(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ファン、より詳細にはラジアルファンまたは斜流ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240415BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20240415BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F04D29/28 P
F04D29/66 P
F04D29/44 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566783
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 DE2022200074
(87)【国際公開番号】W WO2022233372
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021204491.3
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510334790
【氏名又は名称】ジール・アベッグ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レルヒャー、 フリーダー
(72)【発明者】
【氏名】ヘロルド、 アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB44
3H130AC01
3H130AC11
3H130AC26
3H130BA08A
3H130BA08C
3H130BA17A
3H130BA17C
3H130BA66A
3H130BA66C
3H130CA06
3H130CB06
3H130EB05A
3H130EB05C
(57)【要約】
モーター(4)と、このモーター(4)によって回転駆動される羽根車(3)と、吸引ノズル(5)と、この吸引ノズル(5)の周囲に延在するノズルプレート(2)と、を有するファン(1)であって、より詳細には、ラジアルファンまたは斜流ファンであって、前記羽根車(3)が、ベースディスク(10)と、カバーディスク(8)と、これらのベースディスク(10)とカバーディスク(8)との間に延在するいくつかの翼(9)と、で実質的に構成され、前記ノズルプレート(2)が、正圧側に向かう折り目形状の縁部を有し、前記カバーディスク(8)が、吸引側に向かって丸みを帯びている外側縁部を有し、前記ノズルプレート(2)の折り目(6)と前記カバーディスク(8)の丸みとが、前記羽根車(3)からの前記カバーディスクに近い部分の流出が前記ノズルプレート(2)の縁部と相互作用するように、形状形成および寸法形成されている、ファン(1)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーター(4)と、該モーター(4)によって回転駆動される羽根車(3)と、吸引ノズル(5)と、該吸引ノズル(5)の周囲に延在するノズルプレート(2)と、を有するファン(1)であって、より詳細には、ラジアルファンまたは斜流ファンであって、
前記羽根車(3)が、ベースディスク(10)と、カバーディスク(8)と、該ベースディスク(10)と該カバーディスク(8)との間に延在するいくつかの翼(9)と、で実質的に構成され、
前記ノズルプレート(2)が、正圧側に向かう折り目(6)の縁部を有し、
前記カバーディスク(8)が、吸引側に向かって丸みを帯びている外側縁部を有し、
前記ノズルプレート(2)の折り目(6)と前記カバーディスク(8)の丸みとが、前記羽根車(3)からの前記カバーディスク(8)に近い部分の流出が前記ノズルプレート(2)の縁部と相互作用するように、形状形成および寸法形成されている、ファン(1)。
【請求項2】
前記羽根車(3)、前記カバーディスク(8)または前記ノズルプレート(2)の、周方向位置に割り当て可能なファン軸を通る平面での断面において、前記翼(9)に面している前記カバーディスク(8)の内側形状の接線方向の延長線が、該延長線の半径方向外側で、前記折り目(6)を含む前記ノズルプレート(2)と、前記周方向位置の少なくとも90%を超えて、好ましくは、100%を超えて、交差していることを特徴とする、請求項1に記載されたファン。
【請求項3】
前記カバーディスク(8)の丸みが、強い湾曲領域(7)を有して設計されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載されたファン。
【請求項4】
前記丸みの内側形状と、したがって、前記カバーディスク(8)の外側縁部の内側形状とが、前記カバーディスク(8)の外側端部で、前記羽根車(3)の出口領域における空気流の出口方向を、前記カバーディスク(8)の接線方向に真っ直ぐな延長線の方向にすることを特徴とする、請求項1乃至請求項3に記載されたファン。
【請求項5】
前記空気流の出口方向が、前記カバーディスク(8)の円周上で一定または可変であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項6】
前記空気流の出口方向が、主流方向に対して後方に向けられ、前記ノズルプレート(2)に向かう方向に向けられていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項7】
前記カバーディスク(8)の外側端部で、すなわち、前記カバーディスク(8)の湾曲領域(7)で、前記空気流の出口方向が、半径方向に対して35°を超える角度α(26)を有し、好ましくは、該角度α(26)が、45°を超える角度であることを特徴とする、請求項6に記載されたファン。
【請求項8】
前記カバーディスク(8)の仮想的な延長線が、前記カバーディスク(8)の湾曲領域(7)から始まり、好ましくは、全周にわたって、または全周の95%を超える広い領域にわたって、前記ノズルプレート(2)や前記ノズルプレート(2)の折り目(6)と交差していることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項9】
前記吸引ノズル(5)の空気出口直径DD(22)の、前記羽根車(3)の空気出口直径DL(18)に対する比が、前記カバーディスク(8)の前記外側縁部で70%以上、好ましくは、75%以上であることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項10】
前記吸引ノズル(5)の軸方向高さc(23)の、前記羽根車(3)の空気出口直径DL(18)に対する比が、前記カバーディスク(8)の外側縁部で12%以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項11】
前記カバーディスク(8)上の空気流出口と前記ノズルプレート(2)の折り目(6)の開放端部との間の軸方向距離a(25)の、前記羽根車(3)の空気出口直径DL(18)に対する比が、前記カバーディスク(8)の外側縁部で20%以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項12】
wが前記ノズルプレート(2)の半径方向の幅であって前記ノズルプレート(2)のやや長方形の外形の最小辺の長さを表しており、bが前記ノズルプレート(2)の外側の折り目(6)の軸方向高さである際に、
a+b<w-DL、または、a+b<(w-DL)
*tan(α)であることを特徴とする、請求項9乃至請求項11のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項13】
前記ノズルプレート(2)が、長方形の、好ましくは、正方形の外形を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項14】
前記カバーディスク(8)の外径が、前記ベースディスク(10)の外径よりも大きいことを特徴とする、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載されたファン。
【請求項15】
前記カバーディスク(8)の外径に対する前記ベースディスク(10)の外径の比が、85%から95%の範囲内であることを特徴とする、請求項14に記載されたファン。
【請求項16】
前記ノズルプレート(2)の外側の折り目(6)の軸方向高さb(24)が、前記羽根車(3)のカバーディスク(8)の湾曲領域(7)での空気出口直径DL(18)の少なくとも2%、有利には、少なくとも3%であることを特徴とする、請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載されたファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン、より詳細には、ラジアルファンまたは斜流ファンに関する。
ファンは、モーターと、モーターによって回転駆動される羽根車と、吸引ノズルと、該吸引ノズルの周囲に延在するノズルプレートと、を有する。
羽根車は、ベースディスクと、カバーディスクと、これらのベースディスクとカバーディスクとの間に延在するいくつかの翼とで構成されている。
【背景技術】
【0002】
主題のタイプのラジアルファンまたは斜流ファンは、実用上よく知られている。
ほんの一例として、特許文献1を参照されたく、この特許自体は、ラジアルファンの構成を示している。
【0003】
特定の設計や用途に関係なく、主題のタイプのファンは、設置時とテストベンチ上との両方で、同一の高い効率を有する必要があり、この要件は、些細なことのように思える。
しかし、特定の設置状況に合わせて最適化された羽根車とそれに対応するファンである場合、テストベンチで不利な動作をする可能性があるかどうかを判断する必要があった。
【0004】
また、テストベンチ条件下では非常に高い効率を示すラジアル羽根車および斜流羽根車が開発されたが、特定の設置状況では、そのような効率は得られなかった。
また、正圧側に設置制限がある条件下では、非常に高い効率を示すラジアル羽根車および斜流羽根車もあるが、テストベンチ条件下では、効率が低くなる。
このような課題が存在する理由は、テストベンチおよびテストベンチ条件では、特定の用途でのファン性能に関する情報を提供することを目的としているためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017110642(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、正圧側の設置状況とテストベンチ条件との両方において可能な限り最高の効率を発揮するような態様で、汎用ファンを設計および開発するという目的に基づいている。
この2つの状況間の差異は、少なくとも可能な限り小さくする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的は、請求項1の特徴を有するファンによって解決される。
ノズルプレートが、正圧側に向かう折り目の縁部を有している一方で、カバーディスクが、吸引側に向かって丸みを帯びている外側縁部を有している。
ノズルプレートの折り目とカバーディスクの丸みとが、羽根車からのカバーディスクに近い部分の流出がノズルプレートの折り目と相互作用するように、形状形成および寸法形成されている。
【0008】
本発明は、特別なノズルプレートと特別なカバーディスクとの組み合わせに関するものであり、ノズルプレートは、正圧側に向かう折り目形状の縁部を有し、カバーディスクは、吸引側に向かって丸みを帯びている(すなわち、湾曲している)。
これら2つの特徴は、組み合わせることが可能であり、羽根車からのカバーディスクに近い部分の流出がノズルプレートの折り目と相互作用する、という共同効果をもたらす。
これにより、設置状況と同様の局所的な安定化を実現可能であり、その結果、本発明によるファンは、特定の設置状況と同じまたはほぼ同じ効率を、テストベンチ上で示す。
【0009】
羽根車、カバーディスクまたはノズルプレートの、周方向位置に割り当て可能なファン軸を通る平面での断面において、翼に面しているカバーディスクの内側形状の接線方向の延長線が、この延長線の半径方向外側で、折り目を含むノズルプレートと、周方向位置の少なくとも90%を超えて、好ましくは、100%を超えて、交差していると有利である。
これにより、空気流の安定化に関して、本発明による利点がさらに強化される。
【0010】
カバーディスクの丸みが、このカバーディスクの外側縁部上で強い湾曲を有していると有利であり、このことは、ノズルプレートの折り目形状の縁部と組み合わせて理解可能である。
【0011】
具体的には、丸みの内側(翼側)形状と、したがって、カバーディスクの外側縁部の内側形状とが、カバーディスクの外側端部で、羽根車の出口領域における空気流の出口方向を、カバーディスクの接線方向に真っ直ぐな延長線の方向にする。
湾曲していることで空気に特定の出口方向が与えられ、空気の出口方向が、カバーディスクの円周上で一定または可変となるように湾曲構造を設計可能である。
カバーディスクの円周全体にわたって、任意のまたは異なる影響を及ぼすことができる。
【0012】
さらに、空気流の出口方向を、主流方向に対して後方に向け、ノズルプレートに向かう方向に向けることもできる。
ただし、このような設計は、必須ではない。
【0013】
カバーディスクの外側端部で、すなわち、カバーディスクの湾曲領域で、空気流の出口方向が、半径方向に対して35°を超える角度を有し、好ましくは、この角度が45°を超える角度であると、さらに有利である。
その結果、羽根車からのカバーディスクに近い部分の流出が、ノズルプレートまたは折り目に向かって偏向される。
これにより、相互作用が生じる。
【0014】
具体的には、カバーディスクの仮想的な延長線が、カバーディスクの湾曲領域から始まり、好ましくは、全周にわたって、または、全周の少なくとも95%を超える広い領域にわたって、ノズルプレートやノズルプレートの折り目と交差している。
これにより、羽根車から流出する空気が、ノズルプレートまたは外側の折り目と確実に相互作用する。
【0015】
前述の特徴に対応するファンの場合、正圧側で半径方向に制限のある設置条件では、正圧側で乱れのない設置条件と比較して、そのような設置環境に最適化されたファンのコアラインを安定させることができる。
このようにすると、軸方向のみの設置制限がある場合と同様に、正圧側が乱れていない設置状況であっても、正圧側の安定化を達成可能であり、正圧側で半径方向に制限がある設置状況に最適化したファン羽根車は、他の設置状況やテストベンチ上であっても、優れた効率と音響値とを発揮する。
【0016】
具体的には、ファンの非常に特別で特徴的な寸法によって、望ましい特性が促進される。
したがって、吸引ノズルの空気出口直径DDの、前記羽根車の空気出口直径DLに対する比が、カバーディスクの外側縁部で、70%以上、好ましくは、75%以上であると、さらに有利である。
【0017】
吸引ノズルの軸方向高さcの、羽根車の空気出口直径DLに対する比が、カバーディスクの外側縁部で12%以下である。
【0018】
カバーディスク上の空気流出口とノズルプレートの折り目の開放端部との間の軸方向距離aの、羽根車の空気流出口直径DLに対する比が、カバーディスクの外側縁部で20%以下である。
wがノズルプレートの幅であってノズルプレートのやや長方形の外形の最小辺の長さを表しており、bがノズルプレートの外側の折り目の軸方向高さである際に、a+b<w-DL、または、a+b<(w-DL)*tan(α)であると、有利である。
【0019】
本発明によるファンのノズルプレートは、任意の形状を有していてもよく、たとえば、長方形の、好ましくは、正方形の外形を有していてもよい。
流れの条件を有利にするために、カバーディスクの外径が、ベースディスクの外径よりも大きいと有利である。
このような実施形態は、流れがファンの軸方向下流に流れ続ける傾向がある設置条件、すなわち、正圧側で半径方向に制限のある設置状況にも、特に適している。
カバーディスクの外径に対するベースディスクの外径の比が、85%から95%の間であると、有利である。
【0020】
本発明を有利に設計および改良するためのさまざまな可能性が存在する。
この目的のために、一方では、請求項1に従属する請求項を参照されたく、他方では、図面を参照する本発明の実施形態についての以下の説明を参照されたい。
図面を参照する本発明の実施形態の説明に関連して、本発明の実施形態および改良点も、一般的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】強く湾曲したカバーディスクを有する羽根車と、モーターと、サスペンションと、ノズルを有するノズルプレートと、を有するファンを流出側から見た斜視図である。
【
図2】
図1によるファンを、ファン軸を通る平面で横方向から見た断面図であり、モーターは不図示である。
【
図3】
図2の部分的な領域の拡大図であり、追加の寸法が概略で示されている。
【
図6】第1の動作状況でシミュレーションによって計算された、本発明によるファンの流れパターンの流出側部分の概略を表す斜視図である。
【
図7】
図6と同様に、第2の動作状況での本発明によるファンの流れパターンの、流出側部分の概略を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、カバーディスク8の半径方向外側の湾曲領域7を有するファン1の一実施形態の、流出側からの斜視図を示す。
ファン1は、カバーディスク8、ベースディスク10、および、これらのカバーディスク8とベースディスク10との間に延在している翼9からなる羽根車3を有する、後方に湾曲しているラジアルファンである。
羽根車3は、モーター4(ここでは、ステータ12に電子ポット21が組み込まれている外部ローターモーター)によって駆動され、その(不図示の)ローター11に羽根車3が、回転方向が固定された態様で接続されている。
【0023】
実施形態では、吸引ノズル5は、締結具14によってノズルプレート2に取り付けられており、ノズルプレート2は、実質的に支持支柱19とモーター支持プレート20とからなるサスペンション13を介して、ステータ12側でモーター4に接続されている。
羽根車3のカバーディスク8は、内部開口部を有し、吸引ノズル5がその内部開口部内に突出している。
ファン1が作動すると、吸引される空気は、ノズルプレート2から吸引ノズル5に吸引され、羽根車3に流れ込み、翼9の回転運動によって半径方向外側に運ばれる。
実施形態では、ノズルプレート2は、ほぼ長方形の(ここでは、正方形の)外形を有し、このノズルプレート2の半径方向の外側縁部には、流出側(すなわち、羽根車3の方向)に向かう折り目6が形成されている。
さらに、ノズルプレート2には、ノズルプレート2やファン1全体を上位システム(例えば、空調ボックスユニット、換気システムまたは冷却装置)に固定するための締結具30が形成されている。
【0024】
図2は、
図1によるファン1を、ファン軸を通る平面で横方向から見た断面図であり、ここで、ステータ12とローター11とを有するモーター4は、示されていない。
羽根車3のカバーディスク8の外側の湾曲領域7が、ノズルプレート2の外側領域の折り目6と同様に、はっきりと見てとれる。
【0025】
サスペンション13の支持支柱19は、締結具27によって(有利には、ねじ止めされて)ノズルプレート2に取り付けられている。
サスペンション13の支持プレート20は、締結具15によって(有利には、ねじ止めされて)モーター4のステータ12に取り付けられている。
モーター4のローター11上で、羽根車3は、回転方向が固定された態様で、(有利には、ねじ止めされて)締結具16に接続されている。
吸引ノズル5は、締結具14でノズルプレート2に取り付けられている。
他の実施形態では、吸引ノズル5は、ノズルプレート2と一体の部品として製造可能である。
吸引ノズル5は、羽根車3のカバーディスク8を有する内部開口部に突出している。
【0026】
ファン1が動作しているとき、吸引される空気は、
図2で左側の吸引側から吸引ノズル5に流れ込み、そこから羽根車3に流入し、羽根車3の回転運動によって半径方向外側に運ばれ、カバーディスク8とベースディスク10との半径方向外側の端部同士の間に延在している羽根車3の出口29で、ファン1から流出する。
【0027】
羽根車3の吸引ノズル5とカバーディスク8との間のオーバーラップ領域には、半径方向隙間28が形成され、この半径方向隙間28を通って、羽根車3の流出側から来る二次流れが、羽根車3内に流入し、これにより、流出側の圧力レベルが高くなる。
この二次流れは、羽根車3内の流れの状態を安定させる効果があるため、ファン1の高効率と低騒音レベルとの実現には、不可欠である。
【0028】
流出側では、湾曲領域7で強く湾曲したカバーディスク8により、カバーディスク8に近い部分から流出する流れがノズルプレート2と、特に、折り目6で相互作用する。
このようにすることで、目標とする態様で、有利な効果が得られる。
一方では、二次流れ自体が、影響を受け、特に、渦が減少する。
他方では、出口29で羽根車3から流出する流れ全体の挙動が大きく影響を受ける可能性がある。
このように、少なくともファン1の動作状況の一定範囲で、効率および/または騒音の改善を達成可能である。
【0029】
図3は、
図2の部分的な領域の拡大図であり、追加の寸法が概略で示されている。
この領域は、ノズルプレート2の折り目6の近く、および、湾曲領域7を有する羽根車3のカバーディスク8の外側縁部の近くの、本発明で重要な領域である。
翼9に面しているカバーディスク8の内側の流れ案内形状は、
図3の断面図で理解できるように、羽根車3の出口におけるカバーディスク8の半径方向外側端部に出口方向33を有しており、この出口方向33は、断面で見ると、カバーディスク8の接線方向に真っ直ぐな仮想的な延長線の方向である。
実施形態によっては、この出口方向33は、カバーディスク8の円周にわたって可変であってもよく、その場合は、平均的な出口方向が決められる。
この実施形態では、カバーディスク8の出口方向33は、半径方向32から大きく後方に傾斜していると有利であり、流出方向から見ると、ノズルプレート2の方向を向いており、図の羽根車3の左側から右側への、いわば、主流方向に対しては後方を向いている。
【0030】
この出口方向33は、カバーディスク8またはその湾曲領域7の外側端部において、半径方向32に対する角度α26が、35°(有利には、45°)を超えていると有利である。
その結果、カバーディスク8に近い部分の羽根車3からの流出が、ノズルプレート2またはその折り目6に向かって偏向される。
【0031】
有利な態様では、ファン軸を通る断面で見ると、カバーディスク8またはその湾曲領域7の(平均的な)出口方向33の仮想的な延長線が、ノズルプレート2またはその外側の折り目6と交差している。
平均的な出口方向33が、ノズルプレート2の円周全体か、ノズルプレート2の円周全体のうちのかなり角度にわたって、少なくとも円周の95%を超える広い領域にわたって、ノズルプレート2またはその外側の折り目6と交差している。
このようにすると、羽根車3から流出する流れは、ノズルプレート2またはその外側の折り目6と確実に有利に相互作用する。
【0032】
回転軸に対する条件ではなく、正圧側で半径方向に設置制限(壁)があるという条件では、制限がない設置条件と比較して、そのような設置環境に最適化されたラジアルファン1の特性を安定化可能であることがわかった。
上述の方法での正圧側のこのような安定化は、正圧側が実際に乱れていない場合や軸方向のみが制限されている場合であっても達成可能であり、半径方向に制限された正圧側の設置条件に最適化されたファン羽根車3は、他の設置条件においても優れた性能と音響値とを発揮する。
【0033】
図3では、例えば、カバーディスク8の流れ出口からノズルプレート2の折り目6の開放端までの軸方向距離a25、ノズルプレート2の折り目6の軸方向長さb24、または吸引ノズル5の軸方向長さc23など、ファン1のいくつかの特徴的な軸方向の寸法が示されている。
さらに、いくつかの径方向の特徴的な寸法、例えば、吸引ノズル5の空気出口直径DD22、カバーディスク8の外側縁部上の羽根車3の空気出口直径DL18、および(ノズルプレート2の長方形の外形の最小辺の長さを表す)ノズルプレート2の幅w17が示されている。
これらの直径は、ファン軸を基準にして測定されている。
【0034】
高い体積流量を実現し、軸方向長さc23が非常に短い軸方向にコンパクトな吸引ノズル5を設計可能にするためには、ノズル比DD/DLが、DD/DL>70%(有利には、>75%)であると有利である。
この場合、吸引ノズル5の軸方向長さc23は、空気出口直径DL18に対する比c/DLが、c/DL<12%である。
このようにすると、ノズルプレート2の折り目6の特定の軸方向長さb24と組み合わせて、羽根車3のカバーディスク8から折り目6の外側縁部までの流出面の軸方向距離a25が短くなり、所望の流れ相互作用を促進できるため、有利である。
比a/DLが20%以下であると、有利である。
同様に、a<w-DL、または、a<(w-DL)*tan(α)であると、さらに有利である。
羽根車3から流出する流れとノズルプレート2の外側の折り目6とを効果的に相互作用させるためには、折り目6の一定の最小長さb24は、特に、カバーディスク8上の羽根車3の直径DL13に対する比b/DLが2%以上であると有利であり、3%以上であるとさらに有利である。
【0035】
図4は、
図1、
図2および
図3によるファン1を、流入側から見た図である。
羽根車3の吸引ノズル5内に、ベースディスク10と、翼9の一部と、羽根車3が締結具16で取り付けられているモーター4のローター11と、が見てとれる。
この図では、翼9の3次元形状と凹状に湾曲した吸引側の大部分が見てとれる。
この図では、ノズルプレート2の長方形の(ここでは、正方形の)外形またはその外側縁部も見てとれ、それらの上に折り目6も見てとれる。
さらに、支持支柱19をノズルプレート2に固定する締結具27と、ファン1を上位システムに固定可能な締結具30との両方が見てとれる。
【0036】
図5は、
図1から
図4に示すファン1を、流出側から見た図である。
電子ポット21が組み込まれたモーター4のステータ12が見てとれる。
ステータ12は、締結具15によってサスペンション13やモーター支持プレート20に取り付けられている。
羽根車3のベースディスク10およびカバーディスク8が見てとれるが、これは、カバーディスク8の外径がベースディスク10の外径よりも大きいためである。
このような実施形態は、流れがファン1を通過した後に軸方向に流れ続ける設置状況、すなわち、ファン羽根車3より下流で半径方向に制限のある設置状況に特に適している。
カバーディスク8の外径に対するベースディスク10の外径の比が、概ね85%と95%との間であると、有利である。
実施形態では、6つの翼9の後方縁部付近の領域が見てとれる。
これらの翼9は、カバーディスク8の外径のほぼ全てまたは全てにわたって、最大でも数ミリメートル延在しており、これにより、カバーディスク8の外側の湾曲領域7の湾曲形状に沿って流れを誘導することが促進される。
【0037】
サスペンション13は、実施形態では、ほぼ円形の断面を有する支持支柱19と、モーター支持プレート20と、からなる。
例えば、本質的に平らな材料からなる他のタイプのエンジンサスペンションも考えられる。
【0038】
図6は、
図1から
図5のようなファン1の第1の動作状況での出口領域における、シミュレーションによって計算された流れパターンの概略斜視図であり、この動作状況は、速度、羽根車直径および出口面積に基づく体積流量がかなり低いという特徴がある。
羽根車3には、外側の湾曲領域7を有するカバーディスク8と流れ出口面29とが見てとれる。
また、吸引ノズル5と折り目6と有するノズルプレート2も見てとれる。
完全な理解のために、ファン1は、部分的にしか示されていないと述べておく必要がある。
羽根車3から流出する流れの大部分は、ファン軸を通る断面平面上に示す投影流線31からわかるように、その全体が、ノズルプレート2またはその仮想的な半径方向の延長線に向かって傾斜している。
【0039】
重要なことは、カバーディスク8の湾曲領域7の近くの空気流が、ノズルプレート2の折り目6と相互作用することである。
こうすることで、羽根車出口29の下流の大部分の流れの経路に良い影響を及ぼすことができ、かつ/または、ノズルプレート2とカバーディスク8との間の再循環領域内の流れの状態に(特に渦を減らすことによって)良い影響を及ぼすことができる。
吸引ノズル5とカバーディスク8との間の重要な二次流れ(
図3の説明も参照)は、この再循環領域の流れの状態に大きく影響を受ける。
【0040】
図6は、湾曲領域7と折り目6を有するノズルプレート2とによって、羽根車3から流出する空気流同士がどのように相互作用する可能性があるかを、一例として示すことを目的としている。
これは、シミュレーションに基づいている。
図示の流線31は、図示の流線面上に投影されている局所的な速度ベクトルに基づいて示されている。
【0041】
図7は、
図6と比較可能なものであり、
図1から
図5のようなファン1の第2の動作状況での出口領域における、シミュレーションによって計算された流れパターンの概略斜視図であり、この動作状況は、速度、羽根車直径、および出口面積に基づく体積流量がかなり高いという特徴がある。
羽根車3には、外側の湾曲領域7を有するカバーディスク8と流れ出口面29とが見てとれる。
また、吸引ノズル5と折り目6とを有するノズルプレート2も見てとれる。
羽根車3から流出する流れの大部分は、流線31から分かるように、ノズルプレート2から遠ざかる方向を向き、断面で見ると、ノズルプレート2またはその仮想的な半径方向の延長線から離れる方向に斜めに流れている。
【0042】
ここで重要なことは、カバーディスク8の湾曲領域7の近くの空気流が、ノズルプレート2またはその折り目6と相互作用することである。
こうすることで、ノズルプレート2とカバーディスク8との間の再循環領域内の大部分の空気流の経路および/または流れの状態に、良い影響を与えることができる。
吸引ノズル5とカバーディスク8との間の重要な二次流れ(
図3の説明も参照)は、この再循環領域の流れの状態に大きく影響を受ける。
【0043】
図7は、湾曲領域7と折り目6を有するノズルプレート2とによって、羽根車3から流出する空気流同士がどのように相互作用する可能性があるかを、一例として示すことを目的としている。
これは、シミュレーションに基づいている。
図示の流線31は、図示の流線面上に投影されている局所的な速度ベクトルに基づいて示されている。
【0044】
本発明によるファンのさらに有利な実施形態に関する繰り返しを避けるために、説明の一般的な部分および添付の特許請求の範囲を参照されたい。
【0045】
最後に、本発明によるファンの上述の実施形態は、単に特許請求された教示を説明するためのものであり、その教示を実施形態に限定するものではないことに、明確に留意されたい。
【符号の説明】
【0046】
1 ・・・ファン
2 ・・・ノズルプレート
3 ・・・ファン羽根車
4 ・・・モーター
5 ・・・吸引ノズル
6 ・・・ノズルプレートの折り目
7 ・・・カバーディスクの外側の湾曲領域
8 ・・・羽根車のカバーディスク
9 ・・・羽根車の翼
10 ・・・羽根車のベースディスク
11 ・・・モーターローター
12 ・・・モーターステータ
13 ・・・サスペンション
14 ・・・吸引ノズルとノズルプレートとの締結具
15 ・・・モーターステータとサスペンションとの締結具
16 ・・・羽根車とモーターローターとの締結具
17 ・・・ファン軸を横断するノズルプレートの幅w
18 ・・・カバーディスクの外側の空気出口直径DL
19 ・・・サスペンションの支持支柱
20 ・・・サスペンションのモーター支持プレート
21 ・・・モーターステータ内の電子ポット
22 ・・・吸引ノズルの流出端部の直径DD
23 ・・・吸引ノズルの軸方向長さc
24 ・・・ノズルプレート2の折り目6の軸方向長さb
25 ・・・カバーディスク8の外側縁部からノズルプレート2の折り目6までの軸方向距離a
26 ・・・ファン軸を通る平面の断面で見た、カバーディスクの外側縁部での流出出口の内側形状と半径方向との間の角度α
27 ・・・支持支柱とノズルプレートとの締結具
28 ・・・吸引ノズル5とカバーディスク8との間の半径方向隙間
29 ・・・羽根車3の出口面
30 ・・・上位システムとノズルプレートとの締結具
31 ・・・切断面に投影された流線
32 ・・・半径方向
33 ・・・出口方向
【国際調査報告】