第で決まるものである。GDEタンパク質をコードするヘアピン末端DNA分子ベクターは、好適には、一回で又は一連の治療にわたって患者に投与される。これらに限定されないが、さまざまな時点にわたる単回又は複数回の投与、ボーラス投与、及びパルス注入などのさまざまな投薬スケジュールが、本明細書において想定される。
【0453】
疾患又は障害の種類及び重症度に応じて、ヘアピン末端DNA分子ベクターは、1以上の別々の投与によって又は連続的な注入によって、コードされているGDEタンパク質が約0.3mg/kg~100mg/kg(例えば、15mg/kg~100mg/kg発現される量、又は該範囲内の任意の適用量)で投与される。ヘアピン末端DNA分子の1つの典型的な一日投薬量は、上で言及した因子に応じて、約15mg/kg~100mg/kgの範囲での又はそれを超えるコードされているGDEタンパク質の発現をもたらすに十分な量である。ヘアピン末端DNA分子1つの例示的な用量は、約10mg/kg~約50mg/kgの範囲で本明細書で開示されるコードされたGDEタンパク質の発現をもたらすのに十分な量である。従って、約0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、3mg/kg、4.0mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、又は100mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)でのコードされているGDEタンパク質の発現をもたらすのに十分な量のヘアピン末端DNA分子の1以上の用量が、患者に投与され得る。
【0454】
いくつかの実施態様において、インビボでのGDEをコードするヘアピン末端DNAの治療上有効な用量は、約0.001~約500mg/kg体重の用量とすることができる。例えば、治療上有効な用量は、約0.001~0.01mg/kg体重、又は0.01~0.1mg/kg、又は0.1~1mg/kg、又は1~10mg/kg、又は10~100mg/kgであり得る。いくつかの実施態様において、GDEをコードするヘアピン末端DNA分子は、約0.1~約10mg/kg体重、例えば、約0.5~約5mg/kg、約1~約4.5mg/kg、又は約2~約4mg/kgの範囲の用量で提供される。
【0455】
別の実施態様において、インビボでのGDEをコードするヘアピン末端DNAの治療上有効な用量は、少なくとも約0.001mg/kg体重、又は少なくとも約0.01mg/kg、又は少なくとも約0.1mg/kg、又は少なくとも約1mg/kg、又は少なくとも約2mg/kg、又は少なくとも約3mg/kg、又は少なくとも約4mg/kg、又は少なくとも約5mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、少なくとも約50mg/kgの、又はそれを超える用量とすることができる。いくつかの実施態様において、GDEをコードするヘアピン末端DNAは、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg又は約6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、もしくは100mg/kgの用量で提供される。
【0456】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、50mg~2500mgの範囲の総用量のコードされているGDEタンパク質の発現をもたらすのに十分な量である。ヘアピン末端DNA分子の例示的な用量は、約50mg、約100mg、200mg、300mg、400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約720mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、約2000mg、約2050mg、約2100mg、約2200mg、約2300mg、約2400mg又は約2500mg(又はそれらの任意の組み合わせ)のコードされているGDEタンパク質の総発現量をもたらすのに十分な量である。ヘアピン末端DNA分子からのGDEタンパク質の発現は、本明細書の調節性スイッチ、あるいは、対象に投与されるヘアピン末端DNA分子の複数回の用量によって慎重に制御することができるために、ヘアピン末端DNA分子からのGDEタンパク質の発現を、発現されるGDEタンパク質の用量が、ヘアピン末端DNA分子から断続的に、例えば、毎週、2週ごと、3週ごと、4週ごと、毎月、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、又は6ヶ月ごとに投与され得るように制御することができる。この療法の推移は、慣用の技術及びアッセイによってモニタリングすることができる。
【0457】
ある実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、15mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kgの用量で又は例えば、300mg、500mg、700mg、800mgのもしくはそれを超える一律の用量でコードされているGDEタンパク質の発現をもたらすのに十分な量で投与される。
【0458】
いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子からのGDEタンパク質の発現は、ある期間にわたり毎日、1日おき、毎週、2週ごと、又は4週ごとにGDEタンパク質が発現されるように制御される。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子からのGDEタンパク質の発現は、ある期間にわたり2週ごと又は4週ごとにGDEタンパク質が発現されるように制御される。ある実施態様において、期間は、6ヶ月、1年、18ヶ月、2年、5年、10年、15年、20年、又は患者の一生涯である。
【0459】
治療は、単回投与又は複数回投与の実施を伴い得る。いくつかの実施態様において、2回以上の用量を、対象に投与することができる。何らかの特定の理論又は機構によって束縛されることは望まないが、ウイルスベクターと比較すると、複数回投与を、必要に応じて実施することができる。これは、ヘアピン末端DNA分子が、ウイルス由来のタンパク質の非存在のために抗ウイルス性の宿主免疫応答を誘発しないためである。従って、当業者は、適切な用量の回数を容易に決定することができる。投与される用量の回数は、例えば、1~100回の用量のオーダー又は2~50回の用量のオーダーとすることができる。
【0460】
ある実施態様において、前記ヘアピン末端DNAの第1の投与と第2の投与との間隔は、約0.5時間、1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約2週、約3週、約4週、約5週、約6週、約7週、約8週、約9週、約10週、約11週、約12週、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、又はそれよりも長くすることができる。
【0461】
何らかの特定の理論によって束縛されることは望まないが、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含む組成物の投与によって誘発される典型的な抗ウイルス性の免疫応答がないこと(すなわち、抗ウイルスタンパク質応答の非存在)は、複数の機会にGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子がホストに投与されることを可能とする。いくつかの実施態様において、GDEの発現のためのヘアピン末端DNA分子が対象に送達される機会の数は、2~10回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回)の範囲である。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子は、10回超対象に送達される。
【0462】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の用量は、暦日(例えば、24時間の期間)あたり1回以下で対象に投与される。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子の用量は、2、3、4、5、6、又は7暦日あたり1回以下で対象に投与される。いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の用量は、暦週(例えば、1暦日)あたり1回以下で対象に投与される。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子の用量は、2週に1回以下(例えば、2暦週の期間に1回)対象に投与される。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子の用量は、暦月あたり1回以下で対象に投与される(例えば、30暦日に1回)。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子の用量は、6暦月あたり1回以下で対象に投与される。いくつかの実施態様において、ヘアピン末端DNA分子の用量は、暦年(例えば、365日又は閏年では366日)あたり1回以下で対象に投与される。
【0463】
特定の実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子の2回以上の投与(例えば、2回、3回、4回、又はそれを超える投与)を採用して、さまざまな間隔、例えば、毎日、毎週、毎月、毎年などの期間にわたって所望のレベルの遺伝子発現が達成され得る。
【0464】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるヘアピン末端DNA分子によってコードされる治療用GDEタンパク質は、調節性スイッチ、誘導性又は抑制性プロモーターによって、それが、対象において少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも1週間、少なくとも2週、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月/1年、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年、又はそれを超えて発現されるように調整することができる。一実施態様において、発現は、所定の又は所望の間隔での本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子の反復投与によって達成することができる。
【0465】
治療の期間は、対象の臨床的推移及び療法に対する応答性次第である。一実施態様において、反復される比較的低い維持用量が、はじめのより高い治療用量の後に想定される。
【0466】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるGDEタンパク質の発現のためのヘアピン末端DNA分子を含む医薬組成物は、好都合には、単位剤形で提供できる。単位剤形は、通常、医薬組成物の1以上の特定の投与経路に適合させるものである。いくつかの実施態様において、単位剤形は、眼に直接投与される小滴に適合されている。いくつかの実施態様において、単位剤形は、吸入による投与に適合されている。いくつかの実施態様において、単位剤形は、気化器による投与に適合されている。いくつかの実施態様において、単位剤形は、ネブライザーによる投与に適合されている。いくつかの実施態様において、単位剤形は、エアロゾル発生器(aerosolizer)による投与に適合されている。いくつかの実施態様において、単位剤形は、経口投与、頬側投与、又は舌下投与に適合されている。いくつかの実施態様において、単位剤形は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与に適合されている。いくつかの実施態様において、単位剤形は、網膜下注射、上脈絡膜注射、又は硝子体内注射に適合されている。
【0467】
いくつかの実施態様において、単位剤形は、髄腔内又は側脳室内投与に適合されている。 いくつかの実施態様において、医薬組成物は、局所的投与用に製剤化される。担体物質と組み合わせて単一の剤形を製造することができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じさせる化合物の量である。
【0468】
(5.9.5 アウトカム評価)
治療上有効な用量を、1以上の別々の投与で及び種々の経路で投与することができる。本技術分野において認識されるであろうように、治療上有効な用量又は治療有効量は、主として、本開示の医薬組成物に含有される治療薬剤の総量に基づいて決定される。一般に、治療有効量は、対象に対して意味がある利益(例えば、GSDIIIを治療する、調節する、治癒させる、予防する及び/又は改善すること)を達成するのに十分な量である。例えば、治療有効量は、所望の治療的及び/又は予防的作用を達成するのに十分な量であり得る。一般に、それを必要としている対象に投与される治療薬剤(例えば、GDEをコードするヘアピン末端DNA分子)の量は、対象の特徴に応じて異なるものである。そのような特徴としては、対象の状況、疾患の重症度、全身健康状態、年齢、性別、及び体重が挙げられる。当業者は、これらおよび他の関連する因子に応じて適切な投薬量を容易に決定することができるであろう。加えて、客観的及び主観的アッセイの双方が、最適な投薬量範囲を決定するのに任意に採用され得る。
【0469】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療を受けた対象において肝GDEタンパク質レベルの増加を招き得る。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含む組成物を投与することは、治療前の対象におけるベースラインGDEタンパク質レベルと比較して5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の肝GDEタンパク質レベルの増加をもたらす。ある実施態様において、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前の対象におけるベースライン肝GDEレベルと比較して肝GDEレベルの増加をもたらすであろう。いくつかの実施態様において、ベースライン肝GDEレベルと比較した肝GDEレベルの増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、又はそれを超えるであろう。
【0470】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含む組成物を投与することは、治療前の該対象におけるベースラインGDEタンパク質レベルと比較して肝GDEタンパク質レベルにおいて5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%をもたらす。ある実施態様において、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前の該対象におけるベースライン肝GDEレベルと比較して肝GDEレベルの増加をもたらすであろう。いくつかの実施態様において、ベースライン肝GDEレベルと比較して肝GDEレベルの増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、又はそれを超えるであろう。
【0471】
いくつかの実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、治療前のベースラインレベルと比較して肝臓におけるGDEの発現の増加をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療を受けた対象の肝臓における総蛋白の約10ng/mg以上、約20ng/mg以上、約50ng/mg以上、約100ng/mg以上、約150ng/mg以上、約200ng/mg以上、約250ng/mg以上、約300ng/mg以上、約350ng/mg以上、約400ng/mg以上、約450ng/mg以上、約500ng/mg以上、約600ng/mg以上、約700ng/mg以上、約800ng/mg以上、約900ng/mg以上、約1000ng/mg以上、約1200ng/mg以上、又は約1500ng/mg以上のGDEタンパク質レベルの発現をもたらす。
【0472】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるGDEをコードするヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)、グリコーゲン、及び限界デキストリンから選択されるマーカーのうちの1つ以上のレベルの低下をもたらすであろう。
【0473】
いくつかの実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、生体試料中のALT、AST、ALP、及び/又はCPKレベルの低下をもたらす。いくつかの実施態様において、本明細書に記載されるヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前のベースラインALT、AST、ALP、及び/又はCPKレベルと比較して少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の、生体試料(例えば、血漿又は血清試料)中のALT、AST、ALP、及び/又はCPKレベルの低下をもたらす。いくつかの実施態様において、生体試料は、血漿、血清、全血、尿、又は脳脊髄液から選択される。ある例示的な実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、血清又は血漿試料中の、例えば、ALT活性/リットル(U/l)の単位で測定されるALTレベルの低下をもたらす。いくつかの実施態様において、本開示のヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前のベースラインALTレベルと比較して少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の、生体試料(例えば、血漿又は血清試料)中のALTレベルの低下をもたらす。例示的な実施態様において、本開示のヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前のベースラインALTレベルと比較して少なくとも約50%の、生体試料(例えば、血漿又は血清試料)中のALTレベルの低下をもたらす。さらなる例示的な実施態様において、ALTレベルは、絶食後に、例えば、6、8、10、12、18、又は24時間の絶食後に測定される。
【0474】
別の例示的な実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、血清又は血漿試料中の、例えば、AST活性/リットル(U/l)の単位で測定されるASTレベルの低下をもたらす。いくつかの実施態様において、本開示のヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前のベースラインASTレベルと比較して少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の、生体試料(例えば、血漿又は血清試料)中のASTレベルの低下をもたらす。例示的な実施態様において、本開示のヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前のベースラインASTレベルと比較して少なくとも約50%の、生体試料(例えば、血漿又は血清試料)中のASTレベルの低下をもたらす。さらなる例示的な実施態様において、ASTレベルは、絶食後に、例えば、6、8、10、12、18、又は24時間の絶食後に測定される。
【0475】
ALT、AST、ALP、及び/又はCPKレベルの測定は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて、例えば、Liuらの文献2014, Mol Genet and Metabolism 111 : 467-76に記載されているようなFuji Dri-Chem Clinical Chemistry Analyzer FDC 3500を用いて行うことができる。
【0476】
別の例示的な実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、生体試料中のグリコーゲンレベルの低下をもたらす。いくつかの実施態様において、本開示のヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前のベースライングリコーゲンレベルと比較して少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の、生体試料(例えば、肝臓試料)中のグリコーゲン蓄積量の減少をもたらす。いくつかの実施態様において、生体試料は、肝臓、心臓、横隔膜、四頭筋、及び腓腹筋から選択される器官の一部である。例示的な実施態様において、生体試料は、肝切片、例えば、肝細胞の切片である。
【0477】
別の例示的な実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、生体試料内の限界デキストリンレベルの低下をもたらす。いくつかの実施態様において、本開示のヘアピン末端DNA分子を含む組成物の治療上有効な用量を投与することは、治療前のベースライン限界デキストリンレベルと比較して少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の、生体試料(例えば、肝臓試料)中の限界デキストリン蓄積の減少をもたらす。いくつかの実施態様において、生体試料は、肝臓、心臓、横隔膜、四頭筋、及び腓腹筋から選択される器官の一部である。例示的な実施態様において、生体試料は、肝切片、例えば、肝細胞の切片である。さらなる例示的な実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、治療前のベースライン限界デキストリンレベルと比較して少なくとも50%、60%、70%、又は80%の、肝臓試料中の限界デキストリンレベルの低下をもたらす。
【0478】
さらなる実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、治療を受けた対象における肝線維症の発症(onset)を遅らせる。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量は、定期的に投与される場合、GSDIIIに罹患している対象における肝線維症の進行(development)を減速するか又は肝線維症の量を減少させる。
【0479】
(5.10 キット)
別の態様において、本明細書で提供されるのは、ヒトGDEをインビボで、例えば、ヒト患者において発現させるためのキットである。いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるキットは、0.1~500mgの本明細書で提供される1種以上のDNA分子を含む。いくつかの実施態様において、キットは、前記用量を投与するための装置をさらに含む。いくつかの実施態様において、装置は、注射針である。
【0480】
本明細書で引用される全ての特許出願、刊行物(特許及び特許出願、科学文献、又は任意の他の刊行物)、特許、GenBank引用及び他のデータベース引用、ウェブページ上の開示、商用のカタログ、並びに他の引例は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0481】
(6. 実施例)
いくつかの実施態様を説明してきた。それでもやはり、本セクション(すなわち、セクション6)のさまざまな実施例が、説明の目的のためだけに本明細書の特定の実施態様を記載しており、請求項又は本開示に記載される範囲を限定しないことが理解されるであろう。さまざまな変更を、本明細書で提供されることの趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0482】
(6.1 実施例1-ベクターをコードするプラスミドの製造)
AGL発現カセットをコードする核酸配列を、インシリコで設計した。構築体1は、改変された左のITR、ヒトPGKプロモーター、AGL ORF、bGHポリ(a)、右のITR、及び該右のITRの113塩基対下流の、ニッキングエンドヌクレアーゼ用の二重の制限部位(double restriction sites)をコードしている。
【化2】
【0483】
構築体1は、商用のDNA合成供給業者によって合成され、pUC57骨格内にクローニングされた(プラスミド1)。
【0484】
構築体2を合成し、インサート、抗生物質耐性、及びプラスミド2を生成する起点の間にいくつかのダブルニッキング部位を含む合成の骨格を用いて環状化させた。
【0485】
骨格1:
【化3】
【0486】
プラスミド1及び2を形質転換し、次いで、NEB安定又はMDS-42菌株内で1晩増幅させ、それに続き、市販のプラスミド単離キット(Nucleobond Xtra Maxi Plus EF (Macherey Nagel))を用いてプラスミド単離を行い、TEバッファーに溶解させた。
【0487】
(構築体1について)
構築体1上にニックを誘導するために、ニッキングエンドヌクレアーゼNt.BstNBI(6.2U/μg DNA)を、1×Neb3.1バッファー中の単離された構築体1に添加し、55℃で1時間インキュベートした。次いで、プラスミド骨格からITRに隣接する導入遺伝子を解離させるために、ニッキングされたプラスミドを含有する反応混合物を、加熱振盪機上で10分間95℃に加熱し、次いで、混合物を室温まで30分放冷して、一本鎖オーバーハング末端でのITRフォールディングを可能とした。次いで、反応混合物に、制限酵素PvuII及びRecBCDエキソヌクレアーゼV(それぞれ、ニッキングされたプラスミドの1マイクログラムあたり0.157U及び0.625U)の双方、並びにアデノシン三リン酸(1mMの終濃度)を追加した。次いで、反応混合物を、振盪機に37℃で120分載せて、制限酵素に骨格断片を切断させ、エキソヌクレアーゼに骨格断片を消化させた。一般に、エキソヌクレアーゼは、閉じた末端(closed end)で保護されている直鎖状断片を消化しない。最後に、反応混合物を、Takara NucleoSpin Gel及びPCRクリーンアップキットを用いて精製し、残っているITRに隣接するベクターを、製造業者の説明書に従って溶出させた。
【0488】
(構築体2について)
ニックを誘導し構築体2を直鎖化させるために、ニッキングエンドヌクレアーゼnb.BsrDI (0.5U/μg DNA)を、1×Neb3.1バッファー中の単離された構築体2に添加し、55℃で120分インキュベートした。次いで、ITRに隣接する導入遺伝子をプラスミド骨格から解離させるために、ニッキングされた構築体2を含有する反応混合物を、サーモサイクラー上で95℃に3分間加熱し、それに続き、サーモサイクラー内で0.05℃/sの勾配で40℃まで冷却した。次いで、反応混合物に、エキソヌクレアーゼV(DNAの1マイクログラムあたり2.5U)及びアデノシン三リン酸(1mMの終濃度)を追加した。次いで、反応混合物を、振盪機に37℃で120分載せて、制限酵素に骨格断片を切断させ、エキソヌクレアーゼに骨格断片を消化させた。一般に、エキソヌクレアーゼは、閉じた末端で保護されている直鎖状断片を消化しない。 最後に、反応混合物を、Takara NucleoSpin Gel及びPCRクリーンアップキットを用いて精製し、残っているITRに隣接するベクターを、製造業者の説明書に従って溶出させた。
【0489】
ニッキングされ変性/再生された消化抵抗性のDNA産物を、非変性アガロースゲル電気泳動によって可視化した。
【0490】
構築体1の場合、アガロースゲル(図6C)は、レーン3にニッキングされたプラスミド、レーン4に変性/再生されたDNA産物、及びレーン8に消化抵抗性ベクターの単一のバンドを示す。
【0491】
(6.2 実施例2 LNP及びハイブリドソームのトランスフェクション)
脂質ナノ粒子を、Nanoassemblr(商標)マイクロ流体システム(Precision NanoSystems)において製造業者の説明書に従って調製した。所望の処方に応じて、前もって形成されるベシクルの手法のものと類似の、適切なモル比(例えば、40:40:18:2)のイオン化可能な脂質(例えば、MC3)、双性イオン脂質(例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルグリセロホスホコリン(DOPC)、膜の完全性を提供する成分(例えば、ステロール、例えば、コレステロールなど)、及びコンジュゲートした脂質分子(例えば、PEG-脂質、例えば、平均PEG分子量が2000のl-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(「PEG-DMG」)など)からなるエタノール溶液を10mMの総脂質濃度で調製した。さらに、DNA対脂質のw/w比が約14であるDNA水溶液を、pH4.0の25mMの酢酸バッファー中に調製した。製造の総体積に応じて、1ml及び3mlのシリンジを用いて、12ml/分の総流速の入口での流れを生じさせた。各処方について、DNA水溶液を、エタノール-脂質溶液と3:1の流速比(Aq:Et)で室温で混合した。次いで、生成物をPBSに対し透析して、残留エタノールを除去するとともにpHを7.4まで上昇させた。
【0492】
エキソソーム製造については、その全体が引用により本明細書に組み込まれるNordinらの文献、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」、vol 1953. Humana Press、New York、NY (2019)に記載されているように、撹拌されたバイオリアクター内で灌流モードで細胞を増殖させ、接線流濾過及びそれに続くCaptocore 700液体クロマトグラフィーによってエキソソームの単離を行った。
【0493】
分化した非分裂HepRG細胞を、96ウェルプレート内にプレーティングし、HepaRG(商標) Maintenance/Metabolism培地中で維持した。細胞を、5% CO2加湿インキュベーター内で37℃で成長させた。細胞を、分泌型TurboLucをコードする本明細書に記載されるヘアピン末端DNAベクターを11fmol用いてトランスフェクションさせた。US15/112,180に概略が示されているように、トランスフェクションは、エキソソームを脂質ナノ粒子と融合させることによって作製したハイブリドソームを用いて媒介させた。比較として、細胞に対してさらに、脂質ナノ粒子を用いてトランスフェクションを行った。上清の試料を、種々の時点でトランスフェクションを行った細胞から除去し、残りの培地を、新鮮な培地に交換した。上清中のルシフェラーゼ発現レベルのレベルを、Gluc Glow Assayキット(NanoLight Technology)を製造業者の説明書に従って用いて決定した。これを、4週間にわたりいくつかの時点で繰り返した。発現レベルを、図10Aに図示する。
【0494】
(6.3 実施例3 分裂細胞及び非分裂細胞における発現)
2つのITRと隣接する発現カセット内にTurbolucレポーター遺伝子をコードするオープンリーディングフレームを含むように、構築体を作製した。経時的な該ベクターからの分泌型Turbolucの発現を、各細胞培養液中でのルシフェラーゼ活性に基づいて決定した。
【0495】
詳細を述べると、分裂ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK-293T)を、DMEM(10% FCS、1% pen/strep)及び2mM安定グルタミン中で培養し、分化させた非分裂HepRG細胞を、HepaRG(商標) Maintenance/Metabolism培地中で維持した。
【0496】
実施例2に記載されているように、ルシフェラーゼ発現レベルを、種々の時点で非分裂細胞(図10B)及び分裂細胞(図10C)について決定した。ルシフェラーゼ活性を、SynergyMXプレートリーダー(BioTek)を用いて発光を測定することによって決定した。バックグラウンドの分析については、未処理細胞からの生物発光を、上記実施例2に記載したプロトコールに従い測定した。図10Bにみられるように、分泌型Turbolucをコードする構築体3でトランスフェクションを行った非分裂細胞の場合、ルシフェラーゼ活性は、4週間にわたり安定なままである。図10Cにみられるように、ルシフェラーゼ活性は、分裂細胞では第2日にピークとなり、時間とともに徐々に低下する。直接の比較として、構築体3をコードする等モル量の完全な環状プラスミドも、トランスフェクションさせた。図10B及び図10Cにみられるように、ルシフェラーゼ活性は、分裂細胞及び非分裂細胞の双方において時間とともに低下した。
【0497】
(6.4 実施例4: GDE活性アッセイ)
GDEアッセイのために、β-限界デキストリン(Megazyme)を基質として使用して、GDEのグルカントランスフェラーゼ及びα-1,6-グルコシダーゼの複合酵素活性を定量化した。DMEM/F12+15% FBS中のGDSIII患者(Coriell GM00226)健康な対象(OUMS-36T-2F)由来の線維芽細胞。細胞1,000,000個を、トリプシンを用いて剥離させss、冷PBSで3回洗浄し、300gでペレット化した。細胞ペレットを、10mMクエン酸塩、100mM NaCl、0.1% Tween-20、pH6.0中に溶解させ、溶解物を、30℃で16時間β-限界デキストリン(5%、Megazyme)とインキュベートした。各試料の上清中に放出されたグルコースの量を、グルコースHKキット(Megazyme)を用いて定量化した。結果を、以下の表22に示す。
(表22: 残留グルコース活性)
【表22】
【0498】
GDE発現を試験するために、GM00226細胞又はC2C12細胞(3×104/ウェル)を96ウェルプレート内に播種した。24時間後、100ng、50ng、又は10ngのGDEをコードするヘアピン末端DNAベクター(実施例1の精製した構築体1)を用いて細胞をトランスフェクションした。48時間後、細胞を氷冷PBSで洗浄し、細胞を10mMクエン酸塩、100mM NaCl、0.1% Tween-20、pH 6.0中ですすぐことによって、GDE活性を測定しアッセイし、次いで、溶解物を、β-限界デキストリン(5%、Megazyme)と30℃で16時間インキュベートした。各試料の上清中の放出されたグルコースの量を、グルコースHKキット(Megazyme)を用いて定量化した。放出されたグルコースに対する量を、図8A及び図8Bに示す。
【0499】
(6.5 実施例5: 飢餓後のグリコーゲン含量)
GSDIII患者由来及び野生型(OUMS)の線維芽細胞を、10%ウシ胎仔血清を追加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で96ウェルで増殖させた。細胞を、10fmolのGDE又は対照としてのGFPのいずれかをコードするヘアピン末端DNA分子でリポフェクションした。48時間後、培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した。細胞飢餓を、2mM安定グルタミンを追加したグルコース不含DMEM中1時間又は4時間の線維芽細胞のインキュベーションによって行った。
【0500】
グルコース飢餓後、上清を除去した。次いで、細胞をHCl 0.6M及びトリトンで処理した。従って、26μL PBS、5μL HCl、及び5μLのトリトン(10%ストック)を、細胞に添加し、一定の振盪を行いながらインキュベートした。
【0501】
不活性化/溶解を、3.6μLトリス(1M、pH 10.7)の添加によって停止させ、30秒の振盪後、グリコーゲン分解酵素:α-アミラーゼ(16.6ユニット)、アミログルコシダーゼ(0.066ユニット)、及びα-グルコシダーゼ(6ユニット)を、ウェルに添加した。次いで、そのプレートを、37.5℃で1時間インキュベートした。
【0502】
グルコース検出(Promega Glucose Glo Assay)試薬を、製造業者のプロトコールに従い準備した。10μLの各試料を、プレートから取り出し、検出プレートに移した。40μLのPBS及び50μLの検出試薬を添加した。発光をプレートリーダーで記録した。Glucose Glo Assayによって検出されたグルコースに変換されたグリコーゲンの量を、図9A及び図9Bに示す。
グルコース飢餓にもかかわらず、GSDIII患者由来の線維芽細胞は、GFP対照で処理された場合に高いグリコーゲン含量を示し、GDE構築体で処理された場合に低い含量を示した。野生型GDE発現線維芽細胞は、GFP又はGDEをコードするDNA構築体どちらでの処理の後にも、グルコース飢餓後に類似のグリコーゲン含量を有していた。
(6.6 実施例6: ヘアピン末端GDE DNA構築体でのGSDIIIの治療)
本明細書に記載されるGDEをコードするヘアピン末端DNAは、導入遺伝子として発現される場合にGSDIIIの治療に有用であると考えられる。GSDIIIを呈する対象に、治療上有効な濃度のGDEタンパク質を送達しかつ維持するのに十分な用量でGDEをコードするヘアピン末端DNA-ベースのベクターが静脈内投与される。治療後に、対象は、GSDIIIの症状の改善について評価される。ヘアピン末端DNAベースのベクターの12時間の絶食後に正常ケトン血(normoketonemia)を誘導する能力が決定される。
(6.7 実施例7: 動物モデルにおけるGDEでのGSDIIIの治療)
ヒトGDEベースのベクターは、導入遺伝子として発現される場合にGSDIIIの治療に有用であると考えられる。GSDIIIの動物モデル、例えば、Liu, K.M.らの文献; Mol. Genet. Metab. 2014, 111, 467-476(マウス)、Pagliarani, Sらの文献Biochim. Et Biophys. Acta 2014, 1842, 2318-2328 (マウス), Vidal, Pらの文献; Mol. Ther. J. Am. Soc. Gene Ther. 2018, 26, 890-901(マウス)に、又はGregory, B.Lらの文献「カーリーコーテッド・レトリーバーにおける糖原病III型(Glycogen storage disease type IIIa in curly-coated retrievers)」 J. Vet. Intern. Med. 2007, 21, 40-46(イヌ)に記載の動物モデルに、治療上有効な濃度のGDEタンパク質を送達しかつ維持するのに十分な用量でGDEをコードするヘアピン末端本明細書に記載されるDNA分子が静脈内投与される。治療後に、動物を当該特定の動物モデルにおける当該疾患と整合性のある症状の改善について評価する。ヘアピン末端DNAベースのベクターの12時間の絶食後に正常ケトン血を誘導する能力が決定される。
【0503】
(6.8 実施例8: GSDIIIの臨床プロトコール治療)
以下の実施例は、GSDIIIを治療するためにヒト対象をGDEをコードするヘアピン末端DNA分子で処置するのに用いてもよい提案されるプロトコールを列挙する。
【0504】
(患者集団)
治療されるべき患者は、以下の男性又は女性を含み得る:
・AGL遺伝子における両アレル上の病原性変異に基づくGSDIII又は肝臓、筋肉、又は線維芽細胞の生検に基づくGDE欠乏症の確認された診断歴を有する
・血中グルコースが<60mg/dL(<3.33mmol/L)である≧1回の低血糖事象の文書によって証明さる病歴を有する
・患者のGSDIII疾患が、スクリーニング受診前4週間の期間に重篤な低血糖のための入院がないことによって証明される程度に安定である。
・主要除外基準:
○スクリーニング又はベースライン(第0日)血糖値<60mg/dL(<3.33mmol/L)
○肝移植(肝細胞療法/移植を含む)
○大きさが>5cmの肝腺腫の存在
○≧0.5cm/年の文書で証明された年間成長速度を有する、大きさが>3cmかつ≦5cmの肝腺腫の存在
○遺伝子療法。
【0505】
脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle)内に封入されたヒトGDE発現カセットを含むヘアピン末端DNA分子が、治療のために使用される。LNPは、IV投与後の肝臓でのGDEタンパク質の効率的な発現を可能とする。ヘアピン末端DNA分子は、逆方向末端反復(複数)に隣接する二本鎖のGDE発現カセットを含む。
【0506】
前述のことから、特定の実施態様を、説明の目的のために本明細書に記載してきたが、さまざまな変更を、本明細書で提供されることの趣旨及び範囲から逸脱することなく行い得ることが認識されるであろう。上で言及した引例は全て、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024517427000001.app
【国際調査報告】