(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】がんの治療に有用なモレファンチン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 307/77 20060101AFI20240415BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240415BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240415BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C07D307/77 CSP
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/343
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566885
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 SG2022050251
(87)【国際公開番号】W WO2022231520
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】10202104429U
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504161939
【氏名又は名称】ナンヤン・テクノロジカル・ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】523408374
【氏名又は名称】ナンヤン・ハーブス・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanyang Herbs Pte. Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【氏名又は名称】佐藤 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】リィ,ホイ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】千葉 俊介
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ソーク クアン
(72)【発明者】
【氏名】コー,チョン ジー
(72)【発明者】
【氏名】オン,トゥーン ワー ローランド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
式I:
【化1】
[式中、R
1およびR
2は、本明細書で定義される通りである]の化合物が本明細書に開示される。疾患の治療における前記化合物の使用もまた開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、H、-C(O)R
3、または-C(O)C
1-6アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、
あるいは、R
1は、-C(O)R
3または-C(O)C
1-6アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、R
2は、-C(O)C(=CH
2)CH
3を示し、
R
3は、存在する場合、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系を示し、ここでアリール、シクロアルキル、およびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはハロ、C
1-3アルキル、およびNO
2から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかであり、
R
4は、存在する場合、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系を示し、ここでアリール、シクロアルキル、およびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはハロおよびC
1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
R
1およびR
2が、それぞれ独立して、H、-C(O)R
3、または-C(O)C
1-3アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、
あるいは、R
1が、-C(O)R
3または-C(O)C
1-3アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、R
2が、-C(O)C(=CH
2)CH
3を示し、任意選択で、
R
1およびR
2が、それぞれ独立して、-C(O)R
3または-C(O)C
1-3アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、
あるいは、R
1が、-C(O)R
3または-C(O)C
1-3アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、R
2が、-C(O)C(=CH
2)CH
3を示す、
請求項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
R
3が、存在する場合、アリールまたはヘテロ環式環系を示し、ここでアリールおよびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはハロ、C
1-3アルキル、およびNO
2から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである、
請求項1または2に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項4】
R
3が、存在する場合、アリールであり、ここでアリールは、非置換であるか、またはハロ、C
1-3アルキル、およびNO
2から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである、
請求項3に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
R
3が、存在する場合、フェニルであり、ここでフェニルは、非置換であるか、またはF、C
1アルキル、およびNO
2から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである、
請求項4に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
R
2が、-C(O)C(=CH
2)CH
3を示す、
請求項1~5のいずれか1項に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項7】
R
1が、-C(O)R
3を示し、R
2が、-C(O)R
3または-C(O)C(=CH
2)CH
3を示す、
請求項1~6のいずれか1項に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項8】
以下の化合物:
【表1】
【表2】
からなるリストから選択される、
請求項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
以下の化合物:
【表3】
【表4】
からなるリストから選択される、
請求項8に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体との混合物にて含む、医薬製剤。
【請求項11】
医薬に使用するための、請求項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項12】
がんを治療するための薬物の製造のための、請求項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項13】
がんの治療に使用するための、請求項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項14】
有効量の請求項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを特徴とする、がんを治療する方法。
【請求項15】
前記がんが、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、CNS腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃癌(gastric cancer)、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、下咽頭癌、白血病(例えば急性リンパ性、急性骨髄性、慢性リンパ性、慢性骨髄性、慢性骨髄単球性)、肝癌、肺癌(例えば小細胞または非小細胞)、肺カルチノイド腫瘍、(例えば皮膚の)リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔癌、副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌(基底および扁平上皮細胞、黒色腫、メルケル細胞)、小腸癌、胃癌(stomach cancer)、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍から選択される群の一つ以上から選択される、請求項12に記載の使用、請求項13に記載の化合物、または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが、結腸直腸癌および胃癌(gastric cancer)から選択される、請求項15に記載の使用、化合物、または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モレファンチン(molephantin)誘導体、モレファンチン誘導体を含む医薬製剤、およびモレファンチン誘導体の医療上の使用(例えば、結腸直腸癌および胃癌などのがんの治療)に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中の先行公開文献の一覧または議論は、必ずしも、文献が先行技術の一部である、または技術常識であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0003】
今日、抗がん薬の60%超が、何らかの形で植物に由来している。臨床診療で使用される特筆すべき植物由来の抗がん薬には、ビンカアルカロイドのビンブラスチンおよびビンクリスチン、カンプトテシン誘導体のトポテカンおよびイリノテカン、並びにパクリタキセル(タキソール)が挙げられ、それぞれ、Catharanthus roseus G. Don.(キョウチクトウ科)、Camptotheca acuminate Decne(ヌマミズキ科)、およびTaxus brevifolia Nutt.(イチイ科)から単離されるか、またはそれらに由来する。しかしながら、これらの薬は、しばしば脱毛症、皮膚反応、疲労、および筋/関節痛などの副作用を伴う。
【0004】
低および中所得国における新たながん症例の数は、2040年までに80%超上昇することが予想される。この上昇ならびに現在の治療法の薬剤耐性および有害な副作用の問題を考えると、新しい効率的な抗がん薬が必要である。
【0005】
Elephantopus tomentosus Linn.は、キク科に属する多年生顕花植物の一種である。北米原産であるが、汎熱帯地域に広く広がった。マレーシアでは、植物全体のエキスが利尿剤、鎮痛剤、解熱剤、駆虫剤、および抗炎症剤として使用される。植物の葉もまた痛みを軽減するために外用される。
【0006】
E. tomentosus L.についての植物化学研究により、トリテルペン、フラボノイド、アルカロイド、カフェオイルキナ酸、およびセスキテルペンラクトンなどの化合物が単離されている。トメンファントピン(tomenphantopin)AおよびBは、最も早い時期にE. tomentopus L.から単離されたセスキテルペンラクトンのうちの2つであり、ヒトKB口腔癌細胞に対して、それぞれ2.5μg/mlおよび5.0μg/mlのED50値で細胞毒性活性を示した(Hayashi T, et al., Phytochemistry, vol. 26, 1987, 1065-1068)。それ以来、その他多くのセスキテルペンラクトンが単離されている。トメンファンチン(tomenphantine)AおよびBは、それぞれ3.0μg/mlおよび2.7μg/mlのED50値でKB細胞株の増殖を抑制することが分かった(Hayashi T, et al., J Nat Prod, vol. 62, 1999, 302-304)。トメンファントピンDおよびモレファンチンは、ヒト骨髄性白血病細胞株K562およびヒト肝がん細胞株(SMMC-7221)に対して阻害活性を有し、トメンファントピンDについてはそれぞれ44.8μMおよび11.2μMのIC50値、モレファンチンについてはそれぞれ7.9μMおよび5.8μMのIC50値であったが、トメンファントピンC、E、およびFは不活性であった(Mei W-L et al., Two new Germacranolides from Elephantopus tomentosus, Phytochemistry Letters, vol. 5, 2012, 800-803 and Wang B, et al., Two New Sesquiterpene Lactones from Elephantopus tomentosus, Chinese Journal of Chemistry, vol. 30, 2012, 1320-1322)。
【0007】
E. tomentosus Lから単離された複数の生理活性化合物が、がん細胞毒性および抗腫瘍活性を示しているが、これらの化合物はまだ臨床試験で評価されていない。これらの化合物の機構的な作用についてのインビトロ研究、ならびに動物モデルでのインビボ研究も不足している。したがって、E. tomentosusから単離される生理活性化合物のいずれかが、実際にインビボでがんの治療に有効であるのか、そうでないのかを予測することは、現在不可能である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、モレファンチンの誘導体に関し、モレファンチンそのものはE. tomentosus L.から単離される場合がある。誘導体はエステル化によって調製される場合があり、驚くべきことにインビトロおよびインビボの両方で抗がん活性を向上させた。
【0009】
したがって、本発明は、以下の番号付けされた条項を提供する。
【0010】
条項1.
式I:
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、H、-C(O)R
3、または-C(O)C
1-6アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、
あるいは、R
1は、-C(O)R
3または-C(O)C
1-6アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、R
2は、-C(O)C(=CH
2)CH
3を示し、
R
3は、存在する場合、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系を示し、ここでアリール、シクロアルキル、およびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはNO
2、特に、ハロおよびC
1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかであり、
R
4は、存在する場合、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系を示し、ここでアリール、シクロアルキル、およびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはハロおよびC
1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0011】
条項2.
R1およびR2が、それぞれ独立して、H、-C(O)R3、または-C(O)C1-3アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、
あるいは、R1が、-C(O)R3または-C(O)C1-3アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、R2が、-C(O)C(=CH2)CH3を示し、任意選択で、
R1およびR2が、それぞれ独立して、-C(O)R3または-C(O)C1-3アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、
あるいは、R1が、-C(O)R3または-C(O)C1-3アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、R2が、-C(O)C(=CH2)CH3を示す、
条項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0012】
条項3.
R3が、存在する場合、アリールまたはヘテロ環式環系を示し、ここでアリールおよびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはNO2、特に、ハロおよびC1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである、
条項1または2に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0013】
条項4.
R3が、存在する場合、アリールであり、ここでアリールは、非置換であるか、またはNO2、特に、ハロおよびC1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである、
条項3に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0014】
条項5.
R3が、存在する場合、フェニルであり、ここでフェニルは、非置換であるか、またはNO2、特に、FおよびC1アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC1アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである、
条項4に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0015】
条項6.
R2が、-C(O)C(=CH2)CH3を示す、
条項1~5のいずれか1項に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0016】
条項7.
R1が、-C(O)R3を示し、R2が、-C(O)R3または-C(O)C(=CH2)CH3を示す、
条項1~6のいずれか1項に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0017】
条項8.
以下の化合物:
【表1】
【表2】
からなるリストから選択される、
条項1に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0018】
条項9.
以下の化合物:
【表3】
【表4】
からなるリストから選択される、
条項8に記載の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0019】
条項10.
条項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体との混合物にて含む、医薬製剤。
【0020】
条項11.
医薬に使用するための、条項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0021】
条項12.
がんを治療するための薬物の製造のための、条項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
【0022】
条項13.
がんの治療に使用するための、条項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【0023】
条項14.
有効量の条項1~9のいずれか1項で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを特徴とする、がんを治療する方法。
【0024】
条項15.
前記がんが、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、CNS腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃癌(gastric cancer)、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、下咽頭癌、白血病(例えば急性リンパ性、急性骨髄性、慢性リンパ性、慢性骨髄性、慢性骨髄単球性)、肝癌、肺癌(例えば小細胞または非小細胞)、肺カルチノイド腫瘍、(例えば皮膚の)リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔癌、副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌(基底および扁平上皮細胞、黒色腫、メルケル細胞)、小腸癌、胃癌(stomach cancer)、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍から選択される群の一つ以上から選択される、条項12に記載の使用、条項13に記載の化合物、または条項14に記載の方法。
【0025】
条項16.
前記がんが、結腸直腸癌および胃癌(gastric cancer)から選択される、条項15に記載の使用、化合物、または方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1A-Bは、化合物NYH001~NYH005の絶対的なIC
50値を生成するための、異なるがん細胞株の用量反応曲線を示す。
【
図1B】
図1A-Bは、化合物NYH001~NYH005の絶対的なIC
50値を生成するための、異なるがん細胞株の用量反応曲線を示す。
【
図1C】
図1A-Bは、化合物NYH001~NYH005の絶対的なIC
50値を生成するための、異なるがん細胞株の用量反応曲線を示す。
【
図2A】
図2A-Eは、様々な濃度の化合物NYH001-NYH005で処置した異なるがん細胞のコロニー形成を示すクローン形成アッセイを示す。エラーバーは、3つの独立した実験の平均値の標準誤差を表す。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図2B】
図2A-Eは、様々な濃度の化合物NYH001-NYH005で処置した異なるがん細胞のコロニー形成を示すクローン形成アッセイを示す。エラーバーは、3つの独立した実験の平均値の標準誤差を表す。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図2C】
図2A-Eは、様々な濃度の化合物NYH001-NYH005で処置した異なるがん細胞のコロニー形成を示すクローン形成アッセイを示す。エラーバーは、3つの独立した実験の平均値の標準誤差を表す。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図2D】
図2A-Eは、様々な濃度の化合物NYH001-NYH005で処置した異なるがん細胞のコロニー形成を示すクローン形成アッセイを示す。エラーバーは、3つの独立した実験の平均値の標準誤差を表す。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図2E】
図2A-Eは、様々な濃度の化合物NYH001-NYH005で処置した異なるがん細胞のコロニー形成を示すクローン形成アッセイを示す。エラーバーは、3つの独立した実験の平均値の標準誤差を表す。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図3】
図3は、DMSO(コントロール)または化合物NYH001-0003で処置したDLD-1細胞のライブセルイメージングを示す。増殖抑制、有糸分裂停止、および細胞死が、化合物で処置された細胞で引き起こされた。
【
図4A】
図4A-Dは、NYH001-NYH005がトランスウェル遊走アッセイにおいてがん細胞の遊走を抑制することを示す。図は、遊走細胞の代表的な画像(スケールバー=50μm)およびクリスタルバイオレット染色を溶離させ、590nmで吸光度を測定した後の遊走細胞の定量分析を示す。データは3つの独立した実験から取られ、平均値±SEMとして示される。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図4B】
図4A-Dは、NYH001-NYH005がトランスウェル遊走アッセイにおいてがん細胞の遊走を抑制することを示す。図は、遊走細胞の代表的な画像(スケールバー=50μm)およびクリスタルバイオレット染色を溶離させ、590nmで吸光度を測定した後の遊走細胞の定量分析を示す。データは3つの独立した実験から取られ、平均値±SEMとして示される。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図4C】
図4A-Dは、NYH001-NYH005がトランスウェル遊走アッセイにおいてがん細胞の遊走を抑制することを示す。図は、遊走細胞の代表的な画像(スケールバー=50μm)およびクリスタルバイオレット染色を溶離させ、590nmで吸光度を測定した後の遊走細胞の定量分析を示す。データは3つの独立した実験から取られ、平均値±SEMとして示される。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図4D】
図4A-Dは、NYH001-NYH005がトランスウェル遊走アッセイにおいてがん細胞の遊走を抑制することを示す。図は、遊走細胞の代表的な画像(スケールバー=50μm)およびクリスタルバイオレット染色を溶離させ、590nmで吸光度を測定した後の遊走細胞の定量分析を示す。データは3つの独立した実験から取られ、平均値±SEMとして示される。*P≦0.05、**P≦0.01、および***P≦0.001
【
図5A】
図5A-Bは、NYH001-NYH005ががん細胞の浸潤を阻害することを示す。図は、浸潤細胞の代表的な画像(スケールバー=50μm)およびクリスタルバイオレット染色を溶離させ、590nmで吸光度を測定した後の浸潤細胞の定量分析を示す。
【
図5B】
図5A-Bは、NYH001-NYH005ががん細胞の浸潤を阻害することを示す。図は、浸潤細胞の代表的な画像(スケールバー=50μm)およびクリスタルバイオレット染色を溶離させ、590nmで吸光度を測定した後の浸潤細胞の定量分析を示す。
【
図6】
図6は、NYH001-NYH005がDLD-1細胞においてG2/MおよびS期の細胞周期停止を誘導することを示す。DMSOまたは化合物で24時間処置したDLD-1細胞をフローサイトメトリーにより解析し、細胞周期分布を決定した。
【
図7】
図7は、DLD-1細胞におけるアポトーシスおよびオートファジー関連タンパク質の発現に及ぼす化合物NYH001-003の用量依存的な効果を示す。細胞をDMSO並びに1、2.5、および5μMのNYH001、002、または003のいずれかで24時間処置した。ウェスタンブロットを行い、切断型PARP、切断型カスパーゼ3および7、LC3B、並びにATG7のタンパク質レベルをチェックした。ローディングコントロールとしてβ-チューブリンを用いた。
【
図8】
図8は、DMSO(コントロール)または化合物NYH001-003で処置されたDLD-1腫瘍スフェロイドの用量依存的な増殖抑制の画像を示す。
【
図9】
図9は、DMSO(コントロール)または化合物NYH001-003で処置されたDLD-1腫瘍スフェロイドの用量依存的な増殖抑制のプロットを示す。
【
図10A】
図10は、NYH001-NYH003が用量依存的に細胞運動性を阻害し得ることを示す。
【
図10B】
図10は、NYH001-NYH003が用量依存的に細胞運動性を阻害し得ることを示す。
【
図10C】
図10は、NYH001-NYH003が用量依存的に細胞運動性を阻害し得ることを示す。
【
図11】
図11は、NYH002処置が実施例9のHCT116細胞異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を抑制することを示す。マウスは、ビークルコントロール、NYH001(25mg/kg)、NYH002(25mg/kg)、または5-Fu(25mg/kg)のいずれかで処置された。(A)実験の全期間にわたる腫瘍体積。点は各実験群における平均腫瘍体積を示す。(B)各実験群について実験終了時に分離した腫瘍の代表的な写真。スケールバーは10mm。(C)実験終了時の平均腫瘍体積。(D)実験終了時の平均腫瘍重量。(E)実験の全期間にわたるマウスの体重。点は各処置群におけるマウスの平均体重を示す。全てのエラーバーはSEMを示し、n=5である。*P≦0.05、**P≦0.01、NYH002とビークルコントロールとの間の比較。
【
図12】
図12は、NYH002処置が実施例9のDLD-1細胞異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を抑制することを示す。マウスは、ビークルコントロール、NYH002(25mg/kg)、または5-Fu(25mg/kg)のいずれかで処置された。(A)実験の全期間にわたる腫瘍体積。点は各実験群における平均腫瘍体積を示す。(B)各実験群について実験終了時に分離した腫瘍の代表的な写真。スケールバーは10mm。(C)実験終了時の平均腫瘍体積。(D)実験終了時の平均腫瘍重量。(E)実験の全期間にわたるマウスの体重。点は各処置群におけるマウスの平均体重を示す。全てのエラーバーはSEMを示し、n=4である。*P≦0.05、**P≦0.01、NYH002とビークルコントロールとの間の比較。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、式I:
【化2】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、H、-C(O)R
3、または-C(O)C
1-6アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、
あるいは、R
1は、-C(O)R
3または-C(O)C
1-6アルキルを示し、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR
4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、R
2は、-C(O)C(=CH
2)CH
3を示し、
R
3は、存在する場合、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系を示し、ここでアリール、シクロアルキル、およびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはNO
2、特に、ハロおよびC
1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかであり、
R
4は、存在する場合、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系を示し、ここでアリール、シクロアルキル、およびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはハロおよびC
1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC
1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を提供する。
【0028】
それゆえ、R1は、H、-C(O)R3、または-C(O)C1-6アルキルを示してもよく、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、あるいはR2が-C(O)C(=CH2)CH3を示す場合、R1は、-C(O)R3または-C(O)C1-6アルキルを示してもよく、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されるかである。
【0029】
言い換えれば、R2が-C(O)C(=CH2)CH3を示す場合、R1は、Hではない。
【0030】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R1は、-C(O)R3または-C(O)C1-6アルキルを示してもよく、ここで後者の基は、非置換であるか、またはハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されるかである。
【0031】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R2は、-C(O)C(=CH2)CH3を示してもよい。
【0032】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、H、-C(O)R3、または-C(O)C1-3アルキルを示してもよく、ここで後者の基は、非置換であっても、ハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されてもよい。
【0033】
いくつかのかかる実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、-C(O)R3または-C(O)C1-3アルキルを示してもよく、ここで後者の基は、非置換であっても、ハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されてもよい。
【0034】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R1は、-C(O)R3または-C(O)C1-3アルキルを示してもよく、ここで後者の基は、非置換であっても、ハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されてもよく、R2は、-C(O)C(=CH2)CH3を示してもよい。
【0035】
いくつかのかかる実施形態において、R1は、-C(O)R3または-C(O)C1-3アルキルを示してもよく、ここで後者の基は、非置換であっても、ハロおよびR4から選択される一つ以上の基によって置換されてもよく、R2は、-C(O)C(=CH2)CH3を示してもよい。
【0036】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R1は、-C(O)R3を示してもよく、R2は、-C(O)R3または-C(O)C(=CH2)CH3を示してもよい。
【0037】
R3は、存在する場合、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系を示し、ここでアリール、シクロアルキル、およびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはNO2、特に、ハロおよびC1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである。
【0038】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R3は、存在する場合、アリールまたはヘテロ環式環系を示してもよく、ここでアリールおよびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であっても、NO2、特に、ハロおよびC1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されてもよく、ここでC1-3アルキルは、非置換であっても、一つ以上のハロ基によって置換されてもよい。
【0039】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R3は、存在する場合、アリールであってもよく、ここでアリールは、非置換であるか、またはNO2、特に、ハロおよびC1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである。
【0040】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R3は、存在する場合、フェニルであってもよく、ここでフェニルは、非置換であっても、NO2、特に、FおよびC1アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されてもよく、ここでC1アルキルは、非置換であっても、一つ以上のハロ基によって置換されてもよい。
【0041】
上記本発明の実施形態のいずれかにおいて、R3上に存在する置換基は、NO2でない置換基によって置換されてもよい。言い換えれば、上記本発明の実施形態のいずれかにおいて、R3は、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系(例えばアリールまたはヘテロ環式環系、例えばアリール(例えばフェニル)など)を示してもよく、ここでアリール、シクロアルキル、ヘテロ環式環系、およびフェニルのそれぞれは、非置換であっても、ハロ(例えばF)およびC1-3アルキル(例えばC1アルキル)から選択される一つ以上の基によって置換されてもよく、ここでC1-3アルキル(またはC1アルキル)は、非置換であるか、または一つ以上のハロ(例えばF)基によって置換されるかである。
【0042】
R4は、存在する場合、アリール、シクロアルキル、またはヘテロ環式環系を示し、ここでアリール、シクロアルキル、およびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であるか、またはハロおよびC1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである。
【0043】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R4は、存在する場合、アリールまたはヘテロ環式環系を示してもよく、ここでアリールおよびヘテロ環式環系のそれぞれは、非置換であっても、ハロおよびC1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されてもよく、ここでC1-3アルキルは、非置換であっても、一つ以上のハロ基によって置換されてもよい。
【0044】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R4は、存在する場合、アリールであってもよく、ここでアリールは、非置換であるか、またはハロおよびC1-3アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されるかであり、ここでC1-3アルキルは、非置換であるか、または一つ以上のハロ基によって置換されるかである。
【0045】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、R4は、存在する場合、フェニルであってもよく、ここでフェニルは、非置換であっても、FおよびC1アルキルから選択される一つ以上の基によって置換されてもよく、ここでC1アルキルは、非置換であっても、一つ以上のハロ基によって置換されてもよい。
【0046】
R4が存在する本発明のいくつかの実施形態において、それは、メチル基上の置換基として存在してもよい。例えば、C1-6アルキル部分およびR4は、置換または非置換ベンジル基を一緒に示してもよく、ここで置換基は、上で定義される通りである。
【0047】
上記の基が「一つ以上の」置換基を含むと言及される場合、それは、1個の置換基または2個以上の置換基で置換されてもよく、例えば、それは、1~6個の置換基、例えば1~5個の置換基など、例えば1個;2個;または3個の置換基によって置換されてもよい。
【0048】
例として、アルキル基(例えばメチルなどのC1-3アルキル基)が一つ以上の置換基(例えばハロ基)によって置換される場合、前記アルキル基は、1個、2個、または3個の置換基(例えばハロ基)によって置換されてもよい。ハロ基は、フルオロ基であってもよい。一つ以上のハロ(例えばフルオロ)基で置換されたアルキル基の例は、トリフルオロメチルである。
【0049】
さらなる例として、アリール基(例えばフェニル基)が一つ以上の置換基によって置換される場合、アリール基は、1~5個の置換基(例えばハロ基またはC1-3アルキル基、ここでC1-3アルキル基それ自体は、上で定義したように、置換されても、非置換であってもよい)によって置換されてもよい。アリール基は、フェニル基であってもよい。ハロ基は、フルオロ基であってもよい。C1-3アルキル基は、上で定義される通りであってもよい。一つ以上のハロ(例えばフルオロ)基で置換されたアリール基(例えばフェニル基)の例は、ペンタフルオロフェニルである。
【0050】
本発明に従う具体的な化合物には、以下:
【表5】
【表6】
並びにその薬学的に許容される塩および溶媒和物が挙げられる。
【0051】
本発明のある実施形態において、式Iの化合物は、以下:
●上記化合物(a)~(f);
●上記化合物(a)~(e);
●上記化合物(b)~(f);および
●上記化合物(b)~(e);
並びにその薬学的に許容される塩および溶媒和物
から選択される場合がある。
【0052】
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体との混合物にて含む、医薬製剤を提供する。
【0053】
式Iの化合物は抗がん活性を有する。それゆえ、本発明は、以下:
●医薬に使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
●がんを治療するための薬物の製造のための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
●がんの治療に使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
●有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを特徴とする、がんを治療する方法。
を提供する。
【0054】
上記の使用、使用のための化合物、および治療の方法のそれぞれにおいて、がんは、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、CNS腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃癌(gastric cancer)、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、下咽頭癌、白血病(例えば急性リンパ性、急性骨髄性、慢性リンパ性、慢性骨髄性、慢性骨髄単球性)、肝癌、肺癌(例えば小細胞または非小細胞)、肺カルチノイド腫瘍、(例えば皮膚の)リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔癌、副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌(基底および扁平上皮細胞、黒色腫、メルケル細胞)、小腸癌、胃癌(stomach cancer)、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍から選択される群の一つ以上から選択される場合がある。
【0055】
本明細書で言及される場合がある本発明のいくつかの実施形態において、がんは、結腸直腸癌および胃癌(gastric cancer)から選択される場合がある。
【0056】
本明細書で言及される「含む(comprising)」という単語は、言及される特徴を必要とするが、他の特徴の存在を制限しないものとして解釈される場合がある。あるいは、「含む」という単語は、列挙される構成要素/特徴のみが存在することを意図する状況に関する場合もある(例えば「含む」という単語は、「からなる(consists of)」または「本質的に~からなる(consists essentially of)」という表現に置き換えられる場合がある)。より広い解釈およびより狭い解釈の両方が本発明の全ての態様および実施形態に適用され得るということが明確に企図される。言い換えれば、「含む」という単語およびその同義語は、「からなる」という表現または「本質的に~からなる」という表現あるいはそれらの同義語によって置き換えられる場合があり、逆もまた同様である。
【0057】
「本質的に~からなる」という表現およびその別表現(pseudonym)は、少量の不純物が存在する場合のある物質を指すと本明細書で解釈される場合がある。例えば、その物質は、純度90%以上、例えば純度95%以上、例えば純度97%以上、例えば純度99%以上、例えば純度99.9%以上、例えば純度99.99%以上、例えば純度99.999%以上、例えば純度100%である場合がある。
【0058】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形の指示対象を含む。
【0059】
本明細書における(本発明のあらゆる態様または実施形態における)式Iの化合物への言及は、かかる化合物それ自体、かかる化合物の互変異性体、並びにかかる化合物の薬学的に許容される塩または溶媒和物、あるいは薬学的に機能的な誘導体への言及を含む。
【0060】
言及される場合がある薬学的に許容される塩には、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。かかる塩は、従来の手段によって、例えば、任意に溶媒中で、または塩が溶けない媒質中で、式Iの化合物の遊離酸または遊離塩基形態を1当量以上の適切な酸または塩基と反応させ、続いて標準的な技術を用いて(例えば減圧下で、凍結乾燥によって、または濾過によって)前記溶媒、または前記媒質を除去することによって形成される場合がある。塩は、例えば適当なイオン交換樹脂を用いて、塩の形態にある式Iの化合物の対イオンを別の対イオンと交換することによっても調製される場合がある。
【0061】
薬学的に許容される塩の例には、鉱酸および有機酸に由来する酸付加塩、並びに金属(例えばナトリウム、マグネシウム、好ましくは、カリウムおよびカルシウムなど)に由来する塩が挙げられる。
【0062】
酸付加塩の例には、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アリールスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸)、アスコルビン酸(例えばL-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)樟脳酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸(例えばD-グルコン酸)、グルクロン酸(例えばD-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えばL-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸(例えば(+)-L-乳酸および(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸(例えば(-)-L-リンゴ酸)、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタリン酸、メタンスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸(例えば(+)-L-酒石酸)、チオシアン酸、ウンデシレン酸、および吉草酸とともに形成される酸付加塩が挙げられる。
【0063】
塩の特定の例は、鉱酸(例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸など);有機酸(例えば酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸など);並びに金属(例えばナトリウム、マグネシウム、好ましくは、カリウムおよびカルシウムなど)に由来する塩である。
【0064】
上で言及されるように、化合物およびその塩のあらゆる溶媒和物もまた、式Iによって包含される。好ましい溶媒和物は、非毒性の薬学的に許容される溶媒(以下、溶媒和溶媒と呼ぶ)の分子の、本発明の化合物の固体構造(例えば結晶構造)への取り込みによって形成される溶媒和物である。かかる溶媒の例には、水、アルコール(例えばエタノール、イソプロパノール、およびブタノールなど)、およびジメチルスルホキシドが挙げられる。溶媒和物は、溶媒または溶媒和溶媒を含む溶媒の混合物で本発明の化合物を再結晶させることによって調製され得る。あらゆる所与の場合において溶媒和物が形成されたかどうかは、化合物の結晶を周知の標準的な技術(例えば熱重量分析(TGE)、示差走査熱量測定(DSC)、およびX線結晶構造解析など)を用いる解析にかけることによって決定され得る。
【0065】
溶媒和物は、化学量論または非化学量論の溶媒和物であり得る。特に好ましい溶媒和物は水和物であり、水和物の例には、半水和物、一水和物、および二水和物が挙げられる。
【0066】
溶媒和物ならびにそれを作成および特徴づけるために使用される方法のより詳しい議論については、Bryn et al., Solid-State Chemistry of Drugs, Second Edition, published by SSCI, Inc of West Lafayette, IN, USA, 1999, ISBN 0-967-06710-3を参照されたい。
【0067】
本明細書に定義される式Iの化合物の「薬学的に機能的な誘導体」には、エステル誘導体および/またはあらゆる関連する本発明の化合物と同じ生物学的機能および/または活性を有するか、または提供する誘導体が挙げられる。それゆえ、本発明の目的上、当該用語は、式Iの化合物のプロドラッグもまた含む。
【0068】
式Iの関連化合物の「プロドラッグ」という用語は、経口投与または非経口投与後にインビボで代謝され、予め決められた時間内(例えば6~24時間の投与間隔内(すなわち、1日1回~4回))に、実験的に検出可能な量のその化合物を形成するあらゆる化合物を含む。
【0069】
式Iの化合物のプロドラッグは、かかるプロドラッグが哺乳動物対象に投与された場合にインビボで修飾が切断されるように、化合物上に存在する官能基を修飾することによって調製される場合がある。修飾は、一般に、親化合物をプロドラッグ置換基と合成することによって達成される。プロドラッグは、式Iの化合物中のヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、またはカルボニル基が、インビボで切断され、それぞれ遊離ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、カルボキシル、またはカルボニル基を再生成することがあるあらゆる基に結合している、式Iの化合物を含む。
【0070】
プロドラッグの例には、ヒドロキシル官能基のエステルおよびカルバメート、カルボキシル官能基のエステル基、N-アシル誘導体、およびN-マンニッヒ塩基が挙げられるが、これらに限らない。プロドラッグに関する一般情報は、例えばBundegaard, H.“Design of Prodrugs”p. I-92, Elsevier, New York-Oxford (1985)に記載されている。
【0071】
式Iの化合物、並びにかかる化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、および薬学的に機能的な誘導体は、簡単のため、以下ではまとめて「式Iの化合物」と呼ぶ。
【0072】
式Iの化合物は二重結合を含んでもよく、それゆえ個々の二重結合についてE(entgegen)およびZ(zusammen)幾何異性体として存在してもよい。全てのかかる異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0073】
式Iの化合物は位置異性体として存在してもよく、互変異性を示してもよい。全ての互変異性型およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0074】
式Iの化合物は一つ以上の不斉炭素原子を含んでもよく、したがって光学および/またはジアステレオ異性を示してもよい。ジアステレオ異性体は、従来の技術、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶を用いて分離される場合がある。様々な立体異性体は、従来の技術(例えば分別結晶またはHPLC)を用いる、化合物のラセミまたはその他の混合物の分離によって単離される場合がある。あるいは、望ましい光学異性体は、ラセミ化またはエピメリ化を引き起こさない条件下での適切な光学活性出発物質の反応(すなわち「キラルプール」法)、後に適当な段階で除去できる「キラル補助基」との適切な出発物質の反応、例えばホモキラル酸による誘導体化(すなわち動力学的分割などの分割)、続いて従来の手段(例えばクロマトグラフィーなど)によるジアステレオマー誘導体の分離、または全て当業者に既知の条件下での適切なキラル試薬またはキラル触媒との反応によって作られる場合がある。全ての立体異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0075】
誤解を避けるために、本発明の文脈において、「治療(treatment)」という用語は、かかる治療を必要とする患者の治療的処置または対症療法、ならびに関連病状になりやすい患者の予防的治療および/または診断への言及を含む。
【0076】
「患者(patient)」という用語は、哺乳動物(例えばヒト)患者への言及を含む。本明細書で使用される「対象(subject)」または「患者」という用語は、当技術分野で十分に認識されており、本明細書において互換的に使用され、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、および最も好ましくはヒトなどの哺乳動物を指す。いくつかの実施形態において、対象は、治療を必要とする対象であるか、または疾患もしくは障害を有する対象である。しかしながら、他の実施形態において、対象は、健常者であり得る。この用語は、特定の年齢または性別を意味しない。それゆえ、成人および新生児対象は、男性であれ女性であれ、包含されるように意図されている。
【0077】
「有効量(effective amount)」という用語は、治療される患者に治療効果を与える(例えば疾患を治療または予防するのに十分な)化合物の量を指す。効果は客観的(すなわちいくつかの試験またはマーカーによって測定可能)であっても主観的(すなわち対象が効果の徴候を示すか、または効果を感じる)であってもよい。
【0078】
「ハロ(halo)」という用語は、本明細書で使用される場合、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードへの言及を含む。
【0079】
特に断らない限り、「アリール(aryl)」という用語は、本明細書で使用される場合、C6-14(例えばC6-10など)アリール基を含む。かかる基は、単環式、二環式、または三環式である場合があり、6~14個の環炭素原子を有する場合があり、ここで少なくとも一つの環は芳香族である。アリール基の結合点は、環系のどの原子を介してもよい。しかしながら、アリール基が二環式または三環式である場合、芳香環を介して分子の残りの部分に結合する。C6-14アリール基には、フェニル、ナフチル、および同類のもの(例えば1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル、およびフルオレニルなど)が挙げられる。言及される場合がある本発明の実施形態には、アリールがフェニルである実施形態が挙げられる。
【0080】
特に断らない限り、「アルキル(alkyl)」という用語は、非分岐または分岐、非環式または環式、飽和または不飽和の(例えば、アルケニルまたはアルキニルを形成する)ヒドロカルビルラジカルを指し、(例えば、一つ以上のハロ原子で)置換されても、非置換であってもよい。「アルキル」という用語が非環基を指す場合、それは、好ましくはC1-10アルキル、より好ましくはC1-6アルキル(例えばエチル、プロピル(例えばn-プロピルまたはイソプロピル)、ブチル(例えば分岐または非分岐ブチル)、ペンチル、より好ましくはメチルなど)である。「アルキル」という用語が環基である場合(「シクロアルキル」という基が特定される場合でもよい)、それは、好ましくはC3-12シクロアルキル、より好ましくはC5-10(例えばC5-7)シクロアルキルである。
【0081】
本発明の特定の実施形態において、「アルキル」という用語が使用される場合、それは、非分岐または分岐、非環式、飽和ヒドロカルビルラジカルを指す場合があり、(例えば、一つ以上のハロ原子で)置換されても、非置換であってもよい。「アルキル」という用語が非環基を指す場合、それは、好ましくはC1-10アルキル、より好ましくはC1-6アルキル(例えばエチル、プロピル(例えばn-プロピルまたはイソプロピル)、ブチル(例えば分岐または非分岐ブチル)、ペンチル、より好ましくはメチルなど)である。
【0082】
「ヘテロアリール(heteroaryl)」という用語は、本明細書で使用される場合、好ましくはN、O、およびSから選択される一つ以上のヘテロ原子(例えば1~4個のヘテロ原子)を含む(例えば、単、二、または三環式ヘテロ芳香族基を形成する)芳香族基を指す。ヘテロアリール基は、5~14(例えば10)員のヘテロアリール基を含み、単環式、二環式、または三環式である場合があるが、環の少なくとも一つは芳香族である。しかしながら、ヘテロアリール基が二環式または三環式である場合、芳香環を介して分子の残りの部分に結合する。言及される場合があるヘテロ環式基には、ベンゾチアジアゾリル(2,1,3-ベンゾチアジアゾリルなど)、イソチオクロマニル、より好ましくは、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキセピニル、ベンゾジオキソリル(1,3-ベンゾジオキソリルなど)、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル(2,1,3-ベンゾオキサジアゾリルなど)、ベンゾオキサジニル(3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾオキサジニルなど)、ベンゾオキサゾリル、ベンゾモルホリニル、ベンゾセレナジアゾリル(2,1,3-ベンゾセレナジアゾリルなど)、ベンゾチエニル、カルバゾリル、クロマニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、インダゾリル、インドリニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアジオリル(isothiaziolyl)、イソオキサゾリル、ナフチリジニル(1,6-ナフチリジニル、好ましくは1,5-ナフチリジニルおよび1,8-ナフチリジニルなど)、オキサジアゾリル(1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、および1,3,4-オキサジアゾリルなど)、オキサゾリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、テトラヒドロイソキノリニル(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニルおよび5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリニルなど)、テトラヒドロキノリニル(1,2,3,4-テトラヒドロキノリニルおよび5,6,7,8-テトラヒドロキノリニルなど)、テトラゾリル、チアジアゾリル(1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、および1,3,4-チアジアゾリルなど)、チアゾリル、チオクロマニル、チオフェネチル、チエニル、トリアゾリル(1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、および1,3,4-トリアゾリルなど)および同類のものが挙げられる。ヘテロアリール基上の置換基は、適切な場合には、ヘテロ原子を含む環系中のどの原子上に位置してもよい。ヘテロアリール基の結合点は、(適切な場合には、)ヘテロ原子(例えば窒素原子など)を含む環系中のどの原子を介してもよいし、環系の一部として存在することがあるあらゆる縮合炭素環式環上の原子を介してもよい。ヘテロアリール基は、NまたはS酸化型である場合もある。特に好ましいヘテロアリール基には、ピリジル、ピロリル、キノリニル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピリミジニル、インドリル、ピラジニル、インダゾリル、ピリミジニル、チオフェネチル、チオフェニル、ピラニル、カルバゾリル、アクリジニル、キノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、シンノリニル、およびプテリジニル(pterdinyl)が挙げられる。特に好ましいヘテロアリール基には、単環式ヘテロアリール基が挙げられる。
【0083】
本明細書において特に断らない限り、「ヘテロ環式環系」は、芳香族、完全飽和、または部分的に不飽和である場合がある、O、S、およびNから選択される一つ以上のヘテロ原子を含む、4~14員、例えば5~10員(例えば6~10員)など、のヘテロ環式基であってもよく、ヘテロ環式基は1つまたは2つの環を含む場合がある。本明細書で言及される場合があるヘテロ環式環系の例には、アゼチジニル、ジヒドロフラニル(例えば2,3-ジヒドロフラニル、2,5-ジヒドロフラニル)、ジヒドロピラニル(例えば3,4-ジヒドロピラニル、3,6-ジヒドロピラニル)、4,5-ジヒドロ-1H-マレイミド、ジオキサニル、ジオキソラニル、フラニル、フラザニル、ヘキサヒドロピリミジニル、ヒダントイニル、イミダゾリル、イソチアジオリル(isothiaziolyl)、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリル、モルホリニル、1,2-または1,3-オキサジナニル(oxazinanyl)、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリニル(例えば3-ピロリニル)、ピロリル、ピロリジニル、ピロリジノニル、3-スルホレニル(sulfolenyl)、スルホラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル(例えば3,4,5,6-テトラヒドロピリジニル)、1,2,3,4-テトラヒドロピリミジニル、3,4,5,6-テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラメチレンスルホキシド、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チアゾリジニル、チエニル、チオフェネチル、トリアゾリル、およびトリアジナニル(triazinanyl)が挙げられるが、これらに限らない。
【0084】
本明細書において特に断らない限り、「炭素環式環系」は、芳香族、完全飽和、または部分的に不飽和である場合がある、4~14員、例えば5~10員(例えば6~10員、例えば6員または10員など)など、の炭素環式基であってもよく、炭素環式基は1つまたは2つの環を含む場合がある。本明細書で言及される場合がある炭素環式環系の例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、フェニル、ナフチル、デカリニル(decalinyl)、テトラリニル(tetralinyl)、ビシクロ[4.2.0]オクタニル、および2,3,3a,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-1H-インダニルが挙げられるが、これらに限らない。特に好ましい炭素環式基には、フェニル、シクロヘキシル、およびナフチルが挙げられる。
【0085】
言及される場合がある本発明のさらなる実施形態には、式Iの化合物が同位体標識される実施形態が挙げられる。しかしながら、言及される場合がある本発明の他の特定の実施形態には、式Iの化合物が同位体標識されない実施形態が挙げられる。
【0086】
「同位体標識された(isotopically labelled)」という用語は、本明細書で使用される場合、化合物中の一つ以上の位置に非天然同位体(または非自然的な同位体分布)が存在する式Iの化合物への言及を含む。本明細書における「化合物中の一つ以上の位置」への言及は、式Iの化合物の原子のうちの一つ以上を指すと当業者によって理解される。それゆえ、「同位体標識された」という用語は、化合物中の一つ以上の位置で同位体濃縮された式Iの化合物への言及を含む。
【0087】
式Iの化合物の同位体標識化または濃縮は、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、および/またはヨウ素のいずれかの放射性または非放射性同位体で行われる場合がある。この点において言及される場合がある特定の同位体には、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、35S、18F、37Cl、77Br、82Br、および125Iが挙げられる。
【0088】
式Iの化合物が放射性または非放射性同位体で標識または濃縮される場合、言及される場合がある式Iの化合物には、化合物中の少なくとも一つの原子が、問題となっている原子の放射性または非放射性同位体がその放射性または非放射性同位体の天然レベルよりも少なくとも10%(例えば10%~5000%、特に50%~1000%、より特に100%~500%)高いレベルで存在する同位体分布を示す化合物が挙げられる。
【0089】
式Iの化合物はあらゆる適当な経路で投与されてもよく、特に、経口、静脈内、筋肉内、皮膚、皮下、経粘膜(例えば舌下またはバッカル)、直腸、経皮、経鼻、経肺(例えば経気管または経気管支)、局所、あらゆるその他の非経口経路で、薬学的に許容される剤形にて化合物を含む医薬品の形態で、投与される場合がある。言及される場合がある特定の投与方法には、経口、静脈内、皮膚、皮下、経鼻、筋肉内、または腹腔内投与が挙げられる。
【0090】
式Iの化合物は、一般に、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体との混合物での医薬製剤として投与され、これらは意図される投与経路および標準的な薬学的慣習を十分考慮して選択される場合がある。かかる薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性である場合があり、使用条件下で有害な副作用または毒性を持たない場合がある。適当な医薬製剤は、例えばRemington The Science and Practice of Pharmacy, 19th ed., Mack Printing Company, Easton, Pennsylvania (1995)に記載されている。非経口投与については、非経口的に許容される水溶液が利用される場合があり、それはパイロジェンフリーであり、必要なpH、等張性、および安定性を有する。適当な溶液は当業者に周知であり、多数の方法が文献に記載されている。薬物送達の方法の簡潔なレビューもまた、例えばLanger, Science (1990) 249, 1527に記載されている。
【0091】
そうでなければ、適当な製剤の調製は、ルーチン技術を用いて、および/または標準的な、および/または受容されている薬学的慣習に従って、当業者によってルーチン的に達成される場合がある。
【0092】
本発明に従って使用されるあらゆる医薬製剤における式Iの化合物の量は、様々な因子(例えば治療されるべき病態の重症度、治療されるべき特定の患者、ならびに利用される化合物など)に左右される。いずれの場合においても、製剤中の式Iの化合物の量は、当業者によってルーチン的に決定される場合がある。
【0093】
例えば、固体経口組成物(例えば錠剤またはカプセルなど)は、1~99%(w/w)で活性成分;0~99%(w/w)で希釈剤または増量剤;0~20%(w/w)で崩壊剤;0~5%(w/w)で滑沢剤;0~5%(w/w)で流動助剤;0~50%(w/w)で造粒剤または結合剤;0~5%(w/w)で抗酸化剤;および0~5%(w/w)で着色剤を含む場合がある。徐放錠は、0~90%(w/w)で放出制御ポリマーをさらに含む場合がある。
【0094】
非経口製剤(例えば注射用の溶液もしくは懸濁液、または注入用の溶液など)は、1~50%(w/w)で活性成分;および50%(w/w)~99%(w/w)で液体もしくは半固体担体またはビークル(例えば水などの溶媒);および0~20%(w/w)で一つ以上のその他の添加剤(例えば緩衝剤、抗酸化剤、懸濁液安定剤、浸透圧調整剤、および防腐剤など)を含む場合がある。
【0095】
障害、および治療されるべき患者、ならびに投与経路に応じて、式Iの化合物は、異なる治療有効量で、治療を必要とする患者に投与される場合がある。
【0096】
しかしながら、本発明の文脈において、哺乳動物、特にヒトに投与される用量は、合理的な期間にわたって哺乳動物において治療反応をもたらすのに十分であるべきである。当業者は、正確な用量および組成物ならびに最も適切な送達レジメンの選択が、とりわけ、製剤の薬理学的特性、治療されている病態の性質および重症度、ならびにレシピエントの健康状態および知的鋭敏さ、並びに具体的な化合物の効力、治療されるべき患者の年齢、状態、体重、性別、および応答、ならびに疾患の段階/重症度によっても影響されることを認識する。
【0097】
投与は、連続的であっても間欠的(ボーラス注射による)であってもよい。用量は、投与の時期および頻度によって決定される場合もある。経口または非経口投与の場合、用量は、式Iの化合物が1日当たり約0.01mg~約1000mgまで様々であり得る。
【0098】
いずれにせよ、医師またはその他の当業者は、個々の患者にとって最も適当な実際の用量をルーチン的に決定することができる。上記の用量は平均的な場合の代表であり、当然ながら、より高いまたはより低い用量範囲がふさわしい個々の場合があり得、それらは本発明の範囲内である。
【0099】
本明細書に記載される本発明の態様(例えば上記の化合物、組み合わせ、方法、および使用)は、本明細書に記載の病態またはそれ以外の治療で使用するための、当技術分野で既知の類似の化合物、組み合わせ、方法(治療)、または使用と比較して、本明細書に記載の病態の治療において、医師および/または患者にとってより都合がよい、より効果的である、毒性がより低い、選択性がより良い、活性の範囲がより広い、より強力である、副作用がより少ない、またはその他の有用な薬理学的特性を有する場合があるという利点を有する場合がある。
【0100】
本発明は以下の実施例によって説明されるが、これは特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0101】
調製実施例1:E. tomentosus L.からのモレファンチンの抽出および精製
E. tomentosus L.の葉をモレファンチンの抽出および精製に用いた。簡潔に言えば、水およびメタノールの両方を溶媒とし、粉末にした凍結乾燥葉または採取したばかりの葉を用いて粗エキスを得た。遠心分離および濾過により、不溶残留物を粗エキスから除去した。その後、溶媒を除去して濃縮エキスを生成し、次に、下記のとおりにフラッシュカラムクロマトグラフィーをシリカゲルとともに用いてこれを精製した。
【0102】
50gの凍結乾燥粉末を1L 蒸留水に添加することで粗水抽出物を調製した。Vibra-Cell, VCX130ソニケーターを用いて、75% 振幅(10秒オン/オフ)で10分間、粉末-水混合物を超音波処理した。続いて遠心分離および濾過を行い、不溶残留物を除去した。その後、1:1(v/v)比でメタノール(MeOH)を濾過抽出物に添加した。真空濃縮器を用いて溶媒を抽出物から除去し、濃縮エキスを得た。
【0103】
抽出物質(2.47g)をMeOH中に再懸濁した。シリカゲル(4g)を懸濁物質中に添加し、混合物を蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー上に混合物を乾式充填する準備をした。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;CH2Cl2:MeOH=90:10~80:20)により、抽出物質を精製した。結果として生じた精製物質(138mg)をGPC(モデル:LaboACE LC-5060;使用カラム:JAIGEL-2HR;注入濃度:13.8 mg/mL;注入量:10mL;流速:10mL/分)によりさらに精製し、モレファンチン(21.8 mg、0.0629 mmol)を褐色固体として得た。
【0104】
モレファンチンは、収率のより高い、下記の改良法によってもまた合成される場合がある。
【0105】
酢酸エチルを溶媒として、粉末にした凍結乾燥葉を用いて粗エキスを得た。簡潔に言えば、40gの凍結乾燥粉末を250mLの酢酸エチルに添加し、30分間、懸濁液を超音波処理した(Fisherbrand (登録商標) FB15051)。混合物中の残留物を沈殿させ、緑色の溶液をデカントした。次に残留物を別の250mL 酢酸エチル中に懸濁し、30分間超音波処理した。溶液が淡い緑がかった黄色になるまで、これを合計5回繰り返した。合わせた有機抽出物をCelite(登録商標)で濾過し、減圧濃縮した。粗製残留物をフラッシュカラムシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=4:1~1:1)により精製した。次に木炭(200mg)を酢酸エチル(15mL)中の精製産物に添加し、混合物を30分間放置した後、Celite(登録商標)で濾過した。減圧下で溶媒を蒸発させた後、ゲル浸透クロマトグラフィー(モデル:LaboAce LC-5060;使用カラム:JAIGEL-2HR-40;注入量:10mL;流速:30mL/分)により、2つの異なるフラクション:分離不可能なモレファンチニンおよびモレファンチンの混合物、並びに白色固体の純粋なモレファンチン(120 mg、0.289 mmol)を得た。
【0106】
モレファンチンは、以下ではNYH001と呼ぶ。
【化3】
【0107】
実施例2:モレファンチン誘導体NYH002-NYH007の合成
モレファンチンの誘導体は、エステル化反応によって生成された。
NYH002の合成
【化4】
【0108】
モレファンチン(NYH001)(3.4 mg、9.82 μmol、1 equiv)のCH2Cl2(1 mL)溶液に、BzCl(6 μL、52.07 μmol、5 equiv)、Et3N(14 μL、100.44 μmol、10 equiv)、およびDMAP(100 μL、CH2Cl2中、1.0 mg/mL、0.82 μmol、8 mol%)を0℃、窒素下で添加し、反応混合物を24℃で14時間攪拌した。次に揮発性物質を減圧濃縮した。得られた粗製物質をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン:EtOAc=70:30)により精製し、NYH002を18%収率(0.8 mg、1.8 μmol)で黄色油として得、NYH001を71%収率(2.4 mg、1.8 μmol)で褐色固体として回収した。
【0109】
NYH002は、収率のより高い、下記の改良法によってもまた合成される場合がある。
【化5】
【0110】
無水ジクロロメタン(2 mL)中、NYH001(190.1 mg、0.55 mmol、1.0 equiv)、DMAP(6.7 mg、0.05 mmol、10 mol%)、トリエチルアミン(459 μL、3.29 mmol、6.0 equiv)の混合物に塩化ベンゾイル(127 μL、1.10 mmol、2.0 equiv)を0℃、アルゴン下でゆっくりと添加した。次に反応物を室温に温め、1時間攪拌した。次に混合物を減圧濃縮した。粗製残留物を飽和NaHCO3(10 mL)で洗浄し、続いてジクロロメタン(3 x 10 mL)で抽出した。有機層を合わせ、ブライン(10 mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、慎重に減圧濃縮した。フラッシュカラムシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン:EtOAc=75:25)を用いて、得られた粗製物質を精製し、NYH002(228 mg、92%)を白色固体として得た。
【0111】
NYH003の合成
【化6】
NYH001(4.5 mg、12.99 μmol、1 equiv)のCH
2Cl
2(1 mL)溶液に、塩化ペンタフルオロベンゾイル(19 μL、131.96 μmol、10 equiv)、Et
3N(18 μL、129.14 μmol、10 equiv)、およびDMAP(140 μL、CH
2Cl
2中、1.1 mg/mL、1.26 μmol、10 mol%)を0℃、窒素下で添加し、反応混合物を24℃で1時間攪拌した。次に揮発性物質を減圧濃縮した。得られた粗製物質をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン:EtOAc=70:30)により精製し、NYH003を24%収率(1.7 mg、3.1 μmol)で無色油として得た。
【0112】
NYH003は、収率のより高い、下記の改良法によってもまた合成される場合がある。
【化7】
【0113】
無水ジクロロメタン(1 mL)中、NYH001(35.8 mg、0.10 mmol、1.0 equiv)、DMAP(1.2 mg、0.01 mmol、10 mol%)、トリエチルアミン(86 μL、0.62 mmol、6.0 equiv)の混合物に、塩化ペンタフルオロベンゾイル(30 μL、0.21 mmol、2.0 equiv)を0℃、アルゴン下でゆっくりと添加した。次に反応物を室温に温め、1時間攪拌した。次に混合物を減圧濃縮した。粗製残留物を飽和NaHCO3(5 mL)で洗浄し、続いてジクロロメタン(3 x 10 mL)で抽出した。有機層を合わせ、ブライン(10 mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、慎重に減圧濃縮した。フラッシュカラムシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン:EtOAc=75:25)を用いて、得られた粗製物質を精製し、NYH003(31.8 mg、57%)を白色固体として得た。
【0114】
NYH004の合成
【化8】
NYH001(7.3 mg、21.08 μmol、1 equiv)のCH
2Cl
2(1 mL)溶液に、4-(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロライド(31 μL、208.69 μmol、10 equiv)、Et
3N(29 μL、208.06 μmol、10 equiv)、およびDMAP(1.3 mg、10.64 μmol、50 mol%)を0℃、窒素下で添加し、反応混合物を24℃で16時間攪拌した。次に揮発性物質を減圧濃縮した。得られた粗製物質をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン:EtOAc=80:20)により精製し、NYH004を55%収率(6.0 mg、11.68 μmol)で淡黄色固体として得た。
【0115】
NYH004は、収率のより高い、下記の改良法によってもまた合成される場合がある。
【化9】
【0116】
無水ジクロロメタン(1 mL)中、NYH001(32.8 mg、0.09 mmol、1.0 equiv)、DMAP(1.1 mg、9.5 μmol、10 mol%)、トリエチルアミン(79 μL、0.57 mmol、6.0 equiv)の混合物に、4-(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロライド(28 μL、0.19 mmol、2.0 equiv)を0℃、アルゴン下でゆっくりと添加した。次に反応物を室温に温め、1時間攪拌した。次に混合物を減圧濃縮した。粗製残留物を飽和NaHCO3(5 mL)で洗浄し、続いてジクロロメタン(3 x 10 mL)で抽出した。有機層を合わせ、ブライン(10 mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、慎重に減圧濃縮した。フラッシュカラムシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン:EtOAc=75:25)を用いて、得られた粗製物質を精製し、NYH004(47.6 mg、97%)を白色固体として得た。
【0117】
NYH005の合成
【化10】
無水ジクロロメタン(1 mL)中、NYH001(13.8 mg、0.04 mmol、1.0 equiv)、DMAP(0.5 mg、4.0 μmol、10 mol%)、トリエチルアミン(33 μL、0.24 mmol、6.0 equiv)の混合物に、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロライド(14 μL、0.08 mmol、2.0 equiv)を0℃、アルゴン下でゆっくりと添加した。次に反応物を室温に温め、1時間攪拌した。次に混合物を減圧濃縮した。粗製残留物を飽和NaHCO
3(5 mL)で洗浄し、続いてジクロロメタン(3 x 10 mL)で抽出した。有機層を合わせ、ブライン(10 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、慎重に減圧濃縮した。フラッシュカラムシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン:EtOAc=75:25)を用いて、得られた粗製物質を精製し、NYH005(21.1 mg、90%)を白色固体として得た。
【0118】
NYH007の合成
【化11】
無水ジクロロメタン(1 mL)中、NYH001(25.0 mg、0.07 mmol、1.0 equiv)、DMAP(0.8 mg、7.2 μL、10 mol%)、トリエチルアミン(60 μL、0.43 mmol、6.0 equiv)の混合物に、4-ニトロベンゾイルクロライド(27 mg、0.14 mmol、2.0 equiv)を0℃、アルゴン下でゆっくりと添加した。次に反応物を室温に温め、1時間攪拌した。次に混合物を減圧濃縮した。粗製残留物を飽和NaHCO
3(5 mL)で洗浄し、続いてジクロロメタン(3 x 10 mL)で抽出した。有機層を合わせ、ブライン(10 mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、慎重に減圧濃縮した。フラッシュカラムシリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘキサン:EtOAc=75:25)を用いて、得られた粗製物質を精製し、NYH007(31.2 mg、87%)を白色固体として得た。
【0119】
実施例3:細胞毒性アッセイ
様々ながん細胞型における化合物NYH001-NYH005の細胞毒性効果を試験するために、異なるがん細胞を化合物で48時間処置し、MTTアッセイを用いて分析した。試験された全ての化合物について、細胞の増殖は用量依存的に抑制されることが分かった。化合物の絶対的なIC
50値を算出した(表1、
図1A-C)。注目すべきことに、新規化合物NYH002-NYH005の抑制効果は天然化合物NYH001(モレファンチン)よりも大きく、これはがん細胞生存率の抑制における活性がより高いことを示す。NYH007の細胞毒性効果はDLD-1細胞で試験され、IC
50は0.35μMであることが分かった。
表1:異なるがん細胞株に対するNYH001-NYH005のIC
50
【表7】
【0120】
がん細胞に対する化合物の増殖抑制効果をさらに確認するために、コロニー形成アッセイを行った。細胞を様々な用量の化合物で処置し、コロニーを形成するまで7~10日間増殖させた。メタノールを含む0.5% w/vクリスタルバイオレットでコロニーを固定および染色した。蒸留水で細胞培養プレートをリンスした後、定量化のためにスキャンした。Image Jソフトウェアを用いて、コロニー数を定量化した。
【0121】
結果は、化合物が用量依存的に細胞のクローン形成活性を有意に減少させ得ることを示した。MTT細胞生存率アッセイと同様に、新規化合物NYH002-NYH005は、NYH001と比較して、細胞生存により大きな効果を引き起こした。特に、NYH002およびNYH003は、いくつかの細胞株において1 μMまでの低濃度でいかなるコロニー形成ももたらさなかった(
図2A-E)。
【0122】
実施例4:ライブセルイメージングによる形態変化
細胞形態変化および細胞運命を調べるために、細胞を12ウェル組織培養プレートに播種し、異なる濃度の化合物で処置し、Zeiss Axiovert 200M 顕微鏡の熱制御ステージ上に置いた。温度を37℃で維持し、CO2濃度を5%で維持した。72時間の間、位相差像を15分間隔で取得した。
【0123】
非処置細胞はライブセルイメージングの間、健全に成長および増殖することができた一方で、化合物NYH001-NYH003で処置されたがん細胞は用量依存的に増殖抑制および細胞死を受けた。がん細胞は、やがて細胞収縮、膜ブレブ形成、およびアポトーシスに似た細胞死をもたらす、細胞の円形化および有糸分裂の遅延を示すことが観察された(
図3)。
【0124】
実施例5:細胞遊走および浸潤アッセイ
細胞遊走および浸潤は、がん細胞転移を促進する主要な要因である。細胞運動性および浸潤性に対する化合物の効果を調べるために、トランスウェル遊走および浸潤アッセイを行った。孔径8μmのトランスウェルインサート(Corning Costar)を用いてトランスウェルアッセイを行った。遊走アッセイのために、化合物で処置した7.5x104~1.5x105個の細胞を無血清培地中の上側チャンバーに添加した。浸潤アッセイにおいて、細胞播種の前に、トランスウェルインサートを最初にMatrigelでコーティングした。両方のアッセイについて、10% FBSを含む細胞培地で下側チャンバーを満たした。37℃で24時間インキュベートした後、遊走または浸潤しなかった細胞を上部チャンバーから除去した。下側チャンバーに遊走または浸潤した細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色し、顕微鏡下で画像化した。結合したクリスタルバイオレットを33%酢酸で溶離させ、プレートリーダーを用いて吸光度590nmで測定するために、溶離液を96ウェルプレートに移した。
【0125】
トランスウェルアッセイは、単一化合物での処置ががん細胞の遊走を用量依存的に阻害すること(
図4A-D)、NYH002-NYH005はNYH001と比較してより強力な阻害効果を示すことを示した。
【0126】
さらに、化合物は、試験した細胞株における細胞の浸潤性も減少させる(
図5A-B)。
【0127】
実施例6:細胞周期停止およびアポトーシスの誘導
化合物で処置したDLD-1細胞の細胞周期分布をフローサイトメトリーによりさらに調査した。簡潔に言えば、NYH001-NYH005による処置の24時間後に細胞を回収し、70%エタノールで固定した。細胞を洗浄し、ヨウ化プロピジウムおよびRNaseを含むPBS中に30分間懸濁した。Cell Quest Pro Softwareを備えたフローサイトメーターを用いて、細胞周期分布を決定した。FlowJoソフトウェアを用いて、サイトメトリーの結果を解析した。
【0128】
化合物に曝露させた後の、G1、S、またはG2/M期にある細胞の割合を評価した。G2/M期にある化合物処置DLD-1細胞の割合は、コントロールDMSO群のそれよりも有意に高いことが分かり、これは化合物がG2/M期の細胞周期停止を誘導したことを示唆する。S期にある細胞集団もまたわずかに増加しており、これはS期においても細胞周期を遅延させる可能性があることを示す(
図6)。
【0129】
がん細胞におけるNYH001-NYH003によって誘導される細胞死の様式を決定するために、アポトーシス促進マーカー(例えば切断型PARPならびに切断型カスパーゼ3および7など)並びにオートファジーマーカーLC3BおよびATG7の発現をウェスタンブロッティングにより定量化した。化合物NYH001-NYH003は、DLD-1細胞において、アポトーシス促進マーカーおよびオートファジーマーカーの両方の産生を用量依存的に誘導することが分かった。ウェスタンブロットの結果は、化合物により誘導される細胞死がアポトーシスおよびオートファジーに多少関わることを示唆する(
図7)。
【0130】
実施例7:腫瘍スフェロイド増殖アッセイ
腫瘍スフェロイド増殖アッセイは、より生理学的に腫瘍微小環境に関連する環境を作るために確立されたもので、それゆえインビトロ薬物スクリーニングをより代表すると見なされる。このアッセイにおいて、アガロースコーティングした96ウェル組織培養プレート上に8000個の細胞を播種し、続いて800gで5分間遠心分離することにより、DLD-1細胞を含む小さな腫瘍スフェロイドを作成した。この方法は、類似の形態および寸法を有する小型のスフェロイドの作成を可能にする。次に、通常の条件下で、またはNYH001-003による処置の下で、15日間スフェロイドを増殖させた。化合物を含むまたは含まない50%培地交換を3日ごとに行った。
【0131】
Fijiを用いてスフェロイドの面積を測定した。NYH001-NYH003で処置したスフェロイドの増殖は用量依存的に抑制されることが明らかであった(
図8および9)。
【0132】
実施例8:創傷閉鎖アッセイ
細胞運動性に及ぼすNYH001-003の効果を決定するために創傷閉鎖アッセイを行った。4ウェルシリコンインサート(Ibidi)のウェル中にAGS細胞を100%コンフルエントになるまで増殖させた。ウェルは500μmの壁で隔てられており、インサートを取り外すとおよそ500μmのギャップができる。異なる濃度のNYH001-003またはDMSOで処置する前に、細胞をPBSで洗浄して死細胞および浮遊細胞を除去した。ライブセルイメージングにより、ギャップへの細胞遊走を24時間監視した。Fijiにより創傷閉鎖を解析した。データは、NYH001-003が用量依存的に細胞運動性を効率的に阻害し得ること、したがって、がん細胞転移を減少させる可能性があることを示した(
図10A-10C)。
【0133】
実施例9:HCT116およびDLD-1皮下腫瘍異種移植片マウスモデルにおける腫瘍増殖の抑制
1:1 ハンクス平衡塩類溶液/Matrigel中、1×106個のHCT116またはDLD-1細胞をメスのJ:Nu非近交系ヌードマウス(5~6週齢)の右脇腹に皮下注射した。腫瘍体積が50~100mm3に到達したときにマウスを処置群(1群あたりマウス4~5匹)に割り当てた。3週間の間、2日に1回、ビークルコントロール(エタノール:Kolliphor EL:生理食塩水=1:1:8)、NYH001(25mg/kg)、NYH002(25mg/kg)、または5-フルオロウラシル(5-FU、25mg/kg)を腹腔内注射により投与した。マウスの体重は毎日測定し、腫瘍サイズは1週間に2回測定した。式、体積=(長辺×短辺2)/2mm3を用いて、腫瘍サイズを算出した。3週間の処置期間の終わりにマウスを屠殺し、腫瘍を切除した。全ての手順は、NTU Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認され、IACUCプロトコールA20001に従って実行された。
【0134】
結果は、NYH002で処置されたマウスが腫瘍増殖を有意に抑制することを示した(
図11および12)。21日の処置後、平均腫瘍体積は、HCT116およびDLD-1異種移植マウスについてそれぞれ、ビークルコントロールを投与されたマウスと比較して46.5%および51.9%減少した(
図11Cおよび12C)。平均腫瘍重量もまた、HCT116およびDLD-1異種移植マウスにおいて49.3%および57.3%減少した(
図11Dおよび12D)。腫瘍サイズの減少は、結腸癌の治療のために使用される一般的な化学療法薬である5-FUで処置されたマウスよりも顕著であった。5-FU処置は、HCT116およびDLD-1異種移植マウスにおいてそれぞれ、コントロールと比較して10.4%および32.3%の腫瘍体積の減少ならびに21.9%および38.7%の腫瘍重量の減少をもたらした。
【0135】
HCT116異種移植マウスにおけるNYH001処置の有効性もまた評価された。NYH001処置は、5-FU処置よりも腫瘍増殖を抑制することができたが、NYH002よりも有効性は低かった。平均腫瘍体積および重量は、HCT116異種移植マウスにおいて35.4%および41.7%減少した(
図11Cおよび12D)。全ての処置は、実験の間を通して体重に有害な変化を引き起こさなかった(
図11Eおよび12E)。
【0136】
全体的に見て、結果は、NYH002処置がインビボで優れた抗がん効果と最小限の毒性を有し、モレファンチン(NYH001)および5-FUと比較して改善された抗がん効果を提供することを示した。
【国際調査報告】