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特表2024-517452宇宙飛行容器シェルのための繊維複合プラスチックから成るラッピング
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  • 特表-宇宙飛行容器シェルのための繊維複合プラスチックから成るラッピング 図1
  • 特表-宇宙飛行容器シェルのための繊維複合プラスチックから成るラッピング 図2
  • 特表-宇宙飛行容器シェルのための繊維複合プラスチックから成るラッピング 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(54)【発明の名称】宇宙飛行容器シェルのための繊維複合プラスチックから成るラッピング
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/40 20060101AFI20240415BHJP
   B29C 70/30 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B64G1/40 200
B29C70/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568288
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 AT2022060155
(87)【国際公開番号】W WO2022232858
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】A50349/2021
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416151
【氏名又は名称】ピーク・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】グレープナー・ディーター
(72)【発明者】
【氏名】へーアー・フィリップ
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA36
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH31
4F205AH55
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HF05
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK05
4F205HT16
4F205HT26
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、宇宙飛行容器シェル8のための繊維複合プラスチックから成るラッピングに関している。冒頭に記載された様式のラッピングを、特に、宇宙飛行容器シェルとの関連において、良好な強度特性、並びに、慣用の繊維巻回方法を用いての容易な製造にもかかわらず、地球の大気内への再突入の際の、可能な限り完全な灼熱しての燃え尽きが与えられているように構成するために、前記ラッピングが、プラスチックマトリックス2から成る、少なくとも1つのラッピングストリップ1を備え、前記プラスチックマトリックス内に、ストリップ長手方向xに単一指向的に延在するそれぞれに複数の繊維束5から成る、ストリップ横方向yに相互に重なり合って配置された、少なくとも2つのストリップ層3、4が埋設されており、1つにストリップ層3、4の、ストリップ長手方向xにおいて隣接する繊維束5が、巻回ループ毎に、少なくとも一か所、設けられている当接領域6において直接的に互いに隣接し、且つ、ストリップ横方向yにおいて隣接する繊維束5が、オーバーラップ領域7の形成のもとで、ストリップ長手方向xに互いに位置ずれされていることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙飛行容器シェル(8)のための繊維複合プラスチックから成るラッピングにおいて、
前記ラッピングが、プラスチックマトリックス(2)から成る、少なくとも1つのラッピングストリップ(1)を備え、
前記プラスチックマトリックス内に、ストリップ長手方向(x)に単一指向的に延在するそれぞれに複数の繊維束(5)から成る、ストリップ横方向(y)に相互に重なり合って配置された、少なくとも2つのストリップ層(3、4)が埋設されており、
1つにストリップ層(3、4)の、ストリップ長手方向(x)において隣接する繊維束(5)が、巻回ループ毎に、少なくとも一か所、設けられている当接領域(6)において直接的に互いに隣接し、且つ、
ストリップ横方向(y)において隣接する繊維束(5)が、オーバーラップ領域(7)の形成のもとで、ストリップ長手方向(x)に互いに位置ずれされている、
ことを特徴とするラッピング。
【請求項2】
前記オーバーラップ領域(7)は、ストリップ長手方向(x)において、少なくとも1cmにわたって延在することを特徴とする請求項1に記載のラッピング。
【請求項3】
ストリップ長手方向(x)において互いに隣接する繊維束(5)は、当接面を有しており、これら当接面が、前記ラッピングストリップ(1)の法線方向横断面に対して傾斜されていることを特徴とする請求項1または2に記載のラッピング。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のラッピングのためのラッピングストリップ(1)であって、
プラスチックマトリックス(2)が設けられており、
前記プラスチックマトリックス内に、ストリップ長手方向(x)に単一指向的に延在するそれぞれに複数の繊維束(5)から成る、ストリップ横方向(y)に相互に重なり合って配置された、少なくとも2つのストリップ層(3、4)が埋設されており、
1つにストリップ層(3、4)の、ストリップ長手方向(x)において隣接する繊維束(5)が、予め与えられた間隔をおいて、少なくとも一か所、設けられている当接領域(6)において直接的に互いに隣接し、且つ、
ストリップ横方向(y)において隣接する繊維束(5)が、オーバーラップ領域(7)の形成のもとで、ストリップ長手方向(x)に互いに位置ずれされている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のラッピング。
【請求項5】
前記プラスチックマトリックス(2)は、熱硬化性の樹脂であり、且つ、
前記繊維束(5)が、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、及び/または、超高分子量ポリエチレン繊維から形成されていることを特徴とする請求項4のラッピングストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙飛行容器シェルのための繊維複合プラスチックから成るラッピング、並びに、そのようなラッピングのためのラッピングストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロケット段、衛星などの、特に圧力容器において使用されるような宇宙飛行容器シェルは、液密性の理由から、通常アルミニウムから製造され、且つ、一義的に構造付与し且つ力を収容する構造部材として、繊維複合プラスチックから成るラッピングを有している。この様式の圧力容器は、例えば、特許文献1から公知である。
【0003】
そのような、COPV(複合オーバーラップ圧力容器(composite overwrapped pressure vessel))と称される圧力容器の製造の際に、宇宙飛行容器シェルは、通常、繊維巻回方法を施され、その際、繊維、例えば炭素繊維が、反応性樹脂によって予め含浸され、且つ、引き続いて、ラッピングされるべき容器シェルに、予め与えられた巻回パターンを介して引き渡される。
この様式の繊維複合プラスチックから成るラッピングは、圧力容器の、同時に小さな重量における、繊維連続体の高い引張強度に基づいて、特に有利な強度増大を伴う。
通常、高い繊維の燃焼温度に基づいて、これら繊維は、地球の大気内への再突入の際に、金属性の宇宙飛行容器シェルのための断熱層を具現し、このことは、ラッピングの無い容器シェルとの比較において、より粗悪な、灼熱しての燃え尽き挙動を引き起こす。ラッピングも、その下に位置する容器シェルも、地球の大気内への再突入の際に十分に解体され得ないことによって、地球の表面に衝突する宇宙ゴミの増大されたリスクが結果として生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0241459号明細書A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の根底をなす課題は、冒頭に記載された様式のラッピングを、特に、宇宙飛行容器シェルとの関連において、良好な強度特性、並びに、慣用の繊維巻回方法を用いての容易な製造にもかかわらず、地球の大気内への再突入の際の、可能な限り完全な灼熱しての燃え尽きが与えられているように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、提示された課題を、
前記ラッピングが、プラスチックマトリックスから成る、少なくとも1つのラッピングストリップを備え、
前記プラスチックマトリックス内に、ストリップ長手方向に単一指向的に延在するそれぞれに複数の繊維束から成る、ストリップ横方向に相互に重なり合って配置された、少なくとも2つのストリップ層が埋設されており、
1つにストリップ層の、ストリップ長手方向において隣接する繊維束が、巻回ループ毎に、少なくとも一か所、設けられている当接領域において直接的に互いに隣接し、且つ、
ストリップ横方向において隣接する繊維束が、オーバーラップ領域の形成のもとで、ストリップ長手方向に互いに位置ずれされている、
ことによって解決する。
【発明の効果】
【0007】
これら特徴に基づいて、個々に、プラスチックマトリックス内へと埋設されたエンドレス繊維連続体を有する従来の繊維マトリックスラッピングとは異なり、1つのラッピングが提供され、このラッピングが、複数の繊維束によって特徴付けられており、これら繊維束が、プラスチックマトリックスによって、1つのストリップ層の繊維束が当接領域内において直接的に互いに隣接するように互いに結合されている。
本発明の趣旨において、繊維束のもとで、個別の繊維の1つのグループが理解され、これら個別の繊維は、繊維束の始端部および終端部において切断されているか、もしくは、終端している。このことによって、地球の大気内への再突入の際の、ラッピングされた宇宙飛行容器の灼熱しての燃え尽き挙動は、決定的に改善され得る。
何故ならば、プラスチックマトリックスの熱分解により、このプラスチックマトリックス内において埋設されている繊維束が、空気動力学的なせん断力によって、効果的に剥離され得るからであり、従って、更に続けて、同様にその下に位置する容器シェルも、信頼性の高い溶融のために十分に露出され、且つ、断熱的に作用する繊維によって、溶融が妨げられることはない。
ラッピングストリップが、ストリップ横方向に相互に重なり合う少なくとも2つのストリップ層を有しており、その際、ストリップ横方向において隣接する繊維束が、オーバーラップ領域の形成のもとで、ストリップ長手方向に互いに位置ずれされている場合、
プラスチックマトリックスだけによって形成された当接領域によって、付加的な応力集中が、ラッピング内へと導入されるにもかかわらず、実際は、それにも拘らず、ラッピングの十分な剛性もしくは強度が達成され得る。
個々の繊維束への一貫した繊維連続体の分離によって、先ず第一に、ラッピングストリップの引張強度が低減されるにもかかわらず、本発明に従うオーバーラップにより、ラッピングのために必要な引張強度が形成されるだけでなく、応力集中の効果も減少される。
その際、宇宙飛行容器シェルとの関連において、繊維束の問題の無いせん断応力に起因する剥離を可能とするために、ストリップ層毎の繊維束の数は、ラッピングストリップの巻回ループ毎に、即ち、ラッピングされるべき宇宙飛行容器シェルの周囲での巻回ループ毎に、少なくとも1つの当接領域が与えられるように選択される必要がある。
【0008】
ラッピングのための、可能な限り良好な強度値を達成するために、前記オーバーラップ領域は、ストリップ長手方向において、少なくとも1cmにわたって延在する。
この構成の結果として、ストリップ横方向において隣接する繊維束当接領域が、および、これに伴って現れる、そこで生じる応力集中位置も、少なくとも1cmだけストリップ長手方向に位置ずれされており、従って、改善された応力分布が、ストリップ長手方向において達成される。
【0009】
特に有利な強度条件は、ストリップ長手方向において互いに隣接する繊維束が、当接面を有しており、これら当接面が、前記ラッピングストリップの法線方向横断面に対して傾斜されている場合に、結果として生じる。
有利には、繊維束は、当接領域内において、ストリップ幅方向に関して、接ぎ木状に(geschaeftet)形成されている。この構成の結果として、当接領域内において生じる応力集中は減少可能であり、且つ、これに伴って、ラッピングの強度特性が更に改善される。
【0010】
本発明は、同様に、上記されたラッピングのためのラッピングストリップにも関する。
その際、プラスチックマトリックスが設けられており、
前記プラスチックマトリックス内に、ストリップ長手方向に単一指向的に延在するそれぞれに複数の繊維束から成る、ストリップ横方向に相互に重なり合って配置された、少なくとも2つのストリップ層が埋設されており、
1つにストリップ層の、ストリップ長手方向において隣接する繊維束が、予め与えられた間隔をおいて、少なくとも一か所、設けられている当接領域において直接的に互いに隣接する。
ストリップ横方向において隣接する繊維束は、オーバーラップ領域の形成のもとで、ストリップ長手方向に互いに位置ずれされている。
有利には、前記プラスチックマトリックスは、熱硬化性の樹脂である。前記繊維束が、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、及び/または、超高分子量ポリエチレン繊維のような繊維タイプから形成されていることは可能である。
【0011】
ラッピングストリップもしくはラッピングの機械的な特性プロフィルを、予め与えられた事情に対して可能な限り最高に適合可能とするために、ラッピングストリップが、1つの繊維タイプだけを有している繊維束だけを有しているか、または、しかしながら同様に異なる繊維タイプの繊維束から成る組み合わせが存在することも、意図されていることは同様に可能である。
繊維束自体が、異なる繊維タイプの組み合わせから形成されていることが、意図されていることは可能である。この構成の結果として、ラッピングストリップもしくはラッピングの機械的な特性は、使用される繊維タイプの、それぞれに異なる剛性、引張強度、延性、等の考慮のもとで、特に有利な方法で規定され得る。
【0012】
この様式のラッピングストリップの製造のために、例えば、
プラスチックマトリックスとしての少なくとも2つの熱硬化性の樹脂でもって予め含浸された、エンドレス繊維強化されたラッピングストリップが、先ず第一に、複数のストリップ部分に切断され、
この後、それぞれのストリップ部分の未だに硬化されていない樹脂が、熱入力によって軟化され、且つ、これらストリップ部分が、本発明に従うラッピングストリップの形成のもとで、互いに、プラスチックマトリックスを介して結合されることが、意図されていることは可能である。
このように形成され、予大量生産されたラッピングストリップは、次いで、公知の繊維巻回方法において使用され得る。
【0013】
図内において、本発明の対象が、例示的に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従うラッピングストリップの概略的な長手方向断面である。
図2図1のラッピングストリップの概略的な平面図である。
図3】本発明に従うラッピングを有する、宇宙飛行容器シェルの概略的な斜視俯瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に従う繊維複合プラスチックから成るラッピングは、プラスチックマトリックス2から成る少なくとも1つのラッピングストリップ1を備え、
前記プラスチックマトリックス内に、ストリップ長手方向xに単一指向的に延在するそれぞれに複数の繊維束5から成る、ストリップ横方向yに相互に重なり合って配置された、少なくとも2つのストリップ層3、4が埋設されている。
【0016】
地球の大気内への再突入の際の、繊維束5の問題の無いせん断応力に起因する剥離を可能とするために、
ストリップ層3もしくは4毎の、繊維束5の数は、1つにストリップ層3もしくは4の、ストリップ長手方向xにおいて隣接する繊維束5が、ラッピングストリップの巻回ループ毎に、および、これに伴って、同様にラッピングされるべき容器シェルの巻回ループ毎に、少なくとも一か所、設けられている当接領域6において直接的に互いに隣接するように選択される必要がある。
【0017】
ストリップ横方向yにおいて隣接する繊維束5は、オーバーラップ領域7の形成のもとで、ストリップ長手方向xに互いに位置ずれされている。
本発明に従うオーバーラップにより、ラッピングのために必要な引張強度が形成されるだけでなく、当接領域6によって条件付けられる応力集中の効果も減少され得る。有利には、オーバーラップ領域7は、ストリップ長手方向xにおいて、少なくとも1cmにわたって延在する。
【0018】
特に有利な強度条件のために、ストリップ長手方向xにおいて互いに隣接する繊維束5が当接面を有しており、これら当接面が、ラッピングストリップ1の法線方向横断面に対して傾斜されていることが意図されていることは可能である。このことは、繊維束5が、当接領域6内において、そのことが図2内において示唆されているように、ストリップ幅方向zに関して接ぎ木状に形成されいることを意味する。
【0019】
図3内において、宇宙飛行容器シェル8の概略的な斜視俯瞰図が図示されており、この宇宙飛行容器シェルは、本発明に従うラッピングを有しており、このラッピングが、予め与えられた巻回パターンに基づいて、宇宙飛行容器シェル8に載置されている。
そのことが図2内において示唆されているように、ラッピングストリップ1は、ラッピングされるべき宇宙飛行容器シェル8の巻回ループ毎に、少なくとも1つの当接領域6を有している。一目瞭然性のために、図3内において、4つだけのそのような当接領域6が描かれており、これら当接領域が、生じる全ての当接領域6を代表するものである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】