(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】完全液体換気システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20240415BHJP
A61F 7/12 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61M16/00
A61M16/00 380
A61F7/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565198
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022060645
(87)【国際公開番号】W WO2022223751
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523399072
【氏名又は名称】オリクサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ポーブラント,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ナドー,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】マリン,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】バジョレット,アイメリク
(72)【発明者】
【氏名】ミショー,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA05
4C099EA05
4C099PA01
4C099TA00
(57)【要約】
本発明は、哺乳類の肺に呼吸用液体を送給するように構成された完全液体換気システムに関し、この完全液体換気システムは、吸気回路、呼気回路、ポンプシステム、熱ユニット、ガス注入システム、および呼吸用液体処理ユニットを備え、呼吸用液体処理ユニットは、バッキングデバイス、プレート、およびバッグを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の肺に呼吸用液体を送給するように構成された完全液体換気システム(S)であって、前記完全液体換気システムは、吸気回路(60)と、呼気回路(70)と、呼吸用液体処理ユニット(1)とを備え、前記呼吸用液体処理ユニット(1)は、
二相混合体を得るために前記呼吸用液体にガス混合体を注入するように構成されたガス注入システム(30)と、
前記二相混合体を加熱および/または冷却するように構成された熱交換システム(10)であって、
機械的支持を提供するように構成されたバッキングデバイス(11)と、
制御された温度であるように構成された少なくとも1つのプレート(12)と、
前記少なくとも1つのプレート(12)と前記バッキングデバイス(11)との間に位置し、少なくとも2つの対向表面と、前記呼気回路(70)に流体接続された流体入口(131)と、前記吸気回路(60)に流体接続された流体出口(132)とを備えるバッグ(13)と、
を備える、熱交換システム(10)と、
流体ダクト(134)を介して前記流体入口(131)から前記流体出口(132)に前記二相混合体を循環させるためのポンプ(41)を備えるポンプシステムと、
を備え、
前記バッキングデバイス(11)、前記少なくとも1つのプレート(12)、および前記バッグ(13)は、前記バッグ(13)の流体入口(131)と流体出口(132)との間に延びる流体ダクト(134)を画定するように構成され、前記流体ダクト(134)は、前記流体入口(131)と前記流体出口(132)との間の距離よりも大きい長さを有する、完全液体換気システム(S)。
【請求項2】
前記流体ダクト(134)との閉回路を画定するために、前記流体出口(132)および前記流体入口(131)を接続するように構成された再循環回路を更に備え、
前記ポンプ(41)は、前記再循環回路内で前記呼吸用液体を循環させるためのものである、請求項1に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項3】
前記バッグ(13)は、ガス出口(133)と、前記ガス出口(133)に取り付けられた圧力制御弁とを更に備える、請求項1または請求項2に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項4】
前記バッグ(13)は、シール境界を備え、前記流体ダクト(134)は、前記シール境界に包囲された、前記バッグ(13)の非シール部分によって画定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプレート(12)および/または前記バッキングデバイス(11)は、レリーフパターンまたは凹パターンを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項6】
前記バッキングデバイス(11)は、前記少なくとも1つのプレート(12)に平行なプレートであり、前記少なくとも1つのプレート(12)から、0mm~20mmの距離、好適には4mm~15mmの距離だけ離間する、請求項1~5のいずれかに記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項7】
前記流体ダクト(134)は、前記流体入口(131)と前記流体出口(132)との間に延びる蛇状ダクトを備え、前記呼吸用液体からガスを分離するための流体リザーバ(135、135a)は、前記蛇状ダクトおよび前記バッグ(13)のガス出口(133)と流体接続される、請求項1~6のいずれかに記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項8】
前記流体リザーバ(135、135a)は、0.1L~1Lの容積を有する、請求項7に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項9】
呼気ポンプ(51ex)からの呼吸用液体を緩衝剤処理するための第2のリザーバ(135b)、および/または
吸気ポンプ(51in)に送給される呼吸用液体を緩衝剤処理するための第3のリザーバ(135c)
を更に備える、請求項1~8のいずれかに記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項10】
前記第2のリザーバ(135b)および/または前記第3のリザーバ(135c)は、前記バッグ(13)内に一体化される、請求項9に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項11】
前記ガス注入システム(30)は、前記バッグ(13)の流体入口(131)に流体接続されたガス混合チャンバ(31)を備える、請求項1~10のいずれかに記載の完全液体換気システム。
【請求項12】
前記バッグ(13)は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)を備えるグループから選択されたプラスティック材料で作られる、請求項1~11のいずれか1項に記載の完全液体換気システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の完全液体換気システム(1)において、呼吸用液体に熱交換およびガス交換を提供するための方法であって、前記方法は、
前記ガス注入システム(30)によって、二相混合体を得るために前記呼吸用液体にガス混合体を注入すること(S10、S20)と、
前記ポンプ(41)によって、前記バッグ(13)の入口(131)を介して前記二相混合体を前記流体ダクト(134)内に揚水すること(S30)と、
を備える、方法。
【請求項14】
前記呼吸用液体にガス混合体を注入するステップ(S10)は、
ノズルを備える混合チャンバ(31)内に酸素を備えるガス混合体を導入することと、
前記混合チャンバ(31)内に前記呼吸用液体を導入することと、
前記混合チャンバ(31)のノズルを介して前記ガス混合体および前記呼吸用液体を導くことによって、前記呼吸用液体およびガスマイクロバブルを備える二相混合体を生成することと、
を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バッグ(13)の流体入口(131)から前記流体出口(132)に前記二相混合体を導くこと(S40)と、
前記ポンプ(41)によって、前記流体出口(132)から前記流体入口(131)に前記二相混合体を揚水すること(S50)と、
を更に備える、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バッグ(13)内に前記二相混合体を注入する前に、前記バッグ(13)内にガス混合体を注入すること(S20)を更に備える、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全液体換気の分野に関する。特に、本発明は、完全液体換気システムにおいて呼吸用液体に熱交換およびガス交換を提供するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式人工呼吸器は、重態患者の換気機能を補助するために使用される機械であり、患者の自発的な換気が回復され得るまで、肺の機能に代替するものである。
【0003】
機械式人工呼吸器は、限られた時間、肺機能に代替するために使用され得るが、たとえばCOVIDおよび他の感染病原体によって誘発されるような呼吸困難の場合によっては、その炎症誘発効果によって限界に直面する。
【0004】
また、機械式人工呼吸器は、たとえば人工呼吸器誘発肺損傷(VILI)などの肺障害の原因になり得る。
【0005】
完全液体換気(TLV)方法は、換気における根本的な転換を保証するものである。完全液体換気において、哺乳類は、酸素含有ガス混合体ではなく、たとえばパーフルオロカーボンなどの、酸素および二酸化炭素に対し高い溶解度を有する呼吸用液体で換気される。
【0006】
酸素が呼吸用液体に完全に溶解しているため、気液界面がなくなり、肺コンプライアンスが向上する。コンプライアンスの向上に加えて、完全液体換気は、肺炎症を誘発しないことが示されている。また、呼吸補助以外の用途の観点では、TLVは、血液プールとの熱交換器として肺を用いることを可能にする。
【0007】
完全液体人工呼吸器と従来の人工呼吸器とのこれらの実質的な違いは、液体人工呼吸器が臨床上安全であると証明されれば、心停止による虚血再灌流障害から重要な臓器(脳、心臓、腎臓、肝臓・・・)を保護するために超急速低体温療法を誘発するため、急性呼吸窮迫症候群における呼吸補助を提供し、または肺洗浄を可能にするためなど、様々な医療現場での使用を可能にする。
【0008】
完全液体人工呼吸器は、従来、呼吸用液体中の二酸化炭素を除去し、二酸素を導入するように構成された酸素供給器を備える。呼吸用液体は、酸素供給器の通過と同時に、またはその前や後に、冷却または加熱され得る。
【0009】
酸素が豊富化され、所望の温度にされ、新しくなった呼吸用液体は、気管内チューブおよび吸気ポンプを介して被験者の肺に再導入され、その後、気管内チューブおよび呼気ポンプを介して肺から排出され得る。このように、被験者の肺を呼吸用液体で満たし、被験者の血液区画と熱およびガスを交換することが可能である。
【0010】
金属ベースの熱伝達システムを用いて熱流体を冷却するための冷却ユニットとして、氷または冷水浴槽、蒸発器、またはプロパン冷蔵庫を使用し、呼吸用液体と熱流体を冷却する冷却ユニットとの間で熱を交換することで、呼吸用液体を所望の温度にすることができる。これらの熱交換システムは、臨床現場で通常使用するための医療用デバイスの要件に適合していない。第1に、温度調節が正確ではなく、患者を過少または過大に冷却するリスクを伴う。第2に、これらの金属ベースの解決策は、確実に無菌の治療アプローチに適合しておらず、すなわち、患者の肺に接触することになる呼吸用液体が、金属の熱交換機の壁に付着した前の患者の残留物で汚染されることはないことを保証することはできない。これらのシステムの別の欠点は、呼吸用液体との熱伝達が緩慢で非効率的である点である。
【0011】
本発明の目的は、現在、完全液体人工呼吸器の使用を制限している問題点に対する解決策を提供することである。
【0012】
特に、本発明の目的は、呼吸用液体との熱交換およびガス交換が最適化された完全液体人工呼吸器を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、哺乳類の肺に呼吸用液体を送給するように構成された完全液体換気システムに関し、この完全液体換気システムは、吸気回路と、呼気回路と、呼吸用液体処理ユニットとを備える。
【0014】
呼吸用液体処理ユニットは、
二相混合体を得るために呼吸用液体にガス混合体を注入するように構成されたガス注入システムと、
二相混合体を加熱および/または冷却するように構成された熱交換システムであって、
機械的支持を提供するように構成されたバッキングデバイスと、
制御された温度であるように構成された少なくとも1つのプレートと、
少なくとも1つのプレートとバッキングデバイスとの間に位置し、少なくとも2つの対向表面と、呼気回路に流体接続された流体入口と、吸気回路に流体接続された流体出口とを備えるバッグと、
を備える、熱交換システムと、
流体ダクトを介して流体入口から流体出口に二相混合体を循環させるためのポンプを備えるポンプシステムと、
を備え、
バッキングデバイス、少なくとも1つのプレート、およびバッグは、バッグの流体入口と流体出口との間に延びる流体ダクトを画定するように構成され、流体ダクトは、流体入口と流体出口との間の距離よりも大きい長さを有する。
【0015】
有利には、このシステムは、臨床現場で通常使用するための医療用デバイスの要件に適合する。実際、安全かつ無菌のアプローチが保証される。また、温度が正確に制御され得る。
【0016】
また、熱交換システムは、呼吸用液体との熱交換およびガス交換を同時に提供することが可能である。
【0017】
流体入口と流体出口との間に延びる流体ダクトの長さを、上記流体入口と流体出口との間の距離よりも大きい長さにすることで、熱交換システム内の呼吸用液体の滞留時間が、熱およびガスの交換を完了するために十分な長さであることが保証される。
【0018】
1つの実施形態において、このシステムは、流体ダクトとの閉回路を画定するために、流体出口および流体入口を接続するように構成された再循環回路を更に備え、ポンプシステムのポンプは、再循環回路内で呼吸用液体を循環させるためのものである。
【0019】
有利には、流体ダクトおよび再循環回路によって形成された閉回路内の呼吸用液体の循環により、呼吸用液体を吸気回路内に導入する前に、呼吸用液体にいくつかの連続的な処理(たとえば二酸化炭素除去、酸素添加、熱交換、またはそれらの組み合わせ)を提供することが可能である。
【0020】
(閉回路内のループの数に対応する)毎分の処理数は、ポンプシステムのポンプによって呼吸用液体が揚水される流量に依存する。
【0021】
1つの実施形態において、バッグは、ガス出口と、ガス出口に取り付けられた圧力制御弁とを更に備える。
【0022】
有利には、ガス出口は、呼吸用液体を吸気回路内に導入する前に、呼吸用液体からCO2を除去することを可能にする。したがって、吸気ポンプは、哺乳類の気管に挿入されるように構成された気管内チューブ内に、CO2の量が少ない呼吸用液体を揚水することができる。
【0023】
たとえば、流体ダクトは、呼吸用液体からガスを分離するように構成されたリザーバと連通してよく、ガス出口は、上記リザーバの付近に位置してよい。
【0024】
排出されたガス内のCO2濃度を測定するために、ガス出口133にカプノメータが取り付けられ得る。
【0025】
1つの実施形態において、バッグは、シール境界を備え、流体ダクトは、上記シール境界に包囲されたバッグの非シール部分によって画定される。
【0026】
この実施形態において、バッグにパターン(シール境界)が画定される。より正確には、シール境界によって区切られた膨張可能コンパートメントがバッグの非シール部分に画定される。この膨張可能コンパートメントは、呼吸用液体を受容することができる流体ダクトを提供する。
【0027】
有利には、このように流体ダクトは、シール境界によって区切られることにより、向上した気密性を有する。したがって、流体ダクトから呼吸用液体が漏れることが回避される。
【0028】
1つの実施形態において、少なくとも1つのプレートおよび/またはバッキングデバイスは、レリーフパターンまたは凹パターンを備える。
【0029】
制御された温度のプレート上および/またはバッキングデバイス上のパターンは、上述したバッグ上のパターンと併用され、またはこれに代替してよい。
【0030】
たとえば、バッグはシール境界を備えてよく、プレートおよび/またはバッキングデバイスは、バッグ上のシール境界と相補的なレリーフパターンを備えてよい。あるいは、バッグはシール境界を備えず、流体ダクトは、プレート上のパターンおよび/またはバッキングデバイス上のパターンの間に挟まれたバッグの一部の内側に画定される。
【0031】
1つの実施形態において、バッキングデバイスは、少なくとも1つのプレートに平行なプレートであり、上記少なくとも1つのプレートから、0mm~20mmの距離、好適には4mm~15mmの距離だけ離間する。
【0032】
この距離により、バッグおよび流体ダクトのための十分な空間が提供される。
【0033】
1つの実施形態において、流体ダクトは、流体入口と流体出口との間に延びる蛇状ダクトを備え、呼吸用液体からガスを分離するための流体リザーバは、蛇状ダクトおよびバッグのガス出口と流体接続される。
【0034】
この場合、流体ダクトは、流体入口と流体出口との間の距離の2倍より長い長さを有する。この流体ダクトは、呼吸用液体からガスを分離するように構成されたリザーバと連通し、ガス出口は、分離されたガスを排出することが可能である。
【0035】
1つの実施形態において、流体リザーバは、0.1L~1Lの容積を有する。
【0036】
この実施形態により、分離されたガスがガス出口を通って排出される前に分離されたガスを収容するために十分な大きさの容積が存在することが確実になる。
【0037】
1つの実施形態において、このシステムは、呼気ポンプからの呼吸用液体を緩衝剤処理するための第2のリザーバを更に備える。
【0038】
有利には、第2のリザーバにより、流体ダクト内およびガス交換システム内の呼吸用液体の流量を一定にすることが可能であり、その結果、上記流体ダクト内で起こる熱およびガス交換が改善される。
【0039】
また、第2のリザーバは、呼気ポンプの過負荷を防ぐ。
【0040】
より正確には、流体ポートにより、呼吸用液体が流体ダクトに到達する前に呼吸用液体を第2のリザーバ内に導入することが可能である。流体ダクト内に導入する前に第2のリザーバ内に液体を集めることにより、呼気ポンプによる過剰な電力消費が防がれる。
【0041】
1つの実施形態において、このシステムは、吸気ポンプに送給される呼吸用液体を緩衝剤処理するための第3のリザーバを更に備える。
【0042】
有利には、第3のリザーバにより、熱交換システム外の緩衝剤バッグの存在が必要でないため、TLVシステムを小型寸法にすることが有利に可能である。より正確には、TLVシステム内の呼吸用液体循環液の体積を低減し、吸気回路を短くすることも可能である。
【0043】
したがって、呼吸用液体処理ユニット内で処理された呼吸用液体がより迅速に吸気ポンプに到達し得ることにより、熱損失が最小限に抑えられる。
【0044】
1つの実施形態において、第2のリザーバおよび/または第3のリザーバは、バッグ内に一体化される。
【0045】
この実施形態により、「オールインワン」バッグを得ることが可能である。有利には、オールインワンバッグにより、呼吸用液体処理中に呼吸用液体が同じ圧力に維持されることが確実になる。
【0046】
1つの実施形態において、ガス注入システムは、バッグの流体入口に流体接続されたガス混合チャンバを備える。
【0047】
ガス混合チャンバは、均一なガス混合をもたらすことが可能である。
【0048】
1つの実施形態において、ガス混合チャンバは、マイクロバブルを生成するように構成されたノズルを備える。
【0049】
この実施形態により、呼吸用液体およびマイクロバブルを備える二相混合体を得ることが可能である。
【0050】
1つの実施形態において、バッグは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)を備えるグループから選択されたプラスティック材料で作られる。
【0051】
有利には、これらの材料は、熱および圧力への耐性が高い。また、これらは、低い熱抵抗を有する。
【0052】
1つの実施形態において、バッグの容積は、1L~7Lである。
【0053】
この容積は、バッグ内に、より正確には流体ダクト内に十分な呼吸用液体が収容され得ることを確実にする。
【0054】
また、バッグは使い捨てバッグであってよい。有利には、使い捨てバッグにより、手作業が最小限になることによって汚染のリスクが低減される。
【0055】
本発明は、上述した実施形態のいずれか1つに係る完全液体換気システムにおいて、呼吸用液体に熱交換およびガス交換を提供するための方法にも関し、その方法は、
ガス注入システムによって、二相混合体を得るために呼吸用液体にガス混合体を注入することと、
ポンプによって、バッグの入口を介して流体ダクト内に二相混合体を揚水することと、
を備える。
【0056】
有利には、この方法により、呼吸用液体に熱交換およびガス交換を同時に提供することが可能である。実際、二相混合体を得るために、呼気ポンプによって引き抜かれた呼吸用液体中にガス混合体を導入することが可能である。流体ダクト内に入ると、二相混合体は、制御された温度のプレートと熱交換することができる。
【0057】
1つの実施形態において、呼吸用液体にガス混合体を注入するステップは、
ノズルを備える混合チャンバ内に酸素を備えるガス混合体を導入することと、
混合チャンバ内に呼吸用液体を導入することと、
混合チャンバのノズルを介してガス混合体および呼吸用液体を導くことによって、呼吸用液体およびガスマイクロバブルを備える二相混合体を生成することと、
を備える。
【0058】
有利には、この実施形態により、酸素を備えるガス混合体を導入することによって、呼気ポンプによって引き抜かれた呼吸用液体を酸素化することが可能である。
【0059】
1つの実施形態において、この方法は、
バッグの流体入口から流体出口に二相混合体を導くことと、
ポンプによって、流体出口から流体入口に二相混合体を揚水することと、
を更に備える。
【0060】
有利には、この実施形態により、流体ダクトおよび再循環回路を備える閉回路内で呼吸用液体を循環させることが可能である。呼吸用液体は、所望の温度およびガス組成に到達するまで、上記閉回路内を所定の回数循環することができる。その後、呼吸用液体は、吸気回路内に導入され、吸気ポンプを介して気管内チューブに送給され得る。
【0061】
1つの実施形態において、この方法は、バッグ内に二相混合体を注入する前に、バッグ内にガス混合体を注入することを更に備える。この実施形態により、バッグが膨張し、熱伝達を最適化するためのバッグとプレートとの接触が確実になる。
【0062】
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0063】
「酸素供給器」とは、酸素と二酸化炭素とのガス交換を提供することが可能なデバイスを指す。
【0064】
本明細書における「ガスが乏しい」とは、ガス除去後の流体中の(濃度、分圧、・・・として測定された)ガス量が典型的には初期ガス量の半分以下であるように、ガス除去プロセスを介して上記ガスが除去された流体を指し、ガス除去プロセスは、膜ベースのプロセス、変換、または他の任意の既知のガス除去プロセスであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】1つの特定の実施形態に係る本発明の完全液体換気(TLV)システムSを示す図である。システムSの呼吸用液体処理ユニット1は、点線の内側に表される。
【
図2】別の実施形態に係るTLVシステムSを示す図である。
【
図3】1つの実施形態に係る本発明の熱交換システム10を示す分解図である。
【
図4】1つの実施形態に係るTLVシステムSを示す図である。
【
図5】TLVシステムS内の呼吸用液体の循環を示す簡略図である。より正確には、
図5Aは、呼気回路70および吸気回路60内の呼吸用液体の循環を示し、
図5Bは、再循環回路内の呼吸用液体の第1の方向への循環を示し、
図5Cは、再循環回路内の呼吸用液体の第2の方向への循環を示す。
【
図6A】1つの実施形態に係る本発明のバッグ13の3次元表現である。
【
図6B】xz平面に平行な垂直平面上で
図6Aのバッグ13を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下の詳細な説明は、図面と併せて読み取られるときに、より適切に理解されることになる。例解の目的のために、システムは、好適な実施形態において示される。ただし、本出願は、図示された配置、構造、特徴、実施形態、および態様そのものに限定されないことを理解すべきである。図面は、縮尺通りに描かれておらず、特許請求の範囲を図示された実施形態に限定することを意図したものではない。したがって、添付の特許請求の範囲において言及される特徴が参照符号を伴う場合、そのような符号は、単に特許請求の範囲を分かり易くするためのものであり、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
TLVシステム
【0067】
本発明は、哺乳類の肺に呼吸用液体を送給するように構成された完全液体換気(TLV)システムSに関し、上記TLVシステムSは、呼吸用液体処理ユニット1、吸気回路60、呼気回路70、およびポンプアセンブリを備える。
【0068】
好適には、呼吸用液体は、パーフルオロカーボンを備える。パーフルオロカーボンは、生体適合性であり、高い酸素および二酸化炭素溶解度を有するため、特にこの目的に適している。
【0069】
【0070】
呼吸用液体処理ユニット1は、TLVシステムS内を循環する呼吸用液体を処理することが可能である。呼吸用液体の処理は、二酸化炭素の除去、酸素の添加、熱交換、またはそれらの組み合わせを備えてよい。呼吸用液体処理ユニット1およびその構成要素は、後に説明されることになる。
【0071】
TLVシステムSの吸気回路60および呼気回路70は、呼吸用液体が循環する導管を備える。
【0072】
ポンプアセンブリは、吸気回路60および呼気回路70の導管を通して呼吸用液体を移動させるように構成されたポンプ(51in、51ex)を備える。より正確には、ポンプアセンブリは、吸気回路60に接続された吸気ポンプ51inおよび呼気回路70に接続された呼気ポンプ51exの少なくとも2つのポンプ(51in、51ex)を備える。たとえば、上記吸気ポンプ51inおよび呼気ポンプ51exは、
図1に示すように、ピストンポンプであってよい。
【0073】
図1において、TLVシステムSの外部にある気管内チューブ2も示される。気管内チューブ2は、哺乳類の気管に挿入されるように構成される。
【0074】
有利には、TLVシステムSの吸気回路60および呼気回路70は、気管内チューブ2に接続されるように構成される。たとえば、それらは、Yコネクタを介して気管内チューブ2に接続されるように構成され得る。
【0075】
気管内チューブ2との接続により、TLVシステムSの吸気回路60および呼気回路70を哺乳類の呼吸器系と連通させることが可能である。したがって、呼吸用液体は、吸気回路60から哺乳類の肺へ、また哺乳類の肺から呼気回路70へ、それぞれ上述した吸気ポンプおよび呼気ポンプ(51in、51ex)を介して送給され得る。
【0076】
より正確には、TLVシステムS内の呼吸用液体の流れは、システムが気管内チューブ2に接続されるときに、
呼吸用液体が処理される呼吸用液体処理ユニット1内を循環すること、
呼吸用液体処理ユニット1から気管内チューブ2に向かって吸気回路60内を循環すること、
哺乳類の肺を呼吸用液体で満たすために、吸気ポンプ51inを介して気管内チューブ2内に送給されること、
哺乳類の肺から呼吸用液体を除去するために、呼気ポンプ51exを介して気管内チューブ2から引き抜かれること
を備える。
【0077】
その後、上記引き抜かれた呼吸用液体は、TLVシステムSの呼吸用液体処理ユニット1に再び到達するまで、呼気回路70内を循環する。上述した呼吸用液体の流れにより、哺乳類に換気サイクルを提供することが可能である。
【0078】
有利には、TLVシステムSのポンプアセンブリは、吸気回路60および呼気回路70の所定の部分を通る呼吸用液体の流れを選択的に可能にするように構成された複数の弁52(明確性のために各図で1度のみ参照される)を更に備える。
【0079】
たとえば、複数の弁52は、吸気ポンプ51inと気管内チューブ2との間の吸気回路60に位置する第1の弁と、気管内チューブ2と呼気ポンプ51exとの間の呼気回路70に位置する第2の弁とを備えてよい。したがって、第1の弁または第2の弁52の一方が閉じられているときに、吸気回路60または呼気回路70は、哺乳類の呼吸器系から隔離される。
【0080】
各構成要素を通る呼吸用液体の流れを選択的に可能にするために、TLVシステムSの構成要素の上流および/または下流に他の弁52が配置され得る。たとえば、1または複数の弁52は、上述した呼吸用液体処理ユニット1を通る呼吸用液体の流れを調節してよい。
【0081】
TLVシステムSは、TLVシステムS内を循環する呼吸用液体の物理的変数を測定するように構成された複数のセンサを更に備えてよい。たとえば、TLVシステムSは、温度センサ、圧力センサ、流量計、カプノメータ、酸素センサなどを備えてよい。
【0082】
TLVシステムSは、コントローラを更に備えてよい。好適には、コントローラは、センサによって測定された信号を受信し、上記信号を処理するように構成される。たとえば、コントローラは、信号を参照値のセットと比較してよい。その後、コントローラは、上記比較の結果に基づいてTLVシステムSの呼吸用液体処理ユニット1および/またはポンプアセンブリを制御してよい。
【0083】
制御ユニットは、TLVシステムSの選択されたコンパートメントにおいて流体ダクト内の呼吸用液体の流れを導くために、弁52の開閉を制御するように更に構成され得る。
【0084】
TLVシステムSは、緩衝剤バッグ入口および緩衝剤バッグ出口を有する緩衝剤バッグ3(吸気緩衝剤バッグ3とも呼ばれる)を更に備えてよい。
【0085】
図1のTLVシステムSにおいて、緩衝剤バッグ入口は、呼吸用液体処理ユニット1の出口に接続され、緩衝剤バッグ出口は、吸気ポンプ51inに接続される。緩衝剤バッグ3は、呼気ポンプ51exを介して、吐き出された呼吸用液体を受け取るように構成される。
【0086】
この例では、バッグ3は二重の機能を有し、すなわち、緩衝剤を生成および維持する役割である緩衝剤バッグの機能と、TLVシステムSの回路を満たす呼吸用液体を収容および貯蔵するように構成された貯蔵バッグの機能とを有する。
【0087】
ただし、代替実施形態において、バッグ3は、TLVシステムSの回路を満たす呼吸用液体を貯蔵するようには構成されない。この場合、TLVシステムSは、呼吸用液体を貯蔵する目的の別のバッグ、容器、またはボックスを備える。
【0088】
好適には、緩衝剤バッグ3は、1L~5Lの容積を有する。
【0089】
ここで、呼吸用液体処理ユニット1は、より詳しく説明されることになる。
BLTU1
【0090】
本発明に係る呼吸用液体処理ユニット1は、
二相混合体を得るために、たとえば医療用空気および/または医療用酸素などのガス混合体を呼吸用液体に注入するように構成されたガス注入システム30、
二相混合体と熱交換するように構成された熱交換システム10、
および
流体ダクト134を介して流体入口131から流体出口132に二相混合体を循環させるためのポンプ41を備えるポンプシステム、
任意選択的に、熱交換システム10と呼吸用液体との間の熱交換の量を制御するように構成された熱ユニット20
を備える。
熱交換システム10
【0091】
熱交換システム10は、熱交換システム10に機械的支持を提供するように構成された少なくとも1つのバッキングデバイス11と、制御された温度であるように構成された少なくとも1つのプレート12(すなわち熱プレート)とを備える。熱交換システム10は、プレート12とバッキングデバイス11との間に位置するバッグ13を更に備える。
【0092】
バッグ13は、呼気回路70に流体接続するように構成された流体入口131と、TLVシステムSの吸気回路60に流体接続するように構成された流体出口132とを備える。
【0093】
図1に示すように、バッグ13の流体入口131は、ガス注入システム30に接続するように更に構成される。この場合、上記入口131に入る呼吸用液体にガス混合体を注入することが可能である。
【0094】
有利には、熱交換システム10のバッキングデバイス11、少なくとも1つのプレート12、およびバッグ13は、流体ダクト134を画定するように構成される。上記流体ダクト134は、バッグ13の流体入口131と流体出口132との間に延びる。上記流体ダクト134は、後に詳しく説明されることになる。
プレート12
【0095】
少なくとも1つのプレート12は、制御された温度であるように構成される。
【0096】
したがって、上記プレート12は、たとえばアルミニウムなど、熱伝導率の高い材料で作られる。
【0097】
有利には、プレート12を制御された温度に維持することによって、流体ダクト134内の呼吸用液体を、吸気回路60内に導入する前に加熱または冷却することが可能である。
【0098】
より正確には、プレート12の制御された温度が流体ダクト134内の呼吸用液体の温度より低い場合、流体ダクト134内の呼吸用液体からプレート12への熱伝達が起こり得る。その結果、流体ダクト134内の呼吸用液体の温度が低下する。
【0099】
プレート12の制御された温度が蛇状ダクト134内の呼吸用液体の温度より高い場合、プレート12から流体ダクト134内の呼吸用液体への熱伝達が起こり得る。その結果、流体ダクト134内の呼吸用液体の温度が上昇する。
【0100】
温度変化率は、流体ダクト134内の呼吸用液体の温度とプレート12の温度との差に依存する。より正確には、温度変化は、上記差が大きいときに最も急速である。
【0101】
上述したように、TLVシステムSは、コントローラを備えてよい。上記コントローラは、流体ダクト134内の呼吸用液体の温度が所定の範囲内であることを保証するために、その温度を制御するように構成され得る。好適には、上記所定の範囲は20℃~45℃である。
【0102】
図1は、呼吸用液体処理ユニット1が熱ユニット20を備えるTLVシステムSを示す。この熱ユニット20は、所定の温度の流体(たとえば水)を収容するように構成されたタンク21を備える。
【0103】
この場合、TLVシステムSのポンプアセンブリは、プレート12を制御された温度にする、または維持するために、熱ユニット20のタンク21からプレート12に向かって上記流体を揚水するための1または複数のポンプ51を更に備えてよい。
【0104】
好適には、流体は、タンク21から熱交換システム10のプレート12に向かって所定の流量で揚水される。
【0105】
たとえば、プレート12は、熱ユニット20のタンク21に流体接続された少なくとも1つの内部チャネルを備えてよい。この場合、プレート12は、内部チャネルを収容するのに十分な大きさの厚さを有する。内部チャネルは、好適にはプレート12内で非直線状に延びるが、プレート12の表面全体を覆うように、複数の襞を有する。これにより、プレート12全体が均一に所望の温度に加熱または冷却されることが確実になる。
【0106】
しかしながら、代替実施形態において、複数の襞はプレート12の表面全体を覆っていない。この実施形態により、呼吸用液体と、チャネルを備えるプレート12の一部との間で熱交換を得ることが可能である。
【0107】
たとえば、内部チャネルは、1mm~20mmの径を有する断面を有してよい。
【0108】
図2は、それぞれ低温流体および高温流体を収容するように構成された第1のタンク21aおよび第2のタンク21bを備える熱ユニット20を備える別のTLVシステムSを示す。
【0109】
プレート12の制御された温度は、プレート12に向かって揚水される流体の流量を変更すること、および/またはタンク21a、21bの温度を変更することによって調節され得る。
【0110】
図2の典型的な実施形態において、少なくとも1つのプレート12は、第1のタンク21aから低温流体を受容するように構成された第1のチャネル、および第2のタンク21bから高温流体を受容するように構成された第2のチャネルの2つの内部チャネルを備えてよい。
【0111】
タンク21a、21b内の流体は水であってよい。この場合、第1のタンク21aは、好適には、水を0℃~20°の温度、更に好適には4℃~10℃に維持することが可能であり、第2のタンク21bは、好適には水を40℃~90℃、更に好適には40℃~60℃に維持することが可能である。
【0112】
プレート12は、抵抗素子またはペルチェセル22を備えてよい。たとえば、上記抵抗素子またはペルチェセル22は、少なくとも1つのプレート12の表面に取り付けられ得る。この場合、熱交換システム10は、抵抗素子またはペルチェセル22に供電するように構成された電流源を備えてよい。
【0113】
この場合、呼吸用液体処理ユニット1は、熱ユニット20を備えなくてよい。
【0114】
プレート12は、本発明の熱交換システム10の分解図を示す
図3においてより良く示される。
【0115】
この例では、プレート12は、レリーフパターンを備える。したがって、バッグ13がバッキングデバイス11とプレート12との間に挟まれているときに、形成される流体ダクト134は、レリーフパターンと同じ形状を有する。より正確には、
図3の点線は、バッキングデバイス11とプレート12との間で圧縮されたバッグ13の一部を表す。流体ダクト134は、上記部分の内側に形成される。
バッキングデバイス11
【0116】
バッキングデバイス11は、熱交換システム10に機械的安定性を提供するように構成される。
【0117】
したがって、上記バッキングデバイス11は、好適には、変形耐性のある硬質材料で作られる。
【0118】
たとえば、上記バッキングデバイス11は、鋼で作られ得る。
【0119】
バッキングデバイス11は、プレートであってよい。たとえばバッキングデバイス11は、制御された温度であるように構成されたプレート12に平行なプレートであってよい。この実施形態の一例が
図3に示される。
【0120】
この場合、バッキングデバイス11およびプレート12は、一定の距離だけ離れている。好適には、バッキングデバイス11とプレート12との間の距離は、0mm~20mm、より好適には4mm~15mmである。
【0121】
図3の例において、呼吸用液体処理ユニット1は、バッキングデバイス11およびプレート12を備える。
【0122】
あるいは、呼吸用液体処理ユニット1は、複数のバッキングデバイス11および/または制御された温度であるように構成された複数のプレート12を備えてよい。
【0123】
図3に示すように、バッキングデバイス11およびプレート12は、垂直平面xz上に表面を有してよく、これは、上記平面上のバッグ13の表面に等しいか、それより大きい。有利には、この実施形態により、バッグ13全体がバッキングデバイス11とプレート12との間に挟まれることが確実になる。
【0124】
あるいは、バッキングデバイス11およびプレート12は、バッグ13の表面よりも小さい表面を有してよい。
【0125】
この場合、バッグ13の一部のみがバッキングデバイス11とプレート12との間に挟まれる。有利には、この実施形態により、バッグ13の挟まれた部分の内部に存在する呼吸用液体の一部のみがプレート12と熱交換し得ることが確実になる。
【0126】
バッキングデバイス11は、制御された温度であるように構成されてもよい。たとえば、バッキングデバイス11は、熱ユニット20に接続され得る。この場合、流体ダクト134は、有利には、所望の温度の構成要素(すなわちバッキングデバイス11およびプレート12)に包囲される。したがって、熱交換に利用可能なエリアが最大化される。
【0127】
バッキングデバイス11は、抵抗素子またはペルチェセル22を備えてよい。たとえば、上記抵抗素子またはペルチェセル22は、少なくとも1つのバッキングデバイス11の表面に取り付けられ得る。この場合、熱交換システム10は、抵抗素子またはペルチェセル22に供電するように構成された電流源を備えてよい。
バッグ13
【0128】
上述したように、バッグ13は、バッキングデバイス11とプレート12との間に挟まれている。
【0129】
好適には、バッグ13は、使い捨てバッグ13である。
【0130】
「使い捨て」とは、バッグ13が一度の使用後に廃棄されるように構成されることを意味する。
【0131】
有利には、使い捨てバッグ13は、手作業を最小限にすることにより、汚染のリスクを低減することを可能にする。
【0132】
たとえば、バッグ13は滅菌バッグであってよく、または滅菌されるように構成され得る。
【0133】
好適には、バッグ13は、1L~7Lに構成された容積を有する。
【0134】
バッグ13は、呼気回路70内を循環する呼吸用液体を受け取るように構成された第1の入口131を備える。
【0135】
バッグ13は、呼吸用液体が流体ダクト134を通って流れると、呼吸用液体を排出するように構成された流体出口132を備える。排出された液体は、流体ダクト134内の通路により、第1の入口131で受容された液体とは異なる温度および/またはガス組成を有する。
【0136】
有利には、バッグ13は、流体ダクト134内で目標圧力に到達するために膨張するように構成される。好適には、バッグ13は、2バールまで膨張するように構成される。
【0137】
膨張中、バッグ13の2つの対向表面は、それぞれプレート12およびバッキングデバイス11に向かって離間する傾向がある。
【0138】
目標圧力において、バッグ13の上記2つの対向表面は、それぞれプレート12およびバッキングデバイス11によって再び圧縮される。これにより、目標圧力におけるプレート12と流体ダクト134との間の最適な熱接触コンダクタンスが存在することが確実になる。したがって、バッグ13を介して、プレート12と流体ダクト134内の呼吸用液体との間の熱接触コンダクタンスによって熱伝導が起こり得る。
【0139】
また、流体ダクト134内で目標圧力に到達するときに、バッグ13の接触表面とプレート12の接触表面との間に存在する熱接触抵抗が減少する。
【0140】
図3に示すように、バッグ13は、端部同士が接合された2つのシートを備えてよい。この場合、バッグ13がガス注入システム30によって膨張するときに、第1のシートは少なくとも1つのプレート12に向かって移動し、第2のシートはバッキングデバイス11に向かって移動する。
【0141】
バッグ13は、10℃~50℃の温度に維持されるように構成され得る。
【0142】
バッグ13は、小さな厚さ、好適には1mm未満、より好適には0.5mm未満を有する。
【0143】
好適には、バッグ13は、0.05~0.5W/m.K、有利には0.1~0.2W/m.Kの熱抵抗を有する材料で作られる。
【0144】
好適には、バッグ13は、プラスティック材料で作られ得る。有利には、バッグ13は、ポリウレタン、たとえば熱可塑性ポリウレタン(TPU)で作られ得る。ポリウレタンは、熱および圧力への耐性がある。また、低い熱抵抗を有する。
【0145】
有利には、バッグ13は、エチレンビニルアセテート(EVA)またはポリ塩化ビニル(PVC)で作られ得る。
【0146】
熱抵抗が低く、および/または厚さが小さい材料で作られたバッグ13は、バッグ13とプレート12との間の熱接触抵抗を低減することが可能である。実際、接触表面間の熱接触抵抗は、接触表面の材料および厚さによる影響も受ける。
【0147】
図3に示すように、バッグ13は、流体ダクト134からガスを排出するように構成されたガス出口133を更に備える。好適には、ガス出口133は、流体ダクト134と連通する、すなわち流体接続されたリザーバ135からガスを排出するように構成される。
【0148】
有利には、ガス出口133により、流体ダクト134内の呼吸用液体からCO2を除去することが可能であるため、バッグ13の第1の出口132を介して吸気回路60内に導入される呼吸用液体は、CO2が乏しい二相混合体である。
【0149】
流体ダクト内に存在するCO2の一部は、ガス出口133から排出され得る。
【0150】
あるいは、流体ダクト内に存在する全てのCO2がガス出口133を介して排出される。
【0151】
排出されたガス中のCO2濃度を測定するために、ガス出口133にカプノメータが取り付けられ得る。
【0152】
また、バッグ13のガス出口133に圧力制御弁が取り付けられ得る。圧力制御弁は、ガス出口133から排出されるガスの量を増減させることを可能にする。
【0153】
CO2に加えて、何らかの他のガスがガス出口133を介して排出され得る。たとえば、O2がガス出口133から排出され得る。
【0154】
バッグ13は、複数の流体入口131および/または複数の流体出口132を有してよい。
【0155】
図4は、バッグ13が1つの流体ポート131a、1つの流体入口131b、および2つの流体出口132a、132bを有するTLVシステムSを示す。
【0156】
流体ポート131aは、有利には、呼吸用液体の双方向の流れを可能にするように構成される。
【0157】
この例では、バッグ13は、
呼気回路70内を循環する呼吸用液体を受容または送給するように構成された流体ポート131a、
ポンプシステムのポンプ41によって揚水された呼吸用液体およびガス注入システム30からのガス混合体を受容するように構成された流体入口131b、
呼吸用液体が流体ダクト134を通ると、呼吸用液体を呼気回路70内に送給するように構成された第1の流体出口132a、
呼吸用液体が流体ダクト134を通ると、呼吸用液体をポンプシステムのポンプ41に送給するように構成された第2の流体出口132b、
流体ダクト134からガスを排出するように構成されたガス出口133
を備える。
ガス注入システム30
【0158】
上述したように、呼吸用液体処理ユニット1は、ガス注入システム30も備える。
【0159】
ガス注入システム30は、バッグ13の入口に接続されるように構成される。
【0160】
ガス注入システム30は、バッグ13を膨張させるように構成される。より正確には、ガス注入システム30は、流体ダクト134内で目標圧力に到達するまで上記バッグ13を膨張させるために、バッグ13の流体入口131にガス混合体を備える呼吸用液体を注入するように構成される。
【0161】
ガス注入システム30は、(i)流体ダクト134内で、呼吸用液体とプレート12との間の熱交換を最適化する目標圧力に到達することを可能にすること、および(ii)流体ダクト134内にある呼吸用液体中にガス混合体を導入することを可能にすることの二重の利点を提供する。
【0162】
呼吸用液体中にガス混合体を注入することにより、ガス混合体および呼吸用液体を備える二相混合体を得ることが可能である。
【0163】
したがって、ガス注入システム30は、流体ダクト134内の呼吸用液体への熱伝達およびガス交換を同時に得ることを可能にする。
【0164】
たとえば、ガス注入システム30は、空気、好適には医療用空気を注入するように構成され得る。
【0165】
あるいは、ガス注入システム30は、空気およびO2の混合体を注入するように構成され得る。
【0166】
上述したように、バッグ13は、呼吸用液体から分離されたガスを排出するように構成されたガス出口133を備える。場合によっては、O2も上記ガス出口133から排出され得る。
【0167】
より正確には、ガス出口133から排出されるO2の量は、ガス注入システム30によって流体ダクト134内に注入されたガスの組成に依存する。注入されたガス中のO2濃度が高いほど、排出されるO2の量も多い。
【0168】
好適には、ガス注入システム30は、21%~100%の濃度のO2を備えるガス混合体を注入するように構成される。
【0169】
呼吸用液体中のO2濃度は、注入されたガス中のO2濃度に基づいて制御され得る。
【0170】
ガス注入システム30は、ガスマイクロバブルを生成するように構成されたノズルを備える混合チャンバ31を備えてよい。
【0171】
たとえば、ノズルは、ベンチュリ型ノズルであってよい。
【0172】
「マイクロバブル」とは、10mm未満の径を有するガス気泡を意味する。たとえば、上記マイクロバブルは、乱流レジメンを介して得られ得る。
【0173】
このマイクロバブルのサイズにより、気泡が二相混合体中に均一に分散することが確実になり、熱交換が最適化される。また、このサイズの気泡は、ガス交換を最大化する相当表面を有する。
ポンプシステム
【0174】
本発明に係る呼吸用液体処理ユニット1は、ポンプシステムを更に備える。
【0175】
ポンプシステムは、流体入口131を介して流体ダクト134内に呼吸用液体を注入するように構成されたポンプ41を備える。たとえば、上記ポンプ41は、遠心ポンプであってよい。
【0176】
より正確には、呼吸用液体処理ユニット1は、流体ダクト134との閉回路を画定するために流体出口132および流体入口131に接続するように構成された再循環回路を備え、上記再循環回路内の呼吸用液体の循環は、ポンプシステムのポンプ41によって確実になる。
【0177】
したがって、再循環回路内の呼吸用液体の循環は、
流体ダクト134内を循環すること、
流体ダクト134内を循環した後、流体出口132から引き抜かれること、
再循環回路内を循環すること、
流体入口131を介して流体ダクト134内に再注入されること
を備える。
【0178】
ポンプシステムのポンプ41によって、流体入口131を介して流体ダクト134内に処理された呼吸用液体を再注入することにより、吸気回路60内に導入する前に、呼吸用液体にいくつかの連続的な処理(たとえば二酸化炭素除去、酸素添加、熱交換、またはそれらの組み合わせ)を提供することが可能である。
【0179】
毎分の処理数は、呼吸用液体がポンプ41によって揚水される流量に依存する。
【0180】
図4に示すように、吸気回路60、呼気回路70、および再循環回路の各々は、少なくとも1つの弁52を備える。弁の開閉は、再循環回路内の呼吸用液体の循環を強制または遮断することを可能にする。
【0181】
この例では、ポンプ41は、再循環回路内のガス交換システム30の上流に位置することに留意されたい。ただし、代替実施形態において、ポンプ41はガス交換システムの下流に位置し、あるいは上記ガス交換システム30と組み合わせられる。
【0182】
好適には、呼吸用液体は、ポンプシステムのポンプ41によって所定の流量で流体出口132から流体入口131に揚水される。
【0183】
上述したように、バッグ13は、複数の流体ポート、入口131a、131bおよび/または出口132a、132bを有してよい。この場合、ポンプ41は、少なくとも1つの流体出口132a、132bから流体入口131a、131bに呼吸用液体を揚水するように構成される。
【0184】
この実施形態の一例が
図4に示される。この場合、再循環回路は、流体出口132bを流体入口131bと連通させる。
【0185】
再循環回路内の呼吸用液体の循環方向もまた、弁52の開閉に依存する。
【0186】
図5は、再循環回路を更に詳しく模式的に示す図である。
【0187】
より正確には、
図5Aにおいて、弁は、再循環回路内の呼吸用液体の循環を遮断する。したがって、呼吸用液体は、呼気回路70、流体ダクト134、吸気回路60を循環する。
図5B~
図5Cは、それぞれ第1の方向および第2の方向への再循環回路内の呼吸用液体の循環を示す。
【0188】
図5A~
図5Cにおいて、弁52およびバッグ13内の流体ダクト134は、分かり易さのために示されない。
流体ダクト134
【0189】
上述したように、目標圧力において、流体ダクト134は、プレート12とバッキングデバイス11との間で圧縮される。したがって、流体ダクト134の大きな表面は、制御された温度のプレート12と接触している。この大きな接触表面により、流体ダクトの限られた部分しか低温または高温パイプと接触していない管状熱交換システムに比べて大幅に速い熱伝達が実現されることが可能である。
【0190】
流体ダクト134は、バッグ13の流体入口131と流体出口132との間に延び、上記流体入口131および流体出口132の間の距離よりも長い長さLを有する。
【0191】
有利には、流体ダクト134の長さLは、流体入口131と流体出口132との間の距離の少なくとも2倍である。
【0192】
たとえば、バッグ13は、端部同士が接合された2つのシートを備えてよい。この場合、流体ダクト134の長さLは、好適には、シートの長辺の2倍より大きい。
【0193】
たとえば、流体ダクト134は、蛇状部分、螺旋形部分、またはそれらの組み合わせを備えてよい。これらの実施形態は、流体入口131と流体出口132との間の距離の2倍より長い流体ダクト134をバッグ13内に得ることを可能にする。
【0194】
有利には、長い流体ダクト134により、熱交換システム10内の呼吸用液体の滞留時間が長くなり、より良いガス分離が実現されることが可能になる。
【0195】
好適には、流体ダクト134の容積は、0.8L~1.5Lである。
リザーバ135
【0196】
上述したように、流体ダクト134は、有利には、リザーバ135、135に流体接続されてよく、上記リザーバは、ガス出口133に流体接続されている。
【0197】
たとえば、流体リザーバ135は、0.1L~1Lの容積を有する。
【0198】
流体リザーバ135、135aは、呼吸用液体からガスを分離するように構成される。より正確には、リザーバ135、135aは、呼吸用液体からのガスの分離を確実にし、分離後のガス(すなわち、呼吸用液体から除去されたガス)を収容することを可能にする。たとえば、リザーバは、重力を利用して呼吸用液体からガスを分離するために、垂直方向、すなわち局所重力方向に平行な方向に、蛇状ダクトの上部に位置してよい。
【0199】
上述したように、圧力制御弁は、バッグ13のガス出口133に取り付けられ得る。圧力制御弁は、リザーバ135内の圧力を調節するように構成される。リザーバ135内の圧力を変更することにより、ガス出口133から排出されるガスの量を増減することが可能である。
【0200】
また、圧力制御弁は、バッグ13を加圧状態に維持し、プレート12と接触させて熱伝達を最適化することを可能にする。好適には、圧力制御弁は、リザーバ135と大気との間の圧力差を、上記圧力差が0.1バール~0.4バールの範囲であるように調節するように構成される。
第2のリザーバまたは呼気リザーバ135b
【0201】
TLVシステムSは、バッグ13の流体ポート131aに流体接続された第2のリザーバ135b(呼気リザーバまたは呼気緩衝剤バッグとも呼ばれる)を更に備えてよい。この実施形態により、有利には、流体ダクト134内およびガス交換システム内の呼吸用液体の一定の流量を得ることが可能であり、上記流体ダクト内で起こる熱およびガス交換が改善される。
【0202】
一定の流量は、5L/分~15L/分、たとえば5L/分~10L/分または10L/分~15L/分であってよい。第2のリザーバ135bがない場合、流量は一定ではない。より正確には、流量は、呼気ポンプ51exがオフであるときに少なくなることになるだろうし、呼気ポンプ51exがオンであるときに多くなることになるだろう。
【0203】
図6は、バッグ13に一体化された第2のリザーバ135bを示す。
【0204】
有利には、第2のリザーバ135bは、呼気ポンプ51exの過負荷も防ぐ。
【0205】
より正確には、流体ポート131aは、呼吸用液体が流体ダクトに到達する前に第2のリザーバ内に導入されることを可能にする。流体ダクト内に導入する前に第2のリザーバ内に液体を集めることにより、呼気ポンプによる過剰な電力消費が防がれる。
【0206】
第2のリザーバ135bは、オーバーフローによって、流体ダクト134内を流れた呼吸用液体で満たされるように構成され得る。
【0207】
好適には、第2のリザーバ135bは、1Lより大きく4.5Lまでの容積を有する。たとえば、第2のリザーバ135bは、3L~3.5Lの容積を有してよい。
【0208】
これらの容積は、十分な呼吸用液体が第2のリザーバ135b内に収容されることを確実にする。
【0209】
あるいは、上記第2のリザーバ135bは、バッグ13の外側にあってよい。この実施形態において、ポート131aはバッグ13の要素ではなく、第2のリザーバ135bは、呼気回路上の別の呼気緩衝剤バッグとして機能する。
第3のリザーバまたは吸気リザーバ135c
【0210】
TLVシステムSは、バッグ13の流体出口132aに流体接続された第3のリザーバ135c(吸気リザーバまたは吸気緩衝剤バッグとも呼ばれる)を更に備えてよい。上記第3のリザーバ135cは、オーバーフローによって、流体ダクト134内を流れた呼吸用液体で満たされ得る。
【0211】
第3のリザーバ135cの存在により、有利には、TLVシステムSを小型寸法にすることが可能である。実際、この場合、TLVシステムSは、緩衝剤バッグ3の存在を必要としない。したがって、TLVシステムS内の呼吸用液体循環液の体積が低減され、吸気回路60が短くなる。
【0212】
また、第3のリザーバ135cは更に、呼吸用液体処理ユニット1内で処理された呼吸用液体が吸気ポンプ51inにより迅速に到達可能であることにより、熱損失を最小限に抑えることが可能である。
【0213】
図6の例において、第3のリザーバ135cは、バッグ13に一体化される。
【0214】
あるいは、上記第3のリザーバ135cは、バッグ13の外側にあってよい。この実施形態において、ポート132aはバッグ13の要素ではなく、第3のリザーバ135cは、吸気回路上の別の吸気緩衝剤バッグとして機能する。
【0215】
上述したリザーバ135、135a、135b、135cの複数を有するバッグ13は、「オールインワン」バッグ13を得ることを可能にする。
【0216】
たとえば、
図6の「オールインワン」バッグ13は、呼吸用液体からガスを分離するためのリザーバ135a、第2のリザーバ135b、および第3のリザーバ135cを備える。
【0217】
有利には、「オールインワン」バッグ13により、呼吸用液体処理の異なる段階で呼吸用液体が同じ圧力に維持されることが確実になる。
【0218】
好適には、
図6の「オールインワン」バッグ13において、第2のリザーバ135bおよび第3のリザーバ135cは、プレート12と熱交換しない。たとえば、流体ダクト134を備えるバッグ13の一部のみがプレート12とバッキングデバイス11との間に挟まれるように、プレート12がバッグより小さくてもよい。
パターン
【0219】
上述したように、プレート12は、レリーフパターンを備えてよい。上記パターンは、バッグ13に面するプレート12の表面にある。
【0220】
あるいは、プレート12上のパターンは、凹パターンであってよい。
【0221】
この場合、流体ダクト134は、バッキングデバイス11とプレート12上のレリーフパターンとの間に挟まれたバッグ13の一部によって画定される。この場合、バッグ13内に二相混合体が注入されるときに、バッグ13の2つの対向表面は、レリーフパターンが存在しないところで離間する。
【0222】
プレート12に垂直な方向に沿って測定されたレリーフパターンの厚さは、好適には5mm~15mmである。この場合、二相混合体がバッグ13内に注入されるときに、バッグ13の2つの対向表面は、パターンの凹部が存在するところで離間する。逆に、上記表面は、プレート12の凹部でない部分では離間することができない。
【0223】
プレート12に垂直な方向に沿って測定された凹部の深さは、好適には5mm~15mmである。
【0224】
プレート12上のパターンとの併用または代替として、バッキングデバイス11および/またはバッグ13がパターンを備えてよい。
【0225】
たとえば、バッキングデバイス11は、少なくとも1つのプレート12上のパターンと相補的なパターンを備えてよい。
【0226】
バッグ13上のパターンの一例が
図6に示される。この例では、バッグ13は、端部同士が接合された2つの表面を有する。上記表面は、端部の内側に構成された(たとえば熱シールされた)シール境界に沿って更に接合される。この場合、パターンは、シール境界によって画定される。
【0227】
バッグ13上のパターンは、バッグ13の非シール部分に対応し、シール境界によって区切られた、バッグ13内の膨張可能コンパートメントを画定するように構成される。
【0228】
上記膨張可能コンパートメントは、ガス注入システム30によって膨張するように構成される。バッグ13のその他の部分、すなわちシール境界の外側の部分は膨張しない。
【0229】
有利には、バッグ13にパターンを設けることにより、シール境界によって流体ダクト134の気密性の向上が可能である。したがって、この実施形態は、流体ダクト134から呼吸用液体が漏れることを防ぐ。
【0230】
たとえば、
図6は、蛇状ダクト134および3つのリザーバ135a、135b、135cを備える流体ダクト134を画定するために、蛇状パターンおよび3つのリザーバパターンを備えるバッグ13を示す。
【0231】
あるいは、リザーバ135a、135b、135cは、バッグ13の外側にあってよい。
【0232】
図6のバッグ13は、任意のパターンを備えないバッキングデバイス11とプレート12との間に配置され得る。あるいは、バッキングデバイス11および/またはプレート12は、接触表面を増加させるためにバッグ13上のパターンと相補的なパターンを備えてもよい。
方法
【0233】
ここで、TLVシステム1の動作が開示されることになる。
【0234】
初期ステップにおいて、プレート12は、所望の制御された温度にされる。
【0235】
ステップS10において、ガス注入システム30は、ガス混合体および呼吸用液体を備える二相混合体を得るために、酸素を備えるガス混合体を呼吸用液体に注入する。
【0236】
任意選択的に、ステップS20において、ガス注入システム30は、バッグ13の流体入口131を介してガス混合体を注入する。注入ステップS20は、バッグ13の膨張を可能にする。このステップは、バッグ13への二相混合体の注入より前に実施され得る。ガス出口133および圧力制御弁が使用される場合、バッグ13は、プレート12と接触して熱伝達を最適化するために膨張する。
【0237】
ステップS30において、ポンプシステムのポンプ41は、呼吸用液体、またはステップS10において調製されたガス混合体および呼吸用液体を備える二相混合体を、バッグ13の流体入口131を介して流体ダクト134内に揚水する。
【0238】
ステップS20およびステップS30は、二相混合体を調製しながら呼吸用液体を揚水するために同時に行われてよい。
【0239】
酸素を備えるガス混合体を呼吸用液体中に導入するステップS10は、
ノズルによって、酸素を備えるガス混合体を混合チャンバ31内に導入すること、
呼吸用液体を混合チャンバ31内に導入すること、および
混合チャンバ31のノズルを介してガス混合体および呼吸用液体を導くことによって、呼吸用液体およびガスマイクロバブルを備える二相混合体を生成すること
を備えてよい。
【0240】
ステップS40において、二相混合体は、バッグ13の流体入口131から流体出口132へ導かれる。
【0241】
有利には、上記ステップS40において、ガスは、バッグ13のガス出口133から排出されてもよい。この場合、ステップS40は、
バッグ13の第2の出口133を介して呼吸用液体からO2およびCO2を排出すること、
バッグ13の流体出口132においてCO2が乏しい二相混合体を集めること
を更に備える。
【0242】
「CO2が乏しい」とは、流体出口132で集められた二相混合体中のCO2濃度が、典型的には初期のCO2濃度、すなわち呼吸用液体中のCO2濃度の半分未満であることを意味する。
【0243】
ガス排出ステップは、ステップS30における酸素注入を介した呼気液体の酸素化と、ガス出口133を介したCO2除去とを同時に得ることを可能にする。したがって、流体出口132でCO2が乏しい呼吸用液体が集められ、TLVシステムSの吸気回路60内に導入され得る。
【0244】
好適には、ガス混合体は、0L/分~20L/分、更に好適には10L/分~15L/分の流量でバッグ13の流体入口131に注入される。
【0245】
この流量は、有利には、小さなO2時定数および小さなCO2時定数を得ることを可能にする。O2およびCO2時定数とは、呼吸用液体中でO2濃度を63%増加させ、CO2濃度を63%減少させるために必要な時間を意味する。
【0246】
たとえば、ガス注入システムを介して注入されるガスが100%酸素であるときに、典型的には、15秒未満のO2時定数および30秒未満のCO2時定数を得ることが可能である。
【0247】
その後、ステップS50において、呼吸用液体は、ポンプシステムのポンプ41によってバッグ13の流体出口132から流体入口131に揚水される。このステップにより、流体ダクト134および再循環回路を備える閉回路内で呼吸用液体を循環させることが可能である。したがって、呼吸用液体は、ステップS60において吸気回路60内に導入される前に、上記閉回路内を所定の回数だけ循環し得る。
【0248】
ステップS60において、処理された呼吸用液体がTLVシステムSの吸気回路60内に導入される。したがって、上記処理された呼吸用液体は、吸気ポンプ51inによって気管内チューブ2内に注入され得る。
【0249】
監視ステップにおいて、プレート12の温度が監視される。好適には、プレート12の温度は継続的に監視される。
【0250】
制御ステップにおいて、プレート12の温度が変更される。このステップにおいて、プレート12の温度は、呼吸用液体の所望の温度に依存して変更される。プレート12の温度は、上記呼吸用液体の所望の温度変化率に基づいて更に変更される。
【0251】
たとえば、流体ダクト134内の呼吸用液体の温度を急速に低下させるために、プレート12の温度は、0℃にまで制御され得る。流体ダクト134内の呼吸用液体の温度を急速に上昇させるために、プレート12の温度は、60℃にまで制御され得る。流体ダクト134内の呼吸用液体の温度を一定に維持するために、プレート12の温度は、流体ダクト134内の呼吸用液体の温度と等しくなるように制御される。
【0252】
様々な実施形態が説明および図示されたが、詳細な説明は、これに限定するものとして解釈されてはならない。特許請求の範囲によって定義される本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施形態に様々な変更が加えられ得る。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の肺に呼吸用液体を送給するように構成された完全液体換気システム(S)であって、前記完全液体換気システムは、吸気回路(60)と、呼気回路(70)と、呼吸用液体処理ユニット(1)とを備え、前記呼吸用液体処理ユニット(1)は、
二相混合体を得るために前記呼吸用液体にガス混合体を注入するように構成されたガス注入システム(30)と、
前記二相混合体を加熱および/または冷却するように構成された熱交換システム(10)であって、
機械的支持を提供するように構成されたバッキングデバイス(11)と、
制御された温度であるように構成された少なくとも1つのプレート(12)と、
前記少なくとも1つのプレート(12)と前記バッキングデバイス(11)との間に位置し、少なくとも2つの対向表面と、前記呼気回路(70)に流体接続された流体入口(131)と、前記吸気回路(60)に流体接続された流体出口(132)とを備えるバッグ(13)と、
を備える、熱交換システム(10)と、
流体ダクト(134)を介して前記流体入口(131)から前記流体出口(132)に前記二相混合体を循環させるためのポンプ(41)を備えるポンプシステムと、
を備え、
前記バッキングデバイス(11)、前記少なくとも1つのプレート(12)、および前記バッグ(13)は、前記バッグ(13)の流体入口(131)と流体出口(132)との間に延びる流体ダクト(134)を画定するように構成され、前記流体ダクト(134)は、前記流体入口(131)と前記流体出口(132)との間の距離よりも大きい長さを有する、完全液体換気システム(S)。
【請求項2】
前記完全液体換気システム(S)は、前記流体ダクト(134)との閉回路を画定するために、前記流体出口(132)および前記流体入口(131)を接続するように構成された再循環回路を更に備え、
前記ポンプ(41)は、前記再循環回路内で前記呼吸用液体を循環させるためのものである、請求項1に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項3】
前記バッグ(13)は、ガス出口(133)と、前記ガス出口(133)に取り付けられた圧力制御弁とを更に備える、請求項1または請求項2に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項4】
前記バッグ(13)は、シール境界を備え、前記流体ダクト(134)は、前記シール境界に包囲された、前記バッグ(13)の非シール部分によって画定される、請求項
1に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプレート(12)および/または前記バッキングデバイス(11)は、レリーフパターンまたは凹パターンを備える、請求項
1に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項6】
前記バッキングデバイス(11)は、前記少なくとも1つのプレート(12)に平行なプレートであり、前記少なくとも1つのプレート(12)から、0mm~20mmの距
離だけ離間する、請求項
1に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項7】
前記バッキングデバイス(11)は、前記少なくとも1つのプレート(12)から、4mm~15mmの距離だけ離間する、請求項6に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項8】
前記流体ダクト(134)は、前記流体入口(131)と前記流体出口(132)との間に延びる蛇状ダクトを備え、前記呼吸用液体からガスを分離するための流体リザーバ(135、135a)は、前記蛇状ダクトおよび前記バッグ(13)のガス出口(133)と流体接続される、請求項
1に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項9】
前記流体リザーバ(135、135a)は、0.1L~1Lの容積を有する、請求項
8に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項10】
呼気ポンプ(51ex)からの呼吸用液体を緩衝剤処理するための第2のリザーバ(135b)、および/または
吸気ポンプ(51in)に送給される呼吸用液体を緩衝剤処理するための第3のリザーバ(135c)
を更に備える、請求項
1に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項11】
前記第2のリザーバ(135b)および/または前記第3のリザーバ(135c)は、前記バッグ(13)内に一体化される、請求項
10に記載の完全液体換気システム(S)。
【請求項12】
前記ガス注入システム(30)は、前記バッグ(13)の流体入口(131)に流体接続されたガス混合チャンバ(31)を備える、請求項
1に記載の完全液体換気システム。
【請求項13】
前記バッグ(13)は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)を備えるグループから選択されたプラスティック材料で作られる、請求項
1に記載の完全液体換気システム。
【請求項14】
請求項
1に記載の完全液体換気システム(1)において、呼吸用液体に熱交換およびガス交換を提供するための方法であって、前記方法は、
前記ガス注入システム(30)によって、二相混合体を得るために前記呼吸用液体にガス混合体を注入すること(S10、S20)と、
前記ポンプ(41)によって、前記バッグ(13)の入口(131)を介して前記二相混合体を前記流体ダクト(134)内に揚水すること(S30)と、
を備える、方法。
【請求項15】
前記呼吸用液体にガス混合体を注入するステップ(S10)は、
ノズルを備える混合チャンバ(31)内に酸素を備えるガス混合体を導入することと、
前記混合チャンバ(31)内に前記呼吸用液体を導入することと、
前記混合チャンバ(31)のノズルを介して前記ガス混合体および前記呼吸用液体を導くことによって、前記呼吸用液体およびガスマイクロバブルを備える二相混合体を生成することと、
を備える、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記バッグ(13)の流体入口(131)から前記流体出口(132)に前記二相混合体を導くこと(S40)と、
前記ポンプ(41)によって、前記流体出口(132)から前記流体入口(131)に前記二相混合体を揚水すること(S50)と、
を更に備える、請求項
14または請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記バッグ(13)内に前記二相混合体を注入する前に、前記バッグ(13)内にガス混合体を注入すること(S20)を更に備える、請求項
14に記載の方法。
【国際調査報告】